老後の生活を考えるうえで軸となる年金の受給額。妻のもらえる年金の額で損をしないためには、いくつかの“落とし穴”にご用心!「ねんきん定期便」には書かれていない注意点を早めに押さえておこうーー。「ねんきん定期便」には、保険料を納めた期間に応じて、老齢厚生年金と老齢基礎年金の額が記載されている。そして、ねんきん定期便には書かれていないけれどもらえる年金があり、これは請求しないと受け取ることができないので注意が必要だ。自分がもらえる対象なのかどうかを確認する必要がある。そんな「もらい忘れ」に注意が必要な妻の年金を、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんが解説してくれた。【ケース1】いまは専業主婦の妻が、独身時代に勤めていた会社に「企業年金」があったまず注意したいのが、「厚生年金基金」のもらい忘れ。年金は1階が国民年金、2階が厚生年金、企業年金を3階と表して、厚生年金基金は企業年金の一つにあたる。’14年3月までの加入期間で、おおむね10年未満で中途退職した場合、企業年金連合会に記録が移っている。「よくあるケースは、妻が寿退社するまで勤めていた会社に厚生年金基金があったのを知らずに放っておいてしまうこと。結婚後に姓や住所が変わると本人の特定が難しくなり、通知が送られてこないというケースがあるのです。企業年金連合会のホームページからコールセンターに問い合わせるか、勤めていた会社に連絡して確認することをおすすめします」(井戸さん・以下同)結婚してから夫の扶養に入ると、手続きは夫任せ、という人も多い。特に夫が会社を退職したときに注意が必要だという。【ケース2】夫の退職時に、妻が第3号被保険者から第1号被保険者に変更になった厚生年金に加入している会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養される20歳以上、60歳未満の主婦や主夫は、国民年金の第3号被保険者になる。保険料は自分で納める必要はなく、65歳以降、老齢基礎年金をもらうことができる。「注意が必要なのは、夫の定年退職後です。60歳未満の妻は、60歳まで年金保険料を支払わないと老齢基礎年金を満額で受け取ることができません。夫の退職と同時に妻は3号被保険者から自営業者などが加入する1号被保険者になりますが、この手続きを忘れてしまいがちなのです。市区町村の国民年金課に行き、自分で手続きをしましょう」夫が転職を繰り返している場合も、妻はその都度「3号被保険者」になるので、転職の都度、自分で確認しておきたい。「ねんきん定期便」で、加入期間をチェックして、加入期間が40年に足りていないことがわかったら、60歳以降も国民年金に加入して保険料を納める「追納制度」を利用することで加入期間を40年、480カ月の満額にすることができる(ただし、さかのぼることができるのは10年以内の分まで)。【ケース3】妻の前年の年金+そのほかの所得の合計が77万9,900円以下だった専業主婦だった妻が夫に先立たれた後など、年金収入が少ない人には年金に上乗せして支給される給付金制度が適用されることを知っておきたい。「’19年9月からスタートした『年金生活者支援給付金』は、消費税が10%に上がったタイミングで設けられました。65歳以上で、国民年金の保険料に未納期間がない場合、老齢基礎年金に年6万円が上乗せされた額を受け取ることができます」受け取るためには、前年の年金とそのほかの所得の合計が77万9,900円以下で、同居の家族が住民税非課税といった条件がある。さらに、年金を受け取る前に夫が他界したら、遺された妻が、夫が受け取るはずだった年金の一部をもらえる制度もある。【ケース4】夫が年金を繰り下げ受給しようとしたが、受給開始前に亡くなった年金を支払い続けていた夫が亡くなったときに遺族年金があり、一緒に「未支給年金」の請求を行うが、遺族年金を受け取れない自営業の人などはもらい忘れる可能性がある。未支給年金とは、65歳以降に夫が受け取るはずだった年金を、遺族が代わりに受け取ることができる年金のこと。「すでに老齢基礎年金を受け取っている人が7月20日に亡くなったとすると、その人が最後に受け取れる年金は6月15日に支給される4月分と5月分になります。このとき、6月分と7月分が『未支給年金』となります。市区町村の国民年金課で手続きをしなければもらえない年金で、5年経過すると時効になってしまうので、忘れずに請求しましょう」また、年金を繰り下げている間に亡くなったとき、受け取るはずだった年金を過去5年間さかのぼって受け取ることも可能。たとえば、老齢基礎年金(78万円)、老齢厚生年金(122万円)ともに繰り下げをして70歳で受け取るつもりが、69歳で亡くなった場合、遺族が請求できるのは繰り下げ前の年金額200万円×4年分の800万円となる。これから75歳まで繰り下げられるようになるので、もらい損にならないように制度をきちんと知っておこう。【ケース5】’66年4月1日以前に生まれた女性で、厚生年金に1年以上加入していた公的年金の受け取りは原則65歳からが基準だが、65歳前でももらえる人がいる。「特別支給の老齢厚生年金」は、厚生年金に1年以上加入した場合、60歳から厚生年金の一部を受け取ることができる。金額は生まれた年によって異なってくる。「男性は’61年4月1日までに生まれた人、女性は’66年4月1日以前に生まれた人が対象です。受け取り開始の3カ月前に年金請求書が送られてきますが、『年金は65歳から受け取るものなので、後で請求すればいいや』と勘違いをして、請求し忘れているケースが散見されます」これも、手続きを忘れると5年で時効になってしまう。十分に気をつけよう。「女性自身」2020年10月20日号 掲載
2020年10月08日日本国民なら20歳になると国民年金に加入しなくてはなりません。すでに会社勤めなどをしている人なら労使折半で保険料を収めているはずですが、収入のない学生はどうしているのでしょうか。保険料が払えないからと未納のままにしている人、もしくはしていた人も多いのではないでしょうか。学生時代に国民年金の保険料を払っていないと、将来の年金額に影響が及びます。今回は、学生時代に年金の保険料を払わなかった場合の対処の仕方などについて解説していきます。国民年金には保険料の免除や猶予の制度がある自営業者や学生、農業の人など国民年金の第1号被保険者のうち、保険料を支払うことが経済的に困難な方のために、保険料を免除したり猶予したりする制度があります。免除や猶予の手続きをすると、何も手続きを行わずに保険料を納付しない、単なる未納とは区別されます。未納のまま放置すると、老齢年金の受給以外にも不利益を被ることがあります。そのため、免除や納付猶予の制度が利用できる場合はきちんと手続きをし、未納を避けるべきです。国民年金保険料未納のデメリットとは?国民年金保険料を免除や猶予の手続きをせずに未納のままにすると、どのようなデメリットがあるでしょうか。年金が受け取れない、または年金受給額が減る未納の場合、保険料を払わないので「年金額が減る」というデメリットがあることは、難なく想像ができると思います。けれども、「全く受け取れなくなる」可能性もあることは想定外の人が多いのではないでしょうか。老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)を受け取るには、保険料を納付済みの期間と、免除や猶予の期間の合計が10年以上であることが条件になります(受給資格期間といいます)。未納の期間が長くて受給資格期間を満たせない場合、老齢基礎年金を1円も受け取ることができません。「障害年金」「遺族年金」が受け取れない一般に「年金」というと、上述した「老齢基礎年金」のように老後に受け取る「老齢年金」をイメージする人が多いと思います。しかし公的年金には、亡くなったときに遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」もあります。障害年金、遺族年金を受給するためには以下のいずれか条件が必要です。それまでの加入期間の3分の2以上について、保険料を納付済みまたは免除されていること直近1年間に未納がないこといずれの場合も、未納の期間が長いと受給資格を満たせなくなり、いざというときに障害年金や遺族年金が受給できなくなる可能性があります。例えば、交通事故のケガで後遺症が残って働けなくなった場合などに障害年金が受け取れないのは、経済的なダメージも大きいはずです。保険料免除制度とは?本人・世帯主・配偶者の前年の所得が基準額以下の場合、「保険料の全額、4分の3、半額、4分の1」のいずれかが免除されます。いくら免除されるかは前年所得額によって決定します。免除を受けると年金の受給額は減額になりますが、半分は保証されます。保険料納付猶予制度とは?50歳未満の加入者で、本人と配偶者の前年の所得が基準額以下の場合に、納付を猶予してもらうことができる制度です。納付猶予は免除とは違い、後から保険料を納めることを前提としています。そのため、年金を受け取るために必要な受給資格期間に算入されますが、猶予期間分の年金の受給額には算入されません。学生納付特例制度は保険料の後払いを前提とした制度学生の場合は、納付猶予の特例で「学生納付特例制度」という制度を利用できます。「学生納付特例制度」とは?「学生納付特例制度」とは、学生で保険料を納めるのが難しい場合、本人の所得が118万円までであれば、年金保険料の納付を猶予する制度です。この制度を利用すれば、保険料を納めなくても受給資格期間に算入されます。しかし、「猶予」とは「免除」と違い、保険料の後払いを前提としています。ゆえに、そのまま保険料を納めなければ、将来の年金額は減額されるので注意が必要です。学生納付特例制度を申請し忘れた場合学生納付特例制度は、20歳になって「国民年金加入手続きのご案内」が送られてきたタイミングで申請するのが一般的です。もし、そのタイミングで申請しそびれた場合、2年1か月まで遡って申請を出すことができます。この期間も過ぎてしまった場合は学生納付特例制度は使えず、その期間は未納ということになってしまいます。未納期間分の保険料の後払いはいつまでできる?学生時代に学生納付特例制度を利用してもしなくても、保険料を納めていないなら、将来の年金額が減ることには変わりがありません。20歳から40年間、国民年金の保険料を払い込んだ場合に受け取れる年金額の年額は、2020年(令和2年)度で781,700円です。仮に3年間の未納だとすると、将来の年金額は約60,000円(約8%)も減ります。国民年金は一生涯受け取る年金なので、長生きすればするほど、減額の影響は大きくなります。そこで、納めていない保険料を後から納めて、将来受け取る年金を増やす方法について見ていきます。[adsense_middle]学生納付特例を利用した人の追納の期限とタイミング保険料納付猶予制度や学生納付特例は、保険料の納付を先延ばしにして後で払うことが前提であると述べました。その「後払い」にあたる行為を「追納」といいます。追納は、免除や猶予された期間の保険料を10年まで遡って納めることができる制度です。ただし、3年以上前の保険料を追納する場合には、経過期間に応じた加算額(延滞利子のようなもの)が付きますので注意してください。追納の最適なタイミングとは?3年以上経ってからの年金保険料の追納は加算額が上乗せされるので、2年以内に追納したほうがいいということになります。ただ、ここでもう一つ考えるべきことがあります。それは、追納した保険料は社会保険料控除の対象になり、所得税と住民税が軽減される点です。所得税と住民税の節税効果は収入の高い人ほど大きくなります。もし、追納によって所得税の税率が変わるような場合は、そのタイミングで追納するほうが、加算額を回避するより有利な可能性があります。学生納付特例を利用した人が社会人になったら、追納の保険料をいつ払うのがいいかを考えておきましょう。奨学金の返済と追納の関係日本学生支援機構の貸与型の奨学金を受けた場合、社会人1年目の10月から返済が始まります。ここで、年金保険料の追納と奨学金の返済が重なると、負担が重すぎる場合も考えられます。その場合は、奨学金の返済を優先し、年金保険料の追納は生活が安定してからにしましょう。なぜなら、奨学金を返済しない場合のほうがリスクが高いからです。未納で減った年金額を取り戻すその他の方法学生納付特例も利用せず、保険料が未納だった場合は60歳以降で年金額を増やす方法があります。厚生年金を継続して経過的加算額を増やす会社員の場合、厚生年金は最長70歳になるまで加入できます。国民年金の保険料は60歳以降は納めないため、60歳以降に会社勤めをしている場合は国民年金の年金額は増やせません。しかし、老齢厚生年金の経過的加算額は増えていきます。経過的加算額は厚生年金に3年加入して約60,000円増やすことができますので、3年間の未納で減った年金額をほぼ埋め合わせることができます。国民年金の任意加入国民年金が満額に足りない人は、60歳以降も65歳まで国民年金の任意加入をして国民年金保険料を納めることができます。60歳以降会社勤めをせずに厚生年金に加入しない場合は、この方法を利用すれば老齢基礎年金が増やせます。学生時代の年金の未納と追納に関するまとめ学生納付特例を利用した場合は、10年以内に遡って「追納」をすることができます。追納の保険料は社会保険料控除の対象になります。一方、学生納付特例を利用しなかった場合は、60歳以降に厚生年金の継続、または国民年金の任意加入で老後の年金を増やすことができます。上記のように、学生時代の国民年金の保険料が未納のとき、学生納付特例を利用した場合としない場合で、老後に受け取る年金を増やす方法が異なるため注意しましょう。
2020年09月27日「アベノミクスは買いだ」世界にそう喧伝していた安倍晋三首相。だが、8月28日の辞任会見で「アベノミクス」という言葉は最後まで使わなかったーー。『アベノミクスの終焉』の著書がある同志社大学商学部の服部茂幸教授が話す。「アベノミクスが中途半端で終わったことを表しています。アベノミクスは、日本銀行が国債をたくさん買い入れることにより、市中に大量の通貨が供給され、金利は下がり、企業活動が活発化。物価の上昇とともに賃金も増え、消費も拡大すると謳っていました。その景気回復へのシナリオはすべて頓挫したのです」7年8カ月も続いた第2次安倍政権の根幹政策だったアベノミクス。その実態を検証しよう。■物価上がるも賃金下がり『ツーカとゼーキン知りたくなかった日本の未来』の著者である弁護士の明石順平さんはこう語る。「確かに、物価は上昇しました。消費者物価指数は’12年から’19年までに7.2%、食料品に限っては約11%も急上昇。ところが、物価が上がっても名目上の賃金はほとんど変わっていません」賃金が上がっても、それ以上の勢いで物価が上がっていれば、買えるものは少なくなり、実質的に賃金が減っているのと変わらない。’12年から、物価の影響を考慮した実質賃金指数は5度にわたり下落している。アベノミクスで“給料”は上がる(図解:ウソ1)どころか、下がったのだ。安倍首相は“雇用の改善によって賃金の低い新規雇用者が増えて、平均を押し下げた”と主張してきたが……。「だったら名目賃金も下がるはずですが、こちらは下がっていない。明らかな嘘です。仮にそれが本当なら、新規労働者が増え続ける限り、実質賃金が下がるということになりかねない」(明石さん)さらに、これらの数字すらかさ上げされた可能性がある。’18年から調査対象の「常用労働者」の定義が変えられていたのだ。「『常用労働者』から賃金の低い日雇労働者を除外した。結果、平均賃金は高くなりました。そんなことまでして、アベノミクスの失敗をごまかそうとしたんです。本来、賃金が上がり、続いて自然に物価が上がるというのが正しい経済成長。物価上昇を目標としているアベノミクスは最初から誤っているのです」(明石さん)給与が下がった一方で、負担は増えた。今年3月、財務省は、税や社会保険料などの負担が所得に占める割合である「国民負担率」が過去最高となる44.6%になる見通しだと発表。それにともない手取りである可処分所得が減り続けている。アベノミクスで生活が豊かになる(図解:ウソ2)ことを期待した多くの国民を裏切ってきたのだ。前出の服部さんが語る。「アベノミクス失敗の原因をコロナ禍に求める人がいますが、’18年10月には景気が後退局面に入っていたことが今年7月になって明らかになりました。成長率も1%程度と低く、効果がなかったんです。国民はアベノミクスという幻想から目を覚ますべきです」しかし、自民党総裁選への出馬会見(9月2日)で菅義偉官房長官は「アベノミクスをしっかりと引き継いで、前に進めていきたい」と語った。悪夢は“スガノミクス”として引き継がれていくのか。「女性自身」2020年9月22日 掲載
2020年09月10日長年連れ添い、紆余曲折を経ながら、最後は「夫を介護する」という試練と向き合うことになった妻たち。そのとき、夫に何を思うのか。きれいごとだけでは片づけられない複雑な思いを超え、見えてきた「夫婦って何?」の答えに、耳を傾けましたーー。■小山明子さん(85・女優)/夫は故・大島渚(享年80)「ロンドンで倒れて帰国した夫の大島には、右半身のマヒが残りました。彼を支えるといっても、私は女優で何もできないのがつらくて」国際的に活躍していた映画監督の大島渚さん(当時63歳)が、滞在先のイギリスで脳出血により倒れたのは’96年2月。妻の小山明子さんには、その日から介護生活の重圧がのしかかる。「息子2人もいましたが、ずっと家事はお手伝いさん任せでしたから、カロリー計算などしたこともない。周囲の励ましの声が、逆に『お前は妻失格だ』と聞こえ、私は最低な女だと、自分で自分を追い込んでいったんです」ついには自殺願望も出現し、自身も閉鎖病棟へ入院となる。診断は、重度のうつ病だった。ある日、夫に付き添い、リハビリ室で待機していると、隣にいた年配の女性が話しかけてきた。「奥さん。あの方、有名な映画監督の大島渚よ。大変ねえ~」小山さんは当時を振り返る。「すぐ目の前にいるのは妻の私なのに気づかない。『そうなんですか』と返事しながら、心臓が凍りそうなほどショックで。帰って鏡を見たら、頭は白髪、十数キロ痩せて、化粧もしていない老婆のような姿の自分がいました」この出来事が「介護うつ」から立ち直るきっかけとなった。「20歳で女優になって四十数年。いかに自分が夫に依存していたかを知るんです。精神的にも自立しなければ、と思いました」その第一歩として、地元・藤沢市の広報誌で見つけた社会保険健康センターのスイミングスクールへ通い始めた。その後、順調に回復した大島監督だったが、結婚40周年を迎えたころから、再び多発性脳梗塞や十二指腸潰瘍穿孔などが襲う。「夫の入院と同じころ、うちで何十年も働いてくれた70代のお手伝いさんも入院。ここをなんとか乗り切らなければと、私は2つの病院に通い続けました。周囲に頼ることも覚えました。4年間のうつ体験は、無駄じゃなかったんです」退院してきた大島監督は、「要介護5」の判定となり、さらに過酷なリハビリの日々が始まる。「討論番組などの影響で『バカヤロー』のイメージもあった大島ですが、素顔は家族にも誰にも『ありがとう』の人でした。それが脳の病気の後遺症と思われますが、このころから車いすの押し方が悪いといっては、『このバカ女!』など罵声が出るようになるんです」息子さんたちは、「ママ、よく我慢できるね」といったが、小山さんの思いは違っていた。「私は、八つ当たりしてもらってストレス発散して、少しでも長生きしてもらいたかった。だって、十二指腸の手術後には、最悪のことまで覚悟していたのですから」このころ、上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン神父の著書に感銘を受け、抱えているものを手放すなどの処世術を実践した。「もう過去の栄光にとらわれるのはやめよう。1人の闘病する人間とその妻として、一日一日を笑って生きよう。女優の代わりはいくらでもいるけど、大島渚の妻は私だけなんです」’10年10月には、ともに大病を経験した夫婦の念願だった金婚式も無事に済ませた。大島監督が80歳で死去したのは、その3年後だったーー。夫を見送って7年。気づけば自身も80代半ばとなり、体も悲鳴を上げ続けている現実もある。「4年前から毎年、乳がんや心臓の手術を繰り返し、昨年も脊柱管狭窄症と肺がんの手術。仕事を続けるときに不安のままいるよりはと、私は手術を選んできました」現在はコロナ禍で延期などになっているが、自身の介護体験を語る講演などは今後も続けていく。同時に続けたいのが“2人旅”。「大島は孫にとっては、いつも病床で寝ているおじいちゃん。その教訓もあって、私は元気なうちに5人の孫とそれぞれ2人旅をして、思い出作りをしています」「女性自身」2020年9月15日 掲載
2020年09月09日日本国民であれば、20歳になったら国民年金に加入しなくてはなりません。それは、まだ働いていなくて収入のない学生も同様です。2021年(令和3年)3月までの国民年金保険料は16,540円(月額)ですが、もし保険料を支払うことができない場合はどうすればいいのでしょうか。国民年金には単なる未納とは異なる、免除や猶予という制度があります。学生には、学生納付特例猶予があります。今回は、これらの制度の基礎知識についてお伝えします。大学生が利用できる国民年金の猶予制度「学生納付特例」とは?「免除」と「猶予」は、経済的な理由で国民年金保険料を納めることができないときでも未納にならないための制度です。免除や猶予の手続きを行っておけば、その期間は受給資格期間に含まれます。これらの制度を利用したのちに年金額を増やすためには、保険料の追納や、60歳以降も国民年金に任意加入するなどが必要です。国民年金の免除制度とは?免除制度は失業などの理由で国民年金保険料を納められない人が審査を受けて、その所得に応じた免除割合が決められます。そして、免除の割合によって将来受け取る国民年金が減額されます。国民年金の納付猶予制度とは?これに対し、納付猶予は学生やそれ以外の若年者(20歳以上50歳未満)といった、将来的に納付が可能な人に納付を猶予する制度です。免除制度では年金額への反映がされますが、猶予制度では猶予期間中の年金額は未納と同様に計算されません。「学生納付特例制度」とは?20歳以上で所得が一定以下の学生は、申請により国民年金保険料の納付猶予を受けることができます。所得は本人の所得のみが対象です。所得基準2020年(令和2年)度の所得基準は以下のとおりです。118万円+(扶養親族等の数×38万円)+社会保険料控除等「学生納付特例制度」のメリット「学生納付特例制度」は国民年金保険料の支払いが猶予される、税金でいうところの「延納」のようなものです。よって、保険料を払わなければ年金額は減ってしまいます。では、「学生納付特例制度」を利用した場合のメリットには、どんなものがあるのでしょうか。手続きをしていれば受給資格期間に算入される公的年金を受給するためには、年金保険料を支払った期間や保険料の免除期間の合計が一定以上必要です。その期間を「受給資格期間」といいます。現在、老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)の受給資格期間は10年です。国民年金に限らず、厚生年金の保険料を支払った期間や免除期間も合算して10年以上であれば、老齢基礎年金を受給することができます。受給資格期間受給資格期間は以下の計算式で求めます。「国民年金の保険料の納付月数」+「若年者納付猶予制度の対象月数」+「国民年金の保険料の免除月数」+「学生納付特例の対象月数」「学生納付特例の対象月数」は受給資格期間に含まれるため、単なる未納の場合に比べて有利になります。「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」を受け取る権利ができる公的年金は老後に受け取る老齢年金だけではありません。亡くなったときに遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」があります。「学生納付特例制度」の手続きをし、国民年金に加入した人は「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を将来受ける権利が生じます(ただし、障害を負った、または亡くなった時点で、障害基礎年金や遺族基礎年金それぞれの受給要件を満たしている必要があります)。特に、万が一のときに障害基礎年金を受け取れないと経済的なダメージが大きいので注意が必要です。仮に、交通事故などでケガをして身体障害者になってしまった場合、本来なら障害基礎年金の障害等級の1級や2級にあてはまる場合でも、未納では受け取ることができません。公的年金は老後の年金だけではないことをきちんと理解して、学生納付特例の手続きを忘れずにしておきましょう。追納によって減った年金額を満額にできる「学生納付特例制度」を利用した場合、保険料を全額納付した場合と比べて年金額が減額になります。しかし、「学生納付特例制度」の承認を受けた期間の保険料については、後から納付(追納)することにより、老齢基礎年金の年金額を増やして最終的に満額にすることができます。また、社会保険料控除により、所得税・住民税が軽減されます。「学生納付特例制度」を利用した期間が年金額に反映されないのは、「学生納付特例制度」が保険料の猶予であり、後払いを前提としているからだと考えられます。追納するなら2年以内を目標にする追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られています。「学生納付特例制度」を受けた期間の翌年度から数えて、3年目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額(延滞金のようなもの)が上乗せされます。追納するなら2年以内を目標にしましょう。追納によって受給額はどれくらい増えるか追納することで受給額はどの程度増えるのでしょうか。例えば、1カ月分の保険料を追納したら、「781,700円(令和2年度の満額)/480カ月≒1,629円」の年金を増額できます。1年分の追納の場合は、約19,542円の年金を増額できます。増額した年金は終身で受け取れます。「学生納付特例制度」のデメリット追納をしなければ年金額が減額になる上記の追納の説明でも述べましたが、「学生納付特例制度」を利用した場合、追納をしなければ年金額が減額になります。例えば、学生納付特例制度を2年間利用したとします。減額される年金額は以下のとおりです。(781,700円×38年)÷40年=742,615円満額との差額は以下のとおりです。781,700円-742,615円=39,085円実に40,000円近い年金額のカットが、65歳以降一生涯続きます。学生時代にはありがたかった学生納付特例制度が、忘れたころに老後生活にネガティブな影響を及ぼすのです。「学生納付特例制度」を申請する方法[adsense_middle]20歳になったら必要な国民年金の手続き20歳の誕生日を迎えてから2週間以内に、日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」という書類一式が、保険料の納付書とともに送られてきます。通常は、毎月保険料を納めることになります。しかし、収入のない学生で保険料の支払いが難しい場合などは、これまで解説してきたとおり「学生納付特例」を利用することになります。学生納付特例制度の申請書は「国民年金加入のお知らせ」の書類一式の中に入っています。学生納付特例制度の申請場所学生納付特例制度の申請は次の場所で受付けています。住民票のある市区町村の役所の国民年金担当窓口最寄りの年金事務所なお、学生納付特例の申請は郵送でも受付けています。手続きに必要なもの窓口の申請の際には以下のものが必要です。国民年金保険料学生納付特例申請書年金手帳(※)学生証または在学証明書※まだ年金手帳を持っていない人は身分証明書(運転免許証・パスポート・個人番号カード)を持参します。学生の年金&猶予と免除の違いに関するまとめ収入のない学生は、申請によって保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用できます。「学生納付特例制度」は保険料の支払いを猶予する「後払い」を前提とした制度であるため、期間中の年金額には反映されません。10年以内に追納をすることにより、年金額を満額に近づけることができるようになっています。また、「学生納付特例制度」の期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。このように、単なる未納と手続きを踏んで猶予してもらうことには大きな違いがあるので、「国民年金加入のお知らせ」が届いたらくれぐれも放置をしないようにしましょう。
2020年09月05日少子高齢化が進み、公的年金だけでは老後の生活が成り立たないと、ほとんどの人が不安を感じています。特に、国民年金だけで厚生年金のような上乗せがない自営業者は、より一層不安が大きいことでしょう。今回は、自営業者の人の老後の支えになる公的年金の基礎知識と、老後のための自助努力について解説します。自営業の公的年金制度についての基礎知識厚生労働省ホームページ国民年金の年金額はどのくらい?公的年金でもらえる金額は?では、国民年金の年金額は厚生年金に比べてどのくらい少ないのでしょうか。厚生労働省が公開している「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、会社員などの第1号厚生年金被保険者に対する厚生年金の平均支給額は、月に143,761円です。これに対し、国民年金の平均支給額は月に55,809円です。夫婦ともに国民年金の世帯では、月当たりの年金額が10万円強ということになります。これでは、住宅ローンなどもなく質素な暮らしをしたとしても、生活していくことは難しいでしょう。もちろん、健康であれば働けるだけ働くことも可能ですし、それが自営業のメリットでもあります。ただ、将来にわたって健康である保証はなく、若いうちから年金増額対策をコツコツ積み重ねることは必須といえます。自営業者が加入できる年金の上乗せ制度とは?それでは、具体的に自営業者が年金上乗せの自助努力として利用できる制度について見ていきましょう。自営業者が利用できる年金対策の制度は主に以下のようなものがあります。iDeCo(個人型確定拠出年金)小規模企業共済国民年金基金[adsense_middle]iDeCo(個人型確定拠出年金)iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、個人である加入者が掛け金を積み立て、自分で選んだ商品で運用を行い、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができる私的年金制度です。運用の成果によって、将来受け取る年金額は変化します。iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入条件iDeCoは原則として日本在住で20歳以上60歳未満、国民年金や厚生年金などの公的年金に加入している人であれば加入できます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金iDeCo(個人型確定拠出年金)は月々5,000円以上1,000円単位の掛け金から始めることができます。掛け金には上限額があり、自営業者の場合は月額68,000円が上限となっています。iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリット掛金が全額所得控除iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金は全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。この節税メリットはiDeCo(個人型確定拠出年金)の最大の魅力といっても過言でありません。個人の税引き後の資金で運用するのに比べ、断然有利になります。運用益に対して非課税個人の資金を投資信託などで運用した場合、運用益に対して所得税が課税されますが、iDeCoでの運用益には課税されません。受取時にも税制優遇60歳以降にiDeCoの積立金を受け取る場合、分割して受け取る年金方式と一括で受け取る一時金方式、または両者の併用から選ぶことができます。年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。インフレ対策が可能iDeCoでは株式や不動産(リート)などに分散投資が可能となっており、老後までに徐々にインフレが起ったとしても対策することができます。iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリット60歳まで引き出しできないiDeCo(個人型確定拠出年金)の積立金は原則として60歳になるまで引き出しはできません。iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金を自助努力で準備する制度であるため、税制が優遇されています。それゆえ、目的外の資金の利用は制限されるのです。また、一度加入すると、掛金の減額はできますが脱退はできません。元本保証ではないiDeCo(個人型確定拠出年金)の運用は加入者が自ら行います。運用商品の中には元本保証でない投資信託も含まれます。運用がうまくいけば高い収益を得ることができる半面、場合によっては元本割れを起こす可能性もあります。ただ、iDeCoの毎月定額での運用商品の買い付けは長期で続けるほど平均購入単価が下がり、リスクを抑えることにつながります。小規模企業共済小規模企業共済とは、個人事業主や会社役員などが事業を廃止・会社を退職する際に、それまで積み立てた掛金に応じて給付金を受け取る退職金制度のことです。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、全国で約132万人の加入者がいます。小規模企業共済の加入資格常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主および会社の役員小規模企業者たる個人事業主に属する共同経営者(個人事業主1人につき2人)一定規模以下の企業組合・協業組合及び農業組合法人の役員常時使用する従業員が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員なお、加入年齢の制限はありません。小規模企業共済の掛金毎月1,000円以上で500円単位で自由に設定可能で、上限は月額70,000円です。増額、減額も可能です。小規模企業共済のメリット積み立てた以上の金額が受け取れる事業の廃業や退職時に、それまで積み立てた金額を「共済金」として受け取ることができます。20年(240ヶ月)以上積み立てていれば、掛金の支払額以上の給付が見込めます。掛金が全額所得控除小規模企業共済の掛け金は全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。受取時にも税制優遇小規模企業共済の共済金を受け取る場合、分割して受け取る年金方式と一括で受け取る一時金方式、または両者の併用から選ぶことができます。年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。契約者貸付制度あり払い込んだ掛金の範囲内で、無担保・無保証人にて事業資金の貸付けが受けられます。小規模企業共済のデメリット掛け捨てと元本割れのリスクあり納付月数が12ヶ月(1年)未満で解約となった場合は掛け捨てになります。また、加入期間が20年未満の場合は、元本割れしてしまいます。国民年金基金国民年金基金とは、国民年金の第1号被保険者が任意に掛金を拠出することによって将来の年金受給額を増やす制度です。各都道府県ごとに設立された「地域型国民年金基金」と、同じ職種ごとに全国規模で設立された「職能型国民年金基金」があります。国民年金基金の加入資格20歳から60歳になるまでの間の人で、国民年金の保険料を納めている第1号被保険者日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の国民年金任意加入被保険者国民年金基金の掛金掛金月額は加入時に選択した給付の型、口数、年齢、性別に応じて変わりますが、将来も一定です。国民年金基金のメリット掛金が全額所得控除国民年金基金の掛け金は全額、所得控除(社会保険料控除)の対象となります。将来、受け取る年金額が確定している国民年金基金では加入時の予定利率が将来にわたって変わらないため、将来受け取る年金は運用状況などによって変動することはありません。終身年金を選択できる国民年金基金に加入する場合、少なくとも最初の1口目は、終身年金を選択することが必要です。終身年金は一生涯、年金を受け取ることができます。そのため、長生きのリスクに対応することが期待できます。国民年金基金のデメリット一度加入すると解約できない国民年金基金への加入後は原則として解約できません。掛金の支払いが困難な場合は、減額や支払い猶予を利用できます。インフレ対応ができない国民年金基金の予定利率は加入時から将来にわたって変わらないと述べました。これは、将来の年金額が確定しているということであり、インフレによる物価上昇には対応できません。国民年金基金は遠い将来のための制度ですが、将来のインフレリスクに対応できないことは大きなデメリットといえます。自営業者の年金に関するまとめ自営業者の老後の公的年金は国民年金しかないため、それだけで生活していくことはほぼ不可能です。対策としては働けるうちは働き、働いている間に国民年金だけでは足りない部分を自助努力で準備することが考えられます。自助努力のために活用できる主な制度は、iDeCo(個人型確定拠出年金)、小規模企業共済、国民年金基金があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。加入を検討する際は、自分が重視する点は何かなどをよく考えましょう。
2020年09月02日初めての就職、初めての一人暮らし。何もかもが初めてで、期待と不安でいっぱいでしょう。「生活費はどれくらいかかるのか?」「給料のうち、どのくらいを貯金できるのか?」いろいろと心配なことも多いと思います。本記事では、一人暮らしをするにあたって、どの程度の家賃の部屋なら家計の負担にならないのかについてまとめていきます。ワンルームの家賃相場一人暮らしの場合、ワンルームマンションに入居することがほとんどではないでしょうか。どの地域に住むかによって、同じワンルームでも金額にかなりの差があります。全国賃貸管理ビジネス協会が毎月調査し公表している「全国家賃動向」の2020年(令和2年)6月分を参考にし、ワンルームの家賃相場について以下まとめます。主要都市・賃貸ワンルーム平均家賃北海道…42,538円東京都…69,767円神奈川県…58,693円愛知県…49,014円大阪府…56,555円兵庫県…51,453円広島県…48,825円福岡県…47,292円一番家賃の高い都道府県は?47都道府県のワンルーム家賃の平均データを見てみると、家賃が一番高いのは東京都(69,767円)です。では、一番家賃の低い都道府県はどこかというと、鳥取県(38,136円)です。東京都と鳥取県の差は、2倍とまではいきませんが、約3万円もの差があります。ワンルームマンションの家賃は、都心部より地方のほうが安い傾向にあります。給料から考える家賃の目安就職が決まったら、次は住まい探しです。求人票などで、だいたいのお給料はわかると思います。しかし、実際どの程度なら払えるか心配ですよね。家計の負担にならない家賃の目安について、ここから解説していきます。手取り収入の2〜3割だと安心一人暮らしでは、家賃以外にも食費や光熱費など、暮らしにかかるすべての支出をご自身の給与から捻出しなければなりません。家賃は毎月必ず発生する支出で、住んでいる限り長く支払わなければいけないお金です。一般的に、ほかの支出に影響を与えることなく家賃を払い続けられる目安は、手取り収入の2〜3割以内とされています。手取り収入とは基本給にさまざまな手当(職務手当、残業手当など)を上乗せした一か月の総支給額のことを「額面」と言います。この「額面」から、社会保険料(厚生年金や健康保険)や税金などを差し引き、実際に給料として振り込まれる金額を「手取り収入」と言います。何をどのくらい差し引かれるかは勤務先によって違いますが、だいたい額面の1~2割は控除される場合がほとんどです。例えば、額面が20万円の場合、手取りは16〜18万円程度になるということです。いくらかかるか計算してみようここまで、さまざまなデータと一般的な目安についてまとめました。ここからは具体的な金額を計算してみましょう。負担のない家賃の範囲を知っておくことで、住まい探しをより詳細に行うことが可能です。実際にはどれくらい?手取り収入の3割以内であれば、負担なく支払っていくことができる家賃であるとわかりました。では、具体的にどのくらいの金額になるのかを、手取り収入別にまとめていきます。手取り15万円…30,000円~45,000円手取り20万円…40,000円~60,000円手取り25万円…50,000円~75,000円手取り30万円…60,000円~90,000円主要都市の家賃との比較冒頭で、主要都市のワンルームマンションの家賃相場についてまとめました。では実際に、手取り収入と家賃相場を比較検討してみましょう。北海道で一人暮らしをする場合(家賃42,538円)、手取り15万円以上は必要東京都で一人暮らしをする場合(69,767円)、手取り25万円以上は必要神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県で一人暮らしをする場合は、手取り収入20万円以上は必要だと考えられます。新卒年収の平均値から見る家賃相場新卒の年収平均は250万円前後で、手取りでは200万円前後が平均値です。これを単純に12か月で割ると、月の手取りは約17万円程度であることがわかります。手取りが17万円であるとした場合、その2〜3割程度が理想とする家賃です。計算すると、適正な家賃相場は34,000円~51,000円の間であることがわかります。家賃以外にもかかる「住まい関連費」負担にならない家賃の目安について、基準となる金額を具体的に把握することができました。入居する物件によっては、さらに毎月の家賃以外にも費用がかかる場合があります。以下、よくある家賃以外の費用について解説していきます。[adsense_middle]管理費・共益費管理費や共益費とは、階段や廊下などの共用部の管理や修繕に必要な費用として支払うものです。通常、毎月数千円程度であることがほとんどです。物件によっては、共益費込みの家賃としているところもありますので、物件探しの際は気を付けておくとよいでしょう。駐車場代駐車場代は、借りる物件の敷地内にあり、貸主が同じ大家さんである場合は、家賃と合算して支払う場合もあります。自動車用の駐車場は有料の場合がほとんどですが、原付バイクの駐車スペースは無料で利用できる物件もあります。自治会費・町内会費自治会費や町内会費など、住んでいる地域の決まりで月々支払う必要のあるお金もあります。自治会費、町内会費はほとんどが数百円程度で済みますので、さほど負担にはならないのではないでしょうか。一人暮らしの場合、自治会や町内会の活動についてイメージが薄い方も多いとは思います。地域のルールに則って、決まった額を支払いましょう(年払い一括支払いの地域もあります)。火災保険料賃貸物件の場合、火災保険料は入居時に一年分まとめて支払うことが多いです。また、火災保険に加入することを入居の条件としている賃貸物件もあります。年間保険料でも1万円以下である場合がほとんどですが、中には月払いで契約することもあります。家賃以外の気を付けるべきポイント毎月負担なく支払っていける家賃を捻出するためには、家計全体をよく観察していく必要があります。逆に言うと、家賃だけが生活費ではありませんから、やはり一人暮らしをする場合は全体の把握が必要不可欠ということです。ここからは、家賃以外でも気を付けるべきポイントについてまとめていきますので、ぜひ参考になさってください。交通の便は重要理想の家賃の範囲内で、とても気に入った物件に巡り合えたら嬉しいですよね。ぜひもうひとつ気を付けていただきたいのが「交通の便」に関してです。せっかくの理想の物件でも、駅から遠く毎日の通勤が苦痛になるようでは意味がありません。ほとんどの賃貸情報サイトでは、物件を探す際の条件検索項目として「駅から徒歩5分以内」などと具体的に絞ることができます。また、利用したい鉄道会社(路線)の沿線で物件を探すこともできます。通勤は毎日のことですので、家賃だけで選ぶのではなく、交通の便に関しても選ぶ基準のひとつにしましょう。家計管理を気にかけよう固定費と変動費初めての一人暮らしで、家計管理をバッチリしようとすると、かえって息苦しくなり長続きしません。ざっくりと「固定費」と「変動費」に仕分けをしてみることから始めましょう。固定費家計管理の観点では、家賃は「固定費」という扱いです。固定費とは「毎月変わらない支出」のことです。家賃は、毎月一定額ですので「固定費」ということになります。固定費とは、以下のようなものがあります。家賃生命保険料・損害保険料奨学金やローンの返済変動費一方、毎月変わる支出のことを「変動費」と呼びます。支出が一定ではないので、家計管理の面では予測や把握が難しい支出と言えます。変動費とは、以下のようなものがあります。食費水道光熱費(ガス、水道、電気)通信費(スマートフォン料金、Wi-Fi料金など)固定費は毎月必ずかかる費用なので削ることはほぼできません。節約のポイントとなるのは「変動費」であり、変動費をいかに抑えられるかが重要です。水道光熱費にも地域差がある家賃は地域差が色濃く、ワンルームマンションの最高値である東京都と、最安値である鳥取県では約3万円の差があるとわかりました。このほかにも地域差が反映されているものとして、水道光熱費があります。インターネットなどで、事前にその地域の水道光熱費の平均金額についてリサーチすることは可能ですので、転居前にあらかじめ把握しておくと良いでしょう。ガス代は、プロパンガスか都市ガスかによっても一か月の価格が違います。賃貸情報には必ずガスについての表記がありますので、忘れずに確認しましょう。1年目は住民税なし?「手取り」と「額面」の項目でも書きましたが、毎月もらう給料は、総支給額から社会保険料や税金が差し引かれています。その中でも気を付けたいのが、入社1年目では住民税を引かれることがない点です。住民税とは、前年度の所得に対してかかる税金です。前年度が学生である入社一年目の方は、住民税0円ということです。つまり、2年目からは住民税が差し引かれますので、1年目の給料より手取り収入が少なくなる場合もあるかもしれません。新卒で入社したばかりでは、何もかもが初めての経験でとまどうことも多いと思います。しかし、これは誰しも通る道です。わからないことは先輩や社内の担当部署に尋ねながら、ひとつひとつクリアしていきましょう。新卒一人暮らしの家賃に関するまとめ新卒で一人暮らしを始める際、まず物件探しの時点で理想の家賃について知っておくと安心です。入居したものの、途中で家賃が負担になり別の物件に引っ越すことになると、かえって損をします。引っ越し代や、新たな敷金礼金が発生することになり、まとまった入居費用を準備する必要も出てきます。そうならないためにも、だいたいの目安となる家賃や、その他必要な支出についてできる限り把握しておき、その範囲内で理想の物件を探すようにしましょう。
2020年08月29日「所得税法上、個人が手にするお金はほとんどが稼ぎやもうけとみなされ、税金がかかります。非課税になるのは、所得税法第9条などで決められた“例外”だけです」そう話すのは総合情報サイト「All About」で税金ガイドを務める税理士の田中卓也先生だ。課税・非課税は見分けづらいが、「慰謝料」を例に考えるとわかりやすいという。「離婚などで払う慰謝料とは、それまでに受けた精神的苦痛などの損失を、金銭で補填するものです。損失のない状態をプラスマイナスゼロとすると、損失分のマイナスを慰謝料で補填して、ゼロに近づけるイメージです。税金は、稼ぎやもうけなどのように、現状よりプラスになるものにかかります。マイナスの補填である慰謝料などに、税金はかかりません」(田中先生・以下同)だとしたら、高齢者の生活を支える「老齢年金」は?配偶者を亡くした人に支払われる「遺族年金」は?「宝くじの当せん金」はどうだろう?そこで2択クイズを出題!次のうち税金がかからないのはどっち?■「死亡保険金」と「入院給付金」税金がかからないのはどっち?「保険からもらえるお金には、死亡や満期時の「保険金」と、入院や手術の際の『給付金』があります。入院給付金などの給付金は、身体的苦痛や経済的損失など=マイナスの補填と考えられ、非課税です。いっぽう、保険金は課税対象ですが、保険料を払う人(契約者)、誰にかける保険か(被保険者)、保険金の受取人の関係で、かかる税金が異なります。被保険者である夫が亡くなった場合、保険料を払った妻が保険金を受け取ると、自分のお金が増えた、ある種のもうけと考え所得税。夫が払って妻や子が受け取ると、夫のお金を相続したとみなされ相続税。妻が夫にかけていた保険金を子が受け取ると、子はお金をもらったことになり贈与税がかかります」正解は……入院給付金。■「老齢年金」と「遺族年金」税金がかからないのはどっち?高齢者の生活を支える老齢年金。年金だけでは暮らせない人も多いというのに、課税されるの?「老齢年金は稼ぎに当たると考えられ、原則、『雑所得』として課税されます。ですが、公的年金等控除や健康保険料などの社会保険料を差し引いて、一定額以上になる人が課税対象です」配偶者を亡くした人が受け取る遺族年金は?「配偶者が生きていればもらえたはずの年金を、もらえなくなった=マイナス分の補填と考えますので、非課税です」正解は……遺族年金。■「iDeCo」と「NISA」税金がかからないのはどっち?「貯蓄から投資へ」といわれ注目を集める「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と、「小額投資非課税制度(NISA)」は、投資で得た利益が非課税になることが特徴だ。「ただし、iDeCoは60歳以降にためたお金を受け取る際、税金がかかります。NISAは年間120万円までの範囲であれば非課税です」それなら、iDeCOは損?「iDeCoは掛金が全額、所得控除されます。iDeCoを長期間続けると、所得控除による節税が積み重なるので、NISAにはない大きなメリットです」正解は……NISA。■「宝くじ当せん金」と「競馬の勝ち金」税金がかからないのはどっち?「宝くじで7億円が当たったら、税金で相当引かれるんだろうなあ」なんて、当たる前から心配している人もいるのでは?「宝くじの当せん金には、税金がかかりません。というのも、宝くじの代金には約4割の税金が含まれていますので、当せん金に課税すると二重課税になってしまいます」高額当せんしたことのない人も、税金は払っていたんですですね。「競馬の勝ち金はたまたま得たもうけ、つまり『一時所得』として課税対象です」正解は……宝くじの当せん金。「女性自身」2020年9月1日 掲載
2020年08月20日「コロナ禍で夫の在宅ワークが多くなり、家で顔を突き合わせている時間が長くなった方も多いでしょう。でも家事はいっこうにやってくれないし、“頼られすぎ”もキツいですよね。いっそ『自分が外に働きに出てしまう』というのも得策です」こう話すのは、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの中村薫さん。「そもそも、夫が在宅勤務できている状況はいいほうで、来年以降はいよいよコロナ不況が本格化するともいわれています。現在の雇用状況がいつまで続くかは未知数ですから、主婦も働く時間、つまり“稼ぐ時間”を積極的に増やさなければならなくなるでしょう」そこで気になるのは、1日何時間、あるいは週何日、働くのがいちばんお得なのか?というパート収入と、税金などとの関係。よく聞くのは「103万円の壁」という言葉だけど、たまに「106万円の壁」とか「130万円の壁」とかの「パート収入の壁」も耳にする。さっそく中村さんに「パートの年収」の損得ラインについて解説してもらった。「『103万円の壁』『106万円の壁』『130万円の壁』の『壁』はそれぞれ違うので、区別して把握しましょう」最初は「103万円の壁」から。「年収に対して所得税がかかってくるのが『103万円』から。基礎控除48万円、給与所得控除55万円の合計『103万円』を超える収入は所得税の課税対象となるのです」当然、課税されるのは103万円を超えた分のみ。「たとえば年収110万円だった場合は、110万円から103万円を引いた『7万円』に課税されるだけなので、大きな影響はなく、『怖くない、気にしなくていい壁』と覚えておいていいでしょう」次に「130万円の壁」について。夫が会社員(第2号被保険者)で、妻が専業主婦(第3号被保険者)の場合、妻は夫の社会保険(厚生年金と健康保険)の「扶養」となっているため、国民年金と国民健康保険料を納めることもない。「しかし、妻がパートなどで働きに出る場合、その年収が130万円を超えると、夫の社会保険の扶養から外れ、第1号被保険者として、自分が国民年金と国民健康保険に加入し、保険料を支払わなければならなくなります。収入の上昇分を保険料の納入額が上回る場合があり、これが『130万円の壁』といわれるものです」さらに「106万円の壁」もあるという。「パートで働く会社の規模が『従業員数501人以上』で、『週20時間以上勤務』『1年以上勤務の見込み』があり、『学生ではない』……などの条件がそろうと、月収8万8,000円(=年収106万円)以上、自分が第2号被保険者として社会保険(厚生年金と健康保険)に加入することになり、夫の社会保険の扶養から外れます。この場合にも、収入の上がり具合より保険料の納入額が上回ることがあり、『106万円の壁』となるのです」この「106万円」と「130万円」の差は大きい。働く会社を決めるときには従業員数が「501人以上」か「500人以下」かをチェックするのがマストだ。ところで、パートで働くときに考えるのは「1日何時間×週何日働くか」の掛け合わせだろう。そこから年収が導き出せる時給別「パートの年収」を次にまとめたので、該当する時給のところを見てほしい。■1日8時間×週○日働く場合のパート収入【時給800円】5日=160万円/4日=128万円/3日=96万円/2日=64万円/1日=32万円【時給900円】5日=180万円/4日=144万円(※1)/3日=108万円(※2)/2日=72万円/1日=36万円【時給1,000円】5日=200万円/4日=160万円/3日=120万円(※2)/2日=80万円/1日=40万円【時給1,100円】5日=220万円/4日=176万円/3日=132万円(※1)/2日=88万円/1日=44万円【時給1,200円】5日=240万円/4日=192万円/3日=144万円(※1)/2日=96万円/1日=48万円■1日○時間×週5日働く場合のパート年収【時給800円】7時間=140万円(※1)/6時間=120万円(※2)/5時間=100万円/4時間=80万円/3時間=60万円/2時間=40万円【時給900円】7時間=157.5万円/6時間=135万円(※1)/5時間=112.5万円(※2)/4時間=90万円/3時間=67.5万円/2時間=45万円【時給1,000円】7時間=175万円/6時間=150万円/5時間=125万円/4時間=100万円/3時間=75万円/2時間=50万円【時給1,100円】7時間=192.5万円/6時間=165万円/5時間=137.5万円(※1)/4時間=110万円(※2)/3時間=82.5万円/2時間=55万円【時給1,200円】7時間=210万円/6時間=180万円/5時間=150万円(※1)/4時間=120万円(※2)/3時間=90万円/2時間=60万円※1:500人以下の会社で“損する”感※2:501人以上の会社で“損する”感1日8時間、時給900円で働く場合、週4日の勤務なら「年収144万円」となり、500人以下の会社では「130万円の壁」に当たって“損する”感が出る。週3日の勤務では「年収108万円」となり、501人以上の会社では「106万円の壁」に当たって“損する”感が出ることとなる。また、週に5日、時給900円で働く場合、1日6時間勤務なら年収135万円で「130万円の壁」に、5時間勤務なら112.5万円で「106万円の壁」に当たる。「現状で“損する”感にいる方は、だからといって『106万円以下』『130万円以下』に抑えて働くべきではないと思います。今後を考えればむしろ、500人以下の会社で勤務しているなら『155万円以上』、働ける可能性があるなら、一気に飛び越えて、収入拡大を図ったほうがいいでしょう」そして「やはりコロナ不況の先を読むべきだ」と中村さん。「営業利益が減り、会社の経営が厳しくなれば、派遣社員などの非正規社員がシフトから外されるなど、イレギュラーな対応をされる可能性も考えられます。また、時短勤務や交代制などが導入されても、正社員には休業補償がある場合も多いので安心です。もしチャンスがあるのならば、積極的に『正社員雇用』を狙うべき。少しずつでも勤務実績を積み、信頼度を高めることも重要です。アフターコロナでは、『エンプロイアビリティ』つまり『雇われ続ける能力』が大事になってくると考えます」秋からにでも「収入拡大」する方向で、自らの“働き方改革”をしてみよう!「女性自身」2020年9月1日 掲載
2020年08月20日「一定の額を超えて稼ぐと、夫の扶養から外れるか何かで、損しちゃうって聞くけど……」と、よく理解できていない人も多いのでは?そろそろ働きたい主婦のために、わかりやすく解説ーー。「コロナ禍で夫の在宅ワークが多くなり、家で顔を突き合わせている時間が長くなった方も多いでしょう。でも家事はいっこうにやってくれないし、“頼られすぎ”もキツいですよね。いっそ『自分が外に働きに出てしまう』というのも得策です」こう話すのは、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの中村薫さん。「そもそも、夫が在宅勤務できている状況はいいほうで、来年以降はいよいよコロナ不況が本格化するともいわれています。現在の雇用状況がいつまで続くかは未知数ですから、主婦も働く時間、つまり“稼ぐ時間”を積極的に増やさなければならなくなるでしょう」そこで気になるのは、1日何時間、あるいは週何日、働くのがいちばんお得なのか?というパート収入と、税金などとの関係。よく聞くのは「103万円の壁」という言葉だけど、たまに「106万円の壁」とか「130万円の壁」とかの「パート収入の壁」も耳にする。さっそく中村さんに「パートの年収」の損得ラインについて解説してもらった。「『103万円の壁』『106万円の壁』『130万円の壁』の『壁』はそれぞれ違うので、区別して把握しましょう」最初は「103万円の壁」から。「年収に対して所得税がかかってくるのが『103万円』から。基礎控除48万円、給与所得控除55万円の合計『103万円』を超える収入は所得税の課税対象となるのです」当然、課税されるのは103万円を超えた分のみ。「たとえば年収110万円だった場合は、110万円から103万円を引いた『7万円』に課税されるだけなので、大きな影響はなく、『怖くない、気にしなくていい壁』と覚えておいていいでしょう」次に「130万円の壁」について。夫が会社員(第2号被保険者)で、妻が専業主婦(第3号被保険者)の場合、妻は夫の社会保険(厚生年金と健康保険)の「扶養」となっているため、国民年金と国民健康保険料を納めることもない。「しかし、妻がパートなどで働きに出る場合、その年収が130万円を超えると、夫の社会保険の扶養から外れ、第1号被保険者として、自分が国民年金と国民健康保険に加入し、保険料を支払わなければならなくなります。収入の上昇分を保険料の納入額が上回る場合があり、これが『130万円の壁』といわれるものです」さらに「106万円の壁」もあるという。「パートで働く会社の規模が『従業員数501人以上』で、『週20時間以上勤務』『1年以上勤務の見込み』があり、『学生ではない』……などの条件がそろうと、月収8万8,000円(=年収106万円)以上、自分が第2号被保険者として社会保険(厚生年金と健康保険)に加入することになり、夫の社会保険の扶養から外れます。この場合にも、収入の上がり具合より保険料の納入額が上回ることがあり、『106万円の壁』となるのです」この「106万円」と「130万円」の差は大きい。働く会社を決めるときには従業員数が「501人以上」か「500人以下」かをチェックするのがマストだ。では次に、それぞれの「壁」より収入が「多い」場合と「少ない」場合、どれくらいの収入ラインで“損する”感が出るのか、シミュレーションしてみよう。【“損する”パートの働き方ボーダーライン】※会社員の夫(48歳)手取り年収500万円(家族手当なし)、パートの妻(46歳)、子2人(16歳と19歳)で試算)■従業員数500人以下の会社でパート勤務する場合(年収130万円超で国民年金、国民健康保険に加入)【パート年収:130万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約532万円【パート年収:135万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約519万円【パート年収:140万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約522万円【パート年収:145万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約526万円【パート年収:150万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約529万円【パート年収:155万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約533万円■従業員数501人以下の会社でパート勤務する場合(年収106万円以上で社会保険に加入)【パート年収:105万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約510万円【パート年収:110万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約500万円【パート年収:115万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約504万円【パート年収:120万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約508万円【パート年収:125万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約511万円【パート年収:130万円】夫婦で合わせた年間可処分所得:約515万円まずは「130万円の壁」=500人以下の会社でパート勤務する場合を見てみよう。「妻のパート年収が130万円だと、夫婦で合わせた年間可処分所得はおよそ532万円となります。しかし、パート年収が5万円多く135万円になると、妻がおよそ20万円ほど社会保険料を納めることとなり、夫婦の可処分所得は約519万円と、パート年収130万円のときより減るように見えます。この“損する”感はパート年収150万円あたりまで続き、155万円でようやく、130万円のときの可処分所得を超えることになります」さらにいえば、年収130万円以下で夫の扶養となっていると、夫の会社で「配偶者手当」が出ている場合がある。しかし年収135万円超となると、外されるケースもあるという。「夫の給与明細に『配偶者手当が書かれているか』をチェックしましょう」続いて「106万円の壁」=501人以上の会社でパート勤務する場合はーー。「妻のパート年収が105万円だと、夫婦の可処分所得は約510万円です。しかし、妻の年収が110万円、115万円……と上がっていっても、年収120万円ラインまでは、夫婦の可処分所得は妻の年収105万円のときを下回るので、“損する”感が出てしまいます。どちらの『壁』の場合も、この“損する”感が出る年収ラインは、夫の年収が700万~800万円であっても、ほぼ変わりません」「女性自身」2020年9月1日 掲載
2020年08月20日会社を設立すると、経営者が自分1人しかいない会社でも社会保険に加入しなければならないのでしょうか。結論からいえば、たとえ1人のみの会社であっても社会保険への加入が義務づけられています。今回は、社会保険の加入義務やその仕組み、加入手続きの方法について解説していきます。会社設立を考えている人はぜひ参考にしてください。社会保険の加入義務とは?社会保険の加入が義務づけられている事業所には2つの種類があります。強制適用事業所任意適用事業所強制適用事業所とは強制という名が示すとおり、加入が義務づけられた事業所です。そして、任意適用事業所は従業員の過半数が加入を希望しているなどの場合に加入する事業所です。(1)すべての法人は社会保険への加入が義務づけられている株式会社や合同会社、有限会社など会社形態を有しているすべての法人は、社会保険への加入が義務となっています。つまり、すべての法人は強制適用事業者となります。「起業したばかりで従業員がいない」、「会社の規模がまだ小さい」という理由で加入しないという選択をするのは、法令違反であり罰則の対象となります。(2)法人でも社会保険に加入しなくてもよいケースすべての法人は社会保険に加入しなければなりませんが、例外もあります。役員報酬がゼロ、つまり社長が会社から給料をもらっていない場合には加入義務はありません。起業家の中には、複数の会社を経営している人もおり、そのうちの一部の会社からは報酬を受け取っていないということはよくあります。そういった場合には、その会社は社会保険に加入しなくてもよいとされています。さらに、給料を支払う場合でも健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料を控除できない程度の役員報酬である場合には加入義務はありません。地域にもよりますが、目安としては役員報酬が月額1万5千円に満たない程度の場合は、加入しなくてもよい可能性があります。社会保険とは?社会保険の加入が義務付けられているとはいえ、どのように加入手続きを行えばよいのでしょうか。その前に、まずは社会保険について詳しく見ていきましょう。社会保険は、病気やけが、勤務中の事故、そして退職や失業にともない収入が途絶えた場合など、いざという場合に備えて国民全員で保険料を出しあい、生活に困窮した場合など所定の要件を満たした人に対して必要なお金やサービスを支給するしくみです。会社で働く従業員の生活を守ってくれる、我が国の根幹となる制度といえるでしょう。社会保険は種類別に分けると以下のようになります。健康保険介護保険年金保険雇用保険労働者災害補償保険(労災保険)(1)健康保険健康保険は、病院にかかったときに病院代の一部をカバーしてくれるという制度です。一般的には被保険者は3割負担という方が多いのではないでしょうか。健康保険には、一般の会社で働いている人が加入する健康保険、公務員が加入する共済組合保険、そして自営業者や無職の人が加入する国民健康保険があります。会社で加入している健康保険には、出産手当金や傷病手当金など、国民健康保険にはない制度があります。健康保険の保険料は、事業主(会社)と従業員(被保険者)が折半で負担し、事業主が事業主負担分と従業員負担分を合わせた保険料を納付することになります。(2)介護保険介護保険は、介護が必要な高齢者や障害者を社会全体で支え合うという制度です。満40歳以上の人が加入を義務づけられ、保険料を支払うことになります。そして、65歳以上の要介護・要支援認定を受けた人や、40歳から64歳までの人のうち、特定の疾患で要介護認定を受けた人が介護サービスを受けることができます。なお、会社に所属する従業員の介護保険料は、健康保険料と合わせて天引きされ、健康保険料と同様に会社と従業員で折半されます。(3)年金保険年金保険には、基礎年金としての国民年金と、これに上乗せして受け取れる厚生年金があります。会社員の場合は厚生年金に加入することになっています。厚生年金は会社ごとに基金が設立されているのが一般的で、その団体に収めることで、将来一定額の年金がその団体から支給される仕組みになっています。厚生年金保険に加入している人は、厚生年金保険の制度を通じて国民年金にも加入しており、国民年金の給付である「老齢基礎年金」に上乗せして、「老齢厚生年金」も将来受け取ることができます。また、厚生年金や国民年金には上で述べた老齢年金だけでなく、怪我や病気をして障害者となったときに受け取れる障害年金、加入中の本人が亡くなった場合に受け取れる遺族年金があります。(4)雇用保険雇用保険は従業員が失業した場合に一定の期間、保険金が支給される制度です。従業員の再就職を支援するとともに、それまでの間の生活を安定させることを目的とする制度です。なお、雇用保険は雇用されている従業員のための制度となっていますので、経営者自身は一定の要件を満たさない限り原則として加入できません。(5)労働者災害補償保険(労災保険)労災保険は、従業員が業務中や通勤中に事故や災害に遭って病気やけがをした場合、あるいは死亡した場合にその保障をする制度です。従業員の医療費のカバーと社会復帰の支援、または遺族への生活援助のためのものです。雇用保険と同様に、雇用される従業員が対象ですので、経営者は原則として加入対象外となります。また、労災保険は全額会社負担となっています。社会保険の加入対象となる社員とは?会社には、正社員だけではなくパートやアルバイトとして働き、会社から給料をもらっている場合もあります。どのような人が社会保険の加入対象(被保険者)となるのでしょうか。[adsense_middle](1)一般社員(正社員)一般的に正社員はフルタイム勤務をしており、期間の定めがないものと考えられます。このような一般社員については、原則としてその全員が加入対象となります。これは、試用期間中であっても変わりません。ただし、65歳以上の人は原則として介護保険料を年金から天引きされるため、給料からの天引きは行われません。また、70歳以上の人は健康保険のみ加入対象となり、75歳以上の人は健康保険、厚生年金ともに対象となりません。なお、従業員がいなくて社長が1人の会社も、会社から報酬を受けているのであれば、健康保険や厚生年金へは加入は義務となります。(2)パート・アルバイト会社にはパートやアルバイトとして働く人も多くいます。パートやアルバイトであっても、一定の条件以上働く人には社会保険に加入させる義務があります。一定の条件とは、たとえば、従業員501人以上の会社で週20時間以上、1年以上の長期で働く見込みであるなど、一般の社員と同程度の労働力を提供している人と考えるといいでしょう。現在、国民年金や国民健康保険に加入している人や、家族の扶養に入っている人であっても、条件を満たしていれば健康保険や厚生年金保険の加入対象になることができます。社会保険の入り方・加入手続きそれでは、社会保険への各種加入手続きを見ていきましょう。(1)健康保険の加入手続き健康保険の加入手続きは、「全国健康保険協会(通称、協会けんぽ)」に加入する方法と、同種の企業が集まった業界団体、または企業単体で設立した「健康保険組合」に加入する方法があり、どちらかに加入することになります。保険料やサービス内容を確認したうえでどちらに加入するかを決めてください。①「全国健康保険協会(通称、協会けんぽ)」に加入する場合全国健康保険協会に加入する場合は、会社の住所地を管轄する年金事務所で厚生年金保険の加入手続きを行うことで、同時に健康保険の加入手続きも行うことができます。②「健康保険組合」に加入する方法会社を設立したばかりであっても、同じ業界団体が設立している健康保険組合があれば、その組合に加入できるケースがあります。業界団体の健康保険組合に加入する場合は、それぞれの組合に問い合わせ、その規定に従って手続きを行うことになります。(2)厚生年金保険の加入手続き厚生年金保険の加入手続きは、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」に必要事項を記入し、会社の住所地を管轄する年金事務所に提出することで完了します。記載が分からない場合は、年金事務所の方に教えてもらいながらでも行うことができます。(3)介護保険の加入手続き介護保険の加入手続きは、健康保険の加入手続きをすれば同時に行われることになっています。つまり、全国健康保険協会に加入する場合は、年金事務所で手続きをすれば、「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」の加入手続きが完了します。健康保険組合についても同様に、健康保険の加入手続きを行えば介護保険の加入手続きも完了しています。(4)労働保険(雇用保険・労災保険)の加入手続き労働保険とは雇用保険と労災保険の総称をいいます。つまり労働保険の加入手続きをすれば、「雇用保険」「労災保険」の両方に加入したことになります。労働保険の加入手続きは、健康保険や年金保険に比べてやや煩雑になります。①労働基準監督署に「労働保険関係成立届」を届出する会社を設立後、新たに労働保険に加入する事業所は、まず労働保険に加入するための適用事業所の設置手続きが必要です。手続きは次で述べるハローワークで行いますが、その前に「労働保険関係成立届」を労働基準監督署に提出しなければなりません。②「ハローワーク(公共職業安定所)」に各種必要書類を届出する「労働保険関係成立届」を提出したのち、所轄のハローワークに提出して労働保険の加入手続きを行います。ハローワークでは従業員の保険加入手続きを行います。実際に、手続きを行う際に必要な書類は下記のとおりです。会社の登記事項証明書労働保険関係成立届の控え(労働基準監督署に提出した控え)雇用保険適用事業所設置届雇用保険被保険者資格取得届被保険者(従業員)が持っている雇用保険被保険者証手続きに必要な用紙は、ハローワークに設置してあります。資格取得届は、従業員1人につき1枚必要になります。会社設立時の社会保険に関するまとめ今回は会社を設立した場合に忘れがちな社会保険の加入について解説しました。社会保険への加入は義務であり、また経営者自身にとってはもちろん、従業員の健康や生活を守るためにも必要不可欠です。会社経営者は社会保険の重要性や加入条件をきちんと理解しておかなければなりません。加入していない場合の罰則規定もあるため、社会保険の加入漏れがないように適切な手続きを行いましょう。
2020年08月02日8月から、「インデックス保険」という新しい仕組みの保険が登場。インデックス保険とは、あらかじめ保険金が出る指標(インデックス)を決めておいて、その状況になったらすぐに保険金が支払われる保険だ。そんなインデックス保険について、経済ジャーナリストの荻原博子が解説してくれたーー。■地震から最短3日で保険金ゲット日本第1号は、東京海上日動の「震度連動型地震諸費用保険(地震に備えるEQuick保険)」。気象庁が発表する震度情報を指標とする地震保険です。実際に大地震が起こったら、保険会社は震度6弱以上の地域の契約者にメールを送信。契約者は住所や振込口座を確認し返信すれば、最短3日で保険金を受け取れます。たとえばプレミアムプランだと、保険料は年9,600円です。地震が起きて受け取れる保険金は、震度7で50万円、震度6強で20万円、震度6弱で10万円。ほかにスタンダードやエコノミーのプランも。この保険はとても合理的だと思います。まず、指標が震度なので、保険金が出るかどうかが一目瞭然。住む地域に関係なく保険料も一律で、シンプルでわかりやすいです。次に、保険会社が被害状況を調査しないので、保険金の支払いが早い。被災直後に助かるでしょう。さらに、加入はインターネットで被害調査もしませんから、保険会社の経費がかなり抑えられています。その分、保険料も安く設定しているのだと思います。「女性自身」2020年8月11日 掲載
2020年07月31日「新型コロナウイルス感染拡大はいまだにおさまっていませんが、このコロナ禍が収束するころには、『税金を増やすことで対策費の支出分をカバーする』という議論が、にわかに進む可能性が高いと考えています」こう話すのは、国の財政事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。すでに7月1日、自民党の石原伸晃元幹事長らは、安倍晋三首相に“税収増”の要望をするため、首相官邸を訪れている。石原氏の意図は、“新型コロナウイルス対策への多額の財政支出が将来世代の負担にならないよう”ということらしいが……。「私の考えでは、増税はもはや自民党内での既定路線。この面会はあくまで“パフォーマンス”でしょう。安倍政権や与党の幹部が増税の話題を切り出せば、世論の大反発を招く恐れがあります。この面会は、『元党幹事長からの要望があった』という体で、マスコミや世論の反応をうかがうためのものだったとみています」(加谷さん)政府は先の国会において、第1次、2次補正予算として合計約58兆円の財政支出を決定。財源には国債が充当された。しかし、なぜその支出が、税金でカバーされなければいけないのか。加谷さんが続ける。「Go To トラベルキャンペーンにおいても当初、赤羽一嘉国交相はキャンセル料の補償を『考えていない』と発言していました。つまり、政府はこれ以上、コロナ対策として出せるお金がないと考えているはずです。経済が成長しさえすれば、GDP(国内総生産)が上がることで政府債務の比率は下がるのですが、コロナ禍により経済はたいへん落ち込んでいる。政府は現状、増税しか手段がないとみているのでしょう」国民が、いつ収束するかわからない“コロナ第2波”に再び恐怖している最中に、国は着々と“アフターコロナ増税”の計画を進めているという事態……。では、この増税はどのような規模で、いつから実施されるのか。加谷さんにシミュレーションしてもらった。「財務省が参考にするのは『復興特別税』でしょう。政府は東日本大震災の復興にかかる財源の確保のために、特別措置法(特措法)として同税を導入しました。主な内容は、’13年から’37年までの25年間に、所得税額の2.1%を徴収するものです。これと同じようなプランをもとに、『コロナ特別税』というかたちで、長期間に徴税できるシステムを想定していると思われます」震災復興予算は総額32兆円となっていて、このうちの10.5兆円分を「復興特別税」でカバーしている。その内訳は、ほとんどが所得税額の2.1%として徴収しているもの。これをモデルとして「コロナ特別税」について加谷さんはシミュレーションする。「復興特別税は、支出の天井画が見えないうちに始めたものでした。当初は“とりあえず10兆円集めることを目標に”という意図で、所得額の2.1%ぶんと定めたと思われます。コロナ特別税に関しては、現時点でコロナ関連予算として決定されている58兆円を天井だと仮定し、現状の経済状況も踏まえて『半分は国債(=借金)として経済成長で補填し、半分は徴税する』という条件で試算を行います。この29兆円は、復興特別税の約3倍。しかし徴税期間も3倍にするのは長すぎますので『30年』に設定すると、1年あたり『9,600億円』徴税する必要があるという計算になります。現在の所得税の税収は年間約20兆円ですから、ここから9,600億円を捻出するとなると『4.8%』の上乗せが必要となるんです」つまり、現行の復興特別税の、2倍以上の負担が単純に増すことになるのだ。「会社員の夫の年収600万円、妻は専業主婦、子ども2人」という世帯をモデルに、加谷さんに具体的な負担額も試算してもらった。「給与所得控除、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などを差し引いた『課税所得金額』は約268万円。所得税額は約17万円です。現状ここから復興特別税(2.1%=3,570円)を納めていることになりますが、そこにコロナ特別税(4.8%=8,160円)が加算されます。つまりコロナ特別税が施行されれば、’37年までは合計『1万1,730円』を特別税として年額で負担することになるんです」気になるのはそのコロナ税の法制化と施行のタイミングだが……。「安倍首相の党総裁の任期満了は来年9月、衆議院議員の任期満了は10月です。政府や与党は、その前に施行するのが勢力維持には無難である、と考えるでしょう。そのためには秋の臨時国会で議論、そして早ければ年内に可決して、’21年4月から施行という可能性もあります」もしも施行が来年度からといっても、「いまから備えておくべきだ」と加谷さんは説く。「大企業では、’21年3月の決算と来年度予算を見越して、この秋、9〜10月にはコロナリストラを本格的に始めるでしょう。失業率や企業の倒産数も発表数より、実際はもっと増えていくはずです。すると、秋口から景気はさらに冷え込み、来年度の給与や賞与はとても厳しい予測も覚悟しなければなりません。各家庭では、マイカーなどの大きな出費を考えている場合、いまの時期は控えるほうが無難かもしれませんね」新型コロナウイルスがもたらす“恐怖の時代”は、まだまだ終わらなさそうだ。「女性自身」2020年8月11日 掲載
2020年07月30日「もし、あなたが自営業者やフリーランスとして働く夫を亡くした場合、夫が会社員の人ならもらえる『遺族厚生年金』がありません。平均寿命が男性より長い女性は、夫の死後に訪れる生活について、早めに考えておく必要があります」そう話すのは、年金に詳しいファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんだ。年金保険料を25年以上納めていた元会社員の夫が亡くなった場合、夫が受給していた老齢厚生年金の4分の3を妻は受け取ることができる。「夫婦2人の国民年金(老齢基礎年金)は約13万円、夫の現役時の収入で決まる厚生年金の報酬比例部分が約9万円、合計約22万円を受給していた夫婦がいたとします。夫が亡くなった後でも、厚生年金の75%にあたる約6万8,000円が終身で受給可能。自分のぶんの国民年金とあわせ、月に13万円ほどの年金を受け取ることができる」(山中さん・以下同)だが、これは厚生年金加入者だけの制度。自営業者やフリーランスなど、国民年金のみに加入している第1号被保険者にはこれに類する制度はない。国民年金は満額でも月に約6万5,000円、夫婦あわせても13万円程度にすぎない。夫が亡くなった場合、年金額が半減すると思って備えたほうがいい。そこで、山中さんがおすすめの対策を教えてくれた。【国民年金基金】掛金の上限額(自営業者、年間):合計81万6,000円加入年の上限:60歳まで(任意加入者は65歳まで可)受け取れる時期:60歳以降節税効果の例:年約24万円※特徴:現在は予定利率1.5倍で運用されている。ライフプランに応じて、受給の種類を選ぶことができて、終身受給のものもある。保険料は所得控除の対象になり、所得税や住民税を節税できる。【iDeCo(イデコ)】掛金の上限額(自営業者、年間):合計81万6,000円加入年の上限:60歳まで(2022年、年金被保険者については65歳まで引き上げ)受け取れる時期:60歳以降節税効果の例:年約24万円※/運用益非課税特徴:金融商品を選んで、自分で運用する。国民年金基金よりも高い利率で運用できる可能性がある一方、元本割れのリスクも。受け取りは分割と一括で選べて、一括の場合、サラリーマンの退職金と同様に、税金が大きく優遇される「退職所得控除」の対象になる。【小規模企業共済】掛金の上限額(自営業者、年間):84万円加入年の上限:働いている間はいつでも受け取れる時期:原則廃業時節税効果の例:年約24万円※特徴:現在は予定利率1%で運用されている。自営業者のための「退職金制度」。途中解約しない限り、払い込んだ総額を下回ることはなく、受給権の差し押さえも禁止されている。保険料は所得控除の対象。受け取りは分割と一括どちらでも選べる。【付加年金】掛金の上限額(自営業者、年間):4,800円加入年の上限:60歳まで受け取れる時期:65歳以降節税効果の例:年約1,500円※特徴:国民年金保険料に月々400円を足して納めると、将来年金額が月々200円増える。仮に50歳から10年間払い続けると、年金額は2万4,000円増える。国民年金基金に加入していると、付加年金を払うことはできない。※加入時の上限や受取金額は加入状況等により異なる場合がある。課税所得400万円で上限額まで加入した場合の所得控除による節税効果の例。【事業の法人化】メリット:個人事業主よりも煩雑な手続きが必要になるが、法人を設立して、そこに勤めているという形態をとれば、厚生年金に加入できる。また企業型確定拠出年金に加入した場合、掛金は損金として計上できるので、税制上のメリットも受けられる。国民年金加入者のみが入れるのが「国民年金基金」だ。「国民年金に上乗せされて、年金額を増額します。利回りは限定的ですが、亡くなるまで保障が続く、終身のものもあるのがメリット。もう少し増やしたいなら個人型確定拠出年金『iDeCo』です。運用の成果によって受取額が変動します。もし加入中に亡くなっても、積み立てた資産は家族に“継承”できる。掛金の上限額は2つ合わせて月6万8,000円です」(山中さん・以下同)両方に加入したい場合、働いている夫と専業主婦の妻であれば、お得な組み合わせがある。「iDeCoは『小規模企業共済等掛金控除』なので、契約者本人のみの控除ですが、国民年金基金は『社会保険料控除』。夫が妻の掛金を夫の所得から控除できます。よって、収入のある夫がiDeCo、妻が国民年金基金に加入するというのが、控除のメリットを最大限活用できる入り方です」自営業者やフリーランスには退職金はないが、それに代わる制度として「小規模企業共済」がある。「掛金は月1,000円から、500円単位で最大7万円。他の制度と違い、働いている間は何歳まででもかけ続けられ、年齢と関係なく、仕事を辞めたときに共済金を受け取れる」iDeCoと小規模企業共済は、一時金で資産を受け取る場合、「退職所得控除」扱いにすることができる。控除額は勤続20年までは1年につき70万円というふうに増えていくのだが、この二つの制度では、加入期間を勤続年数と読み替えて控除計算できる。「同じ年に両方を受け取ると、控除額を超えて課税される場合は、受け取る時期を一定期間開けたり、一括ではなく分割で受け取るなどの対策も検討しましょう」毎月大きな掛金を払う余裕がない場合は、どうすれば?「月400円で年金額が増やせる『付加年金』を検討しましょう。将来、払った期間分×200円がもらえるので、2年で元が取れます」また、法人を設立するという方法もある。「ややこしい手続きは増えますが、厚生年金に加入できることなど、メリットは大きい」自営業者には定年がない。山中さんは働いている限り、繰り下げをして、もらえる年金額を少しでも増やすことを勧めている。「わからないことがあれば、専門家を頼ってください。年金事務所なら年金について無料で相談できますし、資産運用も含めて包括的に相談したいのであれば、ファイナンシャルプランナーなどに」「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載
2020年07月29日かねてから指摘されてきた国民年金と厚生年金の“格差”。いま両者の統合案が政府内で出ているのだが、それが招くものはーー。「年金財政を延命させるため、6月に年金制度改正法が公布されたばかり。しかし、早くも’25年に予定されている次の年金改正に向け、厚生年金と国民年金の積立金統合案が持ち上がっています。会社員などの年金受給額が減額する可能性もあるため、大きな議論となるでしょう」(経済誌記者)将来の年金給付の財源として積み立てられてきた「年金積立金」。サラリーマンや公務員などの給与所得者を対象にした厚生年金と、自営業者やパート従業員などを対象にした国民年金で、別々に計上されている。厚生年金の被保険者は約3,980万人、積立金は国家予算の1.5倍にあたる157兆円超にのぼる。一方、国民年金のみに加入している自営業者などは1,462万人。積立金は9兆円にとどまる。経済評論家の平野和之さんはこう語る。「厚生年金は収入に応じて保険料が上がりますが、国民年金は一律約1万6,000円。さらに、“将来、もらえないんじゃないか”という年金不信も広がっていて、未納率も3割を超えています」昨年8月に発表された「財政検証」で、国民年金の厳しい状況が浮き彫りになった。「財政検証とは、厚生労働省が5年に1度行う、年金財政の健康診断のようなもの。将来、現役世代の男性の平均手取り収入額に対して、モデル世帯の夫婦の年金給付額がどのくらいの割合になるのかを示した“所得代替率”の未来予測が検証されています」(平野さん)現在の現役男子の平均手取り額は35万7,000円とされている。厚生年金に40年間加入していた夫と、専業主婦の妻というのがモデル世帯。現在の所得代替率は61.7%で、夫婦の年金額はおよそ22万円となっている。しかし、国民年金加入者が受け取れる基礎年金に限れば、現在でも所得代替率はわずか36.4%、夫婦で約13万円に過ぎない。「財政検証では、経済成長率、物価上昇率などを加味して6つのシナリオが示されています。もっとも平均的なケースでも、’40年度の基礎年金の所得代替率は29%になる見込みです。現在の平均手取り額から試算すると、国民年金のみを受給している夫婦は、わずか月額10万3,500円で生活しないといけない」しかも、これは夫婦ともに40年間保険料を欠かさずに払い続けた場合の給付額。未納期間があれば、この金額には届かない。「このまま国民年金の給付額が下がり続けた場合、とても生活は成り立ちません。余裕のある厚生年金の財源に頼らざるを得ないというわけです。当然、厚生年金加入者からは、『なんで厚生年金の積立金で、未納者もいる国民年金も支えないといけないのだ!』という反対の声が上がることが予想されます」厚生年金と国民年金の積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、株式や債券で運用している。年金博士として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんはこう指摘する。「新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の落ち込みは、積立金に大きな影響を与えます。さらに、国民年金と統合されることで、厚生年金の積立金の計画は大きく狂ってしまうことになるでしょう」厚生年金はどの程度の影響を受けるのか。平野さんが注目するのは、財政検証で示された最悪のケースだ。「このケースだと、’52年度に積立金が枯渇すると予想されていますが、統合などによって、時期はさらに10年、15年と早まる可能性がある。そうなれば、現在の50代も無関係ではいられません。積立金が使い果たされた場合、厚生年金の所得代替率は36~38%まで落ち込むと試算されています。現在の平均手取り額から計算すると、将来の厚生年金の受給額はわずか月額13万5,000円。現状の22万円よりも、8万5,000円も減額されてしまうことになります」「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月16日「年金財政を延命させるため、6月に年金制度改正法が公布されたばかり。しかし、早くも’25年に予定されている次の年金改正に向け、厚生年金と国民年金の積立金統合案が持ち上がっています。会社員などの年金受給額が減額する可能性もあるため、大きな議論となるでしょう」(経済誌記者)将来の年金給付の財源として積み立てられてきた「年金積立金」。サラリーマンや公務員などの給与所得者を対象にした厚生年金と、自営業者やパート従業員などを対象にした国民年金で、別々に計上されている。年金博士として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんはこう語る。「集まった保険料のうち、年金の支払いにあてられなかったぶんを、将来に備える資金としたのが積立金の始まりです。現役世代が多く、景気も右肩あがりだったバブル期、年金受給者に支払う額を大きく超えた保険料が集まりました。その結果、圧倒的に加入者が多く、給与から自動的に保険料が差し引かれる厚生年金の積立金は膨れ上がってきたのです」これまでほかの公的年金の財政が悪化するたび、財政に余裕のある厚生年金が救済役となってきた。「’97年には、持続困難となった旧三公社(NTT、JT、JR)の共済年金を厚生年金に統合。’15年には公務員共済、私立学校教職員共済を統合してきた経緯があります。今回の国民年金の統合案も、この流れに沿うものです」(北村さん)厚生年金の被保険者は約3,980万人、積立金は国家予算の1.5倍にあたる157兆円超にのぼる。一方、国民年金のみに加入している自営業者などは1,462万人。積立金は9兆円にとどまる。経済評論家の平野和之さんはこう語る。「厚生年金は収入に応じて保険料が上がりますが、国民年金は一律約1万6,000円。さらに、“将来、もらえないんじゃないか”という年金不信も広がっていて、未納率も3割を超えています」厚生労働省「平成30年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、収入が少なく、不安定な若い世代ほど未納が多く、25~34歳では、約4割が未納だという。「今後、コロナ不況が深刻化すれば、この傾向はさらに高まり、未納率が上昇してしまうことも懸念されています」(平野さん)はたして、われわれの年金はどうなるのか。次の年金改革は5年後だが、議論はすでに始まっている。自分の老後のために、その行方を注視しよう。「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月16日こんにちは、婚活FP山本です。20代のうちは誰もが似たり寄ったりですが、30代になるとバラつきが出てくるのが年収といえます。そして「年収が低い」と感じている人ほど、周囲や他人の年収が気になるあまり、平均年収や中央値などが気になるのが実情です。このような情報は「転職の目安」にもなりますから、ぜひ知っておきましょう。今回は、さまざまな角度で30代の年収中央値についてお伝えします。あなたの人生に、お役立て下さいませ。日本の統計では基本的に「平均」が使われているまずは、そもそもの「中央値」の基本についてお伝えします。中央値とは、ある対象を順番に並べて「中央の人がどうなのか」を示す数字です。ちなみに似た数字に「平均」というものがありますが、こちらはすべての数字を足して人数で割った数字になります。学校のテストなら100点などの上限がありますが、貯金額や年収などは高い人はどこまでも高いため、平均では数字が大きくなりやすくなる点がネックです。大きく見せたい場合は有効でしょうが、実態を把握するには不向きなため、中央値が重要視されています。ただし、日本の統計では基本的に「平均」が使われているため、多くの中央値は「予想・推計」でしかありません。このような中央値の意味を理解しつつ、以後の数字を活用していきましょう。「中央値」のほうが体感的に正しい?たとえば、「1・10・20・30・40・50・1000」という数字の場合、平均なら164で中央値なら30になります。あなたから見て、どちらのほうが実態に近いと感じますか?一概にはいえませんが、一般的には中央値のほうが体感的に正しいと感じることが多いです。また、このように経済的な数字の場合、一般的に中央値は平均よりも数字が小さくなる傾向にあります。このため何らかの平均数字を見るときには、「実態となる中央値はもう少し低いはず」と捉えておきましょう。30代の平均年収は男性499万円、女性315万円次に、30代の「平均年収」を男女別にお伝えします。すでにお伝えしたとおり、年収については明確な中央値の統計がないためです。そのうえで、国税庁の平成30年「民間給与実態統計調査」によると、以下のような結果になっています。30代前半男性:470万円30代後半男性:528万円30代全体男性:499万円30代前半女性:315万円30代後半女性:314万円30代全体女性:315万円先ほどのとおり、実態となる中央値は少し低い可能性が高いです。また、この統計には非正規の方も含まれていますから、より実態とは違ってくる可能性が高いといえます。しかしそれでも、これ以上に正しい数字は日本にありませんから、これはこれでしっかり知っておきましょう。男性も女性も正社員と非正規では収入が倍以上も違う同調査によると、正社員と非正規の平均給与は以下のようになっています。男性も女性も、正社員と非正規では収入が倍以上も違うのが現実です。また、特に女性は非正規のほうが多いので、平均で見ると大きく実態とは違ってくる傾向にあります。このような数字の裏側・内訳なども気にしつつ、少しでも正しい情報の収集に努めましょう。30代の年収中央値は男性462万円、女性360万円?ここからは参考までに、統計を変えて30代の年収中央値についてお伝えします。国の統計ではないのですが、民間のdodaが自社のサービス利用者10万人の正社員を対象にした2012年の集計結果によると、以下のとおりです。なお、少し情報が古いですが、ここ10年の平均年収はほぼ変わっていないため、この視点で参考に見ておきましょう。この中央値の平均を取れば、30代の年収中央値は男性462万円、女性360万円となります。先ほどの平均年収統計では、男性499万円、女性315万円でしたから、中央値や非正規雇用などの事情を考えれば、より実態に近い数字かもしれません。しっかり覚えておきましょう。いまだ女性の3割は専業主婦、半数超は非正規「女性の社会進出」が一般的になりつつある現在でも、既婚女性の約3割は専業主婦になっています。また、働く女性の半数超が非正規雇用での労働です。男性の非正規は2割程度ですから、特に女性の場合は正規・非正規で年収上の格差が大きくなっています。そしてこのため、どうしても「統計の取り方」によって女性の数字はブレやすくなる傾向です。あまり直接的な年収にまどわされることなく、自分の年収を考えていきましょう。全国の地域別・男女別の年収中央値について今度は、全国の地域別に年収中央値をお伝えします。先ほどの調査によると、2012年の都道府県別の年収中央値は以下のとおりです。ただし、これは年代別の要素はありませんから、都道府県ごとの傾向として見ておきましょう。やはり大都市ほど年収中央値も高い傾向にありますが、一方で地方と呼ばれる県でも相応に高めなところもあるのが実情です。年収が低いと感じている場合は、県をまたいだ引っ越しや転職をするのもよいのかもしれません。都会と地方は収入とともに支出も違う!都会と地方は収入とともに支出も違うという点には注意が必要です。たとえば東京などは、確かに収入は高い傾向にあるものの、特に家賃を筆頭に支出も大きくなりやすいといえます。このため、必ずしも大都市のほうが生活しやすいとはいえない点に注意しましょう。もっとも、だからといって「地方のほうが生活しやすい」ともいえません。その人の考え方や性格・相性にもよりますから、引っ越しや転職をする場合は総合的に考えて判断しましょう。[adsense_middle]給料は手取り額だけでなく額面額も気にしようここからは、年収を考える際の注意点についてお伝えします。まずは「手取り額と額面額」についてです。一般的なサラリーマンの方なら、給料は実際に手元にくる「手取り額」を気にする方が多いといえます。ちなみに手取り額とは、基本的に額面額から諸々の税金や社会保険料などを差し引いた残額のことです。手取り額が気になるお気持ちは分かるものの、実際に何をいくら差し引かれるかは会社によります。そして、どうあがいても手取り額が額面額を上回ることもありません。統計や求人などで使われている数字も基本的に額面額ですから、自分の額面額を正しく把握しておきましょう。また、手取り額は、たとえば生命保険に加入するなどの一定の対策を取ることで相応に増やすことも可能です。今後は手取り額を増やす努力に励む一方で、額面額を上げる努力にも励んでいきましょう。ボーナスや昇給・退職金や各種手当も大切目先の毎月の給料額も大切ですが、それだけで自分の労働環境を考えるのは危険です。たとえばボーナスの有無も会社によりますし、昇給具合も会社次第になります。将来的な退職金制度があるかないかもさまざまですし、毎月の給料に加算される各種手当も本当に会社次第です。他社のほうが高い給料を掲げていたので転職したところ、手当やボーナスがなくてかえって収入が減ったという話もよく聞きます。分かりやすい給料以外についても、しっかり目を向けましょう。「構造的に年収が上がらない業種」には注意が必要次に、「構造的に年収が上がらない業種」についてお伝えします。どんな仕事でも、がんばれば収入は上がって当然と思いたいところですが、実際には違うのが現実です。国税庁の平成30年「民間給与実態統計調査」によると、業種別の平均年収は以下のようになっています。会社規模や営業戦略などにもよるので一概にいえませんが、それでも下位の業種であるほどに「構造的に年収が上がりにくい仕事」といえます。非正規労働やアルバイトということも多いため、なおさらです。できれば、平均年収が高い業種への転職を目指しましょう。年齢30歳頃の給与によっては転職を意識しようこの統計によれば、平均年収は20代前半から後半にかけて、一番上がっています。逆にこの時代に年収が上がらないようであれば、その後の年収上昇も望みにくいかもしれません。年齢30歳ごろの給与によっては転職を意識することもおすすめです。ただ、転職しても同業では年収が上がりにくい事情が変わらないかもしれません。他業種への転職は簡単ではありませんが、できれば平均年収が高い業種での正社員を狙いましょう。収入が上がっても支出まで上がっては意味がない?ここからは、ライフプラン上の年収に関するポイントについてお伝えします。まずは、「収入が上がっても支出まで上がっては意味がない」という点です。多くの方は高い年収を得れば豊かな暮らしができると考えますが、本当にそのような暮らしをすれば自殺行為になります。というのも、サラリーマンの年収というのはほぼ確実に定年で落ちるのが普通です。しかし、年収が落ちても生活水準は簡単には落とせません。このため、実は年収が高い人ほど生活水準が高い傾向にあるため、かえって老後破産しやすいのが実情です。年収は上げても生活水準は変えず、差額は貯金などに回すのがライフプラン上は理想的といえます。「給料は死ぬまでは入ってこない」という現実を、早めに理解しましょう。老後資金も2000万円で足りるかはさまざま令和元年には老後資金として2000万円必要といわれました。しかし2000万円で足りるかはさまざまで、むしろ一般的には倍の4000万円は必要です。少なくとも「2000万円も要らない」は多くの場合で間違っています。贅沢な暮らしをしていて貯められそうですか?30代なら今後は結婚、そして住宅ローンや教育費という高額な支出も待ち受けています。収入が上がっても安易に支出に回すことなく、先々のために貯蓄に励んでいきましょう。[adsense_middle]日本人のサラリーマンにとっては当然だった終身雇用は崩壊中最後に、「終身雇用」についてお伝えします。30代の方ならまだ少し他人事かもしれませんが、日本人のサラリーマンには当然だった「終身雇用」は崩壊中です。大手企業でも40代でのリストラが横行していますし、中には30代後半でリストラ対象になる会社も出てきています。もしリストラされたら、あなたはどうしますか?一般的に40歳前後ともなれば若いとはいえず、相応の実力や経験をともなっていなければ転職も簡単にはできません。一度でも非正規労働になれば、一気にライフプランも狂います。リストラされない保証など誰にもありません。この時代に大切なことは、「起業家精神」です。実際に起業するかは別にして、いざとなれば起業できるだけの実力と経験を身につけておけば、リストラも怖くありません。厳しい時代ですが、ぜひ自分で明るい未来を切り開きましょう。「雇う側」になれば定年すらなくなる!リスクばかりがいわれる起業ですが、実はそれに見合うメリットもたくさんあります。一番のメリットは「定年がない」という点です。理不尽な上司もいませんし、満員電車もサービス残業も休日出勤もありません。有能かつ気の合う人を雇うことさえできるようになります。当面の収入が怖いところかもしれませんが、そこさえ乗り越えれば経営者として相応しい収入を得ることも可能です。盲目的に起業を避けるのではなく、まずは自分の身を守るためにも前向きに考えてみましょう。30代で中央値程度の年収があっても油断は禁物学生時代なら、平均点を取れているか否かが1つの安心の目安だったでしょう。しかし社会人の場合、30代で中央値程度の年収があっても油断は禁物です。むしろ中央値程度の年収だけでは足りないことも多いので、支出面や今後のライフプランを踏まえた家計管理をしていきましょう。
2020年07月14日事業を始めようと決めたら、個人事業主としてやっていくのか、会社を設立するのか、どちらでやっていくほうがいいのでしょうか。個人事業主か会社設立かどちらにもメリット・デメリットがあります。それぞれのメリット・デメリットをしっかり把握することは重要です。状況に応じて適切な事業形態を選択しなければ、事業の継続が危ぶまれることになりかねません。今回は、会社を設立するメリット・デメリットについて、個人事業主として事業を行った場合と比較することにより、詳しく解説したいと思います。会社の設立を考えている場合は、ぜひ参考にしてみてください。会社設立のメリット社会的な信用が得られる法人のほうが節税対策をしやすい(1)社会的な信用が得られる会社が取引相手を選ぶ際、相手先の信用力はとても重要視されます。取引相手が会社でないとそもそも取引を行わない企業や、取引量の規模に制限を設けている企業もあるほどです。設立手続きが厳格決算書や確定申告書の情報が豊富信用があると融資や資金調達を行いやすい人材の確保がしやすい有限責任である理由①設立手続きが厳格日本においては、個人より会社形態で事業を行うほうが信用されます。会社を設立するにはまとまった資本金が必要であり、設立手続きにおいても設立登記など法律に基づく手続きを実施しなければなりません。その結果、登記事項証明書によって公的に存在することが容易に確認でき、個人の場合より信用力が高まります。この登記事項証明書には「商号」「本店所在地」「設立年月日」「目的」「役員の情報」などが記載されており、会社の重要な情報がひと目で確認できます。理由②決算書や確定申告書の情報が豊富会社形態であれば、決算書や確定申告書を信用力の判断材料とされます。個人事業の場合は決算書や確定申告書を提出することができますが、個人の確定申告書は法人のものと比べると情報量が少ないため、信用力の有無について判断が難しくなります。一方、法人税の確定申告書は添付資料も多く、会社の財政状態や経営状況を把握するのに十分な情報が得られます。理由③信用があると融資や資金調達を行いやすい金融機関からの融資は個人と法人では大きく異なります。金融機関から個人で融資を受けようとすると、保証人や担保を要求されるなど、非常に条件が厳しくなります。一方、法人の場合は上で述べたように社会的な信用力が高く、融資の可能性も格段に高くなります。また、融資以外にも投資家からの出資による資金調達もあります。理由④人材の確保がしやすい個人として事業を行うより、法人として事業を行ったほうが、人材確保(従業員の雇用維持)が有利になるといえます。これは単なるイメージという理由もあるかもしれません。たとえば、会社名に「株式会社」とか「合同会社」のような名称が付いているのと付いていないのとでは、やはり印象は違ってくるのではないでしょうか。求職者から見ると、会社と名の付くところだから、従業員がいて、しっかり事業を運営しているという“イメージ” を持つ人も少なからずいるでしょう。個人事業よりも法人が好印象を持たれる理由なぜ、個人事業よりも法人に好印象を持つのでしょうか。それは、以下の理由によるものと思われます。法人の場合、個人事業と違って給与体系、有給休暇、残業手当などの基準が明確である場合が多いこと法人の場合、従業員の社会保険料を半額負担してくれること福利厚生面も(個人事業よりは)充実しているイメージがあること仕事を探している人も、そこで働いている人も、安心して働ける環境というのは一番の条件になります。人材の確保が個人よりも法人のほうが有利といえるのも、結局は法人のほうが信用できるということで説明できます。理由⑤有限責任である個人事業の場合、万が一事業を廃業しても、税金や給料の支払い、借入金の返済、仕入先への支払いなど、倒産後も自分の財産を処分してでも払わなければなりません。これに対して、法人の場合は、倒産したとしても出資の範囲で有限責任となります。つまり、出資した範囲でのみ支払義務を負うことになり、事業が失敗したときのリスクを抑えることができます。信用性とは直接関連がないように思えますが、会社の社長が法律上有限の責任しか負わないという制度も、法人格に対して信用を与えた結果ともいえます。(2)法人のほうが節税対策をしやすい法人税率と所得税率の比較給与所得控除が使える認められる経費の範囲が増える赤字の場合の損失を10年間繰越できる消費税の免税による節税対策家族・親族への給与決算月を自由に決められる理由①法人税率と所得税率の比較個人事業主には所得税がかかります。所得税では、所得が増えれば増えるほど税率が高くなる仕組みとなっています。一方、会社の場合、法人税は利益が増えても原則として税率は一定となります。そのため、一定の利益を超えると、法人税のほうが税率は低くなります。したがって、大きい利益が期待される場合は、会社を設立することで支払う税金を抑えることができます。理由②給与所得控除が使える個人事業主の場合、給与所得者ではなく、事業所得という扱いになり、給与所得者に認められる給与所得控除(給与収入に応じて一定金額が所得から控除できる制度)が認められません。しかし、会社から役員報酬として給与をもらえば給与所得者となり、この給与所得控除により、課税される所得を抑えることが可能です。理由③認められる経費の範囲が増える自営業の場合、事業に必要な費用として経費に含めるか、あるいは単なる日常の生活費かという判断が難しく、自営業としての事業に直接必要な費用と認められるかどうかは判断の分かれるところです。たとえば、仕事をしながらの夜食代や、スポーツクラブの会費などの福利厚生費用は、事業に直接必要な費用とは認められないケースが多いといえます。一方、会社であれば、上記のような福利厚生費は経費として事業活動のために支出されたものとすることができます。それ以外にも、自宅兼事務所や自動車、生命保険料、退職金など、会社にしたほうが経費として認められる範囲は広くなります。理由④赤字の場合の損失を10年間繰越できる個人であっても法人であっても、ある年度で赤字となった場合、その損失を翌年度以降の利益と相殺することができます。これを欠損金の繰越控除といいます。これにより、利益が出た年の税金を抑えることができます。個人事業主の場合、損失の繰越は3年間しかできませんが、法人の場合は青色事業者であることを条件に、損失を10年間繰り越すことができます。理由⑤消費税の免税による節税対策個人事業主であっても法人であっても、創業からの2年間は原則として消費税の納税義務がありません(資本金が1,000万円以上の場合や、1期目の上半期の売上高および給与支払額がいずれも1,000万円を超える場合は翌年から消費税課税事業者となります)。また、消費税の課税事業者となるのは、売上高が1,000万円以上となった2年後からになります。したがって、個人で事業を始めて最初に売上が1,000万円以上となった2年後に個人事業主を廃業し、そのタイミングで法人を設立すれば、さらに2年間は消費税免税事業者となることができます。結果として、最長4年間の消費税納税義務を合法的に回避することができます。理由⑥家族・親族への給与個人事業主では原則として家族に給与を支払うことはできません。青色事業専従者給与として税務署へ届出をした場合にのみ認められていますが、それでも一定の制限があります。法人の場合は、特に届出も必要なく、個人事業主の場合のような制限もないため、実際に家族や親族が事業に従事していれば、問題なく給料を支払うことができます。これによって、家族全体で所得を分散することにより、経営者個人の所得税、住民税を節税することが可能になります。理由⑦決算月を自由に決められる個人事業の場合は1月~12月が事業年度と決められていますが、法人の場合は決算月を自由に決めることができます。たとえば、売上が季節により変動が大きい事業の場合は、その月が事業年度の最初にくるように決算月を決めることで、計画的に経営でき、同時に節税対策も行いやすくなります。会社設立のデメリット事務負担の増加会社のお金は自由に使えない赤字でも税金がかかる社会保険へ加入しなければならない設立・運営・解散に費用がかかる[adsense_middle](1)事務負担の増加会社を設立することで事務負担は明らかに増加します。法人税の確定申告書は添付書類が多く、複雑になります。また、社会保険の加入手続きや税務署への届出など、各種官公庁への手続きを漏れなく行う必要があります。(2)会社のお金は自由に使えない会社の資産と社長個人の資産は明確に区別しなければなりません。たとえば、今月は個人的な支出でお金がかかってしまった場合、個人なら事業で受け取ったお金を自分の生活に充てることもできますが、法人のお金は個人用として使うことは認められません。法人の資産と個人の資産が区別され、自由に使うことができなくなるのは会社を設立するデメリットといえます。(3)赤字でも税金がかかる会社を運営していくと、赤字になることもあるかと思います。しかし、たとえ赤字であっても支払わなければならない税金があります。それが法人住民税の均等割です。これが毎年7万円かかるということは覚えておきましょう。(4)社会保険へ加入しなければならない会社を設立すると、健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられます。この保険料は、従業員の給料が増えれば増えるほど高くなっていきます。しかも、保険料の納付は会社と本人が折半する形になります。したがって、従業員が増えれば増えるほど、給料を高く設定すればするほど、会社の負担も大きくなっていきます。(5)設立・運営・解散に費用がかかる①会社設立時にかかる費用会社設立時に設立費用がかかるという点はデメリットといえるでしょう。登録免許税として株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は6万円を支払うことになります。また、会社設立時にはほかにも定款の作成費用や認証手数料、印鑑の作成や登録などさまざまな費用と手間がかかることになります。②会社設立後の費用会社設立後のランニングコストも決して低いとはいえません。会社の場合には社会保険への加入義務が生じるため、社会保険料の負担があります。従業員を雇うにも費用はかかるでしょう。また、事務所の家賃や自動車費用、税理士費用など、仮に売上が上がらなくても、かかる固定費があることに注意しましょう。③事業の廃止・解散にかかる費用会社設立前から解散を考えることはないと思いますが、会社の解散にも費用がかかります。借金の返済や税金の支払いはもちろんですが、会社の清算手続きに解散登記費用が数万円かかることになります。株式会社と合同会社の比較ここでは、会社を設立する際の会社の種類について、特に株式会社と合同会社について紹介します。同じ会社であっても株式会社を設立するか、あるいは合同会社とするか、それぞれメリット・デメリットがありますので、これについてもしっかり理解しておきましょう。[adsense_middle]①株式会社のメリット・デメリットもっとも一般的な会社形態です。誰もが知っている会社形態であり、社会的信用も高いといえます。資金調達もしやすく、会社が大きくなれば、将来的に証券取引所に上場することも可能です。一方、デメリットとしては設立に手間と費用がかかることが挙げられます。また、役員変更するたびに登記費用がかかります。②合同会社のメリット・デメリット比較的新しい会社形態で、認知度もまだ低く信用も低いといえます。しかし、株式会社に比べて設立費用が安く、スピーディに会社設立手続きを行えることから、徐々にその数は増えていっているのは確かです。合同会社では利益の配分など、社員(出資者)の間で自由に決めることができます。また、会社の重要な決定をする際、株主総会や取締役会での決議を要しないため、スピーディに経営上の意思決定が行えます。株式という概念がないため、証券会社に上場ということはできませんが、小規模事業には適しているといえる会社形態です。会社設立のメリット・デメリットに関するまとめこのように会社設立のときにはメリット、デメリットの両面があります。どちらがよいかはその事業内容によるため、一概にいえませんが、事業をどんどん拡大していく意思があるなら、社会的に信用がある会社設立がよいでしょう。税金に関する事項や設立に必要な費用に関しては、税理士や会計士などの専門家に相談し、検討してみるのがおすすめです。また、最初に個人事業としてスタートし、軌道に乗ってきたタイミングで法人化するといった方法もあります。それぞれの実情にあわせて、もっとも適切な方法を選択してください。
2020年07月11日家財保険と火災保険は同じものでもあり、別のものでもあります。「火災や風水害での損害を補填する」という点においては同じです。しかし、完全に一致するものではありません。今回は火災保険の一部である家財保険の基礎知識と、加入時に注意すべきポイントについて解説します。火災保険と家財保険の違い家財保険は火災保険の一種火災保険の中で、家財のみを補償対象とするものを「家財保険」と呼ぶ場合があります。しかし、「家財保険」という保険商品があるわけではありません。住宅用の火災保険の補償対象は「建物」と「家財」に分かれています。つまり、家財保険は火災保険の一種なのです。家財とは、建物の中にある家具や家電などの動産のことをいいます。住宅用火災保険では建物のみを補償対象にすることも、家財のみを対象にすることも、両方を対象にすることもできます。建物と家財の具体的な補償対象は?「建物」は家屋などの建物本体と付属する物置、車庫、塀などの動かせないものが該当します。「家財」は家具、家電、衣類、カーテンなどが対象になります。ただし、建物と家財の区別は保険会社によって微妙なものもあります。一般的には以下のとおりです。意外にも、建物の範囲は広いのです。家財保険の必要性とおすすめする理由住宅ローンを組んでマイホームを購入するとき、多くの場合は金融機関から火災保険の提案を受けます。その際、「建物のみ」の補償プランを提示されることが多いので注意が必要です。たいていの人は、住宅購入は一生に一度のことなので、火災保険のことはよくわからないはずです。そのまま加入して、建物が全焼してしまった場合、建物は建て替えることができます。けれども、家財道具一式はゼロからそろえなくてはなりません。家財の補償がなければ、テレビや冷蔵庫や洗濯機や家具などをすべて自腹で賄わなくてはならないのです。自己資金に余裕のある人にとっては、建物の建て替えに比べて、かかるお金の少ない家財の保険は必要ではないかもしれません。しかし、ほとんどの人はそんな余裕はないはずです。余裕のない人にとっては家財の保険は必要だということになります。さらに、昨今は大規模な自然災害が増えています。想定外の被害も多く、火災保険は必須です。建物だけでなく、家財の損害にもしっかり備えておきましょう。家財保険を検討する際に知っておきたい注意ポイント[adsense_middle]アパートや賃貸マンションなどの借家の場合賃貸借の対象物件においては、建物本体の火災保険は大家さんが加入しますが、建物内部にある家財の火災保険(家財保険)は居住者が加入する必要があります。賃貸住宅用の家財保険の基本的な補償借家人賠償は必須の補償賃貸住宅の賃借人用の火災保険は、上記のように家財の補償をメインに、賠償責任をオプションにしたセットになっています。賠償責任のうち、借家人賠償はオプションとはいえ、必須の補償です。賃借人には退去の際に対象物件の「原状回復義務」というものがあります。「原状回復」とは、借りる前の状態に戻すということです。自分の部屋から家事を出してしまった場合、「原状回復義務」を果たすことができない「債務不履行」の状態に陥ります。この「債務不履行」に対する損害賠償義務を負うために借家人賠償があります。個人賠償責任は重複加入に注意マンションなどの共同住宅の場合、火災より多いのが漏水です。自分の部屋からの水漏れで、下の階の部屋を濡らしてしまった場合などの損害賠償のために個人賠償責任の補償があります。個人賠償責任は、自動車保険などに付帯されている場合はそちらでカバーされます。1契約で同一生計の家族全員が補償対象になります。重複加入にならないように既加入の損害保険をチェックしましょう。また、借家人賠償、個人賠償責任ともに加入する商品に示談サービスが付いているほうがいいです。地震保険は家財の補償も忘れずに日本では、阪神淡路大震災、東日本大震災などの大地震が起きてから地震保険の加入率が一気に上がりました。通常の火災保険では地震による損害は補償されません。例えば、地震によって発生した火災は地震保険に加入していないと補償されないのです。地震保険は単独では加入できず、火災保険に付加します。過去の震災では家財の損害も甚大でした。よって、地震保険は建物だけでなく家財の補償も必要といえます。地震保険においては建物と家財で災害の認定要件や、保険金の支払い方法が異なります。どちらかというと家財のほうが支払われやすいと言われています。通常の家財保険では補償対象にならないもの家財の補償対象は建物以外全部というわけではありません。通常の火災保険の契約では補償対象にならないものは以下のとおりです。所定額以上に高価な貴金属、書画、骨董など設計書、帳簿、証書など自動車通貨、有価証券、預金証書、印紙、切手など商品、営業用什器、備品などテープ、カード、ディスク、ドラムなどのコンピュータ用の記録媒体に記録されているプログラム、データなど所定額以上に高価な宝石、書画などは「明記物件」として保険会社に申告しておかないと、補償の対象に含めることができなくなります。現金や有価証券は盗難の補償が付いていれば補償の対象になりますが、火災などでは対象外となります。2014年の関東地方の大雪災害では、カーポートが潰れて自動車の車両にも損害が多く発生しました。こうした場合、カーポートは補償されますが、自動車は火災保険では補償されません。車両の損害は自動車保険の車両保険からの補償になります。家財の保険金額の決め方家財の保険金額の決め方は、世帯主の年齢・家族構成によりおおよその目安があります。以下はある保険会社のデータです。家財の保険料の決まり方家財に限らず、火災保険の保険料は建物の構造級別、保険対象の所在地、建築年月、保険金額、補償内容、保険期間、保険料払込方法によって決まります。建物の構造級別は以下のように分類されます。保険料はM構造が最も安く、H構造が最も高くなります。家財保険と火災保険の違いのまとめ火災保険とは、火災や風水害での損害を補填する損害保険です。家財保険は火災保険の中で、家具や家電などの家財の損害を補償するものです。火災保険の中に家財保険は含まれています。家財の補償対象は基本的に建物以外の動産です。火災保険に加入する際は、建物の補償だけでなく、家財の補償も検討するようにしましょう。
2020年07月07日住宅ローンは35年など数十年に及ぶ返済ということもあり、借入額をいくらにするのか迷うものです。金融機関が住宅ローンでいくら融資してくれるかは年収により決まりますが、実際のところ、年収に対してどのくらいの借入をするのがよいのでしょうか。本記事では、住宅ローンの借入可能額の計算方法などに触れながら、年収と適正額のベストバランスについてご紹介していきたいと思います。住宅ローンの借入額はいくらくらいがいい?住宅ローンを組むと数十年にわたり、毎月返済していくことになりますが、年収に対してどのくらいまで借入してよいものなのでしょうか?借入できる金額を目安にしてはいけない年収に対していくらまでなら借りてよいかという疑問に対し、明確な答えはありません。これは、生活費や食費など毎月かかる費用がどのくらいかといったことや、貯蓄額など家庭によって大きく異なるからです。一方、金融機関に審査を申し込むと、「年収○○万円なら□□万円まで借入できる」という借入可能額は明確に計算できることから、この数字を1つの目安とする方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、実際のところ、金融機関の借入可能額を目安にすると負担が大きくなることが多いです。借入可能額については、あくまでも自分の年収で借りられる最大額でしかないという意識を持ち、住宅ローン借入額の適正額を決める際の目安にしてはいけないということをまずは覚えておくとよいでしょう。住宅ローンの借入可能額の計算ここで、住宅ローンの借入可能額の計算方法を見ていきたいと思います。住宅ローンの借入可能額の計算では、返済負担率と審査金利の2つが用いられます。返済負担率とは返済負担率とは、住宅ローンとそのほかのローンを含めて、年収に対していくら返済しているのかを表すものです。例えば、年収400万円の方が住宅ローンを借りると、住宅ローンの返済額で8万円/月、自動車ローンなどそのほかのローンで2万円/月返済する場合、返済負担率は以下のように計算されます。{(8万円/月+2万円/月)×12カ月}÷400万円×100(%)=30%返済負担率については、金融機関ごとに上限が定められており、その上限を超える金額は原則として借入できないこととなっています。例えば、住宅金融支援機構のフラット35の場合、年収400万円未満の場合で返済負担率の上限は30%、年収400万円以上の場合で返済負担率の上限は35%と定められています。つまり、上記ケースでは返済負担率35%まで借りられることとなり、借入可能額の基準はクリアすることになります。住宅ローン以外のその他ローンに注意返済負担率についてポイントとなるのは、住宅ローン以外のローンも対象となることです。自動車ローンやウェディングローン、教育ローンなどを返済中の方は返済負担率の計算に入れる必要がありますし、ほかにも携帯電話の分割費用や奨学金なども対象となります。これら借入情報については、自己申告ではありますが、審査時には個人信用情報をチェックされるため、申告漏れがあったらばれてしまいます。なお、そのほかのローンについては、自己資金などで住宅ローン実行時までに完済することができれば、返済負担率の計算から除外できます。審査金利とは返済負担率の計算上、住宅ローンの返済額を求める際には、住宅ローンの適用金利ではなく、金融機関ごとに定められた審査金利が用いられます。審査金利は金融機関ごとに異なりますが、3%程度で設定されることが多いようです。例えば、住宅ローンの適用金利が1%で審査金利が3%という金融機関の場合、35年の借入で毎月2万円ほど返済額が異なるのが一般的です。借入可能額の計算上、審査金利は重要なポイントとなります。フラット35の審査金利は住宅ローンの適用金利住宅金融支援機構のフラット35の場合、審査金利は住宅ローンの適用金利と定められており、このことから民間の金融機関と比べて高い借入可能額としやすくなっています。フラット35の場合、場合によっては年収の10倍程度を借入できる計算となることもありますが、冒頭でお伝えしたとおり、借入できるからといって満額まで借りてしまうと、返済が厳しくなってしまうことが少なくありません。年収と毎月返済額の適正額は?年収に対して、住宅ローンの毎月返済額の適正額はいくらくらいなのでしょうか?[adsense_middle]返済負担率20~25%を目指すまずは、返済負担率を20~25%に収めることを目指してみましょう。実際には、年収や年齢、家族構成などによって適正額は異なるのですが、目安としてこの辺りを意識しておくと余裕を持った資金計画を組みやすくなります。例えば、年収400万円の方の場合、返済負担率20%だと年間80万円の支払いで、おおよその毎月返済額は7万円ほどとなります。7万円/月というと、金利1%、借入期間35年の場合で2,500万円程度の借入となる計算です。月々の収入と支払額を把握しよう上記で借入額の目安について、返済負担率をおおよそ20~25%程度に収めるようお伝えしましたが、実際には年収により税負担や社会保険料などが異なるため、注意が必要です。上記は目安として考えつつ、実際に借入額を決めるときは、毎月の収入と支出を洗い出して計算してみるようにしましょう。手取り収入の把握まずは、手取り収入がどのくらいかを把握することから始めます。手取り収入については、預金通帳を見れば毎月の額を把握できるので、まずは確認してみましょう。毎月の費用の把握次に、食費や水道光熱費、携帯電話などの通信費で、月額いくらの費用がかかっているかを大雑把に書き出し、その合計額を求めます。こうして、手取り収入から毎月の費用を差し引き、そこから住宅ローンの返済額を差し引いたら手元にいくら残るかを求めてみましょう。実際には、想定外の費用が発生することも少なくないため、この段階ではかなり余裕を持った資金計画を立てることをおすすめします。年齢や家族構成によっても適正額は異なる年齢また、年齢や家族構成によっても適正額は異なります。例えば、年齢については、30歳で住宅ローンを組むのと、50歳で住宅ローンを組むのとでは計算が大きく変わってきます。というのも、住宅ローンの多くは完済時年齢を80歳前後とする必要があり、50歳の借入だと最長でも30年しか借りることができません。また、65歳で定年退職することを考えると、退職後に住宅ローンをどのように支払っていくのかも考えないといけません。家族構成家族構成については、子どもが何人いて、教育費にどのくらいの費用がかかるかも計算しておく必要があります。とはいえ、ここまで計算するのは一般の人にはなかなか難しいことでしょう。詳細に計算したければ、FPに相談してライフプランニングをしてもらうことをおすすめします。借入可能額いっぱいの借入でも問題ないという考え方もある一方、借入可能額いっぱいの借入でも問題ないという考え方もあります。住宅ローンは、一般的にすべてのローンの中で最も金利が低く設定されています。金融機関からすると、住宅ローンを貸すだけでは人件費などを考えると貸すだけ赤字になると考える人もいるほどです。アベノミクスによる異次元の金融緩和やマイナス金利の導入により金利は下がり続けており、1%以下の金利で借りられることも少なくありません。住宅ローン控除で借りれば借りるほどお得になる?さらに、政府により、住宅取得を積極的に行ってもらう目的で、住宅ローンを組む際にさまざまな特典を受けられるような制度が設けられています。具体的には、住まい給付金や住宅ローン控除が挙げられますが、ここでは特に住宅ローン控除について取り上げたいと思います。住宅ローン控除とは、借入してから13年間、住宅ローン年末残高の1%について所得税や住民税から控除を受けられるというものです。先述のとおり、住宅ローンの金利は1%を切るものも多い中、住宅ローン控除で1%分の還付を受けられるとなると、場合によっては「借りれば借りるほどお得」という状態になるのです。ただし、住宅ローン控除で受けられるのはあくまでも所得税や住民税に対する控除で、これらはそもそも年収がある程度高く、所得税や住民税を納めていないと還付は受けられません。サラリーマンの方は、職場から交付される源泉徴収票で納税額を計算できるので、確認してみるとよいでしょう。借りたものは返さないといけないとはいえ、当たり前ではありますが、住宅ローンで借りたお金は返さないといけません。借りれば借りるだけお得だからといって、例えば無駄に設備にお金をかけるなど、不要な分も借りてしまうのは問題です。手持ち資金が豊富にある場合に、手持ち資金を手付金として入れるのではなく、手元にお金を残しておくといった使い方ではおすすめできますが、手持ち資金がないのにも関わらず多額の借金をしてしまっては、借入後の生活が厳しくなる可能性が高いです。金利1%程度に対して、税金の還付で1%受けられるからといって、無駄に融資額を大きくするのではなく、あくまでも収入に対していくら返済していく必要があるのかを、なるべく余裕のある水準で計算しておくようにしましょう。その際には先述のとおり、1つの目安として、年収に対する返済負担率を20~25%に収められるかどうかを基準にしておくことをおすすめします。住宅ローン借入額の目安に関するまとめ住宅ローン借入額の目安についてお伝えしました。年収に対していくらまで借りてよいかについては、すべての家庭に当てはまる便利な公式などはありません。1つの目安として、返済負担率20~25%程度に収めることを目標にするとともに、より詳しくは、収入と支出の把握や、年齢や家族構成を元にしたライフプランニングを作成するなどして計算していくことをおすすめします。その際には、FPなど専門家に相談してみるのも1つの方法です。
2020年07月06日世界中を混乱に陥れたコロナ禍。いまや、リーマン・ショックに比肩する景気悪化におそわれるとの予想も。そこで、ボロボロ家計を救うべく、使える制度を使い倒そう!利用できる支払いの「猶予・免除」にはどんなものがあるのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんが教えてくれたーー。■税金は滞納扱いになる前に手続きを!大手旅行会社のHISが今夏のボーナス支給を取りやめるなど、多くの企業でボーナスが大幅に削られています。みずほ総研は、今夏のボーナスが昨年より9.2%減ると予想(’20年5月)。リーマン・ショックに次ぐ大きな下げ幅です。「ボーナスが出るだけありがたい」声がある半面、「冬までどうやって暮らせばいいんだ」という嘆きは深刻です。住宅ローンのボーナス併用払いや毎月の赤字補填など、“ボーナス頼み”の家計にとって、1人10万円の「特別定額給付金」は焼け石に水。今年後半の家計は、ボロボロになるかも……とはいえ、借金は避けたい!ならば、支払いの「猶予・免除」を利用しましょう。国の要請を受けて、コロナ禍の特別猶予もあります。【1】社会保険料国民健康保険・介護保険や国民年金などの社会保険料は、困窮の度合いに応じて免除があります。一家の大黒柱がコロナ肺炎で亡くなった場合などは、国民健康保険料・介護保険料は全額免除です。注意したいのは、これらが申請主義だということ。国民健康保険の免除申請をすれば、保険料を払わなくても保険証が使えます。国民年金は、免除期間も老後の年金をもらうための受給資格期間に含まれます。手続きせず放っておくと、こうした補償は一切ありません。必ず申請してください。【2】税金税金は、最長1年間の猶予があります。延滞金もありません。自動車税・軽自動車税は5月末が支払い期限でした。「払えない」と思い悩むより、早めに手続きをして家計のこれからを考えましょう。手続きしなかったら滞納扱いとなり、延滞金がかかります。【3】水道・下水道料金もっとも大切なコロナ対策は手洗いですから、ふだんより水道代がかさんだ家庭が多いと思います。上下水道は自治体が管理していますので、自治体独自の判断で、一部免除などの措置を行っています。たとえば兵庫県小野市は、5月請求分から半年間無料にする太っ腹。いくら使っても上水道は無料ですが、下水道料金は使いすぎ防止のため通常どおり徴収します。ほかにも、大阪市は上下水道の基本料金が3カ月間無料ですし、鹿児島市は上水道の基本料金が4カ月間無料です。こうした措置のない自治体でも窓口で相談すれば、猶予に応えてくれると思います。6月24日、世界通貨基金(IMF)が、世界経済は大恐慌以来最悪の景気後退と発表。日本はリーマン・ショックを超える景気悪化になると予測しました。コロナ禍の経済ショックはこれからが本番かもしれません。私たちは、使える手はなんでも使って、家計を死守する覚悟が必要です。「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月03日家計の見直しをするには固定費の削減が効果的ですが、その中の一つとして保険の見直しをされることもあると思います。見直しと言っても単純に保険を解約したり、保険料を安くしたりするだけではなく、優先順位を決めた上で必要な保障を確保して、不必要な保障を削減することも必要です。 今回は保険の見直しについて基本的な考え方と状況別の対応方法をお伝えいたします。 保険の見直しの基本的な考え方シンプルに考え方をお伝えすると、 保険の見直しとは、1. 必要な保険は継続して、2. 不要な保険や重複している保険は解約や減額、3. 不足している保険は追加を検討し、4. 同様の機能の保険であれば、保険料が安いものがないか比較することです。インターネット等で情報の比較・検討が得意な方はご自身でも見直しができると思いますが、不得意な方はファイナンシャルプランナーや複数の保険を取り扱う保険代理店・保険ショップに相談することも検討されると良いでしょう。 子どもが生まれた場合の見直しについて子どもが生まれた場合に必要な保険は主に以下の3つです。【1】生計の中心者(基本的にはご両親)の死亡や就労不能に備える掛け捨ての保険(収入保障保険、定期保険等) 【2】お子さんの進学費用を準備するための貯蓄性のある保険(学資保険・外貨建や変額型の養老保険等) 【3】お子さんの医療保険・がん保険・傷害保険 特に【1】はお子さんが社会人になるまでの年齢までは確保することをおすすめします。子どもが生まれたときには最も必要な保険と考えましょう。そのため、解約や減額を検討する場合には、住宅ローンでの団体信用生命保険に加入する場合以外の理由においては最後に手を付ける保険としてください。 【2】は、貯金代わりの側面もありますので、保険料の支払いが当分の間難しい場合には、解約や(解約はせずに、今後の保険料の支払いを止め、保険金の小さな保険にすること)、減額(今後の保険料と保険金を小さくする)を検討しましょう。しかし、将来の進学費用はその後貯める必要がある点は合わせて覚えておきましょう。 【3】については、乳幼児医療費助成等の制度で多くの部分がカバーできるので、必要であれば、掛け捨ての共済や少額の保険の加入に留めておくことが基本的な考え方です。 保険料の支払いが難しい場合の見直しについて新型コロナウイルスの影響だけではありませんが、しばらくの間収入の見込みが難しく、保険料の支払いが難しい場合でも、必要最低限の保険はできる範囲で確保しましょう。 例えば、上記【1】の収入保障保険、定期保険等や自動車保険・火災保険は、可能性は高くないものの、事故などが発生した場合には1000万円単位のお金が必要な状況になりますので、継続できないか検討しましょう。 逆に貯蓄性の高い保険は解約・払済・減額と合わせて、契約者貸付(今までの積立額をベースに貸付が受けられます)や保険料支払猶予(保険料の支払いを一定期間待ってもらえます)ができないか、保険会社や代理店の担当者またはカスタマーセンター等に確認することをおすすめします。 多くの保険会社では、新型コロナウイルス対策で、契約者貸付の利息を0にしたり、保険料の支払猶予の期間を延長したりしていますので、必要に応じて利用しましょう。 その他の見直しのポイント上記以外の保険の見直しについての主なポイントを5点お伝えしますので、参考にしてみてください。 ポイント12017年以前に加入した収入保障保険、定期保険等の有効期間のある死亡保険は、年齢や健康状態によって条件が異なりますが、2018年の保険料の値下げにより、加入をしなおすと安くなる可能性があります。 ポイント22016年以前に加入した学資保険や個人年金、終身保険などの貯蓄性のある保険は、現在より予定利率が高いため、継続できる場合には、解約はせず継続することをお勧めします。 ポイント3医療保険、がん保険は種類が多いため、保険料だけでなく、どのような時に保険金がいくら支払われるかを含めて比較しましょう。 ポイント4保険会社によって、得意な保険、不得意な保険があることが少なくありません。保険の種類ごとに、異なる保険会社の保険を組み合わせることも検討しましょう。 ポイント5火災保険は火災だけでなく、自然災害や汚破損等でも保険金が支払われるプランもあります。洪水や浸水の可能性がない建物に水災が補償されるプランは対象外にすることによって、保険料を下げることが可能な場合があります。 こちらでお伝えしたことがすべてではありませんが、保険を見直す主なポイントを挙げました。保険の見直しだけではありませんが、固定費の削減をすることで家計によって長期間プラスになる可能性がありますので、できることから始めるきっかけにしていただければと思います。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2020年07月02日生命保険料の適正額が分からずに悩んでいる人は多いのではないでしょうか?「日本人は保険好き」と言われることもあるように、中には不必要な保険にまで入り、毎月の料金が高額な人もいます。そこでこの記事では、生命保険料の決め方が分からない人向けに、データ別に見た生命保険料の平均額や、保険料の適正額を決める方法をお伝えします。全体で見る生命保険料の月額平均は約3万2千円公益財団法人生命保険文化センターが公開している「生命保険に関する全国実態調査」(平成30年12月発行)によると、全世帯の平均年間払込保険料は38.2万円。月額平均にすると約3.2万円です。また、平均年間支払保険料で最も多かったのは12〜24万円でした(16%)。月額平均にすると、1~2万円です。また、最も保険料の高かった年間平均84万円以上の世帯(月額7万円以上)は、全体の5.8%でした。保険料は年齢とともに上がるが、60代以降には下がるどのデータを見ても共通して言えるのは、20代から50代にかけて保険料の平均額は上がるということです。しかし、60代以降には保険料の平均額は次第に下がっていきます。もちろん、保険料は世帯・年代・年収・就労形態などが要因で変化するものです。それぞれ詳しく解説します。世帯別に見る生命保険料の月額平均は?夫婦のみの世帯(40歳未満とそれ以上)・乳児~就学修了する末子がいる世帯・高齢夫婦(有職と無職)の世帯の年間平均は約36.4万円。月額にすると約3万円です。世帯別に見ると、末子が高校・短大・大学生のときに最も保険料が高いことが分かります。年間平均は46.2万円で、月額にすると3.9万円です。以下の図表を参考にしながら、それぞれの世帯ごとの生命保険料の平均額を見てみましょう。夫婦のみ・子どもがいる場合の月額平均保険料夫婦のみの世帯の場合は、40歳未満で年間平均払込保険料は24.3万円(月額約2万円)と最も低い金額です。一方で40歳以上の場合は37.3万円(月額約3.1万円)で、世帯別に見る平均よりは低い数値です。一方で、末子が乳児~就学修了までは、末子が乳児の場合は34.5万円(月額約2.9万円)であり、最も保険料が高額な時期は高校・短大・大学生のときです。子どもの有無で備えるべきリスクが異なる子どもの有無によって、備えるべきリスクは異なります。子どもがいる世帯は、世帯主が亡くなったときなどに備えて、残された配偶者と子どもの生活を保障したいと考える人が多い一方で、子どもがいない世帯にそのような補償は不要です。そのため、夫婦のみ(40歳未満)の年間平均払込保険料が最も少なくなります。また、末子が高校・短大・大学生のときに最も教育費がかかるため、備える補償額も一番大きくなります。高齢夫婦の場合の月額平均保険料高齢夫婦(60歳以上)の場合は、仕事の有無で変わってきます。仕事がある高齢夫婦世帯の年間平均払込保険料は32万円(月額約2.7万円)であり、仕事がない世帯は25.6万円(月額約2.1万円)です。仕事がある場合は、ない場合と比べて収入に余裕があるため、保険料の支出も大きくなると解釈できます。高齢夫婦には今までのストックがあるケースが多い高齢夫婦の場合は、今まで貯蓄型の保険に加入してきているケースもあります。その場合は、いざというときの備えがすでに完成しているため、60歳以降に大きな保険料を支払う必要はありません。大きなリスクに対する準備は整っているため、夫婦のみ(40歳以上)の世帯などよりも保険料は少なめです。保険料の平均は子どもが大きくなるにつれて上がる年間平均払込保険料は、子どもが大きくなるにつれて大きくなります。その理由は、進学するにつれて必要な教育費が上がっていく傾向があるためです。そのため、子どもの就学期間が過ぎた後は保険料の負担は減ります。また、夫婦が定年に近づくにつれて、老後の資金を備えたり、すでに貯蓄型の保険でリスクに対する備えができていたりするため、必要な保険料はさらに減るのです。年代別で見る生命保険料の月額平均は?「生命保険に関する全国実態調査」を参考に、29歳以下の人から90歳以上の人までの年間平均払込保険料を見てみましょう。[adsense_middle]29歳以下の月額平均保険料29歳以下の人の年間平均払込保険料は23.3万円(月額約1.9万円)です。全体平均の38.2万円(月額約3.2万円)と比べると、大きく下回ります。20代は30代以降と比べて家庭を持つ人の割合が少ない分、備えるべきリスクは少なめであるため、全体平均よりも保険料が低いと考えられます。30代の月額平均保険料30~34歳の年間平均払込保険料は29.8万円(月額約2.5万円)であり、35~39歳は38万円(月額約3.2万円)でした。30代後半になると、前半のころと比べて大きく保険料の平均が上がっています。その理由は、夫婦間で子どもが生まれたり住宅ローンを組んだりして生命保険に入る人や、世帯主に何かあったときに備えて医療保険に入る人がいるからです。40代の月額平均保険料40~44歳の年間平均払込保険料は34.5万円(月額約2.9万円)であり、45~49歳は42.7万円(月額約3.6万円)でした。40代は子どもが高校・大学生になる歳であるため、30代より1人あたりの教育費が高くなる厚生労働省の資料「人口動態統計」の資料によると、30~34歳で出産する人が増加しています。もし30歳で出産すれば、子どもが高校・大学生になるのは親が48~50歳になったころです。最も教育費がかかるのも高校・大学生であるため、40代後半は保険料が30代のころより高くなり、さらに全体平均38.2万円(月額約3.2万円)よりも大きくなっています。50代の月額平均保険料50~54歳の年間平均払込保険料は48.3万円(月額約4万円)であり、55~59歳は45.3万円(月額約3.8万円)です。年代別で平均保険料を見たとき、50~54歳の人が最も高くなります。その理由は、40代のケースと同じく子どもの教育費・進学費に備える人や、年齢を心配してがん保険の加入や医療保険を厚くしたりする人が出てくるためです。60代以降の月額平均保険料60~64歳の年間平均払込保険料は44.5万円(月額約3.7万円)であり、65~69歳は32.1万円(月額約2.7万円)です。70代以降は、全体平均の38.2万円(月額約3.2万円)を下回っています。65歳以降から平均保険料が下がっているのは、定年退職して現役時よりも保険料の支出が困難になったことと、今までの貯蓄があることが理由です。年代が異なるだけで平均保険料に2倍近くの差がある年代別で生命保険の年間平均払込保険料を見ると、50~54歳の人が最も多く、48.3万円(月額約4万円)でした。次いで55~59歳の45.3万円(月額約3.8万円)、60~64歳の43.9万円(月額3.7万円)です。一方で、最も少ないのは90歳以上の23.6万円(月額約2万)、次いで29歳以下の23.3万円(月額約1.9万円)です。最も多い額と少ない額で2倍近くの差があることが分かります。平均保険料に差が出る理由は、年代ごとに備えるべきリスクが異なるため年代ごとに備えるリスクは異なります。そのため、年間平均払込保険料には年代により差が生じるのです。例えば保険料が高めな50代は、子どもの教育費だけではなく、自身の健康に対するリスクに備えるための保険に加入します。一方で保険料が低めな29歳以下は、ほかの年代と比べて家庭を持っている人は少ないため、備えるべきリスクは少なめです。このように年代による特徴は、支払保険料に影響します。年収で見る生命保険料の月額平均は?次は年収による生命保険料の平均額です。平均年間支払保険料が最も少ないのは、年収200万円未満の人で21万円(月額約1.8万円)でした。一方で、最も多いのは年収1,000万円の人で、61万円(月額約6.1万円)です。年収が上がるにつれて、保険料も上がる図表と見ると、年収が上がるにつれて、平均年間支払保険料も上がっていることがわかります。最も少ない年収200万円未満の人の保険料と、最も多い年収1,000万円未満の人の保険料の差は約3倍です。年収に占める保険料の割合は、年収の低い人の方が高い下の図表を見ると、年収に占める保険料の割合は、年収200万円未満の人が最も高めです。年収200万円未満の人は、年収の12%を保険料に充てています。例えば年収180万円の人なら、年間21.6万円(月額約1.9万円)です。年収の低い人ほどリスクヘッジが必要その理由は、年収の低い人ほどリスクヘッジが必要であるからです。保険とは、貯蓄だけで対応することが困難な事態に備える手段です。例えば病気で入院して高額な医療費が必要になった場合、年収の高い人なら貯蓄で対応できますが、年収の低い人は困難である可能性があります。このように、いざというときに対応するために、年収の低い人はリスクに備えておく必要があるのです。就労形態で見る生命保険料の月額平均は?続いては就労形態による生命保険料の月額平均です。下の図表では、保険加入者が以下の3パターンに分けられており、それぞれの平均年間支払保険料は次のとおりです。夫就労・妻無職35.9万円(月額約3万円)共働き(妻はパート・派遣)37.5万円(月額約3.2万円)共働き(妻はフルタイム)55.8万円(月額約4.7万円)収入が多い共働き世帯の保険料が最も高いこの中で最も平均保険料が高いパターンは、共働き(妻はフルタイム)です。収入が上がるほど支出できる保険料も上がります。一方で、夫就労・妻無職のパターンは最も平均保険料が低くなっていますが、年収に占める保険料の割合は最も高いと考えられます。その理由は、共働き世帯に比べて貯蓄が少ない分、いざというときのリスクを保険で備える必要があるためです。年齢ごとに見ると50代共働き世帯の保険料がピーク30代から60代までを比較すると、30代から50代にかけて平均保険料は上がり、60代になると下がることが分かります。夫が正社員ではない場合の保険料は?夫が自営業やフリーランスなどの会社員ではない場合、年収の低い人の保険料は平均より少なく、年収に占める割合は高いと考えられます。また、年齢によって保険料も上がるため、30代から50代にかけて年間平均支払保険料は上がり、60代には下がるでしょう。子どもがおらず夫婦だけの2人世帯の場合は、最低限の保険だけのほうが合理的であるため、全体平均よりも保険料は下がります。保険料の適性額を決めるポイント2つここまで保険料の平均額をさまざまな視点で見てきました。平均額を参考に、保険料の適性額の決め方をお伝えします。適性額を決めるときは、以下のことを意識しましょう。どんなリスクに備えたいかいざというときにどれほどの保険金を受け取りたいかそれぞれ説明します。[adsense_middle]ポイント①備えるべきリスクを明確にする保険料の適正額を決める1つ目のポイントは、自分がどんなリスクに備えたいかを明確にしておくことです。何をリスクと捉えるかは年代や収入、本人の価値観などによって異なります。例えば、自分がケガ・入院・死亡などしたとき、誰がどのように困るのかを考えることがオススメです。具体例を用いて説明します。事例1以下のような事例を検討します。家族構成:夫(会社員、月収30万円)、妻(自営業、月収15万円)毎月の生活費:25万円貯金:180万円ある日、夫が病気になって入院し、しばらく自宅療養することになりました。入院・手術の医療費は高額療養費制度で負担を軽減。加えて、働けない間は傷病手当金で、夫の収入の約2/3(約23万円)を受け取ります。このとき考えられるリスクと、リスクに備える方法を検討してみましょう。考えられるリスクについてこの事例を見ると、貯金や生活費を切り詰めれば生活していくことは可能であるように感じます。しかし、もしこの夫婦が住宅購入のために毎月一定額を貯金していた場合は、将来設計に支障が出るでしょう。もしくは、夫の看病のために妻が仕事をする時間を減らした場合は、生活に支障がでる可能性もあります。そのため、考えられるリスクは生活費と将来への備えが不足することです。リスクにどう備えるかこの事例でリスク回避するための保険の例を紹介します。医療保険就業不能保険医療保険は入院日数に応じた給付金や、手術を受けた場合に一時金がもらえます。就業不能保険は働けなくなったときに保険金を受け取れます。しかし保険が必要なのは、この事例をリスクと捉える人のみです。もし多くの貯金があったり、生活費が少ない人にとっては、この事例をリスクと判断しないでしょう。その場合、保険は不必要です。事例2次に、以下のような事例を検討します。家族構成:夫(会社員、月収35万円)、妻(パート、月収10万円)、子ども(1歳半)毎月の生活費:35万円貯金:475万円ある日、夫が事故で亡くなったとします。このときに考えられるリスクと、リスクに備える方法を検討してみましょう。考えられるリスクについて夫が事故で亡くなれば、主な収入がなくなるため、家計が厳しくなります。子どもはまだ1歳半であり、就学修了まで教育費・進学費が必要になるでしょう。そのため、生活費・教育費などの不足がリスクとなってきます。一方で、もし住宅ローンなどを組んでいて団体信用生命保険などに加入していれば、ローンの返済義務はなくなります。そのため、住宅ローンはリスクにはなりません。リスクにどう備えるかこの事例でリスク回避するための保険の例を紹介します。定期保険収入保障保険いずれも、保険金を受け取るのは家族が死亡ないしは高度障害になったときです。定期保険の場合は保険金給付が毎月一定額で、収入保障保険の場合は何千万円といった額の保険金を一括で受け取ります。もしも、夫婦のいずれかの親族が裕福であり、夫が亡くなった後に定期的な支援が期待できる場合などは、保険の加入でリスクに備える必要はありません。リスクを明確にする目的は、人によってリスクの許容度が異なるため人によってリスクの許容度は異なります。例えば世帯主が病気・ケガなどしても、十分な貯蓄があれば生活費が不足することもありません。一方で、貯蓄が少ない人は、生活費をカバーする目的で保険に入る必要があります。このように、人によってリスクの許容度には差があるため、何をリスクと感じるのかを明確にしなくてはなりません。ポイント②いざというときに必要な保険金額を決める保険料の適正額を決める2つ目のポイントは、いざというときに受け取りたい保険金を決めておくことです。先ほどの事例をもとに必要な保険料を考えてみましょう。事例1事例1では、夫が病気になって入院した世帯を例に取り上げました。入院時に保険で受け取れる入院給付金は1万円、1.5万円などと選択できます。貯金が十分ではなく、夫に何かあったときの生活費が不安だという方は、給付金額を多めに設定しましょう。事例2事例2では、夫が事故で亡くなった世帯を例に取り上げました。夫が亡くなった場合の支出と収入を考えてみます。収入額だけで支出額がカバーできなくなった分を、生命保険金で補う形にすれば、毎月の保険料が自ずと決まります。いざというときの収支バランスを考え、不足分を保険金で補おう必要な保険金を決めるときは、いざというときの支出に対して、いくら収入が不足しているかを考えましょう。収支バランスを考えて、補うべき不足分を保険金でカバーすればよいのです。あとはその保険金を受け取るために、いくら保険料を払えばよいのかを明確にします。保険料の総額が家計を圧迫しないよう注意!保険料の適正額を決めるときは、保険料の総額が家庭を圧迫しないように注意しましょう。あくまでも保険は、リスクを回避するために入るもの。保険料のために家計が圧迫されては本末転倒です。そのようなことがないように、注意する必要があります。年間の保険料が家庭にとって負担ではないかどうか年間の保険料総額が家庭の負担にならないようにします。保険料を払いすぎていないかどうか確認するには、自身の年齢・年収などの平均を参考にするとよいでしょう。毎月の掛け金の設定に無理はないかどうか年間総額だけではなく、毎月の掛け金が大きすぎないかどうかも意識しましょう。生命保険料の平均と保険料の適正額に関するまとめ生命保険料の月額平均額は約3万2千円です。しかし保険料の額は世帯・年代・年収・就労形態によって変わるので、あくまで参考程度と捉えましょう。適正額を決めるためには、自分にとってのリスクを明確にしたり、いざというときに必要な金額を把握したりするなどのポイントがあります。ポイントを押さえて、自分に合った保険料を設定しましょう。
2020年07月01日家の購入を考えている人のほとんどは、自分が住宅ローンに通るのか不安に思っているのではないでしょうか。住宅ローンの審査項目には年収や属性、個人信用情報がありますが、自信のある方でもひょんなことを理由に審査に落ちてしまうこともあります。本記事では、こうした住宅ローンの審査項目について解説するとともに、審査に通りやすい金融機関のご紹介や、万が一審査に落ちてしまったときの対応についてお伝えしていきたいと思います。住宅ローンの融資の審査項目とは住宅ローンの融資を受けるには金融機関の審査をパスする必要がありますが、住宅ローン審査ではどのような点が見られるのでしょうか?住宅ローンの審査は多岐に渡りますし、金融機関によって若干の違いがあることもありますが、一般的には以下のような点を重点的にチェックされます。年収属性個人信用情報なお、住宅ローンの審査には仮審査と本審査がありますが、その両方において上記審査項目は重要視されやすいです。それぞれ見ていきましょう。年収住宅ローンの返済は、借入する人の収入からなされるため、年収がどのくらいあるかによって住宅ローンを融資していいのかが判断されます。なお、ここでいう年収とは税金や社会保険料を差し引かれる前の総支給額のことで、審査時には勤め先の会社から発行される源泉徴収票や役所で取得できる所得証明書などを提出する必要があります。年収がいくらあれば審査で有利になりやすいかは金融機関によって異なります。年収100万円以上あることを条件としていたり、中には暗黙のルールで年収400万円や500万円ないと審査に通らなかったりといった金融機関もあります。基本的には、年収が高ければ高い程審査に通りやすくなります。属性属性とは、勤め先の企業の財務状況などを見られるほか、「一部上場の会社員」なのか「中小企業の会社員」なのか、もしくは「公務員」「医者などの資格職」なのかといったことが見られます。一般的に、公務員や医者など難関資格の資格職の方は属性を高く評価されます。公務員の場合、よほどのことがない限り職を失うことがないため、安定してローンを支払っていけると判断されます。また、医者などの資格職の方は、仮に今の職場を辞めたとしても、次の職場で同じ内容の仕事をして、また同程度の収入を得られる可能性が高いため、高く評価されるのです。会社員の場合はどんなところに勤めているかが見られるほか、自営業の方の場合は不安定な仕事として低い評価となってしまいやすいです。なお、自営業や中小企業の社長や取締役といった方の場合、地方銀行や信用金庫など、中小企業や自営業者を中心に融資を行う金融機関のほうが審査に通りやすくなります。個人信用情報個人信用情報とは、過去に延滞や滞納をしていないかを確認できる情報のことで、「全銀協」や「CIC」、「JICC」といった個人信用情報機関のデータを見られることになります。基本的に、過去に延滞や滞納歴がある場合には、それがたとえ1回きりかつ理由があるような場合でも、住宅ローンの審査には非常に悪い影響が及びます。問答無用で否決となってしまうことも珍しくありません。過去に延滞や滞納をした経験がある方は、審査時にそのことを隠したとしても、個人信用情報を見られてしまえばすぐに分かってしまいます。思い当たりのある方は、自分で上記の機関に開示依頼書を提出することで、個人信用情報を見ることもできます。金融機関によっては、年収や属性がいい場合には、1度くらいの延滞であれば融資をしてくれる可能性もあります。まずは相談してみるとよいでしょう。その他の審査項目上記以外にも、さまざまなことが審査されます。例えば、対象の物件の築年数や土地の評価額なども審査対象となります。仮に、借入人が住宅ローンを滞納した場合には、金融機関は対象の住宅を差し押さえ、競売にかけて残債を回収するため、土地や建物の評価額が低いと融資できないと判断されることもあるのです。年収や属性、個人信用情報と比べると重要度が低いことも少なくありませんが、審査時にはこうしたことが総合的に判断されて審査結果が出ます。[adsense_middle]審査金利と返済負担率を押さえておこう住宅ローン審査時には借入人の年収が見られますが、年収によっては「条件付き承認」といったこともあります。例えば、「3,000万円で審査申込した結果が、2,500万円の条件付き承認だった」ということもあるのです。こうした、住宅ローンの借入額については、金融機関が個別に設定する審査金利と返済負担率を知っておくと便利です。返済負担率とは返済負担率とは、「住宅ローンやその他ローンを含めた返済額が、年収の内何割を占めるか」を示すものです。例えば、年収400万円の方が、住宅ローンで毎月8万円、自動車ローンで毎月2万円支払っている場合の返済負担率は以下のように計算されます。{(8万円/月+2万円/月)×12カ月}÷400万円×100(%)=30%住宅ローン審査時には、金融機関ごとに設定された返済負担率の上限を超えていないかが見られます。基本的には、返済負担率を超える額の借入はできません。住宅ローンの支払いだけでなく、自動車ローンなどそのほかのローンも含むことに注意が必要です。特に大学入学時に借りた奨学金などが住宅ローン審査に響くようなケースは少なくありません。なお、住宅ローン以外のローンについては、住宅ローン借入時に完済できるのであれば、その分を差し引いて返済負担率を計算することも可能です。例:先ほどの例で、毎月2万円の自動車ローンを借入時に完済する場合(8万円/月×12カ月)÷400万円×100(%)=24%先述の通り、返済負担率の上限は金融機関ごとに異なりますが、例えば、住宅金融支援機構のフラット35の場合、以下のように設定されています。つまり、先程計算した2例についてフラット35で借入する場合、年収が400万円あるため、返済負担率の上限は35%となり、いずれも返済負担率の条件を満たすことになります。審査金利とは返済負担率の計算では住宅ローンの毎月返済額を用いますが、この毎月返済額の計算は、実際の借入金利ではなく審査金利と呼ばれる金利が利用されます。審査金利は金融機関によって異なりますが、3%程度に設定されていることが多いです。例えば、3,000万円を借入期間35年で借りるにあたり、借入金利1%で計算するとその返済額はおおよそ8.5万円/月となりますが、仮に審査金利が3%の金融機関であれば、審査上の毎月返済額は毎月おおよそ11.5万円/月となってしまいます。この通り、審査金利を高く設定されている金融機関だと、年収に対して十分な融資可能額の提示を受けにくくなってしまう点に注意が必要です。なお、住宅金融支援機構のフラット35の場合、審査金利は借入金利と同じ金利とされており、これゆえ年収に対して高額の借入をしやすくなっています。住宅ローンに通りやすいおすすめ金融機関ランキング住宅ローンの審査に通るか不安であれば、最初から審査に通りやすい金融機関を選ぶとよいでしょう。ここでは、住宅ローンに通りやすい金融機関と住宅ローンを3つご紹介していきます。第1位:(審査が甘い)ARUHI住宅ローン「フラット35」ARUHIは住宅ローン専門の金融機関で、特にフラット35の取扱いが多いです。フラット35はネット銀行から都市銀行、地方銀行までさまざまな金融機関で利用できますが、ARUHIの場合は自己資金が一定額以上ある場合に低い金利で借りられる制度があるなど、ほかの金融機関より充実した内容となっています。また、一般的な金融機関では、融資担当者は住宅ローン以外にも法人融資やそのほかの業務で忙しい中、住宅ローンの融資に取り組むこともあり、場合によっては担当者に知識や経験が不足していることもあります。一方、ARUHIの場合は住宅ローン専門の金融機関のため、スタッフは住宅ローンに関する知識が豊富で、条件が厳しい場合でも審査に通るためのアドバイスをもらえたり、積極的に取り組んでもらえたりといったメリットがあります。第2位:(審査が緩い傾向)楽天銀行住宅ローン「フラット35」楽天銀行は店舗を持たないネットバンクで、こちらもフラット35の取扱い実績が豊富です。フラット35は住宅金融支援機構の提供するローンであり、金融機関は事務手続きのみを行うという性質上、事務手数料が高く設定されていますが、楽天銀行はネットバンクということもあり、事務手数料は低く設定されています。本記事で解説したとおり、フラット35は審査金利の問題などからほかの金融機関と比べ、年収に対して高い融資額の承認を得やすいという特徴があります。第3位:(借りやすい)ジャパンネット銀行「住宅ローン」ジャパンネット銀行は楽天銀行と同じくネットバンクですが、こちらはフラット35ではなく変動金利や10年固定金利などが人気です。ネットバンクということもあって審査時の申込をスムーズにすることができ、かつ2019年7月末にできたばかりの住宅ローンサービスということもあり、積極的に融資を実施しています。審査に通りやすいこと以外にも、業界最低水準の金利設定や団信の補償内容が豊富であることなど、魅力的な商品となっています。[adsense_middle]住宅ローン審査に落ちたときの対応いざ住宅ローンの審査に落ちてしまった場合、もう住宅を購入することは諦めないといけないのでしょうか?ここでは、住宅ローン審査に落ちたときの対応についてお伝えしていきたいと思います。別の金融機関で承認を得られることもある実は、ある金融機関で落ちたとしても別の金融機関で承認を得られるということは珍しいことではありません。これは、金融機関ごとに審査基準が異なるからです。一般的には審査基準が緩いといわれている金融機関の住宅ローン審査は否決となったのにも関わらず、その逆に、一般的に審査基準が厳しいといわれている金融機関の住宅ローン審査で承認を得られるといったこともあります。1つの金融機関で否決となったからといって諦めることなく、なぜ審査で承認を得られなくなったかを分析し、審査の承認を得られる金融機関を探すようにするとよいでしょう。年収を上げてから再挑戦する複数の金融機関で審査を申し込んでみたものの、全て審査が否決となってしまうようなケースもあります。こうしたケースでは、なぜ否決となったかの原因を分析して再挑戦するとよいでしょう。例えば、年収が原因で否決となったのであれば、年収を上げることを考えてみましょう。「転職して年収を上げる」ことはそう簡単なことではありませんが、有効な解決策ではあります。そのほか、例えば営業職など業績によって給与が異なる職種の方は、高い年収を得られた年に審査申込することで承認を得られる可能性が高まるでしょう(ただし、年毎の年収の変動が大きい場合には複数年の平均を取るなどの処置が取られることもあります)。また、ご両親と親子リレーローンを組んだり、配偶者の方に連帯債務者になってもらったりして収入を合算する方法もあります。仮に夫が年収400万円、妻が年収200万円だった場合、合算すると600万円になります。個人信用情報をきれいにしてから再挑戦する個人信用情報が原因で否決となった場合には、基本的にほかの金融機関に審査申込しても審査で承認を得ることは難しいでしょう。こうした場合には、個人信用情報上の延滞や滞納のデータが消えるのを待ってから再度挑戦するという方法があります。例えば、自己破産した場合でも5年~10年経過すれば個人信用情報上のデータは削除されます。データがなくなってから住宅ローンの審査を提出したら、特に問題なく審査の承認を得られたという方は少なくありません。また、個人信用情報にキズがある方の場合、配偶者やそのご両親を頼るといった方法もあります。例えば、夫の個人信用情報に滞納歴があるようなケースで、妻の年収が200万円、妻のお父様の年収が400万円あるようなケースでは、親子リレーローンを組んで年収600万円として審査に出すことができます。とはいえ、この場合、妻のご両親に夫の個人信用情報にキズがあることが伝わるといったことや、家の所有権を夫が持てないといったことに注意したうえで慎重に進める必要があるでしょう。通りやすい住宅ローンに関するまとめ住宅ローン審査について審査項目など基本的な内容をお伝えするとともに、通りやすい金融機関ベスト3をご紹介しました。住宅ローンの審査においては、フラット35が審査金利などの問題から借りやすいです。また、通りやすいといわれる金融機関の審査で否決となってしまった場合でも、別の金融機関で通ることもあるため、諦めずに再挑戦してみるとよいでしょう。住宅ローンの審査に通るか不安という方は本記事の内容を参考にされてみてください。
2020年06月29日緊急事態宣言が5月25日解除されしばらく経ちましたが、地域やご家庭によってコロナ以前の状況に近い方もいらっしゃる一方、状況が緊急事態宣言解除前とあまり変わらない方もいらっしゃると思います。今回は状況別の家計についての考え方と第2波に備える点をお伝えします。 家計がコロナ以前と比べて厳しくなった場合に取り組むこと家計が厳しくなることは、大きく分けると、収入が減った場合と支出が増えた場合に起こります。収入が減った場合と支出が増えた場合に主に取り組むことは以下のとおりです。 【1】収入が減った場合に取り組むこと①当面の生活費の貸付または給付の相談を社会福祉協議会等に相談する。②電気・ガス・水道・通信料金・住宅ローン等の支払猶予を各事業所に申請する。③税金、社会保険料の支払猶予を自治体、税務署、年金事務所等に相談する。④固定費(光熱費・通信費等のプラン変更、生命保険・月額料金等の掛かるサービスの見直し等)が削減できないか確認する。⑤不用品の売却やストックの多い食品や日用品の在庫調整をする。⑥失業の場合は、雇用保険(いわゆる失業保険)の申請と就職活動を検討する。⑦個人事業主・フリーランスの場合は、持続化給付金の申請や特別貸付(日本政策金融公庫、各金融機関等)を検討する。 【2】支出が増えた場合①一過性の場合は、特別定額給付金や貯蓄等を充て、早いうちにコロナ以前の収支になるよう調整する②収支が赤字で、継続しそうな場合は固定費の削減や不用品の売却を検討する。③食費、日用品、お小遣い等の固定費以外の支出を見直す。家計がコロナ以前と変わらない場合でも取り組むこと現時点では家計の収支が変わらない場合やほとんど変わらない場合は、貸付や支払猶予は検討しなくても良いのですが、固定費の削減や日々の節約はできることから始める機会にされると良いでしょう。コロナ以前の経済活動に戻るまでしばらくかかる可能性が高いため、手持ちの現金・貯金は多めに持っておくことに越したことはありません。特別定額給付金も本来の目的は、新型コロナウイルス感染症に対する家計への支援ですので、欲しいものを買うというよりは、家計の赤字や支出の補填や第2波に備えるための資金とされることをおすすめします。 第2波やコロナ克服前に備えること緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新型コロナウイルスそのものが無くなったわけではありません。専門家や各報道が感染拡大の第2波の懸念もありますので、新型コロナウイルスの影響がワクチンや治療薬の登場で終息するまでは、支出はなるべく少なめにすることをお勧めします。上記でもお伝えしましたが、手持ちの現金・貯金はなるべく多い方が、経済や家計の落ち込みには有効です。なお、マスクや消毒用アルコール、手洗い用のハンドソープ等は地域によっては、販売しているところも増えてきました。買い占める必要はありませんが、緊急事態宣言中には購入も難しかったので、ある程度のストックはしておきましょう。 新型コロナウイルス感染症の経済的影響は、ワクチンや治療薬が登場して克服できたとしても、しばらくは続きます。働き方や家計は今までと異なる方も少なくないかもしれません。そのためにも家計をできるだけ工夫して今後に備えましょう。 監修者・著者:ファイナンシャルプランナー 大野高志1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®(日本FP協会認定)。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。予備校チューター、地方公務員、金融機関勤務を経て2011年に独立。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等 多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。
2020年06月25日こんにちは、婚活FP山本です。意外に知らない人もいるのですが、実は医療費の支払いには「限度額」があります。知らない人は病気やケガとは無縁の人生を歩んでいるでしょうが、病気やケガは誰がいつなっても不思議はありません。誰かが教えてくれるとは限りませんから、自分でも相応に正しく知っておくことが大切です。そこで今回は、医療費の限度額である高額療養費制度について詳しくお伝えします。あなたの人生に、お役立て下さいませ。医療費の自己負担額には一応の限度額がある!まずは、医療費の限度額についての基本をお伝えします。結論からいえば、医療費の自己負担額には「一応の」限度額があるのが実情です。「一応の」というのは、この限度額とは後述する健康保険などの「高額療養費制度」が使える範囲に限っての話という意味合いになります。簡単にいえば、「保険の対象にならない費用」については青天井で必要です。とはいえ、保険の対象にさえなれば限度額がありますから、かなり嬉しい制度といえます。高額な医療費が気になって病院へ行くことを控えていた方には、ぜひ利用してほしい制度です。ただし、医者によっては「あえて保険適用外の治療や手術」を勧めてくることもあります。その意図はさまざまですが、経済的に厳しい場合は、その旨を伝えて保険適用の範囲で治療してもらいましょう。自動的には免除されず、社会保険上の手続きが必要!たとえ限度額を超える医療費が発生したとしても、差額が自動的に減額・免除されるわけではありません。差額を減額・免除してほしい場合は、社会保険上の手続きが必要です。このような制度があることを知らなかった方は、それだけ損をすることになります。本当に今は、「知っているか否か」で大きく違ってくる時代です。限度額を超えるほどの大金であれば、なおさらといえます。まずはしっかりと、このような制度があるということを知っておきましょう。医療費の限度額とは「高額療養費制度」のこと!次に、医療費の限度額である「高額療養費制度」についてお伝えします。細かくは健康保険と国民健康保険で少し違いますが、理屈はほぼ同じです。健康保険の場合は、以下の表で計算した金額が「自己負担限度額」になり、差額についてはあとで戻ってくることになります。なお、総医療費とは「保険適用される診察費用の10割総額」のことです。そして上記の表からも分かる通り、おおむね医療費の限度額とは「25万円少々」になり、収入が少ないほどに限度額もさらに小さくなります。この限度額を見ても「十分に高い」と感じる方もいるかもしれませんが、制度がなければ青天井で医療費が必要なのですから、嬉しいはずです。医療費が高額な場合は、ぜひ高額療養費制度を活用していきましょう。上限金額を超えた部分は手続きすれば戻ってくるあくまで高額療養費制度そのものは、「自己負担限度額を超えて支払った医療費を、あとで清算する」という制度になります。つまり、病院での窓口では普通に全額を支払うことが必要です。そして、上限金額を超えた部分は手続きすれば戻ってくることになります。この制度だけでは、結局は大金を動かす必要があるという点には注意が必要です。貯金がなくて大金を動かせない……という方は、並行的に後述するさらなる制度の活用をしていきましょう。申請方法は健康保険組合や役所に申請書を送るだけ今度は、高額療養費制度の申請方法についてお伝えします。この申請方法は実に簡単で、健康保険組合や役所に「高額療養費支給申請書」を送るだけです。なお、基本的に「年収区分や本人を確認できる書類(時には病院の領収書も)」も合わせて添付することになります。たったこれだけで、限度額を超えた医療費が返ってくるのが高額療養費制度です。強いていえば、高額療養費は「診察を受けた月の翌月の初日から2年」で時効になります。この制度を知っていれば2年も放置することはないでしょうが、一応の注意は必要です。また逆にいえば、過去2年以内に制度の対象になるような医療費を支払ったことがあれば、今から申請することもできます。ちょっと過去を思い返してみましょう。申請してから3ヶ月程度もかかる点がネック高額療養費制度のネックは、「申請してから支払いまで3ヶ月程度もかかる」という点です。最終的には戻ってくるのですから嬉しい限りではありますが、中には「そんなに待てない」という方もいるかもしれませんね。別の急な支払いが発生することも往々にしてあります。そのような場合は、後述する「高額療養費貸付制度」が使えるかもしれません。ひとまず、このような時間への感覚を持って、高額療養費制度を使っていきましょう。「高額療養費貸付制度」なら8割相当を無利子で借りられる今度は、先ほど触れた「高額療養費貸付制度」についてお伝えします。すでにお伝えした通り、高額療養費制度は極めて嬉しい制度ではあるものの、「支払いまでに3ヶ月程度もかかる」という点がネックです。このネックを穴埋めするためにあるのが、高額療養費貸付制度になります。この高額療養費貸付制度とは、高額療養費の支給見込み額の8割相当を無利子で借りられる制度です。利子がいらない訳ですから、実質的に「お金を受け取れる時期を早められる」といえます。ただし、この制度も利用するには別の申込書が必要ですし、振り込みに2~3週間はかかる点には注意が必要です。また、返済は高額療養費との相殺になりますが、高額療養費のほうが少ない場合は差額を返納しなければなりません。ちょっと注意も必要ですが、必要に応じて利用してみましょう。特に入院・手術をするときには健康保険組合に確認しておこう一般的に、高額な医療費が必要になるのは「入院や手術をするとき」です。一方で、健康保険組合などは組織によって少しずつ違いがあります。「高額療養費制度がない」などの大掛かりな違いはないでしょうが、それでもあとで「想像と違った」となれば大変です。このため特に入院や手術をするときには、事前に健康保険組合などに確認をしておいたほうが無難といえます。後述する「限度額適用認定証」の件もあるのでなおさらです。ぜひ賢く立ち回りましょう。[adsense_middle]合わせて知っておきたい「限度額適用認定証」とは?ここからは、高額療養費制度に関係する補足情報についてお伝えします。まずは、「限度額適用認定証」についてです。高額療養費制度は、「あとで清算する」という制度なので、一旦は大金が必要という点がネックでした。この点を解消するのが限度額適用認定証です。この限度額適用認定証とは、簡単にいえば「病院での支払いそのものが高額療養費制度の限度額までになる」というものになります。つまり、一旦は必要だった大金が不要になるという証書です。貯金が乏しいという方には、極めて嬉しい証書といえるのではないでしょうか。この認定証を手に入れる方法は、高額療養費制度の申請と同じく、健康保険組合や役所に「限度額適用認定申請書」を送るだけです。ただし、すでに支払った医療費には適用できません。入院や手術を受ける前に余裕を持って、この限度額適用認定証を手に入れましょう。窓口で保険証と一緒に提出するだけ!限度額適用認定証の使い方は、病院の窓口で保険証と一緒に提出するだけです。これだけで、あとは病院のほうで限度額以内の支払いになるよう計算してくれます。またこの認定証を使った場合は、すでに限度額以上の支払いがなくなった訳ですから、高額療養費の申請も不要です。強いて言えば、「病院側がこの認定証の存在を知らない」という可能性があります。そのような場合は事情を説明しつつ、健康保険組合などに確認の連絡をしてもらい、対処してもらいましょう。自己負担額は個人単位のほか世帯合算もでき、多数該当もある次に、高額療養費制度の応用についてお伝えします。そもそも高額療養費制度上の療養費とは、「同一月」の医療費の総額です。この医療費の総額というのは、一人暮らしの方なら個人単位になりますが、家族がいる場合は世帯で合算して計算することもできます。ただし、70歳未満の方の合算できる医療費は、2万1000円以上のものだけです。また高額療養費制度には、「多数該当」という制度も用意されています。これは診察を受けた月以前の一年間に、3回以上の高額療養費を受けた場合、4回目からはさらに自己負担限度額が下がるという制度です。病気がちな人にとっては、実に嬉しい朗報ではないでしょうか。ちなみに多数該当は、先ほどの限度額適用認定証を使って限度額を負担した場合もカウントされます。それほど病院に行くようなケースは避けたいところですが、行かなければならなくなったら、せめて医療費については抑えられるよう努めていきましょう。健康保険と国民健康保険で少し違うが、どちらでも使える高額療養費制度は、健康保険にも国民健康保険にもある制度です。限度額適用認定証や多数該当なども同様になります。自己負担限度額の計算式もほぼ同じですが、「被保険者の所得区分」が少し違う点には注意が必要です。一方で、どちらにも高額療養費制度はあるからこそ、利用できるときはしっかり利用することが大切といえます。長い人生、ほかのことにもお金は必要です。使えるときは、ありがたく制度を使わせてもらいましょう。ついでに知っておきたい「高額介護合算療養費」とは?今度は、高額療養費制度と似て非なる「高額介護合算療養費制度」についてお伝えします。高額介護合算療養費制度とは、簡単にいえば「医療保険とともに介護保険も使っている場合の自己負担限度額を定めた制度」です。要件に当てはまれば、高額療養費制度と同じくあとで費用が返ってきます。なお、その肝心の要件とは健康保険なら以下のとおりです。医療費用と介護費用を合算した自己負担額が以下の限度額より高ければ、差額をあとで清算してもらえます。ただし、高額療養費制度とは違って「年額で」です。上記の自己負担額とは、高額療養費制度や何らかの助成制度で給付を受けた場合、それらを差し引いて計算します。正味の自己負担額が世帯として苦しいときには、ぜひ利用しましょう。比較的新しい制度なので知らない人も多いかもこの高額介護合算療養費制度で計算する一年とは、基本的に「8月1日から翌7月31日」です。またこの制度は、平成18年の制度改定で始まったので、比較的新しい制度といえます。もしかしたら、知らずに使っていない方も相応にいるかもしれません。高額療養費制度と同じく、自動的に限度額が適用されるわけではないからこそ、しっかり知ったうえでの手続きが必要です。使えそうな方は、まずは健康保険組合などに相談してみましょう。[adsense_middle]保険料を滞納している方は、それも含めて相談しよう最後に、国民健康保険について大切なことをお伝えします。会社員が加入する健康保険なら、加入も保険料の納付も強制です。しかし国民健康保険の場合、厚生労働省の2018年度調査によると、実に対象世帯の約15%、約269万もの世帯が保険料を滞納しています。保険料を滞納したままでは、高額療養費制度が使えないどころか、10割負担になるかもしれません。一般的に保険料を滞納する人は、非正規労働などで保険料を支払うのが困難なことが多いですが、だからといって支払わないと最終的に困るのは自分自身です。どうしても保険料を支払うのが困難だったり、保険料を滞納したりしている人は、高額療養費制度と同じく「まずは相談する」ことが大切といえます。救済制度がある可能性もありますから、しっかり自発的に動きましょう。「何もしない人」が一番損をする社会!高額療養費制度もそうですが、知らなければ使えません。そして知るためには、自分で調べたり、誰かに相談したりする必要があります。今は、「何もしない人」が一番損をする社会です。自発的な行動は、この情報化社会に必須といえます。お金がなければ生活できませんが、お金を稼ぐ労働には「健康」が必要です。その健康を維持するための「国民健康保険」の維持にも、今後は気を使いましょう。医療費の限度額は「教えてもらえるとは限らない」日本は国民皆保険制度があり、そして医療費の自己負担も高額療養費制度によって限度額があります。ただし、自動的に限度額に抑えてもらえるわけではなく、病院などから教えてもらえるとも限りません。知っているか否かだけで大違いですから、ぜひこの機に高額療養費制度のことを知っておきましょう。
2020年06月25日「新たな年金改革法が成立し、’22年の4月からは段階的に制度が変わっていきます。年金を損なく受け取るには、これまで以上に働き方や受給開始のタイミングが重要となるでしょう」こう語るのは“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾さん。パート主婦が注目すべき改革の内容はおもに2つあるという。1つ目は、パートを代表とする短時間労働者の厚生年金適用拡大だ。「これまでの厚生年金の加入条件は、労働時間が週20時間以上、月収8万8,000円(年収106万円)以上、企業規模が従業員501人以上などでしたが、段階的に企業規模の条件を緩めることになりました」具体的には、’22年10月に従業員数101人以上に、’24年10月には従業員数51人以上に緩和される予定。最終的に、約65万人が新たに加入するようになると、社会保障審議会は試算している。加入で、まず大きな影響を受けるのは、パートの手取り額だ。「月収8万8,000円だと、新たに厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料がかかるようになり、概算ですが、手取りは月1万3,000円ほど減ります」こう聞くと減収ばかりに目がいってしまう。ただ、北村さんはメリットも考慮すべきだと語る。「将来、老齢基礎年金に厚生年金を上乗せできるのです。公的年金の特徴は亡くなるまでもらえること。“長生きリスク”を考慮すると、もらえる年金額を増やすことは重要です」上乗せされる厚生年金の目安は、北村式計算法によると《年収の百万の位の数字×5,500円×勤続年数》。たとえば、55歳のパート主婦が10年間、年収106万円で働いたとすると、《1.06×5,500円×10年》で、年間5万8,300円が、生涯にわたって上乗せされる計算になる。もうひとつ今回の改革で注目すべき点は、年金受給を開始する年齢の選択肢が増えたこと。「受給開始年齢は通常65歳ですが、現状でも最大で5年、開始時期を繰り上げ(早め)たり、繰り下げ(遅め)たりできます。繰り下げた場合、1カ月ごとに年金は0.7%増額(最低1年以上繰り下げなければならない)。最大で42%増えますが、今回の改革で繰り下げの上限が、’22年4月からは10年となり、最大で84%増額できるようになります」年金を損なく受け取るには、こうした厚生年金による上乗せや繰り下げ受給をうまく活用することが重要になってくる。そこで、10年間、年収106万円のパートを続けた主婦が、平均寿命の87歳で亡くなる場合、何歳で年金を受給し始めると、得するのかをシミュレーションしたーー(ブレイン社会保険労務士法人への取材をもとに編集部が概算。年収は106万円、厚生年金加入期間は10年とし、女性の平均寿命である87歳まで生存すると想定した。年金の内訳は基礎年金が年間78万1,700円、厚生年金の上乗せ額が年間5万8,300円。パート期間中の社会保険料は10年間の厚生年金保険料や健康保険料などの総額である)。【A】厚生年金なし、65歳から受給受給率:100%年金額(年間):78万1,700円87歳までに受け取る総年金額:1719万7,400円パート期間中の社会保険料:0円保険料を引いた総年金額:1,719万7,400円【A】と比較した場合の損益:0円87歳時点での受給年金総額は約1,700万円。このケースを基準にして以降は損得を計算する。【B】厚生年金あり、65歳から受給受給率:100%年金額(年間):84万円87歳までに受け取る総年金額:1,848万円パート期間中の社会保険料:158万1,840円保険料を引いた総年金額:1,689万8,160円【A】と比較した場合の損益:▲29万9,240円厚生年金による上乗せで、【A】に比べて、87歳までにもらう年金総額は約128万円多い。だが、前述のようにパート期間中は社会保険料の支払いが発生。その金額を差し引くと約30万円の赤字に。収支がプラスになるのは93歳以降だ。【C】厚生年金あり、70歳から受給受給率:142%年金額(年間):119万2,800円87歳までに受け取る総年金額:2,027万7,600円パート期間中の社会保険料:158万1,840円保険料を引いた総年金額:1,869万5,760円【A】と比較した場合の損益:149万8,360円繰り下げにより年金額は42%増額。パート期間の各保険料を差し引いても、87歳時点では【A】より約150万円の黒字となり、長生きするほど黒字額は増えていく。【D】厚生年金あり、75歳から受給受給率:184%年金額(年間):154万5,600円87歳までに受け取る総年金額:1854万7,200円パート期間中の社会保険料:158万1,840円保険料を引いた総年金額:1,696万5,360円【A】と比較した場合の損益:▲23万2,040円84%増額されるものの、受け取れる期間は12年と短く、結果的に【A】と比べて約23万円の赤字。翌年の88歳以降からはプラスとなる。「シミュレーションだと改革後は、会社員の夫は65歳から受給し、厚生年金に加入のパート妻は70歳まで繰り下げるのが、ベストでした。今回の制度改革では、“75歳まで繰り下げると84%も増額”が強調されますが、目先の数字に惑わされずに、平均寿命や健康寿命を考慮して年金受給計画を立てましょう」年金財政悪化により次々に改革が打ち出される。柔軟に対応して、損なく年金を受け取ろう。「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載
2020年06月25日会社形態には4種類あるのはご存知でしょうか。最もよく知られているのが株式会社ですが、それ以外にも合同会社、合資会社、合名会社があります。今回は合同会社にフォーカスし、合同会社とは何かについて解説するとともに、設立手続きの流れについて、さらに合同会社を設立するメリット・デメリットを解説していきます。合同会社(LLC:Limited Liability Company)とは?合同会社は2006年の会社法改正により設立できるようになった会社形態のひとつです。合同会社は、会社に出資した人がそのまま経営者になるという特徴を持ち、その点においては「合資会社」や「合名会社」と似た点を持っています。ただし、合同会社の社員(経営者)は合資会社や合名会社と違い、有限責任社員のみで構成されています。つまり、合同会社の社員は、負債を抱えて会社が倒産した際など、自分が出資した金額以上の負債に対して責任を負う必要はありません。合同会社は新しい会社形態であり、まだ認知度も低いと言えますが、昨今その数は徐々に増えつつあります。アマゾン・ジャパン合同会社やアップル・ジャパン合同会社、合同会社西友など名の知れた合同会社が存在するのも事実です。合同会社と株式会社の違い合同会社と株式会社の違いは、「所有」と「経営」が分離されているかという点にあります。つまり、株式会社では出資者(株主)が会社の所有者であり、経営者は出資者(株主)から会社の経営を任された人とされています。株式会社は所有と経営が分離されていて、株式会社の経営者は、株主の意向に沿って経営を行う必要があります。一方、合同会社は出資者がそのまま経営者となり、出資者と経営者は同じ人になります。したがって、合同会社では出資者だけで経営方針や利益配分を決めることができるので、自由度が高い会社経営ができることになります。合同会社の作り方・設立手続きの方法や流れそれでは、合同会社の設立手順について見ていきましょう。(1)合同会社の設立方法・手順作成しなければならない書類や一部の手順が異なりますが、「株式会社」も「合同会社」もおおまかな流れは同じです。会社の基本的事項を決める定款の作成定款の認証(株式会社のみ、合同会社は不要)資本金の払い込み登記申請書類の作成登記申請会社設立後の各種行政などへの手続き①会社の基本的事項を決める会社名(商号)や本店所在地、事業目的、資本金額など会社の根幹となる基本的な事項を決めます。②定款の作成会社を設立するには、定款は必ず作成しなければならない重要書類となります。①で決定した基本的事項を定款記載事項として定款を作成します。定款の作成方法には「用紙」を使った紙媒体による方法と、PDFなどを使う方法(電子定款)との2通りあります。どちらの方法で作成しても構いませんが、紙媒体で作成した場合4万円の印紙代がかかるのに対し、電子定款で作成する場合は印紙代がかかりません。電子媒体で作成したほうが印紙代4万円お得になるかもしれませんが、電子定款は作成に手間がかかるうえ、専用の機器が必要になってくる場合もあり、結果的に紙媒体の場合よりも高くなってしまうこともあります。実際には、何度も作成するものではありませんので、紙媒体による定款を作成する人も多くいるのは確かです。③定款の認証(株式会社のみ、合同会社は不要)合同会社は株式会社よりもスピーディに設立手続きが行われるよう図られています。株式会社の場合は作成した定款について公証人の認証が必要ですが、合同会社は定款の認証は必要ありません。④資本金の払い込みまだ会社設立登記ができていませんので、この段階では合同会社の出資者代表の個人口座に、出資者全員が資本金額に相当する金額を振込みます。⑤登記申請書類の作成会社設立登記を行うため、法務局に提出する書類を作成します。登記申請書、登記すべき事項、定款、印鑑証明書など必要書類を作成します。⑥登記申請法務局(登記所)に⑤の登記申請書類を提出します。その際、登録免許税額として収入印紙(最低額6万円)が必要になります。そして、登記申請書を法務局に提出した日付が会社設立日になりますが、登記手続きが完了するまでは数日~2週間程度かかります。⑦会社設立後の各種行政などへの手続き登記手続きが完了したら、税務署、都道府県税事務所、市町村役場、社会保険関係(年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク)などに必要な手続きを行います。(2)合同会社の設立費用はいくら?合同会社の設立にかかる費用は、株式会社の場合よりも安くなっています。主な費用は以下のとおりです。・定款に貼る収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)・登録免許税が資本金の額に0.7%をかけた金額(資本金に0.7%をかけた金額が6万円に満たない場合は6万円)株式会社設立の際に必要な定款の認証代(約5万円)などは必要ありません。したがって、合同会社の設立費用は電子定款の場合ならば6万円から、そうでなければ10万円から設立することができます。(3)合同会社設立手続きに要する期間合同会社の設立には定款の認証がありません。つまり、その分早く手続きを進められるため、株式会社よりも設立にかかる期間は短くなります。会社設立にかかる期間(登記申請までの期間)の目安は、おおよそ1週間から2週間ではないでしょうか。もちろん、どれだけスムーズに手続きを進められるかにもよるため、3日で済むケースもあれば、1ヶ月近くかかるケースもあるでしょう。会社設立をスムーズに行うためには、事前に必要な手続きを把握しておくことが重要です。しっかり準備を整えてから手続きを行うことで、会社設立までの期間を短くすることができます。また、法務局に登記申請をした日が会社の設立日となりますが、登記が完了するまで1週間から2週間ほどかかります。実際に会社が活動し始めるのは登記が完了してからになることに注意してください。合同会社を設立するメリット・デメリットここからは、合同会社のメリットとデメリットについて、株式会社と比較して見ていきましょう。[adsense_middle](1)合同会社のメリット合同会社設立のメリットとしては、一般的に以下が挙げられます。設立費用を安く抑えられ、スピーディに設立手続きができる出資者全員の合意により、自由に会社運営を行える決算公告をしなくてもよい①設立費用を安く抑えられ、スピーディに設立手続きができる合同会社の大きなメリットとして、株式会社と比較して設立費用を安く抑えることができることが挙げられます。株式会社の設立に際しては、公証役場における「定款の認証」が必要ですが、合同会社の場合は「定款の認証」が不要です。この点において合同会社は設立手続きが簡略化され、スピーディに設立が行えます。また、定款認証にかかる手数料5万円の負担もありません。さらに、登記申請の際の「登録免許税」についても、株式会社の場合は課税額が最低15万円であるのに対し、合同会社では最低6万円と安く抑えられています。②出資者全員の合意により、自由に会社運営を行える株式会社においては、株式という概念が重要な意味を持ちます。株主の持つ株式数に応じた議決権によりすべてが決められるため、経営者が自由に会社の運営方針を決めることはできません。一方、合同会社では株式という概念がないため、出資者全員で会社の運営方針を自由に決めることができ、機動的な意思決定が行えます。③決算公告をしなくてもよい合同会社のメリットとして株式会社とは違い、決算公告をする必要はありません。株式会社は、毎決算において貸借対照表や損益計算書を官報や新聞、インターネットで決算を公表(決算広告)しなければなりません。決算公告を官報や新聞、インターネット上に掲載するには手間も費用がかかります。その手間や費用がかからないという点は合同会社のメリットといえます。ただし、以下の場合においては合同会社であっても官報に公告しなければなりません。資本金の減少吸収合併、吸収分割などの組織再編解散(2)合同会社設立のデメリット合同会社設立のデメリットとしては、一般的に以下が挙げられます。企業として社会的な信用度は低い社員(出資者)の退社によって、事業の継続に支障をきたすおそれがある①企業として社会的な信用度は低い合同会社は2006年の会社法改正で認められた比較的新しい会社形態といえます。したがって、認知度で言えばまだまだ低いといえます。また、設立手続きも簡素化され、簡単に設立できることや、決算公告の必要がないことも信用面では不利になるケースがあるでしょう。②社員(出資者)の退社によって、事業の継続に支障をきたすおそれがある合同会社は社員(出資者)と経営者が同じ人であるため、社員の退職に際して出資額の払い戻しをしなければなりません。社員の退社によって資金が流出(資本金が減少)することが考えられます。また、退社した社員の技術やノウハウが事業の核となっている場合には事業の継続そのものが難しくなる可能性もあります。合同会社設立に向いている人とは?個人事業主が節税を目的に法人化する場合や、許認可が必要な業種などですぐに法人格が必要な場合は、少ない費用でスピーディに設立できる合同会社がおすすめです。自らの技術やノウハウをもって、仲間同士で資金を集め、出資額にかかわらずメンバーそれぞれの得意分野を結集してビジネス展開したいと考える場合にも、合同会社の仕組みが合うでしょう。また、設備投資などに大きな資金を必要としない事業、たとえば、デザイナーやコンサルタントなど無形の技術やノウハウを武器とする事業の場合や、飲食や美容など、自分のブランド力を武器にビジネス展開していく事業など、資金調達や会社の知名度をあまり必要としない場合にも合同会社が向いていると考えられます。合同会社設立は自分で手続きする?専門家に依頼する?会社設立をする際、できるだけ費用を抑えるために自分で手続きするという人もいるでしょう。自力で会社設立を行うことはできます。ただし、会社設立には設立登記や定款認証、資本金の払い込みなど、法律に基づく手続きが必要になります。 法律の知識に乏しい人にとって、会社設立手続きはかなりの時間と労力がかかるでしょう。そうなると、手続きを代行してもらえる専門家の存在が必要になってきます。会社設立についての専門家としては、税理士や司法書士、行政書士が一般的です。これらの専門家はそれぞれ得意とする分野が異なるので、自分が必要とする内容によって、誰にどの手続きを依頼するかを決めましょう。それぞれに依頼する場合のメリット、デメリットについて見ていきましょう。[adsense_middle](1)司法書士に依頼する場合司法書士は登記業務の専門家です。法務局への登記申請は司法書士の独占業務なので、行政書士や税理士は行えません。実際に設立登記の申請をするには、ゼロから情報収集を始め、きちんと法律を理解して手続きを進めなければならず、かなりの時間と労力を要するでしょう。自分で会社を設立できるといっても、申請書類を不備なく作成するのは簡単なことではありません。会社設立までスムーズに短期間で行うためにも、自分でやるより司法書士に任せたほうが効率的なケースもあります。(2)行政書士に依頼する場合行政書士は行政書類の作成や認可申請の専門家です。設立登記は行えませんが、行政書士に依頼するメリットも多くあります。まず、定款の作成及び、認証手続きは行政書士の得意分野です。また、飲食業、介護事業、古物商、運送業、建設業など許認可が必要な業種で会社を起こす場合、行政書士ならそれらの申請を代行してもらえます。会社設立と一緒にお願いすることで、スムーズな会社設立が行えるでしょう。多くの行政書士が会社設立のサポートをHP上で謳っていますが、行政書士は書類の作成などを手伝ってくれる存在であり、法務局への登記書類の提出など自分でやらなければならない手続きもあることに注意してください。(3)税理士に頼む場合税理士は税金に関する専門家であり、会計や税務、決算に関するプロです。実際に依頼するのは会社を設立した後、事業を運営していくにあたり、会計記帳や決算、税務申告などにおいて税理士に依頼することになります。税金に関する相談ができることは司法書士と行政書士にはない魅力といえるでしょう。そして、会社設立を税理士に依頼するメリットは、設立後の顧問契約を前提に、設立に関するサポートを格安で依頼できるという点にあります。基本的にサポートしてくれる範囲は行政書士と同じとなります。法務局への申請手続きは代行してもらうことはできません。しかし、税理士は資金調達方法についても詳しいため、事業計画の策定や、事業の運転資金にどれくらい必要なのかといったところまで、税理士のサポートが受けられるのは大きなメリットといえるでしょう。合同会社の会社設立に関するまとめ今回は合同会社の設立手続きの流れや合同会社のメリット・デメリットについて解説しました。合同会社は新しい会社形態で、認知度も低いといえますが、費用も安くスピーディに設立できるというメリットから、徐々に合同会社の数は増えつつあります。小規模な事業者が会社設立にあたって、株式会社ではなく合同会社を選択するメリットは十分に大きいといえるでしょう。
2020年06月24日今回の年金改革の目玉である「75歳からの繰り下げ受給で84%の増額」。数字だけを見れば飛びつきたくなるが、そこには落とし穴もーー。「新たな年金改革法が成立し、’22年の4月からは段階的に制度が変わっていきます。年金を損なく受け取るには、これまで以上に働き方や受給開始のタイミングが重要となるでしょう」こう語るのは“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾さん。パート主婦が注目すべき改革の内容はおもに2つあるという。1つ目は、パートを代表とする短時間労働者の厚生年金適用拡大だ。「これまでの厚生年金の加入条件は、労働時間が週20時間以上、月収8万8,000円(年収106万円)以上、企業規模が従業員501人以上などでしたが、段階的に企業規模の条件を緩めることになりました」具体的には、’22年10月に従業員数101人以上に、’24年10月には従業員数51人以上に緩和される予定。最終的に、約65万人が新たに加入するようになると、社会保障審議会は試算している。加入で、まず大きな影響を受けるのは、パートの手取り額だ。「月収8万8,000円だと、新たに厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料がかかるようになり、概算ですが、手取りは月1万3,000円ほど減ります」こう聞くと減収ばかりに目がいってしまう。ただ、北村さんはメリットも考慮すべきだと語る。「将来、老齢基礎年金に厚生年金を上乗せできるのです。公的年金の特徴は亡くなるまでもらえること。“長生きリスク”を考慮すると、もらえる年金額を増やすことは重要です」上乗せされる厚生年金の目安は、北村式計算法によると《年収の百万の位の数字×5,500円×勤続年数》。たとえば、55歳のパート主婦が10年間、年収106万円で働いたとすると、《1.06×5,500円×10年》で、年間5万8,300円が、生涯にわたって上乗せされる計算になる。「さらに厚生年金の適用に伴い、いざというときは健康保険から疾病手当金が支払われます。病気やケガなどで長期間仕事を休むことになったとき、未加入だと、療養している間は無収入となります。一方で加入していれば、3日連続で仕事を休んだ場合、4日目から最長1年半までの間は、給料の約3分の2がもらえるようになる。民間の保険ではありえないような手厚い保障もセットになっているのです」もうひとつ今回の改革で注目するべき点は、年金受給を開始する年齢の選択肢が増えたこと。「受給開始年齢は通常65歳ですが、現状でも最大で5年、開始時期を繰り上げ(早め)たり、繰り下げ(遅め)たりできます。繰り下げた場合、1カ月ごとに年金は0.7%増額(最低1年以上繰り下げなければならない)。最大で42%増えますが、今回の改革で繰り下げの上限が、’22年4月からは10年となり、最大で84%増額できるようになります」年金を損なく受け取るには、こうした厚生年金による上乗せや繰り下げ受給をうまく活用することが重要になってくる。「たとえば、男性の平均寿命は約81歳。増額狙いで75歳から受給を始めても、もらえる年金総額が65歳から受け取り始めた場合を超えるのは86歳10カ月以降と、平均寿命の約5年後からです」一方で女性の平均寿命は約87歳と先が長く、’70年生まれの女性が90歳まで生きる確率は67%だ。「夫が65歳で定年を迎えて収入が減ることも考慮すると、夫の年金受給開始は65歳にして、預貯金と相談しながら妻の年金のみを繰り下げるというのが、1つの基本的な考え方になるでしょう」「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載
2020年06月24日新型コロナウイルス感染症の影響軽減のため、1年間の納税猶予制度が設けられましたが、節税に悩む個人事業主の方は多いのではないでしょうか。今回の記事では、節税を考える個人事業主や起業したばかりで税金対策について知識がない方に対し、節税のポイントと効果的な具体策をご紹介します。個人事業主の節税のポイントは課税所得を抑えること個人事業主の節税のポイントは課税所得を抑えることです。税金は売上ではなく課税所得に税率をかけて計算するため、課税所得を抑えられれば税金も安くできます。1.個人事業主にかかる税金と課税所得個人事業主にかかる税金は次の4つです。消費税以外は確定申告した課税所得に対する税金であるため、課税所得を抑えることができれば所得税や住民税、個人事業税が下がり節税できます。2.課税所得を抑える3つの要素個人事業主の税金を左右する課税所得は次のようにして求められます。(課税所得)=(売上)-(必要経費)-(各種控除)計算式より、課税所得を抑える3つの要素は次のとおりです。売上(収入)を抑える必要経費を増やす各種控除を増やすこの3つの要素を満たすことが、個人事業主の節税対策となります。3.課税所得を抑えるための3つのポイント3つの要素を満たし課税所得を抑えるためのポイントは次のとおりです。3つの要素のうち節税効果の大きい必要経費、各種控除をメインに節税対策を行う。必要経費、各種控除に対する優遇制度などを活用する。まめに、漏れなく必要経費を計上し、各種控除を利用する。以上の3つのポイントをふまえて、必要経費・各種控除の優遇制度や、経費計上(以下、「必要経費として計上すること」)を忘れがちな費用などを具体的に紹介します。個人事業主の節税に必要経費を活かす方法最初に、必要経費を活かして個人事業主が節税する方法・テクニックを解説します。事業に関係するものは必要経費、まめに漏れなく計上事業の関係する費用はすべて必要経費です。1件1件の額は小さくても、1年間の必要経費を合計すると思った以上に高額になることもあります。必要経費として計上できるものを理解し、可能なものはまめに漏れなく経費計上することが節税の基本です。経費計上できるもの個人事業主が必要経費として計上できる主な費用は次のとおりです。売上原価(原材料費・仕入費用など)従業員への給与、・賃金事務所などの地代、家賃固定資産の減価償却費(費用を所定の法定耐用年数に分割して計上)上記以外にも、消耗品費(文具・備品など)や交通費・出張費、光熱費、通信費、接待費など仕事に関係するさまざまな費用が対象となります。税金も必要経費に必要経費で落とせる税金や公的な負担金のことを「租税公課」といい、下記の税金などが該当します。国税(登録免許税、印紙税、収入印紙など)地方税(固定資産税、不動産所得税、償却資産税、自動車税、軽自動車税、自動車取得税、自動車重量税、個人事業税など)公課(印鑑証明書、住民票の発行手数料、公共サービスに対する手数料など)所得税や住民税は必要経費にはなりませんので注意しましょう。家事按分による必要経費の計上個人の私的な支出と、事業用の支出の両方を兼ねる費用について、事業用分を経費計上することを家事按分といいます。起業したばかりで自宅を事務所として使用している場合の家賃、水道光熱費、通信費などが対象です。たとえば、自宅の1/3を事業用として使用している場合、家賃の1/3を必要経費として計上できます。自動車を個人用と事業用で兼用している場合も、レンタル料やガソリン代を家事按分することができますので、漏れなく必要経費にしましょう。短期前払費用の特例の活用短期前払費用の特例を活用すれば、本来は資産計上すべき費用を、支払った事業年度の必要経費として計上可能です。短期前払費用は、「前払費用」として支払った金額のうち、支払日から1年以内に継続的にサービスの提供を受けるものが対象で、下記のものが該当します。地代・家賃工業所有権の使用料保険料システムのリース料ただし、1年以上先の費用や製造物の原材料費(サービスではない、収益に直接かかわる費用)は対象外です。少額減価償却資産の特例の活用少額減価償却資産の特例を活用すれば、本来は数年に分けて減価償却すべき費用を、支払った事業年度に一括して必要経費として計上できます。通常は、文具・パソコン・自動車などの物品を購入した場合、10万円未満なら「消耗品」として一括経費計上し、10万円以上の場合は法定耐用年数に分割して経費処理します。少額減価償却資産の特例では、青色申告者限定で10万円~30万円の物品購入費についても一括して必要経費として計上できるため、特例を有効に活用しましょう。ただし、必要経費にできるのは1年間の合計が300万円までなので注意が必要です。経営セーフティ共済の活用経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に加入すると掛け金は必要経費として計上できます。経営セーフティ共済は、取引先事業者が倒産した場合に無担保・無保証人で借入れできる制度です。掛け金は月額5,000円~20万円、融資額は掛け金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れることができます。個人事業主の節税に所得控除を活かす方法次に、所得控除を活かして個人事業主が節税する方法・テクニックを解説します。[adsense_middle]青色申告特別控除の活用青色申告によって確定申告を行うことにより最大65万円の所得控除が受けられる青色申告特別控除を活用すれば、課税所得を大きく削減できます。青色申告するためには、税務署への「所得税の青色申告承認申請書」提出や複式簿記による記帳、決算書(損益計算書・賃借対照表)作成などの手間がかかりますが、節税効果が大きいためチャレンジすることをおすすめします。青色申告特別控除を受けるための条件青色申告特別控除を受けるための条件は令和2年分より変更されました。特別控除額は、確定申告方法により10万円、55万円、65万円と異なります。白色申告にはない青色申告だけのメリット青色申告には、白色申告にはない税制上のメリットがあります。下記の税制上のメリットを活かせば、「青色申告特別控除」や前述の「少額減価償却資産の特例」以外により大きな節税効果が期待できます。法人化していれば、家族だけでなく自分の給与まで必要経費にできたり、純損失の繰越し可能期間が9年になるなど、税金を安くする方法が増えます。しかし、法人設立時の費用や時間、手間のかかる法人税の申告、従業員の労働・社会保険料の会社負担分など、さまざまな負担が増えることになります。iDeCo(イデコ)の活用iDeCo(イデコ)を活用すれば、掛け金全額が課税所得から控除されます。また厚生年金未加入の個人事業主にとっては、老後生活資金準備にも有効な一石二鳥の制度とも言えます。iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」とも呼ばれ、自分で掛け金を拠出し資産運用を行う年金制度です。掛け金は全額が所得控除されるうえに、運用益は非課税、受け取る年金は公的年金等控除の対象となるため税制上の大きなメリットがあります。ただし、掛け金には上限があり就業形態によって上限が異なります。個人事業主の場合は、掛け金の上限が月6.8万円(年間81.6万円)です。資産運用はリスクがあって嫌だという人についても、安全性の高い預金商品で運用を行えば、利回りは低いですが節税効果が大きいため魅力ある制度といえるでしょう。その他の各種控除個人事業主は、事業に関する所得控除以外に個人に対する各種控除を受けることができます。基礎控除(※令和2年度より基礎控除額が38万円→48万円に変更(所得2,400万円以下の場合))医療費控除(※セルフメディケーション税制と選択)配偶者控除・配偶者特別控除生命保険料控除・個人年金保険料控除・地震保険料控除など社会保険料控除※国民健康保険料・国民年金保険料など小規模企業共済等掛金控除※iDeCo(イデコ)など寄附金控除会社員なども同様ですが、毎年使える控除なので、まめに漏れなく申告する習慣をつけましょう。最初はわからないところがあったり面倒ですが、習慣化することや、前年度の確定申告資料を残しておくことで早めに慣れることをおすすめします。個人事業主の節税対策に関するまとめご紹介したとおり、節税対策として必要経費に計上したり所得控除できたりする費用や優遇制度は数多くあり、必要経費と各種控除を漏れなく確定申告するかどうかで税金は大きく異なります。節税のためにわざわざ車を買ったり保険に入ったりしなくても、最初は面倒かもしれませんが、青色申告という手続きを踏んできっちりと申告するだけで税額を下げることが可能です。節税だけでなく老後生活資金の準備もできるiDeCo(イデコ)も、一度は検討してみることをおすすめします。
2020年06月22日