Text:谷岡正浩Photo:jacK2024年1月20日(土)に控えた初の武道館公演の前売りチケットは即完とその勢いを見せつける5人組バンドKroi。ブラックミュージックを軸にヒップホップ、ジャズ、オルタナティブなど様々な音楽をクロスオーバーして生み出される独自のグルーヴがシーンを席巻中だ。武道館への景気づけ、いやいや、そこは普段と変わらない彼らのスタンスで音楽を目一杯楽しむために、11月3日よりスタートしたのが『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』だ。これはKroiの面々がリスペクトし、一緒に演りたい!と心から思えるバンド、アーティストと対バンするというもので、今回が4回目、約2年ぶりの開催となる。発表されたアーティストは全部で7組で、実に多彩、かつワクワクするラインナップとなった。なかでも一際目を引くのが、11月12日Zepp Hanedaで開催されたnobodyknows+との組み合わせではないだろうか。ご存知、名古屋出身5人組ヒップホップグループのnobodyknows+は、2002年にデビューした、言わば大先輩だ。はたして、どんな夜になったのか、その模様をレポートする。DJ MITSUがプレイする「オヒサシブリ」のビートに乗って、ホクロマン半ライス!!!のアッパーなフロウとノリ・ダ・ファンキーシビレサスのダミ声フロウが会場を一気にヒートアップさせていく。準備運動なし、不意打ち上等のパフォーマンスにオーディエンスは問答無用に身体を揺らす。2ヴァースからCrystal Boy、続いてヤス一番?が登場し、4MC+1DJの陣形が整う。4曲目「Let’s Dance」の時点ですでにフロアを完全に掌握。現場叩き上げのヒップホップクルーにしかできない無敵のステージだ。それはMCでも存分に発揮された。マイクをとったのはノリ・ダ・ファンキーシビレサス。「いやあKroi観に来たのに、知らないおじさん出て来て、歌わずに延々喋ってばっかじゃねーかと。それをラップって言いますよろしくお願いします。もう我々のことは気にしなくていいので、ひとつ訊いてもいいですか?我々のこと知ってるよって人どれくらいいます?(歓声とともにほぼ全員の手が挙がる)ありがとうございます。Kroiのファンは全員嘘つきということがわかりました(笑)」流れるような喋りに客いじり。のちにKroiの千葉大樹(Key)が、「おれたちに圧倒的に足りていないのはあの漫談のスキルなのではないか」と言ったほど“手練れ感”溢れるものだった。MCの頃合いを見計らって、「大丈夫“アレ”はやるから」とブッ込むと会場は一際大きな歓声と拍手に包まれた。アレ、とはもちろん「ココロオドル」のことだ。ミリオンヒットにして、発売から18年後にリバイバルヒットをしたことも記憶に新しい楽曲だ。誰もが期待するこの曲を、単純に「はいどうぞ」とはやらないのがnobodyknows+流。「エル・ミラドール~展望台の唄~」から「ココロオドル」のオリジナルバージョンへとつなぎ、そこから「ココロオドル(Remix)」へ持っていく怒涛の展開でフロアはカオス状態へ。さらに「イマイケサンバ」へなだれ込むというくどさ(いい意味で)。ラスト2曲は、「隠せない明日を連れて」で火照った身体を少しチル、最後に「愛のテーマ」でもうひと盛り上がりして大団円を迎えた。次のKroiへバトンを渡しつつ、自らの爪痕をきっちり残す最高のステージだった。菊池桃子の1stアルバム『OCEAN SIDE』のタイトル曲が会場をいい感じにシティポップに染め上げるなか、Kroiのメンバーがステージに登場。プラスティックな空気を引き裂くように、ワンカウントで「Hyper」の這うようなボーカルが滲みだすと一瞬でそこはKroiワールドへ。変則的なギターリフに導かれるようにラップパートに局面が移行しつつ、全体に漲る緊張感は高めたままサビへ突入していく。バンド全体の高密度なアンサンブルを絡めとりながら、あるいはその間を縫うように躍り狂う内田怜央のボーカルがとにかく気持ちいい。この、10月25日にリリースしたばかりの新曲に続いて、2曲目には彼らの存在を一気に押し上げるきっかけとなった楽曲「Balmy Life」を早くも投下した。フロアからは自然とクラップが打ち鳴らされる。これ以上ない最高のスタートだ。ここから「Network」「HORN」とつないでMCへ。そこでnobodyknows+へのリスペクトの思いが明かされた。「ヤバイ!ヤバイねー」と開口一番、内田が言った。「私、内田はnobodyknows+のライブDVDを小学生の時に観て、ラップを初めて聴いたのが完全にnobodyknows+だと思うんですけど、そういうアーティストが俺らの企画に出てくれてライブをしてくれるっていうヤバイ事態が起きてます。本当にありがとうございます。普通にブチあがっちゃったんで、俺らもブチあげライブをやりたいなと思います」関将典のベースに千葉のキーボードが絡み、そこに益田英知のドラムが滑り込んでファンキーな空間を作り出していく。「Mr.Foundation」だ。内田はハンドマイクで自由に動き回りながらフロアを煽り、長谷部悠生は激シブのフレーズでギターソロをキメる。まるで彼らのスタジオを覗き見しているような、そんなレアなグルーヴがそのままステージで表現されている。曲終わり、行ったり来たりするような独特のタイム感を操る益田のドラムソロから「Funky GUNSLINGER」へ。時代と場所がごっちゃになったような無国籍な雰囲気を纏ってKroiのライブワールドはいよいよ深まっていく。「夜明け」の後半では、リズム隊とキーボードでじっくりと紡いだ音楽の糸をギターとボーカルで一気に一枚の布に仕上げるような鮮やかなアンサンブルで会場を包んだ。「めっちゃ楽しいわ。調子はどうですか皆さん?」と言った内田に続いて、「俺も黙ってられないんだよ」と長谷部が口を開いた。「俺たちはやっぱり“NARUTO”世代だから。『NARUTO -ナルト-疾風伝』でnobodyknows+の『Hero’s Come Back!!』を聴いた時の“なんじゃこりゃ!”って感動は忘れられないんですよ」。そこからさらに内田のnobodyknows+愛にブーストがかかる。「だって俺、ドラムの発表会で『Hero’s Come Back!!』を叩いたからね。先生に、これ打ち込みだからやめときなって何回か言われたんだけど(笑)」。次の曲「Astral Sonar」に行く前に長谷部が照明を「エッチな感じにしてほしい」とリクエスト。そうするとピンク色にステージがほんのり染まる。それを見た内田が「古い時代のエッチな感じだね」と感想を漏らして会場の笑いを誘った。浮遊感と激情の混じる曲の最後に、スタンドマイクが緩んで垂れ下がり、内田が跪いて歌ってフィニッシュすることになった。「面白い感じで始まって、最後も面白くなっちゃった」と、おそらく二度とないであろう「Astral Sonar」が聴けた。後半4曲を一気に畳み掛け、本編ラストは「a force」で終えた。アンコールの拍手で迎えられて再びステージに姿を現した5人。1曲目はライブ定番曲「Juden」を披露。内田がボンゴなどパーカッションを叩きながら歌う姿が印象的だった。まさに禁じ手なしのフリーゾーンへ突入した感のある会場はひたすら繰り出される音楽に合わせて盛り上がっていくのみ。さらに、「Fire Brain」へ。このツアー3本目にして東京公演だけのサプライズが飛び出した。曲間の「『Dig the Deep』始まって3公演目ですけど、毎晩ヤバイ瞬間を過ごせています」という内田のMCから一気にギターソロという展開で加速していく。このままこのツアーを終え、来年1月の武道館ではさらに“ヤバイ瞬間”へ。Kroiの勢いは止まりそうにない。<公演情報>Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.42023年11月12日(日) Zepp Hanedaセットリスト■nobodyknows+01.オヒサシブリ02.ススミダス→03.Hero’s Come Back!!04.Let’s Dance05.Winds of Wins06.ワサワサ07.アンダーレイン08.エル・ミラドール~展望台の唄~09.ココロオドル10.ココロオドル(Remix)11.イマイケサンバ12.隠せない明日を連れて13.愛のテーマ■Kroi01.Hyper02.Balmy Life03.Network04.HORN05.Mr.Foundation06.Funky GUNSLINGER07.shift command08.夜明け09.Astral Sonar10.selva11.Small World12.Page13.a forceEN1.JudenEN2.Fire Brain<ツアー情報>『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』※終了公演は割愛11月26日(日) 仙台PITゲスト:Ovall12月2日(土) Zepp Sapporoゲスト:クリープハイプチケット情報:()<ワンマンライブ情報>『Kroi Live at日本武道館』2024年1月20日(土) 日本武道館開場17:00 / 開演18:00関連リンク公式サイト:
2023年11月21日現在放送中の冬ドラマには、ジャニーズ出演の話題作が盛りだくさん♪そこで、とくにテンションが上がったポイントについて、『ジャニーズは努力が9割』の著者・霜田明寛さんと本誌記者がジャニヲタ対談!注目作品の見どころを語ってもらいました。記者:今期も魅力的なドラマばかりですが、霜田さんがとくに注目している作品は何ですか?霜田:僕、『すきすきワンワン!』(日本テレビ系・月曜深夜24時59分~)の岸(優太・27)さんと浮所(飛貴・21)さんのコンビが大好きなんです。2人がたわむれている様子が、とにかくかわいすぎます!記者:『VS魂』(フジテレビ系)でも共演している2人なので、リアルな関係性とリンクして、より “萌え度”が高まりますよね。実際に、同居してみてほしい!霜田:主人公はけっこうなダメ男ですが、どこか憎めないのは岸さんが演じているからこそ。浮所さんの犬らしい仕草も愛らしいです。かわいさ満載で、ジャニヲタならハマってしまう作品。何年かごとに、違う先輩後輩コンビでリメイクしてほしい!記者:ジャニーズ共演でいうと、『大病院占拠』(日本テレビ系・土曜22時~)の櫻井(翔・41)さんと菊池(風磨・27)さんのコンビもアツいですよね。霜田:菊池さんは、ふだんから櫻井さんを慕っていますからね。満を持しての初共演だと思います。櫻井さんも菊池さんも、スマートさとやんちゃ感が共存している稀有な存在。待ちに待った初共演から目が離せません!記者:櫻井さん演じる熱血刑事が追い詰められていく一方、菊池さん演じる武装集団のリーダーは常に冷静沈着。この対比も胸アツです。霜田:いよいよクライマックスに突入するので、先輩後輩の直接対決が楽しみですね!記者:それから、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系・火曜22時~)の永瀬(廉・24)さんが、かなりハマり役じゃないですか?霜田:わかります!どこか陰のあるイケメンの役が本当に似合いますよね。キャラクターも永瀬さん自身をほうふつとさせる気がします。永瀬さんの魅力が存分に発揮されているので、脚本の北川悦吏子さんに、ジャニヲタを代表してお礼を言いたいです(笑)。記者:ハマっていたといえば、『大奥』(NHK・火曜22時~)の中島(裕翔・29)さんの和服姿!とても艶やかで素敵でした。原作マンガも大好きなんですが、中島さんの再現度が高くてびっくり!2次元超えのカッコよさに胸キュンでした。霜田:大奥のなかで目立ってしまうのも納得の美男子っぷりでしたね。記者:一方、『ハマる男に蹴りたい女』(テレビ朝日系・土曜23時~)では、藤ヶ谷(太輔・35)さんの意外な一面が発揮されていますよね。アイドルだけでなく、俳優にMCにと多才すぎる藤ヶ谷さんですが、ラブコメの才能まであったとはさすがすぎます!霜田:クールで二枚目な役柄のイメージが強かったので、女性たちに振り回されているのが新鮮です。家事をしている姿にもキュンとします!記者:今期のドラマも、ジャニヲタ歓喜のラインナップで最高ですね!【PROFILE】霜田明寛WEBマガジン「チェリー」編集長。過去にはジャニーズJr.オーディションを受験した経験もある。著書に『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)など
2023年03月04日例年以上にジャニーズの話題に事欠かなかった2022年も残すところあと少し。そこで、『ジャニーズは努力が9割』の著者であり、自身も大のジャニーズファンである霜田明寛さんに、来年とくに活躍が期待できるタレントを3人挙げてもらった。■松本潤大河ドラマ『どうする家康』が控えている堂本光一さんに続き、菊田一夫演劇賞を受賞する日も遠くないかもしれません!外部の舞台で堂々と主演を張ったかと思えば、『Endless SHOCK』では、メインを引き立てるような演技もできて、本当に多才ですよね。この1年のうちに、同期入所でかつてはシンメだった目黒蓮さんと、なにかで共演する機会があれば、長年のジャニーズファンとしてはうれしい限りです!
2022年12月31日例年以上にジャニーズの話題に事欠かなかった2022年も残すところあと少し。そこで、『ジャニーズは努力が9割』の著者であり、自身も大のジャニーズファンである霜田明寛さんに、来年とくに活躍が期待できるグループを3つ挙げてもらった。■Sexy Zone先日、初のドームツアーを大成功させたSexy Zoneは、いよいよ機が熟してきたような感じがします。デビューから10年以上経っているのに、まだ全員が20代というのも、ほかのグループにはない強みですよね。デビュー初期の楽曲に、ジャニーズイズムを強く感じさせるものが多いのも、彼らならではの魅力だと思います。最近は、個人としてもグループとしても、CM出演の機会が増えてきていますし、ビジュアルのよさをいかした仕事が、今後も増えていくのではないでしょうか。マリウス葉さんの引退で4人体制になってしまいますが、新しい門出となる2023年は、ぜひいい1年にしてほしいと思います。■A.B.C-Z例年、舞台『ジャニーズ伝説』を観劇するたびに、A.B.C-Zは、ジャニー喜多川さんが、ジャニーズイズムを継承させるために作ったグループなのかもしれないなと感じています。コンサートや舞台で見せる、アクロバットに大掛かりな機構を使った演出など、ジャニーズのエンターテインメントの真髄を、デビューしてから10年以上も体現し続けているのがさすがですよね。今後、ジャニーズ愛にあふれるグループとして、事務所全体を牽引していくような存在になってくれたらいいなと思っています。■Aぇ! groupAぇ! groupは、関西ジャニーズらしいバラエティ能力の高さで、今後テレビを中心に、活躍の場を広げていくような気がします。コンサートで披露するコントや新喜劇の完成度も高いですし、テレビやラジオに出演したとき、ジャニーズのタレントとは知らずに、「このコ、おもしろい!」と思われるケースもあるみたいです。歌唱力バツグンでカリスマ性のある末澤誠也さんや、子役時代に劇団四季ミュージカルに出演し演技力に定評のある佐野晶哉さんなど、個性あふれる魅力的なメンバーが勢揃いしているので、グループだけでなく個人の仕事もどんどん増えていくと思います!
2022年12月31日例年以上にジャニーズの話題に事欠かなかった2022年も残すところあと少し。そこで、『ジャニーズは努力が9割』の著者であり、自身も大のジャニーズファンである霜田明寛さんに、今年とくに活躍がめざましかったタレントを3人挙げてもらった。■オールマイティーな二宮和也にびっくり今年は二宮和也さんの才能のすごさに改めて驚かされた1年でした。ドラマ『マイファミリー』の大ヒットに始まり、主演映画も2本公開され、24時間テレビのパーソナリティを務めたり、カパーアルバムも配信されるなど、その多才さを改めて思い知らされましたね。とくに、YouTubeの「ジャにのちゃんねる」は、ジャニーズファンなら必ず見たことがあるんじゃないかというくらい、重要な存在になっています。レギュラーメンバー以外にも、先輩から後輩まで、多岐にわたるジャニーズタレントの話題が出るので、幅広いファン層から支持されているんだと思います。■Sexy Zone菊池風磨の幅広い演技力新たな魅力に気付かされたのは、Sexy Zoneの菊池風磨さんです。バラエティでの活躍はもちろん、ドラマ『ファイトソング』で見せた三枚目の演技や、映画『もっと超越した所へ。』でのクズ男の役、舞台『ドリームボーイズ』の主人公など、幅広い演技力を存分に発揮していました。また、「ジャにのちゃんねる」での愛される後輩感も、ふだんのグループ活動のときとはまた違った雰囲気で素敵ですよね。ほかの3人にツッコんだり、場を回すようなときもあって、今後どんどん活躍の幅が広がっていきそうです。■Snow Man目黒蓮はどこか親しみやすい雰囲気で大ブレイク出演ドラマ『silent』の社会現象を呼ぶ大ヒットや、朝ドラ初出演など、Snow Manの目黒蓮さんにとって、2022年はまさに大ブレイクの年だったと思います。目黒さんの人気の秘訣は、見た目のカッコよさや身長の高さで高嶺の花の感じがあるかと思いきや、どこか親しみやすい雰囲気があったり、弱さを抱えた男性の役も演じられたりするところにあるのではないでしょうか。ジャニーズタレントは、男性性を押し付けない雰囲気の人ばかりですが、なかでも目黒さんは令和の男性像にぴったりハマっている気がするので、今後も俳優としてのヒット作に恵まれていきそうな予感がします。
2022年12月31日例年以上にジャニーズの話題に事欠かなかった2022年も残すところあと少し。そこで、『ジャニーズは努力が9割』の著者であり、自身も大のジャニーズファンである霜田明寛さんに、2022年のジャニーズの活躍について振り返ってもらった。■激動の1年で改めてわかったタレントたちの強い思いジャニー喜多川さんが亡くなって3年が経ち、その遺志を継いでいこうという思いが、タレントそれぞれの心のなかにしっかり根付いてきたように感じます。たとえば、新年早々に上演される舞台『JOHNNYS’ World Next Stage』は、東山紀之さん、堂本光一さん、井ノ原快彦さんという、ジャニーさんからの信頼も厚く、長年直接指導を受けてきた3人が、演出として名を連ねています。また、来春の『滝沢歌舞伎ZERO FINAL』は、主演のSnow Manのメンバーが、自分たちで演出を務めることも発表されました。今年は、滝沢秀明さんの退社やKing & Princeのメンバー3人の退所発表など、ジャニーズにとって激動の1年ではありましたが、だからこそ、タレント一人ひとりが、ジャニーさんの遺志を自分たちの手で守り続けようと、強い気持ちを持ってくださっているのが、改めてわかった気がします。不安になりそうなときも、堂本光一さんや生田斗真さんをはじめ、これからも事務所を支えるだろう所属歴の長いメンバーが、きちんとコメントを発表してくださったことも、ジャニーズファンとしては、とてもありがたかったです。■来年も最高のエンタメが生み出されるはず!2022年は、ジャニーズファンにとっては激動の1年でしたが、タレントたちの思いの強さを再確認できた年でもありました。2023年も、ジャニー喜多川さんの遺志を引き継いだ最高のエンターテインメントを、たくさん生み出してくれることでしょう。なかでも、新たにジャニーズアイランドの社長に就任した、井ノ原快彦さんの活躍には期待大です。穏やかで優しい人柄から、後輩たちに愛される井ノ原さん。ジャニーズJr.たちにも、それぞれの意見を尊重して、いいところを最大限伸ばせるような、サポートをしていくのではないかと思います。すでに全国ツアーが決定しているAぇ! groupや美 少年をはじめ、魅力的なグループが多数在籍しているので、なにわ男子やTravis Japanに続いてデビューを掴んでほしいですね。2023年も、1人のファンとして、ジャニーズのエンターテインメントを目一杯楽しもうと思っています!
2022年12月31日例年以上にジャニーズの話題に事欠かなかった2022年も残すところあと少し。そこで、『ジャニーズは努力が9割』の著者であり、自身も大のジャニーズファンである霜田明寛さんに、今年とくに活躍がめざましかったグループを3つ挙げてもらった。■KinKi Kidsは頼もしい限りCDデビュー25周年イヤーということで、例年以上にKinKi Kidsの存在感が大きかったですね。多くの歌番組で、あの美しいユニゾンやハーモニーを聴けたのが幸せでした。新曲のリリースやYouTubeチャンネルの更新、アニバーサリー企画など、ユニットとしての活動がいつもより活発だったにもかかわらず、剛さんはシンガーソングライターとしての20周年を記念した活動、光一さんは『Endless SHOCK』や後輩の舞台の演出と、ソロ活動の手をまったくゆるめなかったのもすごいですよね。ジャニーズタレントの1つの目指すべき姿を体現してくれている気がして、とても頼もしい限りです。■やっぱり外せないSnow ManCDセールスがダントツだったSnow Manはやっぱりハズせないですね。デビュー前から、先輩やファンのなかでは定評があったパフォーマンス力が、世間でもしっかり評価されるようになったのが、人気の秘訣の1つなのかなと思っています。また、ラウールさんのパリコレデビュー、目黒蓮さんの出演ドラマの大ヒット、佐久間大介さんの声優挑戦などをはじめ、メンバーそれぞれのソロ活動が多岐にわたっていて、話題に事欠かなかったことも、知名度を上げる一因になっているのではないでしょうか。来年は、自分たちで主演と演出を務める舞台『滝沢歌舞伎ZERO FINAL』も上演予定ですし、勢いはどんどん増していくんじゃないかと思います。■デビュー1年目のなにわ男子も大健闘!なにわ男子は、今年デビュー1年目でしたが、すでにメンバー間の知名度や人気にかたよりがないのがすごいですよね。メンバーそれぞれが、自分の武器や役割をわかっている気がして、個人としてもグループとしても、今後どんどん人気を伸ばしていくのではないでしょうか。なにわ男子の活躍ぶりを見ていると、このメンバーを選抜した、ジャニー喜多川さんのセンスは、やっぱり天才的だったんだなと改めて感じます!
2022年12月31日現在放送中の秋ドラマには、ジャニーズ出演作が盛りだくさん!『ジャニーズは努力が9割』の著者・霜田明寛さんによると「今期はハマり役を演じている人ばかり」なのだとか。「役柄に、ご自身の印象が反映されている方が多いんです。『silent』の目黒蓮さんは、障害を抱えながらも周囲を思いやる優しさや誠実な人柄が、ご本人と重なりますし、『ボーイフレンド降臨!』の髙橋海人さんも、かわいらしいけれど、どこかミステリアスな雰囲気が、記憶喪失という設定にぴったりですよね。『束の間の一花』で京本大我さんが演じる余命の短い哲学講師役も、見た目の繊細な美しさで、リアリティが増しているように感じます。ご本人の資質に、役作りの努力がかけ合わさって、何倍も魅力的なキャラクターになっているんでしょうね」■目黒蓮(25)『silent』フジテレビ系・木曜22時~「目黒さんの目元や表情の演技に思わず引き込まれてしまうんですよね。猛練習したという手話からも感情が伝わってきて、俳優としてさらに飛躍する予感がします」(霜田さん・以下同)■髙橋海人(23)『ボーイフレンド降臨!』テレビ朝日系・土曜23時~「髙橋さんが醸し出す独特の雰囲気は、年上女性が恋に落ちてしまうのも納得です。記憶を取り戻したとき、演じ方にどんな変化が起きるのか、今から楽しみです」■京本大我(27)『束の間の一花』日本テレビ系・月曜深夜24時59分~「京本さんは、ビジュアルに説得力を持たせるため、人生初の食事制限をしたそうで、美しさに磨きがかかっています。哲学講師という設定も、雰囲気にぴったりです」また、どちらもマンガが原作の『親愛なる僕へ殺意をこめて』と『クロサギ』では、主演の2人が演技の実力をあますところなく発揮しているという。「山田涼介さんは、マンガ原作の世界観のなかでも、見た目に説得力がありますよね。今回は、バイオレンスなシーンの表現力も際立っています。平野紫耀さんは、コミカルなシーンとシリアスな演技の振り幅の広さがさすがです。カッコいいダークヒーローとして、男性人気もより高まる気がします」■山田涼介(29)『親愛なる僕へ殺意をこめて』フジテレビ系・水曜22時~「2つの人格をどちらも魅力的に演じ分けられるのは、山田さんの演技力があるからこそ。真実が明かされるまでの展開にも期待大!」■平野紫耀(25)『クロサギ』TBS系・金曜22時~「劇中で、平野さんがいろいろな変装をするのも見どころのひとつ。着替えシーンで、筋肉美が見られるのもうれしいポイントです」最後に、霜田さんはこう語る。「どの作品もクオリティが高いのはもちろん、ご本人たちの魅力が最大限に引き出されていて、ジャニーズファンとしては、テンションが上がりまくりです!」【PROFILE】霜田明寛Webマガジン「チェリー」編集長。過去にはジャニーズJr.オーディションを受験した経験も!著書に『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)などがある
2022年11月14日今年の夏ドラマはジャニーズが大活躍!そこで、ジャニーズ夏ドラマの注目ポイントを『ジャニーズは努力が9割』の著者・霜田明寛さんに聞きました♪「なんと言っても、なにわ男子の活躍がすごいですよね。メンバー7人中5人が今期のドラマに出演。しかも、『消し好き』では大橋さんが三枚目の主人公を、『パパムス』では長尾さんが主人公の憧れの先輩という二枚目の役を演じていて、グループとしての振り幅の広さにも感心させられます。『彼女、お借りします』の大西さんも注目。過去に童貞役を演じた、櫻井翔さんや二宮和也さんのあとに続くような俳優になってほしいですね」■大橋和也(25)『消しゴムをくれた女子を好きになった。』日本テレビ系・月曜深夜0時59分~「中学生を演じられるのがすごい。歌うシーンで歌唱力を封印していたのも印象的でした」(霜田さん・以下同)■長尾謙杜(20)『パパとムスメの7日間』TBS系・火曜深夜0時58分~「サッカー部のエースで学校イチの人気者という王道の役どころを爽やかに演じています」■大西流星(21)『彼女、お借りします』テレビ朝日系・関西は日曜23時55分~、関東は土曜深夜2時30分~「ピュアな男子大学生がハマリ役。女のコの前であたふたしている様子もかわいいんです!」Jr.たちも健闘!■HiHi Jets&美 少年『トモダチゲームR4』テレビ朝日系・土曜23時~「両グループから選抜メンバーが出演しています。実際のキャラと違う役も演じられるのはさすがですね」なにわ男子がジャニーズ王道の役を演じているのに対して、先輩たちは新境地に挑戦している、と霜田さん言う。「僕の今期イチオシは『純愛ディソナンス』。中島さん演じる心に闇を抱えた主人公から目が離せません。重岡さんの『雪女と蟹を食う』も、映画で見たいくらいの作品ですし、佐藤さんの怯えた表情や永瀬さんのド派手な衣装など、今後も楽しみです!」■中島裕翔(29)『純愛ディソナンス』フジテレビ系・木曜22時~「禁断の恋という話題性だけでなく、心の機微を丁寧に演じる姿を見てほしい!」■重岡大毅(29)『雪女と蟹を食う』テレビ東京・金曜深夜0時12分~「挑戦的なシーンも多いですが、演技派の重岡さんだからこそできる役柄だと思います」■永瀬廉(23)『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』日本テレビ系・日曜22時30分~「同級生役の俳優陣との絡みに注目。同期入所の西畑大吾さんとの共演も感慨深いです」■佐藤勝利(25)『赤いナースコール』テレビ東京系・月曜23時6分~「ホラーは顔がアップになりやすいので顔立ちのきれいな佐藤さんにぴったりな題材です」【PROFILE】霜田明寛Webマガジン「チェリー」編集長。ジャニーズJr.オーディション受験経験も!
2022年08月16日故・石原慎太郎の原作を、篠田正浩監督が映画化した作品が4Kデジタルリマスターされ、『乾いた花 4Kデジタルリマスター版』として、配信されることが決定した。配信プラットフォーム「JAIHO」にて、2月28日(月)から3月29日(火)までの30日間独占・限定配信となる。先日逝去した石原慎太郎の同名原作小説を、妖精のような可憐さの加賀まりこも出演し、気鋭・篠田正浩監督が1964年に映画化した本作は、やくざ映画の原点ともいわれ、その鋭利な尖った表現と、武満徹と高橋悠治による音楽を伴ったスタイリッシュな映像美を誇り、一大センセーションを巻き起こした。かつてマーティン・スコセッシ監督が、本作を賞賛、心酔するあまり、フィルムを購入したという逸話まで残っている。やくざを殺して、三年ぶりに出所した村木(池部良)の足は賭場に向かった。賭けの緊張感とその後の虚脱感だけが村木に生を実感させた。その賭場で少女(加賀まりこ)と村木は出逢う。茣蓙を見つめる熱っぽい眼差しと、勝負への放胆さを持つ少女に村木は羨望と嫉妬を感じた。少女にせがまれて大規模な賭場に案内した村木だったがその部屋の隅には殺しと麻薬にだけ生きている中国帰りの葉(藤木孝)がうずくまっていた……。去る2月14日には、本作が英題『Pale Flower』として第72回ベルリン国際映画祭クラシック部門でワールドプレミア上映され、大盛況のうちに幕を閉じた。篠田正浩監督作品は、昨年、本作同様4Kデジタルリマスターされ、劇場公開、Blu-ray発売、配信と好評を博している坂東玉三郎主演の『夜叉ケ池』に続き、2作目。“松竹ヌーヴェル・ヴァーグ”の一角、篠田正浩監督の才気を、配信でも存分に堪能することができる。『乾いた花 4Kデジタルリマスター版』2月28日(月)から3月29日(火)まで「JAIHO」にて配信配信はこちら (2/28配信開始)
2022年02月28日日本映画のレジェンド、篠田正浩監督が坂東玉三郎を主演に泉鏡花の世界を映像化した『夜叉ヶ池』が、今年のカンヌ国際映画祭クラシック部門(カンヌ・クラシックス)で上映される。この度、本作のBlu-rayが本日7月14日に発売された。『夜叉ヶ池』は、幻想文学の礎を築いた泉鏡花の原作を、『梟の城』や『スパイ・ゾルゲ』などで知られる巨匠・篠田監督が、1979年に取り組んだ意欲作。女方の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性・百合と夜叉ヶ池の竜神・白雪姫の二役を演じて妖艶な世界を表現。さらに加藤剛、山﨑努、丹阿弥谷津子が出演している。日本の特撮技術の基礎を築いた特撮監督の矢島信男の指揮のもと、大船撮影所のステージを大改造して作ったセットで、50トンもの水を使い大洪水シーンは圧巻。クライマックスの洪水シーンの撮影のために、ブラジルのイグアスの滝やハワイを始めとする海外ロケも敢行された。当時、本作を観たマーティン・スコセッシ監督は、篠田監督への手紙の中で、「玉三郎の演技と、あなたが彼を素晴らしく演出した手法に魅了された」「玉三郎が演じた百合を超えるのは、玉三郎が演じた夜叉ヶ池の白雪姫の他にない」と絶賛している。この度発売されるBlu-rayには、1979年劇場公開時のポスターデザインのポストカード、1979年劇場公開時のプレスシート縮刷版が封入される。また現在、ユーロスペースで42年ぶりに本作がリバイバル公開され、レトロスペクティブ「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道 モダニズム ポップアート そしてニッポン」が開催、各地で順次公開される予定だ。「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道 モダニズム ポップアート そしてニッポン」開催期間:2021年7月10日(土)〜30日(金)上映劇場:ユーロスペース上映作品:『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』『私たちの結婚』『涙を、獅子のたて髪に』『乾いた花』『暗殺』『心中天網島』『無頼漢』『沈黙 SILENCE』『化石の森』『はなれ瞽女おりん』※その後全国各地で順次公開予定Blu-ray『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』発売中価格:6,380円(税込)封入特典:・1979年劇場公開時のポスターデザインのポストカード・1979年劇場公開時のプレスシート縮刷版発売・販売:松竹※山崎努の「崎」は「たつさき」が正式表記
2021年07月14日日本映画のレジェンド、篠田正浩監督が坂東玉三郎を主演に泉鏡花の世界を映像化した『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスターで、実に42年ぶりにリバイバル公開、Blu-rayも発売。さらに今年のカンヌ国際映画祭クラシック部門(カンヌ・クラシックス)で上映が決定した。篠田監督はことし90歳。「生誕90年祭」として、その代表作のレトロスペクティブ上映も行われる。戦後すぐと今のコロナ禍の状況はまったく同じ「僕が生まれたのは1931年。満州事変の年です。それから中国との十五年戦争が始まった。パールハーバーは小学5年生のとき。正に戦争一色の戦時下で幼年期・少年期を過ごしました。僕の母は9人の子供を生みましたが、戦争中の、僕が12歳のときに二番目の姉が結核で亡くなり、その下の姉もそれに感染しました。このままでは篠田家の子供は結核で滅んでしまうと思った母は、牛の内臓を買ってきて僕たちに食べさせた。戦後すぐにペニシリンが普及して結核の脅威は少し治まったけれど、その状況は今のコロナ禍とまったく同じです。僕はことし90歳になった。渋谷のユーロスペースで始まる〈篠田正浩監督生誕90年祭〉はそのお祝いだと思っている。さらに嬉しいのは今まで顧みられることが少なかった『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスターで上映され、Blu-rayになったことですね」。スコセッシが絶賛した玉三郎の『夜叉ヶ池』『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社幻想文学の礎を築いたといわれる泉鏡花の傑作『夜叉ヶ池』が映画化されたのは今から42年前の1979年のこと。名作『乾いた花』『心中天網島』などで知られる巨匠篠田正浩の意欲作だ。歌舞伎界を代表する女形の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性の百合と夜叉ヶ池の龍神・白雪姫の一人二役を演じたことが大きな話題になった。「玉三郎さんは撮影当時29歳。三島由紀夫に“百年にひとり出るかどうかの天才女形”と言わしめた人ですから、こちらも緊張感をもって臨みました。その甲斐あって彼の演技は国内外で大評判になりました。アメリカでも公開され、ニューヨークのジャパンソサエティーのプレミア上映会に玉三郎さんと僕が招待された。そこで知り合ったのがマーティン・スコセッシ。彼は試写のパーティーが終わった後、午前1時ごろブロードウェイにあるマンションに招待してくれた。後日、スコセッシは手紙をくれて、そこには〈玉三郎さんの演技と、あなたが演出した素晴らしい手法に魅了されました。玉三郎さんが繊細に演じた百合を凌ぐものがあるとしたら、彼が演じた歌舞伎にインスパイアされた素晴らしい夜叉ヶ池の白雪姫をおいて他にないでしょう〉と書かれてありました。玉三郎の演技はそれほど皆に賞賛されたのです」。『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社このように内外の映画人を魅了した玉三郎の演技の源泉は、鏡花への愛と心酔だ。鏡花原作の『滝の白糸』始め『南地心中』『白鷺』『通夜物語』『辰己巷談』『稽古扇』『夜叉ヶ池』『天守物語』『日本橋』『山吹』『婦系図』に出演していることからそれは明白。鏡花については、「おこがましい言い方になってしまいますけれど、鏡花先生の作品が私になぜ合ったかといえば、読んでいて、自分の言いたかったことが書いてあるような気がするんです。だから覚えること、喋ることが苦痛じゃなくて、むしろ気持がいいんです」と語る。(五代目 坂東玉三郎公式サイトより)篠田監督と鏡花の結びつきも、玉三郎のそれに勝るとも劣らぬほど強く、深い。「中学三年のとき敗戦になり軍国主義から解放されると国語の教師が明星派の詩人で泉鏡花を教えてくれた。マルクス・レーニン主義が時代の中心になっているときに、粗末なガリ版刷りで『高野聖』をテキストに〈日本とは何か、日本語とは何か〉を語ってくれて、僕はたいへん感動したわけです」。“鏡花狂い”ともいうべきそんなふたりがタックを組んで誕生した映画『夜叉ヶ池』が、並の映画であるはずがない。時代を先取りしていた冨田勲のシンセサイザー、矢島信男の特撮まず観客を驚かせたのが、音楽と、大量の湖水が奔流する特撮だ。日本の伝統文化を引き継ぐ鏡花の世界に対位する冨田勲のシンセサイザー音楽、まだCGもない時代のミニチュアワークと光学合成による矢島信男のアナログ特撮が、『夜叉ヶ池』の最大の見どころ聴きどころ。「『夜叉ヶ池』の舞台は大正二年と規定されているけれど〈現代〉の視点で宇宙の神秘を解明しようとした戯曲だから、これは現代音楽しかないと思いました。シンセサイザーというのは〈合成する〉という意味で、冨田勲はコツコツと音楽のコードに合わせて合成していく。音を重ねてハーモニーを作って、ムソルグスキー『展覧会の絵』、ドビュッシーの『沈める寺院』をシンセサイズした。それが本作を、数多ある鏡花原作映画のなかで唯一の”鏡花映画”たらしめていると思う。」『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社冨田のシンセサイザー音楽についてはよく知られているが、特撮監督の矢島信男の仕事は一部のマニアにしか知られていない。矢島の出発点は松竹の日仏合作映画『忘れえぬ慕情』での台風のシーンの撮影。松竹映画のシンボル映像〈富士山〉の撮影も担当している大ベテラン。日本映画最初期のCG作品『宇宙からのメッセージ』の特撮を担当したことでも知られている。「『夜叉ヶ池』の特撮がアメリカで非常に高く評価されたんだけれども、日本の映画ジャーナリストがレポートしなかったので、彼はそれを知らずに死んでしまった。50トンもの水をセットに流しこんだ洪水のスペクタキュラーは矢島信男だからできたシーンです」。『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社駆け足になってしまったが、『夜叉ヶ池』がどんなに凄い作品かが分かっていただけただろうか。泉鏡花の評価が製作時よりも遥かに高くなっている現在、その映画化作品が最新デジタルで鑑賞できる幸せを噛みしめたい。そしてレトロスペクティブ「篠田正浩監督生誕90年祭『夜叉ヶ池』への道モダニズムポップアートそしてニッポン」で篠田監督の偉業を再確認するのも意義あることだろう。撮影/宮田浩史、取材・文/植草信和映画スチールはすべて 『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社特集上映「篠田正浩監督生誕90年祭 『夜叉ヶ池』への道モダニズムポップアート そしてニッポン」開催期間:2021年7月10日(土)〜30日(金)上映劇場:ユーロスペース上映作品:『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』『私たちの結婚』『涙を、獅子のたて髪に』『乾いた花』『暗殺』『心中天網島』『無頼漢』『沈黙 SILENCE』『化石の森』『はなれ瞽女おりん』■初日舞台挨拶7月10日(土)12:00の回上映後ゲスト:篠田正浩監督、坂東玉三郎※その後全国各地で順次公開予定Blu-ray『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版』『夜叉ヶ池』(C)1979/2021 松竹株式会社発売:7月14日価格:6,380円(税込) SHBR-0635封入特典:・1979年劇場公開時のポスターデザインのポストカード・1979年劇場公開時のプレスシート縮刷版発売・販売:松竹
2021年07月06日1979年に公開した篠田正浩監督・坂東玉三郎主演作品『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスター版で42年ぶりに復活。2021年夏に全国各地で順次公開されることが分かった。本作は松竹が2020年に、映画製作を開始して100周年を記念したプロジェクトの締めくくりとなる。幻想文学の礎を築いた泉鏡花の原作を、『梟の城』(1999年)や『スパイ・ゾルゲ』(2003年)などで知られる巨匠・篠田正浩監督が、1979年に取り組んだ意欲作だ。その流麗な美しさと芸の卓越さにより歌舞伎界を一世風靡していた女形の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性の百合と夜叉ヶ池の竜神・白雪姫の一人二役を演じて泉鏡花の妖艶な世界を表現するということで、製作当初からその壮大なプロジェクトが話題となった。共演には、百合の夫で鐘楼守として暮す晃役に加藤剛、晃の友人で失踪した晃の足跡を追う学者の山沢役に山崎努、白雪姫の眷属、湯尾峠の万年婆役に丹阿弥谷津子と、実力を備えた多彩で豪華な顔ぶれが勢揃い。舞台は福井県と岐阜県の県境辺り。三国嶽のふもとの琴弾谷に夜叉ヶ池の伝説の調査に来た学者の山沢(山崎努)は、迷いこんだ池のほとりで、息を飲むほど美しい女性と出会う。百合(坂東玉三郎)というその女性は、夫と二人で鐘楼守をしているという。家に招かれた山沢は、かつての親友で、夜叉ヶ池の調査に出たまま帰らぬ晃(加藤剛)が百合の夫であることを知り驚愕する。夜叉ヶ池には竜神が封じ込められていて、一日に三度鐘を撞かなければ竜神が再び暴れて洪水を引き起こし、村が流されてしまうため、鐘楼守をすることになったのだという。しかし、ある出来事がきっかけとなり、平穏な日々が破られることになるのだった――。脚本は、篠田監督とともに松竹ヌーヴェルヴァーグと称されたメンバーの一人で、多数の作品を手掛けた田村孟と、『天城越え』(1983年)などの監督作品で知られる三村晴彦。撮影は小杉正雄と坂本典隆、音楽はシンセサイザー音楽作家としても世界的に知られる冨田勲、美術はアーティストとしても名高く舞台美術でも著名な粟津潔、朝倉摂、横山豊と、各界でトップランナーとして活躍する錚々たる顔ぶれが集結している。また、鏡花の幻想的な世界観を表現するために、日本の特撮技術の基礎を築き、『宇宙からのメッセージ』(1978年)、『里見八犬伝』(1983年)、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)など数々の作品を手掛けた特撮監督の矢島信男により、当時として最先端の特撮技術を駆使してファンタジックな世界を映像化。そしてクライマックスの洪水のシーンの撮影のために、ブラジルのイグアスの滝やハワイを始めとする海外ロケを敢行。また矢島信男特撮監督の指揮のもと、大船撮影所のステージを大改造して作ったセットで50トンの水を使って村が流される大洪水シーンを作り上げ、まさに圧巻の一言に尽きる一大スペクタクルシーンが実現している。当時、本作を観たマーティン・スコセッシ監督は、篠田監督への手紙の中で「玉三郎の演技と、あなたが彼を素晴らしく演出した手法に魅了された」「玉三郎が演じた百合を超えるのは、玉三郎が演じた夜叉ヶ池の白雪姫の他にない」と絶賛。その後、権利関係の問題で、ビデオ化やテレビ放映がほぼできずにいたが、昨夏、篠田監督と玉三郎さんが再会した際に、本作をぜひ今の人たちにも観てもらいたい、ということで想いが一致し、このプロジェクトが始動した。そして各関係者の尽力に加え、篠田監督と坂東玉三郎から全面協力と監修を経て、音や映像のきめ細かな修復作業を何度も行い、ついに4Kデジタルリマスター版が完成した。奇しくも篠田正浩監督の生誕90周年となる2021年、3月に衛星劇場での篠田正浩監督特集としてTV初放映を皮切りに、今後スクリーンでの上映をはじめ、さらにブルーレイ化、テレビ放映、海外展開など、様々な特集が企画されている。美しい音と映像でよみがえった、日本が誇る圧倒的なスケールと壮麗な映像美で描かれる傑作をぜひ体感してほしい。篠田正浩監督この新作『夜叉ヶ池』を観る人は、坂東玉三郎が、山崎努・加藤剛を相手に緊迫した現代劇を演じ、その果てに魔性の姫に変化する見事なと、世界を圧倒した大洪水の“特撮技術”のお家芸が出会った日本映画の奇跡を、その目で確かめてください。90歳でデジタル技術でよみがえった『夜叉ヶ池』の初日を迎える冒険を楽しみにしています。坂東玉三郎昨年の夏に篠田正浩監督と再会して『夜叉ヶ池』のデジタルリマスター化のプロジェクトが始まりました。デジタル化の作業で映像を確認して、撮影当時の1つ1つの出来事を鮮明に記憶していたことに気づきました。それだけ思いを込めて撮影に臨んでいたのだと思います。泉鏡花「夜叉ヶ池」の世界をデジタル化により美しくよみがえった映像で皆さまに是非ご覧いただきたいと思います。公開当時のマーティン・スコセッシ監督から篠田正浩監督への手紙(一部抜粋)まず最初に、玉三郎さんの演技と、あなたが彼を(俳優としても、日本の伝統芸能の象徴としても)演出した素晴らしい手法に魅了されました。玉三郎さんが繊細に演じた百合を凌ぐものがあるとしたら、彼が演じた歌舞伎にインスパイアされた素晴らしい夜叉ヶ池の白雪姫をおいて他にないでしょう。事実、一度夜叉ヶ池の中に入れば、あなたの作品の真実の美しさが明らかになると私は確信しています。このアンダーワールドで繰り広げられるシーンでは、あなたは日本の文化と伝統の真髄を捉えています。西洋人として私が完全に理解できているかわかりませんが、この映画は文化と歴史の感覚に溢れています。この映画は、あなたとあなたの(文化の)伝統への賛歌であり、現在も、そして未来においても生き続けていくことでしょう。敬意を込めて。『夜叉ヶ池』3月:CS局/衛星劇場にてTV初放送(2K放送)2021年夏ジャパンプレミア上映、ユーロスペースにて篠田監督特集にて上映予定その後全国各地で順次公開ブルーレイ発売、海外映画祭出品も予定
2021年01月28日昨年、好評を博したPUMAとのスニーカーコラボレーション「ewohaku」に続き、「ewokiru」をテーマにアートを身にまとえるTシャツを発表したスポークン ワーズ プロジェクト(spoken words project)のデザイナー、飛田正浩。自ら染めやプリントまで手がける手作業の服作りを実践してきた彼に、亀戸にあるアトリエを訪れ、ファッションとの向き合い方を訊いた。■目指してきたのは「世の中にないもの」ーーこのところファッションの世界でも“手仕事”に注目が集まってきていますが、飛田さんはスポークン ワーズ プロジェクトで手作業の服作りを続けてらっしゃいますよね。はい。もう語るのも面倒になるくらい(笑)ずっと続けてきています。生地を作るにしろ、パターンを引くにしろ、専門のスペシャリストが世にはいて、洋服は作られている。だけど、そこには決まりごとも多々あって、時々「あれ?」と疑問にぶつかることがあるんです。培われてきたものは大切ですが、やっぱり既成概念を壊していかないと、新しいものは生まれてこない。だから、とらわれないために自分でやっているという面もあります。ただデメリットもありますよ。原画を描いて、自分で染色してプリントするとなると、作れる量は自ずと決まってくるし、そのルーティンワークがどこまで必要なのかという疑問も出てくる。だけど、僕の中では“ファッション×アート”が変わらないテーマで、常日頃から「世の中にないものを作りたい」と考えているんです。亀戸にあるspoken words projectのアトリエーーそのアプローチは立ち上げ当初から?紆余曲折ありました。美大(多摩美術大学染織デザイン科卒業)で学んだのですが、四浪して入ったクセに学校にはろくに行かず音楽ばかりやっていたひどい学生(笑)。卒業制作で初めて洋服を縫った時に、「あ、やりたかったのはこれだった」と気づくんです。そこから服作りは独学で模索。ただ“商品を作る”という考えが持てなかった。ずっと音楽を作ってきたから、“作品作りをしている”という感覚だったんですよね。当時は時代的にも、純粋に芸術をやっていこうとする人間が周りにも多かったから、“表現”を軸に生活をしていくことには抵抗ありませんでした。今思うと、非常に向こう見ずなんですけどね。でも、それじゃ服は売れない(笑)。いろんな葛藤を経験して、一時は染色やプリントも封印して、いわゆる量産をする“既製服”のアパレルビジネスもやってみました。ただ、無理に既製服を作ろうとすればするほど悪くなっていく。だから、もうこれで最後だと決意して、ワンピースたった1型に絞って、1点1点全て違う加工のコレクションを発表したんです。それが評価されて、エージェントがついてビジネスになった。ラックだとひとつの大きな塊に見えるものが、手に取るとそれぞれに違う、手作業の量産。自分でも「これだ」と確信できました。初めて“作品”と“商業”が融合できた瞬間だったんですよね。ーー封印を解くことで、逆に進むべき道が開けたんですね。アパレルの王道は歩んでこなかったから、無知ゆえの遠回りや苦労をさんざんしてきました。でも、それこそデザインについては浪人していた時期に一番勉強した気がするし、迷ってきたから見えたものもありますよね。今は“手作業のブランドである”ことは、むしろどうでもいいと思っているんです。PUMAとのプロジェクトを通じてより明確になってきたのですが、結局僕はアートをやりたいんですよね。となると、常に刺激的でなければいけないし、フレッシュであり続けなければいけない。ストーリーやコンセプトさえしっかりあれば、あとは服作りのやり方はどんなモノでもいいんです。染色やプリントという手法に執着するのではなく、ただ“作品”に向き合うことこそ大切だって。後半「アパレルビジネスの常識ではあり得ないことをする使命感 spoken words project デザイナー飛田正浩--2/2」に続く。
2016年06月07日ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督に率いられる新生日本代表がいよいよ始動する。62歳という年齢を感じさせない馬力と一切の妥協を許さない信念を刻みながら、ハビエル・アギーレ前監督の解任から時計が止まっていた日本サッカー界を力強く前進させる。○日本サッカー協会内で始まる緊急工事の目的新生日本代表が大分市内でスタートを切る3月23日から、東京・文京区にあるJFAハウス内でも緊急工事が行われる。空き部屋のひとつを改修してデスクと映像機器を設置し、簡単な応接間も設ける。日本サッカー協会(JFA)の霜田正浩技術委員長が、苦笑しながら目的を明かす。「監督専用の部屋を作ります。毎日ここで仕事をしたいと言う代表監督は初めてなので」。これまでにもスタッフがミーティングを行うための大部屋はあったが、ハリルホジッチ監督は就任直後からJFA内に常駐したいと希望していた。歴代の日本代表監督がJFAハウスを訪れた頻度は、多くて週に1回。これだけを見ても、62歳の新指揮官の熱血ぶりが伝わってくる。自宅のあるフランスから13日に来日して正式にサインを交わし、翌14日にはJ1のFC東京対横浜F・マリノスを視察。15日からはJFAハウス内で3日連続、合計して10時間を軽く超えるスタッフ会議を開催し、18日には自らの希望でナビスコカップ予選リーグの川崎フロンターレ対名古屋グランパスに足を運んだ。時差ぼけは大丈夫なのかと思わず心配してしまうほど、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でフランス国籍をもつハリルホジッチ監督は精力的に動き回っている。○「日本代表の心臓」遠藤保仁を選外とした理由霜田技術委員長に対して、ハリルホジッチ監督はこう語っている。「勝利をつかむために完璧主義者に徹したい」。自身および周囲に対して一切の妥協を許さない。プロフェッショナルな姿勢を貫く指揮官は、19日の代表メンバー発表会見におそらく忸怩(じくじ)たる思いで臨んだはずだ。昨夏のワールドカップ・ブラジル大会や準々決勝で敗退した先のアジアカップ、開幕以降のJ1の全試合やACLなどのすべてを映像でチェック。その上で31人のメンバー、12人のバックアップメンバーを選出したハリルホジッチ監督は、偽らざる本音ものぞかせていたからだ。「もっと多くの時間をかけ、(日本人について)もっともっと多くのことを知ってから最初のリストを作ることが、本来のやり方だったと思う」。それでも、独自色の一端をのぞかせてもいる。ワールドカップおよびアジアカップのメンバーからそれぞれ20人を選んだ一方で、歴代最多の152キャップを誇るMF遠藤保仁(ガンバ大阪)を外した点だ。「皆さんもご存じのように、私はワールドカップ・ロシア大会への準備のために日本に来た」。ハリルホジッチ監督はそのキャリアに敬意を表しながら、長く日本の心臓に君臨してきた遠藤をリストに加えなかった理由を自ら明かした。○スター選手へ向けられた指揮官の"メッセージ"昨シーズンのJリーグMVPを獲得した遠藤は、いま現在も卓越したパフォーマンスを披露している。ハビエル・アギーレ前監督にも重用された。ロシア大会開催時で38歳となる年齢が考慮されたこともあるが、遠藤の選外にはもうひとつの意図が込められていると見ていいだろう。都内のホテルで13日に行われた就任会見で、ハリルホジッチ監督はこう宣言している。「私はチームがスターだと思っている。個々の能力をダメにしてはいけないが、スター選手もチームのために仕事をしてもらうということだ」。ザックジャパンはさまざまな意味で、FW本田圭佑(ACミラン)のチームだった。本田が発信し続けた「ワールドカップ優勝」と「自分たちのサッカー」がいつしか独り歩きして、ブラジル大会を迎えたときにはチームマネジメントが機能不全に陥っていた。ハリルホジッチ監督はアルジェリア代表を率いていたときに、チームの和を乱した主力選手を容赦なく外している。もちろん遠藤や本田がチームから浮いている、あるいは献身的ではないと指摘しているわけではない。それでも、遠藤を招集しなかったことは、ロシア大会を目指す日本代表に「アンタッチャブルな選手は存在しない」というハリルホジッチ監督の"メッセージ"となったはずだ。○自分自身への自信を失っている選手とは就任会見ではこんな言葉も飛び出している。「選手の何人かは自分自身への自信を失っているようだ」。指揮官の言う「何人か」が、MF香川真司(ドルトムント)やDF長友佑都(インテル)を指していることは明白だ。「個人的に話をして、勇気づけなければいけない」という目的も込めて、けがでプレーできない長友をあえて日本に呼び寄せてもいる。香川はどうなのか。けがこそしていないが、復帰した古巣でも精彩を欠く。日本代表においても攻撃面で結果を求めるあまり、守備意識がおろそかになることが少なくなかった。ハリルホジッチ監督の基本布陣は「4‐3‐3」と予想され、27日のチュニジア代表戦(大分銀行ドーム)は中盤を守備的な三角形型に、31日のウズベキスタン代表戦(味の素スタジアム)では攻撃的な逆三角形型で組んでくるだろう。香川が出場するとすれば前者でトップ下、後者ではインサイドハーフとなる。それでも躊躇(ちゅうちょ)したプレーが続くようならば、ハリルホジッチ監督の構想から一時的に外れる可能性も出てくる。実際、指揮官はこうも語っている。「現代のフットボールは『技術』『フィジカル』『戦術』『メンタル』で高いレベルを求められる。先発は確定していないし、招集メンバーも毎回変わるかもしれない」。○バックアップメンバーに見える独自の人選ハリルホジッチ監督が初めて作成したリストは、バックアップメンバーが記されていた点で異例だった。けが人が出た場合に入れ替わる選手のなかには、フロンターレの新人DF車屋紳太郎、大卒2年目のMF谷口彰悟らが名前を連ねている。さらなる独自色を出す準備が進んでいる証しといっていい。リオデジャネイロ・オリンピック出場を目指す、U‐22日本代表を率いる手倉森誠監督とも意見を交換しているハリルホジッチ監督はこうも語っている。「その時点でベストのパフォーマンスを見せている選手が、日本代表に呼ばれる。オリンピック代表でいい選手がいれば、問題なく受け入れていきたい」。代表監督の仕事に熱すぎるほどのエネルギーを注ぐ姿勢はフランス人のフィリップ・トルシエ監督を彷彿(ほうふつ)とさせ、「ピッチの上で我々のアイデンティティーを見つけていきたい」という抱負は「日本人化」を謳(うた)ったボスニア・ヘルツェゴビナ出身のイビチャ・オシム監督ともダブる。「最初の試合はすべてを注いで勝利に導き、『これが私たちの道だ』というものをお見せしたい」。還暦を超えているとは思えない馬力と、揺るぎない信念を感じさせる発信力とで周囲を力強くけん引しながら、ハリルホジッチ監督は「結果=勝利」と「改革=世代交代」の二兎を新生日本代表に追い求めていく。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 藤江直人(ふじえ なおと)日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。
2015年03月21日