【アルマーニ / リストランテ】のエグゼクティブ・シェフが新しく就任!火入れの温度と時間にこだわった繊細な料理伝統的な故郷の味も現代的に軽やかに【アルマーニ / リストランテ】のエグゼクティブ・シェフが新しく就任!ファッションブランドが手掛けるレストランの魅力といえば、内装や料理、ホスピタリティを通じて、お洒落な世界観を満喫できるところだ。特にトップメゾンは、店内に足を踏み入れた瞬間からゲストの時間軸をずらし、非日常へといざなってくれるものである。世界的デザイナー、ジョルジオ・アルマーニがプロデュースする東京・銀座の【アルマーニ / リストランテ】がまさにそうだ。晴海通りに面したアルマーニ / 銀座タワーの1階からエレベーターに乗り込んで10階で降りると、目の前にはゴールドを基調とした幻想的な空間が出現。奥のダイニングフロアでは、落ち着きのあるネイビーブルーのレザーチェアや、シンプルにしてエレガントなペンダントライトが洗練された雰囲気を醸し出している。2019年3月のリニューアルによって、より解放感あふれる空間を得たダイニングフロア。言うまでもなく、真のブランドには確かな実力をもった作り手の存在が必要不可欠だが、この点においても【アルマーニ / リストランテ】は申し分ない。厨房を取り仕切るカルミネ・アマランテ氏はナポリの料理学校を卒業後、イタリア・イスキアのミシュラン二つ星レストラン【Nino di Costanzo】や、スペイン・サンセバスチャンの三つ星レストラン【Martin Berasategui】などでシェフの経験を積み、2018年に来日すると東京・大手町にあった【HEINZ BECK TOKYO】のエグゼクティブシェフに就任。わずか1年で同店に一つ星をもたらした。2020年8月より【アルマーニ / リストランテ】のエグゼクティブシェフを務めるカルミネ・アマランテ氏。生まれは1990年。世界中の【アルマーニ / リストランテ】の中で最も若いエグゼクティブシェフだが、その技術とセンス、真面目でチャーミングな人柄が相まって、すでに多くの顧客の心を掴んでいる。火入れの温度と時間にこだわった繊細な料理現在、提供されているのは“冬のメニュー”。ランチタイムには5皿のコース(4,500円)と6皿(1万円)の2種類が用意されている。イタリアの伝統的な料理に日本ならではのアレンジを加えていると案内されて、実際にいくつかの料理を味わったところ、その繊細な仕事ぶりにはっとさせられた。例えば前菜として登場した『ホタテのカルパッチョ ビーツとスモークしたポテト』。冷製かと思いきや、ホタテはほのかに温かく、口に運ぶとその旨みと甘みが舌の上でしっかりと際立っていたのだ。6皿のランチコースに含まれる『ホタテのカルパッチョ ビーツとスモークしたポテト』聞けば、65度で1分ほど火を入れたという。「食材に備わるおいしさを最大限に引き出すにはどのように調理したらよいかを常に考えて料理しています。ホタテに対しては何種類かの調理法を施し、その温度と時間がベストであるという結論に辿り着きました」(カルミネ氏)。白いポテトのクリームは燻製に、アマランサスはトーストにしてあるため、口に含めば香ばしい匂いが鼻に抜ける。有田焼の白いプレートに盛られた料理はけして派手ではないが、シンプルかつエレガントで、そしてその味わいには確かな主張が感じられる。どうやら、アマランテ氏は日本の食文化にも興味があるようだ。特に出汁に影響を受けて、雑味のないやわらかい味を抽出することにこだわっているらしい。そうした意識が働いているからだろう。彼の料理は優しく、日本人の味覚に寄り添う。伝統的な故郷の味も現代的に軽やかにカルミネ氏が率いる新生【アルマーニ / リストランテ】の面白さは、他にもある。カルミネ氏の生まれ故郷、ナポリの伝統的な家庭料理を、洗練された仕立てで味わえるのもそうだ。特に新鮮だったのがパスタ料理『トルテッロ ジェノヴェーゼ』。ジェノヴェーゼというとバジルを使った緑色のソースを連想しがちだが、ナポリではタマネギと牛の筋肉を炊いてつくる茶色いソースを指す。現地ではそれを熱々のパスタに絡め、たっぷりと削り出したパルミジャーノ・レッジャーノと共にいただくが、カルミネ氏は【アルマーニ / リストランテ】でそのトラディショナルなスタイルを分解して再構築。女性でもひと口で食べられる、ファインダイニングにおける一皿に昇華させているのだ。カルミネ氏のスペシャリテ『トルテッロ ジェノヴェーゼ』。厚めにスライスされた黒トリュフがふくよかな風味を添える。余計な水分を加えず、色の濃い卵黄を使った鮮やかなパスタの生地の中には、アマランテ氏が「肉の旨みと、脂の甘みのバランスが丁度良く、味わいが繊細」と評価する飛騨和牛のほほ肉を使った詰め物がぎっしり。そのほどけるような食感と、オニオン&フォンドヴォーのとろりとしたソースの相性はすこぶるよろしく、口の中に溢れんばかりの旨みに思わず目尻が下がる。『トルテッロ ジェノヴェーゼ』の口当たりは実にやさしい。8時間かけて煮込んだ飛騨和牛のほほ肉に、生クリーム、鶏胸肉のムースを合わせるというアレンジを施しているそうだ。また、ナポリの伝統菓子をベースにした『ババ ナポレターノ』も印象的だった。一般的なババはあらかじめシロップにたっぷり浸された状態で提供されるが、カルミネ氏は、リモンチェッロとラム酒の2種類からゲストに選んでもらって仕上げる、というスタイルを採用している。「女性のお客様の中にはアルコールが苦手な方もいらっしゃるはず。自分の好みを押し付けるのではなく、お客様に味を決めてもらおうと考えた」とはカルミネ氏の弁。じつは筆者はコースの〆に出てくるババを食べきれないという経験を重ねてきたのだが、カルミネ氏のババは軽やかにして味わい深く、すとんと胃袋に収まって感激した。ベルガモットのシャーベットが添えられた『ババ ナポレターノ』。レモングラスやアニスなどの爽やかな風味も魅力。全体を通してみると、どの料理もけして色数が多いわけではない。だが、確かに華やかで心に残る。その感想を素直にぶつけてみると、カルミネ氏はこう言った。「美しさの表現についてはいろいろな発想があると思いますが、私は装飾のために何かを足すのではなく、その料理に必要な要素でまかないたい。デリケートで洗練されていて、シンプルに見えながらもしっかり仕事された料理を提供し、お客様に喜んでいただきたいのです。」詰まるところ、本質から生まれる美を追求する、ということだ。まさに、ピュアなエレガンスさとシンプルさを追求するアルマーニの世界観に通じている。ラグジュアリーとは豪華とか華美とか目先のことではなく、本質的な贅沢である。そのことを【アルマーニ / リストランテ】は思い出させてくれるに違いない。アルマーニ /リストランテ【エリア】銀座【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】7500円【ディナー平均予算】15000円【アクセス】銀座駅 徒歩3分
2021年02月17日食材に優劣をつけずに敬意を払う趙楊さんからその大切さを学びました「学生時代、何気なく読んだ熊谷喜八さんの本に書いてあった“食を通して人を幸せにしたい”の一言が、ずっと頭の片隅にあったんです」。こう語るのは伊藤光恵さん。今や神楽坂の名店の一つに名を連ねる四川料理店【梅香】のオーナーシェフだ。住宅街の一角に佇む飾り気のない店構え。短大を卒業後、その言葉を胸に熊谷シェフの多国籍レストラン【キハチ】に就職する。そこで【キハチチャイナ】なら厨房にすぐ入れると聞き、中華に転身。調理場はどこも過酷だが、重い鍋と炎を操らなければならない中華は一段と厳しい。女性ならばなおさらだ。だが、伊藤さんは中華って面白いと思ったという。いわく「鍋一つで煮る、焼く、揚げる、蒸すなどほぼ全ての調理法ができるうえ、火の周りにほとんどの調味料があるので体を動かさずに料理ができる。効率の良い料理だと思った」そうだ。『蟹の淡雪炒め』2,490円。終始強火で炒めつつも、メレンゲ状の卵白は、その名の通り淡雪の如くホワホワでそれでいてどこかねっとりした旨味も兼ね備えている。火加減とタイミングがものをいう佳品。修業の傍、食べ歩きで舌を磨いていくなかで出合った【趙楊】の料理に深く感動した伊藤さん。3年間勤めた【キハチ】を辞め、即刻趙楊さんに弟子入りを果たす。「まず香りの高さが素晴らしい。加えて素材一つ一つの味が、調味料に負けることなくきちんと引きだされているのには驚きました。何もかもが衝撃的だったんです」。『牛肉山椒オイル掛け』1,950円。四川の代表的な料理の1つ『水煮牛肉』。伊藤さんが初めて【趙楊】で食べてその香りと辛さに感銘を受けた思い出の一皿。途中六本木のワインバーで腕を振るうも、再度【趙楊】に戻り、都合6年趙楊さんの薫陶を受け、32歳で独立。11年前のことだ。「趙楊さんは、きゅうりもフカヒレも同じ愛情を持って調理するんです。技術的なことはもちろん、“食材への敬意”を趙楊さんから教えられました」。梅香【エリア】神楽坂【ジャンル】四川料理【ランチ平均予算】1000円【ディナー平均予算】5000円【アクセス】牛込神楽坂駅 徒歩1分
2021年01月30日~愛読書をご紹介してくださるのは~【弁天山美家古寿司】内田 正さん1943年、浅草【弁天山美家古寿司】の5代目として生まれる。幼少期から寿司職人になることを志し、家業を手伝いながら江戸前の仕事を学ぶ。立教大学卒業後、正式に先代に弟子入り。過去に、寿司職人の仕事と江戸前寿司をひもとく『これが江戸前寿司』も出版する。「たかが」ではなく、「されど」寿司屋の心意気で寿司職人に人格は必要か、否か。江戸時代から脈々と続く寿司屋の5代目に生まれた私は、物心が付いたころから、そんなことを考えていました。成り行きにまかせて寿司の道に入ることはたやすく、よくある話かもしれません。でも、私自身はそれをすんなり受け入れられなかった。どうせやるなら、己の意志のもとに決断したかったのです。『幸福論』カール・ヒルティ/岩波書店その葛藤のさなか、当時、ありがたくも大学に通わせていただいていた私は、ある授業の参考文献として『幸福論』と『進路指導の基礎知識』の2冊に出合い、霞が晴れたような心地になりました。どんな仕事をするにせよ、働くということに変わりはない。ならば、どの職業を選ぼうとも、詰まるところ大差ないのではないか。寿司職人はお客様のために寿司を握ると同時に、仕込みも、店の経営もやらなくてはならない。一人で3役もできるとは恵まれている。そう、私なりに解釈したんですね。『鮓・鮨・すし すしの事典』𠮷野 昇雄/旭屋出版それからは、自覚も芽生え、責任を持って寿司屋の看板を背負っていこうとなったのですが、ふと、寿司はただ握っていればいいものではないということに気がついた。寿司には歴史がある。作法がある。伝統ある寿司屋を継ぐならば、知らないことがないようにしたいと思い、われわれの職業上の大先輩が著した『鮓・鮨・すし』で学ばせてもらいました。『浅草のおんな』伊集院 静/文藝春秋75歳の今は、すっかり分厚い本を敬遠するようになりましたが、活字との付き合いは大切にしています。この間も、なじみのスナックのママと、わが浅草を舞台にした伊集院静さんの小説で盛り上がりましたっけ。映画化したら主役は誰に、脇役は誰に、なんて話を延々と(笑)。誤解を恐れずに申し上げますと、たかがスナック、たかが寿司屋でやるなら、材料を仕入れ、お客様に提供し、商いすれば済むでしょう。けど、私は、されど寿司屋でありたい。だから、技を磨くだけでなく、自分の知識を肥やす。それは、寿司職人としての私の人格でもあるのです。~内田さんの愛読書3選~『幸福論』カール・ヒルティ/岩波書店いわゆる「世界三大幸福論」のひとつ。スイス人の思想家が、「生きる喜びは仕事と共にある」という現実主義的なスタンスで、幸福に近づくための具体的なヒントを論じている。『鮓・鮨・すし すしの事典』𠮷野昇雄/旭屋出版1879年から続く「𠮷野鮨本店」の、今は亡き3代目が1990年に上梓した、“握り寿司学”の集大成。歴史から調理技術まで、寿司の全貌を明らかにして、その魅力を伝えている。『浅草のおんな』伊集院 静/文藝春秋浅草の小料理屋「志万田」のおかみ・志万が17歳のときにほれた男を追って東京に出てきて、浅草の女になっていく姿を描いた小説。美しい情景描写と繊細な心理描写がさえる。いかがでしたか。料理人の愛読書「シェフの本棚」も掲載されている冊子「hitosara quarterly magazine」は、グルメサイト「ヒトサラ」が加盟店様向けに発行している食のトレンドブックです。日本から世界まで、あらゆる角度から食の情報を集めています。下記リンクより試し読みもできます。ぜひチェックしてみてください。弁天山美家古寿司【エリア】浅草【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】10000円 ~ 14999円【ディナー平均予算】10000円 ~ 14999円
2021年01月26日日本でとれた旬の食材を、完全にオーセンティックなタイ料理に仕上げたい「タイ料理というと、ひと昔前までは屋台のようなカジュアルなお店や激辛料理のイメージでした。でも、夫の赴任でバンコクへ渡ってみたら、お店も味も洗練されていてびっくり。がぜん興味がわいて、かなりガチな(笑)料理の専門学校に入ったんです」と、話すのは、【タイ料理 みもっと】の店主、みもっと先生。2019年6月【タイ料理みもっと】をオープン。普通の駐在夫人が通うのは家庭料理の教室だろうが、彼女はプロを目指すタイ人に混じって基礎的なタイ料理をおよそ150、さらに【マンダリン オリエンタル バンコク】のクラスで100レシピを習得したという。『ヤムタワイ』。野菜をココナッツミルクで湯がいてつくるサラダ。魚の燻製粉入りのカレーペーストと煮詰めたココナッツミルクをかける。1年半ほどタイ料理の勉強に明け暮れ、帰国してからは料理教室をスタート。自宅で2年、「おいしみ研究所」と看板を掲げて4年。SNSを通して生徒も増え、イベントの依頼も舞い込むようになる。「私の名前、店名でもある『みもっと』は10年以上前からやっているSNSのアカウント名なんです。つながった皆さんから『お店もやって!』とリクエストが増え、ついにお店を出すことを決心しました」『マッサマンカレー』。もっとも複雑なカレーといわれる。スパイスを通常より多く重ね、フレッシュハーブも。チキンと、素揚げした五郎島金時や栗入り。ジャスミンライスとご一緒に。ともに6,000円のコースから。なにしろ勉強熱心。開店前には再度タイへ渡り、古典料理、地方料理、発酵をテーマに20日で100レシピを学ぶプライベートレッスンまで受け、ついに【みもっと】を開店。「全然タイっぽくない内観で“新しいタイ料理”と思われることもありますが、実はすごくオーセンティック。おいしい料理には新鮮な旬の食材が持つ力は欠かせませんから、日本の食材を使います。これからもブレずに、タイ料理、そして食材の力強さと向き合って、進んでいきたいですね
2021年01月10日旬の食材にまっすぐな心で向き合うピュアで美しい料理古屋聖良シェフが料理の道を目指すきっかけになったのは、なんと就職活動の失敗から。「銀行に就職希望でしたが面接にすべて落ちてしまって。それなら“食べることが好きだから”と、料理の道へ進みました」と笑う。しかし、これは料理の神様の導きだったのだろう。彼女の料理に惚れ込んだ大人たちが集う【クラージュ】就職したレストランで、持ち前の真面目さとセンスに目を留めた師の勧めもあり、「サンペレグリノヤングシェフ」コンクールへ出場する。「無理だと思うけれど、世界大会のイタリアに行けたらいいな」と出場した日本大会で見事に優勝。そこから世界大会で上位入賞を狙うべく、メンターの【ナリサワ】成澤由浩シェフとの“血の滲むような”特訓の日々を過ごし、大会に出場。しかし結果は入賞ならず。「心から悔しかったです」。この経験が料理人としての転機となった。まだまだ足りない。もっと世界が見たい。そう思い、オーストラリア・メルボルン郊外の名店【Brac】へ働きに行く。そこでは、採れたての食材を使う素晴らしさ、盛り付けの美しさなど様々なことを吸収して帰国した。『タイとほおずきのタルタル』。魚とフルーツは古屋シェフが好きな組み合わせ。「今の季節のほおずきの香りと酸味がタイとよく合うと思いました」シェフとして考えることは、「とにかく、おいしいものをつくり、来ていただくお客さまに喜んでもらうこと」。謙虚で口数が少ない古屋シェフだが、丁寧につくる料理からは、彼女の食材や料理への愛が冗舌に溢れている。スペシャリテ『鴨と黒トリュフのサンド』。自家製パンに鴨の旨みと黒トリュフの香りが染み込みワインがすすむ。鴨は古屋シェフがコンクールで優勝したときのテーマ食材。コース15,000円~国内外の経験を生かし、旬の食材にまっすぐな心で向き合うピュアで美しい料理は、遊び慣れた大人が集う【クラージュ】の常連ゲストの心を、早くもつかんでいる。courage【エリア】麻布十番【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】5000円【ディナー平均予算】30000円【アクセス】麻布十番駅 徒歩7分
2020年12月20日取材から見えてきた二軒目を出す傾向とメリット1.カジュアルに楽しく、が主流2.新しい世界観で広がる世界3.人材が育つ、活躍できる場に「石かわ」 グループきっての若き天才料理人の船出【NK】【NK】の魅力は、和をベースとしながらも、角谷氏のインスピレーションで洋や中のエッセンスを自在に組み合わせる奇想天外さにある。写真は『真薯』をイメージしてつくられた『毛蟹のムース』2008年からミシュランの三つ星に輝き続ける東京・神楽坂の日本料理店【石かわ】の店主・石川秀樹氏は【虎白】【蓮三四七】【波濤】などを生み出してきた。そして、今度は34歳の若き料理人・角谷健人氏が抜擢され、【NK】が誕生。石川氏に「天才」と言わしめる料理は早くも訪れた人の心をがっちり掴み、すでに数カ月先まで予約で埋まっている状態だという。薪焼きを導入したのも【NK】ならではの発想なぜ、次々に新店を出すのか。理由を問うと、石川氏は「社会に貢献できるリーダーを育てたい」と語った。彼の考える〝2軒目0とは弟子が活躍し、幸福の輪が広がる場。【石かわ】グループでコツコツと研鑽を積んできた料理人に店をまかせ、そこできちんとした組織をつくりあげることが、結果的に社会への貢献につながると考えている。石川氏(左)と【NK】店主・角谷氏(右)グループでやることにもメリットを見出している。「まとめて人材募集をかけられるし、トレーニングも行える。各店が神楽坂にあるので、困ったときには助け合える」店内は和食店のイメージを鮮やかに裏切るシックな雰囲気ただし、ひとつ〝ルール0を決めている。最初に資金は用意するものの、走り出したら一切口を出さない。自分のやり方で責務をまっとうすることが店主であり「リーダー」だから。今、角谷氏は、その道を着実に走り始めている。【NK】を出す理由「次なるリーダーを育成する」【NK】店主・角谷氏は23歳で【石かわ】に入社。「過酷な経験を通して人間として成長するためのヒントを見つけてほしい」(石川氏)との想いから設けられた“一人海外研修”では北インドとヒマラヤへ。価値観を一新し、たくましさに磨きをかけた。名物に特化したスタイルで確かな目利きを広く伝える【嘉祥 うち山】2種類のごまだれで味わう『鯛茶漬け』。酵素ドリンクを添えて、体の中ら免疫力をアップさせるという提案も茶懐石を源流とした日本料理でもてなす名店【銀座 うち山】。その姉妹店である【嘉祥 うち山】は、コロナ禍を機にコース料理の提供を止め、鯛茶漬けと焼きごま豆腐の専門店として再スタートを切った。【うち山】の二大名物で潔く勝負するという格好だが、舵取りを行った【銀座 うち山】の店主・内山英仁氏は、そこに懸ける想いを次のように語る。【銀座 うち山】の内山英仁氏(右)と、【嘉祥 うち山】をまかされた弟子の狩野迅門氏(左)「今まで生産者と真摯に向き合い、その苦労を理解したうえでこだわりの食材を扱ってきました。その目利きで多くの方々に喜んでいただきたい。しかし、客単価の高い店は客層を絞りがちです。そこで自慢の料理を単品として取り出し、背伸びすれば手が届くような価格で提供する、というスタイルを編み出したのです」熊本・天草で育てられた「みやび鯛」看板メニューの『鯛茶漬け』は1,800円。スッポンの鍋が付くと3,500円。食材の質を落とない代わりに、一斉スタートを導入するなどの工夫で人件費の削減に努め、価格の抑制に成功した。コスパの高さは評判を呼び、満席の状態が珍しくない。座席はカウンター8席のみ。ランチは一斉スタートで3部制。価格を抑えるために仕事の効率化を重視している。聞けば、収支はとんとん。だが、正しい仕事はたくさんの笑顔を生むと実感しているのだろう。内山氏の表情は明るく、その目は多店舗展開という未来をまっすぐ見つめている。【嘉祥 うち山】での工夫「上質な食材を肩肘張らずに」おいしくて高級な鯛を見つけるのはたやすいが、安価で、仕入れが安定していて、なおかつ食べて満足できる鯛を選ぶのは至難の業だ。【嘉祥 うち山】では、吟味に吟味を重ねた結果、熊本・天草で育てられた「みやび鯛」を採用。旨み豊かな味わいに目利きが光る。嘉祥 うち山【エリア】築地【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】1000円 ~ 1999円【ディナー平均予算】20000円 ~ 29999円街の期待に応えて新展開!【焼肉お富】赤身ミックス(ロース、上カルビ、上ハラミ、天肉)2,480円(2人前・税込)やホルモンミックス1,280円(2人前・税込)のほか、タン塩など一品もあり錦場内の漬物店店主で、「Meets リージョナル」など情報誌のコラムニストとしても知られるバッキー井上さんが、京都の中心地四条河原町からすぐの裏寺に焼肉店を2020年8月末にオープンした。自店の漬物を出す居酒屋【百練】、名を冠した飲み屋【バッキー食堂】とは違う業態の展開だ。来店客には店主のバッキー井上さんファンも多いバッキー井上さんに聞くと、単にビジネスを広げる意味合いでの開業ではないという。では、なぜこの時期、新業種に挑戦したのか。「以前この場所にあった【さんきち】という焼肉屋さんは、多くのファンをもつ店でした。ところが惜しまれつつ今年1月に閉店された。みんなが残念だと思ったでしょう。その後、その地の大家さんから、なんとかあの場所で焼肉店を再開したい。一肌脱いでくれないかと相談があったんです」と開業を決意した理由を話す。店内はカウンターとかつての座敷を改装したテーブル席。グループなら2階席へ肉は京都の名店【モリタ屋】から仕入れ、タレは人気焼肉店【アジェ】のオーナーにアドバイスをもらった。なんとか開業にこぎつけることができたのは、【さんきち】を愛し、「あの場所に焼肉店」をと望む街の友人たちの助けもあったからと話す。懐かしい昭和のたたずまいを残した「京漬物も食べられる焼肉店」の誕生で、街が少しでも活気づくことが、なによりの願いだという。【焼肉お富】を出す理由名店の想いを継ぐ焼肉店京都・裏寺通りは、かつて焼肉店のメッカだった。そんな場所から、一軒、また一軒と昭和の焼肉店が姿を消した。バッキー井上さんは、そんな一店【さんきち】の場所で焼肉店を開業した。裏通りとはいえ京都の中心地に、かつてのファンと街の活気を呼び戻したいと願ったからだ。焼肉 お富【エリア】祇園【ジャンル】焼肉【ランチ平均予算】~ 999円【ディナー平均予算】4000円 ~ 4999円生麺で勝負のやきそば専門店【焼きそばとハイボール PACK】定番の『ソース焼きそば』800円。豚バラと油カスの濃厚な旨味が麺を美味しくする京都では今、〝焼きそば専門店0が続々登場し、にわかに注目を集めている。そんななか、5年にわたる構想を形にして2020年7月オープンしたのが、【焼きそばとハイボール パック】だ。おすすめは鉄板前のカウンター席店主は、【フライドチキンとハイボール リンク】や【ツナグ】など鶏料理をメインにした飲食店を展開する北川浩次さん。5年前から「いつかは焼きそば店」をという想いがあったそうだ。【リンク】として出店したイベントで焼きそばを出したところ好評を博し、自信につながった。(左)店主の北川浩次さん。(右)8種の焼きそばは、すべて北川さんのオリジナル。専門店にするならと、一番力を入れたのが、生麺だ。滋賀県の製麺所に何度も足を運び、焼きそばに合う中太麺と極細麺をつくりあげた。「B級とは言わせない焼きそばをつくりたかった。ソース焼きそばだけでなく、自分らしいアレンジを加えて多種類のメニューを考案すれば、専門店として成立するのではと思いました」と開業のきっかけを話す。『山椒かおる塩昆布焼きそば』900円には、京都「五辻」の昆布を使用。【リンク】の『ミックス唐揚げ』700円【焼きそばとハイボール PACK】を出す理由「もっちり生めんが味の秘訣」屋台のソース焼きそばは、老若男女に人気の味。だが、専門店なら、ワンランク上の焼きそばにする必要があった。焼きそばに合う生麺の完成が、開業の条件だった。試行錯誤の末にできあがった麺は、もっちりして風味も抜群。他にはない上質な味を目指すという。焼きそばとハイボール パック【エリア】西院【ジャンル】焼きそば【ランチ平均予算】~ 999円【ディナー平均予算】2000円 ~ 2999円
2020年12月19日若き料理人の自由な感性から生まれる新感覚の和食スパイスに果物!? 自由な発想から世界が広がるワイン好きにはたまらない隠れ家若き料理人の自由な感性から生まれる新感覚の和食あまたの名店がしのぎを削る美食の街、東京・神楽坂。そのランドマークたる毘沙門天 善國寺の裏手に、2020年8月、一軒のレストランが静かに産声を上げた。名は【NK】。ひっそりとした細い路地を奥に進み、控えめに記された店名を頼りに扉を開けると、真っ白なコックコートに身を包んだ若きシェフが笑顔で出迎えてくれた。角谷建人さん、34歳。巨匠・石川秀樹さんをして「天才」と言わしめた料理人である。【石かわ】グループで11年にわたって研鑽を積んできた角谷建人さん。何が、「天才」という言葉を促したのだろう。単刀直入に訊ねてみると、角谷さんは次のように教えてくれた。「いつかは店をやらせてみようと思ってくださっていたのかどうかはわかりませんが、あるとき石川が言ったんです。毎日食べてやるから、普通の和食じゃないものを作って持ってこいと。でも、僕は和食出身の料理人なので、やっぱり和食のエッセンスを大切にしたい。それで、和食をベースにしながら、勉強を兼ねて個人的に食べ歩いてきたフレンチや中華の要素を取り入れて、和や洋で括れないようなボーダーレスな料理を提案することにしたんです。すると、石川は面白がってくれたみたいで。有名テーマパークをもじり、僕にカク.ランドというニックネームまで付けてくれました(笑)」なるほど、そういうことだったのか。というのも、【NK】の正式名称は【Nanpeidai Chef’s table featuring Kakuland】。【NK】が系列の西洋料理店【Nanpeidai】のシェフズテーブルであるということは理解できたが、“Kakuland”については謎だったのだ。薪の香りをつけたイクラとスダチのクリーム。【NK】で提供される料理のメニューは、14皿ほどで構成される“おまかせコース”1本のみ。一枚板のカウンターに向かって腰を落ち着けると、存在感のある焼き台が視界の中心に入り込んできた。角谷さんは、その前に立って薪や炭で火を起こし、料理に応じて奇想天外な演出を施していく。思わず歓喜の声を上げてしまったのは、「薪の香りをつけたイクラと酢橘のクリーム」。フレンチの定番“キャビア×サワークリーム”の組み合わせにインスピレーションを得たというそれは、薪で燻した出汁で漬け込んだイクラと、その味わいを引き立てるために脂肪分の少ない酢橘風味のクリームを合わせたもの。イクラを噛んで薄い皮がぷちんと弾けた瞬間の薫香の広がりや、その厚みのある旨みとクリームの甘みや酸味との一体感が実に素晴らしい。「難しいことは何もしていないんです」と角谷さんは頭をかいて謙遜するが、まさにセンスが結晶した一皿だ。スパイスに果物!?型破りな驚きが待っている『甘鯛の松笠焼き』。基本に忠実に、皮をぱりっと、中をふっくらジューシーに仕上げているのはお見事。角谷さんによる“わくわくする世界”はまだまだ続く。例えば「甘鯛の松笠焼き」。和食ではお馴染みの一品だが、これも予定調和ではない。アフリカのミックススパイス“ラッセルハヌート”が香り、付け合わせに醤油ベースのジュレを纏ったドラゴンフルーツが用いられている。こちらの想像を軽々と超える組み合わせに、一瞬、奇を衒っているのかと勘ぐってしまったが、実際に口にして、すぐに反省することになった。ラッセルハヌートが松笠焼きの香ばしさを盛り立てていること、ドラゴンフルーツのほどよい甘さとねっとりした具合が、甘鯛の味わいとパリッとした鱗の食感を引き立てていることを実感し、角谷さんの自由な発想に拍手喝采したくなった。おまかせコースの前半に登場する『生からすみの冷たい素麺』。また、「生からすみの冷たい素麺」にも心動かされた。ボッタルガの冷製パスタを彷彿とさせるその料理は、卵の黄身でのばした生からすみのソースと、酢橘や胡麻油、塩昆布で味付けされた麺を合わせたもの。ハーモニー自体は和テイストだが、オリーブオイルやエディブルフラワーを取り入れると、和だか洋だかわからない “枠にとらわれない料理”になる。固定概念にとらわれすぎず、もっと自由に発想していい。角谷さんの料理には、そんなメッセージも込められているのかもしれないと、ふと思った。ワイン好きにはたまらない隠れ家ジュヴレ・シャンベルタンやシャサーニュ・モンラッシェなども、運が良ければグラスで味わえるかもしれない。さて、美味しい料理とくれば、美味しいお酒が欠かせない。【NK】には美食家たちを満足させるアイテムが揃っている。ワイン、日本酒、焼酎、ウイスキーとある中で、特筆すべきはワインの充実ぶりだ。店の入口付近には大きなワインセラーがあり、そこには【石かわ】グループ全店のボトルが勢揃いしている。お宝ワインも満載だ。しかも、一般的にはボトル売りされているような銘柄が、ここではグラス売りされる。ワイン好きにはたまらないだろう。カウンター8席のほか、ウェイティングスペースも設けられている。想像を超える驚きを与えてくれる【NK】。オープンから4か月ですでに予約が取れない状態が続いているというが、それは仕方のないことと言えそうだ。【NK】店舗情報電話:050-3138-3930住所:東京都新宿区神楽坂5-37 相良ビル1F営業時間:18:00~/20:30~、土曜17:00~/20:00~の2部制定休日:月曜、日曜、祝日コース価格:2万9000円~
2020年12月18日(写真)【デンクシフロリ】をつくるメンバー。左から【フロリレージュ】シェフ・川手寛康さん、女将・橋本恭子さん、シェフ・森田祐二さん、【傳】長谷川在佑さん取材から見えてきた二軒目を出す傾向とメリット1.カジュアルに楽しく、が主流2.新しい世界観で広がる世界3.人材が育つ、活躍できる場に人気のフレンチ&和食店がタッグを組み、新店をオープン【デンクシフロリ】串焼きの「焼き場」を中心にしたキッチンをカウンターが囲む。雰囲気にも【傳】と【フロリレージュ】のエッセンスが融合2020年10月。「アジアのベストレストラン50」で日本最高位に輝く【傳】の長谷川在佑さんと日本2位の【フロリレージュ】川手寛康さんがタッグを組んで新しい“串”の店をオープン。料理は2人のシェフそれぞれの個性が融合したジャンルレスの串料理。世界のフーディがやってくる客単価3万円を超えるガストロノミーの世界とは違い、普段使いもできる9,800円のコース一本で勝負する。『ビスク 海老芋』日本料理の定番“揚げた海老芋”がビスクとあわせて登場。海老芋を軸に料理を考えていたとき、2人で“海老繋がりでビスクが合うのでは?”とピンときたそう。新鮮な組み合わせだが、これが美味「世界のフードシーンもカジュアル傾向に。2軒目は気取らず食事を楽しむ店にしたかった」と語るのは川手さん。自身にとっては【フロリレージュ】、台湾の【logy】に続く3軒目だ。「【logy】は田原諒悟(【フロリレージュ】元スーシェフ)の店なので、【デンクシフロリ】が僕にとっての実質2軒目。この店は【傳】の長谷川さんと共同で出す、と決めていました」と話す。一方、長谷川さんはこの店が2軒目。「僕1人では、もう一軒店を出そうとは絶対に思わない。川手さんと共同経営だからできたことです」。と語る。自身の店を持つ2人のシェフが、共同出資で店を出すというのは、今までありそうでなかった形態だ。『ピジョン えび』【フロリレージュ】の料理として出したこともある“鳩の味噌漬け”を、海老とともに串にして焼いた一品。肝のソースをつけると一気にフレンチに。鳩の骨で取ったスープはパスタを入れて付け合わせに「構想は11年前からありました。ちょうど2人とも自分の店を開店した年ですが、最初は経営も苦戦しました。2人で試行錯誤しながらコラボレーションイベントをしたときに、2人でつくる楽しさを知って。この楽しさを表現できる実店舗をいつかやりたいと思っていたのです」と川手さん。そんな思いを実際に行動に移したのが2019年11月のこと。共通の趣味、釣りに行く車のなかで、いつ店を出してもいいように、共同会社をつくろうと川手さんから持ちかけた。「物件というのは探し始めてもすぐに見つからない。だから、いい物件が出てきたらすぐに店を出せるよう準備をしよう」と話をしたそう。気心が知れた間柄とはいえ長谷川さんが即答でOKと言ってくれるように、川手さんはプランをしっかり練って提案。誰もが好きで、楽しめる新機軸の店を2人でつくることに長谷川さんもその場で快諾した。共同出資の会社名は『神宮前フィッシングクラブ』。2人が好きな釣りにちなんで名付けた。『プリン 煎茶のクリーム』川手さんが“ずっとやりたかった”という王道プリン。カジュアルな店だからこそできる、昔ながらの正統派プリンに煎茶のクリームをトッピング。卵の風味のなかに、ときおりほんのりお茶の香りが漂う出資率は、川手さんが7、長谷川さんが3で設立した。そして機は4月に到来する。良い物件の話が来てすぐに契約。コロナ禍の真っ最中だったが出店への迷いは一切なかったという。「むしろ、時間があって週一ミーティングができて好都合だった」と話す。会社の仕組みづくりや、運営の詳細を提案するのは川手さんの役目。そこに長谷川さんが意見を言い、肉付けしていくスタイルで開業準備を進めてきた。レシピ開発や人材採用は2人で担当。シェフは新規採用し、【フロリレージュ】のマネージャーだった橋本恭子さんを“女将”にすえ、2人の考えをスムーズに現場に伝える体制を整えた。シェフ 森田祐二さん北海道出身。北海道のホテルレストラン、イタリア料理店などに勤務し、【logy】の田原諒悟シェフに声をかけられ、来京。【デンクシフロリ】のシェフに就任。川手シェフ、長谷川シェフ考案のレシピを現場を仕切って完成させる。女将 橋本恭子さん【フロリレージュ】で2年半マネージャーとして働く。【デンクシフロリ】のオープンにあたり、自ら立候補して、女将に。レストランの事務方の仕事から、現場でドリンクの提案、サービスやホールでの仕事までこなす。“串もの”というテーマも2人のセッションから生まれたもの。「最初は誰もが好きな焼鳥をやろう、と話していたのですが、つくりたい料理が焼鳥の枠からはみでてしまって」(長谷川さん)。「でも、長谷川さんのアイデアが良くて。気軽に楽しめるアイコン“串”だけ残して自由に表現すればできるよね、と今の形になりました」(川手さん)。2人の息の合ったやりとりを聞けば、1人ではなく2人で共同経営をする楽しさが垣間見えてくる。しかし、一方で、難しさはないのだろうか。「分かり合えるパートナーとの経営はメリットしかない。2人だから新しい世界が広がる。資金面でも無理がない。また、スタッフも、2人から多くの知識が学べる」と話してくれた。気の合うシェフ同士の化学反応はゲストにとっても魅力的。今後の新潮流になるかもしれない。【デンクシフロリ】を出す理由「新機軸の店で、ファンの裾野を広げる」【傳】や【フロリレージュ】とは全く違うタイプの新しい店を出すことで、食べる人の裾野を広げる。それはまた、自分たちの世界も広がることでもあるという。経営面で言えば、海外でも展開できるコンセプトとスタイルを見越して計画。複数店の展開を見据えれば、売上も積み重なり、3店舗全体のファンを増やせると見込む。デンクシフロリ【エリア】原宿/明治神宮前【ジャンル】和食【ランチ平均予算】10000円【ディナー平均予算】14000円【アクセス】表参道駅 徒歩5分フィロソフィーは同じ。スタイルを変えて大ヒット【創和堂】全員新規採用組。「まとまるチーム作りは採用が命。経験より、話が通じるかを重視し、80人面接して残ったのがこの10人です。採用を妥協しないことが経営の要」と酒井さん渋谷の雑居ビルの2階に突如現れるシックなカウンター。吟味されて選ばれた日本酒と自然派ワイン、そして酒飲みの心をくすぐる料理の数々で瞬く間に人気の店となった【酒井商会】。その店主、酒井英彰さんが自身の2店目【創和堂】を出したのは2020年7月のこと。【酒井商会】をオープンしてわずか2年のことだ。2軒目をオープンしようと思ったのは、開業1年目に差し掛かったとき。「1軒目は、自分の目の届く範囲の20席。料理は僕がほぼつくり、ほか3人でまわしていました。しかし、このままではスタッフに独立できる経験が身につかないと考えたことがきっかけです」。『雲仙ハムカツ』500円。【酒井商会】でも大人気の一品が、【創和堂】のメニューにも登場。長崎の「雲仙ハム」を5cm程度に分厚くカットしてカツにした一品。ハムだけれど、肉汁があふれ、食べ応え抜群だ。酒井シェフの名刺がわりの一品自店を出す以前は、「ゼットン」各店舗、【並木橋なかむら】と大箱の店で働いていた酒井さん。そこでの小さな店では得られない経験に助けられたと実感することも多かった。「小さな店の経験だけだと手が遅かったり、大箱での経験だけだとゲストへの接し方で苦労する。チームのためにも両方経験できる場が必要だと思いました」。そう思い物件を探し始めたが、どんな店にするかは白紙だったという。「大箱、というのは決めていましたが、どんな店にするかは物件ありき。別の物件を見た時は水炊き屋を考えました。今の物件は入り口が小さく奥が広い。この雰囲気なら【酒井商会】のコンセプトを踏襲した、新しい店ができるなと思いました」。『原始焼き・のど黒』3,500円。この日ののど黒は島根県から直送されたもの。『原始焼き』は、旬の魚を炭火で焼き上げる、【創和堂】の名物メニュー。丸ごと一尾串に刺し、炭火の遠火で焼き上げる。皮は香ばしく、適度に脂が乗った身はふっくら新店の面積は【酒井商会】の3倍。席数は2倍。スタッフは10人だ。九州のうまい食材を料理し、自然派ワインと日本酒で楽しんでもらうというコンセプトは変えずに、楽しむ場の幅を広げた。大人のカップルがカウンターでゆっくりつまみと酒を〝おまかせ0で楽しむのが【酒井商会】だとしたら、【創和堂】は開放的な空間で、大勢がアラカルトでシェアして楽しむスタイルだ。『わっぱ盛り・おばん菜』1,800円。おすすめのおばん菜からセレクトされた3種の盛り合わせ。基本的には2人用でシェアするスタイル。この日は『牛すじとレンコンの八丁味噌あえ』『馬肉の生ハムと柿の白和え』『エビとニラ、ピーナツもやしのナムル』双方に共通するのは「隠れ家」感。【創和堂】の入り口は二重扉になっていて、ゲストが最初に目にするのはシックなバー。奥の扉の先にダイニングがある驚きの仕掛けだ。〝わざわざ行きたくなる、使いやすい店0と、7月のオープン直後から満席が続く好調ぶり。「僕がいなくなって【酒井商会】は前田料理長の料理を楽しみに常連さんが通っています。【創和堂】のメニューはスタッフで話しながらつくるチームの料理。自分だけでは思いもつかない発想が生まれるのも、こうした場があるからこそですね」。【酒井商会】【創和堂】それぞれの個性、こう考えた【酒井商会】「隠れ家的雰囲気」あえて看板を出さず、古い雑居ビルの階段を上ると突然シックな木の扉が現れるという仕掛け。雑多な印象のビルに大人が楽しめる店があるという意外性も話題に。「親密なカウンター」入り口を入るとすぐに現れるカウンター。奥にはテーブルが2席。予約は4人までなので、2人の利用客が圧倒的に多い。ゆっくりと親密にリラックスできる雰囲気をつくる。「ドリンクは口頭で説明」カウンターのコミュニケーションを大切に、よりパーソナルなサービスを心がける。ドリンクはおまかせも多く、ゲストとの会話できめ細やかにおすすめ。【創和堂】「バーinレストランを設置」【酒井商会】の意外性を、店の中に独立したバーをつくることで表現。ゲストは扉をあけるとこのバーを通りダイニングへと向かう。もちろん、このバーだけの利用も可能。「キッチンを囲む劇場型カウンター」調理する様子が見られるカウンターは全28席。この他に個室が1つ、テーブル席も。大勢の人がつくる臨場感のあるさざめきが心地よい。子どももOK。「ドリンクはメニューで」ゲストは好きなドリンクをメニューから選ぶ。おすすめの日本酒などは、“爽”“薫”など味わいごとに分けて表記する工夫をし、初心者でも選びやすいようにしている。創和堂【エリア】恵比寿【ジャンル】和食【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】9000円【アクセス】恵比寿駅 徒歩6分
2020年12月14日まずはクラシックとモダンが融合したフランス料理を気軽に楽しもう日本の新しい魅力を感じたいなら、イノベーティブなコースをティータイムだけのスイーツも見逃せないまずはクラシックとモダンが融合したフランス料理を気軽に楽しもう大手町駅から徒歩数分。2020年に開業した「丸の内テラス」に、注目のレストランがオープンした。10階に上がり、エントランスに向かう。目に飛び込むのは天井の高いガラス張りの開放的なレストランだ。オーストラリアの有名デザイナーが手がけたという内装は、ボーダレスなモダンさが混ざり合い、グローバルな美意識が満ちている。日本の大企業や外資系ホテルの高層ビルが立ち並ぶ東京のど真ん中のロケーションもあるのだろう。このご時世でありながら、外国人客を含むエグゼクティブたちが談笑し、ビルの窓が作り出す夜景に囲まれた店内は、ニューヨークのフィフスアベニュー、あるいは香港のセントラルあたりの、シックなレストランのようだ。10Fのダイニングフロアこちらのレストランは、【アポロ】【ロングレイン】などを手がける「トランジットジェネラルオフィス」のフラッグシップレストラン。シェフを務めるのは同会社のコーポレイトシェフだった徳山亨氏。そこに、パートナーシェフとして、大阪の人気フレンチ【ラ・シーム】の高田裕介シェフを迎え、今のTOKYOを表現する料理を提供している。料理のテーマは「旅」。日本経済の中心でもあり、さまざまなカルチャーが交錯する国際色豊かな東京の中心地というエリアで、世界を旅しているような気持ちになれたら、という思いが込められている。ランチもディナーもコースのみではなく、アラカルトや1品でも楽しめるという自由度の高さがいい。まずは気の合う仲間で訪れ、気になる料理をアラカルトでチョイスし、シェアしながら楽しむのがおすすめだ。ディナーアラカルトメニューから。『ティアン・ド・クルジェットーズッキーニの重ね焼きー』料理の骨格はフランス料理。高田シェフ自らが探してきた日本全国の確かな食材を生かした、クラシックな技法で丁寧に料理しながらモダンに仕立てたものがメニューに並ぶ。そして、それぞれの料理に、ゲストが思わず笑顔になってしまうような仕掛けや思いが随所に散りばめられている。ディナーアラカルトメニューから。炭焼きの『天草ホロホロ鳥』例えば、『ティアン・ド・クルジェットーズッキーニの重ね焼きー』という料理。ティアンとはプロバンス地方の、野菜を重ねてオーブン焼きにした素朴な郷土料理だ。それを数ミリ単位でスライスしたズッキーニを重ね、その間にタイムとにんにくの風味のオイルを挟み、周りに細かくしたパン粉をつけ焼き上げ、ミントとバジルのソースを添えた美しい料理に変身させている。店内のチャコールオーブンで、豪快に一羽丸ごと焼き上げるホロホロ鶏は、シンプルに塩だけで調理されテーブルに登場し、ほろほろ鶏のだしをベースにしたソースが添えられる。ここには、ちょっとした遊び心が。ゲストは香草を束ねたブーケをソースに浸し、自分で肉にソースをつけながら食べる仕掛けになっているのだ。このソースを塗る、という行為がなんだか工作をしているようで楽しい。日本の新しい魅力を感じたいなら、イノベーティブなコースをちょっとグルメな女性とご一緒する日などは、ぜひディナーコースを予約して。コース料理はアラカルトとはまったく違う表情で、今の日本の食を表現している。こちらは一皿ずつ1人のポーションで、日本の旬の食材や昔ながらの食材、食文化をイノベーティブな料理として表現している。ディナーのコースから『秋刀魚のスティック』(左)、『マッシュルームのタルト』(右)たとえば、最初に出てくるのは鯉のスープ。「僕が育った福島では、昔から馴染のある魚だけれど、どうしても”どろ臭い”などのネガティブな印象も拭えない食材。けれど、ちゃんとした鯉は、こんなにもクリアでおいしい食材だいうことを知って欲しくてコースの最初に出しています」と徳島シェフは思いを語る。そのほかにも、『なまずのリゾット』や『エゾジカのロースト』など、メジャーではないジビエや川魚を大胆に登場させている。「食べたことがない、もっといえば食わず嫌いの人もまずは食べて欲しい」と徳山シェフ。その新しいおいしさに、まだまだ知らない日本の食材をもっと知りたくなるに違いない。シェフの徳島亨さん。ホテル日航東京(現ヒルトン東京お台場)のモダンフレンチレストラン「テラス オン・ザ・ベイ」他を経てトランジットジェネラルオフィスコーポレートシェフに就任。2020年11月【THEUPPER】シェフに就任一方ランチもまた、ディナーとは全く違う様々な“旅”感を味わうことができる。しっかり食べたいときには、『黒毛和牛の赤ワイン煮込み』など、クラシックなフランス料理のランチセットを頼むのもよし。大阪【ラシーム】の味を大阪に行かず食べたい!という人は、同店とまったく同じカレーライスを注文するもよし。ちょっと軽くエスニックなものを、という人にはマレーシアの郷土料理ラクサをフレンチ風にアレンジした麺や、高田シェフ特製魯肉飯などがおすすめだ。ティータイムだけのスイーツも見逃せない!そしてこちら、“ちょっとお茶しに行く場所”としても覚えておきたいアドレス。ティータイムには、高田シェフ考案のパフェやモンブランなど、トップシェフが作り出すティータイムだけのスイーツが食べられるのだ。例えば、この日の『季節のパフェ』は、なんと、大阪の“飴ちゃん”を季節のフルーツを使いながら、パフェとして表現!ティータイムにオーダー可能な『季節のパフェ』。この日はカシスやりんごなどの6種類のムースに、キャラメルのアイス、アニスの香りのメレンゲなどを重ねて飴ちゃんに見立てたボンボンは、カシス、オレンジ、紅茶、りんご、レモン、柿などのムース。その下にはキャラメルアイス、生クリーム、クランブル、メレンゲが重なっている。見た目はボリュームあるけれど、ムースがそれぞれふわふわで軽やか、果物の香りと甘みを生かしたものだから、するっとお腹におさまっていく。長いスプーンを下まで入れて、すべてを一緒に食べてみれば、「サクッ、フワ、シャリ、トロ」食感のしあわせのハーモニーが口に広がりたまらない。10Fには広いテラス席も。冬はクローズしているが、春から秋にかけては、いつでも気持ち良く過ごせるオススメの場所そして最後に。旅気分を味わえるのは、料理だけではないこともお伝えしたい。こちらのバーテンダー谷田歩氏がつくるカクテルでも世界各国への旅気分が味わえる。昼下がりの午後、ノンアルコールのレモンバーベナのさわやかな香りがきいたピニャコラーダを片手にテラスに出ればマイアミあたりにいる気分だし、夜、どこかで食事をしたあとに一杯だけこちらのバーで「ロックホール・フレンチマティーニ」(なんと、ロックフォールチーズを漬け込んだウオッカをつかっている!)で〆ればニューヨークか上海のバーでくつろいでいる気分になる。はっとさせる、素材の組み合わせが楽しいカクテル。ノンアルコールからショートカクテルまで多種ラインナップここは、一歩足を踏み入れば旅へ連れて行ってくれるレストラン。1日のどんなシーンでも、思いついたらふらりと訪れて、つかの間の非日常を味わってみてはいかがだろうか。【THE UPPER】店舗詳細情報電話:03-5962-9909住所:東京都千代田区丸の内1-3丸の内テラス9F10F営業:11:30~14:00(ランチL.0.)、14:30~15:00(TEA&SWEETS)、18:00~22:00(ディナーL.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)定休日:日曜・祝日(※但し日曜日が祝前日の場合は営業)※最新の営業時間に関しましては、直接お店にお問い合わせください
2020年12月11日「なにわ男子のオールナイトニッポンPremium」が 12月14日(月)19時より放送されることが決定した。2018年秋に結成され、関西ジャニーズJr.を牽引するなにわ男子。2020年1月には、デビュー前にも関わらず京セラドーム大阪でAぇ! group、Lil かんさいたちと共に、関西ジャニーズJr.として初の単独ライブを行い、3公演で13万5000人を動員。さらに、今秋からは初の全国ネットでの冠テレビ番組をスタートさせた。しかし、コロナ禍により3月に予定していた両国国技館ライブが中止になり、ドラマ撮影も延期になるなど、変化を余儀なくされた2020年を過ごした。そんな彼らが、2020年の終わりに、グループ初となるメンバー7人全員での冠ラジオ番組に挑戦する。記念すべき初挑戦の場となるのは、ニッポン放送「オールナイトニッポン」特別番組。ジャニーズ事務所の先輩Kis-My-Ft2が現在レギュラーを務め、Hey! Say! JUMPやSexy Zone、ジャニーズWESTといった先輩たちが過去に特別番組を担当してきた「オールナイトニッポンPremium」がその初挑戦の場となる。ジャニーズJr.がオールナイトニッポン特番を担当するのは、2019年8月に当時デビュー前だったSixTONESがオールナイトニッポンを担当して以来2組目。関西ジャニーズJr.としては初の抜擢となる。今回の特別番組では、リスナーから「私のまわりの〇〇男子」や「“なにわ”イメージ調査」などのメールを募集するほか、ジャニーズの名曲やエピソードトークをお届けする。情報発表にあわせて、メンバー7人よりコメントが寄せられた。【西畑大吾】初めてこのお話を聞いた時は、本当に驚きましたし、とても嬉しかったです。というのも、僕自身ANNのリスナーであり、勝手にラジオ関西の番組内で「オールダイゴニッポン」というコーナーをパロディでさせて頂いたりと、ANNの1ファンなのでとても光栄に思いました。そして、なにわ男子7人での初ラジオがANNということで身が引き締まる思いです。リスナーの皆さんと共に楽しみ、共に作り上げていく「なにわ男子のオールナイトニッポン Premium」になればいいなと思います。とにかくなにわ男子、ワイワイガヤガヤ頑張ります!【大西流星】オールナイトニッポンさんの番組名に自分たちのグループ名が入っていることにまだ実感が湧かないです!7人全員でのラジオが初めてで、しかも生放送ということでドキドキですがみんなで盛り上げて幸せな時間にできるよう頑張ります!【道枝駿佑】道枝駿佑です!7人での生放送ラジオは初めてなのでとても今からワクワクしてます!個性が強い7人が集まってるのでクロストークになって聞き取りづらいこともあるかと思います笑。3時間弱あるのでその3時間を楽しみます!【高橋恭平】オールナイトニッポンは本当に色々なラジオがある中で、一番聞いていて、僕的にも好きなのですごく嬉しいです!個人的には菅田将暉くんのラジオをよく聞いていたのであのような感じで僕も喋れたらなと思います!7人生ラジオ頑張ります!【長尾謙杜】オールナイトニッポンに出演させて頂けて本当に嬉しいです!初めての7人ラジオを生放送でさせて頂けるということで緊張もありますが超超超楽しみです!2時間50分を一瞬に感じてもらえるようにめっちゃ喋るので聴いてくださったら嬉しいです‼️【藤原丈一郎】なにわ男子ANN初出演、そして7人初ラジオということで初尽くしです!2020年色んなことがありましたが、少しでも明るくできるよう、日本中に僕たちの「なにわボイス」をお届けします!生放送なので、どんなことが起きるのか?起きないのか?その結果は、「なにわ男子のオールナイトニッポンPremium」で!【大橋和也】なにわ男子7人でラジオが初めてなのですごくワクワクしてます!!!!!!!多分みんなの素が聴けると思うので乞うご期待!笑笑!笑いあり感動あり涙あり(笑いすぎて)笑笑■なにわ男子のオールナイトニッポンPremiumパーソナリティ:なにわ男子(西畑大吾 / 大西流星 / 道枝駿佑 / 高橋恭平 / 長尾謙杜 / 藤原丈一郎 / 大橋和也)放送日時:2020年12月14日(月)19時00分~21時50分放送局:ニッポン放送(関東ローカル)ハッシュタグ:#なにわ男子ANNPメールアドレス:728@allnightnippon.comメール募集テーマ:「私のまわりの〇〇男子」世の中には「草食男子」「弁当男子」「メガネ男子」など「〇〇男子」がいっぱい。そこで、あなたの周りにいる特徴的な男子に「〇〇男子」と勝手にネーミングをつけて「エピソード」と一緒に送ってください。※メール送付の際の件名は「男子」でお願いします。メール募集コーナー:「“なにわ”イメージ調査」「各家庭にたこ焼き機が必ずある!」「全員阪神ファン!」など、あなたが勝手に抱く“関西圏のイメージ”を教えてください。メールを受けて、なにわ男子が“なにわのリアル”について語ります。※メール送付の際の件名は「なにわのイメージ」でお願いします。
2020年12月10日【鮨 ほり川】にて。店主の堀川文雄さん(右)と、元アルバイトでフリーランススタイリストの秋谷麻美さん(左)45年間で最大のインパクト“予約ゼロ”のピンチを切り抜ける東京・下北沢で1975年に開店以来、経営の低迷は「コロナ禍が最も影響が大きい」と話す【鮨 ほり川】の店主・堀川文雄さん。常連の多くは40代以上で会食利用がなくなったことから危機感を抱き、元アルバイトで親交が続く秋谷麻美さんに相談した。そこで、もともと利用していたツイッターとインスタグラムに加え始めたのが、noteだ。堀川さんの運営するnote『73歳すし屋のnote【現役】』緊急事態宣言での休業中に1本目を投稿するや否や、noteのプロデューサーなどに紹介されたことで話題に。しかし休業が明けても予約が入らなかった、5月下旬。「思い切って、正直に『予約がゼロです』とツイートしてみようと話し合ったんです。そうしたら、1万以上の『いいね』がついて、noteにも流入し、予約が少しずつ入るように。ドラマみたいな展開に、2人で本当に喜びました」と秋谷さん。SNSの声から生まれた『ほり川スペシャル』『ほり川スペシャル』で選べるつまみSNSで話題になったことで、「高くて行けないけど応援してます」「回らないお寿司は高そうで怖い」という人たちの声に気づいた。堀川さんは「フォロワーで最も多いのが、25~35歳。今までは仕事関係での来店が多いのに比べ、若い人たちは領収書を切るのではなく自分のお金で寿司を食べにくる」と、今までの平均単価より安い8,000円の『ほり川スペシャル』を考案した。握りや刺身、鍋などのコースを、お得に分かりやすく提供する。現在、来店客の9割が注文するメニューだ。女性客の一言がきっかけで生まれたフルーツ寿司。果物の甘味と酢飯の塩気が絶妙に合う職人と、元アルバイトで相談。2人でこんな工夫をしていますSNSは秋谷さんに投稿を手伝ってもらいつつ、堀川さん自身も若いスタッフにやり方を聞きながら投稿している。話し合って投稿しては、その反応を日々チェックするお2人に、投稿する際に工夫していることを伺った。①自信のあるものを投稿する「SNSで発信したからといってすぐにお店に来てくれるわけではないけれども、どこにも負けないものを発信し続けることが大切」(堀川さん)『ほり川 スペシャル』はもちろん、店の自慢メニューをツイッターとインスタグラムで投稿し、時々noteにまとめている。SNSに詳しいお客さまからのアドバイスで、写真としてもインパクトがあるマンゴー寿司を投稿したところ、反応がよかったそう。②女性客、ひとり客への一言を“敷居が高くて入りづらい”というイメージを持つ女性客やひとり客へ、一言添えた投稿が間口を広げるnoteの活用後はお客さまの男女比率が逆転して、女性が7割に。「カウンターのお寿司屋さんって、女性がひとりでは行きづらいですよね。ツイッターでもインスタグラムでも、投稿には『おひとりさま歓迎』と書くようにしています」(秋谷さん)。「私が話したことを秋谷さんに文章にしてもらうことで、SNSで発する言葉が柔らかいというのは女性客増加に影響しているかも」(堀川さん)。③noteとツイッターは併用する「noteの記事を拡散するにはツイッターが必要だし、ツイッターの投稿がバズってもnoteがないと受け止める場所がないんです。ツイッターとnoteはセットだと思っています」(秋谷さん)また、投稿にコメントがあればリツイートしてコミュニケーションを図っているという。「コロナ禍で切羽詰まって、とにかく変わらなきゃダメだと考えました。でも、店を長年やっているからこその固定観念があって、どう変わればいいかは難しい。だから若い人の意見を聞くのを大切にしています」(堀川さん)ほり川【エリア】下北沢【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】~【ディナー平均予算】8000円 ~ 9999円
2020年12月05日入り口から、サプライズが始まる!好きな人との距離がグッと縮まるシェアスタイルあの名物も登場。ウキウキが止まらないメニュー入り口から、サプライズが始まる!渋谷の雑居ビルの2階に突如現れるシックなカウンター。吟味されて選ばれた日本酒と自然派ワイン。そして酒飲みの心をくすぐる料理の数々で瞬く間に人気になった【酒井商会】。その店主・酒井英彰さんが2020年7月に恵比寿に、自身2店目となる【創和堂】をオープンした。早くも食いしん坊の心を鷲掴みにしたその店は、すでに予約が取りにくい人気店となっている。入り口に入ってすぐに登場する、隠れ家バー。バーだけの予約も可能この【創和堂】、【酒井商会】と同様、大人がちょっとワクワクしてしまう「隠れ家感」に満ちている。ひっそりと主張しない扉をあけると、まず目に入るのは、シックなバーカウンター。「あれ?店を間違えた?」と不安に思うなかれ。実はここ、バーin レストランが店内にあるというなんとも洒落た仕立てなのだ。この秘密めいた、大人の雰囲気漂うバーを通り過ぎて奥の扉を開けると、広い活気のあるダイニングに到着する。この“静”と“動”のギャップにこれから始まる、おいしいひとときへの期待がより高まるだろう。もちろん、このバーはバースナックやバーだけのドリンクも充実しているので、純粋にバー利用だけのでもOK。けれど、せっかくなら友人とバーで待ち合わせをし、アペロを一杯飲んでからダイニングに向かう、というのがおすすめだ。好きな人との距離がグッと縮まるシェアスタイル大人のカップルがカウンターでゆっくり、つまみと酒を“おまかせ”で楽しむのが【酒井商会】だとしたら、【創和堂】は、開放的な空間に身を置き、仲間とアラカルトの料理を“シェア”して楽しむスタイル。料理はなんと、常時60種類近くオンメニュー。基本的にそれらの料理はすべて2人前が一皿に盛り込まれており、仲間で分け合うことで、楽しい時間がさらに楽しくなるイメージだ。『わっぱ盛り合わせ・小鉢』1,800円。まずは酒のつまみにと頼む人が多いメニューとはいえ、“こうじゃなければいけない”という押し付けは一切なし。たとえば1人客にも優しいのがこの店のいいところ。相談すれば、料理の分量を1人用に調整し、魅力的なメニューを1人でも数品頼むことができるのは、なんとも嬉しい。大勢のスタッフがきびきびと働き、炭鉢を中心に据えた劇場のようなキッチンを囲むカウンターは、人々のさざめきがいいBGM。どんなシチュエーションで訪れても、自然と店の風景に馴染んでしまう心地よさがある。原始焼きを焼き上げる炭鉢。鉢は酒井さんが作陶家にお願いしてつくってもらったオリジナルそんな【創和堂】で名物となっているのが、『原始焼き』だ。これは主に九州から直送で取り寄せた魚や野菜を、独特な形で組み上げた“炭鉢”でシンプルにゆっくり焼き上げたもの。「炭を組み上げ、横から食材に当てる火は、日本で料理という概念が生まれてから最初の火の入れ方だと知りました。だから“原始焼き”と名付けています。ゆっくりじんわり距離をとって火を入れていくので、しっとりと、素材本来の味が引き出されますね」と酒井さん。この料理をしたくて、炭をいれる鉢を特注し、中心の炭をくべる鉄コイルは、金属加工工場を訪ね歩いて理想のものを探し抜いたそう。【創和堂】名物・原始焼き。旬の魚や野菜をシンプルに塩焼きに。今日はさんま、のどぐろ、かます。1尾800円0基本的に、【酒井商会】も【創和堂】も、酒井さん出身の九州を中心とした食材でつくる料理と酒を楽しむスタイルはかわらない。けれど以前の店では炭火が使えなかったため、"炭火焼"は【創和堂】でしか食べられない。じっくりと炭火で焼き上げられた、旬の魚はシンプルに塩で。日本酒と合わせれば、これぞ極上の味わいだ。通常3-4種類の魚が登場。丸ごと焼く魚は、大きすぎないものを選んでいるため、2人でも2種類注文して食べ比べするのも楽しい。季節を変えて訪れれば、その季節ごとの魚に出会え、日本の海の豊かさを知ることができる。あの名物も登場。ウキウキが止まらないメニューそしてもう一つ。ぜひ頼んでほしいメニューが、【酒井商会】のファンなら一度は必ず食べたことがあるであろう、かの店の名物『雲仙ハムカツ』だ。「前の店からの常連さんも多くて、リクエストをいただくことが多いので。喜んでいただけるのであればと、こちらの店でも出すことにしました」と酒井さんは笑う。惜しげもなく厚切りにした雲仙ハムカツは、ジューシーな肉汁をたたえた食べ応えのある一品。この日は徳島県のクラフトビール『KAMIKATZ』のIPAを合わせて楽しんだ。これが、これ以上最高の組み合わせがあるのだろうかと思うほど、ぴったりの組み合わせ!!【酒井商会】で大人気メニューとなった『雲仙ハムカツ』はこちらでも食べられるもちろん目当てにしたい料理は『原始焼き』や『雲仙ハムカツ』だけではない。なんといっても【創和堂】の魅力は、食材の旬に寄り添い変わっていく、食いしん坊なら思わず全制覇したいと願わずにはいられない料理の数々だろう。例えば、秋に入ったばかりの頃に訪れて、『馬肉の生ハムと柿の白和え』や『鱧と夏野菜の南蛮漬け』など、夏の終わりと秋の始まりを感じるメニューを堪能したかと思えば、晩秋にまた訪れるたときには『すっぽんの茶碗蒸し』や『くえの出汁しゃぶ』など気に冬に向かって変化した料理を楽しめる。店主の酒井英彰さん・35歳。福岡県出身産直の食材を使い、それらを生かした料理にするからこそ、ゲストは訪れるたびに日本の今の季節を、おいしい料理で感じることができるのだ。そうした季節を感じる料理を味わいに、ついまた訪れたくなってしまう。だからこそ、私が誰かと、おいしいものを食べてリラックスしたいと思うときに、真っ先に頭に浮かぶお店が【創和堂】なのかもしれない。現に今。今度は、前回食べられなかった、『すっぽんの春巻き』食べにいかなくては。そんなことを思いながら、次はいつ行こうかとカレンダーとにらめっこしている。【創和堂】店舗情報電話:080-8040-4822住所:東京都渋谷区広尾1-12-15 リバーサイドビル1F営業時間:17:00~24:00(L.O.22:30)定休日:日曜平均予算:8000円前後
2020年12月04日~愛読書をご紹介してくださるのは~【BOTTEGA】 笹川 尚平さん1976年、富山県生まれ。20代でイタリアの料理と文化に魅了され、渡伊。ピエモンテやトスカーナなどで修業。帰国後、【アロマフレスカ】原田慎次シェフに師事、【カーザヴィニタリア】でシェフを11年間務めた。2017年、【BOTTEGA】をオープン。知性を養っていれば出会いはもっと生かせる中華からイタリアンへと転身した僕は異色派なのかもしれません。調理師学校卒業後に上京して念願の料理店で働いていたのですが、都会で暮らすようになって初めてピッツァやパスタだけではないイタリア料理の魅力に目覚め、そのあまりの衝撃から思い切って軌道修正しました。『LE RICETTEREGIONALI ITALIANE』Anna Gosetti della Salda/Solares社その時点で僕は20歳。イタリア料理に関してはまったくの素人。そこで、手始めに『LE RICETTE REGIONALI ITALIANE』というレシピ集を求め、辞書と首っ引きで片っ端から訳していきました。すると、各州の郷土料理の特色――例えば食材の組み合わせ、ハーブの使い方といったセオリーを読み解けるようになっていった。〝寝る間を惜しむ0という表現がありますが、当時の僕はそんな感じ。仕事以外の全エネルギーをこの作業に費やしていた。青春です。『架空の料理空想の食卓』澤口知之、リリー・フランキー/扶桑社それからイタリアで修業した僕は、帰国後、しばらくして麻布十番の【カーザ ヴィニタリア】でシェフを務めさせていただくのですが、時に自分の料理の方向性について迷いが生じる。すると、僕の足は敬愛する澤口知之シェフが切り盛りしていた【ラ・ゴーラ】あるいは【リストランテ アモーレ】によく向かいました。澤口シェフがつくるイタリア料理は実にイタリア的であり、僕にとっての道標。澤口シェフはこの世を去ったので、もう直接言葉を交わすことはできません。だからこそ、彼のイズムが全編に散りばめられている『架空の料理 空想の食卓』は貴重です。『結果的に幸せをつかむ人の「正しい考え方」あなたを支える36の言葉』小宮一慶/ 幻冬舎それから、小宮一慶氏の『結果的に幸せをつかむ人の「正しい考え方」』も欠かせない一冊。店の運営で壁にぶつかったとき、この本を通して、言葉ひとつで人間は気付き、道が開けることを実感させられました。料理をつくるのもそうですが、つくる人の人間性が大事だと僕は思います。料理人には店を介してたくさんの人と出会えるチャンスがある。その出会いを生かすには備えがないと。本は活用しがいがありますね。(談)~笹川さんの愛読書3選~『LE RICETTE REGIONALI ITALIANE』Anna Gosetti della Salda/Solares社イタリアの郷土料理を詳細に網羅したイタリア料理本の定番で、1967年の発売以来、重版し続けているベストセラー。1200ページの中に約2200点のレシピが収録されている。『架空の料理 空想の食卓』澤口知之、リリー・フランキー/扶桑社作家リリー・フランキーと、その盟友であるイタリア料理の鬼才・故澤口知之が雑誌「料理王国」に連載していた写真付きエッセイを再編。料理にあふれるパンチ力に目を奪われる。『結果的に幸せをつかむ人の「正しい考え方」あなたを支える36の言葉』小宮一慶/ 幻冬舎数々の企業経営者に伴走してきた経営コンサルタントの著者が自らの人生を振り返り、かつて己のメンタルを支えてくれた名言を紹介。「正しい」考え方とは何かを掘り下げる。いかがでしたか。料理人の愛読書「シェフの本棚」も掲載されている冊子「hitosara quarterly magazine」は、グルメサイト「ヒトサラ」が加盟店様向けに発行している食のトレンドブックです。日本から世界まで、あらゆる角度から食の情報を集めています。下記リンクより試し読みもできます。ぜひチェックしてみてください。BOTTEGA(ボッテガ)【エリア】広尾【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】13000円【アクセス】広尾駅 徒歩5分
2020年11月28日人気シェフが2人で作る、どこにもない新しいレストラン(和食 + フレンチ)x 串=新感覚のガストロ・串キュイジーヌ!?シックなのに、リラックスできる秘密人気シェフが2人で作る、どこにもない新しいレストラン左から【フロリレージュ】シェフ・川手寛康さん、【デンクシフロリ】女将・橋本恭子さん、シェフ・森田祐二さん、【傳】シェフ・長谷川在佑さん2020年11月、人気シェフ2人がタッグを組んで、どこにもない"串料理"の店をオープン! そのシェフとは、人気店【傳】の長谷川在佑シェフと【フロリレージュ】川手寛康シェフ。2人でつくった店の名前は【デンクシフロリ】。"傳"と"フロリ"のフィロソフィーを串で繋いだ店、という思いが一発でわかるネーミングだ。この店で味わえるのは、2人のシェフそれぞれの個性が融合したジャンルレスの串料理。9,800円のコース料理で、肩肘張らずに楽しめる空気感が魅力だ。そもそも、「アジアのベストレストラン50」の日本1位、2位にずっと君臨している【傳】、【フロリレージュ】は、シェフの世界観を料理で表現するガストロノミーで世界のフーディたちを魅了しているレストラン。そんな2人が、なぜ"串モノ"の店をオープンしたのだろうか。目の前のキッチンで串モノを炭焼きにする臨場感、広がる香りもごちそう「きっかけは、11年前に長谷川さんとコラボレーションイベントをやったことですね。和食、フレンチという違うジャンルですが、いっしょに料理をしたらすごく楽しくて。この楽しさをいつかカタチにしたいと思ったんです」と川手さんが話せば、長谷川さんも「フレンチのおいしさを教えてくれたのは、川手さん。例えば【傳】の名物、フォアグラが入った『傳最中』は川手さんと出会ってなかったら生まれていなかった。川手さんとだから店を出そうと思いました」と話す。あ・うんの呼吸とはまさにこのこと。息もぴったりな2人が"2人で"やりたいと思ったのは、いろんな人がカジュアルに楽しめるお店だったそう。いまや、世界のフードトレンドもリラックスして食べられる"コンフォートフード"に流れがきている。そんな時代のニーズもふまえて、最初やろうとしていたのは「焼き鳥」の店だったという。けれど、やりたい料理もアイデアを出していくとどうしても焼き鳥の枠からはみ出してしまったのだとか。であれば、焼き鳥の"串"をアイコンにして、"串モノ"にしたらどうだろう、と話しは広がった。二つのお店を繋ぐのが"串"、お客さんとレストランの楽しさも"串"でつなぐ。いろんな思いや楽しさを串で繋ぐって面白い!と盛り上がり、どこにもないジャンルのレストランが誕生した。(和食 + フレンチ)x 串=新感覚のガストロ・串キュイジーヌ!?コースの2品目『いわしレバームー』コースは全部で8品。それぞれの料理は【傳】らしさ、そして【フロリレージュ】らしさをはっきりと感じる要素がある。そして、いっしょに食べればそれが調和し、新しい味となって口に広がる。つまり、それぞれ単体で味わう楽しさがありながらも、さらにそれらをいっしょに食べることで生まれる"新しい発見"と、一度で二度おいしい味の変化が楽しめるのがおもしろい。例えば、『いわし レバームー』という料理。串に刺さったイワシのミンチは、しょうがや味噌、ネギとともになめろう風に仕上げたものを炭火で焼いている。添えられているのは、レバーとフォアグラ、エシャロットや生クリームで作ったフレンチのレバームースだ。イワシのミンチ単体で食べればそれは和風の味であり、レバームースも軽やかな口当たりながらもフランス料理としての表情を見せる。しかし、レバームースの上にかけられている、塩昆布とレモンの粉末といっしょにレバームースをソースにしてイワシにつけて食べると、これが融合し、ジャンルレスなおいしさとなって、思わず笑みがこぼれてしまう。はやくも【デンクシフロリ】のスペシャリテとなった『ピジョンえび』。ハトのだしで食べる手打ちのパスタも、ソースを入れて味変してほしい店の名物になりつつある『ピジョン 海老』もおもしろい。フランスから仕入れている鳩は、胸肉、もも肉、ささみ、それぞれの部位に分けて味噌やみりん、にんにくなどでマリネし、炭火焼きに。ここに、醤油と酒の漬け地につけたボタンエビをあわせて串に打ち、さらに炭火でさっと炙る。鳩の味噌漬けは【フロリレージュ】でも過去に登場したメニューだそうだが、ここに和風の海老をあわせるのは2人のアイデアだ。鳩と海老という組み合わせは、フレンチでは昔から登場する山海の組み合わせだそうだが、ここに和の調味料を大胆に使った。添えたソースはネギソースと鳩の内臓のソース。焼き方や食材の組み合わせはフレンチの手法を用い、さらに和の味わいやフレンチのソースをアクセントにすることで、いろんな世界が広がる。ひと串のなかで繰り広げられる料理の小宇宙。これは、もはや"ガストロ・串・キュイジーヌ"と名前をつけたくなるほどだ。添えのスープパスタも秀逸だ。卵を練りこんだ手打ちパスタが、シンプルな鳩のスープに入っている。さっぱりとしつつも旨みを感じるのは、ここに和のだしが隠し味で入っているからだろう。まずは、そのままでいただけば、澄んだスープが体に染み入る。さらにネギソースを加えると一気に塩ラーメンのような表情になり、さらに内臓のソースを加えると、パンチのきいた別の麺となってまた違う味になる。これまた様々な味変がエンドレスループとなって止まらない。シックなのに、リラックスできる秘密『プリン煎茶のクリーム』しっかりと苦味もあるキャラメルに、密度の濃い王道プリン。上には煎茶を煮出した生クリームをあわ立てて。クリームのほろにがさと、キャラメルの苦味が大人の味わい「とにかく、楽しんでほしい」という2人のシェフの思いが込められた料理は、どの料理も、新しい発見があって、そしておいしい。さらに新しいのに、どこか馴染みのある味わいも感じて、懐かしさすら感じるのが心地よい。デザートの『プリン煎茶クリーム』は、まさに子どもの頃大好きだった、プリンを思い出す味。けれど、ここに、人生経験を積んだ大人にむけてほろりとした苦味をひとさじ加えているのがニクい。しっかりと焦がしたキャラメルをまといみっしりとつまっていながら、なめらかなプリンは、煎茶を煮出したクリームをあわ立てた生クリームをあわせることで、ひと味違う洗練された味になっている。【フロリレージュ】を彷彿とさせる、劇場型のダイニング洗練と心地良さのバランス。それは、オープンキッチンを囲む、劇場型カウンターからも感じられる。ダウンライトが落ち着いた雰囲気を醸し出しているダイニングは、人々が思い思いに楽しみながら、談笑し、リラックスして食事を楽しむ心地よさがある。目の前で炭火焼きされる食材や、ごはんが炊き上がる様子は、次の料理への期待にゲストは胸を高鳴らせ、自然と一体感が生まれる。「僕たちもこの店を心から楽しんでつくっています。来てくださる方にも、楽しかった、美味しかったといってもらえたらそれが本望。こうした幸せって世界中の人たち共通のものだと思うんです。ゆくゆくは海外にも【デンクシフロリ】を出したいですね」。と川手さんと長谷川さんは顔を見合わせて笑う。おいしいを繋ぐ"串”が生み出す幸せの輪は、将来、世界に広がっていくに違いない。2人のシェフのこれからの挑戦にも目が離せない。【デンクシフロリ】店舗情報電話: 03-6427-2788住所:東京都渋谷区神宮前5-46-7 B1A GEMS青山CROSS営業時間:17:00019:30、20:00023:30の二部制定休日:月曜コース料金:9,800円0※最新の営業時間に関しましては、直接お店にお問い合わせください撮影/石井宏明(人物)、岡本祐介(料理・店内)
2020年11月27日フランチャコルタのポップアップバーが1ヶ月間限定で【FARO】にオープン!能田耕太郎シェフが作る、今までにないヴィーガン料理も楽しんで加藤峰子パティシエが作るヴィーガンスイーツも注目フランチャコルタのポップアップバーが1ヶ月間限定で【FARO】にオープン!今回のポップアップのために、ソムリエがセレクトしたフランチャコルタ。左から、『フェルゲッティーナ ロゼ』(フェルゲッティーナ)、『ヴィッラ クレスピア チジオーロ ドサッジョ ゼロ』(ヴィッラクレスピア)、『エンリコ ガッティ サテン』(エンリコ ガッティ)、『カ デル ボスコ アンナマリア クレメンティ ブリュット』(カ デル ボスコ)今回の「ヴィーガン料理とイタリア最高峰のスパークリングワイン・フランチャコルタを楽しむポップアップバー」は、日本はもちろん、イタリア本国でも実現したことがない初めての試み。この素敵な企画は、自身もフランチャコルタが大好きだという【FARO】の能田耕太郎シェフが、自身のつくるヴィーガン料理とフランチャコルタの相性が良いと思ったことがきっかけで生まれた。もともとフランチャコルタはオーガニックやヴィオディナミなどの作り手が多く、シャンパーニュのようなエレガントさがありながらも、どこかチャーミングで軽やかな一面もあるワイン。その魅力を、ナチュラルで複雑味があり、かつ軽やかなヴィーガン料理と併せて楽しんでほしいと形になったのだ。フリーフローのバーで楽しめるのは、ヴィーガンのフィンガーフード。そんな、プレシャスな機会となるポップアップバーで楽しめるのは、【FARO】のソムリエ、河内 彪(かける)氏が選んだ4種類のフランチャコルタ。生産者が違えば、それぞれの個性も違うということを、フリーフローでいただきながら飲み比べてみるのも楽しい。合わせるスナックは、どこか和の雰囲気も携えた『八寸』と名付けられた4種類のヴィーガンのフィンガーフード。通常は座れない、店内もバーカウンターで、じっくりと味わうのも特別なひと時となるだろう。ここで終わっても良いけれど、せっかくここに来たならば、このバーでのフリーフローをアペロとし、続きをダイニングにてヴィーガンコースとともに楽しむことを強くオススメしたい。ここで繰り広げられる能田耕太郎シェフのヴィーガン料理と、フランチャコルタをしっかりあわせてこそ、ますますその真価を感じることができるからだ。能田耕太郎シェフが作る、今までにないヴィーガン料理も楽しんで能田耕太郎シェフ。20年以上イタリアで料理に携わり、現在はローマにあるミシュラン一つ星レストラン【ビストロ64】オーナーシェフ。2018年に【FARO】の料理長に就任し、ローマの自身の店をもちつつ、東京でもシェフを務める。現在はローマと東京を行き来する生活を送っている。そもそも、みなさんは”ヴィーガン料理”と聞いてどんな料理を思い浮かべるだろうか。実はこの1、2年の間、従来のヴィーガンのイメージを覆す、ガストロノミー・ヴィーガンがじわじわと人気を博しつつある。その、ヴィーガンでない人でも積極的に選びたくなる”ガストロノミー・ヴィーガン”の火付け役の1人とも言えるのが【FARO】のシェフ・能田耕太郎氏だ。「【FARO】は資生堂が経営するレストラン。食べて美しくなる、体が喜ぶ、というコンセプトを伺ったときに、最初から誰もが食べたくなるヴィーガン料理をメニューに出そうと思っていました」と語る能田氏。今や【FARO】を訪れるゲストの半数は、こちらのヴィーガンコースを注文するというから、その人気は推して知るべしだろう。彼のつくるヴィーガン料理は、主となる野菜の香りや食感、味の様々な表情を生かしつつ、そこに発酵調味料やハーブ、主の食材を引き立てる別の食材の組み合わせを緻密に構築し、重なり合う音楽のようなハーモニーをつくることで、ハッとさせる食べ応えを生む。こうした料理は、イタリアに長く住んでいる能田氏がローマの店ではイタリアの伝統料理を、新しい感覚で解釈した料理に通じている。ここでは、日本の生産者がつくる野菜の素晴らしさ、精進料理の歴史などからインスピレーションを得て【FARO】の料理として昇華しているのだ。ヴィーガンのショートコースより。『じゃがいものスパゲティ』例えば、こちらの『じゃがいものスパゲティ』。能田氏のスペシャリテのひとつで、じゃがいもを細く麺状にし、オイルにさっと泳がせアルデンテの食感を残したものに、カリカリに揚げたじゃがいもをトッピングしたもの。通常メニューでは、魚醤とバターを味付けに使い、キャビアをトッピングするところを、ヴィーガンコースでは、ピスタチオとココナッツで作ったヴィーガンバターと、セロリなどの野菜をベースに作った自家製醤油でコクを出し、リコリスや穂紫蘇をトッピングしている。ほのかに香るココナッツの香りと穂紫蘇の香りが、料理に華やぎを添え、通常メニューとまったく違う表情を見せている。ここに合わせる、フランチャコルタは『ヴィッラ クレスピア チジオーロ ドサッジョ ゼロ』。完全有機栽培のブドウを使用し、ドザージュはゼロ。キリッとした飲み口が、ココナッツのほのかな甘みやビーガンバターの油分をすっきりと切ってくれる。ヴィーガンのショートコースより『しろいし蓮根のラヴィオリ』そして、もうひとつのスペシャリテ『しろいし蓮根のラヴィオリ』。野菜のコンソメに、蓮根の詰め物をしたラヴィオリを浮かせたものだが、野菜の甘さを感じるスープに、もっちりとした皮につつまれた蓮根のさまざまな食感を感じる食べ応えのあるラヴィオリがよく合う。咀嚼すると、ときおりふっと鼻に抜ける、海苔の青い磯の香りがアクセントだ。合わせるフランチャコルタは、『エンリコ ガッティ サテン』。ブドウ本来の生命力を引き出すべく、有機農法を行う家族経営のワイナリーがつくるこのワインは、フランチャコルタでしか感じられないサテンの絹のような口当たりと、きめ細かな泡が、もっちりとしたラヴィオリを優しく包む。ミネラル感のある味わいは、海苔の磯の香りともリンクする。ヴィーガンショートコースより『椎茸のファルス 野菜コンソメのリダクションソース』そして、この日のメインとして登場したのが、「椎茸のファルス 野菜コンソメのリダクションソース」。肉厚のしいたけの下に忍ばせているのは、ソイミートでつくられたボロネーゼ。多くの種類の野菜を煮詰めたソースは、さながら野菜だけのドミグラスソースのような濃厚さだ。しいたけのムチっとした食感、肉を思わせるソイミートのしっかりと詰まった食べ応えのあるボロネーゼ、野菜の旨味がぎゅっとつまったソースをいっしょに食べれば、肉料理に負けないパンチとボリュームを感じる。ここに合わせるのは、フランチャコルタを牽引する名門「カデルボスコ」がつくる、フランチャコルタの最高峰『カ デル ボスコ アンナマリア クレメンティ ブリュット』。「イタリア最高の泡」とも称えられる7年以上の瓶内熟成を経たこのワインの、非常にきめ細やかなクリーミーな泡と複雑で広がりのある味わいは、ボリューム感のあるメイン料理を上品にまとめてくれる。加藤峰子パティシエが作るヴィーガンスイーツにも注目ヴィーガンコースから『吉野葛とアーモンドのソルベ紫蘇の香り』コースの最後のクライマックス、【FARO】のもうひとつの魅力は、パティシエ・加藤峰子氏が作るデザートの数々。日本ならではの食材を生かし、香りやその味わいを立体的に組み立てられたデザートは、イタリアに25年近く暮らし、VOGUEイタリアの編集者を経てパティシエとなった加藤氏の洗練された感性が光る。この、『吉野葛とアーモンドのソルベ紫蘇の香り』は、アーモンドミルクと葛で作られた、つるんとした食感のシートと口どけのよいソルベの食感が面白い。紫蘇の香りをメインにしながらも、国産オーガニックのバラやバジル、ライム、野イチゴの香りを抽出したものを忍ばせた複雑で奥ゆきのあるソースが印象的な味わいをもたらす。合わせるフランチャコルタは、『フェルゲッティーナ ロゼ』。自社栽培のブドウのみを使用し、丁寧な圧搾を行う「フェルゲッティーナ」。女性当主がつくる、華やかなフレーバーとチャーミングでバランスの取れた味わいは、デザートとの相性も抜群だ。アラカルトで注文可能な『山口農園の花のタルト』*事前に予約をそして、もうひとつ。今回、特別に事前の予約をすればアラカルトでオーダー可能なプティフール『山口農園の花のタルト』をご紹介したい。まるで小さなブーケのようなこちらのタルト、山口農園から届いた花とハーブがなんと約40種類乗せられている。これは、多種の薬草から作られるお酒『アマーロ』からヒントを得て、日本の野山の野生の花やハーブで”食べるアマーロ”をつくりたいと生まれたデザート。ヴィーガンメニューのものは、クリームが米粉からつくられており、さっぱりとした口当たりで、食べるだけですっきりとした食後感になる。フランチャコルタと合わせる、特別なヴィーガン料理は、そのときどきの旬の食材でつくられるため、内容はそのときどきで変わるそう。日本の季節の恵みを、イタリアの最高峰の自然派スパークリングワインのペアリングで楽しむ貴重な機会、たった一ヶ月しか開催されないので、ぜひ早めに予約を。「Franciacorta x FARO Pop-up Bar(FF Pop-up Bar)」詳細期間:2020年11月19日~12月18日バー利用:フリーフロー 8,000円(スナック付)ダイニング利用:ヴィーガン ショートコース 6,000円ガストロノミー ショートコース 7,000円※要予約※いずれも税込、サービス料別※フリーフローはディナータイムのみ【FARO】店舗詳細電話:03-3572-3911住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル 10F営業:12:00~13:30(L.O.)、18:00~20:30(L.O.)定休日:日曜、月曜日、祝日、夏季(8月中旬)、年末年始
2020年11月20日楽しく、おいしく、ワクワクしながら料理を通じて社会を、未来を変えていく。そこに先陣を切って、挑戦し、実行していきたい。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令された4月上旬。医療従事者へお弁当を届ける団体『Smile Food Project』の活動の報道が大きくされたことを覚えている人も多いだろう。活動の中心となったのが人気店【シンシア】シェフ石井真介氏だ。緊急事態宣言中、営業ができずに、どの店も苦難を強いられ、売上が激減。しかしそれ以上に“料理が好き”で料理人となった彼らにとって、料理ができないことは、想像を絶する苦しみだった。【シンシア】の石井真介シェフそんななかで、たまらず石井氏が胸の内をfacebookに投稿。「フランスで現地の日本人シェフたちが医療機関に差し入れをしたとのこと。僕たちも、命がけで働いてくれる人たちに何かしたい」その声に賛同した人々が集まり、なんと1週間後にはプロジェクトが発動。その活動は大きく報道され、料理人の社会活動に注目が集まった。北参道にある【シンシア】のオープンキッチンそんな石井氏が9月、海の未来に人々の意識を向ける新しい店【シンシア・ブルー】をオープン。漁獲量が年々減っている海の資源を守るため、サステナブル・シーフードを扱い料理する、画期的な店だ。料理を通じて、社会を変える――。そんな新しいシェフのスタイルを自らの背中で見せていく石井氏。その辿ってきた道、そして誰も通ったことのない道への挑戦に迫る。2軒目の出店に込めた思いは“水産資源の明るい未来”――【シンシア・ブルー】開店おめでとうございます。サステナブルさ・シーフードに光をあてたレストランは以前から考えていたのですか?今回の出店のお話があったのが、2年前。ちょうどカジュアルな店をやってもいいなと思っていたときで、お受けしました。けれど初めは、具体的な内容は決めていませんでした。サステナブル・シーフードを使おうと思ったのは、『シェフス・フォー・ザ・ブルー』(水産資源を守るシェフが中心となった一般社団法人)の活動から。2020年8月、原宿の「ジングウマエ コミチ(JINGUMAE COMICHI)」にオープンした【シンシア・ブルー】と、そのチームメンバー乱獲や大量消費による魚の減少などを学ぶなかで、国際認証を取得した持続可能な漁業・養殖業の魚「サステナブル・シーフード」を知りました。「水産資源や環境に配慮し適切に管理されたMSC認証を取得した漁業で獲った水産物」や「環境と社会への影響を最小限に抑えたASC認証を取得した養殖場の水産物」などです。新しい店でそれを使えれば、海の状況を広く知ってもらえると考えました。【シンシア・ブルー】の『FIP鱸のパイ包み焼き』。「漁業改善プロジェクト(FIP)」を推進中の漁業者による東京湾のすずきを使った一皿――【シンシア】ではサステナブル・シーフードを使わないのですか?日本に流通しているサステナブル・シーフードは輸入冷凍魚がほとんどです。【シンシア】はゲストが特別な日に来てくださるようなコースメインの店なので、冷凍の魚は使えません。でもカジュアルな店なら、冷凍のものを上手に使っておいしく提供できるのではと思いました。―― バイキングスタイルにしたのは、なぜですか?【シンシア】では、フードロスへの取り組みとして、営業中に出た食材の端っこや余った野菜を使って、週末に【シンシア+】というランチブッフェを開催していたのですが、これが好評で。その延長線のイメージもありました。どんな素材でもおいしく料理することが料理人の腕の見せ所。認証の魚以外にも、マイナーで売れにくい、鮮度落ちが速いなどの理由から市場に回らない新鮮な未利用魚も、信頼のおける魚屋さんから仕入れて使っています。新型コロナウイルスの影響もあり、今はテーブルオーダーで一品ずつ運ぶスタイルをとっています。思った以上に好評で、みなさんすごく召し上がるので儲けはギリギリかな(笑)。【シンシア・ブルー】では、信頼性の高い国際認証を取得したサステナブル・シーフード、そして未利用魚を使った料理をバイキングスタイルで提供――バイキングなのに、料理ができたて。そして美しくておいしいですね!こうした、環境問題や社会に対してのメッセージって声高に伝えようとすると伝わらない。みんな勉強しにレストランに来ているわけじゃないですから。おいしくて、ワクワクして、楽しくてまた来たい!と思ってもらうことが大切。そのなかで少しでも、そういう問題があるんだ、って興味を持ってもらえればいいと思っています。――【シンシア】も、前身の【バカール】も予約困難の理由は“楽しいから”ですね。そうだと嬉しいです。【バカール】は、当時、ソムリエの金山幸治と、みんなが来れるギリギリの値段にしてフランス料理の面倒臭いところ全部とっぱらって、楽しさとおいしさが同居する店にしたいね、とつくった店でした。手書きの台帳で顧客データをまとめて、顧客ごとのおもてなしを心がけました。――そのおもてなしは、【シンシア】にもつながっていますね。はい。【ラ・ブランシュ】で修業していたとき、田代シェフは厨房でゲストをテーブル番号でなく名前で呼んでいました。その方の状況を常に聞き、微調整していた。そこに愛情を感じました。料理は自己満足でつくるものではないです。料理で人を喜ばせたい。その原点は常に忘れません。コロナ禍においてゲストがみんな応援してくれた。そのことも嬉しく、また自信にもなりました。テーブルに置かれるメッセージカード。ゲストごとに内容が違う新しい世界が開いた、医療従事者へのお弁当支援――医療従事者へお弁当を届ける『Smile Food Project』は大きく報道されましたね。ちょうど、フランスの日本人シェフたちが、医療従事者にお弁当を差し入れているニュースを見て、自分たちも何か役に立ちたいとSNSで発信したことがきっかけです。僕は料理はできるけれど、仕組みはつくれない。そんなどうしようもない気持ちをそのまま載せたら、ケータリング会社『サイタブリア』の石田社長、広告代理店の方などが次々と連絡をくれて1週間でチームが決まり、企業の協賛金も得て、実行できた。あれには驚きました。「いろんな人が集まれば大きなことができる。新しく実感できた成功事例です」と石井シェフ――この成功事例は大きな出来事だったのですね。正直、【シンシア・ブルー】はコロナ禍においてオープンをどうするか悩み、手付金を捨てて辞めようと思ったこともありました。けれど、このお弁当プロジェクトがきっかけで、クラウドファンディングという形をとり、開業しようと決意しました。サステナブル・シーフードを使ったレストランが増えないのは、そこにいろんな壁があるから。『サステナブル・シーフードを使うレストラン』とうたえる認証をとるのもお金がかかるし、該当食材を冷蔵庫内で別に管理しなければならないなど労力もいる。けれどやってみなきゃ誰にも伝えられない。自分がまず先陣を切ってやってみる。その背中を見て誰かがついてきてくれたら嬉しいですね。Sincère【エリア】千駄ヶ谷【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】25000円【アクセス】北参道駅 徒歩4分あわせて読みたい記事
2020年11月18日“銀座”という華やかで特別な街を料理とワインで感じる「秋刀魚を応援する!?」独創的な料理名の秘密偶然から誕生した、トリュフが雪のように積もるアイスクリーム“銀座”という華やかで特別な街を料理とワインで感じるインティメイトな雰囲気をつくり出すシックなカウンター早いものでもう11月。年末が視界に入ってくる季節だ。今年は海外にも行けなかったし、クリスマスや年末に、贅沢においしいいものでも食べに行こうかな。バブル世代ならずともそんな風に考えている人も多いはず。そんなちょっと贅沢で特別なディナーを味わうなら、今こそ銀座に出かけてほしい。昭和の人間にとっては、銀座といえば華やかで、少しおしゃれして出かけたくなる場所。紳士淑女が颯爽と歩き、多くの文化人に愛され、華やかでファッショナブルな独特の香りを放つ街だから。昔と比べれば今は、背筋を伸ばしたくなる穏やかな緊張感と、刺激が交錯する独特の雰囲気は薄れてしまったかもしれないけれど、海外の人で賑わっていた街が今は少し落ち着きを取り戻し、かつての銀座らしい空気が戻ってきたように思う。そんな銀座のビルの一角に、銀座らしい華やかさ、そして現代の軽やかさが交錯するフランス料理を楽しませる店がある。その名は【ル・シーニュ】。「旧軽井沢ホテル」の総料理長を勤めていた上野宗士氏と、【ドミニク・ブシェ】でソムリエをつとめていた有馬純平氏がタッグを組んで、2019年12月にオープンしたレストランだ。シェフの上野宗士さん。パリ【レ・ザンパサドール】などで修行後帰国し、【ベージュ アラン・デュカス 東京】の副料理長に就任。その後、「旧軽井沢ホテル」のフランス料理店【ル・シーニュ】のシェフに。2019年12月に現在の店【ル・シーニュ】シェフとなる料理はおまかせコースのみ。メニューをひらけば、『ミニヨンズ現る』『完熟な未熟者』『銀座』のような、およそどんな料理かはわからない、短編小説の目次のような文字が並んでいる。「ワインはどうされますか?」と有馬さんに聞かれて、想像つかない料理を楽しみに、‟おまかせで”と身を委ねることにした。が、しかし。それぞれの料理に合わせるペアリングだとアルコールが弱い私には少し辛くなってしまう。そんなことを正直に話すと、それぞれのグラスワインの分量を調整してくれるという。その心遣いがうれしい。そして、それが大正解!お店で楽しめるワイン色々。ロマネ・コンティとルロワはボトル提供。フランスワインが中心だが、カリフォルニア、スイス、ギリシャなど、若く挑戦的で将来期待されるメゾンのものも揃えている実は、こちら、ワイン好きにはちょっと話題のお店でもある。ストックしている銘醸ワインは250種類以上。ワインペアリングは16,000円から50,000円までという幅広いラインナップ。40,000円や50,000円のラインナップには、ブルゴーニュの注目株「ピエール・イヴ・コラン・モレ」のコルトン・シャルルマーニュや、ボルドーの格付け第1級シャトー・オー・ブリオンなど、他店では、まず、グラスで提供されることのないワインが登場する。「やはり、銀座にいらっしゃるお客様に満足していただくようなワインのラインナップは意識しています。基本は本質的においしく、美しいワインを。若手の注目株から、銀座らしいオーセンティックなものまでお客様の嗜好にあわせてご紹介しています」と有馬さん。一つの料理ができあがると、上野さんと有馬さんで真剣に話し合い、合わせるワインや最終的な料理の味の調整をして、世界観を決めていくため、ペアリングのワインは一皿ごとに変えている。お任せコース24,000円のなかの一品『銀座』。キャビアは5種類ほど常備し、常連のお客様にはあえて違う種類のものを出して味の違いを楽しんでもらうそう‟銀座”という街の魅力を意識しているのは、シェフ・上野さんも同じだ。【ベージュ・アラン・デュカス 東京】の副料理長を務めていた上野さんにとって、‟銀座”というのは、思い入れのある場所だったという。集まる人の面白さ、華やかな街の魅力。そうした場所で、‟若すぎず、また年を取りすぎてもいない今”軽井沢から銀座に移り、シェフを務めることに魅力を感じたという。そうした、彼らの思いがよくわかるのが、スペシャリテの一つ『銀座』だ。これは乳脂肪分40%のジャージー牛でつくられたクリームに銀箔とキャビアが‟これでもか”と乗せられたゴージャスな一品。これには、ペアリングをオーダーした人には値段にかかわらず、もれなくグラスに、シャンパンの王様・クリュッグがたっぷりと‟注がれる。上品な塩気のキャビアと、濃厚ながらもしつこくないクリームを一口食べる。そして優雅で繊細でふくよかなクリュッグを口に含む。これぞまさに、オーセンティックな煌びやかさと軽やかな‟令和”が交錯した今の銀座を体現したかのような組み合わせ。背徳感のある贅沢に身を浸しながら、遊び慣れた大人気分で、自然と高揚していくのがわかるだろう。「秋刀魚を応援する」⁉独創的な料理名に込められた秘密の話『秋刀魚応援プロジェクト』。甘みのあるパプリカと脂が乗った秋刀魚の旨味の多重奏を、ハーブのフレッシュさで小気味好く切るそして、こちらのお店で楽しいのが、料理につけられたメニュー名。『銀座』の次に運ばれてきた料理メニューは『秋刀魚を応援プロジェクト』。現れたのは、ハーブに包まれた可愛らしい黒いタルト。中身は、パプリカのコンフィに香ばしいサンマ。それらの食材をハーブのサラダとエディブルフラワーがドレスアップしている。なぜ、これが、サンマの応援料理なのだろうか?その理由をシェフに聞くと「米津玄師さんの『パプリカ』ってあるじゃないですか。あれはNHKの番組で子供むけの応援ソング。一方、今年はサンマが深刻な不漁。そのなかでも長年つきあいのある仲買の方が脂ののったいいものを届けてくれるんです。そんなサンマの現状に意識を向けつつおいしさをちゃんと知ってほしい、組み合わせとしてもいいパプリカと合わせた料理だから、応援歌とかけて‟秋刀魚を応援プロジェクト”という名前になったんです」と笑顔で答えてくれた。『名前はまだない』。熊本県産の‟えこめ牛”のローストにマデラ酒、ごぼうなどの付け合わせを添えて。赤身ながらも繊維がこまかく柔らかい繊細な肉に、さっぱりとしたソースが相性抜群続いて運ばれてきた牛肉の一皿のメニュー名はその名も『名前はまだない』。どんな料理かといえば、赤身の牛肉のステーキに、マデラソース、そしてごぼうなどの野菜の付け合わせがのせられたもの。なんでも、このお皿につけたくなるような名前が思いつかないのだという。「料理名に生産者の名前や食材名、ソース名を並べるような表記にしっくりこなくて。そのお料理の食材の背景や歴史が見えて、記憶に残るものにしたいんですよね」と上野さん。アラン・デュカスの元で薫陶を受けた上野さんが、その技術と哲学を消化して自分のものにし生み出す料理は、フランス料理の骨格がしっかりとありながらも、軽やかで自由だ。そうした彼の料理に、従来のメニュー表記は確かに似合わない。彼にとってフランス料理とは、‟火の入れ方、味の付け方、調理の正確さなどの基本的な技術の上で、それをどう解釈していくか”というところに真髄があるという。例えば、この熊本の赤牛のローストは、バターをたっぷりと使い、アロゼしながら焼き上げたクラシックなフランス料理の手法のもの。ソースは従来のマデラソースよりもぐっと酸味を効かせてさわやかに仕上げ、黒ごまのパウダーを添える。付け合わせは、‟和食からヒントを得た”というごぼうを煮たものと、ごぼうでつくった団子。団子は【日本料理晴山】に食べにいったとき‟美味しくて感動したもので、山本晴彦シェフに作り方を教えてもらって、早速料理に取り入れたものだそう。この組み合わせが実によく合う。上野さんの柔軟で、‟料理をつくるのが楽しくてしかたない”という気持ちが一皿ごとに伝わってくる。そして、そこに、短編小説のような料理名が、ワクワクした高揚感をゲストに伝えてくれるのだ。偶然から誕生した、トリュフが雪のように積もるアイスクリームデザートの『黒雪』にふりかけられるフローズン・トリュフ。その大きさは圧巻!フランスからオーストラリアまで、その時期によって上質なトリュフがとれるところから仕入れる。軽井沢時代からのスペシャリテ『黒雪』は、そんな自由で料理を楽しんでいる上野さんを象徴する料理かもしれない。このスペシャリテは偶然の産物だったという。冬が厳しい軽井沢。ある日、食材庫に行ってみたら、黒トリュフが凍ってしまっていた。凍ったトリュフは、どんな風になってしまっているのだろう?と疑問に思った上野さんは、まずスライスして食べてみた。すると、冷たいトリュフが、口の中で一気に溶け、花開くように香りが立ち上った。温度差によってその香りの強さと広がりが強調されることに気がついた上野さんは、トリュフならではの香りを極限まで引き出すために、凍らせたトリュフをすりおろし、口の中の体温で一気に花開くように冷たく提供するにはどうしたらいいかと考えた。そして生まれたのが、冷たいまま提供できる、アイスクリームというわけだ。「トリュフをよりトリュフらしく届ける」ために、アイスクリームもトリュフのアイスクリームに。そこに細かく削ったトリュフを、雪が降り積もるようにたっぷりとかけた。「浅間山が噴火して、火山灰まじりの雪が降り積もったら、こんなイメージかもしれない」そう思い、『黒雪』と名付けた。『黒雪』。見よ、この降り積もるトリュフの厚さを!!たっぷりとこころゆくまで振りかけられた黒トリュフが、口のなかで溶けるときに放つ芳香に、夢見心地になること間違いなしこのデザートは、コースを締めくくる最大のクライマックスだろう。口の中で一瞬にしてシュワっと溶けた瞬間、芳醇で媚薬のような香りが身体中に広がり、恍惚としてしまう。そして、この日にいただいた、数々の料理とワインが走馬灯のように思い出され、今日という特別なディナーが深く記憶に刻まれる。【ル・シーニュ】というのは、‟兆し”という意味だそうだ。これからなにか起きそうな、ワクワクする予感。実際、食事をしている間、、次はどんなワクワクに出会えるのだろう?という予感がずっと持続していた。そして大人になった今だからこそ、心地よい高揚感を覚えながら、こうした銀座らしい落ち着いた場所で贅沢なひとときを味わうことで、忙しく走り抜けてきた日々をリセットできる。きっと明日、なにかいい‟兆し”があるかもしれないな。寝る前に、いただいためくるめく料理とワインの素晴らしさを反芻しながら、幸せな眠りにつく。それは、いろんなものを経験してきた大人だけが味わえる特権なのかもしれない。【ル・シーニュ】店舗詳細電話:03-3571-0005住所:東京都中央区銀座5-4-15 西五ビル6F営業時間:18:30023:00(L.O.19:30)定休日:日曜日・月曜日コース:24,000円(2021年1月6日より27,000円)
2020年11月13日日常の食材をていねいに調理した、新しい町中華がアツイ下ごしらえに手間をかけた名物のフカヒレはぜひ食べたい点心にワイン。いろんな楽しみ方ができる大人のワンダーランド日常の食材をていねいに調理した、新しい町中華がアツイ中華料理が、今、ますます元気だ。マニアックな辺境系中華からシェフの研ぎ澄まされた感性が光るモダンチャイニーズまで。振り幅の広さも魅力の一つだろう。そうした動きの中、見直されつつあるのが町中華だろう。アラカルト中心で、麺飯一品だけでももちろんOK。メニューを見れば、酢豚、海老チリ、麻婆豆腐等々の、誰もが知っている往年の“おなじみ中華”がずらりと並ぶ。肩肘張らず毎日でも通えるような気取りなさ。そんな昔ながらのテイストはそのままに、より洗練された空間と軽やかな味わいを持つ、新しいスタイルの町中華が近頃、次々に誕生。チャイニーズ通らの熱い視線を集めている。落ち着いた趣の店内に一歩入れば、まず、カウンター席。奥にダイニングと個室も7室用意かれている。この10月1日、六本木にオープンしたばかりの【桃仙閣】も、そんな愛すべき“ネオ町中華”を標榜する一軒だ。「ここでは、昔から食べ継がれてきた日本の中華料理を、気を衒わず、基本に忠実に作っていきたいと思っています。」落ち着いた口ぶりでこう語るのは、オーナーシェフの林亮治さん。ミシュランの星を持つあの南麻布【茶禅華】の知る人ぞ知るオーナーでもある。林シェフの島根にある実家が、実は50年余りも続く老舗中華料理店【桃仙閣】。高校を卒業後、恵比寿【筑紫楼】、西麻布【麻布長江】で修業を積み帰郷。25歳で家業を継いだ林シェフ、10数年を経て、ようやく島根「桃仙閣」の味を東京に伝えたいとの思いを叶えたわけだ。だが、そこは東京のど真ん中『酢豚』や『海老チリソース』、『天津飯』に『玉子の皮の春巻』等々の昔懐かしい本店メニューは踏襲しつつ、さりげなく都会らしさを加味している。左の4つは蒸し鷄のネギソースや白イカとレタスの湯引きなどの“おまかせ前菜”(写真は2名分で3,800円)。右の3つは、ピーマン薄切りニンニクオイル和えなど“野菜のおまかせ前菜3種”(2名分1,680円)。まず、目を見張らされるのは前菜の数々。メニューに並ぶは、『蒸し鷄のネギソース』や『ピータン豆腐』、『白イカとレタスの湯引き』など、一見、ありふれた料理ばかり。だが、白磁の器に盛りつけられて登場する一皿一皿は、見るからに洗練され、口にすれば、湯引きした白イカはまだほんのりと温かく、蒸し鷄の胸肉はしっとりと舌に優しい。聞けば、湯引きにする料理は、いずれも作り置きをせず、注文の都度、素材を茹で、その場でソースと和えているのだとか。だからこその白イカの柔らかさと絶妙な温度感なのだろう。また、蒸し鷄にしても鷄を丸のままスープに浸して蒸し、冷蔵庫には入れずに常温のままで提供。翌日へ持ち越すことなくその日に使い切る。それゆえ、肉はしまることなく作りたての美味しさを保てるわけだ。下ごしらえに手間をかけた名物のフカヒレはぜひ食べたい『毛鹿鮫フカヒレの姿煮込み』(250g 13,800円)。厚みのある毛鹿鮫ならではのざくりとした食感と白湯の旨味が後を引く逸品。304人で楽しめる。ハーフサイズもあり。「ここでは、取り立てて特別な料理も、特別な素材も扱ってはいません。当たり前のことを、手を抜くことなく実直かつ丁寧にやるだけ。味付けも、極力シンプルにしています。化学調味料は言わずもがな、全体的に一歩引いた味つけにしていますね。」と林シェフ。シグネチャーメニューの一つ『毛鹿鮫のフカヒレの煮込み』も然り。シーズン中には上海蟹の味噌を入れることもあるが、通常はスタンダードな白湯煮込みが主流となる。フカヒレを煮込む白濁したスープは、鷄のもみじをベースに老鷄、鷄ガラ、豚骨に豚脂少々を6時間余りも強火で煮込み、1/3まで煮詰めたもの。冷めればプルプルに固まるほどゼラチン質の旨味が凝縮されている。ここに醤油やオイスターソース、紹興酒等で味つけするわけだが、オイスターソースの量はグッと控えめ。フカヒレ本来のねっとりとした食感や香り、底味の深さがじんわりと引き出され、淡味ながら深奥な余韻が最後まで舌に残る。オーナーシェフの林亮治さん、42歳。子供の頃から慣れ親しんできた実家【桃仙閣】の味を大切に、今の町中華を追求している。点心にワイン。いろんな楽しみ方ができる大人のワンダーランドその他、水餃子や焼売など吉林省出身の点心師が作る点心類もバラエティ豊か。同じ水餃子も『羊肉の水餃子』はカボチャと人参を練り込んだ皮を用いる一方で、シンプルな皮で作る『海老と青紫蘇の水餃子』は包み方自体を変えたりと、目と舌を楽しませてくれる。8000円のコースは用意されているものの、基本はアラカルト。林シェフがにこやかにこう語る。「焼きそばや炒飯一皿でもいいし、前菜何品かとワイン、あるいは、餃子とビールなんていうオーダーもOK。深夜1時まで営業していますから、夜更はワインバー的に使って頂いても。お客様の好きなように楽しんで頂けたら嬉しいですね。」お一人様には、量的な対応も快く応じるなどホスピタリティも満点。スタッフのにこやかなサービスには、ついわがままの一言も言ってしまいそうだ。吉林省出身の女性点心師が作る点心もおすすめ。手前から“上海蟹の煎り焼き餃子”一個780円。“玉子皮の春巻”4カット1,280円、“羊肉の水餃子”一個420円など。一つのボリュームもたっぷり。また、「ワインバー的にもぜひ使って欲しい」、と話すようにワインも充実。ブルゴーニュを中心に、各国のワインが揃っている。ペアリングが流行りの中、ここでは上質のワインをボトルでゆっくり味わう客が多いとか。そう、ここは、美味しいものを食べ尽くした真のグルマン達が羽根を休めに訪れる普段使いの名店にほかならない。林シェフが中華料理に合うと考えているブルゴーニュの赤ワインを中心に、白ワインはアルザスのゲヴェルツを始め、南アフリカ、ギリシャなどグローバルなワインが揃う。ボトル3000円から。【桃仙閣 東京】店舗情報電話:080-4343-3946住所:東京都港区六本木4-8-7 六本木嶋田ビル B1F営業:18:00001:00(L.O.)※土日祝営業の場合17:000定休日:日曜日を中心とした不定休平均予算:10,000円015,000円
2020年11月06日~愛読書をご紹介してくださるのは~【星のや東京 ダイニング】浜田統之さん1975年、鳥取県生まれ。2005年、「ボキューズ・ドール」日本大会で史上最年少優勝。2007年、【軽井沢ホテルブレストンコート】総料理長に就任。2013年には、「ボキューズ・ドール」仏大会本選で第3位の栄冠にも輝いた。2016年、【星のや東京】の料理長に就任。ひたすら素直な心をもって未来に残る料理を考える随分前のことです。今や僕の料理に欠かせない器のつくり手である陶芸家の青木良太さんから、「自分の作品は数千年後に生きる人々の心を揺さぶることができるだろうか」というメッセージとともに一枚の写真が送られてきました。写されていたのは三千年前の縄文土器。それは驚くほど美しく、現代においても色あせない魅力をたたえていました。『ここまでわかった!縄文人の植物利用』工藤 雄一郎、国立歴史民俗博物館 編/新泉社いつの時代もいいものはいい。青木さんによって示唆されたその事実に僕は大いに刺激され、料理人として〈未来に残る料理〉を追求していこうと心に固く誓いました。そのために、何はともあれ古代日本人の食生活を知らなければいけない。そこで、僕は縄文時代までさかのぼって調べることにしたのです。いやはや、当時は今よりよっぽど豊かですよ。高級だからとか、みんなが評価するからとか、そうした邪念にとらわれず、〈目の前のものをどうおいしく食べるか〉だけに心を砕いて一途に調理していたのですから。『木のいのち木のこころ―天・地・人』西岡常一、小川三夫、塩野米松 著/新潮社そうした真っすぐさは『木のいのち木のこころ―天・地・人』という本にも教えられましたね。ひどく感銘を受けたので読後に小川三夫棟梁に会いに行ってきたのですが、そこでこんなことを言われました。「法隆寺を建ててくださいと言われたら難しいと思うだろ?でも、要は木と木の組み合わせの集合体。そうやって素直に捉えられるかどうかが何事においても大切だ」『プレゼンテーションzen』ガー・レイノルズ 著/ピアソン・エデュケーション(現・桐原書店)考えるより、感じる。その在り方を心がけながら、今、僕は天然魚と山菜をメインに使ったコース料理に挑み続けています。食材を限定したのは、ミニマリズムの本質が凝縮された〈禅〉の精神にのっとって。つまり、あれこれ選択肢を持つのではなく、限られた中で最大限の効果を生み出す、という発想です。今回の3冊はいわゆる料理本ではありませんが、むしろ料理以外の分野に触れることが料理人の視野を広げ、未来に残る料理のヒントをもたらす。僕はそう確信しています。~浜田さんの愛読書3選~『ここまでわかった!縄文人の植物利用』工藤 雄一郎、国立歴史民俗博物館 編/新泉社狩猟や採集、漁労をなりわいとした縄文人は、現代よりもはるかに植物を利用していた。最新の理科学研究に基づき、縄文の暮らしと植物の関係を写真や図版を用いて解明する。『木のいのち木のこころ―天・地・人』西岡常一、小川三夫、塩野米松 著/新潮社世界最古の木造建築として知られる法隆寺の伝説的な宮大工、その唯一の内弟子などの聞き書きを通して、職人が何を思い、どのようにその技と知恵を継承してきたかをつづる。『プレゼンテーションzen』ガー・レイノルズ 著/ピアソン・エデュケーション(現・桐原書店)プレゼンテーション指導の第一人者がその極意を伝授。余分なものを極限までそぎ落とし、本当に伝えたいことのみをシンプルに伝えるという考え方を「禅」になぞらえている。いかがでしたか。料理人の愛読書「シェフの本棚」も掲載されている冊子「hitosara quarterly magazine」は、グルメサイト「ヒトサラ」が加盟店様向けに発行している食のトレンドブックです。日本から世界まで、あらゆる角度から食の情報を集めています。下記リンクより試し読みもできます。ぜひチェックしてみてください。星のや東京 ダイニング【エリア】大手町【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】30000円【アクセス】東京駅 徒歩10分
2020年11月01日フランス史上初、ミシュラン1つ星を獲得した日本人女性シェフ2019年は神﨑千帆さんにとって忘れられない年だ。ミシュラン仏版で、シェフを務める【ヴィルチュス】が初の1つ星を獲得。師マウロ・コラグレコさん率いる地中海沿いの【ミラズール】は3つ星に輝いたからだ。常連も多く45席が毎日ほぼ満席。「彼は私を認めてくれた初めてのシェフ。応えたいという思いで必死でした」と振り返る。2度目の渡仏で1つ星として頭をもたげたばかりの【ミラズール】へ。アルゼンチン人のコラグレコさんは、国籍も性も関係なく仕事そのものを認めてくれた。千帆さんの父親は精肉店で、子どもの頃から料理人になることが夢。離婚して4人の子どもを女手一つで育て上げた母親の姿を見て備わった生き抜く根性は厨房でも伝わっただろう。全部門を経験し、スーシェフにまで上り詰めた。公私ともにパートナーの、製菓専門のディ・ジャコモさんともこの店で出会った。『ホタテとハヤトウリのサラダ風』。ハヤトウリはタリアッテレ状に切りそろえ、マンダリンオレンジ、アイスプラントとあえる。オレンジとオリーブオイルのシンプルなドレッシング、からすみを振りかけて。「マウロに学んだのは、素材を生かす哲学。例えば、塩はゲランド産粗塩を乾かしたものを使いますが、旨みが凝縮していて、これに勝るものはありません」。【ヴィルチュス】では、率直に言い合えるディ・ジャコモさんとの二人三脚。地中海の太陽を感じさせる、鮮烈さと優しさ溢れる料理で、素材の表情を浮かび上がらせる腕には定評がある。常連も多く45席が毎日ほぼ満席だ。一匹から切り出したアンコウのフィレ。エシャロットで炒めてクリームを絡めたフダンソウと芽キャベツを添えて。パセリと魚のフュメのエマルジョンと。将来的な出産との両立にも悩み、「男性も出産できたら、男女差はないのに」とも。その素直な語り口には、女性としてのステージにもまい進する強さが満ちている。
2020年10月24日~愛読書をご紹介してくださるのは~【Restaurant PAGES】 手島 竜司さん1976年、熊本県生まれ。19歳から地元のフランス料理店で修業を開始。26歳で渡仏し、パリの名店【Restaurant Lucas Carton】などで研鑽を積む。2014年、パリ16区の凱旋門近くに【RestaurantPAGES】を開業。’16年に仏・ミシュランガイドで一つ星を獲得した。先人の世界観を真に知るには本こそが頼り昔は「フライパンに残ったソースをなめて味を盗め」と言われたものですが、時代は変わりました。今は携帯がありさえすれば、苦労なくレシピを引き出せます。それによって浮いた時間を活用すれば、己の料理を進化させることも可能でしょう。科学的に美味を追求する『ModernistCuisine』を読んでみようと思った理由もそこにあります。『Modernist Cuisine』シリーズ 日本語版 ネイサン・マイアーボールド、マキシム・ビレット 著、山田 文、田畑 あや子、内藤 典子 訳/角川書店そんな今日的な便利さを歓迎する一方で、僕はアナログならではのよさも実感しています。例えば先に述べたようにインターネットを検索して先人のレシピを知り得たとしても、その先人がどんなアイデンティティーを持っていたから、食べ手の心を揺さぶる料理が生まれたのだということを体系的に理解するには至らない。それができるのは、やっぱり「本」なんですよ。僕は今まで給料の多くを本に費やしてきました。渡仏して数年はひどい貧乏生活でしたが、部屋の壁一面を埋め尽くすほどの料理本を求め、必死になって読みましたね。『皿の上に、僕がある。』三國 清三 著/柴田書店とくに印象的だったのが、三國清三シェフによる一冊『皿の上に、僕がある。』。三國シェフの大胆さ、豪快さ、激烈なバイタリティーがぎゅっと凝縮されていて、憧れずにはいられませんでした。料理人がアイデンティティーを持ち、それを表現することが大切であると、この本が無言のうちに諭してくれたのです。『「 京味」の十二か月』西 健一郎、平岩 弓枝 著/文藝春秋また、『「京味」の十二か月』には日本料理の奥深さをしみじみと教えられました。僕なりの解釈ですが、日本料理の素晴らしさとは、生産者、流通業者、仲買人、料理人など、プロフェッショナルたちによる総合力のたまものであることなんです。僕は今、フランスでフランス料理をやっていますが、日本人シェフとして、日本料理におけるその一貫性という文化を表現したい。それもあって、店ではあえて日本の食材を使いません。現地の食材を見極めておいしい状態に持っていくことが、日本人の料理哲学だと思っていますから~手島さんの愛読書3選~『Modernist Cuisine』シリーズ 日本語版マキシム・ビレット 著、山田 文、田畑 あや子、内藤 典子 訳/角川書店マイクロソフト社の最高技術責任者が料理の世界に転身し、ラボを創設。最先端の調理器具や、美味を科学的に追求。肉を煮る鍋の断面を写真にしたりと見せ方も徹底している。『皿の上に、僕がある。』三國 清三 著/柴田書店三國シェフが1986年に31歳で上梓。20の食材を取り上げ、それぞれに対する考え方、調理法を三國氏が自身の言葉でつづる。氏の世界観が投影された大胆なビジュアルは必見。『「 京味」の十二か月』西 健一郎、平岩 弓枝 著/文藝春秋名店【京味】をいとなむ西健一郎氏が、自身の料理のつくり方や考え方を、常連客である作家・平岩弓枝氏との対談によって解説。四季の素晴らしさを改めて実感できるはず。いかがでしたか。料理人の愛読書「シェフの本棚」も掲載されている冊子「hitosara quarterly magazine」は、グルメサイト「ヒトサラ」が加盟店様向けに発行している食のトレンドブックです。日本から世界まで、あらゆる角度から食の情報を集めています。下記リンクより試し読みもできます。ぜひチェックしてみてください。
2020年10月18日一人で切り盛りしていたころに編み出した、最高の〝炊き方0研ぎ、浸しん漬し、火加減、炊き、蒸らし……。一つ一つはごくシンプルな工程に思えるが、炊き方は店により千差万別。だからこそ日本料理店にとってはこだわりの見せどころとなるわけだが、数ある店のなかでもその味に定評があるのが、【新ばし 笹田】の笹田秀信さんが炊くご飯だ。南魚沼産コシヒカリ、岩手県産の松茸、日本料理店の命であるだし。使う材料がシンプルだからこそ、その差は歴然とする締めはきまって白いご飯。ふっくらと上品な甘味があり、これだけでも贅沢なほどだが、今回は特別に、要望があったときにだけ出すという「松茸ごはん」の炊き方を教えてもらった。蒸らし時間と水分量が変わる以外、炊き方は白米とほぼ同じ。中でも独特なのが、火力を一切変えずに炊くこと。「一人で厨房を切り盛りしていたころ、細かな火加減の調整が難しくて、そのために編み出しまた」。炊きは17分前後と決めているが、最後は空気穴から出る湯気の香りで炊き上がりを判断する。『贅沢! 松茸ごはん』のつくり方日本の秋の“ 贅” を“炊く”食材が輝く、匠の炊き方南魚沼産コシヒカリ、岩手県産の松茸、日本料理店の命であるだし。使う材料がシンプルだからこそ、その差は歴然とする。材料(2人分)・米(新潟県南魚沼産コシヒカリ) 1.5合・松茸(岩手県産) 100g(~150g)・一番だし(右ページ参照) 約250cc・うすくち醤油 40cc・みつ葉 少々つくり方'v まず、米を研ぐ。ボウルに水を入れておき、米を入れたら、最初の水は素早く捨てる。次からは、手のひらの親指の付け根あたりで軽く押しつけるように研ぎ、これを3回ほど繰り返す。'w 米の水気を切ったら、ザルにあげて最低30分ほど置いておく。'x 松茸は、たんざく切りに。薄すぎないように切り、食感を残しておく。'y 2枚蓋の土鍋に、米と、あらかじめとっておいた常温の一番だしを入れたら、うすくち醤油を入れ、味を調整する。松茸から水分が出るので、塩分を強めに感じる程度がベスト。'z 味を決めたら、上から敷き詰めるように松茸を入れる。'{ 土鍋に蓋をし、空気穴以外から湯気が漏れないように蓋の周りなどを布巾でふさぐ。'| 中火の弱火で17分前後炊く。途中で、火加減を変えない。『贅沢! 松茸ごはん』の3つのポイントPoint ①米を研いだら水を切り乾くまで30分以上置く米を研ぎ終わったあと、水気をしっかりと切ったら、ザルにあげ、お米の表面が乾くくらい、最低30分以上置く。笹田さんいわく、「1時間でも2時間でもかまわない」そう。Point ②火力は、途中で変えない。「10分で湯気」を目安にする中火の弱火程度の火にかけ、17分炊く。10分前後で、少しずつ湯気が出てくるのを一つの目安にし、もし早めに湯気が出てくるなどしたら、火力を調整する。Point ③おかきのようなこうばしい香りがベスト湿度や米の状態など、日々変わる環境下で最上のご飯を炊くため、最後に信じるのは己の感覚。湯気の香りを確認し、おかきのようなこうばしさになったら火を止める。「『松茸ごはん』の魅力は、米のみずみずしさと松茸の華やかな香りの競演。松茸はカサの開き方で、『味は〝つぼみ0、香りは〝開き0』といわれます。軸が太く、ずんぐりしているものほどいい。入れれば入れるほどおいしくなりますよ」旬の炊き込みご飯はもちろん、白米でもぜひ炊き比べをしてほしい。炊き込みご飯の味を決める笹田流“一番だし”のひき方炊き込みご飯に使う“だし”のつくり方を笹田さんに教えてもらった。鰹の風味が勝ちすぎず、昆布の品のいい旨みが出ていればOKだ。▽材料・水 2L・利尻昆布(香深産) 28g・血合い抜きの鰹節 30g▽つくり方'v 昆布の表面をペーパーなどで軽く拭き、汚れを落とす。'w 昆布を1時間ほど水に浸けてから、ぐらぐらさせないように弱火にかける。'x 30 ~ 40分ほど煮出したら、昆布を取り出す。'y 1割(200cc)ほど差し水をし、温度を下げたら鰹節を入れる。'z 軽くアクを取り、鰹節が沈んだら漉してできあがり。いかがでしたでしょうか。【新ばし 笹田】の松茸ごはんを、ぜひご自宅で再現してみてください。教えてくれたのは笹田秀信さん奈良県出身。高校卒業後、すぐに日本料理の道を志し、日本料理の名店でおよそ9年間にわたり、研鑽を積む。2005年に独立、2012年に現在の店舗に移転。新ばし 笹田【エリア】新橋/汐留【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】15,001円~20,000円【アクセス】虎ノ門駅
2020年10月03日日本の旬とフランスの技術が調和する、美しい世界マリオットホテル系列のラグジュアリーホテル「東京エディション虎ノ門」や洗練された都会派の「AOYAMA GRAND HOTEL」等々、2020年の東京はホテルラッシュ。高級ホテルも華を添える中、“食”のジャンルで頭一つ抜きん出ているのが、この9月1日に開業した「フォーシーズンズホテル東京大手町」。いくつかあるレストランのなかでも、最上階のフレンチレストラン【est】に、今、グルマン達の熱い視線が注がれている。ホテル最上階から臨む景観もご馳走のうち。スカイツリーも見える。店内中央のテーブルからはキッチンの様子も伺うことかできる入り口から続くアプローチに期待を膨らませつつ、店内に足を踏み入れれば、そこは淡いベージュとシャンパンゴールドの輝きに包まれた瀟洒な空間。さりげなく和の趣を加味した照明やオブジェがシックな雰囲気を醸し出す。そんな内装とシンクロするかの如く、ここ【est】が目指すのは、日本のテロワールに根差したフランス料理。そして、それを編み出すのは、【アルページュ】や【ランブロワジー】など名ただたる名店で腕を磨いてきたギヨーム・ブラカヴァルシェフだ。ギヨーム・ブラカヴァルシェフ、39歳。【アルページュ】や【オテル・ド・クリヨン】等パリで11年研鑚を積んだ後、2012年に来日。【キュイジーヌ・〔s〕ミッシェル・トロワグロ】のエグゼグティブシェフを経て【est 】のシェフに「【est】のeはエモーション、sはシーズン、tはテロワールを意味しています。ですから、ここで扱う食材の、およそ85%は日本の食材。フランスから取り寄せているのは、キャビアやトリュフなど一部の食材だけです。」とは、ギヨームシェフ。来日して8年、全国各地の生産者のもとを訪れ、それぞれの食材が育まれてきた環境にまで目を向けてきただけに、日本の食材への造詣も深く、味噌、醤油、もろみと言った極めて日本的な調味料も違和感なく取り入れ、軽やかで革新的なフランス料理を表現している。きのこ形のパンは【シニフィアン シニフイエ】の特注品。上の部分はカリカリ、中はしっとりと柔らかい。上にはきなこを振りかけている。左が大豆のフムス例えば、特注のパンに添えたバターならぬ大豆のペースト。いわば大豆版フムスのような味わいなのだが、そこに、振りかけているのが、なんと粉末にしたもろみ。このもろみが、オリーブ油や塩だけではまかないきれぬ香ばしさと旨味をプラス。バターに負けぬ存在感を示しているのだ。食べ疲れない料理を心がけているというその一皿一皿は、バターやクリームも従来のフレンチに比べ、出来るだけ減らされているのだろう。いずれも、素材本来の味を持ち味が前面に引き出された食後感の軽さが印象的だ。『カボチャ キャビア』。カボチャのピューレは、栗のようなホクホクした甘みが特徴の“恋するマロンカボチャ”と濃厚な旨みの“ブラックジョーカボチャ”の2種類をブレンドしている2種類のカボチャで作ったピューレをパスタ生地ではなくスライスした大根で包んだ野菜のラビオリ“カボチャキャビア”にしても、2種類のカボチャを混ぜたカボチャのピューレを包むのは、パスタ生地代わりのスライスした大根。キャビアが入ったソースにしても、生クリームと思いきやリコッタチーズを牛乳で伸ばしたソースといった具合だ。たっぷりのキャビアがを加えることでラグジュアリー感と共に塩味をカバー。カボチャのあまみを際立たせるといった仕掛けも心憎いばかりだ。能登の「高農園」から取り寄せている野菜の数々。有機農法で栽培された野菜は、能登島の赤土に育まれ、ミネラルいっぱいに育つ。生き生きとした味わいだ料理への思いを熱心に語るギヨームシェフだが、その根底にはフランスの小さな村で、菜園や畑に囲まれて育ってきた幼い日々の経験が息づいている。作物が育ち、収穫され、料理として卓に並ぶ。今でいうファーム・トゥー・テーブルの食生活が当たり前だった日常の食卓。だからこそ、味の良し悪しはもちろん、その食材がいかにナチュラルな環境の中で作られているかに重きを置く。そう、食材が育つ環境にまでその目は向けられ、エコロジカルな食材のみを、ここ【est】では扱っている。『マナガツオ牡蠣』。香川県の漁師さんから届くマナガツオには牡蠣のソースが添えてある。周りを取り囲む高農園の野菜は、ホイルで包み焼きにしたビーツやさっとボイルした加賀太胡瓜などいずれも一手間がかけられている。能登「高農園」や千葉「武井ファーム」の野菜、北海道函館や香川の漁師から届く旬の魚etc.、皿を飾る素材は、いずれもギヨームシェフが自ら産地を訪れて納得したものばかり。それらを、シンプルかつエレガントに仕あげるセンスはさすが。そこには、料理自体もナチュラルに、と考える彼の意向が垣間見える。そのためには、ヒラメを昆布締めにしてみたり、鰆を軽く味噌漬けにしてみたりと和のテクニックを用いることも厭わない。日本の食材と手法にリスペクトしつつも、フレンチのエスプリが凜然として香りたつ新感覚のフランス料理から目が離せない。『カモミール蜂蜜』。デザートは、イタリア人のペストリーシェフ、ミケーレ・アッバテマルコ氏によるもの。レモン風味のチュイールでできた花びらに、エルダーフラワーのパルフェや蕎麦風味のアングレーズなどで構成されているフォーシーズンズホテル東京大手町【est】住所:東京都千代田区大手町1-2-1フォーシーズンズホテル東京大手町39F電話:03-6810-0655営業:11:30 ~ 15:30、18:00 ~ 23:00要予約ランチコース:10,000円0、ディナーコース:20,000円0フォーシーズンズホテル東京大手町HP
2020年10月02日メインダイニング【レ セゾン】内で1日1組のためだけに開かれる秘密のディナー日本でも有数の格式と歴史を持つ高級ホテルの一つ、帝国ホテル。その名を聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべるだろうか。私にとって帝国ホテルは憧れ中の憧れ。幼少の頃、我が家では帝国ホテルを訪れ、カフェでカレーを食べることさえも特別な日だった。とりわけ、母は、当時の料理長だった村上信夫氏の大ファンでレシピ本を何冊も持っており、時間があるときは、家でレシピ本の料理をつくってくれた。村上ムッシュのおかげで我が家の食卓には凝った料理がたびたび登場し、私はすくすくと食いしん坊に成長していった。そもそも帝国ホテルは明治政府が主導をとり、海外の要人を迎えるホテルとして建設された。初代会長は次の新紙幣のデザインにも決定した、日本の資本主義の父・渋沢栄一氏がつとめた。以降、現在まで政財界の要人をはじめ、世界中のトップセレブリティたちを日本ならではのきめ細やかさでもてなし、名実ともに日本の伝統と格式を体現するラグジュアリーホテルの頂点だといっても過言でないだろう。第14代東京料理長、杉本雄氏2019年4月、そんな帝国ホテルの第14代東京料理長に、38歳の杉本雄氏が就任したことは、大きなニュースになった。料理長とは館内直営の8つのレストラン&バーに加え、バンケットやイベントなどの料理も監修する立場。350名近くの料理人を束ね、積み重ねてきた伝統と格式を継承しながら、進化していかなければならない。その大役に30代の歴代最年少の杉本氏に白羽の矢がたったということは、ホテル業界を驚かせた。杉本氏は日本国内だけでなく、海外でもその技量を認められた実力派のシェフだ。憧れの帝国ホテルに入社後5年働いたころ、‟どうしてもフランスで本場の料理を学びたい”と、一旦退社して渡仏。いくつかのレストランを経て、パリの三つ星レストラン【ホテル ル・ムーリス】で働いたときには、ヤニック・アレノ氏やアラン・デュカス氏などの名料理人の信頼を得てメインダイニングの責任者をつとめるまでになった。そうして13年をヨーロッパで過ごした頃に、当時の帝国ホテルの田中健一郎総料理長から再入社を打診され、再び帝国ホテルに戻ってきた。ホテルからの大きな期待も受け、今回の就任となった……というわけだ。【レ セゾン】内の個室で杉本料理長特別コース「ル サロン アンティミテ」が食べられる。まさにレストラン in レストラン通常、ホテルの「料理長」は、ホテルにある各レストランのシェフたちを統括する立場。だから、直接現場で料理をすることはイベント以外ではあまりない。国内外で豊富な経験を積んだ、若き料理長がつくる料理を食べてみたいけれど、叶わないのか……と思っていた。が!今年の4月にメインダイニング【レ セゾン】の個室の一室に1日1組限定で、料理長がゲストのためにコース料理を考案し、料理をしてくれるという。いわば夢のようなレストラン・イン・レストランがスタートしたというではないか。しかも、そのプラチナシートに伺うことが叶ったのだ。子供のころから憧れ続けていた帝国ホテルで、料理長直々に料理をしていただけるなんて……それは私にとって、まさに夢みたいな出来事だった。この日のテーブルを彩るのは、杉本料理長作のセンターピース。しつらいはゲストごとに変わる予約当日、【レ セゾン】へ向かうと個室に案内された。テーブルの上には、二人分のシンプルなセッティング。実はこの設えから料理長の‟ようこそ”のサプライズが仕込まれていた。「今は、コロナの影響もあり装花は控えております。かわりに、こちらに料理長手作りのオブジェを飾らせていただきました」。サービスの方から説明を受けて、グレーのアーティチョークに金色の羽がふわりととまっている素敵なセンターピースに目をやる。そこへ、「ようこそいらっしゃいました」と杉本料理長がご挨拶にきてくれた。空気が動き、ふわりとチョコレートのいい香りがかすかに鼻腔をくすぐる。「あの、これ、料理長が作ったってサービスの方がおっしゃっていたのですが…」と恐る恐る聞くと「はい。つくりました」と杉本さんはにっこり。「まさかチョコレートですか?」と返すと「そうですよ。3日かけて一から全部僕が作りました。フランスでの最初のレストランでペストリー部門に配属されましてね。料理がやりたかったのにペストリー部門なんて、と最初は暗くなりましたが、チョコレートの細工をはじめ、いろいろと勉強しました。この羽も包丁一本でつくるんですよ。そのときのこと、思い出しますね」と気さくに話してくれる。え、さらりとおっしゃったけれど、このオブジェを私たちの席のために3日かけてつくってくださったなんて……。しかも、これ、すごく素敵。気分はもう、すっかりファベルジェエッグを献上されたロシアの皇女だ。この日のアミューズの一品『うなぎと土佐ジローの卵』。うなぎがまとうワインレッドと卵の鮮やかなグリーンのコントラストが美しいうっとりとオブジェを眺めていると、杉本料理長が「では、これからコースを始めさせていただきます。メニューにないアミューズを3種類お出ししますので、そこでもしも味の濃い、薄い、またボリュームなどなにか感じることがありましたら率直におっしゃってください。その後の料理ではお好みに合わせて料理いしていきますので」と爽やかに部屋から去っていった。部屋に入って10分もたってない。けれど、杉本料理長の、ゲストを心から楽しませたい、おいしいと感じてくれるものを精一杯作りたいという、気持ちが心から伝わってきて、もう一瞬で心を掴まれてしまった。昨今「自分の世界観に合わない人はどうぞ来なくていいです」というような高級店もあるなかで、あの帝国ホテルの料理長がここまでして、1組のゲストのためだけに心を尽くしてくださるなんて。その謙虚さと一心さに触れ、運ばれてくるお料理への期待と、そこにしっかり向き合おうという襟を正すような気持ち両方が芽生えてくる。いよいよアミューズが運ばれ、特別な一夜が始まった。3品登場したなかで記憶に残ったのが、赤ワインのゼリーをまとわせたうなぎと、ほうれん草のジュレでコーティングされた土佐ジローの卵の一品だ。下には赤ワインのソースが敷き込まれている。ボルドーの地方料理でもある赤ワインとうなぎの煮込みや、ブルゴーニュの地方料理のウフ・アン・ムーレットなどを彷彿とさせるクラシックな顔もありながら、シャキシャキとした生のハーブとほうれん草のジュレが生み出すフレッシュな食感と香りが現代的な一皿になっていた。卵からこぼれるトロリとした黄身がまた食欲を掻き立てる。3品のアミューズをたっぷりと堪能した後、メニューに書かれたコース料理がいよいよスタート。手元に置かれたメニューを開くと、『北海道産帆立貝』『仏産舌平目』『黒トリュフ』など、フランス料理のエース級食材の名が大きな文字でずらりと並ぶ。その下につけあわせやソースが控えめに記載されている。ここには”何を食べているか、しっかり感じてほしい”という料理長の思いが現れている。「北海道産帆立貝」赤カブのジュースでマリネし、なめらかなスモーククリームとオシェトラキャビアとともに例えばこの一皿めの『北海道産帆立貝』。ビーツのジュースに漬け込み、美しく染められた生の帆立貝に、オーク樽のチップでスモークした帆立貝の身をピュレにしてクリームと合わせホイップした軽やかなソースが添えられている。さまざまな帆立貝の食感や味わいをビーツの果肉のゼリー、ビーツのパウダー、そしてたっぷりのキャビアが引き立てる。豪華な脇役たちが、帆立貝の旨味や甘みを引き出すというなんとも贅沢な一皿だ。目の前で魚をデクパージュ(ゲストの前で料理を切り分け、皿に盛り付けてサービスを行う方法)する杉本料理長そして次の魚料理は、今までの料理とは雰囲気を変えた、王道のクラシックフレンチの仕立てで登場。この、シルバートレーに乗る、一見シンプルに丸ごと焼いただけのようなな舌平目。実は、骨をきれいに取り除き、平目のムースをサンドして元の姿に戻して焼いたものだった。平目の皮を傷つけずに綺麗に骨をはずし、元に戻すのは非常に高度なテクニックが必要だという。それを目の前で料理長自らが、ゲスト一人一人のために、デクパージュしてくれる。アルコールランプで温められたシルバーのトレーの上で舌平目の香りを感じながら、料理長の技術を眺めるなんて、おそらくもう、格式あるホテルでしか見れない光景かもしれない。切り分けた平目に、ソースと花クールジェットのファルシを添えて、料理長がサーブしてくれた。「デクパージュというフランス料理ならではの技術を知らない人も多い時代です。でもこうしたことをきちんと伝えられるのが、私たちのホテルならではだと思うのです。ですから、こういう演出もぜひ体験してほしいですね」と杉本シェフ。こうした王道のフランス料理らしい時間もまた、非日常の気分を高めてくれる。コース3品目の『オマール海老』続くフランス料理の王道食材『オマール海老』はうってかわって、モダンな仕立てで登場。オマール海老の尾と爪のフリカッセに、コニャックで香りをつけたクリームと濃厚な甲殻類のジュが添えられている。色合いも鮮やかで、卓上が華やぐ一品だ。そして、本日の肉料理「黒毛和牛」のサーロイン。使う牛肉は、A5などランクにはこだわらず、フランス料理のソースに合う肉質を選ぶという。今回はローストした和牛の脂をさっぱりと切るようなフレッシュなプラムがいいアクセントになっている。この肉料理とともに運ばれてきた黒トリュフとオニオンのサラダがまたいい合いの手をいれてくる。「フランス料理らしく、肉料理は鳩や子羊や鴨などを調理することももちろんできますが、帝国ホテルのゲストの方々は、やはり牛肉がお好きなんですね。皆様に喜んでもらうこと、それが何より一番です。ですから初めてのゲストにはメイン料理に牛肉をお出しすることが多いです。もしも鳩が食べたい、などのリクエストがあれば、事前にぜひおっしゃってください」とのこと。コースの合間に登場してくれて、気さくに話してくださる杉本料理長は、どこまでも、どこまでも、ゲストファースト。こうした言葉は、一朝一夕では出てこないだろう。常にゲストが喜ばせることで頭がいっぱいなんだろうな、と想像できる。デザートの『黒トリュフ』デザートの『黒トリュフ』もまた、目にも楽しい、遊び心あふれるお皿だった。お皿の上に黒トリュフが丸ごと一個乗っている⁉と思いきや、これは黒トリュフそっくりにつくったチョコレートクリームのデザート。センターピースにあったチョコレートの羽が、ここにも散らされている。そしてさらに厚めにカットされた(スライスではなく、カット!)トリュフが添えられている。前菜からデザートまでしっかり、ロシアの皇女気分のまま、非日常を味わった。この上ない幸せに浸って、最後のコーヒーをひと口飲んだ頃。シェフが登場して、では、最後のお楽しみをお出ししましょう、とおもむろに、卓上にあった素敵なセンターピースを手に取り、ナイフとフォークで壊すではないか。‟もったいないー!”という心の声と、‟チョコレート食べたい”という心の声を戦わせつつ見守ると、中から登場したのは、なんとヘーゼルナッツそっくりの、ミニャルディーズ。最初から卓上に出すチョコレートの中に仕込むため、コースが終わる頃に食べごろになるように温度も計算したというボンボンは、ジャストな口どけだ。「おいしい……」とため息混じりの声が思わず漏れる。すべての食事を終えて考えた。フランス料理の伝統と革新を感じられる料理、そしてサービス。最初から最後まで、こんなにも楽しく、美味しく、非日常感と姫気分を味わったレストランが昨今あっただろうか。私が男性だったら、プロポーズはここでしたい。帝国ホテルの料理長が2人のためだけにつくった料理を、2人の世界で堪能する贅沢を味わい、そして指輪を用意して、あのアーティーチョークの中に仕込んで、最後にミニャルディーズとともに指輪を出してプロポーズ!杉本料理長の心づくしのおもてなしが、男性の勇気を温かく後押ししてくれるだろう。楽しい妄想をしたけれど、残念ながら、プロポーズをする予定もされる予定も特にない。そんな私は次、誰と来ようか。この特別なレストランには、心から喜ばせたい相手を連れて行きたいのは間違いない。そうだ、あの人に声をかけてみよう。帰り道にそんなことを考えながら、この日の余韻に浸る時間もまた、【アンティミテ】がくれる幸せの一つなのだ。レ セゾン【エリア】有楽町/日比谷【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】15,001円~20,000円【アクセス】日比谷駅料理長 杉本 雄の【ル サロン アンティミテ】電話:03-3539-8087住所:東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル本館中2階(メインダイニング【レ セゾン】内)営業:入店時間17:30020:00定休日:ホテルに準ずるコース価格:1組2名100,000円(税込、飲み物、サ別)予約:2名から受付10日前までにお電話で予約を注意事項:子供は10歳より。男性はジャケット着用。
2020年09月28日独自の方法で完成した上モツの旨みを凝縮したトリッパプリプリの脂身が口中で甘くとろける小腸にむっちり肉厚のトリッパ、そして食感も独特なギアラ、と存在感たっぷりの内臓が醍醐味のイタリア版モツ煮込み。それが、広尾【ボッテガ】の『トリッパ、ギアラ、小腸の煮込み』だ。笹川尚平シェフのスペシャリテでもあるこの逸品。原型は、トスカーナ州での修業時代に食べた白いトリッパの煮込みだという。左下の皿が下ゆでした(手前から)ハチノス、ギアラ、小腸。右皿は、香味野菜のにんじん、玉ねぎ、セロリ。チーズは、スカモルツァアフミカートとペコリーノロマーノ「現地ではトマト煮込みが定番ですが、白い方が素材の味が感じられてうまかった。自分がやるなら白い煮込みにしようと決めていましたね」と笹川シェフ。小腸とギアラを加えたのは、個性ある内臓類を一皿に盛り込みたかったからとのこと。ポイントはゆで汁。モツ類を下ゆでし、ゆで汁は捨てずに活用するのが笹川流だ。「煮込み料理は、一度素材から出た旨みを再度素材に戻すことでうまくなる。それなら、旨みが抽出されたゆで汁を捨てる手は無いと思った」のだとか。オーブンで焼き煮込むのはその旨みを封じ込め、同時に香ばしさもプラスするため。一方、小腸は食感を残すべく別立てにして煮込み、仕上げには、チーズを忍ばせて味の変化を楽しませる。最後まで飽きずに食べてほしいと願う気持ちが、また食べたくなる秘訣なのだ。具材の小腸は別鍋で煮て、プリッとした食感ととろける脂の感覚を大切に小腸は、煮込む時間も約1時間半とトリッパやギアラに比べて短め。それも、煮込みすぎてせっかくの脂を溶かしすぎないようにするためだ。玉ねぎ、にんじん、セロリの香味野菜のほか、笹川シェフはほかの料理で使ったポロネギの残りやディル、セルフィーユの茎などを入れているそうだ。ゆであがったらボールにあけ、氷に当てて素早く冷やし一口大に切って保存。注文の都度、トリッパとギアラの煮込みに合わせて仕上げている。『トリッパ、ギアラ、小腸の煮込み』のつくり方ゆっくりと時間をかけて丁寧に仕込む上質なモツは鮮度が命鮮度抜群の内臓類の臭みは皆無。その旨みを生かすべく下ゆで汁も活用し、小腸はその脂のプリプリ感を残すため別ゆでするなど、細やかな配慮が味の秘訣だ。材料(30~35人前)「ギアラとトリッパの仕込みⒶ」・ギアラ 3kg・トリッパ 2kg・水 適宜・香味野菜 (セロリ2本、玉ねぎ 1個、にんじん1本 各ざく切り)・塩 大さじ4・黒こしょう(粒) 大さじ「ソフリットⒷ」・セロリ 6本・玉ねぎ 6個・にんじん 3本・にんにくみじん切り 大さじ3・ドライセージ 大さじ3・ドライローズマリー 大さじ2・ドライローリエ 10枚・オリーブオイル 100cc・白ワイン 1.5ℓ「小腸仕込みⒸ」・小腸 2kg・セロリ (ざく切り) 1本・玉ねぎ(ざく切り) 1/3個・にんじん (ざく切り) 1/3本・ポロネギ(ざく切り) *あれば 青い部分など適宜・ディルとセルフィーユの茎 適宜・水 適宜「仕上げ用」・季節の野菜を煮込んだもの 大さじ1杯・オリーブオイル 適量・黒こしょう 適量・スカモルツァ アフミカートチーズ(刻む) 大さじ1・ペコリーノロマーノチーズ(すりおろす) 大さじ2・イタリアンパセリ(刻む) 適量つくり方'v ギアラとトリッパを下ゆでする。Ⓐの材料をすべて鍋に入れ、具全体がひたひたになるまで水を入れ、火にかける。中火で、アクを取りながら2時間半~3時間ほど下ゆで。'w 煮込んでいる間に、別鍋でソフリットを作る。Ⓑの材料の野菜をすべて粗みじん切りにする。'x 鍋にオリーブオイルを熱し、Ⓑのにんにくを炒める。香りがたったら2 の野菜を一気に入れ、中火で炒める。しんなりしたら、ハーブ類を加えて炒める。白ワインを入れてアルコールを飛ばし、さらに15分~20分ほどゆっくり炒める。'y ①のトリッパとギアラを短冊状にカットする。ゆで汁はとっておく。'z ③に④のモツ類を入れる。ざっくりと混ぜ合わせなじませたら、4 のゆで汁をたっぷり入れてぐつぐつするまで火をかける。'{ ⑤を鍋ごと180℃のオーブンにいれ、約3時間焼き煮込む。途中、表面に浮いてきた脂が色づいてきたら取り出して全体を回すようにざっくりとかき混ぜ、また、オーブンに戻す。この作業を3時間の間に4~5回繰り返す。ここまでは前日の作業。'| 具材となる小腸を別鍋で煮る。Ⓒの小腸と野菜類、ハーブを鍋に入れ、ひたひたになるまで水を入れて中火にかけ、1時間半から2時間煮込む。'} ⑦の小腸が煮あがったら、ポウルに取り氷に当てて冷ます。冷めたら食べよい大きさにカットする。'~ 小鍋に⑥の煮込みをレードル2杯分と⑧の小腸をカットしたもの5~6片を入れ、 野菜の煮込み、黒こしょう適量を加え火にかける。' 器にスカモルツァアを入れ、その上から9 を盛り付ける。その上からオリーブオイル、黒胡椒、ペコリーノロマーノをかけ、仕上げにイタリアンパセリ少々をふる。『トリッパ、ギアラ、小腸の煮込み』の3つのポイントPoint ①香味野菜をゆっくりいためて旨みのもとをつくる香味野菜と共に下ゆでするだけでなく、ゆで上がったトリッパとギアラを香味野菜で作るソフリットソースとさらに合わせるのも旨さの秘訣。この時、香味野菜を炒めすぎて、野菜の甘みが出ないように気をつけたい。Point ②モツは湯でこぼさない!ゆで汁も鍋に戻してモツの旨みを肉に戻すモツを下ゆでした煮汁は、臭みが出るため通常なら捨ててしまうところだが、新鮮なモツを使う【ボッテガ】では、あえてこのゆで汁を再利用。モツの旨みの出た煮汁で煮込むことで、その旨みを再度モツに戻すわけだ。Point ③食べる直前に小腸と野菜の煮込みを加えて食感と旨みをアップ仕上げの味のポイントの1つが玉ねぎや黒キャベツ、じゃがいも、ブロッコリーなど季節の野菜10種あまりでつくる野菜の煮込み。味の変化を演出すると共に、くどくなりがちなモツの脂感をさっぱりとさせてくれる。いかがでしたでしょうか。【ボッテガ】のトリッパ、ギアラ、小腸の煮込みを、ぜひご自宅で再現してみてください。教えてくれたのは笹川尚平さん1976年生まれ、富山出身。イタリアで修業後、【アロマフレスカ】の原田慎次シェフに師事。【カーザヴィニタリア】で11年間シェフを務めた後、独立。2017年、広尾に【ボッテガ】をオープンする。2018年ミシュランの星を獲得する。BOTTEGA(ボッテガ)【エリア】広尾【ジャンル】イタリアン【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】13000円【アクセス】広尾駅 徒歩5分
2020年09月26日深くやさしい甘味をたたえた麦味噌でつくる「食べる豚汁」「胃袋をつかまれる」。そう表現したくなる豚汁がある。東京・白金にある【福わうち】の大将・三宮昌幸さんがつくる『麦味噌の豚汁』だ。野菜や豚の味が染み出ただしに、麦味噌ならではのやわらかい香り。具はごろっと大きめに切り、食べ応えを。あえて味噌を染み込ませないことで素材の味をしっかりと際立たせる。全体に深い甘味があり、その味わいはなんともやさしい。5種類の具材とは、にんじん、だいこん、ごぼう、しめじ、えのきのこと。この5つから染み出ただしをベースに、豚肉と油揚げから出る味が加わり、まろやかでやさしい味わいになる「原形は母がつくっていた豚汁。母はいりこを入れていたのですが、こどもの頃はそれが嫌で……(笑)。いりこを抜いてつくったのがこのレシピ。決め手は、だいこんとにんじんの旨みが染み出た〝だし0です。時間と手間をかけて、このだしをとるのがポイントです」三宮さんが話す〝時間と手間0とは、前日の仕込みのこと。にんじんとだいこんを一日前にしっかりと煮ておき、冷蔵庫で一晩寝かすことでだしの旨みが格段に増す。ここにほかの野菜やきのこ、麦味噌と豚肉が一体となり、さらにやさしく深い甘味が生まれるのだ。「旨みは甘味。その言葉をいちばん実感していただけるのがこの豚汁です。ぜひとも、手間暇かけてつくってみてほしいですね」豚汁に添える自家製のゆずこしょうは、料理によって使い分ける【福わうち】では豚汁の汁椀の縁にゆずこしょうを添え、途中で溶くことでいい塩梅になる。このゆずこしょうが、毎年10月に大分県から送られてくる野生のゆずを使った自家製のもの。さらに【福わうち】では、添える料理によって、2種類のゆずこしょうを使い分ける。豚汁などの汁物には細かい方を、肉料理などには粗いものを、といった具合にだ。細かい方には、ゆずの搾り汁を多めに入れることで滑らかに仕上げている。『麦味噌の豚汁』のつくり方『麦味噌の豚汁』の味わいを深くするのは5種類の具材から染み出るだし具から出る旨みを丁寧に重ねていくことで、味に奥行きを出す。つくり方はいたってシンプルだが、その分、時間をかけてつくるのだ。材料(2人分)・だいこん 80g・にんじん 70g・水 400cc・ごぼう 7g・油揚げ 7g・えのき 30g・しめじ 30g・豚バラスライス 50g・麦味噌(若いもの) 70g・万能ねぎ 適量・ゆずこしょう 5gつくり方'v だいこん、にんじんをやや大きめの乱切りにする。'w 水400ccを入れた鍋を火にかけ、だいこん、にんじんを入れる。沸騰したらごく弱火にし最低1時間ほど煮る。可能であれば、だいこんとにんじんを煮汁とともに冷蔵庫で一晩寝かす。'x ごぼうを小さめのささがきにする。油揚げは短冊に切る。えのきとしめじはイシヅキを切り落とし、ばらばらにしておく。'y ②をふたたび、火にかける。沸騰したら中弱火にし、そこにごぼう、油揚げを加える。ごぼうが煮えたら、えのきとしめじを加える。'z きのこが煮えたら、弱火にし、豚バラスライスを加える。'{ 豚肉から赤みが消えたら、ザルとホイッパーを使い、麦味噌をとく。ザルに残った味噌のかすは入れない。'| お椀に盛り付け、万能ねぎを散らす。縁にゆずこしょうを添えたら、完成。『豚汁』の3つのポイントPoint ①5種類以上の具材を使い、3種類以上の根菜を使う味の決め手となる野菜だしは、野菜に“味を入れる”のではなく、野菜から“味を出す”イメージ。だいこんとにんじんは、最低でも1時間以上、前日に煮ておこう。Point ②具が固くならないよう火加減は見ながら微調整だいこんとにんじん以外の具材は、煮えすぎないように中弱火~弱火程度で微調整。とくに豚肉は、豚汁の味わいの印象を左右する主役。硬くならないように丁寧に仕上げたい。Point ③完成直前に麦味噌をときやさしい味わいに仕上げるそれぞれの具材に味噌の味が染み込まないよう、麦味噌は完成直前にだしにとく。にんじんやだいこんは、大きめに切ることで、さらに素材の味がはっきりと際立つ。いかがでしたでしょうか。【福わうち】の麦味噌の豚汁を、ぜひご自宅で再現してみてください。教えてくれたのは三宮昌幸さん1967年生まれ。17歳で料理の道に入り、地元・大分県で修業を始める。27歳で博多の人気和食店【たらふくまんま】に入店すると、2年後には東京支店の料理長に抜擢。2001年に独立し、【福わうち】を開業。
2020年09月19日じゃがいも一つでも、料理人の腕で一流の皿にできる。そんなフランス料理の力に魅了されました「美術の教師だった母は帰りが遅く、おなかがすいてもつくってくれる人は誰もいない。自分で料理するしかなかったんです。 物心ついた頃にはもう台所に立っていました」。あっけらかんとそう語るのは田中いずみさん。赤坂のフランス料理店【タンモア】のオーナーシェフだ。住宅街の地下1階にある秘密の空間小学生の頃から料理番組を見ては献立を考え、キャべツ一個をどう使い切るかなどを算段するのが楽しかったという田中シェフ。それも食いしん坊なればこそ。「今も、鴨一羽を胸、モモ、内臓など、各部位を違う料理法で提供するのが好き」だそうだから、そのスピリットは既に幼い頃から芽生えていたようだ。『ハモのバリグール風』テーブルに置かれた瞬間、鼻先をくすぐるハーブの香りが素晴らしい。南仏の定番料理に今が旬のハモを、軽く炙って合わせた一皿。卒業時に調理師免許が取れる高校を出た後、調理師学校に進み20歳で就職と同時に結婚。横浜や鎌倉のレストランで修業後、彼女曰く「旦那をほったらかして」渡仏。一つ星レストランやパリ郊外のビストロなどで3年半腕を磨いた。結婚生活を続けながらのフランス修業はご主人の理解あってこそだろう。『エゾ鹿内もも肉2種仕立て』は、ローストしたモモ肉にかぶ・すももを添えた一品と、同じ鹿肉を生ハムにし、かぶ・すももと共にサラダ仕立てにしたもの。コースは8,000円~。「フランス料理は、料理人の腕1つでただのじゃがいもも一流のお皿に昇華できる。そこに魅力を感じました」。帰国後、2年前にオープンした同店では、好きなジビエや海と山の幸を共に盛り込んだ一皿をスペシャリテとして提供。仔鹿や仔山羊なら一頭仕入れて自ら解体することも厭わないガッツな精神の持ち主だ。が、仕事を続けていく中でさまざまな壁にぶつかったことは想像に難くない。「人間、コンプレックスを持っていた方が頑張れる」。この一言がすべてを物語っている。タンモア【エリア】赤坂【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】5000円【ディナー平均予算】10000円【アクセス】乃木坂駅 徒歩6分
2020年09月13日フルーツと野菜の魅力を掛け算のおいしさで表現「フランス料理の古典の中には、鴨にオレンジ、フォアグラにラズベリーというように、果物を添えた料理がたくさんあります。果実は、ほかの食材と合わせた時に相乗効果を発揮することが多いのです。フランスでそれらを食し、学ぶなかで必然性があることがよくわかり、大好きになりました」と野田さんは言う。使用する食材。中央は鶏胸肉。左下から時計まわりに、小麦粉、卵液、パン粉、グラナパダーノパウダー、パセリ、グレープシードオイル、ディジョンマスタード、アップルマンゴー、トマト、白ワインビネガー、玉ねぎ、にんにく帰国後、料理の試作を重ねるうちに、フルーツを使った料理に楽しさを見い出し、積極的に取り入れていくなかでどんどん魅了されていったそうだ。このカツレツもそんな思いから生まれた。上品な鶏胸肉がトマトとマンゴーのソースでインパクトのあるご馳走に早変わりする。実際に食すると、トマト、マンゴー二つの素材が、足し算ではなく、掛け算のおいしさになっていることがわかる。実は、両者のまとめ役になっているのは、玉ねぎのすりおろしだという。「通常のピネグレットで使用する玉ねぎの量よりも多めに加えているのですが、それが功を奏し、深みを与えています。また、日本の果物は生食が基本の繊細な味わいなので、なるべく熱を加えずに供することも大切。そんなことを考えながら、日々、果実の可能性を探っています」マンゴーは甘みの強いアップルマンゴーをチョイスソースをつくる際、マンゴーの甘みが強いもののほうが、トマトと合わせたときの効果が高くなる。フィリピンマンゴーよりは、アップルマンゴーのほうがベターだが、一番大切なのは熟れ具合。指で触ってややへこむくらいがほどよい。『ミラノ風カツレツマンゴーとトマトのソース』のつくり方フレッシュなマンゴーとトマトをソースに年間を通しての定番というチキンカツ。トマトと旬の果物のソースで、季節感を演出。マンゴーの甘酸っぱさで夏の華やぎを。材料(一人分)〈カツレツ〉・鶏胸肉 40g・塩 適量・薄力粉 適量・卵 適量・牛乳 適量・パン粉 適量・揚げ油 適量・グラナパダーノパウダー 適量〈マンゴーとトマトのソース〉・アップルマンゴー(角切り) 25g・トマト(角切り) 25g・塩 少々・ディジョンマスタード 0.5g・玉ねぎ 1g(すりおろし)・白ワインビネガー 4g・グレープシードオイル 5g・パセリみじん切り 適量つくり方'v鶏胸肉は肉叩きでパンチして平らにする。'w叩いた鶏肉に塩をして水気を拭き取り、薄力粉をまぶし、卵と水を合わせた卵液にくぐらせ、パン粉を付ける。'xマンゴーとトマトのソースをつくる。材料すべてボウルに入れ混ぜ合わせる。'yフライパンで油を温め、温まってきたら鶏を揚げ焼きにする。'z油をペーパーで切って皿に盛り、上にグラナパダーノ、マンゴーとトマトのソースをのせパセリをかける。『ミラノ風カツレツ マンゴーとトマトのソース』の3つのポイントPoint ①鶏胸肉は、均一に肉叩きで薄く叩く叩くのと同時に、針でパンチングが入る器具で丹念に叩く。肉は薄く広がると同時に細かい穴があき、味がしみやすくなり、咀嚼したときの、歯切れが良くなる。Point ②鶏肉がかぶるくらいの油で揚げ焼きを少なめの油のほうが、肉が曲がらず、きれいに仕上がる。温度は低めの130~140度から揚げ始めると焦げずに揚がる。常に鍋をゆすって、油の温度を均一にすることも大切。Point ③トマトとマンゴーの甘さを引き立てる玉ねぎを忘れずに通常のビネグレットに比べて玉ねぎの割合を多くすることで、トマトとマンゴーの甘酸っぱさの中に深みが出る。添えものとしてではなく、ソースとしての役目を担うようになる。いかがでしたでしょうか。【kiki harajuku】のミラノ風カツレツ マンゴーとトマトのソースを、ぜひご自宅で再現してみてください。教えてくれたのは野田雄紀さん1983年生まれ。22歳で渡仏。魚介レストランや昔ながらのビストロを経て、当時三つ星の名店「タイユヴァン」で研鑽をつむ。帰国後、神楽坂の一つ星【ルグドゥノム・ブション・リヨネ】でスーシェフを務め、2011年に【kiki harajuku】を開店。kiki harajuku【エリア】原宿/明治神宮前【ジャンル】ビストロ【ランチ平均予算】8000円 ~ 9999円【ディナー平均予算】10000円 ~ 14999円
2020年09月11日~愛読書をご紹介してくださるのは~【赤坂 桃の木】小林武志さん1967年、愛知県に生まれる。大阪の辻調理師専門学校を卒業後、同校で講師を8年ほど務める。その後、【知味竹爐山房】をはじめ、数軒の中華料理店で研鑽を積み、2005年に【御田町 桃の木】を開店。2020年3月、紀尾井町に移転。店名を【赤坂 桃の木】に改めた。点と点をつないで一本の太い線にする読書の効能料理人は調理師の免許を取っても、すぐにいろんなことをやれるようになるわけではありません。だから、若かりし頃の私はせめて知識を養っておこうと、とにかく本を読みました。母校の辻調理師専門学校で講師をやっていたときは、夜中になるとしんと静まり返った校内の図書室に忍び込み、読書にふけったもの。四畳半の自宅も、その3分の2は書物で埋め尽くされていました。『華味三昧―中国料理の文化と歴史』/講談社『華味三昧―中国料理の文化と歴史』は、まさにそんな修業時代に出合った一冊。現場での最初の師匠、【知味 竹爐山房】の山本 豊さんが実に博識のある方で、「中国料理をやるならその文化や歴史を知っておいた方がいい。コバちゃん、これを読んでみたら?」と薦めてくださったのです。そもそも中国に円卓は存在せず、四角いテーブルで食事していたとかね、厨房にいるだけじゃ知り得ない蘊蓄がちりばめられていて、前のめりでページをめくりました。『ことばの歳時記』金田一春彦 著/新潮社山本さんの影響を受けて読んだ本の中には、『ことばの歳時記』というタイトルのものもありました。日本人の季節に対する感性はとても繊細であるということをしみじみと考えるきっかけになりましたっけ。『色の名前』近江源太郎 監修/角川書店料理長という立場になり、メニューの名前を決める際の参考にと求めた『色の名前』という本もそうです。日本人は微差に注目し、それを重んじられる民族だと感じました。私の料理は時に「丁寧を極めている」と形容していただきますが、実際は包丁をきちんと研いだり、火加減を大切にしたり、当たり前のことを当たり前にやっているだけです。思えばそれは、日本人である私にもともと備わっていた感性と、物心ついてから手に取った書物によって培われた感性の賜物かもしれません。読書には記憶の中の点と点をつなぎ合わせてくれる効能があります。それがいつか線になり、料理をするうえで閃きを与えてくれる。だから、若い方にはなるべくいろいろな本に親しんでいただきたいですね。~小林さんの愛読書3選~『華味三昧中国料理の文化と歴史』講談社1981年刊行。中国料理の変遷史、北京における食の歳時記・風俗記、豚食文化の歴史、医食同源のルーツなど、中国料理の文化と歴史をさまざまな角度から浮き彫りにした一冊。『ことばの歳時記』金田一春彦 著/新潮社著者である日本語研究の第一人者が深い学識とユニークな発想にもとづいて、四季折々の言葉の背後に広がる日本人の生活と感情、歴史と民俗を広い視野で捉えた異色の歳時記。『色の名前』近江源太郎 監修/角川書店自然の中に存在する多彩な色の名前を、その由来となった自然の風景写真と共に紹介した色彩図鑑。微差で色を識別するところに日本人ならではの繊細な美意識が感じられるはず。いかがでしたか。料理人の愛読書「シェフの本棚」も掲載されている冊子「hitosara quarterly magazine」は、グルメサイト「ヒトサラ」が加盟店様向けに発行している食のトレンドブックです。日本から世界まで、あらゆる角度から食の情報を集めています。下記リンクより試し読みもできます。ぜひチェックしてみてください。赤坂桃の木【エリア】田町/三田【ジャンル】中華料理【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】20000円【アクセス】永田町駅
2020年09月08日サーブされた瞬間からえびが香るシンバ流・ブイヤベース【bistro simba】の『ブイヤベース』は、訪れたゲストの大半が注文するというほどの看板料理だ。丁寧に火入れした旬魚とえびのグリルに、別添えのココットに入ったスープをかける。スプーンを口元に運ぶとオマール海老のいい香りが漂い、飲めば旬魚の香りと味が凝縮。旨みこそあれどえぐみはまったく感じない。この日に使った魚は、キンメダイ、マダイ、ヒラメ、イサキ、イトヨリ、タチウオ、サバのアラと骨。菊地シェフいわく、ヒラメやアンコウなど、ゼラチンの多い魚を入れるとおいしさが増すという「海老を多めに使うのが大事。お客さまにも『ビスク』と『スープ・ド・ポワソン』の中間、と伝えています。〝濃厚0〝クリア0〝香り高い0味わいを意識してもらえれば」。スープの味の決め手は、別の料理に身を使った魚のアラや骨、オマールの殻とミソ。つまり端材だ。『ブイヤベース』をはじめ、【bistrosimba】では食材の使い切りを徹底、ロスを最小限にとどめている。「フランス時代に働いていたビストロではタラを使うとき、背はロースト、腹はブランダード、残りをブイヤベースにしていたんです。文字通り食材を余すところなく使う〝ビストロ0という文化が素晴らしいなと思って、自分が店をやるなら〝ビストロ0だと心に決めていました」端材の扱い方と、食材が持つ可能性を広げる『ブイヤベース』の味わいを、ぜひ確かめてみてほしいオマール海老のミソは殻から取り出し、後でスープに合わせる濃厚な味わいと旨みをもつ、希少なオマール海老のミソは、大事な味の要素。海老のミソはあらかじめ頭から取り出し、別の容器に移しておく。殻のまま使ってしまうと、溶け出しきらないことがあり、使える量が少なくなってしまう。スープに戻すタイミングは、骨やヒレ、オマール海老の殻などをこしたあと。ハンドミキサーを使って、スープにしっかりと溶けるようにかき混ぜ、さらにもう少し細かくこす。こうすることで、濃厚さと旨みが増しつつ、なめらかな舌触りのスープができあがる。『えび香るブイヤベース』のつくり方別の料理から出た食材の端材が生む美味「食材を無駄なく、使い切りたい」というシェフの思いから、ブイヤベースに使われるアラや骨、殻は、他の料理をつくる際に出た食材の端材が使われる。材料(10杯分)・魚のアラ(5~10種類) 7.5kg・ウイキョウ約1個・玉ねぎ 3個・オマール海老(身以外) 16尾分・オリーブオイル 1000cc・にんにく 2株・イタリアンパセリ(軸) 適量・トマトペースト 800g・白ワイン 1500ml・水 3500ml・塩 適量〔盛り付け用/1人あたり〕・旬の鮮魚 3~4種類・各1切れ・さいまき海老 1尾・イタリアンパセリ(葉) 適量・ピモン・デスプレット(またはカイエンペッパー) 適量つくり方'v魚のアラを、流水で濁りがなくなるまでさらしておく。アラと骨に塩で下味をつけ、100℃に温めたスチームオーブンで10分ほど蒸し焼きにする。'wウイキョウ、玉ねぎを炒めやすい大きさに切る。'xオマール海老の頭からミソを取り出して、別の容器に移しておく。殻の砂袋を取り、ハサミで炒めやすい大きさに切る。胴体から足を切る。'y2つの大鍋にオリーブオイル各500cc、房ごと横半分に切ったにんにく1株ずつを入れて強火にかける。以降は2つの鍋で同じ調理を行う。'zにんにくの香りが立ち、オリーブオイルから煙が立つくらいの温度になったら、オマール海老の頭と足を炒める。香りが立ち、赤くなってきたら、胴体を入れて炒める。'{胴体に火が入ったら、2 の野菜、イタリアンパセリを入れ、さらに炒める。'|野菜に火が入り、甘みが出てきたら1 を出た水分ごと鍋に加える。ゼラチンが多いので鍋底が焦げ付かないよう木べらでよくかき混ぜる。'}トマトペースト、白ワインを加えてよくかき混ぜる。大きめの麺棒を使って魚の骨をやや細かくなるまで砕きながら煮る。'~白ワインのアルコールが飛んだら、水を加えて、またよくかき混ぜる。こす前に、塩でもう一度下味をつける。'手鍋を使って、2つの大鍋を1つにまとめたら、ムーランを使ってこす。⓫こしたスープに、オマール海老のミソを入れ、ハンドミキサーでよくかき混ぜたら、1回目よりも細かい目のムーランでこす。味を見て塩を入れ、最後の味を決める。⓬フライパンでグリルした、旬の鮮魚とさいまき海老をやや深めの皿に盛り付け、上からイタリアンパセリの葉とピモン・デスプレットを散らす。スープをココットに入れ、レードルを添える。『ブイヤベース』3つのポイントPoint①時間短縮するために魚はオーブンで蒸し焼きに通常、ブイヤベースの魚介だしは煮込んでとるが、【bistrosimba】では仕込み時間短縮のため、火入れにスチームコンベクションオーブンを使う。しっかりと火が入れば問題ないので、100℃で10~15分ほど蒸し焼きにしよう。Point②オリーブオイルで炒めてオマール海老の香りを出す菊地シェフいわく、「オマール海老は、頭と足は香りが立ちやすく、胴体は水分を多く含み、旨みが一番強いんです」とのこと。炒める際には、頭と足から炒めて香りを出し、その後胴体を加えていくのがよいそうだ。Point③長く煮込まないように加える水は少なめにする長時間煮込めば煮込むほど、魚の旨みが出るのかと思いきや、その逆。魚からなるべくえぐみを出さないように煮込む時間は短めがいい。最後に加える水の量は、想像よりも少なめだが、仕上がりの味わいがクリアになる。いかがでしたでしょうか。【bistro simba】のブイヤベースを、ぜひご自宅で再現してみてください。教えてくれたのは菊地佑自さん1976年、東京都生まれ。学生時代は教師を目指していたが「何かをやりたい」と一念発起し料理の世界へ。25歳で渡仏、10年にわたる滞在で調理技術を磨く。帰国後、麻布十番【エレネスク】を経て、2015年、【bistro simba】を開業。bistro simba【エリア】銀座【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】8000円【アクセス】新富町駅 徒歩3分
2020年09月05日