ディズニー/ピクサーの新作映画『ファインディング・ドリー』の日本語版で、エンドソングの歌唱を担当する八代亜紀が“本人役”で声の出演を務めることが発表になった。オリジナル版ではシガニー・ウィーヴァーが本人役で登場している。公開された映像『ファインディング・ニモ』では、カクレクマノミの父マーリンが、行方不明になってしまった息子ニモを探して大冒険を繰り広げる姿が描かれたが、新作はニモの親友ドリーが幼い頃にはなればなれになってしまった家族に出会うために、旅立ち、人間の世界を舞台に冒険するドラマが描かれる。このほど公開になったのは、ドリーが、八代亜紀の声に誘われて海上へと泳いでいくシーン。ピクサーのアニメーションに「こんにちは。八代亜紀です」というセリフが重なる衝撃的な映像だが、各国版で有名スターがこの部分を担当しているそうだ。「アニメーションで八代亜紀役の出演は初めてでした。八代さん!とドリーが言うセリフにはびっくりしましたね」という八代は「監督に八代亜紀の“声”のまま淡々とした感じでと言われたんです。歌ではずっと抑揚をつけるということを何十年もしていますから、抑揚がいらないと言われてとても難しかったですね」と収録を振り返った。八代はエンドソング『アンフォゲッタブル』の歌唱も担当しており、歌とナレーションでドリーの冒険を彩る。『ファインディング・ドリー』7月16日(土) 全国ロードショー
2016年07月05日雨の季節になり、自分の部屋や屋内にいる時間が長くなっている人が増えてきたのではないでしょうか。屋内では身体を動かす機会は少なく、身体がなまっているなと感じている方もいらっしゃると思います。そんなとき、フィギュアスケーターはさまざまなアイテムを使って、屋内でもストレッチを兼ねたトレーニングをしています。今回は、皆さんもまねができるような、スケーターが家や遠征先で行っている身体のトレーニングについてお伝えしたいと思います。○筋肉の緊張をほぐす器具まずはフォームローラーを使っての身体のケアです。フォームローラーとは、少し硬めの素材でできた円柱の器具です。以前は1メートル弱のものが主流でしたが、最近では持ち運びに便利な30センチほどのサイズのものや円柱の中身がない筒状のタイプなど、さまざまな種類が出てきています。表面がデコボコになっているものもあり、目的に合わせて選んで使用しています。こちらの器具は、主に筋肉の緊張をほぐす目的で使用します。例えば長いサイズのものですと、床の上に器具を置き、器具がちょうど背骨に当たるようにして寝転びます。あとは20分ほど、器具から落ちないように手足をうまく使ってバランスをとるだけです。このバランスをとるための微妙な振動で、背骨周りの筋肉をほぐすことができます。この器具はあるスポーツトレーナーが考案したものと言われており、セルフケアではどうしても手が届きにくい背面を一人でほぐすことができるので、器具が生まれた当初はスポーツ界でも話題になりました。○テニスボールも使用次にボールを使っての身体のケアです。フィギュアスケート選手は、練習中には硬いスケート靴を履いているので、足裏が疲労で固まることがしばしばあります。そこでテニスボールやゴルフボールを用いて、足裏をほぐします。ほぐす方法はとても簡単で、床にボールを置き、足でコロコロ転がすだけです。またこの小さめのボールは足裏だけではなく、お尻に敷いて体重をかけたり、股関節周りもほぐしたりすることができます。ボールにほぐしたい場所を当てて体重をかけるだけですので、とても手軽に行えます。○マッサージ棒の秘密最後は、スティックタイプのマッサージ棒です。テレビでバックステージが映されたときや、試合会場で選手と直接会ったときなどに、リュックなどの荷物に長い棒が入っているのを見かけた方もいらっしゃるかもしれません。長い棒に小さなコマがたくさんついており、ふくらはぎや太ももに当てて、コロコロと棒を転がします。棒はしなるようにできており、脚の形にそってケアすることができます。ボールでは1カ所を集中的にというケアの仕方ですが、こちらは少し長めになっているので、広範囲を一度にケアできるのがメリットです。今回はこの3つしかご紹介できませんでしたが、ご参考になりましたでしょうか。同じ目的のものでも、出しているメーカーによって少し形状が異なっているものもあります。ぜひいろいろ試してみてください。○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2016年06月28日歌手の八代亜紀が、ディズニー/ピクサーの最新作『ファインディング・ドリー』(7月16日公開)の日本版エンドソング「アンフォゲッタブル」を担当することが17日、発表された。八代がディズニー作品の楽曲を担当するのは、初となる。本作は、ピクサー映画の中で、国内興行収入1位となる110億円を記録した『ファインディング・ニモ』(03年)の続編。前作の1年後が舞台で、カクレクマノミ・ニモとマーリン親子の親友で、忘れんぼうのナンヨウハギのドリーが主人公となり、家族を見つける冒険に出て行く。このストーリーにちなみ、世代を超えて愛されているジャズの名曲「アンフォゲッタブル」がエンド曲として起用された。同曲は、どんなことがあっても忘れられない"いとしい人への思い"をつづり、ジャズシンガーのナット・キング・コールが歌ったことで世界的に大ヒット。娘ナタリー・コールがナットの生前に録音された歌声に声を重ねたデュエットソングが、時を超えた父娘の愛の賛歌としてリスナーの心をつかみ、第34回グラミー賞の主要3部門受賞に輝いた。この曲を歌う八代は、日本人アルバム史上最大級となる世界75カ国でジャズアルバムを配信し、海外のジャズクラブでのライブを行うなど世界のジャズシーンで活躍中。そんな八代の抜てきは、同曲に込められた深い愛と感情の機微を届けられるということから実現した。これを受けて八代は、「びっくりすると同時にとてもうれしいです! 歌ってきてよかった、46年八代亜紀をやってきてよかったです」と歓喜。また、「今回カバーしたことで、八代亜紀としての視野が広がった」と自らの成長を明かした。歌詞については、「"忘れられない"という気持ちに対して、"大丈夫だよ、忘れてないよ"と言っている言葉が大好きです」と明言。続けて、「ドリーの場合はそれが両親で、"忘れてないよね、心の中にあるよね"という親への思いなんです」と自らの解釈を披露した。さらに、八代が本作の日本語吹替版に声優として初参加していることも発表。役どころは明かされていないが、八代は「歌に加えてダブルでうれしい! 重要な部分で声の出演もしていますので、お子さんも大人の方もみなさんに見てほしいです!」とアピールした。(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
2016年06月17日●フィギュアスケーターが陸上で行うトレーニング世界選手権も終わり、フィギュアスケートはオフシーズンへと突入しました。現在、多くの選手が次のシーズンに向けて準備をしている頃だと思います。前回は体幹トレーニングについて触れましたが、今回はそのほかの陸上トレーニングについていくつかご紹介したいと思います。以前、オフアイストレーニングとしてバレエや新体操などをご紹介しました。浅田真央選手はバレエをきっかけにスケートを始めましたし、高橋大輔さんは現役時代、陸上トレーニング専門のトレーナーさんと一緒にランニングや体幹トレーニングを行っていました。ですが、この他にも選手がオフアイスで行っているトレーニングがたくさんあります。○さまざまな効果が見込める縄跳びまずは、最も多くのフィギュア選手が取り入れているであろう「縄跳び」です。この記事を読んでくださっているほとんどの方も、一度は縄跳びをしたことがあるでしょう。フィギュアの選手はこの縄跳びをトレーニングだけではなく、ウオーミングアップで取り入れていることが多いです。テレビでウオーミングアップ風景が映った際に見かけたことがある方もいらっしゃると思います。縄跳びのやり方は選手の目的によって異なりますが、長く跳び続けて心肺機能を高めたり、2重跳びや3重跳びでジャンプ力を高めたりと、さまざまな効果があります。専門用語では「プライオメトリクストレーニング」というのですが、縄跳びをしている際に着地の時間をなるべく減らし、着地のパワーをジャンプの力に変えることで、より楽に高いジャンプが跳べるようになります。低年齢の選手は正しい跳び方を身体で覚えていくのですが、縄跳びをしている際は、体幹が安定していないと着地のパワーをうまくジャンプ力に変えられず、2重跳びなどで縄に引っかかってしまう原因になります。縄跳びは場所をあまりとらない利点もあるため、取り入れやすいトレーニングと言えます。●ボールを使った練習の数々○バランスや体幹を鍛えるメニューまた、同じプライオメトリクストレーニングとして、1kg程度の重りが入っているボール(メディシンボール)を使ってトレーニングを行う選手もいます。こちらも目的によって使い方はさまざまですが、私の場合はボールを使って体幹を意識させることを目的として取り入れていました。重いボールを真上に投げようとする際、腕の力だけではなかなか投げられませんでした。でも、膝の曲げ伸ばしの反動で生まれた力を体幹を通じて腕まで伝えられたときは、ボールは楽に遠くまで投げられました。この動きを応用して、ジャンプの軸に変えていくわけです。力を物に伝えて得た感覚は身体も覚えていてくれて、ジャンプも楽に跳べるようになった記憶があります。物を使うトレーニングは他にもたくさんあり、バランスボールやバランスボードなどといった不安定な道具を使って、バランス感覚を鍛えるというトレーニングが一例です。昨今のフィギュアスケートの採点法を鑑み、最近ではスピンやステップでより高いレベルの技を習得するため、基本の姿勢から変形させた姿勢で技を行うことが増えてきました。基本からあえて姿勢を変形させるため、平衡感覚を鍛え、どんな姿勢でも転倒しないようなバランスを保つ訓練が必要となってきています。もちろん氷上での練習も重要になってきますが、変形した姿勢が原因でけがをしないよう、陸上で基礎の筋肉の使い方を覚えてから氷上で練習することが多いです。○日常の健康増進にも役立てよう見た目は華やかなフィギュアの世界ですが、その裏ではこのような見えない努力をしている選手がたくさんいます。フィギュアスケートへの効果をご紹介させていただきましたが、これらは、一般の方の健康増進にも大いに役立てられるものだと思います。フィギュアスケーターが取り入れているトレーニング、ぜひとも日常にも取り入れてみてくださいね。○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2016年04月04日実に40年以上「日本の心」を歌い続けてきた八代亜紀さん。流行歌手と呼ばれていたデビュー当時、プロであればどんなジャンルも歌えるのが当たり前だったそう。ジャンルが細分化された現在も、演歌にとどまらずジャズやロック、ポップスなどあらゆる音楽を「八代節」で歌い上げる彼女が、初のブルースアルバム『哀歌 -aiuta-』をリリース。プロデューサーに寺岡呼人さんを迎え、日米の名曲カバーだけでなく世代の異なる個性豊かなミュージシャンが新曲を提供した充実の内容だ。ブルースの魂が八代さんに脈々と息づいていることを感じさせてくれる、濃密なインタビューをどうぞ!――まずは、なぜこのタイミングにブルースアルバムをリリースしようと思ったのでしょう。八代:日本人である私にとってのブルースは、浪曲なんです。浪曲はひとりでセリフを言ったり歌ったりするんですけど、寝るときいつも父に聴かされて、その声音というか音の魂を感じて2歳のアキちゃんは意味もわからないのに「カワイショウだね」って泣いていたんですって。今の時代は、仕事がないといっても選んでいるだけで、本当はいっぱいあるでしょう?私たちの若い頃は仕事を選べなかったし、両親が若い頃はもっとそうだった。日本が戦争に負けてものすごく貧しかったけど、どん底から少しずつ豊かになっていったから、些細なことにも幸せを感じたんですって。今はなんでも揃っているけれど、幸せもつらさも感じにくいと思うの。だからこそ、八代亜紀の歌うブルースを伝えたいんですよね。――小さい頃から歌がお好きだったそうですが、人前で歌うのは苦手だったそうですね。八代:本当に嫌いでした!歌うときって顔を歪めたりするでしょう。それを見られるのが嫌だったの。週に1回、近所のおじいちゃん、おばあちゃんが私の歌を聴きに、座布団を持ってうちへ集まってきたんだけど、子どもながらにそれが苦痛でね。渋っていると、父がだんだん怖い顔になってくるんです。さすがにもう怒られるっていう瞬間、母に10円玉を「はいっ!」って渡されてね。それが私のギャラ(笑)。だけどやっぱり顔を見られるのは嫌だから、ふすまの向こうで歌ってました。――歌うことが楽しさに変わるきっかけは、あったのでしょうか。八代:その後、父が独立して会社を作り、お金の工面で苦労するようになりました。「従業員の給料を優先して、余ったお金がうちのだからな」と母に話している姿をよく見かけ、なんとかして父を助けなければと思ったんです。それで憧れだったジュリー・ロンドンのプロフィールが「クラブシンガー」となっていたから、一流はクラブで歌うのだと思い込み、私もそうならなきゃ!と決心したの。友人に連れられて行った地元のキャバレーで年齢をごまかして歌って、フロア中に私のハスキーな歌声が広がった途端、騒がしかったお客さんやお姉さんたちがスッと立ち上がって、フロアに出てきてダンスを始めたの。キャバレーで歌い始めて、3日目で父にはバレましたけどね。「不良はいらん」とものすごく叱られて勘当されました。それで東京へ出てきたの。――それでも歌手になりたい気持ちは揺るぎませんでしたか?八代:そうね、でも追い出されてしまったから、父に私が本気だと証明しなければいけないという意地もありました。母が段取りしてくれて、東京のいとこ夫婦のところに居候しながら音楽学院に通い、レコードデビューする寸前までいってダメになったこともありました。4年経って銀座のクラブで歌うようになるんだけど、その間、父は電話にも出てくれませんでした。アキは勘当されたのに、悲しんでいるどころか、東京でルンルンしてるって思っていたみたい。――銀座のクラブで歌うのは、まさに憧れだったわけですよね。八代:銀座で歌っていると、いろんな人がやって来て「レコードを出しなさい」と言われるのだけど、「クラブシンガーは一流だから!」と全然相手にしなくて、すごく生意気だったの。そしたらね、お店で働いていたお姉さんたちが「アキちゃんの歌を毎日ただで聴けるのは本当に嬉しいけれど、世の中にはつらい思いを抱えている歌のなかのような女性がたくさんいるの。レコードを出さないと、その人たちに歌は届かないんだよ」と言ってくれて、ハッと我に返ったんです。それでレコードを出すには芸名を考えなければということで、八代亜紀が生まれました。地方回りをして、スーパーの前とかで箱の上にマイクを置いて歌い、レコードを手売りするようなキャンペーンを2年間やりました。父がそのことを知って、アキは本気だったとようやく認めてくれて、私を支えるために母と一緒に東京へ出てきてくれたんです。――八代亜紀として軌道に乗ることができたのは、ご両親の支えがあったからこそなんですね。八代:昭和47年の暮れに、東京の小さな一軒家で両親とおこたに入りながら、「来年はどうなるんだろうね」って話をしていたの。ラジオもテレビの仕事も一本も決まっていなかったし、48年のスケジュールは真っ白だったから。だけど「私、頑張るからね、絶対に売れるよ!」と言って、新しい年のカレンダーの12月31日のところに「紅白歌合戦出場」とそっと書き込みました。そしたら年が明けて2月に発売した『なみだ恋』という曲が大ヒットして、スケジュールが真っ黒になったの。――唯一の“予定”だった紅白歌合戦出場も実現したわけですね。八代:だからね、自分のなかでけじめをつけるべきときっていうのは、誰にでもちゃんとあるの。10代だろうが50 代だろうが、年齢は関係なくね。大事なのは自分で決めて行動すること。そしたら、違う道が必ず拓けるから。それを私は若い人に強く言いたい。人生はブルースなんですよ。◇やしろ・あき熊本県八代市出身。1971年デビュー。1973年に出世作『なみだ恋』を発売。『愛の終着駅』『舟唄』『雨の慕情』など多数のヒット曲を持つ。2012年にはジャズアルバム『夜のアルバム』をリリース。邦人アルバム史上最大級となる世界75か国で配信された。◇自身にとって初のブルースアルバムとなる『哀歌 -aiuta-』が発売中。日本の「歌謡ブルース」とアメリカの「BLUES」の名曲カバーに加え、THE BAWDIES、横山剣(CRAZY KEN BAND)、中村 中が楽曲を提供。プロデューサーは寺岡呼人。まさに老若男女がしみじみと味わうことのできる、名盤に仕上がっている。※『anan』2015年11月25日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・兵藤育子
2015年11月18日フィギュアスケートのシーズンが本格化してきました。10月24日にはグランプリシリーズの初戦となるスケートアメリカが開幕し、国内でも「第19回全日本フィギュアスケートノービス選手権大会」が10月23日から25日にかけて行われました。これらの主要大会だけではなく、国内各地でも全日本選手権やインターハイなど、それぞれの全国大会に向けての予選が行われています。試合が続くなかで大切になってくるのは、選手たちの身体をつくるための栄養補給です。今回はフィギュアスケーターの栄養管理について、少しお話しさせていただきます。○他競技選手との合同合宿での衝撃アスリートにとっては「食事もトレーニングの一環」であることは、現在は多くの人に知られていると思います。競技の特性に適した食事の取り方や、年齢に応じた栄養摂取方法など、アスリートたちはさまざまな観点から食事を考えています。私がノービスの選手だった頃、「フィギュアスケート」「新体操」「体操」「シンクロナイズドスイミング」の4つの芸術スポーツのジュニアのトップ選手を対象にした合同合宿で、他競技の選手と交流する機会がありました。同じ芸術スポーツということで通ずるものもあり、すごく刺激になったのを覚えています。同じ講義を受けて食事も共にしましたが、競技によって食事の取り方に差があり、このときに初めて食事のことを意識し始めたと記憶しています。シンクロナイズドスイミングの選手は、ごはんの量を調べてカロリーを計算していましたが、「ここまで意識をしないといけないものなのか」と驚きが隠せませんでした。○「栄養のプロ」に支えられていた高橋さん現在では各地の一流選手が集まる野辺山合宿でも栄養指導が行われており、フィギュアスケート選手も栄養面に気を遣っている選手が増えてきたように思います。アスリートと一般の人では摂取量が異なるため、アスリートを専門にしている栄養士さんに相談する選手もいますし、チームやクラブで栄養士さんに講演をお願いしているところもあります。今はアスリートの栄養についての書籍はもちろん、情報がすぐに検索できる環境になってきているため、そういった情報を頼りに自分自身で管理をするという選手も多いのではないでしょうか。私も現役時は栄養士さんに相談することはありましたが、トップ選手の多くは、「栄養のプロフェッショナル」にさまざまな形でサポートを受けています。高橋大輔さんもその一人でした。スケートファンの中では有名な話かもしれませんが、高橋さんの遠征には「栄養アドバイザー」とも呼べるそのプロの方がほぼ毎回帯同されており、現地でバランスの整った食事を毎日提供されていました。遠征中だけではなく、日々のトレーニングでもきちんと食事が取れるよう、週に1度、高橋さんの家で1週間分の食事を料理されるなど、栄養面での二人三脚で身体をつくりあげてこられました。情感たっぷりなステップを踏むためのしなやかでたくましい脚は、この徹底した栄養管理によって支えられていた一面もあるはずです。サポートが始まってからは、高橋さんも作りおきされている物をお弁当箱に詰めてくるなど、食事を楽しんでいるなという様子がうかがえました。当時は私もまだ現役選手だったので、一緒に食事をしながら、「野菜一つとっても、葉物と根菜では食べる意味が異なる」などの食材にまつわる豆知識を高橋さんから教わるといった楽しい時間を過ごさせていただきました。○選手応援のため、ファンの方も栄養補給をこうした徹底したサポートを受けられるのはごく限られた選手になりますが、サポートの方法はさまざまです。毎回の食事を写真で栄養士さんに送り、足りないものを次の食事で補ったり、栄養士さんと決めたルールに沿って食事をしたりするなど、選手の性格によってもサポート方法は異なってきます。これから選手は連戦になり、疲労を早く回復し、次へのエネルギー補給をしなくてはいけなくなるため、今まで以上に栄養に気を遣うことになります。選手のために各地へ応援に来てくださるスケートファンの皆さまも、体調を崩すことがないよう、ぜひ選手たちと共に栄養面にも気を配ってくださいね。○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年10月30日八代亜紀が10月28日(水)に新作アルバム『哀歌 -aiuta-』を発売。その発売を記念して、12月には東京国際フォーラム・ホールCにてコンサートも開催する。八代亜紀 コンサートチケット情報自身初のブルースアルバムとなる『哀歌 -aiuta-』は、寺岡呼人がプロデューサーを務め、THE BAWDIES、横山剣、中村 中らが楽曲を提供し、アレンジを村田陽一が手掛け、今までのブルースのイメージにあった「歌謡ブルース」「演歌」とは違う、モダンなブルースとなっている。八代は『哀歌 -aiuta-』リリースにあたり、以下のコメントを寄せた。ご近所さんが座布団を持って我が家に聴きに集まる程の名手であった父の吟う浪曲を子守唄がわりに聴いて育ちました。「声音の変化」「フレーズの抑揚」「ブレスの緩急」そして「言霊」。こういったものが渾然一体となってまだ物心もつかない私の幼心の琴線にも確実に届いていました。切ない母子ものを聴きながら意味も分からずに「おとうさん、悲しいね」と感想を言っていたそうです。そんな幼時体験を持つ私にとって「浪曲は日本のブルースである」という持論を持つに至ったのは極自然な流れでした。初めてブルースを聴いた時にもあの時と全く同じ衝撃を経験しました。そしてそれは今聴いても変わることはありません。即ち普遍的な「悼み」「哀しみ」は時代、言葉、場所といったギャップを問わないということなのでしょう。今回の「哀歌」でも求めたものは「普遍」。洋邦各年代のカバー、そして21世紀の今を切り取る新作ブルース。12通りの「哀」が詰まった『哀歌 -aiuta-』の完成です。豪華なクリエイティブチームと彼女の唯一無ニの声が融合して出来た「八代亜紀のブルース」。その魅力を堪能できる公演は、2015年12月19日(土)、東京国際フォーラム・ホールCにて。チケットの一般発売は11月21日(土)。チケットぴあでは、一般発売に先駆けて先行先着プリセールを10月28日(水)12:00より受付開始。
2015年10月27日8月11日(火)に東京・明治神宮外苑で催される神宮外苑花火大会に歌手の八代亜紀、福原美穂、ロックバンドの怒髪天、お笑い芸人の千鳥、NON STYLEなどの出演が決定した。八代らは、神宮軟式球場で行われるプログラム「「LIGHT UP NIPPONどっかん祭」in神宮軟式球場」に出演、ライブを披露する。同プログラムは、東日本大震災被災地の10数か所で、8月11日19時に鎮魂と復興の祈りを込めた花火を一斉にうちあげる活動「LIGHT UP NIPPON」と同花火大会のコラボ企画。同花火大会とコラボレーションするのは、今回が初の試みだ。毎年、豪華アーティストと花火の競演でも話題を呼ぶ同花火大会。すでに、神宮球場に歌手の山川豊、水森かおり、氷川きよし、女性アイドルグループのアンジュルム、K-POPエンタテインメントグループ・Apeaceなどの出演が発表されている。また、神宮軟式球場には、女性アイドルグループ・でんぱ組.inc、AKB48の岩佐美咲などが出演。■神宮外苑花火大会8月11日(火)打上時間:午後7時30分~午後8時30分有料席会場:神宮球場/秩父宮ラグビー場/神宮軟式球場/東京体育館敷地内追加出演者:神宮球場:【OPENING ACT】妄想キャリブレーション / Pottya / KOBerrieS♪神宮軟式球場:【「LIGHT UP NIPPONどっかん祭」in神宮軟式球場】八代亜紀 / 怒髪天 / 福原美穂 / 千鳥 / NON STYLE / 森三中・黒沢&鬼奴 / 佐久間一行MC:宮川大輔【OPENING ACT】チャッキーズ∞インフィニティ / CANDY GO!GO! / Honey Squash / チャメっ娘☆WITCHES
2015年07月22日昨シーズンのフィギュアスケートは、シニア移行1年目の本郷理華選手のグランプリ(GP)ファイナル出場や、宮原知子選手の世界選手権銀メダル獲得など、特に女子において若い選手の台頭が目立ちました。一方の男子でも、ジュニアの宇野昌磨選手が全日本選手権で羽生結弦選手に次ぐ2位に入る躍進を見せるなど、メキメキと成長をとげているスケーターがいます。今回は若手の注目女子スケーターを紹介した前回に続き、シニアのGPシリーズにまだ出たことのない男子の注目選手を紹介します。○一つひとつの要素で加点が取れる宇野まずは宇野選手です。伊藤みどりさんや浅田真央選手をはじめとする多くの名選手を育て上げた山田満知子コーチに師事し、幼少の頃から浅田選手が気にかけるだけの才能をリンク上で見せていました。ノービスでも注目されていたため、すでにご存じの方も多いかもしれません。以前から表現力には定評がありましたが、そこに昨シーズンから習得したトリプルアクセルや4回転ジャンプも加わり、ジュニアGPファイナルや世界ジュニア選手権でも優勝を飾りました。また全日本選手権で2位になったことにより、四大陸選手権の代表にも選出。初のシニアの国際大会にも出場し、多くの経験値を得ました。4回転などのような難しい種類のジャンプの習得は、大きな得点源となります。ただ、宇野選手の武器は、一つひとつの要素に加点がされる機会が多いことだと私は思っています。スピンの入り方も独創的で、ジャンプにも流れがあり、プログラムの随所に工夫がされているなと感じています。今シーズンからGPシリーズに参戦し、シニアに本格的に移行となります。シニアの選手の中でどこまで上位に食い込んでいってくれるのか、非常に楽しみです。○山本草太や佐藤洸彬にも注目ジュニアGPファイナルや世界ジュニア選手権で、宇野選手と共に表彰台に立った山本草太選手も注目です。山本選手も昨シーズン飛躍的に活躍し、知名度が上がった選手ではないでしょうか。今年で高校生になりますが、すでにトリプルアクセルを習得し、試合での「魅せる演技」には迷いがありません。「自分がこうなりたい」という理想像をしっかりと持っているように感じます。宇野選手がシニアに上がることにより、山本選手はこれまで以上にジュニアの選手に追われる立場になります。それでも今の山本選手を見ていると、追ってくる選手をより高いレベルまで引っ張っていってくれる存在になるのではないかと思います。独特の世界観を持っており、表現することを楽しんでいるように演技をするのは佐藤洸彬選手です。昨シーズンにトリプルアクセルを確実に習得したことにより、見事に世界ジュニア選手権の代表に選ばれました。今シーズンからはジュニアの年齢を卒業したことにより、シニアに移行となります。岩手県出身で、リンク事情に悩まされた経験もあると聞いたことがあります。コツコツと努力して手に入れた成果を生かして、2015-2016シーズンも活躍してほしいです。○2人のライバルによる新しい風に期待そして最後に、今年からジュニアに上がる選手にもスポットを当てたいと思います。光る才能を持った選手は数多くいるのですが、その中でもぜひ注目していただきたいのは、同い年の三宅星南選手と島田高志郎選手です。2人とも長沢琴枝コーチに師事しており、近いところで切磋琢磨(せっさたくま)し、共に高いレベルまで来た選手です。難易度の高いジャンプや表現力など、お互いの持ち味は似通っており、あまり差もありません。一方で、「普段の練習からお互いを意識し合っているのだな」ということを見ている側はひしひしと感じます。2人とも踊ることや表現をすることに恥ずかしさを感じていない点も、その魅力だと思います。新鋭の氷上での熱いライバル物語が、ジュニアの世界に新しい風を運んでくれるのではないかと期待しています。男子のジュニアで勝つためには、トリプルアクセルが必須となってきました。どの段階で習得するのかが一つのカギとなりますが、その過程をぜひ見守りながら観戦をしてみてください。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年07月17日フィギュアスケートのシニアの選手は、ショートプログラム(SP)では最大2分50秒、フリーでは女子は4分、男子は4分30秒の演技を行っています。演技中はもちろん集中はしていますが、結構長い時間のため、「何を考えて演技をしているのだろう」と思われる方もいらっしゃると思います。選手それぞれ違いはありますが、今回は私の経験などを基に、「フィギュアスケーターが演技中に考えていること」を中心にお話します。○演技中の思考と演技の出来栄えの関係って?私が現役選手だった頃、選手同士の普段の会話の中で、「試合中は何を考えている? 」と話題になったことがありました。「ミスしたジャンプのこと」「どこで呼吸を整えるか」などの声があり、中には「気付いたら終わっている」という意見も。また、「観客席やジャッジの顔が見えているときは調子がよく、見えていないときは調子が悪い」と話す選手もいました。私も、ジャッジの顔が演技中に見えていたときは調子がよかったです。周囲の景色を考えられるだけの余裕があり、それだけ落ち着いて演技をしていたということなのかもしれません。○呼吸を整えるという人演技中の思考とパフォーマンス精度の関連性について、もう少し詳しくみていきましょう。まずは、「どこで呼吸を整えようか」という考えからです。SPでは必須要素が、フリーでは行う要素の最大数がルールで決められています。ただ単に要素を行うだけではなく、演技をしながら行わなければいけないため、どちらも競技時間内では休む間もないほどギリギリの状況となっています。しかし息があがった状態では、100%の出来栄えで要素を行うことが難しいので、演技の中で呼吸を整えるポイントをあらかじめ決めておくケースが多いです。呼吸を整えるポイントは選手それぞれ変わってきますが、曲の変わり目や、要素と要素の間のつなぎの部分で行われている場合がほとんどです。また、呼吸でリズムを取るケースも多く、ジャンプの助走の部分で呼吸を整える選手もいます。「普段の練習から呼吸を意識し、本番も同じように呼吸をすれば、練習と同じ意識で演技することができる」と言っていた選手もいましたが、余計なことを考えないようにあえて呼吸に目を向けていたのかもしれません。○ミスをしたジャンプのことを考えるという人次に、「ミスしたジャンプのことを考える」という選手についてです。おそらく、このことを考えて演技している選手が、最も多いと思います。シニア・ジュニアの選手はもちろんですが、国内の大会ではノービス以下の選手も、ジャンプ・スピン・ステップの数が決められています。必須ジャンプが決められていたり、クラスによってはファーストジャンプ(演技で行うそれぞれの要素の1つ目のジャンプ)の重複が認められていないクラスもあったりします。ルールが細かく決められている中でミスをしてしまった場合、選手の多くはリカバリーのことを考えます。「行うはずだったジャンプにコンビネーションをつけることができなかった」「トリプルの予定がダブルになってしまった」など、ミスの種類はたくさんあります。普段の練習から、ミスを犯したときを想定して練習をしていれば落ち着いて対応することもできますが、予想外のミスをしてしまったことで、動揺してしまうケースも少なくはありません。○ミスを想定した練習方法ではここでミスを想定した練習方法を、シニアの選手の場合でいくつかご紹介したいと思います。SPでは、ジャンプコンビネーションを予定していても、ジャンプを付けられずに単発で終わってしまうというミスが多いです。しかし、予定しているもう一つのジャンプにコンビネーションをつけることができれば、見ている側には分からないミスなのでリカバリーできます。曲掛け練習で意識することや、曲掛けが行えない場合でも、2つのジャンプ間のつなぎを続けることなどがリカバリー練習に相当します。またジャンプコンビネーションを試み、ファーストジャンプがダブルになってしまうミスもよく目にします。シニア選手は「トリプルを含んだコンビネーション」を行わなければいけないため、この場合はセカンドジャンプをトリプルにしなくてはいけません。これも普段の曲掛け練習で意識できますが、普段のジャンプ練習だけでも冷静に対応できる場合もあります。○緻密なプランと毎日の練習での意識付けの融合フリーでは、ダブル以上のジャンプに回数制限があるため、あらゆる想定が必要です。よくあるミスは、ジャンプコンビネーションの回数や予定していたジャンプの回転数が足りなかったことによる、ジャンプの跳びすぎです。予定と違った演技をしてしまった場合、きちんと記憶しておくことも大切ですが、動揺して数が分からなくなってしまう場合もあります。そして、跳びすぎてしまった場合はエレメンツとして見なされず、基礎点が全く入らないため、大きな減点につながります。そのため、跳びすぎないようにジャンプコンビネーションを同じものにしない工夫をしたり、ジャンプ構成のパターンをいくつか考え、ミス時のパターンをあらかじめ決めたりするなど、事前にさまざまなシミュレートをしている選手が私の周囲には多いように思えます。これらの緻密な「大減点回避プラン作成」と、それに基づく毎日の曲掛け練習などでの意識付けが、本番で生きてくるのです。今回お伝えしたことで、「こんなにもたくさん考えながら演技をしていたのか」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、短い競技時間での演技で何よりも大事なことは、「考えていることが音楽表現の妨げにならないよう、表情やしぐさに出ないこと」です。「演技を見ている限りでは何も読み取れないけれど、もしかしたらこんなことを考えているのかも……」と想像しながらフィギュアスケート観戦をすると、新たな楽しみ方が発見できるかもしれませんね。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年06月02日去る5月18日、フィギュアスケートの浅田真央選手が競技者として復帰することを明言し、各媒体で大きく報じられました。復帰のニュースを聞いたフィギュア仲間からも、メディアやSNSなどを通じてたくさんのエールが送られましたし、「どの大会で復帰をするのか」ということも大きな話題となっています。私もこのニュースを聞いて喜んだうちの一人です。浅田選手は同日の会見で、「試合が恋しくなり、試合でよい演技をしたときの達成感を味わいたいと思った」と話していました。競技会で守りの姿勢ではなく、常に攻めの姿勢を見せていた浅田選手らしい決断だったのではないかと感じています。ただ、喜ぶと同時に、あえて厳しい道を決断した浅田選手に頭が下がる思いもあります。なぜなら、私自身がフィギュアスケートにおけるブランクの過酷さを身をもって経験しているからです。今回は私の経験を基に、浅田選手がまたリンクの上で躍動し、完全復活を遂げるまでの課題についてご紹介しようと思います。○引退後1カ月で衰えた三半規管と筋肉私は2011年3月の大会を最後に競技人生を終え、2年ほど会社員として企業で働いていました。職種がフィットネスインストラクターだったため、毎日身体は動かしていましたが、引退してから1カ月ほどで三半規管は衰えました。スケートでしか使わない筋肉も落ち、脚の形も変化していたことを鮮明に覚えています。入社から1年ほどたった頃、選手時代にお世話になった方からのお誘いがあり、2013年1月の東京冬季国体に向けて一度だけ「現役復帰」をすることになりました。仕事に支障が出ない程度に練習を行っていましたが、決められた競技時間内に決められた要素を行うことがとても難しく、体力の低下を実感しました。現役当時にはなかったルール変更もあり、ルールに対応するためのプログラム作りなどにも時間が割かれました。国体の本選前にいくつか試合に出させてもらいましたが、久しぶりの試合で筋肉が緊張してしまい、力が空回りしてしまったジャンプもいくつかありました。試合に出場して初めて修正箇所が分かることもあり、「目標とする大会に向けて、こうしてコツコツ積み上げていくことが重要なのだな」と、あらためて感じたことを覚えています。○新ルールへの対応と体力アップが課題浅田選手は1年以上も競技から離れ、ほぼスケートをしない生活を過ごしてきたものの、シーズンオフにはアイスショーにいくつか出演していました。スケートから完全に離れた状態での復帰では、私自身の経験もあり心配に思うこともあります。ただ、アイスショー出演用に練習をしていたため、ジャンプやスピンなどのエレメンツ一つひとつに関しては、大きな不安要素はないように感じます。また、浅田選手は表現力に定評がありますが、アイスショーで得られた「魅せる」ということが加わり、以前とは違った雰囲気の演技が見られるのではないかと期待しています。しかし、アイスショーではルールに縛られません。演技時間や演技内容は自由に決めることができますが、競技となれば演技時間などルールにのっとって行わなければなりません。ソチ五輪シーズンから大きく変わったルールと言えば、フリーでダブルジャンプの回数に制限が設けられたなどのジャンプの数についてのルールです。このように、現役当時と変わってしまったルールに対応できるようにしなければいけません。他の選手が長い練習時間をかけて頭と体に染みこませてきたルールを、これから身につけていく必要があります。また、体力に関しては、アイスショーのときとは違った体力が必要になってくるため、今から相当ハードなトレーニングが続くことが見込まれます。○毎日の積み重ねが正しかったことを証明して実際にどのタイミングで競技復帰するかの目標は定めておらず、3年後の平昌五輪についても「今の時点で五輪は考えていない」と浅田選手は話しています。ただ、浅田選手の求める「演技での達成感」というのは、「毎日コツコツ積み上げてきたことが間違っていなかった」と実感できたときに味わえるものだと思っています。これから先、そういう気持ちを浅田選手が幾度となく感じることができる瞬間が訪れることでしょう。浅田選手が目標とするところまでは、先の見えない長く険しい道のりになるかもしれませんが、浅田選手が挑戦していく姿を応援していきたいです。○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年05月22日2014-2015シーズンの世界ランキング上位6か国による、フィギュアスケートの世界国別対抗戦が4月19日に閉幕した。「男子シングル」「女子シングル」の各2名と「ペア」「アイスダンス」の各カテゴリーで得たポイントの合計で順位を決める今大会。日本は合計103ポイントで3位に終わった。1位は110ポイントのアメリカ、2位は109ポイントのロシアだった。日本からはシングルには羽生結弦選手、無良崇人選手、村上佳菜子選手、宮原知子選手が出場。ペアには古賀亜美、フランシス・ブードロ・オデ組が、アイスダンスにはキャシー・リード、クリス・リード組がそれぞれ出場した。エース・羽生選手はショートプログラム(SP)とフリーで共に1位となり、一人で24ポイントを獲得する活躍を見せた。他の選手たちも各々健闘はしたが、その演技は元選手の目にどのように映ったのだろうか。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在はコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんに、シングルに出場した選手の演技について解説してもらった。○無良選手、村上選手、宮原選手のSP&フリー無良選手「SPでは細かいミスはありましたが、無良選手らしい大きなジャンプが帰ってきたのではないでしょうか。フリーでも、冒頭の4回転トゥーループで両足着氷になった以外は目立ったミスもなく、見事に『オペラ座の怪人』の主人公・ファントムを演じきったのではないかと思います」。今大会は日本のキャプテンとして、皆をまとめる役も担った無良選手。澤田さんは、演技にもメンバーを引っ張っていこうという姿勢が感じられたと話す。「演技後半は疲れが出てスピードが落ちることもありますが、今回は後半になるにつれてスピードが出てきた感がありました。日本チームのキャプテンとしての責任も果たせたのではないかと思います」。宮原選手「SPでは冒頭に珍しいミスがありましたが、後半のジャンプで見事にリカバリーができました。SPではジャンプコンビネーションが必須要素となっているため、もしリカバリーができていないと大きな損失になっていました。冷静に対応できたのも、万が一に備えて日ごろからきちんとシミュレーションをしているからだと思います」。全日本選手権優勝、世界選手権2位という実績を引っさげて今回初出場を果たした宮原選手。SPは6位ながらもフリーでは僅差(きんさ)で3位になるなど、高い実力を見せつけた。「フリーでは持ち前の体力を生かし、後半のダブルアクセル-3回転トゥーループを2つとも成功させ、大きな得点源となりました。基礎点が1.1倍になるところで要素を行ったうえ、加点がつく非常にいいジャンプでした。スピンなどもすばらしく、『できるものをより質の良いものに』と、コツコツ積み重ねてきたことがきちんと評価されていたという印象です」と澤田さんは称(たた)える。村上選手「SPは大きなミスもなく、見事に『オペラ座の怪人』のヒロイン・クリスティーヌを演じ切りました。気持ちよく曲に乗せてステップも踏めており、村上選手らしさがしっかりと出た演技だったのではないでしょうか」。SPは5位発進となり、演技後は持ち前の「佳菜子スマイル」も出ていた村上選手。ただ、フリーは予定してた3回転フリップが1回転になってしまうなどのミスがあり、スコアを伸ばせず。6位に沈み、演技後はチームメートに申し訳なさそうな表情を見せた。「フリーでは中盤に少しミスが出てしまい、すごく悔しい内容になってしまったと思います。しかし、ミスを終盤まで引きずらず、途中で気持ちが切り替えられたことは、よかったところではないでしょうか。上位選手の引退により、この1年は『自分がみんなを引っ張っていかないと』という気持ちで、とても苦労したはずです。ただ、少しずつ苦しみから抜け出せているのではないかと感じますし、気持ちの面でも成長できた1年になったのではないかと思います」。○来シーズンも日本人選手たちの活躍に期待今回の3位という結果には、少なからずペアとアイスダンスの影響があったといわざるを得ない。どちらの種目もショートとフリーで6位に終わってしまったからだ。澤田さんはその遠因として、競技人口の少なさがあるのではないかとみている。「日本選手はシングルのスケーターが多く、野辺山合宿などを経て仲間同士で切磋琢磨(せっさたくま)し、世界のトップに立つようになってきました。その一方で、日本チームはアイスダンス・ペアの競技人口が少ないことが指摘されていました。今回上位に入ったチーム(カナダなど)はどちらも競技人口が多く、カテゴリー内で競い合ってここまできた選手が多いです」。国内に代表選手が少ないということは、それだけ競い合う機会が限定されることを意味する。国際大会などの大きな大会が、課題発見の場になるというケースも少なくないという。両種目は今後も日本フィギュアスケート界の課題となってきそうな感がある。ただ、そういった現状を打破するための若い力も少しずつ増え、着実に成長してきていると澤田さんは話す。「最近はペア・アイスダンスをやりたいという選手が増え、昨年末の全日本選手権は7組のカップルが出場していました。また、新たにペアを始めようとしている選手たちもいます。シングルだけではなく、ペア・アイスダンスの競技人口も増えていけば、自然とチーム全体が強くなっていくのではないかと思います」。「フィギュア大国」と称されることもあるロシアやアメリカと、肩を並べるぐらいにまできた日本。この2か国に追いつき、追い越すための機は熟しつつあるようだ。来シーズンの日本人選手たちは、今シーズン以上に刮目(かつもく)に値しそうだ。写真と本文は関係ありません○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年04月21日フィギュアスケートの世界選手権が3月末に閉幕し、2014-2015シーズンの主要大会は、残すところ4月16日開幕の国別対抗戦のみとなりました。今シーズンは競技会でのボーカル使用が許可されたこともあり、競技での使用曲はどうなるのかということに注目が集まったと思いますが、みなさんの印象はどうだったでしょうか。今回はオフシーズンで最も重要な「使用曲の決め方」を、私の経験などを中心にお伝えします。○ヒット映画から使用曲を決めるケースが多い以前にオフシーズンは曲を決めることから始まるとお伝えしましたが、今がまさにその時期で、もうすでに来季の使用曲を決めている選手もいることでしょう。使用する曲を探すことは本当に難しく、毎年頭を悩ます選手が多いのではないかと思います。今シーズンの国内大会において、シニアでは「オペラ座の怪人」を、ジュニアでは「ロミオとジュリエット」を使っている選手が多かった印象を持っていますが、同世代で使用曲がかぶってしまうのは珍しいことではなく、私の現役時代もよくありました。昨シーズン(2013-2014シーズン)は、「レ・ミゼラブル」を使用している選手がよく見られましたが、全国的にヒットした映画の使用曲はスケートに使われることが多いです。また、有名な選手が使っていたから「この曲を使いたい」という選手もいます。このように映画やドラマ、また試合観戦などを通じて、知った曲を使うというパターンが一番多い選び方ではないでしょうか。私自身も、現役最後のシーズンで使用した曲(FS: 篤姫)は大河ドラマの影響が大きいです。○コーチや振付師が薦めてくる場合もあるスケーターの中には、感性を養うためにミュージカルやバレエなどの芸術鑑賞に行く人も多く、そこで使用されていた曲を使う選手もいます。今シーズンの村上佳菜子選手は、ショート・フリー共に「オペラ座の怪人」の中の使用曲を用いていましたが、「劇団四季」のミュージカルを見てからずっと使いたかったようです。「リバーダンス」という曲もよく使われていますが、これもアイリッシュ・ダンスを中心とした舞台作品の中で使われている曲です。このように自分自身で勉強のために見た作品の楽曲も、プログラム曲に選ばれることが多いです。また、周囲の意見を参考にして決めるというパターンもあります。振付師の方が、「この選手に合うだろう」と持ってきてくださる場合や、普段指導をしてくださっているコーチが、「この曲が好きだからぜひ滑ってほしい」と希望する場合などです。ソチ五輪シーズンに鈴木明子さんが滑ったショートの曲「愛の賛歌」は、師である長久保裕コーチが好きだった点も選曲決定につながったようです。○自分の演技が映える一曲を選ぶ難しさ先ほど「選手に合う曲」と表現しましたが、「どのような基準で選んでいるのか」と気になる方もいらっしゃるでしょう。実はそのほとんどが「フィーリング」で、これというものがなくお伝えしにくいのが正直なところです。ですが、その曲を聴いたときに「滑ってほしい選手が、その曲で演技している姿が想像できるかどうか」という点が、ポイントになると思います。競技中は、使用している曲を表現しなくてはいけません。ダイナミックなジャンプを跳ぶ選手はそのジャンプに合うような曲を、魅せるのが上手な選手はその表現がより映えるような曲を選ぶでしょう。また、高橋大輔さんのように速くステップが踏める選手は、ステップの足さばきを後押ししてくれるような曲を…というように、選手の得意なエレメンツが一層映えるような曲を選ぶケースが多いのではないかと考えられます。その一方で、伸び盛りのノービス・ジュニアの選手はもちろん、シニアの選手でも自分自身の表現の幅を広げるため、昨季とは全く異なるジャンルの曲を選ぶこともあります。自分の演技を生かしてくれる一曲を、慣れ親しんだジャンルとは別分野から選ぶことの難しさは、皆さんもうっすらと想像できるのではないでしょうか。○苦労して決めた曲をブラッシュアップこのようにオフシーズンにさまざまな苦労を経て使用曲を決めていきますが、実際に振り付けをしてみて、「ジャンプがどうしてもはまらない」「スピンをする時間が足りない」などの問題が出てくることはよくあります。そのような問題を解決し、より良いものができるように何度も何度もブラッシュアップをしていきます。全日本選手権につながる国内予選が始まるまで、残り半年を切りました。選手たちにとっては長いようで短いオフシーズンになるかと思いますが、試行錯誤を重ねてできた良い作品が数多く見られることを楽しみにしたいです。写真と本文は関係ありません○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年04月15日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週木曜日は、アート・ブックショップ「ナディッフ」各店がオススメする1冊をご紹介。今回は東京・渋谷の支店 NADiff modern(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura地下1階)です。■「澤田知子 FACIAL SIGNATURE」澤田知子「顔は印鑑や署名のようなもので、その人それぞれのID、本人を証明するものだと思う」の言葉にあるように、1998年に『ID400』という、400 通りに自身の姿を変えた証明写真の作品を発表して以来、セルフポートレイトを手法として多くの作品を生み出してきた澤田知子。約8年振りとなる今回の新作『FACIAL SIGNATURE』は、作家がニューヨークで生活をしていた体験が元になっている。「人は何を、どこを見て個人を判断しているのか知りたいと思い、様々な東アジア人に見えるように変装した」という考察の下、300点のセルフポートレイトを撮影した。ページを捲るたびにこちらを直視する女達。どこかで見たことがあるような、誰かに似ているような、自分自身を見ているような、人間のアイデンティティの強さと儚さを浮き彫りにし、見る者に正面から問い掛ける。ナディッフ本店を有する複合アートスペースNADiff A/P/A/R/T 2F MEMにて現在開催中の「澤田知子FACIAL SIGNATURE」展は4月19日まで。18日にはナディッフアパートにて、本人を招いた出版記念トーク&サイン会開催も開催される。【書籍情報】「澤田知子 FACIAL SIGNATURE」著者:澤田知子出版社:青幻舎言語:日本語ソフトカバー/320ページ/B6発刊:2015年価格:5,000円
2015年04月02日フィギュアスケート世界選手権の男女フリーが3月28日、中国・上海にて行われた。男子は羽生結弦選手が、女子は宮原知子選手がそれぞれ総合で銀メダルとなり、日本人選手の最上位となった。他の日本人選手たちもそれぞれ奮闘したが、男子は来季の出場枠が2007年以来の「2」に減少することが確定するという結果となってしまった。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在はコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんの目に、出場選手らの演技はどう映ったのだろうか。小塚崇彦選手、無良崇人選手、宮原選手、本郷理華選手、村上佳菜子選手の演技について解説してもらった。○男子編小塚選手今回で7度目の世界選手権出場となり、2010-2011シーズンでは銀メダルも獲得している小塚選手。ショートプログラム(SP)はまさかの19位スタートとなったが、フリーはシーズンベストの152.54をマークし、トータル222.69で総合12位となった。澤田さんは、フリーでは小塚選手の長所が出ていたのではないかと指摘する。「SPでは本人にとって予想外のミスが相次ぎ、フリーでは1番滑走での演技となりました。開始冒頭にミスはあったものの、それを引きずらず、曲の後半に向けてどんどん気持ちと曲が一体になっていくような演技に見えました。小塚選手の持ち味である滑らかなスケーティングもよく伸びており、ジャンプ以外の部分でも魅せてくれたなという印象です」。無良選手無良選手は今シーズンにグランプリファイナルに初出場するなど、確実に成長の跡を残した。そのシーズン終盤に迎えた世界選手権は、総合16位と不本意な形で終わってしまった。「無良選手が得意としていたトリプルアクセルがSPで決まらず、フリーでも同じミスが1度ありました。前日の悪いイメージが身体に残っているのかなと感じましたが、フリーの後半では高く大きなトリプルアクセルを着氷し、そこからは不安要素なく滑っていた印象です」。○女子編宮原選手昨年末の全日本選手権で初優勝し、休養中の浅田真央選手に代わる「新女王」として世界選手権に臨んだ宮原選手。SPではパーソナルベストのの67.02をマークして、自ら誕生日を祝福。SP3位で挑んだフリーでは、冒頭の3回転ルッツ-2回転トゥーループ-2回転ループを流れるように決める。1度の転倒はあったものの、銀盤の妖精のように美しくしなやかなスケートを披露した。初出場で堂々の銀メダルという、147センチの17歳がやってのけた大きな偉業に、澤田さんは「努力が報われた結果」と話す。「SPをノーミスで終え、フリーでは1カ所手をつく場面も見られましたが、大きなミスもなく、宮原選手が出せる力はすべて出したのではないかと思います。以前出場した世界ジュニア選手権では、ジャンプの回転不足により、点数が伸び悩むということがありました。その判定を宮原選手自身が真摯(しんし)に受け止め、日々コツコツ努力してきたことが、今回の結果に表れているのではないかと思います」。さらに澤田さんは、表情の変化にも注目している。「顔の表情も、曲調に合わせて変えていたのが印象的でした。表情は試合のときだけではなかなか表現できないので、日々の練習時から努力してできあがったものではないでしょうか。ジャンプの内容としては、全日本選手権と同様、ダブルアクセル+3回転トゥーループが後半に2つ入っています。ジャンプの基礎点が1.1倍になるところで成功したことにより、大きな得点源となっていますね。着氷姿勢も美しく、加点がもらえる結果となりました。来シーズンは、ぜひともより大きな成果を期待したいです」。本郷選手長年にわたり日本の女子フィギュアスケート界を支えてきた鈴木明子さんの師・長久保裕コーチの指導の下、今シーズンに入って一気に頭角を現してきた本郷選手。今大会でもSPとフリーでパーソナルベストを出すなど、試合を重ねる度に成長していく姿に、澤田さんも期待を寄せる。「世界選手権初出場でしたが、堂々とした演技で、本郷選手が今出せるものをすべて出せたのではないかと思います。長い手足を生かしたダイナミックな演技で、ジャンプなどのエレメンツにも目立ったミスもなく、いいシーズンの締めくくりではなかったでしょうか。試合に出るごとに点数も伸びていき、今回もシーズンベスト更新という形になりました。GPファイナルにも出場し、シニアの中で戦っていく自信がついたシーズンでもあったと思うので、来シーズンはより飛躍的な活躍を期待したいです」。村上選手宮原選手ら若手の台頭もあり、20歳にして女子最年長での出場となった村上選手。SPは65.48点で4位と、表彰台を狙える位置で発進。フリーでは、後半に予定していた3回転サルコウが1回転になってしまうミスなどもあり、トータル7位で5回目の世界選手権を終えた。「全日本選手権で(高い質の演技を見せたものの、得点が伸び悩むという)つらい経験をしてから、本当に長い3カ月間だったと思います。SPではトゥーループの3回転+3回転を成功させましたが、高さと幅が以前よりも大きくなったように感じました」。また澤田さんは、技術面での変化も感じている。「(3回転トゥーループ以外の)他のジャンプでも、高さや回転のピッチなどが良いものになっていると感じました。一度身体で覚えてしまっているものを修正していく過程は本当に難しく、多少の不安もよぎるのではないかと思います。フリーではいくつかミスもありました。ただ、村上選手が取り組んできたことは、間違っていないのだと証明できた試合になったのではないかと思います」。○出場枠減を、より厳しい競争へとつなげる今大会の結果により、男子は来季の世界選手権の出場枠が1つ減ってしまった。世界選手権の出場枠は、3人が出場する国の場合、そのうち上位2人の合計順位が「13」以下ならば次回シーズンも3枠を維持できる。女子は来シーズンも3人が出場できるが、男子は羽生選手が「2」で、その次に成績の良い小塚選手が「12」。合計「14」となるため、来季は2人しか出場できなくなる。ただ、過ぎたことを悲観しているヒマはない。「男子の出場枠が減ってしまいましたが、過去には1枠しかなかったこともありますし、女子の出場枠も少なかったことがあります。減ったことは残念に思いますが、その限られた出場枠に入るべく、全員が練習を積み上げるため、日本チーム全体のレベルアップができるというメリットもあるのではないでしょうか」と澤田さんも話す。○新世代の選手たちの飛躍に期待フィギュアスケートの2014-2015シーズンは、「高橋大輔さんや浅田選手が試合に出ない」「ソチ五輪5位などの実績を持つ町田樹さんが、全日本選手権で突如引退」といったことなどもあり、物寂しさを感じたファンも少なくないだろう。ただそんな中でも、男子では全日本選手権2位の宇野昌磨選手、女子では今大会の宮原選手や本郷選手に代表されるような若い力も出てきている。芽生えて間もない選手たちがオフに練習を重ね、来シーズンに大きな花を咲かせてくれることが、今から楽しみだ。写真と本文は関係ありません○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年03月30日フィギュアスケート世界選手権の男子フリーが3月28日、中国・上海にて行われた。日本の絶対エース・羽生結弦選手はトータル271.08で2位となり、日本人初となる同大会連覇を逃した。○転倒後に見せたソチ王者のプライド日本人初の快挙とはならなかった。ただ、連覇達成がついえた瞬間、ソチ五輪王者は笑顔でライバルの健闘をたたえ、祝福した。冒頭から、羽生選手らしからぬミスが続いた。最初のジャンプでは、予定していた4回転サルコウが2回転にとどまった。続いて、得意としているはずの4回転トゥーループでも転倒。4回転はいずれのジャンプも決まらなかった。しかし、ここからソチ五輪王者としての矜持(きょうじ)を見せる。基礎点が1.1倍になる後半、最初の3回転ルッツ-2回転トゥーループを鮮やかに決めると、続くトリプルアクセル-3回転トゥーループも成功。さらにトリプルアクセル-1回転ループ-3回転サルコウの3連続もきれいに跳んでみせた。参加選手の中では唯一となる、2度のトリプルアクセルのジャンプコンビネーションを体力の落ちるプログラム後半に組み込んだ。その上、GOE(出来栄え点)でも1.57、1.29といずれも加点をゲット。残る2本の3回転もきっちりとまとめ、トータル175.88でフリーを終えた。○グランプリファイナルとの決定的な差金メダルを獲得した今シーズンのグランプリファイナルでも、フリーの冒頭に4回転サルコウ(基礎点10.50)と4回転トゥーループ(基礎点10.30)を跳んでいる。このときは共に成功させ、さらにGOEでもそれぞれ2.43、2.71という高い加点を得ている。すなわち、この2つのジャンプで約26点を稼いでいた計算になる。結果、フリーでは194.08というパーソナルベストをたたきだした。しかし今大会では、4回転サルコウが2回転サルコウ(基礎点1.30)になったこともあり、冒頭のこの2種類のジャンプで得られた点数は、GOEを含めても10点に満たなかった。その結果、わずか2.82点差で金メダルを逃してしまった。昨年末の全日本選手権後に「尿膜管遺残症」であることが判明。腹部の手術を受けて練習を再開するも、1月末には右足首をねんざするというアクシデントに見舞われた。決して体調が万全ではない中でもしっかりと「戦える体」に仕上げ、前日のショートプログラム(SP)ではシーズンベストの95.20をマーク。表彰台の頂点に最も近い位置でフリーに臨んだが、結果は2位となってしまった。○冒頭の2種の4回転をミスしてしまった理由羽生選手が優勝するには何が足りなかったのだろうか。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在は関西大学を拠点にコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんは、やや「冷静さ」が足りなかったのではないかと分析する。「SP、フリー共に4回転トゥーループの着氷に失敗してしまいました。SPでは、直前まで念入りにトゥーループに入るイメージをしていたので、羽生選手の中では、少し不安要素があったのかもしれません。またフリーでは、1つ目の要素をパンク(予定の回転数を回りきれなかったこと)してしまったため、2つ目の要素であるトゥーループには、少し焦りが出てしまったのではないかと思います。これまでの羽生選手は、失敗をする際でも予定の回転数を回りきってからの失敗が多かったです。この場合だと、回った分の点数が入ってからの減点(GOEでマイナス評価)になりますが、パンクをしてしまうと、予定よりも低い点数しか入らないということになります」。ジャンプを武器としている羽生選手には珍しい形でのミス。そこへ、今シーズンからの新ルールが"追い打ち"となったのではないかと澤田さんは見ている。「今シーズンより、ダブルジャンプの上限回数がルールで決められています。パンクをすることによって、演技で予定しているジャンプの構成を変えなければいけないという可能性も出てきます。演技をしながらでの判断となるので、いかに集中を切らさずに冷静に判断できるかというところが、カギになります」。普段の試合ではあまり起こりえないミスが、小さなほころびとなって焦りを誘発し、傷口を広げてしまった―というわけだ。○短期間での世界選手権の銀は羽生選手だからこそそれでも、澤田さんは短い練習期間で世界選手権銀メダルという結果を出した羽生選手を称(たた)える。「ジャンプの基礎点が1.1倍となるフリー後半では、難しい組み合わせのジャンプコンビネーションなど、3つのジャンプコンビンネーションをきちんと成功させ、高得点を獲得していました。手術やケガなどで練習時間が思うように取れなかったと思いますが、オフシーズンに羽生選手が積み上げてきたものがあるからこそ、短期間の練習でも高い水準での演技ができたのではないかと思います」。○同門2人のライバル物語に期待羽生選手に代わって優勝したのは、同じブライアン・オーサーコーチに師事するハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)。ラテンの貴公子はSP同様、美しいジャンプと情感たっぷりのステップなどで会場のファンを魅了。フリーでは一度の転倒ミスはあったものの、それ以外はほぼ完璧な演技を見せ、トータル273.90をマーク。悲願の世界選手権初優勝を果たした。暫定1位でフェルナンデス選手の演技を見守った羽生選手。フェルナンデス選手のスコアを確認した瞬間に、3歳上の"兄弟子"に笑顔で惜しみない拍手を送った。自身が4回転をミスし、銀メダルに甘んじたことに「正直、悔しい」ともらしたのは偽らざる本音だっただろう。それでも、ハビエル選手のトップをわがことのように喜んでみせた姿が、羽生選手が皆から愛されている理由の一つと言える。これからも、この同門2人による新たなライバル物語が繰り広げられていくだろう。そして、多くのドラマも生まれるはずだ。その過程で、羽生選手が今まで以上に強く"進化"していくことをファンもきっと望んでいるに違いない。○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年03月30日フリーアナウンサーの宮本隆治、歌手の八代亜紀、吉幾三、川中美幸が13日、都内スタジオで行われた、BSスカパー!の特別番組『宮本隆治の歌謡ポップス☆一番星コンサート』の公開収録に参加した。同番組は、音楽情報バラエティー番組『宮本隆治の歌謡ポップス☆一番星~演歌・歌謡曲情報バラエティ~』の特別番組。ゲストの八代、吉、川中によるトークコーナーのほか、生バンドの歌唱ステージを披露する内容で、番組は、3月29日18時からBSスカパー!で先行放送、5月上旬に歌謡ポップスチャンネルで90分の完全版を放送する。番組収録前、報道陣の取材に応じた八代は、「人生の贈りもの」、「心をつなぐ10円玉」を披露するにあたり、「今、どうしても歌いたい曲。言葉が素敵なので、じっくり見て聞いてくれればうれしい」とアピール。一方、コラボレーションを含む7曲を歌唱する吉は、「3曲がギリギリ……」とこぼしながらも、「カラオケじゃなく生バンドという音楽番組はなかなか無い。こういう番組は続けて欲しいし、この3人で毎週出てもいい」と番組初のコンサート形式が楽しみな様子だった。また、番組司会を約2年半務めている宮本アナは、「司会生命をかけて、誰も知らない素顔を引き出したい」と意欲満々。フリー転身前のNHK時代には、『紅白歌合戦』や『のど自慢』など歌番組の司会を担当してきた宮本アナだが、八代は以前からの印象を、「表も裏も面白い人」と称してにっこり。「生放送が終わると面白いって言われてましたけど(笑)。私は額縁ですから、中の絵を引き立たせることに徹します」と照れ笑いする宮本アナに、川中は、「額縁の方が高い時もある」と突っ込んで笑いを誘っていた。
2015年02月14日昨年12月26日から28日にかけて開催されたフィギュアスケートの全日本選手権。女子では、ここ8年で6度も同大会で優勝したエース・浅田真央選手が不在だったため、誰が勝っても初優勝という中で迎えた試合だった。○新女王に輝いたのは宮原知子群雄割拠の戦いを制し、新女王となったのは関西大学高等部の宮原知子選手。その宮原選手をはじめ、ジュニア選手の勢いが目立った大会は、元選手の目にどのように映ったのだろうか。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在は関西大学を拠点にコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんに主だった選手を解説してもらった。宮原知子悲願の優勝を果たした宮原選手は、確実性を重視しつつ、持ち前のスタミナをいかした戦略が見事にはまったという。「ショートプログラム(SP)では、3回転-3回転のジャンプコンビネーションがアンダーローテーション(回転不足)判定となり、ジャンプの点数が少し低くなっていました。しかし、フリーでは3回転-3回転を回避し、後半にダブルアクセル-3回転トゥーループのジャンプコンビネーションを2本入れるという作戦に切り替えていました」。体力の落ちる後半に、3回転をセカンドジャンプに入れることはかなりの高難度となる。ただ、宮原選手がそれを非常に簡単そうにこなした点に、澤田さんは注目している。「普段あらゆる場面を想定して練習していることや、『練習の鬼』と呼ばれるほどの練習量が、この結果に結び付いたのではないかと思います。シーズン後半は、日本のエースとして戦うこととなります。練習してきたことが結果につながったことを自信に、シーズン後半も戦い抜いてほしいと思っています」。本郷理華12月のグランプリファイナルに繰り上げで出場した本郷選手。大舞台での経験を糧に、全日本選手権でも2位と活躍した。「持って生まれた長い手足を生かし、ダイナミックな演技を見せてくれました。SPで1位になったことで、フリー直前は緊張をしている様子でした、それでも、フリーでは本郷選手が今、できること行っていた印象です。フリーの選曲『カルメン』も本郷選手に非常に合っており、主人公・カルメンになりきり、見ている側に気迫が伝わるかのような演技でした。グランプリファイナルに出場したことで意識などが変わったのか、『より攻めの姿勢が見えたな』というのが私の印象です」。樋口新葉中学2年生ながら、シニア顔負けの演技を披露して3位に輝いた新星・樋口選手。岡島功治コーチに師事し、今シーズン頭角を現した14歳は、一気にスターダムを駆けのぼる可能性を秘めていそうだ。「ジュニアグランプリファイナルでメダルを獲得した樋口選手は、全日本ジュニア優勝者として推薦での出場になりましたが、SP・フリー共に3位という、素晴らしい結果を残しました。SPでは樋口選手の持ち味を生かしたスピードのある演技を、フリーでは最初のジャンプこそ失敗しましたが、残りの要素をきっちりと行っていました。最終グループでの演技で緊張した面持ちでしたが、ジュニア1年目でこの経験をできたことは、今後を考えると非常に大きかったと思います。フリー終了後には演技内容に満足していなかった様子でしたが、3月の世界ジュニア選手権で悔しさを晴らしてほしいです」。村上佳菜子女子の参加選手の中で唯一五輪の舞台を経験して、年齢的にも次代を担う役が期待されている村上佳菜子選手。だが、SPでは自身の得点源でもある3回転トゥーループの連続ジャンプが回転不足とジャッジされるなど、思ったように得点を伸ばせなかった。「村上選手は、今シーズンは苦しい戦いが続いています。全日本では素晴らしい演技でしたが、結果につながらず、悔しい思いをしたことと思います。昨シーズンに上位にいた選手が出場していないことで、『勝たないといけない』というプレッシャーもあったのかもしれません。プレッシャーをかけすぎると身体が思うように動かなくなり、タイミングもずれてしまうこともあります」と澤田さんは指摘する。長年共に戦ってきた先輩・鈴木明子さんが昨シーズンに引退。さらに本来のエース・浅田選手も休養している今シーズンは、村上選手に女子のエースとしての期待がかかっている。そんな目に見えない重圧とも戦っているかもしれない村上選手に、澤田さんは光明を見出している。「技術点は伸び悩みましたが、演技構成点だけで見れば、フリーでは2位です。『オペラ座の怪人』の曲を使いたいと、コツコツ努力していることはきちんと結果に出てきています。シーズン後半はこの悔しさをバネに、飛躍的な活躍を期待したいです」。○若い世代の台頭が目立つ女子女子に関して言えば、ジュニアの活躍に注目が集まる結果となった今大会。だが、その潮流は世界でも同様のことが言え、特にフィギュア大国・ロシアではその傾向が顕著だ。昨年12月のグランプリファイナルでは、女子は参加6選手中で4選手がロシア勢だった。優勝を飾ったエリザベータ・トゥクタミシェワ選手は、17歳とは思えないほどの妖艶(ようえん)な表現を見せた。そのほか、ソチ五輪で一気に知名度が高まった5位のユリア・リプニツカヤ選手(16歳)、2位のエレーナ・ラジオノワ選手(16歳)、4位のアンナ・ポゴリラヤ選手(16歳)のいずれも10代半ばだ。若い世代がどんどん力をつけ、結果も伴いだしている。シーズン後半は、そんなフレッシュな世代たちが火花を散らせる「ライバル物語」に注目してみるのもいいのではないだろうか。○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年01月09日昨年12月26日から28日にかけて開催されたフィギュアスケートの全日本選手権では、羽生結弦選手が3連覇を飾ったが、ほかにもさまざまなドラマがあった。○町田の引退、小塚の復活劇男子ではソチ五輪5位、世界選手権2位などの輝かしい成績を残した町田樹選手が突然引退を表明。さらに、ジュニアの新鋭・宇野昌磨選手(中京大中京高)が2位に入り、一躍"時の人"となった。そんな今大会は、かつての現役選手の目にどのように映ったのだろうか。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在は関西大学を拠点にコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんの解説と共に、男子の主だった選手の演技を振り返ってみよう。町田樹ショートプログラムでは、ほぼパーフェクトな演技を披露して2位発進した町田選手。だが、フリーではジャンプのミスが響いて総合4位に終わった。そして、3月の世界選手権発表の場で現役引退を表明。今後は、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学し、研究者の道を歩むことを宣言した。澤田さんは、フリーの演技を「競技者と同時に、音楽を表現する『アーティスト』として、記憶に残る演技だったと感じています」と評価する。「これは演技構成点でも評価されており、演技構成点だけで見れば3位という結果になっています。音楽の解釈や、音楽の表現にこだわっている町田選手にふさわしい結果になったのではないかと思います」とした。宇野昌磨今シーズンに入り、4回転とトリプルアクセルの成功率が上がり、ジュニアのグランプリファイナルで優勝するなど、成長が著しい宇野選手。澤田さんは、その表現力に注目する。「宇野選手は『表現力がすばらしい』と、ノービスの頃から注目されており、ジュニアの国際大会でも活躍してきました。昨年同様、フリーでは最終グループでの練習となりましたが、今年は6分間練習からのオーラがひときわ目立っていました。練習開始数十秒後にトリプルアクセルを決め、誰よりもよく動いていたのではないかと思います。身体は小さいですが、演技中はそのことを感じさせないほどの大きな演技で、観客を魅了していたと思います」。小塚崇彦グランプリシリーズではスケートカナダ大会で8位、ロシア杯で6位といまひとつ波に乗れていなかった小塚選手。ただ、過去に優勝した経験もあり、昨シーズンも3位に入っている全日本選手権で今年も3位となり、躍動した。「小塚選手は、スケートがよく伸びる(1蹴りで進む距離が長い)選手で、ジャンプがなくてもスケートを『魅せる』ことができる選手です。しかし、競技では大きな得点源であるジャンプが成功しなければ、勝つことができません。長く先の見えないトンネルの中にいるようなスランプだったと思いますが、この全日本で見事に復活を遂げました」と、澤田さんもその復活劇を喜ぶ。小塚選手が次々にジャンプを決めて最後の見せ場のステップを終え、次の要素のスピンが終わる頃には会場が総立ちになっていた。ファンも、その演技に感じるものがあったようだ。「細かい失敗があり得点は伸びませんでしたが、(総立ちとなった場面は)観客の心が一番動いた瞬間だったのではないかと感じました。今回、シングル選手の中では最年長の出場となった小塚選手ですが、まだまだ日本の選手を引っ張っていってほしいです」。○年々、高い競技レベルに突入このほかにも、グランプリシリーズのスケートカナダ大会で優勝した無良崇人選手をはじめ、実績のある選手が多数参加したが、その無良選手も5位に終わった。それだけハイレベルな戦いが繰り広げられていた証しである。澤田さんも、競技レベルが上がってきていることを実感している。「男子では、ジュニアの推薦で出場した選手の多くが、トリプルアクセルに挑戦しています。また4回転を跳ぶ選手も多く、出場枠の少ない世界選手権などの代表争いは、熾烈(しれつ)な戦いとなってきております。最近は、長年スケート界を引っ張ってきた選手の引退が相次ぎました。ですが、その背中を見てきた若い選手は、きちんと成長しているなと今回の全日本選手権を見て感じました」。偉大な先人たちから受け継いできた技術と気持ちを結実させるための次なる機会は、「ユニバーシアード冬季競技大会」だ。○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年01月08日フィギュアスケート・羽生結弦選手が、昨年12月26日から28日にかけて開催された全日本選手権で優勝し、見事に大会3連覇を達成した。11月の中国杯では試合前の公式練習で他の選手と激突し、頭部とあごから流血をするほどのケガを負った。一時は出場も危ぶまれた12月のグランプリファイナルでは、けがの影響を感じさせない288.16という高得点をマークしてV2。そして、そのわずか2週間後の全日本選手権でも表彰台の頂上に立った。27日のフリーでは、冒頭の4回転サルコウこそ転倒したものの、続く4回転トゥーループは華麗に決めてみせる。演技後半には、トリプルアクセルからのコンビネーションジャンプを2度も成功させるなど、着実に得点を伸ばしてを栄冠を手にした。しかも、同大会後に「尿膜管遺残症」を患っていたことが判明。最近は中国杯のけがとは別の痛みを伴いながらの戦いを強いられていたが、それでも結果を残したかっこうだ。○羽生選手を優勝に導いた3つの要素名実共に「日本の絶対エース」となっているソチ五輪金メダリストは、なぜ全日本選手権で優勝できたのだろうか。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在は関西大学を拠点にコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんは、羽生選手には3つの勝因があったと見る。ジャンプ時の工夫まず、「ジャンプ時の工夫」が得点を大きく伸ばした要素の一つではないかと指摘する。「羽生選手はもともと、ジャンプなどのエレメンツ一つひとつの質が良く、出来栄えを評価するGOEでも加点がよくついています。全日本選手権では、ジャンプ着氷時の流れや、空中姿勢での工夫(手を上げてのジャンプ)もあり、より加点がつきやすいものになっていました」。得点を伸ばすためのプログラムさらに、得意のジャンプを最大限にいかすためのプログラムも奏功したという。「ショートプログラムでは、基礎点が1.1倍となる演技後半にジャンプを2本入れ、フリーでは演技後半にジャンプコンビーネーションを3本入れていました。戦略面での作戦が見事にはまり、羽生選手に有利に作用したなという印象です」。羽生選手のフリーの技術点は、加点のない状態(ベースバリュー)で90.12点と、その次にベースバリューが高い宇野昌磨選手(79.37)を10点以上も上回っている。なおかつ、基礎点が高くなる演技後半にトリプルアクセルを2本入れるなど、自身の武器であるジャンプがより大きな得点源になるように立てた演技構成を、澤田さんは高く評価している。精神力そして最後に、強いメンタル面が羽生選手を支えたと見ている。「全日本選手権は、3月の世界選手権などシーズン後半の大会の選考会も兼ねているため、独特の緊張感が漂っています。ただ、羽生選手は終始リラックスしているように見受けられました。もちろん、集中すべきところでは集中し、緊張感を高めていましたが、不安な気持ちなどは見えませんでした。むしろ、練習してきたことに自信を持ってこの大会に臨んでいるのかなと感じました」。そんな"絶対王者"は、昨年12月30日に「尿膜管遺残症」の手術を受け、1カ月は安静が必要とされている。そのため、3月に中国・上海で開催される世界選手権への出場が微妙なところではある。ただ、出場できれば2013-2014シーズン同様、全日本選手権とグランプリファイナル、世界選手権の「3冠」も現実味を帯びてくる。羽生選手がどのような決断をくだすのか、ファンは要注目だろう。○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2015年01月06日鈴木明子さんの引退、浅田真央選手の休養宣言によって、フィギュアスケート日本女子のエースとして今シーズンを迎えることになった村上佳菜子選手。かつてはチームジャパンの末っ子として数々の試合に出場していましたが、今シーズンからは村上選手が他のチームジャパンの選手を引っ張るという形になりました。今回は、後輩たちを導くリーダー役としての期待もかかる村上選手についてお話しましょう。○一人二役でのオペラ座の怪人今シーズンは、「オペラ座の怪人」の曲を使用する選手が多く見られますが、村上選手もその一人です。ショートプログラム(SP)では作品のヒロイン・クリスティーヌに、フリーでは主人公・ファントムになりきり、同じ物語の曲でも見事に演じ分けています。選手の多くはSPとフリーの曲を違うものしますが、村上選手はあえて同じ物語の曲を選んできました。長年やりたかった曲だからこそ、村上選手なりのこだわりなのかもしれません。○幼い頃から身についていた巧みな表現村上選手のお姉さんと私が同い年の友人であったことから、村上選手のことはノービスで活躍する前から知っていました。ノービスの頃は身体が小さかったのですが、手や上体をうまく使い、動きがとても大きく見えていたことを覚えています。シニアになった今でも、ステップなどに加点がついています。小さい頃に身体に染み込ませた表現の仕方が、今の村上選手の巧みな表現力につながっているのではないでしょうか。○3回転-3回転でプログラムに勢いまた、今の村上選手の武器は、3回転-3回転のコンビネーションジャンプであると感じています。昨シーズンの全日本選手権のフリーで行った3回転トゥーループ-3回転トゥーループのジャンプには、GOEで2・10の加点がつきました。結果として、基礎点8・20点のジャンプが10・30点のジャンプになりました。このコンビネーションジャンプは、ジャンプの幅や高さが十分にあり、見ていて気持ちいいジャンプです。また、プログラム序盤で行うことが多いので、このジャンプをきっかけとしてプログラムに勢いが出ているなという印象もあります。今シーズンのグランプリシリーズでは細かいミスが続き、残念ながらファイナルに進出することはできませんでした。しかし、村上選手は「ここぞ」というところで、持っている最大限の力を発揮することができる選手です。12月26日より開幕する全日本選手権では、村上選手らしいダイナミックなプログラムが見られることを楽しみにしています。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2014年12月25日ソチ五輪金メダリストのフィギュアスケート・羽生結弦選手は、日本時間12月12日から14日まで開催されていたグランプリ(GP)ファイナル大会で、トータル288・16をマークして大会2連覇を達成した。11月の中国杯では試合前の公式練習で他の選手と激突し、頭部とあごから流血をするほどのアクシデントに見舞われた。その影響もあってか、GPファイナルもギリギリ6位で滑り込んだ。だが、SPで今シーズンの世界最高スコアとなる94・06をたたきだすと、フリーでは自己ベストとなる194・08をマーク。終わってみれば2位に30点以上もの大差をつけての圧勝で、完全復活を印象付ける勝利となった。フリーでは冒頭の4回転サルコウと4回転トゥーループを鮮やかに決め、GOEでも共に2点以上の加点を得る。体力の落ちる後半も3回転ルッツ-2回転トゥーループ、トリプルアクセル-3回転トゥーループなどのジャンプを次々と決めてみせる。最後の3回転ルッツのみ転倒してしまったが、それ以外はほぼ完璧な演技を披露した。「オペラ座の怪人」のファントムに自身を重ねてのステップや舞いも、プログラムコンポーネントで唯一90点台(91・78)をマークするなど高い評価を得て、自己ベスト更新につなげた。羽生選手はなぜ優勝できたのか。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在は関西大学を拠点にコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんは、「攻めの姿勢」を貫いたことが奏功したのではないかと指摘する。「SPとフリー共にノーミスとはなりませんでしたが、フリーでは基礎点が1・1倍になる後半にトリプルアクセルを2本入れるなど、『守るのではなく、勝ちにいくための攻めの構成』と感じました」。6位でGPファイナルに出場した羽生選手は、自らを「挑戦者」と位置づけて大会に臨んだ。最後まで自分を信じて攻め抜いた気持ちが、プラスに働いた形になったと澤田さんは見ている。「ソチ五輪のチャンピオンとして今シーズンを迎え、非常に重圧がかかったシーズンインだったかと思います。中国杯では事故もありましたが、それを感じさせないような堂々とした演技でした。(GPファイナルは)シーズン初旬に予定していた構成より難易度を少し落としているとはいえ、五輪チャンピオンになってもなお、成長しようとする姿がこのような結果につながっているのではないかと思います」。けがからの復活劇を見せた羽生選手が次に見据えるのは、全日本選手権の表彰台。注目の大会は、12月26日より長野のビッグハットにて開催される。○取材協力: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2014年12月16日2月のソチ五輪では、メダルまであと一歩の5位と飛躍的な活躍をみせてくれた町田樹選手。今シーズンも安定した演技で、日本人選手の中では最初にグランプリ(GP)ファイナルへの切符を手に入れました。これで一昨年から3シーズン連続での出場となり、すっかりGPファイナルの常連選手となった感じがします。○限られた時間で最大限の練習をした日々町田選手は私の1学年下にあたり、関西大学の後輩でもあります。大学では一緒の授業になったこともあるなど、練習拠点は違いましたが、身近な所で頑張っている姿を見てきた選手の一人です。町田選手はノービス・ジュニア時代、主に広島県で練習をしていたと記憶しています。しかし、広島にはシーズンリンク(夏はプール、冬はスケートリンク)しかありません。そのため、夏場は岡山県など、夏でも営業をしている他県のリンクに行き練習をしていたと聞いたことがあります。私も練習拠点が閉鎖し、滑れる場所を求めて他の府や県に行っていた時期もありましたが、移動時間も増え、非常に体力と気力がいるものでした。他県で練習となると、学校との兼ね合いで練習時間に限りがあり、短時間しか練習ができなかった日もあったことでしょう。とぎすました集中力で練習するための術を、自然と身につけたのかもしれません。○"適応力"でリンクの違いを感じさせない精緻な演技現在は、大阪府にある臨海スポーツセンターを練習拠点にしています。このリンクは年間営業をしていますが、リンクの大きさが国際規格より少し小さいリンクになっています。そのため、普段プログラムを練習するときと、国際規格サイズの試合会場でプログラムを行うときでは、ジャンプを跳ぶ場所やステップを行う位置が異なることがほとんどです。例えば、縦の距離が短いリンクで端から端までステップを行っていても、国際規格サイズのリンクでは端までたどり着かないということが起こり得るということです。しかし、町田選手の演技を見ると、リンクの違いといった事情があるようには感じません。国際規格サイズのリンク全体を使い、スケートもよく滑っているなという印象を受けます。広島にいた頃、恵まれているとは言えないスケート環境に屈することなく練習を続けていたことが、町田選手のこの"適応力"につながっているのではないかと思っています。練習できる場所があれば、リンクのサイズに関係なく練習を重ねて試合で結果を出す。小さい頃から当たり前のようにやってきたからこそ、本番でも動じずにすばらしい演技ができるのではないでしょうか。○卓越した音楽編集で、ジャンプと音楽が一体にまた、町田選手は曲を表現することに強いこだわりがあるなと感じます。フィギュアスケートでは、今シーズンに羽生結弦選手や村上佳菜子選手、無良崇人選手らが用いている「オペラ座の怪人」といった物語がある曲は表現しやすいです。ただ、町田選手はフリーでは物語のないクラシックを選んできました。物語がある曲は、その曲が使用されている場面を表現することができますし、表現したい演技も、物語があれば設定しやすくなります。「ロミオとジュリエット」であればジュリエットに恋するロミオに、「カルメン」であれば妖艶な女性になりきって演じることができます。ですが、クラシックは曲の解釈の仕方が人それぞれになってくるため、難しいと私は感じています。私はアントニオ・ヴィヴァルディ作曲の「四季」の「夏」がすごく好きな曲ですが、「夏」の表現は難しいです。曲名にとらわれず、曲を聞いたままで解釈して表現を……となると、何をどう表現するのかという設定をきちんとしないといけなくなります。この点が、物語があるのとないのとでは難しさが違うというところです。ところが、町田選手はその難題に自分なりの「答え」を見つけているように感じます。さらに曲を身体で表現するだけではなく、長い曲を競技用に編集したときに違和感を覚えたり、曲の雰囲気を損なったりしないよう、編集にもこだわっています。曲の表現にこだわりすぎると、ジャンプなどのエレメンツに気が回らなくなることも多いのですが、ジャンプが表現の一部に感じるほど、見事に音楽に溶けこんでいます。これは、町田選手自身に「これを表現したい」という強い意志があるからできることなのだなと思います。ソチ五輪が終わって1シーズン目。シニアで戦っている選手の顔触れも変わってきています。町田選手はベテランと言われる位置にいますが、ぜひ今年も、昨年以上の飛躍を期待したいです。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2014年12月10日フィギュアスケートのグランプリシリーズが日本時間10月25日、開幕した。開幕戦のスケートアメリカ大会は、今シーズンの新プログラム「交響曲第9番」を披露した町田樹選手がトータル269・09点をマークして大会2連覇を果たした。日本のエースは羽生結弦ではない―。そう言わんばかりの力強く伸びやかなスケーティングを町田選手が演じてみせた。25日のショートプログラムでは、ソチ五輪銅メダルのデニス・テン選手(カザフスタン)やグランプリファイナル優勝などのキャリアを持つジェレミー・アボット選手(アメリカ)ら実力者がひしめく中、唯一の90点台となる93・39をマークして首位発進をした。そして迎えた26日のフリースケート。今シーズンより取り入れたルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作の「交響曲第9番」の調べに乗った演技を、多くのフィギュアスケートファンに初めて披露した。冒頭の4回転トゥーループを鮮やかに決めると、続く4回転トゥーループ-2回転トゥーループも無事に着氷。さらにトリプルアクセルからの3回転トゥーループもきれいに決め、GOEでも2点を加点した。後半のジャンプも大きなミスはほぼ見られず、175・70をマーク。2位のジェイソン・ブラウン選手(アメリカ)に30点以上の大差をつけるトータル269・09で見事にV2を達成した。町田選手の会心の演技に、Twitter上には「すごい完成度! ジャンプもちろんすごいけど、ステップ! 素敵! なんという情熱的な! うわああああん! 町田先生! 」「まっちーキスクラの悪そうな笑みがたまらない! 」「アアアアアもう~~~~まっちーのバレエ的な身のこなし好きィィィィ」「まっちーの第九の初演、圧巻だった。でもこれはまだスタート地点。極北に到達した時はどんな銀河点が出るんだろう。それと共に楽しみなのは観客席からまっちーの演技の後押しをするであろう第九の大合唱。演技の中盤は大合唱をフルコーラスで歌う覚悟が必要」などのファンの歓喜の声が多数見られた(すべて原文)。四大陸選手権4位などの成績を収め、現在は関西大学を拠点にコーチとして活動する元フィギュアスケート選手の澤田亜紀さんは、「昨年に比べて感じることは、『スケートが伸びるな』ということです。1歩押した時に滑る距離が伸び、演技が途切れることなくつながっているなと感じました」と、昨シーズンとの違いを分析。その上で、「ショート・フリーとも大きなミスはなく、満足のいく内容になったのではないのかと思います。この結果を自信に、2戦目でも力を発揮してほしいです」と話した。今回の勝利でグランプリシリーズ通算4勝目となった町田選手。次戦は11月22日、23日のエリック・ボンパール杯に出場予定だ。写真と本文は関係ありません
2014年10月27日●ジャンプルールの厳格化フィギュアスケートの採点方法は、ソルトレイクシティ五輪後に大きく変わりました。それまでは6.0点満点で採点する減点方式の採点法でしたが、ソルトレイクシティ五輪時の採点に不正があったとされ、翌シーズンのグランプリシリーズで試験導入した後、2004年-2005年シーズンからは現在のISUジャッジングシステムが導入されました。○毎年変わるルールISUジャッジングシステムとなっても、技術(ジャンプやスピンなど)と演技構成(主に表現力)を分けて採点をすることは変わっていません。ただ、ジャンプやスピンに対して基礎点が決められており、以前の減点方式と比べてはっきりと得点の基準が明確化された分だけ、選手は得点を得るための作戦が立てやすくなったのではないかと思います。フィギュアスケートのルールは毎年少しずつ変わっていますが、大きくルールが変わるのは五輪後が多く、今年も大幅なルール改正が行われました。今回はその中からジャンプに関する大きな変更点をご紹介したいと思います。○ジャンプミスはこれまで以上に許されないまずはショートプログラム(SP)についてです。SPは7つの課題が定められており、シニアの場合だとa.ダブルまたはトリプル・アクセルb.ステップより直ちに行うトリプル(男子はクワドラブル<4回転<も可)・ジャンプc.bとは異なる種類のジャンプ・コンビネーション(男子: 2-3回転、3-3回転、2-4回転、3-4回転女子: 2-3回転、3-3回転)d.フライングスピンe.男子:dとは異なるポジションの足かえ1回のキャメルまたはシットスピン女子:レイバック・スピンあるいはサイドウエイズ・リーニング・スピンf.足かえ1回、少なくとも2種類の基本姿勢を含むスピン・コンビネーションg.氷面を十分に使用したステップ・シークエンス以上が課題となっています。このうち3つがジャンプの課題ですが、要求を満たさないジャンプは「無価値」となるというルールが新たに加わりました。昨年までのルールですと、例えばジャンプのタイミングが合わずにダブル以上のジャンプがシングルジャンプになってしまった場合、出来栄え点(GOE)は最低評価の「-3」とされましたが、シングルジャンプの点数そのものは入っていました。しかし今シーズンのルールでは、シングルになってしまった場合は0点(コンビネーションジャンプの場合、シングルになったもののみ0点などの細かな規定あり)になるということになります。昨シーズンまでもジャンプのミスには厳しいルールでしたが、今シーズンはより厳しいルールに変更され、本当にミスが許されない状況になったと言えます。○フリーではダブルジャンプの回数に制限次はフリースケーティングについてです。フリースケーティングで大きく変わったところは、ダブルジャンプの回数に制限ができたことです。昨年までは、ダブルで回数制限を設けているジャンプはアクセルのみでした。しかし、今シーズンからは「いかなるダブルジャンプも全部で2回を超えてはならない」というルールに変更になりました。すなわち、ジャンプコンビネーションでダブルトゥループ(2T)の3連続ジャンプを行った場合は、キックアウト(基礎点なし=0点)になるということです。また、ジャンプコンビネーションにも新たなルールができました。ジャンプコンビネーションは、「全てのトリプルおよびクワドラブルジャンプのうち、2種類のみを2回行うことができる。これら2回行ったうちの少なくとも1つがジャンプコンビネーションまたはジャンプシークエンスの場合、行った両方ともが通常の方法で評価される」との旨がルールに記載されています。分かりやすく説明しますと、トリプルトゥループ(3T)を2回行う場合は、どちらかをジャンプコンビネーションまたはジャンプシークエンスにしなければ正常に点数が評価されず、3Tのソロジャンプを2本跳んでもきちんとジャンプの点数が評価されないというわけです。ここまでは昨シーズンまでと同じですが、もし転倒等で2回ともソロジャンプになった場合、2回目のソロジャンプに「+REP」という記号がつき、本来の基礎点の70%になるというルールが追加されました。昨シーズンまでは、同じような場合は2回目に「+COMBO」という記号がつき、本来の基礎点の80%になっていたことを考えると、1割の違いが生じるわけです。さらに、ジャンプコンビネーションまたはジャンプシークエンスは最大3回までで、1つのジャンプコンビネーションは最大3個までのジャンプを含んでよく、残りの2つは最大2個までのジャンプとするというルールがあります。昨年までは+COMBOの記号も最大3回までとされているうちの1回にカウントしておりましたが、今年からはカウントをしないルールに変更になりました。●これまで以上に演技中の即座の判断が求められるミスをした際の基礎点は低くなってしまいましたが、ジャンプコンビーネーションのルールと合わせて考えると、2回行ったジャンプのどちらかで行う予定であったジャンプコンビネーションが、他のジャンプを行った時につけることができるので、点数の面では同じくらいになるのではないかと思います。少し例を出してみます。例えばフリー冒頭で3Tの2連続ジャンプを予定していたが、タイミングが合わずに2Tの2連続ジャンプになってしまったとしましょう。ジャンプコンビネーションのルールでいえば、あと2回ジャンプコンビネーションができるということになります。ジャンプコンビネーションはトゥループまたはループ(Lo)で行うことが多いです。ただ、2Tはすでに2度使用しているため、ダブルジャンプの新ルールによって、ループジャンプを含んだ3連続ジャンプにするなど、2Tを使わないジャンプコンビネーションに変えなくてはなりません。すなわち、演技後半で3Lo-2T-2Tというジャンプコンビネーションを予定していても、演技冒頭で3T-3Tのジャンプコンビネーションが2T-2Tになってしまった場合、後半に予定していたジャンプを3Lo-2Lo-2Lo等に変更しないといけないということです。ステップを挟んでジャンプシークエンスにすることも可能ですが、その際にもこの後に行う予定のジャンプのことも考慮しなければいけません。さらにその後、同じ種類のトリプルを2回行い、どちらにもジャンプコンビネーションがつけられなかった場合、その後に予定しているジャンプの中でリカバリーを行わなければいけません。そして、それら全てを演技中に瞬時に判断しなくてはいけないのです。○ミスを想定した練習の必要性かなり極端な例になってしまいましたが、このようなことが試合で起こらないとも限りません。ジャンプの順番等の作戦を立てることも、得点を得るために重要なことだと思いますが、ミスが起こることも想定し、日々の練習でリカバリーの仕方も練習しておくことが大事なのではないかと思います。日本国内では全国各地で全日本選手権の予選が始まるなど、本格的にスケートのシーズンが始まりました。ルールが大きく変わり、選手たちには負担が大きかったオフシーズンだったとは思います。しかし、ジャンプやスピンなどの技だけにとらわれず、選手それぞれ練習してきたプログラムというすばらしい作品が見られることを、私は楽しみにしています。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。
2014年10月23日