全ステージ生存率は9.6%、医師が語る「膵臓がん」の厳しさ
日本ではまだ数少ないオンコロジスト(腫瘍内科医)で、抗がん剤のエキスパートである武蔵野徳洲会病院の佐々木康綱先生は語る。
「確立された検診法がないうえ、早期発見が難しく、見つかった多くの患者さんは、すでに切除不能であるケースがほとんどなのです。たまたま別の病気でCTスキャンを受け、運よく早期発見できたような場合は、完全切除が可能で、治癒に結びつくこともありますが……。また、膵臓がんは、多臓器に浸潤・転移しやすいのも特徴です。その場合は化学療法が適用されますが、近年、難治がん治療の鍵とされる、分子標的薬も、免疫細胞を再活性化する『免疫チェックポイント阻害剤』も、膵臓がんに対しては、あまり有効なデータがないのが現状です。ただし近年、日本で開発されたS-1という抗がん剤が、進行膵臓がんを対象とした治験で、5年生存率44%という好結果をたたき出しました。この数字から、この治療法が極めて優れている可能性がありますが、わが国でしか使える薬ではないので世界的な標準治療になるかはまだ未確定です。また最近では、がんの遺伝子解析により膵臓がんの中にもDNA配列ミスの修復機能の働かない『マイクロサテライト不安定性(MSI)