言語優位な娘と私、視覚優位な息子出典 : 幼い頃から息をするように本を読み、水を得た魚のようにどんどんと新しい知識を吸収していくアスペルガー症候群の娘は、いわゆる言語優位タイプです。私も同じタイプだったので、子ども向けの本にかけるお金は惜しまず、他の出費を削って絵本や児童小説を増やしてきました。図書館にも毎週のように通いました。後から生まれた息子も、本に囲まれて暮らし、家族が本を読む姿を見たり、読み聞かせをしていれば、本好きな子になるだろうと思ってました。ところが、息子の場合そう上手くは行かなかったのです。絵本は猛スピードでめくって終了!読み聞かせをすると、絵の細かい部分が気になってしつこく同じ質問を繰り返します。また、お話を読んでいる最中に強引にページをめくって破いてしまったりすることが続き…お互いストレスを感じて次第に読み聞かせの機会が減っていきました。しかしその後、息子に自閉症スペクトラム及びADHDの診断が下りてこんなことが分かりました。・耳から入ってくる情報に弱く、目からの情報の方が取り入れやすいこと・見通しが立たないと不安になること・常に新しい刺激を求める傾向にあることどうやら娘や私とは、脳の構造が違う。知識を得る方法も表現する方法も違うようなのです。どうすればそんな息子の「〇〇ってこういうことだったんだね!」という笑顔がたくさん見られるんだろうか。私は悩みながらも、絵本以外に息子が興味を持つ学び方を探ることにしました。見通しが立たないと不安になる息子に、時計の読み方を教えたい!さて、その方法は…出典 : 診断が下りたときに知った「見通しが立たないと不安になる」という特性通り、息子は幼い頃から何をしていても「もうすぐ終わる?」「ねえ、もう終わり?」と問い続けてきました。家族だけでいる間は良かったのですが、幼稚園や習いごとに通い始めると息子の不安はどんどん増し、先生や周囲の人に何度も「終わりの確認」をするようになりました。そこで息子がまだ4歳のころ、少し早いかな?と思ったのですが、時計の読み方を教え、終了時刻を書いたカードを息子に持たせて、自分で「もうすぐ終わるかな?」の確認ができるようにしようと思ったのです。そこで私は、時計を覚えるために息子に合った学習法は何なのかをいろいろ試してみました。ドリルを買ってみたり、九九の5の段だけを歌で一緒に覚えたり、自作のプリントを作ってみたり…色々試してみましたが、その中で息子がいちばん良い反応を示したのが、DVD教材だったのです。「おぼえちゃおう!とけい・数えかた(DVDビデオ)」 にっく映像株式会社こちらはにっく映像株式会社が出している「おぼえちゃおう!とけい・数えかた」という学習DVDです。これを購入して息子に観せてみると、時計への興味が一気に増して、DVDの音声に合わせて時刻を言うようになりました。そして、DVDの最後で紹介されている他のDVDの内容を観て、「次は『せかいちず』を見てみたい!」「次は『かんじの部首』っていうのが欲しい」と言うのです。自分から進んで「ああしたい、こうしたい」と言うことの少ない子でしたから、とても驚きました。そうして、買ってきたDVDは何度も何度も飽きることなく繰り返し見続け、内容をすっかり覚えてしまうのでした。文字から情報を得るタイプの私は「こういう学び方もあるんだ!」と、とても新鮮な気持ちで息子を眺めていました。春から小学生になる今でも、息子はこのシリーズが好きでよく観ています。内容も多岐にわたっているので、小学4年生になる娘も一緒に観て楽しんでいます。DVD以外で、息子に合った方法はなんだろう?出典 : さて、映像学習がとても良いということに気がついたものの、販売されているDVDには限りがあります。どうしたものかと悩んでいた矢先のこと、息子がたまたま本棚から手に取った本を読んで、声をあげて笑い始めたのです。それは、ドラえもんの学習シリーズ漫画でした。絵本はあんなに猛スピードでページをめくっているだけだったのに、どうしてマンガは楽しめるんだろう?と不思議に思い、息子を観察してみました。すると、息子はいったん開いたページの絵を全部ざっと眺めてから、吹き出しの文字を読んでいることに気がつきました。おそらく、・先にストーリーの展開をざっと確認することで見通しが立ち、「どうなるんだろう?」という不安が払しょくされる・絵本と違って1ページにたくさんの絵があることで、常に新しい刺激を求める衝動が満たされる・吹き出しに書かれた短い言葉を読むだけで内容が理解できるのでストレスを感じにくいという点で、視覚優位&ADHDの息子にとっては楽しく読み進めることができたのだと思います。それから、息子はドラえもんの学習シリーズをむさぼるように読み始めました。初めはおもしろいストーリーを楽しんでいたようですが、最近では、「ママ、敬語ってこんな風に使うんでしょ?」「ママ、これは英語で〇〇っていうんだよね~!」とそこで得た知識をお披露目してくれるようになりました。最近では普通の絵本にも手を伸ばすようになっています。いったん猛スピードですべてのページをめくって絵を確認する行為は変わりませんが、その後、始めに戻って文字を読んで内容を把握するようになりました。学習マンガで「読む楽しさ」に触れた息子は、絵本も自分なりに楽しめるようになってきたのです。ドラえもんの学習シリーズ小学館子どもに合った方法で楽しく学んで、好きなものを増やそう!出典 : わが家の場合、いわゆる「お勉強ができる」ことを目指しているのではなく、知っていること・好きなものが増えることで、少しずつ子どもたちの世界を広げていくことに焦点を当てています。DVDを観て国旗があることを知る、好きな国旗がある、テレビでその国の名前が聞こえると気になって見てみる、世界遺産があることを知る、図鑑を一緒に観る、ほかの国にも興味が出てくる。そんな風に世界が広がって行けばいいなぁと思っているのです。だからこそ、日常生活の中で視覚優位の息子が楽しく過ごせるように、他にもいろいろ工夫をしています。好きな歌手の歌を聴くときは、歌詞をプリントアウトしたものを渡しています。耳からの情報だけではなかなか歌えなかった息子が、目で歌詞を確認すると、あっという間に最後まで歌えるようになりました。以前にも紹介しましたが、テレビには常に字幕をつけるようにしています。そうすることで視覚優位の息子は、今誰が喋っているのか、何を言ったのかが正確につかめるようになり、家族と同じように番組を楽しめるようになったのです。また、そろそろ1年生になるということで、楽しんで学校のお勉強に取り組めるように、パソコンの学習用ソフトも購入してみました。視覚優位の息子にはドリルに取り組むよりも、ゲーム形式で学べる学習ソフトの方が合っているようです。ADHDの診断が下りたからこそ、息子に合った方法で前に進める出典 : 言語優位の私が視覚優位の息子を育てるのはなかなか大変です。私の想像もつかない場面で苦労していることがたくさんあるのかも知れません。もしもあの時、私が息子に「お姉ちゃんと同じように本を読みなさい」「本を好きになりなさい」と強要していたら、息子が心から読書を楽しめる日は来なかったように思います。発達障害の診断が下り、その特性を知れたからこそ、子供を観察し、その子に合った方法を探して前に進むことができるようになる。診断が下りることの最大のメリットは、その辺りにあるのかも知れません。発達ナビさんが提供してくださるこの場で、皆さんでたくさん情報交換をし、いろんなタイプの方の物事のとらえ方や困りごと、対処方法を共有していけるといいですね。
2017年02月14日分数が苦手だった娘に、オリジナルの教材を使ってみると…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子九九は覚えられるけど…「なんとなく」しか掛け算を分かっていなかった娘出典 : 発達障害のある娘。小学校では2年生で「掛け算」の勉強が始まります。暗記が得意な娘は九九は苦労することなく覚えることができました。でも娘は記憶力が良いだけで、実は掛け算の概念を理解していたわけではありませんでした。小学3年生になると、掛け算を応用した「割り算」「分数」が始まります。掛け算の概念を十分に理解していない娘は、当然割り算や分数の意味もぼんやりとしかわかりません。それでも3年生程度の問題であれば、まだ“なんとなく”または“ヤマカン”で解くことができました。通分も「学んだ方法」を「手順通り」に行えば解くことができました。同じように「少数」や「割合」の単元も“なんと~なく”終えたのでした。難しい計算は必要ないかもしれないけど…中学生になって分かった娘のつまづき出典 : 中学校になり算数から数学へと変わると、さすがに“なんとなく”や“ヤマカン”は通用しなくなりました。でも私達親子は、「別に難しい問題はできなくてもいいよね」「大人になったら計算機やパソコンを使えば良いんだし」と、数学のテストの点数が悪くても、さほど気にはしませんでした。しかしある日、娘と買い物に行ったときのことです。私「ほら、欲しいって言っていた文具が30%OFFになってるよ!持ってるお小遣いで買えるんじゃないの?」娘「そんなにお金もってないよ」私「でも今日お小遣い○○円持ってるよね?」娘「うん。でもきっと足りないと思う…」私「そうかな?定価の30%引きだよ」娘「…よくわかんない…」この時私は初めて、娘が普段の生活で大切な「おおよその計算」や「割合のイメージ」ができていないことに気が付いたのです。家に帰って娘に「小数」や「割合」をどこまで分かっているか確認すると、小数と百分率は理解しているものの、全体を1(または100)とした場合の割合と分数のイメージがうまくつかめていないようでした。紙に円を描いてもわからないようだったので、紙をピザのように切って説明してみましたが、娘にはピンとこないようでした。知り合いの間ではわかりやすいと評判だった『くもんの分数パズル』を使っても、娘はイマイチよくわからないといった感じでした。「はじめての分数パズル」くもん出版通級の先生の一言で、一気に解決!娘に合った教材を作ってみたら…当時、定期的に相談をしていた通級の先生にこの話をすると、「円ではなく棒状の方が理解しやすいお子さんもいますよ。試してみてはいかがですか?」とアドバイスして下さいました。私は早速100円ショップで両面マグネットを購入し、棒状の分数パズルを作ってみました。Upload By 荒木まち子両面マグネットの裏は少数になっています。Upload By 荒木まち子このパズルを見せたところ、「あ、これならわかる!なーんだ、こういうことか!」と、娘はあっさり納得しました。それまでどれだけ説明しても理解してもらえなかったので、私にはとても驚きでした。同じ説明をしているのになぜ円だと分からなくて、棒状だと分かるのかを娘に聞いてみると…「円は何だか見づらいの。私は棒状の方がパッと見て分かるから好き。あと円だと重ねると下の数字が見えなくなっちゃうでしょ。これだと重ねなくても並べて比較できるからすごく分かりやすいの。」娘が一瞬で理解してくれたおかげで、あっという間にお役御免となってしまった教材…娘が分かってくれたので良しとしましょう。娘に褒めてもらったこの分数パズル、実はダメ出しも受けました。「凄く良い教材なんだけどさ、この色合い、何とかならなかったの?」ごめん、娘よ。百円ショップの材料では、これが限界なんですヨ。
2017年02月13日やっと固まった、娘の不登校と向き合う決意出典 : 不登校の子どもや、障害のある子どもを育てていると、世間一般的な子育てをするだけではうまくいかず、悩んだり、選択を迫られたりする場面が多いと思います。自分の子育てに対する考え方を問われるようなこともあるかもしれません。私の娘は小2で不登校になり、小4でアスペルガー症候群と診断されました。娘を育てていく中では、「学校とどうやって付き合うか?」「勉強はどうするか?」「昼夜逆転、パソコン・ゲーム漬けをどうするか?」「発達障害の療育はしなくていいのか?」など悩むことばかりでした。問題とぶつかるたびに、主治医と相談したり、本やブログを読み漁ったり、相談機関にかかったり、親の会で話を聞いてもらったりと必死で手掛かりを求めました。ときには失敗して娘も自分も傷つきましたが、だんだんと「私はこういう考えで娘を育てていく」という気持ちが固まっていきました。私の考え方は、「学校も勉強も無理しなくていい。昼夜逆転でもいい。娘の心が元気であることを第一にして本人を信じて、任せて、待つ」です。発達障害については発達障害者相談センターで「今のままの育て方で問題ありませんよ」と言われたので、特別なことはしないでおこうと決めました。こうやって自分なりの考え方をしっかり持っていれば、迷わず娘を育てて行けると思っていました。しかしそれでも、周りの声や世間の常識、自分のなかに巣食っている価値観に、何度も迷い自分を見失いそうになったのです。そんなときにどうやって対処してきたのか、私の経験を書きたいと思います。私の育児は間違っているの…?周りの声に気持ちは揺れ動く出典 : 私が仕事をしていたときのことです。お昼休みはどうしても職場の人と話す機会が多いですよね。そこで子どもの話になったとき、私は嘘をつきとおすのも疲れるので「娘は学校に行ってないんですよ」と正直に話すわけです。すると、年上の先輩お母さんには、「のんきなお母ちゃんやねぇ」と言われ、高卒すぐの子には「学校だけは行っといた方がいいですよ」と言われ…周りからの言葉に、「私は怠慢なのかなぁ、もっと娘にとっていい方法を探さなくてはいけないのかなぁ」と心がかき乱されて、どっと疲れてしまったのです。そして、突然焦って塾を探したり、居場所を探したり、福祉サービスを探してみたりと、すっかり自分を見失ってしまいました。そのときだけではありません。例えばブログなどで、「不登校だったけど親がしっかり支えて学校に通えるようになった話」を読んだときや、新聞で引きこもりの記事を読んだとき。私の中の「子どもは学校へ行って就職して独立して一人前。それは親の義務。」という刷り込まれた価値観がムクムクと顔を出し、「本当に子どもに任せていて大丈夫なの?」「このまま引きこもりになったらどうするの?」と不安でいっぱいになってしまいます。そして「うちの子は簡単な計算もできないし、雑談もうまくできないし、家の中で好きにさせていたら本人のためにならないんじゃないのかな…。私が何もしないのは努力不足なのかな?」と自信がなくなってしまうのです。大事なことを思い出させてくれたのは、同じ悩みを持つ仲間たちだった出典 : そんな私に大事なことを思い出させてくれたのが不登校の親の会の仲間たちでした。「娘さんにはね、今は『世界は安心なところだ』ということを確認してもらうのが先ですよ。この前、編み物カフェにいったでしょ?それだけでもすごいことなんだから、できたねって一緒に喜んだらいいんです。無理に新しいことをしなくていい。」「娘さんは『ちゃんとやらなければいけない』と思い込んで、外に出られない状態なんだと思います。何かできた、気持ちよく体を動かせたとかいう『今はこれが気持ちいい』という体験を積み重ねていくことが大切なんですよ。」「勉強はいつでもできます。全然あせらなくていいんですよ。」そう言われて目が覚めました。私は何を焦っていたのだろうって。もう少しで、一番大切なことを見失ってしまうところでした。私たち親子にとって、いちばん大事なことは何だろう出典 : 親の会の仲間たちの言葉を聞いて、思い出したのです。娘が不登校になった当初、よく「死にたい」「私なんていない方がママが楽になる」といって泣いてばかりいました。だけど、私が娘が学校に行かないこと、勉強をしないことを受け入れて、「本人の力で立ち上がるまで待つ」と決めてからは、娘もすっかり落ち着いて家で楽しそうに過ごしていました。一番大切なことは、「生きていてよかった」と娘自身が思えること。そして、家で安心して心を休ませて、「楽しいな」と思えることが一つでも増えていくこと。それだけでいいんです。娘もこの春には中3になります。また私の心が揺れ動いてしまうこともあるでしょう。だけど、私たち親子に寄り添ってくれる親の会の仲間や教育相談の先生、支援者の方たちがいれば大丈夫だと確信しています。「お母さん、それでいいねんで。よくやってるよ」と言ってくれる人がそばにいてくれたら私は頑張ることができます。この記事を読んでくださっている方も、私のように心揺れ動きながら奮闘されているのかもしれません。しんどい育児を家族だけで乗り切っていくことは、とても難しいと私は感じています。つらい時にはためらうことなくSOSを出して、一人でも多く自分たちを応援し支えてくれる人たちとつながっていくことを願っています。
2017年02月10日発達障害のある息子のために、習い事をさせたい!思考錯誤を試みるも…出典 : 息子に発達障害の診断がおりた3年前、私はネットの検索魔になっていました。発達障害についての知識を調べることはもちろん、検索窓に繰り返し繰り返し打ち込んだのは「発達障害児 習い事」の文字でした。インターネットのQ&Aなどを見ても、「発達障害児に習い事をさせたいのだけれど、何が良いですか?」という質問の多いこと多いこと!発達障害のある子どもを持つ保護者がこれほど習い事探しに必死になるのは、「発達障害の特性が少しでも軽くなって欲しい」「発達障害でも普通の子に負けないで生きていって欲しい」という想いがあるのかもしれません。私も息子が発達障害だと分かった途端、習い事探しに奔走しましたが、それも同じようにこんな理由からだったように思います。・習い事で苦手を克服して欲しい(息子は運動や協調運動が苦手)・何か「好きなこと」を見つけて欲しい・先生や友達との関わりが上手に出来るようになって欲しい・「楽しい」と思える場所を増やして欲しいしかしあれこれとネットを徘徊し、「これは!」と思った習い事に息子を連れて行っては、癇癪を起こされてあえなく退会…を日々繰り返していました。好きなことを増やしてほしかったのに…失敗だらけだった息子の習い事選び出典 : 例えばトランポリン教室。「発達障害の子どもにはトランポリンが良い」という話もよく見聞きしていました。けれども、競技用の跳ね幅の大きい本格的なトランポリンは、重力に対して強い不安を感じるという特性を持つ息子のパニックを誘発しました。また、先生に支えてもらいながら飛ぶことも、触覚過敏の息子には苦痛でしかなかったようです。それから、ピアノも発達障害児の協調運動を鍛えるのに良いという話。目で楽譜を追いながら、左右の手を別々に動かすからです。理論上は確かに効果的に思えます。けれども、ピアノの習い事はどうしても自宅で練習する必要があります。幼稚園で疲れ果てて帰ってくる息子には、それはあまりに重い負担でした。その他にも、体操教室、サッカー、乗馬教室等々、「理論上は特性を克服するのに良いけれど…」という習い事を、息子が続けることはできませんでした。そして、この経験は息子にとっても「失敗経験」になってしまい、「好きなことを増やしてほしい」という私の期待とは正反対の結果になってしまったのです。「どうしてうまくいかないんだろう?」息子の様子をみて辿りついた答えは出典 : このように私の場合、「発達障害の特性をなんとかしよう」「発達障害でも生きていけるように好きなことを」と思って選んだ習い事は一つもうまくいきませんでした。「なぜうまくいかないんだろう?」私が考えて行き着いた答えは、・「発達障害の特性」といってもあまりに多様であり、必ずしもその習い事がマッチするわけではない・理論上は発達障害の特性に良いことであっても、先生が発達障害に理解があったり、発達障害の子どもでも集中して取り組めるような環境設定が出来ていなければ息子にとっては負担にしかならないというものでした。そして私は途中で気づいたのです。習い事にそんな大それた成果を期待するのではなく、子どもの生活に何かしらの「習慣づけ」をする手助けになれば良いのだと。多くの発達障害のある子どもがそうかもしれませんが、息子は毎日の見通しがきちんとたつこと、日々の規則的なルーティンを好みます。例えば息子は「日中は幼稚園に行く」というのが日々の規則的な習慣です。そのため、イベントが盛りだくさんで幼稚園が休みになったり行事が増えたりする年末年始のほうが、むしろ不安になって辛いと言います。年末年始が終わって、制服を着て通園バスが来たとき、息子は「ああ、やっと幼稚園だ。良かったぁ」と言っていました。お友達との交流や課題などは疲れることも多いようですが、それでも「習慣」をこなすことが彼にとってとても安心のできることなのです。私は息子のこの特徴から、「習慣作り」をつくるための取り組みとして習い事を考えるようになりました。習い事に対する考え方を変えたら、息子に「好きなこと」ができた!出典 : 息子の習い事にとって大事なのは、得意か不得意かではなく、ただ「習慣作り」をすること。私がそう考え方を変えたところ、息子は公文式にうまくハマりました。毎日同じ枚数を同じ時間に取り組むこと、週に二回は教室に行って勉強すること、それが彼の生活習慣となっていきました。そのうちに、公文をやらずにいるとモヤモヤするらしく、毎日決まった時間に自分から教材を持ってくるようになりました。もちろん、一日の課題を終えたらご褒美(うちは息子の好きなYouTube動画を5分だけ見ていいことにしています)をつけるなど、モチベーションを維持する工夫は最大限しています。それを繰り返すうちに、進級したり、賞状をもらったり、先生に褒めて頂いたりすることが出てきて、気付いたら息子の中で「好きなこと」になっていったようです。「好きなこと」は、突然は生まれないのです。地味な習慣の積み重ねと繰り返しの末、なんとなく好きになるのだと思います。習い事を探すときは、「この子をなんとかしよう」という気持ちではなく、「何か習慣を作ろう」という気持ちで検討してみると気持ちが楽になるかもしれません。親子ともに、それを「習慣」にするまでの過程が苦痛ではない習い事が良いかもしれませんね。
2017年02月09日「発達障害ってなあに?」もし子どもに聞かれたら、どう答える?出典 : わが家には「自閉症スペクトラム+ADHD」と診断された娘と息子がいます。病院で医師からWISC検査の結果と診断についての説明を聞いていた時、娘は私の隣にいました。当時、娘はまだ小学校低学年でしたが、言語IQが異常に高くアスペルガーの要素が強い娘は、私の本棚に並べてあった発達障害に関する本を既に何冊か読んでいたため、医師の話すキーワードを理解してしまったのです。思わぬ形で「自分は発達障害である」ことを知り、娘はショックを受けていましたが、今は自分の特性とどう向き合えば楽に生きられるかということを一緒に考えながら歩んでいる最中です。一方、就学前の息子はまだ自分が発達障害であることも、人とは違う部分があることも知りません。いつか、誰かから指摘されたり言葉を耳にしたりして、「発達障害ってなに?」「ぼくはみんなと違うの?」と聞かれる瞬間が突然やってくるかも知れません。その時に備えて、慌てずにきちんとした説明ができるように、発達障害とは何かということをよく考えておかなければと思うようになりました。「発達障害は個性かどうか」という議論をあちこちで見かけるたびに、その思いは強くなる一方です。なんとか「発達障害とは何か」という問いに対する「わが家なりの答え」を導き出せないものでしょうか。その答えを導き出すカギは、日常生活の中にありました。ヒントは「たわし頭」にあった!?娘とのある会話出典 : 話は変わりますが、皆さんは、毎日髪をセットするのにどれぐらいの時間をかけていますか?わが家では、娘の髪をセットするのに10~15分、私の髪も同じぐらいの時間がかかります。つまり、毎日30分近くを髪をセットするためだけに鏡の前に立ち続けている計算になります。決して特別な髪型やオシャレをしているのではなく、たわしのような髪についてしまった寝癖を直すため、いったん髪の毛を根本から濡らしてドライヤーをあてて伸ばさなくてはならないのです。そうしなければ、瞬く間に髪は広がってぼさぼさになり、不潔に見えてしまいます。2日で1時間、1週間で3時間、1ヶ月でなんと10時間越え!「一度も髪を梳いたことがない」という美しい髪の持ち主である姪っ子を見るたびに、毎朝たわし髪と格闘している私たち親子は一体なんだんだろう?とがっくりきてしまいます。ある日、娘とこんな会話をしました。出典 : 娘「ママ、せっかくこうやって髪型を整えても、姪っ子ちゃんの方がきれいに見えるね…」私「そうだねぇ。頑張ってるんだけど仕方ないよね。こういう髪を持って生まれたんだもんね。」娘「他の髪に変えてもらうわけには…いかないよね。」私「そうだよね。この髪で生きて行くしかないんだから、嘆くよりも、どうやったらこの爆発的な頭を清潔に見せられるか、テクニックを磨くしかないよね。」娘「そのかわり、私にも誰かから『うらやましい』と思ってもらえるところがあるのかなぁ?」私「きっと持ってるよ。生まれ持ったスペックってみんな全然違っていて、良いのも悪いのもごちゃ混ぜになってるからね。あなたが当たり前だと思っていることが、誰かにとっては羨ましくて仕方のないところだったりするんだよ、きっと。」娘「そっか。自分では当たり前だと思ってることが、他の人にとっては手に入れられないものだったりするんだね。髪のキレイな人が私の苦労を知らないのと同じだね!」そんな話をしてから、娘は毎朝、自分で髪を整えるようになりました。もちろんブラシでとくだけでは清潔に見えないので、また一から私が濡らしてセットをするのですが、「なんとかしてみよう!」という気持ちが嬉しくて、頭をなでながら「きれいにできたね」と声をかけるようにしています。そうしているうちに、発達障害の特性もこれと同じじゃないかな?と思うようになりました。発達障害は、人が生まれながらに持った「スペック」のひとつ出典 : 発達障害の人が抱えるさまざまな特性は、生まれ持ったスペック(=仕様)であって、誰かと取り替えることもできなければ、努力したからといって仕様自体を根本から変更することもできません。たまたま大勢の人が装備しているスペックとは異なるものを持ち合わせてしまったので、同じ世界では生きづらく感じることもあるでしょう。けれども、それは決して卑屈になるようなことではなく、自分のスペックを最大限に生かすことができれば、とても個性的で魅力的な人間になれるのではないかと思うのです。ただ、その他大勢の方が手にする「マニュアル」は通用しません。自分なりのマニュアルを作る作業が必要です。まずはしっかりと自分の装備を確認することで、どんな環境でなら自分が穏やかに暮らせるかを知り、どんなコミュニケーションの取り方なら相手も自分も楽しい時間を過ごせるかを模索する。それが特性を抱えて生きていくということなのではないでしょうか。100人いれば、100通りの答えがある出典 : 「発達障害ってなに?」「僕はみんなとは違うの?」そんな問いに対するわが家なりの答えが出たような気がします。思うに、「発達障害」という言葉は「こういうグループに属する」という記号のようなものです。そのグループの中には「個性」では済まされないほど深刻に悩んでいる方もいれば、悩みながらもなんとか社会生活を送ることができているという方もいらっしゃると思います。また、他人から見れば「個性」といえるような特性であっても、当人は非常に苦しんでいるというケースもあるでしょう。100人いれば100通りの「発達障害って何?」に対する答えがあるのです。それを単純に「発達障害は個性だ」「いや個性ではない」と議論するのは、あまり意味がないような気もします。いろんな答えがあっていいんです。それが当たり前なんです。いつかお子さまから「発達障害ってなに?」と聞かれた時、あなたならどう答えますか?お子さまが劣等感を抱かず、その答えを胸に前向きに生きていける。そんな答えが見つかるといいですね。
2017年02月07日孫のためにプレゼントを選ぶ祖父。しかし違いが…わからない!Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子発達障害の娘が、5才の頃お気に入りだったのが…出典 : これまで、発達障害の娘が乳幼児の頃に好きだった本をご紹介しましたが、今回は娘が5才の頃お気に入りだった絵本をご紹介します。娘がハマったのは「ノンタン」でした。出会いは病院の待合室にあった「ノンタンおやすみなさい」という絵本です。夜なのに眠くないノンタンが、友だちのところに行くお話に娘はドキドキワクワク…。そこから娘は、ノンタンの魅力にハマっていったのでした。Upload By 荒木まち子(ノンタンあそぼうよ2)ノンタンおやすみなさい (キヨノサチコ/作・絵偕成社)ノンタンシリーズの楽しさは、ストーリーの多様性とリズム感出典 : ノンタンにはたくさんのお話があります。風船ガムで空を飛ぶ「ほわほわほわわ」、ボールをどんどん追いかけていく「ボールまてまて」のような話の展開を楽しむもの。ゴミをちらかしっぱなしにする「ぱっぱらぱなし」や、ブランコを独り占めする「ぶらんこのせて」など、ルールを教えてくれるもの。そして「およぐのだいすき」や「たんじょうび」のような優しさを描いたもの…。また、ノンタンの絵本は文字のリズム感がとても良く、娘もよく一緒に口ずさんでいました。何度読んでも娘はお気に入りの場面で笑ったり、ノンタンのマネをしたりと、飽きることがないようでした。ノンタンあそぼうよ(21点各1冊セット)(キヨノサチコ/作・絵偕成社)娘の心をつかんだ理由は、ノンタンの性格にありました出典 : そんな優しいノンタンですが、決して大人が望むような「良い子」ではありません。いたずらが大好きで、わがままなところもあります。周りの言うことを聞かずに自分がしたいことをします。「失敗から学ぶタイプ」の代表のようなキャラクターです。でもそこが、子どもの心をつかむのでしょう。娘がノンタンシリーズで1番気に入っていたのは、『がんばるもん』です。娘は小さい頃、病気やケガで入院したことが何度かあったので、特に共感したのだと思います。Upload By 荒木まち子ノンタン がんばるもん(キヨノサチコ/作・絵偕成社)ノンタンが大好きすぎてヒヤヒヤしたこと出典 : 才の誕生日のとき、娘は祖父母に「誕生日プレゼントはノンタンのぬいぐるみが欲しい」と、お願いをしました。ところが祖父母が買ってきたのは…キティちゃんのぬいぐるみでした。(しかも特大)私は娘が大泣きするのではないかとヒヤヒヤしましたが、娘は「おじいちゃん、おばあちゃんはお年寄りだからノンタンがわからないのね。しょうがないか…」と納得してくれて、私は心からホッとしたのでした。もっと小さなお子さんにはコチラ出典 : 小さいお子さんには「赤ちゃん版ノンタン」シリーズもお勧めです。絵本ではないですが、ノンタンにはパズルやひらがなや数字が学べるボードブックなど、関連グッズが多くあります。Upload By 荒木まち子赤ちゃん版ノンタン 全9巻(キヨノサチコ/作・絵偕成社)Upload By 荒木まち子(ノンタンボードブック) ノンタン あいうえお(キヨノサチコ/作・絵偕成社)木製パズル「ノンタンあそぼうよ」株式会社コンセル
2017年02月06日LDっ子長男が宿題を嫌がるのには理由があるけれど…出典 : 小5の長男は学習障害(LD)の診断を受けていて、「書く」ことが苦手です。特に「プリントに答えを書く」「漢字の書き取りをする」ということは、彼にとっては大変苦痛のようです。また文字を書くことが困難なことに加え、見通しを持つのも苦手なので、冬休みの宿題では文字を書き込むところがたくさんある宿題のプリントが数枚あるのを見たとたん、「こんなにたくさん!ぼくにはムリだよ、死んじゃうよ~!」と、転学して以来初めての大パニックを起こしました。「2週間あるから、分けてやれば1日分の勉強は少しだけで済む」というのが、頭ではわかっていても感情的に受け入れられないようです。とにかく「目の前にあるたくさんのプリントをやらなくてはならない」というプレッシャーに押しつぶされてしまうのですね。宿題を前にパニックを起こし大泣き!そんな長男に対して親が出来ること出典 : これまで宿題に悩み苦しむ長男の様子を見てきた父親は、今回の宿題に対しても「やらせる必要ないよ。学校にも僕から話をするから!」と言っていました。私も正直、悩みました。パニックを起こし、大泣きしながらまでやらせる必要があるのだろうか…。正直、親として、「この子にとって、書き初めはなんの意味があるのだろう?」「この課題は、どうしてもプリントに書いて取り組まなくてはできないことだろうか?」と考えてしまいます。とはいえ、最初から「うちの子には無理なので、必要ないので、やらせません」と言っていいのだろうか…と悩みもしました。特別支援学級では、彼のレベルに合わせて今の彼に必要な課題を出してくれているのがよくわかるのです。それなのに「イヤだからやらない」をこれからも通していくのは、彼にとっていいことなのだろうか、と。いろいろ考えた結果、「長男にとって、冬休みの宿題を少しでもやりやすい形に工夫してやらせる」ことにしました。工夫①: 文字を書くハードルを下げてあげるUpload By みくたくママ右側が、学校から渡された書き初め用紙です。不器用な長男にとっては、少しでもマスが大きい方が書きやすいので、同じA4用紙に収まる範囲で最大限に拡大コピーをしました。それが左側の用紙です。用紙の大きさは変えなかったのは、学校の書き初め展で展示されるときのためです。Upload By みくたくママ九九表を書くプリントや、掛け算割り算が20問ずつあるプリントも、量を見ただけで「無理だ~!」となってしまいます。そこで、書く負担を減らしてみようと、「単語カード」を使っての計算問題にしてみました。単語カードを使った勉強は、長男にとっては「一問ずつの提示でプレッシャーがない」「書く負担がない」という点から合っているようです。また、彼にはこのような形で毎日繰り返すことが記憶の強化につながりやすいようで、単語カードは漢字の読みを練習するのにも使っています。工夫②: 見通しを持つため宿題を細かく分けてあげるUpload By みくたくママどんなに口で「一問ずつでもいいよ」と言っても、たくさん問題があるのを見るだけでプレッシャーに感じて苦しくなってしまう長男。そこで、プリントを一問ずつ切り離し、一枚ずつ提示するようにしました。不思議なもので、1枚ずつ提示すると落ち着いて取り組むことができ、調子がよければ「もう1枚やってみる」と自分から取り組むことができました。算数の文章題については、学校と相談して、式を立てることが出来れば計算は電卓を使っていいことにしています。Upload By みくたくママお手本を一行ずつに切り離し、「一日にこれだけ書けばいいんだよ」と、視覚的な負担感をやわらげました。一行(十文字程度)なら、なんとか集中して丁寧に書くことができました。書くときは、上の写真のように、マスのすぐ横にお手本を置いて、視線を大きく動かすことなく視写しやすいようにしました。画数の多い漢字を書くときは、横で私が一画ずつ書くのを真似して書きました。「宿題がイヤだ」には理由がある!大事なのは「その子に合った勉強法」であること出典 : 宿題が「イヤだ、やりたくない」は、彼にとってはわがままではなく、ちゃんと理由があることです。だったら、その理由を考慮して、彼に合わせた形で勉強できるように工夫すればいいのではないか。そう思って、上に挙げたような工夫をしたところ…「やだな~」とは言いながらも、泣いたりパニックを起こしたりすることはなく、毎日少しずつの宿題をこなすことができました。「このぐらいだったら大丈夫だから、もうちょっとやってみようかな」と言うこともありました。以前にもコラムに書いたように、「その子に合った勉強法」であれば、勉強に苦手意識を持つ学習障害の子どもであってもすすんで学習に取り組むことができることを、今回改めて実感しました。
2017年02月06日1年生のときから学校が苦手な長男。なんとか勉強と向き合えるよう、工夫してきたのですが…出典 : 「学校大嫌い!」からスタートした長男の小学校生活。夏休みになんとか気持ちを切り替えてもらい、「宿題してみよう」という流れを作りました。ところが…1番簡単そうな教科書の音読ですら、「イヤ!」と拒否。最初は叱ってやらせようかと思いましたが、ふと「もしかしたら、意味の受け取り方や眼球の使い方が独特だからかもしれない…」と考えるようになりました。そう思い至ったのには理由があります。例えば「くじらがいっとう」という詩の一節を見て、長男は「くじらがいっとうしょう」と読むのです。算数のプリントにあった「たしざんかなひきざんかな」は「ひらがなかたかな」と読んでいました。長男はページを一瞬見て、見て取れた言葉の一部から脳内の辞書と参照し、予想して声としてアウトプットしていたようなのです。そのときの眼球の動きを観察すると、確かにページをパッパッ、という感じで見ていました。文字列の上をスキャンするような目の動きには、なっていなかったのです。文字列を見ること自体に慣れてない、意味が理解できずにますます嫌になるという悪循環になっていることに気付き、これは苦痛だろうな…と思いました。まずは「風船バレー」で、心と身体から拒否感を払拭出典 : 少しでも長男が楽に学習できるように…と考えた私は、教科書を一旦置き、反抗ばかりでめちゃくちゃになっていたコミュニケーションの回復も狙い、風船やボールなどの投げ合いっこをして遊ぶことにしました。そこには、眼球の動きを良くする練習にもなるのでは?という期待もありました。その他、ビジョントレーニングの本を参考にしつつ、棒の先に虫の人形などを付け目で追う遊びや、テレビの情報番組の認知症予防トレーニング、視力を保つ特集なども大いに活用しました。さっそく、家庭学習!最初は文章理解の前に、言葉の理解からUpload By hiro_michi目の動きを良くする練習やボール遊びの時間を重ねていくうち、少しずつですが文字に関心が向くようになった長男。その後、いろいろな質問が飛び出すようになりました。「銀行」はどうして「ぎんこお」じゃなくて「ぎんこう」って書くの?「分」はどうして「ふん」って読む時と「ぷん」って読む時があるの?そもそも「話し言葉」と「書き言葉」は生まれ方や使われ方が違うこと。「銀行」は「ぎんこお」か「ぎんこう」か悩むところだけど、いろんな地方、いろんな人に聞き取り調査して、やっぱり「ぎんこう」って書くのが一番いいって、国語を司る機関がルールを決めたんだよ。といった具合に、その言葉が生まれた背景から私は説明することにしていました。読み手の頭に何かイメージや情報を浮かばせようとして文字が書かれていることや、読む練習をすると、書き手の伝えたいことをつかみやすくなるということなどを図を使って説明し、読み書きのモチベーションにつなげました。見て理解ができたら、次は頭の中でイメージできるように出典 : 読み書きに慣れてきたら、文字と意味(イメージ)とをつなげる遊びも取り組んでみました。言葉の引き算遊びです。これは、車での移動中などによくやりました。「どうろ」から「う」を引くと?「うーん、どろ!」「道路が泥になったら、大変だね」「みかん」から「み」を引くと?「…かん!」「みかんが缶になっちゃった」文字と読みが一致してきた頃合いを見計らって、詩の音読にトライしてみました。詩にしたのは、文字と音(目と口)に絞って練習できるかな、と思ったからです。例えば、谷川俊太郎さんの「たいこ」という詩では、「どんどんどん/どんどこどん/どこどんどん/どどんこどん…」これを机や体ををたたいてリズムを再現します。そのあと、一行ずつ交代で読んだり、一連ずつ読んだり。たたき役、読み役を入れ替えたり。妹も巻き込んで、できるだけ楽しい時間になるように工夫していました。興味を上手く引き出せれば、子どもは自ら学習する出典 : 長男との勉強や成長を振り返ってみると、学校の授業の前には、その土台作りに1番時間と工夫が必要だったように思います。土台がしっかりと出来上がった後は…、●子どもの好きな分野の本を見つけてきては、さりげなく置いておく●子どもが読めない本を「読んでほしい」と持ってきても拒否しない。でも、全部は読まず「残りは後で」と言ってみるといった接し方をすることで、興味のある分野なら、かなりの文章量を読めるようになりました。その中でも、子ども向け農業雑誌『のらのら』は、野菜好きの長男がハマったうちの1冊でした。バックナンバーを揃え、一文字ももらさず読むほど熱中しています。読み書きの壁は十人十色。本なども参考にしつつ、長男自身をよく見て彼自身が「読みたい」と思った時にスッとアシストできればと考えています。ちなみに、不思議なことにまだ漫画は読めません。絵と吹き出しで世界観をつかみ、ストーリーを追うというのが難しいようです。とはいえ、いずれは読めるようになるのでは…と、見守っています。
2017年02月05日発達障害と診断を受けてから就労するとき、便利なツールがあります出典 : 発達障害の診断を受けている成人の方が、障害をオープンにして働く・もしくは一般就労でも上司や親しい人に打ち明けるときに必要となるのが、自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)です。障害や特性については、口頭だけで説明するよりも資料にまとめた方が、相手も理解しやすく情報共有もしやすくなります。今回の記事では、私の失敗例と障害者職業センターで学んだナビゲーションブックの作り方を紹介したいと思います。作成の過程では、自分の得意・不得意、向いていること・向いていないことも分かってきますので、これから転職・就職する人にもおすすめです。これでは何も伝わらない…ナビゲーションブックを作成しなかった、私の失敗例からご紹介出典 : まずは、私が一般就労でカミングアウトしたときに会社に渡した資料をご紹介します。結果として、その時のカミングアウトは大失敗に終わってしまいました。以下が私が実際に作成した資料内容です。******私は平成25年にアスペルガー症候群〈広汎性発達障害〉と病院の検査結果より診断されています。アスペルガー症候群とは何かについて解説したサイトから説明を引用します。--------(引用ここから)----------------------------------------------------◆アスペルガー症候群とは(略)◆アスペルガー症候群の原因(略)◆アスペルガー症候群の特徴(略)--------(引用ここまで)---------------------------------------------------検査の結果から分かったこと・言語力は優れている・処理する速度は遅めで、マイペースである・言語のやり取りや扱いは得意であるが、イメージするのは苦手・耳で聞くだけでは理解しづらい(意味が分からない)ので、メモをとる方がよい(中略)・人付き合いは苦手・視覚的短期記憶が弱く、視覚的探索が弱い******これでは説明する上司も困ったでしょうし、聞かされた方も何が何だかわからなかっただろうな…と、今では思います。サイトから引用した一般的なアスペルガー症候群の説明に加え、自分が医師から言われた特性をそのまま箇条書きしただけの資料です。これでは、いったい私が何に困っているのか、どういう手助けが欲しいのかさっぱりわかりませんよね。障害者職業センターで作ることになった「ナビゲーションブック」とは出典 : カミングアウトで失敗した会社を辞めてから通うことになったのが、障害者職業センターでした。センターでは、訓練の最終目的として全員がナビゲーションブック作りに取り組みます。ナビゲーションブックとは、●障害特性や考え方●行動の特徴●それに対して自分はどう対処するのか●そして企業側に配慮を求めたいこと…を、まとめたものです。ナビゲーションブックの作成とは、自己像と利用者像の部分が重なったところが本当の自分であり、その部分を本人自身が理解し、自分でまとめる作業を支援することと言えます。(厚生労働省就労移行支援事業所のための発達障害のある人の就労支援マニュアル より)発達障害はまだ社会では理解されにくい「新しい障害」であり、外から見ても分かりづらい障害なので、周囲の人に理解を求めるには言葉で説明するほか、資料としてまとめておくのが有効です。そのためには、「自己理解を深める」ことが大切です。障害特性や仕事をしていく上での課題、対処方法を把握して整理することは、自己理解を深めることにつながり、周りの人や企業に自分のことを分かりやすく伝えるスキルとなります。企業などに自分の障害や対処方法、配慮してほしいこと、自分のセールスポイントを説明するときに利用します。出典 : どんな内容をまとめればいいの?まず、作業上の特徴、対人面の特徴、思考や行動の特徴の3つに分けて作っていきます。●作業上の特徴例・指示はどうすれば理解できるのか・作業にどれくらい耐えられるか、オーバーワークになりがちではないか・集中力、持続力、安定性・得意な作業内容・苦手な作業内容・報告ができるか・質問ができるか●対人面の特徴例・休憩時間はどう過ごしたいか・言葉遣いはちゃんとできているか・相手の話を聞けるか・自分が話すときはどうか・相手の気持ちを理解できるか●思考や行動の特徴例・ストレスや疲労が溜まるとどうなるか・特徴的な考え方はあるか・趣味は何かこの3つのカテゴリごとに、自分の特徴、それに対して自分はどう対処するか、他者に配慮を求めたいことをまとめていきます。1人で作るのは大変!カウンセラーと共に作成したその手順はUpload By ヨーコナビゲーションシートは、・最初に受ける職業評価(適性テストや心理テスト)から分かった、自分の障害特性や考え方の癖・訓練中に自分で気づいたり、担当カウンセラーと担当コーチから指摘されたことをまとめ上げていき、カウンセラーと二人三脚で時間をかけ作成します。これは自分の出来ないことや欠点と徹底的に向き合う作業になるので、精神的に辛さを感じる人が多いようです。ですが、最後に出来上がったときは就職へ向けての心強いアイテムとなるのです。私はナビゲーションシートを作るため、10回ほど担当カウンセラーと面談しました。最初は特性の羅列にとどまっていたのですが、カウンセラーやスタッフとの意見交換や実習での経験を通して、自分の対処法や配慮事項についてまとめ上げることができたのです。その作業は以下のような手順で進んでいきました。①とにかく、作業上の特徴、対人面の特徴、思考や行動の特徴別に特性を書けるだけ書く(主治医や周囲に言われたことも参考に)②重複するもの、まとめられるものはまとめてしまう③その中で「会社に伝えたいもの」をピックアップする④まとめられるものは一つのセンテンスにまとめる⑤自分でその特性にどんな対処ができるのか書く⑥会社にはどんな配慮をして欲しいのか書く⑦得意なこと、いいところも盛り込むその結果、初稿はA4用紙3枚にびっしり特性だけを書き込んだものが、最終稿では2枚にスッキリとまとまり、読みやすくわかりやすいものが出来上がりました。「ナビゲーションブックの作り方」自分も周囲も、より幸せに働くために出典 : これは障害者職業センターに行かなければできないものではありません。ただ、1人で全て仕上げようとするのは大変だと思います。家族や身近な友人にチェックをお願いするのもいいかと思います。支援者がいる方はぜひその方と一緒に作りましょう。私がお勧めなのは、ハローワークや就労支援機関に協力してもらうことです。ハローワークや就労支援機関は企業の側に立った視点でサポートしてくれるので、より客観的なナビゲーションシートを作成することができます。またシートは一度作って終わりではなく、仕事について困ったことが起きたりするたびに更新し、活用できるとよいでしょう。企業に障害や特性を理解してもらえるかどうかで、幸せに働けるかどうかが左右されると私は思います。そのために、ぜひこういった自己理解のツールを活用していきたいですね。
2017年02月03日お話が苦手な次男のために、保育園の先生が提案してくれたもの。それは…出典 : 発語がみんなより遅く、お話があまり得意ではない次男。生活のほとんどを「かして」「あけて」「ぎゅうにゅうちょうだい」で乗り切っています。さしづめ「ハロー」「センキュー」「マネー」「プリーズ」だけで海外生活をしているようなものでしょうか。そんな彼が、「よりスムーズに周囲とコミュニケーションを取れるように」「周りの状況を把握し、見通しとなるように」と、保育園の先生が絵カードを作ることを提案してくださいました。今や誰でも簡単に手に入る絵カード。手軽に作れるし、お願いしちゃおうかな出典 : 私が知っている絵カードといえば、インターネットなどで無料で配布されているイラストをプリントアウトしたものが定番です。私もよく、絵カード用イラストをスマートフォンにダウンロードしていました。このように、絵カードは買ったりしなくても手軽にすぐ手に入る時代です。先生にわざわざ保育園用の絵カードを作って頂くのは手間になるし、恐縮ではあったものの、まあプリントアウトして頂くだけなら甘えてもいいかな…と、お願いすることにしました。そうして出来上がったカード。見せてもらうと…出典 : しかし、出来上がった絵カードを見てびっくり…!なんと、先生の愛情がこもった手描きの絵カードだったのです。そして更に驚いたことに、色は同じクラスのお友達が塗ってくれたのだそうです。Upload By OKASURFERUpload By OKASURFERUpload By OKASURFERUpload By OKASURFER最後の「うがいカード」は、さすがに体調が悪そうなのでお蔵入りになりましたが…。(笑)先生とお友達の手によって完成した絵カードは、次男の「次の見通しをつけるために」活用できているそうです。また、次男以外のお友達も絵カードに興味を持ち、ときには一緒に活用しているのだとか。手作り絵カードがもたらした、暖かな気持ち出典 : 先生のご配慮で、心のこもった世界に1つだけの絵カードが出来上がりました。今はこちらの絵カードをコピーしたものを、私も自宅で使わせてもらっています。クラスのお友達にとって、「支援する」「支援される」という意識が芽生える前から「絵カードがあると、スムーズに生活できるお友だちがいる」ということを、なんとなく感じてもらえていたら…本当に嬉しいです。一方、次男の保育園のように理解のある先生がいらっしゃることは単にラッキーだっただけで、実際には協力的でない保育園や幼稚園もあるかもしれません。それでも諦めずに声を挙げてほしいなと思う一方で、私が特に気をつけていることは、「クレクレ星人」にはならないということです。「うちの子を支援してくれ」というだけの態度ではなく、「クラス・園単位でみんなが過ごしやすくなるように」という目線でいることが大切だな、と思っています。そういう立ち位置でいるうちに、いつのまにか協力者が増えていくような気がします。「自分も、相手も、無理なく。」それが合理的配慮の原則だと、私は感じています。日々のお忙しいお仕事の中でもこうしてクラス全体を見渡した暖かい配慮をして下さった先生には、感謝してもしきれません。寂しいけれどこれから先、健常のお友達と次男の人生が交差することは無いのかもしれません。それでもどこか心の隅で、「絵カード」の存在を覚えていて、それによって助かる人がいると知ってくれていたら、とっても素敵なことだな…そんなことを考えながら宝物の絵カードを眺めています。
2017年02月02日石鹸が痛い!?息子が「触覚過敏」だとは、まだ知らなかった頃…出典 : 発達障害がある人の中には、「聴覚過敏(音に敏感)」や「触覚過敏(肌の感覚が敏感)」がある人もいる、ということはよく知られています。私が息子の触覚の過敏さを疑い始めたのは、毎日の入浴がきっかけでした。息子の場合、シャワーを嫌がることはありませんでしたが、少しでも石鹸が身体に残っていると「お母さん、痛い!!!流して!!痛い!!!」と顔をしかめるのです。最初は石鹸が身体に残っていることが単純に気になっているだけなのかと思いきや、背中やお尻など、本人から見えない場所に石鹸が残っていても、息子はすぐに察知するのです。そして、半ばパニックになりながら、「痛い!!!痛いよぉお!!はやく、はやく流してぇぇ!!」とジタバタ暴れるのでした。触覚過敏のある子は、赤ちゃんの頃に抱っこされるのを嫌がったり、触られるのを嫌がったりすると言われていますが、息子が赤ちゃんの頃は触れられるのを嫌がるようなことはなかったのに…。当時はまだ発達障害の診断が出ていませんでしたが、私の中で「この子の感覚は何かが違う…」と思った最初の出来事でした。冬場、いつも薄着だった息子。どうしてジャンパーを着てくれないの!?出典 : その他にも、触覚過敏なエピソードはあります。息子はナイロン製のジャンパーやダウンジャケットを着ることができませんでした。ズボンもジーンズ素材は履けません。でも、親戚や友達から頂いたりしたジャンパーなどは、くださった方にも申し訳なく、なんとか息子に着せようと私は頑張っていました。そのたびに息子は絶叫…!その嫌がり方は常軌を逸していましたが、当時の私は「着て!!いいから着なさい!!」と涙目の息子を押さえつけ、服を着せようとしていました。息子は真冬でも雪が降っていても、薄手のフリース素材や綿のコートしか着ようとしませんでした。当時通っていた保育園から、「砂や葉っぱが落としづらいので、なるべくナイロン製のジャンパーで来てください」「1人だけ寒そうなので、もうちょっと暖かい上着を…」と繰り返し言われていましたが、息子はナイロン製のジャンパーを決して受け付けませんでした。あるママ友との会話で、突然解けた謎出典 : そんな生活にほとほと疲れていたある日、発達障害のお子さんを持つママ友とお茶する機会がありました。そのママ友がぼそりと話したことが、私の疑問に全て答えてくれる内容だったのです。ママ友「シャワー浴びるとき、毎日絶叫するんだもん。とにかくすごい泣き方で。お隣さんが心配して電話かけてきたぐらい。発達障害って分かって理解できたよ。触覚過敏で、シャワーが痛かったんだよね」シャワーが痛い!?これを聞いたとき、身体に残った石鹸を「痛い!!痛い!!」と泣き叫ぶ息子の姿に繋がったのでした。これまで嫌がっていたものは、ほとんど触覚過敏が原因だった!出典 : このママ友との会話がきっかけで、息子は発達障害の診断に結びつきました。診断がおりたとき、これまで私は何も知らずに息子にひどいことばかりしてきたことに気付いたのでした。・ナイロンのジャンパーやジーンズを嫌がること・風が吹くたびに「痛い、苦しい」としゃがみこんでしまうこと・前ボタンのある洋服を全力で拒否して逃げ回ること・歯磨きのたびに「痛い痛い」と泣くこと・ぬかるみに足が触ると大泣きしてしまうこと…全て、息子が冗談か我儘で大騒ぎしているのかと思っていました。そのたびに私は「痛いのなんて気のせい!」「やりなさい!」と厳しく叱っていたのです。でもそれは、気のせいなどではなかったのです。息子は、本当に痛かったのです。治るものではないけれど、付き合い方は工夫できる出典 : これまでいろいろ調べ、主治医や療育先にも相談してきましたが、触覚過敏はそう簡単になくなるものではないようです。息子は成長していろいろなことに取り組むことができるようになりましたが、様々な過敏性はまだ残っています。ただ、大きくなってくると「これは痛いから、こっちにして欲しい」などの要求をしっかり口に出してくれるようになりました。これができるようになると、訳も分からず痛みでパニックになるようなことも少なくなります。今では、本人も私も触覚過敏とうまく付き合いながら生活することができるようになりました。大切なのは触覚過敏をなくすことではなく、いかに苦痛を和らげながら生活ができるかを、子どもと一緒に考えていくことなのかもしれません。発達障害の子どもが感じている「痛み」は、気のせいでも我儘でもなく本当の「痛み」なのだと知ることが、まずは大きな第一歩なのだと私は思います。
2017年02月02日発達障害の専門的医療機関が不足している!?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。これまでの記事では、①早期発見について、②発達障害発見後の支援と引継ぎについて、それぞれ総務省による調査の結果と勧告内容についてお伝えしてきました。今回の記事では、発達障害の専門的医療機関の確保に関する調査・勧告内容についてご紹介します。調査対象の18.5%で発達障害の専門的医療機関が確保出来ておらず出典 : 各都道府県において、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければいけないことは、発達障害者支援法に定められています。「都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。 」発達障害者支援法第19条(専門的な医療機関の確保等)では実態はどうでしょうか。今回総務省が19都道府県及び8指定都市の計27団体に関して調査したところ、専門的医療機関を確保していたものは22団体(81.5%)で、残る5団体(18.5%)は確保できていなかったことが明らかになりました。また、専門的医療機関を確保済みの22団体の管内に所在する専門的医療機関から、27機関を抽出し、発達障害に係る初診待機者数及び初診待機日数も調査しました。その結果、約4割の医療機関で初診待機者数が50人以上となっており、その中には最大316人が待機している例も存在しました。加えてその初診待機日数は、半数以上の医療機関で3か月以上となっており、その中には最長で約10か月の例もみられるなど、専門的医療機関の更なる確保が必要な状況がみられたとのことです。なぜ発達障害を診ることができる医者は少ないのか?出典 : 総務省の調査した医療機関の中からは、以下のような意見があがったとのことです。①小児科医が発達障害を診断する場合、風邪等の診察と違って、幼児期の状況や成育歴などを聴き取る必要があり、手間と時間を要するため、診療報酬上のメリットを与えてほしい。②発達障害児に対する精神科医による診察は、その特性上、1 人に対し1 時間から 2 時間費やすことが多く、30 分を大幅に超えるため、現行の「通院・在宅精神療法」の時間区分(30 分未満の場合は 3,300円、30分以上の場合は 4,000 円の 2区分のみ)のうち30分以上を細分化し、その時間区分に見合った診療報酬にしてほしい。③発達障害児に対する小児科医の診察による診療報酬では、「小児特定疾患カウンセリング料」(月の1回目は5,000円、月の2回目は 4,000円)が算定可能であるが、発達障害という特性上、長期にわたり通院が必要であるにもかかわらず、2年を限度にしか算定できないことから、2年という期限を設けないようにしてほしい。太字は引用者注発達障害の専門医となるのは難しい上に、診療の旨味も少ないため、医師にとっても魅力を感じにくい領域なのかもしれません。市町村によっては不安解消のため独自の取り組みを行っています出典 : この度総務省が調査した都道府県及び指定都市の中には、初診待機者の不安解消を図るための取り組みを実施しているところもあったとのことです。ひとつは市町村が医療機関と連携して小児科の診察優先枠を毎月1日設定し、保護者の了解のもと県職員も医療機関の診察に同席、医師、保護者及び県の三者で情報の共有を図っている事例です。そしてもうひとつは、医療機関の受診前や療育前に、市町村の主催で臨床心理士等による親子小集団活動、保護者同士のグループワーク等を「にこにこ教室」として実施している事例です。医療機関の受診などを待っている保護者の不安感の解消が図られていることがメリットとして挙げられています。総務省は専門的医療機関の確保を勧告こういった現状に対し、総務省は厚生労働省に対し、発達障害が疑われる児童生徒が専門的医療機関を早期に受診できるよう、専門的医療機関の確保のための一層の取組を行うことを勧告しました。また専門的医療機関の受診までの間、保護者の不安解消を図る取り組みを都道府県等に示し推進するようにも勧告しています。以上、いかがだったでしょうか。発達障害者支援者法は施行されてからまだ10年と少し。発達ナビではこれからも国の取り組みと状況についてお伝えしていく予定です。
2017年02月02日環境の変化が苦手な息子。まずは学校での負担を取り除くようにしてみたけれど…出典 : 発達障害の子は、環境の変化や急な予定の変更が苦手と言われますが、息子もそうした子の1人でした。環境が変わるたびに不適応を起こす息子。入園、入学の時にもなかなか新しい環境になじめませんでしたが、これまでの中で1度目の大きな不適応は小学校4年生で転校してからのことでした。その後、5年生になると、二次障害を起こして自暴自棄になってしまいました。まずは心身の健康を優先しようと考えた私は、一旦学校の勉強を全てあきらめることにしました。担任や通級の先生とも相談して一切の宿題や授業の中での課題を出さなくてもいいことにしてもらったのです。学校を休むのは嫌、だけど教室にいるのも苦痛。そんな気持ちが少しでも落ち着けるよう、環境を整えることに学校の先生方や主治医と協力して取り組みました。それまでも、漢字を書く量を減らしてもらったり、興味のあることに取り組むことはしていたのですが、当時の息子の精神状態は、それすらも取り組める状態ではなかったのです。好きなことも楽しめない息子のため、あちこち連れ出すことにした私出典 : 次第に自宅では大好きなゲームに依存し、そのゲームをしている時もイライラが治まらなくなっていった息子。そんな姿を目の当たりにした私は、健康な心なくしては、この子の未来はない…そう痛感し、息子の得意を引き出せるような声かけや行動を起こすことにしました。「授業中のノートや宿題も気にしなくていいから。学校の授業とは関係なく、興味を持ったことを学んでいこう!それで大丈夫」と、伝え、テレビの教育番組を見たり体験や実験のイベントに連れて行ったり、一緒に本を探したりしました。学校にいる間も先生方だけでなく、クラスの仲間の支えがあり、次第に心の安定を取り戻していきました。心が安定してくると、学校の授業や課題にも次第に取り組めるように。そうした日々を過ごすうち、様々な「得意」を伸ばす工夫の中、息子は苦手な科目や行事もそれなりにできるようになっていったのでした。成長と共に、自分のコンディションと向き合い始めた息子出典 : その後、中学生になった息子。学習ではタブレットを取り入れた授業で成績が上がってくると、英語やピアノを習いたいと言い出しました。英語は準2級に合格し、ピアノも伴奏をさせてもらえるほどに上達しました。新しい興味も芽生え、料理を覚えたいというので、カレーやハンバーグの作り方を教えました。高校に進学すると、どうしてもなくならないケアレスミスを防ぐにはどうしたらよいか?苦手な国語はどう取り組んだらよいか?など、困っていることを私に相談してくれるようになりました。読解の参考書を一緒に探してみたり、認知機能のトレーニングとしてコグトレに取り組んでみたりもしました。コグトレの成果なのかは分かりませんが、息子のケアレスミスは大幅に減っていきました。コグトレとは、認知機能の5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)に対応する、「覚える」、「数える」、「写す」、「見つける」、「想像する」力を伸ばすための、紙と鉛筆を使ってできるトレーニングです。(CD付 コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング 単行本宮口 幸治 著)調子が良かったのも束の間…高校生の息子に再度訪れた、不調の波出典 : 高校1年生の夏休みが開けた頃に、また不調が現れ始めた息子。ヤル気満々で入学したものの、ハードな部活を選択したことによる体力の消耗と、受験を経て浮かれているクラスの子達のざわめきが、限界点を超えてしまったようでした。登校しようとすると動けなくなる、好きなことも何も手につかなくなる、高校なんてどうでもいい、将来もどうでもいい…という状態になりました。私は息子に、潔くしっかり休むことを提案しました。主治医は「それでも学校は行ったほうがいいだろう」と最初は言っていましたが、通院の度に和らぐ表情を見て、登校を急かさなくなりました。出典 : 学校を休みだしてしばらくは、寝るかゲームかYouTubeという生活を繰り返していました。本当は心配でしたが、「一緒にDVDを見よう」「少しは休憩を取ってみたら?」と息子への過度な干渉は減らし、落ち着くのを待ちました。そんな不安定な期間が1ケ月以上経ってからのことです。好きだったピアノに触れ始めた息子。その姿を目にした私は、「ピアノを弾くのはとてもいいと思う」と正直な気持ちを伝えました。それから1週間くらいすると、自ら勉強をし始めました。その後、冬休みが終わったら登校すると言い、主治医に「学校から冬休みの課題をもらって、取り組んでみては」とアドバイスされると、課題にも取り組み始めたのでした。子どもが前向きにチャレンジできるのは、疲れたときに休める場所があるから出典 : これまで息子と過ごしてきて分かったことは、心が安定している時は苦手なことにもチャレンジしようとするということです。そして、心に余裕がない状態になると、できるはずのこともできなくなり、気持ちがガクッと落ちたような状態になります。親としては、「もう少しだけ頑張れるのでは?」「あとちょっとやってみようよ」とつい期待して、背中を押してしまうこともあるかと思います。でもその気持ちをぐっと抑え、まずは子どもの心身を休ませてやることが大切なのだと気付きました。我が子の「できること・できないこと」それを把握しつつ、無理のないように進めることはもちろん、これからも「できる時・できない時」を見極めて接していきたいと思いました。
2017年02月01日視空間認知とは出典 : 視空間認知とは、目から入った視覚の情報を処理し、空間の全体的なイメージをつかむための機能です。ものとの距離感や奥行き、文字や形を把握するときに使われます。目でとらえた映像は、そのままだと「点」「線」「色」などの単なる情報にすぎません。しかし、私たちは「3本の縦線」を見ると漢字の「川」であることがわかりますし、平面である地図の情報を見て、自分の現在地がどこかを把握し、実際に目的地までたどり着くことができます。これらはすべて視空間認知の機能のおかげです。このように視空間認知機能とは、視力とは異なり、はるかに幅広く複雑なものです。「ただ単にものを見る」ための視覚のシステムは生まれたときにはほぼできあがっていますが、視空間認知は発達とともに身についていくものです。この機能を身につけていくためには、実際にものを見たり触ったり、興味のあるものを目でとらえて手を伸ばしたりと、空間の中で目や体を使う経験が必要です。さて、視空間認知は「見たものの全体像を把握する機能」ですが、その機能はいくつかの要素に分けて考えることができます。・対象と背景を区別するはたらき・形や色を認識するはたらき・形・方向に左右されず、同じ形を「同じだ」と把握するはたらき・ものともの(あるいは自分ともの)の位置関係を把握するためのはたらき詳しくはのちほどの章でご説明しますが、これらの4つのはたらきにより視空間認知機能は構成されています。また、視空間認知機能は、運動機能や記憶力とも関連する重要な機能であるといえます。脳で処理されたイメージが鮮明であればあるほど、即座に反応して体を動かすことができますし、複雑な形も覚えることができます。逆に、この機能に弱さのある場合には、ものを覚えることや、体を動かすことに対して苦手を持っていることが多くなります。視空間認知の力が弱いとどうなるの?出典 : 私たちは日常生活のさまざまな場面で視空間認知の機能を使いながら過ごしています。学習や集団での行動につまづきがある子どもの中には、その背景に視空間認知の問題が潜んでいることがあります。視空間認知に課題がある場合には、以下のような姿が見られることが考えられます。例えば、【生活】・探している本を本棚から見つけることができない・ぬり絵をするとき、枠からはみ出たり、すきまだらけになってしまう・人の顔をなかなか覚えられない【学習】・教科書の中から特定の単語を探し出すことができない・文字(漢字やひらがな・アルファベットなど)をなかなか覚えられない・図形の問題が苦手【スポーツ】・ダンスを見て覚えたり、まねしたりするのが苦手・飛んでくるボールをうまくつかむことができないこれらの項目に多く当てはまる場合には、視空間認知機能に弱さが見られる場合があります。視力の問題はともかく「見えにくさ」の問題は、子どもが自ら気づくことは少なく、周りもなかなか気がつかないことが多いです。視空間認知が成立するまでの「見る」ことのメカニズムって?出典 : そもそも、私たちはどのようにものを「見て」いるのでしょうか。ものを見るために必要な機能はさまざまです。視空間認知機能は、たくさんの「見る力」のうちのひとつの機能にすぎません。「見る力」と聞いてまず思い浮かべるのは視力でしょう。視力とは、目に見える物体を鮮明にとらえる力のことで、止まっているものの形を見分ける力です。しかし、たとえ視力がよくても「見る力」のはたらきが優れていとは限りません。「見る力」は、「入力」「情報処理」「出力」という3つのステップから捉えることができます。この3つは関連し合っており、この3つのうち、一つでも欠けてしまった場合には「見えにくさ」が生じ日常生活に支障があらわれてしまいます。Upload By 発達障害のキホン1.【入力】にあたる「眼球運動」…動いている物体を目で追う、ピントを合わせる2.【情報処理】にあたる「視空間認知」…目で見た情報を脳で処理する3.【出力】にあたる「目と体のチームワーク」…目で見たものに合わせて体を動かすこのうち視空間認知は「情報処理」の部分にあたります。ではこれから、私たちがものをどのように見ているのかのメカニズムを3つのステップに分けてお伝えします。Upload By 発達障害のキホンものを目で追ったり、視線をすばやく動かしたり、両目を寄せたり離したりするのが眼球運動のはたらきです。このはたらきは「入力」の部分にあたり、目の動きが適切に行えることで、情報をくまなく目から取り込むことができます。眼球運動には、以下の3つの種類があります。◇ものを目で追う「追従性眼球運動」一本の長い線や、本に書かれた文字をゆっくりと追いかける眼球運動のことです。見ているものの動きに合わせて滑らかに、動いているものと同じ速さで眼球を動かすことです。また、ひとつのものに焦点を絞って見つめ続けることも、追従性眼球運動のひとつです。例えば以下のようなとき、追従性眼球運動がはたらいています。・飛んでいる飛行機を目で追う・書き順を目で追う・ものをじっと見る◇視線をすばやくジャンプさせる「跳躍性眼球運動」すばやく、一点から別の一点へ視線を動かす眼球運動のことです。飛び石から飛び石へ視線を移していくというイメージがわかりやすいかもしれません。この眼球運動は、多くのものの中から必要な情報を早く、正確に見つけるために必要なはたらきです。例えば以下のようなとき、跳躍性眼球運動が働いています。・黒板とノートを交互に見る・人ごみの中から探している人を見つける・本を読む際、次の行に移る◇見るものに合わせて右目と左目を離したりする「両目」のチームワーク普段意識することはないかもしれませんが、私たちは両目を使うことにより物の距離感や立体感をつかんでいます。片目を閉じて、周りを見渡してみてください。片目で見るときには周りの景色が写真のように見えるのではないでしょうか。写真ほどではなくても、見え方に少し違和感があると思います。ものとの距離に合わせて、右目と左目の視線を変化させています。つまり、対象物に焦点を合わせるために、近くのものを見るときには両目を真ん中に寄せ、そして遠くのものを見るときには両目を離しているということを指します。これら3つの眼球運動が正しく機能することにより、情報を目から取り入れる「入力」という第1ステップが完了します。Upload By 発達障害のキホン第1ステップで「入力」された視覚情報は脳へ伝わり、「情報処理」という第2ステップへと引き継がれます。この情報処理の段階ではじめて、本記事のテーマとなる視空間認知の力が発揮されます。視空間認知は、目から入った情報を脳で把握する能力です。空間の一部ではなく、全体像を把握するはたらきがあります。ただの点や線だった情報が、一つの形として具体的にイメージすることができるのは空間認知のはたらきのおかげです。空間認知のはたらきは4つに分けて考えることができます。◇見たい対象と背景を区別するはたらき私たちは、目に入るすべての情報から、必要な情報だけを選びとって、ものを見ています。これは、その対象物と背景を見分ける力があるおかげです。たとえば町の中でも、道路を渡るときには信号を見たり、目の前に飛び込んでくる自転車を見てよけたりなどと、必要な情報だけを選びとって見ることができるのは、「対象と背景」が区別できているからです。◇形や色を弁別するはたらき目から入った情報を分析し、形や色、輪郭などを認識するはたらきです。例えば、さまざまな色や形のビーズの中から、色・形ごとに正しく分けることができるのはこのはたらきのおかげです。そのほかには、お絵かきやぬりえをするときにも、図形の問題を行うときにもこのはたらきが役立っています。◇位置や色・形の不揃いにかかわりなく、「同じ」ものだと認識するはたらきこれは背景や位置、大きさ、多少の乱れがあっても、同じものを同じであると認識するためのはたらきです。例えば、書体が違っても筆記体でも「A」を同じ文字として認識することができるのはこのはたらきのおかげです。また文字や図形に限らず、人の髪型や化粧が変わっても、同じ人であるとわかるのもこのはたらきのおかげです。◇空間的な位置を把握するはたらき目で見たものを立体的に把握して、空間の中で位置関係や向きを認識する力です。ものと自分との距離感、奥行きの感覚を把握します。上下・左右などの判別や、ものをつかんだりするために必要な能力です。Upload By 発達障害のキホン第1ステップで情報を目で見て、第2ステップで脳の中で認知された情報をもとに、私たちは体を動かします。これは、「入力」「情報処理」の次のステップの「出力」にあたります。「目と体のチームワーク」とは、視覚のはたらきと体の動きを連動させることです。例えば「赤信号を見て横断歩道の手前で止まる」ことを例にあげて考えてみましょう。1.赤信号を目でとらえる2.脳が体に「止まれ」という命令を出す3.脳から送られた命令に従い、体が反応し立ち止まるこのように、視覚の情報をもとに体を動かしています。私たちは、これらの一連の動きを普段意識することなく瞬時に行っています。「見る」と「動く」という能力のつながりは生まれたばかりの赤ちゃんにはなく、心身の発達とともに身につけられていくものです。これらの3つの「眼球運動」「視空間認知」「目と体のチームワーク」を合わせて「見る力」といいます。視空間認知などの「見る力」に弱さがある場合の原因は?出典 : 「眼球運動」「視空間認知」「目と体のチームワーク」という3つの「見る力」がすべてスムーズに行われることにより、私たちはものを見て、それに即して体を動かすことができています。しかし、これらの力が一つでも欠けていたり、足りなかったりした場合には生活に支障をきたすことがあります。「見る力」が弱いときに抱える困難は一人ひとり異なっています。たとえば、ものが二重に見えたり、鏡文字のように反転して見えたり、見たいものにすばやく目線が合わせられないなどです。困難のもう一つの原因として、生活の中で「見る力」を育てる機会が少ないことが考えられます。室内でテレビやゲームをしたりする遊びばかりしていると、近くと遠くを見たり、動くものを目で追ったりする機会が減ってきます。そのような場合には、見る力を育む経験、例えば鬼ごっこやボール遊び、自然の中で空を見ることなど取り入れ、見る力を鍛える機会を作ることが大切です。発達障害がなくても「見る力」に問題が出てくる場合もあることを知っておくとよいでしょう。このような「見えにくさ」の背景に発達障害がある場合があります。発達障害とは、何らかの要因によって、脳の機能の一部に機能不全が見られる状態であり、発達が遅れたり、偏ったりすることです。具体的には、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥性多動性障害)などの子どもは「見えにくさ」を抱える場合が多く、主に学習場面での「読み書きができない」問題としてあわられてきます。視空間認知能力を測るためには?出典 : 視空間認知能力を測るにはいくつかの方法があります。自分で行うセルフチェックと専門機関に見てもらう方法です。本来、子どもの見る力を確認するには専門家の検査が必要ですが、簡単なチェックリストでも状況を把握することができます。以下のチェックリストの中で、チェックが多く当てはまれば視空間認知に課題があることが予測されます。漢字やひらがなの書き間違いが多い。覚えた漢字やひらがなを思い出すのに時間がかかる。または思い出せない。よく鏡文字を書く。うまく描けない図形がある。またはお絵かきで書いたものが周りの人に伝わらない。文字を書くときに、マスや行からはみ出す。また、読めないくらい形の乱れた文字を書く。筆算で桁をそろえて書くのが苦手で、書いているうちに位がずれてしまう。はさみで切る、ボタンをはめる、ひもを結ぶといった、手を使った作業が苦手で、不器用。ボールを投げたり、キャッチしたりするのが下手で、球技が苦手。ラジオ体操やダンスを見て覚えたり、まねしたりするのが苦手。鍵盤ハーモニカやリコーダーなどを演奏する時、鍵盤や穴の位置をよく間違えてしまう。左と右をなかなか覚えられず、よく間違える。方向音痴で、よく道を間違ったり、迷ったりする。家具や歩いている人などによく体をぶつけたり、つまずいたりする。北出勝也/監『発達の気になる子の学習・運動が楽しくなる ビジョントレーニング』p25 2015年/ナツメ社/刊ここにたくさんのチェックが当てはまる場合には、空間認知の弱さがあると考えられます。ここのチェックに当てはまらないけれど、子どもに「見る力」に問題があるのではないかと疑う場合には、「眼球運動」や「目と体のチームワーク」の領域に課題があるのかもしれません。子どもの視覚認知を評価するために、さまざまなテストが開発されています。例えば、視覚能力評価テスト、「見る力」理解力テスト、未就学視覚運動評価、K-ABC検査、視知覚スキル検査、運動除外視覚認知テストなどです。これらのテストは、自閉症スペクトラム症やADHDなどの発達障害のある子どもたちの特性を把握するときにも使われることがあります。検査は、テストごとに年齢は異なりますが、最も幼い場合2歳から受けることが可能です。検査は視覚機能のトレーニングセンターや、視覚発達支援センターで受けることができます。場合によっては、「見る力」の専門家がメガネ屋さんにいることもあります。それ以外に発達検査や知能検査を受けたい場合には、公的病院や民間病院で検査を受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診するといいでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。現在、診察希望の人が多いために実際に受診するまでには、予約から長い時間がかかることもありますので、ご了承ください。小児眼科を専門とする医師|日本小児眼科学会HP視空間認知能力って鍛えられるの?出典 : 視空間認知能力に限らず、「見る力」はトレーニングにより鍛えることが可能です。「見る力」の弱さを克服するために、よく利用されているのはビジョントレーニングです。ビジョントレーニングとは、「見る力」を高めるための訓練の方法であり、子どもに限らず、スポーツ選手など大人にも取り入れられています。ビジョントレーニングを行う専門家は大きく分けて2種類あります。視覚訓練士といわれるプロが行う場合には、スポーツ選手や大人に行われることが多いです。また、発達臨床心理士、発達支援員などの発達に関する専門家により行われる場合は、他の発達で課題となる領域と合わせて行われます。専門家が行う場合には、検査を行うことから始めます。視力、眼球運動、視空間認知、目と体のチームワークのうち、どこに課題があるかを把握し、それぞれの過大に合わせてオリジナルのトレーニングが提供されます。見る力の弱さがどこにあるかの原因・分析をしたり、プログラムを組んだりすることを望む場合には、専門家に一度相談してみてください。◇おうちでできるビジョントレーニングビジョントレーニングは、専門家にかからずとも自宅や学校でも行うことができます。専門家にかかるには大幅に時間をとる必要がありますが、おうちで行う場合には、おやつの時間やすきま時間などに簡単に取り組むことができる点がメリットです。現在ビジョントレーニングに関する本がたくさん出版されているので、本を参考にしながら行っていくとよいでしょう。専門家ほど詳細ではありませんが、チェックシートが添付されていることもがあるので、どの部分に課題があるかどうかをおおまかに把握することができます。トレーニングは、日常的に行うことが望ましいです。推奨される時間は、3~15分と若干幅があるもののできれば毎日行っていきたいものです。・注意点個人の問題にあった適切なトレーニングを行うことです。「見る力」のうち、眼球運動、視空間認知、目と体のチームワークのどこに弱さがあるのかによりトレーニングの中身が変わってきます。まずは、「見る力」のうちどこに弱さがあるかどうかを把握することからはじめましょう。ビジョントレーニングを行う前にまず、子どもの目に異常がないか、視力は適正であるか確認しましょう。視力に問題があるのに放置をしておくと、トレーニングを行っても適切な効果が出ないことがあります。気がかりな場合には一度眼科で検査をしてもらってください。◇眼球運動のトレーニング方法眼球運動のトレーニングでは、目を上下左右に動かして、視線をスムーズに動かすトレーニングを行います。繰り返し行うことで、正確にすばやく情報を目でとらえる力が身に付きます。例えば線や点を目で追うトレーニングが考えられます。あみだくじのように、スタートとゴールを設定し、交差させたりぐるぐると渦巻いたりした線を書いた紙を準備します。スタートからゴールまでの線を目を追っていくことで、目の追従眼球運動を鍛えることができます。他にも、眼球運動には、ジャンプさせる能力である「跳躍性眼球運動」と「両目のチームワーク」がありますが、以下の動画では3分ほどでそれらの3つすべてを網羅できるトレーニングが紹介されています。(音声が流れますのでご注意ください。)◇視空間認知のトレーニング方法視空間認知を鍛えるためには、実際に「ものを手でさわって動かす」ことが有効となります。この能力をはぐくむトレーニングでは、具体物を使い、見本をもとに形を再現するような練習を行います。例えば、大人が作った見本と同じように、ブロックを作ったり、見本と同じように色を塗ったりすることで視空間認知能力を鍛えることができます。他には、服をコーディネートして写真に撮り、実際目の前に服をもってきて、同じように再現する遊びなどもよいでしょう。難易度をあげたければ、見本を見せる時間に制限をかけて、頭で記憶するように工夫してみるのもよいでしょう。また、ワークシートを使ったトレーニングもあります。机の上に置いたシートを見ながら行うので、目の細かな動きや、それに合わせて手先の動きの訓練を行うことにもつながります。ワークシートを用いたトレーニングについて、詳しくはこちらの本に載っているので参考にしてみてください。北出勝也/監『発達の気になる子の学習・運動が楽しくなる ビジョントレーニング』2015年/ナツメ社/刊◇目と体のチームワークのトレーニング方法目で見たものにすぐに反応をして適切に体を動かすためのトレーニングを行います。目と体のチームワークを高めるためには、目と体の動きを連動させるような練習をします。例えば、「↑ → ↓ ← 」などと矢印がランダムに描かれた紙を使用してトレーニングを行うことができます。2人組となり、1人が上記の矢印が描かれた紙をもち、指差していきます。もう1人の人は、指差された矢印の方向に動きます。「↑」だとジャンプする、「↓」だとしゃがむ、「→」だと右に一歩ずれる、「←」だと左に一歩ずれる、というように目で見た通りに体を動かすような練習を行ってみてください。「見る力」つまり視覚機能の能力をトレーニングする手段のひとつとして、作業療法という方法があります。「見る力」の向上のみに特化しているビジョントレーニングに対して、作業療法は身辺の自立や学習・社会参加のために必要な能力全般を向上させるためのトレーニングです。視覚機能のほかには、手先の器用さを養う微細運動や大きく体を動かす粗大運動、身辺自立など、基本的な運動能力から集団の中で生活する力まで、幅広い能力を養います。作業療法については以下の記事で詳しく紹介しているので、関心のある方は参考にしてみてください。まとめ出典 : この記事では、「見ること」のメカニズムから視空間認知のテストの方法、「見る力」の鍛え方や発達障害との関連などをご紹介しました。「見えにくさ」と発達障害には関連があると述べましたが、まずは子どもの「見えにくさ」がどこからくるのか分析をし、弱さのある部分はどこなのかを発見することが大切です。そして弱さを発見したあとに私たちがするべきことのは、その弱さにより子どもが困ってしまわないように次の手立てを考えることです。発達障害があるかないかということは、さほど問題ではないのかもしれません。「見えにくさ」の難しいところは、本人にとっても周囲の大人にも、「見えにくさ」があることに気がつかないことが多い点です。本人はその状態でずっと生活してきている上、ほかの人の見え方との比較ができないため見え方が偏っていることに気がつくことはできません。子どもの学習場面、運動場面、生活動作を観察して、「ん?」と思うことがあれば、一度「見る力」について思い出してみてください。
2017年01月31日療育センターとは?出典 : 療育センターとは、一般的に障害のある子どもに対して、それぞれに合った治療・教育を行う場所のことを言います。しかし療育センターの定義は法律や制度で定められていないため、明確な定義がなく、指し示す施設もさまざまです。そもそも療育とは、「治療」と「保育・教育」を合わせた言葉です。障害のあるお子さんが社会的に自立できるように、専門的な教育支援プログラムを通してトレーニングをしていきます。しかし療育と一口に言ってもさまざまなのは、一人ひとりに合うように「治療の方法」や「保育・教育の方法」に多くのスタイルがあるからです。そのため「××療育センター」「××総合療育センター」と名前がついている施設であっても、どのような支援を行っているのかやどんな機能を持った施設かは、施設によって異なります。また、いくつかの機能の施設を併設した複合施設であることもあります。お子さんに合った支援をしてくれる場所を見つけることが大切なのです。この記事では、療育センターの中でも多く見られる障害児通所支援・障害児入所支援にあてはまる施設について、ご紹介します。「療育センター」といっても機能と果たす役割はざまざまです出典 : 「療育センター」とひとことでいっても、実際は児童福祉法で定められる施設のどれかに当てはまる場合がほとんどです。児童福祉法は、障害のある子どもが住んでいる地域で療育や支援を受けやすくするために設けられました。2012年に改正された児童福祉法において、障害のある子どもに対する支援は、主に障害児通所支援と障害児入所支援があります。また「療育センター」の中には、いくつかの機能が同じ施設に集まっている場合もあります。以下に、児童福祉法における各施設の役割について詳しくまとめました。<障害児通所支援>・児童発達支援(児童発達支援センター・児童発達支援事業所)日常生活の自立支援や機能訓練、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供するといった支援を行います。・医療型児童発達支援(医療型児童発達支援センター)児童発達支援の役割に加えて、医療を提供します。・放課後デイサービス6~18歳の就学児童(※場合によって20歳まで)が通います。授業の終了後や学校が休みの日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進などを目的とした多様なプログラムを設けています。・保育所等訪問支援専門知識を持つ児童指導員や保育士、理学療法士などが、障害のある児童が通う保育園・幼稚園を訪問します。障害のある子どもや保育園・幼稚園のスタッフに対し、集団生活に適応するための支援や支援方法の指導を行います。<障害児入所支援>・福祉型障害児入所施設児童福祉法改正前の知的障害児施設支援、盲ろうあ児施設支援、肢体不自由児施設支援、重症心身障害児施設支援にあたります。主に対象とする障害以外の場合でも、その障害に応じた適切な支援を提供します。・医療型障害児入所施設福祉型障害児入所施設の機能に加え、医療を提供します。療育センターは、「医療型児童発達支援」や「医療型障害児入所施設」にあてはまる施設が一般的であり、加えて「児童発達支援」の通園クラスが設けられている場合も多いです。また「児童発達支援」のみなど「医療型」の機能を持たない施設や、放課後等デイサービスといった機能を併せ持つ施設もあります。この支援の施設だから良い、というわけではなく、お子さんに合った施設を見つけることが大切です。利用を検討している施設がどどの支援にあてはまるのか、どんな療育を行っているのかなど、あらかじめ知っておく必要があるでしょう。お住まいの地域の「療育センター」が実際はどの機能を持っているかは、各施設のホームページなどで確認してみてください。参考:障害児及び障害児支援の現状|厚生労働省療育センターを利用できる対象って?出典 : 療育センターを利用できる対象者は、実際は施設が児童福祉法で定められている各支援のどれに該当するかによって異なります。つまりどの支援を受けるかによって違いがあります。また児童福祉法にあてはまるサービスは、療育手帳や身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っていない場合でも、受給者証を持っていれば利用できます。受給者証とは、児童福祉法に基づく支援・サービスを利用するために必要となる証明書です。受給者証をもらう流れやかかる費用などについては、記事の後半でご紹介します。医療型児童発達支援、医療型障害児入所施設を利用できる対象者は、以下の通りです。・医療型児童発達支援上肢、下肢又は体幹の機能の障害(肢体不自由)があり、理学療法等の機能訓練または医学的管理下での支援が必要と認められた、知的障害児(自閉症児)、肢体不自由児、重症心身障害児が対象です。・医療型障害児入所施設施設等に入所して、保護、日常生活の指導、自活に必要な知識技能の付与及び治療を行うことが必要と認められた子どもが対象です。また、療育センターにおいて、児童発達支援や放課後等デイサービスなどのサービスを利用する際の対象も、児童福祉法に基づきます。・児童発達支援身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)が対象です。具体的には乳幼児健診などで療育の必要があると認められた場合や、保育園や幼稚園に通っているが併せて障害の特性に合った専門的な療育・訓練が必要と認められた場合などがあります。・放課後等デイサービス身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある就学児童(発達障害児を含む)が対象です。ただし引き続きサービスを受けなければその福祉を損なう恐れがある場合は、満20歳に達するまで利用可能です。療育センターで受けられるサービスって?出典 : ◇診療診療部門では、小児科、児童精神科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、小児科などの外来診療を受けることができます。さらに医師による診察後、個別あるいは集団での療育が行われます。個別療育では、言語療法、作業療法、理学療法、心理指導などが行われます。医師の判断に基づき、子どもの発達評価がされ、一人ひとりにあった支援につなげます。一方で、集団の場合は親子遊びなども行われます。さらに個別療育指導の一環として、子どもの発達状態や療育方針などに関する相談活動や、保護者向けの療育講座などがあります。◇通園通園の場合は主にグループでの療育活動が行われます。子どもだけ通園する場合と親子通園があり、親子通園は親が参観する場合や親子で活動する場合などさまざまです。・子どもだけのグループ活動「ごっこ遊び」や「粘土遊び」といったテーマ遊び、「リズム運動」などのプログラムがあります。集団ならではのお互いの刺激や喜びを体験しながら、一人ひとりの発達を促すことが狙いです。・親子グループの活動「親子遊び」「親子体操」などがプログラムにあります。集団での活動を通して発達を促す他に、保護者が子どもの発達を促す関わり方を学ぶことができます。ダウン症など、障害が早くに分かっている場合には、早期からの日常的な発達促進の働きかけが有効であることから、親子グループの中で、発達を促す遊びや訓練を行います。さらに家庭生活の中でも、それを活用し継続して行い、発達を促していきます。・保護者のグループ活動親子通園において、子どもが療育の場やスタッフに慣れてきた段階で、並行して保護者のグループ活動も行われます。また子どものみの通園の場合でも、定期的に保護者のグループ活動を催すことがあります。集団活動での取り組みや個々の子ども発達確認、療育方針の確認などを療育スタッフから保護者に伝えるのみならず、保護者間のコミュニケーションを促し、共感しながら学び合うという役割があります。出典 : ◇診療小児科、神経科、リハビリテーション科、外科、歯科など各専門の医師が、入所している子どもの診療や外来診療を行っています。また入所する際には、リハビリテーションセンターや小児科の受診、ソーシャルワーカーとの面談などを必須としているところもあるようです。◇入所一人ひとりの身体機能の改善を目的に、理学療法や作業療法、言語療法など、お子さんの状態に応じたリハビリテーションを受けることができます。さらに、血液・心電図・脳波などの検査が受けられる、人工呼吸器などの医療機器が備わっている施設もあります。施設での生活はリハビリの時間のほか、発達のレベルに合わせたクラスでの活動、散歩の時間なども設けられています。日ごろの活動以外に、季節ごとに行事がある施設もあるようです。規則正しい集団生活と子ども同士の関わりによって、社会性を身につけることができます。さらに医療型障害児入所施設には、親子入所、社会的入所などの入所タイプが設けられている場合があります。それぞれ入所期間や目的が異なります。・親子入所短期間、保護者と子どもが一緒に入所します。対象児童は、障害児入所施設への入所対象である児童のうち、低年齢(おおむね2歳~6歳)であり、かつ、親とともに短期間入所させることにより療育効果が得られると認められる児童です。リハビリなど必要な療育を行い、あわせて、家庭に復帰した後においてもスムーズな療育ができるように、保護者に対して指導をしてくれます。・社会的入所家庭の事情により長期的な在宅生活が困難な場合や、家族の病気や出産などによって一定期間在宅が困難な場合に入所することを言います。◇地域療育支援重度の障害があるお子さんを持つご家庭に対し、必要な医療や訓練、指導といった療育相談をはじめとして経済問題や家族問題など、相談支援を行っています。また施設によっては、訪問による健康診断を行っている場合もあります。出典 : 療育センターの相談窓口では、生活、家庭、教育など総合的な援助を提供してくれるソーシャルワーカーに相談できます。就園・就学や福祉サービスについて、子育ての悩み、家庭環境のことなど幅広く相談できます。さらに療育センターの利用を検討している際でも、相談窓口を利用できます。療育センターの利用についてや療育方針などについて、聞いてみるとよいでしょう。日常における子どもの関わり方、障害の捉え方や対応の仕方、保育・教育の場の選択など、あらゆる相談に対応する場となっているのです。また療育センターにおいて、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用する場合は、以下の関連記事を参考にしてみてください。療育センターを利用する流れ出典 : 乳幼児検診などに心身の障害あるいはその可能性が見つかった場合、保健センターにおいて、発達の見極めのための療育相談や経過観察が行われます。その後、障害や発達の遅れなどが明らかになったときに、専門病院の受診や療育センターの利用へと繋がっていきます。また、通常の保育所・幼稚園に通っている際に、障害や発達の遅れがだんだんと明らかになってくる場合もあります。このケースは、保育所や幼稚園の巡回心理・発達相談や、保健センター・保健所の療育相談などの利用後、専門医療機関や療育センターを利用するという流れになります。療育センターを利用する際の手続きは、児童福祉法における障害児通所支援と障害児入所支援で異なります。例えば、児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービスを利用する場合は障害児通所支援、医療型障害児入所施設を利用する場合は障害児通所支援の手続きになります。◇利用相談療育センターを利用する際は、はじめに利用相談をしましょう。療育センターでどのようなサービスを受けるかによって、相談窓口が異なります。・障害児通所支援障害児通所支援の相談窓口はお住まいの市区町村の福祉相談窓口・障害児相談支援事業所等となります。・障害児入所支援障害児入所支援の相談窓口はお住まいの地域の児童相談所となります。しかし障害児入所施設の利用に迷う場合は、まずはお住まいの市区町村の福祉相談窓口・障害児相談支援事業所などに相談するのがよいでしょう。◇施設見学・相談実際に利用したい療育センターに足を運び、施設利用について相談してみましょう。施設によっては障害児施設利用計画案を作成してくれる場合があります。◇申請書等の提出療育センターを利用するためには、受給者証が必要です。受給者証には、児童発達支援や放課後等デイサービスといった通所支援を受けるために必要な通所受給者証と、施設に入所して支援を受ける入所支援を受けるための入所受給者証の2種類があります。受給者証取得のため、障害児通所・入所給付費支給の申請を行いましょう。必要な書類は、市区町村によって異なるため、事前に確認することが必要です。・障害児通所支援市区町村の福祉担当窓口にて、障害児通所給付費支給の申請を行います。・障害児入所支援お住まいの地域の児童相談所にて 障害児入所給付費支給の申請を行います。◇調査・審査支給の有無やサービス内容の決定のために聞き取り調査(ヒアリング)を受けましょう。障害の種類や程度をもとに、要件を満たしているかどうか、また子どもに必要だと考えられる適切なサービスの量や内容について検討されます。・障害児通所支援…市区町村の支給担当窓口によって検討されます。・障害児入所支援…児童相談所の担当者によって検討されます。◇受給者証の交付支給が決定したら、「通所受給者証」・「入所受給者証」が交付されます。・障害児通所支援「通所受給者証」が発行されます。・障害児入所支援福祉型と医療型は交付される受給者証が異なります。福祉型:「入所受給者証」医療型:「障害児施設医療受給者証」「入所受給者証」受給者証の取得方法や障害児施設給付制度などについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。出典 : 各施設によって、療育プラン検討の流れは少しずつ異なります。ここでは療育を受けるまでの流れの例をご紹介します。1.ソーシャルワーカーとの面談日常生活で困っていることがあれば、具体的に伝えるようにしましょう。2.医師による診察診断名を知りたいときは、ここで聞きましょう。総合病院の診療を紹介してもらうケースもあります。3.発達検査・知能検査実際の行動やコミュニケーションも観察して、発達の特性を見ます。お子さんの特性に基づいた関わり方の相談をすることもできます。4.療育方針の検討ソーシャルワーカーが幼稚園や保育園を巡回訪問し、日ごろのお子さんの様子を見てくれます。これまでの流れをもとに、療育プランが検討されます。療育センターの施設利用にかかる費用と減免措置出典 : 受給者証を取得することで国と自治体から利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービスが受けられます。障害児施設給付制度は、児童福祉法に基づき、障害児通所給付費あるいは障害児入所給付費として国と自治体から利用料の9割が給付されることにより、自己負担1割でサービスを受けることができる制度です。負担額は世帯の収入によって変わり、サービスが受けられる日数もこの受給者証に上限が記載されています。月ごとの利用者負担額には上限があり、その上限額を超えて自己負担をすることはありません。その上限額は前年度の所得によって4つの区分があります。・生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯: 0円・市町村民税課税世帯(前年度の年間所得がおおむね890万円以下の世帯): 通所施設、ホームヘルプ利用の場合4,600円、入所施設利用の場合9,300円・上記以外(前年度の年間所得がおおむね890万円以上の世帯): 37,200円出典:障害児の利用者負担|厚生労働省・多子軽減措置児童通所事業利用児童の未就学の兄・姉が、幼稚園等に通っている、もしくは児童通所支援を利用している場合、保護者が支払う利用者負担額が軽減されます。・その他の減免措置医療型入所施設を利用する場合は医療型や食費の減免があり、通所施設を利用する場合は食費の負担が軽減されます。さらに、自治体によっては独自の助成金がある場合もありますので、問い合わせてみるとよいでしょう。参考:多子軽減制度の対象範囲の拡大について|中野区まとめ出典 : 「療育センター」という名前がついている施設でも、役割はさまざまです。療育センターの利用を検討している際は、「児童福祉法のどの支援にあてはまる施設なのか」「その支援を受けるための対象・手続き・費用」などを把握することが大切です。また療育センターの相談窓口は、施設を検討している際も利用することができます。お子さんの発達に気になる点がある、あるいは子育てに悩みがあるときなど、気軽に相談してみてください。療育センターや関連する制度について正しく理解することで、さまざまな役割を持つ施設の中から、お子さんに合った療育をしてくれる場所を見つけられるでしょう。参考:米山 岳廣、鳥海 順子、宮川 三平/著「病児と障害児の保育―基礎と実際」2008年文化書房博文社/刊
2017年01月31日ミュンヒハウゼン症候群とは出典 : ミュンヒハウゼン症候群は周囲の関心や同情をかったり、懸命に病気と闘っている姿をアピールし精神的満足感を得るために病気や重病であることを装ったり、自傷行為や尿検査などの検体をすり替えたり、偽造工作などを繰り返し行う精神疾患です。「ミュンヒハウゼン症候群」は1951年にイギリスの医師リチャード・アッシャーが発見しました。ミュンヒハウゼン症候群という名前は『ほら吹き男爵』という物語で知られる、ドイツ貴族ミュンヒハウゼン男爵(実在の人物がモデル)の名前から命名されました。しかしこの名前は精神医学における診断名としては確立しておらず、「虚偽性障害」という別の診断名で診断されることが多いようです。虚偽性障害は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)とアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)で定義されています。次は『ICD-10』が示す定義になります。・虚偽性障害身体的あるいは心理的な症状を意図的に捏造することが行われる障害であるが,特にその目的が経済的利益や医療上の恩恵を得るといった外的動機のためではなく患者の役割を得るという心理的動機によって行われるものを指す.出典:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店,2013)まだ日本での罹患率ははっきりとは分かっていませんが、病院の患者では約1%の人にミュンヒハウゼン症候群の診断基準を満たす病像があるといわれています。またミュンヒハウゼン症候群と関連して代理ミュンヒハウゼン症候群があります。代理ミュンヒハウゼン症候群も虚偽性障害という精神疾患の一部です。対象が自分自身ではなく代理の人に対して傷害を加え、自分に周囲の関心を引き寄せることで、自らの精神的満足を他者から得ようとします。多くの場合、対象は自分の子どもであるため児童虐待にあたります。ここでは主にミュンヒハウゼン症候群について紹介していきます。参考書籍:岡崎祐士/総編集『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店,2013)ミュンヒハウゼン症候群の主な症状出典 : ミュンヒハウゼン症候群の主な症状は、自分自身に負わせる身体的または心理的な徴候と症状のねつ造・ごまかしです。ときには病気や外傷をわざと誘発して周囲からの関心を求めています。これらがミュンヒハウゼン症候群の症状と認められるためには、保険金や休暇を得るなど個人的利益のためではなく、周囲の関心を引くために行っている場合に限ります。病気ねつ造の方法には大げさに表現したり、作り話をしたり、自傷行為などによる誘発などが含まれます。例えば神経症状(けいれん、めまい、失神など)のエピソードをごまかして周囲の人に話すといったことから、検査で異常がでるように尿に血液を加えるなど病気であるように見せかけます。または敗血症を誘発するために傷口に糞便を入れるなどの自傷行為が見られます。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)ミュンヒハウゼン症候群の原因出典 : ミュンヒハウゼン症候群の根本の原因はよく分かっていません。発症する背景としてミュンヒハウゼン症候群がある方は幼少期に精神的および身体的虐待を経験している場合があるといわれています。また小児期に重度の疾患を経験した場合や重病の身内がいた場合もあります。ミュンヒハウゼン症候群の人は自己肯定感の低さや不安定な対人関係といった問題を持っていることがあります。病気を装うのは自尊心や自分に対する関心を高め、維持しようとする手段だといわれています。ミュンヒハウゼン症候群の診断基準は?出典 : ミュンヒハウゼン症候群および虚偽性障害については世界保健機関(WHO)の『ICD-10』とアメリカ精神医学会の『DSM-5』が診断基準を示していますが、ここでは『DSM-5』の「自らに負わせる作為症/虚偽性障害」の診断基準で説明していきます。自らに負わせる作為症/虚偽性障害A.身体的または心理的な徴候または症状のねつ造,または外傷または疾病の意図的な誘発で、確認されたごまかしと関連している.B.自分自身が病気,障害,または外傷を負っていると周囲に示す.C.明らかな外的報酬がない場合でも,ごまかしの行動が確かである.D.その行動は,妄想性障害または他の精神病性障害のような他の精神疾患ではうまく説明できない.出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)この診断基準に当てはまる項目の他にも病歴の聴取やこれまでかかった病院遍歴などをもとに臨床的な診断をしていきます。いくつかミュンヒハウゼン症候群と同じような症状がある精神疾患があります。・詐病(さびょう)詐病とは、虚偽またはおおげさに強調された身体的・心理的不調を意図的に装うことです。いわゆる「仮病」と、広義では同じです。兵役を逃れる、仕事を避ける、金銭的な補償を獲得する、犯罪の訴追を免れる、薬物を得るといった動機が背景に存在しています。このような明らかな意図があれば詐病の診断が示唆されます。詐病と仮病との違いは、詐病の方がより大きな利益を求めて虚偽な言動を行う点です。またミュンヒハウゼン症候群と詐病との違いは、虚偽をするその目的です。詐病は利益を得るために行っていますが、ミュンヒハウゼン症候群は人からの関心を得て精神的な満足感を感じたいために行っているという違いがあります。・境界性パーソナリティ障害境界性パーソナリティ障害とは対人関係、自己像、および感情の不安定と、著しい衝動性を示す状態のことです。現実または想像の中で見捨てられることを避けようと、なりふりかまわない努力をします。例えば治療者が面接時間の終了を告げられたことに対して突然の絶望感を味わうことがあります。他にも自分にとって重要な人物がほんの2~3分遅れたり、約束を取り消さなくてはならなくなったりしたときにパニックや激怒することがあります。ミュンヒハウゼン症候群はこれらの障害と鑑別される必要があります。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)ミュンヒハウゼン症候群かも?と思ったら・・・出典 : もしかすると自分はミュンヒハウゼン症候群かも・・・と思った場合、また家族が身体の不調を訴えているけれどミュンヒハウゼン症候群の可能性がある場合、どの医療科目を受診するのが良いのでしょうか?基本的にミュンヒハウゼン症候群の専門科目は精神科になります。ミュンヒハウゼン症候群である可能性が高ければ精神科を受診してください。ミュンヒハウゼン症候群かもしれないという自覚症状がある場合は本人自らが精神科を受診することをおすすめします。精神科によって専門医に正しい診断と治療の手立てを受けましょう。カウンセリングなどの治療を早期に開始することで、症状が悪化することを防ぎます。一方で本人は自覚がなくとも周囲がミュンヒハウゼン症候群である可能性が高いと気づいた場合、いきなり精神科をすすめてしまうと本人の自尊心を傷つけてしまう恐れがあります。受診を促す際の声のかけ方などを工夫したり、付き添いながら受診したり工夫が必要です。または本人がかかっている内科や外科などの医療機関にミュンヒハウゼン症候群である可能性を伝え、精神科への受診を促してもらえるように協力してもらうことも一つの手段です。ミュンヒハウゼン症候群は特別な検査はなく、問診や家族からの聞き取りなどによる臨床的診断を行います。診断はこれまでの病歴の聴取や診察に加えて、本人が訴える身体疾患を除外するために必要な検査を行います。身体症状をおおげさに表現していること、作り話をしているのかなどを証明していきます。ミュンヒハウゼン症候群の治療法はあるの?出典 : ミュンヒハウゼン症候群の治療は難しく根本的な治療法は確立されていません。しかし虚偽によって処方されている過剰または不要な薬剤の使用を止めたり、避けたりする必要はあります。そのため早期に精神科または心理士とのカウンセリングなどの治療を開始することが重要です。しかしミュンヒハウゼン症候群の方が治療へ参加するきっかけをつくることは難しいですよね。そのためミュンヒハウゼン症候群がある本人に対して病気であると告げず、家族の了承を得て精神医学的治療を行うことを推奨する専門医もいるようです。治療は本人だけでなく医師・家族の連携が必要になってきます。ミュンヒハウゼン症候群の方が積極的に治療に参加すると症状が緩和していくことがあります。逆に治療を本人の意思とは関係なく、強制してしまうと本人の自尊心を傷つけ、怒りを買ったり、医師または病院を替えてしまったりすることがあるので注意してください。まとめ出典 : ミュンヒハウゼン症候群は虚偽性障害という精神疾患のひとつです。別名で「病院はしご症候群」、「医者めぐりをする患者」と呼ばれています。本文中で述べたとおり、病院の患者では約1%の人にミュンヒハウゼン症候群の診断基準を満たす病像があるといわれています。この病気に気づきやすいのは本人よりも、周囲の人たちの方が多いと言えるでしょう。治療法はまだ確立していませんが、カウンセリングなどの精神医学的治療を受けることで症状が緩和する場合があります。周囲の人たちの本人に対する接し方などを専門家に聞くこともできます。周囲の人も本人がどうして病気を装ってまで関心を引きたいと思っているのか考え、病気が悪化・再発しない環境を協力しながらつくることが大切だと思います。ミュンヒハウゼン症候群にかかってしまった本人の背景を理解しておくことが効果的な治療たのための手掛かりとなるかもしれません。
2017年01月31日わが子の顔を思い浮かべる…それってみんなができることなの!?出典 : 「お子様の顔を思い浮かべてください」、と言われたとき、皆さんの頭の中にはどんな表情のお子さんが描かれるでしょうか。笑った顔、怒った顔?泣いた顔でしょうか?残念ながら、私は自分の子どもの顔を思い浮かべることができません。それに気がついたのは、子どもが発達障害と診断され、その特性についてあれこれ学んでいるときでした。「人の顔を覚えられない」発達障害の特性の1つにあげられていたこの項目を見た私は、軽いパニックに陥りました。ちょっと待って!人の顔ってみんな頭に思い浮かべられるの!?えっ!?どういうこと???私、大好きな子どもたちの顔がわからないんだけど…!!!それまで私は、それが普通だと思って生きてきました。多少の違いはあるにせよ、みんな同じような感覚の中で生きているんだと。だから、頭の中に人の顔や映像を浮かべられる人を「特殊な能力を持った人だな、すごいな」と思うことはあっても、自分がその能力に欠けているとは思いもしなかったのです。そんなはずはない!と何度も子どもの顔を思い浮かべようと頑張ってみましたが、無理でした。浮かんでくるのは、漢字やアルファベットで書かれた子どもたちの名前、丸顔・大きな目・への字口、メガネ・奥二重・唇に傷…そんな文字列ばかりだったのです。努力で特性を改善させることにもチャレンジした。でも、できなかった出典 : 数日経って落ち着きを取り戻してから、いろいろと自分について考えてみました。・どうやら私の頭の中は言語で埋め尽くされていること・画像や映像を記憶することができないのを補完するように、記憶ははすべて言語化されていること・親しい人の顔は特徴を言語化して記憶するので、会えば判別できること・誰かと知り合った時にまずフルネームを漢字で教えてもらうのは、似た名前の人と混同しないように、まず記憶の箱にフルネームを漢字で書いたラベルを貼り、そこに相手の特性を言語化したものを放り込んでいくからだということ・よって名前を知らない人の情報は箱がないので整理することができず、特徴も言語化されないので、近所の人や幼稚園の保護者など名前を知らない人の顔は判別できないこと・外国の俳優名が覚えられないのは、カタカナやアルファベットの羅列に意味を持たせられないから・写真を撮るのが好きなのは、記憶にとどめておけない景色を私の代わりに記録してくれるから出典 : ショックから抜け出して頭の中を整理しながら、人とは違うということを知るにつれ、また落ち込む日々が続きました。特徴を言語化して紐付けしていく、というのは私が知らず知らずのうちに身につけた「人を判別する方法」だったのだと思います。そんなことをしなくても、人の顔を思い浮かべられることができれば、どんなに楽なことでしょう。何より愛するわが子の顔を思い浮かべられない、という衝撃が大きすぎて、なんとかあの笑顔を手に入れたいとパーツを1つひとつ思い浮かべる練習をしたりもしましたが、進展はありませんでした。生まれ持った特性というのは、努力ではどうにもならないのだなぁ…と、身に染みて感じているところです。自分の特性を知った今、思うこと出典 : 「人の顔を覚えられない」という特性を知らずに生きてきた40年。学生の頃、新学期の始まりは名簿を覚えるのに必死でした。名簿順に並んで座っている間に、名前と特徴を一致させないと、一体それが誰なのか分からなくなるからです。子どもが幼稚園に入った時は、クラスの名簿を壁に貼ってフルネームを覚えるところから始めました。三つ編みでブランコに乗っているのは誰?と娘に聞いて「Aちゃんだよ」と教えてもらうと、Aちゃんのラベルがついたボックスに「三つ編みでブランコ」などの言語化された情報を放り込んでいくのです。みんなそうしていると思っていた。でもそうじゃなかった。それに気づいた今、私が思うことは「もっと早く自分の特性を知りたかった」ということです。そうすれば、同じような悩みを持つ人の体験談を読んだり、どんな風に工夫しているかを知る手立てになったと思うのです。出来ないことを嘆く時間を「いろんな方法にチャレンジしてみる」という前向きなエネルギーに変えることができていれば、訳の分からない焦燥感に苛まれることも少なかったのかもしれません。自分と同じ辛さを経験しないよう、今わたしが子どもたちにできることは…出典 : そんな自分の経験から、わが子が持っている特性については、早くから「あなたにはこういう傾向があるよ」と伝えることにしています。その上で親子で一緒に工夫し、本人にとってより楽な方法を見つけることができれば、穏やかな日常を過ごせるようになるのではないかと思っています。そんなことを思いながら、今日もまた息子の顔を観察しては、「向かって左側、鼻と口の端を結ぶ直線上、やや内側に淡い色のほくろあり」と言語化した特徴を息子ボックスに放り込んでいます。どれだけ頑張っても、子どもの顔を思い浮かべることはできないのだから、私にできる方法で子どもたちを知っていければいい。そんな私の生き方が、いつか子どもたちの道しるべになればいいな…と、願っています。
2017年01月31日モロー反射とは?出典 : モロー反射とは、生後まもない赤ちゃんに見られる原始反射の一つです。大きな音や明るい光、身体がグラッと傾いたときなど、赤ちゃんへ外から大きな刺激が与えられたときにモロー反射は起こります。刺激を受けると手足をビクッとさせ、ゆっくりと万歳をするように腕を広げます。それはまるで何かにしがみつくような姿勢のように見えます。では、なぜ外部からの刺激に対して赤ちゃんはモロー反射を起こすのでしょうか。目的は、自らの身を守ること、親に外部刺激から守ってほしいというメッセージを送ることの2つです。生後まもない赤ちゃんは、周囲が危険なのかどうか、またどのくらい危険なのかきちんと判断することができません。それゆえ赤ちゃんはどんな危険な状態に陥っても自らの身を守ろうと、刺激に対して無意識的にモロー反射を起こします。そしてパパ・ママに外部刺激から守ってもらおうとするのです。子どもの発達が進むスピードは個人差があるので、モロー反射が活発に見られる時期や消失する時期は子どもによって変わってきます。おおよそモロー反射は0~4ヶ月の間に見られる原始反射運動です。生後4ヶ月を過ぎると大体の子どもはモロー反射が見られなくなります。原始反射とは?出典 : モロー反射のように、赤ちゃんが生まれたときから備えている反射的な運動のことを原始反射と言います。赤ちゃんが外からの危険から身を守り、また運動機能の発達のためになくてはならない運動です。原始反射は足や指、口など赤ちゃんの身体のさまざまな部位で見られます。既に挙げたモロー反射の他にも、以下のような原始反射があります。◇自動歩行赤ちゃんを立たせるように支え、足を床につけてあげると、まるで歩いているかのように足を交互に屈伸させる動き◇把握反射手や足のひらに他の人の指などが触れた時、反射的に握りしめる動き◇吸てつ反射赤ちゃんが口に入ったものに反射的に吸いつく動き◇バビンスキー反射足の裏をかかとからつま先に向けてゆっくりこすると、足指が反射的に開く動きなど原始反射は平均的には生後0~3ヶ月の間で活発に表れ、生後4~5ヶ月ころを目安にだんだんと消えていきます。原始反射が消失することで、自分の意志で身体を動かすこと(随意運動)ができるようになります。原始反射は脳幹によってコントロールされている動きです。そのため原始反射の出現と消失を確認することは、脳や脊髄をつかさどる中枢神経の発達が順調であるかどうかの指標となります。モロー反射をはじめとする原始反射は、乳幼児健診にて確認されます。それぞれの病院や保健所などで差はありますが、おおむね3、4ヶ月健診まではモロー反射を含む原始反射が正常に見られるかといった検査項目があるそうです。産婦人科舘出張佐藤病院ホームページ‐母子1ヶ月検診‐わだこどもクリニックホームページ‐乳幼児健診‐モロー反射と点頭てんかん(West症候群)の違いとは?出典 : 一見可愛らしい動きに見えるモロー反射。しかしモロー反射の中でも赤ちゃんの動き方や程度、消失時期によっては何かしらの疾患のサインになることがあります。ここではモロー反射の動きととてもよく似ている点頭てんかん(West症候群)についてご紹介します。モロー反射と一番区別をすることが困難な疾患として、「点頭てんかん」があります。点頭てんかんとは、乳児期に起こる悪性のてんかんです。生後3~11ヶ月時に発症することが多く、その背景には重篤な脳障害があります。小児難治てんかんの中では最も多く発症するてんかんであるといわれています。点頭てんかんの80%は、生まれる前あるいは出生直後に起こった脳障害の合併症として起こり、症候性West症候群と呼ばれます。一方残りの20%は、発症までの発達も正常で、かつさまざまな検査でも異常なしであるため潜因性West症候群と呼ばれます。点頭てんかん自体は遺伝性の疾患ではありません。しかし、遺伝性の脳障害の合併症として点頭てんかんが発症した場合は遺伝する可能性があります。点頭てんかんの具体的な症状として、生後3~11ヶ月時に以下のような発作、様子が表れます。・眠い時や目覚めの前後で突然頭がガクッと垂れる・手足を一瞬縮めたり伸ばしたりする・このような動きが5秒~40秒毎に繰り返し続き、またこの一連の発作が一日に何回も見られる・情緒や運動の発達が停滞・後退する(発作が出現前後より患児は笑わなくなったり、不機嫌になったりする。また今までできていた首のすわりやお座りができなくなる)治療としては、薬物治療やホルモン治療、食事療法、外科治療を行います。それによって発作を抑制させることをねらいとしています。モロー反射の動きと、点頭てんかんで見られる動き(発作)はよく似ています。それゆえ、パパ・ママにとって子どもの動きがモロー反射なのか、点頭てんかんなのか判断することはとても難しいことが多いです。違いを見分けるには、赤ちゃんがどのようなタイミングやきっかけでその動きをしているのかを見ることがポイントとなります。モロー反射は赤ちゃんに大きな刺激を与えられたときに表れる反射的な運動です。一方で、点頭てんかんの場合は刺激の有無にかかわらずそういった動きが見られることがあります。また、点頭てんかんでは、一定時間ごとに発作的な動きとして表れるほか、一日に何回も見られることもあります。赤ちゃんの様子を見て、もし何か気がかりなことがあったら、かかりつけの小児科に一度相談してみるとよいでしょう。モロー反射の動きと点頭てんかんの動きは一般の人にはなかなか判断が難しいものです。「こんなことで相談するのは気が引ける...」などと遠慮せずに、少しでも気になったことはお医者さんに聞いて、子育ての不安を減らしていきましょう。難病情報センターホームページモロー反射が疾患に気付くきっかけになることも出典 : モロー反射がきっかけで、子どもが発症している疾患に気づくきっかけになることもあります。その疾患の代表例が、脳性麻痺(まひ)です。脳性麻痺とモロー反射は、モロー反射の続く期間と密接な関係があります。脳性麻痺は、妊娠中や出産前後、生後4週間以内で起きた、赤ちゃんの脳の損傷が原因となって発症します。目に見える症状としては、身体が反り返る、手足がこわばって硬くなるといった症状があります。また、このような症状がなくても、首のすわりや寝返り、はいはいなどの運動機能の発達が著しく遅いことから脳性麻痺が発覚することもあります。モロー反射をはじめとする原始反射が本来消えている月齢を過ぎ、1歳近くになっても表れている場合、脳性麻痺の可能性があります。ただ、子どもの発達は子どもそれぞれによってかなり差があるので、神経質になりすぎる必要はありません。ですが、モロー反射が消えていくおおよその期間を知っているだけで、子どもの抱えている疾患に早く気づくことができる可能性もあります。また、モロー反射があまりに弱い、全く見られないという場合も脳性麻痺につながる「核黄疸」であるケースも考えられます。黄疸とは、新生児期に起こる、皮膚や眼球が黄色を帯びる現象のことです。通常生後数日で赤ちゃんには黄疸が表れますが、ほとんどの場合これは生理的なものであるため遅くとも生後3週間以内に消えていきます。しかし、中には生理的なものではなく、「病的黄疸」と呼ばれる黄疸もあります。この病的黄疸の一種である核黄疸は、治療が遅くなると脳性麻痺につながることがあります。核黄疸は生理的黄疸よりも強力で、ただ皮膚が黄色を帯びるだけにとどまらず、脳機能や運動機能・筋力に大きな影響を及ぼすことがあります。モロー反射が極めて弱い、全く見られないときは核黄疸の初期症状による、運動機能や筋力の減弱である可能性があります。心配な場合はかかりつけのお医者さんに診てもらいましょう。発達障害とモロー反射の関連は?出典 : 先ほどもご紹介したように、モロー反射をはじめとする原始反射は発達状態のバロメーターです。この点から、原始反射が強く残存している場合、脳機能への問題が考えられます。そしてそれが発達障害の兆候である可能性もあるのです。モロー反射が長く続くということは、外からの刺激に毎回反応してしまう、つまり刺激に対して敏感な状態が続くと解釈できます。そのため、以下の発達障害のような傾向が見られることがあります。・音や光をはじめとする刺激に対する感覚過敏・ADHDの症状がみられる(多動、不注意、衝動性)・社会的未熟さ(新しい状況・環境への参加対応が難しい)必ずしもモロー反射が長く続く=発達障害である、というわけではありません。しかし、モロー反射をはじめとする原始反射が長く続けば続くほど何らかの問題がある可能性が高まります。いざというときのために、日頃から子どもの動作をよく観察したり、場合によっては記録したりすることが大切です。モロー反射が激しいときはどうすればいいの?出典 : では、子どものモロー反射で不安を感じる場合、どうすればよいのでしょうか。多くのパパ・ママが子どものモロー反射に不安を感じることとして、モロー反射が激しく、子どもが泣きだすというケースが挙げられます。これは、大きな刺激に対して大きな動きで反応した赤ちゃんが、刺激と自分の動きに対してびっくりしてしまい、その衝撃で泣く、というメカニズムで起こります。モロー反射は刺激に対する無意識の反応のため、パパ・ママにできることとしては赤ちゃんに不要な刺激を与えないように環境を整えてあげることが必要です。・大きな音をなるべく立てない・赤ちゃんが極端な熱さ、冷たさに触れないようにする(冷たい風や指でも赤ちゃんはびっくりしてモロー反射を起こすことがあります。)・こまめなスキンシップで赤ちゃんを安心させてあげるまた、寝かしつけの際に赤ちゃんがモロー反射を起こし、なかなか寝てくれなくて悩んでいる...というパパ・ママもいるかもしれません。この場合、寝かしつけるとき、特に赤ちゃんをだっこしている腕の中からベッドへ移すときがポイントです。赤ちゃんにとって刺激となる要因をできるだけ少なくする、以下のような工夫をすることが大切です。・ベビーベッド・赤ちゃんの寝具を、だっこされている腕の中の体温くらいにあたためておく・だっこから腕を抜くときに、赤ちゃんの首の角度や体勢が大きく変わらないようにする・扇風機の風やヒーターの光が赤ちゃんに直接当たらないようにするこのように、モロー反射が激しく、一度起こるとしばらく泣き続けてしまうなどという場合、まずは子どもに余計な刺激を与えないような環境づくりをすることが重要です。また、モロー反射から泣きだす子どもの大半はびっくりして泣いています。パパ・ママがこまめにスキンシップをとることで赤ちゃんを安心させてあげることも一つの方法です。「眠ったと思ったら起きちゃう!赤ちゃんの寝ぐずり「背中スイッチ」攻略法とは?」まとめ出典 : モロー反射とは0~4ヶ月で見られる原始反射の一種です。大きな刺激を受けた時に身体をびくっとさせ、両手を広げてしがみつくようにする動作は赤ちゃんならではのとても可愛らしい動作です。また、ただかわいい動作であるだけでなく、モロー反射をはじめとした原始反射は子どもの発達状態の一つの重要な指標となります。原始反射の始まりと終わりの時期や動作の特徴などで子どもの発達状態に問題がないか気づくきっかけになることがあります。モロー反射とさまざまな疾患・発達障害との関係についてもご紹介しましたが、実際パパ・ママにとって、モロー反射と他の疾患の症状を区別することは難しいケースが多いです。モロー反射などの原始反射を通して、少しでも不安を感じたときは乳幼児健診の際に保健士や医師に相談したり、行きつけの小児科へ相談したりすることをおすすめします。
2017年01月31日大きな可能性を秘めた分類法、ICF(国際生活機能分類)出典 : 誰もが助け合いながらともに生きていける社会。そんな社会を実現するために、近年は「障害者差別解消法」の施行や「インクルーシブ教育」の普及など、多くの取り組みが行われています。これらの取り組みの基本的な考え方には、「社会での<生きづらさ>を抱えた人がより良い生活を送るためには、その人自身の変化だけではなく、社会全体のサポート体制を構築していくことが欠かせない」というものがあります。今回ご紹介する「ICF(国際生活機能分類)」は、生活機能や障害の状況の分類分けを提供すると同時に、「障害」のある状態を、本人を含めた社会全体でよりよくするための重要な要素をたくさん盛り込んでいます。お医者さんや学校の先生、介護など様々な分野で働いている人たちが、より充実したサポートを提供していくのに重要となるICF(国際機能分類)について、詳しく見ていきましょう。ICF(国際生活機能分類)とは出典 : はInternational Classification of Functioning, disability and Healthの略で、日本語では国際生活機能分類と呼ばれています。2001年に世界保健機関(WHO)によって採択されました。ICFはその名にもある通り、人間の「生活機能」と「障害」を判断するための「分類」の仕方を示したものです。ここでいう「生活機能」とは簡単に言うと、「人が生きていくこと」を指しています。ご飯を食べたり運動をしたり、社会に参加したり、それらをする能力はすべて「生活機能」ということができます。これに対し、ICFでは「生活機能」が何らかの理由で制限されている状況を「障害」としています。心身機能に障害がある場合に加え、たとえば「コミュニケーションをとることが困難」な状況や、「仕事をすることができない」といった状況も、活動や参加に「障害」がある状況としてとらえられます。そんな「生活機能」と「障害」の状況を細かく分類分けして、示しているのがICFです。加えてICFでは、生活機能や障害の状況に影響を与える要素として「環境因子」と「個人因子」(※注1) を挙げ、「環境因子」も同じように分類分けをしています。つまり「生活機能」を作り上げている要因も分類分けすることで、「人が生きること」を広い視点から総合的に理解することを目指しているのです。(※注1) 現段階では「個人因子」は分類分けされていません。ICIDHからの歴史的変遷出典 : の考え方はどのようにして生まれてきたのでしょうか。ここではICFを理解するのに欠かせない「ICIDH(国際障害分類)」という考え方について触れながらご説明します。ICIDHとは International Classification of Impairments, Disabilities and Handicapsの略で日本名を国際障害分類と言います。ICFと同じくWHOによって定められ、ICFが採択される約20年前の1980年に作られました。「生活機能」を分類しているICFに対してICIDHは、その名の通り「障害」を分類する分類法です。障害を「心身レベルの障害」、「能力レベルの障害」、そして「社会レベルの障害」という3つのレベルに分類をしたことが画期的でした。しかしICIDHの考え方には問題点が多く挙げられ、その中の一つとして「障害が直接的に社会的不利につながるという認識がなされてしまう」という問題点がありました。本当であれば障害のある人が「買い物の困難さ」に直面する原因には、その人の抱える障害だけではなく、お店にエレベーターがないことや、途中で手を貸してくれる人がいないことなど、いろいろな要因が存在します。ところがICIDHでは、障害があることが「買い物の困難さ」という社会的不利を生み出す唯一の原因としてとらえられてしまう危険性があったのです。そこで考え出されたのがICF(生活機能分類)です。その人の生活機能を、障害だけではなく環境を含めた広い視点からポジティブな視点も含めてとらえることを目指して作られました。医学と社会の「統合モデル」としてのICF出典 : これまでは人間の障害や生活機能を考える際に、「医学モデル」と「社会モデル」という考え方が主流でした。「医学モデル」では、病気やけがなどが直接障害を引き起こすものとして理解されるため、障害への対応には医療が必要不可欠なものとされています。一方で「社会モデル」では、障害が周囲の環境によって作り上げられるものとされているため、社会の環境を変えることが障害をなくすことにつながるとの考え方がされています。ICFの考え方は、これまでの「医学モデル」と「社会モデル」を統合するものということができます。つまり、障害を個人と周囲の環境双方からとらえ、人間の状況を全体的に理解することを目指しているのがこのICFなのです。ICFを構成する要素出典 : では人の生活機能を「心身機能・身体構造」、「活動と参加」という2つの要素から構成しています。そして、その生活機能に相互に影響を与えあう背景因子として「環境因子」と「個人因子」の2つを挙げています。ここではそれぞれの要素がICFにおいてどのように説明されているか、そしてどのような項目のもとで分類分けされているかをご紹介します。初めに、生活機能を構成している「心身機能・身体構造」と「活動と参加」の2つの要素についてです。生活機能は初めにも触れたように、「人が生きていくこと」を指しています。反対に生活機能が制限されているとき、人の生活にはなんらかの「障害」が伴っているということができます。ICFでは生活機能を構成している「心身機能・身体構造」と「活動と参加」に関する項目が合わせて1,000個以上存在します。「心身機能・身体構造」は「.0:機能障害なし」から「.4:完全な機能障害」までの5段階で評価され、「活動と参加」の部分は「.0:困難なし」から「.4:完全な困難」までの5段階で評価されます。それぞれの項目では機能や活動状況などが詳細に記載されていますが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。◇心身機能・身体構造心身機能とは身体の生理的、心理的機能のことを指しています。見ることや聞くこと、呼吸をすることや音声を発することなどの能力がはかられるのがこの項目です。身体構造とは、身体のそれぞれの器官や、肢体とその構成部分などのことを指します。つまり、脳や呼吸器、骨や皮膚など、身体の各部分の位置や大きさなどが分類されています。◇活動と参加活動とは、生活上の目的を持った具体的な行いのことを指しています。読むことや書くことに加え、コミュニケーションをとることや家庭生活を行うことなどがここに含まれます。参加とは、家庭や社会などへの関わりのことを指しています。働くことやスポーツをすること、地域の中で何か役割を果たすことなどが、参加の中に含まれています。ICFでは、活動と参加は「実行状況」と「能力」の2つにおいて評価することが大切だとしています。「実行状況」とは現在「している」活動であり、「能力」とはすることが「できる」活動です。たとえば「調理」という活動に関して、それを現在の状況で実行しているかと、実行できる能力があるかは異なる場合があるでしょう。両者をそれぞれで評価し、その程度の差をはかることは、その後の活動へのヒントにもなることがあるのです。人がどのような状態で生きているか、どのような障害を感じながら生きているか、を判断するためには、どうしてそのような状況になっているのかを的確に判断する必要があります。ICFでは状況を作り出している要因を「環境因子」と「個人因子」に分けています。ICFでは背景因子の中で「環境因子」のみを分類分けしていますが、評価の際にはプラスの状況とマイナスの状況どちらも評価できるようになっています。つまり、環境が生活機能に良い影響を与えている場合は「+0:促進因子なし」から「+4:完全な促進因子」の5段階で程度を評価することができ、逆に環境が生活機能にマイナスの影響を与えている場合は「.0:阻害因子なし」から「.4:完全な阻害因子」の5段階でレベルを評価することができます。◇環境因子環境因子は、人の生活機能に影響を与える外的な要因です。たとえば、建物の設備、交通機関のバリアフリー状況などの物的な環境が例として挙げられます。それだけではなく、環境因子には家族や友達、世間の人の目などの人的な環境や、医療や保健などのサービスも制度的な環境として含まれています。◇個人因子個人因子とは、その人に固有の特徴のことを指しています。この個人因子に関しては、現在のICFでは分類分けされていませんが、年齢や性別、民族などの基本的な特徴に加えて、社会的状況や人生体験なども、この個人因子として生活機能の分類に含めることができます。ここで注意しておきたいのは、環境や個人的な要因が、生活機能にマイナスの影響を与えるものとしてのみとらえられるべきではなく、プラスの影響も与えるものとして理解される必要があるということです。ICFの生活機能モデル出典 : 以上で説明したように、ICFは人の生活機能を的確にとらえるための分類を提供しています。しかし、ICFの考え方を最大限に活用するためには「心身機能」や「環境」の状況をバラバラに評価するだけでは十分ではありません。それぞれの項目を独立したものとして評価するだけではなく、各項目がどのように関わりあっているのか、どこを改善すれば生活機能がよりよい状況になるのか、を考えていくことがICFの考え方では重要です。そこで、ICFの要素の関係性を分かりやすく示したのが次のICFモデルです。Upload By 発達障害のキホン出典:障害者福祉研究会『ICF国際生活機能分類ー国際障害分類改訂版ー』2002年中央法規出版/刊このモデルにおいて注目すべきなのは、それぞれの要素をつなぐ矢印が、すべて双方向に向いていることです。たとえば「エレベーターがない」という環境要因が「地域の活動に参加できない」という参加の制限につながる可能性がある一方で、「地域の活動に毎週参加している」という参加が「エレベーターの設置」という環境の変化につながる場合もあります。双方向の矢印はこのようなお互いが影響しあう可能性を示しているのです。また、この関係性は必ずしも2つの要素間での関わりのみではありません。1つの要素がもう1つの要素に影響を与え、さらに他の要素にまで影響を与えるという場合もあります。たとえば、「点字ブロックの設置」という環境の変化が「駅まで一人で行くことができるようになる」といった活動の変化につながり、やがて「隣の駅で行われている講演会に一人で参加する」といった参加を促進することもあるかもしれません。さらに参加という体験がその人自身の自身につながれば、個人因子の変化が見られるようになるということも考えられます。このように、すべての因子がすべての因子に影響を与える可能性があるというのもICFの考え方の特徴です。しかし忘れてはならない点は、これらの要素は相互に影響しあう前にそれぞれが独立したものであるという点です。たとえば身体に疾患があった場合、その疾患がその人の能力や健康状態にどのような影響を与えるかは必ずしも予測できるものではありません。ICFを利用する際は、1つの要素を評価したことで他の要素を決めてしまうのではなく、はじめにすべての要素をバラバラに検討してから、それぞれの関係性を見ていくことが大切なのです。ICFの活用方法出典 : このように、ICFを活用すると生活機能や障害の分類だけではなく、「現段階でどのような状況があるのか」、「その状況を作り出している要因にはどのようなものがあるのか」を総合的に判断することができます。さらに、状況やその状況を作り出している要因を理解することによって、「障害」による「生きづらさ」の改善を図ることもできるのです。ここでは、実際に通常学級に通う小学生の女の子を例に挙げてICFの活用方法を紹介します。小4女子の主な基礎情報・障害名未熟児網膜症(視力右0.05左0.02)・教育歴幼稚園卒業後○○小学校の通常学級に入学。学年相応の学習。(※中学校を卒業したら盲学校入学を希望)・教科書や板書、普通文字のプリントが読みにくい。・視知覚の障害(図形と素地、形の恒常性、空間における位置)がある。漢字の読み書きが苦手。理科の実験・観察や体育での球技種目に参加することが難しい。・慣れた道を通れば、単独通学が可能。歩行時、段差箇所等でつまずくことがある。・混雑する場所や不慣れな場所は、周りの様子がよく見え不安な気持ちになることがある。・親しい友達がいる。しかし、見えにくさがあるため消極的になり、友達と一緒に遊ぶことが少ないが、性格は素直で明るい。・身辺の事柄の処理は確立している。・音楽が得意。3歳より母親の送迎でピアノ教室に通っている。・下駄箱の位置を昇降口入り口近くに設置してほしい(保護者)。・学力を身につけたい(本人)。上記のような状況を、分類に従って評価したのち、構造的にあらわしたのが下の図です。なお「心身機能・身体構造」、「活動」の項目において振られている数字は障害の程度を表しています。Upload By 発達障害のキホン出典:西村修一/著『合理的配慮とICFの活用-インクルーシブ教育実現への射程-2014年クリエイツかもがわ/刊このように、ICFでは実際の状況を洗い出した後に、全体を構造的に把握して、さらなる改善への行動につなげることができます。これは、担任の先生にとって役に立つだけではなく、他の教科を指導する先生や保護者、他の関係者のコミュニケーションをスムーズに行う際にも重要なコミュニケーションツールとしても考えることができます。まとめ出典 : 今回見てきたように、ICFは「人が生きること」を広い視点から眺め、評価するための分類法です。人が生きていく上で障壁を感じるとき、それは必ずしもその人に存在する障害の有無のみでは理解することはできません。ICFでは人が生きていく上での障壁を個人に存在する障害としてのみとらえるのではなく、その人に存在する個性と周りの環境の関わりとを考えた上で、よりよいサポートを可能にしていく考え方なのです。「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版) の厚生労働省ホームページ掲載について|厚生労働省について|文部科学省ICF(国際生活機能分類) -「生きることの全体像」についての「共通言語」-|厚生労働省参考文献:障害者福祉研究会『ICF 国際生活機能分類―国際障害分類改定版』2002年中央法規出版/刊参考文献:西村 修一/著『合理的配慮とICFの活用―インクルーシブ教育実現への射程』2014年クリエイツかもがわ/刊参考文献:佐藤久夫・小澤温/著『障害者福祉の世界 第5版』2016年有斐閣/刊
2017年01月31日フリースクールとは?出典 : フリースクールは法や制度などによって定められた学校でないため、その定義はさまざまですが、文部科学省は以下のように定義しています。「フリースクール(フリースペースを含む)」とは、不登校の子供を受け入れることを主な目的とする団体・施設を指す。つまりフリースクールは社会において「不登校の子どもたちの居場所」という役割を果たしています。それぞれの施設の運営は個人や民間の企業、NPO法人によって担われおり、様々な規模や形態のフリースクールが存在します。フリースクールは学校教育法上の公的な学校とは認められていないため、義務教育課程の子どもであれば、もともと通っていた小中学校に籍をおいたままフリースクールに通うことが通常です。フリースクールの最大の特徴としては・入学資格を設けていないこと・異なる年齢・年代の子どもが集まっていること・決まったプログラムやカリキュラムを持っていないことが挙げられます。授業内容は学校教科の学習ばかりではなく、他者との交流を行いながら自分の好きなことを自由に学ぶことができる場所であることが多いです。「もちつき大会」のような季節に合わせた行事を自分たちで企画したり、ハイキング、潮干狩りなどのレジャー活動、運動会、劇や合唱の発表会、料理、旅行などを行ったり、その活動内容は実に様々です。また、自由や個性を重んじながら、施設のスタッフやほかの子どもと接することのできるフリースクールは、不登校の子どもたちにとって社会との接点をもつ場所であり、ソーシャルスキルのトレーニングの場ともなっています。参考:フリースクールが担う不登校支援の可能性についてフリースクールは、1975年頃から増加していく不登校を背景に80年代半ばから徐々に市民の手で広がっていきました。1992年には国も「不登校は誰にでも起こりうること」という認識を示し、フリースクールに通う日数も学校の出席日数として認められる事例も増えていきました。今日、フリースクールは、2015年に行われた文部科学省の調査によって把握されているだけでも、北海道から沖縄まで全国474ヶ所が確認されています。出典:「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」その数を見てもわかるように、フリースクールは今や子どもが学び育つ場として必要不可欠な場となっています。また、不登校の子どもを預かるフリースクールは、子どもたち本人のみならず、彼らと24時間ともに過ごす保護者や家族の精神的疲労を軽減する役割も果たしています。2015年度現在、不登校児童生徒数は、小学校27,581 人、中学校98,428 人、小・ 中の合計では126,009 人にものぼります。その数は前年度と比べ3,112人も増加しており、 フリースクールのニーズは今後も増えていくと考えられます。出典:平成 27 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」以上のように社会的なニーズはあるものの、社会におけるフリースクールへの理解や支援は未だ不十分といえます。以下で説明する出席認知と通学定期以外の公的支援はほとんどないため、運営の財源探しに苦心するフリースクールが多いようです。国も、フリースクールで学ぶ子どもや保護者への支援を検討しはじめています。フリースクールにはどんな子が通えるの?主として、何かしらの理由で学校に行っていない子どもが通います。理由は様々で、いじめに遭って学校に行くのが怖くなってしまった子や、学校生活にうまく馴染めない子、学校の授業についていくことが難しい子、受験競争のストレスで疲弊してしまった子などがいます。それぞれ、自分の目的に合った形態のフリースクールに通っています。また、上記のような例の中には広汎性発達障害(PDD)やADHDなど、発達障害のある子どももいます。広汎性発達障害やADHDの子どもは共同生活におけるコミュニケーションを苦手と感じることも少なくなく、発達障害のない子どもよりも不登校になる可能性が比較的高いと言われています。同じように学校に籍をおきながら通える形態として「サポート校」の存在があります。フリースクールが主に精神面のサポートを行い、広く不登校の子供たちを対象としているのに対して、サポート校は主に学習支援に軸足を置いており、学習塾という色合いが強いです。そのためサポート校の対象は高等学校通信教育を受けている者(高等学校における「通信制の課程」に在籍している者、または、中等教育学校の後期課程における「通信制の課程」に在籍している者)や高等学校卒業程度認定試験合格を目指す人に限られる傾向にあります。フリースクールへの出席は学校への出席日数として認定されるの?出典 : フリースクールに通う子どもの出席認定は、小・中学生については1992年から、高校生についても2009年から実施されています。フリースクールに通うことを在籍校の出席扱いとするかどうかは在籍校の校長先生の判断に委ねられ、校長先生がそのフリースクールが「不適切」だと判断しない限り出席扱いになります。児童の不登校の問題に関して、文部科学省は以下のような姿勢を示しています。不登校児童生徒の中には、教育支援センター(適応指導教室)やいわゆるフリースクールなど、学校外の施設において相談・指導を受けている者もおり、このような児童生徒の努力を学校として適切に評価し、学校復帰などの社会的自立を支援するため、小・中・高等学校の不登校児童生徒が学校外の機関で指導等を受ける場合について、一定要件を満たすとき校長は指導要録上「出席扱い」にできることとしている。日本国憲法では義務教育について以下のように示されています。憲法第26条第2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と規定されており、また、教育基本法第5条第1項に「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。」一般的に義務教育といわれているものは、保護者が負っている「教育を受けさせる義務」(教育義務)によって子どもが受ける教育のことをさします。保護者は、児童を小中学校などに通学するように取り計らう「就学義務」という義務を負っています。一方、子どもには、基本的人権の一つである教育を受ける権利があります。しかし義務教育は「子どもが学校に行かなくてはいけない」という義務があるということは意味していません。フリースクールの費用はどのくらい?出典 : フリースクールは学校教育法上で公的に認められた学校ではないため、費用は自己負担となります。また、費用は施設によって金額差があります。平成27年3月に行われた文部科学省による調査では、1~3万円・3~5万円とする団体・施設がそれぞれ4割弱、平均額は約3万3千円でした。無料から5万円以上まで施設ごとに大きく異なり、入会金で10万円以上必要な場合もあります。1~3万円とする団体・施設が約3割で、平均額は約5万3千円です。出典:「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」現行の制度では、政府によるフリースクールへの助成はおこなわれていません。そのため、不登校の子どもが高校生である場合、保護者は在籍している高校とフリースクールの両方に学費を納めなければならず、経済的負担は少なくありません。今後、公的支援の導入によってフリースクールの費用が下がる可能性はありますが、現時点でははフリースクールを検討する上で家庭の経済状況の考慮も必要となります。フリースクール卒業後の進路は?学歴はどうなるの?出典 : フリースクールに通う子どもたちは、義務教育期間中はもともと通っていた学校に籍をおいたままフリースクールを利用することになります。在籍校の校長による許可が出ればフリースクールへの登校も義務教育上の出席日数として承認される場合もあり、卒業に必要な単位が出席日数単位を満たすことができれば、義務教育上の小中学校の卒業資格を得ることができます。籍をおいている高校の卒業資格については、高校卒業程度認定試験(高認)を取る、フリースクールと定時制高校や通信制高校を併用するなど、様々な方法で取得することができます。フリースクールを検討する際のポイントは?出典 : 不登校の子どもを支援する施設やサービスは数多く存在します。その中で、親子にとって最善の居場所はどこか?と悩みながら情報収集されているご家庭も多いかもしれません。ここでは、そんな不登校の子どもの居場所のひとつとしてフリースクールを検討する上で、どのようなことができるかを紹介します。フリースクールとひとことで言っても、授業内容や雰囲気はさまざまです。さまざまな施設の情報を集めるとよいでしょう。インターネット検索や資料請求によって各フリースクールの具体的な費用や概要について知ることができます。参考:発達ナビ > 地域情報 > フリースクール参考:NPO法人フリースクール全国ネットワーク実際に子どもをフリースクールに通わせていたり、通わせた経験がある保護者、あるいはフリースクールで働くスタッフの話をきくことで実情を知ることができます。参考:「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」多くのフリースクールが、入学前の見学を歓迎しています。実際にフリースクールを訪れ、そこに通う子どもたちの様子を見たり、指導員の話を直接聞くことで雰囲気を知ることができます。また、お子さんにポジティヴな刺激を与えられる可能性もあります。まとめ出典 : フリースクールは主として不登校の子どものための居場所です。全国に約474ヶ所あり、規模や形式、提供する授業内容、費用などはそれぞれ異なります。公的な学校ではありませんが、在籍校の校長による許可が出ればフリースクールへの登校も義務教育上の出席日数として承認される場合もあります。社会からの理解は未だ不十分ではあるものの、フリースクールを必要とする人が多いことは確かで、今後公的支援の拡充がおこなわれる可能性も大いにあります。本人に合っているというのが大前提ですが、不登校の子どものためのさまざまな選択肢のひとつとして、フリースクールを検討してみてはいかがでしょうか。
2017年01月30日知的障害とは出典 : 知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。厚生労働省は知的障害を以下のように定義しています。知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。知的障害を引き起こす原因はさまざまです。病気や障害の合併症としてあらわれることもあり、その症状や知的障害の程度、苦手なことも一人ひとり異なります。また、よく学習障害(LD)と同じ障害だと思われがちですが、学習障害は知的発達に遅れがない発達障害です。知的障害は「知的機能(IQ)」の数値のみによって診断がくだされるという印象がありますが、「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会的適応性などの能力を測る指数とも合わせて診断が下されます。アメリカ知的障害・発達障害学会(AAIDD)では、適応能力を知的機能と別に考え、適応機能の程度を実生活に必要なサポートの大きさによって定義することを提案しています。適応能力をアセスメントするため、日本でもVineland-Ⅱ適応行動尺度やASA旭出式社会適応スキル検査、S-M社会生活能力検査など、評価ツールも活用されるようになってきています。このように、現在では知的機能だけではなく知的障害のある人の適応能力を重視し、支援を行っていこうという流れになりつつあります。家庭においても子ども一人ひとりの適応能力を伸ばしたり、より生活しやすいように環境調整をすることで、日常生活の困りごとを減らしていくことが大切です。参考文献:Intellectual Disability: Definition, Classification, and Systems of Supports (11th Edition)(AAIDD,2010)知的障害の子どもの生活における4つの困難とは出典 : 知的障害のある子を育てる場合、どのような困りごとがあるのでしょうか?知的障害の場合、個人差が大きいため症状や苦手なことは人それぞれですが、以下に共通してみられることの多い困りごとをご紹介します。注意力が散漫で、今行っている作業に集中できないこともあります。また、落ち着きがなかったり、人の言うことを集中して聞くのが難しいこともあります。知的障害のある人は、記憶していられる量が比較的少ないと言われています。そのため一度に複数のことを伝えても、一部しか覚えていられなかったり、長期間覚えているのが難しかったりします。知的障害の程度によっても異なりますが、学校の授業についていくのが難しかったり、書類の意味がわからない、お金の計算がわからないなど、覚えられないことで日常生活で困ってしまうこともあります。一度聞いただけでは忘れてしまうが何回か絵カードを見れば覚えられるなど、その子がどれくらい覚えていられるか、どうしたら覚えやすいかといった記憶の特徴も一人ひとり異なります。知的障害のある子どもは、自分の身の周りにある具体物を基本として外界を認識する傾向があります。そのため、時間や数といった概念的なものごとの理解や、いま目の前にないものを頭のなかで考えることが難しい場合があります。たとえば「静かに」と伝えても話し続けてしまう子が多くいます。静かに、という抽象的な注意では「何をしたらいいのか」が分かりにくく、結果的に手持ち無沙汰でまた歌い始めたり話し始めてしまう場合が多いです。言葉という概念が理解することがなかなか難しく、言葉がスムーズに覚えられない場合があります。知的障害のある子どもの中には、言葉の遅れが目立ったり、自分の気持ちを上手く言えずに手を出してしまう子もいます。知的障害の子どもへの接し方は?子育てのコツ7選出典 : 知的障害のある子どもへの接し方で基本となるのは、以下の3つのステップです。1.成功しやすい指示を出す子どもにとってわかりやすく、具体的な指示を出します。課題はスモールステップで難しくない、興味があるものだと取り組みやすく、成功を実感しやすくなります。2.行動子どもがやってみて、できない場合は少し待ってから成功に導くための適度なサポートをします。失敗体験をさせないこともポイントです。3.ほめる「できた」ときにほめることで、子どもは「いいことをした」「うまくできた」と感じます。この成功体験を繰り返すことで、習慣化し、さまざまなことが身につきます。さらに具体的なコツを以下にご紹介します。知的障害のある子どもは、目に見えないことや抽象的なことを理解するのが苦手な場合もあります。そんな時は、絵や写真などの視覚的情報を用いて伝えると理解しやすくなるかもしれません。例えば、物のしまってある場所を覚えられないとき、引き出しにアイテムの写真を貼ってあげるのも一つの工夫になります。また、手順が覚えられないときには絵カードを使うのもおすすめです。出典 : 知的障害の子どもの中には、曖昧な表現が苦手な子もいます。できるだけ抽象的な表現や曖昧な表現は避けて具体的な手順や方法を伝えることも大切です。記憶しておくことが苦手な場合は紙に書いて壁に貼っておくなどの方法もよいでしょう。その場合、絵や写真で理解できる、文字が読める、簡単な文章が読めるなど、本人の発達に合わせて伝える工夫をしましょう。複雑な状況判断を求めるよりも、パターンを繰り返してある程度覚える方が得意なお子さんもいます。何かを習得してもらいたいときは、スモールステップで一つずつ伝え、パターンを繰り返すとよいでしょう。少しずつ、パターンを学ぶことで比較的記憶に結びつきやすく、何度も繰り返すことで定着していきます。お金や時間といった生活や自立に必要なスキルは生活の中で根気よく教えていきましょう。その際に分かりやすいルールを設けることも覚えやすさにつながります。大切なことは、ルールを設けるのに終始せず、「ルールを守ったから上手にできた!」という経験を多く積んでいくことです。また、コミュニケーションの場面でも、気持ちを伝えるフレーズをいくつかパターンで学ぶという方法があります。気持ちが一杯いっぱいになっている時に、あれこれ考えるのは大人でも難しいことです。「そういうこというのやめて」「僕のだから返して」など短めの文章でいくつか引き出しを持てるといいかもしれません。伝えてもわかってもらえない場合には先生に相談する、など次の方法までパターンで学べるとより良いでしょう。次第に自分が経験したことであれば、その経験を通してものごとを理解したり考えるなどできるようになります。そのような体験を積むことで、認識できる世界を広げていきましょう。出典 : 知的障害のある子どもの中には運動の発達の遅れから、手先が極端に不器用な子もいます。作業療法など訓練をしてもよいですが、練習をするときは、日々の生活を通して、日常的に手先を使うのもおすすめです。その際も、スモールステップに分けて子ども自身がやりやすい方法で、「できた」を実感できるようにすることが大切です。服の脱ぎ着なども大きなボタンとボタンホールの服を用意して、ボタンが難しい場合は最初の一つだけはずす、など、目標をちょっと頑張ればできることにするとよいでしょう。できないこと全てできるまで練習する、など過度な練習にならないようにします。出典 : 子どもに成功体験を味わって自信をつけてもらうことが大切です。できたことは、明確に褒めることを意識していきましょう。「靴下は上手にはけたけど、ズボンはもっと頑張らないとダメだね」など、褒められたのか注意されたのか曖昧では「できた!これで合ってるんだ!」と確信を持ちにくくなってしまいます。一つ一つできたものから子どもにとってわかりやすい表現と態度で、きちんと伝えて褒めてあげましょう。できたら「ごほうびシール」を貼るなど、視覚的なものを使う「トークンエコノミー」という方法もおすすめです。できないこと、苦手なことに目をむけてばかりいると、子どもも「僕はなんにもできないんだ」と自信を無くしてしまうかもしれません。夢中になれることや、得意なことを見つけたら存分に取り組める環境を用意したり、思い切り褒めてあげましょう。「できることがある」「これは大丈夫!」という気持ちは、苦手に取り組んでいける自信にも繋がっていくのではないでしょうか。例としては、知的障害の子どもに限りませんが、欲しいものを与えないとひっくり返って大泣きしたりしてしまう子どももいます。根負けしてお子さんの望みを受け入れるしかない場面もあるでしょう。しかし、何度かそのような経験をすると、今後の生活でもかんしゃくを起こせば要求がかなえられる、と誤って学んでしまいます。例えば、お菓子がほしいとねだっている時。対処法として、事前に「今日はお菓子は買わないよ」と伝えておきましょう。しかし、事前によく約束しても、いざ目の前にお菓子があれば欲しくなってしまうものです。そこで、次の対処法としては、買い物リストを子どもに渡し、かごに入れる役割を任せたり夢中になって取り組める仕事をお願いしましょう。ただ、どんな対処法をとっても、思い通りにならない状況に泣き出してしまうこともありますよね。その時は、泣くことに対して叱ったりする前に、「そうだよね、欲しかったんだよね」と一言共感するというのも大切です。出典 : 適応能力を上げるためにできることとして、子どもの能力をトレーニングするだけでなく、環境をやりやすいように整えたり、さまざまな便利なツールを使うことで「できる」を増やすという方法もあります。集中力がない場合はおもちゃを勉強部屋から片づけるなどの集中しやすい環境を作ったり、タイマーやスケジュールを利用して一つの作業を短時間で切り替えるなどの工夫をするのもいいでしょう。また、今はさまざまな便利なツールがサポートしてくれます。たとえば、かつては電車に乗る、ということも、行き先を路線図から探して窓口で切符を現金で買い、駅員さんに切符を切ってもらうという複雑な能力が必要でした。現在はスマートフォンの音声機能とアプリを使えば経路と乗り場を教えてくれますし、ICカードがあればタッチするだけで改札を通れます。こういった補助ツールを積極的に使うことで適応度を上げ、社会的経験値を上げていくことができるのです。スマートフォンの地図アプリや録音機能をメモ代わりに使ったり、デジカメでメモをとるなど、本人がやりやすくなるツールを積極的に使いましょう。知的障害のある子どもの教育面でのポイントは?出典 : 知的障害がある子どもが受けることのできる特別支援教育には、知的障害特別支援学校、知的障害特別支援学級があります。これらの特別支援教育では、知的障害児に応じた教育課程編成や適切な教科書での学習ができます。通常学級に所属した場合も、困りごとに応じた合理的配慮を受けられるように相談してみると良いでしょう。できたら通常の学級で…そうお考えの方もいらっしゃると思います。学校に入ってからの経験は子どもにとって非常に大切です。学級規模にもよりますが一般的に通常の学級はクラスの人数も多く、障害の特性に合わせたきめ細やかな支援が受けにくい場合があるかもしれません。一方、支援級の中では出会える友達も人数に限りがあるかもしれません。それぞれのメリット・デメリットや、実際に進学する学区・学校ではどのような支援が行われているかを確認することをお勧めします。学びの場を選ぶときは医師や専門家の意見を聞くことはもちろん、子ども本人とも相談を重ねることも考慮しながら、子どもにとって学びやすい環境を選ぶのが大切です。どのクラスに進学しても、学校の先生に協力してもらうことが大切です。例えば、席替えでは静かで気が散りにくい前列にしてもらう、教室移動が苦手な場合は一声かけてもらうなど工夫をお願いしてみましょう。また先生に家庭での取り組みや、今伸ばしているところ、伸びてきたところなどを知っておいてもらうことで、子ども本人の過ごしやすさも変わるかもしれません。家庭の中だけで取り組み続けると、親御さんに負担が大きいだけではなく子どもが誤った学習をしてしまうこともあるかもしれません。療育指導の場を使って子どもの成長を促すだけではなく、家庭での取り組みを一緒に検討したり、園や学校との連携を検討するのも一つです。療育に限らず、地域の資源を上手く活用していくことはとても大切な視点といえるでしょう。就学前の場合は児童発達支援が、小学校入学から18歳までは放課後等デイサービスなどの通所支援など、公的支援を受けることもできます。発達ナビ地域情報|地域の施設情報が検索できるコーナーです知的障害のある子どもの子育てに悩んだらサポートを出典 : 子どもへの接し方を変えるだけで改善できることはたくさんあります。ですが、子育てをしていると、悩むことやつらいことがあるのは当然です。最初からうまくいくことばかりではありませんし、周囲に気を使ったり、子どもの様子に気を配ったり、体力的にも精神的にも毎日へとへとになるパパ・ママも少なくないでしょう。これでいいのか、子育てに自信がなくなることもあるかもしれません。家庭の中だけで頑張り続けると、疲れてしまいます。親御さん自身が、疲れて辛くなってしまわないよう、児童相談所や専門機関に相談したり、療育センターや親の会など同じ悩みを持つ方に出会える場所を使うのも一つです。専門家の意見だけでなく、親同士の繋がりの中からもより良い方法や工夫の発見があるかもしれません。ぜひ、一人で抱え込まず周囲の人を頼ってください。子育て全般に言えることでもありますが、そんな時は、親御さんが一人で抱え込まないことがなにより大切です。公的支援をはじめ、さまざまなサポートがありますのでご紹介します。◇専門機関に相談する地域の子育て支援センターや児童発達支援センター、児童相談所などでは、子どものことや子育てについて、気軽に相談ができます。必要があれば医療機関や療育施設などの専門家を紹介してくれます。また児童精神科や小児神経科に相談したり、療育を受けることで、子どもの特性がわかり、対処法を教えてもらえます。知的障害のある人向けに専門の相談ができる制度もあります。・知的障害者相談員…知的障害者と保護者の相談に応じ、指導、助言など、必要な援助を行う民間の協力者です。電話や訪問で家庭での接し方を相談したり、必要な関係機関との連絡などのサポートをしてくれます。サポートを受けたい場合はお住まいの自治体の福祉担当窓口に問い合わせてください。・ペアレントメンター…ペアレントメンターとは、親による親のための相談者を意味します。カウンセリングの研修を受けた同じ障害のある子どもを育てた経験のある先輩の保護者が当事者目線で相談に乗ってくれます。地域によって導入されているかどうかは異なりますが、お住まいの自治体の障害者発達支援センターなどで紹介してもらえますのでお問い合わせください。◇親の会に参加する知的障害の家族を対象とした家族会やサポートグループが全国にあります。親の会は障害のある子どもを持つ親同士がつながり、障害について学んだり情報交換をしていく活動です。また、発達ナビのQ&Aコーナーやコミュニティでも、子育ての悩みを相談することができます。同じ経験をした人の話を聞いたり、具体的なアドバイスを聞いたりすれば、見通しがもてるでしょう。誰かにつらい気持ちを話すだけでも、気持ちが楽になり、一人で悩みを抱え込まずにすみます。◇ペアレントトレーニングを受けるペアレントトレーニングとは、親が子どもとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消し、楽しく子育てができるよう支援する、パパ・ママ向けのプログラムです。子どもをのばすほめ方、環境調整の仕方、指示の出し方、行動の教え方などを具体的に学べます。◇レスパイトケアで意識的に休息をとるがんばりすぎて、余裕がなくなっているときは、リフレッシュが必要です。育児を軽減するサポートを利用するなどして、自分の時間をつくりましょう。児童発達支援、放課後等デイサービスの中には預かり型の支援サービスもあります。また、障害児を受け入れているファミリーサポートもあります。一時的預かりのサービスを行っている地域もあります。地域の福祉相談窓口などで相談してみてください。ペアレントメンター研究会知的障害者相談員全国の育成会|全国手をつなぐ育成会連合会あなたの子育てに関する疑問や悩みを質問してみましょう!|発達ナビQ&A地域の児童発達支援・放課後デイサービスを検索|発達ナビ地域情報ポイントをつかんで、お子さんの良い部分を伸ばしてあげましょう出典 : 今回、知的障害の子どもに対する子育てのコツや困ったときの対処法をお伝えしました。知的障害の子どもを目の前に、「どうしてうちの子はできないんだろう」と思ってしまうこともあるかもしれません。できないことばかり目がいってしまう時も、できることを見つけて「できてるね」と子どもに伝え、一緒によろこぶことから始めてみてはどうでしょうか。できることを増やすことは心の面でもとても大切で、不登校やうつ病など二次障害の予防にも繋がるといわれています。また、自分だけで考えるのが難しい場合は、療育指導などの専門家の支援を受けることも大切です。一人ひとりの個性や環境によって対処法も様々で、こうすれば必ず上手くいくという方法はありません。周りの力を借りたり、相談しながら進んでいけるといいでしょう。
2017年01月30日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日障“害”という表記につきまとうネガティブなイメージ出典 : こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。「障害児」という言葉を聞いたとき、みなさんはどんなイメージを浮かべますか?私にも、知的な遅れを伴う自閉症の息子がいますが、子どもを表す言葉として“害”という字が当てられると、やっぱりネガティブな印象を受けてしまいます。元々、「障害」という言葉は「障碍(障礙)」という漢字でした。しかし戦後の国語改革で「碍(礙)」という字が当用漢字に含まれなかったために、「障害」という表記が一般的になったという経緯があります。碍の本字は元は礙であり、大きな岩を前に人が思案し悩んでいる様を示します。つまり自分の意思が通じない困った状態。意思が通らない、妨げられているという意味だったのでマイナスイメージはそれ自体にはありませんでした。そのため「障害」の「害」という漢字の負のイメージに対する反対意見から、「碍」という漢字を常用漢字にしてほしいという声が当事者からもあがっています。現在は「障がい」という交ぜ書きの表記を採用している自治体も多いです。朝日新聞デジタル: 「障害者」か「障碍者」か 「碍(がい)」を常用漢字に追加求め意見, 2010年4月5日「障害」「障がい」「障碍」。それぞれの表記についていろいろな考え方がありますが、この議論に違和感を覚えます。なぜなら「障害」の「害」ではなく「障」の字も、ネガティブな意味を含んでいるからです。しょう【障】1. じゃまをする。じゃま。さしさわり。「障害/故障・罪障・支障・万障・魔障」2. 隔てさえぎるもの。「障子・障壁」3. 防ぐ。「保障」コトバンクよりこのような考えから、現在は“チャンレンジド”などまったく違う呼び方をしている団体もあります。運動会でも “障害物競争”の種目名をなくしている学校もあると聞いたことがあります。「自閉症」という名前がもたらしている誤解・弊害は?出典 : <span><a class="linkclass" href="">同じように、言葉のせいでネガティブな印象を与えてるものに「自閉症」があると思います。自閉症の「閉」には、「閉める」「閉ざす」という印象を受けますが、今もこのまま使われており、この障害名により随分と誤解が生まれています。自閉症がこれだけ認知されてきているのに、字面だけで判断して“自閉→自分の心を閉ざしている→鬱みたいなもん”と考えてしまう人たちもいるようです。「私は若い頃自閉症だった」とか「あいつは自閉症だから付き合いが悪い」なんて平気で言う人もいます。私もママ友から息子について「殻に閉じこもっているの?」「鬱病みたいなもの?」「治療すれば治るんでしょ?」「もっと愛情をたっぷりかけて育てたら?」という言葉をかけられたことが何度もありました。自閉症は後天的にかかってしまった病気でもなく、薬により治癒するわけでもなく、親の育て方が原因でもないのですが…自閉症の特徴として、興味関心が限定的であり、外界とのコミュニケーションが難しいことがあります。たとえよく喋っていたとしても相手の気持ちを推し量ることが困難ですので、察したり空気を読むことが苦手でトラブルになることがあります。相手の顔色や声のトーンをキャッチして共感しながら会話する意思疎通はなかなか出来ず、一方的な話し方になってしまうこともあります。そういった意味で“自分の世界にいる=自分だけの独特の空間にいる”という特徴を表しているのが「自閉症」という言葉であり、その言葉ゆえ誤解を生んでしまっているように感じます。言葉が変わると、社会の見方も変化する出典 : <span><a class="linkclass" href="">一方で、呼び方が変わったことで社会の見方が変化したものもあります。例えば、今は「看護婦」「保母」という呼び方はしません。「看護師」「保育士」となっています。職業に対して女性の仕事と決めつけないようにこの言葉が生まれました。実際、男性看護師や男性保育士も今はたくさんいますし、「看護や保育は女性の職業」という社会の偏見も少しずつ緩和されてきたように思います。他にも、「父兄会」という言葉。現在はあまり使われなくなってきました。「父母会」という呼び名に変わったり、両親ともに居ない子に配慮して「保護者会」と言われることも、全国の保育園、幼稚園、学校で増えてきているようです。最近では、シングルマザー・シングルファザーの家庭に配慮して、「父の日」「母の日」ではなく「父母の日」、両親ともおらず祖父母の元や児童養護施設で育っている子に配慮して「保護者の日」としている園もあります。出典 : <span><a class="linkclass" href="">同じように、学校での学級種別の呼び名にも少しずつ変化が生まれています。これまで、小学校では、障害のない子のクラスを「普通学級」、障害のある子のクラスを「支援学級」と呼んできました。また支援学級は、「なかよし学級」「わかば学級」といった風に、各学校でクラス名を決めていることも少なくありません。これも今では、「そもそも何が“普通”と言えるのか?障害のないことを"普通"と考えることはどうなのか?」という議論もあり、「通常学級」と「支援学級」という表記に変わりつつあります。他にも、特別な感じを与えないため通常学級を1組~4組とし、最後の番号、例えば5組を支援学級としているところもあるようです。こうした事例を考えると、呼び名を変えることに、人々の見方や意識を変えていく意味はあるのかもしれません。けれども、呼び名を変える"だけ"では、当事者の抱えている現状は変わらない出典 : <span><a class="linkclass" href="">上に挙げた事例を考えると、呼び名を変えることに、人々の見方や意識を変えていく意味はあるのかもしれません。ですが、いくら呼び方や言葉が変わったとしても、それだけでは当事者が直面している状況は変わりません。いくら「保護者の日」と呼んだところで、親がいない子どもたちにとってその現実が変わることはありません。子どもたちは、「うちにはママがいない」「うちにはパパがいない。ママ一人で僕を育ててくれている」とちゃんと分かっています。同じように、「障害」であろうが「障碍」であろうが、その人が何らかの「障害に直面している」という現状も変わりはないのです。それはこの世の中は大多数の定型発達の人が生きやすいようになっているからです。例えば、合理的配慮が義務化された現在でも、まだまだ学習障害児の子どもも黒板の文字を読み、それを書きとることをさせられている現場は多いのではないでしょうか。音声ソフトやタブレットを使うことなど浸透はまだまだしていません。出典 : <span><a class="linkclass" href="">いつの時代も障害者は、社会から見て“障害がある”のではなく、理解や配慮のない社会で生きて行く上で“障害に直面している人達”です。言葉だけをいじって「ハイ、完了!」としないで、「殻に閉じこもっている人」「心の病」「愛情不足」「治療すれば治る」「人づきあいが悪い人」などの間違った認識がなくなり、それぞれに配慮し、みんなが生きやすい社会になればよいのではないでしょうか。皆さんはどう思いますか?立石美津子/著『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』2016年/すばる舎/刊Upload By 立石美津子
2017年01月29日不登校児が家にいるということ。それは私にとって、息の詰まる時間でもありました出典 : 不登校になり、自宅で過ごす子どもたち。私の参加する親の会でもよく聞くのですが、彼らが自宅で過ごしていて辛かったことに「親がキレるのが怖かった」「親の機嫌が悪かったり、悲しまれたりした」という意見があるようです。こうした子どもたちが1番望んでいることは、親は親で勝手に幸せになってくれること。テレビを見て笑っている姿でもいい、楽しそうに過ごしてくれるのが嬉しいのだと、私は思うのです。そんな私も、娘が不登校になってからしばらくの間は、しょっちゅうキレていました。そのたびに泣く娘を見ながら「これではいけないのに…」と、情けない気持ちでいっぱいだったのです。私がどんなふうに、自分のイライラと向き合ってきたのか、ご紹介したいと思います。また娘を叱ってしまった…もう同じことを繰り返さないために考えたこと出典 : そんなある日のことです。私はまた些細なことで、娘にキレてしまいました。娘はポロポロと声も立てずに泣いています。もう、こんな光景を見たくない!と思った私は、いつもと違う行動をとることを決意しました。娘と話し合いながら、娘が泣くに至った出来事と自分のそのときの気持ちをメモ書きすることにしたのです。その時の出来事を時系列に書いていきます。()は私の気持ちです。①娘が夕飯を残した(悲しくなった)②娘に「後で食べる?」と聞いたら「いらん」と言った③1時間後、娘が「袋ラーメンあったっけ?」と探しに来た。自分では見つけられず、私が在宅仕事を中断して探してあげた(なんで夕飯は食べないのにラーメンは食べるの?腹が立った)④「ラーメン頼んだら作ってくれる?」と娘が言ったので、笑って「うん」と答えた。(こんな夜中に何で作らなあかんの。仕事中だったのに腹が立った。でも耐えなければと、あえて笑った)⑤「やっぱり冷凍スパゲティ食べる。気持ち悪いけど」と言われたとたん、ブチ切れした私。(前もスパゲティ食べてほとんど残して気分が悪くなったくせに。そしてまた私が残飯処理をしなければならないのか!キレた。)こうして文字に起こして、娘と話し合いながら自分の気持ちを丁寧に振り返ってみると、色々と見えてくるものがありました。イライラの爆発は、自分の感情に気づかなかったことが原因だった出典 : 娘に対し、突然怒りを爆発させてしまう私ですが、子どもの頃は「いつもニコニコしてるね」「癒されるわ」と言われてきました。だけど、心から笑っている訳ではなかったのです。むしろ「嬉しい、楽しい」という感情が湧くことはめったになく、どちらかというと「悔しい、腹が立つ」というマイナスの感情の方が感じやすい性質です。どういう表情をしたらいいのかわからないから、誰からも攻撃されないように笑顔を選んだだけなのです。今回気付いたことですが、「もうダメ」とキレるまでに、途中で何度も怒りを感じているはずなのに、自分では見えていないというか、心にフタがされているような感じがするのです。そうして怒りが心の中に積み重なり、何かのきっかけで溢れ出したときにキレてしまうのです。つまりキレたときには、すでに精神的には限界を迎えているのです。母親から怒られることに対し、娘はどう思っているのだろう出典 : 自分の気持ちを振り返った後、私は娘の正直な気持ちも確かめることにしました。私「怒られたら怖い?」娘「うん、そりゃ怒られるのは怖い。特にママ怒るとむちゃむちゃ怖いから。」私「他の人に怒られるのも怖い?」娘「怖いに決まってるやん。ママはその場では怒らないのに、後でいきなり一気に怒りをぶつけてくるからびっくりする。例えば私が掃除手伝えなかった時でも『いいよいいよ』って言ったのに、後で急に怒りだすから『え!?』ってなる。その場で怒っているなら言ってほしいし、本当の気持ちを話してほしい。今日なら、夕飯を残したときに『悲しかった』って話し合ったときに言ったやろ。それをその時に言ってほしい。そうしたらわかるし、びっくりしないし」そうした娘の言葉に、私のどういう行動に違和感を抱いていたのか、そしてどうして欲しいのかという気持ちが分かり、話し合って良かったと思いました。また、娘の言葉のおかげで自分のキレ方の癖に気づくことができたのです。イライラすることは誰にでもある。だからこそ、大切にしたいのは…出典 : 娘のおかげで自分のキレ方に気づいた私は、「とにかく我慢しないように心がけよう」と決めました。ちょっとムッとしたとき、「あれ、私怒ってる?それとも疲れてる?」と自分に問いかけるようにしたのです。そして、無理している自分に気づいたらできるだけ休むようにしました。合わせて、娘に正直に「いま機嫌が悪い」と申告するように。そうすると、娘もいろいろと推測して胸を傷めることが減ったようです。こうして私がキレることも、少しずつですが減っていきました。もしキレてしまっても、後で必ず娘に謝るようにしました。すると娘も、「ママも人間だもんね。しょうがないね」と許してくれるようになっていったのです。しんどい子育てをしていると、自分の感情を後回しにし、疲れを溜め込むことが多いと思います。ときには自分の気持ちに目を向け、自分に優しくしてあげる時間を持てたらいいですね。
2017年01月27日総務省による初の発達障害者支援実態調査出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。約12年前となる2005年4月、「発達障害者支援法」が施行され、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの「発達障害」のある児童生徒が乳幼児期から切れ目なく適切な支援が受けられるよう、国、都道府県及び市町村の責務や求められる取組が定められました。この発達障害者支援法が制定されるまで、発達障害は、身体、知的及び精神の各障害者制度の谷間に置かれ、必要な支援が届きにくい状態となっていました。しかし同法の施行により、発達障害の早期発見、発達支援(医療的、福祉的及び教育的援助)サービスの提供、学校教育における支援、就労の支援、発達障害者支援センターの設置などが進められてきました。法の施行後、発達障害に対する理解や支援の取組が進展したとの一定の評価がなされています。一方、今回の総務省勧告では、・発達障害の早期発見の不十分さや市町村による発見状況の差・障害児に対する「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」の未作成・進学過程での支援の途切れ・専門的医療機関の不足などの課題が残っていることが指摘されました。発達ナビでは、この総務省による発達障害者支援に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告について、「早期発見に関すること」「発見後の支援と引継ぎに関すること」「専門的医療機関の確保に関すること」の全3回に分けて詳しくお伝えします。発達障害早期発見の重要性と早期発見の場としての健診出典 : 現在、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から、発達障害の早期発見と適切な支援の実施はとても重要だと考えられています。発達障害者に対する適切な支援がなされない場合、その特性により生じる問題に周囲が気づかずに、無理強い、叱責などを繰り返すことで失敗やつまずきの経験が積み重なり自尊感情の低下等を招き、更なる適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等、二次的な問題としての問題行動(以下「二次障害」という。)が生じることがあるとされている。(生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)こうした二次障害を未然に防止する上で、発達障害者を早期に発見し、早期に適切な発達支援につなげていくことが特に重要であることから、国及び地方公共団体は、発達障害の早期発見のため必要な措置を講ずるものとされている。(発達障害者支援法第3条第1項)また、早期発見の機会としては、1歳6か月児健診、3歳児健診、5歳児健診などの乳幼児健診や、就学時健診が該当します。市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査(以下「乳幼児健診」という。)を、市町村教育委員会は学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第11条に規定する就学時の健康診断(以下「就学時健診」という。)を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならないものとされている。(発達障害者支援法第5条第1項及び第2項)調査で分かった早期発見の取り組みにおける課題点出典 : 厚生労働省は乳幼児健診において、広汎性発達障害を早期に発見するためのツールとして、2歳前後の幼児に対して自閉症スペクトラムのスクリーニング目的で使われる、親記入式の質問紙であるM-CHATや、広汎性発達障害の支援ニーズを評価するための評定尺度であるPARSの活用・普及を図っています。そして就学時健診を行うにおいて、市町村教育委員会に対し発達障害の早期発見に十分留意するよう求めてはいますが、具体的な方法は特に示してはいません。今回の調査の結果、健診時に発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれが指摘されています。というのも調査対象となった31市町村で、市町村ごとの発達障害が疑われる児童の発見割合をみると、1歳6か月児検診では0.2%から48.0%まで、3歳児検診では0.5%から36.7%までと、市町村ごとで発達障害が疑われる児童の発見割合にかなりのばらつきがある検診で発達障害が疑われる児童の発見割合が1.6%を下回る市町村については、発見に漏れがある可能性が高いのではと考えられます。また、厚生労働省が早期発見ツールとして普及を図っているM-CHAT及びPARSの活用がされている市町村は、31市町村のうち5市町村にとどまりました。総務省は厚生労働省に対し、乳幼児健診における発達障害が疑われる児童の発見のための市町村の取組実態を把握するとともに、発達障害が疑われる児童を早期発見する有効な措置を講ずることを勧告しています。文部科学省に対しては、就学時健診時における発達障害の発見の重要性を改めて周知徹底するとともに、就学時健診における具体的な取組方法を示すことを勧告しています。発達障害早期発見のための保育所・学校の取り組み出典 : 保育所や学校も発達障害の早期発見の場としてとらえられています。文部科学省は、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対し、各学校において発達障害等の障害は、早期発見・早期支援が重要であることに留意し、実態把握や必要な支援を着実に行うことなどを求めています。今回の調査の結果、調査した23保育所では、保育士等による日々の行動観察を通じて発達障害が疑われる児童の発見に努めていました。このうち、4保育所では、行動観察に当たって、着眼点や項目を共通化し、できるだけ客観的に判断できるよう、所内共通のチェックリストを用いてました。また、調査した23幼稚園、23小学校、23中学校及び24高等学校の計93校のうち、91校においては、教諭・教員による日々の行動観察を通じて発達障害が疑われる児童生徒の発見に努めていました。このうち、35校(4幼稚園、14小学校、11中学校、6高等学校)では、行動観察に当たって、校内共通のチェックリストを用いていました。チェックリストの活用をしている学校では、「教諭・教員が行う行動観察の習熟度が向上する」「発達障害児の特性が把握でき、その後の支援方法の検討に参考となる」「客観的な尺度であるため、保護者の理解が得られやすい」などの意見がみられたとのことです。教育委員会の学校に対する支援状況出典 : また、教育委員会の学校に対する支援の実施状況の調査も行われました。調査した50教育委員会(19都道府県教育委員会、31市町村教育委員会)のうち、36教育委員会(19都道府県教育委員会、17市町村教育委員会)において、文部科学省の「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」や「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(平成24年12月)における質問項目を活用するなどし、学校に対し、チェックリストを示していました。しかしながら、上記ガイドライン(試案)は、小学校及び中学校を対象としたものであり、また、上記調査の質問項目は、学習面に関しては小学校3、4年生までに表面化する困難や障害を意識して作成されたものとされ、元々の調査対象も小学校及び中学校となっていることから、幼児や高校生に関しては、そのまま用いることは必ずしも効果的とは言えません。総務省は、厚生労働省と文部科学省に対し、発達段階における日々の行動観察に当たっての着眼点や項目を共通化した標準的なチェックリストを、活用方法と併せて示すことを勧告しています。発達障害の早期発見はなぜ重要なのか、そしてその難しさ出典 : このように現在、発達障害の早期発見と適切な支援の実施は、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から重要とされ、国として取り組みが行われています。しかし市町村によって取り組み具合にばらつきがあることも今回の調査で明らかになりました。発達ナビとしては今後の国の取り組みを注視しつつ、情報発信を続けていく予定です。
2017年01月26日なかなか周囲に理解されない子どもたち。そんな子どもたちの気質とは出典 : かつて東京都内の中学校で、心障学級・通級情緒障害児学級などを受け持っていた森薫(もりかおる)先生。2012年には、通信制高校等のためのシンクタンク『学びリンク総合研究所』の所長に就任され、非行や不登校で悩む当事者・家族への支援を行っています。森先生は、周囲の人からなかなか理解されることがない子どもたちに特有の気質を「スペシャルタレント気質」と名付けました。今回は、「スペシャルタレント気質」な子どもたちに対する森先生の考え方や、そんなお子さんの子育てへの思いを伺います。発達障害ではなく、特別な才能を持ったスペシャルタレント出典 : ―発達障害のある子どもたちや、集団生活に馴染めず引きこもりや登校拒否になってしまった子どもたちのことを「スペシャルタレント」と呼ぶ理由について教えてください。日本で発達障害という名前が世の中に広まり始めたのは、1995年頃のことでした。当時、中学校の教師をしていた私は発達障害に関する様々な勉強会に参加しましたが、どうしても“障害”という呼び方に抵抗があったのです。発達に偏りがある子どもたちは人に合わせることが苦手です。しかし、誰よりも優れた“ひらめき”と“こだわり””豊かな五感力”を持っていました。こういった才能を伸ばしていくためには、その子たちに合った学びの場が必要であると思い、通信制高校の立ち上げに参加しました。そして、これまでに私が関わってきた特別な才能を持つ子どもたちに尊敬の意を込め、彼らの特別な気質を「スペシャルタレント(”ST”)」と呼ぶことにしたのです。―こだわりが強かったり、人とは違う感受性を持っている子どもたちの特徴を、障害ではなく、彼らの良さとして捉えたのですね。集団生活に馴染めない子どもたちは、「困った子」として捉えられがちです。そして、発達障害という見方により、その子の足りないところばかりに着目してしまいます。学校の先生が「困った子」という見方をすれば、生徒たちも同じような目線でその子のことを見るのは当然です。こうしていじめが始まり、スペシャルタレントの子どもたちは学校に居場所を失ってしまうのです。教育現場にいる教師や支援者がこの子たちを、素晴らしい才能の持ち主としてリスペクトできたら、いじめは起こらないでしょう。現在の日本の教育は同質化を求めるあまり、バランスよく育っていない子は否定的に捉えられてしまいます。こういった構造的な問題がある限り、学校はスペシャルタレント気質の子どもたちにとって、居心地の悪い場所でしかないのです。シンプルなコミュニケーションが、才能を育てる鍵出典 : ―スペシャルタレントの子どもたちが、困っていることはどんなことですか?彼らは思春期を迎える頃になると、一生懸命周りの友達に合わせようと努力します。しかし、必死で気を遣ってついていこうとしても、安心できる場所を見つけることができません。学校の中では「そんなこともできないの?」といった言葉もいじめに直結します。空気が読めない、人並みにできない、コミュ障だなどと言われ続ければ、どんどん自己肯定感が低くなっていきます。―みんな同じ方向を向くことを求められる場では否定され、その結果、いじめや登校拒否に繋がっていくということですね。スペシャルタレントの子どもたちは、複雑なコミュニケーションが苦手です。特に同級生とのコミュニケーションは、実はとても複雑で難しいのです。例えば、相手が年上であれば敬語だけを使えばよく、コミュニケーションの仕方はシンプルですよね。しかし、同級生となるとそうはいきません。親しさによって丁寧な言葉を使ったり使わなかったり、距離の取り方も一人ひとり微妙に違います。そして、同級生は協力する仲間であると同時に、競争する相手でもあります。気持ちの切り替えが難しい子にとって、同級生との関係づくりは非常に厳しいものなのです。自分の生活の場をなるべくクリアに保ちたいと感じるスペシャルタレントの子にとって、曖昧で分かりづらいコミュニケーションは不安を煽るものであり、合わせようと努力をすることはとてもしんどいことなのです。―なるほど…そんなスペシャルタレントの子どもたちに合ったコミュニケーションが出来る環境はあるのでしょうか。年上や年下の人と関わることのできる場所に連れていってあげると、シンプルなコミュニケーションだけ求められるので、スペシャルタレントの子は安心して関係作りができるでしょう。もしくは、海外留学をすることもおすすめです。例えば英語圏では、日本ほど間柄によって呼び方を変えたり敬語を使ったりする必要がありません。友人でも年長者でも小さな子でも、ファーストネームで呼び合えば良いのですから。自分の意思表示も“Yes”“No”の二択で求められます。日本のように気を遣って言葉を選ぶ必要はありません。さらに欧米では、人といかに違っているかが逆に評価されます。みんなが個性的で他人と変わった能力の持ち主だからこそ、素晴らしい芸術や技術が生まれるのではないでしょうか。たとえば、“変人国家”なんて呼ばれるイタリアでは、人と変わっていることが当たり前で、その変わった人々によって優れた芸術やファッション、映画、音楽が数多く生み出されています。これは、人とは違う特別な才能をリスペクトし合ってきた証拠ですね。合言葉は「あ・し・た・あ・お・う・よ」出典 : ―学校での関わりに悩む、スペシャルタレント気質の子どもたちに対して、家族はどんなことができるでしょうか?お子さんが学校でいじめに遭ったり不登校になったりすると、お母さんたちは不安になると思います。しかし、子どもたちの豊かな才能に目を向けて、不安ではなくわが子の「ファン」になってあげてください。家族みんなが、その子の応援団になるのです。私のところに相談にいらっしゃるお母さんたちに対して、「あ・し・た・あ・お・う・よ」という言葉を紹介しています。「あいしている」「しあわせ」「たのしい」「ありがとう」「おかげさま」「うれしい」「よかった」この言葉を、お子さんにたくさんかけて、抱きしめてあげてください。すると、お子さんのエネルギーはみるみる回復していきますよ。―子どもがパニックになった時や、自傷行為をする時はどうしたら良いですか?自傷行為をしていたら、そのことを否定せず黙って抱きしめてあげてください。自傷行為は、うまく自分の思いが伝わらないという負の感情が蓄積して起こるものです。突然起こるものではありません。まずはしっかりとお子さんの気持ちに向き合い、丁寧に受け止めてあげることが大切です。大好きなお母さんに否定されることほど悲しいことはありません。通常、私たちは5歳くらいからの出来事を記憶していると言いますが、スペシャルタレントの子どもたちは記憶力が良いため2~3歳頃から記憶をしているようです。そのため、親に否定された経験も明確に覚えているのです。パニックが長時間続くこともほとんどありません。物を壊したり怪我をしたりしない限りは、止めずに見守ってあげましょう。落ち着いてから、「暴れるほど悲しかったんだね」と受け止めてあげてください。Upload By 佐藤 愛美(ライター)―自傷行為やパニックが起こっても、否定の言葉をぶつけるのではなく、まず子どものことを受け止める。とても大切だと思います。でも、お母さんたちが「子育てを正しくやらなければ」というプレッシャーに日々さらされていると、難しいですよね。そうですね。かつての日本には地域の中にたくさんの子どもたちがいて、未婚の若い女性でも子守り体験を通して将来のリハーサルをする機会が多かったのです。お母さんのお乳が出なければ地域の人が代わりにお乳を与えてくれたし、産後すぐに働きに出ても、おじいちゃんやおばあちゃんが子守りをしてくれるのが当たり前でした。そのため、現在のようにお母さんが子育ての責任をすべて一人で背負うことはなかったのです。この時代は、「子どもなんて少し変わっていて当たり前」と思われていたし、思春期の早い時期に社会に出ることが多く、18歳まで同級生の集団の中に身を置く必要もありませんでした。思春期のストレスも少なくて済んだのではないでしょうか。スペシャルタレントの気質を持った人たちも、周りに合わせることなくのびのびと生活できていたんです。しかし現在は、社会全体が評価主義によって動いています。小さい頃から偏差値や内申点で評価され、高学歴が求められ、大企業に就職する人々がエリートと呼ばれています。子育てすら、自分を評価するための材料になってしまっているのです。お母さんたちは人並みに育児ができなければ評価されず、公園デビューをする時もマニュアルが必要になっています。このような社会背景の中で、集団に馴染めない子どもを育てるのは非常に苦しいことでしょう。頑張り屋さんのお母さんは、自分で自分にOKを言おう出典 : ―評価主義社会の中に立たされたお母さんたちは、どうしたら心の余裕を持って子育てができるでしょうか。私は、相談に来たお母さんたちにまずこう言います。「よく頑張ってきましたね、お母さん。本当に頑張り屋さんですね」評価主義社会の中で認めてもらおうと必死になってきたお母さんたちは、「頑張っているね」という言葉をずっと求めているんです。しかし、大人になってしまうとなかなか褒めてもらえる機会はありませんよね。だから、「I am OK!」と自分で自分を褒めてあげることが大切です。洗濯物の干し方がうまい、畳み方なんか最高!って。自分はこんなふうに頑張っている、こんな良いところがあると、自分に「OK」を与えてあげてください。すると子どもに対しても「あ・し・た・あ・お・う・よ」の言葉を与えられるようになります。―お母さん自身が、まず自分に「OK」を…大切な視点ですね。一方で一つ気になるのが、スペシャルタレントと呼ぶと、「天才児」のようなニュアンスで捉える人もいるのではないかということです。そうなってしまうとやはり評価主義の中でプレッシャーに感じるお母さんも出てくるような…優れた才能を持っている子はたくさんいますが、「天才児」というニュアンスとは少し違いますね。私は面談の中でよく保護者に対して「この子が何をしている時がいちばん幸せそうでしたか?」と聞いています。すると、これまでの我が子の姿を思い返しながら、絵を描くことや人形を作ること、小さい頃はダンスに興味を持っていたなど、色々な話が出てきます。実はこれが、未来に繋がる資源(リソース)なんです。中には「うちの子には何も才能がない!」と嘆く方もいます。しかし、一つの物事にとことんこだわり、嘘がつけなくて優しいという素晴らしい資源にもっと気づいてほしいのです。この気質はスペシャルタレントの子だけが持った、特別な才能ではないでしょうか。不登校児が学校生活に戻らなくても良いルート作りを目指して出典 : ―スペシャルタレントの子どもたちが個性を伸ばせる進路には、どのようなものがありますか。不登校の子がいちばん苦しむのは、「いつかは学校に戻らなければいけない」というプレッシャーです。学校の先生も、スクールカウンセラーも、教育相談所も、そして親ですら彼らが早く学校へ戻るように促します。この子たちは、心身ともにぼろぼろになりながらやっとの思いで学校を抜け出したのに、こんなに辛い要求はありません。今の日本に必要なのは、“学校に戻らなくても良いルートづくり”なのではないかと私は考えています。具体的には、家庭でパソコンやタブレットを使って勉強ができるホームスクールや、通信制の高校、フリースクール、そして先ほども紹介した、海外留学が当たり前に選べるようになるといいですね。―スペシャルタレント気質を持った子が大人になった時、自分の特性を活かせる仕事に辿り着くためには、周囲の大人はどんなサポートをすれば良いでしょうか。その子たちの個性を潰さず、スペシャルタレントとして尊重することです。現在活躍しているスポーツ選手の多くが「小さい頃に自分のやりたいことをやらせてくれたから今がある」と語っています。普通科の学校や目の前の成績ばかりに囚われることなく、その子が夢中になれるものを一緒に発見し、色々な体験をさせてあげてください。苦手なことを人並みにしようと何十年も努力するより、自分の得意なことを活かして活躍したほうが幸せではないでしょうか。苦手なことは、他の人に任せたり手伝ってもらったりしても良いのです。私が今、老眼鏡を使って文字を読んでいるように、便利な道具を使えばできるようになることもあります。Upload By 佐藤 愛美(ライター)―最後に、森先生が今後取り組んでいきたいと考えていることがありましたら、教えてください。スペシャルタレントの子どもたちと一緒に農業体験ができる場所づくりをしていきたいと考えています。田んぼで自由に走り回り、泥を投げ合い、ありのままの自分を認めてもらえる場所です。農業をしている大人の手伝いをし、自分の得意なことや不得意なことに向き合っていく中で、自分に対する肯定感を育めるのではないでしょうか。親や教師が“普通の”進路に固執せず、可能性を広げる場所を作ってあげることで、この子たちの活躍の幅はきっと広がるはずです。―ありがとうございました。集団生活を苦手とする子どもたちの気質を「神様からもらったプレゼント」と言う森先生。苦手を克服する従来の教育から、得意なところを伸ばす新たな教育へのシフトを目指し、一人ひとりが自分を大好きになれる場所づくりが進んでいます。(佐藤愛美)Upload By 佐藤 愛美(ライター)『未来に輝け! スペシャルタレントの子どもたち 不登校・ひきこもりの解決方法』2013年、学びリンクUpload By 佐藤 愛美(ライター)『子どもと夫を育てる 「 楽妻楽母」力‐不登校・引きこもり・夫婦のすれ違い、すべて解決!‐』 2015年、学びリンク
2017年01月26日子どもの発達障害診断が終わった直後、「お母さんも、あるね」出典 : 8年前に、子どもを連れて初めて精神科を訪れた日のことでした。予約時に「受診日には母子手帳を持ってくるように。」と言われていたのに、言われていたことすら忘れてしまい、母子手帳を持参しませんでした。子どもの診察が終わり、子どもには発達障害があると診断をした次の瞬間、病院の先生が私に言いました。「お母さんも、あるね」そしてこう続けました。「息子さんと貴女は似てところが沢山あるでしょう?お母さんもありそうだから、診察受けてみたらどう?お薬も出すよ。楽になるよ。」あまりに軽々しく言う先生の言葉を信用できずにいました。当時の私には、「楽になるよ。」と言う言葉が悪魔の囁きにすら聞こえたのです。発達障害の診断を受けることは、「逃げ」だと思っていた出典 : 子どもたちが発達障害と診断を受けて、通院しながらお薬飲んでいるのを見ると、私は羨ましく思う気持ちが生まれ、「私も子ども達のお薬を飲んでみたい」と何度も思いました。私は幼少期から忘れ物や宿題忘れが酷く、先生にきつく叱られた時には「明日は必ず忘れ物しないようにしよう。宿題は必ずやろう。」と決意するのですが、帰宅すると宿題の存在自体を忘れたり、さらには学校に勉強道具の忘れ物をする始末。数学や社会なども、教科書の文字全部が飛び込んでくる感じがして、どうしても覚えるということができませんでした。結婚して家事をするようになって困ったのは、片付けられないこと。1つのことに集中して片付ける、ということがどうしてもできませんでした。1番困ったのは鍋に火をかけたまま忘れること。いったい何度鍋の中身を真っ黒に焦がしたか分かりません。他にも財布をなくす、鍵をなくす、保険証をなくす、いろいろありました。探し物をするだけでクタクタに疲れてしまう日々でした。それなのに受診を拒んだのは、「私には診断が必要ない」、「診断を受けるのは、頑張ることから逃げることだ」という風に思えてしまったから。本当は、日常生活にたくさんたくさん困っていた。私は、それを認めたくなかったんだと思います。それでも、子ども達のカウンセリングを通じて少しづつ自分を知っていきました。子ども達が成長し、子育ての手が少しづつ離れてくると、ようやく自分と向き合ってみようかな?と思うようになってきました。そこである日、思い切って精神科での検査を受けてみることにしたのです。「忘れ物をするのは、あなたのせいじゃないんだよ」精神科で受けたのは、特性を見るための様々なテストです。そこで再確認したのは「私って覚えておくことが本当に苦手なんだな。」ということでした。次に感じたのは「子ども達はこんなしんどい検査を受けてたんだな。」ということ。子どもが経験した事を私も体験する事ができて嬉しく思いました。そして、私を検査した心理士さんからは心強い言葉を沢山いただけました。出典 : 心理士さん「あなたは人当たりやさしく気を使えるので、周りと上手くやっていけるタイプ。でも、本当の気持ちを言えているかは疑問。言いたい事を言えるようにしていきましょう。でも、自分の中に入ってくる情報が多過ぎるので、どうしても抱え込んでしまいがちになります。うまく休養をとっていきましょう。湧き上がるやりたいという衝動は、創造性が豊かということです。それからあなたのような人は、アイデアがポンポン出てくるあまり、あれもやりたいこれもやりたいとやり過ぎる傾向があります。そういう人は、なんでも自分でやろうとするのではなく、プロデュース業を仕事にすると良いです。貴女の創造性と人との関わりは素晴らしいところです。その素晴らしいところは消す必要はないですよ。ただ、少し荷を下ろす必要はあると思います。5つあるとしたら、3つにするとか。少し整理すると良いでしょう。忘れ物することは貴女のせいじゃないからね。そこは周りに助けてもらいましょう。後は周りに気持ちを伝えられるように、頼ったり甘えたりできるように、少し言葉を工夫して伝えていきましょう。自分が思う自分と、周りが思う貴女とでは、大きなギャップがあるように思います。そのギャップが、少し人間関係を難しくしてるようです。でも、お子さんを通して自分と向き合ってきて、おおよそ私から言われる事が予想できているようですから、今回のことは『あぁ、やっぱりそうか』と納得するのではないでしょうか?今回、テストを受けて自分と向き合うと決めたことは良いことですよ。それと、処理能力が遅いのもあり、仕事を失敗しないように丁寧にしようとすることで仕事の能率が悪くなりやすいようです。苦手なことはどんどん人に委ねていきましょう。」などなど…私の特性を説明するだけでなく、その活かし方まで伝えてくださる方でした。後は、日常生活での具体的な対応の仕方や言葉遣いの工夫なども教えてくれました。カウンセリングでの言葉を聞きながら「あぁそっか!そう言えばいいのか!」と納得しました。知ることって大事だと再確認できました。1番安堵したのは「忘れ物をするのは貴女のせいじゃないからね。」という言葉。努力だけでは乗り越えられないものがあると分かり安心しました。今回の心理士からの言葉から、やりたいという衝動が多い末っ子の「学校がつまらない」という言葉を意味を初めて理解しました。末っ子にとっては、自分の衝動性を満足させるものが学校にはなかったのだということに、初めて気付きました。自分の特性を知ることは、子ども達の発達障害の特性を理解するのにも良い参考材料となったのでした。診断を受けても変わらないもの出典 : テストの結果とその後の医師の診断から、私も子ども達と同じように発達障害があることが分かりました。結果が出たとして、私という存在は変わりませんし、これからも変わりません。変わるとしたら社会の目かもしれません。でも、今回の結果から、分かった事を利用して生活を豊かに過ごすことはできます。苦手を少し楽に過ごす工夫もしやすくなりました。得意なことはより自信を持って進んでいけます。診断を受けるまで長い年月がかかりましたが、今は勇気を出してテストを受けてみて良かったなと思っています。
2017年01月26日発達障害の息子との会話、それは6歳とは思えない話し方で…出典 : 私の息子は年齢に不釣り合いな独特の話し方をし、側で聞いている人が思わずギョッとして振り返ります。それはまるで、公式な文書を順番に読みあげているかのような話し方だからです。「お母さん、高速道路に侵入する際には落下物に気を付けてね」「僕は○○くんと一緒に遊んだ。しかし、○○くんは僕と一緒に遊ぶことを執拗に拒んだんだ。なぜなら、○○くんは…」使っている単語も、普通の6歳児のボキャブラリーとはかけ離れています。息子の喋り方は会話調ではなく、文書そのままのような感じなので、大人から聞いていても話の流れが非常に分かりやすいです。けれども、子ども同士の会話では、ひどく浮いてしまうことになるのです。なぜ息子はこのような言葉遣いにこだわるのでしょうか。こんなに難しい言葉、一体どこで覚えてきたの?出典 : 息子が言葉を習得するのは、主に本とニュース番組からです。バラエティ番組などは「いろんな言葉がうるさくて耐えられない」と言います。息子によると、淡々と一本調子で正しい言葉で読み上げるニュースが1番安心して視聴できるのだそうです。同様に、本を読むのも安心するようです。そして、崩した表現は苦手です。その結果、「お母さん、高速道路に何か落っこちてるかもしれないから気を付けてね!!」ではなく「高速道路に侵入する際には落下物に気を付けてね」という言葉が、彼の中での「言葉」になるのです。「正しい言葉」の方が頭に入ってきやすい分、息子は言葉にひどく拘ります。言葉の成り立ちや用法を、なんとなく覚えることができません。まさに、言葉を「スルーできない」のです。気になる言葉をすぐ聞いてくる息子にイライラ!もっとスッと会話したいのに…出典 : 言葉を「スルーできない」息子は、大きくなるにつれて耳から聞いた言葉について、納得がいかなくなることが多くなってきました。ある日シャツをベロンと出しながら歩いている息子に、私が「シャツを入れなさい。だらしがない」と言ったときのことです。息子はこう言ってきたのです。「“だらし”というのは何?」「僕は“だらし”というのが無いんだね?」「じゃあ、“だらし”が有るというのはどういう状態なの?」この調子で質問は続き、私は思わず「もういい、とにかくシャツを入れなさいったら!」と怒ってしまいました。話し言葉だけではなく、書き言葉にもこだわりは発動します。「お母さんは外国由来の言葉はカタカナで書くと言った。じゃあなぜトラは日本語なのにカタカナで書いてあるの?」この調子で、ちょっとやそっとでは答えられないような質問を1日中私に投げかけてくるのです。時間があるときは1つひとつ調べて丁寧に答えていましたが、この「言葉に対するこだわり」のためにやり取りがいちいち止まってしまうことが頻繁に生じ、私は息子と話すたびに「黙って質問に答えてよ~!!」とイライラしていました。もう限界!息子の関心・こだわりを活かすために私が用意したのは出典 : ある日、遂に限界に達した私は、電子辞書を息子に買い与えました。そして、「意味が知りたいとか、何でこういう言い回しをするんだろう?とか不思議に思ったら、これを使ってみて」と言ったのです。紙の辞書も考えたのですが、辞書をひく手間がかって息子が途中で音を上げます。電子辞書であれば、息子でも使いこなすことができるのです。結果は大成功!私にいちいち聞いてはお互いにイライラしていた時間が、電子辞書で調べることで解消しました。発達障害児の育児には、デジタル機器が非常に役に立つことがあります。デジタルの機器は、発達障害児にとってのメガネや杖のようなものかもしれません。活用できるものは積極的に活用し、本人も周囲も楽になること目指したいものです。
2017年01月26日私の娘は、22歳の時にアスペルガー症候群と診断されました。そんな娘が小中学生だった当時は、まだまだ発達障害についての世間の認識が薄かった時代。娘の特性に対する理解や支援を得られず、小学校高学年から続いたいじめの影響で、神経性食欲不振症、不登校、被害妄想、幻聴幻覚、解離などの二次障害が現れていきました。そして、いま現在も入院治療が続いています。今回は、前回記事の小学生時代に続き、娘の中学生時代についてお話します。これは今から、15年ほど前の出来事です。現在では信じられないような出来事に、親子で随分と苦しめられてきました。障害や教育に対する支援・態勢が、現在と比べてどのくらい異なっていたのか、その点も含めて読んで頂けると嬉しいです。入学した中学でもいじめが待ち受けていた出典 : いじめの事態が改善されないまま小学校を卒業した娘でしたが、期待を持って入学した中学でも、再びいじめが待ち受けていました。三校の小学校から生徒が集まる中学だったので、娘の名前はすぐに知れ渡ってしまい、新しい仲間にも打ち解ける事ができないようでした。学校に行く事が苦痛になっているのではないかと感じましたが、頑張って登校している娘を見ると何も言えず、ただ楽しく過ごせるようにと祈る事しか出来ませんでした。加えて同じ頃、重度知的障害のある四年生の次男が、担任が変わり環境が変わった事で落ち着かなくなり、些細な事でも大声を出しパニックを起こすようになりました。私は、娘の事が気になりつつも、目の前の次男の対応に追われていました。2泊3日の学年行事から帰宅後、言葉を話せなくなった娘。出典 : 娘に変化が起きたのは6月下旬でした。新1年生の行事である2泊3日のふれあい合宿を終えて帰宅した時のことです。「お帰り〜!」と、私は声をかけましたが、娘は何も言わずに黙って下を向いたまま。出かける前には、「行きたくない」と口にしていたので、いろいろあったのだろうなと思い、私はそれ以上は何も言いませんでした。夕食の時間になっても、娘は何も話さず、食事も口にせず、下を向いたままでした。私は娘の様子が気になったものの、「合宿で何かあったのだろうか。話したくないなら仕方がない、明日になれば、少しは元気になるだろう…」と考え、事態をあまり重く受け止めていませんでした。ところが事態は、私の想像をはるかに超えたものでした。翌日以降も、何を聞いても、返事をするどころか、顔を上げる事すらせず黙ったまま。言葉を発するのが困難なように見えました。ただ事ではないと感じた私は、担任に相談し、言葉が出ないまま学校に通うのは無理だろうと、夏休みまでの1ヶ月間、学校を欠席させると決めたのでした。娘の言葉は、その後の2ヶ月間も出る事はありませんでした。児童相談所の医師の言葉に、親としての自信を失くしてしまい…出典 : その後学校からは、娘を児童相談所に連れて行くように勧められ、私は娘と次男と出かけて行きました。相談所に行くと、女性職員との簡単なやり取りの後、「精神科の医師に診て貰います」と言われ、その場で待つように指示されました。しばらくして現れた若い医師は、私と娘と次男をチラリと見ていきなり、こう告げました。「お母さんが悪いです!」驚いて、言葉も出ない私に、医師は続けて言いました。「お母さんの育て方が悪いから、子どもがこうなったのですよ!」私は、あまりの言葉にショックを受けました。この時、医師とはまだ一言も言葉を交わしていません。何も話していないのに、なぜ断言するの?なんとひどい言い方。話も何も聞かないで、何が分かると言うの?私はただただ驚き、自分の子育てを全否定されたショックで、やりきれなさと悔しい気持ちでいっぱいでした。医師との面談の後、女性職員が申し訳なさそうに言いました。「こういうケースは、ものすごく多いのですよ。関東から九州に引っ越して来た人は、カルチャーショックで、子どもと母親は耐えられなくて関東に帰ってしまい、父親だけが残って単身赴任になるんです。」私は、この女性職員の言葉に救われたような気がしました。けれども、若い医師の言葉はずっと心に引っかかり、自分の子育ては間違っていたのだろうかと、母親としての自信を失いかけてしまったのでした。神経性食欲不振症(拒食症)と診断されて出典 : その後も娘は、下を向いて顔も上げられない状態が続き、歩くのもおぼつかなく、食事も取れなくなり、164cmで42kgだった体重が30kgを切るまでになりました。私たちは、次男の主治医に娘の診察をお願いしました。児童相談所のあの若い医師とは違い、娘の様子をしっかりと診てくれました。娘に下りた診断は、神経性食欲不振症(拒食症)。体力を回復させる内科治療をしながら臨床心理士のカウンセリングを受ける事に決まり、娘の治療が始まりました。週に一度、1時間の女性心理士のカウンセリングと並行して、次男の言葉の教室でお世話になっている言語聴覚士にもお願いをして、娘の指導をしていただきました。娘の言葉はすぐには出ませんでしたが、言語聴覚士の指導で行われた私と娘が身体を密着させて行う運動療法は、お互いの不安を解消させてくれました。二人で向かい合って座り、手を繋いで引っ張り合いをしたり、その手をお互いの背に回し、ギューッと抱きしめたり、背中合わせでおしくらまんじゅうをしたり…言葉はなくても、お互いの心が一つにならないと出来ない運動でした。何回か通ううちに、娘は、「うん…」と声が出るようになりました。絞り出すような娘の声を聞いた時、私は嬉しくて心から感謝をしました。それからようやく、少しずつ娘の言葉が出てきたのでした。ところがそのうちに、また別の奇妙な出来事が起きるのです。娘は「お母さん大好き」と言って、私の顔をじーっと見つめ、異様な笑みを浮かべ、それから、私の行く先々に着いて回り、トイレの中まで入ってくるようになったのです。いわゆる赤ちゃん返りでした。娘は、私のそばを片時も離れなくなり、「抱っこ!」と言って膝に乗って来ます。私は一晩中、私よりも身体の大きな娘を抱っこして座ったまま状態で過ごすことになり、朝まで眠れない日々が続きました。一瞬たりとも、心が休まる事はありませんでした。4,5日経つと、さすがに娘も辛くなったのでしょう。夜は布団で寝る…と言って、添い寝をするようになりました。日中も夜も、私は娘のそばを離れる事もできない状況でしたが、次第次第に、娘の様子も安定していきました。そして、夏休みも終わろうとする頃、娘はようやく無言状態から脱出したのでした。不思議なもので、娘が安定してくると、あれほど不安定だった次男も落ち着いてきました。2人が不安定になって、私ひとりでは手に負えない状態でしたが、少しずつ事態は進展していったのです。自らカウンセリングをストップさせ、再び学校へ…娘の家での様子はこのように変化していきましたが、その間も週に1度のカウンセリングは続けていました。カウンセリングは1時間ほど、心理士と娘だけで行われました。たわいもない話をしたり箱庭療法をしたりして過ごしながら、私たちには話さない学校での出来事を話していたようでした。何回目かのカウンセリングを受けた後、娘は自分から心理士に「もうこれ以上続けていても意味がないから、自分の気持ちに蓋をして、学校に行きます。」と言って、突然にカウンセリングを終了させました。私は驚きましたが、娘の決断は揺るぎませんでした。そして、10月の終わり頃、娘は休んでいた中学に再び通い始めました。私たちは、もう少しゆっくり休むようにと伝えましたが、娘は私たちを押し切って、学校へと戻って行ったのでした。体調はまだ戻っておらず、調子の良い時だけ登校する形で、通院しながら頑張って登校しました。以前は、男子生徒からの悪口が酷かったのですが、担任教師のお陰で、娘の悪口を言う生徒は減っていきました。若い教師でしたが、何度も家庭訪問をして下さり、娘や私の気持ちを親身になって考え、支えてくださいました。娘は、カウンセリングを終了しても、困った時には心理士に電話をかけていました。カウンセリングという形を取らなくても、いつでも深夜でも相談に応じてくださる心理士の存在は、娘にとって、どんなにか心強かった事でしょう。この心理士と担任教師の二人を味方につけて、娘は学校という孤独な場所に立ち向かって行ったのでした。出典 : 中3になった娘の高校受験対策出典 : 中1の10月から登校を始めた娘は、中2も同じ担任教師のクラスとなり、生活を変える事なく、体調の良い時だけ登校しました。無理のない登校で、だんだんと落ち着きを取り戻し、笑顔も見られるようになりました。けれども、中3では担任も変わり、娘への理解も得られませんでした。自分の考えを押し通す担任に、私は不安を覚えました。高校受験も控えているので、体調の良い時だけ登校する訳にもいかず、悪口を言われても、嫌がらせがあっても娘は我慢して登校を続けたのでした。担任教師が理解してくだされば、なんとか頑張れるものなのに、担任は娘の訴えを否定し続けます。クラスの生徒に悪口を言われて我慢できずに、娘が担任に相談に行くと、まるで娘のほうが告げ口をしているかのように思われて「どうして、いちいち言いに来るんだ。」と突っぱねて、少しも娘の気持ちを理解しようとしないのです。私自身も何度も学校に行き担任に話をしましたが、私の話など聞く耳を持ちません。そこで、小学校の時と同じように主人と2人で学校に出かけ、夫婦揃っての校長面談を取り付けることにしました。ですが、いざ学校に行ってみると、現れたのは校長ではなく学年主任。私たちの話を「はい、はい」と笑顔で頷いて聞くばかりで、全て分かっているかのように応答したのでした。私は、この表面的な応対に人としての温かさの微塵も感じず、失望したのでした。推薦入試で高校合格へ… 卒業への思い。出典 : 担任教師にも学年主任教師にも理解を得られず、修学旅行や体育祭、文化祭など行事があるたびに辛い思いをしながらも、娘はどうにか、残りの学校生活を乗り切っていきました。中3の2学期になって高校見学や説明会が始まると、私は娘と私立の美術科のある高校見学に行きました。私たちだけのために応対してくださった美術科主任教師は、とても穏やかな優しい方でした。私はその誠実なお人柄に惹かれて、初対面であったにも関わらず、心を開いて話が出来たのでした。「毎日一緒にいる担任教師よりも、この初対面の教師のほうがよほど理解してくださるではないか…こんな出会いはそうそうない」私は、この教師になら娘を安心してお任せ出来ると確信し、この高校の美術科の推薦入試を娘に受けさせ、無事に合格通知を頂いたのでした。九州に転居してからずっと、娘はひとりで耐えて来ました。転勤とはいえ、住みたくもない街で暮らし、行きたくもない学校に行かなければならない事は、辛く苦しいものだったに違いありません。苦しんでいる我が子に、してやれることは何なのか。親として出来る限りの事は、してきたつもりです。ですが、果たして、これで良かったのでしょうか。発達障害への認識が、現在のように進んでいたのなら、娘はこんなに苦しまなくても良かったはず。療育や支援を受けて、もっと娘自身を輝かせる事が出来たはずです。医師ですら、発達障害の認識がない時代では、支援も療育も受けられず、当事者だけが苦しみの中にいたのです。現在なら、学校に行かない選択も出来たでしょうし、必要な支援も療育も受けられるでしょう。時代のせいにはしたくありませんが、そんな時代であったのは事実です。卒業式の日、娘は立派に卒業証書を頂きました。晴れ晴れとした娘の顔を見て、私はホッとしていました。本当によく頑張ったね。卒業おめでとう…私は、娘のこれからの道が明るく光り輝くものとなるようにと、願ったのでした。
2017年01月25日幼いころから続いた、娘の「足が痛い」という訴え出典 : 歳の娘にはアスペルガー症候群の診断が出ています。ある日「学校をやめる」と宣言してから、毎日家で過ごしています。そんな娘ですが、不登校になる前はよく、足の痛みを訴えていました。そのたびに「成長痛かな?」「きっと身体が大きくなろうとしているんだよ」と軽く聞き流していました。しかし、ピアノの練習や宿題の最中など、「どうして今?」という場面でも痛みを訴えるため、不思議に思っていた私。足の病気かな?と不安に思ったりもしましたが、遊びの時間になると「もう治った!」と走り回っているので、病院へ行く程でもないのかな…と様子見を続けていたのです。本当に痛いの?どのくらい痛いの?あまりにも辛そうな娘を前に出典 : 足の痛みが子どもの心と繋がっていると気がついたのは、娘が登校を嫌がるようになってからのことでした。毎晩「足が痛い」「動かせない」と訴えるようになり、ベッドで娘の足をさすってあげる時間が増えました。学校をお休みすると痛みは引いていき、また夜になると痛みを訴えるのです。登校のストレスが、娘の体に痛みをもたらしていたのですね。学校を休みがちなお子さんの中には頭が痛い、お腹が痛いと訴えるケースが多いというのは知っていましたが、まさか足にくるとは!気がついたときは、目からウロコ状態でした。このような話をすると、「そう言えば休ませてもらえるから『痛い』って言ってるだけじゃないの?」「親が甘やかすから図に乗る」などと言われることがあります。確かにそのようなケースもあるのかも知れません。それでも、子どもがそこまで追い詰められているのならば、休ませてあげるのも大切な選択肢の1つなのかも知れないなぁ…と、個人的には思っています。娘と一緒に、痛みが現れるタイミングを洗い出してみた出典 : さて、子どもが足の痛みを訴えてきたとき、それが本当の痛みなのか?本当ならどの程度の痛みなのか?他人である私にはわかりません。それでも、涙目で痛みを訴えてくる子どもの言葉を信じることから始めてみることにしました。そして娘と一緒に、「どんな時に痛みが出るのか」を観察してみることにしたのです。観察を続けて行くうちに、少しずつ痛みの出るタイミングが見えてきました。前日から学校を休むと決めている場合は、痛みが出ることはありません。行けそうなら行ってみよう!と言ってベッドに潜ると痛みが出てきます。学校だけではなく、新しい習い事の体験日が迫っている時なども、痛みが出ることが分かりました。そうして長期間観察した結果、「安心できる場所以外へ出かける予定がある場合、足に痛みが出る」という結論に達しました。極度に緊張する場面で、手に汗をかくなどの反応が出る人もいますが、娘の足の痛みもそのような反応なのだと考えることで、少しずつ娘の不安を探る手段にもなっていきました。観察や分析を繰り返すことで知った、子どもが抱えている漠然とした不安出典 : ある日の会話です。娘「ママ、ここのところずっと足が痛いんだけど、どうしてかな?」私「あれ?特別なところに行く予定はないはずだけど...」娘「そうなの。でも痛いからどうしてかなぁと思って。」母「そうねえ・・・。あ!もしかして、この間水泳教室でテストに合格したから、次から平泳ぎに入るでしょ?それでちょっと水泳教室に行くのが不安に思えるのかも?どうかな?」娘「確かに!平泳ぎはやったことがないから、怒られたらどうしようってずっと怖かったんだ!ママ、ありがとう!それだ!」母「そっか。じゃあ少しでも不安を軽減させるために、パソコンで平泳ぎの基礎を調べてみたらどうかな?いろんな動画もあると思うよ!」娘「なるほど!やってみるね!」母「きっと、一度水泳教室で平泳ぎを教えてもらえば足の痛みは取れるから、それまではマッサージしたりして乗り切ろうね。」娘「そうだね!次の水泳教室までの我慢だね!」出典 : こんな風に会話することで、娘の中でよく見えていなかった不安を洗い出せるようになっていきました。生活の中で漠然と抱えている不安要素を、足の痛みをきっかけにきちんと捉えることができるようになり、娘自身理由が分からないまま機嫌が悪くなったり、他人にきつく当たったりすることが減っていきました。一時は娘が足の痛みを訴えるたびに「何がいけなかったのか」と、鬱々とした気分になる私でした。でも今では、「足が痛い」と相談されると、「いいサインを出してくれたね!何が不安なのか、一緒に考えてみよう!」と、プラス方向に捉えられるようになりました。子どもの訴えを信じることで、見えてくるものがある出典 : 「足が痛い」「頭が痛い」「お腹が痛い」…。子どもからいろいろなサインが出たとき、「気のせいだよ」「頑張りなさい」と痛みを無かったことにしてしまうのは、実はとてももったいないことなのかもしれません。まずは一旦痛みを受け止め、子ども自身がきちんと掴み切れていないストレスの原因を探るチャンスに変えてみても、よいかもしれませんね。
2017年01月24日