■生理直前になると阿修羅と化す私
私は普段は比較的穏やかに生きている。その証拠にかつて、実の娘から「お母さんはいいお母さんだけど、物書きとしては非常識な親だった方が売れてたのかな……」と申し訳なさそうに言われたことがあり、「バカ!私はそんなことネタにしなくたって売れてやる!」と娘には言ったけど、その言い方も穏やかだったので残念ながら説得力は皆無だっただろう。
とはいえそんな私でも当然ながら心乱すことはあって、それはえてして生理直前の数日間だ。この時期にタイミング悪く肉体疲労や低気圧などの条件が重なったりすると途端にどっぷりと落ちる。
フリーランスの物書きという仕事柄、自分がいつまでこの仕事をやっていけるのかとか、果たして今誰かが自分の書いたものを必要としてくれているのだろうかとか、中身スッカスカの文章しか必要とされない腐った世の中だとか、日頃から小さくくすぶらせている不安や鬱憤や逆恨みがすべて何十倍にも膨れ上がり、無視できなくなってしまう。目に入るすべての生きとし生ける同業者への憎しみ、妬み、そねみの業火に焼かれ、阿修羅となってしまうのである。20代の頃の私は、この荒波にはいつなんどきもひとりで立ち向かわなければならないものだと信じて疑わなかった。