今回は会社員向けの記事になります。テーマは住民税です。ご存知の通り日本には様々な税金があります。その中の一つである住民税について知っておくと便利な知識を今回は解説していきますので、特に新社会人になった方、転職をお考えの方は是非ご覧下さい。住民税とはどんな課税?始めに住民税についてお話しておきます。訳も分からず税金を納めるより、分かって納税しておきたいですよね。そもそもですが「税金」の役割は周知のとおり、私たちの生活に纏わる様々なサービスを負担してくれる財源を指します。例えばごみの回収や公共施設の維持管理等です。他には道路の整備、警察、消防、救急等の経費など多岐に渡るものです。その一部を負担しているのが住民税になります。もう少し具体的に解説していきますね。住民税の詳細について1月1日現在に住民票の置いてある自治体に対し納める税金で、「都道府県民税」と「市町村民税」の2つを合わせたものを住民税と言います。住民税は前年度の所得に応じて計算され翌年支払う事になります。計算される過程で「所得割」部分と「均等割」部分に分かれ、合算したものを徴収される事になりますが、徴収の方法としては給与天引きされる特別徴収か、確定申告が必要な方は自分で納める普通徴収となり、今回テーマのサラリーマンであれば殆どの方は特別徴収に該当します。住民税の請求、支払いまでを図解します住民税が計算され、支払いに至る過程を図解説明していきます。後程気を付けておきたい事も解説しますのでご一読下さい。住民税はいつから発生するの?初めて社会人になる方必見!住民税は一体いつから納めなくてはならないのでしょうか?特に新卒の方等は分からない事もあるかもしれませんね。ひょっとするとアルバイト等で住民税を引かれている方もいらっしゃるかもしれません。今一度計算される期間を図にしてみましたのでこちらをご覧下さい。これは今年を対象にした図ですが、2019年に受け取ったお給料をベースに計算される事になります。そして計算された金額は来年の6月からの支払いスタートとなりますので、計算が終わって新年度に入り半年後に支払いが発生するという事になる訳です。前年の年収?給料?所得って何?ここで一度所得について触れておきます。先程の図では前の年の所得を元に計算されるイメージを表しています。混同し易いのが年収という言葉です。ここで改めて用語について解説しておきます。年収はお給料、ボーナスの総額を指します。例えばボーナス無しで毎月総支給額25万円だったとします。年収は25万円×12カ月=300万円になるという事です。ここでは社会保険など引かれる前の金額で計算しますので注意しておきましょう。所得とは年収から所得控除を差し引いた残りの金額を指します。細かく言うとこれを課税所得と呼びます。住民税や所得税等は、この課税所得に対し決められた税率を掛ける事になります。住民税の計算はこんなイメージですこちらの図をご覧ください。先程の図と併せてご確認頂けると分かりやすいかもしれません。まず年収の総額があって、所得控除を差し引きます。主な控除は基礎控除や生命保険料控除、社会保険料控除等様々あり、個々によって利用できる控除は異なってきます。そして課税所得が計算されたら、そこに対し所得割の計算が先に発生します。この所得割に関しての税率はこちらの図をご覧ください。全国で殆ど一律での税率となっており、最も高い所で10.1%、低い所で9.7%となります。平均して10%で考えて頂ければ問題は無いでしょう。この所得割額が計算された後に更に税額控除と言って、身近なものでは住宅ローン減税があり、住宅ローン減税含め約19種類にも登る最終控除が発生し、その後に住民税の納税額が決まる流れとなっています。住民税の支払いは2種類冒頭で触れましたが、計算された住民税を納める方法は2種類ありましたね。もう少し詳しく解説しておきたいと思います。企業が代行して納税する特別徴収サラリーマンやパートさんの方が殆どです。お勤めの企業が従業員に代り、住民税を納める方法です。給料明細などに記載されてある事で納税額を確認する事ができ、給与天引きとなるため支払いの失念が無い事が特徴です。また12カ月に渡って支払う事ができますので、大きく引かれる事もなく支払いの負担は軽いでしょう。納付書を使用し直接納税する普通徴収サラリーマンの中には確定申告を必要とする方も中にはいらっしゃいます。生命保険募集人さんは正にそうでしょう。この場合、自分や税理士を通じ確定申告しますが、この際に計算された課税所得に対し毎年6月に納付書という書類が送られてきます。4期に渡り納付する書類が入っており、6月、8月、10月、1月の納付期限が決められています。この納期に従って住民税を納めますが、一括で4期分納める事も可能です。但し、自分で納めなければならない為、うっかり納期を忘れてしまう事もあります。支払える時に納めておきたいですね。住民税の計算は所得税の計算過程と同じこれまでは住民税の計算期間から計算方法、納税までを解説してきましたが、実は住民税は所得税の計算の流れと全く同じなんですね。違いは税率くらいです。基本的に納税額を計算する場合は先程の図に則り控除を差し引いて計算されます。年収が高い方、控除が少ない方は納税額も高くなりますし、同じ年収でも控除が多い方は納税の金額にも差が出てきます。この年収が高い事による事例を次に解説していきます。転職をお考えの方は是非ご覧ください。[adsense_middle]転職する際に気を付けておきたい事最近では仕事も多様化してきて、転職や自営業になったりと様々な仕事の選択肢があります。その際に気を付けておきたい事を解説します。転職を例に挙げてみると、以前までの勤務先での年収が高い場合、翌年支払う住民税が高いままであるという事です。具体的に言うと、年収800万円あった会社から年収500万円になるケースなどです。これは極端かもしれませんが、住民税は前年度の所得に応じて計算され翌年支払いを開始する仕組みです。前年まで800万円での年収に対する所得は高額な金額が想像できますね。そして年収がダウンして手取り額も下がったタイミングで、前年度の住民税がやってくる事になります。支払い終えるまでは家計にも響くケースだってあるかもしれません。また自営業に転身した場合、売上が少ないタイミングで前年の住民税が大きくのしかかるケースもあります。特に年収が高い方は、しっかりと納める金額を把握して翌年の納税に備えるのがベストだと思います。退職する際にも気を付けて実は退職も気を付けるべき点はあります。退職後、新たに就職先がある場合は大丈夫かもしれませんが、無職でいる場合でも容赦なく住民税の納付はやってきます。前年までは給与もあったけど、今年は仕事せずにゆっくりしたいと思っても、前年に計算された住民税は忘れた頃にやってきますので、納める金額の蓄えはしっかりと持っておきたい所ですね。住民税はいつから納税するかに関するまとめ今回はサラリーマン、新卒の方向けに住民税に関する解説を行ってきました。特に転職や退職時には気を付けておきたい所ではあります。また年収のアップダウンが大きい給与体系なども注意が必要です。税金とは言え、滞納しすぎると大切な財産さえ差し押さえられてしまいますので、退職、転職はしっかり準備して行って下さいね。
2019年11月14日今回は住民税が免除される要件等について解説していきます。基本的に住民税は所得に応じて計算される仕組みです。いくらの所得であれば課税非課税のラインなのか、そもそも所得をコントロールできるのか等様々な疑問について解説しますね。始めに年収と所得の違いをおさらいしますよく「年収」いくらだったらとか、計算では「所得」がいくらであれば非課税になります等、ネットで検索すると出てきますよね。ここでは年収と所得の違いについて先に解説していきます。年収とは1年間で得た収入の総額を指します。サラリーマンの場合総支給額で計算され、ボーナス等も含まれます。ここでは社会保険料など引かれる前の金額を意味しますので比較的計算しやすいでしょう。所得とは、年収から所得控除を引いたものを指します。所得控除には配偶者控除、社会保険料控除、基礎控除、生命保険料控除等様々あり、控除額が大きければその分納める税金も安くなる仕組みとなります。住民税は所得に応じて計算されます。また、各家庭によっては控除の適用も異なる為、一概に年収が同じでも異なる事になります。個人事業主の方は確定申告をしなければなりませんので、所得控除に加え、経費を差し引いて所得を計算します。この経費がいくらかかったかによって所得金額が変わります。コントロールできると言えばできるかもしれませんが、使っていない経費などを計上する事はできませんので、気を付けるべき点ではあります。住民税が非課税になる対象は?ここから本題に入っていきます。住民税が非課税になると言っても内訳は様々あります。こちらの図をご覧ください。ご覧の様に都道府県民税と市町村民税に分かれ、更に均等割、所得割と分類されます。何がどうなっているのか少し詳しくお話しておきます。均等割は一律で課税されるもので、一般的に都道府県民税が1,500円、市町村民税が3,500円となっており、自治体によって税率を変え上乗せで徴収する事もできます。所得割は全国で10%となっており、こちらも均等割同様自治体によって税率を変える事は可能です。一般的には都道府県民税が4%、市町村民税が6%の割合です。均等割、所得割いずれも前年度の所得に応じて計算されますので転職や退職時には気を付けておきましょう。さて、この住民税が非課税になる対象ですが、先に課税されない収入を解説し、後に収入の基準を解説していきますね。課税されない収入は何?課税される事のない収入ですが、失業保険の給付金や生活保護の給付金が挙げられます。国の補助である制度からは課税は免除されます。障害年金や遺族年金も非課税?皆さんは障害年金、遺族年金という言葉をご存知でしょうか?これは国が定める障害認定に該当した場合、国から年金が支給される事になります。また、遺族年金は配偶者のどちらかが亡くなった際に国から年金を受給する事ができる制度ですが、この年金に関して住民税が掛かる事はありません。課税されない世帯や所得基準は?ここからは非課税になる対象世帯や非課税になる対象所得について解説していきます。非課税になる対象世帯は?住民税が非課税になる対象世帯は次に該当する方になります。生活保護を受給している障がい者、未成年者、寡婦(夫)で且つ前年度の所得が125万円以下の場合※寡婦(夫)とは配偶者と死別若しくは離別した独身の方の事です。【前年度の所得が次の金額以下の場合】控除対象の配偶者や扶養親族がいる方35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計)+21万円控除対象の配偶者や扶養親族がいない方35万円上記に当てはまる方は住民税の均等割、所得割共に課税されません。尚、所得割のみ課税されないというケースもありますので以下にその要件を記載します。控除対象の配偶者や扶養親族がいる方35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計)+32万円控除対象の配偶者や扶養親族がいない方35万円尚、今回使用した計算式は東京23区の場合です。お住いの自治体によって若干計算式も異なる場合がございますので、ご確認下さい。非課税になる対象所得は?次に非課税になる対象所得について解説します。特にパート勤務等されている方は参考にして頂ければと思います。結論から言えば、前年度の総収入が100万円以下(細かく言うと98万円)であれば住民税は非課税となります。あれ?103万円じゃなかったっけ?とお考え違いの方もいらっしゃるかもしれませんので、補足しておきたいと思います。所得税の103万円の壁と住民税の100万円の壁タイトルの通りですが、103万円は所得税が非課税になる金額の事を指します。住民税は100万円となっており、混同しやすいですよね。何故この様に金額が異なるのかと言いますと控除される額が異なる為です。その計算に関して次で解説しますので、覚えておいて頂ければと思います。控除に関する計算式まず所得を計算するにあたり、基礎控除というものがあります。これは誰でも同じ金額で38万円となっていますが、住民税に関する基礎控除は実は33万円なんです。この差によって103万円と100万円の違いが発生する事になる訳ですね。事例で解説します。パート勤務Aさんの場合Aさんの前年度総収入が98万円でした。翌年の住民税を計算する場合次の計算式になります。年収98万円-所得控除65万円-基礎控除33万円=0この様に0円となりましたので非課税になります。所得税ですと、上記の所得控除と基礎控除の合計金額が103万円になりますので、103万円以下に抑えるという事になります。気を付けるべきは100万円以上103万円未満に年収が収まった場合は住民税が課税される事になりますので、出勤時間などの調整で収入を調整して頂く必要は出てくるかもしれません。所得税と住民税では控除額が異なる今回を機に一つ覚えておいて頂きたいのは所得税と住民税では控除額が異なるという事です。基礎控除もそうですが、身近なものとして生命保険料控除も異なります。少し計算間違いをしやすいですが、気になる方は是非チェックしておきましょう。また余談ですが、来年度から所得税、住民税の基礎控除額が変更となります。しかし103万円、100万円と明らかに変化するものではありませんのでご参考までに。住民税が非課税になるメリット・デメリットは?ここからはメリットとデメリットについて解説していきます。非課税なのは嬉しいけどどうなんだろうと思う方は是非ご一読下さい。[adsense_middle]非課税のメリット住民税が非課税になった場合の主なメリットは以下の通りです。高額療養費制度利用時の自己負担額が少額国民健康保険料の減免NHK受信料の免除保育料の減免上記が主なメリットですが、具体的には1の高額療養費自己負担額は35,400円となります。また国保ですが、これは自治体において申請が必要ですので、お住いの自治体に確認頂く必要があります。そしてNHKの受信料に関しては、世帯構成員のどなたかが、障がい者手帳を保有し、且つ世帯全体が住民税非課税の場合であれば免除されるそうです。お子様のいる世帯でしたら、所得に応じて保育料等も変わりますので役場などに確認されてみて下さい。一番心配な治療が出来るのかという点においては大きいと思いますし、70歳以上であれば24,600円と高額療養費自己負担額が更に減額となりますので、覚えておいて下さいね。非課税のデメリット非課税のデメリットについてはそんなにありませんが、気を付けて頂きたいのは、今流行りの「ふるさと納税」を行っている方は損をするという事です。理由は、そもそもふるさと納税はお住い以外の自治体に納税する事によって住民税の控除が受けられます。しかし、非課税ともなれば控除される事はありませんので、仮に1万円のふるさと納税を行っても、1万円の自己負担なだけになりますのでご注意下さいね。住民税非課税世帯に関するまとめ今回は住民税の非課税に関する解説でした。所得によって非課税になるラインなどがお分かり頂けたかと思います。特にパート収入の方等は金額をしっかりと押さえておいて下さいね。
2019年11月11日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さん、弁護士の外岡潤さんが解説!【ケース】父とともに遺言状の作成を行っているE子さん。遺言状は自筆である必要があるので、父に書かせているが、資産家の父は財産が多岐にわたっているうえ、一筆でも間違えば、訂正印を押して、何文字直したまで記載しなければならない。手元がおぼつかない父はイライラが募り、もう書きたくないと言いだした【新ルール】財産目録は自筆じゃなくてもOKに「遺言書は、日付、署名、押印がなければ認められず、すべて手書きでなければいけませんでしたが、今年1月から『財産目録』に限り、自筆でなくても認められるようになりました」(外岡さん)遺言作成の手間が大幅に軽減したことになる。「パソコンやワープロを使って作成した文書や、不動産登記事項証明書、通帳のコピーも目録として使用してもよいことに。ただし各ページに署名押印する必要はあります」(外岡さん)日本は現在、亡くなる人が年間で130万人を超えている。「つまり、その数だけ『相続』事案は発生しています。高齢者同士の相続が増えたことや、配偶者保護の必要性が出たことなどから、今回40年ぶりに相続法が改正されたのです」(松下さん)配偶者居住権や、生前贈与の持ち戻し免除が認められるようになったのも、超高齢社会で残された配偶者が困窮しないための措置だ。妻にとって、有利なことが多い今回の法改正。知らなければ、大きな損。逆に知ってさえいれば、大きく得ができるのだ!
2019年11月02日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さん、弁護士の外岡潤さんが解説!【ケース】C子さんの夫は認知症を発症し、遺言状を書くことはできない。夫が亡くなった場合、評価額2,000万円の自宅だけが遺される。遺産は、C子さんに1,000万円、折り合いが悪く没交渉になっている娘に1,000万円という計算になるが、娘からは遺産分割のため、自宅の売却を求められる可能性が高い。このまま、住み慣れた家に住み続けたいが……【新ルール】’20年4月から夫の死後も居住権を主張できる「夫の死後、土地を妻と子どもたちで遺産分割する場合、所有権を子どもたちが取得すれば、年老いた妻が家を追い出される可能性があります。『高齢の配偶者の自宅を確保する』ために、改正相続法では『配偶者居住権』が新設され、’20年4月から施行されることになりました」(外岡さん)自宅の権利が「所有権」と「居住権」に分けられ、妻が居住権を相続すれば、所有権の有無にかかわらず、妻は自宅に住み続けることができるようになる。居住権の価値の算出は、築年数や耐用年数などから複雑な計算をする必要があるが、価値を仮に1,000万円とした場合、C子さんは居住権1,000万円、娘は“居住権のない所有権”1,000万円を相続することになる。居住権は売ることはできないが、C子さんはなくなるまで、自宅に住み続けられるのだ。「さらに、『配偶者短期居住権』というのも新設されます。遺産分割協議成立まで一定期間(早期に成立した場合は最低6カ月)、妻は家賃を払うことなく自宅に住み続けられることに」(松下さん)
2019年11月01日改正相続法が今年7月に施行された。今回は、多くの人、とりわけ女性にとって、有利な改正になっているが、どれほどの人が知っているだろうか。また、来年にも新制度が始まる……。施行から3カ月、改正相続法の遺産の新ルールを弁護士の松下真由美さんが解説!【ケース】夫が亡くなり、葬儀をしないといけないのに、B子さんと息子には貯金がない。夫の口座には葬儀費用ぐらいありそうだけど、口座が凍結されてしまって……【新ルール】150万円まで故人の口座からお金をおろせる「被相続人(夫)が亡くなると、金融機関の預貯金は凍結されて、遺産分割の協議が終わるまで、引き出せなくなってしまいます。しかし『葬儀のお金がない』というのは重大な問題です。そこで、今年7月から、相続人が適切な手続きを行えば、被相続人の預貯金を引き出せるようになりました」(松下さん)引き出せる限度額は、被相続人の預貯金残高の「3分の1」に、相続人の法定相続分(妻=2分の1、子=2分の1をきょうだいの数で割った額)をかけた金額。仮に夫が600万円の貯金を遺した場合、B子さんは6分の1にあたる100万円まで引き出せる。「ただし、1金融機関での払い戻しの上限は『150万円まで』と定められています。『用途』は限定されていません。なかには、被相続人の負の遺産、つまり借金を返済するという目的で払い戻す人も。いずれにせよ、何に使ったのか記録を残しましょう。葬儀費用など故人のためではなく、自分のために使った場合は、相続額から引き出した金額分が引かれることになります」(松下さん)
2019年11月01日遺産分割協議書と聞くと何か難しそうな印象の書類が思い浮かびます。そのため、どんな書類なのだろう?と疑問に思うこともあるかもしれません。また、相続を専門的に扱っていなければ、一般的にはなかなか聞きなれない書類かと思います。遺産分割協議書とは、相続が起こった際に相続人の間でどのように財産が分割されたのかといった話し合いの結果を記載する書類のことをいいます。では、どのような理由で作成し、提出先はどこになるのでしょうか?今回の記事では、遺産分割協議書の作り方や遺産分割協議書を使用する手続きの流れについて順番を追って紹介していきます。手続きの流れここでは手続きの流れについて順番を追って紹介していきます。遺言書が有るのかどうか?相続が発生した場合の手続きの流れとして、まず遺言書の有無を確認します。遺言書があった場合、遺産分割協議で相続人の間で自由に遺産を分割できなくなる可能性も出てくるため、遺言書の確認はとても重要な作業になります。そして遺言書の有無の確認後、遺言書がなかった場合、誰が相続人なのかを確定させていく必要があります。相続人は誰なのか?そこで誰が相続人に当たるのかを確認する方法として、戸籍謄本を確認する方法があります。入手方法として、役所で被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本を発行してもらい確認していきます。この確認によっては、今まで存在を知らなかった相続人がいるケースも考えられるため、こちらもしっかりと調査する必要があります。相続財産はどのくらいあるのか?相続人の確認後、相続財産がどのくらいあるのかを確認しなければなりません。この際、後にトラブルに発展する可能性もあるため、可能な限りその時点での財産の額を確認する必要があります。それでも万が一新たな財産が見つかった場合、どうするのかも念のため相続人の間で話し合っておくことをおすすめします。また、相続人が1人の場合は1人で引き継げばいいだけですが、相続人が複数人いる場合は、遺産を相続人ごとに分割する話し合いをしていく必要があります。この相続人の間で行われる遺産分割の話し合いのことを遺産分割協議といいます。遺産分割協議遺産分割協議書は、この遺産分割協議で行われた話し合いの結果をまとめた書類になります。財産の分割については各相続人による話し合いが必須となります。その際、口頭だけでは言った言わないなどの思わぬトラブルが生じる可能性もあります。このようなトラブルを防ぐため、遺産分割協議書という書類に相続人同士の話し合いの結果をまとめる必要があります。このような役割から、遺産分割協議書はいわば契約書のような役割を持っていると言えます。また、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。例えば相続人の中に未成年者が含まれている場合は、未成年者の代理人も含めて遺産分割協議を行わなければなりません。もし相続人が欠けた状態で遺産分割協議を行っても、その協議は無効とされます。そのため被相続人の出生から死亡までの謄本を取得し、相続人を正しく調査することが重要となるのです。遺産分割協議書が必要な手続き遺産分割協議書は主に次の手続きに必要となります。預貯金の名義変更不動産等の名義変更登記株式等の名義書換相続税の申告各手続については後述します。このように遺産分割協議書によって、相続財産の名義変更をする際、誰にどの財産が分割されたか第三者が確認することが可能になります。こうした点から遺産分割協議書は、証明書のような役割を持っていると言えます。相続財産の名義変更等遺産分割協議書によって可能となる各種の手続きはどのようなものがあるのでしょうか?また、提出先はどの役所になるのでしょうか。ここでは遺産分割協議書を添付資料として使用できる各種手続きについて紹介していきます。預貯金の名義変更手続き(提出先:銀行等)銀行等の名義変更手続きは、被相続人名義の口座を解約し、相続人の口座に預貯金を移していく形になります。その際、どの相続人にいくらを移せばいいのか第三者から確認することが書類なしでは困難となります。しかし、遺産分割協議書があれば、遺産を誰が引き継ぐのかの証拠となるため名義変更の手続きに書類が必要となるのです。不動産等の名義変更登記(提出先:法務局)不動産等の名義変更は、不動産登記をすることによって行います。不動産登記については第三者が確認するために必要な手続きですが、自分で行うことは難しいため専門家に依頼して確実に行うことをおすすめします。その際、登記の必要書類として遺産分割協議書が必要となります。株式等の名義書換(提出先:証券会社等)株式の名義書換は、上場会社の場合、取引のある証券会社等で行います。その際に名義書換の根拠資料として遺産分割協議書が必要となります。相続税の申告(提出先:税務署)相続税の申告の際も、遺産分割協議書が必要となります。遺産分割の話し合いの結果によっては、相続税が高くなってしまう可能性も考えられます。そのため遺産分割の話し合いをする前に、相続専門の税理士等にどのような分割方法が相続税が低くなるのかを相談するのも有効な選択肢の1つと言えます。遺産分割協議書の作成方法[adsense_middle]書式などの要件遺産分割協議書の作成についての書式ですが、特に決まった書式はありません。そのため縦書きや横書き、手書きでの作成やパソコンで作成して印刷することも可能です。ここでは一般的な書式について紹介していきます。タイトル何の書類なのか分かりやすいように「遺産分割協議書」と記載するのが一般的です。本文の内容次に本籍地、最後の住所、被相続人(亡くなった人)の氏名を記載します。氏名の横には死亡年月日も記載しておきます。例として、下記のような内容になります。例本籍:○○県○○市○○町○○丁目○○番地○○号最後の住所:○○県○○市○○町○○丁目○○番地○○号被相続人:○○ ○○(令和○○年○○月○○日死亡)そして下記のような一文を入れるのが一般的です。上記の被相続人の相続人全員が、被相続人の遺産について協議を行い、次の通り分割することに同意した。この同意する一文の後、相続人ごとに財産の記載をしていきます。相続財産の記載について不動産について土地、建物などの不動産については、自宅などの自分たちだけが分かる書き方では、第三者が確認する書類としてはふさわしくありません。そこで第三者が確認しても意味が通るように登記事項証明書(登記簿謄本ともいいます)の記載に従って正確に記載することが求められます。仮に間違えて記載してしまうと、法務局での手続きの際、受け付けてもらえない場合があるので注意が必要です。例としては土地の場合は所在、地番、地目、地積の順に記載し、建物の場合は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などの記載が必要となります。例を挙げると下記のようになります。例1.相続人○○ ○○は次の遺産を取得する。<土地>所在:○○市○○町○○丁目地番:○○番○○地目:宅地地積:○○㎡<建物>所在:○○市○○町○○丁目家屋番号:○○番○○種類:居宅構造:木造かわらぶき2階建床面積:1階○○㎡2階○○㎡現金、預貯金について現金の場合は、金額に換算できるため金額をそのまま記載して問題ありません。また預貯金の場合は、金額の他、銀行名、支店名、預金種類、口座番号の記載が必要となります。預貯金の金額は銀行等から残高証明書を取得して、正確に記載する必要があります。理由として、遺産分割協議書は相続税申告の際の添付書類としても使用するため金額の記載があると、相続税申告の際に税務署のほうでも遺産の分割内容が把握できるためです。例として、記載内容としては下記のようになります。例2.相続人○○ ○○は次の遺産を取得する。<現金>金○○○○○○円<預貯金>○○銀行○○支店普通預金口座番号○○○○○○口座名義人○○ ○○金額○○○○○○円株式について株式については会社名、株式の種類、株数の記載が必要です。例として、下記の通りになります。<株式>○○○○株式会社普通株式○○○株その他入れておきたい文言について遺産分割協議の際は、全ての財産について話し合いをしたつもりでも、新たに財産が見つかる場合もあります。そのような場合もトラブルに発展することを未然に防ぐために、新たに財産が見つかった場合はどうするのかを記載しておくことをおすすめします。例として次のように記載します。3.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人○○ ○○がこれを取得するものとする。人の気持ちは変わりやすいものなので、その時考えればいいなどと安易に構えていると思わぬトラブルに発展する可能性があります。面倒かもしれませんが、この一文については誰が相続するのかよく話し合いの上、記載しておくことをおすすめします。日付、住所、氏名の記載と押印最後に記載した日付と相続人ごとに住所、氏名を自署し、押印するのが一般的な書き方になります。なお押印の印鑑ですが、認印ではなく実印での押印が望ましいです。例としては、下記の通りとなります。例上記の通り、遺産分割の協議が成立したので本書面を○○通作成し、署名押印の上、各自1通ずつ保管する。令和○○年○○月○○日住所相続人○○ ○○実印住所相続人○○ ○○実印住所相続人○○ ○○実印遺産分割協議書の作成枚数遺産分割協議書が複数ページにわたってしまうようでしたら契印も必要となります。印鑑をページとページにまたがるように各相続人が押印するようにして下さい。遺産分割協議書の作成枚数は、公平に相続人の人数分作成するのがよいでしょう。なお提出については写しでも受け付けてもらえる場合もありますが、原本を提出して原本還付の手続きの上、原本を返還してもらうことをおすすめします。参考:各相続人が集まるのが距離的に難しい場合各相続人がそれぞれ離れた地域に住んでいて、一同に会するのが難しいケースもあります。このような場合は、電話などで連絡を取り合い、最終的な書面を郵送でやり取りして自署押印してもらうというのも方法の1つになります。遺産分割協議書の作成を専門家に依頼するメリット、デメリット[adsense_middle]専門家に依頼するメリットここまで遺産分割協議書の作成について紹介してきましたが、あくまでも一例にすぎず、ご参考までにお考えいただきたい点にご注意ください。また、自作で書類を作成するのはチェックも大変ですし、想像以上に労力を要するものと思います。そのため遺産分割協議書の作成を専門家に依頼することも一つの方法としておすすめします。専門家に依頼するメリットとして、自分で作成すると万が一修正しなければならない箇所が見つかった場合、何度も作成し直したりする手間が生じる可能性がありますが、専門家に依頼すれば手間もかからず正確な書類が出来上がります。また相続税申告についても遺産分割協議書の作成とともに専門家に依頼している場合は、相続税の節税についても期待することができます。専門家に依頼するデメリット一方デメリットですが、なんといっても費用がかかることが挙げられます。専門的な書類も多く、また相続財産の金額によって報酬を決める税理士も多いため、相続財産の金額によっては思わぬ高額な費用が発生する可能性もあります。しかし初めて作成する人は、自分で作成するとどうしても時間がかかってしまいます。専門家に依頼すればその分時間の節約が期待できますし、より短時間で正確な書面が作成される可能性があります。このようにメリット、デメリットを考えると、遺産分割協議書の作成を専門家へ依頼することも選択肢の1つとして検討の余地はあるかと思います。遺産分割協議書に関するまとめ以上、遺産分割協議書の作成方法と手続きの流れについて紹介してきました。遺産分割協議書の作成は慣れていないと時間も手間もかかってしまい、間違えてしまうと手続きが進まなくなる可能性も出てくるので専門家に依頼することをおすすめしたいと思います。手続きの流れとしては、相続の発生、相続人の調査、相続財産の把握、遺産分割協議書の作成、相続税の申告、各相続財産の名義変更というのが一連の流れとなります。この記事を参考に、少しでも手続きがスムーズになれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
2019年09月24日2019年10月から消費税が原則10%になります。増税前にセールやキャンペーンなど財布のひもを緩めるお店が増えていますが、本当に消費税増税前に買ったほうがいいものは限られています。 今回は、消費税増税前に買ったほうがいいものと買わないほうがいいものを仕訳してお伝えします。 大前提として必要なものは買い、不必要なものは買わない当たり前のことのようですが、必要なものは買い、不必要なものは買わないことが大前提です。 例えば、10万円(税抜)の品物の消費税増税の2%は2,000円ですが、増税前に購入した場合の品物の総額は108,000円になります。必要なものであれば増税前に2,000円安く買えると判断できますが、不必要なものであれば108,000円の無駄遣いになってしまう可能性もあります。消費税増税前のセールやキャンペーン等に踊らされて不必要なものを買うことにならないかまずは考えられると良いでしょう。 消費税増税前に買ったほうがいいもの・したほうがいいもの消費税増税前に買ったほうがいいものは、増税後に値下げしないもの・しにくいものが中心となります。【1】定期券・回数券・航空券・テーマパークや映画館等のチケット使用期限内に使うことが前提となりますが、消費税増税すると値下げしない場合がほとんどですので、予算や計画を立てた上で、期限内であれば使えるチケット類は増税前に購入すると良いでしょう。期限切れや紛失には注意しましょう。【2】書籍・カルチャースクール等習い事の費用・保険適用外の治療や健康診断・修理費用・たばこ・市販薬・化粧品等これらに共通するのは(市販薬や化粧品は一部の商品で値下げとなるものもありますが)値下げをほとんどせず、価格が決まっているものです。価格本体の変更はありませんが、消費税2%分の負担が単純に増えることとなります。歯列矯正やインプラントであれば、100万円を超えるケースも少なくありませんので、予定があれば、増税前に治療が行えるか確認すると良いでしょう。 消費税増税前に買わないほうがいいもの消費税増税後も支払い総額が変わらないもの、安くなる可能性のあるものは、無理に駆け込んで購入する必要ありません。 【1】食料品等の軽減税率(8%)が適用されるもの酒類・医薬品を除く飲料品、健康食品を含む食料品は2019年10月以降も持ち帰りであれば8%の消費税率のため、増税前に買い込む必要はないでしょう。なお、アルコール濃度1%以上の酒類や医薬品・医薬部外品は軽減税率が適用されないことも合わせて覚えておきましょう。【2】衣類、家具、家電すべてに当てはまるわけではありませんが、多くのお店で売っている衣類、家具、家電等は消費税増税後の売り上げの減少や価格の比較が容易であることから、増税後に値段が割り引かれる可能性が少なくありません。 また、2019年10月~2020年6月に実施されるキャッシュレスポイント還元制度(対象店舗でクレジットカードや電子マネー等のキャッシュレス手段で支払うと最大5%のポイント還元が受けられる制度)が適用されれば、この制度を利用して増税前よりトータルの支払いが減る可能性もあります。 【3】消費税が非課税のもの法律で消費税がかからないものがあります。一例としては、切手・はがき、商品券・プリペイドカード、保険料等が挙げられます。これらは、消費税が掛かりませんので、いつ購入しても価格は変わりません。 なお、郵便料金は2019年10月以降に上がるので、古い切手・ハガキ等を使用する場合は差額の切手を貼る必要があります(例:増税後62円ハガキの場合は、1円切手を貼って総額63円にする必要があります)。 今回の消費税増税は、軽減税率やキャッシュレスポイント還元制度等が関わってくるため、今までの消費税増税と比べて複雑化している面もありますが、無駄なものは買わず、必要なものを増税前に買うと良いか、増税後に買うと良いかの判断をすることは今までと変わりありません。駆け込み需要の雰囲気に飲まれ過ぎず、必要なものを適切な価格で購入できるように考える機会にしてください。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年09月19日親が土地や不動産などの財産を持っていて、もしその親が亡くなってしまった場合は相続が発生する形となります。しかし相続では自動的に手続きが行われるわけではないため、自分たちできちんと段取りを踏んで手続きを行っていかなければ損をしてしまうケースも考えられます。また一生のうちに多く経験することではないので、やり方がわからないという方も多いかと思います。今回の記事では、相続が起こってからどうすればいいのかを順番を追って紹介していきます。相続が発生した場合、まず何からしなければいけないの?今回のケースではお父様が亡くなって(この記事では、以降亡くなった人を被相続人といいます)、お母様と子供2人が相続人というケース、つまり被相続人と相続人が3人の場合という事例で紹介していきます。死亡届の提出お父様が亡くなって、まず最初にしなければいけないことは死亡届の提出です。こちらは市区町村役場へ、死亡の事実を知ったときから7日以内に行わなければならないことになっています。遺言書があるかどうかの確認同時に遺言書があるのかどうかについても確認しましょう。遺言書があると財産の分配に影響してくる場合があります。なお、今回のケースでは遺言書はなかったものとして紹介していきます。相続税の申告と不動産などの名義変更その後、行っていく手続きとしては相続税の申告と不動産などの名義変更といったところになります。なお。相続税の申告については、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内という期限があります。一方不動産などの名義変更には期限は特に定めはありません。土地、建物などの不動産の分割の方法死亡届の提出と遺言書の確認を行ったら、次に被相続人の財産を相続人の間で分割する話し合いをしていかなければなりません。その際、現金でしたら単純に金額を分配していけばいいのですが、土地や建物などの不動産の場合そういうわけにもいきません。それでは土地、建物などの不動産の分割にはどのような方法が考えられるのでしょうか?ここでは分割方法について紹介していきます。土地、家屋などの固定資産の分割方法の種類現物分割相続財産が土地だけで建物がない場合は、単純に土地の面積を相続人の人数で割って分割する方法が考えられます。これを現物分割といいます。代償分割相続財産が土地だけではなく建物も一体となっている場合は、1人の相続人が相続するというケースがあります。このケースでは他の相続人に対して代わりの財産を分配することで公平に財産を分配できる形になります。これを代償分割といいます。換価分割換価分割とは親から引き継いだ土地や建物などの不動産をそのまま引き継ぐのではなく、売却して現金に換金してから財産を分配する方法をいいます。以上が土地、建物などの分割方法の種類になります。なお、分割方法ではありませんが、これとは別に相続人複数で土地、建物などを共有するという相続の方法もあります。計算は煩雑になってしまいますが、賃貸用マンションを相続して共有名義にするといったケースもあります。協議の内容に沿った遺産分割相続人の間で話し合いがまとまった後は、遺産分割協議書という書類を作成し遺産分割の内容を書面に残します。口約束でのトラブルが防げるのはもちろんですが、この遺産分割協議書が存在することで、第三者に対してもどのような内容で財産を分配したのかを示すことができます。参考:なかなかまとまらない遺産分割協議上記のように遺産分割協議がスムーズにまとまれば良いのですが、相続人の人数が多くなってくると遠方に住んでいるケースなどもあり、なかなかスムーズに話し合いが進まないといった状況も考えられます。遺産分割協議が相続において一番の難関であると思います。そのため、被相続人が亡くなってすぐに遺産の分割の話し合いというのはなかなか難しい面もありますが、なんとか相続人同士で協力し合って早めに話し合いの場を持つことをおすすめします。相続税の申告と相続税の納付の手続き相続人の各人にどのように財産の分配をするのかを決定したら、その内容に基づいて相続税の申告準備を進めていく形となります。相続税の申告と相続税の納付の期限は同じで、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内という期限になります。こちらは期限を過ぎると罰則があるため、遅れないように申告と納付を行わなければなりません。ここでは相続税の申告と納付の手続きの流れについて紹介していきます。[adsense_middle]相続税の計算方法相続税は現金、預金や土地、建物といった不動産、その他の財産の価値を集計して計算していきます。集計した金額からは次の控除額を差し引くことができます。相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×相続人の人数今回のケースでは父が亡くなって、母と子供2人が相続人という形になるため、相続人の人数が3人になります。上記の控除額の計算式にあてはめると、相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×3人で4,800万円という形になります。なお相続税の基礎控除額が下がってしまったため、今後相続税を申告、納付する世帯が増えてくると思われます。相続税を納めるほどの額の財産はないという人も、念のため財産の価額を確認することをおすすめします。相続財産が基礎控除額を上回ってしまったら?上記のようにおおよその計算をして、もし財産の価額が基礎控除額を上回りそうだとなった場合は、相続税の計算をして申告と納付をしていく形になります。しかし現金や預金などの財産は金額が表示されているため、誰が計算しても同じ金額になりますが、建物や土地などは誰が計算しても同じ金額とはなりません。理由として、不動産の評価金額の計算方法が専門家によって異なる場合があるためです。このことから、専門家でも不動産などの財産の評価は難しいということがわかります。そのため相続税の計算や申告は相続を専門に行っている会計事務所などに依頼することをおすすめします。なお相続の経験があまりない会計事務所もあるため、ご注意ください。もちろん依頼する分、費用がかかってきますが、結果的には時間と手間を節約できることがメリットだと思われます。相続税申告の必要書類相続税の申告が必要というケースでは、どんな書類が必要となってくるのでしょうか?ここでは相続税の申告に必要と思われる書類を紹介していきます。被相続人出生時から死亡時までつながる被相続人の戸籍謄本(こちらの書類は被相続人が引越しが多かった場合などは、なかなか取得できないといったケースもあります。そのためこちらの書類は経験上、早めに準備することをおすすめします)住民票の除票(本籍が記載されているもの)相続人相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降の書類を準備してください)相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書(記名押印のしてあるもの)不動産の登記事項証明書不動産を相続する相続人の住民票(特例を使って申告する場合、確認のために必要となります)不動産の固定資産評価証明書相続人全員のマイナンバー相続人全員の身分証明書(マイナンバーカードであればひとつで大丈夫です)基本的には上記の書類が必要です。書類については会計事務所によって取り扱いが異なることもあります。会計事務所などに依頼する場合は、依頼している会計事務所などに確認していただければと思います。相続税の納付相続税申告書が出来上がれば、相続税の金額も計算されていることと思います。なお、相続税の納付については現金で納付することとされています。そのため現金や預金などの財産が多ければ、相続税の納付も相続財産から行うことができます。しかし不動産などの財産が多い場合は、評価額によっては現金や預金で用意できないケースもあります。そのため、相続税を納付するために不動産を一部売却するといった事態が起こる可能性も確認いただければと思います。財産の名義変更の手続き相続税の申告と納付を無事済ませたら、その流れでそのまま財産の名義変更をすることをおすすめします。名義変更には期限はありませんが、名義変更を放置するとデメリットが生じる可能性があります。ここでは名義変更の手続きに必要な書類及び、名義変更を放置した場合のデメリットについて記述します。[adsense_middle]名義変更の必要書類被相続人出生時から死亡時までつながる被相続人の戸籍謄本(こちらの書類は被相続人が引越が多かった場合などは、なかなか取得できないといったケースもあります。そのためこちらの書類は経験上、お早めに準備することをおすすめします)住民票の除票(本籍が記載されているもの)相続人相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降の書類を準備してください)相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書(記名押印のしてあるもの)不動産の登記事項証明書不動産を相続する相続人の住民票不動産の固定資産評価証明書本人確認書類こちらの必要書類についても、専門家に依頼する場合は、念のため専門家に確認いただければと思います。名義変更にかかる費用不動産の名義変更とは、手続きとしては不動産の名義を被相続人の名義から相続人の名義に変更するという手続きになります。また登記の申請には登録免許税という税金が別途かかる形となります。登録免許税の金額登録免許税の金額は、相続の場合、固定資産評価額の1,000分の4と定められています。例えば不動産の固定資産評価額が1,000万円の場合は、4万円といった形になります。このように自分で登記をする場合は上記のような書類が必要となりますが、相続税申告とほぼ同様の書類が必要となるため、相続税の申告まで進んでいる段階であれば書類を集めることは難しいことではありません。しかし自分で不動産登記を行うとなると思わぬ手間がかかってしまったり、時間も思いの外かかってしまうといった可能性が高いです。そのため不動産登記についても、相続税申告のときと同様、専門家に依頼することをおすすめします。不動産登記申請の専門家は司法書士です。依頼している会計事務所に提携している司法書士がいる場合は、相続税申告の際、名義変更の登記申請の必要書類ができている形になるため、専門家への費用が抑えられる可能性もあります。詳細については、会計事務所に相談して提携している司法書士がいるかどうかなどを確認することをおすすめします。名義変更を放置した場合に考えられるデメリット1.相続人各人の環境の変化遺産分割協議をした時点では、話がまとまっていたとしても他の相続人が不慮の事故などで亡くなってしまった場合など、思わぬ展開になることがあります。例えば今回は母と子供2人の相続人3人のケースを考えてきましたが、仮に子供の一方をAとして、Aに奥さんがいたとします。このAが不慮の事故で亡くなった場合は、相続の権利がAの奥さんに引き継がれます。名義変更を放置していると、本来遺産分割協議ではもう一方の子供Bに財産が引き継がれることになっていたとしても、Aの奥さんにも財産を相続する権利があるため、Aの奥さんが財産の分配に反対した場合は再度話し合いをしなければならないといった事態が起こります。このようなケースになってしまうと、遺産分割協議のとおりに相続することができないといった可能性が出てきてしまいます。2.書類の収集が煩雑化してしまう場合がある1のケースのように財産の引継ぎで揉めることはなくても、相続人の人数が増えてしまった場合はどのような問題が生じるでしょうか?例えば今回のケースでは母と子供A、子供Bは全員近所に住んでいたとします。しかし、子供Aが不慮の事故で亡くなってしまい、奥さんと、新たに子供Aと同居していない孫C、孫Dがいたとします。孫C、孫Dが近所に住んでいなかった場合は、それだけで書類のやりとりが煩雑になってしまいます。この上、孫C、孫Dが財産の分配に反対してきたとしたら、余計に手続きが煩雑化してしまいます。このようなケースになってしまうと話し合いの場を持つことも困難でしょう。名義変更は早めに行うべき以上のように、引き継ぐはずだった財産が引き継げなくなってしまう可能性も出てきてしまうのです。このように相続人各人の環境は永遠に不変のものであるとは言い切れません。権利を確定する意味でも、名義変更などの手続きはいつでもできるといって放置せず、なるべく早めに行う必要があると言えます。土地を相続する方法に関するまとめここまで紹介してきたように相続の発生は、人の一生が終了してしまうという重大な出来事であるため冷静に対処することが難しいですが、まずは落ち着いて被相続人の死亡届と遺言書の有無を確認しましょう。その後、相続税の申告を専門家に依頼することと、相続財産に土地や建物などの不動産があれば名義変更を専門家に依頼すれば、まずは一安心ではないでしょうか。流れとしては、被相続人の死亡届、遺言書の有無の確認相続税の申告、納付財産の名義変更といった形です。なお2、3は同時に進めていくことも可能です。詳細は専門家に確認していただくことをおすすめします。本記事が少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
2019年09月07日こんにちは、婚活FP山本です。あなたは「独身税」を聞いたことがあるでしょうか?ざっくり「独身なら(割増の)税金が発生」というものです。少なくとも今のところ、そんな税金は日本にはありませんが、将来的には分からないかもしれません。もし実施されるとしたら……あなたはどう思うでしょうか?そこで今回は、この独身税について議論の背景や海外の実例、取り巻く可能性についてお伝えします。あなたの人生に、お役立て下さいませ。実は日本でも独身税が議論されたことがある!まずは、日本における独身税の背景についてお伝えします。冒頭通り、独身税とは文字通り独身の方にかける税金です。こうすることで独身者に早期の結婚を促すと、少子化対策に繋がるという考えになります。今の日本でも、少子化は深刻な問題ですからね。また「既婚者の負担を軽減する」という目的もあります。結婚すると、特に教育費を中心に独身者よりも支出が増えますからね。既婚者の負担増を独身者に補ってもらいたいというのも税金の理由です。独身者は独身貴族として、少なくとも既婚者よりは余裕があるはずと考えられているのが理由になります。つまり、少子化対策と既婚者支援の一挙両得になりうる策が「独身税」です。どちらも十分な問題ながら効果的な策が中々見つからないため、過去には実際に日本でも独身税が議論されたことがあります。それほど、切羽詰まった状況とも言えるかもしれません。かほく市ママ課のお願いに過ぎなかった…が最近では2017年に、石川県かほく市のママ課(一種のボランティア団体)が、行政との意見交換会で「独身税」を要望したことで議論が再燃しました。「子育てで生活が苦しい。独身者に支援をお願いできないか?」という内容です。結局、実現しませんでしたけどね。あなたは、このママ課の要望をどのように感じましたか?少なくとも、未だに賛否の声があって結論は出ておりませんし、議論さえ進んでいません。もし実際に導入されたら、日本はどのようになるのでしょうね。海外で独身税が導入されたことがあった!次は、海外の実例についてお伝えします。実は海外では、実際に独身税を導入した国がいくつかありました。有名なところでは「ブルガリア」でしょうか。1968~1989年で導入されました。ちなみに導入の理由は、今の日本と同じく「少子化への対策」としてです。その結果は……大失敗となりました。導入前は2.18%だった出生率が1.86%に下がり、さらに結婚数自体も下がってしまったのです。増税で独身者がお金を貯めにくくなり、余計に結婚が遠のく結果になりました。出生率は「形だけの結婚」が増えたため……でしょうか。他にはフランスも有名かもしれません。ただ、どちらも現在は廃止されています。独身税の失敗は他にも原因があるのかもしれませんが、少なくとも上記の理由は十分にありえるでしょう。同じものを日本に導入したら、同じ結末を迎える可能性が高いかもしれません。独身税での結婚は少子化対策にならない?確かに子供を望むなら、まずは前提として結婚があるのは基本です。しかし、結婚したとしても子供をつくるかどうかは別問題と言えます。現に子供のいない夫婦も多いです。前例であるブルガリアのように、偽装のような形だけの結婚が増えるだけかもしれません。また仮に「子ナシ税」のようなものができたとしたら、独身税と同じく余計に子供を育てるお金や気力を失う結果になりかねないでしょう。少なくとも、海外の独身税のままの結婚では、少子化対策にはならないのかもしれませんね。独身税が日本で実現する可能性はゼロではない今度は、独身税が日本で実現する可能性についてお伝えします。結論から言えば、実現の可能性は「ゼロではない」と言えるでしょう。なぜなら「賛成意見も相応にあるから」です。否定意見ばかりならともかく、賛成も多いなら「議論の余地アリ」と言えますからね。そもそも、独身税以上の少子化対策……あなたなら、どんな方法を思いつきますか?「高額な出産祝い金」という手段が言われることもありますが、これはこれで一つの差別ですし財源も問題になります。何も対策を取らなければ、それだけ少子化が進んでしまいますね。既婚者の負担軽減についても、理屈は似ています。必要なだけ消費税を上げるなら、それはそれで問題でしょう。他に有効な策が見つからない以上、独身税が実現する可能性は残ると言えます。憲法違反という理由は変わることもある簡単に言えば、日本の憲法という最高の社会ルールで、国民は「法の下で平等」と保障されています。つまり「不合理な差別は認めない」というわけです。既婚と未婚、子アリと子ナシ、いずれも平等のはずなら、独身税は憲法違反になる可能性が出てくるのかもしれません。しかし憲法も絶対ではありません。直接の変更もあれば、解釈や裁判所の判断などによる変更もありえます。すでに「一定の差」もありますし、これが拡大される可能性もゼロではないでしょうね。年収が低い人ほど結婚すべきなのも事実さらに、独身税の効果である結婚への誘導や既婚者支援についてお伝えします。前者は、基本的にありえません。結婚するもしないも、本人の自由です。また既婚者は自由意志で結婚したはずなので、それで「生活や子育てが苦しい」などと騒ぐのは、自業自得と言えます。……ただ、年収が低い人ほど結婚すべきなのも一つの事実です。最終的に生活に困るのは、むしろ独身者になりますからね。そういう意味で、結婚への誘導は悪いわけではありません。また最終的に支援が必要になるのは独身者だからこそ、まずは既婚者を支援するのもアリと言えます。でないと、同様に自業自得と切り捨てられてしまうかもしれませんからね。結婚したくてもできない人を見捨てるのか?独身税を考える時には、「結婚したくてもできない人」への対処にも悩みます。もはや結婚は、頑張ったら誰もが普通にできることではありませんからね。同様に「本気で年収が低く、上がらない人」も沢山います。だから結婚できない人は、どうやって結婚したらいいのでしょう。少なくとも、皆に結婚を促し、皆で子アリ既婚者を支援すれば良いわけではありません。人も生き方も「多様化の時代」です。ぜひあなたも、あなたなりの意見を考えてみましょう。[adsense_middle]結婚税、独身控除ができる可能性もあるかも?最後に、独身税を考える時の注意点をお伝えします。今のところ、独身税は「独身者負担・既婚者優遇」という方向性です。このため、既婚者ほど独身税を歓迎しがちといえます。しかし今は3組に1組が離婚する時代ですから、「明日は我が身」で考えることも大切です。それに、すでに既婚者は「配偶者控除」「3号被保険者」などで独身者より優遇されています。平等を保つために「結婚税」ができるかもしれませんね。最終的に困るのは独身者だからこそ「独身控除」ができるかもしれません。こんな可能性もゼロではないでしょう。「保育園落ちた。日本死ね」のように、あなたの意見で国が動く可能性もあります。発信はもちろん自由ですが、客観性や思いやりの気持ちは忘れないようにしましょう。目先の税金や損得より長期的ライフプランを!仮に独身税が導入されたら、あなたは独身だったら結婚しますか?結婚税が導入されたら、既婚者なら離婚するのでしょうか?国がどうなるかは誰にもわかりません。ただ大切なことは、目先の税金や損得より、長期的に未来を見据えたライフプランによる判断です。独身税の導入などの可能性も踏まえつつ、しっかり未来を見据えて、結婚を含めた行動を考えていきましょう。独身税はともかく、未婚や少子化は確かな問題独身税はともかく、未婚や少子化は確かな問題です。一方で年収が上がらない事、結婚したくてもできない事、教育費の負担感なども大きな問題といえます。この世は不十分で問題だらけですが、だからこそ国まかせにするのではなく、個人は個人で自助努力に励んでいきましょう。
2019年09月03日生命保険は、死亡などによって保険金が支払われるものから、病気やけがによる治療によって保険金が支払われるものなど様々な種類があります。なお、税法上、受け取った保険金は、税金がかかるものとかからないものに分けられる特徴があるのですが、相続税がかかる生命保険とは、基本的に受け取った死亡保険金の金額や保険契約が大きく関係します。そこで本記事では、生命保険と相続税の関係についてポイントの解説を進めていきます。重要!相続税は、すべての人にかかる税金ではない法定相続人には、配偶者、子供、父母、祖父母、兄弟姉妹など、家族構成や人数が大きく関係しますが、妻や夫といった配偶者は、常に相続人になる決まりとなっています。なお、上記図の計算例では、夫が死亡し、法定相続人が配偶者である妻と子供1人の場合となっており、計算式にあてはめて計算すると相続税の基礎控除額は4,200万円と計算されます。法定相続人には順位が設けられている法定相続人は、法律上、故人の財産を相続できる順位が設けられており、ポイントは以下の通りです。法定相続人には、第1位順位から第3位順位まであり、ポイントは、先順位の人が1人でもいる場合は、後順位の人は相続人にならないところにあります。たとえば、上記図の若草太郎さんが亡くなった場合で長男と長女が生存している場合、法定相続人は、配偶者と子供である長男および長女の3人になります。仮に、若草太郎さんが死亡した時点で両親や兄弟姉妹などが生存していたとしても法定相続人にはあたらず、基本的に財産を相続する権利が発生しません。相続税を考える上で、基礎控除額がいくらになるかが大きなポイント前項の例の場合、相続税は、故人の財産が4,800万円(3,000万円+600万円×3人)を超えた場合に課されると判定することができ、相続税を考える上において、まずは、基礎控除額がいくらになるかが大きなポイントになります。そのため、たとえば、生命保険の受け取った死亡保険金のみをベースに単独で相続税が課されるものではないため、故人の財産をトータルで考えることが極めて重要になるわけです。生命保険と相続税の重要ポイント配偶者=1,500万円-1,500万円×1,500万円÷3,000万円=750万円長男および長女=750万円-1,500万円×750万円÷3,000万円=375万円計算の結果、配偶者に課税される死亡保険金の課税対象は、受け取った死亡保険金1,500万円の内750万円、長男および長女に課税される死亡保険金の課税対象は、それぞれ受け取った死亡保険金750万円の内375万円ということになります。相続税の基礎控除額を超えない場合、相続税がかかることはない若草太郎さんが死亡した場合における相続税の基礎控除額は、法定相続人が配偶者、長男、長女の3人で4,800万円(3,000万円+600万円×法定相続人の数)です。この時、配偶者が受け取った死亡保険金の内750万円、長男および長女が受け取った死亡保険金の内375万円ずつが課税対象となるため、合計1,500万円(750万円+350万円+350万円)が相続税の課税対象になります。この時、基礎控除額4,800万円よりも金額が低いため、結果として、それぞれが受け取った死亡保険金に対して相続税がかからないと判定をすることができます。相続税が課税されるパターンは、基礎控除額を超えた場合相続税が、かからない場合故人の財産合計は6,600万円に対して、故人の債務や基礎控除額を合算した合計金額は6,700万円となっており、これらを差し引きますと、マイナス100万円(6,600万円-6,700万円)です。計算の結果、マイナスになった場合は、0円として取り扱われることになり、このような場合、相続税がかからないことになります。相続税が課税される場合、いつまでに税金を支払いする必要があるのか相続税が課税される場合は、相続税の申告期限までに相続税の申告書を作成し、亡くなった人の住所地を所轄する税務署に対して申告書類を提出しなければなりません。なお、相続税の申告期限とは、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うことになっており、たとえば、1月10日に死亡した場合、その年の11月10日が申告期限になるイメージです。ちなみに、相続税の納付は、原則として申告期限までに金銭で納めることになっておりますが、延納や物納といった制度によって納付することもできます。相続税を納めている人の現状国税庁が公開している最新の統計データによると、2017年度に相続税が課税された人の割合は、8.3%となっており、さほど多くないことが分かります。相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられた法改正があってからは、相続税を納める人の割合が4%台から8%台に増加しているものの、それでも、全体的に見ると、相続税を納めなければならない人というのは、ごく僅かであることが見て取れます。相続税の納税金額を見ると、全体的にかなり高額であることも分かり、相続税は、自分とはご縁のないものと感じるのも無理のない話です。とはいえ、特に、不動産や上場株式をはじめとした金融商品は、故人の財産を評価する際、専門的な知識がなければならず、安易に考えることは、リスクが伴う場合があります。仮に、不動産や金融商品を多く抱えている場合は、税理士を通じて財産評価や相続税対策をしておくのが望ましいでしょう。まとめ生命保険の契約状況と受け取った死亡保険金額によって相続税がかかる場合とかからない場合があります。ただし、相続税は、故人の財産から故人の債務や非課税金額、基礎控除額を差し引くことで、はじめて、相続税がかかるのか、かからないのかが判定できるものとなります。そのため、生命保険のみの単独で判断できるものではなく、全体的な財産状況と債務状況を把握することが必要になることを理解しておく必要があります。
2019年08月18日相続について親子間で話し合うのは難しいと感じている人は少なくないようです。自分たちの「貯蓄」や「資産運用」の考え方が親と違うために、もめごとになったり、親の相続資産を自分たちに与えてもらえないのではないかという不安を解消するために知っておくべきことをご紹介します。■ 1.相続トラブルは資産がない家の方が多い相続に関して「うちは資産がないから争いにもならないし、相続税も支払わなくても大丈夫」と思っている人はいませんか?意外に思うかもしれませんが、そのような家庭の方が相続トラブルは起こりやすいのです。1-1なぜトラブルが起こるのかST8818 / PIXTA(ピクスタ)両親のうち父親が亡くなった場合に、資産は自宅と土地とわずかな銀行預金だけで、母親が自宅に死ぬまで住み続けたいと思っているというケースは多くあります。そのような場合、資産がない家庭だと不動産を現金化できないため、法定相続分通りに遺産を分割しにくくなります。また、民法が改正され、今年から「配偶者居住権」という法律が新たに加わりました。これは、「相続開始時に被相続人所有の建物に居住する配偶者が、相続開始後、終身その建物を無償で使用することができる」という権利です。法定相続分通りに遺産分割しても、母親が自宅に住んでいるのであれば、相続した子どもが売却や賃貸で収益を得ようとしても、現実的には難しくなります。このような理由から資産が少ない家庭の方が相続トラブルになりやすいのです。いくら遺産が少なくて兄弟の仲がよくても、お金を目の前にして不公平感を感じると、相続が「争続」になるケースはどこの家庭にも潜んでいます。1-2相続について話し合っておいた方がよいケースは?Tony / PIXTA(ピクスタ)相続について話し合っておいた方がよいのは次の3つのケースです。相続税がかかることがあらかじめ分かっている場合相続税はかからないが、子どもが複数いて、今親が住んでいる家など親の資産を、子どもが均等に分けるのが難しいと予想される場合子どもが相続を受けたくないと思っているものを、親が資産として持っている場合。老朽化した賃貸住宅を親が所有していて、相続を受けても賃貸経営を続けていくことが難しい、売却しても、かえってコストがかかってしまうなどのケースです。相続の相談は切り出しにくいかもしれませんが、お盆で帰省するときや、家族で集まる機会があるときに、話しておくべきです。■ 2.どのように資産を分けたらいいのかHiroS_photo / PIXTA(ピクスタ)相続の場合、遺言書があれば、それが一番優先されると思っている人が多いようですが、実は違います。一般的には、「相続人の合意>遺言書>法定相続分」となり、相続人の合意が一番優先され、別の分け方ができるのです。2-1一番良いのは相続人の話し合いでの合意すべての相続人が話し合い、合意するのが一番良い相続の方法です。そのために、すべての相続人に「相続財産」「法律の定め」「自分の気持ち」を隠さずにすべて正直に話すこと家と土地は、なるべく一人の所有者となるようにすべきことを心がけましょう。最初から正直に話さないと、法定相続分と大幅に割合が異なり、自分が多くもらうことになったときに、ほかの相続人から 「なんとなくあやしい」「何か隠し事をしているのでは」 という不信感がめばえてしまい、ここから争いに発展するのです。また、固定資産税の支払いや、 不動産の維持費の支払いなどが複雑となるため、不動産などの共有名義は避けましょう。不動産をもらう人が、もらわなかった相続人に現金で支払うなどすることで解決できます。2-2生前贈与を検討した方がいい場合もMills / PIXTA(ピクスタ)親の老後の生活資金が確保できている、親が亡くなった後に子どもへの金銭的(現金)な相続をする準備ができている家庭なら、「生前贈与」を考えてもよいでしょう。子どもが自分たちの住宅を購入する際に、親から子どもが住宅を購入する時点で親に生前贈与をしてもらっておくことで、住宅取得資金等の非課税制度や相続時精算課税など、優遇税制の対象になる場合もあるからです。また、住宅購入資金の融資額やその利息分の削減ができるので、資金面で楽になります。■ 3.まとめsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)相続が発生する前に親に対してストレートに相続について相談すると、自分の子どもに「あなたはもうすぐ死ぬくらいの歳だ」と言われたようなものと感じ、不快に思われることもあると思います。「もっと年をとったとき今の家に住み続けたいか」など、将来の意向を聞く、相続セミナーに誘ってみるなどの方法で、相続に関して注意を促しましょう。帰省の機会が多い今の季節に、相続のことを話し合うチャンスづくりをしておきましょう。
2019年08月16日財産を相続する際に、遺族間で揉めてしまう場合があります。子どもの1人が実家の敷地に住宅を建てている場合は特にその可能性が高くなります。相続で揉めないために、親が元気なうちにやっておくことがあります。父親:死亡母親:実家の敷地の土地所有者子どもA:実家の敷地に自分名義で家を建てた、かつ母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有する子どもB:母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有するという場合どんなことをすれば、トラブルを未然に防ぐことができるか考えてみましょう。■ 1.なぜトラブルが起こるのかmidori / PIXTA(ピクスタ)両親のうちの片方が亡くなる「一次相続」で、生存している母親が土地を相続する場合は、子ども同士のトラブルは起こりませんが、その後、母親が亡くなったときの「二次相続」で、遺産分割を巡り兄弟姉妹間のトラブルに発展する可能性があります。Aは母親名義であった土地に家を建てているので、土地を自分名義にしたいと思うのが自然ですが、母親の相続財産が土地しかないとき、法定相続に従うと土地はAとBの共有名義になります。土地を子どもAとBが共有する形で相続すると、やがて困ったことが起こります。子どもAにとっては、自分の家が建っている土地を自由にできません。子どもBにとっても、土地を売却して換金するにはAの承諾が必要ですし、そもそもAの家が建っている土地に買い手は現れないでしょう。Bにとって固定資産税がかかるだけの不要な財産となってしまいます。■ 2.トラブル回避のための予防策はhoriphoto / PIXTA(ピクスタ)トラブル回避のためには、母親が元気なうちに行動を起こす必要があります。親が亡くなったとき、兄弟姉妹間のトラブルがなく、円滑に遺産分割が進み、遺族が納得して相続する方法について、生前に親が子どもに提案するのがベストです。親の意識が足りない場合は子どものほうから働きかけましょう。2-1 事前に母親から子どもA、Bに意思を伝えるbee / PIXTA(ピクスタ)事前の親子間の合意形成をすれば、トラブルを未然に防げます。母親から、AとBに対して、事前に「家を建てているAに、将来自分の土地を相続させたい」という自分の考えを明確に伝え、互いに納得してもらいましょう。AとBには母親の財産を均等に相続する権利があるものの、相続時に当事者間で合意できれば、実際にはどのような分け方をしても構わないからです。しかし、生前の合意には法的拘束力がありません。実際に母親が亡くなった後に、Bが自分の権利を主張しはじめた場合は、トラブルになります。2-2子どもBに土地と同じ価値の財産を準備するAとBには、母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利があるため、AとBに相続させる財産をあらかじめ特定しておく方法があります。そのために、母親は生前に遺言を書いておくべきです。Aに相続させたい土地の価値と同様の財産をBが相続できるように遺言に書いておくのです。2-3母親が遺言で子どもBの相続する権利を縮小させるテラス / PIXTA(ピクスタ)Aに相続させたい土地の価値と同等の財産を、Bに準備できない場合でも、母親が遺言を書けば、Aが土地を相続できる権利を取得させることはできます。しかし、「遺留分」という法律のために権利をまったくなくすことはできません。この家族構成の場合、Bの遺留分は母親の財産の4分の1となります。そのため母親が、最低限全財産の4分の1を子どもBに相続させ、土地1,000万円を含めその他の財産をAに相続させる内容の遺言を書けば、土地を確実にAに渡すことができます。ただし、母親が亡くなったあとのAとBの関係が悪化する可能性があることは否めません。2-4どの方法でも話がまとまらない場合は、代償分割を母親が亡くなった後、AとBが協議をして、代償分割という方法を使えば、Aが土地を相続することが可能です。代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が不動産などの現物の資産を相続し、他の相続人に代償金(または代償財産)を支払うことで遺産を分け合う方法です。たとえば、1,000万円の土地をAが相続し、あとでAからBに500万円の代償金を支払います。こうすることで、結果的にはAとBが公平に相続したことになります。母親が元気なうちに話がまとまらない場合はこの方法を選択するのもよいでしょう。■ 3.まとめpixelcat / PIXTA(ピクスタ)土地を取得するための費用がかからないと、実家の敷地に住宅を建てる人は将来的に兄弟と揉める可能性があります。親が元気なうちは、土地を親から無償で借りる形になり、問題はありませんが、親が死亡した後にトラブルが起きる可能性があります。残された子どもたちにわだかまりが残らないように、家族全員で相続について話し合うようにすることをおすすめします。宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター吉井希宥美
2019年08月10日固定資産税は、土地や建物など不動産を所有している人に対して課される税金です。一戸建てやマンションを所有している場合には、土地と建物それぞれに固定資産税がかかります。マンションにも同様に課税されます。不動産を共有している場合は、持分に応じて固定資産税がかかります。では、固定資産税はどのように算出されるのでしょうか。■ 1. 固定資産税とは固定資産税は先に述べたとおり、土地や建物など不動産を所有している人に対して課される税金です。3年に1度見直しが行われています。固定資産税の納付書が送られてくるタイミングは、自治体によって多少異なりますが、毎年5〜6月頃に1月1日時点の所有者に対して送られてきます。年4回の指定月が期限となり、1回ずつ納めればいいようになっています。1-1.年の途中で不動産の所有者が変わったら1月1日時点の所有者に対し課税され、たとえ年の途中で不動産の所有者が変わっても支払い義務は1月1日時点の所有者となります。不動産の売買では一般的に、所有権の移転時を起点にし、移転時までを売主、移転後を買主の負担とし、日割り計算で買主が売主に支払うことが多いです。HappyRich / PIXTA(ピクスタ)1-2固定資産税の算定基準は固定資産税評価額固定資産税の税額の算出は、固定資産税評価額が基になっています。固定資産税評価額は実勢価格の70%程度を目安に決められます。実勢価格とは、実際の取引が成立する価格のこと。つまり、不動産の時価のことで、売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合う価格です。■ 2.固定資産税評価額hiroshi / PIXTA(ピクスタ)固定資産税評価額を知るにはどうしたらいいのでしょうか。2-1固定資産税課税明細書を確認する不動産の1月1日時点の所有者に対して市町村から送付される固定資産税課税明細書には、固定資産税評価額が記載されていますので、確認することができます。紛失の際には、不動産を管轄する区役所等で所得できます。取得には運転免許証等の身分証明書が必要となります。2-2固定資産税台帳を閲覧する各区市町村が所有する固定資産税台帳を閲覧して確認する方法もあります。毎年4月1日から第1期の納期期限日までの間、自分の土地と建物だけでなく、他の人の土地や建物の評価額も確認すること可能となります。帳簿所有者の情報は掲載されていませんが、評価額は掲載されています。料金は無料です。2-3評価額に納得できないときは評価額を確認して思ったよりも高いなど、納得いかない場合は、「縦覧制度」などで確認をしたうえで、各自治体にある固定資産評価審査委員会に対して不服を申し立てることができます。審査の申し出が可能な期間は決まっていて、その時期は各自治体で異なりますので、申請の際には期限を確認しましょう。■ 3.固定資産税を安くする方法がある評価額が高ければ高いほど、固定資産税は高くなります。居住用の家屋の敷地(住宅用地)については、固定資産税の負担を軽くするために住宅用地の課税標準の特例措置が設けられていますのでうまく使うべきです。特例の条件を満たす物件を購入することで、減税措置を受けることができます。HappyRich / PIXTA(ピクスタ)たとえば「小規模住宅用地」の特例措置があります。200平方メートル以下の部分は評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分は3分の1が課税対象になるという制度です。また新築の物件なら、一般の住宅なら3年間、認定長期優良住宅のマンションなら最長7年間、固定資産税が半分になる制度も利用できます。これらの措置を受けるためには、適用要件があるためチェックが必要です。■ 4.まとめkawamura_lucy / PIXTA(ピクスタ)固定資産税は、土地や建物など不動産を所有している人に対して課される税金です。算出は評価額を基に行われます。固定資産税の知識を知ったうえで課税標準の特例に該当する条件を備えた住宅選びを行えば、節税することが可能ですので、自分の土地や建物の評価額がいくらなのか確認しておきましょう。
2019年08月07日40年ぶりに「相続」に関する法律が改正され、一部を除き今月から施行されている。相続は「富裕層の問題」と思いがち。だが、裁判所に持ち込まれた相続事件の、実に3分の1が遺産1,000万円以下(’17年・最高裁判所)。“争続”を避けるため、早めの準備が必要だ。ただ小さな思い違いで、取り返しのつかない事態を招くことも。そこで経済ジャーナリストの荻原博子さんが、相続の落とし穴を解説してくれた――。【1】息子の妻も寄与分を請求できるこれまで、いくら介護を支えても息子の妻などに相続権はありませんでしたが、今後は貢献に応じた「特別寄与料」が請求できます。これが大きく報道されたため、期待する方も多いでしょうが、特別寄与料が法定相続人1人分より多いとは思えません。相続財産の1割程度と考えておきましょう。【2】自筆遺言書を法務局で保管自筆遺言書には紛失や隠匿、偽造などの不安がありましたが、法務局保管であれば安心でしょう。ただ死亡届を出したら自動的に、「遺言状があるよ」と連絡が入るわけではありません。家族が遺言書の存在を知らなければ、預けただけで開封されない可能性も。遺言書の存在や保管場所を、必ず家族に伝えておきましょう。【3】仏具は相続対象ではないが……相続税はすべての財産にかかるのではなく、墓地や墓石、仏壇仏具などは相続税がかかりません。以前は、これを“抜け道”として、純金製の仏具や骨とう価値の高い仏像などを子孫に残す方もいましたが、今ではNG。税務署に税逃れと判断されます。【4】借地なら「借地権」を相続借地に故人名義の家がある場合、土地は他人のものだから相続には関係ないと思う方が多いでしょう。しかし、借地には「借地権」があり、相続財産に含まれます。借地権は、借地年数にもよりますが土地の相続税評価額の6~7割が一般的。都心だと地価が数億円、借地権も億単位というケースもあります。早めに専門家にご相談を。【5】賃貸住まいに思わぬ費用が故人が賃貸住まいなら、荷物をすべて撤去し、借りる前の状態に原状回復して、賃貸契約を解除するまで賃貸料が必要です。家財の処分を遺品整理業者に依頼すると、広さによりますが2DKで10万~25万円かかります。【6】相続税は10カ月以内に現金で相続税がかかるのは、相続財産が、3,000万円+600万円×法定相続人の数を超えた場合です。法定相続人が妻と子2人なら、4,800万円が判定ライン。まずは、相続財産を計算してみましょう。相続税を払う方は、故人の死後10カ月以内に現金払いが原則。自宅など換金しづらい財産が多い方は、生命保険の活用も一手です。生命保険の死亡保険金は、現金で支給されるうえ、500万円×法定相続人の数以内は相続税がかからないからです。「相続財産は持ち家だけ」という家族が、“争続”に発展することも少なくありません。親が元気なうちに、相続の話を始めたいものです。
2019年07月19日「安倍政権において、消費税をこれ以上引き上げることはまったく考えていません」「今後10年ぐらいの間は、上げる必要はないと私は思っている」参議院選挙の公示日前日の7月3日に行われた日本記者クラブ主催の討論会。安倍晋三首相はこう語り、10月から消費税を10%に引き上げることに理解を求めた。「この状況下で“消費税を増税する”というのは“日本経済を破壊します”と言い放っているのに等しいのです。『10年間上げない』という言葉も、はたして額面どおりに受け取っていいかどうか……」そう憤るのは、京都大学大学院教授の藤井聡さんだ。6年にわたり、安倍内閣で内閣官房参与を務めたが、増税などに反対する「言論活動に注力するため」、昨年12月に参与の職を辞している。「すでに安倍政権になってから1世帯当たりの年間の平均所得は実質値で40万円も減少しました。10月の消費増税は、さらなる所得の落ち込みを招くでしょう」消費税は所得が低い人ほど、負担が大きくなる。ファイナンシャル・プランナーの有田美津子さんが解説する。「2%の増税による消費税の負担額は、年収252万円の世帯だと約3万9,000円、年収1,183万円の世帯だと約8万2,000円増えることになります。負担額だけ見れば高所得世帯のほうが大きいんですが、収入に占める負担額の割合は、低所得世帯になるほど、高くなります。年収が252万円の世帯では負担の増加率は1.54%、一方、1,183万円の世帯では0.69%です。つまり、低所得のほうが2倍以上も負担額の割合は増えている。消費増税は、所得が低い世帯ほど家計への影響が大きいんです」だが、これはあくまでも2%の増税が家計に与える直接的な影響にすぎない。所得は増えていないのに、税負担が増えれば、当然、消費を抑えて支出を減らさざるをえないことになる。藤井さんはその影響をこう指摘する。「消費は経済成長のエンジンです。消費が冷え込めば、物価が下落し企業業績も悪化する。その結果、労働者の給与が減ってしまう。’97年に消費税が3%から5%に増税されてから、1世帯当たりの平均所得は多いときで年間20万円減り、’13年にはピーク時より135万円も減少しました」10%への増税は、5%への増税時以上の影響を日本経済に与えるという。「10%という税率だと、買い物する際に、簡単に税額を計算できます。常に、税が意識されることで、消費行動に大きなブレーキをかけてしまうのです。とりわけ女性の場合、5%から8%への3%分の増税より、10%への2%分の増税のほうが、“購買意欲”を減退させる力が4.4倍も高いという研究結果もあります」(藤井さん・以下同)さらに、最悪のタイミングの増税となる。「『働き方改革』のために、残業代が減り、所得は確実に減っています。ここ数年、日本経済を活気づけていた“オリンピック特需”も終わってしまう」世界経済が好調だったおかげで、輸出企業が収益を上げて、日本のGDPは押し上げられていたが……。「米中の貿易戦争に、原油高。世界経済の見通しは立たない状況にあります。これまで日本経済を支えていた外需が、落ち込みつつあるのです。この経済状況下での増税は自殺行為だといっていい。現在、年間の平均所得は550万円ほどですが、10%の心理的効果も相まって、短期的には50万円、長期的には最悪のケースで200万円ほども、所得が減少すると考えています」
2019年07月16日「いまの景気状態で、消費税の増税が強行されれば、家計への影響は計り知れません。日本経済も間違いなく悪くなってしまいます」こう警鐘を鳴らすのは、政権与党の自由民主党内で、「消費増税の凍結」を一貫して主張してきた西田昌司参議院議員(60)だ。10月に予定されている消費税の10%への増税。7月21日に投開票が行われる参議院選挙では、「老後2,000万円不足」問題と同様に大きな争点になることは間違いない。そんななか、今回の参院選で3期目を目指す西田議員が、6月25日に本誌の取材を受け、消費増税反対の声を上げた。税理士を経て、京都府議を5期務めた後、’07年から参議院議員に。国会で「政治とカネ」の問題を鋭く追求する姿勢などから、“国会の爆弾男”の異名がある西田議員は、消費増税が日本経済をどん底に突き落とすと考えている。「アベノミクスで、景気はよくなっています。ただ、いちばんの問題は賃金が上がっていないこと。雇用が増えて、ようやく賃金も上がろうとしている局面で、消費税を10%にすれば、個人が消費に使えるお金が減ってしまいます」軽減税率の対象となるのは、持ち帰りの食料品など、一部の品目だけ。購入する店舗の規模によって、還元率が2%か5%かで変わる、ポイント還元も’20年6月末までの期間限定だ。「多くの人が外食や家族旅行などの消費を控えるようになるでしょう。これまで1カ月に1度だった外食が、2カ月に1度になれば、当然景気は悪くなりますよね。外食産業もお客さんが来なくなれば、そこで働く従業員にお金を払えなくなる。つまり、雇用が減り、給与も減る。すると、さらに個人消費が減ってしまう。こうした、負のスパイラルが日本中に拡大してしまうんです」だが、財務省が“国の借金”と表現する国債などは、現在1,000兆円ほどある。消費税の増税を行わなければ、将来世代にツケを回してしまうのではないか。「そもそも、国は中央銀行(日本銀行)を通して、通貨を発行することができます。いくら国債を発行しても、財政破綻することはありません」国債の信用度は金利の低さに現れる。現在の日本国債の金利は、0.1%という超低金利だ。「デフレ下のいまこそ、どんどん国債を発行すべきだと考えています。すると、通貨の量が増えるわけですから、物価が上昇するインフレになります。まずはデフレ脱却が最優先です。そして、目標とするインフレ率が達成されてから、消費税の増税を行えばいいのです」自国通貨を発行できる政府は、ハイパーインフレにならない限り、財政赤字を心配する必要はないという考えは、MMT(現代貨幣理論)として、世界中で注目されている。「日本は900兆円もの国債を発行していながら、破綻しないどころか金利が下がってきた。これを財務省はどう説明するのでしょうか?財務省は現実を見てほしい」デフレ脱却のためには、個人の所得が上がる必要がある。「企業の業績がよくて、株価がそこそこ高くなっても、従業員に給料として還元されないから、個人消費が増えない。さらに、働き方改革で残業代が減って、家庭に入る給料総額も少なくなっています。これでは、デフレから脱却できるはずはありません」財務省は、“すでに軽減税率などの準備を進めているので、いまさら消費増税を延期したら、大混乱になってしまう”として、反対意見を封じ込めようとしている。「先の大戦では、米国と戦うのは危ないとわかっていながら、日本は戦争に突き進んでいきました。“決まったから、やめられない”では大日本帝国陸軍と同じ。もちろん、凍結による混乱はあるかもしれないが、実際に経済が悪くなることを考えれば、どちらの混乱のほうがいいでしょうか」
2019年07月04日二世帯が同居すると、いろいろなメリットが生まれます。ここでは、二世帯住宅にすることで大幅な節税対策もなる優遇税制について。小規模宅地の特例や固定資産税、不動産取得税などの減税の適用など、その仕組みとポイントを解説します。「土地の購入費がかからない」「子育てを親に協力してもらえる」「親の介護がしやすい」などのほか、税制面でも優遇されるのです。■ 1. 相続時の「小規模宅地の特例」で相続税評価額が最大8割安くなるmmm / PIXTA(ピクスタ)亡くなった人が事業または居住していた宅地等のうち、一定面積までの部分については相続税の課税価格として計算される額を一定のパーセンテージで減額する制度が「小規模宅地の特例」です。1-1 被相続人等の事業用に供されていた宅地等適用の条件は?適用の条件は次のようになります。a.貸付事業以外の事業用の宅地等特定事業用宅地等に該当する宅地等 は400平米を限度に 80%減額b.貸付事業用の宅地等【一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等】特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 は400平米を限度に 80%減額貸付事業用宅地等に該当する宅地等は 200平米を限度に 50%減額【一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等】貸付事業用宅地等に該当する宅地等は 200平米を限度に 50%減額【被相続人等の貸付事業用の宅地等】貸付事業用宅地等に該当する宅地等は 200平米を限度に 50%減額1-2 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等特定居住用宅地等に該当する宅地等は 330平米を限度に 80%減額となっています。詳しくは国税庁のホームページを参照してください。もし、二世帯が一緒に暮らしていたら、自宅にこの優遇税制が適用になります。つまり、自宅の土地の相続税評価額が最大8割安くなるのです。ただし、二世帯で居住している場合と、玄関を別にしている完全な二世帯住宅に住んでいる場合ですと、判断が異なりますので注意が必要です。「小規模宅地の特例」は建物には適用にならず、自ら申告をしなくてはならないので注意が必要です。■ 2. 二世帯住宅の場合に受けられる税制優遇措置maruco / PIXTA(ピクスタ)次に二世帯住宅の場合に受けられる優遇措置をご紹介します。この優遇税制を受けられるのは「壁やドアで構造上二世帯に仕切られていて、台所やバス、トイレなどが2つずつあって、利用上も独立している」二世帯住宅です。登記の方法には「共有」「区分登記」などがありますが、登記の形態に関係ありません。2-1 不動産取得税haku / PIXTA(ピクスタ)住宅の不動産取得税率は固定資産税評価額の3%ですが、要件を満たした新築住宅は建物価格から1,200万円(長期優良住宅は1,300万円)控除後、税率を乗じます。二世帯住宅を購入して構造上独立していると認められたならば2戸分の控除を受けられることができます。各戸の固定資産税評価額が3,000万円とすると3,000万円-1,200万円×2件分×3%=18万円/年となりますが、一世帯だと3,000万円-1,200万円×1件分×3%=54万円/年つまり36万円もの差があるのです。面積の要件があり、登記上の床面積が50平方メートル以上、240平方メートル以下であることが必要です。2-2 固定資産税土地の固定資産税に関しては、毎年1月1日に一定の要件を満たす住宅用地については、200平米までの部分を6分の1に評価額を減じて税率を乗じ、新築住宅については120平米まで、当初3年間固定資産税が半分になる特例があります。不動産所得税同様、これらの制度も二世帯住宅と認められると2戸分が適用になります。■ 3. まとめ写真AC二世帯が同居することで、小規模宅地の特例や固定資産税、不動産取得税などにおいて、減税の適用を受けられます。しかし、これらの優遇税制を受けるためには、土地や床面積の平米数の規定などの要件がありますので、確認すべきです。不安な人は税理士などの専門家に相談しましょう。
2019年07月03日「多くの国民が、10月の『消費税増税』が予定通りに行われるかどうかを、気にしています。自民党の選挙公約が発表されましたが、公約が載った資料には、小さな文字でひっそりと『本年10月に消費税率を10%に引き上げます』と書かれているだけ。これで選挙に勝ったら、公約が信任されたといって、増税するつもりなのでしょうか?」(全国紙政治部記者)6月7日、自由民主党は夏の参議院選挙に向けての選挙公約を発表した。党本部で行われた会見で壇上に上がったのは、岸田文雄政調会長だ。「令和の時代になって初めて行われる国政選挙。令和時代の日本の姿を選ぶ選挙というのを念頭に、公約も作成を行いました。表紙にある『日本の明日を切り拓く(ひらく)』というタイトルはそういった思いと決意を込めさせてもらった」そう夏の参院選挙の意義を説明した岸田氏。この日、自民党が公開した資料は『令和元年政策パンフレット』と『令和元年政策BANK』の2つ。いずれも、自民党ホームぺージで閲覧できる。「『政策BANK』が公約の本体。そのなかから、強調したい項目を、6項目にわたって、“特だし項目”として、(『政策パンフレット』で)掲げさせてもらった」そう岸田氏が言うように、24ページある『政策BANK』は小さい文字だけでびっしり公約で埋め尽くされている一方、18ページの『政策パンフレット』は大きい文字と写真で構成されている。自民党が『政策パンフレット』で“重要項目”として掲げたのが、「力強い外交・防衛で、国益を守る」「強い経済で所得をふやす」「誰もが安心、活躍できる人生100年社会をつくる」「最先端をいく元気な地方をつくる」「災害から命・暮らしを守る」「憲法改正を目指す」の6項目だ。各項目で概要が説明されているが、どこにも「消費税」の文字はない。そもそも、『政策パンフレット』には一度も「消費税」という文字は出てこないのだ。「消費税」についての記載があるのは『政策BANK』のみだ。10月の消費税10%が明言されるのは、8ページ目。「2経済再生」という大項目で、5つめの項目である「財政・税制」の2つ目の文章。前出の政治部記者はいう。「要は、自民党は『消費税』を選挙の争点にしたくないということだと思います。よっぽど政治に興味を持っている人くらいしか、『政策BANK』なんて読まないでしょう。10月の消費税増税前の最後の選挙ですし、これだけの国民の関心事なのですから、消費税の増税が正しい政策だと思うのなら、『政策パンフレット』の方にも大きく記載するべきです。これでは“消費税増税隠し”と言われても仕方がない」この日の会見でも、岸田氏は自ら、増税について語ることはなかった。初めて触れたのは会見の開始から30分ほど経ってから。記者の質問を受けてのことだ。「リーマンショック級のできごとがない限り引き上げる。こういったことを再三強調してきました。少なくとも、現在、リーマンショック級のできごとには遭遇していないと、私は認識している」増税を争点化させたくない自民党。一方、野党5党派は、全国に32ある「1人区」の候補者の一本化に向けて動き出しているが、政策でのまとまりはなく、“増税反対”に対する熱量はバラバラだ。このまま波風が立つことなく、10月の消費税増税は行われてしまいそうだ。
2019年06月08日ご両親が亡くなるなど、相続はいつか必ず経験するものです。人生の中で何度も経験するものではありませんので、何から手を付けてよいか分からなくなってしまうものです。いざというときに慌てないように、まずは相続手続きの全体の流れを解説していきます。■ 1.相続の開始(相続人の死亡)makaron* / PIXTA(ピクスタ)1-1死亡届の提出(相続発生後7日以内)相続は人の死亡で開始します。人が亡くなった場合、まず死亡届を役所に提出しなければなりません。届け出をする役場は、亡くなった方の本籍地、死亡地、届け出をする方の所在地を管轄するいずれかの市区町村役場です。1-2「死体埋火葬許可証」がないとお葬式はできないmakaron* / PIXTA(ピクスタ)死亡届を出す際「死亡診断書」「死体検案書」のどちらかが必要になります。死亡診断書は病院で亡くなった場合または死亡理由が明らかな場合に医師が作成します。死亡検案書はそれ以外の場合に死亡の事実が確認された後に作成されます。これらが役所に受理されると「死体埋火葬許可証」が発行され、はじめてお葬式を行うことができます。■ 2. 遺言書などの確認(目安:初七日)CORA / PIXTA(ピクスタ)死亡の手続きが一通り終了したら、お葬式の手配をするのと同時に遺言書を遺品の中から探します。亡くなった人が住んでいた家のほか、貸金庫を借りていた場合などは、その中に保管されているケースが多いようです。2-1遺言書には3種類ある遺言書には、亡くなった人が自ら書いた自筆証書遺言のほか、公証役場にて作成する公正証書遺言や秘密証書遺言というものがあります。いずれも最新の日付のものが有効となります。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所にて「検認手続き」が必要になるため、勝手に開封しないようにしましょう。2-2保険、年金関係の確認をする遺言書を探すのに加えて社会保険や生命保険などの保険関係や年金関係の手続きも確認します。関係機関の窓口を尋ねるか電話で問い合わせをし、亡くなった事実を伝え、その後どのような手続きをすべきかを確認します。■ 3.相続財産、相続人の調査(目安:四十九日)相続財産と相続人の調査を合わせて行います。これらを行うことは、適切な遺産分割を行うため、または相続税申告を行うために必ず行います。遺産の額や内容が分からないと正確な相続税の申告ができず、過少申告してしまうと加算税を課されることになります。3-1相続財産の調査kai / PIXTA(ピクスタ)相続財産の調査対象となるのは、不動産、預貯金、株式、投資信託、公社債、生命保険金のほか現金、ゴルフ場の会員権、骨董品などの動産などが該当します。宝石などの貴金属も相続財産です。3-2相続人の特定相続人の特定は、被相続人の現在の戸籍(除籍)謄本を取得することから始まります。これですべての相続人が分からない場合、死亡時からさかのぼって出生したときの戸籍までを順番に取得します。本籍の移動が伴う場合、複数の役所で謄本を取得する必要があります。「婚姻」「離婚」「養子縁組」などの身分事項から前妻との間に子供がいないか、養子や養親がいないかなどを確認し、知らない相続人がいたら、その相続人が被相続人の死亡時に生存していることを確認します。すでに亡くなっていた場合は相続関係が変わってきますので注意が必要です。■ 4.相続放棄をする(目安:相続後3~4か月)akiyoko / PIXTA(ピクスタ)相続において、プラスの遺産だけ引き継ぐことはできません。相続とは亡くなった人の財産をまるごと引き継ぐという制度です。相続放棄をしないまま期限が過ぎると、相続することを承認したとみなされます(=単純承認)。4-1手続きを放置すると単純承認とみなされる相続した財産を処分(消費、売却など)したときも単純承認したとみなされます。一度単純承認したとみなされると、期限が過ぎる前であっても以後放棄することはできません。相続放棄には家庭裁判所での手続きが必要です。この手続きは3か月を目途に行いましょう。4-2放棄により相続人が変わる夫が亡くなった場合、妻と子の相続放棄によって、夫の父と母に相続権が移ります。このことがあまり知られていないため、トラブルになることが多くあります。妻と子が相続放棄する場合、手続きをする前から意思表示しておかないと、父母や兄弟に迷惑がかかりますのでよく話し合っておきましょう。相続放棄による相続権の移動は、法定相続人の相続範囲である兄弟姉妹までとなっています。■ 5.遺産分割協議(目安:相続後4~10か月)Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)遺産分割協議とは、相続人全員で被相続人(亡くなった人)の遺産の分け方を決める「話し合い」のことです。遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。話し合いで決まった内容を書面におこしたものが「遺産分割協議書」です。5-1協議はなるべく早く行うトラブルを起こさず協議を終えるには、できるだけスピーディーに行うことがポイントです。様々な書類には、全相続人の実印が必要だからです。例えば、株などは換金のタイミングを逃せば大損する可能性があり、賃貸不動産を所有していた場合は、相続が発生した翌日から遺産分割協議が成立するまでの賃貸収入は、相続人全員に法定相続分での配分を求められるケースが多く、厄介です。5-2協議はやり直しがきかない遺産分割はやり直しができません。そのため、一歩間違うと、税金を余分に支払ったり、身内でトラブルになったりしかねません。さらに、法律改正が近年行われ、税金の計算はさらに複雑になっています。相続人だけでなく、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家を交えて行うのも1つの手です。■ 6.不動産や預貯金などの解約・名義変更(目安:相続後4~10か月)Graphs / PIXTA(ピクスタ)不動産がある場合は遺産分割協議書にのっとり、名義変更を行います。単独の名義もあれば、複数の人の共有名義になることもあります。貯金や証券の名義変更も一緒に行いましょう。6-1預貯金の名義変更被相続人が死亡すると、被相続人名義の口座は凍結されて入出金が一切できなくなってしまいます。この凍結は自動的に解除されることはありません。相続人等の預貯金を相続した人が解除の手続きを行わない限り、そのお金は使えませんので手続きを行いましょう。必要書類がたくさんあるので、予め問い合わせておくのがベターです。6-2不動産の名義は単独にするのがおすすめ不動産を売却する際には、共有者(相続人の相続人等)全員の遺産分割協議が必要です。法律上は、自分の持ち分だけ売却することも可能ですが、現実的にはかなり難しくなります。そのため、不動産の共有名義はあまりおすすめできません。■ 7.相続税の申告(目安:相続後4~10か月)相続財産が一定額を超える場合は、相続税の申告と納付を行います。納付が必要な場合は相続が発生してから10か月以内に行う必要があります。相続税の申告が必要なのは、納付すべき相続税の金額がある相続人です。相続税の特例を利用して相続税がかからない場合でも、特例を利用するために相続税の申告は必要なケースがあるので注意が必要です。7-1相続財産は「時価」で評価相続財産の「評価額」を算定する際の原則は時価主義と言われるものです。取得後の価値の上下は考慮されません。ゴルフ会員権を500万円で購入後、相続発生時に100万円になっていたら、評価額は100万円とみなされます。7-2土地の評価方法では時価ではない不動産の場合は「路線価方式」という計算方法で算定されます。間違いやすいのですが、実勢価格や、公示価格、固定資産税の評価額とは異なります。目安としては「実勢価格の8割程度」と言われることが多いようです。また「小規模宅地」や「貸家建付地」などの特例があり、実勢価格に比べて相続の評価額が安くなるので、相続税対策に不動産を購入する人が多くいます。■ 8.まとめこのように相続には細かなタイムスケジュールが設定されているため、期限を過ぎてしまうと取り返しがつかなくなってしまううえ、かなり多くの手続きが必要となります。揃えておく書類もたくさんあります。これらの流れをフローチャートにして、1つ1つチェックしていくとよいでしょう。流れをしっかりと押さえて、相続が発生したときに慌てないようにしましょう。
2019年06月07日今年10月に予定される消費税の増税まで、いよいよ残り数ヶ月に。増税と聞いて、家計の負担が増えることに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。でも、支払い方法を変えるだけで、出費を抑えられることもあるのです。今回は、資産運用・トレーディングのプロである山田良政さんに「増税後にクレジットカードを使うメリット」についてご紹介いただきます。文・山田良政「キャッシュレス」が増税対策に!?いよいよ、消費税10%への増税が迫ってきました。現在の8%から2%増えるわけですが、これが毎回の買い物で積み重なると、予想以上の家計の負担となります。例えば、年間で200万円使っている家庭では、消費税分だけで4万円も負担が増える計算です。しかし、その影響で皆がお金を使わないと経済が冷え込んで、逆に国の税収が減ってしまう可能性もあるのです。そこで政府は、増税による家計や経済への負担を減らすために、クレジットカードやQRコードでのキャッシュレス決済に限り、原則2%分をポイントで還元する軽減税率を施行する予定です。つまり、現金しか使わない人は、増税後は10%の消費税を支払うことになりますが、キャッシュレス決済をすれば、増税後でも2%分のポイントが還元されるので、実質に支払う消費税は8%に近い感覚になります。支払いは現金派というあなたも、この機会にクレジットカードに乗り換えてみてはいかがでしょうか。中小の小売店での商品購入時には5%還元される!また、さらに嬉しいことに、キャッシュレス決済で商品を購入する際、店によっては5%分のポイントが還元されるケースもあるのです!ただし、対象は「中小の小売店」での商品購入時のみ。全ての買い物で5%還元されるわけではないということを覚えておきましょう。ちなみに、5%還元の対象になっている「中小の小売店」とは、中小規模の飲食店、宿泊施設、サービス業などのことを指しています。大手スーパーや、百貨店などで購入した商品に関しては、そもそもポイント還元の対象外になっています。ただし、コンビニの場合はオーナーが中小規模でも、大手の傘下なので2%還元となります。なお、換金性の高い商品券やプリペイドカード、減税対策済みの住宅、自動車などはポイント還元の対象外となっているので注意しましょう。還元率の高いクレジットカードを早めに選ぼうここでひとつ、軽減税率を受ける上で重要なことをお伝えします。それは、この軽減税率が期間限定の政策だということです。政府は、増税前の駆け込み需要と、増税後の経済の冷え込みを抑えるため、増税後9ヶ月間は最大5%ポイント還元を行うと発表しました。つまり、現段階では2020年6月には軽減税率が終了する予定なのです。また、消費税増税の前後にクレジットカードを作ろうとしても、同様の申し込みがカード会社に殺到し、手元にカードが届くまでいつも以上に時間がかかってしまう可能性があります。さらに、ひと言で「クレジットカード」と言っても、年会費があったり、軽減税率分以外のポイントが貯まりにくかったり、貯まったポイントの使い道が限られていたりすると、むしろ損してしまう可能性も……。カード会社に申し込みが殺到する前に、還元率が高く、使い勝手の良いカードを選びましょう。5月現在、ポイント還元の対象となる、キャッシュレス決済業者の登録は完了しており、業者の一覧が公開されています(詳しくは、経済産業省の「キャッシュレス・消費者還元事業」というページを確認してみましょう)。増税後からカードを使い始めたいと考えている方は、申し込みが殺到する前に、早めに申し込んでおいた方が良いかもしれませんね。-山田良政-株式会社オフィサム代表取締役。FXによる資産運用を自動化させた第一人者。自身が開発したFX自動売買システムが、2013年度に「世界一の評価」を獲得。誰でも気軽に資産が増やせる「自動取引システムによる資産運用」を提案し、その分かりやすい切り口はマネーに関するプロ達だけでなく女性からの支持も多い。「億を稼ぐ」ために必要な思考が綴られたインタビュー本『億トレⅡ』『億トレⅢ』も大好評。『月間BIG tomorrow』でも執筆中。・株式会社オフィサム © Kite_rin /shutterstock© Ollyy /shutterstock© Dean Drobot /shutterstock
2019年06月01日2019年10月に消費税が10%に増税される予定ですが、税制は社会状況の変化に応じて変わるものです。所得税も働き方の多様性を踏まえ、同一業務であるのに雇用形態が異なる場合がある、会社員とフリーランスにある税制の差を埋めるために今回の改正となりました。 今回は2020年以降に適用される所得税の給与所得控除と基礎控除の改正事項についてお伝えします。 1.給与所得控除の改正について 所得税を計算するうえで、事業をしている人やフリーランスの人(以下、個人事業主)は必要経費を収入から引くことによって所得を算出しますが、勤務先から給料を支払われている人(以下、給与所得者=会社員・公務員・団体職員・パートタイマーやアルバイトも含まれます)は具体的な必要経費の計算をしません。 その代わりに、給与所得控除と呼ばれる法律上の経費的なものを差引き、収入の全額を所得としないことで、個人事業主との所得税負担の公平を図っています。この給与所得控除について、高額所得者は多額すぎるとの判断から、2020年分の所得税から上記の表のように変更となります。経費的に差し引ける給与所得控除額の上限を220万円から195万円にすることで、給与の高額所得者の所得税負担を増やすことになりました。 2.基礎控除の改正について基礎控除とは、所得税額の計算をする場合に、所得金額などから差し引くことができる控除の一つで、誰にでも適用される控除です。この控除があるため、年間103万円以内のパート・アルバイト等の収入があっても、所得税はかからないことになります。 2019年分は所得に関わらず、一律38万円ですが、2020年からは上記の表のとおりとなります。所得の種類を問わず、2400万円を超える所得がある場合は、控除額が減り所得税の負担が増えることになります。 3.給与収入850万円以下の人は実質的な影響はなし給与所得者にとっては、給与所得控除と基礎控除との両方が影響しますが、給与収入が年間850万円以下の場合は、給与所得控除が10万円減少するものの基礎控除が10万円増加するため、合計するとそれらが差引されて実質的な所得税には変化がありません。 しかし、給与収入金額が年間850万円を超える場合には状況が変わります。所得調整控除の対象となる人(特別障害者、23歳未満の扶養親族がいる人、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人)以外は、段階的に控除額が減るため負担増となります。例えば、給与収入1,000万円の場合・税率20%の場合には、所得やその他の控除が同じ条件であれば、年間3万円の所得税の負担が増えることになります。 一方、個人事業主は、雇用形態でない場合には給与所得控除がありませんので、今回の改正で基礎控除の控除額が引き上げられる分、所得やその他の控除が同じ条件であれば、所得税は減ります。事業所得が1,000万円・税率20%の場合は年間2万円の所得税の負担が減ることになります。 今回の所得税改正では、給与での年収850万円以上の人は負担増、個人事業主の人は負担減となるため、本人や家族で該当する人は2020年からの手取り額が変わる可能性がありますので、働き方や源泉徴収票、確定申告書を確認する機会にしていただければと思います。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2019年05月23日みなさんが日々支払っている税金。今年も消費税の増税をはじめ、大きな税制の変更が予定されています。今のうちから、ある程度の知識と対応策を押さえておきましょう。今回は、資産運用・トレーディングのプロである山田良政さんに“今年度増税・減税される税金とその対策”についてご紹介いただきます。文・山田良政2019年10月1日に消費税が8%から10%へもうご存知の方も多いと思いますが、今年の10月1日から、消費税が8%から10%になります。ほぼ全ての商品に関わる税金ですので、食費や日用品などが2%分高くなるとあれば、家計への打撃は必至でしょう。車で通勤している方は、ガソリン代や車検・保険代でさらにお金がかさむことに。このタイミングで、支出の見直しを行い、携帯の契約を大手キャリアから格安会社に移行したり、普段買っているものを安売りのときだけ購入したりといった、細かな対策を行うようにしましょう。景気対策として消費税の軽減税率が適用2019年10月の増税では、今までの増税とは異なり、軽減税率が適用されます。軽減税率の対象商品は今まで通り消費税8%のまま。酒類(料理酒やみりんを含む)以外の食品に適用されます。お酒をよく飲まれる方は、これを機にお酒の量を抑えてみても良いかもしれません。また、持ち帰りや出前食品は8%のままですが、席について食べる外食は10%の税率が適用されます。同じものを食べるなら、店内で食べるのではなく持ち帰りにした方がお得ですね!キャッシュレスによる5%ポイント還元がスタート上で紹介した軽減税率以外にも、キャッシュレス決済の場合5%のポイントが還元される施策も検討されています。ただし、これは中~小規模の店での買い物時限定で適用されるものなので、すべて5%還元になる!と思っていると、損してしまう恐れもあります。大手は対象外となっていますが、JRがスイカでのポイント還元を検討するなど、自主判断でポイント還元を行うケースはあるようです。今のうちからアンテナを張っておき、どのカード、サービスを利用するのが一番お得なのか、見極めておく必要がありそうです。自動車税減税&環境性能割の実施これから自動車の購入を検討する方にお得なニュースが。それは自動車税の減税。今年の10月1日以降、新たに登録された車は減税適用されるのです。減税額は、最大年間4,500円で排気量が上がるほど減額されていく仕組みのようです(軽自動車は対象外)。また、同時に自動車取得税が廃止され、燃費基準に応じて課税されていく「環境性能割」が導入されます。「2020年度燃費基準」という指標を+10%以上達成した車種であれば、自動車取得の際の「環境性能割」が非課税になるのです。なお、電気自動車やクリーンディーゼル車、プラグインハイブリッド車も「環境性能割」の非課税対象になります。これから車の購入を検討される方は、ぜひ参考にしてください。消費税はすべての人にかかってくる税金です。物価が上がれば、私たちの生活にも少なからず変化があるでしょう。だからといって、切り詰めすぎるのは良くありません。今回ご紹介した点を意識しつつ、楽しみながら生活を送りしょう。© TunedIn by Westend61 /shutterstock© Africa Studio /shutterstock© George Rudy /shutterstock
2019年05月18日相続が発生したときに、心配になるのが相続税ではないでしょうか?相続税は、場合によっては大きな負担になることがありますが、財産を相続しても相続税がかからないこともあります。今回は、相続税発生の有無を分ける基礎控除の額について説明します。基礎控除額の計算方法を理解しておき、生前の相続対策などに役立てていただければ幸いです。相続税の基礎控除は相続人の数で変わる!相続税発生の基準となるのが、基礎控除です。相続税の基礎控除の意味や基礎控除の金額を計算する方法を知っておきましょう。相続税がかかるケースとは相続税は、相続や遺贈により財産を取得した人に課税される税金です。相続税がかかるかどうかは、相続の規模によって変わります。亡くなった人(被相続人)が残した財産が一定規模以上の場合、その相続で財産を取得した人に相続税がかかるしくみです。相続税の基礎控除とはその相続が、相続税がかかる規模かどうかを判断する基準となるのが基礎控除です。基礎控除は、相続税だけでなく贈与税や所得税にもありますが、課税対象から無条件で差し引きできる金額になります。相続税は、相続税の課税対象となる財産の合計額(課税価格の合計額)から基礎控除額を差し引きした課税遺産総額をもとに計算します。課税価格の合計額が基礎控除額以下の場合には、相続税はかかりません。基礎控除額は、相続税の非課税枠ということになります。相続税の基礎控除の計算式相続税の基礎控除は、次の計算式で計算します。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数相続税の基礎控除は、2015年1月に改正により引き下げられました。2014年12月以前に発生した相続については、次の計算式で計算します。(旧)基礎控除額=5,000万円+1,000万円×法定相続人の数相続税の基礎控除の早見表相続税の基礎控除額は、相続人数によって変わります。たとえば、相続人が1人の場合、相続税の基礎控除額は3,600万円ですから、被相続人の残した財産の額が3,600万円を超える場合には相続税がかかります。一方、財産の額が3,600万円を超えない場合、すなわち3,600万円以下の場合には、相続税はかかりません。相続税の基礎控除額を超えているなら早急に遺産分割が必要被相続人の残した財産が相続税の基礎控除額を超えている場合には、相続開始を知った時から10か月以内に相続税の申告が必要です。相続税の申告をする前提として、遺産分割を終わらせなければなりません。基礎控除額を超えており相続税がかかるケースでは、速やかに遺産分割協議を終わらせるようにしましょう。10か月以内に遺産分割が終わらない場合でも、法定相続人が法定相続分で財産を取得したものとして、期限内の申告が必要になります。相続税の基礎控除の「法定相続人」とは?相続税の基礎控除は法定相続人の数によって変わりますが、ここでいう「法定相続人」には民法上の法定相続人すべてが含まれるわけではありません。相続税における法定相続人のカウントの仕方を知っておきましょう。法定相続人に含まれる養子の数には制限がある民法上、養子には実子と同様の相続権があります。子は第1順位の相続人ですから、養子を増やせば法定相続人を増やすことができます。しかし、相続税の基礎控除を計算するときには、養子を全員法定相続人としてカウントできるわけではありません。養子については、次のようなルールがあります。被相続人に実子がいる場合…養子は1人までしか法定相続人に含めることができません。被相続人に実子がいない場合…養子は2人までしか法定相続人に含めることができません。養子を実子とみなす場合相続税の基礎控除の計算においては、次の場合には養子であっても実子とみなします。特別養子縁組により養子となった場合配偶者の連れ子を養子にした場合代襲相続人でもある養子(孫を養子にしており、子が亡くなっている場合)相続放棄した相続人も法定相続人に含める民法上、相続放棄すれば最初から相続人でなかった扱いになり、法定相続人ではなくなります。しかし、相続税の基礎控除の計算では、相続放棄をした人も法定相続人としてカウントします。相続放棄をした人がいても、基礎控除額が減ってしまうことはありません。生命保険金がある場合の相続税の基礎控除は?財産を相続するのではなく、生命保険金として受け取った場合には、一部が非課税になることをご存じでしょうか?相続の際に、生命保険金がある場合の相続税の計算方法や基礎控除との関係を知っておきましょう。生命保険金を受け取っても相続税がかかることがある被相続人が亡くなったことにより、生命保険金(死亡保険金)を受け取ることがあります。生命保険金は、民法上の相続または遺贈により取得した財産ではありません。しかし、生命保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象になります。生命保険金には非課税枠がある相続税の計算において、生命保険金には基礎控除とは別の非課税枠が設けられています。生命保険金の非課税枠は、次の計算式で計算します。500万円×法定相続人の数たとえば、法定相続人が3人の場合、生命保険金は1,500万円まで非課税です。相続人が受け取った生命保険金が1,000万円の場合には、全額非課税になります。もし相続人が受け取った生命保険金が2,000万円なら、500万円のみが課税対象になります。生命保険に加入すれば、相続税の課税対象になる財産を減らすことができます。相続税対策として、財産を現金や預金で残すのではなく、生命保険に加入することは、有効な方法の1つです。生命保険金の非課税枠を計算する際の「法定相続人」とは?相続税において、生命保険金の非課税枠を計算する際の「法定相続人」には、民法上の法定相続人全員が含まれるわけではありません。養子の数について制限があり、相続放棄をした人も「法定相続人」の数に含めることは、基礎控除の場合と同様です。非課税になるのは相続人が受け取った生命保険金だけ生命保険金について、非課税の恩恵が受けられるのは、相続人が受け取ったもののみになります。相続人以外が受け取った生命保険金は、非課税にはなりません。相続放棄をした人が受け取った生命保険金も、非課税枠には含めないことになっています。たとえば、相続放棄をした人が1,000万円の生命保険金を受け取った場合、法定相続人の人数に関係なく、1,000万円全額が課税対象になります。生命保険金がある場合の計算例相続税がかかるかどうかは、課税対象になる財産から生命保険金の非課税分を差し引きした金額が、基礎控除額以下であるかどうかで判断します。たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。被相続人の残した財産額が6000万円で、そのうち相続人が受け取った生命保険金が2,000万円の場合、生命保険金については1,500万円が非課税になりますから、相続税の課税対象になる財産額(課税価格の合計額)は4,500万円です。つまり、このケースでは課税価格の合計額は基礎控除額以下であるため、相続税はかからないことになります。基礎控除の計算方法まとめ相続財産の額が基礎控除額を超えていれば、相続税がかかります。基礎控除額は法定相続人の数によって変わりますが、法定相続人の数はほぼ変えることができません。相続対策としては、相続財産の額を減らすことが有効です。生前贈与をしたり、生命保険に加入したりすることで、課税対象になる相続財産の額を減らせることがあります。相続税が心配なら、あらかじめ対策をしておきましょう。
2019年05月16日消費税増税によってマンションを購入する際の負担はどう変化するのか。消費税増税に伴う住宅ローン控除拡充の内容や控除額の変化などを踏まえながら、マンションを購入するタイミングについて考えていきます。消費税増税によるマンション購入への影響2019年10月に迫った消費税の10%への引き上げは、予定通り実施されればマンションの購入にも影響します。マンション購入価格の上昇消費税増税はマンション購入価格の上昇に直結します。ただし、消費税がかかるのは「建物」部分のみ。「土地」(マンション敷地)や個人が売主となる「中古マンション」にはもともと消費税がかからないため、増税による影響はありません(中古マンションであっても、不動産業者(課税事業者)が売主となるケースでは建物部分に消費税がかかります)。消費税増税により「建物」部分の購入価格が上昇する4,000万円(建物2,000万円・土地2,000万円)の新築マンション購入する場合では、消費税の負担は40万円(=建物価格2,000万円×増税分2%)増えます(税率8%適用時:160万円→税率10%適用時:200万円)。仲介手数料の増加中古マンションは一般的に不動産業者を介して売買され、不動産業者に支払う手数料(仲介手数料)が発生します。この仲介手数料は消費税の課税対象であり、消費税増税による影響を受けます。消費税増税により仲介手数料が増える不動産業者へ支払う仲介手数料は宅地建物取引業法で上限(*1)が定められており、売買価格が400万円を超える場合の上限額は「(売買価格×3%+6万円)+消費税」で計算されます。(*1)仲介手数料上限額たとえば売買価格3000万円の中古マンションを購入する場合の仲介手数料上限額は、以下のように変化します。上記の金額は仲介手数料の上限額であり、物件や不動産業者によっても違います。特に不動産業者が売主・買主双方から手数料を受け取れるような場合、交渉によって仲介手数料を下げられる可能性があります。買い手側から交渉しなければそのままということも多く、まずは交渉してみましょう。下がらなかったとしても損はしません。消費税10%が適用されるタイミング消費税は原則として引渡時点の税率が適用されます。今回の増税では2019年9月30日までに引渡しが済めば8%、引渡しが2019年10月1日(増税日)以降となれば10%の税率が適用されます。引渡日2019年9月30日以前:消費税率8%引渡日2019年10月1日以降:消費税率10%消費税増税に伴う住宅ローン控除の拡充2019年の税制改正大綱において住宅ローン控除を拡充する特例が設けられました。この特例は消費税増税に伴う負担の増加と住宅需要減少への対策を目的としたもので、個人が消費税率10%で住宅を購入した場合に適用されます。現行の住宅ローン控除制度の概要住宅ローン控除制度(住宅借入金等特別控除制度)は、住宅ローンを利用して住宅を取得する人の金利負担軽減を図る制度。その内容は、年末時点の住宅ローン残高または住宅の取得対価のいずれか少ないほうの金額の1%を、最長10年間に渡り所得税から控除するというものです(所得税から控除しきれない場合には、翌年度の住民税の一部からも控除できる)。住宅ローン控除の(年間)最大控除額=年末時点住宅ローン残高等×1%住宅ローン控除限度額(2014年4月〜2021年12月居住開始)(*2)売主が個人で消費税が非課税となる場合(*3)前年度所得税課税所得金額の7%まで(上限13.65万円)(*4)前年度所得税課税所得金額の5%まで(上限9.75万円)住宅ローン控除拡充の概要2019年の税制改正では特例によって、消費税率10%が適用される住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までに入居した場合に限り、控除期間が3年間延長されることになりました。消費税率10%が適用される住宅を取得・2019年10月1日から2020年12月31日までに入居→控除期間が3年間延長控除額は1年目〜10年目については現行どおり、11年目〜13年目については以下のいずれか少ないほうの金額となります。【11年目〜13年目の住宅ローン控除(年間)最大控除額】(1)または(2)のいずれか少ないほうの金額(1)年末時点の住宅ローン残高等(*5)×1%(2)住宅の取得価格から含まれる消費税相当額を差し引いた金額(*5)×2%÷3(*5)一般住宅:上限4,000万円/長期優良住宅等:上限5,000万円住宅ローン控除拡充による控除額への影響住宅ローン控除拡充によって控除額はどう変わるのか。以下のような条件でシミュレーションしてみます。シミュレーション条件家族構成:夫(会社員)・妻(専業主婦)・子(8歳・12歳)収入:夫の給与所得600万円(課税所得265万円)*シュミレーション期間中一定で推移すると仮定所得税額(復興特別所得税含む):17.1万円住宅価格:4,000万円(建物2,000万円・土地2,000万円)+消費税200万円(諸経費含まず)住宅ローン:借入金額3,200万円/元利金等返済/返済期間30年・ボーナス返済なし/全期間固定金利1.5%住宅ローン残高推移(万円)住宅ローン控除は、(A)所得税と控除対象となる住民税から、(B)40万円(=4,000万円×1%・一般住宅の場合)を上限として、(C)住宅ローンの年末残高×1%と(D)住宅取得価格×2%÷3(11年目〜13年目)のいずれか少ないほうの金額が控除する仕組み。つまり、以下の表の(A)〜(D)のうち最も小さい金額(赤字で示したもの)がその年の実際の控除額となります。実際の控除額(万円)このケースでは10年間の控除額の合計は約271万円、13年間の控除額の合計は約333万円となり、控除の拡充によって控除額は約62万円増えます。すまい給付金の拡充住宅ローン控除は所得税・住民税から控除する仕組みのため、収入が低い(課税額の少ない)人は控除される税金が少なくなり、負担軽減効果が薄いという欠点があります。これを補完する仕組みとして設けられたのが「すまい給付金」制度であり、今回の増税に伴ってすまい給付金の拡充も行われます。すまい給付金は売主が不動産業者等で消費税が課税される場合のみが対象で、個人が売主となる中古マンションの購入では給付を受けられません。(*6)夫婦(妻は収入なし)および中学生以下の子どもが2人のモデル世帯において、住宅取得する場合の夫の収入額の目安。実際には都道府県民税の所得割額(市町村発行の個人住民税課税証明書で確認できる)に基づいて決定されます。消費税増税により実質的な負担が減るケースも上記のシミュレーションの条件で4,000万円(消費税込4,200万円・諸経費含まず)の新築マンションを購入する場合、増税による消費税負担の増加分は40万円。一方で住宅ローン控除の拡充によって控除額が約62万円増え、新たに対象となるすまい給付金が30万円とあわせ、控除額は92万円増加します。消費税負担の増加分40万円を控除額の増加分92万円が上回り、このケースでは税率10%で購入することで実質的な負担が52万円減少します。マンション価格の動向人手不足や建築需要の増加によって建築費、人件費は高止まりしており、マンション価格は上昇が続いています。マンション価格の動向は、マンション購入のタイミングを判断する材料となります。マンション価格の推移不動産経済研究所による調査によると、2018年の新築マンションの全国平均価格は4,759万円(㎡単価71.3万円)となっており、1973年の調査開始以来の最高値を更新しました。特に価格上昇の大きい東京23区内では新築マンションの平均価格が7,142万円(2018年)と、平均的なサラリーマンではなかなか購入が難しい水準にあります。マンション価格は今後どうなるのかすでにマンション価格はピークにマンション価格は今後もしばらくは高止まりが続くと見込まれているものの、オリンピックが開催される2020年が近づき、すでにマンション価格はピークにあるとの見方もあります。マンションの売却が増えることも想定マンションの売却益は保有期間が5年を超えると長期譲渡所得(所得税+住民税/税率20%)に該当し、短期譲渡所得(同/税率39%)よりも有利な条件で売却できます。オリンピック開催が決定した2013年からすでに5年が経過し、値上がりを見込んで当時購入したマンションの売却が増えることも想定されます。家余りは長期的なマンション価格の下落要因また税制改正によってタワーマンションを利用した相続税の節税対策ができなくなったことで、投資・節税目的の需要減少によるマンション価格の下落につながる可能性もあります。さらに人口減少に伴って空き家は急増しており、家余りは長期的なマンション価格の下落要因となります。好立地の新築マンションについては今後も価格の高止まりが続くと予想一方で建築費や人件費の高騰でマンションの利益率は低下しており、ディベロッパーは新築マンションの供給数を減らし、利益率の高い好立地の高価格帯マンションの比率を高めています。そのため好立地の新築マンションについては今後も価格の高止まりが続くのではないかと予想されます。結論資産性の高い好立地のマンションであれば、待っていてもあまり値下がりは期待できず、その間の家賃負担などを考えると、早めに購入したほうがいいかもしれません。一方で郊外型のマンションなどは今後値下がりも予想され、不動産価格が落ち着くまで様子を見るのもひとつの選択肢といえます。どのタイミングでマンションを購入すればいいのか新築マンションを購入する場合、住宅ローン控除特例によって消費税10%が適用されるほうが有利となるケースもあります。入居時期を調整できる場合には、税率8%と10%のどちらで購入すれば実質的な負担が減るか、借入金額や収入などをもとに試算して、有利なタイミングを選びたいところ。ただし焦って購入するのは禁物です。マイホームを持つことはリスクも伴い、無計画な住宅購入によってせっかくのマイホームが人生の重荷になってしまうこともあります。ライフプランや返済計画をしっかりと立て、迷いのなくなったタイミングで購入すべきでしょう。
2019年05月09日親が亡くなったときなどに、財産を相続するケースは多いでしょう。財産を相続できるだけならよいですが、相続税の負担は心配なはずです。相続税がどれくらいになるのかを計算するため、相続税の税率を知りたいという人も多いと思います。今回は、相続税の税率や計算方法について説明しますので、参考にしてください。相続税の税率とは?まず、大前提として知っておいていただきたいのは、相続税は、所得税のように所得の額に税率をかけて計算するものではないということです。相続税の税率を知っても、相続税は計算できません。相続税にも税率と呼ばれているものはありますが、相続税の税率は計算の過程で使うものです。相続税の計算方法は、やや複雑です。以下、相続税計算方法について説明しますので、大まかな流れを理解しておいてください。相続税の計算方法相続税は、次のような流れで計算します。手順1. 「課税価格の合計額」を出すまずは、「課税価格の合計額」を出します。「課税価格の合計額」とは、相続税のかかる財産の額を合計したものから、相続税のかからない非課税財産(仏壇・仏具など)及び被相続人の債務・葬式費用を差し引きしたものです。相続税のかかる財産とは、以下のものになります。ア本来の相続財産民法上の相続または遺贈により取得した財産です。イみなし相続財産生命保険金や死亡退職金になります。ただし、生命保険金も死亡退職金も、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。ウ相続開始前3年以内の生前贈与財産相続の際に財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内にも生前贈与を受けていた場合、その生前贈与財産も相続税の課税対象になります。エ相続時精算課税による生前贈与財産相続時精算課税を選択して生前贈与された財産は、相続税の課税対象になります。つまり、「課税価格の合計額」は次のようになります。課税価格の合計額=ア+イ+ウ+エ-(非課税財産+債務+葬式費用)手順2. 「課税遺産総額」を出す相続税には、手順1で算出した「課税価格の合計額」から必ず差し引きできる「基礎控除額」があります。相続税の「基礎控除額」は、次の計算式で計算します。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数「課税遺産総額」とは、「課税価格の合計額」から基礎控除額を控除したものです。この「課税遺産総額」に対して相続税がかかることになります。「課税価格の合計額」が「基礎控除額」よりも少ない場合には、「課税遺産総額」はマイナスになりますから、相続税はかかりません。課税遺産総額=課税価格の合計額-基礎控除額手順3. 各相続人の「仮の相続税額」を出す手順2で算出した「課税遺産総額」を法定相続人が法定相続分で取得する形で仮に分けます。その上で、各相続人の取得額に対応する「仮の相続税額」を出します。各相続人の「仮の相続税額」は、財産の取得額に税率をかけて計算します(下記「相続税の税率表」参照)。手順4. 「相続税の総額」を出す手順3で計算した各相続人の仮の相続税額を合計し、「相続税の総額」を出します。手順5. 財産を取得した人の「実際の相続税額」を出す手順4で計算した「相続税の総額」を、実際に財産を取得した人(相続人及び受遺者)に取得額に応じて割り振る形で、「実際の相続税額」を出します。相続税の税率の意味相続税は、相続した財産額に税率をかけて出すものではありません。1つの相続が発生すると、財産をどう分けるかに関係なく、「相続税の総額」が決まります。「相続税の総額」を取得額に応じて按分することでそれぞれの人の実際の相続税額が決まります。相続税は「相続税の総額」を按分して出す相続税を出すときには、相続した財産額が基準になるのではなく、「相続税の総額」が基準になります。たとえば、親が亡くなったときに1,000万円を相続したとしても、それだけでは相続税額がいくらになるかはわかりません。相続税の金額を求めるには、その相続の「相続税の総額」を知る必要があります。自分が相続した財産額だけでなく、相続の全体像を知らなければ、相続税の額は出せないのです。税率は相続税の計算の過程で便宜上使うもの相続税の税率は、相続税算出の基礎になる「相続税の総額」を算出する過程で使います。「相続税の総額」は、各相続人の「仮の相続税額」を合計したものです。相続税の税率は、「仮の相続税額」を出すときに使います。なお、ここで税率を使って算出された「仮の相続税額」は、「実際の相続税額」とは異なります。相続税の税率表「仮の相続税額」を出すときに使う相続税の税率表(速算表)は、次のとおりです。なお、下記の表は平成27年1月1日以降の相続・遺贈に関して適用するものです。平成26年12月31日以前の相続・遺贈については別の表を使いますが、今回は省略します。「仮の相続税額」を出すときには、課税遺産総額を法定相続分に応じて分けたときの取得金額を上記の速算表にあてはめ、次の計算式で計算します。仮の相続税額=法定相続分に応じた取得金額×税率ー控除額相続税の税率表のどこにあてはめるかは、法定相続分に応じた取得金額によって決まります。ちなみに、現金や株など相続した財産の種類によって税率が変わることはありません。相続税の税率表は、計算の便宜のための速算表です。控除額というのも、あくまで計算のために使う金額なので、特に意味はありません。仮の相続税は子供でも税率は同じ「仮の相続税」を出すために、相続税の税率表にあてはめるときには、年齢は関係ありません。子供であっても、法定相続分に応じた取得金額のところにあてはめます。相続税の計算例上の手順2までで算出した課税遺産総額が9,000万円と仮定します。法定相続人が、被相続人の妻、長男、次男の計3名の場合、法定相続分は妻2分の1、長男及び次男は各4分の1ですから、法定相続分に応じた取得金額は次のようになります。妻:9,000万円×1/2=4,500万円長男:9,000万円×1/4=2,250万円次男:9,000万円×1/4=2,250万円この金額を上記の速算表にあてはめて、各相続人の「仮の相続税額」を出すと、次のようになります(手順3)。妻:4,500万円×20%-200万円=700万円長男:2,250万円×15%-50万円=287万5,000円次男:2,250万円×15%-50万円=287万5,000円仮の相続税額をもとに計算した「相続税の総額」は、次のとおりです(手順4)。700万円+287万5,000円+287万5,000円=1,275万円なお、実際にも法定相続分どおりに遺産分割した場合、1,275万円を法定相続分で分けることになりますから、各相続人の実際の相続税額は次のようになります(手順5)。妻:1,275万円×1/2=637万5,000円長男:1,275万円×1/4=318万7,500円次男:1,275万円×1/4=318万7,5000円※妻については配偶者の税額軽減が受けられるため、相続税の負担は0円となります。上の計算結果を見ればわかるとおり、「実際の相続税額」は、税率表を使って出した「仮の相続税額」とは異なります。相続税の税率表を使っても、実際の相続税の額を出せるわけではありませんので、注意しておきましょう。相続税の税率や計算方法まとめ相続税の金額は、相続した財産に税率をかけても出せません。相続税の金額を把握したい場合には、手順を踏んで計算する必要があります。相続税の計算は複雑ですから、よくわからない場合には税理士に相談しましょう。
2019年05月08日今年10月には消費税が10%に上がるとされており、すでに生活に身近な食品などの値上げが相次ぎ、家計を直撃している。2月からはレギュラーガソリンの全国平均価格が9週連続で上昇し続け、3月からはアイスクリームやサバ缶などの缶詰類、家庭用すり身製品、牛乳などの乳製品の値段が上がった。5月以降は大手メーカーの値上げラッシュが本格化する。■家計にかかわる主な価格・制度の変更【5月】<サントリー>1日出荷分から1.2リットル以上のペットボトル飲料が一律20円値上げ。<アマゾン>17日からアマゾンプライム年会費が3,900円から4,900円に値上げ。<カルビー>21日納品分からポテトチップスなどスナック菓子を順次値上げ。【6月】<TOHOシネマズ>一般の映画鑑賞料金を1,800円から1,900円に値上げ。<東洋水産>1日出荷分から「赤いきつね」など即席めん約200品目を13~30円値上げ。【7月】<カゴメ>1日出荷分からトマトジュース、野菜ジュースなどが5~10%値上げ。【10月】消費税が10%にアップ(見込み/軽減税率制度により、外食・酒類などを除く飲食料品は8%に据え置き)。中小の小売店でのキャッシュレス決済で最大5%ポイント還元。値段や消費税が上がる前に買うべきものを買っておかないと損してしまう!と駆け込み消費を考える人も少なくない。「あまり慌てずに、いったん冷静になって家計のことを考えてみましょう」そうアドバイスするのは、1万5,000人以上の家計を再生させてきた家計再生コンサルタントの横山光昭さんだ。「消費税が上がっても、家賃や健康保険適応の医療費、保険料などには消費税はかかりません。消費税がかかる支出は光熱費や食費、日用品費など月の生活費の3分の2程度。たとえば、生活費が毎月30万円かかる家計であれば、約20万円分の支出に消費税がかかることになります。現在の8%で計算しますと、消費税は1万6,000円。10%になりますと2万円で差額は4,000円。負担増は4,000円と思えば、それほど苦しいと感じることはないと思います。焦ってストック買いするほうが家計のムダにつながります」(横山さん・以下同)むしろ今から増税前までに準備しておきたいのは、改元を機に家計の“お金の流れ”をきちんと見直して、みるみる貯まる“貯め体質”になること。「一度、支出のすべてを書き出してみましょう。支出は家賃や光熱費、通信費、保険料などの『固定費』と、食費や日用品費、衣服費や娯楽費などの『変動費』に分けられ、支出を書き出すことでふだんの買い物の浪費グセが見つかります。“ムダ支出”を見直すだけでも増税分はカバーでき、さらに貯蓄の分も捻出することもけっして無理ではありません。把握しているつもりの支出も改めて書き出してみると、“なんとなく”“ついつい”使っている支出に気づくもの。元号が変わるタイミングは、そうした“家計の常識”をガラッと見直すのにもよいチャンスです。家計のルールを改めて、貯め体質になりましょう」
2019年05月05日ある日突然、長年慣れ親しんだ「自宅」に住めなくなるとしたら……。相続が発生するとそんな事態が実際に起こる場合があります。今回は、相続でなぜ「住まいを失う」場合があるのか、そして住まいを失わないために知っておきたい「配偶者居住権」についてお話しします。■ 相続が発生して「住まいを失う」場合とは?相続が発生することによって住まいを失う理由はさまざまです。cba / PIXTA(ピクスタ)例えば、相続税を支払うために自宅を売却するケースや、収入を得ていた配偶者(夫や妻)が亡くなってしまったため生活費が不足して自宅を売却し換金するケースなどが主なものですが、なかには相続トラブルによって自宅の処分を余儀なくされるケースもあります。下記にその例を挙げてみましょう。ケース1:夫が亡くなり、相続人が妻と子一人の場合で、自宅評価額2,000万円、預貯金3,000万この場合、妻と子の相続分はそれぞれ1/2となり、妻2,500万円、子2,500万円となります。妻が夫名義の自宅にそのまま住み続けていくためには自宅の所有権を得る必要があります。妻が相続する遺産の内訳を、自宅2,000万円、預貯金500万円とすれば妻はそのまま自宅に住み続けられますが、受け取れる預貯金が500万円では将来の生活費不足が心配になります。freeangle / PIXTA(ピクスタ)もちろん相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で受け取る遺産の内訳を変えることもできますし、そもそも「遺産相続の割合」を変えることもできますが、親子間であってもさまざまな理由で話し合いがうまくいかない場合も少なくありません。遺産分割の協議がうまくいかない場合は結局、妻は将来の生活費のために自宅を売却しなければならない状況に陥ってしまいます。EKAKI / PIXTA(ピクスタ)ケース2:夫が亡くなり、相続人が妻と子二人の場合で、自宅評価額3,000万円、預貯金1,000万この場合、妻の相続分は1/2、子の相続分はそれぞれ1/4となり、妻2,000万円、子はそれぞれ1,000万円ずつとなります。妻は自宅への居住を希望しましたが、子二人が現金での相続を主張したため、妻は自宅の売却を余儀なくされ、妻と子二人はそれぞれ現金で遺産を相続することになりました。この場合も相続人同士の話し合いで法定相続によらない遺産の分割協議が可能ですが、相続人が増えることでその関係者(相続人の配偶者や家族等)も増えていきますので、トラブルになるケースも増えていきます。このような事態を回避・抑制するために生み出されたのが配偶者居住権なのです。■ 配偶者居住権とは?ray / PIXTA(ピクスタ)法務省HPの「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」によると、配偶者居住権とは「配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利」としています。分かりやすい例でいうと、夫が亡くなったときに妻が一緒に住んでいた「夫名義の家」については、最長で妻が亡くなるまでの間、妻にその家を使用する権利を法律で認める、ということです。新設される権利なのでイメージしづらいですが、建物の権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割協議の際や遺言書などによって、「配偶者が配偶者居住権を取得」し、「配偶者以外の相続人が負担付きの所有権」を取得することができる、といえば少し分かりやすいかもしれません。ABC / PIXTA配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは違い、売買したり、自由に貸し出したりすることは出来ませんが、その分評価額を低く抑えることができます。先述した「ケース1」であれば、自宅評価額が2,000万円なので、これを「配偶者居住権1,000万円」と「負担付きの所有権1,000万円」に分けて妻と子がそれぞれ相続すれば、妻は自宅に住み続けられるうえに、預貯金3,000万円のうち1,500万円を受け取ることができ、その後の生活の安定を得ることができるようになるのです。■ 配偶者居住権を利用する場合の注意点残された配偶者の住居確保や生活安定を図るために新設される配偶者居住権ですが、利用する際には注意が必要です。まず、この改正民法が施行されるのは2020年の4月1日なので、現在は配偶者居住権を取得したり行使したりできません。また、配偶者居住権は遺産分割における選択肢の一つとして、若しくは被相続人(夫など)の遺言等によって配偶者(妻など)に配偶者居住権を取得させることができるようにするものであって、自然に備わるものではないことにも注意が必要です。※1Graphs / PIXTA(ピクスタ)配偶者居住権は残された配偶者が住まいを失わないための選択肢としては有用ですが、もちろん万能ではありません。相続が発生した場合においてトラブル回避のためにもっとも重要なのは、これまでも、そしてこれからも相続人同士の丁寧な話し合いに他ならないのです。【参考】※法務省民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)注※1配偶者居住権とともに新設される配偶者短期居住権(少なくとも6か月間の居住を保障)については配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で居住していることで当然に成立するとされています。
2019年04月21日これから先、親が死亡したときの相続手続きが心配という人も多いのではないでしょうか?相続手続きを避けて通ることはできません。いつかは訪れるそのときのために、相続手続きの流れをしっておくことは大切です。ここでは、相続手続きの基本的な流れや注意点について説明しますので、参考にしてください。相続発生後に必要になる手続きの流れと手順とは?まずは、相続手続きの全体像を押さえておきましょう。相続手続きの基本的な流れ相続が起こった後の手続きの流れは、大まかには次のとおりです。1. 相続人・相続財産調査まず、相続人と相続財産を確定します。法定相続人として、把握している以外の人が出てくることもありますから、戸籍を取り寄せて調べます。相続財産については、何がどれだけあるかを明らかにし、遺産目録を作成しておくと良いでしょう。2. 遺産分割協議法定相続人全員で相続財産を分けるための話し合い(遺産分割協議)を行います。遺産分割協議で分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。なお、亡くなった人(被相続人)が遺言書を残している場合には、遺言書に従って相続が行われますから、遺産分割協議は不要です。各財産を相続する人は、遺言書でわかりますから、すぐに3の各財産の相続手続きに入ることができます。3. 各財産の相続手続き遺産分割協議(または遺言書)にもとづき、不動産、預貯金、株式などの各財産を、被相続人名義から相続人名義に変更します。場合によっては必要になる相続手続き相続においては、次のような手続きが必要になることもあります。相続放棄の手続き相続放棄とは、相続しない旨の意思表示です。相続放棄をすれば、最初から相続人でなかった扱いになります。財産よりも借金が多く、相続したくないような場合には、相続放棄することも可能です。相続放棄は、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所で行わなければなりません。期限を過ぎてしまうと、相続放棄ができなくなってしまいます。相続放棄について、詳しくは以下の記事をご参照ください。相続税の申告・納税手続き相続財産の額によっては、相続税がかかることがあります。この場合には、相続開始を知ったときから10か月以内に相続税の申告・納税手続きが必要です。相続財産の合計額が、次の計算式で算出される相続税の基礎控除額を超える場合には、相続した人に相続税が課税されます。基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数相続手続きで重要なのは遺産分割の手続き相続手続きのカギとも言えるのが、遺産分割になります。遺産分割とは相続財産分与の手続き遺産分割とは、相続財産(遺産)を各相続人に分与する手続きです。遺言書が残されている場合を除き、遺産分割が終わるまでは、遺産は相続人全員の共有ですから、相続人の1人が勝手に処分することもできません。遺産分割が終わらなければ、相続手続きが進められないことになります。遺産分割で争いになったら調停や審判を申し立て遺産分割は、相続人全員による遺産分割協議で分けるのが原則です。遺産分割するときには、基本的に法定相続分に応じて分けます。しかし、不動産のように分けにくいものもある上に、相続人同士の利害関係が対立し、もめてしまうことはよくあります。遺産分割協議で遺産の分け方が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが可能です。この場合には、裁判所で決着をつけることになります。財産別の相続手続きを知っておこう遺産分割(または遺言)で誰が何を相続するかが決まったら、いよいよ相続手続きです。主な財産の相続手続きの概略を知っておきましょう。不動産の相続手続き土地や建物、マンションなどの不動産の相続手続き(相続登記)は、法務局で行います。相続登記をすれば、不動産の名義が被相続人から相続人へと変更されます。相続登記の手続きをするときには、登記申請書と添付書類を法務局の窓口に提出します。添付書類としては、戸籍謄本のほか、遺産分割協議書、遺言による場合には遺言書、住民票、印鑑証明書などが必要です。不動産の相続手続きは自分ですることもできますが、相続のパターンにより必要書類が変わるなど、手続きは複雑です。不動産の相続手続きを自力でできない場合には、司法書士に依頼しましょう。預金の相続手続き銀行預金や郵便貯金(ゆうちょ)などの相続手続きは、金融機関ごとに行います。相続手続きの必要書類は各銀行で違います。遺産分割協議書によるか、遺言書によるかでも必要書類は変わりますので、事前に問い合わせてから用意しましょう。遺産分割協議書による場合、通常必要になるのは、各金融機関で用意されている相続手続依頼書兼同意書、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書です。株式の相続手続き上場株式の場合には証券会社で、非上場株式の場合には発行会社に問い合わせて、相続による名義変更の手続きをします。相続手続きに必要なものは、預金の場合と同様です。自動車の相続手続き自動車の相続手続きとしては、陸運局(運輸支局または自動車検査登録事務所)での移転登録申請が必要です。廃車にする場合や売却する場合でも、先に相続人名義に変更しなければなりません。相続手続きの注意点相続手続きをするときに注意しておくのは、次のような点になります。相続手続きで必要な書類は多い相続手続きをするときには、戸籍謄本を収集しなければなりません。相続手続きに必要な戸籍謄本は膨大な数にのぼることもあり、自分で集めようと思うとかなりの時間がかかってしまうことがあります。相続手続きでかかる時間や手間を考えると、専門家に依頼した方が安心です。何もかも自分でやろうとすれば手続きが進まないことがありますから、早い段階で弁護士などに相談しましょう。相続手続きには期限があるものもある相続手続きには、相続放棄や相続税申告のように期限があるものがあります。期限を過ぎてしまうと不利益を受けることになりますから、十分注意しておきましょう。なお、遺産分割や相続登記には、期限はありません。しかし、遺産分割が終わらないと法定相続で相続税の申告を行わなければならなかったり、相続登記をせずに放置していると次の相続が発生して手続きが複雑化したりします。相続手続きをせずに放置していても、デメリットが増えるだけです。相続発生後は、各種の手続きを速やかに終わらせるようにしましょう。相続手続きは弁護士等に依頼した方がいい?相続手続きは自分ですることもできますが、弁護士等の専門家に依頼することもできます。専門家に依頼するメリットを知っておきましょう。相続手続きを自分ですると時間がかかる相続手続きを自分ですることもできますが、慣れない人がやると、時間や手間がかかってしまいます。相続手続きをスムーズに終わらせるためには、専門家に任せるのがおすすめです。相続手続きを専門家に依頼した方がいいケース相続財産として不動産がある場合には、司法書士に依頼して相続登記の手続きをしてもらうとよいでしょう。司法書士には、相続登記の前提として、戸籍謄本の収集や遺産分割協議書の作成も依頼できます。遺産分割協議書の作成は、行政書士にも依頼することができます。相続人間で争いになることが予想されるなら、弁護士に相続手続きを依頼した方がよいでしょう。弁護士に依頼すれば、遺産分割協議の代理人になって他の相続人と交渉してもらえます。遺産分割協議が成立しない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立ててもらうことも可能です。なお、相続税の申告がある場合には、税理士に手続きを依頼しましょう。相続の手続きまとめ相続手続きをするには、相続人や相続財産をはっきりさせてから、遺産分割協議をする必要があります。遺産分割協議が終われば、各財産の名義変更を行って、相続手続き完了です。遺産分割協議では相続人同士が争いになってしまうことがあります。相続手続きの際には必要書類も多くなるので、最初から弁護士等に依頼して手間を省くことも考えましょう。
2019年04月16日世論調査によると「消費税増税に伴う家計支出の見直し」を考えている人の節約項目で、最も多かったのは「食費」だった。だが“お金のプロ”は、「もっと削るべきところがある」と――。時事通信が実施した「生活のゆとりに関する調査」が3月に発表された。注目すべきは、家計を管理することが多い女性の65.5%が、消費税増税によって支出を見直す必要を感じていること。「家計を見直す場合、どのような支出に影響があるのか、幅広い層に調査(複数回答)しました。59.4%ともっとも多くの人が節約対象としたのは食費で、外食、旅行などの娯楽費(39.5%)、水道光熱費(37.6%)と続きました」(時事通信世論調査担当者)そして、生活に直結する「日用雑貨の購入費」「衣料品や宝飾品の購入費」などを対象にしている人も多かったことがわかった。「日銀が目標とする『物価上昇率2%』を達成しないうちに消費税増税すると、景気の後退を招くため、増税はすべきではありません」この前提で節約術を解説するのは、経済評論家の山崎元さん(60)。「毎月30万円の家計支出がある家庭では、2%の消費税増税によって、月に6,000円の節約をする必要が生じます」節約で大切なのは「(1)確実である、(2)ストレスが小さい、(3)悪影響が出ない――」こと。この3条件を満たすのが生命保険の見直しだという。まずは年間の保険料を割り出すことから。「40代、50代の夫婦は、とにかく保険に“入りすぎ”。公的な健康保険に加入していれば、医療費の出費も3割負担、1割負担などになります。仮に入院・手術があっても、高額療養費制度で一定額以上の医療費の支払いは必要ありません。つまり、がん保険、医療保険は不要だと私は考えます」月の掛け金が高い、年金型保険に苦しむ人も多いはずだ。「低金利時代のため、年金型はリターンが少ない。人気の『外貨建て保険』なども含め、解約して別の貯め方をおすすめします。たとえば10年満期の変動金利型の個人国債です。これなら元本割れの心配がありません」保険は、最小限の範囲・最短期間・最安値に収めるのが鉄則だ。「生命保険なら、特約はつけず、働き手の死亡保障のみで、子どもが成人するまでの期間、掛け金の安いネット生保や共済に」保険を解約することに抵抗があるなら“払い済み”も検討を。「新たな保険料の支払いをストップする代わりに、すでに支払った保険料で保障内容を縮小するという方法があります。これも保険の整理になるでしょう」解約や契約内容を変更する際は、自分で判断し、決断すること。「保険会社の外交員などに相談してはいけません。彼らの収入に直結するため「もっと安くなるプランがある」と、新たな費用がかかる保険の転換など、言葉巧みに引き留められることがあるからです」保険の整理さえできれば、家族の“楽しい思い出”となるはずの旅行も我慢しなくてよい。「ただし、これをいい機会だと思って、将来の“わが家の暮らし”をきちんと数字で考える癖をつけましょう。厚生年金加入のサラリーマン家庭なら、手取り収入の2割を貯蓄する生活設計ができれば、老後の準備はOKと言えます」
2019年04月13日親や親戚が亡くなったときに頭を悩ませがちなのが相続。相続では財産だけでなく、借金も引き継いでしまいます。相続したくないなら、相続放棄ができますので、手続きをとるようにしましょう。本記事では、相続放棄の手続き方法や注意点についてご説明します。相続放棄とは?相続する権利は放棄できることを知っておこう相続人になっていても、相続しなくてすむようにしたいなら、相続放棄が必要です。相続放棄にはどういう意味があるのかを知っておきましょう。相続人になっていても相続放棄ができる人が亡くなったときには、民法上の相続人(法定相続人)が財産を相続します。けれど、相続人であれば必ず相続しなければならないわけではなく、相続する権利自体を放棄できる、相続放棄という制度があります。相続放棄をすれば、その相続に関しては、初めから相続人でなかったものとみなされます。たとえば、親が亡くなれば子供は通常相続人となりますが、相続放棄をすれば親の相続とは無関係になります。負の遺産があれば相続放棄することにメリットがある相続放棄をした方がいいのは、被相続人が借金を残している場合になります。相続では、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金(負債)というマイナスの財産も引き継ぐからです。プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多ければ、一般には相続放棄した方がメリットになります。相続放棄はどこでする?やり方は?手続き方法と流れを押さえておこう相続放棄をするには、法律上定められた手続きをとる必要があります。何もせず放置していれば相続放棄はできなくなってしまいますから注意しておきましょう。相続放棄は家庭裁判所に対して行う相続放棄を行う場所は、家庭裁判所です。相続放棄をするには、相続開始を知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければなりません。相続放棄の申述と言っても、口頭で行うわけではなく、相続放棄申述書とその他の必要書類を提出して、書面で手続きすることになります。相続放棄の必要書類相続放棄する際には、次のような書類が必要になります。相続放棄申述書裁判所で用意されている書式に必要事項を記入します。書き方については、記入例を参考にしましょう。申述書には相続放棄の理由も記載しますが、関わりたくないという理由でもかまいません。被相続人の資産や負債の概略も記載します。被相続人の住民票除票または戸籍附票被相続人の最後の住所地がわかるものとして、住民票の除票または戸籍附票を用意します。戸籍謄本自らが相続人であることがわかる戸籍謄本一式を用意します。相続放棄の申立費用相続放棄申述の手数料として800円がかかるので、800円分の収入印紙を購入して申述書に貼っておきます。また、裁判所からの連絡用に使う郵便切手を事前に提出しなければならないので、切手の組み合わせや金額を裁判所に確認してから提出します。相続放棄の申立方法相続放棄の申述をする場合には、次のような方法があります。書類を裁判所の窓口に提出する方法相続放棄の必要書類一式を揃えて、家庭裁判所の家事事件受付係に提出します。提出時に申述書の控も一緒に差し出すと、控に受付印を押して戻してもらえます。その後は、裁判所からの連絡を待つことになります。相続放棄の手続きを郵送でする方法必要書類一式を家庭裁判所に郵送します。控と返信用封筒を同封しておけば、受付印を押したものを返送してもらえます。郵送の場合にも、書類提出後は、裁判所の連絡を待つことになります。相続放棄の手続きを代理でしてもらう方法相続放棄の手続きを本人以外がやる場合、代理人になれるのは弁護士になります。相続放棄申述書の作成は司法書士にも依頼できますが、司法書士に代理人になってもらうことはできません。相続放棄申述書提出後の流れ相続放棄申述書を提出した後の流れは、次のようになります。家庭裁判所から照会がある相続放棄の意思に間違いがないかどうかの確認のため、申述人宛に家裁から照会書が郵送されてきます。照会書と一緒に同封されているに回答書に必要事項を記入し、家裁に返送します。相続放棄申述受理通知書が届く家裁からの照会の後、相続放棄申述が正式に受理され、申述人宛に相続放棄申述受理通知書が郵送で届きます。債権者に通知書を見せるかコピーを渡すかすれば、被相続人の借金の支払いを逃れられるのが通常です。相続放棄申述受理証明書の請求債権者から相続放棄申述受理証明書を要求された場合、相続放棄申述受理通知書を紛失した場合などには、家庭裁判所に証明書の交付申請をします。相続放棄する場合の注意点相続放棄の手続きをするときには、次のような点に注意しておきましょう。相続放棄すれば財産も相続できない相続放棄をすれば借金を引き継がずにすみますが、財産を相続することもできません。相続放棄後に新たな財産がでてきても、一度行った相続放棄を撤回することはできないので、慎重に行う必要があります。相続放棄には期限がある相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内の期間(熟慮期間)に行わなければなりません。熟慮期間を過ぎてしまうと、相続放棄はできなくなってしまいます。なお、当初の熟慮期間内であれば、期間伸長の申立ができます。相続財産がどれくらいあるか不明で、3か月以内に調査が終わりそうにない場合には、期間伸長の手続きをしておいた方がよいでしょう。相続放棄できないケースもある熟慮期間内であっても、相続放棄ができなくなるケースがあります。たとえば、相続人が相続財産の一部や全部を処分した場合には、法定単純承認といって相続を承認したことになってしまい、相続放棄はできません。相続放棄をする可能性があるなら、相続財産には手を付けないようにしましょう。相続放棄をすれば他の相続人に影響がある相続放棄をすると、他の相続人に影響を及ぼすことにも注意しておきましょう。相続放棄により、他の相続人の負担が増えたり、新たに相続人になる人が出てきて相続放棄が必要な人の範囲が広がったりすることがあります。たとえば、被相続人に借金があり、相続人が妻と子1人であるケースで、妻が相続放棄をすれば子だけで借金を負担しなければなりません。また、同じケースで妻も子も相続放棄をした場合、第2順位の相続人(直系尊属)が相続人となるため、第2順位の相続人も相続放棄が必要になってしまいます。第2順位の相続人がおらず、第3順位の相続人(兄弟姉妹)がいる場合も同様です。離婚していても子供は相続放棄が必要親が亡くなると子供は相続人になります。父母が離婚していても、親子関係は変わりません。離婚により離れた父親が借金を残して亡くなった場合でも、息子や娘は相続放棄しない限り借金の支払いを請求されることになります。未成年者の相続放棄には特別代理人が必要なことがある未成年の子が相続放棄をする場合、親権者との間に利益相反が起これば、親権者が法定代理人として相続放棄の手続きをすることができません。利益相反が起こる場合とは、次のようなケースです。親も子も相続人で、子だけが相続放棄をするケース複数の子がいる場合で、一部の子だけが相続放棄をするケース上記のようなケースでは、子のために特別代理人が必要です。相続放棄をする前に、家庭裁判所に申し立てをし、特別代理人を選任してもらわなければなりません。なお、親も子も相続放棄をする場合には、特別代理人は不要で、親が子の相続放棄の手続きができます。まとめ相続放棄は、通常は相続開始から3か月以内に行わなければなりません。うっかりしていると、相続放棄ができなくなってしまうことがありますので十分注意しておきましょう。なお、3か月を経過していても、当初被相続人に借金があることが全くわからなかった場合には、相続放棄できる可能性があります。3か月過ぎているとあきらめる前に、弁護士等に相談するのがおすすめです。
2019年04月12日