清田 幸弘 著『相続専門の税理士、父の相続を担当する』2022年5月12日刊行株式会社あさ出版(代表取締役:田賀井弘毅、所在地:東京都豊島区)は清田 幸弘 著『相続専門の税理士、父の相続を担当する』 を2022年5月12日に刊行いたします。相続の専門家が当事者に。伝えたい大切なこと相続税の申告を6000件以上手掛ける日本トップクラスの相続専門税理士が初めて経験する案件――それが父の相続でした。プロが自分の親の相続を担当するとどうなるのか。生前の準備から、葬儀、手続き、申告までの一部始終をマンガや図解を交えてわかりやすく解説。実際に行った節税策も掲載しています。相続のプロが、親の相続の一部始終を包み隠さず描く前代未聞の1冊※本書よりマンガ部分を一部抜粋相続時トラブルは、 全体の約8割が資産5000万円以下相続時トラブルは、 全体の約8割が資産5000万円以下父がまだ元気なときから相続対策し、 相続税を「約30%」減額父がまだ元気なときから相続対策し、 相続税を「約30%」減額相続対策を「できるだけ早く」 はじめたほうがいい理由相続対策を「できるだけ早く」 はじめたほうがいい理由財産だけでなく、 親の気持ちも受け継いでいく財産だけでなく、 親の気持ちも受け継いでいく書籍情報表紙タイトル:相続専門の税理士、父の相続を担当する著者:清田 幸弘ページ数:232ページ価格:1,650円(10%税込)発行日:2022年5月12日ISBN:978-4-86667-385-1 amazon: 楽天: 目次第1章私が「相続専門税理士」になった理由第2章父の相続対策をはじめる第3章父、亡くなる第4章父の相続の手続き・申告をする著者プロフィール清田 幸弘(せいた・ゆきひろ)著者:清田 幸弘ランドマーク税理士法人 代表税理士立教大学大学院客員教授1962年、神奈川県横浜市生まれ。明治大学卒業。横浜農協(旧横浜北農協)に9年間勤務、金融・経営相談業務を行う。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田会計事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。【報道関係各位】『相続専門の税理士、父の相続を担当する』リリース.pdf : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年04月27日みなさんは義実家の方々とは上手く付き合えているでしょうか? 大なり小なり義実家トラブルは皆さん経験があるみたいです…。 今回は実際に募集した義実家トラブルエピソードをご紹介します!「相続について理解していない義母」姑が唐突に相続に関する話をし、どうやら彼女の中で「土地家屋に関してはすべて義弟に」と決めているようでした。ただ義弟は独身者なので、彼がキレイに家屋を潰し土地を売却してくれないと、全てうちの息子達に流れてくる…という相続の仕組みを姑は理解していないようで…。独身貴族ぶっているけれど、自身に何かあったときにしっかり後見人なり立てる処理を自分でやってくれないと、全て私の子どもたちに流れてくるので「土地家屋は全て次男に譲ります」と言われても、安心できないという話でした…。(女性/公務員)「孫に甘い義両親」うちには子どもがいて、仕事もしなければいけないため、義両親がお金をかけて二世帯住宅を建ててくれました。仕事をしている最中は、義両親が子どもの面倒をみてくれていましたが、お菓子をあげすぎてどんどん体重が増えていき…。仕事をしていて何もできないし預けている後ろめたさがあるため、義両親に注意することができず…。最近はゲームをやり続けているわが子を「集中しているね」と、ほめていてもやっとします…。(女性/主婦)いかがでしたか?こんな義両親と付き合うとなると骨が折れそうですね。子どもの為にも義実家とはいい関係でいたいものです…。以上、義実家トラブル体験談でした。次回の「トラブル体験談エピソード」もお楽しみに♪※こちらは実際に募集したエピソードを記事化しています。"
2022年04月24日「うちの子どもたちは仲がいいし、大した財産もないから、自分が死んでもその後、相続トラブルになることはない」と思い込んでいる親たちは多い。ところが、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルは、この20年で約1.5倍以上に増えて、近年の新受件数は1万4,000件強で推移。その約3分の1は「1,000万円以下」のケースという。「相続は遺産が少ないほどトラブルになりやすく、なかでも多いのは、すでに父親は他界していて、その後、母親が亡くなったことで、財産を子どもたちで相続する場合。すでに独立している子どもたちは集まれる機会が少ないうえ、限られた時間の中で決めなければならないことがたくさんあるので、冷静さを失いがち。特に、自宅とわずかな現金しか残っていないというケースは注意が必要です。やはり、親御さんが元気なうちに、自宅や預貯金をどのように相続してほしいのか、きちんと決めてもらうことが大切です」そうアドバイスするのは、相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さん。「死んだ後の話をするのは不謹慎だ」と思うかもしれないが、親族が集まれる機会に、相続について話し合っておくことが、トラブルの回避につながるという。 本来、被相続人の死亡をもって始まるはずの相続だが、なぜ、生前から準備しておく必要があるのだろう。それは、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告・納付」を、故人の居住地を所轄する税務署に出向いて行わなければならないというルールがあるからだ。「親が『遺言書』を遺していない場合は、相続人で遺産分割協議を行い、『遺産分割協議書』を作る必要があります。これを含めた必要な書類を10カ月以内にそろえ、相続税の申告・納付手続きを済ませなければなりません。仮に相続財産が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)以下であれば相続税はかかりませんが、持ち家がある場合は、自宅の評価額だけで基礎控除額を超えてしまう可能性もあるので注意が必要です。万が一、申告が遅れてしまうと、不動産の『小規模宅地等の特例』などの優遇が使えなくなり、相続税の額が増えてしまう恐れも出てきます」(竹内さん・以下同)さらに、親に多額の借金があったことがわかった場合は、3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し出ることで、負債を背負わずに済むといった選択肢もあるので、モタモタしてはいられない。■スムーズな相続のためには親の生前から準備が必要もちろん“みとった後”も忙しい。葬儀や納骨のほかにも、健康保険、年金の死亡手続きや、銀行口座やクレジットカードの解約など、やらなければならないことは山ほどある。そんななかで円滑に相続を進めるためには、親の生前にやっておくべきポイントが3つあるという。まずは、相続財産を確認すること。「通帳を集めて残高を確認しておきましょう。相続開始後の預貯金の払い戻しは大変手間がかかります。複数口座があるとなおさらですので、口座はなるべく1つにまとめて、あとは親御さんが元気なうちに解約してもらうといいでしょう」通帳とともに、金融機関の届出印はどれなのか、目印のシールでも付けておくとわかりやすい。また、故人の銀行口座を解約するときに必要なこともあるので、日ごろから自分の実印もきちんと管理しておきたい。続いて、自宅はいくらの価値があるのかを、固定資産税の通知書をもとに調べておく必要がある。土地が共同名義になっていると相続時にややこしくなるので、自宅の登記簿謄本を取得して、所有者が誰なのか把握しておこう。2つ目のポイントは、誰が相続人になるのかを確認すること。きょうだいは2人だけなので、相続人は2人、と思いきや、じつは両親は再婚で先妻の子がいた、なんてこともありうる。「戸籍謄本を取り寄せて相続人の数を把握し、簡単な家系図を作成してみましょう。たとえば、父がすでに他界して、母の財産を3人の子どもが相続するときは、法定相続分は3分の1ずつになります」そして3つ目が、具体的な遺産の分け方を決めておくこと。介護の負担など、親との関わり方はきょうだいによって異なることもあるので、必ずしも法定相続分のとおりに分けなくてもよいというのだ。「たとえば、長男が親の介護やみとりの中心になり最期まで面倒を見たとしたら、『ほかのきょうだいたちより多くの財産をもらってもいいはず』、と思うでしょう。そのようなときは『遺言書』を活用して、相続に親の意思を反映せておくことです。きょうだい間の話し合いを円滑に進めるためにも、生前に『遺産の分け方の確認』をしておくことが大切です」相続でもめる原因の多くは、この「遺産の分け方」にあるが、そうしたトラブル回避の“切り札”になるのが「遺言書」だ。自ら公証役場に足を運んで、口述しながら公証人が作成する「公正証書遺言」と、原則すべてを自分で自書して作成する「自筆証書遺言」の2通りがあるので覚えておこう。いっぽう、「終活」ブームとともに耳にする機会が増えてきた「エンディングノート」は、相続財産を目録にするときには便利なツールだが、これだけで安心と思ってはいけないという。「エンディングノートは、終末期の医療の受け方やお葬式のやり方など、故人の希望を周囲の家族に伝えておくのにとても便利なツールなのですが、法的な効力はありません。かえってエンディングノートに書いてあることが原因でもめることもあるので、どれだけの財産を誰に遺すという相続に関しては、『遺言書』を作成して、具体的な分配方法を決めておくことをお勧めします」ちなみに’19年1月改正の相続法施行により、自筆証書遺言の作成は、だいぶハードルが低いものに。遺言書に添付する「財産目録」は、それまで手書きに限られていたのが、パソコンでの作成が認められるようになったほか、通帳などのコピー添付も認められるようになった。また、昨年7月からは、自筆証書遺言を市区町村の法務局で預かってくれる保管制度ができ、書類の不備を指摘してもらえるようになった。紛失リスクもなくなるので、ぜひトライしてみよう。■もめない相続のカギは相続人同士の“納得感”しかし、いくら「遺言書」で財産の分け方を指定しても、ほかの相続人から遺産の最低限の取り分である「遺留分」を請求されると、渡さなければならないといった決まりもある。たとえば、母と同居する長男が、「弟と妹は介護をほとんど手伝わないのだから、相続財産は分けなくてもいいだろう」と考えたとしよう。長男の気持ちを察した母は、「長男だけに相続財産を渡す」という「遺言書」を書こうとしたが、弟と妹から「遺留分」を請求されたら、法定相続額の2分の1を渡さなければならず“争続”のもとになる。もし遺産が3,000万円であれば、3人のきょうだいで分ける場合の法定相続額は1人1,000万円で、遺留分はその2分の1の500万円という計算になる。遺言書を書くときには、こうした遺留分に配慮し、相続人同士が納得できる内容にしておくことが望ましい。また、遺言書に不備があると無効になることも。遺言書を作成した「日付」の時点で親の認知機能に問題があったり、体調不良で正確な判断ができていないということが後でわかったりすると、無効になることがあるので注意したい。「遺言能力といって、遺言の内容を十分理解したうえで自分の死後にどのようなことが起こるのかを想定できる能力が問題になります。遺言能力がない人が遺言を書いたとして、ほかの相続人がその内容に納得いかないと家庭裁判所に申し立てられると、無効になる可能性があります」
2021年11月17日「残すものは何もないから、わが家に限って相続争いなんか起きるはずがない」。そう思っていても、意外と基礎控除額を超えた金額が相続分として残ることが。今すぐ財産を洗い出して賢く節税をーー!「生前贈与ができなくなる!?」「相続税の節税ができない!」富裕層の間でそんな噂が飛び交っている。事の発端は’20年12月の税制改正大綱だ。「相続税と贈与税を一体的に課税する観点から課税方法を見直す」との記載が、さまざまな臆測を呼んでいる。「相続なんて、庶民には関係ない」そう思う人が多いだろう。だが、相続専門の税理士、橘慶太さんはこう警告する。「法改正があっても、富裕層は相続税が多少増える程度です。万全の準備も行うでしょう。しかし、もっとも大きな影響を受けるのは、相続税の対象ラインぎりぎりの方です。改正前なら相続税と無縁でいられたのに、改正後は相続税を払う立場になることもあるでしょう。相続税は、子どもたちに大きな負担を残します。’16年の相続税法改正以来、相続税の対象者は増えています。都市部の地価の高い地域に持ち家のある方は注意が必要です」■相続税の計算の仕方は?今のうちに考える庶民にこそ影響の大きい税制改正のゆくえを、Aさんの例をもとに解説してもらおう。夫と死別したAさんの財産は次のとおり。地価が高騰し自宅は3,000万円相当だが、子どもに負担をかけないよう節約に励むAさんの生活は、庶民そのものだ。【Aさん(72)の場合】子ども:2人Aさんの財産:土地・家屋3,000万円、預貯金1,500万円。計4,500万円相続税基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円相続税対象額:4,500万円−4,200万円=300万円「Aさんのような方が、いちばん危険です」(橘先生・以下同)相続税は3,000万円+(600万円×相続人数)が基礎控除で、これを上まわれば課税される。Aさんの場合、相続人は2人だから基礎控除は4,200万円。相続財産は全部で4,500万円。もし今亡くなると、300万円が相続税の対象だ。「相続税は死後10カ月以内に、申告手続きと原則現金での納税を終えなければなりません。ですが基礎控除額を超えなければ、申告も納税もいっさい不要。残された子どもたちの負担は雲泥の差です」相続税を回避できる対策は?「今なら、『生前贈与』を行えば相続財産を減らせます」生前贈与とは、生きている個人が財産を贈ること。親から子への贈与でも、もらう側の子に贈与税が発生する。課税方法は2種類だ。1つ目は「暦年課税」。1年ごとにもらった財産に対して、毎年贈与税を納める。ただし年間110万円の基礎控除があり、110万円以下なら申告も納税も必要ない。2つ目は「相続時精算課税」だ。通算2500万円までの贈与には贈与税がかからないが、贈与者が亡くなったときは、それまでに贈与された財産と相続財産とを合算して相続税を算出し、納税する。贈与税はどちらかを選ぶのだが、Aさんのようなケースでは、暦年課税を選ぶのが一般的だ。そのうえで、110万円の基礎控除内、たとえば100万円の贈与を2人の子どもに2年間行えば、相続財産を400万円減らすことができ、相続税の対象から外れる。もっと相続財産の多い人は、次の節税策も活用できる。【暦年贈与】非課税枠:年110万円注意点:贈与者の死から3年以内は相続税対象に【教育資金の一括贈与】非課税枠:1,500万円注意点:’23年3月末まで【住宅取得資金の贈与】非課税枠:省エネ住宅1,500万円、一般住宅1,000万円(※住宅の取得時期により、非課税枠が異なる)注意点:’21年12月末まで【結婚・子育て資金の贈与】非課税枠:1,000万円注意点:’23年3月末まで【扶養義務者間での生活費や冠婚葬祭での祝い金等】非課税枠:制限なし注意点:その都度、必要な金額を社会通念上妥当な範囲で■税制改正の本当の目的は?損しないためにできることところが、冒頭で述べた相続税と贈与税の一体化の方向に税制改正が進めば、相続税の節税ができなくなる可能性がある。「税制改正のシナリオはいくつか考えられる」という橘先生に3案挙げてもらった。【1】“持ち戻し”期間を5年、7年、10年などと長期化“持ち戻し”とは暦年課税で、贈与者の死からさかのぼって3年以内に贈与された財産を、相続財産に含めて計算し直すこと。税制改正で持ち戻し期間が長くなれば、高齢になって始める暦年贈与では、相続税を節税するのが難しくなる。【2】“持ち戻し”の対象を相続人以外の孫などにも広げる持ち戻し対象が広がると、死ぬ間際の「孫」への贈与も持ち戻しとなり、節税の効果がなくなる。【3】非課税制度の期限終了で延長なし非課税贈与がなくなれば、相続財産を一度に大きく減らす方法がなくなる。税制改正はいつ始まるのか?「来年すぐにはないでしょう。今年末の税制改正大綱に詳しく改正内容を示し、法整備を行って、早ければ2年後から施行でしょうか」それまでにやるべきことは?「Aさんのケースでは、まず財産を洗い出すこと。そして、生前贈与などを利用して、早いうちに相続財産を減らしておくことです」生前贈与以外に方法は?「子や孫の教育費や生活費の支援も、扶養義務者間は非課税ですから利用できます。ただし必要なときに必要な額を渡すのが条件です」将来、相続税制はどうなる?「暦年課税を廃止して相続時精算課税に一本化し、相続税の節税ができない税制にする。相続税の基礎控除をさらに引き下げて、相続税の対象を広げる。そんな未来を、国は描いているのかもしれません」相続税は人ごとではない。節税ができなくなる前に、生前贈与で相続財産をスリムにしよう。
2021年10月20日相続が発生したとき、一番の難題は実家の土地や建物はどうしたらいいかということ。相続すれば税金や維持費が重くのしかかってきます。「空き家を放置するのはリスクがあります。相続の前に実家の状況や不動産価値を見極めることが大切です」と話すのは、FP2級の資格を持つ海田幹子さん。今回は住む予定のない実家を相続した場合としなかった場合、それぞれの対処法について教えてもらいました。■ 空き家を放置するのはリスクがある!固定資産税が最大6倍になることも空き家を放置すると以下のようなリスクがあります。固定資産税や修繕費、管理費など、維持管理するためにコストがかかる人が住まなくなると、建物の老朽化の速度が早まり資産価値が下がる老朽化や自然災害などで建物が倒壊すると人にケガをさせる可能性がある景観や衛生面などの悪化により周辺住民や行政からの注意を受ける税制優遇措置から外れて固定資産税が高くなることがある「住む予定がないから」「今住んでいる場所から遠いので」などと、相続した不動産の管理をしないことはNG。空き家を放置してしまうと、様々なリスクがあると覚えておきましょう。きちんと管理がされず、倒壊や保安上の危険があると見なされたときや、衛生上有害な状態と判断されたときは「特定空家」に認定され、固定資産税が最大6倍に増額されてしまう可能性もあります。実家として住宅が建っている土地には、固定資産税評価額が以下のように軽減されます。住宅の固定資産税評価額固定資産税=評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)200㎡以下の部分:固定資産税評価額×1/6200㎡を超える部分:固定資産税評価額×1/3しかし特定空家に認定されてしまうと、軽減がなくなってしまうのです。では、固定資産税評価額の軽減がある場合とない場合でどのくらい負担が増えるのか見てみましょう。建物評価額100万円・土地評価額1000万円の不動産の固定資産税固定資産税評価額の軽減がある場合100万円×1.4%+1000万円×1/6×1.4%=約3万4333円特定空家に認定された場合100万円×1.4%+1000万円×1.4%=15万4000円上記の場合、評価額の軽減がある場合とない場合では、年間約11万9667円もの差がでました。特定空家に認定されると、固定資産税の負担が上がってしまうので、空き家は放置せず、適切に管理しましょう。■ 住む予定のない実家を相続したときの対処法3つ住む予定がない場合は、実家を手放すか活用するかが選択肢に挙げられます。対策1.賃貸に出す借りてくれる人がいるなら、賃貸に出すことが可能。家賃収入が見込め、人が使うことで建物の老朽化のスピードが遅くなるというメリットがあります。対策2.売る住まない不動産を持っていても維持費がかかり続けるため、地価が上がる見込みがなければ売却もあり。立地や空き家の状態などにより買い手が見つからない場合は、実家の近くに住む親戚や住民に低額で売却、または無償譲渡も選択肢のひとつになります。対策3.寄付する土地は自治体に寄付をすることも可能です。ただし寄付できる土地は、自治体にとって有用な不動産に限られるため、買い手が見つからない不動産を寄付することは難しいかもしれません。■ 買い手がつかなさそうな不動産…相続前なら放棄できる!基本的に所有している土地は売却や寄付をしない限り手放すことはできません。ただし、これは「所有」している場合のこと。相続前なら相続放棄をすることで土地の所有権を放棄できます。買い手がつかなさそうな不動産の場合、検討する余地はあるでしょう。注意しなければいけないのは、不要な土地だけを放棄し現金だけを相続することはできないということ。相続放棄をするならすべて放棄しなければならない、ということを覚えておきましょう。土地の所有権がない=固定資産税を払わなくていいということ。ただし、相続放棄をしたあとも、土地の管理義務は残ります。管理義務からも免れたいときは、土地の管理を代わりに行ってくれる相続財産管理人の選任が必要です。相続財産管理人の申し立ては家庭裁判所で行います。申し立てにかかる費用は、収入印紙や郵便切手、官報公告料など。それにプラスして、相続財産管理人の経費や報酬にあたる予納金が必要です。予納金は裁判所が決定し、数10万程度の場合もあれば100万円ほどになることもあります。相続財産管理人が決まってはじめて、土地の管理義務から解放されることになります。住む予定のない実家などの不動産は、賃貸や売却、寄付をしない限り、固定資産税や管理費などの費用がかさみ続けます。一度取得した土地は、基本的に放棄することはできません。相続する実家に不動産価値がなく買い手がつかないと判断した場合は、相続の際に「相続放棄+相続財産管理人の選任」により手放すのもひとつの手でしょう。●教えてくれた人/海田幹子さんファイナンシャルプランナー2級の資格を持つwebライター。ライフプランニングや住宅ローン、資産運用などお金にまつわる内容を多数執筆。私生活では2児の母。わかりやすくてためになる記事を心がけている
2021年03月15日「親が存命の人であれば、相続の問題は決して人ごとではないはず。けれど、相続に関して無頓着である人は少なくありません。じつは私自身も父の死後“相続地獄”に陥ってしまったんです」こう語るのは『相続地獄』(光文社)を出版したばかりの、経済アナリスト・森永卓郎さん(63)だ。森永さんといえば、かつて本誌の取材でも「ケチと呼ばれることを恐れず、楽しく生きる」とケチ哲学を提唱。ロケ弁を多めに持ち帰る、スーパーの半額シールを狙うなど、徹底した節約生活ぶりを発信してきたが、意外なことに、相続対策はしていなかったという。「父が生きている間、相続に関して、何も考えていなかったんです。当時は知識がなく、どこをケチればいいかも、わかりませんでした。父が亡くなってから、財産を把握したり、遺品整理をするのは本当に大変で……。相続地獄を味わった身として、親の存命中に相続準備をすることの大切さを痛感しています」森永さんいわく「ケチは情報と知識の積み重ね」。“相続地獄”にハマりお金も労力も無駄にしてしまった森永さんに、たとえケチと言われても、親の存命中にやっておくべき準備を聞いた。【極意1】資産リストを作っておく「親の預金口座は生前にかならずリストアップを。金融機関は500以上ありますので、親の死後、口座があるか問い合わせるだけでもひと苦労。気づかずに、消えてしまう口座もあるかもしれません」(森永さん・以下同)10年以上出し入れのない休眠口座の預金額は毎年1,200億円にものぼるという。さらに、タイムリミットがあるのもやっかいだ。相続税の申告と納税は、親の死後、10カ月以内に行わなければならない。「四十九日法要が終わるまではバタバタしていますから、申告作業は実質8カ月ほど。漏れがあれば脱税になりますし、相続税の支払い期限を過ぎると、期日から2カ月までは年利7.3%、2カ月を過ぎると14.6%と消費者金融並みの延滞税が発生します」相続税をスムーズに申告するためにも、資産リストは必須なのだ。さらに、生前に小額口座を解約してまとめておくことも重要だと森永さん。「苦労の末、ようやく探り当てた口座が、残高わずか700円というケースもありました(笑)。この労力なんだったの……という感じです。口座をまとめる際の注意点として、預金額は、金融機関が破綻しても補償される1,000万円を超えないこと」近年は、ネット証券などデジタル資産にも注意が必要だ。「今思えば、父はパソコンを使っていたから、私の知らない株式取引やネット銀行があったかも。そこまで考えが及びませんでした」デジタル資産の有無を確認し、ログインID・パスワードは残しておいてもらおう。【極意2】財産は生前に整理「親の死後に一つずつ遺品の価値を見極めるのは途方もない労力がかかります。私の場合は、弟が業者に頼んで一括処分しました。しかし、まとめて処分するのでは損する可能性も」親の存命中に価値のある財産がどれなのか、聞き出しておくことが重要だ。「見落としがちなのは百貨店友の会の積み立てや航空会社のマイル。じつは、配偶者や法定相続人に受け継ぐことができるので、存在の有無を確認しておきましょう」さらに、死後の整理を楽にするためにも、不要なものは生前に処分を進めたい。優先すべきは自動車など持っているだけで費用がかかるものだ。「固定電話もスマホがあるなら、詐欺電話のリスクもあるので解約を検討してみてください。親が介護施設に入居して実家が空き家になっている場合は、思い切って手放すのも選択肢」【極意3】ファミリーヒストリーを聞いておこう「“公正証書はお金がかかるのでハードルが高い”という人は、自筆遺言を残してもらいましょう。思い出の品、家族への思い、財産の分割など、親の考えを知っておくことは重要です」ファミリーヒストリーを作り、把握していない「相続人」がいないかどうかも確認を。「以前、私は家系図を作る会社に依頼し、江戸時代まで家系をさかのぼりました。すると、びっくりすることに、亡くなった母親には夭逝した妹がいたんです。幸い、相続に関するような発見はありませんでしたが、もし隠し子などが見つかれば“争族”の種になるので、早めに把握しておきましょう」【極意4】葬儀・墓の準備も生きているうちに親の希望する葬儀や、墓をどうするかも確認しておきたい。「葬儀は、死の悲しみもあるなか進めなければならないので、相見積もりを取らず、病院から紹介された葬儀社にすべて任せてしまうケースが多いです。しかし、本当にそれでよいのか冷静に判断を」現在は比較的安価な家族葬や、火葬場で弔う直葬(20万円ほど)など選択肢も広い。「親の生前に葬儀の話題を持ちかけるのは気が引けますが、気持ちよく親を送るためにも話しておくべきです。墓についても、新たに購入する場合、都内だと500万円はかかります。できれば葬式費用とあわせて用意してもらうほうが安心です」とはいえ、相続準備をしようとしても、そもそも親に財産や死後の話をするのは抵抗があるもの。「いきなりお金の話はケンカになり、信頼もなくします。ふだんから親にリスペクトの念を持って接することが、肝心です。話す前には『いつもありがとう』、いろいろ教えてもらったときには『お陰で安心したよ。ご飯行こうか』とねぎらうことを忘れずに」親子のコミュニケーションが、“相続地獄”回避の第一歩なのだ。「女性自身」2021年2月23日号 掲載
2021年02月15日新型コロナウイルスの収束が見えないなか、これまでになく「死」を身近に感じ、「相続」を考えた人もいるのではないだろうか。相続法は’18年、約40年ぶりに大きく改正され、手書きの「自筆証書遺言」の法務局保管制度が、’20年7月から始まった。さらに’21年度以降には、法務局に保管された自筆証書遺言の遺言者が亡くなったときに、生前指定した人に連絡する制度が本格的に始まる予定だ。このように遺言書に関する制度が整備され、そのハードルは下がっているが、それでも、まだ多くの人たちにとって遺言は「うちには関係ない」存在だろう。だが、弁護士の竹内亮さんはこう指摘する。「遺言書がないと、遺族が集まり、財産分けについて話し合わねばなりません。その話し合いこそが、大変なのです」遺言書があれば話し合う必要もなく、遺言書どおりに相続すればよい。残された家族がもめる機会も、大幅に減るという。「特にお金持ちでもない、普通の家庭に、複雑な遺言書は必要ありません。A4用紙1枚に手書きでつくる『シンプル遺言』で十分です」(竹内さん・以下同)残された家族がもめないための遺言書づくりを、教えてもらおう。【ケース】仲よしのお嫁さんにも遺産を分けてあげたい光文恵美(55歳)の夫はすでに他界し、恵美は長男夫婦と2世帯住宅で暮らしている。夫の存命中から、恵美と長男の嫁であるG子(32歳)はとても仲がよかった。G子は、夫が病いに倒れたときも恵美と交代で看病してくれたし、夫の葬儀でも恵美を心身ともに支えてくれた。恵美は「G子がいてくれてよかった」と、心から感謝している。とはいえ、G子は長男の嫁だから、法定相続人ではない。このままだとあんなによくしてくれたG子に何も残してやれない。恵美は、なんとかG子に財産を残す方法はないものかと思案している。実は、民法改正によってお嫁さんなどにも「特別寄与料」が認められ、財産を一部受け取れる制度ができた。「とはいえ、お金に換算できない『支え』のようなものだと、特別寄与料が認められるのはむずかしいと思います」たとえ、特別寄与料が認められるとしても、遺言書がなければ、恵美の死後、財産を分ける話し合いの場で、G子は「私にも財産が欲しい」と主張しなければならない。恵美の長男でG子の夫であるF輔が相続財産を受け取るのに、さらにG子個人にも遺産が欲しいとは、なかなか言い出せないだろう。「こういうときに、シンプル遺言が有効です。遺言書にG子にいくらか財産を分けると書けば、G子さんが主張しなくても財産を受け取ることができます」その際、法定相続人ではないG子には「遺贈する」と書く。注意しよう。【遺言書の例(自分で書く)】主な財産データ:自宅(土地・建物)1,500万円、預貯金3,500万円遺言書1東京都○○区××1-2-3の自宅の土地建物を長男のF輔に相続させる。2預金のうち300万円を長男F輔の妻G子に遺贈する。3それ以上の預金はすべて長女のH美に相続させる。4以上に書いたもの以外のすべての財産を長女H美に相続させる。2020年10月13日東京都○○区××1-2-3光文恵美(印)それぞれの項目を書き終えたら、書いた日付、書いた人の住所、氏名、そして押印を忘れずに。「子どもたちに、恵美さんの思いをよく話しておきましょう。何も言わずにお嫁さんに遺贈すると、不信感を招く恐れがあります」後に残る家族への贈り物として、シンプル遺言を書いてみよう。「女性自身」2020年10月27日号 掲載
2020年10月21日新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家族との時間が増えた人も多いのでは。こんなときには、家族の問題。特に’18年に法改正された「相続」について考えてみてはいかがだろう。「相続なんてお金持ちの問題。うちには関係ない」と思う人は多いが、相続裁判の約3分の1は遺産額1,000万円以下だ。5,000万円以下まで広げると、76.3%に及ぶ(’18年・最高裁判所)。「遺産は自宅と少しの貯金」という普通の家族が危ないのだそう。そこで、経済ジャーナリストの荻原博子さんが相続に翻弄された家族のケースを例に、「相続トラブル」を避けるための正しい知識を教えてくれたーー。【ケース1】末っ子だけに生前贈与〈恵子さん(40歳)は独身。親と同居し、介護も一手に担いましたが、母、父と相次いで亡くしました。父は生前、介護の労をねぎらって、恵子さんだけに毎年100万円を渡していました。相続協議の席で、それを知った2人の兄は激怒!〉お金など財産を与えることを贈与といい、贈与税がかかります。ただし、贈与税は年間110万円を超えた額にかかるため、恵子さんのケースは非課税。申告も不要です。ですが、亡くなる前3年間の贈与は、相続財産に含まれるのです。父の遺産が3,000万円だとすると、恵子さんへの贈与3年分、300万円を合わせた3,300万円が遺産総額です。きょうだい3人で分けると、1人分は1,100万円。恵子さんはすでにもらった300万円を引いて800万円を受け取ることに。また、父の遺産が300万円だった場合、恵子さんへの贈与300万円を合わせた600万円が遺産総額です。3人で分けると1人分は200万円。すでに300万円もらっている恵子さんは100万円もらいすぎで、この分、兄たちは足りません。兄たちの不足分は、恵子さんが自腹を切って払わねばならないことも。とはいえ相続は、相続人が合意すれば、どのように分けてもOK。兄たちが介護のお礼として目をつぶってくれるといいのですが。【ケース2】妻は住み慣れた家で暮らしたい〈時価2,000万円の自宅と約2,000万円の貯金を残して、健一さん(75歳)が亡くなりました。妻は年金暮らしで生活費に不安を抱えていますが、住み慣れた自宅で暮らすつもりです。しかし、教育費にあえぐ2人の子どもから、自宅の売却を提案されました〉自宅を売却すると妻は住む場所に困りますから、’20年4月から施行された「配偶者居住権」を活用しましょう。配偶者居住権とは、自宅の権利を、「居住権」と「その他所有権」に分けて、配偶者は居住権だけを相続できる、としたものです。居住権やその他所有権がいくらかは複雑な計算式があるので、仮に、2,000万円の自宅の1,000万円が居住権、残り1,000万円がその他所有権とします。健一さん宅の相続財産は全部で4,000万円。法定相続どおりだと、妻が2分の1の2,000万円を、子どもらは1,000万円ずつに分けます。これまでなら、妻が2,000万円の自宅を相続すると、貯金はもらえませんでした。しかし、配偶者居住権を使うと、妻は1,000万円の居住権と1,000万円の貯金を、子どもらはそれぞれ、自宅のその他所有権を500万円分と貯金500万円を受け取ることができます。妻は自宅に住み続けられ、また貯金も手に入るので生活費も安心。自宅の売却は、妻が亡くなってから、改めて考えましょう。「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載
2020年05月08日新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家族との時間が増えた人も多いのでは。こんなときには、家族の問題。特に’18年に法改正された「相続」について考えてみてはいかがだろう。「相続なんてお金持ちの問題。うちには関係ない」と思う人は多いが、相続裁判の約3分の1は遺産額1,000万円以下だ。5,000万円以下まで広げると、76.3%に及ぶ(’18年・最高裁判所)。「遺産は自宅と少しの貯金」という普通の家族が危ないのだそう。そこで、経済ジャーナリストの荻原博子さんが相続に翻弄された家族のケースを例に、「相続トラブル」を避けるための正しい知識を教えてくれたーー。【ケース1】亡き父が連帯保証人に〈工場を経営していた勇吉さん(77歳)が亡くなり3カ月以上たったころ、8,000万円もの借金が発覚しました。銀行から、知人の連帯保証人になっていたという知らせがあり、家族は寝耳に水でした〉借金など「負の遺産」が大きい場合、相続全体を放棄することができます。ただし、相続放棄は、相続開始を知ってから3カ月以内に行わねばなりません。銀行は、相続を放棄されると返済してもらえないので、あえて死後3カ月以上たってから連絡してきたのかもしれません。また、銀行員がお葬式に参列することがありますが、これは相続人がそろっているか、確認する側面もあるようです。葬式に参列していたら、「相続開始を知らなかった」と言い逃れできませんから。こうした事態を避けるために、連帯保証人や借金など言いづらい情報も、家族にはきちんと伝えておくことが大切です。【ケース2】先祖伝来の自宅をどう分ける?〈代々、都内の一等地に住む徳太郎さん(83歳)が亡くなりました。残したものは2,000万円の貯金と、時価1億円の自宅です。相続人は、徳太郎さんと同居する長男と、別に暮らす次男の2人。長男は徳太郎さんの介護に力を尽くした自負もあり、住み慣れた家から離れるつもりはありません。しかし、次男は自宅を売却して、遺産を分けろと主張しています〉土地の相続は、相続の評価額を8割減らせる「小規模宅地等の特例」が使えます。その条件は、相続人が配偶者か、同居の親族か、同居していないが持ち家がないなどの要件を満たす親族であること。徳太郎さんのケースでは、同居している長男が相続すると評価額は8割減で2,000万円。貯金2,000万円と合わせても基礎控除の範囲内ですから、相続税はかかりません。ですが、きょうだい2人で相続すると、遺産総額は1億2,000万円。相続税を計算すると、それぞれ580万円、計1,160万円も必要です。次男が貯金2,000万円を受け取ることで納得すれば、相続税はゼロで済みますが、溝は深いようです。ほかにも想定外な相続トラブルを『最強の相続』(文春新書)に集めています。相続は、親が元気なうちに、相談を始めましょう。「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載
2020年05月08日連日、新型コロナウイルス関連のニュースで持ちきりだが、4月には相続など、私たちの“お金”に関する重要な法律が施行される。それらは私たちの生活にどう影響するのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんが、生活への影響度の大きさで★をつけてくれたーー。【民法改正配偶者居住権の施行】生活への影響度★★昨年、40年ぶりに民法が改正され、相続が変わりました。今年4月からは、「配偶者居住権」が認められるようになります。相続は、相続人が納得すれば自由に分けてよいのですが、合意できないと「法定相続」というルールに従うことになります。これまでの法定相続は、夫が他界し、妻と子どもで相続する場合、妻が遺産の半分を、子どもたちが残り半分を分け合うのが決まりでした。たとえば、2,000万円のマイホームと2,000万円の貯金を残して夫が他界したとします。遺された妻がマイホームに住み続けたい場合、妻は2,000万円のマイホームを、貯金2,000万円を子どもたちで分けることになります。きょうだいが2人なら、それぞれ1,000万円ずつ受け取ります。でもこれでは、妻が貯金を相続できず、その後の生活が困窮することになりかねません。そこで4月からは、マイホームについて、妻が「居住権」を、子どもが「その他所有権」をと分けて相続できるようになります。先に2,000万円のマイホームが、居住権が1,000万円、その他所有権が1,000万円とすると、妻は1,000万円の居住権と1,000万円の貯金を相続し、子どもたちがそれぞれ500万円分のその他所有権と、500万円の貯金を相続することになります。配偶者居住権によって、妻はマイホームに住みながら、貯金も手にして生活も安定するでしょう。これから相続をする方には、かなり大きな法改正といえます。【発送電の分離】生活への影響度★’16年に「電力小売の自由化」が行われ、新しい発電業者などがたくさん誕生しました。ですが、各家庭に電力を送る送配電部門は大手電力会社にゆだねられたまま。これでは、新しい発電業者は高い送電費用を払わせられることになりかねず、電気料金の自由な競争を妨げるのではといわれていました。そのため、今年4月の発送電の分離が、電力自由化の総仕上げ。小さな発電業社も自由に割安な送電網を利用できるようになって、もう一段階、電気料金が安くなることが期待されていました。しかし実際は、大手電力会社が別会社をつくって送電網の管理を行うことになりました。送電網の構築や管理には、大きな資金とノウハウが必要だからです。4月は発送電の分離という節目ですが、大きく取り上げられることもなく、電気料金の引き下げも見込めないでしょう。「女性自身」2020年4月7日号 掲載
2020年03月27日【今週の悩めるマダム】2人の兄が相続トラブルで揉めています。上の兄は両親が亡くなるまで実家で暮らし、介護をしてくれていました。いっぽう都会暮らしの下の兄は、両親とは帰省のときに会う程度でした。両親の死後、2人の兄は絶交状態に。でも近々、下の兄の娘の結婚式があります。どうしたら2人は仲直りしてくれるでしょうか。(佐賀県在住・50代主婦)あまりお話ししたことがありませんが、実は僕にも弟がいるんです。2歳年下の58歳。彼は離婚をして、子どもはおらず独身です。現在、福岡で母と一緒に暮らしています。その家は僕が母を住まわせるために買った家で、そこに母と弟が暮らしています。父が他界して15年ほど経つのですが、父が残したマンションがいまでも福岡市の中心部にあります。最近になって、そこが建て替えするため、マンションが売れることになったのです。それで最近、弟から“僕が遺産相続を放棄するための書類”が送られてきました。これが面倒なことに、サインをすれば済むというものではなく、在仏日本大使館に出向いて申請をし、さらにはそれを1週間後にふたたび受け取りに行かないとなりません。自分のためにするのなら喜んでやるところですが、書類だけ送りつけられ、「遺産は勝手にこちらが相続する」ということですから、なんで僕がやらないとならないのか、となるわけです。でも、母の面倒を毎日見てくれている弟のことを思うと、そのぐらいのことはしてやらなきゃとも思います。彼が遺産を相続することに、もちろん異論はありません。ただ、最初に「兄貴、こうなったのだけど、僕が相続していいよね?」みたいな一言があればよかったかな、と思います。それが「筋」というものです。そういう思いやりの一言があれば、「当然でしょ。お前には感謝しかないんだよ」という流れに落ち着くわけですから。僕らはこのようなことで仲たがいすることはありませんし、そのマンションの売却金が弟の老後のために役立つなら願ってもないことです。いつも、何よりも、まず弟のことが心配でしたからね。そんな僕らのような良好な兄弟関係でも、「えー、筋が違うだろ、紙切れだけ送ってきやがって」となるのですから、もうちょっと複雑な遺産相続のある兄弟関係では揉めるのも当然でしょう。そこで、奥様。あなたにできることは「娘の結婚式に出て、一緒に祝ってやってほしい」と下のお兄さんから上のお兄さんに連絡させることかもしれません。僕の知り合いに全く同じケースの兄弟がいました。25年もの長きにわたって口も利かない、年賀状もなし、交流ゼロの兄弟。ところが昨年、お兄さんのお子さんが結婚したのです。僕がその弟さんに、「血の繋がった子が結婚するのに顔出さないわけにはいかないでしょう。一緒に祝わせてくれ、と一言連絡したほうがいい」と勧めたのです。渋々でしたが、弟さんはお兄さんに僕が言った通りのメッセージを送りました。そして結婚式当日、長年絶交していた弟を、兄はなんと自分の横に座らせたのです。きっかけは本当に些細なことでいいんです。もともとは血を分けた仲。意固地になっているだけで、仲直りは「一言」で済むのです。【JINSEIの格言】兄弟間のトラブル解決のきっかけは、本当に些細なことでいいんです。もともとは血を分けた仲なんですから。意固地になっているだけで、仲直りは意外と「一言」で済むのです。この連載では辻さんが恋愛から家事・育児、夫への愚痴まで、みなさんの日ごろの悩みにお答えします!お悩みは、メール(jinseinospice@gmail.com)、Twitter(女性自身連載「JINSEIのスパイス!」お悩み募集係【公式】@jinseinospice)、またはお便り(〒112-0811 東京都文京区音羽1-16-6「女性自身」編集部宛)にて絶賛募集中。※性別と年齢を明記のうえ、お送りください。以前の連載「ムスコ飯」はこちらで写真付きレシピを毎週火曜日に更新中!
2020年03月03日もしも自分の親が連帯保証人でありながら死亡した場合、その債務が自分に降りかかるのではないかと不安ですよね?そこでこの記事では連帯保証人の相続について解説します。相続対象となる場合とならない場合、対処法も含めて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。連帯保証人が死亡したら負債も相続する?相続が発生するケースはさまざまですが、一般的に相続を考える場合は、親の死亡が前提となります。世代の順序通りに亡くなった場合、親の資産を本人の配偶者や子どもが相続するわけですが、万一被相続人(亡くなった本人)が誰かの借入金に対して連帯保証人となっていた場合、連帯保証の相続はどう考えるべきなのでしょうか?まずはその内容として以下を解説します。配偶者や子供などの家族が相続相続人で分割して相続債務を誰かに集中することも可能配偶者や子供などの家族が相続結論から申し上げますと、連帯保証は相続する必要があります。たとえばあなたの父親が亡くなった場合には、相続人である母親やあなたが連帯保証を相続しなければなりません(あなたに兄弟がいる場合は兄弟も相続)。連帯保証人になるケースは、信頼できる相手だからこそです。ちゃんと返済してくれるという信頼がある相手や、万一借金が焦げ付いてもその人のためなら肩代わりしても良いと思えるような相手です。しかし、それは被相続人から見ての信頼であり、相続した家族からすると無関係な相手となります。被相続人が死亡したことで縁もゆかりもない人の連帯保証や、場合によっては借金を背負う可能性があるのです。相続人で分割して相続基本的に相続は1人に対して行うものではありません。相続人同士で話し合って複数名へ相続することになります。話し合いで解決しない場合には、法定相続を基本として相続することになります。たとえば、法定相続を前提とし、相続人が母親・あなた・弟で、連帯保証債務を2,000万円請求されたとすると、以下のような負担が必要となります。ただし、相続人の誰かが後述する相続放棄をしている場合には事情は変わります。たとえば、あなたの弟が相続放棄をした場合には、母とあなたで負担することになります。債務を誰かに集中することも可能連帯保証債務は遺産分割協議によって、誰かに集中させることも可能です。たとえば母親が「自分が連帯保証債務を負担する」と言った場合、母親に集中させることができるのです。ただし、遺産分割協議における決定事項は、相続人同士の約束事に過ぎませんので、法的にはほかの相続人も連帯保証人とみなされます。万が一母親が銀行などの金融機関に借金返済ができなければ、ほかの相続人が支払わなくてはならないのです。連帯保証を相続した場合には、あらかじめ想定しておく必要があります。連帯保証人の相続は変更できる?相続放棄という対策被相続人が連帯保証人だと分かった場合で、その立場を受け継ぎたくないのであれば、相続放棄すると良いでしょう。相続放棄は資産の相続だけでなく、負債の相続も放棄するという方法ですので、負債の方が大きい場合に有効です。相続放棄について以下内容を解説します。相続放棄可能な期間相続放棄否認の可能性限定承認なら安心して相続可能[adsense_middle]相続放棄可能な期間相続放棄は、「相続開始や相続人になったことを知った翌日から3カ月以内」に行う必要があります。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しましょう。3カ月以内と聞くと期間が短い気がするかも知れませんが、「相続開始」や「相続人になってから」ではなく、「知った翌日」から3カ月以内なので、知らなかった期間は含まれません。親の離婚などで長年会っておらず、死亡を知らなかったケースなどにも安心です。相続放棄否認の可能性相続放棄をしようと思っても、できない場合があるため注意が必要です。具体的には、相続財産を処分した時です。相続財産の一部だけでも処分してはいけません。また、相続財産を隠していた場合や、内緒で消費していた場合、意図的に目録へ記載しなかった場合も相続放棄はできません。一旦相続放棄をしたとしても、発覚すると相続放棄できないものとされています。限定承認なら安心して相続可能限定承認は、相続財産の範囲で債務を弁済するという相続の仕方です。つまり、後から借金が発覚したり、連帯保証の債務を負うことになっても、相続財産以上に負担する必要がないのです。ただし、法定相続人全員で行わなければならないため、1人でも反対者がいると成立しません。また、弁護士費用が100万円を超えるなどもハードルとなり、利用者は少ないようです。とはいえ、財産の内容や法定相続人の考え方により、1つの選択肢となり得ます。連帯保証を相続したらもしも連帯保証を相続してしまった時には、どのようなことを念頭に置くべきなのでしょうか?必ず考慮しておくべきこととして、以下内容を紹介します。連帯保証人に債務者本人と同じ責任がある主債務の調査すべき金融機関との交渉を模索すべき連帯保証人に債務者本人と同じ責任がある連帯保証人は債務者本人と同じ責任があります。つまり、債務者が借金を返せなくなった場合、自分が借金していることと変わりがなくなるのです。連帯保証人よりも責任が軽いものとして「保証人」がありますが、保証人にある権利が連帯保証人にはありません。たとえば、自分よりも先に債務者に請求して欲しいと主張する権利(催告の抗弁)は、保証人にはありますが、連帯保証人にはありません。また、債務者に支払い能力があるにも関わらず、自分に請求が来た場合の主張(検索の抗弁)も、保証人にはできますが連帯保証人にはできません。さらに、保証人が複数名いる場合には債務を分けられますが、連帯保証人にこの権利はありません(分別の利益)。連帯保証人の責任は保証人よりも圧倒的に重いのです。主債務の調査すべきもしも連帯保証を相続してしまった場合、債務の内容や債務者の返済状況をチェックしておく必要があります。人様の借金ですから、いつ焦げ付くとも限りませんので、状況を把握した上で対策を講じる必要があるのです。たとえば、残債から考えると自分でも返せる場合には、連帯保証人の相続をしても良いかも知れません。逆に、万一負債を被った場合に自分の資産では賄えないのであれば、先述の相続放棄が賢明でしょう。判断基準を明確とするために、きっちりと確認しておきましょう。金融機関との交渉を模索すべき連帯保証人から外してもらうよう、金融機関に交渉することが可能です。状況によって金融機関が応じてくれる可能性もあるからです。たとえば、残債が少ないケースがこれにあたります。借入れ審査時には連帯保証人が必要となる額だったとしても、残債が少ない場合には不要となるケースがあります。連帯保証人を外してもらえなくても、保証債務を減額してもらえるケースもあります。また、代わりの保証人や担保を立てられる場合にも連帯保証人から外れられる可能性がありますので、一度相談してみましょう。請求される前に!連帯保証が相続対象か確認しようそもそも、連帯保証の相続対象となるものとならないものがあります。以下内容は相続対象か非対象か迷う人が多い項目ですので、それぞれについて解説いたします。親本人が金融機関からの借入に対する連帯保証人である場合賃貸借契約の連帯保証身元保証人根保証[adsense_middle]親本人が金融機関からの借入に対する連帯保証人である場合親が誰かに頼まれ、金融機関からの借金に対する連帯保証人となっている場合には、親の死亡によって連帯保証の相続をしなければなりません。このケースは最もシンプルな連帯保証の相続となります。そして、借金が焦げ付いた場合、自分には全く身に覚えのない借金であるにも関わらず、返済が求められることになります。賃貸借契約の連帯保証賃貸借契約の連帯保証も相続対象となります。かみ砕いて言うと、部屋を借りる時に連帯保証人となった場合のことです。連帯保証人として債務を被るケースとしては、家賃の滞納です。実際に滞納した家賃と、遅延損害金を連帯保証人が支払わなければなりません。このケースにおいて連帯保証人の立場を相続すると、親の有人や知人の家賃をあなたが支払うことになるのです。法人の連帯保証契約賃貸契約において、法人契約の連帯保証人を立てる場合には契約相手の承諾が必要です。連帯保証人が個人であれば責任追及がしやすいですが、法人の場合には取り立てが困難だからです。個人の場合は連帯保証も相続しますが、法人の場合は破産などによってそれ以上取り立てができない可能性が高いのです。身元保証人就職する場合などに身元保証人を求められるケースがあります。身元保証人とは、なんらかの損害を与えた場合に、身元保証人がその損害を補償するという契約です。身元保証人は被保証人との間に信頼関係があるからこそなれるものですので、相続によって身元保証人になったとしても信頼関係が認められません。そのため、身元保証人の立場は相続されません。根保証根保証というのは、継続的取引の債務を将来にわたって保証するものです。具体的には銀行における当座貸越契約などが該当します。期間に定めがない根保証は相続対象となりませんが、限度額や期間に定めがある場合には相続対象となります。連帯保証を相続してしまったら債務整理も検討連帯保証を相続してしまい、万が一負債を背負うことになった場合には債務整理を検討しましょう。もちろん、返済できるのであれば返済していけば良いのですが、返済が厳しいという場合に債務整理は有効な手段です。債務整理とは合法的に借金の負担を軽減、もしくは帳消しにする方法で、以下の種類があります。借金を軽くする任意整理借金を大幅に削減する個人再生借金を帳消しにする自己破産デメリットよりもメリットが大きい借金を軽くする任意整理任意整理とは、借金の負担を軽減する方法です。債権者と債務者が協議の上で、将来利息のカットや返済額のカットを行います。大幅な借金軽減は望めない反面、債務者の負担軽減をきっちり行うため、今後の返済が軽くなるでしょう。任意整理は裁判所を通さずに手続きをしますが、弁護士や司法書士が窓口となって対処してくれますので、知識がない人でも安心して手続きを進めることができます。ただし、5年~10年はクレジットカードやローン取引ができなくなります。借金を大幅に削減する個人再生個人再生とは、借金の負担を大幅に軽くしてくれる方法です。具体的には借金を5分の1程度まで軽減してくれ、3年でその分だけ分割返済するというものです。つまり、残りの5分の4は免除されるため、一気に借金の悩みから解放されます。住宅や車などの資産を手放すことなく借金が軽減されるため、これまでの生活を維持しながら自立しやすい方法です。個人再生という表現のほか、民事再生と表現されることもあります。ただし、借金額の上限が5,000万円以下と定められていますので知っておきましょう。個人再生は裁判所を通して行う手続きとなります。ただし、約10年はクレジットカードやローン取引ができなくなります。借金を帳消しにする自己破産自己破産は、資産を没収される代わりに借金が帳消しになる方法です。借金額が大きく、どうしようもない場合に最後の手段として利用しましょう。資産は没収されると言っても、生活必需品や99万円以下の現金は保有することができます。ただし、約10年はクレジットカードやローン取引ができなくなることや、免責決定までの3カ月~半年間は、生命保険募集人や警備員など、就けない一部職業があります。自己破産も任意整理や個人再生とともに、弁護士や司法書士が相談に乗ってくれます。デメリットよりもメリットが大きい債務整理をすると、上記のようにいくつかのデメリットが生じてしまいます。しかし、デメリットよりもメリットの方が大きいです。クレジットカードが作れなかったり、ローン契約ができない、就けない職業があるなどは、平時の段階から考えると大きなデメリットと感じられるでしょう。しかしながら、実際にお金の問題に直面した人にとっては、直近の問題の方が重いのです。借金を背負ってしまうと明日が見えない状況となりますので、早めに専門家へ相談した方が良いでしょう。連帯保証人が死亡した場合の相続に関するまとめ連帯保証人が死亡したら、連帯保証を相続する必要があります。連帯保証人は債務者と同様の責任があるため、相続すべきかどうか検討しなければなりません。連帯保証は、金融機関からの借入や賃貸借契約などのように相続対象となる場合がある一方、身元保証人や根保証のように相続対象とならない場合があります。その線引きもしっかり引いておきましょう。連帯保証の債務を免れるには、相続放棄や債務整理などの対策がありますので、あらかじめ知っておくと良いでしょう。
2020年02月18日親の遺産をめぐって起こりがちな兄弟トラブル。それまで仲が良かった兄弟でも、財産の話が絡むと確執が生じることもあります。本記事では、相続が発生すると、なぜ兄弟間で争いになるのかを説明します。将来揉め事にならないよう、あらかじめできる対策も知っておきましょう。父母の遺産に対して兄弟が持つ権利は同じ父母が亡くなったとき、その子供は全員相続権を持ちます。兄弟がいれば、兄弟間では公平に財産を分けるのが原則です。相続人の順位と割合法律上相続人になる人は、配偶者(夫・妻)と血族(子供、父母、兄弟姉妹)です。配偶者はどんな場合にも相続人ですが、血族については優先順位があり、(1)子供、(2)父母、(3)兄弟姉妹となっています。相続できる財産の割合は、配偶者と一緒にどの血族が相続人になるかで次のように変わります。配偶者と子供・・・配偶者1/2、子供1/2配偶者と父母・・・配偶者2/3、父母1/3配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者3/4、兄弟姉妹1/4兄弟間では権利は平等子供は第1順位なので、死亡した人に子供がいれば必ず相続人になります。子供が複数いる場合、子供と子供の間には権利の差はありません。子供は皆相続人となり、取得できる財産の割合(相続分)も同じになります。たとえば、父親が亡くなり、母親と子供(姉、妹)で財産を相続する場合、母親の相続分は2分の1、子供の相続分は姉も妹も4分の1ずつです。親の財産を相続する兄弟の定義は?家族でなくても、亡くなった親と法律上の親子関係がある兄弟姉妹がいることがあります。家族でなくても法律上の血縁関係があれば、遺産相続に巻き込まなければなりません。養子にも実子と同じ権利がある亡くなった親に養子がいることがあります。養子縁組とは法律上の親子関係を発生させる手続きなので、養子は法律上れっきとした子供です。子供の中に親の養子がいれば、実子と同様に相続人になります。この場合には、養子も含めた兄弟間で平等に財産を分ける必要があるということです。異母兄弟・異父兄弟も相続人に親が再婚している場合など、異母兄弟や異父兄弟がいることがあります。異母兄弟や異父兄弟も、死亡した親の子である以上、相続人になります。相続分も他の兄弟と変わりません。異母兄弟や異父兄弟がいるけれど、会ったこともないという人も多いでしょう。しかし、相続の場面では関わらざるを得ないことがあります。兄弟の中に非嫡出子がいる場合非嫡出子とは、結婚していない男女の間にできた子供です。これに対し、結婚している男女の間にできた子供は嫡出子と呼ばれます。死亡した父親が愛人との間に子供を設けている場合、父親が認知をしていればその子供は非嫡出子となり、父親の子供として相続権を持ちます。嫡出子と非嫡出子とは、以前は相続分が違いました。法改正により現在では、嫡出子と非嫡出子の相続分には差がなくなっています。父親が認知していない場合父親と愛人との間に子供ができているけれど、父親が認知していない場合には、法律上の親子関係は発生しません。たとえ生物学上は親子であっても、その子供は父親の相続権を持たないことになります。遺産を相続するまでの流れ親が死亡した後、相続手続きをする際の大まかな流れは次のとおりです。[adsense_middle]1. 戸籍謄本を集める相続手続きを行うためには、戸籍謄本を揃える必要があります。戸籍謄本を確認することで、相続人が誰であるのかを確定することもできます。戸籍謄本を集めるときには、被相続人の出生から死亡までの戸籍はもちろん、相続人とのつながりがわかる戸籍もすべて取り寄せなければなりません。相続に必要な戸籍謄本は一般に数が多く、自分で揃えるには手間がかかります。相続手続きを依頼するなら、戸籍謄本の収集の段階から行政書士・司法書士などの専門家に依頼すると良いでしょう。戸籍謄本を集めている過程で、それまで知らなかった異母兄弟や異父兄弟が出てくることがあります。この場合には、異母兄弟や異父兄弟にも連絡をとって相続手続きを進めなければなりません。2. 遺産の内容をリストアップ相続財産を明確にします。どのような財産があるかわからない場合には、被相続人の自宅などを探して手がかりになるものを見つけます。預貯金がある場合には金融機関で残高証明書を発行してもらい、不動産がある場合には法務局で登記事項証明書を取得しておきます。3. 相続人全員で遺産分割協議相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産をもらうか、どういう比率で分けるかなどを話し合います。話し合いは皆が集まって行う必要はありません。電話や手紙のやりとりでも、全員の意思確認ができればOKです。分配方法が決まったら、遺産分割協議書を作成します。話し合いに参加してくれない人がいる場合や、財産の分け方で全員の意見が一致しない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停(または遺産分割審判)を申し立てて解決を図ることができます。4. 財産の名義変更手続き遺産分割協議で決まった内容に沿って、財産の名義変更手続きを行います。預貯金については金融機関で払い戻しまたは預け替えをし、不動産については法務局で相続登記をします。兄弟の相続でよくあるトラブル親の財産を兄弟で相続するときには、どういったことでトラブルが生じるのかを知っておきましょう。不動産の遺産分割方法が決まらない遺産として土地や建物といった不動産がある場合には、兄弟間で揉めてしまいがちです。不動産というのは動かせるものではなく、バラバラに分けられるようなものでもないからです。たとえば、亡くなった親名義の家に同居していた子供がいれば、当然家を相続したいでしょう。しかし、一人が家を相続すると、他の兄弟が相続するものがなくなってしまうことがあります。親の介護をした人が多くもらえるわけではない子供の頃は一緒に育った兄弟姉妹でも、大人になると親とのかかわり方は同じではないでしょう。平等に配分すると、かえって不公平に感じることもあります。たとえば、妹は親と同居して親の介護をしていたけれど、姉は家を出て年に1回くらいしか実家には戻ってこなかったということもあります。このような場合、親の介護をしていた妹はその分財産を多くもらいたいと思うこともあるでしょう。一方の姉は、自分にも権利があるのならその分は確保したいと言うかもしれません。そういったところから確執が生じやすくなります。親の介護で寄与分は認められる?被相続人に特別の寄与をした人を優遇する「寄与分」という制度も民法上用意されています。親子間には相互に扶養義務があるので、介護をするのはある意味当然のこととも考えられます。裁判所を通して遺産分割する場合でも、親の介護をしただけでは寄与分は認められにくいのが現状です。親から生前贈与を受けている人がいる場合も子供の中に、親からお金の面で援助を受けていた人がいる場合もあります。親からの援助が民法上の「特別受益」に該当すれば、遺産分割の際にその特別受益を遺産に加算し、特別受益者はその分は受け取ったものとして遺産分割することが認められています。結婚の際の持参金や留学費用などが特別受益に当たることが多いですが、明確でないものや証拠がないものなどもあり、争いになりがちです。兄弟で不動産を分けるときの注意点相続した親の不動産を分けるときには、トラブルにならないよう分け方に気を付ける必要があります。[adsense_middle]遺産分割の方法は3種類まず、遺産分割の方法としてどんな方法があるのかを知っておきましょう。一般には、次の3種類の方法のいずれかで決めることになります。現物分割財産の現物をそのまま分ける方法です。たとえば、遺産として土地・建物と預貯金があり、長男と次男が相続人である場合に、長男が土地・建物、次男が預貯金という形で分けるのが現物分割です。換価分割遺産を売却してお金に換えてから分ける方法です。たとえば、遺産が自宅の土地・建物のみの場合、一人が自宅をもらうと、他の人がもらうものがなくなります。このような場合、自宅を売却してお金に換え、お金を相続人全員で分ければスッキリ分けられます。代償分割財産を取得した人が他の相続人にお金(代償金)を払って、相続により得た財産額が公平になるように調整する方法です。たとえば、遺産が自宅の土地・建物のみで、一人がどうしても自宅がほしいという場合には、他の相続人に代償金を払うことで承諾を得てもかまいません。土地や建物を共有にしない不動産は持分を設定して共有にすることができます。不動産を物理的に分けることはできなくても、共有にして各相続人の権利を確保することは可能です。しかし、不動産の分け方が決まらないという理由で共有にするのは、できるだけ避けた方が無難です。共有の不動産にはトラブルも多いので、問題を先送りにしてしまうにすぎません。共有にした場合のトラブルとは?土地や建物を共有にすると、簡単に売れなくなってしまいます。不動産を売却等して処分したい場合には、共有者全員の合意が必要です。一人が土地を売りたいと言っても、他の人が売りたくないと言えば、その土地は売れないことになります。土地の持分を売却することは可能ですが、特別な事情がない限り、土地の持分だけを購入したいという人はいないでしょう。また、共有者のうちの誰かが亡くなった場合には、亡くなった人の相続人が持分を相続することになり、不動産の共有者が増えてしまうという問題もあります。権利関係が複雑になれば、ますます全員の合意が難しくなってしまうでしょう。分け方によって税金が変わる遺産の分け方の違いで、税金にも差が出ることがあります。土地を誰がもらうかで相続税が変わる相続税を計算するときには、土地の評価額を出さなければなりません。被相続人の自宅の土地については小規模宅地等の特例が適用になり、評価額を8割減額できる場合があります。小規模宅地等の特例は、誰がその土地を取得するかによって適用の可否が分かれます。たとえば、親と同居していた人が自宅の土地を相続した場合には適用されますが、親と同居していた人がいるにもかかわらず他の人が土地を相続した場合には適用されません。評価額を8割減額できるかどうかは大きな問題です。兄弟の誰が自宅の土地をもらうかで、税金の金額が変わる可能性も視野に入れておきましょう。換価分割では譲渡所得税に注意換価分割を行った場合、譲渡所得が発生していれば譲渡所得税の課税対象となり、相続人全員に譲渡所得税がかかります。マイホームを売却して譲渡所得が発生した場合には、3,000万円の特別控除が受けられ、税金の負担が軽くなります。相続した親の自宅を売却した場合、親と同居していた相続人については3,000万円の特別控除が受けられます。一方、親と別居していた相続人は特別控除が受けられません。兄弟で平等に分けたつもりでも、手元に残る金額に差が出ることがあります。遺言で相続トラブルを防ぐ親の死後の兄弟トラブルを防止するために、親に遺言書を書いておいてもらう方法があります。親に遺言書を作成してもらおう被相続人が遺言書を残している場合、被相続人の意思を尊重して、法定相続よりも遺言が優先することになっています。親に遺言書を用意しておいてもらえば、兄弟間で遺産分割協議をする必要もありません。親の希望だからと言うことで、兄弟全員が納得する可能性もあります。兄弟の遺留分に気を付けておく親に遺言書を書いてもらうときには、遺留分に注意しておかなければなりません。遺留分とは遺言の内容にかかわらず確保できる最低限の取り分です。子供が親の相続人になる場合には、子供は皆遺留分を持ちます。子供の遺留分は次のとおりです。たとえば、父親が既に亡くなっており、母親の財産を兄弟3人で相続する場合、1人あたりの遺留分は4分の1を3人で割った12分の1です。兄弟全員が少なくとも12分の1の財産を取得できるように、母親に遺言を書いてもらう必要があります。相続における兄弟トラブルに関するまとめ親が亡くなったとき、遺産に対して兄弟が持つ権利は平等です。不満を持つ人が現れないよう、全員の権利に配慮しながら遺産を分配する必要があります。将来、遺産相続で兄弟トラブルになることが予想されるなら、親に遺言を書いてもらう方法も検討しましょう。
2020年02月17日「子供よりも孫の方が信用できる」「相続の回数を減らしてコストを抑えたい」などの理由で、遺産を子供ではなく孫に引き継がせたいと考える人も多いようです。何もしなければ孫は相続人にはならないケースが多いので、孫に遺産を相続させるには事前に対策が必要です。本記事では、孫に遺産を相続させる4つの方法を説明します。孫は遺産を相続できる?相続できるなら割合はどうなる?国税庁贈与税の計算方法贈与税の金額は、上の速算表に当てはめ、次の計算式で出します。贈与税額=基礎控除後の課税価格×税率-控除額たとえば、2,000万円の土地の贈与を受けた場合、基礎控除後の課税価格は2,000万円-110万円=1,890万円となります。特例税率で計算すると、1,890万円×45%-265万円=585万5,000円一般税率で計算すると1,890万円×50%-250万円=695万円となり、特例税率の方が税金が安くなります。高税率と言われる贈与税ですが、祖父母から孫への贈与については比較的税金は抑えられています。孫に非課税で贈与する方法孫への贈与を非課税にできる場合があります。具体的には、次のような方法です。①毎年110万円以内で贈与する年間110万円の基礎控除枠を利用して、毎年少しずつ贈与する方法です。ただし、毎年一定額を連続して贈与すると、最初からまとまった金額を贈与するつもりだったとみなされ、合計額に課税されてしまうことがあります。②非課税特例を利用子供や孫に現金を一括贈与する場合、利用目的によっては一部が非課税になる特例を利用できます。たとえば、教育資金として贈与する場合には1,500万円まで、結婚・子育て資金として贈与する場合には1,000万円までが非課税です。住宅購入資金として贈与した場合には条件によって異なりますが、最大で3,000万円までが非課税になります。なお、それぞれの特例で年齢などの条件があるので、孫への贈与なら必ず非課税になるわけではありません。孫への贈与に相続時精算課税を使った方がいい?相続時精算課税とは、60歳以上の人から20歳以上の子供や孫への贈与を2,500万円まで非課税とし、相続時に贈与財産額を相続財産額に加算して相続税課税で精算するものです。なお、贈与が2500万円を超えたら一律20%の贈与税がかかります。相続時精算課税を一度選択すると、通常の暦年課税(毎年110万円まで非課税になる方法)に戻すことができません。孫への贈与に相続時精算課税を使うときには、次のような点に注意が必要です。相続税は1.2倍になる下で説明しますが、孫の相続税は通常より2割加算されるので、相続時精算課税を選択しても孫の税金は高くなります。暦年課税なら生前贈与加算しなくていい相続人に対する死亡前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象に含められますが、相続人でない孫への生前贈与は対象外です。孫には暦年課税で贈与を行った方が得策のことがあるので、十分に検討が必要です。死因贈与する方法(その2)は孫の了承が必要死因贈与でも確実に財産を譲ることができますが、孫の同意が必要です。孫に義務を負わせることも可能死因贈与では、財産を贈与をする代わりに、何らかの義務的な内容を約束させることも可能です。たとえば、孫との間で「生前に自分の面倒を見てくれたら死後に財産をあげる」といった約束をしてもかまいません(負担付死因贈与)。孫は放棄できない自分の死後、孫に財産を譲るには遺贈という方法もあります。遺贈は自分で遺言を書くだけで、孫の了承はいりません。ただし、孫は遺贈を放棄することもできます。一方、死因贈与は孫と契約を結ばなければならないので、孫の同意が必要になり、孫が拒否した場合には実現しません。死因贈与を受けた孫は放棄できないので、孫の同意を得て契約を結ぶことができれば、確実に財産を譲れます。相続税がかかる死因贈与を行った場合には、贈与税ではなく相続税の課税対象です。相続税がかかるかどうかは、被相続人の財産が基礎控除額を超えるかどうかで決まります。相続税の金額は、原則として取得した財産額に比例します。しかし、次の1~3以外の人は、相続税額が2割加算されるというルールが設けられています。被相続人の1親等の血族子の代襲相続人配偶者孫は子供の代襲相続人である場合を除き、相続税が1.2倍になります。同じ財産でも子供に譲るのと孫に譲るのとでは税金の額が変わってくることを認識しておきましょう。孫に遺贈する方法(その3)では遺留分に配慮遺言を書くときに気を付けなければならないのが遺留分です。孫に遺贈する場合、他の相続人の遺留分に注意しておきましょう。[adsense_middle]相続人の遺留分を確保して孫に遺贈する必要がある遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人について、民法上確保されている最低限の相続割合です。直系尊属のみが相続人のケースでは財産全体の3分の1が、それ以外のケースでは財産全体の2分の1が、遺留分を持つ人(遺留分権利者)のために確保されます。【例2】遺留分権利者として、配偶者と子供2人がいるケース上記の【例2】では、財産全体の2分の1が遺留分権利者に確保されるので、配偶者の遺留分は4分の1、子A及び子Bの遺留分は各8分の1となります。孫に遺贈をする場合には、配偶者、子A、子Bの遺留分を確保しておかなければなりません。もし孫に全財産を遺贈する旨の遺言を書いた場合には、配偶者は財産の4分の1に相当する金銭を、子A及び子Bは財産の8分の1に相当する金銭を支払うように孫に要求できます(遺留分侵害額請求)。なお、どうしても孫にすべての財産を遺贈したい場合、遺留分権利者に話をして納得してもらい、家庭裁判所で遺留分放棄の手続きをとってもらう方法もあります。相続税にも注意孫に遺贈をすると、孫は相続税を払わなければなりません。上にも書いたとおり、孫の相続税は通常の1.2倍になります。孫が税金を多く支払うことに抵抗を持つかもしれませんので、事前に話し合いをしておいた方がよいでしょう。孫を養子にする方法(その4)でも孫の相続税の負担は重くなる生前に孫と養子縁組すれば、遺言を書かなくても孫に財産を引き継がせることができます。ただし、孫の相続税の負担が重くなることは変わりません。孫を養子にしても相続税は1.2倍に!養子は1親等の血族なので、通常は上に書いたとおり、相続税の2割加算の対象外です。しかし、孫などの直系卑属が養子になっている場合には、例外的に2割加算する扱いになっています。孫を養子にする場合でも、遺贈の場合と同様、孫の相続税が高くなることは変わりません。二重身分のケースでは?養子である孫が子供の代襲相続人でもある場合には、相続税は加算されません。孫に遺産相続する方法に関するまとめ自分の死後に孫に遺産を譲る方法(死因贈与、遺贈、養子縁組)では、孫に1.2倍の相続税がかかってしまうという難点があります。生前贈与を行えば非課税枠を使って税金を抑えられるケースもあるので、死後にこだわらないなら生前贈与も含めて検討すると良いでしょう。贈与税や相続税などの税金は、家族構成や財産状況によっても変わってきますので、税理士に相談して対策をとるのがおすすめです。
2020年02月09日被相続人が連帯保証人になっていながら死亡した場合、財産を受け継ぐ相続人は連帯保証人の立場も相続しなければなりません。その結果、相続した財産よりも負債の方が大きくなる可能性があります。この記事では、連帯保証人の相続について解説いたします。債務者の連帯保証人死亡時は、連帯保証人も相続対象被相続人が死亡した場合、相続人は住宅や金銭など、各種財産を手に入れられます。しかし、もしも被相続人が連帯保証人となっている場合には、その地位も引き継がなくてはなりません。債権者が借金を返せなければ、相続人が負債を被ることになります。まずは連帯保証人の相続について以下内容を紹介します。親が連帯保証人なら子供はピンチ必ず連帯保証人になっていないか確認すべき連帯保証人になっているかの調べ方相続対象となるケースとならないケース親が連帯保証人なら子供はピンチ相続の形はさまざまではあるものの、一般的には親が死亡した際に配偶者や子供に財産が相続されます。言い換えれば親が連帯保証人になっている場合、その負債が子供に降りかかる可能性が高いのです。親にとっては信頼している人の連帯保証人だったとしても、子供にとっては縁もゆかりもない人の連帯保証をしなければならなくなります。必ず連帯保証人になっていないか確認すべき親が高齢である場合や重病である場合には、終活の一環として必ず借金の有無や連帯保証人になっていないかどうかを確認しておきましょう。死亡してから確認するよりも、存命中に確認した方が確実です。もちろん、死亡後にも念のため確認し、ダブルチェックしておきましょう。連帯保証人になっているかの調べ方被相続人が連帯保証人になっているかどうかの調べ方は、保管しているはずの契約書を探す方法です。連帯保証人になる場合、金銭消費貸借契約書を交わす必要があり、連帯保証人にも渡されます。一般的に、この契約書は保管しているはずですので、遺品整理を兼ねて探してみましょう。契約書を保管していない場合や、見つからなかった場合には、督促で気付くことになります。相続対象となるケースとならないケース連帯保証人の立場が相続されるケースとされないケースがあります。相続対象となるケースは、金融機関からの借入に対する連帯保証人や、不動産などの賃貸借契約に対する連帯保証人です。相続対象とならない場合は根保証の場合です。根保証とは、継続的な取引で生じる債務を将来にわたって保証するものです。極度額等の定めがなければ相続対象外となります。連帯保証人は債務者と同じ義務がある連帯保証人には債務者と同等の義務があります。そのため、借金が焦げ付いた場合、連帯保証人は債務者と同じ借金を背負うことになります。また、保証人に認められている権利が、連帯保証人には認められていません。具体的には以下のとおりです。債権者へ振れない本人が返せても請求されることがある複数の保証人で分割できない債権者へ振れない債権者が連帯保証人に督促をした場合、連帯保証人は支払わなければなりません。通常の保証人であれば先に借りた本人へ督促するように要求できます。これを催告の抗弁権といいます。しかし連帯保証人にはその権利がありませんので、債権者の求めに応じて借金を肩代わりしなければなりません。本人が返せても請求されることがある債権者が連帯保証人に督促した際、本当は債権者に返済能力があると知っていれば、債権者に請求してもらいたいものです。このことを検索の抗弁権をいいます。しかし、連帯保証人には検索の抗弁権もありませんので、債権者の求めに応じなければなりません。複数の保証人で分割できない通常の保証人であれば、複数人数で債務者の借金を分割可能です。このことを分別の利益といいます。しかし連帯保証人の場合には分別の利益がありませんので、1人で返済する必要があります。相続放棄すれば回避可能!その手続き方法とは?相続人が多額の負債を抱えている場合や、連帯保証人になっている場合などには、相続放棄することで回避できます。相続は資産だけでなく借金も受け継ぐことになりますので、相続放棄は有効な手段です。ただし、相続放棄する場合にはいくつか知っておくべきことがあります。ここではその内容として以下を解説いたします。プラスマイナスを考慮して相続放棄を検討相続放棄の手続き法相続開始を知ってから3カ月以内相続放棄の注意点相続放棄期限を過ぎてしまったら[adsense_middle]プラスマイナスを考慮して相続放棄を検討相続放棄をする場合には、資産と負債のバランスを考えましょう。たとえ被相続人が連帯保証人となっていても、借金の総額が資産を下回る場合は相続した方が得です。逆に、資産の合計よりも借金が多い場合や、連帯保証人まで相続するリスクの方が高い場合には、相続放棄をした方が無難でしょう。プラスマイナスをしっかりと考慮して検討する必要があります。相続放棄の手続き法相続放棄の手続きは、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所です。家庭裁判所に行って手続きする方法と、郵送する2パターンがあります。必要書類は「相続放棄の申述書」「被相続人の住民票除票または戸籍附票」「申述人の戸籍謄本」の3点で、場合によって身内の戸籍謄本が求められることもあります。ちなみに、相続放棄に必要な費用は、収入印紙代800円と、戸籍謄本450円が必要です。相続開始を知ってから3カ月以内相続放棄を検討する上で重要なことは、相続開始を知ってから3カ月以内という期限があることです。もしも期限を超えているのに相続放棄をしなかった場合には、相続をしたと見なされてしまいます。ただし、相続開始から3カ月以内ではなく、相続開始を知ってから3カ月以内ですので、知っておくと良いでしょう。相続放棄の注意点相続放棄をする場合には、限定承認も視野に入れましょう。先述したように、相続した方が良い場合と相続しない方が良い場合は、資産と負債のバランスによります。しかし、資産と負債のバランスがハッキリと分からない場合もあります。相続放棄をした結果、実は資産の方が多かったというケースの場合、相続人は損をします。このようなケースでは限定承認がおすすめです。限定承認とは、相続財産に資産と負債が混じっているケースで、プラス財産の範囲に限ってマイナス財産も相続する方法です。万が一マイナス財産が多かったとしても、プラス財産を超えないため、相続人が被る被害を回避できます。ただし、限定承認には一定の条件があります。それは、相続人全員が賛成するという条件です。相続人の中に1人でも反対者がいれば限定承認は認められませんので、成立しないことも多いです。相続放棄期限を過ぎてしまったらもしも相続放棄期限を過ぎてしまってから相続放棄したい場合には、状況によって裁判所の判断となります。なるべく早めに弁護士に相談すると良いでしょう。多くの弁護士事務所は無料相談をしていますので、気軽に相談が可能です。連帯保証人の相続に関するまとめ債務者の連帯保証人死亡時は、連帯保証人も相続対象となります。連帯保証人は債務者と同じ返済義務があるため、相続すると借金を背負うリスクがあります。そのリスクを相続によって背負わなければならないため、被相続人が連帯保証人になっていないかどうか、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。ただし、連帯保証人の相続を回避するには、相続放棄という手段がありますので、リスクヘッジが可能です。
2020年02月09日相続財産管理人は、相続する人がいない財産を管理します。あまり聞き慣れない言葉ですが、どんなときに関与することになり、どんな仕事をするのでしょうか?本記事では、相続財産管理人を置くべきパターンや就任までの大まかな流れを説明します。相続財産管理人って誰?どんな制度?相続があっても、相続財産管理人が必ず置かれるわけではありません。相続財産管理人が関与するのは、比較的特殊なケースです。相続人がいない・全員放棄の財産を管理する相続財産管理人が関与するのは、相続人が1人もいないか、相続人全員が相続放棄して財産を引き継ぐ人がいない場合で、必要性がある場合にのみ選任してもらえます。死亡した人が土地や建物、預貯金などの財産を持っていないなら、相続手続き自体必要ないので選任も不要です。誰がなる?申立時には候補者を推薦できますが、候補者が選ばれるとは限りません。家庭裁判所の名簿に掲載されている弁護士などの専門家が選ばれるのが一般的です。相続財産管理人を置くべきケース相続財産管理人が必要な場合としては、次のようなパターンが考えられます。(1) 特別縁故者が存在同一生計だった人や療養看護に努めた人など、特別の間柄だった人(特別縁故者)がいる場合です。特別縁故者が財産分与請求の申立をすれば、遺産の一部や全部をもらえる可能性がありますが、この請求の前提として相続財産管理人が必要です。(2) 借金を残している死亡した人が誰かからお金を借りていたら、お金を貸した人(債権者)は遺産から返済を受ける権利があります。もし相続人が1人もいなければ、債権者は「お金を返してくれ」と言う相手がいません。このような場合、相続財産管理人が付けば、遺産から返済してもらえます。(3) 全員が相続放棄した相続放棄した人も、新たに相続人になった人が遺産を管理可能になるまでは、遺産の管理を継続しなければなりません。すべての相続人が相続放棄した場合には管理義務を逃れられないので、負担をなくすためには相続財産管理人を選任してもらう必要があります。(4) 国や地方公共団体による用地買収死亡した人の土地を引き継ぐ人がおらずそのままになっているとき、国や地方公共団体が用地買収のために相続財産管理人選任を申し立てることもあります。役割と権限相続財産管理人の主な役割は、死亡した人の財産の清算です。たとえば、借金の支払いをしたり、預金の払い戻しをしたりします。清算完了後、残った財産は国のものになるので、これを国庫に帰属させる手続きも行います。どんなことができる?相続財産管理人は、自らの判断で保存行為(財産の現状を維持する行為)や管理行為(物の性質を変えない範囲で利用・改良する行為)を行う権限を持ちます。一方、処分行為を行う場合には権限外行為となり、裁判所の許可を受けなければなりません(※下表参照)。申立件数は増加している下のグラフは、平成21年から平成30年までの10年間に新規で受け付けられた相続財産管理人事件数です。グラフを見てわかるとおり、近年事件数は右肩上がりで増えています。亡くなるときに家族や親戚がいない人が増えていることが考えられ、この傾向は今後続くものと思われます。相続財産管理人選任申立方法は?おひとりさまの残した土地や建物、預貯金などがそのままになっている場合には、利害関係人などが申し立てれば、相続財産管理人を選任してもらえます。就任までの流れと必要書類を知っておきましょう。[adsense_middle]就任までの流れ相続財産管理人が就任するまでの流れは、大まかには次のとおりです。1. 申立書を提出死亡した人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書と必要書類を出します。2. 審理出された書類にもとづき、申立を認めるか却下するかの審理が行われます。3. 審判審理の結果、相続財産管理人を置くべきとなったときには、裁判所が適当な人物を選び、審判を出します。4. 公告相続財産管理人が選任されたら、裁判所は遅滞なくこれを公告するものとされています。準備すべき書類次のような書類を揃えて提出します。家事審判申立書戸籍謄本相続放棄申述受理証明書住民票除票(または戸籍附票)遺産に関する資料候補者の住民票等家事審判申立書裁判所のホームページにあるものをダウンロード・印刷して記入します。財産目録も添付します。戸籍謄本死亡した人の出生から死亡までのもののほか、相続人がいないことがわかる戸籍・除籍・改製原戸籍謄本すべてが必要になります。なお、法定相続証明制度を利用し、法定相続情報一覧図の写しを提出してもかまいません。法定相続情報証明制度とは、あらかじめ戸籍謄本の束を法務局に提出しておき、法務局で交付を受けた法定相続情報一覧図を提出する方法です。相続放棄申述受理証明書相続放棄により相続人がゼロになったケースでは、相続放棄申述受理証明書を添付します。住民票除票(または戸籍附票)死亡した人の最後の住所を証明するものが必要です。住民票はマイナンバーの記載のないものを提出します。遺産に関する資料遺産としてどんなものがあるのかがわかる資料が必要です。不動産がある場合には登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金がある場合には残高証明書等を添付します。候補者の住民票等候補者を指定する場合には、候補者の住所がわかるものを出します。住民票はマイナンバーの記載がないものが必要です。申立は自分でできる?申立の際には、戸籍謄本の収集に労力がかかります。第3順位までの相続人が1人もいないということを証明するためには、かなりの数の戸籍が必要になることがあります。忙しくて時間がない場合や手続きに自信がない場合には、弁護士や司法書士に依頼するとよいでしょう。相続財産管理人選任にかかる費用は?相続財産管理人の選任手続きには費用がかかります。実際に申立をする場合には、費用を上回るメリットがあるかどうかを検討しましょう。申立時の印紙代や切手代は?相続財産管理人選任事件で必要な収入印紙は800円分、切手は裁判所によって異なりますが数千円程度です。さらに、選任後は官報公告が行われるので、公告料金4,230円も納める必要があります。予納金も必要。相場はどれくらい?申立の際の印紙や切手はそれほど高額ではありません。しかし、相続財産管理人の報酬に充てる予納金も納める必要があり、これが高額です。金額は事案によって異なりますが、数十万円から100万円程度になります。相続財産管理人の報酬は相続財産から支払われべきものなので、清算後余剰があれば予納金は戻ってきますが、財産状況によっては戻ってこないこともあります。お金をかけても手続きするメリットがあるかを考えてから申立しましょう。おひとりさまは遺言を書いておく相続財産管理人選任の手続きは、面倒な上に費用がかかります。自分が死んだ後財産を引き継ぐ人がいないおひとりさまは、遺言を書いておくと、周囲の人に迷惑をかけずに済みます。遺言を書くときには、自筆証書遺言や公正証書遺言の形にし、法律的に無効にならないようにしておきましょう。相続財産管理人に関するまとめ身近で身寄りがない人が残した財産があり、自分に利害関係があれば、相続財産管理人の選任申立てを検討してみましょう。もし自分が特別縁故者の立場なら、財産を受け取れる可能性もあります。ただし、費用がかかるので、どれくらいのメリットがあるかを考えておかなければなりません。身寄りがいないおひとりさまは、周囲への負担がかからないよう、誰に財産を譲るかの遺言を書いておくことも考えましょう。
2020年01月31日家族が亡くなることはあまり考えたくないものですが、いつかは起こるのが相続です。身近で誰かが亡くなったとき、自分は財産をもらえるのか、もらえるとしたらいくらくらいになるのかは気になるでしょう。本記事では相続人や相続割合について、法律上のルールがどうなっているのかを説明します。遺産をもらう人はいったい誰?死亡した人は物を所有できません。死亡した人の物、すなわち遺産を誰が引き継いで所有するかは法律で決まっています。法定相続人は配偶者と血族の一部死亡した人(被相続人)の権利や義務を引き継ぐ人は民法で決まっており、法定相続人と呼ばれます。法定相続人になれるのは、親族のうち、配偶者(夫・妻)、子供、父母、兄弟姉妹です。ただし、配偶者以外には次の表のとおり優先順位があります。夫・妻以外の親族は、血族(血のつながっている人)で、義母や義父、義兄弟は含まれません。一方、養子縁組していれば、血はつながっていなくても法律上は血族と同じ扱いになります。離婚しても親子の関係は変わらないので、前妻の子は一緒に暮らしていなくても相続人です。生物学上の親子関係があっても、認知していなければ法律上親子ではないので、お互いに相続人にはなりません。子供と兄弟姉妹には代襲がある子供の方が被相続人よりも先に死亡していることがあります。このようなケースでは、死亡した子供の子供、つまり被相続人の孫が子供の立場を引き継ぎます。このうように下の世代へと相続する資格が引き継がれることを代襲相続といい、第1順位と第3順位で起こります。第1順位では子供が死亡していれば孫、孫が死亡していればひ孫と、どこまでも下の世代へと続きます。一方、第3順位の方は、兄弟姉妹が死亡していてもその子供(甥・姪)までで代襲は終わりです。父母とも亡くなっていれば祖父母父親と母親の両方が死亡している場合に、祖父母のうちの誰かが生きていれば相続人になります。第2順位は、直系尊属のうち最も近い世代の人ということです。相続できる財産の割合は?民法では、相続できる財産の割合も定められています。相続人の組み合わせで割合が変わる相続人は複数いる場合がほとんどです。そのため、誰がどれだけ財産をもらうかという割合も決まっており、これを法定相続分といいます。相続人の組み合わせとしては、配偶者のみ、配偶者と血族、血族のみの3パターンがありますが、それぞれについて次の表のような割合になります。同順位の人が複数いる場合相続分は、同順位の相続人全員での割合です。【例1】妻、長男、次男が相続人→妻1/2、長男1/4、次男1/4【例2】夫、父、母が相続人→夫2/3、父1/6、母1/6代襲相続人がいる場合子供が死亡して孫が代襲するケースでは、死亡した子供の相続分を孫が引き継ぎます。たとえば、死亡した子供の相続分が4分の1で孫が2人いれば、孫1人あたり8分の1となります。実際にもらえる割合は遺産分割協議で決まる民法上のルールにもとづき、具体的な遺産の分割方法は相続人同士が話し合いで決めることになります。遺産を分けるためには話し合いが不可欠相続割合は法律で決まっていますが、死亡した人が残した財産が自動的に分割されるわけではありません。そもそも、遺産の中には土地や建物など簡単に分けられないものが多いという問題があります。遺産を分けるためには、実際には相続人の話し合い(遺産分割協議)が必要です。分け方を決める際に、各相続人は法定相続分をもらう権利を主張できます。生きている間の贈与や貢献度も関係してくる相続人の中に、生前に被相続人から多額の贈与を受けている人がいたり、被相続人の財産形成に貢献している人がいる場合には、そのまま分けるとかえって不公平です。そのため、多額の贈与を受けている場合には「特別受益」、財産形成への貢献がある場合には「寄与分」として相続割合の修正が行われます。民法のルールと違う分け方をしてもいい遺産分割協議では、相続人全員が納得していれば、民法のルールと違った割合で遺産を分けてもかまいません。ただし、必ず全員同意がしていなければならず、一部の人だけで決めても無効です。分け方で争いになったら裁判所で解決相続人間の協議がまとまらないことがあります。遺産の分け方で争いになったら、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所の関与のもと調停の場で話し合うことができます。調停でも話がまとまらない場合、裁判官が遺産分割審判という形で分け方を決めますが、審判では法定相続分どおりになるのが通常です。審判になった場合、分けにくい不動産は競売でお金に換えなければならない可能性もあります。法定相続人がいないケースではどうなる?相続人になれるのは、夫・妻と、子供や孫、父母や祖父母、兄弟姉妹や甥・姪です。それ以外の家族や親族は原則として財産をもらえません。ただし、特別縁故者が財産をもらえることがあります。[adsense_middle]相続する人がいない財産は国のものになる相続人が一人もいないときには、死亡した人の財産は誰のものにもならず、国庫に帰属します。ただし、自動的に国のものになるのではなく、相続人の不存在を確認したり、亡くなった人に対して債権を持っている人に申し出てもらったりする手続きを踏まなければなりません。家族でなくても財産分与を受けられることがある相続人は1人もいないけれど、被相続人と特別の関係にあった人(特別縁故者)がいるというケースがあります。特別縁故者がいる場合、その人が財産をもらえることがあります。特別縁故者とは、被相続人との間で次の要件をみたす人です。生計を同じくしていた人療養看護に努めた人その他特別の関係にあった人特別縁故者が相続財産をもらうには、特別縁故者自らが家庭裁判所に相続財産分与の申立てをする必要があります。申立て後、裁判所が特別縁故者と認めてくれた場合には、財産の一部や全部をもらえます。法定相続人がいても遺言が優先ここまで相続割合について民法上のルールを説明してきました。しかし、被相続人が遺言を残していれば、民法上のルールどおりにはならない点に注意しておきましょう。法定相続人でも財産をもらえないことがある被相続人が自筆証書遺言、公正証書遺言などの法律上有効な遺言を書いていた場合、遺言に従って財産が引き継がれます。親族ではない第三者に財産を譲る遺言が書かれていれば、その第三者が財産を引き継ぐことになります。また、遺言では相続割合の指定もできるので、法定相続分ではない割合が指定されていれば、遺言どおりになります。遺留分は確保されている相続人のうち兄弟姉妹以外の人には、遺留分と言って最低限の取り分があります。遺留分の割合は次のとおりです。遺留分がある場合でも、自動的に遺留分が確保されるわけではありません。遺言により自分がもらえるはずの財産をもらうことになった人に対し、遺留分を返還するよう請求する手続きが必要です。なお、2019年6月30日以前に死亡したケースでは遺留分を現物で返してもらうのが原則ですが、法改正により2019年7月1日以降に死亡したケースについては、遺留分を金銭で返してもらうのが原則となっています。相続割合に関するまとめ民法上相続割合は決まっているので、この割合にもとづき話し合いで遺産を分ける必要があります。ただし、相続人全員が納得していれば、民法上のルールどおりで分けなくてもかまいません。遺言があれば遺言どおりに財産の引き継ぎが行われるので、民法上の相続割合は関係がなくなります。遺言があっても兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があることも認識しておきましょう。
2020年01月25日相続に関するご相談の中で非常に多いのが、どこまでが相続財産の対象となるのかという質問です。相続財産は非常に広い範囲まで対象となりますが、一方で対象から外れる財産もあるため一般の方にはわかりにくいのかもしれません。また、遺産分割の対象と相続税の課税対象となる遺産も微妙に違ってくるため、これから相続手続きをする人は概要についてきちんと理解しておくことが大切です。そこで本記事では、相続財産の対象や種類、相続税の課税関係について詳しく解説します。相続財産の基本的な範囲相続が発生したときに遺産分割の対象となる財産は非常にたくさんありますが、基本的には金銭に限らず物など経済的に価値があるものすべての財産が対象になると考えた方が無難です。代表的な財産についてまとめてみました。現金普通預金、定期預金不動産(自宅、投資用物件など)株式仮想通過金自動車美術品骨董品貴金属基本的に金銭に見積もることができるすべての財産が遺産分割の対象となります。マイナスの財産も対象遺産分割をする際に忘れてはならないのが、借金などのマイナスの財産の相続です。相続が発生すると皆さんプラスの財産についてはしっかりと調査されているのですが、マイナスの財産に関することが頭から抜けてしまっているケースがあるため注意しなければなりません。亡くなった方がしていた借金については、本人が亡くなっても消滅するわけではなく相続人に対して引き継がれることとなります。具体的には次のようなマイナスの財産があります。未払いのクレジットカード自動車ローン住宅ローン(団体信用生命保険に加入していればチャラになる)医療費の支払いその他のローンキャッシング個人間の貸し借りマイナスの財産を配分する時の注意点遺産分割の話し合いではプラスの財産をどう分けるかだけではなく、マイナスの財産についても誰が責任を持つのか一緒に話し合うことになります。ただし、ここで注意しなければならないのはマイナスの財産についてはあくまで相続人間でしか対抗できないということです。例えばプラスの財産であれば、相続人全員で話し合って合意していればどのような割合で誰が相続しようが何ら問題はありません。ところがマイナスの財産についてはちょっと違います。例えば長男と次男がいて、1億円の預金と1億円の借金があったとして、遺産分割で預金と借金を全部長男が相続して次男は何も相続しないということで合意したとします。その後長男が1億円の預金で1億円の借金を全額返済すればよいのですが、万が一使い込んでしまい返済ができなくなってしまうと、債権者は長男だけでなく次男にも法定相続分の1/2については請求できるのです。借金の相続についてはあくまで相続人間の内輪での決め事に過ぎず、債権者にとっては「そんなの知るか」ということになるため、速やかに借金が完済されなければ、たとえ1円も相続していない相続人であっても、債権者から法定相続分に対応した分の借金返済を迫られるので気をつけましょう。借金の相続から逃れる方法何も相続しない人で相続財産に借金がある場合については、上記のように借金の返済だけ債権者から迫られる可能性があります。そこで、債権者からの請求を逃れる方法として相続放棄という手続きが有効です。相続放棄とはあらゆるすべての財産についての相続権を放棄して、最初から相続人ではなかった状態にするという手続きのことで、一切の財産を相続できなくなる代わりに借金の返済についても義務を免れます。そのため何も財産を相続しない場合で相続財産に多額の借金がある場合については、できるだけ相続放棄の手続きをしておいた方がいいでしょう。相続放棄は家庭裁判所に申し立てすることで比較的簡単にできます。取り扱いを間違いやすい遺産について以下の財産は、遺産分割の対象から外れると誤解されているケースが多いため注意が必要です。軽自動車軽自動車の相続についてカーディーラーなどに相談すると、「相続人さん単独で名義変更できるので遺産分割の対象ではないですよ」と案内されることがあるようですが、実はこれ間違いです。確かに軽自動車の名義変更は相続人全員の署名捺印等の必要がないため、やろうと思えば相続人のうち誰か1人が書類を書いて勝手に出しても名義変更ができます。ただこれはあくまで手続き上の問題であって、法的には軽自動車についても遺産分割の対象です。勝手に名義を変えてしまうと他の相続人との間でトラブルになる可能性があるほか、あとで相続放棄をしようとしてもできなくなってしまうため十分注意しましょう。税金関係所得税や住民税、固定資産税など未払いのままになっている故人あての税金についても相続の対象となるため相続人が納税しなければなりません。ただ、マイナスの財産としてプラスの財産から差し引くことは可能です。祭祀関係の財産仏壇や仏具、お墓や墓石などの財産のことを祭祀財産といい、遺産分割とは別で考えることとなります。具体的には祭祀継承者を決めてその人が相続することになるのですが、決め方については遺言書に指定されていればその内容に従い、指定がなければ相続人で話し合って決めるなどその地域の慣習などをもとに決めていきます。ちなみに祭祀財産には相続税はかかりません。生命保険は相続税の課税対象?遺産分割と相続税申告において取り扱いが異なるのが生命保険です。生命保険は誤解したまま手続きを進めていると、相続税の申告漏れが発生する可能性もありますので注意しなければなりません。生命保険の保険金は、保険契約において受取人に指定している人固有の財産という扱いを受けるので、遺産分割の対象からは外して話し合うことになります。そのためか保険金には相続税が課税されないと思い込んでいる人がいるのですが、実は保険金は相続税の課税対象なんです。[adsense_middle]保険料を誰が負担していたか生命保険に対して課税される税金は3種類あります。契約の仕方によって異なりますので、生命保険を受け取る際には注意が必要です。ポイントは、誰が保険料を負担していて誰が保険金を受け取るかということです。保険料を自分で支払って保険金も自分で受け取る場合については、支払った保険料と受け取った保険金の差額に対して所得税が課税されます。保険料の負担者、被保険者(保険をかけられる人)、受取人がすべて別人の場合、保険料の負担者から受取人に対して保険金相当額の贈与があったとみなされて、保険金に対して贈与税が課税されます。保険料負担者と被保険者が同じで受取人だけ別人の場合は、保険金に対して相続税が課税されます。また、保険料負担者と被保険者、受取人がすべて別人の場合において保険料負担者が死亡した場合は、解約返戻金相当額に対して相続税が課税される点にも注意が必要です。このように生命保険は課税される税金が3種類あるため、保険金を受け取る前に自分はどの税金を支払う必要があるのかよく確認しましょう。生命保険の非課税限度額生命保険で受け取る保険金については、500万円×法定相続人の人数分の非課税枠がありますので、受け取った保険金がその金額以下であれば相続税は非課税です。そのため、生命保険を使って相続税対策をするのであれば、非課税となる金額を予め計算したうえでその金額におさまるよう保険契約を調整するとよいでしょう。生命保険で愛人と相続税でもめる!?世の中には生命保険の受取人を家族とは関係のない愛人に指定している人も少なくありません。受取人は相続人以外でも指定はできますので、保険契約としては何ら問題はりませんが相続税申告の際にかなりの確率でトラブルとなります。というのも、保険金を受け取る愛人からしてみると自分がいくら受け取っているのか相続人に知られたくないはずです。ところが相続税を計算するためには、愛人が受け取った保険金も含めて計算しなければならないため、愛人から保険金の金額を聞き出さなければなりません。また、愛人は相続人ではないものの保険金を受け取ることで相続税を納税しなければならなくなるのですが、そのことを理解できていない人が非常に多いです。相続税申告は本来納税する人が全員で申告するのですが、愛人がそれを拒否することが多く、相続税を正しく計算できないというトラブルが起きてしまいます。この場合は仕方がないので相続人と愛人で別々の申告書を作成して相続税申告をするしかないのですが、申告書の金額がずれるケースが非常に多いので税務調査の対象になる確率がかなり上がると考えた方がよいでしょう。遺産から控除対象となる葬儀費用の種類についてプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額が相続税の課税対象になるとお話しましたが、この時に控除できるマイナス財産の中に葬儀費用も含めることができます。ただ、葬儀に関連した費用であればなんでも認められるわけではありません。葬儀費用に含まれるもの次の費用については葬儀費用として相続税の申告の時にプラスの財産から控除することが可能です。火葬にかかる費用埋葬にかかる費用遺体の回送、運搬費用お通夜、告別式の費用葬儀費用に含まれないもの次の費用については葬儀費用には認められないため、プラスの財産から控除することができません。香典返し法事にかかる費用墓地やお墓の購入費用ポイントはお墓の購入費用です。お墓は生前に本人が購入すれば相続税を非課税にできますが、死後になってしまうと購入費用をプラスの財産から差し引けなくなりますので注意しましょう。相続財産に関するまとめ今回ご紹介したように遺産分割の対象となる財産と相続税の課税対象となる財産は微妙に異なりますので、認識を間違えないよう注意が必要です。遺産分割や相続税申告をする際には、話し合いや手続きを進める前に相続財産に漏れがないかを入念に確認することが重要で、慌てて先に進めると後で新たな財産が見つかってトラブルになります。まずは徹底的に財産調査を行ったうえで財産の仕分けをして、そこから協議に入るとよいでしょう。
2020年01月20日相続が発生したら相続税の確定申告が必要となりますが、実はすべての人に確定申告の義務があるわけではありません。また、一定の財産を相続する場合は相続税のみならず所得税の確定申告が必要になる場合もあるため注意が必要です。そこで本記事では、相続においていくらから確定申告が必要となるのか、また相続税、所得税が課税されるケースについて詳しく解説します。最近ご相談が多い、2019年の法改正によって変更になった部分についても触れていきますので、ぜひ最後まで読んでいただくことをおすすめします。相続したら確定申告は必要?相続が発生したとしても、すべての方が確定申告をしなければならないというわけではありません。確定申告の必要があるのは、相続税又は所得税が課税される場合です。相続税申告が不要なケース相続税は課税遺産総額が相続税の基礎控除額を超えた場合に課税されるため、基礎控除額を下回る場合は相続税の確定申告は必要ありません。ただし、相続税がかからない=相続税の確定申告が不要、と認識している人が時々いますが、これは大きな間違いなので注意が必要です。たとえ相続税が課税されない場合でも確定申告は必要なケースがあり、申告せずに放置していると無申告加算税や延滞税が課税される危険もあります。特例を使って評価額の金額を減らす場合相続税の計算をする際には、配偶者が相続する財産について1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い方まで上限として相続税が非課税となる配偶者の税額軽減や、亡くなった方が住んでいた自宅の土地の評価額が80%オフになる小規模宅地等の特例といった特例制度を使うことができます。これらの特例を適用することで相続税の基礎控除以下におさまり、結果として相続税が非課税となる場合については、たとえ相続税はかからないとしても特例を適用させるために必ず確定申告をしなければならないのです。特例を適用しないまま申告期限が過ぎてしまうと、特例を適用できなくなる恐れがあるため十分注意しましょう。原則として所得税の申告は不要だが、、、相続発生時に課税される税金は原則として相続税なので、所得税についてはほとんどのケースで課税されません。ところが、次のケースについては相続であっても所得税の対象となるため所得税の確定申告をする必要が出てきます。家賃収入がある場合相続財産にアパートなどの賃貸物件が含まれている場合、亡くなる日までの家賃収入は故人の所得となりますが、その後の家賃収入については相続人の所得となるため、相続税ではなく所得税の課税対象となり確定申告が必要になります。相続人が1人だったり、遺産分割の話し合いで揉めていなかったりすればよいのですが、もしも協議が難航しているとその間の家賃収入をどのように申告するのかが問題となります。相続が発生してから遺産分割協議がまとまるまでの家賃収入は、原則として民法で規定されている法定相続分に従って家賃収入を按分して相続人各自で確定申告を行うことになるのです。後で遺産分割協議が決定して法定相続の比率とは違う比率で分割したとしても、すでに行っている所得税の確定申告の修正を行う必要はありません。その場合は遺産分割協議の後に発生した家賃収入について所得税申告をすれば大丈夫です。生命保険に加入している場合亡くなった方に生命保険をかけている場合で、契約者と保険金の受取人が同じ人の場合は保険料と保険金の差額に対して所得税が課税されます。ちなみに生命保険は契約形態によって同じ保険金だとしても課税される税金が次のように異なります。基本的に契約者が保険料を負担していると仮定した場合です。保険料を負担した人と保険金を受け取る人が同一であれば所得税、別人であれば相続税または贈与税が課税されます。[adsense_middle]生命保険加入の落とし穴税金対策で生命保険に加入する人が増えていますが、実は間違った方法で契約している人が多く、そのせいで本来は課税されるはずのなかった相続税が課税されるケースも増えているため注意が必要です。例えば子供のために親が生命保険に加入するケースがよくあります。契約者:子供保険料負担者:母被保険者:子供受取人:子供このような契約の場合、保険料を負担しているのは母親なので表面上は生前贈与対策になっているように見えますが、実はそうではありません。仮に生命保険が満期を迎えて受取人に保険金が支払われた場合、支払われた保険金に対して贈与税が一気に課税されるのです。仮に1,000万円の保険金が支払われた場合、177万円の贈与税が発生するため非常に大きな痛手となります。保険料負担者が死亡した場合もっと深刻なのは保険料負担者が途中で死亡した場合です。保険料を負担していた人が死亡すると、それまで保険料を支払って加入していた保険契約を解約した場合に支払われる解約返戻金相当額に対して相続税が課税されてしまいます。贈与税の場合とは違い、実際に解約するのでなければ現金は増えないのに税金だけ課税されることになるのです。親にこっそり負担して貰ってもバレる保険料負担者については、多くの場合で保険料を口座引き落としにしていることで税務署にバレます。贈与税の基礎控除である年間110万円の範囲で保険料を負担し続けたとしても、肝心の保険料を贈与を受けた人以外の口座から自動引き落としにしてしまうと、たとえ贈与契約書があったとしても贈与税が課税される可能性が極めて高いです。そのため、贈与を受けたお金で保険料を支払う場合は、贈与したお金を受け取った人の口座に入金してそこから自動引き落としで支払う必要があります。2019年民法改正によって遺産に所得税が課税されるケースとは2019年7月に民法改正によって、従来まで課税されるはずのなかった所得税が課税される危険性が出てきました。次にご紹介するケースに該当すると、相続なのに所得税がバッチリ課税されてしまい確定申告が必要になります。ただ、回避策についても合わせて解説しますので、今後相続を控えている人は是非最後まで読んで参考にしてください。相続は遺産分割か遺言書相続が発生した場合、手続きの流れとしては遺産分割協議をする場合と遺言書がある場合との2種類に分かれます。基本的に一定の条件を満たしている遺言書が見つかった場合は、遺言書の内容に従って遺産を分けるため遺産分割協議をする必要はありません。反対に遺言書がない相続については、相続人全員で話し合って遺産を分け合うことになります。2019年の改正で影響を受けるのは、遺言書がある相続のケースです。遺留分を害する遺言書の場合遺言書は本人の好きなように分け方を指定することができるので、場合によっては子が2人いるのに「すべての財産を長女に相続させる」といった強引な遺言書が見つかることも少なくありません。例えば長女と次女の2人が相続人だとした場合に次女がそのまま受けるのであれば特段問題はありません。ところが、もしも次女が納得いかないと怒った場合、次女には遺留分という民法で保護されている最低限の取り分(法定相続分の半分)があるため、たとえ遺言書が全額長女を指定していたとしても1/4については遺留分として長女に請求することができるのです。ここでポイントとなるのが、遺留分を請求する時のやり方です。遺留分を戻す時の配分仮に相続財産が預金1億円、土地1億円の合計2億円だとした場合、次女の遺留分である5,000万円はどこから渡すことになると思いますか?手っ取り早く考えるのであれば、預金1億円から5,000万円とって渡すのがシンプルに見えますが、実は法改正前はそのようなやり方が原則としてできず、預金2,500万円、土地2,500万円という配分にしなければならなかったのです。土地が共有状態にこのようなやり方をすると預金は問題ありませんが、土地については1つの土地を3/4と1/4という割合で長女と次女が共有することになってしまいます。そうなると将来的に長女が土地を売却したいと思っても、次女が賛成してくれないと売却ができなくなってしまい大きな不都合が生じていたのです。よって、2019年7月の法改正によって次のように改正されました。遺留分は金銭で精算2019年の法改正によって遺留分はすべて金銭で支払うこととなりました。よって先ほどの事例で言うと、長女から次女に5,000万円の金銭を渡せば土地を共有する必要はなくなったのです。非常によい改正なのですが、実は税金の話でいうと所得税が課税される可能性が出てきてしまったのです。所得税という税金が課税されるわけ先ほどの事例のように相続財産の中に多額の預金があればよいのですが、相続は預金残高がわずかで不動産の割合が多いというケースがよくあります。そうなると遺留分を金銭で支払うといっても、5,000万円という大金が準備できないという問題に直面する可能性があるのです。みなさんならこの場合どう解決しますか?おそらくほとんどの方が、不動産から5,000万円分を次女に渡して解決しようと考えるでしょう。ところが、残念ながら2019年7月の法改正後は上記のケースで次女に不動産から5,000万円分を渡してしまうと、長女の側に所得税が課税されてしまうのです。所得税課税のメカニズムもともと長女には次女に5,000万円を払わなければならない債務を負っています。これに対して長女が一定の土地の持分を渡すことで5,000万円の債務から逃れられることから、税務上は長女が次女に土地を5,000万円で売却したと考えて土地の売却益に対して所得税が課税されるのです。そもそも遺留分で渡すお金がないから土地を渡しているのに、そこに対して所得税を課税してくるとはなんとも酷な気もしますが残念ながらどうにもなりません。所得税を回避する方法万が一上記のケースで課税されると、所得税15%のみならず住民税についても5%課税されてしまいます(長期譲渡所得の場合)。この状況を回避するためには、遺言書が見つかった場合でも遺言書をなかったことにして遺産分割協議をすることが有効です。遺産分割協議をした上で、土地5,000万円を次女に割り振れば所得税が課税されることはありません。あくまで遺留分の精算として次女に渡した場合に所得税が課税されるので、遺産分割協議に切り替えてしまうことで最悪の状況は回避できます。相続における所得税の確定申告の必要書類やむなく所得税が課税されてしまう方については、会社員の方で年末調整をしている場合でも翌年2月中旬から3月中旬にかけて確定申告をしなければなりません。特に今回ご紹介した所得税は、譲渡所得税といい所得総額に総合課税されるのではなく分離して課税されるため計算方法が異なります。必要書類として準備が必要なものは主に以下の通りです。確定申告書譲渡所得の内訳書戸籍の附票遺言書など購入時の金額がわかるもの[adsense_middle]故人の確定申告(準確定申告)も必要ここまでは相続人の申告について解説してきましたが、実は亡くなられた方本人の死亡を知った翌日から起算して4ヶ月以内に相続人が代わって確定申告をしなければなりません。この申告のことを準確定申告といい、通常の確定申告と同じように青色申告をすることも可能です。準確定申告によって亡くなられた方のその年の所得について申告をするのですが、とにかく期限が4ヶ月と短いため葬儀や法事に忙殺されていると期限を過ぎてしまう恐れがあります。そのため、準確定申告についてはできれば相続税申告と合わせて税理士に任せてしまった方が得策です。相続における確定申告に関するまとめ今回は相続における確定申告について解説してきました。相続といえば相続税がかかることは知っていても、今回ご紹介した事例のように所得税が課税されるケースがあるとは知らなかった方が多いのではないでしょうか。何も考えずに手続きだけ先に進めてしまうと、気がついたときには所得税が課税されてしまっている可能性がありますので十分注意が必要です。生命保険のケースも遺留分の法改正のケースも、事前に所得税が課税される仕組みを理解して対策をとればそこまで大きな問題ではないので、今回の記事を参考にしていただき是非対策をとられることをおすすめします。
2020年01月19日日本の高齢化が進む中、将来の相続について考える方も増えているのではないでしょうか。相続対策を考えるにあたって非常に重要な位置づけとなるのが相続税です。相続税はすべての人に課税される税金ではなく、基礎控除額を上回った場合にだけ課税されます。そこで本記事では、相続税の基礎控除の計算方法や相続税申告に関連する基礎知識について詳しく掘り下げていきたいと思います。相続税とは?相続税とは相続等によって取得する財産に対して課税される税金で、亡くなられた方が持っていたあらゆる財産について課税の対象となります。具体的には、土地や建物などの不動産や現金、貯金、株式、投資信託、仮想通過、金、ゴルフ会員権など資産としてプラスになるものはもちろんですが、故人が残した借金についても相続の対象となるため注意が必要です。マイナスの財産を忘れる人が多い相続が発生した人から相談を受けた際に、「遺産はそんなに多くないので、調べるのは簡単です」という人がいます。ですが、プラスとなる資産については比較的楽に調べてまとめることができるのですが、借金については書類がちゃんと残っていないと相続人でも気が付かないことがよくあります。マイナスの財産を見落とすと、本来払う必要のない相続税を支払ってしまうこともあり得るのです。また、あまりにも借金の方が多く残っている場合については、相続するのではなくて相続をしないという手続きである相続放棄をした方がよいケースもあります。相続放棄は相続が開始してから3ヶ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをしなければならず、そういった手続きをしないまま3ヶ月以上経過してしまうと相続によって借金を背負うことになってしまうため注意しましょう。相続税の基礎控除額とは?相続税の基礎控除の額とは、相続税が課税される金額から差し引くことができる金額のことで、原則としてすべての相続人について適用ができる相続税の控除制度の1つです。冒頭で相続税はすべての人に対して課税される税金ではないと言いましたが、これは相続する資産の合計が基礎控除の金額を超えなければ相続税が課税されないことによります。相続税申告が必要なケース基礎控除以下の資産を相続するのであれば相続税は非課税ですが、相続税申告もしなくていいのかというと必ずそうとは限りません。相続税がかからない場合でも配偶者の相続税負担が軽くなる配偶者の税額軽減や、亡くなられた人が住んでいた家の建っている土地の評価額が80%オフになる小規模宅地等の特例といった各種特例制度を使うことで基礎控除額を下回るという場合については、たとえ相続税がかからなかったとしても、相続税申告だけはしなければならないのです。このことを知らずに「うちは相続税がかからないから」と高を括っていると、相続税申告期限が過ぎてしまい、おまけに特例も使えなくなるといった状況に陥る可能性がありますので注意しましょう。相続税の基礎控除の計算方法相続税の基礎控除額は次の計算式に当てはめて算出します。相続税の基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数例えば、妻と子供3人が相続人となる場合、基礎控除の金額は4,800万円となります。[adsense_middle]改正でどのくらい控除される金額が減ったの?ちなみに、平成27年に法改正がされるまでについては以下の計算式でした。改正前の相続税の基礎控除の金額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数先ほどと同じ条件で計算すると8,000万円となり、法改正によって基礎控除の金額がかなり縮小されたことがわかります。これによって、今までは課税される資産が基礎控除の範囲に納まっていたために相続税とは縁がなかったご家庭についても、半分近くまで基礎控除が減額されたことによって課税されるようになったのです。計算に含められる法定相続人の人数とは計算式を見ると分かる通り、相続税の基礎控除の金額は法定相続人の人数1人あたり600万円増えます。法定相続人は民法で優先順位が次のように決まっています。配偶者相続人亡くなった人の配偶者が存命の場合は、必ず法定相続人となります。血族相続人配偶者以外の親族については、次の優先順位に従って法定相続人となります。第一順位:子、(代襲相続の場合は孫)第二順位:直系尊属(父母、祖父母)第三順位:兄弟姉妹(※欠格や廃除があった場合は変わります。)このように法定相続人となる人と優先順位は民法によって決められているのですが、相続税の節税対策を考える人の中には、ある方法で基礎控除を増やそうとする人がいるのです。養子縁組で基礎控除を増やす第一順位の子というのは、亡くなられた人と血のつながりがある実子だけでなく養子縁組して実子になった子についても該当します。普通養子縁組は最寄りの役所で比較的簡単に手続きができることから、子がいるにもかかわらず孫と養子縁組して法定相続人を増やすという技を使う人がいるのです。確かに法定相続人が増えれば基礎控除も増えるのですが、これには大きなリスクがあるため注意が必要です。計算に含める養子には制限がある基礎控除の計算で法定相続人に含めて計算できる養子には、次のような制限が規定されています。実子がいる場合は1人まで実子がいない場合は2人までですので、最大でも2人までしか効果がないので、そのためだけに養子縁組することは決してオススメできません。バレると節税できない税務署側は基本的に節税目的の養子縁組を認めていません。そのため先ほどの制限の範囲内の養子だとしても、例えば遺産分割において養子に一切財産を相続させないなど、養子縁組をした理由に疑問が生じるような状況が発生すると、「節税目的で養子縁組してますよね」という指摘を受けることとなり、税務署長の権限で養子の人数を1人残らず基礎控除の計算式から除外されてしまう可能性があるのです。このことは相続税法第63条に規定されており、不当減少養子といいます。また、本人は節税対策目的で養子縁組したとしても、法律的には正式な法定相続人であり遺産を相続することができるため、場合によっては養子縁組したことによって遺産分割が大揉めになってしまうこともあります。よって、養子縁組は絶対に節税対策で使わないようにしましょう。相続税の申告期限について相続税は死亡を知った日の翌日から考えて10ヶ月で申告期限となります。例えば2020年1月10日に亡くなられた場合、その日のうちに相続人が死亡を知ったとすると相続税の申告の期限は2020年11月10日となります。ちなみに、最終日が土日祝日にかかる場合については翌平日扱いになり、仮に2020年11月10日が土曜日であれば2020年11月12日月曜日が申告の期限です。死亡を知った日の翌日からスタート相続税の申告期限で間違いやすいのが、どこから申告の期限のカウントダウンがスタートするのかという点です。死亡を知った日であり、死亡した日ではないので、例えば相続人が海外に住んでいて親が死亡したにも関わらずなかなか連絡が取れず、最終的に1カ月後に死亡の事実を知った場合についてはそこから10ヶ月のカウントダウンがスタートします。期限はあっという間にやってくる期限まで10ヶ月もあると思うかもしれませんが、実際のところそんなに余裕のあるスケジュールではありません。というのも、家族の誰かが亡くなると相続手続きは二の次でまずは葬儀の手配、火葬場の手配、埋葬の手配などやらなければならないことがほかにたくさんあります。その後もおおむね四十九日の法要が終わるくらいまでは、相続手続きに着手することすら難しいでしょう。遺産分割協議を先に終わらせる必要がある相続税申告の流れの中で最も障壁となるのが遺産分割協議です。相続税はたとえ同じ金額の資産だったとしても、誰が、どのように、いくら相続するのかによって課税される相続税の税額が違ってきます。しかも、相続税は原則として相続人全員で相続税を計算したうえで、それぞれが相続する割合に従って按分して税金を納めるので、遺産分割協議が終わらないと相続税が計算できず相続税申告もできないのです。とはいえ遺産分割協議は揉めることが多く、調停や裁判になると何年、何十年という長期間にわたることもあります。どうしても相続税申告に間に合わない場合遺産分割協議が終わらないからといって相続税の申告期限を延長してくれるわけではありません。たとえ相続人の間でひどく揉めているような場合でも、相続税の申告期限は絶対に守らなければならず、期限に1日でも遅れてしまうと次のようなペナルティが課せられます。無申告加算税:自主的に申告した場合は5%、税務調査が入ってから申告した場合は15%延滞税:2019年は年2.6%(税率は年によって異なります。)さらに、先ほどご紹介した配偶者控除や小規模宅地の特例なども使えなくなってしまいます。[adsense_middle]未分割申告をする遺産分割が終わらないまま申告期限が迫ってきてしまった場合については、未分割申告という方法で相続税申告をする必要があります。未分割申告とは、遺産分割の協議がまとまらないので、とりあえず民法で決められている法定相続分に合わせて相続したと仮定して相続税を計算し申告するやり方です。未分割申告をするには相続税申告書を提出するにあたって、申告後3年以内の分割見込書という書類も一緒に添付して申告します。未分割申告で申告しておけば、無申告加算税や延滞税は課税されません。ただし、未分割申告の場合は配偶者控除や小規模宅地等の特例といった相続税を低く抑える特例制度が使えないため注意が必要です。これらの軽減制度は本来相続税を大幅に減額することができる制度なので、一切適用できないとなるとかなりの金額の相続税を一旦納税しなければならなくなります。ですので、できることなら申告期限までに遺産分割を終わらせて、特例を適用したうえで通常の相続税を納税したほうがよいでしょう。更正の請求で相続税が戻ってくる未分割申告をすると高額な相続税が発生しますが、遺産分割が終わってから分割内容に合わせてもう一度相続税申告をすることで、多く納税しすぎている分の税金を返してもらうことが可能です。この手続のことを更正の請求といいます。申告をやり直すことを修正申告という人がいますが、修正申告は申告漏れなど少なく納税しているものを正すことで、税金を払いすぎている場合にするのは更正の請求というのです。実は相続税申告をした人の中には、計算ミスや評価額の判断ミスなどによって通常よりも多く相続税を納めすぎてしまっている人が結構います。そのため、相続税の取り扱い件数が多い税理士の中には、相続税の還付である更正の請求をメインとするセカンドオピニオンを大々的に宣伝してやっているケースもあるくらいです。遺言書があると相続税申告がスムーズ遺産分割が終わらないせいで未分割申告をせざるをえないケースが多いですが、遺言書が残されていればそのような心配も無くなります。というのも、法律に従った遺言書が残されていれば遺言書に書いてある通りに遺産分割をすればよいので、遺産分割の協議を相続人全員でする必要がなくなるのです。相続税申告をする際の添付書類についても、遺産分割協議書は不要になり家庭裁判所で検認した遺言書をもって代用することができます。遺言書というと相続発生後の揉め事を防ぐというイメージがあるかもしれませんが、相続税申告においても手続きがとてもスムーズになるので効果的です。相続税の基礎控除に関するまとめ相続税の基礎控除額の計算方法はとても簡単ですが、法定相続人となる人が誰なのかを勘違いしていると大変です。相続人が1人違うと600万円も変わってきてしまうので、計算する際にはまず誰が法定相続人なのかを入念に確認してからにしましょう。また、相続税の申告期限は10ヶ月しかありませんので、相続が開始したらできるだけ早く手続きに着手することをお勧めします。万が一期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが重いので十分注意が必要です。特に不動産や株式など評価額の計算が必要となる資産を相続する場合については、個人の方が自分で相続税申告をするには荷が重すぎるので、できる限り税理士に依頼してやってもらった方がよいでしょう。
2020年01月17日「相続で争うのは、お金持ちだけだと思っていませんか。相続トラブルのうち、およそ半数は1,000万円以下の遺産を巡るものだといわれています。そして、親族同士がもめる“争族”は、他人同士の争いよりも激しくなることも多いんです」そう語るのは、これまで約3,600もの家庭の相談を受けてきた遺言・相続の専門家の江幡吉昭さん。銀行勤務時代に顧客の相続争いを経験したことから専門家の必要性を痛感。遺言・遺産問題の総合サイト「遺言相続.com」を運営している。「司法統計のデータでも、遺産の分割を巡る争いは、平成20〜27年の7年で23%も増加しています。うちのきょうだいは仲がよいので大丈夫と思っている家族ほど、争いに発展することも多いのです」(以下、「」内は江幡さん)それまで問題なくやってきた親族が、遺産相続をきっかけに“争族”になることは多いという。しかも、意外な理由で……。江幡さんが“争族”の実例を教えてくれた。【争族1】父と同居する姉に財産を使い込まれた姉(55)の家族と暮らしていた父が83歳で亡くなった。公務員として定年まで勤めた父。数千万円の退職金をもらい、十分な年金も受給していたので、離れて暮らす素子さん(仮名・53)は、それなりの遺産がもらえると期待したが……。「まったく父の遺産はありませんでした。同居していた姉家族が使い込んでいたんです。体が弱ってくるにつれて、親は同居する家族にキャッシュカードを渡して『○万円おろしてきて』となり、やがて金銭の管理を一任するようになるものです。実際にこの姉は、ちょくちょくお金を引き出していたんですが、『私は介護の負担をしている』との自負もあり、使い込みも正当化。素子さんは、父の通帳を見せるように迫り、弁護士を立てて争うことになりました。私はよくお客さんに、『親の財産が心配なら、親のそばに住みなさい』と言います。相続において、そばに住んだり、同居している家族に有利に運ぶことが多いのです」【争族2】逆恨みする長男が遺言に不服で弁護士を90歳で亡くなった花子さん(仮名)には2人の息子がいた。長男(68)は地元の高校を卒業した後、地元企業に勤め、現在は年金暮らし。幼少期から成績優秀だった弟(63)は一流大学で、海外赴任経験もあるエリートサラリーマン。自分の勉強不足を棚に上げて、「弟と違い、大学に行かせてもらえず、収入に大きな差がついた」というのが長男の口癖だった。遺言を残さなかった父の死去時は“わがまま”を通し、多めに財産を相続した長男。そんな経緯もあり、花子さんは「長男に4分の1、次男に4分の3の財産を相続させる」という遺言書を書いた。「もちろん、法的に完璧な遺言書です。書いたときの花子さんの判断能力もしっかりしており、内容が覆る可能性はほとんどない。しかし、長男は次男を“逆恨み”。母の遺言に不服を唱え弁護士を立て、遺産分割調停の争いに発展しました。たとえ、遺言書を残しても、エキセントリックな人には話が通じないものなのです」“争族”が始まるタイミングは“四十九日”が多いという。葬儀や死亡後の手続きが落ち着いて、親族全員が集う初めてのタイミングだからだ。「“争族”にならないための、いちばんの方法は遺された家族の“話し合う余地”をなくすこと。つまり、遺言書の作成に勝るものはありません」とはいえ、年末年始の帰省時、親に強引に「遺言を書いて」というのはNG。「『自分が死ぬのを待っているのか!』と、頑なになってしまうことがあります。まずは、親が話を聞きそうな相手に説得してもらいましょう。父親の場合、妻や長男だったり、友人や弁護士だったりしますが、そういう“キーマン”に説得してもらうほうが、遺言書を書いてもらえる可能性が高くなります」自分たちは大丈夫。そんな慢心を捨てて、“争族”に備えよう!「女性自身」2019年12月24日号 掲載
2019年12月13日「相続で争うのは、お金持ちだけだと思っていませんか。相続トラブルのうち、およそ半数は1,000万円以下の遺産を巡るものだといわれています。そして、親族同士がもめる“争族”は、他人同士の争いよりも激しくなることも多いんです」そう語るのは、これまで約3,600もの家庭の相談を受けてきた遺言・相続の専門家の江幡吉昭さん。銀行勤務時代に顧客の相続争いを経験したことから専門家の必要性を痛感。遺言・遺産問題の総合サイト「遺言相続.com」を運営している。「司法統計のデータでも、遺産の分割を巡る争いは、平成20〜27年の7年で23%も増加しています。うちのきょうだいは仲がよいので大丈夫と思っている家族ほど、争いに発展することも多いのです」(以下、「」内は江幡さん)それまで問題なくやってきた親族が、遺産相続をきっかけに“争族”になることは多いという。しかも、意外な理由で……。江幡さんが“争族”の実例を教えてくれた。【争族1】愛人の子の死後認知に、妻は“生命保険”で対抗「私が受ける相談でも、夫の不倫による女のドロドロ“争族”バトルは多いんです」妻子を残し、がんで亡くなった男性には、20歳年下の愛人との間に隠し子がいた。「愛人に子どもが生まれたことを打ち明けられた妻は、『離婚しない・愛人とは会わない・認知しない』を条件に夫婦関係を維持しました」約束にもかかわらず、隠し子と会っていた夫。亡くなると、妻に内緒だった“計画”が明らかに。「夫は、隠し子を認知するという公正証書遺言を書いていました。この『死後認知』で、その子どもにも、最低限認められた権利である遺留分の相続ができることに……」だが、妻は夫の“計画”をお見通しだった。「不倫発覚直後から家計の管理権を握った妻は、夫を高額の生命保険に加入させ、夫の収入から掛金を払っていました。受取人はもちろん自分と自分の子ども。死亡保険金は原則相続財産にはならないので、愛人の子に相続させる必要はありません」結果、愛人の子の相続分を大幅に減らすことに成功した。【争族2】“ゴミ実家”を相続放棄でも片付け費用100万円が疎遠だった父を亡くした明美さん(33・仮名)。母の死後、父はゴミをため込むようになり、実家はゴミ屋敷と化していた。「貯金どころか、借金があることも発覚。明美さんは夫のアドバイスで、資産も借金も相続しない『相続放棄』を決断。これで解決したと思っていたんですが……」ところが後日、実家の町内会長から「ゴミ屋敷を片付けてくれ」と連絡がきたのだ。「相続放棄をしたからといって、民法上、空き家を含む相続財産の『管理責任』まで免れられるわけではありません。ほかにきょうだいのいない明美さんは、結局、100万円を負担して、業者に実家の片付けを頼むはめに」ゴミ屋敷だけではなく、老朽化した家屋など、“負の不動産” がトラブルの種になることは多い。
2019年12月12日「相続で争うのは、お金持ちだけだと思っていませんか。相続トラブルのうち、およそ半数は1,000万円以下の遺産を巡るものだといわれています。そして、親族同士がもめる“争族”は、他人同士の争いよりも激しくなることも多いんです」そう語るのは、これまで約3,600もの家庭の相談を受けてきた遺言・相続の専門家の江幡吉昭さん。銀行勤務時代に顧客の相続争いを経験したことから専門家の必要性を痛感。遺言・遺産問題の総合サイト「遺言相続.com」を運営している。「司法統計のデータでも、遺産の分割を巡る争いは、平成20〜27年の7年で23%も増加しています。うちのきょうだいは仲がよいので大丈夫と思っている家族ほど、争いに発展することも多いのです」(以下、「」内は江幡さん)それまで問題なくやってきた親族が、遺産相続をきっかけに“争族”になることは多いという。しかも、意外な理由で……。江幡さんが“争族”の実例を教えてくれた。【争族1】いじわるな姉に“養子縁組”で復讐地主の長男の嫁として、夫の両親の介護を1人でやりながら30年も耐えてきた香織さん(仮名・55)。義理の父母は優しくしてくれるけど、夫の姉には「嫁だから実家のことはやって当たり前」と虐げられてきた。堪忍袋の緒が切れたのは、義母の三回忌の法事の席。夫の姉から「母が死んだのはお前のせいだ。父の財産も狙っている」と親戚中の前で罵倒された。「積年の恨みを晴らすため、香織さんは義父が亡くなる半年前、公証人を病室に呼んで、義父と養子縁組をしたんです。もちろん夫の姉には知らせませんでした」養子と実子の相続権は同じ。つまり、養子縁組したことで、夫のぶんとあわせ、香織さんの夫婦は義父の遺産の3分の2を相続できることに。一方の夫の姉は、2分の1の遺産を見込んでいたところ、3分の1に減ってしまった。「当然、夫の姉は怒りましたが、後の祭りです。香織さんの執念が勝ちました」【争族2】仲がよかった父に相続の対象外にされて「亡くなる直前に遺言書が作られ、争いになることも多いんです」82歳で亡くなった父と、前妻の息子・太郎さん(仮名・52)は仲が良く、入院中もお見舞いに行っていた。死後、共通の趣味であるサックスを譲ってもらう約束まで交わしていたのだが……。亡くなる直前に書いたという公正証書遺言に「遺産はすべて後妻の家族に相続させる」と書かれていたのだ。「遺言書や契約書などの法的な根拠を保証することができる公証人ですが、人によって対応の違いがあることは知られていません。遺言の作成には、本人の意思表示が必要ですが、これは「うん」とうなずけば、意思表示とみなすような公証人もいる。特に、依頼者(この場合は後妻家族)の弁護士や司法書士と公証人の仲がよい場合、意思確認がおろそかにされる傾向があるのです」遺言を不審に思った太郎さんは、遺留分だけは相続できるよう、請求することにした。「親は子どもたちにとって太陽のような存在です。太陽がなくなると、惑星の動きがバラバラになるように、親の喪失によって、家族の関係が一気に変わってしまうのです」“争族”が始まるタイミングは“四十九日”が多いという。葬儀や死亡後の手続きが落ち着いて、親族全員が集う初めてのタイミングだからだ。
2019年12月12日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さん、弁護士の外岡潤さんが解説!【ケース】父とともに遺言状の作成を行っているE子さん。遺言状は自筆である必要があるので、父に書かせているが、資産家の父は財産が多岐にわたっているうえ、一筆でも間違えば、訂正印を押して、何文字直したまで記載しなければならない。手元がおぼつかない父はイライラが募り、もう書きたくないと言いだした【新ルール】財産目録は自筆じゃなくてもOKに「遺言書は、日付、署名、押印がなければ認められず、すべて手書きでなければいけませんでしたが、今年1月から『財産目録』に限り、自筆でなくても認められるようになりました」(外岡さん)遺言作成の手間が大幅に軽減したことになる。「パソコンやワープロを使って作成した文書や、不動産登記事項証明書、通帳のコピーも目録として使用してもよいことに。ただし各ページに署名押印する必要はあります」(外岡さん)日本は現在、亡くなる人が年間で130万人を超えている。「つまり、その数だけ『相続』事案は発生しています。高齢者同士の相続が増えたことや、配偶者保護の必要性が出たことなどから、今回40年ぶりに相続法が改正されたのです」(松下さん)配偶者居住権や、生前贈与の持ち戻し免除が認められるようになったのも、超高齢社会で残された配偶者が困窮しないための措置だ。妻にとって、有利なことが多い今回の法改正。知らなければ、大きな損。逆に知ってさえいれば、大きく得ができるのだ!
2019年11月02日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さん、弁護士の外岡潤さんが解説!【ケース】C子さんの夫は認知症を発症し、遺言状を書くことはできない。夫が亡くなった場合、評価額2,000万円の自宅だけが遺される。遺産は、C子さんに1,000万円、折り合いが悪く没交渉になっている娘に1,000万円という計算になるが、娘からは遺産分割のため、自宅の売却を求められる可能性が高い。このまま、住み慣れた家に住み続けたいが……【新ルール】’20年4月から夫の死後も居住権を主張できる「夫の死後、土地を妻と子どもたちで遺産分割する場合、所有権を子どもたちが取得すれば、年老いた妻が家を追い出される可能性があります。『高齢の配偶者の自宅を確保する』ために、改正相続法では『配偶者居住権』が新設され、’20年4月から施行されることになりました」(外岡さん)自宅の権利が「所有権」と「居住権」に分けられ、妻が居住権を相続すれば、所有権の有無にかかわらず、妻は自宅に住み続けることができるようになる。居住権の価値の算出は、築年数や耐用年数などから複雑な計算をする必要があるが、価値を仮に1,000万円とした場合、C子さんは居住権1,000万円、娘は“居住権のない所有権”1,000万円を相続することになる。居住権は売ることはできないが、C子さんはなくなるまで、自宅に住み続けられるのだ。「さらに、『配偶者短期居住権』というのも新設されます。遺産分割協議成立まで一定期間(早期に成立した場合は最低6カ月)、妻は家賃を払うことなく自宅に住み続けられることに」(松下さん)
2019年11月01日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さんが解説!【ケース】夫が亡くなり、葬儀をしないといけないのに、B子さんと息子には貯金がない。夫の口座には葬儀費用ぐらいありそうだけど、口座が凍結されてしまって……【新ルール】150万円まで故人の口座からお金をおろせる「被相続人(夫)が亡くなると、金融機関の預貯金は凍結されて、遺産分割の協議が終わるまで、引き出せなくなってしまいます。しかし『葬儀のお金がない』というのは重大な問題です。そこで、今年7月から、相続人が適切な手続きを行えば、被相続人の預貯金を引き出せるようになりました」(松下さん)引き出せる限度額は、被相続人の預貯金残高の「3分の1」に、相続人の法定相続分(妻=2分の1、子=2分の1をきょうだいの数で割った額)をかけた金額。仮に夫が600万円の貯金を遺した場合、B子さんは6分の1にあたる100万円まで引き出せる。「ただし、1金融機関での払い戻しの上限は『150万円まで』と定められています。『用途』は限定されていません。なかには、被相続人の負の遺産、つまり借金を返済するという目的で払い戻す人も。いずれにせよ、何に使ったのか記録を残しましょう。葬儀費用など故人のためではなく、自分のために使った場合は、相続額から引き出した金額分が引かれることになります」(松下さん)
2019年11月01日親が土地や不動産などの財産を持っていて、もしその親が亡くなってしまった場合は相続が発生する形となります。しかし相続では自動的に手続きが行われるわけではないため、自分たちできちんと段取りを踏んで手続きを行っていかなければ損をしてしまうケースも考えられます。また一生のうちに多く経験することではないので、やり方がわからないという方も多いかと思います。今回の記事では、相続が起こってからどうすればいいのかを順番を追って紹介していきます。相続が発生した場合、まず何からしなければいけないの?今回のケースではお父様が亡くなって(この記事では、以降亡くなった人を被相続人といいます)、お母様と子供2人が相続人というケース、つまり被相続人と相続人が3人の場合という事例で紹介していきます。死亡届の提出お父様が亡くなって、まず最初にしなければいけないことは死亡届の提出です。こちらは市区町村役場へ、死亡の事実を知ったときから7日以内に行わなければならないことになっています。遺言書があるかどうかの確認同時に遺言書があるのかどうかについても確認しましょう。遺言書があると財産の分配に影響してくる場合があります。なお、今回のケースでは遺言書はなかったものとして紹介していきます。相続税の申告と不動産などの名義変更その後、行っていく手続きとしては相続税の申告と不動産などの名義変更といったところになります。なお。相続税の申告については、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内という期限があります。一方不動産などの名義変更には期限は特に定めはありません。土地、建物などの不動産の分割の方法死亡届の提出と遺言書の確認を行ったら、次に被相続人の財産を相続人の間で分割する話し合いをしていかなければなりません。その際、現金でしたら単純に金額を分配していけばいいのですが、土地や建物などの不動産の場合そういうわけにもいきません。それでは土地、建物などの不動産の分割にはどのような方法が考えられるのでしょうか?ここでは分割方法について紹介していきます。土地、家屋などの固定資産の分割方法の種類現物分割相続財産が土地だけで建物がない場合は、単純に土地の面積を相続人の人数で割って分割する方法が考えられます。これを現物分割といいます。代償分割相続財産が土地だけではなく建物も一体となっている場合は、1人の相続人が相続するというケースがあります。このケースでは他の相続人に対して代わりの財産を分配することで公平に財産を分配できる形になります。これを代償分割といいます。換価分割換価分割とは親から引き継いだ土地や建物などの不動産をそのまま引き継ぐのではなく、売却して現金に換金してから財産を分配する方法をいいます。以上が土地、建物などの分割方法の種類になります。なお、分割方法ではありませんが、これとは別に相続人複数で土地、建物などを共有するという相続の方法もあります。計算は煩雑になってしまいますが、賃貸用マンションを相続して共有名義にするといったケースもあります。協議の内容に沿った遺産分割相続人の間で話し合いがまとまった後は、遺産分割協議書という書類を作成し遺産分割の内容を書面に残します。口約束でのトラブルが防げるのはもちろんですが、この遺産分割協議書が存在することで、第三者に対してもどのような内容で財産を分配したのかを示すことができます。参考:なかなかまとまらない遺産分割協議上記のように遺産分割協議がスムーズにまとまれば良いのですが、相続人の人数が多くなってくると遠方に住んでいるケースなどもあり、なかなかスムーズに話し合いが進まないといった状況も考えられます。遺産分割協議が相続において一番の難関であると思います。そのため、被相続人が亡くなってすぐに遺産の分割の話し合いというのはなかなか難しい面もありますが、なんとか相続人同士で協力し合って早めに話し合いの場を持つことをおすすめします。相続税の申告と相続税の納付の手続き相続人の各人にどのように財産の分配をするのかを決定したら、その内容に基づいて相続税の申告準備を進めていく形となります。相続税の申告と相続税の納付の期限は同じで、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内という期限になります。こちらは期限を過ぎると罰則があるため、遅れないように申告と納付を行わなければなりません。ここでは相続税の申告と納付の手続きの流れについて紹介していきます。[adsense_middle]相続税の計算方法相続税は現金、預金や土地、建物といった不動産、その他の財産の価値を集計して計算していきます。集計した金額からは次の控除額を差し引くことができます。相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×相続人の人数今回のケースでは父が亡くなって、母と子供2人が相続人という形になるため、相続人の人数が3人になります。上記の控除額の計算式にあてはめると、相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で4,800万円という形になります。なお相続税の基礎控除額が下がってしまったため、今後相続税を申告、納付する世帯が増えてくると思われます。相続税を納めるほどの額の財産はないという人も、念のため財産の価額を確認することをおすすめします。相続財産が基礎控除額を上回ってしまったら?上記のようにおおよその計算をして、もし財産の価額が基礎控除額を上回りそうだとなった場合は、相続税の計算をして申告と納付をしていく形になります。しかし現金や預金などの財産は金額が表示されているため、誰が計算しても同じ金額になりますが、建物や土地などは誰が計算しても同じ金額とはなりません。理由として、不動産の評価金額の計算方法が専門家によって異なる場合があるためです。このことから、専門家でも不動産などの財産の評価は難しいということがわかります。そのため相続税の計算や申告は相続を専門に行っている会計事務所などに依頼することをおすすめします。なお相続の経験があまりない会計事務所もあるため、ご注意ください。もちろん依頼する分、費用がかかってきますが、結果的には時間と手間を節約できることがメリットだと思われます。相続税申告の必要書類相続税の申告が必要というケースでは、どんな書類が必要となってくるのでしょうか?ここでは相続税の申告に必要と思われる書類を紹介していきます。被相続人出生時から死亡時までつながる被相続人の戸籍謄本(こちらの書類は被相続人が引越しが多かった場合などは、なかなか取得できないといったケースもあります。そのためこちらの書類は経験上、早めに準備することをおすすめします)住民票の除票(本籍が記載されているもの)相続人相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降の書類を準備してください)相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書(記名押印のしてあるもの)不動産の登記事項証明書不動産を相続する相続人の住民票(特例を使って申告する場合、確認のために必要となります)不動産の固定資産評価証明書相続人全員のマイナンバー相続人全員の身分証明書(マイナンバーカードであればひとつで大丈夫です)基本的には上記の書類が必要です。書類については会計事務所によって取り扱いが異なることもあります。会計事務所などに依頼する場合は、依頼している会計事務所などに確認していただければと思います。相続税の納付相続税申告書が出来上がれば、相続税の金額も計算されていることと思います。なお、相続税の納付については現金で納付することとされています。そのため現金や預金などの財産が多ければ、相続税の納付も相続財産から行うことができます。しかし不動産などの財産が多い場合は、評価額によっては現金や預金で用意できないケースもあります。そのため、相続税を納付するために不動産を一部売却するといった事態が起こる可能性も確認いただければと思います。財産の名義変更の手続き相続税の申告と納付を無事済ませたら、その流れでそのまま財産の名義変更をすることをおすすめします。名義変更には期限はありませんが、名義変更を放置するとデメリットが生じる可能性があります。ここでは名義変更の手続きに必要な書類及び、名義変更を放置した場合のデメリットについて記述します。[adsense_middle]名義変更の必要書類被相続人出生時から死亡時までつながる被相続人の戸籍謄本(こちらの書類は被相続人が引越が多かった場合などは、なかなか取得できないといったケースもあります。そのためこちらの書類は経験上、お早めに準備することをおすすめします)住民票の除票(本籍が記載されているもの)相続人相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降の書類を準備してください)相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書(記名押印のしてあるもの)不動産の登記事項証明書不動産を相続する相続人の住民票不動産の固定資産評価証明書本人確認書類こちらの必要書類についても、専門家に依頼する場合は、念のため専門家に確認いただければと思います。名義変更にかかる費用不動産の名義変更とは、手続きとしては不動産の名義を被相続人の名義から相続人の名義に変更するという手続きになります。また登記の申請には登録免許税という税金が別途かかる形となります。登録免許税の金額登録免許税の金額は、相続の場合、固定資産評価額の1,000分の4と定められています。例えば不動産の固定資産評価額が1,000万円の場合は、4万円といった形になります。このように自分で登記をする場合は上記のような書類が必要となりますが、相続税申告とほぼ同様の書類が必要となるため、相続税の申告まで進んでいる段階であれば書類を集めることは難しいことではありません。しかし自分で不動産登記を行うとなると思わぬ手間がかかってしまったり、時間も思いの外かかってしまうといった可能性が高いです。そのため不動産登記についても、相続税申告のときと同様、専門家に依頼することをおすすめします。不動産登記申請の専門家は司法書士です。依頼している会計事務所に提携している司法書士がいる場合は、相続税申告の際、名義変更の登記申請の必要書類ができている形になるため、専門家への費用が抑えられる可能性もあります。詳細については、会計事務所に相談して提携している司法書士がいるかどうかなどを確認することをおすすめします。名義変更を放置した場合に考えられるデメリット1.相続人各人の環境の変化遺産分割協議をした時点では、話がまとまっていたとしても他の相続人が不慮の事故などで亡くなってしまった場合など、思わぬ展開になることがあります。例えば今回は母と子供2人の相続人3人のケースを考えてきましたが、仮に子供の一方をAとして、Aに奥さんがいたとします。このAが不慮の事故で亡くなった場合は、相続の権利がAの奥さんに引き継がれます。名義変更を放置していると、本来遺産分割協議ではもう一方の子供Bに財産が引き継がれることになっていたとしても、Aの奥さんにも財産を相続する権利があるため、Aの奥さんが財産の分配に反対した場合は再度話し合いをしなければならないといった事態が起こります。このようなケースになってしまうと、遺産分割協議のとおりに相続することができないといった可能性が出てきてしまいます。2.書類の収集が煩雑化してしまう場合がある1のケースのように財産の引継ぎで揉めることはなくても、相続人の人数が増えてしまった場合はどのような問題が生じるでしょうか?例えば今回のケースでは母と子供A、子供Bは全員近所に住んでいたとします。しかし、子供Aが不慮の事故で亡くなってしまい、奥さんと、新たに子供Aと同居していない孫C、孫Dがいたとします。孫C、孫Dが近所に住んでいなかった場合は、それだけで書類のやりとりが煩雑になってしまいます。この上、孫C、孫Dが財産の分配に反対してきたとしたら、余計に手続きが煩雑化してしまいます。このようなケースになってしまうと話し合いの場を持つことも困難でしょう。名義変更は早めに行うべき以上のように、引き継ぐはずだった財産が引き継げなくなってしまう可能性も出てきてしまうのです。このように相続人各人の環境は永遠に不変のものであるとは言い切れません。権利を確定する意味でも、名義変更などの手続きはいつでもできるといって放置せず、なるべく早めに行う必要があると言えます。土地を相続する方法に関するまとめここまで紹介してきたように相続の発生は、人の一生が終了してしまうという重大な出来事であるため冷静に対処することが難しいですが、まずは落ち着いて被相続人の死亡届と遺言書の有無を確認しましょう。その後、相続税の申告を専門家に依頼することと、相続財産に土地や建物などの不動産があれば名義変更を専門家に依頼すれば、まずは一安心ではないでしょうか。流れとしては、被相続人の死亡届、遺言書の有無の確認相続税の申告、納付財産の名義変更といった形です。なお2、3は同時に進めていくことも可能です。詳細は専門家に確認していただくことをおすすめします。本記事が少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
2019年09月07日実家の親の土地に一戸建ての住宅を建てたり、二世帯住宅を建てたりするのは、費用の面をはじめ何かとメリットが多いでしょう。しかし、きちんとした知識がないと将来相続でトラブルになる可能性も考えられます。ではどうすればトラブルを防止することができるのでしょうか。■ 1. 親には生前にやっておくべきことがあるkuro3 / PIXTA(ピクスタ)親の土地に子どもが家を建てると、親が亡くなったあとに問題が生じる場合があります。不動産は遺産分割がしにくい財産のため、均等に分けることが難しく、相続人に不公平が生じることが多いです。1-1不動産を売却して換金しなくてはならないケースがある遺産分割は相続人同士で協議を行い合意できれば、どんな割合で分割しても問題ありません。しかし、合意に至らない場合は、家庭裁判所において調停による分割が行われ、調停でも解決しないときは、家庭裁判所の審判によって法定相続分に基づいた分割が行われます。親が亡くなり、相続人が子ども2人(AとB)だった場合で、住宅の評価額が1,500万円、現金が500万円、計2,000万円の相続財産がある家庭の場合、法定相続では2分の1ずつ財産を相続することになります。親の土地に住宅を建てた子どもAが、土地をもらいたい場合は、法定相続に従うと、500万円の現金をもう1人の子どもBに渡さなくては土地を取得できません。もし、Aが500万円を用意できない場合は不動産を売却して換金せざるを得なくなり、土地を取得することが困難になります。1-2.親を中心に相続について話し合うつむぎ / PIXTA(ピクスタ)相続トラブルにならないために、親は自分が元気なうちに子どもたちを交えて相続について話し合っておくことが大切になります。最も理想的なのは、日頃から兄弟同士で仲良くし、親子間でも会話をしてそれぞれの家族の事情などを共有することです。親が中心になって、相続に関する考え方やその理由などについて話をし、子どもに理解を求めておくことが必要です。何よりもお互いの信頼関係を築いておくことが大切です。■ 2.相続トラブルを防ぐための手続きは?5x5x2 / PIXTA(ピクスタ)遺産分割協議書は、誰が何を相続するのかを証明する書類ですが、親が亡くなったあとのものしか有効ではありません。つまり親が亡くなる前に遺族同士で遺産分割協議をして取り決めをし、書面を作っておくことはできないのです。では、生前にどんなことをしておけばいいのでしょうか。2-1生前に親が財産を再構成しておく親が元気なうちに自分の資産を法定相続分通りに遺族が相続できるよう再構成する方法があります。先の例の場合なら、親は自分の不動産「1,500万円」を子どもに相続させるために、Bにも1,500万円の相続をさせることができるよう、現在保有している500万円の金融資産を生前に増やして1500万円にするという方法です。Bが相続する予定の資産は、現金だけでなく、生命保険など、ほかの資産でも構いません。こうすることによって兄弟間の不公平を解消することができます。2-2代償分割によって遺産を分割する親の自宅を子どもの誰かが必要とするケースでは、「代償分割」という方法で遺産を分割することが可能です。代償分割とは、不動産のように単純に分割できない財産を、特定の遺族が一人で相続する代償に、他の遺族に相応の代償金を支払って遺族の不公平を解消するやり方です。A:土地1,500万円B:金融資産500万円と相続をしますが、不公平を解消するために、Aが自分の財産からBに別途「代償金500万円」を支払います。代償金は一括払いでなくても構いません。代償金は何も手続きをしないと贈与とみなされてしまいます。贈与税がかることがないようにするためには、遺産分割協議書に代償分割に関する記載が必要となります。ただし、先に述べたようにAに500万円の支払いができない場合はこの方法はできません。■ 3.相続トラブル回避にも親は今からできることをやっておくことmakaron* / PIXTA(ピクスタ)このように、実家の土地に子どもが家を建てる場合、将来親の家や土地を相続する際に、不公平だと兄弟同士でトラブルが発生する可能性があります。子ども同士でトラブルになるのを良く思う親はいないでしょう。親は自分が亡くなった後のことも考えて、今からできることをやっておくべきです。ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員 吉井 希宥美
2019年08月30日相続について親子間で話し合うのは難しいと感じている人は少なくないようです。自分たちの「貯蓄」や「資産運用」の考え方が親と違うために、もめごとになったり、親の相続資産を自分たちに与えてもらえないのではないかという不安を解消するために知っておくべきことをご紹介します。■ 1.相続トラブルは資産がない家の方が多い相続に関して「うちは資産がないから争いにもならないし、相続税も支払わなくても大丈夫」と思っている人はいませんか?意外に思うかもしれませんが、そのような家庭の方が相続トラブルは起こりやすいのです。1-1なぜトラブルが起こるのかST8818 / PIXTA(ピクスタ)両親のうち父親が亡くなった場合に、資産は自宅と土地とわずかな銀行預金だけで、母親が自宅に死ぬまで住み続けたいと思っているというケースは多くあります。そのような場合、資産がない家庭だと不動産を現金化できないため、法定相続分通りに遺産を分割しにくくなります。また、民法が改正され、今年から「配偶者居住権」という法律が新たに加わりました。これは、「相続開始時に被相続人所有の建物に居住する配偶者が、相続開始後、終身その建物を無償で使用することができる」という権利です。法定相続分通りに遺産分割しても、母親が自宅に住んでいるのであれば、相続した子どもが売却や賃貸で収益を得ようとしても、現実的には難しくなります。このような理由から資産が少ない家庭の方が相続トラブルになりやすいのです。いくら遺産が少なくて兄弟の仲がよくても、お金を目の前にして不公平感を感じると、相続が「争続」になるケースはどこの家庭にも潜んでいます。1-2相続について話し合っておいた方がよいケースは?Tony / PIXTA(ピクスタ)相続について話し合っておいた方がよいのは次の3つのケースです。相続税がかかることがあらかじめ分かっている場合相続税はかからないが、子どもが複数いて、今親が住んでいる家など親の資産を、子どもが均等に分けるのが難しいと予想される場合子どもが相続を受けたくないと思っているものを、親が資産として持っている場合。老朽化した賃貸住宅を親が所有していて、相続を受けても賃貸経営を続けていくことが難しい、売却しても、かえってコストがかかってしまうなどのケースです。相続の相談は切り出しにくいかもしれませんが、お盆で帰省するときや、家族で集まる機会があるときに、話しておくべきです。■ 2.どのように資産を分けたらいいのかHiroS_photo / PIXTA(ピクスタ)相続の場合、遺言書があれば、それが一番優先されると思っている人が多いようですが、実は違います。一般的には、「相続人の合意>遺言書>法定相続分」となり、相続人の合意が一番優先され、別の分け方ができるのです。2-1一番良いのは相続人の話し合いでの合意すべての相続人が話し合い、合意するのが一番良い相続の方法です。そのために、すべての相続人に「相続財産」「法律の定め」「自分の気持ち」を隠さずにすべて正直に話すこと家と土地は、なるべく一人の所有者となるようにすべきことを心がけましょう。最初から正直に話さないと、法定相続分と大幅に割合が異なり、自分が多くもらうことになったときに、ほかの相続人から 「なんとなくあやしい」「何か隠し事をしているのでは」 という不信感がめばえてしまい、ここから争いに発展するのです。また、固定資産税の支払いや、 不動産の維持費の支払いなどが複雑となるため、不動産などの共有名義は避けましょう。不動産をもらう人が、もらわなかった相続人に現金で支払うなどすることで解決できます。2-2生前贈与を検討した方がいい場合もMills / PIXTA(ピクスタ)親の老後の生活資金が確保できている、親が亡くなった後に子どもへの金銭的(現金)な相続をする準備ができている家庭なら、「生前贈与」を考えてもよいでしょう。子どもが自分たちの住宅を購入する際に、親から子どもが住宅を購入する時点で親に生前贈与をしてもらっておくことで、住宅取得資金等の非課税制度や相続時精算課税など、優遇税制の対象になる場合もあるからです。また、住宅購入資金の融資額やその利息分の削減ができるので、資金面で楽になります。■ 3.まとめsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)相続が発生する前に親に対してストレートに相続について相談すると、自分の子どもに「あなたはもうすぐ死ぬくらいの歳だ」と言われたようなものと感じ、不快に思われることもあると思います。「もっと年をとったとき今の家に住み続けたいか」など、将来の意向を聞く、相続セミナーに誘ってみるなどの方法で、相続に関して注意を促しましょう。帰省の機会が多い今の季節に、相続のことを話し合うチャンスづくりをしておきましょう。
2019年08月16日財産を相続する際に、遺族間で揉めてしまう場合があります。子どもの1人が実家の敷地に住宅を建てている場合は特にその可能性が高くなります。相続で揉めないために、親が元気なうちにやっておくことがあります。父親:死亡母親:実家の敷地の土地所有者子どもA:実家の敷地に自分名義で家を建てた、かつ母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有する子どもB:母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有するという場合どんなことをすれば、トラブルを未然に防ぐことができるか考えてみましょう。■ 1.なぜトラブルが起こるのかmidori / PIXTA(ピクスタ)両親のうちの片方が亡くなる「一次相続」で、生存している母親が土地を相続する場合は、子ども同士のトラブルは起こりませんが、その後、母親が亡くなったときの「二次相続」で、遺産分割を巡り兄弟姉妹間のトラブルに発展する可能性があります。Aは母親名義であった土地に家を建てているので、土地を自分名義にしたいと思うのが自然ですが、母親の相続財産が土地しかないとき、法定相続に従うと土地はAとBの共有名義になります。土地を子どもAとBが共有する形で相続すると、やがて困ったことが起こります。子どもAにとっては、自分の家が建っている土地を自由にできません。子どもBにとっても、土地を売却して換金するにはAの承諾が必要ですし、そもそもAの家が建っている土地に買い手は現れないでしょう。Bにとって固定資産税がかかるだけの不要な財産となってしまいます。■ 2.トラブル回避のための予防策はhoriphoto / PIXTA(ピクスタ)トラブル回避のためには、母親が元気なうちに行動を起こす必要があります。親が亡くなったとき、兄弟姉妹間のトラブルがなく、円滑に遺産分割が進み、遺族が納得して相続する方法について、生前に親が子どもに提案するのがベストです。親の意識が足りない場合は子どものほうから働きかけましょう。2-1 事前に母親から子どもA、Bに意思を伝えるbee / PIXTA(ピクスタ)事前の親子間の合意形成をすれば、トラブルを未然に防げます。母親から、AとBに対して、事前に「家を建てているAに、将来自分の土地を相続させたい」という自分の考えを明確に伝え、互いに納得してもらいましょう。AとBには母親の財産を均等に相続する権利があるものの、相続時に当事者間で合意できれば、実際にはどのような分け方をしても構わないからです。しかし、生前の合意には法的拘束力がありません。実際に母親が亡くなった後に、Bが自分の権利を主張しはじめた場合は、トラブルになります。2-2子どもBに土地と同じ価値の財産を準備するAとBには、母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利があるため、AとBに相続させる財産をあらかじめ特定しておく方法があります。そのために、母親は生前に遺言を書いておくべきです。Aに相続させたい土地の価値と同様の財産をBが相続できるように遺言に書いておくのです。2-3母親が遺言で子どもBの相続する権利を縮小させるテラス / PIXTA(ピクスタ)Aに相続させたい土地の価値と同等の財産を、Bに準備できない場合でも、母親が遺言を書けば、Aが土地を相続できる権利を取得させることはできます。しかし、「遺留分」という法律のために権利をまったくなくすことはできません。この家族構成の場合、Bの遺留分は母親の財産の4分の1となります。そのため母親が、最低限全財産の4分の1を子どもBに相続させ、土地1,000万円を含めその他の財産をAに相続させる内容の遺言を書けば、土地を確実にAに渡すことができます。ただし、母親が亡くなったあとのAとBの関係が悪化する可能性があることは否めません。2-4どの方法でも話がまとまらない場合は、代償分割を母親が亡くなった後、AとBが協議をして、代償分割という方法を使えば、Aが土地を相続することが可能です。代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が不動産などの現物の資産を相続し、他の相続人に代償金(または代償財産)を支払うことで遺産を分け合う方法です。たとえば、1,000万円の土地をAが相続し、あとでAからBに500万円の代償金を支払います。こうすることで、結果的にはAとBが公平に相続したことになります。母親が元気なうちに話がまとまらない場合はこの方法を選択するのもよいでしょう。■ 3.まとめpixelcat / PIXTA(ピクスタ)土地を取得するための費用がかからないと、実家の敷地に住宅を建てる人は将来的に兄弟と揉める可能性があります。親が元気なうちは、土地を親から無償で借りる形になり、問題はありませんが、親が死亡した後にトラブルが起きる可能性があります。残された子どもたちにわだかまりが残らないように、家族全員で相続について話し合うようにすることをおすすめします。宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター吉井希宥美
2019年08月10日