樹里さんには2歳年上の姉・海さんがいます。海さんには発達障害があり、樹里さんはいわゆる「きょうだい児」であり、「ヤングケアラー」でした。そんなある日、日ごろ我慢していた気持ちが爆発し、お母さんに不満をぶつけた樹里さん。そしてそれ以降、家にいるときは部屋からほとんど出なくなったのでした。家事の手伝いもする気になれず、引きこもりがちになった樹里さん。それでも学校へは通っていたのですが、今度はその学校でもある問題が……。「家にいるくらいなら…」妹が選んだのは…? ※話し→話 中学校での友人関係もうまくいかず、家でも海さんと喧嘩ばかり……。自分の居場所を見失った樹里さんはお母さんに「もう限界!」と訴えます。 そんな樹里さんの叫びを聞いたお母さんは、児童相談所の一時保護所の利用を提案。一時保護所がどんなところかわからない樹里さんでしたが、「お姉ちゃんと離れて暮らせるなら……」とお母さんの提案を受け入れるのでした。 ◇ ◇ ◇ 発達障害のお子さんが自傷行為をした場合、周りは過剰な反応をせず冷静に対応してください。自傷行為をよくしてしまう場合は、どんなときに起こっているのかを記録し、原因と思われるストレスを減らせるよう環境や接し方などを工夫すると良いでしょう。 しかし、家にいてもどんどん気持ちの余裕がなくなっていく樹里さんが、つい海さんにきつく当たってしまうのもしかたないと思う方は多いのではないでしょうか。 逃げ場のなかった樹里さんは、家族の状況がわかっていても自分の気持ちを吐き出す場所もなく、ただただ自分の中にため込んでいくしかなかったのかもしれませんね。 そんな中で、お母さんから提案された児童相談所の一時保護所の話。どんなところなのかは実際に見てみないとわかりませんが、樹里さんが少しでも落ち着けるような環境であればと願わずにはいられません。 >>次の話 監修者:医師 神奈川県立こども医療センター 産婦人科 松井 潔 先生 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2024年03月14日樹里さんには2歳年上の姉・海さんがいます。海さんには発達障害があり、樹里さんはいわゆる「きょうだい児」であり、「ヤングケアラー」でした。小学校低学年のころから姉の面倒をみつつ、母の手助けもしていた樹里さん。その日常は想像以上に大変なものでした。「私の気持ちはどうでもいいの…?」 ※樹里のお姉さん→樹里とお姉さん 何気ない友人との会話から、自分の置かれている境遇に引け目を感じてしまった樹里さん。さらに、家で騒ぐ海さんの姿を目にしてしまい、思わずイライラが爆発。大きな声で海さんを怒鳴りつけてしまいます。 すかさずお母さんが仲裁に入りますが、お母さんは海さんのことをかばうばかり。これには樹里さんも自分の気持ちを抑えきれなくなり、胸の内に抱えていた思いをお母さんへと訴えかけるのでした。 ◇ ◇ ◇ 思わず大きな声で怒鳴ってしまった樹里さんですが、発達障害のお子さんを大声で叱るのはよくありません。急な大声にパニックを起こして指示がほとんど聞き取れなくなり、冷静に行動することが難しくなってしまうのです。何か伝えたいことがある場合は、穏やかな声で静かに話しかけると良いでしょう。 しかし、幼いころから家事や海さんのフォローにと、自分の時間を犠牲にして努力してきた樹里さんにとって、自分の味方をしてくれる人がいないというのはつらいこと……。お母さんにも、できるだけ樹里さんのことも気にかけてあげてほしいですね。とはいえ、お母さんだって海さんのお世話や家事でいっぱいいっぱいの状態で、樹里さんを気づかう余裕がないのが現状です。 どうか、樹里さんとお母さんのお互いが、無理なく心身ともに平穏に過ごしていける方法を見つけられますように。 >>次の話監修者:医師 神奈川県立こども医療センター 産婦人科 松井 潔 先生 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2024年03月13日障害者手帳には3種類ある「障害者手帳」とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類の手帳の総称です。身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体の機能に一定以上の障害があると認定された方に交付される手帳です。障害の種類や程度によって1級から7級の等級が定められています。療育手帳は、知的障害(知的発達症)があると判定された方に交付される手帳です。自治体によって名称が異なる場合があり、例えば東京都や横浜市では愛の手帳、青森県や名古屋市では愛護手帳という名称で療育手帳が発行されています。知的障害の程度によって手帳の等級が判定されますが、判定基準および等級に応じた支援サービスの内容などは、各自治体によって運用が異なっています。精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることが認定された方に交付される手帳です。手帳の交付は精神疾患(機能障害)の状態と能力障害(活動制限)の状態から総合的に判断され、その程度によって1級から3級に等級が定められています。参考:障害者手帳|厚生労働省上記のいずれの障害者手帳も、取得することでさまざまな支援や福祉サービスをうけることができますが、手帳の等級(障害の重さの程度)などによって、その内容は変わります。このコラムでは、・障害者手帳取得のメリット、デメリット・障害者手帳がない場合に、将来受けられる支援や合理的配慮についてなど、障害者手帳についてのギモンから、将来に役立つかもしれない情報まで専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。【専門家が回答】障害者手帳取得にはメリットがある?分かりやすく解説!ここからは障害者支援制度に詳しい行政書士の渡部伸先生に、障害者手帳取得についての質問にお答えいただきます。(質問)子どもに知的障害(知的発達症)があり、「療育手帳」を取得できる可能性があると言われました。取得のメリットやデメリットを知りたいです。また、取得できないのはどういう場合でしょうか。取得できないと療育が受けられないのではないかと不安です。(回答)療育手帳を取得することには、さまざまなメリットがあります。たとえば、働く場面での選択肢が広がります。企業などで働くことを希望する際に、一般の人と同じ方法での採用が難しい場合、障害者雇用の枠で働くという可能性が生まれます。障害者雇用で働くためには、手帳があることが条件となります。またそれ以外の場面でも、医療費の助成や公共交通機関の割引、NHKや携帯電話料金などの割引、映画館などレジャー・スポーツ施設の割引、所得税など税金の控除など、多くの経済的なメリットもあります。これらは、手帳の等級や自治体などで異なる場合があります。デメリットは基本的にはありません。周囲に手帳を持っていることを知られたくない、といった心理的な負担を感じる人はいるかもしれませんが、サービスを利用するとき以外、他人に持っていることを知られることはありませんし、普段はしまっておけば大丈夫です。療育手帳が取得できるかどうかは、18歳未満の場合、児童相談所でIQや日常生活の動作などから総合的に判定されます。なお療育についてですが、療育を行っている公的機関や民間の障害児通所支援などを利用する際には、「受給者証」が必要になります。こちらは手帳とは別の制度なので、療育手帳がないと受けられないものではありません。Upload By 発達障害のキホン(質問)子どもが療育手帳(愛の手帳)を取得していましたが、更新できず返納しました。発達障害がある場合、精神障害者保健福祉手帳は取得できますか?取得の目安の年齢があれば知りたいです。また、取得するとどんなメリットがあるでしょうか?(回答)発達障害がある場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性があります。目安の年齢は特にありません。最初に精神科を受診してから6ヶ月経過していれば申請可能です。医師の診断書など必要な書類をそろえて、役所の障害福祉窓口で申請します。精神障害者保健福祉手帳は、ほかの障害者手帳と異なり、取得後も2年ごとに更新する必要があります。メリットですが、療育手帳や身体障害者手帳と比較すると、受けられる支援は限られる場合があります。例えば、各自治体で行っている重度心身障害者への医療費助成は、重度の身体障害者手帳や療育手帳の所持者はほとんどの自治体で対象となりますが、精神障害者保健福祉手帳の所持者は1級のみ、あるいは対象外としている自治体もあります。そのほか各種の割引や減免など、手帳の等級や自治体などによって受けられるサービスもあります。障害者雇用については、2018年から精神障害者も対象となっていますので、将来の進路の選択肢が広がるという意味で、大きなメリットがあると思います。Upload By 発達障害のキホン(質問)障害者手帳がなくても、将来的に、高校や大学などの受験や、就職する際など、支援や合理的配慮を求めることはできるのでしょうか?(回答)合理的配慮とは、障害のある人が教育や就業、その他社会生活において障害のない人と平等に参加できるよう、それぞれの障害特性や困りごとに合わせて行われる配慮のことで、行政や学校・企業などの事業者には、この合理的配慮を可能な限り提供することが求められています。この合理的配慮の対象となる障害者は、障害者手帳を持っている人に限定されません。手帳がなくても、障害により日常生活に困難のある方も含まれます。受験に際して合理的配慮を求めるためには、医師の診断書や個別の教育支援計画、学校内で行ってきた支援の実績など「配慮の必要性」を示したうえで、事前に申請をする必要があります。具体的な配慮の内容としては、集中しやすいように別室受験やイヤーマフの持参、拡大文字の問題冊子の配布など、本人の困りごとに応じた支援を依頼することができます。ただし、学校などによって対応できることは異なるようです。就業の場においては、募集や採用の時点で、本人や支援者などから必要な配慮についての意思表明を行います。そのうえで本人と企業の間でどのような配慮ができるかを相談、検討し、合意したうえで配慮を行います。就業の場合は受験と異なり継続的な支援になりますので、定期的な見直し、改善が行われることになります。Upload By 発達障害のキホン障害者手帳についての関連コラムはこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年02月04日良い出会いを求めて奔走私には発達障害がある24歳の娘がいます。私たち親子はこれまで多くの人に支えられながら暮らしてきました。今までの子育ての中で私は良い人との出会いこそが要(かなめ)だとつくづく感じています。もちろん出会った人すべてのが「最高!」というわけではなく、ときには「うーん残念」と思うようケースも少なからずありました。でも教育の現場も福祉の現場も、複数人(チーム)での関わりが基本なので「この人とは何かウマが合わないなぁ」と思ったら私は周りの関係者に相談をしたりしてきました。このように、私は長い間良い支援者との出会いを求めて奔走してきました。周りの人はきっと「このお母さん必死だなぁ」と感じていただろうと思います。今の私たち綱渡り状態ではありましたが、何とかドロップアウトすることなく成長した娘。彼女は現在、親元を離れグループホームで生活をしています。娘はずっと暮らしてきた地域とは違う自治体管轄のグループホームを選んだので、小学生の頃からから築き上げてきた支援者との繋がりは引っ越しと同時になくなってしまいました(引継ぎはしてもらいましたが)。環境の変化が苦手な娘が、新たな支援者との関係を一からつくるのには時間がかかります。でもさまざまな苦労をしながらも彼女のペースで頑張っているようです。今の私たち親子は以前に比べ程よい距離感が築けています。では、“子育て”が終わったのかといえば決してそうではなく、大きな問題が起きたときには本人や支援者の方から連絡が来ます最初は手探りで娘に接していた支援者の方々も1年、2年と娘と接していくうちに彼女の特性(ツボ)を徐々に理解してくれてきたように感じています。人と制度の両輪先にも書きましたように、私は支援の要は『人』だと考えています。それは娘が24歳になった今でも変りません。でも最近はそれに加え『制度』も大事なのだと感じるようになってきました。娘が中学生の頃までは放課後等デイサービスの制度はなく、役所などでも障害のある子どもの居場所の情報を集約、統括はしていませんでした。ですので、民間の施設の情報をクチコミやインターネットで集め、一件一件電話をしては子どものことを説明し、自分の足で確認に行くしかありませんでした。良い施設が見つかったとしても全額自費で経済的にかなり厳しかったです。「子ども食堂」や「ヘルプマーク」といったものも、娘が高校生の頃にでき、徐々に全国に広がっていきました。今では多くの人が利用しているこのようなサービスが全国に広がるには制度(=国や自治体の予算)が欠かせません。もちろんどんなに制度が整っても、それを使う人の知識や技術や適性、意欲がなければそれは意味を成しません。でも逆もまた然りで、素晴らしい支援者や職員がいても、適切な制度がなければ彼らの動きに制限がかかってしまうこともあるのです。『人』と『制度』この両輪が上手く機能してこそ充実した支援が得られると私は考えています。Upload By 荒木まち子制度の最新情報を集める大切さこのコラムの読者さん(発達ナビユーザー)は小さいお子さんの保護者の方も多く、制度や法律と言われてもいまいちピンとこないかもしれません。私も子どもが小さかった頃は毎日を過ごすのが精いっぱいでした。幼稚園でトラブル、学校での勉強、友達関係、反抗期、生活リズム、受験、進路、就職etc.目の前のことの対応に日々追われていました。でも、振り返ってみると「もう少し早いうちから制度や法律についても気にかけておけば良かった」と思っています。改正された障害者総合支援法・児童福祉法が2024年4月1日に施行されます。法律は難しいと感じるかもしれませんが、私たちの暮らしにどんな影響があるかを知っておくと将来への不安は少なからず減るはずです。改正の内容の一部をざっくり言うと◆グループホームで暮らしている方がそこを出て、別の暮らし方を希望した場合・2024年3月まで→新居は本人が探す・改定後→入居中のグループホームなどが居住支援(物件探し、一人暮らしで必要な支援の相談など)を行うといったようなものがあります。<参考>厚生労働省障害者総合支援法等の改正についてまた、障害のある子どもの就労に関しても、令和7年10月に新たな就労選択支援が施行される見込みだそうです。これは現在中学3年生の子どもからが対象ですので、当てはまる方は注視が必要です。情報はどこで入手する?地元に根づいたママ友同士の情報はときにとても有益ですが、法律や制度についての最新情報が話題に上がることは少ないかと思います。では、それらの情報収集はどこでしたら良いでしょうか。特別支援学校であれば学校やPTA主宰の勉強会などでも情報は得ることができますし、親の会(手をつなぐ育成会)の広報誌などでも最新情報が手に入ります。企業が主宰する講演会などに参加するのも良いかもしれません。<参考>全国手をつなぐ育成会連合会 (zen-iku.jp)人との繋がり、ネットワークを制度が充実したからといって、すべてを行政や支援者に丸投げして任せてしまうことがないよう私は心掛けています。なぜなら人との繋がりが希薄になってしまうからです。制度や支援を理解し上手く利用することで、親の私自身の心にも余裕が生まれ、子どもに対しておおらかに接することができるようになったのは事実です。でも親にはできなくて支援者にはできることがあるように、親だからこそできること、親にしかできないこともきっとあると思うのです。“親も支援者もワンチーム”といったぐらいの気持ちでお互い素敵な関係が築けたなら、そのネットワークはきっと親がいなくなった後も子どもを支え、守ってくれると私は考えています。今後、私が願うこと現在、支援やサービスに地域差があるのは確かです。でも都心に限らず、先駆的・画期的な取り組みをしている自治体はあります。それらが良い「モデルケース」となって全国に広がり、いつしか「スタンダード」になれば良いな、と思います。行政の、地域や業種・職種を超えた柔軟な繋がりや連携が広まり、どこに住んでいても同じような支援やサービスが途絶えることなく受けられるようになる日がくることを願ってやみません。放課後等デイサービスだって、子ども食堂だってヘルプマークだって全国に広まったんだから不可能ではないはず!と私は思っています。執筆/荒木まちこ(監修:渡部先生より)まさにおっしゃる通りで、私がコメントを差し挟む余地はほとんどないというのが率直な感想です。制度が無ければ希望する支援は受けられませんが、その制度を担う人がいなければ利用できない。どちらかが欠けても、本人の地域生活は成り立ちません。そして制度も少しずつ変わったり、新しいものができたりしています。こういった情報はなかなか検索しても見つかりません。ぜひどこかの家族会に入会して、本人が少しでも安心して暮らせるような情報をゲットして、下世話な言い方をすれば「トク」してほしいと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月27日障害のある子は親を選んで生まれてくるってホント!?新年早々、なんだかいきなり波乱を呼びそうなテーマですが、けっこう私はこの手の話を耳にするんですよ。「子どもは親を選んで生まれてくる」って。そして、「障害のある子どもは、それに耐えうる強い親を選んで生まれてくる」と……。こういった話について、障害のある子どもを育てている親御さんの反応はさまざまだと思います。「そうか!だからか……!だからうちを選んで生まれてきたのね!」と、救われるような気持ちになる人もいれば、「は?そんなことある訳ないわ」と否定する人もいることでしょう。じゃあ、私の場合はどうだったかというと……。「いや、もしそうだったら選び先間違えてるんじゃない?」と正直思いました。だって私ときたらズボラでいい加減で、家事だって下手くそだし、どう考えてもできた親じゃないし、今もきいちゃんをフォローしきれていないことがたくさんあるからです。おうち療育だって正直面倒くさい(というか、ほぼできていない……)生まれてくるなら、もっと私よりもテキパキしてたり、イライラしなかったり、向いてそうな人、たくさんいるやん!!と(もちろんそういうすばらしい親御さんもたくさんいます)。Upload By 星きのこそして、実際のところ、私の周りにいる障害のある子どもの親御さんたちも、定型発達の子どもの親御さんと何ら変わりがないわけですよ。つまり、すごいなと思う人もいれば、ズボラな人もいる。お洒落な人もいればそうでない人もいる。たまたま、障害のある子どもが生まれたってだけで、別に障害がない子どもの親御さんと何も変わりません。Upload By 星きのことにかく明るい!初めて「親の会」に参加して私が初めて親の会に参加させていただいた時のこと。私のまったくの偏見なのですが、障害のある子どもの親御さんって、お洒落にも気を遣う余裕なんてなくて、とっても疲れているというイメージを持っていました(本当にごめんなさい……!汗)。でも、実際にお会いしてみると、すごくお洒落な方や、バンドマンみたいな個性的なお母さんもいて(笑)。本当にいろんな方がいてビックリしました。そりゃそうですよね、子ども産んだからっていきなりその人の個性が変わる訳はありません。もちろん、子どもを産んでからは自分自身に手がかけられなくなるのは、定型発達の子どもも、障害のある子どものお母さんも、皆一緒です。それどころか、わが子のエピソードをネタにして、大笑いしているのにビックリしました……。「うちの子、この前、電車乗り間違えて大変だったのよー!」「うちの子がお風呂の中でウンチしちゃって、プカプカ浮いちゃって……」「うわ~!! うちなんてね……」あ、明るい……!皆さま、とても明るい……!! と、衝撃を受けました。反対に、親の会のメンバーから見た私の初対面の印象は、「く、暗い……!このママ、大丈夫かしら!?」だったそうです。最近、先輩ママさんに「きのこさん、明るくなってよかったわー!あの時、暗すぎてどうしようかと思ったもの」と言われました(笑)。と、言っているその先輩ママさんはなんと暗黒期が6年間もあったそうです! 皆、それぞれいろいろなことを乗り越えて今があるんだなあと思いました。Upload By 星きのこ「障害がある子の母は強い」なんて言われがちだけど、実際は結局、何が言いたいかというと、「子どもが親を選んで生まれてくる。障害のある子どもの母は強い」と言われますが、皆、周りの助けを得ながら少しずつ強くなっているんです。私には分からないけれど、もしかしたら本当に「子どもは親を選んで生まれてくる」なんてこともあるのかもしれません。私自身は、そういった考え方については否定的でもなく肯定的でもないのですが(むしろちょっとロマンチック~なんて思ったりもします(笑))、でも、そういう言葉で、心が弱っている母親に付け込むような商売をする人たちもいると聞いたことがあります。ですので私は、ちょっとお金儲けの匂いや怪しい感じがする団体には近づかないようにしています。いつか遠い遠い未来に自分もきいちゃんもあっちの世界(?)に行った時に、「ねえ、本当はどうだったの?ママ、すっごく驚いたんだけどー!」ときいちゃんに笑いながら聞いてみたいと思います。Upload By 星きのこ執筆/星きのこ(監修:鈴木先生より)以前にもお話ししましたが、ダウン症児の親の集いである「こやぎの会」発行の「ダウン症の健康手帳」1ページ目に書いてある詩の一部を紹介させていただきます。「会議が開かれました。(中略)天においでになる神様に向かって天使たちは言いました。“この子は特別な赤ちゃんでたくさんの愛情が必要でしょう。(中略)どうぞ神様この子のためにすばらしい両親をさがしてあげて下さい。(中略)天から授かった特別な子どもなのです」あなたは子どもが、そして天使たちが選んだ親なのです。あなたでなければ育てられなかったと天使たちの会議では結論したのです。豊かな愛を抱いて育ててくださいね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年01月23日私が出産した次男は、ダウン症候群です。妊娠中に異常を指摘されたことはなく、いざ自分が障害児の母親となったとき、「自分の人生は終わった」と、正直そう思いました。そんな絶望を味わった私ですが、次男のおかげで新しい夢ができたのです。ダウン症に詳しい人ってどこにいるの?私はダウン症の次男を出産したとき、とてもショックで1カ月間、毎日泣いて過ごしました。毎日泣いて過ごしながらも、私は「ダウン症には早期療育が必要と言われているけど、療育って何? どうやって始めたらいいの?」「障害があっても保育園に入れるのだろうか?」「利用できる福祉サービスは?」など、日々たくさんの疑問が……。 区役所に行って福祉サービスについて聞くと「保健センターが窓口になるので、そちらに行ってください」と言われ、保健センターへ行くと「詳しいのは区役所のほうなんです」と、区役所や保健センターをたらい回しにされたこともありました。結局、一番正しい情報を教えてくれたのは、ダウン症の親の会で知り合った先輩ママでした。 ダウン症専門のコンシェルジュになりたいこういった経験をして「これからダウン症の子を出産する人が、私と同じように困ることがあるのではないだろうか? そうならないように、福祉サービスの手続きや内容に詳しい“ダウン症専門のコンシェルジュ”になって、ダウン症児を出産して困っている人たちに寄り添いたい」と思うようになりました。 現在では、SNSに出産直後の暗い気持ちをそのまま文章として残したり、福祉サービス利用までの経緯や手続き方法について投稿したりしています。実際に、私のSNSを見た方から「先日ダウン症の子を出産してショックで毎日泣いていますが、あなたの過去の投稿を見て、とても共感して救われました」とメッセージをいただくこともあります。 次男を出産した直後は、障害児の親になったことのショックが大きく、「私がこの子を心からかわいがる日なんて、こないのではないか」と思っていました。ですが現在、1歳2カ月になった次男を心からかわいい、愛おしいと思いますし、次男のおかげで「ダウン症専門のコンシェルジュになりたい」という新たな夢ができたことを、うれしく思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師 松田玲子イラスト/森田家著者:吉川 みきな
2024年01月17日『目に見えるだけが障害じゃないと知ってほしい。』24万人もの方が、20歳以降に発達障害と診断されている現代社会。(大人の発達障害ナビより引用)そんな中、発達障害(ADHD)のパートナーをもつ人は、日々の生活をどのように暮らしているのでしょうか。そこで今回のMOREDOORでは、ADHDのパートナーと結婚して10年目になるBさん(仮名)にインタビューを実施。Bさんの日々の暮らしと、夫婦関係の専門家カップルセラピストからの意見をご紹介します。※当事者の声はさまざまです。あくまで一例として、考えるキッカケになれば幸いです。さまざまなところに違和感を覚え……ーーパートナーがADHDかも?と気づいたきっかけは?Bさん:生活面だと片付けられないところです。やったらやりっぱなしです。人間関係も広くは付き合わないし、飲み会も行きたがらない。金銭面もあったらあった分だけ使ってしまいます。コミュニケーションも一方的で人の話は聞かなくて……。そういったさまざまな面を見て「ADHDなのでは?」と気が付きました。ーー日常生活を送る上で、悩んでいることは?Bさん:やはり片付けられないことですね。ーー解決に向けてどんな工夫を?Bさん:その都度伝えて、パートナー自身に気づかせてました。ーーパートナーとは、どんな関係性を築いていきたいですか?Bさん:今のまま仲がいい夫婦のままがいいです。ーー今後、社会に対して「もっとこうなったら良いのにな」と思うことは?Bさん:まだADHDの認知度も低いので目に見えるだけが障害じゃないことを知って欲しいです。仲良し夫婦のままでいたい片付けが苦手なところや、コミュニケーションが苦手なところを見て、「パートナーがADHDなのでは」と気が付いたBさん。普段から相手をよく見ているからこそ、気が付けたのかもしれません。またADHDの症状は「怠慢、サボりだと勘違いされやすい」とも言われています。愛するパートナーの特性を上手に乗り越えてきたBさんだからこそ、世間の人にもっと知ってほしいと強く願っているようですね。カップルセラピストは2人の関係をどう見る?パートナー間の関係改善を目的としたカウンセリングを行う、“カップルセラピスト”はお二人の関係をどう見るのでしょうか?これまでの3,000件以上に及ぶ臨床経験を活かし、パートナー間の課題解決をサポートしてきたカップルセラピストの坂崎さんに話を聞きました。ーーBさんのお話をどう感じましたか?カップルセラピスト坂崎さん:結婚10年目で、「今のまま仲が良い夫婦のままがいい」と言えるのは素晴らしいと思います。その言葉が言えるまでになった背景には、「その都度伝えて、パートナー自身に気づかせる」という努力の賜物だと思いますし、辛かったことも葛藤もあったことでしょう。ADHDといっても、もちろん人それぞれで、共通点はあるものの、性格も違えば必要な対応も違っていきます。決定的に改善が難しいものもあれば、工夫次第で改善可能なことも多いです。片づけはその中でも、工夫してきたが諦めることやむなしと思っておられる部分なのかもしれませんが、その工夫をお互いの協力で見出していくことが重要ですね。向き合うことの大切さADHDのパートナーをもつと大変な面ばかりがクローズアップされがちです。しかし、実際のパートナーをもつ当事者Bさんからは、お互いに症状と向き合うことで、素敵な関係性を築けることが伝わってきました。ADHDといってもひとくくりにはできず、個人と個人として向き合う中で見えてくる解決策があるのではないでしょうか。みなさんは、この記事を読んでどのように感じましたか?コメント・監修者:坂﨑 崇正(さかざき たかまさ)臨床心理士・公認心理師、COBEYAセラピスト。2010年鳴門教育大学大学院修了。スクールカウンセラー、男性相談員、就労支援相談員、専門学校講師等を経て、2021年よりCOBEYAにカップルセラピストとして参画。これまでの3,000件以上に及ぶ臨床経験を活かし、パートナー間の課題解決をサポート。(MOREDOOR編集部)
2024年01月05日息子の困った行動と、ある日の夕方の出来事Upload By べっこうあめアマミある日の夕方のことです。その日は子どもたちが持ち帰った汚れ物が大量で、私は大量の汚れ物の予洗いをしていました。すると、居間から娘が私を呼ぶ声がしたので急いで見に行くと、居間は大惨事となっていたのです。息子には感覚刺激を求めて遊ぶくせがあり、私が居間に駆けつけた時も、ちょうど夢中になって遊んでいるところでした。この行動自体は息子の自己刺激の一種で、日頃からよくあることではありました。しかし、その日は帰ってから息子がなかなか玄関から動かないなど、いろいろと続いており、さらに、疲労に加え体調不良もあって頭が全く回らない状態だった私。思わずカッとなって、息子にひどい叱り方をしてしまったのです。自分の育児に自信がなくなって……あふれる涙息子を激しく叱って泣かせてしまうと、過去のいろんな出来事や今の自分の状況が頭を巡り、私も涙がとめどなくこぼれました。自分がこれまでしてきたことは正しかったのか……何も現状が変わっていないように思えて、虚しく思えたのです。そして同時に、自分があまりにいっぱいいっぱいであることにも気がつきました。夫の帰りはいつも深夜が当たり前で、私の実家は遠方です。ワンオペ育児の疲労からか、頻繁に吐き気や頭痛に襲われる状態で、さらに自分自身の持病の不安も加わり、精神的にも不安定でした。相談しようと思えばできる人がいたと思うのですが、自分の弱さをさらけ出す勇気が出ず、誰にも言えない悩みやつらさだらけで、 追い詰められていました。次の日の朝、息子の反応はUpload By べっこうあめアマミ次の日の朝、ひどい頭痛で起きられずにいると、夫が息子の支度をすべて完了してくれていました。私は昨夜のことが気まずくて、息子にどう接していいか分からずにいました。すると息子は、家を出る時に私にぺこっと頭を下げ、手を挙げて「いってきます」のポーズをしてくれたのです。その姿に、激しい罪悪感に苛まれていた私は、勝手ながら少し救われた気がしました。息子は話すことができず、本心を知ることはできませんが、いつも通りの一日を始めることができました。ただ、また夕方が近づいてくると、息子にどう接していいのか不安になると共に、また昨日のようなことが起きないかと不安がどんどんふくれあがっていきました。息子の担任の先生に電話、先生の言葉に救われてUpload By べっこうあめアマミ夕方、私は散々迷ったあげく、昨日の出来事を誰かに話さなくてはならないような気がして、息子の学校の担任の先生に電話をしました。その日の息子の様子が気になって、このまま息子と顔を合わせるのが怖かったからというのもあります。電話口に先生が出ると、何から話していいか分からなくなりましたが、最近あったことをポツポツと話し始めました。先生はその話に一緒に驚き、共感してくれました。孤独感を強く抱いていた私でしたが、先生とは一番近い感覚で、息子の現状を共有し合えている気がしました。先生こそが、息子に対して私と一番近い認識を持ってくれている相手だと確信したのです。そして、話の流れから昨日の出来事を話しました。先生は私の話を聞いて、まず、「話してくれてうれしい」と言ってくれました。「お母さんが話してくれたから、助けようとすることができる、だから話してくれる存在になれたことがうれしいんです」と。続けて「親だってそうなってしまうことはある」と、気持ちに寄り添ってくれました。私のことを一切責めず、否定せず、共感し、労わってくれたのです。「すでにお母さんはこの電話をするまで、いっぱい反省したと思う。この電話をかけることもすごく勇気がいったと思う。だから、もう昨日起きてしまったことは、難しいかもしれないけど一旦考えないようにしましょう。もう自分を責めないで。」先生の言葉に、私は涙が止まらなくなりました。特別支援学校は、特別な支援を必要とする子どもだけを支援する場ではないUpload By べっこうあめアマミ先生は、息子の気持ちについても言及してくれました。今朝の出かける時の反応がすべてだと思うと。「気にしてないよ、大丈夫だよ」ということだと思うと。たぶん、何を言ってもやってもヘラヘラしているように見えるのは、息子本人もなんで怒られているのか分かっていないからで、まだ理解が難しいんだと思うとも話してくれました。そしてその上で、学校でどんな対策をしているかなども教えてくれました。先生は、こうも言ってくれました。「特別支援学校は、特別な支援を必要とする子どものためだけに支援をする場ではないと思っています。そうしたお子さんのご家族の支援もしていきたいから、これからも、何かあったらどんどん電話してほしいし、連絡帳にも書いてほしい。夜も寝られず悩むことがあったら、長文の手紙にして連絡帳に挟んでくれてもいい。学校に話しに来てくれてもいい。だから、いっぱい話しましょう。」そして、「お母さんって本当にすごいと思います、だって朝から夜寝るまで、ずっとですもんね」と言ってくれました。先生は、家で障害児をみる親の大変さを理解してくれていたのです。その上で、息子だけでなく、私や家族も支援したいと言ってくれました。学校は子どものためのもの、担任の先生は息子の担任であって、あまりご迷惑をかけてはいけないと思っていましたが、このときの先生の言葉に、私は心底救われたのです。私が欲しかった言葉をくれた先生、息子だけでなく、私にとっても頼れる存在娘のお迎えの時間がせまっていて、さらに泣きすぎてうまく受け答えができずにグズグズな情けない姿をさらしてしまいましたが、先生と話したことで、私の気持ちは落ち着きました。先生は、私が欲しい言葉を全てくれた気がしました。こうして私は、先生と話したおかげで、ずっと落ち込んでいた気持ちがすっきりし、「いつもの自分」で子どもたちのお迎えに出発することができたのです。次の日、なんとまた先生が電話をくれました。私の様子を心配しての電話でした。「何かあったら積み重なる前に、どんどん相談してください」と、また心強い言葉を言ってくれたのです。先生との電話を終えて連絡帳を見ると、そこにも心遣いのメッセージがありました。「迷うこと、不安になること、ママにしか分からないことがあっても、絶対に一緒に戦います。味方はいっぱいいます、頼ってください。」先生からの一つひとつの言葉に支えられて、今の私がいます。息子だけでなく、親である私のケアまでしてくれて、明日への力をくれる、そんな特別支援学校って最強だなと感じた思い出です。執筆/べっこうあめアマミ(監修:初川先生より)担任の先生の言葉に救われたエピソードのシェアをありがとうございます。特別支援学校だからこそ障害についての理解や障害のあるお子さんを育てる大変さをよくご存知で、少人数で支援が行き届きやすいといった側面はありますが、おそらく読者の方の中には、特別支援学級や通級指導教室、通常学級であっても担任の先生の言葉に救われたことに思い当たる節のある方もいらっしゃるかもしれませんね。家庭と学校はお子さんが長く過ごす場です。お子さんの難しさやずっと一緒にいることでそばにいる大人にかかる負担など、先生方と保護者の方とでは共有できるものがたくさんあります。アマミさんはずっとこれまで親だから自分で頑張らなければ、担任の先生は子にとっての先生であって自分が頼る相手ではないとかなりご自身を律してこられたのだな、とこのエピソードを読んで思いました。ただ、どんな人にも気持ちやコンディションはあって、いつもいつも頑張れるわけではないです。そして、お子さんに障害などの難しさがあったらなおのこと、負荷がかかっている面があるのも当然だろうと感じます。保護者の方がいっぱいいっぱいになられた際に、弱音を吐いたり、つらいと言えたりする相手や場があるといいなと心から思います。アマミさんのように担任の先生がそのお相手となることもありますし、場合によっては養護の先生や特別支援コーディネーターの先生であることもあるかもしれません。スクールカウンセラーや地域の子育て相談窓口がそこを担うこともあると思います。「何かあったら積み重なる前に」「相談してほしい」と思っている支援者は探してみると近くにいるのではと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月23日きょうだい児とは?「きょうだい児」は、障害のある子どもの兄弟姉妹を指す言葉として使われています。保護者が障害のある子どものケアを行っていることで、きょうだい児はバランスを取るため、家庭内で優等生的な役割を演じることや、自分よりも他者を優先するようになることがあると言われています。そして、そういった状態が続くことで心身の不調や不登校などにつながる可能性も指摘されています。一方できょうだい児にはその環境から「他者への配慮ができるようになる」「責任感が強い」「自立した人になる」などのポジティブな面もあると言われています。こういったさまざまな面があるきょうだい児ですが、これまで注目されてこなかったこともあり、まだ支援制度などが整っていないというのが現状です。兄、弟、姉、妹のそれぞれの漢字の組み合わせで「きょうだい」という読み方があるため、漢字ではなくひらがなで表記される場合が多いので、本コラムでも「きょうだい児」と表記していきます。近年、きょうだい児についてメディアなどで取り上げられる機会も増えてきています。しかし現在までに国などの大規模な調査は行われておらず、日本全国にきょうだい児がどのくらいいるのかは、よく分かっていません。また、「ヤングケアラー(本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の児童)」という言葉も注目されています。ヤングケアラーは直接的に家事や家族の世話をするという点できょうだい児とは異なっているものの、きょうだい児もヤングケアラーも、「ケアをする側」としての役割を求められがちで、「ケアが必要な存在」として認識されにくいという共通点があります。本コラムでは、きょうだい児の抱えやすい悩みや、保護者の関わり方などについて、発達ナビで行った「きょうだい児」に関するアンケート結果を交えて紹介します。また、小児科医として発達障害のお子さんやご家族と多く関わってこられた室伏佑香先生にもお話を伺いました。参考:学校教育における慢性疾患や障害のある子どものきょうだい支援の課題|滝島真優参考:障害のある児のきょうだいに関する研究の動向と支援のあり方|川上あずさきょうだい児への関わり方、どうしたら?発達ナビアンケート結果とエピソードのご紹介発達ナビでは、発達障害のあるお子さんのいるご家庭に「きょうだい児関係」のアンケートを実施しました。ここではアンケート結果と、保護者の方からお寄せいただいたお悩みやエピソードなどをご紹介します。Upload By 発達障害のキホン参考:「きょうだい児関係」アンケート&エピソード募集!コミックマンガエッセイ化も!きょうだい児がいる割合は、今回アンケートに回答いただいたご家庭のうち、約60%にきょうだい児がいるという結果になりました。内訳として、年上のきょうだい児(兄姉)がいる家庭と、年下のきょうだい児(弟妹)がいる家庭は29%で同じ割合でした。そして、年上と年下のきょうだい児両方がいるという家庭も2%でした。また、きょうだい児とは異なりますがきょうだい共に特性があるというご家庭は22%という結果でした。実際に読者の方から寄せられた、きょうだい児がいるご家庭のエピソードを紹介します。長男に障害があり、次男がきょうだい児です。長男に障害があると分かった時からは、きょうだいそれぞれが私(母)を独占できる時間を意識してつくるように心がけました。長男が宿泊活動で家にいない時には、次男は学校を休ませて一緒に旅行に出かけるようにしたり、長男が放課後等デイサービスに通っている間は次男のリクエストに可能な限り応えるようにして過ごしていました。思春期の頃はきょうだい共に荒れて殴り合いのけんかをしたこともありましたが、成人した今となってはお互いができることを尊重できるようになり、長男ができないことを次男がサポートするといった関係になっています。姉がきょうだい児で下の子に発達障害があります。下の子は一人になることに強い抵抗があり、きょうだい児である姉に対して執着し、姉も親を気遣って我慢している様子があり感謝と申し訳なさを感じています。下の子は姉に対して遊び相手としても心のよりどころとしても執着して、常にそばにいたがるので、姉は家庭で勉強もリラックスもなかなかできず学校の成績や宿題に影響が出ることもあります。しかし、遊びを断ると癇癪を起こすので、他のことがしたくても一緒に遊んでくれているのです。そのために疲れて体調を崩すこともありますが、「自分が遊びの誘いを断ることで家族が困るくらいなら自分が我慢すれば……」と話して相手を続けてくれているようです。できる限り親が遊び相手をするようにしていますが、仕事や家事などもあり、限界があるため姉は親を気遣ってくれています。下の子は時には他害することもあり、きょうだい2人だけにするのは危険なため親のどちらかが立ち合いのもとで遊ばせるようにしています。きょうだい児の悩み……結婚、親なきあとは?医師Q&A次に、きょうだい児がいる家庭が抱えやすい課題や、よくある悩みについて、保護者としてどのように関わっていけばよいのか、小児科医の室伏佑香先生に伺いました。(質問)障害がある子どもにどうしても手がかかってしまい、きょうだいに十分かまってあげることができず心苦しく思っています。(回答)お子さんに障害がある場合には、通院や療育などでどうしても障害のある子を連れて行かなければいけない場面や、家庭内でも介助や対応などが必要できょうだい児に寂しい思いをさせてしまうこともあるかと思います。ショートステイなどの福祉サービスを利用し、保護者ときょうだい児がゆっくりと向き合える時間を意識的につくっていくのもよいでしょう。Upload By 発達障害のキホン(質問)発達ナビのアンケートやその他調査などでからも、きょうだい児は、自分の人生を自分だけで決められないと感じたり、将来への不安があることもうかがえます。保護者としてどのように対応すべきでしょうか?(回答)きょうだい児の方は、進路や居住地、結婚についてなど、自分の思い通りに決断することに後ろめたさを感じてしまう方も多いようです。成長するにつれて保護者に話しにくい悩みも出てくることと思います。同じ立場で話し合えるきょうだい児の当事者会などへ参加できるようにサポートするのもよいでしょう。Upload By 発達障害のキホン(質問)親なきあと(親が障害のあるきょうだいの世話ができなくなった時)が心配です。親としてどのような準備ができるでしょうか。(回答)グループホームなど障害のある子どもの住まいや、公的な障害年金以外にも障害がある子どもが受け取れるお金の仕組み(金融機関などを活用する信託や、自治体が運営している障害者扶養共済など)などがあるので、さまざまな情報を整理して、準備しておくと良いですね。また、親なきあとに向けて、将来的に成年後見制度などを活用することも見すえ、障害のあるお子さんが自立できる支援体制を整えておくことが大切です。また、中には必要以上に責任を感じて自分が面倒を見なければならないと思ってしまうきょうだい児の方もいます。日ごろから家族でよく話し合って、福祉制度や活用できる支援に対する理解を深めておくといいでしょう。Upload By 発達障害のキホン参考:障害福祉サービスについて|厚生労働省参考:特定贈与信託|一般社団法人信託協会参考:障害年金|日本年金機構参考:障害者扶養共済制度(しょうがい共済)|厚生労働省参考:成年後見制度とは|厚生労働省きょうだい児支援の現状や今後の課題は?ここまで見てきたように、きょうだい児には特有の困難があります。しかし、障害の当事者や保護者への支援はさまざまありますが、きょうだい児を対象とした支援制度はまだ制度化されていないというのが現状です。そもそもきょうだい児についての大規模な調査などもこれまでのところされておらず、研究が進められている段階です。ある研究で実施された教師を対象にしたアンケートでは、忘れ物や学力の不振、友人関係などへの影響が出ているという回答や、精神面や健康状態についても影響が見られるという回答も見受けられました。また、きょうだい児自身の就職や結婚、親なきあとのへの不安なども指摘されています。そのような状況ではありますが、明確にきょうだい児を対象とした公的な支援はほとんどなく、既存の制度の活用や当事者会への相談など利用できる資源が限られています。そういったことからも、学校などの教育現場、医療や福祉の現場、行政などが連携したきょうだい児への支援制度を設立することが課題と言えるでしょう。参考:障害児・者のきょうだいが抱える諸問題と支援のあり方|柳澤 亜希子参考:学校教育における慢性疾患や障害のある子どものきょうだい支援の課題|滝島真優まとめきょうだい児とは障害のある子どもの兄弟姉妹について使用される言葉です。きょうだい児は家庭内で我慢を続けたり、将来への不安を抱えるなど、精神的な負荷も指摘されています。そのため、ショートステイなどの制度を利用しきょうだい児とゆっくり向き合う時間をつくることや、親なきあとを見据えて福祉制度の理解を深め、話し合っておくことも大事になります。また、家庭外でリフレッシュできる機会をつくることも大切です。きょうだい児の当事者会などもあるので、家庭から離れた場で相談したり、同じ立場の人ときょうだい児あるあるを語り合ったりといった活動をすることも心身の健康を保つ方法の一つです。きょうだい児の支援に関してはまだ公的な制度が整っていないのが現状ですが、保護者としては家庭内外でできることをしていくといいでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年12月13日なぜ平日だけでなく、土曜日も利用するのか?Upload By べっこうあめアマミ私は当初、息子の放課後等デイサービス利用は平日だけを考えていました。なぜなら放課後等デイサービスの利用日数には限りがあるからです。私は在宅ですが仕事をしていますし、平日、息子が学校のあとに過ごす場所があることが最も助かると思っていました。しかし、息子の特別支援学校入学前、夫と放課後等デイサービスの利用日を話し合った時のことです。夫から、「土曜日を入れたほうがいいんじゃないか」という提案がありました。わが家には、息子より4歳年下の娘がいます。「娘には息子の事で我慢させてしまうこともあるかもしれないから、土曜日は娘だけのチートデイにしてはどうか」というのが夫の意見でした。それを聞いて、私も「確かに」と思ったのです。娘は毎日保育園に通っているので、平日の放課後等デイサービスがない日は、娘より息子のほうが早く家に帰ってくることになります。平日の放課後等デイサービスがない日は息子の日、そして土曜日は娘の日、そうやってそれぞれに向き合う時間をつくるのもいいのではないかと思ったのです。きょうだい児の娘にも、やりたいことを我慢してほしくないUpload By べっこうあめアマミ娘は今5歳。女の子向けのアニメにもハマっていて、映画やキャラクターイベントにも行きたいと言い出すお年頃です。そして、活発な娘は思いきり体を動かす公園や、動物と触れ合える場所なども大好きです。しかし、そういう場所に休日に行くと、どうしても混雑はまぬがれません。息子を連れて行ったらぐずってしまわないか、動きづらくならないかと不安もあります。しかも、息子は娘とは逆であまり動きたがらない性格なので、公園遊びなどのアクティブなことはあまりしないのです。そうなると、娘と息子、2人とも楽しめる場所というのはなかなか難しいものでした。しかし、土曜日に息子が放課後等デイサービスに通うようになってからは、娘が行きたい場所は、土曜日に心置きなく行けるようになりました。娘はきょうだい児だけど、できる限り好きなことをさせてあげたいし、息子がいるから……と、やりたいことを我慢させたくない。私にはそんな強い思いがあったので、土曜日は重要な意味のある日になったと思っています。親としても、混雑する場所やアクティブな遊びの場へ行く際に、子どもを2人連れていくよりも負担が減るので、助かっています。息子にもメリット、土曜日だからこそできる活動もUpload By べっこうあめアマミ土曜日の放課後等デイサービスは、息子にとってもメリットがあると感じています。土曜日は平日よりも時間が長いので、平日はできないようなプログラムが組まれることもあるのです。学校がある平日では行けない、ちょっと遠い所へのお出かけなどに連れて行ってもらえることもあります。お昼ごはんやおやつをみんなでつくる日もあります。このように、息子は息子で土曜日を楽しめているのではないかと思うのです。息子としても、妹につき合って苦手な場所に行くよりも、大好きな先生やお友達とのんびり過ごすほうがいいことだってあるかもしれません。日曜日は家族でのんびり過ごす日Upload By べっこうあめアマミ土曜日は娘のチートデイとして、娘がしたいことをする日にしているわが家ですが、日曜日はだいたい家族で一日のんびり過ごします。息子も行けそうな場所なら家族4人でお出かけすることもありますし、特に何もせず、家でゆっくりすることも多いです。そうして昼下がりに家族で夕飯の買い物に行って、近所のショッピングモールをぶらぶらしたり、または外食をしたり。そんな、家族水入らずの過ごし方をしています。放課後等デイサービスのおかげで、バランスのとれた一週間にわが家が放課後等デイサービスの利用を始めてから3年が経ちますが、一週間がうまい具合にバランスがとれて回っていると感じています。息子は小学1年生の頃より成長し、今ではそれほど苦手な外出先もないかもしれません。しかし、それでも娘は今後成長していくと共に、きょうだいと一緒の外出しかできないことに不満を感じたり、親も気がつかないうちに我慢をさせてしまうことがあるかもしれないと思うのです。今後も土曜日という娘のための日を維持していくことで、娘の発散になってほしいと思いますし、何かあれば普段は言えない気持ちを聞ける日になるといいなと思います。私たち家族の生活は、平日も土曜日も放課後等デイサービスに支えられており、先生方にはいつも感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、放課後等デイサービスのお世話になりながら、子どもたちそれぞれに向き合っていきたいと思います。執筆/べっこうあめアマミ(監修:鈴木先生より)土曜日を娘さんの日にして、お子さんそれぞれに向き合う時間をつくったとのこと、とても良いアイディアだと思います。曜日が固定されていることは、こだわりのあるASDのお子さんにとってもいいことだと思います。外来で爪を噛んでいるお子さんにも「毎週土曜日は爪を切る日にしようね」とお話ししています。病気や障がいを持ったお子さんのきょうだいには、どうしてもストレスや負担がかかりがちです。特に入院されているお子さんの場合は、付き添いなどで保護者の手が取られてしまうので、きょうだいは甘えたい時に甘えることができません。その結果、きょうだいが腹痛や頭痛など心身症の症状を呈する場合もあります。子どもだけでなく、ご家族の一人が病気になった時も同じです。アマミさんのご家庭のように、放課後等デイサービスなども利用しつつ、家族みんなで協力してやっていくことが大切なのではないでしょうか。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年11月23日育児につまずき、思い詰めて心療内科を受診した私。そこで医師から投げかけられた言葉は「発達障害の疑いがある」という、私にとって意外な言葉でした。そこで心理テストを受け、結果を受け止めた今の自分の心境をお伝えします。ほかのママとどこかで比べてしまう現在、私は3歳と0歳の姉妹を育てている2児の母親ですが、上の子も下の子も出産後から両親や親戚などに頼らず、ほぼワンオペで育児をおこなっていました。孤独に育児をしていたこともあってか、ほかのママ友たちと自分を比べると「どうも私は子どもに対する愛情に欠けているのではないか」と思ってしまう自分がいることに気づいたのです。たとえば、子どもとどうやって遊べばよいか本気でよくわからなかったですし、一生懸命に育児本を読んでそのようにおこなっても、いまいち乗り気になれない自分がいたりしました。特に下の子を出産したあとの数カ月の間は、上の子に対して感情的に怒鳴るなどひどい扱いをしていたことも事実です。そんな出来事から「私はもしかして産後うつなのでは?」と思い悩み、また慢性的な睡眠障害もあって、思い切って心療内科を受診したのです。 思い切って心療内科を受診心療内科を受診したのは下の子が生後半年を過ぎたころでした。医師からの診断は「適応障害と産後うつ」そして「発達障害の疑いがある」という、私にとっては衝撃的な話でした。恥ずかしながら発達障害というワードだけは聞いたことがありましたが、詳しくは知りませんでした。早速家に帰って発達障害について調べてみたり、セルフチェックテストなどをおこなったりしました。たしかに今までの人生を振り返ってみて対人関係においてのつまずきや、職場でのトラブルなどはあったのも事実ですし、いわゆるADDやADHDの症状である「忘れっぽさ」や「衝動性の強さ」「こだわりの強さ」があったように感じました。 愛着障害と診断を受けて後日、2日ほどに渡って精密な発達障害の心理テストを受けたのですが、結果は「発達障害の所見はなし」でした。しかし、私が過去に実親から暴力などの虐待を受けたことがあるということから、「愛着障害の可能性がある」と医師から聞かされました。愛着障害とは、乳幼児期において暴力やネグレクトなどで傷を負い、適切な愛情を持って育てられなかった子どもが、社会人になったときに対人関係や仕事、そして育児などに支障が出る障害のことだそうです。医師からその診断を受けたときは、正直言って「やっぱりな」と思う自分がいました。 まさか自分が発達障害の疑いを持たれるとは思いもよらず、心理テストの結果が出るまではモヤモヤでいっぱいでしたが、発達障害やそのほかの精神疾患などについての勉強にもなりました。客観的に自分が親にされてきたことは虐待だったのだと受け止め、過去の自分と向き合うことで本当の私になれる気がしています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日になりますように! 監修/助産師 松田玲子著者:仲本まゆこ自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2023年11月18日「東大卒はなるべく隠しておきたい」という当事者の言葉『ルポ高学歴発達障害』は、世の中で言われる「高学歴」の発達障害当事者10人のインタビューや、大学教員、精神科医、支援団体への取材を通じて「理解が得られにくい不条理」に迫った1冊です。このコラムでは、著者である姫野桂さんのインタビューをお届けします。Upload By 発達ナビ編集部――姫野さんはご自身の経験も合わせて、発達障害についてさまざまな発信をされてきました。今回、「高学歴発達障害」をテーマに選ばれたのはどのような思いからですか?姫野桂さん(以下、姫野):以前、高学歴なのに発達障害の特性で仕事がうまくいっていない方の記事を読みました。今まで取材してきたなかでも京都大学を卒業している方で、同僚はすぐに覚えられる電話対応などの仕事が覚えられずにうつ病になってしまったとお話ししてくださった方がいました。高学歴というとエリート道を進んでいると思われがちですが、実は悩みも抱えている人が多いことを伝えたくて本にしました。また、私自身は超高学歴ではありませんが、就職活動や会社員時代に苦労したのでそういった苦悩も書きたかったからです。――大人の発達障害当事者の方からは、「ケアレスミスが多い」「マルチタスクが苦手」「職場でのコミュニケーションがうまくいかない」といった声が聞かれますね。姫野さんご自身の苦労とは、どのようなものだったのでしょうか?姫野:就職活動で例を挙げると、当時は自覚がなかったのですが算数障害があり、SPI(適性検査)の数学がまったくできませんでした。大手企業はSPIを導入しているところが多かったため、大手企業は避けるようにして中小企業に絞りました。――そうすると面接に進めるように?姫野:そうですね。ただ、自分をより良く見せることが不得意なこと、本音を話してしまうことなどから、うまくいきませんでした。例えば、「なぜ弊社を選んだのですか?」と聞かれた際に「福利厚生が良かったからです」と答えたり、「何か質問はありませんか?」と聞かれた際に「残業はどのくらいありますか?」といった質問をしたりしていました。――今回、10人の発達障害当事者の方を取材されています。印象的だった言葉を教えてください。姫野:東京大学法学部卒の女性の「東大卒はなるべく隠しておきたい」という言葉です。東大卒ということで期待されるボーダーラインが上がってしまうという点は、理不尽だと思いました。※本書では当事者の方のプライバシー保護のため、氏名や年齢、事実関係などが一部変更されています最後に、石川さんに東大卒であることを“損”に思ったことはあるか聞いてみた。「それはあります。やはりハードルを上げられてしまうので、「東大卒だったら何でもできるだろう」というような感じで“合格ライン”が上がってしまう感じがあるんです。だから、なるべく隠しておくほうが得だなと思います。石川真里さん(東京大学法学部卒業)の言葉――早稲田大卒の男性も同じようなことをお話しされていますね。結果的にその会社は辞めたのですが、そのとき僕を怒鳴っていた上司は学歴コンプレックスがあったんです。「お前は俺が行きたかった大学を卒業しているのになんでそこまで仕事ができないんだ」と言われたことがあって。(中略)必要のない限りは、大学名を口にしなくなりました。三崎達也さん(早稲田大学経済学部卒)の言葉――そして、お二人とも「東大は自分にとても合っている場所だったので、それはすごく良かった」「自分のポジティブな部分を作ってくれたのは早稲田のおかげ」というように、誇りに思われているのも印象的でした。プライドとの折り合い――精神科医の熊代先生とは、高学歴の発達障害者が自身のアイデンティティと向き合っていくことの困難さについてお話しされていますね。ご自身の体験と重なるようなことはありましたか?姫野:私自身、発達障害が分かったのが30歳のときでした。就活を始めた頃、鬱病を疑って心療内科にかかったのですが、発達障害については何も言われず、抑鬱状態という診断を受けました。もっと早く発達障害があると分かっていたら、就職活動の仕方や仕事選びも変わってきていたのではないかと思います。当時はリーマンショックの影響で周りの友人もなかなか内定が出ない人が多かったので、発達障害が原因ではなくリーマンショックのためだと考えていました。それでも、「なぜ人事受けが良いはずの大学なのに受からないんだ」という葛藤がありました。そのあたりのプライドの折り合いをつけられたら良かったなと思います。子どもの頃から学業では優れていても、社会関係の部分ですごく弱みや苦手があるということを踏まえて、天狗にならないようにするというか、学歴を鼻にかけないようにするのが処世のあり方として結構重要になります。そのためには自身の発達適性の早い段階での把握は肝要です。(中略)ただし一方で、「自分には何かできるはず」「秀でたものがあるはず」といったアイデンティティを持つことには可能性もあるんですよね。ここも高学歴発達障害者の方のアイデンティティの形成戦略としてかなり難しいところです。熊代亨さん(精神科医)の言葉「大学が一番楽しかった」という声――筑波大学における学生支援についても取材されていますね。姫野:筑波大学のヒューマンエンパワーメント推進局の取り組みは素晴らしいと感じました。特に発達障害のある高校生へ向けた「大学生1日体験講座」で、10名限定ですが高校生一人ひとりに学生のメンターがつき、中には「障害学生支援技術」などを履修したピア・チューター(有償のボランティア)がいるのはとても魅力的だと思いました。ピア・チューターになるには自由科目の「障害学生支援技術」を履修したうえで、視覚障害、聴覚障害、発達障害といった形でコースに分かれた集中講義を受けてもらいます。佐々木銀河さん(筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局)の言葉ただ、多くの高学歴発達障害者を取材してきて、ほとんどの人が「大学が一番楽しかった」と答えています。社会に出てからどう自分の特性とつき合っていくかが課題だと思っています。――たしかに、「社会に出てから」「就職してから」直面した困難がインタビューからも強く感じられますね。最後に、本書をどのような方に読んでほしいとお考えでしょうか。姫野:高学歴発達障害当事者だけでなく、同僚や家族、友人など身の回りに高学歴発達障害の方がいる方にも読んでいただき、周りの期待やエリートのイメージと実情との乖離、活躍している大学時代の友人との比較、アイデンティティとの折り合い……といった「高学歴であるからこその葛藤」があることを知ってほしいです。そして、「あの人は高学歴だから」という前置きを外して個として見てもらえたらと思いますし、彼らが苦手そうなことにぶち当たって困っていたら「何か手伝おうか?」と声をかけるなど、そっとさりげなくフォローしていただきたいです。――ありがとうございました。姫野 桂さんフリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。著書に『私たちは生きづらさを抱えている発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)『生きづらさにまみれて」(晶文社)電子書籍『ダメ恋やめられる!?発達障害女子の愛と性」(集英社)。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年10月27日きょうだい児として育ったはちみつこさん。きょうだい児とは、障害や病気などを兄弟姉妹に持つ子どものこと。はちみつこさんにはふみちゃんという妹がいるのですが、子どものころから少し「あれ?」と感じることが多くありました。そんな矢先、「就職したはずの妹が解雇になった」と母親から電話を受けたはちみつこさん。結局ふみちゃんははちみつこさんが住むB市に引っ越すことが決まったものの、家賃はすべて母親持ち。自分とあまりにも違う扱いを不公平に感じ、はちみつこさんはふみちゃんへのイライラを抑えられません。はちみつこさんがふみちゃんにイラ立ちを募らせていたのは、当時の仕事上での待遇にも原因があったようで……?そして3年後。妹との関係は… しばらくの間ふみちゃんと距離をおいていたはちみつこさん。そんな2人の関係を変えるきっかけとなったのは、はちみつこさんの出産でした。母親から、ふみちゃんははちみつこさんにずっと憧れていること、女性としての幸せを望めない可能性があることなどを聞いたのです。親になったからこそ、母親のふみちゃんへの気持ちを理解できるようになったはちみつこさん。今ではピンチのときに助けてもらうなど、ふみちゃんを頼りにしています。まだふみちゃんを心配に思うこともあるはちみつこさんですが、限りある人生の中で、家族と暮らす「今」という時間を大切にしたいと思っているのでした。 はちみつこさんが感じたように、「親になって初めてわかった」という経験をしたことがある方は多いでしょう。たしかに、マイペースなふみちゃんとしっかりもののはちみつこさんに対し、母親の対応は平等ではなかったかもしれません。 ですが、母親はどちらの子のこともしっかりと愛していたはず。 人のきょうだい関係を羨ましく感じることもあるかもしれませんが、家族の存在は何にも代えがたいものです。 自分の家族だからこそ築ける、かけがえのない関係を大切にしていきたいですね。著者:マンガ家・イラストレーター はちみつこ
2023年08月31日発達障害の姉と妹は仲良し姉妹わが家には3歳差の仲良し姉妹がいます。自閉スペクトラム症、ADHDがある姉(現在中1)は、小1~小3は通常学級(小1は加配あり)、小4~小6は特別支援学級(情緒)、中学進学後も特別支援学級(情緒)に引き続き通っています。普段は素直で優しい姉ですが、こだわり強め、癇癪頻発、また特性から1日中しゃべり続けていることもあります。記憶力が良いため昔のことをよく覚えていて、特につらく悲しい記憶が抜けない面があります。以前交流級の男子数名からいじめにあったことがあり、学校へ行くことが怖く現在は不登校を選んでいます。妹(現在小4)は、周りをよく見ていて常に気配りできる子どもです。いつも自然に姉の面倒を見てくれていて、声かけのタイミングや話の聞き方は療育の先生より上手と思えるほどです。二人の関係は良好です。妹が姉のやりたいことを優先してくれることもありますが、妹が対戦ゲームをしたいときなどは、姉を誘って一緒に遊んでもらうこともあります。姉は話を聞いてもらいたいタイプなのですが、脈絡なく話してしまったり、話が飛び飛びになったりもするし、聞き取りにくいことも多々あります。それでも妹は相づちを入れつつ「ちゃんと聞いているよ」という姿勢で姉との会話を楽しんでいるようです。このように妹は話の聞き方一つにしても、親以上に姉への対応が上手だなと感じています。それは4歳の頃から自然に身についていったように思えます。Upload By ユーザー体験談4歳から自然と身についていた姉への「声がけの仕方」妹は小さい頃から”周囲の人を助けたい”と思う性格のようで、園や学校のお友達が困っていると自然と手助けをしていましたし、姉のフォローもいつもすすんでしてくれています。姉は話しかけられても気づかないことが多いのですが、妹は4歳くらいの頃から、姉に話しかけるときは姉の視界に入る場所に移動して名前を呼び、一旦注目させてから話すということを自然と行っていました。普段私がそのように話しかけている様子を見て、自然に習得したようです。妹が年長くらいになると、出かける際、姉に「〇〇(姉の名前)、□□(場所)に行きます。あわてないで準備します」などと姉に声がけをするようになりました。姉のパニックや癇癪に事前に気づいてくれるまた、妹は姉のパニックや癇癪に対して、落ち着くまでそっとしておいたほうがいいときと声がけをしてあげたほうがいいときの違いを感覚的に掴み、対応してくれます。それも妹が4歳頃から自然と行っていたように思います。姉がパニックや癇癪を起こしたときは、落ち着くまで待つのが1番の対応になります。妹はそのときも何も話しかけずただ待っています。そして、おさまったタイミングで、「落ち着けてよかった」など声をかけて、パニックや癇癪を起こしたことは責めません。ちゃんと落ち着けたタイミングを見極められていることもすごいことだなぁと思います。また、姉がパニックを起こしそうになる状態に気づくのがとても早く、先生がそれに気づかず進めていると、「〇〇(姉の名前)大丈夫?ちょっと休む?」と絶妙なタイミングで声をかけています。妹の声かけがもう1分遅かったら癇癪を起こしていただろうと思うことが何度もありました。癇癪を起こしてしまうと長いし、本人も周りもつらいので、一瞬の表情の変化や動きで気づいて助けてくれる妹にはとても助かっています。また姉も「ありがとう、ちょっと休みたいな」と妹の声がけだと素直に応じられることが多いです。Upload By ユーザー体験談姉のパニックを最小限に抑えてくれる妹のすばやい状況理解と対応以前療育施設で、姉と妹だけ別の部屋に案内されたときの話です。案内された部屋には、学校の机と椅子があり、その部屋に案内された時、一瞬姉の動きが止まりました。瞬時に妹はその動きに気づき「やばい!」と思ったそう。やはり姉が癇癪起こす直前の状態、体が強張る様子になっていました。いじめられて不登校になった姉は、学校を思い出させる机と椅子がとてもつらく、耐え難いものでした。療育の先生はそのことを知らなかったということもあり、異変の理由に気づきませんでした。私は、姉が学校の机と椅子が嫌なことを妹には話していなかったのですが、妹は姉が学校を連想したのかもしれないとすぐ気づき、部屋に入る前に「このお部屋は学校みたいだから〇〇(姉の名前)は苦手みたい」と療育の先生に教えてくれました。また姉には「この部屋はいやだよね。無理しなくていいと思うよ」と穏やかに声をかけていました。Upload By ユーザー体験談その後、妹が姉にその後の予定を話し、落ち着かせようとしてくれました。姉も一旦落ち着きかけたのですが、少しパニックになってしまったため、その日の療育はそのまま終わってしまいました。ですが、あのまま案内された部屋に入っていたら、1週間は荒れていたと思います。妹の気づきと素早い対応のおかげで、その日1日荒れる程度で済みました。これからも仲良し姉妹で!姉は少しでも過ごしやすいように、妹には好きを優先してほしいこのように妹には姉だけでなく、私もとても助けてもらっています。ただ、優しすぎて自己主張が苦手な面がある妹。いつも負担や我慢ばかりさせているかと思うと、親として申し訳ない気持ちもあります。ですので、母と妹2人で出かけたり、ぎゅーっと抱きしめることは欠かせません。Upload By ユーザー体験談親としては、二人がこれからも仲良し姉妹でいてもらいたいというのが何よりの望みです。姉は、素直で優しい部分はそのままで、気持ちのコントロールを徐々にできるようになってもらい、悲しみばかりに囚われず少しでも過ごしやすくなってもらいたいです。妹は……いつも自分の気持ちよりも相手のことを優先しがちなので、もっと自分のやりたいこと、好きなことを優先できるようにになってもらいたいです。サポートには本当に助かっていますが、妹には妹の人生があると思うので、その部分は我慢をさせないように親としても注意して見守っていきたいです。また妹は、家では姉をサポートし、学校では特別支援学級の子をサポートしているようです。本人も人を助けたい思いが強く、大人になったら姉の通う療育施設の先生になろうかなと話しているので、療育の先生になって支援が必要な子やその家族の支えになる存在になってくれればと思っています。イラスト/カタバミエピソード参考/naco.(監修:森先生)とっても良い妹さんですね。お母さんから妹さんへの配慮も、大変素晴らしいと感じます。発達障害のある子どもが成長するためには、親だけでなく家族全員の協力が得られるとより良いですよね。親だけではケアできない部分もあり、同年代のきょうだいからケアしてくれることは、とっても助かるでしょう。ただし、パニックや癇癪の対応は、大人でも疲れてしまうこともあるくらい大変なことです。「きょうだい児」がどんなに優秀でも、親はそれに甘え過ぎないことが大切です。「きょうだい児」にも、安心して家族に甘えたり、ときに反抗したりすることも必要です。「きょうだい児」とのコミュニケーションも大切にして、ときに親と2人っきりで甘えられる時間を意識的にとってあげること。「お世話をしてくれるから」でなく、「その子自身を愛している」こと、「その子のやりたいことを応援している」ことを、これからも今の調子でしっかりと伝えられるといいのではないかと思います。
2023年08月31日「障害」について深く考えたことがなかった私私は身近に障害のある人がいたことがなく、障害者と直接関わった経験もないまま大人になり、母親になりました。世の中にはさまざまな障害のある人がいるけれど、それは自分とは関係のない、どこか遠い世界の話のように思っていたのです。そんな私がまさか障害のある子どもを産み育てることになるなんて、想像もしていませんでした。妊娠すれば障害のある子どもが生まれる可能性を、誰しも一度は考えることがあるとは思いますが、私はそんなときでも「わが子に限って大丈夫だろう」と安易に考えていました。Upload By みん障害があるかもしれないわが子を心から可愛いとは思えない日々でも次男のPを出産後、わが子の成長に違和感を感じはじめ、発達障害の可能性を疑い、その不安がみるみる現実のものとなっていく日々は本当につらく苦しい時期でした。息子に発達障害があるかもしれないと分かった頃は、一体どの程度の障害なのか?どんな風に成長するのか?がまだまだ未知だったので、障害のあるお子さんをもつ人のブログやSNSを読み漁っては、不安に思っていました。見ず知らずの人の子どもとわが子を比べては、感情の浮き沈みが常にありましたし、「障害があってもわが子は可愛い」という障害のあるお子さんを育てている親御さんたちの言葉を耳にしても、私にもそんな風に思える日が来るの?と正直自信がありませんでした。なぜなら、毎日Pと関わることに必死で、初めての育児でもないのにこんなに育てづらいものなのか?と、1歳半を過ぎた頃からは可愛いと思う余裕もなく目まぐるしく日々が過ぎていくだけだったからです。Upload By みん将来を悲観していた私…障害の受容へと繋がったきっかけは?そんな悲観的だった私の心に変化が現れたのは、Pを療育園へ入園させた時期です。それまで、「こんなに大変な子どもはどこにもいない!周りのお母さんたちは育児がラクで羨ましい!」と卑屈になっていた私の気持ちが、入園とともに少しずつ溶けていきました。なぜなら、療育園にはPと同じように困りごとを抱えたお子さんと、私のように育児に悩み、疲れているお母さんたちがたくさんいて、そんな親子を助けてくれる療育の知識や経験をもった先生方がたくさんいたからです。同じ目線で私の話を聞いてもらえ、共感してもらえる療育園の環境はたった1人で戦っているわけじゃないと実感できましたし、何より孤独ではなくなりました。それに療育園では、困りごとを相談すれば関わり方のアドバイスをもらえ、先生たちの知識や経験の多さに救われながら、私自身にも知識や経験が増えていきました。同時に障害のある子どもへの福祉制度のことや、就学、就労についてなども見聞きする機会が増えていきました。Upload By みん「想像できない」ことで不安になるのなら、「知る」ことで少しでも不安を和らげよう!「Pの将来はどうなってしまうんだろう?」と悲観ばかりしていましたが、こんな制度やこんな場所があるんだ!と具体的に想像することができ、現実的に考えられるようになったことが、私にとっては障害の受容へと繋がるきっかけになったと思います。誰だって未来が想像できないと不安だし心配になると思います。私はこれまで障害者と関わりがなかったために、障害者の生活や人生に対する知識が全くなく、メディアなどで見聞きしていたマイナスなイメージばかりを持っていたので、わが子に障害があるとなると、どうしても悲観的になるし、戸惑うのも当たり前だったと思います。Upload By みんでも子どもの未来は障害のある無しに関わらず、親がいくら理想をもっていても、逆に絶望したとしても、結局は子どもと共に過ごす日々の中で一緒につくっていくものなんだと感じました。子どもの成長に対して、親が勝手に過信や期待をしすぎるのも、悲観的になったり諦めたりするのも、どちらも違うと思いますし、子どもの現在を見て今必要なことやできる限りのことをし、精一杯関わっていくことで、Pにとっても私たち家族にとっても、自然とより良い未来へと繋がっていくと信じています。執筆/みん(監修:森先生より)「子どもを可愛いと思えない」というお母さんは、子どもに愛情を持っていないわけではありません。むしろ反対で、子どもへの責任感が強すぎて、その重圧から育児を素直に楽しめなくなっているのです。真面目で思い詰めてしまうタイプに多いでしょう。最愛のわが子に障害があると伝えられたら、受け入れられない気持ちがわいてくるのは当然のことです。受け入れられないことすら受け入れられず、自分を責めるという悪循環に陥ってしまう方が少なくありません。同じ状況にいる人にしか分からない葛藤や悩みがあります。当事者やその家族同士が関わる機会があると、悩んでいるのは自分だけでないことに気がつきます。悩みを安心して話せて、理解し合える人がいると思うだけで、心理的な負担はグッと減ります。また、人は漠然とした未来に対して一番不安を募らせるものです。将来を具体的に想像できるような道筋を見聞きすることで、障害を受け入れて、地に足をつけて準備を進めることができますね。1人で不安を抱えていないで、まずは行政や療育センターに相談してみるといいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月14日発達障害と知的障害の違い発達障害も知的障害も、社会生活を送る上で生きづらさを伴うことは、大きな共通点です。では、発達障害と知的障害は、何が違うのかと疑問に思う方もいるかもしれません。発達障害というのは、よく「発達凸凹」とも呼ばれます。得意なものと苦手なものの差が大きいイメージです。いろいろな能力の中に、著しく高いものもあれば、低いものもある状態です。一方、知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えてみてください。どこかの能力が低いというのではなく、全体的にゆっくり成長しているのです。例えば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢は7歳くらいというイメージです。そう解釈すると、目の前の子どもにとって何が必要かが見えてきます。小学校4年生の中に小学校1年生の子どもが混じっている、だからレベルに合った学習内容の取得が必要だといった具合です。そしてそのゆっくりとした成長が、成人になっても12歳くらいの水準で止まってしまうのが軽度知的障害です。ただし、必ずしもみんなの精神年齢が12歳レベルで止まるかというとそうではなく、生活上の経験値がそれぞれ異なりますので、あくまでも目安です。子どもたちの知的なしんどさもしも発達障害と知的障害の両方がある場合、個人的には、まず知的なしんどさに対応することが先決と考えます。日常生活や社会的な生活を送る上での困りごとは、知的なしんどさから生じる部分が多いからです。発達障害に知的障害も伴う場合は、知能の程度(軽度・中等度・重度)がどうかという点が重要になります。発達障害でもIQが高ければ、今の社会を生き抜いていく方法は少なからずあるでしょう。こだわりが強い自閉スペクトラム症のある人が、興味や専門性が活かされるような技術職や研究職に就いて、高いパフォーマンスを発揮できることも見聞きします。また、大手企業を起業した経営者のなかにも、診断を公表している方がいます。ADHDの特性である行動力やアイデア力が、起業に生きるというのは想像しやすいでしょう。「軽度・中等度・重度」の程度の違い知的機能の水準は一般的にはIQで表され、知的障害の基準のひとつに「IQ70未満」があります。障害は、その程度によって次のように4段階に分けられます(WHOの「ICD-10」より)。IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度※()の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢です。4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。各段階で、学力の習得が可能な年齢(学年)というのも付記していますが、あくまでも目安となる年齢です。支援次第で、目安の年齢以上に、成長を促せる可能性はあります。・IQ50~69…軽度多くの場合、身のまわりのことは自分でできるようになります。自分で考える力も身につき、小学6年生くらいまでの学力を習得できます。簡単な読み書きや計算ができます。ただし、言葉の発達や抽象的なことの理解に遅れが生じる傾向があります。高度なスキルが必要な場合を除き、仕事に就くこともできるでしょう。一般的に知的障害といっても、本人や周囲の人にも「知的障害」という自覚がなく、支援を得ることなく生活しているケースもあります。そのため、実際の人数よりも認定数が少ないものと考えられます。また統計上は、知的障害者の約85%がこの段階に分類されます。ですので、知的障害といえば、概して「軽度」のことを指すといっても過言ではないでしょう。・IQ35~49…中等度身のまわりのことはだいたい自分でできるようになりますが、一定のサポートは必要なことが多いでしょう。簡単な読み書きや計算が部分的に可能です。乳幼児期に言葉の遅れはありますが、コミュニケーション能力はあります。適切な支援を受ければ、小学2年生くらいまでの学力を習得できます。配慮があれば、単純作業の仕事などに就くこともできるでしょう。・IQ20~34…重度乳幼児期はほとんど会話をしませんが、学童期になると、基本的な生活習慣(会話、食事、排せつなど)を身につけることができます。学力の習得目安は5歳くらいまでで、読み書きや計算は難しいでしょう。簡単なお手伝いやおつかいといった作業は可能です。・IQ20未満…最重度快・不快の表出は可能な場合が多いですが、言葉でのコミュニケーションを身につけることは難しい場合が多いでしょう。適切な支援によって能力の成長は見られますが(3歳程度まで)、身のまわりのことを自分で処理することは難しく、常に周囲からの支援や保護が必要となります。誤解されやすい「障害程度」なお、知的障害の男女比はおよそ1.6:1(軽度)~1.2:1(重度)で、全体での男女比は1.5:1程度とされます。ここまで、知的障害の程度区分の4段階について解説してきましたが、ここで誤解されやすいことがあります。それは、「障害程度が低い」=支援の必要性も低いのか?ということです。確かに身のまわりの世話などが必要な場面は、中等度や重度よりも軽度のほうが減るかもしれませんが、それでも支援をしなくていいわけではありません。むしろ軽度知的障害の場合、定型発達と見分けがつきづらく、支援されない可能性すらあります。そうなると、生きづらさは増していきます。失敗を極度に恐れ、失敗するくらいだったら最初から挑戦しない。そんなプライドの高い子どもがいます。小学校低学年のAくんもそんなひとりです。Aくんは、先生から「この問題、間違ってもいいからやってごらん」と言われても、(少しやってみて)「やっぱり無理」「もうやめた」(考えもせずに)「わかりません!」「できません」などと答えるパターンが多いのです。Aくんは、あきらめるのが早いのです。しかし、これらの言葉はできないことへの防衛でした。知能検査を受けたところ、Aくんには軽度知的障害があることがわかりました。 By 宮口幸治気づかれない「軽度知的障害」軽度知的障害のある子どもは、普通に話したり遊んだりしている分には、定型発達児とほとんど見分けがつきません。また自分が興味のあること・好きなことの記憶力はよかったりします。しかし、言われたことはだいたいできますが、いつもとやり方が違ったり何か問題が発生した際の対処法が分からなかったり、自分で新たな工夫をするのが苦手なことが多いのが特徴です。なお、軽度知的障害がある場合でも、保護者が熱心に教えたり、個別塾に通わせたりすることで、小学生までの勉強にはなんとかついていけることもあります。小学生では成績がそれほど悪くなかったからといって知的障害がないとも限らないのです。もし知的障害が疑われるなら、「まだ小学生だから様子を見ましょう」と経過観察するよりも、少しでも今できることを考えてあげたほうがいいでしょう。例えば、自治体の教育センターや発達に詳しい医療機関を受診し、どこの部分につまずきが見られるのかをしっかりアセスメント(子どもの状態や特性を把握し評価すること)してもらって、具体的にできる今後の対応策を、学校、保護者が一緒に検討することが望ましいと考えます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年08月04日「男の子だからこんなものか」が「何かあるかも」に変わった親子遠足1歳から保育園に入った息子は、保育園も問題なく過ごし、1歳半健診、3歳児健診で指摘をうけることもなく、親である私自身も息子にADHD(注意欠如・多動症)があるとは気づきもしませんでした。落ち着きのなさはありましたが、「男の子だからこんなものか」と思っていました。ですが、年少で行われた初めての親子遠足で私は「息子には何か特性があるかも」と違和感を抱いたのです。出発前に子どもたちが園庭に並んで先生の話を聞いていたとき、息子だけが列から脱走して園庭にある遊具で遊び始めたのです。乳児時代の保育園は大きな行事や団体行動がなかったため、周りのお友達と息子を比較できるような機会はありません。それまで私は、「3歳の子どもなんて、並んで話を聞けないのが普通」だと思っていたのですが、このとき初めて周りのお友達の成長を知り、明らかに違う息子の様子に衝撃を受けました。Upload By ユーザー体験談私は、すぐに保健センターに連絡しましたが、発達相談は約半年待ち。結局、年少の秋から地域の療育センターへ通えるようになったのですが、息子の問題行動は増え、私はどんどん追い詰められていきました。保育園でトラブル多発!どん底まで落ち込んだ年中時代団体行動が増えた保育園で、息子はよくトラブルを起こすようになりました。まず、息子は団体行動ができないので、いつも途中で脱走してしまいます。当然、運動会の練習にも参加できませんでした(ただ、練習には参加していなくてもどこかで理解しているようで、本番ではうまくできているのが不思議でした)。また、遊んでいたら途中で切り上げることができず、やめさせようとすると、泣いて暴れてしまいます。園では、みんなが席についたら給食を食べ始めるという決まりがあったのですが、給食の時間になって周りのお友達は席について準備をしていても、息子は前の活動をやめることができないため席につくことができませんでした。Upload By ユーザー体験談自分のペースを崩されると暴れたり、叩いたりしてしまうので、友達に手が出てしまうこともしょっちゅう。また、暑さ寒さに弱いので、屋外の活動がスムーズにできませんし、体幹を保つのが難しいのか、どこでも寝転んでしまいます。特に年中になってから、これらのトラブルはひどくなっていきました。私は、療育に通ってもなにも改善しないと焦ったり、保育園からなにか指摘されれば怒りを覚えたり、その一方で、息子が友達に手を出したという報告を受ければ、私たち親子は価値がないと思い込み、すべてを捨ててどこかに行ってしまいたいとまで追い詰められていきました。同級生や同級生の親御さんたちに会うのがつらくて、保育園の送迎を夫に頼んだ時期もありました。葛藤しながら通い続けた療育に救われた私ただ、そんな中でも療育には通い続けました。トラブル続きの中、藁にもすがりたい気持ちがあったからでした。実は、息子に「何かあるかも」と感じた親子遠足のころ、私の会社に自閉スペクトラム症のある方が障害者採用で入社してきました。その方は大学に入るまで自分の障害を知らず、療育なども受けず、生きづらさを感じながら人生を過ごしてきたと教えてくれました。そして、自分ももっと早く気づけて支援につながれていたら、ここまで生きづらさを抱えることはなかっただろうとも話してくれたのです。それを聞いた私は、息子の特性に早く気づくことができたのだから、療育を受けさせなければと強く思ったのです。息子は年少の秋から地域の療育センターに通い始め、年中までの間は月に1回作業療法(OT)と理学療法(PT)を受けました。コミュニケーションの改善より、体幹が弱くゴロゴロしてしまうことを課題とされていたので、トランポリンや平均台を使った体幹を鍛えるトレーニングが中心でした。私は、公的な支援を受けられて良かったという思いと、本当にこれで良くなるのだろうかという不安の間で揺れ動き、複雑な気持ちを抱えていました。当時はきちんと息子の障害を受容できていなかったということもあり、通所受給者証の書類にある「障害児」という言葉を見ると、改めて「息子は障害児なのか」と落ち込んだこともありました。Upload By ユーザー体験談そんな中、年長になった息子は、それまで通っていた地域の療育センターから、民間の児童発達支援の教室に移り、週1~2回の頻度で通所するようになりました。ここで、私たち親子に転機が訪れました。この児童発達支援では、母である私も先生に悩みを聞いてもらうことができたのです。障害を受容できないこと、息子の他害…悩む私の気持ちに共感をしてもらうと、それまで一人で抱えていた不安や焦燥感が消えていき、とても心が楽になりました。また、親子参加型の療育もあったので、初めて同じ境遇のお母さんたちと友達になることができました。保育園のお母さんとは違い、同じ悩みを持つ方とつながることができたことで、本音で語り合うことができました。本当に救われました。そのお母さんたちとは今でも仲良くしています。暗いトンネルのようだった障害児育児に、光が差し始めたときでした。Upload By ユーザー体験談小学校は通常学級へ入学。中学でも療育を継続しています年長の夏、特別支援学級と通常学級の授業を見学しにいき、息子にとっては通常学級がいいだろうとの判定を受け通常学級への入学、同時に通級を利用することになりました。そして、小学校入学から卒業までの間、息子は放課後等デイサービスで支援を受け、中学に入った現在も1ヶ所継続しています。保育園時代はとても大変でしたが、幸いにも息子は児童発達支援の教室や、放課後等デイサービスが大好きでした。とくに年長のときに通っていた児童発達支援では褒められることも多く、自信もついて、行動も良い方向へと変わっていきました。療育に行っていなければ母である私も悩みを打ち明ける場所がなく、毎日途方にくれるばかりで、息子との関係ももっと良くない状況に陥っていたと思います。勇気を出して相談して、息子にとっても私にとっても居場所となる教室や放課後等デイサービスと出合え、通い続けることができて良かったと心から感謝しています。イラスト/keikoエピソード提供/カプゴジラ(監修:鈴木先生より)保健センターの発達相談で半年待ちなど時間がかかる場合は、気軽にかかりつけ医に相談することをお勧めします。行けばすぐにでも話を聞いてくれる医者がそこにはいます。かかりつけ医が専門でなくてもどこかにパイプがあるはずです。それが医療連携です。特に地域の医師会に入っている先生であれば必ずどこの先生がそういう問題に強いかをご存じのはずです。ただ、専門の先生の外来も半年以上待つかもしれません。しかし、かかりつけ医からの紹介状があれば比較的早く診てくれる可能性はあります。これも医療連携なのです。各地域にはADHDや発達障がいの親の会があります。そういう場で同じ悩みを持った親同士の触れ合いができるのでこの機会に参加してみてはいかがでしょうか。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月13日障害のあるわが子と一緒にアウトドアを楽しみたいけれど…わが家はキャンプやバーベキューなどアウトドアで活動する機会が多いです。そんな私たち家族を見て、友人から「障害のある子どもを連れてのキャンプって大変じゃない?」と聞かれることもたまにあります。普通に生活するだけでも大変なので、それはもちろん「大変」なのですが、そんな中でも楽しく過ごせるようにさまざまな工夫をしています。Upload By みんまず、Pを連れてのキャンプでは、何よりも安全を重視しないといけません。キャンプ場によっては川や海が近くにあったり、急な段差など足場が悪いところがあったりと、自然の中では100%安全な場所は存在しません。Pは水が好きだし高いところも好きなので、キャンプへ行くとPから目を離す余裕は全くなく、私は常に周りを見ながら危険を予測、予防しながら過ごしています。Upload By みん自然の中は危険がいっぱい!何をどう注意すれば良い?それでも疲れたときやトイレに行きたいときなど目を離さざるを得ない場面があります。そんなときは必ず夫にPを見てもらうよう声をかけ、Pには安全のために車の中やテント、ハンモックの中で少しの間待ってもらうこともあります。小さいときにはハーネスも役に立ちました。また私たちの近くで過ごしているほかのキャンパーに迷惑がかからないように注意することも必要です。そのようなストレスを少しでも減らすために、キャンプ場を選ぶときはできるだけハイシーズンを避け、人が多く混雑しそうな人気のあるキャンプ場は、最初から選ばないようにしています。たとえ施設の設備があまり整っていなくても、人が少なくて安全な場所を選ぶようにしています。それでもどうしても大変そうな場合は、テント泊ではなくロッジやコテージ泊などを選択するのも良いと思います。偏食のわが子の食べものはどうする?持って行くおもちゃは?次にアウトドアでの食事ですが、偏食のPはキャンプで食べられるものが限られてしまうので、Pが食べられるパンやお菓子はもちろん、バナナやコーンフレーク、パウチゼリーなど常温で置けて食事の代わりになりそうな物をたくさん持って行っています。アウトドアに持って行くおもちゃも、いつの間にか落としたり無くしたりする可能性があるので、1番のお気に入りではない物を少しだけ持たせています。もし落としても探しやすいよう目立つ色や大きさの物、そして最悪無くしたとしても、またすぐに買える物を選んで持って行くようにしています。Upload By みんアウトドアで過ごすのは大変だけど経験を積み重ねると…キャンプに興味はあっても障害児を連れてはなかなかハードルが高く踏み出せないこともあるかもしれません。想像するだけでも大変なことのほうが多いですし、実際、楽しさより疲れが勝ってしまうかもしれません。でもわが家の場合、確かにかなり大変ではありましたが、幼いうちからキャンプに慣れさせて、外で過ごす経験やどんな場所でも寝る経験を積み重ねてきたからこそ、Pが7歳になった今では、キャンプへ連れて行っても幼いときほどのこまり感は減りました。Pの行動も大体予測できるようになったので、不安やストレスはかなり減り、私もキャンプをゆっくり楽しめる時間がつくれるようになりました。良い意味で親子共に年々アウトドアでの活動に慣れることができています。これからもPと一緒にアウトドアを楽しみたいと思います。Upload By みん執筆/みん(監修:新美先生より)キャンプなどアウトドア活動での工夫について、具体的な工夫を詳しく教えてくださりありがとうございます。キャンプ自体に慣れない人から見れば、危険も多そうなアウトドアにわざわざ連れて行かなくてもいいのではないかと一瞬思ってしまいがちですが、とてもしっかり対策をしたうえで家族で楽しまれているのは素敵だなと読ませていただきました。親やきょうだいのもともとの趣味や家族で楽しんでいた活動に、特性の強いお子さんを参加させるのには苦労もありますが、スモールステップで少しずつ慣れていき、さまざまな工夫をして一緒に参加できるようになれるのはとてもいいですね。特性の強い子どもがいるからと、あきらめずに、準備して工夫して安全を確保して、いろんな活動を広げていけるのは、親子ともどもに生活の充実になり大事なことだと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年05月12日20代で「うつ病」の診断私が発達障害を自覚したのは30歳。それまでずっと生きづらさはあり、いろいろな精神症状を経験しました。20代前半、第二新卒で働いていたとき、気分の落ち込みと気力の低下、希死念慮がひどく、ほとんど寝たきりのようになってしまいました。それまで精神科にかかったことはなく、インターネットで調べた、うつ病の診断もできるというクリニック(内科だったと思います)に行ったところ、うつ病との診断が。抗うつ剤を処方されて1錠飲んだところ、興奮状態になり、頭痛、下痢、幻聴という副作用が出て、パニックを起こして救急車を呼んでしまいました。※発達障害の診断が下りたあとになってわかったのですが、発達障害者への抗うつ薬の投与は慎重にすべきという意見もあるようです。このときの医師は精神科医でなかったので、私の症状には適さない処方だったのかもしれません。10年以上前のことなので、詳細はあまり覚えていないのですが、そこから大学病院の精神科にかかるようになり、31歳で実家を出て関東を離れるまで、そこの精神科の先生を主治医としてずっと面談を続けていました。32歳で発達障害と二次障害の診断31歳で実家を離れて今の夫のもとで暮らし始めた私。しばらくは夫に世話してもらいながら静かに暮らしていたのですが、翌年の夏、改めて気分の落ち込みや神経過敏に悩まされるように。やはり再び精神科に通いたいと、近所の精神科医院(標榜は心療内科でした)に行って発達障害の自覚についても話したところ、高機能自閉症(現在の分類ではASDに該当します)の診断が降りるとともに、それによる二次障害としてのうつ傾向が指摘されました。手帳取得への動き先に精神障害者保健福祉手帳と障害年金を取得していた友人に上記の診断の話をすると「福祉ともつながれるし、メリットも多いからぜひ精神の手帳を取得するといい」と勧められて、まずは手帳を取得するために動くことになりました。主治医とソーシャルワーカーさんの意見を総合すると、まだ発達障害単体で精神障害者保健福祉手帳の申請は通りづらいとの判断でした。※これは2012年当時の宮崎県での状況です。地方によっても違うとのことでしたし、現在では発達障害単体でも通ることもあると思います。地域のソーシャルワーカーさんに相談してみるとよいと思います。そこで、二次障害としてずっとうつ傾向が続いているし、手帳申請時の書類上の「初診」にあたる診療(上記の20代でかかった内科医の診療)で「うつ病」の診断が出ているのにも矛盾しないということで、「うつ病」の診断で申請してくれることになりました。診断書の内容への工夫診断書の病名自体は「うつ病」なのですが、主治医は、二次障害のうつ傾向がよくなっても矛盾が起こらないように、症状のところに「易刺激性の亢進(感覚過敏傾向の表現)」「感情コントロールの困難(コミュニケーション障害の表現)」などといった表現を入れるなど、できる限りの工夫をしてくれたようです。主治医やソーシャルワーカーさんのおかげもあり、無事、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得することができました。手帳を取得して変わったこと何よりも経済的に助かるというのが、障害者手帳の最大のメリットです。自立支援医療制度を使って医療費が1割負担になるとか、交通機関によって運賃が割引になったりするのはとてもありがたいです。美術館などの施設も割引がある場合があります。同じく「うつ病」で同時に申請して取得した障害年金には本当に助かっています。人に自分の障害を説明するときに「私は実は障害者で、障害者手帳を持っているんです」と言えるので、説明がしやすくなりました。デメリットとしては、一つぐらいしか経験がありません。一度、タクシーで手帳での割引を使おうとしたときに差別的なことを言われて不快な思いをしたのです。私の住む自治体ではタクシーの割引金額はごくわずかだったので、その後は割引を利用しないことに決めました。障害者手帳は、自分にとって開示するメリットが大きいときに開示すればいいだけで、開示することにデメリットがあったりして隠しておきたいときには隠しておけるので、そこがありがたいなと思っています。発達障害があると症状のコントロールのために人より医療費がかかったり、特性のためになかなか思うような収入が得られなかったりと、経済的に苦労する人も多くいます。手帳はそこの負担を軽減してくれます。また、手帳を持っていると障害者雇用枠で就職・就労することもでき、働く場の選択肢も広がると思います。取得していない人は一度検討してみるのをお勧めしたいです。文/宇樹義子(監修・渡部先生より)精神保健福祉手帳の取得に際しては、心理面での抵抗もあったのではと想像しますが、決断されて本当に良かったと思います。今回のエピソードで紹介されている自立支援医療制度は、精神通院医療や薬にかかる費用の自己負担が、通常の3割から1割に軽減されるという大きなメリットがあります。その他の経済的なメリットとして、所得税や住民税、相続税の控除が受けられる、携帯電話料金の基本料金の割引きなどがあります。一方、タクシーで不快な経験をされたという、残念なお話もありました。福祉に携わる者として、障害理解、共生社会という考え方をもっと広めていかなくてはいけないのだなと、改めて考えさせられました。手帳の具体的なメリットをお話しいただき、取得を迷われている方にとっては、背中を押してくれるようなエピソードだったと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年04月12日障害児向けの絵本作家として活動しているしょうじあいかは、2023年3月に「全国の障害児施設へ自作絵本を配るクラウドファンディング」を実施し、初期の目標金額389%を達成。この度、クラウドファンディング成功を足がかりに、4月1日に障害児支援を目的とした絵本屋サイト『絵本屋だっこ』をオープンしました。URL: 絵本屋だっこに掲載中の絵本■絵本作家しょうじあいかとは・北海道在住の3児の母で、長男が重症心身障害児・保育士、幼稚園教諭、教員免許、カウンセラー資格等を保有・言語理解が難しい息子でも楽しめる絵本をつくりたいと、2022年から障害児向けの絵本づくりをスタート「自作絵本を障害児施設に配りたい」という夢のため2023年2月~3月に挑戦したクラウドファンディングは、400%に迫る達成率で成功をおさめました。4月より全国の施設へ絵本約2,000冊を配布していきます。実施した絵本クラファンまた「絵本づくりを少しでも障害児支援につなげたい」という思いから、クラウドファンディングと同時進行でサイト『絵本屋だっこ』の立ち上げ準備をしてきました。しょうじあいかの絵本の売り上げは、全額、障害児支援のための寄付にします。■絵本屋だっこの取り組み・絵本の売り上げを障害児のための寄付に・障害者アーティストのイラストを絵本にし、売り上げはアーティストに全額還元・一部絵本の売り上げをもとに障害児施設等へ絵本を配布絵本づくりをとおして、インクルーシブな社会の実現へ寄与できればと考えています。■絵本屋だっこの絵本ジャンル・重い障害があっても楽しめる絵本・障害があってもなくても楽しめるインクルーシブ絵本・障害者アーティストの作品を使用した絵本・障害への理解を広める絵本・英語版絵本■絵本の購入はAmazonから絵本屋だっこ制作の絵本はすべてAmazonからご購入いただけます。(AmazonのKDPにより出版)※HPの購入ボタンを押していただくと、それぞれの絵本のAmazon販売ページに遷移します。■読み聞かせ動画も無料公開絵本の内容を知っていただくため、絵本屋だっこでは全作品の読み聞かせ動画を公開中です。▼しょうじあいか【障害児向け絵本作家】絵本屋だっこ ■今後は法人化も検討現在は個人事業として運営していますが、書店への絵本流通や図書館や海外への絵本寄付など、より幅広い活動のため、今後は法人化(出版社化)も検討しています。・公式サイト ・絵本屋だっこInstagram ・公式LINE ・しょうじあいかInstagram 絵本屋だっこチラシ 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年04月07日過去の自分と重なった後輩ママさんUpload By ぼさ子2023年が明けたころ、私の住む地域にも次年度小学校入学予定のお子さんに向けて入学決定通知書が届けられました。そして間もなく療育の先生から「ほぺろう君と同じ学校に入学する事が決定したお子さんを育てるお母さんがいるのですが、その方とお話してくれませんか?」という依頼が。過去に私も、身近に同じ境遇の方がいなくて「誰か先輩を紹介してほしい」と療育先にお願いした経験があったので、私でお役に立てるなら…と引き受けさせていただきました。お会いしたママさん(以下、後輩ママさん)のお子さんもほぺろうと同じく自閉スペクトラム症の診断。後輩ママさんの「私は今まで同じ境遇の人に会ったことがなかったんです」という言葉にハッとさせられました。この後輩ママさんは過去の私だと。不安感・疎外感…。「頑張らなきゃ」と感情を押し殺して毎日を乗り越える育児。自分と重なるほかの人に会ったことで「本当はいろんな感情があったんだよな…」とあふれてくるものがありました。私の居住地ではまだペアレント・メンターなどの地域内での繋がりが整備されていないので、後輩ママさんの依頼を受けたとき「よくぞ勇気を出して誰か紹介してほしいと相談してくれた」と思いました。同じ地域の先輩だからこそできる話Upload By ぼさ子後輩ママさんは進学についての不安を持っている様子で、主にほぺろうが通う特別支援学校のことや準備についての話をさせていただきました。大半の子どもたちとは違う進路に行くことによる情報の少なさ・不安感を一年前の私も抱えていたよなぁ…としみじみ。この日は、以前に私もお世話になった先輩ママさんも同席してくださっていたので、一緒に「この特別支援学校で準備する物、放課後等デイサービス、移動支援サービス、病院、この地域での療育手帳の使い方」などなどの情報を伝えました。私が話した内容はすべて かつて先輩ママさんから聞いた話の受け売りですが、過去の私は先輩ママさんにすごく救われたので同じ話をせずにはいられませんでした。先輩ママさんからもらった大切なものUpload By ぼさ子過去、それまで同じ境遇の方に会ったことのなかった私が初めて先輩ママさんにお会いしたとき、育児についてや地域ならではの情報を聞けたことももちろんすごくためになったのですが、一番良かったと思えたのが「先輩ママさんの表情を見られたこと」。このとき、先輩ママさんが不幸そうな顔をしていたら今の私とは違っていたでしょう。お子さんはほぺろうと状況が似ていたので大変な思いもたくさんしてきただろうと容易に想像できましたが、先輩ママさんの穏やかな空気から「ああ、この人は今 幸せなんだな…」と希望をもらえたことを憶えています。私は今でもここが自分のターニングポイントだったと思っています。今回後輩ママさんとお話したとき、同じ進路の子どもを持つ親として私もそんな空気感を出せていたらいいな~なんてチョッピリ意識してしまいました。後輩もいつか先輩へ。つながるバトンUpload By ぼさ子ほぺろうの人生はまだまだこれからだし、障害児育児の先輩と言うには早い私(むしろまだまだ後輩)ですが、今回自分の経験を誰かの役に立てるという機会をいただけたのは、私でも少しは成長した?次のステージに立てた?そして何より、ほぺろうの存在が意味のあるものになったという気がして感慨深かったです。闇の中にいる感覚だった時代の自分に「そんな日が来るよ」と教えてあげたい。月日を経ながら先輩ママさんと後輩ママさん両方と接することができて「これはバトンなんだ」と感じました。最後に、新しい進路を行くお子さんたち、ご入園ご入学おめでとうございます!そして ここまで頑張って育ててきた親御さんたちを褒め称えたい!みなさんにとって希望いっぱいの未来になりますように。Upload By ぼさ子執筆/ぼさ子(監修:初川先生より)特別支援学校に通う子どもを持つ先輩ママとして後輩ママさんとお話をされたのですね。情報の少なさもそうですが、保護者としての心がまえやありようについてのモデルとして、以前ぼさ子さんが助けられたように、今度はぼさ子さんが助ける側になる。ただ助けるというだけではなく、ご自身のこの1年を振り返り、ほぺろうくんやぼさ子さんの成長を感じる機会でもあり、以前お話を聞いた先輩ママの素敵だった笑顔を思い出す。なんと素敵な循環だろう、なんと素敵な機会・ご縁なのだろうと思います。いい意味での「持ちつ持たれつ」が機能しているように感じました。「あのころは私も不安だった」「後輩ママさんは過去の私だ」。日々子育てでみなさん奮闘されていることと思いますが、立ち止まって振り返ってみると、実は結構たくましく成長していたりしますよね。不安の内容や質も以前とは変わっていたり。いろいろな意味で、とても素敵なメンター経験になられたことと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年03月28日私は現在、4歳と1歳の2児のママです。次女が1歳になる前、精神科を受診して「適応障害」と診断を受け、服薬を開始しました。今は子どもの成長とともに育児も少し落ち着いてきて、かつ自分自身の仕事も安定しているので、服薬しなくてもある程度余裕を持って子どもたちを見られるほどにメンタル面が安定しています。そんな、今の私だからこそ言える、長女に対しての反省と後悔の念を体験談としてお伝えします。 長女の甘えを受け入れられなかった今だからこそ理解できるのですが、次女が生まれたときは長女はまだ3歳にもなっていないころだったので、当然、ママに甘えたい気持ちがまだまだあります。そこに次女のお世話のタイミングなど、私の事情は関係ありません。 次女が生まれたばかりのころは、「ママ、着替えられない!」「ママ、お外行きたい!」などといった欲求すら、洗濯や料理する家事の時間などの私の日常ルーティンと噛み合っていなければ、すべてイライラして「今忙しいから!」とバッサリ切り捨てていたように思います。 一番私が暗かった時期は「長女はなんでこんなにわがままなんだ」とイライラしていましたが、今思えば月齢に沿った自然な行動をしていただけだと思います。私が自分勝手だと解釈してしまったのは、自分自身のゆとりのなさからくるものでした。 ゆとりが持てる環境は「自らが作り上げて得られるもの」と「時間の経過で自然に得られるもの」と2つあるのだな、と実感しています。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日になりますように! 監修/助産師 松田玲子著者:石塚みよ自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2023年03月01日子どもの寝つきが悪い…これって睡眠障害?睡眠にまつわるギモン自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害がある場合、睡眠障害を併存していることがあります。睡眠の問題の背景には、何かしらの障害が関係していることがありますが、睡眠の相談を医療機関ですることを知らず、長年悩みを抱えてしまう方もいるという現状があります。発達ナビQ&Aコーナーでも、子どもの睡眠に関する心配や、睡眠障害へのギモンが数多く寄せられています。「赤ちゃんのときから寝つきが悪く、朝起きられません。来年には中学生になりますが、どのようにサポートしたらいいでしょうか」「5歳すぎてもまとまって寝ないのは、発達障害が関係しているのでしょうか」「みなさんは眠れていますか?眠れないときはどうしたらいいのでしょうか」「日中に寝てばかりの息子がいます。服薬をしていますが効果がありません」これらは、発達ナビのQ&Aコーナーに実際に書き込まれた、睡眠にまつわる悩みです。このコラムでは、睡眠のなぜ?から、発達障害と睡眠障害の関わり、服薬についてなど、体験談や、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態のことをいいます。子どもの睡眠障害にはいくつか種類があります。・不眠症…寝つきが悪い、眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまう、朝早く起きてしまう、眠りの質が悪いなど、睡眠が十分でない状態・過眠症…夜ちゃんと寝ているはずなのに、日中あらがえないほど眠い状態・概日リズム睡眠障害…昼夜のリズムと体内時計がうまく合わず、調節できなくなって睡眠リズムがくずれてしまい、社会生活に支障をきたす状態・いびき・睡眠時無呼吸症候群(SAS)…子どもの場合、いびき、無呼吸の主な原因は、鼻づまりやアデノイド・口蓋扁桃(こうがいへんとう)といったのどや鼻の奥のリンパ組織の肥大で、物理的に気道が狭まること。また、肥満で気道が狭くなることも・むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)…脚などの下肢がむずむずするなど動かしたい強い衝動がある状態・睡眠関連律動性運動異常症…乳幼児期から4歳くらいまでの時期で発症する睡眠障害。頭を左右に振ったり、前後に強く動かすなどする。9ヶ月の子どもでは59%に見られるほど、乳児期には非常に多い症状だが、5歳前後には5%以下に・睡眠時随伴症…睡眠中に生じるねぼけ、夜尿、歯ぎしり、悪夢などの身体的現象の総称子どもは、新生児期には昼夜を問わず短い睡眠・覚醒を繰り返しますが、乳児期から夜間睡眠が中心になり、3歳から6歳になるころには昼寝をとらなくなるなど睡眠リズムが徐々に確立していきます。赤ちゃんの眠りはまだ眠りが浅く、夜泣きをすることも多くあります。幼児期(3歳から6 歳ごろ)までに浅い眠りと深い眠りのサイクルが大人と同様のリズムに移行していきます。そのため、幼児期になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。発達障害と睡眠障害の関連は?睡眠障害は、発達障害の併存症として認められることが多いといわれています。睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではありませんが、発達障害の特性により、睡眠になんらかの問題が出てしまうことが主な原因です。乳幼児期の睡眠は脳の発育にも関わるため、睡眠障害が長引くこと自体が睡眠不足や生活リズムが乱れて悪循環を生み、子どもの心身の発育に影響している可能性も否定できません。自閉スペクトラム症がある子どもは音や光などに対する感覚が過敏なため、覚醒しやすいといわれています。また、睡眠に関係するメラトニン生成や、セロトニンからメラトニンにいたる代謝経路の障害が関係しているのではないかと考えられています。そのため、自閉スペクトラム症のある子どもの睡眠の問題には、なかなか寝つけない、入眠することができない、 夜中に起きて騒いでしまう、ちょっとしたことで起きてしまうなどが多くあります。ADHDの特徴には不注意・多動性・衝動性があります。ある調査ではADHDのある子どもの入床への抵抗、入眠の困難、中途覚醒、起床の困難、日中の過剰な眠気がある子どもが多い傾向があるという結果があります。また、ADHDのある人の脳には脳内の神経伝達物質であるセロトニンに偏りが生じているともいわれています。そのため、セロトニンを原料としてつくられるメラトニンという体内時計をコントロールするホルモンにも偏りがでてしまうため、不眠や概日リズム睡眠障害に陥りやすいのではないかと考えられています。参考:子どもの睡眠亀井雄一、岩垂喜貴 |保健医療科学2012 Vol.61 No.1 p.11-17Q:来月から6年生になる男の子の母です。ADHDの子は寝ない子・寝付きが悪い子が多いと言われていますが例にもれずうちも小さい頃から寝付きが非常に悪く、そして寝ると朝本当に起きられません少し前までおやすみをした後隠れてタブレットで動画見てたりしていたので没収しました・・・携帯は夜間ロックをかけています。普段は自分の携帯のアラームをかけさせていますが、全く起きず叩いても起きず、ベッドから引きずり降ろしてようやく起きます体も大きくなってきたので正直この起こし方が最近本当に大変です・・・。(中略)同じようなお子さんお持ちの親御さん、どのような対策とられてますか?病院にかかってみた方がいいのかな?と思ったこともありますこちらの質問には以下のような回答が寄せられました。A:息子もADHDとASDです。赤ちゃん時代は、眠りが浅い子でした。幼少期も夜驚や寝言が多かったです。それほど深刻には考えていなかったのですが、高学年になっても寝相がかなり悪く、主治医に相談し、メラトベルと言う睡眠ホルモンの薬を試してみました。(中略)朝起きられない問題は、コロナ禍で生活リズムが不規則になった頃からです。やはり、就寝前の電子機器の使用で就寝時間は徐々に遅くなり、22時半頃になることもあります。朝は休日でも8時起床にしていますが、息子もなかなか起きられません。自分の力で起床することが、自立の一歩だと思っているので、スマホのアラームやAlexaなど工夫して平日は一人で起きるようにしています。寝坊した場合は、就寝時間を早めるように促しています。熟睡できている事が前提だと思うので、1度主治医に相談してみては?違う切り口からの回答なんですが、職場で専門機関監修の睡眠改善セミナーを受けた中で使えそうなテクニックをいくつか。・睡眠環境を整える→寝室に光源を極力置かない。ダウンライトなどを活用。就寝中は家電のランプも塞ぐ(専用シールとかあります)→窓の隙間も塞ぐ。暗幕の活用→温度湿度の管理、寝具、パジャマの見直し(大人もついでにやってみては)・寝る前のスマホテレビ、照明→理想は1時間前にやめる。→リビングが調光できるならば、夕食前あたりから外に合わせて光量も落とす。・朝起きた時の楽しみを作る→朝飲む飲み物を少しリッチにする、朝ごはんへの投資、早起きして好きな映画を見るなど。(弟はゲーム時間確保のために早起きしてました)環境改善は一緒に寝てるのであれば親御さんの睡眠にも作用するのでおすすめです。年齢的にもう別々でしょうか?個人的には「朝起きる目的」があるパターンが学童期は一番効いたなと思います。私自身も見たいアニメがある、夏のラジオ体操でコンプリートして記念品もらいたい、という俗物的な目標があった方が起きてました。参考になれば幸いです。このように発達ナビQ&Aコーナーでは、疑問を投稿すると、ほかのユーザーの方が実体験をもとに回答してくれます。聞いてみたい質問があれば、ぜひ投稿してみてください!【小児科医に聞く】睡眠の大切さ、子どもの睡眠問題、何科を受診すればいい?、発達障害と睡眠障害の関わり、服薬のギモン、睡眠障害がある子どもへの対応などここまで発達ナビのQ&Aコーナーに寄せられたギモンを中心にご紹介しました。ここからは、小児科医の藤井明子先生に子どもの睡眠の重要性、受診のタイミング、睡眠障害がある子どもへの対応、服薬のギモンについてお答えいただきます。A:睡眠には「脳を休める」ノンレム睡眠と、「体を休める」レム睡眠があります。ノンレム睡眠時には、大脳を休めるだけでなく、成長ホルモンが分泌され、脳内の神経ネットワーク形成や細胞の修復、骨・筋肉形成が行われます。また、免疫機能・代謝機能が増強され、疲労の回復に役立っています。レム睡眠時には、脳は活発に活動し夢を見ることが多いですが、全身の筋肉は緩んで、体は休んでいます。睡眠の時間が短い、質が悪いなどで、睡眠の役割が十分に果たされないと、子どもの心身の成長や発達に影響が及ぶとされています。Upload By 発達障害のキホンA:かかりつけの小児科でまずは相談してみましょう。小児科医は、病気のことだけでなく、お子さんの生活全般、生活習慣についてのお困りごとにも対応することが可能です。すでに寝る前の工夫をとられていることもあるかと思いますが、お子さんが寝ないと、保護者も眠れず、親子共に疲弊していることもあります。少しでも工夫できることがないか、一緒に小児科医と考えていけると良いと思います。Upload By 発達障害のキホンA:いろいろ対策をしても寝つきが悪いようなら、受診して相談してみても良いでしょう。1〜2歳のお子さんの寝つきの悪さなら時間と共に改善する可能性もありますが、5歳であると睡眠覚醒リズムが確立される年齢なので、睡眠障害があるのかもしれません。ASDの特性もあるような気がするとのことなので、併せて相談されると良いでしょう。Upload By 発達障害のキホンA:受診すると、必ず薬が処方されるというわけではありません。まずは、睡眠リズムを作るための生活習慣の見直しをおこなっていきます。例えば、布団に入る1時間前のテレビ・インターネットなどは控える。休日・平日関わらず一定の時間に起きる、入眠までにすることの手順を同じ手順で同じ時刻に行うなどです。生活習慣の見直しをおこなっても改善しない場合に、薬の内服も検討します。発達障害に伴う入眠困難なお子さんへは、メラトニン受容体作動性入眠改善薬(一般名:メラトベル)を使用することがあります。メラトニンは、体内時計に働きかけ、睡眠と覚醒を切り替えて、眠りを促す作用があります。Upload By 発達障害のキホンA:易刺激性の薬とは、ASDに対するかんしゃくや、それに伴う暴言・暴力に対する薬のことだと思います。睡眠障害があるお子さんで、易刺激性に対する薬を使用することはあります。薬を使うことで、気持ちが安定し、入眠しやすくなることがあります。副作用として、眠気・だるさ、食欲増進を認めることがあります。主治医の先生と相談しながら、適切な効果のある量を調整していく必要があります。薬は、副作用と効果のバランスを見て、効果がある場合には続けていくと良いでしょう。長期に飲み続けて、依存性のでる薬ではないので、効果がある場合には続けて、適切な睡眠習慣をつくることができると良いと思います。Upload By 発達障害のキホンA:生活リズムの乱れは、抑うつやイライラといった気分の悪さと関連していることが指摘されています。睡眠リズムを取り戻すためには、朝に起きて光を浴びることから始めましょう。ベットを日当たり良い場所に移動し、毎日同じ朝の同じ時間にカーテンを開けて日光が入るようにして、刺激を多くしましょう。朝ごはんを食べることも、リズムをつくる上で大切です。食事が食べられなくても、少量のお湯などを経口摂取することから始めても良いです。午前中の生活を正してから、入眠前の工夫をしていきましょう。テレビや携帯電話、パソコンの使用は、入眠前1〜2時間は控えていきましょう。Upload By 発達障害のキホンA:ナルコレプシーは過眠症の一つで、オレキシン神経系の機能障害が原因です。日中の居眠りだけでナルコレプシーと診断できず、睡眠日誌をつけ、終夜睡眠ポリグラフィ、反復入眠潜時検査を受ける必要があると思います。ナルコレプシーを積極的に疑う場合には、睡眠外来を受診することをお勧めします。しかし、睡眠外来に受診すべきがどうか迷われる場合には、かかりつけの小児科に相談してみましょう。Upload By 発達障害のキホンA:起立性調節障害は、自律神経機能不全により、立ちくらみ、朝起き不良、だるさ、動悸、頭痛を認める病気です。朝起き不良だけでなく、だるさのために午前中の活動がしにくい状態になることもあり、そのため入眠困難になり、睡眠リズムの乱れにつながることもあります。起立性調節障害の治療と加えて、入眠をサポートする薬を使うこともあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害のある子どもの睡眠にまつわるエピソード発達ナビライターの方々の睡眠にまつわるエピソードをご紹介します。子どもの成長に欠かせない「睡眠」。睡眠に関する悩みが解消しないときは抱え込まず、医療機関へ子どもの心身の成長や発達に大切だといわれる「睡眠」。しかし、いろいろと工夫してもなかなか子どもが思うように寝てくれず悩みを抱えている方も多いかもしれません。発達障害がある場合、睡眠障害を併存していることも多く、睡眠の問題は、単純に生活習慣の乱れではなく、何かしらの原因が背景にある可能性もあります。また、わが子が寝ないと、保護者も眠れず、親子共に疲弊してしまうこともあります。小児科医では、病気のことだけでなく、子どもの生活全般、生活習慣について相談することも可能ですので、心配なことがあれば、かかりつけ医に相談してみましょう。発達ナビ「Q&Aコーナー」にあなたのギモンをぜひ投稿してください今回は発達ナビQ&Aコーナーに寄せられた睡眠にまつわるギモンと小児科医の藤井先生からのアドバイスをご紹介しました。発達ナビのQ&Aコーナーに気になることを質問するとユーザーの方が経験をもとに答えてくれます。話題の質問に専門家からアドバイスともらえることも!ぜひチェックしてみてください。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年02月21日かかりつけの歯医者さんはありますか?きっかけは「親の会」でのお話Upload By べっこうあめアマミたとえ発達がゆっくりでも、甘いものは大好きな子どもたち。それなりの年齢になり、何でも食べるようになってくれば、虫歯などの口腔内トラブルに見舞われることもあるはずです。私もそんな不安はありましたが、何となくその不安には蓋をして、長らく息子を育ててきました。しかし、ある日参加した地域の「親の会」のお話し会で、考えを改めることになったのです。そのお話し会では、すでに成人した障害があるお子さんの親御さんたちが、ご自身の経験談などを話してくれていました。その中で、歯科治療の話題が出たのです。お話しくださった方のお子さんには知的障害があるということでしたが、あるとき、虫歯になってしまったそうです。しかし、街の歯医者さんでは暴れてしまって治療ができず、大きな専門の病院に通って治療をすることになり、とても大変だったそうです。知的障害に限らず、発達障害などさまざまな特性があるお子さんに言えることですが、虫歯になってもこのように暴れてしまい、治療にならないケースは少なくないのではないでしょうか。子どもたちにとっては口の中に不思議なものを入れられるだけでも不快なのに、変な味がしたり、痛かったり、その上長時間じっとしていなければならないのです。これは、受け入れがたい苦痛でしょう。でもだからこそ、子どもが小さいときから取り組んでほしいことがあるとも言われました。それは「虫歯になってから」ではなく、「虫歯になる前から」歯医者さんに通うことです。まずは診察台に座れるようになるところから始め、歯磨きだけだったり、フッ素を塗るだけだったり、子どもの様子を見ながらゆっくりと、「歯医者さんに慣れる」ことができるようにしていきます。かかりつけの歯医者さんを決めて定期的に通うことで、最初は入ることさえ抵抗があった子どもも、だんだん慣れていくのではないでしょうか。虫歯になってから初めて歯医者さんに行くと、どうしても痛い治療をせざるをえません。そうすると子どもの中に「歯医者さん=怖い」というイメージができてしまい、拒否感がより強くなってしまいます。でも、何も痛いことをされないときに、ただ楽しい気持ちで通う習慣をつけていけば、結果は変わっていくかもしれません。お子さんが、歯医者さんという場所やそこで会う人たちに心を開き、信頼関係ができていることは、スムーズな治療のために大切なことです。このお話を聞いて、私は大いに納得し、息子にもかかりつけの歯医者さんを探したいと思いました。障害があると診てもらえない?難航する歯医者さん探しUpload By べっこうあめアマミ「息子にかかりつけの歯医者さんを」と思いましたが、実際に探してみると、なかなか障害がある子どもを快く受け入れてくれる歯医者さんは見つかりませんでした。街の診療所ですと人手も限られますし、患者が暴れた場合にしっかり拘束することもできません。口腔内は繊細な治療が必要となりますから、やはり歯医者さん側も不安があるのでしょう。そんなある日、「小児歯科」と看板に掲げている歯医者さんに、当時1歳だった娘(息子の妹)の歯科健診に行きました。娘はおとなしく診察台に座って健診を受け、歯医者さんも褒めてくれました。そして、「今後も定期的にフッ素塗布などしにくるといいよ」とすすめてくれたのです。ちょうど家からも近くて良さそうな歯医者さんだと思った私は、息子のことが頭をよぎり、「今度、この子のお兄ちゃんも連れてきていいですか?」と聞いてみました。すると歯医者さんは何の迷いもなく「どうぞ連れてきてください」と言ってくれました。しかし、その後私が息子に障害があることを話し始めると、歯医者さんは急に別人のように歯切れが悪くなったのです。娘の通院はぜひにとすすめてくれるのに、息子の通院は、本人を見てもいないのに拒まれる。致し方ないかもしれませんが、親としてはわが子2人に明らかな差がある対応をされたようで、少し悲しくなりました。出会いは突然に!息子を受け入れてくれた歯医者さんUpload By べっこうあめアマミその後しばらくして、今度は娘が保育園で歯をぶつけてしまい、またどこかの歯医者さんで診てもらわなければならなくなったときのことです。前回の苦い思い出を踏まえ、今度は別の歯医者さんに行ってみました。そして娘の治療後、またしても私は、歯医者さんにおずおずと息子のことを切り出し、障害がある子どもでも通院は可能か聞いてみました。すると、歯医者さんはさらっと快諾してくれたのです。その歯医者さんも、自分は障害児「専門」ではないとおっしゃっていましたが、「とりあえず連れてきてください」と言ってくださり、後日息子を連れていきました。その歯医者さんは、私が親の会で言われたことと同じことをおっしゃっていました。「息子さんにとって歯医者さんが嫌な場所にならないように、まずは信頼関係をつくりたい、だから無理に何かをしようとせず、ゆっくり進めていきますね」と話してくれました。まずは診察室に入り、診察台に座るところからです。息子は最初は多少緊張があったと思いますが、歯医者さんの人柄もあって安心したのか、初日からおとなしく診察台に座ることができました。診察台が倒れることには少し抵抗があるようでしたが、歯磨きをしてもらい、口の中に異常などがないかも診てもらえました。最後、息子が少しだけ嫌なそぶりを見せたので、その日はそこで終わりました。息子はたくさん褒められて、ご機嫌で帰宅。私もホッとしたのを覚えています。歯医者さんの提案で、最初はお互いの信頼関係をつくることと慣れるために、1ヶ月に1回くらいのペースで通いました。そうして歯磨きや、適切なタイミングでフッ素塗布などをしてもらいつつ、息子がだいぶ慣れてきた今は2、3ヶ月に1回くらいのペースで通っています。鉄則!発達っ子の歯科治療は「治療」より「予防」Upload By べっこうあめアマミ息子は今、8歳の小学2年生ですが、これまで一度も虫歯になったことがありません。いろいろな要因はあると思いますが、良い歯医者さんに出会い、定期的に口の中を診てもらいながら、歯磨きやフッ素塗布などをしてもらっているおかげかもしれません。親の会だけでなく、私の周りの障害があるお子さんを育てる親御さんたちの間では、「かかりつけの歯医者さんを見つけて定期的に通う」ことをよくすすめられます。幼児期のうちから歯医者さんと信頼関係を築き、歯医者さんは怖くない、口の中を触られても大丈夫、と良いイメージをつくり上げていきたいものです。もし、それでも大きな虫歯になって、治療がかかりつけの歯医者さんでは無理ということになったら、そのときは最終手段として専門の口腔センターなどにお願いしましょう。そういう際にはかかりつけの歯医者さんが判断して、治療に適した病院に紹介状を書いてくれるのではないかと思います。発達に課題があったり、障害があったりするお子さんの歯科治療はどうしても大変です。そのため、「治療」より「予防」が何より大切です。虫歯になってから困るよりも、なるべく虫歯にならないように気を付けていきたいですね。執筆/べっこうあめアマミ(監修:藤井先生より)良い歯科医院との出会いがあって良かったですね。信頼関係を築くために、1ヶ月おきにまめに通院されたのも良かったですね。治療となると、口腔内を安全にみるために身体を抑える必要が出てくることもあったり、場合によっては全身麻酔で入院されて治療する場合もあります。痛くない定期的なチェックを継続し、歯科医院の通院ができるようになっていることが、虫歯予防において大切です。今回のべっこうあめアマミさんのお話は、発達障害の特性があるお子さんの親御さんにはもちろんのこと、歯科検診を嫌がるお子さんをお持ちの親御さんにも知ってほしい内容です。
2023年01月23日本人への障害告知以前コラムでも書きましたが、娘は中学2年生のときに主治医から障害の本人告知を受けています。告知は・娘自身が「自分の障害について知りたい」と思った・本人に“居場所”があり、精神的に落ち着いている・告知後、支援者(学校関係者)のフォロー体制ができていることを医師が確認したうえで行われました。そのおかげで娘は障害告知をポジティブに受けとめることができました。障害告知から6年後に、再告知その後、娘は高等特別支援学校を卒業し、特例子会社(※)に就職しました。そして20才になったある日、娘は再び私に「自分の診断名を知りたい」と言いました。私は娘に、中2のときに告知を受けているのになぜまた聞きたいのか尋ねました。娘は「診断名は知ってるけど、自分の障害の詳しい種類と程度を知りたい」と言いました。SNS上でも発達障害に関する情報や当事者として発信する人も多くなってきていましたし、娘もそういったものを見て何かしら思うところがあったのかもしれないと、このとき私は思いました。(※)特例子会社は、「障害のある方の雇用の促進、そして安定を図るために設立された会社」のことです。【参考】厚生労働省特例子会社制度の概要Upload By 荒木まち子娘は社会人になってからは一人で通院をしていました。何か親が医師に伝えたいことがあるときは、手紙を書き娘から医師に渡してもらっていました。私は医師に『娘が自分の障害名や障害の程度を知りたがっている』旨の手紙を書きました。医師は中学生のときから娘を診ているので娘のことはよく分かっています。二度目の告知は通常診療とは別枠で予約を取り、親同伴で行われることになりました。一度目の告知のときは前回の告知のときは、娘と親がそれぞれ感じている“本人の長所と短所”を事前に書き出しました。・真面目で一生懸命。我慢強い・常識を学び、言われたことは直したいと考え努力している・ルーチンに強く、さぼらない・興味や関心が深く狭い。技術や知識は多い・自分から気持ちを伝えることは、落ち着いてるとできる・会話は苦手で、相手の言葉に不安になることがある・新しいことや状況の変化・変更に対して臨機応変に対応することが苦手これらのことを一緒に振り返りながら医師が娘の『特性』を文字に起こして障害の説明をしました。本人の理解力に合った言葉選びと文字を書きながらの説明は、視覚優位の娘にはとても有効な方法です。医師からは『これからどのようにして周りの人たちに助けを求めていくのが良いか』のアドバイスもありました。2度目の障害告知では二度目の障害の説明でも、事前に本人と親で『娘の長所と短所と思われることの書き出し』をしました。その内容は6年前とほとんど違いはありませんでしたが、新たに“自分のことばで相談を持ち掛けるのは、ハードルが高い。相談してくれる人が向いてくれたら話せる。自分から働きかけることが苦手”が加わりました。娘は自らに主治医に「自閉症」「発達障害」「アスペルガー症候群」「ADHD」の違いや「自分は何に当てはまるのか」「障害の重さはどの程度なのか」などを質問しました。娘の質問に対し、主治医は図を書きながら娘に分かるように説明をしました。そして診断名は大事な個人情報だということも娘に伝えました。娘をとりまく環境の変化私は当初、再度自分の障害についての説明を望んだ娘の心境がよく分かりませんでした。でも娘と医師のやり取りを見ているうちに、娘が“学生”から“社会人”になったことが大きく影響しているのだと感じました。『学生』でなくなると、選択の自由度が増し、煩わしいもの、嫌なことを避けることもできます。学生時代は限られていた交友関係や活動範囲を広げることが可能です。一方で、自ら行動を起こさなければ人間関係は希薄になりがちです。周りの人は本人の意思を尊重します。そして自身の行動には責任が伴なってきます。そんな中で娘が自分の障害を再確認したいと思うのは自然なことだったのかもしれません。これからも親は子どもが何歳になっても親ということには変わりありません。そして子どもに障害があると、子どもを守りたいという気持ちはことさら大きくなります。でも自分の障害を理解しようとしている娘の姿を見て、私は彼女を一人の大人としてもっと尊重し、対等なスタンスで接していくべきなのだろうと感じました。これからも人生の節目やターニングポイントを迎えるたびに、娘は自身の障害についていろいろと考えることでしょう。そしてそのとき、私もまた新たな気付きを得るのだと思います。いつになるか分かりませんが、そのときまで体も心も頭も(笑)元気でいたいものです。執筆/荒木まち子(監修:鈴木先生より)そもそも自閉スペクトラム症を「障害」ととらえずに「特性」ととらえればいいのです。特性を知ることで今後の人生や生き方に役立てればいいと思います。重要なのは会社や周りの人たちがその特性を理解してくれるかどうかです。理解してくれることによって優しく丁寧に具体的に肯定文で話してくれれば、娘さんにとって生きやすい社会になります。最近はSNSなどでさまざまな情報が飛び交っております。重要なのは信頼のできる主治医と向き合って自分独自の特性を正確に知り、どういう対策を取ったらいいか知っておくことです。そしてそれを理解してくれる仲間を増やすことです。
2023年01月17日わが子にとっての「あたりまえ」とは?を考えるーー『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』この本では、発達ナビの連載ライターである「まゆん」さんと、自閉スペクトラム症があり特別支援級に在籍する息子の「太郎」くんの温かい日常のエピソードが描かれています。太郎くんとの生活は驚きの連続。ふとしたときに独特の感じ方、考え方を見せる太郎くんの特性を、まゆんさんも、まゆんさんのご両親やお姉さんも、否定することなく、やさしく受け止めてくれます。自閉スペクトラム症がある太郎くんのエピソードが中心に描かれていますが、そのほかにも看護師として夜勤で働くまゆんさん自身のお仕事のお話や、若くして亡くなったまゆんさんのお兄さんや病気が見つかったお姉さんのお話、先生や友達との人間関係などを含めて、「自閉スペクトラム症のある子どもの子育て」というテーマに限らず、生きるとは、子どもを持つこととは、その人にとっての「あたりまえ」とは、お互いを思うこととは、といった幅広いテーマについてじっくりと考えられる一冊になっています。感覚過敏、癇癪、抽象的な概念の理解の難しさなど、さまざまな特性があるものの、ときに大人が気づかないようなハッとするようなことを口にしたり、周りの人の言葉や行動を自分なりに解釈してやさしい言葉をかけてくれる太郎くんとの関わりを通して、太郎くんだけでなく、まゆんさんや太郎くんの周りの人が成長していく様子も垣間見ることができます。やさしさあふれる太郎くんとあたたかいご家族の日常から、自分にも人にもやさしくなれる生き方のヒントが得られるのではないでしょうか。一人にしない、立場を超えた対話の重要性ーー『対話から始める脱!強度行動障害』強度行動障害とは、他害や自傷など、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動を著しく高い頻度で起こすために、特別に配慮された支援が必要な状態を指します。近年、医療、教育、福祉、行政など、それぞれの分野でさまざまな取り組みが進められているものの、まだまだ家族や施設で孤立し、困り果ててしまうケースが多いといわれています。この本では、ライフサイクルを見据えたうえで、1. 思春期、2. 思春期~青年期、3. 成人期~高齢期と3つのパートに分け、強度行動障害の背景、予防のための工夫や支援、家族との関係性や自立生活のための支援についてなど、それぞれの時期にぶつかりやすい困りごとやその対処法について、座談会も交えながら、児童精神科医や介助職の方など幅広い立場の専門家により書かれています。大切なのは支援者も当事者も孤立させないこと。それぞれの立場を超えて対話を重ね、教育、福祉、医療など分野を超えて連携し、包括的に支援を行っていくことが強度行動障害を抜け出すための一歩になるのではないでしょうか。強度行動障害についてさまざまな悩みに直面したとき、この本は必要な情報を提供してくれるかもしれません。フリースクールについての疑問に答えてくれる一冊ーー『フリースクールを考えたら最初に読む本』近年では、不登校の子どもの数が年々増加し、フリースクールなど家や学校以外の「第三の居場所」の需要が高まっているといわれています。いざ子どもが不登校になり、フリースクールに通うという選択肢を考える段階になったときに、そもそもフリースクールとはどんな場所で、どんなスタッフがいるのか、どのように選べばいいのか、といったことについて情報を得ることが難しいという課題があるそうです。この本では、不登校新聞編集長の石井志昂さんにより、不登校について、フリースクールの必要性について、運営やスタッフについて、選び方についてなど、フリースクールに関して知りたい情報が分かりやすくまとめられています。Q&Aや当事者、保護者の方の体験談も掲載されており、幅広い視点から「フリースクールとはどんな場所か」について学ぶことができるような一冊となっています。不登校は決して他人事ではなく、何かのきっかけで急に学校に行けなくなってしまうことはいつでも起こりうることだと言えるでしょう。子どもが不登校になったとき、フリースクールは一つの選択肢になるかもしれません。フリースクールと言っても、中身はさまざま。子どもにとって最適な選択ができるよう、この本は必要な情報を提供してくれるのではないでしょうか。現在不登校状態にある方も、フリースクールについて知っておきたいという方も、さまざまな方におすすめの一冊です。強迫症の正しい理解と治療のためにーー『強迫症を克服するー当事者と家族のための認知行動療法』強迫症とは、自分の意思とは関係なく、ある考えやイメージが頭に浮かんで離れなくなり(強迫観念)、そこで生まれた不安を払拭するために同じ行動を何度も繰り返すこと(強迫行為)で日常生活に支障が出てしまう不安障害の一つです。強迫症は本人の生活に支障をきたし、そのことを自分で責めたりしてしまったり、家族や近くにいる人も巻き込まれてしまったりするケースが多く、とても苦しい病気であるといわれています。この本では、「洗浄強迫」「確認強迫」「整理整頓型強迫」「想像型強迫」などそれぞれのタイプごとに症状や原因が説明されているほか、強迫症の治療、家族の対応、関連するほかの障害などについて詳細に語られており、自分の症状に合った対処法を見つけることができるようになっています。強迫症の治療は「ひたすら我慢する」「ひたすら嫌なことをする」と考えられていることも多いですが、このようなイメージは誤解であるとこの本では述べられています。病気の実態や治療について正しい知識を得たいと思ったとき、この本はそっと寄り添ってくれるのではないでしょうか。誰もが参加し楽しめる、新しい体育のあり方ーー『合理的配慮にも活用できる!アダプテッド・スポーツで誰もが主役の楽しい体育』アダプテッドスポーツとは、身体活動をする際に配慮が必要な方(障害児者、高齢者、妊婦など)に対し、用具、ルール、環境などを工夫することで、誰もが身体活動に参加できるようにするための取り組みを指す言葉です。この本では、年齢、性別、障害などを問わず楽しめるアダプテッド・スポーツの考え方をベースに、誰もが主役になれる体育の在り方が分かりやすく解説されています。第1章では、理論編として、体育やアダプテッドスポーツの基本的な考え方を、第2章では、実践編として、器械運動、陸上運動、ボール運動など、それぞれの分野ごとにさまざまな運動の実践例が紹介されています。運動の効果・効用や評価の仕方など、実際に授業をデザインする際に参考になる内容もたくさん盛り込まれています。教室の中には、運動が苦手な子ども、身体を動かすことに制約がある子どももたくさんいるでしょう。体育の授業の時間に、誰かが我慢したりつらい思いをしたりする必要がない環境づくりのためには、みんなで楽しめる体育の授業を考えていくためには、どのようなことが必要なのか、この本と共に考えてみてはいかがでしょうか。「令和の日本型学校教育」と知的障害教育はどう交わる?ーー『知的障害教育における「個別最適な学び」と「協働的な学び」』2021年1月に中央教育審議会から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が答申されました。この本では、答申の中で示された「個別最適な学び」と「協働的な学び」というキーワードについて、これらを知的障害教育においてどのように実現していくかについての提案がなされています。Ⅰ章で「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が示す内容を読み解き、Ⅱ~Ⅳ章では、知的障害教育の歴史、「学校生活の集団化と個別化」、教育目標「自立」をめぐる議論をもとに「個別最適な学び」と「協働的な学び」の在り方が検討されています。さらにⅤ章では「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現する授業づくりについて、Ⅵ章では今後の課題と望ましい方向性について述べられています。知的障害教育の歴史を振り返ると、すでに「個別最適な学び」「協働的な学び」の多様で豊かな蓄積があることが示されています。今後の教育が目指す「令和の日本型学校教育」と知的障害教育はどのように結びつき、関わっていくのでしょうか。知的障害教育という観点からの「個別最適な学び」と「協働的な学び」について知りたい方、「個別指導」と「集団指導」、また教育目標「自立」との関係について考えたい方におすすめの一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2023年01月14日娘の障害が分かったとき、夫は単身赴任中だったわが家の長女ゆいの障害認定が下りたころ、夫は3年間の単身赴任中でした。しかも当時はコロナで移動制限もあったころで、夫が帰宅できる回数は少なく、ほぼ私と子どもたちだけで過ごしていました。夫とはいつでもオンラインで連絡が取れるとはいえ、役所の手続きや通院、学校との打ち合わせも全部私一人で対応し、心細く大変だったことを思い出します。障害の診断が下りた当時は「うちの子は普通だ」「障害者の手帳なんかいらないのでは」「気にしすぎだ」と言っていた夫ですが、少しずつ心境が変わってきているように感じます。実は夫からちゃんとゆいについての思いを聞いたことはありません。でも、中学校の特別支援学級の説明会に参加したり、勤め先にゆいが療育手帳を取得したことも話したりしています。口にはしないだけで現実を受け入れつつあるのかなと感じているのですが…。Upload By 吉田いらこわが家の子育てバランスは、私が子どもたちに甘く夫が厳しいパターンでした。夫は甘やかすばかりでは子育てに良くないと思っていたようで、よく「俺が厳しい部門の担当になる」と言っており、ゆいの障害が確定するまでは、夫は子どもたちには特に勉強面で厳しくしていました。しかし今年に入り、単身赴任を終えて帰宅した夫は…とにかくゆいに激甘になっていました。特別支援学級に移ってから本人に合う勉強法に変えていただいているとはいえ、全員共通で受ける算数のテストの点数は相変わらず高くはありません。○が少ない答案用紙を見て、以前の夫だったら「しっかり勉強しないからだ」と注意していたと思うのですが、今はもう答案用紙を見ても微笑むだけです。Upload By 吉田いらこ夫の娘たちに対する接し方の違いが気になって…勉強面以外でも、次女のあいに接するときの夫は今までと変わらないのですが、長女のゆいに関しては「まあ、仕方ないか」という感じで流してしまうのです。ゆいが元々大人しい性格で怒られるようなことはあまりしないという事情もありますが、あいが対応に差を感じてしまうかも、と少し心配しています。夫を見ていて感じたのですが、怒るということは相手に対して期待する気持ちがあるからなのではないかということです。今よりもっと成長してほしいから怒る、ということもあると思います。このことをゆいに対しては無意識に避けているのでは、と感じました。Upload By 吉田いらこでも姉妹で対応に差をつけてしまうと、されている側は敏感に感じ取ってしまうので、二人に対して同じように接するよう、夫には気をつけてもらうようにしています。私としては二人とも優しく甘やかしてもいいのでは、と思っているのですが…。もうすぐ、長女のゆいは中学生、次女のあいは小学校高学年になります。これから勉強面だけではなく、精神面でも成長してきたときに、娘たちにどう対応していこうか悩んでいるところです。執筆/吉田いらこ(監修:藤井先生より)コロナ禍の単身赴任中に、ゆいさんはゆいさんのペースがあると、受け止められたのだと思います。一方で、次女のあいさんへの接し方が気になっているのですね。きょうだいの対応に差をつけるのは、されている側は敏感に感じ取ってしまうかもしれない、と相談されることもあります。しかし、きょうだいとはいえ、個々に個性があります。個別に対応を変えるのはあっても良いかと思います。しかし、必要な注意はあっても良いかと思いますが、成績に対して怒るという対応は工夫しても良いかもしれませんね。
2023年01月13日臨月に行ったノンストレステストでひっかかった娘には重度の知的障害や身体障害があります。言葉はほとんど話すことはできません。発達の遅れは感じていたものの、2歳直前で障害があると診断されるまでは、そんなに重い障害があるとは思ってもいませんでした。妊娠中は、後期になるまではとても順調でした。ですが、臨月になり、ノンストレステストを行ったところ、いつまでたっても胎児が起きないのです。通常は、おなかの中の赤ちゃんは20分おきくらいで起きたり寝たりしているそうなのですが、ずっと寝ている状態とのこと。ほかの妊婦さんが30分ほどでテストを終えていくのに、私だけ3時間たっても終わりませんでした。産院の先生はなんども超音波で胎児の様子を見ては「脳もあるし、身体に異常は見当たらない。なんでだろう」と頭をひねらせていました。大学病院に紹介状を書くか迷っていた様子でしたが、予定より2週間ほど早く陣痛が来て、紹介する間もなくかかりつけの産院で出産することになりました。出生後すぐチアノーゼに出産時も、上の子の時とは違いました。生まれてすぐ一声泣いたものの、そのあとはぐったり…胸に抱かせてもらった娘の顔色がだんだん悪くなるのを見て、私は「先生、この子おかしいです!」と叫びました。スタッフが慌てて血中酸素濃度をチェックすると、とても低い数値。あわてて酸素ボックスの中に入れられました。ですが翌日になると落ち着いたので、予定通り3日ほどで退院となりました。Upload By ユーザー体験談泣かない、手がかからない、乳児時代その後は特に問題はないように見えた娘ですが、上の子と比較して違ったのは「泣かない」ということでした。上の子がとにかく泣いてずっと抱っこをしていて大変だったのに、娘は寝かせておいたらずっと寝ているし、泣いてアピールすることもほとんどありませんでした。出産祝いに来てくれたママ友に、「こんなに手がかからないなんて、なんか変じゃない?」と言って「楽なのに心配するなんて、心配しすぎだよ」と言われたのを覚えています。今思えば、自己主張するほど脳も発達してなければ、泣くために必要な身体の力も未熟だったのだろうと思います。Upload By ユーザー体験談4ヶ月を過ぎたころから発達の遅れが目立ち始めた首すわりまでは順調だったのですが、そこから先はつまづきました。寝返りしない、ハイハイしない、座れない、伝い歩きしない…7ヶ月健診で要観察、9ヶ月健診のときにもお座りが安定しない娘をみて、産院の先生に子ども病院を紹介されました。上の子のときを思い返せば、9ヶ月ではしっかり座り、座ったまま体をひねったり、両手でおもちゃで遊んだりしていたし、ずりばいやつかまり立ちもしていました。人見知りも始まっていました。娘は人見知りをすることもありませんでした。原因不明の発達遅延といわれて子ども病院にはかかったものの、原因不明の発達遅延と言われただけ。発達センターを紹介され、1歳になるころから、PT(理学療法)を受けることになりました。センターの先生は、おそらく一目見て娘の障害に気づいていたのでしょう。その後、同じ自治体に娘と同じ障害がある子が複数いると分かりましたし、そうした子どもたちはみんな、就学前はこのセンターに通っていたからです。ですが、立場もあるからでしょう、障害名について口にすることはなく、「ウォーカーをつくって歩行練習をしたほうがいいと思います。障害者手帳をつくれば、公費でつくれるので手帳をつくりませんか?」と提案されました。おそらく、歩行に困難がある障害だから、はやめにウォーカーをつくってリハビリを始めたほうがいいと考えてくださったのだろうと思います。1歳半健診で感じた周りの子どもとの違い1歳半健診にもいったものの、ハイハイもせず、模倣もせず、もちろん積み木もつめず。「おかあさんが髪をとかしていたら、それをまねしますか?」といわれ、1歳半の子どもってそんなことできるんだっけ、と思ったのを覚えています。そうした模倣をするようになったのは、娘の場合は小学校に入ってからでした。健診で、すでに発達センターに通っていることを伝えると、それならと特に要観察の指示もありませんでした。てんかん発作が診断のきっかけに結局、障害が分かったのは、1歳半を過ぎたころにてんかん発作を起こしたことがきっかけでした。地域の中堅病院にしばらく入院し、その後主治医になったのが、ある大学病院から月に何回か来ている脳神経の専門の先生で、その先生は脳波をみて娘の障害に気づき、大学病院への転院手続きをしてくださったのです。大学病院での遺伝子検査の結果、先天性の希少疾患があることが分かりました。Upload By ユーザー体験談3歳児健診はパス、大学病院での配慮がうれしくて3歳児健診には、娘を連れては行きませんでした。障害も分かっていたし、すでに毎月大学病院で見ていただいていたからです。役所に電話したら、「大学病院で毎月見ていただいているなら大丈夫ですよ」と言われました。定期通院のときに、看護師さんに「3歳児健診は行くのやめたんです」と伝えると、いつも計測している身長体重に加えて、詳しく計測をしてくれ、母子手帳に記載してくれたのがとてもうれしかったです。Upload By ユーザー体験談障害告知はつらかったけれど生後1ヶ月くらいから感じていた「何か気になる」というカンは、結局当たっていました。わが家の場合、てんかん発作で入院した病院に、娘の障害に詳しい先生がきていたことから、早めに障害を見つけてもらうことができました。障害が分かったときはその重度さに落ち込みもしましたが、今は早く見つけてくださった先生に感謝しています。あれから10年以上経ちましたが、私たち家族は娘を中心に幸せに暮らしています。イラスト/にれエピソード参考/あき(監修:鈴木先生より)1歳までは運動面での発達が主なので、遅れのあるお子さんはとりあえず「運動発達遅滞」という病名で定期的にフォローしながら病因検索をしていきます。この時点で一般の小児科医から神経専門の小児科医のいる病院へ紹介されるのが普通です。娘さんは運動発達を遅らせることで親にイエローカードを出していたのです。それをいち早く察知するために乳幼児健診(基本コラム「0歳児健診」参照)があります。早めに診断するメリットとしてさまざまな合併症に対する検査・診断・治療が早くできることが挙げられます。1%程度の病気の面は主治医が診るので家族のみなさんは残り99%の健康的な娘さんのできるところを見て伸ばしてあげてください。
2023年01月07日【前編】障害児キッズモデル「僕たちから目をそむけないで!」華ひらく社長・内木美樹さんよりつづく12月3日午前10時、週末の千葉県のイオンモール木更津。多くの家族連れでにぎわうなか、2階にある展示スペースで、ひっそりと小さな写真展が始まった。30点ほどのパネルには、子供たちがカラフルなバルーンやシャボン玉に夢中になっていたり、あどけない表情でソファでくつろぐ姿などが写されている。一見、何げない日常の光景だが、作為のない子供たちの表情や、会場全体の飾りつけもパステルのトーンで統一されていて、不思議な幸福感に満ちているのだ。《ここにいる全員、障害のあるキッズモデル》入口脇に掲げられた写真展のタイトルのとおり、実は、ここに写っているすべての子供が、何らかの障害と共に生活している。よく見れば、パネルの脇にモデルの名前と一緒に「7歳・自閉症・肢体不自由」「3歳・自閉症・重度知的障害」などとプロフィールが添えられていた。「写真も会場も明るい雰囲気で、驚かれたでしょう。私が何より大切にしているのが、この世界観なんです。障害につきまとう、暗かったり、マイナスのイメージを変えたいんです」そう話すのは、この写真展を主催した、障害のある子供たちのモデル事業などを手がける「華ひらく」(東京都新宿区)社長の内木美樹さん(40)。■結婚、起業……穏やかな生活は、授かった長男が2歳になる直前、保育士のひと言で一変「普通にわがまま(笑)、よくいえば活発な女の子でした」’82年12月4日、横浜市に生まれた内木さん。「航空会社勤務の父、専業主婦の母、3つ上の兄の4人家族。地元で小中高と公立校に進み、ずっと陸上部に所属していました」そんな、「ごく普通の生活」が中学1年のときに突然、断たれる。「母が膵臓がんで急死。当たり前だった、学校から帰宅しての『おかえり』という笑顔を失い、深い絶望に陥ります。その孤独や悲しみを12歳の私は抱えきれずにパニック障害を引き起こし、幸福な時期があるからつらいんだと自己防衛で忘れようとするうちに本当に記憶を失い、解離性障害と診断されました」そんなとき、図書館で1冊の学習漫画と出合う。「何げなく手にしたマザー・テレサの伝記を読んで、世界には、こんな不幸な私すら持っている家のない人や、ご飯さえ食べられない人たちがいることを知り、私も泣くばかりでなく、将来、マザーのように自分の体験を生かして何かできないかと、前を向けたんです」その夢を実現すべく、高校卒業後には留学準備の専門学校へ進み、19歳で渡米。ネバダ州のリノ市にある、看護学でも有名な短大TMCCへ入学。23歳で帰国後、コピー機の営業職などを体験。しかし、「上司からのノルマや罵声があったり。留学したせいで、日本の会社とはこういうもんだと思い込んでいましたが、やがて、いわゆるブラック企業だと気づくんです。これは自分の思い描いている道とは違う。だったら、会社に縛られない働き方をしたいと、起業に踏み切りました」’10年11月、たった一人で設立した「華ひらく」は、当初は留学体験を生かして、飲食店のインバウンド向けの接客の英会話教育などを請け負う会社だった。2年後の春に、日米間の長距離恋愛を続けていた克親さんも帰国して、結婚。穏やかな夫との生活のなかで、パニック障害もいつしかおさまっていた。そして、’13年10月8日、長男の尊くんが誕生する。「主人は会社員で経理を担当していて共働きですから、尊は6カ月から保育園。歩き始めるのが遅いくらいで、なんの心配もなく忙しく毎日を送っていました」その日常が、2歳になる直前、保育士のひと言で一変する。「タケちゃん、耳が聞こえてないかもしれません。お名前を呼んでも振り向かないんです」母親の直感で耳は正常だと思っていたが、不安を捨てきれずに、大きな施設を訪ねた。■ガラスの壁の向こうにいる人にも障害のある子供たちのことをどう伝えるか、ひらめいたのは……「自閉症と知的障害があります」市川市のこども発達センターの医師が告げたのに対して、事前に発達障害等について調べていた内木さんは、間髪入れず尋ねていた。「知的障害は中度ですか?」「重度に近い中度です」その言葉が重くのしかかる。「自閉症などの障害があっても、各分野で活躍している人もいます。その存在が私の最後の希望でしたが、重度の知的障害と聞いて、一気にくだかれました」しかし、女性園長は行政と相談して尊くんの担当となる加配保育士を付け、ほかの保護者たちも温かく受け入れてくれたのだった。「それでも、2歳、3歳と成長するにつれて、ますます尊がじっとしていられなくなったり、大声を上げたりするのを見て、私は、うちの子が園全体の和を乱しているのではと、心配するばかりで。’16年2月には、弟の謙くんも誕生。しかし、遊びたい盛りの男の子2人を公園に連れていくのは、いつも夕方5時を過ぎてから。「薄暗い公園を見渡し、ほかの子やお母さん方がいないのを確かめてホッとしている自分に気づいて、また泣きたくなったり」本来の自分らしさをどんどん失っていく内木さんだったが、わが子の障害を受け入れるきっかけは小学校入学と同時に訪れた。千葉県立の特別支援学校への入学式でのことだった。「最初の行事の集合写真の撮影で、尊がシャッターが1回下りただけのところで駆け出してしまったんです。私自身は、もう焦ってしまうばかりでした」すると、周囲の先生たちが、こんな言葉を口にした。「あらら、行っちゃったねえ~。元気でいいね」そのやわらかな笑顔を見て、内木さんは、ようやく自分たち母子の居場所を見つけたのだった。その初めての心の余裕が、彼女にあることを気づかせた。「ふり返れば、保育園でも、公園でも、みなさんは私たちを受け入れてくれていた。なのに、自分で見えないガラスの壁を作っていた。そうか、私こそが、障害のある人たちに対して、偏見や差別の気持ちを持っていたんだと」そして’20年に入ると、家族はまた大きな一歩を踏み出す。ユーチューブで、尊くんの日常を配信し始めたのだった。名付けて、「はばたけタケル」。1年後には登録者数も3千人まで増えるなど、一定の反響は得ていた。しかし、内木さんは、「ユーチューブを通じて、同じ障害のある人たちの輪はできました。でも、ふさわしい表現ではないかもしれませんが、傷のなめ合いをしているうちは、社会は変わらないだろうと思ったんです。だったら、かつての私のように、ガラスの壁の向こうにいるあちら側の人にも、障害のある子供たちと家族のことをどう伝えるか。お涙ちょうだいはイヤだし、できれば子供たちの自立につながってほしいと、思いました」仕事や家事をしながら、また夜も寝ずに考えに考えた。そして、「興味のない人も否が応でも目にしてしまうもの、感情に訴えるもの。そうだ、広告だ、キッズモデルだ!」■無我夢中でらくがきに没頭する子供たちの笑顔が広告に使われ大評判に「飛込み営業で、まずは世間的にSDGsに力を入れている会社などに連絡しましたが、ほとんどが『前例がありません』『障害者を利用してお金もうけをしているとのクレームにつながりかねない』というお返事でした。そこで、よし、外堀から埋めようと思うんです。社会のほうから“日本にだって障害のあるキッズモデルがいてもいいよね”というウエーブを作ろうと。その具体策が、写真コンテストでした」このコンテストは、新聞各紙などにも取り上げられ、冒頭のとおり、その後の写真展にもつながっていき、大きな成果を上げた。同時に進んでいたのが、ある広告プロジェクト。その相手企業がチョークや描いても消せる筆記具「キットパス」で知られる日本理化学工業(川崎市)だった。「60年以上前から障害者雇用に取り組み、社員の7割が知的障害者という日本理化学工業さんは、ずっと大ファンで、モデル事業を立ち上げたときに、ぜひお声がけしようと決めていたんです」同社広報部の雫緑さん(42)は、「今年4月、わが社のホームページのお問い合わせ欄に、内木さんの最初のメールが届きました。障害のある方への思い、ご自身のママとしての思いがあふれるほどの長文で、私自身4歳児の母親として大いに共感して、すぐに広告作りが動き出しました」早くも翌5月には、千葉県の鴨川でキットパスの新商品の広告の撮影が行われた。「華ひらく」から出演するのは、ダウン症のすみれちゃん(8)と自閉症と軽度知的障害のあるなぎさちゃん(7)。ほかの広告制作との大きな違いは演技指導などが一切ないこと。現場に立ち会った、なぎさちゃんの母親の武藤綾夏さん(34)は、「内木さんから『お絵描きの好きな子向きの仕事があります』と一斉メールが来て、なぎさにぴったりと思いました。家でも何時間でも描き続ける子なんです。撮影の現場でも、『この大きな窓ガラスに好きに絵を描いていいんだよ』と伝えられたあとは、大人は手出しせずに、のびのび自由にやらせていただけました」完成した広告写真は、商品チラシや展示会パネルに使用され、大評判となった。雫さんは、「現場で、無我夢中でらくがきに没頭する子供たちの笑顔こそ、私たちが伝えたかった商品のコンセプトそのものです。これは、新しい化学反応ができたなと、現場で広告の成功を確信しました」現在、「華ひらく」に登録しているキッズモデルは、0~13歳の38人、契約企業はフォトスタジオやこども食堂など7社。もちろん、この事業のきっかけとなった内木さんの長男の尊くんも、トランポリン施設の広告などに出演している。■障害のある子供たちが自立でき、そのとき彼らにやさしい社会が実現してほしい「タケちゃ~ん、戻っておいで」写真展の昼休みの時間に、会場近くの海の見える公園を訪れた内木さんファミリー。車を降りた途端に駆け出した尊くんは、もう50mも先にいて、まだ走り続けている。そのあとを克親さんが名前を呼びながら追いかけ、さらに謙くんが続く。「いつもの、わが家の光景(笑)。尊のおかげで、笑い声も絶えないし、教わることも多いです。障害のある子供がいると、両親がその子にかかりきりになって、健常の子が寂しい思いをすると知り、毎月、『タケルがママを独占できる日』と『ユズルがママを独占できる日』も作りました。「ほら、タケル。あっちは海だよ、オーシャン」 「オーシャン!オーシャン!」ようやく戻ってきた尊くん、今度は海を目がけて走り出す。語学に堪能な内木さん夫妻は、幼いころから兄弟に英語で話しかけていて、家族の会話にはよく英単語が混じるのだそうだ。海を見に行った母子を見送りながら、今度は克親さんが、「夫婦でよく話すのは、僕たち親は子供より先に死ぬこと。だからこそ、障害のある子供たちが自立でき、そのときに彼らにやさしい社会になっていてほしい。彼女の仕事はそのきっかけになると信じ、家族全員で応援しています」今後、キッズモデルたちの写真展は、12月21~27日に新宿髙島屋での開催が決まっている。内木さんは、木更津での取材翌日に40歳になったが、これまでと変わらず、次のクライアントや写真展の会場を探して、今日も飛込み営業の電話をかけ続ける。「いずれ60歳ごろまでに、里親や保護司を務めたいという思いもあります。もちろん、マザー・テレサがお手本。でも、まず今はキッズモデルを、もっと日本中の人に知ってもらうことが最優先。まだまだガラスの壁は厚いですけど」ポンと背中を押してくれるのは、たくさんの無垢な笑顔たちだ。
2022年12月18日『自閉症児のいる家族の、特別ではない日常のエッセイ』と題し、日常の出来事をInstagramに投稿している、beth(3beth_gm)さん。長男のハルくんは自閉症を抱えており、bethさんは外出中、周囲に迷惑をかけないかと不安にかられることが多いといいます。ハルくんが通学のために使うバス停でも、bethさんはハラハラする出来事がありました。週に3回ほど、バス停で会う女性とは会話をするような仲ではなく、ハルくんのルーティンが迷惑をかけているのではないかと、bethさんは心の中でその女性に謝罪していました。しばらく経った頃、ハルくんのルーティンが崩される出来事が起きます。ハルくんが女性に対してとった行動は…女性を凝視するハルくんを制止し、代わりに謝罪したbethさんですが、その場はなんとも気まずい雰囲気になってしまったといいます。すると次の日…。女性の行動に、bethさんが驚いた理由女性は、昨日の一件を受けてか、ハルくんが座る場所を空けておいてくれていたのでした。その気遣いに感謝の言葉を述べたbethさんは、女性の返答にさらに嬉しくなったといいます。ハルのルーティンを理解してもらえたこと、受け入れていただけたこと、とても嬉しかった出来事でした。自閉症であるハルくんが、周囲から特別な目で見られたり、誤解されたりすることもあるという、bethさん。しかし、この女性は、ハルくんを『自閉症児』としてではなく、『ハルくん』として見て、また、受け入れてくれたのでした。その女性の思いに「温かな気持ちになった」「素敵です」「読んでいて涙が」と、bethさんが投稿したエピソードは、多くの人を幸せな気持ちにさせています。また、ハルくんと一緒にいると、bethさんは、多くの人の縁に恵まれるのだそう。この出来事をきっかけに、他愛もない話をする仲になったという女性との出会いもまた、ハルくんがつないでくれた縁なのでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年11月26日