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こんにちは、佐原チハルです。肌寒い季節になり、冬が深まると、気になってくるのが感染症です。インフルエンザ、溶連菌、ノロウイルスなどさまざまありますが、忘れてはいけないのが『マイコプラズマ肺炎 』です。特に幼年期や学童期のお子様 がいる方、また青年期までの年齢の方 は注意しておきたいものです。そこで今回は、『マイコプラズマ肺炎』の特徴をはじめ、症状・対策のポイントをまとめてみました。●マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?マイコプラズマ肺炎は、『マイコプラズマ・ニューモニア』という細菌によって引き起こされます。とても小さな細菌だそう。通常、肺炎というと乳幼児や高齢者に多い印象があるかと思いますが、それらの細菌性肺炎とは違います。マイコプラズマ肺炎にかかりやすい年齢層は、幼児・学童期・青年期が中心 なのです。感染報告は1年を通してありますが、秋〜冬にかけてが多めだということです。特徴としては、・潜伏期間が長め(2~3週間)・乾いた咳が出る(風邪と間違いやすい)などがあげられます。●マイコプラズマ肺炎の症状って?マイコプラズマ肺炎の始まり方は、通常の風邪ととてもよく似ています。熱が出る、頭痛がする、乾いた咳が出る、だるいなどです。そのため、マイコプラズマ肺炎であると気づけるタイミングが遅くなることも多いそうです。風邪よりも長引くことが多い ので、咳がなかなか治らない、などのときには、マイコプラズマ肺炎であることも想定しながら病院に行ってみるのがよいでしょう。保育園・学校など、周囲でマイコプラズマ肺炎にかかった子どもがいた場合には、その旨を医療機関にも伝えておいた方が安心です。またマイコプラズマ肺炎の場合は、風邪とは違い、重症化したり、中枢神経系の症状が出たり、中耳炎になるようなこともあります。合併症のリスクがある 、ということです。ただの風邪だと思われても、長引くようであればしっかりと病院に行けるようにしたいですね。●マイコプラズマ肺炎を予防するには、どうしたらいい?インフルエンザやおたふく風邪などとは違い、マイコプラズマ肺炎には予防接種がありません。感染経路は「飛沫感染(せきやくしゃみの際の唾などに含まれる病原菌による感染)」「接触感染(病原菌のついた部位で口や鼻などを触ってしまう)」です。通常の風邪と同様、手洗い・うがい・マスクの着用などで気をつけておくようにしましょう。なお、マイコプラズマ肺炎自体を治療するには、抗生物質の服用が必要 です。必ず、お医者さんに指示されたものを、指示された通りに飲むようにしましょう。自己判断で飲むのを途中でやめてしまったり、以前に出されていたものを飲んだりするのは危険ですので、いけません。できる範囲で予防をしっかり行うことが大切ですが、お子さまの年齢がまだ小さいと、うがいが難しかったり、マスクをしてくれなかったりして、予防が難しくなることは多いです。家族に二次感染することも多いので、一家でかかってしまった……という事態にもなりかねません。重症化も避けたいです。長引く風邪や、不安があったときには、早めに医療機関を受診し、早期対策ができるようにしたいですね。【参考リンク】・保育所での集団発生が起こりやすいのに、あまり知られていない!? マイコプラズマ肺炎 | (財)日本病児保育協会()・マイコプラズマ肺炎 | 東京都感染症情報センター()・マイコプラズマ肺炎とは | NIID国立感染症研究所()●ライター/佐原チハル(フリーライター)●モデル/沖まりね
2016年11月29日こんにちは、ライターの齋藤惠です。みなさんは『リーキーガット症候群 』という病気をご存じですか?日本ではその名前こそ知られてはいないものの、じつに70%もの日本人がかかっていて慢性的な症状に悩まされているという報告もあります。アメリカではすでに深刻な問題となっているとか……。そんなリーキーガット症候群とは、どんな病気なのでしょうか?●こんな症状ならリーキーガット症候群かも?リーキーガット症候群とは腸の病気です。英語では『Leaky Gut Syndrome』といい、直訳すると“Leaky=漏れる”、“Gut=腸”、“Syndrome=症候群”となります。腸の粘膜が傷ついたり穴が空いたりして未消化の物質や有害菌が体内へ漏れ出してしまう病気です。英語を省略して『LGS 』、または『腸管壁浸漏症候群 』とも呼ばれています。代表的な症状には、以下のものがあります。【腸】……便秘、下痢、胸焼け【皮膚】……にきび、発疹、湿疹、じんましん、アトピー性皮膚炎【脳】……慢性頭痛、うつ、自閉症、ADHDこれらはあくまで多くの人に共通して見られる症状の例であり、実際にはもっと多様な症状が起こる 場合があります。一つひとつを取ると独立した病気のように思われがちですが、根底にリーキーガット症候群という深刻な病が潜んでいる可能性があるのです。そう考えると、便秘も頭痛も軽視できませんね。●原因となる生活習慣『栄養医学研究所』によると、リーキーガット症候群は、乱れた生活習慣によって引き起こされる場合が多いようです。例えば、以下の過剰摂取が原因となる可能性があります。・アルコール類やカフェインなどの刺激物・(風邪薬などに含まれる)抗生物質・着色料、防腐剤、酸化防止剤などの食品添加物・精製食品炭水化物食品(白米、パン、砂糖など)・避妊用ホルモン(ピル)日常で多く摂り過ぎているものがあれば要注意です!なお、抗生物質があげられる理由は、“胃腸器官系の細菌、寄生虫、カンジダ、真菌類の異常繁殖を促すため ”だそうです。アルコールやカフェイン、精製食品などはとくに私たち現代人にとって身近な存在であるだけに、普段から過剰摂取しないよう気をつけなければいけないですね。●“腸の不調は万病のもと”と心得て!腸は人間の健康をつかさどる臓器の中でもとくにデリケートな部分 と言われています。腸の働きは単に食べ物の消化吸収だけにとどまらず、栄養をエネルギーに変えたり、解毒作用があったり、感染症に対抗する免疫を持っていたりと、生きるために必要な機能をたくさん担っています。そんな重要な腸のバリア機能が壊れ、栄養も病原体も漏れ出してしまう恐ろしい病気がリーキーガット症候群なのです。栄養過多やストレスによって日々、私たちの腸は病気の危険にさらされているかもしれません!そうならないために、毎日の生活習慣を見直しましょう!具体的にできることは、・胃に負担をかけない食生活をする・精製食品よりも玄米や黒糖などを食べる・食品添加物が多く含まれた食品を避ける・風邪薬やピルの気軽な使用は避けるなどです。できるところから実行して、健康な腸を保つ生活を送りましょうね!【参考リンク】・LGS(リーキーガット症候群)について | 栄養医学研究所()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年11月28日こんにちは。メンタルケア関係を中心に執筆しているメンタルケア心理士の桜井涼です。気温の寒暖差や気圧の変化を強く感じることで、体調を崩すことが多い季節になりました。長く続いた夏の暑さから、急激な寒さと乾燥といった気候の変化に体がついていけないことがあります。そうすると、さまざまな症状を引き起こすだけでなく、風邪などの疾患を起こしやすくなるのです。●秋風邪の原因と症状秋風邪をひいてしまう原因は、寒暖の差が大きく関係しています。それが体温調節に影響し、自律神経のバランスを崩してしまうことにつながるのです。自律神経のバランスが崩れてしまうと、ゆっくり睡眠がとれない、体力低下、だるさなどといった症状を起こします。そこに日常生活で起こるストレスが影響し、免疫力が低下してしまうという状態が起こってしまうのです。症状は、・発熱(38度を超えることもあります)・呼吸器系のトラブル(咳・鼻水・痰・喉の痛みなど)・頭痛やめまいなどです。この中でも特につらく感じるのが、発熱と喉の痛みと咳ではないでしょうか。晩秋になると、気温が下がります(日によって気温の差が激しく変わることも関係)。また、空気も乾燥してきます。免疫力が低下しているときに冷たく乾燥した空気を吸うことで、喉にウイルスが定着しやすく、炎症を起こしてしまうのです。ひどいと、気管支炎などにかかってしまうこともあります。●花粉症との違いこの時期、咳や鼻水といった呼吸器系のトラブルが出るため、「風邪をひいたかも?」とすぐに思ってしまうかもしれません。しかし、自己判断は危険です。風邪ではなく、花粉症である可能性もあるからです。花粉症というと、春のスギを思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど、秋になるとブタクサ、ヨモギ、カナムグラといった植物が花粉を飛ばします。これらの植物に対してアレルギー反応を起こしてしまう人もいます。症状が強いと微熱を出す人もいるくらいです。秋風邪と花粉症の違いは、目のかゆみと高熱です。花粉症の場合は、目のかゆみと共に呼吸器系のトラブル が出ます。熱は出たとしても微熱程度です。秋風邪の場合は、呼吸器系のトラブルと高熱 が出ます。目のかゆみはありません。この2点に気をつけて、秋風邪なのか花粉症なのかを仮判断し、早めに医療機関を受診することをお勧めします。●予防方法秋風邪に対する対処法は、手洗い・うがいの他に次のことがあります。・体を冷やさない・マスクをするなどして冷気を思い切り吸い込まないようにする(気管支が弱い人は特に!)・ストレスを溜めない(免疫力の低下につながります)・軽い運動をして体力をつける・水分補給をこまめにして乾燥から身を守るなどです。特に体を温めることは、心に安らぎを感じさせることにもつながります。少々のストレスなら、温かみで癒やすことができるでしょう。コーヒーなどの温かい飲み物でもいいですが、根菜がたっぷり入っている味噌汁や豚汁、ポトフなどのスープ類を食べることをおすすめします。また、ホッカイロや腹巻きなどの腹部を温めるものを早い段階で使うのもいいですね。●おわりに秋はどうしても風邪をひきやすくなってしまいます。夏風邪と違って、喉に炎症を起こしやすい のでつらさが強いと言えます。油断していると長引きもします。気圧や気温など、少しでも「冷えるな」と感じたら、予防方法としてご紹介したことを試してみてください。つらい風邪を早い段階でくい止めましょう。【参考文献】・『non・no生活基本大百科』集英社・発行●ライター/桜井涼(メンタルケア心理士)●モデル/椎葉咲子(苺乃ちゃん、胡桃ちゃん)
2016年11月23日こんにちは、保育士でライターのyossyです。皆さんは、『先天性心疾患』についてどれくらい知っているでしょうか?実は、100人に1人 の割合で先天性疾患の赤ちゃんが産まれてくると言われています。意外に多いですよね。 生後すぐに見つかる場合もあれば、大人になってから気づく人もいるのだとか。今回は、先天性疾患のなかでも最も多い『心室中隔欠損 (しんしつちゅうかくけっそん)』(『心室中隔欠損症』とも言われます)について解説します。●心室中隔欠損は500人に1人の病気先天性心疾患の約20%が心室中隔欠損だと言われており、500人に1人程度に起こる病気 ということになります。具体的に、どういう病気なのかをみていきましょう。心室中隔欠損というのは、左心室と右心室を隔てる筋肉の壁に、生まれつき穴があいている病気のこと。心臓が4つの部屋に分かれていることはご存じのかたが多いでしょう。右心室、右心房、左心室、左心房という4つの部屋があります。心臓はポンプのような役割をしていますが、全身からの血液(酸素が少ない)↓右心房↓右心室↓肺(酸素を取り入れる)↓左心房↓左心室↓全身へという順序で巡っていくのです。全身を巡ると血液中の酸素は減ってしまいますが、右心室から肺に行くことで、また酸素を取り入れているのですね。右心室と左心室は隣り合っていますが、壁があるため、本来直接血液が流れ込むことはありません。しかし、心室中隔欠損の場合はそこに穴があいているので、左心室の血液が右心室へ流れ込んでしまうのです。その結果、心臓は余分な血液を送らなくてはならなくなり、負担がかかってしまいます。●呼吸が速くなる、体重が増えづらい等の症状が出ることも心室中隔欠損の場合、生後1週間程度で心雑音が現れることが多く、1か月健診時に診断されることも多いようです。穴の大きさや位置によっても症状はさまざまですが、心雑音以外の症状が全くと言っていいほどないケースも。穴が小さければ、1~2歳ごろまでに自然閉鎖することも多い と言われています。ただし、・呼吸が速くなる・脈が速い・母乳・ミルクの飲みが悪く、体重が増えづらいといった症状が出る場合もあり、手術が必要になることもあります。手術をすれば、問題なく園生活・学校生活を送れるケースが多いようです。●原因は遺伝子の異常であることが多い妊娠中の風疹感染、タバコやお酒、赤ちゃんに有害な薬などの影響で先天性心疾患になることもありますが、赤ちゃんの遺伝子の異常が原因のケースも多いと言います。症状が軽い場合、通常の生活をしているうえでは気づきにくいケースも多い先天性心疾患。筆者の子の場合は、生後4日目の診察で2つの心疾患がみつかり、そのうちの1つが心室中隔欠損症でした。定期的に検査を受け、3歳を過ぎてから完治の診断を受けています。定期的な診断を受けていれば、異常が出ても早期に発見できるケースが多いはず。医師から心雑音などを指摘されたら、早めに専門医を受診しましょう。【参考リンク】・心室中隔欠損症 | 日本小児外科学会()・心室中隔欠損(VSD) | 国立循環器病研究センター病院()・[73]こどもの心臓病 | 国立循環器病研究センター()●ライター/yossy(フリーライター)●モデル/倉本麻貴(和くん)
2016年11月17日こんにちは。心理食育インストラクターのSAYURIです。空気が乾燥し始めると症状が強くなると言われるアトピー性皮膚炎。自分にアトピーがあると、「子どもに遺伝したら……」と不安になる人も多いようです。そこで今回はNPO法人予防医療推進協会の理事でアトピーアドバイザーとして全国で公演活動や2,000人を超えるメルマガ会員さんにアトピー情報を発信している、桑野やすし氏にお話を伺いました。●アトピーは遺伝するってホント?桑野氏によると、『「アトピーは遺伝するのか?」については、いくつもの研究・調査があるようですが、概して「遺伝する 」と言ってよいでしょう。研究によって幅がありますが、片親がアトピーの場合で30〜50%程度、両親ともアトピーの場合で50〜80%程度の子どもがアトピーになると言われています。日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版』にも、アトピー素因の一つとして“家族歴”が記載されていますね。遺伝が重要なファクターだと認識されているということです。僕自身3か月の息子がいますが、いずれ彼にもアトピーが発症することを覚悟しています。今できることとしては、3つあると思って実践しています』とのこと。以下に桑野氏が実践している対策法をご紹介します。●子どものアトピー発症に備えた対策●(1)保湿をこまめに丁寧に乳幼児期の子どもの肌は非常に乾燥しやすいので、カサついていたらすぐに保湿。化粧水と乳液の組み合わせで行っています。離乳食が始まったら、食事前に口の周りにワセリンを塗って、食品が口周りの皮膚に付着しないよう保護する こともお勧めします。●(2)動物園や牧場へ行く家畜などの動物が身近にいる環境で育つと、アレルギーの発症率が5分の1になるという研究があります。さすがに家畜は飼えませんが、動物園や牧場へは連れて行ってあげようと思っています。●(3)親の食卓での振る舞いを見直すアトピーの子どもさんの多くは早食いで姿勢が悪い。そうすると消化・吸収に負担がかかります。ですから、姿勢良く、ゆっくり食べるという習慣を身に着けさせる ことが大切。そのためには、ご両親がそういう食べ方を実践する必要があるわけです。子は親の姿を真似しますからね。一口ごとに箸を置いてよく噛み、食事中は席から立たない。落ち着いた食卓を築いてください。●親が心の準備をしておくことも大切また同氏によると、親の心の準備も大切とのこと。桑野氏がこれまで数多くのアトピーのお子さんを見てきた中で、アトピーの子どもを持つ親のメンタルについても以下のようにお話しされています。『アトピーのお子さんを抱える家族を見ていると、多くの場合、子どもよりも親の側に心理的な不安定さが見え隠れしています。親が自分を責めていたり、わが子を過剰に“かわいそう”に感じていたり、周囲の目が気になってアトピーであることを隠そうとしていたり。そういう心の“ぐらつき”があると、それは子どもにも伝わります。そうすると、ストレスの影響で症状が悪化・長期化する こともありますし、親子関係にしこりを残す ことにもなりえます。「アトピーになってもならなくても、この子に幸せがたくさん降り注ぐことを祈っていよう」というくらいの心の準備をしておきたいですね。遺伝する確率が高いということは、“準備ができる”ということです。お子さんがいる方も、これからという方も、今からできることがあると思います』----------いかがでしょうか。自分がアトピーであったり子どもにアトピーがあったりすると、どうしても不安やつらい気持ちが大きくなりがちですが、桑野氏のアドバイスによって少しでも心が軽くなればと思います。【取材協力/アトピーアドバイザー・桑野やすし】・アトピー改善アドバイザー 桑野やすし オフィシャルブログ●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)●モデル/神山みき(れんくん)
2016年11月17日こんにちは、ライターの齋藤惠です。2016年10月22日に放送されたラジオにて、歌手の和田アキ子さんが『シェーグレン症候群 』という病気にかかっていることを発表しました。あまり聞き慣れない病名ですが、いったいどんな症状になってしまうのでしょうか?また、私たちにも起こり得る病気なのでしょうか?●難病『シェーグレン症候群』とは?難病情報センターの説明によると、『シェーグレン症候群』とは、『1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患』だそうです。また、『日本では1977年の厚生労働省研究班の研究によって医師の間に広く認識されるようになりました』とのことです。一般の人々にはほとんど知られていない病気という印象がありますが、意外にも、潜在的な患者さんやアメリカでの報告を含めると年間10~30万 もの人々がこの病気によって病院にかかっているそうです。●具体的にどんな症状?シェーグレン症候群になると、下記のような症状があらわれます。・目の乾燥(ドライアイ)・口の乾燥・鼻腔の乾燥・唾液腺の腫れと痛み・全身の疲労感人によって個人差はありますが、実にさまざまな症状が起こってしまいます。ちなみに和田アキ子さんの場合は、涙や唾液が出にくいとのことで、常に水を手放すことができない生活を送っているそうです。歌手にとっては直接仕事に影響しそうな症状ばかりで、つらそうですね。●どんな人がかかりやすい?シェーグレン症候群の患者さんは、とくに50歳代の女性に多い と言われています。ただし、少数ですが子どもから高齢者まで広範囲にわたり発症する可能性はあるとのことです。女性ホルモンの変化や遺伝、ウイルス、免疫異常など複数の原因が考えられるようですが、やはりこれから更年期などをむかえる女性は特に気をつけたほうがよいでしょう。●どんな治療をするの?現在のところ、残念ながら病気そのものを治療する方法は見つかっていない ようです。ただ、患者さんの症状に合わせて乾燥対策を行うことで、10年後も20年後も現状と変わらない生活を送ることができるといいます。そのためには、定期的な健康チェックを行い、医師の指示にしたがって生活習慣を改善していけばよいとのことです。具体的には規則正しい生活や、過労を避け休息をたっぷりとること、適度な運動など、シェーグレン症候群に限ったことではなく、誰もが健康を維持するために理想的な生活をすれば自然と病気の悪化を防ぐことにつながります。根本的な治療方法がわかっていない難病と言われているだけに、かかってしまった人は極度の不安に陥ってしまうこともあるようですが、体の免疫力を落とさないためにも事態を暗く考えてはいけません。今回、和田アキ子さんが病気を公表したことで、シェーグレン症候群への理解が一般へと広がり、治療の研究が大きく進展することに期待したいですね!【参考リンク】・シェーグレン症候群 | 難病情報センター()・シェーグレン症候群 | 大阪大学 免疫アレルギー内科(大学院医学系研究科・医学部)()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)
2016年11月07日気分障害とは出典 : 気分障害とは常に気分が落ち込んだり、逆に高まることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気です。この障害名は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)により定められています。気分障害とは気分に関する障害がある病状・疾患を一群としてまとめたものをさしますが、主に以下が含まれます。・うつ病エピソード・躁(そう)病エピソード・双極性障害(躁うつ病)・反復性うつ病性障害・持続性気分障害「エピソード」とは、症状が現れている状態であるということを表す用語です。上記の分類に当てはまらない場合は、その他の気分障害や特定不能の気分障害と診断されます。人は生活を送っていると少なからず嬉しいことや悲しい出来事に直面しますが、その際に気分が上がったり、気分が落ち込んだりしてしまうことは当たり前のことです。しかしこのように発生した感情を、自分でコントロールできなくなることがあります。こうした状態が一定期間以上続いて仕事や私生活など普段の生活に支障がでている場合は、気分障害の可能性があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害の種類と症状出典 : 『ICD-10』によると気分障害は大きく分けて5つに分類することができます。うつ病エピソードは気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態のことです。医師によってうつ病エピソードが確認されると、いわゆるうつ病と診断されます。うつ病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。厚生労働省のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされるとてもメジャーな疾患ですが、その中の4分の3の人は治療を受けたことがないと言われています。症状としては、・通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる・喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう・通常より2時間以上早く起床する・重度の抑うつ気分が午前中に現れる・食欲が激しく低下する・体重の減少・様々な欲求への著しい減退が挙げられます。現れる症状は人それぞれですが、『ICD-10』によるとこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上つづくとうつ病の基準を満たしていると診断されます。また、うつ病が重症になると妄想の症状が出ます。代表的なものは体の過度な不調があると妄想する心気妄想、自分はまずしいと思い込んでしまう貧困妄想、自分は犯罪など悪いことを行ってしまったと確信してしまう罪業妄想です。1990年のWHOの研究では「健康な生活を障害する疾患」の4位として発表されていましたが、2020年には虚血性心疾患に次いで2位に上昇すると言われています。その理由として社会のストレス要因が増えてきていることがあると言われています。また慢性疾患を抱えているとうつ病が合併しやすいといわれていることも挙げられます。例えばがんを発症している人のうちの20~38パーセント、糖尿病は25パーセントの人がうつ病を合併していると言われています。こころの耳l 厚生労働省気分障害l 慶応義塾大学病院躁病エピソードは爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ち溢れ楽観的な考えに支配される症状が現れている状態のことです。医師によって躁病エピソードが確認されると、いわゆる躁病と診断されます。躁病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。躁病の症状としては、・活動的になる・口数が多くなる・注意不足、集中力低下によるミスが増える・睡眠欲求の低下・性的欲求が高まる・リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす・社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなるが挙げられます。『ICD-10』によると躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、日常生活に本人が感じる程度のトラブルを起こしてしまっていることが条件となります。多くの場合、躁病の症状は徐々に始まり、何となく元気がみなぎってきたり、仕事の能率が上がったりすることで調子がいいと感じていきます。症状が重くなっていくと活動性が増加し、多くのアイデアを実行しようと一日中活動し続けます。この場合に睡眠時間が短くなってしまったとしてもあまり疲れたと感じません。当初は意識的に活動量を調整するように気をつけることができます。しかし、次第に調子が出すぎているという認識がなくなり周囲の人を考えない言動をするようになります。最終的には口数が多く、自己主張が強くなり、しきりに他人の世話を焼こうとし、対人関係トラブルを起こしてしまう傾向にあります。生涯にわたって躁病の症状しか発症しない単極性躁病はとても珍しく、躁病エピソードを発症している人のほとんどは双極性障害を発症しているといわれています。うつ病エピソードのみを2週間以上継続し、2回以上繰り返すと反復性うつ病性障害と診断されます。反復していると診断される基準として、先述したうつ病を発症した後2ヶ月以上同じような症状が現れない期間が存在することがあげられます。反復性うつ病性障害の一例として季節性感情障害が挙げられます。季節性感情障害とは主に秋から冬にかけて抑うつ状態となり、春には症状が改善するなど、抑うつ症状になる期間と回復する期間の転換が1年のうちの特定の時期に起こる疾患です。双極性障害とは一般的に躁うつ病と呼ばれる疾患です。双極性障害はうつ病エピソードと躁病エピソード両方を反復する場合、基準に当てはまると診断されます。初めのエピソードを発症してから次のエピソード発症するまで平均5年程度かかるといわれますが、エピソードを繰り返すごとに再発までの期間は短くなり、一つ一つのエピソードの継続期間はながくなるといわれています。躁病エピソードは急に発症することが多く、2週間から5か月程度持続します。一方うつ病エピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。双極性障害によって気分が高揚し、いらいらしたり、注意散漫になったり、誇大的になったりするなど対人関係などにも様々な障害を引き起こすことがあります。双極性障害は再発率が高いと同時に、自殺をしてしまう確率が精神障害の中で最も高い精神疾患の一つといわれています。双極性障害(躁うつ病)l 前田クリニック主に気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患です。躁病やうつ病の症状は当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっていることが分かる状態をさします。■気分循環症通常は成人早期までに発症する双極性障害の軽症型です。うつ病エピソードと双極性障害の症状すべての条件を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分が良い状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。気分循環症の症状としては、うつ病期間と気分高揚期間にそれぞれ3つ以上の症状が当てはまることが条件となります。うつ病期間:・エネルギーあるいは活動性の低下・自信が急に無くなるなどの自己評価の激しい変化・不眠・集中ができなくなる・引っ込み思案になり、社会からひきこもる・欲求の低下、喜びの感情の喪失・口数が少なくなる気分高揚期間:・エネルギーがありあまり、活動性が高くなる・睡眠欲求がなくなる・自己評価が過大になる・頭の働きがとてもよくなる・社交的になり、人付き合いがとてもよくなる・口数が多くなる・欲求を追い求めるようになる・過剰に楽観的になったり、過去に成し遂げたことに対して過大評価をしてしまう軽うつエピソードが優位の抑うつ型、軽うつエピソードと軽躁(そう)エピソードが同じ頻度で出現する定型的な気分循環症、軽躁(そう)エピソード優位の軽躁型の3つのパターンがあります。抑うつ型を発症している人が一番多く、割合としては気分循環症を発症している人の50パーセントを占めていると言われています。■気分変調症うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。うつ病と違い比較的短期間であれば気分が落ち込まない正常な期間が存在しても診断内容に影響がないと言われています。気分変調症の症状としては、気分循環症のうつ病期間に発症する症状に加えて、・涙もろい・物事に対して絶望感を感じる・日常生活でこなさなければいけない課題を対処しきれないという考えに陥る・将来や過去の出来事に対して考え込んでしまうなどの症状を発症します。これらの症状のうち3つ以上が当てはまると気分変調症を発症していると診断されます。持続性気分障害を発症している人自身は無気力感や気分の大きな落ち込みを感じていますが、社会的・職業的にはトラブルが発生していない場合が多いです。そのため本人も周囲の人も疾患を発症していると認識できず、本人は不調をそのままにしてしまう傾向があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害を発症しやすい年齢出典 : うつ病はいかなる年齢においても発症しますが、発症率は思春期以降に大きく増加します。平均発症年齢は20歳代ですが、高齢者になって初めて発症する人も少なくはありません。厚生労働省研究班のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされています。女性のほうがかかりやすく、有病率は男性の1.5倍~3倍であると言われています。これは女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有のトラブルが多いことが原因の一つであると考えられています。うつ病をしっていますか?l 厚生労働省双極性障害の発症年齢をみてみますと、15~19歳が最も多く、20~24歳がそれについで多く、それ以上では50歳以上も稀にあると言われます。発症平均年齢は30歳と言われています。5、6歳くらいの子どもについても双極性障害の発症が認められていますが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との識別が難しく、まだ研究が進められている段階です。双極性障害l 前田クリニック気分循環性障害は通常青年期または成人期早期に始まる疾患です。性別関係なく発症すると言われており、子どもの気分循環性障害では症状発症の平均年齢は6.5歳です。気分循環性障害がある人が双極性障害を発症する可能性は15~50パーセントです。気分変調症は小児期、青年期、あるいは成人期早期に発症し、慢性化する場合が多いです。『DSM-5 』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)2014年医学書院/刊気分障害の原因出典 : 気分障害が発症してしまう理由として遺伝子、ストレス、環境、性格などの様々な要因が複雑にかかわりあっていることが挙げられます。主な要因は抑うつ症状の強いうつ病・気分変調症、もしくは躁うつ症状がでる双極性障害・気分循環性障害のどちらかによって異なります。しかしまだはっきりとした原因は解明されておらず、今後更なる研究が必要とされています。うつ病・気分変調症は主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病や気分変調症は性格や遺伝の問題であるとされていましたが、近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると多く言われています。■性格:主にきまじめな性格や社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは主に生物学的要因にある傾向があります。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もあります。しかし、この生物学的要因もまだ解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。双極性障害・気分循環性障害の発症要因と考えられるものは遺伝子、ストレス、性格、生物学的要因で、もっとも深く関与していると言われているのが遺伝子です。■遺伝子:双極性障害は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。しかし、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子の組み合わせによって発症するのではないかと推測されています。■ストレス:身の周りで起こることを本人がストレスに感じてしまうことも大きな原因の一つであると言われています。例として結婚や引っ越し、出産などのライフイベントに対する受け止め方や重なり具合、職場の人間関係などが挙げられます。このような生活環境の変化がストレスとなり、こころの安定の成分をつかさどるセロトニンに影響がでてしまったり、様々な支障が発生します。■性格:うつ病・気分変調症を発症する人と違い、双極性障害・気分循環性障害を発症する人は社交的で明るい、ユーモアのある性格という傾向があります。このような性格を一般的に循環気質と表現します。気配りも上手で、常に周囲の人の中心的役割を果たしていますが、気分が高揚しているときと沈み込んでいるときが周期的に訪れるため、状況に応じながら気分や思考がポジティブになったり、ネガティブになったり変化します。しかし、現在では循環気質の性格だけではなく様々な気質の人も発症することが分かっており、執着気質がその一つです。執着気質とは一つのことにたいして徹底的に自分を追い込む頑張り屋さんのような人です。「疲れてなんかいない」といって自分自身を鼓舞し、さらに頑張り過ぎることを継続することで双極性障害を知らない間に発症している場合があります。■生物学的要因:近年双極性障害には生物学的要因もあることが明らかになってきています。それは、脳細胞内にあるミトコンドリアの機能異常です。ミトコンドリアはエネルギー物質を生産する働きの他に、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度を調整する機能をもつ物質です。ミトコンドリアの異常によってカルシウム濃度の調整がうまく行われなくなると細胞内の情報がうまく伝わらず、双極性障害の発症を誘因するものと考えらます。しかし双極性障害は発症する確率も低くはっきりとした原因はまだ解明されていません。研究が今後進んでいくことが期待されます。気分障害l 前田クリニック気分障害の相談先と治療先出典 : 気分障害に区分される疾患はストレスが多い現代社会ではいつ、誰が発症してもおかしくない疾患です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は以下の行政機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、施設によって予約が必要な場合や健康保険の適用が可能なところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■精神科:精神疾患をはじめ、精神障害や睡眠障害、依存症を診療する科です。具体的には不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状を扱います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。前述の精神症状だけでなく、ほてりや動悸などの身体症状、また社会的背景及び家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、気分障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。気分障害の治療出典 : 気分障害の治療法として現在主に効果的であると考えられ、用いられているのは薬物療法、精神療法、そして電気けいれん療法です。発症している疾患により細かい治療法は異なるので詳しい情報は専門家に相談することをおすすめします。薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられます。一方、双極性障害に対しては激しい移り変わりがある感情を安定させる「気分安定薬」が中心的に用いられます。いずれの場合も、不安を抑える「抗不安薬」が同時に処方されることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、適切な量と期間で服用することが重要であるとされています。抗うつ薬は主にうつ病・気分変調症に処方されています。双極性障害・気分循環障害を発症している人が抗うつ薬を服用するとかえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまったりすることがあるため、躁うつの症状に対しては抗うつ薬は基本的に使用されせん。気分安定薬には気分が上がりすぎる躁状態を抑える効果、沈みすぎてしまう抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。現在、双極性障害・気分循環障害の薬物療法は気分安定薬が中心となっていますが、飲み始めてからしばらくは重い副作用を防ぐために血液検査が数回必要です。また検査後も一定期間ごとに採血をすることで効果と安全性が確かめられるため、継続して受診することが大切です。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20%の患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50%に上がります。また、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性が2倍になるという研究結果もでています。しかし、いずれの場合も治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、自分だけで判断することは危険です。治療の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守って行うことが大切です。気分障害l 慶應大学病院気分変調症l前田クリニック現在様々な精神療法が開発されていますが、気分障害に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。一般的には医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握します。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていく治療法です。また対人関係療法は気分障害を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。うつ病、双極性障害に有効といわれています。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。気分障害l 慶應義塾大学病院まとめ出典 : 気分障害がある人は少なくとも世界に3億5000万人以上もいると言われており、世界的に増加傾向にあります。日本も例外ではなく厚生労働省によると、平成26年度時点で約112万人の人が発症していると言われています。気分障害の症状により日常生活に悪い影響をきたしてしまうと、何かとうまくいかないことがストレスにつながり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため気分障害は悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れずずっと暗いままであったり、気分の上がり下がりが激しく自分をコントロールできない時があるなど、不安を抱えている場合はこころの風邪である気分障害を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。平成26年度患者調査の概要l 厚生労働省
2016年10月26日情緒障害とは出典 : 「情緒障害」とは、子どもが何らかの要因により感情面に問題が生じ、社会に適応できない状態にあることを指す言葉です。広義に解釈すると上記の意味ですが、実は「情緒障害」は、厳密かつ普遍的な定義がなく、その意味や内容は時代や社会的な背景とともに大きく変遷してきました。そのため現在実際に使われている「情緒障害」という言葉も、文部科学省、厚生労働省、医学のそれぞれにおいて定義や概念にばらつきがあります。情緒障害に含まれる具体的な障害もそれぞれの定義によって異なるため混乱を招くこともままあり、必要に応じて関係機関の定義を参照し、確認する必要があります。以下でそれぞれの定義を見ていきましょう。教育、福祉、医学、それぞれ違う「情緒障害」の定義出典 : ・情緒障害の教育的定義主に特別支援教育の場面で使われる、文部科学省による「情緒障害」の定義は以下の通りです。状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP・情緒障害の教育的定義に当てはまる症状教育の場で用いられる情緒障害にあてはまる症状の具体例としては、主に選択性緘黙(かんもく)を指し、その他、集団行動・社会的行動をしない、引きこもり、不登校、指しゃぶりや爪かみなどの癖、常同行動、離席、反社会的行動、性的逸脱行動、自傷行為をあげています。・教育的定義における情緒障害と発達障害の関係文部科学省では、情緒障害は心理的な要因から生じる後天的な問題であり、先天的な問題から生じる発達障害とは違うものと定義しています。・「情緒障害」の教育的定義の成り立ち教育の場で言われる「情緒障害」は、教育上の概念・分類であり、医学用語の「情緒障害」の定義とは必ずしも一致しません。現在、このようなわかりにくさを生んでいるのは、情緒障害という障害の概念が時代によって変遷していることと、特殊支援教育の歴史的背景に由来しています。公立学校に現在の特別支援学級の前身である情緒障害特殊学級が成立した1969年当時、自閉症などの先天性由来の障害も含めおおまかに「情緒障害」と定義していました。のちに、先天的な障害である自閉症は「情緒障害」から除外されたため、「情緒障害」は後天的な心理的問題により社会に適合していない子どもを分類するための概念と修正されました。平成18年には「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が発令され、平成21年には「情緒教育特別支援学級」の名称も「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更され、特別支援教育の場でも自閉症が情緒障害から分けられるようになりました。・情緒障害の福祉的定義厚生労働省管轄の情緒障害児短期治療施設などの福祉の場面で用いられる「情緒障害」は、厚生労働省が定義したものに沿っています。厚生労働省の情緒障害児の定義は以下の通りです。情緒障害児とは,家庭,学校,近隣等での人間関係のゆがみによって,感情生活に支障をきたし,社会適応が困難になった児童をいう。厚生白書(昭和53年版)・情緒障害の福祉的定義に当てはまる行動や状態不登校、引きこもり、かん黙、軽度の非行、チック、発達障害による二次障害、虐待により心理的に傷ついた状態など参考ページ:厚生白書(昭和43年版)第3章社会福祉|厚生労働省HP・福祉的定義における情緒障害と発達障害の関係厚生労働省が定義する「情緒障害」(情緒障害の福祉的定義)は、同省が定義する発達障害に含まれる、としています。参考ページ:発達障害者支援法の施行について|厚生労働省HP医学的な用語としての「情緒障害」は、主として、心理的な反応として起きる、情動が著しく不安定で激しい現れ方をする状態であり、病名ではないとするのが主流です。国立特別支援教育総合研究所によると、医学的な用語としての「情緒障害」は次のようにまとめられます。1)厳密で普遍性のある定義はない。2)病名ではなく症状もしくは状態像を指して用いられることが一般的。3)現在では、心理的要因が原因と想定されるものに主に用いられるが、例外もある。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)においては、「情緒の障害」と表記されているものが、医学的な用語としての情緒障害とほぼ同義とされ、病名に相当する診断カテゴリーとされています。参考:発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究・医学的見地における情緒障害と発達障害の関係基本的に、医学的には情緒障害と発達障害は別の区分とされています。就学相談などで使われる「情緒障害」のさす意味とは?出典 : 教育の場で「情緒障害」とされる状態は、具体的には2種類の問題行動があります。一つは、周囲から介入しない限り周囲に迷惑や支障を生じない、内向性の問題行動、もう一つは、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる外向性の問題行動です。専門用語で「内向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲が介入しない限り迷惑や支障を生じないものをさします。具体的な例として、・選択性緘黙(かんもく)・不登校、集団行動・社会的行動をしない・ひきこもり、指しゃぶりや爪かみなどの癖・身体を前後に揺らし続けるなどの同じパターンの行動を反復すること(常同行動)・自分の髪の毛を抜くことなどです。一般的にはただの「癖」と考えられているものでも、この行動が長期間頻繁に続き、学校での学習や集団行動に支障をきたすほどの場合には情緒障害としてとらえられます。専門用語で「外向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる場合をさします。具体的な例は、・離席、教室からの抜け出し・集団逸脱行動・犯行、暴言、暴力、反社会的行動・非行、性的逸脱行動などです。これらの行動から、学校での学習や集団生活に支障をきたしてしまいます。攻撃性を示す場合が多く、その攻撃性が自分に向った場合である自傷行為も情緒障害としてとらえられます。教育の場で「情緒障害」としてあがることの多い、選択性緘黙と不登校について紹介します。・選択性緘黙文部科学省が定義する選択性緘黙は、以下の通りです。選択性かん黙とは,一般に,発声器官等に明らかな器質的・機能的な障害はないが,心理的な要因により,特定の状況(例えば,家族や慣れた人以外の人に対して,あるいは家庭の外など)で音声や言葉を出せず,学業等に支障がある状態である。(平成25年文部科学省教育支援資料)・不登校文部科学省の教育支援資料において、不登校は、以下のように定義されています。不登校の要因は様々であるが,情緒障害教育の対象としての不登校は,心理的,情緒的理由により,登校できず家に閉じこもっていたり,家を出ても登校できなかったりする状態である。そして,本人は登校しなければならないことを意識しており,登校しようとするができないという社会的不適応になっている状態である。したがって,一般的には,怠学や学校の意義を否定するなどの考えから,意図的に登校を渋る場合は,学校に登校しないという状態は類似しているが,ここでいう情緒障害の範囲には含まない。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP「情緒障害」の子どもには、どのような支援があるの?出典 : 自閉症・情緒障害通級指導教室通級指導教室とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。子どもが在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級指導を受ける場合もあります。障害の種別に分かれ、その子に合った指導が受けられますが、情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害通級指導教室」に通うことになります。・対象者通常の学級におおむね参加でき、一部特別な指導(社会的適応のための特別な指導や強化の補充指導など)を必要とする程度のものであるとされています。・どのような指導がされるか基本的には、特別支援学校などにおける、障害がある生徒の自立を目指した教育的な活動を参考とした指導が中心で、社会的適応性の向上が目的とされています。通級指導を受ける場合、大半の時間を通常学級で過ごし、通級指導を受ける時間は限られています。そのため、必要に応じて各教科などの補充的な指導は行っていますが、個別の指導内容を設定することはできません。自閉症・情緒障害特別支援学級特別支援学級とは、通常学級ではなく特別支援学級に籍を置き、よりきめ細かな指導を受ける少人数の学級です。もし、子どもに手厚い指導が必要な場合は、上記の通級指導教室ではなく特別支援学級に通う場合が多いです。情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害特別支援学級」で指導を受けることになります。・対象者文部科学省は、自閉症・情緒障害教育の対象を以下のように定めています。一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成 が困難である程度のもの二 主として心理的な要因による選択性かん黙などがあるもので,社会生活へ の適応が困難である程度のもの平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP選択性かん黙や不登校などの感情面での問題のために、通常の学級では学習を行うことが難しく、社会的適応のための特別な指導を行う必要がある子どもが対象者であるとされています。・どのような指導が受けられるか情緒障害や自閉症のある子どもなどが、人とのかかわりを円滑にし生活する力を育てることを目標に指導を受けることができます。 特別の教育課程を編成することができることが特徴です。基本的に主な授業は特別支援学級で受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。特別支援学校基本的には、情緒障害であるというだけで特別支援学校の支援対象となることはありませんが、情緒障害とされている子どもが、知的障害や病弱・身体虚弱を伴う場合は、知的障害、病弱などの区分での支援対象となることもあります。特別支援学校と特別支援学級・通級指導教室の違いについては、以下のコラムに詳しく解説されています。・放課後等デイサービス幼稚園・大学を除いた学校に就学中で、かつ障害のある子どもが、学校の授業終了後や長期休暇中などに通い、生活能力向上のための訓練および、社会との交流促進を行う施設です。施設利用にあたって療育手帳や障害者手帳は必須ではなく、障害児通所支援受給者証を申請し、認可が下りれば利用することができます。施設のタイプは、習い事型、学童保育型、療育型の大きく分けて3つのタイプに分けられます。詳しくは以下の記事をご覧ください。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)情緒障害短期治療施設とは、学校教育との緊密な連携をとりつつ、医学的な心理治療を行う総合的な治療・支援施設です。情緒障害児短期治療施設の対象児童は、心理的困難や苦しみを抱え日常生活に生きづらさを感じている子どもたちであり、心理治療が必要とされる子どもたちであるとされています。知的障害児や重度の精神障害児は基本的に対象ではありません。利用方法は、宿泊入所、通所、外来相談の3つがありますが、施設によっては外来相談が設置されていない場合もあるため、一度お近くの情緒障害児短期治療施設に電話などで相談してみることをおすすめいたします。・児童相談所児童相談所とは、家庭や学校などから18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じ、また、子どもおよび家庭に対して医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定や調査、調整を行う場所のことです。各相談所には精神科医師、児童心理士、児童福祉司などの専門職員が配置されています。・児童家庭支援センター児童家庭支援センターは、児童心理療育施設、児童養護施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、乳児院に設置されているもので、18歳未満の子どもに関する様々な相談を、子ども、家庭、地域住民から受け付けます。また、児童福祉施設などの関係する機関との連絡調整も行います。学校で子どもが直面する「情緒障害」の原因は?出典 : 教育的定義における「情緒障害」とされる状態を引き起こす原因としては、対人関係のストレス状況、学業・部活動の負担、親子関係の問題などが考えられるとされています。友人同士や教師との関係において、対等な人間関係が崩れた場合大きなストレスが生じます。いじめがその最たるものとされています。一方的、威圧的に教師や友人に接されることによりストレスが生じ、情緒障害とされる状態に陥る原因になります。学業、部活などにおいて、本人の能力に見合わない要求をされ、かつその環境から抜け出すことができない雰囲気がある場合、それがストレスとなり情緒障害の原因となると言われています。親子関係において信頼関係が築けていない場合に、教育的定義における「情緒障害」の原因となる可能性があります。親子の信頼関係が築かれていないパターンで、児童虐待なども含まれます。子どもと過ごす時間を十分にとることが信頼関係の構築において大切です。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP子どもが情緒障害の疑いがあるとき、どう対応すべきなの?出典 : 生活上の問題が生じたときは、できる限り早い段階でなんらかの対応をとることが必要です。・毎日の基本的な生活環境を整える子どもの成育には、障害の有無、障害の種類にかかわらず、安心して過ごせる環境作りが必須です。毎日の生活のなかで、家族関係の安定を意識し、なるべくお子さんをほめてあげること、そして、できるだけ一緒に過ごしてあげること。このような安心して過ごせる基本的な環境作りを心がけることこそが、お子さんの症状の回復のための基礎づくりとなります。・いじめはすぐ対処もし、お子さんがいじめを受けているように感じたら、本人に対処させるのではなく、いじめが起きている環境から保護することが最優先です。まず、教師に相談し、お子さんのいる環境を変えるなどの対応をし、それに加え児童精神科などで専門的な治療を受けることで、心の傷がこれ以上深まらないようにする必要があります。・医療機関を受診する身体症状が強い場合は小児科、情緒面の問題が強い場合は児童精神科を受診することをおすすめします。専門家の指示を仰ぎ、適切な指示を受ければ、ご家族もお子さんも、無為に苦しむことなく解決の糸口を見つけることができます。どうしても、医療機関の受診への敷居が高い場合には、スクールカウンセラーや各相談機関を利用するのも一つの手です。もし、近くに児童精神科がない場合は、大学病院や総合病院の精神科でも診療してもらえます。少しでもお子さんが何らかの問題を抱えているように感じたら、どうか一人で抱え込まずに、専門家の助けを求めてください。参考文献:杉山登志郎 /著『子どもの発達障害と情緒障害』2009年講談社/刊まとめ出典 : 「情緒障害」の定義はさまざまですが、一般に情緒障害とされる状態は、主に対人関係などの後天的なストレス要因から生じるとされています。先述の通り、お子さんの成育の基本となるのは安心して生活できる環境づくりであり、それには家族からの理解が不可欠です。お子さんをあたたかい目で見守ってあげることこそが、問題解決のための近道となります。とはいえ、保護者の方が、何のストレスも感じずお子さんに接し続けるのは難しいこともあります。専門家からアドバイスしてもらうことで、今までずっと悩んでいた問題から抜け出す解決の糸口が見つかることもありますので、少しでも悩み事がある場合は一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡を取ることをおすすめします。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HPあなたのそばの相談機関|情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワークHP発達障害者支援施策について|厚生労働省HP厚生白書(昭和53年版)|厚生労働省HP情緒障害児短期治療施設運営指針|厚生労働省HP特別支援教育について|文部科学省HP 自閉症・情緒障害とは|国立特別支援教育総合研究所HP
2016年10月24日発達障害の治療、お薬はどんなときに使われる?出典 : 発達障害に対してお薬が使われるとき、それは全て対症療法として投与されます。対症療法とは症状を和らげることが目的の治療で、根治、つまり障害を治すための治療でありません。残念ながら現在の医学の水準では、発達障害を根治する治療はありません。ただ、適切なタイミングと種類、量のお薬を使うことで、その症状を緩和できる場合があります。どんな症状に対してお薬が使われるの?出典 : では主にどんな症状に対して、お薬が使われるのでしょうか。自閉スペクトラム症の場合には最も効果が確かめられているのは、その易刺激性、つまり刺激に対して反応しすぎる状態に対する投薬です。日本でもいくつかの抗精神病薬が、厚生労働省からその適応を正式に承認されています。こうしたお薬は自傷や他害といった攻撃的な行動がある際に用いられますが、その効き目の見極めには大事なポイントがあります。易刺激性に基づく攻撃的な行動、例えば嫌いな音を聞いた後のパニックやイライラする状況から逃れるために人を突き飛ばすなどの行動には、ある程度効果が期待できることがあります。一方で、遊びの目的、つまり「窓ガラスを叩くといい音がして楽しいから」とか、コミュニケーションや交渉の目的で「冷蔵庫を開けさせるために家族を叩く」とかの行動には、お薬の効果は期待しにくいのです。ここを上手く見極めて使わないと、無効なお薬を飲むことになったり、大量にお薬を使って、効果よりむしろ副作用が問題になったりすることが起こってきます。結局はお薬を使う場合にも、その標的となる行動の分析が必ず必要となるのです。著しい反復的な行動に対してもお薬が使われることがありますが、この場合もその背景が重要になります。遊びの性格が強い反復的な行動にはお薬はほとんど効果がありません。もしこれを薬で止めようとすると、大量のお薬を使って、眠くてだるくて遊ぶ元気もないという状態を作ることになってしまいます。一方で不安や強迫といった、「やらないと心配」「やらないと落ち着かない」からやむを得ずやっているという、繰り返しの行動には時にはお薬が有効な場合があります。その他、睡眠の障害やカタトニアなどの症状に対して、それぞれの状況にあったお薬が使われることがあります。これらの場合にも有効な場合とそうでない場合の見極めが必要ですので、主治医にご相談いただくとよいでしょう。また注意欠如多動症(ADHD)に対しても、お薬が使われることがあります。実はADHDの治療薬は、あらゆる精神科のお薬の中でも一番効き目が確かなお薬の一つです。投与するとかなり高い割合で効果を発揮します。しかしこれも対症療法に留まり、一方で副作用もしっかりあるので、使いどころを見極める必要があります。どんなときに「薬を使う」という決断をすれば良い?出典 : さてそれでは、どんなときにお薬を使うことを考えればよいのでしょうか。発達障害そのものへの投薬は常に対症療法であるため、発達障害があること、それだけでは投薬の対象にはなりません。必要な対応や環境の調整をして、それでも本人の苦しさが続くとき、またいろいろな対策を講じていてもどんどん環境との不適合が増しているときは、お薬をつかうことを考えても良いでしょう。自分の場合には、「人生の中で嫌いなもの・ことがどんどん増えているとき」というのを一つの基準にしています。またお薬以外の方法をとることがそもそも難しい場合も、投薬を考えることになります。家庭の状況に全く余力がないとき、家族に他の危機が訪れているときなどには、時期を限ってお薬を使うこともあります。もう一つ、これは発達障害に対する投薬ではありませんが、併存する他の精神疾患がある場合には、当然その治療薬を使うことになります。また最も大切で難しいのはお薬のやめどきです。これについては、常に止めることを考えながらお薬を使う、というのがおそらく正解であると思います。減薬や中止のチャンスを常にうかがっていないと漫然とお薬を使うことになってしまいます。・標的となっていた症状が改善してきたとき・環境との不適合が小さくなってきたと感じられるとき・他の支援がうまく回り始めたときなどが、お薬を減らす・止めるチャンスです。ただし急な中止や減量によって逆に有害な症状を来すお薬があるので、減量、中止の際には必ず医師と相談してください。
2016年10月14日反抗挑戦性障害(ODD)とは?出典 : 反抗挑戦性障害(ODD)とは、別名「反抗挑戦症」とも呼ばれ、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。症状の現れ方によって過興奮型、すね型、マイペース型に分類される場合があり、症状を発症する場面・相手が多いほど重度であると診断されます。反抗挑戦性障害が発達期を通じて何年間も続く場合、両親、教師、監督者などの目上の人だけではなく、同年代の友人、恋人ともトラブルを起こしてしまい日常生活に様々な障害が発生します。反抗挑戦性障害は捉え方によって特徴が異なる疾患です。とくにアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では診断基準などが違う場合があるので注意が必要です。反抗挑戦性障害の主な症状出典 : 反抗挑戦性障害の症状として大きく3つのパターンがあげられます。・怒りっぽくイライラする:周囲からの刺激に過剰に敏感になり、すぐにイライラしてしまいます。そのためしばしばかんしゃくを起こしたり、腹を立てて怒ったりしてしまいます。・周囲に挑発的な行動をする、口論がすき:権威のある目上の人物や、子どもの場合は大人から決められたルールに従うことに積極的に反抗し、口論をふっかけます。そしてわざと周囲の人をイライラさせ、自分の失敗、または失礼な行動の原因を他人のせいにしてしまいます。・意地悪で執念深い:周囲の人との間に起こった出来事を根に持ち続け、他人に対して優しくなれない状態が半年に少なくとも2回発生します。反抗挑戦性障害と反抗期の違い出典 : 通常子どもの健康な育成に反抗期は必要なものとされています。反抗期には誰でも親に反抗的な態度をとったり、いらいらしたりするものです。そのため反抗期と反抗挑戦性障害を見きわめることは難しい場合があります。見分けるためには反抗的な行動がどのくらい続いているのか、どのくらいの頻度で発症するのかを考えることが重要です。例えば第一次反抗期にあたる5歳未満の子どもの場合、周囲の人に対して怒ったり、乱暴な言葉をもちいて反抗したり、かんしゃくを起こしたりする行為が1週間に1回、少なくとも半年間続くことが条件となっています。しかし反抗挑戦性障害か見分けるためには、これらの条件だけではなく発達水準、性別、文化の基準などさまざまな条件を考慮する必要があります。これらすべての条件をふまえた上で発症頻度・症状の重さが通常の反抗期を超えている場合は、反抗挑戦性障害と診断されます。判断することが難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。反抗挑戦性障害を発症しやすい人出典 : 反抗挑戦性障害は通常就学前に発症し、青年期初期以降の発症はあまり見られないといわれています。発症率の男女比は思春期以前は1.4:1となっており、男児のほうが発症率が約1.4倍高いです。しかし思春期以降は性別による発症率の差はあまり見られなくなります。2~5歳児を対象とした調査では反抗挑戦性障害を発症している人の割合は、それ以外の疾患を発症している人の割合より格段に多く、16.8%のという研究結果がでています。そのうちの半数は重い症状があると診断されました。参考文献: ロバート・ヘンドレン/著 『子どもと青年の破壊的行動障害―ADHDと素行障害・反抗挑戦性障害のある子どもたち』 2011年 明石書店/刊反抗挑戦性障害の主な原因出典 : 反抗挑戦性障害の要因として、育った環境が関わっている場合があるといわれています。その理由として、反抗挑戦性障害は、目上の人からの指示などに対して拒否する拒絶症状が症状の中核となっていることが挙げられます。拒絶症状は一日で現れるものではなく、反抗的な感情がだんだん積み重なって発症してしまうと考えられており、主に幼少期の環境に左右されやすいのです。保護者や周囲の人と対立してしまったときに、大人が次はこうしようかという改善策を提示せず、子どもをただ批判、非難することによって抑圧してしまうことはとても危険です。これにより、子どもは自分を守るため挑戦的で反抗的な感情をおこしたり、行動してしまう可能性が生まれるのです。しかし環境要因は決定的な要因ではなく、気性が荒い、我慢することを苦手などのもともとの気質要因、遺伝的要因なども関わり合うともいわれているため、はっきりとは原因が解明されていないのが現状です。反抗挑戦性障害の診断基準出典 : アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)による診断基準は以下の通りです。A. 怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも一人以上の人物とのやりとりにおいて示される。怒りっぽく/易怒的な気分:(1)しばしばかんしゃくをおこす(2)しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい(3)しばしば怒り、腹を立てる口論好き/挑発的行動:(4)しばしば権威のある人物や、または子供や青年の場合では大人と、口論する(5)しばしば権威のある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する(6)しばしば故意に人をいらだたせる(7)しばしば自分の失敗、または不作法を他人のせいにする執念深さ:(8)過去6ヶ月に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもでは、ほかに特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヶ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、たとえばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮すべきである。B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例:家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他社の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、またはほかの重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中のみ起こるものではない。同様に重篤気分調整相の基準は満たされない。■現在の重症度は軽度:症状は一つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)中等度:いくつかの症状が少なくとも二つの状況でみられる重度:いくつかの症状が三つ以上の状況でみられる『DSM-5』では、反抗挑戦性障害と素行症を別の疾患として定義しています。素行症とは、周囲の人に反発して、学校のずる休みや繰り返しの嘘をつくなどの挑発的な行動をとったり、激しい喧嘩をしたりすることに加えて、放火や盗み、物に対しての破壊行為などの法律違反に当たる行動をとることを指します。一方、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では、反抗挑戦性障害は素行症という疾患の中に含まれて定義されます。ここでは、反抗挑戦性障害はおよそ9~10歳未満の子どもに発症する行為障害(素行症)の軽度の症状であると位置づけられます。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊反抗挑戦性障害の合併症出典 : ■素行症反抗挑戦性障害の代表的な合併症として素行症が挙げられますが、これは小児期発症型のをもつ子どもによくみられる併存症です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行症の症状もあらわれてきてしまうのです。しかし反抗挑戦性障害と違い、素行症には人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、しっかりと区別することが重要です。■ADHD(注意欠陥・多動性障害)もう一つの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられます。ADHDとは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が社会的な活動や学業に支障をきたすことがある障害です。ADHDを発症している子どもの20~56%は二次障害として反抗挑戦性障害を発症するといわれており、発症する確率は3歳の子どもが一番高いと言われています。その他にも反抗挑戦性障害は不安症群やうつ病の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。発達障害に関連のある行動障害についてl 国立特別支援教育総合研究所ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害出典 : 反抗挑戦性障害とADHDは強い関わりがあるといわれており、年齢を重ねるとともに合併する可能性が高くなると言わています。そのときは、元々ADHDがある人が“人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害を発症する場合が多いです。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して自分はダメな人間かも知れないと思い、そんな自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、反抗挑戦性障害を発症しているということも少なくないのです。またADHDには主に、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプがあります。その中でも、不注意優勢型のADHDのほうが反抗挑戦性障害の症状が比較的軽い傾向にあります。ADHDのある子どもとその家族の間でおこる衝突の多くは、合併症としての反抗挑戦性障害が関与している場合があります。そこで衝突・喧嘩をする回数が過度に多いときはADHDではなく、反抗挑戦性障害が原因かもしれないと考えることが重要です。ADHDに反抗挑戦性障害が合併すると、対立や怒りの感情の発生、コミュニケーション障害によって、単なる衝突・喧嘩にとどまらない対人関係への悪影響の及ぼし合いが多く発生します。例として母親との関係を挙げると、ADHDと反抗挑戦性障害が合併している10代の子どもの多くで、その青年の症状に加えて母親の精神的苦悩が加わり、親子間の対立や悪影響の及ぼし合いが発生することが分かっています。反抗挑戦性障害が気になったときの相談先出典 : 反抗挑戦性障害は素行症(行為障害)やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。また、年齢が上がってからの治療は、反抗挑戦性障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため、早期に診察・治療することがおすすめとされています。明らかに感情の波が激しく怒りっぽかったり、口論が絶えなかったりする場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている窓口であり、精神保健福祉に関する相談をすることができます。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科・心療内科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心療内科は心と体の不調だけではなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。反抗挑戦性障害の治療法出典 : 反抗挑戦性障害の治療は・症状の重さと発症する頻度を減らすこと・患者が社会生活を送る上で発生するトラブルを少なくすること・家族のストレスを軽減すること・行為障害へ進行することの予防を目的として実施されます。治療法として主に薬物療法、社会技能訓練、認知的技能訓練、ペアレント・トレーニングなどがあります。薬物療法に関しては、反抗挑戦性障害の原因に直接的に効果がある薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。社会技能訓練とは反抗挑戦性障害がある人が、大人や友だちがいる場で周囲の人のサポートを受けながら行う、社会の中での過ごし方を取得する訓練です。正しいコミュニケーション方法のとり方、怒りや拒絶の感情が発生したときの対処方、目上の人との適切なやり取りの仕方などの練習を行います。また、反抗挑戦性障害がある人が否定的な物事の捉え方や考え方を修正し、トラブルが起こらない意見の言い方を獲得するための治療を認知的技能訓練といいます。そこでは主に反抗挑戦性障害がある人がトラブルをおこさないように、自分で課題解決が行えることを目的としています。反抗挑戦性障害がある人を訓練するのではなく、その保護者の子どもとのかかわり方を訓練する、ペアレント・トレーニングという支援方法もあります。主に、保護者の子どもへの行動、対応方法を変えられるようになることを目的としています。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動にたいして上手く対応し、子どもの反抗的な行動を減少させることを目指します。日本ではアメリカで開発されたペアレント・トレーニングをさらに日本向けに改良した治療法が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。反抗性挑戦性障害がある子どもへの周囲の人の対応方法・接し方出典 : 反抗挑戦性障害には主に過興奮型、すね型、マイペース型の3つのタイプがあります。タイプ別の対応法を解説します。■反抗-過興奮型過興奮型の子どもは指示に素直に従えず、無視するか、返事はするものの結局やらない傾向があります。このような状態にも関わらず指示を繰り返すと、子どもが興奮して暴言を返してくるなど、売りことばに買いことばとなってしまいがちです。「指示に従うことは自分の負けだ」などと、誰に対しても、勝ち負けの気持ちが働いてしまうことが主な原因です。このような過興奮型には、前もって約束する方法が適切です。その場ですぐに「~しなさい」と命令するのではなく、前もって約束したことを思い出させるようにします。そうすることで子どもにとって親との戦いではなく、約束を守るかどうかという「自分との闘い」となるように誘導します。具体的なポイントとして、子どもが約束を思い出せないときは、「何を約束したっけ?」と内容を聞きだすのではなく、まず約束したという事実を伝え、「お風呂、遊ぶ、どっちかな?」と二択の質問にします。ことばだけでは伝わらないときには、絵カードを用いて選ばせることもおすすめです。■反抗-すね型すね型の子どもは衝動性が高く、思いついたら計画性なくすぐに行動してしまいます。しかし、自分の思い通りにならないことがあると、ちょっとした拍子ですねていじけてしまったり、ケンカをしてしまったりします。すねていじけてしまう原因として、数多くの失敗体験が心の中にたまり自信が持てなくなり、どうせやっても失敗してしまうとネガティブな思考が染み付いてしまったことが挙げられます。そのため、自分は上手になれる、上達できるという成功体験を実感してもらう必要があります。おすすめは、運動や料理などを通じて、成功体験を実感してもらうことです。例えば縄跳びでは、跳ぶ回数や跳び方でランクをつくり、徐々に上手くなっているという実感を体験してもらいます。ここで重要なポイントは、・何をやるべきかを明確にする・どこまで到達することができたか分かりやすくするために段階的な目標を示す・子どもの取り組みのモチベーションを維持するために結果のみではなく過程を評価することです。また子どもは。本当に自分にできるかと、心の中では不安を感じています。そのため、「本当に上手くなってきたね、こうやっていけばもっと上手くなるよ」と語りかけをしつつ、自信をつけてあげることが大切です。■反抗-マイペース型マイペース型の子どもは集団で遊ぶことや、他の子との共同作業を苦手とします。幼児期では集団に入るよう誘うとパニックを起こしてしまうことがあります。その後、小学校の半ばあたりになると、周りの子どもたちと興味やペースが合わないことがはっきりとしてきます。マイペース型は、じっとすることは苦手であるにも関わらず、好きなものには集中することができるといった子どもによく見られます。また、人の気持ちを理解することを苦手とする一面がある子もいます。このような子どもに対しては、本人の興味やペースなどを配慮して、周囲との距離感を調整してあげることが主な対応方法となります。子どもが嫌がっているような素振りや表情を見せた場合は、無理強いしないで合わせてあげることが重要です。出典 : と反抗挑戦性障害を合併している子どもと家族がうまく関わっていく上で、重要な4つのポイントを紹介します。1. 感情的に対応しない:子どもが感情的に話をする場合には「静かに話すこと」を促し、落ち着くまで相手をしないようにしましょう。ちょっとしたことでも感情的に反応してしまう傾向があり、周囲の人々がそれに対して感情的に接してしまうと状況が悪化してしまう恐れがあります。2. パパに理解してもらう多くの家庭は子どもと多くの時間を過ごすのはママである場合が多いです。そのため、たとえ子どもとママの関係が悪化してもパパはあまり状況をつかむことができず、子育てから離れるようになってしまうケースは少なくありません。一方、子どもは普段一緒に過ごす時間が少なく、あまり反抗する相手とはならないパパの話にはよく耳を傾けることも多いため、パパが話し合いに加わることでみんなで冷静な話し合いができるということも考えられます。思春期を乗り越えていくときのことも含めて子どもを上手に育てていくには、パパの理解を得てみんなで協力していくことが重要です。3.約束を守りきる経験を積ませる:ADHDと反抗挑戦性障害を合併している子どもは約束したことをなかなか守れないという傾向があります。しかしそのような傾向があるからといって諦めたり大目に見ることを続けたりすると、子どもはどんどん約束を守ろうとしなくなります。そのため子どもの特性を理解し守りきれる約束をすることが大切です。守れたらいっぱいほめる、破ったらなんで守れなかったのかきちんと話し合うとあらかじめ明確に決めておくことがポイントです。また約束を守れなかったときには簡単に許さず、譲らないようにしましょう。4. 子どもに期待し、ポジティブになる:過去のことを責めても子どもの自尊心が低下し、状況や症状が悪化する場合が多いです。これからの成長に期待しネガティブになりすぎないことが子どもの心の健康のために重要です。の理解と対応l 公益社団法人発達協会まとめ出典 : 反抗挑戦性障害とは、通常子どもが発症する障害であり、青年期早期以降の発症はあまりみられません。発症する症状として怒りっぽい、口論が絶えない、執念深く根に持つなどの症状が少なくとも半年続くことが挙げられますが、現れる症状は人それぞれです。通常、反抗期そのものは子どもの健康な成長には必要なものです。それゆえ、反抗期と反抗挑戦性障害の見極めが難しい場合があります。また反抗挑戦性障害はADHD・素行症などの他の障害とも合併・併存しやすい疾患であり、症状が複雑化しやすい傾向にあります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。
2016年10月09日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。甘くてトロピカルな味のするマンゴーは、スーパーマーケットでも見かけるほど身近なフルーツになりましたね。南国の味を手軽に味わえるようになってうれしい限りです。ところが、マンゴーを食べる機会が増えたことである問題が起こっています。それはマンゴーアレルギーにかかる人が増加していること。今回は、“マンゴーアレルギー”についてご紹介します。目次マンゴーアレルギーの症状マンゴーアレルギーが起こるメカニズムマンゴーアレルギーの予防方法まとめ●マンゴーアレルギーの症状マンゴーを口にして15分程度で口や唇のしびれ、顔のむくみ、喉の腫れ などを感じたら危険信号。激しい症状では、じんましんが出たり、呼吸困難などを引き起こすこともあります。ほとんどの症状は1時間程度で治まりますが、進行が続き、救急治療を必要とする場合も稀にあります。花粉症や喘息患者、他の野菜・植物・フルーツなどにアレルギーを持っている人の場合は、特にアレルギー反応が激しく出る可能性があり、注意が必要です。●マンゴーアレルギーが起こるメカニズムマンゴーアレルギーは、ほぼ花粉症と同じメカニズムで起こっている と考えられています。花粉症を引き起こすアレルゲンの構造と、マンゴーに含まれる植物性のタンパク質の構造がよく似ているため、マンゴーを摂取した口腔内で同じようにアレルギー反応を起こしてしまうのです。また、リンゴやキウイ、桃、メロンやサクランボなどのフルーツでも同様の反応が起こることがあります。●マンゴーアレルギーの予防方法アレルギー反応を完全に防ぐには、マンゴーを食べないことが一番の予防となります。特に花粉症患者はマンゴーアレルギー発症率が高いので注意しましょう。発症してしまった場合は、抗アレルギー薬を服用することで症状を抑え、激しい症状が出ている場合にはステロイド薬を使用することもあります。ほとんどのマンゴーアレルギーは、「アレ?ちょっと口の中がむず痒い?」程度です。そのため、アレルギーであることに気づかずに食べ続けてしまう ことも少なくありません。ただ、体調不良時に大量に食べると突然強い症状が出ることもあるので、マンゴーアレルギーの存在を知り、食べ過ぎに注意することが大切でしょう。また、幼児などに食べさせる場合は少量から、様子を見ながら与えるようにしましょう。●まとめマンゴーをはじめとしたフルーツにアレルギーがあることは、意外と知られていません。また、その症状もナッツなどのように激しく現れることが少ないために見過ごしてしまうことも多いようです。ところが、花粉症の時期や体調不良時などにいつもより多く食べると、突然激しいアレルギー症状を起こして驚かされることがあります。こうなると、マンゴーに敏感に反応するようになってしまい、今後食べたいのに食べられないという悲しい状況に追い込まれてしまいます。適量を食べていれば、絶食するほどの大きなアレルギーではないだけに、マンゴーが好きな人は“食べ過ぎ”には十分注意したほうがよさそうです。【参考リンク】・口腔アレルギー症候群・ラテックスフルーツ症候群の診断・治療 | 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック()●ライター/さとうあきこ(海外在住プロママライター)
2016年10月04日異食症(Pica)とは?出典 : 異食症とは少なくとも1ヶ月間、通常食べることのない・栄養がないものを1つ以上、継続して口にしてしまう摂食障害の一つです。摂取してしまうものの例としては、氷や土、毛髪、チョークなどが挙げられます。特に氷、土、毛髪を食べることは多く知られており、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名がつけられています。しかし乳幼児のように、まだ十分に認知機能が発達していないことから生じる突発的な異食行動や、熱帯地域などの場所で慣習的に土が食べられているといった、異食行動がその地域にとって普通の行為である場合は異食症とはみなされません。文化的にも社会的にも通常食べられないものを摂取してしまう場合に限り、異食症とみなします。異食症は年代や性別などによっても様々なタイプがある疾患です。おもに、子ども・妊婦・他の疾患を発症している人と3つのタイプに分けることができます。タイプごとにどういう症状や原因があるのか、どういった対応・治療をしていけばよいのか見ていきましょう。子どもの異食症の症状・原因出典 : 乳幼児期は物の区別を苦手とする上に好奇心が旺盛で、何でも口に入れてしまう傾向があります。しかし異食行動を行う頻度は年齢とともに低下していく傾向にあるため、2歳以前の異食行動自体がすぐに問題になるわけではありません。そこで、子どもにおいては生後24ヶ月以降に栄養のなく、通常食べることのないものを継続して摂取してしまうという症状があった時、異食症とみなされる場合があります。子どもが摂取してしまう異物は、子どもの身近にあり手に入りやすいものと考えられます。例えば氷、毛髪、氷、土、毛髪、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。先述したとおり、2歳までは知的好奇心による正常な行動の場合が多いです。しかし、それ以降も異食行動が習慣化するまで継続してしまうと、異食症と診断される場合があります。異食行動を続けてしてしまう原因として、保護者のネグレクトなどにより空腹感から異食してしまう等も考えられますが、決してそれだけではありません。子どもがストレスをため込みやすい性格をもっており、その発散方法として異食行動を行ってしまう、周囲の人が知らない間に異食行動を見逃し、それが常態化しているなど、様々なケースがあります。妊娠中の女性の異食症の症状・原因出典 : 女性は妊娠期間中に衝動的に異食行動を行ってしまうことがあります。この場合は妊娠中のみに発症し、自然に治ることが多いと言われています。口にするものとして、土、石、氷、生のジャガイモや小麦粉がよく挙げられます。妊娠中の女性による異食症は、鉄や亜鉛などの栄養不足が大きな原因と言われています。妊娠することによって女性のからだは、自分自身ではなく赤ちゃんに優先して栄養や酸素を供給するように自然とはたらき始めます。栄養や酸素は血液を通して赤ちゃんに送り込まれるため、からだは体内の血液量を増やそうとします。しかし、通常摂取している1人分の栄養素で多くの血液を体内で生成しようとすると、成分に影響が出てくる可能性があります。その成分が鉄や亜鉛です。妊娠中に意識的に必要な栄養素を摂取していない場合、身体が通常の鉄分・亜鉛でたくさんの血液をつくろうとするため、これらの成分が不足してしまいます。血液中に栄養素が少なくなると、体内で酸素をうまく運ぶことができなくなり貧血がおこります。この鉄欠乏性貧血は、妊娠中に特に起こりやすくなる貧血の一つです。氷や石・土の異食症は、身体が無意識に鉄分を補おうとして引き起こされることが多いとされています。しかし、妊娠中によって発症する異食症の原因は栄養不足だけではありません。脳への酸素供給量が不足することによって、「おなかいっぱい」だという感覚を失ったり、からだの温度調節の機能が鈍くなったりすることで異食症が引き起こされる場合もあります。またその他にも精神的ストレスによって、精神を安定させる働きのある脳内の神経伝達物質の一つ、セロトニンが不足してしまい、感情や欲求が抑制できなくなったりするなど、様々な要因が重なり合っている場合があると考えられます。その他の疾患と異食症を併存している人の症状・原因出典 : 併存症を発症している人は、その併存している疾患によって症状が異なります。その代表的な例として、統合失調症、脅迫性障害、パーソナリティ障害などの他の精神疾患、自閉スペクトラム症などの発達障害、知的障害、そして認知症があげられます。上記で述べた他の疾患と異食症と併存している場合、目に入るものが食べ物かどうか判断することを難しいと感じる認知の障害が元となり、異食行動を起こしている場合が多いです。そのため異食症として摂取してしまうものは、その人の身近にあり手に入りやすいものであることが多くなります。例えば氷、毛髪、氷、土、毛髪、絵具、ひも、鉛筆の芯、布、ほこり、糞便、紙片が挙げられます。またパーソナリティ障害の場合は、自傷行為のために釘や針を異食したり、出血するまで爪をかんだりすることがあります。パーソナリティ障害とは、思考、感情、人とのかかわり方、衝動の制御の4つのうちの少なくとも2つにおいて、柔軟性がないと判断された場合に診断される疾患です。パーソナリティ障害がある人は、考え方や行動パターンの偏りが大きくなるため、異食行動を起こしてしまうことがあります。異食症と一緒に発症しているその他の疾患が直接的な原因となる場合があります。疾患が進行していく途中に異食行動を起こすようになり、エスカレートしていくと異食症と診断される傾向があります。・自閉症スペクトラム:自閉症スペクトラムとは、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つを特徴とする発達障害の1つです。この場合の異食行動は、本人が特定の食べものの視覚や舌ざわりに対して強いこだわりを持った場合に起こることが多いです。・統合失調症:統合失調症は、感情や考えがまとまりづらく、気分や行動、人間関係などに影響が出てきてしまう疾患です。この場合の異食行動は、幻覚や妄想の症状によって引き起こされやすいと言えます。・認知症:中度~重度へと進行した際に引き起こされる、味覚障害、認識障害が主な異食行動の原因となります。・知的障害:18歳までの発達期に生じた知的機能の障害により、理解、判断、思考、記憶、知覚などの知覚機能の発達が、周囲と比べて遅れている状態のことです。発達の遅れによる認知の障害が異食症の要因と言われています。異食症と関係する合併症出典 : 異食症では普段口にすることがない物質を体内に入れるため、身体的に様々な合併症を引き起こすこともあります。合併症の症状は食べたものによりますが、主に・胃炎、胃潰瘍、腸閉塞・中毒・電解質異常・寄生虫の発生があります。その他にも普段の食事の栄養バランスに偏りがうまれ、ビタミン欠乏症、鉄欠乏性貧血が発症する可能性もあります。病院へ行くべきなの?異食症の見分け方と相談先出典 : 乳幼児期の異食行動は、ほとんどの子どもに起こりうることです。また、妊娠中の女性の異食に関しても、多くの場合起こりうる症状です。しかし、以下に当てはまる場合は要注意です。・行動が徐々にエスカレートしていく。・ストレスを感じている様子がある。・明らかな体調不良を感じる。・継続的に異食する物質が人体に有害な恐れがある。本人の状態を見てこれらに当てはまるときは、ためらわず、かかりつけのお医者さんに相談することをおすすめします。異食症は、様々な原因によって発症する疾患です。そのためまずは、かかりつけの病院で相談することをおすすめします。しかし身近に相談できる病院がすぐには見当たらない、いきなり病院へ行くのはためらいを感じる場合は以下の相談先も活用してみましょう。・児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省・全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されており、相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省・精神科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心の症状に対して治療を行います。・心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。上記の心の症状だけでなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、異食症の場合、精神科を受診しても心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。食べてしまったものによって明らかに身体に不調がでている場合は、まずは内科に行き、中毒症状などの治療を受けることを優先してください。異食症の診断基準出典 : 年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、異食症の診断基準は次のようになります。A. 少なくとも1ヶ月間にわたり。非栄養的非食用物質を持続して食べる。B. 非栄養的非食用物質を食べることは、社会的にみて標準的な慣習でもないC. その摂食行動は文化的に容認される慣習でも、社会的にみて標準的な慣習でもない。D. その摂食行動が他の精神疾患(例:知的能力障害、自閉スペクトラム症、統合失調症)や医学的疾患(妊娠を含む)を背景にして生じる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重篤である。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)によると、幼児期に土を食してしまう割合は1歳児で35%あるのに対し、4歳児では6%ほどになるとされています。その為、幼児期の異食行動は自然に起こるものという考えが一般的です。そこで、2歳を異食症の境界としています。参考文献:ICD-10精神科診断ガイドブック2013年中山書店/刊先ほど説明した『ICD-10』では「精神遅延を除く他の精神および行動の障害が存在しない」ことを条件としています。しかし『DSM-5』については「他の精神疾患の経過中にのみ認められる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重症である」と条件付きの併存を認めています。異食症の治療法出典 : 異食症の治療は、合併症の有無をまずは判断し、ある場合は先にその合併症を治療します。その後、心理的評価を行い、心理療法および薬物療法により対処します。異色症の治療l health line育児放棄や虐待がある場合には、その状況を変えなければなりません。また、鉛などの毒性物質への暴露も避けるべきです。治療のポイントは心理社会的、環境的、行動的、家族指導的アプローチにおきます。穏やかな嫌悪療法や負の強化療法(例えば軽い電気ショック、不快な音、催吐薬)が効果を挙げています。正の強化、モデリング(modeling)、行動修正(behavioral shaping)、矯正(overcorrection)治療なども用いられています。年にはマルチビタミンサプリメントが、子どもの異食症治療に効果的であるという研究結果が発表されました。ビタミンにより、栄養のない物を食べたいという欲求を減じるか、なくすことができる可能性があります。異食症の子どもに対するビタミンサプリメントの効果l National Center for Biotechnology Information, U.S.異食行動を発見した時の緊急対処法出典 : あなたの周りの人が異食行動をしているのを発見してしまった場合、どうすればよいのでしょうか?以下の緊急の対処法を行うことをおすすめします。大声を上げて怒らず優しく接することが重要です。なぜなら怒鳴られたりすることで、びっくりして口の中のものを急に飲み込んでしまったり、ストレスを感じて異食行動がエスカレートしてしまったりする可能性があるからです。優しく、お菓子など口に入れる代替品となるものを差し出し、吐きだすように誘導するようにしましょう。体に有害なものを飲み込んでしまった場合は、早急に以下のように対処する必要があります。・ティッシュや紙くずなど消化できるもの....のどに詰まってない場合は、しばらく安静にして様子を見ます。・小銭、電池、ビー玉、ビニール、おむつなど消化できないもの....のどに詰まっていない場合は、無理に吐かせず直ぐに受診します。・たばこ....ニコチンなどの有害な物質を体に吸収させてしまう恐れがあるので、水を飲ませず早急に吐かせます。・洗剤....食道や胃の粘膜を炎症させたり、傷つけてしまう恐れがあるので、吐かせずに水を飲ませて直ぐに受診します。しかしこのような誤って物を飲み込んでしまう緊急事態が起こってしまった場合は、個人で判断せず、すぐに駆け込める病院を確保しておくこと、日本中毒情報センターの中毒110番に確認することがおすすめです。中毒事故発生時の対応l 公益財団法人日本中毒情報センターまとめ異食症は短期間で症状が治まる可能性が高く、治療法もあります。特に子どもの場合は物を口に入れてしまうことは自然なことであり、焦る心配はありません。しかし食べてしまう物によっては、身体に影響を与える危険性のある疾患です。ですので、まず第一に飲み込まないようにすることが大事です。万が一、飲み込んでしまった場合や、症状について気になった場合は迷わず診察を受けに行くことをおすすめします。またご自身でも小さなストレスから取り除いていき、不足していると感じる栄養素を積極的に摂取していく日々の積み重ねが大切といえるでしょう。
2016年09月22日こんにちは、子育て研究所代表の佐藤理香です。先日、子どもの予防注射で『MR(麻しん・風しん)』2回目を予約しようと試みました。ところが病院からの返事は、「現在、麻しんのワクチンが不足している ため、予約できない状況です。入荷も未定です」でした。この“麻しん”こそ、2016年9月現在流行中の『はしか 』です。乳幼児がかかると死にも至るケースがある怖い病気。本日はこの『はしか』のポイントを確認したいと思います。目次1 『はしか』ってどんな病気?2 どんな症状がでるの?3 妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は要注意!4 どうやったら予防できる?●『はしか』ってどんな病気?はしかは、麻しんウイルスによる感染症です。感染力が強く、死に至ることもあります。ワクチンを接種していない乳幼児に比較的多い傾向があります。空気感染やひまつ感染、接触を通じても感染します。『世界保健機関(WHO)』では、はしかを排除することを目標にしています。日本では昨年2015年に、“はしかを排除できた状態”と認定されましたが、なんと今年の8月中旬以降、患者が出てきてしまいました。●どんな症状がでるの?10日~12日くらいの潜伏期を経て、熱が出て発症します。はじめの2日~3日は38度前後の熱や咳、鼻水、結膜炎など、かぜと同じ症状です。その後、一旦熱が下がる傾向にありますが、再び高熱、それとともに赤い発しんが出てきます。全身に発しんが現れてからも4日~5日高熱が続きます。合併症で肺炎などを併発することでも知られています。一度発症してしまうと特効薬はなく 、熱をやわらげるなどの対処療法となります。●妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は要注意!妊婦と1歳前後の乳幼児、ママパパ世代は特に注意が必要です。妊娠中の方が『はしか』に感染すると、流産や早産の恐れがあると言われています。さらに1歳前後の乳幼児は免疫力が低いうえ、ワクチンを接種していない場合もあるので、流行している場合はできるだけ人混みを避けるなど対策が必要です。つい先日、兵庫県尼崎市では、保育園に通う子どもや職員が18人も集団感染する事態になりました。厚生労働省から各自治体を通じて集団生活の場となる園にも連絡が入っているとは思いますが、気になる場合は感染防止対策について園の先生に聞いてみるのもよいと思います。意外にも要注意なのが26歳~39歳のママパパ !実際に感染した人を年齢別にみた調査では、この世代が半分以上いることがわかっているのです。なぜかというと、理由はワクチンの接種回数にありました。『はしか』はワクチンを2回接種することで、高確率で予防することができるといわれています。しかし、この世代のママパパは、ワクチンの定期接種が1回しかなかったのです。このため、きちんと免疫がついていない、または免疫が低下してしまったママパパが『はしか』にかかりやすい状態になっているのです。●どうやったら予防できる?一度かかってしまったら対処療法しかとれないので、予防することが最優先になります。『はしか』はワクチンを2回接種することで、免疫が確実につきます。現在は、1歳で1回目、小学校入学前に2回目の定期接種(通常は無料)が行われています。このため、1歳になったらできるだけ早く接種する ことがポイントです。また、『はしか』を予防するMRワクチンは、生ワクチンです。赤ちゃんへの影響を避けるため、妊娠している人は接種できません。妊娠していない場合であっても、接種後2か月程度の避妊が必要と言われています。妊娠の希望がある人は事前に確認しておきましょう。感染症を防止するための一般的な対策も有効です。人混みを避ける、マスクを着用する、しっかり手を洗うなどを行いましょう。----------最後に、『国立感染症研究所』が出しているスローガンをお伝えします。『はしかにならない!はしかにさせない!1歳のお子様は、1歳のお誕生日に!!』わが子のためにも、お友達にうつさないためにも、時期がきたらすぐにワクチンを接種したいものですね。【参考リンク】・麻しん・風しん | 厚生労働省()・麻疹とは | NIID国立感染症研究所()●ライター/佐藤理香(株)●モデル/大上留依(莉瑚ちゃん)
2016年09月19日初めての出産の際、自分なりに最適な産院を選んだつもりでした。しかし、いま思うと知識が漠然としていたため、反省点も多々あります。そこで今回は、産院選びで重要なポイントと、こだわりすぎなくてもいいポイントを整理して紹介します。■必ずチェックしてほしいポイント私や周囲のママ友の経験から、おさえておきたいポイントをピックアップしました。妊娠中のプレママだけでなく、妊娠を希望する女性も覚えておくと便利かもしれません。・家からの距離産院が遠すぎると、出産のときに間にあうか心配ですが、初産の場合、陣痛がはじまってから出産までに時間がかかることが多いもの。自宅からすぐ近くの産院にこだわりすぎる必要はありません。目安としては、自宅から車や交通機関で、1時間以内で行ければ十分。まずはこの条件に合う産院をピックアップし、そのなかから、ほかの希望条件をそなえたところを選びましょう。・希望する分娩方法が可能か一般的に、分娩方法には、自然分娩、無痛分娩、和痛分娩など複数の方法があります。さらに、ベッドではなく和室での分娩、自由な姿勢で出産できるフリースタイル分娩といった、特徴あるスタイルが選べる場合も。「絶対にこの分娩方法・スタイルで!」と決めているなら、希望の分娩方法やスタイルを実施している産院をチョイスするといいでしょう。ただし、出産では何が起こるかわかりません。助産院は、その場で手術や切開などの医療介入ができません。助産院での出産を希望する場合は、提携している病院の情報も含めて調べておくことをおすすめします。・母乳推進? ミルクOK?授乳指導の方針は、産院によってさまざま。大きくわけると、母乳育児に力を入れているところと、ミルクを与えながら、無理なく母乳育児を進めるところがあります。一般的に、赤ちゃんにひんぱんに吸わせるほど母乳が出やすくなる傾向があるため、母乳推進の産院では、夜中も徹底して母乳を与えるよう指導されます。「絶対に母乳で育てたい」と思っているママにはおすすめですが、出産で疲れていると、指導が負担になることも…。「母乳でもミルクでもいい」というママには、希望に合わせて柔軟に対応してくれる産院がいいかもしれません。・先生との相性妊娠中は、赤ちゃんの状態だけでなく、おりものの変化やおしりのトラブルなど、ママの体に関するちょっと聞きづらいことも医師に相談したいときがあります。先生との相性は、マタニティライフを安心して送るうえで、重要な要素です。■あまりこだわらなくていいポイントインターネットなどでいろいろ調べていくと、あれもこれもこだわりたくなってしまうかもしれません。しかし、実際には「気にしなくてもよかった」というポイントも…。・会陰切開の有無会陰切開とは、分娩の際に、膣口とこう門の間の会陰部分を切開して、赤ちゃんが出てきやすいようにする処置のこと。最近では、自然な分娩の形を重視して、会陰切開はなるべくしない方針の産院も増えています。ただ、「なるべくしない」方針の産院でも、医師が必要だと判断すれば、行われることもあります。切開した方が分娩がスムーズに進む場合もあるので、「必要なら仕方ない」くらいに考えておいた方がいいでしょう。・食事や特典の豪華さ最近は、入院中の食事や美容系のサービスが充実している産院も多いですよね。しかし、私は食事が評判のクリニックを選んだのに、産後すぐは食欲がなく、せっかくのお祝いディナーにもほとんど手をつけられませんでした。また、体調が悪くて、顔エステのサービスや美容院でシャンプーできるチケットも利用する気になれず、特典のない料金がもっと安い産院にすればよかったと後悔しました。一方、エステや豪華食事を満喫している方もいるので、人によりけりと思っていただいた方がよさそうです。・立ちあい出産が可能か感動の瞬間を夫とともに迎えたい! と夢みるママは多いはず。しかし、いざ出産となると、夫が間にあわなかったり、陣痛が痛すぎて夫なんて目に入らなかったり…。「どうしても」とこだわるほどのポイントではないかもしれません。母乳指導の厳しさや医師・スタッフの雰囲気については、産院のサイトを見ただけではわからないので、事前に近所の人や先輩ママにリサーチしておくことも大切です。自分に合った産院で、リラックスして出産にのぞめるといいですね。
2016年09月16日睡眠障害とは?子どもが眠ってくれないのは睡眠障害なの?出典 : 睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態を指す医学用語です。子どもの「睡眠障害」というと大げさでは、と思うかもしれませんが、子どもの心身の育ちにとって睡眠はとても重要です。また、子育て中のパパママにとって、子どもの睡眠は大きな悩みのひとつといえます。「子どもが夜ちゃんと寝てくれなくて……」、「たびたび夜中に起きて騒ぐので、家族みんな寝不足で……」という経験をするパパママは少なくないのではないでしょうか。子どもがぐっすり寝てくれないと、付き合ってお世話をするパパママも寝不足になり、体力的にも精神的にもつらいですね。夜泣きしたり騒いでしまったりすると、近所迷惑になっていないかというストレスを感じることもあるでしょう。うまく眠れない日が続くと、何かの病気ではないか、発育に影響はないのか、不安になったりするのではないでしょうか。子どもは、乳児期から3歳くらいまでの間に睡眠リズムを確立します。赤ちゃんの眠りはまだ未成熟で浅い眠りなので、大人と違って夜泣きをすることも多いのです。ですが、3歳以降になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。特に、発達障害のある子どもの多くは、睡眠に何らかの問題を経験する場合が多いと言われています。発達障害の子どもは、睡眠リズムのシステムづくりになんらかの問題があって睡眠に影響したり、発達障害の二次障害として睡眠障害があらわれたりする可能性が高くなるのです。そして睡眠障害の状況が長く続くことで悪循環を生み、障害や日常生活に更なる影響が出てしまうこともあります。子どもの発育に睡眠が重要な理由は?出典 : 子どもの睡眠のメカニズムは、脳の成長につれ変わっていきます。生まれてすぐの頃は短い周期で昼夜の区別なく眠りと覚醒を繰り返します。生後16週ごろまでには昼間に長めに起きて夜に集中して眠る、約24時間の生体リズムが形成されます。その後、午前中の昼寝、午後のお昼寝の順に必要がなくなり、5~7歳くらいまでに夜間にまとまって寝るようになります。睡眠量だけでなく、睡眠の質(睡眠構造)も年齢・成長にともない変化します。人間の睡眠は、レム睡眠(浅い眠りで身体は眠っているのに、脳が活発に動いている状態)とノンレム睡眠(脳も身体が休んでいる深い眠りの状態)の2つに分けられますが、生後間もなくはレム睡眠に似た浅い動睡眠が睡眠全体の約半分を占めます。3ヶ月ごろにレム睡眠とノンレム睡眠があらわれるようになり、2~3歳までにはノンレム睡眠とレム睡眠を90分ほどの周期で繰り返す、大人とほぼ同じ睡眠リズムができてきます。そのために睡眠のシステムが形成される時期に良質な睡眠をとることは、一生の生活リズムを左右する大きな意味を持つと言われています。成長につれ、メラトニンというホルモンの分泌量も増えてきます。メラトニンは夜間分泌されるホルモンで、覚醒と睡眠を切り替えて眠りをうながしますが、日中に光をたくさんあびることで分泌されるので、早寝早起きの生活リズムを続けることでより分泌量が増え、より眠れるようにもなります。乳児期はこれらの睡眠のシステムが形成される途中であるため、睡眠が浅かったり、細切れになりますが、3歳以降になってもこのシステムがうまくできていない場合、対策を考えたほうがよいかもしれません。細胞組織の生成と新陳代謝を促す成長ホルモンは、身長を伸ばしたり、筋肉をつくったりするのに欠かせません。また、脳の発達や記憶などにも関係するホルモンです。この成長ホルモンは、睡眠中、特に入眠後最初に訪れるノンレム睡眠中に多く分泌されると言われています。つまり睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで、身体の組織や脳が構築され発達するのです。このように、子どもにとって睡眠は日中の疲労を回復するだけではありません。乳幼児から思春期の睡眠は、心身が大きく成長する時期に必要なホルモンが分泌される、発達に欠かせないもっとも大切な時間といえるでしょう。そのため、子どもの睡眠の問題には早期に対処することが重要です。睡眠障害が改善されることで発達障害にもよい影響を与えると考える医師や研究者も多く、さまざまな研究も進められています。子どもの睡眠と脳の発達 ─睡眠不足と夜型社会の影響─ 大川匡子子どもの睡眠障害とは?どんな場合に疑われる?出典 : 眠りになんらかの問題がある状態を睡眠障害と言います。「眠れない」不眠症をイメージする人が多いのですが、眠りすぎやいびきなども含め、眠りの質と量にまつわるさまざまな問題を広く含みます。子どもに見られる症状の目安として、以下のうち、ひとつでも当てはまる場合、睡眠障害ではないかを検討するほうがよいとする専門家もいます。①夜間睡眠中に何度も目を覚ます②強くいびきをかく③日中不機嫌でイライラしている④よく泣く⑤保育園や幼稚園に行きたがらない⑥頭痛や腹痛が多い⑦1日中ねむけを訴える⑧朝起きて学校に行くまでにぐずぐずと時間がかかる⑨土曜・日曜日・休日はお昼まで寝ている⑩成績や部活の伸びが止まってしまった、あるいは急激に伸びた(がんばっている)、朝起きることができず学校にも行けなくなった(『子どもとねむり<乳幼児編>』三池輝久著メディアイランド刊P83より引用)このほか、以下の様子が見られるときも睡眠障害が原因の可能性があります。・夜中に突然大声で叫び、パニックを起こす・手足のムズムズ感や違和感、痛みで眠れない・夜中に歩き回る・夜普通に寝ているが、日中眠そうにしていたり居眠りしたりする・寝る時間が遅くて不規則な生活が続き、直せない・睡眠が十分に取れなくて頭痛や体調不良が続いている・落ち着きがなく、衝動性がある睡眠時間や睡眠中に起きる問題のほか、一見睡眠と関係なさそうなことも睡眠障害が原因かもしれません。子どもが良質な睡眠ができているか、普段の様子や生活をチェックしましょう。子どもの睡眠障害の種類出典 : 睡眠障害にはさまざまな症状や病気が含まれます。代表的な睡眠障害にはどんなものがあるのでしょうか?寝つきが悪い、朝早く起きてしまう、眠りの質が悪いなど、睡眠が十分でない状態です。睡眠不足が続くと、「なんとなく調子が悪い」といった不定愁訴や、頭痛・腹痛、不機嫌やイライラの原因にもなります。夜ちゃんと寝ているはずなのに、日中あらがえないほど眠い状態です。低年齢の子どもは昼寝を必要としますし、体力が無いので疲れていることもありますが、じゅうぶんに睡眠時間を取っているのにひどく眠そうな場合やずっと寝ている場合、睡眠時無呼吸症候群など別の病気が関係している可能性があります。昼夜のリズムと体内時計がうまく合わず、調節できなくなって睡眠リズムがくずれてしまい、社会生活に支障をきたす状態のことです。子どもの場合、朝起きられないと園や学校にも遅刻してしまい、不登校につながりやすい傾向も指摘されています。子どものいびきや無呼吸は、正常な睡眠や成長に悪影響を及ぼすことがあります。子どもの場合、いびき、無呼吸の主な原因は、鼻づまりやアデノイド・口蓋扁桃(こうがいへんとう)といったのどや鼻の奥のリンパ組織の肥大で、物理的に気道が狭まることです。また、肥満で気道が狭くなることもあります。呼吸がしにくいので血中酸素濃度が低下し、何度も脳が目覚めてしまい、十分に睡眠がとれなくなってしまうのです。長時間のSASが続くと、慢性的な低酸素症に伴う精神遅滞、深い睡眠がとれないことによる成長ホルモンの分泌低下に伴う低身長など発達のさまたげになるおそれもあります。アデノイドや扁桃肥大の場合、耳鼻咽喉科で手術すると治ることが多いようです。小児の「睡眠時無呼吸症候群」について■むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)脚などの下肢がむずむずするなど動かしたい強い衝動を覚えます。夜間など睡眠時間帯に起こることで、気になって眠れなくなったり深い睡眠をさまたげてしまいます。主に下肢にあらわれますが背中や顔などに違和感が生じることもあります。子どもの場合、成長痛と間違われることもよくあります。脳内の伝達物質であるドーパミンの機能異常のほか、子どもは鉄分不足が原因で起きる場合が多いようです。鉄分の多い食事やサプリメントで改善することもあります。■律動性運動障害乳幼児期から4歳くらいまでの時期で発症する睡眠障害。入眠時や睡眠中に手足や頭を激しく動かしたり、頭を打ち付けたりする。9ヶ月の子どもでは59%に見られるほど、乳児期には非常に多い症状ですが、5歳前後には5%以下になります。ただし、知的障害、自閉傾向にある子どもでは、後年まで症状が残ることもあります。ふとんにぶつける程度の軽度なら問題ありませんが、頭を壁にぶつけてけがをしたり、音で家族が不眠になったりすると、治療が必要になる場合があります。出典:『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p66睡眠中の異常行動や不快な身体的現象の総称です。子どもによくある「寝ぼけ」を含め、睡眠中に歩き回り、起きると覚えていない睡眠時遊行症(夢遊病)、恐怖の叫びをあげたり、泣いたりして目覚める睡眠時驚愕症(夜驚症)、睡眠中に恐怖や不安をともなう生々しい夢をみる悪夢障害などがあります。重症なものは本人や家族を悩ませることがあります。思春期までになくなることがほとんどですが、遺伝やストレス、外部からの刺激が原因と言われています。ストレスや刺激を取り除くとともに、症状が出ているときにけがをしないように見守りましょう。発達障害の二次障害として睡眠障害が現れることもある睡眠障害は、発達障害の二次障害として発症することが多いと言われています。自閉症やADHDなど、発達障害と診断された人は高い確率で睡眠の問題が起こります。特に乳幼児期には、寝つきが悪かったり、ちょっとの音で目を覚ましてしまい、途中で目を覚ますとなかなか寝ないなど、年齢相応の睡眠リズムが確立しにくい傾向が顕著にみられることも知られています。(『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p49より)これは、睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではありません。発達障害の特性により、睡眠になんらかの問題が出てしまうことが主な原因です。ですが、乳幼児期の睡眠は脳の発育に大きく関わりますので、睡眠障害が長引くこと自体が睡眠不足や生活リズムが乱れて悪循環を生み、子どもの心身の発育に影響している可能性も否定できません。音や光などに対する感覚が過敏なため、覚醒しやすいといわれています。また、睡眠に関係するメラトニンの量や、セロトニン・メラトニンといったホルモンの元となるトリプトファンの量が、極端に多すぎたり少なすぎたりするからではないかと考えられています。ADHDの特性として切り替えが苦手、ということがあります。つまり「起きている」状態から「眠る」状態へ、または「寝ている」状態から「起きる」状態にスムーズに移行することが難しいのではないかといわれています。また、ADHDのある人の脳にはセロトニンが不足しているとも言われています。セロトニンを原料として作られるメラトニンという体内時計をコントロールするホルモンも不足してしまうため、不眠や概日リズム睡眠障害に陥りやすいのではないかと考えられています。寝るのも忘れて熱中してしまう過集中で睡眠リズムが崩れてしまうことが多いようです。また、感覚過敏が、寝つきが悪くなったりすぐに目が覚めてしまう原因にもなります。また、アスペルガー症候群の二次障害としてのうつ症状などによる不眠の可能性も考えられます。Upload By 発達障害のキホン発達障害と誤診される睡眠障害も出典 : 睡眠不足から集中力や落ち着きがなくなった子どもにADHDのような症状がみられることもあります。特に子どもの睡眠時無呼吸症候群の症状として多動や不注意、衝動的行動がよくあらわれることもあり、ときにADHDと誤診されることもあるようです。また、子どものむずむず脚症候群も大人と比べて昼間に症状が出やすく、授業中などにむずむずしてじっとしていられないことからADHDと間違われることもあります。もちろん、診断にはくわしい生育歴などが精査されますので、きちんと医療機関で診断を受ければわかることです。しかし、このことからも、子どもの睡眠障害が、心身の不調や問題行動とされる症状と密接に関わっていることがよくわかります。参考文献:『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p65、p105Upload By 発達障害のキホン睡眠障害を改善する方法・対処法出典 : 子どもの心身の成長には良質な睡眠が不可欠ですし、軽度の睡眠障害や生活リズムの乱れは家庭での工夫で改善できる場合も多いです。睡眠障害がよくなると、家族の生活の質も上げることになるので、早期に取り組むことが大切です。朝、光を浴びることで体内時計がリセットされます。まず起きたら窓を開け、お日さまの光をあびましょう。毎日早寝早起きのリズムで生活し、きちんと朝食を食べているでしょうか?昼寝の時間や長さは適切でしょうか?生活習慣を見直しましょう。また、適度に疲れていると眠くなるので、外で身体をうごかすなどの日中の行動も大切です。夕ご飯やお風呂が遅くなったり、だらだらテレビを見ることも、不眠につながります。親の都合で子どもの生活リズムが崩れることのないように気をつけましょう。寝る前に着替えて歯を磨く、絵本を読むなどの決まりごとをつくります。毎日同じ習慣や手順で眠りに就くことで、自然と寝るモードに気持ちが変わり、寝つきがよくなります。子どもがどんなことをすると眠りやすいか探しながら、合うものがあれば毎日繰り返して「おやすみの儀式」にしましょう。子守唄をうたう、背中をとんとんするなど、赤ちゃんの寝かしつけにも効果がありますので、試してみてくださいね。寝室の環境も睡眠に影響します。落ち着いて眠りにつける空間づくりと、朝起きやすくなる工夫をしましょう。まず、ベッドは日当たりのよい場所に置きましょう。遮光性のあるカーテンをして、朝決まった時間に開け、起床時に日光を浴びるようにします。インテリアの色使いは、赤などの原色は神経を興奮させると言われていますので、避けた方がよいでしょう。淡い青や黄色、アースカラーなどの穏やかで落ち着いた色がおすすめです。不安を感じやすい場合や光に敏感な場合は、天井に布などを吊って天井を低くしたり、照明を和らげると効果があるようです。また、お気に入りのものを置いたり、囲って個室のようにすると「自分のスペース」と安心できる場合もあります。入眠する数時間前からは明るい照明は避け、テレビやスマホも使用しないほうがよいようです。せっかく寝ようとしても、隣室などから大人の楽しそうな声やテレビの音が聞こえると、目が覚めてしまいます。子どもが静かで落ち着いた雰囲気で眠りにつけるよう、環境づくりを工夫しましょう。どうしても寝つきが悪い時には無理に寝かせようとせず、思い切って起きるという手もあります。一度部屋を明るくして外に出てみたり、好きなことをしたり、音楽をかけてみたり、一度気持ちを切り替えると、かえって落ち着き、眠くなることもあるようです。マッサージもおすすめです。やさしくなでてあげるだけでもよいので、眠る前の親子のスキンシップを入眠儀式として取り入れてみてはいかがでしょうか?睡眠障害の治療法出典 : 子どもの睡眠障害の注意点として、大したことではないと放っておいたり、どこに相談していいのか分からなかったりするうちに悪化してしまうことがあげられます。子どもの眠りについて気がかりなことがあったら、まずは抱え込まずにかかりつけの小児科や地域の保健センターに相談しましょう。専門機関や対処を教えてくれるでしょう。乳幼児期は子どもの心身が発達する大事な時期ですので、早めに対処することが重要です。医療機関で行われる代表的な治療法をご紹介します。子どもの睡眠障害の場合、親の生活習慣の影響を受けやすいので、家族全体の生活習慣を見直したり、夜泣きへのかかわり方などについての指導したりといった、行動療法的なアプローチが特に有効です。まずは睡眠に関する知識を正し、睡眠環境や生活リズムを整えることで適切な睡眠が得られるようにします。睡眠リズムを記録する睡眠表をつけることもあります。子どもの薬物治療については、医師による治療方針やケースにもよりますが、生体リズムの改善のため、メラトニンやドーパミンを薬で調整する治療法があります。また、緊張や不安が原因の場合、それを和らげるための薬が処方されることもあります。いずれにしても薬物治療を行う際には主治医と相談の上、用法や用量を守って進めることが重要です。朝に強い光を浴びることで体内時計がリセットされる仕組みを使い、朝、身体の中心部の体温が上昇し始める時間に、人工的に作った5000ルクス以上の明るい光を浴びる治療法です。睡眠障害が生活指導や薬で改善しない場合などにまれに行われますが、1か月以上の入院が必要となることもあります。睡眠の改善が発達や生活によい影響をもたらします出典 : 睡眠障害は家族も本人もつらい問題ですが、生活習慣や環境の改善などで劇的によくなることもあります。「寝る子は育つ」ともいいますが、子どもにとってよい睡眠は成長・発達にかかせないもの。睡眠に問題があると感じたら早期に対処法を考え、ときに病院などに相談し、一緒に改善していく方法を探しましょう。参考:睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン|日本睡眠学会HP
2016年09月05日緘黙症(かんもくしょう)とは?出典 : 緘黙症(かんもくしょう)とは、発声器官には問題がなく、言葉を理解したり、言語能力があると分かっている人が、ある特定の場面や状況で話すことができなくなってしまう精神疾患です。たとえば、家庭の中や家族とは元気よく話せるが、幼稚園や学校では無口になり、話すことができなくなってしまいます。これは、言葉の遅れや、発声障害で話すことができないのではなく、精神的な原因があるのではないかと言われています。緘黙症には、場面緘黙症(選択性緘黙症)と全緘黙症の2つの種類があります。場面緘黙症の場合、話すことを期待されている特定の場面で、話す言語能力があるにも関わらず話せなくなってしまいます。全緘黙症とは、どの場面でも話せなくなってしまう場合を指す言葉です。緘黙症は、医学的な診断名としては「選択性緘黙症」と名付けられていますが、日本では「場面緘黙症」と呼ばれるのが一般的です。"選択"という日本語が、能動的に本人が場面や状況を選んで黙っているような印象を与えやすいため、誤解を避けるために「場面緘黙症」と呼称する人が多いようです。実際、場面緘黙症のある本人は、話したくても話すことができません。医学的な診断名が"選択"性緘黙症となったのも、場所を選ばされざるを得ないという意味合いで"選択"という言葉が使われていると考えられます。このコラムにおいては、比較的一般的な呼称である場面緘黙症を用いて症状や対策等を詳しく説明していきます。場面緘黙症の症状出典 : 主な症状は、ある特定の、話すことを求められる社交場面や状況で話すことができなくなることです。場面緘黙症のある子どもの多くは、家族に対してや、家庭では活発に話しますが、学校やそのほかの社交場では話すことができません。また、家庭の中や家族などの親しい人とも、あまり話すことができない場合があります。話さない代わりに、擬声音を出したり、指をさしたり、筆談したりすることもあります。場面緘黙症のある子どもの年齢が低い場合、つきまといやかんしゃくを起こすこともあります。場面緘黙症の診断出典 : 診断基準には、大きくわけて、2014年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の二つがあります。ICD‐10では、小児期の情緒障害に含まれています。これは、ICD-10では、場面緘黙症は、子どもが発症する疾患という見方が強いことを示しています。一方、DSM-5 において場面緘黙症は、不安障害の一種とされており、不安や恐怖心が一因になっているのではいかという見方をしています。今回はDSM-5の診断基準をご紹介します。1.ある特定の状況、場面以外では話すことができるが、そのある特定の社会的状況、場面では常に話すことができない。2.この疾患により、学業上、職業上の成績が適正に評価されない、または対人コミュニケーションを円滑に行えない。3.この疾患が少なくとも一カ月続いている。4.場面に応じた知識があり、会話の楽しさを知っているが、話すことはできない。5.コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、自閉スペクトラム症、統合失調症またはその他の精神病障害の経過中にのみ起こるものではない。場面緘黙症は、5歳前後で発症することが多いですが、話す機会の増える学校へ行き始める時期まで、症状が顕在化しないことが多いです。研究では、成長とともに場面緘黙症の症状が改善するというものもありますが、研究段階であり、確証はありません。一方、青年期、成人でもまれに場面緘黙症を発症します。場面緘黙とその他の疾患との関係出典 : 場面緘黙症は不安障害の一種と考えられていますが、その他の疾患・障害との併存もしやすいようです。以下では、場面緘黙症との併存が多い疾患・障害について説明していきます。場面緘黙症の併存症で最も多いものは、他の不安障害との併存です。不安障害群の中でも、社交不安症が最も多く、次いで、分離不安症や限局性恐怖症が多いと言われています。2000年にアメリカの学会でクリステンセンが発表した説によると、発達障害は、不安障害と同じくらい場面緘黙症と併存しやすいと言われています。コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、軽度精神発達遅滞、アスペルガー症候群などとの併存が多いようです。夜尿症(Kristensen, 2000)、聴覚に関する疾患(Bar-Haim, et al., 2004)などを合併している場合が、場面緘黙症でない子どもに比べて多いという報告もあります。参考: Kristensen, 2000, Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder.場面緘黙症の相談先出典 : 場面緘黙症は、発症時期である5歳前後だと、まだ学校に通っておらず、他人と話す機会がそもそも少ないため、症状が見落とされがちです。また学校に通い始めてからも性格の問題だと片づけられてしまうこともあります。ですが、場面緘黙症は、本人が好きで黙っているわけではなく、本人が話したくても話せない状態であることに注意が必要です。子どもが場面緘黙症かもしれないと心配になったら、以下で紹介する相談先に早めに相談に行くことをおすすめします。保護者や周りの人が少しでも早く症状に気づければ、困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、生活しやすい環境を整えてあげることができるかもしれません。一方、支援や治療を受けずにいると、症状改善が遅れたり、社交不安障害などの二次障害が発現するリスクが高くなります。家族だけで抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、本人にあった接し方でサポートすることが大切です。1. 保健センター市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。2. 子育て支援センター子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施をしている子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。3. 児童相談所都道府県ごとに設置されており、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると24時間365日、児童福祉に関する相談を受けてくれます。青年・成人の方で場面緘黙症のある方にとっては、電話や対面での相談はなかなかハードルが高いと思います。webで予約できる相談機関、病院や、メールで相談に乗ってくれるところを探すことをおすすめします。1. 精神保健福祉センター都道府県ごとに設置されており、精神保健の向上を専門とした機関です。ここでは電話相談、施設によってはメール相談を受け付けているところもあります。また、精神障害者向けのデイケアを行っているところもあります。以下は全国の精神保健福祉センターの一覧です。全国の精神保健福祉センター一覧2. 心の耳厚生労働省が行っている、働く人向けの心のポータルサイトです。ここでは、メール相談を受け付けており、場面緘黙症の症状でうまく話せない方や、電話や面接に大きなハードルを感じる方におすすめです。以下はそのリンクです。働く人の「こころの耳メール相談」3. 相談事業所など上記の他にもお住まいの地域の自治体に相談窓口が設置されている場合がほとんどです。電話や対面での相談が多いのですが、お住まいの地域の自治体に確認してみましょう。場面緘黙の治療・支援機関出典 : 上記の相談先で紹介された病院へ行くことをおすすめします。直接病院へ行く場合は、心療内科や精神科を受診してみましょう。その上で、必要があればカウンセリングを受けていきましょう。この他にも、子どもに対しては療育施設や発達支援センターで療育を行うことで、場面緘黙が緩和されるケースもあります。場面緘黙症は情緒障害の一つとして、公的な支援が受けられます。情緒障害児短期治療施設では、情緒障害を持つ児童に対して医学的な観点から、心理治療を中心に生活、教育支援を行う場所です。最近では虐待を受けていた児童や、不登校の児童が多く治療・支援を受けているようですが、場面緘黙症による不登校を抱えている児童もいるようです。詳しくはこちらを参照ください。情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワーク家庭でできること出典 : 子どもが安心できる環境をつくる子どもの不安を取り除いてあげましょう。リラックスし、安心した環境を整えることが重要です。2. 答えや反応を無理やり求めることはしない話せないからといって、強制的に声を出させたり、答えさせるとかえって不安感、不信感が増します。そして話さないからといって、声をかけない、無視するのもよくありません。積極的に声をかけ、言葉による反応がなくても、表情や動きでコミュニケーションをとれるように工夫してみましょう。3. 非言語コミュニケーションの活用言葉を発することができなくても、ジェスチャーや筆談でコミュニケーションをとってみましょう。例えば、首の動きで、うなずいたり、首を振ったりして、YES、NOの意思表示ができるように促すことも一つの方法です。4. できたことを褒める今まで話すことや、感情表現できなかった場面や状況で、話すことや感情表現ができた場合は、どんな小さなことでも褒めてあげましょう。本人の自信につながります。場面緘黙症を取り巻く環境出典 : 日本では、場面緘黙症という疾患に対する治療法は確立されておらず、研究もまだまだ進んではいません。しかし、場面緘黙症のある子どもや人を支援する団体や。情報発信機関は多くあります。以下では、そうした支援団体の取り組みを紹介します。場面緘黙症を持つ方々の生活の役に立つかもしれません。場面緘黙症は、教育法上の情緒障害とされており、特別支援教育の対象です。具体的には、通級や支援学級で適切な支援を受けられます。通級とは、在籍は普通学級ですが、週1、2度、普通学級を抜けてその子に合った特別支援を受けられます。特別支援学級とは、在籍は支援学級となり、子どもの障害などに合わせた教育が受けられます。学校教育法「かんもくネット」という団体が提供している、「状況によっては声が出づらいです」と書かれたカードです。公共交通機関の使用時や、災害などの非常時に、周囲の人に場面緘黙であることを知らせる上で役立つかもしれません。以下からダウンロードして印刷し使うことができます。当事者用提示カード1. Free candle息を吹きかけてろうそくを消すゲームのアプリです。声が出ない場面でいきなり声を出す練習をするのではなく、息を吐くところから徐々に慣れていく練習をすることが出来るのが長所です。 おしゃべり猫のトーキングトム話しかけると、猫のキャラクターがおかしな声で返してくれるボイスチェンジャーです。ゲーム感覚で声を出す訓練ができます。その他にも、ボイスレコーダーアプリや筆談アプリなどあるので、必要に応じて探し、活用してみてください。まとめ場面緘黙症は、単にその人が内気であったり人見知りというわけではなく、本人が話したくても話せなくなってしまう状態です。性格のせいだと決めつけず、心配な場合は一度相談に行くと良いでしょう。直接相談に行くことが難しい場合は、メールを活用した相談窓口も活用してみましょう。場面緘黙やその治療法の研究はまだまだ発展途上ですが、支援グッズや、地域ごとの支援団体は多く存在します。本人に合うツールを活用して、コミュニケーションの支援をしていきましょう。本人が安心できる環境を整えたり、ジェスチャーやうなずきなどの非言語コミュニケーションも織り交ぜながら、焦らず、本人が伝えたい気持ちを受け取り、寄り添っていくことが大切です。
2016年09月05日回避性パーソナリティ障害とは出典 : 回避性パーソナリティ障害とは、日本人に多いパーソナリティ障害の一種で、人より不安を感じやすく、傷つくことや失敗することを極度に恐れるようになってしまう精神障害のことです。パーソナリティ障害の一般的な特徴は以下の3点です。・認知、感情、対人関係、衝動性などにおいて、著しい偏りのパターンがあること・偏りのパターンは、青年期か成人期の早期(10歳代後半から20歳代前半くらいまで)に始まり、それから長年つづいていること・偏りのパターンがあることにより、社会生活や仕事の場面で支障が生じていることアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)によると、パーソナリティ障害は以下のように3つに分類されています。Upload By 発達障害のキホン回避性パーソナリティ障害はC群に該当し、不安が強いことや、傷つきと失敗を恐れるあまり、人と接触したり、課題にチャレンジしたりすること自体を避けてしまうことを特徴としています。回避性パーソナリティ障害がある人の割合は、一般人口では0.5~1%、精神科通院者での割合は10~25%です。出典:岡田尊司 「回避性パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか」 PHP新書対人関係においても不安や恐怖が強いため、仕事や恋愛などにも支障をきたし、場合によっては引きこもりになってしまうこともあります。日本人に比較的多くみられるパーソナリティ障害であり、他のパーソナリティ障害に比べると比較的社会適応の幅が広いとも言われています。このパーソナリティ障害では、他者からの批判や拒絶を恐れ、自分が軽んじられているという思いを抱きやすいことから、社会的かかわりが困難となっている。彼らは常々、自己への不確実感および劣等感を抱いており、習慣的に自己にまつわる不安や緊張を持続させている。このため、羞恥心を生じる状況や注目の集まる場で失態を演じることを恐れ、そのような場面を避ける傾向をみせる。その結果、彼らは対人交流に消極的になり、限られた範囲でしか親密な関係を形成できなかったり、ひきこもって生活の範囲を制限したりすることがある。岡崎祐士/監修『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店/刊)より引用回避性パーソナリティ障害の症状出典 : 回避性パーソナリティ障害の症状としては、以下のようなものがあります。・他人からの批判や拒否を恐れ、大切な用事や面談を避けてしまう・人と上手く付き合えないと感じているため、新しい人間関係を築こうとしない・他人より長所が少なく、自分を劣っている人間だと思っている・恥をかくのが嫌でその不安から新しいことにチャレンジしたりするが苦手である・自分に好感を持っていると確信できなければ、その人と親密な関係を持たない・恥や馬鹿にされることを恐れ、親密な関係でも共同作業を断ることがある・人といる時に、普段通りに自然に振舞うことがなかなかできない回避性パーソナリティ障害の前兆は、内気さ、孤立、および見知らぬ人や新しい状況に対する恐怖が生まれる幼児期または小児期に始まりますが、ほとんどの人はこれらの傾向は成長・加齢によって消えていきます。ところが回避性パーソナリティ障害を発症する人は、新しい人との社会的関係が特に重要になる青年期および成人期早期にますます内気になり、回避的になっていく可能性があります。参照:聖心こころセラピー回避性パーソナリティ障害の診断基準出典 : パーソナリティ障害の診断は、パーソナリティが形成されていることが前提となるため、一般的には18歳以上で診断が下されることが多いです。診断基準は医療機関によって異なりますが、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)とアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づいて診断が下されます。ICD-10による診断基準では、以下から3項目以上が認められれば回避性パーソナリティ障害が診断されます。(1)持続性で広範な緊張と不安(2)自分は社会的に不適格だなどの劣等感(3)対人場面で批判・拒否されることの不安(4)好かれている相手でないとかかわれないこと(5)安全を追求するためライフスタイルが制限されていることや批判や拒否を恐れるため対人的接触を回避すること参考書籍:『ICD-10精神科診断ガイドブック』中山書店/刊DSM-5による診断基準では、以下から4項目以上が認められれば回避性パーソナリティ障害が診断されます。(1)批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業的活動を避ける(2)好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたがらない(3)恥をかかされる、または嘲笑されることを恐れるために、親密な関係の中でも遠慮を示す(4)社会的な状況では、批判される、または拒絶されることに心がとらわれている(5)不全感のために、新しい対人関係状況で抑制が起こる(6)自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、または他の人より劣っていると思っている(7)恥ずかしいことになるかもしれないという理由で、個人的な危険をおかすこと、または何か新しい活動にとりかかることに、異常なほど引っ込み思案である参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊たいていの人は、多かれ少なかれこのような回避的なパーソナリティを持ってはいます。しかし、回避性パーソナリティ障害であるといえるのは、これらの傾向に柔軟性がなく、持続的で、社会生活が困難になるほどの苦痛を引き起こしている場合のみです。特にこれらのパーソナリティの傾向は、日本特有の奥ゆかしさや恥の文化と重なります。他人の評価や反応を必要以上に気にして人前にあまり出たくないというパーソナリティを持つ日本人は多く、これらの基準に当てはまるからといって必ずしも「障害」とはいえないこともあります。例えば、DSM-5はアメリカの基準であるため、日本の社会の仕組みや文化的背景を考慮しないと必ずしも治療を必要としない人まで「障害」になってしまうこともあるのです。しかしこれは裏を返せば、日本では回避性パーソナリティ障害の人は理解されやすく、受け入れられやすい土壌があるということも意味しています。回避性パーソナリティ障害と他の障害との関連出典 : 回避性パーソナリティ障害の症状は、他のパーソナリティ障害の症状と重なる部分もあり、下記の障害が併発することもあります。しかしこれらと回避性パーソナリティ障害とを区別することは自分の障害を理解するためにも、また治療するうえでも重要です。以下では、回避性パーソナリティ障害と共通の症状を持つパーソナリティ障害と、各障害との違いについてまとめました。どちらも他人からの批判に対して過敏であること、他人から自分が受け入れられていることの保証を求めることを特徴としています。しかし回避性パーソナリティ障害の人は、内に依存心を秘めながらも、その依存性を嫌って自立的であろうとする傾向があります。どちらも社会的孤立を特徴としています。回避性パーソナリティ障害の人は他人と関係を持ちたいという思いがあり、孤独感を強く感じているのに対して、シゾイド・統合失調型パーソナリティ障害の人は社会的孤立に満足していたり、むしろそれを好む傾向があります。他人に秘密を打ち明けることを躊躇するという特徴が共通していますが、回避性パーソナリティ障害の人がこれを躊躇するのは、恥ずかしい思いをさせられたり、不適切だということが分かったりすることを恐れるためです。妄想性パーソナリティ障害の人は、他人と共有する情報が自分に不利に用いられるという恐れのために秘密を他人に打ち明けたがらないという点で異なります。また、同時に診断されることが多い障害としては他に、・抑うつ障害・双極性障害・社交不安症・境界性パーソナリティ障害があります。回避性パーソナリティ障害の原因は?発達障害との関連は?出典 : パーソナリティ障害の原因は遺伝的要因と環境的要因の2つに分けられると考えられています。遺伝的要因についてはまだ解明途上で、詳しいことはよく分かっていません。回避性パーソナリティ障害については、消極的な性格や不安が強い性格が遺伝していることも考えられますが、かつては活発な子どもだったにも関わらず、あることをきっかけに回避性パーソナリティ障害となることもあるため、環境要因も大きく影響していると考えられます。環境的要因については、親とのかかわり方や過去の社会的体験などが関係しているといわれています。典型的な環境要因としては、親からの過干渉やあからさまな批判、強制的に勉強や習い事をやらされ続けるといった支配的な教育環境があります。また、いじめ、教師からの強い叱責、人前で恥をかかせられるような体験などの社会的体験も、回避性パーソナリティ障害の一因となりうるようです。パーソナリティ障害は、複数の要因が複雑に絡み合って起こるものです。パーソナリティ障害の場合、原因が分かったところで、それが治療に直結するとは限りません。そのため、原因を追求することよりも「これからどうすればよいか」を考えることのほうが重要です。ハートクリニック回避性パーソナリティ障害とは岡田尊司 『パーソナリティ障害がわかる本: 「障害」を「個性」に変えるために』 ちくま文庫岡田尊司『回避性パーソナリティ障害いかに接し、どう克服するか』 PHP新書発達障害がある子どもが周りからの適切な支援や理解を得られないと、周りの大人から注意されることが多くなったり、いじめのターゲットになったり友達から孤立するなど、社会的体験がつらいものになりがちです。この経験の積み重ねが、将来のパーソナリティの形成に大きく影響しています。発達障害自体がパーソナリティ障害へと発展するのか、それとも発達障害の抱えるハンディが社会的体験を不利にして、パーソナリティ障害になりやすい要因となるのかは未だ解明されていません。ですが、発達障害がある人に対しては、本人の特性を理解し、できるだけポジティブな社会心理体験が積めるように配慮することが特に重要だといえるでしょう。回避性パーソナリティ障害の疑いを感じたら出典 : パーソナリティ障害の診断は、精神科医や専門医にも難しいものです。もしご自身やご家族に回避性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関での受診先は精神科、神経科、心療内科などになります。「相談」のつもりであっても、形式は「受診」になるため、できるだけ本人を連れていくようにしましょう。いきなり精神科などの病院に行くことには抵抗がある場合には、各市区町村にある保健所の保健センターで相談することもできます。また、各都道府県に設置される精神保健福祉センターでもメンタルヘルスに関する相談事業を行っています。全国の保健福祉センター一覧また、本人が会社勤めの場合や高校や大学に通っている場合、学校や企業専属のカウンセラーに相談することもおすすめです。企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。回避性パーソナリティ障害の治療法出典 : パーソナリティ障害を確実に根治させる、決定的な治療法はありません。パーソナリティは一人ひとり異なるものであるため、治し方も人それぞれです。一般的には精神療法と薬物療法が中心になりますが、必要に応じて家族療法や福祉・医療関係施設で行われるデイケアなどの社会療法が同時に行われます。一人ひとりの治療目的に合わせて、複数の治療を組み合わせます。医師や心理技術者が患者さんの心理面に様々な働きかけを行い、患者さんの認知や思考、行動パターンなどの偏りを改善して少しずつ社会に適応できるようにしていく根本的な治療法です。1週間に1~2回、30分から1時間程度、治療者が患者さんと面接する形で行うのが一般的です。内容に関しては個々の治療者の判断によるところが多く、統一のガイドラインはありません。この治療法においては、以下の3点を患者さんと周囲の人々が理解する必要があります。・効果が表れるのに時間がかかる治療法であり、一般的には数年かかる・誰にでも効果が期待できるものではない・治療者との信頼関係がなければ効果は得られない個人精神療法は、精神科医が行うもっとも基本的な治療法の1つではありますが、「絶対的な治療法」であるという過度の期待を持つと、すぐに効果が出ないと治療を投げ出してしまったり、治療者を疑ったりと逆に治療が困難になってしまうことがあります。その場しのぎではなく問題を根本から改善しようとするものであるため、時間はかかりますが、本人が治療の意思を持って、治療者と信頼関係をしっかり結んで治療を継続していくことが必要です。また、回避性パーソナリティ障害の基盤となる気質を「森田神経質」と呼ぶことがあり、その治療法として「森田療法」があります。森田神経質のある人は、不安や恐怖を「あってはならないもの」として排除しようとするあまり、かえってそれにとらわれてしまうという悪循環に陥っています。この悪循環を断つために、不安や恐怖を「あるがまま」受け入れる姿勢を身につけようとするのが森田療法です。公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団「森田療法とは」集団精神療法とは、同じパーソナリティ障害を持つ人が複数人集まり、グループで話し合いをしたり、共同で作業をしたりする活動を通して、社会にうまく適応できない原因を見つけて解決する方法です。他の患者さんとコミュニケーションをとりながら、自分と同じ障害を持っている人を見つめることで問題に気付き、それを自分にあてはめて考えることができるようになります。また、集団精神療法での仲間体験は、患者さん自身の自己肯定感を持たせることにつながり、他人とコミュニケーションの取り方を練習する機会にもなります。家族療法では、患者さん本人だけでなく、家族にも治療を行います。パーソナリティ障害がある患者は、その家族にも認知や思考のパターンに偏りがあることが多いです。この偏りのために、家族の努力が患者さんの症状を逆に悪化させていることもあります。具体的には、治療者が家族全員と面接を行ったり、患者さんの付き添いで来院した際に話を聞いたりします。患者さんに思いをうまく伝える言葉のかけ方や、患者さんの気持ちを安定させるための振舞い方など、適切な対応法を治療者から指導します。なお家族療法は、患者さんが未成年のときに行われることが多いです。患者さんがある程度の年齢に達している場合は、患者さん自身が家族から自立する方向で治療が行われる傾向にあります。薬物療法は、強い不安や緊張、抑うつなど、程度の強い精神症状を一時的に和らげる目的で使われます。しかし、あくまで対症療法にすぎず、障害を根本から治すことはできません。治療の中心は精神療法で、薬物療法はその潤滑油としての役割を果たします。使われることのある薬の種類と働きは以下の通りです。■抗精神病薬脳に働きかけて、興奮を静めたり、心を安定させます。フマル酸クエチアピン、リスペリドンなどリスペリドン■抗うつ薬気持ちの落ち込みをやわらげ、心を楽にします。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など■抗不安薬抗うつ薬より効き目がおだやかで、不安感をやわらげます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬(ロラゼパム、ブロマゼパムなど)ロラゼパムブロマゼパム■その他睡眠のリズムが乱れているときは睡眠薬を、そのほか衝動を抑えるためにてんかんの薬や副作用を抑える薬なども使われます。ここでも、「薬を飲むことで、障害がすぐに良くなる」という過度な期待を寄せないことが大切です。また、服薬の決まりをきちんと守り、量や種類に不安があるときはきちんと主治医に相談しましょう。患者さんの認知のゆがみを是正するための治療法です。患者さんに自分を客観的に観察してもらい、認知のゆがみがいつどのようにして起こったのかを記録し、自覚してもらいます。そのうえで、それを改善するための認知の仕方、行動の取り方をロールプレイングなどを通して実践的に学びます。回避性パーソナリティ障害の人が悩んでいる様々なことが、いかに主観的な心配にすぎないかを本人に気付かせて、問題の解決を目指します。近年は簡易型の認知行動療法の研究・開発が進んでいます。具体的には、当事者や仲間がお互いに支え合うサポートグループ・プログラム、短時間で相談に乗る相談センターや電話相談、コンピュータ支援型認知行動療法が実際の現場で活用されています。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法とは障害を克服するために、本人が心がけること出典 : 回避性パーソナリティ障害の人は、親の期待のもとで形成された「理想的な自己」のイメージと、その理想に届かない「劣等的な自己」のイメージの両方を持っていますが、中間にある「等身大の自己(ありのままの自分)」のイメージが持てていません。そのため、何か行動を起こして失敗したときに自尊心が傷つくことに過敏になってしまっています。「等身大の自己」を形成するためには、どんなに小さなことでも自らチャレンジして、成功体験を積み重ねることが必要です。不安や恐れ、迷いは一度横に置いてみて、チャンスが巡ってきたときはまず実行してみましょう。小さなことでもチャレンジを続けることで、失敗の恐れや不安は次第に消えていくはずです。また、うまくいく経験ばかりを求めないことも大切です。失敗する経験は成功する経験よりももっと価値のある体験です。「失敗してもまたやってみればいいや」と気楽に構えてみてください。どうしても一歩を踏み出せないときは、背に腹は代えられない状況を作ってみるというのも一つの方法です。これまでの自分を守ってくれるものがなくなると、一歩踏み出して動き出したというケースは多いようです。例えば、引きこもりの青年が、その子をずっと心配していた父親が亡くなるとその年のうちに仕事をはじめ、以来ずっと仕事を続けているというケースもあるそうです。まずは自分が「やってみたい」と思うことから、少しずつチャレンジしてみてはいかがでしょうか。周りはどう支えればいい?出典 : 回避性パーソナリティ障害を本人が克服するにあたって、周りの人々が対応を工夫することも大切です。ご家族やご友人に障害のある方がいるとき、以下のことに気をつけてみてください。回避性パーソナリティ障害の人は、「自分は何をやってもダメだ」という否定的な自己イメージを持っています。他者からの評価にも非常に敏感であるため、周囲の人は言葉のかけ方に配慮する必要があります。自信を失って症状が悪化するのを防ぐために、けなしたり、否定したり、拒絶したりといった対応は避けなければいけません。逆に、どんなに小さなことでも何かに成功したときは、良かった点を褒めることで本人の自信につながります。結果だけでなく、その過程や意欲、姿勢自体を褒めるのがよいでしょう。回避性パーソナリティの人に、本人の意志とは無関係のことをやらせ、そしてそれがうまくいかなかったときに本人を責めれば、本人の自尊心は深く傷つき自己肯定感が失われてしまいます。周りが先回りして本人の意思決定を横取りするのではなく、本人の主体性や気持ちを尊重して、本人が意思表示をするのを待つことが大切です。本人に人生の決定権と責任を求めていくことが自立へとつながります。本人が行動や意思決定を躊躇している場合は、周りは第三者のような距離で程よく背中を押すとよいでしょう。回避はストレスや傷つきに対する自然な反応です。極限まで頑張らせようと無理強いすると回避が全般化し、すべてを回避するようになってしまうことがあります。そのため、「疲れた時は休めばよい」ということを教えて適度に逃げ場をつくってあげることが大切です。回避の反応が長引いている人に対しては、第三者の力を借りて風穴を開けたり、本人がやりたいと思っていたことを突破口にしてみることが有効です。失敗やつまづいたことにはこだわらず、うまくいかなかったらまた考える、というようなのんびり構えたスタンスがプラスに働くことが多いです。まとめ出典 : 日本人は回避的なパーソナリティを持つ人が多いため、回避性パーソナリティ障害は他のパーソナリティ障害に比べて「困った人」と思われにくく、受け入れられやすい傾向にあります。そういった環境があるため、比較的周りの人に相談しやすかったり、共感を得られやすかったりするのではないでしょうか。また、日々の心がけだけでも、克服に向けた取り組みはしやすいと思います。「等身大の自己」を受け入れるために、不安や心配はひとまず置いておいて、小さなことから少しずつ何かを始めてみてはいかがでしょうか。ただし、生活に支障が出る程の症状が出ているときは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関などで適切なサポートを受けることが、克服への近道になることもあります。
2016年09月05日こんにちは。フリーママライターの横山かおりです。突然ですが、妊活中や妊娠初期に「葉酸を摂取したほうがいい」ということを耳にしたことはありますか?筆者自身も第一子妊娠発覚時に、父から葉酸のサプリメントを渡されました。では、なぜ妊活中や妊娠初期に葉酸が必要なのか?『バイエル薬品株式会社』がおこなった調査によりますと、妊娠・妊活中の女性の約6割は「葉酸摂取の必要性を正しくいえる自信がない」と回答していることがわかりました。そこで今回は葉酸を必要とする大きな理由 をご紹介します。●神経管閉塞障害のリスクが高くなる妊娠初期に葉酸が不足していると、『神経管閉塞障害 』の発生リスクが高くなるといわれています。これは脳や脊髄などがつくられる妊娠4〜5週の間に起こる先天異常です。神経管閉鎖障害の中には『二分脊椎 』『無脳症 』『脳瘤 』などがあります。生死を分けるような大きな病気であり、遺伝の問題もありますが、多くはビタミンB群である葉酸の不足が考えられています。●妊娠が発覚してからの葉酸摂取では遅い胎児の神経管がつくられるのはだいたい妊娠2週から6週ごろです。一方で、妊娠が発覚するのは早くても5週ごろ。つまり、妊娠が発覚してから葉酸を摂取しようとしても遅い のです。心拍確認、母子手帳交付のころには手遅れといってもいいほど。「妊娠したい」と思ったらそのときから葉酸を摂取するように心がけましょう。●葉酸+αのサプリメントでOK日本人妊婦の葉酸摂取量は、『厚生労働省』が推奨する量の半分未満となっており、海外に比べてもとても低い割合となっています。葉酸を食事だけで補うのはなかなか難しいのでサプリメントを使用する人が多いですが、最近では「葉酸」だけのサプリメントと、「葉酸+ビタミン」などマルチビタミンのサプリメントが販売されています。どちらでも葉酸摂取には問題ないのですが、葉酸はもともとビタミンB群。ビタミンB9の葉酸はビタミンB6など他の栄養素とあわせることで効果を発揮する ことが分かっています。ですので、葉酸を含むマルチビタミンなどのサプリメントも積極的に摂取したいですね。----------ただ「妊婦には葉酸が良い」という一言では何が良いのかよくわかりません。正しい知識を理解し、「妊娠したければ葉酸をとろう」の一言に変えて世の女性たちに浸透してほしいですね。【参考リンク】・バイエル薬品「妊活・妊娠に関する意識調査」を実施 | バイエル薬品株式会社()・NTDsを減らしたい! 赤ちゃんのために妊娠前からできることバイエル薬品 神経管閉鎖障害(NTDs)の発症リスク低減の啓発活動開始 | バイエル薬品株式会社()●ライター/横山かおり(ママライター、元モデル)
2016年09月03日発達障害の娘に、二次的な症状として現れた「解離」22歳でアスペルガー症候群と診断された娘。小学校高学年から高校卒業まで続いたいじめにより、神経性食欲不振症、不登校、被害妄想、幻聴幻覚、解離などの二次障害がひどくなり、現在入院しています。二次障害の中でも、不安が強くなった時に起こる解離は、本人の記憶もあやふやで分からないことが多いもの。私が体験した娘の不思議な解離症状をお話したいと思います。普段から、夜になると突然不安に襲われる娘出典 : 日中は穏やかに過ごしている娘ですが、夜になると一気に不安が押し寄せて来ます。不安はどんどん大きくなって娘に襲いかかるので、側に寄り添い言葉をかけても不安が収まることはありません。やがて強い不安は、パニックとなり過呼吸や引きつけを起こします。手や足をバタバタさせたり、全身を揺らしながら大声をあげ泣き叫んだりするのです。その間、大声で泣き叫ぶ娘を前にしても、どうする事も出来ずオロオロして疲弊してしまいます。頓服が効けば、1、2時間ほどで治まり、そのまま眠ってしまうのですが、夜が来れば眠れなくなり不安が襲ってくるので、相変わらず頓服を飲んでばかりの日が続いていたのでした。その日は、いつもと様子が違った。しきりに「行かないで!」と言う娘出典 : その日、娘は絵を描いて過ごしていましたが、私が家事をしようと娘のそばを離れると「行かないで!」と言うのです。結局何も出来ずに、1日中娘に付きっきりの状態でした。夕方になり、重度知的障害のある二男が施設から帰宅する時間になったので、私はいつものように送迎バスを迎えに玄関先へ出ました。すると娘は「行かないで!」と言い、私を引き止めたのです。娘は私の足にしがみついていましたが、バスはすでに到着しています。私は、娘の手を振りほどいて玄関に向かったのでした。「 行かないでー! あぁーーっ!」と、叫ぶ娘の大声が聞こえましたが、その時の私は大袈裟だなぁと思いながら外に出たのでした。二男を迎え、家に戻ろうと振り返ったとき、そこには裸足で呆然と立ち尽くす娘の姿がありました。あろうことか、娘は、私の横に立っていたのです。「どうしたの?」私は驚いて、娘に声をかけました。「家に帰りたいの…。」娘はそう答えると、裸足のまま家の門を出ようとしたのです。「ここが家でしょ?何言ってるの?」私は、無理やりに娘を家の中へと押し込んだのでした。「あなたは、だあれ?」と呟いた。娘は私の名前もわからなかった家に入ると、「あなたは、だあれ?」と娘は呟きました。一瞬ドキッとしました。ですが、以前にも薬を飲んだ後に意識がぼんやりしていたとき、この言葉をつぶやいていた覚えがあったので、今回も一瞬の出来事だろうと軽く考えておりました。ところが「あなたは、だあれ?」と何度も尋ねる娘の様子に、私は初めてとんでもない事が起きているのかもしれない…と、気づいたのでした。「家に帰りたいの。おばあちゃんのところに帰らなきゃ。」娘はしきりに家に帰ると言っては、玄関から出て行こうと試みました。玄関のドアの前で、両手を広げて立ち塞がり、娘が外に出ないように必死に止めると「どうして止めるの?おばさん、だれ?」と、 娘は声を荒げて怒りながら言いました。私は言葉を失いました。目の前にいる娘は、さっきまでの娘と違っていたのです。声のトーンも、言葉づかいも、確かに娘とは違っていたのでした。「お母さんだよ!」「お母さんって、だれ?」私が名前を告げると娘は「知らないわ」とぽつりと言いました。この言葉で、ようやく何が起きているのか知ったのでした。出典 : 以前、医師から娘に解離症状があると告げられてから、ずっと 解離性同一性障害の心配をしていました。まさか…今、目の前にいる娘に起きているのは、もしかして…。私は、恐るおそる娘に聞いてみたのでした。「あなたはだあれ?お名前は?」「知らないわ!」本当に何も知らない様子の娘に、私は娘の名前を告げました。「だれ?それ。変な名前!そんな名前嫌いよ!」娘は、嫌そうに顔をしかめて言ったのでした。「お母さんは?お父さんは?」「いないわ!死んじゃったの。」「どこから来たの?」「ずうっと遠くの外国。船に乗って来たの。」「どうしてここに来たの?」「お花がたくさん咲いていて、綺麗な絵があったからホテルだと思って入ったの。」「家族もみんな死んじゃった。おばあちゃんと住んでるの。おばあちゃん 病気だから早く帰らないと死んじゃうわ。」そう言ってすぐに玄関から出ようとするのです。私は、引き止めるので精一杯でした。重度知的障害の二男は施設から帰宅したばかりでしたが、いつもの娘と異なる様子を察し、娘と私のやり取りを遠巻きに見ていました。「この子はだあれ?」娘が二男を指差して尋ねるので、名前を告げると「可愛いわね!」と頭を撫でて微笑むのでした。いつもなら、夕食の支度をする時間でした。このまま日が暮れていき、夜になって娘が外に飛び出してしまえば、もう私一人では対応出来ません。友人から聞いた「交代人格」という言葉。まずは今夜を乗り切ろうと覚悟を決めた出典 : 娘の対応に困り、私は友人にメールをして相談しました。「事故防止のためにも、交代人格には家にいて欲しいが、無理なら一緒に出かける事。人格が戻るまでは、交代人格と対峙するしかない事。この時、交代人格を否定してはいけない。」友人が下さったこのアドバイスは、解離について全く知識のない私にとって、ただ1つの救い。その後も情報を提供して下さり、ご自分の事のように心配して下さったのでした。思いがけない娘の変異に驚き、何とかしてとにかく一晩を乗り切らなければという思いで必死でした。無我夢中で、目の前の娘ではない別人格と話をして「今夜は遅いからここで泊まって欲しい」と話したのでした。私との力づくの引っ張り合いで疲れたのでしょう。娘は、素直に私の言葉にうなずいて「今夜はこちらで泊めて下さい。」とやっと布団に入ったのでした。そのとき既に23時をまわり、夕食の時間はとっくに過ぎていました。出典 : その間は二男は放ったらかしでしたが、気づいたら自分でパンを焼いて黙って食べておりました。重度の知的障害がある二男ですが、こんな時は事態を察知して私の手間を取らせずに自分でやってくれるのです。私はごめんねと謝り、感謝をしたのでした。娘がやっと落ち着いて話ができる状況になったとはいえ、普段から服用している薬を飲ませるのにまた一苦労。いつも通り「これを飲んでね。」と差し出すと、「毒じゃないの?」と疑って聞かないのです。必死で説得して飲んでもらい、やれやれでした。深夜1時。大学病院に、やっとの思いで電話をかける出典 : 娘が眠ってから、すぐに大学病院に電話をかけました。深夜1時を過ぎていました。当直医に状況を伝えると「うちの病院では、すぐに入院できないが、どうしてもと言うなら、緊急救急システムを使う方法がある。」と教えて下さいました。他害や自傷などで命の危険があるときに、緊急で入院措置をとってくれる病院を紹介してもらえる、というような説明でした。すがるような気持ちで、緊急救急システムに電話をかけました。しかし「おとなしく眠っている現在の状況ではシステムは使えない。もっと深刻な場合に限る。仮に使っても、遠隔地の病院しか空いていない」とのことで紹介してはもらえませんでした。明日の朝まで、別人格と対峙しようと、私は覚悟を決めました。長い長い夜が過ぎて行きました。眠れない一夜を明かし「娘が目を覚ました時には、元の娘に戻っていますように」と、心の底から祈りました。朝が来て、別人格の娘との2日目が始まった出典 : 朝になり目覚めた娘は、別人格のままでした。そして「家に帰りたい」と再び言い出したのです。別人格の娘は、朝ごはんを食べ、毒ではないかと疑いながらも薬を飲み、だんだんと私を頼ってくれているのではないかと感じるようになりました。娘ではないけれど、暴言は吐かないし、言葉使いも丁寧で、穏やかな性格のようだ…。私は次第に、別人格の娘も愛おしく思えてきたのでした。そんな時、突然娘が「おばさんの事、お母さんと呼んでいい?」と言ったのです。私は嬉しさのあまり、「いいよ!呼んで!」と笑顔で答えていました。「お母さん優しいから、ずっとこのまま ここにいてもいい?」「うん!いいよ。ここにいて!」「じゃあ、家に帰らなくてもいいわ。ここにいる!私、名前がないから、お母さん 名前つけて!」別人格の娘がそういうので、娘の名前を告げてみましたが「そんな名前嫌いよ!大っ嫌い!」と言うのです。自分の名前に嫌悪感を示すことは不思議でした。ですが、一先ず入院中の主人に電話をかけ「名前をつけて欲しいと言ってるけど、どんな名前がいい?」と相談しました。主人には、ずっと電話で状況を伝えていたので、すぐに答えてくれました。出典 : 「マリア…」「えぇっ?マリア?恥ずかしいんじゃない?」「じゃあ、サラ!」マリアもサラも聖書に書かれている女性の名前です。聖書もキリスト教にも興味のない主人が、この名前を出した事に私はとても驚きました。娘にどちらが良いか聞くと「サラがいい!」と即答しました。「サラちゃんにする!今日から私は サラちゃんになる!」と言って、大喜びしたのでした。自分の手の甲に「サラ」と書き「サラちゃんと呼んで!」と何度も言い、家族の名前を一人ずつ書いて欲しいと言ってノートを差し出したのでした。言われるままに、私はノートに家族の名前を書きました。「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、サラちゃん、弟…」名前を言いながら説明をしていると突然、別人格の声が変わり娘の声になったのです。驚きました。いつの間にか、別人格は消えていました。このとき既に23時間が経過していました。長い長い時間でした。娘は、やっと元の娘に戻ったのでした。本当の娘に戻ったとき、別人格で過ごした出来事を覚えていた出典 : 「お母さんが上手く誘導してくれたから、戻って来れたんだよ。」娘は嬉しそうに話してくれました。「えっ?覚えているの?」「うん。ところどころ覚えてる。自分が誰だか分からなくなって、自分の名前も家族も分からなかったから、それでノートに書いて!って、言ったんだよ。」確かに、言われてみれば別人格のはずなのに、娘自身の私物が入っているボックスを開けていたり、自分の名前を嫌いだと言ったり、不思議な行動がありました。私が別人格だと思いひたすら対峙していたのは、娘自身だったのかもしれないと思えてきたのでした。「この先、多重人格になったらどうしよう」と不安だった私は、ぼんやりとでも昨夜の出来事を覚えているという娘の言葉に、 少しホッとしたのでした。何度も解離を引き起こし、専門病院に入院中。穏やかな日々を願いながら…出典 : すぐに主治医の診察を受けると「記憶があるので、真性の解離性人格障害ではないでしょう。自分を認識出来ない状態になって、混乱したのではないか。解離ではあるけれども、多重人格とは違うでしょう。」との事でした。安心したのもつかの間、翌日も翌翌日も、娘は再び解離になり同じような症状が出ました。「あなたはだあれ?ここはどこ?」と、同じ質問を繰り返し家から出ようとする娘。私ひとりで対応することに限界を感じました。連休中だったので、仕方なく何度も救急外来に娘を連れて行きました。主人は手術を受けるために入院中だったのですが、「お父さんの手術に対しての不安から来ている解離なので、手術が終わるまでは繰り返し続くでしょう。」との診断でした。そして連休明けに、主治医に「何度も解離を起こす娘の対応が難しい」と伝えました。退院したばかりなので再入院は出来ないが、代わりに別の病院を紹介しますと言われ、精神科の専門病院を紹介していただき、娘はやっと入院できたのでした。後日、発達障害があると解離症状が出やすいと主治医に聞きました。娘の場合は解離ではあっても解離性同一性障害ではないそうですが、「これは別人格だ」と信じ込んでしまうほど、あの時の娘は声も話し方も異なっていました。今でも不安になると、解離になり自分が誰なのかどこにいるのか、分からなくなってしまいます。今は、娘を襲う不安が少しでも和らいで、穏やかな毎日が過ごせることを願うばかりです。
2016年08月29日トゥレット障害(トゥレット症)とは?出典 : トゥレット障害とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種で、多様な「運動チック」と1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。1885年に研究者のGilles de la Tourette(トゥレット氏)にちなんで命名され、トゥレット症やトゥレット症候群と呼ばれることもあります。トゥレット障害は、大きくはチック症と呼ばれる疾患群の1種として分類されます。まばたきや首振り、咳払いといった、一見癖のように見える症状が起こることをチックと呼びます。チックの症状には運動性チックと音声チックの2種類があり、さらに持続時間に応じて、単純性チックと複雑性チックに分類されます。2013年に出版されたアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)の診断基準によると、チック症は5つの診断カテゴリに分類されます。そのうち、以下の4つの条件を満たすものがトゥレット障害と診断されます。トゥレット症の推定有病率は学童期の子どもで1000人あたり3~8人の範囲とされています。A. 多彩な運動チック,および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が,同時に存在するとは限らないが,疾患のある時期に存在したことがある.B. チックの頻度は増減することがあるが,最初にチックが始まってから1年以上は持続している.C. 発症は18歳以前である.D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病,ウイルス性脳炎)によるものではない.(日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院,2014年/刊)東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要チック症について詳しくは次の記事をご覧ください。トゥレット障害の症状経過出典 : トゥレット障害は、平均的に4~6歳で発症し、10~12歳くらいに重症度のピークがきます。まず初期の段階で、まばたきや首ふり、顔をしかめるといった「単純運動チック」が始まることがあります。そしてしばらく経つと、物に触る・蹴る、飛び上がるなどの「複雑運動チック」、不謹慎な言葉を唐突に言ってしまうなどの「複雑音声チック」へと進行していく場合があります。その後、一般的には青年期の間に症状は軽減するといわれています。トゥレット障害を含むチック障害(発達障害者支援関係報告会金生由紀子)トゥレット障害の主な原因と悪化要因出典 : トゥレット障害正確な原因はまだわかっていませんが、家系発症が多いことや双生児研究の結果から遺伝的要因の関連性が指摘されています。また、情動、注意、意欲、報償、依存、歩行運動などをつかさどる、大脳基底核のドーパミン神経受容体の異常が関連しているともいわれています。トゥレット障害の症状を悪化させる要因は環境要因、気質要因、その他の要因の3つに分けることができます。■環境要因チックの症状は、不安、興奮、強い疲労によって悪化し、落ち着いて集中しているときは改善します。たとえば、テストを受ける、課外活動に参加するなどの、ストレスが多い出来事はしばしば症状を悪化させる一方、勉強や仕事に集中しているときは、症状を軽減させます。■気質要因対人関係が不器用、不安やストレスを感じやすい、緊張を感じやすいなど、デリケートな気質の子どもがトゥレット障害を発症しやすいといわれています。■その他の要因併発したADHD(注意欠陥・多動性障害)の症状緩和のために使用される中枢刺激薬などが、トゥレット障害の症状を促進することがあります。また、結膜炎を生じた際の目のかゆみでまばたきをしていたのが癖になったケースや、テレビの見過ぎによる目の疲れが原因となったケースもあります。トゥレット障害によく見られる合併症出典 : トゥレット障害のある人は、他の障害も併発することが少なくありません。代表的なものとして、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と強迫性障害の2つが挙げられます。これらが合併症として現れる理由は、トゥレット障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害がいずれも、ド-パミン系やセロトニン系などの脳内神経伝達物質の機能不全に起因するためであると推測することができます。その他、学習障害、睡眠障害、気分障害、自傷行為などを併発することがあります。これらは、日常生活においてチックが現れることへの不安や、チック症状そのものが学習活動や仕事をするうえでの支障となることで生じる二次障害であると考えられます。しばしばみられる合併症(併発症)は、小児期の注意欠陥多動性障害と10歳以後の強迫性障害がある。ほかに、小児期には睡眠障害、昼夜の区別に一致した生活リズムがとれない、直立二足歩行がきちんとできないことがみられ、10歳代には衝動性行動などをみることもある。(「神経系疾患分野トゥレット症候群(平成22年度)」難病情報センター)東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要ADHD(注意欠陥・多動性障害)、強迫性障害について、詳しくはこちらをご覧ください。トゥレット障害の治療方法出典 : トゥレット障害の基本的な治療方針は、トゥレット障害を除去することを目的としていません。トゥレット障害や合併症があっても本人が社会に適応できるようにしたり、周囲の環境を整備して症状や困難を緩和するという考えに基づいて、治療が行われています。そのため、本人や周囲への心理教育や環境調整などの治療法を基本としつつ、チック症や合併症の症状に合わせて、認知行動療法や薬物療法などの治療法がとられることが多いのです。比較的軽度の症状であれば、家族や学校など周囲の理解を得ることで、通常通りに生活することができます。心理教育および環境調整とは、患者の家族や学校に対して適切な支援を行うための情報提供やアドバイスを行うことで、社会適応できるようにサポートしていける環境を整備することです。重症・慢性化した症状の場合、習慣逆転法(ハビット・リバーサル)という行動療法がとられることがあります。習慣逆転法(ハビット・リバーサル)とは、意識化練習、拮抗反応の学習、リラクゼーション練習、偶然性の管理、汎化練習の5つのステップを用いた治療法のことで、これらを習得することで症状が改善されるというものです。ただし、現在のところ日本ではあまり普及しておらず、一般的な治療法ではありません。上記の療法では解決できない場合、薬物療法が行われることもあります。合併症も含めて、どの症状に的を絞るのか、副作用の程度などを考慮して選択されます。ドーパミンの過剰な働きを抑制するハロペリドールのほか、リスペリドン、クロルプロマジン、アリピプラゾールなどが用いられます。薬は人によって合う・合わないもありますので、主治医と相談し、指示のもと用法用量を守って治療を進める必要があります。ハロペリドール|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPリスペリドン|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPクロルプロマジン|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HPアリピプラゾール|独立行政法人医薬品医療機器総合機構HP以上に示したいずれの方法でも治療できない場合は、外科治療が施されることもあります。大脳基底核に電極を埋め込んで持続的に刺激を与える、深部脳刺激療法という手術が行われます。法人日本トゥレット協会―トゥレット症候群についてトゥレット障害の診療・相談先出典 : 幼児期・乳幼児期に発症した場合は、小児診療内科・児童精神科などで診療できます。大人の場合は、精神科や神経内科、心療内科などが適切です。その他相談先には、市区町村窓口、保健所、精神保健福祉センター、発達障害支援センターなどがあります。トゥレット障害には、周囲の理解とサポートが不可欠トゥレット障害はあまり知られていない精神・神経疾患で、悪い癖やしつけが足りないなどと周囲から誤解されることが少なくありません。そのため、本人だけでなく周囲の人たちがチック障害を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身に付けることが求められます。病気について学び、正しい対応法などを学ぶことを心理教育といいます。保護者や周囲に対するトゥレット障害における心理教育は次のようになります。・チックは運動を調整する脳機能の特性やなりやすさが基盤にあり、親の育て方や本人の性格に問題があって起こるのではない。・チックの変動性や経過の特徴を理解し、些細な変化で一喜一憂しない。・チックを悪化させるかもしれない状況があれば、その対応を検討する。・チックを本人の特徴の一つとして受容する。・チックのみにとらわれずに、長所も含めた本人全体を考えて対応する。・チックや併発症及びそれに伴う困難を抱えつつも本人ができそうな目標を立て、それに向かって努力することを勧める。(トゥレット障害を含むチック障害発達障害者支援関係報告会金生由紀子)また、小学生以上でトゥレット障害のある人が生活する上で生じる困難に対する理解をサポートする教材として、次のようなものがあります。心理教育を通してトゥレット障害に対する理解を深めましょう。「チック」や「くせ」をよく知ってうまくつきあっていけるように(齋藤万比古,分担研究者:金生由紀子)まとめ出典 : もしトゥレット障害の症状が見られたら、まずは専門機関での相談・受診をおすすめします。早期から適切な支援を行うためには、自分たちの判断ではなく、専門家に相談するのが一番です。仮にトゥレット障害ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえることが多いので、一度相談してみることをおすすめします。東京大学医学部附属病院精神神経科―トゥレット症候群の概要日本小児神経学会―Q&A大人のためのADHD.co.jp―ADHDの原因強迫性障害ガイド―強迫性障害の原因発達障害療育の糸口―トゥレット症候群の症状法人日本トゥレット協会―相談窓口
2016年08月28日産後ママにとって気になるのは、産後の“体形戻し”。体重は落ちたのに、妊娠前に履いていたズボンが入らない!?ということはありませんか?それはもしかすると骨盤のゆがみが関係しているかもしれません。最近は入院グッズの中に“骨盤ベルト”の指示がある産院もあるほど。私も出産前に骨盤ベルトを購入したのですが、帝王切開で出産したため傷の痛みもありすぐには付けることが出来ませんでした。産後しばらく経って、体形も気になるし傷口の痛みも減ってきたのでそろそろ……と思ってつけてみることに。でもなんだか正しく使えているのか不安。そこで、プロの力を借りることにしました。骨盤のゆがみは、放っておくと大変?!そこで、骨盤矯正を行っている整骨院へ。検査を受けたところ、私の骨盤は通常よりも20度もずれていました。でも出産後はみんなこのくらいずれているものですよ、とのこと。出産のため、色々な骨をつないでいるじん帯を緩めるホルモンが妊娠中から出続け、さらに出産によって骨盤が開き、育児による無理な姿勢がかさなりこのようなことが起きるそう。このゆがみを放っておくと、体形のくずれや腰痛などだけでなく更年期の症状も重くなってしまう可能性があるそうです……。産後の骨盤矯正は、思った以上に大切そうです。骨盤矯正ってどんなことをするの?産後のママケアにはマッサージや整体などもありますが、骨盤矯正を行っている整骨院は“柔道整復師”という国家資格を持っている先生が施術をしてくれます。専門的な知識を持った方に施術していただけるので、私も身体のメカニズムを理解しながら治療を進められました。私がはじめて受けたのは産後ケアコース。はじめに写真を撮ってゆがみを確認し、産後ママの身体に起こっていることを教えていただきながら治療方針を決めて行きます。その結果、①骨盤まわりを中心とした骨を元の位置に戻す②筋肉のバランスを整える③おなかと背中のインナーマッスルを鍛えるという3つのアプローチをすることに。骨盤を元に戻すだけでなく、腹筋背筋を鍛えることで正しい位置に矯正された骨盤をキープすることで、くびれができて体形維持ができるそうです。整骨院での骨盤矯正、メリット・デメリットは?《メリット》・プロの手で正しく骨盤矯正ができる・育児ででてくる腰の痛みなどにも事前に予防できる・体形のもどりがよくなる・更年期になったときに症状が軽くなる可能性がある・姿勢がよくなることによって抱っこなども楽になる《デメリット》・費用がかかる(料金設定は様々ですが、平均5〜6000円/回)・小さな赤ちゃんがいるなか、通わなければならない(週1〜2回を3ヶ月が目安)やっぱり一番のデメリットはお金がかかることと、赤ちゃんを預けて通うのが大変なこと。しかし、思い切って集中してケアをし早めに身体を整えていくことで育児が楽になれば結果的にはお得かもしれません!骨盤矯正をするベストなタイミングって?じん帯を緩めるホルモンのおかげで、産後1年は骨盤のゆがみが比較的戻りやすいと言われています。骨盤矯正は産後2ヶ月くらいからできるそうですが、体力も回復し悪露も落ち着いた頃がいいそうで、3ヶ月くらいから通われる方が多いそう。私は5ヶ月から始めましたが、まだまだ間に合うとのこと。産後の身体の状態や赤ちゃんの状態、さらに通うことが負担にならないタイミングを選ぶのがいいかと思います。子連れでも安心な整骨院が増えている!“結婚式を挙げるか挙げないかと同じくらい、産後の骨盤矯正をするかしないかを選ぶのは大切なこと”と先生は言っていました。私自身通ってみてよかったなと思うことは、産後の身体に最も負担がかかる時期に定期的に身体のメンテナンスをしてもらえることで身体的に育児が楽になったこと。毎回行く度に「腰痛はありますか?」など身体のこと聞いてくださり、安心。おかげで腰痛知らず!産後はネイルサロンや美容院などに行く時間がどうしても減ってしまいがちですが、、自分をケアする時間が心のゆとりにつながっていると思います。赤ちゃんをなかなか預けることが難しいママ向けにバウンサーを用意してくれたり、赤ちゃんを見てくれるスタッフがいる子連れ歓迎の整骨院も増えているそう!向き不向きもあるので一度話を聞きに行くのもおすすめです。人生の中で数回しかない出産は、大きく身体の変わるタイミング。慣れない育児に追われてしまいがちですが、これから長く続く子育てのためにも自分に合ったママケアを探してみてください♪
2016年08月25日こんにちは。心理食育インストラクターのSAYURIです。猛暑日が続く2016年夏。暑さの中でも元気いっぱいの子どもたち。ついさっきまではいつもと変わらず元気だったのに、急に機嫌が悪くなったと思い抱き上げてみると、体が異様に熱い! 慌てて水分補給をしようとしても嫌がって飲まない。そんな症状が代表的なのが『ヘルパンギーナ 』です。今回は『手足口病』『プール熱』と並ぶ夏の三大感染症の1つ『ヘルパンギーナ』についてご紹介したいと思います。●1歳児が最も多い! ヘルパンギーナの症状ヘルパンギーナの罹患者はその90%を5歳以下の子どもが占めており、中でも最も多いのが1歳児 。まだうまく自分の体調を説明できないので、触ってわかる発熱以外の症状は把握しにくいかと思います。ヘルパンギーナは『エンテロウイルス 』の一種が引き起こす感染症で、突然39度以上の高熱が出ます。発熱があると水分を摂らせたくなるのですが、飲んでくれない理由は喉やのどちんこ付近に1mmから大きいものでは小豆大にもなる口内炎 ができて痛むため。関節痛やだるさから機嫌が悪くなることもあります。●特効薬がない!?実はヘルパンギーナそのものを治癒させる特別な薬はありません。ウイルスによる感染症ですから抗生物質も効かないので、他の風邪と同じように症状を抑える薬を飲ませながら、できるだけ栄養を摂らせ、安静にして体力と免疫力に頼るしかないのが現状です。そうはいっても、口内炎や水泡が口の中にいっぱいあっては大人でも飲んだり食べたりはつらいものです。冷たいもの、熱いものを避け、サラッとした水分よりも少しとろみのあるものの方が飲み込みやすいので、常温にしたスムージーやお米の粒をすり潰したお粥、卵豆腐(タレの塩分がしみるのでタレはかけないで)、片栗粉でとろみをつけたスープなどを少しずつでもいいので食べさせてあげましょう。おう吐や下痢がある場合も少なくないので、たとえ吐いても下痢をしても脱水状態にならないよう、根気よく少しずつでも水分補給をしてあげましょう。通常、2日~4日で熱が下がり体調も回復するので、もし5日以上高熱が続くようであれば早めに再診 を受けましょう。●日常生活で発症は抑えられます通常、8月中旬ころには減少するヘルパンギーナですが、この夏の猛暑で子どもたちの体力や免疫力が下がっている可能性もあります。お盆明けのこの時期は特にお盆中の生活の乱れからの体調不良が増える時期。感染しても発症するかどうかは、その子の免疫力次第です。食生活では、納豆や味噌などの発酵食品、ビタミンCなどを多く含む新鮮な緑黄色野菜、果物、粘膜を守るオクラや里芋などのネバネバ食品、ミネラルが多い海藻類などを毎日の食事に取り入れましょう。そしてそうめんなどの冷たい麺類。今はエアコンのきいた室内での食事がほとんどのはずですから、特にしょうがやネギといった体を温めて冷やし過ぎないようにするための薬味を一緒に摂るのも効果的です。しょうがやネギといった薬味が苦手な子どもには、そうめん自体を氷などで冷やし過ぎないよう配慮してあげるのもいいでしょう。【参考リンク】・ヘルパンギーナとは | NIID 国立感染症研究所()●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)
2016年08月18日広汎性発達障害(PDD)の原因は?出典 : 広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の診断基準である『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。広汎性発達障害は、最新の診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。また、広汎性発達障害の障害名、症状の中には自閉症スペクトラム障害の概念では除外されたものも含まれています。ですが、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。広汎性発達障害のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、脳の機能障害がその原因と考えられており、親の子育て方法が原因で起こるものではありません。このうち、レット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因であることが分かっています。ほかの障害についても最近では遺伝的要因の関与が有力視されていますが、必ずしも単純に親から子どもへ遺伝するという意味ではありません。遺伝的要因と環境要因が複雑に相互に影響しあっていることが原因ではないかと言われています。しかしながら具体的な障害の原因やメカニズムは分かっておらず、様々な説が議論されている段階です。広汎性発達障害って治療できるの?出典 : 広汎性発達障害を根本的に治療する薬や手術といった医学的な方法はありません。しかし、広汎性発達障害による困難を緩和・解消するための教育・療育によるアプローチは存在します。本人が困難への対応法を学んだり、困難を未然に防ぐための環境調整をすることで、生きやすい環境を作っていくことが可能です。広汎性発達障害のある人はその特性ゆえに、生活する中で様々な困難にぶつかりがちです。他者の感情の読み取りが困難なため、会話の意図を誤解して受け取ったり、コミュニケーションがかみ合わなかったりする場合があります。抽象的な指示が理解できないために同じミスを繰り返したり、こだわりのため順番やルールを守れずトラブルになったりすることもあります。中には自分に自信をなくしたり、周りに強い被害者意識を持ってしまうこともあります。こういった日々の困難さが引き金となって、うつ病やひきこもりなどのいわゆる二次障害が発現することもあるのです。特に思春期以降の不安障害や気分障害の予防が大切です。広汎性発達障害の特性による困りごとを緩和するのに加え、こうした二次障害のリスクを極力なくすためにも、周りが障害の特性についてよく理解し、どのように対応すれば本人が行動しやすいか、生きやすいかなどを考えていくことが必要です。また、てんかん発作や感覚過敏など、一部の症状に対しては薬物療法によって症状を緩和できる場合もあります。うつ病や睡眠障害などの二次障害に対しても精神安定剤などの薬物治療が行なわれることもあります。これらの二次障害に対する治療の一つとしては、心理療法である認知行動療法の有効性が示されています。広汎性発達障害の治療の判断基準は?出典 : 広汎性発達障害は主に「社会性・対人関係の障害」「コミュニケーションや言葉の発達の遅れ」「行動と興味の偏り」の3つの症状が現れると言われています。専門機関においても上記の3つの症状が見られるかを本人や保護者への問診や本人の行動観察などから評価・判断します。親が気づく子どもの症状としては「視線を合わせない、または避ける」「言葉の発達が遅い」などの症状がよく挙げられます。また、広汎性発達障害のある人のほとんどに何らかの感覚過敏が見られます。例えば、小さな物音を怖がったり(聴覚過敏)、抱っこされることを嫌がったり(触覚過敏)、偏食が多い(味覚過敏)などの感覚過敏があります。広汎性発達障害の症状は上記のように複数存在しますが、特定の症状がでたら治療が必要という明確な線引きはできません。また症状ごとに対処法や治療プログラムは異なります。本人が特性による困りごとに直面している場合、専門家による何らかの治療や支援が必要になると言えるでしょう。障害ではないかと気づいた場合には、まずは近くの保健センターや子育て支援センター、児童発達支援センターなどの専門機関に相談するようにしましょう。広汎性発達障害の治療法と治療を行う年齢は?出典 : 広汎性発達障害の根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。■療育療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことが推奨されます。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。■薬物療法広汎性発達障害そのものを根本的に直す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、教育や支援を行うと効果的であるともいわれています。治療を終える判断基準については、根本治療ができないため、はっきりと決まっているわけではありません。ですが、本人が特性への対処法を習得したり、環境調整を行ったりすることで困りごとが緩和されれば、治療が必要のない状態になることも少なくありません。しかし、進学や引っ越し、転職などの大きな環境変化によってさまざまな困難が再発する可能性もあるため、十分なフォローが必要です。広汎性発達障害の具体的な療育法・治療法出典 : 療育の遊びを通じてコミュニケーションの取り方を学んだり、友達を作ったりすることができます。また、ストレスを抱えがちな親にとっても療育の場は相談できる場所であり、同じ悩みをもつ親同士の交流の場所にもなっています。療育の効果は個人差があり、子どもに合った療育が必要となりますが、子どもにとっても親にとっても療育は心の面の大きなサポートになると言えるでしょう。広汎性発達障害の療育方法は様々ですが、下記の4つがよく知られています。それぞれの位置づけは異なりますが、ここでは簡単に概要のみを説明します。■ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis/応用行動分析)人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、問題解決に応用していく理論と実践の体系です。広汎性発達障害に対する療育だけでなく他の障害や教育、福祉、医療、スポーツ分野でも利用されています。■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)米国ノースカロライナ州で生まれた、自閉症スペクトラム障害の当事者とその家族を障害支援する総合的なプログラムです。※自閉症スペクトラム障害とはレット障害を除く広汎性発達障害を指します。■PECS(ペックス、Picture Exchange Communication System)絵カードを使ったコミュニケーション援助プログラムです。上記のABAの原理に基づいて作成されています。■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニングの総称です。紹介した療育方法はごく一部ですが、療育機関ではこれらの療育理論や方法を複数組み合わせたり、独自のプログラムを利用して、子ども1人ひとりにあった療育方法が行なわれます。広汎性発達障害の根本的な治療としての薬物療法はありませんが、一部の症状に対しては対症療法として薬を使用することがあります。例えば、パニック症状を緩和するためには抗精神病薬、てんかん発作や感覚過敏には抗てんかん薬などが処方される場合もあります。その他様々な症状に対して薬物療法が行なわれますが、薬は一時的なもので、症状が完全になくなるというわけではありません。また薬には副作用が出ることもあります。薬の使用は必ず医者の指示を守りながら使うようにしましょう。適切な治療やサポートを受けられない場合、広汎性発達障害の主症状とは異なる合併症や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。注意すべき症状・状態には以下のようなものがあります。・気分障害(うつ病など)・不安障害・睡眠障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症などこのような症状や状態が現れた場合には専門の相談機関や医療機関で早期に相談・治療を開始しましょう。二次障害の治療には、それぞれの症状によって認知行動療法などの心理療法的アプローチや薬物療法などが用いられます。二次障害の予防のためには環境調整や周囲の理解、親や家族以外にも本人が信頼して相談できる人間関係を作ることなどが大切です。接し方で大きく変わる!広汎性発達障害の子どもへの接し方のポイント出典 : 広汎性発達障害のある子どもの中には、使っている言葉の意味を理解していなかったり、遊びのルールを理解するのに時間がかかってしまう子もいます。その際は絵や写真を使うと、理解しやすくなる場合があります。また、あいまいな表現は苦手なので、できるだけ具体的な言い方をするようにしましょう。何度叱っても同じことを繰り返してしまうために、親もイライラしてつい大声で叱ってしまうかもしれません。広汎性発達障害のある子どもは恐怖心でトラウマになりやすい傾向にありますので、大声で叱ってしまいそうになったら一度その場を離れるなど、冷静になるよう心がけてみてください。広汎性発達障害のある子どもが適切な行動を習得するまでには、根気強く教える必要があることを理解しましょう。叱るときには感情的にならず、具体的に注意する方が効果的です。上記でお伝えしたように写真や絵を使うなど、どうすれば上手く伝わるかを試行錯誤することも大切です。手をひらひらさせたり、ぴょんぴょん飛び跳ね続けたりするなど、広汎性発達障害のある子どもの中には同じ行動を長時間続ける常同行動が見られる場合があります。これらは視覚支援によって見通しを持てる環境を作ったり、コミュニケーションスキルを学んだり、適切な遊びにかえることなどで改善することが多いです。無理に止めさせようとするとパニックに陥ることもあるため、何回やったら終わりと決めたり、何か違うことに集中するための課題などを与えてあげたりするとよいでしょう。広汎性発達障害の子どもを持つ保護者は、できないことや、やめさせたい行動が多く目につき子育てが不安になってしまうこともあるかもしれません。ですがマイナス面ばかりに目がいかないように、得意分野を見つけて、できることを増やすことが大切です。また、ちょっとしたことでも褒めることが子どもの自信につながります。広汎性発達障害のある子どもの子育ては通常に比べて少しコツが必要になってきます。家族だけで解決しようとするとつまづくことも多いため、プロの手を借りて、子育ての仕方を学んでいくのもおすすめです。ペアレントトレーニングでは褒め方のコツや上手な指示の出し方、危険な行動を予防する方法などを学ぶことができます。まとめ出典 : 広汎性発達障害の根本的な治療方法はありませんが、療育によってコミュニケーションを取りやすくなったり、生活の困難に対処しやすくなります。そのためできるだけ早く療育をスタートしたほうが、本人の生きづらさも減ると思います。日常生活において不安に思ったりすることもあるとは思いますが、何かあった場合は身近な専門機関に相談してみてください。また、本人にとってよい環境を整えて生きづらさを少しでも減らせるように、周囲の人たちは障害の特性を理解した上でサポートするようにしましょう。
2016年08月17日こんにちは、ライターの佐原チハルです。みなさま、『とびひ 』はご存じでしょうか。「聞いたことある!」という人、きっと少なくないですよね。“とびひ”という言葉自体は耳にすることが多いため、身近に感じられますが、その分罹患した際の苦労についても小さく見積もられがち。子どもがかかってしまったら、子ども自身も、ママ・パパも、結構な苦労をしてしまうものです。そこで今回は、“とびひ”についてポイントをまとめてみました。●“とびひ”ってどんな病気?“とびひ”という名前は、実は通称。正しくは、『伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん) 』という病名がついています。虫刺されやあせも、肌に傷を負ったときなど、そこに細菌が感染することで起こります 。“とびひ”という通称は、感染した場所をかいてしまうことで、症状があっという間に他の部位に広まってしまうことからつけられました。“とびひ”には、2種類があります。水ぶくれのできる『水泡性膿痂疹』と、かさぶたのできる『痂皮性膿痂疹』です。“とびひ”の大半は前者で、原因は“黄色ブドウ球菌”と呼ばれる細菌 です。目・鼻・口の近くからできはじめ、水膨れやかゆみが全身に広がります。基本的には夏にかかることが多いですが、暖房の効かせすぎなどにより、冬に見られることもあります。●“とびひ”の予防法は?“とびひ”の予防法としては、やはり“皮膚を清潔に保つ ”ことが一番のようです。手はしっかりと洗う、爪は短く切る、ひどく汗をかいた場合はシャワーを浴びる、などです。またお子さんが小さいと、“鼻をほじる”ことも多いと思います。しかし、鼻の中には“とびひ”の原因になる細菌が多いとのこと。注意したいところです。●“とびひ”にかかってしまったら、どうしたらいい?“とびひ”は、名前のとおり、広まってしまうのがとても早いです。注意していても、かかってしまうことはあるでしょう。ひどい症状になってしまうのを防ぐためには、“すぐに皮膚科に行く ”のが一番です。小児科でも薬がもらえることはありますが、皮膚科の方が確実です。実は筆者は昨年、子どもが“とびひ”にかかり、全身に広めてしまいました。小児科には通っていたのですが、症状がおさまらず、皮膚科に紹介状を出してもらう事態になりました。“とびひ”は、患部を覆ってさえいれば、保育園など休む必要はありません。ただ、うちの子はあまりにも全身に広まりすぎてしまったため、2週間ほど通園ができなくなってしまいました。そうなるまで、本当にあっという間でした 。プール遊びもできずじまいで、かわいそうなことをしてしまったと後悔しています。筆者の子もそうなのですが、アレルギー体質・アトピーのお子さんの場合は、皮膚のバリア機能が低くなっているため、“とびひ”になりやすいそうです。子ども自身の予防や、子どもから家族や友達に感染することを防ぐためにも、“患部をこすらない”“タオルや衣服は共用しない”などの対策が必要とのことです。お子さんの年齢や体質によっては、“とびひ”を防ぐのは、とても困難なことでしょう。しかし、日頃からしっかりと予防策を講じておくことで、また早期発見・早期治療を行うことで、軽い症状ですませることができるかもしれません。夏を満喫して楽しむためにも、気をつけてあげたいですね。【参考リンク】・「とびひ」ついて詳しく知ろう | maruho()●ライター/佐原チハル(フリーライター)
2016年08月16日こんにちは。健康管理士のSAYURIです。全国的に猛暑日、熱帯夜が続く2016年夏。熱中症だけでなく十分な睡眠がとれずに体調不良を訴える人も少なくないようです。そこで今回は、不眠症についてご紹介したいと思います。●不眠症は自己申告制!?近年、ストレスからの不眠症に悩む人たちが増加して社会問題となっています。睡眠障害の中で最も多くみられる『不眠症』。実は実際の睡眠時間の長短に関わらず、睡眠に対する不足感を訴え毎日の生活に支障をきたす症状を指します。すなわち、睡眠時間がたとえ4〜5時間でも本人が満足して日中、正常に活動できるのであれば不眠症とは呼びません。一般的に高齢になるほど眠れないと訴える人が増加しますが、ぐっすり眠ったという満足感があるかどうかは個人差があります。本人が睡眠不足だと感じ不調を訴えれば、たとえ何時間眠っていても不眠症になります。つまり、不眠症は自己申告の疾患 とも言えるのです。たとえば他の疾患であれば、治療をして検査結果が正常に戻れば治ったとされます。しかし、不眠症の場合は『睡眠ポリグラフ検査』という脳波、眼球運動、筋電図などの検査で眠っていたことを実証できても、本人が眠ったと満足感を得ることができなければ、治ったということにはならないのです。●不眠症の症状と期間不眠症はその症状や期間によって下記のように分類されています。●症状・入眠障害……寝つきが悪く、ベッドに入ってもなかなか眠れない・中途覚醒……夜中に何度も目が覚める・早朝覚醒……朝早く目が覚めて、その後眠れない・熟眠困難……眠りが浅く、ぐっすり眠ったという感覚がない●期間・一過性不眠……1週間以内・短期不眠……1〜3週間・長期不眠……4週間以上一過性不眠は、普段正常な睡眠の人が海外旅行などの時差や、試験前日などで特別な緊張を伴う出来事 があったときなどに起こりやすくなります。短期不眠は家族など近親者の大病や死、仕事や家庭内でのトラブル、本人の病気など長く続くストレス を受けたときに見られます。そして長期不眠は薬物性不眠 や他の疾患による不眠、精神疾患 などによる不眠が多く見られます。----------不眠はこの他にも原因別の分類もあるので、次回はその原因別の分類と予防、改善法についてご紹介したいと思います。【参考文献】・総務省認証予防医学学術刊行物『ほすぴ』成人病予防対策研究会発行●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)
2016年08月11日双子の妊娠についての基礎知識(前編) の続きです。■双子の妊娠では、無理は禁物前編で解説したように、多胎妊娠の場合、どうしても単胎妊娠よりリスクが高くなります。そのため、無理をしないよう、とくに心がける必要があります。まず、妊婦健診には忘れず行き、少しでも体調に異変を感じた場合はかかりつけの病院にすぐ相談しましょう。状態が急に変わって緊急の入院や手術になるといったことも十分考えられますので、いつでも入院できるような準備をしておくことも大切です。■ノウハウを調べておこう双子の妊娠では、制度面でも少し異なってきます。たとえば職場で取れる産前休暇の長さは通常6週間ですが、これを14週間まで延長することができます。そして、健康保険から支給となる出産育児一時金は2人分の支給を受けることができます。2人分支給されるとはいえ、出産にかかる費用は赤ちゃんが1人の場合よりも多くなりますし、長く入院したり帝王切開をしたりすれば、それに関わる費用もかかります。・参考: 出産育児一時金はどう受給するか (※ウーマンエキサイト外のページにジャンプします) 育児のために使うものについても、少し様子が違ってきます。当然ですが、肌着やベビー服などは2人分必要となります。一方でベビーバスなどについては2人で同じものを使うこともできますので、その辺りを考えて、「なんでも2つ揃えてしまった!」ということがないようにしましょう。また、ベビーカーなどで双子用の特殊なものなどを見かけますが、これは購入するよりもレンタル(リース)やリサイクル品を使うほうがコストは抑えられます。そのほか、言わずもがなですが、育児の手間が2人分かかるので、ママ1人ではかなり厳しい状況になることもあるでしょう。家族に早めに協力を取り付けたり、自治体などが提供しているサービスを利用したりして、育児や家事の負担、ストレスを減らしましょう。こうしたノウハウについては、双子のいる親同士が集うネット上のコミュニティなどをのぞいてみると、さまざまな知恵があるはずです。双子の妊娠は大変ですが、生まれた後の喜びは、きっと2倍になるでしょう。大切な命のためにも日々の生活に気をつけて、無理のないように過ごしてください。
2016年08月08日発達性協調運動障害とは?出典 : 協調運動とは、手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動です。例えば、私たちがキャッチボールをする時、ボールを目で追いながら、ボールをキャッチするという動作を同時にしていますよね。他にも、縄跳びをする時、ジャンプする動作と、縄を回す動作を同時にしなくてはなりません。このような運動を協調運動と言います。発達性協調運動障害とは、日常生活における協調運動が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害です。別名、不器用症候群とも呼ばれていました。本人の運動能力が期待されるよりどのくらい離れているかは、通常「MABC-2」(Movement Assessment Battery for Children,2ndversion)や、「JPAN」(日本版感覚統合検査)と呼ばれる感覚処理行為機能テストなどのアセスメントテストによって評価されます。これらのテスト結果を参考に、医師が発達性協調運動障害かどうかを判断します。アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では以下のような診断基準になっています。A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習及び使用の機会に応じて期待されるよりも明らかに劣っている、その困難さは、不器用(例、物を落とす、またはぶつかる)、運動技能(例、物を掴む、はさみや刃物をつかう、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活活動(例、自己管理、自己保全)を著明及び持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前及び就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。C.この症状の始まりは発達障害早期である。D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例、脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。発達性協調運動障害と運動能力出典 : 人間の運動には大きく分けて、粗大運動と微細運動があります。人間は、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、初めは姿勢を保つことや寝返りといった粗大運動を習得し、次第に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります。粗大運動とは、感覚器官からの情報をもとに行う、姿勢と移動に関する運動です。粗大運動には、先天的に人間に備わっている運動と、後天的に学ぶ運動があります。寝返り、這う、歩く、走るといった基本的な運動は人間が先天的に持っている粗大運動能力です。一方、泳ぐ、自転車に乗るなどの運動は、環境的な影響や学習によって身につけると言われています。微細運動とは、感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(特に指先など)の調整が必要な運動です。モノをつまんだり、ひっぱったり、指先を使って細かな作業、例えば、絵を書く、ボタンをかける。字を書くなどの運動があります。成長とともに、粗大運動から、より細かい微細運動ができるようになります。発達性協調運動障害のある人は、粗大運動や微細運動、またはその両方における協調運動が同年代に比べぎこちなく、遅かったり、不正確になります。子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったが、幼稚園や、小学校に行くようになり微細運動を必要とする場面が増え、微細運動が顕著に困難である場合もあります。発達性協調運動障害のある子どもの年齢別の困りごと出典 : 発達性協調運動障害かどうかの判断は、協調運動が本人の年齢や知能に応じて期待されるよりも著しく不正確であったり、困難であるかどうかが重要なポイントとなります。以下で年齢別によく見られる傾向を紹介します。とはいえ、年齢が低ければ低いほど、得意な運動と困難な運動は子どもによって大きく差があり、人それぞれです。ですので、以下の例に当てはまるからといって、必ずしも発達性協調運動障害であるということではありません。子どもの様子を見つつ、気になるときは専門家に相談してみましょう。乳児期は、そもそも基本的な粗大運動を学び、獲得していく段階です。また子ども一人ひとりの運動機能獲得のスピードは違いますし、できること、できないことも個人差が大きい時期です。ですので、苦手なことがあっても心配する必要がない場合も多いと言えます。ですが、発達性協調運動障害と診断される子どもは、乳児期に以下の様な特徴が共通して見られる傾向があります。例:母乳やミルクの飲みが悪い、離乳食を食べるとむせる、寝返りがうまくできない、はいはいがうまくできない幼児期は、特に5歳を過ぎると、運動能力の個人差が縮まってきます。そのためこの時期に発達性協調運動障害と診断される場合が比較的多いと言えます。発達性協調運動障害のある幼児は以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:はいはい、歩行、お座り、靴ひもを結ぶ、ボタンをはめる、ファスナーを上げる、平坦な場所でも転ぶ(転んだ時に手がでない)、トイレで上手にお尻をふく小学校に上がると日常生活、学習生活でより複雑で繊細な動作を求められる場面が増えます。そのため微細運動での協調運動障害が顕著に表れます。発達性協調運動障害のある子どもは以下のことが不正確であったり、習得が遅れていたり、困難な場合があります。例:パズルを組み立てる、模型を作る、ボール遊びをする、活字をますの中に入れて書く、階段の上り降りがぎこちない、靴ひもが結べない、お箸をうまく使う、文房具作業が苦手(消しゴムで消すと紙が破れる、定規をおさえられずにずれるなど)発達性協調運動障害の原因出典 : 発達性協調運動障害のはっきりとした原因は、まだわかっていませんが、いくつかの原因が検討されています。まず妊娠中、母親のアルコールを摂取、またはそれによる早産、低体重で生まれた場合、発達性協調運動障害を発症する確率が高いという研究があります。次に、ADHD、学習障害、アスペルガー症候群を含む自閉スペクトラム症との併発が非常に多いため、なんらかの共通する遺伝的要因があるのではないかと言われています。また、上記のような障害のある子どもは定型発達の子どもより、発達性協調運動障害を発症する可能性が高いと言われています。5歳から11歳の子どもでは、5~6%が発症します。また、女児より男児のほうが発症率が高いことが分かっています。『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)発達性協調運動障害の診断と発達障害の関係は?出典 : 現在使われている精神疾患の診断基準は、アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』5版テキスト改訂版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準があります。現在、最新の診断基準である『DSM-5』が主流になりつつありますが、医師や医療機関によってどちらの診断基準に準拠しているかは異なります。発達性協調運動障害における診断基準の違いは、『ICD-10』と『DSM-5』で異なる点があります。『ICD-10』では発達性協調運動障害は心理発達の障害に分類されるため、精神遅滞と知能指数が重要になります。『ICD-10』の診断基準では、明らかな精神遅滞(知能指数70以下)の場合、運動の困難さ、不器用さはその精神遅滞が原因によるものと判断されます。一方で精神遅滞のない広汎性発達障害の場合、発達性協調運動障害と併発し、両方の診断が下りる場合があります。『DSM-5』の診断基準では、発達性協調運動障害は神経症群に入るため、精神遅滞や知能指数との関係ではなく、純粋に発達性協調運動障害の症状に当てはまるかどうかが重要になります。広汎性発達障害(アスペルガー症候群)と発達性協調運動障害を併発することは少なくありません。『ICD-10』の診断基準では、両方の診断基準を満たしている場合、両方の診断が下ります。対人関係において、認知されたものを統合する際に混乱が起きコミュニケーションがうまくとれないというアスペルガー症候群の特徴が、運動機能面においても現れているのではないかと検討されています。『ICD-10』の診断基準では、子どもが知的能力障害を持っている場合、その知的能力障害のため運動能力が損なわれているとの見なされる場合もあります。しかし、その運動が知的能力障害を考慮してもなお、不器用であったり、不正確である場合は、知的能力障害と発達性協調運動障害の両方の診断が下ります。ADHDのある子どもがよくころんだり、物にぶつかったりしてしまうのは、ADHDによる注意散漫や衝動性に原因があるのか、それとも発達性協調運動障害によってなのかを注意深く観察する必要があります。子どもの運動に対する困難さ、不器用さは必ずしも、ADHDだけが原因、発達性協調運動障害だけが原因というわけではなく、両方が原因となっていることもあります。特にADHDの場合、発達性協調運動障害との併存確率は50%と非常に高いです。発達性協調運動障害とADHDは併存しやすいため、二つを併発している場合は、DAMP症候群(deficits in attention, motor control and preception/注意・運動制御認知における複合的障害)と呼ばれることもあります。発達性協調運動障害について相談できる機関出典 : 子どもの運動や動作の不器用さが気になったら、まず以下の3つのどれかに相談に行きましょう。市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。中には、療育指導を実施している子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。都道府県ごとに設置されており、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると、24時間365日いつでも児童福祉に関する相談を受けてくれます。発達障害者支援全般を行っている機関であり、都道府県・政令指定都市やその他法人によって運営されており全国に設置されています。お近くの発達障害者支援センターは以下のリンクより検索できます。発達障害情報・支援センター相談窓口情報ここでは、相談支援と発達支援を行っています。相談支援では子どもの相談はもちろん、その様子に応じて医療機関、療育機関の紹介、行政サービスの利用方法を紹介してくれます。発達支援では、医療機関、療育機関との連携を図りながら、家庭での療育方法のアドバイス、発達検査、発達状態に応じた療育計画の作成や具体的な助言をしてくれます。発達性協調運動障害への支援を受けられる機関出典 : 上記の相談先で紹介してもらった医療機関を受診しましょう。小児専門や発達障害専門の医療機関では療育も行っているところがあります。上記の相談先で紹介してもらった療育機関で療育を受けましょう。療育機関では子どもの成長や自立支援のための、医療、治療、育成、保育、教育を総合的に行っています。民間の療育機関は保険が適用されないため、各施設により費用は様々です。内容や療育に当たる方との相性もあるので、あらかじめ見学に行くことをおすすめします。発達性協調運動障害の支援・治療方法出典 : 作業療法は、作業(子どもの場合、主に遊び)などをして、複合的な動作をできるようにしていくものです。運動、日常生活、学習などの動作をスムーズに行えるようにするために、基本的な動作に加え、動きと動きの統合が必要な協調運動への支援を行います。発達性協調運動障害のある子どもは、一つ一つの行動の統合が苦手であることが分かっているので、作業療法は障害の改善に効果があるといわれています。東京小児療育病院みどり愛育園広義には高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。特に運動による理学療法が発達性協調運動障害の改善に役立つとされています。別名運動療法ともいわれますが、理学療法に含まれない場合もあり、定義はあいまいです。理学療法士が行う運動を使った療育では、日常生活で必要な運動、行動を訓練し改善していきます。日本理学療法士協会家庭でもできること出典 : 家庭でもできることは多くあります。家庭で様々なサポートを行う場合は、まず、「こうするべき、こうあるべき」という先入観を捨て、子どもと一緒に楽しみながらやることが長続きの秘訣です。あくまで遊びの中で取り入れ、訓練、という位置づけにしないことも大切です。家庭で見られる困りごとの例としては、以下のような例が挙げられます。・手先がうまく使えていない・正しくお箸の使い方を何度も教えたけれど、なかなかお箸をうまく使いこなせない。・服のボタンをうまくはずしたり、かけたりすることができない。・文字を書くときに極端に筆圧が弱い、強い。上記のような困りごとに対して、考えられる不器用さの原因としては、・手の筋肉の動きをうまく制御できない・手元に注意が向いてない・手の動きと視覚の情報の連携が取れていないなどが挙げられます。これらを踏まえた上で、手で何かを握る経験や、握ったあとの状態を把握する機会を増やすことにより、手の筋肉に入れる力の制御を学ぶことができ、つまむ機能や握る機能が育っていきます。具体的に家庭で出来ることとしては、以下のような取り組みが考えられます。・ブランコやアスレチックで遊び、どのくらいの力で自分の体重を支えれれるようになるのかを学ぶ。・コイン遊びを通して、コインを握る、つまむ、入れるという動作を経験する。いろんな指でコインをつかむことで指の力の入れ加減を学ぶ。・粘土で遊び、粘土の形を変形させたり、細かい作業を行うことで、感覚の加減を学ぶ。ここで紹介した方法はあくまで一例であり、他にも様々な方法があります。また、家庭でできるこうした取り組みも、すぐに効果が表れるとは限りません。ゆっくり時間をかけて、楽しみながらやっていきましょう。 コラム粘土遊びは子どもの脳が活性化する!?楽しく創造力を伸ばす、3つの魅力とは?乳幼児期の感覚統合遊び発達障害の子の感覚遊び・運動遊び 感覚統合をいかし、適応力を育てよう1まとめ発達性協調運動障害は、一つ一つの運動を関連づけたり、統合することが困難な障害ですが、運動の得意不得意はどんな子どもにも見られるため、ただの「不器用な子」ですまされる場合も少なくありません。しかし、発達性協調運動障害のある子どもが見過ごされ、必要な支援を受けられないままでいると、その子どもが集団に適応することが困難になることもあります。たとえば、運動能力を中心とした遊びは、子どもたちの社会で周囲との関係を構築するために重要な役割を果たします。また授業での運動課題に取り組む場面では、その子ども自身の評価を著しく下げることがあるかもしれません。子どもが発達性協調運動障害かどうか心配な場合は、早めに相談機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、家庭でできる工夫を行っていきましょう。お子さんが楽しめるペースや方法で、出来ることを少しずつ増やしていけば、自信にもつながり、学校生活へも良い影響が出ることでしょう。
2016年07月27日ハンチントン病とは?出典 : ハンチントン病とは、運動症状・精神症状などの症状がみられる遺伝性の神経変性疾患で、国の指定難病にされています。平均30歳~40歳頃に発症する方が多く、症状は本人が気づかないうちにいつの間にか始まっていることが大半で、約15年をかけてゆっくり進行していきます。アジアでの発症確率は10万人に0.4人と、比較的稀な疾患です。運動症状としては、不随意運動(舞踏運動)によって手足が自分の意思とは関係なく動く、精神症状としては苛立ちやうつ状態が続くことなどがあります。これらの症状は時間に伴って進行していきます。参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊ハンチントン病の症状出典 : ハンチントン病の症状には運動症状と精神症状があり、初期・中期・後期と症状が進行していきます。しかし、人によって症状の程度には個人差があり、またすべての症状が発症するわけではありません。不随意運動(舞踏運動):自分の意思とは関係なく体が運動することを不随意運動と言います。ハンチントン病では、手足を勢いよく曲げたり伸ばしたりする動き、頭部を回したり伸ばしたりする動きや、舌を出したり、しかめ面をしたりなどの表情の動きなどがみられます。進行するにつれて、歩行・食事・着脱・排泄等も難しくなり、介護が必要になることがあります。短気・いらだち・うつ状態・不安・無気力状態等の症状がみられます。進行するにつれて症状は悪化していきます。認知能力が低下し無目的な言動が増えてきます。また、抑うつ状態が続くせいで、自殺を図ろうとすることもあります。精神症状も進行すれば介護が必要となることがあります。Upload By 発達障害のキホン症状の発症や程度には個人差があり、運動症状は初期症状でも、精神症状は中期症状等というように、症状のパターンは様々です。また上記の症状以外の症状も発症する場合があります。ハンチントン病の原因出典 : ハンチントン病は、第4染色体に局在する遺伝子(IT15 またはハンチンチンと呼ばれます)の繰り返し配列の異常によって引き起こされます。第4染色体の遺伝子の通常の繰り返し配列の長さは26回以下ですが、ハンチントン病の方は36回以上と染色体が伸長しています。この反復配列の数の長さによって発症年齢が決まり、伸長するほど若い時期に発症するといわれています。また、ハンチントン病の主な症状である不随意運動(舞踏運動)は、脳の一部で随意運動を司っている大脳基底核と大脳皮質が萎縮することで発症します。ハンチントン病は常染色体優位性遺伝といって、発病の原因となっている遺伝子が親から子に伝わる病気です。両親のうちのどちらか一方がハンチントン病の原因遺伝子を持っている場合、子どもには50%の確率で遺伝します。ただし、祖父母から孫に世代をまたいで原因遺伝子が遺伝することはありません。ハンチントン病の診断基準は?出典 : ハンチントン病の診断基準は問診や画像検査によって分かることがあります。また、受診機関もその時々の症状に合わせて横断的に受診し、専門医にも診てもらうことをおすすめします。ハンチントン病の診断は主に問診によって行われ、家族歴、臨床所見により臨床判断が可能です。しかし、確定診断は遺伝子検査により診断されます。■家族歴:近親にハンチントン病を患った方がいるか、または神経疾患や精神疾患がある方がいるかどうか。ハンチントン病の原因は親から子への遺伝によるものです。したがって、近親でハンチントン病になったことがある方がいるかどうかを問うことがあります。■特徴的な臨床所見:上記で述べたようなハンチントン病特有の運動症状(不随意運動)や精神症状を自覚または他覚できるかどうか。初期症状では日常生活中のふとした瞬間に手が震える等の軽い不随意運動が起こります。初期症状を他覚するのは難しいですが、自覚があるならば問診時に話してみることをおすすめします。神経内科や精神科を受診して、専門医に診てもらうことをおすすめします。近親にハンチントン病の方がいらっしゃる場合には、その旨を医師にお伝えください。■CT検査・MRI検査ハンチントン病の不随意運動(舞踏運動)は脳の一部の大脳基底核と大脳皮質の異常により生じるため、CT検査やMRI検査を行います。さらにこれらの検査は他の病気である可能性を否定するために行うものとされています。また、うつ病の方は共通して大脳基底核と大脳皮質の萎縮が見られますが、これらの特徴がうつ症状にどのように影響しているかはまだ分かっていません。■遺伝子検査確定診断のために遺伝子検査を行います。近親にハンチントン病の方がいて、ご自身にも自覚症状がある場合には遺伝子検査を受けることをおすすめします。近親にハンチントン病の方がいるが、ご自身に自覚症状がない場合は、遺伝カウンセリング等を受けることが一般的にすすめられています。ハンチントン病の治療法出典 : ハンチントン病の原因治療はなく、対症治療がメインになります。主に薬物療法を用いて運動症状・精神症状を和らげています。不随意運動(舞踏運動)の治療薬には2013年から使用が許可されたテトラベナジンがあり、精神症状には抗精神病薬を使用しています。参考サイト:テトラベンジン添付文書ハンチントン病と診断されたら…出典 : ハンチントン病が進行するにつれて、自分の意思を伝えることが困難になってきます。そのため、本人が自分の意思・希望を伝達するための方法を確保することが重要です。また、難病指定がされている疾患のため、医療費の助成支援を受けることもできます。以下では、診断を受けたらしておくと良い手続きなどをご紹介します。事前指示書とは本人が医療についての決断を下すことができなくなった場合に、医療についてのその人の希望を伝達するための文書です。以下の文書を作成し、手続きを行っておくと自分の意思や尊厳を優先することができます。■リビングウィル医療に関する患者の指示や希望をあからじめ表明した文書■医療判断代理委任状本人が決断を下すことができない状態に陥った場合に本人の代わりに決断を下す(代理人)を指定するための文書参考サイト:メルクマニュアル医学百科事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)ハンチントン病は国の指定難病にされているため、医療費の助成を受けることができます。指定難病の医療費の自己負担割合は2割です。また、その他の制度による医療費がすでに1割負担となっている患者さんの場合、負担割合は1割のまま変わりません。難病医療費は世帯の所得に応じた医療費の自己負担上限額(月額)が設定されます。自己負担上限額は、受診した複数の医療機関などの自己負担をすべて合算したうえで適応されます。参考サイト:難病医療費助成制度の対象疾病についてまとめ出典 : ハンチントン病は、10万人に0.4人が発症するという極めてまれな病気です。人から人へ感染する病気ではなく、親から子へ遺伝によって原因遺伝子を引き継ぎ発症するため、生活習慣の悪化によって発症したり進行したりする病気ではありません。根本的な治療方法はまだ見つかっていませんが、不随意運動を和らげる薬や、精神症状を和らげる抗うつ薬や抗てんかん薬等があり症状を和らげることができます。症状を緩和するためにも早めに医療機関の受診をおすすめします。参考サイト:難病情報センター参考サイト:メイクマニュアル参考サイト:ハンチントン病と生きる参考サイト:メディカルノート
2016年07月25日学校でのトラブルが続くと、子どももしんどい様子…出典 : 娘は、学校でお友だちに指摘したことが発端となり、長期間ケンカをしていた時期があります。その頃、チック症状が増え始めていました。今はでは仲直りをし、普段通りに笑って話せるようになっているものの、それでも1度出現したチック症状はなかなか治まらず、学校へ行くのがつらいと言うようになりました。学校から帰ると頭痛を訴えたり、娘が精神的に追い込まれているときよく出る右足の痛みも、頻繁になっていました。チック症|クラスメイトとのトラブルが原因?新たなチックが出現しました学校を休む基準は、しんどさの度合いで決めればいいのだろうか?Upload By GreenDays私たち家族は、学校を「どうしても行かなくてはならない場所」という位置づけで考えてはいません。熱が出れば休むのと同じように、心が苦しくなった時には積極的に学校を休んで心をほぐす時間に当てようと考えています。ですので、チックが発症して以来、娘は登校日の半分ぐらいの割合で学校を休んでいます。少しずつチックは治まってきましたが、1番症状が激しく出るのは「今日は学校を休むかどうか」を決める瞬間です。娘なりに色々な葛藤もあるのでしょう。行くと決めていたのに、朝食の途中で足が痛みはじめ、結局学校を休んだ日もあります。幼い娘に「学校を休む」という決断をさせるのは酷なようにも思いますが、「しんどい」の度合いは本人にしかわかりませんので、私が決めるというのもなかなか難しく、何か良い方法はないかなと考えていました。娘の「しんどい」を洗い出して可視化!私が娘と話し合うときにいつも困っていたのは、「しんどい」と訴えられても、その詳細な度合いまで共有できない事でした。「ちょっとしんどいけど、まあ頑張れる」レベルなのか、「これ以上頑張ったら苦しい」レベルなのか、「すごくしんどくて心が壊れる寸前」なのか。たくさん会話をしながら探っていきますが、本人も自分の状態をきちんと把握できていないので、私と娘の認識が大きくずれていることもあります。そこで、娘が「しんどい」と思う出来事を「1~10」にレベル分けしてみました。「レベル5」までは、なんとか頑張れる程度。「6~10」は、チックや頭痛・吐き気・足の痛みなどの身体症状が出始めるため、何らかのサポートが必要になってきます。Upload By GreenDaysこうして娘のストレスを数値化することで、「しんどい」と訴えられたときに「今、1~10で言うとどのぐらい?」と確かめ、そのレベルを推測することができるようになりました。しんどいレベルが「4」か「5」の時は、そっと背中を押してあげれば前に進む勇気が出ることもあります。「6」以上の時に背中を押してしまうと「ママの期待に応えなければ」という気持ちが芽生え、余計に娘を追いつめてしまうことになるので「まずは心を休めようね」と声をかけることにしています。この数値化のおかげで娘と私の認識は大きくずれることなく、その認識を前提に話ができるようになりました。出典 : 「しんどさ」がわかれば課題や手立ても見えてくる!また、娘のストレスを書き出してみることで、わかった事もたくさんありました。雨の日と晴れの日では同じ出来事でもストレスの度合いが違うこと、児童精神科への通院前には、娘にとんでもない負荷がかかっていたことお友だちとバイバイする時間になると激しく怒り、泣いて抵抗する娘にも、その瞬間はかなりのストレスがかかっていることも判明しました。わがままなのではなく、自分ではどうしようもない感情の揺れに振り回されていたのです。「お友だちと遊ぶときには、あらかじめ帰り際の対策をたてておく」という課題も見えてきました。こうして娘と一緒に「今はどんな状態だろうね」「こんな状態の時はどうしたらいいかな?」と話し合っていくことで、娘は安心してSOSを発することができるようになっていると思います。年齢が上がるにつれ、いろいろな感情やプライドが邪魔をして、本当のことを話してくれなくなる時期が来るかも知れません。それでも、「SOSを出せば一緒に解決策を考えてもらえる」という経験は、娘の今後の人生できっと役立ってくれることと思います。客観的に自分の状態を判断できるようにUpload By GreenDays「今、自分はどういう状態にあるのかを知る」ことは、とても大切なことだと思います。同じ出来事が起きても、なぜ今回は怒ってしまったのか、なぜ今回は平気だったのか。それを自分自身が少しずつ理解していくことで、自分自身の理解は少しずつ進んでいくと思います。理解が進めば対策が立てやすくなり、対策が立てられれば毎日穏やかに過ごせることも増えるのではないでしょうか。「己を知る」手立てを伝えることは、いずれ私の手を離れて巣立つ娘へ贈る大切なプレゼントです。焦らずゆっくりと。娘に合った方法を模索しながら、いつの日か客観的に自分の状態を判断できる力を身につけてあげたいと思います。
2016年07月21日自閉症とは?出典 : 自閉症(Autism)は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴が発達段階で現れると言われています。文部科学省によると、自閉症は以下のように定義されています。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。■ICD-10の分類における自閉症自閉症は、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の分類では広汎性発達障害に含まれます。広汎性発達障害のうち、知能指数が高い(IQ70以上)高機能自閉症の場合は「アスペルガー症候群」、知能指数が低い(IQ70以下)の場合は「カナー症候群」にあてはまります。自閉症の分類は分かりにくいですが、以下の図がわかりやすいので参考にしてください。Upload By 発達障害のキホン■DSM-5の分類における自閉症2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)ではそれまでの診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第4版テキスト改訂版)における広汎性発達障害の分類に変更点がありました。変更点としては、広汎性発達障害のサブカテゴリーである自閉症やアスペルガー症候群が廃止され、レット障害を除くすべての障害名が自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder、略称ASD)に含まれるようになりました。これらは本質的には同じ1つの障害単位であると考えられており、症状の強さに従っていくつかの診断名に分類されます(そのため、spectrum=連続体と呼ばれています)。このようなことから、2013年以前に自閉症やアスペルガー症候群に分類された症状は、現在では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害という診断名に分類されるようになりました。詳細は下の図をご覧ください。しかし『DSM-5』が未だ浸透していない場合もあり、『ICD-10』の診断基準を用いる医師もいることや、すでに自閉症の診断名を受けている人も多くいます。また、発達障害者支援法での障害名が「自閉症」であることから、この障害名を使い続けている人も多いのです。そのため本記事では文部省の定義に準拠し「自閉症」という名称を使用しながらご説明します。Upload By 発達障害のキホン自閉症の特徴的な3つの症状出典 : 自閉症の方は、対人関係を築くことが苦手なことが多いです。具体的な特徴としては、・目線を合わすことができない・周囲に関心がないように見える・相手の気持ちがわからない・その場の空気が読めないなどが挙げられます。自閉症の方は、会話をしていても目を合わすことが苦手です。無理に視線を合わせようとすると落ち着きがなくなったり、パニックになってしまいます。自閉症の方は環境の変化を敏感に感じることが苦手なため、このように対人関係が苦手だと受け止められてしまいます。自閉症の方はコミュニケーションや言葉の発達が遅れる傾向があります。具体的な特徴としては、・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・人の話したことをオウム返しする・抽象的な言葉・比喩や皮肉の意味を理解できない・呼んでも反応しない・自分の話したいことだけ一方的に話すなどが挙げられます。自閉症の方は言葉を話し始めるのが遅く、言葉の意味を理解するのが困難です。言葉を話し始めても、意味のある言葉で会話をするのではなく、誰かの言葉をオウム返しし続ける場合も少なくありません。相手に自分の気持ちがうまく伝わらず、暴れてしまうこともありますが、正しい対処法をしていれば成長と共に落ち着いてきます。自閉症の方はある一定の行動をとる傾向があります。具体的な特徴としては、・落ち着きがなく、手を動かしたり、部屋の中を行ったり来たりする・毎日決まった行動をし、予定外の行動は取れない・1つのものに執着する・自分の興味があるものに対して、とても執着する・予定外のできごと・初めての人/場所/活動などに抵抗を示すなどが挙げられます。自閉症の人は、自分の興味のあることに対してとことん熱中する傾向があります。なので、自分の興味のある物事をとことん調べ、誰も教えていないのに専門家顔負けの知識を持っている方も珍しくありません。年齢別に見た自閉症の症状の現れ方出典 : 自閉症の症状は成長とともに変化していきます。自閉症の症状は人によって個人差が大きいのですが、大まかな年代別の症状を紹介します。自閉症スペクトラム・広汎性発達障害・アスペルガー症候群・自閉症については、以下のような共通の症状があります。これらの症状は、すべてがあてはまるわけではなく、症状の現れ方は人によって異なります。自閉症は発達障害のひとつですが、発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、その特徴となる症状が分かりにくい場合があります。ですから、生後すぐに自閉症の診断がでることはありません。しかし、幼児期全体を通してみると、以下のような特徴的な行動をとっていたことが多いと言われています。以下にそれらの症状を紹介します。■周囲にあまり興味を持たない傾向がある視線を合わせようとしない子が多いです。また他の子どもに興味をもたなかったり、名前を呼んでも振り返らないことが多いです。定型発達の子が興味をあるものを指で指して示すのに対し、自閉症の子は指さしをして興味を伝えることをしない傾向があります。■コミュニケーションを取るのが苦手知的障害を伴う自閉症の子は、言葉の遅れや、オウム返しなどの特徴がみられます。会話においては、一方的に言いたいことだけを言ってしまったり、質問に対してうまく答えられないなどの特徴があります。定型発達の子が友達とのごっこ遊びを好むのに対し、自閉症の子は集団での遊びにあまり興味を示さないことが多いです。■強いこだわりを持つ興味を持つことに対して、同じ質問を何度もすることが多いです。また、日常生活においてあらゆるこだわりを持っていることが多いので、ものごとの手順がかわると混乱してしまうことが多いです。■集団になじむのが難しい年齢相応の友人関係がないことが多いです。周囲にあまり配慮せずに、自分が好きなことを好きなようにしてしまう子が多い傾向があります。人と関わるときは何かしてほしいことがあるときなだけのことが多く、基本1人遊びを好みます。人の気持ちや意図を汲み取ることを苦手とする子も多いです。■臨機応変に対応するのが苦手きちんと決められたルールを好む子が多いです。言われたことを場面に応じて対応させることが苦手な傾向にあります。■どのようになぜといった説明が苦手言葉をうまく扱えず、単語を覚えても意味を理解することが難しい場合があります。また、自分の気持ちや他人の気持ちを言葉にしたり、想像するのも苦手です。そのため説明がうまくできないこともあります。■不自然な喋り方をする抑揚がない、不自然な話し方が目立つ場合があります。■人の気持ちや感情を読み取るのが苦手上記でも述べましたが、コミュニケーション能力が乏しく、人が何を考えているのかなどを考えるのも苦手な傾向にあります。■雑談が苦手目的の無い会話をするのを難しく感じる人が多いです。■興味のあるものにはとことん没頭する広汎性発達障害の人は物事に強いこだわりをもっています。そのため、興味のあることにとことん没頭することが多いですし、その分野で大きな成果をあげられることもあります。自閉症の診断基準出典 : 自閉症について、気になる症状がある場合は医師に相談し、診断を受けることもできます。医療機関での診断は、『DSM-5』や『ICD-10』による診断基準によって下されます。医療機関での診断は、子どもの場合は、専門外来のある小児科、脳神経小児科、児童精神科などで行われることが多いです。また、18歳以上の場合は一般的に精神科や心療内科で診断がなされます。しかし、自閉症を診療できる専門の医療機関はまだまだ少ないのが現状です。各地域の「発達障害者支援センター」に相談をして、専門の医療機関を紹介してもらう方法をおすすめします。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。医療機関では、診断基準に基づいたテスト、生育歴の聞き取り、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答など、しっかりと問診をしたうえで総合的に判断されます。『DSM-5』では、広汎性発達障害の下にあったレット障害を除くすべての障害名が、自閉症スペクトラムという名称に統合されました。そのため、自閉症は現在では自閉症スペクトラムという診断名で診断されることが多くなっています。以下に『DSM-5』にある自閉症スペクトラムの診断基準をご紹介します。A. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。(1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。(2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。(3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)(1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語、独特な言い回し)。(2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)(3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限定・固執した興味)(4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)C. 症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。D. その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。E. これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。(『日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』2014年 医学書院/刊P.49より引用)自閉症の疑いを感じたらどうすればいい?出典 : もし、上記の診断基準において当てはまる項目が多い場合や気になることがある場合は、専門機関での相談をおすすめします。誰かに相談することによって気持ちも楽になります。家族で悩んでいても、困難に対する改善策はなかなか見つかりません。できるだけ早期に小さい頃から自閉症に対する教育方法や療育などの対処法を始めると、その後の発育に大きな違いがみられます。はじめの一歩を踏み出すのには勇気がいるかと思いますが、一歩を踏み出すことによって色々な悩みが軽減されます。自閉症ではないと診断された場合でも、困難を乗り越えるための様々なアドバイスをしてもらえる場合が多いので、一度相談してみることをおすすめします。障害なのかな、と疑問を持った場合、いきなり自分で専門医を探すのは難しいので、まずはお住まいの地域の身近な専門機関に相談するようにしましょう。子どもか大人かによって行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が場合には、電話での相談にものってくれることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。まず身近な相談機関に行って、診断の疑いがあればそこから専門医を紹介してもらいましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」自閉症の症状・特徴は人それぞれ出典 : 自閉症には様々な症状がありますが、その症状には個人差があります。早期にそれらの特性に気づき、一人一人に合った環境をつくること、早期療育や適切な教育を行っていくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとして活かすこともできます。自閉症のある人の中でも、特性を活かして活躍している人がいます。特性を活かせるような環境づくりをすることで、本人の生活上の困難さを解消し、その人らしく生きることが可能になるでしょう。
2016年07月14日私の愛すべき家族
育児に遅れと混乱が生じてる !!
こどもと見つけた小さな発見日誌