ネットで「エイジングケアの最終兵器」とまで言われる美容成分幹細胞エキス。“幹細胞コスメ”と呼ばれ、肌本来のすこやかになろうとする力を引き出す化粧品として注目を集めています。幹細胞エキスとはどんな成分なのでしょうか。幹細胞エキスの種類や美容効果など知っておきましょう。幹細胞コスメとは?出典:byBirth“幹細胞コスメ”という言葉を聞いたことはありますか?近年、化粧品に配合されるエイジングケア成分の研究がすすみ、多くのエイジングケア成分があります。そんな中、どんな成分配合のアイテムを選んだらよいかわからないという人も多いのではないでしょうか。そんな人におすすめしたいのが幹細胞コスメ。使い続けるごとに、なめらかでハリのある自信に満ちた素肌に導いてくれる、今、大注目のエイジングケア成分です。美容大国と言われる韓国やアメリカでは、幹細胞コスメの巨大マーケットが出来上がっているほど。配合された幹細胞培養液(抽出エキス)の種類によりますが、肌の生まれ変わりを助けて、すこやかな肌の土台作りをサポート。肌老化の原因になる活性酸素を取り除く抗酸化力にもすぐれています。幹細胞について知ろう出典:byBirthそもそも、幹細胞とは何なのでしょうか?幹細胞は、最先端の再生医療の現場でも脚光を浴びています。幹細胞は、すべての細胞のもとになる細胞のこと。幹細胞は、骨や筋肉、臓器、肌など人間を構成するパーツをつくる細胞を生み出します。古くなった細胞や壊れた細胞があれば、幹細胞があたらしい細胞を作るのです。特定のパーツの細胞を生み出す組織幹細胞と、どんなパーツの細胞でも再生できる多能性幹細胞の2つがあります。ちなみに、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中教授を中心に作られた「iPS細胞」は、多能性幹細胞です。幹細胞コスメには幹細胞は入っていない出典:byBirthさまざまな細胞のもとになる幹細胞ですが、幹細胞コスメに幹細胞が入っているわけではありません。したがって、幹細胞コスメという言い方は、語弊があります。正しくは、幹細胞培養液(抽出エキス)を配合したコスメです。「幹細胞コスメを使うと、幹細胞によって肌の新しい細胞が作られてキレイになれる」というのは間違い。それでは、なぜ、幹細胞コスメがエイジングケアに有用なのかというと、幹細胞を培養して得られる幹細胞培養液(抽出エキス)に含まれる成分が、肌のすこやかな土台をつくるのをサポートしてくれるからなのです。幹細胞コスメ=幹細胞が入った化粧品ではないということを、覚えておきましょう。幹細胞培養液の種類と美容効果出典:byBirth幹細胞培養液(抽出エキス)は、元になる幹細胞によって期待できる美容効果が異なります。3種類あるので、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。動物幹細胞培養液出典:byBirth主に羊の毛根や胎盤の幹細胞を培養して得られます。動物の飼育環境の問題、ウイルスの危険性、肌につけたときの安全性などの理由から、日本では流通していません。海外では、動物由来の幹細胞培養液を配合した化粧品が販売されていますが、上述の理由から購入は控えるのが無難です。ヒト幹細胞培養液出典:byBirthヒト脂肪由来幹細胞やヒト神経幹細胞などを培養して得られます。生体由来成分なので、厳しい安全基準をクリアしないと化粧品に配合できません。ヒト幹細胞培養液は、ドナーが誰か、幹細胞やウイルスが混入していないかなど衛生面や安全性が徹底管理されています。ヒト幹細胞培養液は、肌の生まれ変わりを促すEGFや、肌に本来あるコラーゲンやヒアルロン酸の合成をサポートするFGFなど、細胞を活性化させる情報伝達物質のほか、コラーゲン、エラスチン、抗酸化酵素など美容成分がたっぷり含まれています。本来、化粧品に配合される美容成分は、肌の表面にある角質層にしか浸透せず、その下にある表皮細胞や真皮の細胞まで届きません。角質層にある角質細胞はいわば死んだ細胞です。死んだ細胞に美容成分を届けても、肌が活性化することはないのです。「化粧品には保湿の役割しかない」と言われるのはそのためです。しかし、ヒト幹細胞培養液は細胞の働きを活性化させて肌を根本的に立て直せるので、エイジングサインへのさまざまな効果が期待できるといわれています。その理由が、リガンドとレセプターです。肌の活性化を促すには、リガンドというカギの役割を果たす成分と、細胞の表面でカギ穴の役割を果たすレセプターが結びつく必要があります。ヒト幹細胞培養液には、リガンドとして機能する成分が豊富に含まれていると言われています。エイジングケアに魅力的なヒト幹細胞培養液ですが、生体由来成分なので価格が高いのがネックです。植物幹細胞培養エキス出典:byBirth植物の幹細胞培養液から抽出して得られます。培養液の抽出が容易で、低コストで成分をつくれるので、比較的、低価格な商品が販売されています。もととなる植物は、砂漠地帯や山脈などの高地といった厳しい生育環境で繁殖する植物。生命力があり、高い保水力があるアルガンツリーやアルペンローゼがあげられます。植物幹細胞にはレセプターとリガンドがないため、ヒト幹細胞培養液のように肌の細胞に直接働きかける効果はありません。しかし、植物幹細胞エキスはすぐれた抗酸化力を持ちます。紫外線や空気中の汚れなどが原因で肌に発生する活性酸素は、肌老化を加速させる要因に。その活性酸素を除去して、美しい肌を守ってくれるのです。また、高い保湿力も魅力。肌の乾燥は、しわ、たるみ、しみ、くすみなどを引き起こす原因になります。肌のうるおいをしっかり守ることが、エイジングケアの基本です。肌老化に悩むなら一度試す価値あり!出典:byBirthエイジングケアの最終兵器とまで言われる幹細胞培養液(エキス)ですが、肌を若返らせる薬ではありません。あくまでも、すこやかな肌の土台作りをサポートする成分であると考えましょう。エイジングケアは毎日の積み重ねが大切。幹細胞培養液(抽出エキス)配合の化粧品で、コツコツお手入れを続けてみましょう。少しずつ、肌の変化を感じられるはずです。エイジングサインに悩んでいるなら、一度、幹細胞培養液(抽出エキス)配合の化粧品を試してみてくださいね。
2019年06月02日二階のベランダにかかっている物干し竿は錆びついており、窓の奥に見えるふすまには穴が開いている。千葉県内にある小保方晴子さん(35)の実家には、人が住んでいる気配はまったくなかった。’14年1月に小保方さんが発表した「STAP細胞」は世界的に注目され、彼女は“リケジョの星”ともてはやされた。しかし、その数カ月後に研究に関する不正疑惑が浮上し、最終的には理化学研究所も退職することになったのだ。「’16年に上梓した手記『あの日』はベストセラーになり、印税は3千500万円以上とも報じられています。その後、’17年1月からは1年以上にわたり『婦人公論』で『小保方晴子日記―「あの日」からの記録』を連載し、注目を集め続けました。しかし『婦人公論』連載終了後は消息も途絶え、どこかの研究機関に再就職や研究再開をもちかけているという話も聞いたことがありません」(科学ジャーナリスト)STAP騒動から1年後ごろまでは、千葉県内の実家で家族も生活していたようだった。「しかし、この2~3年は小保方さんのご家族にはまったくお会いしておらず、家も“まるで廃墟のよう”と言われています」(近隣住民)ついに“平成のコペルニクス”にはなれなかった小保方さん。1年前のインタビューではこんな前向きな思いも明かしていた。《研究をしていた時から根底にあった思いは、社会の役に立ちたいということ。どんな形であっても、これからもそのために生きていきたい。この人生でもう一度、その夢を追い続けたいと思っています》(『婦人公論』’18年4月10日)いまも彼女はどこかで、著書の印税生活を送りながら、夢を追い続けているのだろうか。
2019年05月08日「Y’sサイエンスクリニック広尾」最高医学責任者の新刊4月3日、幹細胞を活性化させてアンチエイジングを図ろうという新刊『幹細胞 活性化で若返り! 夢をかなえる5つの方法とは』が発売された。発売は講談社からで、四六判の176ページ、価格は1,300円(税別)である。著者は東京都港区南麻布にある「Y’sサイエンスクリニック広尾」の統括院長で最高医学責任者の日比野佐和子氏である。同氏は同クリニックにて肌再生治療、美容皮膚科、アンチエイジング内科(点滴療法)を担当している。自宅で誰でも幹細胞を活性化人間などの生物は細胞により構成され、一般的な体細胞が一度その役割を担う形に分化してしまえば、それ以外の細胞にならないのに対し、別の種類の細胞に分化する能力を持ち増殖し続ける細胞が幹細胞である。幹細胞は近年、再生医療の分野で注目されている。新刊『幹細胞 活性化で若返り! 夢をかなえる5つの方法とは』では、日比野佐和子氏が自宅で誰でも幹細胞を活性化させることができるという方法を紹介している。この5つの方法を実践することで若返りを図るだけでなく、健康長寿にもつながるとしている。また、日比野氏自身が受けたという「脂肪由来の幹細胞移植」を紹介。同氏は移植後すぐにその効果が現れたとしている。自身、激しい運動をしていないのに、筋肉量が増え、顔や体のたるみが解消。不妊治療としての効果も確信しているという。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※『幹細胞 活性化で若返り! 夢をかなえる5つの方法とは』(日比野 佐和子) - 講談社BOOK倶楽部
2019年04月11日私たちのカラダの中にある脂肪細胞には、脂肪を燃焼させてくれる「褐色脂肪細胞」と、脂肪を溜め込んで肥満の原因となる「白色脂肪細胞」があります。ダイエットの敵ともいえる白色脂肪細胞に焦点を当て、性質や働きについて解説します。カラダの脂肪の大半は白色脂肪細胞細胞のなかには、脂肪滴と呼ばれる脂肪のかたまりをもつ脂肪細胞があります。白色脂肪細胞には大きな脂肪滴がひとつ、褐色脂肪細胞には中小の脂肪滴が多数あります。実は、カラダの中の脂肪細胞はほとんどが白色脂肪細胞です。ダイエットに役立つ褐色脂肪細胞は首や肩甲骨などの周りにしか存在せず、加齢とともにその数は減少していきます。肥大化した白色脂肪細胞の怖い影響白色脂肪細胞には、内臓の位置を正常に保ち、体温を維持する働きがあります。また、食欲やエネルギー代謝の調整に関わるレプチン(※1)も分泌しています。 そして、白色脂肪細胞の中には、アディポサイトカインとアディポネクチンという生理活性物質が存在しています。アディポサイトカインは糖や脂質の代謝を助け、アディポネクチンは糖尿病や動脈硬化を予防する働きがあるといわれています。しかし、内臓脂肪が増加するとアディポサイトカインの分泌異常が起こり、悪い働きをするアディポサイトカインが多く分泌されるようになります。なかでも、肥大化した脂肪細胞から多く分泌されるTNF-α・MCP-1・PAI-1は悪玉アディポサイトカインとされ、以下のようなリスクとなります。PAI-1・・インスリンの働きを悪くし、糖尿病の発症リスクを高めるMCP-1・・動脈硬化の発症や悪化に関係が示されているPAI-1・・血液を固まりやすくし、血栓ができやすくなるこれらの影響は、皮下脂肪よりも内臓脂肪で特に大きくなります。つまり、内臓脂肪型の肥満は、生活習慣病につながりやすいので注意が必要です。(※2)白色脂肪細胞を程よくキープするコツ3つ太り過ぎると、白色脂肪細胞が肥大化し、生活習慣病の原因となる悪玉アディポサイトカインを分泌してしまいます。ダイエットや健康を維持するために重要なカギは白色脂肪細胞を程よくキープすること。そのための3つのコツは以下のとおりです。1.体脂肪率を適正に保つ体脂肪率は、白色脂肪細胞の増えすぎや減り過ぎを知るバロメーターになります。年齢によっても異なりますが、男性は15~20%、女性は20~25%くらいが目安です。2.褐色脂肪細胞を活性化させる脂肪燃焼に役立つ褐色脂肪細胞を刺激し、活性化させるのも有効です。凍らせたペットボトルで肩回りをマッサージしたり、冷シャワーと温シャワーを交互に浴びたりしてみましょう。3.有酸素運動を行う酸素を取り入れながら行う有酸素運動は、脂肪燃焼に効果があります。ウォーキングやサイクリングなどを20~30分以上継続して行うのがおすすめですが、10分くらいずつの運動でも効果が出なわけではありません。時間が空いたらカラダを動かす習慣をつけるのがベストです。 白色脂肪細胞は減らしすぎても増えすぎてもカラダに悪影響をもたらします。白色脂肪細胞の良い部分をいかせるよう、適切な体脂肪率を保ち、運動を心がけてくださいね。 【参考】(※1)e-ヘルスネットレプチン〈〉(最終閲覧日2016/09/06)(※2)e-ヘルスネット肥満と健康〈〉(最終閲覧日2016/09/06)e-ヘルスネット脂肪細胞〈〉(最終閲覧日2016/09/06) 【執筆者】衞藤敬子/管理栄養士コントラクトフードサービス大手(株)グリーンハウスに入社、社員食堂のメニュー提案や栄養指導業務を経て、2009年「あすけん」に参加。アドバイス作成やサービス開発に携わる傍ら、年間150件以上の栄養指導やプロアスリート選手の食事サポート、セミナーなどを実施。現在はフリーランスに転向し、幅広く活躍。
2018年11月04日脂肪細胞には2種類あり、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞では働きが異なります。そこで、2種類の脂肪細胞の違いや脂肪を燃焼させる方法についてご紹介します。脂肪燃焼効果のある褐色脂肪細胞を活性化させ、より効果的にダイエットを行いましょう。 白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の違い脂肪細胞は細胞質に脂肪滴と呼ばれる脂肪のかたまりを持っている細胞のことをいいます。白色脂肪細胞はカラダ全体に存在し、脂肪を蓄える役割をしており、褐色脂肪細胞は首や肩甲骨、脇の下などの一部にしか存在せず、脂肪を燃焼して熱を産生する働きをします。(※1)いわゆる体脂肪と呼ばれるものは白色脂肪細胞のことです。褐色脂肪細胞のうれしい効果とは?白色脂肪細胞に溜め込まれた脂肪を燃焼させてくれるのが褐色脂肪細胞。褐色脂肪細胞は加齢とともに数が減ってしまいます。しかし、この褐色脂肪細胞を活性化させることで、脂肪を燃焼させやすくなり、生活習慣病の予防やダイエットに効果をもたらしてくれます。褐色脂肪細胞を活性化させるコツ6つ褐色脂肪細胞は寒さを感じたときや体温が低下したときに、体温を維持しようと活発に働きます。そのため、カラダに冷たさを感じるような刺激を与えることが、褐色脂肪細胞を活性化させる有効な方法の一つといえます。1.水泳をする体温よりも冷たい水の中で行う水泳は、褐色脂肪細胞を刺激するには最も適している運動といえます。水の中を出入りし、冷たい刺激を受けることによってカラダが熱を生み出そうとするため、脂肪燃焼効果が期待できます。2.適度な寒さにカラダをさらす特に寒い季節には、暖房の効いた温かい部屋にこもってしまいがちですが、冷たい外気を浴びることで褐色脂肪細胞が活性化され熱を産生します。寒い時期こそ減量のチャンスです。適度に外へ出てウォーキングなどを行いましょう。(※2)3.水を入れて凍らせたペットボトルでマッサージをする褐色脂肪細胞は特に鎖骨や首の周りに多いとされます。8割くらいの水を入れて凍らせたペットボトルを耳の下あたりから首に沿って転がすように、2〜3分間マッサージをするだけでOK。ただし、冷たいと感じる手前でやめましょう。4.シャワーを活用する20℃と40℃のシャワーを30秒ずつ、交互に5回を目安に首の周りにかけます。一時的な温冷浴は自律神経を整えるためにも有効で、血流を改善・代謝アップ効果もあります。5.唐辛子の料理を食べる唐辛子に含まれるカプサイシンには白色脂肪細胞の褐色化を促進させる効果があります。その他にも食べ過ぎを防止する、代謝を上げるなどダイエットにうれしい効果が盛りだくさんです。(※3)6.青魚を食べるさばやさんまなどの青魚の油に含まれるDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸には、心臓病予防や血糖値改善に効果的とされていますが、DHAやEPAをとり入れることで、本来脂肪を蓄積する働きの白色脂肪細胞においても、褐色脂肪細胞のように脂肪を燃焼させる働きをすることが報告されています。(※4)(※5) このように、脂肪燃焼に効果的な褐色脂肪細胞を活性化させるためにはいくつかの方法があります。もちろん一つの方法にとらわれるのではなく、他のダイエットと組み合わせながら、効率良くダイエットを行うのが望ましいです。自分に合った方法を見つけ、チャレンジしてみましょう。【参考】(※1)e-ヘルスネット〈〉(最終閲覧日2016/07/15 )(※2)糖尿病ネットワーク〈〉(最終閲覧日2016/07/15 )(※3)保健指導リソースガイド〈〉(最終閲覧日2016/07/15 )(※4)保健指導リソースガイド〈〉(最終閲覧日2016/07/15)(※5)京都大学〈〉(最終閲覧日2016/07/15) 【執筆者】衞藤敬子/管理栄養士コントラクトフードサービス大手(株)グリーンハウスに入社、社員食堂のメニュー提案や栄養指導業務を経て、2009年「あすけん」に参加。アドバイス作成やサービス開発に携わる傍ら、年間150件以上の栄養指導やプロアスリート選手の食事サポート、セミナーなどを実施。現在はフリーランスに転向し、幅広く活躍。
2018年11月04日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「iPS細胞研究のいま」です。再生医療とともに創薬の分野でも研究が進んでいる。京都大学の山中伸弥教授率いる研究チームがiPS細胞の作製に成功してから12年が経ちました。iPS細胞は人工多能性幹細胞といい、病気やケガによって体の組織や臓器の細胞が失われてしまっても、自身の体細胞から人工的に作り出すことができ、再生医療などでの活用が期待されています。人体に使用する際の危険性もだいぶクリアになったと、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は発表。2015年には、患者の細胞から網膜を再生し移植をしたところ、経過は良好で異常は見られていなかったという臨床報告が上がりました。ほかにも、脊椎損傷やパーキンソン病、貧血などの血液疾患に関しても動物実験では安全性が確認されています。最近では、iPS細胞から、ミニ肝臓の大量製造に成功したという報告も。肝臓移植を待つ人は年間、数千人にのぼり、ドナーの数が圧倒的に不足していますから、これが将来、実用されたなら、たくさんの命が助かるでしょう。現在研究が進められているのは、再生医療ともうひとつ、新薬の開発です。難病指定されているパーキンソン病やミトコンドリア病。皮膚・結合組織疾患、悪性関節リウマチ、骨や関節系の疾患、消化器系の疾患。アルツハイマー、てんかん、アトピー性皮膚炎、スギ花粉症…などを改善する薬をiPS細胞を使って作ろうとしています。ただし、創薬は疾患箇所の体細胞を採取して行いますが、そもそもそれが病気の根本原因なのか?また、Aさんの疾患細胞から作られた薬が、同じ病気とはいえ、BさんやCさんにも効果があるのか?など、まだまだこれから研究が必要な課題もあります。iPS細胞の研究には、クラレや味の素、ニコンなどの民間企業も積極的に参加しており、これからますますビジネスとして注目されることでしょう。そのぶん、最新研究の成果が一部の企業の独占にならないよう、情報公開も求めていきたいですね。科学技術の発達につれ、いよいよ人が死ににくくなる時代。一方で、生命に対して人間がどこまで介入してよいのか、という倫理観を問われる議論も、持ち上がってきています。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年7月25日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年07月21日STAP細胞発見の報道から、気づけば4年。最近はニュースでも見かけなくなった元理化学研究所(以下理研)研究員の小保方晴子さんですが、3月25日に処女作から約2年ぶりの手記を出版。今回は理研でのSTAP細胞騒動終焉後の、2014年12月以降の小保方女史の日常が、日記として綴られています。 騒動後も彼女の生活は“平穏な日々”ではなく心身を崩し、マスコミに追われ、刑事告発があり、また在学していた早稲田大学からは博士号を剥奪。その際の苦しい心中が、表現力豊かに語られています。 本作の内容はSTAP細胞騒動後に起きた出来事に関する記述も多いのですが、主だった内容は彼女の生活からの視点。傷つきながらも立ち向かおうとして、心を折り、また立ち直ろうとする。まさに三歩進んで二歩下がる姿が描かれています。 センセーショナルな割烹着姿の女性がさまざまな“進化”を遂げたのも衝撃ですが、今思えば彼女はなぜ彼女はスターとなってしまったのか。本書を読みすすめながら、研究者としての側面以外の彼女の顔を考えてみたいと思います。 ■精神疾患者の日常と回復状況としての有用性 読み進めていちばん最初に感じたことは意外にも彼女の素顔ではなく、本書の有効性です。本書は”STAP細胞の騒動後に起きたことを当事者が語る”という特筆性を脇に置けば、精神疾患を患った女性の”ある程度の回復”までの記録として読むことができます。 2015年の1月はマスコミからの逃亡劇のなかひたすら泣き、絶望し続けている。と思ったら2月にはクスリの効果なのか食欲に振り回される記述が増え、勉学への意欲をほんの少し取り戻します。そして3月になると涙し絶望しながらも、パン作りや料理にいそしんだ記録が目に入ってきます。 その後は出来事とあわせてまた絶望の淵に立たされたり、少し回復したり、パニックが起きたりと状態に波があります。診断による鬱とPTSDがどのような事象によってどう変化を遂げるのか、そして後半の回復がどんなキッカケから生まれたかがよく理解できます。 当事者としてはどれも絶望や混乱に変わりないのかもしれません。ただ鬱や精神疾患を体験したことのない人にとっては、心の変化と心身の変化が比較的わかりやすく書かれているので理解の深まる内容かもしれません。 ■強い「わかってほしい」が原動力でありトラブルの元凶か STAP細胞騒動の中心人物とはいえ、彼女がなぜここまで“渦中のスター”として扱われたのか。そこには若い女性研究者だったからということ以外にも、注目されるべき理由があったように思います。1つは多くの人が感じているであろうビジュアル面での異質さです。 STAP細胞での釈明会見では、7万6,000円のバーバリーのワンピースを着用し、その後の対談では11万6,000円のレッドヴァレンティノのワンピース。そして週刊誌のグラビアに登場した際はグッチの21万3,840円のワンピースと、衣装も見た目もランクアップして私たちの前に現れました。 研究者という立場よりも感じる“オンナ”の側面は、間接的に研究者としての説得力を減退させ不謹慎な側面にばかり注目を集めるような作用がありました。 「なぜわざわざ自分から話題を振りまくのか」と思う人も多いかと思いますが、本書を手にとるとその理由が少しわかる気がします。彼女の原動力は研究したい学びたいという気持ちの前に「私をわかってほしい」という気持ちが強くあり、同時に“行動のちぐはぐさ”があるのです。 たとえば通院している病院の先生に「本が出たら大きな反響がある」としてしばらく病院に来ないで欲しいと告げられた際、彼女は本書に「見放されたような気がいて、すごく寂しかったのに、また笑ってしまった」と綴っています。通院し続けたいという気持ちを明確に持っているのに、先生の指示に素直に従ったような記述がありました。 他にも出版にあたり打ち合わせをした際、同席者が世間の悪口や業界の噂話を“笑い話”として出した際、彼女は心の中で「慣れていない」と感じまた疲労感を覚えていたようです。ただこれも本人に伝えることはなかったようです。 こういった我慢してその場をやりすごしたという記述が、本書では散見しています。主にその対象は心を許していない相手に対して行うようですが、ちょっとした本音を我慢して裏で辛くなるのは“本音が伝わらないことによる状況悪化”を起こしかねません。見方によっては被害者意識が強い人とも捉えられます。 思ったことを何でも伝えるのも問題ですが、こうして文字として改めて綴るところからも「本心をわかってほしい」という気持ちの強さがあるのでしょう。研究者として理解されるよりも、自分をわかってもらうことを優先した結果が、ふるまいや見た目の異質さに、つながっているのかもしれません。 「シャッター音がなるたびに、自分の(命の)ロウソクに火を分けられているように感じた。(中略)もう私の火は揺らいでいない、そう思った時に、最後のシャッター音が聞こえた。写真にうつる女性を見て、この人の火はきっとドラマティックに燃え続ける、ロウソクが尽きるまで火が消えることはないと信じることができた(中略)。私は分けられた火をまた誰かに分けながら生きていく」 本書出版の際に撮影に望んだときのことを、あとがきにかえた日記として、彼女はこう綴っています。 前作では今でも実験をしている夢を見る。涙が勝手に込み上げてくる。と書いた彼女が、2年の時を経てどう変化し、そしてどう進化していくのか。“ドラマティックに燃える火”が彼女の身を焦がさず、幸せの炎であることをまずは願いたいです。
2018年04月11日3月22日に『小保方晴子日記』(中央公論新社)を出版した小保方晴子さん(34)。STAP細胞騒動から4年。今回の著書には、論文ねつ造を指摘されて“どん底”に落ちた日々から、彼女がどうやってここまで這い上がってきたかが、克明に描かれている。 日記は、理研を依願退職した直後の14年12月31日から始まるが、当時は一歩も外に出ず引きこもる生活だったという。 《一日に何度も死にたいと思って、気が付けば真剣に方法を考えてしまう日々が続いている(15年1月24日)》(『小保方晴子日記』より・以下同) こうして絶望の淵に追いやられた彼女は、16年1月に手記『あの日』(講談社)を出版。何を言っても世間が聞く耳を持ってくれなかったと感じていた彼女は、本を書くことで、初めて鬱屈した思いを活字の形で吐き出すことができたようだ。このころから、彼女の生活に変化が現れていく。 STAP騒動の渦中には、スエットにパーカー姿で、髪の毛を振り乱して理研に出勤していた彼女の姿を本誌も目撃していた。だが2年前の手記出版をきっかけに、彼女は次第に化粧品やファッションへの関心を取り戻していったのだ。 《白いワンピースを友人が代わりに買って、郵送してくれた。私にウェディングドレスを着る日は来ないと思うから、奮発してこの白いワンピースを買うと決めたのだ(16年4月9日)》 ただ騒動のなかで、犠牲者も出た。14年8月、自ら命を絶った小保方さんの元上司、笹井芳樹さん(享年52)。一時はノーベル賞候補とまで言われた笹井さんの妻・A子さんに、本誌は2年前にも取材したが、今回あらためて話を聞かせてもらった。 前回の取材は、小保方さんが初の手記を出した直後のこと。A子さんは「小保方さん個人の気持ちを綴った内容なら読みたくありません」と終始、硬い表情だった。 しかし、あれから流れた2年の歳月がA子さんの心を融かしたのだろう。今回は、柔らかい表情で記者の質問に答えてくれた。 「小保方さんからの連絡は、まだありません。ただ、(小保方さんが自分に)連絡することは大変なことだとは思います。たとえば、交通事故で人の命を奪ってしまった人が遺族に謝罪に行くのはすごく勇気がいること。それと同じような大変さはあるので……」 A子さんは、そう彼女を思いやってみせた。 「じつは主人が、小保方さんについて『研究者には向いていない』と言っていたことがあったんです。でも、彼女にはこうして文章を書く才能があったということなんでしょう。私も、なんとか前を向いて生きていきたいと思います」 そう言って微笑んでいた、A子さん。その瞳は、小保方さんの行く末をどこか危ぶんでいるようにも見えたーー。
2018年04月05日《えっ、小保方さん、めっちゃ綺麗になってない!?》《別人ですよ!》 3月22日に『小保方晴子日記』(中央公論新社)を出版した小保方晴子さん(34)。STAP細胞騒動から4年。小保方さんは今回の自著発売にあたって、雑誌『婦人公論』4月10日号のインタビューに登場した。そこで披露したグラビア写真での変貌ぶりに、ネットには驚きの声が殺到しているのだ。 小保方さんといえば、かねてからそのファッションが注目されてきた。STAP細胞を“発見”して一躍、時代の寵児となった当初は、研究室で白衣代わりに着ていた“白のかっぽう着”が注目を集めた。ベテランスタイリストはこう語る。 「今回の『婦人公論』グラビアで着用していた白のワンピースは、グッチの春の新作で21万3千円。これは、論文ねつ造を指摘された14年4月の反論会見で彼女が着ていた7万6千円のバーバリーのワンピース、さらには16年6月の雑誌対談で着ていた11万6千円のレッドヴァレンティノのドレスをも上回る“過去最高額”ですね」 着ている洋服の値段は右肩上がりだが、彼女の服の好み自体は、以前からあまり変わっていないという。 「世の中から姿を消していた2年前、瀬戸内寂聴さん(95)との対談で久しぶりに姿を見せた際のドレスも、今回と同じ白色。自分は潔白ーーそう訴えるかのような、クリーンで無垢な雰囲気のデザインでした。でも、今回のグッチのワンピースは胸元にフリルやリボンがあしらわれた派手なデザイン。“勝負服”というか、『返り咲いてやる!』といった意欲が見えます。2年前よりも自信が回復したのか、“野望”すら感じられますね」 プロの目にも過去との違いがはっきり見てとれるようだ。今回の著書には、論文ねつ造を指摘されて“どん底”に落ちた日々から、彼女がどうやってここまで這い上がってきたかが、克明に描かれている。日記は、理研を依願退職した直後の14年12月31日から始まるが、当時は一歩も外に出ず引きこもる生活だったという。 《一日に何度も死にたいと思って、気が付けば真剣に方法を考えてしまう日々が続いている(15年1月24日)》(『小保方晴子日記』より・以下同) 絶望の淵に追いやられた彼女は、16年1月に手記『あの日』(講談社)を出版。何を言っても世間が聞く耳を持ってくれなかったと感じていた彼女は、本を書くことで、初めて鬱屈した思いを活字の形で吐き出すことができたようだ。このころから、彼女の生活に変化が現れていく。 《新作の化粧品でテンションアップ(16年1月3日)》 STAP騒動の渦中には、スエットにパーカー姿で、髪の毛を振り乱して理研に出勤していた彼女を本誌も目撃していた。2年前の手記出版をきっかけに、彼女は次第に化粧品やファッションへの関心を取り戻していく。 《白いワンピースを友人が代わりに買って、郵送してくれた。私にウェディングドレスを着る日は来ないと思うから、奮発してこの白いワンピースを買うと決めたのだ(16年4月9日)》 STAP騒動から4年。彼女は、美しい“鎧”をまとうことで、世の中と再び対峙する勇気を得たのだろう。
2018年04月05日「’83年生まれの有名人が、これだけ立て続けに世間を騒がすと、今後何かをやらかした有名人が出るたびに、“何年生まれだろう?”と調べたくなりますね(笑)」 そう語るのは、漫画家のやくみつるさん。7月に元SPEEDの今井絵理子参議院議員(33)と、神戸市議会議員の橋本健氏との不倫疑惑が報じられた。また、8月に同じく元SPEEDの上原多香子(34)にもスキャンダルが発覚。3年前の夫・TENNさん(享年35)の自殺は、なんと上原の不倫が原因であるとの報道も……。 この2人は、ともに’83年生まれだ。冒頭でやくさんが話すように、最近の“お騒がせ女子”は、「’83年生まれ」がやたらと目立っているのだ。’15年、男性秘書と“不倫温泉旅行”に出かけていたことが報じられた上西小百合衆議院議員(34)は、いまだテレビやSNSでの発言などで注目の的となっている。’13年、自宅マンションに不倫相手を連れ込み、現場で夫と“鉢合わせ”した後に離婚した矢口真里(34)もその1人だ。そして記憶に新しいところでは’16年1月、上西や今井らと“同学年”のベッキー(’84年3月6日生まれ)が起こした“ゲス不倫騒動”……。 これって、単なる偶然ではないはずーー。そこで本誌は、’83年生まれ、お騒がせ女子多すぎ問題の真相を探った。まず、社会心理学者で新潟青陵大学大学院の碓井真史教授に、この世代の特徴を聞いてみると……。 「’80年代前半生まれは、“個性重視”に教育方針が大きく変わった時代に育ったんです。たとえば、小中学校では『自分の思いを主張すること』に重きを置いたプレゼンの勉強なども始まりました」 ’83年といえば、東京ディズニーランドが開園し、ファミコンが発売された年でもある。 「当時は景気もよく、どんどん子どもたちの夢が広がっていくような時代背景がありました。小学生のころに“ディズニーランドに行きたい”“ファミコンが欲しい”といった願いを、親にかなえてもらった人も多かったことでしょう」 思春期を迎えたころには、当時の最新システム「ウィンドウズ95」搭載のパソコンが発売されたことによって、インターネットの普及に弾みもついた。 「個性を尊重した教育を受け、環境も整い、『キミたちには無限の可能性がある』なんて周りから言われながら育ってきたのですが、バブル崩壊後に景気はどんどん下降することに。そして自分たちが社会に出るころ、ちょうど就職氷河期の真っただ中にさしかかるわけです。つまり、幼少のころから言われてきた、自由で個性を尊重する夢のような時代はもうなかった。待っていたのは“夢と現実とのギャップ”。その差が大きかったのが、この世代の特徴です」(碓井教授) いっぽう、この世代は「直情径行」(自分の感情に赴くままに行動する)だと分析するのは、前出のやくさん。 「人とのコミュニケーションよりも、まず自分を優先する。そして相手とやり取りをするというより、自分を発信することのほうに重きを置くタイプが多いのがこの世代の特徴ではないかと思います。そういう意味で、’83年生まれのお騒がせ女子の中で、いちばんわかりやすい人物は上西小百合議員でしょう。SNSでの自己主張で“炎上”してしまうのも、その典型例といえます」(やくさん) ’83年生まれの中でも、実際にトラブルを起こすのは「成功者たち」だと、やくさんは指摘する。 「就職氷河期も経験したこの世代は、格差がはっきりわかれている。だから、格差社会の中、有名人になった彼女たちは、同世代の中でも成功者なんですよ。“勝ち組”たちは、『人生は己れの天下』と考えるものですから、何をするにせよ己れの思うがまま、向こう見ずに行動するんです」(やくさん) ’83年生まれの有名人に多いのは、不倫問題だけではない。STAP細胞の研究論文に不正疑惑があがった小保方晴子さん(33)も同い年だ。現在33〜34歳のお騒がせ有名人たち。世間的にはいい大人のはずなのだが……。 「30代になってからようやく大人の自覚を持つ人もいれば、まだ自覚を持てない人もいる。かといって、20代の人と同じ行動をすると、世間からは評価されない。“もう30代なんだから”という目で見られます。それでも気持ちは少女の心のままで、まだまだ青年期の感覚を持っている人が多いのかもしれません。自分が起こしてしまった“失敗”のケジメが、自分でつけられないケースも見られますね」(碓井教授) これまでの常識にとらわれず、結婚しても家庭に縛られたくない、自由で素敵な恋がしたいーー。そして人生何もかもがうまくいけば、こんなに楽しいことはないーー。 いつまでもそんな甘い考えを持っていた“夢子ちゃん”たちが払った代償は、あまりに大きいものだった。
2017年08月24日再生医療の恩恵株式会社プリマルーチェは、ヒトの幹細胞から分泌される「ヒト幹細胞培養液化粧品/プリマルーチェ」の販売を開始した。オンラインショップにて購入可能。株式会社プリマルーチェは、大阪心斎橋にてトータルビューティーサロン「プリマポルタ」を運営中。同サロンは、ヒト幹細胞培養液美容のパイオニアだ。2アイテムを販売販売中の商品は、「ローションカクテル(美容液)100ml12,960円」と「クリームステップル(クリーム)40g16,200円」の2アイテム。いずれも税込み価格だ。2アイテム共に、「肌の生まれ変わり」を促す最先端の技術を使用したヒト幹細胞培養液(ヒト幹細胞順化培養液エキス)を主成分としている。ヒト幹細胞培養液とは?ヒト幹細胞培養液とは、再生医療の研究過程で生まれたもの。ヒトの脂肪由来幹細胞を培養するために、幹細胞が分泌する成分だ。脂肪幹細胞は、傷や炎症があると、まわりの細胞に指令を出して組織を修復する働きを持っており、昨今では、再生医療だけでなく、スキンケアに関しても世界的に注目を集めている新素材。日本では、2014年に厚生労働省の認可を受けている。(画像はプレスリリースより)【参考】※ヒトの幹細胞から分泌される幹細胞培養液を使用した化粧品 「ヒト幹細胞培養液コスメ/プリマルーチェ」 オンラインショップで販売開始
2017年08月05日順天堂大学は4月6日、悪性リンパ腫細胞や成人T細胞白血病細胞を今まで知られている仕組みとは異なった機序で死滅させる抗体を樹立したと発表した。同成果は、順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学講座 松岡周二助教、理化学研究所 統合生命医科学研究センター ワクチンデザイン研究チーム 石井保之チームリーダーらの研究グループによるもので、3月31日付けの米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。B細胞リンパ腫や成人T細胞白血病において有意な治療効果を示す抗体医薬はこれまでにも開発されているが、一部の効果がみられない患者や、一度寛解しても標的分子を欠失した耐性株が出現し再発する患者も多いという問題があった。同研究グループは今回、通常行われているように標的分子のペプチドを免疫したり、1種の悪性リンパ腫で免疫したりするのではなく、複数の悪性リンパ腫で免疫したマウスの抗体産生細胞を用いて融合細胞を作製し、悪性リンパ腫細胞への細胞傷害活性を指標にスクリーニングした。この結果、複数の分子(HLAクラスII分子群のDP、DQ、DR)に結合し、多くの悪性リンパ腫に傷害活性を有する抗体「4713モノクローナル抗体(mAb4713)」を得た。同抗体は、短時間で巨大な穴を血液がん細胞に直接あけるという作用をもっており、同抗体を注射することにより、悪性リンパ腫細胞を移植したマウスの生存を有意に延長したという。さらに正常な細胞に対しては傷害活性がないことも確認している。同研究グループは、今までの抗がん剤や分子標的薬で治療できなかった患者や再発した患者に対し、効果的な治療薬の開発が見込まれるとしている。
2016年04月07日慶應義塾大学(慶大)と日本医療研究開発機構(AMED)は4月1日、ヒトiPS細胞におけるグルタミン代謝の特徴を利用し、安全性を高めた心筋細胞の作製に成功したと発表した。同成果は、慶應義塾大学 医学部 循環器内科学教室 遠山周吾助教、藤田淳特任講師、福田恵一教授、医化学教室 末松誠教授(研究当時、現:AMED理事長)らの研究グループによるもので、3月31日付けの米科学誌「Cell Metabolism」に掲載された。ヒトES細胞やiPS細胞のような多能性幹細胞は、多種類の体細胞に分化出来る能力を有している反面、分化させた細胞集団のなかに未分化幹細胞が残存する性質があることがわかっている。こうした未分化幹細胞が生体内に移植されると、腫瘍を形成する危険性があるため、実用化にあたっては、目的とする細胞を純化精製すると同時に、未分化幹細胞を除去する方法の開発が望まれている。同研究グループはこれまでに、未分化幹細胞においてグルコース代謝が活発であること、心筋細胞は乳酸をエネルギー源とすることを明らかにし、培養液に含まれているグルコースを除去し、乳酸を添加することで未分化幹細胞を除去する方法を報告している。しかし、グルコースを除去するだけでは、未分化幹細胞が完全に死滅するのに時間を要するという課題があった。そこで今回、同研究グループは、未分化細胞においてグルコースと同時に消費が活発なグルタミン、アルギニン、セリン、グリシンの4つのアミノ酸に着目。これらのアミノ酸を除去した条件に加えて、グルコースも除去した培養液を用いてヒトES・iPS細胞を培養したところ、アミノ酸を除去しなかった場合と比較してヒトES・iPS細胞が劇的に死滅することがわかった。また4つのアミノ酸のうち最も重要なものがグルタミンであることを見出した同研究グループは、次にヒトES・iPS細胞におけるグルタミン代謝の役割について、細胞に存在する全遺伝子を網羅的に解析する「トランスクリプトーム解析」および細胞や組織内に存在する全代謝産物を網羅的に解析する「メタボローム解析」を行った。この結果、ヒトES・iPS細胞はグルタミンを活発に取り込んでミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によりエネルギーを得ていることが明らかになった。さらに、同研究グループは「未分化幹細胞やその他の増殖細胞が生存不可能で、心筋細胞のみが生存可能な代謝環境」を作り出すために、通常は培養液に必要不可欠とされるグルコースおよびグルタミンを除去し、心筋細胞にとってエネルギー源となる乳酸を添加することにより、心筋細胞のみを選別できるのではないかと考え、「無グルコース無グルタミン乳酸添加培養液」を作製。実際に、ヒトES・iPS細胞由来のさまざまな細胞集団をこの培養液で培養すると、短期間で未分化幹細胞が完全に死滅し、心筋細胞のみが選別されることが確認された。この結果についてメタボローム解析した結果、心筋細胞では乳酸を利用してエネルギーを得ているだけでなく、乳酸を利用してグルタミン酸を産生しており、さらに、選別されたヒトES細胞由来の心筋細胞には、腫瘍を形成する原因となる未分化幹細胞が残存しておらず、その残存率は0.001%未満であることが確認された。なお、純化精製後の心筋細胞はそのほとんどが心室筋細胞であったという。同研究グループは今回の成果について、安全性の高い心筋細胞を比較的安価かつ簡便に入手するという大きな課題を解決し、心臓の再生医療の実現化を大きく加速するものであると説明しており、今後は医師主導の臨床研究、臨床治験の準備を実施する予定であるとしている。
2016年04月01日理化学研究所(理研)は3月18日、マウスES細胞(胚性幹細胞)の老化回避機構を解明したと発表した。同成果は、理研 多細胞システム形成研究センター 多能性幹細胞研究チーム 丹羽仁史チームリーダー、二木陽子 研究員らの研究チームによるもので、3月17日付けの米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。一般に、細胞は分裂を繰り返すことで染色体DNAの末端にあるテロメアと呼ばれる部分が短くなり老化するが、ES細胞は老化することなく半永久的に培養できる。2010年に、マウスES細胞で「Zscan4」というタンパク質がテロメアを伸長し、遺伝子を保護することが発見されたが、Zscan4はすべてのES細胞にいつも発現しているわけではなく、どのようなときに発現するのかはわかっていなかった。同研究チームは今回、Zscan4の発現様式を経時的に解析するために、Zscan4が発現すると緑色に光るマウスES細胞を作り、顕微鏡下で120時間観察した。その結果、Zscan4は一部の細胞においてのみ発現していることを確認。また、赤色の核マーカー(H2B)を指標に細胞を1時間おきに追跡し、緑色の輝度を測定することでZscan4の発現を定量化した。このZscan4の発現様式を細胞の家系図となる細胞系統図に沿って記述することにより、これまで平均12時間でほぼ均一と思われていたES細胞の細胞周期が、実際には10~30時間と大きくばらついていたことがわかった。さらに、Zscan4の発現量を経時的に詳しく解析したところ、細胞周期が長いほどZscan4の発現量が多く、Zscan4の発現量が一旦増えた後は、次の細胞周期の長さが短くなる傾向にあることがわかった。また、培養系においてES細胞内に色素を注入し、その希釈率で細胞周期の長さを同定する手法を用いて、細胞周期の長さとテロメアの長さの関係を解析した結果、細胞周期が長い状態のES細胞は、テロメアが短くなっていることがわかった。一般にテロメアの著しい短縮やDNAの損傷が起こると、その修復機構が働いて細胞周期が一時的に停止し、細胞周期が長くなる傾向にあるが、今回の結果でも、テロメアが短いES細胞は細胞周期が長くなることが示され、またそのような状態においてはZscan4の発現量が増えることが新たにわかった。このことから、Zscan4はテロメアが短くなったことに応じて発現が誘導され、テロメアの長さを元に戻すことでES細胞の老化を回避していることが示されたといえる。同研究チームは今回の成果について、再生医療分野での応用が期待されるES細胞およびiPS細胞の培養にも応用できることが期待されると説明している。
2016年03月18日東京大学は3月16日、東京大学分子細胞生物学研究所の中村勉講師らの研究グループが、ヤコブセン症候群患者が発症する自閉症の原因は、脳の神経細胞の活動を抑えるGABA受容体の運搬に関与するたんぱく質「PX-RICS」だと特定したと発表した。今後、自閉症の新薬の開発につながる期待が持てるという。自閉症は発達障害の一つ。厚生労働省によると、発達障害にはアスペルガー症候群や注意欠如・多動性障害(ADHD)などもあり、自閉症は80~100人に1人の割合で発症すると言われている。「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「限定的な興味や強いこだわり」などの症状を特徴とする。「社会認知機能」と呼ばれる他者の心情を推し量ったり、他者に共感したりする脳の機能の障害が自閉症の原因であると考えられているが、発症の詳しい仕組みはこれまでにわかっていなかった。研究グループは大脳皮質や海馬など、脳の認知機能に関連する領域の神経細胞に豊富に発現しているたんぱく質・PX-RICSを同定し、その遺伝子を欠損するマウスを作製した。そのマウスは外見的には正常だったが、他のマウスに対する興味が少ないことを確認。具体的には、「他のマウスに対する反応や超音波域の鳴き声を使った母子コミュニケーションが少ない」「反復行動が正常なマウスよりも多い」「習慣への強いこだわりを持つ」など、自閉症の症状に特徴的な行動異常を示していたという。さらに解析を進めたところ、PX-RICS遺伝子が「ヤコブセン症候群」(11番染色体長腕末端部の欠失に起因する先天異常疾患)患者の半数以上が発症する自閉症の原因となる遺伝子であると特定できたとのこと。中村講師はこの結果を受け、「今回、私たちはGABA受容体の輸送が自閉症の発症に関係することを明らかにしました。この輸送メカニズムを標的とした薬剤を開発するなど、今回の成果は自閉症の新たな治療戦略へ貢献できる可能性があります」とコメントしている。
2016年03月17日アークレイは3月9日、京都大学との共同研究によりヒトiPS細胞から膵島細胞の高効率作製に成功したと発表した。同成果は「第15回日本再生医療学会総会」の付設展示会で紹介される予定。血糖値を下げるインスリンは、膵臓内の膵島で産生・分泌される。膵島が障害を受けてインスリン分泌が枯渇すると、慢性的な高血糖となり、その状態が続くと腎不全や網膜症などの合併症を引き起こす可能性がある。障害を受けた膵島は再生できないため移植治療が必要となるが、ドナー不足により治療が思うように進んでいない現状がある。そのためヒトiPS細胞やヒトES細胞を用いて人工的に膵島を作製・利用する再生医療に期待が寄せられているが、移植治療に十分な量の膵島細胞を作製する方法や品質のバラツキが少ない作製方法の開発が課題となっている。こうした課題に対し、アークレイは2014年にヒトiPS細胞を1個から培養可能な流路型の超小型培養装置の開発に成功するなどしている。今回の研究では、新たにヒトiPS細胞の流路型培養システムを開発し、ヒトiPS細胞から膵島細胞を作製することに成功した。同システムは培養環境を物理的に制御することができ、同一構造を多数作成することで容易に培養規模を拡大することができる。現在、培地交換や温度管理、CO2濃度管理を全自動化した培養システムを開発中とのことで、大型化・自動化に加えて膵島以外の細胞腫への応用も検討していくとしている。
2016年03月09日順天堂大学(順天堂大)と慶應義塾大学(慶大)は2月19日、ヒト末梢血から作製したiPS細胞を効率的に神経幹細胞に誘導する技術を開発したと発表した。同成果は順天堂大医学部脳神経内科の服部信孝 教授、ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授と、慶大医学部生理学教室の岡野栄之 教授によるもの。2月18日(現地時間)の米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。同研究グループはこれまで、パーキンソン病患者からiPS細胞を作製し病態メカニズムを再現することに成功しているが、皮膚を採取する必要があるため患者の負担が大きく、研究の大規模化を妨げていた。一方、より採取の負担が少ない血液からもiPS細胞を作ることはできるが、血液由来のiPS細胞は神経系に分化しにくいことが課題となっていた。今回の研究では培養中の酸素濃度を低くすることで未分化iPS細胞を強制的に神経系に分化する環境を作り出し、末梢血由来iPS細胞を効率よく神経系の細胞に分化させることができた。同手法を用いることで患者に負担の大きい皮膚生検をせずに、通常の血液検査程度の量の血液から樹立したiPS細胞でも、神経難病研究を効率よく進められるようになる。同研究グループは今後、この方法を用いて順天堂医院に通院する数千人のパーキンソン病の患者からパーキンソン病iPS細胞バンクを構築し、パーキンソン病の病態研究・再生医療を促進していくとしている。
2016年02月19日細胞を用いたアート作品が展示される「ELEGANT CELL -細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」が、2月17日から23日まで東京大学駒場リサーチキャンパス内の東京大学生産技術研究所S棟1階のギャラリーで開催される。ビーズ状に加工した細胞を型に入れて固めたり、糸状に並べて編み物をしたりと、細胞を高度な機能部品として生きたまま配置して立体的に造形する研究を行う東京大学竹内研究室。これまで、東京大学山中研究室とともに細胞を用いた新しいものづくりを行ってきた。今回開催される展覧会では、細胞の彫刻や新しいデザインの実験器具などを展示する。ラインアップは、パナソニック ヘルスケアとインダストリアルデザイナーの山中俊治によるバイオメディカ機器(生物医療に関わる機器のこと)や、アーティストの鈴木康広が細胞や生体材料を用いて製作した「細胞を生ける器」など。また、2月17日の18時から19時30分まではアーティストの福原志保と山中が、19日の同時刻には女優の池澤あやかと東京大学教授の竹内昌治が、21日の14時から15時30分までは、鈴木と竹内と山中がトークセッションを行う。【イベント情報】「ELEGANT CELL -細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」会場:東京大学生産技術研究所S棟1階ギャラリー住所:東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学駒場リサーチキャンパス内会期:2月17日~23日時間:11:00~19:00会期中無休
2016年02月15日東京都・駒場の東京大学生産技術研究所は、東京大学駒場リサーチキャンパス内S棟1階ギャラリーにて、細胞を生きたまま配置し、立体をデザインする「ものづくり」の展覧会「Research Portrait02:Elegant Cell ー細胞とバイオマテリアルの小さな実験室」を開催する。会期は2月17日~2月23日。開場時間は11:00~19:00。入場無料。同展は、東京大学山中研究室と竹内研究室が共同で、細胞を用いた「ものづくり」への新しい挑戦を発表するもの。モーターやネジなどを組み合わせて作られるロボットなどとは異なり、生き物は受精卵から細胞分裂を繰り返し、徐々に成長してかたちづくられる。しかし、竹内研究室では、細胞を高度な機能部品として生きたまま配置し、ビーズ状に加工した細胞を型に入れて固めたり、糸状に並べて編み物をしたりと、立体を造形することを研究しているという。これらの研究は、将来的に人工臓器や実験動物の代替など、医療分野への応用が期待されているが、同展ではこの細胞を使った「ものづくり」に、これまで関わることの少なかったデザイナーたちが挑戦する。また、将来再生医療への応用が期待されるバイオエンジニアリング分野だが、細胞を点・線・面という規格に沿ったパーツに加工することで、三次元構造を作り出すことができるという。今回の展示では、その一つ一つの「点」として使用されるビーズ状に加工した細胞や、「線」として使用されるアルギン酸のファイバー、「面」として利用される「細胞折り紙」などが展示されるということだ。そのほか、同展では、パナソニック ヘルスケアと共同で制作している、山中俊治教授デザインのバイオメディカ機器「CO2 Incubator TypeY」と「Biological Safety Cabinet TypeY」が初公開される。なお、山中氏は、デザイナーとして腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、技術者としてロボティクスや通信技術に関わる。大学では義足や感覚に訴えるロボットなど、人とものの新しい関係を研究している。さらに、アーティストの鈴木康広(東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員・武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授)による細胞や生体材料を使用した作品「細胞を生ける器」も展示されるということだ。また、関連企画として、福原志保(アーティスト)・山中俊治(東京大学教授)によるトークセッション「バイオアートとバイオデザイン」が2月17日18:00~19:30、池澤あやか(女優)・竹内昌治(東京大学教授)によるトークセッション「池澤あやかの研究体験― 竹内教授のバイオの授業」が2月19日18:00~19:30、鈴木康広(アーティスト)・竹内昌治(東京大学教授)・山中俊治(東京大学教授)によるトークセッション「細胞のかたち」が2月21日14:00~15:30に開催される。詳細は同展Webサイトにて。
2016年02月15日ヒト幹細胞培養液を導入東京都渋谷区の高級エステティックサロン「シャンテリー」の最先端エイジングケア「ヒト幹細胞培養液導入コース」が人気だ。ソウル大学で研究がおこなわれた「ヒト幹細胞培養液」を導入するもので、日本では唯一。世界的にも注目されるエイジングケアだ。定価は43,200円(税込み)だが、現在キャンペーン中につき、10,800円(税込み)となっている。肌再生医療けがや病気で失った体の機能や組織を元通りにするためにうまれた再生医療。この再生医療を美容分野に応用したところ、飛躍的に効果が出ている。ヒト幹細胞培養液は、成長ホルモンがピークの脂肪細胞を培養したもので、失われた細胞を修復したり再生させたりする働きをもっているため、肌の再生を促進する。「ヒト幹細胞培養液導入コース」は、この培養液を導入することによって、シミやほうれい線が薄くなったり、傷跡が小さくなったりする効果が期待できるものだ。シャンテリー「シャンテリー」は、創業53年の完全個室形式の高級エステティックサロン。ヒト幹細胞を日本に初めて導入させた。現在までの施術は1,000人以上となっており、しわやシミ、たるみ、ニキビ跡や、傷跡などに対しての効果が出ている。(画像はプレスリリースより)【参考】・日本初!ヒト幹細胞培養液を導入したフェイシャルエステが人気急増中! 最先端アンチエイジングを提供する広尾のエステサロン『シャンテリー』
2016年02月13日京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は2月9日、ヒトのiPS細胞から免疫細胞の一種であるiNKT細胞を作製することに成功したと発表した。同成果は京大CiRAの喜多山秀一 研究員、同 金子新 准教授、愛知県がんセンター研究所のRong Zhang 研究員(当時、現・国立がん研究センター)、同 植村靖史 主任研究員(当時、現・国立がん研究センター)らの研究グループによるもので、2月9日(現地時間)に米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に公開された。iKNT細胞は免疫反応を誘導し、がんへの免疫反応を高める上で重要な役割を果たしている。がん患者の多くでは体内のiNKT細胞の数や機能が低下していることが知られており、体内のiNKT細胞の数を増やすことで免疫機能を高め、がん治療につなげられると考えられている。今回の研究では、iNKT細胞からiPS細胞を作製し、再びiNKT細胞(re-iNKT細胞)へ分化させることを目指した。その結果、元のiNKT細胞よりも元気で他の免疫細胞の機能を高めてがん細胞への攻撃を促すre-iNKT細胞を作製することに成功。さらに、re-iNKT細胞自身もがん細胞を直接攻撃することが観察された。これにより、iPS細胞への初期化を介して機能が改善した大量のre-iNKT細胞を作製できることが示されたほか、iNKT細胞はがんだけではなく感染症や自己免疫疾患など幅広い疾患に関連する免疫応答を制御していると考えられており、今後細胞治療への応用が期待される。
2016年02月10日横浜市立大学(横市大)は1月20日、細胞質のタンパク質合成を制限することにより細胞老化を抑制するメカニズムを発見したと発表した。同成果は、横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 博士後期課程3年 高氏裕貴氏、藤井道彦 准教授、鮎澤大 名誉教授らの研究グループによるもので、1月5日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。動物細胞においては、種々の老化ストレスにさらされると肥大化・扁平化をともないつつ細胞増殖を停止し、最終的に分裂能力を失う「細胞老化」と呼ばれる現象がある。近年、細胞老化は生物個体の老化の原因のひとつであることが明らかになりつつあり、たとえば、老化したマウスには老化した細胞が多く存在するが、老化細胞を選択的に除去することで、マウスの老化が遅くなることが報告されている。今回、同研究グループは、細胞老化の共通の特徴であるDNA複製の遅滞と細胞の肥大化・扁平化に着目し、「細胞老化の不均衡増殖モデル」を細胞老化の普遍的モデルとして提唱した。細胞はさまざまな障害を受けるとDNA複製を停止させるが、同モデルでは、この状態が長く続くと、タンパク質の過度な蓄積が起こり、細胞膨張と核膨張が起こる。次いで核膜とヘテロクロマチン複合体の崩壊が起こり、分裂能力の喪失や老化特異的遺伝子の発現が誘導される。同研究グループは、ヒト正常およびがん細胞を用いた解析から、細胞質タンパク質合成の制限が細胞の種類に関係なく不均衡増殖を解消し、細胞老化を抑制することを見出した。この制限はヒト正常細胞の分裂寿命を顕著に延長しただけではなく、細胞老化により分裂を停止した細胞の増殖を再開させることができたという。さらに、タンパク質合成の制限が個体の老化に及ぼす影響を、モデル生物である線虫C.elegansを用いて調べたところ、タンパク質合成の制限は、線虫の平均寿命および最大寿命を延長させ、個体レベルでの老化防止にも有効である可能性が示された。今後の課題は、細胞質タンパク質合成の制限により、ヒトなどの高等動物の老化防止を実現できるかどうかであり、そのためには細胞質タンパク質合成をターゲットとした老化抑制剤の探索や開発を進める必要があると同研究グループは説明している。
2016年01月21日国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)はこのほど、日本医療研究開発機構(AMED)および先端医療振興財団との共同研究により、再生医療用の移植細胞の製造中に混入または発生するがん化のリスクを持つ悪性形質転換細胞(がん細胞)を超高度に検出する「デジタル軟寒天コロニー形成試験法」を開発したと発表した。同成果は同研究所再生・細胞医療製品部の佐藤陽治 部長とAMEDリサーチ・レジデントの草川森士 博士を中心としたグループによるもので、2015年12月8日に英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。再生医療に用いられる移植細胞の製造工程管理では、がん細胞が混入してしまった場合にそれを高感度で検知し、移植細胞の品質を確保する必要がある。がん細胞の特性である足場非依存性増殖を利用する従来の「軟寒天コロニー形成試験」は、正常細胞への混入を比較的短期間かつ簡便に評価することができるが、従来のアッセイ法におる検出感度は低く、正常細胞中に微量に混入したがん細胞から形成されるコロニーを検出することは困難だった。これに対し、同研究では画像解析によるコロニー検出に挑戦し、細胞の核、ミトコンドリアをそれぞれ青、赤に染める生細胞染色試薬を用いてコロニーを染色し、コロニーの形状、大きさ、蛍光輝度などを指標とすることで1個のコロニーを高精度に認識することが可能となった。また、画像解析のハイスループット化にも成功した。さらに、同技術を応用して、細胞試料をマルチウェルプレートに分割、播種して軟寒天培養を行い、各ウェル内での細胞コロニー形成を解析し、足場非依存的に増殖するがん細胞の混入を評価する「デジタル軟寒天コロニー形成試験」を考案。同試験法は大量の細胞からなる試料であっても、複数に分割したウェル毎にコロニー形成の有無を解析するため、高シグナル/ノイズ比が確保され、試料中に微量に存在するがん細胞を高感度に検出することが可能となる。同試験法を同グループが評価したところ、HeLa細胞相当のがん細胞が混入する細胞試料であれば0.00001%の感度で検出可能であることが示唆されたという。また、細胞試料を分画、播種するウェル数および培養細胞数を調節することで、検出感度を適宜向上させることが可能であることに加え、細胞数にかかわらず、高検出感度を保持する同試験法の適用が可能だと考えられている。同研究グループは今後、再生医療用の移植細胞の製造工程における品質評価のための標準的な試験系にすることを目指し、試験系の自動化などもふまえ、試験方法の最適化に向けた研究を進めていくとしている。
2016年01月18日慶應義塾大学(慶大)は1月18日、ヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞へと分化誘導する方法を開発し、マウス損傷脊髄の再髄鞘化に成功したと発表した。同成果は同大医学部生理学教室(岡野栄之 教授)と同整形外科学教室(中村雅也 教授)によるもので、2015年12月24日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。オリゴデンドロサイトは中枢神経内に存在する細胞の1つで、細い神経の周囲を取り囲む髄鞘と呼ばれる脂質の層を形成し、神経の信号が伝わる速度を早める機能を持つ。脊髄損傷に対する神経幹細胞移植による機能回復メカニズムとして、移植細胞がオリゴデンドロサイトに分化して神経の再髄鞘化に寄与するという説が唱えられているが、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞は主にニューロンに分化し、オリゴデンドロサイトにはあまり分化には分化しなかった。今回の研究では、同研究グループが2014年に開発したヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞を多く含む神経幹細胞(hiPS-OPC-enriched NS/PCs)へと分化誘導する方法を用いて、マウス脊髄損傷に対しhiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植し、その有効性を検証した。その結果、hiPS-OPC-enriched NS/PCsが多くの神経栄養因子を分泌していることを確認。移植後12週のマウス脊髄内で、移植細胞はニューロン、アストロサイトに加え、成熟オリゴデンドロサイトに分化していた。さらに従来のヒトiPS細胞由来神経幹細胞の移植では見られなかった所見として、移植細胞由来オリゴデンドロサイトが残存軸索を再髄鞘化していた。また、移植細胞由来ニューロンは、ホストマウスのニューロンとシナプスを形成していた。その後、hiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植したマウスの後肢運動機能評価を行った結果、明らかな運動機能の改善が認められた。また、電気生理学的評価として、運動誘発電位を計測したところ、明らかな改善が認められたことから、移植細胞由来のニューロンやオリゴデンドロサイトが、神経回路の再構築や神経伝達速度の回復に寄与していることが示唆された。脊髄損傷に対しては、従来の細胞移植でも有意な運動機能の回復が認められていたが、今回の成果によってさらなる機能回復を望める可能性が示されたことになる。
2016年01月18日理化学研究所(理研)と熊本大学は1月18日、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスである「HIV-1」が細胞から細胞へと感染拡大する際の新たなメカニズムを解明したと発表した。同成果は、理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループの大野博司 グループディレクター、環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループの長田裕之 グループディレクターと熊本大学 エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)の鈴伸也 教授らの研究グループによるもので、1月15日付けの米科学誌「Journal of Immunology」に掲載された。免疫系細胞は、細胞膜が細長く伸びた細胞膜ナノチューブ(TNT:Tunneling NanoTube)を作り、離れた2つの細胞を物理的に連結して、細胞間で物質交換を素早く確実にやりとりする機能を持っているが、この性質を逆手に取り、エイズウイルスなどのウイルスやウイルスの病原タンパク質が細胞から細胞へと移動することで、感染を拡大させたり、免疫機能を抑制して病態を悪化させたりすることが知られている。HIV-1は、CD4という表面分子を持つTリンパ球(CD4+Tリンパ球)とマクロファージという2種類の免疫細胞に感染し、これらの免疫細胞の中で増殖。未感染のCD4+T細胞やマクロファージへと感染することで、免疫細胞の機能不全や減少を引き起こす。このようにHIV-1が感染拡大していく経路には、一度HIV-1が感染細胞の外に出て周囲の未感染細胞に感染する経路のほかに、TNTを介してHIV-1が感染細胞から未感染細胞に移る経路が知られていたが、そのメカニズムは明らかにされていなかった。今回の研究では、ヒト血液由来のマクロファージにHIV-1を感染させ、TNTの形成促進を観察した。この結果、ウイルスタンパク質であるNefを欠損した変異HIV-1を感染させるとTNTの形成促進は観察されなかった。一方、HIV-1をCD4+Tリンパ球に感染させても、このHIV-1によるTNTの形成促進は見られなかった。そこで同研究グループは、マクロファージには発現しているが、CD4+Tリンパ球には発現していないTNT形成因子「M-Sec」に着目。マクロファージ細胞株にNefを強制的に発現させるとTNTの形成促進が見られたが、M-Secの発現を抑制したマクロファージ細胞株では、Nefを強制的に発現させてもTNTの形成促進が見られなかったことから、NefによるTNTの形成にはM-Secが必要であることを明らかにした。同研究グループはさらに、理研の化合物バンクを用いて、6800の化合物の中から、M-SecによるTNT形成の抑制活性を指標として、TNT形成を可逆的に阻害する「NPD3064」という化合物を見いだした。この化合物を用いたTNT形成の抑制により、HIV-1の産生は約2分の1に減少したという。このメカニズムが解明されると、HIV-1の感染やそれによる病態形成の詳細がわかり、エイズの治療や発症予防に貢献すると考えられる。さらにTNTの形成阻害薬が、これまでの抗エイズ薬と異なる作用メカニズムにもとづく、新たなエイズの治療薬の開発につながる可能性があると同研究グループは説明している。
2016年01月18日名古屋大学(名大)と理化学研究所(理研)は1月15日、ヒトES細胞から下垂体ホルモン産生細胞を分化誘導することに成功したと発表した。同成果は同大大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科の須賀英隆 助教および、理研多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームの辻孝 チームリーダー、大曽根親文 リサーチアソシエイト、同センター立体組織形成研究チームの永樂元次 チームリーダーらの研究グループによるもの。1月14日(米国東部時間)の英科学誌「Nature Communicaitons」に掲載された。下垂体はさまざまなホルモンを分泌する器官で、成人で1cm程度と小さいが、全身の恒常性を保つために大きな役割を果たしていることで知られる。下垂体が機能しなくなると血圧低下や電解質異常、基礎代謝の低下、不妊など、欠乏したホルモンに応じて重い症状が発生する。同研究グループは2011年にマウスのES細胞から下垂体組織を作ることに成功しており、今回の研究ではその時に用いられた培養技術を改良・発展させることでヒトES細胞から、下垂体のもととなる下垂体原基を試験管内で作ることに成功した。さらに、数週間に渡る長期培養方法を開発し、成熟した下垂体ホルモン産生細胞を誘導することができた。作製したホルモン産生細胞は、生体内の下垂体細胞と同様にホルモンを分泌し、下垂体の機能を失ったマウスに移植すると生存率が著しく向上するなど、治療効果も確認された。同成果は今後、下垂体機能不全に対する再生医療への応用が期待されるとともに、ヒトの下垂体発生のモデルとしての利用や、疾患特異的iPS細胞を用いた下垂体疾患モデルとしての応用も見込まれており、新規薬剤の開発にも役立つと考えられている。
2016年01月16日理化学研究所や科学技術振興機構は1月12日、がんや細胞内病原体に対する免疫に重要な「樹状細胞」の働きを、生体内で可視化するイメージング解析技術の開発に成功したと発表した。今回開発された技術を用いて、感染症やがんの種類に応じ、最適な樹状細胞を効率的に活性化するワクチンの設計・開発に役立つ可能性があるという。同研究は、理化学研究所 統合生命医科学研究センター 組織動態研究チームの岡田峰陽チームリーダーや和歌山県立医科大学 医学部 先端医学研究所 生体調節機構研究部の改正恒康教授らが共同で実施した。体内に侵入した病原体や接種されたワクチンは、免疫細胞の一種である樹状細胞によって認識される。その樹状細胞がリンパ球の一種である「T細胞」を活性化すると体を守る獲得免疫が働くが、樹状細胞には多くの種類があり、病原体やワクチンの種類に応じて異なった役割を果たす。ウイルスやある種の細菌は、体内のさまざまな細胞の中に寄生するが、このような細胞内病原体やがんに対する免疫には、「キラーT細胞」による攻撃が重要となる。がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃するキラーT細胞は、そのほとんどが「CD8陽性T細胞」と呼ばれる細胞が、樹状細胞に活性化されることで形成される。「CD8陽性T細胞」を活性化する能力の高い樹状細胞は2種類ある。1つはリンパ節やパイエル板、ひ臓などのリンパ組織に常在しており、もう1つは皮膚や腸、肺などさまざまな組織に存在し、そこからリンパ組織へと移動していく。それぞれの役割やその連携は、病原体やワクチンの種類や感染部位、接種方法などによって異なると考えられているものの、その詳細はわかっていなかった。研究グループは今回、2種類の樹状細胞だけが特定の波長の光を当てることで蛍光色が変化する光変換蛍光タンパク質KikGRを発現するマウスを作成。このマウスの体内に存在する2種類の樹状細胞は、もともとすべて緑色の蛍光を発する。このマウスの皮膚に青紫色の光を照射すると、皮膚にいる交差提示(一部の樹状細胞が細胞外の異物を取り込んで、その抗原を主要組織適合性複合体クラスI上に提示できること)能を持つ樹状細胞だけが、赤色の蛍光を発するようになったという。そして、赤色蛍光を発するようになった皮膚の樹状細胞が、時間とともにリンパ節へと移動してくる様子が観察できたとのこと。この成果により、これらの樹状細胞がリンパ節に移動してきた後の動きなどが判明。マウスにおいては、約3日間のうちにリンパ節内の一番深い部分まで移動する点、リンパ節内で約1週間生存する点などが明らかになったという。理研などは、キラーT細胞の分化に重要な2種類の樹状細胞を、生体内で区別することおよびイメージング解析をする技術の確立に成功したことは、今回が初としている。今回開発された技術を用い、さまざまな種類のワクチンや感染に対する免疫応答を解析することで、効果の強いワクチンが、どの種類の樹状細胞とCD8陽性T細胞の相互作用を最も強く誘導しているかを知ることが可能となる。理研などは「得られた知見を蓄積することにより、感染症の種類に応じて、最適の種類の樹状細胞をターゲットとする新しいワクチン設計・開発の道が開かれることが期待されます。こうした戦略は、感染症に対するワクチンだけでなく、さまざまな腫瘍に対するがん免疫応答を誘導するワクチンの設計・開発にも応用できると考えられます」としている。
2016年01月13日京都大学(京大)は1月6日、ヒト体細胞からiPS細胞へ再プログラム化される中間段階にあたる幹細胞株、ヒトiRS(intermediately Reprogrammed Stem)細胞を新たに樹立したと発表した。同成果は同大学 再生医科学研究所の多田高 准教授の研究グループによるもので、英科学誌「Development」の電子版で公開された。同研究グループが樹立に成功したヒトiRS細胞は、ヒト体細胞とiRS細胞の再プログラム化の中間段階にあり、培養条件を変えることでiPS細胞への再プログラム化を再開するほか、単一細胞からの増殖が可能で、ゲノム編集などの遺伝子操作技術の応用が容易であるなどの特性を持つ。研究ではさらに、ゲノム編集により、iPS細胞のマーカー遺伝子として知られるOCT4遺伝子の下流に蛍光照射によりグリーンに光るタンパク質を挿入することで、ヒトiRS細胞(OCT4発現オフ)がiPS細胞(OCT4発現オン)に変化する様子を生きた細胞で可視化する事に成功。また、OCT4の活性化はiPS細胞化に必要であるが十分ではない事も明らかにした。今回の研究成果によって、ゲノム編集を含む遺伝子改変されたiPS細胞の作製が簡易になり、遺伝性疾患の病因解明や創薬開発、iPS細胞の品質の安定化につながることが期待される。
2016年01月06日京都大学(京大)は12月25日、ヒトiPS細胞から気道上皮細胞を効率よく分化させる方法を確立したと発表した。同成果は、京都大学 医学研究科 三嶋理晃 教授、京都大学 医学部附属病院 呼吸器内科 後藤慎平 特定助教、大学院生 小西聡史氏らと、大阪大学生命機能研究科/医学系研究科 月田早智子 教授らの研究グループによるもので、12月24日付けの米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。肺の気管を覆う気道上皮細胞は粘液を分泌し繊毛の運動によって流れを作り出すことによって、異物や病原体を除去するのに重要な役割を果たしている。今回の研究では、ヒトiPS細胞を段階的に分化させ、表面蛋白質「Carboxypeptidase M(CPM)」を用いて肺のもととなる細胞を単離し、サイトカインや化合物などを加えながらさまざまな条件で三次元培養を試みた。この結果、繊毛上皮細胞、クラブ細胞、基底細胞、粘液産生細胞、神経内分泌細胞といったさまざまな気道上皮細胞の成分を含む嚢胞構造を作る方法が開発された。また、さまざまな発生のプロセスで分化に重要とされるNotchシグナルを抑制すると、気道繊毛上皮細胞や神経内分泌細胞が効率よく誘導されることがわかった。ヒトiPS細胞から作られた気道繊毛上皮細胞は、体の中と同じように規則正しく振動し粘液を動かす機能を持つことも確認されている。今回の成果により、COPD、気管支喘息、気管支拡張症、嚢胞性線維症、原発性繊毛機能不全症などといった呼吸器疾患の解明や創薬の研究が大きく前進することが期待されると同研究グループは説明している。
2015年12月25日理化学研究所(理研)は12月18日、呼吸器学者の間で40年近く謎とされていた、神経内分泌細胞(NE細胞)が気管支の分岐点に規則正しく配置され、塊を形成するメカニズムを解明したと発表した。同成果は、同研究所 多細胞システム形成研究センター呼吸器形成研究チーム 森本充 チームリーダー、野口雅史 研究員、同研究所 生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ 高速ゲノム変異マウス作製支援ユニット 隅山健太 ユニットリーダーらの研究グループによるもので、12月17日付けの米科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。NE細胞は気管支の上皮細胞の一種で、気管から細気管支までの上皮組織に広く観察される。NE細胞は吸気の酸素濃度のセンサーであるとともに、組織の損傷時には組織修復に働く幹細胞のための幹細胞ニッチになることが知られている。また、気管支の分岐点に数個集まって小型のクラスター(塊)を形成する。この特徴的なNE細胞の分布パターンは40年近く前に報告されて以来、吸気の酸素濃度の感知に役立っていると考えられてきたが、NE細胞が気管支の分岐点に規則正しく配置されクラスターを形成するメカニズムは謎となっていた。また、NE細胞は肺がんの1種である小細胞肺がんの起源になることが知られており、同細胞種の制御メカニズムの解明が求められている。同研究グループはまず、肺の上皮細胞およびNE細胞が蛍光で光るマウス系統を作製。このマウス系統の胎児から光る肺を採取し、組織透明化試薬で透明化した後、共焦点顕微鏡と2光子励起顕微鏡で高解像度かつ広範に撮影した。この結果、気管支の立体構造を保ったまま、ひとつの肺葉のすべての上皮細胞とそのなかに存在するNE細胞の分布の観察に成功した。さらに、取得した3次元画像を用いてNE細胞の正確な位置とクラスターの大きさを定量的に解析し、気管支の分岐構造とNE細胞クラスターとの関係を幾何学的に理解することに成功した。画像解析の結果、NE細胞クラスターは気管支の分岐構造においてほぼ同じ位置に形成されること、および発生中に少しずつ大きくなることがわかった。また、より高解像度の画像を取得したところ、分岐点と関係なく単独で出現する「単独NE細胞」を多数発見したという。単独NE細胞は、Notch-Hes1シグナルによって出現数が制限されていることも明らかになった。さらに同研究グループは、NE細胞の分化とクラスター化をリアルタイムで撮影する技術を開発し、NE細胞の挙動の経時観察に成功。その結果、NE細胞は分化するときは単独NE細胞として出現し、その後、自ら歩いて分岐点に向かって移動し、クラスターを形成することがわかった。同細胞を起源とする小細胞肺がん細胞は転移能が高いことが知られているため、今後はNE細胞の移動を制御している因子の同定が課題となる。
2015年12月18日