「自閉症」について知りたいことや今話題の「自閉症」についての記事をチェック! (3/5)
個別面談で知らされた事実Upload By アマミモヨリ小学校の個別面談で、宿題について先生から聞かれました。Upload By アマミモヨリうちでは宿題が終わったら、ゲームをしても良いことになっています。なので早く遊びたいヒルマは、学校から帰るとすぐ宿題にとりかかるのです。毎日、積極的に取り組んでいることを先生に伝えると、Upload By アマミモヨリ提出していない宿題が山ほどあって驚きました。でもね、わたしは主張したい。連絡帳に書いてある宿題は、わたしがチェックしているので、見落としはないはず!と。それなのに未提出リストには、わたしの知らない課題がいくつも載っていたのです。息子が連絡帳を書かない理由Upload By アマミモヨリじつはヒルマ、5年生になってから、連絡帳に記入してくるのが週2~3回になっていました。高学年になると連絡事項が少ないのかと思っていたら、全然ちがいました。4年生までは連絡帳を書く時間があったけれど、今は各自で時間を見つけて書くのだそうです。それはもう絶望的にヒルマが苦手とする分野です。「時間のある時にあげてください」と先生から言われた植物の水やりは、時間のある時がいつか分からず、3年間鉢植えの土を枯らしてきました。今後は先生が声をかけてくれることになったので、とりあえずひと安心です。夏休みまであと4日さて、たまった宿題の提出期限まであとわずか。計画を立ててクリアしていけば、何とか間に合いそうです。Upload By アマミモヨリ帰宅後、すぐに連絡帳を確認しました。今日はちゃんと書いてある!とホッとしたのも束の間、Upload By アマミモヨリ宿題を学校に忘れてくるという痛恨のミス。さすが「自称忘れ物のプロ」であるわたしの子です。こうして宿題がたまっていくのですね。Upload By アマミモヨリその後の数日を息子の宿題(当日の宿題もあるので大量)に費やして、Upload By アマミモヨリギリギリで提出期限に間に合いました!わたしたち、がんばりました!なのにその余韻もさめないうちに、Upload By アマミモヨリ夏休みの宿題をどっさり持ち帰りました。もう、イヤだよぉ…。子どもの宿題なのに子どもの宿題に、なぜ親のわたしがこんなにプレッシャーを感じるのでしょう。のん気に出かけて行くヒルマの背中を見送りながら、小学生の頃毎日のように平気で忘れ物をし続けたわたしのようだと思いました。Upload By アマミモヨリあの頃よく叱責されたものだけど、母もこんな気持ちだったのでしょう。親がいくら怒っても子どもは簡単には変わらないってこと、身をもって気づけたのだから、わたしの忘れ物癖もムダではなかったと思うのです。
2019年08月06日無事、仕事が決まったものの...乗り越えなくてはならないハードルがたくさんありました昨年春から仕事をしている私ですが、仕事を始めるにあたり一番心配だったのはやはり子どもたちのことでした。けれど定型発達の次男は幼さが抜けてしっかりしてきているし、自閉症の長男は平日、放課後等デイサービスに通っているので帰宅時間はだいたい18時。間に合うよう働けば問題ありません。ありがたいことに、かつてお世話になっていた会社で事務のパートが決まりました。平日の10時から16時までの勤務なので、長男の帰宅時間にも間に合う。ほっとしました。けれど、気がつきました。しまった!夏休みをどうしようかと。Upload By シュウママダメもとで聞いてみよう・・放課後等デイサービスに聞いてみました長男が通っている放課後等デイサービスは、学校のある日は学校に直接お迎えに行ってくれ、18時に自宅まで車で送ってくれます。けれど、春休みや夏休みといった長期休暇の期間は、10時から15時30分までになります。Upload By シュウママ私の勤務時間は10時から16時。これでは夏休み中は、放課後等デイサービスを利用したとしても私の出勤時間にも長男の帰宅時間にも間に合いません。一度は仕事を諦めようかと思ったのですが、藁にもすがる思いで、通っている放課後等デイサービスに相談してみることにしました。放課後等デイサービスから、意外な返事が!放課後等デイサービスの責任者の先生に仕事のことと夏休みのことをお話しすると、先生はしばらく考えて「それなら、長期休みの期間だけ預かり時間を延長しますよ」と言ってくださいました。「息子さんの他にも、実は同じように働いているお母さんから、時間を延長できないか相談を受けてます。大丈夫ですよ」そう笑顔を見せてくださったのです。Upload By シュウママそんな先生の言葉は、働く私の背中を押してくれるようで、とてもあたたかかったです。働くことを諦めないで。相談してみることで克服できることがあるかもしれませんもちろん、放課後等デイサービスによっては時間の延長に対応できないところもあるかと思います。けれど、もし私と同じように長期休みの問題で働くことを躊躇している方がいるのなら、すぐに諦めるのではなくて、一度放課後等デイサービスに相談してみて欲しいなと思います。もしかしたら解決することもあるかもしれません。仕事を始めてちょうど1年たちますが、こうした支援があるおかげでなんとか続けてこられています。もともと出不精なこともあって家庭内でストレスを溜めがちだった私ですが、仕事を始めてからは外に出て働くことで気分をリフレッシュすることができるようになりました。そして夏休みを放課後等デイサービスで過ごすことは、長男の成長にもプラスになりました。通っている放課後等デイサービスでは、夏休みはプラネタリウムに行ったり、広い公園を走り回ったりして、家庭で過ごす以上に日々さまざまな活動に取り組むことができます。そのおかげで夜もぐっすり眠り、ご飯もたくさん食べ、元気に過ごしていました。放課後等デイサービスが働く私の背中を押し、長男の成長もサポートしてくれたのです。周囲の人に支えられ、さまざまな問題を乗り越えることができたことを痛感した1年でした。Upload By シュウママ
2019年06月27日サンちゃん、食べ方を工夫する4歳ごろ、麺をすすることが出来るようになったサンちゃん。ちゅるちゅるっと麺が口に吸い込まれていく様が見ていて爽快で、母はとても好きでした。しかし、しばらくしてサンちゃんは麺をすすらなくなりました。どうもその原因は、麺ではなく麺とともについてくるアレだったようです。さて、サンちゃんはアレを回避すべく新しい食べ方を考えたようですが…Upload By たなか れもんUpload By たなか れもんUpload By たなか れもんちなみに、汚れた手はすぐにふきたがってテーブルにこすりつけたりするので、目下お手ふきでふく練習中です!2019年6月28日発売、たなかれもん初の著書『つま先立ちのサンちゃん』。サンちゃんと弟のワッくん、ママ・パパの4人の毎日が描かれています。描きおろしの漫画に加え、療育園の仕組みなども紹介されています。監修は小児科医で医学博士の平岩幹男先生。
2019年06月21日「はじめて履いた靴」へのこだわり『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。どんなにかわいいわが子であっても、子育てには苦労はつきもの。自閉症など障害のある子の子育ては、その特性からさらに大変なことが多くあります。その一つがこだわりに付き合うことではないでしょうか。Upload By 立石美津子「僕が歩き始めたとき、人生で最初にお母さんが買ってくれた僕の靴。それは10㎝のベージュ色の可愛い靴でした」何だか歌の歌詞のようですが、そんな淡く美しいものではありませんでした。「これが靴という物だ」と本人は思ったのでしょう。それを履くことが心地よくなります。そこまではOKでした。ところが、毎日これを履いていることで次第にパターン化し、「このデザイン以外の物は僕は受けつけません!」となってしまい、こだわりが誕生しました。息子が、1歳のときのことです。まさか、はじめて買ってやった靴にここまでこだわることになるとは…買った当時は想像もしていませんでした。10.5㎝に。足が少し大きくなったけれど…Upload By 立石美津子しばらくの間、10㎝の靴を履かせていましたが、成長と共にきつくなってきました。そこで全く同じ色、デザインの10.5㎝の靴を買ってやりました。ここで私が違うデザインのものを与えていたら、結果は違っていたのかもしれませんが…たまたま私が同じ靴を続けて買ってしまったことで完全にパターン化し、「この靴でなければならない」となってしまいました。11㎝の靴を求めて子どもの足はドンドン大きくなります。10.5㎝の靴も次第にきつくなりました。そこで、同じ店に買いにいったところ、同じデザインのものはありましたが、11㎝の青色の靴しかありませんでした。それを買い、家に帰って履かせようとしたところ断固拒否、火のついたように泣き叫びました。翌日のお出かけのとき、ベージュの靴を見せて「これはもうきつくなったから、今日からははかないの。青いこっちの靴よ」と言い聞かせましたが通じず、暴れて履いてくれません。仕方なくきついベージュの靴を履かせたら機嫌が直り、きつい靴を履いて出かけました。私はメーカーに問い合わせし、他の靴屋に行き、サイズ違いの11㎝、11.5㎝、12㎝の同じデザインのベージュの色を買い置きしました。生産終了!さあ、どうするところが、息子の足がさらに大きくなり、12㎝ではきつくなりました。メーカーに問い合わせると、すでに生産は終了したとのこと。仕方なく、少しでもデザインが似ている色もベージュの物を買いました。ところが、前と同じく断固拒否!でも、私が頑張ってもないものはなく、その靴を用意することはできません。息子がどんなに暴れても、自傷しても、どうしてやることもできません…。お気に入りの靴はきつくなってしまっているので、息子はかかと部分を潰し、サンダルのような履き方をするしかなくなってしまいました。ゴミ箱に捨てた!?でも、これではやはり歩きづらかったのでしょう。ある日、ふと台所の生ゴミ用のゴミ箱を開けてみたら…そこに“ベージュの12㎝のこだわりの靴”が捨ててありました。私が捨てたのでもなく、本人に「捨てなさい」と命じたわけでもありません。自分で納得して、捨てたのです。「ああ、自分で自分をやっと納得させたんだな」と思いました。捨てた場所は「生ゴミ」のゴミ箱でしたが、それをとがめることはせず、「履けなくなったから、辛いけど自分で捨てたんだね」と褒めました。どんなデザインの靴でも受け入れられるようにこのことがあってからは、靴に関しては足が大きくなって違うデザインになっても、受け入れてくれるようになりました。今、振り返ってみると、洋服については衣替えのときは苦労したものの、それ以外は「ボタンが付いているものはダメ」というくらいで「この服でなければ着ない」というこだわりはなく、与えたものをすんなり着ていました。私は、息子の靴へのこだわりにばかりスポットを当ててしまい、必要以上に悩んでいたのかもしれません。あれだけこだわっていた息子自身、成長する中で折り合いをつけ、どんな靴でも履けるようになりました。子どもが幼いころには周りが“本人のこだわり”に応じてやり「お母さんは僕の嫌がることはしない」「自分に心地よいことを周りが認めてくれる」「大人は自分を守ってくれる人間である」このように安全基地を脅かさないことで、幼いころ、安心できる日が続くと大きくなったとき、我慢もできるようになるのだと、今は思っています。Upload By 立石美津子27.5㎝の靴を見てUpload By 立石美津子どんな靴でも履けるようになった今…「僕が歩き始めたとき、人生で最初にお母さんが買ってくれた僕の靴。それは10㎝のベージュ色の可愛い靴でした」ようやく、はじめての靴は懐かしい思い出となりました。現在、18歳の息子の足のサイズは27.5㎝。大人の男の、少しすっぱい臭いがする靴が玄関に並んでいます。
2019年06月18日空まで飛んで行きたいな小さい子向けの箱ブランコが窮屈になってきたサンちゃん。大きい子向けのブランコに乗ってみるも、なかなか姿勢を保って乗り続けることが難しい様子で、すぐずり落ちてしまうから、お腹をのせてユラユラしていたり。やっぱり、ビュンビュン勢いよく揺らせる、いつものブランコが楽しいよね…。そんなサンちゃんをそっと見守る大きい子向けのブランコくんがいました。果たしてサンちゃんとブランコくんは仲良しになれるのでしょうか…?Upload By たなか れもんUpload By たなか れもんUpload By たなか れもんサンちゃんはこれくらいのことではへこたれないよ!これからもよろしくね、ブランコくん。
2019年05月20日自閉症の長男が10歳になった年に、小さな妹が誕生しました。年が近い上の妹と双子のように育ってきた長男にとって、小さな妹は初めて「自分が守ってあげたい」と思う存在でした。 今回は、下の子の誕生によって長男に初めての感情が生まれたこと、その感情が大きな成長につながり、兄妹の絆が深まったエピソードを紹介します。 年の近い妹に依存していた自閉症の長男わが家の長男に障害があることを知ったのは、長女が生まれてすぐの2歳のころ。年齢相応のことが難しく、幼いころから兄妹は双子のように育ってきました。しかし、成長とともに長女が長男を追い越すことが増え、気が付けば兄妹の関係はすっかり逆転! 「しっかり者の妹に甘える兄」。それが当たり前になり、ますます自立から遠のいていく長男の将来を親として不安に感じていました。そんななか、わが家に新しい家族が誕生したのです。 「お兄ちゃんが守ってあげるよ」家族全員立ち会いのもと生まれたのは、とても元気な女の子。8歳の長女は、待望の妹だったため大喜びでした。しかし、10歳の長男は、どうしていいのかわからず戸惑っている様子。 うれしいけれどうまく言葉にできない長男に、「あなたの妹よ」と声をかけると、少し考えて生まれたての妹にこう話しかけました。「はじめまして、赤ちゃん。これからお兄ちゃんが守ってあげるよ」。長男が初めて自分から誰かを守りたいと思った瞬間だと感じました。 次女の誕生で深まった兄妹の絆次女が生まれてから、長男は立派なお兄ちゃんになろうと一生懸命でした。そんな兄の姿を見た長女は、自然と長男を兄として頼ることが増えてきたのです。もちろんうまくいかないこともたくさんありましたが、小さな妹にとって、自慢のお兄ちゃんになりたかったのだと思います。「これは俺にまかせて!」そう言って、何度失敗してもめげずに、2人の妹を引っ張っていこうとする姿を見せてくれるようになりました。 長男の障害のことがあり、長い間、3人目の子ども産む勇気が持てませんでした。しかし、小さな妹の誕生が兄妹みんなにいい変化をもたらしてくれたことで、改めて「勇気を出して産んでよかった!」と思えました。これからも兄妹3人がなかよく育ってくれることを願っています。著者:戸塚麻心発達障害のある長男、長女、年の離れた次女の三児の母。保育園・アパレルなど幅広い業種を経験し、結婚・出産。子育て中に2級FP技能士を取得し、コンサル会社に勤務。現在は不定期でアシスタント業務をしながら記事を執筆中。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年05月04日自閉症の長男と、定型発達の次男。わが家の「翌日の準備」風景わが家の双子の息子たちは、4月から小学5年生になります。今思うと、これまで本当にあっという間でした。子どもたちが低学年のころ、私は毎晩2人のかばんの中身を点検していました。Upload By シュウママ定型発達の次男の場合、低学年のうちは先生が翌日の予定を細かく板書してくれていたようで、連絡帳を見れば次の日の必要なものがすぐわかりました。私は、連絡帳を確認して「あれを持っていって」「これを忘れないで」と次男に指示していました。そして自閉症の長男の場合は、連絡帳を見ながら私が必要なものを準備していました。中学年になってくると、次男は「習字の墨汁がないから補充してほしい。それから明日は4時間授業で、給食はないよ」というように、必要なことや予定など自分から私に伝えてくれるようになりました。しかし長男の方はまったく変わらず、今日あった出来事も明日の予定も、自分から教えてくれることはなかったのです。Upload By シュウママ明日は6年生の卒業式。連絡帳をチェックしていたら...。つい先日、6年生が卒業式を迎える日の前夜のこと。私は、いつものように長男の連絡帳を確認していました。「明日は、在校生はモノトーンの服で登校してください」という先生からのコメントを読み、それに合った洋服を出していたところ、長男が横から連絡帳を覗き込んできました。そして何を思ったか、私の服の袖をぐいぐい引っ張るのです。Upload By シュウママ母の袖をつかみ、長男が何度も繰り返した言葉「どうしたの?」と聞くと、長男は切羽詰った表情で繰り返しこう言いました。Upload By シュウママ「何のこと?」と思った私が首をかしげていると、長男はいら立ったように再び「あした、おべんとう!あした、おべんとう!」と大きな声で言いました。その瞬間「あっ!」と思い、私はあわてて学校から配布されている1週間の行事予定表を確認しました。すると…そこには、こう書かれていたのです。Upload By シュウママ前日の連絡帳には書かれていなかったけれど、1週間の行事予定にははっきり「お弁当が必要」だと書いてある!きちんと確認していなかった!私は大慌てで炊飯器のタイマーを設定し、冷蔵庫の中身を確認しました。大丈夫、お弁当の材料はある...。ほっとして振り返ると、長男がにんまり笑っていました。ゆっくりかもしれない。でも、確実に成長しているんだね「明日、お弁当の日だったんだね。教えてくれてありがとうね。ママ、忘れてたよ。」そう言うと、長男はうれしそうにどや顔をしていました。Upload By シュウママおそらく先生から、「明日はお弁当ですよ。おうちの人に伝えてね」などと言われていたのでしょう。それを長男は覚えていて、きちんと伝えてくれたのです。長男が学校からの連絡事項を教えてくれたのは、初めてのことでした。長男も、もうすぐ5年生。小さな成長が見えて、なんだかとてもうれしい1日でした。
2019年03月29日ご飯が熱い!癇癪をおこした長男ある日、夕飯を食べていたときのことです。炊きたてのご飯をほおばった長男は、思いのほか熱かったのでしょうか。私が目を離したすきに、あろうことかご飯の入った茶碗をテーブルにひっくり返しました。Upload By シュウママ振り返ると、長男は怒ったような顔をしながら固まっていました。長男は、癇癪をおこすとよく物に当たります。やってしまった直後はだいたい硬直しています。衝動的に動いてしまって、後で反省するというのがパターンですが、そもそもひっくり返しちゃダメです。私は長男に向き合って叱ろうとしました。叱ろうとした瞬間、長男が発したひとことすると長男は大きな声で言いました。Upload By シュウママ私は一瞬耳を疑いました。先に食べ終わって本を読んでいた次男も一瞬意味がわからず、ぽかんとしていましたが「いや、オイラやってないし」と抗議しました。ところが長男はさらに「おとうとくん、やったねえ」と言うではありませんか。一度ならず二度までも…。バレバレではあるものの長男が初めて嘘をついたのです。初めての嘘に感心…している場合じゃなかった!そのとき、私が一瞬思ったのは、「嘘をつけるようになるなんて、成長したな…!」でした。ついこの間まで、単語もろくに言えなかった長男が、自分の行為について考えを巡らせ、自分を守ろうと言葉を選んで話したということが、なにか感慨深かったのです。イヤイヤ!もちろん、自分を守るためとはいえ、他の人がやったことにするのは、ついてはいけない嘘です。ここはきちんと説明して叱らなければいけません。けれど説明して長男に伝わるだろうか…?どうやったらわかってもらえるだろうか…。そう考えたとき、ふとある考えを思いつきました。どうやって「それはダメ」を伝える?私は次男にこっそり耳打ちしました。Upload By シュウママ私が作戦を説明すると次男もノリノリで参加してくれました。そして、私は次男に向かって「ご飯をひっくり返すなんて、なんてことするんだ!」と言って次男を叱っているふりをしました。「えーん。オイラやってないよ」と次男が泣き真似をしても「嘘だ。認めてちゃんと謝るんだ!」と、続けて怒りながら横目で長男の反応をうかがいました。Upload By シュウママ効果てきめん!反省した長男すると長男は自分がついた嘘で弟が理不尽に怒られている…という状況を理解できたのでしょうか。口を開けてすくみあがっています。Upload By シュウママ私は長男の方に向き直り「茶碗ひっくり返した人は誰?」と聞きました。すると長男は泣きながら手を挙げました。Upload By シュウママ十分反省しているように見えました。「嘘をついたらいけないよ」と私が言うと、長男はこくりと頷きました。その日以来、長男が自分でやったことを次男のせいにしたことはありません。子どもの心や言葉の表現力が成長していくことはとても幸せなことです。けれど、発達障害であってもそうでなくても、悪知恵も同時に育っていくので、気をつけていかないとな…と思った出来事でした。
2019年02月28日スパルタ特訓時代『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。わが子がしゃべらない…、言葉が少ない…、変な言葉遣いをすると、周りの子が上手にしゃべっているのを見て焦ったり、比べてしまったり。つい「言葉」だけにスポットを当ててしまい、「わが子の言葉を増やそう!」と必死になってしまうのではないでしょうか?かつての私もそうでした。でも、言葉を増やそうとすればするほど、やたら“オウム返し”が増えるだけでした。母「これは葉っぱよ、葉っぱ」子「これは葉っぱよ。葉っぱ」母(怖い顔になり)「そうじゃなくて、葉っぱ!」子「そうじゃなくて、葉っぱ」母(更に怖い顔になり)「葉っぱ!」子「葉っぱ」母は「やっとできるようになった」とホッとします。しかし!この訓練により、オウム返しが定着してしまい…。母「お名前はなんですか」子「お名前はなんですか」母「お名前はなんですか。立石勇太でしょ!」子「お名前はなんですか。立石勇太」(質問者の言葉までセットで言ってしまう)となってしまい、ガッカリ。そんな経験ありませんか?母「お名前を教えてください」子「…(無言)」という風に、質問の仕方を少し変えるだけで、途端に固まってこともあります。以前、息子とタクシーに乗ったときのことです。運転手さんに、「僕のお名前は?」と聞かれた息子は、「山田太郎※」とタクシーの運転手のネームプレートを読み上げました。オウム返しが減ってからも、会話がなかなか噛み合いません。※ここでは仮名にしています言葉を話す意味よく考えてみると、言葉って単語が増えるだけではダメで、「相手と関わりたい」という強い動機があって発達していくもの。電車の型番、国の名称、リンゴの銘柄を「王林、ジョナゴール、シナノスイート、世界一、富士…」と唱えていても…「ママ、今日は電車に乗ってお出かけしたい」とか「「お母さん、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」とはなかなか言ってくれないものです。英語だって英単語を山ほど知っていても、「外国人と話したい」という動機がなければ、英会話は上達はしません。これと少し似ているのではないかと思います。息子がしゃべりはじめたきっかけUpload By 立石美津子息子が5歳、うどん屋に行ったときのことです。私と息子は、うどん屋さんで昼食をとっていました。そのとき、あと一本、うどんの切れ端が残っている器を、店員さんが下げようとしました。息子は”まだ、この一本を食べたいのだ!器を下げないでくれ!”という状況に追い込まれました。そして「まだ、食べる!」と叫んだのです。店員さんは慌てて器を戻しました。この経験をきっかけに「要求を叶えるためには言葉という便利なものがあるんだ」と理解したのか、徐々に、例えば「カレーライス食べたい」としゃべるようになってきました。オウム返しでも、心がこもっているUpload By 立石美津子オウムに「おはよう」と声をかけると「おはよう」と答えてくれます。でも、そこに心はこもっていないでしょう。人間が「おはよう」と言っても、オウムは「おはよう。今日の予定は?」「昨晩は良く眠れた?」と言う風には反応はしてくれないので、会話が続きません。息子は現在、18歳。今でもオウム返しをします。母「行ってらっしゃい」と見送ると息子「行ってらっしゃい」と元気に手を振りながら玄関から出ていきます。でもオウムとの決定的な違いは、言葉はオウム返しでも心がこもっていることです。オウム返しの「行ってらっしゃい」でも、ちゃんと意思表明してくれます。そこに心があるのが感じられます。こんな息子を毎朝、笑顔で「行ってらっしゃい~」と見送っている、親バカな私です。親が望む言葉に囚われないで私の身近に18歳になっても言葉がない子がいます。その子は自閉症ではありません。でも、その身振り手振り、表情でしっかりコミュニケーションが取れる子です。「これも言葉の一つなんだな」と感じています。ある自閉症のお子さんは、いつもは“要求語”しか発しないのに、先日はじめて、美しい満月を見あげながら「つき…」と言ったそうです。満月をきれいだと思った感性や、それを伝えようとしたこと(共感)を感じて、お母さんはすごくうれしかったそうです。息子は、要求があるときはたくさんしゃべりますが、会話のやりとりを続けることはまだなかなか難しい状況です。でも、あまり「言葉!言葉!」と焦らないで、その人にとってのそれぞれの言葉、親として見守ってやりたいと思っています。日本語って、難しい?息子のオウム返しがのり移ってしまい、息子が帰宅した時、つい私のほうから母「ただいま」と声をかけてしまい…息子「ただいま」オウム返しを予測して、息子が言うべき言葉を私が先回りして言ってしまうことも多く、なかなか学習できない息子です。でも、よく考えると「おはよう」「おはよう」「こんにちは」「こんにちは」「おやすみなさい」「おやすみなさい」なのに、「行ってらっしゃい」と言われたときは「行ってきます」、「おかえり」と言われたときは「ただいま」と、置かれた状況により言い回しを変えなくてはならない日本語って、実はすごーーーーーーーく難しいのかもしれませんね。2018年9月10日、医師・松永正訓氏が立石親子を取材、書き上げた新刊が発売に。発達障害がある子と母の、幼児期から今までに渡る育児について綴られています。
2019年02月07日毎日の宿題がつらすぎる。ひょっとして「学習障害」もあるの?自閉症スペクトラム障害のある小学3年生の長男は、自分の興味のない事にはなかなかとりくめず、小学校入学当初はよく癇癪をおこしていました。とくに漢字の宿題が苦手で、ドリルからノートに写すことをやりたがらず、漢字をマスにおさめるのも難しい…。文字の誤りを指摘すると机をたたきはじめ、冷静ではいられませんでした。でも、やる気になれば、ノートを写すことはできます。おちついていれば、文字をマスにおさめて書くこともできます。だから私には、怠けているようにも見えて、イライラと怒ってしまう。そんな毎日が耐えられないと感じていました。「でもどうして、低学年の宿題で毎回こんなに怒らなきゃいけないんだろう?」「どうして、こんな大きなマスに字をおさめられないんだろう?」「宿題をやっているのに、単元テストで漢字の点が全然とれないのはなぜなんだろう?」「鏡文字がなかなか無くならないのは、なんでだろう?」毎日の宿題のあまりの大変さに、「ひょっとして学習障害があるの?」と、学習障害という言葉が頭をよぎりました。そこで、専門家に相談してみました。すると「癇癪を起こすのは子どもが苦しんでいることを表しているんですよ。癇癪をおこさずにできるところまで、手助けをしてあげた方がいい」とアドバイスされました。あまりに癇癪がひとく、漢字の勉強も難しかったため、2学期からは通級で漢字学習に取り組んでもらうようになりました。また、「長男は怠けているのでなく、苦しんでいるのかもしれない…」そう気づいたところから、長男の特性に合った家庭での支援も始めました。今回のコラムでは、現在わが家で行っている「国語の漢字の支援方法」を紹介します。診断をまたず、すぐに対応をはじめた医療機関での診断がついてから、支援を始めるご家庭も多いかもしれません。でも診断がついたころには、子どもは努力しても報われないことを経験し、怠けていると勘違いされて傷つき、学習そのものへの意欲を失っている状態になってしまうかもしれません。ある療育病院でひらかれた勉強会に参加したとき、「診断をまたずに考えられる支援を始める事が大切」だと言う臨床心理士さんの言葉に出あいました。その言葉を聞いて、改めて「診断を待たずにすぐ動く」のは間違っていなかったと思いました。長男もまだ診断はついていません。でも、宿題や授業中に困り感があると感じたので、診断を待たずに学校の先生と相談して支援を始めることにしたからです。どこに相談したらいい?わが家の場合、まず、担任と通級指導教室に相談しました。小学校1年生の2学期のことです。漢字学習につまづきがあることを認めてもらえたので、1年生の時は通級の個別学習の授業数を増やし、通級で漢字学習に取り組める環境を用意してもらえました。スクールカウンセラーの先生にも「所属している通常学級でも、通級で受けているような学習支援をお願いしたい」と相談できたことで、通級の先生と連携いただき、学級でも通級での支援を踏まえた学習環境が整いました。学内・学外の第三者から、担任の先生に支援の方法を伝えてもらえる方が、どのように支援すればいいかも伝わりやすく、連携した対応をとっていただけるように感じました。家庭でできること先生に配慮をお願いするばかりでなく、保護者も自宅での取り組みを工夫したり、その様子を伝えるなどすることが、先生の協力を得るためには大切だと考え、わが家では、次のような工夫・支援を行いました。Upload By しろくま母さん漢字の宿題は、みんなと同じ漢字ノートを使いながら、以下のような補助をしました。・漢字ドリルからノートへ親が色鉛筆で下書きする→ドリルから転記する辛さをなくし、なぞるだけでいいようにする・漢字の部品を赤と青で色分けする→部品を理解しやすくする・漢字を部品に分解して示す→部品を理解しやすくする・単純な繰り返しは3回まで→繰り返しの苦痛を軽減する・漢字のはらい、とめ、はねなど細かい部分の指摘をしないよう先生に依頼→できているところだけ〇をしてもらうことで学習意欲をそがない部品に分けたり、繰り返し書くのを減らしたのは、小学校2年生の2学期頃からです。この頃からは、だいぶ落ち着いて漢字学習に取り組めるようになってきました。Upload By しろくま母さん学年があがるにつれて、漢字テストの内容も難しく問題数も多くなり、間違えることへの拒否感が強く、登校しぶりをしたり、テストをうけなくなったりしたので、小学校2年生の3学期以降、担任の先生に合理的配慮をお願いし、読みだけのテストに切りかえてもらいました。事前に漢字テストをもらい、答えを記入し、読みがなを()に記入できるようにつくり変えて、当日はそれを解かせるように先生にお願いしました。どんな工夫をしても、仕方なく取り組む雰囲気はかわりませんが、週末、このドリルを使って勉強するときが一番楽しめています。このドリルには、小学校2年生の3学期から取り入れ始めました。全例文に「うんこ」が掲載されており、小学生低学年の男子受けは抜群です。このドリルを使うことで、子どもが例文を外で連呼したらどうしよう、という不安がちょっとありましたが、息子は連呼することなく、その場で楽しんで終わりました。ここでも部品を赤と青で色分けして記入したり、頑張りをみとめるコメントを赤字で書き込みました。息子もコメントは嬉しいようで、書いていない時は「ひとことは?」と聞かれました。Upload By しろくま母さん子どもの成長につながる学習とは?毎日の憂鬱とイライラの原因となっていた漢字の宿題。「学校の授業についていけなくなることが不安。せめて宿題だけはどうしてもしてほしい」。長男が小学校へ入学したばかりの頃は、なかなか宿題が進まない長男の様子を見てさぼっていると思い、クラスメートから遅れないためにもと、叱ってでも、出された宿題は必ずさせていました。でも、「分からない、できない、さぼってみられる、叱られる」の連続の先に、子どもの成長は見えてきませんでした。勉強がよく分からないことを理解してもらえずに傷ついて、息子は意欲も自信も失っていってしまったのです。難しく分からない宿題の前にすわり続けている状態より、本人のペースに合わせて「分かる、理解できる」ような環境を整えて取り組むことが子どもの成長につながるのではないか。療育病院での勉強会で、臨床心理士さんもそう言っていました。それを聞いて、本人が分かる・できるように、難易度や取り組む課題の量を調節することが、家庭でできることだと思い、苦手な漢字学習への取り組み方を工夫してきました。もし、お子さんが宿題で癇癪をおこしているなら、それは「難しい、助けてほしい」とサインなのかもしれません。そんなときは、その子に合った支援を見つけて、環境を整えてほしい。そして、「分からない事も自分で調べたい、学びたい」と子ども達に感じてほしい。わが家での取り組みが、少しでもそんなご家庭の役にたったら、とてもうれしいです。
2019年02月04日次男のランドセルから出てきた、1枚の人権作文ある日、双子の次男が学校から帰ってきたときのこと。ランドセルを放り出して遊びに行く次男を見送った後、私は「学校からのお便りはないかな〜」とランドセルを開けて連絡帳ケースを取り出しました。すると中には連絡帳と一緒に1枚の原稿用紙が。Upload By シュウママ開いてみるとそれは学校で書いたと思われる次男の人権作文でした。「ぼくのお兄ちゃんは自へいしょうという病気です」「いつも見ている」というタイトルで書かれたそれは「ぼくのお兄ちゃんは自へいしょうという病気です」という書き出しで始まっていました。原文をそのまま全て載せることはできませんが、それは人権作文というより、長男に対する自分の感情を綴ったものでした。「見たいテレビをやっていないと怒ってテレビを叩くお兄ちゃん」「そんな姿を見るとぼくはとても腹が立つ」…Upload By シュウママなかなか普段本人から聞くことがない素直な思いがずばりと書かれていました。けれど次男はこうも書いています。「でも本当はお兄ちゃんはとても苦しいのかもしれない」人の気持ちを受け止めるレーダー自分でわかっていて、わざと人に意地悪したり叩いたりする人は、いつかバチがあたる。「でもお兄ちゃんには悪気がない」Upload By シュウママそう書いてあったのです。怒りをうまくコントロールできない兄への理解、行動の裏にある感情や理由を考えて寄り添う力が、私が思っていたよりもずっと育っていたことに驚きました。兄の自閉症のことを自分で考えられるようになっていた次男私は学年が上がるにつれて、なんでも話してくれるわけではなくなった次男が今、発達障害の兄をどう受け止めているのか、本心がわかりませんでした。次男の置かれている環境が本人を苦しめていないだろうかとも思っていました。長男は気に入らない音楽が流れると耳をふさいで叫んだり、手当たり次第に物を投げたりします。日常的にそんな兄の姿を見るのは、やはり特殊な環境だと思うからです。発達障害のある子どもがいると、どうしても身近にいる家族は戸惑ったり、苦しい思いをすることもあります。けれど、次男の作文を見て、長男のことを対等に見ている部分があったり、気持ちを想像して思いやったりしていることもわかりました。小さいころと変わらず、まっすぐに兄を受け止めていました。そして、きょうだい児として障害のある兄の心の声に気づき、その気持ちを汲み取り、寄り添う力が育まれているのではないか、そう思ったのです。偶然見つけた1枚の人権作文が次男の成長を教えてくれ、心にほっと温かい明かりを灯してくれました。Upload By シュウママ
2018年11月23日自閉症やダウン症など、親とは違う性質を抱えた子をもつ300組以上の親子を取材した『FAR FROM THE TREE』。世界中で50以上の賞を受賞した作家、アンドリュー・ソロモンの同作は、同じような境遇にいる親子に勇気を与えると共に、あらためて家族の本質について問う内容で瞬く間にベストセラーとなり、24か国語に翻訳されるまでの反響を呼んでいます。ドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』は、この原作の映画化。作品では6組の親子を取材しています。ここで映し出されることは、ひとりの人間としてひとりの親として考えさせられることばかり。ちょっと大げさかもしれませんが、「これまでの社会通念をガラッと変えるようなこと」が示されているといっていいかもしれません。■親の考える「普通」と子どもが違っていたら…そもそもアンドリュー・ソロモンが本著を書くきっかけになったのは、自身がゲイでそれに対し苦悩する両親の姿を見てのこと。自分の両親と同じような状況に置かれたほかの親たちは“どう向き合ってきたのだろう?”ということから、いわゆるマイノリティに属する子のいる家族を取材するようになったといいます。彼はろうの子のほとんどは健常の親から生まれ、親は子どもを治療しようとするけれど、子どもは思春期になると、「自身のコミュニティ」を発見することに気づく。すると同時に、親から子へ受け継がれる「縦軸のアイデンティティ」と、周囲の仲間から学び、養われる「横軸のアイデンティティ」が存在することに気づいたそうです。そして、自閉症、ダウン症、LGBTに関わらず、親の「普通」と、子どもが成長とともに発見するアイデンティティが異なると、両者がその違いを認め、受け入れるまでには時間がかかることがわかったといいます。この親と子の「違いの受容」こそが本作の大きなテーマといっていいでしょう。■親の気持ちが子どもを追い詰めるこの作品には6組の家族が登場します。1組は、原作者で映画のストーリーテラーでもあるアンドリュー・ソロモンと、その父のハワードの親子。2組目は、かつてダウン症の人々の可能性を示す代弁者になるほどの知名度を得て、テレビ番組『セサミストリート』にも出演していたジェイソンと、母親の脚本家、エミリーの親子。3組目は、自閉症のジャックと彼のためにあらゆる治療を試したというエイミーとボブのオルナット夫妻。ほか3組も、直面した問題や抱えた困難はそれぞれに違いますが、最終的に彼らがたどり着いたのは「受容」の心にほかなりません。親としては「普通」の子との違いをそう簡単には認められない。先のエミリーもオルナット夫妻も「この子ならば」と一般的な子に近づけ、普通の学校に通えるように、あの手この手を打つ。でも、そのことが逆に子どもを追い詰めて、関係が悪化してしまう。最終的に行き着くのは、互いに認め合うこと。他の子との違いをきちんと認めてあげたとき、ここに登場する家族は思わぬ世界と未来が開けていくのです。■他人とわが子を比較していたら、親の愛情は伝わらないこれはなにもマイノリティに属する子をもった親に限ったことではないと思います。私自身を含め、一般的な親というのは、どうしても他人の子とわが子を比較しがちとなっているように思えます。「●●君はできるのに、なんであんたはできないの!」とか、「その歳で、この程度のことはできないと恥ずかしいよ」なんて、ついつい口から出てしまう。ほかの子より勉強が遅れているように思えると、やみくもに追いつかせようとしたり、不得意なことがあると、人並みぐらいにできるよう求めたりしがちとなってしまったり。「十人十色」という言葉があるように、子どもによって個性も違えば得意なことも違う。性格も違えば、考え方も違う。そんなことは言われなくてもわかっている。でも、実際は子どもがほかより劣っていることがあると敏感に反応してしまう自分がいることに気が付き、愕然とします。そうしてついつい冷たく、厳しく当たってしまう。でも、それは残念ながら、どんなに愛情があっても一方通行。まずは、互いの意思を尊重して認め合う。子どももひとりの人格者。そこからはじめないと親の愛情が伝わらないことを本作は教えてくれます。そして、違いを認めることで子どもを楽にできれば、じつは親の気持ちも楽になることを教えてくれます。■「自分たちには直すべきところなんてない!」心を自由にただ、この作品は、そうした親と子の関係で大切なことを伝えながら、そのさらに一歩先のメッセージをわれわれに届けます。それは、いまの社会にある固定観念のチェンジといいますか。ある意味で世の中の意識改革を求めるメッセージです。低身長症のリア・スミスとジョセフ・A・ストラモンドはこう言います。「自分たちには直すべきところなんてない」と。続けて、ジョセフはこう言います。「俺があんたなら自殺すると言い放ったやつがいる。身体が不自由なら、心も不自由だと?」。自閉症で話すことのできなかったジャックは、ある医師によりタイピングで自分の言葉を伝えることができたとき、「僕はがんばっている。僕は頭がいい」と言います。また、アンドリューは以前「同性愛は異性愛より劣ったもの」とずっと感じていたそうです。ただ、ここにきて性的マイノリティに対する見方が大きくかわってきました。病気だとみなされていた同性愛が、いまでは個性として認められることになった。ちょっと視点を変えただけで見方がかわる。そう彼は伝えます。障がい=かわいそう。こういったマイノリティに対するネガティブな社会的なイメージは、そろそろ払拭(ふっしょく)したほうがいいかもしれません。障がいがあっても、マイノリティであっても、ごくごく一般の人間と変わらない。別に自分の境遇を恨んだり、悔やんだりしているだけではない。自分なりに喜びも幸せも感じている。「違い」はけっして闇ではない、考え方によっては大きな光になりうることを、ここに登場する親子のそれぞれの生き方は物語ります。このマイノリティや障がい者に対する意識の改革は、これからの社会を考える上で、非常に重要になってくる気がします。少し飛躍した話にもなりましたが、よりよい親子関係のヒントを与えられるとともに、これからの社会の在り方について見つめるいい機会になることでしょう。ドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』11月17日(土)新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなどの子どもを持つ6組の家族を取材したドキュメンタリー映画。困難を抱える子どもと、彼らと向き合う親たちが、自分たちのたどってきたこれまでの山あり谷ありの道のりと、決して苦難ばかりではない歓びの日々について語る。作品中に出てくる言葉、考え方をひとつ変えるだけで「しあわせの形は無限に存在している」ことがほんとうに実感できる心温まる映画です。公式サイト:
2018年11月16日Q. 自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?A. 自閉症の特徴のある障害概念のグループです。それまで自閉症やアスペルガー症候群など様々な名称で呼ばれていたものが、「DSM-5」という診断基準で「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」として統合されました。Upload By 井上 雅彦アメリカ精神医学会が策定した最新の診断基準「DSM-5」で、それまで、アスペルガー症候群、高機能自閉症、早期幼児自閉症、小児自閉症、カナー型自閉症などさまざまな名称で呼ばれていたものが、この診断名に集約されました。診断や支援において、これらには明確な線引きがないことから、それぞれの障害に明確な境界線を設けない考え方が、医療の現場で使われることが多い「DSM-5」で採用されたことが経緯としてあります。そして、「連続体」という意味の「スペクトラム」という言葉が使われることになりました。これからこの概念が一般化していくと考えられています。「DSM-5」では、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害について、主に以下が特徴として挙げられます。■アメリカ精神医学会の診断基準の「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」A. 社会的コミュニケーションの障害B. 限定された反復的な行動様式C. 症状は発達早期に存在している診断ではA、Bの2つの症状を3段階の重症度で評価していきます。(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)について詳しく知るもっと詳しく知る自閉症スペクトラム障害(ASD)とは?年代別の特徴や診断方法は?治療・療育方法はあるの?広汎性発達障害(PDD)とは?年齢別に症状の特徴を解説!アスペルガー症候群(AS)とは?症状と年齢別の特徴を詳しく解説します。カナー症候群(カナー型自閉症)とは?アスペルガーとの違い、症状、年齢別の特徴、子育て・療育法を紹介!自閉症 | 文部科学省
2018年10月25日自閉症の息子が5歳のとき――初めて意味のある言葉を発した!Upload By 立石美津子『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。あれは、息子が5歳のときでした。デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、大きな声で「まだ食べる!」と叫んだのです。そのころの息子は、まともな単語すら出ていませんでした。それなのに、いきなりの2語文!しかも自閉症らしからぬ、自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。言葉は単独では発達しないと、主治医に諭されて出典 : 息子は2歳から国立の子ども病院の心の発達科に通っていました。この病院ではソーシャルスキルトレーニングのほか、さまざまな訓練があったので「言葉が話せるようになるトレーニングをさせたい」と申し出ました。ところが担当医は、「お母さん、いくら言葉を教えても、それは単に単語を覚えるだけに終わります。言葉を操ってコミュニケーションをとれるようにはなりませんよ!」ときついことを言うのです。「ソーシャルスキルトレーニングを受けさせたい」と申し出ても、「周りに関心を持つことができてはじめて、社会のルールを学べるのです。○○君(息子の名前)は、排泄・着替えなど自分の身のまわりのことも全くできていないじゃないですか!何を考えているの?」と厳しく言われました。更に、診察室の床に落ちているゴミを口に入れている息子を見て、「ほら、ごらんなさい。ゴミを口に入れているじゃないですか、この段階では“社会性を育てる”なんてずっと先の話ですよ。まだ早い、まだ早い」と言いました。5歳過ぎてもオムツが外れない息子を心配し、「なんど教えてもトイレでおしっこができない。どうしてもオムツを取りたい」と訴えた時も…「オムツだけをとっても、オムツとれた赤ちゃんのままです」と言われる始末。「言葉も、オムツがはずれることも、全部発達の中でできるようになっていくものです」と厳しく諭されました。自閉症の息子、リンゴの銘柄は言えても「買って」とは言わない…出典 : 幼いころ、息子はリンゴの銘柄にこだわりがあり、スーパーに行くと、リンゴの棚の前で「ジョナゴールド・津軽・紅玉・シナノゴールド・秋映・王林…」と覚えている銘柄を順に言っていました。けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。息子は、スーパーの中だけでリンゴの銘柄を唱えていたのではありませんでした。動物園など、リンゴなんて目の前にない場所でも、銘柄名をお経のように唱え続けるのでした。これは言葉を使ったコミュニケーションとは言えません。「伝えたい気持ち」があるかどうかUpload By 立石美津子言葉だけのトレーニングをしても単語を単に覚えるだけ。言葉を使ってしゃべるようには、なかなかなりません。息子が意思のある言葉を発したきっかけは、「うどんを最後の1本まで食べたい、器を下げようとしている店員に何がなんでも伝えたい」という強い動機があったからです。「どうしても言葉を使って伝えたい」という動機。この動機づけこそが、言葉を話すようになるための第一歩です。本人が「そうしたい」という気持ちになるまで待つしかないのです。おもちゃで遊んでいるときに、友達に奪われそうになって「嫌だ」と言う。カレーライスが食べたいとき「カレーライス」と叫ぶ。結果、自分の希望が通る。こうして「自分の気持ちを伝えるためには便利な“言葉”というものが、存在するんだ」ということを体験させるしかないのです。それまでは、周りの人たちは、ただ単語をインプットさせようとするのではなく、「思いを伝えるための言葉」で語りかけ続け、ときが来るのを焦らず辛抱強く待つしかないのだと思います。5歳ではじめて意味のある言葉を発した息子。その後、少しずつ、伝えたい気持ちも言葉も発達していきました。今、18歳になった息子は悪い言葉も覚えて、私があまり構い過ぎると「まじ、しつこい」と連発します。母として眉をひそめながらも「友達の真似をして、母親に言葉で感情をぶつけられるようになったなんて、昔に比べたら成長したなあ」と心ではひそかに喜んでいます。2018年9月10日、医師・松永正訓氏が立石親子を取材、書き上げた新刊が発売に。発達障害がある子と母の、幼児期から今までに渡る育児について綴られています。
2018年09月11日シュウのやまない大声は家族の悩みの種9歳になる自閉症の長男は、幼いころから癇癪のひどい子どもでした。言葉も少なかったため、気持ちを伝える方法がわからず、自分の思い通りにならないと「あ~」と叫んで怒りをあらわにするのです。Upload By シュウママけれども7歳を過ぎて言葉数が増え、ある程度、意思疎通ができるようになると大声は徐々に減っていきました。やっと落ち着いた…と思っていたのですが、ここ2ヶ月ほど前から再び頻繁に大声を出すようになりました。ただ以前とは少し様子が違い、シュウの顔を覗きこむと笑顔だったのです。恐竜が出てくる番組だったり、アニメの戦闘シーンなどを見ているときにこの傾向はよく見られました。機嫌がいいのにどうして大きな声を出すの?興奮と連動しているのでしょうか。まるでやまびこのように、自分の出す声が反響するのが楽しいーそんな風に見えました。Upload By シュウママ「やめて」も「小さな声で」も通じない…どうしたらいい?そんなある日、またシュウが大声を出し始めました。あまりにも大きな声量に、私は「やめて!」と叫びました。けれどもシュウはいっこうにやめようとしません。私自身が感情的になってはいけないのかと思い、今度は「大きな声を出さないでね」と冷静に言ってみました。しかし、それでも大声がやむことはありません。Upload By シュウママそこで、声を出すことそのものは禁止せず私が小さな声を出して真似させてみました。するとシュウも「あ~」と小さな声を出してくれました。ところが安心したのも束の間、しばらくするとまた大声に戻ってしまいました。結局、対処だけでは根本的な解決にはならず、ほとほと困り果てて、何かいい方法はないか考える日々が続きました。息子が一番興味を持っているものそれから1週間ほど経った時のことでしょうか。シュウがテレビを指差して「あかちゃん!」「あかちゃん!」と連呼するのです。見るとそこには録画したアニメ番組の赤ちゃんが映っていました。Upload By シュウママ長男はその時々でマイブームが起きるのですが、おそらくその時は動物や人間の赤ちゃんが可愛くてたまらなかったんだと思います。ふとひらめきました。そうだ声の大きさを赤ちゃんになぞらえてみたらどうだろう?声の大きさを視覚で伝えるため、興味のあるものに置き換えてみたら…Upload By シュウママ私はホワイトボードを出して、左側から順に赤ちゃんと子ども、大人の絵を描きました。そしてシュウが大声を出すと、ホワイトボードを見せながら「今、大人の声になってるよ。小さい赤ちゃんの声を出すんだよ」と何度も説明しました。するとシュウは「あかちゃんのこえ、あ~」と小さな声を出すようになったのです。完全に大声が治まったわけではないですが、この方法を使うと、「大人の声=大声」「赤ちゃんの声=小さな声」と素早く脳内変換できるようで、少しずつ声の調整ができるようになってきました。自閉症児への伝え方はひとつじゃない自閉症の子どもの大声に悩まされているお母さんは多いと思います。シュウの場合、言葉の習得が進んだことでイライラするような大声はなくなりましたが、ご機嫌だとしても、音量が大きいのは悩ましいものです。声の大きさをどうやって使い分けてもらうか、対処法はそれぞれあると思います。例えば、声の大きさを赤青に色分けして教える、という方法もよく聞きます。わが家のように今お子さんが興味があるものになぞらえて教えるというやり方も有効かもしれません。どうかお試しください。Upload By シュウママ
2018年08月01日山崎賢人がサヴァン症候群の小児外科医・新堂湊を演じる『グッド・ドクター』(フジテレビ系)第2話が、7月19日に放送された。物語の中心となったのは低出生体重児を出産した16歳の女子高生。わが子を守りたい少女、育てられないと嘆く少女の母、生きてほしいと願う湊、リスクを負いたくない病院…“ルール”を超えて救われた小さな命が、教えてくれたこととは?■「どうして助けちゃダメなんですか?」東郷記念病院で、16歳の女子高生・唯菜(山田杏奈)が緊急出産する。産まれたのは、在胎週数25週・724gの低出生体重児。さらに唯菜は、これまで一度も妊婦健診を受診していない未受診妊婦、父親とは音信不通と、赤ちゃんの病状以外にも問題が山積みだった。赤ちゃんは腸の大部分が壊死しており、手術しても助かる確率は10%以下。術中死の可能性も高く、病院の方針は回復を待つ温存治療だった。だが湊は、唯菜に高山(藤木直人)が手術すれば助かると伝えてしまう。ガイドラインに反した湊の行動は、病院にとって大問題。だが、湊にはその理由がわからない。「どうして助けちゃダメなんですか?」と湊が問いかけても、高山からは「医者は神様じゃない。根拠のない希望を与えるな」とつらく当たられ、司賀院長(柄本明)からは「ひとりの力だけでは命は救えないよ。湊にはここで学ぶべきことがたくさんある」と励まされ、夏美(上野樹里)からは「とにかくルールは守って」と、曖昧な答えしか返ってこなかった。■里子に出すことも愛情のひとつなのかそれでも湊は、諦めない。赤ちゃんが寂しい思いをしないようにとキッズスペースから玩具を持ち出し、保育器いっぱいにぬいぐるみを飾る。一方で唯菜は、出ない母乳を一生懸命に絞っていた。そんな2人の願いが届いたのか、赤ちゃんの腸は蠕動(ぜんどう)運動を始める。手術をすれば助かる可能性は上がったが、唯菜が未成年のために手術には保護者の同意書をもらうことが必要。一刻を争う状況で、唯菜の母・真紀(黒沢あすか)は同意書にサインをするが、その条件は赤ちゃんを里子に出すこと。手術を断念するか、赤ちゃんと離れるか…16歳の少女には、あまりにもむごい選択だった。わが子を育てたいと願う母親にとって、子どもと引き裂かれることは耐えがたい苦しみとなる。だが、育児はきれいごとではなく「育てられない」という真紀の選択も、けっして否定することはできない。しかもそれは真紀のエゴではなく、過去に唯菜の学校用品を買い換えることができずに味わった、惨めな経験があったから。里子に出すという条件は、同じ思いを娘に、そして孫にさせたくないという母の愛情でもあったのだ。■「ルール」と「命」、守るべきはどっち?赤ちゃんと離れることに絶望する唯菜に、夏美が提案したのは「養育里親制度」。それは子育てを諦めるのではなく、“自分が母親になれる体制が整ったら、わが子を迎える”という、唯菜と真紀の意思を両立させた考え方だった。人は物事の選択を迫られたとき、どうしても自分の考えに固執してしまいしがち。でも、決めつけることを辞めれば、新たな道が見つかることがある…。第2話が映し出したのは、相手を否定をせずに受け入れることの大切さ。これまで湊を全否定していた高山は、画像診断で異常を見抜き、適切な対処法を提案した湊を「新堂が正しい」と認め、院長は手術を決めた高山の決断を「責任は私がおう」と支持した。夏美は「(病院では)ひとりの勝手な行動がいろんな人に迷惑をかけてしまう」と話していたが、結果として、ルールに囚われない湊の行動が人々の心を動かし、小さな命が救われることになったのだ。もちろん、ルールは守るべき。けれども「ルールだから」と決めつけることをしない湊の思いに寄り添うことで、今後も周囲の人々や病院に、あらたな世界が広がっていくことだろう。■山崎賢人&上野樹里の“焼きおにぎり”シーンにホッコリ!今回も、物語の肝となったのは「助けたい」という湊のまっすぐな願い。生きてさえいてくれれば、「どれだけ遠くに離れていても、赤ちゃんにとってのお母さん」でいられる。保育器に残した似顔絵のプレゼントには、泣かされたという視聴者も多いはずだ。コミュニケーションに障がいがあるとされているが、話すことのできない赤ちゃんと誰よりもコミュニケーションをはかれていたのは湊だった。加えて、鬼のような高山についても「たくさんの子どもを笑顔にできます。僕もそんな小児外科医になりたいです」と話す湊を見ていると、なんだか元気が湧いてくる。そして訪れた“焼きおにぎりシーン”。重みのある感情の連続となる物語の最後に、ホッコリさせてくれる制作陣からの贈り物のような一幕。湊と夏美の距離感がもっとも伝わる場面でもあるだけに、今後の“おにぎりシーン”にも大いに注目したい。次話では、病院のガイドラインを破ったとして高山が謹慎処分になってしまう。そんな中、小児外科に他病院をたらい回しにされた女児が搬送されてきて…。『グッド・ドクター』第3話は、7月26日よる10時から放送。木曜劇場『グッド・ドクター』木曜よる10時から※山崎賢人の「崎」は、正しくは「たつさき」
2018年07月25日『グッド・ドクター』(フジテレビ系)第1話が7月12日に放送された。山崎賢人が、自閉症スペクトラム障がいでコミュニケーションに障がいがある一方、サヴァン症候群で驚異的な暗記力を持つ小児外科医・新堂湊を演じる本作。湊は子どもを助けるために一生懸命だが、人の気持ちを推し量ることができない。「僕は人と違います」。胸が締め付けられるようなセリフは、たくさんのことを私たちに問いかけた。■サヴァン症候群で小児科を目指すことができるか幼いころから小児科医になることを夢見てきた新堂湊(山崎)は、レジデントとして小児外科の世界に飛び込むことになる。期待に胸を弾ませて迎えた初出勤。湊は途中で事故に遭遇するが、暗記している膨大な医療データから最良の方法でケガをした子どもに応急処置を施し、なんとか東郷記念病院にたどり着く。救出した子どもの母親からは深く感謝される湊だったが、指導医の瀬戸夏美(上野樹里)とともに小学1年生の将輝の病室を訪れた際、ある問題を起こしてしまう。横紋筋肉腫が再発した将輝に対し、両親の意に反して真実を打ち明けてしまい、母親から「二度と近づかないで」と非難されてしまったのだ。夏美からの「カルテには書かれていないそれぞれの事情がある。ご両親の気持ちがわからないの?」という問いに、「わかりません」と即答する湊。事故現場での正確な対応といった医師としての優れた能力が明かされた一方で、コミュニケーションが苦手である湊に立ちはだかる壁が、早くも浮き彫りになったかのようにみえたのだが…。■湊と子どものピュアな心に、あふれる涙その後、将輝の容体が急変。居合わせた湊は「早くオペしないと死んでしまいます」と、一刻も早い手術を望むが、「触らないでください。ほかの先生を呼んでください」と声を上げる母親。しかし湊は苦しむ将輝を前に居ても立っても居られない。結果として看護師・橋口(浜野謙太)の協力もあり無事に高山(藤木直人)が手術することとなり、将輝は一命を取り留めた。手術を終え、湊に対して「先生が気づいてくださらなかったら、今頃あの子は。それなのに私、大変失礼なことを。本当にごめんなさい」と頭を下げる母親。だが湊はそんな母親に「僕は人と違います。慣れています」とほほえむ。さらに息子がかわいそうだと話す母親に「かわいそうじゃありません。かわいそうなのは、病気であることです」とまっすぐに伝えるのだった。ドラマの最後に明かされたのは、将輝が退院を待ち望んでいた理由。それは早く小学校に行くことではなく、ママの誕生日をおうちで祝ってあげたいということ。つらい状況でも、母親のことを思う子ども。そして、そんな子どもの本音に寄り添う湊のピュアな思いに心が温まるが、同時にさまざまな感情が交錯し、溢れる涙を抑えることができなかった。■自分の子どもが病気だったら…親に突き付けられる難題終始、胸が苦しくなるようなセリフの連続だった第1話。なかでも印象的だったのは「先生たち、自分の子どもを“ああいう人”に任せられますか?」というセリフ。これは、湊が将輝に再発を勝手に告知してしまったことに激怒した母親が、担当医に発した言葉だ。辛辣(しんらつ)な言葉だが、親であれば気持ちがまったく理解できないわけではないから、心苦しい。子どもが命に関わる大きな病にかかったとき、どんな医師に診てもらえたらが安心かといえば、腕もよく、親の気持ちを理解してくれる医師なのかもしれない。けれども、もしも逆の立場だったら? 自分が湊の母親だったら? そう考えると、より一層胸が痛む。そして、そんな行き場のない切なさを癒やしてくれるのもまた、湊の優しさにほかならない。患者より接待ゴルフを優先する医師、規則に縛られ担当医の指示だけに従う医師、障がいがあるというだけで切り捨てようとする医師、はたまた「大人になれない子どもをなくしたい」と切に願う医師。一体、名医=グッド・ドクターとは何だろうか。視聴者は多くのことを自問自答しながら、ドラマと向き合っていくことになりそうだ。■役者・山崎賢人が語る大きな使命とは山崎が自閉症スペクトラム障がいの医師を演じるということで、放送前から注目を集めていた本作。第1話が放送されるやいなや、演技を絶賛する声がSNSに上がった。山崎は、特徴的な手や視線の動き、こわばった表情などを細やかに表現。一方で、子どもに頬をつねられたり、子どもと一緒に絵を描いたりするシーンで見せる、柔らかな表情も絶妙だった。小児外科医は医師全体の0.3%しかいないというセリフがドラマ内であった。山崎は番組の公式インタビューで「このドラマで小児外科の現状を知っていただいて少しでも良い方向に向かえば…小児外科医を目指す方が少しでも増えたらうれしい」と話すなど、大きな使命を持ってこの作品に挑んでおり、その決意が伺える幕開けとなった。次回描かれるのは、未受診妊婦の女子高校生。破水からの緊急出産となるが、生まれてきた赤ちゃんは大きな問題を抱えていて…。『グッド・ドクター』第2話は、7月19日よる10時から放送。木曜劇場『グッド・ドクター』木曜よる10時から※山崎賢人の「崎」は、正しくは「たつさき」
2018年07月19日双子を可愛がってくれた、ひいおじいちゃん今年の桜は例年より早く咲き、本来ならまだ満開であろう時期に散っていきました。時を同じくして4月の初め、わが家の双子を可愛がってくれたひいおじいちゃんが亡くなりました。双子とひいおじいちゃんの関わりは深く、以前、コラムにもその様子を書いていました。連絡を受けた時、私はしばらく呆然としていました。頭の中には長男の頭を撫でてくれていたひいおじいちゃんの姿が駆け巡ります。知らぬ間に涙があふれ、私の隣りでは次男が悲しそうな顔をして膝を抱えていました。楽しそうにテレビを見ている長男に「ひいおじいちゃん、死んでしまったよ。もう二度と会えないんだよ」と告げました。けれど長男はぽかんとして私の顔を見つめ、またテレビへと視線を戻しました。長男は死というものがどういうものか分かっていなかったのです。Upload By シュウママ不安もある中、子どもたちと葬儀へ参列することに葬儀には、子どもたちも一緒に参列しようと思いました。2人を大切に思ってくれたひいおじいちゃんのもとへ、どうしても連れて行きたかったのです。そうは言っても、本当に大丈夫だろうか、長男は騒いだりしないだろうかーー。乗り込んだ新幹線の中で不安が募ったことを覚えています。Upload By シュウママパニックになってもおかしくない中、意外だった長男の姿初めて入る葬儀場、そして大勢の人。長男にとってはパニックを起こす要素だらけの状況です。Upload By シュウママ通夜がしめやかに営まれている間、私は多動の長男が騒ぎ出したりしないかと気が気ではありませんでした。ところが予想に反して、長男は握り締めた手を膝の上に置いて、きちんと座っていました。ひいおじいちゃんの遺影を見ながら、感じるものがあったのでしょうか。長男はじっと写真へと視線を注いでいたのです。Upload By シュウママなぜひいおじいちゃんはこの場にいないんだろうという寂しさがあったのかもしれません。周囲に漂う重い空気を察したのかもしれません。どちらにせよあの瞬間、長男はひいおじいちゃんの不在を心の底から哀しんでいたのです。長男にとって、ひいおじいちゃんはやはり特別な人だったんだと改めて感じました。ふっと2年前、最後にひいおじいちゃんと会ったときのことが蘇りました。長男を丸ごと可愛がってくれた長男が言葉を話せなかった7歳ごろは、頻繁に癇癪を起こしていました。それは夏休みに私の実家に帰省した時も同じでした。些細なことで泣き出す長男に対し、ひいおじいちゃんは「シュウの頭の中には言葉があふれているよ」と優しく言い続けてくれました。そして冬休みに再び帰省した時のことです。皆と楽しい時間を過ごし、いよいよ家に帰る日。「また会おうな」と言って頭を撫でてくれたひいおじいちゃんに向かって、長男は「バイバイ」と言って手を振ったのです。その瞬間、ひいおじいちゃんは驚いた顔をしてぼろぼろと涙をこぼしました。これが初めて長男がひいおじいちゃんに向かってしゃべった言葉だったのです。言葉があふれているよーーそう励ましてくれたひいおじいちゃんは、誰よりも長男の力を信じてくれていました。でも本当は話さない長男のことを誰よりも心配していたのだと思います。人前で決して泣くことのなかったひいおじいちゃんが、長男のために流した涙。その優しさは長男の心に届いていたのでしょう。Upload By シュウママ長男が葬儀の席で静かに見送ることができたのは、ありったけの愛情で包んでくれたひいおじいちゃんに必死で応えたからだと思います。愛された記憶は、長男の心の中に宝物のようにしまわれているのかもしれません。葬儀に参列できたことで、改めてひいおじいちゃんの残してくれた優しさが心に沁みていきました。そしてそれは長男も同じだったんだということに気づかされて、悲しみが少しだけ癒されていくのを感じたのです。
2018年06月20日父親として自閉症がある息子の子育てに向き合う出典 : もうすぐ父の日ということで、父親としての自分の思いや考えを振り返ってみました。母親の立場からは考え方や悩みの観点が違うこともあるかもしれません。父親なりのお話をできればと思います。私は自閉症児の父親として、心に決めていることがあります。息子の障害が分かった当時から想定していたこともあれば、日々の生活を過ごす中で見出した部分もあります。家族を持つ男性として「当たり前」のようなことも、障害という現実によって「当たり前」と思えなくなるケースもあるだろうと考えてお伝えします。自閉症児の父親として心に決めている3つのこと出典 : つ目は、自分から情報収集して自閉症をより理解することです。私の主な手段はテレビや本、WEBサイトやSNSです。本は図書館などで借りれば無料ですので、気兼ねなく情報収集ができます。WEBサイトでは、個人ブログの場合、療育の実体験や症状について知ることができます。また、発達障害などの専門サイトは日本の制度や社会情勢、新しい動向や特徴的な事例などもよくチェックしています。子どものために参考になることが多く、定期的に見るようにしています。情報を得ることがなく、「何も知らない状態」というのは、余計な不安を感じたり希望を見出せなくなったりしてしまうと考えています。私自身が、そうだったからです。3歳頃に自閉症と言われた当時の息子は、話すことはもちろん、目を合わせることもできない状態でした。そのまま容姿だけが年を重ねていくものだと考えてたため、将来の不安や成長しない(と思っている)ショックはとても大きなものでした。でも、情報を集めたことで少しずつ自閉症の全体像が見え、息子が成長することが分かって前向きになることができました。特に大きかった「発見」は、重度の自閉症でありながら小説家として活動をしている東田直樹さんを知ったことでした。東田さんは息子と同じように手をかざす、ジャンプする、急に動く、歌うなどの症状がありました。しかし、自らパソコンをタイピングして小説の執筆をするだけでなく、文字盤を利用してリアルタイムで人と会話をしていました。特徴的なケースかもしれませんが、当時の私には大きな希望でした。東田さんの姿を通して、わが子の自閉症という障害を理解し、受け入れることができたのだと思います。今後も年齢など息子のステージが変わるにつれて、初めての経験や知らないことが増えていくでしょう。意識的に自閉症やその周辺のことを知ろうとする努力を続けていきたいです。2つ目は、妻のことを意識して気に掛けることです。「夫なら当たり前だ」と思われるかもしれませんが、息子に障害があることが分かり、より意識が高くなりました。ただでさえ大変と言われる子育てです。障害があり、生きにくさを感じることがある子どもを育てていくのは、とても困難が多いだろうと診断された時に覚悟しました。特に考えたのは、精神的な負担です。私は仕事で外に出ていることが多いため、ずっと妻が中心となって子どもを見てくれています。息子と街中を移動する時の周りの視線、保育園や学校に行った時の先生の反応のほか、さまざまな場面で健常児との違いを感じて、落ち込んだり悲しくなることがあり得ると想定しました。そして、それらは実際に全て起こりました。そんな時は、仕事が立て込んでいたり、疲れていたとしても、妻の気持ちが落ち着けるようにできる限り話を聴く時間を取るようにしてきました。妻から話かけてくれることもありますし、明らかに気分が落ちている時はこちらから聞くようにしています。アドバイスや無理に共感するというよりはとにかく話を聴くことが大切。ひと通り話を聴いた後に、短期的に考えるのではなく少し長いスパンで考えてみる、今後(未来)の話をすることで良い形に転換できているのかなと思います。結果的に早く前向きになって、次のことを考えて行動することに繋がっています。また、息子の進学について悩んだ時などは、妻以上に妻のことを考えて発言をしました。息子の当時の状況(発達度合い)を考えた際、特別支援学校ではないところに進学すると、何かが「できない」状況が増えてしまうと考えていました。それにより息子が自尊心を失う可能性もありましたし、何より妻が「自分の教育が悪い」などと自己否定をして落ち込んでしまうことが一番の心配でした。妻が自信を無くしてしまったり、傷ついたりしてしまうと本人も辛いですし、息子もそれを感じ取って悲しい気持ちになるでしょう。もちろん、私も辛くなります。だから、できる限り元気にいて欲しいのが夫としての願いです。3つ目は息子の成長の可能性を探り、伸ばしてあげることです。息子は言葉を話すことが困難なタイプですので、発話がほとんどありません。診断された当時は、息子にこちらの話は通じておらず、コミュニケーションはできないものだと考えていました。しかし、息子と一緒に過ごす中で、彼には意思があり、状況や話を理解していることが分かってきました。教えたことを覚えたり、話したことを行動することが少しずつできるようになったからです。少しずつ自閉症を理解をしていく中で、「できるようになるためには、どうすればよいか?」と思うようになっていた私は、「『声』というアウトプット手段が難しいのであれば、他の手段を習得すればよい」と考えました。それから紙と鉛筆で文字を書く練習を始め、今ではパソコンのタイピングの練習をしています。文字にすれば1文で済んでしまう簡単な話ですが、実際は苦節2年程の時を経て今があります。そもそも鉛筆を握れないところから始まり、線をなぞれない、なぞれるようになっても時には完全に無視することがありました。息子の集中力が切れて1枚のプリントを終わらせるのに2時間かかる日も…。でも、諦めずに可能性を頼りに継続して進めてきたことにより、確実に前進しています。実際に息子がタイピングの練習をしている動画がこちらです。私も「タッチパネルの製品を使おう」と言ったり「好きな数字のタイピングから始めてみよう」「文字のタイピングの前にローマ字を覚えよう」という提案をしながら一緒に進めてきましたが、この練習を全面的に支えてくれたのは妻です。妻のひたむきさと息子自身の努力の成果なので、2人に本当に感謝しています。妻と息子が幸せであるために出典 : 私は、父親として妻や息子に幸せであって欲しいと願っています。そして、そのように導くことが使命だと思っています。これらは自閉症とは何ら関係はありません。今は私たち家族に自閉症という要素が入りましたが、それによって妻や息子が不幸になるものではなく、私たち家族がどのように行動するか?ということが少し変わっただけです。どのような状況下にあっても、まずは父親である私自身が自ら心に決めたことを、継続していくことが全てだと感じています。とはいえ実際には自分一人ではやり切れないことばかりです。妻や息子自身、周りの方の協力があって成り立つものですが、まずは紹介した3つのことを大切にしながら、父親としての使命を果たしていきたいと思います。
2018年06月14日行き先の確認は念入りに…「用意周到」を求められるレジャー出典 : 発達障害の息子と一緒に旅行やレジャー施設などに行くとき、私たち家族は常に先回りして施設の特徴を調べ、息子にとって苦痛な刺激がないかどうかを確認します。大きな音や明るすぎる照明がないか。疲れたときに休ませる場所はどこにするか。混み具合はどうか。泊まりにしたほうが良いか日帰りにしたほうが良いか。息子は刺激に弱く、すぐに「疲れた」と言って座り込んでしまいます。そんな息子が無理をすることなく、「楽しかった」と言って終わってくれるようなラインを探ります。こんなとき、「このレジャー施設は発達障害のある子どもにやさしいよ」「このホテルは発達障害の特性に理解があるよ」というようなことが体系的にまとめられている情報があったら、とても助かりますよね。今回、諸外国の事情を調べていたときに、アメリカでは発達障害のある子どもにやさしい施設に認定を与えていることを知ったのです。認定された施設をまとめてくれている「Autism Travel」というページを見れば、ホテルやレジャー施設などの一覧を見ることができます。 Travel - 自閉症者向け旅行サイト(英語)アミューズメントパークとしては初めて!「セサミプレイス」とは出典 : 「発達障害のある子どもにやさしい施設」の認定は、アメリカのIBCCES(International Board of Credentialing and Continuing Education Standards 資格認定・継続教育基準国際委員会:筆者訳)という団体が行います。同団体の定める条件をクリアすると、「認定自閉症センター(Certified Autism Center)」として認められ、レジャー施設やホテルであればAutism Travelのページに掲載されます。この「認定自閉症センター」に初めて認められたアミューズメントパークが、アメリカ・ペンシルバニア州にある「セサミプレイス」です。ここは、アメリカの子ども教育番組「セサミストリート」のキャラクターのテーマパーク。「セサミストリート」といえば自閉症の女の子のキャラクターが登場したことも話題になりましたね。セサミストリートに自閉症の新マペット登場!番組制作の背景は?日本では視聴できるの?アメリカで「認定自閉症センター」として認められるには、働いているスタッフが発達障害についてしっかりと教育を受けている必要があるそうです。では、「セサミプレイス」のスタッフは、実際にどのような訓練を受けたのでしょうか。公式ホームページに記載されている内容によると、スタッフは発達障害の特性にかかわる以下の点について特別なトレーニングを受けているそうです。・感覚刺激に関する認識・運動能力・自閉症に関する基本的知識・各種プログラムの作成・ソーシャルスキル・コミュニケーション・環境設定・感情についての認識また、スタッフがその人の特性に配慮して、乗ることのできる乗り物をピックアップしてくれたり、刺激で疲れてしまった人のためのコームダウンの部屋を準備してくれていたりします。聴覚過敏の人のためにヘッドフォン貸出が行われているほか、パレードでは、身体を触れられることが苦手な人は、キャラクターが直接ハグしたりすることのない列に案内されるのです。セサミプレイスホームページ ー 世界で初めて「認定自閉症センター」に認定される(英語)「分かっている人がいる」という安心感出典 : 今でこそわが家の息子は感覚刺激が不快になると、自分から休憩するようになりました。成長するに従って、自分の限界を認識することができるようになってきたからです。けれども、幼いころはそうはいきませんでした。水族館に行けば、ボヤボヤとした光と、館内から響く独特の音にやられて、床に這いつくばって動かなくなりました。動物園では、動物の臭いにめまいがしてきてしまい、ずっとおんぶで移動したこともあります。顔は真っ青でした。お祭りに足を運べば、太鼓の音と人混みに吐き気がしてしまい、泣きながら帰りました。心配して「どうしました?」と声をかけてくださるスタッフの方もいましたが、「すみません、発達障害で…」と答えても「?」という顔をされることが多かったのです。そうすると、なんだか申し訳ないことを言ってしまったような気分になり、「大丈夫です。ちょっと疲れたみたいで」と、そそくさとその場を去ったものです。そんな時、具体的に何かをしてくれるわけではなくとも、「セサミプレイス」のようにいまパニックを起こしている人が何に苦しんでいるのか「分かっている人がいる」ということ、それがどんなに心強いことか想像に難くありません。私たち親も、特に何かを配慮をしてもらいたいわけではなく、「知っておいてもらえると、それだけで気持ちが楽」なのです。日本にも、このような認定制度があったら、旅行計画をするときに、もっと気楽に楽しい気持ちでできるかもしれませんね。
2018年05月28日無表情だった長男に変化が!2歳ではじめてしゃべった言葉自閉症の長男が赤ちゃんの頃のことです。定型発達の双子の次男に比べ、長男は呼びかけに対する反応も薄く言葉も出ませんでした。そのころは長男が自閉症だとは診断されていなかったので、表情の乏しい長男と接することに不安を覚える毎日でした。言葉もなかなか出ず、「この子は何か障害があるのではないだろうか」─そんな思いが頭をかすめ始めていました。しかし、2歳を過ぎた時、長男が朝ごはんを食べている最中に大きな声で言ったのです。Upload By シュウママ発音は聞き取りにくかったけれどついに言葉を話してくれた!とても嬉しかったことを覚えています。それからしばらくごはん前になると「いただきます」と言うようになりました。このままどんどん言葉が増えていくんだと思っていました。けれどある日ふと気づいたんです。「あれ、最近『いただきます』って言わないな」─。私は長男に「いただきますは?」と聞いてみました。消えてしまった「いただきます」…。もう一度言ってみてけれど長男はじっと私の顔を見つめるだけで、何も言おうとしませんでした。Upload By シュウママ強制してはいけないのかと思い、促すことはやめました。その代わり家族で大きな声を合わせて「いただきます」と言うようにして言葉が戻ってくるのを待っていました。けれど、その後も、長男が「いただきます」と言うことはありませんでした。それから2年の月日が流れました。再び長男に変化!4歳になったころには歌を聞かせてくれました変化があったのは長男が4歳になったころ。その当時、長男は療育施設に通っていたのですが、園で覚えてきた手遊び歌を真似して歌うようになりました。笑顔で歌っていたのです。Upload By シュウママ「ああ、また言葉が出始めた!」本当に嬉しかったです。けれどその喜びも長くは続きませんでした。またしても言葉が出なくなったのです。あんなに楽しそうに歌っていたのに、どんなに呼びかけても歌わなくなってしまったのです。このときの私のショックはとても大きく、主治医の先生に相談に行きました。言葉はどこにいったの?悩む私に先生がかけてくれた言葉私の話を聞いた先生は「今は辛いかもしれないけど、どんどん話しかけてあげてください」と言ってくださいました。Upload By シュウママけれど私は「もう一生言葉が出ないんじゃないかと思うんです」と半ば投げやりに言ってしまいました。「どうせまた言葉は消えてしまうんじゃないか、それなら期待しないでおこう」と思ったからです。けれど先生は「今は言葉の種まきだけしておいてくださいね。またきっと言葉が話せるようになりますよ。一度しゃべったんだもん。大丈夫ですよ」と笑顔で声をかけてくれました。正直、そのときは半信半疑でした。しかし、それからまた長男の言葉が戻ってくるときが突然やってきました。7歳になった頃、「おかあさん」と呼んでくれたのです。Upload By シュウママ成長はそれぞれみんな違うもの涙が出るほど嬉しかったけれど、同時にまた言葉が消えるかもしれないという不安がありました。それでも長男の姿を見た主治医の先生は、素直に喜んでくださいました。Upload By シュウママ息子が9歳になった現在まで、先生の言葉の通り、長男は発音は不明瞭ながら、たくさんの言葉を話すようになってきました。発達障害のある子どもは階段状の成長はしていかないと感じています。ある時は一気に上り、また下がりまた上がり…その繰り返しだと思います。けれど後退しているように見えても、実際はそうではなく着実に前へと進んでいるのだと気づかされました。かけ続けた言葉は、きっとお子さんの心の中に根づいていきます。いつか言葉の花を咲かせる日が来るかもしれません。どうか、言葉の種をまき続けてください。そして、お子さんの言葉の世界を豊かに育ててあげてくださいね。Upload By シュウママ
2018年05月23日東田さんが描く―これまでの自分の人生を振り返って―今回紹介する『自閉症の僕の七転び八起き』(KADOKAWA)を執筆した東田直樹さんには、重度の自閉症があります。このエッセイには、障害のある子どもとの接し方、当事者の心の中、一人の人間としての葛藤、前向きに生きていく力、障害があるがゆえの悲しみや喜びが詰まっています。東田さん自身が振り返る、通常学級での悩みや、家族の自分への接し方、これまでのさまざまな選択からは、本人の努力だけでなく、家族や周囲の支えがどれだけ大きかったのかが伝わってきます。特別支援学校から通信制高校へ。自分がやりたいことを探し続けた青年期出典 : 東田直樹さん(ひがしだなおきさん:以下東田さん)は、重度の自閉症があり、口頭で会話をすることが困難です。ですが、パソコンや文字盤ポインティング(文字盤を指差しながら言葉を発する方法)を使うことで、コミュニケーションを取ることができます。東田さんは小学5年生までは通常学級に在籍、小学6年生から中学3年生の4年間は特別支援学校に通いました。その後特別支援学校の高等部には進学せずに、アットマーク国際高等学校(通信制)に入学、2011年3月に卒業。彼が13歳のときに執筆した書籍『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、今や20カ国以上で翻訳・出版されているベストセラーとなっています。東田さんが発する言葉や挑戦する姿勢からは、前向きな性格を感じ取ることができますが、東田さんが初めからそうだったわけではありません。自分が一生かかっても「できない」ことを、同級生が簡単にやってのける姿を見て、苦しんだ小学5年生までの日々。逃げるように転校した特別支援学校で知った、人から大切にされることの重要性。そこは、できないからと言って責められることも叱られることもない、居心地の良い場所でした。特別支援学校で4年間自分を見つめなおした東田さんは、自分の人生を生きたいと、通信制高校への入学を決意します。現在は紆余曲折を経て、作家や詩人として活躍している東田さん。彼は何を思い、どう生きてきたのでしょうか。今の自分があるのは家族のおかげ―東田さんはどう支えられてきたのか出典 : 大人になった東田さんは、子どもの頃に「できなかった」たくさんのことが「できる」ようになりました。幼児用の工作ワーク、人とのコミュニケーション、我慢をすること、家族に言いたいことを言うこと。それから、誰の人生も大変だということにも気づけました。できることが増えた今、東田さんは自閉症で良かったと思える機会も増えたそうです。そして、自分がここまで頑張ってこられたのは、否定せず、障害があるからできないだろうと決めつけず、長所を伸ばそうと努力してくれた家族のおかげだと言います。本書では、東田さんの経験に基づいた、自閉症のある子どもとの接し方も紹介されています。・人格を否定するような叱り方はしない・本人に選ばせる練習をする(選ばせるときは2回確認する)・機嫌がもとに戻ったら、いつものように接する・どんな人になりたいのか聞いて、将来の楽しみを一緒に考える・コミュニケーションを諦めない・問題のある行動は辛抱強く注意するこのように日々心掛けることから、あめのなめ方やおかずを取り分ける方法といった、細かい接し方まで具体的に書かれています。こうした両親のささやかなサポートが積み重なり、今の伸び伸びとした東田さんがあるのでしょう。「愛」と「自分の心」―東田さんの背中を押した、生きる希望と勇気出典 : けれど、接し方よりも大事なのは、「愛」だと言います。「人の心を育てるのは、愛情です。」「愛情を注いでもらっているから、心は育つのです。」「たとえ、自己表現できなくても、知能が低くても、愛は伝わります。自分が大切にされているという実感は、生きる希望につながります。」本書の中で東田さんは、「愛」という言葉を何度も使っています。障害のある子どもを育てることは、ときに一筋縄ではいかない難しさがあります。強く叱りすぎてしまったり、接し方を意識しすぎて疲れてしまったり。しまいには自信を失くしてしまうこともあるかもしれません。子育てに正解がないと分かっていても、上手くいかない、と落ち込むこともあるかもしれません。でも、それでいいのです。落ち込んだり悩んだりするのは、しっかりと子どもに向き合って愛を注いでいる証だからです。無理せず、自分のペースで愛情を注ぐこと。いつかあなたの愛は、その子にとって生きる希望になるはずです。もう一つ、東田さんは「自分の心」の大切さについても述べています。今何をしたいのか、どう感じているのか、本当に幸せなのか。自分の心に正直に生きること。自分の気持ちを大切にしていれば、周りの人の気持ちも尊重できるようになります。もしも、みんなが頑張っているように見えて、自分だけが頑張れない時があっても大丈夫。「頑張れないときがあっていいのです。頑張る基準は、自分の心が決めればいいと思います。」「もしも子どもに障害がなかったら」そう思うのは別に悪いことじゃない出典 : 「障害児の子育てには、たくさんの苦労があります。僕は、子供を愛せない親が悪いのではなく、愛せないほど苦しい状況になってしまうこと、そのものが「悪い」と思っています。親が、もしも子供に障害がなかったらと考えたとしても、別に悪いことではなく自然なことです。」東田さんは当事者目線で、障害のある子どもを育てることについて触れています。彼自身も、自分に障害がなかったらどんな人生を歩んでいたのだろうと考えることもあり、そのことに罪悪感を持っていた時期もあったようです。「普通である想像上の僕は、いつも笑っています。しかし、今の僕より幸せかどうかはわかりません。悩みのない人などこの世にはいないからです。」障害者は決して特別な存在ではありません。それぞれが不安や悩みを抱えて生きている。障害を抱えながら生きていくには、たしかに困難や壁がつきものですが、“普通”と言われる定型発達の人の日常や人生にも、悩みや孤独があります。どんな人も、みんな同じように心を持っている。それが東田さんの考えです。「自分らしく生きられる社会を目指して」―誰にでも必要な3つのこと―出典 : 東田さんは、障害のある人自身にも必要な3つのことを挙げています。・この社会の中で、自分の生きる意味を探すこと・自分のことを理解すること・なぜできないのか、どうすればいいのか自分で考えることこれらをすべて実現するには、周囲のサポートが欠かせません。ずっと自分と向き合い続ける努力も必要です。この3つは、どんな人にとっても大切なことだと思います。どれだけ多くの人が自分のことを理解し、生きる意味を見出し、できないことに立ち向かっているでしょうか?障害があっても、多様な生き方を選択でき、社会の中で自分らしく生きられる温かい未来を東田さんは望んでいます。そんな東田さんの今後の目標とは…「自閉症で本当に良かったと思える人生を歩むこと」。それを達成すべく、日々自分の気持ちと向き合い、行動のコントロールに挑戦しています。ちなみに外出やお金の払い方は、今もトレーニングを継続中だそうです。「どんな生き方を選ぶかは人それぞれでいい、大切なのは自分の気持ち」と語る東田さん。彼はこれからどんな未来を切り拓いていくのでしょうか。悩みや葛藤に向き合い、自分に正直に生きる東田さんの生き方は、たくさんの人の人生の選択を後押ししてくれるでしょう。
2018年05月12日長男、進級のストレスが爆発!?新年度の始まりは、担任やクラスの顔ぶれも大きく変わるため親は不安が大きくなりますね。幸いわが家の自閉症の長男は嫌がらず学校に通っています。けれど新しい環境に慣れないためでしょうか。家で癇癪を起こすことが多くなってきたのです。理由はどれも些細なことで、食卓に出したご飯が少し熱かっただけで茶碗をひっくり返したり、学校に着ていくお気に入りの洋服がなかったりすると大声で泣きわめいたりするのです。Upload By シュウママ朝の支度中に頻繁に起こるので、やはり今は学校に行くことが長男にとってストレスになっているのかなと想像できます。ある日、そんな状態の長男と接するのに限界が来ました。私は思わず怒鳴ってしまい、もう何もかも投げ出したくなっていまったのです。Upload By シュウママ「シュウが自閉症じゃなければ良かった?」という問いそんな様子を双子の次男がじっと見ていました。身支度を終えた次男は私の傍に歩み寄り、「お母さん大変だね」と静かに話しかけてきました。そして…Upload By シュウママ突然の質問になんと答えていいか分からず、言葉に詰まってしまいました。「自閉症はシュウの個性だよ、自閉症じゃなければいいなんて思ったことないよ」ーそう答えれば子どもたちを傷つけることはないのでしょう。ですが、この時は気持ちに余裕がなく、「そうだね。やっぱり自閉症じゃない方がよかったかな」と思わず本音が…。「でも可愛いからね。何とか頑張れるよ」と続けました。次男がかけてくれた言葉私の言葉を聞いた次男は、少し考えてこう言いました。「でもねオイラこう思うんだ。シュウみたいな病気の子どもはさ、お母さんを選んで生まれてくるんだよ」Upload By シュウママその言葉を聞いた瞬間、私は目頭が熱くなりました。きょうだい児として育まれていた優しさ心の余裕をなくしてしまったことに対して、いろいろな思いが巡りました。「でもお母さんイライラして怒鳴ったりするよ。シュウは失敗したと思ってるんじゃないかなあ」。次男は「うーん。それはあるかもしれないけど…」とまた考え込みます。(そこは否定して欲しかった!)けれど、すぐに「名案を思いついたぞ」という表情をして「まあ、お母さん荷が重いよね。だったら…」Upload By シュウママ「シュウの世話手伝ってやるから頑張れ~」と言い残し、ランドセルを背負って玄関へと走っていきました。次男もまだ4年生。まだ子どもと思っていてもしっかりと大人に近づいているんですね。もしかしたらそれは長男に手がかかるゆえに味わってきた、きょうだい児としての寂しさが次男の成長を後押ししているのかもしれません。それでも、障害のある長男だけでなく、母を思いやる優しさも育まれていたことに気づき、たくましくなった次男の後姿を見送りました。Upload By シュウママ
2018年04月28日療育入園初日。椅子から脱走し走り回る長男3歳当時、自閉症の長男は一日中走りまわっているような子どもでした。多動の特性も強いゆえ、仕方のないことだと思うのですが、母親の私も追いかけるのに一苦労。公園に連れていくと立ち止まったり座ったりすることもなくひたすら駆け回ります。Upload By シュウママ既に療育の通所支援に通うことが決まっていたので、まあ訓練で多動はおさまってくれるだろう…と思っていたのですがそれは甘かった!療育施設の入園日、何度座らせようとしても椅子からおりて脱走する長男を見ながら目の前が真っ暗になりました。Upload By シュウママ他にも座れずに泣いている子もいます。けれど長男ほど活発に動き回る子はいなかったのです。「1か月で座れるようになりますよ!」先生の言葉に半信半疑だったけど…現実をつきつけられたような気がして「この子が椅子に座れる日が来るんでしょうか」思わず尋ねると先生は笑顔で答えてくださいました。Upload By シュウママ「みんなそうです。大丈夫ですよ」優しい先生の言葉にうなずきながらもそう簡単にいくのだろうか――不安が募りました。少しずつ少しずつ。変化があらわれてきた長男それから長男は毎日療育施設に通いました。私は週に2回ある親子通園日に長男の様子を見ることができるのですが、「あの多動がおさまるはずがない…」とやはり半信半疑でした。けれど先生方の日々の取り組みはまさに目から鱗だったのです。その療育施設では手を洗って牛乳を飲み、椅子に座ってみんなで手遊び歌を行うのが日課になっています。はじめ長男は牛乳を泣いて嫌がり、吐き出したりコップを倒したりしていました。けれど先生は牛乳が嫌ならお茶にしようかという妥協は一切なく、他の子と同じ牛乳を飲ませていました。「一口だけでも飲むんだよ」と先生はスプーン1さじから始め、1さじ飲めたら次の日は2さじという風に量を増やしていきました。Upload By シュウママその間、飲み終わった子ども達は自分の椅子を並べて先生と手遊び歌をしています。そうすると不思議なもので自分も遅れを取りたくない、みんなと一緒に手遊びしたい!という意識が芽生えてきたのでしょうか――長男は徐々に牛乳を飲める量が増えていき、最後には一人で全部飲み干し、自分で椅子を持って手遊びに参加できるようになったのです。Upload By シュウママ大切なのは妥協しないことそして長男は、教室以外の大きなホールでお誕生日会をする時でもきちんと座って待つことができるようになったのです。「あの子がちゃんと椅子に座って待てるようになるなんて…」と私は先生に言いました。すると先生は「園では基本みんなと同じものを食べ、同じ行動をするよう促します。そうするとね…」先生はくすりと笑って言いました。Upload By シュウママそして「ご家庭でも、お母さんが子ども用に別におかずを作ったりするのは控えたほうがいいんです。家族みんな同じものを食べるほうが楽しいし、苦手なものも食べられるようになるんですよ」とアドバイスしてくださいました。そういえば療育の給食の時間、子ども達は「シュウちゃんにんじん食べられたね~」とおしゃべりしながら食事していました。お友達が食べられたなら自分も食べれるかもしれない、と感じながらお互いを育てあうのかなと感じました。療育施設ではたくさんのことを教えてもらったのですが、子どもの自主性は重んじても妥協はしないという姿勢や向き合い方も、教えて頂いた大切なことでした。
2018年03月28日世界自閉症啓発デーってなに?出典 : 「世界自閉症啓発デー」は、2007年12月18日に開かれた国連総会で、カタール王国王妃から提案され、決議されました。毎年4月2日は世界中で自閉症の啓発活動が各地で行われます。日本でも世界自閉症啓発デーの4月2日から8日までを発達障害啓発週間として、シンポジウムの開催やランドマークのブルーライトアップなどが実施されています。世界自閉症啓発デーは、自閉症に関する理解を深め、身近に考えることで、すべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日です。世界自閉症啓発デー 日本実行委員会公式サイト自閉症とは出典 : 自閉症は先天的な発達障害の一つで、育児の方法や環境など後天的な原因で生じるものでもありません。対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りといった特徴が発達段階で現れると言われています。具体的には、他の人の気持ちを理解することや、言葉を適切に使うこと、予定外の変化などが苦手な傾向があります。自分の感じたままに話したり、行動したりすることがあります。外見からはわかりにくく、真面目に取り組んでいても、誤解や偏見を受けることもあります。大人のなかでも、自閉症であるのにそのことに気づけずにいる場合もあります。そのため、必要な支援を受けられず、自閉症の二次障害であるうつや不安障害などの精神疾患にかかる人もいます。一方で、自閉症のある人たちは関心のあることにまっすぐに取組むことが得意であることが多いです。鋭い感覚を生かせたり、記憶力が抜群な人もいます。そういった長所を得意な分野で生かして活躍している人もいます。自閉症についての理解や支援が十分に広まることで、自閉症のある人がより住みやすい環境で生活することができるようになるでしょう。全国でイベント開催。自閉症をもっと知ろう!Upload By 発達ナビニュース2018年の世界自閉症啓発デーに合わせて企画された各地の注目イベントを紹介します。自閉症のある人だけでなく、誰もが自分らしく暮らせる社会とは?あなたも自閉症啓発デーに合わせて実施されるイベントに参加して、一緒に考えてみませんか?Upload By 発達ナビニュース今年のテーマは 「知りたい、知らせたい 発達障害のこと ~こども、若者、スポーツ、アートの視点から~」。「安心してください!地域のみなさん」、「やりたいんだ!アート・スポーツ・ミュージック」 、「知ってほしい!街の中の味方」という題材でシンポジウムが開かれます。【日時】4月7日(土) 10:00~16:20【会場】全社協・灘尾ホール(新霞が関ビル内)【参加】要事前申し込み(定員250名)世界自閉症啓発デー2018出典 : 歌やダンスのパフォーマンスがステージで繰り広げられ、自閉症や発達障害を体感するブースなども設けられます。また、4月2日はSNSのタイムラインをブルーで埋め尽くそうと、「#WB2018」「#MAZEKOZE」のハッシュタグつきで写真の投稿も呼びかけています。イベントにはぜひ青い物を身につけて参加を!【日時】4月2日14:00〜18:30【会場】東京タワー広場 特設ステージ一般社団法人 Get in touch出典 : 月5日から4月13日まで各所で続々と関連イベントを開催。メインとなる4月1日、2日も多数の会場で「青いものづくり」「LD・ADHD等の擬似体験プログラム」といった参加型の企画されていたり、「自閉症啓発デー・アート展」が開幕します。主な会場ごとのイベントはこちら。五稜郭タワー・アトリウム【日時】4月1日(日)13:00【内容】開会式&オープニングセレモニー、「Blueの音楽祭」棒二森屋店【日時】4月1日(日)10:00〜16:00【内容】LD・ADHD等の擬似体験プログラム、「ハッピー」こどもイベントサークル、歌声ライブ&あおいろライブ函館市芸術ホール【日時】4月2日〜7日(月)10:00〜19:00【内容】第5回自閉症啓発デー・アート展、発達相談、羊毛フェルトで作る「地球玉」(2日のみ、14:00〜17:00)世界自閉症啓発デーin HAKODATE 2018出典 : 寸劇や疑似体験をはじめ、キャラバン隊公演や障害のある方々などによるバンド演奏とダンス、ミニコンサートなど。【日時】4月7日 (土)11:00〜17:00【場所】Qiball(きぼーる)1階アトリウム第10回世界自閉症啓発デーinちば~みんな大切な仲間です~自閉症の当事者であり、少年画家として活躍する濱口さんと交流できる小学生以上を対象としたワークショップです。濱口さんのインスタレーションとともに参加者も自由に絵を描きながら、絵で表現することを一緒に楽しみます。【日時】4月8日(土)10:00~11:30、14:00~15:30【場所】海老名市立中央図書館【参加】3月24日から参加券を海老名市立中央図書館で配布。(各定員10人)少年画家 濱口瑛士の世界自閉症啓発デーの4月1日から8日までの「発達障害啓発週間」スペシャルイベントとして企画された、発達障害のあるミュージシャンによるコンサートです。手作り楽器で「キミダケノオト」を奏でて、気持ちを音に乗せて表現する楽しさも体験できます。【日時】4月8日(土)10:15~11:30【場所】三茶しゃれなあどホール【参加】要事前申し込み大人1,000円/小学生以下無料キミダケノオトでフリーセッション!そらコンサートこのほかにも、全国各地で自閉症の啓発に関する活動が展開されています。各自閉症協会や自治体ごとの一覧も公開されているので、みなさんのお住まいの地域ではどんな活動があるのか、ぜひチェックしてみてください。世界自閉症啓発デー 全国都道府県市の自閉症協会の取り組み計画世界自閉症啓発デー2018自治体等啓発取り組み一覧世界自閉症啓発デー2018自治体等啓発取り組み一覧(教育関係)世界を包む青い光。「ライト・イット・アップ・ブルー」出典 : 世界自閉症啓発デーに合わせて、世界中のランドマークや名所旧跡を青色でライトアップするライト・イット・アップ・ブルー(Light It Up Blue)が、近年日本でも広がりをみせています。青色は「癒し」や「希望」をあらわすとして、世界自閉症啓発デーのシンボルカラーになっています。自閉症はわかりにくい障害と言われ、障害を知らない人から誤解を受けたり、うまくいかないことに直面することもあります。そんな自閉症の人の存在を多くの人に気づいてほしいという願いから始まったのがこの青いライトアップなのです。ニューヨークに本拠地のある世界最大の自閉症支援団体「Autism Speaks」が2010年にはじめて以来、日本でも各関係団体や賛同する施設でライトアップが広がり、定着しつつあります。点灯式にあわせてイベントも実施するなど、各地でさまざまな取り組み行われています。誰でも気軽に足をは込めるライトアップ。おすすめの会場を紹介します!画像は過去のものです。実際とは異なる場合があります。【日時】2018年4月2日(月)18:15〜22:00【場所】東京タワー屋外特設ステージ世界自閉症啓発デー2018出典 : 大阪の象徴である通天閣もブルーに!大阪府内では、ほかにも大阪城天守閣や天保山大観覧車も青色に染まります。【日時】4月2日(月)日没から23:00まで(天保山大観覧車は22時まで)「世界自閉症啓発デー」(4月2日)のブルーライトアップ及び発達障がいに係る啓発活動を実施します出典 : 長野県の茅野市民館では、ライトアップだけでなく、日中イベントも企画されています。自閉症をはじめ、発達障害の当事者や関係者のメッセージの展示。誰でも参加できるダンボールと絵の具を使ったアートワークショップもあります。点灯式は4月1日18:00から行われます。【日時】4月1日(日)、2日(月)アートワークショップ「みんなでつくろう 光る!まぜこぜドーム」【日時】4月1日(日)13:00~15:00【会場】茅野市民館 ロビー、他【参加】要問合わせ It Up Blue ちの 2018 ~ひろがれ!青い光がつなげるこころ~出典 : ココウォークでは2014年からこの運動に賛同して参加しています。長崎県ではほかにも、女神大橋、稲佐山、ハウステンボス、大村市周辺施設がライトアップされます。【日時】4月2日(月)~4月8日(土)長崎県こども家庭課4月2日は、世界自閉症啓発デー今年のライトアップは全国100ヶ所余りで行われる予定です。幻想的な青に染められた夜の街を歩いて、自閉症について考えてみませんか?世界自閉症啓発デー2018ライトアップ施設一覧世界自閉症啓発デー2018ライトアップイベント詳細一覧まとめ出典 : 近年、発達障害への社会の関心が高まりつつありますが、誰もが暮らしやすい社会を実現するに正しい理解の広がりがもっと必要です。自閉症のある人はコミュニケーションをとるのが苦手であったり、こだわりがあったり、いつもと違うことが苦手であったりといった特性があります。外見からはわかりにくいため、いまだに「心を閉ざしている」「親の育て方のせい」などといった誤解を受けることもあります。しかし、周りの人が自閉症について理解し、接し方や環境調整といった工夫をすることで、自閉症のある人やその家族が抱える困りごとは減らすことができるのです。イベント会場に足を運べない人も、当日は青い服やアイテムを身に付けてみてはどうでしょうか。青いものを写真に撮ってSNSに投稿することで、同じように自閉症について考えている仲間とつながることもできるかもしれません。世界中の人が自閉症について考える4月2日の「世界自閉症啓発デー」を通じて、あなたも自閉症の人が安心して暮らせる社会への一歩を踏み出しませんか?取材協力:一般社団法人日本自閉症協会
2018年03月28日次男が大熱!全く兆候に気づかなかったけれど冬休みが終わったばかりの頃、学校から帰ってきた次男(定型発達)がランドセルを玄関に投げてそのまま仰向けに倒れこみました。真っ赤な顔をしているので驚いて額に手を当てるとすごい熱!「なんで先生に言って早退しなかったの!」と聞くと「我慢しちゃった…」とのこと。すぐ病院に連れて行くと、インフルエンザではなかったものの気管支が炎症を起こしており翌日にも熱はひかず学校を休みました。Upload By シュウママ幸い大事には至りませんでしたが…朝はいつもと変わらず元気だったのにどうしたんだろう。私は次男の様子から、その後体調が崩れるなんて、思ってもいませんでした。自閉症の長男の場合。体調が悪くなる前に教えてくれる、ある「におい」それから2週間後のことです。朝、長男を起こそうとしたとき、いつもと違う、ふっと何か匂う感じがしました。うまく伝えられないのですが、いつもの長男の体臭とは違う、汗のようなカビのような不思議な匂いです。Upload By シュウママとっさに「これ、熱が出る前兆かも!」と思いました。長男は体調を崩す前、いつも体臭が変わるのです。注意して見ていると、朝ごはんはよく食べるものの、いつもより食べるスピードが遅い。鼻水も咳も熱もないけど、いつもより目に力がない。普段とどこか様子が違っていました。Upload By シュウママ念のため学校を休ませると、やはり夕方から急に熱が上がり始め翌朝まで下がりませんでした。こちらも病院に連れていくと、風邪という診断でほっとしたのですが…ふと思ったんです。そういえば…どうして私は次男の体調には気付かなかったのに長男の異変だけ察知することができるのだろうかと。なぜ長男の異変だけには気付くのか。それはある習慣があったから思い当たったのは一つの小さな習慣でした。長男が夜寝る前と朝起きた時、私はいつも必ずぎゅっと抱っこしてくんくんとにおいを嗅いでいました。Upload By シュウママ双子の息子たちは9歳です。普通嗅ぎませんよね。でもなぜそれをするのかというと、長男が7歳まで言葉を話せなかったということが大きな理由です。話せないなら私が感じ取るしかない。実際毎日抱っこしているといつもと違うときに気が付くことがあります。あれ、何か不純物の匂いがするなあって(笑)言葉で説明できないから、無意識に五感を駆使できるようになったのかも定型発達の次男は、体の調子の悪さを言葉に出して訴えることができます。けれど自閉症の長男は違います。最近ではパパ、ママ、電車など見たものをそのまま伝えることはできるようになっていますが、それでもまだ暑いとか寒いとか、お腹が痛い頭が痛いといった、感覚的なものを伝えることは、まだ難しい。Upload By シュウママそのため私は体調の良し悪しを、長男の表情や仕草、顔色、果ては匂い…ほんの小さな「いつもと違う」異変から推し量るしか術がなかったのです。たぶん、無意識に五感全部を使って子どもを守ろうとする本能が働いていたのかもしれません。発達障害のある子どもを育てることは大変なこともあります。けれど子どものほんのわずかの変化に誰よりも敏感に気付くことができるようになっている、と感じる瞬間があるかもしれません。それは、親子の毎日の小さな積み重ねにも気付かせてくれました。そしてそれは、子どもにとってお母さんが一番安心して身を委ねられる場所である証なのかもしれない。そんな風に感じるのです。
2018年02月26日意外と身近?拡張現実(AR)とは出典 : 発達障害のある子どもたちの療育シーンを覗いてみると、いろいろな遊びやゲームを活用していることが分かります。わが家の息子の療育でも、半分はお勉強感覚、半分はゲーム感覚というプログラムがよく見受けられました。課題に遊びやゲームを取り入れることによって、子どものモチベーションがアップすることはなじみのある話だと思います。さて海外では、発達障害の子どもたちの療育において、「課題をゲーム化」することに加え、 拡張現実(AR:Augmented Reality) の技術を使ってソーシャルスキルトレーニングを行うことのできるメガネが開発されました。拡張現実(AR)と言っても、ピンとこない方もいるかもしれません。拡張現実とは、私たちが実際に見えている世界に、さまざまな画像や映像を重ねて表示する技術などを指す言葉としてよく用いられます。身近な例では、最近流行した「ポケモンGO」があります。スマートフォンの先に見えている現実の景色の中に、ポケモンのキャラクターなどが重なって表示され、あたかも私たちが生きている世界の中にキャラクターたちが存在しているかのように見えます。さて、拡張現実(AR)を使ったメガネで、どうやって療育を行うのでしょうか。スマートグラスによるソーシャルスキルトレーニング出典 : このような拡張現実の世界を見せてくれる特殊なメガネを「スマートグラス」と言います。通常のメガネのレンズにあたる部分には透明なティスプレイがあり、現実の世界に重ねて、表示される内容を見ることができます。このスマートグラスを、自閉症スペクトラムの子ども向けの支援に使うことを見出したのがアメリカのBrain Power社とAffectiva社です。 SUPPORT (訳:自閉症者の支援)この取り組みで使われたのは"Google Glass"(グーグルグラス)と呼ばれるスマートグラスです。グーグルグラスは検索エンジンとしても有名な Google社が開発したものの、一般向けへの販売は2年以上前に終了していました。このまま幻の機械になってしまうかと思われたグーグルグラスでしたが、この製品の開発によって療育用の機器として再び注目を集めています。グーグルグラスによる療育は、発達障害のある子どものソーシャルスキルトレーニングに使われているようです。下の動画が、その様子になります。スマートグラスにはカメラも内蔵されており、メガネの先にいる人間の顔やジェスチャーなどをリアルタイムに認識することができます。実際のソーシャルスキルトレーニングでは、次のようなことを行っているようです。目の前にお母さんが座っています。お母さんは笑っています。それを見て、メガネの中に映し出されたアニメーションの顔を使った「表情当てクイズ」に回答します。お母さんが笑っている顔を見て、「ハッピー」のアニメーションを選ぶことができたら、目の前に「正解!」と出てきます。こうして、ゲーム感覚で、目の前の人の表情を学ぶことができます。また、スマートグラスを使って、相手と視線を合わせる訓練もできるようです。目の前にいるお母さんや療育者の目を見た瞬間に、目の前に拍手をするアニメーションが出てきたりして、何かしらの「ご褒美」が表示されるようになっています。スマートグラスの活用はスタンフォード大学でも同じような取り組みはアメリカのスタンフォード大学でも行われており、そこでも同じくグーグルグラスが用いられているようです。スマオートフォンアプリとも連動し、トレーニングの成果などを分析して、次のアクションの検討に役立てることも可能です。臨床研究も進められており、利便性と効果の両軸から、在宅での療育の可能性について日夜研究されているようです。Upload By 林真紀Upload By 林真紀Upload By 林真紀"Autism Glass Project" (訳:自閉症児用メガネプロジェクト)「ゲーム感覚」であることの重要性出典 : このように、海外ではAR技術が自閉症スペクトラムの人のソーシャルスキルトレーニングに活用されていることが分かりました。自閉症スペクトラムの人にとって、人と目を合わせたり、人の表情を適切に読み取ったりすることはとてもハードルの高いことで、このようなことを「訓練」として無理やり行うことは苦痛になってしまうでしょう。しかし、今回紹介したようなスマートグラスを用いて、ゲーム感覚でトレーニングを行うことによって、苦痛ではなく、楽しくソーシャルスキルを学び、訓練をすることができます。今後こういった技術が一般化していけば、療育も新しい進化を遂げるような予感がしています。「訓練」ではなく、苦痛なく、楽しく。そんなソーシャルスキルトレーニングを行うことのできる技術の先駆けとして用いられたこのAR技術・スマートグラス。これからの療育をどう変えるか、目が離せませんね。
2018年01月27日発達障害児とその家族を支えるため、発達障害の正しい理解のための講演活動や、発達障害児を持つ家族のための相談支援活動などを行っている団体、一般社団法人「発達障害ファミリーサポートMarble(マーブル)」。その代表理事を務める国沢真弓さんは自身も、高校生になる自閉症児の母であるため、「当事者家族」の視点からのお話にはとても説得力があり、温かみのある方です。本業がアナウンサーであるため、周囲への「伝え方」のアドバイスは、なるほど! と深く納得できるものばかり。500名以上の発達障害児の家族の相談にのってきた国沢さんに、今回うかがったのは、発達障害の子どもを取り巻く、周囲との上手なコミュニケーション方法について。同じく発達障害の息子を持つ筆者が、「カミングアウトはするべきか?」「するとしたら上手な伝え方は?」、また「身近に発達障害児がいる場合、周囲はどう働きかければいいのか?」などを聞きました。■カミングアウトにあえて障害名を言う必要はない――発達障害の程度が重い場合は、あえて説明しなくても周囲は自然とわかるかもしれませんが、グレーな場合はわかりにくいですよね。特に説明する必要を感じない場合は、黙っていてもいいような気もしてしまいますが、身近なところにはカミングアウトした方が良いのでしょうか?「私が相談を受けた中では、カミングアウトした方が良いケースが多かったです。ただし、その際に、障害名をあえて言わない方が、結果的に良かったようですよ」――障害名をあえて言わないのはなぜでしょうか?「保育園や幼稚園だと、保護者が顔を合わせる機会が多いので、保護者の人となりが大体わかるのですが、小学生になると保護者の顔が見えにくくなってきます。残念ながら、中には噂好きのお母さんがいて、障害名だけ切り取って周囲に言われてしまったという例もあります。もちろん、障害名を伝えてうまくいくケースもあるので一概には言えませんが、カミングアウトする際は、どういう保護者がいるかわからないという想定で考えた方が良いと思います」――具体的には、どう伝えれば良いのでしょう?「上手くいった、ひとつの例をご紹介しましょう。『ホップ・ステップ・ジャンプの伝え方』…と私は名付けているのですが(笑)。まず“ホップ”。ユル~リと、子どもの具体的な行動を伝えます。例えば、『授業などの予定が急に変わると、混乱して泣いてしまうこともあるかと思います』とか『息子の〇〇は気持ちが高ぶると時々、乱暴な行動に出てしまうことがあります』など。ただ、この時、できればマイナス面だけではなくプラス面も話してほしいです。例えば、『小さな子には優しかったりするんですよ』など、良い面もくっつけると、聞いた時の印象が和らぎます。次に、“ステップ”として、子どもの行動に対して親として努力している姿勢を伝えます。例えば、『本人が行動を改められるように、1カ月に1回ほど専門家に相談に行っています』などというふうに『何もしていない訳ではないんだよ』と知らせます。最後に“ジャンプ”として、『〇〇のことで、何かありましたらお知らせください』と、いつでも受け入れる姿勢でいるということも伝えておく。そうすると、『ちょっと子どもはやっかいだけど、この保護者は何かあった時に聞く耳を持っているんだ』と、周囲も安心してくれるでしょう。本当は、しんどいんですけどね(汗)そして余裕があれば、最後に『今日は、話す前は緊張しましたが、親子ともども、楽しい学校生活を送りたいと思っているので、1年間よろしくお願いします』などと前向きな言葉で締められたら、グッド! ちょっとハードルが高いかな(笑)。でも、こんな順番でお話しすると、周囲に受け入れてもらいやすいようで、1クラスに2~3人は、応援してくれる保護者が出てくるケースをたくさん見てきましたよ」――なるほど。受け入れる姿勢を示すことはとても大事ですよね。では、もし、実際に子どものことで保護者からクレームがきた場合は、どう対処するのがベストでしょうか?「『周囲から子どものことでクレームがきた』という相談も、とても多いです。例えば、通常学級では『〇〇君がいると授業が進まない。支援学級にうつった方がいいんじゃないんですか?』なんて言われてしまうことも、残念ながらあります。そういう時は、もし、わが子が授業を中断しているのが事実だとしたら、まず謝ることが大切。そのうえで、『この子の居場所ができるように、クラスメートに迷惑がかからないように、学校と話し合いをしているので、もう少し見守っていただけますか?』とか『今、事態が改善されるよう、専門家にも相談をしています』などと、こちらが努力している姿勢を示しましょう。と言っても、こういう局面で、このように伝えるのは、すごくエネルギーを使いますよね。私も、相談する方のつらさがわかるだけに、なんとか力になれたらと思うんですよ」 ■発達障害の子どもに対して、周囲はどう対応すべき?――次は、逆の立場から考えた時のことをお聞きします。例えば、身近に発達障害の子どもがいた場合、周囲はどう接したら良いのでしょうか?「周囲が『歩み寄りたい』という気持ちを持ってくれたら、とてもありがたいです。発達障害の子どもの性質と接し方のコツを、周囲のみんながわかってくれたら、その子だけでなく、きっとみんなも楽になると思うんです。事実、障害児がいることで、その子を落ち着かせるために一致団結したり工夫したり、クラスがすごくまとまるケースもあるんです。…と言うことを、私たちのような“障害児の親サイド”から言ってしまうと、ちょっと押しつけがましいかもしれませんが(笑)。でも、実際、そういう例はあるんですよ」――「あの子はいろいろ問題行動を起こして迷惑」というふうにとらえるのではなく、「どうすればみんなが快適に過ごせるか?」というふうに視点を変えるのですね?「そうです。『授業を中断されて迷惑』とばっさり切り捨てるような一面的な考え方ではなく、『同じ教室に困っている子がいて、どうすれば解決できるか』を多面的にみんなで考える。その子が落ち着けば、自分たちへの飛び火も消えて、お互いに過ごしやすくなるはずですから。ただ一方的に、その子ばかりを特別扱いするというのではなく、みんなにも良いことがあるということを知ってもらえたら良いですね」――具体的には、周囲はどう接したらいいのでしょうか?「発達障害児に接する基本は4つです。1つは、話しかける時は『おだやかに・短く・肯定的な表現で・具体的に・わかりやすく褒める』。例えば、『廊下は走っちゃダメだよ!』ではなくて、『静かに歩きましょう』。『ちゃんとやってよ!』ではなくて、『〇〇を□時までに△△にしまいましょう』というふうに。2つ目は、あらかじめ予定を伝えることです。例えば、今日1日のスケジュールなどを表にして、『どこで、何が、いつ、誰が』を明記してわかりやすく伝えます。3つ目は、その子が集中できる環境を整えることです。好きなモノを手に握らせるなど、ほかにもその子が落ち着いていられるように工夫します。4つ目は、感覚過敏に配慮することです。発達障害児は知覚・触覚・嗅覚・味覚・平衡感覚が鋭かったり、逆に鈍かったりすることが多いので、近くで大声を出さないようにしたり、急に体に触れたりしないように、その子どもに合わせて配慮します。これら4つのことを組み合わせてやっていくと、落ち着いてコミュニケーションを取れることが多いと思います。すごくたくさんあって、大変という印象を持たれる方も多いかもしれませんね! けれど、こういうことを実践して、実際、発達障害の子どもが落ち着いて、クラスにいることができたら、それは周囲の皆さんの“努力賞”だと思いますよ」――なるほど。でも、このコミュニケーション方法って発達障害児だけではなく、すべての子どもに同じように役立ちますよね?「もちろん、発達障害児だけではなく、すべての子どもに有効な方法だと思います。私もこの対応法が身に着いてから、ずいぶん変わりました。例えば、忙しい時に子どもがミルクをこぼしたりすると、以前は『もう…! 何してんの!』みたいに怒ってしまっていたけど(苦笑)、息子への対応法が身についてからは『これでキレイにふきます』とサッと布巾を渡せるようになりました。私がイライラすると息子がそれに影響されて大変になってしまうので、自分の身を守るためでもあるんですけどね(笑)」――対応法が、すっかり体に身に着いたのですね!「10年以上、発達障害児の子育てをしていると、ずいぶん変わりますよ(笑)。難しいことかもしれないけれど、周囲の皆さんにも、どんどん対応法を知ってもらえたらうれしいです。上手に対応できた子は、きっとクラスの中でも『えっ、すごいじゃん!』と羨望(せんぼう)も集まって、その子も鼻高々になるかもしれません。そうやって、お互いコミュニケーション方法を学ぶことで、お互いの理解が深まるような、そんな環境になれば素敵ですよね」集団の調和を乱す子を、単に『みんなの邪魔』と言って排除するのは簡単です。でも、排除するだけでは、そこからは何も学べませんし、成長もありません。自分も、いつ“障害を持つ側”になるかはわからない…。障害を持った時に、悲嘆したり絶望したりすることがないように、誰もが尊重される、暮らしやすい社会が実現できると良いなと、心から思います。ただし、発達障害の子どもが何に困っているかを考え、相手の立場を理解し、一緒に楽しく過ごす方法を考えるのは、手間も忍耐力もとても必要です。けれど、それを根気よく進めていくことで、子どもたち(もちろん子どもだけではなく私たち大人も)は、かけがえのないものを学んでいくのではないでしょうか?国沢真弓さん プロフィールフリーアナウンサー、自閉症スペクトラム支援士、一般社団法人 「発達障がいファミリーサポートMarble」 代表理事<役職>ペアレント・メンター、三鷹市相談支援事業「ママサロン」相談員 、三鷹市知的障害者相談員、三鷹市発達障害児親の会「モンブランの会」会長、社会福祉法人「清陽会」評議員、児童発達支援施設「すこっぷ調布」アドバイザー、三鷹市教育支援推進委員会委員。<経歴>都立新宿高校、聖心女子大学文学部歴史社会学科を卒業。富士通株式会社を3年勤務後、アナウンサーに転向。NHKテレビ「きょうの料理」「婦人百科」の進行を約10年務めたほか、多数のテレビ・ラジオ番組に出演。海外特派員、番組企画構成も担当。ナレーション・司会は各500回以上務め、厚生労働省主催「世界自閉症啓発デイシンポジウム」の総合司会を毎春担当。「3歳までの子育ての裏ワザ」「こんな時どうする?子どもの友達・親同士」(PHP出版)など共著多数。<現在の活動>一般社団法人「発達障がいファミリーサポートMarble」代表理事として、「発達障害」や「伝える力UP」といったテーマでの講演を、全国で行っている。また、「ペアレントメンター」として保護者や支援者の相談に応じるほか、障害児の家族が気軽に参加できるイベントやお喋り会の開催等を行い、家族の元気を応援している。(詳しくはホームページをご覧ください)。取材・文/まちとこ出版社N
2018年01月20日長距離のバス移動!初登園の長男は不安でいっぱい自閉症のある長男の通う療育施設までは距離があり、バスで1時間ほど。長男は乗り物が大好きな子どもでした。けれど通常の幼稚園バスよりもひとまわり大きな通園バスに乗り、さらに1時間かけて行くと聞いたとき「大丈夫かな…」と不安がよぎりました。するとやはり心配的中!初日は私も一緒にバスに乗りましたが、長男はずっと小さな体をこわばらせていました。Upload By シュウママバスの先生は歌をうたったり、手遊びをして長男の緊張や不安を解こうとしてくれます。けれど長男はイライラした様子で今にも泣き出しそう…。初日からこれか…と冷や汗が流れたそんな時です。運転手さんのサプライズ大きな声が響きわたりました。Upload By シュウママ「よーし、これからトンネル入るぞ~みんな暗くなるぞ!目をつぶって!」高架下のトンネルへ入る直前運転手さんが、車内のライトを消したのです。突然車内が暗くなったので長男はきょとんとしました。そしてトンネルから出る直前「もうすぐ出口だよ~、はい明かりがつくよ」そう言ってライトをつけてくれ車内はぱっと明るくなりました。子ども達のわあっという声が聞こえました。ぽかんとしていた長男も笑顔に!Upload By シュウママこうして長男は初日のバスを何とか乗り切ることができたのです。運転手さんのほんの少しのサプライズが子どもたちの笑顔を引き出してくれたのです。その後も、サービス満点の優しい運転手さんは子ども達の人気者でした。ところが子どもたちを思うあまり、大きな失敗をしてしまうことも・・・外は大雨!子ども思いすぎる運転手さんの大失敗…雨の降る日のことです。私は親子通園日だったため長男と一緒にバスに乗っていました。療育施設に着いたときにはどしゃぶりになっていました。バスの駐車場から施設の出入口まではすこし距離があります。「これじゃ先生も子どもたちも濡れちゃうなあ。かわいそうに…。ぎりぎりまで近づけるよ」そう言うと運転手さんは、バスを屋根のある出入口に寄せようとしました。とたんにガチャン!という音。「うわっ!やっちゃった!」見るとバスのフロントガラスにひびが入っていました。Upload By シュウママ子どもたちに寒い思いをさせたくない、という優しさがガラスを割ってしまったのです。なんだか申し訳なくていたたまれないような気持ちになりました。後日運転手さんはUpload By シュウママと頭を掻いていましたが、その顔は笑っていました。運転手さん、素敵な思い出をありがとう長男は3年間この療育施設で過ごし、その間毎日バスで通園し運転手さんには本当にお世話になりました。バスの中でかつての卒園生を目にすると「あ~〇〇ちゃんだ。おおきくなったなあ」と目を潤ませ、一緒に成長を喜んでくれる温かい人柄の運転手さんでした。夏の猛暑や冬の寒さ、そんな日の親子通園は正直体にこたえます。けれどその1時間の距離を楽しいものへと変えてくれたおかげで、心や体の負担を軽くしてくれたのです。それは先生だけでなく、この運転手さんの存在がいかに大きかったか…。今にして思います。Upload By シュウママそしてとても不思議なご縁ですが、運転手さんと我が家の双子はクリスマスイブが誕生日だったのです。「同じ誕生日だね!」と話が弾みました。だからですね。この時期になるとふっとあの運転手さんのことを思い出すんです。
2017年12月27日自閉症スペクトラム障害の「困難」出典 : 発達障害の1つ、自閉症スペクトラム障害。物事への興味関心やコミュニケーションに関する特異性が強い障害だと言われていますが、実際には一人ひとりが異なる多様な困難に直面し、その困り度合いや表出のしかたもそれぞれ異なります。我が家の7歳の息子は自閉症スペクトラム障害の診断を受けており、好きなことばかりを喋り続けてしまったり、トミカを延々と等間隔で並べ続けてたりしていました。また、少しの乱れも許さず、ちょっとでも間隔がずれてしまったりすると、癇癪(かんしゃく)を起こしていたものです。最近はこのような癇癪は起こさないように自分でコントロールできるようになりましたが、好きなことに対するこだわりの強さはいまだ健在です。これらは自閉症スペクトラム障害の「社会的コミュニケーションの困難さ」や「こだわりの強さ」に起因するのでしょう。そんななか、今年の11月に、なぜこの2つの特徴が発生するかについての研究結果が、日本国内から発表されたのです。リズム同期実験/最新の脳波技術による研究とは出典 : 以前まで、「社会的コミュニケーションの困難さ」と「こだわりの強さ」は、これまでは、それぞれ別のメカニズムから生じていると考えられていました。けれども、最新の脳科学の研究によって、これら2つの特徴が同じメカニズムから生じている可能性があるという見解が示されたのです。研究結果を発表したのは、京都大学、筑波大学、理化学研究所、帝塚山学院大学による共同研究チーム。この研究は、英国の科学誌「Scientific Reports」にもオンライン公開されました。自閉スペクトラム症者のコミュニケーション障害に関する新たな視点 -最新の脳波技術を用いた科学的根拠による理解の促進-| 京都大学 theta activation during motor synchronization in autism (訳:自閉症者のリズム同期課題時の前頭シータ波の活動)この研究は、自閉症スペクトラム障害の当事者が参加し「リズム同期」の課題を行うことで、自閉スペクトラム障害の特徴を明らかにしようとするものです。ここで言うリズム同期とは、タイミングをあわせて音を鳴らしていくようなもので、二者でリズムが一定になるように、交互に音のなるスイッチ(キーボード)を押す実験です。自閉症スペクトラム障害の参加者がキーボードを押すと音が鳴り、続けて相手(PCプログラムもしくは定型発達の参加者)がキーボードを押すと別の音が鳴ります。PCプログラムが相手をする場合は、一定の間隔で音を出すパターン、急に間隔が変わるパターンなどを使用して、それらがどれだけ同期しているか調べるのです。またこの実験中は脳波も測定し、どのような脳波が発されているかも記録していきます。そして自閉症スペクトラム障害の参加者と定型発達の参加者の同期実験の結果を比較してみると、次のようなことがわかりました。・リズムが一定のPCプログラムが相手だと、自閉症スペクトラム障害の参加者と定型発達の参加者で、同期の特徴に差はない。・人および音の間隔が一定ではないPCプログラムが相手だと、定型発達の参加者に比べて自閉症スペクトラム障害の参加者では、同期量が少ない。この同期量の少なさは、主に自閉症スペクトラム障害のこだわり傾向の強さと関係があるつまり、自閉症スペクトラム障害の人たちが、一定ではないリズムへの適応に困難さを抱えていることが示唆されてます。自閉スペクトラム症者のコミュニケーション障害に関する新たな視点 ~最新の脳波技術を用いた科学的根拠による理解の促進~また、この同期実験で、参加していた自閉症スペクトラム障害の人たちの脳波データを解析したところ、定型発達の人たちの脳波と較べて、下記のような特徴があったそうです。・リズム同期において、自閉症スペクトラム障害の人たちにのみ前頭シータ波が増加する(=脳に負荷がかかっている)・自閉症スペクトラム障害者の前頭シータ波は、リズム同期の相手が人であってもPCであっても増加することが分かった前頭シータ波とは認知負荷がかかっていることを示す脳波であり、驚いたことに自閉症スペクトラム障害の人たちは「相手とリズムを合わせる」ということだけでも、脳に負荷がかかっていることが分かったのです。これらのことから、研究報告では次のように記述されています。上記の結果から、自閉スペクトラム症者では、単純なコミュニケーションに含まれる他者のイレギュラーなリズムに適応することに負荷がかかっていること、しかもこれにはこだわり傾向が関係していることが、実験と臨床の両面から発見されました。また、この考え方により、「コミュニケーションの困難さ」と「こだわり傾向」の強さは、他人のリズムに合わせることの難しさから起因するものとして統合的に説明できると、研究では示唆されています。自閉症スペクトラム障害の子どもの毎日を想像してみる出典 : このことを知ってから私は、息子がくたびれて帰ってきて、家に帰って不機嫌だったりすることも、私は少し優しい気持ちで眺めることができるようになりました。大勢の誰かにとっては「ただリズムを合わせるだけのこと」が、脳に大きな負担をかけていること。さらにそれが変則的なリズムであればあるほどストレスが大きい。良く考えてみれば、人とのコミュニケーションは変則的なことだらけです。相手の話に頷くタイミング一つとっても、「一定ではないリズム」です。さらにこれに、相手の話を聞いて適切な答えを言ったり、笑ったりといった「超変則的なリズム」が加わるのです。自閉症スペクトラム障害のある人たちにとって、「一定ではないリズム」の集合である対人コミュニケーションが、いかに難易度の高いことであるかが、より想像しやしすくなりました。学校生活や社会生活は「リズムを合わせる」ことだらけです。他者の行動に合わせて1日行動すると、恐らく自閉症スペクトラム障害の人たちの脳には大きな負荷がかかっているのでしょう。言うなれば、毎日が大荒れの大航海。そう思うと、家に帰ってきた息子を、まずは褒めてあげたくなるのです。
2017年12月22日