互いに才能を尊敬し合う、菅田将暉さんとSEKAI NO OWARIのFukaseさん。映画『キャラクター』で“芝居”というフィールドで初共演したふたりの、今と未来とは…。――初共演だそうですが、それぞれどんな印象をお持ちでしたか?菅田:僕にとってFukaseさんは、ずっと見てきた、聴いてきたアーティストなんです。今回映画でご一緒する、しかもお芝居が初と伺って、単純に一表現者として、この方がお芝居をしたらどうなんだろう…と、ワクワクしました。撮影に入る前にライブを観に行って、楽屋で挨拶をさせてもらいました。そこで観たFukaseさんは、ステージの上とは全然違った人で。Fukase:えー、どんな人でした?僕。菅田:とても大人で、優しくて…。Fukase:(笑)。逆にどんな人だと思ってたんだ。菅田:…あんまり話の通じない、もっと変わった人(笑)。Fukase:アハハ。でもよく言われます、それ。「すげえ変なやつだと思ってた」って。どこでそんなイメージが付くんだか(笑)。菅田:でもパフォーマンスしているときのFukaseさんは曲ごとにキャラが全然違っていて、そのプレイの仕方がちょっとお芝居に近いなって思ったんです。自分をどう見せたいか、というよりも、楽曲に合わせて自分を演出するような。Fukase:確かにそういうところはあるかも。自分がどう、というよりは、楽曲に誠実に、忠実でありたい気持ちはあります。菅田:やっぱり。この言葉が合っているかどうかはわからないんですが、その発想は、すごく役者っぽいと思いました。Fukase:えー(笑)。菅田:アーティストとしての強烈な個性を持ちながらも、そこをチェンジすることもできる。そんな人って、あんまりいないですよね。Fukase:なるほど。確かにその意味ではあんまり話が合う人いないかも。ミュージシャンの友達が少ないのはそのせいか(笑)。菅田:(笑)Fukase:僕はちょうどこの話を頂いたとき、菅田くんのドラマ『3年A組』を見ていたときで、“この人と俺、対峙するのか?このドプロと?!”って。菅田:ドプロって(笑)。Fukase:最初は不安だったんですよ。怖いし、緊張するし、絶対照れるだろうなって。でも、ふたりが言葉を交わすシーンを初めて撮影したとき、菅田くんがもう、圧倒的に“山城圭吾。”になっていたから、これは照れたりせず、全力でぶつかることが俺のやることなんだと改めて自覚できたんです。あの駐車場のシーンは、大きなターニングポイントだった。菅田:いや、それは僕も近いところがあって。山城は、両角という強烈な個性に出会い、刺激をもらい、魅了された結果、戻れないところに行ってしまった男で。僕にとってあの現場にいたFukaseさんも、そういう存在でした。Fukaseさんの存在を吸収することで、役が理解できたんです。Fukase:それは僕もそうです。山城と言葉を交わしたことで足りなかった1ピースが埋まり、両角を掴めた。そこが理由かはわからないけれど、それ以前に撮っていたシーンで、いくつか撮り直したところもあります。菅田:そうだったんですか…。――エンターテインメント界の真ん中にいらっしゃるおふたりは、これからのエンタメの可能性について、思うことはありますか?Fukase:実は、もしコロナがなかったら、この撮影時期、僕らドームツアー中だったんです。ドームで演奏して、殺人鬼やって、またドームで演奏して…。菅田:想像するだけで大変そう。Fukase:コロナでライブができなかったのはもちろんつらかったけれど、だからこそこの役に集中できた、という面もあって。クリエイターとしては、この時期に何をしていたかで、この先に作る作品の可能性が大きく変わってくるのでは、と思います。菅田:僕は、仕事が解禁されたとき、止まっちゃいけないと思ってそこからずっと突っ走ってきたんですが、数か月でちょっと壁に当たってしまって…。なので僕はまだ、この先のエンタメについては考えがまとまっていなくて…。Fukase:そうかー。あ、現場で僕が、「殺人鬼を演じながら、ラブソングを書かなきゃいけない」って話したの、覚えてる?菅田:覚えてます。Fukase:そのとき菅田くんが、「両角の、山城に対する感情と恋愛感情って似てません?」って言ったの。それに俺、ハッとして、その気持ちで歌詞を書いて出したら、「ちょっと歪みすぎてる…」って言われちゃって(笑)。菅田:失礼しました(笑)。Fukase:その歪みをカットして作ったのが「silent」。問題は何曲もできちゃった“歪んだラブソング”なんですが、菅田くん、いつか一緒に歌いません?菅田:えー、なにそれー!!嬉しいです。歪んだラブソングを生み出しちゃった責任、一緒に取らせてください(笑)。Fukase:じゃあ手始めに、うちに遊びに来てください。ちなみに酔っ払うと俺、声がワントーン上がるキャラになるらしく、ちょっとそこが両角っぽいかも。菅田:本当ですか(爆笑)。それ、ぜひ見に行きたいです。すだ・まさき1993年2月21日生まれ、大阪府出身。ドラマ『コントが始まる』に出演中。8月公開予定の主演映画『キネマの神様』の主題歌「うたかた歌」を、RADWIMPS feat.菅田将暉として担当することも話題に。ミリタリーブルゾン¥132,000(コモリ/ワグ インク TEL:03・5791・1501)ヴィンテージカーディガン¥9,800(ペニーズ/アームス クロージング ストア祐天寺TEL:03・3793・5334)ヴィンテージパンツ¥16,500(ストリップス ストア TEL:03・6427・4529)ヴィンテージブーツ¥14,080(ポロ スポーツ/ゴッファX TEL:03・5411・8717)その他はスタイリスト私物フカセ1985年10月13日生まれ、東京都出身。SEKAI NO OWARIのボーカルを担当、作詞・作曲も手がける。デジタルシングル「バードマン」が配信中。7月7日にアルバム『scent of memory』が発売。『キャラクター』画力はあるが、悪人が描けずにくすぶる漫画家アシスタント・山城(菅田)は、殺人現場に遭遇し、殺人鬼・両角(Fukase)を目撃する。両角をキャラクターにした漫画で、山城は人気漫画家となるが、作品と酷似した殺人事件が次々と起こり…。6月11日公開。※『anan』2021年6月2日号より。写真・玉村敬太スタイリスト・猪塚慶太(菅田さん)百瀬 豪(Fukaseさん)ヘア&メイク・AZUMA(M-rep by MONDO-artist/菅田さん)江口洋樹(Fukaseさん)取材、文・若山あや撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー(by anan編集部)
2021年05月27日映画『キャラクター』で初の共演を果たした、菅田将暉さんとSEKAI NO OWARIのFukaseさん。お二人がそれぞれ映画について語りました。山城の“個性のなさ”は、自分に重なるところも。菅田将暉今回僕が演じたのは、偶然殺人犯を目撃したことがきっかけで、売れっ子漫画家になった山城圭吾。彼は、技量はあるのに個性がないゆえに、チャンスを掴めず、漫画家の道を諦めようとしていた男。演じて思ったのが、漫画家は“自分の個性とは何か”という問いに、常に対峙させられている、ということ。本当に過酷な仕事だと思いました。俳優も表現が仕事で、個性に関しては漫画家同様いろいろ言われることも多々。改めて俳優・菅田将暉の出演作を一作一作見ていくと、演じているキャラはかなりバラバラ。強いて言えば、廃れた場所で暮らす男とか、変人といった役が多い。一方でじゃあ、“個人・菅田将暉としての個性とは?”と考えると、これが結構難しくて。というのは、俳優という仕事柄、“他人の人生”ばかりを演じているので、ふと自分を見つめたとき、“あれ、何が好きだったっけ?どうしたいんだっけ?”みたいなことが、よくあるんです。加えて、昨年の自粛期間、僕は一切芝居をせずに家にいて、それこそ自分の個性がどんどん削がれていくような感覚を味わっていたので、個性のなさに打ちのめされていた山城は、僕自身と重なるところも少なくなかったですね。物語が進むにつれ、山城にも“表現者の自我”のようなものが生まれ、それが暴走し始めます。ネタバレになるので内容は控えますが、クライマックスの彼の行動は、表現者の業、あるいはエゴイズムから出たものだと僕は解釈していて。エゴイズムを思い切り出した彼の快楽を出したく、ちょっと“悦(えつ)ってる”表情で演じました。あそこまでイキ切ったシーンをカットしない永井聡監督、すごいなと思います(笑)。呼吸や目の動き、表情の引き出しが増えた。Fukaseこのお話をいただいたとき、お芝居の経験がなかったので迷惑をかけると思って一度お断りしたんです。でもバンドメンバーのSaoriから「この経験は表現者として音楽に還元できるはずだから、やったほうがいい」と背中を押され、出演を決めました。両角という殺人鬼を演じることに抵抗はなかったんですが、メンバーや親から「ピッタリだね!」なんて言われたり、友達に映画に出ることになったって言っただけで「殺人鬼の役?」って当てられて、僕のイメージって…って感じ(笑)。両角の役作りのため、役者の知り合いに相談したら「最終的に役を少しでも好きになれたらいいね」と言われて。確かに両角は殺人鬼ですが、殺人そのものよりも、山城が描く、漫画の殺人事件をリアルに再現することに興奮を覚え、もはやアートを共同制作している感覚でいる。常に山城のことで頭がいっぱいで、それって一種の純愛だと感じたんです。だから殺人鬼を好きになるなんてめちゃくちゃヘンテコだけど、それを演技の着地点にするのもいいのかなって思えました。ピンクの髪にグリーンのジャージー姿というスタイルも今までの殺人鬼にはなかったんじゃないかな。あれは僕がいつも油絵を描くときに着ているジャージーを細かく再現したものですが、飛び散った油絵の具のせいなのか、血糊でたくさん返り血をつけているのに全然目立たないんです。現場で偶発的に生まれた仕掛けですが、そのおかげで両角は捕まらずに、芸術のように殺人を楽しんでいくのがひとつの見どころだと思います。そして両角を演じたことで、Saoriの助言通り呼吸や目の動きなどの表情の引き出しが増えたと思う。早くライブで生かせる日がくるといいな。すだ・まさき1993年2月21日生まれ、大阪府出身。ドラマ『コントが始まる』に出演中。8月公開予定の主演映画『キネマの神様』の主題歌「うたかた歌」を、RADWIMPS feat.菅田将暉として担当することも話題に。ミリタリーブルゾン¥132,000(コモリ/ワグ インク TEL:03・5791・1501)ヴィンテージカーディガン¥9,800(ペニーズ/アームス クロージング ストア祐天寺TEL:03・3793・5334)ヴィンテージパンツ¥16,500(ストリップス ストア TEL:03・6427・4529)ヴィンテージブーツ¥14,080(ポロ スポーツ/ゴッファX TEL:03・5411・8717)その他はスタイリスト私物フカセ1985年10月13日生まれ、東京都出身。SEKAI NO OWARIのボーカルを担当、作詞・作曲も手がける。デジタルシングル「バードマン」が配信中。7月7日にアルバム『scent of memory』が発売。『キャラクター』画力はあるが、悪人が描けずにくすぶる漫画家アシスタント・山城(菅田)は、殺人現場に遭遇し、殺人鬼・両角(Fukase)を目撃する。両角をキャラクターにした漫画で、山城は人気漫画家となるが、作品と酷似した殺人事件が次々と起こり…。6月11日公開。※『anan』2021年6月2日号より。写真・玉村敬太スタイリスト・猪塚慶太(菅田さん)百瀬 豪(Fukaseさん)ヘア&メイク・AZUMA(M-rep by MONDO-artist/菅田さん)江口洋樹(Fukaseさん)取材、文・若山あや撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー(by anan編集部)
2021年05月26日SEKAI NO OWARIがアルバムを出すのは約4年ぶり。その間も「RAIN」や「サザンカ」などのヒット曲を生み、大規模なツアーで独自のエンターテインメントを築き上げ、日本のポップシーンを牽引してきた。今回、完成した2枚のアルバムとともにインタビューに登場してくれたのはFukaseさん。意外な素顔も覗かせる、2枚のアルバムが遂に完成。「『Eye』と『Lip』というタイトルの2枚のアルバムにしようというアイデアが出たのが昨年の頭。目は口ほどに物を言うといいますが、人を傷つけないように話しても目は本音を語っていることもあるし、一方で、願いを口に出すことで道が切り拓かれることもある。どちらにも“語る”という意味があるんです」彼らのポップな側面を遺憾なく発揮するのがアルバム『Lip』。等身大のラブソングに挑戦した「YOKOHAMA blues」やドラマ主題歌「イルミネーション」など、Fukaseさんの優しい気持ちが伝わってくる楽曲も。そこには私生活での“変化”が反映されている。「ライブに子供たちがたくさん来てくれるようになり、プライベートでも周りに子供がいる時間が増えたことが大きいです。友達の子供が休みの日に遊びに来るからといってカレーを作ったり、庭に滑り台つきのビニールプールを用意したり。そうした中で、音楽を通じて子供たちに言っておきたいことや、守ってあげたいという気持ちが生まれました」一方、弦楽器の音色がヒリヒリとした感触を生み出す「LOVE SONG」や英語詞のナンバー「SOS」におけるシリアスなメッセージ性など、ダークな側面を感じさせるアルバム『Eye』は「今の時代に向き合って書いた曲」が多いという。「もちろん安易に人を傷つける発言はすべきでないけれど、多くの情報を自然と目にする時代に生きている中では、言いたいことをあらゆるフィルターに通してしまうと結局自分が何を考えているかわからなくなってしまう。だから僕は音楽を作る上で正直でありたいんです。自分でちゃんと筋が通っていれば必要以上に恐れる必要はないんじゃないかな」前述の子供たちとのエピソードを意外に感じた人も多いかもしれないが、Fukaseさんはプライベートで会うと「イメージと違う」と言われることが多いのだとか。今回のアルバムでは、そんな彼の素顔も覗かせることでセカオワの表現が更にポップに進化し、広がりを見せる。「こうしてひとりでインタビューしてもらうのも実は今回のアルバム取材が初めて。ずっとバンドの中のFukaseという部分でしか発信してこなかったんですけど、僕自身の要素も表現としてこのアルバムに入れられたらいいなと思って作ったので、感じてもらえたら嬉しいです」前作『Tree』から約4年ぶりのアルバムが2/27に2枚同時発売。『Eye』【初回限定盤CD+DVD】¥4,000DVDには昨年のライブ映像を収録。【通常盤CD】¥3,000『Lip』【初回限定盤CD+DVD】¥4,000DVDにはMVを収録。【通常盤CD】¥3,000(TOY’S FACTORY)セカイ ノ オワリNakajin(G)、Fukase(Vo)、Saori(Pf)、DJ LOVE(DJ)からなる4人組バンド。海外活動時の別名義、End of the Worldとしての1stアルバム『Chameleon』もリリース予定。※『anan』2019年2月27日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)インタビュー、文・上野三樹(by anan編集部)
2019年02月20日