今年で3年目を迎えるPFF(ぴあフィルムフェスティバル)による映画賞「大島渚賞」の授賞式が4月4日、東京・丸ビルホールで行われ、受賞を果たした藤元明緒(ふじもと・あきお / 33歳)監督が出席。自身にとって所縁が深いミャンマーの情勢や、ウクライナ侵攻に触れながら「映画は無力じゃない。そう信じて作っていかないと強く思いながら、優しい世界につながるような映画を仲間たちと届けていきたい」と決意を語った。2019年に創設され、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若き才能に授与される同賞。「日本で活躍する映画監督(劇場公開作3本程度)」、「原則として前年に発表された作品がある」監督を対象に、高い志を持って世界に挑戦した大島渚監督に続く次世代の才能を期待と称賛を込めて顕彰してきた。坂本龍一氏が審査員長を務める。第1回は『鉱 ARAGANE』や『セノーテ』が世界各国で高い評価を受ける小田香監督が受賞。昨年の第2回は「該当者なし」という結果を経て、今回、ベトナム人女性労働者たちを描く長編第2作『海辺の彼女たち』が昨年公開され、話題を集めた藤元監督の受賞となった。4月16日からは、インドとミャンマーの国境地帯で日本兵の遺骨発掘作業に携わる少数民族ゾミ族を描いた短編連作『白骨街道 ACT1』(監督/脚本/編集)が公開される。壇上で挨拶に立った藤元監督は「映画を志して上京した10年前には想像もつかないこと。まだ実感が湧いていないが、大先輩の名前を冠した賞をいただき、うれしいですし、お客様の映画に対する思いやりに背中を押される」と喜びの言葉。ミャンマーに暮らす映画製作の仲間が逮捕されたり、行方不明になったりしていると明かし「映画って本当に何ができるんだろうと考えた1年でした。立ち向かうものが強大すぎて、精神的にもきついものがあった。映画を作る、映画を観るという行為は、平和な環境と人びとの健康があって成立するもの」と涙ながらに訴える場面もあった。表彰式には審査員の黒沢清(映画監督)、荒木啓子(PFFディレクター)が出席。黒沢監督は『海辺の彼女たち』について「観た瞬間、胸がざわざわとかきむしられる感覚で、随所にハッと凝視してしまう、映画に吸い込まれるような瞬間があった。堂々と世界に『こういう日本映画がある』と胸を張って推薦できる、大島渚賞にふさわしい作品」と絶賛。一方、選考過程で坂本が「これはドキュメンタリーでも良かった。フィクションである理由が今ひとつ理解できない」と語ったことも明かした。その坂本からはメッセージが届き、荒木氏が代読。坂本は「やっと大島渚賞の意味が明確になりつつあります」と意義を再確認する一方で、「毎回、候補に挙がる作品の質が低いことに、忸怩たる思いを抱えている。最近の日本映画の大きな傾向として、他者を傷つけることを極度に恐れている」と厳しい言葉も。「これこそ、大島渚賞にふさわしいと言える作品に出合えることに大いに期待しています」と今後の展望を見据えていた。取材・文・写真=内田涼
2022年04月04日ベトナム人女性労働者たちを描く長編第2作『海辺の彼女たち』が昨年公開され話題を集めた、藤元明緒(ふじもと・あきお / 33歳)監督が、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)による映画賞「大島渚賞」を受賞したことが発表された。4月3日(日)に東京・丸ビルホールで記念上映会が行われる。この賞は映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られるもの。2019年に創設され、今年で3年目を迎える。かつて大島渚監督が高い志を持って世界に挑戦していったように、それに続く次世代の監督を期待と称賛を込めて顕彰してきた。選考方法は「日本で活躍する映画監督(劇場公開作3本程度)」、「原則として前年に発表された作品がある」監督を対象に、大島渚監督作品を知る世界各国の映画人より推薦を募り、審査員が授賞者を決定。第1回は『鉱 ARAGANE』や『セノーテ』が世界各国で高い評価を受けるなど、次々に新たな作品を生み出している小田香監督が受賞し話題を呼んだ。そして昨年の第2回は「該当者なし」という結果を経て、今回の藤元監督の受賞となった。「大島渚賞 記念上映会」では、受賞監督作品と大島渚監督作品が上映される。前述の『海辺の彼女たち』、そして1969年のカンヌ映画祭監督週間で上映され、大島渚監督の国際的評価の皮切りとなった『絞死刑』。2作の上映後には、藤元明緒監督と黒沢清、大島新(大島渚監督の息子であり、『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』を監督)、MC荒木啓子(PFFディレクター)によるトークショーも行われる。■イベント情報「大島渚賞記念上映会」4月3日(日)13時開映会場:丸ビルホール料金:一般 2,500円、学生 1,500円発売:チケットぴあにて、3月19日(土)午前10時より発売(会場でのチケット販売なし)<上映ラインナップ>(※予定)『海辺の彼女たち』『絞死刑』<トークショーゲスト>藤元明緒監督、黒沢清(映画監督)、大島新(ドキュメンタリー監督)MC:荒木啓子(PFFディレクター)
2022年03月10日