作・鴻上尚史×演出・菜月チョビ『パレード旅団』が上演中だ。OFFICE SHIKA REBORN 「パレード旅団」チケット情報本作は、OFFICE SHIKA PRODUCEによる新シリーズ「OFFICE SHIKA REBORN」の第一弾。「名作は、死なない」のキャッチフレーズのもと、これまでの名作戯曲を上演していくシリーズとなる。その1作目である『パレード旅団』は、本作で演出を務める劇団鹿殺し座長の菜月チョビが“初めて目にした「演劇」”という鴻上尚史の戯曲。現在59歳の鴻上が27歳のときに原型を書き、その10年後の1995年に鴻上主宰の劇団「第三舞台」(2012年解散)で上演された作品だ。舞台は、「いじめにさらされている中学生の世界」と「崩壊にさらされているある家族の世界」、そのふたつの世界を往復するように進行し、キャストは“ある少年の家に全国から集まったいじめられっ子7人”と、“洪水で流される家の中に閉じ込められたバラバラの7人家族”の2役を演じる。ダンスや歌、布を使った水の表現、大きな扇風機でつくり出す台風の表現など鴻上戯曲テイストを感じる演出を、菜月ならではギラリとした味付けでみせていく世界。そこに登場する7人+2人の人物たちのやり取りは、2017年に上演するうえでのアレンジも加えられてはいるが、これが約30年前に生まれた物語だと思うとある種の絶望を感じるほどに現代に響くものだ。中でも、いじめられっ子の少年の「復讐、しませんか?」や、父親の「今日かぎり、父さんは父さんをやめようと思う」という台詞は印象的。そこの言葉を発端に、物語が動きだす。全く違う軸で展開するふたつの世界が徐々に近づいていくかのように、世界間の往復テンポも少しずつ上がっていき、ある瞬間、交差する。そのとき、思いもよらない光景がそこに広がった。その光景は、菜月の描く世界とも鴻上の描く世界とも感じられる、演劇ならではの鮮烈な魅力を放っていた。公演は、犬のポチ役を伊藤今人が演じる「踊る犬組」、菜月が演じる「歌う犬組」があるほか、葉丸あすか(柿喰う客)が演じる婚約者役を「日替わり婚約者」として七味まゆ味(柿喰う客)やファーストサマーウイカ、有田杏子(劇団鹿殺し)が演じる日も設定されており、さまざまなバージョンが楽しめる。『パレード旅団』は12月17日(日)まで東京・シアターサンモール(終了)、12月21日(木)から24日(日)まで大阪・ABCホールにて上演。撮影・取材・文:中川實穗
2017年12月18日ニッポン放送のラジオ番組『オールナイトニッポンPremium』パーソナリティ発表記者会見が13日、東京・有楽町の同局で行われ、ロックバンド・X JAPANのToshl、演出家の鴻上尚史、シンガーソングライターのmiwaが出席した。1967年10月2日の放送スタートから、今年の10月で50周年を迎えるニッポン放送の『オールナイトニッポン』。これの記念として、今年10月から来年3月の半年間限定で、月曜から金曜の19:00~20:50に『オールナイトニッポンPremium』が放送される。この日行われた会見には、来年1~3月にパーソナリティを務めるToshl(月曜担当)、鴻上尚史(火曜)、miwa(水曜)の3人が登壇し、意気込みなどを熱く語った。月曜を担当するToshlは、25年ぶりに『オールナイトニッポン』に出演。「今もロックシンガーをやっていますが、元々はロックシンガーになることよりもラジオのDJになることが夢でした。それぐらいラジオに影響を受けた子供時代だったので、25年ぶりにやれることになってワクワクしてますし幸せな気持ちでいっぱいです」と笑顔。2010年から3年間同番組を担当していたmiwaも「『オールナイトニッポン』に出演するまではライブのMCが苦手で、ライブで喋りたくないぐらい苦手意識がありました。でもラジオのお陰で喋るのが楽しくなり、リスナーとのやり取りのようにお客さんとやり取りをすればいいのかと思いました」と当時を振り返り、「『オールナイトニッポン』でオードリーの若林さんをゲストに呼び、一緒にコラボしました。今年のツアーでも来ていただいてコラボし、改めて『オールナイトニッポン』つながりだと思いました。先程もToshlさんから『何か一緒に出来たらいいね』と仰ってくださったので、何かご一緒できたらと思っています」と意気込んだ。25年前に同番組を担当していたToshl。放送中に炎上事件を起こして大きな話題を集めた。その話題を振られたToshlは「当時僕らのステージでよく火を噴くパフォーマンスをやっていました。本当は来て欲しくなかったんですが、泥酔状態のYOSHIKIとHIDEが番組に乱入したんです。スタジオで暴れるだけ暴れて、最後に火を噴いてくれたんですけど、その火が当時のディレクターの頭に燃え移って、その影響で今は早めに(頭髪が)後退したんですけどね(笑)」と笑わせる場面も。25年ぶりの同番組にYOSIKIを呼ぶのかという質問には「結構今は仲が良いので、来てくれると思います。お酒は最近控えているようだし、19時台でしたら大丈夫だと思いますね(笑)」と前向きだった。
2017年09月14日元SKE48のメンバーで女優の松井玲奈が24日、東京・本多劇場で行われた舞台『ベター・ハーフ』の公開舞台稽古及び囲み取材に、風間俊介、中村中、片桐仁、作・演出の鴻上尚史とともに登場した。同作は2015年4~5月に上演し、好評を博した鴻上のオリジナル作品。PR会社に勤める諏訪(風間)は、上司の沖村(片桐)に頼まれ、沖村がネットで知り合った女性とデートすることになる。しかし、そこに来た平澤(松井)もまた、友人の小早川(中村)の代わりとして来ていたことから、4人の恋模様が複雑に絡み合っていく。前回から参加している3人に、新たなキャストとして入った松井は「すごいプレッシャーを感じてる」と緊張している様子。片桐から「そんな、選挙とかないわけだから! 結婚宣言しちゃう?」と、先日行われたAKB48シングル選抜総選挙で須藤凜々花が結婚宣言を行ったことにかけていじられ「やめてください~!」と大慌てだった。また風間は片桐に「何のサービス!?」と驚いていた。総選挙よりも今回の舞台の方がプレッシャーだという松井に、風間は「嘘でしょ!? うちらの中だとしたら絶対に4番までには入れるんだよ!?」とびっくり。松井は改めて自身の結婚について聞かれ、「結婚はわかんないです。予定もないです」ときっぱり答えた。一方で松井は片桐のファンと公言し、共演を楽しみにしていたという。片桐が「すごい、好きな感じでくるかなと思ったけどそんなことない」と残念がると、松井は「好きだからいけないんです!」と弁解し、「ずっと仁さんのことをすごく好きだったので、共演させていただけることも嬉しいですし、お芝居の中で仁さんが投げてくるボールが面白いので、キャッチできるのが幸せだと思います」と情熱的に語る。松井の片桐仁への熱い思いを聞いた風間は「僕らの名前が出てこない……」と拗ねた様子を見せていた。
2017年06月24日俳優の風間俊介が24日、東京・本多劇場で行われた舞台『ベター・ハーフ』の公開舞台稽古及び囲み取材に、松井玲奈、中村中、片桐仁、作・演出の鴻上尚史とともに登場した。同作は2015年4~5月に上演し、好評を博した鴻上のオリジナル作品。PR会社に勤める諏訪(風間)は、上司の沖村(片桐)に頼まれ、沖村がネットで知り合った女性とデートすることになる。しかし、そこに来た平澤(松井)もまた、友人の小早川(中村)の代わりとして来ていたことから、4人の恋模様が複雑に絡み合っていく。前回の上演時は、好評につき当日券を求める列ができたという同作に、風間は「正直言うと再演はあるかなと思ってたので」とニヤリ。また、片桐も「顔合わせのホン読みの時に『これはもう再演決定ですね』と。鴻上尚史、才能あるなと思って」と振り返り、風間から「呼び捨てだよ」とつっこまれていた。再演となるが、前回の好評を受け「もう1回同じコースに、同じ直球を投げる」と表した風間。「変わったと部分があるとしたら、(新キャストの)玲奈ちゃんの力と、僕らの2年間のほんのちょっとの成長」と語ると、鴻上はすかさず「片桐仁のブレイクですね!」と、ドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』で話題になった片桐をアピールした。また、今回もダンスを披露する風間は「まだ錆び付いてなかった。大丈夫ですかね」と苦笑するが、鴻上は「そこがジャニーズですね。びっくりしますね。役者の世界に来たんじゃないかなと思うんですけど、ジャニーズでしたね」と風間のダンスの腕前に感心しきり。しかし風間は「テレビ局からタクシーに乗った時に『お兄ちゃん何? 照明? 音声?』って言われて、『照明です』と答えて、照明さんのトークをしたことがあります」と芸能人らしくないエピソードを明かし、周囲を笑わせていた。
2017年06月24日2年前のSKE48卒業後からは女優として活躍中の松井玲奈が、2015年に初演された鴻上尚史作・演出の舞台『ベター・ハーフ』に出演する。主演映画が次々公開されるなど映像で引っ張りだこの松井だが、つかこうへい原作の主演舞台『新・幕末純情伝』(2016・17年)では演出の岡村俊一に「この作品はもう松井玲奈以外ではやりたくない」と言わしめ、女優としての幅広い才能を発揮している。その『新・幕末~』は松井が紅一点で他は全員男優、かつ大所帯の座組みだったが、今回の『ベター・ハーフ』はコンパクトな四人芝居。また他の3人(風間俊介、中村中、片桐仁)は初演から続投で、この再演には松井だけが新キャストとして加わる。舞台『ベター・ハーフ』チケット情報「台詞の量ももちろん多いですし、どうなるんだろうという緊張感があります。『新・幕末~』のときは周りが持ち上げてくれるみたいな感覚があったんですけど、この作品はみんなで支え合っていく“人間パズル”みたいなお芝居なんだろうなと。初演からさらにブラッシュアップして上がっていく皆さんに、私がどれだけ追いついて同じラインに立てるかがすごく大事なんだろうなと思っています」松井が演じるのは、デリバリーヘルスで働きながらアイドルとしてデビューすることを夢見る・平澤遥香。遥香はトランスジェンダーの友人・小早川(中村)に頼まれ、小早川が出会い系サイトで知り合った男性と会う。だがそこにいた諏訪(風間)も、正体を偽って小早川とやり取りしていた沖村(片桐)の代わりで……。「自分の夢に向かって突き進む芯のある女の子だから、ブレのない真っ直ぐな人にやってほしいという鴻上さんのご意向で、今回声を掛けていただけたみたいです。境遇などで遥香に共感するところはありつつ、『どうしてそう思うんだろう?』って疑問に思うところも今はたくさんあるので、自分とは違うところも突き詰めていって、どういうキャラクターが出来上がるのかが楽しみです」そもそも芝居に興味を持ったのは、宝塚好きの母の影響で観た、天海祐希出演の舞台『オケピ!』がきっかけなのだとか。「鴻上さんに初めてお会いしたときに、舞台が好きだとお伝えしたら、『良かった。嫌いだったらどうしようと思った』と安心していただけました(笑)。その日にしかないライブ感が楽しくてよく観に行きます。舞台を観ることは特に、覗き見をしているような感覚があって面白いですね」大好きな舞台に立ち、本格女優への扉をまたひとつ叩く。公演は6月25日(日)から7月17日(月・祝)まで東京・本多劇場にて。その後、全国を巡演。取材・文:武田吏都
2017年05月11日舞台版『ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)』のプレスコール及び囲み取材が26日、行われた。会見にはのび太役の小越勇輝、しずかちゃん役の樋口日奈(乃木坂46)、ジャイアン役の皇希、スネ夫役の陳内将、チッポ役の佃井皆美、脚本・演出の鴻上尚史が出席した。同作は藤子・F・不二雄作『ドラえもん』大長編シリーズの同名映画が原作。のび太がピンクのモヤをくぐると動物が人間の言葉を話すアニマル惑星にたどり着き、惑星を守るために立ち上がる。鴻上尚史作・演出で2008年に上演され、今回が9年ぶりの再演となる。世の中に様々な作品を送り出してきた鴻上だが、今回『ドラえもん』9年ぶりの再演に「キャストが若々しくなりました。みんな若いのにキャリアがあるので、とても真面目に役作りに取り組んでもらいました」と違いを語る。そして「ドラえもんの舞台化……? と思われるかもしれませんが、しっかりとドラマがあって物語を楽しんでいただける作品です」と太鼓判を押した。イケメンすぎるのび太として話題になった小越は、「こうして衣裳・ヘアメイクを身につけて照明・音響に助けられると、演じる『のび太』のキャラクターが濃くなってくるのを感じています」と自信を見せる。「のび太が、チッポをはじめとするアニマル惑星のみんなと出会って成長する物語でもあるので、その様子を伝えられればと思っています」と意気込んだ。「ワクワクしかない」という樋口は、「舞台上でドラえもんの道具もいくつか出てきますが、夢の詰まったシーンでとても気に入っています」とアピール。ジャイアン役の皇希は「精一杯、のび太をいじめたいと思います(笑)」と役について語った。また、チッポ役の佃井は犬の衣装に挑戦し、「見た目だけでも楽しんでいただける作品です」を自信を見せた。原作のスネ夫の個性的な髪型に悩んだという陳内は、「ヘアメイクさんにとても素敵に作っていただきました」と感謝の気持ちを表す。「裏で早替えやスタッフワークなど、様々な技を目の当たりにして、改めて『演劇ってすごい!』と思いました」としみじみしながらも、「僕にできることは、作り上げてきたものを板の上で全力で出すのみ」と気合いを入れた。東京公演は2017年3月26日~4月2日、サンシャイン劇場にて行われる。また、福岡公演はキャナルシティ劇場にて4月7日~9日、愛知公演は刈谷市総合文化センター 大ホールにて4月14日~16日、宮城公演は多賀城市民会館にて4月21日~23日、大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて4月29日~30日。(c)Fujiko-Pro
2017年03月26日国民的ヒーロー“ドラえもん”の物語、その舞台版が約9年ぶりに再登場する。舞台版ドラえもん『のび太とアニマル惑星(プラネット)』の脚本・演出を手掛ける鴻上尚史は、「子供向けの舞台と思われるだろうけど、初演の時は観客の7割が大人でした」と当時を振り返った。舞台版ドラえもん『のび太とアニマル惑星(プラネット)』チケット情報「9年前はまだ2.5次元(アニメや漫画を原作とした舞台作品)という言葉が一般的でなかったから、『着ぐるみのキャラクターが出てくるの?』なんて誤解されたりして(笑)。でも蓋を開けてみたら、大人の観客が実に喜んでくれたんですよ。ドラえもんは、大人が読んで涙する作品ですからね。子供の頃に出会い、大人になって再発見する、という感じかな」(鴻上)今回の再演で主人公のび太を演じるのは、『テニスの王子様』や『弱虫ペダル』などの舞台で活躍した小越勇輝だ。鴻上の「2.5次元の雄、と紹介されました」という言葉に、照れくさそうに肩をすくめる。その端麗な笑顔と、のび太のイメージとのギャップに戸惑うが…。「よくそう言われてしまって…。う~ん、のび太としてはマイナスかな?でも自分の武器でもあるかな?とかいろいろ悩んでます。“イケメンのび太”なんて言われたりもするけど(苦笑)、そうじゃないところを舞台の上で見せられたらなと」(小越)鴻上は、小越の真剣な表情を微笑ましく見ながら「大丈夫。初めて会った時、ぼ~っとしてたよね。あ、のび太だ、と思ったよ(笑)。かっこいいんじゃなくて「チャーミングなのび太」になれると思うよ」と勝算のうなずきを見せた。「のび太は、僕らが一番感情移入しやすいキャラクター。自分の中にある怠け癖や向上心や負けん気といったものを平均的に持っている男の子なんです。さらにしずかちゃん(樋口日奈)やジャイアン(皇希)、スネ夫(陳内将)など、周囲の人の思いを受けとめるキャッチャーみたいな存在でもある。小越君ならいけるな、と。でも俺、演出家を三十数年やってきて、初めて主演俳優に『そんなにカッコよく踊るな』って言いましたよ(笑)。男のお客さんに『なんかのび太って、俺と地続きじゃん』と思ってもらわないとダメだからね。たぶん今回で、小越君には男性のファンがつくと思いますよ」(鴻上)「はい。すごく面白い挑戦だと感じているので、いろんな方に見ていただきたいです。物語に込められた人との絆や助け合いの心、真っ直ぐな熱といったものを、自分の体でしっかりと伝えられたら。何か温かいものを届けられたらいいなと思っています」(小越)歌とダンスも盛り込んだ快活な音楽劇には、環境問題への鋭い視点も潜む。老若男女の心に響くメッセージが込められた、ドラえもんの宇宙の旅がまもなく発進する。「楽しくて夢のある物語の中に、大切な問題をしっかりと描く。それは原作の藤子・F・不二雄先生が長く持ち続けてきたポリシーだと思います。子供劇となめて来てもらってもいいですけど(笑)、おっ!と驚かされると思いますよ」(鴻上)舞台は3月26日(日)より開幕。取材・文上野紀子
2017年03月17日舞台版『ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)』が2017年3月に上演されることが27日、わかった。同作は藤子・F・不二雄作『ドラえもん』大長編シリーズの同名映画が原作。のび太がピンクのモヤをくぐると動物が人間の言葉を話すアニマル惑星にたどり着き、惑星を守るために立ち上がる。鴻上尚史作・演出で2008年に上演され、今回が9年ぶりの再演となる。のび太役は、ミュージカル『テニスの王子様』、舞台『弱虫ペダル』、ミュージカル『刀剣乱舞』などで活躍する俳優・小越勇輝が務め、ヒロイン・しずか役は乃木坂46の樋口日奈に。またジャイアン役に皇希、スネ夫役に陳内将が決定した。他、佃井皆美、嶋村太一、澤田育子が出演する。東京公演は2017年3月26日~4月2日、サンシャイン劇場にて行われる。また、福岡公演はキャナルシティ劇場にて4月7日~9日、愛知公演は刈谷市総合文化センター 大ホールにて4月14日~16日、宮城公演は多賀城市民会館にて4月21日~23日、大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて4月29日~30日。
2016年12月27日鴻上尚史のプロデュースユニット「KOKAMI@network」の第15 回公演『サバイバーズ・ギルト&シェイム』が、11月11日に開幕した。KOKAMI@network『サバイバーズ・ギルト&シェイム』チケット情報「サバイバーズ・ギルト」とは、戦争や災害、事故、事件から奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対して感じる罪悪感のこと。日本では特に3.11(東日本大震災)で広く浸透した。本作のタイトルにはそれに日本人ならではの「生き延びた恥ずかしさ(シェイム)」が加わっている。物語は、戦場から1年ぶりに故郷に戻ってきた主人公が母親に「母さん。僕ね、死んじゃったんだ」と告白することから始まる。主人公の水島明宏を演じるのは、本作で初主演を務める山本涼介。明宏が所属していた大学の映画サークルの先輩・夏希を演じるのは南沢奈央。さらに、身体が弱い明宏の兄を伊礼彼方、明宏の所属する部隊の上官・榎戸を片桐仁、明宏の母親を長野里美、その婚約者・岩本を大高洋夫が演じる。明宏が本当に幽霊として戻ってきたのかそうでないのかは、明かされないまま物語は進んでいく。とぼけた母親は息子の帰宅を喜び、堅物の兄は「戦場に戻れ、非国民!」と非難する。そこに母親の婚約者や、明宏の上官まで現れると混乱状態に。そんな中で明宏は「生きた証を残したい」と夏希に出演を頼みこみ、最後の映画撮影に挑む。“抱腹絶倒の爆笑悲劇”と銘打たれた本作。登場人物それぞれの個性は強烈で、ちょっとした会話にいちいち笑わされてしまう。中でも片桐が巻き起こすハチャメチャなやり取りには何度も爆笑が起きていた。その一方で、そんな彼らがそれぞれの理由で抱えている「自分が許せない」という感情。それは懺悔のように吐露したところで終わらない感情だが、物語の中で少しずつ溶かされ、温められ、さまざまに昇華されていく。「映画の撮影が終わるまで」をひとつの支えのようにして進んでいく彼らの結末を、ぜひ劇場で見届けてほしい。笑いながらも泣けてしまうし、泣きながらも笑ってしまう。そんな演劇ならではの体験ができる作品『サバイバーズ・ギルト&シェイム』は、12 月4 日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年11月17日「仮面ライダーゴースト」で注目の新進俳優・山本涼介の舞台初主演作で、鴻上尚史の作・演出による「サバイバーズ・ギルト&シェイム」が11月11日(金)に初日を迎え、山本さん、鴻上さんに共演の南沢奈央、片桐仁らが報道陣の取材に応じた。“サバイバーズ・ギルト”とは近年、注目されている概念で、災害や戦争などに遭いながらも生還した人が、自分だけが助かったことに感じる罪悪感のこと。本作では、近未来の戦争中の日本を舞台に、自分は戦死して幽霊になったと信じ、成仏のために映画を1本完成させることを望む青年と家族、周囲の人々の姿を描く。山本さんは「映像作品も含めて初めての主演」とあって、初日を迎えてやや緊張気味…?会見前に、報道陣が見守る中で約10分間のあるシーンの公開フォトコールが行われたが「そんなに緊張しないと思ってたら、思った以上に…。多少、不安があります」と語ったが、これに片桐さんが食いつき「多少なの?大したことないの? (公開フォトコールで)相手のセリフを口ずさんでたよ(笑)」と指摘。山本さんは「顔が引きつってました…」と苦笑を浮かべていた。最初にオファーが届いたときは「驚きが最初に来た」と山本さん。「責任感を感じたし、セリフ量も増えるので不安もありました」と吐露する。そんな山本さんを片桐さん、南沢さんら共演陣が支えるが山本さんは、片桐さんについて「仁さんは…変(笑)。アドリブが多いので、笑いをガマンするのがしんどいです。こっちが真剣にやっている後ろで、真剣に面白いことをやってくるんです(笑)。まだ、僕はストレートしか投げられないのですが、仁さんは変化球を投げてくるので、勉強させてもらっています」と語る。一方、大学の映画サークルの先輩を演じる南沢さんについて、山本さんは「ハグするところがあって、緊張します(苦笑)」と語り、鴻上さんから「中坊かっ!もう少しレベル高いこと言えよ(笑)!」とお叱りの言葉が…。一方、南沢さんも山本さんの印象について「背が高い」と語り、「印象じゃないし!」と突っ込まれていたが「私は、165cmで、山本くんは私よりちょうど20cm高いんです。私はずっと、自分より20cm高い人が理想だったんですけど、思ったより大きいですね(笑)。すごく安心するし、頼りがいがありますよ」と語っていた。鴻上さんは“サバイバーズ・ギルト”について、まさに現代で扱うべきテーマとして強調。「アメリカの大統領も、威勢のいいことを言ってると、ますます(サバイバーズ・ギルトで)苦しむ人が増えるんじゃないか?」と懸念も口にする。また、“座長”山本さんについては「まだ若いけど、伸びしろがあり、この1か月の公演でも成長していくと思う」と期待を寄せていた。「サバイバーズ・ギルト&シェイム」は12月4日(日)まで紀伊國屋ホールにて上演。(text:cinemacafe.net)
2016年11月11日作家・演出家である鴻上尚史のプロデュースユニットKOKAMI@networkの第15回公演『サバイバーズ・ギルト&シェイム』が11月に上演される。主演は、『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダースペクター/深海マコト役などを演じた山本涼介。鴻上と山本に話を聞いた。KOKAMI@network vol.15『サバイバーズギルト&シェイム』チケット情報鴻上書き下ろしの新作である本作。「サバイバーズ・ギルト」とは、戦争や災害、事故、事件などに遭いながら奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対してしばしば感じる罪悪感を表す言葉。鴻上は本作が生まれた背景について「“サバイバーズ・ギルト”という言葉、生き残ったことへのいろんな想いについて、ずっと考えていました。具体的にはやっぱり3.11。それまでもそういうことはあったけど、国民として“サバイバーズ・ギルト”にどう向き合えばいいんだろうっていうことを、みんなが考えだしたのはやっぱり3.11以降なんじゃないかなって思うんですよね。“シェイム”って足したのは、日本人らしく生き延びた恥ずかしさもあるだろうってことで。このタイトルで作りたい作りたいと思ってて、やっと作品になりました」と語る。それを“抱腹絶倒の爆笑悲劇”と表現するのは「悲劇的な状況をどれだけ笑える状況にするかっていうのが、表現の力だったり、芸術や芸能のやるべき仕事だと思っているから」(鴻上)。山本は舞台初主演。「台詞が出ない夢を見ます(笑)」とプレッシャーを感じながらも「共演者のみなさんは、僕にはまだできない芝居をする方々。観て学びたいですし、この舞台を通してたくさんの“初めて”を経験していきたい。一個一個大事にできたら」と意気込む。そんな山本に鴻上は「涼介の仕事は、野球でいえばピッチャーとしてとにかく一生懸命球を投げること。周りの守備たちはベテランなのでどんな球が飛んできても処理する。だから観客は一生懸命投げる涼介の姿に一番感動するんだよ」と話す。山本が演じるのは、戦場から「死んじゃった」と帰ってきた主人公。天国に行かずに故郷に戻った理由は、大学で所属していた映画研究会で納得できる映画がまだ撮れていないから。南沢奈央をヒロインに最後の映画を撮ることを決意する。「人に対してまっすぐぶつかる人。自分とそこまでかけ離れてないので、自身にあるもので活かせるところは活かしていきたいですね」(山本)。「テーマは「生きる」ってことかなあ。「サバイバーズ・ギルト」に苦しんでいる人もいない人もみんないろんな意味で生きのびて苦労してると思うんです。そういう時に、深刻に悩むんじゃなくて笑い飛ばせる力を少しでも与えられる作品になれば。」(鴻上)公演は、11月11日(金)から12月4日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月18日「MEN’S NON-NO」専属モデルとして活躍するほか、現在放送中の「仮面ライダーゴースト」で人気を博す山本涼介の、初主演舞台が決定。日本を代表する劇作家で演出家の鴻上尚史のプロデュースユニット「KOKAMI@network(コーカミネットワーク)」第15回公演として、新作「サバイバーズ・ギルト&シェイム」に参加する。「サバイバーズ・ギルト&シェイム」とは、戦争や災害、事故でかろうじて生き残った人が、自身が生きていることに感じる罪悪感と恥ずかしさのこと。舞台は未来。戦争が起こり、戦場から故郷に帰ってきた若い男は、「僕、死んじゃったよ」と両親に告げる。人間は、自分の理解が超えたことが起こったとき、決まってどちらかの方法を取る。1つは、「この世界は現実でない」と思い込むこと。それが不可能なら、もう1つは「私は現実ではない」と決めること。本作は、「生き延びてしまった罪と恥」と向き合い、格闘し、笑い飛ばす、抱腹絶倒の“爆笑悲劇”だ。そんな本作で主演を務めるのは、TVシリーズの「仮面ライダーゴースト」や『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』に仮面ライダースペクター/深海マコト役として出演する山本さん。その恋人役には、確かな演技力でTVドラマ・舞台と話題作への出演が続き、科学情報番組「サイエンスZERO」(NHK)ではメインナビゲーターを務める南沢奈央。共演には、本格ミュージカルに多数出演し、音楽活動も精力的に展開する伊礼彼方、コントからシリアスな役柄まで幅広くこなし、「99.9 -刑事専門弁護士-」での存在感も記憶に新しい片桐仁、伝説の劇団「第三舞台」を鴻上さんとともに結成し、劇団解散(’12)後も舞台・ドラマ・映画で活躍を続けるベテラン俳優・大高洋夫。同じく劇団「第三舞台」では看板女優として活躍し、大河ドラマ「真田丸」のおこう役でも注目を集める長野里美と、多彩なキャストが顔を揃えている。<主演:山本涼介 コメント>「仮面ライダー」という、大きな船に乗っていたこの1年。そこから、ポンッと荒海に投げ出されたような気分です。夢だった初主演という大役をいただき、同時にその言葉の大きさと責任が僕の肩にのしかかっています。ですが、仮面ライダーで演じたクールであまり感情を表に出さない役から、今回は全てを“解放”して、“爆笑悲劇”という新ジャンルの物語を感情豊かに表現したいと思っています。演出家の鴻上尚史さんをはじめ、南沢奈央さんら心強い共演者の皆さんの胸を借り、一度として同じステージのないナマモノの魅力を楽しみながら、精一杯演じたいです。<作・演出:鴻上尚史コメント>「サバイバーズ・ギルト&シェイム」とは、戦争や災害でかろうじて生き残った人が、死んでしまった人たちを思い、生きていることに感じる罪悪感と恥ずかしさのことです。未来、戦争が始まり、戦場から故郷に帰ってきた若い男は、「僕、死んじゃったよ」と両親にあっけらかんと告げるのです。若い2人とワークショップをやりました。じつにエネルギュッシュで真面目、これからを期待させる山本涼介さんと魅力的で確かな演技力の南沢奈央さんと共に、「生き延びってしまった罪と恥」の抱腹絶倒の爆笑悲劇を創ります。舞台KOKAMI@network vol.15「サバイバーズ・ギルト&シェイム」は11月11日(金)~12月4日(日)まで全20ステージ、紀伊國屋ホールにて上演。(text:cinemacafe.net)
2016年09月04日鴻上尚史率いる「虚構の劇団」の第12回公演『天使は瞳を閉じて』が、8月5日(金)に開幕した。【チケット情報はこちら】本作は、鴻上主宰の劇団「第三舞台」(2011年に解散)が、1988年に鴻上作・演出で初演。以来、再演を重ねてきた作品だ。「虚構の劇団」では2011年8月に上演され、今回5年ぶりとなる。初日の公演を観劇した。舞台は、放射能に汚染されて人間がいなくなった地球。人間がいないせいで天使は暇を持て余していた。しかしあるとき、天使の1人が「透明な壁」に囲まれた小さな街を見つける。そこはかつて原発事故が起き、放射能を外に漏らさないために壁で覆った街。しかしその壁が結果的に街を守り、人類滅亡から逃れた唯一の場所だった。そこで暮らす人間は、街ができた経緯を忘れ、楽しそうに生活している。その姿に惹かれ、1人の天使が人間になる。もう1人の天使は、そんな人間たちの毎日をただただ見つめ続ける――。描かれているのは、人間の営みだった。天使が思わず人間になってしまうほど思いやりや夢に満ちた世界が、(放射能ではなく)人間の心に起因して少しずつ変わっていく。その小さな発端の連なりや、そこから生まれる別の感情、なにかのきっかけで弾ける残酷さ……そういったものが一つひとつ丁寧に描かれ、演じられている。また、鴻上作品ならではの笑いやダンスのシーンは楽しい。ユタカ(上遠野太洸)とマリ(鉢嶺杏奈)の新婚夫婦がいちゃつく姿では、美男美女の壊れっぷりに笑った。物語は少しずつ回転速度を上げていく。いつでもやり直せた日々は、気付けばもう引き返せない速度で動いており、舞台上の空気も変わってしまっている。そんな変化をただ見つめることしかできない天使(小沢道成)の表情は、やさしく切なく悲しい複雑な色をしていた。上演前、舞台上には「通行制限中帰還調整区域につき通行止め原子力災害現地対策本部」と書かれた看板が立っていた。本作はもともとチェルノブイリの原発事故を発端に書かれたものだが、今その看板は身近で生々しいものになった。1988年に書かれた戯曲が驚くほど今とシンクロする。過去に観たことある人も、ない人も、ぜひ“今”観てほしい作品だ。『天使は瞳を閉じて』は8月14日(日)まで東京・座・高円寺1にて。その後、愛媛、大阪、東京にて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月12日1988年の第三舞台第20回公演として誕生した鴻上尚史作・演出の『天使は瞳を閉じて』。以来、さまざまなバージョンで披露されてきたこの作品が、鴻上率いる「虚構の劇団」で5年ぶりに上演される。放射能に汚染されて誰もいなくなった地球に天使だけが残された──。そんな物語の設定が、リアルに感じられた5年前。あれから5年で何が変わったのか。ユタカ役で客演する上遠野太洸と鴻上が、上演に向けての意気込みを語った。【チケット情報はこちら】鴻上は今回の上演を決めた思いをこう語る。「この作品は、もともと、チェルノブイリ原子力発電所事故が起こったあとに、地球上から人類がいなくなったらどうなるんだろうと着想したものでした。それが、5年前の上演では、上演を決めたあとに東日本大震災が起こって、思いがけず日本の状況にシンクロしてしまった。それから5年、この間に忘れられてしまったこともあるのではないか。本当に意味のある5年だったのか。今上演したらどう感じてもらえるのか。そんな興味があって、もう一度やろうと思ったんです」。そこに客演として呼ばれた上遠野は、誰もいなくなったと思われた地球上で、透明な壁に守られて生きている人間のひとりを演じる。この作品では彼らの格闘を細かい心理描写で描いていくとあって、今、人間の内面を表現することへの苦悩と喜びを感じているようだ。「たとえば怒る場面があったとして、その怒りは悲しみから生まれているものなのかとか、そこに付随するものまで考えさせられる。だから、感情というものを今までよりも深く見つめられるようになってるんです。それをどう表現して伝えていけるのか、これからの稽古でもっと高めていきたいですね」。鴻上から見ても、上遠野の成長ぶりは著しい。「太洸が演じるユタカは、意識的にも無意識的にも自分を持て余し、自分と周りを傷つけながら引っ掻き回すという役なので、演技力のあるイケメンでないと(笑)、説得力がない。それに、太洸はとても熱心で努力家だから。演出家としてはやっぱり、必死になってやってくれる人だと、一緒に手を取っていける。彼の参加によって劇団員にもいい化学変化が起こってくれるといいなと思っています」。新しいユタカの存在が、きっと新しい『天使は瞳に閉じて』につながるだろう。歴代の作品を観てきた人も初見の人も、ぜひ目撃してほしい。これが今の“テントジ”だ。『天使は瞳を閉じて』は8月5日(金)から14日(日)まで東京・座・高円寺1で上演。その後、愛媛、大阪、東京を周る。取材・文:大内弓子
2016年07月25日風間俊介主演の舞台『イントレランスの祭』が、4月9日に東京・全労済ホール/スペース・ゼロにて開幕した。本作は、作・演出を手がける鴻上尚史によるプロデュースユニットKOKAMI@networkの第14 回公演。KOKAMI@network vol.14『イントレランスの祭』チケット情報物語の舞台は日本。地球に580万人の宇宙人が難民として逃げてきて、国連で決まった割り当てに従い、日本では25万人の宇宙人を受け入れることになる。宇宙人が地球に溶け込み、生活を始めてから数年がたったある日、売れないアーティストの佐渡健吾(風間)は恋人(岡本玲)から自分は宇宙人だと告白される――。タイトルの「イントレランス」とは「不寛容」の意味。劇中には「差別」という言葉が何度も出てくる。地球人と宇宙人だけでなく、会社員とフリーター、若い美人と太めの中年女性……人が人を区別し差別する姿と、傷つきながらもしたたかに生きようとする姿が描かれている。観客という立場で観ていると、その「不寛容」はひどいものだ。言いがかりのような差別でも、弁が立つ者が正当性を主張すれば、それを鵜呑みした世間が被差別者を追い詰めていく。その媒介はインターネット。すぐさま“祭”となる世界に反論の余地はない。あるとき、宇宙人に「地球人だから差別される側の気持ちがわからない」と言われたTVディレクターが「わかる」と反論する。そこで告白したのは「父は日本人ではない、母は特別な地区の出身」という身の上話。舞台上と現実が交差する瞬間にハッとさせられる。苦しくなるようなテーマを扱っているが、そこは鴻上作品。「深刻にではなく面白く、重くではなく軽やかに、悲しくではなく笑える形で追及し、描きたい」と、登場するキャラクターはそれぞれ魅力的で、笑いどころも盛りだくさん。風間演じる主人公は路上で“相手にふさわしい言葉と踊り”を売るアーティストだが、その作品には思わず笑ってしまう。宇宙人を迫害する“日本防衛隊”と宇宙人による乱闘シーンも見どころのひとつ。旗を使ったアクションとダンスは華やかで美しく、その中で恋人のために必死に戦う風間のダンスには胸を打たれた。観劇後のスッキリとした気持ちは、実力派揃いだからこそ実現したと感じる。座席に置いてある、鴻上による手書きの「ごあいさつ」も必見だ。4月17日(日)まで東京・全労済ホール/スペース・ゼロ、4月22日(金)から大阪・シアターBRAVA!、4月29日(金・祝)から東京・よみうり大手町ホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2016年04月12日俳優の風間俊介が9日、東京・渋谷区の全労災ホールで行われた主演舞台『イントレランスの祭』公開フォトコールに登場し、共演の岡本玲、作・演出の鴻上尚史とともに取材に応じた。「イントレランス」とは「不寛容」という意味で、宇宙人の難民を受け入れることになった日本で売れないアーティスト・佐渡健吾(風間)が、恋人の青井蛍(岡本)から「自分は宇宙人王室の王位継承者である」と告げられることから物語が展開。移民や差別など、現代日本の問題をユーモラスに描く。鴻上は、2回目となる風間の起用について「この演技力に惚れまして」と話し、出演者が旗を持って踊るシーンがあることから「やっぱり”あの事務所”だったのね」とジャニーズ事務所所属の風間のダンスを賞賛。「僕はてっきり踊りがダメで、外されて俳優に来たのかと思ったんですけど、びっくりしましたよ」と驚きを語った。風間は「踊れないんじゃなくて、踊らないんです」と強調。ダンスシーンの衣装について「あのコート、ジャニーズJr.っぽいですよね。だからちょっと、あの頃の記憶が……」と懐古し、「あんまりやらなくなると、恋しい部分はあるんですけど、これくらいがちょうどいいです」と話した。また、岡本は風間のダンスシーンについて「みんなが練習している間に携帯でゲームをしていても、完璧に合わせてくるので、さすがだなと思って」と稽古の様子を明かした。すると風間は「合わせには行きますけど、携帯ゲームやってるのがばれてしまって」と苦笑しながら答えていた。
2016年04月09日●早期の黒字転換を視野にシャープと鴻海科技集団が、4月2日、大阪・堺市の堺ディスプレイプロダクトにおいて会見を行い、鴻海科技集団の中核企業である鴻海精密工業による、シャープの買収について正式調印した。今後、シャープは、台湾の鴻海(ホンハイ)傘下で経営再建を図っていくことになる。シャープは3月30日に、第三者割当による新株式(普通株式及びC種類株式)を発行し、これを鴻海が取得することを正式に発表。今回の正式調印により、鴻海は約3,888億円を出資し、シャープの発行株式において66.07%の議決権を獲得。シャープを買収することが正式に決定した。契約条項のなかには、2016年10月5日までに出資が実行されず破談となった際にも、鴻海はシャープの液晶ディスプレイ事業を購入する権利を得ることが盛り込まれているが、鴻海科技集団・郭台銘会長兼CEOは、「実際に破談になることは、99.999%ない。その要因が見当たらない。だが、万が一のことを考えて、文言として、この条項を入れている」と説明した。鴻海は、なんとしてでもシャープの液晶ディスプレイ事業を手に入れたいとの姿勢が見え隠れする。会見でも、「シャープのIGZOは世界トップの技術である」、「コスト削減や小型化が可能な技術であり、私がエンジニアであれば、IGZOを押したい」などと発言。また、会見場に設置された85型の8Kディスプレイを指さしながら、「8Kディスプレイは、66歳の私でも若々しく映し出してくれる。2020年の東京オリンピックでは、世界中の人たちがこの技術を使ってオリンピックを楽しむことができる。これを、シャープと一緒に世界中に紹介できることを誇りに思っている」とした。その一方で、有機ELにも投資していく姿勢を強調。「ディスプレイ産業は、技術変化の重要なタイミングに入っている。日本において、新たな技術開発に投資したい。これに躊躇するわけにはいかない。競争の土俵が変わるタイミングにおいて、新しい技術に目を向けていく必要がある。次世代技術で勝つのは、いち早く動いた企業である」と述べた。シャープでは、今回調達した資金の使途について、有機ELの事業化に向けた技術開発投資や量産設備投資などで2,000億円を計画している。だが、「有機ELには様々な情報があり、専門誌でも技術的詳細を理解せずに情報を掲載している。70%~80%は間違った情報が出ている。将来は、IGZOが60%、有機ELは40%の比率になる。有機ELはトップクラスで使えるものは少ない」とし、有機ELよりもIGZOを優先する姿勢をみせた。なお、シャープは2月25日に、鴻海が提案していた経営再建策を受け入れることを取締役会で決議。この時点で出資規模が約4,890億円としていたが、シャープが提出した偶発債務に関する調査を行うことを理由に、鴻海側が正式契約を保留。それに伴い、経済環境の悪化、シャープの業績の下方修正など、出資条件を1株当たり118円であったものを88円へと見直した。結果として、約1,000億円を減額する形となった。鴻海の郭会長兼CEOは、「3,888億円の出資額は、今日、正式に契約をしたものであり、今後、減額することはない」と語った。ちなみに、シャープは保証金として1,000億円の前払いを得ており、これは破談になった場合にも返却する必要はない。郭会長兼CEOは、「これは、シャープの再建に対して、いかにコミットしているのかを示すものである。次世代IGZOや有機ELなどのディスプレイ技術、カメラモジュールやセンシング技術にも投資をしていく」と発言。シャープの高橋社長も、「この1,000億円は成長分野に投資をしていく。もちろん、ケース・バイ・ケースでほかのところに使うこともあるだろうが、できる限り運転資金に使うことは避けたい」と語った。一方、シャープの黒字化については、「2年と思っていても、日本人の文化では4年だというだろう」などとし、「日本人はシャープのブランドが好きであり、シャープブランドを日本人がサポートするように、鴻海もシャープブランドをサポートしていく。これにより、優れたシャープ製品が登場し、多くの人に購入してもらえれば、短期間で黒字化することを保証できる」(郭会長兼CEO)などとし、早期の黒字転換を視野に入れていることを示した。●シャープのブランドと雇用は○シャープの歴史では異例の会見今回の会見は、土曜日に開催されたことや、ここ数年、シャープの主要な会見が東京で行われていたことに当てはめると、異例のものとなった。会場が、すでに鴻海が出資している堺ディスプレイプロダクツで行われたが、これまで報道陣にはほとんど公開されなかった建物だ。そうした点も含めて、今回の会見が、鴻海主導で進められたことを強く感じざるを得なかった。鴻海科技集団の郭台銘(テリー・ゴー)会長兼CEOは、次のように語る。「105年の歴史を持つ日本の企業を、なぜ、台湾の企業が買収するのか。それは、世界がフラット化しており、企業は国境がない事業体になってきている点があげられる。すべての会社の共通目標が、世界中にいる株主に対する利益の最大化である。シャープは、日本の企業ではなく、グローバルな企業である。鴻海も台湾企業ではなく、中国企業でもない。グローバル企業である。今回の案件は、グローバル企業同士が、独自のリソースを持ち寄り、お互いに補完し合うことで、成功につながる。これがわかったからこそ、出資した。鴻海とシャープは、文化的な違いがある。だからこそ、うまくいくと考えている。両社の違いこそが資産である。これは物理的な境界があるということではない。鴻海には100万人以上の従業員がおり、国籍は様々。シャープにも世界各地で様々な人が働いている。こうした人たちを融合できる。まずは、シャープが先進的な技術を活用し、スピーディに、コスト効果が出る形で、最高の品質を持つ製品を市場投入するための支援に集中する。それにより、シャープが再び、先端的なコンシューマ向けのグローバルブランドになれるようにサポートしていく」シャープの高橋興三社長も、「鴻海が保有する世界最大の生産能力、グローバルな顧客基盤と、シャープが持つ革新的で、実績のある技術と開発力の融合を図ることができる。販売量の拡大、新たなサプライチェーンや製造能力の活用など、グローバルに競争力を強化できる。だが、そうしたことを遥かに超えるポテンシャルを持った提携であると感じている。鴻海からは、買収ではなく、出資であるという言葉をもらっている。お互いの企業文化を尊重し、認め合うことで、両社が持つ創意の遺伝子と、ベンチャースピリットの融合を図り、アジア初の新たなプロダクトイノベーション、開発、製造企業の姿を示していきたい。さらに、鴻海とともに、日本および世界の様々な企業と連携することで、共同研究開発を積極的に進め、技術開発を促進することで電機産業の発展に貢献していく」とする。気になるのは、シャープブランドの維持と雇用の継続である。シャープの高橋社長は、「今後もシャープブランドを維持し、世界中の顧客に向けて、新たな価値を提供していく。また、従業員の雇用を原則として維持し、従業員が将来のチャンスを広げるとともに、シャープの企業としての一体性も維持していく」と語る。郭会長兼CEOは、「シャープの従業員にとって、今日という記念すべき日は、すばらしい一日になる。シャープが今後100年にわたって繁栄することに向け、新たな一歩を踏み出していただきたい」とし、「若い人材にも適職とチャンスを与え、シャープに残ってもらうようにしたい。適切な責任とポジションを見つけるように努力する」と述べた。さらに郭会長兼CEOは、「鴻海では毎年、個人の成績を理由にしてレイオフする人員が、3~5%に達している」としたが、「日本においては、最善を尽くして雇用を維持したい」と述べつつも、組織変更や人材の再配置などに取り組む姿勢をみせた。「シャープには、技術の統合がうまくできていないという課題がある。それは、シャープ全体を見渡す人がいないのが理由。シャープはディスプレイの技術には優れているが、スマートフォンでは後れを取っている。これはスマートフォンのチームに優秀な人がいないわけではなく、適材適所に人材が配置されていないことが原因。複数のチームを管理する役職が必要だ」(郭会長兼CEO)。●「目のつけどころがシャープ」を維持できるか今回、台湾企業による最大の買収に対する課題についても、郭会長兼CEOは触れた。「ある人から、鴻海は、網にかかったイワシの群れに入った、一匹のナマズのようである、という例え話を聞かされた。そのイワシは、狭いなかを賢明に泳がなくては、そのナマズに喰われてしまう。だが私は、鴻海がナマズだとは思っていない。変化のための触媒であると思っている。私たちがシャープに変化を促すことができなければ、グローバルの競合他社が、私たちを生きたまま食べてしまうだろう。つまり、我々も賢明に泳ぎ続けなくてはならない。中国の古い格言に、『高い山に向かうときに注意しなくてはいけないのは、明確なロードマップを持たないこと』というものがある。私自身、ロードマップを持っていなければ、この重要な投資をするためにここまで労力をかけ、長い道のりを辿ってくることはなかった。再建の方向性は明確である。私は明確なロードマップを持っている」(郭会長兼CEO)。また、これまでアップルとの緊密な関係によって成長を遂げてきたことを振り返りながら、「私たちは、世界で最も優秀な企業と仕事をしていることを誇りに思っている。だが、最も優秀な企業は、最も難しい顧客ともいえる。厳しさを持たないとベストな企業になることはできない。常に顧客からの挑戦を受け続けたことが、鴻海が、この業界でリーダーになれた要因だ。この顧客の存在が、常に上を目指すことにつながり、それによって、さらなる成長を遂げることができた」などとした。会見では、シャープを評価する発言が、郭会長兼CEOから、何度も聞かれた。「シャープといえば品質である。中国科学院のフェローをしている友人は、米国での客員研究員の仕事を終えて、北京に戻ってきたときにシャープの冷蔵庫を購入した。それが1986年のこと。30年後のいまも問題なく動いているという。シャープの技術者には不屈の精神がある。この技術者たちの精神が、シャープがいいときも悪いときも支えてきたといえる。私は2012年に、堺ディスプレイプロダクツに出資したが、その間も、ディスプレイの技術進化させてきたことには、尊敬の念をいだいている。イノベーションを続け、技術と品質に挑み続けている企業である。鴻海は、どうしたらシャープのように、100年の歴史を積み重ねられる企業になるかを学んでいきたいと考えている。現在、鴻海は42歳。まだ先は長い。100年の歴史を積み重ねることは容易ではない。私たちも学んでいきたい」(郭会長兼CEO)。そして会見場のスクリーンに、シャープ創業者である早川徳次氏の写真を映し出しながら、言葉を続けた。「早川徳次氏が生んだイノベーションに対する意思は、いまでもシャープの社員の間に息づいている。初のシャープペンシル、ラジオ、電卓のほか、白物家電の参入などを通じて、長年にわたり、イノベーションを起こす企業であることを証明してきた。また、シャープは液晶ディスプレイ業界における重要な生みの親の1社であり、いまでも世界の最先端を走っている。その技術はスマートフォンやタブレット、PCで幅広く利用されている。シャープは、液晶技術をコンシューマ製品に初めて搭載した企業であり、そのリーダーシップにより、全世界の数億人がテレビを視聴する喜びが高まった。こうしたイノベーションのDNAがあるから、私はシャープが大好きである。シャープは、技術のイノベーターであり、リーダーとして果たしてきたことに敬意を表する」(郭会長兼CEO)。会見に同席した鴻海科技集団・戴正呉副総裁は、「ニトリホールディングスに売却が決定している大阪・阿倍野区のシャープ本社ビルは、シャープの歴史にとって重要な場所である。できれば買い戻したい」と発言。「それが無理ならば、隣に68年の歴史を持つ1,800平方メートルの面積を持つ場所がある。この建物に最上階に、シャープ創業者である早川徳次氏の博物館を必ず作りたい」と語った。今回の正式調印では同時に、早川徳次氏ゆかりの地に、高齢化社会に貢献する実験的なスマートホームとして、「早川徳次記念館」を建設することに関して、鴻海が資金面で支援することを約束する覚え書きの調印も行っている。郭会長兼CEOは、「私はシャープが、今後100年間もイノベーションを進め、世界中で、成功を積み重ねることができるようにフルサポートすることを約束する。そして、私たちは、さらなる高見を目指すことを恐れずに進んでいきたい」と語る。いよいよ鴻海の傘下で、スタートを切ることになったシャープ。新たな体制下において、早川徳次氏が生んだイノベーションに取り組むDNAや、「目のつけどころがシャープ」という言葉に代表される、シャープらしいスピリットが維持できるのかが、今後の注目点といえよう。
2016年04月04日KOKAMI@netwaork vol.14『イントレランスの祭』がまもなく幕を開ける。イントレランスとは不寛容の意味。作・演出の鴻上尚史が、不寛容になっている今の時代を、地球人に憧れる宇宙人と、宇宙人を愛した地球人の物語に託した。彼らの愛と戦いの日々から見えるのはどんな風景か。宇宙人を演じる岡本玲とともに、稽古が進む今の思いを聞いた。KOKAMI@netwaork vol.14『イントレランスの祭』チケット情報『イントレランスの祭』は4年前、鴻上率いる「虚構の劇団」の第8回公演作品だ。それを再び「KOKAMI@netwaork」で上演することにしたのには、鴻上のこんな思いがある。「世の中がどんどん不寛容になっているなと感じた4年前より、状況はシビアになっている。だから、今やる意味がすごくあるのではないかというのがひとつ。そして、僕が若いヤツを育てている『虚構の劇団』ではなく、すでに育った役者さんたちを呼んでやることで、また違うものが見えるだろうと思ったんです」。そこで、地球人を演じる風間俊介の相手役となる宇宙人役にと声をかけたのが、岡本玲。風間とは朝ドラ『純と愛』で兄妹役を演じ、鴻上ともかつてラジオ番組で共演経験がある、信頼のおける女優である。岡本のほうも鴻上の舞台への出演は念願だったという。「鴻上さんの作品は、テーマはいろいろあるんですけど、観ると必ず元気になって帰れる。だから、私も、エネルギーを与える側になりたいとずっと思っていたんです」。演じ手が変わったことで、同じ戯曲でもやはり変化はあると鴻上はいう。「これは人間がぶつかっていく話。一人ひとりの人間が鮮明になればなるほど、ぶつかり度合いも大きく深くなっていきますし、演劇って結局人間を見せるものなので、より面白くなっていると思います」。だから岡本も燃えている。「私自身は演じながら、人間社会って煩わしいな、もっと笑って許し合えたらいいのにって思ってるんですけど(笑)、その煩わしさを表現するには、もっともっと繊細に演じていかなければなと思うんです」。しかし、鴻上作品のこと、不寛容な社会を切り取るだけでは終わらない。「世の中にはいろいろ問題があるけど、それでも生きていこうよと、やっぱり絶望じゃなく希望を描きたいんです」(鴻上)。「この作品を観ると、日常でイヤな人とか事柄に出会っても、いろんな人がいていろんなことが起こるから世の中面白いんだって、寛容になれるんじゃないかなと思うんです」(岡本)。日常を変えてくれるような演劇の力を、きっと体感できるだろう。公演は4月9日(土)に東京・全労済ホール/スペース・ゼロにて開幕したのち、4月22日(金)から大阪・シアターBRAVA!、4月29日(金・祝)から東京・よみうり大手町ホールにて上演する。チケットは発売中。取材・文:大内弓子
2016年03月28日シャープは25日、臨時取締役会を開き、台湾の鴻海グループを割当先とする4,890億円規模の第三者割当による新株式発行を決議。同グループ傘下での再建を正式決定した。新たに発行される株式は、鴻海精密工業とその子会社であるFoxconn Limited、Foxconn Technology Pte. Ltd、SIO International Holdings Limitedが引受け、4社による持ち株比率は65.56%となる。調達した4,890億円のうち2,000億円を、有機ELパネルの事業化に向けた技術開発や設備投資に活用。スマートフォンなどへの採用で、急速な需要拡大が見込まれるなか、同社独自のIGZO技術と高精細を実現するLTPS技術を生かして、2017年中ごろまでに試作ラインを立ち上げ、2018年初頭の量産開始を目指す。また、1,000億円を中型液晶を中心とした高精細化や歩留まり改善、次世代技術開発投資に。さらに450億円をIoT分野における研究開発や金型投資に活用し、人工知能(AI)とIoTを組み合わせた「AIoT」機能を搭載したコミュニケーションロボット、液晶テレビ、調理家電といった新規商品を創出するという。経営不振のシャープを巡っては、鴻海精密工業と日本の官民出資のファンドである産業革新機構がそれぞれ再建案を提案し、シャープがどちらの陣営による再建案を受け入れるか注目されていた。シャープによると4,890億円という出資規模、ディスプレイデバイス事業の競争力強化が期待できること、世界トップクラスの電子機器受託製造サービスを提供する鴻海の技術により、生産性やコスト競争力の強化が見込めること、経営の独立性や一体性の維持、従業員の雇用維持といった項目に対しても強いコミットメントが得られたとして、鴻海精密工業による再建案を受け入れたとしている。
2016年02月25日鴻上尚史が旗揚げした「虚構の劇団」の第11回公演がまもなく幕を開ける。『ホーボーズ・ソング~スナフキンの手紙Neo~』という、“さすらう人たちの歌”を意味するタイトルを掲げた新作は、どんな世界になるのか。鴻上の創作の過程に、劇団だからできること、劇団ならではの面白さが、改めて見えてきた。虚構の劇団 チケット情報「虚構の劇団」に新作を書こうとしたとき、鴻上に映ったのは、「わさわさし始めて、どこに行くのかわからない感じの」今の日本の姿だった。「世の中全体がさすらってる感じがしてるぞと、さすらい人という意味のホーボーという言葉が浮かんだんです」。そして書いたのは、“賛成派と反対派に分かれて内戦を続ける日本”の物語だ。「今、安保法制のことで揉めているけれども、じゃあ、本当にふたつに分かれて戦いが始まったらどうなるのかと興味が湧いてきたんです」。といっても、安保法制のことを描くわけでも、警鐘を鳴らすわけでもない。「作品を作ることでそのパラレルワールドを覗いてみようということですね。そういう思考実験は、稽古初日に台本があればいいという(笑)、劇団だからできること。鴻上が今この時点で何を考えているのかということをリアルタイムで観られるのが、虚構の劇団の新作だというわけです」。劇団を立ち上げて8年目。劇団員たちに課すものも高くなってきた。「たとえば、ふたつに分かれて戦う軍隊の片側のリーダーを演じる三上(陽永)。僕の作る芝居なので、内戦といってもただ深刻なだけにはならず、歌も踊りも笑いもあるわけで、そこを目指しながら、ある権威みたいなものを真っ当に表すことが果たしてできるのか。また、戦いの話なので、過去の虚構の劇団作品以上に、けっこうなファイティングもある。だから、ちゃんと見せられるものにするために、稽古中はもうカリカリしてるんですけど(笑)。でも、彼らに書く脚本は、僕の役者に対する挑戦状。鴻上の言葉、鴻上の演出を全身で引き受けて、必死にあがいて何とかしようとする姿は、感動的かなと。みなさんにもそれを目撃していただければなと思っています」。客演に迎えるオレノグラフィティと佃井皆美が劇団員に与える刺激にも期待しながら、「こんなやっかいな時代だけど、明日も生きていこうと思ってもらえるような芝居」を今回も目指す。今年7月にオープンしたばかりの「あかがねミュージアム」での新居浜公演は、「故郷でやる初めての芝居」。ほか2か所の四国公演と、東京、大阪公演で、「しんどい分、面白い」という新作を披露する。各地公演ともにチケットは好評発売中。取材・文:大内弓子
2015年08月19日Lemonade Labは4日、台湾の鴻海精密工業の子会社FIH Mobileと複数の個人投資家から総額580万米ドルの出資を受けたと発表した。同社はFIHの生産能力を活用し、出資を元手に年内にウェアラブルデバイスの提供を目指す。Lemonade Labは、自転車ロードレースの国内トップカテゴリーで活躍する加地邦彦氏とソフトバンクグループの孫正義代表の実弟、孫泰蔵氏によって設立された会社。本社は米国ボストンにあり、国内には港区西麻布にサテライトオフィスを構える。同社では、複数のセンサーからデータをリアルタイムに取得、高度な解析を可能にし、スポーツシーンに革新をもたらすデバイス・サービスの創出を目指しており、当初は、自転車やランニングのトップアスリート向け商品の開発を進め、スポーツ愛好家に広く受け入れられる製品とサービスを提供したい考え。そのために、第一線で活躍するアスリート、コーチとともにスポーツを研究し、ウェアラブルデバイスの核となるコーチング機能の品質向上に役立てていくとしている。今後は、FIHからの出資、FIHの持つ生産能力を活用し、年内に日本、台湾、米国、フランスでデバイスの導入を目指す。
2015年08月04日NECは4月27日、台湾の電子機器受託生産(EMS)事業者である鴻海グループとデータセンター事業での協業に合意したと発表した。これにより、鴻海は台湾内に設置した鴻海 高雄データセンターにNECのSDN製品や運用管理ソリューションを採用した。今回、鴻海が採用するNECのSDN関連製品・ソリューションは、SDN対応製品「UNIVERGE PFシリーズ」と「クラウド管理基盤ソリューション(MasterScope<日本名WebSAM<)」。NECは「NEC神奈川データセンター」でSDNを実運用しており、同センターで培った運用管理ノウハウなど、これまで国内外200システム以上にSDNを導入した実績を生かし、鴻海のデータセンター運営を支援する。鴻海はNECと協業することで、先進的なIaaS基盤を構築しデータセンター事業の強化を図る。
2015年04月27日ニフティは、クララオンラインが中国にて提供しているパブリッククラウドサービス「鴻図雲(ホンツーユン)」に共同提供社として参画し、4月16日(木)からサービス提供開始したと発表した。これは、同社が海外で提供する初のクラウドサービスとなる。同サービスは、ニフティクラウドの安定したインフラ基盤とクララオンラインの中国におけるビジネスノウハウを組み合わせることで、中国でもニフティクラウドと同じパブリッククラウドを利用できるサービス。中国の5つの通信キャリアとのBGP接続による中国全土へのインターネット接続性と、環境の違いに対する技術面およびビジネス面でのサポートを提供する。これらのサービスは、既に本田技研工業(中国)、タニタ上海といった企業がサービスを利用している。現在、中国で、ITビジネス市場の成長に伴ってクラウドサービスが急速に普及しており、これまで、「鴻図雲」をインフラ構築・運用の面で支援。今回、中国で安定稼動し、導入実績のある「鴻図雲」に共同提供社として加わることで、サービス促進を図るという。今後は、クララオンラインとの協業をより強化し「鴻図雲」のソリューション拡大を図り、中国でのビジネスを強力に支援するとしている。
2015年04月23日4月3日(金)より東京・本多劇場で上演される舞台『ベター・ハーフ』の開幕前会見が4月2日に行なわれ、キャストの風間俊介、真野恵里菜、中村 中、片桐仁、作・演出を務める鴻上尚史が出席した。現代に生きる男女4人の恋愛模様を描いた同作。広告代理店に勤める男、諏訪を演じる風間は「制作発表で僕は“必ず面白いものになるという確信があります”と言ったんですが、それは間違ってなかったなと感じています。あと、キャスト同士がこんなに仲良くなるとも思っていなかったです(笑)。4人芝居で仲が悪いと最悪なので(笑)」と話した。デリバリーヘルスに務めながら芸能界デビューを目指す女性、という役どころに挑戦する真野は「劇中ではコスプレに挑戦しています。ここまできちんとしたコスプレというのは初めてなので、とてもウキウキしています。ファンの方はどういう反応をするかな(笑)」と明るくコメント。それを受けて風間は「ちょっと怒りながら真野ちゃんのコスプレを見るというシーンがあるんですけど、ついニヤケてしまって・・・(笑)。そこは僕が真野ちゃんのコスプレに慣れるための稽古でしたね(笑)」と明かした。諏訪の上司、沖村役を務める片桐は「恋愛劇なので、芝居に反映できるように稽古の合間に4人でそれぞれの恋愛観を話したりしました。ただ、僕は恋愛下手という役なんですが、僕自身も話せるような恋愛観はほとんど無いので(笑)、皆さんの話を聞いてただけなんですが、そこで“なるほど”と思ったり、身につまされたり。このお芝居も、観客の皆さんはそういう楽しみ方をしていただけるんじゃないでしょうか」と芝居の見所をPRした。男の体を持って生まれ女性の性を自認している「トランスジェンダー」という役どころを演じる中村は「鴻上さんからはコメディエンヌで行けと言われたので、そのように演じています。自分の中で新しい分野が開眼していたら良いなと思います。あと、劇中では恋愛の曲を、どの世代の方にも楽しんでいただけるように5曲選りすぐって歌っているので、そこも楽しんでいただけたら良いですね」と語った。また、作中でダンスシーンに挑む風間は「鴻上さんから、“君はどこの事務所だ?ジャニーズってもっとできるんじゃないのか?”と言われました(笑)。俳優としてのダンスなので、出来栄えではなく、一生懸命やっている姿を見ていただきたい(笑)」とコメント。それを受けて鴻上は「ジャニーズ一の演技力と聞いていたんですが、同時にジャニーズ一、体が硬い男だというのが分かりました(笑)。ただ、稽古していくうちにカッコよくなった。さすがに魅せ方が分かっている、大したもんです」とダンスの出来栄えに太鼓判を押した。舞台『ベター・ハーフ』は4月20日(月)まで東京・本多劇場、25日(土)・26日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、5月3日(日・祝)から5日(火・祝)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。
2015年04月03日作・演出家、鴻上尚史の書き下ろし作『ベター・ハーフ』に真野恵里菜が挑戦している。それぞれのベター・ハーフを探し求めて、4人の登場人物が密接に絡み合いながら進むこの物語に、「芝居がしたくて2年前にハロー!プロジェクトを卒業した」という真野の“女優魂”が燃えているようだ。演出家と女優がその濃密な芝居を語った。舞台『ベター・ハーフ』チケット情報ずっと前から芝居が、それも舞台が好きだったという真野。なかでも、2013年の『キフシャム国の冒険』を観て以来、鴻上作品への出演は夢のひとつになったそうだ。「テンポのいい会話のやりとりがあって、ダンスもあって、まさに演劇という世界。そこに私も入ってみたいと思ったんです」(真野)。その思いは、実は鴻上も直に受け取っていた。「真野ちゃんは『朝日のような夕日をつれて2014』も観に来てくれたんですけど、劇場を出るときに、“私をキャスティングしろ”っていう目で僕を睨んで帰って行ったんですね(笑)。そして僕は、そういう野心のある人が好きなんです。それぐらいエネルギーのある人でなければ、芝居を作るというとても大変なことを、最後までくじけずにやれませんから」(鴻上)。稽古に入って1か月。実際、真野のほか、風間俊介、中村 中、片桐 仁による4人だけの芝居は想像以上にエネルギーが必要で、「家に帰って気づいたら寝落ちしている」(真野)ほど疲れるのだという。鴻上曰く、「世の中がギスギスしてきた今、人間と人間がコミュニケートし、つながるとはどういうことなのかを描きたかった」という作品である。それぞれがいっぱいしゃべって、喧嘩もする。「人と話すことって大事なんだなと感じます。それに、役として本心を相手にしっかり伝えられたときは、本当に嬉しくなるんです。だから、どういう芝居をすればちゃんと伝わるのかって一生懸命考えていて。こんなに芝居に打ち込めるなんて、ハロプロを卒業した意味がここにあったなっていう気がしています」(真野)。本心をさらけ出すような芝居に、「アイドル真野ちゃんに抱いている幻想を壊すかもしれない」と鴻上。しかし、「みなさんの心を引っ掻き回したい(笑)」と真野はたくましい。さらには、その会話劇のなかにダンスや中村 中の歌も加わる。「4人がぐじゅぐじゅしているのを(笑)、どうせなら楽しくお見せしたい。最終的には、明日も生きていこうと思ってもらえたらいいなと思うんです」と鴻上は締めくくる。演劇の醍醐味はもちろんのこと、生きていく力も、この舞台は与えてくれそうだ。舞台『ベター・ハーフ』は4月3日(金)から20日(月)まで東京・本多劇場、25日(土)・26日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、5月3日(日・祝)から5日(火・祝)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。各会場ともチケット好評発売中。取材・文:大内弓子
2015年03月27日4月3日(金)より東京・本多劇場で上演される舞台『ベター・ハーフ』の製作発表が1月21日、都内で行なわれ、キャストの風間俊介、真野恵里菜、中村 中、片桐仁、作・演出を務める鴻上尚史が出席した。【チケット情報はこちら】同作のタイトル『ベター・ハーフ』は、天国でひとつだった魂がこの世に生まれる時に、男性と女性に分けられて別々に生まれてきたという古代ギリシャの言い伝えからきた言葉で、現世でもう片方の自分と出会うと身も心もぴったりと相性が合うとされている。物語は広告代理店に勤める諏訪(風間俊介)が、上司の沖村(片桐仁)から「ネットで知り合った女性に自分の代わりに会って来てほしい」と頼まれるところからはじまる。諏訪が待ち合わせ場所に行くと、若い女性、平澤(真野恵里菜)が待っていた。諏訪は急速に平澤に惹かれるが、その平澤も、実は男の体を持って生まれ、女性の性を自認する「トランスジェンダー」である小早川(中村 中)の身代わりで来ていたのだった・・・。会見で風間は「この舞台は今並んでいる4人が全キャストです。この面子が横に並んだだけで、必ず面白いものになるという確信があります。このキャストがベター・ハーフだと思っています」と自信を覗かせた。また、真野が演じる平澤は、デリバリーヘルスに務めながら芸能界デビューを目指す女性、という役どころ。「まだ台本が完成していないので、どういうシーンがあるかドキドキしているんですが(笑)、何かしら自分の色を添えられるように頑張りたい」と語った。中村は「トランスジェンダー」という役どころについて、「私自身、男として生まれて、女として生きていますが、自分が見てきた景色と、小早川が見ている景色は必ずしも同じじゃないと考えてます。なので、そこは経験した事とか、先入観に囚われず、役作りして行こうと考えてます」と話した。片桐は「この作品は嘘というのがひとつのテーマ。見る側は誰に共感するかという楽しみ方もできるんじゃないでしょうか」とコメント。作・演出を務める鴻上は今作について「世の中がギスギスしている昨今、不寛容な時代に人間と人間を繋ぐ愛というものをもう一回きちんと描きたいと思った。ただ、このキャストなので、単に深刻になるのではなく、刺激的に、楽しく、艶やかに、笑えるような作品にしたい。踊りも踊ってもらいたいし、中村さんには歌も歌ってもらいたい」と話した。それを受けて風間が「“えっ!踊るんだ!?”と思いました(笑)」と返すと、鴻上から「アイドルのダンスではなく、俳優としてのダンスを見せて欲しい」とリクエストが。すると風間は「アイドルのダンスをつい見せたくなっちゃうんですけど、それはやめましょう(笑)」と笑いを交えて話した。舞台『ベター・ハーフ』は4月3日(金)から20日(月)まで東京・本多劇場、25日(土)・26日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、5月3日(日・祝)から5日(火・祝)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。
2015年01月22日鴻上尚史が主宰を務める、「虚構の劇団」の第8回公演『イントレランスの祭』が、10月30日(火)、東京・シアターサンモールで開幕する。今回書き下ろす新作のテーマに“イントレランス=不寛容”を掲げた鴻上に、作品にかける思いと劇団の今について話しを訊いた。虚構の劇団『イントレランスの祭』チケット情報現代における殺伐さ、許容範囲の狭さを、身に沁みて感じていたという鴻上。「たぶん不寛容になるには、それなりの理由があると思うんです。なぜちょっとした“異物”に対し、人はイラっとしてしまうのか。そしてイラっとする側、イラっとさせる側にもそれぞれ人生があって。そこを抽象論にならないよう、いかに演劇的におもしろく描けるかを考えました」。鴻上はその“異物”を、今回“宇宙人”というかたちで劇中に登場させている。それは物語を抽象論にしないことに加え、「個別の問題を扱っているとは思われたくなくて。具体的な事象ではなく、なぜ人は不寛容になるのか。差別そのものをあぶり出すためには、宇宙まで飛んでしまった方がいいだろうと思ったんです」と話す。一見すると非常に重いテーマ。だが作品には、鴻上らしい笑いが随所に盛り込まれている。「深刻に悩んで解決するなら、いくらでも深刻にします。でも深刻にすることで、事態は余計深刻なものになるんじゃないかと。だったら悩みのあまりの重さに思わず笑ってしまうとか、突き放して笑うってことの方が可能性はある。そもそも僕は、笑いのない芝居以前に、笑いのない人生は嫌なんですよね」。前作『夜の森』では、「虚構の旅団」と題し木野花に演出を託した鴻上。劇団メンバーにとってこの舞台は、「嵐のような経験だったのでは」と笑う。「俳優の根本を突きつけられましたからね。その傷がどれだけ癒えているのか……(笑)。ただ“虚構の劇団”っていう枠組みで芝居ができることの嬉しさやありがたさ、貴重さということは、強く実感できたんじゃないかと思います」。2名のメンバーが離脱したが、新たに2名の研修生が参加。キャラクターの厚みが増し、鴻上自身「だからこそ書けた脚本」と語る。劇団として「虚構の劇団」は、次なるステップへ踏み出す時期に来たのではないだろうか。「そう感じますね。鴻上の旗のもとにという意識から、自分がこの集団で何ができ、この集団はどこを目指しているのかという意識に変わってきた。彼ら彼女らが自分を主体に考えられることが一番大事だし、本作がその布石になればいいなと思います」。公演は10月30日(火)から11月11日(日)まで東京・シアターサンモールにて、11月23日(金・祝)から11月25日(日)まで大阪・ABCホールにて上演される。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2012年10月17日ザ・ブルーハーツの楽曲を全編に散りばめた音楽劇『リンダ リンダ』が、6月20日、東京・紀伊國屋サザンシアターにて開幕した。本作は劇作・演出を手がける鴻上尚史のユニット「KOKAMI@network」の第11弾にして、8年ぶりの再演でもある。『リンダ リンダ』公演情報物語で描かれるのは、アマチュア・バンドの「クール・パルチザン」。彼らは、大手レコード会社のスカウトマンを前に、気合い十分のライブを披露する。だが、結局はメインボーカルだけが引き抜かれ、ドラムのゴンパチは福島の実家へと帰ってしまう。残されたリーダーのケン、ベースのマサオ、マネージャーのミキは意気消沈。だがゴンパチからの電話で、ケンは、ある無謀な計画を思いつく。この舞台はバンドものではあるが、若者たちがひたむきに夢を追うような青春物語ではない。ケンとマサオは四捨五入すれば40歳。夢を夢見る時代はとっくに過ぎ去り、リアルな現実に直面せざるを得ない状況にある。そう、青い春と言うには年齢を重ね過ぎているのだ。だがそれでもロックへの夢を諦めきれず、彼らはあがき続けることをやめない。そんな彼らの心情は、そのままザ・ブルーハーツの楽曲として歌い上げられていく。耳馴染みのいいメロディラインは言うまでもないが、歌詞の一つひとつに、実直さと、繊細さと、胸を突くような熱さが感じられて、印象深い。しかも、楽曲が、まるでこの舞台のために作られたかのように、何の違和感もなく物語に溶け込んでいる。ザ・ブルーハーツに対する鴻上の思いは、それほどまでに深く、強いのだろう。マサオ役の松岡は、8年前の初演が初舞台。その後も重ねてきた舞台経験が、確実に今回の再演に生かされている。そしてSOPHIAでは決して聴けない、マサオとしての松岡の歌声。特に後半のソロパートは圧巻だ。鴻上に負けず劣らずザ・ブルーハーツの大ファンだと言うのが、ケン役の伊礼。その情熱は役にも反映され、まるで彼自身が、みんなを計画へと巻き込んでいく熱源のよう。感情の起伏の激しさがかわいくもコミカルでもあるのは、星野真里。大高洋夫、高橋由美子は、ベテランとしての安定感を見せる。一方、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎は力の入った演技がキャラクターと合致し、笑いへ転化させることに成功していた。東京公演は7月22日(日)まで。その後、大阪・森ノ宮ピロティホール、福岡・ももちパレス 大ホールにて上演される。取材・文:野上瑠美子
2012年06月20日ザ・ブルーハーツの楽曲に乗せ、夢を見続けたいとあがく大人達の奮闘を追った音楽劇『リンダリンダ』。作・演出を務める鴻上尚史は、この作品でひとりのアーティストを演劇の世界へと引きずり込んだ。その人こそ、ロックバンドSOPHIAのボーカル・松岡充。その後松岡は、ブロードウェイミュージカルの翻訳公演で主役を張るなど、演劇界にとっても欠かせない人材のひとりへと成長した。そして8年ぶりの『リンダリンダ』再演へ向け、松岡に現在の思いを訊いた。KOKAMI@networkvol.11「リンダリンダ」 チケット情報「自分では“第四舞台”のメンバーだと思っています(笑)」。鴻上が約30年に渡って主宰を務めた第三舞台に引っかけ、松岡はそう語る。それほどまでに松岡が鴻上をリスペクトするのには、初舞台の時の演出家という以上の何かがありそうだ。「もうカルチャーショックでした、鴻上さんとの出逢いは。本当に天才だと思いますし、今回はその頭の中を読み切りたいなと。2回目の挑戦だからこそ、ちょっとでも鴻上さんの“神様の目線”に近づきたい。鴻上さんの前で、おこがましくて絶対に言えないですけどね(笑)」。松岡はこれまでに6本の舞台を経験している。それが松岡の糧になっていることは間違いないが、「(初演では)経験値がないのが逆に武器だったと思うんです」とも話す。「やっぱり初恋の良さって、何ものにも代えられないじゃないですか(笑)。でも再演ではそれがない分、いかに高みを目指すのか。そこをテーマとして考えなければと思います」。そのひとつの糸口となるかもしれないのが、初演でも演じたロックバンドのベースを担当するマサオ役。「初演の時はマサオではなく、SOPHIA松岡充でやってしまっていたんです。でもマサオはボーカルではないし、ステージのセンターに立つ人間でもない。今回はそこを強く意識していこうと思います」。初舞台から8年の年月は、松岡にエンタテインメントというものの考え方も変化させたようで、「創り手側のエゴをいかに排除し、観る側の立場にどれだけ立てるか。そういうステージの創り方は絶対に必要だと思います」と語る。この考え方は、演劇界における鴻上の精神とも通じるものがある。コアなファン向けであったアングラ演劇から、誰もが楽しめる演劇へ。鴻上の歩んで来た道は、確実に松岡へも続いている。「舞台を観に行くことって、空港みたいなものだと思うんです。搭乗口に向かって、劇場という飛行機に乗る。それから離陸して、ありがとうございましたって僕らが機体から送り出すまで。そこにあるすべてのドキドキ感を大事するような、そんな作品を創り上げたいなって思います」。公演は6月20日(水)から7月22日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアター、7月28日(土)から30日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、8月2日(木)・3日(金)に福岡・ももちパレス大ホールにて開催。チケットは東京公演は発売中、大阪、福岡公演は5月26日(土)より一般発売開始。取材・文:野上瑠美子
2012年05月24日ザ・ブルーハーツの楽曲を全編に散りばめた、鴻上尚史作・演出による音楽劇『リンダリンダ』。2004年に初演された本作が8年ぶりに再演される。5月8日、記者発表が都内にて行われ、鴻上ほか主要キャストの松岡充、伊礼彼方、星野真里、丸尾丸一郎、高橋由美子、大高洋夫が登壇。松岡と大高以外は、再演からの新キャストとなる。KOKAMI@networkvol.11「リンダリンダ」チケット情報物語は存亡の危機を迎えたロックバンドのメンバーと、それを取り巻く人々との、夢をかけたある無鉄砲な計画の行く末を描くもの。再演では新たに、昨年の東日本大震災から現在に至るまでの日本の状況を反映させる。鴻上は再演を決めた理由として、「世界的に名の知られたミュージカルはすべて再演され、ブラッシュアップを繰り返しながら成長していくもの。これは音楽劇ではありますが、同じように育てることで絶対いい作品になっていくと思います」と語った。バンドメンバーでベースを担当するマサオ役は、初演同様SOPHIAの松岡が演じる。松岡にとっては初舞台だった今作について、「この作品にかける思い入れは誰よりも強いと思っています。あれからの8年間で成長した部分を無駄にはしたくないですし、お客さまに納得していただくのはもちろん、自分のなかで納得できるものにしたいですね」と再演に向け力強い抱負を述べた。ザ・ブルーハーツへの思いを誰よりも興奮気味に話していたのは、かつて彼らのコピーバンドをしていたという伊礼。「こうやってまた違うかたちで、ザ・ブルーハーツに出合えたことに運命を感じています。もう楽しみで楽しみで夜も眠れないくらい!」と気合いは十分のよう。初の音楽劇への挑戦となる星野は、「一番好きなザ・ブルーハーツの楽曲は?」との質問に、劇中でも披露する『キスしてほしい』をチョイス。すると伊礼は「誰にキスしてほしいの?」とニヤニヤ。そこですかさず松岡が「そういうことじゃないでしょ?(笑)」と返し、会場が笑いに包まる場面も。松岡の「稽古が楽し過ぎる」という言葉を裏づけるような、カンパニーの仲の良さを垣間見た瞬間だった。また初演を振り返って鴻上は、「客席には松岡くんのファンから、演劇、ミュージカル、ブルーハーツのファンがいた。それらの人たちが混在した、カオスのような客席がすごくおもしろくて!今回もまたそうやって、いろいろなファンの人たちで客席が埋まると素敵だなと思います」と、幅広い客層に向けアピールした。公演は6月20日(水)から7月22日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアター、7月28日(土)から30日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、8月2日(木)・3日(金)に福岡・ももちパレス大ホールにて開催。チケットは東京公演は発売中、大阪、福岡公演は5月26日(土)より一般発売開始。取材・文:野上瑠美子
2012年05月09日