多くの女性たちが憧れている世界の代表格といえば、華やかな美容業界。ですが、今回ご紹介するのは、そんなイメージを打ち壊すようなスター美容師殺人事件を全編ワンショットで描いて話題となっている1本です。『メドゥーサデラックス』【映画、ときどき私】 vol. 603年に一度のヘアコンテストに向けて準備が進められていたが、開催直前に優勝候補と目されていたスター美容師が変死を遂げる。しかも、奇妙なことに頭皮が切り取られた姿で発見されたのだ。会場に集まっていたのは、「今年こそ優勝する」と誓って意気込んでいた3人の美容師と4人のモデルたち。さらに主催者や恋人、警備員らを巻き込みながら、事件や人間関係に関する噂と疑念が渦巻き始める。容疑者とされている11人に明かされる真実とは…。ミステリーの名作を数多く生み出してきた英国から、新たに誕生したゴシップ・ミステリー。気鋭の映画スタジオ「A24」が北米配給権獲得し、世界中の映画祭を席巻している本作について、こちらの方にお話をうかがってきました。トーマス・ハーディマン監督短編映画が高く評価され、BBC FilmsとBFI(英国映画協会)の支援によって本作で長編デビューを果たしたトーマス監督。長編初監督ながら見事な演出力と構成力を見せ、映画界でも注目を集めています。そこで、撮影の裏側やタイトルに隠された思い、そして日本から影響を受けていることなどについて語っていただきました。―今回、美容業界を舞台に映画を撮ろうと思ったのは、なぜですか?監督母は髪を大事にしていた人なので、髪への情熱は母から受け継いだものだと思います。まだ僕が幼かった頃、怖がりだった僕を母がいつも外に連れ出してくれたのですが、母はなぜか週に1か2回も美容院に行っていたのです。そういったこともあって、僕は美容院で育ったと言えるんじゃないかなと。ファッション雑誌もそこで初めて手に取り、おかげでファッションに興味を持つようにもなりました。その後、アートや文学、映画といった世界に触れていくなかで気が付いたのは、そこにあるヒエラルキーは美容の世界にも同じようなものがあるということ。そこから、どんどん自分の目が開かれていくようになり、映画として描きたいと思うようになりました。女性が引っ張っていく物語を作りたかった―『メドゥーサ デラックス』というタイトルには、どういった意味が込められているのでしょうか。監督いまお話した母が通っていた美容室は、劇中にコンテストの主催者として登場するレネのモデルでもあるオズワルドさんという方がオーナーの「オズワルドズ」という名前のお店でした。ところが、僕が実家を離れたあとに、彼は亡くなってしまったのです。その後、どうなっていたのかは知らなかったのですが、久しぶりに地元に戻ったときにお店を訪れてみると、違うオーナーが経営している「メドゥーサ」という美容室に変わっていたんです。それは自分にとっては大きな驚きでした。あと、「メドゥーサ」には魔女のように知的で強い女性が社会や男性から迫害されているイメージがあるので、性差別的な要素があると感じていました。そういうなかで、神話を再解釈し、女性が引っ張っていく物語を作れたらいいなと。なぜなら、僕の母には7人の姉妹がいて、つねに女性たちに囲まれて育った経験があったからです。ぜひみなさんにも、新しいものを受け取っていただきたいと考えています。きっかけとなったのは、美容系のYouTube―なるほど。また、本作で話題となっているのは、これだけの展開を全編ワンショット撮影で行ったことですが、どういった経緯だったのかを教えてください。監督いままでと違う映画にしたいと思っていたので、脚本を書いている段階から「ワンショットで撮りたい」というのは考えていました。きっかけの1つとしては、年の離れた兄の娘たちが見ていた美容系のYouTube。彼女たちの母親が亡くなってしまったので、代わりに彼女たちの面倒を見る機会が多くなったのですが、そのときにそういう動画をずっと一緒に見ていたんです。そこで気が付いたのは、人が何かをしている様子を長いショットで追っていくことに、我々も自然と慣れてしまっているということでした。YouTubeの環境によって、物の見方も変わってきましたが、長回しをすることでキャラクターによるドラマも生まれるのではないかなと思ったのです。ワンショットによる状況的な面白さもありますが、僕はそうやって出てくる感情や人間の様子にも興味があるので、それをけん引してくれた俳優たちには感謝しています。―とはいえ、撮影にあたってはかなり緻密な準備が必要なので、大変だったのではないかなと。監督今回は9日間しか撮影期間がなかったので、事前にZoomを使って俳優たちとリハーサルをしたり、iPhoneやノートパソコンを片手に撮影の確認をしたりして、構築していきました。僕たちは野心的で夢もありますが、お金がなくて(笑)。なので、そういうやり方をするしかありませんでした。とはいえ、映画作りというのはそもそも簡単なことではないので、そういう意味では全体的によくできたんじゃないかなと思っています。―なかでも苦労したのはどんなことですか?監督やっぱり赤ちゃんがいるシーンは、大変でしたね。というのも、実は今回は双子の赤ちゃんを起用していたんです。1人はよく泣く子で、もう1人は全然泣かない子だったので、シーンによって使い分けています。つねに新しい世界を作り出すチャレンジをしている―舞台となるホールは、非常に複雑な構造の建物でしたが、そこも本作には欠かせない要素だったと感じました。場所は先に決まっていたのでしょうか。監督脚本を書いているときは自分の頭のなかだけにあったので、どういう場所になるかはまったくわからない状況だったんです。その後、ロケ地探しをしたのですが、イギリス中のコンベンション・センターやホールを見て回りました。そして、ついにイギリス北部にあるプレストン・ギルドホールという施設を見つけたんです。本当に完璧な場所だったなと思います。―劇中に登場するヘアスタイルはどれも素晴らしいものでしたが、ヘアメイクはレディ・ガガのヘアメイクなどをはじめ、“ヘア界で最も独創的なスタイリストの一人”と称されているユージン・スレイマンさんが担当されたとか。彼の仕事ぶりを間近でご覧になっていかがでしたか?監督彼はシャネルやルイ・ヴィトン、イッセイ ミヤケなどさまざまなトップブランドとコラボをしていますが、僕は彼の仕事をずっと追いかけてきました。彼にどれだけ才能とスキルがあるかはわかっていたので、ぜひ映画に参加してほしいとお願いをしたのです。彼はいろんなものをぶっ壊すパンクの世代ですが、僕もこれまで存在していた範疇から刷新していく世代なので、そういう意味では2人とも同じような感覚を共有しているのではないかなと。年齢も育った環境も違いますが、つねに新しい世界を作り出すチャレンジをしているところが似ていると感じています。実際、この作品ではこれまでにない方向性であっても好んで挑戦してくれました。日本のカルチャーが自分の血となっている―キャラクターによって違うさまざまヘアスタイルの数々には、ぜひ注目ですね。また日本についてもおうかがいしたいですが、どのような印象をお持ちですか?好きなものはありますか?監督それはとてもいい質問ですね。というのも、僕はまだ日本に行ったことがないのに日本が大好きで、コム・デ・ギャルソンやジュンヤ ワタナベといった日本のファッションから影響を受けたり、ポール・シュレイダー監督が三島由紀夫を題材にした映画を観たりしてきました。それから、多くの映画作家が子ども時代からカメラを手にしていたという話はよく聞きますが、僕の場合は任天堂のゲームだったんですよ(笑)。「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」でよく遊んでいましたが、それらのゲームで培った感覚というのが僕の映画作りには深く関係していると思っています。そんなふうに、自分の意識と日本は深くリンクしていると感じるので、僕にとっては日本のカルチャーが自分の血となっているような気がしているほどです。―確かに、本作のカメラワークもゲームのような視点が生かされているように感じました。それでは最後に、ananweb読者に向けて、注目してほしいポイントなどについて教えてください。監督今回は、コアレスというミュージシャンに音楽をお願いしましたが、彼はメドゥーサの蛇が動くような音を作ってくれていて、それには僕自身も非常に驚きました。僕の映画のために、才能豊かな人が自分なりの解釈を加えて新たなものを生み出してくれて、本当に光栄に思っています。観客のみなさんにも新しい体験をしていただきたいので、映画を観たあとにスキップしてしまうほど楽しかったと思ってもらえたらうれしいです。息を飲む緊張感が味わえる新感覚ミステリー!まるでその場にいるような圧倒的な臨場感と、見たこともないような圧巻のヘアメイクが堪能できる本作。ワンカットによる驚異の映像はもちろん、本格的でありながら斬新な展開も楽しめる必見のミステリー作品です。取材、文・志村昌美引き込まれる予告編はこちら!作品情報『メドゥーサデラックス』10月14日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開配給:セテラ・インターナショナル️(C) UME15 Limited, The British Film Institute and British Broadcasting Corporation 2021
2023年10月11日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第156回は、婚活していると出会う“男性”についてのエピソードです。なかでも、いまでも印象に残っている「婚活男性3選」その53をお届けします。1.ビギナーを強調する男【結婚引き寄せ隊】vol.156それは“いますぐ結婚したいかた向け”とされる30代がメインの婚活パーティに参加したときのこと。そもそも婚活といっても、なかにはさほど結婚願望がなくても軽い気持ちで参加している人などもいるのですが、その日はいい人がいればすぐにでも結婚したい私のような真剣度の高いタイプが集まっていました。同席になった相手と自分のプロフィールカードを交換しあって、さっそく自己紹介タイムからスタート。いつもは「にお住まいなんですね」とか、仕事の話などから入ることもありますが、この日は違いました。「結婚したらどんな家庭を想像していますか?」「趣味が似ているのでもし結婚しても一緒に趣味を楽しめそうですね」などと、一気に、将来思い描くイメージについて聞かれることもしばしば。おたがいの釣書はカードを読めばある程度わかるということで、ストレートに結婚観を確認するかたが少なくありませんでした。これは話が早そう、と思いつつ、あっという間に最後のほうの参加者との自己紹介へ。30代前半のその男性は、「僕、こういうところは初めてなんですよねえ」とのこと。プロフィールカードをじーっと見ながら、「…カードに書いてあることを聞いていけばいいんですよねえ?」とこちらに質問してきます。「え?」と聞き返すと、「いやあ、僕、ビギナーなんで」とニヤニヤしているうちに終了。ほかの参加者との落差に驚きつつも、その後もその男性の様子を見ていると、終始ニヤニヤしながらのらりくらりとした言動で、相手の女性をイライラさせていました。ビギナーなのはいいとして、真剣味がまったく感じられない男性にあっけにとられた参加女性たち。婚活パーティなのだから、せめてポーズでも真剣さを見せてほしいものです。2.シェアしたがる男それは婚活サイトで出会いを探していたときのこと。30代半ばでスポーツが好きだという男性とメールのやりとりを経た末、実際にふたりで会うことになりました。その男性は「体を動かしたあとに、おいしいものを食べることも好きなんです」と言っているだけあって、お気に入りのお店があるとのことで、指定されたレストランで待ち合わせしました。行ってみると、確かにおしゃれなインテリアで、女性ウケも良さそうなお店。婚活男性にはあまり多くないけれど、もしかして女性慣れしているタイプの男性かな、という印象ももちました。そのお店の常連ということで、男性がオススメするメニューをオーダーし、たわいもない話をしながら料理を待っていました。そして頼んだそれぞれのサラダやパスタが運ばれてきて、いざ食べようとすると、「じゃあ、シェアしましょうか」と男性。「シェア?」と聞き返すと、微笑みながら、「それぞれの味をおたがいに食べたほうがいいですよね!」と力説。事前にメールでやりとりしていたとはいえ、初対面の関係で、まだ彼氏でもないのにシェアし合う?さらにそっちは常連でよく食べるメニューなんだから味を知ってるだろうよ…とドン引き。いや、でも、心の声なので実際に言ってはいませんが。怪訝な顔で男性を見つめ返すと、「じゃあ、分けますね」と、勝手に料理を小皿へ取り分けられました。しぶしぶ少しずつ口にしましたが、テンションが下がってしまい、その後何を話したのかあまり記憶にありません。突然会った男性と料理をシェアするほどウェルカム体制ではない、むしろギョッとしてしまった私でしたが、なかにはこれぐらいフレンドリーなほうが仲良くなりやすいという女性もいるのかもしれませんね。なんにせよ、価値観が違う人とはうまくいくわけないので、早々にこの男性とはさよならしたのでした。3.グチばかりの男それは合コンに参加したときのこと。平日の夜に開催されたということもあって、それぞれ仕事帰りに駆けつけた男女が、ざっくばらんに会話できるような居酒屋に集合しました。お店に到着すると、早く仕事が終わったという友人同士だと思われる40代前後の男性がふたりいて、「お先に飲んでたよ」とビールジョッキを片手に挨拶され、見るとすでにほろ酔いな感じ。続々と参加者が集合し、合コンがスタート。おたがいの仕事の話や趣味の話などをしながら、和気あいあいと時間が過ぎていきます。合コンも半ばになった頃、早くから到着し飲んでいた男性たちのうちのひとりが、「ったくもう最悪だよ」と会社のグチを言い出しました、それも大きな声で。もともとお酒に弱いのか、イヤなことばかりでクサクサして飲み過ぎているのかわかりませんが、出会いを探す男女が集まっているはずの合コンで、酔っているから声も大きく、そこからえんえんとグチを言い散らかす男性。まわりにいた参加女性は波のようにサーっとほかの席へと移動し、その男性の友人が「ごめんねー」となぜか酔っ払った男性に変わって謝っていましたが…。結局、楽しいはずの飲み会の気温をぐっと下げてしまったその男性のおかげで、二次会に行くこともなく、合コンは終了したのでした。ああ、収穫なし。人間、ストレスがたまることはあるでしょうが、しくじりそうなときはお酒はほどほどが一番だなと思ったのでした。出会いを探していると、ときどき驚くような場面にも遭遇することがあるかもしれません。でも、めげずにトライしていれば、運命の人に出会うのはもうすぐ。みなさんの恋がうまくいきますように!文・かわむらあみり©buritora/Adobe Stock文・かわむらあみり
2023年10月10日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回はパリコレ期間中に見つけた、簡単にオシャレに見える着こなし術をご紹介いたします。カジュアルとエレガンスの融合ロングワンピースは女性らしさやエレガンスを演出しますが、デニムと組み合わせることでカジュアルなアクセントが加わり、コーディネートに深みが出ているようです。光沢感あるアイボリーがより品格があって素敵!また、春や秋など、気温の変わりやすい季節に、ロングワンピースとデニムの組み合わせは暖かさとスタイルのバランスを保ちつつ、季節の変わり目のファッションを楽しむことができます。クラシックでモダンなスタイルの組み合わせタートルネックは首元をすっきりと見せ、プリーツスカートは腰からのAラインで女性らしいシルエットを演出してくれます。この組み合わせは常に洗練されており、シンプルでありながら上品な印象を与えます。さらに愛らしい淡いイエローが、より雰囲気を優しく鮮やかなものにしてくれているようです。ぜひ真似してみたいカラーのひとつ。脚長効果あり!デニムセットショートデニムで脚を露出させ、ロングブーツがさらに脚を長く見せる効果を発揮してくれています。また、朝晩の気温差がある季節には、ショートデニムとロングブーツの組み合わせは、暑すぎず寒すぎない絶妙なバランスを取るのに適しているんですね。ベストな組み合わせ!ブラックトップスとホワイトのワイドパンツという組み合わせは、そのクリーンかつシンプルな配色とシルエットにより、多くのファッション愛好者から支持されています。こちらのかたを例にとると、ブラックトップスはスリムに見せる効果があり、ホワイトのワイドパンツが体のバランスをとる役割を果たします。これにより、体型を美しく見せることができます。どちらもスタイリッシュでトレンディー私はどちらのかたも、とってもトレンディーで秋に向けたファッションど真ん中だと思うのですが、どちらがお好きでしょうか?左のかたは、ショートドレスにはロングブーツで脚長効果を発揮。まだ暑いパリの秋の日にぴったりな、肌の露出が多めのスタイル。また右のかたは秋まっしぐらのカラートーンがなんとも落ち着いていて大人っぽい雰囲気。ラフに見えるパンツにぺたんこパンプスは、左のかたとは真逆の組み合わせですが、どちらもトレンド感があって素敵!最近よく見かけるブラックデニムロンドンのZARAのショーケースでも、ちょうど今、ブラックデニムをメインに打ち出しているところです。ブラックはベーシックカラーのひとつであり、ほとんどすべての色やデザインと相性が良いため、さまざまなアイテムとのコーディネートが容易なのが魅力的。そんな中でも彼女のスタイルは、オーバーサイズのジャケットにビシッと決まった全体ブラックスタイルが、とってもトレンディーでセンスを感じさせてくれます。いかがでしたでしょうか?今回は比較的カジュアルでも品のあるスタイルをピックアップしてみました。着こなしかたや重ね着方法はとても参考になるものが多い印象です。参考になれば嬉しい限りです!写真、文・平野秀美
2023年10月09日東京・上野の東京国立博物館の本館 特別5室で、特別展「京都・南山城の仏像」が開かれています。本展で仏像大使を務めているのは、イラストレーターのみうらじゅんさんと作家・クリエイターのいとうせいこうさん。大人気の展覧会オリジナルグッズを開発したお二人に、グッズ誕生話などを語っていただきました!仏像大使は、みうらじゅんさんといとうせいこうさん!左:いとうせいこうさん、右:みうらじゅんさん【女子的アートナビ】vol. 313特別展「京都・南山城の仏像」では、京都最南部に位置する南山城(みなみやましろ)地域にある浄瑠璃寺(じょうるりじ)や海住山寺(かいじゅうせんじ)、禅定寺(ぜんじょうじ)などに伝わるさまざまな仏像を紹介。平安時代につくられた国宝の《阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀のうち)》や重要文化財の《十一面観音菩薩立像》など、平安から鎌倉時代までの貴重な名作仏像ばかりが集められています。本展で仏像大使を務めるのは、みうらじゅんさんといとうせいこうさん。展覧会のオリジナルグッズも開発されたお二人に、グッズ制作の秘話などを語っていただきました!Tシャツに込められた気持ちは…――今回、5つのグッズを開発されたとのことで、まずは神々しい阿弥陀如来坐像の絵がプリントされたTシャツについて教えてください。みうらさんこれは、僕が最初のグッズ企画会議のとき持ち込んだ絵。頼まれてもいないのに、描いてきたものです。先に開催された奈良国立博物館での展覧会でも、東京のほうでも好評と聞いていますよ(笑)。いとうさんそう、はやっているみたいだよね、みうらさんの絵。男性でも女性でも着やすいデザインだし、みうらさんと僕の後ろ姿も入っているので、宗教色だけにならずいい感じで、ばっちりでしたね。みうらさん絵の左下、“見仏”してるのがいとうさんの後ろ姿だとわかったうえで着ると、また気持ちが上がるんじゃないかな?いとうさんえ!?(笑)。どういうこと?みうらさんつまり、Tシャツを着ている人々のお腹のあたりにいとうさんがいるわけで、効力として胃腸を守ってくれてるわけで(笑)。いとうさんなるほど(笑)。ある種のおめでたさと、みなさんの健康を祈るという気持ちが入ったTシャツなんですね。爆売れ「おくすり手帳」誕生秘話――薬師如来坐像が表紙にデザインされたおくすり手帳も、奈良博のときに数千冊も売れたそうで、ネットでも話題になっていました。この企画は、どんなきっかけで生まれたのですか?いとうさん二人でやっている自主ラジオ番組の『ラジオご歓談!』で、あるとき、おくすり手帳の話になったんだよね。この「おくすり手帳」という名前自体が、妙齢の自分たちにはこそばゆい感じがした、とかそんな話になって。みうらさんそうそう。既製のものはいろいろあるけど、僕らが使えそうなグッとくるおくすり手帳がない。ちょうど展覧会にも薬師如来の仏像がお出ましだから、そりゃ薬師如来のおくすり手帳が欲しいよ、とね。いとうさん薬師如来は、手に薬壺を持っていて、そのなかに誰でも治せる万能の薬が入っている、というのが昔から伝わる信仰なんですよ。それで、ラジオでおくすり手帳の話をしたあと、薬剤師の人がメールをくれて、おくすり手帳のデザインに決まりはない、と教えてくれたんですよ。みうらさんだってね。だったら自由につくれると思ったんだよね。薬剤師さんも納得のデザインだと自負しています(笑)。いとうさん 誰でも使うものだから。家族みんなが必要ですよね。みうらさんこれなら、“見仏”の旅にも持っていけますね。急に病気になったとき、便利ですよ。朱印帳代わりにはなりませんが、このお弁当についているシール、ちょっとかわいいな、と思ったら、貼ってもいいですよね、思い出として。いとうさん思い出はやめてください(笑)。それは、高校生の女の子がやるようなものでしょ。これは薬剤師さんが見るものだから、違うシールが貼ってあったら困りますよ。みうらさん承知しました(笑)。お薬のシールだけにしてください。いとうさんでも、本当におくすり手帳は大好評だね。今後、おくすり手帳のマーケットを変える可能性がある商品でしたよね。みうらさん僕ら、仏像大使ではなく、結局グッズ大使ですからね(笑)。牛頭天王キャップのこだわりポイント――牛頭天王のワッペンがついたキャップも、人気があるそうですね。いとうさん当初から、牛頭天王を使いたいと思っていて。牛頭は、あやしい力を持つので、ぜひキャップにつけたいという想いが強くあったし、みうらさんはGOZUという文字を入れたいというこだわりがあったよね。みうらさんそう、ヘビーメタル感を入れたかったもんで(笑)。そもそも、キャップだけでも高いですから。お得だと思いますね、GOZUキャップ。いとうさん高いから、そんなに売れないと思っていたら、奈良では売り切れていたんだよね。みうらさんだってね。世の中、変わりましたね(笑)。ずいぶん前から、展覧会のグッズ企画を出してきましたけどね。僕ら下町ロケットはさ。いとうさん下町ロケット!?(笑)みうらさんいやいや、仏像ロケットですか(笑)。なかなかヒットは飛ばせなかったけど、今回は、こんな宣伝までさせてもらって本当、ありがたいですね。アクリルスタンドの使い方は…――不動明王立像のアクリルスタンドも、奈良では一時完売になったそうですね。いとうさんアクリルスタンドの時代がきていますね。この不動明王は、神童寺にあるもので、僕の“推し仏”のひとつです。不動明王は、邪悪なものに打ち勝つ炎を後ろに背負っています。このお寺の不動は、一般的なスタイルと少し異なり、童子のように膝小僧を出していて、昔、そのあたりを走っていた村の小僧のような雰囲気があるのです。これがアクリルスタンドになって、売れているのがうれしいですね。みうらさんこのアクリルスタンド、おしゃれなスイーツと一緒に写真を撮るといいですよ。僕、この前、はじめておしゃれなカキ氷を食べて、それがメロン1個まるごと入っているような感じで、まるで仏様の螺髪(らほつ)みたな状態でメロンが載っていて。このアクリルスタンドと一緒に写真を撮ってインスタに乗せるといいなぁって思いました(笑)。あとは、手のひらに収まるちょうどいい大きさだから、JRの改札もこれをピッとすれば通れるんじゃないかな?いとうさんSuicaじゃないですから(笑)。十一面観音の見分け方は…――定番グッズの光仏シリーズ、今回は十一面観音が光る仏様になっています。いとうさん光仏シリーズは、電気を消すと仏の姿が浮かび上がるのですが、今回はペンになっています。光る十一面観音が導いてくれます。みうらさん十一面観音は、頭に十の面がついていて、手には水瓶(すいびょう)を持っておられます。もし、街で水瓶を持っている人を見かけたら、「あっ、十一面観音だ!」と思いがちですが、違いますから(笑)。いとうさんそれは、ただ水瓶を持っている人なんですね(笑)。みうらさんですね。いとうさんじゃあ、もし、その人の頭上に十のお面がついていたら?みうらさんそれは、確実に十一面観音です。現世にお出ましになられたということになります。いとうさん救いがあるということですね(笑)。とにかく見てください!――最後に、仏像初心者の人に向けて、この展覧会の楽しみ方を教えていただけますか。いとうさん初心者の方は、仏像について、いろいろ知らなければとプレッシャーに感じるかもしれませんが、それは取り払って、とにかく見てください。仏像って、訳がわからないんですよ。なんで頭の上にたくさん顔があるんだろう、なんで手が千本もあるんだろうって、そのことにいちいち驚けばいいと思うのです。驚いてショックを受けたあと、本を読んでみてもいいし、千本もある手がすごいなと悪夢を見てもいい。美術として驚き続けることもできますし、信仰の気持ちがあってもいい。美術と信仰、片方でも両方でもいいんです。みうらさんこの展覧会のメインは、浄瑠璃寺の阿弥陀如来坐像です。今回、その仏像の修復が終わったことを記念して展覧会が開かれています。東京には一体が展示されていますが、実際現地に行くと、九体の阿弥陀如来が横並びにずらりと、ロイヤルストレートフラッシュ状態におられます。だから、この展覧会を見られた方は、ぜひ浄瑠璃寺に足を運んで、お堂ごと体感してほしいですね。おすすめです。――ありがとうございました!仏像大使は音声ガイドにもゲスト出演!仏友同士であるお二人のトーク、いかがでしたか。難しそうな仏像の話も、お二人が語ると身近で親しみやすく感じられます。本展の音声ガイドでも、みうらさんといとうさんの仏像トークを楽しめます。(音声ガイドナビゲーターは、俳優・タレントの横山由依さんです!)ぜひ、音声ガイドを聴きながら展覧会を楽しみ、見終わったあとはオリジナルグッズもご覧になってみてください。Information会期:2023年9月16日(土)~11月12日(日)会場:東京国立博物館本館特別5室開館時間:9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)※11月3日(金・祝)、4日(土)、10日(金)、11日(土)は19時00分時まで休館日:月曜日、10月10日(火)※10月9日(月・祝)は開館観覧料:一般 ¥1,500、大学生 ¥800、高校生 ¥500※本展は事前予約不要です
2023年10月08日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポート。今回は今週まで開催されていたパリコレで見つけた、かっこいいヘアスタイルをご紹介いたします。超クールでかっこいい!ブロンドヘアがよりカッコよく見えるのかもしれませんが、綺麗に揃ったボブヘアはスタイルとバッチリ似合っていてかっこいい。このスタイルは、どんな顔型でも真似できそうですよね。かなり個性的なショートヘアユニークなヘアスタイルですが、かなり個性的でファッショナブルに見える!ヘアスタイルだけでお洒落に見えてしまうなんて凄いですよね。これくらい大胆にパッツンと短い前髪カットも勇気がいりそうですが、本当トレンドが感あって素敵。ウェイブが可愛いやっぱり今年はカラーアップしたウェイブ感もいいですよね。比較的真似できそうなスタイルなので、ちょっと印象を変えてみたいなというかたにおすすめ。長さはもっと短くても長くてもお洒落。こんな髪色も真似したい!全身ブラックスタイルでカッコよく決まった彼女の一番のポイントは、やはりピンクのベリーショートヘアではないでしょうか。数回脱色しないと、ここまで鮮やかな色はでなさそうですが、一度はやってみたいヘアースタイルです。アイシャドウの色もバッグとお揃いのかわいいブルーで魅力的。ベリーショートは、その人の顔立ちや骨格を強調するため、自分に似合うスタイルを見つけると、非常に個性的で魅力的な印象を与えることができそうです。ベリーショートでカッコよく真っ赤なリップとオールブラックのコーデでカッコよく決めた彼女にピッタリなベリーショート。上記のかたも同じベリーショートですが、髪色が違うだけで、これだけ雰囲気が異なるんですね!ベリーショートはスッキリとして、首や顔周りが見えやすくなるため、清潔感や爽快感があります。特に暑い季節には涼しげな印象を与えることができます。前髪ぱっつんボブは服を選ばない前髪ぱっつんのボブヘアは、多くの女性たちに愛される定番の髪型ですよね。ファッションやメイクとの相性も良く、モードなスタイルからカジュアルまで、幅広いコーディネートに合わせやすいのも大きな魅力です。彼女のように、個性的なスタイルにもバッチリ似合うヘアースタイル。いかがでしたか?今季のパリコレではショートカットヘアやボブヘアをよく見かけたような印象です。10月に入りこれから徐々に寒くなりますが、参考になるヘアースタイルがあれば幸いです。写真、文・平野秀美
2023年10月07日東京・六本木にある国立新美術館で、「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」がはじまりました。本展の音声ガイドナビゲーターは、声優・俳優の津田健次郎さん。今回、サンローランの服をステキに着こなされた津田さんに、展覧会のご感想やファッションのことなど、お聞きしてきました!津田健次郎さんが音声ガイドに!津田健次郎さん【女子的アートナビ】vol. 312本展は、“モードの帝王”と呼ばれ、ファッション界の第一線で活躍してきた天才デザイナー、イヴ・サンローラン(1936-2008)の没後日本ではじめて開催される大回顧展です。1958年、21歳の若さでディオールのデザイナーとしてデビューしたイヴ・サンローランは、1962年に自身のブランドを発表。2002年に引退するまで、世界のトップデザイナーとして走り続けました。彼の40年にわたる活動を、ルック110体を中心に、アクセサリーやドローイング、写真も含めた262点で紹介。イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を受けて開催される、眼福かつゴージャスな展覧会です。本展の音声ガイドナビゲーターを務めるのは、津田健次郎さん。本展の内覧会に登壇した津田さんにインタビューも行い、展覧会やファッションのことなど、いろいろお聞きしてきました!尖ったぶっ飛んだスタイルも!――まず、サンローランの服がとてもお似合いですね。着られてみて、いかがですか?津田さんスタイリッシュな感じがします。それに、ラインがきれいです。前から、サンローランはラインがきれいだと思っていましたが、着ると改めて実感しました。スタイルをよく見せてくれる洋服だと思います。――今回の展覧会をご覧になって、全体のご感想を教えていただけますか。津田さんすごくバリエーションが豊かです。12章立てになっているのですが、章ごとに雰囲気が違い、本当に豊かな世界が広がっているのです。現代でも着られるような洋服もかなり展示されていて、1点1点とてもステキでしたね。「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――お気に入りのルックはありましたか?津田さん展覧会のポスターにもなっている、モンドリアンの絵をモチーフにした作品は、かっこいいなと思いました。イヴ・サンローランのアートシリーズは、ほかにもゴッホなど芸術家の作品からインスピレーションを得て、再構築して洋服にされたものがあり、彼はアレンジャーとしてもすばらしい方だと思いました。また、男性のタキシードをアレンジして女性バージョンにしたものとか、その隣にあったジャンプスーツとかも本当にすばらしいと思います。尖ったぶっ飛んだスタイルもたくさんあり、楽しかったですね。「バブーシュカ」ウエディング・ガウン 1965年秋冬オートクチュールコレクション――ぶっ飛んだスタイルというのは、どのルックですか?津田さんマトリョーシカからインスピレーションを受けたウエディング・ガウンです。インスピレーションが爆発しているな、と感じました。かわいいのだけれど、きれいでもあるし、恐ろしく手が込んでいます。あのデザインを思いついて、本当に服にしてしまうというのがすごいし、パンチ力がありますね。ファッションは、商業ベースに絶対に乗せていかなければならない世界。彼は、商業思考の脳みそを持ちつつ、芸術家でもあり、このバランスが、いわゆる画家などのアーティストとはまた違う部分なのかな、と思います。また、彼は、フランスを中心としたファッション界でオートクチュール(仕立服)を成功させただけでなく、アメリカの大量消費社会でプレタポルテ(既製服)も受け入れられました。ヨーロッパだけでなくアメリカでも受け入れられたというのが、彼のすごいところのひとつだと思います。もうリスペクトしかない…――音声ガイドを担当されていますが、おすすめポイントはありますか。津田さん音声ガイドは、ナレーションがメインのものが多いですが、今回のガイドはナレーションだけでなく、サンローランの名言も出てきます。そこは声の雰囲気を変えているので、ぜひ多くの方に聴いていただきたいですね。まず、作品を見て、ご自分のインスピレーションでいろいろ感じていただいて、そのうえで作品にまつわる音声ガイドを聴いていただけると、また情報量が増えて、世界が深くなったりするので、その順番がおすすめです。「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――音声ガイドで、イヴ・サンローランの人生にも触れられていますが、彼の生き方についてはどう思われましたか。津田さん21歳でディオールを継ぐ、というのは驚異的だと思います。それで自身のメゾンを開いて、すごいスピードでファッション界に躍り出る。彼の才能が開花するスピードに衝撃を受けました。華やかな世界で、華やかな作品をたくさん世に生み出して、しかもトレンドの最前線で戦っていた人ですが、この方はめちゃくちゃ静かな方なのではないか、と音声ガイドをしていて思いました。恐ろしくナイーブな方なのだな、と。本展でも、「想像上の旅」という章がありますが、彼は頭の中で旅をするという作業が一番好きで、それがクリエイティブの根源にあったのではないかな、と思いました。あとは、ご本人がかっこいい。スーツとメガネが本当にステキですよね。あのメガネ売っていないかな(笑)買いたくなっています。――イヴ・サンローランは、仕事に対して完璧主義だったと伝わっていますが、その姿勢についてはどう思われますか?津田さんもう、リスペクトしかないですね。そこまで到達できる表現者は、やはりなかなかいないと思います。まずは、そういう仕事の環境を獲得できるのがすごいことです。あとは、尽きない情熱。最後の最後まで追い込んでいく、という姿勢です。特にファッションは、ひとりの作業でつくれるものではないので、職人さんとともに、もしくはカンパニーとして、ひとつひとつの洋服を本当に極限まで追い込んでつくっていく。その姿勢と、折れない表現の力、強い信念、すごく学ぶべきものがありますよね。今回、音声ガイドの仕事で彼のことを詳しく知り、今日、実際に作品を見せていただいて、「すごいっ!」とひれ伏したくなりました。表現というものは、時代とともについえていくものでもあるのですが、サンローランの服は残る気がします。地域や時代を超えて、残っていくすごみを感じました。感動して拍手したくなる「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――今回はファッションの展覧会ですが、アートの展覧会などにも行かれますか。津田さん芝居の仕事をするなかで、できるだけ自分のなかから出てくる独自のものを表現していきたいと思っているので、いろいろインプットするように心がけています。そのひとつが、美術館に行くことです。――どんな美術展に行かれましたか?津田さん今年は、マティスやシーレ、佐伯祐三などの展覧会に行きました。どれもすばらしかったですね。例えば、マティスは表現を突き詰めていった末、晩年に切り絵のスタイルになりますが、その切り絵が超ハッピーな感じなのです。おじいちゃんになって、新たにドーンと飛び出したような感じで。そんなポップな切り絵を展示室で見たとき、本当に感動して、拍手喝さいしたくなりました。ブラボーで、スタンディングオベーションしたくなるほどの気持ちでした。その後、最晩年にマティスはロザリオ礼拝堂の設計を手がけますが、切り絵で爆発したポップが教会のデザインに着地していくのです。美術館に行くと、キュレーターさんの想いも伝わり、それらも含めてすごく感動します。――津田さんの感動が伝わってきます。ほかにも、記憶に残る展覧会はありますか?津田さん以前見たゲルハルト・リヒター展は、特にすごかったです。なかでも、《ビルケナウ》という有名な絵がある展示空間は、本当にすばらしかったです。展示室内に4つの絵画作品が並び、その作品の複製が向かいに並び、その横には横長の鏡の作品があり、鏡の反対側にはアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所の写真があるのです。この空間自体がアートだな、と思いました。現代美術というのは、どんな角度で物事をとらえるのかが大事だと思うのですが、その部分をリヒターの作品で深く体験できました。リヒターという作家は幅が広くて、手法をどんどん変えいくのです。自分がやってきたものが膠着しそうになると、また技法を変えて試していく。絵画とは、アートとは何か、という彼の表現に対する恐ろしいほどの探究心に圧倒されました。――ありがとうございます。では、最後に、展覧会に来られる方にメッセージをお願いいたします。津田さん今回の「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」、本当に写真だけでは伝わらない作品が多数ありますので、ぜひ実物を見に来ていただけたらと思います。刺繍やスパンコールのすごさとかも実物を見ていただきたいですし、超一流の職人さんが一年がかりでつくっている作品もあります。そして、ぜひ音声ガイドとともにご覧いただけたらうれしいです。――ありがとうございました!取材を終えて…上品なサンローランのスーツがとてもお似合いだった津田さん。イヴ・サンローランの才能や、好きなアートについて語るときの熱量が非常に高く、表現者としてさまざまな人や作品をリスペクトされているお姿に感銘を受けました。そんな津田さんの美しく魅力的なボイスがたっぷり聴ける音声ガイドとともに、展覧会を楽しんでみてください。©︎ Musée Yves Saint Laurent ParisInformation会期:~2023年12月11日(月)休館日:毎週火曜日会場:国立新美術館企画展示室1E時間:10:00〜18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,300大学生¥1,500高校生¥900音声ガイド貸出価格:¥650(税込)※お一人様一台につき
2023年10月07日高齢化が進むなかで、患者数が年々増加してると言われているパーキンソン病。現在、日本には20万人以上の患者がいるとされています。そんななか、パーキンソン病の当事者が主演を務める日本初の劇映画『いまダンスをするのは誰だ?』がまもなく公開。そこで、病と闘いながら活動しているこちらの方にお話をうかがってきました。樋口了一さん【映画、ときどき私】 vol. 602人気番組「水曜どうでしょう」シリーズのテーマソングである「1/6の夢旅人2002」や日本レコード大賞優秀作品賞を受賞した「手紙〜親愛なる子供たちへ〜」などで知られ、数多くの有名歌手たちにも楽曲を提供してきた樋口さん。パーキンソン病を17年間も患いながらシンガーソングライターとして積極的に活動を続けていますが、本作では俳優初挑戦にして初主演という大役を務めています。今回は、役作りの苦労や病気との向き合い方、そして諦めそうになった自分を変えてくれた音楽との出会いなどについて語っていただきました。―まずは、どういった経緯で、主演のお話が来たのでしょうか。樋口さん最初は主題歌を頼まれたので、二つ返事で受けました。ところがしばらくして、「主役をお願いしたい」という手紙が突然届いたんです。そのときは本当に寝耳に水で、どうやって断ろうかということしか考えていませんでした(笑)。―そこから引き受けようと気持ちが変わったのはなぜですか?樋口さん一晩寝たあと、「辞退させていただきます」と連絡をして電話を切ったときの自分を想像してみたんです。そしたら、やったことがないという理由だけで断るのは、表現に携わる人間としてもったいないなと。それに、これから先の人生で「映画の主役をやってほしい」なんて言われることはまずないだろうと思ったんです。そう考えているうちに、だんだんやってみたいなと考えるようになりました。将来を考えて落ち込んでしまうときもある―初めての演技でわからないことも多かったと思いますが、俳優の知人に相談したことはありませんでしたか?樋口さん周りにいっぱいいるので、それも考えたんですよ。でも、下手に技術を植え付けられると、逆に余計なことをしちゃうんじゃないかなと思ってやめました。そこで、セリフを覚えたうえで、どうしたらそれを普段話しているように言えるかということにまずは重きを置くことにしました。とはいえ、自分で編み出した方法だったのでいまでも不安はありますが、一番長くやってきた音楽を生かして歌を歌うようにセリフを言えた部分もあったかなと思っています。―演じるうえで、同じ病を抱える主人公に共感する部分もあったのではないでしょうか。樋口さんそれはありましたね。ただ、病気を宣告されて怒りに任せていろんなものを壊していく彼のような反応は僕にはなくて、自分はわりと淡々と受け止めることができたので、そこは違ったかなと。でも、治療法のない難病なので、将来のことを考えて落ち込むことは僕にもあるのでわかる部分はありました。―ということは、役づくりに関しては技術的な難しさはあっても、感情的にはすんなりとは入れたと。樋口さんそうですね。劇中に何もかも失ってビルの屋上で泣くシーンがありましたが、そこも気持ちがわかるので、家族も友達も全部奪われた子どものような感じで演じました。病気に蓋をせず、個性として扱ってほしい―今回はセリフ以外にもダンスを覚えるのが大変だったと思いますが、これまでにダンスのご経験は?樋口さん小学校のときに踊ったフォークダンスの「オクラホマ・ミクサー」以来ですよ(笑)。今回は、撮影の約2か月前から先生に振りを教えてもらいながらロックダンスを練習しました。覚えるのが大変なのはもちろんですが、全然かっこよくならなくて…。でも、娘のために一生懸命なんだけど、イマイチなところがこの映画では大事だと思ったので、真剣だけどイケてない感じをそのまま出しています。―本作では、パーキンソン病の方に対してきつく当たったり、心ない言葉をかけたりする不寛容な社会の様子も描かれていますが、ご自身もそういった経験はありますか?樋口さんいまのところ、僕はそういう場面に遭遇したことはありませんね。でも、コンスタントに薬を飲んでいないと、突然動きが取れなくなってしまうので、日常生活のさまざまな場面で自分が周りに気を遣ってしまうことはよくあります。薬が効いているときは普通に動けているので、周りも病気であることを忘れていろいろ誘ってくれるのでそれはうれしいんですけど、相手に迷惑をかけるのが嫌だなと思って自分が断ってしまうことが多いですね。でも、僕は極力自然に接してほしい気持ちもあるので、もしみなさんの周りにパーキンソン病の方がいたら、病気に蓋をしてしまうのではなく、その人の個性として扱ってもらえたらいいなと思います。公表したことで、エネルギーを活動に使えるようになった―ご自身がパーキンソン病の診断を受けたのは2009年ですが、不調を感じてから病名がわかるまで3年もかかったそうですね。樋口さん当時は何だかわからなかったので、まず正体を現してほしいとつねに思っていました。僕の場合は、典型的な症状である手の震えが出なかったので、それが病気の診断が遅れる理由だったのかもしれません。そんななかで、「もしかしてパーキンソン病なんじゃないか?」と自分で思うようになり、そのことを医師に告げて調べてもらったら、パーキンソン病であることがわかりました。難病であることは知っていましたが、病名がわかったことでホッとした部分はあったと思います。―とはいえ、公表するまでには葛藤もあったのではないでしょうか。樋口さん最初は「言わないのが当然」というか、自分の弱みは伏せておくのが普通の対応だと思っていました。でも、何かを隠すというのはエネルギーを使いますからね。公表したことによって、そこに使うエネルギーを自分の活動に向けられるようになったので、以前よりも負担は軽くなりました。ただ、実際は会社や同僚にも隠しながら闘っている人は多いとは思います。会社勤めしている方は、「組織のなかで正常な役割を果たせなくなった」と自分で言うようなものですからね…。そこは、僕とは違うプレッシャーがあって大変だろうなと感じています。―ご自身は歌手をやめようと思ったことはなかったですか?樋口さん僕が熊本に移住したのは、いまから12年ほど前ですが、一番声が出なくなってしまったときでもあったので、実は「やめるしかないのかな」と考えたこともありました。ライブをしてもお客さんに対してうまく表現できなかったのが、本当に情けなかったんですよね。「何があってもバッドエンドはない」と考えている―そこからどうやってまたモチベーションを上げて、活動を続けられたのでしょうか。樋口さんその瞬間についてはいまでもはっきりと覚えていますが、中島みゆきさんが吉田拓郎さんに向けて書いた「永遠の嘘をついてくれ」という曲をお二人が歌っている音源を聴いたときのこと。自分に言われている気がして、涙が止まらなくなってしまったんです。そのあとに、諦めることを1回諦めてみようかなと。音楽は世界を変える力があるかどうかはわからないですが、人の気持ちを変えることができるんだなと自分で実感しました。そういった感覚は、ザ・ビートルズを初めて聞いたとき以来だったと思います。―病気と向き合うなかで、考え方が大きく変わったこともありましたか?樋口さん僕は「自分=パーキンソン病」ではなくて、パーキンソン病という“荷物”が1つ増えたなという感覚です。でも、「何でこんな荷物を持たなければいけないんだろう」というよりも、「この荷物を抱えた人生にはきっと何か理由があるんだろう」と思っています。その理由は死ぬまでわからないかもしれませんが、「必ず知ることができるときが来る」と信じていて、いまはそれを楽しみに待っているような感じです。―そういう気持ちは、創作活動にも影響を与えているのではないかなと。樋口さんそれはありますね。特に自分が書く詩には変化があって、「何があってもバッドエンドはない。すべての終わりはハッピーエンドなんだ」というようなものを作ることが増えました。以前からそういうところはあったのかもしれないですが、この病気になってからは、「ネガティブなことが起きても、それはハッピーエンドのための障害物であり通過点」みたいな内容が多くなってきたなと自分でも感じているところです。いまは、ギターを弾きながら歌えなくなったとか、できないこともいろいろと増えています。でも、ファンの方々も見守るように受け入れて、やれることを精一杯しているところを見てくださっているのでありがたいです。30代をすぎても、子どもように楽しんでほしい―いつでもポジティブな樋口さんの姿に、救われている方も多いと思いますが、実際に反響を感じたことはありますか?樋口さん最近、「水曜どうでしょう」のキャラバンで各地を回っていたのですが、そのときに「1/6の夢旅人」という楽曲がいかにたくさんの方の人生に関わっているのかを知ることができました。結婚式で使ってくださった方や「泣きました」という方など、あの曲のなかにはみなさんのいろんな感情が入っているんだなと。多くの人の背中を押す役割も担っているようなので、いまでは自分の手を離れて大きなものになっているんだと感じています。―それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いします。樋口さん20代からすると、30代というのは年を取ってしまったなと一番感じるときかもしれません。でも、いま自分が59歳になって思うのは、30代って全然子どもだなということ。なので、みなさんには“ガキ感”みたいなものを発揮してもらって、もっと楽しんでほしいなと思います。僕でさえ、自分もまだまだガキだなと感じているので(笑)。30歳すぎたからと悲観することなく、突き抜けてもらいたいです。インタビューを終えてみて…。音楽を深く愛し、どこまでも前向きな樋口さん。病気であることを感じさせない力強い言葉には、背中を押されるような感覚がありました。「音楽をやることが自分の役割だったと言われたい」とも語っていた樋口さんの活動をこれからも楽しみにしたいと思います。次にダンスをするのはあなた!実話を基にパーキンソン病を抱えながら生きる人たちのリアルを描きながら、家族や周囲の人たちとしっかりと向き合うことの大切さも描いている本作。自分らしい生き方を見失いがちな現代に生きる人たちにとっては、「自分だけではない」と新たな一歩を踏み出す勇気をもらえるはずです。写真・園山友基(樋口了一)取材、文・志村昌美ストーリー家庭を顧みることなく、仕事一筋で生きてきた功一。妻とはすれ違いが続き、娘とも仲が悪くなってしまう。そんなある日、若年性パーキンソン病だと診断されるも、それを受け入れることができず、一人で孤独を抱えていた。職場でも仲間が離れていくなか、パーキンソン病のコミュニティに通い始める。本音を話せる友人ができたことで、人とのふれあいの大切さと痛感するのだった。そして、不仲だった娘ともダンスを通じて、お互いの関係を改善しようと試みることに…。まっすぐな思いが詰まった予告編はこちら!作品情報『いまダンスをするのは誰だ?』10月7日(土)より新宿K’scinemaほか全国順次公開配給:アークエンタテインメント(C)2022いまダンフィルムパートナーズ写真・園山友基(樋口了一)
2023年10月05日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は海外で見つけた個性的なバッグにクローズアップしてみます。フリンジがかわいい!彼女のファッションカラーとピッタリとマッチしたバッグは、フリンジがバッグより長くついた個性的なデザイン。バッグというよりはアクセサリーの一部として見たほうが正しいかもしれません。もふもふとした可愛いクラッチ犬のようにもふもふとして丸っこいクラッチは、Tシャツやデニムなどのシンプルなスタイルにピッタリ!ファッションのメインポイントのように目を引きます。強烈な個性を発揮するバッグさて、こちらはなんとも不思議なバッグというかアクセサリーというか。確かに中にモノを入れているようなのですが、彼女の服装とのマッチポイントが全くないからこそ、印象的でありアクセサリーの役割をしているように感じるバッグです。超ミニショルダーバッグ未だに人気の超ミニシリーズ。こちらは人気の『BOYY』というブランドのショルダーバッグ。携帯すら入らないサイズですが、のリップやカードは入るくらい。ネックレスのように愛用できそう。円形の個性的なレザーバッグレザーバッグでそれほど見たことがない円形のバッグ。ある程度の荷物は入りそうですし、品もあって素敵!いかがでしたでしょうか?世の中にはいろんなデザインのバッグが存在するんですね。バッグはひとつのアクセサリーとして今や愛用されています。ぜひ今後のファッションアイテムに、自分らしいバッグをチョイスしてみてください。写真・文 平野秀美
2023年10月01日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は先週開催されたロンドンファッションウィークでもよく見かけたホワイトをメインに使ったファッションをピックアップしています。ホワイトファッションがあふれていたロンドンファッションウィークホワイトは着こなしやすい!かわいらしい彼女のふんわりスカートが魅力的なスタイル。白とダークグリーンのベストの相性も抜群!ホワイトは、どんな色とも相性が良く、コーディネートの幅が広がるんですね。シンプルで着やすさ抜群!今回ご紹介する2種類のシャツタイプのワンピースのうちのひとつ。どちらもとてもシンプルでありながらもインパクトがあり、主張が強くなりすぎないのが特徴。こちらのシャツは胸元のちょっとしたデザインと、腰上がりの広がったシルエットが魅力的でインパクト大。こちらのシャツワンピースは、長めで清潔感を感じさせる軽やかなデザイン。どんな小物や色にも合わせやすそう。季節問わず愛用できるホワイト白は四季を通して着用可能で、他のアイテムや色次第で、季節感を持たせることができるのが魅力ですよね。こちらはシンプルにスニーカーやメガネもホワイトで統一しながらも、ふんわりとしたワンピースにぴったりな、淡いグリーンのショルダーバッグをチョイス。優しい雰囲気を上手に演出しています。ホワイトはフォーマル対応も抜群!ホワイトはフォーマルな場面でもカジュアルな場面でも使える汎用性があるのも特徴的。大胆な肌の露出も、いやらしくなく上品に見せてくれるのが魅力。高級感も感じさせてくれるホワイトは高級感があり、エレガントな印象を与えてくれます。個性的で大胆なデザインでも、エレガントに見せてくれる!視覚効果も抜群!ホワイトは光を反射し、着痩せ効果や肌の透明感をアップさせる効果もあるんだとか。自分の体にあったドレスを上手に着ることで、その効果は最大限に発揮されそうです。いかがでしたでしょうか?ホワイトシャツワンピース、ふんわりワンピース、パーティドレスなど、さまざまなファッションでホワイトは取り入れられています。夏以降もホワイトは安定した人気。ぜひ今後のファッションに活用してみて下さい。写真・文 平野秀美
2023年09月30日仕事へのモチベーションが下がってしまうときは誰にでもありますが、そんなときにオススメなのは、第一線で活躍し続けている人たちの姿から学ぶこと。今回ご紹介するのは、“天才ファッションデザイナー”と呼ばれるジャンポール・ゴルチエの素顔と半生に迫っている注目のドキュメンタリーです。『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』【映画、ときどき私】 vol. 601ファッションシーンで数々の旋風を巻き起こし、奇想天外でファンタスティックなデザインで有名なクチュリエのジャンポール・ゴルチエ。そんな彼が新たに挑んでいたのは、ミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」だった。しかし、自身のコレクションと2足の草鞋を履いて創り上げるショーの舞台裏はトラブルの連続。ゴルチエとそのチームは、衣装合わせ、初のリハーサル、ダンサーの故障、演出のいざこざなど、さまざまなアクシデントに見舞われていた。果たして、無事に初日を迎えることはできるのか…。マドンナやカトリーヌ・ドヌーヴ、そしてファッション界の女帝アナ・ウィンターなど、数多くの豪華メンバーが登場していることでも話題の本作。そこで、見どころについてこちらの方にお話をうかがってきました。ヤン・レノレ監督選挙中だったフランスのエマニュエル・マクロン大統領を描いたドキュメンタリーなどを手掛け、ドキュメンタリー作家としてキャリアを積み重ねているヤン監督。本作では、2018年にパリで初演を迎えて以降、東京や大阪をはじめ全世界35万人の観客を熱狂の渦に巻き込んだミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」の舞台裏に密着しています。今回は、ジャンポール・ゴルチエとの撮影から感じたことや撮影秘話、そして日本との意外な繋がりなどについて語っていただきました。―これまでさまざまな著名人に密着されていますが、そのなかでもゴルチエさんは監督から見てどんな存在ですか?監督ドキュメンタリー作家としては彼を撮ることができるのは喜びでしたが、正直に言って、ゴルチエは僕が撮ってきた人物のなかでも一番クレイジーな人だと思っています(笑)。というのも、彼はつねにクリエーションのことを考えていて、いつも“スパークリングしている人”ですからね。アイデアがどんどん出てきてしまうので、1つの衣装を完成させるまでに10回以上変更することもあるくらい。一緒に働いている人は、本当に大変だと思います。でも、それはよくするための過程であり、そのプロセスによって素晴らしいものが生まれていくというのがわかりいました。バックステージだけでなく、内面も撮ることができた―撮影に関しても、ご本人から指示されるようなことはありましたか?監督僕に対しては、クレイジーな要望はありませんでしたね(笑)。というのも、僕が用いているドキュメンタリーの手法というのは、対象者に介入せずにありのままをずっと撮っていく方法だからです。そんななかで印象に残っているのは、彼が自分のクレイジーさに気がつく瞬間。それは映画のなかでも見ることができますが、靴のせいで足首を痛めてしまったダンサーに対して、「申し訳なかった」と謝ったときです。自分自身で行き過ぎていることに気づき、クレイジーな欲求にもリミットがあること彼は知ったようでした。―そういった普段ではなかなか見ることができないような瞬間もカメラに収められていますが、どのように撮影を行ったのかを教えてください。監督ドキュメンタリー作家として、自分の強みだと思っているのは、対象者と長い時間をともに過ごして撮影を行うこと。僕の場合、6カ月未満で撮ることはありません。実際、過去にテディ・リネールという柔道家のドキュメンタリーを撮った際には3年密着しましたし、ゴルチエも1年間かけて撮っています。そんなふうに彼らの生活のなかに存在してずっと撮り続けるというのが、僕のドキュメンタリーの秘訣です。今回もつねに相手のそばにいることができたおかげで、バックステージだけでなく彼の内面の部分まで撮ることができました。クリエーションに必要なのは、違うものを衝突させること―また、非常に豪華なセレブたちも数多く出演されていますが、それゆえに撮影においては大変なこともあったのではないかなと。監督そうですね。“大スター”と言われる方々をドキュメンタリーで撮るというのは、非常に難しいことだなと改めて思いました。たとえば、マドンナの場合は専属のカメラマンにしか映像は撮らせない方なのでその映像を使ってほしいと言われましたし、カトリーヌ・ドヌーヴからは「演技する前後はいいけど演技中は撮らないで」という要望がありましたからね。そのほかの方々も、人によってそれぞれいろんなリクエストがあったほどです。ただ、きちんと説明をすればみなさん理解はしてくださるので、その都度こちらが適応して撮ることが大事だと感じました。―映画のなかで印象的だったのは、ゴルチエさんから発せられる言葉の数々。なかでも、「違いとは特別である」というひと言には勇気づけられる方も多いと思いますが、監督は違うことの素晴らしさについては、どう感じていらっしゃいますか?監督クリエーションにおいて言うならば、違いという名の“ショック”を与えるというのは必要なことではないでしょうか。実際、ゴルチエも一見まったく関係のない要素を衝突させることによって、彼のクリエーションを成立させているんです。モチーフや素材、カラーなど、あえて違うものを合わせていますが、勇気を持ってそれができるかどうか、というのが彼の創作活動における肝だと思います。なので、普段自分がいる場所から出て行くというのも大切なことかなと。フランス人が日本に行ったり、逆に日本の方がフランスに来たりすると、現地にいる人たちでは気づかないものを見い出したりすることがありますよね。あえて違う国に行くのも、面白いクリエイティブに出会える方法だと考えています。自分のなかにも、日本は息づいている―なるほど。ちなみに、日本に対してはどのような印象をお持ちでしょうか。監督実は、僕は日本とは個人的な繋がりがあるんですよ。というのも、キリスト教の司祭をしていた僕の叔父は、川崎に21年間暮らしながら労働者の方々に向けて宣教を行っていた人なんです。70年代当時はまだ組合がなかったそうなので、彼は労働者の人たちをサポートしながら、組合を作る手助けもしたと聞いています。なので、企業側からしてみれば、彼は出る杭のような邪魔な存在だったかもしれませんね…。その後、叔父は自身の経験をまとめて本に書き、「出すぎた杭」というようなタイトルをつけましたが、彼は日本社会においては、“突き抜けた釘”のような人だったと思います。でも、僕にしてくれた日本の思い出話は、実際に生活していた人だからこそ語れることばかりだったので、それはいまでも僕のなかでも息づいていると感じています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督彼の作る服というのは、決して産業的なものではありません。だからこそ、それを身につけると誰もが自分を解放し、トランスフォーメーションすることもできるのです。そして、その姿はまさにアートであり、彼のモードでもあると言えるでしょう。それだけでなく、現代のスターたちがいまも90年代にゴルチエが作ったものを求めるという現象は、本当にすごいことですよね。これからもゴルチエとモードの関係性というのは、ずっと残るものですし、巡り巡っていくサイクルのなかに彼は存在していて、これからも生き続けていくと僕は思っています。多様性と想像力に溢れる生き方に刺激される!魅惑的なファッションで、日常を忘れてしまうほどの豪華絢爛な世界へと誘ってくれる本作。その真髄となるジャンポール・ゴルチエのクリエイティビティに触れることで、観る者の人生もきっと彩り豊かになるはずです。取材、文・志村昌美華やかな予告編はこちら!作品情報『ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇』9月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマカリテほか全国公開配給:キノフィルムズ️(C) CANAL+ / CAPA 2018
2023年09月27日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は気軽なパーティなどにピッタリなスタイルをピックアップしてみました。急なお呼ばれでも、これを参考にすれば安心してファッションを楽しめそうです。上品ブルーで美人スタイル清潔感溢れる淡いブルーはとても上品。ちょっとしたパーティにピッタリな珍しいふわふわの素材と肩出しスタイル。肩出しは女性らしさを強調し、一気に華やかなスタイルにもなります。派手にするのは一部だけ!?さて、とても参考になるこちらの着こなしかた。シャツやバッグなどはシンプルで、どんな時でも着ていけるようなデザインですが、スカートだけは思いっきりパーティ仕様。このように、ファッションの一部だけでも思いっきり派手にするだけで、ちょっとしたイベントなどに行くには十分なスタイルに早変わり!自分らしさを知っておくモダンでもとても落ち着いた雰囲気のこのスタイル。深めのグリーンが印象深く、素材が上品なロングワンピース。バッグもクラッチではなくあえてハンドバッグにすることで、他のかたとの差別化を図っています。ポイントでインパクトを!こちらはオシャレで可愛らしいトップスが印象的!さらにトップスがショート丈というところが、さらに全体のバランスをスタイリッシュにしてくれています。大きな花が咲いたようなシャツと、ネイビーロングスカート、彼女の長めなボブヘアがぴったり!色の使い方がパーフェクト!鮮やかなタイダイ風のショートパンツセットアップスタイル。白と相性も抜群!特に淡いピンクのサングラスは、単体として印象を高めていてスタイリッシュ。パーティでは厚底やヒールといった高めのシューズでよりスタイルの良さをアピールするのも良し!いかがでしたでしょうか?結婚式やパーティなどにお呼ばれされて、何を着ていけばいいか困ることってありますよね。そんな時に、色の使いかたや着こなしかた、小物の使いかたとして参考になれば幸いです。写真、文・平野秀美
2023年09月24日東京・上野の森美術館で10月20日から「モネ 連作の情景」がはじまります。本展のナビゲーターは、俳優の芳根京子さん。今回、モネゆかりの地フランスを訪れた芳根さんに、モネやアートの魅力について、語っていただきました!芳根京子さんがナビゲーター!芳根京子さん【女子的アートナビ】vol. 311印象派の巨匠、クロード・モネ(1840-1926)の人生に影響を与えた第1回印象派展が開かれたのは1874年。それから150年の節目を迎えることを記念して開かれる「モネ 連作の情景」では、フランスやアメリカ、ドイツなど世界各地や日本の美術館などからセレクトされた代表作60点以上が展示されます。本展では、特にモネの「連作絵画」にスポットをあてて紹介。同じ場所やモティーフを異なる時間や季節で描いた「連作」という表現手法は、画家の代名詞にもなっています。有名な〈睡蓮〉や〈積みわら〉をはじめ、ノルマンディー地方の景勝地〈エトルタ〉などの作品も展示される予定。初来日作品もあり、新たなモネの世界を発見できる展覧会になりそうです。そんな芸術の秋にぴったりの展覧会でナビゲーターを務めるのが、俳優の芳根京子さん。本展の記者発表会に登壇した芳根さんにインタビューも行い、モネやフランス旅のことなど、いろいろお聞きしてきました!私で大丈夫かな、と…クロード・モネ《睡蓮の池》1918年頃 油彩、カンヴァス 131.0×197.0cm ハッソ・プラットナー・コレクション © Hasso Plattner Collection――まず、ナビゲーターに就任されたご感想を教えてください。芳根さんアートはそれほど詳しくないので、私で大丈夫かな、と思いました。でも、母が美大出身なので、母と一緒に美術館に行く機会はこれまで何度もありました。「アートをもっと知りたい」という気持ちはあったので、このお仕事に飛び込ませていただきました。私のようにアートに詳しくないけど興味がある、という方などが、今回の展覧会に足を運ぶきっかけになったらうれしいです。――この夏、本展特別番組撮影のためフランスに訪れたそうですね。どんな場所に行かれましたか?芳根さんモネの故郷であるフランスで、彼の人生をたどる旅をしてきました。モネが見てきた世界、描いてきた景色や作品も見ましたし、後半生を過ごした自宅も訪れました。――フランスでご覧になったモネの作品で、印象に残っているものはありますか?芳根さんインパクトが強かったのは、オランジュリー美術館にあった睡蓮の作品です。360度モネの作品に囲まれるので、ステキでした。また、ずっと見入ってしまった作品は、マルモッタン美術館にあった《印象、日の出》です。本物の景色を見ているような不思議な気持ちになり、ずっと見ていられる感じでした。実際に、モネが見たであろうリアルな日の出もル・アーヴルで見せていただいたのですが、その場所は特に印象的な建物があるわけではなく、きれいな日の出が見やすい場所でした。モネは、そんな日常の自然の景色を魅力的に切り取る力が高かったのだな、と感じました。まさか私の人生で行けるとは…――モネは日本好きとしても知られていますが、今回の訪問で日本を感じられる場所はありましたか?芳根さんモネが後半生に住んでいたジヴェルニーの家を訪問したとき、家の中に浮世絵がたくさん飾られていました。また、庭には日本風の橋がかかっていて、全体的に「和」を感じました。その庭園は、派手ではないけれど美しさがあり、モネは日本のことがお好きだったのだな、と感じました。――日本とは遠く離れたフランスで、日本を感じられる庭園をご覧になっていかがでしたか。芳根さんすごくうれしかったです。モネの庭は、アートについて詳しくない私でも知っているような場所でしたが、まさか私の人生で行けるとは思っていませんでした。そこでは、庭を手入れされている庭師の方ともお話をさせていただいたのですが、高知にある「モネの庭」にも関わっていらっしゃると聞いたので、さっそく高知行きの飛行機を予約しました(笑)。「モネの黒」を見てみたいクロード・モネ《昼食》1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cm シュテーデル美術館© Städel Museum, Frankfurt am Main――今回の展覧会で、注目している作品はありますか?芳根さんフランスで睡蓮の池を見てきたので、やはり睡蓮の作品です。国内外から集められた睡蓮の絵がまとめて見られるというので、とても楽しみです。また、今回はじめてフランスに行ったので、パリの街並みを描いた作品も見てみたいです。実際にパリを見てから絵を見ると、「そうそう、パリはこんな感じ」と思えそう(笑)。あとは、初来日の《昼食》も楽しみです。モネが黒い色を使うのは珍しいそうなので、「モネの黒」を自分の目で見たいです。――モネ作品、どんなところがお好きですか?芳根さん光もすばらしいと思いますが、五感で楽しめる絵のような感じがします。実際に、そんなことないのですが、絵から香りがするような気がするのです。また、絵によってそこに流れている空気が違う気がして、体験型みたいな、目だけではない楽しみ方があるなと思いました。――展覧会では音声ガイドも担当されます。これから収録があるそうですが、意気込みを教えてください。芳根さん音声ガイド収録ははじめてなので、とにかく絵を見ている方のお邪魔にならないよう、寄り添えるものになるよう心掛けたいと思います。またモネにあまり触れたことがない方も、モネの絵を見て音声ガイドを聴いて、「モネ好きだな」と思ってもらえたらうれしいです。実際にフランスに行く前と行った後では、モネに対する思いが本当に違うので、そんな私だから表現できる音声ガイドになればと思います。モネに親近感――モネの人生は平坦ではなく、いろいろあって一流の画家になっていきますが、そんな彼の人生をどう思いますか?芳根さんモネは、一人前の画家になるために、悩んで葛藤して、いろいろなものを乗り越えてきました。ただの天才ではなく、ちゃんと悩んで前に進んだ人なのだなと思い、同じ人間のような感じがしてホッとしますし、親近感がわきます。あれだけの作品を生み出しているので、自信家であってもおかしくないと思うのですが、そうではなく、人間味があります。目を患いながらも絵を描き続け、傑作を生み出しているというのがすごいです。――ちなみに、モネは美食家としても知られていますが、芳根さんがフランスで食べて印象に残っているものはありますか?芳根さん毎日食べていたのは生ハムでした。朝からホテルで食べて、昼も夜も食べて(笑)。もともと生ハムは好きでしたけれど、これほど毎日3食全部食べていたのは、本当においしかったからだと思います。全然飽きないのです(笑)。フランスらしいお料理では、ガレットもよかったです。母に解説してあげたい――あまりアートに詳しくないと仰っていましたが、今回のお仕事で何か変わりましたか?芳根さん今まで、アートは知識がないと楽しめないのかな、と自分の中で勝手にハードルを上げてしまう部分があったのですが、このお仕事をきっかけに母と美術館回りをはじめ、フランスに行く前に、はじめて「一人美術館デビュー」もしました。――どの美術館で、デビューされたのですか?芳根さんちょうど松岡美術館(東京・港区)で印象派の展覧会が開かれていたので、チャンスだと思って駆け込みました。とてもよかったです。事前に、モネは光に注目するといいと教わったので、その点を意識して見てきました。何かに注目してアートを見るという経験が、これほど楽しいとは思わなかったです。記念にポストカードも買いました。――お母様は美大出身ですので、ご一緒に美術館に行かれるときは、お母様が作品解説をしてくれるのですか?芳根さん母もそんなに詳しいわけではないのです。きっと、モネに関しては私のほうが詳しいと思います(笑)。母も父も、「モネ 連作の情景」に行きたいといっていて、一回目に行くときは音声ガイドを聴いて、二回目は私を連れて行きたいと話していたので、そのときは隣で解説してあげるね、といいました(笑)。今回、モネのことを集中して学びましたが、とても楽しくて。一気にアートのことをすべて知ろうとすると、範囲が広すぎて難しいと思いますが、美術館にあまりご縁がない方でも、モネは入りやすくて飛び込みやすい世界かなと思います。――では、最後に展覧会を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。芳根さん私もアートは難しいのかな、と思い込んでいたのですが、全然そんなことはなくて、絵を見たときにあふれてくる感情に間違いはないし、否定されることはないと今回のフランス旅で思いました。絵を見ているだけで、パワーやエネルギーがダイレクトに感じられて、4日間のフランス旅でしたが、人生が豊かになった気持ちになりました。今までモネに触れたことがなかった方も、音声ガイドでサポートさせてもらうので、安心して足を運んでいただけたらと思います。今回は、世界中からモネの作品だけが集められた「100%モネ」の展覧会になっていますので、モネが好きな方、美術館やアートが好きな方も、絶対楽しめる展覧会になっていると思います。ぜひ、みなさんもお越しください。――いろいろお話しいただき、ありがとうございました!取材を終えて…キラキラと目を輝かせて、モネやフランス旅のことを楽しそうに語ってくれた芳根さん。ナビゲーターのお仕事をきっかけに、モネやアートに興味をもち、とても多くのことを学ばれて努力しているお姿にも感動しました。芳根さんのモネへの愛が100%詰まったものになりそうな音声ガイドも、聴くのが楽しみです。なお、芳根さんが出演される「モネ 連作の情景」の特別番組は、11月11日(土)にフジテレビ(関東ローカル)で放送される予定。展覧会とあわせて、こちらもご覧ください。Information会期2023年10月20日(金)〜2024年1月28日(日)会場上野の森美術館時間9:00〜17:00金・土・祝日は〜19:00※入館は閉館の30分前まで休館日2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)入館料日時指定予約推奨平日(月〜金)一般 ¥2,800/大学・専門学校・高校生 ¥1,600/中学・小学生 ¥1,000土・日・祝日一般 ¥3,000/大学・専門学校・高校生 ¥1,800/中学・小学生 ¥1,200※会期中は、上野の森美術館チケット窓口にて当日券を販売。混雑時は入場をお待ちいただく場合がございます。※本展は大阪に巡回します。【大阪展】2024年2月10日(土)~2024年5月6日(月・休)大阪中之島美術館※東京展と大阪展は一部展示作品が異なります。
2023年09月24日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は、2023年9月15日から開催されたロンドンファッションウィークで出会った、イケメンたちのスタイルをピックアップして紹介します。シックでシンプルに双子のインフルエンサーのおふたり。素足はもちろんソックス無し!イケメンのかたはかなりの確率で無ソックスなのですかね。それにしても、シンプルながらもセクシーさを感じさせてくれるスタイリッシュな着こなしです。イケメンはタンクトップ愛用率高い!?無地でシンプルなボトムスにタンクトップ。小物やジュエリーを上手に取り入れている、ファッションウィーク中では珍しく消極的な印象のシンプルさ。タンクトップが彼らしさを発揮しているのかも。色を統一して軽やかなコーデこちらも引き続きタンクトップ。最近本当によく見かけるワイドパンツに、個性的な小物を使用したすっきりとしたスタイル。ネイビー系の色で統一しているところが、全体をより軽やかに見せてくれています。イケメンのキュートな瞬間さて、こちらはロングヘアがトレードマークの彼のスタイル。一見デニムにジャケットと普通な印象です。しかし、高めのヒールのアンクルブーツに浅めのニット帽が彼らしさを強調してます。仕草も何気にキュートに見えるのは私だけでしょうか?シンプルなのに印象的なスタイルこちらもキュートさなら負けていません!笑顔がとっても素敵な彼は、ベレー帽にラウンド型のサングラスを愛用。色のバランスがとっても印象的です。鮮やかなグリーンのベレー帽が全体をインパクトあるスタイルへと導いてくれています。このように、何か1つでも印象の強い色を使うことで、シンプルなスタイルだって一瞬でインパクトある着こなしに変身するんですね。イケメンは全身バーバリーもお手のもの!こちらはバーバリーショーの後。バーバリーチェックが印象深い全身お揃いのカラーで着こなしてくれたイケメン。ホワイト×ブルーのバーバリーチェックのスタイルこちらも鮮やかなブルーとホワイトがとっても印象深いバーバリーチェックを全身に纏ったイケメン!なんでしょう、この上品でいて印象深いファッションは!いかがでしたでしょうか?今回はほんの一部でしたが、ロンドンファッションウィークのイケメンスタイルをご紹介いたしました。これからミラノとパリとファッションウィークはまだまだ続きますので、引き続きイケメンハンティングしていきたいと思います。写真、文・平野秀美
2023年09月23日気になる話題の映像作品をおすすめするコラム【テレビっ子の窓】第9回。日本の作品から韓国の作品まで日々チェックしている、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりがお届けします。「無駄なウソ-誰にも言えない秘密-」U-NEXT独占配信中© STUDIO DRAGON CORPORATION【テレビっ子の窓】vol.9秋といえば、芸術の秋。長い夜を楽しく過ごせるファンタジーからサスペンスまで、おすすめの韓国ドラマをご紹介。それぞれの男性キャストのかっこよさに釘付けになること間違いなしの作品です!ファン・ミンヒョンに釘付け「無駄なウソ-誰にも言えない秘密-」「無駄なウソ-誰にも言えない秘密-」U-NEXT独占配信中© STUDIO DRAGON CORPORATION子役から活動しているキム・ソヒョンと、ボーイズグループのWanna One、NU’EST出身のファン・ミンヒョンが主演のラブコメディ「無駄なウソ-誰にも言えない秘密-」。モク・ソルヒ(キム・ソヒョン)は、嘘を聞き分けて真実を見抜く能力を持つ “ライアーハンター”が生業で、あるとき偶然乗り合わせたバスで、思いがけず若い男性のピンチを救います。「無駄なウソ-誰にも言えない秘密-」U-NEXT独占配信中© STUDIO DRAGON CORPORATION以降も、よく巡り合わせるその謎の男性は、ソルヒの住むマンションの隣の部屋に引っ越してきた天才作曲家キム・ドハ(ファン・ミンヒョン)だと判明。華麗なる経歴ながら、なぜかいつもマスクで顔を隠して世間に姿を見せないドハと、他人にありのままの自分を見せられないソルヒはいつしか惹かれ合って…。甘いマスクのファン・ミンヒョンがピアノを弾く姿や、ふたりの恋、ある事件の真実から目が離せません!カン・ハヌルにシビれる「インサイダー」「インサイダー」U-NEXT独占配信中© SLL Joongang Co.,Ltd all rights reserved.演技派カン・ハヌルが主演するアクションサスペンス「インサイダー」。司法修習生のキム・ヨハン(カン・ハヌル)は、信頼する上長の指示により、賭場への潜入捜査を決意するも、捜査は難航。そのうえ、より危険な刑務所へ潜入することになってしまいます。「インサイダー」U-NEXT独占配信中© SLL Joongang Co.,Ltd all rights reserved.さらに、思いがけない事件にも巻き込まれてしまうヨハン。さまざまな出来事が重なり、命懸けの賭けをするなかで、ヨハンは刑務所のトップへと上り詰めていくのですが…。善良だった司法修習生が刑務所で死闘を繰り広げるようになりハラハラしますが、その状況や心情の変化を見事に演じ切るカン・ハヌルのクールさにシビれるはず!オレ様キャラのイ・ミンギに注目『ヒップタッチの女王』Netflixシリーズ「ヒップタッチの女王」独占配信中名作ドラマ『まぶしくてー私たちの輝く時間―』(2019年)の演出キム・ソギョン×脚本イ・ナムギュのコンビと、ハン・ジミン、イ・ミンギによるサイキックコメディ「ヒップタッチの女王」。田舎町で、叔母と獣医の祖父がいる動物病院を受け継いだ獣医のポン・イェブン(ハン・ジミン)は、流星群が見える夜に“おしりをさわるだけで過去が見える”不思議な能力を手に入れます。Netflixシリーズ「ヒップタッチの女王」独占配信中一方、ソウルから左遷され、田舎町の警察署にやってきた熱血刑事のムン・ジャンヨル(イ・ミンギ)。ふたりが出会い、さまざまな事件解決のために力を合わせて挑むうち、だんだんと距離が縮まっていくのですが…。ハン・ジミンのコメディエンヌぶりもさることながら、ちょっとオレ様気質のキャラを演じるイ・ミンギの男前オーラにも注目です!ツンデレのロウンが可愛い「この恋は不可抗力」Netflixシリーズ「この恋は不可抗力」独占配信中SF9のロウンと、チョ・ボアによるファンタジーロマンス「この恋は不可抗力」。何百年も続く呪いに苦しめられている敏腕弁護士のチャン・シンユ(ロウン)と、その呪いを解く鍵を手に入れた公務員のイ・ホンジョ(チョボア)が出会います。封印された禁書の入った木箱を受け取ったホンジュが禁書の術を使うと、シンユの様子が大変化して…。ロウン演じるクールなシンユが豹変し、愛を語るようになってからのまなざしやセリフも要チェックです!ラブストーリーからアクションサスペンスまで、どの韓国ドラマのキャストも、それぞれがカッコよくて見入ってしまうはず。気になる主人公やストーリーから、まずは気軽に作品を楽しんでみてくださいね!文・かわむらあみり文・かわむらあみり
2023年09月23日アメコミからは大ヒットを記録する作品が数多く誕生していますが、そのなかでも映画、アニメ、ゲームなど幅広い分野で世界的な人気を誇るシリーズのひとつといえば『ミュータント・タートルズ』。今回オススメするのは、ティーンエイジャーとなった4人組のカメたちが繰り広げる冒険をCGアニメで描いた最新作『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』です。そこで、日本語吹替版の声優を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。宮世琉弥さん【映画、ときどき私】 vol. 6002019年に俳優デビューを果たしたのち、ドラマ『恋する母たち』や『君の花になる』などの話題作へ次々と出演して注目を集めている宮世さん。現在は音楽活動にも取り組むなど、多岐にわたる活躍を見せています。そんななか、本作では声優に初挑戦。“チーム・タートルズ”と呼ばれるミュータント化してしまったカメの兄弟の一員で、リーダーを務めているレオナルドの声を担当しています。そこで、役作りの裏側や10代最後にしたいことなどについて語っていただきました。―小さい頃から『ミュータント・タートルズ』がお好きだったそうですが、きっかけは何ですか?宮世さん実は、僕は家系的に見てもカメとはご縁があるんです。実際にカメを飼ってたこともありますし、昔からタートルズの実写版を観たり、フィギュアを持っていたりしたので、声優のお話が決まったと聞いたときはびっくりしました。―まさに運命的ですね。そのことはご家族にも話されたんですか?宮世さん「声優をすることになった」と伝えたら、すごく喜んでくれました。最近もお父さんが映画館に飾ってあるタートルズのボードを見つけて、わざわざ写真を送ってくれたほどです。この作品を通して、世界に触れられたような気がした―今回のアフレコを通して、新たな魅力を感じた部分もありましたか?宮世さんタートルズたちは小さい頃から人間に見つからないように生活をしてきているので、彼らにとって外の世界は当たり前じゃない。レオナルドを演じていて、自分もいま当たり前だと思っていること1つ1つが大切なことなんだと教えてもらいました。―名字の「宮世」には、出身地である宮城から世界へ羽ばたけるようにという思いが込められているそうですが、この作品では世界を近くに感じたのでは?宮世さん今回はアフレコのときにちょうど日本にいらっしゃったジェフ・ロウ監督ともお会いできましたし、歴史のある作品でリーダー役の声優を務めさせていただいたので、世界にちょっと触れられたような気がしました。この作品を広めたいというのはもちろんですが、自分の音楽なども含めて、いつかは日本だけでなく海外の人にも知ってもらいたいという気持ちが高まっています。―ちなみに、宮世さんもタートルズのように親の言うこと聞かずに外へ飛び出しちゃうタイプですか?宮世さんはい、僕も飛び出すタイプだと思います。特に、このくらいの年齢のときは、親の言うことを聞いていなかったですね(笑)。なので、共感する部分はたくさんありました。タートルズと同じく、15歳で新しい世界を知った―劇中のタートルズは15歳という設定ですが、ご自身も15歳で俳優デビューをしたので、そこがひとつの転機だったのではないかなと。宮世さんそうですね。僕も15歳はいろんな経験をさせていただいた年だったので、タートルズと同じような気持ちだったかもしれません。新しい世界を知り、新しい人と出会って繋がっていったという意味では似ている気がします。―では、できあがった作品をご自身で観たときの感想を教えてください。宮世さん初めてのことですごく緊張していましたし、周りの声優さんたちが本当にすごい方ばかりなので、全力は尽くしましたが反省する点は多いように思いました。でも、逆に反省することがなくなったら終わりかなとも感じているので、もっとよくなるようにがんばっていきたいです。大変だったけど、自分らしさを出すことができた―とはいえ、これまでの俳優業で得たものが活かされた部分もあったのではないでしょうか。宮世さん普段、役作りをするときは自分の“引き出し”を増やすために、いろんな作品をたくさん観るようにしているのですが、そこは役に立ったのかなと。その作業をするとイメージがしやすくなって、台本の読み取り方が全然違うんです。たとえば、今回も『キングスマン』とか『ジョン・ウィック』、『マトリックス』みたいな作品を観ていたおかげで、敵と戦うシーンはうまくできました。そういうところは、役者をやっていてよかったなと思ったところです。―なるほど。逆に、苦労したのはどんなシーンですか?宮世さん殴られたときの音や呼吸の音とかは難しかったですね。役者の場合だと、実際の行動と合わせて出るものなので、それをせずにただ映像を見ながらするのは大変でした。でも、いろんなアドバイスをしていただいたおかげで、自分らしさも出せたと思っています。プレッシャーもありましたが、楽しかったです。―ということは、今後もまた声優には挑戦してみたいと。宮世さんこの作品は続きがあるかもしれないので、ぜひもう一度したいです。そのためにも、ヒットさせられるようにがんばります!相手のことを考えられる大人になれるように成長したい―“チーム・タートルズ”の4人は、それぞれ違った個性を武器に強大な敵に立ち向かいますが、宮世さんが考えるご自身の強みはどんなところ?宮世さん僕は顔が特徴的なところもあるので、自分にしか出せない表情というのがあるんじゃないかなと感じています。あとは力の入れ方によって目の印象を調整できるので、目も武器だと思っています。―逆にコンプレックスみたいなものはあるのでしょうか。宮世さん直したいという意味では、すぐに思ってることが顔に出てしまうところです(笑)。20代になったら、もう少し大人になりたいなと。相手が喜ぶことをしてあげたいので、相手のことをちゃんと考えられる人になれるように成長していきたいです。―10代もいよいよ最後の年になったので、いまのうちにしておきたいこともあるのではないかなと。宮世さん自分のお金で海外旅行をしてみたいです。1人でバックパッカー的な感じで行けたらいいなと思っています。―どこに行きたいですか?宮世さんフィンランドでオーロラを見たり、ギリシャに行ったりできたらいいですよね。自然のあるところに行きたいです。いつかお芝居で賞をもらえるようになるのが目標―理想の休日の過ごし方はありますか?宮世さんありがたいことに最近はすごく忙しいので、いまは寝る時間が一番うれしいです(笑)。でも、お仕事は本当に楽しいですし、若い間しかこんなに動けないので、「大変だったけど、そのおかげでいまがある」といつか思える日が来ると信じています。―では、近い将来の目標と遠い将来の目標を教えてください。宮世さんいまは本気でお芝居に取り組んでいるところなので、そのなかで賞をいただけるようになれたらいいなと思っています。あとは、これまでお仕事した方々とまたご一緒して、みんなで切磋琢磨しながらいいものを作っていきたいです。先の目標としては、『ミュータント・タートルズ』を『ハリー・ポッター』みたいにシリーズ化させて、ぜひ8まで続けたいですね(笑)。―期待しています。それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。宮世さんみなさんも疲れることがあるかもしれませんが、「疲れた」ということはがんばった証拠です。そういうときは自分が幸せになれる楽しいことをして、自分へのご褒美をちゃんとあげてください。僕もがんばりますので、お互いにがんばっていきましょう!そして、僕の作品を観て、元気になっていただけたらうれしいです。インタビューを終えてみて…。タートルズたちと同じように、冒険心とヤンチャさを兼ね備えているところが魅力の宮世さん。これからどんな形で世界へと向かっていくのか、楽しみなところです。まずは、初挑戦とは思えない見事な吹き替えにもぜひ注目してみてください。タートルズの新たな魅力の虜になる!現代のストリートカルチャーや遊び心をふんだんに詰め込み、ストーリー的にも映像的にも見どころ満載の本作。ティーンエイジャーだけでなく、幅広い層が一緒に楽しめること間違いなしの1本です。写真・園山友基(宮世琉弥)取材、文・志村昌美ストーリー子供のころより、“危険な存在”とされる人間から隠れて暮らしてきたタートルズたち。しかし、人間が住む大都市ニューヨークで、“普通のティーンエイジャー”としてみんなに愛され受け入れられたいと思っていた。ミュータント化してしまったカメの兄弟レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ、ドナテロの4人は、その願いを叶えるために新たな友人エイプリルの助けを得て謎の犯罪組織との戦いに繰り出す。そんな彼らの前に現れたのは、ミュータント化した敵の大群だった…。テンションが上がる予告編はこちら!作品情報『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』9月22日(金)全国公開配給:東和ピクチャーズ(C) 2023 PARAMOUNT PICTURES.TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES IS A TRADEMARK OF VIACOM INTERNATIONAL INC.写真・園山友基(宮世琉弥)
2023年09月21日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回はコペンハーゲンファッションウィークで撮影した写真の中から、印象的なカラフルなスタイルをご紹介いたします。独特な色を大胆に使う!コペンハーゲンは、北欧の中でも独特なファッションセンスで知られています。統一感のない色でもこんな感じで着こなせちゃうのはさすが!ピンクとグリーンだけでなく、イエローが入ることで、3つのカラーが調和しているように感じます。完全に異なる柄とカラーを楽しむアンバランスに見えがちな柄×柄のスタイルでも、合わせてみると意外と面白い組み合わせだったりするんですね。こちらはインパクト大の組み合わせが印象に残るスタイル。好き嫌いはあると思いますが、こういう全く異なる柄や色でも、上手にスタイリッシュに着こなしてるのはさすがです!個性豊かな色たちの共演!こちらは目を奪われる爽やかなブルーが印象的なファッション。オレンジとホワイトがブルーに魅力を吹きこむかのように、お互いのカラーが存在感を増しているようです。縦ラインのアウターも個性的で印象深い!カラフルなStine Goyaのトレンチコート!ここまできたら、思いっきりカラフルにカラーを楽しんでいるよう。クラッチバッグのグリーンもスカートの濃いピンクも、全てトレンチコートとの組み合わせが似合っています。どんな色の小物でも合わせやすいそうです!色のトーンが違うカラーマッチこちらは濃いレッドのニットが目をひく中で、淡いシルキーなライトブルーがさらに上品にインパクトを強調していて、とても面白い組み合わせです。色のトーンが異なるカラーを一緒に使うのは、なかなか難しいのですが、こちらはお洒落に着こなしています。かなりの上級者スタイル!やっぱり人気のレッド!実は最近、レッドを使用したスタイルをよく見かけるのですが、今回のコペンハーゲンでも、数多くのレッドを使ったファッションを見ることができました。中でも印象深かったこちらをピックアップ。レッドのブーツ自体が稀な印象ですが、ブーツにぴったりのTシャツや小物に合わせて、きらびやかなミニスカートがバランス良いですよね。今回はカラーを上手に使ったスナップを6選ご紹介しました。みなさんお洒落に着こなしていて、色の組み合わせに悩んだらぜひ参考にしてみてください!写真、文・平野秀美
2023年09月17日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。気温が下がった時や、秋に着用できる軽めトレンチコートや長めアウターは、気温や天気の変動に柔軟に対応しながら、おしゃれを楽しむことができるアイテムとして人気ですよね。今回はいくつかの代表的なアウターの着用スナップを紹介します。かっこいい!ダーク系トレンチコートトレンチコートは言うまでもなく、クラシックで洗練されたアイテムですよね。ダークネイビーやブラックカラーといったダーク系トレンチコートは、さまざまなコーディネートに合わせやすく、ビジネスカジュアルからプライベートカジュアルまで幅広く対応可能。定番ベージュと一緒に、もう1着欲しいかたにはおすすめのカラー!今年注目のホワイト系ロングアウターホワイトやアイボリー系は清潔感があり、爽やかな印象を与えてくれます。着用するだけで、コーディネート全体が明るくなりますよね!また、ホワイト系は中立色のため、さまざまな色やデザインのアイテムとの相性がとても良いです。そのため、比較的さまざまなスタイルに合わせやすいのも特徴です。ど定番だけど、やっぱり可愛い!ベージュのトレンチコートは、ファッションの世界で長く愛され続けているアイテム。カジュアルからフォーマルまで、様々なシーンで使うことができるので、働いている方から学生、主婦など年齢や職業など関係なしに、常に愛用できます。トレンチコート自体がクラシックなデザインであり、流行に左右されにくいので、1着あれば何年も着用できるというメリットも嬉しいですよね。大人っぽさいなら断然カーキ!カーキのトレンチコートは、自然な色合いとシンプルなデザインで上品な印象を与えます。重すぎず軽すぎず、大人の魅力や落ち着きを感じさせることができます。またカーキは春や秋はもちろん、夏や冬にも合わせやすい色なので、年間を通して着用できるのも魅力的ですよね。柄物ロングコートヒョウ柄は無地のコートや一般的な柄に比べて、非常に目を引くデザイン!そのため、シンプルなコーディネートでもアクセントとして機能します。今回このかたのように、カジュアルなTシャツとデニムスタイルでも、ヒョウ柄のコートを羽織るだけで、断然雰囲気が変わります!今年は挑戦してみたい柄の1つです。使いやすいライトグレー!ライトグレーはシンプルでありながらも、洗練された印象を与えてくれます。ビジネスカジュアルや都会的なスタイルと特に相性が良いカラー!また色や素材によっては、雨の日にも使えるのが特徴です。こちらのかたのように、インパクトのある色と重ねることで、印象も変えることができます。いかがでしたでしょうか?これからの季節、人気のトレンチコートやロングコートが活躍する季節になるので、ぜひ参考にしてみてください。写真、文・平野秀美
2023年09月16日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第155回は、すぐに女性に手を出そうとする軽い男性が言いがちな誘い文句を厳選してご紹介します。1.「うちのウサギかわいいよ?」と家に誘う【結婚引き寄せ隊】vol.155ときどき「うちにおいでよ」なんて、知り合って間もない女性にすぐに言ってしまう、カジュアルすぎる男性も存在するようです。今回は、そんな軽い男が言いがちな誘い文句とエピソードをご紹介しましょう。出会いを探していたAさんは、あるイベントの帰り際、職場の同僚と仕事相手の男性と食事に行くことになりました。その日に行われたイベントについて、お互いに感想を言い合い、リラックスしながら食事も進んで、お酒もおいしく飲んでいたそうなのですが…。だんだん盛り上がってきて、「もう一軒行こう!」という話になったものの、同僚の女性は明日が早いからとそそくさとその場をあとにしました。残ったAさんとしばし顔を見合わせていた仕事相手の男性ですが、突然スマホを取り出し、慌てて何かをしている様子。「なにしてるんだろう?」とキョトンとしてしまったというAさんでしたが、次の瞬間、男性がスマホにおさめたペットのウサギの写真を見せてきました。小さな白ウサギがちょこんと座っている写真を見せられて、「かわいい」と思わず言うと、「うちのウサギかわいいよ?いまから見に来る?」とすかさず言ってきたのだそう。勢いでなんとなく行ってしまいそうになったAさんでしたが、ハッと思いとどまって、「私も明日早いので」と丁重にお断りして帰宅したとのこと。ペットをえさにして家に呼び込もうとする男性、いるんですね…。2.「本当にめちゃくちゃ疲れてる」とホテルに誘う婚活とまではいかずとも、恋活をして「いい出会いがあればいずれはその人と結婚したい」と思っていたBさんは、その日も合コンに参加していました。30代の男女が集まる飲み会は和気あいあいとしていて、あっという間に時間が過ぎていったそうです。飲み会に集まったメンバーは男女ともに働き盛りで、仕事のグチも言い合って、みんなスッキリと気分よく過ごせたこともあり、すぐに二次会へと移動。カラオケで大いに盛り上がり、狭い部屋でより距離が近くなったように感じたようです。終電も近くなり、さすがにそれぞれ帰宅の準備をしていたところ、Bさんは一番よくしゃべったサラリーマンの男性と駅までふたりきりになりました。ちょっとはしゃぎすぎたこともあり、「疲れたね」などとふたりで話していたら、男性は「本当にめちゃくちゃ疲れてるんだよね」と、じーっとBさんの顔を見ながら、「ちょっと休みたいだけだから…」と駅近くのホテルに誘ってきたのだとか。「はぁ?」と思わず怪訝な顔で言うと、すぐさま「冗談だよ〜」とおどけた男性。そんな男性を置いて、さっさと帰宅したBさんでした。いやあ、出会ったその日にホテルに誘うとか、ふざけた男性もいるものです。3.「すぐそこだから」と家の近所で待ち合わせする婚活に励んでいたCさんは、いろいろな飲み会に顔を出して、出会いを探していました。同じように出会いを探していたある男性と意気投合して、Cさんはふたりで会う約束をとりつけたそうです。その男性はなかなかのイケメンで、面食いなCさんは距離が縮まったことがうれしかったのですが、なかなかお互いの都合のよい日が合わずに、もう会えないのかもと思っていた矢先、やっと男性から連絡が来たのだそう。ふたりで会う日が決まり、普段行かないような駅で待ち合わせを提案されたものの、どちらかというとCさんのほうが彼に対する思いが強かったこともあって、二つ返事でOKしてその場所へ。こぢんまりとした駅前のレストランで食事をして、まだ時間があるということで、次はどうしようかと話していたら、「僕の家、すぐそこだから、来る?」というお誘いが。驚きながらも、そもそも自分の家の近所で待ち合わせして、家に来させる目的だったのかと瞬時に悟ったCさん。なんだかなとテンションが一気に下がって、家には行かずに、「また今度」とその場をあとにしたそうです。時にはうまい手口で女性を誘って、簡単に親密になろうとする男性がいるようですが、気をつけたいものですね。相手を大事に思う男性なら、女性側の気持ちやテンポもきちんと汲んでくれるはずですから。たったひとりの男性を探したいだけなのに、ときどき思いがけない出会いがあるものです。イマイチな出会いがあったとしても、めげずに本当の恋をつかんでくださいね。文・かわむらあみり©polkadot/adobe Stock文・かわむらあみり
2023年09月15日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回はオシャレなオフィススタイルやモノトーンスタイルが好きなかたにおすすめ。秋ファッションの参考になる大人なスタイルをピックアップしてみます。オーバーサイズのジャケットオーバーサイズは今シーズンもトレンドアイテム。この写真のようにモノトーンでキレイめに着こなしていても、大きめジャケットでより今っぽい雰囲気になっています。重ね着したニットとインナートップスも、ジャケットやズボンと色をマッチさせた、完璧な大人ファッション。ライダースジャケットをかっこよくこちらは対照的にショート丈のライダースジャケットをスタイリッシュに。シャツやズボンは一見オーソドックスなデザインですが、ライダースジャケットが雰囲気をかっこよく、そしてスーツスタイルに見えないカジュアルさを演出してくれています。ワイドパンツが印象深い!こちらは全体的にオーバーサイズで決めています。ワイドパンツに大きめのジャケット、さらに長めのシャツとどこをとってもオーバーサイズ。印象的なのは、スーツから見える袖のインパクト。オーバーサイズを重たい印象にしないライトグレーを選んでいるところが、さすがインフルエンサー!ブラックで大人かっこいい!こちらはデザイン違いのブーツがインパクトあるオールブラックスタイル。暑苦しく見えないのは、短めインナートップスと、ライトな素材のスカートで印象をコントロールしているから。カジュアルすぎないようにジャケットはかっちりとした雰囲気のスーツジャケットをオン。ピンクをポイントカラーにこちらは柔らかな色のジャケットに超ワイドパンツを合わせたシンプルなスタイルで、とても優しい柔らかな印象を感じます。ポイントに見えるピンクの厚底サンダルとバッグが、このスタイルの特徴!全体の雰囲気とは異なる色を使用してインパクトを強調しているようです。サングラスも同じく印象を変えてくれています。真似したい!完璧な美スタイルトレンドを上手に取り入れた、全体的にスタイリッシュでかっこいい美スタイル。オーバーサイズのジャケットに合わせたのは光沢があるネイビーパンツ。意外性があってかっこいいですね!また、中に合わせたのはヘソ出しルックでセクシーかつクールな短いインナー。まとまったヘアスタイルとスニーカーがよりスポーティに見せてくれて、女性らしさとかっこよさの両方を演出する、完璧なスタイルです。今回は比較的、簡単に真似できそうなスタイルをピックアップしてみました。海外ではカラーを使ったファッションが多いですが、このようにあまり色がなくてもスタイリッシュに着こなしているのはさすがですね。ビジネスウーマンをはじめ、落ち着いたスタイルが好きなかたに、ぜひ参考になれば嬉しいです。写真・文 平野秀美
2023年09月10日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は海外でよく見かける上下セットスタイルをピックアップしてみました。ビジネスに応用できるスタイルもあり、スーツのようだけど堅苦しくないものも!上手な着こなしが参考になります。スーツをカジュアルにセクシーにこちらはシャツを組み合わせたらスーツのようにカッコよく着こなせるシックなスタイル。しかしさすが海外。インナーは着用していると思われるのですが外からはほとんどヌードに見えてしまうセクシーさ!この着こなしは日本ではなかなかできませんよね。でも海外のファッショニスタの中では、比較的よく見受けられるスタイルでもあります。カラーと素材がかっこいい!なかなか真似できなさそうなパープルのスーツスタイル。光沢がかった素材はパーティなどの特別な日に着用したくなる存在感。カラフルなスーツが海外ではトレンディーなスタイルでもあるので、ぜひ参考にしたいスタイルです。珍しいグリーンで目を惹く!こちらは上下同じデザインではないものの、カラーを統一させたスタイリッシュな着こなし。意外と難しいグリーンカラーですが、バッグまで合わせてしまう点が徹底的に決まっていてかっこいい。柄と素材がユニーク!こちらはパンツとジャケットが決まっているスーツスタイル!ただ、単純なスーツではなく柄や素材がユニークで、形はスーツなのに、全然かしこまった印象を受けないのが魅力的。パーティーやイベント、重要な時にしっかりとした身なりで着こなしたいという時は、このようなユニークなスーツスタイルだとお洒落です。目を惹くレッドの上下セット強烈なレッドがインパクト大の、こちらのコーデ。光沢のある素材なので、より輝いて見えます。ジャケットを落ち着いた色で組み合わせることで、トーンダウンして少し落ち着く印象。デニムはどんな素材や色にも合うので、この重ね着はとても参考になります。北欧らしい上下セット!私のおすすめがこちらのセット。一見パジャマのように見えてしまいそうなところを、サンダルやサングラスでお洒落に着こなしちゃうところが、さすがですよね。ユニークな柄と印象深い色がお洒落度をさらにアップしてくれます。日本ではあまり見かけないスタイルでもあるかもしれませんが、海外ではこのように上下セットを上手に着こなしています。特に夏から秋にかけては、テロンとした素材のセットが人気になるので、ぜひこれからの季節に挑戦してみてはいかがでしょうか。写真・文 平野秀美
2023年09月09日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第154回は、出会いを探すなかでライバルともなり得る恋活や婚活する女性同士でいるときに、かけられたくない言葉をご紹介します。1.「もうアラフォー?」【結婚引き寄せ隊】vol.154絶賛彼氏募集中ではあるものの、さまざまなことが重なり、おひとりさまでいる女性も少なくありません。そんな女性同士が集まると、あえて意地悪でなのか、それとも無意識か、なかにはちょっとマウントをとってしまうような女性も。せめて自分はうっかり言わないよう、絶対言われたくないNGワードをご紹介します。なんでも赤裸々に話せる間柄の親友ならば、それまでの関係性もあるため、少しくらいキツい言葉を言われてもすんなり受け止めることができます。ですが、さほど関係性が深くない相手や、出会いを探すなかで知り合った婚活友達などから言われると、大きなお世話ですよ、と言いたくなる言葉があります。まず1つ目は、「もうアラフォー?」などという、年齢にまつわる言葉です。その言葉の裏には、もう落ち着いていてもいい年齢なのにまだ出会いを探しているんだね、という思いが透けて見えることがあります。ただ単に深読みしているだけという可能性もありますが、そうではない場合、自分の年齢が若くても同年代でも、年齢のことを持ち出して何かを語るのは失礼なことですよね。婚活中でアラフォーのAさんは、飲み会で知り合った少し年下の女性から、「もうアラフォーなんですか?」と言われてムッとしたとか。「もう」という、なんだかちょっと手遅れのようなニュアンスで言われたことが、よくない意味で印象に残ったそうです。言葉って難しいものですね。2.「稼いでるもんね」続いては、婚活中にBさんが言われたという、「稼いでるもんね」という言葉。実際、彼女は大企業に勤めていて年収もそれなりにあるようですが、もちろん自分から自慢するようなことはありません。ですが、Bさんは婚活するなかで仲良くなった同世代の女性たちと飲んでいるときに、「なかなか良い相手が見つからないんだよね」とぽろりと口にすると、「稼いでるもんね。経済的には相手にお金がなくても困らないんだから、イケメンだったらOKぐらいな感じのほうがすぐ見つかるよ」というようなことを言われたそうです。それはなかなか婚活がうまくいかないため、もしかしたら励ましの言葉だったのかもしれないのですが、「稼いでいるからって、イケメンでもヒモはイヤだし」と思ったBさんはすかさず「私にも好みはあるから」とバッサリ。なにげなく口にした言葉でも、いつ言ったかによって、言われた側の印象も変わるようです。3.「理想が高いから…」最後は、「理想が高い」という言葉をよく言われるという、Cさん。接客業をしているCさんは、いつも身だしなみを整えている清潔感あふれる美人で、男性から言い寄られることも少なくないようです。でも、もともと恋愛にはあまり興味がないそうで、彼氏がいるときもあったものの、別れたあとはしばらくは悲しいけれど、ひとりの時間が充実していて楽しいそうです。仕事が忙しいこともあってか、気づいたらひとりでいる時間が長く、重い腰をやっとあげて出会いを探すようになったのですが、タイミングもあるのかピンとくる男性がいないのだとか。そんななかで、まわりからは恋愛に結びつかない理由を「理想が高いから…」と言われてしまうのです。相手に多くのものを求めているわけではないようですが、美人ゆえに相手がいないことを不思議がられて、“理想が高いから彼氏ができないんだろうな”と周囲に勝手に結論づけられることに、「私の何を知っていてそう思うんだろう」とため息をつくCさんなのでした。同性からの発言は、ただのマウントになることもあれば、本当に参考になることもあります。なにげなく言った言葉で、相手の心にさざなみを立てないよう、円満な関係を築きたいものです。男女問わず、みなさんのすべての出会いが良いものでありますように。文・かわむらあみり©Flamingo Images/Adobe Stock文・かわむらあみり
2023年09月08日これまでさまざまな作品で描かれてきた歴史上の人物のひとりといえば、ナチス・ドイツの大物戦犯アドルフ・アイヒマン。その行いや逮捕劇などに関しては知られているものの、最期の日々についてはあまり語られてきませんでした。そこで今回ご紹介するのは、アイヒマンの遺体を巡る秘密の計画とそれに関わった人々の“真相”を描いた話題作です。『6月0日アイヒマンが処刑された日』【映画、ときどき私】 vol. 5991961年、ナチス・ドイツの戦争犯罪人であるアドルフ・アイヒマンに下されたのは死刑の判決。その知らせを告げるラジオに授業を中断して聞き入る先生と同級生たちを不思議そうに見つめていたのは、リビアから一家でイスラエルに移民してきたダヴィッドだった。ある日の放課後、ダヴィッドは父に連れられて、炉の掃除ができる少年を探していたゼブコ社長の鉄工所ヘと向かう。当初はヘブライ語が苦手な父のためにと熱心に働いていたダヴィッドだったが、居心地の悪い学校を抜け出し、いつしか鉄工所に入り浸るようになる。気さくな工員たちはダヴィッドを可愛がり、ゼブコも一目置いていた。そんななか、ゼブコの戦友で刑務官のハイムが小型焼却炉の設計図を片手に、極秘プロジェクトを持ち込んでくる。それがアイヒマンを燃やすためだと知ると、工員たちに動揺が広がるのだった…。死刑が廃止され、火葬が行われないはずのイスラエルで一体何が起きていたのかに迫っている本作。そこで、独自の視点から歴史を見つめ直したこちらの方にお話をうかがってきました。ジェイク・パルトロウ監督アメリカのロサンゼルス生まれで、ベラルーシ系ユダヤ人の父を持つジェイク監督。父は映画監督兼プロデューサーで母は俳優、さらに姉もハリウッドの実力派俳優グウィネス・パルトロウという芸術一家の出身です。今回は、アイヒマンの火葬をテーマにしようと思った理由や実在の人物から聞いた驚きのエピソード、そして日本の好きなところについても語っていただきました。―本作で描いている題材については、いつ頃から興味を持たれていたのでしょうか。監督第二次世界大戦とユダヤ人の歴史は、幼い頃から父とつながる“場所”であり、一緒に考えて議論を交わすテーマでもありました。毎年サンクスギビングの祝日には、BBC制作による第二次世界大戦のドキュメンタリーを観る習慣があったほどです。もともと父がこういった問題に関心が高く、家にもいろんな文献があったので、その影響は大きかったですね。ただ、誤解してほしくないのは、僕の個人的なアイデンティティや宗教的な義務感からこの作品を作ったわけではありません。誰かに恋をするのと同じように、あくまでもフィルムメーカーとしてこの題材に興味を持ち、面白いと思って作りました。―アイヒマンの火葬については、どういったきっかけで知りましたか?監督はっきりといつかは覚えていませんが、ドキュメンタリーや本のなかで知ったことだったと思います。アイヒマンは政治的な理由から火葬されることになりますが、もともとユダヤ教では火葬しないので、「一体何があったんだろう」と考えました。それと、当時は暗殺の可能性なども懸念して「アシュケナージ」と呼ばれる東ヨーロッパ系のユダヤ人を護衛に付けないといった配慮もされていたそうですが、そのあたりのディテールも興味深いなと。その2つの点が面白いと思いましたし、そこにストーリーがあると感じていたので、実際イスラエルに行って当時関わっていた方々にお話を聞くことにしました。これまで描かれていない話だと気が付いた―アイヒマンがどうやって火葬されていたかという事実については、おそらく知らない人のほうが多いと思います。監督僕自身もこの話は聞いたことがなかったし、取り組むにあたってこれまで描かれてもいなかったことに気が付きました。最初は、本作にも登場するホロコーストのサバイバーである板金工をメインにした物語にしようかと考えたのですが、リサーチをするなかで出会ったのがダヴィッド少年。現在の彼と直接会って話を聞いているうちに、興味をそそられるようになりました。ちなみに、彼は過去に自身の話を新聞社に持ち込んだことがあるそうですが、当時工場に働いていた人たちがその場に子どもがいたことを認めなかったため、取り上げてもらえなかったそうです。僕としてはこの映画を作りたい気持ちが強かったので、本当かどうかを重要視することなく、彼の話を信じることにしました。―リサーチのなかで、新たに知った事実や驚いたことはありましたか?監督まず、僕がこの物語に惹かれた理由の1つは、アイヒマンの火葬の計画がとてもカジュアルに話されていたこと。どういうことかというと、本来ならば、秘密警察の人たちが極秘のうちに進めるようなことですが、日中の明るいときに工場で「魚の骨が焼けるかどうか」みたいな話を例に出しながら、担当者同士が軽い感じで話しているんですよね。そういうところも含めて、面白いなと思いました。子どもたちがこの作品にエモーションを与えてくれた―ダヴィッドさん本人から聞いたお話のなかで、印象的なエピソードもあれば教えてください。監督彼の物語については、すべてが映画の通りではありませんが、彼は13歳のときから大人になるまでいろんな仕事をしてきたそうです。最終的にはコンピューター関連の仕事に就くのですが、それまでは僕も聞いたことがないような多種多様な仕事をしていたと聞いて驚きました。そのうえで少年時代の日常がどんなものだったのかを知るために、当時はどういう感情を抱いていたのか、子どもたちはどんなものを食べて、どんな遊びをしていたのか、といったことを深掘りしてこの作品のバックグラウンドを作っていきました。―そのダヴィッドを演じたノアム・オヴァディアくんは、素晴らしかったですね。ただ、演技経験のない11歳の子どもをメインキャラクターにするのは、ある意味大きなチャレンジだったのではないかなと。監督そうですね。特にこの作品にとっては、ダヴィッド役を演じられる少年を見つけられるかどうかが重要だったので、キャスティングディレクターにお願いして国内中を探してもらいました。そこでたくさんの動画を見ましたが、際立っていたのがノアム。何がよかったかというと、彼には役を演じるうえでの自然な資質があったのです。今回、本作に教師役で出演してもらったロテム・ケイナンさんは、イスラエルでは演技指導者としても有名なので、演技教室のようなものまで開いてもらいました。これはほかの子どもたちにも言えることですが、ノアムたちがこの作品にエモーションをもたらしてくれたと思っています。それなくしてこれだけ良質なものは作れなかったので、本当に感謝しています。観客が共感できるのは、本人よりも事件に関わった人たち―これまでアイヒマンを描いた作品は多数あるので、過去作とは違うアイヒマンの見せ方は本作でも大きなポイントだったと思います。そのあたりで意識されたことはありますか?監督実は、この作品ではアイヒマンの心理について掘り下げる意図は最初からまったくありませんでした。個人的にあまり興味をそそられるキャラクターではなかったですし、そこに触れてもいまさら何かの解決になるわけでも、意義深い話になるわけでもありませんからね。しかも、それに関しては過去の作品で描き切っていると考えています。それよりも僕としては、アイヒマンが影響を及ぼした人たちのほうに関心を抱いていました。何か大きな事件を題材にするときは、その本人よりも、そこに関わっている人たちを描いたほうが観客もより共感できるものです。今回は、当時まだ若かったイスラエルという国の人々にどんな影響を与えていたのかをフィクションを交えて見せたいと考えました。日本の好きなところを語り出したらきりがない―まもなく公開を迎える日本に対しては、どのような印象をお持ちですか?監督すごく前に一度だけ行ったことがありますが、また訪れたいなとずっと思っています。日本文化の好きなところを語り出したらきりがないですが、まずはやはり映画ですね。自分のなかでも、小津安二郎監督、成瀬巳喜男監督、小林正樹監督、黒澤明監督は基盤となっています。特に、小津監督の『晩春』ほど傑出した作品はないのではないかと感じているほど。僕の10歳になる娘も、原節子さんの大ファンです。原さんはすでに引退されていましたが、亡くなる前に彼女を短編で撮れたらいいなと夢のまた夢として思い描いていたこともあったので、それを娘に見せられたらよかったですね。いつか小津監督のお墓にも行ってみたいですが、大好きな日本映画が作られた場所をいろいろと巡ってみたいなと思っています。―それでは最後に、観客に向けてメッセージをお願いします。監督本作のことが好きか嫌いとかいうのではなく、描かれるテーマについて、誰かと何か話をしたくなる作品になったと思います。多くの方に作品との繋がりを感じてもらえればうれしいです。激動の時代に、歴史が動いた舞台裏を知る!歴史的事件の知られざる裏側に切り込み、観る者に新たな視点を与えてくれる本作。語られてこなかった真実を目撃するだけでなく、名もなき人々の思いに触れることもできる必見作です。取材、文・志村昌美気になる予告編はこちら!作品情報『6月0日アイヒマンが処刑された日』9月8日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開配給:東京テアトル️(C) THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP
2023年09月07日婚活で約1000人の男性と出会い、年下夫を射止めたライター・かわむらあみりがお届けするコラム【結婚引き寄せ隊】連載第153回は、婚活していると出会う“男性”についてのエピソードです。なかでも、いまでも印象に残っている「婚活男性3選」その52をお届けします。1.妙に同調する男【結婚引き寄せ隊】vol.153それは30代が中心の婚活パーティに参加したときのこと。いつものように自己紹介から始まり、短い時間に、次から次へと「はじめまして〜!」とあいさつしながら、おしゃべりしていました。何度目かの席移動が終わったところで、シャツの襟をピシーッと立てている男性が目の前へ。最初は名前を言い合うぐらいなので気づかなかったのですが、この男性、ちょっと会話が進むだけで、なんだかムズムズとした違和感が。「趣味は何?」とタメ口で聞いてきて、「音楽鑑賞と…(まだ話している私)」と少し応えただけで、「だと思った!」とこちらの会話にかぶせて、妙に同調してくるのです。男性は、その後もこちらが何か言うたびに、「だと思った!」と言ってきました。はじめは、なんとなく“だと思われる”というのは、つまりは“そんな感じがする”とか“わかるよ〜”というような、こちらの発言を肯定する感じなのかなと思いきや、実は真逆。最後のほうでまた「趣味は?」と聞いてきて、こいつは完全に人の話を聞いていないな。合いの手を入れるようなノリで「だと思った!」とかぶせる、勢いだけの男か。と、数分で悟りました。まだ婚活パーティは序盤だったものの、妙な男性の妙な圧に疲れてしまい、けっきょくこの日も空振りに終わったのでした。もしかして、エナジーバンパイア系の男性だったのかもしれません。くわばらくわばら…。2.間違った男気を見せる男それは20代から40代の男女が参加する、婚活飲み会に参加したときのこと。多様なタイプや世代が集まっていましたが、みんなシングルということもあって、話は自然とそれぞれの仕事や恋愛話になりました。各自が職場のグチや元カレの話で盛り上がるなか、前に座っているギャル風の女性がとなりの男性にちょくちょく「すご〜い」と目をまるくしています。なんだろうと気になって聞いてみると、となりの男性は「営業職でトップの成績」だとのこと。さらに、そのギャル風女性がうっかりお酒をこぼしたら「大丈夫ですか!」とすかさず自分のハンカチで机をふいていて…。「男気あるんですね」などと褒めるギャル女性の「男気」という言葉に反応し、男性も満面笑顔です。そうか、今日はこのふたりがうまいこといくんだろうと思い、その後トイレに行くと、扉の前でバッタリ“男気男性”に遭遇。すると、サッと女子トイレのドアを開けて、「どうぞ」とニッコリ微笑む男性…。えー!女子トイレのドアを微笑みながら開ける男性って、怖いんですけど!!この人、もしかして、間違った“男気”を披露しているのかもしれない…。ゾッとしながらも、急いで女子トイレに逃げ込んだのでした。3.とにかく同棲男それは婚活サイトで出会いを探していたときのこと。そこのプロフィールは自己紹介文のほか、すぐに結婚したいか。もうちょっとおたがいを知ってから結婚したいか。といった、その時点での自分の“結婚したい度”もわかるようになっていました。すぐにでも結婚したかったため、同じように考える男性がいいだろうと探した結果、人柄がよさそうな30代の男性とやりとりするように。実際に会うまでは、「将来こんな家庭がいいと思うんですよね」などと、結婚願望を言っていた男性でしたが…。いざふたりで会ってお茶をしてみたら、「とにかく一緒に住まないと相手のことはわかりませんよね?」と言ってくるので、結婚願望が強い人なのかと思っていたら、「僕はまず同棲したいんです」と、語気を強めて言ってきて…。過去の恋愛についてもさりげなく聞いてみたら、なんと何か月か同棲しては別れてを繰り返している、同棲常習犯だったのです。なんだかなァと一気にテンションが下がり、以降は連絡を絶ったのですが、「とにかく同棲」なんてしていたら、どんどん歳を取るだけだと疲弊したのでした。さまざまな出会いを探していると、予想もしないことがあるものです。でもきっと、どこかに運命の相手はいます。みなさんの恋愛がうまくいきますように!文・かわむらあみり©kapinon/adobe stock文・かわむらあみり
2023年09月06日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回はパーティにぴったりなド派手スタイルをスナップしてきました。上下セットアップが今期も人気!こちら、コペンハーゲンで人気の『STINE GOYA』の派手目な上下を上手に着こなしています。なかなか難しいセットスタイルですが、パーティなどでは人気ファッション。トレンディで明るいカラーが、よりお洒落に目を惹きます。カラーで注目を奪う!こちら、どちらも素敵ですが、特に右のオレンジスタイルは、どこにいても目を奪われてしまうインパクト大なカラー!しかもシューズやバッグまで全身オレンジを上手に着こなしているのがすごいですよね!やっぱりワンピーススタイル!こちらは、柄とカラーがとっても魅力的なドレスを、カジュアル目に着こなしたスタイル。海外ではドレスにスニーカーは比較的主流ではありますが、こちらのドレスは黒のパンプスでも似合います。一見派手に見えるドレスですが、合わせやすいカラーですよね。シルバーのミニバッグもお洒落!ピンクが大人っぽく見える!スタイリッシュなハイネックワンピースが、お揃いの淡いピンクカラーのコートに上手にマッチしています。アウターの素材がさらに上品さを引き立てていますね。通常ピンクは可愛いという印象が強いですが、こちらはブラックとの組み合わせで、より上品で大人っぽく見せることができています。誰よりもキラキラと!パーティでは思い切ってひときわ目立つファッションを楽しみたい!という方には、こちらのようなキラキラしたタイプもおすすめ。どこからみてもパーティドレスとわかる存在感が魅力的です。おしゃれのポイントは、パンプスやクラッチの色をドレスと合わせているところ。パーティはどれだけ派手に着こなしても足りないくらい、お洒落して出かけたいですよね!あまりない機会なので、悩みがちではありますが、ぜひ上記を参考にしてみてください。写真・文 平野秀美
2023年09月03日ON/OFF両用できるテーパードパンツ。誰しもが一本は持っている定番アイテムですが、そういうアイテムこそ着こなしがマンネリ化しやすいものです。とくに汎用性の高いトップスを組み合わせると、一気に野暮ったく見えてしまうので要注意...!そこで今回は、こんな着こなしをやめたら洗練見えできた!テーパードパンツの通勤、休日コーデをそれぞれご紹介します。タックブラウスを卒業!テーパードパンツの通勤コーデ通勤時のテーパードパンツコーデでもっともよく見かけるのは、とろみ素材のタックブラウスを合わせた着こなし。もちろん変ではありませんが、コーデが洗練されている...というよりは無難な着こなしの域を出ません。ハズレのない守りのコーデではありながら、これだけだとオシャレな着こなしから遠くなってしまうので、タックブラウスは今日から卒業を。代わりに取り入れたいのは、ドレープの美しいブラウス。身頃の中心で生地がたるんでヒダができたデザインのものを「ドレープ」と言います。服地をたっぷり使っているので見た目にも高級感と上品さを得られ、通勤コーデにも遜色ありません。今の時期はノースリーブトップスがおすすめですが、肌の露出を抑えるなら半袖・フレンチスリーブのドレープトップスを採用して。バッグ、靴にはレザーやエナメルなど程よい光沢のあるものを選ぶと洗練さアップ!カーディガン、フツーに着るのを卒業!テーパードパンツの休日コーデテーパードパンツをデイリーに使用したい時、多くの方が合わせがちなのがカーディガンです。カーディガンもテーパードパンツ同様にON/OFFどちらにも対応できるので、確かに組み合わせとしてもおかしくはありません。ですが、無難なアイテムに無難なアイテムを掛け合わせてしまうと、厳しいですがコーデ全体を通してみたときに「無難な人」という印象にしかなり得ません。カーディガンは一緒に取り入れても良いのですが普通に着るのではなく、斜めがけして“着崩す”というテクニックを採用してみてはいかがでしょうか。インナーはカジュアルなTシャツで絶妙に砕けた印象を与えるのがおすすめです。とはいえ、Tシャツの素材やシルエット選びには気をつけて。薄い素材、ヨレたシルエットのTシャツはもちろんNGですよ!また、バッグや靴は通勤コーデではできないトレンド感のあるアイテムを投入すると、オシャレなデイリーコーデに早変わり!とくにテーパードパンツはもとよりきちんとした印象があるので、キレイめなサンダルと合わせて、素足をチラ見せ。肌面積を増やすことで抜け感が生まれます。小物合わせも洗練見えに大きく影響されるテーパードパンツをはじめとした定番と言われるアイテムはネガティブに言い換えると「無難な服」になります。そのため、定番服同士でコーデを完成させるとどうしても野暮ったい印象に。その領域からほんの少しランクアップして周りと差のつく着こなしを目指したいと思ったら、ぜひ今回ご紹介したようなアイテムの取り入れ方に注意をしてみてくださいね。このほか、トレンドの小物をプラスするだけでも印象はガラリと変化します。ぜひ、小物合わせにも意識を置いてみましょう。イラスト・文 角 佑宇子
2023年09月02日ヨーロッパ在住のファッションジャーナリスト、平野秀美さんのファッションスナップレポートです。今回は海外で見つけた淡い色、パステルカラーやペールカラーをベースにした可愛らしいスタイルをご紹介します。ピンクベースが優しい雰囲気に個性的なオーバーサイズのワンピースに同色のシャツをセットインした個性的なスタイル。センス抜群な個性的な重ね着を、淡いピンクが柔らかな雰囲気にしてくれています。ふんわりワンピースとの相性抜群可愛らしい淡いイエローが目を惹く、ふんわりしたワンピース。ピンクのスニーカーとの相性も抜群!可愛すぎない大人っぽい上品なワンピーススタイルに仕上がっています。デートやちょっとしたお出掛けにぴったり!個性爆発!カラーで魅せる淡いパステルカラーを大胆に組み合わせたカジュアルスタイル。暑い夏にぴったりの涼しげな雰囲気が、まだまだ暑い日本の夏にもぴったり!インナーやサンダルはあえてブラックで統一して引き締めて、落ち着かせる部分はしっかりポイントで押さえています。参考になります!ピンクがお洒落なセットスタイル1960年代を感じさせる雰囲気あるデザインに、ピンクの柄が可愛らしいセットスタイル。パールジュエリーを合わせて完璧なスタイルを作っています。キルト風のズボンとジャケットが、よりアンティークな雰囲気を楽しませてくれてます。ホワイトとピンクを上手に組み合わせて今すぐ真似できそうなお洒落スタイル。なかなか使いにくそうなシルキーの淡いピンクスカートに、雰囲気の異なるカジュアルなデニムを持ってくることによって、普段使いできるスカートスタイルに。オーバーサイズのデニムジャケットは、どんなファッションにも合わせやすいので、ひとつ持っていると重宝しますよ!いかがでしたでしょうか?海外では比較的カラフルな色を見かけることが多いのですが、こうして淡いカラーも上手に着こなしているのを見ると、どんなスタイルも上手に着こなすファッショニスタに圧巻です。今後も参考になるスタイルをアップしていきたいと思います。写真・文 平野秀美
2023年09月02日東京都現代美術館で、5人の作家による展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」が開かれています。ユニークなタイトルですが、いったいどんな展覧会なのでしょう?作家さんたちのお話を聴いてきましたので、レポートします!共感しなくてもいい展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」展示室入り口※本記事の写真はプレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 310東京都現代美術館では、例年夏休みの子どもたちに向けてさまざまな展覧会を開催しています。現在開かれている「あ、共感とかじゃなくて。」は、少し大きくなった子どもたちを対象にした企画。東京都現代美術館学芸員の八巻香澄さんは、本展の趣旨について次のように教えてくれました。八巻さん友だちや家族との関係に息苦しさを感じはじめている子どもたちに向けて、共感しなくてもいいんだよ、あなたの気持ちを大事にしていいんだよ、という想いをこめて作った展覧会です。大人のみなさんも、ご覧になって元気になっていただけたらと思います。答えが見つからない作品有川滋男さん本展は、5人の作家による展覧会です。お一人ずつ、ご自分の作品について解説してくれましたので、ご紹介していきます。まずは、映像作家の有川滋男さん。有川さんの展示コーナーでは、おもに映像作品を見ることができます。例えば、《ディープリバー》という作品では、何かの仕事をする女性たちの様子が流れていますが、何をしているのか、映像を見続けていてもよく理解できません。今回の作品について、有川さんは次のように説明されています。有川さん今回の展示は、「架空の仕事シリーズ」から出しています。この名前のとおり、実際にはありえない、非現実的、非合理的な職業や仕事、そこで働く人に関する作品で、映像を最初から最後まで見ても、どんな仕事なのか、なんの目的なのか、どんな人が働いているのか、わからないようになっています。私は、目の前にある作品を人々がどう見るか、どう解釈して、どう捉えるかに興味関心があります。見る人によって捉えかたは千差万別。見る人の社会的背景、年収、言葉、性別、宗教、見るときの気分によっても見方は変わります。自分がもつ固定観念により判断し、答えを出そうとするはずです。私の作品では、「答えが見つからない・判断できない・解釈しづらい」という状態で見続けてもらうことを促しています。想像力を働かせてもらえるような作品を目指して制作しています。コロナ禍で情報が加速度的に錯綜し、ステレオタイプで判断し、偏見をもって物事をとらえることも増えてきました。それを回避するためには想像力が必要不可欠です。この展示で、想像力を喚起できればうれしいです。巨人伝説に魅了され…山本麻紀子さん次にご紹介するのは、アーティストの山本麻紀子さん。落とし物をひろうのが得意という山本さんは、巨人の落とし物の大きな歯をつくったり、植物を染料として絵を描いたりされています。靴を脱いで入ることができる展示室で、山本さんが作品について語ってくれました。山本さんこの展示室の空間は、アトリエのある滋賀県の家を再現しています。私のなかには、「巨人・落とし物・植物」という3つのテーマがあります。巨人というのは、2012年から巨人伝説に魅了され、それから私は巨人を追いかけています。また、ふだん活動しているのは、京都駅のすぐ近くにある被差別の歴史をもつ地域です。そこのコミュニティに入り、外国籍の方なども含めた地域の方々と関わり、そのなかで感じたり思ったりしていることなどを作品にしています。そこでは植物にも出合えて、観察したり描いたりしています。展示室の空気感、モノとモノの関係性など、何かしら感じていただけたらうれしいです。美術館に来られる人は特権性がある渡辺篤さん(アイムヒア プロジェクト)の作品《Your moon》2021年続いての展示室では、かなり暗い空間に作品が展示されています。現代美術家で「アイムヒア プロジェクト」を主宰している渡辺篤さんが、作品について解説してくれました。渡辺さん私のキャリアは特徴的で、足掛け3年引きこもりして、そこから社会復帰しました。今回の展示室では、実際に引きこもりをしている人たちが自身の部屋を撮影した作品や、コロナ禍のときに開始した、同じ月を見て写真を撮るプロジェクトの作品などを紹介しています。月の写真は、引きこもりに限らず、「孤立を感じている人々」という条件で参加者を募集して、国内外さまざまな方にスマホにつける望遠鏡を送り、写真を撮ってもらいました。約50名のメンバーたちが日々送ってくれた写真をライトボックスにして展示しています。私がいくつかのプロジェクトをとおして大事にしているのは、美術館に来られる人と作品を共有し、喜びを分かち合い、楽しむということ。そして、ここにいない人のことを常に忘れないこと。ここに来られる人は、特権性があります。コロナを通じて私たちが知ったのは、ここに来られない人、出られない人がいるということ。コロナが終わっても、引きこもりや障害をもっていて、ずっと出られない人もいます。その人たちがいる同じ社会で我々は生きているということを、この場所で、作品を通して一緒に考えてもらえたらと思っています。教科書カフェ武田力さん次の展示室では、演出家で民俗芸能アーカイバーの武田力さんの作品を見ることができます。武田さんの作品は、《朽木古屋六斎念仏踊り継承プロジェクト》と、《教科書カフェ》の二つ。武田さん日本の集落には、何百年も前から伝わる芸能があります。お盆の時期、集落に帰ってくる祖霊たちに向けた儀式として行われている民俗芸能などですが、地域の人口が年々減少して継承が難しくなり、どうやって継いでいくことができるのか、というのが問題になっています。なんとか、この芸能を継承してほしいということで、ぼくらアーティストに声がかかりました。会場では、2016年に継承が復活したときの映像を流しています。また、《教科書カフェ》という移動図書館のような車には、戦後から平成までの小学校のときの教科書が置いてあります。寄贈いただいたもので、名前が書いてあったりもします。実際に教科書を手にとって、ここに座って読んでみてください。ぼくも、毎日ではないですが、ときどきここに来ていますので、みなさんと交流できたらと思っています。壁を鑑賞!?中島伽耶子さんの作品《we are talking through the yellow wall》展示風景最後は、アーティストの中島伽耶子(なかしまかやこ)さんの作品《we are talking through the yellow wall》。黄色い大きな壁が、明るい部屋と暗い部屋を隔てています。中島さんこの壁は石の壁を突き抜けて、隣の小さな展示室を明るい部屋と暗い部屋に分断しています。この壁を鑑賞してみてください。壁や境界、こちら側と向こう側の違いというのは、目には見えなくても人と人がコミュニケーションする時には必ず存在しています。また、すれ違いや意識のずれなどもあります。それを実際に壁を立てることで表そうとしています。展示室にあるリアルな壁にはスイッチや穴があり、壁の向こう側を想像できます。誰かいそうな感じがして、こちらのリアクションが相手に伝わるような、クリアではないけど向こう側を意識できる状態を作品にしてみました。でも、壁のこちら側と向こう側で受けとれる情報が違うことを体感できると思います。11月5日まで開催不思議な映像を見たり、巨人の落とし物を触ったり、月の写真や昔の教科書、壁を眺めたりと、ひとつの展覧会でさまざまな体験ができます。共感も理解も求められていないので、気楽に楽しめると思いますが、私の場合、全体を見終わったあと、何かいつもと違う部分の感覚が刺激を受け、フシギな感覚に陥りました。何回か足を運んでみたくなる、そんな展覧会です。本展は11月5日まで開催。Information会 期:~11月5日(日)会 場:東京都現代美術館 企画展示室 B2F開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)休 館 日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10観覧料:一般¥1,300大学・専門学生・65歳以上¥900中高生¥500小学生以下無料
2023年09月01日幅広い層から人気を誇り、シリーズ累計発行部数55万部を超える汐見夏衛のベストセラー小説「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」。“純度100%”とも言われるラブストーリーがついに実写化され、話題を呼んでいます。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。酒井麻衣監督 & 箭内夢菜さん【映画、ときどき私】 vol. 598マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の女子高生・茜と、自由奔放で学校でも人気者の青磁を中心に描いている本作。映画『劇場版 美しい彼~eternal~』やなにわ男子『初心LOVE(うぶらぶ)』のMVなどを手掛け、気鋭のクリエイターとして注目を集めている酒井麻衣監督(写真・左)が監督と脚本を務めています。そして、主人公・茜の親友である沙耶香を演じているのが、ドラマ『チアダン』や『だが、情熱はある』などの話題作に出演が続いている箭内さん(右)です。今回は、おふたりに現場での様子や作品を通して気づいたいまの心境、そして最近ときめいたことなどについて語っていただきました。―原作は女性から絶大な人気を誇っていますが、おふたりはどこに魅力を感じていますか?箭内さん茜はマスクをしていないと安心できない子ですが、そういう繊細な人はたくさんいると思うので、そこが共感を呼んでいるのかなと。共感というのは、心の支えにもなりますからね。私は先に拝見させていただきましたが、映像が本当にキレイで、泣けてきました。青磁くんの絵も素敵なので、たくさんの魅力が詰まっている作品だと思います。監督人の顔色をうかがったり、気を遣ったりして、何も言えなくなるのは大人になるにつれて多くなってくることだと思うので、そのあたりが描かれているのが魅力だと感じています。言いたいことを言いたいときにどうしたらいいのかという気持ちに寄り添った映画になっているといいなと思っています。あとは、箭内さんが言ってくださったように、キレイなものをみると心に響くものがあると思うので、ぜひそういうところも観ていただきたいです。自分に自信を持つことが大事だと感じている―マスクを手放せない茜に自分を重ねる人は多いと思いますが、実際にマスク着用が自由になったいま、ご自身の心境にも変化はありましたか?箭内さん最初はマスクが苦しくて嫌だったんですけど、いざ外していいと言われたら、マスクをしていたほうが安心できていた自分がいることに気がつきました。それはつまり自分を閉ざしている部分があるからでもあるので、いまは自分に自信を持つことが大事だと感じているところです。監督この作品を映画化すると決まったときに、実は原作にあるマスクの設定を生かすか生かさないかという議論が最初にあったんです。私としてはそのままにしたいと伝えました。実際、マスクがお守りみたいな存在になっている子たちもいるので、映画にするうえでもそこは否定したくないなと。その部分は、真摯に繊細に描くように意識しました。―なるほど。ちなみに、茜のマスクのようにおふたりにもなくてはならないアイテムがあれば教えてください。箭内さんやっぱり携帯ですね(笑)。監督わかります!箭内さん私は中学生で初めてガラケー、高校生でスマホデビューなので、そんなに早くから持っていたわけではないのですが、いまではないと何もできなくなってしまいました…。特に、東京ではスマホがないとどこにも行けません。完全に依存していますね。充電が切れたりしたら、大変です!監督私も同じくスマホです。というのも、いつも寝る前に何かしらの動画を見ながらじゃないと寝られなくなってしまったので…。スマホで音楽を聴いたり、小説を読んだりする場合もありますけど、本当に便利ですよね。私もないと不安です。箭内さんから純度の高い気持ちが伝わってきた―大半の読者が共感していると思います。では、現場での様子についておうかがいしますが、監督は演出をする際に「どうしたらご自身が俳優たちの着火装置になれるか」を考えているとか。そんななか、監督が心を動かされたシーンはありましたか?監督それはつねにあった気がしています。今回は青春映画ということもあって、「まっすぐな気持ちって本当に素敵!」という瞬間がいっぱいありました。たとえば、箭内さん演じる沙耶香が茜と仲直りするシーンでは、友達を思うからこその雑味のない純度の高い気持ちが伝わってきました。「友達っていいよね」という言葉はよく聞きますが、それを改めて体感できたと思います。―監督から箭内さんに、具体的な指示などもされていたのでしょうか。監督箭内さんとは、ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』のオーディションで出逢っていて、そのときから本当に素敵な女優さんだなと思っていたので今回もお願いしました。箭内さんは脚本を読み込む力がすごくありますし、人物の感情をしっかりと繊細に自分のなかに落とし込める方。だからこそ、心からにじみ出るお芝居に胸を打たれます。ご一緒するのは2度目ですが、「お任せしても大丈夫」という信頼感があったので、特にリクエストすることもありませんでした。そういった安心感は役の人物像にも通じていたと思います。白岩さんは、カリスマ性があるけど親近感もある人―箭内さんから見た酒井監督の現場ならではの光景や思い出に残っていることなどがあれば、お聞かせください。箭内さん任せてくださっていたという言葉を聞いて、すごくうれしいです。でも、それができたのは、監督が演じる側の近くにいてくださったおかげだと思います。というのも、酒井監督の現場では自分が想像していた役のイメージ通りでいられるので、すごく演じやすい環境。部屋の雰囲気ひとつとっても言えることですが、映像に映るものすべてにこだわっていますし、どんな小さなことも見逃さないので、そういうところがすごいなと感じています。―本作で主演を務めた青磁役の白岩瑠姫さんについてもお聞きしたいのですが、監督から見てどのような印象でしたか?監督私は白岩さんについては、「儚くて強い」と言う言葉で表現していますが、あとは本当に優しい方だなと思いました。実際、みんなのことをいつも優しいまなざしで見てましたからね。あとは、現場のムードを上げなければいけないときには、おちゃらけて盛り上げてくれるので、カリスマ性もあると感じました。箭内さん私も今回が初めてでしたが、会った瞬間にオーラを感じたので、本当に青磁くんみたいだなというのが第一印象でした。あと、クラスみんなで踊るダンスシーンでは、撮影の待ち時間にご自身が所属されているJO1のダンスを披露してくださったこともありましたね。そのおかげで場が和んで盛り上がったので、アイドル感はありつつも親近感があり、かわいらしさとさわやかさも持ち合わせている魅力的な方だと思いました。仲良しのりんくまの新しい表情が見られた―劇中と同じく、まさにクラスの人気者を地で行くタイプですね。監督サービス精神があるんでしょうね。いま話していたダンスシーンの撮影では、見ている人たちの反応を撮るときに、わざわざ踊ってくださっていたほどです。本来は俳優たちの表現力だけでも撮ることもできますし、カメラに映っていないので踊らなくても大丈夫なのに、それを全力で踊るんですよ。私としては、「まだ撮影あるから休んでてください!」と心配になってしまいました(笑)。―映画初主演ながら、座長としてみなさんをしっかりと引っ張っていたんですね。また、茜を演じられた久間田琳加さんもとても素敵でした。箭内さん私は雑誌『Seventeen』で一緒にモデルをしていたこともあり、今回の現場でもたくさん話をしました。普段は「りんくま」と呼んでいるほど仲良くしているのですが、茜として不安を感じていたり、恋していたり、喜んでいたりする姿を見て、見たことのない新しい表情を見ることができたと思います。りんくまはつねに笑顔でかわいらしいので、茜にぴったりだなと感じました。誰かが好きな人に対して向けるまなざしを見るのが好き―本作では大人でも思わずときめいてしまうようなシーンがいくつもありましたが、最近おふたりがときめいた瞬間といえば?箭内さん少し種類が違いますが、最近は動物の赤ちゃんの動画をずっと見ています。ついにSNSのオススメにもそれしか出てこなくなりました(笑)。癒されますし、いつまでも見ていられます。監督この前、実写版の『リトル・マーメイド』を映画館で観ましたが、ときめいたのはやっぱりエリック王子です(笑)。私が好きなのはエリック王子がアリエルを見つめるまなざし。それを見るだけで「君のことを愛している」という気持ちが伝わってきますから。それが自分に向けられなくてもいいので、誰かが好きな人に対して向けるまなざしを見つめるのが好きです。―そういう部分は、本作でも生かされたのではないかなと。監督そうですね。今回は特に、茜の目の描き方にこだわりました。たとえば、青磁に会う前や部屋でリップを塗っているとき、沙耶香から「好きなの?」と聞かれたときなど、甘酸っぱい恋をしているときの目をしてもらっています。疲れて家に帰りたくないときは、映画館に寄ってほしい―それでは、最後にananweb読者に向けてメッセージをお願いします。箭内さんこの作品では茜に共感できる方が多いと思いますが、それだけではなくて茜を思う家族のシーンもすごく素敵で私は大好きです。学生の方はもちろんですが、青春映画を観る機会があまりない大人の方でも楽しんでいただけると思います。母娘で観に行くというのもいいなと思うので、ぜひ劇場でご覧ください。監督私は1日の生活をするだけでも大変なので、洗濯や掃除、人によっては子育てをしながら仕事をしているみなさんは本当にすごいと思っています。ただ、そのなかで落ち込むときもありますし、気にしすぎてモヤモヤすることもあるのではと思っています。そういう気持ちはまさに茜や青磁の感情と近いと思うので、ボロボロになって寄り道をしたくなったときも、そうではないときも映画館に寄って観ていただきたいです。インタビューを終えてみて…。和気あいあいとした撮影にはじまり、終始楽しそうにお話をする酒井監督と箭内さん。その様子からも、現場でいかにいい関係だったのかが垣間見ることができました。「絶対に映画館で観てほしい!」と繰り返しお話されていましたが、スクリーンでしか味わえない体験があるはずなので、おふたりの言葉通り劇場での鑑賞をオススメします。代わり映えのしない日常が色づきはじめる!相手を想うピュアな気持ちと自分の本心を解き放つ大切さを思い出させてくれる本作。珠玉のストーリーを見事に再現した吸い込まれるような美しい映像にも、爽やかな感動と癒しをもらえる1本です。写真・園山友基(酒井麻衣、箭内夢菜)取材、文・志村昌美箭内夢菜 ヘアメイク・エムズアップ 伊藤遥香スタイリスト・髙橋美咲(Sadalsuud)ワンピース(オルタデザインズ/株式会社オルタデザインズ TEL:03-6383-3782)、ジャケット(JUN OKAMOTO TEL:03-6455-3466)、アクセサリーすべて(ブランイリス/ブランイリス トーキョー TEL:03-6434-0210)ストーリーマスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。いっぽう、絵を描くことを愛する銀髪のクラスメイト・青磁は、自由奔放に過ごしていた。茜は何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手だったが、 彼が描く絵とまっすぐな性格に惹かれはじめる。そして、次第に茜の世界はカラフルに色づいていくのだった。そんななか、徐々に距離を縮めていくふたりの過去が重なりあい、誰にも言えなかった想いがあふれ出す…。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』9月1日(金)より全国ロードショー出演:白岩瑠姫(JO1)久間田琳加箭内夢菜吉田ウーロン太今井隆文/上杉柊平鶴田真由監督:酒井麻衣原作:汐見夏衛「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」(スターツ出版 刊)脚本:イ・ナウォン酒井麻衣音楽:横山克濱田菜月主題歌:JO1「Gradation」(LAPONE Entertainment)製作:『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会制作プロダクション:C&Iエンタテインメント、アスミック・エース配給:アスミック・エース(C)2023『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』製作委員会写真・園山友基(酒井麻衣、箭内夢菜)
2023年08月31日女性の活躍や権利のために、世界中で巻き起こっているさまざまなムーブメント。そんな動きが盛んななかで誕生したのは、各国の女性を主人公にした7つのショートストーリーで構成された映画『私たちの声』です。そこで、ジェニファー・ハドソンやカーラ・デルヴィーニュといった豪華なキャスト陣が揃う本プロジェクトで、日本代表を務めたこちらの方々にお話をうかがってきました。呉美保監督 & 杏さん【映画、ときどき私】 vol. 597アメリカ、イタリア、インドなどさまざまな国を舞台に描いた作品が並ぶなか、日本のパートを託されたのは国内外で評価の高い呉監督。そして、2人の子どもを育てながら働くシングルマザーを描いた短編『私の一週間』で主演に指名されたのは、本作で世界デビューを果たした杏さんです。今回は、仕事と育児の両立で意識していることやジェンダーギャップを改善する難しさなどについて語っていただきました。―まずは、本作の主人公に杏さんを起用された理由から教えてください。監督子を持つ母親を描くにあたって、杏さんは実際に3人のお子さんがいらっしゃいますし、大変な育児をしながら仕事をされている姿を見て、「どうやって両立しているんだろう?」と以前から気になっていたんです。しかも、テレビ番組などで「完璧にはできていません」みたいな等身大の発言もされていたので、面識がない頃からいつかお話を聞いてみたいなと。そんなふうに考えていたときに、今回のテーマとちょうど一致したので、「いまだ!」と思ってオファーさせていただきました。育児ではあらゆる可能性を想定している―杏さんは、監督に対してどういった印象をお持ちでしたか?杏さんすごくパワフルで、描きたいことに対する情熱がすごくある方だと思いました。淡々とした口調ではありますが、そのなかにしっかりとした意志があるので、熱く語り合うことができる方です。いまでは、ママ友としての交流もあるので、とてもいい出会いになりました。―本作で一緒にお仕事をされるなかで、監督が抱いていた育児と仕事の両立に関する悩みは解消される部分もあったのでしょうか。監督子育ても仕事も段取りが大切だと思いますが、杏さんはそれを淡々と効率よくこなしている方だと感じました。そして、子どもとの時間や仕事だけでなく、自分の趣味など、さまざまなことに取り組むタフさも持っている。といっても、おそらくそれは本人がしたいからそうしているだけで、ものすごくがんばっているわけでもない。そういうところに憧れますし、私も同じようにいろんなことにチャレンジしたいなと思っています。―実際、杏さんは両立をするうえで意識されていることはありますか?杏さん考えすぎてガチガチになってしまうのはよくないですが、あらゆる可能性を想定しておくようにしています。つねにプランBやプランCを持つようにしたり、突然なくなることもあるからイベントごとを楽しみにし過ぎないようにしたり、といった感じです。自分の気持ちこそが、日本におけるジェンダーギャップ―なるほど。とはいえ、育児では予想を超えたことが起きることもあると思いますが、劇中で“あるサプライズ”をしてくれる子どもたちのようにご自身のお子さんたちに驚かされることもあるのでは?杏さんたまに手紙を急にくれたり、笑顔の絵を描いてくれたりすることはあります。しかも、そのなかに「大好き」と書いてあったりするので、そういうのはやっぱりうれしいですね。―監督にとっては8年ぶりの新作となりますが、出産を経験したあとにこの企画で復帰を決めた理由についてお聞かせください。監督2021年の3月頃に、プロデューサーから「ジェンダーギャップをテーマに短編映画を作ってみませんか?」と声をかけていただいたのがきっかけでした。ただ、そのときは上の子が5歳で下の子が0歳という時期だったので、最初は時間も体力も余裕がないなと。でも、「自分はもう一生映画は撮れないのではないか…」と毎日モヤモヤした思いを抱えて過ごしていたときでもあったので、話を聞いて私のこの気持ちこそがまさに日本におけるジェンダーギャップのひとつだと気がついたんです。そこで、「いまここで動かなければ、私は二度と映画は撮れない」と自分に言い聞かせて、お受けすることにしました。いまの夢は現場にいいサイクルを確立すること―現在、日本の映画界では出産をした女性の離職率が高いことが問題視されていて、監督と同じような思いを抱えている女性は多いと思います。監督そうですね。実際、私も本当の意味で復帰できたとは思っていません。今回は短編だからできましたが、もし私が出産前と同じサイクルに戻して長編を作ろうとしたら、育児をしながらでは不可能。ほかにも映画業界で働く仲間たちに話を聞くと、子どもを産んだあとに現役でバリバリ働けている人はほとんどいません。―映画業界は代表的な例ですが、ほかの業界でもまだまだ働く女性の置かれている立場は厳しい状態と言わざるを得ないかもしれません。監督もちろん、ベビーシッターさんに預けたりすればできるとは思います。でも、そういうことではなく、ちゃんと子どもとの時間を持ちながら仕事ができてはじめて、自分の場合は復帰できたと言えるのかなと考えています。そのためには、予算のことなど課題はたくさんありますが、次に新作を撮るときにはいいサイクルを確立するのが夢です。それが実現すれば、子どもを持つ人だけでなく、現場にいるみんなが自分の時間を持てるようになるので、そういう環境を作りたいと思っています。母親の焦燥感や孤独を客観的に見つめることは大事―ただ、2023年のジェンダーギャップ指数で、日本は146か国中125位という過去最低の結果で、先進国のなかでも最下位という厳しい状況です。おふたりも、改善したほうがいいと感じることはありますか?杏さん育児に関して言うと、ここまで見過ごされてしまう理由のひとつは、ときが経つとみんな育児から卒業してしまうので、当事者が声を上げ続ける難しさがあると感じています。大変な時期を過ぎると、「もう楽になったから…」となりますよね。監督しかも、思い出って美化されますから(笑)。杏さんそうなんですよ。「私はできてたよ!」みたいになることもあるくらいですからね。でも、本当につらい人は声を上げる時間も余裕もなく、負のスパイラルに陥っているのが現実だと思います。―まさに、劇中で描かれている母親の姿と重なりますね。杏さん本作では育児をしている人の焦燥感や孤独みたいなものを淡々と描いていますが、そういう姿を客観的に見つめることは大切だと感じました。かといって、この作品では育児に関する問題提起をしたり、大変さを声高に訴えたりすることはありません。逆に、そういうメッセージは入れ込まないようにしようと監督と話していたくらいでした。そういった部分も、これまであまり受けてこなかった直球の母親役を今回は演じたいと思った理由かなと。そこから何を受け取るかは、観る方に選択の余地があるようになっているので、男女問わずいろんな世代の人に観ていただきたいです。もっと作品や中身を見てもらえる映画制作者になりたい―そのあたりは興味深いところですね。ちなみに、杏さんは現在フランスで育児をされていますが、日本とはどんな違いを感じていますか?杏さん社会全体が子どもに合わせることに対して、疑問に思っていない国だなと思います。日本だと、子どもがいることで謝らなければいけない状況が多いですからね…。そういう価値観の違いを感じているところです。―育児以外にも、ジェンダーギャップや女性ならではの苦労をした経験があれば教えてください。監督「女性監督として大変だったことはありますか?」とよく聞かれるんですが、私の場合はあまりそれが思い浮かばないんですよね。といっても、私は女性であることに加えて在日韓国籍でもあるので、いろんな偏見の対象とされることが多いですが、監督になってからの15年間ですごく大変だったことは特にありません。むしろ、それが個性となって逆に覚えてもらえたところはあるかなと。ただ、それも裏を返せば「覚えてもらえてラッキー」としている自分がいるので、そういうところを手放さないとこれ以上の成長はできないと考えるようになりました。もっと作品や中身をしっかりと見てもらえるような映画制作者になりたいと思っています。休みも遊びも“必要な仕事”としてとらえていい―それでは最後に、ananweb読者に向けてアドバイスがあればお願いします。杏さん映画はもちろん、小説や漫画でも言えることですが、エンターテインメントを通していろんな人生に触れられると、そこで救いになる何かと出会えることがあります。そういった時間を積み重ねていくことで、新たな気づきや癒しを得られると思うので、行き詰ったときはそんなふうに楽しむようにしてください。私は、休みも遊びも“必要な仕事”としてとらえてもいいと考えているほどです。監督生きているといろんな感情に出くわすと思いますが、それはつまり「生きている証拠」なのかなと。つらいときにはその瞬間だけで考えてしまいがちですが、点でとらえないことも必要です。しんどくなったら、杏さんがおっしゃっているように休むのも大事ですし、何かを手放してみたり、点で考えずに「生きているんだな」と感じていけたらいいですね。インタビューを終えてみて…。ご自身の経験に基づいていることもあり、言葉に力強さと説得力のある呉監督と杏さん。そんなふうに共鳴し合っているおふたりだからこそ、現代を生きる女性たちのリアルに迫る作品を生み出せたのもうなずけます。今後も、おふたりのタッグが見られるのを楽しみにしたいところです。どんな小さな声でも、世界を変える力がある実話からアニメーションまで、さまざまなジャンルで女性たちが抱える葛藤や立ちはだかる困難を描いている本作。どんな局面にも、勇敢に立ち向かおうとする女性たちの姿は、言葉や文化の違いを飛び越えて共感を呼び、観る者の心を大きく揺さぶるはずです。写真・園山友基(呉美保、杏)取材、文・志村昌美杏 ヘアメイク・犬木愛(agee)スタイリスト・杉本学子(WHITNEY)ブラウス¥29,700、パンツ¥24,200(ともにLE PHIL)、ネックレス¥25,300(SASKIA DIEZ)リング¥37,400(GABRIELA ARTIGAS)、ピアス¥12,000(MOUNIR)/すべてLE PHIL NEWoMan 新宿店 TEL:03-6380-1960ストーリー「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンとして掲げる非営利映画製作会社<We Do It Together>協力のもと、世界の映画界で活躍する女性監督と女優が集結して紡ぎ出したのは、女性を主人公にした7つの物語。幼い娘のために重度の薬物中毒を克服しようとリハビリに取り組む女性や、コロナ禍に若い女性のホームレスを救い出そうとする女医、毎日多忙なルーティンをこなしながら2人の子どもを育てているシングルマザーなど。さまざまな状況に置かれた女性たちが、力強く生きて行く様子が描かれている。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『私たちの声』9月1日(金)新宿ピカデリーほか 全国ロードショー配給:ショウゲート(C)2022 ILBE SpA. All Rights Reserved.(C)WOWOW写真・園山友基(呉美保、杏)
2023年08月30日静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」が開かれています。本展では、静嘉堂文庫美術館が所蔵する仏教美術の名品を一挙に公開。冥界や地獄の様子などを描いた作品が展示されています。“あの世”に行く前に、ぜひ見ておきたい展覧会をご紹介!「地獄の十王」をイッキ見!「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」展示室入り口※本記事の写真はプレス内覧会で許可を得て撮影しています。【女子的アートナビ】vol. 309「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」では、静嘉堂文庫美術館が所蔵するコレクションのなかから、仏教美術の名品を紹介。「十王図・二使者図」と「地蔵菩薩十王図」全13幅を一挙に展示するほか、江戸絵画の人気作品や円山応挙の《江口君図》、おなじみの国宝《曜変天目(稲葉天目)》も出品。重要文化財や重要美術品なども含まれた、見ごたえある展覧会です。企画を担当された静嘉堂文庫美術館学芸員の吉田恵理さんは、次のように解説してくれました。吉田さん当館が所蔵する仏画は、質が高く珍しい作品があるのが特徴です。静嘉堂の創設者・岩﨑彌之助は、明治時代、廃仏毀釈などによる文化財の海外流出や、散逸を憂い、仏教美術も集めていました。中国や朝鮮半島、そして日本の仏画もコレクションに含まれています。本展では、今回はじめて十王図をまとめて展示しましたので、ぜひ味わってみてください。意外に楽しい!?冥界ツアー河鍋暁斎《地獄極楽めぐり図》より「田鶴の臨終」明治2年(1869)では、各展示室の見どころをいくつかご紹介。第一章「極楽浄土への招待」では、中国、朝鮮半島、日本のさまざまな仏画などを展示。ここでの見どころは、河鍋暁斎の作品《地獄極楽めぐり図》のうち「田鶴の臨終」です。この作品は、日本橋の小間物問屋である勝田五兵衛の娘・田鶴を供養するため、暁斎が描いたもの。勝田は暁斎のパトロンでした。展示されている場面は、14歳で亡くなった田鶴を、阿弥陀三尊が迎えにきたところ。この後、田鶴は地蔵や弘法大師をお供にして冥界ツアーに出かけます。地獄を見物したり、閻魔大王と宴会したりとさまざまな場面が登場。作品の隣に複製が置いてあるので、暁斎が描いた冥界ツアーを自分の手でめくりながら楽しめます。石臼で砕かれる残酷場面も…!「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」展示風景第二章「地獄の十王ここにあり」では、本展のハイライトである十王図が勢ぞろい!十王とは、人が亡くなったあとに行く冥界にいる裁判官のこと。亡くなった人は、冥界の十王によって現世の罪を裁かれ、その後どこに行くのか、何に生まれ変わるのかが決まります。有名な閻魔大王も十王のひとりです。「十王図」の見どころについて、吉田さんは次のように解説してくれました。吉田さん十王図では、王が堂々と大きく配置され、手前には、裁きを受ける亡くなった人が描かれています。亡くなった人が、少しでも良い場所に行けるよう、縁者が王に仏像や掛け軸などを持参する様子もたくさん描かれています。功徳を積んでください、とアピールをする意味も含まれていると思います。また、石臼で砕かれる人を描いた残酷な場面もあり、細かく見ていくと非常におもしろい作品です。応挙の大人気作品が登場!「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」展示風景第三章「昇天した遊女―円山応挙筆『江口君図』の謎に迫る」では、重要文化財の「普賢菩薩像」と、円山応挙の「江口君図」を並べて展示。さらに、応挙型の幽霊を写した「幽霊図」や、重要文化財の「西行物語」、さらに国宝の「建窯 曜変天目(稲葉天目)」も同室にあり、貴重な作品が集まるゴージャスな展示空間になっています。応挙の《江口君図》は、遊女・江口君の亡霊を普賢菩薩に見立てて描いた作品です。吉田さん描かれている江口君は、遊女の面影もありますが、普賢菩薩でもあり、幽霊画であるとも考えられ、いくつもの意味がこめられています。本展では、極楽世界から展示がはじまります。冥界のなかの「あの世」をぜひ探検してみてください。会期は9月24日まで!この展覧会は、9月24日まで開催。功徳を積めば地獄行きを免れるなど、将来、役に立つコトも作品から学べるかもしれません。ぜひ、美術館で“あの世”を探検してみてください。Information会 期:~9月 24 日(日)会 場:静嘉堂@丸の内開館時間:10:00~17:00 ※金曜は 18:00 閉館。※入館は閉館時間の 30 分前まで休 館 日:月曜日、9 月 19 日(火) ※9 月 18 日(月・祝)は開館観覧料:一般¥1,500大学・高校生¥1,000中学生以下無料
2023年08月30日