台北映画祭が予定通り6月25日に開幕されることが明らかになった。「Variety」誌が報じた。新型コロナウイルスの影響で多くの映画祭や授賞式が延期や中止を決める中、つい先日ヴェネチア国際映画祭が9月2日から12日まで予定通りに開催すると報じられたが、それより2か月以上早い台北映画祭もその流れに乗った。同映画祭には、台湾の作品を対象とした「台北電影奨」と海外からの長編作品で始めてメガホンを取った監督あるいは2本目を撮った監督を対象とした「国際新人監督部門」の2つのコンペティションを設けている。なお、後者には日本の福永壮志監督の『Ainu Mosir』がラインアップされている。通常通りに行われるのは「台北電影奨」の方で、「国際新人監督部門」においては海外から招いていたフィルムメーカーや審査員たちの招待は取り消され、受賞者はオンラインで発表されるとのこと。主催者は、映画祭の開幕2週間前または開幕中に、台湾で大規模な集団感染が発生した場合は「台北電影奨」のイベントも即中止すると表明。オープニングを飾るのはワールドプレミア上映となるクー・ジェンニン監督の『無声』(原題)、クロージングではツァイ・ミンリャン監督の『日子』(原題)が上映される。『日子』は今年のベルリン国際映画祭で優れたLGBT映画に贈られるテディ賞の「審査員特別賞」を受賞している。(Hiromi Kaku)
2020年05月26日新宿二丁目のレズビアン・バーがつなぐ、ひと、思い出、運命。李 琴峰さんによる小説『ポラリスが降り注ぐ夜』。「新宿二丁目は、わずか1km四方ほどの面積に、セクシュアル・マイノリティのための店が約400軒も立ち並ぶ、世界でも稀有な繁華街です。台湾から来た私から見たら、いろいろな属性の人が立ち寄ったり、つながりを持ったりするちょっとしたコミュニティという印象でした」李琴峰さんの『ポラリスが降り注ぐ夜』で、物語のハブとなるのは、その二丁目にあるレズビアン・バー〈ポラリス〉。章ごとに主人公は入れ替わり、ある章でモブだった人物が別の章では大きな役割を果たす。北斗七星にちなんだ7つの連作で女性たちの人生の断章が描かれる。既存の小説では、二丁目といえば、ゲイタウンや男性同士の関係ばかりがフォーカスされてきたが、「かつて花街や赤線地帯だった興味深い背景もあります。なので私はいつかそうした歴史も重ねながら、この街に集う女性たちの物語として書いてみたいと思っていました」バイセクに警戒心を持つレズビアンの日本人女性〈ゆー〉、誰に対しても恋愛感情や性的欲求を持たないAセクシュアルゆえに理不尽な攻撃を受ける中国人女性〈蘇雪〉、自身の性と社会の差別に苦しみながらトランジション(性別移行)をしていく台湾人女性〈蔡曉虹〉…さまざまな性的指向と性自認を持つ女性たちの想いが吐露されていく。ひと口にセクシュアル・マイノリティと言っても、それぞれの認識はもっと複雑でデリケートなものだと改めて思う。「ある人は自分で決めたいし、ある人は決めたくない。絶えず揺らぎながら生きている人もいます。言葉は不思議で、ありように名前をつけることで定義できる面もあるけれど、一方ではその言葉に縛られてしまう苦しさも。諸刃の剣なんです。そうした切実さを避けず、リアリティをもって書きたいと思いました」台湾はアジアで最初に同性婚を認めたが、その法制化や社会の価値観にも大きな影響を与えたという〈ひまわり学生運動〉など、史実を踏まえた作品もあり、生々しく重い。だが李さんが何より危惧するのは、わかった気で他者をくくることだ。「マイノリティ同士でもすんなりわかりあえたりしない。必ずしも連帯できない。それは私が大事にしている問題意識で、これまで、あまり書かれてこなかったものだと思います」り・ことみ1989年、台湾生まれ。早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程修了。2017年、「独舞」で群像新人文学賞優秀作を受賞。’19年、「五つ数えれば三日月が」が芥川賞候補に。『ポラリスが降り注ぐ夜』著者の意向により本書の電子書籍の印税の一部が、新宿二丁目の足湯cafe&bar『どん浴』に寄付される。筑摩書房1600円※『anan』2020年5月20日号より。写真・中村ナリコ(李さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月18日ドラァグクイーンもトランスジェンダーも女装家も、なんでも「オネエ」とまとめたがる乱暴な時代で、さらりとそれを引き受ける方の素顔に迫る連載『オネエのすっぴん』。第1回は、ドリアン・ロロブリジーダさんにお話を伺いました。大学在学中、「若手女装グランプリ」初出場にして優勝。紆余曲折ありながらも「今でもどうにか口紅を引き続けている」と語る彼の、これまでとこれから。ドリアン・ロロブリジーダさん プロフィールドラァグクイーン。新宿二丁目発本格DIVAユニット「八方不美人」や、好きな歌を好きな場所で“ただただ歌う”ユニット「ふたりのビッグショー」メンバーとしても活動。2019年夏には、日本航空による日本初の試みである「JAL LGBT ALLYチャーター」にスペシャルアテンダントとして搭乗するなど、活躍の場は多方面に渡る。本名はマサキ。■堂々としてればいい「ん、オカマ?羨ましいの?」ドラァグクイーンになったきっかけは、高校生のときに遊んでもらってた、近所に住むゲイの仲良しグループ。その中に昔ドラァグクイーンをやられてたって方がいて、初めてその方の女装をみたときに、まぁ!って衝撃を受けたの。もともとビジュアル系バンドが好きだったから自然に入れたのか、なんて素敵なんだろう!かっこいいんだろう!って釘付けになって。ハッキリとドラァグクイーンに憧れたのはあのときが最初です。マサキ少年の“女装魂”に火がついちゃったんだよね。そこから彼のメイクを真似てみたりするようになって、ちょっとずつ女装をする機会が増えていきました。でも最初はただの趣味ですよ。LGBTのパレードで女装して歩いたり、大学の学園祭を女装で練り歩いたりっていう。本格的に「ドリアン・ロロブリジーダ」として活動することになるきっかけは、新宿2丁目のあるクラブで開催された「若手女装グランプリ」。リル・グランビッチさんっていうドラァグクイーンに勧められてなんの気なしに出てみたら、いきなり優勝をいただけたんです。そこからドラァグクイーンとして本格的に活動が始まりました。仕事をいろいろといただけるようになって、なんやかんやあり、今もどうにか口紅を引き続けてる。そんな感じです。ドラァグクイーンの中には、普段のすっぴんの自分とクイーンとしての人格を使い分けてる方もいるんだけど、自分の場合はどちらも一緒。ドリアンはあくまでも「マサキくん」が派手な化粧をしてるだけなんだよね。抑圧された自我やジェンダーを開放するために……!みたいなことは全くなくて。ただこれが美しいと思うから、目立ちたいから、楽しいし、楽しませたいからやってるだけ。性格は、むかしっから明るかったですよ。自分がゲイだということで悩んだこともないし。小学生のころ母親に「あんたのせいでお兄ちゃん(編集部注:ドリアンさんの実兄)が”オカマ”の兄貴だって言われる」だなんて言われたこともあったけど。兄貴、気の毒よねぇ(笑)。 でも、それもあんまり気にしなかった。というのも”オカマ”よばわりされるような表現が、自分のセクシャリティから自然に出てきたものだったのか、それともおもしろいと思って意識的にやってたのかちょっとわかんなくて。とにかく「自分は”オカマ”の方がいい。羨ましいでしょ〜?」くらいに思ってました。でもどうなんだろう、それも当時周りにいた友達が良かったからなのかもしれない。こっちが堂々としていたら、そのまま受け入れてくれる人たちでしたから。だから、堂々とすることは今でも大事だなって思ってます。「実はゲイで……」と後ろ暗いことのように伝えてしまうと、相手だってそうとらえてしまう。だから「そうよ!オカマだよ!? 羨ましい?」という態度でいる。もちろん嫌がられることもなくはないけど、そんな人には「つまんないノンケ(※1)ね〜!」くらいにしか思わないかな。■営業マンもPRマンもパフォーマーも同じ。 まずは自分を好きになってもらうことからゲイであることよりよっぽど悩んだのは、大学を中退したときかな。大学に入って2丁目で遊びに遊んで、その上ゲイバーで働きだして、女装もはじめて。気付いたら単位数がえらいことになって思い切って中退。母親が泣いてね、自分もこれからどうしようって真っ暗な気持ちになりました。でも運良く香水メーカーに拾ってもらえて、そこからは「取り返さなきゃ!」ってがんばった。最初は営業をやらせてもらって、次がPR。それから転職してもずっとPRとしてキャリアを積んできました。会社員のマサキくんとドリアンの違いは、これまたあまりないんだよね。もちろん会社員の仕事のときはオネエ丸出しだと社会人としてNGだからそのあたりはちゃんと振る舞うけど、メンタリティとしては一緒。売るのは物だったり情報だったりブランド自体だったりしたけど、「まずは自分という人間を買ってくれ!」と思ってやってきたから。最初はアウェイだったお客さんがどんどん自分を見てくれるっていうのはクイーンのときも一緒です。「さあファンになってもらうぞ!イッツ、ショウタイム!」っていう気持ちで昼の仕事もやってきました。最近はありがたくもドラァグクイーンの仕事が忙しくなって、2月に「これ一本に賭けてみよう!」って昼の仕事をやめたんですけど、そうしたらこの世界の状況(新型コロナウィルス※2)で。先行きは“煮こごり”くらい不透明だけど、でも人生は一度きりだから。どうせなら死ぬときに「楽しかったー!」って言えるように、いろいろ挑戦していこうと思ってます。今はクラブイベントだけじゃなくて、一般企業のイベントでもMCやショーをさせていただいたり、『八方不美人』っていうグループでCDも出させていただいたりね。著名なアーティストのみなさんと一緒に大きなステージに立たせてもらえることも増えました。『八方不美人』のステージ(ドリアン・ロロブリジーダさん提供)だけど自分が今そんなことをできるのも、先輩たちが道を作ってくれたおかげ。もともとはアングラなものだったドラァグカルチャーを地上に出して、いろんな仕事とつないでくれた人たちがいる。だから自分も若い人たちにバトンをつないでいきたいって思います。そのためにも面白そう!と思う現場にはどんどん飛び込んで、「ドラァグクイーンって、こんなにいろんなことができるんだぞ!」ということを日本の人たちに知らしめたいですね。アングラな魅力は持っていながら、もっと道を広げていきたい。欧米の「Drag culture」の単純なコピーじゃなくて、日本がこの数十年で培ってきた「ドラァグ文化」の魅力を知ってほしいの。■楽しむから楽しい。 先輩たちが教えてくれたドラァグクイーン道。まぁ、でも、とは言っても吹いて飛ぶような仕事だから、周りからは「そんな生き方をしていて不安にならないの?」って聞かれたりしますけど、大学の中退もそうだし、自分には恥ずかしい失敗とか挫折が人生でたくさんあって。もう失うものはあんまりないって思う。今の自分の人生のゴールは「目指せ、野垂れ死に」なの。自分はきれいなお布団の上で死ねるとは思ってないんです。それだけこれまでの人生、すっごくおもしろかったり楽しいことをさせていただいてるから。いやーな死に方すると思うよ(笑)。そこまでどうぞご覧いただきたい、そう思ってます。今はもう1分後に死んでも後悔ないな。楽しかったなーって、今でもそう思える。もちろんこれからも目の前のひとりでも多くの人を笑わせたいし、笑顔にしたいから、ステージに立ち続けたいですけど。目の前の人を楽しませるコツは、まず自分が誰より楽しむことじゃないかな。楽しそうにしていれば、楽しい人たちが周りに増える。逆にずっと文句を言ってるような人って、そういう人しか寄ってこないじゃない。そう思うようになったのもドラァグクイーンをやってからです。仕事をしてると、しょっぱい現場なんてしょっちゅう出くわすんですよ。ステージ裏でバッチリメイクして「よし!」っていざステージに出たらお客さんが二人しかいないとか、他にもショウタイムに機材トラブルで音が一切出ないとか。控室がないからビルの外付けの非常階段でメイクするなんてこともあった。夜だし暗いし見えないっつーの!でもそういう現場で先輩たちが「こういうときの方が楽しいのよ」って教えてくれた。「笑っちゃうね」「なんか楽しくなってきた!」って。だから今では自分もああいう瞬間が一番楽しいって思うようになりましたね。「さあどうしよう!」って逆境を楽しむというか。もちろんいつもブツブツ文句は言うんだけど。言いながら、でもやる、みたいなね。この「じゃあどう楽しもう?」精神は自分の日常の中にも返ってきてますね。■ワーママ、オネエ、好きに呼ばせておけばいい。どんな呼び名であれ、どのみち私たちって素晴らしいしこれから先のことは、もうあと5年で40歳ですから、ひとまずそこまでは走り続けようと思ってます。5年なんてほんとに一瞬。ふんばりどきだと思ってます。できるなら女優デビューもしたいし、ダンスも習いたい。恋人も作りたいし、いろんなことをしてみたいです。「ドラァグクイーンにはこれくらいしかできないだろう」という誰かの思い込みを壊せるくらい、たくさんのことに挑戦していきたいです。読者のみなさんに伝えたいことは、なんだろう……、「あなたの魅力は、あなたに貼られたラベルごときでは到底表現し得ない」かな。今の時代って例えば母親だったらシングルマザーとかワーキングマザーとかなにかとラベルを貼られやすいし、それは迷惑なことでもあるけれど、でもそんなラベルなんてたいしたことない。あなたの魅力とは関係ないから。だからラベルは社会と戦うための単なる窓口だと思って、逆手にとって楽しんじゃおうよって言いたいです。自分もよく「オネエ」ってひとまとめにされるけど、でもこんなにいい男だし、メイクをすれば美人だし、PRの仕事もできるし、歌も歌えるのよ、いいでしょう〜?って思ってる。ドラァグクイーンをやるときも男装をすることがよくあるんだけど、ドラァグクイーン=女性の格好をするっていう固定観念を逆手にとって、ドラァグクイーンで男装、だけど壮絶に美しい、というのを見せて、見る人が混乱している様子を楽しみたいんです(笑)。人がそれぞれ持ってる「男らしさ」「女らしさ」の思い込みをグラグラ動かすきっかけになりたいって思う。だからあなたも何かラベルを貼られたら、そんなラベルは気にしないで、あなたのありのままを存分に出しちゃえばいいと思う。全身全霊のあなたで、貼られたラベルのイメージごと変えちゃえばいいのよ。私たちは何を貼られたって、どうしたって、どんな状況になったって、それはそれは素晴らしいんだから。自分は自分のことをすっごくダメな人間だと思うけど、でもすっごく愛してるの。どうしてこんな自己肯定の化け物みたいになったのかはわからないけど(笑)、そうなるには、小さなことからでも成功体験を積み重ねることじゃないかな。自分がやりたいことで誰かから褒められたり、頑張った結果を自分で褒めてあげることができたりっていうのが少しずつ自信や自愛につながると思うから。1日10回腕立てするとか、毎日ベッドメイキングをするとか、なんだっていいのよ。なにかひとつ続けていくと、自信は育まれていくと思う。だからまずは「なんか欲しがれ!」って言いたい。欲しがる対象は具体的なモノやコトだけじゃなく、「こういう自分になりたい」っていうのも含めて。「どうせ私なんて」っていうのはほんとに禁句。小さいことから欲しがっていく先に、自己肯定ってあると思うから。まぁ、ほどほどにしないとこんな化け物みたいになっちゃうけどね(笑)。ドリアン・ロロブリジーダさんの愛用アイテムポンズふきとるコールドクリーム「ドラァグの濃いメイクを落とすのは、これが一番。化粧のテクニックとかは、正直全然話せることはないのよ、本当にメイク下手だから(笑)」
2020年05月04日マンガを投稿するツイッターのフォロワー数は54万人超え。現在は、ピクシブなどの連載、ウェブサービスの「note」でも発信しているもちぎさん。毒親育ちといった境遇にも負けず、おのれのセクシュアリティと向き合い、健気に幸せの足元を固めてきた。一読すれば、その優しさに惹かれること間違いなし。『ゲイバーのもちぎさん』は、ゲイバー勤め時代の回想を軸にしたエッセイコミックだ。「ノンケ(異性愛者)とかタチウケ(性行為時のポジション)とか、ゲイ業界で当たり前に使っている符牒を、担当さんやノンケの方々に話したときにすごく面白がってもらって、逆に自分自身が驚いたくらいです」好奇心はくすぐられるけれど、同時にハードルが高くも感じられるゲイやゲイバーのカルチャー。その実相をユーモアたっぷりにガイドしながら、自身の経験や傷をも率直に明かしてくれるところにぐっとくる。「自分なりに消化したい、世間の反応を見てみたいという感情があったのは確かです。ゲイ業界で完結したり、仲のいい子たちだけで慰めあったりするのではなく、自分の培ってきた人生経験の偏りに気づくためにも、もっと広くの人に知ってもらいたかったんですね…。『同じ立場だから誰もが共感できる』というほど人間は単純ではないと思うし、あたいが描いているのはあくまであたい個人の経験や考え。マイノリティや同環境の人たちの代表のような主張はしないように自戒しています」ひとの真心を感じるエピソードが多いが、なかでもバーのママ、イチガヤさんがもちぎさんにかけた〈あんたはここで自分を愛して一から堂々と働いてみなさい〉という言葉には、思わず涙腺がゆるむだろう。「弱っていた自分を弱いまま受け止めてもらった。いまの社会にはなかなか見当たらない場所を差し出してもらえた感じでうれしかったです」白くてふわふわ(なのか?)なフォルムで描かれているもちぎさん。「人間って描くのしんどいので、よく描くキャラは楽にしておこうかなと思った次第です。あと、あたいは北半球一美しいゲイなので(自称)、それを表現するにはあのフォルムにせざるを得ないというか(笑)」そんなナゾの見た目も含め癒し効果抜群のシリーズに今後も期待。『ゲイバーのもちぎさん』1マンガは独学。いまはタブレットを使うが、最初のころはボールペンで紙に描き、その写真をネットに上げていたのだという。特別収録のページもたっぷり。講談社1000円©もちぎ/講談社もちぎ作家兼学生。ギリギリ平成生まれ。ネチコヤン(猫)2匹と暮らす。彼氏募集中。『ゲイ風俗のもちぎさん 2 セクシュアリティは人生だ。』も発売に。※『anan』2020年4月29日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2020年05月02日「さんまのFNSアナウンサー全国一斉点検2020」(フジテレビ系)が4月18日に放送された。同局系列のアナウンサーたちの“ヤバい疑惑”を紹介するという番組だったが、その内容が「同性愛者を差別してるのでは」と波紋を呼んでいる。問題となったのは「上司と部下とで距離感が異常に近すぎる、おっさんずラブ状態のアナウンサー…ヤバくない!?」というコーナーだった。そこではプライベートでも旅行に行くほどの仲だという佐野瑞樹アナウンサー(48)と倉田大誠アナウンサー(38)が、2人きりで食事や温泉に行くシーンの隠し撮りが放映された。食事の場面では佐野アナが嫌いなものを倉田アナに食べて欲しいとお願いしたところ、「どこか上司と部下のソレではない」とナレーションが入り「奇妙な距離感」というテロップが。ケーキを持って2人で佐野アナの自宅に訪れることになった際には、スタジオで「うわ」「マジ?」という声も漏れていた。さらに別の日に撮影された温泉のシーンで倉田アナが佐野アナにみかんを差し出したところ、「夫に尽くす新妻感が溢れ出す」というナレーションが。2人で風呂に入っているシーンにはスタジオで悲鳴も上がった。VTRが終わると山崎夕貴アナ(32)は「衝撃映像でしたよね」といい、ハライチの澤辺佑(33)が仲良く入浴していたことに対して「『アッ』てなった」「2人お幸せに、ってことでいいんですよね」とコメント。明石家さんま(64)が「結婚すればいい」と囃し立てたところ、陣内智則(46)が「イヤやな、『佐野倉田熱愛』って出たら」と発言。すると、スタジオでは拍手と笑いが起こった。男性2人が仲良すぎるのは、「ヤバい」ことなのだろうか。Twitterでは「同性愛差別では」と厳しい声が上がっている。《2人の男性アナが仲良くて何が悪いの?それをスタジオ全員で笑いものにするって普通にヤバくない?同性愛とかLGBTとかそういう概念がお台場には存在しないんですか?》《ゲイでないことを前提に「ホモネタ」で遊んでいる地獄の状況》《男同士の同性愛を茶化してアナウンサーみんなで笑ってて、そんな人たちが真面目な顔して読むニュース聞けなくね笑》《二人がたとえそれ以上の関係だったとしてもそれはそれで普通に素敵なことじゃないの…?まだLGBTへの偏見はなくならないのかなあ》またドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)のファンからはこんな声も上がっている。《おっさんずラブはそういう愛の形もいいよねみたいなんを世間に提示してくれたのに今回のアナウンサーのやつみたいな使い方されんの違うやろ》《おっさんずラブという作品を本気で愛してたからこんな風に使って欲しくない、、てか男同士仲良くて何が悪いん?》同局は17年9月、「とんねるずのみなさんのおかげでした」30周年スペシャルに石橋貴明(58)扮するキャラクター「保毛尾田保毛男」が登場。同性愛者を揶揄するやりとりがあり、批判が相次いだ。そのため「頂戴した様々なお叱りやご意見を真摯に受け止め、多様性(ダイバーシティ)のある社会の実現のために正しい知識を身に着け、より良い番組作りを進めて参りたいと考えております」と謝罪していたが――。今回の放送に多様性は感じられるだろうか?
2020年04月22日ライター、ブックカウンセラー・三浦天紗子さんに、文字、行間に色気が潜む、小説、エッセイ、そして短歌を教えていただきました。言葉で腑分けされた繊細な感情。そこに文章の色気は潜んでいる。「作家は、登場人物の感情やそのときの感覚にミクロのレベルまで近寄って、腑分けしてくれるんですよね。例えば“うれしい”という気持ちも、エピソードを積み上げ、喩えを駆使して文字で読者に伝えてくれる。だから私たちはそれを読めば、作中で右往左往する人たちの思いや感情に、行間も含めて乗っかるだけで、色気を味わえるんです」と言うのは、ライター、ブックカウンセラーの三浦天紗子さん。色気のある文章には、必ず以下の要素がある、と語ります。「文体が静謐というか、ささやかな声で語っていること。インテリジェンスともろさが共存していて、さらに心に孤独が棲んでいる。そんな要素がある文章は色っぽい。どちらかというと、恋にしろ運命にしろ、ままならない物語のほうが、色気は漂いますよね。加えて、今回選んだ6冊にはいずれも、どこか死の淵をのぞき込む危うさがある。それも、色気を感じさせる一つの要因かもしれません」空間に潜む幽霊が醸し出す、少し切ない官能性。『ここは夜の水のほとり』清水裕貴 著¥1,400/新潮社‘18年の「女による女のためのR-18文学賞」の大賞受賞作が収録された、5編の連作短編集。舞台は美大と美大予備校、玉川上水の鬱蒼とした緑の中で交錯する人間関係を描く。「どの物語にも、幽霊のような“影”がちらついていて、それが独特の色気に繋がっている気がします。受賞作は、〈あなた〉と語りかける存在が、かつてルームメイトだった男性をそっと見つめるストーリー。部屋に漂っている、意識の官能性というか、切ない色気が堪能できます」視線、ささやき声、筆談。静寂の世界に漂う色っぽさ。『ギリシャ語の時間』ハン・ガン 著、斎藤真理子 訳¥1,800/晶文社ある日突然言葉が話せなくなってしまった女性が、言葉を取り戻すために、ギリシャ語教室に通い始める。そこで出会ったのは、徐々に視力を失いつつある男性講師。「失われた言葉と、失われつつある視線を使ってのコミュニケーションは、とても静的で、その密やかさと削ぎ落とされた感じがとても色っぽい。お互い、不自由さを引き受けて、その上で寄り添い、交わし合う言葉や視線。端正な文章、特に終盤の詩のような繊細な世界観に、ため息が出ます」夢や秘密を打ち明ける。その密やかさが官能的。『囚われの島』谷崎由依 著¥1,600/河出書房新社バーで出会った盲目の調律師に魅入られ、主人公の女性新聞記者・由良は彼の部屋へ通う。二人は同じ島の夢を見ていることがわかるが、調律師はその夢に怯えており…。「調律師が語る夢の話を由良が聞くシーンが色っぽい。秘密や夢うつつの昔話、彼が恐れているイメージに二人が共鳴していく雰囲気にゾクゾクします。蚕をめぐる歴史や蚕の生殖の特殊性などが性的なメタファーにもなっていて、何かが起きそうな不穏な空気に酔うような読み心地です」死と隣り合わせの日記には繊細で危うい色気が宿る。『八本脚の蝶』二階堂奥歯 著¥1,200/河出文庫25歳の若さで命を絶った女性編集者が死の直前まで綴った日記と、生前親しかった13人の文章を収録した一冊。「悩んだり葛藤したり、日記の中の彼女は内省を深め自分を追い詰めていきます。完璧主義で繊細で、危うさに満ちた文章からは、自己のあり方に煩悶する、孤独で繊細なたましいの気高さを感じます。彼女は猛烈な読書家だったので、さまざまな本から引用がなされているのですが、特に死生観にまつわる抜き出しや執筆部分が、エロティックです」華やかさとつつましさ。削ぎ落としの美学を堪能。『対岸のヴェネツィア』内田洋子 著¥1,400/集英社長くミラノに住む作者が、イタリア人ですら“暮らしづらい”と言うヴェネツィアで暮らすことを決意。そこで出会った人々や街の様子を綴った12のエッセイ。「どこか人を拒むような雰囲気もある、不便な街・ヴェネツィア。でも内田さんのフィルターを通して見ると、その暮らしづらさまでもが官能的になるから不思議。秀逸なのが、住むことになった部屋との出合いのくだり。窓から見える風景の描写は、私も住んでみたいと思うほど魅力的」ほとばしる熱情をクールな言葉で詠む、抑制の色気。『メタリック』小佐野 彈 著¥2,000/短歌研究社LGBTであることをオープンにしている歌人のデビュー作。370もの短歌が収録されており、恋愛や、世の中の不条理、ままならないことなどへの思いが溢れている。「とにかく“愛を詠む”熱量がすごい。好きな人への気持ちをストレートに詠んでいる、恋文のような短歌がたくさん収録されています。自身のセクシュアリティへのとまどい、叶わない恋に飛び込むみずみずしさ…、抑制が利いたモダンな表現によって、逆に彼の繊細さや孤独感を強く感じます」みうら・あさこライター、ブックカウンセラー。書評やインタビューを中心に、弊誌をはじめ雑誌やウェブメディアで活躍中。※『anan』2020年4月1日号より。写真・中島慶子取材、文・河野友紀(by anan編集部)
2020年03月31日劇場のスタッフとアーティストが2年という長期間に渡り創作に向き合い、新たな演劇作品を生み出す新シリーズが、2018年4月より北九州芸術劇場で始動。第1弾となる本作は、関西を拠点に活動する劇団太陽族の岩崎正裕が作・演出。約1年半をかけて北九州の様々な場所を巡り、人々に出会い、2月上旬より本格的な稽古を開始した。社会派としても知られる岩崎が本作で描くのは“現代女性の生き方”。3名の女性を軸に、結婚、家庭と仕事、不妊治療やLGBTなど社会を取り巻く様々なキーワードも織り交ぜながら物語が描かれるという。【チケット情報はこちら】「九州の女性たちは飲み会の場でもよく立ち働きますよね。女性が少し控えめで、コミュニケーションの取り方が関西とちょっと違うというか、関西では男性にも割と対等に突っ込むんですよね。その外に出せない何かを女性たちは抱えてるんじゃないか、現代における女性を描いてみたい、というのが着想の始まりでした。中心になるのは3人の女性で、ひとりは40代で独身、古い一軒家に住んでいる。もうひとりは夫が医者で、外に出たいけど夫は家にいてほしいと暗に強制されている。もう1人は不妊治療を続けながらもなかなか子どもが出来ず親族たちからの視線にも悩んでいる、という設定です。でも男性女性の二元論だけでは何か取りこぼしそうな気がして、現代においてはLGBTの事に触れざるを得ないだろうと。自分は女性と認識していて女性が好きという若い女性、その思いを受ける側の女性や彼女の恋人、母親の物語も加わります。タイトルは、杉田久女の俳句~花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ~に着想を得ていますが、私は“まつわる紐”を女性にまつわる男性がつくった社会の数々のしがらみ、と捉えてみました。それを物語で解いていく事によって、それぞれの登場人物に風が吹くんじゃないかな、という想いを込めています」出演は、北は北海道から南は熊本県の出身者まで、オーディションで選ばれた10名と関西からのゲストキャスト2名による計12名。福岡を拠点に活動する劇団FOURTEEN PLUS 14+の村上差斗志は「女性の生き方や生き辛さを描く作品で、その生き辛くさせている男性を演じるという事で喋る台詞が全部自分に返ってきて苦しい部分もあるんですが、観終わった後、観てくださった女性にも男性にも良い風が吹く作品になればいいなと思います」と意気込みを語った。本作は、岩崎が書き下ろした戯曲を岩崎とは長年親交のある飛ぶ劇場の泊篤志が北九州弁に翻訳し、全編北九州弁で上演する。その土地の言葉と体温を持って、今この時代に問う“女性の生き方”とは?世代や性別を超えて、多くの観客に考えるきっかけを与えてくれる作品となりそうだ。公演は2月27日(木)から3月1日(日)福岡・北九州芸術劇場 小劇場、3月7日(土)から8日(日)まで兵庫・アイホール(伊丹市立演劇ホール)にて。チケット発売中。
2020年02月18日2月14日に公開された映画『バイバイ、ヴァンプ!』が物議を醸している。「ヴァンパイアに噛まれると同性愛者になる」というストーリーに批判が殺到し、公開停止を求める署名運動まで起こる事態に。制作側が釈明の声明を発表するも、思わぬところに波紋が広がっている。公式サイトによると、同作は美貌の吸血鬼に噛まれた女好きの吾郎が女装した同性愛者となることから騒動が起こる“青春ヴァンパイアホラー”。また予告編には「同性愛の町になっちまう」というセリフも盛り込まれている。そういったことからから署名サイト・change.orgに公開停止を求めるページが作成された。発起人は「同性愛を悪のように仕立て上げ、敵視し差別対象とする表現が見受けられます」「多様な性への配慮が欠けており、視聴者に間違った印象を与えかねません」とつづっている。たちまち署名はネットで拡散され、7,000人もの賛同者が集まるほどの反響に(17日20時時点)。そして16日、同作の公式Twitterアカウントは製作委員会からのコメントを発表した。《この映画には一部、同性愛の方々に対し不快な思いを抱かせる表現が含まれているかもしれませんが、同性愛を差別する作品ではありません》また《愛とは自由であり、人それぞれの愛が尊重されるものであるというテーマのもと、製作されました》《この作品は、そのテーマをエンターテインメントな作風で描いているため、一部の方に誤解や混乱を招いた事をお詫び申し上げます》と釈明していた。しかし、ネットでは疑問の声がこう上がっている。《噛まれたら黒人になっちゃうバンパイア作品は、差別ですか?差別じゃないですか?》《その映画の中に、噛まれる前から存在している同性愛者は描かれているんですか?》同作を鑑賞したある観客は、感想をこうつづっている。《「快楽に弱く、ところ構わず性的な接触を求めだす」とか「相手は誰でも良い」とか「同性間の友情が成立しなくなる」とか、同性愛に対するありとあらゆる誤解を濃縮したような特性が同時に付与される描き方になっていました》さらに、立憲民主党・石川大我議員(45)はTwitterで同作に《茨城県境町が全面協力している》と指摘。同県は昨年3月にLGBTへの差別禁止を盛り込んだ男女共同参画推進条例改正案を可決し、同年7月にはLGBTカップルを公認するパートナーシップ宣誓制度を開始した。そのためこんな声も上がっている。《行政まで誰も問題視せず公開に至ってしまったのか》《何のためのパートナーシップ制度、差別禁止条例だったのか…》
2020年02月17日細野豪志衆議院議員(48・無所属)が2月11日、「LGBTを支援する理由」をツイートした。しかしその投稿に疑問の声が上がっている。15年に「LGBTに関する課題を考える議員連盟」の顧問に就任するなど、これまでも積極的にLGBTに関する問題に取り上げてきた細野議員。そんな彼は11日、Twitterに《私がLGBTのアライ(支援者)である理由》として以下の5点を挙げた。・当事者の友達がいる・それぞれの生き方(人権)を尊重した方が良いと思う・才能のある人が多く、国や地域に活力が出る・外国人にだけ同性の配偶者に在留許可を出している(内外逆差別)のはおかしいと思う・オリンピック憲章に書いてある(今年は特に)そんな細野議員の投稿には《当事者として感謝申し上げます》《当たり前に普通に存在を受け入れて普通に幸せになれる世の中にしたいですね》といった声が。しかし、いっぽうでは「才能のある人が多く」という文言を疑問視する声が続出。ネットでは「才能と人権は関係あるの?」との声が上がっている。《あなたの友達かどうかとか、その人に才能があるかどうかとか、オリンピック憲章に書いてあるかとか、そういうことじゃないのでは?》《たとえ当事者に才能がなくて国や地域に活力が出なくても、普通に応援しませんか?》《男が好きでも女が好きでも、結婚する人もしない人も、子供がいてもいなくても、「尊重しなければいけないもの」が人権だと思います》《才能がないとダメなんですか?》
2020年02月14日◼︎切ないラブストーリー2本が同日公開へDRESS読者のみなさま、あけましておめでとうございます!新年いかがお過ごしでしょうか?1月も終わりに近づき、そろそろお正月気分も抜けてくる時期ですね。みなさまに新年最初にご紹介したいのは、今をときめく旬な俳優の切ないラブストーリーを堪能できる2作品!2020年1月24日(金)公開の映画『ロマンスドール』と『his』です。■『ロマンスドール』まず1作目は、タナダユキ監督が、初のオリジナル同名小説を自ら実写化した『ロマンスドール』。TVドラマ『民王』の秘書・貝原茂平に始まり、『カルテット』での家森諭高、『凪のお暇』での我聞慎二と、癖のある、一風変わったこじらせ男子を演じ、私たちを魅了し続けてきた高橋一生。本作では妻に自らがラブドール職人であることを明かすことのできない夫・哲雄役を演じます。蒼井優の演じる妻・園子との大胆なベッドシーンは、切なく美しく、TVドラマでは見ることのできない俳優・高橋一生の魅力を思いっきり堪能できる素晴らしいシーンに仕上がっています!『ロマンスドール』のストーリー美大の彫刻家を卒業して、フリーターとして暮らしていた哲雄(高橋一生)は、大学時代の先輩から紹介され、ラブドールの制作工場で働くことになる。ある日、社長(ピエール瀧)から「シリコン素材でリアルな人肌に近い人形」の開発を命じられた哲雄と師匠の相川(きたろう)は、生身の女性から乳房の型取りをすることを思いつく。美術モデルの園子(蒼井優)を工場に呼び、「医療用」と偽り乳房の型取りをさせてもらった哲雄は園子に一目惚れし、突然「あなたのことが好きです。好きになってしまいました」と告白するのだった。1年後に結婚し、平穏な夫婦生活を始めた哲雄と園子だったが、園子の乳房の型でラブドールを制作した哲雄は、後ろめたさから自分がラブドール職人であることを言い出せないままでいた。園子の型で作った新作ドールは爆発的な売り上げが続き、日に日に忙しくなっていく哲雄は、徐々に園子ともセックスレスになっていく。いよいよ夫婦の危機が訪れそうになったその時、園子は哲雄に胸の中に抱えていた秘密を打ち明け……。『ロマンスドール』の見どころは?夫の嘘と、妻の秘密。高橋一生が「この作品は、結婚してからはじまるラブストーリー。結婚がエンディングではなく、その先のお互いの想いや愛の形がどう変化するか、どこに落ち着いていくのか。激しさだけではなく、淡々として日常の中で本当の愛が見えてくるような、ある意味究極の作品だと思っています」と語る通り、本作ではそれぞれに嘘や秘密を抱えながら、夫婦としての答えを見つけようともがくふたりの日常が、淡々と、しかし丁寧に描かれます。リアリティのあるラブドールの造形士を演じるため、資料を読み込んだ上で、実際の製造工程の実習にも複数回参加したという高橋一生。個人的に、彼の「手」の演技はとてもセクシーだと感じているのですが、今回も単なる売り物としてのドール作りではなく、工芸的な感覚で作品としてのドールづくりを行うという職人としてのリアリティを見事に体現しています。また、物語の深い余韻を残す主題歌「やさしいままで」を手がけるのは、高橋一生の弟・安部勇磨がボーカルをつとめるnever young beach。こちらも要チェックです!■『his』続いて2作目の『his』は、『愛がなんだ』で知られる今泉力哉監督が男性ふたりの恋や葛藤を描いたラブストーリー。主人公・迅を演じる宮沢氷魚は、俳優としてのキャリアは浅いながらも、TVドラマ『偽装不倫』での杏演じるヒロインと恋に落ちる年下のカメラマン役にキュンキュンした人も少なくないはず……!持ち前の繊細さと品性を最大限に活かし、ゲイとしての自分と周囲との関係や、忘れられない恋人への想いとの間で、静かに葛藤する主人公を魅力たっぷりに演じます。『his』のストーリー2010年、ベッドでふざけあう恋人同士の迅(宮沢氷魚)と渚(藤原季節)のふたりだったが、そのとき突然、渚は「別れよっか」と告げる。あまりに突然の一言に、迅は何も言い返せないのだった。2018年、自分がゲイであることを知られることを恐れ、岐阜県白川町に移住した迅は、近隣の人々に助けられながら畑仕事をする穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、迅の前に幼い女の子が現れる。女の子の「パパー!」という声に振り返った迅の前に、かつての恋人・渚が立っていた。迅と別れた後、プロサーファーになるためオーストラリアに留学した渚は、そこで通訳の仕事をしていた女性と出会い、結婚し、一児の父となっていたのだった。結婚後は家事と育児に専念していたが、現在は離婚前提で別居中という渚の突然の来訪を、迅は拒むことができない。渚と彼の娘の空(そら)をしぶしぶ受け入れた迅は、3人で同居生活を始めることになり……。『his』の見どころは?「同性愛をメインの題材として扱うことは、ある意味利用しているというか、ひとつの差別じゃないか」と感じ、これまで避けていたという今泉監督。結果として、感情や葛藤は男女と違いはなかったといいます。また、本作の監修には、同性パートナーであり、共に弁護士でもある吉田昌史氏と結婚式を挙げ、法律事務所を開設した南和行氏が携わり、離婚訴訟の法廷シーンや、同性愛者が身を置く社会のリアリティがきっちりと描かれます。恋愛の行く末だけではなく、同性のふたりが「家族」として世間とどう向き合い、生きていくのかというところまで描いた本作。子供を連れて昔の恋人に会いに行って、うだうだとどっち着かずの情けない男・渚と、田舎に逃げ込んできた迅が、渚の娘・空の存在を尊重しながらも前を向き、互いの境界線を超えて進んでいく姿に、静かな感動と、一歩踏み出す勇気をもらえます。2作品どちらにも共通するのは、主人公たちが打ち明けられない秘密や嘘を抱えていること、そして一緒に生きていくことを選択したふたりの恋人たちの想いや葛藤を丁寧に描いていることでしょう。DRESS世代の女性たちから不動の人気を誇る高橋一生と、人気急上昇中の若手俳優・宮沢氷魚。それぞれの魅力を堪能しながら味わえる、切なくも美しいラブストーリーに、あなたも心揺さぶられてみませんか?『ロマンスドール』と『his』は、2020年1月24日(金)より全国公開です。◼︎作品情報『ロマンスドール』2020年1月24日(金)全国ロードショー脚本・監督:タナダユキ(『百万円と苦虫女』『夫のちんぽが入らない』)原作:タナダユキ「ロマンスドール」(角川文庫刊)出演:高橋一生、蒼井優、浜野謙太、三浦透子、大倉孝ニ、ピエール瀧、渡辺えり、きたろう配給:KADOKAWA上映時間:123分公式サイト:romancedoll.jp(c)2019「ロマンスドール」製作委員会
2020年01月23日劇団ONEOR8の2年ぶりの新作公演『誕生の日』がまもなく開幕する。外部プロデュース公演でも脚本、演出などで目覚ましい活躍を見せている劇作家、演出家の田村孝裕が、「評価を直に感じるので、一番緊張する」と語るホームグラウンドでの、久々の書き下ろしである。ささやかな日常を懸命に生きる人間の感情の揺らぐ様を、鋭く、温かく見つめ、繊細に描き出してきた田村が、新たな主人公としたのは40歳を目前にした独身女性。この設定だけで同世代の女性たちの共感を誘う田村の世界が炸裂しそう……と期待を募らせていたところ、そこには思いもかけない、これまでの田村のアプローチとは確かに違う驚きの仕掛けがあった。挑戦のきっかけは、危機感だ。「当たり前ではあるけど、いつまでも若手とは言っていられない。自分たちの芝居を古いと自覚して芝居を作っていかなくては、このままではヤバいぞと(笑)。古いというか、自分が面白いと思っているものと、世の中で評価されたり、面白いとされているものがだんだん違ってきていると感じているんですよね。“劇団力”といったものをつけていかないと、どんどん取り残されてしまう。一昨年に劇団創立20周年を迎えて、今回はリスタートの気持ちでやろうよ、と」バーを営む木村加寿美は39歳、独身。幼い頃から男の子に見間違われてきた。思春期に女性としての自我が芽生えるが、容貌のコンプレックスからいわゆる“女らしさ”はすべて排除し、恋愛沙汰とももちろん無縁。オバサンと呼ばれる年齢となった今も化粧もせず、見た目はオッサンのままで……。そんな主人公に扮するのは、劇団員の山口森広だ。女性キャラクターを、男性が演じる。まさしく演劇の妙味ともいえるが、ジェンダーに対する問題意識が高まる昨今、このような切り口を選んだのはなぜなのか。「自分の母校である舞台芸術学院の公演に関わった時など、やっぱり若い子と僕らの感覚はだいぶ違うなと気づかされるんです。性に対する飛び越え方が全然違うな……ってことは前々から感じていて、そのあたりのことを書いてみたいなと。ただ、いわゆるホモセクシュアル、レズビアンといった題材になってくると、僕自身がどうしても差別的な視点で見てしまう。たとえば女装家だとか、山口そのものをノーマルではない人物として描くとしたら、おそらくその差別意識が全面的に出てしまうなと。その描き方がはたして正しいのか、僕の中で疑問があったので、だったら彼を女として書いたほうが、僕の持つ差別的な視点そのものもちょっとした笑いに転嫁することができるかなと。自分がそうした差別意識を持っていることは、正直に、なるべく隠さずにいようと思って書きました」そう、焦点はLGBTではないのだ。ひとりの女性が、心の傷をどう解消し、新たな一歩を踏み出していくのか。そのドラマを覗くことで、やはり各々の性差に対する考えがあぶり出されるだろう。男優が女性を表出する仕掛けは、過度な深刻さを避けて空気を緩和しながら、人間関係の新たな気づきをもたらすのでは……、そんな予感がする。「最初はLGBTについて触れないといけないかな……とも思いましたけど、そこに僕なりの説得力がなかった。加寿美のように生きてきた女友達が僕の周りにもいるので、そういう人に視線を向けたほうが僕自身のリアリティが出るなと思ったんですね。ただ芝居の匙加減をどうすべきか、ずっと悩んでいて。観客がどう受け止めてくれるのか、今から不安です(笑)」これまでの劇団公演とは違う新たなドラマの打ち出し方は「自分でも意識した」と明言。昨秋、数々のヒットドラマを手がけた脚本家、岡田惠和の書き下ろし舞台『不機嫌な女神たち プラス1』を演出した。その時の経験が大きく影響していると振り返る。「ホンをいただいて、すごく困ったんですよ。これ、どうするの!?って(笑)。ある状況から状況への飛躍が生理的に無理じゃないか……、ここでこのセリフをしゃべっちゃう!?といった場面が多々あって。でもそれって、意外と役者さんがどうにでもしてくれるんですよね。役者の力ってすごいなと、あらためて思いました。その時に、ある程度面白いと思ったものなら、強引に、乱暴にでも書いてしまっていいんだなと思って。頭で書くんじゃなくて心で書く、岡田さんのホンはそんなふうに感じられた。岡田さんはきっと、ディレクターさんや役者さんのことをものすごく信頼しているんですよ。その信頼のもとに、自由に書いている。信頼関係の上に成り立つのなら……と考えて、実は今回の『誕生の日』は、だいぶ乱暴に書いたんです(笑)。いつもだったら二の足踏んで、立ち止まって、戻って、もう一回書き直して……なんてやってますけど、それをせずに、演出のことも考えずに」劇団ONEOR8のリスタートのテーマは、「劇団の体力をつけよう」。集客を含めて、劇団本来が持つ力を見直していく。そのため今回の新作公演は、著名な客演を迎えない、小劇場での長期間公演など、新たな試みに乗り出した。先述のように田村の劇作スタイルも新境地へ。ただ、描き出したい芯は変わらない。今回も、ひとりの女性の葛藤を時に笑いを交えて見つめながら、胸にガツンと響く何かを受け取ることになるのだろう。「表現の仕方は試行錯誤して、変化をつけていかなければと思いますが、僕自身が書きたいものは、劇作を始めた時から変わってないなと。どうしようもなくがんじがらめだけど一生懸命に生きる人たちが、何を選択し、どう動くのか。前進でも後退でもいいから、その登場人物の一歩を見つめることが僕の興味であり、そこはこの先も変わることはないだろうと思います」ONEOR8『誕生の日』は、1月18日(土)から2月2日(日)まで東京・日暮里のd-倉庫にて上演。取材・文:上野紀子
2020年01月16日今泉力哉監督が、最新映画『his』でテーマにしたのは同性愛。田舎町に住む迅(宮沢氷魚)のもとへ子連れで現れたのは、8年前に別れた恋人・渚(藤原季節)。二人は再び愛し合う関係になるが、渚とその妻(松本若菜)は親権を争い裁判へ発展してゆく…。宮沢さんと藤原さんにお話を伺いました。宮沢:LTBTQをテーマにした作品だけに、今回は相手役が重要だと思った。それが(藤原)季節くんだと知り、これまで季節くんが演じた役柄とか写真を改めて見たときに、ちょっと怖いかも…って、それが第一印象(笑)。藤原:(笑)宮沢:でも実際に季節くんに会うとすごく正直でいい人で。僕が演じる迅が、季節くん演じる渚を愛せると思ったし、宮沢氷魚として藤原季節を好きになれると思った。藤原:ありがとう。僕は、まず、宮沢氷魚×今泉力哉監督という組み合わせが想像つかなかった。だって、今泉さんがこれまで描いてきたのは、ありふれた日常の恋愛模様であり、群像劇だったから。そこに氷魚くんみたいなスターが入ってくるんだ、って。宮沢:いやいや…。藤原:今泉さんが氷魚くんの相手役になぜ僕を選んだのかに、必ず意味があると思ったんだよね。だから、迅と渚はお互いにないものをきっと持っていて、それを与え合える関係が作れればな、って。宮沢:(岐阜県加茂郡)白川町の現場に入ってすぐに、同じ部屋に住み始めたのはよかったと思う。毎晩夜中まで、鍋をつつきながら、熱く語り合ったよね。藤原:僕がその前の作品で訪れていた、熊本の天草で手に入れた焼酎を飲みながらね。宮沢:あれ、うまかった!そういえば撮影初日に、天草の教会で買った貝殻ももらったね。藤原:いつもはいきなりそんなものあげたりしないんだけど、きっとスタートの時点から自分が氷魚くんにとって異物でありたかったのかな。ただの映画の相手役じゃないという、枠組みを超えた間柄になろうとしていたのかも。宮沢:お互いに知らない世界に飛び込んでいくことに不安しかなかったし、撮影中も苦しいことのほうがはるかに多くて…。センシティブな部分と向き合っていくうちに、どんどんしんどくなったよ。藤原:渚が子供を連れて迅の前に8年ぶりに突然現れて、しばらく3人で暮らすシーンはただただ幸せだった。でもそのあとに、陰で傷ついている人がいると気づいてからが、僕は辛くて。宮沢:親権争いの裁判シーンは、季節くんはとくに辛かったと思う。藤原:辛かったね…。ちなみに僕が印象的なシーンは、迅が自給自足の田舎生活をしている中で頼りにしている、(鈴木)慶一さん演じる緒方と、山に鹿を狩りに行くところ。鹿を撃ったあとの迅の表情が、すごいんだよね。僕はいつも映画を観るときに、一見すると“ちょっとしてる”ふうに見えるけどじつは“ちょっとしていない”、ふとした瞬間を見たいんだけど、一つの命を奪ったときのあの言葉にならない興奮や激情が込み上げる表情は感動的だった。迅という人間の価値観が崩れ落ち、そして立ち上がるのを感じて。あの芝居はすごかった。宮沢:う~ん、今考えると自然とああなってたかも。慶一さんのオーラと緊張に引き込まれたのもあって、独特な空気が流れていた。藤原:あの瞬間だけが、社会や日常と関係のない、裸の迅だなって。迅と慶一さん二人のシーンは、僕の知らないところで、迅の核が見えるから、気がついたらすっかり一人の人間として氷魚くんを好きになってた。これって僕にとってすごく大事なことだったかもしれない。だって、僕とか氷魚くん、監督たちが唯一忘れちゃいけないのは、「この映画はただ2人の同性愛者の恋愛を描いたもの」なんだってこと。観てくれた人たちにも、「2人の人間がただお互いに好きだってことを描いた映画」だと思ってもらいたくて。特別なことじゃないんだよ、当たり前に存在している人たちなんだよって。宮沢:そうそう。でも、それを作り上げるのは本当に難しかった。藤原:そこにたどり着くために僕ら二人も、そして監督も相当悩んでいたもんね。宮沢:監督に相談すると、監督が一番悩んじゃうからね(笑)。藤原:そうなの(笑)。撮影が終わったからといって、僕らの仕事はまだ終わらない。ここからだと思うんだよね。こんなふうにインタビューを受けることで、自分の認識をどんどん更新していかなければならないって思う。宮沢:話せば話すほど、僕らの認識も変わるから、毎回言ってることが違ってしまうのは本当に申し訳ない気持ちがある。でも、僕らも日に日に新しい発見があって認識を更新していくし、取材で問われる度に考え直してしまう。でもそれでいいんだよね。藤原:考えないこととか、捉え方を更新しないほうが危ないと思う。とはいえ、古かったものが猛烈に新しくなっていくわけじゃないけど、でも10年後には、今はまだ当たり前じゃないことがごく当たり前になっていると思うし、同性愛者のカップルが手を繋いで街を歩いているなんて普通だと思うの。だからこの作品が、その“当たり前”を作るきっかけになればいいなって。10年後にこの映画を観返したとき、本当にこんな裁判があったのかよ、ってなったら楽しいよね。きっとそうなっているよ。宮沢:アンアンが60周年のときにはね!そうそう今年、アンアンは創刊50周年らしいよ。藤原:そうなんだ、すごい!宮沢:100周年になるまで出たいね。でも、僕は75歳か…。藤原:僕らが頑張らないと…(笑)。宮沢:めっちゃ頑固な役者になってたりして!藤原:(笑)。また『his』の続きを作りたいよね。子供の空ちゃんも大きくなって、やべ、反抗期だ、ってなったり!宮沢:あははは(笑)、作りたい!“複雑な感情こそが人間らしい”ということ。物語で描かれる幸せは、迅と渚、その子供・空(外村紗玖良)との日常のシーン。主演の二人も、撮影期間中は役に入り込むのが辛かったが、この場面は幸せに感じたと語る。空を連れ戻しにきた渚の妻。ともすれば悪人になりがちだが、そうはさせないのが監督の手法。それぞれの弱さや言葉足らずな部分から生まれる衝突を、低い温度で描いている。頭を寄せることで相手を求め合う感情を表現。「一人の人間にいくつもの感情がある。派手にしないほど繊細になり、また好きを伝えるパターンは無数にある」と監督。©2020映画「his」製作委員会みやざわ・ひお1994年4月24日生まれ、アメリカ出身。MEN’S NON-NO専属モデル。‘19年はドラマ『偽装不倫』(日テレ系)に出演し、大きな話題に。‘20年は舞台『ピサロ』が上演。ニット¥30,000(ラッド ミュージシャン/ラッド ミュージシャン 原宿 TEL:03・3470・6760)カットソー¥14,000(カイコー/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)パンツ¥39,000(ワコ マリア/パラダイストウキョウ TEL:03・5708・5277)靴¥42,000(リーガル シュー&カンパニー TEL:03・5459・3135)ふじわら・きせつ1993年1月18日生まれ、北海道出身。‘19年はU-NEXT『すじぼり』で連続ドラマ初主演を務めた他、『監察医 朝顔』(CX系)に出演。‘20年は映画『のさりの島』で主演。ジャージートップス¥29,000中に着たカットソー¥22,000靴¥58,000(以上トーガ ビリリース/TOGA原宿店 TEL:03・6419・8136)パンツ¥35,638(オフィシン ジェネラル/マッチズファッション TEL:0800・919・1268)※『anan』2020年1月15日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) スタイリスト・秋山貴紀(宮沢さん)八木啓紀(藤原さん)ヘア&メイク・スガ タクマ(宮沢さん)中村兼也(藤原さん)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2020年01月12日映画『愛がなんだ』などで、カップルの恋愛比重や、恋する人間のかっこわるさなどを魅力的に描いてきた今泉力哉監督が、『his』でテーマにしたのは同性愛。田舎町に住む迅(宮沢氷魚)のもとへ子連れで現れたのは、8年前に別れた恋人・渚(藤原季節)。二人は再び愛し合う関係になるが、渚とその妻(松本若菜)は親権を争い裁判へ発展してゆく…。同性愛者は日常に存在して、わざわざ取り上げるほうが差別的になるのではないかと「あえて避けてきた題材」と言う監督が、これまでの手法をもって、このテーマをどう描くのか、公開前から早くも注目を集めている。映画が終わっても人生は続く。そんな恋愛映画を作り続けたい。恋愛映画を作る時はいつも、明確な悪人を作らずに衝突や葛藤を描きたいという意識があり、なおかつ全体的に“温度”が上がらないように気をつけています。たとえば感情的に泣くような温度の高い芝居って、一歩間違えると役者だけが気持ちいい感じに見えて、お客さんがのれない。だから撮影中に少しでも温度の高さを感じると、その度に脚本に立ち返って確認します。それってドラマティックになりにくいからみんなやりたがらないけど、僕の興味はそこにあるんです。ただ今回は自分の脚本じゃない、同性愛を描いた難しいテーマの中で、主演の二人に任せた部分も多くて。たとえば、台所で歯を磨きながらキスするシーンもそう。僕自身はそういう日常を送っていないし、僕の恋愛映画では日常の何気ないキスや接触を描いたことがないから。でも二人のバランスがいいというのもあって、結果、すごく自然な流れになった。『愛がなんだ』ぐらいから、そんなふうに役者にどんどんゆだねるようにはなっています。役者に任せて僕が持つアイデアよりももっと面白いものが出てきたらそれが正解だから、自分の中の考え含め、どっちだろう…と限られた時間の中でギリギリまで迷いたいし、わからないことは「わからない」ってみんなに頼る。あとは、完成作で全員を納得させるのが監督の仕事だと思っているんで。だから「いつも悩んでる人」って言われちゃうんですよね(笑)。近年の恋愛の傾向としては、極端な話、恋愛はしたくないけど結婚はしたい、結婚はしたくないけど子供は欲しいなど、恋愛に対して損得や効率を考える人が増えている気がします。それって僕は悲しいことだと思います。“温度の低い恋愛”を描いてきましたが、恋愛の醍醐味は面倒くささにあるので。さらに僕は映画の登場人物がまるで隣に住んでいそうな“地続きの恋愛”が好きで。何かを解決してハッピーエンドという映画もあるけれど、それで終わりにするとそのまま登場人物たちも終了しちゃう。映画が終わったあとも登場人物たちの人生は続くという方向にしたほうが、人物は生きると思っているんです。『his』も、ラストシーンは観る人によって登場人物たちのその後の人生について、いろんな解釈ができるはず。やるからには、これまでの同性愛作品と違うものにしたかったし、今後も恋愛映画を通して、これまで描いたのとは違う恋の形を探りたいです。“複雑な感情こそが人間らしい”ということ。物語で描かれる幸せは、迅と渚、その子供・空(外村紗玖良)との日常のシーン。主演の二人も、撮影期間中は役に入り込むのが辛かったが、この場面は幸せに感じたと語る。空を連れ戻しにきた渚の妻。ともすれば悪人になりがちだが、そうはさせないのが監督の手法。それぞれの弱さや言葉足らずな部分から生まれる衝突を、低い温度で描いている。頭を寄せることで相手を求め合う感情を表現。「一人の人間にいくつもの感情がある。派手にしないほど繊細になり、また好きを伝えるパターンは無数にある」と監督。©2020映画「his」製作委員会今泉力哉監督1981年2月1日生まれ、福島県出身。自主制作映画を作っていた頃から、恋愛映画にこだわり続けてきた。監督、脚本、演出まで手がけ、短編を含む映画、ドラマ『時効警察はじめました』、乃木坂46のPVまで幅広く手がける。オリジナル脚本に受賞作が多く『こっぴどい猫』『サッドティー』『パンとバスと2度目のハツコイ』など多数。‘19年公開の映画『愛がなんだ』がヒットし代表作に。今作『his』は1月24日より全国公開。※『anan』2020年1月15日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2020年01月11日みなさんあけましておめでとうございます!2020年のスタートが切られ、正月早々色んなニュースが飛び交っています。今年の年末はみなさんどんな過ごし方をしましたか?筆者は約10年ぶりに家族とも恋人とも友だちともすごさず、一人自宅で静かに年を越しました。「ぼっちの年越しってちょっとさみしさを感じるかな」と思い、せめてタイムリーな話題に乗るために紅白歌合戦にチャンネルをあわせたところ……。「これ、凄い!」とNHKの執念を感じたのです。■チャンネルは変えさせない!NHKの執念すら覚える演出12月31日のチャンネル争いでの悩みはだいたい紅白歌合戦を観るか、「笑ってはいけないシリーズ(日本テレビ)」を観るかという判断です。若い世代だとテレビの前にいるときは紅白をメインにしつつ、演歌歌手が出たタイミングでチャンネルを変える……という柔軟な対応をする人が多いと思います。今回もそうやって“いいとこ取り”して視聴しようと思いっていました。が、しかし、数年ぶりに観て思いました。「チャンネルを変えるタイミングが無い!!!」と。当然ながら出演者の構成は若い人向け(今話題のアーティストなど)、万人受け(誰もが知っているベテランアーティスト)、シニア向け(演歌歌手など)、と大きく分けると3タイプに分かれています。このシニア向けが20代30代的にはつまらないわけで、チャンネル変更チャンスです。しかし今回驚いたことに、ほぼすべての演歌歌手の演出に“若い人が思わず観続けてしまう仕掛け”が施されていました(単独歌唱は、なんと石川さゆりさんのみ)。たとえば丘みどりさん(35)の出演時には、今年初登場となったKis-My-Ft2がバックダンサーを担当。三山ひろしさん(39)は昨年に続き、けんだまギネス記録への挑戦が。天童よしみさん(65)は、今年話題になったMattさんとの共演で歌っていたりしていました。思わず「これは!」と観てしまう演出が続きまくるのは、もはや「チャンネルはそのままで」と全力で訴えかけるNHKの執念!筆者はレビューを書こうと思ったからだけでなく、紅白歌合戦のチャンネルを一度も変えることなく最後まできっちり視聴してしまったのでした。■副音声のパワーは“ぼっち”に効く!また紅白の法則とあわせて毎年話題になるのが、副音声の面白さです。今年は南海キャンディーズの山里亮太さん(42)と渡辺直美さん(32)が務め、定期的にゲストを入れ替えながらゆるりとしたトークが進みます。正直歌番組なのに副音声ってどうなのかなあと思いながら、初めて全編副音声での視聴をしてみました。結論、「これは、ぼっちに効く!」本来は紅白って、家で一人でちゃんと観るべきテレビ番組ではありません。1年の疲れをダラダラ癒やしながら、家族であーでもないこーでもないと観る番組です。それができないぼっち視聴者に、この副音声というサービスが凄く効くのです。3秒に1回は出演者にどうしようもないツッコミをかます山ちゃんと(でも出演者の情報たくさん持ってて凄い)、視聴者ばりに曲目に興奮し続ける直美。通常のバラエティの進行ではありえないユルさがなんだか一緒にテレビを観ている気分にさせてくれて、凄くありがたいのです。毎年歌番組なのになぜ?と思ってた副音声のパワーは、近年増える単身世帯へ向けたものだったのか……。そう思うと、全世代取り入れてやるぞ!という、これまたNHKの執念を感じるのでした。■メッセージ性強し!死なせてもらえない時代の到来紅白の演出は毎年、その年の話題になったものを中心に行われます。2019年はラグビーと来年に控えた東京五輪が主な演出テーマ。そのため序盤から郷ひろみと五輪に扮したダンサーのギラギラした曲目が歌われるなど、かなり勢いのある明るい演出が目立ちました。そんな中でも個人的に「これは…」と、良くも悪くも言葉を失ったものが2つあります。1つは故・美空ひばりさんをAI(人工知能)技術で蘇らせ、新曲「あれから」を歌わせるという演出です。「AI技術すげええええ」と、思うほどのクオリティではあったのですが、そもそも死者を蘇らせて歌わせる時代って、どうなんだろうなと、ふと疑問に思います。よく「歌は魂」といいますが、「ここに魂はあるのかな」と。人間は当然いつか死ぬわけですが、「死なせてもらえない時代」が来るということを肌で感じました。そして凄いと思うと同時に、ちょっとだけ怖さを覚えてしまったのでした。2つめは、紅組のトリをつとめたMISIAさんの演出です。数年前に和田アキ子さん(69)がいなくなると聞いて「これじゃあ締まらないのではないか」と思ったのも、もう昔の話。歌姫MISIAは愛をバッチリ歌いきり、鳥肌モノ。そしてラストの6色レインボーで、別の意味での鳥肌になったのでした。6色レインボーは、近年注目されるLGBTのイメージカラー。MISIAさんの歌唱はラストに向かいドラァグクイーンなどが取り囲み、踊り、それを見守る出演者もみんなレインボーフラッグを振るという大団円……。私は「NHK攻めるなー」と関心したのですが、ふと疑問にも思ったのです。「当事者がこれを見たら、嬉しいのだろうか?」と。実際にネットの声を後で探してみると、「説教臭さがあるな」という人や「家族に隠しているのに、あれみて凍りついた」と話す当事者の意見もありました。そもそも紅白って、いつの間に今回のような様々な演出をする“チャレンジングな番組”になっていたのでしょうか。叫ばれるテレビ離れを食い止めるための“本気”なのでしょうが、いろんな意味で執念を感じさせられました。そんなNHKも推していた東京オリンピックが、2020年は開催となります。今年は1年どんな年になるのか。楽しみです。(文・イラスト:おおしまりえ)
2020年01月03日2019年12月31日の放送で70回目を迎える『NHK紅白歌合戦』。年の瀬のご長寿番組について、見直しを求める声が上がっている。Twitterでは、番組の“男女対抗”という構図に疑問を投げかける投稿が相次いでいるのだ。《令和になった事だし、いいかげん男女対抗止めれば良いのに。どっちでも無い人をハナから拒否かい。東西で分けても、いい勝負になると思うけどな》《いつも思うけど、このジェンダーフリーの時代、男女対抗チームで紅白歌合戦やるんじゃなくて国民投票とかでチーム決めて歌合戦やった方がいいんじゃない?楽しそうだし》2018年の放送時には、星野源(38)が“おげんさんといっしょ”という企画コーナーで登場。星野は昭和のお母さんを思わせる女性の衣装とヘアメイクで現れた。自ら“おげんさん”と名乗り、「おげんさんは男でも女でもないから」とコメント。また「紅白もこれからね、紅組も白組も性別関係なく、混合チームで行けばいいと思う」と持論を述べ、SNSで大きな反響を呼んだ。女性自身では今年の紅白歌合戦の放送に先駆け、Instagramのフォロワーを対象に『紅白歌合戦は男女対抗で続けるべきだと思いますか?』とのアンケート調査を実施した。3日間にわたるアンケートの回答者数は、男女合わせて533名。結果は「思わない」が57.2%で、「思う」が42.8%だった。「男女対抗で続けるべきだと思う」と回答した人からは、下記のような意見があった。「伝統みたいなものだから。色々変わる時代ですが紅白は変わらないで欲しいと思います(40代・女性)」「昔ながらのやり方で、お年寄りも子供も一緒に楽しめるから!(30代・女性)」「紅白なので、男女で構わないと思います。今は全て新しくなっていますが、古くからの歌合戦があってもいいじゃないですか!私はそう思います。(50代・女性)」「それ以外の枠で分けると、派閥がおきそうだから。年越しは平和にしたいから。(20代・女性)」「男女対抗をやめてしまうと、他局にあるようなただの歌謡番組になりかねあい。紅白ならではの演出があっていいと思う。(40代・女性)」「家族でどっちが良かったとか会話するきっかけになったり投票してどっちが勝つのかワクワクするから(20代・女性)」また、「男女対抗で続けるべきだと思わない」と回答した人の意見は下記のようなものだった。「ジェンダー的な問題点があるからはっきり区別するのはよくないと思う。また男女混合グループの場合はっきり分けられないことから。(10代・女性)」「今回の場合だと『いきものがかり』のような男女のグループも居るから男女で分けてるのはおかしい。ランダムに分けて戦った方がまだ気持ち良い。(50代・女性)」「これほどジェンダーレスが浸透している時世に男女で分けるのはもう古い。女性の着物の華やかさと、組分けの見た目の分かりやすさはあるけれど、男女混合のユニットもあるので特に分ける必要はないと思う。(30代・女性)」「両方好きな人がいたりするので毎回選ぶのが大変。そんなの関係なしで見たいです。(30代・女性)」「LGBTの問題があるいまの時代に男女で分ける必要が分からないし、そもそも視聴者は対抗だと思って見ていないのではないかと思う。ただの歌謡祭にしたらいいのに。(30代・女性)」「アーティスト的に白を応援していても、赤が負けると自分も女だから素直に喜べないところもあって複雑だから。(20代・女性)」「男女混合のグループも有り、性別を分けられたくないアーティストも認められるべきだから。(40代・女性)」19年1月10日の定例会見では、エンターテインメント番組部の責任者がこう話していた。「紅白、歌合戦、というベースがある限り紅白歌合戦であるということ。時代の流れに取り残されないよう、男女を超えた企画という形で最善の策をとっている。変える必要はない」NHK側は現状維持の姿勢を見せているが、視聴者からの反響を受けてどう変わっていくのだろうか。
2019年12月18日【今週の悩めるマダム】結婚して30年、セックスレスに悩んでいます。一応寝室は一緒なのですが、この10年はもう何もありません。夫は60歳ですが、EDではないです。浮気相手がいるとも思えません。私には相変わらず優しくしてくれます。だから抱かれないのは、私に女としての魅力がないからかな、と思ってしまいます。(広島県在住50代主婦)夫婦の夜の営みに関して、これが正解というものは残念ながらありません。夫婦の数だけ夫婦の夜の形があると僕は思います。ですから、奥様のご相談にこうしたらいいですよという的確な回答は戻せないかもしれない。それでも、僕なりにこのお悩みと向き合いたいと思います。まず、男というのはどうしても性的な行動をとる時、攻める側にならないとなりません。実は、これを苦痛と思う男性が意外に多いんです。女性は男というのは野性的な本能を持っていると信じている、というのか、みんな女性を欲していると思いがちかもしれません。でも、僕の周りの男性たちは、その勝手なイメージに苦しんでいる人が結構います。こうした女性が持つ男性への先入観が、セックスレスの原因である可能性もあるのではないでしょうか。一般的に、男と女という2つの性に分けて語られますが、人間の性は2つだけではありません。LGBTの方もたくさんいらっしゃいますし、異性愛者の方でも、性愛に関しては様々な指向の違いがあると思います。さらに、30代、40代、50代、60代……と年齢によっても変化していくものです。アセクシャルといって、他者に対して性的な関心や欲求がない方もいます。もともとは性欲があっても、年齢を重ねて低下していくことは珍しくありません。なので、勃起不全(ED)ではないのに、ご主人が奥様を抱かなくなった理由を一言で決めつけることはできません。愛情がなくなったから抱かないとか、女としての魅力がなくなったから抱かないとか、そんな単純な理由だけではないと思います。身体的には問題ないのかもしれませんが、もしかすると心理的な要因があるのかもしれないですね。人生は長いので、いろいろなことで悩み、その気にならない、ということもよくあります。「その気にならない」ことの細かい理由はわかりませんが、そこには心の問題が関係している可能性が十分考えられます。ところで、奥様からご主人に性的に寄り添うことはありますか?変な言い方ですけど、待っているだけなのでは?欧米では、男女はいつも腕を組んで歩いたり、知り合いの前でも恥ずかしがることなく肩を抱き寄せあったり、キスも普通にしています。ボディータッチやキスは、2人の愛を繋ぐ上で大事な行為です。同じベッドで寝ているのであれば、救いがあると思います。だいたいは女性のほうから、いびきや体臭が嫌だという理由で寝る場所を分けることが多いと聞きます。寝ている時に手を握ってみたり、奥様から優しくアプローチしてみたら、夜を取り戻すきっかけになるかもしれません。ただしやり過ぎるとお互いによくないので、時間をかけて、話し合ったりしながら、ちょっとずつ近づいてみたらどうでしょう。【JINSEIの格言】奥様からご主人に性的に寄り添うことはありますか?変な言い方ですけど、待っているだけなのでは?寝ている時に手を握ってみたり、奥様から優しくアプローチしてみてはどうでしょう。この連載では辻さんが恋愛から家事・育児、夫への愚痴まで、みなさんの日ごろの悩みにお答えします!お悩みは、メール(jinseinospice@gmail.com)、Twitter(女性自身連載「JINSEIのスパイス!」お悩み募集係【公式】@jinseinospice)、またはお便り(〒112-0811 東京都文京区音羽1-16-6「女性自身」編集部宛)にて絶賛募集中。※性別と年齢を明記のうえ、お送りください。以前の連載「ムスコ飯」はこちらで写真付きレシピを毎週火曜日に更新中!
2019年11月26日2019年秋ドラマが次々放送される中、ふとした疑問を抱いた方はいないでしょうか。「恋愛ドラマを見かけないな」と。無いわけではないのですが、今季純粋に恋愛を軸にしたドラマは『結婚できない男』『モトカレマニア』の2本。2本あるとはいえ、1本は中年男性の恋愛。もう1本はこじらせ女子がテーマですから、いわゆる王道の恋愛ドラマとは言い切れません。現実世界では恋愛をしない人が増えているといった問題もあるようですが、テレビドラマの世界で恋愛はどんな変化をとげているのか。■恋愛ドラマは減ってしまったのか?少し前なら毎シーズン過激な不倫ドラマが放送されていたように思うテレビドラマの世界。インターネットでの娯楽消費が増えた結果、コンテンツには「当事者意識」や「共感」、「知らない世界を垣間見る」「新しい視点」といった部分がより大事にされているように思います。その結果、支持されるドラマのテイストも時代に沿って変化しているような。たとえば恋愛ドラマであれば2016年に『逃げるは恥だが役に立つ』といった男女の役割や結婚制度を根本から考え直すようなヒット作もあったものの、基本的には共感に寄せたようなドラマが人気を集める傾向にあるようです。2017年放送の『東京タラレバ娘』や『あなたのことはそれほど』などはわかりやすい例。アマゾンプライムオリジナル番組『バチェラー・ジャパン』も恋愛リアリティ・ショーという特性を存分に生かし、視聴者に共感と参加者意識を芽生えさせる作りで人気となっております。黄金期の恋愛ドラマは「非現実的な恋愛」「憧れ要素のある恋愛」といったものが人気でした。しかし今の時代は「共感度の高さ+恋愛」や「知らない世界での出来事+恋愛」など何かに付随した形の恋愛という、ニーズの変化をより求められているのかもしれません。■時代を反映する恋愛ドラマの多さでは実際に恋愛ドラマは増えているのか、減っているのか、数字の部分を少し追いかけてみたいと思います。ドラマのジャンルは厳密に恋愛モノかどうか定義するのは難しいものの、2010~2019年のドラマをみていくと恋愛ドラマが締める割合に変化があります。今回各年代のテレビドラマ本数と、それに占める恋愛ドラマの割合を示したデータを割り出してみました。2010~2013年には恋愛ドラマが占める割合が10%台に落ちたものの、2014年から盛り返し、2016~2017年には2割近い割合で恋愛ドラマが占めるようになっています。2010年10/98本(10.2%)2011年12/100本(12.0%)2012年9/109本(8.3%)2013年9/109本(8.3%)2014年15/108本(13.9%)2015年14/97本(14.42%)2016年17/87本(19.5%)2017年17/78本(21.8%)2018年12/73本(16.4%)2019年6/55本(10.9%)ちなみに2014年の変化のきっかけを考えると、2013年には『半沢直樹』や『あまちゃん』『ドクターX~外科医・大門未知子~(2期、平均視聴率は2期より20%台になっている)』といったブームにつながるドラマが多く放送されておりました。結果としてテレビドラマ自体が注目を集めたのも1つの要因としてあるでしょう。また注目したいのは、2015~2017年にはドラマ自体の本数が減っているのに、恋愛ドラマが増えているという現象です。実はこの3年間は“不倫黄金期”ともいえる3年です。2014年には上戸彩さん主演『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』が放送され、不倫ドラマの注目度が上がるきっかけになりました。そして2015年末にはタレント、ベッキーさんの不倫を発端とする、芸能界の不倫ブームがありました。2016年には『不機嫌な果実』のドラマが約20年ぶりに新たに放送され、他にも『毒島ゆり子のせきらら日記』『せいせいするほど、愛している』などの不倫ドラマが増えています。このように恋愛も時代のニーズを上手く汲み取り、変化しているのがわかります。これからも恋愛って、テレビで観たいものであり続けるのでしょうか。■今後、恋愛ドラマはどうなっていくのか?不倫ブームも落ち着いた今、では恋愛テレビドラマは今後どうなっていくのでしょう。その先に見えてくるのは、2つのポイントがあると思います。・共感に寄せる or ありえない設定での恋愛ドラマが増える1つは『バチェラー・ジャパン』などに代表される(厳密にはドラマではないですが)非現実的だけど共感力の高いドラマが増えるか、逃げ恥に代表されるような新たな価値観や関係性を問いかけるドラマが増えるかもしれません。最近ではフェミニズムなど女性の立場の変化が大きく叫ばれています。恋愛というシーンにおいても、新たな関係性を提示するような作品が今後増えていくことは十分考えられます。・LGBT要素をふくんだ恋愛ドラマが増えるもう1点は、LGBT要素を含んだ恋愛ドラマが増えていくというものです。というか、男性同士の作品に関してはすでに増えています。『おっさんずラブ』や『きのう、何食べた?』などはゲイカップルを主人公にした恋愛ドラマ。『おっさんずラブ』に関してはその人気から映画になるなど、ブームを呼んでいます。では逆にレズビアンカップルに関してはというと、最近だと野島伸司氏がオリジナル脚本を手がけたFODオリジナル番組『百合だのかんだの』があるくらい。ここはゲイとレズビアンの社会的な認知の違いや、原作の多さの差などもあるのかもしれません。とはいえ、今後は多様性をふくんだカップルが注目を浴びる作品も増えていくのは間違いないでしょう。憧れを含んだテレビドラマは、気づけば「分かる」や「新しさ」を含んだコンテンツになっていきました。そしてこれからはどんな作品が、どんな楽しさを運んできてくれるのでしょう。2019年は、恋愛ドラマがちょっと少なめというのが現状です。しかしまずはこの先の変化を想像しながらテレビの前に座り、楽しんでみたいと思います。(文・イラスト:おおしまりえ)
2019年10月28日ファッションやインテリアなど、その道のプロフェッショナルの5人組“ファブ5”が、悩める人たちを次々に変身させていくNetflixオリジナルシリーズ「クィア・アイ」。フード&ワイン担当:アントニ、インテリア担当:ボビー、美容担当:ジョナサン、カルチャー担当:カラモ、ファッション担当:タンが日本を舞台に活躍する「クィア・アイ:We’re in Japan!」が11月1日より、Netflixにて遂に配信スタートとなる。「クィア・アイ:We’re in Japan!」の撮影でファン待望の来日を果たしたファブ5。“自尊心を取り戻し、自分の人生と自分自身を愛すること”の大切さを伝える彼らは、日本に来て何を感じたのか。また、日本の“ヒーロー”たちにどのような変化を与えたのだろうか。日本の人々、日本食、すべてが大好きになった――日本が舞台のスペシャルシーズンの撮影でしたが、日本で撮影してみていかがですか。どんなシーズンになりそうでしょうか。ボビー:日本での撮影は素晴らしかったよ。言葉の壁のせいでうまく意思の疎通が取れないんじゃないかって少し心配していたんだけど、そんなことは全くなかった。カラモ:僕は、日本の文化を世界中の人たちに知ってもらえることがただただ嬉しい。と言うのも、ボビー以外、僕ら全員日本に今回来るまで日本の文化に触れたころがあまりなかったと思うんだ。実際に来てみて、日本の人々、日本食、すべてが大好きになった。ジョナサン:もう、とにかく日本に夢中で、どうなっちゃうか分からなかった。唯一ショックだったのは、日本にいる間に紀平梨花選手に会えなかったこと。東京と東京近郊にあるスケート・リンク全て行ったのに!今度の世界選手権、彼女絶対に優勝するから。どこよりも早く断言する。だって、ヤバいでしょ。あのトリプル・アクセル、トリプル・トーループ。あり得ないから!もう、出来過ぎ。しかも4回転も挑戦しているみたいだし。4回転トーループに4回転サルコー。ヤバいでしょ。世界共通の“愛”を届ける「クィア・アイ」――日本でも「クィア・アイ」が大人気なのですが、この作品が国や文化の壁を超えて多くの人に愛される理由はどこにあると思いますか。タン:特にメディアなんかを見ても分かるように、世界中で人々が切り離され地域社会が大きく分断されているけど、僕たちの番組を観て、人はいろんな風に繋がることができるんだってことに気づくからじゃないかな。お互いに心を開くだけで素晴らしいことが起きる可能性があって、明らかだと思っているそうした隔たりが実はそうじゃないんだってことにね。カラモ:世界の共通語は「愛」で、誰もが愛を求めている。誰もが愛されたいと思っているし、誰かに存在を認めてもらいたいと思っている。周りから否定的な目で見られているんじゃないか、愛されていないんじゃないか、嫌われているんじゃないかという思いを抱えながらみんな生きている。だからこそ、人に勇気を与える、「今のままで十分素敵だ」「みんな君を愛しているよ」と言ってくれる番組にみんな惹かれるんじゃないかな。ジョナサン:その通り!ボビー:それ以上の答えはないよ。褒めることの大切さ「生き方を変えることができる」――皆さんがどのように褒め上手になれたのかを簡単に教えてもらえますか。ジョナサン:誰がなんと言おうと、これまで出会った人たちは、少なくとも僕が知る限りテロリスト級の悪人はいないと思っているし、大抵の場合、何らかの形で気持ちが通じ合うことができる。僕はアメリカの田舎町の出身で、親戚の半分はトランプ支持者だ。(困ったもんだってのは)分かってる。それでも、ほとんどの話題で根本的に意見が合わない彼らのような人たちでも、「自信を持ちたい」「自分の思いを聞いて欲しい」という彼らの思いには共感できる。そういうことなんだと思う。自分と違う部分にばかり目を向けるよりも、どこか共感できる部分を見つけることの方が気持ちが満たされる。――ただしツイッターは別。負の感情は全てツイッターで吐き出すの。そうやって負の感情を全部吐き出すことで、現実世界で出会った人たちと共感できるんだと思う。ボビー:ゲイの男としてアメリカで育って、これまで嫌なことを散々言われてきた身としては、人を褒めてあげることだったり、その人の良い部分を見つけてあげることが如何に大事かということを身をもって学んできた。言葉によってどれだけ傷つけられるかが分かっているから。だからこそ、言葉が人に与えるプラスの効果も、褒めることの影響力もわかっていて、誰かをちょっと褒めてあげるだけで、その人の生き方を変えることができるのも分かっているんだ。――日本では結婚しないと幸せになれない、と言うような固定概念がまだ色濃く残っています。いつもハッピーな皆さんにとって、幸せの概念とは?ジョナサン:何よりもまず自分を愛せなければ駄目。それ以外のことはオマケのようなもの。番組の中でも、恋愛を成就させるお手伝いをしてきたし、見ていて楽しいのは確かだけど、一番重要なのは自分自身を愛することだって僕たち全員が思っている。近代的でも古き良き風情を残す日本の風景――今回日本で撮影をしてみて、予想していなかった、日本ならではの独特な違いがあれば教えて下さい。ボビー:僕は何度も来ているから日本がどんなところか分かっていた。世界で一番好きな国の一つでもあり、一番好きな街の一つでもある。秩序正しく、清潔で、全てのものが時間通りに動くのが大好きだ。日本のスタッフは絶対に優秀だろうと期待していたし、全てが順調に進むと思っていた。さっきも言ったけど、意思の疎通を図る上で言葉の壁という面で少し不安はあったけど、そんな心配も無用だった。なんの問題もなく気持ちが通じ合うことができた。だから予想外のことは特になかった。そこが日本のいいところでもある。期待を裏切らない。ジョナサン:僕は日本の美しさに驚いた。東京も日本も今回初めて来た。初めて来てみて、「ヤバい」って思った。古い伝統的な建造物が真新しい建物と隣り合わせで立ち並んでいて、至る所にちょっとした穴場のような味のある路地裏が存在する。街中を当てもなく歩いていても、迷子になるという感覚にならない。とにかくもう、最高。アントニ:僕からも一つある。僕にとっては今回初めてのアジアで初めての日本だったんだけど、日本の何が好きかって、例えばカナダやアメリカだと全てが近代的で、みんな真新しいものを求める。一方でヨーロッパに行くと古いものに対する敬意が重んじられていて、400年も500年前も前に建てられた建築物がある。で、ここ日本は、その両者が見事に共存している。しかも技術的に物凄く進歩している。これは前にも話したけど、自動お湯はりのお風呂には本当に救われた。ジョナサン:トイレも!もう少しだけ自分のことを愛してあげよう――日本では風邪予防だけではなく、自分に自信がないという理由で夏でもマスクをつけている人もいます。顔を隠すこと、自分に自信がないと言うことに対して、メッセージがあれば教えて下さい。ジョナサン:心地いい場所、つまりぬるま湯に浸かったままだと人間は成長しない。だからもし医学的な理由ではなく、落ち着いくという安心感が理由で毎日マスクをつけているのだとしたら、まず「何を一体そんなに怖がっているの?」「何から隠れているの?」と自分に聞いてみて、例えば試しに火曜日と木曜日だけはマスクを外してみる、というのはどうかな。いきなり毎日外すのは難しいと思うから、例えば「1日おきに外してみる」とか、ちょっとずつ試してみるところから始めてみたらいいと思う。そして自分に聞いてみるの。「なんでマスクをした方が落ち着くんだろう」って。こういうのも(手で顔の下半分を覆う)確かにお洒落だけど、それが本来の自分を隠すものだったとしたら何か対策を考えないとだね。カラモ:僕からも言わせて貰うと、今回日本の依頼人たちと接して気づいたのは、彼らの多くが人には見せたくない部分を抱えていることだった。それは傷ついたことが発端だったりする。誰かから自分のことを変だとか醜いと言われたりして。その傷が今度は恥に変わって、自分もそうだと思い込んでしまう。今回日本の依頼人たちで特に感じたのは、まずそう思い込んでしまったこと、そしてそれを隠さなきゃと思っていた自分を許してあげていいんだと伝えることが最初のステップだということ。「その思い込みから自分を解放してあげていいんだ」と自分で自覚する必要がある。そこから今度は、自分が抱えている「恥」だったり、「自己否定」を無くす為には別のメッセージで置き換えないといけない、ということを知ることが大事なんだ。ジョナサンが言うような、自分を肯定する小さなことから始めてみるのでもいい。ジョナサン:僕はこれを「学習棄却(いったん学習したことを意識的に忘れ、学び直すこと)」って呼んでるんだ。カラモ:学習棄却だ。自分が好きになれる自分の別の部分に目を向けるんだ。そして人に揶揄されるんじゃないかと自信が持てないものを抱えていたとしても、自分のことを「美しい」と言ってくれる、自分を支えてくれる人たちを周りにおくこと。自信が持てないのは誰だって同じ。人から「変だ」と言われた経験は誰にだってあって、みんな日々自分に「大丈夫だ」って言い聞かせているんだ。ありのままの自分こそが完璧な姿であって、そんな自分を愛するところからまず始まる。そうやって一歩一歩進むことによってマスクをつけて自分を隠している人たちでも、自信が持てるようになるんじゃないかな。ボビー:日本文化全般に言えることは、もう少しだけ自分のことを愛してあげてもいいんじゃないかということ。もっと自分を褒めてあげてもいいと思うし、自分を大事にしてあげていいと思う。これまで日本の人たちと接してきて感じたことは、みんな常に他の人がどう思うかを気にしている。何度も言うけど、それはそれで素晴らしいことなんだよ。調和のとれた社会を作ることができるんだから。でも同時に、個人の中に抱え込んでしまうものもたくさん産んでしまう。そのことにもっとみんな気づかないといけないと思う。『ル・ポールのドラァグ・レース』をみんな見てるかわからないけど、ママ・ルーの言葉を借りるなら、「自分を愛せなくて、どうやって他の誰かを愛せるって言うの?」ってこと。本当に本当にその通りだから。だって自分を愛せなくて、自分を美しいと思えない人が、結婚相手や家族に対して愛情を伝えられるわけないでしょ?自分にだってできないんだから。今回日本で出会った依頼人の中でも、どうしても自分を好きになれない依頼人が一人いてね。僕たちから見たら本当に素敵な人なのに、自分ではそう思えず、だから奥さんに対しても愛情を伝えることができなかった。でも今は自分の素晴らしさに気づくことができて、奥さんに対する態度も変わったのを目の当たりにして、本当に最高だった。だから、そこが唯一日本の文化に欠けている部分だと思う。もっと自分のことを愛していいと思う。そこは変わらなきゃ駄目な部分。まあ、アメリカ人は自分たちのことを愛し過ぎだけどね。ジョナサン:僕が気づいたのは、一般的に日本人が抱える問題とアメリカ人が抱える問題を区別してその文化的背景の違いばかりが取り上げられるけど、アメリカの田舎だってLGBTに対して抑圧的だ。だから抑圧的な伝統を重んじる文化で育つ人の気持ちは僕にはよくわかる。それに、自殺は日本が抱える大きな問題だけど、アメリカでも同じ。過重労働もアメリカで今大きな問題で、日本でも同様だ。男女の不平等や賃金差にしてもそう。日本が抱える問題はアメリカが抱える問題とさほど違いはない。例外なのは銃規制だ。つまり何が言いたいかというと、国が違っていても抱えている問題はそんなに差がないと言うこと。一見全然違うように見えて、一歩下がって社会学的観点から見てみると、日本文化もアメリカ文化も、南アフリカもロシアも、みんなそれぞれ抱えている問題はあるけれども、突き詰めてしまえば、みんな愛を求めているんだ。みんな受け入れられたいと思っている。他のことは単なるおまけでしかない。だから、例えば日本人はもっとこうした方がいいとか、アメリカ人はもっとこうしなきゃ駄目だって話になると、そういう漠然とした一般論にはうんざりしてしまうんだ。だって、みんなそれぞれ必死に悩んでいるんだから。Netflixオリジナルシリーズ「クィア・アイ in Japan!」は11月1日(金)より独占配信開始。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング
2019年10月09日アメリカの禅センターで暮らしていた頃、“禅”と書かれた特注の作務衣を着こなすイケメンゲイのレジデントが居ました。彼はのちにパンセクシャル(全性愛)の女性と恋に落ち、僧侶の道を志すことに。二元性を超えた空(くう)の世界に触れたいと、アメリカで禅修行に勤しむ人たちにLGBT(性的少数者)の人々が少なくないことは自然なのかもしれません。言葉を生業にしていたというアイデンティティなんてものは完全に崩壊し、危うい英語で立ち回り続けた丸裸同然の筆者・土居彩がアメリカ修行中にジェンダーについて考えました。取材、文・土居彩 看板写真・Yumiko Sushitani【マック・マインドフルネス時代の瞑想探し。「魂ナビ」が欲しい!】vol. 3モテモテだったイケメン雲水のアール。私がアメリカの禅センターで典座とともに料理を作りながら生活していたとき、アール(仮名)というイケメン・レジデントがいました。アールの生まれはドイツ。イギリスの名門大学院を卒業し、ロンドンにアート関連の会社を起業した彼は美術に特化したコンサルティング業務を生業としていました。彼が渡米して禅センターで修行生活をしていたのは、禅仏教関係の古美術に魅せられたため。プラクティスしながらその世界に触れ、学びたいと考えたのです。完璧なクイーンズ・イングリッシュを話し、ちょっとスパイシーな冗談を飛ばすアール。筋金入りのミニマリストな彼が持っている服といえば、「禅」と襟元に書かれた特注の黒い作務衣と着古されたコム・デ・ギャルソンのブラック・ジャケットのみ。只者ではないこだわりを見せ、キラキラ光る瞳にしなやかな肢体、くすんだ色の金髪には寝癖が……と、見た目もいいので当然モテます。ところが、禅センターで恋愛はご法度。特に最初の4か月間は断固禁止で、レジデントとして認められたあかつきに渡される分厚い文書のかなりのページにも「恋愛沙汰NG」というお達しが念入りに書かれています。とはいってもアールのことをちょっといいなと思っていた女性は私が知っているだけでも何人かいて、彼女たちは恋破れては涙していました。というのも、アールはゲイだったからです。ゲイの彼がパンセクシャルの女性に恋をした。このたびそんなアールが恋に落ちて結婚したのです。なんと相手は、女性! 美男美女で、就寝前には二人そろって小さな顔にウディ・アレンみたいな大きな丸メガネをかけ、笑っちゃうぐらいそっくり。パートナーのティ(仮名)は、パンセクシャル。彼女の前の恋人は女性で、その前は男性。ティにとって性別というのは付属的なものに過ぎず、相手に惹かれるかどうかの条件にはならないのだそうです。ちなみにバイセクシャルと混同されがちなパンセクシャルですが、バイセクシャルが「男性も女性も好き」とするのに対して、パンセクシャルは「相手の性別に囚われないで好き」となります。異性愛者の私ではありますが、ニンフのような人間離れした透明感と底なしの明るさを持つティの魅力には、ちょっとクラッとくることも。アールが落ちたのもわかります。そして僧侶になったアール。とはいえ男性以外とお付き合いをしたことが無かったアール自身もビックリな展開です。当然ティ以外に女性経験ゼロな彼は「日々女性器の奥深さを探究中だけど、すごいんだねぇ! 僕らに娘ができたら、“アヤ”って名づけるつもりなんだ」、ですって。アメリカ人のティと結婚したアールは現在グリーンカードを申請中。ロンドンの会社も閉鎖し、出家してよりディープなお坊さん修行に勤めています。神は男と女を作られた。アメリカにおけるLGBT(性的少数者)の人たちが、「神は男と女を作られた」とする旧約聖書を基にした教えではなく、男と女という二元性や、「私」という個の概念を超越したところに真理があるとするブッダの教えを積極的に学ぼうとするのは自然なことなのかもしれません。ところでアールのドラマティックな出来事はすべて、たった半年間で起こった話。当人を含めて誰も想像できないものでした。つまり私たちは、自分はこういう人間だと、どこか決めているところがありますが、変わるんです、実際は。アールのように。あらゆるものは変わるという般若心経の教え。そういえば私たちが一緒に禅センターの朝課で唱えていた摩訶般若心経も、あらゆるものには自性がなく、変化を続けることが存在の本質だと説いていました。毎朝唱え続けることで、気づかないうちにその教えがアールや私にも浸潤したのでしょうか。というのもアールほど極端な例ではありませんが、私もずいぶん変わりました。料理しない女が典座と料理を作り続けたら…。例えばアンアン編集者時代は素晴らしい料理家さんたちの料理ページの連載を担当しながら「私は料理をしない女」と豪語していました。太りたくなくて、食べることにもあまり興味がありませんでした。ところが退職してからは何の縁か、アメリカの禅センターで毎日三食30〜100人の人たちの料理を作ることになり、否応なく食べることの重要さをヒシヒシと痛感することになりました。結果として、今では料理は大切な日課になりました。先日も「食」とは「良い人」と書くと、接心でお世話になった福井県の天龍寺のご住職に教えていただき、日々それを実感しています。©星覚食べることを通じて、あらゆるものとの深いつながりを再認識し、さらには食べたものが3日もすれば、自分へと変化していく。そんな食の奥深さについて思うことは、また改めてこちらでお話したいと思います。ほかにも中目黒に住んで、最新ファッション・ショーや化粧品の新作発表会にお邪魔させていただいていた頃には、自分が望んでアメリカで2年間もホームレス生活をするなんて想像すらできませんでしたし。人は毎瞬変化するのです。食べたもの、取り入れた情報、出会った人、語り合った言葉、触れた土地……消費したり感じたもの全てがその人になっていきます。トランス女性禅教師のカイトリオナ・リード。さて1992年にティク・ナット・ハン師から禅仏教教師としての権限を授けられた、アメリカにおけるLGBT禅指導者のカイトリオナ・リードという人がいます。カイトリオナは、南カリフォルニアにあるマンザニタ・ヴィレッジ・リトリート・センターを設立し、持続可能な環境作り、非暴力、社会正義を促進することを目的としたヴィッパサナー瞑想と禅のプラクティスを教えています。今でこそ当たり前と言っても過言ではないLGBTQの仏教家ですが、男性だった彼女がトランス女性禅教師という道を選んだ1996年はそうではありませんでした。実際に弟子のひとりにも「あなたがトランス女性として生きることを選んだことにがっかりしました。だってあなたは私が出会った最も男性性と女性性が統合され、調和している男性だったからです」と言われたそうです。カイトリオナの勇気ある選択を誇りに感じながら、その弟子の心も少しわかります。というのも男性僧院長と女性信者のスキャンダルで問題になった禅センターやスピリチュアル・コミュニティは、アメリカで数か所あるからです。パワーとジェンダーがらみの問題は、たとえ精神修養の地だといっても、そこから完全に解放されてはいません。だからきっと私がレジデントとして暮らした禅センターでも、恋愛御法度という分厚い但し書きが渡されたのでしょう。丸裸でもなおしがみつく「私」というレッテル。日本で編集者だったなんて口が裂けてもいえない、訛りの強い英語に限られた語彙を擦り切れるまでリピートし続けてかろうじて意思の疎通がはかれる、丸裸同然の私っていったい何者なんだろう?そんなふうに日々何者でもない自分と向き合わざるを得なかった毎日の中で、アールとティ、センターの休日に山を降りて一緒に5リズム・ダンスに行ったゲイのダブリュー(仮名)と何か月も一緒に修行しながら生活したことは、丸裸同然でもなお、私が女性というカテゴリーに依然としてしがみついていることに気づかせてくれる体験でした。ある日会話のなかで、当然のように「まぁ、私は異性愛者だから」と私が言ったとき、ティが「どうしてそう言い切れるの?」と興味深そうに、ちょっと悪戯めいて微笑みながらたずねてきました。残念ながらそれに対する「今までそうだったし、これからも多分そうだから」という私の返答は、仏教の修行者としては全くクールではありませんでした。公案だったら老師から落とされているでしょう。だから私は、今日も坐っています。土居彩編集者。株式会社マガジンハウスに14年間勤め、anan編集部、Hanako編集部にて編集者として、広告部ではファッション誌Ginzaのマーケティング&広告営業を勤める。’15年8月〜’17年5月、カリフォルニア大学バークレー校心理学部にて、畏怖の念について研究するダチャー・ケトナー博士の研究室で学ぶ。’18年9月〜’19年1月、7月、ニュー・メキシコ州サンタフェにあるウパヤ禅センターに暮らしながら、ジョアン・ハリファックス師に師事。現在は、書道家・平和活動家、13世紀の道元禅師を初めて英訳し欧米に伝えた禅研究家の棚橋一晃氏の著書『Painting Peace(平和を描く)』(シャンバラ社)を翻訳中。恩人たちに支えられ続けながら、会社を辞めて渡米奮闘したドタバタな当時の様子を綴ったananweb連載『会社を辞めて、こうなった』も。
2019年10月02日「クィア・アイ」で「ファブ5」のひとりとして大人気のジョナサン・ヴァン・ネスが、回想録「Over the Top」を発表した。セックスや薬物依存、幼い頃に教会で年上の少年から受けた性的暴行などについて赤裸々に語っている。「小さい頃に性的暴行を受け、なんとか切り抜けた人たちの多くは、すごくこじれたトラウマを抱えている」と決して消えることのないトラウマにさいなまれていることを綴った。そのトラウマのせいで、ティーン時代のジョナサンは非常に自滅的な行動に走っていたという。インターネットのチャットルームで年上の男性を探しては会い、性交渉を持った。アリゾナ大学に入学すると、コカインにハマってしまい、退学する羽目に。ヘアスタイリストになるためにロサンゼルスに移住した後はメタンフェタミンの依存症になり、リハビリを受けては再発を繰り返した。こうした自暴自棄な行いは、働いていたサロンで意識を失うまで続いたそうだ。気絶した翌日、行いを改めようと決意したジョナサンは、HIVの検査を受けに行ったところ、陽性という結果が出たことを明らかにしている。「クィア・アイ」のようなメイクやヘアで人を助ける番組に出演するにあたり、HIVについて公表することに悩んだというが、トランプ政権のLGBTコミュニティに対するひどい扱いに耐えかね、公表を決意したという。現在、ジョナサンはいまもお酒を飲んだりマリファナを吸ったりすることはあるが、強い薬物からは手を引いたとのこと。(Hiromi Kaku)
2019年09月24日近年、耳にする機会が多くなった「LGBTQ」という言葉。それぞれに、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング・クィアを表すセクシュアルマイノリティの総称であり、今の時代、理解していてもはや当然。そんな中、より深く、きちんと学ぶための教科書となるのが、LGBTQの人物が登場する映画。実際、現代の状況を反映してか、セクシュアルマイノリティの主人公が登場する映画が時を超えて公開されたり、ヒットするケースが増加。その実情を、映画ライターのよしひろまさみちさんに伺った。対話をして相手を知る大切さを映画で学べます。「9月末に公開されるアンドリュー・ヘイ監督の『ウィークエンド』は、2011年の作品です。第21回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭などのイベントで上映されたことはありますが、いよいよ日本で初めて劇場公開されることになりました。これは実は、ゲイを主人公にした作品の作風が大きく変わった、ターニングポイントとなる映画です。それまでは、『ブロークバック・マウンテン』に代表されるように、結ばれてもそうでなくても最後には死ぬといったドラマティックな悲恋ものがほとんどでした。でも、『ウィークエンド』で描かれていたのは、クラブで出会った二人の週末だけの物語。お持ち帰りや年齢差のあるカップル、意見の食い違いなど、ゲイの出会い系における“あるある”が満載で、これまでになかった日常を描くということに切り込んだのです。以降、市井のセクシュアルマイノリティや、異性愛者の社会保障に入りにくいなど現実的な悩みが登場する作品が主流となっています」昨年公開された『ゴッズ・オウン・カントリー』も、その一つ。「牧場を営むジョニーと季節労働者のゲオルゲの男性同士の恋物語です。イベントや映画館での限定上映からスタートし、口コミやSNSでその評判が広がって、全国公開にまで拡大しました。ただ、日本映画にそういったムーブメントがあるかというと、まだないのが実情です。『俺のスカート、どこ行った?』『きのう何食べた?』『腐女子、うっかりゲイに告る。』が同時期に放送されたように、ドラマ界には新しい動きが起こっているだけに残念といえます。今後に期待したいところです」先述の2作以外にも、セクシュアルマイノリティが登場する名作は、数多く存在する。そこには、LGBTQの現状を知るヒントがたくさんあると、よしひろさん。「例えば、1980年代イギリスを舞台にした『パレードへようこそ』は、サッチャー首相と警官という共通の敵を持つ炭鉱町とLGBTQコミュニティが手を組む物語です。最初はセクシュアルマイノリティに偏見を持っていた人たちが、対話をし、一緒に戦うにつれて、相手を理解し始める姿には感動してしまいます。また、ゲイであることを告白した父と戸惑う息子を描く『人生はビギナーズ』は、監督であるマイク・ミルズの実体験がもとになっており、カミングアウトをする方とされる方の気持ちが繊細につづられています。それぞれの映画を観ると、自分とは違うセクシュアリティを持つ人を異質なものとして突っぱねるのではなく、対話をして理解し合うことの大切さを教えてくれます。それは、性にまつわることはもちろん、どんな問題と向き合ううえでも大切なことですよね。映画は、“違う人がいるのが社会”ということを、理解のない人に知ってもらうための良きツールだと思います」よしひろさんおすすめの注目作品をピックアップ。観て、さらに理解を深めてみよう。『WEEKEND ウィークエンド』ライフガードのラッセルは、一夜限りの相手を求めて訪れたクラブで、アーティストを目指すグレンと出会う。年の離れた二人は会話を通じて、お互いの秘密やこだわりについて知っていくが…。9/27~、YEBISU GARDEN CINEMAほかで公開。『ゴッズ・オウン・カントリー』イギリスのヨークシャーを舞台に、2人の青年の出会いから愛が生まれる瞬間までをつづった名作。ベルリン国際映画祭やサンダンス映画祭など、多数の映画祭で賞を受賞。監督はフランシス・リー。Blu-ray&DVD発売中発売・販売元:ファインフィルムズ『キャロル』デパートで働くテレーズと、そこへ買い物に来たキャロル。同性ながらも強く心惹かれ合い、異性のパートナーがいながらも逢瀬を重ねるようになる。「キャロルの眼差しから、その思いが伝わってくる。演じるケイト・ブランシェットの美しさに魅了されます」DVD¥3,800発売・販売元:KADOKAWA『人生はビギナーズ』75歳の父親・ハルに、ゲイであることを告白されたオリヴァー。内気な彼だったが、父が亡くなった後に行ったパーティで運命の女性と出会う。「余生を若い恋人と過ごすハルを見ると、親には、彼のように幸せに、自由に暮らしてほしいと感じるはずです」DVD¥1,500発売元:クロックワークス販売元:アミューズソフト©2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.よしひろまさみちオネエ系映画ライター、編集者。小誌をはじめ『otona MUSE』『sweet』など、様々な媒体で執筆を行う。『スッキリ』(日本テレビ系)では、月1オススメ映画紹介を担当している。※『anan』2019年8月14日-21日合併号より。取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2019年08月18日「女の子」の枠に入れられるのが嫌。でも、「男の子」になりたかったわけではない突然だが、私の戸籍上の性別は女性である。「何を今さら」と言われてしまいそうだが、私は長年この事実に違和感を抱いてきた。私が生まれた昭和50(1975)年は、今以上にジェンダーロール(性役割)が守るべきものとして扱われていた時代である。女の子はスカートを履くのが当たり前。現在では好んで履くこともあるが、物心ついた当時は、これが嫌で嫌で仕方なかった。股下がスースーするような履き心地が心もとないというのもあるが、「女性である」という枠に組み込まれてしまうようで、何だか恐ろしかったのだ。「女の子らしい」とされるレースや小花柄などは、視覚情報としてうるさく感じられ、避けていた。かといって、男の子になりたかったわけではない。私の髪は、元美容師である母の手によって常にショートカットにされていた。私から「長く伸ばしたい」と母に願い出たことも何度もあったが、「自分で手入れができるようになってからね」と聞き流されていた。なぜ娘の願い出をいつも退けていたのかと後年質問したところ、「ショートカットが可愛いと思っていたから」と答えた。嘘ではないだろうが、おそらく面倒だったのもあると私は思う。私には3歳上の兄がいて、今ではすっかり落ち着いた2児の父親だが、学童期は多動気味な少年だった。そんな息子を育てながら、こだわりの強い娘こと私の髪を毎日結ってから送り出すなんて、自分だったら泣きながら「勘弁してください」と願い出るだろう。ショートカットで装飾の少ないシャツやパンツという出で立ちに加え、痩せてはいたが、骨ばったごつい体格をしている私は、しょっちゅう男の子に間違われていた。保育園や小学校のクラスメイトからの「オトコオンナ」というからかいも、悪気ない大人から「坊ちゃん」などと呼ばれるのも、等しく不快に感じていた。なぜ服装や髪型から「男の子である」と決めつけられ、時にはからかいの対象として扱われなければならないのか。とても理不尽に思え、泣きながらその場を逃げ去ることもあった。「女性」の枠に入れられることも、「男性」として扱われることも、私にとっては受け入れ難い。「じゃあ私は一体どっちに入ったらいいの?」そんな疑問が湧き上がってきた。「私、女の子に産んでほしいって頼んでない!」性別違和とジェンダーロールへの不満を爆発させた私。そのとき母はさて、私の母はとても朗らかかつ柔軟性のある人で、ぶつかることもありつつ、深い愛情を注いでもらっていた。しかし「男の子だから」「女の子だから」をよく持ち出す人で、3歳上の兄には許されるのに私には許されないことがさまざまあった。兄の立場からしたら、逆のこともあったのかもしれないが、ここは一旦横に置く。「男である」「女である」と断じられることへの違和感を払拭できずにいた私は、母への不満を募らせることになる。そして、それが思春期に爆発した。高校1年生の夏休みのこと。兄はすでに実家を離れ、県外で暮らしていた。両親は共働きで、それぞれ出勤してしまうまで寝過ごしてしまった私は、食後に食器をシンクに入れたまま洗いそびれ、慌てて部活動の練習へ向かった。夕方、母より後に帰宅をした私は、こっぴどく叱られた。寝坊したために自分がすべきことをこなせず、母の仕事を増やしてしまったことは申し訳ないと思い、素直に謝罪した。が、ふと(あれ?兄ちゃんも高校生のとき、似たようなことが何度もあったよな。でも、叱られてなかった…)と気づき、どうしてかと母に尋ねると、「○○(兄)は男の子だからいいの!希望は女の子でしょ!?」と一喝された。「え、何それ。私、女の子に生まれたい、女の子に産んでほしいって頼んだわけじゃないのに、どうして“女の子だから”だなんて役割を背負わされなきゃいけないの?女の子だから、女の子らしく…そう言う割にさ、小さいころの私が男の子に間違われた、嫌だ、髪を伸ばしたいって頼んでも、ボーイッシュで可愛いじゃないとかさ、私、別にボーイッシュがいいなんて思ってなかった。というか、女の子らしくしたらいいの?ボーイッシュにすればいいの?それを私に選ぶ権利はないの?ねえ?子どもは親の選択に従わなければならないの!?男か女じゃなくちゃいけないの??私は私でいてはいけないの!!?」長らく抱えていた性別への違和感と、ジェンダーロールに絡め取られて自己が失われてしまうような不気味な感覚がないまぜになって、私は一気にまくし立ててしまった。前述したとおり、普段の母は陽気で柔軟、発達障害だなんて概念すら知らなかったころから、私の特性を尊重してくれた。だから私はとても信頼していた。こんな言葉をぶつけられる程度に信頼していた。でも「女の子に産んでほしいって頼んだわけじゃない」はさすがに言い過ぎだ。母は、今までに見たことのないような、強ばった悲しげな表情を浮かべている。まずいと気づいたものの、吐き出した言葉は取り戻せない。何を言うべきか、何をするべきか、私が迷い、うろたえている間、重い空気が流れる。先に口を開き、沈黙を破ったのは母だった。「ごめん、私はちゃんと希望を1人の人間として見ていなかったのかもしれないね。これからは女の子だからとか、そういうことは言わずにちゃんと話を聞くようにしなくちゃね」きっぱりとした口調で母は伝えてくれたが、傷ついていたのではなかろうか。私は凄まじい後悔と、やっと言えて、なおかつ受け入れてもらえた安堵に包まれ、その後のことは覚えていない。以降、母との関係は良好だ。しかし、長年当たり前だと思っていた感覚から抜け出すことは容易ではない。役割を押しつけてくることこそなくなったが、私の息子について「男の子だからそれぐらいでいいの!」というようなかたちでジェンダーロールを持ち出すことがある。その度に「だからそういうのはやめてって頼んだでしょ」「あ、そうだったね、ごめんごめん」と意思表示して笑い合うことができているのだから、あの日の衝突は無駄ではなかったと思える。まだ自分が「女性」だという確証を持てない私。男女、LGBT以外にも多様な性があると知り…女性の体を持って生まれ、恋愛や性愛の感情は男性に向く事実を踏まえると、自分は女性であると捉えるのが自然だ。でもやはり、どこか据わりが悪い。身体的なことはともかく、「心が男性」だとか「心が女性」だという表現があるが、何を以て判断できるのか。基準が分からないから、私は自分が「女性である」という確証を持てないのだ。それに、現時点で恋愛・性愛の対象が男性だとしても、いつか魅力的な女性に出会って、私が恋をする可能性が皆無とも思えない。だからといって、自分がレズビアンもしくはバイセクシュアルだというのも、どうにもピンとこないのだ。2度の結婚と離婚、出産を経ても、そうした思いは変わらなかった。そしてあるとき、後に書籍化される宗方美樹(現・小池みき)さんの『同居人の美少女がレズビアンだった件。』というWeb漫画と、同作で“同居人・まきむぅ”として描かれている牧村朝子さんの『百合のリアル』という書籍に出会い、男女及びLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)以外にも、多様な性(LGBTQ+)があるということと、Xジェンダー、クエスチョニングという概念を知ったのだった。他者に判断された性別でも、男性でも女性でもないあり方を選ぶもの『百合のリアル』(牧村朝子著/星海社)P59より性に対するあり方をまだ決めていない。もしくはあえて決めない。『百合のリアル』(牧村朝子著/星海社)星海社P108より衝撃を受けたのと同時に、深く安堵した。男性か女性のいずれでなくてもいいし、無理に決めなくてもいいのだ、と。そして『百合のリアル』には、私が何十年も抱えてきた思いと似た、牧村さんの言葉もつづられていた。わたしの場合、「未知への恐れ」は自分自身に向いていました。自分の中の同性愛を嫌悪し、「よくわからないもの」として恐怖していたのです。(中略)この「自分が何者かわからない恐怖感」を解決するために、わたしは「同性愛者」とか「レズビアン」という言葉を欲しがったのだと思います。「男としか付き合ったことがない自分は同性愛者じゃない」とか、「女と寝たことがない自分はまだレズビアンになれていない」とか、そんなの誰が決めたのかしらっていう謎の思い込みに苦しめられながら。わたしはこの「自分の中の未知への恐怖」に、色んな名前をあてがうことで、解決を試みました。(中略)色んな言葉で説明しようとしたなあ、って思います。レズビアンとか、ファッションレズとか、バイセクシュアルとか、性同一性障害、アライだとか。けれど、どんな言葉で説明しても、結局自分は自分だったのです。『百合のリアル』(牧村朝子著/星海社)P243-246より自分を男性だとも、女性の体を持って生まれてきたにも関わらず、女性だとも自認できない状態は、正直に申し上げて恐怖だった。だからこそXジェンダー、クエスチョニングという概念を知ることで救われた。許されたような気がした。現在の私は、性自認について問われた場合、「FtX(Female to X-gender、女性からXジェンダー)」もしくは「FtQ(Female to Questioning、女性からクエスチョニング)」と答えている。とはいえ、平時はあまりこだわりがないというか、意識をしない。相変わらず「女性である」と断定されることへの違和感は消えてはいないが、「私は男性でも女性でもないけれど、男性と女性の両方があるのかもしれない。だから、女性“でも”あるのかもしれないな」と、以前よりは楽に受け止められるようになった。「男だろうが女だろうが、どんな性であろうが、私は私でしかないんだ」という確信があるからだ。もしわが子が性別違和を訴えたら、私が伝えたいこと自閉症スペクトラム障害との診断を受け、SNSなどを通じてさまざまな人と交流をするようになってから、私と同じように性別違和を抱えている発達障害当事者は少なくないことが分かった。近年、イギリスなどでは、発達障害と性別違和の関連性についての研究が進められているという。もちろん、発達障害当事者の全員が性別違和を感じるわけではないし、性別違和を抱える人が、必ずしも発達障害当事者であるとは限らない。そして現段階では、どのように関連があるのかは分からない状態だ。しかし、発達障害当事者である息子が性別違和の苦しみを訴える未来を、全く想像しないわけではない。自分にも経験があるし、おそらく私は驚かないだろう。どう寄り添えるのかはそのときになってみないと分からないけれど、彼の思いを受け入れ、肯定したい。人が人をカテゴリという器に押し込めても、それぞれのアイデンティティは、それぞれが選び身に付けるものです。『百合のリアル』(牧村朝子著/星海社)P249より「性自認やアイデンティティは決めてもいいし、決めなくてもいい。一旦決めてから、また変わることがあってもいいんじゃないかな。何があってもあなたはあなただから」常識と呼ばれるものや、時代ごとに求められるジェンダーロールにとらわれ、迷い、悩み、母との衝突を経て理解を得てもなお、「性自認が曖昧な自分だから、母を傷つけてしまったのではないか」と自己否定をして苦しんだ私だからこそ、そんなふうに伝えたい。参考:「あなたがあなたらしく生きるために性的マイノリティと人権」活用の手引き|法務省委託 人権ライブラリー※クエスチョニングについても触れられています
2019年08月16日切実だけど、なかなか人に相談しにくい“性”の問題。ともすれば後ろめたささえ感じてしまうこのテーマ。本誌は真正面から向き合うことにしました。今回、この問題に取り組んでくれたのは、江原啓之さん。「性の悩みを、秘めたることにしてはいけない。堂々と、ポジティブに論じ合うべきなのです」と語り始めた江原さんの言葉に、ぜひ耳を傾けてください。そこにはきっと、“心にふたをしていたあなた”に届く珠玉のメッセージがあるはずです。「日本では、まだ性について語ることに少なからず罪悪感を抱いてしまう人が多いですよね。ですが、性の問題は愛の問題ですから、秘めたることにするのではなく、堂々と向き合い、論じられなければならないことなのです」今回、“性”をテーマとした特集を組むきっかけとなったのは、近年、編集部に性に関する悩みが多く寄せられるようになったから。「この年になって性欲が高まって困っています」「結婚して数十年ですが、オルガズムが何なのかわからない」。そんな切実な悩みが目立つのだが、文面にはどこか気まずさが漂い、悩むこと自体にネガティブな感情を抱いている人が多いようなのだ。そこで、これまで多くの女性の悩みに向き合ってきた江原さんに、性の悩みの根底にある問題、その本質について解き明かしてもらうことにした。江原さんは「日本ほど性に関することを秘め事にしてきた国はなく、年齢を重ねた女性も、もっとこのテーマと向き合い、語り合うべきだ」と力説する。「私が個人カウンセリングをしていたのは、昭和から平成にかけての時期。当時から性やセックスに関する悩みは、女性にとって最大のテーマでした。その際、常に説いていたのは、スピリチュアルな視点では、セックスとはオーラの融合であり、いわば『オーラマーキング』であるということです。そして夫婦間においてオーラを融合させる方法は、セックスがすべてではありません。長年連れ添った仲のよい夫婦であれば、体を寄せ合うだけでも十分。つまり、『融合するオーラ』というのは、愛し愛されていることの証明であり、気恥ずかしさを感じる必要はないのです」そして、そもそもセックスとは、“生の根源”。たとえば「令和」の典拠となった『万葉集』と並び、日本の古典の代表的な作品である『古事記』には、イザナミノミコトとイザナギノミコトの営みによる“国産み”の場面が描かれる。「神話においても重要なモチーフとなっているセックス。令和の御代を迎えたいまこそ、性についての認識を根底から問い直すべきときなのです」そして近年、江原さんが憂いている「安楽死」の問題を引き合いに出し、こう説き続ける。「私は、積極的な延命治療を避ける『尊厳死』は否定しませんが、自ら命を閉じる選択をする『安楽死』には断固反対です。安楽死を望むのは、“生きる欲”をなくしてしまうということ。そう考えると、人間の抱える現世三大欲である食欲・物欲・性欲を感じることは、『生きたい』と願う証し。性衝動が高まったり、性に思いまどう人は、“生きる欲”が旺盛な頼もしい存在なのです」さらに、「高齢になると性欲は減退するはずで、高まるのは恥ずかしいこと」という考えは、間違った思い込みであるとも語る。「『あなたはいつから大人になりましたか?』と聞かれたとき、世間的には大人といわれる年齢になっていても『いまだに子どもだな』と感じる人も多いはず。肉体面で老いを感じても、心は子どものころのままではありませんか?ですからセックスについても『もう若くはないから』という限界を感じる必要はありません。むしろ、童心に帰ってパートナーと大いに楽しみましょう。それが生きるエネルギーにもつながります」また、江原さんがもうひとつ懸念するのは、柳澤伯夫元大臣の「女性は産む機械」発言や、杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」といった発言がまかり通る日本社会の現状についてだ。「生産性のないことには価値がない、子どもを作るためでなければセックスをしても意味がない、といった論調が噴出するこの国に危うさを感じます。いうまでもなく、セックスとは子どもを授かるためだけにするものではなく、愛し愛されるための営みです。本当のセックスは心でするものであり、いわば『愛と向き合うための性』の行為でもあるのです」
2019年08月15日おとな向け週末映画ガイド今週のオススメは『グッド・ヴァイブレーションズ』『トム・オブ・フィンランド』『あなたの名前を呼べたなら』『風をつかまえた少年』。特集上映では「京マチ子追悼映画祭」に注目!ぴあ編集部 坂口英明19/8/2(金)イラストレーション:高松啓二今週公開の作品は15本。このうち、全国300スクリーン規模で拡大上映されるのは『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の2本、あとはミニシアターなど小規模での公開とライブビューイングです。その中から、おとなの映画ファンにオススメしたい作品をご紹介します。世界は矛盾と理不尽なことで満ち満ちているけれど、あながち捨てたもんじゃないな、と思える4本です。『グッド・ヴァイブレーションズ』右か左か、バーで政治論争をしていた頃はよかったが、プロテスタントかカトリックか、の争いとなり、やがて店から客が消え、銃弾飛び交う内戦が始まった。そんな北アイルランドの1970年代が舞台です。「戦争の前は、街のホールでストーンズを観た。ディランもジミヘンもフーもアニマルズもキンクスも観た。ベルファストに来たアーティストは全部観た。だけど、いつしか誰も来なくなった」と嘆くひとりの音楽好きが、こんな時こそと思い立ち、テロの標的となってしまった"爆弾横町”と呼ばれる荒れ果てた街の一角に、「グッド・ヴァイブレーションズ」という名のレコード店を開きました。彼はそれがきっかけで地元のパンクバンドにのめり込み、北のパンクのゴッドファーザーとロンドンの雑誌にとりあげられるまでになります。バンドのテレビ出演、戦火の中のツアー敢行、損得は二の次で駆け抜けるのです。そういう実話の映画化です。アイルランド紛争が解決したのはそれから20年くらい後の1998年。その間、主人公のテリーさんは決して大成功を収めませんし、バンドも大スターにはなりません。お店も何度も開閉を繰り返します。でもいいじゃないか、この元気。逆境の中でも夢を追う主人公の、愛すべきキャラと簡単にはメゲない持続する志が素晴らしい映画です。ピーター・バラカンさんがぴあアプリ版の連載で、この映画のことを書いています。ピーターさんいわく、彼は「今もまだ店を細々とやっているんじゃないかな」。『トム・オブ・フィンランド』ハードゲイを描いて、世界で有名になったフィンランドのイラストレーター、トウコ・ラークソネンの半生。あのヴィレッジ・ピープルのようなコスチュームの男たち、どこかで見たことのある絵です。第2次大戦後のフィンランド、同性愛は法律で固く禁じられていました。ラークソネンは、戦争から復員したあと、CMのイラストを描く本業のかたわら、深夜、鍵をかけた自室で、密かにそんな絵を描き続けます。やがて、それがアンダーグラウンドの世界に出回り、アメリカにまで輸出されることに。アメリカの雑誌編集者がつけた名前が「トム・オブ・フィンランド」。彼はゲイの世界のアイコンになるのです。フィンランドで同性愛が合法化されたのは1971年。ムーミンについで、2014年にフィンランド郵便が「トム・オブ・フィンランド」の記念切手を発行しました。しかもこの切手、同国郵便史上最高の売上を記録したそうです。ムーミンで有名な国は、いまやLGBTに理解のある国でもあるのです。ラークソネン没後23年のことでした。『あなたの名前を呼べたなら』インド映画です。ただ少し趣がちがって、歌や踊りのエンタテインメントではありません。上映時間も99分と短い。テーマは、主人とメイドの恋、というインドでは現代でも考えにくいタブーにふれたものです。舞台はムンバイ。新婚家庭のメイドに雇われた農村出身の未亡人ラトナが主人公です。雇い主は建築会社の御曹司アシュヴィン。アメリカ帰りのぼんぼんです。新婚のはずが、結婚直前に破談、一人暮らしとなってしまいます。彼の食事を始め、身の回りのケアは住み込みのメイド、ラトナの仕事となります。こうなると、ふたりが接近しても不自然でないのですが、インドではこれは絶対にありえないことなのだそうです。結婚4カ月で夫に死別したあとも、村の風習により婚家に縛られ、自由が利かない暮らし。そこから逃げ出し、都会でメイドをしながら、ファッションデザイナーになる夢にチャレンジしているラトナ。そのひたむきな姿に、アシュヴィンは次第にひかれていき……。原題は『Sir』、ご主人さまと訳されます。日本語タイトルとあわせてみると、ラトナの心の叫びを汲み取ったなんとも見事な題名です。『風をつかまえた少年』これも実話を基にした映画。イギリスとマラウイの合作です。マラウイはアフリカ南部の小さな内陸国。2001年、この国を洪水とそれに続いて干ばつが襲います。零細な農業を営む主人公ウィリアム少年の家族も、その日の食事に困る生活で、入ったばかりの中学校の学費が払えません。しかし、退学させられてもなお、学びたい一心で、図書室に潜り込み理科の勉強を続けます。彼が熱中したのは発電の仕組み。今の貧困を変えられるのではないかと感じたからです。そして、父の唯一の移動手段である自転車を分解して利用すれば、風力発電でポンプをまわし、井戸の水を田畑に導くことができると思いつきます。それを奇想天外としか思えなかった父も、家族の説得と彼の情熱に動かされ、子供を信じ、自転車を手放す決意をし……。主人公のモデルになった少年は、その後奨学金を得て大学へ進み、アメリカに留学、現在は本国に戻って活躍しています。『TIME』誌の「世界を変える30人」に選ばれたことも。ぴあアプリ版の連載「池上彰の映画で世界がわかる」で池上さんがこの映画をとりあげ、「人はなぜ勉強をする必要があるのか。その答えがある」と紹介しています。特集上映では。「京マチ子追悼映画祭」(YEBISU GARDEN CINEMA)8/2〜15)「京マチ子追悼映画祭」(YEBISU GARDEN CINEMA)8/2〜15昭和の名女優、京マチ子さんの追悼特集上映です。今春、大規模な京マチ子映画祭が開かれ、彼女にスポットライトが当たっていました。そこに入ってきた訃報です。5月12日のことです。映画ファンにとっては衝撃でした。今回は「追悼」の2文字を新たに加え、代表作11本が上映されます。京マチ子は「国際グランプリ女優」とよばれました。戦後まもなく、1950年製作の『羅生門』がヴェネチア映画祭金獅子賞と米アカデミー賞名誉賞を受賞。以降『雨月物語』でヴェネチア映画祭銀獅子賞、『地獄門』でカンヌ映画祭グランプリと米アカデミー賞名誉賞、出演作が相次いで国際映画祭で賞を受けます。今回は、黒澤明監督『羅生門』、溝口健二『雨月物語』『赤線地帯』、小津安二郎『浮草』が4Kデジタル復元版、衣笠貞之助『地獄門』がデジタル復元版での上映。他に、春の回顧作品には入っていなかった市川崑監督の『穴』が上映されます。それにしてもすごい監督陣。すべて日本映画史に残る作品です。この機会に大スクリーンでどうぞ。
2019年08月02日誰もが愛したくて、愛されたくて、受け入れたくて、受け入れてほしくて……そして偏見がある。サンシャイン劇場で上演している舞台、三ツ矢雄二プロデュース LGBT THEATER Vol.1「MOTHERS AND SONS ~母と息子~」は、そんなひとりの女性とゲイカップルの家族の話だ。上演は8月4日(日)まで。【チケット情報はこちら】ニューヨークに住むキャル(大塚明夫)とウィル(小野健斗)は同性婚をし、バド(阿部カノン、中村琉葦ダブルキャスト)という11歳の息子と暮らしている。クリスマス前のある日、そこに突然、前触れなくキャサリン(原田美枝子)が訪ねてきた。彼女は、キャルのかつての恋人・アンドレの母親だ。アンドレは20年以上前にエイズで亡くなっており、最近に夫を亡くしたキャサリンは、喪失感のなか「なぜ息子は死んだの?なぜ自分は孤独で、あなた達は幸せなの?」とキャルや自分も追いつめていく……。本作は第68回トニー賞(2014年)戯曲賞にノミネートされた。近年、ブロードウェイではLGBTにまつわる作品が増えている。この舞台となるニューヨークで同性婚が合法となったのは、2011年7月。日本では今月同性婚を認めないのは重大な人権侵害」と日本弁護士連合会が意見書を国に提出したばかりと、ニューヨークに比べてかなり遅れている。そのため人によっては、本作内で交わされる会話に馴染みが少ないかもしれない。ただこれは、タイトルにもあるようにすべての“母親”という役割の女性と、誰かの息子たちの心を巡る物語だ。小ぎれいで広々としたリビングでの1時間40分の会話劇。互いに相容れない気持ちを持ちながら、拒絶することもせず同じ時間を過ごす。原田の不安定だけれど力強い佇まいが、大塚と小野演じるゲイカップルに対して際立つ。しかしその影で、3人それぞれが抱える偏見がちらほらと露呈もする。大人達の複雑な思いなどまだ知らず、少年・バドだけは輝くばかりの未来を見つめて微笑んでいる。素直でまっすぐで甘えん坊なバド。彼の幸せそうな様子から、ここがどんな温かい家庭で、キャルとウィルがどれだけ良い両親なのかが想像できる。バドがダブルキャストなので、演じる俳優によって男3人の家庭から受ける印象も変わるだろう。登場するのが同性愛カップルだからこそ、「血の繋がりや家族とはいったいなにか」という命題が立ち上る。愛し合うこと自体は複雑なことではないはずなのに、なぜ噛み合ないのか……今の時代に突きつけられた、大きな課題でもある。取材・文:河野桃子
2019年08月02日意中の彼と仲良くなり、彼もまんざらじゃないと思っていたはずなのに、いざとなるとなぜか「そういう対象には見られない」と言われてしまう……そんな経験はありませんか?じつは、男性にとって「恋愛対象」に入りやすい女性には、いくつかの共通点があるのです。もちろん容姿やスタイルではありません。いったいどんなところなのでしょう?■ 一緒にいて居心地がいい男性は女性の前でカッコよくいたいもの。「高嶺の花」や仕事や家事にスキのない女性など、あまりにも完璧な女性を前にすると、自分の実力以上に頑張り過ぎてしまうところがあります。ただ、その頑張りは長く続かず、結果として「ずっと一緒にいるのは疲れてしまう」という結論に至ってしまうこともしばしば。彼に一緒にいて「落ち着く」と思ってもらうためには、彼があなたのために無理をしなくてもいいように、ちょっぴり「完璧」を崩してあげて。ちょっと抜けたところがあるくらいのほうが、一緒にいて居心地がいいのです。■ 「俺だけ」感があるだれとでも仲良くできる女性だと、男性側が「俺だけというわけじゃないんだ」と思ってしまい、気持ちにブレーキをかけてしまって、恋愛対象とならないことがあります。意中の彼がいるのなら、万人にモテる必要はありません。褒められることは多くても、微笑み返すのは「彼だけ」にしたり、お誘いは多くても断らないのは「彼だけ」にしたりと、周りとの「差別化」を図りましょう。■ 女性として見られるノリが良くて気が合っても、「男友達」と同じフィールドに入ってはいけません。「男友達」とは「恋愛」に発展することは絶対にないからです。(LGBTなど、いろいろな形があるのでそこは割愛するとして……)そうならないためには、「女性」としての気配を消さないことがポイント。「動きやすい格好」をするにしても、女性らしいラインを強調できるものを選んだり、小物に気を配ったりと、ときどき「こいつも女性なんだな」と意識してもらえるような工夫が大切です。■ 色気があるじつはある研究で、性的なものを極端に拒否、抑圧している人は、フェロモンが出にくいと言われています。フェロモンを出せる人は、性に対して拒否的な気持ちがありません。エッチをしたいなんて「いやらしい」「はしたない」と思っているなら、もっと自分の気持ちに素直になってみて。女性だって「好きな人とエッチをしたい」と思うのは自然なこと。彼とのエッチな妄想を広げてみましょう。そんな自分を許してあげられれば、おのずと色気が出てくるはずです。■ おわりにありのままの自分を素直に出せる人は、とても魅力的に映ります。無理をして完璧な人を演じたり、気持ちを隠したりしていると、どうしても不自然に見えてしまうもの。もし「無理をしている」自覚があるなら、少し崩してみませんか? 少し欠点のある「人間らしい」姿のほうが、彼にとってもかわいく見えるのですから。(矢島 みさえ/ライター)(愛カツ編集部)presented by愛カツ ()
2019年07月24日『ラ・ラ・ランド』でエマ・ストーンのルームメイトのひとりを演じていたジェシカ・ロース主演『ハッピー・デス・デイ』と、その続編『ハッピー・デス・デイ 2U』が公開中。『ゲット・アウト』『スプリット』『ハロウィン』『パージ』などを次々と世に送り出してきたヒットメーカー「ブラムハウス・プロダクション」が製作とあって、もともとホラー映画ファンからの注目度は高かったが、「いい意味で予想を上回る」「今季の大穴」「公開館が少なすぎるのがもったいない」といった鑑賞者からの声が続出し、この夏、見逃し厳禁の1作となっている。「超面白い」「ループものとしては最高傑作かも」映画レビューサイト「coco」でのレビュアー満足度は『ハッピー・デス・デイ』が97%、7月12日(金)より公開されたばかりの『ハッピー・デス・デイ 2U』は100%と高水準。本作が近年量産されるホラー映画の中でひと味違うのは、ジェシカ演じる主人公の大学生ツリーが何度も自分が殺される誕生日の朝に戻ってしまうタイムループホラーであること。「ホラー映画の定番を気持ちよくぶち壊しながら繰り広げられるループは超面白いしハラハラする」「スラッシャーものとのマッシュアップが新鮮」「脚本が素晴らしい!ループものとしては最高傑作かも」「過去作品とはちょっと毛色が違う」との声が相次いでいる。しかも、その主人公ツリーはパーティ大好きで毎晩飲んだくれ、父親からの電話は基本無視、ルームメイトが誕生日祝いにくれたカップケーキもポイ捨て、おまけに大学病院の先生と不倫中という超絶ビ○チ…なのだが、「本人認めてる通り誰に殺されてもおかしくないのが作品進行でもプラス」「主人公が死ねば死ぬほど魅力的にw」「何度も生まれ変わるヒロインが常識的で素直に変化していく様に好感」「主人公にまさか感情移入できるとは」と、性悪な彼女がタイムループを繰り返しながら自分を省みて、次第に共感を覚える存在となっていく点が注目を集めている様子だ。“世界は私中心に回っている”という自己チュー主人公が、何度も同じ1日を繰り返すうちに変わっていくのはビル・マーレイ主演『恋はデジャ・ブ』(’93)などと通じるものがあり、“ミッション”のクリア(真犯人を見つける)までタイムループが続くのはトム・クルーズの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(’14)と同じ。何度もトライ&エラーを繰り返しながら真相に迫る展開は、ジェイク・ギレンホールの『ミッション:8ミニッツ』も彷彿とさせる。「成長してゆく姿が感動的ですらある」「最後は少し泣いてしまった」「青春、恋愛、家族愛、LGBTまで盛り込み」「実は人間ドラマだった」「下手すりゃブラムハウスの最高傑作だよこれ!」といった声も上がっており、タイムループホラーの域を超えた青春ドラマの傑作でもあるようだ。続編では一転、『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』並のSF映画へ!?さらに、「ループ現象の原因が明らかになると同時に更なる問題が発生」するのが、続編『ハッピー・デス・デイ 2U』。「2作目は蛇足かと思ったが、全然そんな事なく超面白かった!」「SFネタが満載でパワーアップ」「『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』並のれっきとしたSF映画」と、前作とはやや趣の異なる感想が多々。今回は、蝶の羽ばたきほどのほんの些細な出来事が大きな変化につながってしまう“バタフライ効果”が鍵となるらしいが、さながらアシュトン・カッチャー主演の『バタフライ・エフェクト』(‘04)か?2作を見届けた方からは、「感動はさらにドラマティックになる」「爆笑痛快」「"最愛の人"を巡る、普遍的な葛藤を描く物語には深く胸打たれ、大満足」との意外な声も上がり始めている。『ハッピー・デス・デイ』『ハッピー・デス・デイ 2U』はTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開中。(text:Reiko Uehara)■関連作品:ハッピー・デス・デイ 2019年6月28日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© Universal Picturesハッピー・デス・デイ 2U 2019年7月12日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© Universal Pictures
2019年07月18日アイドルグループ・Kis-My-Ft2の北山宏光が、舞台『THE NETHER(ネザー)』で主演を務めることが14日、明らかになった。ジェニファー・ヘイリーによる同作は、英国The Royal Court Theatreで上演されると、批評家たちから絶賛され、2015年のローレンス・オリヴィエ賞では作品賞を含め4部門にノミネート(舞台装置で最優秀賞)された。「ネザー/NETHER」と呼ばれるインターネット上の仮想空間で犯罪を取り締まっている捜査官・モリス(北山)を主人公に、「人の欲望の暴走」と「倫理の危うさ」という普遍的な問題を、たった5人の登場人物で鮮やかに描く。日本版の上演台本・演出を手がけるのは、振り込め詐欺、原発事故、イラク戦争など、目の前にある現実を描いてきた瀬戸山美咲。#MeToo運動やLGBTといった、性自認や性的指向に着目し、主人公の性別を女性から、あえて性的なことに恐怖心や嫌悪感を抱く男性にすることで、人間と人間の物語として再構築する。2017年の『あんちゃん』以来2年ぶりの舞台出演となる北山は、欲望渦巻くネット上の仮想空間を捜査する捜査官役を演じる。中村梅雀、シライケイタ、平田満といったキャリアと実力を揃えた面々が揃った。東京公演は東京グローブ座にて10月11日~11月2日、大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて11月7日~11月10日。○瀬戸山美咲(上演台本・演出) コメント人間は肉体と心を持つ限り、「満ち足りなさ」や「寂しさ」を感じてしまう……。この作品はインターネット上の犯罪をサスペンスフルに描きながら、そういった人間の普遍的な姿を描いています。また、テクノロジーと倫理、仮想空間での表現の自由など、今、私たちが直面している様々な問題が盛り込まれている戯曲です。とても刺激的なキャストが揃いました。みんなで化学反応を起こしながら、人間の本質に迫っていきたいと思います。○北山宏光 コメント初めてお話をいただいた時、その世界感と内容に最初は戸惑いました。ただ台本を読みこんでいくと、これは現実でも起こりうる可能性もある話だし、社会的なメッセージが込められていて、非常に楽しみになってきました。表現するのには、まだまだ未知数な部分もありますが、良いチャレンジになると思っています。共演者の方々も、大先輩ばかりで、生半可な気持ちでは到底、太刀打ちができないので、ちゃんとしがみつき、自分の中でも成長できる舞台にしたいです。○中村梅雀 コメント芸歴55年目にして、出演者が少人数のお芝居に出るのは初めてです。海外作家の作品も数えるほどしか出演していませんが、今回の【バーチャルと現実の世界を行き来する物語】がどんな舞台になるのか、今からとても楽しみです。立派な仕事をしても、家族が居ても、どうにもならない心の歪みや孤独を抱えてしまう人間の、デリケートでチャーミングな深層心理に迫る面白い作品です。是非、沢山の方々に観ていただきたいです。○シライケイタ コメント命の根源や生きることの本質を問い、生きるって何だろうと感じさせるようなこの作品に、俳優として参加できることを、本当に嬉しく思います。最近は脚本や演出をする機会が多く、久々に出演のみに集中する作品になるので、とても楽しみにしています。今をときめく北山さんや大先輩方とともに、良い作品を作っていきたいと思います。○平田満 コメントこのような視点の作品をあまり観たことがなかったので新鮮な気持ちで台本を読みました。仮想空間というのは、僕にはあまり馴染みのない世界ではありますが、この作品の世界観や人間関係を、どれだけリアルに感じられるものなのかがとても興味深く、その中でシムズという役にチャレンジできることにやりがいを感じています。キャストの皆さんや演出の瀬戸山さんと一緒になって、今まで観たことがない、やったことがない演劇になればいいなと思います。
2019年07月14日アメリカ、韓国、そして日本。ミュージックシーンを席巻し、同性の共感を呼んでいるアーティストと彼女たちが支持を集める背景を、音楽通の二人、谷口由貴さんと高橋 修さんが分析!世界中の女性を虜にする“カッコよさ”の秘密とは?――いま女性から支持される女性アーティストに共通のキーワードは?谷口:“強さ”が重要なキーワードだと思います。特に、アリアナ・グランデなど洋楽トップアーティストに顕著ですが、SNSの登場によって、そのアーティストのスタンス、生き様までもがダイレクトに伝わるようになりました。そうした時代にあって、政治的な発言を含めてモノ申せる女性の強さが、カッコいいと受け止められています。カーディ・Bは、その音楽もSNSも時代的なカッコよさを体現しているラッパーです。高橋:政治的なスタンスだけでなく、性に対しても同じことが言えますよね。R&Bシンガー、ジャネール・モネイは自分のセクシュアリティにすごく意識的で、音楽にも反映させている。そうした彼女たちの姿勢は、女性の支持が高いですよね。谷口:彼女たちが発するメッセージや音楽に触れると、女性リスナーは、「もっと自由でいいんだよ」「みんなと同じでなくてもいい」と勇気がもらえるんです。高橋:ジャネールには、政治的にも注目すべき点があります。アレクサンドリア・オカシオ=コルテスという、去年、下院初当選したばかりで早くも「アメリカ初の女性大統領になれる」とも目される人物のSNSに、ジャネールが「いいね!」しまくってるんです。谷口:そうした強さを外に向けて打ち出し、女性を先導するアーティストが注目される一方で、精神的な闇に迫り、ダークさをさらけ出すタイプへの支持も大きいと感じています。高橋:いまなら、絶対にビリー・アイリッシュですよね。17歳の彼女に、世界が大注目しています。――いわゆるガーリーなものやボディラインを強調するタイトな服ではなく、ビッグシルエットの個性的ファッションを貫いてますね。谷口:彼女は、学校に通わずホームスクールで学んだことが、彼女にしか表現できない独自の世界観を作り上げていそう。私は日本の若者研究もしていますが、ビリー・アイリッシュと同世代の日本人も、一昔前と比べて「みんな同じでなきゃいけない」というよりも、「どうやって自分の色を出すか」という考え方の子が多いように思います。――そうは言ってもなかなか自分らしさを持つことは難しい。谷口:だからこそ、固定観念に縛られず独自の世界を色濃く表現できて、自分の声を代弁してくれる人への憧れや共感が、強まってきているのでしょう。高橋:ホールジーも、以前はダークな音楽をやっていましたし、社会問題や性差別への意識の高さも含め、“いま”を強く感じさせるアーティストのひとりです。カーディ・B1992年生まれ。ポールダンサーとして働き、SNSとリアリティ番組出演で人気を経て、’17年、メジャーデビュー。今年、女性ソロアーティスト初となるグラミー賞最優秀ラップアルバム賞を受賞。提供:ワーナーミュージック・ジャパンジャネール・モネイ1985年生まれ。『The ArchAndroid』でグラミー賞最優秀コンテンポラリーR&Bアルバム賞受賞。映画『ドリーム』など女優としての地位も確立。昨年、「PYNK」のMVで女性器を表現したドレスを着用して話題に。提供:ワーナーミュージック・ジャパンビリー・アイリッシュ2001年生まれ。今年発表したデビューアルバム『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥー・ウィ・ゴー?』が、Apple Musicで80の国と地域で1位を獲得。現代美術家の村上隆ともコラボ。ホールジー1994年生まれ。2ndアルバム『ホープレス・ファウンテン・キングダム』が各国チャート1位に輝く。LGBTや自身が経験したホームレスへのサポートも熱心。最新曲「Nightmare」が配信開始。たにぐち・ゆき(右)博報堂研究開発局研究員。コンテンツビジネスラボのメンバーとして音楽ヒット予測やコンテンツ消費行動調査などを担当。若者研究にも注力。たかはし・おさむ(左)昨年まで、老舗総合音楽誌『ミュージック・マガジン』編集長を20年間務める。今年4月発売された同誌4月増刊号『K‐POP Girls』の編集人。※『anan』2019年7月10日号より。写真・土佐麻理子(対談)取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2019年07月09日シンプルな言葉と、絵で展開される豊かな世界は、新しい価値観や、未知のものへの心の扉を開きます。時を超えたり、理想を見たり…。知らない世界を“絵本”で知ろう!「絵本って同じページをずっと眺めていたり、好きに戻ったりできるのがいいですよね。大人こそ、じっくり“絵を読む”時間によって感性が開かれるような気がします」と、絵本専門士の資格を持つ杉上佐智枝さん。彼女の思う絵本がくれる最大のギフトは“想像力”を育むことだ。「子どもでもわかる内容とテンポなので『この登場人物には、どんな言葉をかけたらいいかな』といった相手の立場を想像する時間が持てます。ファンタジーで、空想の世界で遊ぶもよし、実話で痛みや悲しみに共感するもよし、そこで得た想像力こそが、国を超えてわかり合う力、最終的には人間力になると思います」杉上さんの語る絵本の持つ魅力別に本を紹介します!多様な価値観を受け取る。『タンタンタンゴはパパふたり』文:ジャスティン・リチャードソン&ピーター・パーネル絵:ヘンリー・コール訳:尾辻かな子、前田和男1500円(ポット出版)「LGBTのことは、デリケートな問題ですが絵本を通してだと、子どもにも自然に伝えることができます。私たちが知るためにも、これからの世代に知ってもらうためにも大切なテーマですよね」。卵の代わりに石を温めていたおす同士のペンギンカップル。飼育員が機転を利かせて…。NYの動物園で実際にあったお話。差別や偏見を乗り越える強さ。『彼の手は語りつぐ』著:パトリシア・ポラッコ訳:千葉茂樹1600円(あすなろ書房)「人種差別や偏見といった、どこの国でも生まれる問題を扱ったものも大人になったからこそ、手に取ってほしいです。それを乗り越える人間の愛と強さを感じた時、救われる思いがします」。南北戦争時代の文字の読める黒人と、文字の読めない白人の、友情の物語。作者はその白人の子孫で、代々語り継がれてきた実話。ライフスタイルの異なる世界を知る。『おんぶはこりごり』作:アンソニー・ブラウン訳:藤本朝巳1500円(平凡社)「働いている母親の大変さや、未婚女性の寂しさなど、境遇が違う世界を絵本で覗くのも楽しいですよ。絵本ならユーモラスに展開しているものが多く、受け入れやすいのではないでしょうか」。家庭を一人で支えるママと、甘えっぱなしの夫と子どもたち。ある日ママが家出したら!?家事の女性負担をシュールに描く。理想の在り方とは何かを考える。『わたしのそばできいていて』作:リサ・パップ訳:菊田まりこ1400円(WAVE出版)「対人関係のヒントをくれる作品も数多くあります。特に職場の後輩や、自分の子どもに対して、『こう接したいな』というお手本にしたい例も。大人になって悩んだ時こそ、原点に立ち戻る大切さを知ります」。本を読むのが苦手なマディは図書館で白い大きな犬と出会い…。作中の読書介助犬は米国などで実在する。すぎうえ・さちえアナウンサー。日本テレビ所属。絵本専門士。毎年、読み聞かせ研修のために、その年の新人アナウンサーの特技に合った絵本を探すそう。※『anan』2019年7月10日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2019年07月08日