「日ごろから、バランスのいい食事や適度な運動をすることを心がけ、積極的に社会参加することなどは、認知症発症リスクを下げるために有効かもしれません。久山町研究を含むさまざまな疫学調査データから示されています」そう話すのは、九州大学大学院医学研究院教授で医学博士の二宮利治先生。“久山町研究”は、福岡市の北部に位置する糟屋郡久山町(人口約8,900人)の住民を対象に、’61年から長年継続している生活習慣病の大規模な疫学調査だ。脳卒中や高血圧、糖尿病といった生活習慣病の調査に加え、’85年からは、65歳以上の住民を対象とした認知症の調査も開始した。6〜7年ごとに追跡調査を行い、日ごろの食事や生活習慣が認知症の発症とどのような関連があるかを調べているのだ。「久山町研究の特徴は、町ぐるみで調査に協力してくれているということ。そのため、65歳以上の住民における認知症の調査の受診率は90%以上と非常に高く、さらに、調査にご協力いただいた99%の方の健康状態を毎年追跡しています」このように精度の高い認知症の疫学調査は、世界でほかに例がなく、注目を集めている。久山町研究の成績を基にした推計によると、’25年には日本で認知症患者が約700万人にのぼり、65歳以上の5人に1人が認知症になるという。とはいえ、いまだ特効薬もなく、未解明な部分が多い認知症。そこで今回、久山町研究の研究責任者である二宮先生に、現在までの調査結果から得られた認知症の予防法を聞いた。■歯の健康を保つ「過度なダイエットは避け、筋肉や骨のもとになる良質なタンパク質を、大豆や卵、魚などでしっかりとってください。筋力や骨密度が低下すると、足腰が弱まって活動が鈍ります。その結果、脳の働きが衰え、認知症のリスクも高まるのです。また、食事をしっかりかむためには“歯”の健康を保つことも必要です」栄養素の取り方も重要だ。「主食はカップ麺で、足りない栄養はサプリメントで補う、という方もいますが、栄養素は食品からとるのが好ましいと思います。外食でもかまいませんが、バランスを考えてメニューを選んだり、献立を考えたりする行為そのものが、生活にハリをもたらし、認知症のリスクを低下させることにつながります」少なめにしたほうがいいのは、米と酒だ。「米の摂取量と、認知症の発症に明らかな関連性が見られたわけではありません。しかし、一定の摂取カロリーのなかで、米の摂取量が多いほど、予防効果があるほかのおかずの量が減ってしまい、栄養バランスが崩れることになります。ですから、米の量が少なめで、副菜を多く食べている人のほうが、認知症になりにくいという結果が得られたと考えています」■生きがいを持つのがいちばん。お酒のリスクも減るお酒に関しては、「飲めば飲むだけ脳が萎縮する」と言う研究データもあるというが……。「脳の病的変化や萎縮が進んでいても、認知症の症状が見られない人がいることが海外の調査から報告されています。また、人とのコミュニケーションをとり、社会活動や趣味のサークルなどに参加するなど、生きがいを持つことが脳にいい影響を与えることを示唆する報告もみられます。脳には耐久性があって、脳を継続的に刺激することで、この神経細胞のルートはダメならこっち、というように脳の働きを代償する機能があるのではないかと思っています。飲酒と認知症の関係はまだ明らかになっていませんが、お酒が人生の楽しみという方は、一日1合程度なら飲んでもいいかもしれません。ただし、飲みすぎは絶対にダメですよ」
2019年08月14日治療が難しい認知症。正確な予防法をあぶりだすために、町の住民ほぼ全員の生活を長年追いかけた、画期的な調査がある。認知症発症の有無から見えてきたものとは——。「日ごろから、バランスのいい食事や適度な運動をすることを心がけ、積極的に社会参加することなどは、認知症発症リスクを下げるために有効かもしれません。久山町研究を含むさまざまな疫学調査データから示されています」そう話すのは、九州大学大学院医学研究院教授で医学博士の二宮利治先生。“久山町研究”は、福岡市の北部に位置する糟屋郡久山町(人口約8,900人)の住民を対象に、’61年から長年継続している生活習慣病の大規模な疫学調査だ。脳卒中や高血圧、糖尿病といった生活習慣病の調査に加え、’85年からは、65歳以上の住民を対象とした認知症の調査も開始した。6〜7年ごとに追跡調査を行い、日ごろの食事や生活習慣が認知症の発症とどのような関連があるかを調べているのだ。「久山町研究の特徴は、町ぐるみで調査に協力してくれているということ。そのため、65歳以上の住民における認知症の調査の受診率は90%以上と非常に高く、さらに、調査にご協力いただいた99%の方の健康状態を毎年追跡しています」このように精度の高い認知症の疫学調査は、世界でほかに例がなく、注目を集めている。久山町研究の成績を基にした推計によると、’25年には日本で認知症患者が約700万人にのぼり、65歳以上の5人に1人が認知症になるという。とはいえ、いまだ特効薬もなく、未解明な部分が多い認知症。そこで今回、久山町研究の研究責任者である二宮先生に、現在までの調査結果から得られた認知症の予防法を聞いた。■糖尿病にならないようにする「認知症には、いくつか種類があります。久山町で主に研究しているのは、脳梗塞や脳出血などによって発症する血管性認知症と、脳の側頭葉などが萎縮して起こるアルツハイマー型認知症の2種類。’88年および’02年の久山町の健診を受診された、65歳以上の住民を10年間追跡しました。その結果、’88年の対象者に比べ’02年の対象者では、アルツハイマー型認知症の発症率は倍増していました。血管性認知症の発症率は、高血圧治療の普及により大きな変化はありませんでした」アルツハイマー型が急増している要因の一つとして、近年、解明されつつあるのが“糖尿病”との関係だ。「糖尿病患者は、糖尿病でない人と比べて、アルツハイマー型認知症および血管性認知症の発症リスクが約2.1倍高いことがわかりました。つまり、糖尿病は、認知症発症のリスク要因であると考えられます」ということは、糖尿病の予防になる食生活を心がけることは、認知症を予防するうえで大切であるといえるだろう。■一汁三菜の和食スタイルが大事久山町研究では、認知症になりにくい食事パターンも検討している。その結果、糖尿病を予防する食事法とも類似していた。「’88年の久山町の健診で食事調査を受けた、認知症のない60〜79歳の住民1,006人を17年間追跡調査し、食事パターンが認知症発症に及ぼす影響を検討しました。すると、大豆・緑黄色野菜・海藻類・魚・卵・牛乳や乳製品・果実などをよく摂取する食事をしている人のほうが、認知症になりにくいことがわかったのです」牛乳・乳製品を例に挙げると、摂取量が1日あたり44グラム以下の人たちと比べて、97〜197グラム(約牛乳瓶1本分)摂取する人のほうが、血管性、アルツハイマー型ともに発症率が低かったという。九州大学農学研究院との共同研究では、鶏の胸肉に含まれる“イミダゾールペプチド”という成分に記憶力を改善させ、認知症に予防的に働く可能性があることなどもわかってきている。「注意してほしいのは、『これを食べていたら認知症を予防できる』という夢のような食材はないということです」二宮先生が推奨するのは、大豆を使ったお味噌汁などの汁物が一品と、主食の米、魚や肉などの主菜に加え、野菜などの副菜が2品つくバランスのいい“一汁三菜”の伝統的な和食スタイルだ。久山町研究に協力している中村学園短期大学准教授の内田和宏さんが、一日分の理想的な一汁三菜レシピを教えてくれた。【朝食】麦ごはん…白米、押し麦味噌汁…かぼちゃ、しめじいり豆腐…木綿豆腐、にんじん、葉ねぎ、サクラエビ、しらす干し、糸みつばコールスローサラダ…キャベツ、とうもろこし、ヨーグルト、ミニトマトいり豆腐や味噌汁で、大豆を摂取。サラダで緑黄色野菜を、ドレッシングにヨーグルトを使って乳製品もしっかり補給している点がポイント。白米をとってはいけないということではないが、少なめのほうがいい。【昼食】麦ごはん…白米、押し麦鶏肉の味噌焼き…鶏肉、じゃがいも、ブロッコリー五目あえ…にんじん、しいたけ、ほうれん草、絹さや、木綿豆腐きんぴらごぼう…ごぼう、にんじん、ごまリンゴそれぞれの料理にブロッコリー、ほうれん草、にんじんなど緑黄色野菜を含む。大豆、鶏肉のタンパク質は筋力や骨を形成するのに必須なので、しっかりとったほうがいい。足腰の強さを保つことは認知症予防に必須。【夕食】麦ごはん…白米、押し麦味噌汁…オクラ、ぶなしめじアジのエスカベッシュ(マリネの一種)…アジ、にんじん、たまねぎ、きゅうりエビとヤングコーンの炒めもの…エビ、ヤングコーン、さやいんげんトマトのマヨネーズグラタン…トマトアジ、エビといった魚でタンパク質をとるのもいい。アジなど青魚が豊富に含むEPAには血液をサラサラにして血行をよくし、脳機能維持効果がある。緑黄色野菜とトマトやきのこ類と、野菜を豊富に含むのがいい。認知症リスクを減らす一日のメニュー。さっそく実践してみよう。
2019年08月14日ダイエット中の間食にナッツ類を食べる人は多いですよね。ナッツ類にもさまざまな種類があり、どれを選べば良いか分からない、ということもあるのではないでしょうか。今回は、ナッツ類の種類、効能、1日にどれくらい食べれば良いのかについてご紹介します!ナッツ類にはどんな種類がある?出典:byBirth「ナッツ」といっても、さまざまな種類がありますよね。どんな種類があり、どんな効能があるのでしょうか?くるみ抗酸化作用はナッツ類の中でも非常に優れています。オメガ3脂肪酸も豊富で、血管を丈夫に保ち、美容や認知症予防にも良いといわれています。αリノレン酸も多く、女性ホルモンのバランスを整えるといわれており、アンチエイジングにも嬉しいナッツです。アーモンド出典:byBirthナッツといえばアーモンド、というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。アーモンドはビタミンEが多く、抗酸化作用が期待できます。アンチエイジングだけでなく、血行を良くするため、冷え性の改善にも良いですね!カシューナッツカシューナッツはナッツ類の中でも脂質は少なめです。そのため、カロリーも他のナッツより低いため、ダイエット中におすすめです。オレイン酸という不飽和脂肪酸が豊富で、血管の疾患を予防するはたらきも◎。ピスタチオカリウムが多く、むくみ対策におすすめのナッツです。カリウムは体内の余分な水分を、体の外に出すはたらきがあります。糖質の代謝に関わるビタミンB1、貧血対策に良い鉄も豊富です。ひまわりの種出典:byBirthリノール酸が多く、コレステロールを上げにくくするため生活習慣病予防にも◎。カリウムも豊富なため、むくも予防にも良いですね!マカダミアナッツチョコレートやクッキーによく入っているナッツです。パルミトレイン酸という脂肪酸が含まれていて、肌荒れ・肌のシミやシワに効果的といわれています。ビタミンB1も豊富なので、ダイエット中にもおすすめです。ヘーゼルナッツオレイン酸がアーモンドの約1.5倍含まれているため、抗酸化作用や生活習慣病予防が期待できます。健康目的で食べる人も多いようです。ダイエット中にナッツ類が良いと言われる理由とは?ナッツ類には、ダイエットするために必要な栄養素が豊富です。不飽和脂肪酸出典:byBirthナッツ類は脂質を豊富に含んでいますが、その脂質の種類が注目されています。ナッツ類は、オレイン酸、EPA、DHAなどの脂肪酸を含んでいます。悪玉コレステロールを減らすはたらきや、善玉コレステロールを増やすはたらきがあります。ダイエットだけでなく、健康にも嬉しい栄養素が豊富です。脂質というと、悪いイメージを抱きがちですが、ナッツ類の脂質は良質であるため、問題ありません。しかし、良質といっても脂質であることに変わりはないため、食べすぎはNGです。ビタミンE抗酸化作用が高く、毛細血管の血流を良くするため、代謝UPにも良いビタミンです。例えばアーモンドのビタミンEは、かぼちゃの約5倍も含まれています。ビタミンEの抗酸化作用は、今やアンチエイジングには欠かせません。カルシウム実はミネラル類も豊富なナッツ。カルシウムはナッツ類全般に豊富に含まれています。アーモンド、ヘーゼルナッツに多く含まれています。骨や歯を丈夫に保つために必要なミネラルです。骨粗鬆症対策にも◎。マグネシウムアーモンド、カシューナッツに豊富に含まれます。抗ストレス作用もあるため、ダイエット中のストレス対策にも良いですね!亜鉛アーモンドに多く、亜鉛が不足すると味覚異常やにきびができるなどの症状があらわれます。肌の状態を良く保つために必要なコラーゲンの生成にも関わっているミネラルです。食物繊維出典:byBirthアーモンド、カシューナッツ、ピスタチオは特に食物繊維が多いナッツです。食物繊維には水溶性・不溶性の2種類ありますが、ナッツ類は不溶性食物繊維が多く、胃や腸で水分を吸収して膨張し、腸のぜん動運動を活発にします。ナッツを毎日食べる人は、便秘が改善されるというデータもあるようです。また、アーモンドについての研究では、腸内で食物繊維が脂質の吸収を妨げるため、余分なエネルギーを体に溜めない、という報告もあります。ダイエット中の体重管理にも良いですね。ダイエット中、ナッツ類を食べ過ぎるとどんなことが起きる?出典:byBirth太る後述しますが、目安量を守っていればダイエットに効果的ですが、脂質量が多いため食べすぎると太ってしまいます。ダイエットの間食にナッツ類を食べて太ってしまうと、元も子もないですよね。1日の摂取量に注意しましょう。胃腸の調子が悪くなることがあるナッツ類に食物繊維が豊富であることは前述しましたが、多量に食べると体質によっては、便秘や腹痛が起こることがあります。また、脂質量が多いため、消化にも時間がかかり、胃腸には負担です。にきびができるナッツ類自体、にきびを作りやすいわけではありません。ナッツを加工する時に使用するバターや塩によって、肌のコンディションが悪くなることがあります。なるべく、素焼き、ローストされているものを選ぶようにし、1日の摂取量を守りましょう。1日にどれくらい食べたら良い?出典:byBirth目安といわれる量は、「1日20g~50g」とさまざまな情報があります。こうしたナッツについての研究は海外のものが多く、日本人の体形を考えても、1日25g~30g程度にしておくと良いでしょう。また、一つのナッツを食べるよりも、ミックスナッツなどさまざまな栄養素を摂れるナッツを選ぶと良いでしょう。おつまみ用のナッツには油や塩が多いため、素焼き・無塩のものがダイエット中にはおすすめです。食感や味、効能が自分に合うナッツを見つけて、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
2019年08月13日子ども向けのワークなどによくある迷路。じつは、迷路で遊ぶと、子どもにとってさまざまな効果が期待できるのです。今回は、迷路で遊ぶことのメリットや、おすすめの迷路絵本をご紹介しましょう。迷路で遊ぶと頭が良くなる!?知育玩具や絵本にも用いられることが多く、子どもはもちろん、大人も夢中になってしまいそうな迷路。子どもが暇を持て余してしまう車やバス、電車での移動の際や、天気が悪い日のお家遊びツールとしても活用できるため、子育て家庭にとっては必須とも言えるアイテムのひとつです。シンプルな遊びにも思える迷路ですが、「ゴールにたどり着くためにはどこを曲がればいいのか考えながら線を引いていく」という作業は集中力や判断力が必要とされ、脳の活性化につながるのだそう。医学博士の白澤卓二氏は、迷路遊びの効果について次のように述べています。迷路には、脳の働きを活性化させる力があります。お子さんが夢中になって迷路をとくことで、空間認識能力のアップや、認知機能の柔軟性が獲得されています。また、お年寄りの認知症予防プログラムにも迷路は活用されています。(引用元:絵本ナビスタイル|迷路で子どもの「脳力」がアップする!『めいろどうぶつえん』)「線を引く」ことのすごいメリット迷路遊びでは、「ゴールを目指して線を引く」という作業がメインになりますが、中学受験のプロとして活躍している小川大介先生いわく、「線を線として書くこと」には以下のメリットがあるのだそう。●文字や数字を学ぶ基礎ができる小さな子どもにとって、迷路遊びのような「1本の線を引く作業」はかなり難しいと小川先生は言います。そして、線を書く遊びになじんでいる子となじめていない子では、本格的に文字や数字を学び始めてからの定着に大きな差が出るのだそう。幼少期に楽しく遊びながら、文字・数字を書くための基本を身につけることができる点は、迷路遊びの大きなメリットです。●算数の図形問題への苦手意識がなくなる小川先生いわく、迷路などで線を書くと、自分の手で動かしたものが形になる感覚を味わうことができ、形に対するセンサーが磨かれていくのだそう。前述したように、子どもにとって線を引くのは難しい作業。最初は紙に線を引く練習から始めましょう。直線や曲線を書く練習から始めていき、慣れてきたら丸や三角、四角などの図形に発展させていくことで、図形として物をとらえる目が養われ、ひいては算数の図形問題にもなじめるようになります。年齢別・おすすめの迷路絵本さまざまな絵本のテーマにもなっている迷路。ここでは、おすすめの迷路本を年齢別に紹介します。2、3歳〜「ぐんぐんすすめ! よんだりたどったりめいろであそぼ」著:かしわらあきお(幻冬舎)大きくてわかりやすい迷路になっており、まだ線を書くのが難しい子どもでも指でなぞりながら遊べます。「てくてく」「とことこ」など、子どもが好きな擬態語がいたるところに散りばめられており、言葉遊びも楽しめます。「ベリーくんのきのみやさん」(エド・インター)絵本と木製の迷路がセットになった知育玩具です。ストーリーに合わせてマグネットペンで玉を運ぶ迷路で、数の数え方や色の認識力、手先の器用性などが養われます。「ノンタンおばけむらめいろ」著:キヨノサチコ(偕成社)子どもに大人気のノンタンシリーズの迷路本です。ノンタンが好きな子どもはもちろん、おばけが好きな子どもにもピッタリ。ノンタンとおばけのやりとりを楽しみながら、迷路にふれるきっかけとして活用するのもおすすめです。 年長~小学校低学年「算数が好きになるパズル迷路のろじか~る」著:算数パズル開発室(世界文化社)迷路をしながら、計算問題では身につかない考える力を養う絵本。迷路で楽しく算数に触れることができるので、算数に苦手意識がある子どもにもおすすめです。「めいろどうぶつえん」著:吉川めいろ(飛鳥新社)50種類の動物が迷路になっており、動物が好きな子どもにおすすめです。動物ごとに生態の解説も載っているので、図鑑のように楽しむこともできます。「パズルでまなぼう③めいろ」監修:市川希(世界文化社)完成後の迷路に色を塗ると動物などが出てくるページがあり、迷路でゴールにたどり着いたとき、そして色を塗って動物が出てきたときと、さまざまな達成感が味わえます。知能研究所・所長の市川希先生による解説つきです。***子どもから大人まで楽しむことができ、脳の活性化にも良い影響がある迷路。ぜひ親子で取り組む趣味のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。文/田口 るい(参考)マイナビウーマン子育て|迷路は知育に最適!?迷路の効果と子供への教え方日経デュアル|簡単オススメ!紙と鉛筆を使い、子を賢くする方法絵本ナビスタイル|迷路で子どもの「脳力」がアップする!『めいろどうぶつえん』偕成社|ノンタンおばけむらめいろ世界文化社|算数が好きになるパズル迷路のろじか~る世界文化社|パズルでまなぼう③めいろ絵本ナビスタイル|ぐんぐんすすめ! よんだりたどったりめいろであそぼ株式会社エド・インター|えほんトイっしょベリーくんのきのみやさん
2019年08月13日近畿在住の70代女性は夫と死別して一人暮らしをしていたが、1年ほどしてから「夫が生きている」と口走って夜中に外を歩き回るようになったため、慌てた娘に連れられて精神科病院を受診した。この女性の診察にあたった、ひょうごこころの医療センターの小田陽彦認知症疾患医療センター長が、当時の状況を次のように話す。「お薬手帳を見ると、受診の1カ月前から『ベンゾジアゼピン受容体作動薬』という抗不安薬が投与されていました。いわゆる安定剤です。本人に事情を聞くと、『夫が亡くなってから1年たつのに不安が一向に収まらない』とかかりつけ医に言ったところ処方されたようです。じつはこの薬は、65歳以上の人が飲むと幻覚妄想を伴う意識障害(せん妄)や認知機能障害を起こしやすいので、副作用の可能性を考えてすぐに中止し、外来で経過をみました。すると翌々週には幻覚妄想や徘徊といった症状がすっかり消えたのです。よくなったので精神科への通院は3回ほどで終了しました」「認知症」とは、「もの忘れ、言葉が出にくい、段取りができない」といった症状により生活に支障をきたしている状態を指す。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つが代表的な認知症を引き起こす病気(認知症性疾患)だが、日本神経学会のガイドラインによると、認知症の症状が出る病気は、じつに60種類以上もある。【アルツハイマー型認知症】記憶をつかさどる海馬を中心に脳が萎縮する。直近の出来事を忘れる、日付がわからなくなる、判断力が低下する等の認知機能障害が起こる。【血管性認知症】脳梗塞や脳出血などで起こる。損傷血管の部位によって症状はさまざまで認知機能障害以外に歩行障害、排尿障害などが現れることがある。【レビー小体型認知症】脳にレビー小体という異常構造物が出現する。認知機能障害以外に幻視(70%)、パーキンソン症状(77%)など多彩な症状がみられる。【前頭側頭型認知症】人格をつかさどる前頭葉や言語をつかさどる側頭葉が萎縮する。異常行動が目立つ(行動異常型)前頭側頭型認知症や意味性認知症がある。「そのなかには、治る可能性があるものも含まれます。しかし、きちんと病気を探さず、もの忘れが起きたら何でも、『アルツハイマー型』と診断を下してしまう医師も多く、すぐに抗認知症薬が処方されたためにかえって体調を崩してしまうケースもあるのです。特に多くの薬を投与されている65歳以上の高齢者は注意が必要です。薬の種類が増えるほど薬同士が合わないことによるトラブルの可能性は高まりますし、65歳以上になれば誰でも薬の副作用は出やすくなるのです」(小田センター長・以下同)冒頭の女性のように薬の副作用が原因で認知機能障害が起こるケースは多く、抗不安薬のほか睡眠導入剤、総合感冒薬、胃酸を抑えるH2受容体拮抗薬などは要注意だという。もの忘れがひどくなる脳の病気には、前出の4大認知症のほかに、脳を覆う髄液が脳内で滞り脳を圧迫する「正常圧水頭症」や、頭を打った後しばらくしてから血腫が頭蓋骨内にできて脳を圧迫する「慢性硬膜下血腫」がある。いずれも外科手術で症状が改善する可能性があるという。ほかに、飲みすぎていたお酒を断つことで、認知機能が元に戻ることも。「ほかに、甲状腺ホルモンが不足して代謝が低下することで認知機能障害が起こる『甲状腺機能低下症』はホルモン補充療法で、ビタミンB12欠乏症による認知機能障害はビタミン補充療法で改善されることがあります。大切なのは、治るかもしれない認知症を見逃さないことなのです」見逃しを防ぐためにも役立つのが「お薬手帳」。認知症が疑われた際は、医師に今飲んでいる薬をきちんと確認してもらうことがカギだ。お薬手帳の確認がないまま問診だけで抗認知症薬が処方されているのであれば、薬剤師か別の医師に相談してみよう。「抗認知症薬を服用するのであれば、その前にCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)といった頭部画像検査と血液検査は必ず受けましょう。それらなしに正確な診断は不可能だからです。検査なしでいきなり抗認知症薬を処方されている場合は、医師に事情を聞いたほうが無難です」もの忘れが激しくなると、自分で体調不良の原因や経緯を医師に正確に伝えられなくなるので、家族など周囲の協力も不可欠だ。「ご自身で体調の異変に気がつかないときでも、ご家族が『いつごろからどんな症状が起きたのか』といった情報を把握してもらえると医師としては助かります」誰にでも起こりうる認知症。気になる症状が出たときでも、“治るかもしれない可能性”を見過ごさないよう気をつけたい。
2019年08月02日蒸し暑い夏の夜、かたせ梨乃(62)は東京都港区内の有名レストランを訪れていた。男女5人ほどのグループで食卓を囲み、ディナーのひとときを楽しんでいた。かたせといえば代表作『極道の妻たち』をはじめ、映画やドラマで女優として幅広く活躍。最近ではバラエティ番組でも明るいキャラクターで親しまれている。「実はかたせさんは長らく、高齢のご両親を介護しているんです。ようやく最近になって、その実体験を公に話されるようになったんです」(テレビ局関係者)彼女は6月3日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で、今年93歳の両親の介護を初めて明かした。父親は一時は“要介護5”に認定され、母親も骨折したりと、93歳の両親の世話をかたせは一人で背負ってきたという。「かたせさんのお母さんが80歳のころ、足が弱くなったため、ご両親はそれまで暮らした一軒家からマンションに引っ越したそうです。その後、お父さんが倒れて入院し、歩行も食べることも困難になったそうです。そんなお父さんの入院中にお母さんの認知症が進み、かたせさんはこの時期がいちばん大変だったと聞いています」(前出・テレビ局関係者)兄弟姉妹のいない一人っ子で、独身のかたせは昨今、日本で増えている“シングル介護”の典型例でもある。父はその後、懸命のリハビリとかたせの支えもあって“要介護1”まで改善。退院後、彼女は90歳を過ぎた両親を引き続き在宅介護しようと最後まで考えたというが――。今月発売された雑誌で1~2年前の“家族の決断”をこう振り返っている。《両親と私、お互いのために「人の力を借りることも大切」と、二人いっしょに有料老人ホームでお世話になることを決めました。私はひとりっ子なので、両親の携帯がつながらなければ、すぐに駆けつけたい。でも、仕事も忙しい。当時は「たとえ5分でも10分でも」と毎日、病院の父、自宅の母に会いに行きましたが、とても大変な日々でした》(『終活読本ソナエ2019年夏号』)「株式会社ねこの手」代表で、介護コンサルタントの伊藤亜紀さんは“シングル介護”の重責をこう代弁する。「相談できる兄弟姉妹がいるというのは、やはり大きなメリットです。介護の労力や経済的な負担など、なんでも一人で抱えないといけないのがつらいところです。体も精神も追い詰められてくるんです。ですから、兄弟がいない場合、相談できる話し相手がいることが大変重要なんです」かたせには三十年来のなんでも“相談できる相手”がいるという。「彼女は映画『極道の妻たち』(86年)で共演して以来、岩下志麻さん(78)とはなんでも話し合う仲。お互い、よくメールしているようです。近年は岩下さんも旦那さんの介護をするようになって、2人の話題に“家族の介護”が増えているといいます」(映画関係者)『極妻』では姉妹を演じた2人。実生活でもかたせは岩下を姉のように慕っているという。本誌は岩下の“介護生活”を今年5月に報じている。今年に入って、夫の映画監督・篠田正浩さん(88)が体調を崩し自宅療養に入ったため、女優業をセーブして夫を支えているのだ。前出・伊藤さんによれば、こうしたかたせと岩下のような関係を“ケア友”と言い、その大切さをこう力説する。「本当の兄弟姉妹同士だと利害や価値観がぶつかったりして、トラブルになることも。その点、利害関係がない“ケア友”は相談相手としては最適だと思います。しかも、女優という仕事も共通なので分かち合えることも多いはず。似たような境遇の人であればより的確な助言もできます。価値観が近い“ケア友”がいるのは、大変素晴らしいことです」“ケア友”岩下との共闘で、かたせは“シングル介護”生活を前向きに乗り切っている。
2019年08月01日家族信託のほかにも、財産管理や相続、認知症に関連したさまざまな制度があります。生前贈与や生命保険は、今まで生前の相続対策に活用されてきました。成年後見制度は、認知症などで判断能力を欠くことになった場合に活用されています。今回は、従来の制度と比べて、家族信託にどんなメリット・デメリットがあるかを考えてみましょう。■ 1.後見制度よりも資産の運用がしやすい「後見制度」とは、判断能力が不十分な人を守る制度です。契約などの法律行為を行えない人を後見人等が代理し、必要な契約等を締結する、財産を管理するなどすることで、本人の保護を図ります。tsukat / PIXTA(ピクスタ)1-12種類の後見制度法定後見と任意後見の2つがある法定後見制度は、既に判断能力が不十分な時に、申立により家庭裁判所によって選任された後見人等が本人に代わって財産や権利を守り、本人を法的に支援します。任意後見制度は、本人が元気で判断能力があるうちに、将来、自らの判断能力が低下した場合に備え、任意後見人を選び、公正証書で任意後見契約を結んでおくもので、将来、判断能力が不十分となった時に備えるための制度です。1-2資産運用の自由度は家族信託のほうが高い後見制度を利用すると、毎年、家庭裁判所への報告義務が発生します。また、法廷後見人として身内が後見人になるとは限りません。資産を保護する活動はしてくれますが、本人や家族のために、積極的な資産運用を行ってくれないケースが少なくありません。家族信託なら自分が元気なうちから、資産の管理・処分を託すことができ、もし、万が一判断能力を喪失したときも、自分の意向に沿った財産管理を行えます。不動産の売却や買い換え、アパート建設などの資産運用・組替えも、受託者である家族により可能です。信託において、受託者は信託財産の管理運用を行なうことができますが、成年後見人のように、本人に代わって身の回りの世話や一切の契約ごとの管理を包括的に行ったり、本人のした契約を取り消したりする成年後見人のような権限はありません。■ 2.生前贈与よりも財産管理の自由度が高くなる相続対策として生前贈与が行われる場合がありますが、生前贈与では主に高額な贈与税が問題になります。贈与税の基礎控除額は110万円。相続税に比べて高い税率です。CORA / PIXTA(ピクスタ)贈与税が非課税になる特例もありますが、住宅の購入や教育資金、結婚・子育て資金と使用目的が限定されています。一度贈与した財産を戻すことができない点もデメリットとして挙げられます。贈与税の非課税制度を利用して限度額いっぱいの金額を孫に贈与したものの、あとから介護費用が必要になってお金に困るといったケースもあります。家族信託ならば、受託者による財産の処分や運用方法の変更を行うことができるため、いざという時にも現金化することができるのです。家族信託のほうが多目的な用途に使用可能だといえます。■ 3.生命保険は健康でないと加入が難しい生命保険の死亡保険金は、指定された受取人の固有財産で遺産分割の対象にはなりません。そのために、相続が発生した場合に特定の人に財産を渡したい場合に有効な方法です。makaron* / PIXTA(ピクスタ)ただし、生命保険に加入するには、被保険者が健康でなければなりません。受取人は誰でもよいわけではなく、一般的に孫、祖父母、兄弟姉妹(義理含む)の2親等以内の親族とされています。家族信託の受益者、受託者は、基本的には「家族」であり、保険の受取人に比べ広範囲となっています。ただし、信託契約は委託者と受託者の信頼関係が何より重要です。信託は「信用して託す」わけですから、信頼できる家族がいないなら家族信託を利用することはできません。なお、家族信託で、受益者が未成年や高齢者など、自ら監督することが難しい場合は、信託監督人をつけることができる場合があります。■ 4.遺言書よりも長く財産管理の道筋を示せる相続対策として遺言書を書く人が多くなっていますが、財産承継について遺言で指定できるのは自身が死亡したときの相続までで、その次の代の相続については指定できないのをご存知でしょうか。cba / PIXTA(ピクスタ)遺産を子どもに相続させることを指定できても、その子どもから孫に遺産を継がせる(2次相続と言います)ことまでは指定できません。遺言書は万能ではないのです。家族信託では、自分の希望する順番で何段階かに分けて受益者の指定が可能となります。1次相続者である高齢の配偶者などが認知症や障害により遺言が書けない場合でも、遺言を書いたのと同じ効果になるので、遺産分割協議による争いを回避できます。■ 5.まとめ家族信託で注意してほしいのは、相続税です。不動産相続は注意が必要です。相続で「所有権」を取得した人に相続税が課税されますが、家族信託を利用して不動産を信託した場合は、所有権を取得した人ではなく、受益権を取得した人に対して相続税が課税されます。受益権の評価額は、その不動産の相続税評価額と同じです。家族信託それ自体で相続税評価額が引き下げられるわけではありません。このデメリットを考慮しても、家族信託は、後見制度や遺言、贈与などに比べ、財産管理において思い通りの財産承継ができる制度ですので、一度家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員吉井 希宥美
2019年07月12日向井理が主演を務め、赤堀雅秋が作・演出・出演する『美しく青く』が、7月11日に開幕した。【チケット情報はこちら】山海を抱く被災地を舞台に、“喪失感”を抱える人々が懸命に生きる姿を描いた本作。キャストは他に田中麗奈、大倉孝二、大東駿介、横山由依、銀粉蝶、秋山菜津子、平田満らが名を連ね、街を襲うハナレザルの猿害に対策する自警団リーダー・青木保役を向井、保の妻で認知症を患う実母の介護に明け暮れる青木直子役を田中が演じる。初日を前にした会見には、赤堀、向井、田中の3人が出席。向井は「胃が持ち上がるほどの緊張」を感じつつも、「問題に向き合わず逃げてしまう、誰の中にもある衝動を生きていく」と気を引き締めた。赤堀との初タッグについては「キャッチボールしやすかった」。役者に合わせて言葉を選ぶ演出に触れ、「もっと違う視点で芝居を構築しなければ」と薫陶を受けた様子を見せる。タイトルの由来を尋ねられた赤堀は「希望であり畏怖の念からつけた」と結論づけ、その心を「空や海といった人智の及ばない自然と、普段行っている人間描写のスケッチを対比する中で、今回はもっと根源的な人間の営みや幸福の在り方を掘り下げたかった」とした。田中は自身の役どころを「不安定さを抱えたキャラクター」と紹介。それと同時に「(誰しもが)自分に投影できる登場人物がいるはず」と観客に呼びかける。劇中には、高い防波堤を擁した海岸、木々が生い茂る薄暗い森、青木家のリビングといった美術セットが次々に登場。そこで繰り返される他愛ない会話から、街に暮らす人々のやるせない感情が澱のように溜まって吹きこぼれていく。「街のために」と自警団で強い統率力を発揮する一方、家庭では穏やかながら時に傍観者のような態度を取る保を、向井はバランス感覚に優れた緻密な演技で表現。田中は実母・節子(銀粉蝶)の介護に追い詰められた直子の激情を、圧倒的な気迫をもって沸点の寸前で押し殺す。シアターコクーンでの赤堀作品すべてに出演している大倉は、自警団・役所・住民に挟まれコミカルさを見せる劇中の清涼剤だ。佐々木幸司(赤堀)・順子(秋山)夫妻が営む居酒屋でくだを巻く自警団メンバーのリズミカルな応酬、アパート大家でトラブルの渦中に放り込まれる片岡老人(平田)のもの悲しい存在感にも注目したい。公演は7月28日(日)まで、東京・Bunkamura シアターコクーンにて。その後、8月1日(木)から3日(土)まで大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。東京公演は立見券を発売中。取材・文:岡山朋代
2019年07月12日成長、発達、認知――。教育関係の記事ではあたりまえのように使われる言葉ですが、その厳密な意味となると答えられない人も多いでしょう。お話を聞いたのは、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている、静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生。それらの言葉の意味に加えて、幼児教育の世界で流行語となっている「非認知能力(非認知的スキル)」という言葉がはらむ問題についても持論を語ってくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)成長、発達、認知という言葉の意味とは?成長、発達、認知という言葉のうち、その意味合いからも混同されるのが成長と発達ではないでしょうか。子どもの成長、発達といった場合、一般の会話においては大きなちがいはありません。でも、アカデミックな意味でいうと両者にはちがいがあります。「成長」とは、「数値」でわかる身体の量的な変化です。つまり、子どもでいえば身長が伸びたり体重が増えたりした場合に、「成長した」というのです。そして、「発達」とは「働き」や「質」に焦点をあてた心身の変化です。たとえば、「子どもが手指で柔らかいものを上手につまめるようになる」という動作の「器用さ」の変化や、そして「頭のなかで言葉や数や論理を理解する」というような、見た目だけではわからない心理的変化も「発達」に含まれます。この発達の過程において、生涯にわたってドラマチックな変化を見せるのが「認知の発達」です。「認知」とはごく簡単にいえば「ものごとがわかる」ということです。一般に認知能力というと、文字を書く、計算する……といった「学力」と同じ意味だと、非常に狭い意味でとらえられがちです。しかし、認知は人間のあらゆる「知覚」「運動」「学習」「判断」「記憶」などに関わります。たとえば、生活習慣の獲得。子どもが服を上手に着られるようになったなら、そこには、方向や位置関係がわかる……という空間認知や、見て触った情報をもとに動作を実行するという認知の発達がみられるのです。友だちとの付き合いにおいても、表情を認知し、視点を動かして相手の気持ちを察し、出来事のつながりから因果関係を推理し、行動の社会的な結果を予測して意思決定をする……といった認知の過程がたくさん含まれているのです。生活習慣から社会生活、おしゃべりから数の理解、砂場の遊びからスポーツの試合まで、子どもの頭のなかでは認知的な営みが忙しく繰り広げられているのです。子どもの教育から少し話はそれますが、この「認知」に関する言葉で、個人的に残念に思っているのが、2004年末に日本で「痴呆症」に代わるものとして「認知症」という名称が採用されたということです。「認知症」という名前は、そのままの意味でとらえると、「わかる病気」ということになってしまいます。当時、厚労省が行ったアンケートでも、ほとんどの有識者が「認知障がいという名称が適切」と答えていました。「認知」を「歩行」に置き換えて考えてみましょう。歩行器で歩く人も、車椅子を使う人も「歩行障がい」があるわけです。が、それを「歩行症」と呼んだらおかしいですよね。「うまく認知できないこと」は、本来なら「認知障がい」と呼びたいところです。「でも、厚労省側が『少しでも字数が少ないほうがいい」と判断して『認知症』という言葉に決まったんですよ」と、その検討会の座長を務めた医師の長谷川和夫先生から、直接お聞きしたことがあります。こうして「認知症」という名称が生まれて15年がたったいま、「うちのおじいちゃん、『ニンチ』になっちゃって……」といったふうに、ずさんに略されて使われるのを耳にします。認知という言葉が真逆の意味で使われるのです。わたしは「みんなの認知症情報学会」で、認知症や発達障がいの当事者の方々のお話を聞く機会があるのですが、そのなかのひとりの女性が「わたし自身の認知の特徴について正確に説明しようとしても、ニンチという言葉は、得体の知れない深海魚か怪物のように思われ、人の誤解を解くのは大変です」とお話しくださったことが忘れられません。「認知症」のように、名前と意味の関係をあいまいにした言葉は、誤解に悩む人を増やしてしまうのです。「社会情動的能力」を「非認知能力」と呼ぶべきではない「認知」の意味への誤解を広げている名称がもうひとつあります。現在の教育界で頻繁に聞かれる「非認知能力(非認知的スキル)」がそれです。米国の経済学者のヘックマン(J.J.Heckman)の著書『子どもたちに公平なチャンスを与える(”Giving Kids a Fair Chance”)』邦訳『幼児教育の経済学』(東洋経済新報社)のなかに「非認知能力」は登場します。ヘックマンは米国の公教育が、子どもたちを到達度テストの点数で評価し、「学力優位の教育に偏っている現状」を批判しています。多くの人が社会で成功し、経済格差を解消するためにも、到達度テスト(認知テスト)では測れない、意欲や長期計画を実行する能力、他人と協働するのに必要な社会的・感情的制御という「非認知能力」を伸ばす教育が重要である。そして幼児期こそ「非認知能力」を育む最適期なので、幼児教育にかかる費用を、社会が家庭へ「事前に分配」すれば、効率的に社会的格差が解消される――。と、幼児教育への社会的投資を促しました。わたしは、この結論には賛成です。経済階層や家庭環境のちがいにかかわらず、どの子どもにも適切な幼児教育の機会が与えられるように社会システムを作ること。そして、学業のみならず、社会性や情動コントロールの能力を育む「幅広い領域の教育」の恩恵をすべての子どもが得られるように、社会が幼児期にお金と手間をかければ、子どもが年を取るまで望ましい効果が得られ、人生も社会全体も豊かになる……というヴィジョン。これは、わたしが30年以上前から、テレビ幼児教育番組のコンテンツ開発の仕事をしながら思い描いてきた理想と重なります。しかしながら問題は、社会性や情動コントロールの能力を「非・認知能力」と名づけ、学業に関わる能力だけを「認知能力」と名づけたことでした。わたしは、その意味する「事柄」ではなく、「名称」を問題視しています。ヘックマンは当初、「(研究者が)数値で量的に認知しやすい能力」と、「(研究者が)数値では認知しにくい能力」とを区別するつもりで、認知能力と非認知能力と命名したようですが、そんな名称では「子どもの頭のなかの認知能力」と区別がつきませんし、実際、混同されています。社会性や情動コントロールの能力のなかには膨大な認知過程があるにもかかわらず、それを「非認知」と呼べば、一般の人は「人付き合いや、我慢ができることなどに、認知は入っていないのだな」と誤ってとらえてしまうでしょう。そもそも、「非(Non-)」が頭について、「認知『じゃないもの』が大事だ」……という造語の仕方が誤解のもとです。大事な事柄は、否定ではなく肯定で、端的に表現すべきでした。ヘックマンは学業の能力(彼のいう認知能力)と社会情動性の能力(彼のいう非認知能力)の両立を重視したはずですが、教育者の間では「非認知能力」あるいは「非認知スキル(Non-cognitive skills)」という名称のみが流行語になり、両者のバランスは崩れていきました。さらに「非」という接頭辞が、続く「認知能力」を排除するか、または時間的に後回しにする解釈へと迷走させています。「<我慢ができて、友だちと仲良く協力し合い、自分の感情をコントロールする力>は非認知能力であり、これが育ったあとに認知能力を伸ばせばよいのです」と、幼児教育の現場で語られるのを聞きましたが、これは、ふたつの能力を同時に重視するヘックマンの論旨に反します。また、赤ちゃんのときからの「顔や声のパタンを見わける認知能力」がベースにあってこそ、特定の大人への愛着が深まり、観察と模倣の学習も進み、社会情動的能力が発達するのだという、心理学の知見ともかみ合いません。学術的な知見と「つじつま」が合わないまま、「非認知能力」という名称は、一般の人々の「認知」への理解をゆがめているのです。幼児期にこそ「認識の枠組み」を与えたい2011年の東日本大震災のとき、米国の『TIME』誌は、被災者の写真とともに「“Gaman”=ガマン」という言葉を「日本人独特の精神性」を象徴するものとして紹介していました。米国人のヘックマンが想定した「忍耐力や情動の抑制のレベル」をはるかに越えるマグニチュードの「被災者の我慢」に、米国のジャーナリストは驚いたのです。幼児教育の現場はもちろん、日常の現実やアニメでも「我慢強い子」のモデルを多く目にする日本は、「他者と協働するための社会性」への期待が重過ぎるほどです。ですから「非認知能力」と呼ばれる「社会・情動性」の教育の旗を振らなくても、日本の幼児教育の先生方はすでにそれをたっぷりと教育なさっていると思います。が、近年の「非認知能力」という流行語の副作用として「認知能力」が狭く解釈され、「文字や数を学ぶ認知能力は、小学校から伸ばす」とみなされ、幼児の幅広い認知能力が論じにくくなったのは問題です。他方、小学校はといえば、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学)を代表するプログラミング教育に加えて、英語の教科化で忙しく、6歳からの知識学習はどんどん増やされています。6歳を境に幼児教育と小学校の教育の内容には、崖のようなギャップがあります。それを不安に思う親は、非認知能力重視をうたう幼稚園に子どもを通わせつつ、さらに国語、算数、英語の「学業の先取り」を助ける塾へも通わせ、ダブルスクールの行き来で親子はヘトヘト。楽しいはずの幼児期がこのような疲労感で終わっては、「意欲」を育むどころではありません。そこで思い出すのは、わたしが2004年にハンガリーの保育園を訪ねたときの驚きです。保育士が「さあ、論理で遊びましょう!」と、3歳から6歳の子どもたちを集め、おもちゃや絵本、ボールなどを使って、仲間わけの論理遊びをはじめました。子どもたちは、異年齢同士で相談しながら、おもちゃを選び、ボールを転がして「考える遊び」を楽しんでいたのです。「考えること」は運動であり、友だちとのコミュニケーションであり、答えを探すための忍耐も遊びの内でした。ブダペストの明るい教室には、「子どもの思考」への洞察と、「考える遊び」を開発する技術があり、芸術的なバランスがあることに、わたしは心打たれました。ブダペストの小学校も見学しましたが、幼児教育から滑らかにつながり、校長は「幼児から児童への認知発達を考え、自分で論理的に考えられるように、遊びや学びを開発しているんですよ」とお話しくださいました。論理、社会性、物語、数学、運動、音楽などが、一体となった教育は、面白い幼児教育番組を見ているような印象を残しました。1973年にはじまった幼児教育番組『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)は、ガチャピンとムックが有名ですが、東 洋、永野重史、新田倫義、藤永 保という4人の発達心理学者が監修して、幼児期の認知発達を支援する目的でつくられました。わたしは1984年から1988年まで心理学スタッフとして制作に携わりました。放送がはじまった頃は、批判の電話がたくさんあったそうです。「幼児期はココロを育てる情操教育が重要なのに、『ポンキッキ』は知識の詰め込みの早期教育でけしからん」という批判です。「知性と情意性、どっちを重視するのか?」という、能力を分割する議論は、むかしもいまも変わらず繰り返されるんですね。『ポンキッキ』の監修者は、「幼児が主体的に情報を処理する能力を育て……質の良い知的構造の形成と深化を目指す」という理念を掲げ、論理概念すらも面白いアニメで見せ、社会性や情動性をテーマにした歌やダンスも開発しました。いま、わたしは『しまじろうのわお!』(テレビ東京)という幼児教育番組の監修者として、ピーマンの悲しみの理解から、転んでも立ち上がる意欲の歌、ジュースの量を比べる遊びまで、幼児の生活全体を対象に、『認識の枠組み』を与える映像を開発しようと、制作仲間と議論を重ねています。ハンガリーの「社会的な論理遊び」、そして「生活のなかで考える面白さ」を伝える『ポンキッキ』、こうした「認知と情意性の発達を丸ごと支援する教育」を、いろいろなメディアで増やしたいものです。大人のかたも、子ども時代の記憶を思い出して、「3歳のわたしが面白かったことは?大好きな人のなにを真似たのかな?」とご自分の発達を振り返ってみませんか?「認知=ものごとがわかること」について考えはじめると、高齢者になるという発達も面白くなるように思います。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月12日《1日1食》《糖質制限》など新しいダイエットや、体にいい食材・よくない食材などが次々と話題になるが、むやみに実践することは逆に健康をおびやかすことも。「腸内環境を整えて健康を維持する“腸活”がブームですが、『腸にいい』と思っていた習慣が、じつは腸の状態を不調にする原因だった、ということがよくあります。腸が健康でないと、肌荒れなど見た目に影響が出るだけでなく、精神的にもストレスがたまり、免疫力が下がって病気にかかりやすくなってしまうのです。人生100年時代ともいわれますが、健康寿命でいるためには、足腰だけでなく、腸の健康も欠かせません。正しい腸活を行って、消化と吸収、排泄がスムーズな“美腸”をキープすることが大切です」松生クリニックの松生恒夫院長は、腸の健康の大切さをそう強調する。松生院長はこれまで4万件以上の大腸内視鏡検査を行い、“汚腸”の人を救ってきた便秘外来のスペシャリストだ。「ベストな“美腸”の状態になるためには、毎日の朝食後に消化管の収縮活動“大蠕動”が起きて、スムーズな排泄が行われていることが不可欠です。ダイエットで朝食を抜いたり、食事の時間が不規則になるなど、生活リズムが狂うと大蠕動が起こらなくなります。また、腸に強いストレスがかかると交感神経が優位になり、腸を動かす腸管運動にブレーキがかかり、便秘の原因となってしまいます」(松生院長・以下同)便秘は腸の老化を早めるだけでなく、万病のもと。便秘が長引くと、老廃物や毒素が体内にたまり、さまざまな病気リスクが増大してしまう。“腸美人”であることは、体の内部も見た目もイキイキと過ごすためのカギなのだ。日本人の食生活の欧米化により、腸内環境が悪化して便秘になる人が増えている。大腸がんにかかる人も年々増え、がんで亡くなる人のうち、女性では大腸がんがもっとも多い(男性では3番目)。便秘になりがちという女性は気をつけたいところだ。その一方、腸の健康を維持している人は健康寿命であることが研究で実証されているという。「アメリカのミネソタ州では、’88年から’93年までに20歳以上だった人を対象に『消化器症状評価アンケート』を行い、約4,000人を’08年まで追跡調査しました。この調査の結果、慢性的な便秘がない人のほうがさまざまな病気にかかりにくく、生存率も高いことがわかったのです」さらに、腸内環境をよくする不飽和脂肪酸のオリーブオイルを多用し、野菜や豆類、果物、穀物をたくさん食べる“地中海型”の食生活をしている人は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが少ないという研究結果もあるという。しかし、若々しくありたいと思って取り入れている健康法が“不腸”の原因になってしまうケースも。松生院長の患者さんに目立つ主なケースは3つ。1つ目が「玄米食」。玄米は白米より食物繊維とビタミンB1が豊富で、健康食のイメージがあるけれど……。「食物繊維は、水に溶けない『不溶性食物繊維』と、水に溶ける『水溶性食物繊維』の2つに分けられ、玄米に多く含まれているのは前者です。消化に時間がかかるため、腸にトラブルを抱えている人はかえっておなかが張ったり、便が硬くなったりして、便秘を悪化させてしまうことも。腸の動きが正常ならもちろん食べてもいいですが、その際も、よくかんで食べる、スープなどの水分を多めに取る、水溶性食物繊維が豊富な海藻類と一緒に食べる、などしましょう」理想的なのは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を2対1の割合で取ることだという。次に糖質制限。生活習慣病の予防や治療として注目を集めているこのダイエット法は、血糖値をコントロールするなど医師の指導のもとに行うのは効果的だが、やみくもに糖質を避けると、腸にダメージを与えるリスクが。「ごはんやパン、麺類、根菜類などの野菜や果物を食べないことで、体重と体脂肪を一気に減らせるかもしれませんが、同時に食物繊維をはじめ必要な栄養素も不足してしまうと、慢性的な便秘を招き、“汚腸”になってしまいます」このほか、外食やコンビニ食・インスタント食品をよく食べる人も、食物繊維が不足しがちだという。おなかを冷やす生サラダではなく、煮物などの総菜を1品追加するよう心がけよう。納豆や漬け物といった発酵食品もよいという。「漬け物に含まれるラブレ菌という植物性の乳製品は、腸内の善玉菌を増やし、便秘を解消してくれます。また、魚に含まれるEPA、DHAは大腸がんを抑制する因子の1つと認められています。肉ばかりに偏ることなく、魚もしっかり食べましょう」さらに、ヨーグルトにも注意が必要だという。えっ、腸内環境には欠かせない食品じゃないの!?「ヨーグルトに含まれている動物性乳酸菌は、消化の過程でほとんど消滅し、小腸にはよいのですが、大腸にはあまり高い効果が期待できません。『生きたまま腸に届く』という製品も登場していますが、それでもわずかな量です。むしろ食べすぎによる脂肪の取りすぎや腸の冷えによる悪影響のほうに気をつけるべきです。取るのであれば、低脂肪や無脂肪のものを選ぶようにしましょう」
2019年07月10日阿川佐和子(65・以下、阿川)「うちはいま、認知症の母(91)をきょうだいとお手伝いの方とローテーションを組んで、在宅介護しています。その合間にショートステイで外泊サービスを利用しているんです」ヤマザキマリ(52・以下、マリ)「私の母(86)は北海道の実家の近くに住む妹が、在宅介護をサポートしてくれていました。それが、認知症に加え、パーキンソン病も併発して……。足元がおぼつかなくなり、今年1月、部屋で倒れているところを妹に発見されて、入院しました」阿川「高齢者専門の施設なの?」マリ「専門ではないですが、認知症患者が多い病院なんです。我が強い母ですから、同室の人と合うわけがないと思っていたのに、4人部屋で和気藹々と過ごしています。お互い、会話はまったく成立していないんですけど、ワイワイ楽しそうでした」小説家、エッセイストの阿川佐和子さんの母親は、昭和2年生まれで、現在は91歳。父は作家の阿川弘之さん(’15年没、享年94)。外では温厚だが、家庭内では絶対君主で、専業主婦だった母親は振り回されていたという。漫画家のヤマザキマリさんの母親は、昭和8年生まれの86歳。北海道に渡り、札幌交響楽団のビオラ奏者として、2人の娘を女手一つで育て上げた。親の介護が始まったのは、阿川さんが57歳、ヤマザキさんが49歳のときだった――。マリ「佐和子さんは、どうやって親の認知症がわかったんですか?」阿川「8~9年くらい前かな。あるとき、長年、実家で働いてくれた家政婦さんが電話で『こんなこと、私から申し上げるのも何ですが、奥さまがヘンです』って。もともとトボけてるからなあって言ったら『そういう問題じゃありません』って、ピシッと言われたんですね。それで“ついに来たか”と」マリ「母は、80歳を過ぎたあたりから、物忘れが目立ってきたんです。でも、犬の散歩も欠かさず、毎日、元気そうでした。あるとき、北海道の実家に帰ると、母が外に立って青ざめた顔で『変な外人さんがうちに来ちゃって!』って。あわてて家に入ると、外国人が出ている料理番組が放映されていて、それを見て、うちの台所に外国人が来たのだと勘違いしたようなんです。そうした症状が増えて、ようやくレビー小体型認知症(症状の1つに幻覚がある)だと診断されました」阿川「うちの母は、いまだに、自分でできることはいっぱいあるんです。お医者さんに行って、勝手にパソコンをのぞいたとき“アルツハイマー”という文字を見て、『誰のこと?』って聞いたりね」マリ「本人も認知症だって認めたくないですよね。母も『一過性のもの』『疲れているだけ』と抵抗していましたから」阿川「いままで、自分を見守ってくれていた親が、だんだん壊れていく姿は、子どもとしてもつらいもの。だから、初期のころは特に必死になるよね」マリ「グレープフルーツの匂いが認知症に効くと聞いて、アロマを嗅がせたり(笑)」阿川「私も最初は何でも真面目に、完璧にこなそうとしていました。母は心臓病も抱えていたから“薬を必ず飲ませないと危ない”って、神経ピリピリさせてるの。だから薬袋ごと、どこかにしまって見つからなかったりすると、叱りつけちゃうんですよ。『どうして!』って。すると母も泣きだしちゃったり。マリちゃんも、やりすぎたことってない?」マリ「ありました。北海道に帰ると“わー”っていろいろ言ってしまうから、そばで介護してくれている妹から『お姉さんが来ると、お母さんがビクビクする』って言われました。こうなるとお互いが疲弊しますよね」阿川「仕事も、通わないとダメなようなものは辞めて、ある程度自分のペースでできる原稿の仕事しかできないかなって、ほんの一瞬だけ考えました」マリ「1対1になると、周りが見えなくなってきますよね」阿川「そんなとき、昔なじみの友人と会う機会があって、彼女たちに救われました。『アガワさ、介護は1~2年でなんとかなると思ってるでしょ。10年かかるかもしれないんだよ』って言われて。“え!10年、冗談じゃない”って」マリ「今から必死になっても、そんな長期戦、戦い続けることはできないですよね」阿川「10年ですまないかもしれないし。だからできる限り、手を抜けるところは抜いて、自分1人で背負わない。これを聞いて、すごく心が楽になって。友人との井戸端会議もバカにならない」マリ「夫の実家のあるイタリアでは、みんな井戸端会議好き。普通に高齢のおばあちゃんを車いすに乗せて連れていったり。それは当たり前に受け入れられ、『シニョーラ(おばさま)、元気そうで』って歓迎されます」阿川「そうやって、介護する側、される側も外につながることって大事。この間、取材である主婦の方の質問を受けたんです。『お姑さんの介護が始まったので、週に1回の習い事をやめたほうがいいでしょうか』って。周りの家族は“習い事なんてやってる場合じゃないだろう”という空気になるかもしれませんが、私は『やめちゃいかん』という答え。私だって、母を置いて、好きなゴルフをやることもありますが、“悪かったな”という後ろめたさを持っていると、次に“ようし、やってあげようじゃないの”とやさしくなれるもの」マリ「そうね、滅私奉公はいけないと思う。北海道で母をそばで見てくれる妹も、一時期、介護でいっぱいいっぱいになって。髪はボサボサだしストレスで太ってしまって。“やばい”と思って『もういいよ、お母さんのことはいいから出かけておいでよ』と、コンサートのチケットを買って送ったりしました」阿川「自分にとって、リフレッシュできるものを最低1つ持っていないと、逃げ場がなくなります。逆に自分のためだけの時間を持つことで、介護をするエネルギーが湧いてくるものですよ」現在でも、認知症の症状は少しずつ進んできているが、母たちは平和で穏やかな日々を過ごしている。マリ「最近は、イケメンの青年介護士さんに『リョウコさん』と下の名前で呼んでもらって、ポッと頬を赤らめています」阿川「認知症になると、女がよみがえってくる説もありますよね。フェロモンって大事」マリ「入居者が集うホールでダンディな男性がいたら、『あそこにすごく寡黙で、ハンサムな人がいるんだけど』って。いまでは私と女友達のような会話もしています」阿川「私も母が認知症になったばかりのころは、お風呂に一緒に入ったりしていましたから。すっぽんぽんになって、何十年ぶりかしらね。1回、お風呂で倒れて以来、1人では入れられなくなって」マリ「1人でのお風呂は怖いです。うちは3回、救急車を呼んでいます」阿川「一緒にお風呂に入ると『あんた随分おなか出てるわね』っておなかを突かれたり、こっちも突き返して『イヤン』と言われたり。そんなことをしながら、全身チェックもできるんです。湿疹を見つけて『かゆい、かゆい』と言っているのはこれが原因か、とか、巻き爪が痛そうだなとか」マリ「監視されるよりも、一緒にお風呂に入ったほうが母も安心しますよね。私も、今年の冬、母と妹と一緒に、温泉に行ったんです」阿川「あら、えらい」マリ「貸し切りのお風呂に入れて、みんなですっぽんぽんの状態になって。そのとき、また一段と心を許してくれたというか、恥ずかしがらなくなりました」阿川「甲冑を脱いでくださったのね。一緒にお風呂に入るのは、母と娘だからできること。一方で、最近では、認知症が進んで、だんだん、私のことを、母の姉だと勘違いするようになりました。『誰だかわかる?』って、指を私のほうに向けると、指先にある鼻を見て『お鼻ちゃん』と言ってみたり。そういう知恵の回り方がすごいんだけど」マリ「私も、名前を忘れかけられています。マリじゃなくて、『娘』って言われることも」阿川「『さ』がつくでしょって、ヒントを出しても、ウフッと笑ってごまかしたり。でも娘ってわかるから『娘子ちゃん』と言ってみたり。深刻になることも多いけど、そのあと必ず笑いがあるんです」マリ「介護を通して、親子の距離がぐっと近くなった、新しい母娘関係を築けているような気がしますね」
2019年06月30日「お互い、もう介護される年齢に近づいているわね」という話から始まった“認知症介護対談”。年を重ね歴史のある母娘でも、母が認知症になればその関係は変わってくる。いままで見せなかった弱さを見せるようになったヤマザキマリさん(52)の母は、これまで着ていた鎧を脱いで穏やかに。阿川佐和子さん(65)の母は家族のかせから逃れて、自由になった。母娘が向き合って、その距離がぐっと近くなった介護の時間はとても豊かなものだった――。阿川「うちはいま、認知症の母(91)をきょうだいとお手伝いの方とローテーションを組んで、在宅介護しています。その合間にショートステイで外泊サービスを利用しているんです」マリ「私の母(86)は北海道の実家の近くに住む妹が、在宅介護をサポートしてくれていました。それが、認知症に加え、パーキンソン病も併発して……。足元がおぼつかなくなり、今年1月、部屋で倒れているところを妹に発見されて、入院しました」阿川「高齢者専門の施設なの?」マリ「専門ではないですが、認知症患者が多い病院なんです。我が強い母ですから、同室の人と合うわけがないと思っていたのに、4人部屋で和気藹々と過ごしています。お互い、会話はまったく成立していないんですけど、ワイワイ楽しそうでした」小説家、エッセイストの阿川佐和子さんの母親は、昭和2年生まれで、現在は91歳。父は作家の阿川弘之さん(’15年没、享年94)。外では温厚だが、家庭内では絶対君主で、専業主婦だった母親は振り回されていたという。漫画家のヤマザキマリさんの母親は、昭和8年生まれの86歳。北海道に渡り、札幌交響楽団のビオラ奏者として、2人の娘を女手一つで育て上げた。親の介護が始まったのは、阿川さんが57歳、ヤマザキさんが49歳のときだった――。マリ「佐和子さんは、どうやって親の認知症がわかったんですか?」阿川「8~9年くらい前かな。あるとき、長年、実家で働いてくれた家政婦さんが電話で『こんなこと、私から申し上げるのも何ですが、奥さまがヘンです』って。もともとトボけてるからなあって言ったら『そういう問題じゃありません』って、ピシッと言われたんですね。それで“ついに来たか”と」マリ「母は、80歳を過ぎたあたりから、物忘れが目立ってきたんです。でも、犬の散歩も欠かさず、毎日、元気そうでした」阿川「うちも日常の家事には支障がなかったけど、同じことを繰り返し話したりして“ん?”っていうことが少しずつ……」マリ「あるとき、北海道の実家に帰ると、母が外に立って青ざめた顔で『変な外人さんがうちに来ちゃって!』って。あわてて家に入ると、外国人が出ている料理番組が放映されていて、それを見て、うちの台所に外国人が来たのだと勘違いしたようなんです。そうした症状が増えて、ようやくレビー小体型認知症(症状の1つに幻覚がある)だと診断されました」阿川「うちの母は、いまだに、自分でできることはいっぱいあるんです。お医者さんに行って、勝手にパソコンをのぞいたとき“アルツハイマー”という文字を見て、『誰のこと?』って聞いたりね」マリ「本人も認知症だって認めたくないですよね。母も『一過性のもの』『疲れているだけ』と抵抗していましたから」阿川「いままで、自分を見守ってくれていた親が、だんだん壊れていく姿は、子どもとしてもつらいもの。だから、初期のころは特に必死になるよね」現在でも、認知症の症状は少しずつ進んできているが、母たちは平和で穏やかな日々を過ごしている。阿川さんは、父を’15年に亡くしたが、母は、夫の死をどこまで理解できているのかわからないという。ヤマザキさんの母は、人生を支えてきた楽器演奏から離れて久しいが――。マリ「この間も病院に行くと、母が遠くに歩いている看護師さんを見て『今、コンサートホールの支配人を呼ぶから、挨拶しなさい』って言うんです。私もその“妄想”に付き合って『今日は何を演奏するの?』と聞くと、『プログラムを読んでいないの!』って怒られたり(笑)。母は元気なころ、コンサートのプロデュースもしていたんです」阿川「そういう物語には、乗っかるほうが楽しいよね。うちの母は、なぜかいないはずの赤ん坊の話をするんです。『赤ん坊どうしたの?』って聞かれると『さっき帰った』『ちゃんと寝かせているの』『うん、2階で寝てる』って、話を合わせたりして」マリ「認知症になっても、あえて否定するのもよくないし、羞恥心や感情面の尊重も大事ですよね」阿川「特に排せつに関してはね。以前、母が部屋で頭から布団をかぶっていたんです。どうしたのかと思って布団をめくると、片足だけ私のストッキングをはいているの」マリ「どういうことですか?」阿川「聞いても『んー』と言って答えないの。多分、自分の下着を汚してしまって、それが恥ずかしいと思ってはき替えようとしたのに、どうしていいのかわからなかったと思うんです。それで私のクローゼットから着替えを探したけど、パンツではなく、靴下の引出しを開けてしまったのだと」マリ「親の排せつの失敗は、娘もついつい情けない気持ちになったりするけど……」阿川「考えてみたら、隠すこと自体がカワイイじゃんて思うようになりました」マリ「認知症になって、とても自由に生きられている部分もありますからね」阿川「うちは圧倒的に父が強かったんです。絶対君主的で、それによって家族が振り回されていました。でも母は、『なんでそんなに言うことを聞けるの?』って思うくらい従順だったんです。だから私は、きっと7歳年上の父が早く死ぬだろうし、そうしたら母を旅行に連れていったりして、家庭の束縛から解放してあげようって、ずっと思っていたんです。それなのに、母が先にボケてしまって、悔しかったですよ」マリ「それは無念」阿川「でもね、ボケてみると、100%不幸だとはいえない。むしろ母は自己主張が強くなりましたよ。入院中だった父が『お前の作ったちらし寿司が食べたい』と言いだしたときも、さらっと『あーちらし寿司ですね、そこの百貨店に売っていますよ』って」マリ「素晴らしい!」阿川「いま、母はとても自由に愉快に生きているんです。私が『ねえ、母さん、ご飯作ってよー』って言うと『んー、明日』って先延ばし。マリちゃんのお母さんは、女手一つでずっと闘っていらしたわけでしょ?」マリ「闘魂そのままというイメージを持っていたんですが……。もともと物を書くのが好きな人で、日記帳を渡していたんですね。ところが、認知症に加えパーキンソン病も併発しているから、手が震えてうまく文字が書けない。それであるとき、母の部屋から、書こうと思ったのに、何度も何度も途中で諦めてしまっている書き損じの紙の束が出てきて……。それを隠していたんですね。手にしたときは、もう涙が止まりませんでした」阿川「切ないねえ」マリ「前の母とは違うんだと改めて感じて、喪失感を覚えました。いかに母が私の心の大きな支えになっていたかって痛感して……。50歳にして、初めて精神的自立を余儀なくされた焦りも(笑)。でも、認知症になって、肩肘張らず、強がらず、いまの母は穏やかです」阿川「よかったねえ」マリ「いままでの母なら『会いたい』なんて言わないタイプだったのに、お見舞いに行くと『今度はいつ来るの?』なんて聞いてくるんです。“なんだ、この弱々しい母は”って感じてしまうけど、『1人で娘2人を育て、世間と闘ってきたけど、ようやく甲冑を脱げたんだ』と、いまの姿が本当の母なんだと思えるようになりました」
2019年06月29日認知症の親のもとには毎日のように「振り込んで」と詐欺の電話。夜、買い物に出かけると、まるで当たり前のように徘徊老人が……そんな時代に突入するまで、あと5年半なんです。「年金問題について、大きな波紋を広げた金融庁の報告書。その中では、日本が抱える“2025年問題”にも触れられているのです」(全国紙社会部記者)2025年問題とは、団塊世代の多くが後期高齢者(75歳以上)となる時代に懸念されるさまざまな社会問題のこと。およそ5年後に待つ“恐怖の未来”について語るのは、国際医療福祉大学大学院教授で、公衆衛生に詳しい医師の武藤正樹さんだ。「’25年には認知症の人が700万人に達する、と報告書にもあります。かつて、世界のどの国も経験をしたことがない、いわば“認知症パンデミック”が引き起こされるため、運転による交通事故や、徘徊による失踪・死亡事件の増加が想定されているのです」その予想図と、’25年に向けてわたしたちができる備えについて、武藤さん、そして医療介護コンサルタントで『2025年、高齢者が難民になる日』(日経プレミアシリーズ)の共著もある武内和久さんに詳しく教えてもらった。■認知症患者の保有資産187兆円を狙った詐欺の横行警察庁によると、’18年に起こったオレオレ詐欺やアポ電詐欺などの特殊犯罪の件数は1万6,000件以上。1件あたり、平均約230万円もの被害が出ている。第一生命経済研究所では、認知症患者の保有する金融資産が、’25年には187兆円に達すると推計している。「“ターゲットにするなら認知症の人。なぜならお金もあるし、だまされていることに気づきにくい”と言わんばかりに、詐欺集団も彼らを集中的に狙うことになるでしょう」(武藤さん)【対策】「認知症の人の資産を守るために、本人の意思を尊重しつつ、早めに後見人を選定したいところ。また、オレオレ詐欺に関しては、電話をしながらATMを利用している高齢者に声をかけるなど、地域や金融機関でも犯罪防止に取り組む必要があるでしょう」(武内さん)■行方不明者は2万人超え。うち3%は死者に……昨年1年間に警察に届け出があった行方不明者全体のうち、認知症患者の割合はおよそ20%、その数は1万6,927人にものぼった。そのうち、徘徊の末に死亡が確認されたのは508人だった。認知症の行方不明者数は、’12年の調査から、年々増加している。’25年には、その数は2万人を超えてしまう勢いだ。「’18年のデータでは認知症の行方不明者のうちの3%が死亡していますから、’25年には600人以上の死者が出てしまう計算になります」(武藤さん)【対策】認知症患者が徘徊してしまったとき、6割のケースは“自宅から1キロ以内にいる”といわれている。そのため、地域の見守りが重要だと武内さんは話す。「『この人を見たら私に連絡ください』と近隣に周知することが大切。身元がわかるように、住所が書かれたものを靴や服にくくりつけておくのも一案でしょう」■介護士は55万人不足。施設はパンク状態に年間10万人もいるといわれる介護離職者。その原因は、認知症家族の介護であることが多いという。「不安や睡眠不足など、心身ストレスは計り知れません。ひとりで抱え込めば、虐待などにつながる危険性もあり、専門家に頼るのがベストなのですが……」武藤さんは、頼りにしたい介護現場でさえ“深刻な人材不足”だと嘆く。現在でも介護士は約40万人も不足しており、’25年には55万人にも達する見込みだという。「新たに介護施設を作っても、オープンできないケースが考えられます。1人が見ることができる患者の人数にも限界がありますから、このような状況で、増え続ける認知症の人を受け入れることはできません。無理に押し込めると、劣悪な環境のもとで認知症が悪化してしまう懸念さえあるのです」【対策】武内さんは“在宅介護がベスト”としつつも、家族によるサポートの限界に理解を示す。「たとえ認知症の人の独居であっても安心できるくらいの、医療や介護、見守り、生活支援など、24時間体制の包括ケアサービスが拡充されるべきです。そして、利用できる制度について知っておくこと。65歳以上で一定の収入がない場合、さまざまな介護サービスが1割負担で利用できますが、家族がそれを知らずに抱え込んでしまう場合も多いです。自治体の介護保険課に、在宅介護時に使える制度がないか相談してみましょう」若手弁護士のつながりの場や、介護事業のトップリーダーの講演などを企画している「KAIGO LEADERS」代表の秋本可愛さんは、年々認知症患者が増えていくなかで、彼らを受け入れる社会づくりが大事だと訴える。「認知症の方々が、地域の人たちに『ありがとう』と言ってもらうような機会をもっとつくっていくべき。じっさいに、料理、庭仕事、駄菓子屋のお店番など、高齢者の患者に活躍の場を提供している施設もあります。介護する側だけでなく、彼らにも『ともに社会に貢献している』と思ってもらうことで、少しでも両者の負担が減るのではないでしょうか」親は、夫は、そして自分は?5年後の環境を考えて、自分が打てる対策を実行していこう。
2019年06月28日「年金問題について、大きな波紋を広げた金融庁の報告書。その中では、日本が抱える“2025年問題”にも触れられているのです」(全国紙社会部記者)2025年問題とは、団塊世代の多くが後期高齢者(75歳以上)となる時代に懸念されるさまざまな社会問題のこと。およそ5年後に待つ“恐怖の未来”について語るのは、国際医療福祉大学大学院教授で、公衆衛生に詳しい医師の武藤正樹さんだ。「’25年には認知症の人が700万人に達する、と報告書にもあります。かつて、世界のどの国も経験をしたことがない、いわば“認知症パンデミック”が引き起こされるため、運転による交通事故や、徘徊による失踪・死亡事件の増加が想定されているのです」その予想図と、’25年に向けてわたしたちができる備えについて、武藤さん、そして医療介護コンサルタントで『2025年、高齢者が難民になる日』(日経プレミアシリーズ)の共著もある武内和久さんに詳しく教えてもらった。■認知症有病率が上昇「5人に1人」が患者に「現在、65歳以上の高齢者の認知症有病率はおよそ15%。しかし、今後は増加していき、’25年には20%に届く見込みです。これは、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症にかかっているという計算です」(武藤さん)その理由として考えられるのは、生活習慣の変化による糖尿病患者の増加にあるという。「糖尿病になると、認知症の原因疾患であるアルツハイマー病の発症リスクが2倍になるといわれています。また、アルツハイマー病の発症には、閉経にともなう女性ホルモンの減少が密接に関わっているともされています」(武藤さん)【対策】「治療はできませんが、予防はできるのがアルツハイマー病。まだ発症していなくても、刻一刻と脳の中は変化していくため、生活習慣病に注意しながら、適度な運動を長く続けることが大切です。また、習慣づけたいのが、地域交流や芸術鑑賞、日記つけなどの脳を活性化させるアクティビティ。パズルなど“知的レジャー”でもよいので、週2回以上を目標にしましょう」(武藤さん)■認知症ドライバー1万3,000人、懸念される事故多発現在でも頻発しているのが、高齢者ドライバーのブレーキとアクセルの踏み間違いによる交通事故だ。「現在、高速道路で逆走する運転手の約7割が65歳以上、そして4割に認知症の疑いがあるという調査結果もあります。’25年における認知症ドライバーの想定人数は、現在より1.3倍ほど増加した1万3,000人ほど。そのぶん事故件数も増えてしまう可能性はおおいにあります」(武藤さん)【対策】今年5月の警察庁の発表によると、「認知症のおそれがある」と医師に判断された75歳以上のドライバーのうち、免許証を返納していない人の割合は35%にのぼるという。もちろん免許返納も求められるが、さまざまな方法で対策ができると武内さんは語る。「まずは、メーカーによる安全ブレーキの開発や、運転せずに移動できる“タクシー相乗り”サービスの充実化を期待したい。そして自分の運転技術を過信せず、ブレーキの踏み間違い防止装置の取り付けなどを検討しましょう」(武内さん)
2019年06月27日「まだまだ俺は運転できる!」。そう言い張って、なかなか免許返納に動いてくれない親は多い。そんな親には、安全面だけでなく、“経済面”からもアプローチしていこう!「若いときと比べて、ちょっと反応が鈍いなと感じたら、人を傷つけないうちに返すのが賢明かと思う」6月7日、俳優の杉良太郎さん(74)が高齢者の悲惨な事故が続くなかで、自身の運転免許を自主返納した様子は大きく取り上げられ、“杉様に続け!”“これが高齢者ドライバーのお手本”と、称賛の声が多く上がった。「高齢者の免許返納への機運が高まってはいますが、警察庁によると、75歳以上の免許保有者の返納率は5%程度。まだまだ多くの高齢者は車を運転しているのが現状です」(社会部記者)免許返納に関しては、都市部と地方に住む人たちとの事情は大きく異なる。とくに地方では、高齢者の移動手段の“足”として、車は生活に欠かせない。だが、「事故が起こったからでは遅い」と、親に免許を返納させようと説得する子どもは多いはずだ。「私の場合、83歳の父親を説得しようと試みたのですが、当初はなかなか納得してもらえず……。決め手になったのは、“返納することでこれだけお金が浮くよ”と話したことでした」こう語るのは、東京都在住の男性Aさん(53)。「父親に認知症の初期症状が見られた当初は“まだまだ運転には自信があるんだ!”と言って聞き入れてくれませんでした。そこで、車を処分した場合に浮かせることができる、年間維持費について説明したんです。コンパクトカーに乗っていた父親の場合、年間約60万円を維持費として支出していました。『車を手放せば毎年約60万円がそのままほかのことに使えるし、売れば約100万円で下取りもしてもらえる。今年だけで160万円を捻出できるんだ』と説明し、ついに父親は納得。車検代や駐車場代などの維持費は、それまで父親にとって“当たり前”の出費でしたから、お金が浮くことは盲点だったようです」同じく、都内に住む40代の主婦Bさんも親に免許を返納させることで、浮いた維持費をためていると話す。「母親(75)は、週2回の通院に車を使うのみでしたが、都内はとにかく駐車場代が高く、軽自動車1台でも年間50万円以上かかってしまうんです。『通院をタクシーに替えても、いま持っている車さえ手放してしまえば毎年15万円近くためられるよ』と話しました。今後親が車いす生活になることも考えて、バリアフリー工事の資金としてためています」一般的にマイカーにかかる維持費をまとめたもの(自動車保険は6等級/30歳以上/車両保険なしを想定。駐車場代は「駐車場ネット」から東京都23区の平均値を計算。燃料代はガソリン代を135円/リットル、月に1回「満タン」にした場合を想定)を見てみると、仮に親が75歳で返納し90歳を迎えた場合、コンパクトカーを処分すれば約950万円、ミニバンなら約1,000万円浮くことに。老後への“説得材料”として、親の自動車維持費がどれだけかかっているか、把握することから始めよう。
2019年06月27日認知症になった父との“お別れ”までの7年間を描いた映画『長いお別れ』。6月19日、本作の大好評スタートを記念した公開記念舞台挨拶に中村倫也と中野量太監督が登壇。中村さんは“恋人役”蒼井優の結婚に触れ、「おめでたいですね」「誰かいい人いないかな」と語った。東家の次女・芙美を演じた蒼井さんの同級生であり、恋人・磐田道彦役を演じた中村さんと、中野監督が満席の場内に登場すると大きな拍手が。中野監督が「ほぼ女性のお客様ですね、こんな中での舞台あいさつは初めてです。(笑)今日はご来場くださりありがとうございます」と挨拶。中村さんは「僕自身、若い世代の方々に観ていただきたい映画だと思っていました。今日はたくさんの方にお越しいただき嬉しいです」と語り、「楽しく、愛おしい気持ちになれる作品ですよね、僕もうるっとしながら、時にケラケラ笑いながら観た映画です。認知症がテーマにはなっていますが楽しんでほしいです」と、自身の感想を明かして舞台挨拶がスタートした。中野監督、中村倫也との出会い激白!「パーティーの中で一人膝を抱えて座って」実は本作の撮影以前に中野監督と中村さんはとあるパーティーで出会っていたとか。当時をふり返り「あの時は中村さんだと気づいていなかったんですが、パーティーの中で一人膝を抱えて座っていて。(笑)その直後に、いろいろな作品に出演されているのを見かけるようになって…あの時のって! 思い出したんです」と、意外な出会いのエピソードを明かした監督。すると「僕、パーティーとかに馴染めなくて、あの頃はとがってました。(笑)」と中村さん。すかさず「じゃあなんでパーティーにきたの?」とツッコミを入れるなど、2人の仲睦まじい様子に場内には笑いが。和やかなムードの中、映画の脚本を読んだ時の印象を聞かれた中村さん。「小学生の頃、ひいおばあちゃんが介護が必要で。小さいながらにお見舞いにいったり、僕のことも分かってはくれていないんだけど、一緒に遊んだりという愛おしい記憶を思い出しました。だから、僕自身、完成を楽しみにしていた作品なんです」と幼い頃の思い出を告白。「(演じた)道彦も、いい人なんだけど、どこか頼りないというか、あぁいるな、とみんなに感じてもらえるキャラクターにできるといいなと思っていました」と、自身が演じた役柄に込めた想いにも触れた。「僕もグリーンカレーを作ってくれる人がいるといいな」そんな道彦の恋人役でもある蒼井さんが実生活で山里亮太(南海キャンディーズ)と結婚したことが話題に上がると、「おめでたいですね。僕もグリーンカレーを作ってくれる人がいるといいな。どこかにいい人いないかな(笑)」と劇中で蒼井さん演じる芙美が作る料理で、山里さんが結婚会見でも触れたグリーンカレーをあげながら、冗談混じりでコメント。また、「真面目な父親と、天然な母親の両親を見て育ったし、やっぱり両親のような家族を築いていきたい」と理想の家族像についても言及すると、中野監督は「でも、僕の映画に出た人はみんな結婚するんだよ。宮沢さんに竹内さんに蒼井さん!」と自身のキューピッドパワー(?)をアピール、場内をさらに沸かせた。最後に、「この映画は色んな世代の人に観ていただきたい作品。この映画をきっかけに、普段話さないことを家族と話してみたり、今までにない一歩を踏み出せる映画になっていると思います。詳しくはネタバレになっちゃうから言えないけど、僕が劇中で『付き合って1年半記念』と話しているシーンは特に気に入っているシーンなので、ぜひ注目してください!」とアピールした中村さん。中野監督は「親・子・孫の3世代を描いた映画だけど、特に若い世代の人々にこそ観てほしいと思っていました。今日はまさに、そんな人達がたくさん来てくれて嬉しいです。今日は僕ら2人にとっても良い日になりましたね」と、2人でマイクを掲げて中村さんと乾杯して映画の大盛況ぶりを祝っていた。『長いお別れ』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:長いお別れ 2019年5月31日より全国にて公開(C)2019『長いお別れ』製作委員会
2019年06月20日目下、食品業界でその健康効果が注目されているピーナッツ。ツヤツヤな肌をキープし、認知症も予防。そんな“老けない体”を作ってくれるというのです――。「アーモンドやくるみなど、ナッツ類の健康効果はこれまでにもたびたび話題になってきましたが、いま食品業界が注目しているのはピーナッツに含まれる豊富な栄養素です」そう話すのは、ナッツ類の研究を長年続けている慶應義塾大学医学部の井上浩義教授だ。ピーナッツはミネラル、ビタミン、タンパク質、植物由来の脂質などの栄養素が豊富で、特筆すべきはその“抗酸化作用”だという。「ピーナッツの薄皮部分には、レスベラトロールというポリフェノールがふんだんに含まれており、この成分には血管を若々しく保つ働きがあります。これはほかのナッツ類と比較しても群を抜いています。以前にハーバード大学が行った研究でも、《ピーナッツを毎日食べ続けると、生活習慣病などによる死亡リスクが20%下がる》という報告がされています」(井上教授・以下同)手軽に食べられるピーナッツに、そんなにすごい健康効果があるとは!さらに、ピーナッツから得られる効果は、女性にとってうれしいものが多いと井上教授は解説する。「まずは便通の改善です。ピーナッツは食物繊維も豊富であるため、食べ続けることで腸内環境が整い、1日の便通が平均1~2回増えたというデータもあります。これは大腸がんの予防にもつながるのです」また、ピーナッツは肌の新陳代謝を促し、保湿効果を高めることで、肌を健康な状態に保ってくれるという。「これからは強い紫外線によるダメージが気になる季節ですが、ポリフェノールの抗酸化作用は肌を日焼け後の酸化から守ってくれますし、ビタミンEは美肌効果をもたらします。同時に網膜の細胞が保護されることで、目の老化予防という効果も得られるのです」そのほか、脳の血流を活性化させ、記憶力アップや認知症の予防にもなる。さらには、活性酸素や悪玉コレステロールを減らすことで、動脈硬化を防ぐことにもつながる。これほどまでの若返り効果をもたらすピーナッツは、“最強食材”といってもけっして過言ではないだろう。井上教授自身、毎日ピーナッツを食べる生活を10年以上続けているそうだが、その効果を実感しているという。「昔は難治性のニキビが出ていたのですが、ピーナッツを食べるようになってからはいっさいなくなりました。もちろん、毎日快便です」そう話す井上教授の肌は、記者も驚くほどツヤツヤだ。
2019年06月20日目下、食品業界でその健康効果が注目されているピーナッツ。ツヤツヤな肌をキープし、認知症も予防。そんな“老けない体”を作ってくれるというのです――。「アーモンドやくるみなど、ナッツ類の健康効果はこれまでにもたびたび話題になってきましたが、いま食品業界が注目しているのはピーナッツに含まれる豊富な栄養素です」そう話すのは、ナッツ類の研究を長年続けている慶應義塾大学医学部の井上浩義教授だ。ピーナッツはミネラル、ビタミン、タンパク質、植物由来の脂質などの栄養素が豊富で、特筆すべきはその“抗酸化作用”だという。「ピーナッツの薄皮部分には、レスベラトロールというポリフェノールがふんだんに含まれており、この成分には血管を若々しく保つ働きがあります。これはほかのナッツ類と比較しても群を抜いています。以前にハーバード大学が行った研究でも、《ピーナッツを毎日食べ続けると、生活習慣病などによる死亡リスクが20%下がる》という報告がされています」(井上教授・以下同)手軽に食べられるピーナッツに、そんなにすごい健康効果があるとは!さらに、ピーナッツから得られる効果は、女性にとってうれしいものが多いと井上教授。その効果は次の5つだ。【1】お通じがよくなり、腸がイキイキ!【2】高い保湿効果で、肌がツヤツヤに!【3】脳の血流が活性化し、認知症の予防に!【4】網膜の細胞が保護され、目の老化防止に!【5】良質な脂質で、動脈硬化の予防に!これほどまでの若返り効果をもたらすピーナッツは、“最強食材”といってもけっして過言ではないだろう。さっそくピーナッツを食べる習慣を始めたいところだが、井上教授によれば、若返りの効果を十分に発揮させるには食べ方や選び方に注意が必要だという。ポイントは次の4点だ。【1】必ず薄皮付きのものを!「薄皮をとってしまうと、大切なポリフェノールがほとんど失われてしまいます。健康効果を得るためには、ピーナッツは必ず薄皮付きのものを選ぶようにしてください。市販のものはきちんと密封されたもの、素焼きのものを選ぶようにするとよいでしょう」【2】目安は1日30粒“ピーナッツは太る”という先入観を持つ人もいるだろう。もちろん食べすぎには注意だが、ピーナッツのカロリーは、30粒でおにぎり約1個分。「間食でついつい甘いものに手が出てしまうよりは、ずっといいでしょう。小腹がすいたときに手軽に食べられるのも、ピーナッツのよいところです」【3】朝起きてひとつまみ「人間の体が1日のうちで“酸化”のピークを迎えるのは正午です。朝一番にピーナッツをひとつまみ食べることで抗酸化物質を摂取し、体を酸化から守ることができます」【4】味付きでないものをできれば味が付いていない素焼きのものが好ましいが、食べにくさを感じる人は、塩味やハチミツなどの味付きでも構わないという。ただし、塩分過多のものを食べることで、せっかくの健康効果を台無しにしてしまうことのないように気をつけたい。若々しさをキープするために、手軽に食べられる“最強食材”ピーナッツ30粒を、毎日の習慣にしてみては。
2019年06月20日デイサービス利用中に突然、施設に連れ去られた母――。本人の意志を無視して後見人をつけ、自由と財産、幸せをも奪った行政の暴走を、家族は怒りをもって告発する!「“この国では安心して長生きもできないんだな”とつくづく感じました。普通の生活に戻れたのは奇跡としか言いようがありません。本当に地獄のような日々でした」そう語るのは三重県桑名市在住の山本浩子さん(48・仮名)だ。浩子さんは独身で、母・静江さん(79・仮名)と桑名市内の自宅で二人暮らし。静江さんには’14年頃から軽い認知症のような症状がみられたが、浩子さんは仕事をしながら、デイサービスを利用するなどして、在宅介護をしてきた。「私は母が大好きで、介護を辛いと思ったことはありませんでした」(浩子さん)ところが母娘の平穏な生活は突然崩壊する。’16年9月、桑名市の出先機関である地域包括支援センターの職員らが、デイサービス利用中の静江さんを一時保護の名目で連れ去り、施設に入れてしまったのだ。当時の模様を当事者である静江さんは、こう振り返る。「突然、市の職員が来て施設に連れていかれましたが、事情がさっぱりわからなかった。私は施設の職員に“家に帰して”“タクシーを呼んでほしい”と繰り返し頼みましたがずっと無視されました」着の身着のままで施設に入れられ、家族と会うこともできず、連絡も取れない状況が続いた。静江さんは「家族が迎えに来ないので、“捨てられた”とさえ思った」という。一時保護の名目は娘の浩子さんによる母・静江さんへの虐待疑惑。後に情報公開請求で入手した市の内部資料には、こう記されていた。「次女からのDVが発覚」「主(静江さんのこと)の体にアザや外傷が見受けられた」「緊急措置として施設に入所させ次女との分離を図った」浩子さんによると、静江さんは脳梗塞の予防のため、血液がサラサラになる薬を服用。そのせいで、ちょっとしたケガでも血が止まりにくく、こぶやアザができたり、広がりやすかったという。「母は活発な性格。体を動かすのが大好きなので、私はできるだけ母の自由にさせていました。でも24時間付きっ切りというわけにはいきません。私が目を離した際に、家や庭などで転んでケガをすることもありました。そのことはケアマネジャーや市の職員にも説明していたのですが、彼らは私が虐待したと決めつけて母を連れ去ったのです」(浩子さん)浩子さんによれば、静江さんがケガをしたとき、浩子さんはすぐに病院に連れて行ったという。「私が本当に虐待していたなら虐待を隠すために病院やデイサービスには連れて行かないはずです」静江さんも、私の取材にはっきりと、こう話していた。「娘が私を虐待したことは一切ありません。私は、自宅で娘と暮らすのが一番の幸せなのです」高齢者の多くは、住み慣れた家でずっと暮らしたいと思っている。浩子さんは、そんな思いに寄り添っていただけだ。ところが地域包括支援センターの職員やケアマネは「在宅介護は大変で、続けるのは危険だ」と言い続け、家族や本人の同意なしに施設に連れ去った。市職員ら周囲の独善的な思い込みが、やがて行政による不当な介入と人権侵害につながっていったようなのだ。なお、事件当時、静江さんの夫の隆さん(81・仮名)は通院の関係で、愛知県岡崎市に住む長女の田口康子さん(53・仮名)夫婦宅で暮らしていた。ありもしない虐待を理由に静江さんを連れ去られた夫の隆さんと康子さんは、浩子さんともども「虐待の事実はない」と強く否定し、静江さんを自宅に戻すよう申し入れたが、桑名市は無視し、驚くべき行動に出た。家族が全員反対したにもかかわらず、軽い認知症とされた静江さんに勝手に後見人をつけてしまったのである。成年後見制度は2000年に介護保険制度と同時にスタート。認知症などで判断能力が十分でない人の代わりに、家庭裁判所が選任した後見人が医療・介護契約を結んだり、財産管理をする。成年後見制度の利用申し立ては、本人、4親等内の親族のほかに市区町村長などもできる。桑名市は本人の診断書を添えて、市長名で津家裁に申し立てた。成年後見制度に詳しい一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表が語る。「成年後見制度で最も重要なのは後見制度を利用する認知症の人の意思の尊重(民法858条)です。植物状態の人を除き、たいていの認知症はまだら状態。程度の差こそあれ意思表示ができます。ところが実際には、本人の意思の尊重という根本原則が形骸化しており、意思を無視した誤った運用が堂々と行われています」たとえば利用申し立てを受けると、家裁の職員が本人に会い、健康状態や利用の意思を確認する必要がある。また本人に対し精神鑑定を実施することも、法律で定められている。だが、これには植物状態で意思表示できないような場合は、手続きを省略できるという但し書きがある。「このため、現実には専門外の内科医の診断書一つで植物状態同様に“常に判断能力がない”と決めつけられ、精神鑑定も家裁職員による本人の意思確認も行われない“手続き飛ばし”が当たり前に行われています」(宮内さん)静江さんのケースでも、内科医の診断書1枚に基づき、この二重の手続き飛ばしが行われたのだ。浩子さんが語る。「成年後見制度の恐ろしいところは、本人を無能力者扱いして、合法的に本人から自由と権利、財産を取り上げてしまうこと。家裁が後見人に選任した弁護士と市役所の指示で、母は家族との面会を禁じられ、電話もかけさせてもらえなかった。後見人がつくまでの間、施設費を母に払わせるため、市は、母の同意なしに生活保護を受けさせることまでしたのです。母は当時を思い出して“認知症だからという理由で人間扱いされなかった。囚人のように扱われた”と憤慨しています」(取材:ジャーナリスト・長谷川学)
2019年06月20日「“この国では安心して長生きもできないんだな”とつくづく感じました。普通の生活に戻れたのは奇跡としか言いようがありません。本当に地獄のような日々でした」そう語るのは三重県桑名市在住の山本浩子さん(48・仮名)だ。浩子さんは独身で、母・静江さん(79・仮名)と桑名市内の自宅で二人暮らし。静江さんには’14年頃から軽い認知症のような症状がみられたが、浩子さんは仕事をしながら、デイサービスを利用するなどして、在宅介護をしてきた。「私は母が大好きで、介護を辛いと思ったことはありませんでした」(浩子さん)ところが母娘の平穏な生活は突然崩壊する。’16年9月、桑名市の出先機関である地域包括支援センターの職員らが、デイサービス利用中の静江さんを一時保護の名目で連れ去り、施設に入れてしまったのだ。当時の模様を当事者である静江さんは、こう振り返る。「突然、市の職員が来て施設に連れていかれましたが、事情がさっぱりわからなかった。私は施設の職員に“家に帰して”“タクシーを呼んでほしい”と繰り返し頼みましたがずっと無視されました」一時保護の名目は娘の浩子さんによる母・静江さんへの虐待疑惑。後に情報公開請求で入手した市の内部資料には、こう記されていた。「次女からのDVが発覚」「主(静江さんのこと)の体にアザや外傷が見受けられた」「緊急措置として施設に入所させ次女との分離を図った」浩子さんによると、静江さんは脳梗塞の予防のため、血液がサラサラになる薬を服用。そのせいで、ちょっとしたケガでも血が止まりにくく、こぶやアザができたり、広がりやすかったという。「母は活発な性格。体を動かすのが大好きなので、私はできるだけ母の自由にさせていました。でも24時間付きっ切りというわけにはいきません。私が目を離した際に、家や庭などで転んでケガをすることもありました。そのことはケアマネジャーや市の職員にも説明していたのですが、彼らは私が虐待したと決めつけて母を連れ去ったのです」(浩子さん)事件当時、静江さんの夫の隆さん(81・仮名)は通院の関係で、愛知県岡崎市に住む長女の田口康子さん(53・仮名)夫婦宅で暮らしていた。ありもしない虐待を理由に静江さんを連れ去られた夫の隆さんと康子さんは、浩子さんともども「虐待の事実はない」と強く否定し、静江さんを自宅に戻すよう申し入れたが、桑名市は無視し、驚くべき行動に出た。家族が全員反対したにもかかわらず、軽い認知症とされた静江さんに勝手に後見人をつけてしまったのである。成年後見制度は2000年に介護保険制度と同時にスタート。認知症などで判断能力が十分でない人の代わりに、家庭裁判所が選任した後見人が医療・介護契約を結んだり、財産管理をする。成年後見制度の利用申し立ては、本人、4親等内の親族のほかに市区町村長などもできる。桑名市は本人の診断書を添えて、市長名で津家裁に申し立てた。成年後見制度に詳しい一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表が語る。「成年後見制度で最も重要なのは後見制度を利用する認知症の人の意思の尊重(民法858条)です。植物状態の人を除き、たいていの認知症はまだら状態。程度の差こそあれ意思表示ができます。ところが実際には、本人の意思の尊重という根本原則が形骸化しており、意思を無視した誤った運用が堂々と行われています」たとえば利用申し立てを受けると、家裁の職員が本人に会い、健康状態や利用の意思を確認する必要がある。また本人に対し精神鑑定を実施することも、法律で定められている。だが、これには植物状態で意思表示できないような場合は、手続きを省略できるという但し書きがある。「このため、現実には専門外の内科医の診断書一つで植物状態同様に“常に判断能力がない”と決めつけられ、精神鑑定も家裁職員による本人の意思確認も行われない“手続き飛ばし”が当たり前に行われています」(宮内さん)静江さんのケースでも、内科医の診断書1枚に基づき、この二重の手続き飛ばしが行われたのだ。浩子さんが語る。「成年後見制度の恐ろしいところは、本人を無能力者扱いして、合法的に本人から自由と権利、財産を取り上げてしまうこと。家裁が後見人に選任した弁護士と市役所の指示で、母は家族との面会を禁じられ、電話もかけさせてもらえなかった。後見人がつくまでの間、施設費を母に払わせるため、市は、母の同意なしに生活保護を受けさせることまでしたのです。母は当時を思い出して“認知症だからという理由で人間扱いされなかった。囚人のように扱われた”と憤慨しています」浩子さんは母の救出に専念するため退職を余儀なくされた。一方、長女の康子さんは、母親に後見人をつけた津家裁の審判を不服として、名古屋高裁に即時抗告を申し立てた。申し立て後の’16年11月、ようやく桑名市役所で母と姉、父の面会が実現したが、虐待の汚名を着せられた次女は外された。以下は、そのときのやりとりを記録した一部だ。康子さん「浩子はお母さんがおらなくなってから、無茶苦茶。寝れやん、食べれやん」隆さん「みんながガタガタになってさ。もう、家が崩壊しとる」静江さん「浩子が可哀そうや。うちに帰りたい。うちに帰った夢ばかりみとる(すすり泣く)」’17年1月、名古屋高裁の藤山雅行裁判長は、静江さんの判断能力を認め、「本人の精神状況につき鑑定を経ずして後見開始の審判をした原審は、その手続きに違法がある」と津家裁を批判。後見人を付けた家裁の審判を取り消した。’17年11月、静江さん、浩子さん、康子さんの母娘3人は、国(家裁)と桑名市(伊藤徳宇市長)を相手取り、名古屋地裁に国家賠償請求訴訟を起こす。「桑名市からはいまだにお詫びの一言もありません。私たちのような被害者を再び出さないため、やむなく提訴しました」(浩子さん)静江さんもこう話す。「施設に閉じ込められた、かけがえのない私の貴重な時間を返してほしいです」静江さんは地裁に提出した陳述書で、次のように書いている。「私は認知症のような症状があると言われていますが、はっきり自分の意思も言えますし、すべてのことを忘れたことはありません。ですが、もし認知症だったとしても、人を人とも思わないような対応をして良いとは思いません。認知症になったら一人の人間として扱わない、自由さえ奪っても良いと考えるならば長生きなどするものでないと正直思います」今年6月20日、津地裁で国賠訴訟の裁判が開かれ、静江さん母娘が証言に立つ予定だ。浩子さんは、市役所、家裁、厚生労働省等、さまざまなところに相談したが相手にされなかった自身の経験を踏まえ、こう語る。「後見人が外れるまでの10カ月間は地獄でした。私たちのような被害者を出さないよう、行政や職業後見人、家裁の暴走を監視し、後見被害者の声を受け付ける第三者機関を早急に設立すべきだと思います」実は、介護家族が虐待の濡れ衣を着せられ、親が後見人を付けられたケースはほかにもある。決して他人事ではないのだ。(取材:ジャーナリスト・長谷川学)
2019年06月20日徳光和夫アナウンサー(78)が6月14日、渋谷区と日本認知症予防学会が取り組む「認知症に関する協定」概要発表会に認知症予防大使として出席した。一部スポーツ紙によると、徳光アナは自身の起用理由について「認知症予備軍であり、78歳にしては元気。みのもんたは最近、何となく元気ないので、一番元気のいいのが徳光と思われて、大使に選ばれたと思う」と笑わせたという。「徳光さんにとってみのさんは、業界の後輩であり立教大の後輩。そのため“ネタ”にはしやすかったようですが、たしかに最近のみのさんには心配の声も上がっています」(テレビ局関係者)みのは13年11月までTBS系の情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」「みのもんたのサタデーずばッと」でキャスターをつとめていた。だが13年9月、日本テレビに勤務していた次男が窃盗未遂容疑で逮捕。同局を諭旨解雇処分となった。そしてみのにも批判が殺到した結果、両番組のキャスターを降板した。「当時のみのさんは年収10億円超えとも言われるほどの人気者でした。しかし両番組に続き、文化放送の冠ラジオ番組『みのもんたのウィークエンドをつかまえろ』が14年3月で終了。87年から放送されていた長寿番組でライフワークにしていただけに、ショックだったでしょうね」(芸能記者)現在は稼業である水道メーター会社兼個人事務所「ニッコク」社長をつとめながら、レギュラーは日本テレビ系「秘密のケンミンSHOW」とAbemaTV「みのもんたのよるバズ!」の2本のみだ。「AbemaTVではキャスターをつとめています。みのさんそれを足掛かりに地上波へのキャスター復帰を狙っていたようですが、いまどにお呼びがかかりそうな気配はありません」(前出・芸能記者)地上波のキャスターこそが、みのの“若さの秘訣”だったようだ。
2019年06月16日卵には認知症予防や風邪予防の栄養素が含まれています。コレステロールが多い、と良くない面が取り上げられがちですが、良い面も沢山あります。2015年、食事摂取基準でコレステロールの上限値が設定されなかったことをふまえ、結局、卵は何個くらい食べるのがベストか?ということについてまとめています!卵が「摂りすぎ注意」といわれていた理由は?出典:byBirth卵のコレステロールは多い?卵1個(Mサイズ)につき、コレステロールは280mg含まれています。たらこ1/2腹(約25g)で88mg、焼き鶏のレバー1串(約30g)で約110mgなので、確かに卵のコレステロールは多いといえますね。卵といえば、「コレステロールが多い」と、良くない面が取り上げられがちですよね。ダイエット中、炭水化物を減らすかわりに卵を1日に何個も食べる人や、卵に含まれる栄養素に着目するのは良いですが、卵ばかり食べる人もいます。そういったことが原因で、「卵の食べ過ぎは良くない」と見聞きすることが増えたのかもしれません。卵に含まれる栄養素卵には、魅力的な栄養素が豊富に含まれています。ビタミンCと食物繊維以外は含まれているので、「完全栄養食」といわれることも。コリン卵黄に含まれている脂質です。脳を活性化させ、認知症の予防・改善に良いといわれています。数ある食品の中でも、卵のコリンは特に脳に吸収されやすい、といわれています。記憶力アップにも良いといわれているので、勉強盛りの子どもにも◎。メチオニンアミノ酸の一種で、体内では作ることができないため、食事から摂る必要があります。アルコールは肝臓で分解されますが、その際に必要になる成分です。二日酔いに卵はおすすめです。ビオチン皮膚や髪をきれいに保つ作用があります。美肌・抜け毛対策もできるとは、嬉しいポイント◎。さらに、コレステロールの代謝をよくする作用もあります。リゾチーム卵白に含まれていて、細菌を卵の内部に侵入させないよう、溶菌作用があります。風邪薬に「塩化リゾチーム」という成分が入っていることがあります。なんと、卵白から特殊な技術で取り出された成分なのです。医療にも使われるとは、すごいですよね!免疫力を高めるため、「風邪予防に卵」と覚えておきましょう!1日に摂るコレステロールの上限値がなくなった!?食べていいわけではないって本当?出典:byBirth厚生労働省の食事摂取基準では、1日に摂るコレステロールの上限は300mgと設定されていました。しかし、2015年に発表された新しい食事摂取基準では、上限値はなくなっています。根拠がなかったため、上限値がなくなった?上限値がなくなった、というと、「どれだけ摂ってもOK!」と思われがちです。ですが、今回、上限値が設定されなかったのは、コレステロールは体内で合成できるため、食事から摂るコレステロールの影響が少ないと考えられる上限値を決める科学的根拠が少ないという理由です。食事からの影響が少ない、というだけで影響はゼロではないこと、根拠がなかったために上限を設定できなかった、とも捉えられます。コレステロールはどれくらい体内で合成されている?肝臓でコレステロールはつくられます。コレステロールの約9割は、体内でつくられており、残りが食事から摂る分です。確かに、体内でつくられる比率が圧倒的に多いですよね。また、食事でたくさんコレステロールを摂ると、体内での合成量は少なくなり、常に一定の量に調整されています。これからまた変わる可能性も今後、食事のコレステロールが血中コレステロール値におよぼす影響について、はっきりとした根拠が分かった場合、食事摂取基準におけるコレステロール基準値は変わる可能性もあります。常に、最新の情報をみておく必要がありますね!医師から制限等がない場合、1日に1~2個がベスト!出典:byBirthコレステロールが高い家系の人は、遺伝素因もあるので、食べ過ぎには注意しておきましょう。また、年齢とともに、どうしても血中コレステロールはあがる傾向にあります。コレステロールが気になるなら、水溶性食物繊維をとろう!水溶性食物繊維には、体の中の余分なコレステロールを吸着して、体の外に出すはたらきがあります。どんな食品に多いかというと、フルーツ(熟したもの)わかめ、昆布などの海藻類しいたけ、舞茸、しめじなどのきのこ類などです。卵だけでなく、コレステロールが気になる場合は、今から対策として水溶性食物繊維を摂っていきましょう!まとめ出典:byBirth卵は、何かと「コレステロールが多い」といわれがちですが、他にもコレステロールが多い食品は沢山あります。卵には美容や健康に魅力的な栄養素がたっぷり含まれています。とはいうものの、食べ過ぎには要注意。1日に3個も4個も食べることは避けたほうが良いでしょう。何にでも、「適度」があることを理解して、楽しく食事ができるのが理想的ですね!
2019年06月15日「ふっくん」こと布川敏和さん(53)との約20年に及ぶ結婚生活にピリオドを打って5年。別れた夫婦が「いい感じ」になるための秘訣をつちやかおりさん(54)に聞きました。「先日、彼と電話で子どものことや仕事のことをあれこれと、気づいたら1時間半も話していたんです。こんなに話すなんて、自分でもびっくりしちゃいました」そう語るのはつちやかおりさん。通話の相手は、20年近く連れ添った元夫の布川敏和さんだ。「いっしょにいた期間は親きょうだいより長いので、お互いのことがよくわかるんです。離婚前はお互いの悪いところばかり目につきましたが、いまではいいところも見られるようになった感じですね。夫婦じゃなくなったことで、相手に求めるものがなくなったからでしょうか」つちやさんは、18歳から9年の交際を実らせ’91年に布川さんと結婚。ハネムーンベビーで’92年に長男(現在・俳優の隼汰さん)を、’94年に長女(モデルの桃花さん)、’01年に次女(花音さん)を授かったが、’14年6月に離婚を発表。夫婦という関係を解消してから5年、つちやさんには、自分自身でも意外な変化があったという。「結婚前は本当に早く仕事を辞めたかったんです。当時、敏和さんはアイドルとしての全盛期でしたから、会う時間が全然取れなくて。いつでもいっしょにいられるように早く芸能界をやめて、結婚したいって(笑)。それがいまでは、仕事を受けすぎてマネージャーにも怒られるくらいの変わりぶりです」実際、現在のつちやさんは舞台やテレビのバラエティから、本の出版、講演など仕事が切れることがない。さらにはグループホームで暮らす認知症の母親の介護経験から、介護関連の資格取得も目指しているという。もちろん、冒頭のエピソードのように、布川さんと長電話ができるような関係になれたということも、当時のつちやさんには考えられなかった大きな変化だろう。「かといって『2人でランチでもしようか』ということにはならないんです。犬を預ける都合でしょっちゅう顔を合わせてはいるんですけど。もはや親戚のおじさんですね(苦笑)」たしかに“親戚のおじさん”とはランチに行く関係にはならないが、子どもたちが自立し、一人暮らしをしている布川さんのことはどう思っているのだろう。「早く新しい奥さんをもらってほしいですね。だって、もし彼に何かあっても、まだ子どもたちに面倒を見させるわけにはいきませんから。じゃあ、私なの?ってことになっちゃうでしょ(笑)」元夫である布川さんとの関係を屈託なく語るつちやさんだが、昨年の夏には“家族5人”の写真をブログに掲載して話題となった。「花音が留学先から帰国したときだったんですけど、どうする?パパも呼ぶ?ってことになって。敏和さんも楽しそうにしていました。けっこう緊張していたんでしょうね。途中で真っ青になって倒れちゃったんです。あとで『本当に体調が悪かったんだよ』と言っていましたが、子どもたちは大爆笑でした」この先も、子どもが結婚したり、孫が生まれたりすれば、もちろん顔を合わせる機会はあるとつちやさんは言う。「離婚から5年たってようやく、こういう関係もありかな、と思えるようになりましたが、それにはお互いが同じ距離感じゃないとだめなんでしょうね。どちらかに未練やわだかまりが残っていると成り立たないと思います。そう考えると、いまは本当に“いい感じ”に落ち着くことができていると感じています」
2019年06月14日<(老後資金の)不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる >そんな記述を含んだ金融庁の「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」が波紋を呼んでいる。この51ページにも及ぶ報告書が発表されたのは6月3日のこと。報告書によれば、年金収入で暮らしている高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の月間収支は約5万5,000円の赤字である。仮にこの生活が20年続けば約1,300万円が、30年続けば2,000万円が年金とは別に必要になる、というわけだ。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは、報告書を読んだ率直な感想をこう語る。「老後のために、2,000万円ほどの貯蓄が必要という試算は、民間では言われてきたことではあります。でも、省庁が“年金だけでは足りない”と表現したことはなかったかもしれません」――年金は100年安心政府はずっとそう喧伝してきただけに、“年金だけで生きていけない”という内容への反発は激しい。「これからの世代は、ますます年金だけでは生活できなくなっていく。さらに、長寿にもなっていくので、たとえ金融資産があっても、途中で尽きてしまうかもしれない。そのため、『資産寿命』を延ばすことが必要だと、報告書では強調されています」(風呂内さん)「資産寿命」とは、報告書によると、<老後の生活を営んでいくにあたって、これまで形成してきた資産が尽きるまでの期間>。これが尽きてしまえば、後は年金だけで生活するほかなくなる。報告書では人生を3つの期に分けて、「資産寿命」の延ばし方を指南している。【現役期】資産形成期このころから、投資によって資産を増やすことが必要だという。税制面で優遇が行われている「つみたてNISA」と「iDeCo」が報告書で推奨されているほか、<日経平均だけに積立投資するよりも、米国NYダウと組み合わせた方がトータルリターンはさらに大きくなり>2など、具体的なアドバイスまで。「<保有期間が5年ではマイナスリターンも発生するが、保有期間が20年になるとプラスリターンに収斂>とあるように、長期間投資するほど、有利な結果になりやすいということです」(風呂内さん)もちろん、長期投資でもマイナスになるリスクもある。手数料がかかることも忘れてはならない。経済評論家の平野和之さんは、こう語る。「運用に失敗しても、金融機関は責任を取らず手数料を取る。“貯蓄から投資へ”というのであれば、金融機関にも“手数料は成功報酬のみ”など、リスクを負わせることは必要ではないでしょうか」手数料を取ることだけを目的として、リスクの高い商品を勧めてくる業者もいるという。その見極めは自分でやらねばならないのだ。【リタイア期前後】運用・取り崩し期退職金がある人はそれを踏まえた老後計画を立てる必要があるが、年々退職金の額は減っているという。’02年には平均2,600万円ほどあった退職金は、’17年には2,000万円まで減っている(常用労働者が30人以上の民営企業、大卒者)。ここで、報告書が提案するのが、老後も働き続けることだ。第一生命経済研究所の首席エコノミストの永濱利廣さんは、「健康寿命が延びているのだから、昔と比べて現役世代が長くなるのは仕方ありません」と語る。だが、現役時のような給与水準は、再雇用前と比べて、平均65.4%まで下がるという。’16年度の調査では、65歳から69歳の男性の55%、女性の34%もの人が働いていて、これは世界でも高い水準にあるという。「現状でも、年金や貯蓄の関係から“働かざるをえない”という人もいるでしょう。今後、働く高齢者はより増えていくと考えられます」(風呂内さん)【高齢期】資産管理期働くことによる所得は期待しづらく、年金と資産の取り崩しで生きていく必要がある。ここで大切なのが、“支出の削減”となるが、すでにリタイア期から習慣づけていることが望ましい。「携帯料金やガス料金の見直しなど、生活水準を下げずに取り組む節約という方法も。まずは家計=経済に対してアンテナを張っておくことです」(永濱さん)さらに、こんな準備も必要だ。「認知症などで判断能力が低下すると、資産を思うように利用できなくなったり、失うこともあります。そうなる前に、資産の扱いを決めておきましょう」(永濱さん)うまくやれば、「人生100年時代」にも対応できると、報告書にはあるが……。年金生活に入る前に2,000万円を貯めておく――そんな“絵に描いた餅”が食べられなかった場合、飢えてしまうのは自分自身である。
2019年06月11日山里亮太(南海キャンディーズ)との電撃婚で話題となっている蒼井優。実力派女優として名高い彼女の魅力を改めて確認できる映画『長いお別れ』が、6月10日時点で観客動員15万人、興収1億8000万円突破と独立系ながら大ヒット中で、国内最大級の映画レビューサイト「coco」でもレビュアー満足度91%と高い数値を維持している(6月10日現在)。認知症の症状が日に日に進んでいく元・中学校校長の父と、優しさに溢れた愛情で支える母、さらにそれぞれに人生の岐路に立たされる2人の娘の7年間を描きつつも、劇場にはすすり泣く声とともに笑い声が響き渡る。悲壮感一辺倒ではない、新たな認知症映画ともいえる本作には、蒼井さんをはじめ俳優陣を絶賛する声が続出している。◆「たくさんの笑いと愛と切なさで溢れている」本作は、自主制作映画『チチを撮りに』(’12)がベルリン国際映画祭など国内外10以上の映画祭で絶賛され、商業デビューを飾った前作『湯を沸かすほどの熱い愛』(’16)がロングランヒットとなり、日本アカデミー賞など国内映画賞を席巻した中野量太監督の最新作。これまで“血縁にこだわらない”、むしろ“血縁よりも熱い”愛を描いてきた中野監督が、「オリジナル脚本へのこだわりを捨てられた」と語るほど直木賞作家・中島京子の同名小説に惚れ込み、改めて家族という血縁と、血縁でない者が結びついた夫婦の双方について、認知症という病を通して描き出している。「coco」レビュアーからは、「家族の絆や愛など奇をてらう事なく、真っ直ぐな映した作品で素直に感動した。前作もそうだが、死に向かう話なのに後味は悪くない」「所々に散りばめられたユーモア溢れるエピソードでそれほど重くなく見られる」「たくさんの笑いと愛と切なさで溢れているとても優しい映画でした」といった声が寄せられ、月日をかけて少しずつ自分自身や家族と決別していく“長いお別れ”と称される認知症を扱いながら、“優しい気持ち”になれて“家族に会いたくなって”劇場を後にする人が多い様子。「『湯を沸かす…』に乗れなかった私は、あれの評価でよく語られていた「残酷だけれど温かい」「泣けるけれどもホッコリ」「家族愛に溢れている」という文句をそのままこの映画に充てたい」との声もあり、「先年亡くなった家族を思い出した」「親父と重なり涙腺が緩んでしまった」「数年前に送った父と山崎努さんの背格好が似ていて懐かしく感じました」「自分の両親のことに当てはめてみてしまいます」と、実際に家族を見送った人たちも含め、自身の家族と重ねるコメントも多い。◆人生に迷う蒼井&竹内“姉妹”はじめ「キャストがみんなはまり役」そんな身近さを感じるのは、「認知症を初期から晩年まで丁寧に描き、同時に温かく見守る家族の姿」もつぶさに映し出していることが大きい。何より、「とにかくキャスティングが最高!」「キャストがみんなはまり役で素敵」「これ以上ない完璧なキャスティングが◎」などなど、この家族・東(あずま)家の面々を演じた俳優陣に感嘆の声が続々。「山崎努の認知症演技のリアルさで物語にどっぷり浸れた」「僅かな機微で魅せる山崎努は流石」「本当に認知症になってしまったかと思うほどの山崎努さんの演技」と、茶目っ気のある初期の姿から7年の間にゆっくりと、だが確実に認知症が進行していく様をリアルに演じた父・昇平役の山崎さんの熱演があるからこその没入感。また、「女優陣がみんな可愛らしかった」「松原智恵子さんのほんわかな雰囲気が素敵」「松原智恵子さんが演じる母の寛容さの背景にある芯の強さ」「蒼井優演じる次女に好感」「個人的には竹内結子の演技が良かった」など、次女・芙美を演じた蒼井さん、長女・麻里を演じた竹内結子、そして母・曜子を演じた松原智恵子の三者三様の女性たちの姿も印象的。なかには「場を和ませる母親役の松原智恵子さんがとてもいい。蒼井優さんの可愛さを再確認したのだが・・、クソぅ!」と、今回の電撃婚に悔しそうな(?)ファンの声までも。◆「人生を見つめ直すチャンスをお父さんからもらえた」だが、劇中での蒼井さん演じる芙美は決して幸せとはいえない。カフェの経営を夢見ながらも実現には遠く、運命的な再会から新しい恋が始まるも続かない。それに身近にいることもあって、たとえ失恋の直後であっても、しばしば母に呼び出される。それでもあるとき、つながっているのかいないのか、よく分からない中での会話ながら、父から「ゆ~っとして」とダジャレのような(?)アドバイスを受け取ると、思いっきり「ゆ~っと」伸びをした後の彼女は、どこか憑きものがとれたかのよう。アメリカから一時帰国した姉・麻里にも「変わったね」と言われるようになる。その麻里も、数年間いても馴染めないアメリカでの生活、コミュニケーションが足りていない夫や息子との関係に、“家族と離れている”からこそ結論を見出せるようになっていく。確かに認知症になった家族と暮らすことは、ひと筋縄ではいかない。「こんなに美しいものじゃない」「ファンタジー的」という声が上がるのも納得できる。しかし、この家族をこれほどまでに愛おしく感じるのは、認知症や介護といった避けられない親の老いを通じて、家族各々がそれぞれの愛を再認識し、積み重ねてきた家族の歴史を土台にして前を向いていくからだ。その姿は、「子供たちがお父さんの認知症と向き合うことで自らの人生を見つめ直すチャンスをお父さんからもらえたのではないか」「介護に携わった家族一人一人にも変化と変容がありジンワリ沁みる。逞しくなっていく芙美の姿には特に打たれた」と、観る者に深い共感を呼び起こしている。『長いお別れ』は全国にて公開中。(text:Reiko Uehara)■関連作品:長いお別れ 2019年5月31日より全国にて公開(C)2019『長いお別れ』製作委員会
2019年06月11日代はそれまで健康であった人も体調の変化を実感するようになり、老後のことを考え始める年代です。40代は生活習慣病や七大疾病と言われる病気にかかりやすくなり、40代からの生命保険はそれらをカバーできる保障である必要があります。今回は40代におすすめの生命保険ランキングをご紹介します。40代で備えるべきリスク40代で備えるべきリスクは、病気やケガのリスク、死亡のリスクに加え、老後のリスクも考える必要が出てきます。若いときに比べて体調の変化が顕著になり、現在のことだけでなく老後のことも考える必要がある40代は、病気だけでなく家族の生活費や子供の学費、介護や老後に備える必要があります。また、残りの人生をどう生きていくのか考える機会も多くなり、生命保険の見直しをする方も増えます。【40代で備えるべきリスク①】病気やケガのリスク40代ではそれまでなかった病気や生活習慣病が目立ってきます。特に40代は胃がん、大腸がん、肺がんになる確率は30代以下の3~4倍にものぼります。脳卒中や心筋梗塞のリスクも高まり、糖尿病などの生活習慣病での入院も増加します。40代からは30代までの生命保険ではカバーできなくなる場合が多いのです。【40代で備えるべきリスク②】死亡のリスク男女ともに40代の死因はがんが1位です。2位は自殺、3位は心疾患、4位は脳血管疾患と続きます。自殺や心疾患、脳血管疾患はストレスが原因の一つとして考えられています。これらは突然死であったり急激に症状が進行する病気です。死亡しない場合も元の生活が難しいほどの後遺症が残る場合があります。ですから40代ではより厚い死亡保障を用意しておいたほうが安心できます。【40代で備えるべきリスク③】老後のリスク40代は自身の老後について考え始める時期でもあります。支給される年金がいくらで、今の生活を維持するにはこれだけの資金が必要になり、それをどう用意していくのか。また、親の介護もしながら自身の老後の生活も維持するためにはいくら必要だとか、明確に老後の資金が見えてきます。子供の学資や生活費が落ち着いたあとは、老後の資金をどう用意するかを考えておくと豊かな老後の生活が安心して送れます。40代におすすめの生命保険選びで重要なポイント40代の生命保険選びで重要なポイントは2つあります。がん、心疾患、脳血管疾患(三大疾病)や生活習慣病をカバーできる生命保険を用意すること老後や介護、就労不能などに対応した生命保険を選ぶことこれらのポイントを押さえながら、40代におすすめする医療保険ランキングと、40代におすすめする死亡保険ランキングをご紹介します。40代におすすめの医療保険ランキング40代におすすめの医療保険ランキングは以下です。5位損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「新・健康のお守り」4位オリックス生命「医療保険新CURE」3位メットライフ生命「新終身医療保険Flexi S」2位チューリッヒ生命「終身医療保険プレミアムDX」1位三井住友海上あいおい生命「新医療保険Aプレミア」第5位損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「新・健康のお守り」第5位は損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「新・健康のお守り」です。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「新・健康のお守り」は、特約も多く介護に備えられる保険です。三大疾病での入院は無制限になるのに対し、七大生活習慣病追加給付特則が60日を超えて継続して120日までの保障になるため注意が必要です。第4位オリックス生命「医療保険新CURE」第4位はオリックス生命の「医療保険新CURE」です。オリックス生命の「医療保険新CURE」は七大生活習慣病(がん/心疾患/脳血管疾患/糖尿病/高血圧性疾患/肝硬変/慢性腎不全)での入院では支払い限度日数が120日、三大疾病(がん/心疾患/脳血管疾患)での入院は支払日数が無制限になり、40代から増加する病気をカバーできます。がん充実プランや三大疾病充実プランなどの特約もあり、がんや特定の病気に備えて保障を上乗せすることも可能です。第3位メットライフ生命「終身医療保険Flexi S」第3位はメットライフ生命「終身医療保険Flexi S」です。メットライフ生命の「終身医療保険Flexi S」は、豊富な特約で長生きのリスクに備えることができる保険です。1入院最長730日まで選べる入院日数や、介護、認知症などをカバーしています。第2位チューリッヒ生命「終身医療保険プレミアムDX」第2位はチューリッヒ生命の「終身医療保険プレミアムDX」です。チューリッヒ生命の「終身医療保険プレミアムDX」は、治療が長期化する傾向がある精神疾患やストレス性疾患に対して備えられる保険です。特約付加で七大疾病による入院が無制限になるため、40代から多い疾患に対して備えられる医療保険でもあります。第1位三井住友海上あいおい生命「新医療保険Aプレミア」第1位は三井住友海上あいおい生命「新医療保険Aプレミア」です。がんのリスクや生活習慣病のリスク、女性特有の病気に対するリスクに備えられる他、介護状態になったときのリスクにも備えられます。40代で加入する医療保険でもっともおすすめできる商品です。[adsense_middle]40代におすすめする死亡保険ランキング40代におすすめする死亡保険ランキングは以下です。5位オリックス生命「家族をささえる保険keep」4位T&Dフィナンシャル生命「家計にやさしい収入保障」3位東京海上日動あんしん生命「家計保障定期保険NEO」2位損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「リンククロスじぶんと家族のお守り」1位三井住友海上あいおい生命「&LIFE新総合収入保障」(※保険期間・保険料払込期間60歳満了、年金月額15万円、3大疾病払込免除特約なし、支払い保障期間は最短期間で算出。)第5位オリックス生命「家族をささえる保険keep」第5位はオリックス生命の「家族をささえる保険keep」です。オリックス生命のキープは喫煙者も非喫煙者と同じ保険料で加入できる死亡保険です。非喫煙者割引を利用しない他社の収入保障保険の保険料と比べると保険料が安いため喫煙されている方に人気があり、40代の喫煙者におすすめできます。第4位T&Dフィナンシャル生命「家計にやさしい収入保障」第4位はT&Dフィナンシャル生命の「家計にやさしい収入保障」です。T&Dフィナンシャル生命の「家計にやさしい収入保障」は、喫煙者(健康体保険料)も非喫煙者(非喫煙者健康体保険料)もぞれぞれ保険料が割安であることが特徴です。40代で保障の上乗せや、死亡保険を用意するときに加入したい保険です。第3位東京海上日動あんしん生命「家計保障定期保険NEO」第3位は東京海上日動あんしん生命の「家計保障定期保険NEO」です。東京海上日動あんしん生命の「家計保障定期保険NEO」は、5疾病(がん/急性心筋梗塞/脳卒中/肝硬変/慢性腎不全)での入院一時金や就業不能状態になった場合の給付金も用意できます。また、1年間喫煙していなければ保険料が割引になります。40代で増えてくる病気に対応できる死亡保険です。第2位損保ジャパン日本興亜ひまわり生命「リンククロスじぶんと家族のお守り」第2位は損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「リンククロスじぶんと家族のお守り」です。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「リンククロスじぶんと家族のお守り」は、七大疾病(がん/急性心筋梗塞/脳卒中/慢性腎不全/肝硬変/糖尿病/高血圧性疾患)とメンタル疾患(統合失調症/気分障害/神経症性障害・ストレス関連障害および身体表現性障害/摂食障害/非器質性睡眠障害)の際に毎月(2年間・5年間)生活サポート年金を受け取れます(無解約返戻金型メンタル疾患保障付七大疾病保障特約)。その他にも、健康割引や5年ごとに5%相当の保険料の減少などの保険料の割引もあります。40代はさまざまなストレスが増える年代です。精神的な病気になった際もカバーできるおすすめの死亡保険です。第1位三井住友海上あいおい生命「&LIFE新総合収入保障」第1位は三井住友海上あいおい生命の「&LIFE新総合収入保障」です。三井住友海上あいおい生命の「&LIFE新総合収入保障」は、支払事由が広範囲な点が特徴です。他社は独自の基準で支払事由を設定している中で、あいおい生命はより広範囲をカバーできる公的介護保険制度の要介護2以上の状態になったときに年金を受け取れます。また、非喫煙者、喫煙者だけでなく優良運転者(ゴールド免許保持/無免許で運転しない)を対象に6段階最大20%割引の保険料が割引されます。非喫煙者や優良運転者は割安な保険料でしっかりした死亡保障を用意できます。40代で死亡保険を用意するなら、まずはこちらの商品をおすすめします。40代におすすめの生命保険に関するまとめ40代からの生命保険は生活習慣病や七大疾病に備えて、より厚い保障を用意する必要がありました。また、就労不能時の保障や介護に備えておくとさらに安心できます。40代になったら一度保険を見直して、必要な保障をカバーできる生命保険を用意し万一のときに備えてください。
2019年06月10日「今年から初めて本気で」終活を始めた渡辺えり(64)。地元・山形で暮らす認知症の両親の影響だという。今後の人生設計を語る――。「今、64歳なのですが、今年から初めて本気で終活を考え始めました。きっかけは、やはり両親です。父が93歳、母が89歳で体は健康なのですが、2人とも認知症を患っています。症状は父が軽く、母が重いため、今、地元・山形で別々の老人ホームに入っています。山形新幹線で片道3時間で往復できるようになりましたから、毎月、日帰りでも時間をつくって帰るようにしています」そう話す渡辺。昨年創立40周年を迎えたオフィス3○○(さんじゅうまる)を主宰、日本劇作家協会会長も務める彼女は『ぴったんこカンカン』(TBS系)などテレビ出演に加え、現在も大阪松竹座の『三婆』に出演するなど精力的に活動。私生活では4月に23年間連れ添った俳優・土屋良太(52)と離婚したばかりだ。「心機一転、引っ越しをしたばかりなんです。広いところから狭いところに移ったので、荷物が入り切らなくて。本や資料だけでも手元に置いておくものと大学に寄付するもの、田舎に送るものと、選別できていない段ボールがまだ50箱もあって。新居では開くところもないありさまなんです。元劇団員たちが土日に来てくれますが、この分では1年以上かかりそうです」「私は太ってるからため込むタイプなんです(笑)」と語る渡辺。「今回の引っ越しで、ずいぶんスリムになりました。服とかいらないものは手伝いに来てくれた人にあげました。姪っ子にもずいぶん送りました。だけど、やっぱり舞台衣装などはまた使うと思うから、それは山形に送ろうと思ってます。実は60歳を過ぎたら地元で演劇塾を開こうと以前から思っていて、故郷に稽古場にできる古家を買ってあったんです。父の入居しているホームはそこから歩いて30分ぐらいのところにあります。まだ実際に始めていないのは、60歳になっても自分がまだまだ元気だったから。今は仕事があるから東京に住んでいますが、70歳過ぎたら山形に移り住もうと。月謝2,000円で10人ぐらい、子どもたちに芝居を教えようかなと思って……」いったん劇団を解散したとき、早稲田大学の演劇博物館に衣装や小道具は全部寄付したという。「今回もあげるところは決まっているのですが、全部送ったら地元の演劇塾はどうなるんだと思って。だから一部は山形に持ってきます。主宰するオフィス3○○公演も、来年までは東京・本多劇場でやりますが、再来年からは小劇場に戻って、自主制作でコツコツやろうと思っています」数年後に向け、今はさまざまなものの整理と今後のお金の算段を考えていて心身ともにフル回転で、慌ただしい日々を送っている。「でも、私は恵まれているんです。田舎で少女のころから思い描いていた夢は、みんなかなっています。大ファンのジュリー(沢田研二)とは舞台『フィガロの結婚』で共演しました。劇作家の唐十郎さんとも舞台『少女仮面』でご一緒できました。美輪明宏さんとも、縁があって改名するきっかけまでいただきました」唯一かなっていないのが『世界平和』。今夏、渡辺が主宰するオフィス3○○の舞台『私の恋人』は、渡辺自身も足を運び、ガス室や焼却炉などを見てきた、ドイツのミュンヘンにナチスがユダヤ人を隔離するため造ったダッハウ収容所がモチーフだ。「簡単ではないことはもちろんわかっていますけどね。私は5歳のとき山形市内に引っ越して小学校に入った途端、いじめに遭っています。あまりのショックに2年間もひきこもり状態になりました。夢と現実のギャップを知り、不平等な世界や矛盾を知り、だからこそ、演劇の夢を追うようになりました。世間にはすごく貧しくていじめられてる人と、金持ちがいることが許せませんでした」演劇を志し、18歳で上京したとき、是が非でもこの“格差”をなくしたいと思ったそう。「両親は私が山形大学に進学し、音楽教師になってほしかったそうです。母は合格発表を一緒に上野まで見に来てくれたのですが、帰りの列車の中で『娘を手放さなければならないのはバチが当たったからだ』と号泣したことを後で打ち明けられました。私が演劇をやめられないのは、まだ『世界平和』の夢を達成できていないから。これからもやり続けて、ジワジワ効く漢方薬のように、若い人たちにも“平和”への思いを感じてほしいと強く願っています」
2019年06月09日「今、64歳なのですが、今年から初めて本気で終活を考え始めました。きっかけは、やはり両親です。父が93歳、母が89歳で体は健康なのですが、2人とも認知症を患っています。症状は父が軽く、母が重いため、今、地元・山形で別々の老人ホームに入っています。山形新幹線で片道3時間で往復できるようになりましたから、毎月、日帰りでも時間をつくって帰るようにしています」そう話す渡辺えり(64)。昨年創立40周年を迎えたオフィス3○○(さんじゅうまる)を主宰、日本劇作家協会会長も務める彼女は『ぴったんこカンカン』(TBS系)などテレビ出演に加え、現在も大阪松竹座の『三婆』に出演するなど精力的に活動。私生活では4月に23年間連れ添った俳優・土屋良太(52)と離婚したばかりだ。後悔はたくさんあるが、ひとつだけ、両親にやっておいてよかったなと思うことがあると渡辺は言う。「15年前、母親から急に『どうも認知症になりそうだ』と電話があったんです。今までこうしてくれとか何も言ったことがなかった母親が、初めて。『元気なうちに、旅行に連れてってくれ』と。行きたいところを聞いたら、伊勢神宮と出雲大社と、日光東照宮と広島の原爆資料館の4つ。それで必死に10日間休みをつくったんです。そのときはまだ両親も元気で、移動の際も私のトランクを持って走ってくれて、すべて時間どおり、間に合ったんです。母親と一緒に露天風呂に入って背中を流し合ってね。本当によかった。当時の写真は母もいまだに喜んで見ています」今夏、渡辺が主宰するオフィス3○○の舞台『私の恋人』はその旅行体験が生かされているという。「両親と広島の原爆資料館に行ったときのことです。私も初めてでした。私は劇作家ですから、人間のしでかした所業は人に伝えなくちゃいけない。これは見なくちゃと思って、目を見開いて全部見て出たんですけど、途中で両親を見失ったんですよ。おかしいなと思って外に出たら、噴水の前のベンチに2人でうなだれているんです。とてもじゃないけど見てられなかった、と2人で泣いているんです。戦争経験者ですから、心が傷つきすぎて5分で出てきたんです」渡辺はドイツのミュンヘンでナチスがユダヤ人を隔離するため造ったダッハウ収容所にも足を運んだそう。「今度の舞台『私の恋人』もダッハウがモチーフなんです。ガス室の隣に焼却炉が3つ並んでいて、ここで亡くなったという部屋もすべて見て色も覚えてます。囚人に植えさせた木も見ました。戦争は名もない人たちを犠牲にする。それが今もなお繰り返されてる。何とか止められないか。それが『私の恋人』のテーマですから、私が直接見てきたものをぜひ舞台で再現させたいと思います」時間もお金も演劇にひたすらつぎ込んできたという渡辺。貯金はほとんどないという。「私は芸能人だからお金持っていると思われがちなのですが、演劇人は違うんです。亡くなった杉村春子さんもそうでしたけど、ほかで稼いだお金で劇団を存続させてきたんです。老後の貯金なんかしてこなかったんです。だからまず、貯金から始めようと。節約して少しずつ始めます。そうしないと、周りに迷惑をかけてしまうでしょう?老人ホームを契約しなきゃいけないのかなと思っています」
2019年06月08日「心機一転、引っ越しをしたばかりなんです。広いところから狭いところに移ったので、荷物が入り切らなくて。本や資料だけでも手元に置いておくものと大学に寄付するもの、田舎に送るものと、選別できていない段ボールがまだ50箱もあって。新居では開くところもないありさまなんです。元劇団員たちが土日に来てくれますが、この分では1年以上かかりそうです」そう苦笑する渡辺えり(64)。昨年創立40周年を迎えたオフィス3○○(さんじゅうまる)を主宰、日本劇作家協会会長も務める彼女は『ぴったんこカンカン』(TBS系)などテレビ出演に加え、現在も大阪松竹座の『三婆』に出演するなど精力的に活動。私生活では4月に23年間連れ添った俳優・土屋良太(52)と離婚したばかりだ。「今、64歳なのですが、今年から初めて本気で終活を考え始めました。きっかけは、やはり両親です。父が93歳、母が89歳で体は健康なのですが、2人とも認知症を患っています。症状は父が軽く、母が重いため、今、地元・山形で別々の老人ホームに入っています。山形新幹線で片道3時間で往復できるようになりましたから、毎月、日帰りでも時間をつくって帰るようにしています」山形には弟夫婦が住んでおり、下着の替えやさまざまな手続きは弟夫婦にやってもらっているので助かっているそう。「切ないのは毎月帰っても、『ほんとに久しぶり!』と言ってくること。父は2日続けて行ってもそういう感じなんです。こないだも、外に車いすを押して行ったらすごく喜んでくれて。つらいのは、父も母も帰るときにすごく悲しい顔をするんですよ。『帰らないでくれ』って」父親が入居している施設は広く、介護士たちはみんな朝から晩まで立ち働いている。「たくさんいるから私の父の部屋を尋ねても知らないんですね。交代でやって広いから仕方がないですが。父は教師だったので『学校みたい』とか言うんですよ。心配になって『大丈夫?』と聞いたら、軍需工場で働いていた当時と重なって、『1人で寮に入ってたんだから、今も我慢できる』って。我慢っていう言葉が出るのは正直切ないです。年とったら、自宅で多少、だらしなくしたいじゃないですか。でも集団生活だとそれが規制される。自分が認知症になったら耐えられるかなとか思ったり。ずっと苦労かけっぱなしでこうなっちゃったと思うと、やりきれないですよね」痛感したのは、介護する人の人柄で症状が変わるということ。「ニコニコと話しかけてくれるところでは、母もニッコニコなんです。でも、全然話しかけてくれない人だと、暗くなってしまう。認知症でなくてもそうじゃないですか。黙って無表情でいられると心が冷えて気がめいってきますよね。いつでも声をかけ、ポンポンと直接触って接してくれる。花でも水やらないと枯れてしまうでしょ」後悔はたくさんあるが、ひとつだけ、両親にやっておいてよかったなと思うことがあると渡辺は語る。「15年前、母親から急に『どうも認知症になりそうだ』と電話があったんです。今までこうしてくれとか何も言ったことがなかった母親が、初めて。『元気なうちに、旅行に連れてってくれ』と。行きたいところを聞いたら、伊勢神宮と出雲大社と、日光東照宮と広島の原爆資料館の4つ。それで必死に10日間休みをつくったんです。そのときはまだ両親も元気で、移動の際も私のトランクを持って走ってくれて、すべて時間どおり、間に合ったんです。母親と一緒に露天風呂に入って背中を流し合ってね。本当によかった。当時の写真は母もいまだに喜んで見ています」
2019年06月08日姑や舅の介護に直面したとき、あなたならどうする?その難題に向き合うために、先輩の体験をレポート。さまざまなケースはあれど、『抜け道を見つけて、賢くすり抜ける』のが正解のようです――。「義母に認知症の兆候が現れたのは70歳代後半のこと。講演やエッセイ教室で各地を飛び回っていた義母が、同じ話を繰り返したり、批評すべき生徒さんの原稿を失くしたりするようになったのです」エッセイストとして活躍する藤原美子さんの義母は、壮絶な引き揚げ体験をつづった『流れる星は生きている』が大ベストセラーとなった作家の藤原ていさん(故人)。夫は、数学者で作家の藤原正彦さんだ。「結婚が決まったとき、人生相談で厳しい回答をしていた義母を見て、親戚から『美子ちゃん、大丈夫?』と心配されたものでした。けれどその心配は杞憂であるとすぐにわかりました」新婚当初から義父母の家の庭先に住み、頻繁に行き来するように。「思い悩んだとき『美子さん、おたおたするものではありません!』と肝の据わった活を入れられると不思議と落ち着き、その言葉が聞きたくて義母に相談しました」そんな義母が認知症と診断されたとき、主に心がけたことは3つ。【1】自己イメージを傷つけない「気丈だった母の誇りを傷つけぬように、表舞台からの引退もやんわりと『80歳はもう定年ですよね?』といった感じで勧めました」【2】ひとりにしない「義母の夕食の時間は18時と早く大変でしたが、間に合うように夕飯を作り、できるだけ皆でにぎやかに食卓を囲むようにしました。義母がひとりにならぬようにしたのです。息子たちはずっと義母に見守られながら成長してきました。今度は闊達な義母の老いていく過程を見守り手助けすることは、彼らにとっても大きな人生勉強になったのではないでしょうか」また、美子さんはなんとか義母の認知症の進行を遅らせられないかと思案。5分前のことを忘れてしまうようにもなっていたていさんだったが、昔の話を好み、生き生きと話す。そこで’01年に義母に旧満州(中国東北部)再訪を提案する。「義母の人生の原点は、満州からの引き揚げ体験。大学生を頭の息子3人も加わり、家族全員で訪れました。義母が昔を思い出すよすがとなり、要所要所で覚えていることを家族に伝えてくれました」【3】輝いていた時代の歌を聴かせる「義母の時代は満州事変以来、戦争ばかりでしたが、素晴らしい流行歌は健在で、主人が懐メロのCDを聴かせ、義母の好きな藤山一郎などを歌ってあげていました」旧満州から帰国後、ていさんは自宅から近くのホームへ入居。週末ごとに夫婦と息子3人で訪れ、昼食を共にした。症状が進み、最後の2年は寝たきりとなった。「点滴だけで命をつなぎ、意識も混濁し、これでよかったのかといまだに考えることがありますが、『死後は夫・新田次郎と共に』という義母の遺言どおり、同じ骨壺に納めることができました。いまでも問題に直面すると、義母ならどう言うだろうかと考えます。そして常日ごろから息子に義父母の話をしています。それが義父母たちが私たちの心の中に生き続ける唯一の手立てなのです」
2019年06月07日