10月22日~31日に開催される第28回東京国際映画祭の記者会見が28日、都内で行われ、開催概要やオープニング作品&クロージング作品、各特集などが発表された。今年は開催期間が10日間と1日長くなり、会場も拡大。従来の六本木ヒルズに加え、新たに新宿の映画館を利用し、上映本数を増やす。また、部門の再編成を行い、「コンペティション部門」、「特別招待作品部門」といった従来の部門に加え、日本公開前の個性的な最新作をプレミア上映する「パノラマ部門」、過去1年の日本映画を振り返って現在の日本を代表する作品をセレクションする「Japan Now部門」、デジタル・リストアされた日本映画を上映する「日本映画クラシックス部門」の3部門を新設。より日本映画に重点を置いた9部門構成となる。ディレクター・ジェネラルの椎名保氏は「広く一般の方にも楽しんでいただけるよう映画祭を目指して企画をしています。楽しみにしていただきたいし、期待していただきたい」とアピールし、日本映画の強化について「世界の中における映画祭として考えると、日本を含むアジアにフォーカスした映画祭にしていきたい」と発言。事務局長の都島信成氏も今年のラインナップに関して、「より幅の広い作品をやっていきたい。映画祭としての幅を出していきたい」と語った。オープニング作品は、1974年にニューヨークのワールド・トレード・センターの間をワイヤーロープ1本でつなぎ、命綱なしで高さ411メートルの空中闊歩に挑んだ実話を描いたロバート・ゼメキス監督作『ザ・ウォーク』。クロージング作品は、直木賞作家・桜木紫乃原作、佐藤浩市と本田翼初共演の『起終点駅 ターミナル』に決定した。そして、国際交流基金アジアセンターとの共催で、日本を含むアジアの気鋭監督3人がオムニバス映画を共同製作するプロジェクト「アジア三面鏡」についても発表。日本からは『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督、そして、『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞したフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督、初監督作『遺されたフィルム』で第27回東京国際映画祭「アジアの未来部門」国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞したカンボジアのソト・クォーリーカー監督の3人が参加し、来年の東京国際映画祭での上映を目指す。記者会見には3人の監督も登場。それぞれ自分の国ではないアジアの異国で作品作りを行う予定とのことで、行定監督は「すごく刺激的なこと」と語り、「異国の監督が、自分の情緒を大切にしながら作品に取り組めば、新しい角度で事実が見えてくるんじゃないか」と期待感を表した。メンドーサ監督も「興奮しています」と言い、「3人の作品がリンクし、1本の映画としてつながる。全体として1本に見てほしい」とコメント。クォーリーカー監督は「日本とカンボジアはルーツに共通点が多い。文化的なルーツをつなげるような作品を作りたい」と伝えた。また、特集上映としては、昨年11月に逝去した高倉健さんの出演作を上映する追悼特集「高倉健と生きた時代」や、アニメーション特集『機動戦士ガンダム』、1985年の第1回東京国際映画祭でオープニングを飾った黒澤明監督の『乱』の4Kデジタル復元版のジャパンプレミアなどが行われる。
2015年07月28日「おぉっ、マジか?」。市原隼人が出演のオファーを快諾したと聞いて、三池崇史監督は驚愕した。オファー出した本人が驚くっておかしいだろっ!とツッコミたいところだが、なぜか納得してしまう。そして市原さんは、自らが主演を務め、完成したこの映画をこんな言葉で評する。「これまでの映画、これから先に公開される映画、その全てが“過去”になってしまうような新たなジャンルの映画だと思います」。ここまでで『極道大戦争』がどれくらいブッ飛んだ映画なのか十分に想像がつくと思う。一応、どんな映画なのかを説明するとタイトルの通り、やくざ映画である。だが、出てくるのはただのやくざではない。“ヤクザヴァンパイア”である。彼らに噛まれると、カタギの人間もやくざになってしまう。そして街には(文字通り)血に飢えたヤクザヴァンパイアがあふれる…。もちろん、原作小説などない。こんな、とんでもない話を思いつき、実際に映画にしてしまうのは三池監督だけだ。そこに市原さんは一寸の迷いもなく飛び乗った。そして撮影を、現場を心の底から楽しんだ。セオリーも常識も超えた戦場に身を投じる、やんちゃな男たちに話を聞いた。人気漫画やベストセラー小説の映画化が主体の邦画界にあって、本作の始まりは、三池監督によると「飲み屋での無駄話」だという。そんな奇跡のような本作が成立したという事実について監督は感慨と意義を口にする。「いま、ヒットしそうだから映画を作るとかそういう流れ、見る側というより、われわれ作る側のモヤモヤっとしたところ――そんな闇に向かってデカい石を思いっきり、筋肉が切れてもいいやって感じで、全力で投げた快感があった。そういう快感が意外とエンターテイメントの観客に必要なんじゃないかと思うんです。なかなかいま、闇に向かって石投げるのは歓迎されないけど(笑)」。ちなみに出てくるのはヤクザヴァンパイアだけではない。最強のKAERUくん、カッパなどワケのわからないものだらけなのだが…。市原さんはそんな奇想天外なストーリー展開に驚きつつ「演じていて繊細な感情と大胆な部分と凄い振り幅を持ってるんです。お客さんにとってもいろんな見方ができる作品だと思う」とその魅力を語る。特に、演じる上で印象深かったのは『ザ・レイド』でその名をとどろかせたインドネシアが誇るアクション俳優ヤヤン・ルヒアンとの1対1のアクション。「楽しかったですね。(ヤヤンさんは)もう、目が獲物を狩るような感じで(笑)。アクショントレーニングに始まって、息遣いやモーションを確認し合っていくんですけど、三池組って“生もの”だから、どんどん変わっていくんです。そうした中でのアクションはすごく刺激的でした。撮影中も次にどうなって、何が来るのかわからない楽しみがあって、子供の頃に『あそこには行っちゃダメ』と言われている場所に毎日、通っているような気分でした」。三池監督と市原さんのタッグは『神様のパズル』以来、実に7年ぶり。だが、三池監督が前作の頃から抱いてきた市原さんの印象は、7年を経ても何ら変わることはなかった。「とんがっているところは相変わらずで、その鋭さは変わらないままにより太くなったと思う。何かの覚悟を決めたんだな、この人は…という印象がある。役者というのは仕事が来れば役者だし、逆に自分が乗り気じゃなくてもやらなければいけなかったり、いろんな要素があるワイルドな生き方だと思いますそこで、どっちかを選んだり、何かを選ばないといけない時があるけど、それを全くあきらめずに『おれはこうなんだ』という強いものを持ってる。でもね、それは7年前からあったよね。役作りについて何を言われても『役作り?自分はしないんで』って言えちゃってた(笑)。そこはカッコいいと思うし、この先も変わらないんだろうなって思う」。さらに三池監督は、市原さんの“素顔”について、ハリウッドのあの名優を引き合いにこんな言葉も漏らす。「意外とね、市原隼人って役としての人間は知ってても、彼自身はどこか別の国のやんちゃな王子様って感じで実態がつかめないの。タイプは違うけど、同じ匂いを感じるのがデ・ニーロ。よくこの世界でああいう生き方していけるなと思いますよ」。そんな三池監督の言葉に「いやいやいや」とかぶりを振りつつ、市原さんは「職人でいたいんです」と自身の俳優という仕事へのスタンスを口にする。「芝居で会話したいし、現場で遊びたい。現場が終わってからじゃなくて。やらされるのは嫌だし、そういう人を見るのも好きじゃないんです」。決して多くを言葉で語ろうとはしないが、そのひと言ひと言に信念が見える。「物の捉え方が多少変わってくるし、それは必ず芝居の中にも出てくると思います。知識も増えていろんなことが見えてくると、裏ではこんな風に物事が動いているのか、こう進んでいるのか、というのが分かってくる。その中で、変に芝居をしなくていいのかな?気持ちだけそこにあればいいのかな?と思えてくるようになりましたね。基本的なことは変わらないし、がむしゃらでいたい。誰がおっしゃっていたか忘れてしまいましたが『努力はしてないけど、ポイントを押さえてきただけだ』と。それがなかなかできないんですが、そうなれたらいいなと思いつつ、年食っている最中です」。三池監督は「この映画がこんな風になったのはおれのせいじゃないよ。市原隼人がスタッフ全員を、映画を加速させたから(笑)」とおどけつつ「ひとつだけ絶対に真実として言えるのは、現場に何十人といる中で、彼が一番集中してるということ。一瞬がもったいない、真剣に生きないと…という迫力がある」と市原さんを称え、そしてこんな思いをも口にする。「いま、みんながイメージしてる“自由”というものがずいぶん小さい気がするんです。自分が自由でいられる場で自由でいようとしているような感じがして、自分が作り手となったことで、下に若い人たちが来るけど、迫力や熱を感じないんです。実際、30代の面白そうな監督がゴロゴロ出てこないといけないのに『極道大戦争』を撮ってもまだ次のオファーが来るからね(笑)。個人的に嬉しいことだけど、大丈夫かよ?とも思っちゃう。ガツガツ来る下からの熱があるからこそもっとやれるのになぁ…とも感じます」。それは若い世代に向けての叱咤激励であると同時に54歳の己を鼓舞するための刃でもある。「周りからとやかく言われなくなったら終わりが近いのかなって思います。そういう意味でカズ(=三浦知良)に学ぶことって多いです。あの張本(勲/野球評論家)さんとのやり取り(※張本氏の『もうおやめなさい』という引退勧告にカズは『“もっと活躍しろ”って言われているんだなと思う。光栄です』と返した)は本音だと思うんです。非難されることで悔しさも出てくる。あのTVでのひと言が意図せずしてカズにゴールを量産させる――そんな結果が起きてほしい。映画監督って守りに入りがちで、作品のイメージで“そういう監督”と見られがちで、それは単なる虚像なんだけど、でもいつのまにかそれが理想の生き方みたいになっちゃってる。そうやって“ポジション”“ブランド”を築いた瞬間に終わりは始まってるんです。だから、黒澤明が晩年に『ゴジラ』を撮ったらよかったんだけど(笑)、それはなかなかできないんですよ。その存在を知らしめるような代表作を超える作品を撮れる監督ってなかなかいない。イーストウッドくらいが唯一、異様な気配を持って常識を崩してる。そういうことをなんとなく考えてしまう年齢ですね。いまだに企画会議で三池崇史が土俵に上がる。ありがたいと思いつつ、ヤバい感触を持っています」。50代半ばの鬼才の原点回帰、それに呼応し見事なまでに踊り狂う若き才能の咆哮をとくと味わってほしい。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:極道大戦争 2015年6月20日より TOHOシネマズ新宿ほか全国にて公開(C) 2015「極道大戦争」製作委員会
2015年06月19日映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(6月20日公開)の公開を記念し、旧作1&2を大音量で上映する"轟音上映会トークイベント"が5日、東京・新宿ピカデリーで行われ、"赤モヒカン"ウェズ役のヴァーノン・ウェルズやナイトライダー役のヴィンセント・ギルら旧作1&2のキャスト6人が集結。さらに、ジョージ・ミラー監督も登場した。イベントには、1作目『マッドマックス』で悪役ナイトライダーを演じたヴィンセント・ギル、ジョニー・ザ・ボーイ役のティム・バーンズ、カンダリーニ役のポール・ジョンストン、ジェシー役のジョアヌ・サミュエル、2作目『マッドマックス2』で"赤モヒカン"ウェズ役を演じたヴァーノン・ウェルズ、そして、スタントライダーのデイル・ベンチというキャスト6人が参加。懐かしい顔ぶれに、ファンから歓声が沸き起こった。熱気に包まれる中、「ナイトライダー!」とたくさんの声援を受けたヴィンセントは「黒澤明監督を知ってからずっと来たかった国なので、今回来られて光栄」と喜びを語り、ティムは「僕と同じような白髪交じりの方々は、公開当時にこの作品をご覧になったことでしょう。アリガトウ! 友よ! われわれはまだ生きています」と宣言。映画の中では片腕を失ったポールは、手を上げて無事を証明し、観客を沸かせた。そして、当時の思い出話で盛り上がり、デイルは橋の上をバイクに乗って転がるシーンについて「握りしめすぎて、本当に死んだと思われるような危ない転び方をしてしまった」と振り返り、「間違ってそうなったけど、実際に映画になって、みんなにそれが一番良かったって言われてうれしかった」と笑顔。ヴァーノンは「お尻が丸見えだった」という自身の衣装について語り、「寒さでお尻が紫色になって、そのたびに暖かくして、色が戻るように努力してくれた」と裏話を明かした。その後、キャスト陣にサプライズでジョージ・ミラー監督が登場。監督は「30年以上も会っていない人もいる」と感激しながら、一人一人と抱き合って再会を喜び、「不思議な感覚。タイムトラベルをした感じ」と心境を表現。「いろんな思い出がよみがえってきます」と感無量の表情を見せた。監督はまた、"お尻丸見え"のヴァーノンの衣装は「当時の衣装デザイン担当のせい」だと言い、「彼女が住んでいるすぐ近くにSMショップがあって、後ろにほとんど布がないものを彼女は見つけてきた」と説明。30年以上の歳月を経て明かされる貴重なエピソードの数々に、会場は盛り上がりを見せた。MCを務めた本作の大ファンというお笑い芸人・玉袋筋太郎も終始興奮。「たまんね~!」「うっわ~!」などと歓声を上げながら、進行を務めた。
2015年06月06日来日中のジョージ・ミラー監督が5日、東京・六本木のニコファーレで行われた映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(6月20日公開)の来日会見に出席した。監督は冒頭、「世界中でいい反応を受けていてうれしい」と本作に対する反響を喜び、「忘れられない体験。カンヌ映画祭のレッドカーペットを超えるような素晴らしいジャパンプレミアだった」と前日のジャパンプレミアを興奮気味に振り返った。そして、本作では「本物にこだわった」と語り、「本物の車両を使い、本物の砂漠で、本物の人間が実際に車をぶつけたりする。大変な作業だったけど、みなさんが入り込める作品になった」と自信をのぞかせた。「日本の文化は世界の映画界に大きな影響を与えている。特に日本の美意識、ビジュアルの部分」と日本の影響についても語り、本作も「映像を通して語られる作品」とビジュアルに重きを置いていると説明。そして、黒澤明監督作品について「映像が脳裏に焼き付くイメージがある」と言い、「私の一番好きな日本の映画は『七人の侍』」と話した。今回の来日で「三鷹の森ジブリ美術館」を訪れたことも明かし、「宮崎駿さんは神」と表現。「いろんな作品が展示されている部屋を巡り、素晴らしいアーティストだと。ハートを感じるし、英知を感じる」とあらためてその魅力に引き込まれたよう。一番好きなジブリ作品を聞かれると『千と千尋の神隠し』と答え、「偉大なアーティストの作品を見ると、一生忘れないイメージが脳裏に焼き付く。この作品も一生忘れられないイメージを持った」と熱弁した。また、続編についての質問も飛び出し、監督は「この作品を作り終えたばかりなので休養が必要」としながら、「作っている時にほかのストーリーもどんどん湧いてきたので、それは脳裏にある」と期待させた。会見の最後では「初監督作品でどういう反応が起こるかわからなかった」と1作目の公開時を振り返り、「日本で本当の意味で認められた」とコメント。「最初に私の作品を受け入れてくださった日本という国に深く感謝しています」と日本への思いを語った。
2015年06月05日先日、6月公開の主演作『悪党に粛清を』を引っさげ、映画デビュー18年目にして初来日を果たした“北欧の至宝”マッツ・ミケルセン。その舞台挨拶の際、歌舞伎を観に行ったことを明かしていたが、その演目は、明治座「五月花形歌舞伎」にて上演中の片岡愛之助主演・通し狂言『鯉つかみ』で、以前から“マッツ”ファンを公言する愛之助さんとマッツが、まさかの正座姿で対面していたことが分かった。本作は、妻子を殺された孤高の元兵士が復讐に身を投じていくさまを描いたウェスタン・ノワール。主演を務めた国際的俳優マッツ・ミケルセンは、カンヌ国際映画祭「男優賞」受賞、デンマーク女王よりナイトの称号を授与された、いわば“北欧の至宝”。現在は、TVドラマ「ハンニバル」のレクター博士役で人気沸騰中で、今回の初来日でも、舞台挨拶の劇場前には彼をひと目見ようと集まった“ファンニバル”が約300人も駆けつけていた。実は、そんなマッツと初対面を果たした愛之助さんも、『007/カジノ・ロワイヤル』を観て以来、彼の大ファン。マッツを楽屋に招待し、歓談した様子を「誰かわかりますか?」「凄く会いたかった人です」と自身のブログにもアップしたほど。マッツは歌舞伎や楽屋の違いなどについて、愛之助さんに次々と質問。愛之助さんの丁寧な説明に熱心に聞き入る間、なんと終始、正座!「足を崩してくださいね」と言う愛之助さんに「ダンスをしていたので大丈夫です」と苦にする様子もなく、日本文化を重んじるその姿勢に周囲のスタッフを感心させていた。観劇後、「デンマークにはパントマイム・バレーという形式的な古典劇があり、それに通じるものを感じました。本当に素晴らしかった」と初歌舞伎の感想を語っていたマッツ。愛之助さんから歌舞伎の押隈(おしぐま)をプレゼントされ、「額に飾ります」と大喜びだった。また、今回の対面を前に、いち早く本作を観ていた愛之助さんは、「腕力だけがものをいう非情な開拓時代の描写に圧倒されます。そして侍のように寡黙に己の筋を通すマッツ・ミケルセンの魅力全開。ラストカットが秀逸。単なるウエスタン、単なるノワールではございません」と、本作を絶賛。マッツ自身も「黒澤明監督からインスパイアを受けた歴史的なウェスタン」と語っているだけに、日本が誇る“サムライ・スピリッツ”の“逆輸入”ともいえる本作でそれを見事に体現したマッツの魅力に、人気歌舞伎俳優の愛之助さん自身もすっかり圧倒されたようだ。『悪党に粛清を』は6月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年05月18日ハン・ソロ(ハリソン・フォード)&チューバッカが映った特報も公開され新章『フォースの覚醒』への期待が高まる『スター・ウォーズ』だが、4月29日(祝・水)より「スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン。」が開催される!「六本木ヒルズ森タワー52階展望台 東京シティビュー」にて開催されるこちらのエキシビジョン。本作の魅力である壮大な物語性を帯びた“サーガ”と広大かつ深遠な世界観を持つ「ギャラクシー」を軸に、様々な“Vision”で『スター・ウォーズ』の世界を切り取っていく。シリーズ6作の撮影で実際に使用された、「ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティヴ・アート」所蔵のコンセプトアートに衣装、小道具など約100点に加え、シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカスが選んだ世界中のアーティストの手によるアート作品60点も展示される。まず入口ではダース・ベイダーおよび、頭上に浮かぶ巨大なデススターが来場者をお出迎え!ちなみにベイダーが乗っているのは『帝国の逆襲』に登場するベイダー専用の瞑想室、その名もメディテーション・チャンバー。左手の窓に目を向けると、一面にストーム・トルーパーたちがずらりと並んでおり、来場者はまずは“帝国軍”の洗礼を受けることになる。さらに進むとまず、最初の展示は「The Original Visions ~スター・ウォーズの原点~」。ルーカスが本シリーズやキャラクターを構想するにあたって、影響を受けた作品として「千の顔を持つ英雄」などの書籍や黒澤明監督の映画『隠し砦の三悪人』といった作品が並んでおり、神話や宇宙冒険活劇の存在がいかに大きなインスピレーションを与えたかが説明されている。続く「Visions of FORCE~フォースの光と闇~」では、作品の根底に流れるエネルギー“フォース”の神秘性や謎を解き明かす。ここでは映画で実際に使用された、それぞれのキャラクター専用のライトセーバーも展示されており、長く使用されたことで表面に細かい傷のついたダースベイダー用のライトセーバーなどを至近距離で見学できる。「Vision of BATTLE~戦いと兵器~」では文字通り、シリーズを通じての様々な戦いの歴史、そこで使用された兵器やなどを紹介。壮絶な戦いの中での兵器の変遷をミニチュアと共に振り返る。「Vision of SAGA~サーガと運命の肖像~」では魅力的なキャラクターたちとその繋がり、彼らが辿る運命について、実際に使用された衣装や小道具と共に説明する。ダース・ベイダーにヨーダ、ボバ・フェット、炭素冷凍されたハン・ソロなどなど人気キャラクターたちが居並ぶ展示は圧巻!それぞれの武器、ベイダーの頭部などの貴重な小道具も必見だ。続く「Vision of GALAXY~銀河と生態系~」では、広く銀河に暮らす様々な種族やその生態系などについても紹介。旧シリーズおよび新三部作のいずれにも登場し、ルークやソロを苦しめる悪役ながらも奇妙な人気を誇るジャバ・ザ・ハット、ハン・ソロの無二の相棒であるウーキー族のチューバッカなどもこちらで拝むことができる。勝手におススメしたいのが、『ジェダイの帰還』に登場し、ぬいぐるみのようなあいくるしい容貌とキャラクターで人気を博したイウォークのコスチューム!“等身大”となっているが、その意外な大きさに驚かされること請け合いだ。最後の「Vision of DROID~ドロイドが見たサーガ~」にて、ついにC-3POとR2-D2の名コンビが登場!シリーズを彩ったおなじみのドロイドたちも登場する“ドロイドシアター”の映像も必見だ。また、屋上の「スカイデッキ」では、ダース・ベイダーと記念撮影ができるスペースも!海抜270メートルに位置する開放感あふれるスカイデッキでベイダー卿と対峙し、その様子をプロカメラマンに撮影してもらうことも可能となっている。この会場限定のグッズも盛りだくさんのスペシャルショップも充実!見て、撮って、買って楽しめるこちらのエキシビジョン。冬の新章の公開が待ちきれない方はまずはここで『スター・ウォーズ』の世界にどっぷりと浸かってみては?「スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン。」は六本木ヒルズ展望台 東京シティビューにて4月29日(祝・水)から6月28日(日)まで開催(会期中無休)。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は12月18日(金)より公開。(C) & TM Lucasfilm Ltd.(photo / text:Naoki Kurozu)
2015年04月29日鳥山明氏原作の人気アニメ『ドラゴンボール』の最新作となるTVアニメ『ドラゴンボール超(スーパー)』が、2015年7月よりフジテレビ系で放送されることが28日、明らかになった。これは28日に都内で行われた『ドラゴンボールZ復活の「F」』の舞台あいさつにて発表。物語は、孫悟空が魔人ブウとの壮絶な戦いを終えて平和を取り戻した地球が舞台で、TVシリーズ初となる鳥山氏原案による物語を新たにTVアニメで描いていくという。魔人ブウ後の世界としては、2013年に公開された映画『ドラゴンボールZ 神と神』、現在公開中の『ドラゴンボールZ復活の「F」』、そして原作518話があり、これらの物語との関連にも注目が集まる。今回のアニメ化について、孫悟空/孫悟飯/孫悟天役の野沢雅子は「CM、ゲーム等で数知れず"超"という言葉を言ってきましたが、いよいよシリーズ"ドラゴンボール超"がスタートするという事で最高です。首を長~くして待ちに待った新シリーズ、長~く、長~く続くともっと最高です」とコメント。また、この日の舞台あいさつでは「待っててください! 私たちも本当に待っていたんですから!」と喜びをあらわにしていた。また、フジテレビの野崎プロデューサーは、鳥山氏から届いたプロットを見て「夢が膨らむばかりです。もしかしたら、ブウやフリーザ以上に強い敵も登場するかもしれませんよ…」と大きな期待を寄せ、「ドラゴンボールの続編が再び完全新作のテレビアニメとして、しかも鳥山先生のプロットをもとにした話で始まるということで、私自身がワクワクドキドキしています」と話している。『ドラゴンボール』は、漫画誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)で1984年~1995年の期間に連載された国民的漫画で、単行本(完全版含む)は全世界で2億3,000万部を超える発行部数を記録。TVアニメは1986年の『ドラゴンボール』を皮切りに、1989年『ドラゴンボールZ』、1996年『ドラゴンボールGT』、2009年『ドラゴンボール改』、2014年『ドランゴンボール改』(魔人ブウ)編が放送。映画、ゲーム、玩具なども含め世界中で愛されている。TVアニメ『ドラゴンボール超』は、2015年7月よりフジテレビ系にて、毎週日曜朝9:00~9:30に放送。また、公開7日目で動員100万人を突破している映画『ドラゴンボールZ復活の「F」』は、現在全国公開中。
2015年04月28日iTunes Storeでレンタル100円の「今週の映画」と、iBooksでおススメ電子書籍が1冊無料の「今週のブック」を見逃すな! iPhoneやiPadで上質なコンテンツをお得に楽しんじゃいましょう。お手軽価格&無料で利用できるので、レンタルや電子書籍未体験の方もこの機会に試してみてください!○100円で! 今週の映画今週の映画は、黒澤明の『夢』です。黒澤監督が自身の見た夢を元に作り上げた全8話から成るオムニバス映画で、製作にはスティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが携わっています。各エピソードは、夏目漱石の『夢十夜』を思わせる「こんな夢を見た」という文字が浮かび上がるところから始まります。マーティン・スコセッシ、笠智衆ら、豪華キャストも公開当時話題となりました。ジョージ・ルーカスのVFXスタジオであるILMの協力やハイビジョンシステムによる合成を取り入れたことで、幻想的な雰囲気のある仕上がりになっているところも見所のひとつです。(作品紹介)<< 黒澤明とスピルバーグ。映画界の2人の天才が紡ぐ"夢"の世界は、斬新な映像のきらめきに満ちていた……。「日照り雨」「桃畑」「雪あらし」「トンネル」「鴉」「赤冨士」「鬼哭」「水車のある村」の全8話からなるオムニバス映画。原子力発電所の爆発による放射能汚染で荒野と化した世界を描くなど、3.11以降を予見したかのようなエピソードも。つながり作品iTunes Storeでの黒澤明監督の映画は『羅生門』や『乱』、今回紹介した『夢』など限られたタイトルしか配信されていませんでしたが、本日4月22日から『七人の侍』『影武者』『隠し砦の三悪人』『夢』『椿三十郎』などの作品が追加され、31作品を観られるようになりました。この機会に未だ観ていない超有名作品も是非!○無料で! 今週のブック今週のブックは19世紀のドイツの経済学者/思想家、カール・マルクスの主著『資本論』をマンガで読めるという『資本論 ~まんがで読破~』です。『資本論』はマルクスの死後、遺稿をもとにフリードリヒ・エンゲルスが編纂し、全3部が刊行されたのですが、こちらのマンガ版はマルクスが執筆した第1部をベースにしています。マルクスの思想は資本主義の分析において、現在でも有効で、日本の経済学者である置塩信雄、森嶋通夫によって定式化された「マルクスの基本定理」(企業が利益を上げるには従業員から搾取をしなければならない)など、さまざまな研究が報告されています。(作品紹介)<< 19世紀前後に起こった産業革命以後、工業化により商品の大量供給が可能になったが、貧富の差はますます広がり、人々の生活は豊かになるどころか苦しくなるばかり。労働者を酷使する生産過程の中で新たな価値を生み出す「搾取」のシステムが明らかになる……。資本主義社会に生涯をかけて立ち向かった革命家・マルクスの代表作をマンガ化。つながり作品フリードリヒ・エンゲルスが編纂した『資本論』の第2部、第3部をマンガ化した『続・資本論 ~まんがで読破~』や『共産党宣言』などがiBooksで読めます。株価も物価が上がっているのに、何故、自分の給料は上がらないまま貧乏なのか疑問に思ったなら必読です。
2015年04月22日六本木ヒルズの東京シティービューで4月29日から開催される「スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン。」について、その詳細が明らかになった。この展覧会にあたりジョージ・ルーカス(George Lucas)は、SF的ビジュアルデザインの第1人者シド・ミード、ファイナルファンタジーシリーズの天野喜孝など、世界を代表するアーティストに作品を依頼。“ビジョン”をテーマとする世界初公開のアート作品が約60点展示される。なお、会場は全部で6部構成となっており、このうち「The Original Visions ―スター・ウォーズの原点―」では、スター・ウォーズのインスピレーション源にフォーカス。宇宙冒険活劇「フラッシュ・ゴードン」や黒澤明の「隠し砦の三悪人」、そして地球に帰還した煤汚れたアポロ宇宙船。これらをモチーフとしたアート作品が展開される。一方、「Vision of FORCE ―フォースの光と闇―」では、フォースの善と悪をテーマとしたアート作品が集められ、劇中に登場したライトセーバーとともに出展される予定だ。その他、「Vision of BATTLE ―戦いと兵器―」ではバトルシーンのダイジェストを、撮影で使用されたブラスター銃などと合わせて展示。「Vision of SAGA ―サーガと運命の肖像―」では登場人物たちが身に着けていた衣装や小道具が、「Vision of GALAXY ―銀河と生態系―」ではイウォークのコスチュームやジャバ・ザ・ハットの像を中心に、ユーモアなクリーチャーが紹介されている。更に、「Vision of DROID ―ドロイドが見たサーガ―」には、ドロイドを代表するC-3PO と R2-D2のコンビが登場。過去6作品を映像で振り返ることが出来る。展覧会に先駆けて、全国のセブンイレブンとローソンでは記念メダル付の前売り券(1,800円)を販売。デザインはダース・ベイダー、R2-D2とレイア・オーガナ、ミレニアム・ファルコンの3種類を用意した。更に、会場内のスペシャルショップでは、限定アイテムとなる1/4ぬいぐるみの「ウィケット」「座りウィケット」を始めとするグッズを展開。また、ヒルズ内の12店舗でも、映画とコラボしたTシャツやパラソルなどが発売される。【イベント情報】スター・ウォーズ展未来へつづく、創造のビジョン。会場:スカイギャラリー住所:東京都港区六本木6-11-1六本木ヒルズ展望台「東京シティビュー」会期:4月29日から6月28日まで時間:10:00から22:00(入館は閉館の30分前まで)料金:一般1,800円、高大学生1,200円、4歳から中学生600円、65歳以上1,500円※展望台、森美術館入館料を含む
2015年03月16日○入店早々……なぜかマジック!東京都品川区の大井町駅から徒歩3分、世の中の食いしん坊たちを大満足させてきた洋食屋があると聞きつけ取材班が直ちに出動!! 大井東口商店街から一本路地に入ると、頭上にご立派な看板を発見。その名も「ブルドック」。鼻息荒く突撃だっ。「いらっしゃい! じゃあ、さっそくコレ一枚引いて? 」。トランプの束を筆者の前へおもむろに差し出す店主の鈴木謙さん。む、むむ!? コ、コレは同店の通過儀礼なのか?? しかし、引くしか選択肢はなさそうだ。「数字覚えた? じゃあ、いくよ……ッホイ! 」。せ、正解! すっげーー!! ってなんだコレ。鈴木さん、マジックじゃなくて、今日はオムライスとメンチカツを食べに来たんですけど。「ハハハ! 冗談だよ。僕は学生のときに安くて旨くてデカいメンチカツを食べて幸せを感じてね、自身が大きなメンチカツを提供しているのはその影響もあるかな。ま、食べてごらん」。「ブルドック」の創業は1949年頃。先代店主のお父様から鈴木さんが引き継いだそうだ。なぜ、こんなユーモア溢れる人物がコック帽子をかぶるに至ったのかが気になる。「若い頃"プログレ"ってジャンルの音楽をやっててね、同時に絵画や舞台、映画も大好きだったんだ。ところでさ、ブライアン・デ・パルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』って映画見たことある? あれが大好きでさー。それとねー……」。以降約40分間、鈴木さんの芸術トークが繰り広げられるとは筆者は知らなかった……。つまり、結局色々やってみてコックに落ち着いたそうです……。○わらじばりにデカいメンチカツ、絶品デミソースのオムライス!なぜかアートのお勉強をガッツリしたわけですが、ようやく本筋の実食タイムに入ります。「あいよっ! 黒澤明もビックリなメンチカツとオムライスお待たせ!! 」。黒澤明が口にしたかどうかは不明だが、これはマジでデカい。通称"わらじメンチ"の異名は伊達じゃない。そして、存在感的には全く引けを取らない円盤型でこんもり盛りに盛られたオムライス。その二つが相まみえると、"阿形"と"吽形"よろしく、まるで金剛力士像のようなド迫力。ケチャップ文字で書かれた「福」の字が鈴木さんの人間性を物語っているゾ!そして、一口食べてみる。衣はサクサクと言うかザックザク! その後に追っかけてくるメンチカツの肉汁は口内で噴水状態!! 大口で食べても一切れ三口はかかる贅沢感が印象的だ。そして、あえて口の中にメンチカツが若干残ってる状況でオムライスをパクリ!うん、こっちも美味ぃー! ケチャップライスを頰張るとほんのりバターの香りが。具の鶏肉とマッシュルームも大きくて食べ応え十分。甘辛のデミグラスソースがサイドにかかっているので、ケチャップとの味の違いを楽しめる。しかし、食べても食べてもまーだまだオムライスはなくならない。しかし、メンチカツの肉汁と戯れるケチャップライスもこれまた最高。まさに圧倒的至福!「僕の店で大切にしていることは、"記憶に残る料理"ということなんだ。色んな人が食べに来るけど、この味はなかなか忘れられないでしょ? 」。猛烈なボリュームと幸せに包まれる料理を提供してくれる「ブルドック」に感謝。そう、食は爆発なのだ!(文・A4studio東賢志)
2015年02月03日『宇宙刑事ギャバン』や『マジンガーZ』の音楽をはじめ、数々の特撮作品の音楽や主題歌、映像音楽を手がけてきた作曲家・渡辺宙明氏による「渡辺宙明卆寿記念コンサート」が、8月30日に東京・渋谷区立文化総合センター大和田さくらホールで開催されることが明らかになった。「宇宙刑事」三部作をはじめとした「メタルヒーロー」シリーズの音楽の礎を築き、「スーパー戦隊」シリーズ、『仮面ライダーBLACK』や『仮面ライダーBLACK RX』、そのほかにもさまざまな特撮作品の音楽を担当し、特撮音楽の巨匠として知られる渡辺氏。その活躍は特撮だけにとどまらず、『マジンガーZ』や『グレートマジンガー』、『鋼鉄ジーグ』、『最強ロボ ダイオージャ』とアニメ作品も手がけている。昨年には、新たにVシネマとして生まれ変わった特撮作品『宇宙刑事シャリバンNEXT GENERATION』と『宇宙刑事シャイダーNEXT GENERATION』の劇中BGMを手がけたことでも記憶に新しい。渡辺氏が8月19日に90歳を迎えることを記念して開催される「渡辺宙明卆寿記念コンサート」は、同氏の代表的作品を組曲としてオーケストラで演奏する公演。渡辺氏本人の監修、そして当時のオリジナル楽譜が渡辺氏より提供され、数々の名曲はもちろん、これまでステージで一度も演奏されずにいた伝説の音楽の数々が生演奏で披露されるという。演奏は、昨年にゴジラ音楽のフルオーケストラ演奏で、NHKや新聞にも取り上げられ、タワーレコードチャートで1位を記録したオーケストラ・トリプティークが務める。演目は、宇宙刑事ギャバン組曲、マジンガーZ組曲ほかが予定されている。チケットは1月19日10:00より「カンフェティチケットセンター」で先行発売。700席程度のホールのため、プレミアムチケットになることが予想される。チケットの詳細は、「カンフェティチケットセンター」まで。
2015年01月19日12月17日、ミュージカル『SAMURAI 7』の公開稽古が行われた。今作の元となるのは2004年、黒澤明監督による名作『七人の侍』公開50周年を機に、GONZOがリメイクしたフルデジタル・アニメーション『SAMURAI 7』。『ミュージカル・テニスの王子様』シリーズで知られる演出・上島雪夫と音楽・佐橋俊彦のタッグがこのミュージカルを手掛ける。ミュージカル『SAMURAI 7』チケット情報ある村を守り人々を救うため、様々な苦しみを背負った7人の男が立ち上がる物語。披露されたのは前半のクライマックス、今回の作品のためにつくられたオリジナル曲「侍」を歌うシーン。キャストがめいめいに動きを確認しながら待機していると、キクチヨ役の大澄賢也が取材陣に対し「(竹刀が)当たったらすみません」と冗談を言い、場を和ませる。「生きることとは死んでゆくこと生きのびることとは死に抗うこと」という歌詞を朗々と歌い上げるカンベエ役・別所哲也の歌声が稽古場に響くなか、侍たちはゆっくりと歩き、太刀さばきを披露。その歩き方、竹刀の長さと振り方がそれぞれに異なり、7人のキャラクターの違いを感じさせる。公開稽古の後、取材に応じる上島とキャスト。上島は「原作の良さを残しながら、アニメーションが持っている素敵なキャラクターと面白いエピソード、アニメならではのダイナミックさとファンタジックさを失わず、今まで見たことのないような時代劇ミュージカルを完成させたい」と意気込みを語る。「ミュージカルとしてどんなカンベエ像が作れるのかを模索しています。死と常に向き合う侍という存在の生き様を、この男くさい仲間たちと作り上げられたら」と話すのは別所。彼は「この日本発のミュージカルが、アジアやブロードウェイの人たちに興味深いものだと思ってもらえたら」と大きな野望も口にした。カツシロウを演じる矢崎広は「どこにたどり着くのか、もがいている真っ最中」と話し、二刀流のキュウゾウ役・古川雄大は「台本に『神速のスピードで』と書かれているので、どれだけ神に近づけるかチャレンジします」と笑わせる。七人七様に今作にかける思いを話すさまは、そのまま七人の侍たちのキャラクターにつながっていくようだ。新年早々、新しい魅力を持ったミュージカルを観られることを期待したい。公演は1月17日(土)から25日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。取材・文/釣木文恵
2014年12月25日映画界に多大な貢献を果たした映画人を称えるアカデミー賞名誉賞の受賞式が8日(現地時間)にロサンゼルスで開催され、宮崎駿監督が表彰された。日本人としては、1990年に受賞した黒澤明監督以来24年ぶりとなる。『千と千尋の神隠し』がアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した際も、『ハウルの動く城』『風立ちぬ』が候補になったときも渡米しなかった宮崎監督が出席するとあって、授与式には世界の注目が集まった。宮崎監督のプレゼンターを務めたのは、1987年から親交のあるジョン・ラセター監督。妻のナンシーさんと出会った翌日に『ルパン三世カリオストロの城』の抜粋映像を見せたことがきっかけで結婚に至ったエピソードを語り、作品には「アドベンチャーとハート、アクションとユーモアがあった。洗練された独自のスタイルと、人間の行動に対する素晴らしい観察眼があった」と絶賛。「宮崎作品を観るたびに、映画作りについて新たに学んでいる」と語った。オスカー像を受け取った宮崎監督は「私の家内が、お前は幸運だとよく言います。一つは、紙と鉛筆とフィルムの最後の時代の50年に、私がつきあえたことだと思います。それから、私の50年間に、私たちの国は一度も戦争しませんでした。戦争でもうけたりはしましたけれど、でも戦争をしなかった。そのおかげが、僕らの仕事にとっては、とても力になったと思います」と語った。そして、一緒に名誉賞を受賞した94歳の女優、モーリン・オハラに会えたことについて、「これはすごいことです。こんな幸運はありません」と顔をほころばせた。実は73歳の宮崎監督は今回の受賞者の中で最年少。アイルランド出身で94歳のモーリン・オハラのほか、『昼顔』などルイス・ブニュエル作品や大島渚監督の『マックス、モン・アムール』などを手がけたフランスの脚本家で83歳のジャン・クロード・カリエール、人道的活動で知られる映画人を称える「ジーン・ハーショルト人道賞」は87歳のハリー・ベラフォンテが受賞した。(text:Yuki Tominaga)
2014年11月11日第27回東京国際映画祭の特別招待作品としてインド映画『チェイス!』が10月29日に東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズでお披露目され、同作に主演するアーミル・カーンと、ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督が会見を行った。日本でも大ヒットした『きっと、うまくいく』に主演し、米TIME誌で“世界で最も影響力がある100人”にも選出されている、インドの“国宝級”スターのカーンは、「やっと念願がかなった。来日し、早速ファンに声をかけてもらい、感激している」と初来日に喜びをかみしめた。その他の写真『チェイス!』は、米シカゴで撮影されたアクション超大作。サーカス団の天才マジシャンとして人気を博す一方、幼い時に父を破滅に追い込んだ銀行へ復讐するため、金庫破りを繰り返す主人公サーヒルが、インド本国から派遣された検挙率ナンバーワンの刑事ジャイと対決する。インド映画史上最大規模の製作費を投じ、アメリカをはじめ、世界各国でインド映画の歴代興収記録を更新している。「スペクタクル大作であると同時に、エモーショナルなドラマ性がインドに限らず、世界中の人々に響いたんだと思う。日本の皆さんにも楽しんでもらえるはず」と自信を示すカーン。『きっと、うまくいく』で当時44歳にして大学生を好演し、「自分でも無理だと思ったが(笑)、出演作選びは、まず観客としてストーリーに惹かれるかが重要。そして、役者として新しいチャレンジができるか考える」とポリシーを語った。一方、アーチャールヤ監督は「アーミルが素晴らしいのは、スター気取りせずに、チームワークを重んじてくれる点。周囲に苦労を見せず、どんな役でも演じきる才能には、改めて驚かされた」とカーンに最敬礼だ。また、日本映画への造詣も深く「好きな監督は黒澤明さん、三池崇史さん。それに北野武さんには監督、役者の両面で魅力を感じる。一番好きな日本映画は『用心棒』。いつかインドでリメイクしたい」と熱弁していた。本作は日活と東宝東和が共同設立した“アジア映画最強レーベル”『GOLDEN ASIA』の第2弾作品。インド映画として過去最大規模で全国公開される。『チェイス!』12月5日(金)TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2014年10月29日現在開催中の第27回東京国際映画祭で、今年から新設された「SAMURAI (サムライ)」賞の初年度の受賞者として北野武監督が10月25日(土)、六本木ヒルズにて行われたトークイベントに登壇。これまで大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(’83)での俳優業に加え、『その男、凶暴につき』(’89)や『ソナチネ』(’93)、『座頭市』(’03)、『アウトレイジ』シリーズなど映画監督としても国際的に支持を得てきた、北野監督。この日は「ぴあフィルムフェスティバル」各賞の受賞監督、「日本学生映画祭」の受賞監督らも出席し、トークショーの前半では若手監督たちからの質問に対し、北野監督は「自分が描きたいものを自分なりに描けばいい。でも、嫌いなものも認めるという余裕も必要で、自分の好きなことを他の意見もあると思いながらつくっていけばいいんじゃないか。みんなマジメすぎるよね。余裕をもって、常に自分を客観的に見た方が追い詰められなくていいと思う」と、独自の映画論について時に冗談を交えながら語る。トークショー後半では、日本映画に造詣が深いトニー・レインズ氏(映画製作者/映画評論家/キュレーター)とクリスチャン・ジュンヌ氏(カンヌ映画祭代表補佐)も登壇し、日本映画について議論が交わされた。日本映画に興味を持つきっかけとして、黒澤明や溝口健二、小津安二郎などの名監督の名を挙げたレインズ氏とジュンヌ氏。最近の日本映画について、レインズ氏は「映画の未来は今、この舞台の上にいる若い監督たちによって作られます。かのオーソン・ウェルズ監督(『市民ケーン』など)の有名な言葉で、『彼らは、未来を使い果たしてしまった』というものがありますが、大会社による映画製作は終焉を迎えています」と自身の見解を語る。これにジュンヌ氏も同意し、「映画の未来は若手監督にあり、これは日本映画に限らず、全世界的な映画製作について言えることです。世の中の変化と共に監督も変わり、映画のメッセージもその伝え方も変わるでしょう。若手監督の皆さんが伝えたいメッセージを発信できることを願っています」と胸の内を明かした。いまでこそ“巨匠”と呼ばれ、カンヌ・ヴェネチア・ベルリンなどの海外の映画祭でも大勢のファンを抱える北野監督。この日は、映画監督として駆け出しの頃のエピソードも披露した。「日本で作品の悪口ばかり言われていた時に初めて評価してくれたのがトニーさんで、いまだに恩義を感じている。だから若手監督のみなさんも、誰がどこで見ているか分からないので、好きな映画を撮った方がいい」。さらに、映画監督としてどうすれば大成するのか?という話になると「何が必要かなんて、どうすれば宝くじが当たるかというような話だから、それは自分で探すしかない。参考意見として(周りの意見)は受け止めていいけども、作るのは自分だから。自分の世界を構築することがベストであって、自分で新しいものを見つけるかもしれない。私は『がんばれ』とは言いません。若い芽は早く摘んでおいた方がいいですから」と、最後は辛口のコメントで若手監督たちにエールを贈っていた。第27回東京国際映画祭は10月31日(金)まで開催。(text:cinemacafe.net)
2014年10月27日故・黒澤明監督の愛弟子として知られる小泉堯史監督による本格時代劇『蜩ノ記』が観客動員数50万人を突破し、10月16日(木)、東京・有楽町のTOHOシネマズ日劇にて、小泉監督ほか、主演の役所広司、岡田准一、堀北真希による大ヒット舞台挨拶が行われた。前日には「第38回山路ふみ子映画賞」を受賞したばかり。「日本一早い映画賞」とも言われる同賞を受賞し、賞レースへの順調な滑り出しを決めた小泉監督は、故・黒澤明監督のもとで長年にわたり記録係を務めた野上照代さんから、「これは黒澤先生からもらったと思って」と花束を贈呈されると、破顔して「これは『野上照代賞』だと思って受け取ります」と喜んだ。その一方で、辛口で知られる野上さんは、「小泉監督の作品でこんなにお客さんが入ったのは初めて」とぶちまけ、会場の爆笑を誘う場面も。岡田さんが「本当にカッコいいんですよね!また現場に来ていただけるように、監督にも頑張っていただければ」と笑顔を見せると、「まあ、嬉しい。岡田くんにそう言われたんじゃ」と投げキッスで応え、「映画作りは本当に大変。みなさん、分かってあげてください」と、キャスト・スタッフの苦労をねぎらった。そんな野上さんに対し、小泉監督も「僕が黒澤さんのチーフを続けられたのは、野上さんがずっと相談に乗ってくれたから。監督になってからもシナリオを読んでくれたり、現場にも来てくれたり、まさにスタッフの要。100歳まで頑張ってもらわないと」と感謝し、会場を温かい雰囲気に包んだ。そして、時代劇としては異例のヒットを記録した本作について、「丁寧に作っていけば時代劇を好きになるお客さんも増えると思います。良いものは良いですよね」と語った役所さんは、「出だしに台風が2つも来てちょっと損をしたので、さらにヒットするようにいろいろな方に薦めてください」とユーモアたっぷりに笑顔で観客に呼びかけていた。『蜩ノ記』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:蜩ノ記 2014年10月4日より全国にて公開(C) 2014「蜩ノ記」製作委員会
2014年10月16日直木賞受賞小説を『雨あがる』の小泉堯史監督が映画化した『蜩ノ記〈ひぐらしのき〉』。役所広司が演じたのは、ある罪による切腹が3年後に迫った郡奉行・戸田秋谷だ。その他の画像その運命の日までに藩の歴史「家譜」を完成させることを命じられた秋谷と、彼の監視役になる青年武士・檀野庄三郎との絆の物語を軸に展開。「秋谷にはとても3年後に腹を斬って死ぬ人とは思えない普通さがありますよね」。そう語った役所に「その境地は理解できましたか?」 と聞くと、「できません」という素直な答えが返ってきた。「だから自分なりに研究するわけですよね。秋谷はどんな人なんだろう? どんな話し方をし、仕事にどう取り組んでいたのだろう? って」。その助けになったのが「小笠原流」の作法や所作だ。「これまで出演した時代劇は浪人の役ばかりで、城務めをしているような役は初めてだったんですけど、小笠原流から背筋が伸びるようなものを教わりましたね」。だが、その作法を覚えるのが大変だった。「特に食事のシーンですね。食べる順番が決まっていて、食べるものによって箸の持ち方も変わるんです。おかずを取るときにほかの食べ物の上を通過させてはいけない、お吸い物を飲むときにお椀から箸の先を出してはいけないという、細かい決まりもある。でも、その統一された作法が登場人物を美しく見せていると思います」。庄三郎役の岡田准一とは意外にも今回初共演だが、「岡田くんは時代劇が似合いますよね」と絶賛。「彼は武士の扮装をしても刀を振っても様になる。武道の先生で、踊りを長年やっているから身体で覚えるようなことは吸収するのが速いんでしょうね」。そんな役所も、本作ではその血を受け継ぐ小泉組の現場で黒澤明監督の映画作りの極意を学んだ。「準備の仕方が違いますよね。スタッフが画に映らないことも勉強し、周到に準備をしているからあり得ないと思うような装飾品はひとつもない。逆に役者がめくるかもしれないから、本の中身も結構書いてあるんです」。「黒澤さんの映画作りは宝物だし、大変な教科書じゃないですか!」と言葉に力が入る。「若い俳優さんたちもこういう映画作り方を知れば、日本映画がもっと豊かになると思いますね」。役所広司という俳優が面白いのは、『蜩ノ記』のような格調高い作品に出演したかと思えば、『渇き。』のような気鋭監督の作品で破天荒な役にも挑戦するところ。「面白そうなことをやっているらしいって聞いたら行ってみたいじゃないですか(笑)。それに、この歳になると立派な人の役が増えてきますけど、ひと色には染まりたくない。映画もお客さんの希望を叶えるものと、お客さんが知らない世界を見せて楽しんでもらえるものの両方があっていいと思います」。そうなると、『ガマの油』に続く2本目の監督作が気になる。「監督はまたやりたいですよ。短い人生、やりたいことをやりたいですよね(笑)」。『蜩ノ記〈ひぐらしのき〉』10月4日(土)より全国公開取材・文:イソガイマサト
2014年10月06日映画『蜩ノ記(ひぐらしのき)』が10月4日(土)に公開を迎え、主演の役所広司を始め、岡田准一、堀北真希、原田美枝子、小泉堯史監督が舞台挨拶に登壇した。黒澤明監督の下で長年、助監督を務めた小泉監督が葉室麟の直木賞受賞小説を映画化。ある事件の罪で10年後の切腹とその間に藩の歴史を綴った「家譜」の編纂を命じられた戸田秋谷の元に若き藩士・檀野庄三郎が訪れる。藩からの“見張り役”として送り込まれた庄三郎だったが、徐々に秋谷の人柄に心酔し、その家族とも打ち解けていき…。初日を迎え、晴れ晴れとした表情の役所さん。念願の小泉組への参加となったが「ツイていたと思います。小泉組もそうですがその作品で秋谷という役に出合えたことに縁(えにし)を感じます」と嬉しそうに語る。岡田さんは、劇中の庄三郎と秋谷の関係そのままに役所さんに憧れ、現場でもその立ち居振る舞いに心酔したよう。「主役としての立ち方、そして人としての現場での在り方。黒澤組のスタッフさんたちが、役所さんを見ながら僕に『あれがいい。ああいう人を支えたくなるんだ。お前もああいうふうになれ』と言ってくださいました。その人柄を直に見ることが出来て幸せでした」とふり返る。堀北さんも「いい経験をさせていただきました」と充実した表情。「所作に舞とクリアしないといけないことも多かったですが、いい緊張感の中で臨めたと思います。撮影に入る前に監督とお話をさせていただき(演じた)薫についてたくさん伺い、参考となる本も渡されたのですが、ここまで監督の中にイメージがおありなら、少しでもそこに近づけるように努力しようと思いました」と語る。原田さんは黒澤作品への出演経験もあるが、今回、小泉監督の下に、すでに引退したスタッフも含め、黒澤組を支えた人たちが集結したことについて「懐かしい面々であり、共に戦ってきた仲間です」と嬉しそう。「セットでボーっとした時間を過ごすのが好きなんですが、思いのほか撮影が早く終わってしまって、もう少し長くそこにいたかったというのが本音です」と少しだけ寂しそうに語った。小泉監督は「スタッフはみんな、黒澤監督の教えを受けており、支えてくれるのでやりやすかったです。キャストにも恵まれ、その日、現場に行けば秋国や庄三郎に会えるというのが楽しみでした。そうした雰囲気が『フィルムに出る』と黒澤監督もよく仰ってました」とうなずく。この日は、黒澤組で長くスクリプター(記録係)を務めた野上照代さんが客席で映画を鑑賞したが、コメントを求められると「黒澤さんの声が聞こえます。『小泉、うまくなったな。100点満点やろう』と」と語り、小泉監督は「涙が出てきそうです」と感激。野上さんは撮影現場にも足を運んだそうで、岡田さんはその時の様子について「『頑張れよ!』と言われて帰っていかれて(笑)、カッコいいんです。素敵でした」と目を輝かせていた。『蜩ノ記』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:蜩ノ記 2014年10月4日より全国にて公開(C) 2014「蜩ノ記」製作委員会
2014年10月05日全員とは言わないが「この10年を振り返って」という問いをぶつけると、多くの人からは「あっという間だった」「気が付いたら10年経っていました」といった答えが返ってくる。堀北真希は違った。あっさりと「私にとってはこの10年は長かったです」と口にした。彼女がデビューしたのは11年前。10年はキャリアのおよそ9割を占める歳月なのだから「長かった」という答えは決して不思議ではないのだが、彼女の答えのあまりの迷いのなさにこちらがたじろいでしまう。「デビューした時は中学生でしたからね。中学を卒業して、高校を卒業して、成人になって…。いろいろありました」。柔らかい笑みを浮かべて彼女はそう付け加えた。映画『蜩ノ記(ひぐらしのき)』はある事件の罪を問われ、10年後に切腹することを申し付けられた武士が、静かに己の運命を受け入れ、父として、夫として、ひとりの男として、生きる姿を描いた時代劇。堀北さんは、切腹の日まで藩の歴史である「家譜」の編纂に日々を費やす戸田秋谷(役所広司)の娘で、父の死を覚悟した上で気丈に生きる薫を演じている。メガホンを握ったのは黒澤明監督の下で長年にわたり助監督を務めてきた小泉堯史監督。スタッフにも黒澤組の屋台骨を担ったベテランが名を連ねるが、日本映画界の貴重な財産とも言えるチームでの仕事は、堀北さんに多くの発見をもたらしたようだ。「撮影に入る前にいつも以上に多くの準備をした気がします。舞や所作の稽古もそうだし、衣裳の着物やカツラも、実際に撮影をするわけでないのに、本番と全く同じように着用して映りを見て検討して、また別の日にもう一度、衣裳合わせをしたりしました。監督とも撮影に入る前にたくさんお話をさせていただきました。撮影の前の準備の時間がすごく濃かったです」。逆に撮影が始まると、拍子抜けするほど淡々と撮影は進んだ。それまでに緻密に積み上げ、準備してきたものをカメラの前で出すだけ。その差にも新鮮な驚きを覚えたという。「ここまで準備に時間をかけるなら、撮影も同じようにじっくりと進めていくものかと思っていたんですが、始まってからはサラッと進みました。本番もほぼ一発OKで、カメラも複数で同時にいろんな角度から撮るので、何度も繰り返す必要もなく早かったですね」。撮影前に小泉監督と話し合い、そしてクランクイン後、スムーズに撮影が進む中で、それでも強く監督から求められたのは、現代女性とは違う、江戸時代を生きる女性の奥ゆかしさ。参考文献として、当時の武家の生活や風習について書かれた本や武家に生まれた女性の一生を記した本に目を通した。「やはり、当時は女性が積極的に自分の意見を言うことはあまりないんですよね。特に男性、目上の父親に対して気軽に自分の考えを言える環境ではない。そこは、おしとやかに気恥ずかしさを持って演じてほしいと言われました。庄三郎さん(岡田准一/※秋谷を監視するために藩から送りこまれた武士で、一緒に生活する中で秋谷に心酔していく)とのシーンは何度も『もっと気恥ずかしそうに!』と言われました。私としてはそうしてるつもりなんですが『もっともっと!』と(笑)」。そんな時代の背景もあって、父がいずれは切腹せねばならないことを知りながらも哀しみを内に秘め、静かに家族を支える薫。そんな彼女が普段とは違う行動を見せるのが、父が起こした事件の当事者である、かつて藩主の側室だった松吟尼(寺島しのぶ)に会いに行くシーンだ。「このシーンは薫が自分の思いを伝えるセリフがあったので、薫が何を思っているのかを表現できたらいいなと思っていました。薫としては、父親が不義密通の罪で切腹を命じられたというのがどうしても気になっている部分なんです。それを確認するわけですけど、そこでも決して、直接的な言葉で会話をするわけではないんです。だから、彼女が100%全てを知って納得したわけではないのかもしれないんですが、自分で行動を起こしたことで何か、腑に落ちるところがあったんではないかと思って演じました」。10年後に腹を切ることが決められた秋谷。どれほど思いを巡らせても、現代を生きる我々が彼の心情・心境を理解することはできない。そして、そんな彼が運命を受け入れて日々を過ごす姿は静かに、強く胸を打つ。役所さんが演じた秋谷の姿は、堀北さんの目にはどのように映ったのだろうか?「私は、一家の主であり子どもたちの父親であるからこそ、それが出来たのかな?と思います。薫や郁太郎(吉田晴登/※薫の弟)は常に父の背中を見ているわけで、父として秋谷さんはそれを分かっている。だからこそ、大事なことを教えるためにブレずに10年という歳月を過ごすことが出来たのではないかと感じました」。冒頭で彼女のキャリアが11年前に始まったと書いたが、本作で秋谷に心酔し、やがて少しずつ薫に心惹かれていく若き武士・庄三郎を演じた岡田准一とは、まさに11年前に彼女が初めて出演し、いきなりヒロインを演じた映画『COSMIC RESCUE -The moonlight generations-』以来の共演となった。「まず、当時の私のことを覚えているのか分からなくて…本当にただの中学生だったので(笑)。だから『お久しぶりです』と挨拶するのは変じゃないかな?11年前の共演の説明から入った方がいいのかな?とかいろいろ考えたんですが、岡田さんは覚えてくださっていて。私の方は、本当に『子どもの時にお世話になった』という感覚だったので、(当時の思い出が)恥ずかしいとか、そういう気持ちはなかったんですけど、岡田さんは岡田さんで、当時は学校の話とかして『宿題しなきゃ』とか言ってたのに、久々に会ったら一気に大人になっててどう接していいのか分からなかったらしいです(笑)」。そんな話を聞くと、確かに10年という歳月が、彼女にとっては非常に長い時間であったことも納得できる。とはいえ、堀北真希はまだ26歳である。中学の頃から学業と並行して女優業を行なってきたせいか「女優を自分にとって“仕事”と思うようになったのはほんの数年前からです。同級生が働き始めて、それぞれに“職業”を持つようになって、改めて『あ、私にとってはこれが仕事なんだ!』と腑に落ちました」と笑う。その美貌は「クールビューティー」という言葉で表現され、同時にミステリアスなイメージが彼女に付随されていった。どんな役柄にも自然にスッと溶け込んでいく演技力の高さも相まって、素の彼女が何を考え、どんな壁にぶつかり、どんな葛藤を抱えて日々を生き、仕事に臨んでいるのかはスクリーンやTVの画面からはなかなか読み取ることはできない。だから、改めて訊ねた。26歳になった堀北真希にとっての女優という仕事のやりがい、面白さとは?「なかなか…うまくいかないところですかね?」。少しだけ考え込んで、彼女はそう答えた。「なかなかうまくいかないんですよ。うん、なかなかうまくいかない(笑)。たまに、うまくいったなって感じる時もあって、嬉しくてまた頑張ろうって思うし、うまくいかないことが多くて、じゃあ次は頑張ろうって思って…。その日、お芝居をしてみて『今日はうまくいった!思い通りに出来た』と感じる時もあるんですけど、オンエアを見てみたら、自分が思っていたよりも全然うまくできてないこともあったりするんです(苦笑)。でも多分、ずっとうまくいってたら満足してダメになっちゃうと思うんで、そういうものなのかな?と思ってます」。「だから、この仕事を一生続ける」という答えが続くことを期待するも、こちらのそんな思惑はあっさりと裏切られる。「女優は一生の仕事になりそうか?」という問いに、困ったように首を傾げる。「先のことを考えるってことが全然なくて…割といつも成り行きなんですよね(笑)。このお仕事は、誰かに『この役をお願いします』と言ってもらえないと成り立たないんですよ。だから一生、自分が誰かに必要とされて生きていけるのかな?と。いまの自分には分かんないですね」。いや、きっと誓いや意気込みなど必要ない。いまのままで、うまくいかないことに悩みつつ、目の前の仕事に打ち込んでいけば、その時、彼女は大女優になっているはずだ。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:蜩ノ記 2014年10月4日より全国にて公開(C) 2014「蜩ノ記」製作委員会
2014年10月02日映画『蜩の記』の東日本大震災復興支援チャリティー試写会が9月10日(水)に開催され、美智子皇后陛下が一般の観客と共に映画をご高覧になった。主演の役所広司を始め、岡田准一、堀北真希、原田美枝子、小泉尭史監督が美智子さまのご退席後に報道陣の取材に応じた。葉室麟の直木賞受賞小説を映画化。江戸時代、ある事件で10年後の切腹を申し付けられ、その日まで藩の歴史を記した家譜の編纂を続ける戸田秋谷と、その見張りとして彼とその家族と生活を共にすることになった若き藩士の交流を静かに描き出す。岩手県遠野市で撮影が行われた縁もあって、この日のチャリティ試写会が行われる運びとなり、美智子さまがご臨席。役所さんらは劇場で美智子さまを出迎え、映画を一緒に鑑賞した。美智子さまのご退席後、役所さんらは報道陣が待つロビーへと姿を現したが、一様に「緊張しました…」と語る。役所さんは「こんなに不動の姿勢で映画を観たのは初めてです(笑)」と語り、「皇后さまがこちらに歩いてこられた時は、不思議な風が吹いているかのように感じました。座られると『大きな画面ですね』と仰られたのですが、こちらは緊張でしどろもどろになって、わけの分からないことを…」と苦笑を浮かべる。映画の上映後の様子については「(エンドロールで)小泉監督の名前が出るとみなさんと一緒に拍手をしてくださり『おめでとうございます』と仰って下さいました」と明かした。小泉監督は、上映後のご歓談の中で美智子さまから「素晴らしい映画をありがとうございました」とお言葉をかけていただいたそうで、「優しいとしか言いようがないです。慈愛と優しさに満ちていらっしゃいました」と感激の面持ち。監督が故・黒澤明監督の下で助監督を務めていたことや、キャスト陣一人一人についても美智子さまはご存じだったようで、小泉監督は「一人一人のことを見てくださったことが嬉しいです」と語った。岡田さんは「名前を呼んでいただいて、(自分の存在が)知られているということに戸惑いまして、なんと話していいか分からず…(笑)」と語り、「出ているドラマや映画のこと、武術のことも褒めていただき光栄で、幸せな日だなと思いました」と笑顔を見せる。また、美智子さまは本作が被災地の岩手で撮影されたことについてもとても気にされていたそうで、岡田さんはその姿に「日本の母であり、日本で一番愛されている女性でいらっしゃるということを感じました」と深く感銘を受けたようだった。着物姿の堀北さんをご覧になり、美智子さまは「華やかですね」と仰ったそうで、堀北さんは恐縮しきり。美智子さまがこうして人々と一緒に映画を観る機会はなかなかないが、そこで自身が出演する映画が上映され、一緒に鑑賞することが出来たことに「幸せです」と微笑んだ。原田さんは、劇中の戸田一家の様子について美智子さまから「『いい家族ですね』と褒めていただきました」と嬉しそうに明かした。なお、この日の上映には遠野市の仮設住宅「穀町団地」に暮らす人々を始め、遠野市から15名の被災者が招待された。『蜩の記』は10月4日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:蜩ノ記 2014年、全国東宝系にて公開
2014年09月11日共に1985年生まれだが、松山ケンイチは3月生まれで学年では蒼井優のひとつ上になる。「撮影のときは同い年だったけど、いまは僕の方が年上ですから」と松山さんが“先輩風”を吹かすと、蒼井さんは「同い年の間はタメ口で、誕生日を迎えると敬語に戻すという微妙な関係なんです」とケラケラと楽しそうに笑う。『男たちの大和/YAMATO』(’05)、『人のセックスを笑うな』(’08)に続き、まもなく公開となる『春を背負って』で2人の歩みが三たび交錯した。標高3,000メートルの自然の中で、2人の目は互いを、そして己をどのように捉えたのか?『劒岳 点の記』(’09)で未踏峰に挑む男たちの姿を、壮大な自然を背景に圧倒的なリアリティをもって綴った木村大作監督の5年ぶりの最新作『春を背負って』。父の死を受け東京でのトレーダーの仕事を辞め、父が営んできた立山連峰の山小屋を継ぐことを決意した亨(松山ケンイチ)が、頼れる風来坊の悟郎(豊川悦司)や天真爛漫な愛(蒼井優)ら周囲に支えられながら成長し、父の遺した想いを受け止めていくさまを描き出す。CGかアニメーションなのではないか?そう思うほどの色鮮やかな絶景がスクリーンに広がる。この本物の美しさを手に入れる代価として、俳優陣・スタッフは山に赴き、幾度となく厳しい自然に身をさらした。木村組に参加すると決めたときから、過酷な撮影は覚悟していた。蒼井さんは「ここ数年、あまり過酷なロケは経験してなかったんですが、嫌いじゃないんですよ」と笑うが、実際に山に入ると、肉体的な強さに加え、命を預かるという精神的な部分での強さ、責任が求められた。そしてそれはチームの一体感をももたらした。「自分の命は自分で守らないといけないし、同時に他人の命に対しても責任がある。自分が間違って石を踏んで落とせば、それが落石になる危険性がある。そういう一定の緊張感が常に現場にありましたね。でもこの組だからこそ、乗り越えられたとも思う。みなさん、ガテン系なんですけど(笑)、作品に対する姿勢がすごく美しい組でした」。自身が演じた亨を「僕と同じ世代やその下の若い人たちが感じている将来や自分の居場所に対する不安を抱えている人間であり、僕自身も持っている『生きる』ということへの疑問を真っ直ぐ出せる役だった」と語る松山さん。撮影でずっと山で共同生活を送る中で、役を超えて、ひとりの人間として気づかされることも多かった。「東京にいると、情報があり過ぎて、頭がいつもフル回転していて、本当は自分と関係ないどうでもいいことまで入って来ちゃったりする。でも山に行くと、そういうものが一切ないので、ある意味で自分の声だけしか聞かなくて済むので落ち着くんですね。改めて人間は自然の中の一部でしかないって強く感じました」。蒼井さんも松山さんの言葉に深くうなずく。約30人の撮影隊の中で、決して女性の割合は高くなかったが「狭いし、お風呂もないような場所なんですけど、みんなで生活していく中で、自分が俳優であるということや年齢・性別とか、自分に付随している“記号”がどんどん取っ払われていくんです。それは、こういう環境でないと気づけない、貴重な体験でしたね」と笑顔で語る。2人を“丸裸”にしたのは自然だけではない。黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』でのカメラマン助手としてのキャリアに始まり、『八甲田山』、『鉄道員(ぽっぽや)』など数々の名作に携わり、カメラを通して本物を見続けてきた木村大作。自らレンズをのぞく木村監督の眼は、時に自然以上の厳しさでもって俳優陣の芝居を見つめ、“生”の芝居を引き出していった。松山さんは言う。「大作さんの前では嘘をすぐに見抜かれてしまう気がします。真っ直ぐな人が真っ直ぐに撮ってくれるので、こちらが都合よく演技したり、集中してないとすぐにバレてしまう。逆に言うと、こちらが『どう見せたいか?』ではなく、自分の生きてきたものをそのまま出すように導かれている気がしました」。蒼井さんは「大作さんが撮る作品は“活動写真”という感じがするんです」と少々、古めかしい言葉で監督の映画作りを表す。「真実を映し出してしまうので、ごまかさせてくれないんです。決してお芝居について細かく演出はされないんですが、頭で考えてお芝居するのではなく、環境に身を委ねる――それだけで成立してしまうように現場全体を演出し、俳優・スタッフ一人一人が『大作さんに信じてもらっている』と感じさせてくださるんです」。亨の父(小林薫)の生前から、山小屋の運営を手伝っていた愛だが、どのようにして彼女がここにたどり着いたのか?それを亨と悟郎の前で告白するシーンは、テストすらせずに一発本番で撮影された。「スタッフは役者以上に緊張したと思いますよ。空気が重いのと、ストーブを焚いて暑いのと、張り詰めているのと…でも一発OKでした」(松山さん)。「みんなワクワクするんですよ(笑)。ぶっつけ本番でやるシーンというのは、そうする意味があるシーンなんです。ほかのシーン以上の緊張感や責任があるけど、そういう撮影ができる喜びが後押ししてくれることもたくさんあるんです。その現場の空気はスクリーンに映っていると思います」(蒼井さん)。ちょうど20歳になろうとしている時期に撮影された初共演の『男たちの大和/YAMATO』では決して共演シーンは多くなかった。20代半ばでの『人のセックスを笑うな』では、松山さんは年上の女性に夢中の主人公で、蒼井さん演じる少女の恋心は一方通行だった。ようやく30歳を前にして、3作目での共演で、互いの存在に真正面から向き合った。松山さんは「僕の中では毎回、共演するたびに印象が違うんです」と蒼井さんの印象を口にする。「今回は、まさに愛ちゃんのようにみんなを明るくさせる感じでしたね。でも『人のセックスを笑うな』のときは、静かというか、ダークサイドっぽい感じというか…(笑)。いまとは対極のとんがっていて、沸々としたものを持っている印象でした。『大和』のときは…妖精みたいでした(笑)。何年か後にまた一緒に仕事したらどんな感じになっているのか楽しみです」。もしかしたら、松山さんが感じた印象の違いは、役柄が蒼井さんに深く染みこんだ結果なのかもしれない。蒼井さんは首をかしげつつ、この10年に思いを巡らせる。「自分では(役に影響されているとは)意識してないんですけどね(笑)。今回、初めて現場でちゃんとお話したんですよ。そうしたら『全然、印象が違う』って(笑)。そう言われるとそうかもしれない…。私の中でも松山さんの印象は変化があって、初めてお会いしたときは、それこそ戦争を題材にした作品だからなのかもしれませんが、ギラギラした印象で、熱いものを自分の中に持っている方だなと思いました。約10年経ってすごく穏やかになって、幸せそうだなと感じます(笑)」。「熱いものはいまでも持っているよ!」と笑う松山さんの言葉を受け、蒼井さんは続ける。「持っているんだけど、(力の)抜きどころを見つけた感じがしますね。生きていて楽しそうだなって(笑)。今回、特に松山さん、豊川さん、檀(ふみ)さんとの時間が長かったんですが、3人とも役者の仕事を大切にされているけど、それとは別に大切なものを持っていて、それがあるからこそこちらの世界で力を発揮されているんだなというのを感じました。役者としてはもちろんですが、人間として憧れるし、そういう方たちと3か月一緒に過ごせたのは幸せでした」。亨は、山小屋での営みの中で、かつては反発することもあった父の思いに触れ、その存在が生きる上での“道標”に出会ったことに改めて気づかされていく。松山さんにとって、これまでの歩みの中で出会った道標と言える存在は?「人に関しては挙げるとキリがないんですけど、それ以外ではチャップリンの映画ですかね。24~25歳くらいで初めて観たんですが、映画からすごくたくさんのことを学べるんだと実感したし、ビックリするくらい突き刺さる言葉が多いんです。淀川長治さんが『映画が教科書』と仰っていましたが、まさにその通り。自分が俳優という仕事をしている喜びを感じさせてくれましたね」。一方の蒼井さんは「小さい頃から聞かされてきた」という言葉と、10代の頃に出会ったある先輩の俳優の教えを明かしてくれた。「うちの家訓が『なんとかなるさ』なんです(笑)。子どものときは『なんて陽気な家族なんだ』と思っていましたが、いまでもその言葉が自分の根底にあって、おまじないのようで、どこかでその言葉に救われている気がします。それと、この仕事を始めてからある先輩に言われたのが『自分の仕事は何か?と聞かれて“表現者だ”なんて言うようなダサい女優にはなるな。みんな表現者だと勘違いしているけど、私たちはあくまで労働者だから』ということ。そのとき、私はただの学生で、言葉の意味は分かっても、実感がなかったんです。でもこの年齢になって仕事をする中で、その言葉の重みや強さみたいなものを感じています。いつか私も後輩に伝えたいですね」。次に顔を合わせたとき、この“微妙な同い年”の2人が、どんな関係になっているのか楽しみだ。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:春を背負って 2014年6月14日より全国東宝系にて公開(C) 2014「春を背負って」製作委員会
2014年06月12日9月2日、家具メーカーのマルニ木工が、同社東京ショールームで、プロダクトデザイナーの深澤直人と、「ミナペルホネン(mina perhonen)」デザイナ-の皆川明による初のコラボレーションプロジェクト「ふしとカケラ・マルニコレクション・ヒロシマ・ウィズ・ミナペルホネン(MARUNI COLLECTION HIROSHIMA with mina perhonen)」の発表会を開催。深澤、皆川両氏登壇により、トークセッションが行われた。同プロジェクトは、今秋開催の「三越伊勢丹デザインウィーク(ISETAN MITSUKOSHI DESIGN WEEK 2013)」のメインコンテンツ。深澤デザインのイス「HIROSHIMA(ヒロシマ)」などマルニ木工のイスにミナペルホネンの"カケラ"(残布)のパッチワークを組み合わせた商品や、端材を使ったテーブルなどのオリジナル家具が期間限定で発売される。皆川氏は、「2011年に西麻布のギャラリーで初めて"HIROSHIMA"を見て、その横姿の美しさに感動した。"カケラ"とは、洋服を仕立てる際に出る、端切れなどの余り布のこと。余り布も他の生地と同じように手間暇かけて作られるのに、廃棄されてしまうのはもったいないと常々感じていた。そんな余り布に“ピース=カケラ”としてもう一度生命を与えようというのが今回の試み。毎年発表してきたミナペルホネンのコレクションラインで使われたアーカイブ生地を組み合わせることで、タイムレスな魅力が感じられるものになったと思う」と語った。今回、皆川氏は使い続け生地が擦り切れると、織り込まれた別の色が見えてくる生地をイスの座面用に提案。「使い込む内に現れる経年変化を楽しめるようなイスを作りたいと考えた。この生地は2色の糸が互いの色を干渉し合わないようにしながら高密度で織り込んで作られており、表地と裏地が時間の経過と共に歩みよってくるような仕掛けになっている」と話す。また深澤氏は、「人はモノを買う時、”傷がなく奇麗な商品が欲しい”と思うのが正直なところ。だが、このプロジェクトで、"ふし"(がある木材)や"カケラ"を使ったモノであっても、"自分にしか手に入れられないもの"という価値がそこに存在する、という新しい考え方を提供できたのが大きな意義だと思う。プロダクトデザイナーとして、これまでは美しくクオリティーの高いものを目指してモノ作りを行ってきたが、今回そこに”無駄にしない”という意識を持ち込むことができた」と語った。同プロジェクトは、伊勢丹新宿店1階ザ・ステージで10月23日から29日まで開催されるイベントで公開予定。
2013年09月06日懐かしいメロディーとともに語られる昔話の舞台あの懐かしい主題歌と共に独特の語りで人気があった「まんが日本むかし話」。どことなくノスタルジックな感覚を呼び起こす昔話の舞台の中で、行ってみたいと思う場所をマイナビニュース会員の男性441人にアンケートをしてみました。>>女性編も見るQ.なつかしの「まんが日本むかし話」行ってみたい昔話の舞台は?1位金太郎(神奈川県金時山)16.6%2位牛若丸(京都府鞍馬山)14.7%3位羅生門の鬼(京都府羅城門跡)9.1%4位しょじょ寺の狸ばやし(千葉県木更津證誠寺)7.9%5位恐山のおどり鬼(青森県恐山)7.3%5位あの世のいり口(北海道突哨山)7.3%7位地獄めぐり(栃木県日光市若子神社)7.0%■金太郎(神奈川県金時山)・「神奈川県人の誇りの一つです」(53歳/情報・IT/技術職)・「昔話と言うより偉人の逸話みたいで,触れてみたい気がします」(63歳/情報・IT/経営・コンサルタント系)・「平和そう。また金太郎がどんな姿なのか実際を見てみたい」(26歳/不動産/その他)■牛若丸(京都府鞍馬山)・「実在した人物でもあるので当時の歴史を感じてみたい」(28歳/学校・教育関連/事務系専門職)・「この時代に行って自分を鍛え直したい」(33歳/情報・IT/技術職)・「てんぐの出没スポットでもあるから」(28歳/商社・卸/事務系専門職)■羅生門の鬼(京都府羅城門跡)・「自分が好きな、芥川龍之介の小説でも題材になっているところだから」(31歳/学校・教育関連/専門職)・「なんかちょっと怖い場所でもあるし、今でも何かが起こりそう」(30歳/金融・証券/専門職)・「黒澤明の映画にもなったので」(54歳/マスコミ・広告/クリエイティブ職)■しょじょ寺の狸ばやし(千葉県木更津證誠寺)・「タヌキの踊る姿、見てみたいですよね」(43歳/電機/事務系専門職)・「狸ばやしを聞いてみたい」(50歳/医薬品・化粧品/技術職)・「これは歌もあって、有名ですよね。一度行ってみたいです」(45歳/建設・土木/技術職)■恐山のおどり鬼(青森県恐山)・「小さい時は怖かったけど今は怖いもの見たさで興味がある」(29歳/運輸・倉庫/技術職)・「恐山自体が神秘的な気がするから行ってみたい」(38歳/その他)・「恐山は、あの世の雰囲気が味わえそうだから」(34歳/運輸・倉庫/その他)■あの世のいり口(北海道突哨山)・「あの世の入り口がどんなものか見てみたいと思うから」(27歳/団体・公益法人・官公庁/事務系専門職)・「トラウマになっている」(34歳/印刷・紙パルプ/クリエイティブ職)・「森や山は異界という気分が味わえそうなので」(27歳/学生/その他)■地獄めぐり(栃木県日光市若子神社)・「地獄はどんなところか気になる」(25歳/自動車関連/営業職)・「怖いけど、興味がある。お化け屋敷感覚」(28歳/建設・土木/技術職)・「地獄ツアーに行ってみたい」(26歳/運輸・倉庫/事務系専門職)■番外編:実際行ってみた。地元からの情報も。・マヨヒガ(岩手県遠野市マヨヒガの森)「実際に「遠野物語」でここだと言われている場所を探してみたが山深くてたどり着けなかった」(43歳/マスコミ・広告/経営・コンサルタント系)・ねこ岳の怪(熊本県阿蘇山根子岳)「地元の有名な迷い山だから。よくこの山で迷って遭難する人がいるらしい」(29歳/食品・飲料/その他)総評輝ける1位は「金太郎(神奈川県金時山)」です。アニメの他、童謡や絵本などにもなっている知名度と、神奈川県という人口の多い県に存在するということが多くの人の記憶に残った要因だと考えられます。2位は「牛若丸(京都府鞍馬山)」となりました。日本の歴史に登場する「源義経」の幼少のころの物語で、天狗に武芸を習った逸話です。「判官びいき」の語源となったことでも知られる義経は日本人が好きなキャラクター。源平の戦いという歴史の知識に関連して記憶している人が多いようです。3位は「羅生門の鬼」。渡辺綱(わたなべのつな)が羅生門の鬼の腕を切るという物語です。京都という日本を代表する観光地にあるということと、小説や映画の舞台になったということも上位ランキングした要因です。4位は「しょじょ寺の狸ばやし(千葉県木更津證誠寺)」。タヌキが踊るほのぼのとした物語が見る人の心に残ったようです。5位は同率で「恐山のおどり鬼(青森県恐山)」と「あの世のいり口(北海道突哨山)」が並びました。さらに0.3ポイント差で「地獄めぐり(栃木県日光市若子神社)」。昔話は意外と「怖い物語」が多いのです。「怖いもの見たさ」を刺激した物語が並びました。番外は、実際行ってみたと言う人や、昔話の舞台となった地元の回答者の意見です。「なかなかたどり着けない」場所もあるようです。それが神秘的な物語が生まれた背景なのかもしれません。ランキング下位は「地域の伝承」、1位~3位の上位は「歴史上の人物の活躍譚」であることが特徴です。金太郎は「坂田金時(さかたのきんとき・源頼光の家来)、牛若丸は「源義経」、羅生門の鬼の腕を斬ったのは「渡辺綱(源頼光の家来)」となります。ヒーローが活躍する物語が心に残り、その場所に行ってみたいと考えるのは、観光したいという気持ちとともに、ヒーローへのあこがれがあるのかもしれません。ちなみに、金太郎と渡辺綱は源頼光四天王、つまり職場の同僚ですね。(文・OFFICE-SANGA秋田茂人)調査時期:2012年12月14日~2012年12月19日調査対象:マイナビニュース会員調査数:男性441名調査方法:インターネットログイン式アンケート■関連リンク【男性編】一緒に旅に出たい戦国武将ランキング【男性編】日本の歴史の中で一番好きな時代【男性編】今の日本をつくったといえる幕末の偉人ランキング完全版(画像などあり)を見る
2013年01月23日テレビの地上波で洋画劇場が減っていて、映画好きにはちょっと寂しいご時世です。一方で独自の番組編成で好調に映画を放映しているのがWOWOWです。WOWOWさんの映画番組はどのように決められているのでしょうか。株式会社WOWOW 編成制作局 編成部の渡邉数馬さんのお話を伺いました。■新作放映映画を軸に決めていく!――WOWOWさんの映画の番組編成はどのように決まっているのでしょうか。渡邉さん映画は新作が封切られますと、基本的には劇場、ビデオセル(DVDなどを含む)、ペイパービューという順路を経てWOWOWなどのペイテレビで放送が可能となります。作品によりますが、大体新作映画が公開されてから1年~1年半ぐらいです。月々WOWOWに初登場するこの新作映画を軸に番組を編成しています。――例えば、1年前に『スパイダーマン』を劇場公開したのでそろそろ放映できるから……とか、そういう配置の仕方でしょうか。渡邉さんそうですね。その初放送となる新作をゴールデンタイムに入れて、その周りで関連作品を特集編成するとか。実際にありましたが、『ハリー・ポッター』の最新作を放映する際には、それまでの旧作全作品を同じ日に縦積み一挙放送するなどです。――ゴールデンタイムというのはあるのでしょうか?渡邉さんやはり週末ですよね。金、土、日、特に土曜日の21時からの2時間は大事なゴールデンタイムです。横軸が月~日まで、縦軸に時間が並んでいるシートを想像してください。お客さまが映画をご覧になる時間はやはり平日には帰宅された夜ですよね。それが横にずっと、曜日を横断して並んで、土日は休日ですから一日を通じて映画を楽しんでいただけます。「逆L字型」と呼ぶんですが、この枠がお客さまが映画を見やすい、大事な時間帯です。毎月の編成はここにどんな映画を入れるかから考えていきます。――その大事な枠にはどんな映画をはめるのですか?渡邉さんプライオリティーが高いのは話題性のある「誰もが楽しんもらえる映画」です。興行収入の大きかった映画はそれだけ見たい人が多いわけですから。――ゴールデン枠以外はどうやって決めるんですか?渡邉さん例えば、お昼なんかはながら視聴に適したライトな映画にしておこうとか、深夜のミッドナイト枠には「知る人ぞ知るミニシアター系」の映画を入れようとか。――ということは、それぞれの曜日、時間帯に「枠」が設定してあって、それに適した映画をはめていくというスタイルなんですか?渡邉さんそうです。総合映画編成のWOWOWシネマならではの多彩なジャンル、嗜好に対応した映画枠、さらに映画の楽しみ方や出会いを提案する特集編成という2つの軸を中心に月々の編成を組み立てていきます。ホワイトボードにシートを作って、みんなで埋めていくみたいな感じです。もちろんパソコンでやりますけどね(笑)。――1カ月分の番組編成はどのくらい前にできてるものですか?渡邉さん宣伝物の締め切りの都合などもあるんですが、3~4カ月前にはできていますね。今はちょうど年明けの番組編成をやっているところです。――なるほど。1年間での編成はどういう風に決めるのでしょうか。渡邉さん映画を見てもらえるのは余暇ですから、みなさんに時間ができる時期をまず軸に考えます。年末年始、ゴールデンウイーク、お盆などですね。実際にやりましたが、例えばお盆編成の目玉として、黒澤明監督全30作品のハイビジョン一挙放送をお届けするとか、年末年始編成の目玉として『男はつらいよ』シリーズ全49本一挙放送をお届けするとか、中長期的なコンテンツ戦略によって作品を調達し、お客さまが最大限お楽しみいただくタイミングで特集を組むんです。■放送する映画の調達はどうしているのか!?――WOWOWさんは、放送する映画の調達はどのように行っているのでしょうか。渡邉さん基本的にはテレビでの「放送権」を購入するという形の契約を結びます。配給会社や製作会社といった邦画の各ライセンサー、ハリウッドメジャースタジオなどが相手です。特にハリウッドメジャースタジオとは、安定的な放送権の確保を狙い、包括的な中長期契約を結んでいます。――長期的な契約というのは怖くないでしょうか。映画の仕入れというのは怖いもので、ペラ1枚とか写真1枚で購入したりすると聞きました。3年先の映画とか、まだ影も形もないのでは? 何が出てくるか怖くないですか?渡邉さん映画の「買い付け」は本当に大変だと思いますが(笑)。放送権の調達は映画の購入ほどはリスクは高くないです。弊社は基本的には劇場公開をされた映画を中心に調達、編成を行っておりますので、興行収入の多寡によるリスクヘッジなども契約に盛り込んでいますし。――その映画の放送権の価格はいくらぐらいなのでしょうか。渡邉さん具体的な金額は申し上げられませんが(笑)、正直金額の幅は作品によって大きく変動します。映画って、ヒット規模や興行収入によってその価値は大きく変動するものです。予算の大小にかかわらず、面白くて興行収入が良ければその価値はどこまでも上がります。――興行収入がその映画の価値、値段を決めていると言えますか?渡邉さんそれが「すべて」ではありませんが、最も重要な判断基準であることは確かですね。ただ、一般受けはしないけれども確実にコアな層にヒットする、そういう映画もあります。――WOWOWさんで新しく試してみたい番組編成はありますか?渡邉さんWOWOWは昨年の10月に3チャンネル開局を果たし、念願の映画専門チャンネルWOWOWシネマをスタートいたしました。それまでは、例えばテニスの生中継などや人気の海外ドラマ作品と、先ほど申し上げたゴールデンタイムを競い合ったりしていました。いわゆる、放送枠の争いがあったわけです。ですが、今では、映画は映画、スポーツはスポーツと、3チャンネルそれぞれを活用することで専門性を強めてお客さまに届けられています。映画については24時間専門ということで、今まで以上にボリューム感やこだわり感を持ったさまざまな大型企画を成立させるベースがもてたかなと思っております。開局から1年が経ちましたが、引き続き専門チャンネルだからこそできるさまざまな企画を通じより多くの映画ファンに喜んでいただけるチャンネルを目指して頑張っていきたいですね。映画の番組編成はどうも面白そうです。「仕事楽しそうですね」と伺ったところ渡邉さんは「楽しいです」と即答でした。いやあ、映画って本当にいいものですね!(高橋モータース@dcp)WOWOWさんのサイト
2012年12月22日『二十四の瞳』や『楢山節考』などの作品を手がけた巨匠・木下恵介の生誕100年を記念する新作映画『はじまりのみち』の撮影がこのほど終了し、木下監督の生誕100年の日となる本日、映画の場面写真が公開された。その他の写真『はじまりのみち』は、戦時中、木下が脳溢血で倒れた母を疎開させるためにリヤカーに乗せて山越えをした、という実話を主軸に、血気盛んな映画青年として軍部に睨まれ、松竹を一時離れるきっかけとなった『陸軍』の製作時のエピソードを盛り込みながら、子を想う母と、母を想う子の愛の物語を描く感動作。『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『カラフル』などを手がた原恵一が監督を務める。本作の撮影は先月9日から行われ、静岡県浜松市を始め、長野県、群馬県、栃木県などロケ地を移りながら撮影が行われた。最終日は先月29日で、主人公・恵介(加瀬亮)と彼の母を乗せたリヤカーを共におす便利屋(濱田岳)の出演シーンを撮り終えて、全カットの撮影を完了。原監督は「俳優のみなさんや一所懸命に働いてくれたスタッフの姿を見て『いい映画にしなくてはいけない』と、気持ちを新たにしました」と語り「実写とアニメの一番大きな違いは季節と天気に左右されるということ」と約20日間におよぶ撮影を振り返った。このほど公開された場面写真は、疎開先に向かう途中の山で、昇ってくる朝日に向かって恵介、その兄の・敏三(ユースケサンタマリア)と母・たま(田中裕子)が手を合わせる場面。病で動くことさえ困難な母の身を案じる息子たちが、雨に濡れ、泥だらけになりながら山を越える場面は本作のハイライトといってよいだろう。木下恵介監督は今日からちょうど100年前の1912年12月5日に生まれ、映画監督として数々の傑作を生み出してきた。その作品は、人間の心理描写に重点を置き、人間の弱さや哀しみを描くものが多く、同時期に活躍した黒澤明監督のダイナミックな作風と比較されることも多い。しかし、現在開催中の回顧上映や研究を通じて、洗練された映像技法の導入や、コメディ描写のキレの良さなど“木下作品の新たな魅力”にスポットがあたりつつある。映画『はじまりのみち』も単純な伝記映画や、木下監督を賞賛するだけの作品ではないそうで、偉大な映画作家の“新たな魅力”にさらなる光をあてる作品に仕上がるのではないだろうか。『はじまりのみち』2013年6月1日(土)ロードショー
2012年12月05日世界最高峰のパフォーマンス集団の世界を3D映画化した『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』が9日(金)から世界最速で公開される前に、本作を手がけたアンドリュー・アダムソン監督がインタビューに応じた。その他の画像本作は、『サルティンバンコ』や『ZED』などの作品で知られるパフォーマンス集団シルク・ドゥ・ソレイユの世界を最新の3D映像で捉えた作品。ドキュメンタリーではなく、シルクの幻想的な世界を舞台に、サーカスに迷いこんだ少女と、空中ブランコ乗りの青年の恋の物語を描くもので、『アバター』のジェームズ・キャメロンがプロデューサーを務めている。アダムソン監督は『シュレック』や『ナルニア国物語』で世界的な成功をおさめたフィルム・メイカーで、本作のオファーは『ナルニア…』の製作会社の元CEOで、本作の製作総指揮を務めたケイリー・グラナットから持ち込まれたという。「実は最初は『あまりいいアイデアじゃないな』と思ったんだ。映画が扱ったラスベガスの7つのショーはそれぞれがあまりにも違う内容だからね。でも自分がシルクのショーを観た時のことを振り返ってみると『まるで夢みたいだ』と思った。そこで、映画もそのようにすればいいんじゃないかと思ったんだ。黒澤明監督の『夢』や『不思議の国のアリス』のことも思い出したよ。だから大事なのは“何でもアリ”の世界に観客を惹きつけるストーリーを見つけることだった」。そのために監督は、シルクの世界観を損なわないためにセリフを用いず、事前に脚本を用意せずに撮影と編集作業を行き来しながらストーリーを紡いでいったという。「シルクの創造性をこれ以上拡大することはできないんだ。彼らはアーティストの集団で、その創造性をいかんなく発揮できる環境をすでに作り上げている。いろんな才能のある人たちが協力して創造性を発揮しているんだ。僕たちが映画を作り上げる過程にとても似ていると思ったよ。だから、基本的な物語だけを用意して、緩急をつけながら語ることに注意した」。アダムソン監督はシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスを「人間の限界を見せてくれるもの」だと評する。「彼らは単にパフォーマンスをするだけではなくて、衣装や美術、音楽などのすべてが創造性をもって表現されていて、そのいずれもが極限まで高められている。そういうものを観ると“人間賛歌”ではないけれど、人間というのは何だって出来るんだ、という気持ちになるんだよ」。圧倒的な身体能力と芸術性がいかんなく発揮された世界を、ラブストーリーを軸に描き出した映画『シルク・ドゥ・ソレイユ3D』。そこには、驚きや楽しみだけでなく、観る者の胸をうつ大きなメッセージも隠されているようだ。『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』11月9日(金)より、TOHOシネマズ有楽座他、全国ロードショー
2012年11月07日「『職業は?』と聞かれたら『野村萬斎』と答えたい」。そう言って浮かべた笑みは“優しい”と言うべきか、“いたずらっぽい”と表現すべきか…何とも形容しがたい。掴みどころがないという意味では、今回演じた“のぼう様”こと成田長親と似たものを感じさせるが「長親は無自覚だけど、僕は確信を持ってやってますよ」と自らが積み重ねてきたものへの矜持を覗かせる。狂言師として伝統芸能を守り受け継いでいくだけにとどまらず、現代劇からギリシャ悲劇、さらには子ども向け番組への出演まで幅広い分野で活躍し、新たな道を切り拓いていく野村萬斎。実に9年ぶりの映画出演作となる『のぼうの城』では、たった500名で2万の大軍に立ち向かう忍城の城代(=指揮官)を魅力的に演じている。冒頭の“職業=野村萬斎”という発言を証明するかのように、萬斎さんが演じているからこその魅力が詰まった本作。どのような思いでカメラの前に立ったのか?映画公開を前に話を聞いた。激しい殺陣による合戦シーンあり、城を丸ごと水に沈める壮大な水攻めシーンありと、これまでの日本映画にないスケールで展開する本作だが、欠かすことのできない魅力の一つが萬斎さん演じる、でくのぼうの“のぼう”こと長親のキャラクターだ。あの時代(=戦国末期)の時代考証にただ忠実に演じるのではなく、時に現代的な受け答えや、あえて芝居がかったリアクションを取り入れることで、長親を何とも親しみやすい人物に仕上げている。萬斎さんは「ある種、“道化”のような立ち位置で予測できない演技を心がけた」と役へのアプローチを明かす。「監督からは『常に白い衣裳を着せたい』というイメージで、ひとりだけ浮いてて、目立ってもいいということですよね。目立つためにはみんなと違わなくてはいけない。テンポ感や空気を変えて、周りは猛者が多くて低く『おうっ!』と唸るような中で、僕だけ『ハイっ!』と甲高い声を上げたり、常に天邪鬼(あまのじゃく)でいることを意識してました。庶民の目線を持ちつつも、人間の本質的な部分を追求したい。人として正直と言うところを含め、狂言で言うところの太郎冠者(たろうかじゃ)に近いと言えるし、道化と言えばピエロやジョーカーですよね。絵札よりも強いのか?それとも単なるババなのか?確かにそういう掴みどころのなさはありますね」。いまでは笑ってふり返るが、撮影に入る前はこの“掴みどころのなさ”に大いに悩まされたという。そこで「惚れた相手に聞くのが一番」とヒロイン・甲斐姫を演じる榮倉奈々に、初対面でいきなり「どうして甲斐姫はのぼうが好きなの?」と聞いたとか。戸惑いつつも榮倉さんから返ってきた答えは、長親が持つ「将器」だった。萬斎さんは改めて、本作で描かれる奇妙なリーダー像についてこんな思いも。「昔、『乱』(’85/黒澤明監督)という映画に出演したとき、根津甚八さんから“ダメージアップ”という造語を教わったんですが、頼りなくて隙がある人物ほどダメージを与えられるといったら変ですが、みんなを安心させられるんですね。専制君主的ないかにもなエリートが上から物を言うのではなく、隙のある人間が実は本質をきちんと見抜いていて、しかもそこに信念がある。それが長親の良いところですね。とっつきやすくて下から持ち上げられるリーダー像があって、そこに才能のある人が寄ってくるというお話。(敵方の大将の)石田三成も含め、リーダーとは何ぞや?というところに興味を持っていただけたら嬉しいです」。9年という時間を置いての映画出演となったが、萬斎さんにとって映画やドラマといった映像作品に出演することの楽しさは?「狂言というのは2~3人で演じるもので、(表現の)省略も多く、見る側の想像力に訴えるところが多いのですが、映画はこれだけの人数が集まってリアルに具体的に作れるところが魅力ですね。僕としては無いものねだりって感じがするわけです(笑)。また、狂言は一つ一つの演技を映像用に残すことはほとんどしません。僕らの芸はその場の一代限りのもので、弟子や息子に芸のDNAを残すことで存在していく。だから、映像として形に残る仕事をしたいという思いはあります」。さらに、狂言以外の場での表現が“狂言師・野村萬斎”に与える新たな発見や影響についてはこう語る。「狂言では僕らは“型”を習い、プログラミングされるがごとく表現技術を習得していくわけで、それはスイッチひとつで心がなくても『泣け』と言われれば泣けるし、『笑え』と言われれば笑えるということ。では、そこに感情が全くなくてもいいのか?と言われればそうじゃない。感情だけではダメだけど、型にもやはり一滴の感情が必要です。であるなら、こういう作品で本当にその気持ちになる――映画では本当にそういう気持ちにならなければ嘘になってしまいますから――それが狂言に入ってくることで、どんなに省略された表現の中にも人間味が増していくのかなと思います。何より僕らもまた、型から入りつつも最終的には型から脱しなくてはいけないわけです。様式や型に囚われない世界に入るためには、リアルな実戦で気持ちを作ったり涙を流すことは、いますぐではないにしろ、活きてくると思ってます」。“改革”ばかりが声高に叫ばれ喝采を受けるのが昨今の風潮だが、萬斎さんが目指すのは単なる伝統の改革ではない。自らの試みを「挑戦的な活動」と認めつつ、常に「伝統を守る」という意識を持ち続ける。「伝統芸能の技をもって『ここまではいける』という確信は常に持っています。そこは確信犯的にやらないと単に狂言師が『新しいことをやります』と言っても、メチャクチャな変なものになってしまうので難しいですよ。伝統という枠の中で、じゃあどうやって発信したらいいのか?発信しなければ単なる古い文化財になってしまいます。古典の本質を掴みつつ『ここを現代的にアレンジしよう』、『ここをアピールしよう』という狙いがないといけないと思います。その点、“のぼう”は無責任に見えるかもしれませんね(笑)。でも、ズレているように見えて、本質はちゃんと見えているんです。自由に、楽しみながらやらせていただきました(笑)」。全てを冷静に計算し、そのくせ計算外の出来事が起こることを誰よりも楽しみに待ち望んでいる道化。日本が誇る稀代のジョーカーの名演に泣いて、笑って、突っ込んで、翻弄されつつ壮大な歴史活劇をお楽しみあれ!(photo/text:Naoki Kurozu)stylist:Nakakawahara Hiroshi(CaNN)Hairmake: Shinji Okuyama (ing)■関連作品:のぼうの城 2012年11月2日より全国にて公開© 2011『のぼうの城』フィルムパートナーズ
2012年10月31日名優にして巨匠クリント・イーストウッドが西部劇にオマージュを捧げ、1993年にアカデミー賞9部門ノミネート、最優秀作品賞ほか4部門に輝いた名作『許されざる者』が日本映画として生まれ変わる!『フラガール』、『悪人』の李相日監督が自ら持ち込んだ企画を実現、国際派俳優・渡辺謙を主演に迎えて同名映画にて日本時代劇を制作することが決定した。『荒野の用心棒』に代表されるマカロニ・ウエスタンで一時代を築いたイーストウッドが自らの師にオマージュを捧げるために作り上げた“最後の西部劇”『許されざる者』。銃を捨て、幼い子供たちと密かに暮らしていた老ガンマンが、賞金稼ぎのために再び銃を取る姿を描き、当時無冠であった彼は4冠を獲得した。本作に感銘を受けた李監督は、昨年配給元であるワーナー・ブラザーズに日本版の企画を持ち込み、半年後に本国後より許可が下りてすぐに執筆を開始。今年6月に製作の最終決定が下りた。自身初の時代劇として挑む本作では、幕府崩壊後の明治時代初期、北海道を舞台に、江戸幕府側の残党・釜田十兵衛が再び刀を取り戦いに身を投じる姿を描く。黒澤明監督の名作『用心棒』を西部劇に変えた『荒野の用心棒』、さらにそれにオマージュを捧げた三池崇史監督の『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』と、相思相愛の関係にある時代劇と西部劇。その決定打となる今回の一大プロジェクトにふさわしい主演キャストに抜擢されたのが、『硫黄島からの手紙』でイーストウッド監督とタッグを組んだ経験のある渡辺さん。オリジナル版でイーストウッドが演じた役を渡辺さんが演じるほか、相棒モーガン・フリーマンの役に柄本明、そしてジーン・ハックマンの役に佐藤浩市という日本映画界を代表する演技派3人が揃った。この映画化決定に、当のイーストウッド監督からは「『硫黄島からの手紙』で濃密な仕事をした私の良き友人である渡辺謙氏と李相日監督が、このたび、日本の『許されざる者』製作にあたり、タッグを組むと聞いて大変光栄に思います」と喜びのコメント。巨匠から背中を押される形となった李監督は、「自分は正しいと疑いなく胸を張る人間よりも、迷いや贖罪を抱え、正しくありたいと葛藤する人間に寄り添えるもの…、そんな映画を目指していければ、と考えています。西部劇の傑作と言われるオリジナル作品。そして何よりも、尊敬してやまないクリント・イーストウッドという類まれな映画人に立ち向かえる機会を得られたことに、興奮と喜びはもちろん、怖れすら抱かざるを得ません」と並々ならぬ喜びを表す。そして、大役に抜擢された渡辺さんは「映画界での父とも思っているクリントの代表作をリメイクするのは、大きな挑戦になります。李監督と共に北海道の大地と格闘しながら、僕たちなりの『許されざる者』を積み上げていきたいと思っています」と力強い意気込みを寄せている。本作の撮影は、9月中旬より11月下旬まで全編北海道ロケで行われ、2013年秋に公開予定。ウエスタンにインスパイアされた映画魂を、どのように日本映画として蘇らせるのか?続報を待ちたい。『許されざる者』は2013年秋、全国にて公開。「許されざる者」Blu−ray価格:2,500円(税込)「許されざる者」DVD価格:1,500円(税込)発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ発売中■関連作品:許されざる者 (2013) 2013年秋、全国にて公開
2012年08月20日プロモが運営する韓国料理屋「チヂミのおいしい店 明洞房(みょんどんぼう)」は、7月1日より「牛レバ刺し」にそっくりな新メニュー「明洞房オリジナルレバ刺し」の発売を開始する。7月1日より、焼肉店や居酒屋の人気メニュー「牛レバ刺し」の、飲食店での提供が禁止となる。6月12日の厚生労働省よる正式発表以降、「食べ納め」をしようと、多くの人が「牛レバ刺し」を提供する店を訪問しているという。同店ではこの「牛レバ刺し」人気を受け、「牛レバ刺し」を細部まで忠実に再現した「明洞房オリジナルレバ刺し」を販売開始する。「明洞房オリジナルレバ刺し」の正体は、韓国で昔から食べられているという伝統家庭料理「묵(ムク)」。どんぐりやソバ、緑豆の澱粉を豆腐状に固めたもので、最近では、どんぐりの美容効果から美容食品としても注目されている。同店では、この「ムク」を使用し、「牛レバ刺し」特有のとろっとした“見た目”、独特なシャクっとした“食感”、そして濃厚な深い“味わい”の3要素を、独自の製法で見事に再現した。その再現力は、本場の味・素材にこだわり、韓国から直接食材を取り寄せている同店ならではのもの。「牛レバ刺し」好きも思わず納得の、自信を持って勧められる仕上がりになっているという。「明洞房オリジナルレバ刺し」はホームページ上で6月29日より受け付けを開始し、7月1日より店頭とホームページ上での販売を開始する。■「チヂミのおいしい店 明洞房(みょんどんぼう)」住所:愛知県名古屋市緑区桶狭間切戸2412番地(大型駐車場完備、R23号線有松インター降りてすぐ)営業時間:11:30~14:30/17:00~23:00定休日:毎週月曜日(月曜が祝日の場合は営業し、翌日休み)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月29日井上靖の自伝的小説を原田眞人監督が映画化した『わが母の記』が公開されている。本作は、原田監督が「巨匠・小津安二郎監督の作品に近づきたい」と撮り上げた作品だ。そこで、『早春』(1956年)以降の6作品で、小津組のプロデューサーを務めた山内静夫氏に作品を鑑賞していただいた。山内氏は本作をどう観たのだろうか?その他の写真本作は文豪・井上靖が自身の人生や家族との実話を基に綴った『わが母の記~花の下・月の光・雪の面~』を原作に、普遍的な家族の愛を描いた物語。役所広司が作家・伊上洪作を、樹木希林が母親の八重を、宮崎あおいが三女の琴子を演じている。試写室から出て、原田監督と対面した山内氏は「監督さんのいる前だと緊張するね」と笑みを見せながら「とても爽やかな印象。映画としてどっしりしているし、そこに“人生”が描かれている」と鑑賞した直後の印象を述べる。「一家がいて、それぞれが人生を背負っている。映画は物語だけではなくて、そこに“人生”があるのがいい。みんなが色々な気持ちで生きている空気がしっかりと漂っていて、ここ最近の映画にはない日本映画を観た気がしました」。原田監督は「改めて小津安二郎監督の作品を集中して勉強して、これまで小津作品の“本当の良さ”に気づいてなかったな、と。小津さんという存在には憧れていましたが、この3年で画期的に印象が変わりました。その結果としてこの映画が出てきた」と振り返り、山内氏は「映画を観ている間は集中していたので小津作品のことは思い出すことはなかった」と語るも「主人公の作家と母の姿を観たときに小津作品のことが頭に浮かびました」という。大学で教鞭をとっている原田監督は「今の若い世代は小津監督や黒澤明監督を知らなくても、少しガイドをしてあげると、とてもいい感性をもっている。だからこそ、良い芸術をちゃんと伝えるのが僕らの世代の役割なのではないかと思うようになった」と言い、山内氏は「撮影所がなくなってしまったのが大きいですよね。かつては撮影所で映画だけではなく色々なことを先輩から学ぶことができた。映画の世界にとって撮影所がなくなったことが本当に悲しい」という。以前より原田監督は「この映画は若い人に観てもらいたいし、僕が小津さんへの愛を込めたこの映画を観てもらうことで、そのうちの何パーセントかの人が小津映画に興味をもってほしいんです。そうやって文化を継承していかないと新しいものは生まれない」と語っている。本作を公開中の劇場では、若い観客も多く足を運んでいるそうだが、彼らが本作をどのように観たのかも気になるところだ。『わが母の記』公開中
2012年05月02日