境界性パーソナリティ障害とは?出典 : 境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder:BPD)は、対人関係や自己に対するイメージなどの広い範囲において、激しく考え方や感情が変化していく特性がある障害です。境界性パーソナリティ障害の多くは思春期から青年期・成人早期に起こる感情と行動の失調状態です。時間はかかりますが適切な治療を行うことによって自分自身を取り戻していくことができるといわれています。現在さまざまなパーソナリティ障害が確認されており、境界性パーソナリティ障害はその中の一つとして存在しています。パーソナリティ障害とは、思考、感情、人とのかかわり方、衝動の制御の4つのうちの少なくとも2つにおいて、柔軟性がない状態をいいます。このようなパーソナリティ障害がある人は、考え方や行動パターンに著しい偏りがあるため他者と摩擦が生じ、日常生活や仕事・学校の場面でトラブルをおこしてしまうことがあります。境界性パーソナリティ障害は他人から見捨てられてしまうのでないかという不安と、自分が何者でどう振る舞えば良いのか分からない自己イメージの不安定さがトラブルの背景にあるといわれています。境界性という名前は、“強いイライラ感”が症状として現れる神経症と、“現実が冷静に認識できない”認知障害をもつ統合失調症、2つの精神疾患の境界にあると、かつて考えられていたことに由来し命名されています。現代社会の中では境界線がはっきりしないことは数多く存在しています。例えば自分と他人との境界や男と女の境界、子どもと大人との境界など、あらゆるボーダーラインがあります。境界性パーソナリティ障害がある方はその境界が分かりにくく、社会にうまく適応できないという生きづらさを抱えています。境界性パーソナリティ障害を発症している方々の中での男女割合は女性が75%と多く、主に女性が発症しやすい傾向があることが分かっています。出典:日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(医学書院,2014)参考:岡田尊司/著『境界性パーソナリティ障害』(幻冬舎新書,2009)境界性パーソナリティ障害の主な特性とは?出典 : 境界性パーソナリティ障害の主な特性として代表的なものは、自己イメージの混乱と見捨てられるかもしれないという強迫観念があることです。この3つの特性からくる不安と恐怖の感情がもととなり、さまざまな症状に発展していきます。境界性パーソナリティ障害がある人は、「自分がどんな人か分からない…」というように自己イメージがはっきりしない状態であるため、他人の影響を受けやすかったり、他人と自分を区別できなかったりすることがあります。自己イメージは自己同一性(アイデンティティ)とも言われ、自分・他人から見ても一貫している自己を持っていることをいいます。自己イメージが安定していると、自分が社会にとって意味があり、自分の中に生きているという実感が生まれます。それによって過剰に不安になることや人に流されることが減ってきます。しかし境界性パーソナリティ障害がある人は自己イメージが混乱しているため、例えば一面的な評価を自分の全人格に対する評価として過剰に受け取ってしまうことが多くなります。その度にひどく落ち込んでしまったり、同じ人からの評価にも関わらず、褒められたときはその人のことを好意的に思う一方で、問題などを軽く指摘されただけでその人に敵意を示し激しい怒りを感じたりします。このような対人関係を続けることで過度なストレスを感じるようになり混乱や落ち込んだ状態が慢性化し、さらに自分を見失うという悪循環に陥ってしまいます。境界性パーソナリティ障害がある人は、自身が信頼をおいている相手に依存する特性がみられます。常に根底には自分が見捨てられてしまうのではないかという「見捨てられ不安」というものを感じています。幼い頃に両親の離婚によって家族や愛着のある場所などから離れることに強い不安を抱いたり、虐待などにより愛情を失う体験をしたことが背景になっている場合もあります。「また同じ思いはしたくない」という潜在的な意識によって見捨てられ不安は招かれ、信頼できる相手に対して疑い、見捨てられるのではないかという不安を抱いています。その見捨てられ不安から例えばメールを送ってもすぐに返ってこなかったり、自分が期待している反応が返ってこなかったりする場合、「嫌われたのではないか?」、「見放されたのではないか?」と強い恐怖を感じ相手から離れまいとしがみつこうします。そして見捨てられ不安から逃れたり、相手の興味を自分に引きつけたりするためにギャンブルや過食、過量の飲酒・服薬、自傷行為や自殺をほのめかす行動を起こしてしまうのです。境界性パーソナリティ障害がある人は自己イメージの混乱や見捨てられることに不安や恐怖を常に感じていることから、感情の波が激しく変動し、自分でコントロールすることができなくなります。激しい怒りやひどい落ち込みや空虚感を感じることから、それを解消しようと暴力や暴言を吐いたり、リストカットなどの自傷行為や大量の薬物摂取、大量の飲酒、過食などに走りやすくなります。これらを繰り返すことで日常化していくと、薬物依存やアルコール依存などに発展していくこともあります。さらに強いストレスにさらされ続けると一時的な記憶喪失になる解離性症状が表出する場合もあります。境界性パーソナリティ障害が発症する原因ときっかけって?出典 : 境界性パーソナリティ障害の原因はさまざまな説があり、定まっていません。原因は本人の生物学的な気質要因と環境的要因の相互作用によって生じるという考え方が有力です。脳の機能の中には衝動を抑えたり、怒りや不安をコントロールしたり、ストレスに対する感情をコントロールしたりする部位があります。境界性パーソナリティ障害がある人は、何らかの原因によってそれらの部位に特徴があるために、衝動性、怒り、不安、ストレスなどを感じやすくなっているのだと考えられています。・前頭前皮質:行動をコントロールし、合理的判断に関係する部位です。なんらかのストレスによりこの部分の活動が低下すると、扁桃体の活動を抑えることができず、感情や行動をコントロールできなくなると考えられています。・扁桃体(へんとうたい):怒りや不安といった感情をつかさどっている部位です。境界性パーソナリティ障害がある人は扁桃体が平均より小さいという研究があります。扁桃体の特定の部位が、感情的な刺激に対して過剰に反応するという研究があります。・視床下部/下垂体:ストレスに対する反応に関係する部位です。ちょっとしたトラブルにもイライラや落ち込みを感じる人とあまり動じない人がいますが、それはこの部位の反応の個人差が一因と考えられています。境界性パーソナリティ障害がある人は過剰にストレスを感じ、精神的なショックを受けて落ち込んでしまったり、心が傷ついたりするのは、この部位に関連があると考えられます。・セロトニン系:脳内にある神経細胞間の神経細胞伝達物質のひとつです。セロトニンがうまくはたらかないと、不安やうつの気分が強くなったり、衝動性が抑えられなかったりすることがわかっています。環境的要因には養育環境が大きく関係しているという説があります。過去に心的外傷体験(心が傷ついた体験)や不認証体験(自分を認めてもらえなかった体験)があり、数年後に似たような体験が再現されることによって、境界性パーソナリティ障害の症状が表出するということがあります。心的外傷体験や不認証体験とは、極端な例だと親が子どもに対する虐待やネグレクト(育児放棄)などが挙げられます。または親の離婚や死別によるショックなどもあります。これはあくまで極端な例ですが、他にも、子どもへの愛情不足や褒める・認めるといった共感の不足、過保護や過干渉によるストレスなども子どもにとっては負担になっていることがあります。そのような体験がベースにあり、ちょっとした友人関係や恋人関係の出来事がきっかけで、見捨てられ不安などの症状が発生します。参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)参考:岡田尊司/著『境界性パーソナリティ障害』|(幻冬舎新書,2009)境界性パーソナリティ障害の診断基準出典 : 境界性パーソナリティ障害の診断基準について説明していきます。診断基準は医療機関によって異なりますが、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)やアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づいて臨床的に診断が下されます。ここでは『DSM-5』による診断基準を説明していきます。『DSM-5』では以下から5項目以上が認められれば境界性パーソナリティ障害である可能性が高いという基準になっています。対人関係、自己像、感情などの不安定性及び著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる、以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。(1) 現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとするなりふり構わない努力(注:基準5で取り上げられる自殺行為または、自傷行為は含めないこと)(2) 理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係の様式(3) 同一性の混乱:著明で持続的に不安定な自己像または自己意識(4) 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食)(注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと)(5) 自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し(6) 顕著な気分反応性による感情の不安定性(例:通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらただしさ、または不安)(7) 慢性的な空虚感(8) 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)(9) 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(医学書院,2014)p.654より引用境界性パーソナリティ障害と併発する合併症出典 : 境界性パーソナリティ障害はその障害の特性上、うつ病などと合併しやすく、発達障害などと併発している場合もあります。また境界性パーソナリティ障害と似ている自己愛性パーソナリティ障害についても紹介していきます。■うつ病などと合併することがある境界性パーソナリティ障害がある人がうつ病を経験する割合は90%に近いという報告もあるくらい、最も合併することが多い病気です。うつ病は抑うつ気分が続き、何もやる気がしなかったり、すべて自分が悪いと責めてしまい、死にたい気持ちになったりする症状があります。境界性パーソナリティ障害の症状と共通点も多く、対人関係のトラブルが頻繁に起こることで抑うつな感情をもたらします。境界性パーソナリティ障害とうつ病が合併すると自己破壊への衝動が増し、死にたい気持ち(希死念慮)が増すと言われています。自己破壊的な行為はたとえば、過剰な自己非難や絶望感から自傷行為を行ったり自殺を考えたりすることです。またうつ病に限らず、境界性パーソナリティ障害の自己破壊的行動への衝動が高まることによって、アルコール依存症、薬物依存症や気分障害、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、パニック障害などを引き起こすこともあります。■ADHDとの合併の可能性がある境界性パーソナリティ障害がある人はADHDを小児期または同時に発症している可能性があると、近年の研究によりいわれるようになりました。イギリスのある研究では、境界性パーソナリティ障害がある人でADHDの発症率は小児41.5%、成人16.1%と高いことが分かりました。境界性パーソナリティ障害の発症は、必要な親からの共感が得られなかったことが原因の一つではないかという仮説があります。ADHDがある人は、その特性から、社会関係や対人コミュニケーションに困難さが生じる場合があるほか、親が育てづらさを感じて親子の関係がうまくいかなかったり、体の感覚が過敏で子どもがだっこを嫌がったりして必要なコミュニケーションをとる機会を持ちにくかったりする場合があります。こうした、親子や対人関係上の困難さが積み重なることによって、子どもが十分に共感を受け取ったと感じられないなどが原因で境界性パーソナリティ障害へと発展することもあり得ます。また発達障害の中には境界性パーソナリティ障害と似た症状が現れるものもあるため、臨床現場では障害同士の鑑別が難しいとも言われています。■自己愛性パーソナリティ障害との合併が混在することがある自己愛性パーソナリティ障害とは、自分に対して誇大なイメージを抱き、注目や称賛を求める一方で、他者からのマイナスな評価に対して過敏に傷つきやすく、他者に対する共感性の薄さが特徴的な障害です。境界性パーソナリティ障害は、自己中心的で対人関係の問題から情緒不安定をまねくことなどから自己愛性パーソナリティ障害と共通点が多くあります。また原因も自己愛の未成熟が関わってくることから診療の現場では、この2つの障害の区別は難しいとされています。この2つの障害の違いはどこにあるのでしょうか。境界性パーソナリティ障害が自己否定を繰り返し、考え続けることで情緒不安定が生じる傾向にあります。それに対して自己愛性パーソナリティ障害は、理想と現実のギャップを受け止められず、自己防衛のために誇大化した言動を繰り返し、自信があるようにうかがえるという点に特徴があります。そもそもパーソナリティ障害はそれぞれ独立して存在するのではなく、重複している共通の症状があるため、複数のパーソナリティ障害が併存しやすくなっています。ですので境界性パーソナリティ障害に限らず、他のパーソナリティ障害が合併していることがあったり、判断が難しかったりする場合があります。参考:『Attention-deficit hyperactivity disorder as a potentially aggravating factor in borderline personality disorder』|BJPsych参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)境界性パーソナリティ障害かも?と思った時の相談先と医療機関出典 : パーソナリティ障害の診断は難しいものです。もしご自身やご家族に境界性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関での受診先は精神科、心療内科などになります。「もしかして境界性パーソナリティ障害かも・・・?でも、医療機関を受けるほどのことでもないような気がする・・・」そのような場合は、各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター、または各市区町村に設置されている保健所・保健センターの相談窓口へ相談してみてください。もちろん、本人だけではなく家族が電話などで相談することもできます。次のリンクは全国の精神保健福祉センターの一覧になりますので、参考にしてみてください。参考:全国の精神保健福祉センター一覧l厚生労働省また、本人が会社勤めの場合や高校や大学に通っている場合、学校や企業専属のカウンセラーに相談することもおすすめです。企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。境界性パーソナリティ障害の治療ってどんなものがあるの?出典 : 境界性パーソナリティ障害の治療法は、主に精神療法と薬物療法があります。精神療法は即効性はありませんが、医師や専門家と一緒に本人の物事に対する考え方や感じ方などを見直していく治療法になります。これから紹介するのは境界性パーソナリティ障害に有効といわれている精神療法の2つの代表例です。■認知行動療法(CBT):認知行動療法とは、何か困ったことにぶつかったときに、本来持っていた心の力を取り戻し、さらに強くすることで困難を乗り越えていけるような心の力を育てる方法として、いまもっとも注目を集めている精神療法です。具体的には、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのかを客観的に観察し、自動思考という考えのクセを把握します。そして、そういった状況に直面した際に、どのように考え、対処していけばいいかを考え、考え方をコントロールしていく治療法です。参考:認知療法・認知行動療法マニュアルl日本認知療法学会■弁証法的行動療法(DBT):弁証法的行動療法とは、マーシャ・M・リネハンによって開発された、境界性パーソナリティ障害に効果的といわれている、行動療法を中心とした心理療法です。以下の4つの治療法を組み合わせることで、考え方のクセに気付かせ、バランスの良い考え方や反応ができるようにすることが目的です。・苦悩耐性スキル....自身の感情の波が激しくなっているときに、問題がさらに悪化しないように、状況を改善するタイミングを待つためのスキルを身につけます。・マインドフルネススキル....ありのままの自分を受け入れるスキルを身につけます。・感情調整スキル....自身の感情を理解し、調節することのできるスキルを身につけます。・対人関係スキル....感情調整を行いながら、適切な対人関係を築くスキルを身につけます。しかし、欧米を中心に発達した治療法であり、日本で受けられる場所はまだ限られています。また、薬物療法と心理療法以外にも、重度の境界性パーソナリティ障害と診断されたときに入院療法が適応される場合があります。・薬物乱用、自殺、自傷行為を繰り返すとき・重度の妄想により日常生活を送ることが難しいとき・社会から離れた場所で本人に休息が必要と判断されたとき・家族などの周囲の人が疲れてしまったときこれらの場合は入院をし、カウンセリングなど様々な治療法を組み合わせて治療していきます。参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)境界性パーソナリティ障害に根本的に作用する薬は残念ながらありません。そのため衝動性や感情の不安定さといった症状を改善するために薬が処方されます。主に気分の落ち込み、不安、現実認識の低下に対する薬が処方されます。BPDの薬物療法の第一選択は,中等量の非定型抗精神薬であり,抑うつ, 不安に対してはセロトニン選択性再取り込み阻害薬SSRIぐらいに抑えるべきであるというのがガイドラインにおける薬物療法の基本である。牛島定信『境界性パーソナリティ障害の治療ガイドライン』(2010)抗うつ薬は抑うつ症状を改善するほか、衝動性や感情の不安定、激しい怒りの抑制のために処方されます。薬には副作用もありますし、人によって薬が合わないこともあります。低年齢の子どもの場合はより慎重に進めるべきという専門家もいます。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めることをおすすめします。境界性パーソナリティ障害がある人にどう接したらいい?出典 : 境界性パーソナリティ障害がある方は身近な人に見捨てられることへの不安を強く抱いています。治療を行っていくにあたって、本人のなかでは葛藤や変化が訪れます。また治療も長期にわたって行われるために、効果がなかなか現れないことに対する苛立ちや不安感を抱くかもしれません。そんなときに寄り添うことができるのは医師ではなく、本人の家族や周囲の人たちです。その人たちが安全基地としての役割を担うことによって本人が治療に挑みやすい環境をつくることができます。あなたの居場所はここにある、いつもそばにいると安心させる協力的な姿勢と環境づくりが大切です。境界性パーソナリティ障害がある方は、感情や言動の変化が激しいために家族や周囲の人が振り回されてしまったり、本人からの強い物言いによって責任を感じてしまったりすることがあります。本人に対してどう接していいかわからず悩み、周囲の人がうつ病などになってしまうケースもあります。そのようにならないためには、本人に振り回されすぎないことが大切です。拒絶せず、過保護にもせず、程よい距離感をもって本人の言動を観察してみてください。境界性パーソナリティ障害がある人を支えることは難しく共倒れしてしまう危険性がありますので、本人に振り回されないように意識してみてください。また本人の言動の一つひとつは、本人に責任がある姿勢を貫いてください。境界性パーソナリティ障害の原因のうちの環境要因として家族の環境がありますが、たとえこれまでの関わりに何らかの問題があったとしても、その結果何を感じて、何を行うかは本人次第です。家族や周囲の人が責任を感じすぎてしまうと、本人は自分の問題の責任を家族に押しつけてしまい兼ねません。そうではなく「それはあなたの問題です。」と一線を引いたり、家族で抱えこまずに専門家に相談し支援を受けたりすることが重要です。上記と矛盾してしまうかもしれませんが、家族・周囲の人などとのかかわりの積み重ねによって、本人が負担を感じていることがあります。しかし具体的にどのようなかかわりが負担になっていたのかは、関係性の当事者たちには分からないことがあります。そのようなときには家族なども一緒に治療を受ける方が良い場合もあります。治療を受ける程ではなくても、本人とのかかわり方や自分を見直すよい機会になります。長年築いてきた関係を改善するには時間がかかります。一気に問題を解決しようとは考えずに、焦らず少しずつでも変わっていくことを意識してみてください。しかし本人の回復に貢献するために、家族や周囲の人自身が無理矢理変わらなければならないということではありません。「できないことはできない」と言うことも、現実的な一人の人として本人とかかわっていくためには大切なことです。本人にとって身近な家族などは、激しい感情をぶつけやすい人でもあります。そのために本人に対して怒りや嫌悪感を感じ、ときには拒絶してしまうこともあります。しかし拒絶してしまっては本人にとっての安全基地であることも、かかわり方をお互いに変えていくこともできず、根本的な治療を行うことはできなくなります。ですので、定期的に他の人に相談して助言をもらうことは重要です。周囲に安心して相談できる相手がいない場合は、心理カウンセラーなど専門家のサポートを求めることも考えましょう。参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)まとめ出典 : 境界性パーソナリティ障害の症状は多岐にわたって存在し、本人をはじめ周囲の人たちも悩まされます。しかし決して個人の性格の問題ではありません。本人が過去の体験を自分の糧となるように消化できていなかったり、現在またこれまでの環境が合わなかったりといったことが積み重なっています。その積み重なっている経験が考え方をつくり、そこから言動が生まれています。これらは適切な治療を受けることによって、少しずつではありますが変えていくことができます。境界性パーソナリティ障害がある人を支えることは大変なことだと思います。ですが、本人も自身の言動や思考をコントロールできず苦しんでいます。本人や家族だけで解決しようとするのではなく、専門家の支援も受けながら、お互いに適切な距離を取りつつ、また一方で支え合いながら付き合っていくことが大切です。
2017年05月23日小児科外来のカウンセリング室にやってきた母娘出典 : 病院の小児科外来でカウンセリングを行っているカウンセラーの私のもとに、不登校の娘さんと母親が心理相談を受けに来ました。そのとき娘さんは中学3年生。母親の話だと中学2年生のころから学校に行き渋るようになったけれども、教師の働きかけで今は何とか相談室登校をしているとのこと。母親が説明する間、その子は一言も話さず暗い顔をして座っていました。私は「学校で何か嫌なことがあったのか」、「友だちと気まずいことでもあったのか」と問いかけましたが、無言のまま。母親は、「家で娘に尋ねても嫌なことやいじめはないと言うのです」と代弁します。医師の方では医学的処置は行わないとのことを聞いていたので、経過観察をしながらじっくり支援の方向性を探ろうと考え、「すぐには話したくないかもしれないので、時々来て状況を知らせて下さい」と言って初回の面談を終わろうとしました。しかし母親は「どこに行っても同じことを言われます。私が心配でたまらないのです。このまま一生引きこもりになるのではないかと不安です。ここで話を聞いていただけませんか」と言うのです。娘さん本人の考えは計り知れませんでしたが、母親の困り感が大きいことも鑑み、ひとまず次週も面談の予約を入れることにしました。カウンセラーと母親と娘の三者面談、しかし彼女は一言も話さず…出典 : 翌週、時間通りに母娘がやってきました。母親はこの一週間も娘の状況は変わらないことを説明してくれましたが、肝心の娘さん本人はやはり一言も発しません。母親がしゃべり過ぎるので娘さんが話さないのかと考え、母親の発言を抑えて彼女の発話を待ちました。しかしいくら待っても言葉を発しません。最後にはうなだれ、長く伸びた髪が顔を覆い、ホラー映画の「貞子」のような状態になってしまったので、「これ以上はまずい」と思い、母親との話に戻りました。親子で訪れる小児科の心理相談の時、私は特別の事情がない限り親子別々に話すことをしません。子どもは不安を抱いて訪れます。その時に親から離れて一人で知らない人と話すことは苦痛でしかないと思うからです。廊下で待たされ母親だけが診察室に通されると、そこでは自分のことを話しているに違いないが、何を話しているのか気になるでしょう。余計な不安や苦痛を子どもに与えないために親子で話すのです。まれに母親だけに伝えなければならないことがある場合は、子どもが退屈そうに見えたとき、「退屈なら廊下を歩いてきていいよ」と言って外に出します。時間的に余裕がある環境でしかできないことかもしれません。カウンセリングというより雑談?それでも続く、奇妙な3者面談出典 : そういうわけでその母娘との面談はいつも三者で行いましたが、話すのはいつも私と母親でした。それでも娘さんは毎週来ることを拒まず、一言も話さないにもかかわらず毎回1時間近くその場に座り続けていました。半年近く話しても事態が大きく変わることもなかったので、話の内容は徐々に雑談に変わっていきます。明朗快活なお母さんはニコニコしながらたくさんおしゃべりしました。よもやま話になるとつい笑いだすようなことにもなりますが、娘さんはそれでもやはり、無表情のまま。わずかでしたが相談料を支払っていただいていましたので、談笑でお金をいただくのはどうかと思い、母親に「このまま続けますか」と尋ねました。母親は「長い目で見なければいけないのは分かっているが、娘と二人でいると気が沈んでしまうので、迷惑でなければ続けさせてください」と言ったので、ひとまず継続することに。とはいえこのままずっと談笑を続けるというのも気が引けます。なにか改善のきっかけがつかめないかと、私は彼女が在籍する中学校を訪問することにしました。しかし、娘さんは中学校では人目を避けて登校し、ほとんど相談室で好きな漫画やイラストを描きながら過ごしているとのことで、変化を期待できるような情報を手に入れることはできませんでした。高校受験が迫ったある日、無言だった娘が、はじめて「やりたいこと」を口にした出典 : それからも、カウンセラーと母親が談笑するだけという、奇妙な"三者"面談が続きました。初夏から始まった面談も初冬にさしかかっていました。母親は高校進学のことを気にし始めました。私も引き受けてくれる学校があるか気になりました。そんなある日、母親が思いがけないことを話しだしたのです。「娘は、高校はイラストやデザインが学べるところにしたいと言っています。中学校で尋ねたらA高校のデザイン科があると言われたそうで、そこを受験したいと言うのですが、先生どう思いますか」。この話も三者面談の中でした。私は母親に「それは素晴らしい。本人が受けたいと言うのならぜひ受けさせるべきです」と言いました。本人が高校には行きたいと言い、志望校もはっきりと言った。母親はこのことには喜んでいましたが、実際受験するにあたっては、相談室登校で学力がきわめて不安、試験や面接に行けるかどうか、受験に失敗したらもっと落ち込みがひどくなるのではないかなど、心配でたまらないようでした。私は、「本人が自分で道を切り開こうとしているのです。今はそれを応援しましょう。失敗したらその時に次を考えましょう」と言い背中を押しました。その後。その子は自宅でも受験勉強をし、中学校では専願という受験方法を示され、無事試験会場にも行け、めでたく志望の高校、学科に合格したのです。娘さんの高校入学後も母親はしばらくの間、「また、いつ登校しなくなるか不安だから」と言い、私との心理相談にやってきましたが、不登校が生じやすい5月の連休明けまで様子を見ても特に問題は起こらず、母親も安心して心理相談を終了しました。ずっと黙っていた娘が、なぜもう一度学校に行けるようになったのか出典 : その後も娘さんが私の相談室に来ることはなく、毎日他の生徒と同じように登校し授業を受けており、部活もバスケットボール部に入り元気に活躍しているとのことでした。母親は「嘘みたい、今までのはなんだったの」とキツネにつままれたかのようでした。心理相談を続けている間は一言も発さなかった娘さんが、なぜこのように劇的な変化を起こしたのでしょうか。私が思うに、その子自身の伸びる力がもともと眠っており、表面には出ない間も、じっくりと力を蓄えていたのだと思います。不登校、相談室登校は彼女にとって不快な経験だったと思います。彼女自身もなんとかそれを克服しようと思ったでしょう。しかしなかなか克服の道が見えず、長い間ふさぎ込むことになったのだと思います。高校進学を目の前にして、やっと自分の好きなデザインを学び、本来やりたかったバスケットを行うことに道を見出し、光を見つけたのだと思います。道を見出したのは彼女自身です。それができたのはその子の成長する力によるものと思います。小学校や中学校で不登校を経験したのちに高校生になり、「休みたくなると、もうあの不登校を再び経験したくないからという気持ちになって、それで頑張って登校したんだ」と打ち明けてくれた子もいました。一人、二人ではありません。子どもたちはしっかり学んでいるのです。そしてそのような子どもの成長する力を発揮させることができたのは母親の頑張りだったのだと思います。相談室登校の娘さんを見放すことなく、少しでも効果があることは惜しまず与え続けました。それとともに母親は、娘を支え続けるために自分の心の安定も求めました。娘さんは三者面談の中で一言も発しなくても、母親の言葉、カウンセラーの言葉をしっかり聞いていたのです。自分を支えてくれる人たちの中で自分は何をすべきかを考え続けていたのでしょう。子どもは母親や家族に支えられ、母親や家族は社会に支えられるような循環が子どもたちの成長には不可欠だとの思いを深めたケースでした。
2017年05月20日視覚過敏とは出典 : 視覚過敏とは、視覚情報の処理に関するはたらきに偏りがあるために、光の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。視覚過敏のある人は、そうでない人にとっては気にならないような光に対して一見過剰に見える反応をしてしまったり、本を読むときに文字がゆがんで見え、読みにくさを感じたりします。また、人の顔がモザイク画のように見えたり、暗いところが苦手だったりすることもあります。知的機能に遅れがないのに、視覚過敏によって勉強することができず学習が遅れてしまったり、デパートを歩くだけでさまざまな視覚情報が目に入り疲れてしまったりと日常生活によくない影響を与えてしまうことも珍しくありません。そもそも視覚過敏というのは、感覚過敏の一つだと考えられています。感覚過敏は、自閉症スペクトラムやADHDをはじめとする、発達障害のある人が訴えることの多い症状です。感覚過敏は、感覚に偏りがあり、特定の刺激を過剰に受けとってしまうものです。視覚過敏の他にも、聴覚・嗅覚・触覚・味覚が過敏なこともあります。他にも、感覚が敏感ではなく、むしろ鈍感なケースも見られます。「感覚に偏りがある」といっても、すべての人が似たような偏りがあるわけではなく、一人ひとり感じ方が異なることが特徴です。視覚過敏は、視力のよさや目の異常が原因ではなく、中枢神経の異常であったり、なんらかの発達に支障があるために起こると考えられています。このように視覚過敏をはじめとする、感覚の偏りは本人の努力や慣れでどうにか克服できるものではありません。本人にとって好ましくない刺激をできるだけ遮断することや、周囲の環境を調整していくことが大切です。しかし、周囲の人が感覚過敏の人に見えている世界を理解することは難しいとされています。そのため最近ではVR技術などを用いて感覚過敏の人に見えている世界を体験できるような技術が発展してきています。以下の動画は、視覚過敏・聴覚過敏のある子どもから見るデパートを再現したものです。VRではない、パソコンやスマートフォンの画面でも体験できるものになっています。※ただし、感覚過敏のある子どもと言っても、一人ひとりの感じ方や症状は異なるため、あくまでイメージ動画としてご参考にしてください。動画のなかで、何度も蛍光灯がピカピカ光ったように見えたり、足音が気になったり、お母さんの言葉が聞き取りにくかったりしています。他にも、ピーっという音やお金を落としたときの音など、不快に感じる音も聞こえています。感じ方は症状は一人ひとり異なりますが、感覚過敏の子どもは、動画のように周囲の刺激に過剰に反応するためにパニックを起こしてしまうこともあります。視覚過敏の人にとっての日常生活出典 : 視覚過敏があると、蛍光灯がまるでディスコボールのように感じられたり、太陽の光や夜間の車のライトがまぶしすぎたりします。またそれだけではなく、視覚過敏のある子どもは、目から入ってくる情報の処理能力や一度見たものを覚えておく能力が高いとも言われています。このような能力は、美術の時間に非常にレベルの高い写生ができたり、多くの人には区別することができないような微妙な色の変化にも気づいたりと、プラスの面も少なくはありません。その一方で、視覚過敏があると、目からの情報を大量に処理してしまうことがあります。普段、ほとんどの人は目から入る情報を無意識のうちに必要な情報と不必要な情報に分けて考えています。そうしないと、頭が一度に処理できる情報量を越えてしまい、頭がパンクしてしまうからです。視覚過敏のある人は、環境によっては、まさに頭がパンクしている状態で日常生活を過ごすことになってしまいます。視覚過敏をはじめとする感覚過敏が一般的に知られるようになったのはごく最近です。そのきっかけになったのが、感覚過敏の人が自分自身が生活している世界をことばで表現し、発信するようになったことです。自らが生きている世界を自伝した第一人者であるドナ・ウィリアムズさんのメモに以下のような内容が残っていました。これは、彼女がスーパーマーケットで買い物をしているときの体験を書いたものです。雑誌売場を通ると、私の目には次々と雑誌の見出しが飛び込んできます。私の頭の中には私が理解できないほどのものすごいスピードで様々な文字が洪水のように入ってきてしまうのです。雑誌売場を離れても見出しの文字はまだ頭の中に残っています。そのため、緑色や葉っぱ状のものを見ても、それが野菜だということが理解できず、それを自分が買いたいのかどうかさえもわからなくなってしまいます。また他にも、視覚情報に敏感なため、多くの人が気づかないささいな変化に気がついたり、大きな変化があるとパニックになってしまったりすることがあります。そのため本来は楽しい場所であっても、今まで行ったことのない建物や部屋に入ることを嫌がったりすることがあります。学校生活や日常生活に慣れてくると、だんだん新たな場面に出くわすことが少なくなり、症状が軽くなったように感じられますが、運動会やクリスマスパーティーなどの特別な行事のときに再びパニックになることがあります。視覚過敏のある子どもは、一度見たものを記憶する能力が高いために、突然なにかを思い出すことがあります。いわゆるフラッシュバックと呼ばれているものです。フラッシュバックが起きると勉強をしていたはずなのにいきなり立ち上がっておもちゃを取りに行ったり、悲しいことを思い出して泣いてしまったりすることも珍しくありません。記憶する能力が高いことはすばらしいことですが、記憶にとらわれすぎて、目の前のことに集中できないと困ってしまうので、周囲がやるべきことを整理するなどの工夫が必要になります。参考書籍:熊谷高幸/著者『自閉症と感覚過敏ー特有な世界はなぜ生まれ、同支援すべきか?』(新曜社・2017)子どもが文字を読むのが難しい…視覚過敏が原因かも?出典 : 先の章では、主に生活面で困ることを紹介してきました。視覚過敏の人は生活面だけでなく、学習面でも困ることがあります。視覚過敏が原因となって、黒板の文字や教科書の文字が正しく読むことができなかったり、読むのに時間がかかり過ぎたりするからです。知的障害がないにもかかわらず、文字が読めない症状を総称してディスレクシアと呼ばれています。文字が読めないという症状は視覚過敏以外が原因となることもありますが、ここではディスレクシアを引き起こす可能性のある視覚過敏の症状を紹介します。視覚的な要因でディスレクシアが生じる場合、文章を読んでいるときに、どこを読んでいるのかが分からなくなってしまいます。視力が悪いわけではないのに、このようなことが起こるのは、文字の見え方そのものが異なるからです。一般的に、視覚過敏の子どもはゆがんだ見え方によって次のような困難を抱えています。・読む速度が遅い・効率のいい読み方ができない・文章を読んでいると、疲れて眠くなってしまう・長時間、読み続けることができない・読むことで、頭痛や吐き気が生じるでは、ゆがんだ見え方とはいったいどのような見え方なのでしょうか?視覚過敏のある人は具体的に次のような見え方で文字を読んでいると考えられています。◇洗浄現象文章を読むときに、白い部分が明るく見えすぎて黒い文字の部分を見えなくしてしまいます。たとえば、通常は区別することのできる、アルファベットの"b"と"d"が同じように見えることが起こります。◇光背現象洗浄現象と同じように、文字の周りの白い部分が原因で、読むことを難しくします。光背現象で困っていたアメリカの学校の教師は、すべての文字の周りの白い部分が燃えるような輝きをもって見えていたと話しています。◇リバー現象文章を読んでいるときに、仮に文字がダンスをしているかのように動いていたら読みにくいと思いませんか。リバー現象とは、まさにその状態です。それぞれの単語が波打つかのように動いていて、止まったかのように見えた瞬間にまた動き始めてしまいます。◇オーバーラップ現象オーバーラップ現象は言葉の通り、それぞれの文字や文が互いに重なり見えてしまう現象です。一つの文に着目し、それを読もうとすると単語と単語が重なって動いたり、文同士が交差したりして読むことが難しくなります。◇回転現象文字が上から下に動いたり、逆に下から上に動いたりと、それぞれの文字がばらばらの動きをしているように見えると言われています。場合によっては、すべての文字がまわっているように見えることもあります。◇シェイキー現象文字がゆがんで見える現象です。例えば、文字がらせん状にゆがんだり、3Dのように、浮かんで見えたりします。◇ぼやけ現象水に浸したように文字がにじんで見えたり、目が悪い状態のように文字が二重になったり、ぼやけて見えたりします。◇シーソー現象一つの文がシーソーのように上下に動いて見えます。そのため、行間隔が狭い文章を読むときには、上下の文が重なりあうように見えることもあります。◇トンネル現象文字に目をやるときに一度にわずか数文字しか判別できないような症状です。そのため、単語の途中で改行されている文章を読むことや、学校の教師が黒板の右端に達したら、左にもどって授業を進めていくような場面に遭遇すると困ってしまいます。人によっては本を読むことが、1文字しか書かれていないフラッシュカードをひたすら連続的に読んでいく作業に感じてしまうそうです。英語の動画ですが、30秒を経過したあたりから、ゆがんだ見え方が体験できるので参考にしてください。このような文字の見え方をしていると考えると、例えば学校の授業中に音読をすることになりうまく読めなかったとしても、怠けていたり、やる気がなかったりするせいだとは思わないでしょう。視覚過敏のせいで文字をうまく読むことができない人は、本人が一生懸命読もうとしているにもかかわらず、読むことができないのです。参考書籍:Helen Irlen/著者『アーレンシンドロームー「色を通して読む」光の感受性障害の理解と対応』(金子書房・2013)子どもが視覚過敏かなと思ったら出典 : 子どもの行動で気になる点があるときには、まずは行動をよく観察してみましょう。どのような状況で子どもが行動しているのか観察することで、子どもがどんな刺激に対して敏感なのかや、嫌悪感を抱いているのかを知る手がかりになります。子どもが不可思議な行動をとる背景には、なんらかの理由が隠れていると考えられます。視覚過敏の子どもにとっては、光がチカチカするのも文字が動いて見えるのも生まれながらの症状であるため、それが異常だと気づきにくいです。そのため、周囲の大人が子どもの感覚の特徴を知ることが重要になります。他にも、視覚過敏と似た症状であっても、視覚過敏ではない目の病気が背景に潜んでいることがあります。例えば、光に対して敏感になり、普段では気にならないような光を目があけられないほどまぶしく感じることがあります。このような症状は、緑内障や白内障などの目の病気あるいは、コンタクトの長期間利用やパソコンの見過ぎなどによって生じている場合があります。これらを素人が判断することは難しいため、専門家に相談するようにしましょう。視覚過敏に関する相談先としては、眼科や保健センター、子育て支援センター、児童発達支援事業所などが挙げられます。視覚過敏への対処法出典 : 視覚過敏の症状を根本治療する方法は、現状見つかっていません。しかし、工夫をすることで、子どもにとって生活しやすくなったり、文字を読むことが困難だった子どもがすらすら読めるようになるケースがあります。視覚過敏の子どもが生活していくうえで、子どもが安らぐことのできる空間を作ってあげるとよいでしょう。視覚を刺激するような光がなく、落ち着ける環境で、子どもが音楽を聞くことや、好きなことをできるような空間です。サングラスをかけることで、太陽の光などが気にならなくなることもあります。また、感覚過敏で苦しんでいる人の自伝の中で、片目ずつ別々のものを見ることで目に入ってくる情報を限定したり、逆にさらに強い刺激を自分に与えることでパニックになることを防いだりする方法が紹介されています。このような工夫は人それぞれなので、子どもに合った方法を探していくことが大切です。文字の読みにくさを解消する方法としては、色つきメガネを利用する方法と、文字の大きさなどを調整するなど手軽にできる方法があります。文字が大きくわかりやすい字体(フォント)にしたり、読みたい範囲以外を隠したり、長い文をスラッシュで区切ったりすることで文章を読みやすくできます。蛍光ペンで重要だと思われるところにだけ色を付けることで、読む情報量を調整できます。これにより、文章を読むことへの抵抗を減らせます。また、白黒のコントラストが原因で文章が読みにくい場合、紙の色を白から変えるだけで読みにくさが軽減されることもあります。参考書籍:山口真美/著者『発達障害の素顔ー脳の発達と視覚形成からのアプローチ』(講談社・2016)視覚過敏で文字が読めない人の中には、アーレン法と呼ばれる色つきメガネをかけることで、文字が読めるようになることがあります。56秒から2分05秒を見てみると、色つきメガネの有無で音読する速さに差があることが分かると思います。アーレン法では、一人ひとりにあう色つきメガネの色が異なるため、スクリーニング検査等をしたうえで、どの色がベストなのか調整していきます。アーレンシンドロームを知っていますか?|筑波大学附属学校教育局まとめ出典 : ここまで視覚過敏の人から見た世界や、視覚過敏の対処法を紹介してきました。視覚過敏の子どもを育てていると、音読がうまくできなかったり、楽しませようと思って連れて行った場所でパニックを起こしたりするかもしれません。しかし視覚過敏でいちばん大変な思いをしているのは、間違いなく視覚過敏のある子ども自身です。視覚過敏のある子どもが快適に生活していくためには、周囲が正しい理解をして、子どもが生活しやすい環境を整理したり、適切な配慮をしたりすることが大切になってきます。また、視覚過敏のある子どもは、これからずっと視覚過敏と付き合っていくことになります。日々生活していく中で、両親と子ども自身が協力しながら、その子なりの視覚過敏への対処法を見つけていけるといいのかもしれませんね。
2017年05月19日精神疾患とは?出典 : 精神疾患とは、広義に解釈すると、 なんらかの脳の働きの変化により心理的な問題が生じ、感情や行動などに著しいかたよりがみられる状態のことです。ですが、精神医学の領域においても「精神疾患」という言葉は、普遍的かつ確立された定義がありません。使われる場面や診断基準、医師によっても定義や概念にばらつきがあり、いまもなお見解の違いで議論が行われることもあります。この記事では、こころや脳のはたらき、または発達の過程における問題により引き起こされる、思考、行動、感情のコントロールにおける医療の介入が必要な状態について、ひとまず「精神疾患」という言葉を用いて説明していきます。精神疾患についての詳しい定義やどのような種類があるかについては以下の記事をご覧ください。精神疾患の代表的な症状出典 : 精神疾患には様々な種類の疾患があり、疾患ごとに症状も大きく異なります。また症状の種類も多種多様です。とはいえ、抑うつや不安などに代表されるように、精神疾患の症状のほとんどは一般の人でも経験するよくあるものです。疾患であるかどうかを決めるのは、症状の組み合わせと症状の程度、そして症状が続いている期間です。しかし、精神疾患ごとに、それぞれ症状の組み合わせも程度も、判断の目安となる期間も異なります。以下において、精神疾患の代表的な症状を紹介いたしますが、あくまでも参考程度にとどめていただき、もし少しでも不安になった場合は専門機関に相談するようにしましょう。・抑うつ気分:つらい・悲しい・憂鬱・むなしいなどの気持ちになり、気力がでない状態です。・幻覚:実際には刺激や対象が無いのに、それについて生じている知覚のこと。幻聴が代表的ですが、幻視、体感幻覚などもあり、幻聴にもさまざまな種類があります。・妄想:根拠が無い非合理で訂正不能な思いこみ。本人は妄想とは認識しにくいものです。・離人:自分が自分であるという実感がしない、あるいは外界と自分との間に奇妙な隔たりを感じてしまう状態です。・強迫:止めたい気持ちがありながらも、一方でそれをやらなければ気が済まないようにも感じ、同じ思考や行為を繰り返してしまうことを指します。精神疾患をチェックする方法はあるの?出典 : 全ての精神疾患をご自身でチェックする方法はありませんが、うつ病などの個々の病気を評価する尺度はあるので、以下に紹介いたします。ここで注意していただきたいのは、以下に紹介するチェックリストは、何点以上なら病気であると判断するものではないということです。あくまでも、その傾向があるということを示すだけなので、チェック結果の意味づけについては医師と話し合う必要があります。チェックして少しでも不安に思った場合は結果をもって医療機関に相談しましょう。以下のリンクでは、厚生労働省がストレスチェックを実施する際に推奨する「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基づいて制作されたテストが簡単に行えます。職場でのストレスレベルを約5分程度で測定することができます。リンク:5分でできる職場のストレスセルフチェック|こころの耳HPCES-Dは一般人がご自身でのうつ病を発見する目的で米国国立精神保健研究所により開発された自己評価尺度です。質問項目は20問で所要時間は10-15分、対象年齢は15歳からとなっています。リンク:CES-Dによるうつ病症状の簡易チェック|せせらぎメンタルクリニックHP精神疾患かな?と思ったら、どの病院の何科に行けばいいの?出典 : まず患者本人およびその家族から、主訴(何に困っているのか)、現病歴、既往歴(以前かかっていた病気のこと)、家族歴、生活史、家庭環境や職場環境などを聞き出します。次に、集めた情報や診察室で観察される症状から、患者さんが伝統的精神疾患の分類のどれに属するのか総合的に診断を決めていきます。おおむね以上のような流れで進みますが、医師により異なる手順をとる場合もあります。精神疾患をみる診療科は精神科や精神神経科、心療内科や神経内科など、かなり名称にばらつきがあります。◇精神疾患が心配なら精神科、精神神経科、神経科これらの科は、名前が異なりますが診ている病気は精神疾患で共通しています。◇心理的な問題が関与している身体症状を解消したいなら心療内科心療内科は、心理的な問題が原因で、胃潰瘍などの身体的な症状が出ている場合(いわゆる心身症)を対象としています。とはいえ、軽いうつ病などの一部のこころの病気を診ている場合もあるので、もし通いたい心療内科がある場合は、事前に電話して、自分が抱える悩みが対象かどうか調べる必要があります。◇認知症やてんかんが疑われるなら神経内科も神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉の病気を主な対象としています。認知症やてんかんなどは精神科だけでなく神経内科でも診ています。一部の神経内科では、こころの病気を診ている場合もあるので、気になる場合は電話して聞いてみる必要があります。一般的には看板ごとに以上のような住み分けがされていますが、診療科名からどのような病気を対象としているのか確かめにくいこともあるので、あらかじめ電話やHPで確認するとよいでしょう。参考HP:医療機関の探し方、選び方|厚生労働省HP精神疾患かな?と思った時に、病院を選ぶポイント出典 : どの医療機関を受診するか迷ったときのポイントを紹介いたします。医療機関により、どのような病気を専門としているか異なるので、まず、その医療機関が何を専門としているのか調べる必要があります。以下のリンクでは診療科目や診療日、診療時間、どのような疾患を治療しているかなどの全国の医療機関の詳細を検索できます。是非ご活用ください。医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について|厚生労働省HP精神科医にも、統合失調症に詳しい医師や発達障害の治療に慣れている医師など、それぞれ得意分野があります。受診前に、電話やインターネットのHPなどで問い合わせたり、どのような分野を得意としている医師が在籍しているのか調べたりすることをおすすめします。医療機関の専門性の他に、どのような治療プログラムがあるのかも調べることをおすすめします。医師の診察とは別に、カウンセリング、作業療法、その他様々な治療プログラムを行っている場合があります。また、その医療機関がどのようなスタッフを配置しているのかも医療機関の性質を知る上で参考になります。カウンセリングを通じて心理的な問題を解決に導く臨床心理士 、デイケアなどで心身のリハビリテーションに携わる作業療法士 、言語機能の回復や発達に関わる言語聴覚士、これらの多職種や外部機関との連携をとり社会復帰をサポートする精神保健福祉士など、精神医療に携わる職種は多岐にわたります。自分やご家族には今後どのようなサポートが必要なのか見極め、状況にあった医療機関を選びましょう。作業療法士ってどんな仕事?|日本作業療法士協会HP精神疾患は通院治療が必要な期間が長くなることが多いので、通いやすさを十分考慮する必要があります。駅から遠かったり、受診可能な時間が自分の生活と合わなかったりすると、どうしても通いづらくて治療中断してしまう可能性もあるので、自分が通い続けられる場所かよく調べる必要があります。診察・治療を担当する医師との相性は特に大切です。実際に医師と話してみて、ご自身がどのように感じるのかで相性の良し悪しを判断しましょう。医師に対して不信感を持ったまま診療を続けるより、信頼関係を構築できる医師を見つける方が、治療もうまくいきます。どうしても相性が悪いなと思ったり、医師の説明に納得が行かない場合は、セカンドオピニオンを求めてみるのもひとつの方法です。その場合、紹介状は必ずしも必要ではありませんが、新たに受診してみようとする医療機関に対し、セカンドオピニオン目的での診察を受けてくれるかどうか予め尋ねた方が良いでしょう。最初にかかった医療機関に全てお任せするのではなく、 医療を使いこなすという姿勢 が大切です。どの病院のどの診療科に行けばいいのか迷ったり、そもそも受診すべきか迷ったりすることもあるのではないでしょうか?そんな時は、お近くの精神保健福祉センターや保健所に連絡すると、専門家が相談に乗ってくれますので、気兼ねなく連絡してみましょう。以下のリンクで、全国の精神保健福祉センター、保健所を検索できます。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省HP保健所一覧|全国保健所長会HP夜間休日精神科救急医療機関案内窓口|厚生労働省HP精神疾患の治療法出典 : 精神疾患の治療法は、大きく分けて身体的治療と心理的治療の2つに分かれます。以下、それぞれについて紹介いたします。代表的なものが、薬物を用いた薬物療法です。他に、高照度光刺激療法、修正型電気けいれん療法、経頭蓋磁気刺激法(けいとうがいじきしげきほう)などの身体に物理的に働きかける療法を指します。身体療法とは対照的に、心理的な手段を用いて患者の心身に働きかけるもので、さまざまな理論・アプローチがあります。たとえば、行動をよりよい方向に改善していく行動療法、患者のかたよって硬直した思考パターンを変えていく認知療法、無意識の葛藤や防衛を分析していく精神分析療法、クライエントの訴えを受容することに徹する来談者中心療法などが代表的です。それらの技法をさまざまに取り入れた折衷的な方法が、日本における「カウンセリング」の主流となっています。その他にも自律訓練法、箱庭療法、遊戯療法、森田療法などがあります。医療機関で精神科医が行う面接や心理的治療を「精神療法」、心理士が行うセラピーを「心理療法」と呼ぶことが一般的です。参考:メンタルヘルス関係|こころの耳HP日本精神神経学会では、精神科の入院が適応となる状態を以下のように記しています。・幻覚妄想状態・著しい興奮状態・躁状態・重症な自殺念慮・長く続いている重症うつ状態などです。(引用:Q.入院が必要となるのは、どのような時でしょうか?|日本精神神経学会HP)入院した場合、身体的治療や狭義の心理的治療に加えて、生活、社会機能の改善を目的に、集団精神療法やレクリエーション療法、作業療法、家族への心理教育プログラムなどがおこなわれます。精神疾患に苦しむ人への対応の仕方出典 : こころの不調に悩む方と接するときに基本となるのは、 話を真摯に聞くことです。その人が今どんな気持ちでいるのか、何に悩んでいるのかじっくりと時間をかけて話を聞きます。自分の価値観を押し付けたり、否定したりせず、ただただ聞き手に徹します。こころの不調に悩んでいるときは、ただ自分の気持ちを聞いてもらい、共感してもらうことで、いくらかでも癒やされるものです。その際、気をつけるべきなのは、本人の苦しみを完全にわかっていると思い込んでしまうことです。本人が味わっている苦しみを、その人と全く同じように感じることは不可能です。「わたしはあなたのことをわかっている」という思い込みは、一方的な価値観の押し付けにつながりやすく、本人を傷つけてしまうこともあります。本人が抱えている問題を完全に理解することはできないことを心に留めつつ 回復してほしいと願っていること、そして、その人が悩んでいる問題は、その人自身の弱さや性格によるものではなく、もしかしたら医学的な問題であり専門家による治療が必要かもしれないこと を伝えます。適切な援助を受けることがどれほど有益なのか具体的に伝え、信頼できる支援者を探す手伝いをすることが大切です。精神疾患に苦しむ方が受けられる経済的な支援出典 : 精神疾患にかかった場合、障害者手帳の交付や医療費助成などの支援を受けられます。自立支援医療(精神通院医療)とは精神疾患がある方で、かつ、通院による継続的な治療が必要な場合、その通院医療にかかわる医療費負担が原則1割になる制度です。詳しくは、以下のリンクをご参照ください。自立支援医療(精神通院医療)について|厚生労働省HPこの制度は、負担の上限金額を超えた高額な医療費を支払った際に、その超過分の払い戻しを受けることのできる健康保険制度です。以下のハンドブックの12-15ページをご参照ください。精神障がい者と家族に役立つ社会資源ハンドブック|厚生労働省HP重度の心身の障害がある方が、保険証を使って病院に受診した場合、自己負担金が助成される制度です。各自治体ごとに、対象となる障害やその度合い、支援内容がかなり異なります。また、この助成を受けるにあたり注意点が2つあります。1点目は平成27年8月1日以降に新たに障害者の診断を受けた場合には、助成の対象とならないことです。2点目は、所得制限が定められているため、生計を同じくしている人の所得が一定額以上の場合には助成の対象外となることです。詳しくはお近くの市役所などにご相談ください。精神障害者保健福祉手帳を取得した場合、等級にもよりますが所得税や住民税、贈与税などの控除や生活保護の障害者加算、各種手当てが受けられます。詳しくは以下の記事をご参照ください。「障害年金」とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働く上で、あるいは日常生活を送る上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。障害年金の障害認定基準は障害者手帳の障害認定基準と異なります。そのため障害者手帳で1級でも、障害年金では異なる場合があります。詳しくは以下の記事をご参照ください。精神疾患に苦しむ方が受けられる生活面の支援出典 : その方が何らかの行動をする際に生じうる危険を回避するために必要な援護を行うサービスです。外出時における移動中の介護や排泄、食事などの介護、その他日常生活での行動の援助が行われます。精神障害による行動上著しい困難があり、常時介護を必要とする場合に利用できます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。参考:行動援護|独立行政法人福祉医療機構HP生活介護では、介護を常に必要としている方に対し、入浴や排泄、食事などの日常生活の援助や、創作的活動や生産活動の機会の提供、各種相談などを、主に日中において行います。参考:生活介護|独立行政法人福祉医療機構HP家庭など、居住している場所にホームヘルパーを呼び、食事や入浴、その他日常生活の援助を受けることができます。利用対象者は、原則として精神障害者保健福祉手帳の保持者、あるいは障害者年金を受けている方で、かつ、日常生活に支障がある人です。施設入所支援では、主として夜間において、食事や排泄などの日常生活の援助や相談が行われます。日中の訓練などサービスも同じ施設で行われます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。障害福祉サービスの内容|厚生労働省HP共同生活援助とは主に夜間において少人数での共同生活を援助するサービスです。個別の支援計画を立てた上で、相談や入浴、排泄などの日常生活の援助を行います。詳しくは以下のサイトをご参照ください。共同生活援助|独立行政法人福祉医療機構HP在宅の精神障害者を対象に、介護者の事情で一時的に介護困難の場合利用することができます。夜間を含め施設で、入浴や食事などの日常生活の援助が行われます。利用が可能な期間は基本的に7日以内で、事情がある場合は必要最小限の範囲で延長可能です。グループホームなどの夜間のサービスは、自立訓練や就労移行支援、地域活動支援センターなどの昼間のサービスと組み合わせて利用するのが一般的です。精神科訪問看護/精神科デイ・ケア(通院以外の治療)出典 : いずれも在宅での生活を支えるサービスで、上記の自立支援医療(精神科通院医療)の対象です。自宅などの居住している場所で保健師、看護師、作業療法士、精神保健福祉士などにより行われる療養上の世話または必要な診療の補助を行うことを指します。具体的には病状の観察と情報収集や日常生活の維持、対人、家族関係の調整や精神症状の悪化の予防、社会資源活用の補助等が行われます。詳細は以下のリンクでご確認ください。参考:訪問看護について|厚生労働省HP精神科デイ・ケアは、社会で生活するために必要な能力の回復を目的として、グループでの治療をおこなうものです。利用時間や利用開始時間に応じてデイ・ケア、ショート・ケア、ナイト・ケア、デイ・ナイトケアなどの種類があります。統合失調症やうつ病などの疾患別プログラムや、高齢者や思春期、青年期などの年代別プログラム、家事能力や復職支援などの目的別プログラムなど、様々な内容があります。施設により内容が異なります。保健所や精神保健福祉センターで行っている場合は費用はかかりませんが、医療機関の場合はかかります。とはいえ、自立支援医療(精神通院医療)を利用すれば、自己負担額は減ります。参考:精神科デイ・ケア等について|厚生労働省HP精神疾患に苦しむ方が受けられる社会復帰の支援出典 : 地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上などのため、一定の支援が必要な方を対象に、入浴・排泄・食事などの日常生活を営むために必要な訓練や相談などの支援を行います。たとえば、入所施設を退所した方や病院を退院した方、特別支援学校を卒業した方などが例に挙げられます。自立訓練(生活訓練)対象者のうち、就労移行訓練などの日中のサービスを利用している方が対象です。地域での生活に向けて一定期間、住まいの場を提供して帰宅後における生活能力などの維持・向上のための訓練その他支援を行います。一般企業などへ就職を希望する方に、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練を行います。詳しくは、以下の記事をご参照ください。一般企業などでの就労が難しい人に働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のための必要な訓練を行います。雇用型のA型と、非雇用型のB型があります。創作的活動や生産活動の機会の提供、社会との交流などを行う通所施設です。まとめ出典 : 精神疾患の症状ははっきり目に見えるものではありません。症状のつらさだけでなく、周囲の方からの理解を得ることができずにつらい思いをされている方も多いのではないでしょうか?もし、長らく精神の不調に苦しまれているのなら、一度医療機関や相談機関に話を聞きに行くことをおすすめします。自身にどのような傾向があるか知り、その対処法を知ることで、自分だけでは気づけなかった突破口が見つかるかもしれません。良い専門家に出会うかどうかで、生活が変わります。自分の苦しさを理解してくれる相性の良い専門家に出会うまで、諦めずに探してみることをおすすめします。難しいことですが、気長に少しずつ、出来ることから着実に、ときには人の手を借りながら問題を一つひとつ解決していく心持ちが必要なのかもしれません。こころの不調は回復に時間がかかることが多いので、支える側の負担も無視できないものとなります。本人と良好な関係を保ち、その方と共に生きていくためには一人で抱え込まないことが大切です。家庭の中だけで解決しようとせず、少し勇気を出して、医療機関や支援サービス、経済的支援や相談窓口などを積極的に活用することをおすすめします。
2017年05月18日聴覚過敏の息子の「魔法の呪文」出典 : 先日、人混みに酔ってしまう凸凹姉弟を連れて、平日に休みを取ってテーマパークへ遊びに行ってきました。私たちの他には数組の観光客がいるだけでしたので、子どもたちの緊張度合いも軽く、ゆっくりと楽しめていたように思います。ところが、マイナス20℃の世界を体験できるというブースに入った時のことです。予想に反し、お化け屋敷のような造りになっていたため、息子は怖がって私の手を握り前に進めなくなってしまいました。早く脱出しようと、息子を抱っこして足早に出口に差し掛かったところで、「バーン!」という大きな音とともに冷風が吹きつけられてきました。その瞬間、聴覚過敏の息子はパニックに陥りました。私の胸にしがみついたまま目をつぶって大粒の涙を流し「怖い!怖い!」と泣き喚き、誰の声も届かない状態になってしまったのです。息子を抱いたまま慌ててその場を離れ、花壇の側に腰を下ろして、息子の顔をそっと両手で挟んでこちらを向かせます。私「大丈夫、大丈夫!ママはここにいるからね。とりあえず、あの呪文を言ってみるよ!せーの!」二人「「ああ、ホッとした!」」まだ小さい頃、しょっちゅうパニックに陥っていた息子と二人で決めた魔法の呪文、それが「ああ、ホッとした!」です。ママと目を合わせてこの呪文を唱えたら、心が落ち着くからね。パニックを終わらせられるからね。そうやって、何年も一緒に唱えてきた呪文のおかげで、息子は今回もあっさりとパニックから抜け出すことができました。次の瞬間にはもう花壇を眺めながら「きれいねぇ」「ママはこの色のお花が好きそうだね」とのんびりとお話しています。確かにあの大きな音には私も驚いたけれど、息子にとっては考えられないほどの衝撃があったんだな。そう考えつつも、こんなにあっさりと抜け出せるなら、さっきの大泣きは何の意味があったんだろう?そんな疑問もわいてきました。一体、どうして息子はパニックに陥ってしまうのでしょうか?パニックに陥ることで、息子に何かメリットがあるのでしょうか?パニックの時、息子の中で何が起こっている?出典 : そんなことを考えながら息子の手を引いて歩いているうちに、とあるテレビ番組を思い出しました。臆病な芸人さんたちをわざとビックリさせて、彼らが驚くようすを見て楽しむという番組です。テレビは作られた世界なのでやらせや演技だという意見もあるそうです。しかしわが子たちも、驚いた時や恐怖を感じた時は固まって動けなくなったり、飛び上って尻もちをついたりしています。それを思うと、番組での芸人さんの反応は、あながち演技ではないと感じたりもします。さて、その番組の中で、ある芸人さんがパニックを脱するために必要なことを「怖いという気持ちを抜く」と表現していました。そして今回、息子がパニックから抜け出すまでの過程を見て、息子も怖いという気持ちを抜くために、パニック状態に陥ってるのかしれないなと思うようになりました。感覚過敏の息子には、突然降りかかってきた大音量は恐怖以外のなにものでもなかったのだと思います。私たちが「わぁ!ビックリしたなぁ!」と笑えるほどの音であっても、息子は何百倍、何千倍という強烈な感覚で受けて止めているのでしょう。そして、全身を襲う恐怖の感情をなんとか体から追いだそうと、大声で泣き叫んだり、逆に何も感じないように固まったりして、「怖いという気持ちを身体から抜く」作業を行っているのかもしれない。そう思うと、少し息子を理解できたような気がしたのです。だから、私と「ああ、ホッとした」という呪文を唱えることで、「怖いという気持ちを身体から抜く」という作業は完了し、いつもの息子に戻れたのではないでしょうか。今まで息子がパニックに陥るたびに、私は一刻も早くパニック状態から抜け出させてあげることだけを考えていました。周囲への配慮もありますが、なによりも息子が一番辛そうだったからです。しかし、パニックに陥るのにも意味があるとわかったことで、「どうしようもないほど怖かったんだね」と共感し、「怖い気持ちは追いだせた?」と声をかけることができるようになりました。息子が感じる恐怖がどれぐらいのものなのか、他人である私には本当の意味で理解することはできません。ですが、寄り添ってくれる人がいるということだけでも、安心して過ごせる材料になるかもしれないと思っています。保護者として私たちにできること出典 : 発達障害を抱えるお子さまの中には、パニックを起こしてしまう人も多くいらっしゃると思います。それを支えるご家族の方も本当に大変です。でも、次にお子さまがパニックを起こした時には、「今、恐怖を追いだそうと戦ってるんだな」「行き場のない感情を処理しようとしているんだな」と少し視点を変えて見守ってみるのはいかがでしょうか?パニックの内容を言語化してあげることで、お子さま自身も、なぜ自分がパニックに陥ってしまうのかがわかり、別の対処法が見えてくるかも知れません。残念ながら、些細なことに恐怖を感じたり、上手く体を動かせなかったりすることで、からかいやイジメのきっかけになるようなこともあります。今の私たちにできることは、苦手な刺激から子どもたちを守り、対処方法を一緒に探ること。そして、「自分を大切にしてくれない人からは全力で逃げなさい」と教えてあげることぐらいなのかも知れませんね。
2017年05月17日アスピーガールの心と体を守る性のルールUpload By 発達ナビ編集部自分に自信がなくて相手に合わせるけれど、とても疲れる…「付き合っているのだから」と、相手の言うことをなんでも聞いてしまい、心も体も傷ついてしまう…友人関係を築くのも苦手だから、恋愛や性に関する情報源も少なくなりがち…そんな、アスペルガー症候群傾向の思春期女子が陥りがちな恋愛や性のトラブルから、自分たちの心と身体を守り、パートナーとより良い関係を育んでいくための書籍、『アスピーガールの心と体を守る性のルール』が東洋館出版社より発売されました。この本の著者は、自身も29歳でアスペルガー症候群と診断を受けた当事者であり、現在は自閉症の研究に従事する女性、デビ・ブラウン氏。「親愛なる妹たちへ」と呼びかけながら、主に著者よりも若い思春期の女の子たちに向けて本を書かれています。書名に「性のルール」と銘打たれている通り、本の後半ではアスペルガー女子にとって情報が得にくい性の情報や自衛についてのことが中心に書かれていますが、前半には、そもそも自衛が必要な危険な状況をつくりだす元となる、アスペルガー女性に特有の「生きづらさ」とその対処法についての情報にページが費やされています。その結果、アスペルガーとしては未診断でも、自分の感情や人間関係、ノーと言うのが苦手など、何かしらの生きづらさを抱える若い女の子にとって参考になる内容となっています。男の子のアスペルガーと、どう違う?出典 : アスペルガー症候群の特徴としては、「あいまいなコミュニケーションが苦手」「相手の気持ちを理解するのが苦手」などがよく挙げられ、他人からはマイペースな印象を持たれがちだと言われています。しかし本書によると、アスペルガー女子(本書では親しみを込めて"アスピーガール"と呼ばれます)は「人に嫌われたくないという気持ちから、本当の姿を隠し、壁を作ってしまう」「(他人に)ノーと伝えるのが苦手な人が多い」「完璧を目指しすぎることで、ストレスや不安を感じ、必要のないプレッシャーに襲われてしまう」などと、むしろ過剰なまでに他人に気を遣ってしまい、その結果しんどくなってしまうような、傷つきやすく繊細な特性を持っているのだということです。本書では、そんな彼女たちが、恋愛と性の問題にどのように対処していけば良いかの指針を示しています。あえて性をテーマの中心においた理由出典 : 生きづらさを抱えやすいアスピーガールにとって、日々の困りごとは多岐に渡ります。そのたくさんの困りごとの中でも、なぜ本書では、性をメインのテーマに置いたのかを考えてみました。つまるところ、アスペルガー女子は、良くも悪くも常識にとらわれないからこそ、危険な目に遭うリスクも多いといえるからではないでしょうか。心や体が傷つけられると時には取り返しのつかないことになりうるからこそ、筆者はアスピーガールの先輩として、本書を執筆したのだと思います。・自分を好きになるための7つのルール・悩みを聞いて支えてくれる「サポーター」の見つけ方・自分と相手との境界線を持ち「ノー」と伝えることの大切さ…などなど、アスピーガールたちが、自分の心と体を守りながら周囲の人やパートナーと関わっていくためのヒントが、本書には満載です。生きづらさを抱えるアスピーガール本人だけでなく、親御さんや先生方など、アスピーガールに関わる大人の方々にも読んで頂きたい本です。アスピーガールの心と体を守る性のルール
2017年05月16日「聴覚過敏」で辛い思いをしてきた長男出典 : 聴覚過敏のある長男は、小さい頃から色々な「音」に敏感でした。掃除機の音をひどく怖がったり、ハンドドライヤーの音が怖くて外出先のお手洗いに行けなかったり、赤ちゃんの泣き声が苦痛で赤ちゃんそのものが怖くなってしまったり…。今でも生活するのがとても大変そうです。また、大きい音だけに限らずザワザワした空間も苦手です。ザワザワで不安が強くなると更に過敏が強くなって、音の洪水に飲み込まれそうになり耳を塞いで逃げ出してしまうことがしょっちゅうでした。そんな長男のお守りアイテム「イヤーマフ」Upload By OKASURFER長男は「音」から逃れるためにしょっちゅう両手で耳を塞いでいました。それでは両手が使えずに危険だと思った私はなんとか耳を手で塞がずに済む手段がないかと手に入れたのが「イヤーマフ」です。イヤーマフとは大きな音を遮断したりノイズキャンセリングするアイテムで、見た目は「ヘッドフォンのコード無し」みたいなものです。身近な通販サイトなどでも販売しており、ヘリコプターの操縦士やスナイパーになるつもりでもない限り、1000円程度で買えるお手頃なものも多いです。我が家が購入したのも「使わなかったら勿体ないから」という理由で一番安い1000円弱のもの。それでもこのイヤーマフは、今や長男の大切なお守りになっています。集団生活に雑音はつきものだから出典 : 保育園など集団生活を行うときには教室にイヤーマフを置かせていただいていました。はじめて見るイヤーマフに「これ何?」「音楽が聞こえるの?」「僕にも貸して」とイヤーマフに興味を示すクラスのお友だち。そんなとき先生は「Aくんは大きな音が苦手だから、これで耳をふさぐんだよ。大切なものだから勝手に使わないようにね。」「じゃあAくんがびっくりしないために、みんなはどんな大きさの声で話すといいのかな?」などと、長男の聴覚過敏についてわかりやすくお友だちに伝えてくださっていました。そして何ヶ月も経たないうちに、長男が辛そうな時には、クラスのお友だちが長男のもとへ率先してイヤーマフを持ってきてくれる姿も見られ、子どもたちの素直で純粋な優しさにとても感動したものです。しかし一歩街中に出ると向けられる冷たい視線...出典 : とはいえ、日々の生活の中でいつでもどこでも「これは音が苦手だから付けているんです」と説明できるわけではなく。パッと見た目は大人用のヘッドフォンと変わらないため、装着するとどことなく漂う「NO MUSIC, NO LIFE」感。出かけ先や電車の中でイヤーマフをしていると「なぜ子どものくせにヘッドフォンをしているんだ?」「変なイキがった格好をさせて」「なんか変な子なのか?」「変な親なのか?」と、上から下まで2往復ほど舐めるように見られることが多いのです。ときには半笑いで、ときには汚い物を見るような目で。卑下するような目線を感じる時は、この視線を子どもが受け取ってはいないだろうかととっても辛い気持ちになります。ナチュラルにイヤーマフを着こなすために!母が取った苦肉の策周りからの視線なんて気にしなければいいのかもしれませんが、あいにくガラスのメンタルしか持ち合わせていない私。嫌〜な視線に耐えかねて、なんとかこのイヤーマフを街中でナチュラルに装着できないものかと考えました。そしてイヤーマフの「ヘッドフォン感」を逆手に取った作戦がこちらUpload By OKASURFER「NO MUSIC, NO LIFE」そして「Apple」のシールを貼ることで渾身の「リア充イヤーマフ」を作り上げ、長男に提案しました。これならば、相変わらず変な子、そして変な親とは思われるかもしれないけれど、「そういうファッションですけど何か」というバリアを張ることができるはず!……が、息子は2秒でステッカーを剥がしました(爆)そうでした。トンカツにソースがかかっていると拒否し、ごはんと納豆は別に食べたいタイプの長男。大切なイヤーマフをプレーンなままで使いたいのは当然のことでした。知ってほしい「イヤーマフ」のこと出典 : 「イヤーマフを街に溶け込ませるリア充作戦」に失敗した私はもう一つのことを考えました。【街中の人にイヤーマフのことを知ってもらう作戦】です。と言っても何か大きなプロジェクトを行えるような超能力は、私のような一介の主婦には無いので、私が今できる唯一の周知方法「発達ナビのコラムに書く」という作戦に出たわけです。ここまで読んでくださったのも何かの縁、もし今後街中で紐無しヘッドフォンを付けている人を見かけたら「おっ、あれか!」と温かい目で見守っていただければ…そんな気持ちでこの記事を書いています。足が不自由な方の車椅子、目が不自由な方の白状のように、「耳が聞こえすぎて困っている人のイヤーマフ」をもっと知ってほしい。そして、イヤーマフのことを知らない周りの方にもそっと伝えてほしい。そんな風に思います。「知らない」「得体が知れない」からこそ嫌な物を見る視線を向けてしまうのだと思います。逆に言えば、知っている人が増えればもっともっと温かい視線が街にあふれるのではないでしょうか。さて、街中で「リア充式ではないプレーンなイヤーマフ」を付けている子どもがいたら、それはうちの子かもしれません。見かけたらぜひ「おっ、あれか!」と、このコラムのことを(ついでに私のつまらない苦労話も)思い出してニヤっとしていただけると嬉しいです。
2017年05月16日民間の発達障害支援施設はどう選べばいいの?専門家に聞きました。発達に凸凹がある子どもの保護者にとって「どんな民間の支援サービスや学習塾を選んだらよいか」は頭を悩ませるテーマのひとつ。長年、特別支援教育の第一人者として活動を行ってきた大南英明先生に、民間の発達障害支援サービスの種類や選ぶ際に気をつけるべきこと、早期療育の意義などをお伺いしました。Upload By 福井万里【プロフィール】大南 英明全国特別支援教育推進連盟理事長1937年生まれ。公立小・中学校教諭、養護学校教諭を経て、東京都教育委員会指導主事に就任。文部省初等中等教育局特殊教育課教科調査官、東京都教育庁指導部心身障害教育指導課長、都立青鳥養護学校長を経て、98年帝京大学文学部教育学科教授に就任。2003年4月から帝京大学文学部教育学科長を兼任。2005年帝京大学小学校初代校長。2008年帝京大を定年退任、放送大学客員教授。人権擁護推進審議会委員。民間の発達障害支援サービスにはどんな種類が?一般の学習塾も有力な選択肢出典 : ー民間による発達障害支援サービスはどんな種類があるのですか。発達障害支援をする民間サービスというと、大きく分けて、2つの大きな流れがあろうかと思います。・発達障害児への支援を専門として受け入れる療育施設・発達障害児の受け入れをうたっていない一般向け学習塾前者の発達障害児向け専門の事業者は、バックに大学などの専門機関がある場合もあり、担当の指導員だけでは難しい場面には心理の専門家に相談できる仕組みなど、システムや組織が非常にうまくできている傾向があります。例えば、東京未来大学がバックにある三幸学園や、社内に研究所があり専門家の監修体制も敷いているLITALICOジュニア、武蔵野東学園(自閉症児の積極的受け入れを実施)と提携してカリキュラムを作った四谷学院には、発達障害のある子どもに合った専門的なカリキュラムやプログラムがあります。見落としがちなのは、後者である、看板に発達障害児の受け入れを銘打っていない学習塾です。ーそれは盲点ですね。実際、こうした学習塾の中には、30年以上前から現場レベルでさまざまな障害のある子どもの受け入れに取り組んできている施設もあるのです。 そういう施設は、最初は知的障害への支援が主でしたが、近年は発達障害への対応力も高めてきており、私自身どう指導していけばよいか相談にのってきました。独自のノウハウを学習塾ごとにためていっており、コマーシャルやプログラムなどには「発達障害」という言葉はでてこなくとも、今読めば発達障害のある子どもの学びをも想定しているとわかる内容になっています。ーどんなカリキュラムで学習塾が受け入れをしているのですか。障害児と障害のない子どもの内容を分けずに、同じプログラムでステップを細かくして指導しています。今もおそらく障害児を受け入れているとは言っていないけれど、受け入れている学習塾はあると思われます。そういうところは、口コミで広がっているのではないでしょうか。具体例としては、自学でのプリント学習を中心とする学習塾では、実質的には障害児の受け入れをしてきたと思います。療育用のプログラムで指導する民間サービスと、同じプログラムで障害がある子を受け入れる学習塾、この2つの種類の存在が頭にあるといいですね。ー他の種類はあるのでしょうか。最近は中間型も存在します。個人指導や個別指導をしている学習塾で、看板に小さく「学習障害やADHDなどの発達障害のある子どもも受け入れます」などと書いてある事業者です。本当に適切な指導ができるかは確認が必要ですが、わざわざ電車に乗って遠くに行かなくても、身近なところでそういう塾を利用するのも1つの方法だと思います。外からは見えにくい療育施設の質、市町村の無料相談で専門家の積極的活用を出典 : ー発達障害児の受け入れを明記していない学習塾でも、自分の子どもに合うプログラムであれば魅力的な選択肢になると思います。ですが、明示的な情報なしに、わが子に合った学習塾を探すのは難しそうです。障害のある子の親の集まりなどら得られる口コミが参考になります。そういう集まりに参加すると「あそこにいくと、子どもにあったプログラムで良かった」などの声をきけると思います。もうひとつは、自分で判断しないで専門家に相談して確認するといった手もあります。インターネットでも自分で様々な情報を集めることが出来ますが、即断せず、第三者の意見を参考にすることが大切です。ー相談できない専門家が身近にいない場合は、どうしたらよいでしょう。そういうときは、各市町村で実施している発達相談窓口の無料相談がよいと思います。相談する側には臨床心理士などの専門家が担当しているケースが多いです。公の機関なので、特定の施設の相談はできないかと思いますが、「こういう内容のプログラムの学習支援塾を探したのだけど、わが子の特性にあっているか?」などの聞き方は大丈夫です。子どもが3歳ぐらいの小さい時期からでも、相談にのってもらえます。無料で利用できる市区町村の相談機関は、大いに活用するとよいのではないでしょうか。ーなるほど、それは参考になりますね。発達障害のある子どもを受け入れてくれるかどうかも重要ですが、それ以上に気になるのは、実際の指導の質です。民間業者の質はどのようなところから決まってくるのでしょうか。民間事業者の質といった意味では、人、つまりよい指導者がいるかどうかに左右されます。良い指導者が多いところは、その施設の実績として結果がでているはずです。Upload By 福井万里ーよい指導者を探すには、どうしたらよいとお考えですか。一番は、さきほどお話した、お母さん同士の口コミだと思います。コマーシャルだけでは、推し量れない部分です。また、公の機関にも相談してみるといいでしょう。子どもに向くか向かないかは別の問題ですが、悪い情報がはいっているケースなどは、公の機関は意外に情報を持っているので、聞いてみるといいと思います。ただ、その子どもに合わなかった特定のケースの場合もあります。聞ける場合は、苦情の内容も聞き、お子さんの特性に照らし合わせて判断するとよいのではないでしょうか。ー悪い情報が入っているところが、悪い施設とは限らないのですね。そうです。話題になっている業者というのは、いいにつけ悪いにつけきちんとした指導をしています。しかし、ひとつのサービス機関がすべての子どもに合うようになるのは不可能です。コマーシャルや広告などでは、たいてい、どんな子にでも合う指導ができるかのように宣伝されがちです。一方で、口コミなどで伝わる悪い情報というのも、色々工夫はしたけれどやはりその子には合っていなかった、という可能性があります。幅広く展開すればするほど、合わない子もでてきます。そこを加味して冷静に判断するとよいと思います。発達障害のある子どもを受け入れる事業者の側にも、子どもを預かって指導をするわけですから大きな責任がありますが、一方で保護者の側も、施設の見学などの際には自分の子どもの様子をなるべく詳しく説明し、その子とその施設のプログラムや指導が合っているのかどうか、自分でもよく吟味することが大切です。「1対1の個別指導」=良い指導とは限らない出典 : ー次にお聞きしたいのは、指導の方法についてです。保護者の立場からすると、やはり個別指導の方が、自分の子どもの特性にあった対応をしてくれそうに思えます。1対1の個別指導だから良い、ということではなく、お子さんの特性にあった“個別の”指導プログラムを提供できるかどうかが重要です。たとえば、LD(学習障害)でもディスグラフィア(書字障害)とディスレクシア(読字障害)では、困り事が違います。読むことが苦手な子なのに、読むプログラムが多いと困ってしまいます。ですから、個別指導とうたっているところでも、どういう指導内容なのかが大事になってきます。また、1対1の個別指導の方が質が高いというイメージを持たれるかもしれませんが、複数の生徒がいたほうが、緊張感がほぐれて取り組みやすくなる子どももいます。どうしても友だちがいると気が散ってしまう子は別の方法を考えるとして、教えられる子ども側から見ると、生徒が複数の方が精神的に負担が少ないケースもあります。特に、先生と生徒が1対1の個別指導で、相性がよくない先生にあたったときに、子どもにとっては悲劇になります。やっている中で合わなそうであれば、替えてもらう勇気が必要だと思います。相性の問題は、生徒が複数のときはあまり表面化しませんが、1対1になると途端に難しくなってきます。1対1の個別指導の落とし穴だと思います。見学時には教室設備も観察を。子どもが落ち着けないのは、環境要因のケースも少なくない出典 : ー他に民間事業者を選ぶときに、気をつける観点はありますか。学ぶ環境にも目をむける必要があります。設備というと、最新の施設がよいと思われがちですが、そうではなく、子どもが安心する設備に工夫してくれているかです。例えば、天井が高いのが落ち着かないお子さんであれば、布をはって天井を低くすれば、落ち着きますよね。ガラス張りがたくさんあったら、普通の家ではないので、イヤだと思う子どももいます。そういう場合はカーテンをします。どの子にもあった設備をつくるのは難しいですが、あまりお金をかけない工夫ひとつで環境はつくれます。環境について、配慮や相談にのってくれるかどうかも大事なポイントだと思います。ーなるほど。落ち着かない理由を、「障害だから落ち着かない」と言ってしまっているケースをよく聞きます。でもその子が落ち着く環境を作ると、その子は落ち着けるわけですよね。落ち着かない原因が何なのかを見つけることだと思います。ー落ち着かない原因を探ってくれる雰囲気があるところがよい施設なのですね。そうです。ですから、最初のプログラムではすぐに具体的な学習指導などに入らずに、子どもの反応を確認して、もし落ち着いていなければ、何が原因なのかを考えてくれるところがいいですね。いつまでも落ち着かない、指示が入らないというのが、障害のためだと考えてしまったら、そこでストップしまい、子どもの可能性の芽が摘まれてしまいます。子どもの生活スタイルから、民間サービスに何を求めるかを整理しよう出典 : ーカリキュラムについてはどのように選んだらよいでしょうか?その学習施設で何を得たいのか、その子の一日や一年における、その時間の位置づけを考えることが大事です。他にどこにも通えていない子がその学習施設にいくのであれば、他人と触れ合う場所がここしかないので、そこで学ぶことが大事になってきます。しかし、5日間学校に通っている子が、プラスアルファとして通うのであれば、体力、集中力、思考力など総合して、何をどれくらいの時間学んだら良いのか、振り返る必要があります。ー親自身が、要望を整理する必要がありそうですね。そうです。親自身が要望を整理し、「こういうことを望んでいるがそれがかなえられるか?」と聞くことが必要です。また、子どもの成長に対してフィードバックされるような仕組みがあると、より好ましいですね。どんな子も先生が自分のことを褒めているということは、必ずわかります。フィードバックされた親が喜んでいるとさらに子どもは頑張ります。ー他には、どんな観点が必要でしょうか?子どもの興味関心を見極め、子どもが本当に楽しんで取り組んでいるかが大事です。それに合った課題やプログラムを提供するところがいいです。その上で、もう少し欲張ると、家へ帰ってもそこで学んだことを課題として出してもらえるといいですね。同じ課題や教材教具がむずかしければ、「家にある似たもので学習できますよ」とヒントをくれるような場所がいいです。施設での学習時間は限られているので、家庭で関心をもっている内容を毎日できるとなると、ものすごくよいでしょう。ー子どもが楽しんで取り組めているかが重要なんですね。子どもも意外に義務感があって、「ここにきたらこれをやらないといけない」などと考えています。興味も関心も意欲もないのだけど、お母さんに「ちゃんとやりなさいよ」と言われたら、頑張ってやったりするのです。ですが、子ども一人ひとりの関心事や困り事を観察して、楽しみながら取り組ませてくれるところが、真の個別対応です。そういう取り組みができる民間サービスを探すとよいのではないでしょうか。良い指導には、正しい「厳しさ」が重要。見学の際は子どもと指導員の関わり方の確認をUpload By 福井万里ー厳しい指導をするところは、避けたほうがよいのでしょうか。これも、一概に「厳しい」「優しい」と区分けすることはおすすめしません。子どもはある意味、厳しい指導を求めている場合があります。褒められてばかりや、やさしいことばかりしていたら、子どもは興味関心をもちません。そう簡単には達成できないレベルでありつつも、子どもが持ちこたえて乗り越えられるような、絶妙な課題設定ができる指導者がよいでしょう。レベルを段差で例えると、階段は登れないけれど、細分化してレベルアップするスロープ状なら登れる子もいます。その場合は、スロープを作ってくれるような取り組ませ方をしてくれる指導者がよいと思います。座っていられない子に、歩いていいよと放置してしまったら、子どもの姿勢は育ちません。求められる「厳しさ」というのは、強制的に指導するのではなく、子どもが出来ないことを出来るようにしっかり取り組めるようにする指導です。子どもに合わせてしまう指導が現在多いですが、できるようになるためのハードルを作る、正しい「厳しさ」が大事なのではないでしょうか。ー施設を選ぶという観点から考えると、そういう指導者はどうしたら見分けられますか。社会のルールを守るのは障害のある子どもたちも同じです。親が施設を選ぶときは、放置されている子がいないところをみてみるとよいです。動いている子がいても、担当の先生がちゃんと見て、フォローしているのであれば、野放しではありません。教室を見学する際には、他のクラスも見させてもらえるようであれば、その点をみてみるといいと思います。また、他のクラスを見学できなくても、下駄箱ひとつとっても指導が行き渡っているか確認できます。きちんと靴を揃えているかなど、見られる場所はあります。ー大南先生が感じる、民間の発達障害支援サービスの課題は何でしょうか?放課後等デイサービスは、単価が安いので資格がある人が少ない傾向にあります。本来は単価をあげて資格がある人が入ってくる方がよいのでしょう。質の底上げを狙って、厚労省はガイドラインを作りました。ですが、そのガイドラインは、普通の学習施設にとっては、自由度のあるカリキュラムが作りづらくなっているという課題もあります。また、送迎など親への支援を手厚くする一方、子どもも一人ひとりにあったカリキュラムや支援が手薄になるところも多くあります。利用する子ども一人ひとりに寄り添った支援が一番大事なので、そこを見失わないでほしいと願っています。早期療育の利点は「誤った学習や習慣」を未然に防ぎやすいこと出典 : ー大南先生は幼少期の療育についてはどのような考えをお持ちですか。早期の療育にはどのような効果があるのでしょう。比較的学習成果が出るのが早いことや、「誤った学習や習慣」を未然に防ぎやすいことは、早期領域の意義だと言えるでしょう。たとえば、その子に合った指導や支援を受けていないまま6〜8歳になった発達障害の子どもたちが、ちゃんと座れるようになるのにはそこから2〜3ヶ月かかります。それが、幼児の間から指導を始めると、すぐに自分で椅子を動かして座っていられるようになります。そういう状態から小学校で受け入れられれば、その2〜3ヶ月が必要ないことになります。ー早期療育の効果がでやすいのは、なぜでしょうか。まだ、子どもの中に誤った習慣や学習が定着しきっていないからだと思います。例えば、紙があったらぐちゃぐちゃにすることを一度学んでしまうと、紙があるのを見ればなんでもぐちゃぐちゃにしてしまうようになります。しかし、最初から紙をぐちゃぐちゃにしないように教えたり、ぐちゃぐちゃにしていい紙はこれですと教えたりすれば、幼児はよけいな学習をしなくてすみます。ー年齢を重ねたあとに療育をする場合は、どうすればよいですか。人はいくつになっても成長するので、いつから療育を始めても手遅れということはないです。ご家族も本人も大変にはなりますが、どこの時点からでも、人は成長できます。でも、年齢があがればあがるほど、間違った学習が増えてしまいます。そうなると、間違った学習を訂正していくことが、大変になってきます。ですから、子どもの発達障害がわかった時点から、やれることはやっておくことを強くおすすめします。担任、民間サービス、親の3者の連携が、子の発達を促進する出典 : ー民間サービスを利用する際に、小学校の担任の先生と共有する必要はありますか。支援サービスを利用していることを、学校に言いたくないという親もいらっしゃると思います。でも、先程もうしあげたように、支援サービスにどのような位置づけで通わせるのかが大事になってきます。学校で精力を使い果たして疲れ切っていて、支援サービス先で集中できないケースや、学校と支援サービスで内容が重複して飽きてしまっているケースもあります。子どもの抱えている困りごとの解決が、学校と支援先と連携しないとわからないこともあります。親と担任の先生、支援サービスの支援者の3者の連携が、子どもの成長によい影響を及ぼすのだと思います。ー小学校の先生方は、民間サービスの利用に理解があるのでしょうか。子どもの困り事を協力して解決していきたいと、関心をもっている教師はたくさんいます。だから、教師の意欲を見極めた上で、相談していけるとよりよい環境になるでしょう。学校でも取り入れてくれるケースもあります。学校は教科書を消化しないといけないという逃げ口上がありますが、工夫をしようと思えばできることはいっぱいあるのではないでしょうか。現在、小中学校では民間学習塾と連携して、教師の研修をしているところもあります。民間の発達障害支援サービスとも今後連携して、教員を指導ができるとよいと感じます。地域全体で発達障害児教育を盛り上げていくための秘訣は?出典 : ー大南先生は墨田区の社会福祉事業団に50年近く携わってきたそうですが、地域ぐるみで発達障害支援が盛り上がるポイントは何でしょうか。障害がある人たちのニーズを、その地域で公表できる雰囲気があるかだと思います。「何をバカいってるんだ」という地域だったらニーズを公表できません。下町である墨田区は昔から公表できる雰囲気がありました。実際、1953年という早い時期から、墨田区では全国に先駆けて特別支援学級を作ることができました。ーニーズが言える雰囲気づくりの他に、どういう方々が動いたのでしょうか。ニーズが公表できて、中心的に動く人たちがいて、サポートする人たちがいて成り立ちました。そして教育委員会が動いて継続しています。教育委員会を巻き込めるかどうかが、ポイントのひとつです。23区には学校卒業後の余暇活動のボランティアがあります。ただ、充実しているところとそうでないところの格差はありますね。ー余暇活動のボランティアとはどんな内容で、どういう方が携わっていますか。日曜日などにお茶やスポーツなどの余暇活動をサポートする活動です。区民ボランティアも100人くらい登録していただいています。ボランティア講座などを開いて、継続してボランティアに関われるよう工夫しています。高齢者の方のなかには、技能があっても、「お金はいらないからやらせてくれないか」という人が結構いらっしゃいます。眠っている市民の力がもっと活用できるといいなと感じます。ー民間の療育教室でも、地域の商店街との交流が盛んな事例があるようです。放課後に地域の方々が見守るような仕組みができるといいですね。実例を公表していくと、広がりやすいのではないでしょうか。障害がある子をもつ保護者の方々も、そういう雰囲気のある地域は、通いやすくなります。教室を通うこと自体後ろめたさを感じている保護者もいらっしゃいます。それを払拭できるのは地域の雰囲気づくりです。そして、地域の結びつきが深くないと、要望、つまりニーズを伝えづらいですよね。ー最後に発達ナビの読者へ一言をよろしくお願いします。まず第一に、お子様の好きなこと、得意なこと、興味のあることを見つけていただき、一緒に楽しんだり、ほめたりして、お子様を認めることが大切です。「子どもを知る、理解する」ことの第一歩です。お子様の気になること、課題は、保護者の方々の悩みの種になることが多いと思います。しかし、できないこと、課題のない子どもは、どこにもいないことも事実です。お子様のことで悩みをどこへ持ち込めばよいのか、そのことで悩まれることもあろうかと思います。公立の相談機関をまず尋ねることをお勧めします。公立の相談機関が近くにない場合には、NPO法人等が運営する相談機関を訪ねてはいかがでしょうか。それから具体的な指導、支援をしている教室等へ出向かれれば、お子様にふさわしい場所に巡り合えることにつながると思います。そして、お子様の一日のスケジュールを考えて、無理のない、お子様に背伸びをさせない場所と時間を選ぶことをお勧めします。
2017年05月15日うちの子が、またやらかした…!出典 : 幼稚園時代は、3年間登園しぶりを貫き通した長男。先輩ママ達は、口を揃えて「小学校に入ったらラクになるわよ〜」って、毎日お疲れ気味の私に希望を持たせようとしてくれました。ところが!入学した小学校にも慣れ、日に日に暑くなり始めたこの時期、私はパニックになりそうでした。私を待っていたのは、毎朝ランドセルを忘れる長男を、ジャージ姿にサンダルのまま走って追いかけ、さらに放課後は学校に忘れ物をとりに行く日々・・・あれあれ?こんなハズではなかった。なんだか話がちがーう!でも、そんなうっかりさん・あわてんぼさんのお子さんも大丈夫!実は、学用品をカスタマイズして、その子に合わせて分かりやすく、使いやすく、気づきやすくできるんです。工夫次第で、忘れもの・落としものを減らして効率UP。ゴミ出しだって間に合うし、下の子の習い事も連れてけます。そんなうちの工夫を、今となっては楽しい思い出となった当時のエピソードと共に、楽々かあさんこと、大場美鈴がご紹介します。ランドセルの中身がからっぽ…出典 : うちは小学校からかなりの距離があります。重いランドセルと暑さで、大抵は家に着く頃にはぐったりしていてもおかしくありません。それは小学1年生にはなおのこと大変でしょう。ところが、他のお子さん達よりも大幅に早く帰宅し、涼しげな顔で元気よく「ただいま!」と家に飛び込んできた長男。・・・アヤシイ。「ランドセル、見せて!」案の定、中身はからっぽ!これでは宿題もできないし、明日の時間割も分かりません。仕方ないので、放課後の学校に忘れ物を取りに行き、職員室の担任の先生に一声かけると、「ああ、◯太郎くんのお母さん。ちょうど良かった」と言われ、イヤな予感と共に一緒に教室に入って頂くと・・・まあ、出るわ出るわ。長男が学校で脱ぎ捨てた、大量のくつ下、上着、そして肌着(どうりで、ないと思った…!)。それから、「一体いつのお茶?」という、不気味な水筒。机の中も、道具箱の中も、くっちゃくちゃのゴミだらけ!・・・んー、目を背けたくなる現実。でも、口で言われた事をすぐに忘れちゃう子や、周りをみながら動くのが苦手な子は、紙に書いて「見える」ようにしてあげるだけで、気がつきやすくなるかもしれません。Upload By 楽々かあさん画像出典:「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」p7よりというワケで、ランドセルのフタの「あの位置」に入るように、イラストで「持ち帰りリスト」を作ってみました。「毎日」「金曜日」「雨の日」など、曜日やシーン別に分けて、持ち帰るタイミングを伝え、水筒も「もし忘れたらどうしたらいいか」という対処法も書き添えました。この場所なら、帰りの会の時には、必ず目に入ります。イラストでなくても、持ちものセットをそれぞれ写真に撮って、写真加工・フレームアプリでも同様にできると思います。これで、さすがに「からっぽ」ってコトは減り、今はこのリストがなくても大丈夫になりました。それから、朝、長男が手ぶらで登校しようとしている時には、玄関先でこんなクイズを出しています。「クイズです。学校に行く時に、必要なものは何でしょうか?」「給食セット、オンリー」「オトコの大事なトコを隠す、葉っぱ1枚」「(弟の)◯次郎さえいれば、おれは他に何もいらない」…などのボケが返って来ることも多々ありますが、この朝の親子コントの風景。もはやうちの習慣として定着しています。時間割を書いて来ないッ!期限切れでシワシワの申し込み用紙…出典 : 連絡帳に明日の時間割を書いて来ないことが多かった長男。一体明日の持ち物は何なのか、宿題は何か。毎日のように先生に電話で聞くのもなんだか申し訳ないし…。その上、ランドセルの底からは、シワシワになった、提出期限切れの何かの申し込み用紙なんかが発掘されるのです。…はあ〜(ため息)。でも、実は連絡帳を書かない子や提出物を出し忘れる子には、その子なりの理由があるかもしれません。長男の場合は、当時、漢字学習が原因で学校を休みたがる程、字を書くのが苦手で、黒板の書き写しがかなり負担のようでした。その上、周りを見ながら動くのも苦手なので、連絡帳を書いたり、提出物を出したりするタイミングもよく分かってなかったようです。これも、工夫次第で負担感を減らして、気づきやすくすることができます。Upload By 楽々かあさんまず、連絡帳のカスタマイズから。連絡帳は表紙に「タグ」をつけると、連絡事項や提出物があるのが分かりやすくなります。【作り方の例】1.クリップボードのついたノートカバーと、パスケース(100円ショップ)を購入し、カバーの表紙に強力両面テープでくっつける。2.パスケースに入る大きさのカードを、オレンジ(目立つ色)と白の2枚用意し、オレンジのカードに「連絡提出物あり!」と書き、白のカードと裏表に貼り合わせる。ラミネートでパウチできるとなおよし。3.カードの端に穴を開け、紐を通してパスケースと結ぶ(完成!)。これで、先生に何か連絡や提出物がある時には、カードをオレンジに裏返して入れておけば、気がつきやすくなります。また、連絡帳を出すタイミング、書くタイミング、出す場所がよく分からない場合は、担任の先生に「このクラスのルールを教えて下さい」と、聞いてしまうのが確実でいいと思います。周りを見ても分からなければ、聞いてしまえばいいんです。それを箇条書きにしたラベルシールなどを、連絡帳か連絡袋に貼っておきます。そしてもう一つ。明日の時間割には「専用フォーマット」を作りました。全教科と、定番の宿題と持ちものをリストUPし、適宜空欄を入れたものを、ワープロソフトで作って大量プリントし、先のカスタマイズした連絡帳カバーのクリップボードに挟んでおきます。Upload By 楽々かあさん画像出典:「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」p7より参考アイデア:Facebookページ「楽々かあさんのアイデア支援ツールと楽々工夫note」読者投稿よりこれなら、マルつけや、簡単な記入だけで済むので、明日の時間割の書き写しの負担を減らせます。無事、明日の時間割を揃え終わったら、その紙を外して、一番上には常に新しい用紙がくるようにします。また、教科や定番の宿題はクラスによって違うので、学年が上がる度にフォーマットを更新します。字を書けるようになってきたら、徐々に自分で記入する部分を増やしてゆくといいと思います。うちの長男は、これでずいぶん翌日の時間割を書いてくるようになりました。ただ、それでも忘れてしまうこともあるので、その時には先生と相談して「時間割を書き忘れた時にはどうしたらいいか」のルールを決めてもらいました(うちの場合「教科書は時間割表どおり。宿題は音読と計算ドリル1ページを、とりあえずやればOK」など)。先生に電話する回数も減って、お互いにWIN-WINです。参観日に目撃!ガチャガチャと一人で忙しそうな我が子。出典 : ある参観日。私が目撃したのは、「教科書◯ページを開きましょう」「◯◯を一旦しまいましょう」など、先生の指示が出る度に、ガチャガチャバラバラと、鉛筆や消しゴムを落としまくって、一人で忙しそうな我が子の姿。消しゴムを拾っている間に、何ページを開くように言われたのか忘れてしまって、今どこをやっているのやら、分かりません。ページを探してひとつひとつ内容を見ながらめくっている間に、クラスのみんなは次のことを始めています。しまいには諦め、窓からお外の様子を眺めては、お空の雲の形がフシギだなあ…って、コース・アウト。うーん、かあちゃん気が遠くなりそう。あ、こっち見て手を振ってる…。「イエーイ」じゃな〜い!前見て、前!実は、同時にいろんなことをするのが苦手な子や、好奇心が強くてあれこれ目に入ると手元がうっかりしちゃう子、手先が不器用な子などは、一斉にどんどんまっすぐ進む、授業のスピードがしんどいこともあります。だから、授業中に迷子になっているようなもので、やる気がない、とか、サボっているワケじゃない場合も多いんです。うちの場合、とりあえず文具を落とすのは仕方ないとして、教科書をカスタマイズして、早めにコースに戻れる工夫をしました。Upload By 楽々かあさん画像出典:「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」p9よりじゃーん!教科書に「インデックス」です!市販のインデックスシールを、教科書の単元とページを裏表で書き込んで、ちょっとずつズラして貼るだけで、ずいぶんと効率UPです。これなら、鉛筆3回ぐらい落とせる余裕ができますね(笑)とっても便利なので、長男は今でも愛用していて、毎年新学年の新しい教科書を頂いたらすぐ教科書にインデックスを貼っています。現在の6年生の社会の歴史などは、教科書にインデックスをつけると、そのまま時代の流れの全体像が分かり、学習理解にも役立ちます。シャイでみんなと違う目立つ事が苦手なタイプの子は、教科書のフチをマーカーペンで塗って、単元やページ数の目印をつけておくだけでもいいと思います(私も高校時代、英和辞典などにやっていました)。それから、ささやかな抵抗ですが、机からコロコロと逃げてゆく鉛筆は、市販の三角軸の鉛筆や、四角い鉛筆キャップなどを使うと、少しは転がり落ちる回数が減らせ、落ちても捕獲しやすくなるようです。脱走する消しゴムには、とにかく沢山スペアを用意する作戦。うちでは業務用の安価な「切れ端消しゴム」を大量ストック。消しゴム本体に名前を書いて、筆箱に常時2、3個は入れています。まとめ出典 : どうでしたか?実は、子どもの持っている元々の個性によっては、「周りを見て、自然と学ぶ」「失敗すれば、自分で気づく」が、難しい場合もあります。そんな、うっかりさん、あわてんぼさんは、いくら「気をつけて」「忘れないで」と念押ししても、「言葉は消えていっちゃう(長男・談)」のだそうです。ちょっとだけ、一手間かかりますが、モノを工夫してカスタマイズするだけで、気をつけやすく、忘れにくくなります。子どもも、親も、先生も、ラクになる方法は沢山あると思いますよ。Upload By 楽々かあさん大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』2017年/刊/ポプラ社
2017年05月13日父が入学式に参加する!?さあどうしよう出典 : 私の父にはADHD の特性があります。今も落ち着きのなさとお喋りの止まらなさで、家族に毎日毎日叱られています。言わずもがな、幼少の頃はそれはそれは「大変な子」だったらしく、パニックや多動で幼稚園も入園1ヶ月で強制退園になるほどだったそうです。父は自分と同じ振る舞いをする息子に大変な思い入れがあり、小学校の入学式にも参加したいと言ってくれました。けれども私は、父に参加してもらうことについては少し抵抗がありました。というのも、息子に発達障害の診断がおりていること、ましてや特別支援学級に通級することなど、私は父には何も話していなかったからです。入学式でもし何らかの形で通級のことがバレてしまったら…。私は悩みました。これまでは私は、他人から「支援級なんてとんでもない!この子は普通級でいい!」と何度も畳みかけられ、イライラしてきた経験がありました。なので、父からもそんな言葉を投げかけられるのは耐えられない…と思ったのです。温かい配慮で迎えた入学式。その光景を見た父は、出典 : 結局、参加を断る理由も見つからず、父は2時間かけて入学式に来てくれました。実は入学式の前から、先生方は息子のために綿密に打ち合わせをしてくださっていました。特別支援の先生方は、息子の幼稚園の先生と打ち合わせの場を持ってくださり、息子の特性について話し合いをしていました。また、息子が動揺しないように学校見学を開催してくださり、校長先生や教頭先生一同で息子を迎えてくださいました。前日は担任の先生からお電話頂き、入学式にあたって配慮が必要な点などについて聞かれました。当日は特別支援の先生方と担任の先生方が、かわるがわる息子と手を繋いでいてくださいました。息子が少し不安定になったときには、特別支援の先生がずっと横について声をかけてくださいました。なんて素敵なスタートでしょう、私は感動してしまいました。いろんな人に支えられて入学式を迎えられたことは、この子を育てていて良かったと改めて思うほど幸せなことでした。けれども、息子が「ちょっと違う子で、違った扱いを受けている」ということは、教室の中でも一目瞭然でした。入学式が終わった後に、父も交えて昼食を取っていたときです。父がこう言ったのです。「ずっと先生が息子くんの隣についてくれていたな。息子くんは、アスペルガー症候群なのか?」息子が発達障害と知った父の一言は…出典 : 私は、父がアスペルガー症候群という言葉を知っているのをそこで初めて知りました。同時に、「話すなら今だ!」と思い、息子の障害のことを打ち明けることにしたのです。「うん。3歳で診断がおりた。賢い子だけど、初めての環境とかにとても不安になってしまうし、どうしても集団生活でストレスがかかってしまう。だから、国語と算数だけは特別支援学級で勉強することにした。」父は否定も肯定もせずに聞いていましたが、私の話を聞き終わって、こう言ったのです。「この子が羨ましいね。僕のときは、叱られて叱られて、自信がなくなるばっかりだったから」「今日もみんなに代わる代わる手を繋いでもらって。良かったじゃないか。診断をもらってて」私はこの父の言葉を聞いて、同じように発達障害の特性を持ちながら、まだそれを障害と認知していない時代を過ごしてきた父の苦労を思ったのでした。また「羨ましいね」という言葉は、今の時代に発達障害児として生まれてきた息子を全肯定してくれる言葉であったと思います。先人たちの苦労を無駄にしてはいけない。私は父の言葉を聞いて、改めてそう強く思ったのでした。
2017年05月12日一時預かりとは?出典 : 一時預かりとは、保護者が子どもを見ることが一時的に困難になったご家庭のために、幼稚園、認定子ども園などが一時的に子どもを預かってくれるサービスです。別名「一時保育」ともいいます。保育所を利用せず家庭で子育てを行っている場合でも、出産、葬儀など日常生活での突然の事情によって、一時的に家庭で子どもを見ることが困難となる場合はあります。また、保護者のうちの一方が子育てを行うことができず子育てを1人で担っている場合や、ひとり親家庭の場合には、長い時間の育児によって心身ともに負担がかかって育児疲れを引き起こしてしまうことがあります。このような突発的な事情や育児疲れによって、子どもを見ることが困難となった家庭の状況に対応するために行われているのが、一時預かりです。保育所(保育園)や幼稚園、認定子ども園などでは、一定の時間お子さんを預かることで、親御さんが安心して子育てのできる環境をつくる取り組みを行っています。このような取り組みは、正式には「一時預かり事業」といいます。国が行う事業で自治体が主体となって行っています。この事業は次世代を担うすべての子どもの健全な育成のための法律、児童福祉法第6条の3第7項に定められています。一時預かり事業の目的は、安心して子育てができる環境を整備することによって、子どもたちの福祉を向上させることです。一時預かりを行う施設の定員数や、一人の職員あたりのケアをできる子どもの数などは、国が指定する「一時預かり実施要綱」の基準に従って行われているので、市区町村によって異なることはありません。この事業を実施する主体は、市区町村などの自治体です。各自治体がそれぞれに独自の方法を採用しているので、一時預かりの申し込みや見学の方法は、それぞれの市区町村で違いがあるかもしれません。平成27年より変更が加えられ、一時預かりを行う施設や児童の利用対象の幅が広がりました。この記事では、それらの変更点を交えながら「一時預かり事業」を中心にご紹介していきます。児童福祉法|e-Gov一時預かりには4つの種類がある!出典 : 各自治体が行う一時預かりの事業は以下の4つの方法で実施されています。それぞれで一時預かりの実施される施設や利用できる子どもの条件が異なります。子どもが保育所、幼稚園、認定こども園等に通っていない場合に利用することのできる一時預かりのスタイルです。保育所、幼稚園、認定子ども園、地域子育て支援拠点などが中心となって運営を行っています。また市区町村から委託を受けたNPO法人が運営を行っている「保育室」と呼ばれる施設で行われていることもあります。子どもの世話を行う職員の2分の1は保育士の資格を有しており、残りの資格を有していない場合にも適切なケアを行うための研修を受講しています。平成27年度に創設された新しい一時預かりのスタイルであり、主として、幼稚園等に在籍する満3歳以上の幼児が利用することができます。普段の幼稚園の教育時間の前後、または春休みや夏休みなどの長期間の休業日に幼稚園等において一時的に預かってもらうことが可能です。平成24年に設立された一時預かりのスタイルです。利用している子どもの数が定員に達していない保育施設で保育が行われ、預かる子どもの人数は、定員の範囲内で行うようにと取り決められています。このスタイルの一時預かりは、幼稚園や保育所、そのほか家庭的保育事業所や小規模保育事業所において行われています。施設によって子どもの人数は異なりますが、家庭的保育事業所は1~5名、小規模保育事業所においては6~19名とごく少数となります。また家庭的保育事業所は、保育者の居宅や、そのほかの施設において行われる小規模の異年齢保育です。地域によっては「保育ママ制度」などとも呼ばれます。保育者の居宅といっても、生活感のある家ではなく、子どもたちが安心して過ごせるように、安全設備などに十分に配慮された保育室のような環境です。2015年度よりスタートした「子ども・子育て新制度」という国による制度における事業のひとつを展開する場所として機能しています。法人家庭的保育全国連絡協議会子ども・子育て新制度ハンドブック施設・事業者向け|内閣府・文部科学省・厚生労働省地域子ども・子育て支援事業について|内閣府平成27年度に創設された新しいスタイルで、他の一時預かりとは少し異なるのがこの「居宅訪問型」です。子どもの自宅に直接職員が訪問をする形での一時預かりが利用できます。ほかのスタイルの一時預かりを実施するのが難しい場合に実施されます。「居宅訪問型」の一時預かりを利用するためには、以下の3つの要件のうちのどれかを満たしている必要があります。・子どもに障害、疾病等があり、集団保育が著しく困難であると認められる・ひとり親家庭などで、保護者が一時的に夜間、および深夜の就労を行っている・離島その他の地域において、保護者が一時的に就労を行っている一時預かりの対象となる年齢は?また、どんなときに一時預かりを利用できるの?出典 : 一時預かりを利用することができるのは、基本的に就学前の子どもです。自治体や各施設によって、預けることのできる月齢は異なっています。生後2ヶ月から預けることのできる施設もあれば、生後1年からの預かりのみを行っている施設もありますので、具体的な年齢制限について知りたい方は、お住まいの自治体のHPをご覧いただくのがよいでしょう。どのようなときに一時預かりを利用することができるのでしょうか。一時利用を行うことができるのは、以下の3つの場合です。(1)育児リフレッシュ保育保護者の育児にともなう心理的、肉体的な負担を軽減したいときに一時的に子どもを預けることができます。自治体によって異なりますが、この場合の利用可能な日数は、1ヶ月あたり7日まで、週に3日までなど、月や週ごとに利用できる日数が定められています。(2)非定型保育保護者の就労や、技能習得のための職業訓練校および学校への通学によって、ご家庭での保育が断続的に困難となる場合に預けることが可能です。自治体により異なるが利用可能日数は1の育児リフレッシュの保育と同じくらいと定めている自治体が多いです。(3)緊急保育病気・出産・看護・冠婚葬祭など家庭での育児が一時的に不可能になる場合に一時預かりを利用することが可能です。半月~1ヶ月など自治体により異なる。(1)(2)よりも利用できる期間が長いことが特徴となります。一時預かり保育では子どもはどんな環境で過ごすの?出典 : 一時預かりを利用したことがない場合には、お子さんがどのような環境で過ごすのか心配される方も少なくないかもしれません。この章では一時預かり保育において子どもがどのような環境で過ごすのかについてご紹介します。一時預かり保育のひとつの特徴は、周囲の子どもの顔ぶれがほぼ毎度異なるということです。この点が、定型的な通常の保育所・幼稚園との違いです。これまでは保護者や親族との見知った人の中で過ごしていたのに、一時預かりにおいて、いきなり見知らぬ集団に飛び込むということもあって、緊張してしまってのびのびと過ごすことのできない子どもも少なくはないようです。保育者はこの点を十分に理解しているので、配慮を行った保育を行います。普段の保育において立てる保育目標を立てることはできないものの、当日の子どもの顔ぶれや、一人一人の子どもの心身の状態や、保育場面への適応の状況を考慮して、それぞれに見合った保育やかかわりを行います。一時預かり保育のもうひとつの特徴としては、小さな縦割り保育であること、つまり子どもたちの年齢がばらばらなことがあげられます。施設や園によっては、通常の保育クラスの中に一時預かりの子どもに交じってもらうこともあるようですが、たいていは一時預かりの子どもだけのクラスがある場合が多いです。年齢によって、発達の課題や遊びの質や生活のリズムが異なっているために、子どものニーズに合わせた保育を行っています。また、一週間のうちに何度も一時預かり保育に通う子どもの場合には、少しずつ場慣れしてくるので、在園児のクラスと交流をもつこともあります。このあたりは、子どもの状況に合わせて柔軟な対応を行っているようです。このように年齢が違ったり、環境が異なっても、楽しく保育に参加できるような気配りや配慮、環境づくりを行いながら保育を行っています。利用時間や料金は?出典 : 一時預かりにかかる費用は自治体や実施施設によって異なります。料金が1時間単位で決められている場合もあれば、半日・1日単位で決められている場合もあります。だいたい、1日あたりに換算すると1,500円から5,000円くらいの幅の中で料金が定められていることが多いようです。また、生活保護世帯・住民税非課税世帯は全額免除、所得税非課税世帯は半額を減額される、などの世帯の状況によって支払う金額が変動する決まりを取り入れている自治体もありますので、お住まいの市町村のHPをご確認ください。利用時間も自治体や実施する施設により異なります。ほとんどの場合には、平日の午前8時前後から利用することができ、17時から19時ぐらいまでの間に預かりを終える施設が多いようです。一時預かりの申し込みの方法は?出典 : 一時預かりの申し込みを行いたいときには、直接各施設にお問い合わせの上で申し込みを行う場合と、まれに市役所の窓口で申し込みを行う場合の2つがあります。直接施設へ申し込むときには、一時預かりのための登録を行う必要があります。一時預かりのサービスの利用の際には利用登録と申請書の提出が求められます。市役所の窓口で申し込みを行うときには、窓口にて案内される申請書に必要事項を記入し、申し込みを行います。なお申し込みには期限が定められており、預けたい日程よりだいたい2日~1ヶ月前に利用の申請をする必要があります。しかし、病気や冠婚葬祭などの緊急の利用については、申し込みの期限に限らず、利用をすることか可能な場合もありますので、あらかじめ実施施設に空き状況を問い合わせてみることをおすすめします。定員オーバーで一時預かりをしてもらえない場合には?出典 : 子育てのリフレッシュをしたくても、施設側の受け入れ数が満員のために親御さんが一時預かりを利用することができないこともあります。一時預かり制度を利用することができなくても、以下のサービスでは子どもの一時預かりを行っています。幼稚園や保育所での一時預かりの予約がとれなかった場合には、ファミリー・サポート・センターの一時預かりを利用することができます。ファミリー・サポート事業とは、各市区町村が運営を行っている、地域で子育てを支え合う会員制のサービスです。サービスには、一時預かりのほか、幼稚園・保育所への送り迎えなどもあります。保育所・幼稚園等で行っている一時保育と異なる点は、子どもへサ―ビスを行うのは保育従事者ではないことです。このサービスは、育児を手伝ってもらいたい「依頼会員」と、育児を手伝いたい「提供会員」によって成り立っています。調査によると、提供会員の年齢は60歳代が1番多く、50歳代、40歳代の順に続いています。依頼会員は30歳代が半分以上を占めていて、30歳代と40歳代を合わせると9割を超えています。利用をするためには、会員登録が必要です。お住まいの各市町村にあるファミリー・サポート・センターに出向いて登録を行います。しかし、会員の登録が終了してすぐにサービスを利用できるというわけではありません。会員登録後、提供会員との顔合わせののち、事前打ち合わせを行います。依頼会員と提供会員が実際に会い、子どもの様子や注意事項、活動の際の時間や料金の支払い方法など、サポートを受けるうえで決めなくてはならないことや気になることを話し合います。その後、預かりをしてほしい日時をファミリーサポートセンターへ伝え、提供会員に一時預かりや送迎を行ってもらいます。料金は自治体ごとに規定されています。東京都内だと、利用料は平日1時間当たり約800~1000円ですが、自治体ごとに異なっておりますので、利用の際にはお住まいの市区町村へご確認ください。平成26年度全国ファミリー・サポート・センター活動実態調査結果|一般財団法人女性労働協会◆病児・緊急対応強化事業一部の市区町村では、病児・病後児の預かりや、早朝・夜間などの緊急の預かり(病児・緊急対応強化事業)を実施しています。実際に実施を行っているかどうかは、お住まいの市区町村のファミリー・サポート・センターにお問い合わせください。障害のある子どもは一時預かりを利用できるの?出典 : 制度上は障害のある子どもの場合も一時預かりを利用することが可能です。国の定める「一時預かり事業」の要綱には、障害のある子どもの一時預かりについて「居宅訪問型」を利用することができると明示されています。しかし、それ以外の「一般型」「幼稚園型」「余裕活用型」のスタイルにおいては障害のある子どもの場合における利用について特別な記載は見当たりません。利用料金や受け入れ時間などと同じく、一時預かりの基準は各自治体により異なりますので、利用を検討されている場合はお住まいの自治体にお問い合わせください。一時預かり事業の実施について|内閣府お子さんに障害がある場合で、「一時預かり事業」を利用することができなかったときにも、「日中一時支援事業」という制度を利用することで子どもを一時的に預けることができる場合もあります。日中一時支援事業とは、障害児・者がよりよく暮らすための法律である、「障害者総合支援法」で定められている事業です。一時預かり事業と同じように、社会的な理由や、突然のイベントなどで在宅における介護や子育てが困難となった場合に利用することができます。配属されているスタッフは障害に関する知識・技能を有しています。具体的には、児童発達管理責任者や支援員といわれる役割をもつスタッフが、生活の介助や、食事の提供や健康の管理など、日中の活動の場の提供を行います。日中一時支援事業と児童デイサービス|厚生労働省子どもの預かりのことなら「保育コンシェルジュ」に相談を!出典 : 保育コンシェルジュとは、子どもを預けたい親御さんに保育施設の案内や預け先の提案を行う専門の相談員です。親御さんの希望や家庭・お子さんの状況などをヒアリングによって聞き取りながら、個別のニーズにあったサービスの提案を行っています。保育コンシェルジュは、平成27年4月1日の時点で待機児童が50人以上いる自治体に配置されています。平成28年の厚生労働省からの通達により、各自治体では保育コンシェルジュの配置の強化が行われているので、現在保育コンシェルジュがいない自治体にも今後展開が行われる予定です。待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について|厚生労働省保育コンシェルジュの業務は・保育サービスの利用相談・入所未決定児のアフターフォロー・保育施設・保育業務の情報収集業務・そのほかの保育サービス(一時保育,特定保育,私立幼稚園預かり保育,ファミリーサポートセンター事業)の提供についてのこと◆相談の内容一時預かりの相談のほかには、お住まいの地域の近くにある保育施設の空き情報、保育施設の選び方のポイント、各施設の保育料金の詳細や利用可能時間など、子どもの預かりについてさまざまな疑問を解決してくれます。保育コンシェルジュは、行政の役所の窓口で案内を行っています。また、直接役所の窓口へ行く場合のほかにも、一部の自治体では、地域で行っている育児交流の場である子育てサロンへの出張相談や、電話での相談なども可能となっています。このように相談をしたいときにはいくつかの方法があるので、親御さんご自身の状況に合わせた相談方法を選ぶことができます。保育コンシェルジュは各市区町村で取り入れられたばかりの新しい役割ですので、残念ながら保育コンシェルジュが配置されていない自治体も多くあります。そのようなときには、地域の子育ての事情について詳しい知識をもっている役所の子育て課や、地域の子育て支援センターのスタッフなどに相談してみるとよいでしょう。まとめ出典 : 昨今では夫婦の共働きの家庭が増え、子どもを保育施設に預けたいというニーズが高まった結果、施設の不足が問題となっています。現在、保育施設の不足によって生まれた待機児童の問題について国は全力をあげて対応を行っています。ほんの一例ではありますが東京都の杉並区では平成25年~28年の間に約2579名の保育定員の確保を行いました。一時預かりについても同じく、定員の拡充が現在行われているところです。一時預かりをはじめとするさまざまな子育て支援の制度は、ともに社会のみんなで子どもの育ちや親御さんの子育てを支えようとするものです。子育てをしていく上で、家庭のみで子どもの面倒を見るということが困難となることがあるでしょう。そのようなときに、子どもと、子どもを育てる親御さんをすぐにサポートできる体制が整ってきているので、便利に活用できるといいですね。待機児童解消緊急対策|杉並区
2017年05月11日発達性協調運動障害の息子は体を動かすことが苦手で…出典 : 発達性協調運動障害の診断が下りている息子は、何をするにも不器用で時間がかかります。それは幼い頃からのことで、ご飯を食べていてもすぐにスプーンを落としてしまったり、少し歩けば物や壁にぶつかったりしていました。そんな息子も、体操教室に通って「前転」「逆上がり」など手順の決まった動きはできるようになりましたが、日常生活ではまだまだ困難がたくさん。そんな息子とテレビ体操に取り組んでみた時のことです。一緒に体操をしながら息子を見ていると、身体の動かし方がぎこちなくて、とても同じ体操をしているようには見えません。はたから見ると、ゆらゆらと身体を動かしているような状態に見えたのです。どうしてできないんだろう。気づかなかった盲点とは…発達障害についての知識がない頃だったら、「ふざけてないで真面目にやりなさい!」「ちゃんとやらないのなら、もうやめるよ!?」そんな風に声を荒らげてしまったかも知れないな、と思いながら息子を観察していました。そして、あれこれアドバイスをしながら毎日体操を繰り返すうちに、問題点は意識していても指と腕をまっすぐに伸ばすことができない点だということに気がついたのです。本人は精一杯腕を伸ばしているつもりなのですが、指は丸まり、肘は曲がった状態で身体を動かしているので、体操というよりはくねくねと体を揺らしているだけのように見えていたのです。そういえば体操教室でも、跳び箱に手をつく時に指が曲がっているのできちんと体重を支えられていないと指摘され、「指を全部ペタンと跳び箱につけるんだよ」と声をかけてはいました。しかし、まさか本人が伸ばしていると思っていも、指は曲がっていたとは気づきませんでした。どうしてこんな大切なことを見落としていたんだろう。「指を伸ばして」と言われれば普通は伸ばせるだろうという私の思い込みが息子の成長を妨げていたかも知れない。後悔の念が押し寄せて来てすごく落ち込んだ気持ちになりました。でも、落ち込むだけ落ち込んだら後は前進あるのみ!前に進むしかないのです。まずは体の状態を認識していくことからスタート!出典 : まずは「指を伸ばす」というのがどういうことなのか、私と息子の認識をすり合わせていくことにしました。私「手をグーパーグーパーってしてみて?」息子「こう?」私「グーはすごく上手だね!あれ?でもおかしいな?パーの時に指が丸くなってるね?パーは指がピーンと伸びてお外に広がってないとパーに見えないよ?」息子「やってるよ?」私「うんとね、こうやって指先に力を入れて、もう無理~!!っていうくらい、伸ばすんだよ」そんな話をしながら息子の指を一本一本広げていきます。しかし指は元のようにすぐ丸まってしまうので、すかさずまた指を伸ばしてあげます。焦らずにできたら盛大に褒めて、少しずつ感覚を掴んで行けるように練習を重ねました。もちろんすぐには出来るようにはなりませんが、2週間ほど続けると、自分で意識をしながら指をぐんと伸ばせるようになりました。まだまだ力の入れ方をコントロール出来ていないので、開いた手はぷるぷると震えていますが、「これが指を伸ばした状態である」という共通の認識を持つことができました。そうして指を伸ばせるようになったら、今度は腕の番です。視覚優位の息子にわかりやすいように、バンザイをしている姿を写真に撮って本人に確認してもらいました。そうして客観的に自分の姿を見ることで「あれ?腕が曲がってる?これはおかしいね?」と自分で気づけるようになってきました。でも、私が手を添えて腕を伸ばした状態にすると、指が自然と曲がってしまいます。指を伸ばそうとすると、今度はせっかく伸ばした腕が曲がってしまいます。どんな風に力を入れれば自分の体が思うように動くのかわからない状態なんだということを改めて感じました。まだやり始めて間もないので完全に腕も指も伸びたバンザイはできていません。ですが、いつか自分が思うように体を動かせる感覚を掴めればいいなと考え、練習を続けています。練習を続けたことで思わぬ成果も!出典 : 腕や指を伸ばす練習をしながらテレビ体操に取り組んでいくうちに、思わぬところに効果が出てきました。体を大きく動かす粗大運動だけではなく、指先をつかった微細運動も苦手な息子は、文字を書く時に左手で紙をしっかりと押さえることができず、すぐに紙がずれてしまっていました。しかし、指を伸ばす練習をしたおかげで、左手をL字型にしてしっかりと紙を抑えられるようになり、少し文字が書きやすくなったのです。また消しゴムをかけるのも苦手でしたが、紙を抑えられるようになったことで、以前より消すのが上手になってきました。ついつい粗大運動と微細運動をわけて考えがちですが、身体はすべて繋がっています。一つの動作をマスターすることで、生活のあちこちに潜んでいる不自由さが少しずつ解消されていくかも知れない!と、とても嬉しくなりました。まだ息子はテレビ体操を満足に行うことができません。指を伸ばせるようになり、腕を伸ばせるようになった後には、膝の曲げ方、かかとの上げ方、重心の移動などなど、課題は山積みです。でも、「あれができなくて困ったな」「こんな風で困ったな」と感じた時は、漠然とした問題点が具体的に見えた瞬間であり、前進する絶好の機会でもあります。毎日みんなで体操を続けて一つずつ問題点を洗い出し、一緒に体の動かし方を学んでいけば、いつかは伸び伸びと体操ができる日が来るような気がします。お子様が不器用で困っていらっしゃるお家でも、取り入れてみませんか?真面目にやれば翌日は筋肉痛になってしまうので親御さんにとってもよい運動にもなると思いますし、お子様が体のどの部分を動かすのが苦手なのか、少しずつ見えてくるかも知れませんよ。「テレビ体操」「みんなの体操」放送時間
2017年05月10日初めて息子と一緒に過ごす長期休暇出典 : 私は、発達障害のある息子が0歳のときからずっと会社で仕事をしていました。なので、夏休み・冬休みといった長期休暇も関係なく、息子はずっと保育園に預けていました。3歳になって幼稚園に変わりましたが、最近の幼稚園も仕事をしているお母さんが増えてきているため、長期休暇でも「預かり保育」というシステムがあります。幼稚園の間もずっと、長期休暇中は息子を預かり保育を利用して仕事をしていました。振り返ってみると、仕事をすることが私にとっての良い息抜きになっていたと思います。一日中ずっと息子と二人きりというのは、息子が病気で保育園・幼稚園をお休みした日以外は基本的にはありませんでした。しかし小学校入学にあたり、息子の預け先について考える必要が出てきました。こういった場合、よく第一候補として上げられるのは学童です。しかし私は学童保育の申請をしませんでした。理由は、私が二年前に独立して自宅で仕事をするようになっていたことが関係しています。自営業であれば仕事の仕方にある程度融通が効く利くだろうと考えていたからです。また、事務所が自宅だと学童の申請が通りにくいという話を聞いていたからでもありました。私は「問題は、夏休みや冬休みだけど、なんとかなるだろう」と気楽に考えていました。そして、息子が幼稚園を卒園した後の春休み、たまたま急な仕事が入っていなかったこともあり、初めて息子と一緒に長期休暇を過ごしてみることにしたのです。しかし私は、「なんとかなるだろう」という自分の考えが甘かったことに気付いたのでした。初めての長期休み…楽しかったはずが、ストレスで眠れなくなった!?娘と息子と3人で24時間一緒にいる初めての長期休暇。最初の数日は3人でいろいろと出かけたりして、割と楽しく過ごしていました。けれども、毎日毎日一緒に出掛けるわけにもいきません。1週間を経過したあたりから、次第に私の精神状態はおかしくなってきました。Upload By モビゾウ息子は、発達障害の特性から様々な刺激に過敏に反応するところがあります。私のちょっとしたため息や独り言すら聞き逃すことができません。私が何か独り言を言ったり、物音をたてたりするだけで、息子はビクッとして振り向きます。そして、「お母さん今なんて言った??」「なになに??教えて!?」「今の音なに!??」と何度も聞かれるのです。次第に私は、ため息をつくことも独り言を言うこともできなくなり、息子が反応すると思うと何をするのもおっくうになってきてしまいました。Upload By モビゾウさらに辛かったのはテレビです。息子は自分の気に入った番組を何度も何度も繰り返し見ます。新しい番組はなかなか見ることができません。全く同じセリフを一日中聞かされ続ける苦痛は、結構なものです。さらに、息子は私が見たい番組を一緒に見ることができません。5分もすると我慢の限界がくるようで、「いつ終わる?」「あと何分で終わる?」「ねえねえまだ?」と繰り返すため、私は息子がいる空間では自分の観たい番組の視聴は我慢するようになりました。Upload By モビゾウさらに輪をかけて辛かったのが息子の多弁。ADHDの子は、脳内がザワザワしていることが多いようで、ひたすらしゃべり続けたりします。たまに、聞いているうちに眠たくなってウトウトしてしまうこともあります。それでも息子は遠慮なしです。立て板に水のようにしゃべり続けます。次第に、息子が寝ているときでも、息子の声が耳元にこだまするようになってしまいました。Upload By モビゾウそして遂に、私はストレスで夜眠れなくなりました。息子とたった一週間、長期休暇を過ごしただけで…。「ダメもとでも、学童を申請してみれば良かった」「息子がいたら、仕事なんてまずできない」「夏休みになったら、これが6週間も続くんだ…どうしたらいいの…」こうして考えをめぐらしている間にも、私の精神状態はどんどん悪化していくことになりました。放課後等デイサービスという選択肢があることを知る!出典 : やがてくる夏休みという長い長い休暇をどうするか、私は考え続けました。学童の申請は、既に終わってしまっていました。児童館で何時間か遊ばせておくという手段も考えましたが、試しに息子を児童館に連れていくと、すぐに上級生のいじめの標的になりました。児童館では学校のように先生の見守りがないため、人とのコミュニケーションがあまり得意ではない息子を何時間も置いておくことは、やはり心配でした。どこかないか、安心して息子を預けられるところは…。そして、PCの前で地域情報をガチャガチャと調べているうちに、「放課後等デイサービス」という施設があることを知ったのです。私はすぐに、息子を連れて見学に行きました。見に行っただけで大興奮だった息子。放課後等デイサービスの魅力とは…?Upload By モビゾウ放課後等デイサービスとは、発達に特性のある子どもたちの福祉施設、という説明がよくされていますが、各施設によって内容は全く違うようです。息子と一緒に見に行ったのは、療育と外遊びと宿題の時間がバランスよく組み合わさったような施設でした。ビジョントレーニングや運動療育など、お馴染みの療育コースに息子はワクワクです。「僕もやりたい!」「これ、病院でやったやつだー!!」と大興奮。その施設では隅から隅まで支援が行き届いており、さらにスタッフも専門性の高い方々ばかりでした。息子は、「ここ明日から行ける?明後日から?」と大騒ぎです。けれども、私にはひとつだけ心配がありました。「私が自宅で仕事しているから利用できないと言われないだろうか…」ということ。私がその点をスタッフの方に相談したところ、スタッフの方がこう言ったのです。Upload By モビゾウ「お母さんの就労形態は関係ありません。」そしてさらにこう続けてくれたのです。「お母さんが疲れてしまって、少し休みたいっていう理由で預けてる方も沢山いますよ。」私はそのとき、眠れないほど追い詰められていた心が、やっと解放された気がしました。このスタッフの方の一言に救われたのです。そして初めて、私は「ちょっと…私も疲れたんです」と弱音を吐くことができたのでした。疲れ切ってしまう前に、使えるサービスの活用を。出典 : 発達障害児を育てていて、「もう疲れた…」と思っている親御さんがいたら、放課後デイサービスのような施設もあるということをぜひ思い出して頂きたいです。24時間365日、親だけで相手をするのは限界があります。こういったサービスを積極的に利用して、休息や落ち着いて仕事ができる時間を得ることで、子どもと接する時間をより実りあるものにしてゆくことができるといいですね。また、利用には市町村から発行される受給者証の申請などが必要となる場合もあります。利用を検討している場合は、余裕を持って申請しておくことをお勧めします。
2017年05月05日特性を知って、理解が深まった私たち家族の話。出典 : 我が家にはアスペルガー症候群の娘と、不注意優勢型ADHDの息子がいます。面白いように娘は私に、息子は夫にそっくり。子供たちに発達障害の診断が下り、書籍やネットからたくさんの知識を得る中で、私も「この特性は自分も持ち合わせているな」と感じることが多々ありました。最近は「大人の発達障害」というキーワードもよく見かけるようになりました。診断が下りるかどうかではなく、「自分を知る」という意味で、ご自身に当てはまる特性がないかどうか調べてみるのも良いかも知れません。さて今回は、毎日お昼まで起きてこない夫にイライラしていた私たち家族が、夫の行動を認める方向に進み始めたお話をしたいと思います。夜型生活を続ける夫にイライラしていた日々。出典 : 夫は自宅で仕事をしています。日によって仕事のボリュームにも差があり、夜中まで働いていることもあれば、日中少し余裕ができて子供と遊べることもあります。とても良い環境だとは思うのですが、私にはずっと夫に対する不満がありました。仕事の有無にかかわらす、毎日夜遅くまで起き、昼過ぎまで寝ていることです。もう独身ではないのだから、もう夫婦だけの生活ではないのだから、家族に生活サイクルを合わせてくれてもいいじゃないか。一日中、子どもたちにひっきりなしに話しかけられ、息をつく間もない私に変わって、10分でも20分でも子どもたちの相手をしてくれるだけでも助かるのに…。休日に家族で出かける予定がある時も、夫が起きてくるのは出発時刻の30分前。自分の身支度を整えることしか考えておらず、子どもたちの準備を手伝いながらバタバタと用意をしている私の横で、のんびりとコーヒーを飲んでいるのです。はじめは「手伝ってよ!」と声をかけていましたが、何度話をしても、家庭を運営するということに進んで参加してくれない夫に疲れ、いつしか期待することをやめました。いつしか子どもたちも白い目で夫を見るようになりました。パパが大好きだからもっと遊んでほしい、もっと喋りたい、もっと一緒にいたい。なのに、どうして毎日こんなに遅くまで寝ているの!?そんな子どもたちの声にも、夫は「そうだなぁ」と笑いながら返していましたが、起床時間が早まることはなかったのです。「夜遅くまで起きている」のも「朝起きれない」のも「特性」!?出典 : そんな折、SNSで「ADHDの方は放っておくと夜型の生活になる場合が多い」という情報を目にしました。この情報を見たとき、イライラした感情がすとんと消えてゆきました。夫の夜型生活は、努力不足ではなく、特性によるものだったのだと理解することができたのです。アスペルガーとADHDの子どもたちを育ててきた私は、生まれ持った特性を努力で矯正することは難しいと日頃から肌で感じてきました。だから、父親なんだから一般的な生活サイクルで生きなさいというのは、子どもたちに“一般的な子どものような振る舞いをしなさい”と強制するのと同じことだと思ったのです。むしろ休日に早起きをして家族で出かける際は、夫なりにがんばって早起きをしてくれているのだと認識を改めました。パパが朝起きてくれないと文句を言っていた子どもたちには「いろんなタイプの人がいて、パパは朝に寝てお昼に起きるタイプの人なんだよ。」と自信を持って言えるようになりました。私が認識を改めた事で、子どもたちの夫に対する意識も「朝起きられないしょうがない人」から「これがパパ、そういうタイプの人」というものに変わりつつあります。普通の生活リズムで生きられないことを責めるのではなく、夫の生活リズムを認めて受け入れることで、少しずつ家族関係が良くなっているような気もします。認めることが、家族一人ひとりへの理解を深めることに出典 : アスペルガーの娘と同じような特性・思考回路を持った私は、その特徴を身をもって理解しているため、娘に伝えたいことがたくさんあります。しかし、ADHDの息子は私とはまったく異なるタイプの人間なので、息子のことを理解できるているかどうか時折不安になっていました。しかし今回のことをきっかけに、せっかく息子とそっくりの夫がいるのだから、夫の行動パターンから息子を理解する手掛かりを得なければもったいないと思うようになりました。発達障害のある子どもたちは、私たちには想像できないような感覚過敏を抱えていたり、恐怖や不安を感じていたりします。何気ない日常を送っているように見えても、実はたくさんのストレスを受けながら、がんばっているのです。私が心の中で夫を責めていたように、「もっときちんとしなさい」「もっと努力しなさい」とついついお子さまを責めてしまう方もいらっしゃるかも知れません。そんな時には、一度「もうすでにたくさんがんばっているんだ」という前提でお子さんを見てみませんか?少し視点を変えてみると、「今日もよくがんばったね」「もっと楽になれるようにどうサポートすればいいかな?」という肯定的な声掛けをするきっかけになるかもしれません。
2017年05月03日小児慢性特定疾病とは?出典 : 小児慢性特定疾病とは、18歳未満の子どもの病気のうち、以下の4つの項目を満たしていると厚生労働大臣が認定した子どもの病気のことを指します。・慢性に経過する疾病であること・生命を長期に脅かす疾病であること・症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること・長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること平成29年4月1日現在、722の疾病が対象となっています。代表的な病気は、Ⅰ型/Ⅱ型糖尿病や小児ぜんそく、ダウン症などがあげられます。幼少期から発症し、継続的な治療や療育が必要になるものがほとんどです。認定されている病気は以下のリンクからご覧ください。小児慢性特定疾病情報センター|疾患群別検索なぜ特定の病気を「小児慢性特定疾病」として認定しているのでしょうか?その目的は大きく分けて2つあります。ひとつめは、患者のためにより良い治療方法の研究や新薬の研究などを進めるという医学的な目的です。もうひとつは、重い病気を治療するために必要になる高額な医療費を軽減するためです。まずは、医療費助成制度についてまとめました。小児慢性特定疾病の医療費助成制度出典 : 小児慢性特定疾病の医療費助成制度とは、小児慢性特定疾病に関する治療を受けた場合にかかる医療費を、一定金額の自己負担金額以外は国が助成してくれる制度です。医療費助成制度における自己負担額の上限は所得によって決められています。ある一定の金額を超えたら、助成金を受けることになります。具体的な年収と患者の自己負担額は以下の図表をご覧ください。Upload By 発達障害のキホン出典:ご存じですか?小児慢性特定疾患対策|厚生労働省発行例外として、同じ世帯に小児慢性特定疾病や指定難病の患者がいる場合は、金額が異なります。個人単位の自己負担金額ではなく、世帯単位での負担金額の上限が決められます。世帯内にいる患者の自己負担額を比べた時に、自己負担額が高い金額で計算される仕組みです。基本的には、18歳未満の児童等が対象です。18歳を超えた場合でも、医師が引き続き治療が必要だと判断した場合は、20歳未満まで延長されます。成人を迎えた後の治療に関しては、指定難病に対しての難病医療費助成制度や高額療養費と医療費控除などを利用して、医療費の負担を軽くすることができます。それぞれの制度の利用に関しては以下の記事をご覧ください。医療費の助成を受けるためには、申請が必要になります。申請を行う窓口は、都道府県、もしくは一部の政令指定都市などの地方自治体です。具体的な支援やサポートのガイドラインは国が定めているので、医療費助成について調べる際は、国が運営している「小児慢性特定疾病情報センター」のHPを見ることで、まとまった情報を手に入れることができます。出典:小児慢性特定疾病情報センター地域ごとに、実際の支援やサポートが違うことがあるので、自分の住んでいる地域に関しての情報は、各自治体の相談窓口でご確認ください。出典:小児慢性特定疾病情報センター|各自治体担当窓口小児慢性特定疾病の医療費助成の申請については以下のとおりです。1. まず、指定医療機関を受診して、診断を受けます。2. その診断に基づき、医師に「医療意見書」を作成してもらいます。3. 「医療意見書」と申請書類を国から指定されている地方自治体の窓口に提出します。4. 小児慢性特定疾病審査会によって、書類や病気の症状に対して審査が入ります。5. 審査を終えると、申請した地方自治体より結果が届きます。上記の申請により、医療費助成が受けられる医療費受給者証が手に入ります。窓口への申請で必要になる書類は、各地方自治体の保健福祉局のホームページなどでダウンロードすることができます。医療意見書は、各病気のカテゴリごとに違うので、自分の病気がどのカテゴリなのかを調べた上で、ダウンロードすることになります。下記のページにはカテゴリごとにまとまっているので、自分の病気名を探した上で、書類を手に入れることができます。自分で記入する個所もあるので、分からない場合は診断を受ける医師に相談しましょう。小児慢性特定疾病情報センター |医療意見書の一括ダウンロード小児慢性特定疾病の医療費助成制度には、重症患者を認定する仕組みがあります。小児慢性特定疾患の中でも、特に高額な医療費が長期間にかけて必要になる病気や、同じ病気でも症状が重い患者に対して、負担金額を下げるものです。各病気ごとに基準がつくられており、重症患者の認定をもらうためには、医師の診断が必要になります。詳しい診断基準等は、以下のページをご覧ください。小児慢性特定疾病情報センター - 小児慢性特定疾病 重症患者認定基準小児慢性特定疾病の医療受給者証は更新が必要です出典 : 医療費助成制度をうけるために、必要になる医療受給者証。この書類の有効期限は、申請日からの1年間となっています。医療費の助成を継続して受ける場合は、更新手続きが必要になります。指定された医師からの診断を受け、医療意見書を申請書類として提出することが求められます。各都道府県ごとに多少違いはありますが、更新が必要な方に対して期限が切れる3~4か月前に更新のお知らせが届きます。更新の手続きには2~3か月かかるので、受給者証の期限が切れてしまった場合は、一時的に立て替えた上で、払い戻しを受けることになります。前述した通り、18歳になっても引き続き治療が必要だと認められる場合は、20歳未満まで期間が延長されます。このときに、期限が切れてからの更新手続きは認められないので注意が必要です。また、18歳以降に使用できる医療費助成制度は他にもいくつかあり、相談は、かかりつけの医師や市区町村の窓口で行うことができます。小児慢性特定疾病における福祉サポート出典 : 医療費助成以外にも、小児慢性特定疾病をかかえる子どものための福祉サポートがあります。生活していく中での悩みの相談や、生活用具の給付など様々です。子どもとその家族が抱える悩みの相談窓口を用意したり、困りごとを解決するために関係機関を紹介する取り組みは「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」と呼ばれています。これらの取り組みは、都道府県や地区町村で行うように「児童福祉法」によって定められています。小児慢性特定疾病に関する子育ての相談はもちろん、同じ経験をした方に相談できるピアカウンセリングや家庭内で療育をされている方を対象にした巡回相談指導などをうけることができます。地域ごとに詳細なサポート内容は異なりますので、お住まいの地域の窓口にご相談ください。小児慢性特定疾病情報センター|各自治体窓口病気の症状によっては車いすや、入浴の補助に使う器具など必要になる生活用具があります。それらの生活用具を支給するのが「小児慢性特定疾患児日常生活用具給付事業」です。この申請も、お住まいの自治体の窓口で行います。医師と相談しながら申請する生活用具の支給を受けられるようになります。小児慢性特定疾病に関する相談はどうしたらいいの?出典 : かかりつけの医師や各自治体の窓口を通して行う相談もありますが、それ以外にも、生活の中での困りごとを相談する場があります。小児慢性特定疾病のある子どもと家族にとって、小中学校での集団生活の中でどのように病気のことを説明して、クラスメイトからの理解を得るのかは重要なポイントになります。給食での食事制限や運動制限など、少なからず配慮が必要な場面も生まれてくるはずです。やはり、担任の先生や養護教諭などの学校と相談し、連携を密にすることは必要不可欠です。クラスメイトの病気への理解を深めることで、例えば糖尿病などでみられる低血糖の症状が出た時などに早期発見につながるなどのメリットもあります。周りの人に病気の説明を行う際に、医師の診断書はもちろん、各自治体で配布している「小児慢性特定疾病児童手帳」を使うことで子どもの集団生活をサポートすることができます。教材詳細 株式会社母子保健事業団|小児慢性特定疾病児童手帳上記のような学校生活での悩みについては、国立成育医療センターが運営している「慢性疾患を抱えているお子さまの学校生活相談窓口」でも相談できます。ホームページには、生活の中でのQ&Aやガイドブックがまとめられていますので、ぜひご覧ください。相談窓口のご案内|国立成育医療センター出典:こどものケアドットコム小児慢性特定疾患患者や子どもの健康を考えたポータルサイトまとめ出典 : 小児慢性疾患のある子どもたちの自立を考え、周りの環境をどのように整えるのかは子育ての中でも大きな課題となります。医療費助成制度や福祉サポートをうまく活用しながら、継続的な治療と上手に付き合っていくためにも相談できる環境を用意しておくことは大きな意味を持つはずです。病気に対しての理解も含め、学校現場や病気をもたない子どもたちには、まだまだ知られていないことが多いので、理解を得るのは難しいことかもしれません。学校や医師などつながりを持って子育てにのぞむことは一つの鍵となることでしょう。
2017年04月30日通級指導教室とは?出典 : 通級指導教室とは、小・中学校に通う比較的障害の程度が軽い子どもが、通常の学級に在籍しながらその子の障害特性に合った「通級による指導」という個別の指導を受けるための教室です。通級による指導とは、小学校又は中学校の通常の学級に在籍している軽度の障害のある児童生徒に対して、主として各教科等の指導を通常の学級で行いながら、障害に応じた特別の指導を特別の指導の場で行う指導形態です(学校教育法施行規則第140条及び同施行規則第141条)。参考:平成五年文部省告示第七号|文部科学省通級による指導を受ける子どもは、主に各教科の学習や給食などの時間はみんなと一緒に通常学級で過ごし、週に何時間かある通級による指導の時間だけ通級指導教室に移動して、それぞれの困りごとや課題に合わせた支援・指導を受けることになります。個別に必要な支援や指導の内容が変わるので、障害の種類によって教室の種類もいくつかに分かれています。そのため、在籍する学校にその子のニーズに合った通級が設置されていない場合もあり、地域で定められた他校の通級指導教室に通うこともあります。通級による指導は平成5年より全国で制度化されました。平成18年の改正により、情緒障害から自閉症者が独立して規定され、さらに学習障害(LD)、ADHDが新しく対象に含まれるようになり、指導時間数についても弾力化されました。通常級で学ぶ障害のある子どもが増え、そのニーズの高まりとともに小・中学校での通級指導教室による支援体制の整備が進んでいます。ここ20年間、通級による指導を受けている児童・生徒数は増加傾向にあります。平成27年度の文部科学省の調査によると、全国の公立の小学校3693校・中学校645校に通級指導教室が設置され、義務教育段階の児童生徒全体の0.8%にあたる8万3750人の児童・生徒が通級による指導を受けています。出典:文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】通級による指導の対象は?出典 : 学校教育法施行規則第140条の各号のいずれかに該当する、小学校・中学校に通い特別支援学級に在籍していない児童・生徒で、障害に応じた特別の指導を行う必要がある場合、通級による指導の対象となります。・視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・言語障害・自閉症・情緒障害・学習障害・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・病弱および身体虚弱「情緒障害」とは情緒の現れ方が偏っていたり、その現れ方が激しかったりする状態を自分の意志ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に支障となる状態を指します。具体的には心理的な要因による選択性かん黙(場面緘黙症)などが含まれます。上記の障害種別ごとにクラスが設置されますが、市区町村によってはすべての障害種別のクラスが設置されていない場合もあります。参考: 学校教育法施行規則 (昭和二十二年五月二十三日文部省令第十一号)通級の支援対象となる障害の基準は明確にはありませんが、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度とされています。学習面や生活面など、学校生活で子どもが困難を抱えていないか、さまざまな面から判断されます。後述する通り、就学相談などで親の希望や本人の障害の状況や困りごとなどを合わせて検討されます。明確な基準がないために「特別な指導を必要とする程度」の判断は、地域や学校によって異なる場合があります。通級指導教室ではどんな指導をしてくれるの?出典 : 通級指導教室では、障害に応じた特別の指導として、障害の状態の改善又は克服を目的とする指導をうけることができます。一人ひとりの障害の状況に応じた具体的な目標や計画を立て、特別の教育課程を編成して指導が行われます。特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を参考にした自立活動では障害による学習上・生活上の困難を改善するための指導が行われます。特に必要があるときは、これに加えて児童・生徒の障害の状態に応じて各教科の内容を補充するための指導を行うこともできます。この「教科の補充」は、単に授業の遅れを補習するということではありません。ですが、その子にあった方法で教科を学び、学習上の苦手を克服する必要がある場合に行われます。例えば言語障害のある子どもが音読が苦手で国語の授業ができない場合に読む練習をしたり、算数障害のある子どもが筆算しやすいようにマス目のあるプリントでかけ算を学んだりする場合があります。出典:文部科学省特別支援教育資料(平成27年度)【第1部集計編】通級による指導の時間数は、自立活動と教科指導の補充を併せて、年間35単位時間(週1単位時間)から年間280単位時間(週8単位時間)までが標準として示されています。また、学習障害及びADHDの児童生徒の指導時間数については、月1単位時間程度で指導上の効果が期待できる場合もあることから、年間10単位時間(月1単位時間)から年間280単位時間までが標準として示されています。小・中学校では定められた授業内容や授業時間数を学習要領に基づき行うことが義務付けられています。ですが特例として、児童・生徒本人の障害に応じた特別の指導を通級により受けた場合、受けた指導は小学校または中学校の教育課程に加え、またはその一部に替えることができます。つまり他校に設置された通級指導教室で受けた授業でも、自校で行った授業と見なすことができます。出典:学校教育法施行規則 (昭和二十二年五月二十三日文部省令第十一号)第百四十一条子ども一人ひとりのニーズに合わせるため、以下のような計画のもと、具体的な支援が行われます。・個別の教育支援計画…保護者や関係機関と連携を図って個別の教育支援計画が立てられます。それに基づいて通級による指導の教育課程が在籍校の校内委員会で編成されます。・個別指導計画…小・中学校では障害のある子どもの個別指導計画を作成することが学習指導要綱で定められています。特に通級による指導を受ける子どもの場合、通常学級と通級指導学級のそれぞれで支援計画が作成され、お互いの教員が連携し十分な協議を行って支援を進める必要があります。通級指導教室の通い方出典 : 通級指導教室に通う子どもは、通常学級に在籍し、各教科の授業や給食などの学校生活の大部分を通常学級で過ごします。担任も通常学級の教員がつとめます。週・月に何時間かある通級による指導の時間のみ、通級指導教室に通います。通級指導教室は障害別に分かれているため、必ずしも在籍校に該当する通級指導教室があるとは限りません。他校の通級指導教室に通う場合、保護者による送迎が必要なこともあります。これらの形態は地域や学区によって違いますので、お住まいの地域の制度や通級の設置校がどこにあるか、問い合わせてみましょう。参考:通級について|高知県教育センター通級指導教室と特別支援学級・特別支援学校との違いは?出典 : 特に義務教育が始まる小学校入学の前に、お子さんをどの教育環境で育てるか迷う保護者の方は多いと思います。障害のある子どもの教育環境として、通常学級・通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校の4つの選択肢があります。それぞれの対象となる障害の程度に明確な基準はありませんが、一般的に通級指導教室は比較的障害が軽度な場合に選ぶ保護者が多いようです。出典 : 通級指導教室に通う子どもは、通常学級の学校に籍があり、通級指導の時間のみ通級指導教室に通います。通級指導教室が通常学級の学校にない場合は、通級指導教室がある他の学校に通級指導の時間のみ通います。また、担任は通常学級の先生が受け持ちます。出典 : 特別支援学級に通う場合は、特別支援学級が設置されている学校に籍を置きます。学区内に設置されていない場合、学区外の学校に通うことになります。基本的に特別支援学級で授業を受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。担任は特別支援学級の先生が受け持ちます。出典 : 特別支援学校に通う場合は、通学する特別支援学校に籍をおきます。また、通級・特別支援学級は通常の教員免許のみでも受け持つことができますが、特別支援学校の教員は通常の教員免許に加え、特別支援学校の教員免許を取得していることが通常です。通級を選ぶべき?それぞれのメリット・デメリットは?通級を選ぶべきかどうか、子どものことを考えて迷うのは当然です。教育システムや制度の違いから、通級・特別支援学級・特別支援学校それぞれにメリット・デメリットがあります。お子さんの学校選びの参考にしてみてください。■通級・通常学級に在籍し、いろいろな子どもとのコミュニケーションなどの経験が積める・通常学級で授業が受けられる・本人の障害に合わせた必要な支援やフォローを通級指導教室で受けられる■特別支援学級・発達・障害の程度に準じたカリキュラムで指導を受けられる・給食の時間や昼休みなどには通常学級での子どもとのコミュニケーションなどの経験ができる■特別支援学校・個々人の障害の程度に合わせたカリキュラムで、専門性を持った先生からきめ細かい指導が受けられる・高等部では職業教育が受けられる■通級・特別支援学級・基準があいまいである・すべての学校に通級指導教室や特別支援学級があるわけではなく、場合によっては遠くの学区に通学しなければならない・高校では通級制度はまだ整えられておらず、特別支援学級も設置されていないのが現状(ただし、2018年度から高校でも通級指導を始めるよう文部科学省が準備を進めている)・学級数や受け入れ可能人数などに地域差が大きい・通常学級との行き来がお子さんのストレスになることもある・制度や対象となるかの基準に地域差が大きい■特別支援学校・通常学級の子ども、同世代の子どもと触れあう機会が少ない・転学・転校は可能だが手続きが必要・障害の程度によっては入学できない可能性がある・特別支援学校高等部を卒業しても、通常の高卒資格は得られない(ただし大学入学資格を得ることはできる)・地域差、学校差がある通級指導教室に入るには?出典 : 初等教育(小学校)へあがる前年度に、障害のある子どもや発達が気になる子どものいる家庭が、通常級、通級(通級指導教室)、特別支援学級、特別支援学校などの選択肢の中からどこへ進学するかを選択する機会が就学相談です。小学校入学後に通級による指導を受けたい場合、一般的には以下のような就学相談のプロセスを経ることになります。しかし、就学相談は、地域によって内容や呼び方、その過程が異なります。お住まいの地域の就学相談についてはご自身で行政や学校に問い合わせてみてください。■年中期~6月ごろ:情報収集お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、ホームページを参照して、地域にある特別支援学校や、小学校の特別支援学級の有無などについて情報を集めましょう。また4月から6月ごろにかけて、教育委員会が幼稚園や保育園、発達支援センターや療育センターに「個人調査票」「就学に関する調査票」の作成を依頼します。通常の学級・学校に就学することに不安があると思われるお子さんについて、園やセンターは保護者の了承を得て調査票を作成します。そして該当のお子さんをもつ保護者向けに、教育委員会が就学についての説明会を行います。説明会では小学校全体および通常学級、特別支援学級、特別支援学校ではどのような支援が行われているのか、就学指導・就学相談の流れ、手続きの方法などがアナウンスされます。ただし、私立や認可を受けていない保育園や幼稚園は教育委員会の管轄外なのでこういった情報が回ってこない可能性があります。その場合はご自身で市区町村の教育委員会に問い合わせをして、就学相談を受けることをおすすめします。■7~9月ごろ:就学相談園やセンターの調査票がなくても、市区町村の教育委員会へ連絡すれば就学相談を受けることができます。就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談(複数回のこともあります)を通して子どもにとって最適な就学先を決めます。子どもの状態を把握するための検査が行われたり、相談員がお子さんの在籍園・在籍校に赴いてお子さんの様子を確認することがあります。障害の状態、障害に基づく教育的ニーズ、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などを考慮して、就学指導委員会がお子さんにとって良いと思われる就学先を決定します。この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合はその旨を教育委員会に申し立て、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書や療育手帳などがあれば持参することをおすすめします。小学校入学時は通常学級に在籍していた子どもが、その後通級による指導が必要となることもあります。その場合、小・中学校の校内委員会が関係しています。校内委員会とは、子どもの状態に早期に気付き、適切な支援を行うために小・中学校に設置されたものです。その役割は以下の通りです。・学習面や行動面で特別な教育的支援が必要な子どもに早期に気付く。・特別な支援が必要な子どもの実態を把握し、担任の指導への支援方策を具体化する。・保護者や関係機関と連携して、個別の教育支援計画・個別の指導計画を作成する。・特別な支援が必要な子どもへの指導とその保護者との連携について、全教職員の共通理解を図る。また、そのための校内研修を推進する。・専門家チームに判断を求めるかどうかを検討する。※LD、ADHD、自閉症スペクトラムの判断は教員が行うものではない・保護者相談の窓口となるとともに、理解推進の中心となる。こういった支援体制が小・中学校内にあるため、最初に通常学級に入学したお子さんでも、通級による指導や特別支援学級の支援を受けることができます。通級による指導が変わる?ニーズの増加と新しい取り組み出典 : 通常学級に在籍する子どもの中に発達障害があったり何らかの支援を必要とする子どものニーズは増えていますが、今までは通級による指導の教員は、加配措置の対象となっていました。そのため通級指導を希望しても先生の数によって、通級を利用できる子どもの数が決まる仕組みになっていました。そのために利用したくてもできない「通級待機児童」が発生してしまうこともありました。そこで2017年3月に、「義務標準法の改正法案」が国会に提出・可決されました。通級による指導及び外国人児童・生徒等への日本語指導に係る教職員定数の基礎定数化に向けた法律の改正が行われたのです。これにより10年間で通級による指導を行う教員を段階的に増やすことが決まりました。初年度となる2017年度については、通級による指導及び外国人児童・生徒等への日本語指導合わせての数ですが、計868人の教職員定数を増やすことになりました。またこの法改正により、通級指導の教員1人当たりの子どもの数は2016年度の16.5人から13人になり、よりきめ細やかな指導ができるようになるのではないかとの期待もあります。参考:国立国会図書館 教職員定数と義務標準法の改正通常学級に在籍する学習障害(LD)、ADHD、自閉症スペクトラムなどの発達障害のある子どもはどの学校にもいるといわれており、さらに適切な支援を受けられるようにすべきとの声も高まってきました。これを受け、文部科学省はインクルーシブ教育の一環として「特別支援教室(仮称)」として、さらに弾力的な支援ができる制度を進めようとしています。◇東京都の特別支援教室東京都では全国に先駆けて2016年度から小学校の情緒障害等通級指導教室が特別支援教室という制度に変わりました。それまで自校に通級指導教室が設置されていない場合、他校に通わなければいけなかったのですが、特別支援教室の制度では、東京都の全ての公立学校に特別支援教室がおかれ、拠点校から教員が巡回して指導を行います。これにより、在籍校で指導が受けられるため、・多くの子どもが支援を受けられる・子どもや保護者の移動・送迎の負担が少なくなる・在籍学級の担任と巡回指導教員の連携が密になるなどの効果が期待されています。東京都では新しく特別支援教室専門員を非常勤で配置したり、臨床発達心理士を巡回させるなど、支援を進めています。一方で、巡回による指導を行い、支援を受ける子どもが増える特別支援教室の制度は、教員の負担が大きくなります。そのため教員の数を増やしたり、制度の導入によって指導の質が下がらないようにする必要があるという指摘もされています。出典 : まとめ出典 : その子のタイプや学校の体制によっても、どのような支援体制が子どもに合っているかは変わりますが、大切なのは子どもにとって何が最善か、どんな支援があれば子どもが困り感を感じずに学校生活を送れるか。通級による指導もその選択肢の一つとしてみる価値は十分にあるでしょう。文部科学省によると通常学級に在籍する6.5%の子どもに特別な配慮や支援が必要だという調査結果があります。そのような子どもたちには、弾力的かつ必要な支援が受けられる通級指導教室の存在は重要になってくるのではないでしょうか。特に、発達障害の子どもの中には、得意なことと苦手なことがある場合があり、通常学級での学習におおむね困難がなくても、苦手なところや特性にあった指導が必要になる場面が出てくることも少なくありません。通級のメリット・デメリットを含め内容をよく知り、またほかの学びの場とも検討した上で、子どもに合うのはどのような環境か考えてみてはいかがでしょうか?まずは学校に問い合わせたり、子どもと一緒に見学に行くのもよいでしょう。
2017年04月29日理学療法士とは?出典 : 理学療法は英語ではPhysical Therapyと呼ばれ、主に身体的手段と物理的手段を用いて行う療法のことを指します。理学療法で用いる身体的手段とは主に運動のことを指しています。身体的手段を用いる場合、体操や歩行練習などによって状態の回復や改善を目指します。また物理的手段とは、電気や水、光線などを意味します。温熱や電気刺激などを用いて理学療法を行います。「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。上記のような理学療法を用いて実際に治療を行う人々のことを理学療法士(PT)と言います。理学療法士は「理学療法士及び作業療法士法」に基づく国家資格のうちの一つであり、他の作業療法士や言語聴覚士と同じように医師や他の医療関係者と連携しながら医療を支えています。けがや病気、高齢などさまざまな理由から日常生活に必要な基本動作が難しい人々に対してリハビリテーションを行い、自立した生活が送れるようになるまでサポートをするのです。医療をはじめ、介護や教育、スポーツの分野でも人々を広く支援する理学療法士について、今回は詳しくご説明します!理学療法士及び作業療法士法理学療法士の仕事は?出典 : 理学療法士の仕事は、病気やケガからの回復を促すことだけではありません。一人ひとりの生きがいやその人らしさをサポートすることもまた、理学療法士の大切な仕事のひとつです。多岐に渡る理学療法士の仕事には、以下のようなものがあります。・理学療法プログラムの作成…理学療法を受ける人についての情報を収集・分析し、その人にあった治療法について考えます。・身体の状況についての評価・分析…さまざまな検査を用いて個々の痛みや身体機能について評価・分析します。・基本動作能力の改善…立つ、座る、歩くなどの基本動作を支援します。・運動療法…運動療法を用いて、より身体に負担の少ない動き方の指導を行います。・物理療法…マッサージや温熱などの物理療法を用いて、痛みの軽減や麻痺の回復を行います。・自立支援…自立した生活が送れるよう、地域やご自宅においてのアドバイスを行います。理学療法士と作業療法士の違い出典 : 理学療法士と似た職業として、作業療法士という資格があります。両者とも国家資格をもち、治療を受ける人のリハビリテーションを行う専門家ですが、どのような違いがあるのでしょうか?理学療法士は、からだの基本的な機能回復・獲得をサポートします。基本的な機能回復とは、寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩くなどの日常生活を行う上で基礎となる動作の改善のことを言います。例えば患者が脚を骨折したとき、理学療法士は運動療法や物理療法などを用いて、その部分を曲げたり、伸ばしたりできるよう、身体の基礎的機能の回復をサポートします。一方作業療法士はまず、その人がどのような生活をしたいのかを考え、障害のない日常生活を送るために必要な機能回復・獲得を考えます。その上で、着替える、入浴をする、散歩するなどの作業を通して脚の機能回復を支援します。理学療法士になるには出典 : 先にも少し触れたとおり、理学療法士は「理学療法士及び作業療法士法」に基づき、厚生労働大臣によって免許が与えられる国家資格です。そのため、理学療法士になるためには年に一度の国家試験に合格しなければなりません。国家試験を受験するためには、理学療法士の養成課程が存在する学校で3年以上学び、そこで単位を取得することが求められます。養成校を卒業することができ、試験に合格したら、見事理学療法士への道が開けることとなります。例年、理学療法士国家試験の合格率は70%~90%程度になっています。2016年の合格率は74.1%、2017年の合格率は90.3%でした。理学療法士国家試験の施行|厚生労働省第52回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省第51回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省理学療法士が支援する対象出典 : 理学療法は、日常生活における身体動作に障害がみられる方、または障害が予測される方を対象としています。運動機能の低下を招いた原因は問われません。(けが、病気、高齢など)■身体機能に障害がある方以下のような病気によって日常生活において必要な動作が難しい人が対象となります。・骨折・外傷…手足、脊髄の骨折や腰痛、四肢の切断など物理的に身体を動かすことが難しい状態にある方・呼吸・心臓…肺炎などの呼吸器疾患や、心筋梗塞などの心疾患によって呼吸に困難を抱える方・中枢神経…脳卒中やパーキンソン病など、身体の麻痺や動作能力に障害がある方・その他…糖尿病、メタボリックシンドロームなどから、専門家の指導が必要とする方■高齢期の方高齢や術後の体力低下によって身体機能に障害がある方、近い将来に介護が必要となることが予測される方、自宅にこもりきりになりがちな方など。■発達時期に障害がある子ども診断の有無に拘わらず、運動発達に遅れが見られるお子さんが対象となります。たとえば寝返り、ハイハイや歩行など、日常生活で使われる基本動作が苦手なお子さんなどが当てはまります。このほかにもパフォーマンスの向上を目指す運動選手など、幅広い人々に対してサービスを提供しています。理学療法士が支援する期間出典 : 急性期とは、手術の直後や発症早期で病状が不安定なときのことを指します。病状の安定や症状の回復を目指し、リスク管理を行いながら理学療法を行います。この時期に行われる理学療法には、麻痺に対する治療や、痛み治療などがあります。またその後の順調な回復につなげるため、杖や装具の使い方の指導も行います。回復期とは、病気やけがの状態が安定したときのことを指します。この時期は理学療法を積極的に行える時期でもあり、社会参加や社会復帰を目的とし、医療専門職がチームとなってリハビリテーションを行います。生活期とは、自宅や施設においてその人らしい生き方をサポートする時期です。回復期から獲得してきた能力の維持・向上を目指します。豊かな生活を支援するため、暮らしやすい生活の調整や家族に対する介助方法のアドバイス、社会参加のサポートなども行っています。理学療法士のサービスを受けるには?出典 : 理学療法士によるサービスは、病院、診療所、老人保険施設、老人ホームなどの介護保険関連施設において受けることができます。ただし理学療法を治療として受けるためには医師からの指示が必要となります。主治医・担当医にご相談ください。医師によって理学療法が必要かどうかの判断がなされます。必要だと判断され、またご利用されている医療機関に理学療法科やリハビリテーション科がある場合、治療を受けることができます。・障害のある方運動機能の維持や向上、社会活動の充実、また住宅改修などをご希望の場合、またはリハビリテーション・訪問リハビリテーションを希望される場合、かかりつけ医やケアマネージャー、市町村介護保険課にご相談ください。・身体機能の低下が気になる方身体機能の低下を未然に防ぐための事業として、介護予防事業というものがあります。ご希望の方は市町村老人保険担当課、または地域包括支援センターへお問い合わせください。障害のある方は障害者支援施設において理学療法が受けられる場合があります。ご希望の場合は福祉事務所までご相談ください。また、お子様の発達が気になる方は乳幼児健診での相談、または市町村保健センターや保健師への相談をおすすめします。発達障害支援における理学療法は?出典 : 発達障害において、その特性は「コミュニケーション・社会性の障害」と認識されることが多いですが、それと同時に、運動のぎこちなさや不器用さがみられる場合があります。そのような場合、自閉症スペクトラムや運動発達遅滞、注意欠陥・多動性障害などの子どもに対して理学療法が行われることがあります。「歩いていてなにか転びそうで不安」「模倣するのが苦手」などボディーイメージの未熟さなどがみられる場合に理学療法を勧めると良い場合があります。また、社会性やコミュニケーションを取ることが苦手など精神面や、鉛筆やスプーンをうまく握れないなど巧緻性の面に苦手さがある場合にも作業療法がすすめられることもあります。定型発達において獲得する、寝返りや、四つ這い(ハイハイ)などの獲得までに時間を要する場合があります。また、歩行を獲得してもふらつきや動揺が大きい子どももいます。また、身体機能において、ボディーイメージ・運動企画の未発達さ見られるため、姿勢を保つことが難しかったり、手と手、手と足などの協調運動が難しかったり、なにかをしながら同時に別のことをする二重課題などが苦手な子どももいます。ボディーイメージ・運動イメージに未熟さがある場合には、模倣をさせたり、縄梯子やジャングルジムなどの遊具を使用して、遊びの中で身体を使い、ボディーイメージの発達を促します。また、キャッチボールやボールキックなどを行い協調運動の発達を促していくことがあります。他にも、バランスボールなどを使用して、ボールの上で倒れないようバランスを取ってもらい体幹の筋緊張を高めたりして、歩行の動揺を減少させるようにすることもあります。少し頑張れば到達できる課題を提供し、子どもが「できた」という喜びを感じることができた時に、療育の成果が表れます。一つ苦手なことを成し遂げることができたことで、以前できていなかったことができるようになることがあり、それは子どもの自己肯定感を高めます。理学療法士は、子どものできることが増えていくことで、自信につなげ自ら取り組むことができるように子どもの心身の発達を支援していってくれる心強い存在です。まとめ出典 : 理学療法士とは、立つ・座る・歩くなど日常生活に必要な基本動作をサポートすることにより、その人の自立した生活を支援する専門家です。病気が原因で障害を抱える人だけでなく、高齢により身体機能の低下が懸念される人や、スポーツでさらなる身体機能の向上を目指す人など、あらゆる人のさまざまなライフステージにおいて人生を応援してくれる人とも言えます。発達に遅れがみられる子どもに対するサポートも手厚く行う理学療法士の存在は、発達が気になるお子さんを持つ保護者の方にとっても強い味方となることでしょう。参考:日本理学療法士協会
2017年04月29日目が勝手に動く…眼振(がんしん)とは?出典 : 眼振(がんしん)とは、以下の3つの条件を満たしている眼球の動きのことです。・動き方に規則性がある・周期性がある・本人が意図しているわけではない眼振と聞いて、なじみのない人が多いとは思いますが、実は健康な人も含めてすべての人が日常生活のなかで眼振を行っています。例えば、電車に乗っているときに、目の前を次々と通り過ぎていく建物を見ようとすると、動くものを追跡するゆっくりした動きと、次の建物に視線をずらすためのはやい動きが交互に行われます。このように、日常生活で目のゆっくりした動きとはやい動きが交互に起こっている場合も眼振の一つだと言えます。他にも、ぐるぐると回ったときや、急に立ち上がったときなどの場面でも眼振は起こっています。こうした、日常生活のなかで起こりうる特に困りごとのない眼振を生理的眼振といい、困りごとのある眼振を病的眼振といいます。病的眼振はさらに、先天性の眼振と後天性の眼振の2種類に分類できます。眼振の患者さんは、例えば、視力の低下が伴ったり、「眼球が動く」という見た目が目立つことから、将来のことや他人とのかかわりに対して不安を感じたりして困っています。この記事では、病的眼振を中心に扱っていき、その要因や症状、治療法などを紹介していきます。参考書籍:江本博文清澤源弘藤野貞/著者『神経眼科臨床のために第3版』(医学書院・2011)眼振による眼球運動の種類出典 : 眼振とひとくくりに言っても、さまざまな眼球の動き方があるため、眼球の動き方によって眼振は分類されています。具体的には、眼球が動く方向・眼振特有の動きである緩徐相(かんじょそう)の有無・眼球が動く頻度・眼球がどれくらい揺れるかなどによって分類されます。ここでは、眼球が動く方向と緩徐相について詳しく紹介しています。眼球が動く方向は、おおまかに水平方向・垂直方向・回旋性の3種類に分けることができます。水平方向は右や左に、垂直方向は上下に眼球が動きます。回旋性というのは、眼球の位置は変わりませんがその場で回転します。ペットボトルのふたを閉めるときの、キャップのように眼球が動くとイメージするとわかりやすいかもしれません。ですが、眼球の動く方向は、水平方向と回旋性が合わさっていることもあり、きれいに3つに分けられるということではないので注意が必要です。眼球には、緩徐相と呼ばれる特徴的な動きがあり、この動きがあるかないかで律動眼振と振子眼振の2種類の眼振に分類されます。緩徐相は、眼球のゆっくりとした動きのことです。ゆっくりとした動き以外にすばやく眼球が動く急速相もありますが、急速相は緩徐相によってできたズレをなくすために生じます。よって眼振で重要に考えられているのは、緩徐相の方です。緩徐相と急速相の目の動きは、イメージとしては「仕事中や勉強中など椅子に座っているときにうっかり寝てしまうとき」に似ています。うたた寝の際、ゆっくり頭が下がっていき(緩徐相)、突然目が覚めて元の姿勢に戻った(急速相)ような動線を描いて、眼球が動くのです。◇律動眼振律動眼振は、上述の緩徐相と急速相が区別されて現れる眼振のことを言います。律動眼振の中でも、ゆっくりとした眼球の動きの速度が一定なのか、それとも少しずつ速くなったり、遅くなったりするのかでさらに分類されることもあります。◇振子様眼振振子様眼振は、緩徐相と急速相の区別がつかず、眼球が往復運動をするときに、往路と復路の揺れ方が等しい眼振のことを指します。このように眼振は、いろいろな観点から分類することができますが、詳細な分類ができないケースも多くあります。参考書籍:三村治/著者『神経眼科学を学ぶ人のために』(医学書院・2014)先天性の眼振が発症する要因は?出典 : 眼振が発症する要因は遺伝によるものもあるとされていますが、細かい原因やメカニズムはまだ判明していないものも多く見られます。先天性の眼振は、ヒトがものをしっかりと見るために必要な3つの要素のうちのどこかに問題があると発症します。次の3つのうちいずれかまたはいくつかに異常が見られると、眼振の症状が起こりえます。・固視固視とは、じーっとなにかを見ることです。「見たいものを眼球の中心に置いておけるかどうか」と言い換えることもできます。ヒトの眼は無意識のうちに常に少し動いていたり、視線をうつすときに一直線ではなく微妙にぶれながらうつしたりしています。このような眼の動きのなかで、見たいものから視線が外れてしまうような動きを抑制することも固視するためには必要です。・固視の継続1度、見たいものを眼球の中心にいれることができても、その状態を維持できなければものを見ることはできません。眼と脳をつないでいる中枢神経のはたらきがうまくいかなかったり、眼の周りの筋肉が麻痺してしまったりすると維持することが困難になります。・正常な前庭眼反射前庭眼反射とは、頭の位置が変わっても、それにあわせて眼の位置を調整する仕組みのことです。例えば、目の前にあるモノをじーっと見ながら、少し首を回してみてください。もし眼の位置が調整されなければ、モノから視点がずれるはずですが、前庭眼反射によってモノを見ながら首を回せるのです。参考書籍:江本博文清澤源弘藤野貞/著者『神経眼科臨床のために第3版』(医学書院・2011)先天性の眼振の特徴出典 : 先天性の眼振は、生後まもなく発見されることが多いですが、軽度な眼振の場合にたまに成人になるまで気づかず、大人になってから眼科検診等で見つかることがあります。先天性の眼振には、以下のような特徴が見られます。・両眼性である。・振れ幅は左目、右目で差が見られない。・眼振はじっと見つめようとすると目立つようになる。・周期性後退眼振を除いて、視界が揺れたりめまいを起こしたりしない。・目を閉じたり、暗いところにいくと眼振の症状が軽くなる。・両目を内側に寄せる(=輻湊)と眼振の症状が軽くなる。・頭位異常や異常な頭部運動が多くみられる。・視力が悪く、乱視を合併しやすい。・静止位(=眼振の症状が軽くなる視線方向(null point))があることが多い。先天性の眼振は、律動眼振、振子眼振、周期性交代眼振や新生児点頭痙攣(けいれん)などの種類があります。律動眼振と振子眼振は、先天性の眼振のなかで、緩徐相があるかないかで分けられる眼振です。詳しくは先の章で紹介しましたので、以下では周期性交代眼振と新生児点頭痙攣の特徴を紹介します。◇周期性交代眼振周期性交代眼振は、100~240秒ごとに眼振の方向を変える水平方向の眼振です。先天性の眼振だけでなく、後天性の眼振でも見られることがあります。先天性の眼振では、視界が揺れているなどの自覚症状が見られないのが一般的ですが、周期性交代眼振では先天性であっても周期的に変化する見え方を自覚している人がほどんどです。◇新生児点頭痙攣この眼振にかかった子どもは点頭という、首をこっくりと頷くような動作や首をひねるようにまわす動作をすることが多いです。新生児点頭痙攣は、生後3ヶ月から1歳半までに発症し、多くは数年以内に、遅くとも8歳までには自然に治ります。しかし、最近では新生児点頭痙攣は内斜視や弱視を引き起こすという報告もされており、眼振は自然に見られなくなるが長期的な検査や治療が必要だと考えられています。弱視は、メガネやコンタクトを使っても視力が上がらないような状態のことを言います。参考書籍:三村治/著者『神経眼科学を学ぶ人のために』(医学書院・2014)眼振がある子どもに見られる特徴出典 : 眼振のあるひとは、眼球が揺れているため、ふだんからものが揺れて見えていると思われがちです。しかし、上の章で見てきたように先天性の眼振では、ものが揺れて見えることは珍しく、ほとんどめまいや耳鳴りがみられません。そのため、本人みずから不調を訴えることは少なく、子どもの場合は特に気づきにくいです。眼科に行ったときや第三者に眼球が動いていることを指摘されたときにはじめて眼振かもしれないと疑うことになります。視覚的に眼球が動いていることが確認できた場合以外にも、子どもの眼振が疑われるケースがいくつかあります。◇注視・追視が見られない赤ちゃんは生まれた直後から、目の前のものを見つめること(=注視)ができます。また、生まれた直後は視力が低く、目の前を動いているものを目で追うこと(=追視)はできませんが、数か月すると視力が発達して動くものを目で追えるようになります。眼振のある子どもは、注視や追視ができないことがあるので、ずっと目がきょろきょろしていたり、目の前で手を振っても目で追わなかったりします。これらの様子が見られるときは眼振の可能性があり、注意が必要です。◇不自然に頭を動かしている子どもが、不自然に首を傾けていたり、あごを上下に動かしたりしているときも眼振が疑われます。先天性の眼振の多くでは、眼振の症状が軽くなる静止位(null point)という視線方向があります。先天性の眼振には視線の方向によって、眼の揺れ方がひどくなったり、おさまったりすることがあり、静止位は、もっとも眼振がおさまる視線方向のことです。子どもはその視線方向でものを見るために、顔を動かして調整しようとします。そのため、不自然に頭を傾けるなどの様子が見られます。これらの様子が見られたからといって、必ずしも病的な眼振というわけではありません。しかし、万が一のために、もし子どもにこのような様子が見られたときは、眼科で相談することがおすすめです。先天性の眼振の治療法は?出典 : 先天性の眼振に対して、さまざまな治療法が考えられていますが、いまだに眼の揺れそのものを治す方法は見つかっていません。先天性の眼振の治療は対症療法になります。子どもの視力がメガネやコンタクトで矯正できる場合には、できるだけ矯正することが推奨されています。具体的な対症療法を紹介します。プリズム療法は主に、乳幼児を対象に行われます。プリズム療法は、メガネをかけると視力が矯正できるのと同じように、特殊なメガネを使うことで眼振の症状を軽減する療法です。そもそもプリズムは、光の進行方向を曲げるものです。ヒトがなにかを見えたと感じるのはすべて、光が目の中に入り、その情報が処理されるからです。プリズムによって光を曲げるというとイメージがつきにくいかもしれませんが、光の進む向きが変わることは身近なところで起きています。例えば川の底を見て浅いと思ったのに意外と深かったケースも実は水によって光が曲げられているために起こります。このように、目と見たいものの間に、水やプリズム、ガラスなどがあると光の進行方向が曲げられてしまいます。プリズム治療はこの光が曲げられる性質を利用した療法です。プリズム治療のメカニズムは大きく2つあります。1.静止位にあわせる眼振の子どもには、見やすい位置(=静止位)があります。その位置で見るために不自然に頭を動かすので頭位異常が起きていました。それなら、特殊なメガネで目に入ってくる光の位置を調整してあげれば、頭を動かさず正面を向いたままでも見やすくなるのではというのが1つ目の考え方です。2.輻湊(ふくそう)による眼振の軽減を利用する先天性の眼振では、眼を内側に寄せる(=輻湊)と眼振の症状が軽くなったり視力があがったりすることが多いとされています。この療法では、特殊なメガネで遠くのものを見るときでも、まるで近くのものを見ているかのように光の進行方向を変化させ、目を内側に寄せるように促します。そうすることで、眼振の症状を軽くするという治療です。バイオフィードバック療法は、プリズム治療の2つ目と同様に、輻湊を利用した療法です。眼球運動を音に変える装置をつかって、子ども自身が聞こえてくる音で判断しながら、輻湊を意識的におこなって眼振の症状を軽くするコツを体で憶える方法です。この療法は、眼振を完治させるのではなく、子どもが眼球運動を止める必要があるときに意図的に眼振を止めることができるようになるのが目的です。眼振の治療方法の1つとして、薬が用いられる場合があります。近年、内服薬や目薬によって、眼振の症状が抑えられるという報告はいくつかされています。例えば、てんかん治療で使われるガバペンチンが乳児の眼振に、筋肉の硬調に有効なバクロフェンが周期交替制眼振に有効だと報告されています。しかし、それらの薬が眼振に有効だという明確な証拠は見つかっておらず、さらなる研究が必要です。出典:抗痙縮剤劇薬、処方箋医薬品(注意ー医師等の処方箋により使用すること)日本薬局方バクロフェン錠ギャバロン錠5mgギャバロン錠10mg|独立行政法人医薬品医療機器総合機構出典:抗てんかん剤処方箋医薬品(注意ー医師等の処方箋により使用すること)ガバペン錠200mgガバペン錠300mgガバペン錠400mg|独立行政法人医薬品医療機器総合機構出典:三村治谷原秀信/編集『知っておきたい神経眼科診療』(医学書院・2016)p223手術療法が行われるのは以下の場合です。顔の向きが正面を向いていない。かつ、顔の向きが正面でないほうが、視力がよかったり眼球が動きにくくなったりする。手術療法は、眼球の周りの筋肉を調整することで、眼振の症状が治まる顔の向きが正面でなかったのを正面に変える療法だといえます。こうすることで、眼振自体を治療することはできなくても、眼振が原因で生じていた頭位異常を抑えることができます。参考書籍:三村治/著者『神経眼科学を学ぶ人のために』(医学書院・2014)参考書籍:三村治谷原秀信/編集『知っておきたい神経眼科診療』(医学書院・2016)参考書籍:江本博文清澤源弘藤野貞/著者『神経眼科臨床のために第3版』(医学書院・2011)後天性の眼振の特徴出典 : ここまで、先天性の眼振を見てきましたが、この章では後天性の眼振についてみていきます。後天性の眼振は、先天性の眼振とは異なり、めまいや耳鳴りなどの症状が起こりやすいのが特徴的です。後天性の眼振は大きく5つの原因に分けることができます。3章で触れた、ものを見るときに必要な・固視できるかどうか・前庭眼反射が正常かどうか・固視を維持することができるかどうかのいずれかに異常が見られる場合と、これらの他に、以下で説明する・薬剤性眼振・てんかん眼振の2種類が加わります。◇薬剤性眼振薬剤性眼振は、水平性と垂直性が混ざったような眼球運動がおこります。薬剤性眼振は中枢神経を抑制するような薬を服用していることが原因で発生する眼振です。ヒトは全身に神経を張りめぐらしていますが、中枢神経はそれらのなかで中心的な働きをするもので、脳や背骨のなかにある神経のことです。◇てんかん眼振てんかん眼振は、てんかん発作中に生じる水平性の律動眼振(目がゆっくりずれていき、急に元の位置に戻る)です。てんかん眼振には次のような傾向が見られます。・通常、数分間でおさまる。(持続する場合もあるので注意が必要)・けいれんが止まったときに、両目が同じ方向を向いたままになるが、眼振は静止する。・脳波を調べると、てんかん特有の波長が見られることがある。・こわばりからけいれんが起こる強直(きょうちょく)間代(かんたい)発作が伴う。また、てんかん眼振の治療は抗けいれん薬で行われます。後天性の眼振の治療法は?後天性の眼振は、さまざまな原因が考えられ、多岐にわたるため、まずはその原因を追究することが大切です。頭位異常が見られる場合には手術が行われたり、後天性の眼振のもとになっている疾患を治療したりすることで、眼振を治療していきます。参考書籍:江本博文清澤源弘藤野貞/著者『神経眼科臨床のために第3版』(医学書院・2011)まとめ出典 : 眼振は、その原因や症状の表われ方に非常に多くの種類がある疾患です。人によってはめまいを訴えたりすることもあるほか、本人の自覚症状がなくとも、眼振によって頭位異常が起きて、周りから目つきが悪いと思われたり、そっぽを向いていると勘違いされたりしてしまうこともあります。現在、眼振そのものの治療法は確立されていませんが、眼振の種類によっては後遺症もなく治る場合もあります。それに、眼振そのものを治すことが難しくても、眼振の症状にアプローチしていくことで、眼振のある子ども自身が生活しやすくすることはできます。もし、子どもに少しでも眼振が疑われるような様子が見られたときには、眼科にかかり専門家に診てもらうようにしてください。
2017年04月28日私って発達障害?気づいたのは42歳の時でした。出典 : 子どもの発達障害の場合、まず親や周りが気づいて、子ども自身は何の検査をされているのかわからないまま、診断を受けることが多いと思います。診断を聞くのも受け入れるのもまず親で、そこからタイミングを図って告知するというのがよく見られる流れではないでしょうか。それに比べて大人の場合は、仕事や日常生活で「なんだか変だな。どうしてうまくいかないのだろう?ひょっとして『私って発達障害?』」と疑ったうえで、自分の意志で検査を受けることが多いと思います。私は娘がアスペルガー症候群と診断されてから2年後、42歳の時にコンビニでのバイト中にパニックを起こしたのがきっかけで、発達診断を受けることになりました。しかし、その結果を受け止め、自身のことを理解するまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。9年の付き合いの主治医の診断は・・・出典 : 当時の主治医は、それまで9年にわたって私を診察してきてくれた精神科の先生でした。でも、その主治医は発達検査の結果を見て「うーん、ヨーコさんが発達障害とは思えないんだけどなぁ」と言うだけでした。このままじゃらちが明かないと思った私は、同じ病院内にいる娘の主治医に事情を話して、検査結果を見てもらいました。ざっと目を通した先生は「ああ、アスペルガー症候群ですね」と言いました。その後、私の特性も説明してくれてとても納得したのですが、それを主治医に伝えても「そうかなぁ?」とまだ納得できない様子。私の主治医の先生は発達障害には詳しくない様子で、長い付き合いの間でも先生の口から「発達障害」という言葉を聞いたことがありませんでした。だから、今まで長い間見てきて私の様子から「発達障害とは思えない」と言ったのではないかと思っています。私はあきらめずに先生やカウンセラーに「こんな困りごとがあってずっと苦しかった」、「娘が診断を受けたときの説明がそのまま私に当てはまる」と訴え続けました。そして「精神障害者手帳を取りたい」と先生にお願いしたのです。その時出してもらった診断書を見ると「広汎性発達障害」という診断名が記載されていました。こうして私は診断書を得るところまでこぎ着けることができました。しかし私は、ちゃんとした診断の上で広汎性発達障害と言われたのか疑問を抱くことになりました。それは診断が出たとはいえ、発達障害に詳しくない先生からの診断であることと、半ば無理やり勝ち取った診断のように感じられたからです。私が「ちゃんとした診断」を求めたわけ出典 : ひとまず診断を受けた私は、仕事を辞め、障害者福祉を受けながら暮らしていく道を選ぶことにしました。そんなときに、相談支援員から気になる話を聞きました。ある病院に発達障害に詳しい医師がいて、その病院で発達検査を受けたら、ものすごく詳細な所見をもらえて、説明の時も自分の特性や向いている職業まで教えてくれるらしいというのです。私はその"完璧"とも言える診断にひどく心惹かれました。「広汎性発達障害」の診断は出ていたものの、改めて発達障害に詳しい医師にきちんと診てほしいと思っていたからです。それは、「あなたはこういう人ですよ」という自分に関する説明書が欲しかったからでもあります。それまでの人生は謎だらけでした。どうしてみんなのように友達と打ち解けて遊ぶことができるのか、どうして他の人は分からないことは適当にしておいたまま勉強していい成績をとれるのか。社会に出てからは、なぜ他の人は会社の方針に溶け込んで洗脳されたようにふるまえるのか、なぜ自分はみんなと同じように仕事ができないのか、なぜミスばかり繰り返してしまうのか…。私はなぜ、他の人と同じようにできないのかと何度何度も悩んだのです。ずっと苦しかった。ずっとさみしかった。その診断があれば、今までの謎が解けてこれからの人生が開けるかもしれないと思ったのです。そして、期待に満ちあふれてその病院に転院することしたのです。「こんなことまで聞かれるの!?」驚きながらも、その専門性に感動!出典 : その病院は今までとは違うところばかりでした。事前に渡される問診票では、ハイハイした月齢や喋りだした月齢など乳幼児期の様子も事細かく聞いてきます。「人の臭いや物の臭い、ものの見え方や感触や音に極端な興味を持つことが、これまでにありましたか?」など、0歳から5歳くらいまでの成育歴の質問が多いので、親に見せて聞きながら回答を書きこみました。病院に問診票を持っていくと、それを見ながら「何か好きな素材や逆にこれは受け付けないというものはありましたか?」「学校では得意・苦手な教科は何でしたか?」「忘れ物は多かったですか?」「臭いや光、味に敏感ですか?」「仲の良い友達はいますか」など次々と追加の質問を受けました。その答えを聞いた先生は納得したように頷き「今ついている診断で間違いないでしょう。それに加えて注意欠陥障害もあるでしょうね」と言われました。この診察に私は感銘を受けました。というのは、質問は自閉症の子どもに特有の症状について的確に尋ねられており、追加の質問でも問診の答えを確かめるように進めてゆくことが分かり、先生の専門性の高さに感心したからです。ただ正式な発達検査を受けることはできませんでした。これは発達検査に使われるWAIS-Ⅲは、一度受けたら次は2年間は空けなければいけない決まりがあるためです。療育手帳取得挑戦の際にすでにWAIS-Ⅲを受けたことがあった私は、この2年間のインターバルが経過していなかったのです。それでもなお、憧れの診断にこだわる私に、ソーシャルワーカーはこう言いました。「とことん気になる、知りたがるというのは、生きづらさにつながるアスペルガーの特性からきてると思う。憧れの診断書が手に入らなかったら次に何が欲しいの?」その問いは、私が医療に何を求めているのかを問うものでした。自分の説明書はやっぱり欲しいけれど、2年待たなければならないのはどうしようもない。その現実をこの問いで突きつけられたのです。このとき初めて前を向いて、いま困っていることを何とかしてもらうことが大事だと思うことができました。その上で私の答えは「今の心のしんどさをやわらげてほしい。発達障害であるという視点から二次障害の精神症状やうつの治療もしっかりしてほしい」でした。こうして、先生の専門性を信じてその病院に通い続けることを決めました。自分の特徴を知ることで、今までの謎が解けてゆくように出典 : 今は二次障害である精神症状やうつの治療を受けつつ、自分の困りごとの原因は何なのか、先生の解説で謎が解けていっている感じです。そして生きづらさの解消のため、それまで飲んでいた薬は大幅に見直され、ADHDの治療薬のストラテラを服用することに。新しい主治医を始め、ソーシャルワーカーなど理解ある人に関わってもらっているおかげで、自分の特性が生活や仕事のどんなところに影響を与えているのが理解することができるようになってきたのです。自身の弱点や、疲れ切ってキレてしまう前の予兆なども分かるようになり、意識して自分をコントロールすることできるようになったと感じています。診断を生かしていくために出典 : 発達障害の診断を受けたら、具体的な自分の特性をじっくりと説明してもらうことをお勧めします。そうすることで、今までの生きづらさの理由が氷解し、自分の特徴をしっかりと理解することができるはずです。その上で、医療や福祉の支援を受けて理解者・支援者を増やし、困っているときは助けてもらうことができれば、自分の直面した困難にくじけてしまうことも防げるはずです。繰り返しになりますが大切なのは、診断を受けっぱなしで終りではなく、自分の特徴を知り、より自分をコントロールできるようになることです。診断を受け、なにが自分の生きづらさを作っているのか。自分で工夫できるところはあるのか。どんなサポートを受けたらいいのか。それを知ることが、生きづらさの解消につながるのではないでしょうか。
2017年04月28日DSM-5とは?出典 : とは、米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルです。正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といいます。本来はアメリカの精神科医が使うことを想定したものですが、事実上、国際的な診断マニュアルとして使われています。DSMの初版(DSM-I)は1952年に出版され、以降数回にわたって改訂版が発行されてきました。DSM-5は、2013年に公開された第5版です。なお、第4版(DSM-IV, DSM-IV-TR)まではローマ数字が、第5版(DSM-5)からはアラビア数字が、それぞれ正式な表記です。第二次世界大戦中、兵士の適性検査や帰還兵の治療において精神科医が重要な役割を果たしました。平たく言えば、このときに使われた診断マニュアルが、現在のDSMのもとになっています。第3版(DSM-III)以降、DSMは、精神医学に「共通言語」を与えるという目標を明確に掲げてきました。これは、精神科医の「カン」に頼るのではなく、統一された基準を作り、それにしたがって根拠に基づいた医療行為がなされる環境を整えようということです。この方針が、現在に至るまでDSMのあり方を支えています。これについては、米国精神医学会の説明が簡潔でわかりやすいので引用します。「『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』は、アメリカや世界の多くの国々で、ヘルスケア専門職(health care proessionals)が精神障害の診断に対する権威ある指針として使っているハンドブックです。DSMに書かれているのは、精神障害を診断するための記述、症状、その他いろいろな基準です。DSMは、臨床医に共通言語を与えています。臨床医はこれを使って、患者について情報交換し、精神障害の研究に使えるような一貫した信頼できる診断を与えています。また、DSMは研究者にも共通言語を与えています。研究者はこれを使って、将来[診断基準を]どのように改訂できるか研究し、投薬治療やその他の医学的介入の発展を促しています。」(DSM-5: Frequently Asked Questions | American Psychiatric Association.より上記は発達ナビ編集部による抄訳) Frequently Asked Questions | American Psychiatric Association.また、作られた診断基準が適切かどうかを見直し、場合によっては修正することも、DSMが「共通言語」として機能し続けるためには重要でした。そのために、DSMは大規模・小規模な改訂を繰り返してきました。有名な例では、かつて精神障害としてリストアップされていた「同性愛」が、1974年に削除されたという事例があります。DSM-5の内容は?出典 : では、まず、精神障害が大きく22カテゴリーに分類されます。その下に、一つひとつの診断名が挙げられています。たとえば、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)は、DSMでは「神経発達症群/神経発達障害群」という大分類の下にあります。「神経発達症群/神経発達障害群」には、ADHDのほかに、・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション障害群(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・限局性学習症/限局性学習障害(ディスレクシアなど、いわゆる「学習障害」)・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)が含まれます。どうしてこれらの障害が同じグループに含まれるのか、疑問を持たれる方もいるでしょう。「神経発達障害群」というグループ名が示すように、このまとめ方の背後には、これらの障害はみな神経の発達のしかたという共通の原因に関連しているのではないかという仮説があります。もちろん、これは現在の仮説ですから、DSMの改訂によって今後分類方法が変わることもあるでしょう。DSM-5ではどのような改訂があったの?出典 : 年のDSM-5発表は、1994年にDSM-IVが発表されてから実に19年ぶりの全面改訂でした(ただし、小規模な改訂は繰り返されてきました。とくに、2000年には、DSM-IVの文言のみを大幅に書き換えたDSM-IV-TRが発表されました)。そのため、近年の精神医学の進歩や認識の変化によって、大きく書き変えられたところがいくつかあります。また、英語で書かれたDSM原著だけでなく、日本語訳においても、大きな変化がありました。ここでは、それをいくつか紹介します。最もよく知られているのは、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)」という概念が導入されたことでしょう。「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」は、DSM-IV-TRで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「広汎性発達障害」などと呼ばれていたいくつかの障害をすべて含むものです。つまり、DSM-5では、これらの障害は別々のものではなく、連続した障害なのだ、という見方を新たに採用したのです。「スペクトラム」(連続体)という見方は、DSM-5でとくに重視されている見方です。これは、診断項目に「当てはまるか、当てはまらないか」を判断するよりも、それらに「どの程度当てはまるか」を判断するほうがが適切だろうという考え方です。こうした考え方は、診断名としてはもちろん、診断方法としてもDSM-5を特徴付けている点のひとつです。ところで、「自閉症スペクトラム障害」と「自閉スペクトラム症」と併記されていますが、DSM-5においては、どちらも正しい表記です。DSM-5の日本語訳では、英語の disorder をどう訳すかがはっきりと決まっておらず、「障害」と「症」が併記されています。翻訳の段階では、「障害」をすべて「症」に変えることが提案されました。これは、「障害」という言葉が持つネガティブなイメージを避けることを意図した提案です。しかし、ネガティブなイメージを避けすぎると、今度はかえって過剰診断という別の問題を引き起こすのではないか、という懸念がありました。そうした議論を踏まえて、結局「障害」と「症」が併記されることになりました。日本精神神経学会精神科病名検討連絡会「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」『精神神経学雑誌』116巻、第6号(2014年)429–57ページ高橋三郎・大野裕監訳『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2014年DSM-5はどこで使われているの?いつ必要になるの?出典 : が使われるのは、主に、精神医学を研究したりそれを応用したりする場面です。こうした事情は、日本でも世界の他の国々でもそれほど変わりません。医師がDSMに基づいて診断をしていると、患者にとってはどのようなよいことがあるのでしょうか。最も大きいのは、DSMが「共通言語」として機能することによって、精神科医一人ひとりが独自に診断をするということがなくなり、どの病院・医院でもそれなりに統一された医療行為を受けることができるという点にあるのではないでしょうか。しかし、行政や司法の場で主に使われるのは、DSMではなくICD(国際疾病分類)です。詳しくは下で説明しますが、ICDは、国連の専門機関であるWHOが発表している疾病分類マニュアルです。たとえば、発達障害者支援法は「発達障害」をICDに基づいて定義しています。[…]法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80–F89)」及び「小児〈児童〉期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90–F98)」に含まれる障害である[…]発達障害者支援法の施行について|文部科学省読者のみなさんにとって、「支援やサービスを受けるためにDSMの診断が必要だ」というケースは、あまりないかもしれません。障害年金や障害者手帳のような福祉制度の場合にも、民間の保険会社の場合にも、多くの場合、求められるのはICDの診断コードです。どうやってDSM-5の原文を見るの?診断名の調べ方は?出典 : 残念ながら、DSMの英語原文も日本語訳も、ウェブ上で見ることはできません。DSMは米国精神医学会の著作物であり、一般の書籍と同じように著作権の対象となっています。日本では日本精神神経学会によって日本語版用語監修が行われ、書籍が出版されています。『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM-5の日本語訳) and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition (DSM-5の英語原文)DSMとICD(国際疾病分類)の違いって?出典 : のほかにも、国際的に使用されている疾病分類があります。有名なものに、世界保健機関(WHO)が作成するICD(国際疾病分類)があります。ICDの最新版として、1990年に発表された第10版(ICD-10)が使用されています。また、2018年には第11版(ICD-11)の発表が予定されています。国際統計分類第 11 版(ICD-11)改訂にむけて|WHO健康開発総合研究センターDSMとICDは、しばしば列挙して参照され、またどちらも国際的に使用されています。両者の違いを挙げるとすれば、以下のようなものがあります。1. 作成機関: DSMは米国精神医学会が作成しています。これに対して、ICDを作成しているのは、国連の専門機関であるWHOです。ただし、DSMがアメリカ国内でしか通用しないわけではなく、事実上どちらも国際的に広く使われています。2. 分類範囲: DSMは精神障害のみを対象とした分類です。これに対して、ICDは身体的疾患を含むすべての疾患を対象としています。3. 使用場面: 日本の行政機関では、ICDが採用されています。たとえば、福祉制度に関する書類には、DSMの診断名ではなくICDの診断コードを書くことになります。とはいえ、実際には、ICDとDSMのどちらを主に使うかは医師・医療機関ごとに異なっています。大まかに言って、ICDのうち精神障害や発達障害に関連するコード(F00–F99)にDSMが対応しています。個々の障害(疾患)の分類方法や診断基準について、DSMとICDの間にはそれほど大きな違いはないと考えてよいでしょう。ただし、「自閉症スペクトラム障害」のような新しい概念については、DSMとICDが必ずしも対応しているとは限りませんので、注意が必要です。おわりに出典 : は、精神科医の診断マニュアルとして作成されたものです。その中には、精神医学に関する最新の知見や、まだ議論の決着がついていない事柄が多く含まれています。これらは、精神医学に関する膨大な知識と訓練がなければ、理解することも使うことも難しい内容ばかりです。読者のみなさんにとっては、DSMに基づく診断がしっくりくる場合もあれば、納得いかない場合もあるでしょう。また、「自閉症スペクトラム障害」のように、改訂によって診断名が大きく変わることに疑問を抱く方もいるでしょう。しかし、これらは精神医学そのものが発展途上にあることの証拠でもあります。精神医学の世界では、以前より格段に多くのことが明らかになったとはいえ、それでもわからないことが多くあります。私たちが普段目にするのはICDですが、DSMには、そうした医学研究の苦労が現在進行形で現れているのではないでしょうか。
2017年04月25日長所だった「目標に向かって一直線」がマイナス要素に!?出典 : 歳になったアスペルガー症候群の娘は、昔から「努力の人」と呼ぶに相応しいタイプの女の子でした。まりつきで「あんたがたどこさ」を最後までやり遂げられるように、鉄棒で逆上がりをできるように、二重跳びがとべるように…。上手く出来ない自分が悔しくて、両手に出来た豆が潰れても泣きながら、毎日毎日何時間も練習を重ねてきました。「体が疲れているから休んでからにしよう?」と声をかけても、首を縦に降ることは決してありませんでした。そうして、人の何倍も努力をして、少しずつ出来ることを増やしてきたのです。幼い頃はこのド根性がプラスに作用しており、娘の一番の長所といえるところでもありました。ところが年齢が上がり、他人とのコミュニケーションが増えるにつれ、この長所がマイナスに作用している場面が目に付くようになってきました。娘の思い描く「理想の完成形」には家族や友達が含まれ、そこに向かって努力をしない人たちに声を荒らげ、強い口調で指示を出して相手をコントロールしようとするのです。このままではせっかくの長所が、娘や周囲の人たちを苦しめる要因になってしまう…。どうすれば「目標に向かって一直線!」を良い方向に持って行くことができるのでしょうか。お箸とコップを出すだけなのに、どうして空気がピリッとしてしまうの?出典 : トラブルは何気ない日常の中にも突然あらわれます。我が家ではご飯の前に、子どもたちにお箸やコップを並べることをお願いしています。子供たちに声をかけると、日頃から「人の役に立ちたい」と強く願っている娘は「はーい!」と気持ちのいい返事を返してくれます。息子もお姉ちゃんに負けまいと急いでやって来て「じゃあ、僕はお箸を出すね!」と楽しそうに話します。問題はここから。娘「お箸はお姉ちゃんが出すから、君はコップを並べて!早く!コップは何色がいいかみんなにちゃんと確認して!」息子「はーい。えーと、僕はこのコップにするね」娘「ちょっと!!!自分のものから選ぶんじゃなくて、まずご飯を作ってくれてるママにどのコップがいいか確認しないとダメでしょ!お姉ちゃんはどれでもいいから、ママに聞いてから自分のコップを決めてちょうだい!」息子「えー、ママはどれでもいいっていつも言ってくれるから、僕はこれにする」娘「たとえママがそう言ってくれても、ママは疲れているのに私たちのためにご飯を作ってくれたりお世話してくれているんだから!ちゃんと聞くのが礼儀でしょ!もしお客さんがいたら、まずお客さんにどれがいいか聞く!自分の事は後回しでいいの!いつもそれをやっていないから、お客さんが来た時にちゃんとできないんでしょ!」私「お姉ちゃん、ありがとう。ママはどのコップでも構わないから、あなたも好きなのを選んでね」娘「ありがとうママ!じゃ、お姉ちゃんはこれにするから、早く飲み物を入れて並べて!ああ、そうじゃなくて一つずつ丁寧にやりなさい!!人が口をつけるところは手で持たないの!」こんな風に早口で息子に矢継ぎ早に指示を出したりお説教をしたり、とても慌ただしくてピリッとした空気になってしまうのです。娘の言っていることはあながち間違いではありませんし、この内容がきちんと息子に入っていけば、息子にとってもプラスになるはずです。なんとかこれを穏やかな空気の中で行うことができれば、お友だちや家族とのトラブルも減って、本人も楽になれるんじゃないかと思うのですが…。娘に教えた「必死」にならない方法出典 : そこで、娘と話し合ってみました。私はまず、そんなに必死になる必要はないのだと伝えました。でも娘の答えはこうでした。娘「私、必死になんてなってないよ!ただ役に立ちたいと思ってやっただけなのに!」そうなのです。娘は純粋に役に立ちたいがために頑張っているのです。でも結果的にはそれが弟を巻き込み、ピリッとした空気になってしまうのでした。私「あなたの『役に立ちたい!』は他の人から見ると『必死』に見えちゃうんだよ。食卓を整えるのは、別に全力でやらなきゃいけないことじゃないでしょ?今からみんなで楽しくご飯を食べようっていう時にピリピリしちゃうともったいないし、あなたもムカムカしちゃって気分が良くないでしょ?」娘「確かに・・・・」娘もここは納得してくれたようです。私はこう続けました。私「ママ考えたんだけど、必死に見えちゃうのは、1つは『早口になっちゃう』ことが原因だと思うの。伝えたいことがたくさんあって、言葉が溢れてくるのはわかるんだけど、ゆっくり伝えるだけで自分も周りもずいぶん印象が違ってくると思うよ?」娘「そう!伝えたいことがたくさんあるんだよ!でもまだ思ってることの半分も言えてないのに、ゆっくりにしたらもっと言えなくなっちゃうじゃない」私「そうだよね。でも、頭の中で考えてることを全部他人に吐き出す必要はないんだよ。何が弟にとって必要な情報かを選んで教えてあげたらいいと思うの」娘「確かに。弟も途中から聞いてないもんね」私「あとね、『これをしてもらえる?』とか『お客さんが来てくれた時はこうすると喜んでもらえるよ』とか、そんな風に話し方を変えるだけで、同じ内容でもずいぶん印象が変わってくると思うの。それだったら、ママもニコニコしながら見守れるよ。」娘「わかった!すぐには無理だと思うけど、やってみる」来年の今頃には成果があらわれると信じて出典 : そんな話し合いをしてしばらく経ったある日のこと。娘が今月の目標欄に「人と笑顔で話す」と書いてあるのを見つけました。この話し合いがきっかけになったのかどうかはわかりませんが、目標をたててそれに向かってひたむきに努力ができる娘だから、いつかきっとこの目標も達成できるのではないかと嬉しく見守っています。発達障害を抱える人は、他人とのコミュニケーションが苦手だとよく言われます。それは、特性を持たない人たちとは物事の見え方や感じ方が異なるために通じ合うことが難しいということが原因としてあげられると思います。ですがもうひとつ、「経験から学んで自然とスキルを身につける」のが苦手であるということが、相手と上手くコミュニケーションを取れない要因になっているのではないかと、最近子供たちを見ていてよく思います。でも、経験から学ぶのは難しくても、繰り返し「こんな風にしてみよう」という声掛けをすることで、少しずつ本人も周囲も楽になっていくことはあるかも知れません。人が自分を変えていくというのは、とても時間がかかります。数日声掛けをして変化が見られなくても、焦らずに年単位の目標だと思って続けてみませんか?「こうすれば上手く人と接することが出来る」という成功体験は、きっといつか社会に出て行く子どもたちの自信に繋がっていくはずです。私も来年の今頃には少しずつ成果が出てくると信じて、「必死にならず、ゆっくり話してみよう」と娘に声掛けを続けていきたいと思います。
2017年04月25日児童発達支援管理責任者とは?出典 : 児童発達支援管理責任者とは、放課後等デイサービス、児童発達支援センターまたは事業所など児童福祉法に定められた施設での子どもとのかかわりを通して、施設での療育をリードする役割の人です。厚生労働省の通知によると、障害のある子どもの支援施設のサービスの質の向上のために、ひとつの施設につき1名以上の児童発達支援管理責任者が配置されることが法的に義務化されています。児童発達支援管理責任者の役割で特徴的なのは、施設に来る子どもたちの個別支援計画を作ることです。もちろん、他の職員と同じように、日々の全体的な活動、支援記録 、療育指導 、介助 、送迎業務や保護者からの相談対応も行います。児童発達支援管理責任者の役割は、厚生労働省による「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」という省令に定められています。児童福祉法とは、次世代を担うすべての子どもの健全な育成のための法律です。児童福祉法第二十一条の五の十八第三項のもと発令されたこの基準の中では、障害のある子どもが地域の中で適切なケアやサービスを受けられるよう、児童発達支援センターや放課後等デイサービスセンターなど児童福祉法で定められた施設において、児童発達支援管理責任者の1名以上の配置を義務付けることが定められています。サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者について |大阪府児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 (平成二十四年二月三日厚生労働省令第十五号)児童発達支援管理責任者の職場についても同省令の中で定められています。児童発達支援管理責任者として働くことができるのは、障害のある子どもたちに対して療育や生活の自立支援などを行っている施設です。具体的には以下のような施設が挙げられます。・児童発達支援センター・事業所(医療型を含む)・放課後等デイサービス事業所・保育所等訪問支援・福祉型障害児入所施設・医療型障害児入所施設サービス管理責任者等研修テキスト 分野別講義 「アセスメントと 支援提供の基本姿勢」 <児童発達支援管理責任者>|厚生労働省上述の通り、児童発達支援管理責任者は、児童福祉法に基づく指定通所支援の事業所に1名以上配置することが求められていますが、そのうち最低1名は、専従かつ常勤でなければなりません。児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 (平成二十四年二月三日厚生労働省令第十五号)平成24年の児童福祉法改正によって、障害のある子どものための通所施設が一元化され、また障害のある子どもの支援の充実を図るために放課後等デイサービスが新たに増設されました。障害児通所・入所支援施設は、平成27年の時点で3万7693施設と、法律が改正されたである平成24年の当初(3万3873施設)に比べて12%増加しています。現在、施設が増加していることにともなって児童発達支援管理責任者の役割に対するニーズが高まっています。平成27年社会福祉施設等調査の概要|厚生労働省平成24年社会福祉施設等調査の概要・施設の状況|厚生労働省児童発達支援管理責任者が作成する個別支援計画って?出典 : 児童発達支援管理責任者は、児童発達支援施設に通う子どもたちとのかかわりを通して、指導計画書を作成し、療育をリードする役割があります。個別支援計画とは、障害のある子どもへの支援内容の工夫を計画的、組織的に行うための計画書であり、児童発達支援管理責任者が支援の目標や内容、配慮事項などを記すこととなっています。児童発達支援管理責任者は子どもや保護者との関わりを通して、子どもの心理的・発達的な状態を把握し、コミュニケーション、集団適応、身辺自立などの側面からニーズを特定し、一定期間の支援ののち、どのような姿になっていることを目指すのか目標を立て、支援計画を作成します。作成した個別支援計画をもとにして、児童発達支援管理責任者を含む、保育者や指導員などの施設の職員は、子どもとの関わりや療育の内容を考えてゆきます。つまり、この個別支援計画は子どもへの支援を形作る設計図とでも言える、大変重要な役割を果たす計画なのです。また就学後の子どもが学校と並行して、支援施設を利用する場合も考えられます。そのようなときには、可能な限り学校の教員との連携や、学校における個別の教育支援計画との連携を行うこととなります。児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 (平成二十四年二月三日厚生労働省令第十五号)第2章27、28条|厚生労働省サービス管理責任者等研修テキスト 分野別講義 「アセスメントと 支援提供の基本姿勢」 <児童発達支援管理責任者> |厚生労働省児童発達支援管理責任者になるための要件出典 : 児童発達支援管理責任者になるためには、定められた要件を満たしている必要があります。平成29年4月より新たに、児童発達支援管理責任者になるための要件が見直しとなりました。児童発達支援管理責任者になるためには、「実務経験があること」と「指定の研修を受けること」というふたつの条件があります。この章では、児童発達支援管理責任者になるための要件について、平成29年からの変更点を加えてわかりやすく紹介します。児童発達支援管理責任者になるためには、一定の現場における実務経験が必要となります。◆平成24年告示での要件これまで児童発達支援管理責任者になるためには、障害児者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における5~10年の直接支援・相談支援の実務経験があることが要件として課されていました。※さらに詳しい要件の内訳は、以下のリンク先をご参照ください。障害児通所支援又は障害児入所支援の提供の管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの|厚生労働省◆平成29年改正での追加要件平成29年4月に、児童発達支援管理責任者になるための要件が一部改正されました。この改正により、これまでの要件に加え、3年以上は児童または障害者に対する支援の実務経験があることが新たに要件として課されました。ポイントの1つは、保育所などの児童福祉領域での実務経験も、児童発達支援管理責任者になるための実務経験として算入することが可能になったということです。一方で、もう1つのポイントとしては、算入する実務経験のうち3年間は、児童福祉または障害児者への支援経験である必要があり、高齢者介護のみの実務経験しかない人は要件を満たさなくなったということです。つまり、トータルでの実務経験期間のうち、高齢者介護の経験を引いた期間が、3年以上である必要があります。「障害児通所支援又は障害児入所支援の提供の管理を行う者として 厚生労働大臣が定めるもの」の一部改正について |厚生労働省児童発達支援管理責任者として業務を行うためには、指定された研修を修了することが必要となります。支援施設の提供するサービスの質の向上を図ることができる人材の養成をするために行われています。この研修は、児童発達支援管理責任者のほかにサービス管理責任者の養成のためのものであり、児童発達支援責任者に特化したものではありません。研修の詳しい内容や申し込みの仕方については、次の章でご紹介します。児童発達支援管理責任者として業務を行うために必須となっている研修ですが、実は経過措置があります。平成29年4月1日以降に勤務を始めた、あるいは事業所を開設した場合には、平成30年3月31 日までの間、暫定的に実務経験の要件を満たしていれば、1年以内に研修を受けることを条件として、研修を受けていない場合でも児童発達支援管理責任者として勤務することが可能です。しかし、平成29年3月31日までの間に勤務を始めた、あるいは事業所を開設した場合は、すでに研修を受けずに勤務を行うことのできる期間は終了していますので、早めに研修を受けなければなりません。児童福祉法の一部改正の概要について|厚生労働省児童発達支援管理責任者になるにはどんな研修を受けるの?注意点は?出典 : 一つ目が、2日間の相談支援従業者初任者研修で、二つ目がサービス管理責任者等研修です。このサービス管理責任者研修は、介護、地域生活(身体)、地域生活(知的・精神)、就労、児童と分野別に定められています。各自治体や、自治体が研修を行っている業者に委託を行っており、それぞれの実施主体によって特色のある内容となります。研修の内容の一部は以下の通りです。・児童発達支援管理責任者の役割や意義について・アセスメントやモニタリングの方法について・支援の提供プロセスについて・個別支援計画の作成の方法についてサービス管理責任者及び児童発達支援管理責任者の要件について|兵庫県研修は、都道府県が主体となって行っている場合と、研修事業者が行っている場合の2つのパターンがあります。研修を行う事業者は、都道府県から指定を受けている事業所です。都道府県によって異なる場合もありますが、以下の手続きが必要となります。1. 勤務する、あるいは勤務希望の施設が所在している都道府県の行政のホームページにアクセスします。2. 指定を受けた研修事業者の一覧、もしくは案内が出てきますので、案内にしたがって、研修の申し込みを行ってください。研修は、実際に研修を受けることのできる期間が定められています。同じく募集についても一定の期間が定められています。また、初任者研修講義部分、サービス管理責任者研修は別々に申込みが必要ですのでご注意ください。研修の申し込みあたって、いくつか注意点があります。1. 研修の定員に注意研修には定員が定められていますので、希望した事業所の研修が受けられない場合があります。実務経験者の要件を満たしてはいるものの、まだ研修を修了していない人が勤務できる期間は終わっており、現任の方も研修の受講を行わなければならないため、現在申し込みが殺到しているようです。基本的には研修を開催する都道府県にある事業所に勤める方が優先されますが、ほかの自治体に申し込みをすることができる場合もあるので、急ぎの場合には申し込みをしてみるのもよいでしょう。2. 実務経験を満たしていなくても研修受講は可能研修受講時には必ずしも実務経験の年数を満たしている必要はありません。つまり、実務経験の指定年数が満期に到達するのを見越して、先に研修を受けることも可能です。しかし、応募多数により選考を行う場合は、児童発達支援管理責任者として配置される時期および実務経験年数を考慮して判断されるため、研修を受けられない場合がありますのでご了承ください。まとめ出典 : 児童発達支援管理責任者は、児童発達支援施設に通う子どもたちとのかかわりを通して、指導計画書を作成し、療育をリードする役割があります。平成24年の児童福祉法の一部改正によって、放課後デイサービスの制度が創設された結果、現在では年々障害のある子どもへの支援を行う施設が増えています。児童発達支援管理責任者の役割も大変需要が高まっている状況だといえるでしょう。その一方で、提供するサービスの質の担保も重要となってきています。事業所が増えたことで、支援施設を利用出来る児童は増えたのですが、急激な事業所数の増加によりサービスの質が低い事業所も少なくないことが問題視されてています。この問題を受けて、平成29年に児童発達支援管理責任者の要件の変更が行われました。今後ますますの活躍が期待される児童発達支援管理責任者ですが、その需要が高まるとともにさらに高い専門性が必要とされている重要な役割であるといえるでしょう。
2017年04月22日よく聞く、「小学校は別世界」という言葉出典 : 発達障害のある子どもを育てている親にとって、小学校入学というステージはとても不安なものだと思います。それまで楽しく遊んでいれば良かった幼稚園・保育園の頃と違い、学習という活動がメインとなるのが大きな理由でしょう。また、幼稚園や保育園では手厚い支援をしてもらい、とにかく褒めて育ててもらえていた状態だったお子さんにとって、集団のルールを守ることに重きが置かれている小学校では、息苦しさを感じることが多いのです。幼稚園・保育園ではのびのび楽しくやっていたのに、小学校に入ってから急に自信を失うようになって…というようなお話を、私は幾度となく発達障害児の保護者から聞いてきました。ですから、発達障害のある息子の小学校入学は私にとって緊張感が漂うものでもあったのです。今のところ、息子は小学校の先生たちに手厚く支援していただいているおかげで、毎日楽しく通っています。けれどもやはり、小学校生活のさまざまなことで混乱をしている様子。それは、幼稚園時代にはなかったことでした。トイレに行ってはいけない!?息子の混乱例えば、小学校から帰ってきた息子が、こんな相談をしてきたことがあります。「今日ね、授業中におしっこもらしそうになって。先生にトイレ行きたいです!って言ったんだ。そしたらね…」Upload By モビゾウ「『小学校ではトイレは休み時間に済ませましょう』って先生に言われたの。それなのにね…」Upload By モビゾウ「先生は休み時間に済ませましょうって言ったのに、『はい、じゃあ行ってらっしゃい』って言われたんだよ。意味が分からないでしょう?」なるほど、先生は「本当は休み時間に済ませるのがルールだけど、今日は特別に行ってもいいよ」ということを言いたかったのでしょう。けれども息子は、この「今日は特別に」という部分が先生の言葉から読み取れないのです。先生の言葉をそのまま理解するため、「行ってはいけない」「はい、行ってらっしゃい」という言葉を同時に言われたことに混乱してしまったのでした。Upload By モビゾウさらに息子は、「小学校ではトイレは休憩時間に済ませるってことは、授業中にお腹痛くなったり気持ち悪くなったりしてもトイレに行っちゃいけないのかあ。どうしようどうしよう。お腹痛くなったらどうしよう」と悩み始めたのです。息子の発達障害の特性の一つなのですが、言外の意味を読み取るのが苦手なだけではなく、思考が0か100の両極端に偏りやすいのです。息子は「トイレは休み時間に済ませましょう」という先生の一言を、「具合が悪くても、何があっても、授業中のトイレは我慢しなければならない」という風に、極端な形で解釈してしまうのでした。無数にある集団生活のルール。それを把握することの困難さ出典 : このように、小学校には集団生活を円滑に送るための無数のルールが散らばっています。さらに、そのルールには例外や変更が沢山あるのですが、発達障害児にはそれを把握することがなかなか難しいのですのびのび遊ぶこと、褒められることがメインだった幼稚園時代に比べて、小学校に入ると「こういうルールがあるからダメ」ということが増えていきます。発達障害児は、なんとなく周りとうまくやれる程度にルールを把握するということが苦手です。小学校が別世界というのはこういうことだったんだな、と毎日混乱する息子を見ながら、私もなんとなく理解できたのでした。
2017年04月20日ノーマライゼーションとは出典 : ノーマライゼーションは、どの人にとっても「当たり前のことを当たり前に」を実現するために、社会の環境を整備していこうという考えです。そもそも、当たり前とはどういうことでしょうか。・基本的な人権が保障されている。・自分のできる範囲で、身のまわりのことをする。・自らの意志にもとづいて行動する。・個人としてアイデンティティを確立する。・一生を通じて一人の人間として成長する。「当たり前のことを当たり前に」というのは、これらのことを誰もが自然にできるようにということです。ノーマライゼーションの考えでは、障害があるかどうかや、その障害が軽度か重度かに関係なく、誰もが同じように上記のような権利や生活環境を享受できる社会が当然の姿だと考えられています。例えば、学校の入口に階段しかない場合、車椅子の子どもはほかの子が当たり前にしている通学ができません。でも、スロープがあれば車椅子で学校に入ることが当たり前にできます。ノーマライゼーションは、障害のない人が障害のある人を特別視するのではなく、障害のある人でも普通の生活を送れる環境を整えて、共に協力しながら生活していくことを目指しています。参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊ノーマライゼーションのよくある誤解出典 : ノーマライゼーションは、シンプルで誰にとっても理解しやすい考えですが、誤解を招きやすい考えでもあります。よくある誤解を解き、ノーマライゼーションを正しく理解しましょう。◇「ノーマライゼーションとは人間を“正常”にすること」ではないノーマライゼーションは、障害のある人の行動をなかば強制的に障害のない人に合わせるということではありません。ノーマライゼーションとは、障害のある人が社会で生活している多くの人と同様に多様性と選択性のある生活を送るためのものです。ノーマライゼーションでは、その社会の実現のために必要な支援は社会側がすべきだと考えられています。◇「ノーマライゼーションは特別な支援をなくすこと」ではないノーマライゼーションは、障害のある人が支援を受けずに生活できるようにするということではありません。例えば、目が悪くてもメガネやコンタクトなどの補助器具があるおかげで不自由なく生活できます。ノーマライゼーションは、障害のある人が不自由なく生活できる助けになる支援・サービスを推奨している考えです。◇「ノーマライゼーションは軽度な障害にのみ適用される考え」ではないノーマライゼーションの考えは、重度の障害を抱える人にも適用されます。ノーマライゼーションの原理は、重複障害者が当たり前のことをするためにはたくさんの支援が必要になると指摘しています。◇「ノーマライゼーションは完璧を目指すもの」ではないノーマライゼーションは、誰もが完璧に自立した生活を送れる社会を目指す考えではありません。一人ひとりの、障害や能力などに応じて最適な支援や環境を整えることを目指す考えです。参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊社会福祉の基本原理ノーマライゼーションの歴史出典 : ノーマライゼーションはデンマークで生まれました。ノーマライゼーションの誕生に偉大な功績を残した人物が、バンク・ミケルセンです。彼はデンマーク社会省で働きながら、1951年に結成された知的障害児親の会に共感します。知的障害児親の会は以下の3つのことをスローガンとして掲げていました。・1500人収容する大型施設を20~30人の小規模な施設にすること・社会から分離されていた施設を親や保護者の生活する地域に作ること・ほかの子どもと同じように教育を受ける機会を作ることミケルセンは、親たちの願いを象徴的に表現する言葉として「ノーマライゼーション」を採用しました。ミケルセンの活躍もあり、1959年に世界で初めて「ノーマライゼーション」という言葉が用いられた「知的障害者福祉法」がデンマークで制定されました。ノーマライゼーションは今日では、世界的に社会福祉の基本原理として広がっています。これに大きく貢献したのは、スウェーデンのベンクト・ニィリエです。彼が、普通の生活を測るものさしとしてノーマライゼーションの基本原理を明らかにし、英文にしたことで各国に広がりました。また、1981年の「国際障害者年」の制定もノーマライゼーションの理念が広がる大きなきっかけになりました。「国際障害者年」の制定は、国連が障害のある人々の問題を世界的な規模で取り上げ、啓蒙を行う世界最初の出来事でした。日本でノーマライゼーションが理解されはじめたのは1970年代ですが、「国際障害者年」の制定をきっかけに広く知られるようになりました。「国際障害者年」の制定は日本の社会福祉政策を後押しし、「障害者のすみよいまちづくり推進事業」や「障害者プランノーマライゼーション7か年戦略」が発表されました。「ノーマライゼーション7か年戦略」には、7つのガイドラインが盛り込まれましたが、その一つにバリアフリーの推進がありました。バリアフリーとは、障害のある人の社会参加や、自分らしく生活するときに妨げになる障壁をなくすことです。例えば、多くの駅でエレベーターやエスカレーターの設置が行われていることもバリアフリーの一つだということができます。バリアフリーの推進は障害のある人がノーマルな生活を送るために重要なことであり、2006年に制定された「バリアフリー新法」など現在でも継続的に行われています。参考書籍:野村 武夫/著『ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク』ミネルヴァ書房 (2004年)/刊参考: 厚生白書(昭和61年版)第1編 第2章 社会サービスの新たな展開ノーマライゼーションの基本原理出典 : ニィリエが提唱した、ノーマライゼーションの8つの基本原理を紹介します。ニィリエが基本原理を提唱した当時は、知的障害者は大型施設で生活し、社会から分離されることが当たり前とされる時代でした。そのため、ニィリエの提唱した基本原理には、大型施設に対して批判的な側面がありますが、ノーマライゼーションの基本原理は現在にも通じる点が多くあります。1. ノーマルな一日のリズムを送る1つ目の基本原理は、障害のある人でも、ない人と同じような一日の生活のリズムが送れるような環境をつくりだすべきという考えです。これは、例えば障害のある人も毎朝ベットから出て着替え、朝食を食べるのが好ましいということです。障害があるという理由で自分の意志に逆らって、不必要に家族よりはやく就寝したり、外出したりしないという社会ではなく、誰もが各々のリズムで生活できる社会を目指すのがノーマライゼーションの考え方です。2. ノーマルな一週間のリズムを送る多くの人は、平日は自宅や職場、学校など複数の場所で活動しています。週末は、さらに他の場所で余暇活動をすることも珍しくありません。施設で生活している人は、平日週末を問わず施設が活動場所の中心になっています。2つ目の基本原理は、障害があり施設に入所している人でも、地域社会におけるいくつかの異なるグループに所属し、日々の生活に刺激があることが自然という考え方です。3. ノーマルな一年のリズムを送るノーマルな一年には、季節の変化や、こどもの日やひなまつりなどの伝統行事、誕生日などさまざまなイベントがあります。3つ目の原理で大切なことは、障害があるかどうかでこれらのイベントに参加できるかどうかが決まってはいけないということです。これは、障害のある人が地域社会に関わっていく面でも大切な考え方です。4. 個人のライフサイクルを通してのノーマルな発達的経験をする機会を持つ誰しも、生まれてから幼児期、学童期、成人期、高齢期のライフサイクルを順に経験していきますが、障害のある人のライフサイクルは多くの人のライフサイクルとは異なっている場合があります。例えば、家族と一緒にいられる時間が極端に短い幼児期を過ごす子どももいます。そうではなくて、誰もが同じようなライフサイクルを経験できるようにしようというのが、4つ目の原理です。5. 障害者の選択や願い、要望ができる限り考慮され尊重される5つ目の原理は、本人自身の選択や希望はできる限り、尊重されるべきという考え方です。そのためには、考えていることや意見をうまく言葉で伝えることが困難な人に対しても、注意深く耳を傾け、その人の意志や要望を聞く必要があります。6. 男女が共に住む世界での生活を送る社会では、男性と女性が協力して生活しています。しかし、それらしい理由がないにも関わらず、男女が離れて生活している施設も少なくありません。6つ目の基本原理は、男女を不必要に分離するのではなく、協力しあえる環境を作るべきという考えです。7. ノーマルな経済水準を得る7つ目の基本原理は、障害のある人も、社会に参加して、基本的な経済活動を行えるようにするべきという考え方です。そのためには、児童手当や早期年金、住宅手当、年金、最低賃金などの経済支援が必要になることもあります。8. 設備が、障害のない人を対象とする施設と同じレベルのものである障害者を対象とする施設と一般市民を対象とする施設の設備のレベルが異なっていることがあります。例えば、一人あたりの居住空間を考えてみても、一般的な家のほうが、入居施設よりもプライベートな空間は広い傾向があります。このように、理由もなく障害の有無によって施設の環境にギャップがあるのは好ましくありません。障害者向けの施設をより一般的な施設に近づけていくべきであるというのが8つ目の基本原理です。ノーマライゼーションの8つの基本原理は、一見それぞれ言っていることがばらばらのようにも感じられますが、どれも障害のある人とない人の日常生活におけるギャップを埋めていこうという側面があります。参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊インクルーシブ教育って?ノーマライゼーションの教育分野での取り組み出典 : ノーマライゼーションが広がるにつれて、教育の現場にも変化がありました。もともと、障害のある人とない人を完全に分離して教育が行われていましたが、1981年の国際障害者年をきっかけに、分離教育を減らし、障害の有無にかかわらず同じ教室で授業を受けられるようにしようと考えられはじめました。しかし、みんなが同じ教室で授業を受けることを推し進めるあまり、子ども一人ひとりに必要な支援をすることができませんでした。この反省をもとに、「一人ひとり丁寧に」と「みんなで一緒に学ぶ」の両方を実現する新たな教育としてインクルーシブ教育が打ち出されました。特別支援学校、特別支援学級、通常学級など多様な教育の場を提供したり、子ども一人ひとりの困難さに応じた個別の配慮=合理的配慮によって、障害を気にせず勉強したり、生活したりできるようにすることが目指されています。ノーマライゼーションに基づく就労への取り組み出典 : ノーマライゼーションの理論では、障害のある人もない人と同様に就労を通じて、自己実現できるようにするべきだと考えられています。障害者の社会進出という点からも、少しずつ制度が整えられはじめました。厚生労働省は現在、障害のある人が障害のない人と同じように、その能力と適正にあった仕事をすることで、地域で自立して生活できるように、雇用対策を進めています。例えば、企業に障害者を雇うことを義務化したり、障害者雇用に積極的な企業に支援をしたりしています。障害者雇用対策|厚生労働省身近なノーマライゼーション商品などのユニバーサルデザインって?出典 : 身のまわりには、ノーマライゼーションの考えを含んだ製品や施設が数多くあります。ユニバーサルデザインと呼ばれている製品もその一つです。ユニバーサルデザインユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、たくさんの人々が利用しやすいように製品やサービス、環境をデザインする考え方です。例えば自動ドアは、特別な道具や動作をすることなく、子どもからお年寄り、車いすに乗っている人や両手に荷物を抱えた人など多くの人が利用することができるデザインになっており、ユニバーサルデザインの代表的な例であるといえます。他にも、カラーユニバーサルデザインやユニバーサルデザインフードという考え方もあります。◇カラーユニバーサルデザイン人間は、生まれつきの色の感じ方(色覚)に異なる特徴があります。また色覚は病気や老いによって変わることもあります。こうした人間の色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン(略称CUD)」と呼んでいます。◇ユニバーサルデザインフードユニバーサルデザインフードとは、日常の食事から介護食まで幅広く使うことができる、食べやすさに配慮した食品を言います。日本介護食品協議会はユニバーサルデザインフードについて自主規格を定めており、これに適合する食品のパッケージには、必ずマークが記載されています。◇教育でのユニバーサルデザインユニバーサルデザインな教育とは、障害のある子にとって「ないと困る」支援であり、どの子どもにも「あると便利」な支援を増やすことと言えます。例えば、落ち着いて授業が受けられるよう、黒板周りの装飾を最低限にしたり、学級内のルールを明文化して決めたり、それを目につくところに掲示したりすることなどが、ユニバーサルデザインを意識した教育の工夫として考えられます。◇家のなかのユニバーサルデザイン家族とともに暮らす家のなかのユニバーサルデザインは、障害のある人だけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんや小さな子どもにとっても住みやすい家になります。例えば、階段に丈夫な手すりをつけたり、洗面台の高さを工夫したり、開け閉めが楽な引き戸にしたりすることです。誰にとっても住みやすい住宅の推進のために、助成金を出したり、ノーマライゼーションの啓発のために広報誌「WITH LIFE ~共に生きる」を発行したりしている団体もあります。公益財団法人ノーマライゼーション住宅財団ユニバーサルデザインの製品やサービスが増えれば、障害のある人でもない人と同じように、社会で生活することができます。これは、まさにノーマライゼーションが目指している社会でもあります。まとめ出典 : ノーマライゼーションは、障害の有無を意識しなくても生活できる社会の実現を目指す考え方です。ノーマライゼーションは、今では世界共通の考え方になってきており、今後さらに広がっていくことが予想されます。日本でも、教育や就労において、少しずつノーマライゼーションの考えに基づいた対策が行われつつあります。身のまわりの製品のなかにも、一見ノーマライゼーションに関係がないように思われても、実はノーマライゼーションの考えに基づいている製品が見られるようになりました。ノーマライゼーションが目指す社会実現のために、ノーマライゼーションについて正しく理解したり、ユニバーサルデザインの商品を使ったりしていきましょう。
2017年04月19日あまりにも不器用な息子。それが発達障害の診断へと繋がった出典 : 歳の息子には自閉症スペクトラム・ADHDの他に発達性協調運動障害の診断が下りています。幼い頃からとにかく不器用さの目立つ子で、少し歩けば物や壁にぶつかって転び、咄嗟に手をつくことが出来ずに顔面強打しては、一生消えないであろう傷をいくつも作ってきました。目にも障害があったため、見えにくさが転倒の原因だと思っていたのですが、成長とともに「おかしい」と思うことが増えていきました。・物を上手く掴むことができない・ご飯を食べていてもすぐにスプーンを落としてしまう・お絵描きをすると線がぶるぶると震える・幼稚園に入っても赤ちゃん用のブロックをはめることができない・ボタンをとめることができないこれは目の問題ではなく脳に障害があるのかも知れないと病院で検査をしてもらいましたが、特に問題はなしとの所見。ではこの不器用さはどこから来ているのか?お医者さまと話し合った結果、発達検査を受けることになったのです。その頃の私は発達障害についてほとんど知識はなく、不器用さが発達障害とリンクしているとは思ってもいませんでした。なので「わが子が発達障害かも知れないなんて!?」とかなりの衝撃を受けました。しかし一方で、「これで原因がわかるかも知れない…」とほっとしたのも事実です。こうして受けた検査によって、「発達性協調運動障害」の診断が息子に下されることになったのです。息子の「発達性協調運動障害」出典 : 発達性協調運動障害の症状は、「粗大運動」と「微細運動」に分類することができます。「粗大運動」とは、歩く・走る・姿勢を保持するなど、体全体を使った人間の基本的な運動「微細運動」とは、持つ・書く・摘まむ・ひねるなど、指先を使った緻密な運動息子の場合は、このどちらの症状も大きく出ていたことが原因で、日常生活を円滑に送ることができなかったのです。あのまま「努力すれば普通にできるはず」とやみくもに息子に訓練を強いる日々が続いていたら、おそらく今のように息子が笑顔を見せてくれることはなかったでしょう。息子自身のせいでもなければ、私の教え方のせいでもない。診断が下りて、育児のアプローチの仕方もずいぶん変わって来たように思います。椅子から消える息子を救ったお助けグッズ出典 : さて、そんな息子は食事中や勉強中に、突然椅子から落ちてしまうことが多々ありました。体幹が弱く、姿勢を保持するのが難しいため、ある瞬間に座っている椅子から身体ごと落ちてしまうのです。本人も「落ちそうだ」とは全く思っていないので、スプーンを持ったまま、あるいは鉛筆を持ったまま、ストンと床に落ちてしまうのです。「粗大運動」機能が上手く発達していないために、このようなことが起こるのですね。診断が下りる前は、大人用の椅子に子供用のクッションを固定して高さを合わせていたのですが、まず足を置く板がついている子供用の椅子に買い換えることにしました。それでもやはり、落下は止まりません。これを解決するには体幹を鍛える必要があるのですが、それを待っていてはいつか大怪我をしてしまいます。そこで、あれこれ探した結果、小学校への導入事例もあるという「ピントキッズ」というクッションを利用してみることにしました。ピントキッズは作業療法士によって監修された姿勢補助のためのクッションです。結論から言うと、この「ピントキッズ」の使用は大成功!お尻の部分がくぼんでいるので、姿勢を保持できない息子の体もしっかりと支えてくれるからだと思います。使い始めてから1年半になりますが、息子が家の中で私の視界から突然消えてしまう事はなくなりました。また、体幹を鍛えるために近くの体操教室に週に何度も通い、家の中で「遊びながら体幹を強くできれば」と、トランポリンやバランスボール、バランスクッションなどを用意しました。このようにいろいろな努力はしているのですが、まだ相変わらず歩けばぶつかり走れば転び、家の中で転倒しない日はありません。それでも少しずつ息子なりに進化しているはずだと、焦らず地道な努力を続けて行こうと思っています。ピントキッズ「文字を書く」ということの困難さに直面出典 : 幼稚園の頃に比べると、日常生活はなんとかスムーズに遅れるようになってきた息子ですが、ここに来て「文字を書く」という大きな壁にぶつかっています。鉛筆を持って机に向かっても、何度となく鉛筆が指から抜け落ちて床に転がってしまいます。椅子から下りて鉛筆を拾うという動作だけでも何分もかかってしまうので、なかなか「書く」という動作に入れません。ようやく書く作業に入っても、線が震え、なかなか読める字にならないのです。字の周りには、書き初めや書き終わりに指が震えて鉛筆が当たった細かな線が何本も入ってしまいます。医師からは、この症状が書字障害からなのか微細運動障害からなのかまだ診断できないとのことで、様子見をしています。ただ、息子は「小学校には行かない」という選択をしましたので、漢字の書き取りなどの宿題に苦労することはないと思います。また、ローマ字を覚えパソコンを使って文字を入力することは出来るようになったので、これからの時代は文字が書けなくてもなんとかなるんじゃないかと思う事もあります。しかし、息子自身に「書きたい」という欲求があるので、数年後には「人が読めるような字」を書けることを目標に、少しずつ思考錯誤しながら字の練習をしていこうと思っています。子どもの幸せについて、息子を見ていて思うこと出典 : 歳になった今でも、歩いている隣で「かかとを先に着けて、次がつま先だよ!かかと・つま先・かかと・つま先!その調子!」と声をかけなければ、簡単に転んでしまう息子。1人で歩くのは危険だからと歩きはじめてから5年間、息子の左手はいつも私の右手に繋がれていました。そのせいか、1人で歩く時は私と手を繋いでいた時と同じように左肩が上がったまま固まり、斜めの状態でしか歩くことができません。自分自身の体を思うように動かせないというのは、どんなにまどろっこしいことなんだろうと、息子を見ていて思います。なぜこんな説明を、なぜこんな訓練をしなければならないんだろう。人があっさりクリアできることに膨大な時間をかけなければならないこの子は、果たして幸せなのだろうか。障害について理解し、受け止めているつもりでも、時々そんな疑問が湧いてきます。ですが、子どもの幸せは、子ども自身が感じて決めることです。私達に今できることは、チャレンジできる環境を整えて、失敗しても「大丈夫だよ」と受け止めてあげること。そういった、安心できる居場所を作ることが大切なのかもしれないと考えています。
2017年04月18日保育園が「終わる」ことをどう伝えればいい?出典 : 発達障害の長男は、自閉症スペクトラム・ADHD、知的障害のハイブリッド。そんな長男が保育園年長さんだったころ、朝になると「今日は保育園おやすみ?」と私に聞くのが日課でした。私「今日は保育園行く日だよ」長男「ええ〜〜、じゃあ、明日はおやすみ?」私「お休みは、明日の明日の明日だね」そんな会話を毎日交わし、それでも行ってしまえば楽しく帰ってくる長男。集団生活は本人にとって負担ではあったかと思いますが、暖かい先生方やお友達に囲まれて穏やかな日々を過ごしていました。そんな園生活もあとわずかとなった3月、私は「保育園がもう終わること」「小学校が始まること」をいつ伝えれば良いかと、タイミングを見計らっていました。というのも、自閉症の子どもには「終わり」「区切り」をはっきりさせた方がいいということをよく聞いていたからです。確かに長男にも当てはまることがあり、「終わり」をはっきりさせることで安心する様子は日々の生活の中でよく見られます。年長の3月というこの時期には、療育の事業所であったり、行政の発達センターであったり、「終わり」になる場所がいくつかあります。それぞれの場所の先生たちも、「修了証などで目で見てわかるようにしましょうか」「きちんとさようならをした方がいいですよね」などど声をかけてくださり、長男がどう「終わり」を実感すれば次のステージへスムーズに移行できるかを親身に考えてくださいました。しかし、それで本当に長男がすっきりと終わりを認められるのか。最善の方法はなんなのか。そんなことを考える日々でした。そんな時に直面した、大好きなドラマの「終わり」出典 : いかにして「終わる」か…そんなことを考えていたある日のことです。長男が毎週楽しみにしていたドラマ「スーパーサラリーマン左江内氏」が最終回を迎えることとなりました。録画したハードディスクが火を噴きそうなほど繰り返して見ては、主役の「左江内氏」を真似て、伊達眼鏡をかけて家中を飛び回っていた長男。録画しているとはいえリアルタイムで見るために、早い時間からお風呂も済ませて毎週の放送を心待ちにしていました。スーパーサラリーマン左江内氏しかし最終回放送の日は違ったのです。「終」の漢字がわかる長男は、その日でドラマが終わってしまうことに気づいたようです。最終回の日はわざわざリビングのテレビを別のチャンネルに変えて、テレビのない寝室にこもってしまいました。そしてその日録画した「最終回」を長男はまだ一度も見ようとしません。そんな彼の様子を見て、長男も長男なりに「終わる」ということの寂しさや辛さを抱えているんだなと気づきました。わかりやすく「はい、おしまいです。」「次はこれです。」と、明示して安心させてあげることも大切ですが、「終わりたくない」「認められない」という気持ちもとっても大切な感情なはず。このことに気付いた私は、「終わり」をゆっくり自分で消化することも彼の成長なのだから、「終わりを明示する」ことだけが最善だと思うのはやめることにしました。卒園式の日、長男から思いがけない言葉が出典 : そして3月半ば、保育園の卒園式当日がやってきました。私たち両親のスーツ姿を見て、長男は何かを感じたようです。いままで毎日「保育園おやすみ?」と聞いていた長男は「保育園、終わりじゃない?」と心配そうに聞いてきました。自閉症の子どもは『別れが辛いのではなく単に毎日のルーティーンが変わることが恐怖なのだ』と、さも感情が無いかのように表現されることもあります。でもこの時私は、長男の、保育園との別れを予感して込み上げる「寂しさ」を確かに感じました。それと同時に、「左江内氏ロス」のこともあって彼に「終わり」を突き付ける気持ちにはなれませんでした。「今日は卒園式だけど、3月の終わりまでは保育園には行けるよ。」ぼんやりとした答えを伝えて、卒園式を終えました。ほどなくして迎えた保育園最後の日。最後の降園時にはたくさんの先生方が見送ってくださろうとしたのですが、そこでも何かを察した長男は「やめろ!!終わりじゃねえよ!!!」と玄関から猛ダッシュで走り去り、そのまま保育園生活に幕を閉じました。曖昧だっていい。大切なのは本人の「心地よさ」出典 : しっかりと「終わり」「区切り」を付けなかったけれど、また保育園に行きたいと言うのではないだろうか。4月からは小学校に通うということが受け入れられるのだろうか。そんな心配を抱きながら迎えた4月。小学校に入学した長男は思いの外すんなりと小学校に登校しはじめ、学校では会う人会う人に名前を聞き歩き、給食をモリモリ食べてやんちゃを働いているようです。振り返ってみると、これが彼なりの「終わり方」「始まり方」だったのかもしれません。もしかしたら心の中ではまだ「保育園」も「左江内氏」も終わっていないのかもしれないけれど、彼のペースでいつか消化できるだろうし、なんなら保育園へはまた顔を出しに行ったっていい。完全な終わりや線引きが無い、あいまいなままでいられる心地よさを求めたっていいのです。「ちゃんと終わってあげる」「区切りをつけてあげる」それだけが最善とは限らない。しっかりと子どもの心の動きを感じ取って、教科書通りではない子育てをしなければなとまた気付かされました。
2017年04月17日これ、おじいちゃんも知ってるお話なの?読んで読んで!Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子きっかけは離れて暮らす祖父母からのプレゼント娘が絵本が大好きです。小学校に入って文字が読めるようになってからは特に、色々なジャンルの本を読むようになっていきました。孫娘が本好きな事を知ったおじいちゃんおばあちゃんは、娘の誕生日に絵本を送ってきてくれました。特に今でも印象にのこっている本は『だるまちゃんとてんぐちゃん』です。祖父母が選んでくれた、どこか懐かしく茶目っ気があるこの本を娘はとても気に入り、何度も何度も読みました。たるまちゃんとてんぐちゃん(加古里子作・絵福音館書店)大好きになった「だるまちゃん」シリーズ!娘が気に入ったことを知り、祖父母はクリスマスには『だるまちゃんとかみなりちゃん』を、翌年の誕生日には『だるまちゃんとうさぎちゃん』をプレゼントしてくれました。だるまちゃんとかみなりちゃん(加古里子/作・絵福音館書店)だるまちゃんとうさぎちゃん(加古里子/作・絵福音館書店)おばあちゃんが押し入れから見つけてくれた宝物、それは…出典 : 大好きな祖父母の家に遊びに行った時の出来事です。くつろいであくびをしている娘に、おばあちゃんが家にあった一冊の古びた絵本を見せてくれました。それはだるまちゃんの絵本の作者、加古里子先生の『からすのパンやさん』でした。娘はすぐにからすの親子の楽しいお話に夢中になりました。その様子を見ていた主人が言いました。「あぁ、懐かしいいなぁ。この本まだとってあったんだ。」そう、それはパパも子供の頃に読んでいた本だったのです。私も子どもの頃読んだことがあったので、とっても懐かしく、それ以来親子の共通の話題になりました。からすのパンやさん(加古里子/作・絵偕成社)パパが読んでいた本がいっぱい!もうあの部屋は怖くないよ出典 : 祖父母の家の二階には他にも「おさるのジョージ」や「星の王子さま」や星座の物語など、主人が子供の頃に読んだ数多く本が残されていました。そのことを知った娘は、それまで怖くて全く行けなかった二階へ、自ら行くようになりました。そしてパパが子どもの頃大好きだった本が眠る部屋は、娘のお気に入りの場所になったのでした。娘にとっての「からすのパンやさん」の魅力とは…?出典 : 娘は高校生になった今でも本が大好きです。当時のことを娘に聞いてみました。私「加古里子先生の絵本の魅力はどんなところ?」娘「もちろんお話も面白いんだけど、細かな絵が面白いの。からすのパンやさんは、パンの種類だけじゃなくて、からす一羽一羽の表情とか動きとか凄く面白くて何度も見ちゃう。“ウォーリーをさがせ!”的な魅力もある!お母さんになって読み返して、はじめて感じたこと出典 : 実は娘と一緒に「からすのパンやさん」を読んだ時、私にとっても発見がありました。“子育ての苦労や子どもへの愛情がこんな風に自然に描かれていた本だったんだ!”と、とても驚いたのです。それは自分が子どもの頃に読んだ時には全く感じなかった気持ちでした。“子育てって意外と大変で楽しくて、ちょっと切なくて面白い”私達が子供の頃、私達の両親も恐らくこんな気持ちで読んでいたのでしょうね。娘が親になった時、娘もきっとこの気持ちに気が付くといいな、なんて思ったのでした。Upload By 荒木まち子
2017年04月16日一人の大人として扱われるのが大学です出典 : 高校までは、子どもたちは生徒という立場で先生たちに守られて過ごします。問題があれば担任の先生が中心となって、解決の糸口を探してくれることもあります。ですが、大学に入学すると、世話を焼いたり勉強のやり方を指導する先生は基本的にいません。課目によってはクラスはあるけれど、「ここが私のクラスだ」と毎日通うクラスは存在しません。大学は学生を一人の大人として扱います。高校までのようにいちいち管理されない分、大人としての責任を求められます。それはとても開放的で自由な環境ですが、型にはまるのが得意ともいえるアスペルガー症候群の人には、なじむまでが大変かもしれません。大学という新しい環境に飛び込んだアスペルガーと注意欠陥症を持つ私が、どんなことにつまづいたのか、そして何を得たかを書いていきたいと思います。最初は友達をどう作っていいかわからず…。出典 : 晴れて大学に入学したものの、私には話し相手が一人もいませんでした。学科の人数は約400人。授業も語学以外は大教室で行われます。周りを見ると笑顔で会話しているグループもいるのに、私はどうやって友達を作ればいいのかわかりませんでした。そのことを気にするあまり一時は「この大学は合わないから入試を受け直して別の大学に行こうか」と思ったほどです。でも、しばらくすると語学で一緒になった子と話すようになり、一緒にクラブ見学に行くことになりました。そのクラブ見学で、強いインパクトを受けたのが軽音楽部でした。軽音楽部の部室の前に机とイスがあって、そこに座るアフロヘアの先輩が「ああ、入部希望?」と言ったのを鮮明に覚えています。部室の中にいる先輩たちはなんというか個性が強烈で、「何て自由な人たちなんだ」と私は心底びっくりしました。結局私はその軽音楽部に入部することになりました。最初はどうふるまっていいのかわからず小さくなっていましたが、先輩たちに「バンド一緒に組もうよ」と誘われてからはどんどんなじんでいくように。バンドをやろうという人たちはけっこうアクが強い人が多いのですが、それでも堂々と過ごしている姿に「ああ、変わっていてもいいんだな」とホッとしたのを覚えています。大学というところは、基本的にサークルやクラブ単位で人間関係が深められていく傾向があります。なので適当に顔を出しておけばいいようなサークルでもいいので、どこかのクラブ・サークルに所属することを私は強くおすすめします。ちなみに、そういうところで知り合った先輩は、「楽勝で単位をとれる講義」「出席が甘い先生」などを教えてくれたりもします。学業に励むのもいいけれど、そういう情報も知っていて損はありませんよね。初めて気づいた、自分のコミュニケーションの特徴出典 : 私は大学に入るまで、私は基本的に誰かと群れるということが苦手でした。また当時の私は、難しい言葉を多用するしゃべり方をしたり、本音をオブラートに包まず相手に投げつけたりしていました。さらに、きつく聞こえる方言が、それに拍車をかけていたのです。ある日、そんな私にクラブの先輩が言いました。「ヨーコちゃん、あなたのしゃべり方って怖い」「偉そうに聞こえるし、怒っているようにも見える」「もっとしゃべり方を直した方がいいよ」はっとしました。そのとき初めて、自分の話し方とまわりの人の話し方の違いに気付いたのです。みんなの話し方はトーンが優しく、相手に非があってもいったん受け入れて「だけど自分はこう思うよ」と相手を傷つけないように気遣っていたのです。私は初めてそのことに気づくことができました。また、そのことを私に伝える時にも、先輩は攻撃的な態度ではなく、本音で心配な気持ちを伝えてくれました。私にはそれがうれしく、素直に「そうか、そう思われるようなしゃべり方だったんだな」と納得し、みんなが不快にならないようなしゃべり方を身につけようと思いました。そこで私は、周りの人たちがしゃべっている様子をよく聞いて真似することから始めました。自分の方言を封印することはありませんでしたが、きつい言葉は別の言葉に言い換えました。相手より優位に立とうとする態度もやめるように心がけていったのです。すると周りの人の態度も変わってきて、先輩たちも「ずいぶんマイルドになったね」とほめてくれるように。どんどん肩の力を抜いて過ごせるようになり、大学で過ごすのがますます楽しくなりました。「できない=バカにされる」だと思っていた私を変えた出来事出典 : 私の親は大学教授でした。言いふらすつもりはありませんでしたが、聞かれたら正直に答えていたので知る人は昔から多かったです。ですが親の立派な職業が肩にのしかかり、「できる子じゃなくちゃいけない」と思い詰めていたように思います。高校までは人に弱いところを見せると負けだと思っていましたし、無駄にプライドが高く人より劣っているということは認めることができませんでした。もともと負けず嫌いということもありましたが、勉強ができないと「親は大学教授なのに…」と周りの人や学校の先生から心ない言葉を投げつけられましたし、もちろん親にも「どうしてこんなにバカなんだ」といわれてきました。そのせいで同級生にも「本当は勉強が分からなくて困っているけど、知られたらバカにされる」と思って虚勢を張り続けていました。ところが、大学の語学の授業でのことです。マルクス(Marx)を「マークス」と読み違えた私にクラス中が爆笑し、「ヨーコちゃんがいるからこの授業は癒しの時間になるわ」と言われたのです。そして、あまりに英語ができない私のことをクラスの人はかわいがってくれ、いろいろと助けてくれました。年度の終わりが近くになると、先生も私が単位を落とさないように気を遣って、こんなことを言ってくれました。「君はお父さんが大学教授らしいね。もう、お父さんに頼んでこの問題を日本語に訳してもらってきなさい。そうじゃないと単位があげられないんだよ。」勉強はできない私でしたが、先生やクラスのみんなは、私を愛してくれました。それはおそらく、めちゃくちゃな読み方で大爆笑されても、必死に読み続けたこと、まじめに講義を受けて頑張っているのにどうしてもできない事実がみんなに理解されたこと、親の職業を知っていてもヨーコはヨーコとみんなが見てくれたことがあったからだと思うのです。できないからといって誰のこともバカにしない。できないのなら助けてあげる。そういう空気が教室にあふれていて、ハリネズミみたいになっていた私の心を溶かしてくれました。私はそれまで「できない=バカにされる」だと思っていました。しかし、必ずしもそうではなく、努力する姿を愛してくれる人もいるということをこの時学んだのです。この経験があったからこそ、この先の辛い社会人生活でも人として腐らずに生きてこれたのだと思っています。大学生活を振り返って出典 : 大学生活がスタートした時は、友達の作り方がわからず、大学をやめようかとも思った私ですが、人との関わり方が未熟だったことに気づくことができ、自分の態度を改めることができました。さらには、今でも付き合いのある一生モノの友人を得ることができ、「できない」ということで、必ずしもバカにされるわけではないということを学ぶことができました。ただ、すべてがうまくいったわけではありません。4年で卒業するための授業の選択がうまくできなかったり、就職活動のタイミングや方法が分からなかったり、課題もあった大学生活でした。それでも、主にクラブの仲間のおかげで、大学生活は私にとって一生忘れられない楽しいひとときとなりました。大人同士の付き合いができて、打算も何もない関係の中で友人を作ることができるのは大学ならではです。発達障害の私にとって、「相手が大人になっている」ということは何よりも助かるポイントでした。また、最近では発達障害の学生を支援してくれる大学も増えています。あらかじめそういう支援の充実した大学を調べて、支援を受けながらキャンパスライフを過ごすのもいい方法だと思います。高校までとは違い、大学から広がる世界はとても広いです。大学に行きたいと願う人にはぜひあの自由な世界を味わってほしいなと思います。発達障害学生への就学支援方法について(富山大学)ガクプロ発達障害のある大学生支援プログラム「働くチカラPROJECT」
2017年04月14日息子のことをよく考えてくれる先生だったけど…Upload By モビゾウ発達障害のある息子は、苦手なことや、頑張ってもできないことがたくさんあります。また、聴覚や触覚などに過敏性があるため、教育の現場にいる先生方にはある程度の支援や配慮をお願いしなければなりません。ところが、一生懸命息子のことを考えてくださる先生が様々な支援や配慮をしてくれているにも関わらず、息子が激しい癇癪(かんしゃく)を起こしてばかりだった時期があります。私は、何かが息子のストレスになっているのだと感じてはいたものの、あの先生に支援して頂いているのだから…と思い、いろいろ詮索せずにいました。けれども、一生懸命息子を支援してくださる先生には、こんなセリフが多いことに気付いたのです。先生なりによく考えた結果の支援・配慮。でも…Upload By モビゾウ「たぶん、息子くんはこういうことはできませんよね」「大丈夫です、配慮します」「息子くんにはやらせないようにしますから、大丈夫ですよ!」この先生が「支援」や「配慮」をしてくださるたびに、息子の癇癪は増えていきました。「どうせ僕なんかダメなんだーーー」「どうせ僕はできないからもういい!!」この時期、何か行事があるたびに息子は酷く荒れました。行事では、負担にならないようにと、息子は常に端っこのほうに寄せられていました。光を当ててもらえる他のお友達に比べて、なぜ自分はいつも「たぶんできないから」と端っこに寄せられてしまうのか…。そういった扱いを受けるたびに、息子の自尊心はひどく傷つけられてきたようでした。そんなときの担任変更。だけど私は正直不安な気持ちに出典 : ある時期から別の先生が担任になることになりました。その先生に息子が発達障害であることを相談すると、「大丈夫、息子くんは能力があるから。からまった糸をほぐしてあげれば、必ずできる子だから」とおっしゃられていました。この言葉を聞いた時、正直私は不安になりました。息子を他の子どもたちと全く同列に扱って、負担をかけてしまうのではないかと思ったのです。けれどもそんな私の心配をよそに、その先生が担任になってから息子の態度はガラリと変わりました。他の先生の「支援」に触れてUpload By モビゾウその先生は、息子が苦手としていることに対して常に「こうしたらできるかもしれないよ」とヒントを与えてくださる方でした。息子もそのヒントをもとにやってみたら、できないと思っていたことができたり…ということが何度もあったようです。そして必ず、「大丈夫、君は出来る子だよ」と息子の能力を信じる言葉をかけてくださいました。あんなに「僕は出来ない子だ」と癇癪ばかり起こしていた息子が、行事のたびに「こんなことができるようになった」「こんなことが楽しかった」と話してくれるようになりました。毎日息子を見ている私にとって、その変化は目覚ましいもので、驚きを隠せませんでした。Upload By モビゾウそして最後の発表会。以前は端役をあてがわれてきた息子が主役を演じる姿がありました。舞台からは「僕は出来ない子なんかじゃない」という息子の言葉が聞こえてきそうでした。本当に必要な「支援」や「配慮」ってなんだろう?出典 : 息子の変化を見て分かったこと。それは、「支援」や「配慮」というのは「出来ないことをさせない」ということではないということです。「どうせ出来ないから」と言って苦手なことを免除してしまうのは、その子にとっての自信には決して繋がりません。「支援」や「配慮」とは、他の子とはちょっと違う教え方やお手伝いをすることで、発達障害児にとって難しいことを、少しでも楽に出来るようにしてあげることだと思います。「あ、なんだ、こうすれば少し楽にできる」と発見したとき、それが初めて子どもにとって「できた!」という自信に繋がっていくのだと感じています。
2017年04月13日どこにでもある石が宝物!?出典 : アスペルガー症候群のある娘がまだ幼稚園生だった頃の話です。ある日、園から帰ってきた娘のポケットがパンパンに膨らんでいました。私「ポケットに何が入ってるの?」娘「あのね、今日もとってもいい石を見つけたの!」私「石?お庭にいい石があったの?」娘「うん!鉄棒の後ろの方にね、すごくいい石がごろごろ転がってたんだよ!先生が持って帰っていいって!」自由時間に園庭でお友だちと遊ぶこともなく、ただひたすら砂場で砂を触っていた娘が、その日を境に毎日石を持って帰ってくるようになりました。なんの変哲もない、どこにでも転がっているようなただの小さな石ころです。ポケットを大切そうに撫でながら、「今日もいい石があったよ!」と話す娘の顔は今までになくキラキラとしていて、私もとっても嬉しくなりました。「あなたにとって大切なものは、もちろんママも一緒に大切にするからね!」そういって2人で家中の引き出しを探って空き瓶を見つけ、そこに娘が拾ってきた石ころを保管することにしました。来る日も来る日も、1人で園庭の隅にしゃがんで“いい石”を探す娘の姿を想像して切なくなったこともありました。でも、それが本人にとってステキな時間ならば、別にお友だちと一緒に遊ばなくてもいいか・・・・と思えるほど、娘が宝物の入った瓶を見る姿は輝いていたのです。しかし、園からお持ち帰り禁止を受けた娘は…出典 : しかし幼稚園の方から「たとえ石だとしても園の所有物を持ちかえるのは禁止します」という旨が伝えられ、娘にとっての自由時間は砂場に座って、ただ砂を触るだけのものに逆戻りしてしまいました。私「石は園の所有物だから、これからは持って帰ってはいけないことになったの」娘「え!?先生はいいって言ってくれたのに」私「先生も毎日あなたが石を持って帰ることは想像してなかったんだよ。宝探しのつもりで石を見つけて、自由時間が終わったらお庭に戻せばいいんじゃないかな?」娘「せっかくいい石を見つけても帰りにお庭に置いて帰らなければいけないのはすごく悲しいから、それなら初めから探さない!」何度か話をしてみましたが、娘の態度は頑なでした。思い返せば、お友だちと一緒に遊べなかったのも、他人から見ればどうでもいいようなものに価値を見出して集めたがるのも、アスペルガーの特性であったのだと思います。でも、当時の私には何の知識もなく、ただせっかく見つけた幸せな時間の過ごし方がダメになってしまって残念だなという強い思いがあっただけでした。所有物がダメならこれはどうだ!幼い娘がたどり着いた答え出典 : ある日、娘がまた目を輝かせて私に言いました。娘「ねえ、ママ!ポケットになにが入っていると思う?」私「えっ?パパと公園に行っていい石を見つけてきたの?」娘「違うよ!誰かのものは勝手に持って帰ったらダメなんでしょ?だからコレだったらいいでしょ?すごくステキなの!!」そういって娘がとり出したのは、道端に落ちていたラムネの包み紙。透明のセロファンで出来たその包み紙は、きれいな色が大好きな娘の心を鷲掴みにしたようでた。それ以後「ゴミは持って帰っても叱られない。道もきれいになってちょうどいい!」と色々なものを拾ってくるようになりました。あまりに不潔なものは処分しますが、それ以外の物は娘にとっての宝物ですので、大きな瓶がいっぱいになるまで集めては一緒に眺めて楽しんでいました。そのうち、幼稚園で工作をした後に床に落ちている毛糸の切れ端やおりがみの切れ端を集めて、先生の許可を得てから持ちかえるようになりました。「誰かの所有物を持ちかえってはダメ」というルールを理解すると、そのルールを厳格に守ろうとするアスペルガーらしい特性がまたここでも見えていたように思います。いくつかの空き瓶が満杯になり、箱や引き出しもいっぱいになった頃、「このままではお家がゴミ屋敷になっちゃう!」と娘と話し合うことに。そして、その段階で思い入れが薄くなっているものは写真を撮った後に思い切って処分しました。以後、「写真に残せば納得して処分できる」という図式が出来上がったようです。あちこちから集めてきた娘のお宝は、物を整理する練習にもつながると感じています。全部揃ってないと気持ち悪い!子どもの「収集癖」とどう付き合うか出典 : アスペルガー症候群に限らず、収集癖が強いお子さまがいるご家庭も少なくないと思います。私自身も、文房具が好きなのでペンは全色揃えたい、本などシリーズで出ているものはすべて揃えたいという願望があります。どうしてそのような欲が湧いてくるのかと考えてみたことがありますが、やはり「規則的なものを好む」という特性が強く影響しているような気がします。規則的なものや完璧に揃っているものを見ると安心して居心地がよいのですが、少しでも欠けていたり変則的であるものに対してはとても居心地が悪く、完璧な姿でないことにイライラしてしまうのです。いまでは小学4年生になった娘も、ひとたびシルバニアファミリーなどを収集し始めると、おもちゃ屋さんに行くたびに「すべてを手に入れたい」という思いに駆られ、お小遣いを使ってどんどん集めていきます。娘を見ていると、集めること、手に入れることを目的にしている様子です。家に帰ってパッケージを開けるだけで満足し、またおもちゃ屋さんに行くと「完璧にそろえなければ」という欲求に飲み込まれてしまっていました。出典 : そこで良い機会だと思い、娘と話し合ってみました。私「ママも同じだからよくわかるんだけど、ここにあるシルバニア、全部集めたいよね~!」娘「やっぱりそうでしょ!私もひとつ残らず自分のものにしたいの!」私「うんうん!想像するだけでワクワクするね~!!全部ここに揃ったら圧巻よね!」娘「でも、もう置き場所がないから全部は無理かも知れない」私「いい所に気がついたね!このまま集め続けたら、私たちが住む場所がなくなっちゃうよ~!お家がシルバニアに乗っ取られちゃう」娘「もっと広い家に引っ越してよ~!」私「そうできればいいんだけど、やっぱり生活のことを考えると出来ることと出来ないことがあるんだよ」娘「うーーーーん」私「お小遣いやお年玉もせっかく貯めてきたけど、今どんどんシルバニアに使ってるよね。あなたが満足するならいい事ではあると思うんだけど、全部使っちゃうと、次にお金が必要なときに一銭もない状態になっちゃうよ?」娘「うーーーーん、確かにそうだけど、まだアルバイトをして自分では稼ぐこともできないし、どうしたらいいの?」私「たとえば、『シルバニアは一ヶ月に一つだけ、800円以内』とか、きちんと自分でルールを決めて、欲しい気持ちをぐっと我慢することも大事だよ?集められないものはカタログを集めて、切り抜いて自分専用に冊子を作るとか、工夫して楽しんでみたらどうかしら?」娘「なるほど、冊子を作るのはいいね!いつでも見られると思えば安心できるし、家にあるような感じもするし!」そんなわけで、娘は今せっせと欲しいおもちゃや楽器のカタログを集め始め、挙句の果てに電化製品などのカタログもお店の方に断っていただいてくるようになりました。それを眺めることで「すべてを手に入れたい」という欲求をずいぶん抑えられるようにもなりました。もちろん収集癖自体が収まったわけではなく、今度は家にカタログが溢れるようになったわけです。でも、自分の欲求を認識した上で実現可能かどうかを冷静に判断し、工夫をして我慢をするという一連の作業ができるようになっただけでも、ずいぶん成長できたのではないかと思います。また、「すべて集めたい」という欲求を私に理解してもらえている、という部分も娘にとっては大きいようです。まず「全部集められたら夢みたい!確かにステキだよね!」とお子さまの気持ちに寄り添った上で、どこまでが実現可能かどうか話し合っていくことで、「実現不能な欲求に歯止めをかける」という練習になるかも知れません。「こんなもの集めてどうするの!?」と本音を口にしてしまう前に、ゆっくりとお子さまの宝物を一緒に眺めて、当人にとってそれがどれほど大切なものなのか聞き出してみませんか?思わぬところにお子さまの成長の種が隠れているかも知れませんよ。
2017年04月11日