8月24日、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」が放送倫理・番組向上機構(BPO)の青少年委員会で審議されると決定した。BPOとは、’03年にNHKと民放連によって設置された第三者機関。BPOの発表によれば、《視聴者やBPOの中高生モニターから、出演者に痛みを伴う行為を仕掛け、それをみんなで笑うような、苦痛を笑いのネタにする各番組は、「不快に思う」、「いじめを助長する」などの意見が継続的に寄せられてきていること等を踏まえ、委員会で視聴者意見が寄せられた複数の番組を視聴した上で討論した》と記している。また《個別の番組を対象とするものではない》とも説明しており、テレビ局の担当者との意見交換などを通じて1つのテーマとして審議すると、各メディアで報じられている。ネット上では《もっと早くにBPOは動くべきだった。遅い!良き方向に向かってくれ!》《個人的には「ついに!」って感じだ》と賛同する声もあれば、《議論の対象が抽象的過ぎるのでは》《今更?》と訝しがる声もあり賛否両論のようだ。BPOの発表では「個別の番組を対象としない」とある。だが実際に“炎上”したバラエティ番組もあり、制作に大きく影響する可能性がありそうだ。「最近の番組ですと、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ系)がしばしば視聴者の間で物議を醸しています。炎上した具体例を1つ挙げるとすれば、今年4月の放送回でお笑い芸人のおいでやす小田さん(43)がバケツ一杯の青い塗料を何度も浴びせられていました。ドッキリとはいえ辛そうでしたし、小田さんも『息ができなかった』と語っていました。ネット上でも『いじめにしか見えない』との意見が上がっていました。BPOの審議次第では今後、このような過激なドッキリや仕掛けはできなくなるかもしれません」(テレビ局関係者)■タイキック、ビンタも民放視聴率1位の「笑ってはいけない」なかには“苦痛を笑いのネタ”にしているが、人気を集めている長寿番組もある。それは大晦日の風物詩ともいえる、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の特別番組「笑ってはいけないシリーズ」だ。レギュラーメンバーはダウンタウンの松本人志(57)と浜田雅功(58)、ココリコの遠藤章造(50)と田中直樹(50)、月亭方正(53)の5名。放送開始から15年目を迎えた昨年は「新しい地図」のメンバーや松平健(67)、菅野美穂(44)など豪華ゲストが“笑いの刺客”として登場し番組を盛り上げた。さらに平均視聴率は午後6時30分~午後9時までの第1部が17.6%、午後9時~深夜0時30分までの第2部は14.1%を記録(ビデオリサーチ、関東地区)。『第71回NHK紅白歌合戦』の裏番組のうち、民放局1位を獲得したのだった。「基本的なルールは彼らが24時間に及ぶ収録中に笑ってしまった場合、“罰ゲーム”としてクッション性のある棒でお尻を叩かれます。前回は1人あたりトータルで、200回前後叩かれていました。また田中さんはほぼ毎年、ムエタイのボクサーから “タイキック”を受けて悶絶していました。そして方正さんもプロレスラーの蝶野正洋さん(57)から、強烈なビンタをされるシーンが登場していました。これらを“伝統芸”として受け入れている視聴者も多いようですが、BPOが指す『青少年に与える影響の重大性』としてどのように判断されるか注目が集まるでしょう。また“許されるネタ”と“許されないネタ”の具体的かつ明確な判断基準も、大きく議論を呼ぶことになりそうです」(前出・テレビ局関係者)すでにネット上では、「笑ってはいけない」の存続を懸念する声が上がっている。《笑ってはいけないどうするのかなw》《笑ってはいけない、今年は見送りかしら》《ということは今年から「笑ってはいけない」はやらない可能性が……?》審議の結果によっては、バラエティ界に激震が走ることになりそうだ。
2021年08月26日放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は7月5日、「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)でやらせ疑惑が報じられていた2企画についての意見を発表した。一部でやらせ疑惑が報じられていたのは、タイの「カリフラワー祭り」(17年2月放送)とラオスの「橋祭り」(18年5月放送)。視聴率が好調な同番組の中でも「祭り企画」は人気企画の1つ。やらせ疑惑を報じられたことで企画自体を休止していた。同委員会で審議した結果、「『祭り』は番組のために用意されたもの」「地元に根差した『祭り』への体当たり挑戦だとナレーションで思わせた」と分析。そのうえで「程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があった」と指摘した。「フジテレビ系バラエティー番組『ほこ×たて』でやらせが発覚した際は、放送中止に追い込まれました。その後、BPOは『重大な放送倫理違反があった』と意見を発表しています。それに比べると、今回の意見はかなり甘い印象です」(放送担当記者)とはいえ放送倫理違反があったとされたことで、企画再開は絶望的になったという。「また出演者のロケではケガも相次ぎ、一部では内村光良(54)の降板説も報じられています。好調だった視聴率も、裏番組『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)を下回る回が多くなってしまいました。視聴者をひきつけるような新企画が必要ですが、一度離れた視聴者を取り戻すのは難しそうです」(芸能記者)まさに四面楚歌となった「イッテQ!」。番組はいま、ターニングポイントを迎えているといえそうだ。
2019年07月07日BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会は21日、TBS系バラエティ特番『オール芸人お笑い謝肉祭 ’16秋』(10月9日放送)についての見解を公表。性意識に対する嫌悪感や、子供への悪影響を懸念する視聴者に「謙虚に耳を傾けるべき」との考えを示した。同委員会は、同番組内での、温泉場で男性芸人の股間に"ヒリヒリする薬"を塗るシーンや、ローションを塗った大型の階段セットで芸人が下半身を露出したり、全裸で階段を昇り降りしたりしたシーンに対し、「社会的受容の範囲を逸脱しているのではないか」「性に対する扱いが不適切」との意見が出たことから、審議入りを決定。TBS側と書面でのやり取りや意見交換を行った上で、21日に「委員会の考え」を公表した。それによると、「現代社会はジェンダーについての意識やセクシャルハラスメントに対する理解が深まり、とくに近年は性的少数者の社会的受容という性意識の変化が見られるようになりました」という現状を踏まえ、「テレビ局はこうした動向を鋭敏に感知する必要があり、特定の場面に嫌悪感を表し、また、子どもに悪影響を与えると懸念する視聴者に対しても謙虚に耳を傾けるべき」としている。TBSは、同委への回答書で、「バラエティ番組における下ネタの大前提は、社会に受容される範囲を越えて社会通念から逸脱すれば、視聴者に不快感を与え」るとの考えを提示。「社会に受容される範囲」の線引きするのは困難としたものの、今回問題となった2つのシーンについては、「社会に理解される範囲を逸脱し、多くの視聴者に受容されない内容であった」と反省した。これを受け、同委はTBSに対し、「問題の所在を直截に捉えて、真摯に対応していただきました」と評価。テレビやラジオの番組制作者に対して、「視聴者が心を解放して明日への活力につながる爽やかな笑いに包まれるよう、より神経を研ぎ澄まして、真にチャレンジングなバラエティー番組を作っていただくことを期待します」とエールを送っている。
2016年12月21日放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は6日、審議していたTBS系バラエティ番組『珍種目№1は誰だ!? ピラミッド・ダービー』について、「放送倫理違反」との意見を公表した。問題があったのは6月19日に放送された「双子見極めダービー」という企画で、登場する双子が入れ替わっているか見極めるというもの。出演した顔相鑑定士の男性は、最終問題まで回答したにも関わらず、放送では途中で脱落となり、最終問題ではCGで姿を消した映像が流され、ブログで収録時と内容が違うと怒りを爆発させていた。委員会は、番組の制作体制や制作環境、そして、スタッフの意識の問題点などを指摘した上で、「出演者に無断でレースから脱落したことにしてその姿を消すという、出演者に対する敬意や配慮を著しく欠いた編集を行ったことを放送倫理違反」と判断。また、局制作の番組といいながらも、制作過程のほとんどが制作会社によって担われているという実態は、番組に対する責任の所在をあいまいにする危うさをはらむこともあわせて指摘した。TBSは、7月5日に番組公式サイトで、「出演者の方からご指摘頂いた収録の順番や、ルール変更の経緯は、演出の一環のつもりでしたが、事前に説明や了解を得ることなく画像を加工し、行き過ぎた編集がありました」と説明。「池袋絵意知氏、および視聴者の皆さまに深くお詫びいたします」と謝罪していた。
2016年12月06日BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会は、TBS系バラエティ特番『オール芸人お笑い謝肉祭 ’16秋』(10月9日放送)の審議入りを決めた際の議事概要を公開した。同委は、視聴者から「男性が男性の股間を無理やり触る行為などがあった。内容が下品だ。子どもに説明できないような番組はやめてほしい」などといった意見が寄せられたことを受け、10月25日に開催した会合で、「どのような経緯で放送に至ったのかなど確認したい」として、審議入りを決定した。公開された議事概要によると、「テレビを家族で見ることが多い日曜日の夜の時間帯に放送するのに適した内容とは思えない。こんな形でしか笑いが取れないのだろうか。お笑い芸人の世界のヒエラルキーを垣間見るよう」といった批判や、「青少年委員会では『放送の公共性』や『表現上の配慮』について繰り返し発言してきているが、全く響いていないことに落胆した」と、残念がる意見も。また、「ハプニングでズボンが脱げるのは、笑いの取れるギリギリの演出として考えられるが、皆が見ている中で階段を全裸で滑り落ちるのは故意にやっているもので、さまざまな問題をはらんでいる」との指摘に加え、男性が男性の股間を触った「大声厳禁 サイレント風呂」のコーナーに対しては「男性同士だから許されるという意識があったのだろうか。LGBTの観点からも問題を指摘したい」との意見が出ている。次回の定例会合は、今月22日に開催される。
2016年11月11日●番組を楽しむ多くの視聴者をスルーテレビ制作者にインタビューするマイナビニュースの連載「テレビ屋の声」が10回を数えたことで、編集部から"テレビの規制"についてコラムを書いてほしいというお題が届いた。書きはじめようとした、まさにそのとき、BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会が、10月9日放送の『オール芸人お笑い謝肉祭’16秋』(TBS系、以下『お笑い謝肉祭』)が審議対象となったことを発表。内容は、視聴者から「男性が男性の股間を無理やり触る行為など内容が下品」「『裸になれば笑いがとれる』という低俗な発想が許しがたい」「子どもに説明できないような番組はやめてほしい」というものだった。同番組が放送される前、奇しくも司会のとんねるず・石橋貴明がインタビューで、「『こうやったらまずいな』って考えちゃうような、閉塞感が全てにおいてテレビをつまんなくしちゃっている気がします」(日刊スポーツ、10月3日付)と語っていた。まるでBPOの審議対象になることを確信していたかのような発言に驚かされたが、実際、テレビ業界の規制は厳しくなっているのだろうか?○名立たるテレビマンたちの本音は?まずは「テレビ屋の声」に掲載された名立たるテレビマンたちの"テレビの規制"に対するコメントを拾っていこう。『ゴッドタン』(テレビ東京系)を手がける佐久間宣行氏は、「あります、あります。どんどん難しくなっているんだろうなと思います」。『電波少年』(日本テレビ系)を手がけた〆谷浩斗氏は、「『電波』をやってたときも一応規制はありましたけど、そこからさらに厳しくなってるなというのは感じますね」と、いずれも規制の存在をあっさり認めた。私自身、さまざまな番組の取材をしていると、スタッフとキャストの双方から同じような声を聞く。彼らは決まって苦笑いを浮かべ、半ばあきらめに近いムードを醸し出しているのだ。言わば、「BPOの審議入りしたら、ちょっとヤバイ」どころか、「審議対象になっただけでも、かなりヤバイ」という心理状態なのだが、無理もない。スタッフもキャストも報酬をもらって仕事をしているだけに、番組が打ち切られたら困ってしまう。彼らはテレビ局内だけでなく、スポンサーやBPOの意向にも沿わなければいけない、つらい立場だ。ここで注目すべきは、「意向に沿わなければいけない」人の中に"視聴者"が含まれていないこと。たとえば、BPOが大規模なアンケートや多数決を採用していない以上、寄せられる視聴者の声はあくまで一部であり、番組を楽しんでいる多くの人々はスルーされ続けている。『お笑い謝肉祭』も苦情を寄せた人より、はるかに多い人々が楽しんだとみるのが自然だ。実際、SNSなどのクチコミを見ても、「ひさびさに笑わせてもらった」「あれくらいで苦情なんて暇」「クレーマーとBPOがテレビをつまらなくしている」という擁護の声が大半を占めている。前述したインタビューで、石橋貴明は「僕らの子ども時代は、たとえばドリフターズさんがいて、食べ物を粗末にしてるんだけど、それで『子供に見せたくない番組ワーストワン』とかになるんだけど、そんなことはみんながちゃんと(いけないことだって)分かっていてやっていたし。でも、今は、その前の時点でロックかけられちゃう」と語っていた。石橋がこの勇気あるコメントができるのは、単に大物だからではなく、「視聴者は分かってくれる」という信頼の証ではないか。一方、BPOの委員たちも、何度か「自分たちの言動で制作現場が委縮してほしくない」というコメントを発表しているように、規制ありきではないのだろう。しかし結局は、「苦情に振り回されて、規制に加担している」という感が否めないのも、また現実だ。○"クレーマー有利"のいびつな状態思えば70年代の『8時だョ!全員集合』(TBS系)、80年代の『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)は、「下品」「くだらない」テレビ番組の象徴だった。何度となく各地のPTAや教育団体などで問題にされたが、それでおしまい。番組への影響はほとんどなかった。理由として考えられるのは、当時の視聴者が「自分の選択権をはっきり認識して、それを行使していた」から。元来、視聴者は「テレビを見る、見ない」という2つの選択権に加えて、「どのチャンネルを選ぶか」という数多くの選択権も持っている。現在の40~50代には、親から「テレビは下品でくだらないものだから見てはいけない」と言われて育てられた人も多いが、当時は大人が確固たる意志を持って、自分と子どもをコントロールできていたのだ。ひるがえって2016年の現在は、自らに選択権があることを忘れ、他人の選択権を奪おうとする人に有利な世の中になってしまった。制作現場の実情は、「BPOに申し立てをされただけで大ダメージを受け、『問題なし』でもその後の制作にブレーキがかかる」「審議入りしたら、どんな結果が出ても打ち切りに向かって動き出す」という状態が続いている。つまり、「他人の選択権を奪おうとするクレーマーに有利で、人々の選択権を作ろうとする制作サイドに不利」という、いびつな形になっているのだ。以前よりも不寛容な人が増えているのは間違いないが、制作サイドもスポンサーもBPOも、現在のいびつな状態を踏まえた上で、賢明な判断をしていくべきだろう。●子供向け特撮番組で胸や脚の露出はいいのか?○悪影響を及ぼしかねない番組の魅力実際、これを読んでいるあなたは、「テレビがつまらなくなった」という声も、「ある番組がBPOの審議入りした」というニュースも、ネットでふれることが多いのではないか?学生だけでなく社会人も、テレビよりもネットのほうが接触時間は圧倒的に長い。要はそれだけ「テレビの発信力が下がっている」という事実は認めざるを得ないだろう。しかし、同じ無料のメディアでも、ネットはくだらないものやエロが許されている一方、テレビはそのほとんどがNG。さらに、テレビはわざわざ録画しない限り、その情報はフローされていくが、ネットはストックされ、いつどこでも見られるという危うさを抱えている。どちらが社会や子どもに悪影響を及ぼすかは、接触時間、内容の幅、フローとストックの差で分かるはずだ。そして、悪影響を及ぼすか紙一重のものほど、人々は興味をそそられ、笑いや感動につながりやすいという側面があり、その意味でテレビは極めて不利な状況下に置かれている。不利な状況下にあるのは、ネットとの比較だけではない。テレビ番組が無難なものばかりになっていく一方、報道・情報番組で流れるニュースは年々ヒートアップ。現在のドラマでは見られない残酷な事件や、バラエティでは考えられない爆笑モノの出来事が次々に起こり、現実が虚構を超えてしまうのだから、「テレビがつまらなくなった」と感じる人がいるのも仕方がないのかもしれない。今年の夏に、ドラマ『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(関西テレビ・フジ系)の「描写がグロテスクすぎる」「子どもへの影響が怖い」という視聴者の批判を受けたBPOが、名指しはしなかったものの、制作サイドに配慮をうながすコメントを発表して話題を集めた。しかし、朝から夜まで報道・情報番組で連日放送されている殺人事件の方が、「よほど身近で寒気がする」という人も多いだろう。○『あさイチ』に見る規制への突破口さらに、子どもへの影響を考えるなら、「午後に再放送されている殺人事件を扱った刑事ドラマはアリなのか?」などの線引きもあいまいだ。話を『お笑い謝肉祭』に戻すと、「男性の裸が低俗」というが、それなら「子ども向けの特撮番組に胸や脚を露出した女優が登場するのはいいのか?」などの矛盾がつきまとう。現実の出来事よりも狭い幅で番組を作らなければいけない上に、許される表現の線引きもあいまいであり、その両面で制作サイドの苦労がしのばれる。「批判を避けるために無難な番組を作る」か、「批判覚悟でギリギリのところを攻める」かの2択ならば、前者を選ぶスタッフが多くても責める気になれない。「テレビ屋の声」では、斬新な企画を連発する『あさイチ』(NHK)の河瀬大作氏が、「規制はあんまり感じないです。本当は、昔から変わらないんじゃないですかね」と語っていた。前述した民放各局の制作者たちと比べれば一目瞭然。「スポンサーの影響を受けない」ということが、どれだけ制作サイドにとって大きいか、ということが分かる。ただ、「視聴者やBPOの影響を受けている」という点では民放と同じであり、そこからの批判はあまり受けていないのだろう。これは裏を返せば、「視聴者が本当に見たいものに、できるだけ制限を加えず放送している」ということなのかもしれない。NHKも『あさイチ』以外は、それほど「批判覚悟でギリギリのところを攻めている」番組はないが、とかく制限の多さが叫ばれ、ネットとの不利な戦いに挑むテレビ業界にとって、ヒントの1つとなり、小さな突破口になることを願っている。■木村隆志コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
2016年11月03日●ワイドショーの凄惨なニュース演出は良いのか先日、BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会が、「テレビ番組が残虐なシーンを放送する際、視聴者に『見る』『見ない』を選択するための情報を事前に示すことが公共性の点から必要なのではないか」と、配慮をうながす委員長コメントを発表した。作品名こそ出さなかったものの、対象番組がきょう6日に最終回を迎える波瑠主演『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(関西テレビ・フジテレビ系 毎週火曜22:00~22:54、以下『ON』に略)であることは明白だ。視聴者から「ゴールデンタイムなのに死体の描写がグロテスクすぎる」「(現実の社会でも)異常犯罪が続く中、子供や青少年への影響が怖い」「事前に注意喚起のテロップを流すなり時間帯を考えて放送してほしい」などの意見が寄せられたことを受け、討論した上でのコメントだった。結局、「審議入り」こそしなかったが、言わばBPOの"配慮をうながすコメント"は、制作サイドにとっては横やりのようものであり、これを受けて「その通り」と「干渉するな」などの賛否が飛び交っている。殺人事件が必ず起こる刑事ドラマが相変わらずの人気を見せる中、劇中の残虐なシーンはどうあるべきなのか――。○オープニングにテロップは必要か?委員会の論点は2点で、まず1つ目はオープニングシーンについて。委員から、「いきなり少女の死体の過激なシーンから始まったのは問題がある」「事前表示すべきだった」という声があがった。つまり、委員会としては「番組冒頭に『このドラマには残虐なシーンがあるのでご了承ください』などのテロップが必要」という見解なのだろう。一方、視聴者の見方はどうなのか? 「Yahoo!ニュース 意識調査」の「テレビ番組が残虐なシーンを放送する際、視聴者に『見る』『見ない』を選択するための事前表示が必要か」というアンケートでは、「必要」が52.1%(38,643票)、「不必要」が43.1%(31,979票)、「わからない/どちらとも言えない」が4.8%(3,561票)だった。アンケートの結果は、ほぼ二分されたが、これはある意味当然のこと。そもそもどんなジャンルの作品でも、制作サイドは「視聴者に何とかインパクトを与えよう」とオープニングからギリギリのラインを攻めるし、だからこそ「不快な気分になる」「生理的に受けつけない」視聴者もいる。しかし現状では、刑事ドラマの多くが殺人事件からスタートする。このことからも、制作サイドと視聴者の間には、ある程度の"暗黙の了解"が成立しているはずだ。ただ、『ON』のオープニングは、視聴者にとって「異常犯罪」「グロテスクな死体」などの苦情を言いやすいものだった、という側面は大きい。また、「事前表示すべきだった」との考えにも疑問が残る。『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』というタイトルの「異常犯罪捜査官」というフレーズを見れば、多少なりともグロテスクなシーンがあることが予想できるだろう。制作サイドが最初のカットでタイトルバックを見せなかったのも、"今どき何の情報もなしにドラマを見ている人は少ない"からであり、実際、中高年層や小学生でもリモコンの「番組表ボタン」や「番組情報ボタン」で確認する時代だ。視聴者は「怖い番組かな…?」と思ったら、すぐにボタンを押して内容を確認したり、チャンネルを変えたりできるため、この苦情そのものに「自分が苦手なものを排除したい」という不寛容さを感じる。○波瑠に異常犯罪者をぶつけた理由とは?委員会による2つ目の論点は、「初回が通常より1時間早い21時からの放送だった」こと。「22時台ならいいけど21時台はダメ」という線引きもあいまいだが、それ以前に20時台にも殺人事件を扱う刑事ドラマが複数放送されている。もちろん演出には配慮が見られるが、それでも理不尽な殺人犯が登場し、残虐シーンの一歩手前まで見せているのは問題ないのか。「子どもへの影響を重視しろ」と言うなら、「どちらもNO」が適切なのかもしれない。確かに『ON』のようなホラー要素を含むものは、深夜帯の放送が多く、「子どもが眠れなくなったらどうするのか」と言いたくなる気持ちも分かる。しかし、日中の情報番組やワイドショーでは、ドラマ以上に怖さを感じる凄惨なニュースをさんざん掘り下げているのも事実。「怖がらせようとしているのか?」という演出も多く、ドラマだけが"露骨"とは言えないのではないか。「グロテスクすぎる」という苦情のあった『ON』だが、実はさまざまな配慮がされている。凄惨な殺人や血が噴き出すなどの描写はなく、「グロテスク」と言われたのは、そのほとんどが死体だった。"動きのあるシーン"ではなく、2話の冷凍死体などの"静止した美術"の怖さで勝負しているのだ。しかも、映し出される時間は短く、カット割りを細かくするなどの工夫が施され、映像そのものもスタイリッシュなアートのように加工されていた。それは委員たちも認めていたようで、「制作者は色味を抑えるなど必要以上に強調したとは思えず、相当気をつけながら限界に挑戦して作ったのではないか」と理解を示す声もあった。もともと『ON』の狙いは、「旬の女優・波瑠vs異常犯罪者」の鮮烈なコントラスト。「『あさが来た』(NHK)、『世界一難しい恋』(日本テレビ系)とヒット作でメインを張り続ける波瑠の魅力を最大限に生かそう」というものだ。美しい波瑠と醜い異常犯罪者、輝きを放つ波瑠とグロテスクな死体。両者が対峙(たいじ)したシーンのコントラストが番組の根幹であり、ある意味「それなりの苦情は予想の範疇」だったのではないか。●『ON』は終盤までチャレンジングな演出○制作現場はBPOの声に萎縮している今回の委員会発表で気になったのは、委員たちが自分たちのコメントによって「制作現場が委縮しかねない」と分かっていたこと。実際、「やり方や見せ方に問題はあったが、この番組を『審議』にするとドラマ制作現場に萎縮を与えるので、討論内容を公表することで終えてよいと思う」という委員の声がホームページに掲載されている。その他のコメントにも、「(残虐なシーンを)真似をする人はまずいないと言われている。とはいえ、青少年委員会として何らかのメッセージを公表したほうが良いだろう」「視聴者に対する配慮に欠けていると思うが、青少年委員会として一定のメッセージを発することで『審議』まで進む必要はないのではないか」と、審議をデリケートに扱っている様子がうかがえた。制作現場にとって「審議入り」の事実は重い。審議の結果、「問題なし」というケースも多いのだが、BPOとのやり取りで精神・労力の両面で消耗するほか、番組のイメージは下がり、視聴率にも影響力を及ぼし、スポンサーからも逃げられてしまう。だから制作サイドは、「BPOに問題視されない」ことを前提条件にして番組を作り、その結果この数年間で自主規制が当然のようになってしまった。BPOも、「コメントや審議をしすぎるとテレビがつまらなくなる」ことは分かっていて、だからこそ慎重に検討しているようだが、それでも昨今言われているように「やりすぎ」の感も強い。さらに問題は、委員長コメントの最後に書かれていた「委員会としてはこれ以上問題としないが、今後、同様の番組が放送される際の参考に資するために、上記の点についての配慮を各局に促したいと考え、コメントすることにした。意を汲んでいただきたい」というフレーズ。「配慮を促したい」「意を汲んでいただきたい」…これらは、各局や他番組に対する"強めのけん制球"と言っていいだろう。こうした1つ1つの言葉が、制作現場の人々に「優れた映像を作ろう」よりも先に、「BPOに気をつけよう」と考えさせる。強制力の有無に関係なく、制作現場の人々が感じる圧力は大きいのだ。願わくば、制作側が「貴重な意見として参考にさせていただく」と大人の対応でサラッと受け流してほしいのだが、幸いにして『ON』は終盤まで制作スタンスを変えずにチャレンジングな演出を続けている。ドラマ業界全体が今作を良き例として、BPOや視聴者の苦情に萎縮することなく、ドラマ制作してくれることを切に願いたい。○「グロテスク」も「エアギター」も狙いは同じただ、『ON』の制作サイドにも考えるべきところはある。昨今、視聴率獲得のために過剰な描写を連発して視聴者をあきれさせるドラマが増えているが、「グロテスク」もそれに該当しないとは言えないからだ。『ON』の裏番組『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)も、物語とは関係ない「エアギター」の演技を連発しているが、これは「ネットメディアのトピックス化やSNSのクチコミを狙いつつ、BPOには引っかからない」というプラン。視聴者の「あざとい」という批判も少なくないが、「エアギター」も「グロテスク」も狙いは同じであり、両者の違いは「BPOに引っかかったかどうか」だけだ。両番組とも制作サイドは「攻めている」のだが、気になるのはそのベクトルが「グロテスク」と「エアギター」というドラマ性とは別のところに向いていること。話題の大きさやネット上の露出としては、一定の成果を挙げたのかもしれないが、「作品としての質がどうか?」というと話は別だ。いずれも、視聴率(関東地区)が1ケタ台にとどまっていることも含めて、両番組の関係者には考えさせられるところが多かったのではないか。BPOでの扱いに関わらず、直接的な被害を受ける人がいなければ、苦情は一定期間のみで収まっていく。スタッフとキャストの苦労を思うと、今回のようなことで話題になるのは気の毒であり、最終話に向けて微力ながらエールを送りたい。■木村隆志コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。
2016年09月06日凸版印刷は4月4日、企業や自治体の事務局業務やコンタクトセンターなど幅広い範囲で業務を代行するBPO(Business Process Outsourcing)事業の中核を担う新拠点として朝霞工場(埼玉県新座市)内に「BPOスクエア朝霞」を設立し、6月から稼働を開始すると発表した。近年、社会的環境の変化に伴うさまざまな分野でのBPOソリューションへのニーズの高まっており、同社ではこれまで培ったノウハウと安全性が高く効率的なBPO事業の実績を活かし、事業拡大に向けて対応を強化。複雑化する業務への対応など、アウトソーシングの役割の拡大を想定し、新拠点を設立した。BPOスクエア朝霞の特徴として業務設計、コンタクトセンター、事務センター、システム開発、品質管理などBPO事業のあらゆる機能と人員が集うコミュニケーションの場として、顧客に利用してもらうことを目指す。BPOスクエア朝霞の特徴として、これまでICカードと暗証番号による入退室管理や、24時間の監視カメラ運用、出入口に回転ゲートを設置し、複数人で同時に入室する「共連れ」を防止するなど、セキュリティ面を向上させ、これまで以上にセキュリティ性が求められる業務にも対応が可能だ。さらに、業務拡張スペースの確保により、大規模案件や想定外の業務量拡大にも柔軟に対応を可能とした。そのほか、審査業務の判断プロセスをシステム的に支援する業務分析のルールエンジンを導入し、独自開発の「進捗管理システム」「不備内容の自動判別」「端末による審査業務」、動画と音声によって作業者に事務業務を指示する「作業標準ナビゲーション」などICTを活用した仕組みを導入し、業務のペーパーレス・オートメーション化を推進。今回のBPOスクエア朝霞の設立により、凸版印刷のBPO拠点は札幌コンタクトセンター、東日本BPOセンター、本所コンタクトセンター、坂戸工場、羽村情報センター、名古屋工場、関西BPOセンター、滝野証券工場、福岡工場の計11拠点となる。今後、ICTの活用により複数拠点での業務連携を可能にし、エリア共通基盤を用いた運用による業務効率化・高品質化を図るとともに、事業継続性の面からも高い安全性の実現を目指す。加えて、BPOスクエア朝霞の拡張を進め、全国BPO体制を強化するほか、社会課題を解決するために課題抽出から業務分析、運用まで一貫したBPOソリューションを全国規模で展開・提供し、顧客の企業価値・事業価値向上を図り、BPO関連事業で2020年度に1200億円の売り上げを計画している。
2016年04月04日矢野経済研究所は3月30日、国内の地方自治体向けBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の調査を実施し、結果を発表した。調査結果によると、2014年度の国内自治体向けBPO市場(事業者売上高ベース)は、前年度比2.0%増の3兆7517億5000万円となった。矢野経済研究所によると、地方自治体の予算が縮小傾向にあることやサービス単価が低下傾向にあるため、自治体向けBPO市場の成長率は微増程度に留まっているという。ただし、業務の一括調達を行う自治体が増加しており、BPO事業者側でもサービス提供範囲の拡大に努めている。また新たな需要として、マイナンバー対応BPOや地方創生に関わる広報活動のBPOなどへの需要も発生している。矢野経済研究所では、これらのことから自治体向けBPO市場は2013年度から2019年度までの年平均成長率(CAGR)1.4%で推移し、2019年度の同市場規模は3兆9883億円になると予測している。なお、同調査の調査期間は2015年12月~2016年3月、調査対象はSIer、コールセンター事業者、人材派遣系BPO事業者、PR会社、ふるさと納税事業者、指定管理者、地方自治体など、調査方法は専門研究員による直接面談、電話・Eメールによる取材、ならびに文献調査の併用となっている。
2016年03月31日日立システムズは11月12日、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)への対応に必要な業務をワンストップで代行する、事業者向け「マイナンバー対応BPOサービス」の内容を拡充し、提供を開始した。価格は個別見積もり。具体的には、すでに提供している従業員などのマイナンバー収集・登録から廃棄までの管理や、関連書類の印刷処理、ヘルプデスクの各サービスに加え、今回、日立トリプルウィンとの協働により、給与計算や年末調整業務、および社会保険労務士が実施する社会保険関係帳票作成業務、税理士が行う税務関係帳票作成業務まで、それぞれ有資格者と連携の上提供できるようになった。同サービスを利用することで、事業者はマイナンバー管理・運用および給与計算・各種届出業務にリソースを割くことなく、本来業務に専念することが可能となる。例えば、源泉徴収票については、税理士連携・指示のもと、従業員の支払額の算出などを日立トリプルウィンが代行し、その後のマイナンバーの附番、各種関係書類の印刷、封入・封緘までの業務を事業者あるいは日立システムズが実施するという。社会保険関係書類については、提携先の社会保険労務士を通じて行政機関へ提出されるため、事業者の手を煩わすことなく手続きを済ませることができるとしている。また今回、日立グループ内で従業員向けに提供しているマイナンバー制度に関するeラーニングコンテンツも、必要な期間のみ月額課金制で利用可能なSaaS型のクラウドサービスとして提供される。
2015年11月12日日立製作所と日立システムズは7月6日、マイナンバー制度への対応に必要な業務をワンストップで代行する事業者向けの「マイナンバー対応BPOサービス」を発表した。価格は個別見積。7月7日から販売開始し、提供開始時期は10月1日。両社は2018年度末までに累計65億円の販売を目指す。新サービスは、同社グループが持つマイナンバー制度対応のノウハウを利用し、従業員などのマイナンバー収集・登録から廃棄までの管理、法定調書の印刷代行、ヘルプデスクまで、対応。日立が公共分野でのマイナンバー対応実績・ノウハウを基にIDデータ管理や帳票出力を行う「マイナンバー管理システム」を開発し、日立システムズが同システムを中核に自社のデータセンターやコンタクト・センターなどと組み合わせ、BPOサービスとして提供する。同サービスの利用により、事業者はマイナンバーの管理・運用体制・設備を最小限にでき、マイナンバー管理・運用業務にリソースを割くことなく本来業務に専念することが可能という。例えば源泉徴収票を提出する場合、事業者は、各従業員の支払金額など必要な情報を現行システムからデータを提供することで、その後のデータ照合や帳票への印刷、封入・封緘までの業務を委託でき、納品された源泉徴収票を各省庁へe-TAX(国税電子申告・納税システム)や郵送などにより提出するだけで手続きを済ませられるとのこと。現行業務やシステムを大きく変えることなく、リーズナブルなコストで同社グループと同等のセキュアなマイナンバー管理・運用体制を実現できるとしている。同サービスは、現行業務・システムを大きく変えない管理・運用、機密性の高い独立区画でのデータ登録、高セキュアなデータ管理、監査レポートの発行、きめ細かな問い合わせ対応窓口といった特長を持つ。現行業務・システムを大きく変えない管理・運用では、マイナンバー収集・登録から廃棄までの管理、法定調書の印刷代行、ヘルプデスクまでを代行。データ登録に関してはまず、マイナンバーの収集を、記入者の作業効率化と誤記載の抑止を可能とした「マイナンバー収集キット」を用い、信書として授受する。マイナンバーの授受が確実になされたことを確認するため、郵便物の追跡サービスにも対応する。収集した大量のデータは、日立システムズのBPOセンター内に設置した機密性の高い専用の独立区画においてOCRによる自動入力と目視での確認を併用してシステムに登録する。データ管理は、マイナンバーをインターネットと直接接続しない場所に設置した「マイナンバー管理システム」により、第三者が利用できないように高度な手法で暗号化したIDデータとして保存する。作業を行うスタッフの挙動はセキュリティ・オペレーション・センターでログを監視し、情報漏洩を防ぐ。マイナンバーを記載する必要のある申告書や法定調書の印刷代行や封入封緘作業、またシュレッダーによる書類廃棄なども日立システムズ内で一括して行うため、情報流出リスクを最小化できるとしている。監査レポートは、業務を委託する企業の監督義務に対応する特定個人情報保護評価書(全項目評価書)に対応したレポートを発行する。問い合わせ対応窓口は、管理者や従業員からの問い合わせに対して、マイナンバー制度に関する社内外の認定取得者や教育を受けた日立システムズのコンタクト・センターのスタッフが、きめ細かに対応するとのこと。
2015年07月07日NTTデータスマートソーシングとコンカーは4月17日に、出張・経費精算に特化したBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)分野で業務提携することを発表した。コンカーが提供する「Concur Travel & Expense」は、出張旅費・交際費・近接交通費などの出張・経費管理ができるクラウドサービス。「Concur Travel & Expense」の持つ経費申請事前チェック機能により、規定外の経費申請を未然に防ぐ事が可能となり、企業のガバナンス・コンプライアンスの向上が図れるだけでなく、経費精算などの事務処理に必要となる人的稼働を約60%削減することが可能だという。これらのメリットから、全世界で30,000社、日本国内においてもユニクロや三菱重工など大手企業を中心に400社以上で採用されているという。コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏は、「日本企業では、従業員の経費規定の理解不足から規定に反する内容を入力したり、またその内容をチェックする管理職も経費規定の理解不足やほかの業務の忙しさから十分なチェックを行わずに経理部門へ申請しているケースが多く見受けられる。その結果、経営層は経費の正当性が把握できない状況となってしまう。『Concur Travel & Expense』は経費規定チェックなどを自動的に行うことができるため、従業員も管理職も申請前にミスを減らすことができる。今までサービス導入いただいている企業では、経費精算の担当を行っていた人員の約60%の削減を実現している」と説明した。NTTデータスマートソーシングは、国内外複数のBPO拠点において2009年からNTTデータグループの間接部門および一般企業向けに各種BPOビジネスを展開してきたという。今回の提携により、企業の出張・経費精算に関する全ての業務を、フルアウトソーシング可能なサービスとして提供できるようになった。NTTデータ 執行役員 ビジネスソリューション事業本部長 笹田和宏氏は、「NTTデータグループは現在日本国内を除いた全世界で、約43,000人の従業員を抱えている。BPOサービスにおいては、このグローバル力を活かして、『オンサイト』『ニアショア』『オフショア』と対象事業の要件によって拠点を選択し、柔軟な対応が可能だ」と語った。NTTデータスマートソーシング 代表取締役 和田泰之氏は、「今回の提携によって、企業の出張・経費管理に関する人件費をゼロにするサービスを目指したい。また、われわれはビッグデータ分析なども行っており、『Concur Travel & Expense』の導入からコンサルティング、業務BPO、サポートサービスまでトータルでサービス提供ができる」と語った。今後は、「Concur Travel & Expense」の導入と、各種BPOサービスをセットにして、NTTデータスマートソーシングが提供を行っていく。提供料金については、要件によって個別見積となる。サービス開始は2015年9月の予定。「Concur Travel & Expense」は多言語化に強みを持っており、今後日本国内でグローバル展開しているような大手企業を中心に提案していく構えだ。
2015年04月17日1986年に創業し、海外のグローバルネットワークと国内のグループ会社ネットワークの双方を拡大することにより、BPO事業を成長させ続けてきたプレステージ・インターナショナル。同社は昨年、クライアント環境のセキュリティソフトウェアとして、ウェブルートの「SecureAnywhere Business エンドポイントプロテクション」を導入。3000台規模での適用を今年前半にはすべて終える予定となっている。今回、プレステージ・インターナショナルの代表取締役を務める玉上進一氏、同社で情報セキュリティ部門の責任者を務める佐々木亘氏、ウェブルートの代表取締役社長である伊藤誉三氏に話を聞いた。○地方の力、女性の力を活用し、世界中にビジネスを展開玉上氏は、同社のビジネスについて、「われわれが推進するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業は、一言で言うと『黒子』のようなもの。顧客企業の仕事を代行しながら、価値のあることを提案していく──それがわれわれのビジネスの根幹になります」と語る。同社のビジネスの大きな特徴としては、「グローバルにビジネスを展開していること」「日本のローカルの力、そしてそこに暮らす女性の力を最大限に活用することで、日本政府が旗印として掲げている地方の創生や女性の社会進出への寄与に重きを置いていること」が挙げられる。同社は、2003年に秋田県に解説した秋田BPOキャンパスにおいて、人材育成をはじめ、カフェテリア・リフレッシュルーム・企業内託児所の設置、ISO27001(情報セキュリティマネジメント国際規格)の取得など、従業員が喜びと誇りをもって働くことのできる職場環境の整備に力を注いできた。現在は約1700人のスタッフが働いているが、その8割は女性。玉上氏は「狙って女性を採用したわけではなく、結果的にこの比率となりました。地元で仕事をしたいと望んでいる高いスキルを有する女性が多いのだと思います」と話す。さらに、2013年11月には山形県酒田市に山形BPOガーデンを開設、今年4月には当社にとって最大規模の基幹センターとなる富山BPOタウンを富山県内にオープンする予定だ。○グローバルでセキュリティレベルを一律にしたいからクラウドが最適解玉上氏に、同社におけるセキュリティの位置付けについて聞いたところ、次のような答えが返ってきた。「東証一部上場企業としてはもちろん、BPOという事業内容からしてもセキュリティは非常に重要なテーマ。取引先には金融機関が多く、しかもその多くがグローバルにビジネスを展開しています。そのため、個人情報の管理などセキュリティ意識がとても高いのです。そんな顧客からBPOとして仕事を引き受けるわけですから、最低限でも委託元と同等レベルのセキュリティは確保していなければなりません」今回、エンドポイントのセキュリティソフトウェアとして「SecureAnywhere Business エンドポイントプロテクション」を導入したのも、ハイレベルなセキュリティをグローバルで一律に実現したいというのが最大の狙いだという。さらに、クラウドのセキュリティ製品を選択した理由を聞いたところ、「グローバル企業としては、自分たちが抱える情報に危機が迫った際、リスクを最小限に抑えることのできる環境が世界中で同じように整備されていることが望ましいのです。拠点ごとに対応策がバラバラでは手間もかかりますし、情報の伝達が遅れることでリスクが増大します。当社の場合、セキュリティが破られてしまうとお客様に甚大な迷惑をかけてしまうことになります。したがって、集中管理できるクラウド型のセキュリティ製品が最適な選択肢となるのです」と話してくれた。○クラウド型セキュリティはゼロデイアタックにも効果を発揮玉上氏が他拠点のセキュリティレベルを一律にできるというクラウド型セキュリティ製品について、ウェブルートの代表取締役社長である伊藤誉三氏は次のように語る。「『SecureAnywhere Business エンドポイントプロテクション』はクラウド型セキュリティソフトウェアなので、定義ファイル更新の手間をかけることなく常に最新のセキュリティ情報によってエンドポイントを守ることができる点でメリットが大きいと思います。昨今の脅威を踏まえると、新たなマルウェアが日々誕生しているので、これまでのように端末ごとに定義ファイルを配布するという手は現実的とは言えません。クラウド側に最新の情報を見に来てもらうという方法が最も合理的ですし、ゼロデイアタックに対抗できる数少ない策の1つでもあるのです」ウェブルートは、クラウド型セキュリティのリーダーとして今後もセキュリティ情報の精度向上に最大限の力を注ぎ込むことで、プレステージ・インターナショナルのようなグローバル な企業をサポートしていきたいという。○クラウド型セキュリティ製品で管理上の負荷が激減プレステージ・インターナショナルで、社内の情報セキュリティ部門の責任者を担当しているのが情報管理部部長の佐々木亘氏だ。佐々木氏は、「SecureAnywhere Business エンドポイントプロテクション」の導入効果について、次のように話す。「以前は他社製のセキュリティソフトウェアを利用していたのですが、挙動が不安定だったり管理コンソールが使いにくかったりなど、問題を抱えておりました。今回、Secure Anywhere Businessエンドポイントプロテクションに切り替えたことで、管理上の負荷が激減しました。エンドユーザーにとっても、フルスキャン時のPCの待ち時間が大幅に減少し、業務への支障を払拭できました」プレステージ・インターナショナルでは、ロードアシスト事業として、損害保険会社や自動車メーカー向けにロードサービスを提供しているが、同事業では数千社に及ぶ協力会社とビジネスを共有している。協力会社と密なコミュニケーションを図るため、約1000社にAndroid端末を配布しているのだが、これらにもウェブルートのモバイル向けセキュリティ製品「SecureAnywhere Business モバイル」が導入されている。これらのAndroid端末を管理している部門でも、管理コンソールが使いやすいなど、ウェブルートの製品は好評だという。グローバルで一律のレベルのセキュリティサービスが提供できるというウェブルートのクラウドサービスの利用するプレステージ・インターナショナルの例は、クラウドのメリットを最大限に享受していると言えるだろう。日本では、グローバルでビジネスを展開する企業が増えており、いかにしてセキュリティを守るか頭を悩ましている企業も少なくないはずだ。そうした企業にとって、プレステージ・インターナショナルの導入例はよいヒントになるのではないだろうか。写真:石井 健
2015年03月23日東芝ソリューションは3月3日、企業の調達業務におけるサプライヤ情報の戦略的活用を支援するBPOサービスである「サプライチェーン見守りサービス for BCP」を発表した。提供開始は2015年4月から、最小価格はサプライヤ50社あたり30万円台。新サービスは、ユーザー企業の調達業務の一部であるサプライヤ情報の収集・整備・鮮度維持を代行し、災害時においてもユーザー企業の企業活動を継続させるための取引先への影響度調査を代行するもの。東芝グループでの調達システム運用経験とノウハウを活かしたBPOサービスであるとし、ユーザー企業に代わってサプライヤ情報の鮮度を維持し、災害時にはサプライチェーンの位置情報から影響のある1次サプライヤを洗い出し、即座に影響度を調査して、ユーザー企業のBCP対策立案を支援するという。主な内容には、初期サービスとして取引先情報の新規登録および既存システムからの移行を実施する「取引先情報登録サービス」、1次取引先の決算後に取引先情報(企業情報、拠点情報、営業情報、決算・資本情報など)を収集するとともに、2次以降の取引先も含めたサプライチェーン情報の登録をサプライヤへ依頼・フォローし取引先情報の鮮度維持を行う「取引先情報維持サービス」、グローバルに災害情報を把握し、初動調査として影響度調査を行う「BCP災害時影響度調査サービス」がある。平常時には、同サービスにより鮮度を維持した取引先情報やサプライチェーン情報を随時検索・参照・ダウンロード可能であり、調査結果を年1回のレポートとして受け取ることができる。災害時には、迅速な調査により被災状況を把握するとともに、365日体制でグローバルにサプライヤの災害状況を監視する。また、サプライチェーンの位置情報から影響のある1次サプライヤへ影響調査の依頼メールを送信し、Web画面により影響内容の入力を促す。なお同サービスは、同社が販売する戦略調達クラウドサービスである「ProcureMeister」を使用している。
2015年03月04日