●自身発案の日本語吹替版で夢のキャスティングが実現声優の山寺宏一が、ディズニープラス「スター」にて独占配信中の『マーダーズ・イン・ビルディング』で、自身初となる日本語吹替版の発案・キャスティング協力を担当(日本語吹替版のシーズン1&2は9月14日より配信)。八面六臂の活躍を見せている。日本を代表する声優となった山寺だが、そんな彼が「僕の希望であり、目標」と語るのが、本作の日本語吹替版で主人公の一人を演じている羽佐間道夫だ。羽佐間への思い、そして「盟友」だという林原めぐみへの信頼感を、山寺が明かした。本作は、ドラマ界のアカデミー賞と言われるエミー賞に新作ドラマとしては最多となる17部門のノミネートを果たしたミステリー・コメディドラマ。マルチな活躍で人気を集めているセレーナ・ゴメス、そしてハリウッド・コメディ界のレジェンドであるスティーブ・マーティン、マーティン・ショートの3人がメインキャラクターを務め、自分たちが暮らすマンションで突如起こった殺人事件の謎に迫っていく物語だ。本作を字幕版で鑑賞し、大ファンだったという山寺。「僕はもともとスティーブ・マーティンと『サボテン・ブラザース』が大好きなんですが、本作にはスティーブ・マーティンとマーティン・ショートという、“サボテン・ブラザース”の3人組のうちの2人が出ているんです。『こんなドラマがあるのか!』と思って、興奮しながら観てみたんです。そうしたらものすごく面白くて! センスにあふれていて、ミステリーでもありつつ、人間ドラマでもある。観始めてすぐに大好きになった」と本作との出会いを述懐。もっと幅広い人に楽しんでほしいと思っていた山寺が、ディズニープラスのイベントに出演した際に「日本語吹替版は作らないんですか?」とディズニー関係者に働きかけたことをきっかけに、本作の日本語吹替版の制作が実現したという。山寺の熱意が見事にかたちとなり、さらにキャスティング協力としても参加した。山寺の提案によって、スティーブ演じるチャールズ役は羽佐間道夫、セレーナ演じるメイベル役は林原めぐみが担当することとなり、マーティン演じるオリバー役は、山寺自らが命を吹き込むこととなった。どのような思いを込めて、キャスティングの提案をしたのだろうか?これまでにも羽佐間は『サボテン・ブラザース』や『バックマン家の人々』など多くの作品でスティーブの吹き替えを担ってきたこともあり、山寺は「僕の頭の中では、スティーブ・マーティン=羽佐間さんと直結するものがあって。もし羽佐間さんがチャールズをやってくれたら、ものすごくうれしいなと。さらに僕がオリバー役をやらせていただけて、羽佐間さんと掛け合いができたら最高だなと思った」とにっこり。無事に快諾を得て「羽佐間さんがやってくださるというので、もう本当にうれしくて。こうなったら他のキャストもいい人を集めないともったいないと、ダメ元で『この役にはこの人がいい』と言ってみた。そうしたら、みんなことごとくOKしてくれたんです」と夢がどんどん実現していったと目を輝かせる。●師匠・羽佐間道夫への思いと盟友・林原めぐみへの信頼感羽佐間の演じるスティーブ・マーティンのよさについて、山寺は「センスがあって、かわいらしい。かわいいなんて、大先輩に言ったら失礼なんだけれど」と目尻を下げながら、羽佐間への尊敬の念を吐露する。「羽佐間さんは、現在88歳。10月には89歳になるんですよ! スティーブ・マーティンは70代ですから、彼よりも羽佐間さんの方が年上。だというのに、羽佐間さんはスティーブ・マーティンを演じる時に、いつもの自分より老けた感じでやろうとなさるんです(笑)。普段の羽佐間さんが若々しいので、そのままでスティーブ・マーティンをやったら若くなっちゃうから」と羽佐間のエネルギッシュさに感服。「羽佐間さんは、いつも楽しそうに演じていらっしゃいます。コロナ禍になるまでは、よく2人で飲みに行って、夜遅くまで話し込んだりしていました。羽佐間さんの話は本当に面白くて、ノンストップで話してくれますから。お会いすると『こんな80代っている!?』と感じますね」さらに、「養成所に入った頃からお世話になっていて、羽佐間さんは僕の師匠です。僕は今61歳ですから、羽佐間さんの年齢になるまでに、あと30年近くあります。30年後も羽佐間さんのようにバリバリと仕事をしていたい。羽佐間さんが、僕の目標であり、僕の希望です」としみじみ。羽佐間からいつも刺激を受けていると続け、「羽佐間さんは、常に勉強をされている。日本の古典芸能や落語、浪曲、浪花節などにも詳しくて、声を使って演じることに対してものすごく造詣が深い。いろいろなものに好奇心を持っていて、いい点があれば若い人からも盗みたいと思っていらっしゃるんです。そしてなんといっても、人間性がすばらしい。羽佐間さんはみんなに愛されるし、慕われるし、自分のことだけではなく、声優業界全体のことを考えて、この業界を引っ張ってきた方です。人間的に尊敬するところがたくさんあります」と熱弁し、「今回は、羽佐間さんと一緒にアフレコすることができました。羽佐間さんがいると、休憩時間すらも楽しい。本当にうれしかったですね」と喜びをあふれさせていた。山寺にとっての師匠が羽佐間ならば、「盟友」と語るのが、メイベル役の林原だ。山寺は「セレーナ・ゴメスっていろいろな魅力があって、声も独特。かわいいけれど、ちょっと面白みのある声というか。セレーナの不思議な存在感を出せる人は、誰だろう…と考えた時に、『いた! 林原めぐみだ!』とひらめいた」と振り返り、「僕はこれまでで一番共演が多い声優さんの一人が、林原さんだと思います。林原さんも不思議な人なんですよ。いろいろな魅力がある。彼女が演じてくれたら面白いことになるなと思って声をかけたら、僕と同じで『サボテン・ブラザース』が大好きだというんですよ。30年以上の長い付き合いでも、知らなかったなあ。すぐに『出る!』と返事をもらいました」と経緯を説明する。盟友である林原の魅力について、「かわいらしさをずっと残したまま、確かな芯の強さがあるところ」と分析した山寺。「僕はよく彼女に『ちゃんとしなさい』と怒られています」と苦笑いを見せつつ、「そこがまた今回の役にぴったりなんです。劇中では、メイベルがチャールズとオリバーにビシビシと厳しいことを言う。それがまた正しいことばかりなんです。そんな3人が不思議な絆で結ばれていくところも本当に面白いんですが、おじいちゃん2人にビシビシと言う役を演じる林原めぐみ…というのも、いいキャスティングだなと思っています」と自信をのぞかせていた。■山寺宏一1961年6月17日生まれ。宮城県出身。1984年、声優を目指して東京俳優生活協同組合の養成所に入所。1985年、OVA『メガゾーン23』で声優デビューした。以降、声優として『エヴァンゲリオン』シリーズの加持リョウジ役、『それいけ!アンパンマン』のチーズ役など、数々のアニメーション作品に出演。洋画の吹き替えでは、ジム・キャリー、エディ・マーフィーをはじめ、多くの海外俳優を担当。そのほか、バラエティ番組の司会、ラジオのDJなど、幅広く活躍中。
2022年09月13日