身体に優しいおむすびを提供する「お米のツヤ子さん 身体に優しい【美】おむすび専門店(所在地:香川県高松市番町3丁目3番17号)」は2022年2月に店内のアートをリニューアルしました。今回のアーティストは日本生まれ、韓国の美大を卒業後ヨーロッパ各地をアート修行したのちドイツを拠点に活躍、現在東京に立ち寄っている羽鳥 弘興(Hirooki Hatori)さんの作品が加わりました。Instagram: Facebook : 心を癒すアート:羽鳥 弘興■お店への想い温かいお米のツヤ子さんのおにぎりで、ほっとして笑顔になっていただきたい。美味しいのはもちろんですが、お客様の身体を第一に考え、おむすびには食物繊維たっぷりのもち麦や発芽米を使用、拘りの具や日替わりスープなど、毎日来ていただくお客様にも喜んでいただけるように工夫を凝らしております。さらに店内には県内外、また世界中のアーティストの作品を定期的に展示させていただいております。アーティストさんとはInstagramやFacebookで随時募集。SNSから始まり、リアルでもみなさんとお会いできる機会を大切に考えています。現在のアートはアメリカ出身、香川で活躍されているWilliam Vogler氏の陶芸、岡山出身の龍絵師「虎香」の作品、香川県出身で香川県を中心に己書を広めている楽人道場の葛西 幸代さんの作品、そして今回新たに世界で活躍している羽鳥 弘興さんの水彩画を展示しております。突然世の中が急変し、人と人との関わりが薄れてきて心がざわついている方もいらっしゃるかと思います。そんな時、愛情いっぱいの温かい握りたてのおむすびとスタッフとの笑顔での交流は、人の命をも救うと考えております。また店内に並ぶアート作品を通して癒されていただきたいです。人と人を結び、心と心も結ぶ愛に溢れるおむすび専門店を目指しております。どうぞよろしくお願い致します。■お店のメニュー◯つや姫BOXセット4種類のおむすび+日替わりスープ 780円(税込)人気のつや姫BOXセット◯織姫BOXセット具が選べるアツアツおむすび2つとおかず+日替わりスープ 880円(税込)織姫BOXセット◯単品おむすび・恋するツヤ姫 230円(税込)・贅沢カツオ殿 230円(税込)・満点☆とりそぼろ 230円(税込)・満たされ鮭 200円(税込) 等■店舗概要場所 :香川県高松市番町3-3-17電話番号:090-2897-8376営業時間:<昼>11時~L.O.14時<夜>18時~L.O.22時 なくなり次第終了 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年02月14日音楽フェス「サヌキロックコロシアム 2022(SANUKI ROCK COLOSSEUM 2022)」が、2022年3月19日(土)・20日(日)の2日間、香川県高松市のフェストハレ、オリーブホール、ダイム、モンスター、スムスカフェなどで開催される。音楽フェス「サヌキロックコロシアム」とは「サヌキロックコロシアム」通称サヌキロックは、四国の香川県高松市の複数会場で、街を巻き込みながら開催している音楽フェス。2019年に10周年を迎え、2020年、2021年は中止を余儀なくされたが、3年ぶりの開催を目指して始動した。注目の出演アーティスト出演者は、ヨルシカのサポートメンバーやsajou no hana(さじょうのはな)のメンバーとしても活躍し、『BLEACH』原画展「BLEACH EX.」テーマソングとして「Rapport(ラポール)」を提供したキタニタツヤ、2021年に最新EP『nerd(ナード)』を発表したKroi(クロイ)、最新アルバム『Smoke!!』をリリースしたTENDOUJI(テンドウジ)など。その他、さなり、映秀。ら実力派アーティストが名を連ねる。出演アーティスト一覧■2022年3月19日(土)出演アーティスト一覧BUZZ THE BEARS / ちゃんゆ胃 / CIDER NOTES / CRYAMY / EGG BRAIN / 映秀。 / EOW / ガガガSP / Half time Old / 浜端ヨウヘイ / INKYMAP / ircle / カネヨリマサル / きばやし / キタニタツヤ / クニタケヒロキ from THE FOREVER YOUNG / LONGMAN / Maki / 幹葉( スピラ・スピカ) / 桃色ドロシー / ニアフレンズ / Newspeak / プッシュプルポット / S-TALK / 聡音 / SHE’ll SLEEP / SiLent SPARKLE / 四星球 / 竹内アンナ / THE BOYS&GIRLS / the quiet room / THEイナズマ戦隊 / 内澤崇仁(androp) / ビレッジマンズストア / YAJICO GIRL / ヤユヨ / YONA YONA WEEKENDERS / 夜の本気ダンス / ユアネス■2022年3月20日(日)出演アーティスト一覧ammo / 番匠谷紗衣 / BiS / 超能力戦士ドリアン / ドラマストア / HERO COMPLEX / 黒子首 / アイビーカラー / INNOSENT in FORMAL / Jessica / Kaco / KALMA / Karin. / かずき山盛り / 古墳シスターズ / Kroi / マタノシタシティー / メメタァ / Mercy Woodpecker / 三阪咲 / mol-74 / 森良太 / むぎ(猫) / 武藤彩未 / なきごと / ナルコピクシーー / Ochunism / PELICAN FANCLUB / リアクション ザ ブッタ / reGretGirl / RIP DISHONOR / さなり / 四星球 / TENDOUJI / ザ・モアイズユー / UNFAIR RULE / うぴ子 / w.o.d. / WOMCADOLE※第2弾出演アーティスト発表時の情報。開催概要「サヌキロックコロシアム 2022 -モンスターバッシュ × ♥RADIO 786-(SANUKI ROCK COLOSSEUM 2022 -MONSTER baSH × I♥RADIO 786-)」開催日程:2022年3月19日(土)・20日(日)開催時間:パス交換開始10:00、開場11:00、開演11:30場所:香川県高松市の各施設 フェストハレ、オリーブホール、ダイム、モンスター、スムスカフェ(香川県高松市常磐町2-13-4 南海常磐ビル別館1F)チケット情報一般発売日:2月4日(金)18:00~価格:1日券 5,000円※別途ドリンク代無し。※未就学児入場不可。6歳以上チケット必要。※出演者の変更・キャンセルによる払い戻しは不可。※チケット詳細は公式サイト(を確認。
2022年01月17日ぴあアプリ版で昨年12月まで連載された映画評論家・川本三郎さんのエッセイ『映画のメリーゴーラウンド』が、連載時のタイトルのまま、文藝春秋から書籍化、14日に発売された。映画の尻取り遊び、連想ゲーム。作品や俳優、監督だけでなく、でてきた場所や食べもの、風俗などをつなげていく。一本の作品の話をすると、映画の話は止まらない。ちょっとした小物、小道具が、そこに込められた思いを想像させ、いろいろなことを暗示させる。映画についての雑学、トリビアならこの人、川本三郎さんの楽しいエッセイ集だ。「こうしたことが映画批評の本流からは、はずされてゆく。なんとも勿体ない。まるでパンの耳を捨てるようなもの。ディテイルにも映画の作り手の思いが込められているのに、それを無視してしまうのは、長年、映画を見て来てきた人間には、まったく納得出来ない。映画のメリーゴーラウンド(つまり、尻取り遊び)とは、遊びながら、同時に普通、忘れられがちなディテイルをよみがえらせようとする試みである。時には、パン本体より耳のほうがおいしいもの。あまりディテイルにこだわるとすぐに「木を見て森を見ない」と批判されるが、木あっての森であることを忘れてはならない。「神は細部に宿る」と大仰なことは言わないが、小さなお地蔵さんぐらいは潜んでいると思う。」(あとがきから)。著者の川本三郎さん66回の連載は、ウディ・アレンの『女と男の観覧車』で始まり、『アニー・ホール』『マンハッタン』で幕を閉じた。とりあげられた作品は、『東京物語』、『駅馬車』、『ティファニーで朝食を』、『素晴らしき哉、人生!』、『男はつらいよ』シリーズ、『浮雲』、『七年目の浮気』、『アパートの鍵貸します』、『風立ちぬ』、『勝手にしやがれ』、『007/危機一髪』、『甘い生活』、『ローマの休日』、『天国と地獄』……。連想ゲームだから、日本映画、外国映画、古典的名作、最近作と時空を自在に超える。ぴあアプリ連載時と同じ高松啓二さんのイラスト(カバーも)が、楽しさを倍加している。『映画のメリーゴーラウンド』文藝春秋刊定価1980円(本体1800円+税10%)4月14日(水)発売著者:川本三郎カバー・本文内イラスト:高松啓二『映画のメリーゴーラウンド』本文ページ『映画のメリーゴーラウンド』本文から イラストレーション:高松啓二
2021年04月15日【おとな向け映画ガイド】シングルマザーの挑戦と葛藤『約束の宇宙』、演劇とライブと恋の街・下北沢の『街の上で』、今週はこの2本をおすすめ。ぴあ編集部 坂口英明21/4/11(日)高松啓二さん(イラストレーター)「……見所は、彼女の強靭ながんばりではなく、挫けそうな弱さを感じながらも働くリアルな女性の姿……」伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)「……女の子に生まれたって、子供を産んだって、夢を叶えられる。『約束の宇宙』は、子供たちへ向けた未来へのメッセージなのだ。」シモキタのあそこもここも『街の上で』男子と女子がめぐりあい、会話をして、お互い、いろいろジャブいれながら、この人とひょっとして……と空想をめぐらす。『愛がなんだ』もそうだったのですが、そんなやりとりのシーンって、今泉力哉監督はうまいですよね。どこかにいそうな主人公、いつかおきそうなできごと。場所は下北沢の、ありそうなところ。古着屋の店員をしている青(あお)くんが、店番をしながらひまそうに本を読んでいるところが絵になると、自主映画の女性監督に気にいられ、出演依頼が舞い込みます。台本読んで、自分なりに稽古していったのですが、何テイクとってもうまくいかず、結局すべてカット、使われないことに。つきあわされた打ち上げの居酒屋で、隣りに座ったスタッフの女性と意気投合し、彼女の家へ。それでデキちゃうのかというと、ふたりはグダグダ話し続けるだけ。話題は青くんが最近フラれた彼女の話や相手の恋愛遍歴、たわいのないものです。古書ビビビ、古着のhickory、町中華・珉亭、ライブハウスTHREE、スズナリ、トリウッド……。シモキタの実在の場所を絶妙にとりこみながら、少しコミカルに進むラブストーリーは、あえていうなら初期のウディ・アレン作品の味わい。主人公はアレンのように神経質ではないし、のんびりしていて、好感がもてます。シモキタはマンハッタンみたいにリッチじゃないけど。青役は『愛がなんだ』にもでていた若葉竜也。同じく『愛が…』の成田凌が朝ドラにもでている役者という役どころで特別出演しています。この作品はコロナ禍で公開が1年ほど延期になりました。その間に、若葉君も『おちょやん』に抜てきされ、なんと、朝ドラのふたりが出演、という豪華キャストの映画になっちゃいました。【ぴあ水先案内から】笠井信輔さん(フリーアナウンサー)「……長回しのダラダラとした会話の中に、様々な人生のおかしみが含まれていて、セリフなのかアドリブなのかもわからなくなる魅力。ところがこのダラダラとした点描がクライマックスで一気に集約され大変な興奮を生み出すマジック。やっぱり今泉監督はノッている。」
2021年04月11日【おとな向け映画ガイド】残された人生あと92分!『ワン・モア・ライフ!』と、新感覚のサスペンス・ホラー『ビバリウム』の2本をオススメぴあ編集部 坂口英明21/3/7(日)イラストレーション:高松啓二今週末(3/12・13)に公開される映画は11本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『ブレイブ ‐群青戦記‐』『映画しまじろう「しまじろうと そらとぶふね」』の2本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『ワン・モア・ライフ!』交通事故に遭い、突然天国に召された中年男のパオロが、天国の入口で、「こんなに寿命が短いはずがない。野菜のスムージーだって飲んでいたのに!」と猛反発します。「野菜のスムージー?」、受付係の天使(でしょうか? 老人ですが)が、待てよ、と反応。調べてみると、スムージーのことは寿命の計算に入っていませんでした。申し訳ない、前代未聞のこちらのミスだ、とパオロはスムージーの分だけ、地上に戻されることになります。その時間は、92分!というわけで、人生があと1時間半、映画1本分にもみたないとしたら、自分なら何をする?てなことを考えながら、楽しんでいただきたいイタリアのコメディです。映画に天国の入口はよく登場します。『素晴らしき哉、人生!』や『天国から来たチャンピオン』といった名作が頭に浮かびます。死者を迎え入れてくれるのは大抵、人の良さそうな男性の天使。本作でも、メガネをかけ、白い顎髭を蓄えた天使がパオロに与えられた92分の地上生活を見張ることになります。演じているのはレナート・カルペンティエーリ。イタリアの名優です。『取るに足らない幸せの瞬間』と『取るに足らない不幸の瞬間』というイタリアでベストセラーになった短編集が原作です。人生において取るに足らないことだけれど「それ、あるある。私もある。」と共感するような瞬間をスケッチのように書き連ねたものだそうです。それをダニエーレ・ルケッティ監督は、著者のフランチェスコ・ピッコロとともに脚本化しました。主役のパオロ役に抜擢されたのは、俳優のみならず、脚本家、監督、テレビ司会者など多彩な活躍をするピエールフランチェスコ・ディリベルト。自分勝手で楽天的に生きてきたパオロが「死んでみて」初めて気づいた家族の大切さ、でも与えられた時間はごくわずか! 彼に何ができるのか?撮影の舞台になった、イタリア・シチリア島のパレルモという町がなんとも素敵です。1990年代までは犯罪組織コーザ・ノストラが牛耳る町だったそうです。『ゴッドファーザー』にもでてきましたね。今では人気の観光地です。こういう人生讃歌の映画に、ぴったりです。首都圏は、3/12(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、3/12(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、3/13(土)から名演小劇場で公開。関西は、3/12(金)からテアトル梅田他で公開。『ビバリウム』タイトルバックに、エサをせがむ鳥のひなが映し出されます。ところが、このひな、ちょっと変。実はカッコウのひなでして。カッコウは他の鳥の巣にそっと卵を産み落として、子育てを代行させるのです。托卵、という習性だそうです。あこがれの新居を求め、開発中の新興住宅地を訪れたカップル。案内してくれたのは、挙動がなんとなくおかしい不動産屋のセールスマン。しかし、内見の途中で彼が姿を消してしまいます。やむなく、カップルは車で分譲地を去ろうとするのですが、どうしてもここから外に出られない。どこまでも同じ住宅が並び、気づけば、内見した家の前にまた戻ってしまいます。いつの間にか、家には食料が届けられ、翌朝は、乳児の入った段ボールが玄関の前に置かれています。そこには「育てれば解放される」という謎のメッセージが! つまりこれは、托卵!?カップルには事情が飲み込めません。どうしたら良いのか。これは誰の陰謀なのか。なんとかここを抜け出そうと、ふたりは悪戦苦闘します。そして次第に精神が崩壊していくのです。それでも食料はきちんと届けられ、赤ちゃんは、驚くほど短い間に成長していき、「ママ」と呼び出し始めます。ベルギーとデンマーク、アイルランドの合作で、監督はアイルランド出身のロルカン・フィネガン。使われている言語は英語です。カンヌ国際映画祭の批評家週間でプレミア上映され、新しいクリエイター発掘を奨励するギャン・ファンデーション賞を受賞しています。主人公のカップルは、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグと『グリーンルーム』のイモージェン・プーツ。舞台は謎、ヨーロッパのどこかみたい。住宅地はライトグリーンを基調にして、おしゃれです。絶叫ホラーではなく、恐怖はさざなみのようにやってきます。バックにそら恐ろしい世界がひかえているような、不気味なサスペンス・ホラー。上品な作りですが、それだけに途中の、あっと驚く仕掛けは効果的です。
2021年03月07日【おとな向け映画ガイド】異色の2本をオススメ。息子のゲイバーを相続した『ステージ・マザー』、男性が『MISS ミス・フランスになりたい!』ぴあ編集部 坂口英明21/2/21(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/26・27)に公開する映画は23本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『あのこは貴族』の1本、中規模公開とミニシアター系の作品が22本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『ステージ・マザー』都会で小さな店を経営していた息子の訃報をきいて、田舎から出てきた母が、持ち前の明るい性格と周りの人たちに助けられ、傾きかけていた息子の店を見事に盛り返し、めでたしめでたし、という下町人情物語なんですけど。舞台がサンフランシスコ、息子がドラァグクイーン、店はショーを売り物にするゲイバーとなると、ドラマは急に現代的な様相を呈します。この設定で、もう勝ったも同然と言いましょうか、期待を裏切らない面白さと充実感のある作品です。母メイベリンが住んでいるのは米南部テキサス。今回トランプ元大統領は負けましたが、とても保守的な地区です。息子のリッキーは勘当状態。夫は訃報を聞いても動こうとはしません。彼女は夫の反対を押しきって最愛の息子の葬儀に駆けつけます。サンフランシスコ、カストロ・ストリートといえば、世界有数のLGBTQ+コミュニティがあることで知られています。リッキーはそのなかで、ゲイバーを経営していました。人気者で、パートナーもいます。不慮の死だったため、遺書もなく、なんと店の経営権はメイベリンが継ぐことに。経営はうまくいっておらず、大した価値はない。どうせつぶしてしまうんだろという周りの冷たい視線の中で、息子の想いを繋ごうと、決意するメイベリンですが……。メイベリンを演じるのはジャッキー・ウィーヴァー。最近では『チア・アップ』でダイアン・キートンとチアリーダーにチャレンジするシニア役が印象に残ります。そんなに美形ではないけれど、愛嬌があって、観ているうちにどんどん魅力にハマっていきます。他に『キル・ビル』などでおなじみのアジア系女優ルーシー・リューが、息子の友人で子供を持つ自由奔放な隣人の役。メイベリンを応援するひとりです。監督はトム・フィッツジェラルド。クラシックなハリウッド・コメディに、自立する女性を描く映画の要素を加え、『キャバレー』のように華やかなショーで味付けしたハートウォーミング・コメディに仕立てています。『MISS ミス・フランスになりたい!』男性しか門戸が開かれていない世界に女性が挑戦しパイオニアになる、実話の映画化も含めてそういった作品はいくつもあります。女性オンリーの世界への男性進出も、主夫ものとか、ないわけじゃない。しかし男性がミスコンに、というのは思いつきませんでした。子どもの頃に将来何になりたいかと聞かれ、ボクサーになりたい、サッカー選手になりたいとクラスメートがいいます。アレックスの夢はミス・フランスになることでした。それから幾星霜。24歳になった彼は、その夢の実現に向けて動き出します。そう考えてもおかしくないほど彼は美しいのです。パリのごたごたした下町の下宿屋。ごうつくばりだけれど生きる知恵のある家主、少々とうが立った女装の娼夫、起業を目指すIT系の移民青年、インド人のお針子さんたちといったさまざまな住人と友人の助けをかり、男性であることを隠して「ミス・フランス」コンテストに挑戦します。アレックスは偽造パスポートを手に入れ、まず、パリを中心にした「イル・ド・フランス」地区の予選に参加します。ミスコンなんて、美女を選ぶ男性社会が作り出した遺物なんじゃないの、と思っている人がいるとしたら、驚くと思います。コンテストで重視されるのは受け答え。女らしさ、よりも自分らしさ、自己表現です。アレックスは見事な受け答えで優勝。全国大会に進出します。さて、ここからどんな展開になるか。全国から地区代表が一箇所に集められ、共同生活や旅をしながら決勝に進む、その過程のすべてが審査対象です。この年は、ベルギーへエコ旅行という設定。海岸でゴミ拾いをしたり、産業廃棄物処理場で撮影、もちろん、エコに対する姿勢も大きな審査です。ミス・コンテストというイベントそのものも見どころなのです。ジャン=ポール・ゴルチエのレディースコレクションに出演し話題となったフランスのジェンダーレス・モデル、アレクサンドル・ヴェテールの映画初主演作。この存在感なしではあり得ない企画です。そんな彼の魅力に加え、主人公をとりまく人間模様も多様性に富んでいて、奥深い映画になっています。首都圏は、2/26(金)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、2/26(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、2/27(土)から名演小劇場で公開。関西は、4/2(金)からテアトル梅田他で公開。
2021年02月21日おとな向け映画ガイドこんな映像は観たことがない! 中国新世代が描く現代の山水画『春江水暖』と、スクープ満載の『ディエゴ・マラドーナ』。ぴあ編集部 坂口英明21/1/31(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/5・6)に公開する映画は10本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『樹海村』『哀愁しんでれら』の2本、中規模公開とミニシアター系の作品が8本です。今回は、2/11公開の『春江水暖』と今週公開の『ディエゴ・マラドーナ二つの顔』の2本をご紹介します。『春江水暖~しゅんこうすいだん』古典の風格を持った傑作が誕生した、とやや興奮気味におすすめしたい中国映画です。山水画という絵画ジャンルがあります。背に山を抱き流れる川、岩や樹木や、ときに人間を自然の一部のように配した風景画。この映画には、まさに「現代の山水画」の趣きがあり、描かれるドラマも大きな川の流れのように、ゆったりと、さまざまな人生をのみこんで進みます。上海の南に位置する杭州市 富陽が舞台です。富春江という大河があり、歴史は秦朝まで遡る古い街。2022年にアジア競技大会がこの地で開催されるため、街全体が大改装中。映像でとらえると、山水画の山は、高層ビルにとって変わられつつあります。この街に住むある大家族。家長の老母を中心に、四人の息子、その妻や孫たちに起きること、その波紋やいさかい、苦悶が、四季折々の行事とともに繊細に描かれます。母の誕生日を祝う宴から始まり、満月の秋があり、雪の旧正月、そして富春江の水も暖む春。辛いこともあれば、楽しいこともある。わたしたち日本人も共感できる、すこし懐かしくもある風景です。この作品がデビュー作という、まだ33歳のグー・シャオガン監督は、『悲情城市』『ヤンヤン 夏の想い出』『東京物語』、そして『ゴッドファーザー』といった家族を描いた名作に影響を受けているようです。富陽は実は監督のふるさと。そのふるさとのリアルな姿を映し出すために、大半の役を監督の親戚や地元の知り合いが演じています。脚本も監督自身の家族におきたエピソードをもとにしているそうです。特筆すべきは、映像のすばらしさです。孫娘グーシーと恋人ジャン先生とのデートのシーン。富春江にとびこみ泳ぐジャンをとらえたカメラは、横にそのままゆっくり移動していきます。岸辺の景色をなめながら10分以上。グーシーの待つ岸に上がり、ふたりは並んで歩き出します。ここまで1ショット。まるで、絵巻物のように、映像がつながっていきます。そんな息をのむようなシーンの数々。撮影チームの「チャレンジ・スピリット」の賜物です。首都圏は、2/11(木)からBunkamura ル・シネマで公開。中部は、2/19(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、2/19(金)からテアトル梅田他で公開。『ディエゴ・マラドーナ二つの顔』なんというドラマチックな人生! そのアップダウンは、次から次へと驚きがおしよせるジェットコースターのようです。 昨年11月に他界したサッカー界の巨星、ディエゴ・マラドーナを描いたドキュメンタリー。急ごしらえの追悼ものでは、もちろんありません。『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』で英国アカデミー賞受賞、『AMY エイミー』で米アカデミー賞受賞のアシフ・カパディアが、過去の貴重な映像を掘り起こし、マラドーナのインタビューにも成功した決定版。いわば本人公認の一代記ですが、サブタイトルにある「二つの顔」にいつわりなく、ダークサイドのマラドーナ像がきっちり描かれていて、それが実にすさまじいものなのです。すでにスーパースターだったマラドーナが、FCバルセロナからセリエAでは弱小だったSSCナポリへ移籍したのが1984年。映画はその入団記者会見のあと、そのまま大観衆の待つスタジアムの前に姿を見せるシーンからはじまります。至近距離の映像は、長くエージェントをつとめたマラドーナの友人シテルスピレールが専属カメラマンを雇って撮り続けていたもの。81年から87年あたりまで、実に数百時間に及ぶ貴重な記録の一部です。このお宝映像が最大のスクープ、です。マラドーナはナポリをほぼ独力で強豪チームにおしあげ、86-87シーズンにはついにクラブ史上初のセリエA優勝とコッパ・イタリア優勝を果たします。故国アルゼンチンのナショナルチームでも86年のメキシコWC で大会MVPに輝きます。続く90年のWCはイタリア開催のうえ、準決勝がアルゼンチンとイタリア、しかもその会場がナポリなんて、すごいめぐり合わせです。一方で、ナポリ入団会見でも記者から厳しい質問がとんだマフィアとの関係は、入団後、さらに深まります。加えて愛人とのゴシップ、隠し子疑惑、コカイン中毒など、スキャンダルのデパートのようなもうひとつの顔。それによって、評判も地に落ちます。これが頂上からまっさかさまで、いっそ痛快。それでもまた立ち上がる、そんな不屈のスーパースター。清濁ともに魅力にみちたキャラクターです。
2021年01月31日今週の「おとな向け映画ガイド」今週公開、小津安二郎を敬愛する海外監督ふたりの新作『天国にちがいない』と『わたしの叔父さん』をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明21/1/24(日)イラストレーション:高松啓二今週末(1/29・30)のロードショー公開は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『花束みたいな恋をした』『名も無き世界のエンドロール』『ヤクザと家族 The Family』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。そのなかから選りすぐりの2本をご紹介します。『天国にちがいない』パレスチナ系イスラエル人の名匠エリア・スレイマン監督の作品です。パレスチナ、と聞いてあなたがイメージされることを、見事にくつがえしてくれる映画だと思います。主人公は映画監督。スレイマン自身が演じています。一見、松尾スズキさんのような雰囲気。ごま塩のひげ、下が透明なフレームのメガネをかけ、ハットをかぶり、ショルダーバックは斜めがけ。街を散歩して、カフェに入り、エスプレッソを飲みながら、ぼーっとする……。新作の出資者をもとめてパリとニューヨークへ旅に出るのですが、どこの国に行ってもこのスタイルは変わりません。旅の中で起こるあれこれをスケッチのように描いていきます。ワイドスクリーンいっぱいのシンメトリカルな映像。その中心に彼をおくと、これが不思議と落ち着く構図です。どれもが、どこかユーモラスで、ホッコリとしたもの。おそらく実体験に想像力をふくらませて作り出した彼独自の世界です。彼のセリフは全編通してふたつだけ。映像ですべて物語ります。例えば、パリのヴァンドーム広場に突然戦車が何台も現れたり、地下鉄では妙な男にガンを飛ばされてビビったり、救急車がホームレスに食事のデリバリー? をしたり……。ニューヨークでは、公園に天使がいたかと思うと、子連れの女性やスーパーの店員がカービン銃をまるでアクセサリーのように身に着けていたり……。パレスチナが危険だというのなら、世界こそパレスチナ化しているんじゃない? という彼のちょっとブラックな暗喩もあります。肝心の新作の売り込みがどうなったかというと……これも笑ってしまう結末です。来日したとき、まず墓参をしたという小津安二郎ファンのスレイマンらしい、とても上品な映像、ほのかなユーモア、よい後味の映画です。首都圏は、1/29(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、2/6(土)から名演小劇場で公開。関西は、1/29(金)からシネ・リーブル梅田で公開。『わたしの叔父さん』一昨年の東京国際映画祭で最高賞である東京グランプリと東京都知事賞を獲得した作品。監督はフラレ・ピーダセン。彼もまた、小津安二郎を師と仰ぐひとりです。デンマークの農村で、初老の叔父さんとふたり、酪農を営む27歳の娘クリスの物語。静かなあたたかい映画です。小津の作品同様、大きな事件があるわけではありません。朝、足の不自由な叔父さんを起こし、服の着替えを手伝い、朝食の支度をする。叔父さんはパンにスプレッドを塗って食べる。クリスはシリアルに牛乳。仕事は、乳牛の世話、畑仕事も少し。訪れる人は牛乳の回収業者だけ。出かけるのも週に一度スーパーへ買物をするくらいです。その繰り返し。淡々とした穏やかな日々が続きます。ふたりの会話はほとんどありません。実の父娘のような絆で結ばれているがゆえ、のようです。中盤からドラマが動き出します。といっても少しだけ。牛の治療にやってきた獣医から仕事の手伝いを頼まれるのです。実は彼女、獣医を夢見たことがあり、もう一度その気持ちに火が灯ります。さらに、教会で出会ったマイクという青年とのほのかな恋。人生の新たな期待と不安の一方で、叔父さんと離れることにも辛さがあり、ゆれるクリスの姿は、小津の映画『晩春』の原節子を彷彿とさせます。実の叔父と姪が演じているそうです。姪のクリスは女優イェデ・スナゴ―ですが、叔父役のペーダ・ハンセン・テューセンは酪農家で演技未経験。監督が取材で彼の農場に滞在したときに、本物の持つ魅力はなににもに代えがたいと起用を思い立ったそうです。撮影も実際にその農場で行われました。まるでドキュメンタリーのような作り。ハンディカメラを固定し、引き気味の自然な映像は、まるで彼らの生活をそっと、横で見守っているようです。首都圏は、1/29(金)からYEBISU GARDEN CINEMA他で公開。中部は、2/13(土)から名演小劇場で公開。関西は、2/5(金)からテアトル梅田で公開。
2021年01月24日今週の「おとな向け映画ガイド」ラピュタのモデルを舞台にした『天空の結婚式』と、イ・ビョンホンの衝撃作『KCIA 南山の部長たち』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明21/1/17(日)イラストレーション:高松啓二今週末(1/22・23)のロードショー公開は10本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『さんかく窓の外側は夜』の1本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。緊急事態宣言対応で公開本数が少なくなっていますが、選りすぐりの2本をご紹介します。『天空の結婚式』若いカップルが親の反対でつきあえない、結婚できない、というのはシェイクスピアの時代からトラブルの火種です。古くは身分違い、家と家の仲が悪い、人種、宗教とか。いまなら、相手が同性だから、というのはあるかも。ベルリンに住むゲイのカップル、イタリア人のアントニオとパオロが主人公です。結婚を決めたふたりは、アントニオの両親に報告するため、帰国します。驚く親たち。父親は猛反対です。ところが母親は2つの条件がクリアできれば賛成するといいだします。そのひとつは、彼らの住んでいる村で結婚式をあげること。アントニオの故郷、それは、チヴィタ・ディ・バニョレージョという、断崖絶壁の上に残された小さな集落、あの『天空の城ラピュタ』のモデルともいわれる「天空の村」なのです。父はその村長。観光客だけでなく、難民の受け入れにも理解をしめすリベラル派ですが、頑固です。母親は息子が選んだ人なら間違いない、嫁姑争いもなさそう、と直感したのか、この「天空の結婚式」をモーレツに進めていきます。ママが考えたとびきりロマンチックな結婚式、そしてこの絶景の村がなんといっても最高の舞台です。イタリアでは、2016年に同性カップルの結婚についての権利が認められたこともあり、映画は話題作として大ヒットしています。元は『My Big Gay Italian Wedding』というオフ・ブロードウェイのお芝居。それをイタリア・コメディの旗手、アレッサンドロ・ジェノベージが映画化しました。カップルをとりまく周囲の人間群像とそのコミカルな大騒ぎも楽しい、おおらかで、ハッピーなロマンチック・コメディです。首都圏は、1/22(金)からYEBISU GARDEN CINEMA他で公開。中部は、2/19(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、3/12(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。。『KCIA 南山の部長たち』1979年10月26日。調べてみると、日本では『3年B組金八先生』の第1回が放送された日でした。総理大臣は大平正芳。決して大昔のことではありません。この日、韓国では、歴史的大事件が起きていました。現職のパク・チョンヒ大統領が側近の中央情報部(KCIA)部長キム・ジェギュに射殺されたのです。この事件の顛末を描きベストセラーになったノンフィクションの映画化。驚きを禁じえない作品です。最近の韓国映画は戦後史の暗部にきりこむ社会派の力作が多く、しかも興行的にも成功しています。光州事件を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』、民主化闘争の『1987、ある闘いの真実』、対北朝鮮スパイ戦『工作 黒金星と呼ばれた男』……。そして、韓国最大の政治スキャンダルに挑んだこの作品、2020年、興行収入第1位という大ヒットとなりました。主演にトップスター、イ・ビョンホンを起用したこと、これが大成功した要因のひとつです。映画は、事件にいたる40日間を、キム部長の動きを中心に追っていきます。米下院議会聴聞会でパク大統領の汚職を暴露した前任部長の“始末”や、大統領の側近である警備室長と忠誠心争いの“暗闘”など……なぜ惨劇に至ったかを浮き彫りにします。大統領とキム部長は1960年の軍事クーデターの仲間。日本陸軍とも関係のある元軍人です。スパイさながらのハードなアクションや銃器の手慣れた扱いも、キャリアから考えるとありうる動き。日本がらみのエピソードも、うなずけます。
2021年01月17日おとな向け映画ガイド男がSMに目覚めるフィンランド映画『ブレスレス』と、タイのおしゃれな断捨離映画『ハッピー・オールド・イヤー』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明20/12/06(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は18本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『新解釈・三國志』『天外者』の2本。中規模公開とミニシアター系の作品が16本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『ブレスレス』SMの世界は実はよくわからんのですが、もしも、ですよ。万が一、この主人公と同じことがおきたとしたら、私とて、その深みに足をつっこむやもしれません。2019年のカンヌ国際映画祭 監督週間に正式出品されたフィンランド映画です。SMを扱ったアート系フィルム。種類は違いますが、例えば、自動車事故に快感を覚えてしまう男女を描いたデヴィッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』なんて好きな人は興味を持たれると思います。最愛の妻を水の事故で亡くした優秀な外科医が、10年後、たまたま、本当に偶然、街のSMクラブに迷い込んでしまいます。客と間違われて、プレイにひきずりこまれ、首を絞められ、窒息し、意識を失いそうになる刹那、水死した妻の像が見えたのです。その一瞬の幻想が忘れられず、クラブを再訪し……、彼の生活は一変していきます。BDSMというそうです。B=ボンデージ(拘束)、D=ディシプリン(調教)、SM=サディズム&マゾヒズム。「お前は犬だ、這いつくばれ」とか「足をおなめ」とか。一応すべてでてきます。そのケがない人にとってはどこかブラック・ユーモアも感じます。でもこの主人公の場合、ちょっと切ない。主演のぺッカ・ストラングはフィンランドを代表する名優。この作品で、ユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞)の最優秀男優賞を受賞しています。昨年日本でも公開された『トム・オブ・フィンランド』で伝説のゲイアート・イラストレーター、ラークソネンを演じ、注目されました。彼をいたぶる女王様役のクリスタ・コソネンは『ブレードランナー2049』に起用された国際派。日本では来年公開予定の、ムーミンの原作者トーベ・ヤンソンの生涯を描いた『TOVE』にヤンソンの女性の恋人役で出演しています。首都圏は、12/11(金)からヒューマントラストシネマ渋谷で公開。中部は、1/9(土)から名演小劇場で公開。関西は、1/1(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。『ハッピー・オールド・イヤー』主人公のジーンは、スウェーデンの留学経験を鼻にかける駆け出しのデザイナーで、二言目には北欧風「ミニマルなスタイル」を口にする気取り屋さんです。でも、現実とは驚くほどのギャップが。母と兄の三人で暮らす実家は、かつて商売をしていたこともあり物で溢れかえっています。彼女は、その実家をリフォームし、1階を自分の仕事場にしようと一大決心するのです。無駄なものが一切なく、白一色、シンプルそのものの「ミニマルなオフィス」の実現。その前に立ちはだかる最大の難関は母です。楽器の修理店と音楽教室を営んでいた父は、家族を捨てて出ていったのですが、父愛用のピアノなど、母は思い出の品々を捨てようとしません。新年1月のリフォーム着工まで、時間はあと1カ月と少し。ミニマルな暮らしをめざし、ジーンの「断捨離」が始まります。もらったもの、借りたもの、買ったもの。ものは人の思い出につながります。捨てようとして、初めて、ジーンはこれまでの自分の行いや、目を背けていたこと、いま本当に何が必要なのかに気づきます。晴れて、自分と家族、友だちと元カレ、みんながハッピー・ニュー・イヤーとなるかどうか。タイ映画で、高校生がカンニングをビジネスにしようとする『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』という傑作がありました。そのチームGDH559が製作。同作で主演したチュティモン・ジョンジャルーンスックジンがジーン役を演じています。涼し気な目元、9等身の女優さん、日本のどこかにいそうな親近感があります。
2020年12月06日おとな向け映画ガイド今週の公開作品から、出色の3本をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明20/10/11(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は17本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』『みをつくし料理帖』『夜明けを信じて。』の3本。中規模公開とミニシアター系の作品が14本です。今週も、観逃せない作品が並びました。その中から3本をご紹介します。『博士と狂人』辞典の最高峰といわれる「オックスフォード英語大辞典(OED)」。1928年に第一版を完成するまで、70年以上を要したそうです。膨大な量の言葉をひたすら集め、編纂するという、地味めな仕事ですが、その裏側で、こんなにドラマチックな人間関係と誕生秘話があったとは!OED編纂の中心人物は、マレー博士。独学で語学を学んだ、スコットランドの仕立て屋の息子、たたき上げの人です。計画が始まったものの遅々として進まない辞書作りを、彼が斬新なアイデアを持ち込んで一挙に推進させます。最も重要で大変な「言葉の用例を探す」作業に、一般人の協力を募ったのです。それに応え、世界中から用例が郵便で集まります。なかでも、大量に、しかも的確なものを送ってきたのが、マイナーという医師でした。教養人で読書家、辞書編纂にこれほど力になる協力者はいないのですが、アメリカ人の彼は、実は、南北戦争の後遺症で精神を病み、イギリスで殺人事件を起こし、精神病院に措置入院させられていたのです。マレー博士を演じるのはメル・ギブソン。そして、マイナー役はショーン・ペンです。歴史の教科書にでてくるような、髭面の偉人そのままの顔。格調があり、パッションも充分です。このふたりが、最初は手紙のやりとりから、やがて交流が始まり、深い友情と信頼で結ばれていきます。超アナログ時代の辞書作り、ビクトリア朝のイギリスの再現に好奇心がそそられます。そして、なによりもハリウッドを代表する名優ふたりの奥深い演技がみもの。ご堪能ください。『スパイの妻』黒沢清監督がヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した作品です。1940年、大戦前夜の神戸を舞台にした歴史ドラマであり、緻密に作られたスパイサスペンスです。商社を営む主人公福原優作が、満州で重大な国家機密を入手し、正義感からそれを世界にリークしようと決意します。ことが明るみにでたら「国を売った非国民」として、断罪されるのは必定です。その計画を知ってしまった妻・聡子は……。舞台となる神戸の商社と住まい、洋風なライフスタイルなど、少しでもうそっぽいところがあると、なかなか物語に入り込めないものですが、そのあたり、ぬかりはありません。優作が映画ファンで、9.5ミリ(8ミリより前の個人用小型映画)に凝っているという設定も上手に使われています。みどころは、高橋一生の優作、蒼井優の聡子、このふたりの存在感。ミステリアスで、巧みで。まるで、ヒッチコックの作品に出てくるような演技です。言葉遣いに不思議な気品があり、懐かしさ漂う切り返しのショットにも、独特の世界が感じられます。いくつかの謎を解く鍵は、ラストまで残されます。なるほど! と思うか、お見事! と感心するか。それとも、わからない! と頭をかかえるか……。『薬の神じゃない』この作品は反社会的というか、政府の方針にさからう犯罪者が主人公です。しかも刺激的なテーマ。検閲の厳しい現代の中国で、よく作れたなあと感心します。といって肩肘はったドラマではない。コメディ仕立てで、そんなに予算をかけてもいない映画。ところが中国国内では興行収入500億円を稼ぎ出した大ヒット作になりました。テーマは「白血病の特効薬の密売」。観れば納得、最近の中国映画では出色の出来栄えです。上海で、インドの強壮剤を販売しているチョン・ヨンの店に、思いつめた顔をし、マスクを3重にしたヘンな男がやってきます。きけば、慢性骨髄性白血病で、国内で販売されている治療薬が高価で困っている、インドから安価なジェネリック薬を密輸してほしい、といいます。最初は断るのですが、その差益は魅力的。金に困ったチョン・ヨンは渡航し、密輸を始めます。彼に協力するのは、自分が患者だったり、娘が患者だったりの、訳アリ白血病関係者たち。最初は大儲け、ヤバイ商売は順調に拡大するのですが……。実は元ネタというか、実際に起きた有名な事件をヒントにしています。ネタバレになるので書きませんが、中国では珍しい結末。それが映画が大ヒットした要因のひとつです。主演は、シュー・ジェン。コメディといってもややブラックがかったテイストの作品が多い国民的スターです。今回は、彼の出世作『クレイジー・ストーン〜翡翠狂想曲〜』を監督したニン・ハオと共同製作をつとめています。
2020年10月11日おとな向け映画ガイド今週は、なかなかインパクトのある3本をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明20/8/2(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は18本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。コロナ禍ではありますが、いよいよ夏休み、ファミリー向き映画も公開です。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『映画ドラえもん のび太の新恐竜』『ぐらんぶる』『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』『EYES ON ME:THE MOVIE』の4本。あとの14本はミニシアター系の作品です。今回はその中から、おとな向けの作品3本を厳選して、ご紹介します。『ジョーンの秘密』007シリーズ「M」役のジュデイ・デンチが主演で、イギリス製のスパイ映画、それでもってこのタイトルとなると、凄腕おばあさんのスーパー・スパイものかと早合点しますが、それとは若干、趣が異なります。デンチ扮するジョーンは、80歳を越えた、ごく普通の幸せな生活を送るおばあさんなのです。そんな彼女が、MI5に逮捕されてしまいます。MI5と書きましたが、まちがいではありません。MI5(英国軍情報部第5課)通称保安局は、スパイやテロリストを取り締まるところです。007がいるのはMI6という秘密情報部で、こちらはスパイをする方なんですね。ジョーンさんが逮捕された理由は、第2次大戦後、核開発に関する軍事機密をソ連に漏洩したスパイ容疑。2000年に「核時代最後のスパイ」と報じられた実際の事件が元になっています。映画は、当局の取り調べに答える彼女の回想で綴られていきます。若き日の姿を演じるのは、ソフィー・クックソン。『キングスマン』シリーズ等、スパイ映画にご縁のある顔です。ジョーンは、ケンブリッジ大学を優秀な成績で卒業後、原子力開発機関で働くうちに才能を認められ、原爆開発という機密任務に参加していたのです……。原爆は最初に開発に成功したアメリカのマンハッタン計画が知られていますが、敵国ドイツ、連合国側のイギリス、カナダ、そしてソ連も進めていました。この各国の激しい諜報合戦と、一般市民のジョーンが国を裏切ってでもスパイになった真相が、みどころです。『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』不思議なテイストの映画です。アメリカ南部、アラバマ州の片田舎の事件。カッコいい人はでてきません。あの『ファーゴ』に似た味というか、匂いというか、がします。つまり、ヘンな人ばかりでてきます。無人島からの脱出で死体を水上スキー代りに使うというすごい発想、しかもその死体をダニエル・ラドクリフにやらせたキテレツ映画『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督による新作。今、アメリカで一番元気のいいインディーズ系映画会社、A24と再びタッグを組みました。うだつが上がらない30男たち、ジークとアールとディックは、「ピンクフロイト」というアマチュア・バンドの仲間です。今日も今日とてガレージで練習、終わるといつもの馬鹿騒ぎなのですが、ディックの様子がおかしくなります。血まみれになり、気を失い…。死んだのか? ジークとアールは、そんな彼を、こともあろうに病院の玄関前に置き去りにし、結局ディックは死んでしまいます……。翌朝から警察の捜査が始まります。めったに起きない町の大事件、保安官たちはみなどこか興奮気味です。やばいふたりは、昨夜の行動を隠そうとして家族にまで嘘をつき、その嘘がさらなる面倒をひきおこす。なんでそこまで嘘を? その真相が結構インパクトあります。全編、やんちゃな子供みたいな男たちのイカれたダークな映画。ブラックコメディ好きなおとなには、たまりません。『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』インディアンとよばれた先住民が与えた、アメリカのポピュラー音楽への影響についての壮大なドキュメンタリー。彼らがいかに弾圧されてきたかも語られます。これは知らないことばかりでした。アメリカ音楽好きの人もあまりご存知ないのでは。具体的に先住民にルーツを持つミュージシャンの名前をあげた方が良いですね。ジャズ・ボーカルのミルドレッド・ベイリー(コ―・ダリーン族)、『サークル・ゲーム』などのフォーク歌手バフィ・セイント・マリー(クリー族)、ザ・バンドのロビー・ロバートソン(モーホーク族)、ジミ・ヘンドリクス(チェロキー族)……。500以上のインディアン部族がかつてあったそうです。コロンブスのアメリカ発見から530年の間に、土地を奪われ、アメリカ社会に同化させられたなかで、魂の叫びとして音楽は残りました。そのインディアン・ミュージシャンたちの歴史を1920年代からひもといていきます。タイトルになった『ランブル』は、リンク・レイというショーニー族出身のロック・ギタリストの作品。暴力行為を駆り立てるとしてインストゥルメンタルにもかかわらず放送禁止になった過激な曲ですが、ジミー・ペイジやザ・フーのピート・タウンゼントなど沢山の大物ミュージシャンにインパクトを与えています。ジミ・ヘンドリクスは、インディアンだけでなく、アフリカ系アメリカ人、スコットランド人の血も引いているといいます。アフリカ系アメリカ人とインディアン、抑圧された民族が結びついていった歴史と、それによって豊かな音楽世界が広がっていったことも観逃せません。首都圏は、8/7(金)から渋谷・ホワイト シネクイントで公開。中部は、8/15(土)から名古屋シネマテークで公開。関西は、9/4(金)からシネ・リーブル梅田で公開。
2020年08月02日おとな向け映画ガイド今週は、おとなにこそ観てほしい3本をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明20/7/19(日)イラストレーション:高松啓二今週の新作本数は21本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。連休のため、23日から公開の作品もあります。うち全国100スクリーン規模以上で拡大公開されるのは『コンフィデンスマンJP プリンセス編』と『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の2本。ミニシアター系が19本です。今回はその中から、おとなの皆さんにこそ観てほしい3本をご紹介します。『グランド・ジャーニー』渡り鳥たちと編隊を組んで、ハングライダーのような超軽量飛行機に乗った少年が、ノルウェー最北のラップランドからフランスへ、大空を渡っていく。実話をもとにした、夢のようなアドベンチャー・ムービーです。離婚した母と暮らす14歳の少年トマの夏休み。南仏の父の家に預けられ、WiFiもない環境にふてくされていたのですが、最初は超軽量飛行機への興味から、次第に父の計画に夢中になっていきます。気象学者で少々風変わりな父が熱中しているのは、絶滅危惧種の鳥に安全な「渡り」のルートを教え込もうというプロジェクト。『グース』というアメリカ映画がありました。あの設定と似ています。鳥は孵化したとき最初にみた動くものを親と思う、という習性を活かします。トマは親鳥の代わりとなり、やがて、GPSをつけた超軽量飛行機で、彼らを先導できるまでになります。少しずつ成長していくカリガネガンの雛たちが、またとんでもなくかわいらしいんです。トマが、父の書斎でみつけた『ニルスのふしぎな旅』を夢中で読むシーンがでてきます。妖怪に小人にされ、ガチョウの背中に乗ってガンたちと北をめざすというスウェーデンの児童文学。トマは、渡り鳥たちの中でちょと成長が遅い一羽に『ニルス…』にでてくる「アッカ」という名前をつけたり、自分のことを「ニルス」と名乗るシーンもでてきます。父親のキャラは、鳥類保護活動家でバードマンという愛称のクリスチャン・ムレクがモデルです。ムレクはドキュメンタリー『WATARIDORI』の制作にも関わり、この作品では脚本を執筆、飛行部分の監督も担当しています。ノルウェーの空から見下ろす雄大な森やフィヨルド。ガンたちと一体になって飛ぶトマの姿。このわくわくする映像には心踊ります。あの境界のない空を飛べたら、と夢見たことのあるあなたに、オススメします。『追龍』今、中国の国家安全法強行で世界が注目している香港。その60〜70年代は、古き良き時代、ではなく、警察と香港マフィアがつるんで汚職の限りを尽くした、驚くような暗黒の時代でした。これまで何度も映画化されたこともある、実在の人物をモデルにした、まさに実録犯罪ドラマの集大成。黒社会(香港マフィア)のボス、ン・シーホウ役にドニー・イェン、香港警察のリー・ロック役にアンディ・ラウ、現代の中国・香港映画を代表する二大スターが初共演した香港ノワールです。まるでEXILE TRIBEの『HIGH & LOW』のようなヤクザの出入りシーンから始まります。潮州の田舎からでてきたシーホウは、この騒ぎの中で腕っぷしを買われ名を売り、警察官のロックと出会います。お互いまだ見ぬ未来への野望で目が血走っていた頃。その後いくつもの修羅場で貸し借りを繰り返し、ふたりは不思議な友情を力に、それぞれの世界の「龍」となっていくのです。アクションシーンの舞台になるのが、実在した香港の九龍城砦。その再現は見事です。3万人以上が住む12階建ての崩れかけたような巨大ビルのなかは、スラム街のように入り組み、諸悪の温床だったといいます。当時の啓徳空港を発着する飛行機がビルすれすれをかすめていくなか、ダニ―・ハサウェイの『ザ・ゲットー』がバックに流れ、巨大な魔窟のなかをカメラが移動するシーンのかっこよさときたら…。監督は香港映画のベテラン、バリー・ウォンとジェイソン・クワン。2017年、今の騒ぎの前に製作された映画です。こういうアウトローたちの香港映画はこのあとどうなるのでしょうか。生死も貧富も天命次第、という孔子さんの言葉が映画のなかではでてきますが。『アルプススタンドのはしの方』おとな向け、とはいえないかもしれませんが、じんわり熱くなって、共感したくなる、今年の夏とびきりの青春映画と思います。夏の甲子園第一回戦です。公立高校、たぶん初出場。盛り上がるアルプススタンド。動員がかかって、やむなく「来た」またはワケありで、「はしの方」に座った、そんな4人の高校3年生が主人公です。ふて気味で観戦しているのは、演劇大会県予選出場をインフルエンザが原因で断念した演劇部の女子ふたり。その近くに座る元野球部の男子が、野球のルールも知らない彼女たちに声をかけます。そこに、成績優秀だけど、影のうすい帰宅部女子1名がからみます。悩み多き年頃、みなそれぞれに屈託を抱えていて、なかなか応援に熱が入りません。優勝候補を相手に勝てるはずのない試合、なんとか持ちこたえているのは、ピッチャーの園田君の活躍があるからです。4人の会話は園田君の話題が中心。が、試合の方も急展開!原作は全国高等学校演劇大会で最優秀賞を獲得した高校の名作戯曲。それをもとに、2019年に浅草九劇で舞台化されたもの。舞台とほぼ同じ出演者、脚本も同じく奥村徹也が担当、監督は、なんとピンク映画の世界では大人気の、城定(じょうじょう)秀夫です。一試合中のお話ですが、観戦スタンドとその裏の通路が舞台。撮影も甲子園よりややしょぼい地方の球場ですし、野球試合そのものは歓声と球音だけ。でもそれが、かえって効果的です。なるほどこれはアイデアです。妬み、思いやり、小さな挫折、憧れ、そして片想い……どこか思いあたる遠い日の記憶といいますか。はしっこの方の青春!を声援したい気分になります。首都圏は、7/24(金)から新宿・シネマカリテ他で公開。中部は、7/31(金)からイオンシネマ・ワンダー他で公開。関西は、7/24(金)から梅田ブルク7他で公開。
2020年07月19日おとな向け映画ガイド今週は、ド迫力!アクションと、ハートウォーミングな2本をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/7/12(日)イラストレーション:高松啓二今週末に公開の新作は21本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。うち全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が『今日から俺は!! 劇場版』の1本、ミニシアター系の作品が20本です。その中から、おとながグッとくる3本をご紹介します。『悪人伝』マ・ドンソク! 今、世界の映画界で、いちばん華のある悪漢スターではないでしょうか。ぶ厚い胸板、豪腕からくり出す強烈パンチ、ワルだけどちょっぴり愛嬌もあるマスク。彼の登場シーンは、まるでゴジラのような地響きがします。『新感染 ファイナル・エクスプレス』で人気をさらい、その後毎年4、5本の映画に出演してきましたが、これが決定打です。ヤクザのボスが何者かに襲われ、刃物でめった刺しにされるのですが、奇跡的に、というか人並外れた身体能力でなんとか助かります。当初は敵対する組の仕業と疑いますが、実は、襲ったのは世の中を騒がしている無差別殺人犯で、ボスは運悪く遭遇した被害者、貴重な目撃者だったのです。なめた真似をしやがって! とヤクザのプライドをかけ、組織を挙げての猛烈な犯人探しをはじめます。このボス役がマ・ドンソク。もうぴったりです。決して好人物ではありません。全身タトゥーの超コワモテ。冒頭から肉弾戦の連続です。蛇の道は蛇、といいます。ヤクザのノウハウを活かした独自の「捜査」を繰り広げ、犯人を追うあらくれ刑事(キム・ムヨル)とだってタッグを組みます。ヤクザ=警察の、化かし合いだらけの共同作戦はどこかユーモラスでもあります。韓国本国では観客動員300万人の大ヒット作。すでに、あのシルヴェスター・スタローンがハリウッドでリメイクを決定しています。マ・ドンソク、カメオ出演してくれないかな。『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』主人公のブリット=マリーは専業主婦。女性の就業率が80%を越えるというスウェーデンでは少数派です。63歳。結婚して40年、子供はいません。炊事、洗濯、掃除の日々。キッチンのカトラリーの中が整然としていないと気持ち悪い、毎日の家事をTO DOリストにしてそのチェックが楽しみ、という、どちらかというと仏頂面の堅物キャラクターです。そんな彼女に訪れた転機。実直だと信じていたビジネスマンの夫に、あろうことか、長年の愛人がいたのです。彼女は傷つきます。自分のこれまで生きてきた誇りや証し、それは何だったのか?そして、ひとりで生きようと思い立ちます。さて、ここからが、本番。ブリット=マリーの強みは、空気を読めないこと、忖度をしないことです。特に技能もないのですが、"ハローワーク”の係の女性にずんずん近づき、田舎町の「ユースセンター管理人」兼「少年少女サッカー・チームのコーチ」という仕事を手にします。サッカーなんて興味のかけらもなかった彼女。相手は移民の子どもたちがほとんど、町の人たちも最初は冷淡。そんなアウェー環境のなかで、堅物なキャラのまま、いかにして、独り立ちし、ハッピーなリスタートができるか。原作は大人気作家フレドリック・バックマンの『ブリット=マリーはここにいた』。ラストでこの原作タイトルの深さが生きてきます。面倒なおばさんが、だんだん愛らしくみえてくる、ハートウォーミングな映画です。ブリット=マリーを演じたのは、スウェーデンの名優、ペルニラ・アウグストです。どこかで見た顔だと思ったら、あの『スター・ウォーズ ファントム・メナス』のアナキンの母親ではないですか。『ぶあいそうな手紙』こちらはブラジルが舞台。78歳の、ちょっと気難しいおじいさんと自由気ままな23歳の女の子の、風変わりな関係と、手紙をめぐるお話です。エルネストは年金暮らしの独居老人。サンパウロに住む息子は、家を売って一緒に住もうといいますが、彼はこの思い出がつまった住まいで本やレコードに囲まれて残りの人生を過ごすつもりです。悩みの種は視力がおち、ほとんど字も読めないこと。そんなある日、故国ウルグアイに住む親友の妻ルシアから、友の死を伝える手紙が届きます。ちょっとしたトラブルが元で知り合った若い娘ビアに手紙を読んでもらい、ルシアとの文通が始まります。返事の書き出しは「拝啓」なんてぶあいそうな文言でなく「親愛なるルシア」がいいとか、ビアのアドバイスで、エルネストの手紙は次第に恋する男のものに変わっていきます。頑固親父ですが、文学の教養もあり、音楽の趣味もよく、詩を諳んずるエルネスト。若いビアと付き合いだしてからどんどん若やいでいき、ちょっと不良の彼女も素直さを取り戻していきます。そして……。ブラジル音楽のレジェンド、カエターノ・ヴェローゾの『ドレス一枚と愛ひとつ』を挿入曲に、古い港町を舞台に展開する、ジジイmeetsガールのロマンチック・ストーリーです。首都圏は、7/18(土)からシネスイッチ銀座で公開。中部は、7/31(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、7/31(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2020年07月12日おとな向け映画ガイド今週も、これは、という3本を選りすぐってオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/7/05(日)イラストレーション:高松啓二今週末に公開の新作は17本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。うち全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が『私がモテてどうすんだ』『透明人間』の2本、ミニシアター系の作品が15本です。その中から、これは、という3本をご紹介します。『バルーン 奇蹟の脱出飛行』成功するとわかっていてもドキドキする、スリリングなサスペンスタッチのドラマです。冷戦下に東ドイツから西ドイツへ、小さな子どももいるふたつの家族が、なんと手作りの気球に乗って国境を越えるという、破天荒な、でも実際にあった脱出行の映画化です。1979年、ほんの40年前のできごとです。ベルリンの壁崩壊はその10年後。捕まったら銃殺覚悟の亡命が、まだその頃あったのです。主人公のひとりは、長髪でベルボトムのジーンズを履いています。東ドイツでも『チャーリーズ・エンジェル』が隠れた人気で、話題にでてきます。インターネットの時代ではありませんが、テレビ電波は越境していたわけで、西側の生活を垣間見ることができたはず。それと比べるとかなり過酷な、息詰まる日常があったのでしょう。気球の故障で一度失敗。秘密警察に追われる中、家族のひとりが兵役を6週間後に控えている、そういった差し迫った状況での再チャレンジ。高さ32メートル、面積1,245平方メールもの気球用布地の調達と縫製、近所の目をしのぶ密かな準備、10代の子どもたちは秘密を守れるか……。いくつものハードルを劇的に飛び越える姿は圧巻です。この事件は1982年にディズニーが『気球の8人』として一度映画化。36年の時を経て、本国ドイツで作られました。今年2020年は統一から丁度20年です。『透明人間』タイトルでイメージすることを見事に裏切ってくれると思います。新趣向の“透明人間”です。なるほどこれは、不可能じゃない、かも知れないと思わせてくれます。支配的に同棲していた恋人に逃げられ、悲嘆のすえ、富豪の天才科学者が自殺。その恋人には遺言により多額の遺産が転がり込むのですが……。その後、彼女の身近で起きる怪事や、誰かにストーキングされているような感じは何?ひょっとして自殺したはずの……。気配があるその感じ、気持ち悪さを、どう説明しても周囲は信じてくれない。彼女の精神は崩れだし、そして賭けに出るのです……。SFというよりはホラーサスペンス。しかもスタイリッシュなんです。マッドサイエンティストにふさわしい冷たく、金属的な邸宅、張り詰めた映像、キレそうなヒロインを矢継ぎ早に襲う恐怖。狙われた女性の視点で描いたというのもユニーク。きっちり冷んやりさせてくれる映画です。『マルモイ ことばあつめ』日本統治下の朝鮮半島。日本語を強要され、名前さえ日本式に変えさせられた時代に、母国語を守ろうと、”マルモイ(ことばあつめ)”を続け、辞書を作ろうとした人たちがいた、という史実をもとにできた韓国映画です。物語は、辞書作りのリーダーで小さな出版社を営むジョンファン(ユン・ゲサン)と、街で彼のバッグをひったくろうとしたことからつながり、やがて同士として活躍するお調子者のパンス(ユ・ヘジン)を軸に進みます。パンスは学校に通ったことがなく、読み書きを知らない、逃げ足とムショ仲間の人脈は強く、喜怒哀楽豊かな、愛すべきキャラクターです。演じているユ・ヘジンは、韓国映画の庶民派スター。日本でいうと、『男はつらいよ』以前の渥美清さんのような感じ。40歳をすぎた彼が、辞書製作に関わりながら、文字を覚えていきます。ハングルを読めるようになると、街の看板もわくわくする楽しみに変わります。そして、初めて小説を読んで涙し、子供たちに手紙を書くのです。映画のなかでは、いくつかの韓国のことばの語源が象徴的に使われます。「言葉は民族の精神を持った器」、抑圧された時代のなかで、ことばが市井の人々をひとつにまとめていく、感動のドラマです。『タクシー運転手 約束は海を越えて』の脚本を担当したオム・ユナの監督作品。出演のユ・ヘジンや同作のプロデューサーが名を連ねています。首都圏は、7/10(金)からシネマート新宿他で公開。中部は、7/10(金)からイオンシネマ鈴鹿、7/25(土)から名古屋シネマテークで公開。関西は、7/10(金)からシネマート心斎橋他で公開。
2020年07月05日おとな向け映画ガイド今週は、ミニシアター系で公開の作品から厳選!オススメの5本を。ぴあ編集部 坂口英明20/6/21(日)イラストレーション:高松啓二緊急事態宣言の解除後4週目、今週末公開の新作は14本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。うち『ランボー ラスト・ブラッド』『ソニック・ザ・ムービー』など全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が2本。通常の本数に戻ってきました!観ものの多い中から、今回はミニシアターで上映される、おとなの映画ファンにオススメの5本を、ご紹介します。『SKIN/スキン』人種差別にからむ事件が連日報じられている今、この映画は、なぜこんなことが、という疑問への、ある答えを示しているように思います。スキンヘッドで、全身を憎悪と威嚇のタトゥーで覆い、白人至上主義で、ネオナチグループのメンバーだった男が、いかにして、その差別と暴力の泥沼からぬけだしたか、を描いたドラマ。実話の映画化です。主人公のブライオン・ワイドナーは、14歳のとき、路上生活をしていたところをネオナチのリーダー夫妻に拾われ、我が子のように育てられました。「黒人、イスラム、同性愛はアメリカから出ていけ」という過激な主張を繰り返すグループの若き幹部です。そんな彼が、三人の娘と暮らすシングルマザーのジュリーと出会い、知らなかった家族愛にふれることで、グループからの離脱を決意するのですが、これが並大抵のことではありませんでした。腹は減っていないか、いい暮らしをしたくないか……、世の中からスポイルされた若者へのネオナチのメンバー勧誘ぶりは、映画で描かれた日本のやくざの世界とよく似ています。タトゥーは生まれ持ったものではないですから、自己表現のひとつ。刻まれたその差別意識の象徴を除去するのに16カ月。入れるときより数倍痛いそうです。それでも強い意思と実行力と「愛」があれば。『悪の偶像』清廉な市議会議員の息子が犯した轢き逃げ事件から始まる、犯罪と悲劇の連鎖。韓国の新鋭イ・スジン監督による、一級のサスペンスです。事件を目撃し、現場から逃亡した被害者の新妻の存在が鍵。警察の捜査とは別に、その新妻を加害者の父(ハン・ソッキュ)と被害者の父(ソル・ギョング)が探しはじめ、事態を複雑にしていきます。韓国を代表する名優ふたりが好対照で、ドラマをひっぱっります。行方をくらますミステリアスな新妻を演じているのはチョン・ウヒ。狂気も感じられ、薄気味悪い存在、まさに熱演です。選挙戦と捜査が同時進行する展開、被害者とその妻の隠された事情、普通の人がどんどん狂気に走る予想だにしない展開、そして人間の業の深さ。韓国ノワールらしい映画です。いつも雨模様というのも含め、その独特な緊張感と陰鬱さがたまりません。『はちどり』思春期の女性の、カオスのような世界を描いた映画です。韓国の映画雑誌のベスト10では、『パラサイト 半地下の家族』につづく「第2位」という評価。38歳の監督キム・ボラは、このデビュー作で50以上の世界の映画賞を獲得した、いま注目の女性監督です。小さな体で懸命に羽を動かす、蜂なのか鳥なのかわからない存在の“はちどり”に、主人公をなぞらえた象徴的なタイトル。ウニは14歳、中学2年生。商店街で餅屋を営む両親と高校生の兄と姉、後輩女子や、他校の親友、そして彼氏、日々起こる人間関係の悩みに、親は勿論、誰も気づいてくれません。でも、やっと親身にきいてくれる塾の先生に出会うのですが……。そんなウニの日常を彼女の目線で丹念に描いています。時代は、韓国にとって激動の1994年。民主化、国際化、空前の高度成長の歪みがではじめる年。それはウニの生活とも無縁ではありません。突然来る別れ、将来の自分への不安、それでも「世界は不思議で美しい」と、ウニをそっと見守ってあげたい、そんな温かい気持ちにさせてくれる映画です。首都圏は、6/20(土)からユーロスペースで公開中。中部は、名古屋シネマテーク他で近日公開。関西は、7/4(土)から第七藝術劇場で公開。『ハニーランド 永遠の谷』今年の米アカデミー賞でドキュメンタリー賞と国際映画賞の2部門に同時ノミネートされた、注目の作品です。バルカン半島、ギリシャの上に位置する北マケドニア。電気も水道もない寒村で、盲目の母と暮らす、自然養蜂家の女性の暮らしを3年間追い続けています。「半分は蜂たちのもの、あとの半分だけはわたしが」、彼女は蜂との共生を第一に考えてきました。ところが、近所に住みだした一家が、蜂の乱獲をはじめます……。古来から連綿と、ほそぼそと続いてきた養蜂の仕事は、彼女で終わるのか。静かな、哀しみに満ちたドキュメンタリーです。『オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡』ドラマで演ったら、うそでしょ、うそっぽい、やりすぎと思うにちがいない辛辣な罵声の数々。イリーナ・ヴィネルという、新体操王国ロシアを率いる伝説的な総監督に圧倒されます。2016年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した、マルガリータ・マムーンの、オリンピック直前の様子をとらえたドキュメンタリーです。その練習ぶりも、なんとも凄まじい。同じアスリートの恋人に励まされるシーンに安堵しますが、私生活でも辛いことが続いて起こるマムーン選手の精神力にも脱帽です。それにしても鬼監督の迫力がすごい。よく撮ったなあ、撮らせたな、と感心します。師弟関係を描いたということで、映画『セッション』を想起するという声がありますが、本物の迫力はあんなもんではありません。首都圏は、6/26(金)からヒューマントラストシネマ渋谷他で公開。中部は、7/31(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、7/3(金)からシネ・リーブル梅田で公開。
2020年06月21日おとな向け映画ガイド今週公開の作品も傑作揃い。その中からオススメ3本。ぴあ編集部 坂口英明20/6/14(日)イラストレーション:高松啓二緊急事態宣言の解除後3週目、今週末公開の新作は17本。『ドクター・ドリトル』など全国100スクリーン以上で拡大公開される作品も登場しています。映画館が日々感染防止対策の努力をしていることもあり、少しずつ活気が戻ってきました。今週も傑作揃いのなかで、これはという、おとなの映画ファンにオススメの3本を、ご紹介します。『エジソンズ・ゲーム』功成り名遂げた偉い人、実は嫌なやつだった、というのが、おとなが納得する偉人伝の真実ではないでしょうか。その点でも、この映画はよくできています。主人公の発明王エジソンは、嫌なやつなのです。でも独創的で個性的。演じているのが、ベネディクト・カンバーバッチ、このクセ多いキャラ、もうぴったりです。交流と直流、理科の時間にならったあれですが、電気の規格をどちらにするかという一大ビジネス戦争が、1880〜90年代にアメリカでありました。その一方の旗頭が、エジソン。対するは、マイケル・シャノンが演じる実業家のウェスティングハウス。中心人物ふたりがさまざまな仕掛けをもって対立します。特許訴訟、マスコミ操作、脅し、そして裏切り……。実は死刑台の電気椅子の発明もエジソンが関係していて、論議のタネになってしまうというなかなか興味深いシーンもあります。クライマックスは、1893年のシカゴ万博。19世紀末のクラシカルな世界で繰り広げられる、天才たちの知恵と駆け引きが、すごくスリリングです。『ペイン・アンド・グローリー』黒澤や小津作品など“巨匠の映画がデジタルで修復される”という最近の映画界で流行っている話題をうまくとりいれた、スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の新作です。映画ファンならそれだけでもニヤリとしそうです。体調をくずし、映画作りから遠ざかっている高名な映画監督が主人公。アルモドバル作品ではおなじみのアントニオ・バンデラスが演じています。32年前の作品が、修復の上、シネマテークで古典として上映されることになったのですが、それは彼にとっては失敗作。発表後に封印していた作品です。でもこれがきっかけとなり、観返してみると、意外やいい出来じゃないか、と思います。そして、この作品が原因で絶交していた薬中毒の主演役者を訪ねることになります。彼と旧交をあたためながらヘロインに酔ううちに、気持ちがよくなり、子どもの頃の思い出がいくつもよみがえってきて……。アルモドバルそのものといっていい、セミリタイアした映画監督の日常。 人生を感じさせるセリフ、監督が住む赤を基調にしたインテリアの家もおしゃれです。渋いなかにも繊細さを持つバンデラスが魅力的ですし、母の思い出(演じているのは、監督とつきあいの長いペネロペ・クルス)、同性愛者である監督の原点ともいえる少年時代の性的な事件、 恋人との出会いと別れなど、ちょっといい思い出話が続きます。確かに『ニュー・シネマパラダイス』を彷彿とさせるところも。アルモドバルが肩の力をぬいて作った、過去に向かうだけでなく、明るい未来もほの見える、後味のいい映画です。『なぜ君は総理大臣になれないのか』日本の現役政治家、衆議院議員小川淳也を17年間追い続けたドキュメンタリーです。これが、めっぽう面白い! カメラの前で17年、これでいいのか、と悩み続ける代議士の、愚直なまでに真っ直ぐな姿に、政治の世界でもこんな人がいるんだと驚きます。民主党から民進党、希望の党、そしていまは無所属。このコロナ禍で、国会の質問に立ったこともあります。見たことはある、気がします。当選は5期。政府、政党の要職についたことはほとんどない、といっていいでしょう。安倍長期政権時代に入り、野党の集合離散の波にもまれていく小川氏。高松市に帰るとその説明に追われる日々が続きます。選挙になると、地元新聞社のオーナー一族の自民党議員に常に惜敗し、比例代表で復活が常。政策通、ビジョンが明確な彼ですが、政党間のヘゲモニー争いのなかでで板挟みになり力が発揮できません。理想と現実のから回りや、周囲のから騒ぎ、地方選挙の人間模様など、日本の政治の世界ならではの様々な人間ドラマもこの映画には映し出されています。この議員の暮らしぶりと謙虚な話し方は、政治家とは上から目線のえらそーな人、というイメージの真逆にあります。そうか、だから、総理大臣にはなれない、のか。首都圏は、6/13(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、ポレポレ東中野で公開中。中部は、名古屋シネマテーク他で近日公開。関西は、7/24(金)からシネマート心斎橋他で公開予定。
2020年06月14日おとな向け映画ガイド映画館再開!新作は粒ぞろいです。ぴあ編集部 坂口英明20/6/7(日)イラストレーション:高松啓二緊急事態宣言の解除を受けて、待ちに待った新作映画の公開が、6月1日から映画館で始まりました。6日までで20本、今週末12日、13日にはさらに20本以上の作品が封切られます。各館、座席間を離すなど、鑑賞方法に気を使いながらのリスタートですが、映画館のスクリーンで作品を味わうのは、やはり格別の高揚感があります。しかも今回のロードショー内容たるや、素晴らしい!のひとこと。そのなかで、これはという4本をご紹介します。粒ぞろい! オススメです。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』オルコットの名作小説『若草物語』の4度目の映画化です。久しぶりの、オーソドックスで優雅なアメリカ映画を堪能してください。19世紀後半、ニューイングランド地方に住む四姉妹の成長と青春を描いた作品。先日、1949年版がBSで放送されていましたが、ジューン・アリソンや若き日のエリザベス・テイラーなど当時大人気のスター女優が出演する青春文芸作品でした。今回も、いま最も輝いている女優、シアーシャ・ローナンを主役の次女ジョーに、『美女と野獣』で不動の人気を得たエマ・ワトソンを長女役に起用するなど、ハリウッドの王道を行く作り。特に、シアーシャ・ローナンは観てるだけで幸せな気持ちにさせてくれます。見どころのもうひとつは、ていねいに再現されたセットデザイン、衣装やインテリア、小道具の数々。米アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞したのも納得です。細部にまでこころ配りのある、見事な作品です。『お名前はアドルフ?』ドイツ映画。まさにおとな向きの知的な、それでいて大笑いしてしまう、珠玉のコメディです。元はフランスのお芝居だったそうですが、ドイツで映画化すると、また意味あいが違います。舞台は、ライン川のほとりにある、現代ドイツ文学を教える大学教授のおしゃれな邸宅。妻の弟夫婦に待望の赤ちゃんが生まれるということで、お祝いの宴が始まります。ゲーム感覚で子どもの名前を当てっこしていると、とんでもない事態に。なるほど、舞台劇の映画化。すべてセリフのやりとりで進行します。名前をめぐって、哲学、歴史、文学の大論争。そのうち、それぞれの思いや秘密が吹き出して、さらに修羅場に。家の中での自粛疲れで、プチストレスに襲われていた今だからでしょうか、ここまでぶちまけられると、観終わって何故かスッキリもします。首都圏は、6/6(土)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、7/24(金)から名古屋・伏見ミリオン座他で公開。関西は、7/10(金)からテアトル梅田他で公開。『罪と女王』デンマークはフィンランドと並んで、世界一幸せな国といわれていますが、そんな国の、アンモラルな映画です。その辺が面白いのです。弁護士で、児童保護を専門とする女性が主人公。医者の夫、幼い双子の娘もいて、幸せな生活を送っていたのですが、やや素行の悪い、夫と前妻の間にできた17歳の少年を家にひきとったところから、ほころびが生じ始めます。彼を立ち直らせようとしているうちに、関係を持ってしまうのです。映画のすごさはここからで。過ちが発覚しそうになるや、彼女は、極めて残酷な大人の対応をし、自分の立場を守ろうとする行動にでるのです……。これまで観たことのない展開の映画です。女性監督メイ・エル・トーキーの、デンマーク・アカデミー賞(ロバート賞)作品賞など世界中で映画賞を受賞した作品です。首都圏は、6/5(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、6/27(土)から名古屋・名演小劇場で公開。関西は、6/5(金)からシネ・リーブル梅田で公開。『コリーニ事件』大物実業家がベルリンのホテルで、銃で撃たれて死亡するシーンで始まります。犯行理由について沈黙を続ける犯人。事件の弁護をたまたま引き受けたのは新米弁護士の主人公。特に社会正義に燃え、という意識も、野心もそれほどない、普通の青年です。勝てる見込みのない裁判でしたが。調査を始めると、ある事実が浮かび上がります。それは……。ドイツのベストセラー小説を映画化した、現代のドラマですが、歴史ミステリーであり、後半は裁判劇。殺人事件が歴史を掘り起こし、戦後ドイツが隠してきた事実につきあたるこのドラマの展開はスリリングで、おとな向け一級エンタテインメントです。犯人コリーニ役は、マカロニ・ウェスタンの伝説のヒーロー、フランコ・ネロ。これがめちゃ渋いんです。
2020年06月07日容疑者2人を逮捕した高松南署「弁当に髪の毛が入っている」という客からの苦情が、犯行のきっかけだった。香川県高松南警察署は5月21日、市内の弁当販売店店長・中條久美子容疑者(53)と店員・河野裕子容疑者(35)を、アルバイト女性(24)への脅迫・暴行の疑いで逮捕した。■「髪、丸刈りにしな」「被害者の姉から“妹の様子がおかしい”と相談を受けて捜査に着手。被害者は営業時間中の店内で段ボールの中に押し込まれ、ハサミで無理やり丸刈りにされました」と捜査関係者は明かす。地元の同業者は、「お客さんから“事件のあった弁当店ってどこなの?”と聞かれました。弁当店は見た目以上にせわしない職場で、時折スタッフ同士で口調がきつくなることはありますが、まさか中学生の不良グループじゃあるまいし……」と、2人が寄ってたかってアルバイト女性を押さえつけ頭髪を丸刈りにしたことに驚きを隠さない。「お弁当屋のイメージが悪くなりそうで心配」と飛び火を懸念する。犯行時刻は、4月20日午後6時ごろ。その数時間前、河野容疑者は、アルバイト女性のスマホに犯行予告ともとれるメッセージを送っていた。警察によればその文面は「髪きれ言われたら はいだけいうとけ」「おどれ いうこときかんのか」などと、かなり品がない。犯行現場となった店内でも両容疑者は「髪、丸刈りにしな」など語気鋭く脅迫したというが、実際に2人を知る人物から、これといった悪評は聞こえてこない。「ものすごい愛想がよくて、見た目も年齢より若く見えるべっぴんさんやったわ。子どもが3人おるはずやけど」とは河野容疑者宅近くに住む80代女性。昨年10月まで、近所のスーパーで働いていたが、そんなかわいらしい容姿が仇になったこともあるという。「愛想がよくて人気があったから、近所でも有名なやかましいじいさんに気に入られて、働きよるときに粘着されるようになったな。それが原因で辞めたんだと思うわ」と50代の近隣男性は証言する。「かわいらしい」「小柄」が、河野容疑者を知る人物の口をつく共通ワードで、「だから信じられなくて……この逮捕を間違いじゃないかとすら思っています」(知人)■容疑者の夫は……一方の中條容疑者については、「ごく普通のおばさん。見た目はちょっとぽっちゃりしていて。身長も普通。暗い人っていう感じではないですよ」と60代の主婦。もともと一帯の大地主の子孫だったが、「ほとんど近所付き合いはしておらず、近所トラブルがあるわけでもない」(近隣住民)そんな2人が、女性の髪の毛を切り落とすという処刑じみた犯行に、なぜ及んだのか。河野容疑者の夫は、インターフォン越しに妻の異変を、「わかんないです」と淡々と答えた。河野容疑者のことを信じているか問うと、「はい、そうですね」と落胆した口ぶりで伝えるのがやっとのようだった。「女性にとって髪を切られるのはたいへんショックなこと。ほかにも同じ目に遭った女性がいないかなど余罪を慎重に調べている」(前出・捜査関係者)髪の毛はいずれ元どおり伸びてもアルバイト店員が受けたショックは消えない。
2020年06月02日おとな向け映画ガイド“世界一貧しい大統領”を描いた2本と、異文化トラブルを笑いとばすフレンチコメディが今週のオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/3/23(月)イラストレーション:高松啓二今週末に公開される映画は13本(ライブビューイング、映画祭を除く)。全国約100スクリーン以上で拡大上映されるのは『劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel] III.spring song』のみ。予定されていた春休み映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』『ソニック・ザ・ムービー』『3年目のデビュー』は公開延期になりました。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が12本。この中からの2本に4月公開の1本を加え、今週のオススメしたいおとな向き映画をご紹介します。『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』イギリスBBCが、その質素な暮らしぶりを「世界一貧しい大統領」と評したウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ。彼の半生をテーマにしたドキュメンタリーが相次いで公開されます。それぞれ視点が違っていて、いつか並べて上映しても面白いと思える2本です。先に公開されるこの作品は、旧ユーゴスラビア出身のエミール・クストリッツァが監督。『パパは、出張中!』でカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞を獲得したのをはじめ、ベルリン、ヴェネチアを制した巨匠は、トラクターを運転する大統領がいるときいて関心を持ち、2014年から撮影を開始、翌年の退任式後までムヒカ大統領に密着しています。愛車はボロボロのフォルクスワーゲン・ビートル、給料の9割は貧しい人々のために寄付をし、時間の許す限りトラクターに乗り、小さな畑で農業に精をだす。愛嬌のある顔をした好々爺。実は、若いときは極左反政府ゲリラで、銀行強盗もしたことがあるツワモノです。クストリッツァ監督とマテ茶を回し飲みしながら、にこやかに語ります。確かに、青年時代の写真をみると、精悍で歴戦のゲリラ兵士といった感じ。軍事独裁政権により、13年間も収監され、不屈の精神が培われたといいます。1985年に軍事政権が倒れた時、49歳で解放され、以後政治家として活躍、94年に下院議員になります。2009年には大統領選に出馬し、当選。10年から大統領職を務めました。在任中は、貧困率を劇的に下げるなど施策を次々と実現、国民から圧倒的支持を受けた5年間でした。青春の思い出を語るのですが、話はいささか物騒です。かつてのゲリラ活動の現場に立ち「45口径を手に銀行に入るのは最高だ」といい放つサングラス姿は、まるでフィルムノワールのギャングです。かと思うと、好きなタンゴのことを「挫折を知ったあとで好きになる歌だ」とつぶやく詩人です。夫人は元ゲリラの同志。愛の歴史も語られます。ホセ・ムヒカ、愛称は「ぺぺ」。84歳、「その顔に歴史あり」です。首都圏は、3/27(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、3/28(土)から名演小劇場で公開。関西は、3/27(金)からテアトル梅田で公開。『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』続いて、4月10日に公開されるこの作品は、フジテレビのディレクター、田部井一真監督による日本のドキュメンタリーです。ムヒカさんと日本との意外な関係を、2016年に来日した時の映像と、ウルグアイ現地でのインタビューなどで描いています。そもそも、ムヒカさんの存在が世界で知られるようになったのは、2012年、リオデジャネイロで行われた国連持続可能な開発会議でのスピーチ。「私たちは発展をするためにこの地球上にやってきたのではありません。幸せになるためにやってきたのです。……行き過ぎた消費主義こそが地球を傷つけ、さらなる消費を促しています」。大量消費社会をやさしい口調で問いただす発言が、世界に反響をよんだのです。演説をもとに日本では子供向けの絵本が作られ、なんと50万部を超えるベストセラーになりました。このことがきっかけとなり、来日にもつながるのですが、ムヒカ元大統領と日本との縁はそれだけではありませんでした。ウルグアイでインタビューした田部井監督に「日本にはとても感謝をしているんだ」ときりだし、日本について話しだします。ウルグアイには、日本人の移民が多くいて、菊の花などの栽培をしていました。彼の家の近くにもそういう農家があり、困った時に花の苗を分けてもらったこともあったそうです。2016年4月、夫人とともに来日したムヒカさんが、行きたいと希望したのは、広島。原爆ドームを見終わって「未来に向けて記憶しよう。人間は同じ石でつまづく唯一の動物だと歴史が示しているのだから」と記します。楽しみにしていたのは若者との対話。「人生でいちばん大事なことは成功することでなく、歩むことだ、転んでも再び立ち上がることだ」と、語りかけます。全編を通し、力強いメッセージがつまった映画です。首都圏は、4/10(金)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、4/10(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、4/17(金)から梅田ブルク7他で公開。『最高の花婿 アンコール』フランスの大ヒットコメディ。2014年に作られた『最高の花婿』の続編です。ロワール地方のお金持ち一家。両親は敬虔なカソリックで保守的。にもかかわらず、美しい4人姉妹は全員、外国人と結婚してしまいます。長女はアラブ人と、次女はユダヤ人と、三女は中国人と。四女の相手がやっと同じ宗教のカソリックときかされ、安心したのですが、実はコートジボアール出身の黒人で……、前作はそんな大騒動でした。と、ここまで頭に入れていれば、第1作を観ていなくても充分楽しめます。あれから4年。花婿それぞれの故郷を訪ねる旅行から帰国した両親を囲み、みやげ話を聞こうと家族が集まります。ややコンサバな父の毒舌は相変わらずです。が、きいている花婿たちには、それを笑いとばす余裕もありません。仲のいい彼らはみな同じような悩みを抱えていました。それは、住んでいるパリの「異文化ハラスメント」。例えば、四女の夫、役者のシャルルは「黒人に振られる役はヤクの売人ばっかり。マシなのは『最強のふたり』のあいつだけさ!」とご不満です。で、彼がいきなり思いついたのが、インド行き。ツテもないのに、ボリウッドでスターになろうという計画です。義兄の3人もそれぞれ、フランス脱出を考えています。それを知った父と母。愛しい孫たちの顔が見れなくなるなんて耐えられません。花婿たちをフランスに引き留める大作戦が始まります……。フランスは「人種間混合結婚数」が世界一。20%近くが異民族・異人種・異宗教間での結婚、というデータがあります。ヨーロッパの他の国は3%前後ですから、その多さが窺えます。この映画の面白さは、人種や文化のちがいを茶化したり、皮肉ったり、それを陰湿なハラスメントでなく、当人の前でやるところ。そんな本音トークが受けた理由でしょうね。しかし愛があるんだな。幸せな気分になれること請け合いの映画です。首都圏は、3/27(金)からYEBISU GARDEN CINEMAで公開。中部は、4/18(土)から伏見ミリオン座で公開。関西は、4/17(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2020年03月23日おとな向け映画ガイドグザヴィエ・ドラン新作と夢のような農場の実話、が今週のオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/3/09(月)イラストレーション:高松啓二今週末に公開される映画は17本(ライブビューイング、映画祭を除く)。全国約100スクリーン以上で拡大上映されるのは『貴族降臨-PRINCE OF LEGENDー』1本。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が16本です。この中から、おすすめしたいおとな向きの2作品をご紹介します。『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』いまや、ネットの時代になって、絶滅危惧種的な存在かもしれませんが、ファンレターが重要な役割を担っています。世界が注目する映画監督のひとり、グザヴィエ・ドラン、待望の新作です。ドランは、子供の頃、レオナルド・ディカプリオに夢中で、ファンレターを書いたことがあり、そんな思い出をモチーフに作られたそうで、ちょっとノスタルジックな味もある映画です。タイトルバックの前、いわゆるアバンタイトルが、いかにも意味深にまとめられ、物語が始まります。2006年、ニューヨーク。テレビの人気俳優ジョン・F・ドノヴァンが29歳で謎の死を遂げます。そのショッキングなニュースが流れた時、ロンドンでは、11歳のルパートが自分宛ての手紙のことでお母さんを責めています。彼は子役、母はいわゆるステージ・ママです。11歳の少年の手紙の相手は、その人気俳優でした。なぜ彼らは100通を超える秘密の文通をしていたのか。ドノヴァンにとっての少年はどんな存在だったのか。10年の時を経て、21歳の若手俳優になったルパートが、ドノヴァンとの思い出を書いた著書『若き俳優への手紙』について、語りはじめます。ドラン作品ではおなじみのテーマ「母と子」も、やはり映画の大切な要素です。ルパートの母親役はナタリー・ポートマン、ドノヴァンの母親役はスーザン・サランドン、これにドノヴァンのマネジャー役でキャシー・ベイツ、とアカデミー賞受賞&ノミネートの女優たちが脇を固めています。さすがに名優たち、監督の脚本力も加わって、見事に「キャラ立ち」しています。ドノヴァン役はTVの人気者キット・ハリントン。11歳のルパート役ジェイコブ・トレンブレイは、天才子役!です。神童といわれたドラン監督も30歳。アップを多用し、時に70ミリフィルムを使い、構図もすべて自分で決めるという映像や、音楽の使い方など、いたるところに才器を感じます。冒頭、少年が手紙をなくした母を問い詰めます。「インクの色は何色だったの?」。インクの色、匂い……、手紙が伝えるのは文だけではありません。『ビッグ・リトル・ファーム理想の暮らしのつくり方』こんなときこそ、自然の無限の可能性を感じ、とてもポジティブな気持ちになれる、このドキュメンタリーをオススメします。ロサンゼルス郊外、ジョンとモリーという若い夫妻が、2010年から8年間で作りあげた「理想の」農場のお話です。妻は野菜を中心とした料理研究家でブロガー、夫は野性生物番組の監督・カメラマン。マンション暮らしだったのですが、殺処分から救ったワンちゃんと暮らし始めたのがきっかけとなり、農場経営を決意します。動物と共生し、あらゆる食材を伝統農法で育てるのがモリーの夢。それを実現しようというわけです。最初は相手にされなかった資金集めも、話題が話題を呼んで、なんとか成功。東京ドーム約17個分もあるロス郊外の農地を手にします。そこからの奮闘。一部始終をジョンがカメラに収めていきます。まずは、死んだ土壌を生き返らせるところから。ここに伝統農法のプロ、アラン・ヨークという仙人のような人物がサンダルをはいて登場します。そして、仲間の協力も得て、まるで「ビフォー・アフター」のように土地が劇的に変わり、野生植物の楽園と化していきます。が、難問は続出します。果樹園の樹にアブラムシが大量発生したり。でも、それはどこからともなくやってきたてんとう虫が食べてくれます。そう、そんな風に、自然の難題は自然が解決してくれると彼らは身を持って気づいていくのです。ときに、コヨーテがニワトリを襲います。ジョンは、銃で駆除すべきか、苦渋の選択で悩むのですが……。製作・監督・脚本・撮影監督はジョン・チェスター自身。トロント映画祭、サンダンス映画祭など多くの国際映画祭で「観客賞」を受賞した作品です。生きとし生けるものが共生しあうこと、意味のない命はない、そんなことを痛感します。若い人たちに観てもらいたいなあ。首都圏は、3/14(土)からシネスイッチ銀座、新宿ピカデリー他で公開。中部は、3/28(土)から伏見ミリオン座他で公開。関西は、4/3(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2020年03月09日おとな向け映画ガイド今週のオススメはこの4作品。ぴあ編集部 坂口英明20/2/24(月)イラストレーション:高松啓二今週末に公開される映画は24本(ライブビューイング、映画祭を除く)。全国約100スクリーン以上で拡大上映されるのが『野性の呼び声』『スケアリーストーリーズ 怖い本』『劇場版「SHIROBAKO」』『しまじろうと そらとぶふね』『初恋』の5本。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が19本です。この中から、おすすめしたいおとな向きの4作品をご紹介します。『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』年老いた美術商、成功とはいいがたい彼の人生の終盤に、大きなチャンスが巡ってきます。オークションの下見会で見つけた小さな肖像画。署名がないので安価ですが、これは隠れた名画に違いない、72歳の主人公オラヴィは、その絵画にひと目で魅了されます。調べていくうちに、この絵は19世紀ロシアを代表する画家レーピンの作品だ、と確信します。もしそれが事実で、真相を知るのが彼だけならばひと財産、ですが。証拠がなければ二束三文。さて、最後にして最大のディールは……。フィンランドの首都ヘルシンキを舞台にした現代の物語です。旧市街で小さな美術店を営むオラヴィ。オークションの落札価格さえインターネットで調べられる時代ですが、彼の商売道具はタイプライターと昔ながらの紙のカード。家族も顧みず、絵画に没頭した人生。娘との確執もあり、孤独なひとり暮らしです。ギャラリーをたたむことになるかもしれないという経済状況。朝、ベーカリーでブリオッシュを一つ買うのが毎日のささやかな楽しみです。そんな彼の店に、疎遠だった孫がやってきます。問題児のため学校の職業体験課題の引受先がなく、祖父を頼ってきたのです。店番をさせると意外や商才もあり、オラヴィの調査の大きな力になってゆきます。何か小さな希望がみえてきます。クラシカルな主人公の顔と風体、帝政ロシア領時代の雰囲気を残す街の景観、それが相まって、しみじみとした趣を感じさせる映画になりました。ちなみに、彼のいきつけというベーカリーは、エクベリという老舗です。ガイドブックによればヘルシンキ最古だそうです。孫の教育のために訪れるミュージアムは、アテネウム美術館。国宝級の美術品が撮影に使われています。絵画をめぐるミステリー、スリリングなオークション、ヘルシンキの街のたたずまい、そして家族の絆。観終わったあとも気分良く映画館を出られる素敵な作品です。首都圏は、2/28(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、2/28(金)から名演小劇場で公開。関西は、3/6(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。『野性の呼び声』子どもの頃に読んだことがあるひとも多いかと思います。日本製アニメになったこともあります。勇敢で、誇り高い名犬バックの半生を描いた、ジャック・ロンドンの古典名作、久々の映画化です。バックの父はセント・バーナードで、母は牧羊犬のスコッチ・シェパード。19世紀末のアメリカ、カリフォルニアの判事の家で生まれました。賢くていたずら好きのお坊ちゃん犬。それが、小金稼ぎの悪党に捕まり、ゴールドラッシュのカナダにそり犬として売り飛ばされてしまいます。雪を知りません。夜の雪原でどう寝たら良いか、ましてそりを引くなんて、わけがわからない。そんな世間知らずのバックが、多くの苦難と経験を積んで、強くたくましいリーダー犬になっていきます。そしてソーントンという、傷心の旅を続ける男と巡り合います。演じているのがなんとハリソン・フォード(感動のキャスティング!)。大自然のなかでともに生き、強い友情で結ばれていきます。前半は、高貴な生まれの主人公が、低い身分に落ち、さまよい苦しんだのち尊い存在になるという、日本でいえば貴種流離譚のようなストーリー。後半は、信頼という絆でつながった「ふたり」の、壮大なアドベンチャーです。原作は何度も映像化されていますが、今回は、これまでのような人間目線とは異なり、原作と同じように、バックの立場でその半生を描いたのが特徴です。それを可能にしたのがCG。実際の動物を調教して撮影するのでなく、アニメでもない、新しい表現スタイルです。シルク・ド・ソレイユでパフォーマーだったテリー・ノータリーが、犬の身振り手振りを四足で演じ、それをCG化した上、実写映像を多く溶け込ませたハイブリット。子どもの頃のやんちゃさ、苦難の日々の不屈さ、ソーントンとのおだやかな日々、成犬としてのりりしさ。実写版『ライオンキング』にも驚きましたが、リアルに表現される主人公バックは、喜怒哀楽、とても表情豊かです。『黒い司法 0%からの奇跡』アメリカ南部アラバマ、黒人死刑囚の冤罪を晴らそうと活躍する弁護士の物語。実話を元にした映画です。日本ならインデペンデント作品となるタイプの、とてもシリアスなテーマですが、マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックスという人気の俳優が主演し、ワーナー・ブラザースが配給したメジャー映画。全米では12月のホリデーシーズンに公開された珠玉のエンタテインメント作品です。時代は1988年。ハーバート・ロースクールを卒業したエリート弁護士ブライアン(ジョーダン)は、あえて南部で、冤罪被害者を救済する活動に飛び込みます。最初に手がけたのが、死刑囚ウォルター(フォックス)の事件です。18歳の白人女性が殺害され、ウォルターの無実を立証する黒人の証人が多くいるにもかかわらず、白人男性の曖昧な証言だけで下された死刑判決。調べていくうちに、犯行を裏付けた証言は司法取引によりでっちあげられた偽証とわかります。まだ根強く残る人種差別意識、白人社会の反感のなか、無罪という正義を勝ち取ることができるか、可能性「0%からの奇跡」を描いています。『アラバマ物語』(1962年)という名作映画がありました。黒人青年の白人女性への暴行容疑をめぐる裁判劇。弁護にあたるグレゴリー・ペックは、アメリカの良心を体現したヒーローでした。この原作に描かれたのが、ほかならぬアラバマ州モンロービル。まさに『黒い司法』の舞台なのです。『アラバマ物語』の記念館があり、街の自慢なのですが。本質はなにも変わっていないという皮肉。この映画に登場する他の冤罪被害者の事件が解決したのは、つい最近という事実に慄然とします。だからこそ、今でも活動を続けるブライアン・スティーブンソン氏のこの映画が公開される意味は大きいのです。『PMC:ザ・バンカー』2024年、アメリカ大統領選挙当日、南北朝鮮の軍事境界線を越えて、北朝鮮のKINGが亡命をしてくるという荒唐無稽なポリティカルアクションです。さすが韓国映画。大胆、です。略語が多いので解説しながら紹介します。映画の中心になるのは、PMC(Private Military Company=民間軍事会社)の多国籍傭兵部隊です。CIAから依頼された彼らのミッションは、DMZ(DeMilitarized Zone=軍事境界線)の地下30メートルに作られたバンカー(シェルターのようなもの)で開かれる南北秘密会議の咳から北側の要人を誘拐すること。CIAの企みは、その要人が持つ情報で北の核武装を解除し、選挙で劣勢の現職大統領支持率を一気にあげ、勝利に導こうというもの。当初の計画では10分で片がつくはずでした。ところが、会談前にソウルに北からスカッドミサイルが打ち込まれ、しかもあろうことか、会場に現れたのは北側の最高指導者!ここからは、地下要塞での壮烈バトルです。地下のバンカーには南北双方のエリアが存在し、高級ホテル並のスイート・ルーム、いくつもの会議室、トンネルでセクターがつながっています。ここで、13人の傭兵隊と、中国に雇われた別のPMCが入り乱れての凄まじいサバイバルを繰り広げるというわけです。この臨場感がすごいんです。傭兵部隊の隊長は『神と共に』のハ・ジョンウ。多国籍部隊ですので、アメリカ、メキシコ、ラトビアなど、様々な人種のツワモノが登場します。ドラマの重要な役割をになう、KINGの主治医役で『パラサイト 半地下の家族』のイ・ソンギュンが出演しています。首都圏は、2/28(金)からシネマート新宿他で公開。中部は、2/28(金)から岐阜・大垣コロナシネマワールドで、愛知は近日公開。関西は、2/28(金)からシネマート心斎橋で公開。
2020年02月24日おとな向け映画ガイド今週のオススメはこの4作品。ぴあ編集部 坂口英明20/1/20(月)イラストレーション:高松啓二今週公開される作品は20本(ライブビューイング、映画祭を除く)。100スクリーンを超える全国のシネコンで拡大上映されるのは『キャッツ』『サヨナラまでの30分』の2本。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が18本です。この中から、おとなの映画ファンにオススメしたい4作品をご紹介します。『風の電話』岩手県東部、大槌町に住む庭師が海辺の高台にある自宅の庭に建てた電話ボックス。『風の電話』とよばれています。置かれた電話は繋がっていません。他界した従兄ともう一度話をしたいとの思いで作った、象徴的なボックスです。その後震災がおき、家族や知り合いを亡くした人たちが、この電話のことを知り、天国へ想いを伝えようと訪れるようになりました。その姿がテレビなどで報道され、話題になりました。年間3万人が訪れる鎮魂の場所です。この電話をモチーフに映画が作られました。主人公は、大槌で罹災、家族をすべて失い、呉の叔母の家に身を寄せる高校生ハル。映画は、叔母の入院でパニックのようになったハルが、突然故郷をめざし、ヒッチハイクで始める旅の物語です。計画もない、いきあたりばったりの旅。その途上で出会った大人たちとの交流が、自分はひとりぼっちだ、と絶望していたハルの心を癒していきます。彼らは様々な事情をかかえて生きていて、他人のことなどかまっているひまなどないのですが、ハルの様子をみて、思わず声をかけ、手を差し伸べてくれます。演じているのは、三浦友和、西島秀俊、西田敏行といったベテランの役者たち。諏訪敦彦監督は、役者が台本通りにセリフを読むのではなく、状況を理解した役者が自分の言葉で話す「即興芝居」というスタイルの映画作りをする演出家です。それに応えた、名優たちに、存在感、リアリティを感じます。食事のシーンが多いのも面白いです。悲しいことは多いが、人はまず食べなきゃ生きていけないのです。そして主演、ハル役のモトーラ世理奈が素晴らしい。最初は言葉少ないメソメソした孤独な少女ですが、次第に他者との関係性にめざめていきます。ゆっくりと、自分の言葉でぽつりぽつりと話しはじめます。ロードムービーのように、旅をしながらの撮影だったそうです。終盤近く、10分近い長いモノローグは、この旅の中で彼女自身が人間として成長したかのような、心の叫びが感じられ、圧巻です。『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』年明けから、たて続けにおとな向けのミステリー映画が公開されます。いずれも仕掛けが凝っています。例えばこの作品。世界的なベストセラー小説の出版にからむミステリーサスペンスです。大人気シリーズの最終章出版に向けて、フランスの豪邸に世界9カ国から翻訳家が集められます。携帯もパソコンも没収、ロシアの富豪が作った核シェルターのような密室に、いわゆる「缶詰め」状態にされ、翻訳にとりかかります。原稿も毎日20ページ分しか渡されません。そんな徹底した秘密保持策にも関わらず、本の一部が流出、犯人から法外なお金を要求する恐喝メールが版元に届きます。犯人は9人の中にいるというわけです。大ベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』、その4作目『インフェルノ』の出版に際し、アメリカの出版元が各国の翻訳家を秘密の燃料庫に隔離して翻訳作業を行ったという出版秘話にヒントを得ています。この缶詰めに、アジアの翻訳者は対象外だったようです。映画では、中国からも参加、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ロシア、デンマークから高いギャラで集められます。それぞれ個性的であり、お国柄も違えば、仕事の仕方も異なります。本の内容を知るのは彼らと、作者、そしてこの異常な環境を考えついた出版社の社長だけ。やがて内輪もめが始まり、犯人探しが始まり、思いもつかない展開が……。密室ミステリーの一種ですね。お楽しみに。『イーディ、83歳はじめての山登り』人生を変えてしまう映画とは、実はこういう作品なのかもしれません。30年間介護した夫に先立たれ、ひとりになった83歳のイーディ。身辺整理をしていて、昔父からもらった山の絵葉書を見つけ、山登りか、それもいいなと思いますが……。この年ではとても無理だろうと悩む彼女が吹っ切れたのは、馴染みのフィッシュ&チップスの店での会話でした。「追加の注文には遅い?」と聞く彼女に、「何も遅すぎることはないさ」。店員のこの言葉で彼女はにっこり微笑むのです。マンガなら、頭の上にランプが灯った感じです。ロンドンからスコットランド・インバネス行きの夜行列車に乗り、めざすはスイルベン山。絵葉書に父の自筆で「この変な山に登ろう」と書いてあった山です。イーディを演じるのは、舞台出身の大女優シーラ・ハンコック。綿密なトレーニングを積み。撮影に臨んだとのこと。高齢の役者にとっては大変なチャレンジだったと思います。遅すぎる、ということはない、どんな世代にとっても。一歩踏み出したい人への応援歌のような映画です。首都圏は、1/24(金)からシネスイッチ銀座で公開。中部は、3/7(土)から伏見ミリオン座で公開。関西は、3/20(金)からテアトル梅田で公開。『彼らは生きていた』日本では2月14日(金)に公開される『1917 命をかけた伝令』という第1次大戦を舞台にした戦争映画が評判です。このドキュメンタリーの日本公開が急遽決まったのは、その関連作品とみなされて、のようです。確かにこの2本を観ると、第1次大戦の理解は倍加どころではありません。なんともすさまじい、戦争の記録です。戦争勃発は1914年。映像の世紀は始まっています。戦争の一部始終は映像として残っています。イギリス帝国戦争博物館に保存された数千時間に及ぶそういう戦争の記録映像をデジタル修復、1本の映画にまとめたのは『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督です。フィルムは、傷を取り除き、現代の1秒24フレームに修正し、動きがスムーズになり、着色も加えています。100年前に観たのとは比較にならないリアルさだと思います。サイレント画像に、BBCが収録保存していた退役軍人のインタビュー音声素材、再現音も組み合わせて構成。戦争終結100周年記念行事として、2018年のロンドン映画祭で上映されました。開戦が伝わると、熱病にかかったように軍を志願する10代の少年たち、それを煽るのは宣伝ポスターや国全体の好戦ムードです。彼らは。あまり考えもなく軍隊に入り、軍服に身を包み、軍事訓練に励みます。表情は楽しそうで、どこかピクニック気分です。それが、フランスに派遣され、ドイツと対置する西部戦線に送り込まれたあたりから、微笑みは消え、悲惨な様相を呈してきます。広大な塹壕を堀り、そこをベースにした小競り合いでしかばねを重ねていきます。敵の狙撃により隣にいた戦友の首がふっとび、腕が、足がなくなっていきます。遺骸はそのままにされ、死臭がただよう、この世の地獄です。近代戦の装備がどんどん登場します。まだ飛行機の戦いは主ではありません。戦車が現れ、毒ガスも使われます。毒ガスにどう対処したか、聞くと絶句します。壮絶な、まさに壮絶な戦争です。首都圏は、1/25(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。中部は、2/22(土)から名古屋シネマテークで公開。関西は、2/14(金)からテアトル梅田で公開。
2020年01月20日おとな向け映画ガイド今週のオススメはこの3作品。年末にことしのベストムービーが登場!ぴあ編集部 坂口英明19/12/23(月)イラストレーション:高松啓二ことし最後の週末。公開される作品は10本(ライブビューイングを除く)。全国のシネコンで拡大上映されるのは『男はつらいよお帰り 寅さん』『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』の2本。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が8本です。この中から、おとなの映画ファンにオススメしたい3作品をご紹介します。『パラサイト 半地下の家族』前評判がすこぶるよく、1月の公開予定が、急遽年末に先行公開となりました。2019年最後にロードショーするこの映画が、ことしのベストムービー!と思います。ともかく観終わって興奮しました。思わぬ展開で最後まで目がはなせません。是非観ていただきたいので、慎重にご紹介します。中心になるのは4人家族、ソウルの下町に住んでいます。家は半地下にあり、居間の窓からは、道行く人の首より下だけが見えます。時には酔っ払いが窓に向けて立ち小便をしたりする、そんな場末です。父は気はいいが、何をやってもうまくいきません。母は一見ルーズ、いざというときは強い下町のおっかさん。二十歳前後の息子と娘はそこそこのルックス。4人の共通点は、口が達者で悪知恵がはたらくこと。善人そうに見えるのが特徴です。といってこれまで世渡りがうまかったわけではありません。息子ギウは予備校通いの浪人中ですが、兵役の前後にみっちりやっているため、いわば「受験勉強」のプロ。いっぱしのことをいいます。友人がそんな彼の能力を見込んで、金持ち一家の娘の家庭教師になる話を持ち込んできます。大学在学証明を偽造、面接も弁舌さわやかに、先方の母と娘の心をガッチリつかみます。さらに、その娘の弟が絵を描くのが得意とみるや、この才能は伸ばすべきとアドバイス。知り合いの知り合いで、シカゴ留学の経験もある美術教育のプロを知っているとほのめかす。なんのことはない、それはギウの妹で、彼女も見事にこの役をこなしていきます。そして、おかかえ運転手に父、家政婦に母と、家族はみるみる、この丘の上の豪邸に住む金持ち一家にまるでウイルスのようにパラサイト(寄生)していくのです。と、ここまではお伝えしてもよいと思うのですが、話はこれが序の口なのです。カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)受賞、当然でしょう。米アカデミー賞は外国語部門候補に残っています。残念ですが、日本のほとんどの映画賞は候補の対象期間からはずれます(日本アカデミー賞12/15公開、キネ旬ベストテンは12/19公開まで)。監督はポン・ジュノ、『殺人の追憶』『母なる証明』など、韓国の巨匠。名コンビ、ソン・ガンホが父親役です。12/27(金)から1/9(木)まで、東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田で特別先行公開。1/10(金)から全国公開。『男はつらいよお帰り 寅さん』車寅次郎さんがどんな形で登場するか、は明かせません。振り返れば、テレビでは奄美大島でハブに噛まれれて亡くなりましたが、映画の寅さんは、まだ旅の空のはず、です。22年ぶりの続編。主人公は満男君です。彼ももう50歳近く。ちょっと売れはじめの小説家になっています。妻に先立たれ、中3の娘と二人暮らし。妻の七回忌の法要で柴又の実家に帰ってきて……という始まりです。懐かしい顔が並びます。さくらさんも博さんも。大人になった満男が、悲恋に終わった泉と再会します。これがなるほど、の展開。リリーさんも元気です。団子屋さん「くるまや」はどうなった?裏の印刷工場は?題経寺は?そして肝心のあの人は?昔のことを思い出す満男。何か困ったことがあるといつもあの人がいてくれた。「風に向かって俺の名前をよべ」と言ってくれた。それにしても困った人でもありました。いつか皆でメロンを食べていたことがあって……と、いろんな寅さんエピソードが浮かんできます。過去49作のなかから引用される思い出の数々。「これが男はつらいよの集大成」、確かにそんな映画です。タイトル前のプロローグ、映画用語でアバンタイトルといいますが、いつも寅さんの旅先の夢で始まります。今回は満男が「あ、夢か」とつぶやくと、丸い文字のいつものタイトルに「ちゃーん、ちゃららららら」のあのテーマソング。久しぶりに大画面で観ましょう。老いも若きもお正月映画は、寅さん!です。『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』北欧はヘヴィメタルが大人気だそうです。フィンランドの人口は550万人、メタルバンドは3000あると、この映画のサイトに書いてあります。そういえば、エアギター世界選手権が毎年行われるのもこの国です。あれもメタル系多いですものね。この作品はフィンランドとノルウェーの合作、元気なヘヴィ・メタルバンドの物語です。ロングヘアー、無精ひげ、タトゥー、革ジャン、鎖チャラチャラの出で立ち。音楽のジャンルをきかれると「終末シンフォニックトナカイ粉砕反キリスト戦争推進メタル」と答えるし、バンドの名前は「インペイルド・レクタム(直腸陥没)」。演奏する曲は「溢れ出る分泌物またはももに垂れるクソ」って、おいおいな感じですが、実は素朴な好青年。フィンランド北部、小さな町で12年、幼馴染で作ったバンドです。実は、いつかステージで演奏したいというのが夢の、ライブ童貞。うぶな青年ですから、たまたま知り合ったノルウェーのプロモーターにデモテープを渡せただけで、舞い上がってしまいます。女友達にノルウェーで開かれるロックフェス、ノーザンダムネーションに出ると口走り、その話は、小さな町中に広がって……。フィンランドとノルウェーは北の方で地続きなんですね。奮起した彼らがフィヨルドを越えてオンボロ車でノルウェーをめざす後半は、北欧の美しい景色を背景に、ちょっとほろ苦さも混じった青春爆笑ロードムービーになっています。首都圏は、12/27(金)からシネマート新宿他で公開。中部は、2/1(土)からセンチュリーシネマで公開。関西は、12/27(金)からシネマート心斎橋他で公開。
2019年12月23日黒柳徹子と田川啓二による珠玉のコレクションが並ぶ「SU・TE・KI!展」が、横浜髙島屋ギャラリーにて4月25日から5月7日まで開催される。田川啓二、黒柳徹子女優・ユニセフ親善大使として第一線で活躍し続けて来た黒柳と、“ビーズ刺繍のカリスマ”と呼ばれ数々の美しいドレスを生み出してきた田川。二人の交流は、田川が黒柳のドレスを手掛けたことから始まった。美しいもの、素敵なものが大好きな二人のコレクションは、着物からドレス、工芸品、アンティークなど多岐に渡る。時代を問わず「SU・TE・KI!」と思えるものの素晴らしさを多くの人に知ってほしい、そして未来にも残したい……そんな2人の想いが形となった本展。2017年夏、日本橋髙島屋での開催は大好評を博した。横浜店での開催となる今回は、日本橋店では展示されなかったコレクションも登場。本展は、4つの構成に分けて展示を行う。「和〜匠の技」は、二人が数々の技に惚れ込みコレクションしてきたきものなどを中心に、和の素敵なものを紹介。昭和初期の贅を尽くした嫁入り道具や、艶やかな着物の数々、オートクチュールビーズ刺繍を施した着物や、黒柳が着用したビーズ刺繍の着物、ドレスが登場する。「フラワーズ~花の世界~」は、花が咲き、小鳥が飛ぶ花の世界をモチーフにした華やかなコレクション。二人の暮らしに数々の彩りを加えてきた珠玉のアイテムとして、花模様の刺繍のタペストリーやガラスのペーパーウエイト、フラワードレスなどが登場する。さらに、清時代の宮廷衣装やアンティーク食器、数百年以上の前とは思えない刺繍の技術など東洋の美が多く見られる「シノワズリ~珠玉の中国様式~」や、インドやアフガニスタンなど現地収集したアンティーク布やショール、ラグ、ドレスなどを紹介する「オリエンタル~東洋の配色美~」が展示される。異なる舞台で第一線として活躍し、美しいものに触れてきた二人の審美眼にかなう数十年に渡るコレクションの数々を楽しんで。【展示会情報】SU・TE・KI!展 ふたりが集めたステキがいっぱい会期:4月25日〜5月7日会場:横浜髙島屋ギャラリー住所:神奈川県横浜市西区南幸1-6-31 横浜タカシマヤ8階時間:10:00〜20:00(最終入場は19:30、最終日の最終入場は17:30)料金:一般 800円、大学・高校生 600円、中学生以下 無料
2018年04月20日代々木アニメーション学院と指原莉乃がプロデュースする声優アイドルグループ・=LOVE(イコールラブ)のブログを29日、メンバーの高松瞳(16)が更新。マリオに扮した姿を公開し、ファンから話題を呼んでいる。=LOVEのアメブロオフィシャルブログよりメンバーが一人ずつリレー形式でブログをつなぐ「メンバーリレーブログ」がスタートし、初回は“ひとみん”こと高松が担当。「東京都出身・高校2年生・16歳・1月19日生まれ・やぎ座・AB型 好きな色=赤 好きな食べ物=アイス」と自己紹介し、「この写真#彼女と制服デートなう に使っていいよ」と制服姿に白のコートを着て手をつないだ写真を掲載した。そして、「話はハロウィンに遡りまして、、イコラブメンバー12人でハロウィンに集まってパーティーしたんですその時、高松はマリオになったんですが…何故かセクシーな方向にいってしまい皆でセクシーショット??を撮りまくり…」と、セクシーな表情のマリオ姿や、大笑いしてるマリオ姿などを公開。「結構ノリノリいやこれ、すごーく楽しかったんですクリスマスもパーティーしたいねって話してるので、もしした時は写真お楽しみに」とつづった。高松のマリオ姿に、ファンから「ひとみん!!!!マリオ可愛いー!!」「高松マリオさん可愛すぎる」「ひとみん可愛すぎかよ!」「可愛すぎでしょ」「セクシーマリオ最高です」「マリオの写真めっちゃかわいい」と歓喜の声が多数。「メンバーリレーブログ最高かよ!これから更新楽しみにしてるぜ!」「メンバーのブログ待ってた~」とリレーブログを喜ぶ声も寄せられている。高松はまた、「次回は~~~なーたんこと齊藤なぎさ!!!」と発表。「皆のなーたん 1番落ち着くしよく一緒にいるメンバーです二人合わせてひぃなぎって呼んでください!」と紹介し、「寝方がオシャレすぎるなーたん。可愛い。はぁ、可愛いですね」と齊藤がソファで寝ている姿も公開した。
2017年11月30日鎌田醤油が、アウトドア料理研究家の高松美里さんによる監修のもと、2017年のフードトレンドを盛り込んだオリジナルレシピ「KAMADABBQRecipe」を、公式通信販売サイトにて紹介しています。2017年注目のフードトレンド「ポキ」をアウトドアで楽しむ!KAMADABBQRecipeは、鎌田醤油の商品をBBQなどのアウトドアシーンでも楽しめるようにと、考案されたレシピです。今回ご紹介する「鰹のたたき」の場合、炙る、氷水につけるなどのパフォーマンスをプラス。料理を作っている人も見ている人も楽しいBBQになるように工夫がなされています。アウトドア料理研究家 高松美里 PROFILE高松美里(アウトドア料理研究家/フードスタイリスト)ヘアサロントップスタイリストを経て食の世界へ。アウトドアブランドとコラボした料理企画をはじめ、雑誌、広告のスタイリングなど数多く手がける。2児の母でもあり、子供と一緒に楽しむ食育アウトドアクッキングや、ホームパーティーのおもてなしスタイリングなども合わせて発信しているInstagram(@misatotakamatsu)は各メディアにも紹介され話題に。Seared Bonito Poke ~炙りカツオポキ~【材料】鰹のさく(200g)ポキのたれ:だし醤油(大さじ2)、サラダ醤油(大さじ1と1/2)、ごま油(小さじ2)アボカド(2個)ミニトマト(5個(半分にカット))紫玉ねぎ(1/2個(スライスして水にさらす))白ごま適量氷水【作り方】①カツオに串をさし、炭火で炙り、焼き目をつける。(皮の面をしっかり、他は軽く炙るだけ。コンロ、バーナーでもOK)②すぐに氷水に入れしっかり冷やし、食べやすい大きさにカットする。③薄くスライスしたアボカド、カツオのたたき、ミニトマト、紫玉ねぎを彩りよく並べ、白ごまをかける。ポキのたれを仕上げにかけて完成。【監修者コメント①レシピについて】バーベキューとなるとお肉料理という印象が強いですが、魚介料理も簡単に楽しめます。今回、和食のイメージが強い鰹のタタキをハワイ料理を代表する一品の「ポキ」にアレンジしました。アボカドを盛り付け、女性も食べやすく、彩りに食欲をそそられます。一番のポイントは串にさす、氷水につけるなど調理過程を工夫し、作っている方も見ている方も楽しめる点です。【監修者コメント②使用商品について】「だし醤油」、「サラダ醤油」は、バランスよく様々な食材が原材料に使用されている合わせ調味料です。レモンを絞ったり、他の調味料と細かく計量して合わせたりといった手間も省け、時短にもつながり、アウトドアにぴったりです。だし醤油醤油の名産地讃岐の天然醸造醤油に、日本全国の特産地から厳選したさば節・かつお節・昆布の天然材料のだしを利かせ、普通濃口醤油の塩分より25%減塩した風味豊かなだし入り醤油です。サラダ醤油本醸造醤油とワインビネガーにゆず果汁を加え、野菜の旨みでまとめたノンオイルの体にやさしい和風ドレッシングです。鎌田醤油「BBQレシピ」紹介ページ
2017年07月19日アウトドア料理研究家として、おしゃれで楽しい外ごはんを提案している、高松美里さん。 <前編> に引き続き、愛をこめて選んだ愛用品や、大人も子ども楽しめるアウトドアを通した子育て術を伺います。高松美里さん娘さん:6歳、息子さん:4歳アウトドア料理研究家、フードスタイリスト。ヘアサロントップスタイリストをへて、食の世界へ。アウトドアブランドとコラボした料理企画をはじめ、雑誌、広告のスタイリングなどを数多く手がける。子どもと一緒に楽しむ食育アウトドアクッキングや、ホームパーティーのおもてなしスタイリングなどを発信している、インスタグラム(@misatotakamatsu)も話題。HP: ■お気に入り! 海外のナチュラルアイテム仕事でもプライベートでも、キャンプなどのアウトドアをすることが多いという高松さん。普段から料理系のアイテムに限らず、ナチュラルなものが好きなのだそう。「歯磨き粉も洗剤と同様に、環境に流すことが気になります。海外のオーガニックのものは、パッケージもいいし、香りもいろいろなものがあったりするので、海外旅行に行ったときにスーパーでよく買います。海外ではオーガニックや環境にやさしいもののコーナーが充実しているので、お土産であげたり、もらうことも多いです」「布ならリネンの質感が好み。キャンプ先でテーブルはあるのですが、汚れていたりプラスチックだったりすることが多いので、ナチュラルな素材の布を持っていきます。一枚敷くだけで、自分の好きな雰囲気にすることができますよ。特に『フォグリネンワーク』のリネンのテーブルクロスは、ほとんどの色柄を持っているくらい好き。じゃぶじゃぶ洗って、ノーアイロンで使います。人が来たときもテーブルにクロスをしておけば、後片付けでテーブルを拭かなくてもいいし、汚れても洗えばいいので楽です。ベーシックなものなので買い足せるし、気負わず使えるところがいいですね」 ■体にも環境にもいいものが、もの選びの指針お子さんたちの身につける肌着は、必ずコットンのものを選んでいるのだとか。「機能素材の下着といい香りのする海外の柔軟剤を使っていたら、子どもたちが体をかくようになったんです。皮膚科に連れて行ったら、直接触れる肌着はコットンに変えて、柔軟剤も一度やめてみたらと勧められて。すべてコットンのものに変えたら、症状がよくなってきたんです。柔軟剤はそれ以来使っていなかったのですが、今回『ヤシノミ柔軟剤』を使ってみて、無香料で肌触りが良いので、これからも使いたいなと思いました。子どもにも安心して使える、やさしい柔軟剤があるのはうれしいですね。存在を知らなかったら、今も柔軟剤は使っていなかったと思います」「私は香りが好きですが、それはフレグランスなどで楽しめばいいこと。清潔で肌にも衣類にもやさしいことが一番です。昔からあるという信頼感もありますし、お手軽価格で無理なく継続ができそう。『ヤシノミ柔軟剤』の存在を知らなかったら、今でも柔軟剤は使っていなかったと思います」「洗たく回数はまだまだ多いので、洗剤は肌や環境にはもちろん、繊維にやさしいものを選びたい。『ヤシノミ洗たく用洗剤』は、そんな条件を満たしてくれるし、昔からあるという信頼感もあります。お手軽価格なので、無理なく継続ができそうです」「ヤシノミ洗剤」の売上の1%は、原料の生産地であるマレーシア・ボルネオ島の環境保全活動のため、寄付されています。そのことを知った高松さんは、このシリーズをこれからも使いたいと、改めて思ったそう。「アウトドアを通して、やはり環境には興味を持つようになりました。家にいると、私一人が環境に気をつけたところで何か変わるのかなと思ってしまいますが、自然の中にいると、一人一人の毎日の小さな積み重ねが大事なんだと実感します。寄付されたお金によって、アブラヤシ農園のために分断された森を繋いだり、動物を救出したりと、具体的に活動が報告されているので、自分でもできることがあるとわかるのは、やる気に繋がります。私も子どもたちも動物が大好き。子どもたちには自然に触れ合うことで、環境が今どうなっているのか現状も知ってもらいたいなと思います」 ■都会も自然も、さまざまな場所での経験が人間力に高松さんが子育てで一番心がけていることは、ためこまないこと。そのためには、普段のお出かけから週末のキャンプや旅行まで、親も必ず楽しむことが鉄則。子どもだけが楽しめる場所は選ばないことが、高松さんがいつも笑顔のママでいる秘訣です。「週末のアウトドアだけでなく、平日も大人が見て楽しむお店と公園が一緒になっているような施設に出かけて、子どもと一緒に楽しんでいます。子どもも意外と、おしゃれなカフェや素敵なお店を見たいと言うんです(笑)。美術館や科学館、都会の最先端のものも見せつつ、夏休みなどには海外で砂漠をドライブしたり、実家の田舎に行って野菜を収穫したり。普段生活している都会もすごく好きだけど、旅行などでできる限り、自然にも触れさせたいなと思っています。将来好きなことをやってほしいから、今はいっぱい刺激して、しっかり土台を作ってあげたいです」いろいろな場所に出かけるなかでも、キャンプは子どもたちの教育にも特別役立っているといいます。「普段のキャンプのおかげで、子どもたちはどこでも寝られるし、何でもよく食べます。体も丈夫になってきた気がします。アウトドアは余計なものがないので、焚き火を囲んで話したりしながら、家族でコミュニケーションが図れるのもいいところ。料理も炭火でじっくり焼くだけで、大したことをしなくても絶対においしくできるから、料理が楽しくておいしいということが、シンプルに伝わると思います。自分が関わって料理を仕込んだり、並べると、子どもたちもよく食べるんですよね。料理も片付けも、次に何をするかに自然と目がいくし、みんなが関わっているから、一人の責任にはならない。自然の中で料理をすること自体がエンターテインメントだから、老若男女をこえて楽しめます。そういうことができるのが、アウトドアの魅力ですね。自然だけで何もないので、落ちているもので何かをしてみようと、自由な発想が生まれるのも利点。細かな教育ももちろん大事ですが、アイデアを持っていると人間性が豊かになると思うので、この経験が、人間としての基礎作りになっていくといいな、と思います」 取材/文:赤木真弓 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社
2016年12月06日やさしいママのヒミツ、第5回目はアウトドア料理研究家の高松美里さん。6歳の女の子、4歳の男の子、2人のママです。高松美里さん娘さん:6歳、息子さん:4歳アウトドア料理研究家、フードスタイリスト。ヘアサロントップスタイリストをへて、食の世界へ。アウトドアブランドとコラボした料理企画をはじめ、雑誌、広告のスタイリングなどを数多く手がける。子どもと一緒に楽しむ食育アウトドアクッキングや、ホームパーティーのおもてなしスタイリングなどを発信している、インスタグラム(@misatotakamatsu)も話題。HP: 高松さんの実践する、アウトドアを通した子育て術や、子どもたちにも環境にもやさしいアイテムとは? <前編>では、家でも外でも愛用しているという、調理アイテムをご紹介します。■長く使えて、おしゃれなアウトドアアイテムの魅力もともと美容師の高松さんは、妊娠、出産を機に、好きだったインテリアや料理、アウトドアなどの趣味を生かして、アウトドア料理研究家やフードスタイリストとして活躍しています。高松さんが暮らすのは、都会のど真ん中にある、おしゃれなマンション。一見すると、“アウトドア”からイメージする暮らしと正反対のように見えます。「サバイバルな感じではなく、あくまでもおしゃれに、気軽に、都会の人でも楽しめるアウトドアを提案したいと思っているので、私自身それを実践しています」子どもの頃から、家族でスポーツやキャンプを楽しんできたという高松さん。仕事と子育てで忙しい今も、休日に外に出かけることが一番のリラックス法だといいます。そんな高松さんが愛用する料理関係のアイテムは、やはりアウトドアグッズ。「キャンプがきっかけで買いはじめましたが、アウトドアのアイテムはすごく使い勝手の良いものが多く、長く使えるし、防災にも役立ちます。無駄な買い物にならない気がするし、おしゃれなものも多いのでどんどん増えていきました。今では、家のものとアウトドア用を分けず、両方で使っています」■家でも大活躍なアウトドアアイテム4選そのひとつが「LODGE」の鉄鍋。おいしくできるので、家でも使うようになったのだとか。「鉄鍋は熱伝導率が高く、保温性がいいんです。特にお肉は、表面はパリッと、中はジューシーに焼けるので、本当においしい。ホームパーティーでも、お肉と野菜を詰めておいて、友だちが来たらオーブンに入れるだけで、とても簡単にできるので重宝しています。お手入れは慣れれば楽しいもの。外で使って放っておくと錆びるので、きれいに洗ったあと、オリーブオイルを塗るとピカピカに戻ります。内側は、普段は天然竹を使ったササラで洗うのみ。汚れがひどいときや外側には、洗剤を少量使って洗います」ガラスのジャグやホーローの食器も、高松さんには欠かせないアイテム。「キャンプでは水場が遠かったりするので、このジャグに入れて使います。ホーローは直火OKで割れないし、おしゃれでカラーも豊富。買いそろえやすいし、汚れもウエットティッシュなどでさっと拭けば落ちるのも楽です。外でのお料理がおしゃれで楽しいものになりますね」 アウトドアアイテム以外の愛用品では、見た目もおしゃれなウッドボード。コーディネートもしやすいので、家でもキャンプでも大活躍だそう。「小さなものから特大サイズまで、たくさん持っています。朝は基本和食ですが、ときどきミニサンドイッチを並べて、ピックを刺したりすると、子どもたちも喜んでたくさん食べてくれます。真ん中に大きいウッドボードを置いて、取り皿だけ置くスタイルは、洗い物も少なくて楽。置いているだけで雰囲気が出るし、まな板としても使えて便利です」鉄鍋と同様に、お手入れが必要な土鍋もフル活用。お手入れがてら、毎朝使っています。「炊飯器がないので、毎朝3合炊いています。飯ごうに慣れているからか、早くて簡単に感じますね。手入れもそんなに大変ではありません。とにかくおいしいので、炊飯器には戻れないです。炊きたてのごはんの匂いで、子どもたちが起きてくるくらいです(笑)」■自然の中で使うものには、環境に配慮した「ヤシノミ洗剤」調理器具は、育てる感覚で長く使えるものが好きという高松さん。お手入れに使うものは、必ず環境に配慮したものを使いたいといいます。「キャンプ場では、科学的な洗剤の使用が禁止されているところがほとんど。外では、自分の流したものが実際に目に見えるので、泡が全然消えないで流れていくのを見ると、科学的なものを使う気にはなれないです。水もできるだけ使わず、拭くだけのことも多いですが、洗剤を使うときも匂いが強いものだと残ってしまう気がするので、できるだけ自然素材のものを使いたいなと思っています」そんな高松さんが、ずっと使い続けたいというのが「ヤシノミ洗剤」です。「これを使うようになって、子どもが洗いものをすごくしてくれるようになりました。ポンプ式なので出しすぎることがないのもいいですね。少し使っただけで、手にやさしいこと実感しました。ナチュラル系の洗剤は、洗浄力が気になりますが、サクッと汚れが落ちるのもうれしい。キッチンは匂いが混じると嫌なので、香りがないほうがいいですが、無香料というところもいいですね」 ■お手伝いも遊びのひとつに高松さんのアウトドア料理、スタイリングのコツはカラフルにすること。「グリーンや茶色などの、自然の色と調和するように、トマトの赤や葉っぱの緑、パプリカの黄色を足して、パッと華やかな気持ちになれるように考えています。子どもたちもトッピングが好きで、ピザなどに自由にトッピングしたり、何も言わずとも、花を摘んできてテーブルの上に飾ったり、松ぼっくりを置いたりしてコーディネートしてくれて、自然と美的センスも磨かれている気がします」自然が一番の先生だと話す高松さん。2人のお子さんも、あえてお願いすることもなく、お手伝いをするのが大好きになったそう。「キャンプだけでなく、家でもお手伝いしてくれます。外だと散らかってもイライラしないし、遊び感覚でやらせているうちに、家でも料理や配膳、食器を洗ってくれたりするようになりました。キャンプは非日常が楽しいので、わざわざ遊び道具を持っていかなくても、自然の中から遊ぶものを見つけて楽しんでいますね。テントを張るのも、今は順番をわかってきているのでアシストしてくれます。アウトドアでは何が危険なのか、知ることも大切。“火が熱い”ということも、野菜や肉を串に刺して、火の上の方に入れると温度が高いからすぐに焦げる、という風に実際に経験するとよくわかるし、それ自体がお手伝いすることにもつながっています」2つ違いの娘さんと息子さんは、ずっと2人で遊んでいるほど仲良し。キャンプなどを通して、協力し合う大切さを実感しているのかもしれません。「2人でずっと遊んでいてくれるので、お出かけがすごく楽ですね。お手伝いも競い合って、遊び感覚でするので楽しいようです。子育てでイライラしないコツは、家事も含めて、全部楽しいと伝えること。本人に任せると時間はかかるけど、最初はできなくてもいいという気持ちで、遊びのひとつにしてやらせて、私は別の作業をします。子どもたちが毎朝卵を割ってくれますが、だんだん上手になってくるし、任せてしまうとしっかりやってくれるようになったので、助かります」 <後編> でも引き続き、愛用品やアウトドアを通して学ぶ、高松さん流子育て術について伺います。 取材/文:赤木真弓 撮影:林ひろし[PR]サラヤ株式会社
2016年12月05日NECは25日、WEBサイトと連携するデジタルサイネージを4月1日より香川県高松市内に設置することを発表した。同社は、世界20カ国以上、2600団体以上にデジタルサイネージシステムを導入してきた実績を持っている。今回、香川県高松市の観光情報を効果的に発信するために、玉藻地区フェリー乗り場、高松シンボルタワー(オリーブタワー内)、JR高松駅、ことでん瓦町、高松空港の5カ所にデジタルサイネージを設置する。設置されるデジタルサイネージは、高松市が運営する観光Webサイト「高松旅ネット」と連携しており、6言語(日本語、英語、中国語、韓国語、仏語)に対応した観光情報やイベント情報をタッチパネルに最適な形式に自動変換して表示。目的地までの地図などの情報を、QRコードを使ってスマートフォンに表示できるほか、通信回線には、同社の「デュアルモバイル回線サービス」を使った安定した通信環境を提供、キャリアの電波状況に応じて自動的に2つの回線を切り替えられる。デジタルサイネージとICカードとの連携機能も備えており、高松琴平電気鉄道の交通系ICカード「IruCa(イルカ)」に言語情報を登録することでデジタルサイネージの表示を、登録された言語へ切り替えられる。なお、今回の取り組みに際して、言語情報を登録したIruCaが発行される。
2016年03月25日