NHK交響楽団首席チェリストとしてお馴染みの辻本玲のリサイタルが目前だ(2022年4月23日:トッパンホール)。プログラム前半には、チェリストのバイブル、バッハの「無伴奏チェロ組曲(第4番)」にブラームスの「チェロ・ソナタ第1番」という王道の曲目が置かれ、後半はアメリカンオールスターとでも言うべき3人の作曲家(ジョージ・ガーシュウィン、ジョージ・クラム&サミュエル・バーバー)の作品を連ねるあたりに、“新時代のチェリスト”と謳われる辻本玲の自信と意気込みが感じられる。2009年のガスパール・カサド国際チェロコンクール第3位入賞(日本人最高位)を果たした期待の新鋭が、名門NHK交響楽団を通じて育まれた音楽性とはいかに。それを確認する最高のステージがここにある。●公演概要4月23日(土)トッパンホール「辻本玲チェロ・リサイタル」●辻本玲/Rei Tsujimoto(チェロ)1982年生まれ。7歳よりチェロを始める。11歳まで米国フィラデルフィアで過ごし、東京藝術大学音楽学部器楽科を首席で卒業(アカンサス音楽賞受賞)。2003年、第72日本音楽コンクール第2位、併せて「聴衆賞」受賞。 2007年度青山音楽賞新人賞受賞。ロームミュージックファンデーションより奨学金を得て、シベリウスアカデミー(フィンランド)、ベルン芸術大学(スイス)に留学し卒業。第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞(日本人最高位)、併せて「日本人作品最優秀演奏賞」を受賞。(その模様はNHK-BSにてドキュメンタリー番組「チェロ・エスプレッシーボ!~国際コンクールに懸ける青春~」としてオンエアされた)「第12回齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞。2015年6月からは日本フィルハーモニー交響楽団「ソロ・チェロ奏者」に就任するなど、今後の活躍が期待されている。使用楽器は、NPO法人イエロー・エンジェルより1724年製作のアントニオ・ストラディヴァリウスを貸与されている。クワルテット・エクスプローチェのメンバー。
2022年04月15日新型コロナウイルスの感染拡大により2020年6月より2021年3月27日(土)に開催が延期となっていた「辻本玲チェロ・リサイタル」の開幕がいよいよ近づいてきた。辻本玲は、近年充実した演奏活動を見せている実力派のチェリストだ。2019年のリサイタルで は各地で早々に完売、5月にはキングレコードよりデビューアルバム「オブリヴィオン」(ピアノ:須関 裕子)をリリースし、音楽誌「レコード芸術」にて特選盤に選出されるなど、高い評価を得た。森山涼介、高木慶太、市寛也という旬のチェリスト達とともに「クァルテット・エクスプローチェ」を結成、全国でコンサートを展開するなど、チェロ・アンサンブルの活動にも力を注いでいる。2020年12月にNHK交響楽団に首席チェロ奏者に就任し、名実ともに日本を代表するチェリストとして、活躍の場をますます広げている。オーケストラでの演奏が増えている辻本だが、毎年、東京・大阪・名古屋にてセルフ・プロデュースのソロ・リサイタルを開催している。東京公演の会場はトッパンホールだ。約400席の親密な空間、クリアな音響が特徴で、室内楽を演奏するのに高い評価を得ている。その音響は世界中のアーティストに愛されており、辻本が奏でる伸びやかな音色を味わうのに最適な空間と言えるだろう。今年のプログラムは、グリーグとカサドのチェロ・ソナタ、そして生誕100周年を迎えるピアソラの代表作を中心にすえたチェロ名曲集となる。「ル・グラン・タンゴ」はピアソラが名手ロストロポーヴィチのために、つまりピアソラが最初からクラシック演奏家のために作曲した作品として知られている。かねてよりピアソラ演奏に定評のある辻本がどのような表現を聴かせるかに期待が膨らむ。グリーグのチェロ・ソナタ作品36は、北欧らしいドラマティックな美旋律にあふれたロマンティックな名曲。辻本玲が最も愛する作曲家の一人であるブリテンは、チェロのために非常に重要な作品を残しており、今回とりあげるチェロ・ソナタ作品 65は、ソロ楽器としてのチェロが行き着いた極限のひとつと言えるだろう。また、前半にはベートーヴェンがモーツァルトの主題を使用した愛らしくもドラマティックな変奏曲を、後半にはまるでフラメンコのように情熱的なカサドの「親愛なる言葉」を選曲した。18世紀後半のベートーヴェンから20世紀のピアソラまで、チェロの様々な表現を、辻本玲の大らかな歌心と圧倒的な音色で楽しみたい。
2021年03月19日シルク・ドゥ・ソレイユ初の日本人男性ダンサーとして知られ、現在は振付家としても活動するダンサーの辻本知彦。大河ドラマ『いだてん』で毎週活躍を見せ、ダンサーとしても数々の公演を重ねている森山未來。このふたりが、2010年に立ち上げたパフォーマンスユニット「きゅうかくうしお」の新作公演『素晴らしい偶然をちらして』が11月22日(金)から12月1日(日)まで横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホールで行われる。きゅうかくうしおはふたりではじまったユニットだが、これまでの公演に関わった照明、音響、映像、宣伝美術、舞台監督、制作のスタッフもメンバーに。現在は9人のグループとして活動している。キャストとスタッフの間に区別はなく、出演するふたりも「踊り子」として他のメンバーと並ぶ。通常、演劇やダンスの公演は、本番の1カ月ほど前にスタッフとキャストが集まり、集中的に稽古を重ねて上演を迎えることが多い。しかしきゅうかくうしおは、作品の創作方法自体を考えるところからはじめている。前作『素晴らしい偶然をあつめて』以降、2年半をかけて定期的なミーティング、リサーチ、さらに愛知県幡豆や香港での滞在制作などを重ねてきた。さらにその記録をwebサイト上に公開し、観客にも共有するようにしている。活動の中には、たとえば「言葉と動きの関係性を探る」ため、メンバーが川柳を詠み、それに動きをつけるというものも。それにちなみ、土屋太鳳や柄本時生、森山直太朗ら親交のある著名人たちがきゅうかくうしおを表現した川柳もサイトにアップされている。これらも、観客が彼らを知るのに役立つかもしれない。言葉を尽くし、身体を使って長いスパンでクリエイションを行う彼ら。その膨大な体験から抽出されたものが、満を持して公演の形で観客の目の前に現れる。それはおそらく、即席では生まれない何かを携えていることだろう。2年半で彼らが見つけたものはいったい何なのか、この目で確かめたい。文:釣木文恵
2019年11月21日2月1日(金)に東京・サントリーホールで、“競演”するピアニスト・外山啓介とチェリスト・辻本玲。大学の同級生であり、今やクラシック音楽界に欠かせない存在となったふたりが同じステージに立つのは、2012年ザ・シンフォニーホール(大阪)公演以来となる。演奏曲は、ショパンのピアノ協奏曲第1番とエルガーのチェロ協奏曲。公演を前にして、演奏するふたりにコンサートへの想いを聞いた。【チケット情報はこちら】ロマン派を代表する協奏曲のひとつである《ショパン ピアノ協奏曲第1番》。「ショパンの若い時の作品だけど、技術的な部分や旋律の美しさなど、その後のショパンの作品の基となるものがすべて詰まっている曲」と外山は語る。しかし、ロマンティックなイメージだけでは、この曲を弾くことはできないという。「もちろんロマン派の時代なので、例えば21連符や27連符とか出てきて、割り切れない部分が多くて合わせるのは難しい。しかし忘れてはいけないのは、ショパンは古典というものをとても強く意識している作曲家だということ。きらびやかなイメージだけで〈自分で歌おう〉とするのではなく、そこにある音を素直に表現しなさい、と教えられたことがある。だから、生み出そうとするというより、〈曲の中に入り込んでいく〉という感覚を持って演奏したいと思う」意外にもこの曲を弾くのは久々で、自分でも演奏が楽しみとのことだ。昨年日本ショパン協会賞を受賞し、充実の時を迎えている外山が改めて弾く、至高のコンチェルトに期待したい。一方、《エルガー チェロ協奏曲》について、辻本は次のように語った。「ジャクリーヌ・デュ・プレの名演が有名なため、なんとなく女性が演奏するイメージが強いけれど、それだけではない。第3楽章などはとても男性的。エルガーは非常に愛妻家で、この曲を作ってから間もなく奥さんが亡くなってしまうけれど、すでにそれを予期していたかのような、過去と未来を見つめながら人生を辿っているようなイメージがある。情熱的な部分と抒情的な部分を併せ持つ素晴らしい曲なので、ぜひ聴きにきてほしい」辻本がこの曲でプロのオーケストラと共演するのは初。力強く、表情豊かに歌う辻本のチェロが、いかにこの劇的な名曲を描くのか。チェロ・ファン必聴の演奏になるに違いない。公演は2月1日(金)東京・サントリーホールにて。チケットは発売中。
2019年01月16日