働く女性たちに、キラキラしただけではないリアルなエピソードを聞いていくこのシリーズ。今回は、企業で都合の良い存在になってしまう同僚を見てきた女性に話を聞きました。会社に都合よく扱われてしまう人には、ある共通した条件があるようなのです。今回ご登場いただいたのは、大学卒業後、ある自治体の新卒未就労者支援事業の紹介予定派遣を経て正社員になり、その後転職をして商社で一般職をしているHさん(26歳)です。○社長に物を投げつけて飛び出していった同僚――最初に入った会社はどういう会社だったんですか?20代の社長が経営する、外回りの営業が中心の会社です。最初は社長も外回りをやってたんですけど、だんだんやらなくなってきて、社員にダメ出しばっかりしてましたね。――どんなダメ出しがあったんですか?朝の出勤時間よりも一時間は早く来いって言われてました。営業に出かける準備は、前日にちゃんと仕込んでおけば15分もあればできるんです。なのに一時間も前に来させるなんておかしいので、私は断固として行かないようにしていました。――周りの同僚はどうでしたか?それが、同じ年くらいの同僚には、「朝早くなんて来る必要ないんだよね」って話し合っているのに、いざ、朝になるとちゃんと一時間前に来てしまうんですよ。――その一時間で何をしているんですか?普通にお金を計算したりとか、事務全般ですね。もちろん、早く来てもお金なんか支給されないんですよ。でも、来ちゃうんです。その子の気持ちもわかるんですよ。いちいち歯向かったり反発するのって、めちゃめちゃ面倒くさいじゃないですか。そんな面倒くさい思いをして抗議をするくらいなら、まだ朝早く来たほうが楽なんだと思います。私もそういう気持ちはありましたから。――そんな状態で、会社の空気なんていいわけないですよね……そうです。だから、あまり文句を言えないでいた同僚の女の子は、ある日突然爆発して辞めちゃったんです。朝、早く来ているのに、その時間内で朝ごはん食べていたら怒られちゃって。最後は、そんな小言を言った社長に物を投げつけて外に飛び出して言って、それで辞めてしまいました。○おかしいことはおかしいと言う気力――辞めるときには、文句は言われないんですか?それはないんですよ。人材は使い捨てだから、またすぐ派遣会社から紹介してもらえばいい。そこの社長は言っていました。「不況で人があぶれていいところに就職できないと、うちみたいな会社にも比較的経歴のまともな人が来るからいい」って。――それはなんか怖いですね……。Hさんは小出しで歯向かっていたから、突然切れることはなかったんですかね私は父が法律に詳しかったり、大学で労働について学んでいたりもしていて、周囲に励まされていたので、面倒くさいけどおかしいことはおかしいって言う気力がありました。でも、そんな状態の会社にずっといてもいけないと思って、一年になる前に辞めたんです。そのときまで雇用契約書すらもらっていなくって、辞める直前に私から言って契約しました。――その後は、転職はうまくいったんですか?まだ大学の就職課が条件的に使えたので、大学で求人を見て、今度は商社の一般職の正社員になれました。欠員がちょうど出ていたのと、英語が多少できたこともあり。それと、前のブラック会社も一応、正社員だったんで、正社員をやっていたということが合格に結び付いたそうです。あんな会社でも、経歴としては役に立つんだなと。○残業代も出ない営業男性――今度の会社はどんな雰囲気ですか?ぬるいといえばぬるいけれど、空気は前の会社に比べて悪くないです。私は絵描きになりたいという夢があるので、ここで働きながら、少しずつダブルワークもしていきたいなと思っています。――今の会社の仕事も大変ではないですか?営業の人たちに比べると、随分楽ですね。定時で帰れることも多いし、もし残業があっても、ちゃんと残業代を出してもらえるし。でも、会社の中には、なんとなく慣習みたいなものもいっぱいあって。――それはどんな慣習でしょう私たち事務には残業代が出るんですが、営業の人たちには出ない。それに、私たち事務は有給も取りやすいんですが、営業の人たちは全くとらないんです。――そんなに違いがあるんですか会社は男女の仕事が分かれていて、事務は女性、営業は男性って感じなんですね。だから、女性は有給とってもいいし、残業代ももらっていいけれど、男性は有給もとっちゃいけないし、残業代も出ないってなってる感じです。でも、同じ事務の女性で、有給をとってもいい空気なのに、かたくなにとろうとしない人もいて、あれはなんなんだろうって思って。――学校の皆勤賞を目指そう、みたいな価値観が会社員になっても沁みついているのかもしれないですよね。自分にも最初はそういうのありましたから。営業の人たちは、自分たちが有給もとれず、残業代も出ないことに関してはどう思っているんでしょうねたぶん、この会社にずっといるから、そういうもんだと思ってるんだと思います。疑問も持ってないから、私たち事務が有給をとってようが残業代をもらっていようが、うらやましそうな目で見られたこともありません。「男とは、営業とはそういうもんだ」という空気にのまれているんだと思います。私も、それはおかしいんじゃないの? って思っても、自分の立場では、他人の労働環境についてまで異議申し立てはなかなかできないですよね。――確かに空気を重んじる会社でそれはできないですよね私個人としては今の会社に入ったことで環境はよくはなったとは思っています。でも、会社には多かれ少なかれ、今の環境を変えるために、一人で抗うのは面倒くさいと思う人がいて、その気持ちのせいで付け込まれてしまうこともあるってことがわかりました。それと、やっぱり、長く同じ環境にいたり、労働についての知識がないと、ブラックな環境にいて、それに気づいていても、それがブラックであると説明できないってことってあるんですよね。自分がそういう目にあったら、面倒でもちゃんと抗っていかないといけないと思っています。○まとめブラックな企業や、ブラックとまではいかないけれど、都合の良い条件下でも働き続けていってしまう人には、ふたつの特徴があることがわかりました。ひとつは、会社に抗ったり交渉して労働環境を良くすることと、自分が言われたことに従うことを天秤にかけて、従うほうが心理的コストもかからないし楽だと思ってしまう人。そして、もうひとつの特徴は、会社の慣習に慣れすぎて、自分の働き方が、そもそもおかしいのかどうかも考えていない人ではないかと思います。確かに、会社で、上司や経営者から言われたことにいちいち抗っていると、職場の空気を乱してしまいかねません。それが嫌で、自分だけが耐えればなんとかなる。と思う人もいることでしょう。何もかもに疑問を持つ必要はないと思いますが、あまりにもおかしかったら、面倒くさがらずに動いてみることも必要かもしれません。その見極めもまた難しいのですが……。西森路代ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トークラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
2015年05月30日働く女性たちに、キラキラしただけではないリアルなエピソードを聞いていくこのシリーズ。今回は、自分が目指したわけではないけれど、営業という職につくことになって、そこで奮闘した女性に話を伺いました。転職するたびに、なぜか営業職や営業に近い仕事への異動を命じられるAさん(29歳)。負けず嫌いな性格からか、どこでもそれなりに仕事のコツをつかみ、業績をあげ、転職のたびにキャリアアップしているAさんの話の中には、仕事というものは、やっているうちに適性が見えてくることもあるのかもしれないと思えてくるし、女性がチームリーダーになるための極意もあるような気がしました。○「人の人生をなんと思ってるんだ」という怒り――Aさんは最初はどういう仕事を希望して働いていたんですか?WEB系の会社で、ディレクターをやりたくて入社したんですけど、なぜか2年したら営業に異動することになりました。後で聞いたところによると、大人しそうに見えたから、なんでも従順にやるだろうと思って異動させられたようですが、実際の私の性格はぜんぜん違っていたので……。――実際にはどういう性格なんですか?もともとは大人しいというか、心を開いた人以外にはあまり親しくできないし、プレゼンとか人と話すのも苦手だったんです。でも、異動のときに上司から、「むいてないと思うけどやってみれば」って適当に言われたら怒りが湧いてきて従順ではいられなくなりました。しかも、テストでも営業の適性はまったくなかったのに。それで、人の人生をなんと思ってるんだろうと思ったら腹がたって、それなりに違和感を全部ぶちまけたら、一年後、営業成績は標準だったのにボーナスは最低の査定になってしまいました。後で言わなきゃよかったと思いましたけど、社内営業の大切さを学びました。――営業の仕事は向いていないと言いながらも、ちゃんとやりきっちゃったんですねそうですね、負けず嫌いなのと、2度とやりたくない分やるだけやってから辞めようと思ったので。でも、一時期は気持ちが本当に不安定で、欝アニメに逃避したりロック音楽を爆音で聞いたり、金沢の忍者寺で手裏剣を買って胸ポケットに忍ばせたりしていました。――それは、護身用というか、怒りの表現なんですかね……。営業の仕事は具体的にはどういうものだったんですか?その会社は、テレアポするなら一日100件は当たり前、飛び込み営業も一日に4~5件はやれと言われるし、事務的な仕事は9時から18時のあいだにはするな、その時間帯には会社に帰ってくるなって感じだったんですね。営業にいる同僚も上司も大学まで運動部だったような体力のある人ばかりでしたし、売る商品や会社の性格にもよるかもしれませんが営業は体力勝負だと思いましたね。でも、営業先の担当者の性格によってどういうやり方が合うかもわかることも増えて、顧客折衝力がついたのは良かったです。どんな人にも、その人にあったヨイショができるようになって……。○ループアニメのようにまた営業職へ――それで次の会社に移ったらまた営業になってしまったと……そうですね。大手のトップダウンに辟易としたので今度はベンチャー系のWEB制作会社に行ったんですけど、同年代のディレクターに比べたときに、一社目の営業で培った顧客折衝力が上司の目にとまってしまったみたいで、結局、入社して一年したら営業をすることになりました。――クレーム対応や折衝ってどうやっていたんですか?こういうとあれなんですが、自分より偉い人に尻拭いしてもらえるようあらかじめ仕込んで、あとは笑顔で言うべきことを言って、終わったら早めに立ち去ることですね。――そういうものなんですね……。二社目の営業は一社目とは違っていたんですか?そうですね。テレアポや飛び込みはなくなって、問い合わせがあった案件に対してコンペで勝ち取るようなものになりました。その分、数はうてないので逃げ場はなかったんですけどね。でも、前職では無駄なことこそがいいとされていたんですけど、二社目では無駄をなるべく少なくしようという方針だったので、やりやすかったです。――そこを辞めたのはなぜだったんですか?やっぱり、営業職よりも、クリエイティブに関わっていたいという思いはあったんです。でも、その会社のディレクターはなかなか激務で、仕事に時間をかければかけるほどいいものができるという感覚だし、仕事とプライベートの区別もない。もし、自分がこれから異動願いを出して、それが通ってディレクターの仕事に戻ったとして、30代になったときにそんな激務をずっと続けられるのかなという疑問があったんです。○体力とやりがいのバランス――それで、三社目に転職したわけですね。今度はどのような仕事だったんですか?今度もWEBディレクターを選びました。今まではWEBサイトの構築に関わっていたんですが、今度はWEBサイトの運用に関わる仕事です。今は10人のプロジェクトのリーダーで課員のマネジメントをする状態です。――今までと違うところはありましたか?今関わっているプロジェクトは、ちゃんと定時か、ちょっと残業したくらいで帰れる安定した仕事なんですね。今まで残業の多い仕事ばかり関わってきたので、正直6時に家に帰ってもすることがありませんでした。そのことにびっくりしたし、はじめは思ってたより辛かったです。あと、安定しているぶん、大きな達成感のあるワクワクした仕事をするという感覚とはまた違うんですよね。わかりやすいお祭り感はないのですが、今の業務の中にもちゃんと種類の違うワクワクはあるので、それを見つけて大事にできるようになりたいと思っています。――確かに、仕事で得られるワクワクと激務って今はまだセットになっていることは多い気はしますね。まあでも、私のチームもほぼ女性ばっかりで、シングルマザーの人とか、これから育休に入る人とかもいるし、良い環境ではあると思います。プロジェクトが変われば業務内容も変わり、前のようなクリエイティブな仕事で残業が増えることもあるかもしれませんが、残業代がきっちり出る職場なので、30歳からの働き方としては、いいんじゃないかとは思います。もしかしたら、また別のやりがいを求めてベンチャーに戻りたいなんて思うことはあるかもしれないけど……。――やりがいと安定のバランスは難しいですね。この職場で学んだことってありますか?私は一社目で営業になったときに、超サイヤ人じゃないけど、覚醒して言いたいことが言えるようになったんです。でも、今のプロジェクトのチームの女性たちは、言いたいことがあっても口ごもってる人がほとんど。私は、自分が言いたいことが言えるようになっていたから、この感覚がわかんなくって「この人たち、何も考えてないのかな?」って思ってたんです。でも、この会社でリーダーになってからは、しつこく聞くようにしてますね。だいたい10回くらい聞いてやっと本音を言ってくれるんですよね。だから、最初に聞いて、またしばらくしたら聞いて……と何度も何度も聞いています。――その感覚、すごくわかります。私も最初にいた会社で、会議でも不満があっても言わぬが花って感じがあったので、それに慣れてしまっていて、今でも説明を求められるとアワアワするときがありますだから、リーダーになったら、そこを蔑ろにしちゃいけないなと思いましたね。――三社で仕事をしてみて、気づいたことはなんですか?テレアポや飛び込みの多い会社の営業職に限って言えば、人材は使い捨てだと思われているのではないかと疑問に思ったことはありますけど、転職するときには力にはなっていて、それに気づけたことが本当に良かったです。あのときのブラックな働き方を肯定はしていないけれど、思っていたより戦える自分を見つけられたという意味ではよかったとは思っています。○まとめ今回、印象に残ったのは、ワクワクする仕事をやりたければ、長時間労働で仕事とプライベートの区別もあいまいなことが多く、定時で安定した働き方をしたければ、あまりワクワクした仕事がないという部分です。とはいえ、本当はどの仕事でもやってみるとその仕事ならではの種類のワクワクもあるのですが、「お祭り」感や「ハレ」感がないとわかりにくく、なかなかそこに気づけないことも多いものです。そんな職場が多いので、30代を迎える頃に、結婚や出産を考えると、安定した仕事を選ぶ女性も多いのではないかと思います。もちろん、これは男性でも同様ですね。でも、よくよく考えたら、やりがいと長時間労働が必ずセットになっているのではなく、定時に帰れるけれど、ワクワクした企画に携われる働き方をすることは本当に無理なのでしょうか……という疑問に気づかされたインタビューでした。西森路代ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トークラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
2015年05月19日働く女性たちに、キラキラしただけではないリアルなエピソードを聞いていくこのシリーズ。前回は、保守的な会社で「女は愛嬌」「退職するなら寿で」などといったプレッシャーの中で働いている女性についてレポートしましたが、今回はジャニーズファンの女性に、会社で働くこととジャニーズファンであることの調整はどう行っているのを伺いました。一見、ジャニーズファン向けの企画のように見えますが、すべての趣味人にも共通する話でもあり、また会社で有休を取るとはどういうことなのか、仕事とプライベートを両立させるにはどうすればいいのか……ということが少しは見えてくると思います。今回登場いただくのは、三度目の転職をして、今はメーカー勤務の正社員Tさん(32歳)です。○平日は仕事を大急ぎで終わらせてダッシュ――ジャニーズファンとしては、どういう活動をしてるんですか?高校からずっとジャニオタで、活動的だったときもあったけど、今はちょっと落ち着いて、土日や平日に行ける範囲で舞台やコンサートに行くという感じですね。平日は仕事を大急ぎで終わらせてダッシュします。基本はひとり行動ですね。――それはどうしてなんですか?東京のコンサートならいいんですが、誰かと遠征することになっていても、仕事でどうしてもいけなくなったりすると、ほかに行ける人を探したり、ホテルを取り直したりしないといけなくなるんで。でも、そのおかげで安いホテルや移動手段を見つけることはうまくなってきました。新幹線とホテルのパック料金よりも安い組み合わせで予約できたら「よっしゃー!」みたいな。――わかります(笑)。旅先ではどんな風に過ごしますか?現地では、ファンの友達と合流してご飯を食べることもあるし、一人で観光もしますね。その土地の名物を食べたり、観光地にふらっといったり。でも、地方で一人で回転寿司屋に入って熱燗なんかを頼んでると、お客として来てるおじさんにまじまじと見られることもあって。地方で一人でご飯を食べる女性って珍しいんだなと。あと、クリスマスのコンサート後、ひとりでビジネスホテルに泊まっていたら、ホテルの人が心配してついてきたことがあって。たぶん、ひとりでこんなところで過ごしているんで、この人大丈夫かって心配されたみたいでした。――休みというのはどうやりくりしているんですか?有休を使ってどこかに行くということはほとんどないですね。だいたいは土日か、平日の夜です。――早退とかもするんですか?早退もしなかったですね。日中に仕事を頑張って定時で終わらせて、そこからダッシュです。前に一度だけ、それでは間に合わないので有休を使ったことがありますが、病気でないと有休が受理されない会社だったので、熱が出たって言うしかなくて……。――そんなに有休を取りにくい会社だったんですか?そうですね。前にいた会社の話ですけど、お盆やお正月は10日くらい全員が一斉に休むシステムになっていて、休み自体が少ないわけじゃないんですが、個別でとろうと思うと難しくて。4年間会社にいて、病気で3日、ジャニーズで1日しか有休をとったことはないです。その病気で休んだ3日というのは、ノロウィルスにやられてしまったんですけど、上司に病状を細かく報告しないといけなくて、なんで私、自分がお腹を下した話をこと細かく伝えないといけないんだろうって……。――それは大変ですよね。私もはるか昔には病欠もしにくい部署で働いていたことがありました。そんなことがあると、会社の人にはジャニーズで遠征なんて言いたくなくなりそうですね今までにいたどこの会社でも、休みに旅行にいくと、お土産を持って配りあうという文化がありました。私も普通に旅行にいったときにはお土産を持っていきますが、ジャニーズの遠征のときは、説明することが多くなるし、土日の間に遠征しているだけで有休とって休んでいるわけでもないので、そのときは言わないですね。○転職の際に導線を考える――平日のコンサートに行くときは何か工夫してましたか?さっきも言いましたが、仕事を定時までに終わらせるくらいですかね。それから、転職するときに、会社が終わってから日比谷に通える場所かな? ということは一応考えましたね。もちろんほかの要素も考慮してますけど。――日比谷というと……日比谷には日生劇場、帝国劇場、シアタークリエとジャニーズの舞台をやる劇場がいっぱいあるんですよ。だから、その動線を考えてしまう。人によっては代々木国立競技場に行きやすいところを考えて家を決めたり、水道橋に行きやすいかで沿線に住んだりとか、そういうことは、なんとなくは頭においてるみたいです。――ジャニオタっていうことを会社の仲のいい友達にも話したりはしないんですか?そうですね。あまりしないですね。仲はいいけれど、ジャニーズの話がしたい人とそういう話はすればいいと思うので。それに、話してすぐにわかる人のファンだったらわりとすんなり受け入れてもらえるかもだけど、私が好きなのはジャニーズJr.のふぉ~ゆ~やThey武道っていうグループだったりするので。――会社の人とかだと、「どういうグループですか?」って聞かれそうですねやっぱり説明が必要になりますしね。あと、会社によってオタ的な人の多いところと、そういう人がぜんぜんいない業種ってあると思うんですよ。私はどっちかっていうと、オタの少ない人の多い会社だったもんで。――確かにそれはありそうですね。Tさんが誰かのファンになるのはどういうポイントなんですか?私は、残念なところを見つけるといいな、ってなりますね。自分ではちゃんとしてるつもりなのに、ここぞというところで失敗してしまったり。そういうのを見守りたいというのはあります。――じゃあ、Tさんにとってジャニーズとはどういう存在ですか?自分はいろんなことに興味があるので、その中の一つですね。別に「ジャニーズのファンだから日々の仕事を頑張れる!」とかではないんですよ。でも、そのために仕事や日程を調整したりするのは苦じゃない。きっと、高校の頃から長くファンをやっているので、生活の中の一部になっているのかもしれません。○まとめ私も有休をとりにくい会社で働いたことはありました。有休って、病気のためにあるのではなく、労働基準法で定められた権利であるはずなのですが、実際には会社や部署の空気によって、自己都合では休みにくいところもたくさんあると思います。もちろん、周囲に仕事を押し付けて休むなんて人もほとんどいないはずですが、会社によっては、あれこれ個人的な興味から詮索されたりすることもまだまだあるようです。有休のとりやすさは、その会社の風通しの良さを表す指標でもあるのではないでしょうか。有休の取りにくい会社では、自分とほかの人との働き方の「違い」も受け入れにくいものです。「ワーク・ライフ・バランスの第一歩は、有休にあり」なのかもしれません。西森路代ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
2015年04月18日テレビや雑誌、ウェブに登場する働く女性というのは、生き生きとした姿でためになる仕事の話を提供してくれます。でも、メディアに登場する人たちは、会社を代表して登場する人たち。ということは、会社の顔である側面も大きく、見えてくるのはキラキラとした面ばかりです。多くの働く女性にとって、こうした話にリアリティがあるかというと、そうでもないのではないでしょうか。このシリーズでは、働く女性たちに、より身近な話を聞いていこうと思います。身近でリアルな話の中には、あまりポジティブでない話もあるかとは思いますが、もしポジティブではないことが出てくるとしたら、その話にこそ、本当の働く女性の実態が隠れていることなのだと思います。女性が輝く社会にと言われていますが、多くの会社には女性たちが輝くことのできる土壌はあるのか。誰もが必ずしも輝くべきとも思っていませんが、女性が少しでも楽しく働けるようになるためにも、キラキラした面だけでなく、実体も知る必要があると思うのです。今回登場いただいたのは、Mさん(28歳)卸売業で事務職をして9年目の女性です。○ウソでもいいから結婚準備――Mさんは一般職とのことですが、会社の女性はどういう立場で働いているんですか?うちは女性はみんな一般職なんです。短大を出て就職活動をするときに、総合職は受けなかったので、事務職を探しました。でも、転職した友達に聞くと、事務職の社員の募集はもう少なくなっていると聞きました。――そうですね。なかなか社員で事務職っていう人は派遣にとって変わろうとしていると聞きますね。だから、一般職の人を探すのはけっこう苦労したんです。Mさんは働いていて、ここはちょっとつらいなっていうことはありますか?そうですね。女は愛嬌、みたいなプレッシャーがかなりありますね。というのも、この会社では、寿退職以外で辞める人がほとんどいないんです。転職で辞めた同僚がいたけど、それはすごく珍しくて、うちの会社より余所に行きたいなんて裏切られた、みたいな感じに思う人もいるのがわかって、それだと結婚で辞めるしかないのかって。まだ相手もいないんですけどね。――結婚願望が個人的にあるわけじゃないけど、会社を円満に辞めるために結婚願望が出てきたということですか。けっこうなプレッシャーですよね。今、会社ではどういう立場ですか?私は年齢的には上から2番目くらいですね。みんな本当に辞めちゃうんですよ。寿で退社しないといけないという決まりはないけれど、仕事を続けた女性の前例もないのでそういう空気ができあがっています。だから、ウソでもいいから結婚準備で辞めますっていいたいけど、それだと詮索もすごいんで。――え、詮索までされるんですか?そうなんです。実際に会社の上のほうの男性たちが、結婚相手のことを査定するようなこともあって。――どういう目線で査定されちゃうんですか?結婚式に出た場合とかに旦那さんの顔とかも見るわけですけど、おじさんたちにとって、イケメンかどうかはどうでもいいみたいですね。それよりも、スペックとかステイタスが気になるみたいです。○「つきあってる彼氏には、専業主婦でいいか、早めに確認しなさい」――社内結婚とかもあるんですか?会社の人たちは社内結婚をかなり望んでるんですけど、最近はめっきり少なくなりました。男性社員の結婚は早いです。私年下の人もみんな結婚していく。あ、でもちょっとチャラい感じでイケメンの同僚は、まだいろいろ見定めているみたいで結婚してないですね。男性の同僚とは友達になりすぎちゃって、恋愛関係になったりはなさそうです。――聞いた話だと、あんまり詮索されない会社では今でも社内恋愛多いとか。でも、古いタイプの会社だと、つきあってるってわかった途端、周囲から結婚の圧力をかけられるから、余計慎重になってしまってつきあおうと思わなくなるのかもしれないですねただ、今の男性の上司が恋愛話が大好きで……。「Mさんもいっぱい男性とつきあって、いいプレイガールを目指しなさい」ってアドバイスされたんですよ……。あと、つきあってる彼氏には、専業主婦でいいか、早めに確認しなさいって。――ええーーー(絶句)。か、かなり古いタイプの上司なんですねそうなんです。そういう話に対しても、はっきりと反論はできないんで、「それはなかなか難しいですね」ってやんわりとかわすんですけど。ほかにもプライベートなことを聞いてきたり、性的な話をされることもあって困っています。――それはセクハラに入る気がしますがところが、その人は触ったりするのはセクハラと自覚してるみたいなんですが、本人がやっていることは単なるアドバイスだと思ってるみたいで、ぜんぜん悪気がないみたいなんですよね。――なんか「問題のあるレストラン」みたいなことってドラマの中だけのことかと思ってたけど、まだまだ実社会にもあるんですね。Mさんは、今は実家暮らしですか?そうです。そうじゃないと生活も苦しいし、会社にいる人も女性は実家の人ばかりなんです。――昔の就職でも実家限定の募集ってあったと聞きますけどその因習が残っている感じですね。ひとり暮らしにはキツい給料なんですか?毎月の収入はさほどいいというわけではないんですが、ボーナスはそれなりにあるので、そこだけがモチベーションって感じですね。だから、ひとり暮らしができないほどではないかも。――会社では、お昼ご飯とかはどうしてるんですか?同僚と一緒に会議室で食べてます。私はお弁当を作っていて、たまに同僚と外に出ています。――女性同士は仲は良いですか?そうですね。上司が困った人が多いので男女問わず、同僚は仲がいいです。辞めた同僚とも定期的にご飯を食べたりしてるし。でも、会社には嫌な人もいます。なんでも否定してくる否定おじさんとか、なんでも詮索してくる詮索おじさん、告げ口魔とかもいます。あと、機嫌が悪いときに失敗したりすると、腕をはたいてきた女性の先輩とか……。――そんな人がいるんですか?書類の渡し方がなってないと言って叩かれました。まあ確かに片手で渡した私も悪かったと思いますが。――叩かれるほどではないと思いますよ。働いていて、今の楽しみってなんですか?土日が来るのは待ち遠しいですね。別に何をするってわけではないし、一日は疲れてるのでひたすら寝て過ごしたり、それから友達と出かけたり。でも自分の時間って感じだから、土日は楽しいです。○まとめお友達も一緒にいたことで、気楽な雰囲気で率直に答えてくれたMさん。いろんな話に驚いたり絶句したりしながらのインタビューでしたが、今回のお話の中では、特に結婚願望はないのに、今の状況から円満に抜け出すためには、結婚しかないと思っているというエピソードが印象に残りました。会社勤めをしていたときのことを思いだせばその気持ちもわかります。でも、私の場合は20年も前の話。今ではすっかりそんなこともなくなっていると思ってましたが、時代が変わったのに、女性が会社で働き続けることもまだまだ想定されていません。たくさんの古い因習が残っている会社が今なお存在することに衝撃を受けました。西森路代ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
2015年04月04日○好きな女性アナウンサー首位の水ト麻美アナ「Oggi」2月号に、「水ト麻美アナ大解剖! 全方位好感度のヒミツ」というページがありました。水ト麻美アナと言えば、2013年、2014年の『好きな女性アナウンサーランキング』の首位に輝いた今をときめく女性アナウンサー。この特集には、1988年からの人気女子アナの変遷が掲載されているのですが、河野景子さん、有賀さつきさん、八木亜希子さんといった、バブル時代のお姉さんっぽい「花の三人娘」時代にはじまり、雨宮塔子さん、久保純子さんの「癒し系」ブーム、高島彩さん、中野美奈子さんの「アナドル」ブーム、そして「タレント化のピーク」を経て、多様化時代に突入、この多様化から出てきた水トアナの一強時代というのが現在なのだそうです。壮大な歴史の振り返りを見ると、時代と人気の女子アナのタイプには相関性もありそうです。○弱みが強い武器に個人的に、水トアナの印象というのは「全方位好感度」が高い人ですから、「嫌われない条件」が最強に揃っているなと思います。今までは芸能人やアナウンサーというのは、多少は嫌われる部分があっても、テレビに出る人だからそれを上回る好かれる部分があればいいのではないかという空気もあったと思うのですが、水トアナというのは、もしも同僚にいたとしても、好感度は高そうです。だからと言って、嫌われる部分がないことは弱点にもなり得る時代ですし、逆に弱点があることは強みにもなる時代です。例えばNHKのアナウンサーである有働由美子さんは自らの本『ウドウロク』に、「わき汗」というマイナスの看板を背負うことによって、「ちょっとイタい、かわいそうな形容に耐えている感じが好感を持ってとらえられるらしく、放送でちょっとくらいクロいことを述べても、苦情がこなくなった」と綴っています。弱みとは今や強い武器でもあるのですね。水トさんにとって、「弱み」でもあり、それが「強み」にもなる武器はなんと言っても「大食い」や「ぽっちゃり」で、そのことで周囲に突っ込んでもらいやすくなります。それは、女子アナには「大食い」や「ぽっちゃり」をキャラクターにしていた人が今までいなかったということも関係あるのだと思います。○水トアナの「全方位好感度」には「交渉力」も「Oggi」では、「ぽっちゃり」や「大食い」などのほかに、水トさんの別の面にも焦点を当てています。例えば、「ほんわか見えて野心家」であることや「空気が読める賢い人間関係」など。水トさんは、「自他ともに認める負けず嫌い」だそうで、『ZIP!』の桝アナのポジションを狙っていると公言したりと、いつでもわかりやすい目標を掲げている人なのだそうです。また、竜兵会に憧れて水ト会を結成。「Oggi」によると、「後輩を率い、先輩へのヨイショもお手のもの」だそうです。こうした狡猾にも見える部分も、現代においては「"腰掛け"ではなく本気で働いていることの証」「働きやすい環境は自分で切り開く」と捉えられると「Oggi」では分析しています。なるほど、確かに最近は、HKT48の指原莉乃さんのように、自分で自分の道を切り開く人は人気ですが、水トさんにも同じような部分があったわけですね。今まで、女性誌の中での「全方位モテ」というと、女性の中では悪目立ちせず、男性には失敗しても許してもらえるような女性像として描かれていた気がしますが、水トさん一強時代の「全方位好感度」とは、そこに仕事や人間関係への「交渉力」も加わったのかもしれないと思ったのでした。<著者プロフィール<西森路代ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
2015年01月29日