さまざまなアーティストがスタジオで“一発撮り”を収録する音楽系YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」と、自宅やプライベートスタジオから収録する「THE HOME TAKE」。優里さんは2020年7月10日公開の「THE HOME TAKE」『かくれんぼ』で初登場。この曲はすでにインディーズで配信されていたためSNSで話題になっていたが、「この透明感ある歌声の美声アーティストは誰?」と、公開と同時に大きな注目を集めた。アカペラでインパクトを残したかった。「お話をいただいた時、『THE FIRST TAKE』のことはもちろん知っていました。家族全員が好きでよく観ていたんです。特にうちの父親がめちゃくちゃ好きで、LiSAさんの『紅蓮華』とかを繰り返し観ていました。だから、出演が決まった時、両親にすぐ言うか内緒にしておくべきか、まずそれに迷いました(笑)」自宅やプライベートスタジオから届ける「THE HOME TAKE」の収録も、もちろん一発撮り。この時のためのアレンジは自身で考えたものだという。「せっかくだから、何か特別なことをやりたくて。それでサビのアカペラから入ろうと決めました。インパクトのあることがしたかったんです。収録する前は、音を外したらどうしようとか、あそこで裏声を使ってみたいとかいろいろ考えていたんですが、始まったらもう記憶がなくて。とにかく気持ちを込めること、それだけをずっと考えて歌いました」配信時には、自身もパソコンの前で待機して公開を待ったそう。「確かにパフォーマンスしたはずなんだけど、なんだか実感があまりなくて。パソコンの画面を見ながら、最後まで歌いきれ!がんばれ!って自然と自分を応援していました(笑)」『かくれんぼ』は今、ストリーミング再生数1億回を超えるまでに。そして同年10月にはメジャー2ndデジタルシングル『ドライフラワー』発売直後に「THE FIRST TAKE」に登場。こちらの動画は現在までに、5500万回再生を突破中。楽曲としてもApple Musicをはじめとする音楽配信サービスで次々と1位を獲得した。2021年3月29日付のBillboard JAPAN ストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”では、男性ソロ最速、歴代3位のスピードでストリーミング累計2億回再生を突破したことがニュースにもなった。この曲のバイラルヒットの火つけとなったのが「THE FIRST TAKE」であることは間違いなさそうだ。「本当にそうだと思います。僕としても『ドライフラワー』はたくさんの人の心に響いてくれるはずだと思えた自信のある曲。それをこの場所で披露することで、曲だけでなく歌っている僕のことまで伝えていただけた。それがすごくうれしかったですね」普段から「THE FIRST TAKE」をよく観ているという優里さん。藤井フミヤさんが歌う『Another Orion』には感動したと、興奮気味に話す。「僕が学生時代に大好きでずっと繰り返し聴いていた曲なんです。それをここで聴けたのは興奮しました!いち歌手としても、いろいろな方の歌を聴けるのは本当にありがたい。歌に込めているものもそれぞれ違うじゃないですか。『THE FIRST TAKE』は、それがよくわかって、めちゃくちゃ勉強になります」では、この出演を経て、優里さん自身の中で変わったことはあるのだろうか?「そうですね。度胸は確実につきましたね。テレビとかラジオとかで一発で決めないといけない時に、あの緊張する一発撮りもちゃんとできたんだから、大丈夫って。そういう強い気持ちを持てるようになりました」ゆうり2019年、SNSに投稿された歌唱動画が注目を集める。’20年8月『ピーターパン』でメジャーデビュー。『ドライフラワー』が配信サイトなどで42冠、男性ソロ最速ストリーミング2億回再生突破と大ブレイク。最新曲『飛行船』が好評配信中。※『anan』2021年6月2日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)ヘア&メイク・Yutaro Ichikawa取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年05月30日“一発撮りパフォーマンス”を届ける音楽系YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」。2019年11月15日、記念すべき「THE FIRST TAKE」第1回で歌声を披露したのは、上白石萌歌さんによる別名義プロジェクト、adieuだ。息遣いをそのままに出す感覚を大事にしました。彼女が歌う『ナラタージュ』は、2017年に公開された同名映画作品の主題歌としてリリースされたもの。当時は歌っているのが誰かというのは、17歳という年齢以外一切のプロフィールが非公表だった。それから2年後、adieuとして音楽活動をあらためてスタートした彼女。この「THE FIRST TAKE」のステージが公の場での、初めての歌唱パフォーマンスとなった。「もちろんライブもしたことがなかったですし、音楽番組にだって出演したこともなかったころ。まだ、自分の中でもadieuとはどういう存在なのか模索しているような状態で歌わないといけない。しかも、一発撮りだと聞いてこれはちょっと大変なことだなって震えあがりました(笑)」とはいえ、当時でも“上白石萌歌”としてのキャリアは十分。「もともと舞台に立つような、始まったら終わりまで走り抜けることをやるのは好き。収録の前にも、ウォーミングアップや始める前の呼吸や息遣いを、いつも通り、そのままにやってくださいと言われて。ああ、そういう生の感覚を出せたらいいんだなと理解しました。一発撮りだからこそ、込めた感情がダイレクトに届くような気もして。これは自分の存在を知ってもらういい機会だなと思って、肩の力を入れすぎないで歌ってみようって思いました」また、用意されたのが白い空間だったのも、気に入ったという。「白い箱の中にひとりポツンと立たされるのはすごく孤独を感じました。でも、その閉鎖された場所であることが、意外と歌うのにはよかったんです。より音楽と密に繋がれるような感じがして、すごく集中できました」白い空間は「THE FIRST TAKE」を象徴するもののひとつ。それがこのシリーズを引き立てているということに、他のアーティストの動画を観ていて気づいた、とも。「立っているのは、同じ白い空間なんですけれど、立たれるアーティストによっていろんな白に見えるんですよね。ああ、この人はこんな音で空間を包んでいるんだなって、その人が向き合っている音の質や色合いみたいなものが感じられるのがいいです。だから『THE FIRST TAKE』で発見して、好きになった歌手の方もいますし、もともと好きだった方をより好きだなって感じることも。気になるアーティストの方の映像の公開日だと、普通にスマホ片手にプレミア公開の時間を待って、観ることもあります(笑)」またつい先日、『ナラタージュ』『天気』以来1年半ぶりとなるパフォーマンスを披露。『よるのあと』と、リリース前の公開となった新曲『愛って』をオリジナルアレンジで届けてくれた。「実は、今回の収録のほうが最初よりよっぽど緊張したんです。最初はどういうものかがわかっていなかったですから(笑)。でも、今はその影響力や認知度も知っているので。しかも、バンドセットでの一発撮りで。それもまた新しいチャレンジでした。生音の感覚はひとつの音楽をみんなで作る実感があって、特別な場所にふさわしい歌が歌えたんじゃないかなと思っています。『THE FIRSTTAKE』は、ひとつひとつの曲を深く受け止めてくれる。それって、聴く側だけでなく、アーティストにとってもすごく大きな力を与えてくれるものなんじゃないかなと思います」アデュー(かみしらいし・もか)2019年ミニアルバム『adieu1』で音楽活動を本格化。今年4月、1年5 か月ぶりに新曲『春の羅針』を配信。6月5日に『愛って』を配信する。6月30日にはミニアルバム『adieu2』を発売。※『anan』2021年6月2日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)スタイリスト・服部昌孝ヘア&メイク・坂本怜加(アルール)取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年05月29日2019年11月にスタートした音楽系YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」。この“一発撮りパフォーマンス”から次々とヒットが生まれている。プロジェクトの運営スタッフとクリエイティブディレクターの清水恵介さんに、いかにしてこの奇跡のチャンネルが生まれたかを聞いてみた!音楽でワクワクできるコンテンツを作りたかった。――“一発撮りで音楽と向き合う”という「THE FIRST TAKE」のコンセプトは、音楽系YouTubeの中、今までになかったコンテンツで、瞬く間に話題となりました。まず、どのようにこの企画が生まれたのか教えてください。運営スタッフ(以下、運営):様々な要因がありますが、一つに既存のメディアからのプロモーショナルなヒットが、なかなか生まれにくくなっている現状がありました。若い世代はどうやって新しい音楽を見つけているのかというと、SNSで知り、YouTubeでMVを観たり、音源をダウンロードして聴いていた。まだストリーミングが視聴習慣の主流になっていない移行期でしたが、いずれ変化するだろうと思っていました。そういった流れの中で、デジタル上でストリーミングの再生に直結できるYouTubeチャンネルを作りたいと考えたんです。清水:運営スタッフのみなさんから新しい体験ができる音楽チャンネルを作りたいとご相談を受けて、まず考えたのは「今の時代の音楽コンテンツに求められることは何か」ということです。音楽をどんな時に聴きたいと思うのか、どんな時に感動するのか、どんな時にワクワクするのか…。基本をいまいちど振り返り、ヒントを探していきました。――音楽の聴き方が変わってきた時代に寄り添った音楽コンテンツを作りたかったんですね。では、そもそも“一発撮り”ありきでスタートした企画ではないんですね。清水:そうですね。すでに世の中にあったテレビ番組や映画、動画配信サービスとは違う体験や価値を作るにはどうしたらいいのか、たくさんの動画コンテンツを研究して、チームで徹底的に考えていきました。運営:まずこだわりたいと思ったのは高音質、高画質であるということです。それを落とし込むコンテンツとして、『MTVアンプラグド』など、アーティストが音源をリアレンジして披露したくなるような、洗練されたブランディングを持ったものを作りたいと思っていました。そして緊張感のあるステージは、やはり“わざわざ観たい”と思わせる魅力がある。それをYouTubeで実現する手法として辿り着いたのが“一発撮り”だったんです。YouTubeのプレミア公開機能は、視聴者がリアルタイムで観ながら、チャット上でコミュニケーションもできる。それもまた、デジタル上でライブをみんなで観ているような感覚に繋がっていると思います。――“一発撮り”を引き立てるシンプルなビジュアルへのこだわりも、このチャンネルの魅力だと思います。清水:撮影場所については、廃銭湯で撮ろうとかビルの屋上に小屋を立てよう、思い切ってスナックで撮るのはどうか、などいろいろ話し合いましたが、結局“音楽と向き合う”というコンセプトに合わせて、ミニマルな撮影手法がいいのではと気づきました。デザインに対する僕の基本でもあるのですが、できるだけ少ない要素まで削ぎ落とすことで、残ったものに本質が宿る。その考えがぴたりとハマった感覚があります。――初回のadieuに始まり、話題性のある旬のアーティストや、注目の新人からキャリアのあるアーティストまで、ラインナップもバラエティ豊か。登場される方はどのように選んでいるのでしょうか?運営:「THE FIRST TAKE」は、ブッキングの自由度を高くしています。音楽のジャンルやキャリアを問わず、幅広いアーティストのみなさんにご出演いただきたいと思っています。大事にしているのは、その日そのアーティストのドキュメンタリー性です。白いスタジオでマイク1本、一発撮りというフレームの中では、その人の個性や音楽に向き合う考え方が際立ちます。――再生数1億回を超えた、『猫』や『紅蓮華』『夜に駆ける』など、チャンネルの知名度と楽曲の認知が同時に上がっていく相乗効果も見事だなと感じました。『猫』は、オリジナルバージョンと合わせて累計ストリーミング再生数が3億回を突破。『紅白』初出場直前に公開されたLiSA『紅蓮華』は、大きく本チャンネルの知名度を上げることに。YOASOBI『夜に駆ける』もここからさらにヒット。その後、『群青』(写真)や『優しい彗星』も披露。運営:adieuの時は、まだフォロワーゼロのチャンネルでしたが、詞曲を手がけた野田洋次郎さんが動画の感想をツイートしてくれたことも含め話題になり、再生数が伸びたんです。YouTube上の一つの音楽コンテンツが、SNSで拡散され相互に作用するのがクロスメディアの面白いところです。LiSAが圧倒的なパフォーマンスを披露してくれた『紅蓮華』にしろ、DISH//のメンバーが新たなアレンジで届けた『猫』にしろ、自宅にカメラを届けたYOASOBIの『夜に駆ける』も、ここだけにしかないパフォーマンスをしてくれたことで話題になり拡散され、動画再生数やストリーミングチャートにも結びつきました。清水:最初の話に戻りますが、僕たちが“音楽と向き合う”ことに真摯に取り組んでいると、それにアーティスト側も気づいて応えてくれました。アーティストに出演したいと思ってもらえるチャンネルであることは、とても大事だと考えています。加工やフィルターが当たり前の時代だからこそ、本物の部分を大事にしたい。歌う息遣いや、ちょっとした手の動きも見逃さないように。友人に「このチャンネルは日本の音楽リテラシーを上げた」と言われ、とてもうれしかったです。視聴者の審美眼を侮らずに、より良くなることに愛を持ち、音楽の本質を届けたい。その原点はずっと変わらないですね。一度きりのパフォーマンス。一発撮りで音楽を届ける、YouTubeチャンネル。2019年11月にスタートした音楽系YouTubeチャンネル。「白いスタジオに置かれた、一本のマイク。ここでのルールは、ただ一つ。一発撮りのパフォーマンスをすること。」と、チャンネル概要にある通り、真っ白なスタジオでアーティストたちが一発撮りに挑む姿を高画質・高音質で切り取る。その迫真のパフォーマンスの数々は大きな反響を呼び、『猫』や『紅蓮華』『夜に駆ける』など再生数1億回を超えるものも。これまでに86組のアーティストが参加、147曲を配信。チャンネル登録者数は441万人に上る(データは5月13日現在)。しみず・けいすけTHE FIRST TAKEの企画・クリエイティブディレクター。UNIQLO、SHISEIDOなどグローバルキャンペーンを手がける。※『anan』2021年6月2日号より。取材、文・梅原加奈(by anan編集部)
2021年05月28日