映画『朝が来る』の原作となった小説の作者・辻村深月さんと、実写映画版の監督・河瀬直美さん。“ひとつの物語”を別の手法を用いて表現する、語り手同士のまなざしは何を見据えているのか。そこには二人が築き上げた信頼が垣間見えました。――辻村深月さんの小説『朝が来る』は、実の子を持てない夫婦と、中学生で出産した少女の運命が、特別養子縁組によって繋がっていく物語です。河瀬さんがこれを映画化しようと思ったきっかけは?河瀬:辻村さんの作品は前から知っていましたが、『朝が来る』は人から薦められて読みました。自分も養女として育っているので、共感するところがいっぱいあって。その時はすでにテレビドラマ化が決まっていたんですが、薦めてくれた人に「これは女性監督が映画化したほうがいい」と言われ、そこから始まったんですよね。辻村:連絡があった時にはすごくびっくりしました。河瀬フィルムはファンとして観てきましたが、自分の小説の映画化なんて、こっちが頼み込まないと実現しないだろうし、頼んだからといって監督の気持ちが乗らなければ到底無理。それなのに、まさか河瀬さんのほうから手を挙げてくださるなんて。実は映画化の話もいくつかオファーがあってどれも魅力的だったのですが、河瀬監督がいちばん、想像がつかないものを見せてくれるんじゃないかと思いました。河瀬:あはは。それで、まだ何も決まっていない時にホテルのラウンジで会ったのが、4年くらい前だったかな。辻村:監督の『光』(2017年)が公開される前年でしたね。監督が現れて、時候の挨拶もなく開口一番「この映画を撮るにあたって、朝斗のまなざしというものは必要不可欠だと思っています」っておっしゃって。あ、これが世界の河瀬直美かと圧倒されました(笑)。河瀬:本当に失礼な出会いでしたねえ(笑)。――朝斗というのは、養子となった男の子のことですね。辻村:そうです。『朝が来る』は、養親となった佐都子と、産みの親であるひかりという、2人の母親の物語と言われることが多かったし、私もその角度から話すことが多かったんです。でも監督は、朝斗という子供の目線をあの原作から感じ取ってくださった。この小説の余白みたいな部分を、監督であれば埋めてくださると思いました。後から河瀬さんご自身も養子だったということも聞いて、監督のところに送り出したいという気持ちがさらに強くなりました。――そこからお二人の交流が始まったのですか。辻村:いっぱい対話をして、私もすごく勉強になりました。『朝が来る』が文庫化された時には解説を書いていただきましたし。紆余曲折あって映画化は無理かと思う瞬間もあったけれど、そんな時も実現させようという監督の熱意を間近に見せてもらいました。通常、映画の原作者って撮影が決まってから関わると思うんですけれど、今回は、僭越ですけれど、河瀬さんと友達の関係性を作りながら映画に携わっていく形になって、すごく楽しく、かつ刺激的でした。河瀬:ありがたいお言葉です。『光』を公開した時には奈良までトークイベントに来てもらって、小説と映画の違いについても話しましたよね。私は深月ちゃんの小説は、文字で表現されているものの裏側に読み取れることが多くあると感じていて。映画は、その文字の裏側を具体的に描かないといけないと思うんですよ。文字をそのまま映像化したほうが原作の読者は安心するんだろうけれど、私の場合、原作に書かれたエピソードを多少変えてでも、作者が本当に言わんとしていることが届くところを目指している。『朝が来る』は、“2人の母親と子供”という説明で伝わるほどシンプルじゃない部分がそれぞれの登場人物にありますよね。そこを丁寧に描いていこうと思いました。私の映画はたいてい、一か所に滞在して撮ることが多いんですが、これは全国6か所で撮ったし、登場人物が一番多いし、撮影そのものに2か月かけるという長期戦で。チャレンジでしたね。辻村:完成作品を観た時、河瀬さんとスタッフ、キャストの皆さんが長い旅を終えてここに来てくれた感じがしました。それは物理的な距離もだし、何より登場人物それぞれが生きてきた時間がまるごと映画に入っている。養親となる佐都子と清和が、恋人同士のような二人の時間を過ごしてから親になっていく過程をじっくり見られたのも嬉しかった。小説では、母親になったから急に何かが変わるわけではない、ということを意識していたんですが、そこを大事にしてもらえたと思いました。もうひとつ、大事にしてくださったのは、中学生で産みの親となるひかりが、初めてつきあった男の子とどういう時間を過ごしたのか、というところ。大人からは頭ごなしに「まだ中学生なのにバカなことをした」と断じられてしまうような時間を、そうではなかったんだと丁寧に描いてくださったおかげで、ひかりを肯定してもらえたと感じました。それと、河瀬さんにお願いしたからこそこういう世界が見られたと思ったのが、特別養子縁組を斡旋するNPO法人の浅見という女性がインタビュー形式で答える場面。あそこは完全に浅見さんの物語になっていて、浅見さんもまた朝斗のお母さんなんだ、と気づかされました。――佐都子と清和がNPO法人「ベビーバトン」の説明会に出席する場面や、ひかりが浅見さんのもとで過ごす時間の場面は、ものすごくリアリティがありますね。河瀬:私はドキュメンタリストでもあるので、説明会はドキュメンタリースタイルにしました。NPO法人の方に協力していただいて、実際に養子縁組した人たちに出演してもらったんです。そこに、佐都子を演じる永作(博美)さんと清和を演じる井浦(新)さんに、俳優としてでなく、佐都子と清和という夫婦としていてもらったのがあのシーン。辻村:監督は順撮りで撮影されているので、二人が結婚して、不妊治療に悩んで、というシーンを先に撮影してから、あの場面に臨んでいるんですよね。河瀬:そう。だから二人は本当に佐都子と清和としてそこにいる。あの場面は流れだけ決めて、全部実際に彼らの言葉で語ってもらっています。いわばアドリブでした。辻村:河瀬さんは撮影期間中、原作者の私より何倍も『朝が来る』について詳しかったと思う。永作さんも、私以上に佐都子の理解者だったと思います。最初に「朝斗のまなざしが必要」とおっしゃった時、河瀬さんは私とご自分に対して約束をしてくれた気がしたんですが、完成作品を観て、その約束を果たしてくださったと思いました。最後まで観るとそれがよく分かる。だから絶対、エンドロールが終わるまで席を立ってほしくない!河瀬:はい!そこに秘密が隠されています(笑)。実の子を持つことを諦めたところ、特別養子縁組の取り組みを知った佐都子と清和の夫婦は、中学生で妊娠、出産した少女・ひかりの子供を養子にすることを決める。赤ん坊の受け渡しの日に会った3人の運命はその後…。養子となった朝斗と3人で、東京で暮らす佐都子と清和。幼稚園での多少のトラブルもまた、平穏な日々の証。その時はまだ、突然かかってきた一本の電話によって、家族のしあわせな日常が脅かされることになるとは、誰も思っていなかった。NPO法人「ベビーバトン」を主宰する浅見静恵。ひかりを見守り、出産に付き添い、佐都子たちと生まれた赤ん坊の養子縁組の間に立つ彼女の存在感が際立つ。実際に養親になった人たちに出演してもらった説明会の場面のリアリティは胸に迫るものがある。かわせ・なおみカンヌ映画祭をはじめ各国で受賞多数。代表作は『萌の朱雀』『殯の森』『2つ目の窓』『あん』『光』など。「なら国際映画祭」では次世代育成に力を入れる。東京2020オリンピック競技大会公式映画監督。つじむら・みづき2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。’11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞、’18年『かがみの孤城』で本屋大賞受賞。『朝が来る』[映画]特別養子縁組によって息子を得た夫婦のもとに、謎の女から一本の電話がかかってきて…。監督・脚本・撮影/河瀬直美出演/永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子近日公開予定。[小説]特別養子縁組で繋がる産みの親と育ての親、それぞれの物語を辻村さんならではのミステリーとして描く。不穏な冒頭から、ラストは圧巻。文庫版は解説を河瀬監督が寄せている。文春文庫¥700※『anan』2020年5月27日号より。写真・深野未季(文藝春秋/辻村さん)取材、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2020年05月23日細野豪志衆議院議員(48・無所属)が2月11日、「LGBTを支援する理由」をツイートした。しかしその投稿に疑問の声が上がっている。15年に「LGBTに関する課題を考える議員連盟」の顧問に就任するなど、これまでも積極的にLGBTに関する問題に取り上げてきた細野議員。そんな彼は11日、Twitterに《私がLGBTのアライ(支援者)である理由》として以下の5点を挙げた。・当事者の友達がいる・それぞれの生き方(人権)を尊重した方が良いと思う・才能のある人が多く、国や地域に活力が出る・外国人にだけ同性の配偶者に在留許可を出している(内外逆差別)のはおかしいと思う・オリンピック憲章に書いてある(今年は特に)そんな細野議員の投稿には《当事者として感謝申し上げます》《当たり前に普通に存在を受け入れて普通に幸せになれる世の中にしたいですね》といった声が。しかし、いっぽうでは「才能のある人が多く」という文言を疑問視する声が続出。ネットでは「才能と人権は関係あるの?」との声が上がっている。《あなたの友達かどうかとか、その人に才能があるかどうかとか、オリンピック憲章に書いてあるかとか、そういうことじゃないのでは?》《たとえ当事者に才能がなくて国や地域に活力が出なくても、普通に応援しませんか?》《男が好きでも女が好きでも、結婚する人もしない人も、子供がいてもいなくても、「尊重しなければいけないもの」が人権だと思います》《才能がないとダメなんですか?》
2020年02月14日松坂桃季さん主演で映画化されたベストセラー『ツナグ』の続編『ツナグ 想い人の心得』について、作者の辻村深月さんに話を聞きました。あなたが会いたいのは誰?あの名作の続編登場。松坂桃季さん主演で映画化もされ、ベストセラーとなった辻村深月さんの『ツナグ』。一度だけ、一晩だけ会いたい死者に会わせてくれるツナグという使者をめぐる連作長編小説だ。このたび待望の続編『ツナグ 想い人の心得』が刊行された。辻村さんが続編を書くのはこれが初めて。「いろんな人が『ツナグ』を読んでくださって、“自分だったらこの人に会いたい”“死者に再会を拒否されたらどうなるんですか”といったフィードバックがすごくあったんです。1年に1編くらいのペースで続編を書いてきました。1年間他の仕事をしながらツナグのことを考えて温め続け、締め切りがきたら2日間で一気に書きあげるのは、すごく充実感がありました」ツナグの少年・歩美にまた会えると期待を高めてページをめくると、「おやっ?」と思うはず。「私も小説の続編を読んで“あれっ”となって惹き込まれた経験がたくさんあるんです。だから自分でもやってみたかったんです(笑)」前作から7年後という設定の本作。各編、設定や展開に工夫あり、深いドラマあり。どの話も胸打たれる場面が必ずあり、改めて著者のストーリーテラーっぷりが堪能できる。ツナグに会えるかどうかは、“ご縁”次第だが、この続編自体が、さまざまな“ご縁”で生まれている。「映画化の影響は大きいですね。公開当時キャストの方々がよくインタビューなどで“死んだ人に会えるとしたら誰に会いたいですか”と聞かれていて。その時、松坂桃季さんが宮本武蔵、桐谷美玲さんが沖田総司と答えていたんです。歴史上の人物という発想が自分の中になかったので、そういう話も書こう、と思いました。ただ、あまりに時代が異なると同じ日本語であっても言葉が今と異なるかもしれない。そこをどう見せるかも考えたかった」一方、以前『東京會舘とわたし』を執筆した際の取材で“ご縁”があり、亡くなった娘に会いたいと願う母親の話が生まれたという。「戦時中に東京會舘で結婚式を挙げた女性にお話をうかがっていたら、結婚後お嬢さんを2人産んで、でもお一人は成人後に亡くなったそうで…。娘さんを亡くした後の人生を聞いているうちに、どうにかして『ツナグ』でその方とお嬢さんを会わせたい、という気持ちに駆られ、書かせてほしいとお願いしました」実は『ツナグ』の執筆中、辻村さん自身も担当編集者の死を体験した。「血縁以外で、そばにいて当たり前だと思っていた人がいなくなってしまうのは初めてのことでした。身近な人を喪うとはどういうことか、歩美と一緒に考えたので、当時の気持ちもすごく入っていると思います」本作では、社会人となった歩美の内面的な前進も読みどころだ。「前作で、歩美は生きている人間の都合で死者を呼び出していいのか悩みますが、それは私の悩みでもあったんです。でも次第に、みんなが再会するのは死者本人というより、依頼者が会いたいと望んでいるその人の姿、鏡のような存在なんだと思えてきて。そう考えた時、死者に対して“どうぞいらしてください”と書こうと、作者の心も決まりました」またツナグに会えたことが、心から嬉しくなるこの続編。「書き終えたあとも、歩美や、新しい登場人物の今後も気になって。時間がかかるかもしれないけれど、ライフワークとして書き続けていきたいと思うようになりました」辻村深月『ツナグ 想い人の心得』顔も知らない父親、戦国時代の領主、最愛の娘…。死者との再会を望む人々と使者ツナグの物語。前作未読でも大丈夫。でも、2作合わせてぜひ。新潮社1500円つじむら・みづき1980年生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞し、デビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、翌年『鍵のない夢を見る』で直木賞、‘18年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。ほかに『青空と逃げる』『傲慢と善良』など著作多数。※『anan』2019年12月4日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年11月29日青木豪が演出・上演台本を手掛ける『十二夜』(原作:ウィリアム・シェイクスピア)が2020年3月に上演される。主演を務める前山剛久と青木豪に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、青木がシェイクスピアの本場でもあるイギリス留学から帰国してすぐの2013年に初演され、観客から「こんなに笑えるシェイクスピアは初めて!」と好評を得た作品の再演。当時は客席で観た前山も「めちゃくちゃ笑いました。誰もが楽しく観られるようにアレンジされていた」と振り返り、青木は「“なんちゃってシェイクスピア”です」と語る。「僕らが勝手にシェイクスピアをやったらこんな感じになりました、すみません!みたいなイメージです。例えば衣裳も、“なんちゃって”で遊んでたらこうなっちゃったんです、というような。今回もそのコンセプトは変えません。楽しいことやってるから来て!というふうにつくりたい」今回、7年ぶりの再演で前山を主役(ヴァイオラ役)に抜擢したのは「前ちゃんとは2013年にシェイクスピア作品の『お気に召すまま』をやったのですが、そこから相当活躍してるって聞いて。なのでもう1回、前ちゃんとやるべきだと思いました」という期待から。前山は「豪さんともう1度やりたいと思っていたのでめちゃくちゃ嬉しい。『お気に召すまま』ではオーディションでメインのロザリンド役に選んでもらいました。あのとき豪さんが見つけてくれた、あれがスタートだったという思いがあるんです」と明かす。当時は「いい意味で、それまでで1番追い込まれました。豪さんの稽古って毎回トライしなきゃいけないし、殻にこもるとハッキリ指摘される。でもそのおかげで殻が破れた」。そしてそれ以降、前山は舞台『刀剣乱舞』や『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』など人気2.5次元作品に出演し、この11~12月は宮本亜門演出の『イノサンmusicale』が控えるなど活躍を続けており、「豪さんには僕自身の変化も見てもらいたい気持ちがあります」と意気込む。その他出演者も彩り豊か。納谷健、新納慎也、春海四方、小林勝也らが名を連ね、前山も「納谷健がいて新納さんがいるって時点で稽古場が想像できなくなる(笑)」と言う幅の広さだが、青木は「台詞をしっかり言えて美しく届けるってことがちゃんとできる人たちと、華と勢いのある若い人たちを組み合わせたかった。面白いものができるに決まってるさって気持ちでいます」と化学変化が楽しみになるひと言。前山が「豪さんのシェイクスピアは他にない魅力がある。ぜひ観に来てほしいです」と誘う『十二夜』は2020年3月6日(金)から22日(日)まで東京・本多劇場、3月29日(日)から31日(火)まで大阪・近鉄アート館にて上演。12月1日(日)まで、チケットぴあにて2次プレリザーブ受付中。取材・文:中川實穗
2019年11月28日今年7月に仏政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られたことが話題になった漫画家の永井豪さん。社会現象を巻き起こした『ハレンチ学園』、マンガ界の歴史に名を残す『デビルマン』、巨大ロボットマンガの金字塔『マジンガーZ』など、これまで世に送り出してきた作品は350以上。その作品は海外にも広がり、特にフランスではテレビアニメ版の『UFOロボ グレンダイザー』が『ゴルドラック』のタイトルで大ヒット。今も国際的に活躍する永井さんの50年を超える画業を振り返る展覧会『画業50年“突破”記念 永井GO展』が始まる。本展では、デビュー作から最新作まで、貴重な直筆マンガ原稿、カラーイラストなど600点以上を展示。「鬼・悪魔」「ロボット」「ギャグ」「魅力的なヒーロー・ヒロイン」というジャンル別に紹介される。また会場には『マジンガーZ』や『デビルマン』の世界観をイメージしたエリアを展開。今まで表に出ることのなかった秘蔵資料などを目にすることができる。またデビューまでの道のりをマンガ化した作品も、本展のために描き下ろされ展示される。「この50年はいつも締め切りに追われていて、目の前の仕事ひとつひとつ片付けることに一生懸命でした。気付けば50年という感じ。え、もうこんなに経ったのかと」(永井さん)膨大な量の作品を描いてきた永井さんだが、ネタが枯渇することはなかった。「紙に向かえば何かしら浮かんでくるタイプ」と自己分析し、ギャグマンガとシリアスな作品を描き分ける時も「キャラクターの中に入ってしまえば、自然にモードが切り替わった」と話す。なかでも「キューティーハニー」など女の子のキャラクターには特に思い入れがあり、いずれも自分の好みの女性像をミックスして描き出したものだと語る。創作の根底に流れていたのは、人間の本性を描き出すこと。「人間自体が生物であって、生存本能、異性に対する興味。これを描かなければ人間の本質を描いたことにならないと思うんです。性とバイオレンス、あらゆる人間ドラマのベースに必ずそれはあるはず」そんな想いを胸に生み出した作品にはいずれも、50年の歳月を経ても、色褪せず誰の心にも響く衝撃がある。「僕はデビュー当時、バイオレンスやエロティックを描くのが当然と思っていた。でも僕の中ではちゃんとモラルがあって、少年誌ではここまで、と線引きしてきた。だから自分の表現に対してダメ出しをしてきた数々の編集長とも、渡り合ってくることができたのだと思います」世間の冷たい目を感じながら反骨精神で描いてきた作品が美術館に並ぶ日がくるとは感無量と語る永井さん。その世界観を体感してみて。海外でも絶大な人気を誇る『マジンガーZ』。©1967‐2019 Go Nagai / Dynamic Productionながい・ごう1945年生まれ。石ノ森(当時は石森)章太郎のアシスタントを経て1967年デビュー。2018年、第47回日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞受賞。現在も『ビッグコミック』にて「デビルマンサーガ」を連載中。『画業50年“突破”記念 永井GO展』上野の森美術館東京都台東区上野公園1‐29月14日(土)~29日(日)10時~17時(入場は閉館の30分前まで)無休一般1600円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル) 写真提供・永井GO展実行委員会※『anan』2019年9月18日号より。インタビュー、文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年09月11日辻村深月による長編小説『朝が来る』が、河瀨直美監督で実写化。2020年10月23日(金)にTOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開。“2人の母”を描く、辻村深月の感動ミステリードラマ原作『朝が来る』は、人気小説家・辻村深月が手掛ける感動のミステリードラマ。長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦と、中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母の2つの人生を丹念に描いた作品は、多くの読者の心を掴み、17万部を超えるベストセラーとなった。監督に河瀨直美そんな人気作品を映像へと落とし込むのは、これまで数々の賞を受賞してきた女性監督・河瀨直美。樹木希林を主演に迎えた『あん』や、オリジナル脚本による『光』、ジュリエット・ビノシュを迎えオール奈良ロケで挑んだ『Vision』などを手掛けてきた彼女が、人気ベストセラー小説をどのように描くのか高い期待が寄せられている。<あらすじ>1度は子どもを持つことを諦めた栗原清和と佐都子の夫婦は「特別養子縁組」というシステムを知り、男の子を迎え入れる。それから 6 年、夫婦は朝斗と名付けた息子の成長を見守る幸せな日々を送っていた。ところが突然、朝斗の産みの母親“片倉ひかり”を名乗る女性から、「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話がかかってくる。当時14歳だったひかりとは一度だけ会ったが、生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心優しい少女だった。渦巻く疑問の中、訪ねて来た若い女には、あの日のひかりの面影は微塵もなかった。いったい、彼女は何者なのか、何が目的なのか──?登場人物&キャスト繊細な物語を紡ぐ登場人物達には、実力派キャストが集結。『八日目の蟬』で日本アカデミー賞を 受賞した永作博美や、話題ドラマの出演が続く井浦新を物語のキーを握る夫婦役として迎えるほか、浅田美代子ら人気キャストがそろう。その配役とともに、それぞれの人物像をおさえてシアターへと足を運んでみて。栗原佐都子役 - 永作博美栗原清和役 - 井浦新実の子をもつことが出来なかった夫婦。14歳の少女を繋ぐ「特別養子縁組」によって、男の子・朝斗を迎え入れる。片倉ひかり役 - 蒔田彩珠同級生に本気の恋をし、望まぬ妊娠をしてしまった。14歳にして出産。生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心優しい少女。演じる蒔田彩珠は若くして是枝裕和監督作品に抜擢されている期待の女優。浅見静恵役 - 浅田美代子栗原夫婦と片倉ひかりを引き合わせる。その他ひかりの家族役には、中島ひろ子、平原テツ、駒井蓮らが出演する。原作者・辻村深月からコメントも『朝が来る』の実写化にあたり、辻村深月からのコメントも到着。「脚本を読みながら、河瀨監督に何度も感謝を覚えた。登場人物思いがより強く届くためにどうしたらよいのかを、心を砕いて考えてくれている人がいるということに対する途方もない感謝だ。作家として幸せを感じた。ラスト、“原作でもこうすればよかった”と思える構成がある。けれど私が小説で書いてもきっとその光景には届かなかった。映画だからこそ監督が彼らをここに送り届けてくれたのだということが、はっきりわかる。」と、熱い感謝の念を寄せている。カンヌ国際映画祭公式作品「CANNES 2020」へ正式に選出なお、カンヌ国際映画祭公式作品「CANNES 2020」へ正式に選出決定。通常のカンヌ国際映画祭では、部門ごとに公式選出リストを提示していたが、今回は、2021年春までに劇場公開を予定している作品の中から56作品をセレクトした。70年以上のカンヌ国際映画祭の歴史の中で初の取り組みとなる。【詳細】『朝が来る』公開日:2020年10月23日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開※2020年6月5日(金)公開予定だったが延期。原作:辻村深月『朝が来る』(文春文庫)監督・脚本:河瀨直美脚本:高橋泉キャスト:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、佐藤令旺、田中偉登、中島ひろ子、平原テツ、駒井蓮、山下リオ、森田想、堀内正美、山本浩司、三浦誠己、池津祥子、若葉竜也、青木崇高、利重剛制作・配給:キノフィルムズ(木下グループ)
2019年06月02日『あん』の河瀬直美監督最新作が、2020年に公開されることが決定。新作は、作家・辻村深月の「朝が来る」を映画化する。故・樹木希林さんを主演に迎えた『あん』(’15)をはじめ、『光』(’17)、『Vision』(’18)のほか、CM演出、エッセイ執筆などジャンルにこだわらず表現活動を続ける河瀬監督。待望の新作に河瀬監督が選んだのは、「鍵のない夢を見る」で第147回直木三十五賞を受賞し、今年公開された『映画ドラえもんのび太の月面探査記』では自身初となる映画脚本を手掛けたことでも話題となった辻村氏による長編小説「朝が来る」。2016年にはオトナの土ドラ枠第2弾として、安田成美出演でドラマ化もされた。長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに“特別養子縁組”という手段を選んだ夫婦。中学生で妊娠し、断腸の思いで子どもを手放すことになった幼い母――。それぞれの人生を丹念に描き、第13回本屋大賞にて第5位に選出、17万部を超えるベストセラーとなった感動のミステリードラマだ。今回監督兼脚本(共同脚本:高橋泉)も手掛ける河瀬監督は、「原作『朝が来る』をこの世界に誕生させた辻村深月の才能に嫉妬する」と言い、映画化について「その物語を映画化できる喜びに打ち震えている」とその心境を明かす。そして「小説の中で、二人の母をつなぐ子供『朝斗』のまなざしが表現されている部分を読んだとき、ああ、この世界を映像化できれば素晴らしいなと感じた。その『まなざし』が見る未来を美しく描くことができればと願っている」と意気込み。一方、原作者の辻村氏は「『この映画を撮るにあたって、朝斗のまなざしというものは必要不可欠だと思っています』河瀬直美監督と初めてお会いしたホテルのラウンジで、正面に立った監督が開口一番、私をまっすぐに見つめて、そう言った。まだ互いに自己紹介もしていない、目が合った瞬間のことだった」と監督との出会いを明かし、「原作『朝が来る』はよく、産みの母親と育ての母親、『二人の母の物語』だと言われてきた。しかし、河瀬監督はそこに、幼い『朝斗』のまなざしなくしては成立しない世界をはっきり見ておられた。その瞬間、震えるような感謝とともに、この人に、朝斗と二人の母親を、『朝が来る』の世界を託したい、と強く思った」と通ずるものがあったという。そして「映画『朝が来る』。私が見たもの、河瀬監督がその先に見たもの、幼い子ども『朝斗』が見た世界を、できることなら、あなたにもぜひ見てほしい」と力を込めた。なお、本作はすでにクランクインし、東京の湾岸エリア、栃木、奈良、広島、似島(広島市)、横浜と、日本全国6か所での撮影を敢行中で、クランクアップは6月上旬を予定。また、気になるキャスト発表は後日、行われるようだ。『朝が来る』は2020年、全国にて公開予定。(cinemacafe.net)
2019年05月30日「嬉しいんですけど、それだけじゃない。なんて言ったらいいか…」と言葉を探す渡部豪太。6月12日(水)~23日(日)に上演される『ゴドーを待ちながら』への出演について、喜びにおさまらない感情が湧いているようだ。【チケット情報はこちら】「すごく衝撃的でした。作品に触れるたびに心に傷が刺さるとしたら『ゴドー…』は私にとって大きな、とても優しい引っ掻き傷。この作品を知らないよりも、触れたことのある人生の方が素敵なんじゃないかな。ああ…うまく言葉にならないです!」ふたりの男が謎の人物“ゴドー”を待ち続ける本作。1940年代の発表以来、多くの演劇人に影響を与えてきた。「どちらの男を演じるか決まるまでに時間がありましたが、どちらでも『良い』なと。それほどふたりの男が切っても切り離せない。光と影のような、どっちを欠いてもダメなふたりです」。結果、渡部はエストラゴン役、ウラジミール役は狂言師の茂山千之丞に決まった。「楽しみです。狂言の方は猿やハエなども演じるので、“ゴドー”という人でないかもしれない存在を描く作品に合う気がします」この舞台の面白さのひとつが、2バージョンのキャストだ。もう一方には大高洋夫と小宮孝泰が出演し、親子ほど年の離れた2組が同じ作品に挑む。「相手役を入れ換えてもいいんじゃないかというくらい、年齢にも性別にも個性にもとらわれない、懐の深い作品です。とても小さな世界の話のようでも、大きな宇宙レベルの話のようでもあると感じます」この10年、舞台出演は毎年欠かさない。「映像の面白さとはまた違って、演劇は稽古の時間がたっぷりある。筋トレみたいに練り上げられて、お芝居が立ち上がっていく。鋼のように叩けば叩くだけ不純物が取り除かれて鍛えられていく感じが、すごく好きですね。なのに本番は2時間くらいで終わっちゃうのも良い(笑)」と楽しみを語る。「劇場ってなにかをくれる場所。ドキドキします。お芝居を観たあとは、まったく違う人物になれている気がするんです。役者の吐いた息をお客さんが吸って、そのお客さんの息を役者がまた吸って、お互いに求め合っているような濃密な空間が“劇場”。『ゴドーを待ちながら』を上演するKAAT神奈川芸術劇場は、おしゃれな海辺の劇場です。中華街も近い。そんな素敵な劇場で面白い舞台をやってるから来ない?ってみんなに言いたいです」【衣装】シャツ 19000ジャケット 27000パンツ 24000靴 スタイリスト私物KURO クロ / KURO△GINZA クロ△ギンザTEL:03-6274-6257スタイリング:umeヘアメイク:atsu.co取材・文:河野桃子
2019年04月19日青木豪の書き下ろし新作を、河原雅彦が演出。ジョン・スタインベックの小説『エデンの東』をモチーフに、舞台を1990年代の長崎に置き、ある家族の姿を描き出す。そこで脚本の青木と、主人公の双子の兄弟、勇と光を演じる松下優也と平間壮一に話を聞いた。【チケット情報はこちら】2005年の舞台『エデンの東』でも脚本を務めた青木。だが今回の執筆にあたり、当時とはまた違った点に着目したという。「全4巻の小説ですが、多くの人が知っている映画版ではその4巻だけが描かれていて、3巻まではわりと父母の話がメインになっているんですよね。僕はそこが書く上で面白いところだなと。ある程度大人になった人間が、両親がどう生きてきたかを知っていく。今回はそこから物語を組み直していきました」松下と平間の共演は、『THE ALUCARD SHOW』(2013年、2014年再演)以来今回で2作目。お互いの印象について「当時、同世代の俳優さんのことはほとんど知らなかったんですが、こんなに踊れる人がいるんだってことに驚いて」と松下が切り出すと、平間は「僕は優也の歌を聴いた瞬間、この人の後ろで踊りたいって気持ちになりました」と明かし、それぞれ出会いが鮮烈だったことを振り返る。さらにその後もお互いの活躍は大いに刺激になっていたようで、久々の共演に「嬉しい!」と声をそろえる。また風間杜夫や高橋惠子ら大御所との共演にも、「壮ちゃんがいることでだいぶ不安が和らいでいる」との松下の言葉に、「僕も!優也がいるからわりと落ち着いているかも」と平間も続く。演出の河原とのタッグは、青木は『八犬伝』(2013年)で、松下と平間は『THE ALUCARD SHOW』で経験済み。青木は「河原さんの演出は、作品をすごく“エンタメ”にしてくれるという印象。自分が演出しない時は、“絶対そんなこと出来ないだろう”ってことを書くんですが(笑)、今回河原さんがこれをどう舞台化してくれるのか。すごく楽しみ」と期待を寄せる。「河原さんの演出は思いっきり乗っかれる感じがあって、今回も安心して挑めそうです」とは松下。また平間は「ちょっとピリついた稽古場も経験しているんですが(笑)、それはお芝居に対して河原さんが本気だから。こちらも全身でぶつかっていかないと通用しないという点で、大好きな演出家さんです」と絶大な信頼を寄せる。青木と河原の手により、俳優・松下優也、俳優・平間壮一がいかなる顔を見せてくれるのか。その開幕が待たれる。6月7日(金)よりシアターコクーンにて開幕する東京公演を皮切りに、兵庫、愛知、長崎、福岡と各地を巡る。東京公演は現在、チケットぴあにてプレイガイド最速抽選を実施中。取材・文:野上瑠美子
2019年03月27日辻村豪文、辻村友晴の兄弟ユニット、キセルが20周年を記念したライブを9月16日(月・祝)に東京・日比谷野外大音楽堂で開催する。【チケット情報はこちら】浮遊感溢れる楽曲に、キセルにしか描けない日常的でいながら幻想的な歌詞の世界観で独特な立ち位置を確立し、多くのリスナーにもミュージシャンにも幅広く支持され続けているキセル。日比谷野音公演は2015年以来4年ぶり3回目となる。チケットの一般発売に先駆けて、オフィシャル先行を実施。受付は2月10日(日)午後8時から20日(水)午前11時まで。「20th anniversary year of Kicell ~野音でキセル 2019~」日時:9月16日(月・祝)開場 16:00 / 開演 16:45会場:日比谷野外大音楽堂(東京都)
2019年02月12日女性作家・辻村深月さんに聞く、胸をキュンとさせる男性像とは?私が愛しいと思う男性像は、ナイト、騎士です。プリンスだったら、白馬に乗っているし家(お城)持ちだし、ヒロインの元へやって来てくれた瞬間に自己肯定感が満たされて「めでたしめでたし」と思えるかもしれない。でも、ナイトの場合は、持って生まれた持ち物に頼ることなく自分を磨くし、ヒロインを守る。だから、ヒロインにも、ナイトと一緒にこれからの人生の戦略を練っていくような、共に戦う人であってほしい。一方的にパートナーに寄り掛からず、お互いがお互いの人生を歩みながら、時に守ったり守られたりするべたつかない関係性が作品の中では私の理想です。ヒロインのために存在するような男の人にはしない、と常に意識しています。だからなのか、私が書いている男性キャラクターは、「守りたい」という気持ちが女の子ではなく、自分にとって一番大切な別のモノに向かっている場合が多い気がします。行動原理がしっかりしているというか、彼らは「本当に守らなければいけないものはこれだ」という絶対的な価値観だったり仕事だったりを自分の中に持っている。その思いが、いろんな巡り合わせを経て、「ここぞ」という瞬間に女の子のほうに向かった時、普通の男子が初めてナイトになる。その一瞬の驚きと喜びを読者に届けたいんです。でも、そういう人を書くと、なぜか不思議とダメ男になるんです(笑)。先日、たまたま『スロウハイツの神様』を読み返していたら、「一芸に秀でた駄目人間なんて素敵じゃないですか」という台詞が出てきて、私はデビューして間もない時からこの理論で書いてきているんだなと気が付きました。その台詞は、私にとっては「天才」の定義と一緒なんですよね。「秀才」には、事務処理能力がある。「天才」は、ものすごく特化している能力があるけれども、他のところがぜんぜん足りていない。「この人、ひとつの才能以外は全部ダメだ!」ってわかった時に、キュンとくる。「守ってあげたい」と思うかもしれないですね。情熱は強いけど、生活力や、あるいは他者への共感力さえも標準以下という男性たちは、人としてはダメかもしれないけれど、途方もなく魅力的。例えば、『ハケンアニメ!』で登場させたアニメ監督の〈王子〉や、『スロウハイツの神様』の小説家〈チヨダコーキ〉がそう。彼らは周りにものすごく迷惑をかけるけれども、「彼にしかできないことがある」とわかっているから、周りは彼らを全力でフォローする。他の人にはなつかない獣が自分にだけはなつく、というような関係性は書いていて楽しい。読者にも、「自分も彼を支える側になりたい」という目線で読んでほしいなと思っています。恋は、成立した瞬間に崩壊が始まるものではないでしょうか。でも、ずっとくっつかずにいると、夢とときめきは続きます。だから私の作品の中では、男の子が想いを打ち明けないことが多い。ただ、そういう気持ちって、周囲には意外とだだ漏れだったりします。「この人は気付かれてないと思ってるぞ」と気付いた時に、読者目線だとキュンとなる。ナイトというと、心にも鎧をつけて感情を出さないようにしているイメージがありますが、だからこそ、たまに見せる綻びというかちょっとした表情にぐらっときます。そういったベタさも小説を書く上ではとても大事。ベタに現代ならではの新しい意匠をまとわせ、自分なりの表現を心がけています。最初の頃は「辻村は男をいいふうに書きすぎ」と言われることも実はあったのですが、だんだん「ダメ男を書く人」と言われる人となり(笑)、最近では自分でも、「弱さも含めて魅力」だと感じられる男性が書けるようになってきたかな、と感じます。ナイトの気概を持った男子の新しい魅力を、これからも発見していきたいです。つじむら・みづき1980年、山梨県生まれ。’12年に『鍵のない夢を見る』で直木賞を、今年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。※『anan』2018年11月14日号より。イラスト・長谷川ひとみ(vision track)取材、文・吉田大助(by anan編集部)
2018年11月07日平成28年、大相撲秋場所の14日目。千秋楽を待たずに大関・豪栄道の幕内最高優勝が決まった。大関角番(※)からの全勝優勝は、これが史上初めて。絶対王者の白鵬が全休とはいえ、他の上位陣を完璧に抑え、次点の遠藤にも星2つの差をつけ、圧倒した。※大相撲の本場所で負け越しした場合に、その地位から陥落するという状況を指す。通常は、現役大関の力士に対して用いられる。大関は二場所連続で負け越すと関脇に陥落する決まりがある。■女性の相撲ファン=スー女、とは限らない基本的に春場所以外の場所中の土日は、午後の予定がなければ、NHK BS2の幕下取り組みから観始める(もちろん地元大阪で開催される春場所は、チケットさえ手に入れば現地入り)。ぼーっとテレビを眺めて手仕事をすすめたり、歓声が沸き上がると音量をあげて解説をよく聞いてみたり。相撲を見始めたのは、本当に小さな頃だった。両親の影響を受け、隔月のテレビ観戦が当たり前になり今に至るけど、好きな力士以外のことはよく知らないし、力士を見て「かわいい」と思うことはない。世間では相撲好きな女性のことを、スー女という言葉で表すのが定着してきた。けれど、私は単なる相撲好きな「ミーハー」ではあって、オタクでもスー女でもない。できれば相撲界を見守る相撲ジャーナリストでありたいのだ。■いつの間にか、「気になるひと」になっていた豪栄道を“推し”始めたのは、2010年に発覚した野球賭博問題で彼が謹慎を受けたあと、腐らずにがんばっているところに惹かれたから。自分のホームグラウンドである大阪出身だということもあるし、ちょっと昔のガキ大将風の顔立ちも私好み。さらに言うと、実は猫好きという自分との共通点にも萌え、気づくとなにかにつけて気になる存在になっていた。豪栄道は野球賭博問題以前も、一度、西の関脇にまで上がったことはあるが、三役に定着はできなかった。それもあって、謹慎があけてからの躍進は嬉しかった。「勝てる相撲」をとることが多くなった。反省を糧にしたのだろう。2012年、再び関脇にあがった後は、一度も落ちていない。14場所、しっかりと関脇を維持し、大関昇進後は実に24場所もの間、大関を維持し続けている。■7回も訪れたピンチ。でも、大関であり続ける凄さただし、その間、実に7回の角番を迎えていることも付け加えておこう。この通算の角番記録は、現行制度になって以降ワースト4位。4年間で7回という回数は、在位場所数に対する比率でいうと、約3割(照ノ富士の3.5割、栃東の3.3割に次ぐ悪成績)。それだけ高い頻度で角番を迎えても、一度も陥落せずに大関でい続けている。そもそも大関とは、勢いにのって横綱に上がるか、力尽きて陥落していくか、そのどちらかに駒を進めるひとつ前の、いわば通過点。それが三役最高位である大関だ。そう考えている人も多いはず。だから、豪栄道のように一度も陥落せずに大関であり続けることは、最近では珍しいのではないか。ここ数年、他の大関は上に上がったか、陥落したかのどちらかだ。現大関である高安も、栃ノ心も大関昇進は最近のことだもの。■優勝してほしいけど……引き裂かれる状況平日は終業後に日本相撲協会のHP で取組結果を確認するのが、大人になってからの習慣となった私だが、その年の秋場所は10日目を過ぎたあたりから、胸がざわついていた。だって、あの豪栄道が単独で、しかも全勝でトップを走っているんだもの。いても立ってもいられずに、ワンセグ機能付きの古いスマホを持ち出し、こっそりデスクで無音視聴をしていたほど。11日目を終え、豪栄道は、次点3名に星2つの差をつけてトップ。まだわからない。追う3人に邪念を(テレビ越しに)送りつけたいところだけど、その3人とも好きな力士だというこの状況。誰が優勝しても嬉しいけど、私の豪ちゃんになんとか初優勝を!そんな思いでいっぱいになっていた。■豪栄道、涙の初優勝を見届けた決して油断はできない。なぜなら私は、相撲に限らず真剣に応援すると、8割方、贔屓筋が負ける、という嬉しくない体質の持ち主なのだ。豪栄道の優勝がかかった12日目、13日目の大切な取組は、残業中のデスク脇にこっそり置いたスマホのワンセグ放送を、なるべく凝視しないように薄目で見守った。運命の14日目(この日は土曜日なので自宅でテレビを目の前に薄目をあけて観戦)。私の心配をよそに、テレビの中の豪栄道は玉鷲を気持ちよく寄り切り、千秋楽を待たずに涙の初優勝を決めた。翌日も確実な相撲をとり、晴れて全勝優勝を成し遂げた。薄目だった上に、ソファのクッションに顔をほとんどうずめていたから、ライブではほとんど見れていなかったけれど。私の豪栄道、やるやん!ネットにあがっていた取組を、後から何度も繰り返し観て、優勝を噛みしめた。■冷静と情熱の間、くらいの温度しかしなぜだろう。全勝優勝という偉業を成しとげたというのに、さすが豪栄道!強いぜ豪栄道!次も優勝して綱取りだ!という祭り気分にはなれなかった。とても静かに、「来場所も調子がいいと良いな」、「来場所も調子よかったら、綱取りなんかもめざせるといいね」。そんな冷静な気分。なんとなく少しだけ夢み心地。近年だと、白鵬や、日馬富士、朝青龍の全勝優勝を見てきたけれど、あのときに感じた威勢の良さや強い興奮はなかった。もともと私は「判官贔屓」だ。いつも何かにつけて、負けそうな方を応援してきた。国別対抗戦なら自国の応援をするが、他国同士の試合なら、間違いなく負けている方を応援する。勝率や順位における下位のものだけでない。相撲のような体重区分がないスポーツなら、俄然、小兵力士派。ベテランと新人の対決なら、新人を。王者と挑戦者の対戦なら、もちろん挑戦者を。けれど今思うと、その判官贔屓が、豪栄道の相撲にはハマらなかった。絶対負けないだろうと思う若手にコロッと負けたり、この横綱には勝てないだろうという相手に突然勝ったり、予想をはるかに超えた結果を豪栄道は残してきた。両刃の剣。良いときと悪いときの波が、とても激しく入れ替わるのだ。相手が誰であっても、豪栄道がんばれ――そう思わせる何かが彼にはあるのだ。■私、恋してる?勝つか負けるかいつもドキドキの取り組みを見せつけられる。この「これまでの男とはなんか違うわ」的な感覚で動揺する私……。そうか私、豪栄道に「恋」をしているのか!そう認めてしまうといろんなことに合点がいく。勝つと嬉しいし、負けるともっとがんばれって思うけれど、勝ち続けて全勝優勝なんかして目立ってしまったら、私の豪栄道がみんなから惚れられてしまう。好きな男の雄姿は見たいが、好きな男がたくさんの女子に囲まれるのを見るのは嫌だ。あまり騒がないようにしなくては。落ち着け私。とばかりに冷静さを取り戻してしまう。そうだこれは「恋」に違いない。あれ、そうなると私もただの「スー女」なのだろうか。■巡業で豪栄道に会えたら……実はこの秋、初めての巡業デビューも考えている。もしも豪栄道がその日の巡業に参加していて運よく会えたとき、私は世間のスー女の大先輩たちに混ざって、キャッキャできるのだろうか。地方巡業の楽しさは、母親から聞いていて「お土産の座布団に、サインしてもらったのよ~」と自慢されたことがあるが…。先日縁があり、とある力士を取材して記事を書き上げた。けれど、たとえいつか機会に恵まれたとしても、相手が豪栄道だったら絶対にやり遂げられない。何も聞けないし、何も書けないに違いない(隠し撮りはしたことあるけれど)。結局私は、ジャーナリストにもスー女にもなり切れない、ただただ豪栄道に恋する、中途半端な相撲ファンなのだ。Text/siro大阪在住。書く人であり、編む人でもある。得意分野は着物、落語、相撲、編み物、工作とヘルスケア界隈の関連法規。noteに元大関、照ノ富士に行ったインタビュー「大関をたった14場所で陥落した男」を掲載。画像/Shutterstock
2018年09月10日辻村深月さんが新作の短編集『噛みあわない会話と、ある過去について』を上梓。作品について辻村さんに聞きました。「人って怖い!でも分かる!」と唸らずにはいられないのが、辻村深月さんの新作『噛みあわない会話と、ある過去について』。4編を収録した作品集だ。「以前“いじめをめぐる短編”を依頼された時、いじめられた側の気持ちなら分かるという読者は多いだろうけれど、いじめた側に共感したという人はなかなかいないと思ったんです。それは隠したいというより、自覚がないからかもしれない。悪意というより、“あの子は分かってないから分からせなきゃ”という気持ちが集団で起きた結果だったりする。でもそれは傍から見たらいじめに近いものに見えると思うんです」そんな思いから書いた短編「早穂とゆかり」は、小学校の同級生同士が塾経営者と彼女を取材するライターという形で再会する話だ。しかし会話にはかなりの温度差が生じ、話は過去の出来事に遡り…。この一編を書き上げた時、「全部の短編を、共感できない側から書いて短編集にまとめよう」と思い立った。「自分に都合の悪いことは忘れていたり、思い違いをしていたり。現実には回避できるような、言いにくい内容を、あえて正面切って会話させてみました。それを共感できない側から書くと、噛み合わない感じがより出るみたい(笑)。会話がどちらの方向に流れていくのか分からない緊迫感を楽しんでもらえたら」と言う通り、過去に実は何があり、その時相手はどう思ったのかが明晰に語られていく部分が非常にスリリング。これでもかというくらい相手を追い込む話もあれば、ちょっぴり不思議なテイストの短編もあり、読み応えはさまざまだ。ただ、「読者の方たちが、“自分もこういう怒りを感じたことがある”という気持ちとセットで“自分も誰かにこんな思いをさせたかもしれない”と感じた、と言う方が多いんですよ。自分を省みる視点で読んでくれるなんて、みんなすごい!(笑)」痛感するのは、過去と現在は明確に違う、ということ。「過去に何があったとしても、その後も時間は進んで、関係性は変わっている。家族でも友達でも、思い出に寄りかかって今の相手と向き合うのは甘えではないかと。この4編は、そうした甘えが通用しないと分かる話かもしれませんね」つじむら・みづき1980年生まれ。『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞、『かがみの孤城』で本屋大賞第1位を獲得。近著に『青空と逃げる』など。『噛みあわない会話と、ある過去について』小学校の同級生に取材するライター、人気アイドルになった生徒と再会する教師―スリリングな会話から真実を浮かび上がらせる作品集。講談社1500円※『anan』2018年7月25日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2018年07月24日本年度の本屋大賞が辻村深月さんの『かがみの孤城』に決まった。4度目のノミネートでの栄冠だ。作家生活14年目にして進化し続ける人気作家・辻村深月さんの今、そしてこれから。開けていなかった扉を開くことができました。――新作『青空と逃げる』は、父親が交通事故に巻き込まれたのちに失踪、周囲の悪意から逃げるために母親の早苗と小学生の息子・力ちからが逃避行を続ける物語です。新聞に連載された長編ですね。辻村:連載する3年ほど前、まだ直木賞を受賞する前に依頼を受けました。毎日掲載する新聞連載に堪えうる作家だと認めてもらえたのが光栄でした。どんな話がいいか打ち合わせをしている時、「辻村さんが書く親子の話が読みたい」と言われて。私がこれまで書いてきた親子は、親にとって子どもは保護の対象であり、子どもにとって大人は反発の対象となる場合が多かった。それで今回は、母親も子どもも、お互いにきちんと対話する話にしようということになりました。「逃避行だから実際の風光明媚な場所を入れてほしい」「できれば4~5か所出してほしい」「できれば最後に泣かせてほしい」といろいろオーダーされ、そのおかげで景色を丁寧に描写するなど、それまで開けていなかった扉をここでもまた開くことができました。――母子は最初、四国の四万十へ行きます。そのあと家島や別府温泉など、場所を変えていく。実際に取材に行かれたのですか。辻村:四万十は数年前に女友達と行きました。取材旅行だったわけではないのですが、四万十川の広がりや青さ、カワエビが美味しかったことなどを思い出しながら書きました。家島は『島はぼくらと』に出てくる冴島のモデルなんです。ですから、『青空と逃げる』に出てくるこの島の女の子は、『島はぼくらと』に出てくるシングルマザーの娘さんがその後少し成長した姿をイメージしています。漁港のおばちゃんたちは同一人物だと思っていただいていいです(笑)。――そうだったんですか!この作品では『島はぼくらと』に出てくる谷川ヨシノという、地域活性デザイナーも意外なところで登場し、そんなリンクも楽しいですね。新たに取材した場所は?辻村:別府温泉には行きました。早苗が各地で仕事を探すので、「温泉地ならいろいろと仕事があるはず」と、担当者に薦められたんです。資料にあった、海辺の砂風呂でお客さんに砂をかける「砂かけ」の女性にお話を聞いたら、「砂かけは女の仕事で、ここは女の職場だから」と言われて、ああ、早苗にはここで働いてほしいと思いました。実際に取材した分、書いていて楽しかったですね。早苗たちに、もうここに住んでほしいと思ったくらい。高崎山の猿も実際に見に行ったので、読み返していてやっぱり楽しいですね。――早苗は元舞台女優ですが、出産を機に専業主婦になっている。そんな彼女が、各地で仕事を見つけ、周囲と人間関係を築いていく姿が頼もしく、痛快でした。辻村:まわりの女友達を見ていて、やる前から諦めている人が多いなと感じていたんですよね。家庭に入った女の人が、「私はもう働いてないから」と諦め口調で話していたりする。本当は使える翼があるのに長い間しまっているためにもう自分は飛べないと思っているんじゃないかな、って。早苗は閉じていた翼を開いていくんです。読んでくれた方の感想に、最後に早苗と力が“選べる自由”を獲得したことが素晴らしい、とあって。今、貧困の問題や家族の関係性などから、選べないから追いつめられることってたくさんあると思うんです。早苗も、他に方法がないから、最初はただ逃げざるをえない。彼らが自分たちの今後を選べるところに連れていくまでを、私は書きたかったのかもしれないなと後から思いました。――事件の謎が解明されたのちの、ラストが素晴らしかったです。辻村作品は緻密な構成が魅力ですが、いつも結末を考えずに書き始めるというから驚きます。『かがみの孤城』も、伏線が見事に回収されるあの見事な終盤、当初は何も考えていなかったそうですね。辻村:そうですね。『アンアン』に連載した「ハケンアニメ!」もそう(笑)。いつも何も決めずに書きだす時は、「ここ」と思える場所に辿り着けるか分からず、やっぱり怖いです。「でもこれまでも絶対、何かが降りてきてラストに辿り着けたんだから」という気持ちの積み重ねで、10何年もやってきた感じがあります(笑)。――今後の刊行予定などは。辻村:6月には短編集『噛み合わない会話と、ある過去について』が出ます。いくつかの媒体に書いた短編をまとめたものですが、実は一冊にまとめる時を見越してどれも共通する裏テーマとして、“結晶化された過去”というものを設定していました。いじめられた過去だったり、いい友達同士だと思っていた過去だったり、そうした結晶化された過去を持つ2人がその思い出について語るけれど……という。読んでくれた人から「よくぞこれを書いてくれた」という感想の声がもう届いていたりして、一冊読み終えた時には、不思議とスカッとしてもらえると思います。それと来年、『週刊朝日』に連載した「傲慢と善良」という婚活の話が刊行の予定です。つじむら・みづき1980年2月29日生まれ、山梨県出身。2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、‘12年『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞。今年、4度目のノミネートである本屋大賞を『かがみの孤城』で受賞。他の著作に『朝が来る』『東京會舘とわたし』など。※『anan』2018年5月23日号より。写真・女鹿成二インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年05月21日ミステリ&ファンタジー小説『かがみの孤城』が、今年度の本屋大賞を圧倒的支持で受賞。作家生活14年目にして進化し続ける人気作家・辻村深月さんの今、そしてこれから。「いつも通り全力投球」という感覚でした(笑)。本年度の本屋大賞が辻村深月さんの『かがみの孤城』に決まった。4度目のノミネートでの栄冠だ。新作長編『青空と逃げる』も好評で、来年には作家生活15周年を迎え、充実の時期を迎えた彼女は今、どんな思いを抱いているのか。――まずは本屋大賞受賞おめでとうございます。辻村:今までノミネートされたどの作品で受賞できても嬉しかったのですが、今回特別に感じるのは、前年の受賞者がプレゼンターになるため、恩田陸さんから花束を受け取れたこと。このための今年の受賞だったのかと思いました(笑)。私は10代の頃から、それこそ恩田さんのデビュー作『六番目の小夜子』からずっと作品を読んできているんです。大好きな恩田さんからバトンをもらったことで、私も次にバトンを渡していけたらなと強く感じています。もちろん私にとっては今まで書いてきたどの作品も大切で、ひとつひとつ愛情を持って書いてきたつもりです。今回も特別気合を入れたということはなく、「いつも通り全力投球」という感覚でした(笑)。それでも、今まで開かなかった扉が開いた感じがあるのは嬉しいですね。――この作品は、学校に通えなくなった少女が、鏡を通じて異世界の城と行き来するようになる、という内容。でもある仕掛けにより、すでに大人になった読者にも、自分たちにも関係する物語なんだ、と思えますね。辻村:そういう思いで書きました。読んでくれた方の感想がものすごく熱くて、みなさん“自分の物語”として受け止めてくれているのが分かるんです。その方たちも今回の受賞を喜んでくれるだろうと思うと、とてもありがたいです。自分の代表作って自分で選べないんですよね。いろんなテイストのものを書いていることもあって、人によって「辻村深月の代表作」が違うと思うんです。今後は本屋大賞を受賞したことで『かがみの孤城』が代表作だと言ってもらえると思いますが、それは誰に対しても悔いがないというか。――14年間の作家生活のなかで、変わらないものは何ですか。辻村:やっぱり原点にあるのはミステリです。ミステリ作家であることが私の支え。傍から見れば私が書くものは、謎を提示して真相を探るというオーソドックスな形ではないかもしれません。でも、今まで全部の小説を、私はミステリの技法を使って書いてきました。謎だと思っていなかったものが実は謎だったり、謎だと提示しないでいきなり秘密を明かす方法を物語作りの軸にしてきたんです。――『かがみの孤城』はミステリ作家たちにとって大切な賞、日本推理作家協会賞の長編および連作短編集部門にもノミネートされていますね。この取材の時点で発表はまだですが。辻村:そうなんです!憧れの賞なのですごく嬉しいんです。自分はミステリの本家の子じゃなくて分家の子だから、この賞は目指せないのかなとも感じていたので。今回のノミネートで、ミステリ作家だと見てもらえているんだと思えました。ノミネートされたこと自体が、これからも頑張ったら扉は開くんだと、励みになりました。――来年で作家生活15周年です。先ほどご自身もおっしゃいましたが、作風を広げてきましたよね。辻村:ノンミステリのものも含めいろいろ書いてきましたね。デビューの頃からリアルタイムで読んでくださっている方に「初期の頃のような青春ミステリを書いてください」と言われて「待っててね」と言い続け、ようやく書けたのが『かがみの孤城』でした。ただ、今でも初期の作品を挙げて「最近これを読んで、そこからハマりました」と言ってくださる方も多いんです。10年前に書いたものも現役の物語として、今も読んでくれている人がいるのが嬉しいです。――2007年の作品『スロウハイツの神様』が昨年、演劇集団キャラメルボックスにより舞台化するなど話題になっていますし。過去の作品も愛されていますよね。辻村:『かがみの孤城』の初版の帯に「著者最高傑作」とあったのですが、それに怒ってくれる読者もいるんですよ。「実際に読んだら本当に傑作だったけれど、自分にとっては『ぼくのメジャースプーン』が最高傑作なんです」とか「過去の作品も全部あっての辻村さんなのに」とか(笑)。作品に一番愛情を持っているのが作者とは限らないものなんですよね。作者以上に作品のこと、登場人物のことを愛してくれたり、考えたりしてくれる人がいるのがすごく幸せ。自分の小説が今、私の手を離れたところで愛されている自覚を持てることを、作家として一番誇りに思います。つじむら・みづき1980年2月29日生まれ、山梨県出身。2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、‘12年『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞。今年、4度目のノミネートである本屋大賞を『かがみの孤城』で受賞。他の著作に『朝が来る』『東京會舘とわたし』など。※『anan』2018年5月23日号より。写真・女鹿成二インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年05月18日今田耕司とモデルで女優の中条あやみがMCを務める「アナザースカイ」。2018年最初の放送となる1月5日(金)今夜の放送はゲストに漫画家の永井豪が登場。大きな影響を受けたというローマへ旅立ち、漫画家人生を変えた地で50年をふり返る。永井さんは1965年、石森(現:石ノ森)章太郎のアシスタントになり、2年後の1967年に「目明しポリ吉」でデビュー。翌年に「ハレンチ学園」が大ヒットし、漫画界の常識を塗り替えるほどの社会現象となる。当初ギャグマンガで人気となった永井さんだったが、SF志望だったこともあり、その後「デビルマン」を発表。その衝撃的な結末で新境地を開拓すると、「デビルマン」のほか「マジンガーZ」や「キューティーハニー」などがアニメ化されいずれも大ヒット。特に「マジンガーZ」から続く「グレートマジンガー」「UFOロボ グレンダイザー」など“スーパーロボット”と呼ばれる一連の作品群はいまだにゲームなどで大きな人気を博している。また「キューティーハニー」も庵野秀明監督、佐藤江梨子主演で2004年に、その後西内まりや主演で2016年にも実写化。「デビルマン」も『DEVILMAN』として2004年に映画化されている。多彩な作品たちを生み出してきた永井さんだが、その創作において大きな影響を受けたのがイタリア・ローマなのだとか。今回番組では永井さんが数々の名作を生み出すヒントを得た場所を巡る旅をお届け。空港到着早々ファンから大歓迎を受ける永井さんは、自身初のストーリー漫画に影響を与えたというコロッセオなどを訪問。初めて訪れる映画撮影所・チネチッタに大興奮し、イタリア映画界新進気鋭の監督と再会を果たす。永井さんの不朽の名作「デビルマン」が、湯浅政明監督によって完全アニメ化!「DEVILMAN crybaby」と題して1月5日(金)よりNetflixにて全世界同時ストリーミングが開始。キャストには、内山昂輝、村瀬歩、潘めぐみら若手から、小山力也、田中敦子、津田健次郎ほかベテランまで勢揃い。さらに「マジンガーZ」だが『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』として再アニメ化、2018年1月13日(土)より全国にて公開。森久保祥太郎、茅野愛衣、上坂すみれら人気声優をキャストに迎え、水木一郎のオープニングテーマも新録で“現代版”となり復活。45年の時を経て再起動した最新のマジンガーZの雄姿を見逃すな。「アナザースカイ」は1月5日(金)23時15分~日本テレビ系で放送。(笠緒)
2018年01月05日東京・六本木にあるアクシスギャラリーでは写真家の伊丹豪による新作写真集『Photocopy』の発売を記念し、9月17日に佐久間磨とのトークセッション「Photocopy/Session 5」が開催される。平面性を強調し、ビジュアル自体が持つ力を訴求する作品が国内外で高い評価を得ている伊丹。編集者で出版元の佐久間磨とは3冊目、デザイナーの秋山伸を加えた三者では2冊目の書籍となる同書は、打ち合わせをトークセッションの形で公開し、制作を進めていた。刊行を記念した同イベントは、大阪、名古屋、台湾、東京を巡回して出版を進めたプロジェクトの最終回となり、全体を統括したものとなっている。また、トークショー終了後は、同書の販売及び、サイン会が引き続き行われる。なお、同イベントで着席希望の場合はメール(shelf@shelf.ne.jp)にて。【イベント情報】「伊丹豪×佐久間磨トークセッション『Photocopy/Session 5』」開催日:9月17日会場:アクシスギャラリー「AXIS フォトマルシェ4」会場内住所:東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4階時間:14:00~15:00入場無料(コーヒー付)
2017年09月17日1970年代、一世を風靡した永井豪原作の巨大ロボットアニメ「マジンガーZ」が、45年の時を経てスクリーンで蘇る『劇場版マジンガーZ』(仮題)。このたび、世界最大規模のアニメ映画祭として名高い「アヌシー国際アニメーション映画祭」に今年画業50周年を迎える永井氏が初参戦、『パシフィック・リム』監督のギレルモ・デル・トロも観客席から大興奮で見守る中、最新映像がお披露目された。「マジンガーZ」は、ロケットパンチなど多彩な武器をはじめ、出撃シーン、合体シーンなど、その後のロボットアニメに多大なる影響を与えた、スーパーロボットアニメの“元祖”にして“伝説”といえる作品。その迫力と存在感、主人公「兜甲児」(かぶと こうじ)をはじめとする個性的なキャラクターなどが人気を博し、日本のみならずアジア、ヨーロッパ各地に、いまなお熱狂的なファンを有している。このたび、フランスで開催中の世界最大規模アニメ映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」には、6月14日(現地時間)、『劇場版マジンガーZ』(仮題)特別イベントが実施され、今年画業50周年を迎える原作者の永井氏が同映画祭に初参加。イベントでは、“完全新作”エピソードとしてTVシリーズ最終回からの続編となる世界を描くという、ファン待望のストーリーなど、最新情報が紹介されたほか、世界最速で最新映像となる“アヌシー特報”が解禁。さらに会場には、ギレルモ・デル・トロ監督がサプライズで駆けた。メイン会場となるボンリューの、最も大きな940名キャパの会場が完売になるほど多くのファンたちの期待が集まった本イベント。フィギュアやグッズを大量に買い込んだファンや、「マジンガーZ」や「グレンタイザー」のTシャツを着た熱狂的なファンが集まるその観客席に、なんとギレルモの姿が!突然の登場に観客が沸く中、永井氏が観客席へと現れ、ギレルモの持参したノートにマジンガーZのイラストとサインをその場で直筆。ギレルモは大興奮で「サンキュー!アリガトウ!」と大きな抱擁をかわし、感激の笑顔でガッツポーズをとっていた。そして最新情報として、本作のオープニング楽曲「マジンガーZ」は、TVアニメと同じ水木一郎が務めることが発表された。45年の時を経て再起動する本作のため、みんなの“アニキ”水木一郎が「ゼーット!」でおなじみの本楽曲を新録。よりパワーアップして「マジンガーZ」のオープニングテーマが復活する。また、劇中音楽担当は、数々の映画音楽を担当し、アーティストのプロデュースも手がけてきた渡辺俊幸に決定。渡辺さんは、水木さんが歌うオープニング楽曲を作曲し、昭和のアニメ・ヒーロー主題歌といえばこの人といえる、特撮音楽界の巨匠・渡辺宙明の子息。親子二代で受け継がれる「Z」の遺伝子にも、注目が集まる。今回の映画について、永井氏は「当初より、いまの世の中の方がマジンガーZが活躍するのにふさわしいと思います。未来に対する混乱を感じながら、強い力で平和を取り戻すためのヒーローを求めている空気があると思う」と熱くコメント。最後に、「昔からみた人も、これからはじめて見る人も、キャラクターの魅力を沢山感じていただけると嬉しいです。先ほど、ギレルモさんにマジンガーのような力で抱きつかれて(笑)。子どもの頃にすごい影響をうけたと感謝されましたが、彼のような素晴らしい才能が新しいマジンガーによって影響を受けて次々と生まれてくることを期待しています。みなさんの中にもそういった才能ある方がうまれることを願っております」と、本作を楽しみにしているファンに向けてメッセージを贈ってくれた。さらに、最新映像となる“アヌシー特報”では、マジンガーZのパイロット・兜甲児らしき後ろ姿が垣間見え、「それは、神にも悪魔にもなれるー」という印象的なコピーが目に焼きつく。そして、本作を象徴するホバーパイルダー(操縦席)がマジンガーZの上空へと飛び立つシーンと共に、重厚感とスケール感たっぷりにアップデートされた、隆々たる巨大ロボット・マジンガーZが立ち上がる雄姿を確認することができる。さらに、マジンガーZの宿敵として、当時を知るファンには見覚えのある機械獣との圧巻のバトルシーン、マジンガーZが必殺武器・光子力ビームを放つ場面も一瞬映し出され、まさに「マジンガーZ」が現代に蘇った様子がお披露目されている。声優には、主人公・兜甲児役に森久保祥太郎、ヒロインの弓さやか役に茅野愛衣がすでに発表されている本作。全世界がアツい視線を送る『劇場版マジンガーZ』の続報に、期待が高まる。『劇場版マジンガーZ』(仮題)は日本で世界先行上映。(text:cinemacafe.net)
2017年06月16日漫画家・永井豪の50周年を記念し、漫画史に残る大傑作原作漫画「デビルマン」が、新作アニメとして蘇ることが決定。星野源主演・『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅政明監督がメガホンを取り、「DEVILMAN crybaby」と題して2018年初春に「Netflix」にて配信される。主人公・不動明は、ある日親友の飛鳥了から地球の先住人類「デーモン(悪魔)」が復活し、地球を人類から奪い返そうとしていることを知らされる。了は明に、デーモンの超能力を取り入れて戦わなくては人類に勝ち目はないと、デーモンと合体する話を持ちかけてくる。明は悪魔の力と人間の心を持つデビルマンとなることに成功。デビルマン、不動明の戦いが始まる――。漫画「デビルマン」は、1972年に「週刊少年マガジン」(講談社)にて連載開始され、単行本発行部数は累計5,000万部、連載と同年にテレビアニメ化もされ人気を博した。悪魔の力を手に入れた主人公・不動明が襲い来るデーモンと戦うという設定は、漫画・テレビアニメに共通するものの、アニメではデビルマンがヒロインを守るために敵と戦う、勧善懲悪ものとなっている一方で、漫画では神や悪魔といった存在を通して、「人間とは?」という大きな問いを投げかける作品となっている。漫画家やアーティスト、クリエイターからも影響を受けた作品としてあげられることが多く、これまでテレビアニメのみならずOVA、実写作品などが多数製作されている。新作アニメとして放たれる今作は、いままで一度も実現されず、描かれたことがなかった“原作漫画の結末”までをアニメーション化。飛鳥了と不動明の出会いから、デビルマン誕生、そしてデビルマン対サタンのハルマゲドンまでを描き切るという。「デビルマン」の原作が持つニュアンスを最大限活かしつつ、現代に描かれるべきアニメとして新たに映像化。激しいバイオレンス描写など、「Netflix」配信ならではの表現も組み込まれるようだ。また、監督を務めるのは、『ピンポン THE ANIMATION』『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』などを手掛ける、アニメーション作家・湯浅政明。そして、「コードギアス 反逆のルルーシュ」「甲鉄城のカバネリ」の大河内一楼が脚本を担当、音楽は『ピンポン THE ANIMATION』や『映画 聲の形』の牛尾憲輔が参加する。永井氏は、「まず一番に思ったのは『最後まで描いてくれるの?』でした(笑)僕が絶大な信頼を置いている湯浅監督なら、やりきってくれると信じています。デビルマンとデーモンの闘いが、アニメーションでどのように描かれ、決着がつくのか。2度と実現出来ないかもしれない『デビルマン』の結末までのアニメーションを、僕自身楽しみにしています」と期待を寄せ、そんな原作者が信頼を寄せる湯浅監督は、「漫画史上最高とも言える衝撃的な展開と壮大なラストシーンにたどり着くため、原作のスピリット、エッセンスを『いまやるアニメーション』の形に落とし込む作業に日々悪戦苦闘中です」と現状を明かし、「しかし配信ということで制約も少ないので、限界までやりますよ!バイオレンス、エログロなどありますが、最終的に“愛”です。楽しみに待っていてください」とファンへメッセージを送っている。また、配信決定に合わせてティザービジュアル&特報映像も公開。なお、原作は英語圏を始めイタリア・フランスなど多数の国で翻訳版が出版され、海外でも高い人気を集めており、本アニメは日本語のほか9か国語に吹き替え、字幕は25か国語、さらに全世界190か国にて配信される。「DEVILMAN crybaby」は2018年初春、Netflixにて全世界独占配信。(cinemacafe.net)
2017年03月16日東京・丸の内にある東京會舘。辻村深月さんの『東京會舘とわたし』は、この建物を主人公に、大正・昭和・平成の人間ドラマを描き出す一大群像劇だ。「実は私は7年ほど前、ここで結婚式も挙げているんです。下見で館内を案内された時、“ここは芥川賞や直木賞の会見の部屋ですよ”と言われ、文学賞にゆかりのある式場って縁起がいい気もして(笑)。式を終えた後、ウェディングプランナーの方に冗談で“直木賞を受賞して戻ってきます”と言ったら“お待ちしていますね”と言ってくださって」その後、2012年7月17日に直木賞を受賞、ここで会見に臨んだ。「支配人の方に“結婚式もここだったんです”と言ったら“もちろん憶えていますよ。おかえりなさいませ”と言ってくださったんです」ほどなくして東京會舘は長期の改装工事に入ることになった。つまり、その時期に受賞したのはギリギリのタイミングだった。「そのことを新聞のエッセイに書いたら、社長さんがお礼のお手紙をくださったんです。これは今しかないと思い、東京會舘の小説を書かせてほしいとお願いに行きました。會舘は大政翼賛会の本部になったりGHQに接収された時期があったりと、歴史があって、小説になると思ったんです。改装前のタイミングで取材できてよかったです」バーテンダーや菓子職人、シェフなど館内で実際に働いていた人々が多数登場。どのエピソードも、仕事と真摯に向き合う姿勢に胸打たれる。また、たとえば第3章は灯火管制下での結婚式の話だが、「東京會舘には利用した方からのお手紙もたくさん寄せられていて、戦時に結婚式をした女性からのお手紙を見つけ、ご本人に取材させていただいたんです。ご高齢なのに式に付き添った美容師の名前も憶えていらして、あの話が生まれました」取材すると、事実と事実が結びつく瞬間があり、ミステリー小説をひもとくような楽しさがあったという。「小説だからこんな都合のいい話があるんでしょ、と思われないためにどうするかで苦労しました(笑)」実話がベースと思えないほど味わい深い話が並ぶ。もちろん直木賞を絡めた話もあり、ぐっとくる。「新装オープンしたら、今度は私が“おかえりなさい”と言いたいです」◇つじむら・みづき作家。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、‘12年『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。◇大正11年に丸の内に落成した東京會舘を舞台にした、一大群像劇。関東大震災から大戦、東日本大震災なども盛り込まれ、時代のうつろいが浮かび上がってくるところも読ませる。毎日新聞出版上下巻各1500円※『anan』2016年9月7日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年09月02日「マジンガーZ」「デビルマン」などを世に送り出した永井豪の作品をオーケストラの演奏と映像でふり返る「世界に発信・劇場版アニソンワールド永井豪×オーケストラダイナミックコンサート~映像とオーケストラサウンドで蘇る永井豪の世界~」の開催がこのほど決定した。1967年に「目明しポリ吉」でデビュー以降、「ハレンチ学園」「デビルマン」「キューティーハニー」など数々のヒット作を世に送り出してきた永井氏。昨年、第2回日本映画アニメーション批評家大賞でダイヤモンド大賞を受賞し、今年10月には「キューティーハニー」実写化映画が公開されるなど、ますます注目を集める中、来年2017年にはデビュー50周年を迎える。このほど決定したコンサートでは、「マジンガーZ」「デビルマン」「キューティーハニー」「ドロロンえん魔くん」など、永井氏が手掛けた数々のヒット作品の音楽がオーケストラ版に特別改編し、懐かしのアニメ映像とともに演奏されるという。永井氏の世界観をフルオーケストラで心ゆくまで堪能することができるのだ。また、スペシャルゲストには、「マジンガーZ」「キャプテンハーロック」などのアニメソングや、「仮面ライダー」シリーズなどの特撮ソングを次々と歌い続ける“アニメソング界の帝王”水木一郎が登場。ファンにとってはお馴染みの楽曲が、貫禄の歌声で歌い上げられる。「世界に発信・劇場版アニソンワールド永井豪×オーケストラダイナミックコンサート~映像とオーケストラサウンドで蘇る永井豪の世界~」は、池袋「東京芸術劇場」にて9月18日(日)開催。(text:cinemacafe.net)
2016年08月21日俳優の渡部豪太(30)が1日、34歳の一般女性と結婚した。所属事務所が同日、発表した。渡辺は書面を通じて、「大安の本日、無事婚姻届けを提出して参りました」と報告。「日々、感謝の気持ちを忘れずに2人で楽しい家庭を築いていけたらと思います。役者として一層、邁進して参ります」と抱負をつづり、「これからの二人を暖かく見守って下さい」と呼びかけている。所属事務所によると、本日午前に都内の区役所に婚姻届を提出。お相手の女性とは約3年前に知人の紹介で知り合い、交際に発展したという。女性は妊娠はしておらず、挙式や披露宴は未定。
2016年06月01日タレントのビートたけしが、以前マジギレしたプロインタビュアー・吉田豪氏と、24日(20:58~23:10)に放送されるテレビ朝日系バラエティ特番『ビートたけしのいかがなもの会 現代の超天才30人! 理解を超えたエピソードSP!』で共演することが18日、明らかになった。この番組は、"いかがなものか"をキーワードに激論を展開するトークバラエティ。今回は第6弾の放送で、井上陽水、島田洋七、松田優作、横山やすし、マラドーナといった天才たちの「行きすぎちゃったエピソード」が、プレゼンターたちによって紹介される。このプレゼンターとして初参加する吉田氏は、昨年12月に同局系『ビートたけしTVタックル』に出演した際、本番直前にたけしから「オレの悪口を週刊誌に書いたらしいな!」とマジギレで詰め寄られた人物。しかし、スタッフの調べで、たけしの勘違いだったことが発覚し、たけしは平謝りした後、A3版3枚におよぶ謝罪の手紙まで送ったという間柄だ。そのマジギレ現場を目撃していた陣内智則が、臨場感たっぷりに当時の様子を解説すると、たけしはただただ頭をかくばかり。それでも吉田氏は「正直まだビビッてしまって、たけしさんの目を見て話せません…」と、恐怖におびえている様子だが、萩本欽一などの大物たちの逸話を披露していく。今回は、漫談家の綾小路きみまろも、プレゼンターとして登場し、頑なに芸を変えないという天才マジシャン・ブラック嶋田のエピソードを明かす。収録後、たけしは「きみまろさんは、お互いに売れないときから知っていた間柄。きみまろさんの舞台も見に行ったことがあるんだ。ライブで生のお客さんを前に、たったひとりであれだけ引っかきまわすきみまろさんは、本当にスゴイ人だよ!」と絶賛する。一方のきみまろも「たけしさんがまだ売れない頃から存じ上げていて、若い時分、相方のきよしさんと一生懸命スタジオの隅で練習される姿も見ていました。キレがあって本当にスゴかったですよ! そんなたけしさんの毒舌に憧れて、私も毒舌漫談家として後を追いかけてきた気がします」と目標にしてきたことを明かした。また、たけしは、天才だと思う人物について、イチロー、黒澤明監督と並べて「西川きよしさんも天才だな!」と回答。きよしが、横山やすしをうまく使ったから成功したという"西川きよし天才説"をたけしが書いた翌週に「新幹線のトイレから出てきたら、きよしさんが『たけし師匠~!』って、おしぼりを持って立っていたんだよ」といい、「それ以来、きよしさんはいつもオイラの楽屋にあいさつに来るんだよね。礼儀正しくて困っちゃうよ(笑)」と苦笑いしていた。
2016年04月18日雛形あきこと渡部豪太がふたり芝居で演じる舞台『令嬢と召使』の稽古場を取材した。舞台『令嬢と召使』チケット情報原作はストックホルム生まれのスエーデン人作家アウグスト・ストリンドベリが1888年に発表した戯曲「令嬢ジュリー」。令嬢・ジュリーと召使・ジャンの関係を描いた作品だ。原作に登場するのは、ジュリー、ジャン、料理女・クリスティンの3人だが、本作ではふたり芝居用に再構成。雛形は大女優、渡部は若手俳優という設定。そのふたりが令嬢と召使の即興芝居を始める、というところから舞台はスタート。雛形は令嬢に加え召使の許嫁も演じる。その日は稽古開始から約10日という頃。すでに通し稽古が始まっていた。ピアノの生演奏が流れる中で、雛形と渡部はふたりの俳優として物語を始める。演出は『坂の上の雲』『紙の月』など数々のテレビドラマを手がけてきた一色隆司。ふたりが即興芝居で演じるのは、惹かれ合っている令嬢と召使。立場の違うふたりが恋に落ちる…定番の設定だ。だが、そこから回り始めるふたりの関係の歯車は予想以上に生々しい!「男は(女は)調子がいいな」「女は(男は)ずるいな」と思わず苦笑いしてしまうシーンも…。雛形が演じる令嬢は高慢だが、どこか女々しい女性。召使への誘い方が大人でセクシーで、観ていてドキドキするシーンがたくさん。一方、許嫁役での雛形はテレビのふわっとかわいい姿とは対極の、サバサバとした女性を力強く演じている。許嫁がいながら令嬢の誘いを受ける、貧しい召使を演じる渡部。時にやさしく、時に最低な(!)態度をみせる。「やさしくしてほしいの」と懇願する令嬢にやさしくしない召使が、許嫁には「もっとやさしくしてくれよ」と言う。劇中、ふたりの立場はくるくると変わり、それによりお互いへの態度も変わる。お互いを心から求めているようで、利用している側面もある。恋愛だからこそありえる関係性をリアルに描いていく。最初に感じた「なぜ急に即興芝居を始めたのか?」という疑問。劇中のセリフなどで答えが出されることはないのだが、即興芝居を観ているうちに「そういうことか」と自然に納得できる。令嬢と召使を演じている最中にいわゆる「中の人」が出てくる瞬間というものがあり、その出現によりこの答えを感づかせてくれる瞬間は気持ちがいい。ふたりがどうなるのか、この即興芝居は一体どこへ向かっているのか――生だからこそ感じられる臨場感をぜひ劇場で味わってほしい。舞台『令嬢と召使』は4月21日(木)から24日(日)まで東京・シアタートラムにて。取材・文:中川實穗
2016年04月12日FX個人投資家の豪ドル/円相場見通しを示す予想DI(外為どっとコムの顧客に対するアンケート調査結果による指数)は、10月の調査で5カ月ぶりに豪ドル強気を示すプラス圏に浮上した。プラス幅は+6.6と小さかったが、それでも今年最高を記録した格好であり、豪ドルに対するFX投資家の信頼感が戻り始めたように見える。かつて豪ドルは、高金利(高スワップポイント)であると同時に値動きの良さ(高ボラティリティ)も併せ持つ通貨として、FX投資家の人気を集めたが、近年ではやや不人気の状態が続いていた。今回の予想DIプラス転換が、果たして投資マインド復活を告げるサインとなり得るのか考察してみたい。○豪ドル不人気の背景図のように今年の豪ドル/円予想DIは年始からマイナス圏で推移、5月にプラス3.1に持ち直したものの、再びマイナスサイドに沈んでいた。こうした豪ドル不人気は、米国の利上げ(観測)に伴い、新興国・資源国の経済に下方圧力がかかるとの見方によるところが大きかったと見られる。中でも、豪州にとって最大の輸出先である中国の景気減速懸念が強まった事が大きく影響した公算が大きい。そうした中、豪準備銀行(RBA)が2月と5月にそれぞれ0.25%ずつの利下げを行い、政策金利を同国史上最低の2.0%まで低下させた事も豪ドルへの投資意欲を鈍らせたのだろう。○中国に対する過度の懸念は後退このうち中国については、上海総合株価指数が5月以降に値崩れを起こした上に、8月には人民元の切り下げに端を発する「チャイナ・ショック」が発生するなど、一時は中国経済のハードランディング懸念が強まった。しかし10月以降は、中国人民銀行(中央銀行)の利下げなどもあって上海株が反発しており、過度の懸念は和らいでいるように見える。中国共産党が10月に開いた第十八期中央委員会第五回全体会議(5中全会)で成長率目標を6%台後半に設定したと見られる事(実際の目標値は未発表)や、国際通貨基金(IMF)が人民元を特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用する方向で準備を進めている事も安心感に繋がっているようだ。○RBAの姿勢にも変化また、RBAの緩和スタンスに変化が覗えた点もFX投資家の信頼感回復に寄与している公算が大きい。RBAは声明で「資源価格の大幅な下落を踏まえれば、一層の豪ドル下落が起こりうるし、必要でもある」として豪ドル安誘導の姿勢を強くにじませてきたが、8月声明でこの文言を削除し、「豪ドル相場は商品相場の大幅な下落に適応しつつある」に変更した。豪ドルの対米ドル相場は年初から15%も下落しており、インフレ予防の観点から、RBAはこれ以上の通貨安は望ましくないと考え始めたのかもしれない。これは、国際商品の代表的指数であるCRB指数が足元で続落しているにもかかわらず、豪ドルが持ち直している一因のように思われる。○2016年に向けて強気拡大もこのように、中国経済への不安が和らぐとともに、RBAがこれ以上の利下げを行わないとの見方が広がる中では、史上最低とはいえ2.00%という相対的に高水準の政策金利は、ゼロ金利に慣れ親しんだFX投資家にとって魅力的に映るはずだ。足元の資源価格下落にはある程度目を瞑ってでも豪ドルを買いたいというFX投資家が増えても不思議ではないだろう。10月の豪ドル/円予想DIからは、そうした可能性が感じられた。今後、中国景気が緩やかに持ち直すとすれば、資源価格の下落にも歯止めがかかり、FX投資家の豪ドル強気度合いは2016年にかけて拡大していく可能性がありそうだ。○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya
2015年11月25日ホッとするような温かな歌声で、数々の名曲を生んできたハナレグミ・永積 崇さんが4年ぶりにアルバム『What are you looking for』をリリース。収録曲のうち半分は、他アーティストとのコラボナンバーという新しいアプローチで作られた作品だ。「偉大な人たちに教えを乞うという『西遊記』みたいなアルバムですね。自分一人で創作することにあんまり面白みを感じなかったし、新作を作る度に歌詞の書き方を忘れちゃうので(笑)、うまい人に教えてもらおうという気持ちでお願いしました。いろんな人の言葉やメロディの力で、僕の歌がもっと鳴ってくる。そんな期待があったんですよね」アルバムに入ったのは野田洋次郎(RADWIMPS)、YO-KING(真心ブラザーズ)による提供曲に加え、大宮エリー、池田貴史(レキシ)、辻村豪文(キセル)、堀込泰行(ex.キリンジ)との共作楽曲。「こんなふうな曲で、とは一切お願いしてないんです。それぞれが持っているあの“感じ”を貸してほしかったから。でもでき上がった作品はどれも、うまく僕のことを取り入れてもらっている気がしました。ただ、歌詞の書き方を教えてもらおう、とお願いしたYO-KINGさんは、最初の2行からもうスゴすぎて、思わず『天才ですか!』と。僕を見て降りてきたフレーズだそうですが、天才すぎて全然学べなかった(笑)」この4年間、永積さんはブルースばかり聴いているとか。音楽だけでなく、ブルースマンの写真集を見て、DVDでライブを観て、という日々。「そしたらギターを習いたくなって、本場のニューオーリンズに行っちゃったんですよ。一人で怖そうなバーに震えながら入って、オジイちゃんのブルースマンに教えてもらいたかったけど、そんな人全くいなくて。ミシシッピ川で『いねーよー!』と叫んで、どうすんだオレ、みたいな(笑)。結局、ベテランのブルースギタリスト・吾妻光良さんとライブで共演したほうが衝撃でした。カッコいいフレーズを弾くだけではなく、音の向かう先とかスピード感が学べた気がして。ずっとブルースを聴いていたのも、自分の歌がどういうものか知ろうとしていたのかな」魅力的な人たちとの共演や共作で手に入れた感覚は、この新作にしっかり入っている。古い機材を使ってレコーディングしたサウンドは、とても心地よくて、こんな素敵な音楽に触れることに感謝したい気分。「僕は、いつも世の中に伝えたいことがあるわけじゃない。何でもないことを、各々が眺めているという関係がすごく好き。何でもないことをポーンと歌い、聴いている人たちも自分なりのシーンを眺めている、それが自分にできるメッセージかな、って。そう思いながら、どんどん遊んでいきたいと思っています」◇ハナレグミ永積 崇によるソロユニット。今夏は各地のフェスやイベントに出演するほか、9月からは弾き語りツアーも予定されている。◇6th album『What are you looking for』【完全限定生産盤CD+Book】¥4,000タイの旅の写真と永積さんのイラストなどを掲載した書籍付き。【通常盤CD】¥3,000(SPEEDSTAR RECORDS/Victor Entertainment)※『anan』2015年8月26日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・北條尚子
2015年08月25日象印マホービンは7月21日、圧力IH炊飯ジャー「鉄器コート 豪熱羽釜」の新モデルとして5.5合炊きの「NP-YS10」と1升炊きの「NP-YS18」を発表した。発売は8月21日。価格はオープンで、推定市場価格はNP-YS10が73,000円前後、NP-YS18が76,000円前後だ(いずれも税別)。NP-YS10とNP-YS18は、内釜に「豪熱羽釜」を採用したIH炊飯器。内釜周囲に設けられたステンレスの羽の幅を広げたことで、蓄熱性が従来モデル「NP-BU10」に比べて約25%アップした。側面の「胴リングWヒーター」の火力は従来の約1.3倍になり、高温を維持しながら炊飯できる。釜の外側には鉄をコーティングし、発熱効率が約1%アップした。これによって炊きムラを防ぐという。釜の内側に「うまみプラス プラチナコート」を施したことで、ご飯の甘み成分(還元糖)は約45%、うまみ成分(アミノ酸)は約5%アップ。内ブタには「うるおい二重内ぶた」を採用。蒸気口セットを省略し、毎回の手入れ点数を減らした。サイズと重量はNP-YS10がW27.5×D34.5×H23.5cm/6.5kg、NP-YS18がW30.5×D37×H26.5cm/8kg。炊飯容量NP-YS10が0.09~1L(0.5合~5.5合)、NP-YS18が0.18~1.8L(1合~1升)。炊飯時の消費電力はNP-YS10が1,240W、NP-YS18が1,370W。
2015年07月21日東京ビッグサイトで開催中の「東京おもちゃショー2015」のバンダイブースにて18日、『DX 超合金魂 グレートマジンガー』の発表会が行われ、永井豪氏とグラビアアイドルの篠崎愛が出席した。『グレートマジンガー』は、TVアニメ『マジンガーZ』の続編として1974年に放送され、永井氏とダイナミックプロが原作。発表された『DX 超合金魂 グレートマジンガー』は、2012年12月に発売された『DX 超合金魂 マジンガーZ』に続く、"かつて少年だった大人たちへ贈る究極のマジンガー"をコンセプトに立体化される。ダイキャストパーツも使用して重厚感と質感が忠実に再現されており、実物を前にした永井氏は「重量感がすごくて素晴らしい。昔よりも彫刻などもしっかりしていて、ハンサムにできています」と、仕上がりに太鼓判を押していた。もちろん『マジンガーZ』同様、外装パーツを外すと内部構造を見ることができるほか、飛行時のポーズを再現する「スクランブルダッシュ」も付属。さらに、サンダーブレークを発動させた際に発光する両目、ブレストバーンの演出で発光する胸部高熱板などがLEDで再現され、さまざまなギミックがつめ込まれている。最終回で見せた、マジンガーZとグレートマジンガーの握手シーンを再現するための手首パーツも用意され、永井氏も大喜びだった。そのほかにも、「格納整備基地」の付属やサウンドギミックも内蔵。初回特典には永井氏が描き下ろしたイメージボード集「偉大魔神画(グレートマジンガー)」も同梱されるという。本商品の価格は49,800円(税別)で、発売日は2015年12月26日。6月18日より全国の家電量販店、ホビーショップ、オンラインショップなどで予約受付がスタートしている。試作品ということで触ることはNGとなっていた『DX 超合金魂 マジンガーZ』をじっくりと確認する永井氏は、「うれしいですね。本当に、こういうことができるというのは感無量です」と感慨もひとしお。すると、夢中になっている永井氏のもとに、グレートマジンガーをイメージしたコスプレ姿で篠崎が登場。美女を前にした永井は、篠崎が映しだされているモニターに視線が釘付けになってしまい、司会に篠崎が目の前にいることを指摘されると「直接、見ると目が潰れそうです。『グレートマジンガー』も素晴らしいですが、こちらのフィギュアも作っていただきたいです」と語り、会場を沸かせた。そんな篠崎は、永井の代表作の一つでもある『キューティーハニー』の大ファンであることを明かすと、永井からは「篠崎さんはキューティーハニーそっくりのナイスバディじゃないですか。素晴らしい」と絶賛していた。(C)ダイナミック企画・東映アニメーション
2015年06月19日ニコンイメージングジャパンは15日、豪Crumpler(クランプラー)とのコラボレーション製品として、「Nikon×Crumpler 7ミリオン・ダラー・ホーム カメラバッグ」「Nikon×Crumpler ワイド コンフォート ストラップ」を発売した。価格はカメラバッグが24,800円、ストラップが4,980円(いずれも税込)。○「Nikon×Crumpler 7ミリオン・ダラー・ホーム カメラバッグ」「Nikon×Crumpler 7ミリオン・ダラー・ホーム カメラバッグ」は、本体内部にD810クラスのカメラ本体と、レンズ×2、スピードライト、ノートPC、小物などを同時に収納できる。インナーにはクッション性の高い素材を使用。前面には軽量な三脚を固定できるストラップ(取り外し可能)を備える。そのほか、ショルダーパッド、バッグ開閉時に面ファスナーの音を抑える消音パッチ、ポーチなどの装着に便利なサイドループを用意している。外寸はW345×H210×D280mmで、重量は約1,100g。容量は約13リットル。取り外し可能な仕切りパッド(大×2、小×6)が付属する。○「Nikon×Crumpler ワイド コンフォート ストラップ」「Nikon×Crumpler ワイド コンフォート ストラップ」は、掛け心地にこだわって開発されたカメラストラップ。立体的な裁断形状を採用している。素材は通気性の高いメッシュのほか、首にあたる部分にはネオプレーン、裏面にはラバーを使用。ストラップの最大長は約1,250mmで、幅は65mm。両製品ともに、カラーはブルーブラック、ブラウンカーキ、ブライトレッドを揃える。
2015年06月15日PaniCrewの植木豪の構成、演出による『WASABEATS』が4月22日、Zeppブルーシアター六本木にて初日の幕を開けた。日本の心を通じて、ヒップホップやストリートダンスに新たな地平を拓きたい、そんな植木の思いから始まった『WASABEATS』。ダンスには定評のあるw-inds.の千葉涼平が前回から引き続き出演。そして今回より新たに、若手俳優としても進境著しい平間壮一が参加。このふたりが現代都市を生きる若き忍者となって登場。彼らが経験する忍者修行とその先に待ち受ける戦いを、多彩なパフォーマンスによって表現していく。彼らとともにパフォーマンスを展開するのは、前回に引き続き、植木豪を始めとするストリートダンスの名手たちだ。逆立ちで踊るハンド・スタンド・ロッキング、頭を床につけたまま高速回転するヘッドスピン、時間を止めるようなロックダンスなど、多彩なダンスが登場。さらに今回からは、コンテンポラリーダンスの要素も取り入れられた。フィーチャーされるのはダンスだけに留まらない。格闘技と体操を組み合わせた、トレッキングと呼ばれるアクロバット、そして空中パフォーマンスなど、多種多様な技を持つパフォーマーが集まり、ダンス公演の枠を超えたショーが展開される。そして、映像にも最新技術を投入。舞台上に映し出される映像は、パフォーマーたちの動きと連動し、一挙手一投足から放たれるベクトルを大きく視覚化。タイムラグなしに増幅されるパフォーマーの動きは、音楽とともにビートを生み出し、観客を包み込む。この演出により、観客はパフォーマーの卓越した身体能力を身体で感じることに。それは劇場に観に来ていた子どもたちが、集中を途切らせることなく楽しんでいた姿からもうかがえる。常日頃から「自分が一番惹かれるのは、パフォーマーの生身の表現」と語る植木だが、彼がこだわる生身の表現の魅力を、最大限に伝える演出になっているといえるだろう。また、傘を使ったパフォーマンスや、鏡をモチーフにしたダンスなど、パフォーマー自身の技術が問われるシーンを盛り込んでいるところからも「まず個々のパフォーマーありき」という植木の思いが伝わってくる。今回、新たに導入されたコンテンポラリーダンスや、ヘッドスピンと空中パフォーマンスのコラボレーションでは、アート作品のような静かなる美を表現。「静と動」というダンスが持つ二面性を、前回以上に形にしてみせた。身体で感じられるという点では、音楽が果たしている役割も大きい。音楽を担当するのは、前回に引き続き井手コウジ。和のテイストのモチーフをふんだんに取り入れながらも、多様なアプローチを試みた楽曲群で、パフォーマンスを引き立てている。さまざまな表現が盛り込まれた『WASABEATS』だが、わかりやすくポップな世界観に、コミカルな演技を挟みながら構成されているため、ダンス作品やパフォーマンスを初めて観る人も、肌でその魅力を感じることができ肌でその魅力を感じることができるはずだ。文:小杉厚
2015年04月24日