1日のうち夜は一度訪れる、というのは地球上の話で、宇宙ステーションでは1日に何度も昼と夜が訪れるそうです。考えただけでも体がおかしくなってしまいそうですよね。それに対応すべく極地での研究が進められているそうです。南極における睡眠の研究過酷な環境下では、人の眠りはどのように変化するのか――今回は「地球上で宇宙と環境が似ている場所」と考えられている南極で行われた睡眠の研究に注目します。宇宙旅行が身近なものになっていくと予測される現代。宇宙での睡眠は、今後ますます興味をひく対象になっていくでしょう。時代を先取りして、知っておいても損はないですよね!研究は、南極越冬隊の隊員数名に対して3、6、9、12月に心電図や脳波などの医学データの取得と、睡眠に関するアンケートをとる、というものです。宇宙と南極は似ている?前提条件として、宇宙と南極が似ているという理由は次の通りです。・日照時間が通常と異なる。宇宙ステーションは90分間で地球を1周するため昼夜が45分サイクルで入れ替わり、24時間周期になっている宇宙飛行士は体調を崩すことがある。・運動が必要になる。宇宙では無重力の影響で筋力が弱くなるため、宇宙飛行士には日々のトレーニングが義務付けられている。南極では屋外の行動が制限されるため、越冬隊に義務付けられてはいないが、トレーニングが必要である。・入浴が制限される。宇宙ステーションには風呂もシャワーもない。南極は昭和基地以外には入浴施設がない。そのため、清潔に保つ技術が必要になる。ますます進む極地での研究南極での睡眠研究の結果は「一部の例外を除いて、ほぼ良好な状態だった」そうです。例外とは、睡眠時無呼吸症候群の傾向がみられた隊員のことですが、これは測定前からその傾向があったと考えられています。ただ、この研究結果は事前に先行研究の報告から「睡眠の質の低下や気分の悪化」などの情報があったことから、それを回避すべく食事や睡眠の時間を調整したため「ほぼ良好」となったのではないかとも言われています。これからさらに南極や宇宙など、過酷な状況下での睡眠に関する研究は進んでいくでしょう。また、最新の結果が発表され次第、ご報告したいと思います!Photo by PhOtOnQuAnTiQuE
2015年03月30日電通、東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車(トヨタ)の4者が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して進めているロボット宇宙飛行士「KIROBO」が「地上から一番高い場所で対話をしたロボット」と「初めて宇宙に行った寄り添いロボット」として、2つのギネス世界記録に認定され、3月27日に日本科学未来館で開催された同ロボットの帰国報告会で認定証が授与された。KIROBOは2013年8月に国際宇宙ステーション(ISS)補給船「こうのとり」4号機に搭載され、種子島からHIIBロケットにて打ち上げられた後、ISSで若田光一宇宙飛行士と共に「宇宙での人とロボットとの対話実験」に成功するなど、人とロボットが共に暮らす未来に向けた研究を実施した。2015年2月11日、スペースXの無人補給船「ドラゴン」5号機で無事地球に帰還し、3月12日に日本に帰国。帰国したKIROBO第一声は「地球はまるで青色LEDみたいだった。輝いていたよ」だった。KIROBOのサイズは、身長約34cm、全幅約18cm、奥行き約15cmで、重量は約1000g。主要機能として、音声認識、自然言語処理、音声(発話)合成、情報通信機能、コミュニケーション動作、顔認識カメラ、記録用カメラなどを搭載している。
2015年03月30日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月21日、小惑星探査機「はやぶさ2」の第1回目のイオンエンジン連続運転が同日午前5時30分(日本標準時)をもって、正常に終了したと発表した。これは、同日の運用において取得したテレメトリデータにて確認されたもの。今回のイオンエンジン連続運転は3月3日より409時間実施され、これは計画通りの稼働時間だという。またJAXAでは、第2回目のイオンエンジンの連続運転は2015年6月上旬ころに実施予定としているほか、今後、イオンエンジンの稼働状態や連続運転後の軌道情報などについての詳細解析を進めていく予定としている。
2015年03月23日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月15日、初となる大規模な日欧共同ミッションである国際水星探査計画「BepiColombo(ベピコロンボ)」で用いられる日本側の探査機「水星磁気圏探査機(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)」の機体完成を受ける形で、報道陣に向けて機体公開を行った。同計画のミッションシナリオは、2016年度にフランス領ギアナよりアリアン5型ロケットを用いて打ち上げられ、2024年1月に水星の周回軌道に2機の探査機を投入。約1年(機体の状況次第ではそれ以上)にわたって、水星を観測を行うというもの。2機の探査機はESA(欧州宇宙機関)が製造を担当し表面や内部の観測を行う「表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)」と、JAXAが担当する磁場・磁気圏の観測を行う「MMO」となっている。MMOは、高さが直径1.8mの円に内接する8角柱形状の高・中利得アンテナを含めて約2.4m(側面パネルの高さは1.06m)、2組の5m伸展マスト(磁場観測用)、2対の15mアンテナ(電場観測用)を有する約280kgの探査機。水星の観測軌道は、全球の磁場マッピングおよび水星磁気圏全域の観測が可能なように、 近水点400km、遠水点12,000kmの極軌道が選択されており、軌道周期は9.2時間となっている。なお、近日中に大塚実氏による詳細なレポートを掲載する予定なので、MMOならびにBepiColomboに興味を抱いた方はそちらもお読みいただきたい。
2015年03月16日第1回では、国際宇宙ステーションの成り立ちと、ロシアが2024年に国際宇宙ステーションの運用から抜けること、そしてその後、3基のロシア側モジュールを引き連れて、ロシア独自の宇宙ステーションを建造することといった内容の方針を発表したことを紹介した。今回は、その3基のロシア側モジュールを基に建造される「ロシアの宇宙ステーション」が、いったいどのようなものなのかについて紹介したい。○ISSから分離される3基のモジュールロシア連邦宇宙庁が2015年2月24日に発表した文書の中で、国際宇宙ステーションから分離すると記されているのは、「多目的実験モジュール」(MLM、愛称「ナウーカ」)、「ウズラヴォーイ・モジュール」(UM)、そして「科学・電力モジュール」(NEM)の3基だ。ナウーカ・モジュールは、軌道上で科学実験を行うことを目的としたモジュールとして開発されている。ナウーカとは「科学」という意味だ。これまでに打ち上げられたロシア側モジュールのザリャー、ズヴィズダーは、宇宙飛行士の居住区や倉庫などの用途で使われているため、ナウーカは初の科学実験を目的としたロシア側モジュールとなる。打ち上げにプロトーンMロケットが使われる。ウズラヴォーイ・モジュールは、球体に6か所のドッキング・ポートを持った形をしている。少し詳しい人なら、昔「ミール」宇宙ステーションの中心にあった、ドッキング部分を思い出すかもしれない。ウズラヴォーイ・モジュールもまさにミールと同じように、この6か所のドッキング・ポートにモジュールを結合させ、巨大なステーションを建造することが考えられている。もちろんソユース宇宙船やプログレス補給船のドッキングも可能だ。ウズラヴォーイとは「結節点」や「中心点」といった意味で、まさに各モジュールをつなぐ節として機能する。打ち上げの際は、プログレス補給船の先端にある軌道モジュール部と取り替えるような形で搭載され、ソユース2ロケットで打ち上げられる。科学・電力モジュールは、実験区画と巨大な太陽電池を持つモジュールで、ロシア側モジュールに対して電力を供給し、また独立後も発電所として機能する。以前は「科学・電力プラットフォーム」と呼ばれており、規模も今よりもう少し大きなものであったが、計画は中止され、部品の一部はラスヴェート・モジュールへ流用されている。その後計画が見直され、規模を縮小した科学・電力モジュールの開発が始まった。打ち上げにはプロトーンMか、アンガラー・ロケットが用いられる予定だ。この3基のモジュールはまだ打ち上げられておらず、地上で開発中、もしくは保管中の状態にある。計画では、まずナウーカを打ち上げ、ズヴィズダー・モジュールの地球側のドッキング・ポートに結合する。そして後ろからウズラヴォーイを結合し、それを介する形で科学・電力モジュールを結合する。ウズラヴォーイはすでに完成しているとされるが、こうした組み立て方であることから、まずナウーカが先に打ち上げられないことには何もできない状況にある。しかしナウーカは製造が遅れており、打ち上げは早くても2017年以降になるといわれている。したがってウズラヴォーイや科学・電力モジュールはさらにその後ということになる。ただ、ロシアにとって都合の良いことに、もし予定通りに2017年に打ち上げられたとしても、2024年時点で7年しか宇宙で使われていないことになり、また打ち上げが遅れれば遅れるほど、その時間はより短くなる。ナウーカの設計寿命は15年ほどとされているため、ロシアにとっては寿命が十分に残った状態のモジュールを、自身の宇宙ステーションに使えることになる。○国際"じゃない"宇宙ステーションナウーカ、ウズラヴォーイ、科学・電力モジュールを引き連れて独立したロシアの宇宙ステーションは、それだけは少し貧相だが、徐々に新しいモジュールが結合され、かつてのミールに匹敵するほどの宇宙ステーションが造られる予定だ。まだその具体的な姿かたちは明らかにされていないが、ソヴィエト・ロシアの宇宙開発に詳しいWebサイト「RussianSpaceWeb」によれば、「オーカT-2」、「トランスフォーマブル・モジュール」、「モジュール・シップヤード」という3基が結合される可能性があるという。オーカT-2は、ソユース2.1bロケットで打ち上げられる比較的小型のモジュールで、主に実験場として使用されるという。かつてはオーカ2-MKSと呼ばれており、国際宇宙ステーションへ結合するために造られていたが、計画変更により中止されている。トランスフォーマブル・モジュールは空気で膨らむモジュールで、主に居住区として使用されるようだ。モジュール・シップヤードは、宇宙飛行士が船外活動する際の出入り口(エアロック)が装備されている他、宇宙飛行士を乗せた宇宙船や補給物資を積んだ補給船のドッキング・ポートとしての機能も持つという。実際にどうなるかはまだ不明だが、ウズラヴォーイのドッキング・ポートは6か所あるから、もう1つモジュールが増えることもあるだろう。ロシアはこの新しいステーションを使い、有人月探査を始めとする将来の有人深宇宙探査に向けた足がかりとして、宇宙飛行士の長期滞在実験や、深宇宙探査から帰ってきた宇宙飛行士のリハビリ施設として使うことを目指しているという。○高緯度宇宙ステーションとヴァストーチュヌィ宇宙基地このロシアの宇宙ステーションは、国際宇宙ステーションよりも軌道傾斜角(赤道上からの傾き度合い)が大きくなるといわれている。国際宇宙ステーションの軌道傾斜角は51.6度だが、このロシアのステーションのそれは64.85度になり、また高度も高くなるという。その理由について、ロスコスモスのオレーク・オスターペンコ前長官は「ロシアの上空を通過する頻度が増え、地表が観測しやすくなる」と語ったりしていたが、それは事実ではあっても、おそらく最大の理由ではないだろう。ロシア上空を通過する頻度が増えることで交信可能な時間も増え、また軌道傾斜角が大きいことで宇宙船や補給船の打ち上げがしやすくなるという、どちらかといえばロシアが単独で宇宙ステーションを運用する際の、運用上の必然からもたらされたものであると考えられる。軌道傾斜角が大きいことで宇宙船や補給船の打ち上げがしやすくなる、という点については少し説明が必要かもしれない。現在ロシアは、国際宇宙ステーションへのモジュールや宇宙飛行士、補給物資の打ち上げ場所として、バイコヌール宇宙基地を使っている。バイコヌールはカザフスタン共和国内にあるため、ロシア政府は料金を払って使用している状態にある。ちなみにロシアは、ロシア北東部にプレセーツク宇宙基地を持っているが、ここは地球を南北に回る極軌道への打ち上げに特化した基地であり、国際宇宙ステーションへの打ち上げには使われていない。一方で、ロシアは極東部に「ヴァストーチュヌィ」という新しい宇宙基地を建設している。ヴァストーチュヌィはバイコヌールに取って代わる宇宙基地に位置づけられており、ここが完成すれば、カザフスタンに気兼ねなく、新しいモジュールや宇宙船、補給船を打ち上げられるようになる。しかし、このヴァストーチュヌィ宇宙基地は立地上、国際宇宙ステーションの軌道傾斜角である51.6度の軌道への、有人宇宙船の打ち上げには適していない。というのも、東側には太平洋が広がっているため、万が一ロケットが飛行中に問題を起こして宇宙船を緊急脱出させた場合、宇宙船は太平洋上に着水する羽目になるからだ。ソユース宇宙船は基本的に着水するようには造られておらず(まったくできないというわけではない)、救助用の船なども新たに用意しなければならない。一方、軌道傾斜角64.85度へ向けた打ち上げであれば、ロケットはシベリア北部のツンドラ地帯を突っ切ることになり、ロケットから脱出した宇宙船は陸上に降りられることになるため、捜索や回収が比較的簡単になる。(次回は3月17日に掲載予定です)
2015年03月13日「国際宇宙ステーション」――それは、地球の地表から高度400kmを、秒速7.7kmで飛ぶ、サッカー場ほどもある巨大な建造物である。建設や運用には米国をはじめ、ロシア、カナダ、欧州、そして日本など、世界16か国が参加する一大国際協力プロジェクトでもある。これまでに述べ216人もの宇宙飛行士が訪れ、人類の有人宇宙開発の前哨基地として日夜実験や研究が続けられている。しかし、始め有るものは必ず終わり有り、国際宇宙ステーションもいつかは運用を終えなければならないときがくる。しかし、いつ終わらせるのか、そしてその後の各国の有人宇宙計画はどうなるのかは、まだはっきりとは決まっていない。その中で、ロシア連邦宇宙庁(ロスコスモス)は2015年2月24日、国際宇宙ステーションより先の有人宇宙計画について、いち早く具体的な計画を打ち出した。それは2024年で国際宇宙ステーションから離脱し、ロシア単独で新しい宇宙ステーションを造るというものだ。○国際宇宙ステーションとは国際宇宙ステーションは1998年、最初のモジュール「ザリャー」の打ち上げから建設が始まった。モジュールというのは、宇宙ステーションを構成する部品のことだ。巨大なステーションを一度に打ち上げることはできないので、部品単位で次々に打ち上げて、それらを宇宙でくっ付けて組み立てるという方法が採られている。国際宇宙ステーション計画はもともと、1984年に米国のレイガン大統領によって提唱された「フリーダム」という宇宙ステーションが発端となっている。フリーダムは米国を中心に、日本や欧州諸国、カナダなどが建設に参加する計画で、当時世界は東西冷戦下にあったため、フリーダムによって、西側諸国の結束の強さをソヴィエト連邦に示威する意味合いがあった。フリーダムといういかにもな名前も、レイガン大統領自らが付けたものだ。当初の予定では、1492年のコロンブスによるアメリカ大陸発見から500年目にあたる、1992年には完成しているはずだった。しかし複雑な設計や、予算削減による資金難によって開発は遅れ、何より冷戦の終結によって、フリーダムはいつまで経っても宇宙へ打ち上げられることはなく、存在意義も失われつつあり、1991年には米議会によって計画が中止寸前にまで追い込まれる有様だった。1993年、NASAはフリーダムの規模を小さくした「アルファ」という宇宙ステーションへの計画変更を発表する。一方、1991年に誕生したロシアは、ソ連時代に打ち上げられた「ミール」という宇宙ステーションを引き続き運用しており、また新しく「ミール2」を建造する計画を持っていたが、資金難により計画はほとんど進んでいなかった。そこでNASAはロシアと手を結び、アルファとミール2を合体させる形で、新しい宇宙ステーションを造ることを決定する。それが今の国際宇宙ステーションとなった。そして、もともとミール2のモジュールとして開発されていたザリャーの打ち上げを皮切りに、ユニティ(米、1998年)、ズヴィスダー(露、2000年)、ディスティニー(米、2001年)、クエスト(米、2001年)、ピールス(露、2001年)、ハーモニー(米、2007年)、コロンバス(欧、2008年)、「きぼう」(日、2008-2009年)、ポーイスク(露、2009年)、キューポラ(米、2010年)、トランクウィリティ(米、2010年)、ラスヴェート(露、2010年)、恒久型多目的モジュール(米、2011年)といったモジュールが打ち上げられ、ステーションに結合されていった。またこれと並行し、ステーションの横に伸びるトラス構造物や、そこから広がる太陽電池パドルなどが2000年から2009年にかけて打ち上げられ、さらにカナダ製のロボットアームや、ステーションの外に設置する実験機器なども打ち上げられ、組み立てられていった。国際宇宙ステーションはひとまず、2011年7月をもって「完成」ということになっているが、今後も3基のロシア側のモジュールが打ち上げられる予定であり、また米国のビグロゥ・エアロスペース社が開発する、空気で膨らむ形式のモジュール(インフレータブル・モジュールという)も打ち上げが計画されており、本当の意味ではまだ未完成だ。○ロシアが打ち出した方針ロスコスモスが2月24日に発表した方針は、同庁内で開催された、今後の有人宇宙計画について話し合う会議の中でまとめられたものだ。座長はロスコスモスの前身にあたるロシア航空宇宙庁(ロスアヴィアコスモス)の長官を務めていたこともあるユーリィ・コープチェフ氏である。今後この方針は、産業界のトップも交えた会議の中で、最終的に決定されるという。ロスコスモスが発表した方針は、大きく3つの項目から構成されている。国際宇宙ステーション計画には2024年まで参加する。2024年時点でロシアが保有する国際宇宙ステーションのモジュールのうち、3基を切り離し、それらを基にロシア独自の宇宙ステーションを建造する月探査にも力を入れ、無人探査を行った後、2030年代中に人間を送り込む現在、参加各国の間では、国際宇宙ステーションは2020年まで運用されること決定がなされている。2014年に米国が、ステーションの運用を2024年、あるいは2028年まで延長したいという方針を打ち出したが、まだ計画に参加しているすべての国からの了解は得られていない。例えば日本は現在態度を保留しており、2016年度に決定するとしている。その中で、国際宇宙ステーションに多くのモジュールを提供し、宇宙飛行士や物資の輸送でも主力となっているロシアが、いち早く「わが国は2024年に手を引く」と表明したことは、米国による国際宇宙ステーションの2024年までの延長案をロシアが受け入れたということと同時に、ロシアが抜けることで2024年以降の国際宇宙ステーションの運用に大きな改革が必要になること、あるいは運用を終了せざるを得なくなる可能性もあることを示している。実は、ロシアではかねてより、国際宇宙ステーションから撤退し、独自の宇宙ステーションを持つことを検討し続けていた。また2014年には、ドミートリィ・ロゴージン副首相が、ウクライナ問題を巡る米露の対立を背景に「2020年以降は国際宇宙ステーションに参加しない」と発言したこともあった。一部のメディアで「ロシアが米国に妥協して2024年まで付き合うことを決定した」という論調があったのも、そうした事情があったためだ。この「妥協」という見方は、ある意味では正しい。現在のロシアの宇宙開発は、以前ほどではないにせよ資金不足の状態が続いており、軍事衛星から民間向けの通信衛星に至るまで、開発や打ち上げ時期が軒並み遅れている。また、ロケットの打ち上げ失敗や衛星の故障も増えており、現在信頼性の回復に向けた努力が続けられている最中にある。ロシアにとっては、国際宇宙ステーションに2024年まで参加し続けることで、なるべく投資を抑えつつ、また見方によっては他国がその一部を負担する形で、自力で有人宇宙活動ができるぐらいにまで資金力や技術力を回復させたいという狙いがあるのだろう。ところ、実はロシアは、2001年ごろから独自の宇宙ステーションを持つ構想を持っていた。近年ではOPSEKという名称で研究も進められていた。今回の方針の下敷きには、今までの検討や研究の蓄積があるのだろう。ちなみに、2001年にロシア独自の宇宙ステーションを持つべきと主張していた人物こそ、この会議の座長を務めたユーリィ・コープチェフ氏であった。
2015年03月13日『宇宙戦艦ヤマト2199』と『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』の軌跡を音楽で綴るシンフォニーコンサート「宮川彬良 Presents『宇宙戦艦ヤマト2199』コンサート2015」が2月28日~3月1日にかけて、千葉県・舞浜アンフィシアターにて行われた。2012年に劇場でのイベント上映からスタートした『宇宙戦艦ヤマト2199』シリーズの音楽を、オリジナル・アレンジ・新曲の3つのアプローチから新たなる"ヤマトサウンド"を構築した宮川彬良氏。今回のコンサートでは、ヤマトの航海を音楽で追体験することをコンセプトに、第1部『追憶の航海』と第2部『星巡る方舟』の2部構成で楽曲をセレクトし、ミュージシャン60名が劇判と同じ編成で生演奏を行うという特別なコンサートとなった。第1部のオープニングを飾ったのは、弦と管楽器による落ち着いた曲調の「銀河航路BG」、2曲目は美しいスキャットで知られるYucca氏が登場する「無限に広がる大宇宙」。そして「夕日に眠るヤマト」「地球を飛び立つヤマト」と続き、ヤマトの航海が始まるシーンを再現した。中盤では、約40名の混声合唱団によるガミラス国家「永遠に讃えよ我が光」、ドメルとの死闘を中心にした「コスモタイガー(Wan・Dah・Bah)」「ヤマト前進」「ヤマト渦中へ」も演奏され、観客たちの気持ちを否応なしに盛り上げていく。そしてラストには、デスラーとスターシャの心情を描くシーンで使用された「孤高のデスラー」「虚空の邂逅」が演奏され、ヤマトは無事イスカンダルに到着し、第1部は幕を閉じた。休憩を挟み、第2部は第一バイオリンのソロが美しい「宇宙戦艦ヤマト2199 メインテーマ」からスタート。しかし、ティンパニの迫力が迫る楽曲「蛮族襲来」で空気は一変。その後「ジレルの囁き」では橋本一子氏が登場し、『星巡る方舟』のストーリーやシーンを思い出させる楽曲が続いていく。第2部の終盤では「大決戦-ヤマト・ガミラス・ガトランティス-」「方舟は星の海へと還る」「わかれ」「わかれ-出航-」と、『星巡る方舟』の劇中で使用された曲順と同じ流れで演奏が行われた。最後に、混声合唱団にYucca氏と橋本一子氏が加わった「Great Harmony ~for yamato2199」が斉唱され、ステージに設置されたスクリーンに"大志"のフレーズと地球の姿も。そして、地球が青く変わっていく姿が投影され、コンサートは盛況のうちに幕を閉じた。なお、このコンサートの模様を収録したBlu-ray Audio&CD『宮川彬良 Presents 宇宙戦艦ヤマト2199 Concert 2015』が、6月10日に日本コロンビアから発売されることも決定。価格は、Blu-ray Audioが5,184円、CD(2枚組)が4,104円。(C)西﨑義展/2014 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
2015年03月04日●17年越しで打ち上げられたDSCOVR米国のスペースX社は2月10日、地球・宇宙天気観測衛星「DSCOVR」を搭載した、「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。この打ち上げは2つの点で大きな注目を集めた。ひとつは、DSCOVRがかつてアル・ゴア元米副大統領の肝いりで開発が始まったものの、打ち上げ中止などの紆余曲折の末に、実に17年越しで打ち上げられた衛星であったこと。そしてもうひとつは、ファルコン9の第1段機体が海上への着水に成功したことだ。○17年越しで打ち上げられた「ゴアサット」DSCOVRは米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気庁(NOAA)が開発した衛星で、太陽から放出される荷電粒子や、磁気嵐の状況といった「宇宙天気」を観測すること、また地球の昼側(太陽光が当たる側)を常時観測することを目的としている。DSCOVRは「Deep Space Climate Observatory」の略で、直訳すると「深宇宙の気象観測所」といった意味になる。またDSCOVRという略語は、「発見する」という意味の「Discover」に掛けられている。打ち上げ時の質量は570kgで、設計寿命は約2年が予定されている。軌道は、太陽・地球系のラグランジュ第1点と呼ばれる場所に投入される。下図にあるように、この場所は常に太陽と地球の間に存在しているので、太陽と地球の間の環境や、お互いがお互いに与える作用を観測したり、また地球の昼側を観測し続けるのに適している。DSCOVRには、大きく3種類の観測機器が搭載されている。まず「PlasMag」は、太陽から地球に向かって飛んでくる荷電粒子や電子、そして磁場などを観測する。「NISTAR」は地球のエネルギー収支を観測する。そして「EPIC」は、地球表面からのエネルギーの放射量やエアロゾル、オゾン、雲の動きなどを観測することを目的としている。DSCOVRは実に17年越しに打ち上げられた衛星だ。DSCOVRの開発は、もともと1998年に開発がはじまったトリアーナ(Triana)計画をその源流に持つ。トリアーナという名前は、1492年にコロンブスの艦隊がアメリカ大陸に訪れた際、最初に船から大陸を発見した乗組員の名前にちなんでいる。そしてトリアーナにはもうひとつ、「ザ・ブルー・マーブル」のような青く輝く地球の写真を、ほぼリアルタイムで世界中に配信するというミッションも課せられてた。「ザ・ブルー・マーブル」というのは、1972年にアポロ17の宇宙飛行士たちが撮影した、太陽の光を全面に受けて、宇宙に浮かぶビー玉のように輝く地球の写真のことだ。トリアーナを使い、現代の、そして常に最新のブルー・マーブルの映像を世界中に配信することで、環境問題や世界平和への意識を高めることが期待されていた。これは当時のアル・ゴア米副大統領の肝いりで進められたもので、後の証言によると、トリアーナはそもそも、このゴア副大統領の提案が発端となって計画が立ち上がり、他の科学機器はその後に徐々に付け加えられていったのだという。また、ゴア副大統領は太陽・地球系のラグランジュ第1点の持つ価値や、衛星からの観測で分かることなどについて、深い知識を持っていたという。しかし周囲からの評判は芳しくなく、「高価なスクリーンセーバーに過ぎない」と非難されたり、必要性を強固に訴えるゴア氏の名前を取り「ゴアサット」などと揶揄される始末だった。また、他の機器による科学ミッションについても「すでにある気象観測衛星からのデータで十分」という批判が集まるようになり、すでに衛星はほとんど完成していたにもかかわらず、2001年に計画は中止されることになった。トリアーナはスペースシャトルで打ち上げることが予定されていたが、国際宇宙ステーションの建設や、ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッションの方が優先順位が高かったために中止され、打ち上げ手段がなくなったのだ。ちなみに、打ち上げが中止される直前の時点で、トリアーナは、2003年2月1日に空中分解事故によって悲劇的な結末となった、STS-107コロンビアで打ち上げられることが計画されていた。また、この中止の背景には政治的な事情があったといわれることもある。ゴア氏は2000年の米大統領選挙に民主党候補として出馬し、激しい選挙戦の末、共和党候補のジョージ・W・ブッシュに破れている。トリアーナが中止されたのは、まさにブッシュ政権が誕生したのと同じ2001年のことであり、当時のことについて触れられた記事などでは「ブッシュ大統領はゴアサットを見せしめとして潰したのだ」などと書かれることもある。だが、スペースシャトルの運行予定が詰まっていたことは事実であり、かといって別のロケットで打ち上げるには追加予算が必要になること、さらに衛星の必要性が疑問視されていたことから、たとえゴア氏の息のかかった衛星でなかったとしても、打ち上げは中止されていたと見るのが自然だろう。トリアーナは打ち上げ中止となったが、しかし解体されることにはならなかった。NASAは、ゴダード宇宙飛行センターの窒素が充填された箱の中でトリアーナを保管し、いつか打ち上げの機会が巡ってくるときを待ち続けた。2003年には、トリアーナからDSCOVRへと名称が変更された。そして2009年、トリアーナ改めDSCOVRに、NOAAが救いの手を差し伸べた。当時NOAAは、NASAが打ち上げたACE(Advanced Composition Explorer)という太陽風の観測衛星に観測機器を提供し、宇宙天気の研究や、大規模な太陽嵐が発生する可能性があるときには警報を出すといったミッションを行っていた。しかしACEは1997年に打ち上げられた衛星であり、老朽化が進んでいたことから、NOAAでは後継機を欲していた。そこで目をつけたのが、ほぼ完成した状態で保管されていたDSCOVRだったのだ。NOAAの資金提供によって、約8年ぶりに保管庫から出されたDSCOVRは、まず各機器が正常に動くかが確かめられた。また搭載する観測機器はトリアーナ時代と変わらないが、NOAAの要求に合わせて再調整が行われた。こうしてDSCOVRは、姿かたちこそ変わらないものの、ミッションの主役はNASAからNOAAへ移り、新たに宇宙天気の観測を目的とした衛星として生まれ変わった。また、DSCOVRには米空軍も資金を提供している。これには2つの狙いがあった。まず1つ目は、宇宙天気の情報は米空軍の活動、特に弾道ミサイルの発射などを探知するための早期警戒衛星の運用にとって重要であること。そして2つ目は、新興企業のスペースX社が開発した新型のファルコン9ロケットに、1回でも多くの打ち上げの機会を提供することで、「育てる」という狙いがあった。ロケットに打ち上げ機会を提供するために衛星を新しく造るのはお金がかかるし、かといって単なる重りを打ち上げたり、あるいは空荷で打ち上げるのはもったいない。そこで、ある程度製造が終わっていたDSCOVRに資金提供が行われ、DSCOVRの復活を後押しした。米空軍が提供した分の金額は、ほぼすべて打ち上げ費用に充てられた。こうした紆余曲折を経て、DSCOVRは米東部標準時2015年2月11日18時3分(日本時間2015年2月12日8時3分)、米国フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40から旅立った。ロケットは順調に飛行し、約35分後に予定通りの軌道にDSCOVRを投入した。DSCOVRは現在、太陽・地球系のラグランジュ第1点に向けて飛行を続けている。2月24日にはその道程の半分を通過している。観測が始まれば、宇宙に浮かぶ、青く輝く地球の画像が、毎日のように送られてくる。それはきっと息を呑むほど美しいものに違いない。DSCOVRの打ち上げに立ち会ったゴア氏は、自身のblogの中で次のように語っている。「DSCOVRは、地球に関する私たちの理解を深め、市民や科学者たちに異常気象の現実を教え、その解決策を考えるためのミッションへ旅立った。そしてDSCOVRはまた、この地球の美しさと、そして脆さを映し出し、このたったひとつの地球を守る義務を思い起こさせてくれる、すばらしい機会を与えてもくれるだろう」。●ファルコン9ロケットは着水に成功○ファルコン9の第1段は精度10mで着水今回の打ち上げにおける世間の注目は、どちらかというと積み荷のDSCOVRよりも、それを打ち上げるファルコン9ロケットの第1段機体の回収試験に集まっていた。スペースX社は、ロケットを再使用することで、打ち上げにかかわる費用を大きく引き下げることを目指しており、その最初のステップとして、打ち上げを終えて地球に戻ってきたロケットの第1段機体を、広い甲板を持つ船で回収する、という試験を進めている。同社はこれまで、垂直離着陸実験機による試験飛行や、打ち上げ後に第1段を海上に降ろす着水試験を行い、今年1月10日には船の上に着地する試験に初挑戦した。ロケットは巧みに制御されつつ船の真上まで舞い戻りはしたものの、甲板に激しく衝突するように着地し、残念ながら完璧な成功には至らなかった。その詳細については、拙稿『隼は舞い降りられるか? - 再使用ロケットに賭けるスペースXの野望と挑戦』を参照していただければと思う。今回のDSCOVRの打ち上げでは、1月の試験と同じく、太平洋上に用意した回収船の上にロケットの第1段機体を着地させることを目指していた。しかし、打ち上げ当日に着地予定海域を嵐が襲い、船が出せなくなってしまった。また船自体も、エンジンの1つに問題を抱えていたという。あくまで主目的はDSCOVRを打ち上げることにあったので、回収船が出せないからといって打ち上げが延期されることはなかった。しかし、スペースX社は転んでもただでは起きなかった。船こそないものの、本番さならがらに、海のある一点を目指して着水させることを試みた。その結果、約10mの精度で垂直に安定して降下することに成功したという。同社のイーロン・マスクCEOは「天気が安定していれば、船の上に降り立つことは可能だろう」とTwitterで述べている。もちろん今回がうまくいったからといって、次の試験で成功するとは限らないが、それでも可能性は高くなったと言ってよいだろう。ファルコン9の次の打ち上げは3月1日以降に予定されているが、この打ち上げと、さらにその次の打ち上げでは、ロケットの持つ能力を最大限に使う必要があり、着地に使うための追加の推進剤や着陸脚を積む余裕がなく、回収試験は実施されない見通しだ。次に回収試験が実施されるのは、今年4月に予定されているドラゴン補給船運用6号機の打ち上げの際となる予定なので、今しばらく待たねばならない。なお、同社は1月27日に、「ファルコン・ヘヴィ」ロケットの打ち上げを描いたCGアニメを公開した。ファルコン・ヘヴィは、ファルコン9の第1段を3基束ねて、より重い人工衛星を打ち上げられるようにしたもので、現時点で今年中に初の打ち上げが行われる予定だ。ファルコン・ヘヴィも機体の再使用することが考えられており(再使用しなければもっと重いものを打ち上げることができる)、このアニメでも、3基の第1段機体が打ち上げた場所にきれいに舞い戻ってくるという、にわかには信じられないような光景が描かれている。次の回収試験に向けて、期待は高まるばかりだ。参考・ ・ ・ ・ ・
2015年02月27日2015年2月11日、欧州宇宙機関(ESA)は、再使用型宇宙往還実験機「IXV」の飛行試験に成功した。IXVは「リフティング・ボディ」と呼ばれる、胴体そのものが翼のような役目を果たす形をしており、未来の欧州のロケットや宇宙機の開発にとって重要なデータを集めた。IXVの飛行時間はわずか100分ほどであったが、欧州の宇宙開発の未来にとっても、そしてリフティング・ボディという「翼なき翼」の歴史にとっても、新たな章を刻むものとなった。○翼なき翼、リフティング・ボディ人類は古来より、鳥のように空を飛ぶことを夢見てきた。オットー・リリエンタールやライト兄弟がその夢を叶え、続いてその手が宇宙へと伸ばされたとき、しかし宇宙飛行において翼は必ずしも必要ではないことを知った。けれども、宇宙空間から地上のある一点を狙って着陸することを考えたとき、翼は依然として魅力的であり続けた。スペースシャトルなどが軒並み大きな翼を持っているのはそうした理由がある。だが、打ち上げや宇宙空間を飛行する際には、翼は役に立たず、単なる重荷でしかない。また宇宙船が大気圏に再突入する際、その速度は極超音速の、とてつもないものになるが、そのとき翼は大きな抵抗となり、また高熱からその翼をどうやって防護するかは難しい問題であった。さらに胴体から大きく張り出した翼は、構造的に弱点でもあった。そこで、翼がなくとも飛行を制御することができるよう、胴体そのものが揚力を生み出すような形をした機体が考えられた。それが「リフティング・ボディ」である。フティング・ボディは1950年代の米国で本格的に研究がはじまり、またソヴィエト連邦や欧州、日本でも研究が行われた。その過程でいくつかの実験機による飛行実験が行われたものの、すべて大気圏内の飛行であったり、あるいは宇宙空間には出たものの、軌道速度と比べ非常に遅い速度であったりと、純粋に「翼のないリフティング・ボディ機が宇宙を飛び、地球に帰還する」ことが実証されたのは、今回のIXVが世界で初めてのことであった。○IXVIXVが開発された背景には、ESAが2003年に立ち上げた「将来打ち上げ機準備計画」(FLPP:Future Launchers Preparatory Programme)というプログラムがある。これは将来のロケットにとって必要となる技術や要素を開発することを目的としたもので、例えば機体の信頼性の向上や製造や運用の簡略化、環境への影響の低減といった技術目標が立てられており、その中に「Reusability」、つまり再使用化も盛り込まれている。IXVという名前はIntermediate Experimental Vehicleの頭文字から取られているが、Intermediate(中間)という言葉が入っているのは、この将来の欧州のロケット開発に向けた長期的なロードマップの中の「中間的」な要素に、IXVが位置付けられているためだ。ESAやフランス国立宇宙科学センター(CNES)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)では、2005年ごろからリフティング・ボディの実験機「PRE-X」や、再突入実験機の「AREV」、「EXPERT」の研究が行われており、IXVの開発にあたってはこれらの成果が受け継がれている。なおEXPERTは、実際にロケットに搭載して飛行試験が行われる予定だったが、打ち上げのために確保していたロシア製ロケットの都合で打ち上げが無期延期となっている。IXVはタレース・アレーニア・スペース社によって開発と製造が行われた。全長5.0m、全高1.5m、全幅2.2m、打ち上げ時の質量は1,845kgほどで、前述したように翼はなく、革靴のような姿かたちをしている。大気圏内での飛行制御には、胴体後部に装備された、足ひれのような2枚の板状の翼を使う。機体の姿勢制御はもちろん、飛行方向を左右に、距離にして400kmほど変えることもできるという。今回の飛行試験に先立ち、2012年には米国アリゾナ州のユマ実験場において、高度5,700mの高さからIXVの試験機を空中投下し、パラシュートを展開させる試験が実施された。また2013年には、地中海の上空3,000mから試験機を投下し着水させる試験も行われている。IXVは「ヴェガ」ロケットの先端部分に搭載され、現地時間2015年2月11日10時40分(日本時間2015年2月11日22時40分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターのヴェガ射場(SLV)から離昇した。当初、打ち上げは10時ちょうど(日本時間22時ちょうど)に予定されていたが、ロケットと地上設備との間のテレメトリーの接続が切れるという問題が発生したため、40分間延期されることになった。打ち上げ後、ロケットは順調に飛行し、17分59秒後に高度340kmの地点でIXVを分離した。IXVはそのまま慣性で上昇を続け、高度412kmまで到達した。そしてそこから下降をはじめ、やがて大気圏に再突入した。機体は高度120km付近で秒速7.5kmに達し、最大で摂氏1,700度もの高熱にさらされながら、大気を突っ切っていった。IXVのミッションは、地球周回軌道に乗ることを意図していなかったが、高度120km付近で秒速7.5kmというのは、宇宙船が地球周回軌道から離脱し、大気圏に再突入する際とほぼ同じ条件である。灼熱の環境を抜けたIXVは、大気圏内を滑るように飛行し、やがて速度がマッハ1.5にまで落ちたところで、最初のパラシュートが展開し、続いて2つ目のパラシュートも展開した。そして高度約26kmのところで主パラシュートが展開し、IXVは回収船の待つ海上へと降りていった。打ち上げから約100分後の日本時間2月12日0時19分ごろ、IXVはガラパゴス諸島のすぐ西の太平洋上に着水し、海上で待機していた回収船「Nos Aries」によって回収された。機体の状態は正常で、機体の各所には取り付けられていた、計300個を超えるセンサからのデータも予定通り得られ、ミッションは完璧な成功であったという。このあとIXVはESAの施設へと送られ、約6週間をかけて、初期分析が行われることになっている。ESAのJean-Jacques Dordain長官は「IXVは再突入と再使用の能力において、ESAのために新たな章を拓きました」と語った。(次回は2月24日に掲載予定です)参考・・・・・
2015年02月23日岡山県倉敷市にあるライフパーク倉敷 倉敷科学センターは、「世界・日本の宇宙取材の現場から」と題した科学講演会を2015年3月7日に開催する。今回の講演会では、25年以上にわたって日本、米国、ロシアなどでロケット打ち上げや宇宙関連施設、無重力飛行などを取材し、国によって異なる現場や人々の魅力に虜となったと語るサイエンスライターの林公代氏が登壇し、国内外の宇宙に関わる現場での取材や宇宙飛行士、天文学者などへのインタビューを通して感じた宇宙の魅力について、実際の現場写真などを交えて講演を行う予定だという。具体的な内容としては、ロシアについては宇宙服の製造会社や、宇宙飛行士が訓練する星の街、ガガーリンが乗ったカプセルの実物があったエネルギア社の博物館、バイコヌール宇宙基地で見た発射、若田さん打ち上げまでの様子や表情などを、米国については、NASAケネディ宇宙センターでのシャトルの打ち上げやヒューストンの訓練施設の話などを、そして日本については、種子島宇宙センターでの打ち上げの様子や筑波宇宙センターなどの様子などを語る予定だという。また、各地で出会った宇宙飛行士、宇宙技術者、天文学者といった宇宙に携わる人々の魅力についても語る予定としている。なお、対象は小学生以上(小学生は保護者同伴)としており、定員は200名。参加料は無料で、申し込み方法は、倉敷科学センターに直接電話で申し込み(086-454-0300)、定員となり次第、締切となる予定だという。○倉敷科学センター 科学講演会「世界・日本の宇宙取材の現場から」日時:平成27年3月7日(土) 19:00~20:30講師:林公代(サイエンスライター)会場:倉敷科学センター プラネタリウム対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)定員:200名(先着順)参加費:無料
2015年02月20日宇宙航空研究開発機構(JAXA)と科学技術振興機構(JST)は2月19日、研究開発資源の活用や情報交換などの相互連携および協力を円滑かつ効果的に実施することを目的とした相互協力協定を締結したと発表した。同協定のもと両者は、科学技術イノベーション創出に向け、独創的な研究開発の創出、実用化開発の加速や国民への効果的な成果の展開などを行っていくこととなる。協定の主な内容としては、有望な研究課題・成果の発掘および推進・展開、宇宙航空分野の研究開発成果の社会実装、青少年教育の促進、研究開発成果のアウトリーチの促進などに向けた協力する。また、費用負担・知財などの扱いおよび秘密保持などの基本事項も協定に含まれている。両者は今後、同相互協力協定に基づき、社会的課題の解決と日本の競争力向上への寄与を図るのをはじめとして、次世代人材の育成に協力して取り組むなど、日本全体としての研究開発成果の最大化を目指すとしている。
2015年02月19日SAPジャパンは2月13日、自動車業界のビジネス変革(イノベーション)を支援するためのソリューション開発センターである「オートモティブ・コンピテンシー・センター」を同日付で設立したと発表した。グローバルで自動車産業に関するプロジェクトに長期にわたり参画したメンバーによる専任チームを設置し、ユーザー企業のイノベーションを支援していく。同センターでは、国内の自動車業界のユーザー企業が大きく変化し続ける環境を事業の成長と変革の機会として捉えグローバルで成功するために、実績のあるソリューションの提供に加え、ユーザー企業と共に日本の製造業のさらなる進化を実現する新たなソリューションの開発を目指す。同センターは、自動車業界に関する知識と経験を持つ海外エキスパートチームと、日本の自動車業界を熟知した日本人社員チームとのコラボレーションで構成。これにより、自動車産業における基幹業務についてはユーザー企業の要望や環境に合わせたカスタム開発を含むソリューションを提案し、ビジネスのシンプル化を支援する。また、国内自動車メーカーの持つアイデアとSAPがグローバルで培ってきた知見を組み合わせ、グローバルの経験をベースとしながらもユーザー企業が求める価値の実現を支援するとしている。同社は全世界で約6,300社の車両メーカーやサプライヤーを中心に自動車業界の事業者で既に実績を持っているという。その経験とノウハウを日本市場に向けて提供するため、部門の垣根を超えた「One SAP」としてユーザー企業を支援する組織体制への再編を進めており、今回の新センター設立もその一環だ。
2015年02月14日アメリカ航空宇宙局(NASA)はこのほど、今年に実施される第45次国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションのポスターを公開した。ポスターは、映画『スターウォーズ』をモチーフに、日本人の油井亀美也宇宙飛行士を含む6人の宇宙飛行士が「ジェダイの騎士」に扮している。第45次ISS長期滞在クルーは、第43次長期滞在からクルーを務めるスコット・ケリー宇宙飛行士とミカエル・コニエンコ宇宙飛行士、第44次長期滞在からクルーを務めるオレッグ・コノネンコ宇宙飛行士、油井宇宙飛行士、チェル・リングリン宇宙飛行士、第45次長期滞在からクルーを務めるセルゲイ・ヴォルコフ宇宙飛行士の計6名。油井宇宙飛行士らが搭乗する「ソユーズTMA-17M宇宙船」は2015年5月に、ヴォルコフ宇宙飛行士が搭乗する「ソユーズTMA-18M宇宙船」は同年10月に打ち上げられる予定。10月の打ち上げ時には歌手のサラ・ブライトマンも旅行者として参加し、短期で滞在する予定となっている。NASAは宇宙飛行に対する認知度を高めるため活動の一環として、ISS長期滞在クルーをポスターという形で紹介している。そのポスターは、映画をモチーフにしたものが多く、これまで『マトリックス』『スター・トレック』『パイレーツ・オブ・カリビアン』を模したポスターが公開されている。
2015年02月13日アメリカ航空宇宙局(NASA)は2月10日(現地時間)、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、宇宙空間に浮かんだ笑顔のように見える銀河団の写真を公開した。輪郭、2つの目、ボタンのような鼻、口元でかたどられたものは「SDSS J1038+4849」と呼ばれる銀河団。目のように見えるオレンジの光は「SDSSCGB 8842.3」「SDSSCGB 8842.4」という遠く離れた場所にある2つの銀河で、口元は、強い重力によって光が曲がる「重力レンズ」によるものだという。顔の輪郭のような曲線は、重量レンズのリング状の像である「アインシュタイン・リング」と呼ばれるものとのことだ。この写真は2012年4月にアップロードされたもので、今回、ハッブル望遠鏡が撮影した膨大な写真から「お宝画像」を見つけ出すコンテストで見つかったもの。
2015年02月12日電通、東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車は2月10日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力の下、国際宇宙ステーションに滞在していたロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」が地球に帰還することを発表した。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、KIROBOはグリニッジ標準時間の2015年2月10日の午後7時09分(日本時間2月11日午前4時09分)に、スペースX社のドラゴン補給船運用5号機に搭乗してISSから離脱し、グリニッジ標準時間の2月11日午前0時44分(日本時間同日午前9時44分)に、太平洋上に着水する予定。4者による共同プロジェクト「KIBO ROBOT PROJECT」は2012年に発表され、2013年8月に、KIROBOはISS補給船「こうのとり」4号機に搭載され、種子島からHⅡBロケットにて打ち上げられた。その後、KIROBOは若田光一宇宙飛行士と共に「宇宙での人とロボットとの対話実験」に成功するなど、人とロボットが共に暮らす未来に向けた研究を行ってきた。KIROBOのサイズは、身長約34cm、全幅約18cm、奥行き約15cmで、重量は約1000g。主要機能として、音声認識、自然言語処理、音声(発話)合成、情報通信機能、コミュニケーション動作、顔認識カメラ、記録用カメラなどを搭載している。
2015年02月12日●打ち上げ後、順調に航海を続ける「はやぶさ2」宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月28日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者会見を開催、これまでの運用状況について説明した。現在、探査機の状態は正常。4台のイオンエンジンの稼働を確認したほか、日本の探査機としては初となるKaバンド通信にも成功した。今後1カ月で残りの初期チェックを行い、定常運用に移行する計画だ。はやぶさ2は昨年12月3日に打ち上げられており、それからほぼ2カ月が経過した。2日間のクリティカル運用が完了した後、現在は搭載機器や地上システムの機能を確認する初期運用が実施されているところで、これまでに基本的なところはほぼ完了。國中均・はやぶさ2プロジェクトマネージャが「万全」というくらい、順調に進んでいるようだ。○イオンエンジンは4台とも正常まずイオンエンジンについてだが、12月23日から4日をかけて、スラスタA~D単独の試運転を実施。正常な推力が出ていることが確認できた。そして1月12日からは2台同時運転、16日にはA+C+Dの3台同時運転にも成功。このときの推力は約28mNで、ほぼ定格通りだった(イオンエンジン1台の推力は、初号機の8mNから10mNに向上している)。イオンエンジンは非常に燃費が良い反面、推力がとても小さいという特性がある。このため、小惑星に向かう巡航運転時には長時間の連続稼働が必要になるのだが、1月19日~20日に初めてスラスタA+Dによる24時間連続自律運転を行い、無事成功。3月からの巡航運転に目処が立った。はやぶさシリーズはイオンエンジンを4台搭載するが、同時に運転できるのは最大3台。1台は予備という位置付けだ。だが初号機では、初期運用中にスラスタAに問題が出て、いきなり予備が無い「危機的な状況」(國中プロマネ)になってしまった。かろうじて帰還できたものの、これは解決すべき大きな課題だった。はやぶさ2のイオンエンジンは、國中プロマネが「かなり粒が揃ったものを作ることができた」と胸を張る自信作だ。部品レベルでの国産度を高めたほか、キセノンガス(推進剤)の供給装置も改良。初号機よりも、きめ細かい流量制御ができるよう取り組み、安定した推力を実現したという。4台とも正常だったことで、「1台の予備」を維持することができた。國中プロマネは「厳しい航海が待っている」とし、今後について決して楽観視はしないものの、順調な初期運用の結果には、「機材としては十分な余裕を持って、小惑星への往復航海に乗り出せた」と素直に喜んだ。ところで12月19日~22日にイオンエンジンのベーキングを実施しているが、これは初号機では無かった手順だ。ベーキングというのは、温度をわざと上げることで、揮発性のガスを出し切る作業。特に打ち上げ直後、真空になったばかりというのは、機体からそうしたアウトガスが出やすい。ベーキングによって、機体を乾かすというわけだ。國中プロマネによれば、イオンエンジンは真空度が完全でないと、良いオペレーションができないという。初号機では、そうした知見が十分でなかったために、スラスタAの機能を落としてしまった。そのため、はやぶさ2では、ヒーターで50℃に温めたり、姿勢を変えて太陽光を当てたり、プラズマを点火するなどして、運転前にベーキングを行った。○スラスタBを使わないのはなぜ?2台同時運転、3台同時運転の組み合わせを見ると、スラスタBだけが外されていることが分かるが、これはスラスタBに問題があるわけではなく、バックアップとして取っておくためだという。当面はA/C/Dの3台のみを使って、軌道変換を行っていく計画だ。細かい話になるが、なぜスラスタBなのか、気になる人もいるだろう。「B」はバックアップのB - という理由ではもちろん無い。先ほど、同時に運転できるのは最大3台だと説明したが、じつはスラスタは4台あるのに、直流電源は3台しかない。はやぶさシリーズでは、リレーを電源とスラスタの間に入れることで、組み合わせを変えているのだ。ただ、4台のスラスタがすべて同じ条件ではない。スラスタAとDは繋ぐことができる電源が1つに決まっているが、スラスタBとCは2つの電源から選ぶことができる。こちらの方が自由度が高いので温存しておいて、なるべく先にスラスタAとDを使い倒したいというわけだ。一方、各スラスタの配置上、太陽側にあるスラスタAとBは温度が上がりやすい。しかし温度はなるべく上げたくないという事情があって、日陰側のスラスタCとDを使いたい。条件としては、ほんの僅かな違いであるものの、以上2つの明確な理由があって、A/C/Dの3台に決まったそうだ。ちなみに、リレーがあるのなら、一定時間ごとに切り替えて、4台を均等に使っていくことも考えられるが、そうしないのは、リレーが機械式だからだ。宇宙では、無駄な機械操作はしないのがセオリー。「必要がない限り、リレーの切り替えはさせたくない」(同)という判断により、使用する3台を固定化したわけだ。なお初号機では、復路で健全なスラスタが無くなり、帰還に黄信号が灯ったとき、異なるスラスタのイオン源と中和器を組み合わせるという、裏技に近い「クロス運転」で最大の危機を脱した。はやぶさ2にも「当然ながら初号機の機能はすべて入っている」わけだが、國中プロマネの「でも今回はそういう機能は使わないで帰れるようにしたい」というのは本音だろう。●「はやぶさ2」の最大の懸念点とは…○リアクションホイールのキモはZ軸探査機の姿勢制御に使うリアクションホイールも、初号機で大きなトラブルを起こした場所だ。初号機のリアクションホイールは、小惑星に向かう途中でX軸、小惑星到着直後にY軸が故障しており、それ以降、残るZ軸だけによる綱渡りの運用を強いられていた。リアクションホイールは、円盤の回転速度を上下することで、機体の回転を調整することができる装置。1台で1軸周りの回転しか制御できないため、3軸制御のためには最低3台が必要になるのだが、初号機は厳しい重量制限があったせいで、3台ちょうどしか搭載することができなかった。通常は、冗長のために4台を搭載する。初号機での故障は、初号機用に特別に変更した部分が原因だったと考えられており、標準品を使用したはやぶさ2で同じ現象が起きる可能性はないのだが、今回はセオリー通り4台を搭載。だが、セオリー通りでないのは配置の方法だ。4台が正四面体の位置関係になるスキュー配置ではなく、Z軸のみ2重(XYZZ)にした珍しい配置になっているのだ。このように非常に特殊な配置を採用したのは、初号機での知見があるからだ。もしリアクションホイールが壊れたとしても、探査機には姿勢制御スラスタ(RCS)もあるので、燃料がある限り、3軸制御は可能。だが、初号機はRCSも使用不能になったのに、Z軸のリアクションホイールだけで、地球に帰還することができた。この1台だけでは、Z軸周りの回転しか制御できない。では残りのX軸とY軸はどうしたのかというと、初号機では、太陽光圧により発生する微弱な回転力や、キセノンガスの直接噴射などを組み合わせて、姿勢制御する新しい方法を編み出した。Z軸さえ無事なら、初号機の方法で、姿勢制御は何とかなる。だからZ軸は特に手厚く、というわけだ。ちなみに初号機では、太陽光圧は非常時の姿勢制御として利用されたわけだが、はやぶさ2では、リアクションホイールを温存するために、むしろ積極的に活用する方針。國中プロマネによれば、「イオンエンジンなどの難しい運転がない場合は、XYZの3台のリアクションホイールを停止して、Z軸の1台だけで姿勢制御する」ことを狙うそうだ。○日本初の深宇宙Kaバンド通信を確立そのほか、ここまでの初期運用で大きなトピックスとしては、はやぶさ2で新たに搭載されたKaバンドアンテナによる通信の確立がある。深宇宙でのKaバンド通信に成功したのは、日本の探査機では初めて。Kaバンドは従来のXバンドに比べて4倍高速であり、より大量の観測データを小惑星から送ることができるようになる。しかし残念なことに、日本国内には、はやぶさ2とKaバンド通信ができる地上局がない。そのため今回は、NASAの深宇宙ネットワーク(DSN)各局の協力を得て通信を行った。日本国内にもKaバンド通信が可能な地上局はあるが、これらは地球を周回する衛星向けで、深宇宙通信の能力はない。探査機との通信には、もっと大きなアンテナが必要で、そのための施設として臼田と内之浦に直径64mと34mの大型アンテナがあるものの、対応しているのはXバンドで、Kaバンドは利用できない。日本の小惑星探査は世界最先端の成果を上げているが、こと深宇宙との通信設備に関して言えば、米国から遥かに遅れていると言わざるを得ない。臼田局は、ハレー彗星探査機「さきがけ」「すいせい」の時代に作られたアンテナで、すでに30年が経過している。今後も使い続けるのは「寿命の問題もあり難しい」(同)という状態だ。そこで、JAXAでは「我々は"臼田後継"と呼んでいるが、臼田局を作り替えることを計画している」(同)とのこと。具体的なスケジュールはまだ検討中だが、國中プロマネによれば、「XバンドとKaバンドの送受信が可能な設備を整えたい」そうだ。なお米国はDSN局として、世界3カ所にゴールドストーン局、キャンベラ局、マドリード局を整備。これにより、24時間の運用を可能としている。臼田後継が実現したとしても、日本から探査機が見えている時間だけの運用になり、小惑星近傍ではいずれにしてもNASAの協力を得なければならないが、それでも早急の整備を望みたいところだ。○ハードは大丈夫、では最大の懸念は…このようなプロジェクトでは、どうしても探査機本体に注目が集まりがちであるが、小惑星探査は探査機だけで行えるわけではない。國中プロマネは、「地上の設備、ネットワーク、人の技量」が必要だと指摘。いま一番心配しているのは、「ハードウェアではなく、いかに人間組織を作り上げるか」ということだという。はやぶさ2は小惑星1999 JU3に約1年半滞在し、この間に、小惑星の観測、表面物質の採取、インパクタの運用、ランダー/ローバーの投下などを実施する。探査機の運用で、もっとも忙しい時期だ。「24時間連続のオペレーション。8時間3交代くらいで1年半を乗り切る」(同)ということで、実力のあるスタッフが大勢必要になる。また、たくさんのデータを取得したら、その分析も必要となる。小惑星のどこに何がありそうか、科学的なデータを積み上げないと、着陸地点を決めることができない。大勢の科学者が必要で、大学や研究機関の協力が不可欠だ。小惑星に到着するまであと3年半。それまでに人を育て、協力体制を構築しなければならない。今後は、どれだけ強力な「チームはやぶさ2」を準備できるかがポイントだと國中プロマネは見ており、「万全の体制で他国に負けない小惑星探査がしたい」と改めて意気込みを述べた。
2015年02月04日一般人を対象に、宇宙旅行の企画・販売をする会社が現れた現代では、海外旅行が身近なものになったように、宇宙旅行も非日常なことではなくなる日がくるかもしれません。でも宇宙での睡眠って、実はちょっと特殊なようです。宇宙旅行が現実のものに将来的には身近なものになると考えられている宇宙旅行。実際に海外にある宇宙旅行会社では、2015年以降の出発予定で、1人25万ドル(約2,500万円)の価格で募集をスタートしました。上記の旅行は、宇宙の滞在期間が4分弱と非常に短いものですが、すでに約700人が予約をしているそうです。日本国内でも宇宙旅行を企画する会社が設立されており、本当に現実のものになりつつあるようです。現在では数分の宇宙滞在ですが、きっと科学技術がさらに進歩すれば長期間滞在できるようになるでしょうね。でも、果たして宇宙ではグッスリ眠ることができるのでしょうか。宇宙では睡眠不足になる?宇宙飛行士は宇宙でどのように寝ているのでしょうか?無重力の中では上下と言う概念がなくなるので、寝ようと思えばどのような向きでも寝ることができるようです。ただ、睡眠中にふわふわと浮いて、どこかに飛んでいってしまうので、寝袋を使って動かないように壁などに縛り、固定して眠るのだそうです。不眠に悩む宇宙飛行士の割合は非常に高く、全体の6~7割とも言われています。なぜ宇宙ではこんなにも不眠に悩まされるのでしょうか?睡眠不足解消に睡眠薬も宇宙における不眠の原因は、以下の7つが考えられています。(1)就寝スペースが十分ではない、狭い(2)無重力による宇宙酔い、体内環境の変化(3)普段の環境と異なることからくる精神的緊張(4)換気ファンなどの騒音、睡眠環境(5)(宇宙飛行士は)作業が多いため睡眠不足になる(6)睡眠構造が変化する(深い睡眠が減少する)(7)その他の生活要因(スペースシャトル内での90分周期のサイクルなど)これらを解消するために宇宙飛行士は睡眠薬を利用したり、耳栓・アイマスクを活用しているそうです。なかなか静かで快適な環境でグッスリ……どはいかないようですね!Photo by NASA’s Marshall Space Flight Center
2015年01月29日富士通は1月27日、IoTやクラウドビジネスを加速させる中核拠点として、主力データセンターである館林システムセンター、および明石システムセンターに新棟を建設すると発表した。2015年1月より順次着工し、館林システムセンター新棟は2016年4月に、明石システムセンター新棟は2016年7月に開設予定。同社は、増加するクラウド需要やデータセンター活用のニーズに対応するため、東西の国内主力データセンターである館林システムセンターと明石システムセンターの敷地内に新棟を建設する。両新棟にはSDNなど最新技術を実装し、いつでも、どこからでも、すぐにクラウドやネットワークのサービスを利用することが可能なICT環境を提供する。新棟の概要は、次のとおり。『館林システムセンターC棟』建物構造:免震延床面積:39,000平方メートルラック数:4,000ティア:ティア4相当開設予定:2016年4月『明石システムセンターF棟』建物構造:免震延床面積:3,200平方メートルラック数:500ティア:ティア4相当開設予定:2016年7月
2015年01月27日宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこのほど、小惑星探査機「はやぶさ」に端を発した電力制御技術を家電へ応用するための通信情報をオープンプラットフォームで公開した。「はやぶさ」では、イオンエンジンに一定の電力を供給する必要あり、搭載された計200個のヒーターのスイッチを、温度状況に合わせて切り替える必要があったため、電力のピークカット技術が採用された。このときの技術は、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)などと同様に、コンピューターが各機器の電力使用量を監視し、一度サーバーに情報を集積して、各機器に電力を割り振る方式だった。この方式では、1個体とサーバーが双方向通信するため、個体の数が増えると、制御に時間がかかってしまう。今回の技術では、各機器に優先順位を設定することにより、制御装置から各機器へ、使用できる電力の総量のみを通信し、それぞれの機器が優先順位に応じて使用する電力を自分の判断で変更する。双方向で通信する必要が無いため、従来の制御方式とは違い、個体数が増えても制御速度が落ちることはない。各機器が独立分散の並列処理をするため、制御系統に機器を新たに追加、もしくは途中で離脱させる場合にも対応できる。制御システムの構築には配電盤・家電に小さな機器を取り付けた上で、家電機器側に設けられる並列処理のための論理を導入するだけで済む。既存設備を活用できるため、導入コストを抑えることができる。今回公開されたオープンプラットフォームは、同報発信する情報の記述方法にあたるもので、同方式を利用したいという家電機器メーカーに対しては、JAXAから並列処理のための論理を無償で提供する。JAXA宇宙科学研究所の川口淳一郎 教授によれば、同技術は電車の電力制御や、携帯電話での情報処理などへも応用可能で、電力事業に関する新たなビジネスモデル創出の鍵となり得るとのこと。なお、同技術は1月28日~30日に東京ビッグサイトで開催される「新電力EXPO2015」でデモンストレーションが実施される予定となっている。
2015年01月21日●「何もかも皆懐かしい…」沖田艦長はやっぱりかっこいい人はなぜ宇宙に惹かれるのだろうか。サイエンスやテクノロジーの領域においても、映画や漫画・アニメーションといったクリエイティブな領域においても、宇宙は多くの人の想像力を駆り立てるものであり続けている。現実の宇宙も創作の宇宙も、一般の社会に生きる今の我々にとっては触れ得ぬ存在だが、実際に宇宙を経験したことのある人にとっては、それはどのようなものであるのだろうか。今回は2010年にスペースシャトル ディスカバリーで宇宙へ飛んだ宇宙飛行士・山崎直子氏にお話しを伺う機会を得た。山崎氏が最初に宇宙へ憧れを持つきっかけになったのは、子供の頃に『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』といった作品をテレビで見たことだったという。憧れるところまでは多くの人が同じでも、一生のうちに実際に宇宙に行く経験ができる人はごくわずか。今の時点では、特別に訓練された人たちが宇宙で特定の任務をこなす、宇宙飛行士だけだ。宇宙を経験した人にとって、実際の宇宙とはどんなものなのか、映画やアニメーションなどのSF作品はどのように見えるのだろうか。山崎氏にお話を伺った。○大人になったらみんな宇宙に行けると思った――子供の頃は、どんな作品をご覧になっていましたか?幼稚園生の頃に『宇宙戦艦ヤマト』を見ていました。おぼろげに『アルプスの少女ハイジ』も見たいと思っていた憶えもあるのですが、3歳違いの兄の影響でヤマトを見はじめて。そうしたら、面白かったんです。子供心に、宇宙はすごいな、いつか行きたいなと。大人になったらみんな行けるんじゃないかと思っていました。他にも、子供が普通に見るような『キャンディキャンディ』や『ドラえもん』も好きでしたが、最初に見始めた『宇宙戦艦ヤマト』は強烈でした。宇宙という舞台そのものにワクワクしましたし、後で見直すといろいろといい場面もあるんですよ。沖田艦長の『何もかも皆懐かしい』というシーンも。沖田艦長は子供の頃からカッコいいと思っていましたね。」――JAXAにも『ヤマト』をはじめSF作品のお好きな方が多いそうですね。そういったSF作品から感化されて、JAXAやNASAで働いているという方はたくさんいます。日本以外の宇宙飛行士の中にも日本のアニメオタクという人が何人かいて、『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』、ジブリ作品などを英語で見たそうです。宇宙飛行士は訓練を開始してから実際に宇宙に飛ぶまで、とても長い道のりです。その間に計画もどんどん変わり、実際に宇宙に行けるかどうかわからない中で、小さい時からの"好き"という単純な思いがある意味一番のモチベーションというか、エネルギーになっていたと思います。だから何年かかっても、大変なことがあっても、それが苦ではない気持ちは大きかった。エンジニアや研究開発で携わっている方も長丁場であることが多いので、そういう好奇心が支えるところは同じなのだろうと。――それらの作品を改めて思い返して、印象深いエピソードはありますか?『銀河鉄道999』ではあの当時から"機械と人間"という奥の深いテーマを扱っていて、考えさせられました。『宇宙戦艦ヤマト』では、今でこそ高エネ研(高エネルギー加速器研究機構)などでいろいろな実験が行われている"反物質"というものがあの当時から出てくるんです。『さらば』(劇場2作目『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』1978年)はテレサという反物質世界の女性が登場して、最後は『ヤマト』と一緒になることで自爆し、なんとか地球を救うという話でした。それが中学高校の物理でアインシュタインの[E=mc²]という公式が出てきて、実際の公理で表されるのだということにびっくりしたんです。ある意味美しいというか……。それで物理が好きになりました。でも、それが一歩間違えれば原子爆弾にもなるという科学の両面性を知ったのも作品の影響です。『ヤマト』の中でも古代君が敵を倒した後に「なぜ戦わねばならないのだろう」というシーンがあり、そうした勧善懲悪ではない奥深さも描かれていました。現在は完全新作劇場映画『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』もあり、こちらも観に行きたいと思っています。●そうして行った宇宙は案外"普通"に生活できる場所○現実が想像を追いかける――実際に宇宙に行かれた人の目から見ると、SF作品とはどんな存在ですか?私から見るとSF作品は本当にすごいと思います。私たちの世界の何歩も先を行っていて、その後を現実世界が追いかけているという感じです。それこそ、ジュール・ヴェルヌの小説(『月世界旅行』1865年)から始まって、アーサー・クラークが作品に描いた静止衛星が今は実際にたくさん使われていたり。最近では宇宙エレベーターも、まだSF的な部分はありますが、いろいろな実験や研究を重ねて材料の開発も進められています。宇宙だけではなくテクノロジー全般について、SFやアニメの想像力はすごいと思います。私たちは未来を想像して技術開発や発明をしていきますが、どうしても今あるものに頼って、そこから一歩二歩先を考えるのですが、それをSF作家さんやアニメを作る人は、何百年、何千年先をスポーンと見てしまうのでしょうね。こうなったらいいなと将来をワクワクしながら考えることは同じだと思いますが、そのスケール感はすごいものだと思います。――そういう想像力が、何かをやりはじめる動機になるのかもしれませんね。最初から難しそうだと思ったり現実的な壁を見てしまうと、モチベーションが下がったり、じゃあいいやと諦めてしまうところもあると思います。私も最初から宇宙飛行士の訓練に11年かかると言われていたら、もしかしたら(宇宙飛行士を目指すかどうか)考えていたかもしれません。でも、何か楽しそう、やりたいという思いから始まると、それが苦でないから、何年かかろうとあっという間のように感じます。やっぱり、最初のモチベーション、ワクワク感は大きいですね。――これからのSF作品には、どんなことを描いて欲しいと思いますか?学生時代に見た『エヴァンゲリオン』や『攻殻機動隊』など、必ずしも宇宙ではなくても、人とロボットの関係や、人がどんどん改造されてコンピュータの世界との境界がどうなっていくのか、それは進化と呼べるのか、そもそも生命とは何かなど、いろいろなことを考えさせられます。描いて欲しいことがあるとするなら、これからは宇宙だけ、ロボットだけという分野ごとではなく、いろいろなことが同時並行で進んでいくので、それらが融合していくとどうなるのだろうということには興味がありますね。人が宇宙へどんどん進出して、再生医療が進んで病気が治り、機能を補うだけでなく強化された身体が造られ、コンピュータやロボットやITの技術も進んで……と、想像力が掻き立てられます。○宇宙は"普通"に生活できる場所――現実の宇宙は、SFとはどのように違うものなのでしょうか?小さい頃に宇宙へ行くというと、それこそイスカンダルのような遠い所へ行くことを考えていましたが、今人間が行き来しているのは地上約400kmにある国際宇宙ステーションで、まだまだ地上にへばりついているような状態です。そこに行き来するにも大変という、現実の厳しさがあります。でも、そうして行った宇宙は案外"普通"に生活できる場所でした。長い間訓練をして行くので特別なところだというイメージがありましたが、宇宙食でご飯を食べて、お風呂には入れないけれどタオルで身体を拭いて、歯磨きをして、夜は寝て、日中は起きて仕事をして……と。人は宇宙でも、生活をすればそこが日常生活になるんですよね。もちろん、壁一枚隔てれば真空の宇宙という危機感は、地上の安心感とは比べものになりませんけど最長滞在記録を持っているのはロシアで(※ワレリー・ポリャコフ宇宙飛行士。1994年1月8日から1995年3月22日まで、427日間滞在)、そうやって人が宇宙に生活するようになると、適応して進化していくのではないかという提唱もあるんです。本当に宇宙にいると、そんな気がしますね。●アニメやSFの世界を現実が追いかけている私はISSとスペースシャトルで滞在が15日間と比較的短かったんですけど、その間でもすぐに上下感覚が切り替わるんです。宇宙船の中では天井に明かりがあり、床に少し濃い色があって、"上下"は区別されているんですけど、それに関係なく、自分が宙ぶらりんになっていれば天井が自分にとっての"床"と思えて、自分はちゃんと立っているという感覚になります。だから、他の人にただ「上にあるものを取って」と言っても通じなくて、「あなたの上」とか「宇宙船の天井」と言わなくてはならないのですが、それにもすぐ慣れます。会話をする時に相手と逆さまになって話すのも全然普通で、人の顔も真っ直ぐだけでなく逆さまになった顔で思い浮かべたり、そういった想像も変わってきます。身体的にも、重力がないと体液がどんどん上に動いていき筋肉も衰えるので脚が細くなり、反対に顔は"ムーンフェイス"と言われるようにむくんで丸くなるんです。だから、脚は細く、頭は大きく、胴体は背骨と背骨の間隔が伸びるので長くなるという、宇宙人の想像図に出てくるような体型に近づくんです。本当に人が宇宙で生活していくと、姿も変わっていくのはあながち嘘ではないだろうと感じます。――それが二世代目、三世代目と続けば、新しい能力を身につけても不思議ではないですね。その意味では、中学生の頃に読んだ萩尾望都さんの『スター・レッド』などは火星での何世代にも渡る物語で、どんどん能力が変化していく話ですし、竹宮惠子さんの『地球(テラ)へ…』も、人が宇宙へ行くと新しい集団ができて、文化が生まれ……という内容です。これらもテクノロジーとは別の心理的な面で興味を持った作品です。○世界の多様な在りかたを考えるために――将来的に、普通の人が普通に宇宙へ行けるようになるでしょうか?あと一歩、二歩くらいでしょうかね。動き出せば早いと思います。飛行機だと1903年にライト兄弟が初飛行をした後、民間の利用が一般化するのに50~60年くらいかかりました。宇宙ではガガーリンさんが世界初の有人宇宙飛行をしたのが1961年、スペースシャトルの運用開始が1981年です。今は宇宙旅行用の宇宙船の開発も行われていて、申し込んでいる人も何百人といるようですが、一般の人にとって現実的な料金になるまでにあと20年くらいでしょうか。――山崎さんもまた宇宙へ行きたいと思っていらっしゃいますか?もちろん、行きたいです。旅行も良いですが、仕事でも行きたいですね。宇宙飛行士ですから。宇宙へ行くのに年齢制限はありません。『プラネテス』という作品で、スペースデブリ(宇宙のゴミ)を掃除する会社が描かれていましたが、今は本当に宇宙を掃除する会社が作られて、現在は必要な技術を開発中です。アメリカでは小惑星で資源を発掘する企業も設立されました。国の宇宙飛行士だけでなく、民間が独自に宇宙飛行士を宇宙に派遣するという世界にあと10年20年でなってくると思います。その点でも、アニメやSFの世界を現実が追いかけているなと感じます。――見て想像するだけでなく、現実的に足を踏み入れられる場所として、宇宙が身近になってくる時代なんですね。私自身、子供の頃も今も、SF作品やアニメからすごく影響を受けて、本当に考えさせられてきたと思います。現実の中で接することができるのは今この時代、この場所の限られた世界でしかありませんが、作品の中では過去や未来や宇宙の果てなど、時間と空間の制限を超えて本当に幅広い世界に接することができるのが醍醐味だと思います。私たちが今いる世界が全てではなく、色々な世界の在り方がたくさんあるんです。これからの世の中の在り方を決めていくのは私たち一人ひとり、特に若い世代の人たちであって、自分が何をするか、それでどんな未来になるのか、SFやアニメはそういった想像力を持つ力になると思います。宇宙の話に限らずいろいろな種類の作品に接して、考えていってほしいと思います。■プロフィール宇宙飛行士・山崎直子千葉県松戸市生まれ。1999年国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士候補者に選ばれ、2001年認定。2004年ソユーズ宇宙船運航技術者、2006年スペースシャトル搭乗運用技術者の資格を取得。2010年4月、スペースシャトル・ディスカバリー号で宇宙へ。ISS組立補給ミッションSTS-131に従事した。2011年8月JAXA退職。内閣府宇宙政策委員会委員、日本宇宙少年団(YAC)アドバイザー、松戸市民会館名誉館長、立命館大学および女子美術大学客員教授などを務める。著書に『宇宙飛行士になる勉強法』(中央公論新社)、『夢をつなぐ』(角川書店)、『瑠璃色の星』(世界文化社)など。
2015年01月15日ソニー損害保険(以下ソニー損保)は7日、熊本県熊本市にコンタクトセンターを開設するため、熊本県ならびに熊本市との間で、立地協定を締結した。熊本コンタクトセンター(仮称)は7月から業務を開始する予定。ソニー損保のコンタクトセンターは、顧客からの自動車保険や医療保険に関する問合せや相談に対応するほか、契約手続や契約後のケアなど、幅広いカスタマーサポート業務を担っているという。現在、東京都と北海道の2ヵ所で運営しており、熊本県での業務開始により、コンタクトセンターは3拠点体制となる。熊本コンタクトセンター(仮称)の開設により、人材の安定的な確保を図り、顧客サービスの一層の品質向上に取組むという。あわせて、事業活動の継続性を一層強化し、大規模災害が発生した場合でも顧客に迅速かつ確実にサービスを提供できる体制をさらに強固にすることを目指していくとしている。○熊本コンタクトセンター(仮称)の概要業務内容/自動車保険における、電話やメールによる問合せ対応やコンサルテーション、契約に関するカスタマーサポート業務業務開始/7月1日(予定)規模・要員/7月1日時点:約60ブース/約60名(予定)、2015年度中に約100ブース規模に、2017年度までに約200ブース規模に拡張する予定所在地/熊本県熊本市中央区花畑町12-28アペックスビル
2015年01月08日1957年、ソビエト連邦が人類初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げた。米国は1960年代にアポロ計画を開始し、1969年のアポロ11号で人類が初めて月に降り立った。50年以上の時を経て、今年も我々はたくさんの"宇宙"をスクリーンやテレビ画面の上に見た。国内のアニメだけを振り返っても、超ハードな『シドニアの騎士』から何でもアリの『スペース☆ダンディ』まで描き方は多彩で、シリーズ作品ではガンダムが35周年の年にテレビシリーズ2本をスタート。また、昨年のTVシリーズ放送で幅広いファンを獲得した『宇宙戦艦ヤマト 2199』は、オリジナルのテレビ放送開始から40周年を迎えた今年、かつての"ヤマト"とは一味違う語り口による完全新作劇場版『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』が12月6日に公開され、現在、大きな話題を呼んでいる。東西冷戦を背景にした宇宙開発競争はまた、宇宙を舞台に未知、フロンティア、未来、そして人類の進歩を描く数々のSF作品を産む土壌も育てた。TVドラマ『スタートレック』や、映画『2001年宇宙の旅』、『スターウォーズ』などは、現在もファンの多い名作の代表だ。日本にもその波は起こり、 戦艦や海賊船、鉄道、数々のロボットやメカが60~70年代にかけて活躍。宇宙への夢と憧れがクリエイティブという形に結晶した時代だったと言えるだろう。大量の人工衛星が地球の隅々までを観測し、全長100mもの巨大構造物に宇宙飛行士が長期滞在する時代になっても、なお宇宙は新しい発見に満ち、我々にとって壮大な物語の舞台であり続けている。しかし、これだけ数多く宇宙が描かれる時代でありながら、本当にそれを経験したことがあるのはごく限られた人たちだ。ホンモノを経験した人にとって、宇宙とはどういうものなのだろうか。2012年に国際宇宙ステーションに長期滞在した、JAXAの宇宙飛行士・星出彰彦氏にお話を伺った。○憧れが現実につながる星出氏は1968年生まれ。『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』、そして『スタートレック』などの作品をリアルタイムで見ていた世代だ。多くの少年たちがそうであったように、星出氏もそれらの作品を見て「かっこいい! 行ってみたい!」という思いを抱くようになったという。だがその頃の日本にとって宇宙はまだ遠い存在。どうすれば宇宙に行けるのか、その道筋はまだ見えなかった時代だ。当時の星出氏は、SF作品で描かれる宇宙のどんなところに魅力を感じていたのだろうか。星出氏:フィクションでありファンタジーの世界、悪く言えば夢物語ですが、でもその部分がないとそれを目標にしていこうという力にならないと思うんです。好奇心を沸かせるような舞台設定やメッセージといったところから興味を持っていくのではないかと思います。例えば、私たちが今使っている携帯電話やタブレットなどの通信機器は、一昔前のSF作品では未来的なガジェットとして似たようなものが描かれていた。ロボットは巨大なヒト型にはならなかったが、さまざまな場所でヒトにできない作業をこなしている。法さえ許せば自動車が自律的に路上を走り、プリンタは情報だけでなく現物をプリントアウトするようになった。憧れはその実現を成し遂げる原動力になり得るのだ。星出氏はこうしたSFアニメや映画で宇宙に親しむ一方、ケネディ宇宙センターへ見学に訪れたことがきっかけで、宇宙へ行くことに興味を持ち始めたという。星出氏:アンドロメダ星雲に簡単に行けるようなSFの世界と、地球の大気圏を出るのに一生懸命な現実の世界。そこは完全に乖離していますが、実物のロケットを目にしたことで、現実に宇宙に行く手段があるのだということを実感しました。その後、1985年に日本人として初めて毛利衛氏、向井千秋氏、土井隆雄氏がNASDA(現JAXA)の宇宙飛行士に選定された。日本人でも宇宙に行ける道があると、星出氏にとって宇宙飛行士が現実的な目標になった。だが、それはもちろん簡単な道ではない。星出氏が3回目のチャレンジで選抜試験をパスし、宇宙飛行士の候補者として選ばれたのは1999年。ISS搭乗宇宙飛行士の基礎訓練に参加し、宇宙飛行士として認定されたのは2001年だった。○2時間の夢で終わらない宇宙宇宙への憧れからスタートし、本当に宇宙飛行士になった星出氏。実際に体験した宇宙とは、どんなものだったのだろうか。ISSの長期滞在ミッションで4カ月間を過ごした後、星出氏は「帰りたくない」と思ったそうだ。宇宙での体験を、星出氏はひときわ楽しそうに話してくれた。星出氏:飽きないんですよね。仕事も充実していましたし、訓練に携わる人や管制官など、サポートしてくれるたくさんの人たちがものすごくいいチームを作ってくれたおかげだと思います。(宇宙が)2時間の映画で終わってしまうのではなく、それがずっと続いていることがうれしいんです。宇宙が常にそこにあって、終わらない。我々がSFで知る宇宙とはそこが根本的に異なるところだろう。また、6人の宇宙飛行士が滞在するのはIISSという限られた空間の中とはいえ、内部の容積はジャンボジェットの倍くらいはあり、狭苦しく感じることはないそうだ。さらに、管制だけでなく家族や友達とのコミュニケーションができるようサポート体制が整えられているために隔離された感覚もなく、船内実験や船外作業、補給機の到着など、多彩な仕事を次々にこなす忙しさもある。そしてもう一つ、「地球が見える」ことが飽きない理由だという。星出氏:私は『ブラックホール』と名付けたんですけど(笑)。ちょっと10分くらいと思って見始めると、もうあっという間に2時間は吸い込まれて離れられないんです。昼があり、夜があり、海があり山があり街がある。地上に生きる我々は、地球儀や人工衛星の写真などから地球の姿を概念的には認識していたはずだが、今まさに宇宙にいる宇宙飛行士が目にした光景、撮影した写真を、インターネット経由で見た時、地球がどんなものなのかを始めて目の当たりにした。人が宇宙に憧れ、目指そうとするのは、自分たちがどこにいるのかを知りたいという本能的な欲求によるものなのかもしれない。○現実の延長線上にある宇宙の魅力今年7月、星出氏は第18回NASA極限環境ミッション運用(NASA Extreme Environment Mission Operations=NEEMO18)訓練に参加した。星出氏を含む4名の宇宙飛行士と2名の技術者が、フロリダの沖合約10km、水深20mに設置されている海底研究室「アクエリアス」に9日間滞在し、ISSでの活動や今後の小惑星探査などに向けたさまざまな船外活動やハードウェアの検証、施設内での科学実験などをこなすというものだ。星出氏はこの訓練でコマンダー(船長)の役割を担った。ミッション期間中に現地からの中継で行われた記者会見において、星出氏はコマンダーとしてミッション遂行中の安全面、そして「うまく生活できる、作業できる環境を整える」ことに最も気を配っていると語っていた。一般の感覚では、海中といっても地球上の訓練であり、無事に終わるのが普通だと思うかもしれないが、そうではない。どんなに万全と思われる準備をしても、全て予定通りに進むわけではないのだ。ISSと地上で長期滞在の宇宙飛行士が年に数回行き来し、月や火星の探査機から画像が届き、はやぶさ2が6年にも及ぶサンプルリターンミッションに旅立つ現在。我々にとって宇宙はより身近に感じられるものになっているが、星出氏はその反面「普通になってしまうことのジレンマ」も感じているという。星出氏:一見当たり前のように見えても、実は当たり前ではないんですよね。電車にしても飛行機にしても、たくさんの人がそれを支えているからこそ普通に動いている。宇宙なんて当たり前、と思ってしまうと本質的な面白さに気付けなくなってしまう。時代背景もサイエンス・テクノロジーの土壌もどんどん更新されていく世界の中で、これからのSFはどんなことを伝えていくべきだろうか。星出氏:現実の世界にもすごく面白いことはたくさんありますが、やっぱりストーリーがあって、アニメや映画が成り立つものですよね。現実に、エンジニアがロケットを開発した時の話などを聞くと、ものすごく面白いんですよ。そうしたことを盛り込みながら、宇宙の楽しさ、難しさを伝えていってくれると良いと思います。例えば『宇宙戦艦ヤマト』のように、地上を飛び立った艦が恒星間航行をする世界にはまだ遠いが、ISSの活動が宇宙を身近なものにし、一方でより遠くを目指す有人探査の計画は現実に進められている。宇宙はその存在そのものが人を惹きつけてやまないが、SFであろうと現実であろうと、そこで活躍する人々の姿もまた、たまらなく魅力的なのだ。星出彰彦 プロフィール1968年生まれ。東京都出身。1992年宇宙開発事業団(現JAXA)入社。1999年ISS搭乗日本人宇宙飛行士候補者として選抜、2001年宇宙飛行士に認定される。 2008年スペースシャトル「ディスカバリー号」による「STS-124/1J ミッション」に参加、「きぼう」日本実験棟の国際宇宙ステーション(ISS)への取り付けなどを実施。 2012年ISS第32次/第33次長期滞在クルーとして、ISS に124日間滞在。各種実験やISSの維持管理、3回の船外活動、宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機に関わる作業などを実施した。
2014年12月27日2015年の宇宙、どうでしょう?ということで、予測が秒単位でできることから、どーなるかわからんことまで「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙にかかわるあれこれを、サクっと紹介しちゃいます。今回は、上半期分をば。宇宙にかかわるできごとは、予測が秒単位でできるものから、いきなりやってくるものまで、いろいろでございます。という2014年の「宇宙、どうでしょう」おかげさまで、私の近くでは、かなーり好評でございました。特に「ロゼッタについて早く知っておけてよかった」ってな声が多かったですな。もちろん、詳しくは、天文手帳、天文年鑑、星空年鑑2015を、あと、ライトな宇宙好きむけに、藤井旭の天文年鑑2015なんてのもあります。アプリだと iOS限定ですが、アストロガイド2015なんてのがございますので、ご参照くださいませ。ここでは、2014年版と同じく、まあ、ファンってわけじゃないけど、たまには空を見るかな。話題になったら、気になるかなという「素人でも手軽に観察・参加できる」宇宙にかかわるあれこれを紹介しちゃいます。○1月~2月星がいちばんよく見える時期です。明るい星が集中しているんですな。特に関東地方は、晴れ続けますねー。ただ、日本海側は、雪ですねー。雲の上ではという注釈をつけないといけません。日本は広い。晴れさえすれば、「オリオン座」。そう3つ星が並んでいる、あれがみえますね。オリオン座がわかれば、3つ並んだ星を、左にズーッと延長した先にある、明るーーい星が、シリウス。焼き焦がすものという意味がある星ですな。距離は8.7光年。本州から肉眼で見える、一番近くにある恒星でもあります。逆にオリオン座の3つ並んだ星を、右にズーッと延長すると、赤っぽいアルデバラン、そのさきに、モヤっとか、ゴチャっとか見えるのが「すばる」でございます。これくらいチェックできれば、ちょっと星に詳しい人としてはじゅうぶんです。あ、ビートたけしさんの前ではやらないように、あの人は本当によく知っていますから-。さて、宇宙探査というと、アメリカ勢の動きが目立ちます。まず1月29日、SMAP探査機が打ち上げ。ジャニーズアイドルとは関係なくて、地球の水の探査をするのでございます。2月中ごろ、DAWN(ドーン)探査機が、小惑星ケレス付近に到着します。1801年、最初に発見され小惑星帯最大の直径950km。ほぼ球形で、しかも大気があり、水蒸気を吹き出しているなんて発見もありました。DAWNは夏にかけてケレスをまわる軌道に入り、詳細な探査をはじめます。むー、楽しみですなー。また、同じく2月中ごろから、冥王星探査機ニューホライズンズも、冥王星の本格的探査にかかります。これも夏にかけて冥王星に突撃。横を通り過ぎるフライバイ探査でございます。冥王星は氷のかたまりと予想されておりますが、さてどんな姿をしているのでしょうね?探査機の運用には、直径が100mという巨大なアンテナを使って通信をするのですが、アンテナのスケジュール調整大丈夫かいなと思ってしまいます。リアルタイムでどのアンテナ使っているかなんてわかりますよー。○3~4月3月なかごろ、アメリカは「MMS」という地球の磁場の探査衛星を打ち上げます。4月4日の夜には、「皆既月食」があります。夜9時前後に皆既になる、観察のしやすい月食なので、またお知らせしますねー。双眼鏡で見るのがいいですよー。4月13日~19日は、国の科学技術週間です。毎年、つくばの学園都市などは特にお祭りみたいな感じだそうです。神奈川県相模原市のJAXAや埼玉県和光市の理化学研究所など、若手の研究者を中心に一生懸命って感じでとてもいいですよー。詳しい情報は3月末くらいにこちらで。一家に一枚XXXな科学ポスターの配布も各地の科学館などでされます。そうそう、ヨーロッパの彗星探査機、話題になったロゼッタちゃんは、チュリモフゲラシメンコ彗星によりそいながら、活発になっていく彗星のモニターをしています。彗星は太陽に接近して活発になりますと、噴水のように身体をまき散らします。どこまで見ていられるか? それも注目でございます。ロゼッタのツイッターのつぶやきも注目です。太陽への最接近は8月13日です。○5~6月このころ、夕方の空に、木星と金星、2つの明るい星がよく見えております。さらに5月5~9日くらいは、木星・金星を結んだ下に、水星が見やすくなっているのですが、ちょっとわかりにくいかもしれません。5月5~6日にみずがめ座エータ流星群がピークです。といっても条件はあまりよくないですね。明け方のみ、流れ星がふだんの倍ほど(1時間に5~6個)になります。6月には、ロシアのソユーズ宇宙船で、日本の油井宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションに行く予定…なんですが、ロシアがちょっとグダグダになっているので、さてどうなりますか。宇宙はわりと影響受けにくいそうなんですけど、やはり政治や経済が左右するところはありますからね。後半分は、また6月ごろにお知らせいたしますねー。著者プロフィール東明六郎(しののめろくろう)科学系キュレーター。あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。
2014年12月24日フィンランドのノキア ネットワークスは12月10日(ドイツ時間)、ドイツ・ベルリンにノキア・セキュリティセンターを開設したと発表した。同センターでは、モバイル通信事業者によるネットワークインフラストラクチャ、サービス、ユーザーの保護を支援する。強固なセキュリティを提供することにより、モバイル通信事業者の新規顧客の獲得、解約率の減少、収益の増加につなげる。研究所、デモセンター、会議施設が一体となった高度なモバイル・ブロードバンド・セキュリティの複合施設となっており、強固な通信セキュリティの実現に向け、最先端の専門知識が集まる拠点となっている。また、独自のテスト用4G/LTEネットワークを完備したセンターは、モバイル通信事業者、パートナー企業、政府機関、教育機関等が協業し、セキュリティに関するノウハウや専門知識を開発及び共有できるプラットフォームを提供する。さらに、ノキアネットワークスで長年培われた専門知識や経験をセンターのライブネットワークや設備等と組み合わせ、コアからデバイスへの総合ネットワークセキュリティテストを実施することで、モバイル通信事業者に合わせたソリューションを提供できるようになる。ノキア・セキュリティセンターに実装されている幅広いセキュリティソリューションには、Check Point、F-Secure、Infoblox、Insta DefSec、Juniper Networks、Optenet等のパートナー各社の製品も含まれる。
2014年12月15日バンタンは12月3日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の協力のもと、デザインやエンターテインメントの側面から"宇宙開発"の価値に対する認知拡大を目指すプロジェクト「VANTAN POP ICON PROJECT」を実施すると発表した。現在、小惑星探査機「はやぶさ2」や、宇宙ステーション補給機「こうのとり5号」、X線天文衛星「ASTRO-H」、水星探査機「BepiColombo」など、JAXAによる"宇宙開発"が活況となっており、メディアでもしばしば取り上げられ話題となっている。日本における宇宙開発事業は、国家的にも重要な技術・産業開発項目の1つであり、将来の人類の手軽な宇宙旅行の実現や、人工衛星によるカーナビやGPSの普及といった身近な生活への技術の波及効果にも期待が寄せられている。その一方、"宇宙開発"に興味や憧れを持ち、積極的に理解や支持を示している人の多くは30代以上の男性であり、その興味層の偏りは、今後のJAXAの発展に対する課題の1つとして考えられ、今後の海外に向けたPR活動も重要となるとバンタンでは考え、"宇宙開発"の価値に対する認知拡大に貢献するための1つの方法として、デザインやエンターテインメントの側面からJAXAの活動を国内外のより多くの人達に興味や関心を持ってもらえるようなオリジナルの企画を立案し、実施することでJAXAを支援することを決定したという。今回の「VANTAN POP ICON PROJECT」は、現代の若者であるバンタンの学生たちが、"デザインのチカラ"を通じてプロデュースする"何か"は、今後の"宇宙開発"やJAXAの発展に貢献できることを目指して実施されるもの。具体的には、JAXA非公認のアイドルキャラクターを企画立案し、実際のプロモーションや活動を通じて、国内外のより多くの人達に"宇宙開発"に対する興味や関心を持ってもらい、JAXAの活動やそれがもたらす価値、未来の展望などを知るためのアクションを促すことを目指すとしており、その実現に向け、バンタングループに在学する学生たちを対象に、学びの分野の枠を越えたプロジェクトチームを編成し、アイドルキャラクターをプロデュースするための企画を立案し、ビジュアル化しプレゼンテーションを行っていく予定としている。すでに11月28日にバンタンデザイン研究所でオリエンテーションが実施されており、各校に在籍する300名以上の学生たちが、JAXA広報担当者による宇宙の理解を深める講義の受講や、今回のプロジェクトのコンセプトやターゲットなどについて説明を受けており、今後、それらの学生チームが、12月18日に実施予定の学内審査会に向け、企画の立案を進めていくこととなる。なお、最終審査は2015年1月23日に行われる予定で、JAXAによる特別審査も実施されるとしている。
2014年12月04日クリエイティブ分野の専門スクール「バンタン」は3日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の協力のもと、非公認のアイドル(キャラクター)を企画立案し、デザインやエンターテインメントの側面から"宇宙開発"の認知度を向上させることを目指すプロジェクト「VANTAN POP ICON PROJECT」をスタートすることを発表した。「VANTAN POP ICON PROJECT」は、同校によれば、JAXAによる"宇宙開発"が活況となっていながらも、それに興味や憧れを抱いている人の多くが30代以上の男性という偏りがある状況を変革するために立ち上げられたもの。現代の若者である同校の学生たちが、JAXAの活動をデザインやエンターテインメントの側面から国内外の多くの人達にPRできるようなオリジナル企画を立案・実施することで、宇宙開発やJAXAの発展に貢献できるのではないかという想いから始動したのだという。また、概要としては、グループ校(バンタンデザイン研究所、バンタンゲームアカデミー、レコールバンタン、ヴィーナスアカデミー)の学生たちがプロジェクトチームを編成。JAXA非公認のアイドル(キャラクター)をプロデュースするための企画を立案、ビジュアル化し、国内外の多くの人に宇宙開発やJAXAの活動に対して興味や関心を持ってもらうためのプレゼンテーションが行われる。なお、今後のスケジュールとして、12月18日に同校の講師による学内審査会を予定。その後、2015年1月23日には講師やJAXAが参加する最終審査会が行われ、「最優秀賞」、「JAXA広報部長賞」、「Vantan賞」にそれぞれ1企画ずつが選出される。受賞企画は、同校が2月に開催する卒業終了制作展「VANTAN STUDENT FINAL 2015」の中でショーまたは展示形式で発表されるということだ。
2014年12月03日既報の通り、小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げが延期された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は11月28日、JAXA種子島宇宙センターで記者会見を開催し、打ち上げの延期について説明した。登壇者は、JAXAから國中均・はやぶさ2プロジェクトマネージャと長田弘幸・鹿児島宇宙センター射場技術開発室長、MHIから平嶋秀俊・宇宙事業部MILSET長。今回、延期の原因となったのは氷結層を含んだ雲だ。雲の中に微小な氷晶があるような状態のとき、そこにロケットが突っ込んでいくと、機体に落雷する恐れがある。H-IIAの場合、少しくらいの雨や風で打ち上げは中止にならないが、氷結層を含む厚い雲があると一発でアウトだ。新しい打ち上げ日については「12月1日以降」とされており、現時点では未定。JAXAが発表している天気予報を見る限り、ずっと天候不良が続きそうな見通しで、最短の12月1日に打ち上げられるかどうかは微妙な状況。打ち上げ時刻については、12月1日の場合13時22分43秒で、打ち上げが延期になると、毎日2分ほど前倒しになっていくようだ。事前に天候が悪そうなことは分かっていたものの、2日前のこのタイミングで延期の発表があるとは思っていなかったので、正直ちょっと驚いた。「はやぶさ2」は地球以外の天体に向かうため、軌道の都合で、打ち上げられるウィンドウは10日間しかない。延期するにしても、もっとギリギリまで粘ってから判断するかと思っていたのだ。これについて、平嶋MILSET長は「氷結層については3日くらい前から分かっていて、状況の変化を検討してきたが、予測の確度が上がってきて、もう変わりようがない」と説明。11月30日は見込みが全く無いということで延期を決めたという。國中プロマネは「天候の問題は仕方ない。しかし、はやぶさ2は6年間のミッション。1~2日延びたからといって大きな影響はない。気持ちを引き締めて準備を進めたい」とコメント。10日間というタイムリミットがあるが「種子島に入った当初、特に10月は台風の直撃を受けて、宇宙センターに入れないような状況もあった。射場作業が進められずに困ったが、もう台風の季節は過ぎている。冬の気候は安定しており、楽観視している」とした。今回の打ち上げは日曜ということもあって、各地でパブリックビューイングを予定していた。楽しみにしてたファンも多いだろうが、國中プロマネはファンに対し、「申し訳ないが数日待って欲しい。我々と一緒に打ち上げを見て、はやぶさ2の門出を応援していただければ」とメッセージを述べた。※さて、何の気休めにもならないが、ここで、天気が良かった本日午前の種子島宇宙センターの風景をご紹介しておこう。ああ、打ち上げが今日だったら……。
2014年11月28日宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は11月28日、11月30日に打ち上げを予定していた小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げを12月1日以降に延期することを決定したと発表した。この決定は、打ち上げ時間帯にかけて現地の天候が悪化する予測を受けてのもの。具体的には射場近辺に規定以上の氷結層を含む雲の発生が予想されるためだとしている。なお、今後については天候状況などを踏まえ、打ち上げ日の判断を行っていく予定だという。
2014年11月28日宇宙誕生の秘密とその仕組みを解き明かすシリーズ番組「解明・宇宙の仕組み」のシーズン3が、7日からドキュメンタリーチャンネル「ディスカバリーチャンネル」でスタートした(毎週金曜23:00~)。28日に放送される第4話「宇宙の最初の1秒間」は、複数の専門家の意見を交えてビッグバンの謎に迫る。今のところ、現在の宇宙の起源とされている現象"ビッグバン"。何千億個もの銀河やそれを形作っている材料のすべてが凝縮した小さな1点、それがビッグバンを経て一瞬のうちに宇宙へと変貌を遂げた。宇宙の最初の1秒間は、宇宙の歴史上で最も重要な時間。なぜならば、その間に空間、時間、エネルギー、物質が一瞬のうちに生まれて動きはじめたからだ。しかし、今の時間の概念では、この宇宙創生の瞬間を語ることはできない。そこで、「10億分の1秒」のような想像を絶するほどの時間を表す単位「プランク時間」が用いられる。もともと、空間と時間は限りなく小さな1点の「純粋なエネルギー」の中にあった。そしてプランク時間が動きはじめた時に空間と時間は解放され、空間が膨張を開始。ビッグバンは「空間の中」で起こったのではなく「空間自体の爆発」と考えられている。そして、物質から星や銀河を作るために必要不可欠な「重力」が発生。強すぎず弱すぎない重力のお陰で、さまざまな物質が誕生していくことになる。宇宙の数ある謎の1つが、「どこを眺めても同じような銀河がほぼ均等に散らばっている」こと。1979年に宇宙学者のアラン・グースは、その謎を解き明かす説として「インフレーション理論」を提唱した。それは「生まれたての宇宙が想像を絶する速さで膨張した」という内容で、アラン・グースは「急激な膨張が、宇宙を構成する要素を均等にばらまき、宇宙に秩序ある配置をもたらした」と考えた。このインフレーション理論から時は流れて2014年3月。南極からの観測データが科学界を騒然とさせた。それは「宇宙誕生の直後に起こったことを伝える痕跡を捉えた」というもので、観測データはインフレーション理論にほぼ合致。同理論ではほかの宇宙を発生させた可能性もあるため、複数の宇宙が存在する「多元宇宙」やわれわれと全く同じ人々が全く同じ人生を歩んでいる「並行宇宙」など、「どんな宇宙でも存在しうる」と考えている科学者も現れた。そのほか、番組ではアインシュタインの「物質は凝縮されたエネルギー」という考えが与える影響、アメリカ・ロングアイランドにある研究所での「粒子の衝突実験」、ビッグバンの解明が大きく前進した「ヒッグス粒子」についても解説している。ビッグバンを経て、陽子と中性子が原子核を作りはじめ、38万年後に原子が誕生し、そこから数億年後に原子が集まって星が生まれ、90億年以上をかけて太陽や地球が誕生。今回の番組は、この壮大な"過去"を振り返りながら「すべての運命は、宇宙の最初の1秒間で決まっていたのです」という言葉で締めくくられている。(C)2014 Discovery Communications, LLC.
2014年11月28日シチズンマシナリーミヤノは11月26日、インドのバンガロールにテクニカルセンターインド(Citizen Watches (India) Pvt Ltd, Citizen Machinery Technical Center Division)を開設したことを発表した。インドは長期的には自動車や医療、建設機械などの分野での工作機械の需要拡大が見込まれており、同社では今回のセンター設立により、顧客と直接のコミュニケーションを推進し、ダイレクトマーケティングによるインド固有のテクニカルノウハウの確立ならびに技術支援体制の構築を目指すとしている。また、それによる最適ビジネスモデルの構築と市場に適した商材の投入を進めることで、2016年までに同市場での売り上げ倍増を目指すとしており、その第一弾として、同センター内にショールームを設け、高剛性低価格機として評価の高い工作機械「Cincom A20 VIIPL」を給材機付きで設置するとしている。なお、同社では顧客向けテストカットなど、ビフォア―サービスの対応を実施すると共に、自社が保有する技術・ノウハウのインド市場への積極投入も行っていく方針としている。
2014年11月26日