暑い暑い夏の京都に暮らす人々は、涼を演出するため、さまざまな工夫を凝らしてきました。水と緑を楽しむのも知恵のひとつ。貴船、嵯峨野、山科、清滝。京都の美を際立たせる景色を求めて、少し郊外へと足を延ばしたなら、寺社の庭が、うだるような夏の暑さを忘れさせてくれるに違いありません。夏の京都、心があらわれる、寺社の水と緑をご紹介します。■貴船川のせせらぎとともにある避暑地。貴船神社(きふねじんじゃ)TEL:075・741・2016[貴船]水を司る神として古くから信仰される貴船神社へは、水は清らかで緑は鮮やかな夏にこそ足を運びたい。朱塗りの灯籠と青紅葉がまるで回廊のように境内へと導いてくれる参道、御神水に浮かべると文字が浮かびあがる水占みくじ、結社や奥宮へと続くしっとりした小径、神社に沿って流れる貴船川に出される川床など、この季節の清々しさはひときわ。かつては氣の生じる根源という意味から“氣生根”と書かれていた貴船。たっぷりのパワーチャージも約束してくれそう。左京区鞍馬貴船町1806:00~20:00(授与所受付は9:00~16:30)■緑に抱かれる青紅葉の天井と苔の庭。祇王寺(ぎおうじ)TEL:075・861・3574[嵯峨野]平清盛に愛された祇王が出家した尼寺として『平家物語』にも登場するお寺。散り紅葉と苔の緑のコントラストが美しいと、秋に人気が高いものの、夏の庭もまたおすすめ。10種以上の苔が植えられた苔庭は豊かな表情を持ち、いつまで眺めていても飽きないほど。空を見上げれば葉の形も美しい楓の天井。しっとりとした緑に包まれた庭は外の熱気も遮られ、涼やかさを体感できる場所に。影が虹色に見えることから“虹の窓”とも呼ばれる草庵の吉野窓も見所。右京区嵯峨鳥居本小坂町329:00~17:00(受付~16:30)拝観料¥300■平安時代から受け継がれる池と花と。勧修寺(かじゅうじ)TEL:075・571・0048[山科]昌泰3(900)年、醍醐天皇が生母・藤原胤子(ふじわらのたねこ)を弔うため創建した門跡寺院。池泉回遊式庭園の中心には平安時代から受け継がれる氷室の池。かつては毎年1月2日、池に張った氷を宮中へ献上し、その厚さで五穀の豊凶を占ったという。初夏から夏にかけては、花菖蒲や半夏生、睡蓮、蓮などが次々と咲いて池の周りを彩り、さりげない美しさを堪能させてくれる。庭の奥に見えるのは観音堂。夕方には多くの水鳥の鳴き声が響き、野趣を感じさせる風情が新鮮。山科区勧修寺仁王堂町27‐69:00~16:00拝観料¥400■マイナスイオンを浴びに滝へ。空也の滝(くうやのたき)[愛宕山]火除けの神として知られる愛宕神社の愛宕山。その中腹の清滝川(きよたきがわ)沿いにあるのが、平安時代中期に空也上人が修行したと伝わる空也の滝。最寄りのバス停から東海自然歩道を歩くこと約1時間で、朱塗りの鳥居が出迎えてくれる。高さは12m、幅は1mという滝は京都では最大級。ほとばしる水の流れは目にも涼しく、たっぷりのマイナスイオンは心をリセットしてくれる。右京区嵯峨清滝空也滝町拝観自由「清滝」バス停からは約2.5km、徒歩で1時間ほどかかるので、ハイキング仕様の靴や帽子、ドリンクなどの持参がマスト!※『anan』2016年7月13日号より。写真・福森クニヒロ文・大和まこ
2016年07月06日