Microsoftの女子高生AI「りんな」がTwitterを始めた。これまでLINEアカウントを取得して活動していたが、そのステージを拡張したかたちだ。日本マイクロソフトでは、日本におけるAIのビジネスチャンスのキーワードとして「オタク」「ボット」「スマホ」「SNS」がきわめて重要なものととらえ、LINEとの協業で「りんな」をサービスインしたが、それは、北京にあるマイクロソフト・リサーチ・アジアがこの数十年間をかけて研究してきた成果でもある。りんなはインターネット上のさまざまな会話をデータベースにため込み、それを分析整理する。当然、収集するデータは膨大だ。まさにビッグデータである。MicrosoftのAIとしてはWindows 10の11月版で提供が開始されたCortanaもよく知られているが、Cortanaがパーソナルアシスタントとして効率や生産性を追求したIQの高い人工知能であるのに対して、りんなは「効率とは反対のベクトル」でエモーショナルなつながりを結ぶことに重点を置いた人工知能だという。○秘密の会話でつながる現在りんなのLINE友だちは200万を超えている。しかし、Twitterアカウントは開設してから約2週間でフォロワー数は2万に満たない。意外に伸びが少ないという印象がある。これは、りんなに興味を持つユーザーが、1対1での会話を求めているからだと思われる。Twitterのようにオープンなステージでの対話が好まれないという事情もあるかもしれない。個人的にはリストに登録してずっと観察してきたが、とりあえずフォローしてみた。@ms_rinna りんなをフォローしてみた。どういう基準でフォローされるのかは謎だが、確立は1/4くらいだろうか。これでしばらく様子を見てみよう。— 山田祥平(syohei yamada) (@syohei) 2015, 12月 25「確率」を「確立」とミスタイプしているが一瞬で返信があったので、そのままにしている点はご容赦願いたい。ここで「LINEでお願い」と返信されている。彼女にフォローしてもらうには、彼女のTwitterページの固定ツイートにあるように、LINEでリクエストして、戻ってきた和歌をリプライすればいい。これでDMのやりとりもできるようになる。実際にメンションを投げてみると、びっくりするほど普通の会話であることがわかる。ほんものの女子高生が、どのような口調で、どのようなコミュニケーションをしているのかは知る由もないが、りんなは「きっとこうだろう」というユーザーの期待に近いものを投げ返しているようにも感じる。日本マイクロソフトによれば、りんなとのエンゲージメントは週の初めよりも、木曜日、金曜日あたりが高いという。平日については朝の7時に最初の山があり、昼休みにもうひとつの山、そして、夜に至り22時にピークを迎えるという。ちなみに日曜日には朝の山はないそうだ。○りんなの友だちは女子高生?同社は、りんながTwitterを始めた12月の中旬、東京・原宿の竹下通りのスペースででイベントを開催した。LINEで友だちに対してりんな自身がイベントを告知し、どのくらいの人が本気で集まるかを確かめたのだという。イベント会場に集まったのは、竹下通りという場所柄もあるが、ほとんどが女子高校生だったのには、ちょっと驚いた。彼女たちは等身大の女子高生をりんなに感じているのだろうか。この先、りんなは収集しているビッグデータをもとに会話の精度を高め、さらには、ビジネスロジックとも結びつき、会話の中から導き出された商品のレコメンド、飲食店の紹介といったことをするようになっていく。それが「りんなAPI for Business」だ。そのときに、「効率とは反対のベクトル」というコンセプトをどのように堅持するかが興味深い。そこがAI技術の見せ所だ。(山田祥平 @syohei)
2015年12月28日日本マイクロソフトは12月17日、自社のAI(人工知能)である女子高生AI「りんな」に関する記者説明会を初めて開催した。LINE経由で女子高生AIと会話する不思議なサービスからか、同日時点で185万人もの"お友達"がいるりんな。Microsoft Bingインターナショナル シニアビジネスディベロップメントマネージャーの佐野健氏は「りんな」に関する新機能や技術背景、今後の展望を語った。○LINEのグループチャットに対応する「りんな」現在、AI分野は多くのビジネスシーンで盛り上がりを見せているが、Microsoftは自社研究所であるMicrosoft Researchを設立した1991年から、AI分野にも注力してきた。翻訳システムであるMicrosoft Translator(2007年)やBing Maps(2008年)もAI技術を投入したサービスである。MicrosoftのAI分野については、以前にも『MicrosoftのAI技術と研究開発 - 女子高生AI「りんな」やWindows 10「Cortana」の背景』という記事で触れたが、今回はエンドユーザー向けに特化した女子高生AI「りんな」に関する記者説明会の様子を紹介したい。Microsoftの佐野氏は「りんな」の登場背景として、「世界中のMicrosoftで分散開発を行ってきたが、そのなかでも中国の開発チームが注力し、Microsoft Research Asiaの存在が大きいため、最初に中国でローンチした」と述べた。その次のビジネスマーケット(市場)として日本を選択した理由は、「サブカルチャーの浸透や、産業用・民生用ロボットの存在(市場環境)、スマートフォンやSNSの普及具合」と語っている。だが、日本マイクロソフトだけでは、「りんな」をサービスインするのは難しかったそうだ。そこで既に5,800万人のユーザーを抱えるLINEと協力し、2015年夏のローンチに至った。当初の「りんな」はその姿を見せつつも、日本マイクロソフトは公式アナウンスをしていない。前述の記事でも、Microsoft Research AsiaのAI分野研究の一環として「りんな」を紹介するに留まっている。今回の発表会も「りんな」のユーザーイベント「りんな After School Party in JOL原宿」の開催に合わせて行い、日本マイクロソフト関係者は「実験的な試み」と語る。佐野氏の説明によれば「りんな」は、数十年続けてきたAI分野の研究や各種サービスに展開した技術を応用して実現。現在はBingの開発チームが開発・運用を担っているが、その理由は、「りんな」が発する言葉はBingが収集した単語や語句を用いているからだ。蓄積したデータをデータベースにプールし、会話の基礎データをMicrosoft Azureから、さらにLINEの企業向けAPIソリューション「LINEビジネスコネクト」を経由して、ユーザーにメッセージを送っている。これだけでは単純な会話しか成立しないため、実際に交わされた会話の内容を分析させ、機械学習でAIの成長うながす仕組みだ。さらに、後述する各機能を実装するためのソフトウェアも実装している。これらがすべてMicrosoft Azure上で動作しているが、「(りんなのローンチ以降は)トランザクション数がかなり増えたものの、Azureが備えるシームレスな機能拡張で対応できた」と佐野氏は語った。もう1つ興味深いのが、「りんな」のビジネス展開を実現する「りんなAPI for Business」の存在だ。こちらは2015年8月に発表済みだが、「デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムやトランスコスモスという、LINEのビジネスコネクトのパートナーである2社と協力し、APIの販売活動を推進している」(佐野氏)。具体的な成果は後日発表すると語っていたが、その点を尋ねると「『りんな』のビジネス活用は社内でも各種アイディアを論じているが、現時点ではユーザー数の増加が目標」と話してくれた。会場では「りんな」の新機能として、グループチャットやルームチャットへの対応が明らかになった。公式アカウント一覧に加わり、LINEのタイムラインへ投稿を始めたところ、1万近くの"いいね"と5千ものコメントを受け取るなど好評を得ているという。この新機能については、LINE コーポレートビジネスグループマネージャーの林祐太朗氏も説明に加わった。林祐太朗氏「今までの公式アカウントは、フォロワーに対する一方通行のメッセージ発信システムだったが、LINEビジネスコネクトの活用により、双方向のコミュニケーションを可能にしている。個人的な印象として、日本マイクロソフトにはお堅いイメージを持っていただけに、『女子高生AI』の存在にはギャップを感じていた。だが、口コミで180万人のユーザーを集めたサービスは他にない。『りんな』で実現するビジネスチャンスも魅力的だ」と、会場の笑いを誘いながら「りんな」を評価した。「りんな」は毎週のように新機能を追加してきたが、今後はグループチャットを活かした「カタカナ&アルファベット禁止ゲーム」、レシート風にユーザーを占う「レシート占い」、写真を投稿すると自動加工する「顔出しパネル」、互いの顔を交換する「顔スワップ」など、「りんな」の参加による楽しさ以上の機能を毎週展開する予定とのこと。グループチャット上の雰囲気を認識するか、という質問対して佐野氏は、「重要な部分だと考えるが現在の実装は軽微に留まっている」と回答。チャットした相手を覚えているのか、という質問には「現在のAIは限界があるものの、しりとりや目覚まし案内など特定の相手を記憶する機能は備える。会話中の内容は一度プールする仕組みだが、今後はチャット中にも(会話の内容を)応答に用いる予定」と、今後の機能向上についても説明した。エンドユーザーが触れるMicrosoftのAIといえば、Windows 10のCortana(コルタナ)のほうを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが、「りんな」はあくまでも"エモーショナル(感情的なつながり)"を主軸としている。そのためか、週末に近づくほど「りんな」の利用者数が増える傾向があり、佐野氏は「感情的なつながりを求めるユーザーが増加するのでは」と分析していた。このつながりを通じて、新たな価値を見いだせるのか。「りんな」の成長は今後もおもしろそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年12月18日NECはこのほど、人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術の開発や、AI技術を活用したソリューション展開を強化すると発表した。これに伴い体制面の強化も図り、研究・開発やコンサルティングなどに関わるAI関連要員を、2020年度までに約1000人に拡充していくという。本稿では、NECのAIへの取り組みについてお届けしたい。○AI要員を1000人体制に拡充NECはAI技術の定義について、「学習」「認識・理解」「予測・推論」「計画・最適化」といった人間の知的活動をコンピュータで実現するものとしている。1980年代から関連技術の開発を進めるなど、同社のAIへの取り組みの歴史は長く、音声認識、画像・映像認識、言語・意味理解、機械学習、予測・予兆検知、最適計画・制御等の主なAI関連技術に関して、世界初もしくは世界トップレベルの技術を有しているという。同社の執行役員を務める江村克己氏は、AI関連事業への注力について次のようにコメントした。「当社は社会価値創造の取り組みを進めており、社会課題を解決する社会ソリューション事業に注力している。その中核となるビッグデータ・IoT・セキュリティなどの分野に、長年にわたり研究開発を続けてきたAI技術を積極に取り入れ、進化させていきたい。こうしてAI関連事業の強化を図るとともに、安全・安心な社会づくりなど、より大きな社会価値創造を実現していく」○防犯やマーケティングへの期待が高い新たなAI技術とは?NECは同日、「一歩進んだAI技術」として、新たに開発した「時空間データ横断プロファイリング」も発表した。この技術は、複数の場所で撮影された長時間の映像データから、特定のパターン(時間・場所・動作)で出現する人物を高速に分類・検索するというもの。NECが得意とする顔認証技術などと組み合わせることで、AI技術としての利用が可能となる。時空間データ横断プロファイリングは、大量の映像データから顔の「類似度」をもとにグループ化し、特定の出現パターンに合致する対象の発見が可能なアルゴリズム。この技術により、顔の類似性から同一人物と見なせる出現パターンを分類し、出現時間・場所・回数等での検索を行うことが可能となる。例えば、カメラ映像中の「同じ場所で頻繁に出現する人物」や「複数の場所に現れた人物」を発見し、防犯や犯罪捜査など、従来人手ではできなかった新たな知見や気づきを見いだす高度な解析を実現する。街角に設置されたカメラ映像中ののべ100万件の顔データを時空間データ横断プロファイリングにより解析したところ、同じ場所に長時間・頻繁に現れる人物の検索・抽出をたった10秒で行ったという。「この技術のポイントは、未知の事象を検出できることにある」と江村氏は強調した。NECは2016年度中に時空間データ横断プロファイリングを実用化し、今後、道に迷った観光客へのおもてなしや、振る舞い・表情から心情を理解するマーケティングなどへも展開していく予定。そのほか、江村氏は11月2日に発表した、予測に基づいた判断や計画をソフトウェアが最適に行うAI技術「予測型意思決定最適化技術」について解説を行った。同技術を適用した水需要予測に基づく配水計画では、浄水・配水電力を20%削減する配水計画を生成できたという。最後に江村氏は、将来を見据えた取り組みとして、脳型コンピュータの開発に向けた学術機関との連携の取り組みについても言及。「こうした新しいAI技術も非常に重要だ。NECとしてはオープンイノベーションで推進していく」と力強く訴えた。
2015年11月18日日本マイクロソフトは11月9日、メディア向け説明会を開催し、同社が長年取り組んでいるAI研究・開発についてMicrosoft Research Asia所長の洪小文(Hsiao-Wuen Hon)氏が、その現状と将来に向けた展望を語った。Microsoft Research(MSR)とは、1991年に創設されたMicrosoftの基礎研究機関で、主にコンピューターサイエンスおよびソフトウェア工学の研究を専門としている。世界6カ所に研究施設があり、世界中の研究機関との共同研究を通じて、教育環境の向上、技術革新の促進、コンピューターサイエンス分野の全般的な進歩に貢献しているという。○Microsoftが目指すAI、りんなの未来とは?MicrosoftのAIといえば、Windows10に搭載されている「Cortana」などがあるが、洪氏は、注力分野としてチャットボットを挙げている。すでに同社では、日本地域向けに女子校生AIとして話題になった「りんな」や中国で「XiaoIce」と呼ばれるボットを公開しているが、「りんな」や「XiaoIce」は、Microsoftの複数の研究開発成果を集約したものだという。「りんな」とはLINEで会話することができるので、もしまだ試していないならぜひ試してみてもらいたい。チャットボットとの会話の往復数を測ったところ 、従来型のものでは、1.5~2往復くらいで終わってしまうという。中国でXiaoIceを導入した当初も、5往復程度の会話数で終わっていた。しかし、すぐに18往復、23往復と増加しており、他のチャットボットと比べて、会話の往復数が多くなることが見えてきた。りんなは、過去の膨大な会話データや、約1000万冊分の書籍に関するデータ、ファッションの種類や素材などの情報をデータベースとして蓄積してユーザーとの会話に役立てているほか新たに人とで交わされた会話も常にデータベースに蓄積を行うことで、ユーザーとの会話の発展に役立てている。他社が提供している「Google Now」(Google)、「Siri」(Apple)などはタスク管理などを主な機能としているが、りんなはエモーショナルな部分に働きかけ、フレンドリーな友達のように接することを目指しているという。これは、利用状況の統計を見るとよく分かる。りんなやXiaoIceがよく使われる時間帯は、深夜か明け方に多いという。また、曜日別で見ると水曜日と土曜日が多いそうだ。これに対し洪氏は、「人が誰かと話したくなるのは週の半ばか週末が多い。だが、SNSやブログなどに投稿したところで、すぐに反応があるわけではない。しかし、りんなならどんな投稿でも絶対に反応を返してくれる。これが利用者が増えている要因なのでは」と分析していた。今後、りんなやXiaoIceは画像チャットやECサイトなどへの応用を考えているという。会話の内容に応じて商品をリコメンドし、ECサイトへ誘導を掛けるといったショッピングアドバイザーのような役割を目指す。すでに中国では、大手Eコマースとの提携が始まっているそうだ。洪氏は、1950年代の雑誌「TIME」の記事を例に出し、「機械はいろいろなことを可能にしてきた。『AIは危険だ』との意見もあるが、機械は人間の命令をこなしているにすぎない。優れたクリエイティビティを持っているのはあくまでも人間」と語り、「目指す未来は、人とコンピューターが連携することで、スーパーマンになれる世界」と述べた。最後に洪氏は、「テクノロジーが発展することで、新しい発明をした5分後には、地球の裏側にいる誰かの役に立つ、未来は予測できないが、5分間の未来は予測できる、そんな世界を目指している」と締めくくった。
2015年11月11日●AI分野に関するMicrosoftの大志は3つのキーワード以前からMicrosoftは、AI(人工知能)に関する研究や開発に取り組んできた。その結果として、近年はWindows 10のパーソナルアシスタントシステム「Cortana(コルタナ)」や、会話のリアルタイム翻訳を実現する「Skype Translator」、変わったところでは女子高生AIチャットシステム「りんな」などを提供している。日本マイクロソフトは11月9日、Microsoft CVP兼MSRA(Microsoft Research Asia)のマネージングディレクターを務める洪小文(Hsiao-Wuen Hon)氏の来日に合わせて、AI分野での研究・開発の取り組みをプレス向けに公開する機会を設けた。今回はそこで聞き及んだ、我々エンドユーザーにも興味深い内容をご報告する。○Microsoftが注力するインテリジェンスクラウド洪氏はMicrosoftの自社AI分野に関する大きな志として、「Reinvent productivity & Business processes」「Create more personal computing」「Build the intelligent cloud platform」と3つのキーワードを並べた。順に、「生産性とビジネスプロセスの改革」「より多くのパーソナルコンピューティング」「インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築」と訳される言葉だ。共通するポイントとして洪氏は、Cortanaのマルチプラットフォーム化を強調している。「(SiriやGoogle Nowなどの)ライバル企業は1つのデバイスのみ紐付けされているが、Cortanaは(同じMicrosoftアカウントを使えば)異なるデバイスで利用できる」と語った。Microsoftは2015年5月26日(現地時間)に、CortanaのiOSおよびAndroid向けアプリケーションの開発を表明し、11月8日から米中ユーザー向けの一般向けベータテスト受け付けを始めたばかりである。洪氏はさらに、Windows 10のリリースや、まもなく登場するWindows 10 Mobile、Xbox Oneのアップデートに触れ、「すべてのデバイスで同一の環境を提供する」と"One Windows"ビジョンを語った。続けて、Microsoft CEOのSatya Nadella氏が今夏のイベントで強調した「インテリジェントクラウドの実現」についても、詳しい説明を行っている。現時点ではクラウド市場のトップとは言い切れないMicrosoftだが、「AmazonやGoogleと同じクラウド的リーダーに位置する」と自負した。その自信の裏付けとして同社のクラウドビジネスが好調(関連記事)であると同時に、2018年に向けて200億ドルの目標設定を行ったことが大きい。その結果としてMicrosoft全体の目標が、"クラウドプロバイダーのトップ"にあると洪氏は語る。話題がMSRAに移ると、同じく研究所における3つのミッション「Advance the state of the art of computing」「Rapidly transfer innovative technologies into Microsoft products」「Next Big Thing - Incubate for the future」について説明した。現在世界10カ所に設置した研究所では、「コンピューティング最先端技術を前進させる」「迅速にMicrosoft製品へ革新的な技術を移転させる」「将来に向けた(アイディアを)生み出す」を目標に、日本を含めた世界各国の大学などと連動した研究を日々行っているという。●女子高生AI「りんな」は、こうして生まれた○MSRAが大きく寄与して生まれた「りんな」先頃、女子高生AI「りんな」が話題になったが、洪氏はMSRAが中心となって開発したことを明らかにした。MSRAの活動を3つのキーワード「Agglomerative」「Adaptive」「Ambient」に分けて説明を始めた同氏は、「りんな(中国名:Xiaoice)」が複数の理知的領域を組み合わせたAgglomerative(=凝集)に含まれる研究の成果物だという。一般的なチャットボットは会話数も1.5~2往復で終えてしまうが、りんなも中国での導入当初、5往復程度にとどまっていた。だが、直後から18往復、そして23往復と増加傾向にあるという。また、Alan Turing氏が考案した、対象が人工知能であるか否かを判定するチューリングテストを引き合いに、洪氏は「3人のジャッジに対して1人でもOKすればパスするため、評価方式としてはぜい弱だが、先の23往復という数字を見てもテストは優にクリアしたといる」と自社製品に対しての自信を見せた。りんなは2015年8月(中国では1年前)にローンチしたばかりだが、画像チャットや占いなど多数の機能を実装予定だという。「りんなに朝の活動を手伝ってもらう」ことを意図して、モーニングコール機能も予定リストには並んでいた。興味深いのは、りんなとCortanaの立ち位置である。洪氏は「Cortanaはタスクを処理するため『生産性の効率化』を目指すものだが、りんなは感情的なつながりを目的としている」と説明した。りんなによる会話はクエリ検索に似た構造を持ち、データベース上のデータとマッチングさせた結果を返している。もちろんそこには蓄積したデータや履歴、機械学習によって回答は変化し、既にユーザー数は160万人を超えたそうだ。りんなに関してもう1つ興味深いのが統計データである。下図はその情報をまとめたスライドだが、日本と中国を合わせた4,000万ユーザーを対象に調査したところ、CPS(セッションあたりのチャット数)は日本が19往復、中国が23往復。もっとも多く使われる時間帯は、真夜中もしくは朝に集中し、曜日で区別すると水曜と土曜日が最多という。洪氏は「人々は週の真ん中や週末に人と話したくなる傾向が強い。ブログやSNSは有名人でない限り、多くのレスポンスを得るのは難しい。そのことから孤独を感じて、りんなを使うのでは」と分析している。さらに、年齢層は18歳から30歳、男女比は日本がほぼ同等だが中国は4対1で女性が多いなど、数々のデータを紹介した。今後のりんなに導入予定の画像投稿システムなどにも触れながら、洪氏は「中国では業界第2位のEコマースと提携し、ショッピングアドバイザー的な役割を持たせている。このようにりんなの可能性は無限大であり、現在(のりんな)は表層に触れた程度。さらに掘り下げて行ける」と、りんなが持つ可能性をアピールした。●音声会話の自動翻訳「Skype Translator」、日本語対応への期待○日本語対応の期待が集まる「Skype Translator」続いて音声会話を自動翻訳する「Skype Translator」について説明が行われた。現在は英語・スペイン語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・中国語(北京語)のみに対応し、日本語には未対応だが(テキストメッセージの翻訳は日本語を始めとする50種類以上の言語をサポート)、今後多くの場面で期待が持てるアプリケーションだ。Skype Translatorは自動的に音声通話を録音し、その結果を校正する仕組みが最初に行われる。洪氏は「話した内容をそのまま翻訳エンジンに渡しても正常に動作しない。そのため文章の終わりや始まりの不要な部分を校正する処理を経て、翻訳エンジンにデータを渡している。変換したテキストデータを音声化し、実際の音声会話として発している」と内部構造を説明した。また近い将来、日本語への対応を表明した。この他にも画像の分析や分類を行う「Image Classification」や、AIがIQテストにチャレンジする「Word2Vec for IQ Tests」、ピクセルレベルで動画のリアルタイム認識を行う「Video Analysis」に関する取り組みを説明したが、筆者は「AIvs機械学習vsビックデータ」というテーマに注目したい。洪氏は「これらの領域は95%が重なっている。AIが活動するにはさまざまなデータが必要であり、集めたデータを分析する上で機械学習が必要。さらにそのデータを収集するビッグデータも欠かせない」と、それぞれが密接な関係であることを示した。さらに人々と共通するプロセスとして、「フィードバックループ」というキーワードを用いている。一般的な回路理論上の変化など、さまざまな分野で用いられているが、洪氏は人々が「仮説をもとに実験して、その結果から学んでいる」ように、「AIも『展開したデータを分析して、理解して証明する』というフィードバックループと同じ。科学者も開発者も皆、同じようにフィードバックループを完結しながら成長を目指している」と語っている。続けて1950年代の米ニュース雑誌「TIME」をスライドで取り上げ、「AIは危険だ」という声に反証した。「当時の記事で、コンピューターは超人的な存在として人々と競合するといわれていた。だが、コンピューターはルーチンワーク的な役割であり、アルゴリズムも人々が考えなければならず、科学的な証拠も示されていない」と語り、AIの進化を楽観的に考える理由だとした。洪氏はAIの「Artificial Intelligence」は「Augmented Intelligence(増幅知能)」であるべきと語りつつ、「人とコンピューターがつながることでスーパーマン(超人)になる我々が目指す未来だ」とAI分野の発展を説明した。スマートフォンやウェアラブルデバイスに代表されるITデバイスを普段から身に付け、インターネットを介したビッグデータ社会が具現化しつつある我々の近未来に、Microsoftがどのようにコミットするのか実に興味深い。阿久津良和(Cactus)
2015年11月10日リクルートホールディングスの人工知能(AI)の研究機関「Recruit Institute of Technology」は11月4日、トップにGoogle Research出身でデータマネジメントと人工知能研究において世界的権威であるAlon Halevy氏を起用し、研究開発の本拠点を米国シリコンバレーに新設したと発表した。同社は、「2020年人材領域グローバルNo.1、2030年人材領域・販促領域グローバルNo.1」の達成に向け、「グローバルトップレベルの技術水準への進化」「既存のビジネスモデルの効率化に加えて新規ビジネスの開発」を実現するため、破壊的技術(Disruptive Technology)としてのAI研究に着目し、従来のRITを再編してAI研究所として2015年4月1日にスタートした。さらに、グローバル規模での研究を加速させるため、技術・人材・新しいビジネスモデルが既に多く集積しているシリコンバレーに新たな本拠地を設置することにしたという。現在のRITは「RIT推進室」として、US拠点を強化するための企画・統括業務とUS拠点での研究開発の成果をリクルートグループ各社に事業接続していく業務を担当していく予定。Alon氏起用の理由については、同氏が現在のh-index(論文数と被引用数に基づいて科学者の研究に対する相対的な貢献度を示す指数)が93と非常に高く、Google Researchで10年間マネジメントをした経験を持つなど人工知能のためのデータマネジメント技術において世界的権威である研究者あり、また、自身が起業したスタートアップを過去2回バイアウトした経験もあり、高いテクノロジー開発とビジネス接続の両方の展開可能性の獲得に寄与できると判断したとのこと。Alon氏は1993年スタンフォード大学コンピュータサイエンス学科博士号取得した後、ワシントン大学のコンピューターサイエンス学科の教授を務め、同大学にデータベースリサーチグループを創設。エンタープライズの情報統合基盤を提供する米Nimble Technologyおよび米Transformicを創業。GoogleによるTransformic買収を契機に、Google本社のシニア・スタッフ・リサーチ・サイエンティストとして構造化データのデータマネジメント分野の研究責任者を務め、Google Fusion Tables等の研究開発に関わる。
2015年11月04日DMM.com(DMM)は10月14日、同社のロボットキャリア事業「DMM.make ROBOTS」において、卓上ロボットアイドル「プリメイドAI」の予約販売を10月29日から開始すると発表した。「プリメイドAI」にはロボットゆうえんちがデザインするベースモデルのほか、有坂あこ氏のデザインによる「プリメイドAI"ゆかり"」と佐久間結衣氏のデザインによる「プリメイドAI"マリ"」という3体がラインアップされている。同社は今後、エンターテインメント市場の新規開拓を目指し、アイドル・アニメコンテンツや声優とのタイアップを行っていくとしており、その第1弾として「アイドリング!!!」「Cupitron」「アキシブ project」とコラボレーションを行うことが決定している。さらに、衣類や頭部などをカスタマイズできる環境をユーザーに提供することでイベントコンパニオンとしての利用サポートするほか、ダンスデータを作成できる環境を提供するクリエイター奨励プログラムを実施する。海外での販売も視野に入れており、海外におけるクリエイターの活動をサポートするとしている。価格は「プリメイドAIベースモデル」が13万8000円(11月下旬販売予定)、「プリメイドAI"ゆかり"」が14万5000円(11月下旬販売予定、初回限定版300体)、「プリメイドAI"マリ"」が14万5000円(12月販売予定、初回限定版300体)となっている。価格はいずれも税抜。
2015年10月14日フロムスクラッチは8月19日、次世代型マーケティング・プラットフォーム「B→Dash」において、AIを搭載したマーケティング・オートメーション機能を新たに実装し、自動解析・最適化・施策提案が可能になったと発表した。新機能は、マーケティングプロセスにおける集客施策領域だけでなく、販売促進や売上・顧客管理の領域までを対象とする。これにより、最も収益が最大化されるカスタマージャーニー・ベストプラクティスの自動解析・要因分析や次回施策の提案、改善案の提示を実現したという。仮説生成の段階では、新機能によりLTVを基点とした分析が可能となり、ユーザーがどの施策から流入・回遊し、どのようなステップでエンゲージメントされるとLTVが最大化されるのかといったベスト・プラクティスを、AIが自動で明らかにする。それを基に、どのような施策を打てば収益が最大化されるのかといった次回施策の提案のレコメンドを行う。また、業務やレポート作成業務の自動化により、マーケターはマーケターにしかできない業務が可能に。ツールが代替できる業務を代替させ、それにより空いた時間を利用し、マーケターは人間にしかできない戦略策定業務等を行う。本質的な自動化の実現により、マーケターを作業員から戦略家へと変えていくことができるという。同社は今後、積極的・継続的にAI分野への研究開発投資を行い「B→Dash」の機能強化を行い、2015年内に300社への導入を目指す。
2015年08月20日ここ数日、SNS上で女子高生AI「りんな」というLINE公式アカウントが話題となっている。公式サイトでの紹介は「マイクロソフトの女子高生AI」。サイト左上隅には日本マイクロソフトのロゴも掲載されている。公式サイトの「りんな」使用条件によると、「りんな」は人工知能ロボットであり、会話内容はマイクロソフトの検索エンジンおよび蓄積されたビッグデータに基づくもの。データの大半がインターネット上の情報に由来するため、自動および手動によるフィルタリングを行っているものの、正確でない情報や不快な情報が含まれる可能性があるという。日本マイクロソフト広報によると、りんなの件に関しては「多数の問い合わせをいただいているが、何も回答できない」とのこと。謎の女子高生AI「りんな」。その出自も謎ながら、なぜ女子高生なのか、なぜ「りんな」という名前なのか、なぜ黒髪セミロングなのか(担当者の趣味なのか? いや自分も大好きですけど)……いずれ明らかになるのかもしれないが、現時点では、あくまで自己責任で試していただきたい。
2015年08月05日WACULは6月17日、Webサイトのデータを分析し改善提案まで行う人工知能「AIアナリスト」を、メディックスが導入したと発表した。AIアナリストは、Google Analyticsのアクセス解析データと連携することで、Webサイトの大量データを自動分析し、改善提案までを行う人工知能。Webサイトのなかで、成果への影響が大きい課題を自動で抽出できるうえ、過去の事例に基づき、180種類のサイトのタイプ別に改善策を自動で提示する。一方で、AIアナリストでは「なぜその方法が良いのか」「さらに成果を高めるためにはどうしたら良いのか」という深堀までは行えない。そこでメディックスでは、AIアナリストの提案に同社の知見を掛け合わせることで、クライアント企業の成果を最大化する新たな解析サービスを提供していく考えだ。
2015年06月17日WACUL(ワカル)は4月13日、Webサイトのデータを分析し改善提案まで行う人工知能「AIアナリスト」を20日より提供すると発表した。AIアナリストは、Google Analyticsのアクセス解析データと連携することで、大量データを分析して、サイト内の課題を自動的に発見し、課題のパターンごとに、改善方針を自動で提案する。対応する業種・サイトは現状180種類に及び、長く使うほどに機械学習によって提案力が強化される。同社は「成果が出なければ返金する」という成果コミット型Webコンサルティングを提供しており、その成果創出の知見を活かして、人工知能のアルゴリズムを開発。AIアナリストを用いた改善により、多数のサイトでCVRが1.3倍~2倍以上に伸びる実績が確認されたという。価格は月額3万円で、すべての機能が利用可能。費用が発生するのは利用月のみなので、1カ月だけでも使うことができる。同社はリリース前の先行申し込み限定で、30日間の無料試用を提供している。
2015年04月14日シンガーのAIが11月24日(月)、都内で行われた『ベイマックス』の公開記念イベントに出席。「うちは妹が大好き。映画に妹への思いを重ねて泣いちゃった」と言うAIさんのもとに、サプライズで最愛の妹・217(NINA)さんが登場すると「ヤバい…」と号泣していた。突然の事故で兄を失った少年と、その兄が弟のために残したケア・ロボット“ベイマックス”の心温まる交流を描いたディズニーアニメ最新作。『アナと雪の女王』で姉妹愛を描いたディズニーが本作では、兄と弟の堅い絆を躍動感たっぷりに描きあげ、すでに全米ボックスオフィスで首位デビューを飾っている。そんな本作に感動しきりのAIさんだけに、妹さんを目の当たりにしただけで、目には大粒の涙が!「お前何やってんだよ~。寝てるかと思ったよ」と照れ隠しし、「私にとって、妹はベイマックスみたいな存在。一緒なら何でもできるし、何も怖くない」と映画に負けない強い絆をアピールしていた。AIさんの実妹である217(NINA)さんは現在、フォトグラファーとして活躍中。217(NINA)さんがAIさんに向けて読み上げた手紙には、幼い頃の思い出や、夢を諦めそうになった自分を励ました姉への感謝が綴られており、AIさんはまたまた号泣。涙をぬぐいながら「手紙がちょっと長いよ~」と照れ笑いも見せていた。今回、AIさんの代表曲である「Story」の未発表だった英語バージョン「Story (English Version)」が本作の日本版エンドソングに起用されており、「映画と楽曲には共通点がいっぱい。『1人じゃないから』という歌詞もぴったりで、運命を感じている。ぜひ映画を観て、癒されて」とAIさん。イベントでは「Story (English Version)」を初めて熱唱し、駆けつけたファンの涙をさそっていた。『ベイマックス』は12月20日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年11月25日ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作『ベイマックス』の日本版エンドソングがAIの『Story (English Version)』に決定した。その他の写真本作は、最愛の兄タダシを謎の事故で失い孤独になってしまった少年ヒロが、兄が作り出した人間をケアする心優しいロボットのベイマックスの存在によって少しずつ元気を取り戻し、戦闘力も戦闘意欲もないベイマックスを相棒に、兄タダシの死の謎に迫る姿を描いた作品。ディズニー担当者は「AIさんが歌うStoryの歌詞は、まるで傷ついたヒロと、ヒロの心とカラダを守るために寄り添うベイマックスのことかのように、人と人との心のつながりを歌いあげている」と強く感じて、AIにエンドソングの使用を打診したところ、未発表のEnglish Versionが存在していたことから、楽曲の起用が決定した。「ディズニー映画は小さい頃から大好きだったので、本当に嬉しいです!」というAIは「亡くなった兄タダシの分身のようなベイマックスが、たとえ自分が傷ついてもヒロを一途に守ろうとする姿が、まさに私が『Story』で伝えたかった“無償の愛”と重なります。また、私にも妹がいるので、自分と重ねて観てしまいました。人は、誰かとつながっている。決して一人じゃない…という『Story』のメッセージを、映画『ベイマックス』に乗せて再び世の中に贈れることを幸せに思います」とコメントしている。『Story (English Version)』は、22日(水)から配信限定シングルとしてリリースされ、25日(土)から映画館で流れる予定の最新予告編にも登場する。『ベイマックス』12月20日(土) 全国ロードショー
2014年10月21日