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新作落語のカリスマ、三遊亭円丈の「実験落語neo」第16弾が上演に。円丈の薫陶を受けてきた林家彦いちが出演し円丈と共に高座を務めるほか、彦いち曰く「カタルシスの塊」な円丈の名作『グリコ少年』の1980年のお宝映像も上映、円丈と彦いちによる振り返りトークを行う。【チケット情報はこちら】「円丈師匠は僕にとって、20代の不安な時期に判子を押してくれ、創作落語の指針となってくれた方です」と彦いちは言う。「初めてきちんとお話ししたのは、ネタ合評会の時。僕は『横隔膜万歳』というネタを考えたのですが、他の師匠が物語の運び方などを助言くださる中、円丈師匠は『君、横隔膜、外したいの?』『外したいならやったほうが良いよ』と。で、落語協会の2階で外す練習をしたんです。『3回撫でてみよう』『右回りだよ』なんてやっていたら、入ろうとした事務員さんがそっと扉を締めるのが見えて(笑)。僕が横隔膜の左のほうに手を当てて『うっ』と言ったところ『それでいいんだよ!』。外れた、という落語ができました」彦いちが、主人公が轢き逃げに夢中になるというブラックな噺『最終宣告』を作った折には、円丈から喫茶店に呼ばれたという。「『そういう感覚を大事にしなさい』と言われ、以後、作るネタは全部聴いてくださいました。否定されたことは一度もありません。突然、長い手紙をいただいたこともありますね。”君と僕は友達だ”で始まり、宇宙の話で終わっていました。それは宇宙であり君である、と。嬉しかったですね。どうご恩返しできるか考えていたら『僕ではなく後輩にしてあげて』と。この世界で一番大事なことを教わりました」円丈による新作落語の実験会「応用落語」「第二次実験落語」「落語ジャンクション」に参加してきた彦いち。彼が三遊亭白鳥、春風亭昇太、柳家喬太郎と結成した話芸集団SWAもその延長線上に生まれたものだ。新作落語のパイオニアである円丈を、彦いちは砂漠にラスベガスを作ったベンジャミン・シーゲルのあだ名にちなんで「一人バグジー」と呼ぶ。「師匠は、何もない荒野を切り開いた方。その下に水脈はあったにしても、それまでの創作落語とは一線を画すものを生み出し、落語というものに自由をもたらしたんです。第一次実験落語の頃は、客席の後ろから落語をしたり、懐からザリガニを出して噺に登場させたり、お客を川の両端に座らせて弟子のらん丈兄さんに川を流れながら落語をやらせたり、色々な実験をなさったそうです」今年は彦いちにとって、芸歴30年、50歳の節目。「後戻りはできないですよね。今、(若手噺家がエントリーして創作落語のネタおろしをする企画)『しゃべっちゃいなよ』を隔月でやっているのですが、苦しいけれど毎回、自分もネタおろししています。円丈師匠は戦っている背中を僕に沢山見せてくれた。僕もそれを受け継いでいきたいですね」『実験落語neo~あの頃のシブヤ炎上~』は12/20(金)CBGKシブゲキ!!にて。当日券は17:50より劇場前で先着順販売予定。取材・文:高橋彩子
2019年12月17日今年は初の全国ツアーを成功させ、来年1月にはドラマ『贋作男はつらいよ』(NHKBSプレミアム)で主役の寅さんも務めるという、脂の乗った落語家・桂雀々が独自の「スーパー落語」を引っ提げて地元・大阪で還暦公演を開く。そこで意気込みを聞いた。「桂雀々独演会 熱血の還暦公演」チケット情報51歳から本拠を東京に移して丸8年。当初は不安もあったと明かすが、ターニングポイントは2年前の落語家生活40周年公演だったと言う。シークレットゲストで登場したのは、なんとミュージシャンの桑田佳祐。落語を通した日々の付き合いからゲスト出演が実現した。他にもさまざまな畑違いの人達との交流が大きな財産になっている。一方、落語に関しては「江戸の噺とはネタもつかない(重ならない)し、キャラクターもかぶらない」と無二の存在感で活躍。今では稽古をつけて欲しいと東京の落語家から請われることも多く「上方の噺に興味のある人が多くなりましたね」と語る。今回の還暦公演で目玉となるのは、芝居さながらの照明や舞台装置に工夫を凝らす「スーパー落語」だ。「新歌舞伎座という大きな舞台で映えるものはないかな?」と昼の部に選んだ演目が『夢八』。いねむりで夢ばかりみている男が空き家の番を頼まれると…。「僕の中では“見せる”落語の代表作。表情、仕草、目線、棒を叩くところの描写と、この噺に出合えてから他の噺に応用できるようになったんです。間が持てるようになったというか、お客さんにうまく伝えられた初めての落語やと思いますね。落語作家の小佐田定雄さんの前振りの脚色が秀逸で、これでようやく落語の面白さが分かったんとちゃうかな」と話す。落語家としての転機と断言する一席。夜の部で披露される『景清』は、腕の良い目貫師・定次郎が目の病を患い…。情味のある噺で「誰かに薦められて、こんなネタは持ってないなと思い、(桂)米朝師匠のところにお稽古に行ったんですよ。師匠はマクラから教えてくださったんですが、中でも『ここは足取りが軽いはずや』とか定次郎の心情も言うてくれはって。そういう意味では“気持ち”の稽古でしたね」。さらに雀々の『景清』を聞いた師匠の桂枝雀からは、描写のアドバイスをもらったとか。まさに、米朝、枝雀というふたりの偉大なる先人の魂がこもった演目だ。桂雀々が自信を持って届ける還暦公演で、渾身の芸を堪能してほしい。公演は2月16日(日)大阪・新歌舞伎座にて。チケットは11月16日(土)一般発売。取材・文:松尾美矢子
2019年11月15日柳家喬太郎が11月1日(金)から東京・下北沢のザ・スズナリで落語会を行う。『ザ・きょんスズ』と題した同劇場での落語会はこれが初めてではなく、2013年には4日間計5ステージにわたって開催されて話題を呼んだが、落語家生活30周年を記念する今回は、そのスケールに驚かされる。じつに30日間30ステージにわたって30席の異なる演目を披露し、春風亭昇太、千葉雅子らゲストが日替りで駆け付け、歴史的イベントを盛り上げる。『柳家喬太郎 落語家生活30周年記念落語会 ザ・きょんスズ30』は、ザ・スズナリにて11月1日(金)から30日(土)まで。喬太郎の演目と日替りゲストは下記のとおり。11/119:00『井戸の茶碗』他柳亭左龍 柳家喬之助11/214:00『ぺたりこん』他三遊亭圓丈11/219:00『おせつ徳三郎』他三遊亭歌武蔵11/314:00『午後の保健室』他柳家喬志郎 柳家小傳次 柳家さん助11/414:00『心眼』他桂文三11/519:00『赤いへや』他橘家文蔵 柳家小せん11/6休演日11/719:00『ハワイの雪』他柳亭市馬11/819:00『文七元結』他玉川奈々福11/914:00『双蝶々』他三増紋之助11/919:00『路地裏の伝説』他林家たい平11/1014:00『死神』他笑福亭松喬11/11休演日11/1219:00『錦木検校』他柳家小平太柳家小志ん11/1314:00『按摩の炬燵』他柳家権太楼11/1419:00『ハンバーグができるまで』他春風亭昇太11/1519:00『棄て犬』他神田愛山11/1614:00『錦の舞衣』ダーク広和11/1619:00『本当は怖い松竹梅』他三遊亭兼好11/1714:00『鬼背参り』他一龍斎貞橘一龍斎貞寿11/18休演日11/1919:00『熱海土産温泉利書』ゲスト無し11/2014:00『母恋いくらげ』他林家正蔵11/2119:00『秘密のレッスン』他入船亭扇辰林家彦いち11/2219:00『純情日記横浜篇』他林家正楽11/2314:00『宮戸川』他神田茜11/2319:00『結石移動症』他三遊亭白鳥金原亭馬遊11/2414:00『八月下旬』他柳家小満ん11/25休演日11/2619:00『うどんや』他柳家花緑11/2714:00『マイノリ』他千葉雅子11/2819:00古典ネタ下ろし他林家二楽11/2919:00『歌う井戸の茶碗』他寒空はだか11/3014:00『道灌』他柳家さん喬
2019年10月30日最近、ちゃんと笑っていますか?お腹の底から笑う機会ってなかなかないなぁ…なんて感じなら、落語を聴きに行ってみてはいかがでしょう。落語?それおじさんの趣味でしょ!?と思いました?そんなことはありません。落語好きの女性って結構多いし、演目自体も、意外と女性が共感できるものがいっぱいあるんですよ。例えば、恋愛要素が強くてキュンキュンしちゃう落語も!■ピュアな純愛にときめく◎崇徳院(すとくいん)商家の若旦那が茶店で出会った美しい娘に一目ぼれ。恋の病にかかって寝込んでしまいます。そんな若旦那のため、幼なじみの男が娘を探して東奔西走。少ない手がかりをもとに探していたら、同じく恋の病にかかった娘の父親から「若旦那を探せ」と命じられた男と遭遇し……。若い男女の純愛ドラマを、おバカな江戸の町人がドタバタかき回すコメディです。◎紺屋高尾(こうやたかお)まじめな染物職人が、花魁道中を見て太夫に恋をします。なんとか会いたいと思うものの、太夫は座敷に呼ぶだけでも十両かかる超売れっ子。それを聞いた職人は三年間、一心不乱に働いてお金を貯め、お大尽のふりをして吉原へ。でも、だまし通せるわけもなく、身分を明かしたうえで一途な想いを打ち明け……。ピュアで不器用な恋心を描いたこの噺は、どこか『電車男』を思い起こさせます。■女性が積極的!なラブストーリー◎宮戸川(みやとがわ)遊んで帰りが遅くなり、家を閉め出された半七と隣家のお花。二人は往来でばったり会い、半七が「叔父の家に行く」と言うと、お花は「私も泊めて」と無理やりついて行きます。早合点した叔父は夫婦にしてやろうと二人を二階に上げ、梯子段を外してしまいました。一つの布団に入った二人が眠れずにいると、雨模様になり雷の音が。怯えたお花は半七にしがみつき……。女子がちょっと積極的に仕かける様子も楽しめる噺です。◎紙入れ(かみいれ)小間物問屋の新吉は、得意先のおかみさんから「今夜は旦那が帰らないので遊びに来て」という手紙をもらい忍んで行くと、いい雰囲気になったところで旦那が帰宅。危うく裏口から脱出しますが、紙入れ(財布)を忘れてきたことに気づきます。しかも、その中にはおかみさんの手紙が!翌日、恐る恐る様子を見に行くと……。肝の据わったおかみさんと間抜けな旦那、気弱な間男、3人のやり取りはかなり笑えます。■一人もいいけど、デートもおすすめサクッとあらすじを書いてみましたが、どれも面白そうだと思いませんか?落語には、このように恋愛要素の強い演目もたくさんあるし、それ以上にダメ男が登場する噺が多くていろいろと身につまされます。でも、考えさせられる部分がありつつも大爆笑できて気持ちがいいので、とにかく生で聴くのは本当におすすめ!寄席や落語会に一人で、友達と、もしくは好きな人と……足を運んでみては?夏は浴衣を着て落語デートをするのもいいかもしれませんね。気になる彼に「聴いてみたいんだけど、興味ない?」と声をかけてみたり。「落語?大好き!」という男性はもちろん、「行ったことないけど、気になってたんだよね」という人も気軽にOKしてくれそうです。■話題の落語家さんの昇進ラッシュ2019年は、注目の落語家さんが続々と真打ちに昇進する年だったりもします。5月には落語界No.1イケメンの呼び声が高い瀧川鯉斗さんが昇進。塩系イケメンの柳亭小痴楽さん、飄々とした味わいで人気の柳家わさびさんは9月に昇進するそうです。寄席で「これは」と思う若手落語家さんを見つけたら、自分の推しとして応援するのもあり。駆け出しの頃に仲間内で開く落語会は、お客さんがほんの数人ということもあるので、あわよくば顔を覚えてもらえる可能性もあります。その落語家さんが前座から二ツ目、真打ちへと昇進していく様子を見守るのは、育ててる感を味わえて、また違った楽しみ方ができるでしょう。勢いのある若手の落語も、名人と言われる師匠の老練の技も、どちらもそれぞれ魅力的なので、いろいろ聴いてみていただけたらと思います。最近は、女優としても活躍する春風亭ぴっかりさん、ミスID2016特別賞を受賞した林家つる子さんをはじめ、かわいい女性の若手落語家も増え、女性落語家さんだけが出演する落語会なども開かれています。いきなり寄席に行くのはハードルが高い、という場合は、そういう所を覗いてみるのもいいかも。ぜひ、自分らしい楽しみ方を見つけてくださいね!
2019年06月23日これは落語なのか、演劇なのか――。昨年の『志らくひとり会』が文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞した立川志らく。その続編にあたる新作落語「不幸の家族」を上演するのが、4月22日に本多劇場で開幕した『志らくひとり舞台』だ。2016年に自身の劇団で上演したものを、落語版としてひとりで演じる。まず「志らく 半生を語る」の語りで幕を開ける。次いで始まった「不幸の家族」は、2025年の大三次世界大戦突入寸前の日本が舞台。かつて海上自衛隊で親友であり、恋敵でもあった男ふたりが、18年ぶりに再会することになる。心躍らせいそいそと準備するくだりは、いかにも落語的。はりきりすぎてちょっとドジをしたり、家族との少しズレた日常会話などに、思わず吹き出してしまう。社会風刺や、落語家に対する毒舌も痛快。志らくの得意な映画ネタも満載で、有名映画たちにツッコミを入れていく。映画を観ていなくてもネタが楽しめる気配りも忘れない。時事ネタも織り交ぜ、教養と遊び心たっぷりに会話が展開する。男は娘や息子も巻き込んで再会の準備を進めるが、そのうちに、思いもよらなかった事実が明らかになってくる……。上演時間1時間。男たちの単純な再会話かと思いきや、男同士の友情、夫婦の形、親子の縁、家族の愛情など、さまざまな人間関係が複雑に重なっていく。前半に散りばめられた伏線が、細かいネタにいたるまで丁寧に回収されるうち、なぜか笑っていたのに泣かされている。そこには、人は迫りくる戦争よりも、目の前のちょっとした出来事が重要だという風刺も効いている。がしかし、とても温かい作品だ。演劇作品を落語にしたことで、全役をたったひとりで演じる。しかし、照明も衣装も変わらず高座のみがあるステージには、ふたりの初老の男と、その家族たちの表情豊かな姿が見えた。落語を聞いていたつもりが、いつの間にか1本の小さくも壮大な演劇を観た気分になる。それは古典の技術と経験を踏まえ、試行錯誤の末にたどりついた志らくの新作落語(現代落語)が成せる技だろう。そこには、ひとり芸の要素がふんだんに詰まっていた。これは落語か演劇か。語り、コント、マイム、音楽などを盛り込み、ジャンルを越えたひとり舞台の最高峰を「ひとり話芸の元祖であり極みである落語」(立川志らく)で表現する。上演は23日(火)19時の回が最後。当日券は開演1時間前より劇場受付にて発売。また、チケットぴあでは「立川志らく独演会」等出演公演も販売中。取材:河野桃子
2019年04月23日大の落語ファンである豊原功補が、落語と演劇の融合を目指し立ち上げた舞台“芝居噺”。2017年の『名人長二』に続いて弐席目となる『後家安とその妹』が、5月25日(土)から、東京・紀伊國屋ホールで上演される。そこで今回も企画、脚本、演出、出演の4役を兼ねる豊原と、主人公の後家安役の毎熊克哉に話を聞いた。【チケット情報はこちら】前作について「自分の好きな落語の世界が、素晴らしい役者さんによって現実化していく。その喜びだけで突っ走っていたので、ただただ楽しくてしょうがなかったです」と振り返る豊原。とはいえ「どこまでオリジナルに迫れるのか。その上で新しいものにならなければつくる意味がない」との想いから、“芝居噺”そのものを続けることも悩んだそう。しかし前作で得られた確かな手応えが、豊原の背中をこの弐席目へと押すことになった。元御家人で腕は立つが、その気性の激しさからヤクザ者のような生活を送る後家安こと安三郎と、あることをきっかけに大名に見初められ、側室になった妹のお藤。物語はこのふたりを中心に、彼らに翻弄される人々の悲劇が描かれる。毎熊は今回のオファーについて、「ビビりました(笑)」とひと言。だが脚本を読み進めるうちに、「これは大変なことになるなとは思いつつも、ある魅力を感じて」と、作品に惹かれ出演を決めたと明かす。さらに後家安という人物について、「ひどい男ではありますが、会話の節々に何か感じる部分があるんですよね。この役を演じていく上でその余韻、醸し出す空気感みたいなものは、きっと最終的にすごく大事になってくると思います」と語る。毎熊のキャスティングについて豊原は「雰囲気」を挙げた上でさらに、「後家安というのは悪党ではあるんですが、どこか誠実な悪党じゃなきゃいけないんですよね。これは毎熊くんに出てもらうことにも繋がりますが、心の中にきれいなものが通っていないと、この兄妹に説得力を持たせられない。それを感じられる俳優さんかどうかというのは、ひとつ大きな決め手になったと思います」と続ける。そんな豊原の言葉に、舞台経験が決して多くない毎熊は、「僕を選ぶ時点でリスクがあると思いますが…」と苦笑い。だが豊原は「いやいや、頼もしい限りですよ。僕も演出家としてはまだペーペーですし、今回も俳優さんに助けてもらいたいなと。ただ前回よりは若い方が多いので、また違う、もっと生々しい頼り方をしたいと思っています」と毎熊に期待の眼差しを向けた。公演は6月4日(火)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。チケット発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年04月22日落語家・柳家喬太郎の新作落語「ハンバーグができるまで」が2019年3月に舞台化される。劇団「ペテカン」の本田誠人が脚本・演出を手掛け、離婚した夫婦のとある1日を渋川清彦と馬渕英里何が演じる。喬太郎に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「2年ほど前に演劇誌でインタビューを受けたときに、この作品を“お芝居にしたら面白いと思うんですよね”と、今まで思ったことはなかったのですが、ふと話して。そのときに“ペテカンさんとかに(芝居にしてほしい)”と言ったんですよ。そしたらそれを本田さんが読んで“じゃあやろう”と。瓢箪から駒みたいな話です」と本作の始まりを明かす喬太郎。この演目が演劇に向いていると思った理由は「僕の新作落語の中でも独特な作品で。所謂ナンセンスに徹した内容ではないし、誇張したキャラクターはいても突飛なキャラクターは出てこない、本当に半径500Mくらいの日常の話なんです。そういうところが演劇に向いているんじゃないかと思います」今回の舞台化について「自分のためにつくったものを、何人もの人が寄ってたかって落語とは違うエンターテインメントにしてくれるのは相当ワクワクします。しかも自分も出演者ですからね。原作者として“あとは好きにしていいよ”というのもきっと楽しいと思うのですが、自分も稽古場に通って一緒にできるわけで。今決まっている仕事の中で、1、2を争うくらいワクワクしています」と本当に嬉しそうに語る。脚本・演出を手掛けるのは、ペテカンの本田。喬太郎はこれまで2度ペテカンの舞台に出演しているほか、企画などにも定期的に参加している。「ペテカンの皆さんはね、仲間にしてくれるんです。“ペテカン・シニア部”なんてふざけて言われますけど、だんだんそんな気がしてくるような。ペテカンの舞台って、全部が終わったときに“ああ面白かった!”と思えるんですよ。そうやって終わる仕事ってとってもいいですよね。それがペテカンという人たち。自分の中で大事な人たちです」ドラマや舞台、映画に出演し、芝居をすることを「好きになってきている」と話す喬太郎は、もともと演劇ファン。「だから初めて演劇のオファーがきたときは断ったんですよ。趣味がなくなっちゃう気がして。落語がそうですからね。でも今、とてもいい距離感で仕事ができている気がします。趣味であり仕事でありっていう。僕のなかでは素敵なものになっていますね。でもプロフィールに“演劇鑑賞”とは書かないですよ。大事にしたいから。気軽に関わって大事な関係を壊したくないですからね。…と言いつつ今、取材で話しているのですけど(笑)」公演は2019年3月20日(水)から24日(日)まで東京・博品館劇場にて。取材:中川實穗
2018年12月13日三遊亭円楽がプロデュースをつとめる落語の祭典「さっぽろ落語まつり」が5月24日(金)・25日(土)・26日(日)の3日間、北海道・札幌文化芸術劇場 hitaruほか3会場で開催される事が決定した。【チケット情報はこちら】出演は三遊亭円楽のほか、林家木久扇、桂文枝、三遊亭好楽、三遊亭小遊三、桂文珍、笑福亭鶴瓶、立川志の輔など東西の人気落語家28名。会場は、札幌文化芸術劇場 hitaru、道新ホール、共済ホールの3会場で、合計13公演を予定している。12月5日に行われた制作記者発表にて、プロデューサーを務める三遊亭円楽は「札幌に大きな落語の花火をあげるべく、東西を代表する腕のある噺家が一堂に集結します。3会場同時に様々な公演が開催されるので、お客様のお好きなように会場を巡り、新たな落語の楽しみを発見をして頂きたい。札幌に落語のファンを増やせたら」と意気込みを語った。チケットの一般発売は12月22日(土)午前10時より。なお、一般発売に先駆けて、プリセールを実施。受付は12月12日(水)午前10時より。■三遊亭円楽プロデュース さっぽろ 落語まつり日時:5月24日(金)・25日(土)・26(日)会場:札幌文化芸術劇場hitaru / 道新ホール / 共済ホール
2018年12月11日シリーズ第十弾となる、「ハンサム落語」が11月6日より東京・CBGK シブゲキ!にて開幕。初日に先駆けてゲネプロ、会見が行われた。「ハンサム落語」は古典落語を若手俳優がふたりひと組の掛け合いで行う人気シリーズ。記念すべき第十幕となる今回は、全員がハンサム落語経験者という豪華メンバーでの公演。また演目も全七演目を予定しており、各公演で内4演目が披露される。【チケット情報はこちら】ゲネプロでは、宮下雄也と米原幸佑が『品川心中』『死神』、磯貝龍虎と小笠原健が『明烏』『芝浜』を披露。息のあった掛け合いならではのアドリブも楽しみな本作。公開稽古でもアドリブたっぷりに客席を笑わせた。会見には伊崎龍次郎、磯貝龍虎、小笠原健、桑野晃輔、反橋宗一郎、平野 良、宮下雄也、米原幸佑、和合真一が登壇。それぞれ意気込みを語った。『明烏』では花魁と遊び人を演じ分けた小笠原は、今回が2回目の出演。「とにかくお客さまにも楽しさを届けられるように一生懸命頑張っていきたいと思います」、と出演に意気込んだ。『品川心中』では男をだます女郎を、『死神』ではクセの強い死神を演じた米原は「毎回、本当に答えの無い舞台だなと思います。いくらでも模索できるし、追求出来る作品なので、今回も葛藤をしながら楽しんでやれたらなと思います」と語った。『死神』の最後で見せた余韻が印象的だった宮下は、「組み合わせによってまったく話が変わってみえる所が、ハンサム落語の面白さであり、見所だと思います。僕自身もすごく楽しみなので、お客様に届くよう、毎公演しっかり届けたいと思います」と話した。『明烏』でのお堅い坊ちゃん、『芝浜』での女房役とタイプの違うふた役を個性たっぷりに演じた磯貝は「本物の落語と同じように老若男女、親しまれるように頑張っていきたいと思っております」と語った。宮下、磯貝と並び、一幕より出演している平野は「第十幕までやってくることができたということに感謝しつつ、驕らず。『ハンサム落語』という根底には、言葉で楽しみたい、楽しんで頂きたいという気持ちがあるので、今回の第十幕も今までと根底は変わらず、どの演目を観て頂いても楽しい公演になると思います」と作品への自信を見せた。「ハンサム落語」は東京公演が11月13日(火)まで、東京・CBGK シブゲキ!にて。東京公演の前売りチケットは完売しており、当日券を販売予定。また大阪公演は、11月16日(金)から18日(日)まで大阪・シアター朝日にて。大阪公演は現在チケット発売中。
2018年11月09日NHK新人落語大賞が10月22日に都内で開催。元・世界のナベアツこと、桂三度(49)が大賞に輝いた。落語家の登竜門である同賞。三度は「ずっと、この大会で優勝できたら落語家としてのスタートラインに立てると思っていたので、やっとスタートを切ることができました。一生懸命、精進したいと思います」と語った。「三度さんはオモロー山下ことインタビューマン山下さん(49)とのコンビ・ジャリズムで上方漫才大賞の新人賞などを獲得。さらにソロとしては“世界のナベアツ”として『3の倍数と3がつく数字だけアホになります』というネタで大ブレークしました。しかし11年に当時の桂三枝(現・6代目文枝)師匠に弟子入りし、落語家に転身。それを機にコンビも解散しています」(お笑い関係者)17年に本誌記者へと転身したインタビューマン山下。18年からはフリーとしても活動しているが、本誌での初インタビューは昨年7月の三度へのインタビューだった。そのなかで三度は、落語家人生の苦悩について赤裸々に明かしている。「41歳での弟子入りは肉体的にキツかったですね。重たい荷物も運ばないといけないのですが、僕は腰が悪いので……。そういうのは年下の“兄弟子”さんに手伝ってもらったりして、なんとか乗り切りました。だからその分、僕は“大人力”を発揮。師匠が欲しいものを二手三手先回りして、若い人では気づかないことまで全て用意するんです」お笑いの世界を十分に知っている三度。しかし20年以上ある芸歴が仇となったことも。「僕は外から来た“転校生”みたいなものですし、当初は快く思わない落語家さんもいたようです。信頼している人からも裏ではいろいろ言われていたと知って、挫けそうになったこともありました」収入は5分の1に落ち込んだというが、15年以上寄り添っている妻は見守ってくれた。「落語家になって収入が減っても、奥さんは文句も言わずついてきてくれています。節約もしてくれて、ママチャリなんて17年前に買ったのをまだ乗っているんですよ。僕が『もう買い替えようか?』と聞いても『まだ乗れるからええんや』と言ってくれて。今年の落語コンテストで優勝したら賞金で奥さんにママチャリを買ってあげたいと思います」三度の受賞にTwitterでは《ジャリズムでも、作家(構成作家)でも、世界のナベアツ(ピン)でも、落語家としても才能発揮……桂三度さん、すごいかっこええな~》《凄いわ。転身してから7年楽な道ではなかったろうに》《やるじゃないか!これを励みに2代目桂三枝を目指せ!》といった祝福の声が。これからも邁進してほしい!
2018年10月23日10月スタートのNHKドラマ「昭和元禄落語心中」の主題歌が、この度「ゆず」の新曲「マボロシ」なることが明らかになった。本作は、若者たちを中心に“落語ブーム”を巻き起こしている雲田はるこによる同名漫画の映像化。ドラマでは、八雲役を岡田将生、与太郎役を竜星涼が演じるほか、小夏役に成海璃子、みよ吉役に大政絢、助六役に山崎育三郎と、人気実力派が出演する。アニメ版の主題歌は、椎名林檎と林原めぐみの豪華タッグで話題を呼んだが、今回のドラマでは「ゆず」の書き下ろし新曲に決定。「ゆず」北川悠仁は、今回の主題歌制作のため初めて原作を読んだと言い、「夜中に読み始めたところ、あっという間に物語の世界観に引き込まれて、全巻読み終わる頃には朝を迎えていました。すべての登場人物に『生と死』『愛と憎しみ』『美しさと残酷さ』がはらんでいて、“落語”という明るいテーマとは裏腹に、巻きおこる物語の激しさに、読んでいてゾクゾクしました」と感想を述べ、「どのキャラクターも本当に個性的なので、キャストの皆さんがどのように役を演じていくのか、とても楽しみにしています」とコメント。また、「『マボロシ』を制作する上で最初に思ったことは、今までゆずが表題曲の中で表現してきたポップさだったり、前向きさだったりを手放し、新たな自分たちの表現を目指すことでした」と話す北川さん。「物語が持つ闇、その中に潜む美しさを楽曲で追い求めました。試行錯誤の末、“マボロシ”というテーマが浮かび、このキーワードと物語に背中を押され、今までのゆずにはない、切なく幻想的な楽曲に仕上がりました。また、ゆずの核である歌も、いつも以上に可能性を模索しています。新たな扉を開かせたくれたこの物語との出会いに、心から感謝しています」と話しており、ファンも必聴の楽曲になっているようだ。なお、主題歌「マボロシ」は第1回目の放送から流れる予定だ。NHKドラマ10「昭和元禄落語心中」は10月12日(金)より毎週金曜日22時~NHK総合にて放送(連続10回)。(cinemacafe.net)
2018年09月10日落語家、柳家喬太郎による新作落語の舞台化『ハンバーグができるまで』が2019年3月20(水)から24日(日)まで東京・博品館劇場で上演される事が決定した。脚本・演出は本田誠人。原作である柳家喬太郎の新作落語「ハンバーグができるまで」は、うだつの上がらない、バツイチ中年の“マモル”が主人公。マモルは商店街でその日は珍しく出来合いの弁当や惣菜ではなく、食材を買い歩くことから、商店街の面々が突拍子も無い憶測を抱き、その憶測は商店街緊急連絡網でさらにエスカレートする。これらの食材の買い物は、かつての妻“サトミ”に頼まれたもので、サトミの最後の手料理とともに訪ねて来た理由を告げられ、マモルは途方に暮れる。この原作を本田は、登場人物それぞれが、地域(商店街)が、苦悩や挫折を経て、微速ながらも前進する“再生”のドラマへと昇華する。主演であるマモル役を渋川清彦、マモルの元妻サトミ役を馬渕英里何が務めるほか、柳家喬太郎も出演。今年で結成23年を迎える劇団ペテカンがその脇をかためる。チケットの一般発売は、10月13日(土)午前10時より。なお、一般発売に先駆けて、ぴあでは最速先行予約を実施。受付は9月8日(土)昼12時より。■舞台「ハンバーグができるまで」日程:2019年3月20日(水)~24日(日)会場:博品館劇場 (東京都)原作:柳家喬太郎脚本・演出:本田誠人主演:渋川清彦出演:馬渕英里何・柳家喬太郎ペテカン大治幸雄/齋田吾朗/濱田龍司/本田誠人/羽柴真希/長峰みのり/他
2018年08月30日9月8日(土)から9日(日)にかけて放送される「FNS27時間テレビ ~にほん人は何を食べてきたのか?~」の番組「旅する落語」に「関ジャニ∞」の村上信五が登場。千原ジュニアとビートたけしの前で、初の落語に挑戦することが分かった。「旅する落語」は、自身の舞台でも落語を披露する腕前の千原さんとぶらり旅をして、そこであつめたネタを、後日自分の落語に仕上げて、スタジオで披露するという番組だ。「FNS27時間テレビ」で放送する今回は、噺家ゲストに村上さんが登場し、テーマである「食」になぞらえて、平安時代に親しまれていた「蘇(そ)」というチーズのもとになった食材を体験するところから旅はスタート。東京・大泉学園の町を千原さんと2人で歩く。実は大泉学園に通ったことがある村上さんはこまめにメモを取るなどし、ジュニアさんに「やりよった!ガリ勉出たでー」といじられつつも真面目にネタ探しにいそしんだそう。道中では、ドラマの撮影中だった村上さんの大物先輩にばったり会うなどうれしいハプニングも。そんな2人をロケの3週間半後にスタジオで待っていたのは、総合司会のたけしさん。村上さんにとって自分で落語を作るのも、テレビで披露するのももちろん初めてのことで、スタジオにはなんともいえない緊張感が走る。村上さんは、大泉学園で出会った人たちの関係性をベースに架空の人物でストーリーを展開し、ところどころに町で見つけたトピックスを盛り込んだ落語を披露する。先日行われた「FNS27時間テレビ」の記者会見で、村上さんは「スタジオ収録の時に、“ビート”が客席から聞いているわけですよ!一生に一回しかない緊張感でした。動いていないのに汗びっちょりで。どんな顔していたのかオンエアで見たくないです」とたけしさんの前で落語を披露した心境を語った。千原さんもたけしさんの前で落語を披露するのは「ペレの前でリフティングをするようなもの!」と、いまなお緊張を隠せない様子だった。果たして村上さんの初落語はたけしさんにどのように映ったのか?気になる内容は番組放送で。「旅する落語」は9月8日(土)18:30~の「FNS27時間テレビ ~にほん人は何を食べてきたのか?~」内にて放送。(text:cinemacafe.net)
2018年08月22日08年にお笑い芸人から落語家へと転身し10年を迎えた月亭方正(50)。10周年を機に『落語は素晴らしい ~噺家10年、根多〈ネタ〉が教えてくれた人生の教え~』(ヨシモトブックス)も出版。50人集めるのがやっとだった観客も、独演会で800席を満席にするほどの人気となっている。そんな方正を支えたのが、妻の存在だった。売れっ子芸人から落語家に転身するときも反対せず、収入が半減しても応援してくれた。しかし、そんな妻が怒りを露わにしたことがあったという。方正がこう振り返る。「芸人時代は僕が飲む・打つ・買うの生活に溺れていても、黙っていてくれていたんです。僕が苦しんでいると、嫁も察してくれていたみたいです。でも落語家になってから1年半は夫婦喧嘩の嵐。急に飲む・打つ・買うの生活に文句を言うようになってきて。今思うと嫁も僕のことが心配で必死だったんだと思います。本気で落語家になろうとするなら、遊ぶことなく打ち込んで欲しいと。お陰で僕も更生できましたから、本当に感謝しています」妻の叱咤は愛情の裏返しだったのだ。実際、彼女は夫へこんなサポートをしていた。「仲直りした後、将来の夢を語ったんです。『僕が落語家として大成して全国を回れるようになったとき、お前が三味線で出囃子でも弾けたら……。年を取っても、2人で全国を回れるからええな』と。すると、それをきっかけに嫁は三味線を習い始めたんです」それほど落語家への転身を応援してくれている妻。だが、方正は記者をこう言って笑わせる。「まあ、もうとっくに三味線は辞めているんですけどね。今はカードで散財が趣味ですよ(笑)」しかしその散財も、自分に対する心配がなくなったからこそだと嬉しく思っているという。「落語を始めるまで、僕はずっと何をどうすればいいのか悩み続けていました。でも落語はセンスの上に努力を乗っけることができる。この努力できることが、これまでとの大きな違いです。以前は神社で手を合わせる度に願い事が変わっていました。でも、落語を始めてからはずっと同じです。『家族が健康で幸せでありますように』ということ、そして『立派な噺家になれますように』という2つだけですよ」
2018年07月25日「昔はヒマさえあれば飲みに行っていましたけど、今は空いた時間のすべてを落語に使うようになりましたね。寝る前も常に落語のネタを呟いて、飛行機や新幹線で寝るときも絶対にそうしています。今ではそうしないと逆に寝付けなくなってしまっています」そう語るのは落語家・月亭方正(50)。売れっ子芸人としてテレビで活躍していたにもかかわらず、なぜ彼は新たな道を選んだのか。実は華やかに活躍する陰で、方正はひそかに悩みを抱えていたという。「僕がいつも求められていたのはアホとかヘタレとか、そういうネガティブなものでした。たしかに“滑り芸”や“いじめられ芸”なんて言われて人気も急上昇しましたし、収入も増えました。でも、いつも不安だったんです。自分の力じゃなく周りの方々のおかげで笑いになっているから、やっていることに自信が持てなくて。芸人として“滑り芸”なんて言われるのも不本意でしたし……。その時期は本当に精神的に不安定で。枕を濡らしたり、ひどいときは枕に向かって何度も『ウワーッ!』と叫んだりしていました」芸人としての理想像とかけ離れた現実。そんな板挟みに苦しむなか、方正は落語と出会う。「桂枝雀さん(享年59)の『高津の富』を聴いて、衝撃を受けたんです。『これや、自分が求めていたのは!』と思って、もう夢中でした。ツテを頼って、月亭八方師匠(70)を紹介していただいて。師匠の主催する勉強会の舞台にも出演する許可をもらえたんです。舞台当日までは練習漬けの毎日でした。僕、大人になってから一生懸命に何か打ち込むことができなかったんですよ。子どもならまだしも、いい大人が挫折したときのショックは半端ないですから。でも、このときは本気で落語に打ち込むことができたたんです」そうして上がった人生初の落語の舞台。終わった瞬間、観客からは拍手が巻き起こった。「あのときのことは、今でも忘れられません。もう嬉しくて。僕というより、僕の細胞が喜んでいるというか。それに自分の魂が『お前が探していたのはこれやったんやで!』と教えてくれているような気もしました」その日の打ち上げで月亭方正の名をもらい、本格的に落語家の道へ。現在は活動10周年を機に『落語は素晴らしい ~噺家10年、根多〈ネタ〉が教えてくれた人生の教え~』(ヨシモトブックス)も出版。50人集めるのがやっとだった観客も、独演会で800席を満席にするほどの人気となっている。
2018年07月25日1993年に柳家小三治に入門、2006年の真打昇進後も芸術選奨新人賞を受賞するなど、古典落語への真摯な取り組みが高い評価を得ている柳家三三。昨年は、幕末から明治期の大作『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』を毎月2話ずつ、6か月連続上演。三三自らが古い資料にあたって復活させた口演は、落語の味わい深さを表わして大きな話題となった。「来年もぜひ“続きもの”を」との声に押され、三三が今年選んだのは、創作落語で人気の三遊亭白鳥作『任侠流れの豚次伝(にんきょうながれのぶたじでん)』。昨年とは一転して、ブタを主人公にしたコミカルな“続きもの”に挑戦する三三に話を聞いた。【チケット情報はこちら】秩父の養豚場で生まれた子ブタの豚次は、上野や大阪、名古屋、果ては鳴門海峡にも旅するなか、任侠に生きる“流れの豚次”として成長していく。牛やチャボ、猿などさまざまな動物たちと出会い、戦い、友情を誓い合う豚次の運命はいかに……!日大芸術学部出身でユニークな芸風の白鳥と、ストイックなイメージの三三との組み合わせは意外なようだが、実は二人会も催すほど親しい仲。昨年、横浜にぎわい座で三三が本作を高座にかけた際は、「ひづめの形でボクシングしたり、“ウキー”と“ブー”でケンカのシーンが続いたり」(三三)という熱演で、客席をおおいに湧かせている。今回は8月から12月の5か月間、名古屋、大阪、広島、福岡の4都市にて上演。毎月2話ずつ観ていけば、最後の12月で全10話が完結する仕掛けだ。もちろん、1回(2話分)だけ観ても充分に楽しめるのは、『雨のベルサイユ』(第四話)、『男旅牛太郎』(第六話)など、ひとクセあるタイトルを見ても明らか。「羞恥心を乗り越えるという意味で、ハードルが高い演目」と憎まれ口を叩く三三だが、それでも「この無駄な(登場人物たちの)やりとりはなんだろうと思っていても、あとからそのシーンが生きてきたりと、意外に緻密な構成になってるんですよ」と本作の魅力を語る。「本作の下敷きになっている『清水次郎長』もそうですけど、講談や浪曲などは色んな人が口演することで普遍的な演目になっていきますよね。この“豚次”も、そうなるんじゃないかなと思っています」と、本作について話す三三。「僕らにしても、名作だからやらなければいけないという気はなくて、やっぱりその噺を好きだから、やりたいから、やるんですよね。お客さんと一緒にハラハラドキドキして楽しむという意味では、古典落語も新作落語も関係ないと思うんです」と三三は言う。「自分はこういうことも出来るんだな、という“自分の武器”がまたひとつ把握できた」という本作で、三三の魅力をたっぷりと味わいたい。公演は8月8日(水)愛知・愛知県芸術劇場小ホール、8月9日(木)大阪・グランフロント大阪北館4Fナレッジシアターにて始まり、4都市で5か月にわたって開催。チケットは発売中。取材・文/佐藤さくら
2018年07月13日4月27日(金)開幕の星組宝塚大劇場公演、RAKUGO MUSICAL『ANOTHER WORLD』は、落語噺「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」「朝友」など、死後の世界が舞台の落語噺を散りばめたユニークな作品。星組トップスター・紅ゆずるは、「キャラクターのほぼ全員が死んでいる、これまでにない世界観ですけど(笑)、とても明るい物語。“あの世”は楽しいところで、思い切り人生を全うした人間しか楽しい思いはできない、というようなものを提示したいです」と意気揚々と話す。【チケット情報はこちら】紅の役は、大坂の両替商の若旦那・康次郎。大坂の菓子屋の嬢さん・お澄(綺咲愛里)と、あの世で結ばれるかと思いきや、閻魔大王がお澄に惚れて康次郎ひとりに地獄行きの沙汰を下す。「上方のはんなりとした二枚目の役なので、礼 真琴が演じる江戸の二枚目との対比を見せていきたいです。どんどん仲間が増えていくのですが、今回はみんなに役の特徴的なものを出してもらい、私が周りに踊らされるようにしたいです」。組子たちの成長を温かい目で見守りつつ、コメディセンスの新たな面に磨きをかける。今作は落語が題材の作品を発表してきた演出家・谷正純の新作。「谷先生がずっと温めてこられた作品なので、絶対に成功させたいです」。役作りのため寄席にも足を運び、落語の面白さを研究した。「人情ものなので役として一本通ってないといけない。人形浄瑠璃の振付になっている『崇徳院』の場面も、注目していただきたいです。私は全場出演、早替わりが多く息つく間もないのですが、お客様に『いい物語だったね』とほのぼのとしてもらえたらと思います」同時上演のタカラヅカ・ワンダーステージ『Killer Rouge(キラー ルージュ)』は、紅の多彩な魅力に迫るショーで、10月開幕の台湾公演でも上演される。熱狂的に迎えられた2013年の台湾公演以来、台湾で写真集を撮影するなどこの地を愛してきた紅にとって夢の舞台に。「台湾公演で主演とは、本当に嬉しいです。先日制作発表で伺った時、朝ウォーキングをしていたら横を宝塚歌劇のラッピングバスが通り、『すごいな』と思いました」と笑顔。「とにかく“押せ押せ”の激しいショーですが、全場面で印象を変えたいですね」。今作がお披露目公演の第104期初舞台生を、紅の初舞台作品『LUCKY STAR!』のように、トップスターが紹介する粋な演出もあるという。「私も当時とても嬉しかったので、特別な気持ちで紹介したいです!」。ハートに溢れた紅ならではの舞台が繰り広げられるだろう。公演は4月27日(金)から6月4日(月)まで、兵庫・宝塚大劇場。6月22日(金)から7月22日(日)まで、東京・東京宝塚劇場にて。兵庫公演のチケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2018年04月27日■男の世界である落語界に、ひとりで飛び込んだ女子高生この世界を志したのは女子高生のとき。テレビで見た笑福亭仁鶴さんの落語がきっかけだった。「仁鶴師匠の落語、とにかく面白くて引きこまれました。それまで落語を聞いたことがありませんでしたが、『やってみたい!』という思いひとつでした」と都さんは語る。それから必死にネタを覚えて、テレビ番組『素人名人会』で落語を披露し、好評を博す。そのとき審査員をしていた落語家・露の五郎(後の露の五郎兵衛)さんに弟子入りを志願した。しかし、その答えは――。「『アカン!』とバッサリ、断られました。それでも半年間通い続けました。師匠のお着物をたたんだり、履物を出したり。やっと入門を許可されたのが、高校卒業直前の3月のことでした」■「女の落語は気持ち悪い」と言われることも入門するまでは女性の落語家はひとりもいない。本当に男だけの世界だった。そんな環境の中での入門は、非常に勇気がいるはずだ。「当時の私は女子高生。なにも知らずに飛び込みました。なにも知らないからこそ、ここまでやってこれたんだと思います。落語は男のもの。女の落語はどうしてダメなのか?それを知っていたら、きっとチャレンジできなかったはず。お客さんに『気持ち悪い』なんて言われたこともあります。でも、なにを言われても気にする暇がありませんでした。修行中は本当に忙しかったので」一晩寝たら忘れる“気楽な性格”なところもよかったのかな、と笑顔で振り返る都さん。女流落語家として活躍する今でも「落語は男のもの」という気持ちを忘れていないという。「今でも、落語は男のものだと思っています。私には女の弟子もいますが、男社会で生きていること、落語は男のものだと忘れるなと教えています。女が落語をやると、声の作り方やしゃべり方など、できるようになるまで時間がかかります。男性は、アマチュアでもすぐに落語らしくなる。それは男と女が持っているものの違いかな、と思います」■一流の仕事に、男も女も関係ない男社会を生き抜いてきた都さんに、同じように働く女性へのアドバイスを求めてみた。「仕事をする上で、私は男か女かは気にしていません。露の都というひとりの落語家であること、ただそれだけ。やるべきことをしっかりやって、仕事の内容がどれだけできるかが評価される世界ですから。風当たりが強かったとしても、結果を出してやりつづけること。これが大切ですね」また女性だからこその“決め事”があるという。「女だからこそ、舞台衣装の着物や化粧にはお金をかけています。ちょっといい着物を着て、メイクをしっかりすると、スイッチがONになる。背筋が伸びて、気合が入り、いい仕事ができます」ポイントは、「買えなくもないけど、ちょっと高い」と悩んでしまうものを、エイッ!と買うことだという。分相応の中で、ちょっとだけ背伸びをすること。そうすると気合が入って、心の底からエネルギーが沸いてくるのだとか。「お金をかける物は、人によって違っていい。ファッションでも、小物でも、レストランでも、自分の気分が上がる体験を探してみて」と都さんは語る。■悩まないコツは、自分が「無」になれる時間を作ること厳しい伝統芸能の世界にいながらも、「やめようと思ったことは一度もない」という。“一晩寝たらすべて忘れる”という気楽さを持ち合わせる彼女に、悩みに溺れないコツを聞いてみた。「時間があると余計な事を考えてしまいます。私は今まで修行や、仕事と家庭の両立など、悩む暇がないほど忙しかった。だから悩みがちな人は、趣味や勉強、好きなことに没頭すると良いのでは。ランニングでも、仏像を彫ることでもいい。とにかく『無』になれる時間を作るのが大切。ちなみに弱っているときは、男に救いを求めないこと。そういう時に限って変な男が寄ってきますからね……!」たしかに、女が弱っている時に変な男に引っかかりやすいのは、この世の法則なのかも?現在複数の弟子を抱える都さん。時にやさしいお母さんのような語り口でインタビューに答えてくれた。ちなみに女性の新しい趣味として、落語鑑賞もオススメだという。「テレビなど画面を通してではなく、ぜひ寄席に来て、生の笑いの空気を味わってほしい」とのことだ。取材協力/露の都
2018年01月24日落語家・立川談春が2015年より毎年開催している年末恒例の独演会が12月28日(木)、大阪・フェスティバルホールで行われる。今年の演目は『芝浜』と『文七元結』の2本。2017年を締め括る本公演に向けて、意気込みを語った。「立川談春 独演会」チケット情報『芝浜』は2015年から毎年披露している演目。酒好きで失敗を繰り返す行商人の勝と、ただひたすら主人を支える女房の思いが垣間見える人情噺だ。「同じ『芝浜』でも、去年と今年では全然違う。自分でやっていても感じます。それは、自分の置かれた状況が変わるから。例えば去年の『芝浜』は女将さんがとてもカラッとしていたし、強気だったし、勝を追い込むようなことを言っていた。でも一昨年は、勝が一生懸命女将さんをいたわっていた。やるたびに変わるのは、個人芸だからしょうがないんだと思います。人は更正できるとか、縁の中で生かされているというのはいつの時代も一緒なんだなということが描かれている。揺らぎは見せつつも、その軸は変わりませんね」15歳の頃、立川談志の『芝浜』を聞いて落語家を目指し、談志に弟子入りした談春。終わった後、立てないくらいに衝撃を受けたと語る。「本で読んだときは、何がいいのかさっぱり分からなかった。その中途半端な知識で談志の『芝浜』と対面したときに、ぶっ飛びましたね。落語でこんなに感情移入をしたり、感情表現できるのかと。それに、周りの大人たちもうつむいていました。ひとりひとりがこの噺を聞いて自分と向き合ってるんだなって、子ども心に感じました。そして僕も談志のように聞き終わった後の感想を持ってもらえる芸人になりたいと思って、弟子になろうと思ったんです」。一方『文七元結』で登場するのは、無類の博打好きで仕事もろくにしない左官の長兵衛。負けて丸裸になった挙句、長屋に帰ると女房が愛娘・お久が戻ってこないと泣きじゃくる…。『芝浜』と同様、年の瀬の江戸を舞台に繰り広げられる人情噺の大ネタだ。「落語好きの人にとっては、ステーキ食べ放題に行った後、すき焼き食べ放題に連れて行かれるようなものです。きっと胃もたれするでしょうし、もたれさせたいんです。ただそれはフェスティバルホールという素晴らしい会場だからこそ挑戦できるんです。それに、落語を知っている人には胃もたれする2本かもしれませんが、初めて落語を観る方たちにとってはそうでもないはず。“これが落語なんだ!”って思ってもらえる効果はあると思っています」。公演は12月28日(木)大阪・フェスティバルホールにて。チケットは11月11日(土)10:00より一般発売開始。11月9日(木)23:59まで先行先着プリセールを受付中。
2017年11月07日落語家・三遊亭圓朝の長編人情噺を原作にした芝居噺『名人長二』が5月25日に開幕。本作は、小泉今日子が仲間と共に立ち上げたプロジェクト「明後日プロデュース」の第二弾公演。小泉が舞台初演出を手掛けた『日の本一の大悪党』に続く作品で、今作は俳優として活躍する豊原功補が企画・脚本・演出・主演の4役に挑む。その稽古場に潜入した。芝居噺『名人長二』チケット情報『名人長二』は、「死神」などでも知られる三遊亭圓朝による落語速記(口演を文章化したもの)。フランスの小説家ギ・ド・モーパッサンの短編小説「親殺し」をもとに、近所に住んでいたという指物師(箪笥や箱などを作る職人)長二郎をモデルにして新聞連載として発表した。圓朝自ら高座へあげたことはなく、古今亭志ん生ほか数人しか手を付けていないため、落語ファンでも未体験の人が多い演目だ。出演者は、豊原のほか高橋惠子、山本亨、森岡龍、モロ師岡、梅沢昌代、花王おさむ、菊池均也、神農直隆、岩田和浩、牧野莉佳という重厚感のある顔ぶれ。稽古開始前の時間。豊原は舞台上に作られた高座でまくら(本題への導入となる小噺)を練習していた。今の状況を落語風に話してみたりと、豊原の落語愛が伝わってくる。そして始まった稽古。まずは代役を立て、演出家として見ていく豊原。芝居全体はもちろんだが、例えばボケツッコミの間合いのよさ、鼻歌ひとつで伝わる登場人物の性格など、“落語の面白さ”とも言える部分に徹底的にこだわりながら場面をつくりあげていく。そうやってシーンを何度か繰り返した後、豊原が役者として参加。そうすると空気が締まり、シーンがよりクリアに見えたのは印象的だった。また、舞台初出演の森岡のダメ出しにこたえる姿にも真摯さが滲み、本番への期待につながった。落語ならではの短いテンポで変わっていく場面は、大掛かりなセット転換ではなく、シンプルに小さなワゴンの移動や組み合わせで表現される。冒頭で、噺家が語り描く世界がワゴンの移動によってするりと“演劇”に転換された様子に、落語が始まるまさにその瞬間のグッと引き込まれ目の前に世界が広がる感覚を味わえた。そのほかにも、小道具が手ぬぐいと扇子で表現されていたり、三味線の生演奏が入るなど、落語の香りを濃厚に漂わせながら、生身の人間が演じる演劇ならではの広がりを感じさせる本作。稽古を見ていると『名人長二』の面白さを知り、落語でも体験したくなった。落語好きは演劇の、演劇好きは落語の魅力を体感できる作品になりそうだ。公演は6月4日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2017年05月26日落語の伝統を守る一方で、独演会ではさまざまな挑戦を続けている柳家三三。昨年は文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど、その活躍がいっそう注目されるなか、六ヶ月連続独演会〈たびちどり〉で挑む演目が、大作『嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)』だ。幕末から明治期に活躍した柳派の談洲楼燕枝(だんしゅうろう・えんし)が創作した長編人情噺を、毎回2話ずつ高座に上げ、全12話を通すという試み。長らく演じ手が途絶えていたという本作への想いを、三三に聞いた。たびちどり 柳家三三 六ヶ月連続独演会チケット情報大商人の跡取りでありながら侠客となった“佐原の喜三郎”。物語は彼と、やはり裕福な家の娘ながら芸者から遊女へ身をやつすお虎の運命を軸に、巾着切りの庄吉や、なまぐさ坊主の玄若、三宅島に流された罪人の長・勝五郎、旗本の優男・梅津長門ら多彩な人物を巻き込んで展開する。「人情噺というと泣ける話をイメージするかもしれませんが、元々は広い意味で人情の機微を描いた話のことなんですよ」と三三は言う。「燕枝は九代目市川団十郎と親交が深かったこともあり、この作品も“白浪物”(盗賊を主人公とする物語)や“三尺物”(博徒や侠客が主人公)、“世話物”(町人の人情を活写した芝居)と、色々な要素がたっぷり詰まっているんです」と、その口調にも自然と熱がこもる。今回はこの大作を12話に分け、三三自ら再構成。「怪僧玄若坊」「闇の島脱け」「お虎の美人局」など、内容に合わせて付けられたタイトルは、どれもワクワクするものばかりだ。「本当にね、なぜこの演目が長い間忘れ去られていたのか不思議なくらい」と三三は話しつつ、「ただ、長編だけにダイナミックな場面と地味な場面とがありますから、そこは1話ずつ観ても楽しめるように調整しました。あとは、初見でも、途中の回を観ていなくても内容が分かるように、前回までのあらすじは読み物で配る予定です」と“続き物”ならではの工夫を明かす。そんな苦労もいとわないのは、落語のもつ豊かな世界をもっと知ってもらいたいから。「燕枝が活躍した当時は町内に1軒ずつくらい寄席があって、人々は晩ご飯を終えた後、ちょうどテレビを観てくつろぐ感覚で寄席に足を運んだそうですよ」と三三は語る。「だから『あの寄席で面白い“続き物”をやってるぞ』と評判になると、その寄席によその町からわーっとお客さんが集まったりしてね。艶のある場面にドキドキしたり、切った張ったの立ち回りにハラハラしたり。そういった楽しさを、現代のお客さんにどうやったら届けられるか。それだけを考えて演りたいですね」という三三。その言葉からは、名作を伝える演じ手としての覚悟が伝わってきた。公演は愛知・大須演芸場と大阪・グランフロント大阪にて、5月から10月まで毎月1回ずつ開催。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2017年05月08日江戸時代の誕生以来幾度目か分からぬ落語ブーム到来!数百年続いてきた歴史ある話芸を、観光案内で楽しめる贅沢クルーズがあるらしい?『落語家と行くなにわ探検クルーズ』を満喫してきた! 人間は、広い世界のほんの一部で生きている。全てを知ることはできない。世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。そんな人が集まると、小さなブームになる。誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。それが「うさこの覗いた世界」なのだ……! 古典芸能に疎いわたしのところまで落語のニュースが届くようになって久しい。江戸時代に生まれ、伝統的な話芸として確立した「落語」。最近では話題に取り上げられることもまた増え、老若男女が寄席に足を運ぶらしい。 「落語」……。めっちゃ気になるけど落語研究会に入っていた友人の発表会でしか落語に触れたことがないわたしにとって、寄席は想像つかない世界すぎてちょっと緊張する。そんな時に出会ったのが『落語家と行くなにわ探検クルーズ』だった!それはクルーズ船に乗って話のプロである落語家さんに大阪を案内してもらうというもの。観光もできて落語の世界にも触れることができる一度に二度おいしいクルーズだ。これだー!!これなら初心者でも気兼ねなく落語を味わえる気がする!!!わたしはいざ、乗り場である「湊町船着場」へ向かった。 JR難波駅から徒歩約5分。 川の上でゆらゆら揺れるチケット売り場で受付を済ませ、乗る船を待つ。現れた船体にわたしは思わず目を見張った。 平べったい!!! かつ超ポップ!!!そして落語家さん登場。 この日の落語家さんは桂ひろばさんだ。晴れ渡る空、黄色いクルーズ、青い着物の落語家さん、鮮やかに条件は揃った……!「よろしくお願いします」とご挨拶し、気分上々で乗り込んだ。 大きな窓からは外が広々見渡せる。テーブルの上には事前に注文しておいたお弁当もセット。 たこ焼きや串カツと言った大阪感溢れるものなどいろんなものが楽しめる船の上限定の「なにわ水都御膳」。船内ではお酒なども注文可能で、グループで盛り上がるのにも絶好のロケーションだ。快適すぎる環境が整ったところでクルーズが動き出す。いよいよ落語家さんと探検開始だ! まずはひろばさんの自己紹介から始まった。「落語を聞いたことはありますか?」と問いかけると、手を挙げる人もちらほら。 とはいえわたしを含め、落語を聞いたことがない人も多いようだ。「落語家は師匠から名前をもらいます。僕は“ひろば”という名前をいただいたんですが、それまで候補が4つありました。ひとつがふろば、ふたつめがこのひろば、大阪ですからなんば、そして4つめがはかば」全く知らない落語の世界を、覗き見させてもらうような気持ちになる。 その間も、船は自転車ほどの速度で進んでいった。「この船は“ほたる”って言います。なんでこんなに平べったいのかというと、大阪は地盤沈下で土地が低く、逆に水面は上がったので水面と橋の間が狭いんです」 確かにこの低さ……!言われてみればあっちの橋もこっちの橋も水面と橋の距離が異様に短い。 橋の下から天井ガラスを見上げれば、橋の裏が間近に見える。 橋マニアがいたら垂涎ものの鉄骨! 水都大阪とは言われるが、橋の数としては東京や神戸に負けると言う。「市内の橋の数が881本。東京はなんぼあると思います?1,000本?それがね、3,800本ある。大阪より全然多いでしょ。でも大阪は、町の面積に対する橋の面積が日本一なんです」普通の大阪観光では知ることのないマニアックな情報を軽快なトークで次から次へと過剰摂取できる。とびきり低い橋をくぐる時には「低い橋が多すぎて船長さんの腕が試されるんですよ」の声と共に、どこからか流れ出すタイタニックのサウンド・トラック……。いや!それ!沈んでまうやろが!!!全力でツッコみたい気持ちを喚起させられるのはもう、このクルーズのこってり大阪ワールドに染まってしまっているかもしれない。 船は時折、窓も天井もオープンになる。 クリアな視界。風も気持ちいい。しかしこれは油圧ポンプによって船を沈めることで客室を押し上げており、この状態でいると低い橋と激突するためつかの間の解放感なのである……!ずっとオープンじゃないからこそ、穏やかな室内と爽やかなオープンの緩急があるのもいい。 ほとんどの橋の上には川を眺めるおっちゃんが。こうやって手を振ってコミュニケーションを取れるのも、「大阪観光」の極意だ。 行きは左右にある建物やそれにちなんだ歴史・ストーリーに終始したが、帰りは乗客みんなで大喜利を体験しようというプチ・落語体験が始まった。順番が回ってくるまでに、面白い回答を考える。なんて発想力やスピードを要するんだ……!実際やってみることで、笑ってもらうことの難しさを思い知ったし面白くないことを言っても、面白くしてくれる落語家さんのパワーも目の当たりにした。ここにその時のやりとりを書いても悲しいかな絶対面白くないので、そこはぜひ体験して笑い転げてほしいところだ……! 10年以上探検クルーズで案内をしているというひろばさん、「お客さんがフランス人ひとりだったとき」という困難も乗り越えて今こんなに充実した90分を提供してくれる。 もっと落語家さんの本業を見たい……!そう思ったわたしは「次は寄席へ行こう」と心に決め、探検クルーズを後にしたのだった。 『落語家と行くなにわ探検クルーズ』乗船料金:3,000円(大人)3月25日~4月9日は桜の名所へコースを延長して、120分3,500円お弁当「なにわ水都御膳」1,800円(2日前までに要予約)
2017年03月15日2017年4月29日(土・祝)昭和の日に渋谷・CBGKシブゲキ!!にて、『実験落語neo~シブヤ炎上まつり~』の上演が決定した。かつて、渋谷ジァンジァンで毎月開催されていた、三遊亭円丈主催の新作落語の会『実験落語』が、2016年6月に同じ渋谷の地、CBGKシブゲキ!!で復活を果たし、今回第5弾を迎える。復活後のタイトルは『実験落語neo』サブタイトルは必ず「シブヤ炎上」と入っており、その名通り、これまでの4回も見事な炎上ぶりだった。今回のサブタイトルは、シブヤ炎上まつり。円丈に加え、柳家さん喬、桂雀々、林家彦いち、浪曲師・玉川太福の出演が決定。これまではそれぞれが新作を持ち寄っていたが、新作落語の神様・円丈の作品を5人が高座にかける、オール円丈噺の特別編。どんな化学反応が起こるのか。公演は4月29日(土・祝)渋谷・CBGKシブゲキ!!にて。チケットは3月18日(土)午前10時より発売。なお、チケットぴあでは3月に先行受付を実施予定。
2017年02月21日生の落語をもっと手軽に国民的長寿番組の「笑点」やTVアニメの「昭和元禄落語心中」など、今、日本の落語文化に改めて注目が集まっています。とはいえ…落語は敷居が高い、と思っていませんか?そんな落語をもっと手軽に、身近なものとして楽しむことが出来るのが、神保町にある「らくごカフェ」です。「神保古書センター」5階にあるため、カフェ以外にも落語に関する書籍やCD、DVD、扇子などのアイテムが豊富に揃っています。また、都内近郊で開催される落語関連のイベント情報も手に入れることが出来ますよ。各落語家さんの貴重な展示物や、カフェの天井にディスプレイされている手ぬぐいなど、上から下まで見逃せません。お店では毎週火曜日に「らくごカフェに火曜会」が開催されており、お手軽価格で(予約をしておけば、ワンドリンク付きで1800円・会によって異なる場合あり)生の落語を聞くことが出来るのです!人気の会は売り切れますので、ご予約はお早めに!それ以外でも頻繁に、落語に関する様々なイベントが開催されています。駅チカなので利便性抜群!「らくごカフェ」は、千代田区神田神保町にあります。電車の場合最寄り駅は東京メトロ半蔵門線と、都営三田線、新宿線の「神保町駅」です。A6出口を出て靖国通りを九段下駅方面へ歩きましょう。カレー店「ボンディ」が入っているビルの5階です。なお、夜は正面入口が閉まってしまうので、店内へは一本裏道に入り、裏口から入りましょう。駅から歩いて1分程度の道のりなので、すぐにたどり着けると思いますよ。車の場合「神保町駅」を目指しましょう。首都高速5号池袋線の「西神田」が最も近い出口かと思います。「西神田」からの場合は、靖国通りを神保町駅方面へ進み「神保町」交差点の手前、右側にある建物です。なお、反対車線になるかと思いますので通り過ぎないように気をつけましょう。駐車場はありませんので、近隣のコインパーキングをご利用ください。営業時間案内「らくごカフェ」の営業時間は、下記の通りです。“カフェ営業:月~金12時~18時(落語会で貸切の場合あり)年末等を除き、毎週火曜日19時半より定例会「らくごカフェに火曜会」開催中!定休日不定休(落語会の予定があるときは会場として夜間、土・日・祝日も開店)”出典:喫茶店としても利用したい空間平日の昼間はカフェとして営業しているので、少し時間があいた時など、気軽に利用することが出来ます。オススメは、「中国工芸茶」(各700円・お茶菓子付き)。ジャスミンや白茶、紅茶などがあり、グラスポットの中では美しい花が咲いている様子を見ることが出来ます。このメニューは、若手落語家さんの才能が「花開く」ことを意味しているそうですよ。なお、お湯のおかわりは無料ですので、ゆっくり楽しむことが出来ますね。他にも、コーヒーやソフトドリンク、ホットサンド等があります。落語に参加するには公式ブログでスケジュールを確認しましょう。人気の会は完売しますのでお早めに。申込みは、メール・電話で受け付けています。5日以上過ぎても返信がない場合は、メールが届いていない可能性がありますので、電話をかけてみてくださいね。メールには、「希望の落語会と日付」「名前(フルネーム)」「連絡先(携帯電話等)」「必要枚数」を記載しましょう。なお当日の予約は平日のみ18時まで受け付けています。“特記していない場合、ご予約はらくごカフェまでお願いいたします。rakugocafe@hotmail.co.jp電話:03-6268-9818(平日12時~18時)※定員50名(予約で満席の場合は、当日お席をご用意できない場合がございます)”出典:流水文様をあしらった可愛いカップを片手に、仕事終わりのひととき、本物の落語を聞いてみてはいかがでしょうか。スポット情報店名らくごカフェ TEL・予約03-6268-9818 住所東京都千代田区神田神保町2-3神田古書センター5F アクセス都営三田線・都営新宿線・半蔵門線神保町駅A6出口より徒歩1分営業時間月〜金 12時〜18時(落語会で貸し切りの場合あり)定休日不定休(落語会の予定があるときは会場として夜間、土日祝日も開店)URL
2017年02月20日三遊亭円丈が1970~1980年代、文化の発信地「渋谷ジァン・ジァン」で定期的に開催し、様々な落語家が奔放な新作を生み出した「実験落語」の会。この伝説の会は昨年、「実験落語neo」として復活し、円丈を中心にバラエティ豊かな噺家や芸人が参加している。その第4弾、『実験落語neo~シブヤ炎上するかも~』が開催に。円丈の弟子であり、第1弾からロビーでウエルカム落語を披露し、トークコーナーでMCも務めている三遊亭はらしょうに、会の魅力を聞いた。【チケット情報はこちら】「実験落語neoが普通の落語会と違うのは、全体のテーマがはっきりしている点。会場のCBGKシブゲキ!!が演劇の小屋でもあるので、構成台本に基づき、美術や照明や音響などもきちんと作った中で進行しています。統一された空間だからこそ、誰にでもわかるよう笑いを薄めるのではなく、濃い原液をぼとっと落として楽しんでもらうという、円丈師匠がやってきた“実験落語イズム”が成立するのだと思います」円丈以外の出演者は回によって様々。今回の演者達は、どのようにこの“実験落語イズム”を体現するのだろうか?「立川左談次師匠は不思議な色っぽさがあって、江戸の落語家という雰囲気。とても粋な方です。橘家文蔵師匠は“無頼派”。古典落語の巧さ、迫力たるや、すごいのですが、今回なさるのは古典ではなく新作落語。なかなか聴けませんよね。春風亭百栄師匠はNYで鮨屋をされていた方なので、変わったネタが多い。ご本人とは違うキャラでの、メタ構造的な落語もなさいます。松尾貴史さんは、中島らもさんの新作落語のネタをお持ちで、その中の1本を披露されるとか。らもさんの落語は面白いのに意外と上演されていないので、今回、松尾さんがどう表現されるのか楽しみです。皆さん、個性的な方々で、すごくバランスがいいですよね。MC、緊張します(笑)」もともと一人芝居をしていたはらしょうは、高座で見た円丈の姿に魅了され、弟子入りした。演劇青年を落語に引き込んだ、円丈の魅力とは。「落語は掛け合いが多いですが、円丈師匠の場合、モノローグ的、一人芝居的なんです。柳家小ゑん師匠の原作を円丈が作り直した『新ぐつぐつ』という噺があって、円丈はおでんの具の中の竹輪を演じるんですが、その演技にすごく力が入っていて、着ぐるみも何もないのに、次第に師匠が竹輪に見えてくるんですよ!俺がやりたかったのはこういうことだったんだ、と思いました。弟子として見ていて感じるのは、師匠が自分の面白さに気づいていないということ。常に自分はダメだと思っていて、だからこそすぐ新ネタを作る。最近はネタが覚えられないとぼやいていますが、実験落語neoでもぜひネタおろしをしてほしいですね」かつて、路上パフォーマンスでも腕を磨いたはらしょうならではのウエルカム落語(今回はどこから聞いても楽しめるよう、全編、漫談にするという)を含め、多士済々の演者達による、実験落語独自の空気感を味わいたい。公演は2月6日(月)東京・CBGKシブゲキ!! にて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2017年01月12日2017年2月6日(月)東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!にて、『実験落語neo~シブヤ炎上するかも~』の上演が決定した。かつて、渋谷ジァンジァンで毎月開催されていた、三遊亭円丈主催の新作落語の会『実験落語』が、2016年6月に同じ渋谷の地、CBGKシブゲキ!!で復活を果たし、今回第4弾を迎える。復活後のタイトルは『実験落語neo』サブタイトルは必ず「シブヤ炎上」と入っており、その名通り、これまでの3回も見事な炎上ぶりだった。6月開催の第一回には、林家しん平、ダンカン、清水宏、神田松之丞。8月開催の第二回には、柳家小ゑん、柳家喬太郎、立川吉笑、桂三度。10月開催の第三回には、川柳川柳、夢月亭清麿、立川談笑、石田明(NON STYLE)、と、異種格闘技戦のようなメンバーが円丈の元に集い、会場を沸かせた。年を明けての第4回も豪華だ。円丈に加え、かつて実験落語メンバーであった立川左談次、先日の襲名披露公演も大盛況で、古典落語の名手であり新作落語はほとんどやらない橘家文蔵、独特の空気で客席を笑いの渦に巻き込む新作落語の担い手・春風亭百栄、そして、俳優・ナレーター・折り紙作家など多彩な顔を持つ松尾貴史の出演が決定。実験的な顔合わせ、今回も炎上まったなしだ!公演は2017年2月6日(月)東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!にて。チケットは2017年1月7日(土)午前10時より発売。
2016年12月06日歌手の桑田佳祐が、12月1日に放送されるNHKの音楽番組『SONGS』(毎週木曜22:50~23:15)で、落語に初挑戦する。今回、桑田は落語家になりきり、「波乗亭米祐(なみのりていべいすけ)」という高座名で登場。紋付袴姿で、「あなたへの手紙」と題した創作落語で、曲にまつわる小噺を披露する。ファンの間からは落語好きとして知られる桑田は、以前から「いつか落語をやってみたい」とスタッフに相談していたことから実現。随所にアドリブも散りばめて、初挑戦とは思えないさすがのパフォーマンスを終えると、スタッフからは大きな拍手が巻き起こった。この日の放送では新曲も披露し、言葉遊び満載の曲から、哀愁のある曲まで、全く違う世界観の4曲をフルサイズで演奏。このうち2曲は、初披露となる。
2016年11月23日古典落語を若手実力派の役者が二人一組で見せる“掛け合い落語”で人気のシリーズ『ハンサム落語 第八幕』の大阪公演が11月11日(金)から13日(日)まで、テイジンホールにて上演される。ハンサム落語 第八幕 チケット情報2013年の初演より、古典落語の世界に触れ、日本文化の良さを再認識できると評判の本作は、今回が八幕目。毎公演組み合わせを変えながら上演するのが特徴で、お馴染みのメンバーから新メンバーまで、組み合わせによって変わる掛け合い落語ならではの熱いステージが繰り広げられる。大阪公演の出演キャストは、小笠原健、碕 理人、西山丈也、林 明寛、平野 良、宮下雄也、吉田友一、米原幸佑の8名。初出演となる小笠原は「先輩たちと楽しみながらもしっかり結果を残し、次回以降も呼んでいただけるように頑張りたい」と語り、最年少の碕は「前回初めて参加させていただいて、今回は平野君以外初めての組み合わせばかり。最年少ながら頑張りたいと思います」とコメント。同じく前回から参加の西山は「一部の共演者から“お前はハンサムなのか?”という声がありましたが、出演させていただけることになりました(笑)。皆さん応援よろしくお願いします!」と語り、林は「今回は大先輩との組み合わせがあり、小笠原健という刺客も来ました。頑張ります!」と意気込む。さらに、ベテラン勢の平野が「今回もいろんなケミストリーが起こることを期待しています。第八幕まで続けてこられたのは、その場でしか作れない空間というものを大切にしてきた結果だと思う。これからもどんどん続けていきたい演目なので、楽しい空間を作っていい舞台にしたい」と語り、宮下も「今回は久々に吉田友一さんが戻ってきたことに僕はジャンプして喜びました。実際の落語でも、噺家さんによって話され方が異なるように、『ハンサム落語』も組み合わせによって全然違う色になる。これからも続けられるよう誠心誠意頑張りたいと思います」とアピール。第五幕以来の参加となる吉田は「組手によっていろんなことが巻き起こる、予想しがたい落語会。落語の掟で振舞って、芝居の自由さで遊ぶことができるステージなので、大阪まで精一杯楽しみたい」と力を込めた。また、11月10日(木)19時からは、タワーレコード難波店の5階イベントスペースにて、平野と米原による「トーク&ブロマイドお渡し会」を開催。こちらもぜひ参加を。取材・文:黒石悦子
2016年11月07日新作落語の旗手として落語界を牽引し、今やカリスマ的存在となっている三遊亭円丈。彼が70~80年代、渋谷ジァンジァンで定期的に主催していた「実験落語」の会が、今年6月に「実験落語neo」としてCBGKシブゲキ!!にて復活し、8月の第2弾を経て、早くも10月4日(火)、第3弾が開催に。円丈はもちろん、かつての実験落語に登場した夢月亭清麿や川柳川柳、そして「ニューカマー」の立川談笑とNON STYLE石田明が出演する。CBGKシブゲキ!!『実験落語neo~シブヤ炎上またもや~』チケット情報「公園通りにあったジァンジァンは、オーナーが20世紀中に閉めると言って、2000年に終わったんですが、道玄坂のCBGKシブゲキ!!には“古巣”みたいな感覚を覚えますね。渋谷の匂いがするし、ジァンジァンと同じように真っ暗で、高座が黒い台になっていて。とてもやりやすくてほっとします」と、円丈は語る。ジァンジァンでの実験落語は1986年に終止符が打たれ、その後は「応用落語」「放送禁止落語会」と名前を変えながら2000年まで続いた。「実験という名を一度止めたのは、“文化包丁の『文化』みたいなものだろう?”と言われたから。それで始めた応用落語の出演者の中から、SWA(創作話芸アソシエーションの略。メンバーは林家彦いち、三遊亭白鳥、春風亭昇太、柳家喬太郎)も生まれました。今回は、 “実験落語”の間に『neo』が加わることによって実験の意味が変わり、21世紀の実験になっていると思います」円丈は実験落語neoの第1弾で「悲しみは埼玉に向けて」、第2弾では「ランボー 怒りの脱出」と、自身の名作を披露し、場内を大いに沸かせた。「『悲しみは埼玉に向けて』なんて30数年前とほとんど変わっていないけれど、かつて以上に笑いを取った気もしますから、何をもって新しい、古いと言うのかわかりませんよね。昔はプロレス仕立てにするなど、こういう噺はまずないだろう、というものを作っていましたが、最近は奇をてらわないネタのほうが好きなんです」自著『ろんだいえん』に、新しい落語を作るため、従来の落語を「破壊」したと書いた円丈。そして今、彼が切り開いた世界には多種多様な落語が花開き、プロアマ問わず多くの人材が高座に上がっている。「現代はボーダーレスの時代。噺家が座布団に座って芸をやり、ある感動を与えれば、落語なんだと思います。最後に判定するのはお客さんだから、もしアマチュアが天下を取ればそれが落語。でもそうはならない。そこですよね。プロとアマとでは回数が違う。僕も50年やっていますから、その回数はなかなか追い越せないでしょう。どれだけシラケたか、といった経験も踏まえて、ここはこういうお客さんだからこうだろうかと探りながら、自分が目指す落語のラインに持っていく。僕は一度作ってからもギャグをどんどん入れ替えていくのですが、この歳になると、変わったこと自体も記憶していない時があるからマズいんだけど(笑)、会全体に新しい楽しさがあるし、お客さんにも“来てよかった”“面白い”と思ってもらいたいですね」取材・文:高橋彩子
2016年09月29日昨年話題となったタモリ氏原案の「山名屋浦里」を磨き上げ、今年も落語家・笑福亭鶴瓶が独演会の舞台に立つ。江戸時代の吉原を舞台とする、人気ナンバー1花魁と実直な武士との人情噺だが、昨年演じたものには「なにかが足りなかった」と笑福亭鶴瓶は言う。JRA笑福亭鶴瓶落語会 チケット情報「僕、遅刻をするのが嫌いなのに、今日の現場では遅れてしまったんです。というのも、飛行機に乗っていたら『山名屋浦里』のある場面の言葉が降りてきまして。ちょうど、飛行機も空港へ降りようとしていて、でも、座席前のテーブルをおろしてメモしていたから、客室乗務員の方には注意されながら『ごめんなさい。あとちょっとだけ』言うて(笑)。そのメモをちゃんと清書したくて、今日の入り時間に遅れてしまったんですけど、この噺には、浦里という花魁が酒井という武士を助ける場面がある。でも、昨年の噺を聞いてくれた人のなかには、なぜ彼女が酒井を助けるのかがよくわからないという意見があったんですね。聞いた人それぞれで想像するのが落語のおもしろさなのにとも思ったんですけど、なにかが足りないのかもしれないと自分のなかで宿題にしていたものでした」笑福亭鶴瓶は、テレビの視聴者も落語の観客も突き放さない。徹底的に寄り添う。では、『山名屋浦里』で付け加えられた描写とはなにか。それは、浦里という美しき花魁の悲哀や情を、肩書きではなくひとりの人間として描くということ。「『山名屋浦里』は、タモリさんがブラタモリで知った実話をもとに僕が落語にさせてもらったものやけど、(中村)勘九郎が歌舞伎にしたいと言うて実現する。そのこと自体はものすごくうれしかったんですけど、一方で歌舞伎との戦いが始まったとも言える。歌舞伎版『山名屋浦里』を見てくれた人が、鶴瓶の落語も聞いてみようかとなってもチンケなものだったら意味がわからないでしょ。そうじゃなくて、落語はすごいなぁと感じてもらいたい。あと、歌舞伎と比べればチケット代も安いなぁとかね(笑)。最近、ひとつのことを考え続けられる幸せってあるんやなぁと思うんです。『山名屋浦里』のことをずっと考えていなければ、飛行機での言葉も降りてきてはくれなかったと思いますから」飛行機での言葉たちを紡いだ場面を、取材現場で実際に演じてくれた笑福亭鶴瓶。圧倒的なサービス精神を持つ話芸の達人は、同作だけでなく“あの”『鶴瓶版・死神』をも改訂し、今年の独演会にかける予定だと言う。JRA笑福亭鶴瓶落語会は9月22日(木・祝)から25日(日)大阪・森ノ宮ピロティホール、9月27日(火)福岡・キャナルシティ劇場、10月28日(金)から30日(日)まで東京・赤坂ACTシアターにて。東京公演のチケット一般発売は8月20日(土)午前10時より、チケットぴあではインターネット先行も受付中。取材・文:唐澤和也
2016年08月09日