「彼女が収監されるとすれば恐らく韓国内で唯一の女性刑務所『清州女子刑務所』になるでしょう」と話すのは、韓国の刑事政策に詳しいジャーナリスト。弾劾された朴槿恵・前大統領(65)が、約57億円の収賄や公務上秘密漏えいなど18件の容疑で起訴されている。 これまでも韓国では2人の大統領経験者が逮捕され、実刑判決を下されている。全斗煥(86)と盧泰愚(84)、2人の元大統領だ。2人とも収監され、囚人服姿を国民の前にさらされた。プライドの高い朴槿恵・前大統領はそんな恥辱に耐えられるのだろうか。だが、デイリーNK編集長の高英起氏はこう話す。 「全斗煥も盧泰愚も実際にはその後に特赦、恩赦を得て、2人とも釈放されています。今では悠々自適に暮らし、長生きしていますよ」 やはり大統領経験者は特別なようだ。とはいえ、コリアレポート編集長・辺真一氏がこうも話す。 「朴槿恵にも最終的には恩赦が与えられるでしょうが、一度は収監されるのは間違いない。今回は“親友”の崔順実被告など事件に連座して逮捕されている人間も多いですから、朴槿恵ひとりが早々に出てくるのも難しいでしょう。少なくとも2年以上は実際に刑務所生活を送ることになるでしょうね」 だが、刑務所生活よりも「彼女には、もっと辛いことがある」と言うのは辺氏。 「それは、敬愛する両親と同じ墓に入れないということです。父親の朴正熙・元大統領は、国立ソウル顕忠院に眠っています。しかし顕忠院の墓地は、弾劾や懲戒処分で公職を解任された者は入ることができないのです」 恩赦を得て刑務所を出られたとしても、晩節を汚した彼女を待つのは孤独の苦しみだけだとは――。
2017年04月27日「彼女の周りには人がいない。独身で家族もなく、40年来の親友は、自分への贈賄容疑で被告の身。孤立している。哀れでかわいそうだ」(辺真一コリア・レポート編集長) 3月10日、朴槿恵・韓国大統領(65)が罷免された。憲法裁判所8人の裁判官、全員一致の決定だった。 韓国の歴代大統領は“血塗られた歴史”と言われてきた。退任後にいずれも悲惨な運命をたどったからだ。だが朴前大統領について、ジャーナリストの高英起氏はさらに過酷な運命が待つという。 「冷静に考えると、退任後に断罪された歴代大統領たちも、例えば息子が罪に問われた金大中は悠々自適。金泳山もそうでした。逮捕された全斗煥、盧泰愚も最後は恩赦で許されています。しかし朴前大統領は罷免され、単なる一般人になりました。任期を全うし、最後は許された歴代大統領たちと決して同じではありません」 コリア・リポート編集長の辺真一氏もこう言う。 「彼女の今後は2つしかありません。ひとつは、塀の中に入ること。もうひとつは、温情で在宅起訴になることです。どちらにしても有罪は免れません。朴氏がそれを“生き恥”と考えたら、かつての盧武鉉・元大統領のような悲劇的な結末を迎えるのではと私は恐れます。本当に、彼女はいま孤独なのです」 08年まで大統領の座にあった盧武鉉氏は、退任後に不正疑惑で側近や実兄が次々と逮捕された。元大統領自身の逮捕も噂されるなか、09年に盧氏は自殺。元大統領の自殺に韓国社会は衝撃を受けた。 大統領職を追われた65歳の朴氏が、現在それ以上の絶望に瀕しているだろうことは容易に想像がつく。 公職にも5年間は就くことができない。惨めな引退生活に、彼女は耐えられるのか――。
2017年03月17日