【おとな向け映画ガイド】強欲で傲慢で悪趣味『グリード ファストファッション王国の真実』、アクションスター岡田准一が光る『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の2本をご紹介。ぴあ編集部 坂口英明21/6/13(日)超ネコ舌のヒットマン『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』このアクション、日本映画の枠を超えている!と大興奮させてくれる作品です。コミック原作の大ヒットシリーズ2作目。肉弾合い撃つバトルだけでなく、建物をつかった大掛かりな追走シーンなどで、ハラハラドキドキ具合は前作以上といえます。パワーアップの「首謀者」は、ファイトコレオグラファーをも務めた俳優、岡田准一です。どんな相手も6秒で仕留めるという、天才的な”技術”を持つ、殺人マシーン、通称ファブル(寓話)が岡田の役。師と仰ぐボス(佐藤浩市)から1年間殺人を禁じられ、いまは「殺さない殺し屋」です。彼の生い立ち、ボスとの関係などは第一作で描かれていますが、相棒のヨウコ(木村文乃)と兄妹を装って、大阪の下町でひっそりと暮らしているという設定。殺し屋といえば、ストイックで寄るべない存在、がふつうですが、このファブルが面白いのは、なんか、この男、人づきあいがよく、実に愛すべきキャラの持ち主で、どこか浮世ばなれしたところがあることです。極端なネコ舌、変なコメディアンに夢中で、しかもワンテンポおくれてバカウケする。妙にかわいいイラストを描いたり……。今回の悪役は、表の顔は子どもを守るNPO団体の代表、裏の顔は犯罪組織の親玉・堤真一。彼の腹心の部下が安藤政信です。車椅子の少女ヒナコ(平手友梨奈)との再会がこの悪役たちとのバトルを呼ぶことになり……。ファブルが務めるデザイン会社のスタッフはおとぼけ担当・佐藤二朗以下前作と同じで、これが相変わらずおかしい。大阪でのファブルの協力者・安田顕はカメオ出演。登場すると「おお!」と声がでてしまうくらいのインパクト。相棒・木村文乃は岡田指導によるアクションシーンもあり、さらに存在感増してます。そんなふうに、前作を観た方たちへのめくばせもしつつ、観ていなくても十分に楽しめるように作られています。きっと配信などで前作を後追いしたくなるはず。【ぴあ水先案内から】野村正昭さん(映画評論家)「……彼が駆けぬけるシーンは、全盛期のジャッキー・チェン作品を彷彿とさせる……」
2021年06月13日娘が言う「クラブ」の発音が、どうしてもアレを思い出してしまうんです……。「活動」がつくと語尾が上がる!?n番煎じな話題だったら、ごめんなさい。発音ひとつで変わるイメージ。こまめが言ってるのが、「クラブ」(ぎょうざと同じような発音)。私が思ってたのが、「クラブ」(パンダと同じような発音)。です(汗)。これで分かるかな。「陸上クラブ」や「料理クラブ」みたいに話していれば、「ク」のほうが強めだったかもしんないけど、「クラブ活動」だと「ブ」のほうが強めになるもんねぇ。あやうく学校で踊る小学生を想像しかけたよ(汗)。
2021年06月12日【おとな向け映画ガイド】ダメ親父が突然変異!『Mr.ノーバディ』、オーダーメイドの時間旅行『ベル・エポックでもう一度』の2本をご紹介。ぴあ編集部 坂口英明21/6/6(日)高松啓二さん(イラストレーター)「……ボブ・オデンカークの特徴の無い顔が本作にピッタリで、後の派手なアクションのギャップにも効果的に作用している……」h あの日に帰りたい!『ベル・エポックでもう一度』タイムトラベル、といってもSFの世界ではありません。なるほどこれは実現不可能ではない……、と思える「時間旅行」のお話です。思い出の、あの場所、あの日に帰りたい、誰もがふと考えますよね。“時の旅人社”が経営する「タイムトラベルサービス」は、行きたい時代と場所を再現する、いわば究極の体験型エンタテインメント。広大な敷地に映画の撮影所のような巨大セットを作り、当時の衣装を身にまとったエキストラや、希望する人物を用意してくれます。もちろん、時代考証や記憶のインタビューも念入りに、その場にいる人物のセリフ、行動など、すべてを再現するのです。デジタル化時代の流れに乗れず、仕事も妻も失いつつある初老のイラストレーター、ヴィクトルは、配信ビジネスで羽振りのいい息子にそのトラベルサービスをプレゼントされ、利用することになりました。オファーしたのは、「日時:1974年5月16日、場所:フランス・リヨンの街のカフェ」です。その日そこで、彼は人生を変える運命の女性と出会ったのです。時の旅人社の社長で旅の演出家でもあるアントワーヌは、息子の友人。ヴィクトルのため、出会う運命の女性役に自分の恋人で一番魅力的な女優マルゴをキャスティング、こころをこめて過去の“ひとコマ”を再現します。舞台となるカフェの名は、「ラ・ベル・エポック」。あの日は帰ってくるでしょうか、あの熱い感情は戻ってくるでしょうか……。この映画、「時間旅行」という仕掛けの魅力もさることながら、フランス映画界の至宝と言われるダニエル・オートゥイユ(ヴィクトル役)とファニー・アルダン(妻マリアンヌ役)が演じる、珠玉のラブコメディ。フランス本国でも大ヒットした作品です。観終わっていろいろ話題はつきません。しゃれたエンディングのこと、どの時代どの場所に行きたいか、とか、日本でやるとしたらこのサービス、いったいいくらかかるんだろう?とか。【ぴあ水先案内から】波多野健さん(TVプロデューサー)「……仕掛けがなかなかよくできていて、舞台裏からインカムで監督が指示を出したりと、あたかも『スパイ大作戦』を観ているような気分になり楽しい……」夏目深雪さん(著述・編集業)「…リアリティある展開で、70年代のレトロな美術も豪華、懐メロも気が利いているとなれば、2019年の仏の興行収入1位を『ジョーカー』から奪ったというのも頷ける……」首都圏は、6/12(土) からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、6/12(土)から伏見ミリオン座で公開。関西は、6/25(金)からシネ・リーブル梅田で公開。
2021年06月06日週末宿泊プランを限定販売野村不動産ライフ&スポーツ株式会社は様々な地域にてスポーツクラブ「メガロス」の46施設を運営、健康の新たな価値を提供し、スポーツクラブ事業の枠を超えた新たなサービスの提供を行っています。同社はグループ会社の野村不動産ホテルズ株式会社の管理・運営するNOHGA HOTEL UENO TOKYOと共に、特別宿泊プランを販売することを明らかにしました。宿泊日は6月18日(金)から21日(月)の3泊4日。トレーニングスーツやオリジナルアロマ、バスソルトなどの豪華お土産付きです。総合的なウェルネスを整える豊かな時間今回販売される宿泊プランは、「運動」「食事・栄養」「睡眠」に特化したプログラムを備え、メガロスインストラクターによるパーソナルトレーニングや朝ヨガ、瞑想などを体験できるものです。コロナ禍での外出自粛により健康関連の問題意識を抱えいる人に向け、ホテル内フィットネスジムを貸し切りで使用し、パーソナルトレーニングを行います。朝昼夜の食事付きで栄養管理も徹底され、客室には最高な眠りを提供するエアウィーブのマットレスを採用するなど、トレーニング以外のボディメンテナンスにも配慮さたプランです。(画像はプレスリリースより)【参考】※メガロス×NOHGA 充実の4日間 ウェルネスステイ
2021年06月01日【おとな向け映画ガイド】ロバート・デ・ニーロはじめ、レジェンド三俳優による爆笑コメディ『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』と、難民から五輪へ『戦火のランナー』の2本をご紹介。ぴあ編集部 坂口英明21/5/30(日)春日太一さん(映画史・時代劇研究家)「……既に確固たる地位を築いたレジェンド級のベテランが過去の名声に胡座をかくことなく、“現役”として奮闘して新たな魅力を見せてくれる姿に出会うのは至極の喜びだ。」植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)「……ドタバタ騒動の中に、出資者、製作者、主演者三人三様の屈折した“映画愛”をにじませて映画ファンの心をくすぐる。……」高松啓二さん(イラストレーター)「……メル・ブルックスの『プロデューサーズ』に似ているが、本作の最大のギャグはキャスティングにある。……」ひたすら走って、生き延びる『戦火のランナー』本来なら、公開はドンピシャのタイミングなのですが、今やビミューな雰囲気です。内戦を生き延び、マラソンランナーとして東京オリンピックを目指している、グオル・マリアルという青年を追ったドキュメンタリー。監督はアメリカのビル・ギャラガーです。彼の母国は、北アフリカの南スーダン共和国。2011年に、23年に及ぶ内戦を経てスーダンから独立した「世界で最も新しい国」。国はできたものの、2016年には再び紛争が勃発しています。その紛争に、日本の自衛隊が国連平和維持活動、いわゆるPKOに参加したこともあり、日本では比較的聞いたことのある国でしょう。想像を絶する半生です。内戦の戦禍を避けるため、両親は8歳のグオル君をたった一人で村から逃がしました。頼る人はいません。途中で武装勢力に捕らえられてしまうのですが、なんとか逃げ延び、難民としてアメリカに渡ります。高校はアメリカ。ここで陸上選手、マラソンランナーとしての天分に気づきます。少年にとって戦場の攻撃から生き延びる手段は“ひたすら走って逃げる”しかなく、彼は皮肉にも辛い戦場でランナーとしての基礎を築いていたのです。目指すはオリンピック、です。となると気になるのは、兄弟をはじめ多くの犠牲の上で独立した母国のこと。彼がランナーとして活躍をはじめたころ、南スーダンが独立します。国のために走る…、我々にとっては、今や、やや時代遅れのように感じますが、母国が大変な苦難のうえ誕生したばかりとなれば、その気持ち、わからなくはありません。建国1年後の2012年に行われたロンドン五輪や2016年のリオ五輪で、彼の参加が実現するまでの騒ぎと結末、同郷人たちの応援、映画で語られるすべてがドラマチックです。が、ドラマはまだ終わりとはなりません。さて、グオル君は東京五輪の舞台に立てる、のでしょうか?【ぴあ水先案内から】池上彰さん(ジャーナリスト)「……「南スーダンの選手たちは東京オリンピックを目指して走り続けます」という最後の字幕を見ると、開催が危ぶまれているだけに涙腺が緩みます。」村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)「……内戦下で彼は敵側の兵士に捕らえられるが、走って逃げることで生き延びる。その思い出は、マリアル選手にとって、走ることが生きることにつながるまさに象徴といえる。……」堀晃和さん(ライター、エディター)「……独立後も貧しく紛争が絶えない祖国の環境を少しでも変えようと、走り続けるグオルの姿が胸を打つ。」首都圏は、6/5(土) から渋谷 シアター・イメージフォーラムで公開。中部は、6/19(土)から名古屋シネマテークで公開。関西は、6/11(金)からアップリンク京都で公開。
2021年05月30日【おとな向け映画ガイド】女性の生きづらさを描いた2作品。コロナ禍の『女たち』、北マケドニアの『ペトルーニャに祝福を』。ぴあ編集部 坂口英明21/5/16(日)平辻哲也さん(映画ジャーナリスト)「……コロナ禍前にあった企画をブラッシュアップし、コロナ禍の日常を盛り込むことで、ヒロインのギリギリ感が、より切実になった。……」野村正昭さん(映画評論家)「……内田伸輝監督は、余分な贅肉を削りとり、ひたすら登場人物の心理を注視し、美しい自然との対比の中で、それはさらに浮き彫りにされる。……」首都圏は、6/1(火)からTOHOシネマズシャンテで公開。中部は、伏見ミリオン座他で近日公開。関西は、大阪ステーションシティシネマ他で近日公開。私は幸せになりたい!『ペトルーニャに祝福を』同調圧力、女性蔑視…、こめられたテーマはシリアスなものですが、独特の東欧的ユーモアと言いますか、のんびりとしている割には皮肉も効いている、まさにおとな向きの映画です。マケドニア、といえば世界史で習ったアレクサンドロス大王の大帝国をイメージしますが、あれは2300年も前の話。いまは、ユーゴスラビアから独立した人口200万人くらいの小国です。ギリシャとの国名本家争いがあり、2019年に「北マケドニア」を名乗ることで落ち着いた国。映画制作はそんなに活発ではなく、日本で公開されるマケドニア作品は20年ぶりだそうです。主人公のペトルーニャは32歳の女性。大学をオールAで卒業したものの、職はなく、その日も縫製工場の面接に出かけたのですが、年齢を誤魔化して「20歳です」といったら「42歳に見えるよ」と完全セクハラのイヤミを言われ、腐りながらの帰り道。偶然ある宗教行事に出くわして、彼女の人生が一変します。北マケドニアの主な宗教はキリスト教系の東方正教会。1月の「神現祭」では、司祭が十字架を川に投げ込み、それを男だけが競って奪い合うという行事があります。最初に掴み取ったものは、幸せになれる。目の前に飛んできたので、ペトルーニャは川に飛び込み、なんと十字架を手にしてしまいます…。大騒ぎとなり、彼女は警察に拘束されます。その様子を地元のテレビが報じ、話は社会問題化していくのです。監督のテオナ・ストゥルガル・ミテフスカは北マケドニアの出身。実際に2014年に起きた事件を下敷きにして映画化しています。幸せを求める人に向けて、投げ込まれた十字架。「幸せになる権利は私にもあるはず」、ペトルーニャの言葉は全く正しいと思えます。【ぴあ水先案内から】池上彰さん(ジャーナリスト)「……そういえば日本の相撲の土俵も女人禁制だったと思い出すのですが、きっとペトルーニャのような女性によって、『伝統』の名の下の女性差別は消えていくことになるのでしょう。」春日太一さん(映画史・時代劇研究家)「……寒々しく荒涼としたマケドニアの景色がヒロインを取り巻く過酷な状況にマッチ、その理不尽さを際立たせていた。」首都圏は、5/22(土)から岩波ホールで公開。中部は、6/12(土)から名演小劇場で公開。関西は、6/11(金)からテアトル梅田他で公開。
2021年05月16日【おとな向け映画ガイド】コロナなんかに負けてたまるか!『茜色に焼かれる』にこめた、石井裕也監督の力強いメッセージ。ぴあ編集部 坂口英明21/5/9(日)平辻哲也さん(映画ジャーナリスト)「……何より素晴らしいのは、尾野真千子だ。苦境に立たされても、決して生き方を曲げない肝っ玉母ちゃんぶりにしびれた。劇中、何度も出てくる「まぁ頑張りましょう」という言葉もいい。……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……辛い話ほど人にできない、自分の話なんて面白くもない、だから笑って取り繕って、そうすると一気に重圧がかかるのに、それでも人に負担をかけない存在を選んでいく主人公……」
2021年05月09日【おとな向け映画ガイド】圧倒的な演技、米アカデミー賞主演男優賞アンソニー・ホプキンスの『ファーザー』をおすすめ。ぴあ編集部 坂口英明21/5/2(日)紀平重成さん(コラムニスト、元毎日新聞記者)「……過去の記憶は失われても怒りや悲しみといった感情は豊かに持ち続けることができるという病気の基本をしっかり押さえました。……」高松啓二さん(イラストレーター)「……まるでサスペンスホラーのようだ。特に頻繁に映るドアとシンメトリーの室内が、恐怖を演出する。……」
2021年05月02日【おとな向け映画ガイド】今週は、ぶっとび人生!『ビーチ・バム』、恋のリブート?『ラブ・セカンド・サイト』をおすすめ。ぴあ編集部 坂口英明21/4/25(日)岡田秀則さん(国立映画アーカイブ主任研究員)「……ブノワ・デビエという撮影監督を引っぱってきたことで、ハーモニー・コリンの映画は「蛍光する映画」になった。時に毒々しい人工色で覆われるその世界は、この世の風景ではないようにも見え、それでいて人物たちの虚無もくっきり映し出している。……」細谷美香さん(映画ライター)「……彼に寄り添う白猫ちゃんが危険な目にあわないかちょっと心配になりますが、いつも超然としていてめちゃくちゃかわいいです。」恩田泰子さん(讀賣新聞記者)「……途中までは全然納得いかないが、だんだん愉快になってくるのは、私たちを縛る「常識」をラストの大花火に至るまで、徹頭徹尾ひっくり返してくれるから。たった一つ、「愛」だけは揺るがないけれど……」妻ともう一度『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』妻と喧嘩して、一夜明けたら別の人生になっていたー。昨日までは、人気SF作家だったはず。ところが、何かがちがう。妻はいないし、自分はどうやら普通の中学校教師のようだ。状況が飲み込めないまま、街にでると、バスの広告に妻の華々しい写真が。どうなっているのだ!最初の15分で、カップルのなれそめから危機までを実にコンパクトに描きます。高校時代にピアニスト志望だった妻と出会い、恋におち、やがて結婚。妻はしがないピアノの教師、勉強そっちのけでSFを書いていた自分は売れっ子小説家になった。ふたりの関係には亀裂が入りはじめ…。そして、パリが吹雪に見舞われた夜、アクシデントがおきます。迷い込んだ別の世界では、妻は自分を知らない、しかもスターになっている、この試練のなかで、彼は愛をとりもどせる?フランスで大ヒットとなった『あしたは最高のはじまり』のユーゴ・ジェラン監督によるオリジナル・ストーリー。映画サイトでは、2010年代公開のロマコメ映画ランキングで1位に選ばれた作品です。主人公ラファエル役はカンヌ国際映画祭でショパール・トロフィーを受賞し、フランスでいま注目されるひとり、フランソワ・シビル。妻オリヴィアを演じるジョセフィーヌ・ジャピがチャーミングです。ノートルダム大聖堂やエッフェル塔、オデオン座、と舞台となるパリの美しさも絶品。役者、シチュエーション、使われるクラシックの名曲、ロマンティック・コメディはこうでなくちゃ、夢見ごこちになれる映画です。【ぴあ水先案内から】春日太一さん(映画史・時代劇研究家)「……何より、新たな世界で再び二人が出会い、関係を築いていく姿にはハラハラさせられるのと同時に、その多幸感には尊さすら感じた。……」波多野健さん(TVプロデューサー)「……主人公ラファエルの親友フェリックス役のバンジャマン・ラヴェルネがすごくうまくて笑わせてくれた。この人のおかげでこの映画の楽しさが2段階くらいアップした感じ……」中川右介さん(作家、編集者)「……タイトルバックの数分で主人公夫婦の10年間を描いてしまう。これだけで一本の映画になりそうな密度で、見事だ。惹き込まれた……伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……フランソワ・シビルとジョセフィーヌ・ジャピはずっと見ていたいと思えるほど魅力的で、彼らの表情に一喜一憂しながら自分の人生と照らし合わせてしまう摩訶不思議な説得力は、ふたりが共演をきっかけに交際をスタートさせた互いへの吸引力のせいかもしれない……」
2021年04月25日蒜山には、自然の魅力があふれる蒜山の自然をガイドしてくれる蒜山ガイドクラブでは、「春の蒜山でわらび採り体験」を2021年5月22日(土)に開催します。今だからこそ、蒜山の豊かな自然の中で楽しめるアクティビティに参加してはいかがでしょうか。わらびの調理方法も伝授蒜山ガイドクラブでは、年間を通じて四季折々の自然を満喫できるプログラムが準備されています。また、年間プログラム以外にも様様なガイドを行っています。「春の蒜山でわらび採り体験」は、昨年は、新型コロナウィルス感染拡大に伴い「中止」となりましたが、通常は、人気のプログラムで、わらび採り体験の他に、昼食には蒜山名物「蒜山おこわ弁当」を味わうことができます。また、収穫したわらびの保存方法、アクの取り方、料理方法も教えてもらえます。イベント概要について春の蒜山でわらび採り体験は、2021年5月22日(土)9時30分~12時30分(受付:9時~9時30分)、集合場所は、上蒜山登山口駐車場(旧上蒜山スキー場)、参加費(入山料・保険料・昼食付)は、大人:3,000円、小学生以下:1,500円です。蒜山高原へ、春をつげるわらびを採りでかけてみませんか。(画像は蒜山ガイドクラブの公式サイトより)【参考】※蒜山ガイドクラブ「春の蒜山でわらび採り体験」開催について
2021年04月23日【おとな向け映画ガイド】本好きにはたまらない『ブックセラーズ』、ネット性犯罪の実態『SNS-少女たちの10日間-』、やばすぎるシリアルキラー『スプリー』の3本をおすすめ!ぴあ編集部 坂口英明21/4/18(日)渡辺祥子さん(映画評論家)「……本の素晴らしさを語る書店の主人やコレクター、書評家を見せる、本好きの人のためのドキュメンタリー……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……ブックセラーとは探検家。映画的に言うならインディアナ・ジョーンズってとこ。そしてその本の魅力を引き出す工夫もブックセラーのセンス次第…」植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)「……登場する書店主いわく「本に正しい家を見つけてやるのは医者が患者を治すのに似ている」。そんな彼ら彼女らの本への愛情……」高松啓二さん(イラストレーター)「……。やっぱ古本屋はいいなあ!」村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)「……書籍の取引や書店をめぐる裏話や歴史的エピソードが次々と描かれ、本好きならワクワクするほど堪らない世界である。……」禁断のリアリティショー『SNS-少女たちの10日間-』おとり捜査風ドキュメンタリーというか、これはまた、すさまじい内容の映画です。10代の若者が、SNSにより、どれほど性犯罪の危険にさらされているかを告発しているのですが、その手法は大胆で、少女にむらがる大人たちの性欲も尋常なものではありません。2017年、チェコ。撮影スタッフは、12、13歳想定で少女3人の偽アカウントを巧妙に作り、接触してくる男性とのやりとりをカメラに収めていきます。少女役を演じるのは3人の女優(18歳以上)。らしく見えそうな女性をオーディションで選びます。さらにスタジオに、ディテールに気を使った3人の部屋をセットとして用意します。登録後たった5時間で、83名の成人男性がコンタクトしてきます。それから10日間。なんと2458人の男たちが、10代と知りながらアプローチ、その多くが性犯罪に近い行為に及んだのです。撮影には、精神科医、生化学者、弁護士など、バックアップスタッフを用意、興味本位でないことはわかります。映像にはぼかしが入っていますが、これを生で見せられたらと思うとぞっとします。【ぴあ水先案内から】池上彰さん(ジャーナリスト)「……この映画は、幼い娘を持つ親に対し、子どもがネットでどんなやりとりをしているかに無関心だと、どんな危険が待ち構えているかを警告しています……」村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)「……SNSが常態化した今日の子供たちの危機を訴える効果はあるとはいえ、その作為性は、隠し撮り手法の延長にある盗撮に似て、倫理的な問題を改めて浮上させないだろうか。……」ライドシェア・アプリ連続殺人鬼!?『スプリー』これはフィクションですが、SNS時代ならではの設定と内容、毒気のきいたアクション・スリラーです。「スプリー」というのはライドシェア(相乗り)アプリのこと。アプリで申し込むと近くを走る契約者がそれに応えて車に乗せてあげるというサービスです。そのスプリーのドライバー、名前はカート。みためは普通ですが、SNSにどハマりしていて、フォロワーを増やしたいがために、乗客の殺害現場をライブストリーミングで実況中継しようと思いつき、決行する、そんな内容です。狂っています。ドライバーもおかしいし、乗ってくるお客もへんなのばかり。映像は、カートがライブ中継用にセッティングした車載カメラのものから、客のスマホで撮った映像、SNS画面など入り乱れます。みんながみんな、どうしたらバズるかにいのちをかけていて、笑えます。アメリカ・インデペンデント映画シーンの晴れ舞台、サンダンス映画祭でのプレミアでバカウケ。小規模公開から始まり、バスりに成功したというやんちゃな作品です。監督はウクライナ出身のユージーン・コトリャレンコ。これまでもビデオチャットを使った野心的な作品で知られています。彼の作品が日本で上映されるのはこれが初めてです。カートを演じたジョー・キーリーはInstagramのフォロワー数が700万を超える人気者、次回作はディズニーの『フリー・ガイ』という注目の俳優です。首都圏は、4/23(金)からヒューマントラストシネマ渋谷他で公開。中部は、4/23(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、5/7(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。【ぴあ水先案内から】佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)「……「ああこういう人、日本のSNSにも確かにいるなあ」と思わせる妙な説得力がすごい。……」相馬 学(フリーライター)「SNSの普及により承認欲求なる言葉が、しばし聞かれるようになったが、本作が描くのはその暴走だ。……」
2021年04月18日【おとな向け映画ガイド】シングルマザーの挑戦と葛藤『約束の宇宙』、演劇とライブと恋の街・下北沢の『街の上で』、今週はこの2本をおすすめ。ぴあ編集部 坂口英明21/4/11(日)高松啓二さん(イラストレーター)「……見所は、彼女の強靭ながんばりではなく、挫けそうな弱さを感じながらも働くリアルな女性の姿……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……女の子に生まれたって、子供を産んだって、夢を叶えられる。『約束の宇宙』は、子供たちへ向けた未来へのメッセージなのだ。」シモキタのあそこもここも『街の上で』男子と女子がめぐりあい、会話をして、お互い、いろいろジャブいれながら、この人とひょっとして……と空想をめぐらす。『愛がなんだ』もそうだったのですが、そんなやりとりのシーンって、今泉力哉監督はうまいですよね。どこかにいそうな主人公、いつかおきそうなできごと。場所は下北沢の、ありそうなところ。古着屋の店員をしている青(あお)くんが、店番をしながらひまそうに本を読んでいるところが絵になると、自主映画の女性監督に気にいられ、出演依頼が舞い込みます。台本読んで、自分なりに稽古していったのですが、何テイクとってもうまくいかず、結局すべてカット、使われないことに。つきあわされた打ち上げの居酒屋で、隣りに座ったスタッフの女性と意気投合し、彼女の家へ。それでデキちゃうのかというと、ふたりはグダグダ話し続けるだけ。話題は青くんが最近フラれた彼女の話や相手の恋愛遍歴、たわいのないものです。古書ビビビ、古着のhickory、町中華・珉亭、ライブハウスTHREE、スズナリ、トリウッド……。シモキタの実在の場所を絶妙にとりこみながら、少しコミカルに進むラブストーリーは、あえていうなら初期のウディ・アレン作品の味わい。主人公はアレンのように神経質ではないし、のんびりしていて、好感がもてます。シモキタはマンハッタンみたいにリッチじゃないけど。青役は『愛がなんだ』にもでていた若葉竜也。同じく『愛が…』の成田凌が朝ドラにもでている役者という役どころで特別出演しています。この作品はコロナ禍で公開が1年ほど延期になりました。その間に、若葉君も『おちょやん』に抜てきされ、なんと、朝ドラのふたりが出演、という豪華キャストの映画になっちゃいました。【ぴあ水先案内から】笠井信輔さん(フリーアナウンサー)「……長回しのダラダラとした会話の中に、様々な人生のおかしみが含まれていて、セリフなのかアドリブなのかもわからなくなる魅力。ところがこのダラダラとした点描がクライマックスで一気に集約され大変な興奮を生み出すマジック。やっぱり今泉監督はノッている。」
2021年04月11日【おとな向け映画ガイド】女優たちの圧巻の演技、凛とした富司純子『椿の庭』、熱情を秘めたケイト・ウィンスレット『アンモナイトの目覚め』、今週はこの2本をおすすめ。ぴあ編集部 坂口英明21/4/4(日)植草信和さん(編集者・元キネマ旬報編集長)「……3世代の女性のそれぞれの屈託が、家と庭の映像を通してほのかに浮きあがってくる。……」首都圏は、4/9(金)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、4/17(土)から名演小劇場で公開。関西は、4/23(金)からテアトル梅田他で公開。不遇な女性古生物学者の秘めた恋『アンモナイトの目覚め』1840年代、女性の社会進出がまだ認められていなかったビクトリア朝のイギリス。独学で古生物を研究し、大英博物館に残るほどの化石を発見したものの、不遇な生活を送る古生物学者メアリーに訪れた転機、それはある女性との出会いでした…。メアリーは実在した人物です。死後に認められ、王立協会が「科学の歴史に最も影響を与えた英国女性10人」に選んだのは2010年。同時代の人が彼女について書いた書物はほとんどないそうです。そんなメアリーを主人公にして描くのにあたり、同性と関係を持っていたかもしれない、と想像をめぐらせたのは『ゴッズ・オウン・カントリー』のフランシス・リー。21世紀ゲイ映画の旗手、とよばれる監督です。監督が主演に起用したのはイギリスの名女優ケイト・ウィンスレット。ウディ・アレンの前作『女と男の観覧車』とはだいぶイメージが異なりますが、最初はうつうつとし、やがて内に秘めた熱情を爆発させる女性像を見事に演じています。彼女の心を開かせるシャーロット役には、今年で27歳、すでにアカデミー賞4度のノミネート、1度の受賞という演技派、シアーシャ・ローナン。超豪華な組み合わせです。【ぴあ水先案内から】春日太一さん(映画史・時代劇研究家)「……二人の女性が徐々に距離を縮めていく様が、壊れそうなまでに繊細なタッチで綴られる。……」波多野健さん(プロデューサー)「……この映画で一番感銘を受けたのは“音”だった。……ものすごく迫ってきて、ストーリーを一層奥深いものに見せてくれた。こんな経験は初めてだった。」植草信和さん(編集者・元キネマ旬報編集長)「……地の果てを彷徨するふたりの女性の魂と肉体が結ばれて昇華する描写が、素晴らしい。性愛描写の極致。……」
2021年04月04日放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)とは?保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与え、その健全な育成を図るものです。該当施設は「放課後児童クラブ」「学童クラブ」などと呼ばれ、子どもたちが放課後や長期休みを過ごします。子どもたちは遊びや保育の知識のある支援員に見守られ、友達と遊んだり宿題をしたり、おやつを食べたりして生活します。施設によっては、ものづくりや料理、ハイキングなどさまざまなイベントを行うところもあります。全国に26,625か所あり、登録児童数は1,311,008人(令和元2年7月1日時点)です。公営の施設と民営の施設があり、具体的なサービス内容や過ごし方は施設によって異なります。放課後児童健全育成事業について(厚生労働省)令和2年(2020年) 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(厚生労働省)放課後児童クラブ(学童クラブ)を利用できる人は?出典 : 児童福祉法第6条では「小学校に就学している児童」であって、「保護者が労働等により昼間家庭にいないもの」が、放課後児童クラブ(学童クラブ)を利用できると定められています。学年については、平成27年度から対象児童が6年生まで拡大されたことにより、小学校1〜6年生まで利用することができます。具体的な利用条件については各市町村が定めているので、お住まいの自治体のHPで確認する必要があります。例えば広島県広島市の場合、HPに以下のように細かく記載しています。次の(1)~(3)までの条件を全て満たす場合に対象となります。(1)広島市内に住所を有している児童(2)小学校に在学している児童(3)保護者及び同居する親族(18歳未満の者を除く。以下「保護者等」という。)が次のいずれかの事由に該当することで、家庭において適切な保護を受けられないことが常態であると認められる児童ア保護者等が、就労のため、1週間のうち概ね4日以上(月16日以上)、午後5時頃まで家庭にいないこと。イ保護者等が、疾病又は負傷の状態にあるか障害があること。ウ保護者等が、疾病又は負傷の状態にあるか障害がある親族等を、常時介護していること。エ保護者等が、出産予定日前8週間(多胎妊娠の場合は14週間)に当たる日から出産日後8週間に当たる日までの間(以下「産前産後期間中」という。)であること。オ保護者等が、大学・専門学校等へ通学中であること。カその他児童を保護できない特別の事由があること市町村によってはHPに利用条件の詳細を記載していない場合もあり、また、民間学童では独自の基準を設けている場合もあります。放課後児童クラブ(学童クラブ)の利用対象にあたるかどうかは、ご自分の市町村や周辺のクラブに問い合わせてみると良いでしょう。放課後児童クラブ(学童クラブ)の利用方法出典 : ①問い合わせ概ね9月か10月ごろ、市町村や各施設で次年度の入室希望者の募集が始まります。募集開始時期は市町村によって異なるので、HPなどで情報をチェックしておく必要があります。市町村によっては年度途中からの入室申し込みを受け付けている場合もあります。申し込みをする際、まずは市町村、もしくは利用する可能性のある放課後児童クラブ(学童クラブ)に直接問い合わせて、空き状況や必要な手続きを確認しましょう。地域の放課後児童クラブ(学童クラブ)一覧や問い合わせ先は、市町村のHPにまとめられていることがほとんどです。②入室申し込み・選考入室申込書や保護者の勤務証明書等、放課後児童クラブ(学童クラブ)から指定された書類を期限までに提出します。施設によっては、入室説明会を行うこともあります。定員を超えると選考が行われる場合もあり、その選考基準も市町村によって異なります。また、学年があがるときの継続手続きや退室手続きも施設によって異なるため、直接確認する必要があります。③利用決定・手続き利用が決定した方向けに、説明会への出席や書類の提出が案内されます。開所時間は施設によって異なりますが、概ね、平日は学校が終わったあと(14時や15時ごろ)から19時ごろまで、長期休み等は朝8時や9時ごろから19時ごろまで開室しているところが多いようです。小学校から放課後児童クラブ(学童クラブ)までの送迎を行うところもあれば、子どもたちが自分で下校・登室するところもあります。施設によって方針が異なるため、気になる方は問い合わせの際に確認すると良いでしょう。放課後児童クラブ(学童クラブ)から自宅までは保護者が送迎を行うことが多いですが、保護者の希望があれば子どもが一人で登帰室できる場合もあります。放課後児童クラブの利用料は市町村や施設によって異なりますが、数千円の月額を徴収しているところが多いようです。利用料と別でおやつ代などが必要な場合もあります。例えば東京都港区の場合、学童クラブ育成料として月額3,000円と、おやつ代・お楽しみ会費月額2,000円を徴収しています(令和3年時点)。多くの場合、家庭の状況に応じた利用料の減免制度も取り入れられています。東京都港区の場合には、対象を以下のように定めています。・生活保護世帯・区市町村民税非課税世帯・生活保護に準ずる世帯(生活保護基準額の1.2倍以下の世帯、18歳未満の子どもが3人以上の場合は1.31倍以下の世帯)・低所得のひとり親世帯(児童扶養手当受給世帯)・兄弟・姉妹で学童クラブに入会している児童の第2子以降学童クラブ育成料について発達障害のある子どもが放課後児童クラブ(学童クラブ)を利用するには?日本放課後児童支援員協会による「放課後児童クラブ運営指針」では、障害を理由として受け入れを拒否せずに、受け入れに伴う負担が過重でない限りにおいて、当人の状態に合わせた必要かつ合理的な配慮をするよう記載があります。・障害のある子どもについては、地域社会で生活する平等の権利の享受と、包容・参加(インクルージョン)の考え方に立ち、子ども同士が生活を通してともに成長できるよう、障害のある子どもも放課後児童クラブを利用する機会が確保されるための適切な配慮および環境整備を行い、可能な限り受け入れに努める。・放課後児童クラブによっては、新たな環境整備が必要となる場合なども考えられるため、受け入れの判断については、子ども本人及び保護者の立場に立ち、公平性を保って行われるように判断の基準や手続き等を定めることが求められる。また、厚生労働省による「障害児受入強化推進事業」「障害者受入強化推進事業」では、障害児の受入に必要となる、専門的知識を有する「放課後児童支援員」等を配置するための人件費・研修費等を市町村が負担すると定められています。実際の支援体制は、市町村や施設、タイミングなどによっても大きく異なります。発達障害やその傾向のある子どもが利用できるかどうか、個別の配慮を受けられるかどうかは問い合わせて確認する必要があります。すでに障害児の受入れをしたことのあるクラブであれば、それまでにどのような体制でサポートしていたのか確認してみると良いでしょう。「放課後児童クラブ運営指針」では、家庭や地域の関係機関・学校との連携を密に行うよう書かれています。・障害のある子どもの受け入れに当たっては、子どもや保護者と面談の機会を持つなどして、子どもの健康状態、発達の状況、家庭の状況、保護者の意向等を個別に把握する。・地域社会における障害のある子どもの放課後の生活が保障されるように、放課後等デイサービス等と連携および協力を図る。例えば施設によっては、以下のような連携を行ってもらえる場合があります。▼例・相談支援員や放課後等デイサービスの職員、保護者をまじえてケース会議を行い、特性や困りごと、個別支援計画について共有する・特別支援学級の先生や担任の先生と、学校と放課後児童クラブそれぞれの様子を共有する・保護者と面談を行い、家庭の様子や学童の様子を共有したり、相談に乗ったりする放課後児童クラブ(学童クラブ)と、放課後等デイサービスの違いは?併用はできる?出典 : 障害のある子どもが放課後に利用できる施設として、放課後児童クラブ(学童クラブ)のほかに「放課後等デイサービス」があります。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。●対象放課後児童クラブ(学童クラブ)の利用対象者は、「小学校に就学している」かつ「保護者が労働等により昼間家庭にいない」児童です。放課後等デイサービスの利用対象者は、「身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)」かつ「就学児童」(小学校、中学校、高等学校に通っている児童)で、障害のある児童のみを対象としているのが放課後等デイサービスです。●支援の内容放課後児童クラブの支援内容はクラブによって異なりますが、大きな役割としては、子どもたちがおやつを食べたり遊んだり、宿題をしたりするのを見守る、遊びと生活の場です。民間の学童クラブでは、イベントや習い事などを提供するところもあります。利用者20名につき1〜2名程度の支援員がつきます。一方放課後等デイサービスでは、個別支援計画に基づいて、子どもの特性や困りごとに応じた支援が行われます。その内容は預かり型や療育型、習い事型などさまざまで、利用者5名に対して1〜2名程度の支援員がつきます。施設の空き状況にもよりますが、制度のうえでは放課後児童クラブ(学童クラブ)と放課後等デイサービスの併用は可能です。また、相談支援員や各施設の職員に連携を依頼することもできます。放課後児童クラブに通所しつつ、週1日は放課後等デイサービスで、少人数で特性に合わせた療育の支援を受けるなど、併用するケースもあります。まとめ出典 : 「放課後児童クラブ」(学童クラブ)は、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与え、その健全な育成を図るものです。障害のある子どもの受け入れも行いますが、実際の支援体制は、市町村や各施設、タイミングなどによっても大きく異なります。発達障害やその傾向のある子どもが利用できるかどうか、個別の配慮を受けられるかどうかは問い合わせて確認してみましょう。
2021年03月29日【おとな向け映画ガイド】『天国と地獄』に似てる!? 連続殺人鬼が女子高生に『ザ・スイッチ』と、幸せの国『ブータン 山の教室』。今週はこの2本をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明21/3/28(日)野村正昭さん(映画評論家)「……クリストファー・ランドン監督が手がけただけあって、さすがの出来栄え!……」世界で一番幸せな国で…『ブータン 山の教室』ブータン王国は10年ほど前、若き国王夫妻が来日し、ちょっとしたブームになったことがありました。GDPよりGNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)の方が重要だという国です。そのブータンで作られた、まさに心洗われる映画です。首都のティンプーに暮らす、ipodを手放さない音楽好きな若い教師ウゲンが、上司の命令で僻地の学校に赴任します。学校は春から秋までの季節開校。冬までの約束です。ティンプーは標高2300メートル前後、赴任地のルナナ村は4800メートル。途中のガサまではバス、そこからはトレッキング、つまり山登りしか手段がなく、しかも8日もかかるのです。村に到着するやいなや「僕にはできません」と弱音をはいたウゲンですが、純朴そのものの生徒たちとの暮らしのなかで、何かが変わっていきます……。プロの俳優はウゲン役の新人シェラップ・ドルジと若い数人のみ。村人や生徒たちは実際にルナナに暮らす人々が自身を演じています。特に、クラス委員役を演じるペム・ザムは奇跡ともいえるかわいさ。観ているだけでなごみます。監督はパオ・チョニン・ドルジ。この作品が長篇デビュー作です。写真家でもある監督、ブータンの大自然をとらえた映像美は、やはり映画館のスクリーンで観てこそ、と思います。【ぴあ水先案内から】立川直樹さん(プロデューサー、ディレクター)「……ブータンから“幸せとは何なのだろうか”と考えさせてくれる映画が登場した。……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……ゆっくりと心が広がる感覚を映画で味わい、主人公の青年に自分をシンクロさせながら気づくもっとも大切なこと。」紀平重成さん(コラムニスト)「……最初は村の暮らしや人々の語らいがあまりにも純朴過ぎて少々居心地は悪かったのですが、突然理由もなく涙がこぼれ出し慌てました。」夏目深雪さん(著述、編集業)「……田舎の学校で子供たちを教えるという物語には想像以上のものはない気がするが、これが筆舌に尽くしがたい素晴らしさ。……」首都圏は、4/3(土)から神保町・岩波ホールで公開。中部は、4/24(土)から名演小劇場で公開。関西は、4/30(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2021年03月28日【おとな向け映画ガイド】米アカデミー賞主要6部門ノミネート!『ノマドランド』など、ぴあ水先案内人がすすめる4本をご紹介ぴあ編集部 坂口英明21/3/21(日)笠井信輔さん(フリーアナウンサー)「……様々な人間模様が美しい大自然の中で描かれる本作。劇場の大画面で見てこそ、その良さがわかる作品だ。……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……老いた彼らの表情には人間関係からの苦しみだとか家族への愛よりも、もっと深い人類愛のようなシワが刻まれている。」佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト)「……リアルにアメリカ人の苦境とそこで培われてるたくましさを描き出している。……」佐藤久理子さん(文化ジャーナリスト、パリ在住)「……主人公の旅路に瞠目するうちに、自分も彼女とともに新しい世界を発見していることに気付かされる傑作。」相馬学さん(フリーライター)「……混迷の2021年を生きる現代人にとって、ひとつの指針になるだろう。……」高松啓二さん(イラストレーター)「……圧倒されるのは、ノマドキャンプや国立公園のアメリカの大自然描写……」堀晃和さん(ライター、編集者)「……アメリカの新たな一面を見せられた気分になった。」渡辺祥子さん(映画評論家)「……雄大な景色の中で生きている孤独な自分。でも行きたい道を自分で選べる人生だ。……」大泉洋に「あてがき」したベストセラー小説を映画化『騙し絵の牙』大手老舗出版社を舞台にした業界内幕ドラマも、大泉洋主演だとこんなに軽快でスリリングなエンタテインメントになるのですね。『罪の声』の著者・塩田武士が大泉洋主演を想定し「あてがき」した評判の小説を映画化。一族経営の出版社にありがちな跡目争いに端を発した派閥抗争まっただなかに、外部から招かれた大泉扮する新編集長の活躍を描きます。現社長の息子・中村倫也の後見人である常務に佐野史郎。彼は会社の看板を背負う小説誌を配下に持ちます。一方、次期社長と目される専務の佐藤浩市は“スキャンダラスな話題だろうと売れれば正義”のカルチャーマガジン担当、この2誌の社内ヘゲモニー争い。そこへ社長が逝去。がたつく社内の混乱に油をそそいだのは大泉編集長がうちだした新手です。炎上覚悟のその秘策とは……。個性派の俳優たちが豪華に並びます。編集者役で松岡茉優、木村佳乃、小説家に國村隼、宮沢氷魚、文芸評論家に小林聡美、謎の男のリリー・フランキー、人気モデルの池田エライザなど。監督は『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八です。【ぴあ水先案内から】笠井信輔さん(フリーアナウンサー)「大満足! ほんと痛快。……ほんとに『出版業界の半沢直樹』だった。……」相田冬二さん(ライター、ノベライザー)「……大泉洋のダンディズムを、意外なかたちで炙り出した……」中川右介さん(作家、編集者)「……陰謀と裏切りの二転三転は、小説以上。……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……登場人物全員がしっかりと個性を輝かす場を与えられ、皆がワクワクしながら演じているのが伝わってくるから楽しいのなんの。」堀晃和さん(ライター、編集者)「……ぜひ『牙』に込められた意味も見逃さないでほしい。」“水の精・ウンディーネ”の神話が現代に『水を抱く女』「愛する男に裏切られたとき、その男を殺して、水に還らなければならない」という、水の精(ウンディーネ/オンディーヌ)の神話を現代によみがえらせた幻想的なラブストーリーです。ミステリアスでしかも妖艶なヒロイン、ウンディーネを演じているのはパウラ・ベーア。本作品で、ヨーロッパ映画賞女優賞やベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞しています。ウンディーネは歴史研究者。ベルリンにある都市開発模型を展示する博物館でガイドをしています。展示物や彼女が語るベルリンの歴史も興味をそそります。繰り返し使われる音楽はバッハの協奏曲ニ短調。細部にこだわりが感じられる、ヨーロッパ映画です。監督は名匠クリスティアン・ペッツォルト。【ぴあ水先案内から】佐藤久理子さん(文化ジャーナリスト、パリ在住)「……情熱的なラブストーリーとヒッチコック風のサスペンスが融合し、先の読めない面白さに引きずられる。」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……驚きの連続が待ち受ける究極の愛情表現……」野村正昭さん(映画評論家)「……博物館にあるベルリン全体の模型や、大きな水槽などがミステリアスに絡みあい、やがて現実とも幻想ともつかない結末になだれ込む……」首都圏は、3/26(金)から新宿武蔵野館他で公開。中部は、4/16(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、4/16(金)からテアトル梅田他で公開。親子の逃避行、そして父の決意『旅立つ息子へ』自閉症スペクトラムを抱える息子と田舎町で暮らす父親。このまま自分が面倒をみられればよいのですが、定収入もなく、裁判所からは養育不適合と判断されてしまいます。このままだと全寮制の特別支援施設に預けることになります。入所の当日、いやがる息子をみて父は決意します。この場から逃げ、ふたりで旅に出ようと…。東京国際映画祭で『ブロークン・ウィング』『僕の心の奥の文法』と2度グランプリを受賞したイスラエルのニル・ベルグマン監督作品。実話を基にした映画です。息子がとても個性的。例えば、チャップリンの『キッド』が好きという設定なんて、とても好感が持てます。【ぴあ水先案内から】佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト)「……単純な美しい物語にしておらず、地に足ついた現実を見据えながらつくられている……」渡辺祥子さん(映画評論家)「……いつの間にか愛する息子の世話をすることが生きる目的になっている父親の姿を描くドラマだ。しかし、そんな日々に新たな扉が開く時がくる。……」野村正昭さん(映画評論家)「……イスラエル出身のニル・ベルグマン監督は、文化や言葉の壁を越えて我々に率直に心情を伝えてくる……」
2021年03月21日メゾン マルジェラ(Maison Margiela)とリーボック(Reebok)によるコラボレーションスニーカーの新作「クラブ シー メゾン マルジェラ(Club C Maison Margiela)」が、2021年3月24日(水)よりリーボック クラシックストア 原宿などで発売される。今季、リーボックを象徴するモデル「クラシックレザー」を、“足袋”に着想を得たメゾン マルジェラの「タビ」シューズに再構築した「クラシックレザー・タビ」をリリースし、話題を集めた両者。次なる新作は、リーボックを代表するモデル「クラブ シー(Club C)」と、メゾン マルジェラが得意とする「トロンプルイユ(だまし絵)」を融合させた。注目したいのは、メゾン マルジェラのコードであるトロンプルイユをプリントで表現したアッパーデザイン。「クラブ シー」の立体的なステッチや曲線、影が、フラットレザーの上にまるで実際に施されているかのようにプリントされている。また、シュータンには、両ブランドのロゴを配したオリジナルのタグがあしらわれている。今回発表されるカラーは、ブラックとホワイトの2色となる。【詳細】「クラブ シー メゾン マルジェラ」発売日:2021年3月24日(水)販売店舗: リーボック クラシックストア 原宿、一部セレクトショップ、メゾン マルジェラ 公式オンライン、リーボック 公式オンライン、阪急百貨店オンラインストア、三越伊勢丹オンラインストアカラー:ホワイト、ブラック価格:各35,200円(税込)【問い合わせ先】メゾン マルジェラ トウキョウTEL:03-5725-2414
2021年03月20日春の登山シーズン!いよいよ到来蒜山ガイドクラブでは「擬宝珠山(ぎぼしやま)カタクリトレッキングツアー」を2021年4月30日(金)に開催します。同イベントでは、岡山県北部の雄大な自然、色々な種類の山野草を楽しみながら約2時間のトレッキングを楽しみます。満開のカタクリの花に出会えるかも蒜山は、蒜山高原を始めとした自然豊かな地域で西日本屈指の高原リゾートとして人気があります。蒜山には、蒜山三座をはじめとしてトレッキングを楽しめる山々が多くの山があります。今回のツアーは、鳥取と岡山の県境にある「擬宝珠山」を歩きます。登山道が整備されておりトレッキング初心者で歩きやすい山です。擬宝珠山の春は、春の妖精とも言われるカタクリの花に会いに行きます。トレッキングツアーの概要カタクリトレッキングツアーは、休暇村奥大山レストハウス前駐車場(鏡ヶ成)に集合し、擬宝珠山へ登ります。参加費は、大人2,000円、小学生1,000円、定員は30名程度(最少催行人数3名)です。今回のツアーでは、カタクリの花以外にもチゴユリ、ミヤマカタバミ、ショウジョウバカマ、サンカヨウなどに出会えるかもしれません。自然を楽しみたい人に、おすすめしたいイベントです。(画像は蒜山ガイドクラブ公式サイトより)【参考】※擬宝珠山カタクリトレッキングツアー※蒜山ガイドクラブ公式サイト
2021年03月19日【おとな向け映画ガイド】米アカデミー賞有力候補『ミナリ』など、ぴあ水先案内人おすすめの4本をご紹介ぴあ編集部 坂口英明21/3/14(日)佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト)「……おばあちゃん役の人の演技が絶品。ちょっと毒舌で過激で、でも憎めなくて、好人物っていうキャラクターって昔の日本映画にはよく登場してた。そういう懐かしさも含めて、日本人的な情緒でも共感できる物語。……」渡辺祥子さん(映画評論家)「……最悪の事態になってもきっと乗り越えられる、と思える温かみがあって胸をなでおろす。」紀平重成さん(コラムニスト/元毎日新聞記者)「……複数のルーツを持つカマラ・ハリスさんがアメリカ副大統領になったことも、語られるべき移民の歴史が無視できないほどに大きな潮流となっている」植草信和さん(編集者/元キネマ旬報編集長)「……主題歌が我が国のテレビドラマの名作『北の国から』に類似していることもあって、親子の情愛に感動させられる。」会話のテンポが抜群に楽しい!『まともじゃないのは君も一緒』数学一筋の予備校教師(成田凌)に、恋愛経験ゼロの教え子(清原果耶)が、いかにして女の子と付き合うか、をコーチする、そんなラブコメですが、傑作です。ちょっと小生意気な女子高生、とんちんかんでどこかまともじゃない独身男、ふたりの会話のやりとりは、おしゃれなハリウッド・スクリューボール・コメディのようです。いや、おおげさじゃなく。【水先案内人のコメントから】笠井信輔さん(フリーアナウンサー)「……またも清原果耶にやられてしまった。この人はどうしてこうも芝居がうまいのだろう。……」ダメサッカーチームを救ったのは?『クイーンズ・オブ・フィールド』フランスで90年の歴史を誇るサッカーのクラブチーム。試合中にまさかの大乱闘騒ぎを起こし、メンバー全員が出場停止になってしまいます。控えはなし。このまま行くとチーム存続の危機です。そこでたちあがったのは、選手の妻たち。ある奇策を思いつきますが……。肩のこらない、遊び心満載のコメディ作品です。【水先案内人のコメントから】夏目深雪さん(著述・編集業)「……女たちの疾走と反撃が加速しこのうえない爽快感を生む。……笑って感動できる大人のための作品。」ライブビューイング『メリー・ウィドウ』NYメトロポリタン・オペラの舞台を収録し、映画館で上映するMETライブビューイング。コロナ禍で公演がなく、新作はありませんが、過去の名作を集めた「プレミアム・コレクション2021」の連続上映が始まっています。2月の『椿姫』に続いて、19日からはレハールの『メリー・ウィドウ』を公開。古き良きパリを舞台にリッチで陽気な未亡人をめぐるロマンチック・コメディ。当代随一といわれるソプラノ、ルネ・フレミングが主演の舞台です。【水先案内人のコメントから】朝岡聡さん(コンサートソムリエ/フリーアナウンサー)「……歌も芝居も衣装もセットもMETならではの贅沢さいっぱいで届けられる。これぞ、究極のオペレッタの楽しみ!」
2021年03月14日【おとな向け映画ガイド】残された人生あと92分!『ワン・モア・ライフ!』と、新感覚のサスペンス・ホラー『ビバリウム』の2本をオススメぴあ編集部 坂口英明21/3/7(日)イラストレーション:高松啓二今週末(3/12・13)に公開される映画は11本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『ブレイブ ‐群青戦記‐』『映画しまじろう「しまじろうと そらとぶふね」』の2本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『ワン・モア・ライフ!』交通事故に遭い、突然天国に召された中年男のパオロが、天国の入口で、「こんなに寿命が短いはずがない。野菜のスムージーだって飲んでいたのに!」と猛反発します。「野菜のスムージー?」、受付係の天使(でしょうか? 老人ですが)が、待てよ、と反応。調べてみると、スムージーのことは寿命の計算に入っていませんでした。申し訳ない、前代未聞のこちらのミスだ、とパオロはスムージーの分だけ、地上に戻されることになります。その時間は、92分!というわけで、人生があと1時間半、映画1本分にもみたないとしたら、自分なら何をする?てなことを考えながら、楽しんでいただきたいイタリアのコメディです。映画に天国の入口はよく登場します。『素晴らしき哉、人生!』や『天国から来たチャンピオン』といった名作が頭に浮かびます。死者を迎え入れてくれるのは大抵、人の良さそうな男性の天使。本作でも、メガネをかけ、白い顎髭を蓄えた天使がパオロに与えられた92分の地上生活を見張ることになります。演じているのはレナート・カルペンティエーリ。イタリアの名優です。『取るに足らない幸せの瞬間』と『取るに足らない不幸の瞬間』というイタリアでベストセラーになった短編集が原作です。人生において取るに足らないことだけれど「それ、あるある。私もある。」と共感するような瞬間をスケッチのように書き連ねたものだそうです。それをダニエーレ・ルケッティ監督は、著者のフランチェスコ・ピッコロとともに脚本化しました。主役のパオロ役に抜擢されたのは、俳優のみならず、脚本家、監督、テレビ司会者など多彩な活躍をするピエールフランチェスコ・ディリベルト。自分勝手で楽天的に生きてきたパオロが「死んでみて」初めて気づいた家族の大切さ、でも与えられた時間はごくわずか! 彼に何ができるのか?撮影の舞台になった、イタリア・シチリア島のパレルモという町がなんとも素敵です。1990年代までは犯罪組織コーザ・ノストラが牛耳る町だったそうです。『ゴッドファーザー』にもでてきましたね。今では人気の観光地です。こういう人生讃歌の映画に、ぴったりです。首都圏は、3/12(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、3/12(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、3/13(土)から名演小劇場で公開。関西は、3/12(金)からテアトル梅田他で公開。『ビバリウム』タイトルバックに、エサをせがむ鳥のひなが映し出されます。ところが、このひな、ちょっと変。実はカッコウのひなでして。カッコウは他の鳥の巣にそっと卵を産み落として、子育てを代行させるのです。托卵、という習性だそうです。あこがれの新居を求め、開発中の新興住宅地を訪れたカップル。案内してくれたのは、挙動がなんとなくおかしい不動産屋のセールスマン。しかし、内見の途中で彼が姿を消してしまいます。やむなく、カップルは車で分譲地を去ろうとするのですが、どうしてもここから外に出られない。どこまでも同じ住宅が並び、気づけば、内見した家の前にまた戻ってしまいます。いつの間にか、家には食料が届けられ、翌朝は、乳児の入った段ボールが玄関の前に置かれています。そこには「育てれば解放される」という謎のメッセージが! つまりこれは、托卵!?カップルには事情が飲み込めません。どうしたら良いのか。これは誰の陰謀なのか。なんとかここを抜け出そうと、ふたりは悪戦苦闘します。そして次第に精神が崩壊していくのです。それでも食料はきちんと届けられ、赤ちゃんは、驚くほど短い間に成長していき、「ママ」と呼び出し始めます。ベルギーとデンマーク、アイルランドの合作で、監督はアイルランド出身のロルカン・フィネガン。使われている言語は英語です。カンヌ国際映画祭の批評家週間でプレミア上映され、新しいクリエイター発掘を奨励するギャン・ファンデーション賞を受賞しています。主人公のカップルは、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグと『グリーンルーム』のイモージェン・プーツ。舞台は謎、ヨーロッパのどこかみたい。住宅地はライトグリーンを基調にして、おしゃれです。絶叫ホラーではなく、恐怖はさざなみのようにやってきます。バックにそら恐ろしい世界がひかえているような、不気味なサスペンス・ホラー。上品な作りですが、それだけに途中の、あっと驚く仕掛けは効果的です。
2021年03月07日【おとな向け映画ガイド】韓国プロ野球に挑戦する『野球少女』と、ベトナム戦争秘話『ラスト・フル・メジャー 』の2本をオススメぴあ編集部 坂口英明21/2/28(日)イラストレーション:高松啓二今週末(3/5)に公開される映画は13本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『太陽は動かない』『野球少女』『ラーヤと龍の王国』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が10本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『野球少女』高校球児に性別は関係ないはずですが、男子をイメージしてしまいます。それがプロ野球選手となれば、なおさら女子は考えにくい。でも現在、規約上では女子もあり得るのです。これは、ひたむきな女子高生が本気で男性と同じプロリーグに挑む!という韓国映画です。リトルリーグで野球を始め、天才少女といわれ、高校でも野球部で活躍する主人公チュ・スイン。彼女のプロへの道を阻むものは? 社会の偏見、親の反対、それもありますが、最大の壁は身体能力、体力の差でした。スインは球速130キロを投げる力があって、女子では最高レベル。けれども、プロの男子にはその上が沢山います。これではプロテストには受かりません。どう乗り越えるか……。ひとりのコーチとの出会いで、道が開けていきます。コーチは、スインのピッチングの特徴からある秘策を提案するのです。さっしのいい野球好きなら、ははーんあの手かな、と思い当たるでしょう。日本のコミックで映画にもなった先駆者『野球狂の詩』では、ヒロイン水原勇気がドリームボールをあやつり、大活躍をしました。スインも、魔球とはいいませんが、変化球に活路を見いだします。これも大変な練習が必要ですし、マスターしたとしても、プロの壁は相当厚い。それでも夢に向かって突き進むスインに周囲も動かされていきます。スインを演じるのは大ヒットドラマ『梨泰院クラス』でブレイクしたイ・ジュヨン。ピッチングもとても自然ですし、唇をかみしめ、前を見続ける負けず嫌いな姿に、思わずエールを送りたくなります。閉塞状況の今日このごろ、観終わって、自分も元気をもらったような気持ちになる作品です。『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』1975年に終結したベトナム戦争。アメリカにとって悪夢のような負け戦です。過酷な戦場のトラウマに加え、帰還したあとも冷たい扱いを受けて、精神的に大きな痛手を負った兵士が多いとききます。そのベトナム戦争下の1966年、作戦遂行中にベトコンの待ち伏せにあい、全滅寸前となった地上部隊をヘリで救援に向かい、傷ついた多くの兵士を救出し、自らは戦死した、ある空軍医療兵の実話です。兵士の名はウィリアム・H・ピッツェンバーガー。戦友や彼に命を救われた兵士たちが、アメリカの軍人にあたえられる最高の栄誉である“名誉勲章”を彼に授与してほしいと請願します。しかし彼に与えられたのは、空軍十字章だけでした。それから30年間、請願は続き、クリントン政権下で実を結ぶことになります。映画は、国防総省のエリート職員スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)による関係者への聞き取り調査と、激戦の再現が並行して描かれます。調査が進むなかで、請願が無視され続けた理由、隠ぺいされていた真相が明らかになっていきます。生き残った兵士たちが語る戦闘の様子だけでなく、彼らの復員後の生き方、おかれた立場、不安定な精神状態といった厳しい現実がこの映画のもうひとつのテーマといってよいでしょう。特筆すべきは、名優たちを起用した豪華なキャスティングです。ウィリアム・ハート、ジョン・サヴェージ、サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス……まるでハリウッド70-80年代「脇役グラフィティ」のような顔ぶれです。エンド・クレジットでは「ピーター・フォンダを偲んで」という献辞が書かれていましたが、ピッツェンバーガーの父親役で出演していたクリストファー・プラマー(21年2月5日没)にとっても遺作となりました。タイトルの『ラスト・フル・メジャー』はリンカーンの演説から。「最後の全力を尽くして」といった意味です。まさに。首都圏は、3/5(金)からシネマート新宿他で公開。中部は、3/5(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、3/6(土)から名演小劇場で公開。関西は、3/5(金)からシネマート心斎橋他で公開。
2021年02月28日【おとな向け映画ガイド】異色の2本をオススメ。息子のゲイバーを相続した『ステージ・マザー』、男性が『MISS ミス・フランスになりたい!』ぴあ編集部 坂口英明21/2/21(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/26・27)に公開する映画は23本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『あのこは貴族』の1本、中規模公開とミニシアター系の作品が22本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『ステージ・マザー』都会で小さな店を経営していた息子の訃報をきいて、田舎から出てきた母が、持ち前の明るい性格と周りの人たちに助けられ、傾きかけていた息子の店を見事に盛り返し、めでたしめでたし、という下町人情物語なんですけど。舞台がサンフランシスコ、息子がドラァグクイーン、店はショーを売り物にするゲイバーとなると、ドラマは急に現代的な様相を呈します。この設定で、もう勝ったも同然と言いましょうか、期待を裏切らない面白さと充実感のある作品です。母メイベリンが住んでいるのは米南部テキサス。今回トランプ元大統領は負けましたが、とても保守的な地区です。息子のリッキーは勘当状態。夫は訃報を聞いても動こうとはしません。彼女は夫の反対を押しきって最愛の息子の葬儀に駆けつけます。サンフランシスコ、カストロ・ストリートといえば、世界有数のLGBTQ+コミュニティがあることで知られています。リッキーはそのなかで、ゲイバーを経営していました。人気者で、パートナーもいます。不慮の死だったため、遺書もなく、なんと店の経営権はメイベリンが継ぐことに。経営はうまくいっておらず、大した価値はない。どうせつぶしてしまうんだろという周りの冷たい視線の中で、息子の想いを繋ごうと、決意するメイベリンですが……。メイベリンを演じるのはジャッキー・ウィーヴァー。最近では『チア・アップ』でダイアン・キートンとチアリーダーにチャレンジするシニア役が印象に残ります。そんなに美形ではないけれど、愛嬌があって、観ているうちにどんどん魅力にハマっていきます。他に『キル・ビル』などでおなじみのアジア系女優ルーシー・リューが、息子の友人で子供を持つ自由奔放な隣人の役。メイベリンを応援するひとりです。監督はトム・フィッツジェラルド。クラシックなハリウッド・コメディに、自立する女性を描く映画の要素を加え、『キャバレー』のように華やかなショーで味付けしたハートウォーミング・コメディに仕立てています。『MISS ミス・フランスになりたい!』男性しか門戸が開かれていない世界に女性が挑戦しパイオニアになる、実話の映画化も含めてそういった作品はいくつもあります。女性オンリーの世界への男性進出も、主夫ものとか、ないわけじゃない。しかし男性がミスコンに、というのは思いつきませんでした。子どもの頃に将来何になりたいかと聞かれ、ボクサーになりたい、サッカー選手になりたいとクラスメートがいいます。アレックスの夢はミス・フランスになることでした。それから幾星霜。24歳になった彼は、その夢の実現に向けて動き出します。そう考えてもおかしくないほど彼は美しいのです。パリのごたごたした下町の下宿屋。ごうつくばりだけれど生きる知恵のある家主、少々とうが立った女装の娼夫、起業を目指すIT系の移民青年、インド人のお針子さんたちといったさまざまな住人と友人の助けをかり、男性であることを隠して「ミス・フランス」コンテストに挑戦します。アレックスは偽造パスポートを手に入れ、まず、パリを中心にした「イル・ド・フランス」地区の予選に参加します。ミスコンなんて、美女を選ぶ男性社会が作り出した遺物なんじゃないの、と思っている人がいるとしたら、驚くと思います。コンテストで重視されるのは受け答え。女らしさ、よりも自分らしさ、自己表現です。アレックスは見事な受け答えで優勝。全国大会に進出します。さて、ここからどんな展開になるか。全国から地区代表が一箇所に集められ、共同生活や旅をしながら決勝に進む、その過程のすべてが審査対象です。この年は、ベルギーへエコ旅行という設定。海岸でゴミ拾いをしたり、産業廃棄物処理場で撮影、もちろん、エコに対する姿勢も大きな審査です。ミス・コンテストというイベントそのものも見どころなのです。ジャン=ポール・ゴルチエのレディースコレクションに出演し話題となったフランスのジェンダーレス・モデル、アレクサンドル・ヴェテールの映画初主演作。この存在感なしではあり得ない企画です。そんな彼の魅力に加え、主人公をとりまく人間模様も多様性に富んでいて、奥深い映画になっています。首都圏は、2/26(金)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、2/26(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、2/27(土)から名演小劇場で公開。関西は、4/2(金)からテアトル梅田他で公開。
2021年02月21日おとな向け映画ガイド人生、最期はこうありたいー『痛くない死に方』と、ISによる監禁からの解放を描く『ある人質 生還までの398日』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明21/2/14(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/19・20)に公開する映画は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』『ライアー×ライアー』『あの頃。』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。そのなかから『痛くない死に方』と『ある人質 生還までの398日』の2本をご紹介します。『痛くない死に方』臨終の席。息を引き取ったばかりの祖母を家族が囲み、医者も入って、「おばあちゃんありがとう、お疲れ様でした」と記念写真を撮る。これはあり?痛くない治療をめざしたはずが、患者に苦しみの最期を迎えさせてしまうことが続き、思い悩む若い在宅医療医が、先輩医師に同行して見た看取りのシーンです。痛みもなく、生を全うし、家族に見送られての最期なら、故人も家族もきっと喜んでくれるんじゃないか。白衣を身に着けず普段着で在宅診療を続ける型破りな先輩医師はそういいます。悩める若い医師・河田役は柄本佑。先輩医師・長野は奥田瑛二が演じています。河田は長野のクリニックで働くようになります。「大病院の医者は臓器という断片を見る、俺たち町医者は物語を見る。患者の人生と向き合うんだ」と語る長野の治療法は、河田にとって驚くことの連続です。実は、長野にはモデルがいます。日本の在宅医療のスペシャリストで尼崎市の町医者、長尾和宏さん。彼の著書『痛くない死に方』『痛い在宅医』がこの映画の原作です。脚本も担当した高橋伴明監督は、長尾さんご自身ではなく、『赤ひげ』で加山雄三が演じた新米医師・保本を彷彿とさせる河田を主人公にし、彼の成長物語のなかで、医師はどうあるべきか、人はどう死と向き合うのか、平穏死、尊厳死を問います。長野のもとで2年がたち、河田は、大病院から在宅医療に変更したステージ4の肝臓がん患者・本多さんを担当します。演じているのは、高橋監督の代表作『TATTOO〈刺青〉あり』で主演した宇崎竜童。その妻役は大谷直子です。彼らの視点で、直面する在宅医療、延命治療、リビング・ウィル(生前意思)、もっと具体的に食べること、待ってくれない痛みといった問題も描かれます。ラスト近く、息をひきとったあとで、妻が夫にかけた言葉。こんなことをいわれたら最高だな、と思いました。ぜひ、映画館できいて下さい。首都圏は、2/20(土)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、2/20(土)からミッドランドスクエアシネマ名古屋他で公開。関西は、3/5(金)からテアトル梅田他で公開。『けったいな町医者』『痛くない死に方』で奥田瑛二が演じた医師長尾和宏を描いたドキュメンタリーが同時公開されています。兵庫県尼崎市の在宅医、2500人を看取り、幸せな最期とは何か、を追求する長尾医師に密着し、その日常を追います。監督・撮影・編集は毛利安孝。ナレーションを柄本佑が担当しています。『ある人質 生還までの398日』イスラム過激派の人質となり、13ヶ月拘束されたデンマーク人写真家の、実話をもとにした、いわば再現ドラマです。拷問、監禁の想像を絶する様子と、彼を救いだすために奔走する家族の行動が並行して描かれます。日本人ジャーナリストの拘束や、時には処刑されるというショッキングなニュースで断片的に伝わるこの種の事件の真実に迫る映画です。2013年から14年のシリア。イスラム過激派組織のIS(イスラム国)は活動の初期段階です。このあと、16年にかけて支配拡大していく、その前段階で数十名の西欧人を人質にとりました。この映画の主人公ダニエルも人質のひとりでした。22歳。デンマーク体操チームの一員でしたが、怪我をしてリタイア。もともと憧れていた写真家の道を選び直し、キャリアを積み始めたばかりの新米です。戦場を撮ろうとしたわけではなく、紛争下の庶民の暮らしがテーマでした。取材は非戦闘地区で、夜になれば隣国のトルコに引き上げる。自由シリア軍の許可もとり、現地の人にエスコートもされて、安全なはずでした。が、過激派にあっというまに捕らえられます。デンマーク政府はテロリストとは交渉しないという方針。窮地に立たされたダニエルの父母と姉は、何とか彼を救おうと人質救出のプロと連絡をとります。実行犯とのコンタクト、交渉、そして何より大変なのは法外な身代金の調達です。最終的に、約2億8500万円まで膨れ上がります。監督は、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で世界的に知られるデンマークのニールス・アルデン・オブレヴと、人質解放のプロ役で出演もしているアナス・W・ベアテルセン。デンマークのジャーナリスト、プク・ダムスゴーが『ISの人質 13カ月の拘束、そして生還』としてまとめたノンフィクションを原作にしています。生死の狭間で、人質たちが必死で助け合う姿も感動的です。究極の恐怖を受けながらも、「ヤツらの憎悪に負けたくない。僕の心にあるのは愛だけだ」と語り皆を励ますアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーもつらい死をとげます。拘束されたダニエルはもちろんですが、「無力という精神的拷問に何ヶ月も耐えなければならない」(監督のコメントから)一般人である家族の日々に心が痛みます。あってはならないことです。
2021年02月14日おとな向け映画ガイド役所広司がうますぎ! 西川美和監督『すばらしき世界』と、おとなのファンタジー『マーメイド・イン・パリ』をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明21/2/7(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/11〜13)に公開する映画は18本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『ファーストラヴ』『すばらしき世界』『劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」《後編》』『名探偵コナン 緋色の不在証明』の4本、中規模公開とミニシアター系の作品が14本です。そのなかから『すばらしき世界』と『マーメイド・イン・パリ』の2本をご紹介します。『すばらしき世界』笑福亭鶴瓶が偽医者を演じた『ディア・ドクター』、松たか子と阿部サダヲの結婚サギ師『夢売るふたり』といった、個性的な犯罪者をとりあげ、善悪あわせもつ人間の複雑な心理を描き続けてきた西川美和監督、5年ぶりの新作です。実在の人物をモデルにした佐木隆三の小説『身分帳』を映画化したもの。早くもとびだした2021年ベストムービーといっていい傑作だと思います。役所広司演じる主人公・三上正夫は、前科10犯、殺人の罪で旭川刑務所を出てきたばかりです。強面ですが、ちょっといい男でどこか愛嬌があり、実直そう。ただし背中や腕にタトゥーあり。心を入れ替えて「今度こそ堅気ぞ」という言葉に偽りはないのだけれど。殺した男について問われると「いきなり刀を持って乗り込んできたんだ、あのバカが」と急に感情をむき出しにして、激昂します。チンピラ集団がサラリーマンを脅しているのを町でみかければ、黙っていられず、あっというまにチンピラたちをボコボコにしてしまう。直情径行、正義感の人です。しかも腕っぷしが強い。安アパートでのひとり暮らし、生涯の多くを刑務所で過ごした男の部屋は小綺麗です。ミシンとか裁縫も上手。そんな不思議な魅力を持つキャラクター。役所広司は、もうハマりすぎ、憑依したような演技です。その三上をとり巻く人々。できれば接したくないのに関係せざるを得ない人、好意的につき合おうとする人、それぞれのとまどいながら対応する姿や心理描写、人間模様が、とてもきめ細かく描かれていて、しかもいい役者さんを揃えています。この作品のもうひとつの魅力です。彼に目をつけ、その更生の過程をとりあげようと近づくテレビマンふたり。相手の事情を忖度せずにずんずん食い込むプロデューサー役の長澤まさみと、三上の人間味に惹かれていくディレクター仲野太賀。旬な役者のなんとぜいたくな起用。最初は万引をしたと疑い、逆ギレされてびびるスーパーの店長に六角精児。“反社”の人は生活保護は受けられませんとつっぱねながら、なんとか救う手立てがないかと考えるケースワーカーに北村有起哉。他にも、橋爪功と梶芽衣子は身元引受人の弁護士夫妻、やくざ仲間の白竜とその妻キムラ緑子。助演賞がいくつあってもたりません。世の中は敵ばかりではない。きっと手をさしのべてくれる人がいる。確かに不寛容で生きにくい世界ではあるけれど。観た人により、ちがう受け止め方ができる奥深いタイトルです。『マーメイド・イン・パリ』パリに出没すると、人魚姫もポップでおしゃれです。大洪水でセーヌ川に迷い込んでしまった人魚、名前はルラ。美しい歌声で男の心を虜にし、ついには心臓を破裂させてしまうという能力を持っています。その力で自分の身を守っていました。ある日、彼女が負傷して川岸に打ち上げられていたところを、パフォーマーのガスパールが助けます。自宅に連れ帰り、とりあえずバスタブへ。やがて、めざめたルラは、いつものように歌い出すのですが、ガスパールには効きません。彼は失恋の痛みで、恋する心を失っていたのです。と、文字にすると、ププッと一笑にふされるかもしれませんが、これぞファンタジーですから。このあと、ふたりに恋心が生まれ、ルラは海にもどらなければならない、というストーリーもおなじみのもの。そんなメルヘンのような世界をオススメするわけではありません。フランスのティム・バートンともいわれる監督、マチアス・マルジウの作品です。夢見ごこちなだけでなく、毒気もあります。ルラ(マリリン・リマ)は可愛いだけでなくセクシー。イケメンのガスパール(ニコラ・デュヴォシェル)は王子様キャラというよりは不器用なオタク。そんなふたりのロマンティック・コメディ。これぞ、おとなのためのファンタジーです。それをさらに魅力的にしているのは、はじけるようなマルジウのビジュアル・センスです。ガスパールがパフォーマーとして働く、川に浮かぶ老舗のバー「フラワーバーガー」で繰り広げられる妖艶なフレンチショー、石畳のパリはまるでポップアップ絵本のなかの街のようです。ガスパールが住む家も、おしゃれな小物やフィギア、色とりどりのブリキのおもちゃやドールであふれ、ヨーロッパのアンティークショップのようで目が離せません。ふたりを見守るジョニー・キャッシュと名付けられた猫、スペインの名優ロッシ・デ・パルマが演じるお隣の世話焼きおばさんも愉快な脇役です。とにかく細部に凝っているのです。アンデルセンやディズニーというよりは、今でもファンの多い寺山修司が、宇野亜喜良とともに作り出した人魚姫を思い出しました。人魚の真珠の涙、なんてまさに。
2021年02月07日おとな向け映画ガイドこんな映像は観たことがない! 中国新世代が描く現代の山水画『春江水暖』と、スクープ満載の『ディエゴ・マラドーナ』。ぴあ編集部 坂口英明21/1/31(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/5・6)に公開する映画は10本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『樹海村』『哀愁しんでれら』の2本、中規模公開とミニシアター系の作品が8本です。今回は、2/11公開の『春江水暖』と今週公開の『ディエゴ・マラドーナ二つの顔』の2本をご紹介します。『春江水暖~しゅんこうすいだん』古典の風格を持った傑作が誕生した、とやや興奮気味におすすめしたい中国映画です。山水画という絵画ジャンルがあります。背に山を抱き流れる川、岩や樹木や、ときに人間を自然の一部のように配した風景画。この映画には、まさに「現代の山水画」の趣きがあり、描かれるドラマも大きな川の流れのように、ゆったりと、さまざまな人生をのみこんで進みます。上海の南に位置する杭州市 富陽が舞台です。富春江という大河があり、歴史は秦朝まで遡る古い街。2022年にアジア競技大会がこの地で開催されるため、街全体が大改装中。映像でとらえると、山水画の山は、高層ビルにとって変わられつつあります。この街に住むある大家族。家長の老母を中心に、四人の息子、その妻や孫たちに起きること、その波紋やいさかい、苦悶が、四季折々の行事とともに繊細に描かれます。母の誕生日を祝う宴から始まり、満月の秋があり、雪の旧正月、そして富春江の水も暖む春。辛いこともあれば、楽しいこともある。わたしたち日本人も共感できる、すこし懐かしくもある風景です。この作品がデビュー作という、まだ33歳のグー・シャオガン監督は、『悲情城市』『ヤンヤン 夏の想い出』『東京物語』、そして『ゴッドファーザー』といった家族を描いた名作に影響を受けているようです。富陽は実は監督のふるさと。そのふるさとのリアルな姿を映し出すために、大半の役を監督の親戚や地元の知り合いが演じています。脚本も監督自身の家族におきたエピソードをもとにしているそうです。特筆すべきは、映像のすばらしさです。孫娘グーシーと恋人ジャン先生とのデートのシーン。富春江にとびこみ泳ぐジャンをとらえたカメラは、横にそのままゆっくり移動していきます。岸辺の景色をなめながら10分以上。グーシーの待つ岸に上がり、ふたりは並んで歩き出します。ここまで1ショット。まるで、絵巻物のように、映像がつながっていきます。そんな息をのむようなシーンの数々。撮影チームの「チャレンジ・スピリット」の賜物です。首都圏は、2/11(木)からBunkamura ル・シネマで公開。中部は、2/19(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、2/19(金)からテアトル梅田他で公開。『ディエゴ・マラドーナ二つの顔』なんというドラマチックな人生! そのアップダウンは、次から次へと驚きがおしよせるジェットコースターのようです。 昨年11月に他界したサッカー界の巨星、ディエゴ・マラドーナを描いたドキュメンタリー。急ごしらえの追悼ものでは、もちろんありません。『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』で英国アカデミー賞受賞、『AMY エイミー』で米アカデミー賞受賞のアシフ・カパディアが、過去の貴重な映像を掘り起こし、マラドーナのインタビューにも成功した決定版。いわば本人公認の一代記ですが、サブタイトルにある「二つの顔」にいつわりなく、ダークサイドのマラドーナ像がきっちり描かれていて、それが実にすさまじいものなのです。すでにスーパースターだったマラドーナが、FCバルセロナからセリエAでは弱小だったSSCナポリへ移籍したのが1984年。映画はその入団記者会見のあと、そのまま大観衆の待つスタジアムの前に姿を見せるシーンからはじまります。至近距離の映像は、長くエージェントをつとめたマラドーナの友人シテルスピレールが専属カメラマンを雇って撮り続けていたもの。81年から87年あたりまで、実に数百時間に及ぶ貴重な記録の一部です。このお宝映像が最大のスクープ、です。マラドーナはナポリをほぼ独力で強豪チームにおしあげ、86-87シーズンにはついにクラブ史上初のセリエA優勝とコッパ・イタリア優勝を果たします。故国アルゼンチンのナショナルチームでも86年のメキシコWC で大会MVPに輝きます。続く90年のWCはイタリア開催のうえ、準決勝がアルゼンチンとイタリア、しかもその会場がナポリなんて、すごいめぐり合わせです。一方で、ナポリ入団会見でも記者から厳しい質問がとんだマフィアとの関係は、入団後、さらに深まります。加えて愛人とのゴシップ、隠し子疑惑、コカイン中毒など、スキャンダルのデパートのようなもうひとつの顔。それによって、評判も地に落ちます。これが頂上からまっさかさまで、いっそ痛快。それでもまた立ち上がる、そんな不屈のスーパースター。清濁ともに魅力にみちたキャラクターです。
2021年01月31日スノーシューで雪歩きを体験岡山県の真庭市北部の蒜山では、蒜山ガイドクラブによる「スノーシューで巨木探検ツアー」を2021年3月6日(土)に開催します。スノーシューと呼ばれる「洋風かんじき」を使い雪の上を歩き自然と触れ合いながら巨木を探しに行くツアーです。ふかふかの雪の上をハイキング雪の上を歩いてみたいけど初めてのスノーシューは不安と感じる方もいるかと思いますが、スノーシューは、特別な技術全く必要なく、誰でもすぐに使いこなすことができます。今回のツアーは、スノーシュー・ストックを持っていなくてもレンタルすることができ、小学生以上でハイキング程度歩ける方であれば参加できます。募集概要について開催日時は、2021年3月6日(土)9時~14時頃、集合場所は、休暇村奥大山(西駐車場)、参加費(保険代を含む)は、大人2,500円、小学生1,000円となります。スノーシュー・ストックのレンタル(1セット)を希望する場合は、事前予約が必要で、参加費とは別に大人1,000円、小学生500円がプラスとなります。服装は、スノーブーツもしくは、登山靴とスパッツ、防寒の服装、持ち物は、お弁当、温かい飲み物、おやつ、サングラスが必要です。冬にしか体験することができない雪の世界を満喫する貴重なアクティビティを楽しんでみませんか。(画像は公式サイトより)【参考】※「スノーシューで巨木探検ツアー」について※蒜山ガイドクラブ公式サイト
2021年01月29日今週の「おとな向け映画ガイド」今週公開、小津安二郎を敬愛する海外監督ふたりの新作『天国にちがいない』と『わたしの叔父さん』をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明21/1/24(日)イラストレーション:高松啓二今週末(1/29・30)のロードショー公開は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『花束みたいな恋をした』『名も無き世界のエンドロール』『ヤクザと家族 The Family』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。そのなかから選りすぐりの2本をご紹介します。『天国にちがいない』パレスチナ系イスラエル人の名匠エリア・スレイマン監督の作品です。パレスチナ、と聞いてあなたがイメージされることを、見事にくつがえしてくれる映画だと思います。主人公は映画監督。スレイマン自身が演じています。一見、松尾スズキさんのような雰囲気。ごま塩のひげ、下が透明なフレームのメガネをかけ、ハットをかぶり、ショルダーバックは斜めがけ。街を散歩して、カフェに入り、エスプレッソを飲みながら、ぼーっとする……。新作の出資者をもとめてパリとニューヨークへ旅に出るのですが、どこの国に行ってもこのスタイルは変わりません。旅の中で起こるあれこれをスケッチのように描いていきます。ワイドスクリーンいっぱいのシンメトリカルな映像。その中心に彼をおくと、これが不思議と落ち着く構図です。どれもが、どこかユーモラスで、ホッコリとしたもの。おそらく実体験に想像力をふくらませて作り出した彼独自の世界です。彼のセリフは全編通してふたつだけ。映像ですべて物語ります。例えば、パリのヴァンドーム広場に突然戦車が何台も現れたり、地下鉄では妙な男にガンを飛ばされてビビったり、救急車がホームレスに食事のデリバリー? をしたり……。ニューヨークでは、公園に天使がいたかと思うと、子連れの女性やスーパーの店員がカービン銃をまるでアクセサリーのように身に着けていたり……。パレスチナが危険だというのなら、世界こそパレスチナ化しているんじゃない? という彼のちょっとブラックな暗喩もあります。肝心の新作の売り込みがどうなったかというと……これも笑ってしまう結末です。来日したとき、まず墓参をしたという小津安二郎ファンのスレイマンらしい、とても上品な映像、ほのかなユーモア、よい後味の映画です。首都圏は、1/29(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、2/6(土)から名演小劇場で公開。関西は、1/29(金)からシネ・リーブル梅田で公開。『わたしの叔父さん』一昨年の東京国際映画祭で最高賞である東京グランプリと東京都知事賞を獲得した作品。監督はフラレ・ピーダセン。彼もまた、小津安二郎を師と仰ぐひとりです。デンマークの農村で、初老の叔父さんとふたり、酪農を営む27歳の娘クリスの物語。静かなあたたかい映画です。小津の作品同様、大きな事件があるわけではありません。朝、足の不自由な叔父さんを起こし、服の着替えを手伝い、朝食の支度をする。叔父さんはパンにスプレッドを塗って食べる。クリスはシリアルに牛乳。仕事は、乳牛の世話、畑仕事も少し。訪れる人は牛乳の回収業者だけ。出かけるのも週に一度スーパーへ買物をするくらいです。その繰り返し。淡々とした穏やかな日々が続きます。ふたりの会話はほとんどありません。実の父娘のような絆で結ばれているがゆえ、のようです。中盤からドラマが動き出します。といっても少しだけ。牛の治療にやってきた獣医から仕事の手伝いを頼まれるのです。実は彼女、獣医を夢見たことがあり、もう一度その気持ちに火が灯ります。さらに、教会で出会ったマイクという青年とのほのかな恋。人生の新たな期待と不安の一方で、叔父さんと離れることにも辛さがあり、ゆれるクリスの姿は、小津の映画『晩春』の原節子を彷彿とさせます。実の叔父と姪が演じているそうです。姪のクリスは女優イェデ・スナゴ―ですが、叔父役のペーダ・ハンセン・テューセンは酪農家で演技未経験。監督が取材で彼の農場に滞在したときに、本物の持つ魅力はなににもに代えがたいと起用を思い立ったそうです。撮影も実際にその農場で行われました。まるでドキュメンタリーのような作り。ハンディカメラを固定し、引き気味の自然な映像は、まるで彼らの生活をそっと、横で見守っているようです。首都圏は、1/29(金)からYEBISU GARDEN CINEMA他で公開。中部は、2/13(土)から名演小劇場で公開。関西は、2/5(金)からテアトル梅田で公開。
2021年01月24日今週の「おとな向け映画ガイド」ラピュタのモデルを舞台にした『天空の結婚式』と、イ・ビョンホンの衝撃作『KCIA 南山の部長たち』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明21/1/17(日)イラストレーション:高松啓二今週末(1/22・23)のロードショー公開は10本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『さんかく窓の外側は夜』の1本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。緊急事態宣言対応で公開本数が少なくなっていますが、選りすぐりの2本をご紹介します。『天空の結婚式』若いカップルが親の反対でつきあえない、結婚できない、というのはシェイクスピアの時代からトラブルの火種です。古くは身分違い、家と家の仲が悪い、人種、宗教とか。いまなら、相手が同性だから、というのはあるかも。ベルリンに住むゲイのカップル、イタリア人のアントニオとパオロが主人公です。結婚を決めたふたりは、アントニオの両親に報告するため、帰国します。驚く親たち。父親は猛反対です。ところが母親は2つの条件がクリアできれば賛成するといいだします。そのひとつは、彼らの住んでいる村で結婚式をあげること。アントニオの故郷、それは、チヴィタ・ディ・バニョレージョという、断崖絶壁の上に残された小さな集落、あの『天空の城ラピュタ』のモデルともいわれる「天空の村」なのです。父はその村長。観光客だけでなく、難民の受け入れにも理解をしめすリベラル派ですが、頑固です。母親は息子が選んだ人なら間違いない、嫁姑争いもなさそう、と直感したのか、この「天空の結婚式」をモーレツに進めていきます。ママが考えたとびきりロマンチックな結婚式、そしてこの絶景の村がなんといっても最高の舞台です。イタリアでは、2016年に同性カップルの結婚についての権利が認められたこともあり、映画は話題作として大ヒットしています。元は『My Big Gay Italian Wedding』というオフ・ブロードウェイのお芝居。それをイタリア・コメディの旗手、アレッサンドロ・ジェノベージが映画化しました。カップルをとりまく周囲の人間群像とそのコミカルな大騒ぎも楽しい、おおらかで、ハッピーなロマンチック・コメディです。首都圏は、1/22(金)からYEBISU GARDEN CINEMA他で公開。中部は、2/19(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、3/12(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。。『KCIA 南山の部長たち』1979年10月26日。調べてみると、日本では『3年B組金八先生』の第1回が放送された日でした。総理大臣は大平正芳。決して大昔のことではありません。この日、韓国では、歴史的大事件が起きていました。現職のパク・チョンヒ大統領が側近の中央情報部(KCIA)部長キム・ジェギュに射殺されたのです。この事件の顛末を描きベストセラーになったノンフィクションの映画化。驚きを禁じえない作品です。最近の韓国映画は戦後史の暗部にきりこむ社会派の力作が多く、しかも興行的にも成功しています。光州事件を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』、民主化闘争の『1987、ある闘いの真実』、対北朝鮮スパイ戦『工作 黒金星と呼ばれた男』……。そして、韓国最大の政治スキャンダルに挑んだこの作品、2020年、興行収入第1位という大ヒットとなりました。主演にトップスター、イ・ビョンホンを起用したこと、これが大成功した要因のひとつです。映画は、事件にいたる40日間を、キム部長の動きを中心に追っていきます。米下院議会聴聞会でパク大統領の汚職を暴露した前任部長の“始末”や、大統領の側近である警備室長と忠誠心争いの“暗闘”など……なぜ惨劇に至ったかを浮き彫りにします。大統領とキム部長は1960年の軍事クーデターの仲間。日本陸軍とも関係のある元軍人です。スパイさながらのハードなアクションや銃器の手慣れた扱いも、キャリアから考えるとありうる動き。日本がらみのエピソードも、うなずけます。
2021年01月17日冬の雪山でしか体験できない蒜山ガイドクラブでは、「蒜山原スノーシューハイキング」を2021年1月30日(土)に岡山県北部の蒜山高原で開催します。同イベントは、スノーシューを使った雪の上を歩きます。夏の景色とは異なる白銀の世界を楽しんではいかがでしょうか。初心者も楽しめるイベントが開催される蒜山は、雄大な自然が魅力で、西日本屈指の高原リゾート地です。夏は避暑地として、冬はスキーやスノーボードが楽しめるなど、季節の移り変わりに合わせて様々なアクティビティが体験できる場所です。今回のイベントは、蒜山三座の1つに上げられる中蒜山麓の雪が積もった高原を登ったり、滑ったりしながら、ゆっくりと歩きます。開催概要について集合場所は、中蒜山登山口(塩釜駐車場)で、中蒜山山麓を9時に出発し、2時間半ほどスノーシューハイキングを楽しみます。参加費は、大人2,000円、小学生1,000円、スノーシュー・ストックのレンタル(1セット)は、大人(中学生以上)1,000円、小学生500円となります。(画像は公式サイトより)【参考】※蒜山原スノーシューハイキングの開催案内※蒜山ガイドクラブの公式サイト
2021年01月07日今週の「おとな向け映画ガイド」東山紀之主演の傑作ブラックコメディと、カッコ良すぎるスタントウーマンのドキュメンタリー、2作品をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明21/1/3(日)イラストレーション:高松啓二今週末のロードショー公開は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『おとなの事情 スマホをのぞいたら』『銀魂 THE FINAL』『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 前編』の3本。中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』映画製作の裏方を描いたドキュメンタリーは数々作られていますが、このテーマは初めてではないでしょうか。アクションシーンのスタント・ウーマン、命知らずの女性たちにスポットをあてています。テレビの『ワンダーウーマン』や『チャーリーズ・エンジェル』、女性のアクションが人気をよんだあたりから、需要も志願者も増えたようです。最近ではマーベルものや『ワイルド・スピード』シリーズ、SFアクションなど、たしかにCGとは一線を画す彼女らの活躍には目をみはるものがあります。そんなスタントウーマンの歴史を切り開いてきたベテランから現役まで30人以上の証言と、出演作のフッテージ、さらにこの映画のために実演してくれた映像などで、彼女たちの世界を知ることができます。エイプリル・ライトという女性監督の作品です。奥が深いと驚くのは、専門分野が存在すること。ビルから落ちるのはこの人が名人とか、カーアクションならまかせて、逆に車にはねられるプロもいたり。それぞれが独自にトレーニング方法を開発し、研鑽をおこたりません。キックボクシング、太極拳、体操、ダンス……、様々な分野を志していた人が、先駆者者たちの活躍に刺激を受け、この世界に流入してきたのです。この映画がきっかけとなってスタント・ウーマンをめざす女性も多いのでは。それぐらい、カッコよくて生き生きとしています。『おとなの事情スマホをのぞいたら』イタリアのオリジナル版、韓国版、フランス・ベルギー版(Netflix)と観てきて、日本版ができないか、と楽しみにしていました。それがついに完成。しかも東山紀之が主演というではありませんか。本国で大ヒットしたあと、すでに世界中で18本が公開または製作発表されていて、日本版は19本目なのだそうです。世界共通のストーリー設定はこんな風ー。月食の夜。3組の夫婦と1人の独身男、職業もライフスタイルもちがう7人が年に一度集まる食事会の席で、スマホを使ったゲームが始まります。全員のスマホを机の上に出し、これから届くメールやSNSの通知、電話をすべてさらけだすというもの。「やましいことがないなら、OKでしょ?」と 言われると、皆、断る理由がみつからず、内心ハラハラドキドキでゲーム開始、です。やがて、それぞれの隠していたとんでもない事実が明らかになってしまい……。イタリア版『おとなの事情』は、40代後半の男女が幼馴染の食事会に集まってパスタやワインでの宴、でした。フランス・ベルギー版『ザ・ゲーム〜赤裸々な宴〜』はフォアグラのミルク煮?がでてきたり、食後のチーズがおいしそうでした。韓国版『完璧な他人』は同郷の仲間たちが新居披露で郷里の料理とマッコリ、チャミスル。集まる場所、食事のちがいなど、各国特有のライフスタイルが反映されています。さて日本版。脚本はドラマ『ひよっこ』などの岡田惠和。7人がなぜ、定期的に集まることになったかが大きな意味を持ちます。会場も食事もいまの日本を感じさせる設定。なるほど、と納得です。益岡徹と鈴木保奈美、田口浩正と常盤貴子、淵上泰史と木南晴夏、以上がカップル。三平くんというややコミカルで気弱な独身男の役を東山紀之が演じるというのはアイデア、ですね。常盤貴子の大胆なあのシーンとか、鈴木保奈美の開き直った表情とか……、秘密がばれたときの、それぞれのリアクションに「おとなの事情」がにじみでています。
2021年01月03日