NHK大阪放送局の高瀬耕造アナウンサーが2月29日、大阪市内の同局で行われた連続テレビ小説『ブギウギ』(月~土前8:00NHK総合※土曜日は1週間の振り返り/月~金前 7:30NHKBS、BSプレミアム4K)のセット公開ツアーで司会を務めた。俳優・趣里が主演を務める同作は、戦後の大スター・笠置シヅ子さんをモデルとしたヒロイン・鈴子/スズ子が、銭湯の看板娘から“ブギの女王”と呼ばれる戦後の大スター歌手へと成長する姿を描く。昨年10月2日に放送スタート。今年2月4日にクランクアップし、3月29日放送の最終話まで残り1ヶ月、クライマックスに差しかかっている。「語り」を務めてきた高瀬アナは「特に戦争中(のシーンで)どうしても重たく語ってしまいがちだった」と振り返り、「もう少し明るく希望をもった感じで」と要望されたといい、アナウンス業務とは異なる役割に苦心した日々を回顧。「一番難しかった」ナレーションは、スズ子が巡業先から愛助に手紙をしたため、そのあとに添えた「スズ子と愛助世界はもう2人でした」という甘い言葉だったと明かした。中盤に差しかかり、制作統括の福岡利武氏から「ナレーターという俳優になってきましたね」とほめられ、その時は軽く返答したというが、実は「めちゃくちゃうれしかった」と顔をほころばせた。普段のアナウンスとは別の喜びを実感しつつ、「演じてはいない。見守るというのが一番大きい」と客観視も忘れず。そして、残り少ない収録に「もうすでにボーッとしている時間が増えてきました」と笑わせていた。『ブギウギ』のセット展示は、NHK大阪放送局1階アトリウムで17日まで開催。「スズ子と愛助の家」「羽鳥先生の部屋」「はな湯」のセット実物のほか、「伝蔵さんのおでん屋台」や手紙などの小道具、ステージや日常衣装、さらに衣装バーチャル試着などが楽しめる。入場無料。この日は、高瀬アナ、福岡氏、美術担当の有本弘氏が報道陣を案内した。
2024年02月29日高瀬隼子さんの芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』に描かれているのは、食べるという行為をめぐる三者三様の向き合い方だ。だが、読んでいるうちに、食は恋愛や働き方、生き方にも通じるものがあるかもしれないと思えてくる。「最初の構想ではごはんのことを書く予定はなかったんです。恋愛と絡めてというのも、あまり意識していませんでした。“好きなもの”より“正解だと思うもの”を選ぶ男性がいて、その二谷みたいな人がつき合うならこういう女性だろうと、頼りなげな芦川さんのイメージが浮かんだんです。もう少し日常生活に寄って立体的にしてみたら、食の好みやライフスタイル的な部分がはっきり見えてきて、このような作品になりました」仕事を要領よくこなすが、食には無頓着な男性社員の二谷。芦川の1つ年下でがんばり屋の女性社員・押尾は、普通にグルメ好きだが、気を遣う食事は苦手。芦川は、片頭痛などで頻繁に早退したり、仕事のミスすら責任を取らないので、普通なら会社のお荷物なはずなのに、職場に手作りお菓子を差し入れたりするため、庇護されるポジションにいる。依存体質の芦川を快く思っていない押尾は、彼女を表立って非難する代わりに、〈二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか〉と持ちかける。やがて、芦川が配った差し入れにまつわる、ある事件が起きる。美味しいと思えるかは、関係のリトマス試験紙。作中では、持参したお弁当やカップ麺を食べるランチタイムや、二谷と押尾が会社帰りに誘い合わせておでん屋に寄ったりする場面が登場。ありふれた食の光景が描かれながら、ほとんど和気あいあいとならないのが面白い。「特に押尾に関しては、職場の会食など“人と食べるごはんは美味しくない”と思っているキャラとして書いてしまって、すごく反感を買いそうだと不安だったんです。ところがSNSに上がった感想などを見ていると、押尾に共感してくれる人が結構いたので、むしろ私自身が驚きました」二谷は、食べることすら面倒に思っているふしがある。しかし、芦川とつき合い始めて、それほど望んでもいない手料理を一緒に食べなくてはいけない羽目に。「美味しいね」と言い合うコミュニケーションも含めて、人と食べることも大事だという刷り込みは根強く、それをだんだんと重荷に感じていく変化もリアルだ。「日常的に料理をするのが苦ではない芦川さんは、職場ではきちんとした家庭的な人と思われています。私も彼女と同僚なら、『偉いね』とか言ってしまいそう。食生活を見て、『この人はこういう人だ』と判断してしまうことは、結構あると思うんですよね。私も学生時代に、ぬか床まで持っている料理上手な友人がいて、よくみんなで彼女の家に押しかけ、ごはんを食べさせてもらいました。彼女の恋愛観とか全然聞いたこともないのに、『結婚早そうだな』とか勝手な偏見を持っていたのを反省しています。“ちゃんとした”食事への強迫観念もあるのでしょうか」また、最近の悩みは「この小説を書いたせいか、にわかにごはんに誘われなくなった」ことだとか。「今度帰省する予定があるのですが、久しぶりに地元の友人に会おうよと連絡したら、『ごはんじゃなくていいよ』『ごはん以外がいい?』という返信が来たり(笑)。『ううん、ごはん行こう!』と必死に返しています。ただ、夫はともかく、親しい友達でも、遊ぼう、会おうはイコールごはんに行こうという意味ですよね。だって、ごはんを禁止にしたら、どういうふうに会えばいいのか。公園のベンチで延々話ってできるかな、ハードル高いなと思ってしまいます」ところで、高瀬さん自身の食に対するスタンスはどうなのだろう。「昼間は、事務職をしているんですね。私の中にも『しっかり食べなきゃ』というような、ごはんに対する義務感があるので、仕事が忙しい時期は、二谷みたいにお腹が満たされればいいという気持ちにもなります。エネルギーゼリーで1食クリアするのも嫌いじゃないです。反対に、押尾のように、美味しいお店を探して食べに出かけるのも好きです。コロナ禍前、仕事が忙しくない時期の、18時、19時に退社できるような日には、ひとりで気軽に居酒屋にも行きましたし、よく友達と食事もしていました」美味しく食べられるかは、人間関係のリトマス試験紙のようだ、と高瀬さん。「あまり好きじゃない人と食べると噛んでも飲み込めないし、味がしません。水やお酒で流し込んで、なんとか自分のお皿を空にすることが目的になってしまうので、つらいですよね。とはいえ、そういう人とでも一緒に食事をする時間を持つというのであれば、何らかの関係を持ち、その関係性を維持したいと思っているということでもあると思います。だから、苦手な人でも食事中は態度に出さないでしょうし、相手の話を聞いてニコニコしたり相づちを打ったり、その場をうまくやり過ごすための体裁を整える方にエネルギーを使ってしまうのかも。食べたり味わったりすることに使うエネルギーを残すのが下手なのかもしれないと、いま話しながら思いました」それだけ、一緒に食べて美味しいと思える関係、食べながら「自分はいまリラックスしているな」と感じられる相手は、貴重。「思うんですが、夫とか、本当に親しい誰かとふたり、向かい合わせでちょっと高級なフランス料理などを食べに行くと、美味しくてテンションが上がって、定食屋やうどん屋で食べているときと話す内容も、明らかに変わる気がするんですね」定食屋では「毎日だるいな」「スーパーでトマト買って帰りたい」とか卑近な話しか出てこないかもしれない。おでん屋や居酒屋は、溜めていた本音を吐き出すのが似合うから、つい愚痴が多くなる。「けれど、ちょっとお金をかけて美味しいものを食べに行くときは、『小説を今後も頑張っていきたい』みたいな、いつもと違う未来形の話ができる気がします。そういう意味で、自分の目の前にあるごはんで自分の意識が少し変わって、結果として自分はこんなこと考えてたのかとか、逆に相手からも普段聞けない話が聞けたとか、味覚以外の恩恵も受けるのかなと。美味しいごはんというのは、いろいろな意味で、自分の中に潜む何かを発見するための媒介になるのかもしれませんね」『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子著ラベル制作会社に勤務する二谷と押尾の視点で進む。食べる、作るという本来自由で楽しい行為が、同調圧力ともなり、他者をコントロールする術となり、弱いはずの芦川さんだけが、職場でも二谷との交際でも居場所を広げていく。奇妙な人間関係の結末は。講談社1540円たかせ・じゅんこ1988年、愛媛県生まれ。作家。2019年、「犬のかたちをしているもの」ですばる文学賞を受賞。’22年、「おいしいごはんが食べられますように」で芥川賞受賞。※『anan』2022年10月19日号より。写真・山越翔太郎(TRON)取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年10月18日第167回芥川賞と直木賞が20日に発表され、芥川賞は高瀬隼子氏『おいしいごはんが食べられますように』、直木賞は窪美澄氏『夜に星を放つ』が受賞。高瀬氏は2回目の候補、窪氏は3回目の候補で受賞となった。この後、都内のホテルで受賞会見に臨む。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が贈られる。芥川賞はこのほか、小砂川チト氏『家庭用安心坑夫』、鈴木涼美氏『ギフテッド』、年森瑛氏『N/A(エヌエー)』、山下紘加氏『あくてえ』がノミネート。直木賞はこのほか、河﨑秋子氏『絞め殺しの樹』、呉勝浩氏『爆弾』、永井紗耶子氏『女人入眼(にょにんじゅげん)』、深緑野分氏『スタッフロール』がノミネートされていた。
2022年07月20日今、注目の女の子を紹介する『anan』で連載中の「イットガール」。今回はモデルの高瀬真奈さんです。透明感溢れるルックスで注目の的!自然体なキャラクターも魅力。吸い込まれるような透明感の持ち主で、雑誌や広告で活躍。「自分に自信がなかったけど、ものづくりの現場に関われたら、という思いでこの世界に飛び込みました」。SNSでの発信力の高さも支持を集める理由。「いいものを人と共有することが好きなんです。最近興味があるのは環境のこと。サステナブルなファッションにも関心があり、先日パリコレで『ステラ マッカートニー』のショーを観てきました。人が地球に目を向けるきっかけになるような情報発信をしていきたくて、目下勉強中!」温めて使うと最高に気持ちいい!カレリアンソープストーンというマッサージ用の天然石。かわいくて優秀。旅が好き。写真が好き。フィルムカメラを持ってあちこち旅しています。映像にも興味アリ!今年の目標はハーフマラソン出場。最近ランにハマっていて、走るとマインドが満たされていくのを感じます。たかせ・まな1999年生まれ。『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の人気コーナー「ゴチになります!」のゴチアンバサダーに就任。最新情報はInstagram(@manatakase_)で。※『anan』2020年4月29日号より。写真・土佐麻理子文・間宮寧子(by anan編集部)
2020年05月05日観客の五感を総動員して、ダイナミックに人間を描く。外波山文明のもと、これぞアングラ芝居!と言うべき舞台作りで、時代を超えて観客を魅了する劇団・椿組の春公演『肩に隠るる小さき君は』が、2月26日(水)から3月3日(火)まで東京・下北沢のザ・スズナリで上演される。舞台背景は、2.26事件当時の日本。昭和11年、事件の前夜である2月25日。軍靴の響きが近づく中、日本が世界から孤立の色を深めるその夜に、ひとりの子が生を受ける。その生命を守るために、必死に生きる家族があった……。脚本を手がけるのは、文学座の女優でもある山谷典子。2011年に演劇ユニット・Ring-Bongを旗揚げし、加藤健一事務所公演やNHK-FMのラジオドラマを書くなど、劇作家としても注目を集めている。演出は、R-viveを主宰する藤井ごうが担当。文学座の高瀬久男に師事し、小劇場から新劇、ミュージカルまでを幅広く手がける演出家だ。夏には新宿の花園神社境内に据えられた野外テント公演で人気を博す椿組。そんな彼らが数々の伝説を残してきた下北沢の老舗小劇場に登場。劇場空間全体が、濃密な空気で満たされる。「観る」というより「体感する」観劇体験を味わいたい。文:小川志津子
2020年02月23日平幹二朗が熱いアンコールに応え、代表作『王女メディア』に再び挑む。3か月に渡り各地で公演を行なってきた本作が、いよいよ2016年の年明け、1月9日(土)から16日(土)まで東京・グローブ座にて東京公演を行なう。舞台『王女メディア』チケット情報2012年に高瀬久男の演出により新たに甦った『王女メディア』は、高橋睦郎の修辞により、すべての固有名詞が普通名詞に置き換えられたことで、古代ギリシアの神話的事件が、いつの時代、どこの場所でも起こり得る普遍的ドラマとして展開し、日本各地で絶賛された。全国からのリクエストによって実現した今回の2015年版は、高瀬久男から田尾下哲が演出を引き継ぎ、さらに新しい『王女メディア』へと進化している。1978年に男優として王女メディア役に挑んでから37年。平幹二朗が、「身体の中に棲みついている」というメディアについて語った。「蜷川(幸雄)演出のときは、復讐心に燃えることばかりで、女の弱さや悲しさが感じられなかったかもしれないと思います。2012年の高瀬(久男)演出では、様式美に頼らない、日常性の切り口で新たにつくりましたが、今年の『王女メディア』は、蜷川演出へのオマージュも含めて、新劇っぽさ一色から、様式性を取り入れた多彩なアプローチを試みています。田尾下哲さんの演出で、赤い布に女の絆、同盟を結ぶというような意味をもたせていたり、常に連帯での動きがあったりするので、前回より共演者との交流が増えています。キミホ・ハルバートさんの振付で、メディア以外の女性たちの動きに風のような様式性も加わっています。男性が女性を演じるというのは難しさがありますが、坂東玉三郎さんと『マクベス』で共演したのがきっかけで、研究書の解釈ではなく自分の発想で壁が破れないかと取り組むようになりました。壁を打ち破るには枷の多い役のほうがいい。卒都婆小町、王女メディア、サド公爵夫人といった女性を演じてきました。『王女メディア』は、人間の恐いところまで描ききった特殊性がありますが、エウリーピデースが何を描きたかったのか、テーマは何かを考えると、人間が生きていく力、生きていくには“赦し”が必要で、この“赦し”がテーマなのではないかと、今回思ったのです。これまでは、メディアに同情させようと演じていたのですが、今作では、赦しのない女の悲劇を演じたいと思って挑んでいます。毎日、実験していて、共演者もついてきてくれています。肉体的には苦しいのですが、演じはじめると苦しさはとんでしまって、面白くなるんですよね」東京公演は2016年1月9日(土)より東京グローブ座にて開幕。チケットは発売中。
2015年12月28日