好相性になれる伝え方のコツとは?日常生活にある気まずいシーンで、ふたりの関係を好転させる絶妙な言い回し術を徹底レクチャー。実践! シーン別言い回し術。ウソをつかれた時「すごくショック。どうしてウソついたのか教えて?」ウソをつかれたことに腹を立てて、「どうして!」「なんで!」と責め立てるようなことを言いがち。「攻撃的なことを言っていると自分を見失います。誰にも止められず、どんどんエキサイトして、暴言を口にして大切な人を傷つけてしまう場合も。アドラー心理学で、怒りの感情のピークは長くて6秒と言われています。だからまずはその6秒をやり過ごしましょう。そして相手の話を聞いて、ショック、悲しい、困惑しているなど、どんな気持ちになったかを客観的に伝えること。そうすれば自分の感情を上手にコントロールできます」(“伝わるコミュニケーション”をテーマに講演を行う戸田久実さん)ミスや失敗を報告された時「しっかり確認しておくと、あとあとラクだよ」起こってしまったことを責めてもあとのまつり。感情的になってもお互い不快な気持ちが残るだけ。「ダメ出しや注意されたことばかりに気を取られ、ミスや失敗したことは二の次に。相手のヤル気を損なうだけです。感情を爆発させるのではなく、『〇〇するといいよ』と、相手へのリクエストやアドバイスとして、その気にさせる伝え方にすると、相手の行動は改善されやすいです」(戸田さん)。それでも改善されず、何度も同じミスを繰り返したとしても、人格否定はしないこと。ミスをすることでどんな支障をきたしているかを伝えつつ、相手の事情にも耳を傾けて。セクハラ発言をされた時「それ他の人には絶対に言わない方がいいよ…」セクハラ発言をする人は、冗談やコミュニケーションのひとつだと思っていて、それが相手を傷つける発言であること自体わかっていない人がほとんど。「だからそれがセクハラ発言だということを、言った本人に自覚させることが大事です。しっかりと伝えて食い止めないと、また同じ発言を他の人に繰り返して、被害が拡大する可能性が」(キャリアカウンセラー・関下昌代さん)。問題発言だと伝えることがお互いのため。相手のメンツをつぶさないためにも、大勢の前ではなく、ふたりきりになった時に注意した方が無難だし、理解を得やすい。言われたことに対して感情的にならずに、冷静な対応を。答えにくい質問をされた時「ちゃんはどうなの?」答えにくい質問を平気でしてくる人には、同じ思いをさせて、聞くべきことではないことをわかってもらうことが大事。「そのためにも質問返しが有効です。聞かれたことをそのまま聞き返すんです。質問返しをしていれば、それ以上突っ込んでこなくなるでしょう」(戸田さん)。たとえば年収を聞かれ、質問を返しても、「円だよ」とさらりと答えてきたら、「私も同じくらいかなー」などと言ってあいまいにするか、「へー」と言って、違う話題に切り替えてみること。相手の口車に乗って、ベラベラしゃべってしまうと、後々面倒なことになり、関係が悪化することも。戸田久実さんアドット・コミュニケーション(株)代表取締役。アンガーマネジメントをベースとした、言葉がけに特化したコミュニケーション指導に定評がある。『〈イラスト&図解〉コミュニケーション大百科』(かんき出版)。関下昌代さんキャリアカウンセラー。亜細亜大学で、ビジネスマナーやコミュニケーションの講師も務める。『先輩に可愛がられ、同僚に疎まれず、後輩に慕われる女子になる職場で幸せになる45 のコツ』(中央公論新社)。※『anan』2019年9月4日号より。イラスト・徳丸ゆう取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2019年09月02日言い方を工夫すれば、相性が良くなる!?誰もが一度は経験がある、日常生活にある気まずいシーンをピックアップ。ふたりの関係を好転させる、絶妙な言い回し術を徹底レクチャー。実践! シーン別言い回し術。遅刻してしまった時「遅刻して本当にごめん!電車が遅れちゃって…」開口一番、「電車が遅れた!」と言い訳することは、自分に非がないことを伝える自己弁護が働いているから。まずは謝罪してから、その後に遅れた理由を述べましょう。「遅刻は仕方がないことでも、相手に迷惑や心配をかけたことに変わりはないので、まずはお詫びから。遅刻の理由を先に伝えると言い訳がましく伝わります。お詫びの仕方は人間性が問われます。もちろん自分がミスや失敗をした時も同様。自分の落ち度を認め、それを素直に伝える勇気を持ち、しっかりと謝罪することができれば、他者から評価されます」(“伝わるコミュニケーション”をテーマに講演を行う戸田久実さん)忙しい人に話しかける時「××についてご相談したいのですが、5分ほどよろしいでしょうか?」最初の一言めで、何のことで話しかけているのかを明確に伝えること。「それがわかれば、相手は今の作業を中断してでも、すぐに時間を割いて話に耳を傾けるべきか、あとでじっくり時間を取るべきか、優先順位を瞬時に判断することができます。『ちょっといいですか?』だけだと、その『ちょっと』が何を指しているのか全くわからず、忙しいのに注意をそらされたことで、イライラを助長させるだけ。何の件で話したいのかに加えて、どのくらいの時間を要するのかを一緒に伝えられれば、気遣いができる人だと思われて、グッと距離が縮まるはず」(戸田さん)仕事を引き受けられない時「ほかの案件に追われており、これが終わり次第お手伝いします」仕事が手いっぱいで、泣く泣く相手の要求を断らなければならない時は、「無理です」「できません」と結論だけ伝えてしまうと、信頼関係にヒビが入ってしまうことも。「どうしてできないかの具体的な理由と、力になりたい気持ちがあることを伝えれば、次に繋がります。またその時に『その代わり』を付け加え、代替案を用意すると、グッと好印象。たとえば資料作りをお願いされたのなら、作る時間はないが、資料集めやコピーなど、ささやかでも、今の自分にできることを無理のない範囲で提案してみるんです。そうすれば誠意が伝わります」(戸田さん)飲みの誘いを断る時「誘ってくれてありがとう。でも今日は外せない用事があって…」「断ることに罪悪感を抱いて、ついつい謝ってしまいがちですが、まずは誘ってくれたことに対して感謝の気持ちを伝えること。そして行けない理由をクリアにすれば、相手に気を使わせずに済みます。また翌日に『昨日楽しかったですか?』など、相手に寄り添った言葉を投げかけると、またすぐに誘ってくれるでしょう」(キャリアカウンセラー・関下昌代さん)。できれば参加したくないという人も多いが、飲み会は相性を良くするチャンスがたくさん転がっているので、参加しないのはもったいない。「飲み会は情報収集の場、ネタが増えるので会話が弾みやすくなり、伝わる力が高まります」戸田久実さんアドット・コミュニケーション(株)代表取締役。アンガーマネジメントをベースとした、言葉がけに特化したコミュニケーション指導に定評がある。『〈イラスト&図解〉コミュニケーション大百科』(かんき出版)。関下昌代さんキャリアカウンセラー。亜細亜大学で、ビジネスマナーやコミュニケーションの講師も務める。『先輩に可愛がられ、同僚に疎まれず、後輩に慕われる女子になる職場で幸せになる45 のコツ』(中央公論新社)。※『anan』2019年9月4日号より。イラスト・徳丸ゆう取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2019年09月01日伝え方ひとつで、ぎくしゃくすることもあれば、一気に距離が近づくことも。特に言いづらいことを伝える時に差が出やすいもの。そこでどんな人とも相性がアップする伝え方の極意と、日常でよくある要注意シーンで使える言い回し術を、その道のプロが指南。価値観の違いを認めつつ、自分の気持ちも大事にする。仕事でもプライベートでも長く付き合っていかなければならない相手は必ずいるもの。しかし、自分の思いがうまく伝わらなかったり、会話がかみ合わないと、「この人とは相性が悪い」と判断して、距離を置きがち。だが伝え方次第で相性は変えられると、キャリアカウンセラーの関下昌代さん。「相性の良し悪しは、価値観が合うかどうかで決まるわけではありません。自分以外は、みんな異文化だと思うこと。自分の普通や当たり前が、相手にとってもそうだとはかぎらないのです。わかってもらえて当然だと思い込んで、一方的に気持ちをぶつけたり、言葉足らずになると何も伝わらず、お互い不快感を抱くだけ。だから自分の価値観を押し付けない伝え方を心がけることが、相性を良くする第一歩です」そのためにも相手の立場に立って考えること。しかし相手の顔色をうかがって、言いたいことを我慢しても何も変わらないと、“伝わるコミュニケーション”をテーマに講演を行う戸田久実さん。「良い顔をするのと、良い関係性を築くのは違います。嫌われたくなくて本心を隠したり、何を言われても傷つかないふりばかりして、自分の気持ちをないがしろにしていると、ストレスは溜まる一方。それが大きくなると、相手への不満となり、何かの弾みで怒りを爆発させ、取り返しのつかないことになる場合も。だからその都度言いづらいこともしっかりと伝えることが大事です。曖昧な言い方はトラブルのもと。伝える力を高めれば、お互いの理解が深まり、関係性はグーンとアップします」言葉選びや言い回しなど、伝え方のコツを身につければ相性は思いのまま。どんな人とも好相性に。伝え方の極意8言いたいことを伝えるのは難しいけれど、伝わった時の喜びはひとしお。まずは、心がけるだけで相手に伝わりやすくなる8つのポイントを伝授。場数を踏めば自信が持てるようになり、コミュニケーション力も向上!【1】話すタイミングを見極める話しかける前に相手を観察して、スムーズに話し合いができるベストなタイミングをチョイス。「相手の機嫌が悪いと、聞く耳を持たなくなり、こちらに非がなくとも、伝わるものも伝わらなくなります。表情や声のトーン、振る舞いで、相手の機嫌が見えてきます。不機嫌な場合は避けるべきですが、急ぎで伝えたいことがある時は、お茶など温かい飲み物を差し出して、様子をうかがい、気分を落ち着かせてから伝えてみては」(関下さん)【2】テーマはわかりやすく要点をまとめられる人こそ、伝え上手。「言いにくいからと回りくどくなったり、自分でも何を言っているのかわからなくなると、モヤッとしたまま終わるだけ。だから事前に伝えるべきテーマは何か、核を明確にしておくべき」(戸田さん)。結論と理由をセットで伝えると、相手の納得と理解を得やすい。頭に浮かんだことを思いつくまま話すのではなく、事前に思考を整理してシミュレーションするクセをつけること。紙に書き出すのも手。【3】頼み事は特別感を出す仕事をお願いしたり、相談に乗ってほしいなど、頼み事をする時に大事なのは、特別感。「『あなたにしか頼めない』『さんだからお願いするんだけど』などの言葉を添えると、頼りにしていて、特別な存在であることが伝わり、快く引き受けてくれる可能性大」(戸田さん)。ふたりだけの秘密を共有することで、信頼関係も深まり、相性アップ!ただし多用すると不信感に変わるので、ここぞという時に使うこと。【4】相手に合わせた「たとえ」で語る何かを説明する時に「たとえ」を入れて語ると、相手の心に響きやすくなる。「価値観だけでなく、理解度も人それぞれ。相手が経験していないことを説明したりお願いする時は、理解を得るためにたとえる力が必要不可欠。『この間の仕事で言うと…』など、相手に合わせた例を入れると、物事や目的がはっきりしてくるので、相手もイメージしやすくなります」(戸田さん)。相手の印象に残る伝え方をしたい時も、たとえを使うと効果的。【5】相手に話を振ってみる一方的な言い分で論破しても理解も共感も生まれません。「特に対等の立場ではない者同士の会話は、一方が多く話しがち。自分が話しすぎていると思ったら、『あなたはどう思う?』と聞いて、相手にも意見を述べるチャンスを与えましょう」(戸田さん)。相手の話に耳を傾けながら話し合うと建設的な議論ができる。「意見がくい違っても、話を遮らずに最後までしっかりと聞くことも、良好な関係を築くコツ」(関下さん)【6】肯定から入る意見に同意できなくてもいったん受け止める余裕とポジティブさがあれば、伝え方の達人といえる。「コミュニケーションはキャッチボール。相手から飛んできたボールをパーンとはじき飛ばして、『いや、それは違う』といきなり否定するのではなく、『なるほど、そういう考え方もあるね』と、意見を受け入れて、肯定のリアクションをしましょう。その後に自分の意見を述べれば、相手も聞く耳を持ってくれるようになります」(戸田さん)【7】誰にでも丁寧に偏ったものの見方をせず、公平なコミュニケーションを心がけること。「上司には媚びて、部下には横柄な態度をとるなど、人によって伝え方を変えると、誠実さが失われ、不信感を抱かせ、無用なトラブルを招くこともあります。また、つまらない見栄やプライドを持っていると、自分自身正しい選択ができなくなるので注意すべき」(関下さん)。どんな相手に対してもフラットな気持ちと真摯な態度で対応すれば、尊敬され、信頼度アップ。【8】評判に振り回されない「周りの評判や噂話に流されて、人を判断するのは避けるべき。よく知りもしないのに、『こういう人らしい』と、先入観を持った状態で接すると、ぶっきらぼうな伝え方になり、関係性は良くなりません。まっさらな気持ちで向き合い、自分が直に感じたことだけを信じること」(関下さん)。自分の中に凝り固まった固定観念にも振り回されないように。そうすれば多角的な視野が持てるようになり、良い人間関係を構築しやすくなる!関下昌代さんキャリアカウンセラー。亜細亜大学で、ビジネスマナーやコミュニケーションの講師も務める。『先輩に可愛がられ、同僚に疎まれず、後輩に慕われる女子になる職場で幸せになる45のコツ』(中央公論新社)。戸田久実さんアドット・コミュニケーション(株)代表取締役。アンガーマネジメントをベースとした、言葉がけに特化したコミュニケーション指導に定評がある。『〈イラスト&図解〉コミュニケーション大百科』(かんき出版)。※『anan』2019年9月4日号より。イラスト・徳丸ゆう取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2019年08月31日●なめられて油断されるくらいがいい20代で離婚後、派遣・契約社員としてさまざまな転々とし、30代で外資系のシティバンク銀行に転職。事務的な仕事を淡々と……のはずが、管理職にまで上りつめた関下昌代さん。ジェットコースターばりにアップダウンの激しい人生を送ってきた中で、見えてきた"感情整理のコツ"とは?○失敗だらけの人生だけど――ドラマティックなご経歴ですが、順風満帆ではなかったのですね順風満帆どころか、失敗の引き出しなら、誰にも負けないほどたくさんあります。――失敗が多い理由を、ご自身ではどう分析していますか?昔から無器用で、感情のコントロールが自分でもあきれるほど下手なんです。怒りが湧いてくると我慢せずにボンッと爆発させてしまい、ものすごく叱られたり、あとから「我慢すべきだった」「根回ししておかない自分が悪いのに」と、反省したり。そうやって失敗を重ねる中で、1つずつ体当たりで学んできました。――そうやって失敗は減ったのですか?思うようには減りませんが、失敗を活用できるようになりました。例えば、私は外資系の銀行に勤めていながら、英語がものすごく苦手でした。そこであるとき、「これからインドに電話をかけるけど、聞かないでくださいね!」と。みんなが耳をそばだてる中、汗だくになりながら電話で一生懸命話をして、何とか用事をすませることができました。でも、そうやって人前で派手に恥をかいておくと、失敗が怖くなくなってくるんです。――失敗すると、部下や同僚になめられますよね……「なめられたっていい」くらいの大きな気持ちを持ってみてはどうでしょう。相手が自分を見下して、油断しているくらいがいいのかも。人間は、格下だと思う人にはつい口が軽くなりますから、情報をたくさんもらって、自分の仕事に生かせばいいんです。●ネガティブな気分になったらどうすれば○怒ったときは「気持ちをずらす」失敗だらけとは言いながら、今では『伸びている女性がやっている感情整理の新ルール』(KADOKAWA)という本を書くまでになった関下さん。――怒っているときに、気持ちをずらすにはどうしたらよいのでしょう?怒り、悲しみ、ねたみ、不安など、ネガティブな気分にどっぷりと浸ると、悲劇のヒロインみたいになってしまいがちですよね。そういう感情は自然に湧いてくるものですから、無理に振り切ろうとせず、受け入れてしまえばいいんです。その代わり、頭のどこかに「この状況が一生続くわけではない」と思えるすき間を作っておくこと。自分なりに気持ちをずらせるポイントを作っておくといいですね。例えば、イラっとしたら、自分の仕事ではなくても、郵便物をみんなに配ってみるとか。とにかく動いてその場を一瞬でも離れるのです。ネガティブな感情だけを相手にしていると、そのスパイラルからどんどん抜け出せなくなってしまいますから。○お局さまと呼ばれないために――仕事をがんばるアラサー女性が恐れているのは、「お局さま」というあだ名です「お局さま」、いいじゃないですか。年齢を重ねて、ある程度のキャリアをもてば、誰だってお局さま的ポジションになりますよ。そう呼ばれるのを恐れて、後輩に必要なアドバイスもできないようでは、仕事にならないでしょう?――関下さんもお局さまと呼ばれたことが?「お局さまになったんだ……」と実感したことはあります。若い同僚に、ランチに誘われなくなったんです。寂しいな、どうしてだろうと考えていたら、急に「ああ、私煙たいんだ!」とわかってしまいました。それからは、自分から後輩を誘うようにしました。大勢ではなく1人だけ誘って、じっくり話を聞いてみるとか。それはそれで、深いコミュニケーションが取れてよかったですよ。――お局さまらしく振る舞うようにしたのですね仕事ができるプロなのだから、いつまでも若い子ぶっているのは変ですから。でも、煙たがられて嫌われてはもったいない。後輩には優しくして、人間的に尊敬されて、キャリアのロールモデルになれれば最高です。それに、後輩にだって優秀な人材はいますから、先輩風を吹かせてばかりではなく、謙虚に後輩から学ぶ姿勢も大切ですよね。もうひとつ大切なのは、"女を捨てない"こと。お局さまと言ったって、オジサンになるわけではないのですから、休日出勤の日にジャージにすっぴんでくるようではダメ。どうせなるのなら、チャーミングなお局さまを目指しましょうよ。関下昌代熊本県生まれ。熊本県立第一高校卒業後、住友信託銀行へ入行。その後、派遣・契約社員を経て、1989年シティバンク銀行へ転職。クレジットカード部門、銀行法人部門を経て、2001年人事部人材開発部門のアシスタント・バイスプレジデントに昇格。在職中に立教大学大学院で異文化コミュニケーション学修士取得。11年より神奈川大学非常勤講師。著書に『伸びる女と伸び悩む女の習慣』(明日香出版社)、『伸びている女性がやっている感情整理の新ルール』(KADOKAWA)ほか。ブログ:「伸びる女!」になる秘密
2015年09月14日●正社員になれないと言われて転職高校を卒業して地方の銀行に就職。ごく普通に働いて結婚、寿退社……と、順風満帆のはずが、月給10万円のビンボー生活を経て、シティバンク管理職へと大転身。こんなドラマティックな人生が注目を浴び、現在では『伸びている女性がやっている感情整理の新ルール』(KADOKAWA)などの著書を通して働く女性にエールを送るまでになった関下昌代さん。人生が激しく動き出す"アラサー"時代について、お話を聞いた。辞めた会社を見返してやる!――30歳前後の頃、関下さんはどんな人生を送っていましたか?うーん。大満足とはいえないですね。26歳で離婚して心がボロボロになり、一度は熊本の実家に戻ったのですが、「このまま都落ちしたくない!!」と再び上京して、契約社員として働き出しました。その頃は生活費を稼ぐだけで必死でした。――やはり正社員として働きたかったんですねはい。東京でようやく某ガス会社に契約社員として就職しました。当時の月給は10万円で、家賃が5万円でしたから、生活はカツカツ。でも、いつかは正社員になれるはず、とがんばって仕事をしていました。あるとき勇気を出して、上司に「私もいつか、正社員になれるのでしょうか」と聞いてみたら、「なれるわけないだろう! うちの娘だってなれないんだから」と。その言葉を聞いたら、腹立たしいやら、悲しいやら。でもそれがバネになったのでしょうか、「今に見ておれ~!!」とすぐに会社を辞めて、とんでもないチャレンジをしたんです。○「年収はいくらほしい?」の正しい答えガス会社を辞めた関下さんは、日経新聞の求人広告でたまたま見かけたシティバンク銀行に応募。外資系の銀行という、本人も予想だにしなかった華やかな職場で、正社員の地位を手に入れた。――採用されるために、どんな作戦を?絶対に受かるはずがないと、記念受験のような感覚でしたから、何の気負いもない代わりに、作戦も何もありませんでした。武器といえば、「金融機関に勤めた経験がある」ことだけ。ただ、当時のシティバンクは日本でのビジネス展開を拡大していくうえで、事務処理が得意な人材を求めていましたから、ちょうどニーズに合ったのが幸いして、採用してもらえたんです。――採用試験で印象的だったことは?面接で「年収はいくらほしいですか」と聞かれたことですね。最初の銀行員時代も、派遣社員時代も、年単位の収入なんて考えたことは一度もありませんでしたから、頭が真っ白になってしまいました。それでもとっさに、中学時代の同級生が4年制大学を卒業して証券会社に就職し、「年収400万円」と話していたのを思い出したんです。自分にはそんなキャリアはなかったので、ちょっと遠慮して「350万円」と言ったら、本当にその金額をもらえることになりました。単純計算でガス会社のときの3倍近くですから、それはもう嬉しかったですね。●"アラサー"のときに、とくに大きな変化○宝物になった1通の手紙関下さんにとって大満足の「年収350万円」。実はその答えが大失敗だったかもしれないとわかったのは、シティバンクに就職して3年目の30歳頃のことだった。――シティバンクではどんなお仕事を?最初はクレジットカード部門に配属されました。仕事の内容は書類の整理や電話対応、クレーム処理といった地味なものばかりでしたが、そういった仕事はこれまでたくさん経験していましたから、むしろお手のもの。「ちゃんとしたお給料や健康保険証があるって、なんて幸せなんだろう」と、幸せいっぱいでした。ある日、「お宅は電話をたらい回しにして感じが悪いので、クレジットカードを解約する」という年配の男性からのクレームが私に回ってきました。そのお手紙の文字がとても美しかったので、私もお手紙で応えなくては、という気になって、上司に万年筆を借りて、お詫びと改善策などを書いて先様に送りました。そうしたら、「手紙に感動した。解約はやめる」とお返事がきたんです。この手紙は今も、宝物として大切にしています。――そのお手紙を受け取ったのは何歳頃ですか?29歳頃です。その頃から「せっかく銀行で働いているのだから、数字に携わる仕事をしたい」と考えるようになっていました。シティバンクでそういった仕事をしているのは、MBAの資格をもつなど、輝かしい経歴の持ち主ばかり。でも、このお手紙に勇気をもらって上司に掛け合ってみたら、「関下さんにはクレーム処理は向いていないと思っていました。経理の方に推薦しましょう」と。どうも、クレームのお客さまと話し込んでしまい、ノルマが果たせていなかったようです(笑)。――外資系の銀行で、その中枢に関わる業務を任されたのですねそうなんです。とはいえ、実は経理の知識はまったくなかったので、異動してすぐに大パニックに陥りました。例えば「借り方・貸し方」の意味さえまったくわからないというレベルです。でも、今さら仕事ができないとは言えません。そこで前任者のファイルを見て学びつつ、経理の専門学校に通い始めました。――ちなみにその頃の年収は?実は……その時点ではかなり低かったんです。その後、人事部に異動する前、ふとした拍子に同格の人の年収を知ってしまい、あまりの差に愕然として直属の上司に確認したんです。上司も「あれっ、これは低すぎるな」と、一緒に交渉してくれた結果、収入はうんと上がりました。30代になった頃のことです。○アラサー女性へのメッセージ――年収イメージさえなかったところから、交渉ができるまでに。大きな進歩ですたしかにそうですね。考えてみれば、30歳前後でプライベートはもちろん、仕事の内容や働き方が劇的に変わったような気がします。女性はいわゆる"アラサー"のときに、とくに大きな変化がやってきますよね。プライベートでも結婚、妊娠、出産などの変化が起こりますし、仕事でもキャリアアップ、転職、あるいはプライベートを優先して働き方を変えるなど、さまざまな選択を迫られます。不安定で辛いかもしれないけれど、知っておいてほしいのは「何を選んでも失敗ではない」ということ。どの道を選んだとしても、面白いこと、楽しいことはかならずあります。「これだけが自分の成功」と決めつけないで、気の向くままに選べばいいんです。「いまは家庭に専念するとき」「いまは上司を勝たせるためにがんばるとき」と、そのときそのときで違うミッションに専念すればいい。「ちょっと違うな……」「もっとハッピーになりたい」と思ったら、また選び直せばいいんですから。関下昌代熊本県生まれ。熊本県立第一高校卒業後、住友信託銀行へ入行。その後、派遣・契約社員を経て、1989年シティバンク銀行へ転職。クレジットカード部門、銀行法人部門を経て、2001年人事部人材開発部門のアシスタント・バイスプレジデントに昇格。在職中に立教大学大学院で異文化コミュニケーション学修士取得。11年より神奈川大学非常勤講師。著書に『伸びる女と伸び悩む女の習慣』(明日香出版社)、『伸びている女性がやっている感情整理の新ルール』(KADOKAWA)ほか。ブログ:「伸びる女!」になる秘密
2015年09月13日