2020年7月4日 11:00
遠隔診療で広がる新型終末医療「最期の瞬間を故郷の家族と」
幹雄さんは最後の力を振り絞って父と抱き合った。20年ぶりに家族全員が集まった瞬間だった。幹雄さんはそのまま地元の病院に入院し、翌々日、息を引き取った。故郷の地で、家族に見守られながらの最後だった。
■「最後にタッチした人が”負け”」
内野医師は、男性を退院させるとき、元の主治医から「なぜこんなリスクの高いことをするのか?」と問われたと言う。
「『医療の革命です』って答えたら、苦笑いされましたよ(笑)。リスクしかないことは承知しています。言葉は悪いですが、最後にタッチした人が”負け”なんですよ。
病院の先生だって患者さんの望みを叶えたいという気持ちはあるんですが、リスクは冒せない。でも、僕が主治医になれば、病院は責任から逃れられるので退院させられます。僕のクビくらい、別にいいんです」
実際、訴訟のリスクはある。幹雄さんのケースでも、事前に免責の同意書にサインはもらっているものの、「実際に効力はない」と内野医師は言う。ジュネーブ宣言によって、弱い立場である患者は、インフォームドコンセントによるいかなる同意も撤回できるという決まりがあるからだ。つまり何かあった場合、患者側が訴えれば、退院を許可した内野医師が”被告”になることは避けられないのだ。