Text:谷岡正浩Photo:jacK2024年1月20日(土)に控えた初の武道館公演の前売りチケットは即完とその勢いを見せつける5人組バンドKroi。ブラックミュージックを軸にヒップホップ、ジャズ、オルタナティブなど様々な音楽をクロスオーバーして生み出される独自のグルーヴがシーンを席巻中だ。武道館への景気づけ、いやいや、そこは普段と変わらない彼らのスタンスで音楽を目一杯楽しむために、11月3日よりスタートしたのが『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』だ。これはKroiの面々がリスペクトし、一緒に演りたい!と心から思えるバンド、アーティストと対バンするというもので、今回が4回目、約2年ぶりの開催となる。発表されたアーティストは全部で7組で、実に多彩、かつワクワクするラインナップとなった。なかでも一際目を引くのが、11月12日Zepp Hanedaで開催されたnobodyknows+との組み合わせではないだろうか。ご存知、名古屋出身5人組ヒップホップグループのnobodyknows+は、2002年にデビューした、言わば大先輩だ。はたして、どんな夜になったのか、その模様をレポートする。DJ MITSUがプレイする「オヒサシブリ」のビートに乗って、ホクロマン半ライス!!!のアッパーなフロウとノリ・ダ・ファンキーシビレサスのダミ声フロウが会場を一気にヒートアップさせていく。準備運動なし、不意打ち上等のパフォーマンスにオーディエンスは問答無用に身体を揺らす。2ヴァースからCrystal Boy、続いてヤス一番?が登場し、4MC+1DJの陣形が整う。4曲目「Let’s Dance」の時点ですでにフロアを完全に掌握。現場叩き上げのヒップホップクルーにしかできない無敵のステージだ。それはMCでも存分に発揮された。マイクをとったのはノリ・ダ・ファンキーシビレサス。「いやあKroi観に来たのに、知らないおじさん出て来て、歌わずに延々喋ってばっかじゃねーかと。それをラップって言いますよろしくお願いします。もう我々のことは気にしなくていいので、ひとつ訊いてもいいですか?我々のこと知ってるよって人どれくらいいます?(歓声とともにほぼ全員の手が挙がる)ありがとうございます。Kroiのファンは全員嘘つきということがわかりました(笑)」流れるような喋りに客いじり。のちにKroiの千葉大樹(Key)が、「おれたちに圧倒的に足りていないのはあの漫談のスキルなのではないか」と言ったほど“手練れ感”溢れるものだった。MCの頃合いを見計らって、「大丈夫“アレ”はやるから」とブッ込むと会場は一際大きな歓声と拍手に包まれた。アレ、とはもちろん「ココロオドル」のことだ。ミリオンヒットにして、発売から18年後にリバイバルヒットをしたことも記憶に新しい楽曲だ。誰もが期待するこの曲を、単純に「はいどうぞ」とはやらないのがnobodyknows+流。「エル・ミラドール~展望台の唄~」から「ココロオドル」のオリジナルバージョンへとつなぎ、そこから「ココロオドル(Remix)」へ持っていく怒涛の展開でフロアはカオス状態へ。さらに「イマイケサンバ」へなだれ込むというくどさ(いい意味で)。ラスト2曲は、「隠せない明日を連れて」で火照った身体を少しチル、最後に「愛のテーマ」でもうひと盛り上がりして大団円を迎えた。次のKroiへバトンを渡しつつ、自らの爪痕をきっちり残す最高のステージだった。菊池桃子の1stアルバム『OCEAN SIDE』のタイトル曲が会場をいい感じにシティポップに染め上げるなか、Kroiのメンバーがステージに登場。プラスティックな空気を引き裂くように、ワンカウントで「Hyper」の這うようなボーカルが滲みだすと一瞬でそこはKroiワールドへ。変則的なギターリフに導かれるようにラップパートに局面が移行しつつ、全体に漲る緊張感は高めたままサビへ突入していく。バンド全体の高密度なアンサンブルを絡めとりながら、あるいはその間を縫うように躍り狂う内田怜央のボーカルがとにかく気持ちいい。この、10月25日にリリースしたばかりの新曲に続いて、2曲目には彼らの存在を一気に押し上げるきっかけとなった楽曲「Balmy Life」を早くも投下した。フロアからは自然とクラップが打ち鳴らされる。これ以上ない最高のスタートだ。ここから「Network」「HORN」とつないでMCへ。そこでnobodyknows+へのリスペクトの思いが明かされた。「ヤバイ!ヤバイねー」と開口一番、内田が言った。「私、内田はnobodyknows+のライブDVDを小学生の時に観て、ラップを初めて聴いたのが完全にnobodyknows+だと思うんですけど、そういうアーティストが俺らの企画に出てくれてライブをしてくれるっていうヤバイ事態が起きてます。本当にありがとうございます。普通にブチあがっちゃったんで、俺らもブチあげライブをやりたいなと思います」関将典のベースに千葉のキーボードが絡み、そこに益田英知のドラムが滑り込んでファンキーな空間を作り出していく。「Mr.Foundation」だ。内田はハンドマイクで自由に動き回りながらフロアを煽り、長谷部悠生は激シブのフレーズでギターソロをキメる。まるで彼らのスタジオを覗き見しているような、そんなレアなグルーヴがそのままステージで表現されている。曲終わり、行ったり来たりするような独特のタイム感を操る益田のドラムソロから「Funky GUNSLINGER」へ。時代と場所がごっちゃになったような無国籍な雰囲気を纏ってKroiのライブワールドはいよいよ深まっていく。「夜明け」の後半では、リズム隊とキーボードでじっくりと紡いだ音楽の糸をギターとボーカルで一気に一枚の布に仕上げるような鮮やかなアンサンブルで会場を包んだ。「めっちゃ楽しいわ。調子はどうですか皆さん?」と言った内田に続いて、「俺も黙ってられないんだよ」と長谷部が口を開いた。「俺たちはやっぱり“NARUTO”世代だから。『NARUTO -ナルト-疾風伝』でnobodyknows+の『Hero’s Come Back!!』を聴いた時の“なんじゃこりゃ!”って感動は忘れられないんですよ」。そこからさらに内田のnobodyknows+愛にブーストがかかる。「だって俺、ドラムの発表会で『Hero’s Come Back!!』を叩いたからね。先生に、これ打ち込みだからやめときなって何回か言われたんだけど(笑)」。次の曲「Astral Sonar」に行く前に長谷部が照明を「エッチな感じにしてほしい」とリクエスト。そうするとピンク色にステージがほんのり染まる。それを見た内田が「古い時代のエッチな感じだね」と感想を漏らして会場の笑いを誘った。浮遊感と激情の混じる曲の最後に、スタンドマイクが緩んで垂れ下がり、内田が跪いて歌ってフィニッシュすることになった。「面白い感じで始まって、最後も面白くなっちゃった」と、おそらく二度とないであろう「Astral Sonar」が聴けた。後半4曲を一気に畳み掛け、本編ラストは「a force」で終えた。アンコールの拍手で迎えられて再びステージに姿を現した5人。1曲目はライブ定番曲「Juden」を披露。内田がボンゴなどパーカッションを叩きながら歌う姿が印象的だった。まさに禁じ手なしのフリーゾーンへ突入した感のある会場はひたすら繰り出される音楽に合わせて盛り上がっていくのみ。さらに、「Fire Brain」へ。このツアー3本目にして東京公演だけのサプライズが飛び出した。曲間の「『Dig the Deep』始まって3公演目ですけど、毎晩ヤバイ瞬間を過ごせています」という内田のMCから一気にギターソロという展開で加速していく。このままこのツアーを終え、来年1月の武道館ではさらに“ヤバイ瞬間”へ。Kroiの勢いは止まりそうにない。<公演情報>Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.42023年11月12日(日) Zepp Hanedaセットリスト■nobodyknows+01.オヒサシブリ02.ススミダス→03.Hero’s Come Back!!04.Let’s Dance05.Winds of Wins06.ワサワサ07.アンダーレイン08.エル・ミラドール~展望台の唄~09.ココロオドル10.ココロオドル(Remix)11.イマイケサンバ12.隠せない明日を連れて13.愛のテーマ■Kroi01.Hyper02.Balmy Life03.Network04.HORN05.Mr.Foundation06.Funky GUNSLINGER07.shift command08.夜明け09.Astral Sonar10.selva11.Small World12.Page13.a forceEN1.JudenEN2.Fire Brain<ツアー情報>『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』※終了公演は割愛11月26日(日) 仙台PITゲスト:Ovall12月2日(土) Zepp Sapporoゲスト:クリープハイプチケット情報:()<ワンマンライブ情報>『Kroi Live at日本武道館』2024年1月20日(土) 日本武道館開場17:00 / 開演18:00関連リンク公式サイト:
2023年11月21日恒例の人気企画「アフタヌーン・コンサート」に福間洸太朗が初登場する。13時30分に始まる午後のコンサート。でもテーマは「夜」だ。演奏曲は以下のとおり。J.S.バッハ/ジロティ編:G線上のアリアモーツァルト/福間洸太朗編:アイネ・クライネ・ナハトムジーククララ・シューマン:ノットゥルノシューマン: トロイメライ/夜に /夢のもつれグリュンフェルト:ウィーンの夜会~J.シュトラウスIIの主題による------------ショパン:ノクターン第2番、第13番フォーレ:ノクターン第5番ドビュッシー:月の光ラヴェル:オンディーヌサン=サーンス/リスト編:死の舞踏「もともとは、2月に出演するフランス・ナントの音楽祭『ラ・フォル・ジュルネ(LFJ)』のために組んだプログラムがベースになっています。音楽祭全体のテーマが“夜”なんです。静けさ、眠り、恐怖……。夜にはいろいろなイメージがあります。なるべくヴァラエティ豊かにしたいなと思いました。向こうではドイツ音楽でまとめた前半部分だけを弾くのですが、LFJはたくさんのピアノ・リサイタルがあるので、あまのじゃくな私は、きっとみんなが弾いてくるであろう《夜のガスパール》とか《月光ソナタ》を外したんです。でもふたを開けてみたら《夜のガスパール》を弾く人は2~3人しかいなかった。みんなあまのじゃくでしたね(笑)」3月のリサイタルは、後半にフランス音楽を加えた、いわば福間洸太朗の選ぶ“夜”のフル・ヴァージョンだ(《夜のガスパール》からも〈オンディーヌ〉が入った)。ドイツ音楽とフランス音楽で“夜”の現れ方に違いはあるのだろうか。「やっぱりフランスのほうがポエティックな感じがしますね。ドイツ系のほうが、構成美とか、歌の旋律の美しさが前面に出ている。フランス音楽のほうは、和声がおしゃれで、構成よりも瞬間の空気感みたいなものが魅力だと思います。フランス音楽とドイツ音楽は自分にとって2つの軸です。どちらからもそんなに長い期間は離れたくない。フランスの近現代作品は大好きですし、ドイツ音楽ではシューマンやブラームスを、もっと深く勉強したいと思っています。残念ながら今回はブラームスは弾きません。ブラームスは音楽自体は夜っぽいのですけれども、タイトルに“夜”のつくピアノ曲を書いてないんです」福間洸太朗 (C)Rolf Schoellkopf普段の生活は“夜型人間”だという福間。「最近は健康のためにちょっと修正しているところなんですけど、夜のほうがインスピレーション湧きますし集中できます。動画編集なんかをやっていると、あっという間に午前3時とか4時とかになってしまう。お日さまが出るのを見て、そろそろ寝なきゃという感じですね(笑)。夜には何か摩訶不思議なことが起こるんじゃないか。そんな魅力を感じている人間のひとりなんです。きっとどの時代でも、人々はそれを感じてきたのだろうと思います。朝の曲ばかりのコンサートは私らしくないかも(笑)。東京オペラシティ・コンサートホールでのリサイタルは初めてです。なんといってもあの天井の高さ。空間を贅沢に感じながら弾かせていただけるというのは素晴らしいですし、教会のような雰囲気で、プログラムの最初のバッハから、天上の世界とつながっているような感覚で弾けるんじゃないかと思います」多彩な“夜”の音楽に身を委ねてホールを出れば、そろそろ春の匂いのする3月の日差しが注いでいるはず。「コンサートを聴いたあと、太陽の光で現実に戻るというのは素敵だと思うんですよ。だからコンサートでは、夜の非現実の世界にどうぞたっぷり浸ってください」アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2022-2023福間洸太朗 ピアノ・リサイタル3月4日(土) 13時30分開演東京オペラシティ・コンサートホール取材・文:宮本明■チケット情報
2023年02月07日故・石原慎太郎の原作を、篠田正浩監督が映画化した作品が4Kデジタルリマスターされ、『乾いた花 4Kデジタルリマスター版』として、配信されることが決定した。配信プラットフォーム「JAIHO」にて、2月28日(月)から3月29日(火)までの30日間独占・限定配信となる。先日逝去した石原慎太郎の同名原作小説を、妖精のような可憐さの加賀まりこも出演し、気鋭・篠田正浩監督が1964年に映画化した本作は、やくざ映画の原点ともいわれ、その鋭利な尖った表現と、武満徹と高橋悠治による音楽を伴ったスタイリッシュな映像美を誇り、一大センセーションを巻き起こした。かつてマーティン・スコセッシ監督が、本作を賞賛、心酔するあまり、フィルムを購入したという逸話まで残っている。やくざを殺して、三年ぶりに出所した村木(池部良)の足は賭場に向かった。賭けの緊張感とその後の虚脱感だけが村木に生を実感させた。その賭場で少女(加賀まりこ)と村木は出逢う。茣蓙を見つめる熱っぽい眼差しと、勝負への放胆さを持つ少女に村木は羨望と嫉妬を感じた。少女にせがまれて大規模な賭場に案内した村木だったがその部屋の隅には殺しと麻薬にだけ生きている中国帰りの葉(藤木孝)がうずくまっていた……。去る2月14日には、本作が英題『Pale Flower』として第72回ベルリン国際映画祭クラシック部門でワールドプレミア上映され、大盛況のうちに幕を閉じた。篠田正浩監督作品は、昨年、本作同様4Kデジタルリマスターされ、劇場公開、Blu-ray発売、配信と好評を博している坂東玉三郎主演の『夜叉ケ池』に続き、2作目。“松竹ヌーヴェル・ヴァーグ”の一角、篠田正浩監督の才気を、配信でも存分に堪能することができる。『乾いた花 4Kデジタルリマスター版』2月28日(月)から3月29日(火)まで「JAIHO」にて配信配信はこちら (2/28配信開始)
2022年02月28日日本映画のレジェンド、篠田正浩監督が坂東玉三郎を主演に泉鏡花の世界を映像化した『夜叉ヶ池』が、今年のカンヌ国際映画祭クラシック部門(カンヌ・クラシックス)で上映される。この度、本作のBlu-rayが本日7月14日に発売された。『夜叉ヶ池』は、幻想文学の礎を築いた泉鏡花の原作を、『梟の城』や『スパイ・ゾルゲ』などで知られる巨匠・篠田監督が、1979年に取り組んだ意欲作。女方の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性・百合と夜叉ヶ池の竜神・白雪姫の二役を演じて妖艶な世界を表現。さらに加藤剛、山﨑努、丹阿弥谷津子が出演している。日本の特撮技術の基礎を築いた特撮監督の矢島信男の指揮のもと、大船撮影所のステージを大改造して作ったセットで、50トンもの水を使い大洪水シーンは圧巻。クライマックスの洪水シーンの撮影のために、ブラジルのイグアスの滝やハワイを始めとする海外ロケも敢行された。当時、本作を観たマーティン・スコセッシ監督は、篠田監督への手紙の中で、「玉三郎の演技と、あなたが彼を素晴らしく演出した手法に魅了された」「玉三郎が演じた百合を超えるのは、玉三郎が演じた夜叉ヶ池の白雪姫の他にない」と絶賛している。この度発売されるBlu-rayには、1979年劇場公開時のポスターデザインのポストカード、1979年劇場公開時のプレスシート縮刷版が封入される。また現在、ユーロスペースで42年ぶりに本作がリバイバル公開され、レトロスペクティブ「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道 モダニズム ポップアート そしてニッポン」が開催、各地で順次公開される予定だ。「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道 モダニズム ポップアート そしてニッポン」開催期間:2021年7月10日(土)〜30日(金)上映劇場:ユーロスペース上映作品:『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』『私たちの結婚』『涙を、獅子のたて髪に』『乾いた花』『暗殺』『心中天網島』『無頼漢』『沈黙 SILENCE』『化石の森』『はなれ瞽女おりん』※その後全国各地で順次公開予定Blu-ray『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』発売中価格:6,380円(税込)封入特典:・1979年劇場公開時のポスターデザインのポストカード・1979年劇場公開時のプレスシート縮刷版発売・販売:松竹※山崎努の「崎」は「たつさき」が正式表記
2021年07月14日日本映画のレジェンド、篠田正浩監督が坂東玉三郎を主演に泉鏡花の世界を映像化した『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスターで、実に42年ぶりにリバイバル公開、Blu-rayも発売。さらに今年のカンヌ国際映画祭クラシック部門(カンヌ・クラシックス)で上映が決定した。篠田監督はことし90歳。「生誕90年祭」として、その代表作のレトロスペクティブ上映も行われる。戦後すぐと今のコロナ禍の状況はまったく同じ「僕が生まれたのは1931年。満州事変の年です。それから中国との十五年戦争が始まった。パールハーバーは小学5年生のとき。正に戦争一色の戦時下で幼年期・少年期を過ごしました。僕の母は9人の子供を生みましたが、戦争中の、僕が12歳のときに二番目の姉が結核で亡くなり、その下の姉もそれに感染しました。このままでは篠田家の子供は結核で滅んでしまうと思った母は、牛の内臓を買ってきて僕たちに食べさせた。戦後すぐにペニシリンが普及して結核の脅威は少し治まったけれど、その状況は今のコロナ禍とまったく同じです。僕はことし90歳になった。渋谷のユーロスペースで始まる〈篠田正浩監督生誕90年祭〉はそのお祝いだと思っている。さらに嬉しいのは今まで顧みられることが少なかった『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスターで上映され、Blu-rayになったことですね」。スコセッシが絶賛した玉三郎の『夜叉ヶ池』『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社幻想文学の礎を築いたといわれる泉鏡花の傑作『夜叉ヶ池』が映画化されたのは今から42年前の1979年のこと。名作『乾いた花』『心中天網島』などで知られる巨匠篠田正浩の意欲作だ。歌舞伎界を代表する女形の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性の百合と夜叉ヶ池の龍神・白雪姫の一人二役を演じたことが大きな話題になった。「玉三郎さんは撮影当時29歳。三島由紀夫に“百年にひとり出るかどうかの天才女形”と言わしめた人ですから、こちらも緊張感をもって臨みました。その甲斐あって彼の演技は国内外で大評判になりました。アメリカでも公開され、ニューヨークのジャパンソサエティーのプレミア上映会に玉三郎さんと僕が招待された。そこで知り合ったのがマーティン・スコセッシ。彼は試写のパーティーが終わった後、午前1時ごろブロードウェイにあるマンションに招待してくれた。後日、スコセッシは手紙をくれて、そこには〈玉三郎さんの演技と、あなたが演出した素晴らしい手法に魅了されました。玉三郎さんが繊細に演じた百合を凌ぐものがあるとしたら、彼が演じた歌舞伎にインスパイアされた素晴らしい夜叉ヶ池の白雪姫をおいて他にないでしょう〉と書かれてありました。玉三郎の演技はそれほど皆に賞賛されたのです」。『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社このように内外の映画人を魅了した玉三郎の演技の源泉は、鏡花への愛と心酔だ。鏡花原作の『滝の白糸』始め『南地心中』『白鷺』『通夜物語』『辰己巷談』『稽古扇』『夜叉ヶ池』『天守物語』『日本橋』『山吹』『婦系図』に出演していることからそれは明白。鏡花については、「おこがましい言い方になってしまいますけれど、鏡花先生の作品が私になぜ合ったかといえば、読んでいて、自分の言いたかったことが書いてあるような気がするんです。だから覚えること、喋ることが苦痛じゃなくて、むしろ気持がいいんです」と語る。(五代目 坂東玉三郎公式サイトより)篠田監督と鏡花の結びつきも、玉三郎のそれに勝るとも劣らぬほど強く、深い。「中学三年のとき敗戦になり軍国主義から解放されると国語の教師が明星派の詩人で泉鏡花を教えてくれた。マルクス・レーニン主義が時代の中心になっているときに、粗末なガリ版刷りで『高野聖』をテキストに〈日本とは何か、日本語とは何か〉を語ってくれて、僕はたいへん感動したわけです」。“鏡花狂い”ともいうべきそんなふたりがタックを組んで誕生した映画『夜叉ヶ池』が、並の映画であるはずがない。時代を先取りしていた冨田勲のシンセサイザー、矢島信男の特撮まず観客を驚かせたのが、音楽と、大量の湖水が奔流する特撮だ。日本の伝統文化を引き継ぐ鏡花の世界に対位する冨田勲のシンセサイザー音楽、まだCGもない時代のミニチュアワークと光学合成による矢島信男のアナログ特撮が、『夜叉ヶ池』の最大の見どころ聴きどころ。「『夜叉ヶ池』の舞台は大正二年と規定されているけれど〈現代〉の視点で宇宙の神秘を解明しようとした戯曲だから、これは現代音楽しかないと思いました。シンセサイザーというのは〈合成する〉という意味で、冨田勲はコツコツと音楽のコードに合わせて合成していく。音を重ねてハーモニーを作って、ムソルグスキー『展覧会の絵』、ドビュッシーの『沈める寺院』をシンセサイズした。それが本作を、数多ある鏡花原作映画のなかで唯一の”鏡花映画”たらしめていると思う。」『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社冨田のシンセサイザー音楽についてはよく知られているが、特撮監督の矢島信男の仕事は一部のマニアにしか知られていない。矢島の出発点は松竹の日仏合作映画『忘れえぬ慕情』での台風のシーンの撮影。松竹映画のシンボル映像〈富士山〉の撮影も担当している大ベテラン。日本映画最初期のCG作品『宇宙からのメッセージ』の特撮を担当したことでも知られている。「『夜叉ヶ池』の特撮がアメリカで非常に高く評価されたんだけれども、日本の映画ジャーナリストがレポートしなかったので、彼はそれを知らずに死んでしまった。50トンもの水をセットに流しこんだ洪水のスペクタキュラーは矢島信男だからできたシーンです」。『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社駆け足になってしまったが、『夜叉ヶ池』がどんなに凄い作品かが分かっていただけただろうか。泉鏡花の評価が製作時よりも遥かに高くなっている現在、その映画化作品が最新デジタルで鑑賞できる幸せを噛みしめたい。そしてレトロスペクティブ「篠田正浩監督生誕90年祭『夜叉ヶ池』への道モダニズムポップアートそしてニッポン」で篠田監督の偉業を再確認するのも意義あることだろう。撮影/宮田浩史、取材・文/植草信和映画スチールはすべて 『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社特集上映「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道モダニズムポップアート そしてニッポン」開催期間:2021年7月10日(土)〜30日(金)上映劇場:ユーロスペース上映作品:『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』『私たちの結婚』『涙を、獅子のたて髪に』『乾いた花』『暗殺』『心中天網島』『無頼漢』『沈黙 SILENCE』『化石の森』『はなれ瞽女おりん』■初日舞台挨拶7月10日(土)12:00の回上映後ゲスト:篠田正浩監督、坂東玉三郎※その後全国各地で順次公開予定Blu-ray『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社発売:7月14日価格:6,380円(税込) SHBR-0635封入特典:・1979年劇場公開時のポスターデザインのポストカード・1979年劇場公開時のプレスシート縮刷版発売・販売:松竹
2021年07月06日1979年に公開した篠田正浩監督・坂東玉三郎主演作品『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスター版で42年ぶりに復活。2021年夏に全国各地で順次公開されることが分かった。本作は松竹が2020年に、映画製作を開始して100周年を記念したプロジェクトの締めくくりとなる。幻想文学の礎を築いた泉鏡花の原作を、『梟の城』(1999年)や『スパイ・ゾルゲ』(2003年)などで知られる巨匠・篠田正浩監督が、1979年に取り組んだ意欲作だ。その流麗な美しさと芸の卓越さにより歌舞伎界を一世風靡していた女形の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性の百合と夜叉ヶ池の竜神・白雪姫の一人二役を演じて泉鏡花の妖艶な世界を表現するということで、製作当初からその壮大なプロジェクトが話題となった。共演には、百合の夫で鐘楼守として暮す晃役に加藤剛、晃の友人で失踪した晃の足跡を追う学者の山沢役に山崎努、白雪姫の眷属、湯尾峠の万年婆役に丹阿弥谷津子と、実力を備えた多彩で豪華な顔ぶれが勢揃い。舞台は福井県と岐阜県の県境辺り。三国嶽のふもとの琴弾谷に夜叉ヶ池の伝説の調査に来た学者の山沢(山崎努)は、迷いこんだ池のほとりで、息を飲むほど美しい女性と出会う。百合(坂東玉三郎)というその女性は、夫と二人で鐘楼守をしているという。家に招かれた山沢は、かつての親友で、夜叉ヶ池の調査に出たまま帰らぬ晃(加藤剛)が百合の夫であることを知り驚愕する。夜叉ヶ池には竜神が封じ込められていて、一日に三度鐘を撞かなければ竜神が再び暴れて洪水を引き起こし、村が流されてしまうため、鐘楼守をすることになったのだという。しかし、ある出来事がきっかけとなり、平穏な日々が破られることになるのだった――。脚本は、篠田監督とともに松竹ヌーヴェルヴァーグと称されたメンバーの一人で、多数の作品を手掛けた田村孟と、『天城越え』(1983年)などの監督作品で知られる三村晴彦。撮影は小杉正雄と坂本典隆、音楽はシンセサイザー音楽作家としても世界的に知られる冨田勲、美術はアーティストとしても名高く舞台美術でも著名な粟津潔、朝倉摂、横山豊と、各界でトップランナーとして活躍する錚々たる顔ぶれが集結している。また、鏡花の幻想的な世界観を表現するために、日本の特撮技術の基礎を築き、『宇宙からのメッセージ』(1978年)、『里見八犬伝』(1983年)、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)など数々の作品を手掛けた特撮監督の矢島信男により、当時として最先端の特撮技術を駆使してファンタジックな世界を映像化。そしてクライマックスの洪水のシーンの撮影のために、ブラジルのイグアスの滝やハワイを始めとする海外ロケを敢行。また矢島信男特撮監督の指揮のもと、大船撮影所のステージを大改造して作ったセットで50トンの水を使って村が流される大洪水シーンを作り上げ、まさに圧巻の一言に尽きる一大スペクタクルシーンが実現している。当時、本作を観たマーティン・スコセッシ監督は、篠田監督への手紙の中で「玉三郎の演技と、あなたが彼を素晴らしく演出した手法に魅了された」「玉三郎が演じた百合を超えるのは、玉三郎が演じた夜叉ヶ池の白雪姫の他にない」と絶賛。その後、権利関係の問題で、ビデオ化やテレビ放映がほぼできずにいたが、昨夏、篠田監督と玉三郎さんが再会した際に、本作をぜひ今の人たちにも観てもらいたい、ということで想いが一致し、このプロジェクトが始動した。そして各関係者の尽力に加え、篠田監督と坂東玉三郎から全面協力と監修を経て、音や映像のきめ細かな修復作業を何度も行い、ついに4Kデジタルリマスター版が完成した。奇しくも篠田正浩監督の生誕90周年となる2021年、3月に衛星劇場での篠田正浩監督特集としてTV初放映を皮切りに、今後スクリーンでの上映をはじめ、さらにブルーレイ化、テレビ放映、海外展開など、様々な特集が企画されている。美しい音と映像でよみがえった、日本が誇る圧倒的なスケールと壮麗な映像美で描かれる傑作をぜひ体感してほしい。篠田正浩監督この新作『夜叉ヶ池』を観る人は、坂東玉三郎が、山崎努・加藤剛を相手に緊迫した現代劇を演じ、その果てに魔性の姫に変化する見事なと、世界を圧倒した大洪水の“特撮技術”のお家芸が出会った日本映画の奇跡を、その目で確かめてください。90歳でデジタル技術でよみがえった『夜叉ヶ池』の初日を迎える冒険を楽しみにしています。坂東玉三郎昨年の夏に篠田正浩監督と再会して『夜叉ヶ池』のデジタルリマスター化のプロジェクトが始まりました。デジタル化の作業で映像を確認して、撮影当時の1つ1つの出来事を鮮明に記憶していたことに気づきました。それだけ思いを込めて撮影に臨んでいたのだと思います。泉鏡花「夜叉ヶ池」の世界をデジタル化により美しくよみがえった映像で皆さまに是非ご覧いただきたいと思います。公開当時のマーティン・スコセッシ監督から篠田正浩監督への手紙(一部抜粋)まず最初に、玉三郎さんの演技と、あなたが彼を(俳優としても、日本の伝統芸能の象徴としても)演出した素晴らしい手法に魅了されました。玉三郎さんが繊細に演じた百合を凌ぐものがあるとしたら、彼が演じた歌舞伎にインスパイアされた素晴らしい夜叉ヶ池の白雪姫をおいて他にないでしょう。事実、一度夜叉ヶ池の中に入れば、あなたの作品の真実の美しさが明らかになると私は確信しています。このアンダーワールドで繰り広げられるシーンでは、あなたは日本の文化と伝統の真髄を捉えています。西洋人として私が完全に理解できているかわかりませんが、この映画は文化と歴史の感覚に溢れています。この映画は、あなたとあなたの(文化の)伝統への賛歌であり、現在も、そして未来においても生き続けていくことでしょう。敬意を込めて。『夜叉ヶ池』3月:CS局/衛星劇場にてTV初放送(2K放送)2021年夏ジャパンプレミア上映、ユーロスペースにて篠田監督特集にて上映予定その後全国各地で順次公開ブルーレイ発売、海外映画祭出品も予定
2021年01月28日昨年、好評を博したPUMAとのスニーカーコラボレーション「ewohaku」に続き、「ewokiru」をテーマにアートを身にまとえるTシャツを発表したスポークン ワーズ プロジェクト(spoken words project)のデザイナー、飛田正浩。自ら染めやプリントまで手がける手作業の服作りを実践してきた彼に、亀戸にあるアトリエを訪れ、ファッションとの向き合い方を訊いた。■目指してきたのは「世の中にないもの」ーーこのところファッションの世界でも“手仕事”に注目が集まってきていますが、飛田さんはスポークン ワーズ プロジェクトで手作業の服作りを続けてらっしゃいますよね。はい。もう語るのも面倒になるくらい(笑)ずっと続けてきています。生地を作るにしろ、パターンを引くにしろ、専門のスペシャリストが世にはいて、洋服は作られている。だけど、そこには決まりごとも多々あって、時々「あれ?」と疑問にぶつかることがあるんです。培われてきたものは大切ですが、やっぱり既成概念を壊していかないと、新しいものは生まれてこない。だから、とらわれないために自分でやっているという面もあります。ただデメリットもありますよ。原画を描いて、自分で染色してプリントするとなると、作れる量は自ずと決まってくるし、そのルーティンワークがどこまで必要なのかという疑問も出てくる。だけど、僕の中では“ファッション×アート”が変わらないテーマで、常日頃から「世の中にないものを作りたい」と考えているんです。亀戸にあるspoken words projectのアトリエーーそのアプローチは立ち上げ当初から?紆余曲折ありました。美大(多摩美術大学染織デザイン科卒業)で学んだのですが、四浪して入ったクセに学校にはろくに行かず音楽ばかりやっていたひどい学生(笑)。卒業制作で初めて洋服を縫った時に、「あ、やりたかったのはこれだった」と気づくんです。そこから服作りは独学で模索。ただ“商品を作る”という考えが持てなかった。ずっと音楽を作ってきたから、“作品作りをしている”という感覚だったんですよね。当時は時代的にも、純粋に芸術をやっていこうとする人間が周りにも多かったから、“表現”を軸に生活をしていくことには抵抗ありませんでした。今思うと、非常に向こう見ずなんですけどね。でも、それじゃ服は売れない(笑)。いろんな葛藤を経験して、一時は染色やプリントも封印して、いわゆる量産をする“既製服”のアパレルビジネスもやってみました。ただ、無理に既製服を作ろうとすればするほど悪くなっていく。だから、もうこれで最後だと決意して、ワンピースたった1型に絞って、1点1点全て違う加工のコレクションを発表したんです。それが評価されて、エージェントがついてビジネスになった。ラックだとひとつの大きな塊に見えるものが、手に取るとそれぞれに違う、手作業の量産。自分でも「これだ」と確信できました。初めて“作品”と“商業”が融合できた瞬間だったんですよね。ーー封印を解くことで、逆に進むべき道が開けたんですね。アパレルの王道は歩んでこなかったから、無知ゆえの遠回りや苦労をさんざんしてきました。でも、それこそデザインについては浪人していた時期に一番勉強した気がするし、迷ってきたから見えたものもありますよね。今は“手作業のブランドである”ことは、むしろどうでもいいと思っているんです。PUMAとのプロジェクトを通じてより明確になってきたのですが、結局僕はアートをやりたいんですよね。となると、常に刺激的でなければいけないし、フレッシュであり続けなければいけない。ストーリーやコンセプトさえしっかりあれば、あとは服作りのやり方はどんなモノでもいいんです。染色やプリントという手法に執着するのではなく、ただ“作品”に向き合うことこそ大切だって。後半「アパレルビジネスの常識ではあり得ないことをする使命感 spoken words project デザイナー飛田正浩--2/2」に続く。
2016年06月07日「EXILE」のパフォーマーKEIJIこと黒木啓司が映画初出演にして主演を務め、本音でぶつかり合う青年海外協力隊員を描く爽快な感動作『クロスロード』。この度、公開日が11月28日(土)に決定。併せてポスタービジュアルと予告映像が公開された。カメラマン助手になったものの、目標の見えない日々を過ごしていた沢田(黒木啓司)は、自分を変えようと青年海外協力隊に飛び込む。だが、訓練所でもボランティア精神を地で行く羽村(渡辺大)と対立したり、規則を破ったりと、何かと問題を起こしてしまう。彼らの仲を取り持つ助産師隊員の志穂(TAO)と共に、フィリピンに派遣される二人。沢田は観光省での仕事に不満を抱くが、羽村は失敗しながらも田舎の村でドジョウの養殖を順調に進めていく。そんな優等生タイプの羽村を沢田が好きになれないのは、反発していた亡き父の面影を見るからだった。ある日、野心的な写真を撮ろうとバギオの街を訪れた沢田は、少年ノエルと姉のアンジェラと出会い、この国の現状に胸を痛めるが、無力感のうちに帰国する。それから8年、協力隊での体験は2人をどう変えたのか?震災後の東北での久しぶりの再会に思わぬ答えが待っていた――。公開されたポスターは、「ボランティアなんて偽善だ」という強烈なメッセージとともにカメラを携え険しい表情の黒木さんを大きく捉えている。“理想でもきれいごとでもない”まさにいまのリアルな青年海外協力隊員たちを描いた青春グラフィティの誕生を期待させるビジュアルだ。さらに、予告編では黒木さん演じるボランティア活動に懐疑心を懐きながらもその実、熱きハートを持ち揺れ動く隊員・沢田と、渡辺さん演じるボランティア精神の塊で理念が先に出てしまう羽村隊員が激しくぶつかり合う様子や、赴任先のフィリピンの現地の人の助けになろうとする隊員たちの成長する姿が描かれる。フィリピンでの撮影が本作のスケール感に華を添え、主題歌である中島みゆきの名曲「ヘッドライト・テールライト」も相まって、胸が熱くなる予告編となっている。常に対立する沢田、羽村を共に理解し仲を取り持つ野村志穂隊員役には、人気ファッションモデルでありハリウッド大作映画でも大きな役を演じ、本作で日本映画初出演となるTAO。沢田が赴任先のフィリピン・マニラでボランティアとは何か?と自問自答をするきっかけを作ったフィリピン女性、アンジェラ役に世界一有名なコスプレイヤー、アローディア。訓練所の名物所長の堺顕二役として長塚京三ら豪華キャストが脇を固めているが、今回、DDT・プロレス、新日本プロレスで活躍する飯伏幸太が本作で銀幕デビューを果たしたことが明らかとなった。昨年実施されたシナリオコンテストで大賞に選ばれた作品を基に、監督には『マリリンに逢いたい』『秋桜』のすずきじゅんいち、脚本監修・脚本に『闇金ウシジマくん』『映画ひみつのアッコちゃん』の福間正浩という協力隊経験を持つ2人が強力なタッグを組み製作された本作。「2005年・フィリピン」「2015年・岩手」と時間と空間が交差した道程に待つ感動のラストとは…?まずはこちらの映像から映画初主演となる黒木さんの演技に注目してみて。『クロスロード』は11月28日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2015年08月09日「EXILE」のパフォーマーのKEIJIこと黒木啓司が映画初出演にして主演を務める『クロスロード』の制作発表会見が1月26日(月)に開催され、黒木さんを始め共演の渡辺大、同じく共演でフィリピン出身の“世界一のコスプレイヤー”の称号を持つアローディアらが出席した。日本から発展途上国への援助に赴く「青年海外協力隊」の隊員たちに焦点を当てた本作。過去のある経験からボランティアに対し懐疑的な思いを抱きつつもその実、熱いハートを持つ主人公の沢田が、仲間や現地の人々との出会いを通じて成長を遂げていくさまを描き出す。現在もドラマ「残念な夫。」にレギュラー出演中で、俳優としての活動を着実に広げつつあるが、これまで、映画には縁のなかった黒木さんは「映画は初めてなので気合いを入れてやりたい」と語り「緊張感はありますが、(沢田役は)自分と等身大の役なので、ぶつけていきたい」と意気込みを明かす。本作では海外における活動のみならず、東日本大震災からの復興についても描かれるが、「EXILE」として被災地を訪れた経験もあり「笑顔でみんなを元気にさせることをやって来たので、そういうことを役を通じて出せれば」と思いを口にした。出演が決まってからのほかのメンバーの反応を問われると「最近はドラマもやらせていただき、みんなにも見てもらってますが『気張らずに自分の良さを出して来い』という言葉をいただきました」と明かした。渡辺さんは、奉仕精神に燃え、常に沢田と衝突する隊員を演じる。春からの撮影では、日本国内でのロケとフィリピンでのロケが半々くらいの割合だという。「フィリピンロケは台本を読む限り、一人で村に行かないといけないシーンも多いし、英語のセリフも多いです…」と少し不安そう。それでも「(自身の)役も初めて行った先で学んでいくので、その気持ちを大事にし、それを監督に撮っていただければ」と語った。アローディアは「よろしくお願いします」と日本語で挨拶。Facebookで全世界で430万回「いいね!」が押されるなど、高い支持を集めるが、日本映画出演に「楽しみです」とニッコリ。フィリピンロケを楽しみにする黒木さんに「時間があれば、一緒にビーチにも行きたいですね」と微笑みかけ、これには黒木さんもメロメロ。渡辺さんは、先ほどからの不安が抜けないようで「そんな時間があったら素晴らしいですが…」と浮かない表情だったがアローディアさんの笑みを前に「親交を深めていい作品にしたいです」と笑顔を見せた。すずきじゅんいち監督、そしてこの場にはいない脚本、脚本監修を務めた福間正浩はともに実際に青年海外協力隊を経験をしており、リアルな内実などの描写が期待される。「みなさん、“真面目”というイメージを持ってる方が多いですが、僕みたいないい加減なやつもいるので(笑)」と笑いを誘いつつ、久々の劇映画の撮影を前に気合い十分だった。撮影は4月よりフィリピンにて開始され、日本では岩手県内などでの撮影が予定されているという。『クロスロード』は11月公開予定。(text:cinemacafe.net)
2015年01月26日入江甚儀、20歳。時折、年相応と言える笑顔をのぞかせるが、インタビューが進むにつれてその落ち着いた佇まいと口調から「本当にまだ20歳?」と疑いたくなってしまう。一方で当人は「もう20歳」と感じているという。ドラマに映画、舞台と活躍の場を広げ、NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」にも出演するなど確実に成長を遂げているように見えるが、自らの歩みについて「自分の中ではまだまだ遅いと思ってます」と毅然と語る。ブレイクの萌芽を抱えた20歳は成長を、変革を、ほとばしるエネルギーを発散する舞台を渇望している――。そんな彼にとって武者修行の場として最適と言えるかもしれない。先日より放送がスタートしたドラマ「闇金ウシジマくんSeason2」に入江さんはレギュラー出演を果たしている。10日で5割という暴利の闇金業者「カウカウファイナンス」を営むウシジマとそれでも彼に金を借りに来る切羽詰まった債務者たちの姿を描き、2010年に深夜ドラマとして異例の高視聴率を記録。映画化を経て、連ドラのシーズン2が製作された。入江さんは読者モデルとして名を上げることを志し、やがて悪事へと手を染めていく若者・中田を演じている。本シリーズでウシジマという当たり役をものにした主演の山田孝之を中心に、すでにシーズン1で完成している「ウシジマくん」の世界に飛び込んでいくプレッシャーと緊張感というのはどれほどのものか?「山田さんにやべ(きょうすけ)さん、崎本(大海)さんの3人が揃ってると怖いですよ」と苦笑を浮かべるが、俳優として物怖じすることはなかった。「確かに以前からのみなさんがいて、世界観が出来上がってはいるんですが、このドラマ自体、金を借りに行く側の人間が主体的に存在し、そこに金を貸す『カウカウファイナンス』の人間がいて…という関係性の中で成り立っている作品。だから世界観や空気感になじむことを考えるというより、まず自分の役をきちんと表現するというところからだなという思いが強かったです。それができれば、あとはウシジマくんがいるだけでこの世界の匂いをしっかりと感じさせてくれるので」。中田というのは決して人間として好意を持てる男ではない。「目先の利益に飛びつくタイプで飛びついたら食い散らかして、そこで何かを手にしたはいいけど、見渡すと恋人も友達もいなくなっている。考えが浅はかなんです」と入江さん。「演じる上ではヘラヘラしている感じは意識しましたね。何か疑問に思っても、それを受け止めきれずに流れてしまう。ちゃんと考える人間というのは一度、自分の中で飲みこんで、考えて『こうしよう』となるけど、それができないヤツは笑ったり、黙ってごまかしてしまうと思う。だからヘラヘラしながら、何かに突っかかりを感じても、すぐに『そうっすよね~』とスルーしちゃうような薄っぺらさというのが出せればと思いました」。散々な言いようではあるが、一方で中田を単なるダメな男とは思わない。嫉妬や羨望、野望、人間臭さ…。語弊を怖れず言えば「共感」や「似たもの」を感じているとも言う。「『似てない』と言ったら嘘になると思います。それは中田に限らず、他の役にも感じるし、自分の中に同じような部分があるからこそこのドラマを見て分かるところがあるし『こうはなりたくない』とも思えるんだと思う。中田は『有名になりたい』と思って芸能界にも片足を突っ込んでるけど、僕自身もいま、こういう仕事をさせてもらってて、服を買うのも好きだし上を目指したいって気持ちもすごく強い。そこにはリスクを背負わなくちゃいけない部分もあって、でも中田はそれをうまくコントロールできずに利益だけを求めて堕ちていく。どこかで一歩間違えれば自分も…というのは感じますよ」。そう、単に崖っぷちに立った人間の転落や債務に沈んでいく“負け組”のドラマを見せるだけではないのが本作の特徴。目を背けたくなるのは自分の中にも確実にある感情が描かれているからでもある。ではそこで一線を越えてしまう人間と踏みとどまる人間の違いはどこにあるのか?入江さんは「自分を信じ切れるかどうか」とうなずく。「自分を信じられないからお金の力を借りようとしてしまう。不安で『もっと必要なものがある』と足りないものを埋めようと金を借りてしまうんでしょうね。中田を演じて、改めて感じたのは成長しないヤツだなってこと。成長した気になってるけど、最初から最後まで外見はグレードアップしても中身は変わらない。空回りって言葉がピッタリなんです。何でそうなったのか?順番を間違えたんだと思います。オシャレが好きだから働いて、お金を貯めて好きな服を買って、そこで少しずつ評判を手にして内面も磨きがかかって…と成長していけばいいのに、いきなり金がないから借りる(笑)。苦労しないから身に着かなかったんですね」。入江さん自身は買い物するにも「迷って迷って…というタイプ(笑)」とのこと。親元を離れて一人暮らしを始めて「単純なことですが、遣えばお金はなくなっていくものなんだと実感しました。家にいた頃はお金がどこから出てくるのかさえも分かってなかった」と首を振る。ちなみに、これまでで一番大きな買い物は「思い切って買った革ジャケット」だという。「自分の中で『変わりたい』という思いがあって買いました。それを買ったことで人生の直線にひとつ大きな丸い点が付けられたような気はしています。もちろん、買ったから変わったと思うの浅はかですが、少なくとも“これを着るからには良い仕事しなきゃ”っていう責任やプレッシャーを背負うところはあります。何にせよ、買い物をするときは、この仕事にどう活かせるかってことは常に意識してますね」。自ら事務所のオーディションに応募して芸能界を志したのが中学2年生の時。見事合格するが、そのわずか3日後に連続ドラマのレギュラー出演が決定したというのは語り草である。その後も初舞台で主演を務め、次々とドラマに出演するなど、順調すぎるキャリアを歩んできた。もちろん、それは傍から見てのこと。当人はひとつずつの作品の中で時に葛藤し、もがき、実績を積み重ねてきた。デビューからドラマに映画、舞台とひと通りの作品をこなし、“ふた回り目”と言える周回に入った近年、確実に自分の中の変化や成長を感じている。「去年は特にいろんな監督に出会い、いろんな共演者の方々と仕事をさせていただき、いろんな意見を聞いていろいろ試して、芝居に対する考え方が大きく変わりましたね。特に『ロスト・イン・ヨンカーズ』(三谷幸喜演出)はすごく大きかったです。3か月ずっとあの舞台の世界に居させてもらえたというのは、なかなかない経験で、役者として大きな転換点になった気がしています。改めて感じるのは、お芝居って総合力であり、相手がいてこそ成り立つということ。ただ前に出ればいいってものではないし、時に自分がグイと出ることも必要だし、逆に引くことで自分が生きることもある。駆け引きの面白さを感じました」。経験が自身の血肉になると同時に、自分に足りないものも強く感じるようになった。「これまでは脚本を読んで、パッと自分の中に沸いたイマジネーションに芝居で近づいていくという作業が多かったんですが、それだけじゃ足りない場面が出てくるんです。もっともっと、普段から役作りをしていきたい。それからまだまだできないことがたくさんあって、殺陣もダンスも歌も全然できない。出来ることだけやっていると必ず行き詰まる時が来る。努力しないと演じられない役に挑戦したい。いつか、それができるようになった時にもう一度、原点に戻って“何もしない”役をやってみたいですね」。最後にもうひとつだけ。「年下のカレ」というこのインタビュー企画に合わせて恋愛観を尋ねると、ここでも動じることなく「互いに意見を言い合える仲でありたいですね。“言葉で言わなくても感じて”という部分は、付き合うと出てくると思うけど、そこに頼りたくないんです。伝えたいことはお互いに伝えて理解して、分かり合いたい」と確固たる答えが返ってきた。「年上の女性も大丈夫?」と訊くと、最後の最後で子供のようにはにかんだ表情を見せてくれた。「経験がないので…でも、大丈夫です(笑)!」<プロフィール>入江甚儀1993年5月18日生まれ 東京都出身身長181cm血液型O型「Colorful」(’10)、「人狼ゲーム」(’13)、舞台「ロストインヨンカーズ」(三谷幸喜演出/’13)など、映画・ドラマ・CM・舞台など幅広く活躍中。現在放送中のドラマ「闇金ウシジマくん Season2」のほか、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」(’14)にも出演中。「キカイダーREBOOT」(’14・5月公開)に主演決定。<作品>TVドラマ「闇金ウシジマくん Season2」MBS・TBSほか深夜にて放送中!(そのほか地域の放送局情報は公式サイトにて随時更新中)TBS:毎週木曜24:58~/MBS:毎週木曜 24:59~※放送日時は、変更となる場合がございます。<ストーリー>まっとうな金融機関からはもう借りられない「後がない」客に金を貸し、10日で5割という法外な金利をむしり取る闇金カウカウファイナンス。その社長を務めるウシジマのクールな眼差しが捉える群像劇を描いたコミックが真鍋昌平の『闇金ウシジマくん』だ。2010年に深夜ドラマ化されて異例の高視聴率を記録し、2012年公開の劇場版も大ヒット。そのウシジマくんとカウカウファイナンスが、ファン待望の新シリーズとなって深夜ドラマ枠に帰ってきた!ホストや風俗、アルコールやギャンブルといったものに依存する人たちや、有名になりたい、金持ちになりたい、性欲を満たしたい、働かずに暮らしたいといった欲望に取り憑かれた人々の人間模様を描き出す本作。視聴者はきっと、「こうならないように明日から頑張ろう……!」と、不思議とポジティブになれるはず。また、新シリーズにおけるキャスティングの目玉として、山田孝之の盟友・綾野剛がウシジマの幼なじみ役【戌亥】として登場。裏の世界にも通じている情報屋として、ウシジマの依頼を受けての活躍に乞うご期待。<出演者>山田孝之綾野剛、崎本大海、やべきょうすけ、武田航平、入江甚儀、絵美里原作・真鍋昌平『闇金ウシジマくん』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)企画・プロデュース山口雅俊脚本福間正浩演出山口雅俊白川士遠藤光貴コピーライト(C)2014真鍋昌平・小学館/「闇金ウシジマくん2」製作委員会・MBS(photo / text:Naoki Kurozu)
2014年02月06日