約3年をかけて神奈川県の藤沢・葉山などの湘南エリアの飲食店を調査し、2005年に発刊された『ごくうま-湘南の禁煙レストラン』。その発刊者で、藤沢市の長谷内科医院の院長である長谷章先生に、発刊の意図や禁煙推進活動についてうかがった。○約20年にわたり、地元・市・県、そして日本の禁煙化に取り組む―現在、「神奈川県内科医学会 神奈川禁煙推進委員会」の委員長を務めていらっしゃる長谷先生。禁煙推進活動を始めた経緯を聞かせてください。長谷先生―私が院長を務めている長谷内科医院は、祖父から三代続く医院なのですが、祖父、父ともにヘビースモーカーでした。ふたりとも56歳で心筋梗塞を発症し、一命をとりとめたものの、祖父は62歳、父は72歳で他界しました。父の逝去を機に私も煙草をやめたのですが、その後、総合内科専門医の資格を取得し、内科全般については理解していたものの、煙草に関する正しい知識を持っていないことに気がついたのです。そこで脳外科の専門家にお話を聞いたところ、世界各国と比べて日本の禁煙化があまりも遅れていることを知り、これはぜひ取り組むべきだ、と決意したのです。それから約20年にわたり、禁煙化に向けた活動を推進してきました。―これまで、さまざまな禁煙推進活動を推進されていますが、その原動力は?長谷先生―喫煙は本人のみならず、家族や周囲の方の健康にも悪影響を与える可能性があります。煙草による健康被害を食い止めたい、その思いが禁煙活動推進の原動力です。最初は藤沢市内を中心に、ひとりで禁煙化を呼びかけました。具体的には、私は食べることが好きなので、まずは近隣の飲食店の店長さんに禁煙化を要望して歩いたのです。また、患者さんから"○駅の喫煙所が年中モクモクしている"という情報を得て、駅長に禁煙化を要望したり、仕事で付き合いのある金融機関も責任者に会って禁煙化を求めたりしました。―地道な活動の連続ですね。長谷先生―さらに、県内のデパートなどへは、顧客を代表して社長へメールで禁煙化を訴えました。禁煙化を要望するにあたり、その説得材料のひとつとなったのが2003年に制定された「健康増進法第25条」です。これは"多数の者が利用する施設"での受動喫煙の防止を義務づけた法律です。これにより同年には銀行、郵便局、関東の私鉄が禁煙化され、その後、タクシーやJRの禁煙化へと拡大しました。対象となる施設として事務所も含まれています。○時代の画期となった条例の施行を追い風に―全国初となった神奈川県の「受動喫煙防止条例」施行の背景について聞かせてください。長谷先生―この流れの中で藤沢市の医師会が禁煙化に本格的に取り組むことになり、「藤沢市医師会禁煙運動推進委員会」を立ち上げました。内科、外科、耳鼻科、小児科など、各科の代表者が集まって委員会を結成し、さまざまな活動を検討・実行していくことになったのですが、そのひとつに藤沢市内のレストラン、公共の場、タクシー、学校などおける禁煙化の推進がありました。さらに、2003年に神奈川県知事に就任された松沢成文氏のマニュフェストの1番目に「受動喫煙防止条例」があったので、これを強力にバックアップする活動も行い、2011年4月には、全国初となる同条例の施行を実現することができました。―条例の施行でどういう点が変わりましたか。長谷先生―この条例が施行されたことで、神奈川県の成人男性の喫煙率は下がりました。神奈川県のような人口の多い大都市では、喫煙者も数多く存在するため、このような条例の施行は困難のように思えましたが、それを実現できたことは快挙だといえるでしょう。また、同条例により、県民全体の健康管理に対する認識が高まったことも大きな成果だと捉えています。○グルメと禁煙をテーマにしたガイドブックで、タバコフリーを当たり前に―『ごくうま-湘南の禁煙レストラン』を発刊した経緯について教えてください。長谷先生―『ごくうま-湘南の禁煙レストラン』は"ごはんも空気もうまい"をキーワードに、約3年をかけて藤沢、葉山、茅ケ崎、鎌倉などの飲食店を調査し、湘南エリアの厳選した約50店を「完全禁煙」と「ランチのみ禁煙」に分けて、カフェ、フレンチ、イタリアン、すし、和食など、各種店舗の自慢の料理を写真で紹介しています。発刊のきっかけは、私と共に監修にあたった、内科医の横井泰先生の奥様のユニークな行動にありました。たとえば、気に入ったレストランで食事中に煙草の煙を感じると、横井夫人は、その場でお金を払って店を出てしまうのですが、その際に「今日は帰りますけど、おいしいからまた来ます」とおっしゃるのです。これを繰り返すと店側は対応を考えるようになり、ランチタイムだけでも禁煙にする店が増えたそうです。そんな横井夫妻から誘われ、湘南エリアのおいしいものを、きれいな空気の中で楽しめる飲食店を自費出版で全国へ紹介しよう、ということになりました。私が主に和食を担当し、横井先生が洋食を担当。地元の方しか知らないような穴場的なお店も数多く紹介しています。単なる禁煙飲食店のガイドではなく、本当においしい食事を堪能でき、かつ禁煙を徹底している店にこだわり抜きました。―発刊に伴う調査の際に、印象に残ったエピソードを聞かせてください。長谷先生―取材を行っていた頃は、まだ喫煙できる飲食店が多く、"常連に愛煙家のお客さまがいるので禁煙化しにくい"といった声も数多くいただきました。そんなお店には「グルメと禁煙をテーマにしたユニークなガイドブックで貴店を紹介したい。ぜひ禁煙化してほしい」とお願いして回りました。禁煙化すると喫煙者のお客さまが来なくなる、と思われるでしょうが、実はそうではありません。一時的に客足は遠のくかもしれませんが、お店の味・サービスがよければ必ず戻ってきます。それだけでなく、禁煙化は家族連れのお客さまが増えるなど、さらなる集客と売上アップをもたらすのです。これは禁煙先進国である諸外国でも同様の現象が見られます。なお日本では、居酒屋などでお酒を飲みながら喫煙する慣習が根強く残っていますが、パブで有名なイギリス・アイルランドでは、2007年からパブはすべて禁煙であり、"飲酒の場は禁煙"が常識になっています。アジアでは、最近、中国や韓国でもレストラン内は禁煙になりました。台湾でも3人以上集まる室内は「煙害防止法」により禁煙です。このように諸外国と比較すると、まだまだ日本は禁煙後進国ということが分かります。―今後の抱負について聞かせてください。長谷先生―私たちは"吸わないことが当たり前の社会"を作るために、これからも禁煙化を推進していきます。その大きな目標が2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックです。藤沢市では江ノ島がセーリング会場に選ばれており、現・藤沢市長の鈴木恒夫氏も「煙草のない環境で開催したい」と議会で発言されています。その意味でも、藤沢市から神奈川県、神奈川県から東京都、東京都から全国へ禁煙化を波及させていくつもりで、活動を強化していきたいと考えています。
2015年11月18日大手ファミリーレストランチェーンのロイヤルホストは2013年11月、同業界では初となる全国228店舗(当時)の全席禁煙を実施した。発表した際には賛否を含めた様々な反応があったが、約2年経った今、全席禁煙のプラス効果が表れているという。禁煙化を率先して推進してきたロイヤルホストの佐々木徳久取締役が、同社の果敢なチャレンジを語ってくれた。○ブランドの再構築が全席禁煙化のきっかけ1971年に1号店が開業したロイヤルホストは、ファミリーレストランの御三家の一つとして愛されてきたブランドである。全国200店舗を超える規模にもかかわらず、店舗にコックを配置し、ひと手間をかけて調理するなど、味にこだわっている点が人気の一要因となっている。また、クオリティの高い料理に合わせて、店内環境や従業員のサービス力なども徹底的に整備し、健康的で明るく、清潔感のある店作りにもこだわっている。結果として価格的には他のファミリーレストランに比べて少し高く設定されているが、それに値するだけの料理とサービスを受けられるのがロイヤルホストの強みとなっている。そんなロイヤルホストが全店全席禁煙化に取り組み始めたのは、2013年から遡ること4年前の2009年。きっかけは不況による経営悪化だったと佐々木取締役は振り返る。「当時、食の多様化でファミリーレストランの存在感が薄まったことに加え、リーマンショックの煽りを受けて、経営が揺らいでいました。そのため、改めてロイヤルホストとしてのブランディングを行うべきと様々な取り組みを行いましたが、その一環として数年かけて全店の全面改装をすることになったのです。その際、改装を機に全店全席禁煙化をすることが、ロイヤルホストとしての価値をいっそう高めることに繋がるのではないかという話になりました」。欧米等のレストランでは早くから全席禁煙が進んでいた。ロイヤルホストもいつか向き合わなくてはならない課題ということはわかっていたが、喫煙者の足が遠のけば、その分の売上減少などの可能性があり、なかなか踏み切れなかった。しかし、煙のない空間での食事の提供はロイヤルホストの価値向上に直結するはずとの考えから、同社は大手外食産業では初となる思い切った挑戦を始めた。○客層がビジネスパーソンからファミリーにシフト最初に全席禁煙を実施したのは、東京の板橋と南葛西の2店舗。場所柄、ビジネスパーソンが多く、喫煙席の利用率も高かったこともあり、最初の数ヶ月は売上が落ちてしまったという。「それでも、データを分析するとファミリー層の増える週末には売り上げが増えていましたので、全席禁煙の効果があるのがわかりました。諦めずに継続していくと、地域の皆さんにロイヤルホストの取り組みが伝わって、平日も主婦や高齢者の方を中心とする非喫煙者の方々に利用いただけるようになりました。まさしく利用されるお客様が入れ替わる格好となったのです」。3ヶ月ほどで利益も回復。煙のない清浄な環境で食事をゆっくり楽しみたいというファミリー層などが増え、自ずと客単価も上がり、売り上げ全体が底上げされるという効果も得られた。○喫煙率が非常に高い店での成功が自信に以後、この成功事例をモデルとして、段階的に全席禁煙を推進していくも、順調に成し遂げられたわけではない。喫煙者の多い地域では長く苦戦した店舗もあった。それでも同社は、全席禁煙を導入すれば効果があると信じて粘り強く取り組んでいった。象徴的なのは渋谷の道玄坂の店舗だという。全店でも売り上げはトップクラスだが、喫煙者の多い店舗であった。営業担当者からも全席禁煙には否定的な声しか聞こえてこなかったが、トップの一声で一気に動いていくことになる。「2011年に代表取締役社長の矢崎精二が同店を視察した際、タバコの煙で充満している店内を見て、『この環境はお客さまにとっても、ロイヤルホストで働く者にとっても目指すべき姿ではない』と、全席禁煙をトップダウンで行いました。さすがに売り上げの回復には時間がかかりましたが、半年もすると他の店と同様にご家族連れの方が来店されるようになっていきました」。喫煙者の多いエリアでも、タバコの煙がない空間を望む人はいる。全席禁煙のニーズはどんなエリアにも存在する――道玄坂の事例でそう確信することができたことにより、ロイヤルホストの全席禁煙化は一気に加速したそうだ。「時間を掛けて地域とじっくりと対話することで、ロイヤルホストとしての考え方やメッセージを丁寧に発信してきました。4年かけて順を追って積み重ねた結果、スムーズに全席禁煙を達成できたのだと思います」。当初懸念された喫煙者の足が遠のくことによる売上減はあったものの、同社の信念と努力によって、結果的には全席禁煙がロイヤルホスト全体での売上向上につながったと佐々木取締役は自信を持って語った。東京都は訪日外国人の受け入れ態勢整備のため、宿泊・飲食施設の分煙化の支援を始めている。禁煙、あるいは分煙が業界の中でも積極的に検討が進んできているようである。もちろん賛否両論はあるだろうが、ロイヤルホストの"禁煙"という選択肢は業界に一石を投じたことは間違いないだろう。※この取材は2015年8月25日に行いました
2015年09月16日厚生労働省はこのほど、公式Webページにて「平成27年度『世界禁煙デー』における取組及び『禁煙週間』の実施について」を公開した。「世界禁煙デー」は5月31日。禁煙週間は、5月31日~6月6日。「たばこが健康に悪影響を与えることは明らかであり、禁煙はがん、循環器病等の生活習慣病を予防する上で重要である」ことを、その趣旨としている。今年度は、たばこを減らすことで命を守ることを目的として、「2020年、スモークフリーの国を目指して ~東京オリンピック・パラリンピックへ向けて~」を禁煙週間のテーマとし、禁煙および受動喫煙防止の普及啓発を積極的に行う。主要な実施事項としては、「閣議における厚生労働大臣発言」 「イベントの開催(東京及び地方)」「『禁煙週間』実施要綱の策定、周知」「本週間用ポスターの作成、配布、掲示」「各省庁、地方公共団体、関係団体及び厚生労働省内部部局等に通知し、その趣旨について理解と協力を求める」「厚生労働省ホームページ等による情報提供」など。その他の対応として、「厚生労働省内職員へメールにて禁煙の呼びかけ」「禁煙相談会の実施(3回)」「禁煙週間中における中央合同庁舎第5号館内でのたばこの自動販売機の停止等」を行う。※本文と写真は関係ありません
2015年05月29日今年も恒例の「世界禁煙デー」(5月31日)が近づいてきた。WHO(世界保健機関)では、この日に向けて禁煙に関するキャンペーンを実施するという。WHOのグローバル・リサーチセンターが神戸にある。WHO神戸センター(WKC/正式名称はWHO健康開発総合研究センター)は、1995年に設立され、社会・経済・環境の変化が健康に及ぼす影響、およびそれらが政策にどう反映されるかを研究している。WHOの本部はジュネーブで、世界各地に6つの地域事務局、約150の各国事務所を持つが、スイス国外にある本部組織はこの神戸センターだけ。これは前WHO事務局長の故・中嶋宏博士と前兵庫県知事、故・貝原俊民氏の尽力によるもので、その活動は兵庫県、神戸市、神戸商工会議所および神戸製鋼所から成る「神戸グループ」により支援されている。このWKCとはどのような活動をしているのか、そして、今年の世界禁煙デーはどのようなテーマで実施するのか。WKC所長のアレックス・ロス氏にお話を伺った。○喫煙被害のグローバリゼーションへの対策に取り組む――WKCの活動理念について教えてください。ロス氏: 「WKCは、科学分野においてのリサーチ、技術協力、能力開発、情報共有などをサポートしています。この10年ほどは、急激な都市化が健康に及ぼす影響について本部の研究をリードしてきました。今日では、特に高齢化社会に対応するためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジやイノベーションの推進にむけた実質的なリサーチへと重点を移行しているところです。健康問題について他部門連携で多角的に分析するWKCのやり方は、WHOでもめずらしいと言えるでしょう。世界的に見て、近年の顕著な特徴の1つは急速で大規模な都市化と、そこに集中する人口の大きさです。2、3年前にはついに、都市部の人口が地方の人口を抜きました。現在では世界人口の54%が都市部に暮らしており、2050年までには66%まで増えるといわれています。大都市においては、性差や貧困などが、健康に関する支援や治療を受ける際の格差(健康格差)を生みつつあります。政治的にデリケートな問題ではありますが、私たちは行政が、これらの構造を理解する手助けをするとともに、政府の異なる部門が協働して解決に向けて取り組めるような戦略を練り、人々の健康が平等に守られるよう共に働きかけています。都市生活は、非伝染性の持病、たとえば癌、肺や心臓の疾患、脳梗塞や糖尿病などのリスク要因に良くも悪くも影響を与えます。喫煙、運動不足、偏った食生活、飲酒のほか、大気の汚染などの環境要因もあげられます。WHO本部のタバコ・フリー・イニシアティブのメンバーとWHO西太平洋事務局の職員の協力で開発した、禁煙都市を実現するための行政向け条例モデルとトレーニング・ガイドがあります。これは、社会の異なる部門が共に健康問題に取り組むためWKCが行った実質的アプローチの一例です。これらの活動が、ひいては国全体における『たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO FCTC)』の施行につながります。これはWKCのサイトでも詳しく紹介しています。FCTCは、万人が最高水準の健康を享受する権利を再認識する初の世界的健康条約で、その監視機構はWHOになります。喫煙被害のグローバリゼーションへの対策として各国が開発したものです。たとえば、貿易の自由化に主に起因するタバコの価格の低下、外国資本、宣伝広告、多国展開、不法取引など、複雑な要因のからむ喫煙被害の問題を減らすことを目的としています」○今年のテーマは「タバコの不法取引を止めよう」――「世界禁煙デー」とはどのような取り組みでしょうか?ロス氏: 「毎年5月31日、WHOは『世界禁煙デー』というグローバル・キャンペーンを行います。喫煙による健康被害に焦点を当て、効果的な対策を提唱しています。テーマは毎年変わり、今年は『タバコの不法取引を止めよう』です。不法取引を無くすよう各国に呼びかけ、また、2012年11月にWHO FCTC初の議定書として承認された、『タバコの不法取引排除のためのプロトコル』に賛同するよう促します。なぜ不法取引が健康に関係するかというと、タバコ業界や犯罪組織がここから不当な利益を得て、そのツケ、たとえば保険や医療保障にかかるコストを、一般社会が払わされることになるからです。あらゆる面で、不法取引は世界中の主要懸案事項です。国際税関機構の情報も含めた研究によると、世界的に見て、多ければ10本に1本のタバコが不法マーケットからのものとされています。また、EUによると、不法取引によってEU加盟国にもたらされる税収、および関税収入の損失は、毎年100億ユーロ以上にのぼるとみられています。不法取引は豊かな国だけの問題ではありません。世界中のほとんどすべての国がなんらかの形で影響を受けます。タバコの不法取引の脅威に対応するため、国際社会はこのプロトコルを採択したのです」――2015年のキャンペーンの目標を教えてください。ロス氏: 「今年の世界禁煙デーのゴールは、次の4つです。(1)タバコの不法取引によって入手可能になる低価格の非正規品が招く健康被害、とくに若年層や低所得者層に対する影響への着目を促す。(2)増税や値上げ、グラフィックを用いた警告文などの喫煙コントロール対策がヘルスケアにどう影響するか、また不法取引によってそれがどう妨害されるかを示す。(3)業界が不法取引にどのように関わっているかを示す。(4)不法取引によってもたらせる高額な収益が、いかに犯罪組織の麻薬、人身・武器売買、テロなどの活動の財源となっているのかを明るみに出す。これを実現するためには、すべての関係国にプロトコルの批准、参加、そして施行を促し、早期に活発に活動してもらう必要があります。税収の損益だけでなく、タバコ規制に関して不法取引は多くの国に多大な影響を与えます。日本には政府の厳しい規制がありますし、地理的にも影響を受けにくいかもしれませんが、世界的に見ると深刻な問題です。キャンペーンに関するより詳しい情報は、WHOのサイトで紹介しています」――ゴール達成のための戦略はどのように考えていますか?ロス氏: 「プロトコルです。FCTCはWHOが策定した2つの条約の1つで、現在約180か国が批准しています。FCTCに調印するためには、すべての国が要求に見合う行動を起こさなければなりません。日本は最初に調印した国の1つです。最大の目標は、民間セクターの個人レベルだけではなく、財務省や国務省 、国境の税関、税務署など、各国の政策決定レベルでの注意を喚起すること。2つ目の目標は、より多くの国にプロトコルを批准してもらうことです。消費者サイドは、ときにいちばん安価な商品を求める傾向にあります。とくに、タバコの価格の高い国では顕著です。不法取引に対する法の厳格な施行は、現行法を尊重する意味でも、喫煙者を減らすというそもそもの目標を達成する意味でも重要です。昨年のテーマは『タバコの税』でした。課税率をあげれば喫煙者が減るという明確なエビデンスもあり、こちらも消費者にアピールする重要な手立てとなりました」――最後に、マイナビニュースの読者にメッセージをお願いします。ロス氏: 「究極のメッセージは『吸わないこと』です。健康への害は計り知れません。癌にはじまり、乳幼児を含め大切な家族に及ぼす受動喫煙の影響まで、喫煙が健康に与える害のエビデンスには目を見張るものがあります。中毒になりやすい若年層も、長いあいだ業界のターゲットとされてきました。若者を喫煙という悪習慣から守ることができれば、後年中毒になるリスクは大幅に縮小します。もしすでに喫煙の習慣があるなら、『止めること』です。医療・保健機関のプロに禁煙方法を相談してください。あなたの命にかかわることですから。安全な喫煙場所などありえません。日本ではときどき、別の部屋で吸えば大丈夫というような認識があるようですが、煙は必ず室内を循環します。まわりの人も巻き添えになります。本当に、その害は強調してもしきれないほどです。日本において、公共の場での喫煙についての法制度が整っている県は現在、兵庫と神奈川の2県だけです。日本でスモーク・フリー環境を実現するためには、法律が改善されなければなりません」――ありがとうございました。世界的に見ると、喫煙による害で毎年600万人が命を落としている。その10%以上が非喫煙者だ。6秒ごとに約1名がタバコの害で亡くなっており、これは成人の死亡件数の約1割にあたる。私たちが今、行動を起こさなければ、2030年までにその数は800万人になるといわれている。「世界禁煙デー」をきっかけに、喫煙行動について考えてみてはいかがだろうか。○お話を聞いたアレック・ロス所長のプロフィールWHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)所長。米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校で学んだ公衆衛生政策、殊に保健制度の専門家。これまで、WHO本部(ジュネーヴ)にてパートナーシップ部長、感染症担当事務局長補付部長、エイズ・結核・マラリア担当事務局長補付首席補佐官などの管理職を歴任。この間WHOパートナーシップ政策を構築し、国際保健の取り組み、国連機関、NGO、民間部門との関係をはぐくむ。また、国際連帯税(たばこ税)などの革新的な保健融資制度にも取り組み、エイズ・結核・マラリア対策グローバル基金や国際医療品購入ファシリティー(UNITAID:ユニットエイド)の創設にも尽力する。WHO勤務に先立ち、英国国際開発省にて国内外担当上級保健顧問(2001~2003年)、米国国際開発庁、米国保健社会福祉省、米国下院議会など数々の米国政府機関で上級職員として勤務(1987~2001年)。(取材・文 = モーゲンスタン陽子)
2015年05月25日子どものためにも、そしてパパの健康のためにも、子どもができたら早い段階で禁煙するのが望ましいですよね。タバコを吸わない人にとって、タバコの匂いや煙は不快でしかありませんし、副流煙による悪影響は思っている以上に大きいものがあります。タバコを吸っているパパを説得して、この機会に家庭で禁煙活動を開始してみてはいかがでしょうか。今回は、パパの禁煙に対するモチベーションを高める秘訣とサポートの仕方についてピックアップしてみました。■夫の禁煙のために妻ができること(1)禁煙のつらさを理解する禁煙するということは、本人にとって大きな決心。過去に喫煙していたことのあるママならわかるのではないでしょうか。ニコチン中毒から抜け出すのは簡単なことではありません。ママも「禁煙に成功して当たり前」という考え方は捨て、パパの心に寄り添った言動を心がけましょう。口寂しいと、どうしてもタバコを吸いたくなってしまうので、ガムやアメを食べさせたり熱いお茶を飲ませたり、家にいるなら歯磨きをしたりして、気を紛らわせることに専念させてあげてください。■夫の禁煙のために妻ができること(2)ご褒美を用意するいきなり「今日から1本もタバコを吸わない」という目標を立てても、ほとんどが失敗に終わってしまい、タバコに対する執着心をよりかき立てることになってしまいます。まずは1日に吸う本数を減らすことから始めて、小さな目標をコツコツとクリアしていくことが大切です。設定した目標をクリアしたら、ママからパパにご褒美をプレゼントするのもいいですね。パパの好きなものをご馳走したり、お小遣いをプレゼントしたりして、禁煙に対する意識を高められる環境をつくっていきましょう。■夫の禁煙のために妻ができること(3)タバコを意識させない環境をつくるこれまでテーブルに置いていた灰皿やライターなどはすべて片付け、タバコをイメージさせない環境づくりにも徹しておきましょう。どうしても禁煙中はタバコを意識してしまうもの。少しでもタバコを吸いたいと思わせないような空間をつくることが、禁煙への近道となるはずです。■夫の禁煙のために妻ができること(4)できる限りリフレッシュさせる人は暇な時、口寂しい時、イライラした時などにタバコを吸いたいと思う傾向があります。つまり、こういう状態にさせないことが、禁煙を成功させる秘訣。体を動かしてリフレッシュさせたり、リラックスした空間を演出したりすることで、タバコを吸いたい気持ちを緩和させてあげましょう。ママの努力とサポートによって、パパの禁煙を成功へと導けるはずです。縁の下の力持ちとしてパパの禁煙を達成し、健康な体づくりに貢献しましょう!
2015年02月04日鳥貴族は12月18日、東京都豊島区に、同チェーン初の全席禁煙店舗「池袋グリーン大通り店」をオープンした。○宴会でもたばこの煙なし!同店は、280円均一の焼鳥店として展開する同チェーン店の全席禁煙店舗。これまで同チェーンは喫煙可の店舗を営業してきたが、健康志向の高まりに合わせ、料理をより楽しんでもらうべく出店したという。場所は東京都豊島区南池袋1-26-2近代グループBLD3、4階。営業時間は17時~翌朝5時。席数はカウンター10席、テーブル108席。
2014年12月22日ノバルティス ファーマ株式会社は、9月1日に禁煙補助薬"ニコチネル"の新フレーバーとして、女性や若い世代に人気があるマンゴー風味の「ニコチネル マンゴー」と、従来品より刺激が少なく甘みが強い「ニコチネル スペアミント」を、全国の薬局・薬店で販売を開始する。(いずれも指定第2類医薬品)禁煙に有効な手段のひとつが"ニコチン置換療法"。禁煙を始めた時に現れる、イライラ、落ち着かない、集中困難などのニコチン離脱症状に対し、タバコに代わり、ニコチンのみを体内に吸収させることで、その不快な症状を軽減させる。そしてその摂取するニコチンの量を段階的に減らすことで禁煙に導くという方法。意志だけの力を頼りにするよりも、禁煙成功率が2倍高まると言われている(※1)。両商品は、このニコチン置換療法を実践し、スムーズに禁煙成功へと導いてくれるガム製剤。ガム1個に2mgのニコチンを含有。ガムをかむことでそれを放出して口腔粘膜から吸収させる。これにより、ニコチン離脱症状を緩和し、突然の吸いたい気持ちを抑制することができる。禁煙中に吸いたくなったらガムをかみ、少しずつその使用量を減らしていき、約3カ月で無理なく禁煙できるという。新フレーバーの「ニコチネル マンゴー」は、「ミント以外のフレーバーがほしい」という消費者のニーズに応える形で商品化されたもの。女性や若い世代に人気のマンゴー風味を禁煙補助薬として初めて採用した。一方の「ニコチネル スペアミント」は、従来の「ニコチネル ミント」よりも刺激が少なく、甘みが強いのが特徴。3種類のフレーバーがそろったことで、「味が選べないので飽きて長続きしない」という消費者の声にも対応できるようになったという。※1 喫煙と健康(喫煙と健康問題に関する検討会報告書)保健同人社2002:322-323
2014年08月28日医師コミュニティサイト「MedPeer」を運営するメドピア株式会社は、4月18日~24日にかけて会員医師に対し「医師の喫煙と禁煙指導」についてのポスティング調査を実施した(科目限定)。1,597件の有効サンプルが寄せられた。今回の調査では、回答者の医師全体の約78%が非喫煙者で、喫煙者は全体の約21%。「患者に禁煙指導をしているかどうか」についての質問では、医師が非喫煙者の場合「禁煙指導を行っている」が一番多い割合で48%。理由については、喫煙指導を積極的に行っているというコメントよりも「患者さんの個性もあるのでケースバイケース」「禁煙を決意したら外来で相談にのれると伝えている」というものが多かった。続いて多い意見は医師が非喫煙者の場合「患者へ禁煙指導は行っていない」が30%。「しっかり説明してもほとんどの人はやめない」「喫煙は個人の嗜好の問題」といった意見が目立つ。一方、医師が喫煙者の場合「患者へ禁煙指導を行っている」は14%。「強くは言えないが、推奨はする」「禁煙外来で禁煙指導している」というコメントのほか、産婦人科医が「妊婦は絶対に喫煙をしてはいけないので指導している」、循環器内科医が「循環器的疾患がある人や悪性腫瘍がある人には特にすすめる」など、診療している科目ならではの理由も寄せられた。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月12日オリックス、禁煙治療費1万円補助タバコの値上げを機会に禁煙にチャレンジする方が増えており、企業でも禁煙を積極的に促したり、禁煙手当てが配当されたり、更には喫煙者は採用しないといった企業もあります。禁煙を専門に扱う禁煙外来が作られたこともあり、禁煙という流れは今後更に大きな流れとなっていきます。毎日.jpによるとオリックスは30日、来年4月から、昼休みを除きグループ各社のオフィスビルを全面禁煙にすると発表した。受動喫煙の防止と健康維持が目的で、全面禁煙までの半年間、社員の「卒煙」を促すため、約2万円の自己負担が必要な禁煙治療費のうち1万円を支給する。とオリックスグループ各社で全面禁煙にすると発表しました。また、禁煙治療での自己負担分の内、1万円を補助することも発表しました。禁煙に関して一定の条件が認められれば、健康保険の適用がされます。愛煙者には辛いことなのかもしれませんが、値上げと保険適用という2つの大きな出来事で、禁煙をする人が今後も増えていきそうです。
2010年10月15日値上げと保険適用で、禁煙外来患者増過去最大の値上げが行われたたばこ、JTでは60〜140円引き上げられ、これを機会に禁煙にチャレンジする人が増えています。禁煙を専門に扱う禁煙外来が作られ、一定の条件を満たせば保険適用されることもあり、禁煙は社会の中でより大きな流れとなっています。毎日.jpによると、たばこ増税に伴う値上げで患者さんは増えていますと、東京医科大学病院禁煙外来の平山陽示准教授は語ります。保険が適用される条件には、患者自らが禁煙を望むことやニコチン依存症診断のテストで5点以上と診断されるなどがあります。また、飲み薬や貼り薬により保険適用の期間が違うなど、細かい適用条件もあり専門機関で確認することが大切です。平山准教授は心理面のケアが必要で、専門の医師による「禁煙外来」ができました。とも述べ、専門の意志によるサポートの必要性を訴えます。
2010年10月10日タバコのほとんどの銘柄が、10月から1箱110円以上の値上げになるのを前に、禁煙外来に駆け込む人が増えているという。保険の利く禁煙治療については、2006年6月に「ニコチンパッチ」が適用化、また2008年5月には「チャンピックス」が国内で発売・適用となり、治療手段としても進化しているが、治療方法は医療機関によって異なるため、事前の確認が必要という。1~2ヶ月分のタバコ代で禁煙治療が一般的な禁煙治療は、3カ月間、月2回程度の通院で行われるが、その治療における自己負担費用は、保険を適用した場合、禁煙補助薬を含め約1万2千~1万8千円というから、個人差はあるが約1~2ヶ月分のタバコ代程度で済むことになる。しかし、保険適用にはブリンクマン指数(1日の喫煙本数×年数)が200以上などの条件があることと、仮に禁煙に失敗しても初診から1年以上経過しなければ保険適用されないなど、注意が必要だ。治療の種別と効果に関しては、禁煙治療の比較1.ニコチンガム(二コレット)吸いたくなったときにガムを噛むことで、口の中の粘膜がニコチンを吸収し離脱症状(吸いたい気持)を抑制するもの。噛むと舌がピリピリと辛い味がする。薬局・薬店で購入可。・成功率は10%以下2.ニコチンパッチ(ニコチネルTTS)1日1回貼る禁煙補助薬。持続的にニコチンが吸収され離脱症状を抑えられるが、貼ったところが痒くなる。・成功率は20%前後。3.チャンピックス1日2回服用する錠剤。離脱症状を抑制し、タバコを吸うとまずく感じるため禁煙し易くなる。・成功率は70%程度との報告があり、下方ほど禁煙成功率が高まる傾向となっている。禁煙成功率の高いチャンピックスとは?なおチャンピックスは、ニコチンではなくニコチンに似た構造を持ち、「ニコチン依存ニューロン」のα4β2ニコチン受容体に結合し、以下の2作用でタバコが吸いたくなくなるという。作動薬作用チャンピックスが体内に入ると、ニコチンが少し入ったのと同等の満足感が得られ、タバコを我慢しやすくなる。拮抗薬作用チャンピックスを飲んでいると、例えタバコを吸ってしまっても、タバコを吸うことの満足感が得られなくなる。なお、チャンピックスを使用した禁煙治療では、呼気一酸化炭素濃度を測定しつつ、禁煙治療がうまくいっているか経過をチェックすることが規定されており、保険診療を受ける場合は、必ずこの濃度を2週ごとに測定することとなる。参考までに、チャンピックスの情報と保険が使える医療機関を以下にリンクしておく。さて貴方は、信念で禁煙、それとも治療に頼る?
2010年09月24日