食べすぎや不規則な食生活で何だか胃の調子が悪い…。病院に行くほどではないけれど、何か薬を飲みたいってときありますよね。数多くある胃薬の中でどれを選べばよいのでしょうか?現役薬剤師のかえでら実子さんに、ストレスなど症状別のおススメを教えてもらいました。年末に向けて胃の不調が増加します。11月半ばになり、急に冬らしくなってきましたね。秋から冬にかけての今、食のイベントに参加したり、旅先でのグルメを楽しんだりと、普段よりも偏った食事になっているかたも多いのではないでしょうか。また年末に向けて仕事が忙しくなってくる時期でもあり、決まった時間に食事ができなかったり、夕飯が夜遅くになってしまったりして、食生活が乱れてしまっているかたもいらっしゃるでしょう。そんな日々を過ごしていると「最近なんだか胃が重たくて食欲が落ちてる」「胃が痛くてつらい…」といった症状がでてくるかもしれません。そこで今回は、胃の不調症状やその原因に対する市販薬の紹介をしていきたいと思います。胃の調子が悪くなるメカニズム胃の主なはたらきは、食道から入ってきた食べ物を体が吸収しやすいように消化することです。食べ物が胃に入ると胃液が分泌され、この胃液に含まれている胃酸によって食べ物が消化されます。食べすぎたり飲みすぎたりすると、それを消化しようと胃がずっと動くことになり、結果胃が疲れてしまいます。するとだんだん消化する力がなくなり消化不良をおこしまうのです。また、胃酸は消化に必要な成分ですが、胃の動きが悪くなると食道のほうに上がってきてしまい、胸やけをおこします。さらに、食べすぎやストレスにより胃酸が必要以上に多く出ると、胃の壁が荒れて痛くなることもあります。このような症状は、胃酸の出る量やはたらきを少し抑えたり、胃の壁を修復することで改善します。それでは市販の薬をいくつか紹介していきましょう。市販で買える!薬剤師おすすめの胃薬ガスター10(第一三共ヘルスケア株式会社)H2ブロッカーと呼ばれる成分が入っており、胃酸の出過ぎを抑制し胃痛や胃もたれを改善します。病院で処方される薬にも含まれている成分で、胃の不調にはよく使われています。1日2回まで服用することが可能で、一度服用したあと症状が続く場合は8時間以上あけてもう1錠飲むことができます。<商品情報>ガスター10価格:1箱12錠入り ¥1,738(税込)編集部調べ太田胃散(株式会社太田胃散)4種類の制酸剤が出過ぎた胃酸を中和し、強すぎる胃酸のはたらきを弱めます。さらに7種類の漢方成分の香りや苦みで胃のはたらきを改善。またビオヂアスターゼという消化酵素がデンプンやタンパク質の消化を助けます。メントールによって飲んだ時スーッとする感じもあるので、食べ過ぎて胃がもたれているかたにおすすめです。<商品情報>太田胃散<分包>価格:1箱16包入り ¥649(税込)編集部調べパンシロンAZ(ロート製薬株式会社)胃を守っている胃粘膜がストレスや食生活の乱れなどで荒れてしまうと、胃もたれや胃の痛みといった不調症状を起こします。こちらの薬は、その胃粘膜を修復する成分が2種類と、胃の粘膜にくっつくことで膜をつくり胃の表面を保護する成分が配合。忙しくて不規則な食生活になっているかたや、ストレスで胃がキリキリと痛むかたにおすすめです。<商品情報>パンシロンAZ価格:1箱20包入り ¥1,023(税込)編集部調べブスコパンA錠(エスエス製薬株式会社)普段は先に紹介したような薬で対応できているけど、時々さしこむような胃の痛みのあるかたや、食事をしたあとに急に胃がきゅっと痛むときによく効きます。こちらは毎日服用するのではなく、症状のあるときのみ使用するようにしてください。<商品情報>ブスコパンA錠価格:1箱20錠入り ¥1,082(税込)編集部調べ荒れた胃を元気にするのは大変胃の不調症状は食べすぎやお酒の飲みすぎだけではありません。ストレスや忙しさで無意識にコーヒーを飲みすぎたり、タバコを吸う本数が増えることでもおこります。胃が荒れるのはすぐですが、健康な状態に戻すのはそれよりも時間がかかります。これから師走にむけて忙しくなるかたも多いと思いますが、なるべく規則正しい生活を心がけ、ストレスをためないようにしましょう。それでも胃の調子が悪くなったとは、食生活を改善したり、紹介した薬を飲むなど、なるべく早くケアするようにしてくださいね!<筆者情報>かえでら実子さん某薬科大学卒業後、ドラッグストアや調剤薬局に勤務し、調剤業務や在宅医療に携わる。趣味は美容とイラスト。現在ネイルの勉強中で、先日ネイリスト検定3級を取得。文・かえでら実子
2023年11月18日妊娠中に、なんだか胃の調子が良くない、胃がムカムカする、胃が痛いなどの症状が起きたことのある妊婦さんも多いのではないでしょうか。妊娠中は、胃の調子が悪くなりやすいです。そのため、今回は妊娠中に起こりやすい胃の不調の原因や胃薬の服用、注意したい胃の不調についてお話しします。 妊娠中に胃の調子が悪くなるのはなぜ?妊娠中の生理的な変化によって胃の調子が悪くなりやすい理由は、以下の5点が挙げられます。 ①妊娠を維持するホルモンの作用妊娠すると、妊娠を維持する作用をもつプロゲステロン(黄体ホルモン)とリラキシンいうホルモンがお母さんの体の中で増加します。このホルモンは、消化器系の筋肉の運動を緩めさせて、腸の動き(蠕動運動)を抑制する作用があります。これは、食べ物を胃や腸内をゆっくりと時間をかけて移動させることで、効率よく栄養の吸収をするためですが、時に消化不良を招くこともあります。食道と胃の境界にある筋肉が緩むと、食べ物が胃液と共に胃から食道へ逆流して胸やけが起こることもあります。妊娠週数が進むと大きくなる子宮が胃を押し上げるため、なんだか胃の調子が悪い、胃がムカムカする、胃が痛いなどの症状が起こりやすいです。 ②食生活の変化妊娠初期はつわりがあるときに、水分を多く含む食品や冷たい飲み物を大量に摂取することで、胃腸が刺激され消化不良になり調子が悪くなることがあります。妊娠中期以降は、食べる量の変化や、胎児の成長と共に子宮が胃腸を圧迫することで、消化不良を起こしやすく、なんだか胃の調子が悪い、胃がムカムカする、胃が痛いなどの症状が起こることがあります。胃の調子が悪いときは、できるだけ脂肪の少ない食品をやわらかく調理した食事を摂るように心がけましょう。酸味や辛味の強い料理、水分の多い食品、乳製品、炭酸飲料は、胃腸に対する刺激が強いので控えめが良いでしょう。 ③つわりで何度も嘔吐を繰り返す、嘔吐物に血液が混じるつわりで何度も吐くことで、胃の調子が安定しないことがあります。何度も繰り返し吐くことで、食道と胃の境界付近の粘膜が傷つき、血を吐くことがあります。この状態をマロリーワイス症候群といいます。妊婦さんが繰り返し吐いてマロリーワイス症候群となった場合、血を吐くといっても実際に交じっている血液は少量で、直ちに赤ちゃんの生命や母親の健康に危険が及ぶというわけではありません。しかし、胃の不調があって血液混じりの嘔吐をする場合は、つわりが重症で最低限の体の中のバランスが崩れていることが多いので、早めに産婦人科を受診しましょう。 ④鉄剤の内服による副作用妊娠中は貧血になりやすいですが、病院で処方された鉄剤を内服し始めたばかりの時期に、なんだか胃の調子が悪い、胃がムカムカする、胃が痛いなどの副作用が起こることがあります。共に処方された鉄分の吸収を促すビタミンCを含むビタミン剤を内服することで、消化不良が助長されるケースもあります。鉄剤は胃酸の影響を受けるため、胃薬(胃粘膜保護剤)と共に内服する、あるいは内服のタイミングを工夫する(例:食後ではなく、食間や睡眠前に内服する)ことで、副作用である胃のムカつきや胃痛などの消化器症状を抑えることもできます。鉄剤を内服し始めてから胃の調子が悪いと感じる場合には、次回の妊婦健診を待たずに医師や助産師へ相談しましょう。 ⑤精神的なストレス妊娠に伴う緊張感や生活環境から受けるストレスによって自律神経が乱れ、胃の調節機能が働かなくなることがあります。本来食物を消化するときに分泌される胃酸が、食物がないときにたくさん分泌されることで、自分の胃粘膜を攻撃して胃痛が起きたり、胃もたれや胸やけなどが起きる原因となります。 妊娠中に胃の不調…胃薬を飲んでも大丈夫?妊娠中は生理的な変化によって胃の調子が悪くなりやすいですが、自己判断で市販の胃薬を内服したり、自然治癒を期待して受診せず症状を長引かせたりすることはやめましょう。 なぜ胃の不調が起きているか原因は診察しないとわかりません。胃薬には、胃酸の分泌を抑えるタイプ、胃酸を中和するタイプ、胃粘膜を保護するタイプなど数種類あります。医師が診察をして原因に合わせた処方をしますので、市販の胃薬や過去に処方された胃薬を自分の判断で内服しないようにしましょう。 妊娠中に一般的に処方される胃薬の主成分の一般名と代表的な商品名は以下の通りです。 ・制酸剤一般名:乾燥水酸化アルミニウムゲル水酸化マグネシウム(商品名:マーロックス)・防御因子増強剤一般名:スクラルファート(商品名:アルサルミン)一般名:テプレノン(商品名:セルベックス)一般名:アズレン L- グルタミン(マーズレン S)一般名:レバミピド(ムコスタ) 以下のH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬は、胃酸分泌を抑える効果が高く、胃酸過多の状態にはとても有効な薬剤です。妊娠中でも、必要性があれば使用しても良い薬剤(一般的に有益性投与と呼ばれています)に分類されていますし、FDA(米国食品薬品局)の安全性カテゴリー分類でもほぼ安全とされていますが、担当の医師と相談し慎重に使用するのが良いでしょう。 ・H2受容体拮抗薬一般名:ファモチジン(商品名:ガスター)一般名:シメチジン(商品名:タガメット)・プロトンポンプ阻害薬一般名:ランソプラゾール(商品名:タケプロン) つわりや胃部の不快感などに、漢方薬も広く使用されています。小半夏加茯苓湯、五苓散、六君子湯などが用いられていますが、漫然と使い続けるのは避けましょう。 妊娠中の禁忌薬についてプロスタグランデイン製剤(商品名:サイトテック)や制吐剤(商品名・ナウゼリン)などのように妊娠中には、使用禁忌の薬剤もありますから、いずれのお薬を使用するにしても、勝手に使うのではなく、担当の先生ときちんと相談してから使うようにしましょう。※参考:薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳第2版南山堂 有益性投与について胃薬を含めて多くの薬剤は、製薬メーカーの説明書では、妊娠または妊娠の可能性のある婦人は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとあります。このような表示ではそれら薬剤の使用はほとんど問題ないのですが、医師や薬剤師に相談しましょう。 胃痛以外に症状があったら要注意!妊娠中に胃が不調となることは珍しいことではありませんが、妊娠経過に影響することもあるため見過ごしてはいけない症状でもあります。下記のようなケースは早期発見と治療が大切です。 ・細菌やウィルスなどの感染の可能性がある。妊娠中は抵抗力が弱まり、妊娠していない状態よりも細菌やウィルスなどに感染しやすいため、食中毒や胃腸炎を起こすことがあります。胃やおなかが痛いだけでなく、嘔吐や発熱を伴う場合は、早めに産婦人科へ受診しましょう。やむを得ず、内科や消化器内科など他の診療科や医療機関を受診する場合は、妊娠していることを伝えて診察を受けましょう。・HELLP(ヘルプ)症候群の可能性がある。HELLP(ヘルプ)症候群とは、赤血球が壊されること、肝機能の悪化、血小板の減少を特徴とした母子の生命が急激に危険な状態になる疾患です。HELLPは、Hemolysis(溶血:血液中にある赤血球が破壊されること)Elevated Liver enzyme(肝酵素上昇:肝臓の機能が悪くなること)Low Platelet(血小板減少)の頭文字に由来しています。 多くは妊娠高血圧症候群に合併して起こりますが、合併がなく突如発症することもあります。明らかな原因は不明ですが、症状を放っておくと臓器にダメージを与え母親の命にも関わる病気なので、妊娠を終了させること=出産することが唯一の治療方法です。 HELLP症候群は、主に妊娠後期(妊娠28週以降)~出産後48時間以内に起こることが多く、突然胃痛(心窩部痛)に襲われ、疲労感や吐き気・嘔吐、下痢の症状を伴います。妊娠中に起こりやすい症状と似ているため、単なる体調不良や風邪と思ってしまう妊婦さんもいますが、母子の生命を守るためには早期発見と治療が大切です。突然胃痛が起きて身動きがとれない、吐き気や嘔吐など症状がある場合は、直ちに産婦人科へ受診しましょう。 まとめ妊娠中は、胃の不調が起きやすいですが、自己判断で市販の胃薬を飲んだりせずに調子が悪いときは医師の診察を受けて適切な治療を受けましょう。対策を取ることで、症状は軽減できますので、無理をしないようにしましょう。 参考:・産婦人科診療ガイドライン産科編2017・薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳第2版南山堂・医薬品情報データベース 監修者:医師 医療法人至誠会 梅田病院院長 北川 博之 先生昭和56年愛媛大学医学部卒業。その後愛媛大学付属病院にて産婦人科講師、助教授として勤務。愛媛県立医療技術大学教授を経て、平成20年より現職の梅田病院に院長として就任。現在も愛媛大学、広島大学などで非常勤講師として教育にも従事。著者:助産師 古谷真紀一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。
2019年09月18日お酒の機会が増えるこの時季、「体調を崩さないために」と胃薬を飲む人も増えることでしょう。そこで気をつけたいのが「本当に自分の症状にあったものを選んでいるか」というところ。単にCMのイメージで選んでいませんか?そこで今回は、上手にお酒と付き合いながら年末を乗り切るための胃薬についてご紹介します。お話をうかがったのは、都内のドラッグストアに勤務する薬剤師のMさん。昨今のドラッグストアでは、スタッフの説明を受けず、セルフで薬を買っていく人も増えているみたいですが、Mさんのお店では、基本的に薬のほとんどはカウンターの中。だから、お客さんの話をちゃんと聞いてから、症状に合った薬を出す。そんな当たり前のことが、当たり前にできるスタイルのお店に勤めている方です。■胃もたれ、膨満感に効果的な胃薬――連日お酒が続くと、やっぱり胃の働きが弱くなりますよね?「そういう方は、もたれや膨満感を訴えることが多いですね。そんなときには、胃を元気に動かしてくれる生薬を使っていたり、消化酵素が配合されたものがおすすめです。例えば、弱った胃の働きを高める香砂平胃散をベースにした『タケダ漢方胃腸薬K』とか、あとはもたれの原因になりやすい脂肪分の消化に優れた消化酵素のリパーゼ配合のもので『第一三共胃腸薬プラス』や『シオノギS胃腸薬』、『キャベジン』とかですね」――基本的に、食後の胃もたれと同じように考えていいわけですね。「ただ、基本的に漢方薬もしくは生薬メインのものは食前に、消化酵素配合のものは食後に飲むのがいいでしょう」■むかつき、胸焼け、胃痛に効果的な胃薬――空腹時の胃酸過多によるむかつきや胸焼け、さらにひどくなると痛みなどの症状も多いですよね。「一番手っ取り早いのは、胃酸を出さなくさせてしまうこと。そこで『ガスター10』は即効性も高く、効果的に見ても一番でしょう。胃粘膜を修復する働きもありますし、鎮痛効果も高い。ただ、効果が高い反面、あまり連用するのも問題がありますね。痛みを一時的に抑えることで、その背後にある疾患を見逃してしまったりなんてこともありますから。それと、薬剤師がいないと買えない1類のお薬ですから、いつでも手に入るというわけでもないですし」――そうなってくると、ほかの制酸剤や鎮痛剤配合のものなんかではいかがでしょうか。「M1ブロッカー配合の『ガストール』は結構評判がいいですね。あとは昔から人気の『サクロン』シリーズ。定番の『サクロンS』はもちろん、吐き気の抑制にも働く『サクロンQ』もリピーターが多いですね」■販売スタッフの説明はやっぱり大事――胃痛といえば、『大正漢方胃腸薬』も、成分的にはいいお薬といって間違いではないですよね。「そうなんですけど、おすすめするなら、『大正漢方胃腸薬』よりも『大正胃腸薬K』ですかね。どちらも急性の胃痛症状などに適した安中散+芍薬甘草湯という処方なんですが、大正胃腸薬Kのほうが、芍薬甘草湯のエキス量が濃い。つまり効果も高いんです」――とはいえ、断然CMがガンガン流れている『大正漢方胃腸薬』のほうが売れているんじゃ……。「セルフであればそうでしょうね。うちでは両方置いていますけど、『どうしても』という方以外はKのほうをすすめています。ちゃんと『効き目がいい』と説明した上であれば、ほとんどの方がKを買っていかれますよ」CMのイメージだけでなく、ちゃんと説明を聞くことが大事なんですね。(OFFICE-SANGA 岩井浩)
2012年12月15日