小学生年代では、「全員出場させる」という方針を掲げているチームも増えつつありますが、まだまだ高学年になるとレギュラーと控えを分けるチームも少なくありません。ましてや中学や高校、プロの世界などでは上手い選手がレギュラーとして毎回スタメンで出場し続けるのが当たり前と思っている親御さん・指導者は多いでしょう。実際に高いレベルのチームで「全員がレギュラー」と打ち出しているチームは見当たりません。しかし、今年6月から7月にかけて開催されたEURO2020(※新型コロナウィルスの影響で1年延期)で優勝したイタリア代表が「全員レギュラー」を実現して話題になりました。国際大会に出場する強国の代表チームでどうして全員レギュラーを実現できたのか。マンチーニ監督の言葉を紐解きます。(構成・文:熊崎敬)■「全員がレギュラー」実に13大会ぶりとなるヨーロッパ制覇を成し遂げたイタリア。7試合に及ぶ過酷なトーナメントの中での、マンチーニ監督の次のコメントが話題となりました。「全員がレギュラーだ」これは1-0で勝った、ウェールズとのグループステージ3戦目の直後に飛び出した言葉です。すでにトルコ、スイスを破っていたイタリアは、この試合の前に決勝トーナメント進出を決めていました。そのため指揮官は、キャプテンのCBボヌッチ、GKドンナルンマ、MFジョルジーニョの3人を残して、スタメンを大幅に変更。そのことについて訊かれ、マンチーニ監督はこう答えました。「今日、我々が示したのは、全員がレギュラーということ。だれもが勝利への欲求を表現し、やるべきことを果たした。我々には特定のレギュラーはおらず、そのときピッチに立つ11人がいるだけだ」■誰が出てもチーム力が落ちなかったからこその言葉「このフレーズは勝利監督の常套句ですね」そう語るのは、名手バッジョに魅了され、イタリアに移住して23年、"カルチョ"に深く精通するジャーナリスト宮崎隆司さん。「代表監督だけではなく、少年チームの監督もよく口にしますよ。そう言うことでチームの結束が高まりますから」日本なら、しばしば耳にする「全員野球」や2019年ラグビー・ワールドカップで流行した「ワンチーム」が、これと同じ文脈でしょう。言うまでもなく、どんなチームにもレギュラーとサブのヒエラルキーがあり、それはマンチーニのイタリアも例外ではありません。ですが、宮崎さんはこう付け加えます。「今大会のイタリアはレギュラーとサブの差が小さく、誰が出てもチーム力は落ちなかった。その意味で、マンチーニの言う"全員がレギュラー"という言葉は単なる常套句ではなかったと思います」■W杯予選敗退の失意がユーロに向けての一体感や熱気を生んだ宮崎さんによると、53年ぶりのヨーロッパ制覇は3年前の悪夢を抜きにしては考えられないといいます。言うまでもない、ワールドカップ予選敗退のことです。「4度の世界一を誇るイタリア人にとって、"アッズーリ"のいないワールドカップなんてありえない。それが現実のものとなり、人々は失意のどん底に突き落とされました。ドイツ人やフランス人に嘲笑され、プライドを傷つけられていたこともあり、ユーロに向けて自然と国中に一体感や熱気が生まれたのです」監督がマンチーニ氏だったことも、もちろん大きい。「ワールドカップを逃したときの代表監督は、当時すでに70歳だったヴェントゥーラ。現役時代の実績もなければ、指導者としてもビッグクラブでの経験は皆無に等しい。戦術は古く、求心力もない。そんな監督のもとで最悪の事態が起き、あとを託されたのがマンチーニだった。マンチーニは一見、優男風に見えますが胆力やカリスマ性があり、現役時代もバッジョに次ぐ実力者として尊敬されていました。そんなマンチーニだったからこそ、イタリアは復興できた言っても過言ではないと思います」■絶対的エースがいないからこそ、総合力で戦う監督が代わったといっても、今大会のイタリアは決してタレントに恵まれていたわけではありません。「こいつがなんとかしてくれる」というエースがいないため、総合力が問われることになりました。実際に延長戦、90分、延長PK戦、延長PK戦と決勝トーナメントの厳しい戦いを勝ち上がることができたのは、マンチーニがスタメンと5人の交代枠(延長戦は6人)を上手く使いまわし、チームの力を最大限に引き出したからです。7試合すべてでスタメンを飾ったのは、前述したドンナルンマ、ボヌッチ、ジョルジーニョの3人だけ。マンチーニは登録26人中、23人を代わる代わるピッチに送り出しました。宮崎さんによると、4-3-3のいたるところにマンチーニ流の創意工夫が見られたといいます。「前線で違いを生み出すのは、左サイドの10番インシーニェ。彼の突破力を生かすために、マンチーニは左SBスピナッツォーラに献身的なサポートを要求し、スピナも驚異的な運動量で応えました。また負担のかかる中盤の3枚も、左右2枚を4人でまわし、替えが効かない中央のジョルジーニョを支えた。イングランドとの決勝戦に臨むイタリアは、トルコとの初戦からスタメン4人が異なっていましたが、こうしたことからも"全員がレギュラー"が言葉だけではなかったことがわかります」■「控え」を固定化しているチームは勝てなくなる「全員がレギュラー」それは監督ならだれもが口にする常套句ですが、言うは易し、行なうは難し。宮崎さんが身近な例を引き合いに出して解説します。「日本では中学、高校なら3学年で1チームつくりますが、イタリアは1学年で編成するので総勢20人前後。試合や合宿がマストではないこともあって、みんなが試合に出られるようになっています。そんなイタリアにもレギュラーと控えを固定化する指導者がいて、そういうチームは出番のない子が次々とチームを去り、やがて勝てなくなる。日本では"3年間控えでも、努力すれば成長できる"と言う人がいるようですが、イタリアの子はそんなふうには考えません。彼らは試合に出るために、サッカーチームにいるわけですから」全員がレギュラー。それは指導者を含めた環境に、説得力がともなってこそなのです。熊崎敬(くまざき・たかし)岐阜県出身。ライター。30年近くサッカーを中心としたスポーツの取材を続けており、これまでに訪れた国と地域は約50か国。行く先々でスタジアム巡り、草サッカー観戦に加え、サッカーにまつわる壁画探索を精力的に行っている。好きな選手はマラドーナ。著書に『日本サッカーはなぜシュートを打たないのか?』(文春文庫)、サッカーことばランド(ころから株式会社)、カルチョの休日 イタリアのサッカー少年は蹴球3日でグングン伸びる(内外出版社)などがある。
2021年08月03日2021年6月20日(日)、スイスの高級腕時計ブランド「ウブロ」がオフィシャルタイムキーパーを務めるUEFA EURO 2020TMサッカー欧州選手権開催および、限定コネクテッドウォッチ「ビッグ・バン e UEFA EURO 2020TM」の発売を記念し、「ウブロ 大迫勇也×堂安律 チャリティーイベント」を開催しました。本イベントには、ウブロフレンズとして、サッカー日本代表の大迫勇也選手と堂安律選手、ゲストとして元サッカー日本代表の前園真聖さん、さらには、オンラインで11名の子どもたちが参加しました。日本代表で活躍する大迫選手と堂安選手のトークセッションでは、堂安選手が「(大迫選手は)この若さで日本代表にずっと入っていますし、さらに日本代表をレベルアップさせてくれる存在だと思っているので、僕も切磋琢磨して一緒に次のワールドカップに向けて頑張りたいと思っています」と語り、大迫選手は「得点能力については日本代表の試合を見ていても証明されているので僕が説明する必要もないと思いますが、とにかくボールを渡せばキープしてくれるので、大迫選手の技術には、2 列目の僕としては助けられています」とコメント。普段あまり語ることのないお互いの印象を語り、照れ笑いを見せました。その後は前園真聖さんもゲストとして駆けつけ、ウブロがサポートする今大会のポッドキャストを通じてグローバルで展開している「VALUES OF VICTORY」のテーマの中から「Commitment(決意)」について、クロストークを展開。前園さんは「僕は引退しているので、日本サッカー界を盛り上げる、強くするために応援するというのが僕自身の決意です」、大迫選手は「勝つためには全てを捧げるつもりで全ての試合に出ているし、もちろん日本代表の試合でも常に、犠牲を払ってでも勝つ、というつもりで臨んでいる」、堂安選手は「もちろん、対戦相手に勝つということは大事だと思いますが、その準備の段階で自分に勝つということも非常に大事だと思っているので、それが僕の勝利に対する決意です」と話しました。イベントの後半では、オンラインで参加している子どもたちと質疑応答を行った後、前園さんも含めた3人で寄付金額を決めるキックターゲットに挑戦。プレッシャーのかかる中、難易度の高いパネルを射抜くなどさすがの技を見せ、寄付金額は180万円に決定。イベントの最後に、大迫選手と堂安選手は子どもたちに「このような状況なので、オンラインでの交流となりましたが、また直接会って一緒に話したり、ボールを蹴ったりしたいなと思います。お互い頑張りましょう!」と伝え、未来のサッカー選手にエールを送りました。
2021年06月24日ナイキはこの夏開催されるEURO 2012(ウクライナ・ポーランド共催)に向け、同大会に参加する世界有数のサッカー強豪国、フランス代表、オランダ代表、ポルトガル代表の新キットを発表した。新ホームキットは各国の国民性や独自のフットボール文化にインスピレーションを得てデザインされた。フランス代表はサン・シール陸軍士官学校の士官候補生が着用する制服からインスピレーションを受けたものに。オランダ代表は伝統の鮮やかなオレンジに、1904年のチーム初のキットのサッシュをほうふつとさせるデザイン。ポルトガル代表は大航海時代のシンボルを加え、身頃全体をレッドでまとめたクラシックなデザインとなった。今回のホームキットは4年前のものと比べて23%軽い素材を使用し、かつ20%強度の高いニット構造で作られている。シャツに施された通気孔から空気を取り入れ、試合中の選手の体温調節を助ける。また、環境への影響を軽減しようという同社の姿勢の下、100%リサイクル・ポリエステル素材で、平均13個のプラスチックボトルを再利用して作られた。各国のキットには、トレーニングアパレルやファンがピッチ外で着用するライフスタイルアパレルも準備されており、総合的なコレクションが展開される。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月23日