映画『花腐し』(11月10日公開)の公開記念舞台挨拶が11日に都内で行われ、綾野剛、柄本佑、さとうほなみ、荒井晴彦監督が登壇した。同作は松浦寿輝氏による芥川賞受賞作の映画化作。廃れていくピンク映画業界で生きる映画監督・栩谷(綾野)と脚本家志望だった男・伊関(柄本)、そしてふたりが愛したひとりの女優・祥子(さとう)。梅雨のある日に出会った栩谷と伊関は、自分たちの愛した女について語り始める。そして、3人がしがみついてきた映画への夢がボロボロと崩れ始める中、それぞれの人生が交錯していく。○■映画『花腐し』主演の綾野剛らが舞台挨拶に登場まず綾野が「初日となった昨日はお昼以降、雨が降っておりまして。なんだかこの作品を雨で迎え入れてくれるような、恵みの雨だなと思いました。今日は天気はいいですが、本当に(映画が公開できて)感慨深いですね。皆さんにこの作品がどう受け止められていただけるのか、どう届いていくのか、その思いを大切にしています。荒井監督が、この作品のことを、ひとつのレクイエム映画であると評されていましたが、終わりを迎えることと、はじまりを迎えることの連続で、この作品は存在してるなと。皆さんが観てくださることで作品が育っていくことがうれしくて仕方がありません」と感慨深い様子を見せる。綾野が語った通り、本作は“ピンク映画のレクイエム”というテーマが内包されているそうで、荒井監督は「取り戻せない過去というかね。取り戻せないということでハッキリしているのは、人が死んでいくことなので。この歳になると、僕より下の連中、青山真治や斎藤久志なども死んでいったので。いつ自分の番なのかということがありますが。そういうこともあって、人がいなくなることに対する気持ちをやってみたいと思いました」とその思いを明かした。今作への出演について、綾野は「素直に荒井さんの現場に行きたいというのがありました。映画人の中に入っていろんなことを学びたいというのがありましたし、とにかく脚本から映画の匂いが沸き立っていた。その脚本に出会えたのがうれしくて、ご褒美のような気持ち、畏怖心よりも、飛び込んで作っていきたいと思った。そこに(柄本)佑くんと、(さとう)ほなみさんが参加すると聞いてたんで何よりでした」と熱弁。柄本も「やっぱり、ホンが面白かったし、荒井さんのファンだというのがシンプルな理由。それ以外はないかな……。綾野さんがおっしゃった通り、映画を感じられる現場。出来上がりも含めて、映画という中に仲間入りできる。(柄本が主演した荒井監督の前作)『火口のふたり』もそうでしたが、それを感じられるので。スタッフの方も含めて、そういう方ともう一度お仕事できること。それと実は『火口のふたり』の時に心残りだったことが個人的にあって。もういちど荒井さんのセリフにチャレンジできるとも思って。これはやるべきだと思いました」と力強くコメントする。オーディションで抜擢されたさとうも、「皆さんがおっしゃったとおり、わたしも荒井監督の作品にたずさわりたい。オーディションには綾野さんも柄本さんもいらっしゃって。映画が好きいらっしゃるこの3人と一緒に作品をつくりたいという思いで挑ませていただきました」と振り返る。荒井監督は、「綾野さんとさとうさんは、初めてだったんですけど、僕は初めての人は人見知りしてしまうんですよ。だから子どもの頃から知っている佑には、困った時の支えとしていてほしいなと思った笑。そういうわけで、ヒヤヒヤしながら現場に入ったんですけど、でも綾野さんは優等生でまじめで気配りがあって、驚きました」と述懐。それを聞いた綾野が「誕生日が一緒なんですよね」と誘い水を向けると、荒井監督も「(オファーの際に)もし『出ない』と言われたら、誕生日が一緒だということで口説こうかと思ってた」とぶちまけて会場を沸かせた。最後に荒井監督は「今日は綾野ファンが多いと思いますが、皆さんが10回観てくれたら、なんとかなるかなと思うので。よろしくお願いします」とメッセージ。続く綾野も「短い時間でしたが楽しかったです。この作品を届けるにあたって、いろんな思いがありました。作品の中でも、撮り方。フィックス(固定)で撮るとか、一見懐かしいノスタルジックな感じのする、昔観てきた映画の匂いがあった。だけどこの現代にこういう映画があるからこそ、映画って古くならないんだなと思えたんです。映画のあり方をあらためて、実寸大で体感させてくれた。僕たち役者にとっても(大切な作品ですし)、皆さんにとっても大切な一作になったら幸いです。引き続き出会うチャンスがあったら、また観ていただきたいと思います」と呼びかけ、「荒井さんにはまた映画を撮ってほしいなという願いをこめて。この映画がより、僕たちが想像できないような育ち方をしたらと思っています」と熱い思いを語った。
2023年11月11日『Wの悲劇』や『ヴァイブレータ』など数多くの脚本を手掛け、『火口のふたり』では監督としても高い評価を得ている荒井晴彦さん。芥川賞受賞作『花腐し』の映画化に挑んだ最新作は、綾野剛さんや柄本佑さんをはじめとする実力派キャストたちが顔を揃えていることでも反響を呼んでいます。そこで、ヒロインを務めたこちらの方にお話をうかがってきました。さとうほなみさん【映画、ときどき私】 vol. 615ドラマ『六本木クラス』や『あなたがしてくれなくても』、『30までにとうるさくて』、映画『愛なのに』など、さまざまな話題作への出演が続いているさとうさん。「ゲスの極み乙女」のドラム担当ほな・いこかさんとしても知られていますが、俳優としては「さとうほなみ」の名義で活動されています。本作では、ピンク映画の監督を務める栩谷と脚本家志望の伊関というふたりの男が愛した女優の祥子役を見事に演じ切り、注目を集めているところです。今回は、現場で感じたことや日常生活で欠かさずしていること、そしていまの心境などについて語っていただきました。お名前を聞いたとき、絶対にご一緒したいと思った―脚本から映像化の想像ができなかったにもかかわらず、この作品には強く惹かれていたそうですが、どういうところに魅力を感じましたか?さとうさん最初に脚本を読ませていただいたのは、オーディションのとき。肝となる2つのシーンだけだったので原稿用紙2枚分のみでしたが、物語の概要を聞いただけですでに面白いと感じていました。なかでも一番想像がつかなかったのは、ラストシーン。脚本には山口百恵さんの「さよならの向う側」の歌詞がすべて書いてあるだけで、どうなるのかが何も書かれていませんでした。でも、これだけ言葉を大事にする荒井監督がそうするということは、ここに『花腐し』にとっての何かしらの意味が絶対にあるんだろうなと。そういう気持ちで挑んでいましたが、現場ではさらにいろんな偶然や監督の思いつきなどもそこに合わさっていったので、結果的に激エモな終わり方になったと思っています。―ぜひ、観客のみなさんにもそのエモさを感じていただきたいですね。そして、本作では綾野さんと柄本さんと共演できるというのも出演を熱望した理由のひとつだったのではないかなと。さとうさん荒井晴彦監督、綾野剛さん、柄本佑さんというお三方のお名前を聞いたとき、絶対にご一緒したいと思いました。取材などで綾野さんが「柄本さんのファンだった」とおっしゃっているのを聞きましたが、私こそずっと前からおふたりのファンですから!といっても、まだご本人たちには伝えていないので、この記事で知っていただけたら本望です(笑)。現場にいてくれるだけで心強かった―それは喜ばれると思います。実際にご一緒されてみて、現場での様子についても教えてください。さとうさん綾野さんはお芝居に対してストイックで、本当にいろんなことをよく考えていらっしゃると感じました。それだけでなく、周りのキャストやスタッフのこともしっかりと見ていてすごく気を遣ってくださいますし、場の雰囲気を大切にされる方でもあるので、いてくださるだけで心強かったです。今回は、濡れ場やちょっとしたアクションもありましたが、カラダが交わることや動かすことに関する技術的な面を自ら監修してくださったのもすごいなと。「自分に委ねてくれたら受け身を取るから大丈夫だよ」と言っていただいたので、そういう面でも助けていただきました。―柄本さんについて、印象に残っていることはありますか?さとうさん本当にナチュラルな方なんですが、器の大きい方でもあると感じました。カメラの回っていないところで話していたと思ったら、いつの間にか役に入っているので、ご自身から役にシフトチェンジしているところを見せないようにしているところも素晴らしかったです。仕事選びの基準は、大変でも心を動かされたとき―お仕事選びについては、ご自身がキュンとするかどうかを大事にされているそうですが、本作にもそういう感覚はあったのでしょうか。さとうさん普段、私のなかで基準となっているのは、そこに挑むのがどれだけ自分にとって大変なことだとわかっていても心を動かされたとき。『花腐し』に関しては、「キュンキュンキュンキュン…」くらい最高にキュンとしました。―今回は役柄上、肌を出されるシーンが多かったですが、色気があってとても美しかったです。演じるうえで、意識されたこともありましたか?さとうさん特に何かを気を付けていたわけではありませんが、みなさんのお目汚しにならない程度にはしたいなと(笑)。ただ、後半はピンク映画を生業としている女優として描かれていたので、「肌を人に見せることを意識するとはどういうことか」というのは考えていたかなと思います。いつ仕事が来てもいいようにしているピンク映画の女優としてのプライドを持っているようにしました。―なるほど。非常にお肌もキレイなのですが、意外にも美容にはあまり興味がないとか。とはいえ、ケアとして何かされていることもあるのでは?さとうさん毎日欠かさず、赤ワインを飲んでいます(笑)。というのも、マッサージを担当していただいている方に「手足は冷え切っているし、腸の活動も悪いけど、あなたは赤ワインとの相性が非常にいい」と言われたからです。自分にとって、年齢の分岐点となったのは25歳―それはお酒好きにはうれしいアドバイスですね。普段、どのくらい飲まれていますか?さとうさん詳しくは言えませんが、“適量”ということにしておいてください(笑)。―わかりました。30代もまもなく折り返しですが、30代ならではの変化や楽しみ方みたいなものがあれば教えてください。さとうさんあまり変わっていないような気もしますが、逆に代謝が良くなりました。―それはすごいですね!赤ワインの効果でしょうか…。さとうさんそうですね。もしかしたら、体温が上がっているのかもしれません(笑)。ちなみに、気持ちの面で言うと、私にとって年齢の分岐点は25歳のとき。「あと5年で30歳だからいろんな決断をしなきゃ」みたいな焦りがありました。でも、27歳くらいで「多分もう変わらないな」と気が付いてから、30歳に対する恐れを乗り越えた気がします。ただ、そう考えると次にそれが来るのは35歳なのかなと思ったりもしますが、いまのところ不安や怖さはありません。というのも、いまの40代の方ってすごく若々しくて、みなさん楽しんでいらっしゃるので、自分もそういう風に生きていけるなら年齢はあまり関係ないなって。ただ、来年35歳になったときにめっちゃ恐れているかもしれないので、そのときにまた聞いてください(笑)。観客にしか見えない部分を最後まで楽しんでほしい―ぜひ楽しみにしております。それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。さとうさんこの作品はとても面白い構成の映画となっていて、登場人物たちの関係性は観客にしか見えない部分があるので、そこを楽しみつつ最後までしっかりと観ていただけたらうれしいです。あとは、みなさんにも赤ワインを推奨したいですね(笑)。というのは置いておいて、最近ハマっているのは、朝歩くこと。「朝に日光を浴びるといい」とよく言われていますが、それって本当なんだなと実感しています。私の場合は、音楽を聴きながら何も考えずに歩き、近所の神社に挨拶して帰ってくるという流れですが、それだけも一石二鳥どころか一石三鳥くらいになっているような気がするので、オススメしたいです。インタビューを終えてみて…。飾らない人柄と弾ける笑顔が魅力的なさとうさん。ユーモアたっぷりのお話にも、終始笑わせていただきました。劇中では、全身全霊で役と向き合っているのがひしひしと伝わってくるほどの熱演を見せていますので、ぜひそちらにも注目してみてください。切なさに胸を締め付けられる現在と過去が交錯するなかで、ふたりの男とひとりの女が繰り広げる激しい愛の物語を描いた本作。朽ちてなお純粋さを失わない愛の姿は、いつまでも降り続ける雨のように、観る者の心に突き刺さるはずです。写真・園山友基(さとうほなみ)取材、文・志村昌美ストーリー斜陽の一途にあるピンク映画業界で監督を務めている栩谷。5年も映画を撮っていなかったためにアパートの家賃を支払うことにも困り、制作会社の事務所に居候させてもらっていた。梅雨のある日、栩谷は大家からあるアパートの住人に対する立ち退き交渉を頼まれる。アパートを訪ねた栩谷は伊関という名の男と揉み合いになるが、部屋に入って話し始めると、伊関はかつてシナリオを書いていたことを栩谷に明かす。そして、映画を夢見たふたりの男の人生は、女優・祥子との奇縁に繋がっていくのだった…。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『花腐し』11月10日(金)テアトル新宿ほか全国公開配給:東映ビデオ(C)2023「花腐し」製作委員会写真・園山友基(さとうほなみ)
2023年11月09日綾野剛主演、柄本佑、さとうほなみ共演の荒井晴彦監督作『花腐し』よりメイキングショットが到着した。本作は『共喰い』『火口のふたり』などの荒井晴彦が、芥川賞受賞の松浦寿輝による同名小説を大胆に脚色して描く、ふたりの男とひとりの女が織りなす切なくも純粋な愛の物語。この度解禁されたメイキングショットは2点。土砂降りの中、綾野さんとさとうさんがひとつの傘を手に、思い思いにふり返る様子が印象的な1枚と、それぞれが「“溺れる”ようだった」という大量の雨に佇みながらも、どこか楽しげな雰囲気さえ感じさせるカットとなっている。また併せて、本編特別映像も解禁。雨宿りする場所で綾野さん演じる栩谷が、かつて愛した祥子(さとうほなみ)との想い出をふり返るシーンとなっている。『花腐し』は11月10日(金)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:花腐し 2023年11月10日よりテアトル新宿ほか全国にて公開©2023「花腐し」製作委員会
2023年10月31日『火口のふたり』の荒井晴彦が松浦寿輝による同名小説を脚色・監督した『花腐し』より場面写真が解禁された。2人の男と1人の女が織りなす、切なくも純粋な愛の物語を描く本作は、“ピンク映画へのレクイエム”という荒井監督ならではのモチーフを大胆に取り込み、原作の“超訳”に挑んだ意欲作。廃れていくピンク映画業界で生きる映画監督・栩谷を綾野剛、脚本家志望だった男・伊関を柄本佑、そして2人が愛した1人の女優・祥子をさとうほなみが演じる。この度解禁された場面写真は5点。湿っぽい夜の空気、そして部屋の中で、かつて愛した同じ女性<祥子>について思いを馳せる栩谷と伊関の姿のほか、それぞれの記憶の中に留まる<祥子>との色鮮やかな記憶を捉えたものなど、いずれも色香匂い立つようなカットとなっている。モノクロで映し出される物憂げな綾野さんと柄本さんのカットと、カラーで捉えられたさとうさんの表情の対比も象徴的だ。『花腐し』は11月10日(金)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:花腐し 2023年11月10日よりテアトル新宿ほか全国にて公開©2023「花腐し」製作委員会
2023年08月30日主演に綾野剛、共演に柄本佑、さとうほなみを迎え、『火口のふたり』の荒井晴彦が芥川賞受賞小説を脚色・監督した映画『花腐し』。この度、本予告、本ポスタービジュアルとともに奥田瑛二、山崎ハコ、マキタスポーツら追加キャストも解禁となった。廃れていくピンク映画業界で生きる映画監督・栩谷(綾野剛)と脚本家志望だった男・伊関(柄本佑)、そして2人が愛したひとりの女優・祥子(さとうほなみ)。タイトルに引用された万葉集の和歌「花腐し」とは、きれいに咲いた卯木(うつぎ)の花をも腐らせてしまう、じっとりと降りしきる雨を表現している。そのタイトル通り、梅雨のある日に出会った栩谷と伊関は、自分たちの愛した女について語り始める。本予告は、栩谷と伊関が梅雨のある日、初めて会うシーンから始まる。会話を重ねるうちに少しずつ警戒心が解けていく2人。やがて、それぞれが自らの朽ちつつある夢とともに、過去に本気で愛した女について語り始めるが、なんとそれが同じ女性・桐岡祥子だったことをお互いは知り、衝撃を受ける。しかも、栩谷は伊関に「桐岡祥子は死んだ」と告げる――。男2人が生きる時間を体現するかのようなモノクロ映像から一転、祥子とそれぞれの男たちの記憶は色鮮やかな映像として蘇り、見るものを引き込んでいく印象的な映像となっている。また、ポスターは栩谷、伊関、祥子の3人が土砂降りの雨の中、虚な目で佇む様子を捉えたもの。「朽ちてなお、生きていく」というコピーが添えられ、降りしきる雨とともに自らの夢も愛も朽ちさせていくかのようなビジュアルとなっている。さらに、追加キャストはピンク映画の監督・桑山役と寺本役にそれぞれ吉岡睦雄と川瀬陽太、中国からの留学生リンリン役にMINAMO、韓国からの留学生ハン・ユジョン役にNia、栩谷が身を寄せるビルのオーナー・金役にマキタスポーツ、韓国スナックのママ役に山崎ハコ、ピンク映画の製作会社社長・小倉役に赤座美代子、脚本家・沢井役に奥田瑛二が発表された『花腐し』は11月10日(金)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:花腐し 2023年初冬、テアトル新宿ほか全国にて公開予定©2023「花腐し」製作委員会
2023年07月28日これまで100冊以上の絵本を出版し、児童文学界のノーベル賞といわれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞した絵本作家、荒井良二さん。現在では活躍の場を広げ、絵本にとどまらない表現の世界を自由に旅している。そんなアーティストとしての荒井さんが出力全開で臨む展覧会「new born荒井良二いつも しらないところへ たびするきぶんだった」が開幕する。「手のひらで読む絵本世界とはまた異なる世界へ誘ってくれるのではないでしょうか」と学芸員の中村貴絵さん。荒井さんはここ10年ほどの間に新しい活動期に入った。東日本大震災後は被災地をめぐるワークショップツアーを実施、2014~’18年には「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」の芸術監督を務めている。「それまでの表現媒体が絵本だったというだけで、もともと社会の観察者としての一面があったのだと思います。それがこうした活動をきっかけに開花し、アートを媒介に社会や地域、人、歴史とつながっていったのではないでしょうか」本展では代表作の絵本『あさになったのでまどをあけますよ』などの原画の展示に加え、新作絵画や立体作品など約300点を展示。山形ビエンナーレで発表された物語「山のヨーナ」のインスタレーションを再構成した作品や、大分県の公園に設置されたオブジェ《たいようをすいこむモン》のマケット(試作の模型)も登場。開幕前にワークショップの参加者と共に制作した作品も展示予定だ。面白いのはどんなに道具や場所が変わっても、荒井さんの飄々とした物腰はそのままに見えること。「新しいジャンルに飛び込み、表現の枠を広げていくことに躊躇がない現在進行形のアーティストだと思います。ただそこに大きな覚悟はなく、展覧会のタイトルのように、あくまで知らない場所を旅する『気分』であるところが、実に荒井さんらしい」私たちもそんな気分に身を委ねて、荒井良二さんの新しい世界を旅してみたい。『あさになったのでまどをあけますよ』原画 2011年 偕成社、個人蔵 ©Arai Ryoji《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》制作風景《絵の中のぼくとぼくの中の絵》2023、個人蔵 ©Arai Ryoji《流れ星スパーク奏でよギター》2022年、個人蔵 ©Arai Ryojiあらい・りょうじ1956年、山形県生まれ。2005年、アジアで初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。『たいようオルガン』でJBBY賞など国内でも受賞多数。ライブペインティング、ワークショップのほか、作詞・作曲など音楽活動も行う。最新刊は絵本『ねこのゆめ』(NHK出版)。写真:志鎌康平「new born荒井良二いつも しらないところへ たびするきぶんだった」横須賀美術館神奈川県横須賀市鴨居4‐1開催中~9月3日(日)10時~18時8/7休一般1300円ほかTEL:046・845・1211※『anan』2023年7月12日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2023年07月11日2月に総理大臣秘書官を更迭された荒井勝喜氏(55)が7月4日付けで経済産業省の通商政策局担当の大臣官房審議官として復帰した。更迭から5ヵ月での幹部起用は、ネットで物議を醸している。さかのぼること2月3日、荒井氏はオフレコを前提にした記者団の取材に応じた際に、同性婚についての見解を問われ「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ。人権や価値観は尊重するが、認めたら、国を捨てる人が出てくる」などと発言。すると、この差別発言に非難が殺到し、即座に新井氏は更迭されることとなった。その際、岸田文雄首相(65)は「大変深刻に受け止めており、秘書官の職務を解く判断をした。本人からも辞意があった」と言い、「今の内閣の考え方には全くそぐわない言語道断の発言だ。『性的指向』や『性自認』を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない」「任命責任を感じているからこそ今、申し上げた対応をとっている」と述べた。「荒井氏の更迭に際し、立憲民主党の安住淳国会対策委員長(61)は『多様な社会をつくって世界の水準に引き上げることが日本の課題だが、発言は全く逆で極めて差別的である種の暴言だ』と厳しく非難。さらにSNSでは、ゲイやレズビアンといった当事者やその支援者から反発の声も上がっていました。また荒井氏は差別発言の際、『同性婚のことは秘書官室もみんな反対する』とも話していたため、岸田総理周辺にも厳しい視線が注がれました。一連の発言は海外メディアでも報じられ、国外からも非難されたため、『G7広島サミット』を目前に控えるなかLGBT法の可決に向けて急ピッチで話が進みました。ただ、この法案はもともと’21年に超党派議連によって立法化作業が進んでいたにも関わらず、自民党議員らが抗議したことで頓挫したもの。その“付け焼刃”な成立過程に白けるような声が上がるだけでなく、法案の中身に『当事者を置き去りにしている』という指摘が今も後を絶ちません」(全国紙記者)■「差別主義者の顔も見たくない」「岸田息子さんの復帰も早そう」差別発言によって国内外から注目を集めた批判を浴びた荒井氏だったが、しかしこの度、経産省の幹部として復帰することに。そのため、ネットでは《差別主義者の顔も見たくない。隣に住んでるのも嫌だ。辞職しろ》《差別主義者が復活。お友達内閣とお友達官僚》《荒井秘書官、復活って??????更迭の意味無いやん》と非難する声が上がっている。さらに、思わぬ余波も生んでいる。首相といえば、その息子である岸田翔太郎氏(32)が昨年末に総理大臣公邸で親戚と忘年会を開いたことが判明し、6月1日付で更迭されている。そのため荒井氏の“幹部復活”のように、翔太郎氏に対しても「早々と何かしらのポストで復活するのでは?」と訝しむ声がネットで上がっている。《岸田首相の息子を復帰させる口実にも使えそうな人事ですが、その辺り狙ってるんでしょうか?》《あれだろ。「息子を復帰させるための観測気球」この人と比べれば傷ついた人もいないし、とでも思ってんじゃない?》《結局「更迭」って国民受けを良くするためのフェイクなのね 息子もどこかの幹部に復帰するのかな》《岸田息子さんの復帰も早そう》不信感の高まっている荒井氏の復帰。その人事に、世論が納得しているとは言い難いようだ。
2023年07月05日2005 年に児童文学のノーベル賞と称されるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人として初めて受賞し、世界的な評価を受けた荒井良二(1956-)は、絵本作家であると同時に、絵画、立体作品、インスタレーション、音楽、舞台美術など、ジャンルを問わない幅広い分野で活躍するアーティストだ。その多彩な活動を紹介する個展が、神奈川県の横須賀美術館で、7月1日(土)から9月3日(日)まで開催される。同展のタイトルにある「いつも しらないところへ たびするきぶんだった」という言葉は、様々なジャンルの壁を超越して飛び込んだ先の、ルールも分からない「知らないところ」で、それでも自分なりの仕事をするという、創作に対する荒井の姿勢を示しているという。そのチャレンジングな姿勢は、困難や制約も楽しむような、まさしく旅するときの前向きな気持ちに溢れたものなのだ。同展は、そうした旅するような気分で新たな作品を生み出し続ける荒井の創作活動を、新作や過去の作品を織り交ぜて紹介するもの。これまで手がけてきた100冊以上の絵本と書籍のなかから、代表的な作品の原画がずらりと並ぶのが、同展の大きな見どころのひとつだ。また、新作絵画や、大分県の公園に設置されたオブジェのマケット、芸術監督を務めた「山形ビエンナーレ2018」で発表した立体物の再構成など、荒井の創作の現在地も紹介される。展示の最後には、今回の展覧会名とも結びつく新作のインスタレーション《new born 旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す》が登場する。子供一人ひとりがひとつの家となり、展示室に点在するその小さな家々が、それぞれに物語を内包しながら旅をしていくイメージでつくられたという。来館者は、それぞれの子供たちの物語を想像しながら、会場をゆっくりと巡ることになる。荒井のこれまでの旅をたどり、これからどこへ出かけていくのかを見ていく同展は、ここからまた新しい荒井良二が「誕生=new born」する場ともなるのだろう。色彩豊かな楽しい展示を通して、その創作をめぐる旅を体感したい。<開催情報>『new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった』会期:2023年7月1日(土)~9月3日(日)会場:横須賀美術館時間:10:00~18:00休館日:7月3日(月)、8月7日(月)料金:一般1,300円、大高・65歳以上1,100円展覧会公式サイト:
2023年06月23日映画『花腐し(ハナクタシ)』が2023年11月10日(金)に公開される。主演は綾野剛、監督は荒井晴彦。芥川賞受賞小説『花腐し』を大胆に翻案『花腐し』は、松浦寿輝による芥川賞受賞小説。廃れていくピンク映画業界で生きる映画監督、脚本家志望だった男、2人が愛した1人の女優による、切なくも純粋な愛の物語を描いた作品だ。監督は『⽕⼝のふたり』の荒井晴彦そんな『花腐し』を、『赫い髪の⼥』や『キャバレー⽇記』など⽇活ロマンポルノの名作から、『ヴァイブレータ』や『共喰い』をはじめとする⽇本映画の脚本を数多く⼿がけてきた荒井晴彦が大胆に翻案。映画『⽕⼝のふたり』に続く、自身4作品目の監督作品として自らメガホンを取る。主演は綾野剛主演は『最後まで行く』や『カラオケ行こ!』の公開を控えている綾野剛。共演には、柄本佑とさとうほなみが名を連ねる。栩谷…綾野剛廃れていくピンク映画業界で⽣きる映画監督。もう5年もの間映画を撮れていなかったが、梅⾬のある⽇、伊関と初めて会う。伊関…柄本佑脚本家志望だった男。栩⾕と過去に本気で愛した⼥について語り、その相手が同じ⼥<桐岡祥⼦>だったことをお互いは知り、衝撃を受ける。また、栩⾕から「桐岡祥⼦は死んだ」と告げられる。祥子…さとうほなみ栩谷と伊関が愛した女優。桑⼭…吉岡睦雄寺本…川瀬陽太ピンク映画の監督。リンリン…MINAMO中国からの留学⽣。ハン・ユジョン… Nia韓国からの留学⽣。金…マキタスポーツ栩⾕が⾝を寄せるビルのオーナー。韓国スナックのママ…⼭崎ハコ⼩倉…⾚座美代ピンク映画の製作会社社⻑。沢井…奥田瑛二ピンク映画の脚本家。映画『花腐し』あらすじタイトルに引⽤された万葉集の和歌「花腐し」とは、きれいに咲いた卯⽊の花をも腐らせてしまう、じっとりと降りしきる⾬を表現している。そのタイトル通り、梅⾬のある⽇に栩⾕と伊関は出会い、⾃分たちの愛した⼥について語り始める。そして、3⼈がしがみついてきた映画への夢がボロボロと崩れ始める中、栩谷、伊関、祥子、それぞれの⼈⽣が交錯していく――。【作品詳細】映画『花腐し』公開日:2023年11月10日(金)出演:綾野剛、柄本佑、さとうほなみ、吉岡睦雄、川瀬陽太、MINAMO、Nia、マキタスポーツ、⼭崎ハコ、⾚座美代⼦、奥⽥瑛⼆監督:荒井晴彦原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社⽂庫)脚本:荒井晴彦、中野太配給:東映ビデオ©2023「花腐し」製作委員会
2023年04月20日主演に綾野剛、共演に柄本佑、さとうほなみを迎え、『火口のふたり』(19)の荒井晴彦が芥川賞受賞小説を脚色・監督した映画『花腐し』が2023年初冬に公開決定。ティザービジュアル、場面写真3点、荒井監督やキャスト陣のコメントが到着した。廃れていくピンク映画業界で生きる映画監督・栩谷(綾野剛)と脚本家志望だった男・伊関(柄本佑)、そして2人が愛したひとりの女優・祥子(さとうほなみ)。梅雨のある日に出会った栩谷と伊関は、自分たちの愛した女性について語り始める。そして、3人がしがみついてきた映画への夢がボロボロと崩れ始める中、それぞれの人生が交錯していくーー。『ヴァイブレータ』(03)、『共喰い』(13)をはじめとする日本映画の脚本を数多く手がけてきた荒井晴彦が、『火口のふたり』に続く自身4作目の監督作品として選んだ本作。主人公・栩谷に綾野剛、共演に『火口のふたり』でもタッグを組んだ柄本佑、ドラマ「あなたがしてくれなくても」などのさとうほなみを迎えた男女の物語が完成した。キャスト&監督&原作者よりコメント到着綾野剛/栩谷役初めて映画を観た時の事を思い出した。なんだか銀幕の中はひどく残酷で、こちらがそれを安全圏から覗いているとわかりながらも淡々と物語は進んでいく。その当時は、感情を掴み取ることも、感情を移入することもなく、ただただ傍観していた。しかし、観終わってみれば、独特な達成感というか、やり切った感が身体をほとばしり、それまで経験したことのない感情が湧き立ったものでした。現在、世の中には沢山の作品が生まれ、沢山の感情をシェアする環境が備り、毎日が選択の連続を生きる中で、この映画は何者なのだろうと考える。私にとって花腐しは"映画そのもの"でした。産まれる前から映像作品に携わってこられた映画人に魅せられ支えられ、ただただ映画の額面にようやく触れられた想いでした。本作を皆様の映画鑑賞アルバムの1ページに添えて頂けたら幸いです。柄本佑/伊関役去年の何月でしたか、荒井監督から電話があり「佑にホンを送ったんだけど読んだ?田辺が返事がないんだよなって言っててさぁ、、、」と連絡をいただきました。そんな前置きがありホンを読んだ僕は「おっほっほっ、おもしレェー。」と呟きました。『火口のふたり』に続き荒井監督に呼んでいただいた喜びに加えて、とにかくホンが滅法面白い!!いち映画ファンとしてやらなくてはいけない仕事でした。さとうほなみ/祥子役脚本を頂いたとき、ピンク映画業界に纏わるお話であったりそこを取り巻く人々の関係性であったり、荒井監督が実際に見てきた景色がぎっしり詰まっているんだろうなと感じました。ですが、映像化の想像があまり出来なかった中でもすでにこの作品に強く惹かれておりました。祥子という人物の日常を生きているのは、とてもつらくとても幸せでした。是非ご覧いただきたいと、心より思います。監督:荒井晴彦『火口のふたり』の公開が終わって、体力があるうちにまた撮りたいなと思った。『この国の空』の時のようなストレスが無かったのだ。「花腐し」を撮ろうと思った。榎望プロデューサーから紹介されたばかりの佐藤現プロデューサーにホンを送った。2019年10月だ。佐藤さんはやりましょうと言ってくれた。『火口のふたり』はキネ旬ベストワンになったが、コロナでパーティもできなかった。濃厚接触シーンが多い『花腐し』がクランクインできたのは2022年の10月2日だった。『火口のふたり』は安藤尋に撮らせるつもりだった。『花腐し』も自分で撮るつもりで書いたホンじゃない。2匹目のドジョウがいてくれるといいけれど。原作:松浦寿輝黒々としたトンネル小説「花腐し」が、荒井晴彦の手と眼と感性によって、原作をはるかに越えた荒々しいリリシズムが漲る映画「花腐し」へと転生する。ただただ、唖然とするほかはない。降りしきる雨のなか、廃屋めいたアパートへ帰ってきた男二人が、玄関前の路上でへたりこむシーンのデスペレートな徒労感に、やるせない共感の吐息を洩らしつつ、時代も国も個人も、これから黒々とした終焉のトンネルへ入ってゆくのだと密かに思う。『花腐し』は2023年初冬、テアトル新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2023年04月17日株式会社ミリオンコンサート協会(所在地:東京都港区、代表取締役:小尾晋之介)は、2023年7月13日(木)、東京文化会館小ホールにて、ヴァイオリニスト荒井英治のソロによる「第2回 無伴奏の世界」を開催いたします。荒井英治は、長く東京フィルハーモニー交響楽団のソロコンサートマスターを務め、現在は日本センチュリー、名古屋フィルハーモニー両交響楽団の首席客演コンサートマスター。東京シティフィル特別客演コンサートマスターとして、オーケストラ、指揮者から厚い信頼と尊敬を得る王道のヴァイオリニストとして活動するほか、弦楽四重奏団、モルゴーア・クァルテットのメンバーとして、知られざる作品を紹介、ELPのキース・エマーソンとも交流をもち、プログレッシブ・ロックを自らの編曲による迫真性に満ちた演奏で聴衆に衝撃を与え続ける鬼才としての顔ももつ稀有なヴァイオリニストです。「第2回 無伴奏の世界」では、時代を超えた多面的な作品から、荒井英治がヴァイオリン一挺で限りない音楽宇宙を描き出します。荒井英治 ヴァイオリニスト【開催概要】公演名 :第2回 無伴奏の世界 荒井英治(ヴァイオリン)日時 :2023年7月13日(木)19:00開演(18:30 開場)会場 :東京文化会館小ホール(東京・上野)演奏曲目:ペンデレツキ:無伴奏ヴァイオリンのための『ラ・フォリア』(2013)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004ストラヴィンスキー:無伴奏ヴァイオリンのための『エレジー』(1944)イザイ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ作品27より 第4番 第5番 第6番入場料金:全席自由 4,000円(税込)【チケット取り扱い】ミリオンコンサート協会 TEL:03-3501-5638ミリオンチケット|検索| ←(オンライン・チケットサービス)※Webサイトからのお申込みはセブンイレブンでのお引き取り東京文化会館チケットサービスTEL:03-5685-0650チケットぴあ Pコード:239833 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年03月24日2月より帝国劇場ほかにて上演される舞台『キングダム』に、俳優の壤晴彦が出演することが発表された。本公演は『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載中で、既刊67巻の累計発行部数が9500万部を突破している原泰久の同名人気コミックの初舞台化作品。未だ一度も統一されたことのない苛烈な戦乱の中にある中国を舞台に、戦災孤児の少年・信と玉座を追われた後の始皇帝・嬴政の2人が、時代の荒波にもまれながらも友との約束のために、そして己の夢のために史上初の中華統一を目指す。壤は狂言大蔵流、茂山千五郎(四世 茂山千作・人間国宝)に師事し、その後劇団四季を経てフリーに。劇団四季在籍時は、王騎役の山口祐一郎とは先輩後輩の間柄で、今回の共演は約35年ぶり。帝国劇場では、1987年『風と共に去りぬ』『NINAGAWA マクベス』、1991年に蜷川幸雄演出『仮名手本忠臣蔵』、2008年に宮本亜門演出のミュージカル『ルドルフ -ザ・ラスト・キス-』に出演している。壤が演じるのは秦王・政にとって曽祖父にあたり、約55年間、戦争に明け暮れ戦神と呼ばれた「昭王」。舞台『キングダム』では、死期の迫る昭王(壤)が、昭王に忠を尽くす王騎(山口)に対して中華への熱き夢を語る――どこか壤と山口に重なるような、演劇ファンにとっては奇跡の邂逅といえる名場面が用意されている。なお、本公演で壤は、王弟・成蟜と共に政に対して謀反を起こす丞相の竭氏も演じる。併せて、壤、山口、信役の三浦宏規と高野洸、そして演出を手掛ける山田和也のコメント、加えて信役と嬴政・漂役(小関裕太・牧島 輝)の稽古写真が公開された。三浦宏規(中央)高野洸小関裕太牧島 輝左から)牧島 輝、高野洸、小関裕太、三浦宏規<コメント>■壤晴彦(昭王 / 竭氏)僕は先輩・後輩を問わず「いい!」と思う人には常に敬意を感じます。劇団四季では大先輩の日下武史さん、同期の鹿賀丈史、そして後輩の山口祐一郎君がそうでしたね。俳優としての演技に"清潔感がある"というのが共通項でしょうか?彼が抜擢された『オンディーヌ』では水界の王の僕と彼のハンスはやりとりがなかった。彼とは『ジーザス・クライスト・スーパースター』でイエスとピラトで歌の応酬をしたのみ……今回初めて台詞を交わす事になります。それもこんなに壮大な物語の中で……昭王と王騎としては信頼と敬意を。竭氏としては不穏な腹の探り合い……ゾクゾクしますね。楽しみです。■山口祐一郎(王騎)壤晴彦さんへキングダム稽古場でお姿を拝見したとき、突然、1970年代後半にタイムスリップしました。私が研究生で朝の掃除を終えテラスで水を飲もうとすると、そこには既に、ケーツーさん(劇団では麦草平さんだったのですが、みなさん本名のケーツーさんと呼んでいらした)が、木洩れ日の中でベンチに腰掛け台本を読んでいらっしゃる。「あっ、麦さん(心はケーツーさんでした)」「……」「あっ、お邪魔してすみません。あっ、おはようございます。私、17期山口祐一郎と申します」「嗚呼、君か。次のジーザス。頑張れよ」と白い歯を見せた。格好良いなケーツーさん、と思った。後年、ジロドゥーの『オンディーヌ』のハンスに抜擢されたとき、壤さんがぼくのチューター(個人指導教師)に専任された。そのとき演出家が呟いた。「ホントは、ケーツーみたいに出来る奴が演じるべきなんだけどなぁ」(その通りだよな)とぼくも素直に得心していた。だって、壤さんが紡ぎ出す科白には誰もが感動するのだから。壤さん。2023年、不肖な弟子との共演。どうぞよろしくお願いいたします。■三浦宏規(信)現在稽古真っ只中ですが、とてつもないパワーを持つ作品になると確信しています。信じられないほどの運動量の舞台ですが、この稽古場は熱気に満ち溢れていて、笑いも絶えず、とてもいい環境でお稽古をさせていただいています。そして壤晴彦さんの出演も発表になりました。読み合わせの時、壤さんの第一声を聞いた瞬間に稽古場の誰もがその重厚感のあるお声に、心と耳が震えたと思います。目の前で毎日お芝居を見させていただけることが本当に幸せです。自分も出演していますが、キャストの皆様があまりにも凄すぎて、もはや見に行くのを楽しみにしている時もあるほどです(笑)舞台『キングダム』 ますます盛り上がってまいりました。さて明日からは本番と同じセットでのお稽古です。ワクワクが止まりません!■高野洸(信)信役に追いついていくのがやっとな中、壤さん・山口さんのお芝居と存在感を目にする度に気が引き締まります。最新の稽古状況については、殺陣も全てつきましたが本当にかっこいいです。本物の軍と比べると人の数はもちろん劣りますが、目の前に中華の戦場が広がっています。そしてどれも派手でリアルです。初日までの残り時間を大事に、やれることをやりきります!■山田和也(演出)舞台『キングダム』の稽古は今まさに佳境です。ここ数日は2幕のクライマックス場面に取り組んでいるのですが……主要キャストの殆どが入り乱れることになるので、演出家なのに目が幾つあっても足りません。そんな『キングダム』の世界に壤晴彦さんをお迎えすることになりました。数々の話題作に出演されていらした壤さんですが、私は特にミュージカル『レディ、ビー・グッド!』の壤さんが大好きでした。ご一緒できるのは最高の喜びです。<公演情報>舞台『キングダム』2023年2月5日(日)~2月27日(月) 帝国劇場3月 大阪・梅田芸術劇場メインホール4月 福岡・博多座5月 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru原作:原泰久(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)脚本:藤沢文翁演出:山田和也音楽:KOHTA YAMAMOTO■キャスト信:三浦宏規 / 高野洸嬴政・漂:小関裕太 / 牧島 輝河了貂:川島海荷 / 華優希楊端和:梅澤美波(乃木坂46)/ 美弥るりか壁:有澤樟太郎 / 梶裕貴(東京公演のみ)成蟜:鈴木大河(IMPACTors / ジャニーズ Jr.)※東京公演のみ / 神里優希左慈::早乙女友貴(東京・大阪・福岡公演のみ)バジオウ:元木聖也紫夏:朴璐美 / 石川由依昌文君:小西遼生王騎:山口祐一郎昭王 / 竭氏:壤晴彦チケットはこちら:作品公式HP:
2023年01月22日SKYEのコンサートツアーの最終公演が7月26日に東京・渋谷Bunkamuraオーチャードホールで開催され、2時間20分超にわたって22曲を演奏。ゲストに荒井由実、奥田民生、尾崎亜美が参加し、集まった2000人の観客を沸かせた。SKYEは日本の音楽業界を支え続けてきた鈴木茂(G)、小原礼(B)、林立夫(Ds)、松任谷正隆(Key)の4人が結成した全員70歳の新人バンド。昨年、10月にデビューアルバムを発表。7月14日の名古屋を皮切りに大阪、東京と周り、この日ツアーの最終公演を迎えた。鈴木茂小原礼THE BANDの「The Weight」が場内に流れる中、定刻の19時過ぎ、メンバーがゆっくりとステージに現れる。林立夫のドラム、小原礼のベース、鈴木茂のギターに松任谷正隆のキーボードが順に音を重ねていき「Less Is More」でSKYEのステージが静かに幕を開けた。同曲はSKYEのセッションでいちばん最初に誕生した楽曲で、アルバムの1曲めに収められている。 SKYEはメンバー全員が曲を書き、全員がリードヴォーカルを取れるバンド。1曲めは小原、2曲めの「Dear M」は松任谷正隆、3曲めの「Daydream」では林立夫がリードヴォーカルを聴かせる。林立夫松任谷正隆アルバム収録曲3曲の演奏を終え松任谷正隆から「あらためてSKYEです。僕らのデビューツアーのファイナルにようこそ!」と先ずは客席に向けて挨拶。このツアーにはゲストに荒井由実、奥田民生、尾崎亜美の3人が参加している。「ゲスト目当てにいらっしゃった方も多いと思いますが(笑)、今日はそれを裏切らないショウにしました」と客席の期待を煽りながらアルバム収録曲の「Reach Out To The Sky」「どちらのOthello」を続ける。SKYEの4人のメンバーは半世紀にわたって日本の音楽界の第一線で活躍してきたミュージシャン揃い。ブラス&コーラス3人のサポートこそあるが、基本は4人のメンバーだけで音を出す。時には抑えながら、時には激しくとSKYEが弾き出すサウンドは変幻自在。マニピュレータなんぞに頼らず重厚かつ華やかな音を出し続け客席を圧倒する。奥田民生小原礼はこの日の3人のゲストを三段ロケットに例え、彼らの推進力がこのツアーを支えてくれていると称賛。「先ずは3段ロケットの一番下から火が出ます! ミスター・ロックンロール、 タミオ・オクーダ!」と奥田民生をステージに招き入れる。今回の出演メンバーの中では奥田民生は若手。小原のロケットの例えを受け「どうも、燃料です(笑)。今日は下っ端のペーペーです」と謙遜しながら奥田のファーストソロ収録の「BEEF」に「イージュー★ライダー」をSKYEのメンバーと共に演奏。ここでステージには「家族枠で出てきました! 三段ロケットの二段目です!」と小原の妻、尾崎亜美がジョイン。「私たち燃料としては、割といい働きするよね」と奥田に話しかけ2人で「さすらい」を歌う。このあと、奥田はロケットが離脱するように、ふわふわ~と揺れながらステージを降り、場内の笑いを誘う。尾崎亜美ここからは尾崎亜美のゲストコーナーに。「私のデビューのときに、プロの音楽家の扉を開けてくれた皆さんと、今日はご一緒してます」と1曲めに歌ったのは尾崎のファーストアルバム『SHADY』(1976) に収められた「私は何色」。当時のレコーデイングには松任谷正隆、鈴木茂、林立夫が参加した。松任谷は1枚めと2枚めのアルバムプロデュースも担当。尾崎にとって想い出深いメンバーが再結集した。続いても3人が関わったセカンドアルバム『MIND DROP』(1977) 収録の「初恋の通り雨」を歌う。「この3人は、私の歴史の中でもとっても大事なひとたち」ですと改めて紹介。いちばん最後に尾崎の前に現れたのが夫でもある小原礼。尾崎の海外録音時、小原に参加を依頼したが断られたエピソードを披露。「でも、この4人は私の中でめちゃめちゃ濃い人たちなんです!」とSKYEのメンバーを称えラストは「19歳の頃に作った歌です。この歌で皆さんに知ってもらえるようになりました」と松任谷プロデュースのサードシングル「マイ・ピュア・レディ」を歌って、「二段目、 離脱します!」と、ロケットが回転するようにクルクル回りながらステージを降りた。荒井由実松任谷正隆の奏でるピアノのイントロに乗ってステージには3人目のゲスト、荒井由実が登場。曲は荒井由実が1972年にリリースしたデビューシングル「返事はいらない」。いきなりのレア曲演奏に客席のユーミンファンが湧く。「こんばんは、荒井由実です。さっき一段ロケットとか二段ロケットとか言ってましたが、ようは飛び道具としてやってまいりました!」と話すと場内は大爆笑。「返事はいらない」のレコーディングに参加したのが鈴木茂と小原礼。鈴木とは荒井由実が15歳の頃、デモテープの録音にギターで参加して以来、SKYEのメンバーの中ではいちばん付き合いが長い。小原は「ユーミンがザ・フィンガーズの追っかけやってる頃から知ってるよ!」と思い出話しに花が咲く。SKYEは半世紀以上も前、青学高校時代に鈴木と小原と林の3人で結成したバンド。荒井由実はその頃から彼らを知っており「東京のスタイリッシュキッズの集まり!」と憧れの存在だったそう。続いて歌ったのは75年に発表した6枚目のシングル「あの日にかえりたい」。この曲の録音には林立夫、鈴木茂にキーボードで松任谷正隆が参加した。「(鈴木)茂さん、小原くん、みっち(林)に続いて最後に出会ったのが、残り物に福っていうんですか(笑)」と松任谷正隆を紹介。ユーミンコーナー最後の曲を歌う前に「これでファイナル。ちょっとね、おセンチになっちゃってるんです。これもいい思い出になっていくね、ファーストツアーは1回しかないから」と感傷気味に、この日のステージを振り返る。松任谷は「なるべく普通では聴けない曲やろうかと。次にやる曲は、一緒にやることは2度とないと思います」と紹介したのは「Hong Kong Night Sight」。松任谷のファーストアルバム『夜の旅人』(1977) に収められた楽曲で詞は荒井由実が書き、後に自身のアルバム『水の中のASIAへ』(1981) でカバーした。荒井は「自分でも、とっても気に入ってる曲です。さっきおセンチになってるって言いましたけど、この曲にも同じ気持ちを載せて歌います」と、エキゾチックなサウンドに荒井が情感込めて歌う。2コーラスからは松任谷がボーカルをとる。演奏前に「せっかくだから、小原んちを真似してデュエットやろうかと」と宣言した通り、夫婦でのデュエットを披露。この滅多に観られないサプライズに2000人のオーディエンスも大喜び。このショウでしか観られないのをいくつか用意しましたレアな選曲の連打で客席を大いに沸かせたゲストコーナーが終わると、再びSKYEのメンバーの演奏に戻る。鈴木茂から「『風街ろまん』(1971) を作るときに、松本隆さんから詞を頂いて書いた曲です。ライブでは何回か演奏してましたが、録音することはなかった曲です」とギターを弾きながら歌ったのは、はっぴぃえんどの未発表曲「ちぎれ雲」。50年の時を経て今回のSKYEのアルバムで初めて録音された幻の曲だ。SKYEのコンサートでは演奏の合間にそれぞれのメンバーが制作時のエピソードを話していく。「どちらのOthello」は林立夫がドラムパターンを最初に考え、そこに松任谷が曲をつけた。林立夫はSKYEのサウンド作りを、各々が食べ物を持ち寄る"ポットラック・パーティー"に例える。メンバーみんなが持ち寄って、ひとつのものを作るというスタイルで“整った”曲が「マイミステイク」。仕上げにメンバーが大好きなメンフィスサウンドのフレーバーを、ちょっとふりかけた。コロナ禍のじれったさに加え、小原が自身の生き方を深く懺悔して書いた曲だ。ここでは松任谷、林、鈴木の3人が美しいハーモニーのコーラスを聴かせる。荒井由実+奥田民生+尾崎亜美が登場ここでステージには再び、荒井、奥田、尾崎の3人がジョイン。荒井はこのメンバーを見て「こうやって、ありえない取り合わせが揃うと、フェスのようですね!」と感激。松任谷から「最初にお話したように、このショウでしか観られないのをいくつか用意しました。次の曲でみなさんがリラックスしてくれないと、ボクの立場がないんです」と話すと、奥田は「名古屋、大阪ではこの曲をきっかけにお客さんと打ち解ける感はありましたしね」と受け、演奏されたのは「アジアの純真~これが私の生きる道~渚にまつわるエトセトラ」と続くPuffyメドレー。ご本家のAmiYumiならぬ、尾崎&荒井版での“亜美由実”の登場に客席もオールスタンディングで応える。圧巻は後半。各々がひとつの曲の中で「アジア~」「これが私の~」「渚にまつわる~」の歌詞を歌うマッシュアップを披露。奥田が「隣に釣られないよう気を使った」というほど、超高等テクニックだが、見事にこれを決め、エンディングになだれ込む。ラストは小原の「コロナに負けず突っ走りましょう!」と新アルバムのリード曲「ISOLATION」。豪快なロックンロール・ブギで場内をヒートアップさせ、そのまま奥田の「マシマロ」、尾崎の松田聖子提供曲「天使のウィンク」に荒井由実の「14番目の月」をメドレーで畳み掛け、最後は「ISOLATION」に戻って、大きな拍手の中、本編はここで終了。アンコールでは荒井由実と一緒にエバーグリーンナンバーの「卒業写真」を演奏。小原から「2021年10月にCDデビューが出来て、2022年にこんなにたくさんのお客さんに来てもらって、素晴らしいアーティストの人たちと一緒に出来るなんて感無量です。幸せな気持ちがずっと続くように、もう1曲」とSKYEのメンバーだけで壮大なナンバー「Always」を演奏。ここでメンバーはステージを降りるも、観客の拍手は鳴り止まずセカンドアンコールに応える。松任谷正隆から「このツアーの事、今夜のことは一生忘れないと思います」とアルバムのラストに収められたバラード曲「BLUE ANGELS」を歌い、2時間20分超に及んだSKYEのツアー最終日を締めた。SKYEは、本日7月29日(金) にFUJI ROCK FESTIVAL ’22に出演する。また、この日の模様はスペースシャワーTVにて9月30日(金) 20時より放送される。<公演情報>『SKYE TOUR 2022』2022年7月26日(火) Bunkamura オーチャードホール開場 18:00 / 開演 19:00【セットリスト】01. Less Is More02. Dear M03. Daydream04. Reach Out To The Sky05. どちらのOthello06. BEEF / with 奥田民生07. イージュー★ライダー(with 奥田民生)08. さすらい(with 奥田民生 / 尾崎亜美)09. 私は何色(with 尾崎亜美)10. 初恋の通り雨(with 尾崎亜美)11. マイ・ピュア・レディ(with 尾崎亜美)12. 返事はいらない(with 荒井由実)13. あの日にかえりたい(with 荒井由実)14. Hong Kong Night Sight(with 荒井由実)15. ちぎれ雲16. 川辺にて17. マイミステイク18. Puffyメドレー(with 奥田民生 / 尾崎亜美 / 荒井由実)19. ISOLATION~マシマロ~天使のウィンク~14番目の月(with 奥田民生 / 尾崎亜美 / 荒井由実)■ENCORE20. 卒業写真(with 荒井由実)21. Always22. BLUE ANGELS<リリース情報>『SKYE』発売中『SKYE』ジャケット●【CD盤】3,300円(税込)●【LP盤(2枚組・重量盤)】4,950円(税込)【収録曲】M1. Less Is More作詞:林立夫 / 小原礼作曲:小原礼M2. Dear M作詞:林立夫作曲:松任谷正隆M3. ISOLATION作詞:林立夫作曲:小原礼 / 松任谷正隆M4. どちらの Othello作詞:松任谷正隆作曲:松任谷正隆 / 林立夫M5. Daydream作詞:林立夫作曲:松任谷正隆M6. ちぎれ雲作詞:松本隆作曲:鈴木茂M7. マイミステイク作詞:小原礼作曲:小原礼M8. 川辺にて作詞:松任谷正隆作曲:松任谷正隆M9. Reach Out To The Sky作詞:小原礼作曲:小原礼M10. ROCK’N PINO BOOGIE作曲:鈴木茂M11. Always作詞:小原礼作曲:小原礼M12. BLUE ANGELS作詞:松任谷正隆作曲:松任谷 正隆All songs produced and arranged by SKYE関連リンク日本コロムビア アーティストページ DAYS
2022年07月29日『きみの鳥はうたえる』『アルキメデスの大戦』などの実力派俳優・柄本佑と、『彼女の人生は間違いじゃない』での演技が評価され、TBSドラマ「凪のお暇」でマウント女子・足立さんを演じるなど、その幅広い役どころで注目されている新鋭・瀧内公美の主演で贈る映画『火口のふたり』。女性層の支持を集め、“『愛がなんだ』のオトナ版”という声も上がっている本作から、新たな食事シーンの本編映像が到着した。この度到着した本編映像は、直子(瀧内さん)の誘いに乗り、久しぶりに身体を重ねた賢治(柄本さん)が、直子の新居で手料理を振る舞うシーン。器用に魚を調理する賢治を見て、嬉しそうにサラダの盛り付けをする直子。食卓に並べられた賢治お手製のアクアパッツァとペペロンチーノを頬張りながら、直子が「やっぱり賢ちゃんご飯作るの上手だね」と褒めると、賢治は「作って、人に食べさせるのが好きなんだよ」と満足気な表情を浮かべる。身体を気遣う直子から、ワインの代わりにポンジュースの入ったグラスを渡された賢治が「小学校の時から食事のときはポンジュースを飲んでいたな」と昔から変わらない癖を指摘すると、「お酒も飲めるようになったよ」と直子が笑顔を見せる2人の歴史と親密さが伺えるシーン。とはいえ、柄本さんと瀧内さんが本作で苦労したと明かすのが、会話をしながら食事をするシーン。特にこのアクアパッツァを食べるシーンでは、フォークとナイフで料理を取り分けるのに悪戦苦闘。なかなかメインディッシュのアクアパッツァに手を出さず、サラダやパスタばかり食べる2人に対して、荒井晴彦監督から「どうして全然アクアパッツァを食べないんだよ!」とのダメ出しが…。様々な役柄を演じ、数多くの映画賞を受賞してきた柄本さんが「アクアパッツァて、とても食べにくいんですよ(笑)」と恨み節をこぼしたという食事のシーンにも注目だ。『火口のふたり』は新宿武蔵野館ほか全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年08月27日直木賞作家・白石一文による同名小説を柄本佑、瀧内公美の共演で描く映画『火口のふたり』。この度、主人公の賢治と直子が久しぶりに身体を重ねた翌日の本編シーンが解禁となった。身体の言い分に身を委ねる男と女の不確実な愛を描いたR18+指定衝撃作は、『寝ても覚めても』『愛がなんだ』などに続いて、“鑑賞後に語りたくなる”“恋愛観・人生観によって、捉え方が異なる”など早くも話題となっており、最近では“『愛がなんだ』のオトナ版”という声も多く上がっている。今回そんな本作から解禁となる本編映像は、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という直子(瀧内さん)の誘いに乗り、久しぶりに身体を重ねた賢治(柄本さん)と直子が、翌日、中華料理屋で食事をしているシーン。好物のレバニラ定食を食べながら、賢治は「あの頃さ戻ってみたば、帰り道どこ見失った」と打ち明け、直子を困惑させる。「昨日一晩限りだって頼んだでしょ」と窘める直子に対し、「自分で勝手に火点けといて、あとは勝手に一人で消せって言われたって、そんたこと納得できるわけねぇべった」と、強い口調の秋田弁で言葉を返す賢治。そんな賢治に根負けしたかのような直子は「彼が出張から戻ってくるまでだからね」と、婚約者が帰ってくるまでの5日間、一緒に過ごすことを決める、という男女の駆け引きが軽妙な会話劇で描かれている。最初は直子の提案に戸惑っていた賢治だが、一度関係を持った後は、自分の欲求をストレートに吐き出し、直子にグイグイと迫っていく。そんな彼の姿からは男性の身勝手さが際立って見える一方で、どこか憎めないチャーミングさも感じられる。劇中では、直子に“気持ち悪い”と言われている賢治の秋田弁だが、荒井晴彦監督曰く、演じた柄本の秋田弁はなかなかの上手さだったそう。ほかのシーンでも度々披露される柄本の秋田弁にも、注目してみて。『火口のふたり』は8月23日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年08月22日『ヴァイブレータ』(’03年)や『さよなら歌舞伎町』(’15年)などの脚本家としても知られている荒井晴彦がメガホンを撮った『火口のふたり』。男と女の、ある種の業を見せつける本作で“身体”の欲望に身を任せ続ける男・賢治を演じたのが柄本佑だ。「俳優」としての夢の一つが叶った作品この作品に対しての第一印象を聞くと、「脚本家・荒井晴彦の作品に出ることが、この仕事を始めてからの一つの夢だった」と開口一番に答えてくれた柄本佑。小規模なミニシアター作品からメジャー作品までありとあらゆるジャンルの作品、媒体(映画やドラマ、舞台など)で「俳優」として活躍する彼の夢の一つを叶えた映画が『火口のふたり』だ。「最初に荒井さんからこの脚本をいただいて読んだとき、非常にソリッドで良い作品、そして単純に面白いと思いました。この作品じゃなかったとしても、たぶん、二つ返事で『やります』って言っていたと思うんですよね。だって荒井作品だから。初号が終わって荒井晴彦監督作品っていう座組の中に自分の名前が入っているっていうことがまず嬉しかった。やっぱり欲が出て、また呼んでくれないかなと思ってます(笑)」『火口のふたり』は秋田県を舞台に、かつて東京で恋人同士として暮らしていた賢治(柄本さん)と直子(瀧内公美)が、直子の結婚を機に再び出会い、衝動の赴くままに過ごす5日間と、その驚きの終わりを描く。賢治という男は一言で言ってしまえばダメ男だ。「この賢治って、あまりにも自分のことを大事にせず、鬱病になったり治ったり、ふらふらしているから女房に逃げられて子どもも連れて行かれちゃって。いい年なのにフリーターで、暇さえあれば釣りなんかして、とにかく生活に覇気がない男」。「そんな男が衝撃の事実を知るんですが、それまでさんざん自分を傷つけてきたから、こんな状況になったなら、せめて最後だけでは“身体の言い分”に正直にいてやろうとする。そう思える賢治って、実は優しい男なんじゃないかなって思ったし、最後の最後に、そういう行動ができる賢治が面白いなと思ったんです」次のページ:エロティシズムと青春が共存する世界観”エロティシズムと青春が共存する世界観“身体の言い分”とは、本作でも原作でも作品のテーマの一つとして描かれていることだ。人間という動物の本性とも言える行為を背徳感なく素直に受け入れ、己の欲望のままに行為を重ねていく。その姿はエロティックというよりも、徐々に食事や睡眠といった、より動物的本能に近い行動のように見えてくる。「原作の小説だと賢治が40歳くらいで直子が30代半ばくらい。明らかに僕らが演じるには若いんですよね。ただ原作通りの年代で映像にしたらもっとディープでどろどろした感じになっていたと思うんです。原作は男と女がある一つの何かを超えて、一周回って子供に戻って素直になるというイメージでした。原作よりも若い僕らがやることで、ある種の抜けの良さみたいな、青春性みたいなものが増したのかな、という気がします」そう話す柄本さんが最も「賢治らしい」と思ったというのが冒頭、賢治と直子の再会直後のシーンだ。「最初に直子が『ピアスどうしたの?』と言うと『なんとなく』、『その頭は?』『なんとなく』って。『何か悪さでもしたんじゃないの?』と言われて、『自分の自由にできるのが髪の毛だけってのも悲しいよな』って。このセリフが印象に残っているんですよね。賢治という人間を表しているなと思ったんです。“ああ、コイツは髪の毛しか自由にできないと思ってるんだ”って(笑)。それくらい覇気がないのか、って。このときの賢治の精神状態が分かるなぁと思ったんですよね」そんなダメ男・賢治を丸ごと包み込み、グイッと引っ張る直子。本作には最初から最後まで賢治と直子の2人しか登場しない。「撮影前は本読みで一回、劇中にある西馬音内(にしもない)盆踊りの実景撮影で一回、次に写真の撮影で会って。2日かけて写真撮影した後、1か月くらい空いてから映画の撮影が始まったんです。いま考えるとそのスケジュールが良かったなと思います。恋人だった二人が別れて再会するという賢治と直子の関係性に近い感じがして。写真撮影のときも、映画の撮影のときも、瀧内さんがドーンと男前にいてくださって、その男前さに助けていただいた部分は大きいですよね。もうやらなきゃしょうがない、終わらないからって(笑)」次のページ:柄本家の映画鑑賞ルール映画好きならではのこだわり柄本さんと言えば、映画好きで有名だ。その彼に敢えて「映画とは?」という質問をぶつけてみた。「僕の場合は小さいころから映画を観て育ってきているので、いろいろな言い方があるし、いろいろな角度からの言い方があると思いますが、“一番身近にあって、一番憧れているもの”でしょうか。やっぱり、ずっと憧れ続けているんですよね、映画に。だから映画の現場に行けるっていうだけでもう嬉しい」そして映画を観るときのこだわりといえば、“映画館で観る”。「家で映画を観ることは、ほとんどないですね。役作りなどの資料的に観ることは、たまにありますけど、“映画は映画館で観るようにできているんだな”って思ってからは映画館で観ることにこだわっています。他人と観るっていうことが大事なんじゃないかと思うんですよね。中にはその映画を面白いと思う人もいて、つまらないと思っている人もいるだろうし。そういういろいろな人たちがいる中で、しかも知り合いじゃない他人同士が一つの場所にあつまって一つの人生を垣間見る。その怪しさみたいなものが映画の魅力なのかなと思うんです」「昔からそうなんですけど、それでも実家で映画を観るとき、家で観なきゃいけないとか、親父が観たいっていう時には“親父のルール”がありました。映画を観るときは絶対に電気を消して、トイレの時も一時停止とかしちゃダメ、っていう。家で観てるのに。それが面白かったりするとトイレの間近まで行って、サッとトイレに行って急いで戻ってきたりする(笑)」。「そうやって育ってきたから、やっぱり映画館なんですよ。見えてくる情報量も違うし、環境も違う。僕にとって映画は、生活空間の中で観るものではないんです。映画館という場所に行って1800円払う。その映画に1800円の価値があったのかどうかも含めて。10000円の価値がある映画を1800円で観れた、こんなもん50円だ、それを1800円も払って観ちゃった。そういうことも含めての“映画館で観る”なんですよね」まさに生粋の“映画好き”ならではのコメントではないだろうか。そんな柄本さんのオールタイムベストは『フレンチカンカン』(1954年製作のフランス映画。ジャン・ルノワール監督・脚本)なのだとか。「好きな映画はその時や気分によっても違うんですけど、改めて観て、これが一番好きだなって思うのは、やっぱり『フレンチカンカン』です。劇場でやる度に観に行って、“あの映画は本当に面白いのかな”って毎回疑いながら行くんですけど、やっぱり毎回“傑作だな”って思う。この映画の持つ大きさ、大らかさ。圧倒的な嘘を見せてくれるところ。やっぱり映画ってでっかいですよね」その大きな“映画”という世界を変幻自在に泳ぎ続ける柄本佑。これからも、俳優として硬軟自在な姿を見せてほしい。(text:Ai Takatsuka/photo:You Ishii)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年08月19日柄本佑と瀧内公美のW主演で贈る、男と女の不確実な愛を描いたR18+指定の『火口のふたり』。この度、2人きりの最後の夜に、エロティックさが漂うと評判の秋田・“西馬音内盆踊り”を訪れるシーンの本編映像が解禁となった。主演に『きみの鳥はうたえる』『アルキメデスの大戦』など数々の話題作に出演している柄本佑と、『彼女の人生は間違いじゃない』で大胆な演技を披露し、TBSドラマ「凪のお暇」にも出演している瀧内公美を迎えた本作。『この国の空』など日本映画界を代表する脚本家・荒井晴彦の監督第3作目となる。この度、本作より初めて解禁となった本編映像は、賢治(柄本さん)と直子(瀧内さん)が2人きりで過ごす最後の夜、秋田の“西馬音内盆踊り”を訪れる場面。毎年8月16日~18日に開催される西馬音内盆踊りは、踊り手が顔が隠れる頭巾を着用しており、頭巾を外すまで性別が男性か女性か分からず、何とも言えないエロティックさが漂うと評判の盆踊り。かつて、映画監督の故・相米慎二(『セーラー服と機関銃』『台風クラブ』)もこの踊りに魅了され、3日間見続けたといわれており、相米監督から評判を聞いた荒井監督も2006年に初鑑賞。以来、別名亡者踊りともいわれるこの踊りの、死とエロスが匂い立ってくる様子に魅了され「男女の恋と西馬音内盆踊りを絡めた作品を撮りたいと思った」と作品に取り入れることを構想しており、そのために本作の舞台を原作の九州・福岡から秋田に変更したという。公開されたシーンでは、盆踊りを見ながら「今晩で終わりだな」と名残惜しそうに賢治がつぶやき、「約束守れる?」と直子が笑みを浮かべた顔で返すやり取りが繰り広げられ、盆踊りの隊列を横切る賢治と直子にストップモーションがかかる、印象的な場面が披露される。荒井監督が舞台を変えてまでも作品に取り入れたかった、艶めかしい西馬音内盆踊りシーンに注目してみて。『火口のふたり』は8月23日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年08月16日暑さもフルスロットルとなったこの8月、セクシュアルなエモーショナル・ムービーが2本公開される。直木賞作家による小説を原作とする<R18>ドラマと、米国で最も有名なセックス・セラピストの半生をひも解くドキュメンタリー。ジャンルは異なれど、それぞれのアプローチで”性”を切り口に人間の本質が描かれる。どちらも「生きる」について考えさせられる作品だ。“身体の言い分”に身を委ねる男女のエロティシズム『火口のふたり』2010年「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞した作家・白石一文による小説を、脚本家・荒井晴彦が3作目となる監督作として映画化した『火口のふたり』(8月23日公開)。数年ぶりに再会した男女が、世界の終焉を前に、性愛に溺れる姿を追った衝撃作だ。東日本大震災から7年後の秋田。十日後に結婚を控えた直子は、昔の恋人・賢治と久しぶりに再会する。直子の婚約者が出張から戻るまでの5日間だけという約束で、ただひたすらに互いを求め合うのだが…。身体の言い分に、身を委ねる昔撮った睦まじくも淫らな2人の姿を写したモノクロームのスナップ写真を見たことで、欲望のままに体を重ねていた青春の日々の記憶を鮮やかに甦らせる賢治と直子。抗いがたい欲望に突き動かされた2人は、それぞれに葛藤を抱えながらも、“身体の言い分”と称してその衝動に身を委ねていく。壊れゆく世界の中で、閉鎖された濃密な空間に留まり続ける2人。大きな世界の事情が小さな個人の事情とぶつかりせめぎ合うという滑稽でアナーキーな状況が、強烈な余韻となって本作をより輝かせていることは間違いないだろう。「どう生きるべきか」という根源的な問いその一方で黒々と口を開けた神々しくも禍々しい火口のビジュアルや、幻想的な西馬音内盆踊りの風景など、本作にはそこはかとなく「死」の薫りが漂う。そして否が応でも浮かび上がってくる「世界が終わる時、誰と何をして過ごしますか?」という主題。本作はただひたすらに体を重ねる2人の姿を通じて、「どう生きるべきか」という根源的な問いを観る者に投げかけてくるのだ。男の女のエロティシズムをリアルに描く監督・荒井晴彦メガホンをとったのは、暴力的な性愛の継承をテーマとする菅田将暉主演作『共喰い』(2013年)や、女へと目覚めていく少女を追った池松壮亮出演作『海を感じる時』(2014年)など、男と女のエロティシズムをテーマとする脚本を多数手掛け、キネマ旬報脚本賞に5度輝いた荒井監督。本作では性をむさぼる2人を、煽情的でも芸術的でもなく、あるがままリアルにそして生々しくスクリーンに活写している。また賢治役を演じた柄本佑と、直子役の瀧内公美の愚直なほどまっすぐな“体当たり”の演技も印象的だ。原作よりもいくぶんか若くなった主人公2人によってもたらされた、青春ムービーの軽やかさもまとう“セクシュアル終末ファンタジー”をどうぞご賞味あれ。90歳、現役セックス・セラピストの人生レッスン!『おしえて!ドクター・ルース』そして多様性のこの時代に、自分らしく「生きる」とはどういうことなのか教えてくれるのが『おしえて!ドクター・ルース』(8月30日公開)。抜群の人気と博識を武器に、社会にまん延する偏見や差別と戦い続ける、米国で最も有名な90歳の現役セックス・セラピスト、ドクター・ルース・K・ウエストハイマーの半生をひも解くドキュメンタリーだ。驚くほどエネルギッシュで波乱万丈な人生ユダヤ系ドイツ人のルースは、10代半ばにホロコーストで家族を失い、終戦後はパレスチナでスナイパーとして活動。1度目の結婚の際パリへと渡り、心理学を学ぶため、帰国希望の夫と離婚してソルボンヌ大学へ。2度目の結婚ではアメリカへと居を移すが、娘が産まれほどなくしてシングルマザーに。その後、最愛の夫となったフレッドと3度目の結婚後、ニューヨークの医療系非営利団体で様々な性の悩みに触れたことで一念発起。コロンビア大学、コーネル大学に通って博士号を取得した後、性心理と恋愛関係を専門に扱うセラピストとして開業する。そんな折、縁あって参加したのが、1981年に放送開始された日曜深夜のラジオ番組「セクシュアリー・スピーキング」。番組に寄せられた誰にも言えない性の悩みに、学術的視点から的確かつ具体的にアドバイスするドクター・ルースはすぐに評判となり、彼女はテレビや雑誌、講演会とひっぱりだこに。身長140cmの小柄な体にパワーを漲らせ、ドイツ訛りの英語で朗らか&赤裸々にセックスを語るルース。「“サイズ”と女性のエクスタシーとの相関関係」についてもオブラートにくるむことなくズバッと言い切る彼女は国民的人気を得るが、その一方で検閲と戦い、時にはその発言に反発する一般人から市民逮捕をされそうになることも…。なぜ彼女は“性”の問題に切り込むのか…?家族や恋愛、性の問題に関心を持つことになったきっかけの1つは、10歳で両親と離ればなれになったことで、「誰かに触れられ、愛されることの大切さ」を痛感したことだとルースは語る。そして女性が正しい性の知識や家族計画を知らずに予定外の妊娠をして、人生を犠牲にする姿に心を痛めた彼女は、住民から寄せられた早漏やオーガズムの問題に答えられなかったことを悔やみ、その道のスペシャリストになることを志したのだ。自分らしく生きるために、恋して学んで、何事にも前向きな彼女の人生哲学には「生きる」ヒントが満載だ。現在もセックスや人生の悩み相談を受けながら、その一方でHIV感染の正しい知識を広め、LGBTQに寄り添い、様々な偏見や中絶問題と戦い続けるスーパー・ポジティブなドクター・ルース。大いに笑って、考えさせられる彼女の人生サバイバル講座は間もなく開校!ギラギラと照り付ける太陽にも負けない、エネルギッシュで示唆に富んだ“生きる”を描いた夏映画2本。バイタリティあふれる主人公たちから、あなたなら何を学ぶ!?(text:足立美由紀)(text:Miyuki Adachi)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年08月13日主演に柄本佑と瀧内公美を迎えた、日本映画界を代表する脚本家・荒井晴彦が直木賞作家・白石一文による同名小説を映画化する『火口のふたり』。この度、映画公開に合わせて、モノクロームの詩的で濃密な男性ヌードを収める写真家・野村佐紀子の写真と白石氏の文章で構成されたフォトストーリーブックの発売と写真展の開催が決定した。劇中に登場する野村さんのモノクロームの写真は、ただ欲望のままに生き、一糸まとわぬ姿をあらわにする主人公の賢治と直子(柄本さん・瀧内さん)の若かりし頃を大胆にも映し出し、物語がはじまる際のキーアイテムとして登場している。今回のフォトストーリーブックでは、原作者の白石氏が書き下ろした、映画や原作では描かれない主人公の過去を描いた前日譚と、野村さんによる本編未使用カットを含む写真で構成。森山大道、佐内正史、奥山由之など数多くの写真集を手掛けてきた造本家の町口覚が造本設計を担当し、“文学”と“写真”が見事に融合した、もうひとつの「火口のふたり」が表現されている。映画を観た後や原作を読んだ後にはその世界を追体験でき、また未体験の方にも“男と女の普遍的な愛の物語”として単体でも楽しめる作品になっている。また、フォトストーリーブックの発売と合わせて、映画製作中に撮影した作品をはじめ、これまでに撮りためてきた膨大な数の写真の中から厳選した新作を公開する、「野村佐紀子 写真展 『火口のふたり』」の開催も決定した。原作・白石一文 コメント野村佐紀子さんの写真を見ると、自分の書いたものにいのちを吹き込まれたような気がする。いのちというより血や肉と言うべきだろうか?直子や賢治から遠ざかって何年も過ぎたが、私が描いたふたりは今も火口の縁でこうして生き続けているかのようだ。げに小説は生き物なのだと、今回の写真集を見て強く思い知らされたのである。造本家・町口覚 コメント一昨年の夏、映画『戦争と一人の女』の荒井晴彦さんの脚本に魅せられたぼくは、坂口安吾さんのその小説と、野村佐紀子さんの写真を、一冊の本という空間の中で拮抗させた「Sakiko Nomura: Ango」を出版した。あれから二年、荒井晴彦さんの映画『火口のふたり』にふたたび魅せられたぼくは、白石一文さんのその小説と、野村佐紀子さんがその映画のために撮り下ろした“ふたり”の写真を、一冊の本という空間の中で“交配”させることにした。この本は、ぼくから荒井晴彦さんに贈る艶書だ。『火口のふたり』は8月23日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年07月12日主演に柄本佑と瀧内公美という実力派を迎え、『共喰い』『海を感じる時』などで知られる日本映画界を代表する脚本家・荒井晴彦が自らメガホンをとった監督3作目『火口のふたり』。この度、本作の予告編とポスタービジュアルが解禁された。今回解禁となった予告編は、数枚のモノクロの写真にのせて直子(瀧内さん)が、昔の恋人・賢治(柄本さん)へ結婚式への参加を促す声から始まる。数年ぶりに再会を果たした2人だが、直子は1冊のアルバムを賢治へ差し出す。そこには、一糸まとわぬふたりの姿がモノクロームの写真に映し出されていた。「このアルバムを見ながら、私はしょっちゅう賢ちゃんの身体を思い出していたよ」と告白する直子。戸惑う賢治だったが、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という直子のひと言をきっかけに、ただ欲望のままに生きていた青春の日々に戻っていくように、ふたりはお互いを求めあう。直子の婚約者が戻るまで、ふたりぼっちの“5日間”。お互いの身体の言い分に身を委ね、どうしても離れられないふたりの姿が、「世界が終わるとき、誰と何をして過ごすか?」という究極の問いを観る者に突きつけ、衝撃的な結末を予感させる映像となっている。また、ポスタービジュアルは、モノクロームの詩的で濃密な男性ヌード写真で知られる写真家・野村佐紀子による撮り下ろした写真が使用され、寒空の下で抱き合う賢治と直子が真っすぐに正面を見つめる姿が。「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という、直子の本編中の重要なセリフがキャッチコピーとして使用され、まるで世界に2人だけしかいないかのような錯覚を起こさせる力強いビジュアルに仕上がっている。『火口のふたり』は8月23日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:火口のふたり 2019年8月23日より新宿武蔵野館ほかにて公開©2019「火口のふたり」製作委員会
2019年05月14日直木賞作家である白石一文原作の「火口のふたり」(河出文庫刊)が映画化。監督は日本を代表する脚本家・荒井晴彦。主演は『素敵なダイナマイトスキャンダル』などの柄本佑と、『彼女の人生は間違いじゃない』の瀧内公美。あらすじ東日本大震災から7年後。何もかも失った永原賢治(柄本佑)は、ある日、旧友である佐藤直子(瀧内公美)の結婚式に出席するため、地元・秋田へ帰省する。久しぶりの再会を果たした永原と直子だったが、直子の言葉をきっかけに、ふたりはふたたび体を重ねあうようになる。直木賞作家、初の映画化2009年に「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」で山本周五郎賞を、さらに2010年には「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞した白石一文。「火口のふたり」では、数年ぶりの再会をきっかけに、抑えきれない欲望をそのままぶつけ合う男女の姿が描かれた。本作が初の映画化。主演を務めたのは、実力派俳優の柄本佑。『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18年)や『きみの鳥はうたえる』(18年)など、スクリーンの中で鮮烈な印象を残し続けてきた。また、佐藤直子役には瀧内公美が抜擢された。昨年、廣木隆一監督作品『彼女の人生は間違いじゃない』(17年)で主人公を演じ、数々の賞を受賞。監督は、脚本家としても活躍を続ける荒井晴彦。『身も心も』(97年)、『この国の空』(15年)に続く、3本目の監督作品となる。キャスト&スタッフからコメントが到着永原賢治役・柄本佑荒井晴彦脚本作品に出ることは僕の夢でした。今回のお話をいただいた時、小躍りしました。なんたって脚本だけでなく監督も荒井さんなんですから。ホンはなんともチャーミングで「大人」なホンでした。5歳の時から僕を知ってくれている荒井監督。今まで仕事したどの監督よりも付き合いの長い監督です。どんな映画になっているのか。出ている自分を見る不安はありますが、いち映画ファンとして出来上がりが楽しみです。佐藤直子役・瀧内公美最初に脚本を読んだ時の感想は、絡みのシーンが多い、他愛のないことをずっと喋っている。面白いけれど、私に出来るのかなぁと思いました。現場に入り柄本さんとお芝居をすると、賢治と直子として他愛のないことを話す、食べる、身体を合わせる、寝る。そんな二人の日常を積み重ねていくうち、ああ生きるってこういう事なのかなと、自然と身体が動き、賢ちゃんを真っ直ぐ見て、聞いて、素直に直子として生きたように思えます。良い緊張感と幸福感が現場に漂い、荒井さんと柄本さんの何気ない会話の端々に、この映画にとっての大切な何かがあるような気がして、さりげなく聞いているのが毎日の愉しみでした。まだ仕上がりは見ていませんが、綺麗に撮っていただきましたので、実物より綺麗な私を見て欲しいです(笑)。お楽しみに。荒井晴彦監督東日本大震災と原発事故の翌年、白石一文の「火口のふたり」が刊行される。津波の翌年に××が××する話をよく書くなあと感心した。意表をつくカタストロフィーだが、まだ、あれから2年もたっていない時だ、あるかもと思わせられた。白石さんに原作をもらいに行った時、福岡を秋田に変えていいですかとお願いした。白石さんはアライさんじゃ仕方が無いですねと言ってくれた。その時から4年、震災から7年もたってしまった。直子の結婚式に出るために故郷へ帰った賢治は直子に「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」と言われる。「賢ちゃんが相手の人とうまくいかなくなるのは分かってたし、だったら、私、待ってればよかったかなって。ヘンな嫉妬なんてしないで、もっとちゃんと自分の身体の言い分を聞いてあげた方がよかったのかもしれないって」と直子は言う。何があろうと「自分の身体の言い分」を聞いてあげようという映画です。原作者・白石一文『赫い髪の女』や『遠雷』の頃から荒井晴彦さんの脚本に魅せられてきた者のひとりとして、その荒井さんから映画化の話をいただき、一も二もなくすべてをお任せすることにした。しかも今回は自らメガホンを握って下さるという。原作者としてこれに優る光栄はない。「火口のふたり」はあの大震災から時を経ずに一気呵成で書き上げた小説で、私としてはめずらしいほど生命力にあふれた作品だ。人のいのちの光が最も輝く瞬間をどうしても描きたかったのだろう。映画界の伝説ともいうべき荒井晴彦さんの手で、その光がよりなまなましく、妖しく観る者の心を照らし、身の内に眠っていた“おとこ”や“おんな”が強く喚起されんことを切に願っている。『火口のふたり』は2019年、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2018年12月17日皆さんは絵本をどうやって選んでいますか? 子どもが気に入ったから、自分が好きだから、話題になっているから… などいろんな選び方がありますよね。今回ご紹介する絵本作家・荒井良二さんの絵本は、型にはまらない独創的な絵が印象的です。絵本を選ぶとき、強いメッセージ性のある作品を選ぶ人も少なくありませんが、荒井さんの絵本にはそうした「答え」が存在しないように思えます。でも不思議と元気をもらえる、いつまでも忘れられない…。そんな「荒井良二」絵本の魅力をたっぷりご紹介していきましょう!■あさになったので まどをあけますよ作・絵:荒井 良二/出版社:偕成社 「あさになったので まどをあけますよ」 始まる、いつもと同じような朝。窓をあけて、1日の始まり感じる子どもたち。この絵本は2011年の東日本大震災で被災された方々とワークショップに取り組み、東北地方沿岸部の町をたずね歩いた荒井さんがそのときの思いを込め、描きあげたものだそう。「日常」は当たり前に過ぎていくものだけれど、それを繰り返していくことこそが幸せなのだと気付かせてくれます。本を読んだママからは「前向きな気持ちになる」という感想がたくさん寄せられていました。■空の絵本作:長田 弘/絵:荒井 良二/出版社:講談社 「空の絵本」 青い空と白い雲。表紙一面に広がる空の絵が印象的な絵本。そのリズムが耳に心地よく残る、詩人・長田弘さんの美しい文章と、奥へ奥へと引き込まれる荒井さんの絵が見事にマッチ! 刻一刻と変化する自然の美しさが独特の世界観で描かれています。野山に降る雨が強くなり、青や緑が灰色に。空が明るくなると世界はくっきりと輝きだす…。この絵本を読むと、空を改めて観察したくなる、という人も多いのではないでしょうか。読み終わったあとに「どのページがステキだった?」とお子さんと一緒に話してみるのも良いですね。■きょうというひ作・絵:荒井 良二/出版社:BL出版 「きょうというひ」 雪の降る静かな日に少女がひとり、大きなろうそくに火を灯します。「きえないように きえないように」と祈りを込める少女に、さまざまな思いをはせることができる一冊です。シンプルで美しい詩のような言葉と幻想的な世界観に「ささいなことで悩んでいるときに読むと、なぜか安らぐ」「頭のなかのごちゃごちゃしたものがスッときえる」と感想を寄せるママも少なくありません。どちらかというと大人向けという人もいますが、ろうそくがたくさん灯っているシーンがお気に入りというお子さんもいるよう。「タイトルに惹かれた」という意見もありました。■いつか、ずっと昔作:江國 香織/絵:荒井 良二/出版社:アートン 「いつか、ずっと昔」 結婚を間近にひかえた女性に、かつて愛したものたちとの時間がよみがえり、その記憶は前世、そのまた前世にまでさかのぼって…。命の生まれ変わりという壮大で神秘的な世界が広がるなかに、恋することの華やかさや切なさ感じさせる一冊。今回荒井さんがタッグを組んだのは、人気作家の江國香織さん。「いっしょに本を作るのはとても楽しい。同時に恐い!」と言いながらも「江國さんの文章はどんな絵でも壊れない強さがある。だからぼくはぼくらしく振る舞えば良い」と話すように、ページをめくるたびにピースがはまっていくような心地よさを感じます。「溺れるように読んだ」という感想も寄せられていました。■森の絵本作:長田 弘/絵:荒井 良二/出版社:講談社 「森の絵本」 その声は「森へ ゆこう」と言いました。いちばん大事なものがそこにあると。ページをめくると目に飛び込んでくる美しい景色には思い切り息を吸い込みたくなる、すがすがしさがあります。自分にとって大切なものとは何だろう。読み手の心に語りかけてくるような内容は一見「子どもには難しい?」と判断しがちですが「何度も読んでとせがまれる」「静かに聞いている」と、絵本の世界を楽しんでいるお子さんも少なくありません。「10年後、20年後に読んだとき、どんなことを感じるか。長く手元に置いておきたい」「どこがどう良かったか、あえて何も聞かずに読んだあとの余韻を楽しみたい」といった意見も寄せられていました。いかがでしたか? 黄、緑、赤、黒…。独特のタッチで自由奔放に描かれた作品たちは、並べてみるとまるでアート作品のよう。画集のような美しさと、唯一無二のオリジナリティをあわせもつ絵本たちにぜひふれてみてはいかがでしょうか。
2018年03月06日女優の二階堂ふみが8月6日(木)、都内で行われた主演作『この国の空』公開記念トークイベントに出席。戦時下を生きる19歳の主人公を演じ、「再び戦争を起こさないために、映画を通して、平和な日本と向き合い、考えてもらえれば」と思いを語った。芥川賞作家・高井有一による「谷崎潤一郎賞」受賞の同名小説を脚本家の荒井晴彦が映画化。二階堂さん演じる主人公・里子が「私は愛も知らずに、空襲で死ぬのでしょうか…」と空襲におびえながら、それでも懸命に生き抜き、ある男性との出会いを機に、少女から女へと開花する姿を描いた。イベントには里子の母親を演じる女優の工藤夕貴、そして70年前、原爆が広島に投下された8月6日に東京大空襲でご家族6名を亡くし、孤児となった戦争体験者の海老名香葉子さんが出席した。工藤さんは、いまの二階堂さんと同じ歳のとき、東京大空襲を描いた『戦争と青春』(今井正監督)に出演しており、「時がめぐって、20歳くらいの子どもを抱える母親を演じるのは感慨深い」としみじみ。「戦争経験はないが、撮影当時に今井先生から教わったことが、今回の土台になった」と語った。一方、海老名さんは「戦争映画ではあるが、文芸作品のような印象を持った。戦時下の人の情や気持ち、生き方を描いている」と本作を評し、二階堂さんの“東京弁”を「きれいな言葉づかいで良かったですよ」と絶賛。「私が味わった悲しみや苦しみを、いまを生きる人々に経験させたくない。二度と戦争を起こさないように」と戦争体験を語り継ぐ強い思いを示していた。『この国の空』は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:この国の空 2015年8月8日よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開(C) 2015「この国の空」製作委員会
2015年08月06日終戦70年を迎えるこの夏、「あの戦争」を見つめ直す大小さまざまな日本映画が公開されている。女優・二階堂ふみが主演する『この国の空』(荒井晴彦監督)もそのひとつ。沖縄生まれの二階堂さんが「こういう作品に出演したかった」と語る本作にこめた思いとは?二階堂さんが演じるのは、空襲におびえながら「結婚もできないまま、死んでいくのだろうか」という不安を抱える19歳のヒロイン・里子。妻子を疎開させた隣家の銀行支店長・市毛(長谷川博己)との心揺れる関係性を通して、はかなげな少女の憂いと葛藤、青春を奪われた悲壮感、そして「それでも生き抜いてやる」という力強さを演じきった。役作りを支えたのは、「すべての答えがそこにあった」という荒井監督によるシナリオだった。「美しい言葉がたくさんあったので、それを映像の中で生かしたいなと思って。成瀬(巳喜男)監督、小津(安二郎)監督の作品を参考に、日本語が美しく聞き取れるセリフまわしを意識しました。具体的には鼻濁音を入れたり、声質を変えたり…。現代的なしゃべり方ではセリフひとつも印象が変わってしまうので、そのあたりは徹底して役作りしましたね。当時の女性が歯を食いしばって生きている、重みや説得力を表現したかったですし」戦争に翻ろうされた男女が織りなすラブストーリー。『この国の空』を端的に説明すれば、こんなフレーズになるだろう。しかし、二階堂さんは「これは恋ではない」と断言する。「相手には妻子がいるし、頭ではダメだと理解しても、心と体の歯止めが利かない。ただ、市毛という男性に惹かれたというよりは、戦争の恐怖に押しつぶされそうな里子のなかで、本能的なものが動き出して…。実はふたりは全然違った方向を向いている男女なんです」。10代前半でも20代後半でもなく、19歳の少女がひとりの女へと開花する瞬間をとらえた本作。二階堂さん自身も本作の撮影中に、20歳の誕生日を迎えており、戦時下を生きるヒロインでありながら「役作りはしつつも、最後は等身大であることが一番大事だと思った」とふり返る。「里子と同じで、現場ではひとりで戦わないといけないという孤独感がありましたし、ひとりで戦った結果がスクリーンに焼き付いた。戦って良かった。そう思います」沖縄出身の二階堂さんは、「以前から戦争を題材にした映画に出演したかった」といい、「歴史をふり返ったとき、なぜあの時代に日本が戦争に向かってしまったのか。そして人々が何を感じ、考えていたのかを広い視野で考える必要があるなと思っていたので。祖父母が戦争を経験したという事実も、私にとっては大きなこと。受け継がなければいけない言葉や物語があり、それを見た人に実感してほしい」と凛としたまなざしで語った。ここ数年、年3作品のペースで出演作が公開される「映画に愛された女優」二階堂さん。同時に熱心な映画ファンとしても知られている。「映画の魅力は、いろんな形の感動があることですね。涙の感動、笑う感動、『なんだこれは』という感動…。私自身、それを求めて映画館に足を運んでいます。いい映画の条件ですか?私にとっては子どものような純粋な気持ちになれる作品、かな。すごい映画の作り手は、まるで魔法使いに思えますね」いつ見ても感動するという『アダムズ・ファミリー』。戦争映画では『戦場のピアニスト』をお気に入りに挙げて「敵同士であっても、やはり同じ人間なんだと思わせるラストシーンが忘れられない」。ちなみに昨年のベストワンは『グランド・ブダペスト・ホテル』なのだとか。「女優になったことで、映画のいろいろな見方ができるようになりました。要はいかに心が動いたか。たとえ荒削りであっても、力強さがあれば、映画として魅力的ですよね」(photo / text:Ryo Uchida)■関連作品:この国の空 2015年8月8日よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開(C) 2015「この国の空」製作委員会
2015年08月05日女優の二階堂ふみが16日、都内で行われた映画『この国の空』の完成披露試写会の舞台挨拶に、共演者の長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、メガホンを取った荒井晴彦監督とともに登壇した。映画『この国の空』は、芥川賞作家の高井有一氏による同名小説を、脚本家の荒井氏が18年ぶりに監督に挑んだ一作で、戦時下の激しい空襲と飢餓が迫る恐怖のなかで懸命に生きる人々を丹念に描いた人間ドラマ。主演の里子を演じた二階堂は「戦後70年という節目でこの映画を作ることができて、皆さんにお披露目できるということで、今とても胸にくるものがあります。この映画を見て色々なことを感じていただければうれしいです」とあいさつした。さらに、脚本を読んだ感想を聞かれると「中学生のときに『わたしが一番きれいだったとき』という茨木のり子先生の詩を国語の教科書で読んで、ものすごく肌で実感した作品だったので、自分が戦争を題材に扱った映画に出る際は、こういう肌で感じるものをやりたいなと思っていました」と胸の内を語り、「今回の本を読ませていただいたときに、茨木先生の詩がすぐに頭に浮かんで、ぜひやりたいと思って、監督に初めてお会いしたときに、監督も茨木先生の詩のことをおっしゃっていて、そこでつながった気がしました」と運命を感じたことを明かした。また、今回の役を演じて、一番心に残った点について二階堂は「(戦争について)改めて考えたり感じたりすることが多かったんですけど、やはり忘れないということであったり、作り続けることであったり、私は戦争を知らない世代ですけど、体験をした方から話を聞いて感じて、伝えていくということをやっていかなければなと、すごく感じました」としみじみ語った。そんな二階堂と3年ぶりに共演した長谷川は、「初めて共演したときもすごい女優だなと思って、自分が10代のときってこんなことできなかったと落ち込んだんですけど、すっかり大人っぽくなって、その成長の過程が見られて、何か不思議な感じです(笑)」と照れ笑いを浮かべ、工藤は「ふみちゃんはすごく前向きな女優さんで、今どきに珍しくいい意味でガツガツしている女優さんなので、初日から英語で話すことになって、もんぺ姿で英語でしゃべっていました。でもそこですごく親しくなれたので、やりやすくて楽しい現場になりました」と印象を語った。映画「この国の空」は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほかで全国公開。
2015年07月17日終戦70周年を記念し製作された『この国の空』の完成披露試写会が7月16日(木)、都内で行われ、主演の二階堂ふみをはじめ、長谷川博己、工藤夕貴、富田靖子、荒井晴彦監督が登壇した。園子温監督の『地獄でなぜ悪い』以来2度目の共演となった二階堂さんと長谷川さん。本作では戦時下で思いを寄せ合う、19歳のヒロインと妻子ある年上男性を演じており、長谷川さんは「ふみちゃんはすっかり大人っぽくなっていて…。成長の過程を見られた喜び、というか勉強?になりました」とドギマギ?一方、二階堂さんは「私にとっては仲のいいお兄ちゃん。今回も(演技を)たくさん引き出していただいた」と涼しい表情だった。芥川賞作家・高井有一による「谷崎潤一郎賞」受賞の同名小説を原作に、19歳の里子が「私は愛も知らずに、空襲で死ぬのでしょうか…」と空襲におびえながら、それでも懸命に生き抜き、ある男性との出会いを機に、少女から女へと開花する姿を描いた。沖縄出身の二階堂さんにとって、戦争映画への出演は念願だったと言い、「(終戦)70年という節目に作られたこの映画を、こうしてお披露目できて、胸に来るものがありますね」と感無量の面持ち。約18年ぶりのメガホンとなった荒井監督は、「知り合いの阪本順治監督から『荒井さんは、この国の上の空でしょ?』って言われるけど、いまこの国の上の空は、安倍晋三じゃないですか」と痛烈に批判していた。里子の母親を演じる工藤さんは、「誰も死なない、誰も血を流さない。不思議な戦争映画ですが、見終わると、熱い気持ちが沸き上がる」とアピール。里子の叔母に扮した富田さんも「戦争映画なのに、艶っぽさを感じさせる。もちろん、やっぱり戦争はいかんぞとも思わせる」と話していた。『この国の空』は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月16日演技派女優・二階堂ふみと長谷川博己を主演に迎え、芥川賞作家・高井有一の同名小説を基に映画化した『この国の空』。いままで戦地に赴く男たちを描いた作品が数多く公開されてきたが、本作では戦時中の日常を生き抜く女たちが登場する。愛を知らない少女、娘を見守る母、家族を亡くした叔母…シネマカフェではそれぞれの生き様に注目した。昭和20年、終戦間近の東京。19歳の里子は母親と杉並区の住宅地に暮らしている。度重なる空襲に怯え、雨が降ると雨水が流れ込んでくる防空壕、日に日に物価は高くなり、まともな食べ物も口には出来ないが、健気に生活している。日に日に戦況が悪化していくなか、里子は男性と結ばれることなく、戦争で死んでいくのだろうか。その不安を抱えながら、市毛の身の回りの世話をすることがだんだん喜びとなり、そしていつしか里子の中の「女」が目覚めていくのだが――。本作は市川由衣&池松壮亮主演の『海を感じる時』で脚本を手掛けた荒井晴彦が18年ぶりに監督を務める渾身作。主演の二階堂さんが演じるのは、19歳の少女・里子。戦況が悪化する中、愛も男も知らぬまま、時代に飲まれてしまうのではないかと不安な日々を過ごしていくが、隣家に住む妻子持ちの市毛(長谷川博己)に心を傾けてゆく。「私は愛も知らずに、空襲で死ぬのでしょうか…」この不安も市毛といる時間は忘れることができるのだ。そんな里子を見守る母親・蔦枝(工藤夕貴)は、結核で主人を亡くし、娘とふたり身を寄せ合って暮らしている。愛も知らずに死んでいくよりは、それがたとえ許されぬ恋だと分かっていても目をつぶるしかないと、“女”の顔をみせていく娘を見守る。娘への複雑な感情を吐露するシーンでは、「市毛さんに気を許しては駄目よ。普段のときだったら、許しはしない。でもいまはこんな時代で、あなたの近くには、市毛さんしかいないんですものね…」と感情で動く里子を想ったセリフも。そして横浜で空襲に遭い、命からがら杉並に逃げて来る叔母・瑞枝(富田靖子)。家族を戦争で亡くした彼女は、母娘のもとに身を寄せる。戦争へ恐れを抱き、絶望しても、生きて行こうとする生命力が強く感じられる女性だ。それぞれ3人の女性について荒井監督は「もちろん満足のいく形ではないけれど、戦争中だって衣食住があり、そして、男女がいればセックスだってしたんです。いままでの戦争映画では、そういう人間の姿が描かれてこなかった。男は死ななくてよかったと歓び、妻子が帰ってくる、と唇を噛むこの映画の主人公・里子のうれしくない戦後に重ねて、私たちの戦後が問えるのではと思った」とコメントを寄せている。また、本作のエンドロールで流れるのは、二階堂さんが朗読する茨木のり子の詩「わたしが一番きれいだったとき」。二階堂さん自身、本作の脚本を初めて読んだときに、この詩が思い浮かんだとのこと。あの時代を生きた少女たちが何を考えていたのか。二階堂さんの声からあふれる想いを劇場で感じてみて。『この国の空』は8月8日(土)よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月14日終戦70年の今年、二階堂ふみを主演に『海を感じる時』の脚本家・荒井晴彦が18年ぶりに監督を務める渾身作『この国の空』。このほど、本作が北米最大規模の日本映画祭「JAPAN CUTS 2015(ジャパン・カッツ)」上映作品に選出。二階堂さんの母親を演じた国際派女優・工藤夕貴からコメントが到着した。昭和20年、終戦間近の東京。19歳の里子(二階堂ふみ)は母・蔦枝と杉並区の住宅地に暮らしていた。度重なる空襲に怯え、逃げ込む防空壕は雨が降ると雨水が流れ込んでくる始末。日に日に物価は高くなり、まともな食べ物も口には出来なかったが、それでも2人は健気に生きていた。彼女たちの隣家には、妻子を疎開させた銀行支店長・市毛(長谷川博己)が暮らしている。このまま自分は男性と結ばれることなく、戦争で死んでいくのだろうかと考えるようになった里子は、市毛の身の回りの世話をすることがしだいに喜びとなり、いつしか里子の中の「女」が目覚めていく――。原作は、芥川賞作家・高井有一による「谷崎潤一郎賞」受賞の同名小説。戦争という時代を生きる庶民の暮らしが繊細に、リアルかつ大胆に描かれた物語を、『共喰い』『さよなら歌舞伎町』などの脚本家として知られる荒井監督が映画化した。その本作が、7月9日(木)~19日(日)までニューヨークで開催される「JAPAN CUTS 2015(ジャパン・カッツ)」にて上映されることが決定。荒井監督といえば、日本を代表する脚本家の1人として活躍し、世界からも注目を集める存在だけに、今回、処女作『身も心も』から18年ぶり、そして構想30年というこの監督作に映画祭側が興味を示し、選出されることになった。これまで、俳優としては二階堂さん始め、役所広司、北村一輝、さらに監督は行定勲、西川美和、園子温らが参加してきた「ジャパン・カッツ」。本作の上映日となる7月18日には、二階堂さんの母親役の工藤さんと荒井監督が登壇。さらに、荒井監督が脚本を担当し、市川由衣、池松壮亮共演で話題を呼んだ『海を感じる時』も上映される。ハリウッドや海外作品でも活躍をしてきた国際派の工藤さんが、日本の終戦70周年記念作品となる本作をアメリカの観客たちに届けつつ、“荒井晴彦ワールド”をN.Y.でも見せつけることになりそうだ。<工藤夕貴コメント>この国と日本人が激動した終戦の日。あの夏の日からもう70年も経ちました…。いまは、戦争をテレビや映画だけでしか知らない人ばかりの世の中になり、新たな観点から戦争を見つめる時代に入ってきているのかもしれません。映画『この国の空』は、別視点で戦争を見つめた不思議な作品です。人は、どんな時にでも人を愛さずにいられない生き物です。その“人間”をテーマとした戦争映画がアメリカで公開になる。なぜゆえに人は戦うのでしょうか?そして、人の愛も時折、戦争に似ている部分を持つのかもしれません。『この国の空』は8月8日(土)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年06月09日染谷将太主演、前田敦子共演の『さよなら歌舞伎町』が公開中だ。新宿歌舞伎町を舞台に、不器用に生きる人々の1日を映し出す群像劇だ。染谷と前田が演じるのは倦怠期のカップル。『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』の廣木隆一監督、脚本の荒井晴彦コンビによるオリジナルの新作とあって、映画ファンからの期待も高い本作に、初共演の染谷と前田も「(出演を)断る理由がなかった」と声を揃えた。その他の画像染谷はラブホテルの店長・徹、前田はプロミュージシャンを目指す徹の彼女・沙耶に扮する。染谷は「絶対におもしろいはずだと思いました。廣木監督と荒井さんの作品ですからね。歌舞伎町が題材だというのも魅力的に思えました。お話しをいただいたときはまだ脚本ができていなかったんですけど、やりたいとすぐにお返事しましたね。出来上がった脚本は愛に溢れていました」と振り返る。前田も「呼んでいただいた時点で、出たいとしか思わなかったです」と同様の答え。さらに「廣木監督の作品にはいろんなタイプがありますが、ピンク映画出身だということは知らなかったんです。それを知ったとき、監督の出発点に近い作品に出られるなんてとさらに嬉しかったです」と続けた。共演の情報が公になった際、「あっちゃんの恋人役!?なんでお前なんだ!と言われました(染谷)」、「現役・元を問わず、AKBのメンバーが羨ましがっていました(前田)」と、周囲にとても羨ましがられたというふたり。共演を経て、「すごくフラットな方で、リラックスしてやらせていただきました」と染谷。前田も「染谷さんがそういうスタンスで、すごく嬉しかった。きっちり話し合いをしなくちゃいけなかったらどうしようと思っていたので(笑)」とここでも意見を一致させた。そして完成した作品に「同世代の女の子にも勧めていきたい(前田)」、「どこか愛おしいと感じさせる人々のお話し。最後には心が温まって清々しい気持ちで家路に着ける映画だと思います(染谷)」と胸を張った。『さよなら歌舞伎町』公開中※取材・文・写真:望月ふみ
2015年01月27日先日、女優の菊地凜子との入籍を発表したばかりの染谷将太が1月8日(木)、外国人特派員協会(東京・有楽町)にて行われた、主演映画『さよなら歌舞伎町』の記者会見に共演の前田敦子、廣木隆一監督と共に出席した。一流ホテルマンと周囲には偽っている歌舞伎町のラブホテルの店長を務める青年、その彼女でミュージシャンを目指す少女を始め、様々な思いや人生を抱えて歌舞伎町に暮らす人々のドラマを描き出していく。染谷さんが結婚後、初めて公の場に登場するとあって、会場には普段の同所での映画の上映、記者会見とは比べ物にならないほどの多くの報道陣が詰めかけた。あらかじめ、質疑応答では映画に関する質問のみと決められていたが、冒頭の挨拶のところで廣木監督が「これだけマスコミが集まっているのは…染谷が結婚したから(笑)。おめでとうございます」と祝福。染谷さんは少し照れくさそうに「このたび、結婚したので、これからは些細な幸せを大切に、まだ子どもはいませんが、家長として頑張っていきたいと思います」と語った。染谷さんと前田さんは本作で、倦怠期を迎えつつある同棲中のカップルを演じたが今後、激しいセックス描写があるような作品のオファーがあったら?という質問に染谷さんは「過去にもそういうラブシーンをやったことはありますし、台本を読んで感動して『これはやりたい』と思ったらやるかも」と回答。前田さんも「同じです。自分をそういう風に作品で求めていただけるなら、作品のためなら全然、抵抗はないですね」と語った。2人のキャスティングに関し、廣木監督は「染谷は昔から気になる役者で、僕らと話していても雰囲気、オーラを消すので、それが不思議でした。脚本の荒井晴彦さんの知り合いの役者を通じて電話をして、たまたま(スケジュールが)2週間空いていたので『その2週間ちょうだい』と直々にお願いしました。前田さんは『AKB48』のときから強さと弱さの両極をもっている人なんだろうと思ってました。現場でも(すぐ目の前に)カメラがあっても動じない強さがあるのを感じたし、でもその裏にある弱さが魅力だとも思いました。中間がない感じが好きで、人間的でいいなと思いました」と起用の経緯と魅力について語った。劇中、新大久保でのシーンで、反韓デモの様子が描かれているが、廣木監督は「新大久保でヘイトスピーチがあったことは事実ですので、それは日本的には恥ずかしい部分であると思いますが、現実に行なわれている部分であり、映画の中で外すことはできないと思った」とあえてこのシーンを盛り込んだ意図を説明した。様々な形で“愛”を描く本作だが、「愛を信じるか?」という質問に、染谷さんは「いろんな愛があると思いますが、人間に生まれて、“人間愛”という言葉が好きなので信じます」と語る。前田さんも「いろんな人に支えられていて、特にこの仕事ではそれを感じるので、愛は大切だと感じています」とうなずいた。『さよなら歌舞伎町』は1月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:さよなら歌舞伎町 2015年1月24日よりテアトル新宿ほか全国にて公開(C) 2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会
2015年01月09日