「発達障害とは」について知りたいことや今話題の「発達障害とは」についての記事をチェック! (7/24)
育児につまずき、思い詰めて心療内科を受診した私。そこで医師から投げかけられた言葉は「発達障害の疑いがある」という、私にとって意外な言葉でした。そこで心理テストを受け、結果を受け止めた今の自分の心境をお伝えします。ほかのママとどこかで比べてしまう現在、私は3歳と0歳の姉妹を育てている2児の母親ですが、上の子も下の子も出産後から両親や親戚などに頼らず、ほぼワンオペで育児をおこなっていました。孤独に育児をしていたこともあってか、ほかのママ友たちと自分を比べると「どうも私は子どもに対する愛情に欠けているのではないか」と思ってしまう自分がいることに気づいたのです。たとえば、子どもとどうやって遊べばよいか本気でよくわからなかったですし、一生懸命に育児本を読んでそのようにおこなっても、いまいち乗り気になれない自分がいたりしました。特に下の子を出産したあとの数カ月の間は、上の子に対して感情的に怒鳴るなどひどい扱いをしていたことも事実です。そんな出来事から「私はもしかして産後うつなのでは?」と思い悩み、また慢性的な睡眠障害もあって、思い切って心療内科を受診したのです。 思い切って心療内科を受診心療内科を受診したのは下の子が生後半年を過ぎたころでした。医師からの診断は「適応障害と産後うつ」そして「発達障害の疑いがある」という、私にとっては衝撃的な話でした。恥ずかしながら発達障害というワードだけは聞いたことがありましたが、詳しくは知りませんでした。早速家に帰って発達障害について調べてみたり、セルフチェックテストなどをおこなったりしました。たしかに今までの人生を振り返ってみて対人関係においてのつまずきや、職場でのトラブルなどはあったのも事実ですし、いわゆるADDやADHDの症状である「忘れっぽさ」や「衝動性の強さ」「こだわりの強さ」があったように感じました。 愛着障害と診断を受けて後日、2日ほどに渡って精密な発達障害の心理テストを受けたのですが、結果は「発達障害の所見はなし」でした。しかし、私が過去に実親から暴力などの虐待を受けたことがあるということから、「愛着障害の可能性がある」と医師から聞かされました。愛着障害とは、乳幼児期において暴力やネグレクトなどで傷を負い、適切な愛情を持って育てられなかった子どもが、社会人になったときに対人関係や仕事、そして育児などに支障が出る障害のことだそうです。医師からその診断を受けたときは、正直言って「やっぱりな」と思う自分がいました。 まさか自分が発達障害の疑いを持たれるとは思いもよらず、心理テストの結果が出るまではモヤモヤでいっぱいでしたが、発達障害やそのほかの精神疾患などについての勉強にもなりました。客観的に自分が親にされてきたことは虐待だったのだと受け止め、過去の自分と向き合うことで本当の私になれる気がしています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ベビーカレンダーでは、赤ちゃん時代を卒業して自己主張を始めた2~6歳までの子どもの力を伸ばし、親子の生活がもっと楽しくなる【キッズライフ記事】を強化配信中。今よりもっと笑顔が増えてハッピーな毎日になりますように! 監修/助産師 松田玲子著者:仲本まゆこ自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2022年11月20日中学校の特別支援学級について、先生の説明は…中学校の先生の説明では、基本的には通常学級の教室で授業を受け、苦手な科目だけ特別支援学級の教室へ移動して授業を受けるという方法をとるようでした。現在の小学校でのスタイルと同じです。あとは、部活動を始めるとクラス以外にも世界が広がるので、どこかに入部してくれることを期待しています。本人は今のところ帰宅部を希望していますが…。(ゆいの通う小学校は「特別支援学級在籍」となっていても、普段は通常学級で過ごし、サポートが必要な科目だけ、特別支援学級の教室に集まって授業を受けています。※自治体により異なります)Upload By 吉田いらこ通学路を確認するのは地図アプリで中学校へは自宅から徒歩で15分ほどです。行き方もほぼ一本道で迷うこともありません。ですが、新しい場所に対して不安の強いゆいは「中学校にどう行ったらいいのか分からない、怖い」と言うので地図アプリを見せることにしました。アプリを開いて自宅を表示したら、そこからスタートし中学校までのルートを一緒に見ていきます。「ここにカフェがあるね」「赤い屋根のおうちが見えるね」など場所を確認しながら進めていきました。この方法は「場所見知り」が強いゆいの特性にとても効果があり、よく使っています。新しい場所に行くときは前もって地図を見たり、建物の外観や内部の画像をネットで検索したり、建物のフロアマップを見たりすると全体像が把握できて安心できるようです。Upload By 吉田いらこ中学校卒業後は?特別支援学級でも内申点はつくの?私がゆいの進路選択で一番気になっていたのは、義務教育が終了したあとのことでした。今のところ卒業後に就職することは親子ともに考えておらず、進学を考えています。中学卒業後の進学先は、全日制高校の普通科、特別支援学校高等部、定時制高校、通信制高校、高等専修学校…ほかにも膨大な選択肢があります。障害者手帳を取得しているかどうかが進学の決め手になる場合もあれば、特別支援学級に在籍することで内申点がつかず、受験が難しくなる場合もあると聞きました。※お住まいの自治体等により制度は異なります特に、子どものためを考えて特別支援学級を選んだ結果、進学先の選択肢が狭まったり、進学を希望する高校の受験が難しくなったとしたら、つらいところです…。学業成績に関しては特に問題のないお子さんがいらっしゃるご家庭は悩ましいのではないでしょうか。定型発達の子どもに比べて、障害のある子どもの場合は中学校へ進学する時点でいろいろと調べなければならないことが多く大変だなと感じました。この点に関しては、ゆいが通う予定の中学校では特別支援学級に在籍していても内申点はつくということだったので安心しましたが、早めに進学を希望する学校へ足を運んで確認し動くことが大事だなと感じています。Upload By 吉田いらこ中学校生活は小学校のころとはまた違った悩みが増えてくると思いますが、親としていろいろなサポートができればと思います。執筆/吉田いらこ(監修:初川先生より)中学の進路選択やその後の準備、そして義務教育終了後を見据えてというテーマでのコラムをありがとうございます。中学校に入ったら部活をしてほしいという保護者の方は多くいらっしゃいますね。当の本人は帰宅部希望ということもよくあります。その場合、入学前から部活動のすばらしさを語ったり、特定の部活へのプッシュをしたりは私はあまりおすすめしません。ただでさえ未知の中学校生活に、何らか期待を寄せられることは、部活をもともと楽しみに感じられるお子さんならまだしも、帰宅部希望と言っているお子さんからしたら負担や負荷になってしまうだろうと思います。実際には、中学入学後、部活動の紹介や体験入部といった時期があり、その中で入部するかどうかを決めます。そのころには、中学校というものがおぼろげながらも様子が分かってきて、毎日の疲労度もなんとなくつかめてきているかもしれません。そして、部活動紹介での先輩の姿やクラスの友達の動向などによって、興味関心を突然持つこともあります。そういう意味で、部活動どうするかは入学してからのお楽しみでもいいのではと思います。ゆいちゃんは場所見知りがあって、家で、一緒に地図アプリで様子を確認するとのこと、とてもいいですね。安心できる場で(家で、家族と)、まずは写真で見て、心の準備をしておくこと、何よりです。中学校は毎日通う場になるので、きっとどこからか、歩く練習もされると思いますが、その場合には、ポイントとなるところ(目印となるお店など)で、立ち止まりきょろきょろしてみてください。不安な気持ちで前だけ見て歩いていると、行きと帰りとで景色の見え方が違い、どうにか行けたけど、帰り道は帰り道で不安になるかもしれません。ときどきくるっとうしろや左右を見ながら、歩いていただければと思います。さて、早くも中学卒業後の話が出ていますが、そのあたりを視野に入れておくことは大切です。中学校生活は3年間で、結構あっという間でもあります。私は、中学卒業後に進学を考える際には、高校卒業後を見据えて高校について考えてほしいと思っています。全日制普通科だと、多くの場合、出席日数が厳密で、学習の習得度にも赤点もあり、その学年で取得すべき単位を1単位でも取りきれなかった場合には留年する(留年させない学校もあるので、その場合退学を検討する)ことになります。通信制高校や定時制高校は単位制であることが多く、単位を取り損ねた場合には次年度また挑戦すれば良いというシステムです。しかし、自分で時間割を組んだり、課題も自分でマネジメントしたり、学校によってそのサポート具合はさまざまですが、中学までとは違う難しさが出てきます。また、通信制高校でスクーリングを行う際には、学校に通うタイプと合宿などで一気に行うタイプなどがあります。そうした特徴も、お子さんに合うかどうか、人それぞれというところです。このように高校で単位を取るのはそれなりに苦労が伴い(高校は高校卒業に値する学習を修める場なので仕方ないことですが)、そして、大事なのはその後です。今、さまざまなタイプの高校がありますが、高校卒業を目標に据える学校もあれば、その後の大学や専門学校進学あるいは就職を目標に据える学校もあります。高校は卒業したけれど、その後が…となってしまうとおそらくお子さん本人もご家族も困ってしまうのではないかと思います。そういう意味で、例えば、知的障害のあるお子さんの場合、特別支援学校の高等部に進学し、そこで就労の準備をして、卒業後は確実に就労する(特別支援学校の高等部は就職率がとても高い)、というのはなかなか心強い選択肢の1つにはなります。まだ中学に進学する前から中学卒業後のみならず、高校、そしてその後を見据えて、と助言するのはちょっと気が早いようにも感じますが、しかし心の準備として知っておいていただけたらと思います。具体的には、中学入学後、まず特別支援学級の先生にぜひ卒業生の進路の話について聞いてみるところからはじめると良いかと思います。
2022年11月18日家族へのカミングアウトは相談と共にしのくんは現在4歳7ヶ月。診断名はついていない、いわゆる発達障害グレーゾーンの男の子です。そんなしのくんの状況を、両親や周りの人へカミングアウトしたのは2歳4ヶ月のころでした。その当時、保育園の面談で、「言葉がでてない」「集中力がない」などいろいろ指摘を受けて、「もしかしたらほかの子と違う!?」「発達障害かもしれない!?」と思った私は、まず夫の母に相談しました。Upload By keiko保育園の面談の帰りに、そのまま義実家へ行って、しのくんの状況を打ち明けて、話を聞いてもらいました(保育園のすぐ近くに義実家がある)。義母の反応は、驚きと共に「やっぱり…」といった感じだったので、すぐに相談してよかったと思いました。そのほかの家族にも同じように、会ったときにすぐに相談と共にカミングアウトをしました。みんなしのくんがしゃべらないことを気にしていたので、すんなり理解して受け入れてくれました。友人、会社へのカミングアウト「もしかして発達障害かも!?」と分かったばかりのころは、とにかくいろいろ不安になって情緒不安定になっていたと思います。これから先どうなるのか分からない不安もあって、通院や付き添いでお休みをすることも増えるかもしれない…と思った私は、すぐに上司や一緒に働くスタッフに状況を伝えました。友人には、SNSを使って育児漫画を描くことで、カミングアウトしました。そして、実際に会ったときに詳細を伝えるといった感じでした。カミングアウトへの抵抗Upload By keiko「息子がもしかしたら発達障害かも!?」「うちの子療育行ってるんです」と、人に伝えることに抵抗がなかったわけではありません。でも、黙っているのは違うなぁ…とぼんやり思ったのを覚えています。上手く言えませんが、私の中では「黙っている」ということは「周囲にどう思われるだろう?」と気にしているということで、それはつまり、自分は、しのくんのことを心のどこかで『恥ずかしい』と感じているってことじゃないか…?そう自問自答したときに、「しのくんのことを『恥ずかしい』と感じるのは違うなぁ」と思ったのです。周りから色眼鏡で見られたくはないという思いはありましたが、私が黙っていても、しゃべらないしのくんに対して「あれ?この子おかしいぞ?」と思われるくらいだったら、自分から言ってしまおう!!と決心しました。Upload By keikoカミングアウトしたあとカミングアウトしたことで、相手にどう思われているのか、あまり考えることがなくなりました。別に色眼鏡で見られたっていいじゃない!しのくんはしのくんのままでいい!と思えるようになりました。世界は思っていたよりずっと優しくて、しのくんは幸せ者だと思えるようになりました。Upload By keiko現在しのくんは現在、療育や言葉の教室に通っています。保育園の年中なので、そろそろ卒園後の進路を考える時期が近づいてきています。また迷うところが出てくると思いますが、これからも、しのくんの現状をいろんな人に聞いてもらいたいし、アドバイスもほしいし、理解してもらいたいので、開示し続けようと思います。執筆/keiko(監修:井上先生より)診断のない段階での共有と、診断後の共有は状況も違ってきますね。診断のない段階で共有しておくことで、診断後の受け入れや理解も得やすくなるように思います。また、カミングアウトはその方と周囲の状況によって、ベストなタイミングは変わります。keikoさんのようなカミングアウトについての体験談は、そういった意味で参考になると思います。
2022年11月16日発達障害グレーゾーンの長男は特別支援学級に通っています初めまして、星河ばよです。特別支援学級在籍の長男タロと、定型発達の次男ジロの母です。長男は診断名がついていない、いわゆる発達障害グレーゾーンです。Upload By 星河ばよUpload By 星河ばよ長男が3歳のとき保育園から療育センターをすすめられて長男の発達については、「育てにくいな」とはさほど感じませんでした。初めての子育てでしたし、こんなものなんだろうとそこまで深刻に感じることもなかったです。夫、私の両親、義母も同様でした。次男が生まれても、特に長男との違いを感じることなく毎日は忙しく過ぎていきました。そんな日々が突然変わったのは、長男が3歳の終わりごろ。何の前触れもなく保育園の主任の先生から面談に呼ばれたのです。そこで言われたのはまったく予想もしなかった保育園での長男の様子でした。・集中力が続かない・おゆうぎの途中でも自分の世界に入ってしまいがち・興味があるものとないものの振り幅が大きい主任と担任の先生の3人から、これでもかとほかの子どもとの発達の違いを伝えられて、私はショックで暗闇のどん底に突き落とされたような気持ちになりました。面談の席には夫も同席していましたが、夫も押し黙ったまま。それでもたった一人でこの場に来なくてよかったと心底思いました。もし私一人だったら、とても受け止められなかったから。わが子が周りの子と比べて発達が遅いという現実は、当時の私には本当につらいものでした。Upload By 星河ばよ全然受け入れられなかった長男の発達の遅れ保育園の面談で主任の先生が提示してきたことは以下の2択でした。・療育センターに長男を連れて行く・療育センターの人を保育園に呼び、長男の様子を見てもらうこのどちらかを選択をする前に、私にはまず現状を受け止めるための時間が必要でした。保育園の面談によればおそらく長男は発達障害があるのかもしれない。長男の発達のために療育センターへ行ったほうがいいならそうしたい。だけど、心がそこまで追いつかなくて…。結局、療育センターへ電話をかけるまで1ヶ月ほどかかってしまいました。療育センターに行きたくない、という気持ちよりはむしろ「発達障害」という言葉を必要以上に重く感じてしまい、いつまでも心が起き上がれない感じでした。やっとのことで重い腰を上げ、療育センターへ行くことを決意しました。発達検査の結果、長男は「発達障害の傾向がある」と言われ、あらためて漠然とした不安が襲いかかってきました。心と体が分裂しそうになりながらも、発達検査の結果を保育園に報告すると、すぐに加配の先生をつけてくれました。わが子のために申し訳ないような、だけどすごくありがたい気持ちに包まれたのを覚えています。保育園は療育センターと連携をとって長男をサポートしてくれる。長男にはどんな声かけが有効なのかと気を配ってくれる。それなのに私はいつまでたってもどこか現実を受け入れることができなくて、心が置いてきぼりでした。「朝起きたら全部夢だったらいいのに」「成長がゆっくりなだけ。そのうちみんなに追いつく」と何度思ったか分かりません。泣かない日はありませんでした。周りの人に打ち明けることで少しずつ楽になれた長男の発達の遅れを受け入れようともがいていたとき、夫のほかは保育園のママ友が心の支えでした。彼女もまた私と同じように、保育園の面談で子どもの発達について指摘されていたのです。同じ境遇の彼女と情報交換したり、愚痴を言い合ったり、わが子の将来の不安を吐露したり。どんなに救われたか分かりません。また、近所でお付き合いのあるママ友や私の弟夫婦に、長男の発達障害について思い切って打ち明けたのですが、どちらも親身になって話を聞いてくれました。もしかしたらすでに察していたのかもしれないし、そうでないかもしれない。だけどいたって明るくふつうに受け止めてくれて。ただそれだけのことが本当にありがたく、うれしかった。信頼する人に打ち明けて、それを受け止めてくれる。おかげで私の気持ちが少しずつ軽くなって行くのを感じました。そして、いつまでもどんよりとした気分を引きずっていた私を、責めることなく優しく見守ってくれた療育センターの臨床心理士さんやソーシャルワーカーさんにも感謝しています。Upload By 星河ばよSNSがくれた出会いに感謝私は、もともと漫画を描くことが好きで、最初は軽い気持ちで長男と次男の日常をSNSに投稿していました。ある日、何の気なしに長男の発達の遅れについてのエピソードを投稿すると、いつもより少しだけ反響がありました。そのおかげで、SNSで発達障害のある子どもの子育てについて発信している方とも知り合うこともできました。同じように悩みながら子育てをしている方々の漫画には深く共感し、胸を打たれました。長男の発達の遅れについて発信しても需要がないだろうと思っていたけれど、もしかしたらそうでもないかもしれない。そこで思い切って漫画を描いてみることにしました。長男の発達に遅れがあることをあんなに受け入れられなかった私ですが、おかげさまで今では素直に受け入れることができるようになってオープンマインドになりました。全てをひっくるめて可愛いわが子、これからも一番近くでサポートしていきたい。そんなことを感じてもらえる記事をお届けできたらと思っています。Upload By 星河ばよ執筆/星河ばよ(監修:鈴木先生より)「発達障害の傾向がある」とありますが、医師の診察を受ければ自閉スペクトラム症とか発達性協調運動症など具体的な診断を受けることができます。具体的な診断がつけばそれに対してどういう療育がいいか、多動を抑えるのに投薬が必要なのかなど細かい指示を医師から出すことが可能になります。リハビリなら感覚統合訓練・音楽療法・乗馬療法などがあり、投薬は漢方薬から抗精神病薬までさまざまな手段があります。療育や治療など早期の介入が小学校入学後により良い効果として影響してくるのです。神経発達症(発達障害)のあるお子さんが小中高でその子らしく生活するために今、何ができるのかを真剣に模索することが大切だと思います。
2022年11月09日発達障害のある人への対応で重視したい2つのことこれまで私は児童精神科医として少年院に勤めながら、自治体の教育相談、学校コンサルテーションなども行ってきました。最近では「発達障害」への認知度が高まり、発達障害があることの生きづらさについても理解が深まりつつあります。今回は保護者や支援者の方が発達障害のある人に対応するときに、見逃さないでほしい2つのポイントについて、お話ししていきます。それは、「知的障害の有無」と「認知機能の弱さ」です。1つ目は、知的障害の有無です。社会生活を送る上での困りごとは、実は、知的な障害から生じるケースがほとんどです。逆にいえば、発達障害のある人でもIQ(知能指数)が高ければ、今の社会を生き抜いていく方法はあるでしょう。例えば、自閉傾向が強くても勉強ができたら、好きな分野での研究職に就くといった選択肢が考えられます。知的障害の認定基準は「IQ70未満」知的障害の認定基準は、都道府県によって多少の違いはありますが、おおむね「IQ70未満」です(一部では「IQ75未満」のところもあります)。さらに日常生活での援助が必要だと認められると「知的障害」と判断されます。そのうち、「IQ50~70」が「軽度知的障害」です。ただし、「IQ70未満」という知的障害の定義は1970年代以降のもので、それ以前には「IQ85未満」とされていた時期もあります。みなさん、「境界知能」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。IQ70と85の境となる「IQ70~84」が境界知能です。意外に思うかもしれませんが、境界知能は日本人の7人に1人が該当(IQ100を平均とした場合、境界知能には約14%が該当)します。勉強が苦手な子どもの中には、知的障害には該当しないものの、この境界知能に当たる子どもたちがいます。また、はっきりと発達障害と診断はされないものの、何かしらの課題を抱える「グレーゾーン」の子どもたちもいます。こうした子どもたちにも、本当はなんらかの支援があってしかるべきだと思うのですが、家庭や学校で見過ごされてしまうことが多々あります。むしろ、「軽度知的障害」と診断を受けていたほうが特別支援学級に在籍するなど、支援の手が届きやすくなります。でも、障害の診断はされていないのに、「授業についていけない」「周囲の子となじめない」という子どもの場合は、「本人のがんばりが足りない」「努力不足」「やる気がない」などととらえられてしまいがちです。先にお伝えしたように、境界知能とはIQ70~84です。IQ80あればIQ100の8割なので、同じ年齢の子と比べて8割程度の知能ということです。平均の8割あれば、そんなに心配する必要はないように思いますか?でも、考えてみてください。8割の知能ということは、10歳の子どもたちの中に8歳の子どもが混ざっているイメージです。小2の子どもが小4のクラスの授業についていくのは、しんどいことだと想像できるのではないでしょうか。認知機能の弱さが学習のつまずきにさらに、境界知能の子どもたちがしんどいのには、もう1つ理由があります。「認知機能」の弱さです。発達障害に対応するときに、重視してほしい2つ目のポイントです。認知機能とは、注意、記憶、言語理解、知覚、推論・判断といった「知的機能」を指します。見る、覚える、写すといった社会生活を営むのに必要な能力で、「学習の土台」でもあります。境界知能の子どもたちの多くは、この認知機能に弱さを抱えていることが多いといわれています(知的障害や発達障害のある子どもにも、その弱さは見られます)。例えば、「見る力」が弱いと文章を目で追いづらかったり読み飛ばしてしまったり、「覚える力」が弱いと九九や漢字を覚えられなかったり、「写す力」が弱いと板書が書き写せなかったり…学習面でのつまずきにつながります。このような認知機能の弱さを抱えながら、教科学習の知識を積み上げていくのは大変なことです。学年が上がるにつれて、学習内容は複雑になり、抽象度も増していきます。学習の土台がしっかりしていないところに、知識を積み上げても、子どもたちのつまずきが増すばかりです。子どものつまずきに気づき、手を貸してあげられる大人といえば、親御さんや学校の先生方です。とくに親御さんは、子どもが「自立」するまで、共に寄り添っていく存在です。いわば、子どもの「伴走者」です。子どもが自発的に何かをやり始めて、つまずきながらも、目的に近づいていく。それでもくじけそうになったときに、「大丈夫だよ。いつでも手伝うよ」と安心させるのが、伴走者の役割です。ポイントは、つかず離れずの距離感です。子どもにくっつきすぎて、やることを先回りして手伝ってばかりいると、自立を妨げかねません。一方で、親の子どもへの関心が薄かったり、困っているときに手伝えなかったりすると、子どもは不安になってしまいます。最後に、学習面でのつまずきを解消するには、学習の土台である認知機能をトレーニングすることが大切です。『コグトレ・パズル』は、親御さんに専門的な知識がなくても、パズルやゲーム感覚で楽しみながら、お子さんの認知機能の向上が期待できるトレーニングです。子どもの学習の「伴走者」として、保護者の方も一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか。
2022年10月26日LITALICO発達ナビを「ホーム画面に追加」すると便利!LITALICO発達ナビは、発達障害の基礎知識に関する情報や体験コラムを発信しています。会員向けのダイアリー(ブログ)機能やQ&Aコーナーもあり、毎日チェックしたいコンテンツが充実しています。お手持ちのモバイル端末で発達ナビを「ホーム画面に追加」するとアクセスが簡単!このコラムでは「ホーム画面に追加」の方法をご紹介いたします。iOSで「ホーム画面に追加」する手順お手持ちの端末がiPhoneの場合はこちらの手順に沿って「ホーム画面に追加」してみてください。1. ブラウザ(Safari)で発達ナビを開いた状態で下部のマークをタップUpload By 発達ナビニュース2.上にスクロールUpload By 発達ナビニュース3.「ホーム画面に追加」をタップUpload By 発達ナビニュース4.右上の「追加」をタップUpload By 発達ナビニュース5.ホーム画面に発達ナビのアイコンが追加されますUpload By 発達ナビニュースAndroid™で「ホーム画面に追加」する手順お手持ちの端末がAndroid搭載機種の場合はこちらの手順に沿って「ホーム画面に追加」してみてください。※機種やAndroidのバージョンが異なると、画面や操作手順が多少異なる場合があります。1.ブラウザ(Google Chrome™)で発達ナビを開き右上の「三点リーダー(︙)」ボタンをタップUpload By 発達ナビニュース2.メニュー画面の「ホーム画面に追加」をタップUpload By 発達ナビニュース3.「追加」をタップUpload By 発達ナビニュース4.「作成する」をタップUpload By 発達ナビニュース5.ホーム画面に発達ナビのアイコンが追加されますUpload By 発達ナビニュース「ホーム画面に追加」して最新の情報にすぐアクセスしてみよう!発達ナビでは、今後も発達障害に関する情報の発信だけでなく、会員のみなさまの毎日を応援するコンテンツを制作していきます。発達ナビをお手持ちの端末のホーム画面に追加してぜひチェックしてください!※ iPhone、Safariは、米国およびそのほかの国で登録されたApple Inc.の商標です。※ iOS は、Apple Inc.のOS名称です。※ Android、Google Chromeは、Google Inc.の登録商標です。
2022年10月25日30年以上、発達障害のある子どもたちをみてきた精神科医の言葉今回は、信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授を務める本田秀夫先生のコラムをまとめてご紹介します。これまで執筆いただいたコラムでは、発達が気になるお子さんの進路選びや、発達障害子育てのポイント、インクルーシブ教育の実現に向けた考えなど、保護者の方に向けた力強い言葉をつづっていただいています。30年以上の臨床経験がある本田先生の言葉は、私たちの心に深く届くものばかりです。ぜひ、この機会にまとめてご一読ください。障害のある子どもと障害のない子どもに別々の教育を行うのではなく、全員が共に学べるような形で教育を行うことを意味する、インクルーシブ教育。本田先生は、合理的な考え方であり、そのような環境設定をすることに対して全面的に同意しているものの、現在の学校教育にはまだ課題を感じると言います。共生社会をつくるために必要な姿勢とは…。本田先生は、発達に特性のあるお子さんの進路について話していると「通常学級で大勢の中に入ったほうが、いい刺激を受けるんじゃないですか」と言われることがあるそうです。この記事では、保護者の方に向けて通常学級に在籍することで受けるプラスとマイナスの刺激について解説いただいています。発達に特性のあるお子さんの就学や進路選びでは、通常学級、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校など、さまざまな選択肢の中から検討されるかもしれません。特に、小学校入学前に受ける就学相談で「通級指導教室や特別支援学級が適当」という判断が出た場合に悩む保護者の方が多いと本田先生は言います。発達障害子育てで感じる、さまざまなお悩み。どのように対応すればいいのか迷われている保護者の方に向けて、子育てを考えるきっかけになるクイズを本田先生にご用意いただきました。ぜひ、お子さんをイメージしながら答えを選んでみてください。発達障害のあるお子さんには、さまざまな特性があります。本田先生は、「得意なこと」「苦手なこと」「好きなこと」「嫌いなこと」などを一般常識にあてはめないで、ありのままに理解していくことが大切だと言います。この記事では、発達障害のある子どもの育て方のポイントを解説いただいています。発達が気になるお子さんの子育てをする中で、「できないこと」に目が行きがちだと感じている保護者の方も多いかもしれません。本田先生は、「平均値に届く・届かない能力が必ず存在する」「苦手の克服を最優先課題にするのは、発達障害のある人たちにとってはしばしば逆効果となり、特訓すればするほど嫌いになってしまうことがある」と言います。発達障害の当事者やそのご家族の方から、「発達障害と個性はどう違うの?」と質問をよく受けてきた本田先生は、「発達障害の特性と個性の間に境界線はない」「発達障害の人が向き合う困難はマイノリティ問題と共通している」と考えているそうです。それはなぜでしょうか。本田先生は30年以上の臨床経験から、発達障害と診断された人たちのなかで、割合が大きいけれど十分に理解されず困っている人がいると感じているそうです。それは、発達障害が「重複」するタイプの人であり、発達障害のある人の悩みを理解し支援するためには、その人たちのことをぜひ知っておいてほしいと言います。
2022年10月21日保育園の参観日で…夏の初めごろ、保育園で久しぶりに参観日がありました。その参観日で、しのくんは私の方に駆け寄って来てしまい…。クラスの活動に参加することができず、私は落ち込みました。Upload By keikoほかにも「順番が守れない」「座っていられない」などと保育園から指摘があり…。「ただでさえ発達がゆっくりなのに、このまま小学校へ入ったらどうなっちゃうんだろう?」という不安が私を襲います。Upload By keiko「勉強についていけなくて、つらい思いをするのはしのくんなんだ…」と思った私は…お家で通信教育や市販のワークをする!『お勉強』をすることを決意しました!じっと座れない元々、興味のないことはしない子しのくん。そのため最初はワークをやろうと誘っても5分も経てば逃げ出そうとしました。Upload By keikoそこで私は、夫と連携して、しのくんが逃げないようにし、しのくんの好きなサメや魚を使って声掛けを工夫しました。Upload By keikoそれが良かったようで、次第にワークに取り組めるようになりました。また、ワークも、しのくんの好きな海の生き物のイラストがたくさん描かれているものをチョイスし、イラストを見せて→何がいた?何匹いた?など質問を繰り返すことを行いました。そうすると、質問した内容に答えを返す、というやりとりができるようになってきました!しのくんがついに…!ワークを始めたころはすぐに逃げ出していたしのくんでしたが、だんだん椅子に座っていられる時間も長くなり、一対一で向き合って、提案したものに取り組めるようになってきました。そのうち、「おべんきょうのじかんよ〜!」としのくんのほうから言ってくれるようにまでなりました。そして、ついに自分の名前が書けるようになったのです!Upload By keiko保育園での様子にも変化が…ワークを始めてからちょうど2ヶ月ほど経ったころ、療育センターのかたに来てもらい、保育園での様子を見てもらう機会がありました。様子を見てもらった当日…療育センターの先生がしのくんの変化に「驚いていた」と、担任の先生に教えていただきました。なんと、しのくんは、順番を守ったり、絵本の時間もきちんと座れていたそうです。私はその話を聞いてホッとしました。「もしかして、ワークを始めてからの変化なのかな?」と思いました。最後に好きなことを入り口にすると、今まで興味が持てなかったことや、嫌がっていたことにもチャレンジできることが分かりました!それに、保育園での生活にもよい影響が出てきている様子なので、しのくんが楽しんで取り組めるように工夫しつつ、これからもワークを続けていこうと思います。これからのしのくんの成長が楽しみです!執筆/keiko(監修:初川先生より)就学を見据えて、ワークを始めたというエピソードをありがとうございます。幼児期は発達のペースも早いのと(単に右肩上がりに育つというより、印象としては、ぐんとできるようになる時期が来る感じがあるのではと思います)、その度合いも個人差が大きいので、変化の大きな時期です。ワークに取り組ませるにあたって、しのくんの好きなサメや魚を使って工夫されたのですね。初めてのこと、そして難しそうなことに取り組む際にはそうした工夫はとても良いと思います。ワークの内容そのものが(単独で)、集中力を伸ばし、順番を待てるように作用したかどうかは分かりません。ですが、保育園という集団場面ではなく、家庭での個別場面で、しのくんにとって取り組みやすい課題(量、難易度)であり、取り組むための工夫(サメくんが応援してくれる)があり、さらに、できたらめいっぱい褒めてもらえる。そういった構造が良い作用をもたらしたことを感じました。好きなことを入り口として、自分に合った課題を、取り組みやすい環境設定で行い、そして取り組む間も終わってからも褒めてもらえるという構造は、お子さん自身にとっては、とても達成感を得やすく、「自分はできるぞ!」と感じやすくなるものです。自分はできる、大丈夫と思っていると、多少苦手な場面でも心に余裕を持つことができ、うまく立ち振る舞えることが出てきます。学習(ワーク)そのものを1つの「ツール」として、そうした「良い循環」を生む関わりを始めるということは、大人側からしても取り組みやすい面がありますね。お子さんに合ったものを楽しく取り組んで、いっぱい認められ、「できるぞ!」を積み重ねてゆく関わり、ぜひ継続していただければと思います。
2022年10月18日発達障害の長男は、赤ちゃんのときから「寝ない子」でした。長男を産む前の私は、子どもは一度寝たらぐっすり寝るものだと思っていましたし、寝付くときも30分ぐらいで寝るものだと思っていました。しかし、いざ育児が始まると現実はあまりにも違っていたので、もしかしたら長男は「寝ない子」ではないかと感じるようになりました。そのときの私の思いや、長男が寝なかった理由などについてご紹介します。とにかく寝なくて大変だった乳児期長男は生後6カ月から保育園に入ったのですが、30分ぐらいしか昼寝をしないので保育園の先生がとても心配するほどでした。家でも授乳中には寝るものの布団に寝かせるとすぐに起きてしまうのです。1歳を過ぎても昼も夜もなかなか寝付かず、2時間近くゴロゴロ転がってばかりで全然寝ないので、私のほうがだんだんイライラ……。長男が寝ないことへのストレスと、成長への影響の不安がどんどん募っていきました。 寝なくてもいいやと発想を変えた結果1歳を過ぎてもあまりに寝ないので、疲れ果てた私は発想をガラリと変えてみました。保育園に行くために夜8時半には寝かせたかったのですが、寝る時間にこだわることをやめました。 それまでの私は、長男を寝かしつけたあとに、家事を済ませたり自分の時間を過ごしたりしていたのですが、それをすべて夕食後にすることにしたのです。そして夜10時になったら長男と一緒に寝てしまうスタイルに変えてみました。お互いに好きな時間を過ごせるようになったので、私のストレスも減っていきました。 長男が寝たくない理由とはその後しばらく経って、長男が年長のときに寝なかった理由を聞いたことがあります。理由は2つありました。1つ目は、「音とか光が気になって眠れない」、もう1つは、「起きていれば、もっとおもしろいことがありそうだから」でした。なるほどと思いました。長男は感覚過敏があり、蛍光灯が苦手です。そして音にもとても敏感なのです。起きている間は自分の興味のあることに熱中しています。私が起きていれば、長男も「何かおもしろいことを見つけて遊べる」と思っていたのでしょう。 小学5年生になった今でも、睡眠時間は少ないほうだと思います。「子どもは早く寝るもの」という大人の理想に当てはめず、長男のペースに合わせることで、私の気持ちが「寝られないものは寝られないんだ」と割り切ることができました。感覚過敏がある、発達障害という特性があることで、当時は不安を感じてしまっていたのです。寝る時間が少ないということは、理想の生活習慣を身につけるには本当は良くないのかもしれません。しかし、長男の成長を信じてやっていこうと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師 松田玲子著者:川本 千華発達障害の長男、兄が大好きな次男を育てる2児の母。元ピアノ講師。自身の経験を活かし音楽・発達障害に関するライターとして活動中。
2022年10月17日発達障害があるお子さんの保護者や支援者へのメッセージ集今回は、「こころとそだちのクリニックむすびめ」院長を務める精神科医の田中康雄先生のコラムをまとめてご紹介します。これまで執筆いただいたコラムでは、田中先生が考える精神科医の仕事の役割や、お子さんに発達障害の診断名をつけることより大事にしていること、思春期のお子さんとの関わりのポイント、登園・登校渋りへの対応など、幅広いテーマで保護者や支援者のみなさんへの思いを綴っていただいています。発達障害の特性があるお子さんとその家族、関係者と、つながり合い、支え合い、認め合うことを大切にした治療・支援を実践されている田中先生の言葉は力強く、そして温かい眼差しが感じられます。ぜひ、ご一読ください。日々、発達障害のあるお子さんと保護者の方の言葉や思いを受け止めている田中先生。保護者の方には、「よく、ここまでそだてましたね」「この子に上手に寄り添っていますね」「この子も安心していることでしょうね」「お疲れさまです。ちょっと休んでよいかと思います」…いくら言葉にしても足りないくらいであると言います。田中先生は、診察室で「子どもの発達の診立て」を行いながら、同時にわが子の育ちを心配する親や家族の思いも診立てていくと言います。それは、向き合っているのが「発達障害」ではなく、多彩な個性の持ち主である一人ひとりの子どもであり、家族であるからです。思春期のお子さんがSNSやオンラインゲームにはまったり、部屋にこもりがちになって口をきいてくれない…そんなお悩みのある保護者の方も多いかもしれません。田中先生は、思春期は親子の関係が、「上下の関係」から「水平の関係」に近くなると言います。発達が気になるお子さんについて、精神科に相談に行きたいけれど、様子がよく分からないから躊躇してしまうという声がよく聞かれます。この記事では、田中先生に、「そもそも精神科ではなにをしてくれるの?」という疑問に答えていただいています。発達の気になるお子さんが、「発達障害である」と診断されると、少なからずショックを受ける保護者の方も多いかもしれません。そのような場合、田中先生はどのように保護者の方に寄り添い、多職種の専門家の方との連携を大切にしているのでしょうか。長期休暇明けは、お子さんの心身に影響が出やすい時期であると言われています。田中先生のご経験から、お子さんが園や学校へ行きたくないときによくあるSOSの例や、保護者の方へのメッセージをお届けします。発達が気になるお子さんの保護者の方にとって大きな悩みの一つが、お子さんの将来のことかもしれません。「親が先に死にます。その後、誰がこの子を守ってくれるというのですか」という親の言葉を受け止め、孤立無縁な状態から抜け出してほしいと願う田中先生の言葉をお届けします。
2022年10月12日発達がゆっくりだけど困り感の少なかった幼稚園時代息子は生まれてからずっと成長がゆっくりでした。首座り、ハイハイ、発語…全て健診では「要観察」。歩くのは2歳を過ぎてからやっとでした。そんな息子ですが、よくある「困り感」は少なかったように感じます。癇癪などもそこまで起こすこともないし、落ち着きはないですが多動と言う訳でもない。奇声などもよく上げていましたが、注意すればある程度指示も通るような子どもでした。ただ、発達はゆっくりだったので、常に半年~1年ほど月齢の低い子どもを育てているような感覚でした。Upload By ユーザー体験談3歳から入ったこども園でもそれは続きました。息子は自分の意見をハッキリと言うタイプでもないので(今思うと、周りの言葉をよく理解していなかったのかもしれません)友達トラブルもなかったです。しかし、やはり母の目から見ると同級生との発達差ははっきりと分かりました。集団指示が通りづらい、着替えなどが遅いなどがあったので先生にはそれを伝え加配まではいかないですが、常に気にかけてもらっていました。年中になり、考え始めた就学問題年中にあがり半年位が過ぎたころ、小学校はどこに進むべきか本格的に悩み始めました。丁度そのころ、発達の遅れが気になり受けた検査で、軽度の知的障害があることも分かりました。なんとかみんなと一緒に過ごせているから通常学級で特別支援教室を利用すれば大丈夫?でも知的障害があるなら知的の支援学級の方が手厚く見てもらえるかも?地元の通常学級に通うなら家から5分の小学校に通えば良いのですが、特別支援学級に通うとなると家からバスに乗って通わなければなりません。送り迎えはもちろん私…。当時私は特別支援学級のある小学校と真逆の方向にある会社に勤めていたので、もし息子が特別支援学級に通うことになったら送迎のために会社を辞めなければならなく、この部分でもかなり悩みました。年長に上ってすぐに就学相談へ私の住んでいる自治体では、就学相談は年長にあがる年の4月1日から電話で受付を開始していました。もちろん私は4月に入ってすぐに電話。就学相談へ行きました。就学相談にて担当の相談員さんとの面談、医師やこども園の先生からの聞き取り、相談表の膨大な質問への記入、相談を重ねるごとに息子の「今の状態」「できること、できないこと」が客観的に見られるようになっていきました。Upload By ユーザー体験談困り感の少ない息子、きっと通常学級でもなんとなくトラブルなく過ごしていけるかもしれません。でも、トラブルがない訳ではなく、それは「トラブルに気づかない」だけなのかも…。低学年のころは大丈夫でも高学年になったら勉強も難しくなるし、人間関係も複雑になってきます。そのときに通常学級で息子が楽しく過ごせるのか…夫とも相談し、私たち家族は就学先を「特別支援学級」へと決めました。ママ友に伝えてみると…「全然大丈夫そうなのに!」と言われ息子には加配もついていなかったこともあり、それまで息子の障害をこども園のママ友に伝えることはありませんでした。普段の園での様子や「こんなことがあって困った~」程度は話していましたが、軽度知的障害があることまではなかなか話せなかったのです。こども園の同級生たちは同じ近所の小学校に通う予定の子が半数近く。周りのママ友たちも何も疑わずに息子も近所の小学校の通常学級に通うと思っていたと思います。10月を過ぎると就学の話題も増えてきて、「小学校は〇〇小(近所の小学校)だよね?と聞かれたとき「いや、実は…」と特別支援学級のある別の小学校へ行くことを伝えました。「えっ!?全然通常学級でも大丈夫そうなのに!」「〇〇くん(息子)はしっかりしてるし大丈夫じゃない?」「〇〇くんとうちの子、仲がよかったから残念だよ~」などとママ友たちは言いました。(もちろんコメントしづらくこのように言ったのもあるかとは思います)確かに目立ったトラブルもなく、送り迎えのときにお友達と仲良く遊んでいる様子だけを見ていたらそう思うかもしれません。でもほかの部分では確実に遅れがあるし、軽度知的障害の診断もおりているし…しかし、そのようにママ友たちに言われると「私の選択、本当に良かったんだろうか…」「息子もこども園で一緒のお友達と小学校に行った方が楽しいのではないのか」とモヤモヤとした気持ちを抱えてしまいました。Upload By ユーザー体験談特別支援学級に通ってみてそして4月。特別支援学級に息子は入学しました。結論から言うと…ここに入学して良かったです!やはり先生が気にかけてくれたこども園とは違い、小学校の通常学級は一クラスの人数も多く、集団行動が必要になってきます。まだまだ一斉指示が通りにくい息子。少人数の特別支援学級で合理的配慮を受けながら授業を受けるのが合っているようです。本人も安心して学べるのか、今のところ行き渋りもなく毎日楽しく通っています。Upload By ユーザー体験談私は…結局前の仕事は辞めて、送り迎えができる時間に余裕のある仕事に転職しました。ですが、今の息子の様子を見てこの選択でよかったとしみじみと感じています。いろいろと葛藤はありましたし、今後も中学・高校と悩むことはたくさんあると思いますが、息子が少しでも安心して学校生活を送れるようにみんなで考えて行きたいと思います。イラスト/keikoエピソード参考/ちくわ(監修:三木先生より)特別支援を受けるかどうかを決断するのは、とても悩みますよね。書いてらっしゃるように、クラスの適性だけではなく、家から通いやすいのか、家族への影響はあるのかなど、考えれば考えるほど気になるポイントがたくさん出てきます。しっかり準備をしてしっかり悩んで結論を出されたからこそ、良い環境に巡りあえたのではないでしょうか。楽しい学校生活が送れることをお祈りしています!
2022年10月08日息子の担当はゆったりとした大ベテラン先生Upload By カタバミまちゃがほぼ2歳半のとき、発達センターで臨床心理士に検査をされたあとで小児科の先生の部屋に入り、いよいよ診察されることになりました。担当の先生はお年を召した大ベテランで優しそうな方でした。息子の日ごろの家での様子を聞かれました。発達検査が10時からで診察室に入ったのはもうお昼に近かったので、息子が空腹でぐずらないか心配でしたが、入ってすぐに大人しく部屋の隅にあったブロックで遊び始めてくれました。診察の最後、まちゃの行動にベテラン先生は⁉︎Upload By カタバミ初めに違和感を抱いたのは「息子さんはスイッチが大好きでしょ」という質問でした。エレベーターのボタンなどが好きなお子さんも多いと思いますが、まちゃそんなことはありません。「そんなことはありません」と正直に答えましたが、そのあと何度も同じことを聞かれました。次に「偏食でしょ。野菜とか苦手だよね」これにも「柔らかく煮れば白菜などはよく食べます」と正直に答えました。「話しても喃語だよね」という先生の問いに「たまにですが単語が出ます」と答える私。私はとにかく正直にまちゃの現状を伝えてしっかり診察してほしかったのです。そのあとおもちゃに飽きたまちゃがやって来て、先生の胸ポケットにたくさんささっていたペンを欲しがり、手を伸ばしました。先生は「これは尖っていて危ないよ」と言ってペンを手で覆い、まちゃが「うわ〜ん」と言いながらゴロンと横になった瞬間「あ!これは癇癪ですよ!これは癇癪です!」と言いながら卓上のメモに何かを書き加えました。私は(これが癇癪?空腹で機嫌が悪いときに欲しい物が手に入らないから怒ったんじゃないの?)と不思議に思いました。ベテラン先生から下された診断名。モヤモヤは増すばかりUpload By カタバミ先生は診察の最後に卓上で書いていたメモ用紙にご自身の判子を押して私に渡しました。そこには「言葉の遅れ(喃語のレベル)、癇癪、自分の興味に向かって動く、マイペース、視線合いにくい、偏食、睡眠障害、発達が横ばい → 自閉スペクトラム症 → 療育」と書いてあり、そのあと幼い子への薬の飲ませ方の工夫について詳しく説明されました。まちゃが治るならと私も必死で聞きました。帰宅後は大ショックでぼんやりしていましたが、処方された薬を言われた通りチョコレートの中に埋めて固めて飲ませました。夫に今日の診察でどう感じたか聞いてみたところ「「君と先生は本当に話がかみ合っていなかったね。俺も口には出さなかったけど、先生の話にはあまり同意できなかったな」と言い、私は先生の質問はまちゃに当てはまらないことも多かったと話しました。担当の先生へのモヤモヤは何日経っても消えませんでした。後日、相談すると…お子さんを発達センターに通わせていた先輩ママに相談したところ、希望すれば担当の先生をかえてもらえることと、ベテラン先生はとてもクセが強いので好き嫌いが分かれることを教えてもらえました。そこで検査をしてくれた臨床心理士に相談し、先生はかえてもらえることになりました。後日、まちゃが発達センターに行くことをすすめてくれた育児支援センターで「カタバミさんごめんなさい。まちゃ君の担当の先生のことを詳しくしらないのにすすめてしまいました」と謝られました。そのときに聞いたほかのママたちが先生に言われたことは私が言われたことよりもさらに驚く内容でした。新たに担当していただいた先生は私への質問も説明も丁寧でまちゃへの投薬はなくなり、私も納得した上で改めて療育が始まりました。Upload By カタバミ最初に診察してくれたベテラン先生の診断通り、まちゃには自閉スペクトラム症がありました。でもこの経験から私は、どんなに肩書きのある方でも、親が違和感や苦痛を覚えるなら"子どもの為に"と我慢して1人で抱え込まずに、いろいろな方の意見を聞いてほかの先生を探しても良いのではないかとお伝えしたいです。執筆/カタバミ(監修:藤井先生より)今後のまちゃさんの成長をみていく上で、カタバミさんが1人にならずに、周りに相談していくことは大事ですね。医師に対して感じた違和感を無視せずに、行動されたことはとても良かったと思います。これからも、医師とだけでなく、療育スタッフ、園の先生、学校の先生など、今後いろいろな方と相談することがあるかと思いますが、困ったときには、ほかの人の意見を聞くことで、別の視点を持つことができることもありますね。
2022年10月06日脳には「発達黄金期」があるのをご存じですか?じつは、脳の発達は能力によってピーク期が異なります。親がその発達黄金期に合わせたアプローチをすることで、お子さまの脳はどんどん刺激されていくようです。脳医学者で東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之氏は、脳の成長段階の黄金期をふまえた子育て法を「脳育て」と呼んでいます。今回は、脳の発達黄金期について考えてみましょう。脳の発達ピーク1:オキシトシンの分泌量は1歳頃に “ほぼ決まる”!?脳の発達ピーク2:「おりこうさん脳」が育つのは1~18歳脳の発達ピーク3:指先は第二の脳!「巧緻性」は3~5歳に高める脳の発達ピーク4:脳の成長の原動力「知的好奇心」は3〜6歳頃に伸ばす!脳の発達ピーク5:絶対音感は4~5歳まで。聴覚は8歳までに完成する脳の発達ピーク6:運動神経が伸びる黄金期は12歳頃まで!?脳の発達ピーク7:13歳までに「脳をつくる栄養素」をしっかりとろう!脳の発達ピーク1:オキシトシンの分泌量は1歳頃に “ほぼ決まる”!?身体心理学者で桜美林大学教授の山口創氏の研究から、「スキンシップが子どもの脳を育てる」ということがわかっています。スキンシップをすると、脳内にはオキシトシンというホルモンが分泌されます。「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、ストレスへの反応をやわらげ、情緒を安定させる働きがあるのです。たとえば、子どもが不安を感じているとき、親が抱きしめてあげると、泣き止んだり、安心した様子を見せたりすることがあると思います。これはオキシトシンが分泌されている証拠です。山口氏は、幼児期に「添い寝などを通じて肌にたくさん触れられて育った子どもは、成長してからも情緒が安定しており、社交性が高く、他人を攻撃する傾向も低い」としています。一方、スキンシップ不足で育った子どもは、「人間不信や自閉的傾向が高く、自尊感情も低い」のだそう……。そしてなんと、オキシトシンの分泌量は脳の発達が著しい1歳頃に “ほぼ決まる” とのこと。でも、ご心配なく!山口氏は、1歳を過ぎても、スキンシップの効果は大いにあると話していますよ。「ハグをする」「手をつなぐ」など、子どもとしっかりスキンシップをとるよう心がけましょう。脳の発達ピーク2:「おりこうさん脳」が育つのは1~18歳青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹氏は、日本人の睡眠時間は世界的に短いとし、「寝不足の子どもは前頭葉の働きが低下する」と述べています。前頭葉は、思考、感情、コミュニケーションなど社会性に関わる脳の部位です。そこが未発達だと、集中力・意欲の低下、認知能力の遅れ、イライラしやすい、落ち着きがない、周囲に対して攻撃的になるなどの弊害があるのだそう。睡眠の専門家で文教大学教授・成田奈緒子氏も、慢性的な睡眠不足が子どもたちの脳に悪影響を及ぼしていると危惧するひとり。子どもの脳をきちんと育むために、親は以下の「脳の発達3段階」と、それぞれの「発達ピーク」を知っておいたほうがいいと話します。第1段階(発達ピーク→0~5歳頃):【体の脳(脳幹、間脳、小脳)】「起きる、寝る、食べる、体を動かす」といった、生きていくために最低限必要な機能第2段階(発達ピーク→1~18歳頃):【おりこうさん脳(大脳新皮質)】「言葉、微細運動、知識、スポーツ」などをつかさどる第3段階(発達ピーク→10歳以降):【心の脳(主に前頭葉)】「感情のコントロール、思考、判断」などの機能 そして一番重要なこととして成田氏は、「これらの発達は1~3の順番でしか進まない」と断言しています。どういうことかと言うと、「体の脳」が育たないと「おりこうさん脳」は育たず、「おりこうさん脳」が育たないと「心の脳」が育たないので、結果的に自分の感情をコントロールして生きていくことができなくなってしまうのです。まずは、「体の脳」を育てるため、5歳までの睡眠には特に気を使いたいですね。脳の発達ピーク3:指先は第二の脳!「巧緻性」は3~5歳に高める巧緻性とは、指先の器用さ。ハサミやヒモなどを使った工作がテストに取り入れられるなど、小学校受験でも重要視されている能力です。長年、指と脳の関係性を研究している医学博士の長谷川嘉哉氏も「指先は第二の脳」と言うほど、巧緻性は脳と密接な関わりがあります。前出の瀧氏によると、巧緻性は脳の頭頂葉の運動野がつかさどっており、その部分の発達のピークは3~5歳。積み木やお絵かき、楽器の演奏などの指先を使う遊びが、巧緻性の発達に効果的とされています。また、巧緻性が育まれ、指先を自由に使えるようになると、自分でできることが増えるため、なんと学習効果にも好影響を及ぼすとのこと。埼玉大学教育学部教授・川端博子氏の調査で、巧緻性テストで上位だった子どもは、学力テストの結果でも上位だったことがわかったのです。脳の発達ピークに向けて、どんどん指先を鍛えていきましょう!脳の発達ピーク4:脳の成長の原動力「知的好奇心」は3〜6歳頃に伸ばす!「知的好奇心は、脳の成長の原動力になる」と明言するのは、瀧氏。知的好奇心が高いとポジティブな感情になりやすく、そのポジティブな感情は、記憶力や集中力を高め、考えたり判断したりする情報処理能力をも向上させるそうなのです。たしかに、イヤイヤやったことよりも、ワクワクしながら取り組んだことのほうが、はかどるし、記憶に残りますよね。では、子どもの知的好奇心を伸ばす最適な時期はいつなのでしょう?瀧氏によると「3〜6歳頃の未就学時期は知的好奇心を伸ばすのに最適」とのこと。そして嬉しいことに、6歳を過ぎてしまったとしても、刺激を与え続ければ人間の脳は成長すると、瀧氏は言います。何歳になっても、大人であっても、脳は成長するのです。ですから、子どもの知的好奇心を伸ばしたいのであれば、親御さん自身も「大人だからできない」と思わずに、子どもと一緒にさまざまな活動にチャレンジしてみてくださいね。脳の発達ピーク5:絶対音感は4~5歳まで。聴覚は8歳までに完成する日本こども音楽教育協会によると、絶対音感とは「音を聞いて即時にドレミの高さが判別できる力」のこと。絶対音感がある人は、生活音も正確に言い当てられるのだそう。すごいですね。絶対音感は、脳の発達を促すことがわかっています。ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の研究で、絶対音感をもつ人と、絶対音感をもたない人の脳を比較したところ、絶対音感がある人のほうが、左脳にある側頭平面(言語の理解や数学的能力に深く関係していると考えられている箇所)が約2倍大きく発達していたのです。「先天的に絶対音感がある人は20万人に1人」と日本こども音楽教育協会ウェブサイトにはありますが、幼少期に適切なトレーニングをすれば誰でも絶対音感を身につけることができるようです。脳科学者で『ピアニストの脳を科学する』著者の古屋晋一氏は、特に4~5歳の時期に絶対音感は獲得しやすいと述べています。8歳までに人間の聴覚は完成してしまうようなので、音感トレーニングはできるだけ早く始めたほうがよさそうです。脳の発達ピーク6:運動神経が伸びる黄金期は12歳頃まで!?「運動神経とは運動の指令が脳から筋肉まで送られるときの “情報の通り道” 」と定義するのは、日本女子体育大学学長の深代千之氏。そしてなんと、運動神経の伝導速度に生まれつきの個人差はないと話します。大切なのは、幼少期の「運動環境」。多種多様な動きを経験すればするほど、脳の神経回路が発達して運動神経がよくなるのだそう。また深代氏は、運動神経を伸ばすには「最適な時期」があるとしています。3~5歳頃の「プレゴールデンエイジ」と6~8歳の「ゴールデンエイジ」です。しかし、ゴールデンエイジ期の定義には、専門家によってばらつきがあるようです。『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』著者・髙橋宏文氏は、プレゴールデンエイジを5~9歳、ゴールデンエイジを9~12歳としています。とはいえ、どの専門家も「12歳までに神経系の発達が完了する」としていることから、運動神経を伸ばすには、12歳までの運動経験が大切だと言えるでしょう。■以下の記事で【プレゴールデンエイジ期】【ゴールデンエイジ期】におすすめの運動遊びを詳しく紹介しています!↓↓↓『子どもの運動能力が上がる!ゴールデンエイジとプレゴールデンエイジの過ごし方』『「運動神経のいい子」特徴6つ。12歳までに運動神経はもっと伸ばせる!』ゴールデンエイジは一生に一度の「運動神経が伸びる黄金期」。この時期は、動きがすぐ身につき、覚えた動作は一生忘れないそう。貴重な成長期をしっかり活かして、運動経験を積ませてあげたいですね。脳の発達ピーク7:13歳までに「脳をつくる栄養素」をしっかりとろう!「育脳レシピ」を開発する管理栄養士・小山浩子氏は、遺伝子の影響が表れる13歳頃までに “脳をつくる・働かせる・動かす栄養素” をしっかりとることを強くすすめています。脳も体の一部です。小山氏の言うように、脳が食事の影響を受けるのは当然ですね。では、 “脳をつくる・働かせる・動かす栄養素” を摂取するために、子どもには何を食べさせたらよいのでしょう?小山氏がすすめる食材を紹介します。「脳をつくる」栄養素:DHADHAは脳にとっての最重要栄養素。小山氏が「DHAの摂取量が十分な子どもとそうでない子どもでは、脳の神経回路の発達に違いがある」と言うほどです。また、DHAは体のなかでつくることができません。サバやイワシなどの青魚、サバの水煮缶やツナ缶、魚肉ソーセージを積極的に摂取しましょう。アマニ油やエゴマ油にもDHAは含まれているので、ドレッシング代わりに使うのも◎ですよ。「脳を働かせる」栄養素:レシチン小山氏によると、IQが高い子どもの脳には、脳を「働かせる」アセチルコリンという神経伝達物質が多いそう。このアセチルコリンの材料となるのが、卵や大豆に含まれる栄養素のレシチン。卵は「子どもには1日1個食べさせてほしい!」と小山氏が言うほどなので、毎日食べさせてあげましょう。豆腐や油揚げ、枝豆などの大豆製品が苦手なお子さまには、ヨーグルトやトーストにきな粉をプラスするのもひとつの手です。「脳を動かす」栄養素:炭水化物炭水化物(ブドウ糖)は脳を「動かす」ガソリンです。小山氏によると、「脳が消費するエネルギーは、体全体の消費量のなんと20%」とのこと。脳のために、エネルギーとなる炭水化物をしっかり食べることが大切です。特にエネルギーが必要となる朝は、ご飯やパン、麺類などをきちんと食べさせてください。カリウムや食物繊維を含む、野菜や果物、ヨーグルトと一緒に食べましょう。***能力ごとの発達ピークを意識すると、子どもの脳はもっと発達することでしょう。お子さまが18歳以下であれば、まだまだ能力が伸びる可能性がありますよ!(参考)瀧靖之(2016),『「賢い子」に育てる究極のコツ』, 文響社.クレア・ルウェリントン 著, ヘイリー・サイラッド 著, 上田玲子 監修, 須川綾子 翻訳(2019), 『人生で一番大事な最初の1000日の食事』, ダイヤモンド社.深代千之(2018),『子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル』, カンゼン.高橋宏文(2018),『子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖』, メディア・パル.九州電力 キレイライフプラス|子どもを伸ばす「脳育て」新興出版社|頭のよさにつながる幼児期の遊ばせ方ふとん・寝具の西川|「寝る子は育つ」は本当︎睡眠専門医に聞く「眠りと発育・成績」の関係性致知出版社|「スキンシップ」が子どもの脳と心を育てるー山口創が語る最新科学が明らかにした子育のヒントSony life|特集「子ども脳も大人脳も『好奇心』で成長する脳に効く習い事」ベネッセ たまひよ|3~6才ごろの未就学時期が「知的好奇心」を伸ばすのに最適!その理由と上手な伸ばし方は【脳科学者】ベネッセ教育情報サイト|脳の成長の原動力とは?保護者に何ができる?ヤマハ音楽教室|久保純子さんがナビゲート 4・5歳が分かれ道。幼児期に音楽を始めると獲得できる様々な能力とは?NKO 一般社団法人 日本こども音楽教育協会|プログラムについてSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳をきちんと育てる「正しい睡眠」STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳は“親の愛情”と“食事”で育つ!「育脳」に効く食材の選びかたSTUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“パン&〇〇”で最高の朝食になる!脳が育つ食べ合わせ「5つの黄金ルール」アイ・シー・イー幼児教室|【無料動画配信】小学校受験対策講座「制作」「生活巧緻性」J-STAGE|小学生の手指の巧緻性に関する研究―遊びと学習面からの一考察―
2022年09月29日年少さんのころと比べて減った、娘の自由すぎる行動年中さんになった娘は激しい登園拒否もなくなり、私自身朝が憂うつになることはなくなりました。とはいえ、毎朝「幼稚園やだ!」と床にゴロゴロ転がり、結んだ髪がぐちゃぐちゃになることは日常茶飯事。それでも玄関や教室の前で泣き喚くことは一切なくなりました。あるとき娘はこう話していました。Upload By とまぱんUpload By とまぱん年中さんになって床にゴロゴロしながら自由に歌ってはいけないと気づいたのか、集団生活によってとまちゃんの自由さが控えめになったのかは分かりませんが、今は大人しいそう。以前は娘が自由な行動をしていると、なるべく目立たないようにしてくれ!と祈っていましたが、それが減った今、安堵と同時に少し寂しさも感じ、複雑な気持ちになりました(笑)。被害妄想が強い?娘の考え方に新たな不安が年中さんになってたくさん成長した娘ですが、新たに少し気になることが出てきました。それは娘の被害妄想。とある遊び場のボールプールで子どもが何人か遊んでいました。娘もボールプールに入ろうとし...。Upload By とまぱんUpload By とまぱんとまちゃんが入ったタイミングで、ほかの子たちは別の遊び場へ行ってしまいました。娘が来たから行ってしまったのではなく、たまたまだったのですがとまちゃんは「なんでみんな行っちゃったのかな」と不安そうな顔になりました。恐らく娘は「みんな自分のことが嫌いでどこかに行ってしまったんだ」と思ったのでしょう。その後もそのような場面が何度かあり、娘はその都度不安になっていました。発達障害グレーゾーンの子どもは状況を読む力が弱い?以前読んだ本に、境界知能や発達障害グレーゾーンの子どもは「周囲の状況を読み取る力が弱い傾向がある」と書かれていて、たしかに当てはまるかもしれないと思いました。例えば先ほどのとまちゃんの場合。たまたまとまちゃんが来たタイミングで、みんながほかの遊び場へ行っただけなのですが、とまちゃんは自分が来たからみんな逃げたと思い込んでしまいました。状況を読み取る力が弱い傾向があるとまちゃんは「ほかのお友達はボールプールでたくさん遊んだので、次は別の遊び場へ行った」など行ってしまったほかの理由が考えられなかったのでしょう。「みんな私が嫌いなんだ」という一択しか考えられていませんでした。とはいえ、まだ4歳。状況を読み取るのはまだまだ難しいのかもしれません。むしろ大人な私でさえもついつい被害妄想をしてしまいます。幼稚園で挨拶を交わすお母さんや先生たち。私は嫌われてるのでは、と度々思ってしまうのでとまちゃんの考え方は全く他人事ではなく(笑)。娘の発達について勉強していると、よく「あれ、私もグレーゾーンかな」と思うことが多々あります。状況を読み取る力を育むには?本にはアドバイスが書かれていました。何かあったときには「自分の勘違いかもしれない」ともっと考える習慣をつけさせるといいそうです。お友達が行ってしまったのはほかに理由があったのでは、と一緒に考えてあげる。もしくは日記などに出来事や気持ちを書かせて確認させるとよいそう。書かせるのはまだ難しいので、今度娘が偏った考えをしたときは一緒にほかの理由を考えてあげようと思いました。そして、自分自身が被害妄想をしてしまったときは文に書いて見ようと思います(笑)。Upload By とまぱん参考:境界知能とグレーゾーンの子どもたち|宮口 幸治 (著), 作画 佐々木昭后(著)執筆/とまぱん(監修:初川先生より)とまちゃんが被害的に受け取ってしまう傾向を感じ取り、そこに心配されているのですね。とまちゃんはまだ4歳ですので、周囲の状況を客観的に理解することに難しさがある段階ではあります。ただ、傾向として、“自分が嫌われているから”が第一選択肢に上がりやすいのでしょう。とまぱんさんが試みようとされているように、違う理由を考えてみることは、視野を広げ、さまざまな可能性を案出する力を育むという意味で、とても良いはたらきかけです。とはいえ、まだまだ幼いので、とまちゃんがほかの選択肢を思い浮かべることが難しいとは思います。まずは大人の側が、「こうかもしれないし、こっちかもしれない」とさまざまな可能性を教えてあげるつもりで案出のお手伝いをするのが良いでしょう。長期的な視点に立つと、大人になればなるほど、対人関係の状況は複雑化し、相手がどんな思いで何をしているかは相手に聞いてみないと分からない(どれほど考えても、こちら側からは分からない)ことも多くなってきます。そういう意味で、自分がつらくなりすぎない捉え方というものを自分で案出できることは大切なことです。そのための準備としても、「そうとは限らないよ、例えばこんなこともあるかも!」とさまざまな可能性を教えてあげてください。
2022年09月23日「娘は話せるようにならないの?」娘に先天性の重度障害があると宣告されて「一生意味のある言葉を話せるようにはならないでしょう」「歩けるようになるかも分かりません」大学病院で、娘に先天性の重度障害があると宣告されたのは、2歳になる少し前のことでした。突然の診断に、母である私はなかなか受け入れることができませんでした。そのころの娘は、地域の保育園に通っていました。障害が分かったころに思ったことの一つに「運動会に出るのが嫌だな」ということがありました。娘の通っていた保育園は、一人ひとりに見せ場をつくるとても素敵な運動会を行う園でした。それゆえに、上手く歩けるようになるかも分からない娘が、たくさんの保護者の前で見世物にされるような気持ちになってしまったからです。Upload By ユーザー体験談保育園でのあたたかい対応。だんだんと心に変化がそんな否定的な気持ちになっていた私ですが、障害が分かったあとも、保育園で分け隔てなくあたたかく育てていただいている中で少しずつ思いが変わってきました。同じ疾患のお友達の中には「運動会に出ないでほしい」「遠足には連れていけない」と園から拒否されてしまうとか、幼稚園などでは「階段を一人で登れない子どもは受け入れられません」と入園自体拒否されてしまったという話しを聞くこともありましたが、娘の通っていた園は「どうすれば娘も一緒に参加できるか」を考えて遠足や宿泊学習の行き先も調整してくれました。例えば、園では幼児クラスになると山登りに行くのが恒例でしたが、山道を歩くのが難しい娘のことを考えて、ケーブルカーのある山に行き先を変えてくれたので、車いすでも参加できました。クラスのお友達とは山頂で待ち合わせて一緒にお弁当を食べたり散策ができました。睡眠障害があるので宿泊学習はいけないのではないか、と思っていたのですが「お母さんは付き添わないで大丈夫です」と断言され、安心して預けることができました。時には、担任の先生の何気ない「娘には無理だろう」という考えが前提の行動に対して、ほかの保護者が保護者会で問題提起をするなど…ママ友たちにも恵まれました。意味のある言葉は話せず喃語だけの娘に対し、仲良しのお友達は、娘が「ままままま」というと「ままままま」と逆模倣をしてくれ、なんだか楽しいらしく笑いあっていたりもしました。特別支援学校に入学後は、発語自体あまりしなくなってしまいましたので、保育園時代、逆模倣をしてくれるお友達に恵まれていたころが一番宇宙語を話していた気がします。Upload By ユーザー体験談数年前の気持ちが嘘のように。年長になった娘の運動会を見て娘の障害が分かって4年、年長さんの運動会のときは、数年前に「運動会に出したくない」と思っていたことが嘘のように楽しみにしている私がいました。リレーに出場するのは(歩行が安定しないので)難しい娘には、「白と赤のバトンを第1走者に渡す」係を与えてくれ、娘が渡したのを合図にリレーがスタートするという演出!年長組の徒競走は100メートル走のコーナーありのコースなのですが、娘は特別に50メートル走の直線コースにしてもらい、(一度自分の回は走り終えたあと)一緒に走りたいと言ってくれたクラスメート数名と走り(歩き)、一緒にゴール。観客の保護者からも園児からも盛大な拍手をもらい、ニコニコの娘の姿が輝いて見えました。Upload By ユーザー体験談現在の気持ちと支えになった園長先生の言葉今は、すっかり図太くなった私。障害が分かってすぐのいちばん落ち込んでいた時期に、たくさんの人が支えてくれ、一緒に育ててくれたからこそ、闇におちることなくすぐに浮上し、ゆっくりだけど愛しい娘の成長を味わえるようになったのだと思います。保育園の園長先生に言われた「一緒に育てていきたい」という言葉。勤務先の人事の人から言われた「私たちは〇〇さん(私)の応援団です」という言葉。そして、言葉だけでなく、行動でも実践し、支えてくれたこと。その恩に報いるよう、これからも前向きに、そして人に役立つことをしながら生きていきたいな、と日々思っています。Upload By ユーザー体験談イラスト/taekoエピソード参考/あっきー(監修:井上先生より)医師から診断を告げられたことはとてもショックだったと思います。しかし、園の先生方を中心にさまざまな配慮や工夫の中で子どもさんの可能性を引き出してくれたことがクラスメイトの関わり方にも周りの保護者たちにもそして何より親御さんたちに前向きな気持ちと勇気を与えてくれたのだと感じました。子どもの障害をどう捉えるかによって周りの人たちが大きく変わっていくことを実感されてこられたのだと思います。娘さんがクラスにおられたことが娘さん自身にも、そして周りの子どもたちにもお互いに大きな成長に繋がったのではないでしょうか。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは新たに「パートナー(夫婦関係)」「進学、受験」などを追加しました!その他「祖父母や親戚関係(帰省含)」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」「自傷」「学習」「不登校」なども引き続き募集中です。パートナーなどとの意見の相違、受験や進学での予期せぬトラブル、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年09月18日初めて発達検査を受けることになって…Pが初めて発達検査を受けたのは2歳のころでした。受給者証を取得するために、保健センターで新版K式発達検査を受けたのですが、初めての場所で初めての人と受ける検査は、Pにとってはハードルが高かったようでした。その日は検査をほとんどやろうともせず、測定不能で正確な数値を出すことができませんでした。そもそも、そのときはまだ2歳だったこともあり、この先の成長の可能性を考えると、初めての発達検査だけでは、Pの障害の程度を正確に把握することはできなかっただろうと思います。Upload By みん発達検査をまともに受けることができなかった。3歳、4歳のころは、まず検査を受けるまでが大変でした。初めての検査は保健センターで受けたのですが、その後は療育手帳を取得するときと更新するときには子ども家庭センターで、そしてそれ以外では療育園で担当の心理士さんが検査をしてくれていました。検査の度に毎回場所も人も変わるので、自閉スペクトラム症のあるPにとっては慣れない環境で長時間座って検査をすること自体が難しいものでした。そして検査を受ける度に数値は下がり、知的障害の程度は2〜3歳では軽度だったのですが、4〜5歳では中度になりました。最初は結果に落ち込むこともありましたが、徐々に結果に一喜一憂しなくなっていきました。私は「どうせPはまともに検査を受けることができない」と最初から諦め、いつからか発達検査をすること自体にあまり意味を感じなくなってしまっていました。Upload By みん発達検査をすることにあまり意味を感じなくなったけれど…でも、その考えが変わったのが、Pが6歳になって受けた療育園での最後の発達検査です。担当の心理士の先生が、Pがスムーズに検査を受けるためにはどのようにすれば良いのか?と考え、検査の前に検査の環境を整える準備をしてくれていました。そして、P自身も6歳になって、ある程度座れるようになり、視覚支援や順番も理解できるようになっていました。見通しが立つと検査に対して不安もなくなるのか?いつも以上にスムーズに検査を受けることができていました。Upload By みん発達検査は何のためにする必要があるのか?をやっと実感できた。このときの検査の結果はまた下がって重度知的障害となってしまったのですが、心理士の先生の工夫と、それに応えられるようになったPの成長がうれしくて、中度から重度になってしまったことよりも、やっと発達検査で正確な数値が出たと感じられたことが、とてもうれしかったです。幼いころに1回だけ検査を受けて、その検査結果の良し悪しで、わが子の発達の程度に必要以上に不安になったり、逆に安心してしまったりする場合があると聞きます。かつての私のように、発達検査の結果で落ち込んでしまう人もいるかもしれません。しかし、検査を1回や2回受けただけでは、その後の正確な発達の程度を知ることができないので、継続的に検査を受けていくことが必要だと思います。現在の子どもの発達を親が正しく把握することで、周りの人たちと共に「今の子どもにとってより良い支援へとつなげる」ということが大切なのではないでしょうか。発達検査を受ける意味がなかなか分からなかった私も、やっと発達検査の意味と大切さが分かるようになった気がします。執筆/みんUpload By みん(監修:井上先生より)幼児期の発達検査は変動が大きく、その日の体調や気分によっても変わってくると思います。最後に受けた検査場面のように、検査の進め方を視覚的な支援によって見通しをつけてもらうだけで、本人の不安は軽くなり、検査に集中できたと思います。検査結果は、苦手なところだけに注目するのではなく、できているところ、本人の中でも得意なところにも着目して、その能力を活かせるような活動を考えていくことで、自信もついてくると思います。
2022年09月16日大勢の中でいろいろな刺激を受けるけれど…親御さんや学校の先生と特別支援教育の話をしていると、「この子に通級指導教室や特別支援学級が合うのも分かりますが、通常学級で大勢の中に入ったほうが、いい刺激を受けるんじゃないですか」と言われることがあります。確かに大勢と交流すれば、いろいろな刺激を受けます。しかしその中にはプラスの刺激もあれば、マイナスの刺激もあります。発達障害のある子どもは、通常学級にいると「自分だけ、ほかの子たちと何かが違うぞ」という違和感を持つことがあります。通常学級では、同級生はだいたいみんなできているのに、自分だけうまくいかないという経験をすることがしばしばあるのです。そういう経験を刻々と積み重ねていくと、学年がある程度上がったときには、孤立した感覚を味わうようになります。集団に入って刺激を受けようとした結果、むしろ孤立感を増して、「どこにも居場所がない」と感じてしまう子どももいるわけです。通常学級で、発達障害のある子どもが同級生と同じ課題に頑張って食らいついて、ついていこうとするのは、間違っています。そうではなくて、親や先生が頑張って情報共有をして、その子が参加しやすい課題を用意するべきです。通常学級で十分に対応することが難しければ、特別支援教育の仕組みを活用して、子どもの居場所をしっかりと用意するべきでしょう。大人がやるべきことは、学習以前の段階で、子どもに無理な努力をさせることではないはずです。小学校で通常学級にいれば、確かに多くの子どもたちと交流できます。授業や行事などを通じて「いい思い出」をつくることもできるでしょう。しかし、大勢との交流には「いい刺激」もあれば、そうではない刺激もあります。発達障害のある子どもの場合、大勢の中ではマイナスの刺激を受けることも多いと感じています。「悪い思い出」ができて、それをずっと忘れられなくなる子どももいます。「通常学級にいればいい刺激」は幻想私は、「通常学級にいれば、いい刺激を受けられる」という考え方は、幻想だと思っています。親御さんや学校の先生が「面倒見のいい子もいるので、通常学級でも大丈夫ですよ」などと言うこともありますが、そのような考え方は甘いと思います。そんなふうに、同年代の友達に過度な期待を寄せてはいけません。小学校低学年くらいであれば、まだみんな無邪気ですから、同級生が困っていたら助けようとする子どもも多いです。しかし学年が上がり、子どもたちが思春期を迎えると、そのような場面は減っていきます。基本的には、思春期の子どもたちは、気の合う相手を選んでつき合うようになります。そのとき、個性的で目立つ子どもは、ほかの子どもたちから敬遠されることがあります。個性的な子どもは、みんなが成長していく過程で、グループの中で浮いてしまうことがあるのです。そのような状況になったとき、子どもはそこを「自分の居場所」だと感じられるでしょうか。大人は、子どもの同級生にサポートを期待するのではなく、自分たちで発達障害のある子どもをサポートする用意をしておく必要があります。子どもが受ける「いい刺激」についてもう少し言っておくと、私は、発達障害のある子どもが通常学級に参加したときに「いい刺激」を受けるのは、どちらかというと周りの子どもたちだと思っています。通常学級には、基本的に「学校の標準」をこなせる子どもたちが集まります。通常学級は平均的な子どもの集団になりやすいわけです。そこに発達障害のある子どもが参加して、ほかの子どもたちと違う部分が目立った場合には、発達障害のある子どもが刺激を受けるというよりは、むしろ通常学級のほかの子どもたちが「多様性」を実感しやすくなります。私は通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校の中でも子どもたちは「いい刺激」を受けていると思っています。発達障害のある子どもはマニアックな趣味を持っている場合も多いのですが、通常学級よりも通級指導教室や特別支援学級のような場のほうが、趣味の合う子が見つかりやすい場合もあります。上手な先生がそういうところに注目して、気の合う子どもを組み合わせてクラス分けをしていることもありました。そういう例をよく見ていたので、親御さんから「通常学級に入ったほうが、いい刺激を受けるのでは」と聞かれたときには、むしろ通級指導教室や特別支援学級のほうが「いい刺激」を受けて「いい仲間」ができることも多いという話をすることもあります。自分が納得できる選択肢を取るのが一番ただ、誰かにすすめられたことを渋々やってみたときには、それがうまくいっても失敗しても、すっきりしないことがあります。みなさんが、「小1の4月から特別支援教育を受ける」ということにいま一つ納得できないという場合には、ご自身が納得できる選択肢を取ってほしいと思います。お子さんが通う可能性のある学校や学級を、一緒に見学させてもらい、お子さんがどこに通いたいと思うかを確かめてみてもよいでしょう。「本田がそう書いていたから」というだけの理由で支援を受けることは、おすすめしません。そうではなく、基本的にはお子さん本人の意思を大切にしながら、本人がまだうまく判断できないところについては、親御さんがお子さんのために必要だと思うことを、納得して選ぶようにしてほしいと思います。
2022年09月11日一般社団法人チャレンジドLIFE(代表:畠中 直美、凸凹キャリアコンサルタント・ダイバーシティコンサルタント)は、発達障がい児を育てる母親2名で立ち上げた団体です。2022年9月11日、設立5周年を記念して、タレントのくわばたりえさんをゲストに迎えてのイベントを、グランフロント大阪にて開催します。イベント案内画像イベント詳細ページ: ◆開催趣旨「発達障がい」という言葉が広く知られるようになりましたが、その特性の多様さから、発達障がいは「見えづらい」「わかりにくい」という現状があります。(※1)学校や職場、様々な場所に発達障がいの人たちは存在します。発達障がいを「もっと知りたい、わかりたい」という想いを持つ人たちが集まり、タレントのくわばたりえさんと一緒に楽しく真剣に語り合うイベントを開催します。対話を通して、発達障がいを身近なものとしてとらえ、理解を深め、誰もがいきいきと暮らせる社会へ踏み出すきっかけとなることをめざします。(※1)社会における発達障がいへの認知や理解に関する全国調査(2021年チャレンジドLIFE実施による) 【イベント概要】名称 :もっと知りたい!わかりたい!くわばたりえさんと語る“発達障がい”~チャレンジドLIFE 5周年記念イベント~日時 :2022年9月11日(日)13:00~15:30会場 :Open Innovation Biotope“bee”(JR大阪駅直結 グランフロント大阪タワー A21階)参加者:発達障がい児の保護者、支援者、発達障がいに関心を持つ人 約30名主催 :一般社団法人チャレンジドLIFE協力 :株式会社オカムラ詳細ページURL ※本イベントは満席になりました。<プログラム(予定)>・チャレンジドLIFE 活動紹介対談 :くわばたりえさん&チャレンジドLIFE座談会:くわばたりえさんと参加者みんなでトークタイム、記念撮影 など※重要※新型コロナウイルス感染状況によって、オンライン開催に変更となる可能性がありますことをご了承ください。◆ゲスト くわばたりえさん(タレント)NHK Eテレの子育て情報番組「すくすく子育て」で2012年4月~2016年3月に司会を担当、子育てをテーマとするブログやYouTubeがママ世代に大人気のタレント、くわばたりえさんをゲストにお迎えします。昨年7月に計5回にわたり、くわばたりえさんのYouTubeチャンネル「くすくす子育てママトーク(※2)」にチャレンジドLIFE代表 畠中直美が出演し、発達障がいの子育てについて対談しました。この動画にあたたかい応援コメントが多数寄せられ、発達障がいについて関わりのなかった多くの視聴者に、発達障がいについて触れていただくきっかけとなりました。チャレンジドLIFE 5周年記念では、ぜひリアルでこのような場を作りたい!と考え、くわばたりえさんにゲストとして参加いただくことになりました。(※2)YouTube「くわばたのくすくす子育てママトーク」(2021年7月)<第1回>うちの子、発達が遅れてる? <第2回>発達障がいの診断が出たらどうする? <第3回>発達のこと、誰にどう伝える? <第4回>発達障がいの子の学校生活は? <第5回>発達障がいの子の将来は? YouTube「くすくす子育てママトーク」出演(2021年7月)◆会場 Open Innovation Biotope“bee”についてOpen Innovation Biotope“bee”は、「人を想い、場を創る。」をミッションに掲げる(株)オカムラの「共創空間」です。JR大阪駅直結、グランフロント大阪内とアクセス便利!オフィス&空間プロデュースのプロであるオカムラさんならではの、おしゃれで明るく、ワクワクが広がる空間です。◆主催団体について一般社団法人チャレンジドLIFEは、発達障がい児を育てる母親2名で立ち上げた団体です。発達障がい児を育てる中で工夫してきたことは、みんながより社会を作るために活かせる!という信念のもと、「発達障がいの子と家族に笑顔を!」をモットーに、情報発信や啓蒙活動、企業とのコラボレーションに取り組んでいます。<法人概要>商号 : 一般社団法人チャレンジドLIFE(2017年9月設立、滋賀県草津市)代表者 : 畠中 直美事業内容: (1)発達障がいに関するワークショップ、セミナー、情報発信(2)発達障がいの目線から、多くの人の生きやすさにつながる商品・サービス開発ホームページ: Instagram : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年09月05日重度の知的障害がある娘は水が大好き!ある冬の日…重度知的障害がある娘には「水が大好き」という特性があります。水が好きすぎて水を見ると引き寄せられていってしまうけれど、危険の予知が難しいので、溺れてしまう事故にも気をつけなくてはいけません。Upload By ユーザー体験談まだ娘が3歳ぐらいだった、冬のある日のことです。そのころとても忙しい仕事に就いていた私は、帰りが深夜になってしまいました。その日は夫に子守を頼んでいました。午前0時過ぎ、自宅のドアをそっと開けると、ただならぬ気配を感じました…。わが家は玄関をあけると階段があり、2階の廊下に続いています。その廊下に、人の気配が…!?Upload By ユーザー体験談なんとそこにはずぶ濡れの娘が…!娘にはかなりの睡眠障害もあるので、おそらくうまく寝つけなかったのでしょう。パパもきょうだいも寝てしまい、一人で起きていた娘はつまらなくなって、大好きな水があるトイレに行ってしまったのです。そして、大好きなタブレットと大好きな水のコラボでうれしくなってしまったのでしょう。頭をトイレに突っ込んでみたり、タブレットを水に浸けて遊んでみたりしたのだろうと思います。Upload By ユーザー体験談身体が冷え切っていた娘。申し訳ない気持ちでいっぱいに真冬の夜中です。きっと1時間以上水遊びをしていただろう娘の体は冷え切っていました。急いで風呂場に連れていき、熱いシャワーをかけてよく洗いました。そして、「事故にならなくてほんとうによかった」「早く帰ってこられなくてごめんね」と娘に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。夫に翌朝その出来事を話したらびっくり。まったく気づかなかったそうです…。Upload By ユーザー体験談もうこのようなことを起こさないように…それ以来、自信をなくした夫は娘を夜見てくれることはなくなってしまいました(頑張っても睡魔に負けて、娘より先に寝てしまうので)。私はその後、深夜残業にならない仕事に転職をしました。そして家を建てることになったときは、もう絶対事故が起きないように!と、鍵も動線も工夫した、安全対策を考え抜いた設計にこだわったのは言うまでもありません。イラスト/SAKURAエピソード参考/あっきー(監修:三木先生より)気をつけていても、思いがけない事故は起こってしまうものです。鍵や動線を工夫されるなど、システム面を整えることも重要ですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年09月04日悩ましい…学校・学級選び親御さんと学校・学級の選び方について話をしていると、「通常学級にするか、通級指導教室や特別支援学級にするかを迷っています」と言われることがよくあります。小学校入学前に受ける就学相談で「通級指導教室や特別支援学級が適当」という判断が出た場合に、決断に悩む人が非常に多いのです。判断は難しいのですが、私は基本的に、発達障害・知的障害のあるお子さんは、特別支援学校・特別支援学級・通級指導教室といった「特別な場」を利用したほうがよいと思っています。学校・学級選びについては、「一人ひとりの教育的ニーズ」によって、次のように大きく4タイプに分けられます。1.特別支援学校障害のある子どもを対象として、学習面・生活面の困難の解消を目指した教育が実施されている学校。一般の学校とは別に設置されていて、多くは小学部から高等部まであります(一部、幼稚部も設置されています)。一般の学校とは教育課程が異なり、生活面の学習が充実しています。2.特別支援学級(支援級)一般の小・中学校の中に設置されている学級。一般的に「支援級」とも呼ばれます。特別支援学校と同様に、障害のある子に対して学習面・生活面の教育が行われています。特別支援学級では、在籍している子どもが通常学級の授業に交流という形で参加することもあります。3.通級指導教室(通級)一般の小学校や中学校、高校の中に設置されている教室。一般的に「通級」とも呼ばれます。通級指導教室は、通常学級に在籍している子どもが一定時間利用する教室です。子どもは普段は通常学級で授業を受け、週に数時間程度、通級指導教室に通います。通級では学習面・生活面のさまざまな課題の中で、本人が個別の指導を必要としている部分の教育が実施されます。4.通常学級(通常級、一般級)一般の学校に設置されている通常の学級です。一般的に「通常級」「一般級」などとも呼ばれます。通常学級でも、子どもの障害に配慮した支援が行われています。ただし、通常学級は子どもの人数が多いため、特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室などの少人数教育に比べると、支援は少なくなりがちです。「小1の4月」から支援を受けるのがいいと思う理由通級指導教室でも特別支援学級、特別支援学校、いずれかの形で、個別の支援を受けられるようにしておくことをおすすめします。なぜなら、支援の選択肢を増やしておくことが、子どもにとって「保険」になるからです。こうした場を利用しないという判断をする場合は、通常学級の中でどのような合理的配慮がしてもらえるかを確かめておきましょう。親御さんや学校の先生の中には、「最初は特別な配慮をせずに通常学級に通ってみて、支援が足りないと感じたら、通級指導教室や特別支援学級を検討すればよいのでは」と考える人もいます。そのように対応することもできるのですが、私はおすすめしていません。理由は2つあります。1.子どもの自己肯定感を損なう可能性があるまず一つは、子どもに一度失敗させてから環境を調整する方法では、「子どもの自己肯定感を損なう」ということがあります。あとから検討するのでは遅いということです。発達障害のある子どもの中には記憶力が強く、つらい体験を鮮明に覚えてしまう子どももいます。そういう子どもにとっては、小1のときの挫折がトラウマ体験のようになってしまうこともあります。子どもにわざわざトラウマ体験を植えつけるようなことは、避けたほうがよいと考えます。2.特別な場の調整は簡単ではないそしてもう一つの理由は、「特別な場の調整は簡単ではない」ということです。通常学級に通わせてから、やはり難しいと判断した場合、年度の途中で特別な場の利用を検討することになります。しかし学校側は、年度始めにスタッフの配置を決めています(通級指導教室には「児童13人に先生1人」、特別支援学級には「児童8人に先生1人」など)。いまは各地の学校が人員不足に悩んでいることもあり、子どもに対して先生の人数がギリギリというケースも多いです。そのため、先生の人数が足りなくて、すぐには支援を受けられないという場合もあるのです。早く支援を受けた子どもは「その後」の社会適応がよい傾向にある発達障害や知的障害の専門家の間では、何十年も前から「教育的な支援を受けた人のほうが、社会に出たときの適応がよい」と言われています。子どもたちを見ると、小学校から特別支援学校や特別支援学級に通って支援を受けていた子どもは、身のまわりのことなどを行う生活スキルが高いことが多いです。着替え、片づけ、掃除、家事などを自分なりのやり方で、一人でできたりします。これは、特別な場での教育によって、その子どもに合った方法で身辺自立が身につくように学べているからでしょう。それに対して、小・中学校ともに通常学級だけで過ごしてきた子どもには、生活スキルが十分に身についていない子どもが多い印象があります。勉強はある程度してきているけれど、生活に即した知識やスキルが十分ではないという場合が多いのです。また、メンタルヘルスが損なわれていて、自己肯定感が低いという子どもも見られます。子どものその後をどう考えるかという二択特別支援教育を受けるかどうかという二択は、子どものその後をどう考えるかという二択でもあると、私は思っています。きつい言い方になってしまいますが、それは次のような二択です。1.小学校で特別扱いせず、たくさんの友達の中に入っていい思い出をつくらせたいと親が願い、その代わりに、子どもはその後の人生で生活する力をうまく身につけられず、つらい思いをする可能性がある。2.小学校で特別な教育の場を確保し、将来、社会人として地域でしっかり生活できるようにしていく。子どもの学校生活の「その後」を見越して、社会に出ていくための土台づくりができる環境を選ぶのか。それとも、とにかく学校生活を標準的に送っていけるようにするのか。そのどちらを選ぶのが、子どもの長い人生にとってよい選択になるのかを、考えてほしいと思います。
2022年09月04日心の中に常にある悲しみ40代となった今、数は少ないですが理解者もでき、幸せに暮らしている私。それでも根底には常に、「私は絶対的なマイノリティだ」「自分が自分であるだけで周囲から排除されがちなのは事実だ」という思いがあります。この思いは簡単な言葉で言えば悲しみです。しかし、「マジョリティとしての人生を喪(うしな)いつづける状態」に焦点をあてれば、私は長い人生にわたって喪失体験の中にあり、私はそうした喪失の「悲嘆」を感じているのだ、と言えるのかもしれません。※悲嘆とは、グリーフケアの文脈で使われる、親密な人や慣れ親しんだ環境など、何か非常に大切な対象を喪失したときの感情的な反応のことです。多くは死別による強い悲しみの反応に使われます。私が本当に頻繁に、最低でも週に1回は見る悪夢に、「みんなと同じように振る舞えないことへの恥」が表されていると思われるものがあります。私は中学高校時代の制服を着ていて、複数の友達から囲まれて怒られていたり、電車に乗り遅れて遅刻したり、道に迷ったり、持ち物をなくしてしまったり、自分だけちょっと違った制服を着ていたりするのです。制服は「皆と同じように振る舞うプレッシャー」の象徴なのでしょう。上記のような夢の中で起こることは実際には経験していないことばかりですが、いつもリアルに身に迫ってきます。定型発達の同級生の中で浮いていた学生時代学校の中で、私は常に浮いていました。地元の公立校に通っていた小学校時代は、常にいじめのターゲット。担任教師からも冷遇されていると感じていました。私はクラスで一番ぐらい身体が小さく、動作はスローモーなのに座学の教科は常にトップクラスの成績。児童・教員問わず、相手が間違っていると思ったら徹底的に理屈で追い詰めました。こうした私が、横並びが求められる公立小学校コミュニティでうまくやっていけるはずがありませんでした。あるとき、いじめについて父に相談したところ、「お前をいじめるようなやつらは軽蔑して、お前の知識と論理で論破してやれ。学級会で『憲法違反だ』と演説すればいい」と言います。今思えばこれは不適切なアドバイスですが、幼かったうえになんでも字義どおりに解釈する傾向のある発達障害児だった私は、父のアドバイスを鵜呑みにして実行しました。「憲法違反」とか、「いつか実名で被害を公表してやる」という強い言葉に恐怖した同級生は、表面的にはいじめの手をやや緩めました。しかし私はこの日以来、完全に同級生の「敵」になってしまったのです。当時、父も私も気づいていなかったのは、多くの人は「何を言うか」よりも「(どんな立場の)誰が言うか」に着目しているということです。父は何か理不尽な目に遭ったときには理詰めで反論して成功してきたのでしょうが、それは彼が迫力のある体躯の、運動神経抜群な、クラスのボス的な立ち位置の存在だったからでしょう。私のように、身体がひょろひょろで小さく運動も苦手、普段から浮いた言動ばかりしている、スクールカーストの低い女の子が父と同じ方法で戦おうとしたから、残念ながら「分不相応な振る舞い」とされ、マイナスのジャッジをされたのかもしれません。※周囲の反応が正しいと言う意図はありません。私や父の所属していたコミュニティには残念ながらこういう傾向があったという事実を言っています。小学校時代のいじめは勉強ができることへの嫉妬もあったと思います。いじめから逃れるために中高を私立の女子進学校にしたところ、あからさまないじめはなくなりました。しかし「なぜかなんとなく浮く」傾向はなくならず、グループの中でうっすら除け者にされることはよくありました。おとなしくて控えめな子が大半の女子同属コミュニティの中で、なんでも歯に衣着せずものを言い、教員ともすぐに口喧嘩を始めて激怒させてしまうような私は、なんとなく敬遠されました。お互いに距離を置いてはいましたが、特にグループ内での強い同調圧力の中で絆を確認しあっているタイプとは反りが合いません。自分にはまったく面白さの分からないことでやたらと盛り上がってきゃあきゃあと騒ぎ、笑い転げているので「何が面白いの? うるさいんだけど。少しは静かにしてくれない?」と言い放ったことも何度もありました。私としては、彼女たちの騒ぐ声が聴覚過敏の耳をつんざくように聞こえ、頭痛が起きそうになるほど苦痛だったからもあるのですが、彼女たちにとっては、せっかくの仲間うちの楽しみに絡んできて台無しにしようとする悪意の者に見えたことでしょう。たまたまこの中のボス格の子と同じ大学に進学したのですが、高校のときのことを根に持っていたようで、彼女の周囲の友人を巻き込んで集団で執ように嫌がらせしてきたことがあります。必死に定型発達に擬態しようと失敗を繰り返した20代中高でぼんやりと感じていたコミュニケーション上の不全感は、大学以降どんどん膨らんでいきました。職場でもしょっちゅう先輩や上司と衝突して、反抗的だとか変わってるとか言われるし、同僚の中ではやはり浮いてしまう。当時まだ自分が発達障害だと気づいていなかった私なりに、どうしたら「みんなと同じ」に周囲とつきあえるのか試行錯誤していましたが、どうしてもうまくいきませんでした。20代半ばで関わった職場では、古参の人たちの中に私が新しく入った形のところがありました。古参の人たちの中で、ある「いじられキャラ」の人をからかって皆が楽しそうにしているので、私も同じようにすれば皆と同じようになれると思い、その人を皆と同じようにからかってみたら、その場の全員が明らかに引いた反応をしました。ここでも私は、先にも書いた「何を言うかよりも誰が言うかが重要」ということを分かっていませんでした。当時は「どうして同じことをやっているのに私がやると歓迎されないんだろう」と全く理解できず、ずっとモヤモヤ…。発達障害を自覚、なぜ周囲と違うのかがわかるようになった30代以降ずっとモヤモヤしていた私にも、ついに自分がなぜ「皆と同じにできない」のかを理解できる日がきました。30歳になって発達障害を自覚したときです。自分は発達障害というもので、その特性のひとつのコミュニケーション障害によって、私は周囲とうまくなじめなかったんだ。私のコミュニケーションの仕方は、定型発達といわれる人たちのコミュニケーションの仕方は違うんだ。長いこと暗闇の中を進んできた自分の道が、初めて1本のライトで照らし出されたかのように、「自分は発達障害者だった」という発見は、私に自分の苦しかった人生経験を「コミュニケーション障害」という観点から把握し直す視点を与えてくれました。あれ以来10年間、自分と定型発達の違いについて考え続けています。擬態がうまくなった面もあり、必要なときには最大限擬態しますが、そのぶん非常に強いストレスを感じ、疲労困ぱいしてしまいます。困るのが、ASDによくある、喋り方や表情が平坦になりがちな傾向を私も持っているということです。「あれは言わない、これはこう言う」と特定のやりとりの内容をいくら訓練しても、普段から無意識に出る喋り方や表情まではコントロールできません。私はこれを女性のASDに多い苦労ではないかと考えているのですが、ASDのある人の喋り方の平坦さや無表情は、女性にジェンダー的に求められる理想像と相反するものなので、どうしても「(女のくせに)冷淡で傲慢でけしからん」→「性格が悪い」という印象を与えてしまいがちのようです。一般的には、ある発言について「誰が言ったか」が重要であることが多い、という法則に基づくと、たとえば、私が私である限り、何か褒められた瞬間にいくら「とんでもない!」と精一杯謙遜したとしても、「なんだかすかしていた。感じが悪い」などと受け取られる可能性があるということだと思います。私は年々、定型発達的コミュニティに入るのが怖くなってしまっています。最近は私を理解してくれる友人も増えてきたので少し心強くはありますが、世間に無防備に出ていったときに、まずは排除される可能性のほうが高いというのはとても心細いことです。結果、本当に不可欠な場合以外は不用意に入っていかず、少数の友人・理解者の中だけで暮らすように心がけるようになりました。子どもの頃はなかなか所属するコミュニティを選びづらいですね。しかし、大人になるとかなり自由に選べ、周囲を自分の理解者だけで固めることもできるようになるので、それはひとつの大きな救いかなと思います。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)お父様も、交友関係において宇樹さんと同じような悩みがあったのかもしれません。「憲法違反」という言葉もやや飛躍しており、それを律儀に受け取り学級会で言ってしまった宇樹さんに、結果的に周りが引いてしまったと思われます。IQの高い高機能ASDの人は成績がいいので診断はスルーされるケースが多く、私立中学へ進学する人も多くいらっしゃるようです。似たような人が選抜されて入学してくることもあり、初めはあまり目立たなくなります。音過敏も手伝って言わなくてもいいことをついつい口走ってしまい、周りから敬遠されることもみられます。まだまだ世間ではASDに関して周知されていないことが多いので、自分を理解してくれる友人(または職場)とだけ付き合えばいいのではないでしょうか。いじめのターゲットにするような人たち(または職場)はあなたのことを理解しずらい人たち(または職場)なのですから。
2022年09月03日Q.作業療法士(OT)の方に、どのように子どもの困りごとを相談すれば良いでしょうか?A:お子さんの具体的なエピソードを教えていただけると、作業療法士はアドバイスしやすいです。家庭だけでなく、学校や習い事、放課後のお友達づきあいなど、どんなことでも相談してください。その際、具体的なエピソードがあると、作業療法士が手立てを考える手がかりとなります。「先生はこう言っていた」「私たち親はこう考えている」「本人はこんな風に考えている(言っている)」と、それぞれの立場での解釈、エピソードがあると理解が深まり、適切なアドバイスがしやすくなります。Upload By 専門家インタビューQ.子どもが前向きに作業療法に取り組むために、内容や進め方で大切なことはなんでしょうか?A:スモールステップで取り組んでいくことが大切です。作業療法の本質的な関わりは「モチベーションアップ」です。作業療法では、本人が楽しめる遊び、取り組みやすい課題の形でプログラムを提供します。だからこそ、子どもたちには「やってみたい!」という思いが芽生えるのです。誰でも、できないことを何度もくり返しやらされるのは苦痛ですね。その子が好きなこと、得意なこと、反対に嫌いなこと、苦手なことなど、一人ひとりの背景をしっかり理解したうえで、できることからスモールステップを組んでいくことが大切です。ご家庭でも、スモールステップを意識した関わりや声がけをしてみてください。Upload By 専門家インタビューQ.作業療法は、どのくらいの頻度で受けると良いですか?予約が取りにくく、数ヶ月に1度程度しか受けられていません。A:頻度・回数は大切です。ただ、頻繁に通えないときこそ作業療法士と連携を!器用さを向上させる訓練などでは、やはりある程度の回数を受けることは大切です。例えば、筋力をアップするには、週に3回くらいの頻度で作業療法を受けることが理想とされています。ただ、家庭や通っている施設の状況によっては、頻繁に通えないこともありますよね。そんなときは、次の通所までの目標を作業療法士と決めておき、ご家庭でできることにトライしていくことが大事になります。作業療法士と方向性を共有し、「おうちOT」を進めていきましょう。Upload By 専門家インタビューQ.複数の専門家に支援いただくと、どのような良いことがありますか。A:複数の仮説で検討できるメリットがあります。複数の専門家が関わると、それぞれ意見が異なることもあるでしょう。しかし、1人の子どもの困り感、保護者の困り感を、複数の仮説で検討できるメリットがあります。異なる意見を集めて、調整していくことが重要なのです。福祉や教育の現場では、すでに多職種での連携することが当たり前になってきています。教員や保育士と作業療法士、などもそうですね。さらに職種同士の連携、たとえば理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)、心理士、社会福祉士、医師などにも広げていくことが必要だと考えています。Upload By 専門家インタビュー一般社団法人 日本作業療法士協会では、作業を通して患者・利用者さんご本人と作業療法士が共に力を出し合い、できないとあきらめていたことができるようになった、これまでできなかったことができるようになった、大切な作業と向き合った…そんな記憶に残るエピソードを募集中です。詳しくは下記よりご確認ください。応募締切:2022年8月31日(水)※クリックすると発達ナビのサイトから日本作業療法士協会のサイトに遷移します。
2022年08月19日発達障害を持つ3歳の息子さんと病院へ向かうため、初めて2人での電車移動を試みたママ。いざ駅のホームにつくと、想定外のハプニングが次々と起こり、振り回されてしまった体験談です。 現在10歳で発達障害を持つ息子が3歳のころの話です。息子の検査のため、電車で病院へ行くことに。初めて2人で電車に乗るため、私もやや緊張気味でした。そんな中、電車を見た息子がすごい勢いで顔を上げ、予想外の行動に出たのです! 慌てて追いかけた私にもまさかのハプニングが次々と起こって……。 ※息子の言動はすべての発達障害の方に当てはまるものではありません。あくまでも、“息子個人”の特徴です。 初めての電車移動でいきなりハプニング!?発達障害を持つ当時3歳の息子と電車で病院へ向かうために、最寄り駅へ行ったときのこと。ホームに入ると、息子は耳を塞ぎ、しゃがみ込んでしまいました。息子は自閉症と知的障害があり、さらに視覚と聴覚が過敏なタイプの子です。普段聞かない、スピーカーを通しての駅員のアナウンスや初めて見るホームの風景は、息子の視覚と聴覚を刺激。今までに感じたことがない情報が波のように押し寄せ処理しきれず、パニック状態になってしまったのです。 耳を塞ぎ、しゃがみ込んでいる息子を見て、私は乗車をあきらめることに。「ごめんね。つらかったね。タクシーに乗ろう」と、息子の腕を軽く持ち上げたそのとき、「3番線に電車が到着します~」とアナウンスが流れました。 すると、電車がホームに入ってくるや否や、息子は突如顔を上げ立ち上がりました。かと思うと、電車の扉が開くと同時に軽やかなツーステップでそのまま乗車フィニッシュ! 顔を上げてからフィニッシュまで私の体感で3秒。息子はあっというまに電車内に姿を消しました。 あまりに突然のことで、電車内に消えた息子を呆然と見ていた私……。「扉閉まりまーす」のアナウンスを聞いてようやく「やばい! 息子を止めねば!」とダッシュし、扉が閉まるギリギリで乗車。「セーフ!」と安堵したのも束の間、なぜか前に進めない……!? なんと、電車の扉にガッチリ背中の服を挟まれていたのです。 自分の意思とは関係なく、ピーンと背筋が伸び、首を動かしても、手を動かしても首が締まる。動きを封じられたこの姿は、もはや拷問でした……。突如始まった拷問と闘いながら、首をなるべく動かさないように、息子を目だけで追いました。 身動きがとれない! 乗客の視線がつらい…電車内は座席にポツポツと数人が座っている程度で、立っているのは強制的に立たされている私ひとり。息子は、それほど混んでいない電車内をウロついています。そして息子流の“確認作業”が始まりました。ウロつきながら周囲の情報を集め、安心エリアと認定されれば作業終了となります。 「きゃあぁ!!」と声をあげ、手を叩きながらウロつき、ピョンピョンと小刻みにジャンプを始めた息子。「まずい、興奮し始めた」。息子は乗り物が大好きです。遊園地でも必ず汽車系の乗り物には、何度も乗りたがります。そんな息子の目の前に、本物の電車が現れれば興奮しないわけがありません。しかし障害があるとはいえ、公共の場で、これらの行動を放置しては迷惑になってしまう……。息子の行動を止めたいけれど、私自身の身動きが取れずにっちもさっちもいきません。今なら昆虫標本にされた虫たちの気持ちが痛いほどわかる、と思いました。 「ああ、こんなことになるなら最初からタクシーに乗ればよかった……。息子の社会勉強にもなるかと思ったのが甘かった」と、後悔が頭の中で何度も巡り続けました。乗客全員が、騒ぐ息子に冷たい視線を向けているように感じ、しかも息子を止められない理由が、己のマヌケな失態だと周囲にバレたくないので余計に焦りました。 「◯◯、こっちきて!」と何度か声かけをしていると「何で母親が動いて止めないのか?」と言いたげに、周囲がチラチラと私を見始めています。標本スタイルの拷問がバレないよう、足をクロスしたり、自然に振る舞っているつもりでしたが、扉の前で同じ体勢でずっと立っている人に、周囲が違和感を抱かないわけがありません。 息子を止めに行きたいのに、挟まれて動けない……。だからといって周りの人にこの状況を伝えるわけにもいかない……。そんなことを思いながら、心拍数を上げていると、息子が確認作業を終え、やっと私の元に戻ってきました。 抱っこを求められ、さらにピンチ!安心したのも束の間、息子は私の顔を見上げ、両手を上げて「あーおー」と言いました。「抱っこ」の要求です。「何で今やねん!?」と心の中で泣きツッコミ……。 表面上は「次で降りるからあとでね」とやさしく声かけをしていたが本音は違いました。「もうすぐ降りるから、先ほどの息子の行動を大目に見てほしい」と周囲へのアピールも兼ねていました。そんな私の気持ちも知らず、息子はなかなか抱っこしない私にイラつき始めました。シャツをグイグイ引っ張りながら、「あーおーあーおー!」と要求が強くなっていき、同時に私の首も精神的にもきつくなります。さらに周囲の視線も痛い。そんな闘いの最中、「まもなく○○駅に到着しま~す」と神の声が聞こえました。 「これで拷問から解放される!」。息子の手をぎゅっと握り、拷問からの解放を待ちわびていました。「次、降りるからねー」と息子に笑顔を向けつつ、周囲へのアピールも忘れません。電車がスピードをゆっくり落としながら、ガッ…タンと止まり、次の瞬間、私の目の前の扉が開きました。そう、逆の扉が開いたのです。まだ扉の拷問から、解放が許されませんでした。電車内の空気が「この人やっぱり……」という一体感に包まれました。 「扉閉まりまーす」と容赦なく扉が閉められました。目的地を過ぎ、もうどこに向かっているかもわかりません。電車内は変に静まりかえっています。次の駅まで2・3分の距離ですが、やたらと長く感じ、みっともなさ過ぎて一刻も早くこの場から消えたいと思いました。息子の抱っこ攻撃を「電車から降りたら抱っこするね」と誤魔化し対応をしている間に、次の駅に到着しました。 さらなる試練、そして衝撃の結末へ…ようやく拷問から解放された私は、焦る気持ちから「◯◯、降りるよ!」と勢いよく息子の手を引いてしまい、転ばせてしまいました。火が付いたように電車内で「ぎゃあぁ!」と泣き叫ぶ息子。「◯◯ごめん!」と謝りながら体を抱え、何とかホームに降りましたが、安堵はできませんでした。ホームで、とれたてのかつおのようにビチビチと泣き暴れる息子を何とか抱っこしながら時計を見ると、病院の予約時間の30分前。 「タクシーに乗ったらギリ間に合うか!?」と泣き暴れる息子をさらに強く抱き、タクシー乗り場に向かう際、ある異変に気づきました。「息子の靴が片方ない」。ベンチの下や、足もとを探しても見当たりません。「さっき電車内で転んだときに脱げてしまったのか!?」。拷問から解放されても終わらない試練に打ちのめされ、もう靴を探す気力も、病院へ行く気力も失ってしまいました。 息子が少し落ち着いたところで、病院へキャンセルの電話を入れました。ところが、受付の方が「少々お待ちください」と言ったまま、なかなか電話に出てくれません。その後、受付の方から衝撃の言葉が発せられました。 「◯◯くんの検査、先月になっておりますが……」。これまでの長い試練の時間は、この衝撃的なオチの前振りだったのかと、さらに衝撃を受けたのでした。 闘う必要のない場に勝手に飛び込み、ひとりで勝手に闘って、ひとりで勝手に負ける。そんな私の無駄な闘いに巻き込まれた息子が、気の毒でなりませんでした。電車の扉は、何か異物を挟むと自動的に開くと思っていたのですが、それも私の勝手な思い込みだったようです。この出来事以降、電車に乗るときは、扉に背を向けず、目をカッと見開き、扉をガン見しながら決して油断せずに乗車しています。 息子は療育手帳を取得。タクシー料金が割引になるため、必要に応じてタクシーも利用するようにしています。また、病院のすすめでイヤーマフ(見た目はヘッドホンに見えます)を購入。10歳になった今でもイヤーマフを愛用していて、電車内で騒ぐことなく、車窓から見える看板の文字を読んだり、電車レジャーを楽しんでいます。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKOイラストレーター/Michika著者:猿 祭14歳娘と10歳息子の母。3月まで保育士として勤務。うつ病で休職中の旦那と受験生の娘、発達障がいを持つ息子を抱えながら無職に。これまでの子育てや、日々のあれこれを執筆中。
2022年08月18日常に次男を信じ、寄り添ってくれた特別支援教室の先生発達に凸凹のあるわが家の次男は、小1から小6の現在も通常学級に在籍しており、週1日、特別支援教室(※1)に通っています。次男が学校生活を送る中で、常に寄り添ってくださっていた先生がいます。それは、特別支援教室専門員(※2)のA先生です。※1 特別支援教室…通級指導教室のように障害による学習上または、生活上の困難を改善・克服する指導を児童・生徒が在籍校で受けられる東京都の仕組み※2 特別支援教室専門員…臨床発達心理士などの発達障害の支援に関する専門資格を持つ人(教員免許は必須ではない)Upload By スガカズいわゆる「普通」とされる環境の中で次男は、聴覚過敏、見通し不安、「0か100か」の白黒思考、叱られることへの苦手さなどから、入学当初から頻繁に癇癪を起こしていました。小1のころは、壁を蹴ったり大声での暴言が多かった次男。大人が本人の話に耳を傾けることなく、強く叱るなどすると本人は取り乱して周りが余計に見えなくなってしまうことがあり、そのような関わり方をしてしまうと万が一他害につながる恐れもあります。そのため、次男にとって家庭での関わり方や、学校での本人に寄り添った関わりがとても重要でした。A先生は次男のことを、「乱暴な子」「言うことを聞かない子」ではなく、「嘘をつかない自分に正直な子」「心の優しい子」「たくさんの可能性を秘めた子」として関わってくれました。また、私が次男との関わりで悩んでいるときにも、A先生は傾聴して、決して自分の意見を押しつけず私と次男の気もちを言語化してくれ、最後には励ましてくれました。私は、次男が学校生活での困難にぶち当たるたびに、どうしても周りの人と比べてしまったり、落胆してしまうこともあり、次男の行動に対して受け止めきれない状態に陥ることが度々ありました。トラブルを経験するたびに、私の気もちが落ちて浮上して、また落ちて持ち堪えて…。目の前の状況に対して、まずはその日を無事に終わらせることに注力します。そのためには、感情をできるだけ抑えて、次男と話し合うことが重要でした。そんなときは特にA先生の存在が大きく感じました。A先生はいつでも私と次男の味方をしてくださいました。お陰で次男との関係は良好なまま日々を過ごすことができましたし、少しずつ…少しずつ…時間をかけて、次男も学校生活に適応するようになってきたと思います。次男が小5になり、大好きなA先生が異動することに…。私にとっても次男にとっても、A先生は心の拠り所になっていました。しかし、A先生は次男が小5になる年度に、他校に異動することになりました。異動の知らせを聞いたときにも挨拶に行きましたが、離任式の際にも学校にお伺いし、感謝の気もちを直接伝えることにしました。Upload By スガカズUpload By スガカズ先生との別れを経験して、支え合うことの大切さ、人への感謝を学びましたUpload By スガカズ現在は次男は小6になり、A先生との別れを経験してから1年が経過しました。最初のころは、「オレが知っている△教室(特別支援教室)じゃない…」と、浮かない様子でしたし、心にポッカリと穴が空いているようでした。「A先生がここにいてくれればいいのに」と泣くこともありました。それでも、次男なりに少しずつ現状を受けとめながら、現在も学校生活を送っています。今でも私がA先生の話をすると、次男の表情はパッと明るくなります。先日、A先生に手紙を書きました。次男は書字障害があり、文字を書くことは大の苦手ですが、A先生への思い入れが強く、苦手な中頑張って手紙を書いていました。何度も「この文章変じゃないよね?」と、うれしそうに私に聞いてきました。人生の中で人との別れは何度か繰り返していきます。その中でも、大好きな人との別れは、本人にとって大きな衝撃で、情緒が乱れてしまう場合も多いのではないかと思います。悲しい経験をすることになりますが、そういった経験から、支え合うことの大切さ、人に感謝するこころを学び、今後の人間関係の構築のあり方について考えるきっかけになっていくのではないかと思いました。執筆/スガカズ(監修:井上先生より)すばらしい先生に出会えた経験は子どもさんにとっても親御さんにとっても大きな成長や心の支えになったと思います。子どもが大人に相談できるようになるためには、その大人が子どもにとって「自分を分かってくれる存在」になることです。A先生はまさにそんな人だったのだと思います。このお話は、多くの現場の先生たちにとって、元気を与えるように思います。
2022年08月05日その人らしい生活を支援するのが作業療法士(OT)の役割作業療法士(OT)の役割というと、病気やケガのあとのリハビリの印象が強いかもしれません。ですが実は、発達障害の領域でも作業療法の重要性が高まってきています。今回は、日本作業療法士協会の中村春基会長に、作業療法士の仕事や発達障害のあるお子さんを支援する際のポイントを伺いました。――はじめに、作業療法で対象となる「作業」について教えてください。中村:作業療法でいう「作業」とは、日常生活のすべての行為を指しています。たとえば、料理や掃除といった家事、接客やパソコン作業など仕事の場面で必要なこと、スポーツや音楽鑑賞、手芸などの趣味の活動はもちろん、食事や休息、眠ることだって作業の1つです。発達障害のあるお子さんの場合は、たとえば「食が細い」「なかなか寝つけない」といったことから、「黒板の文字を写すのが苦手」「授業中じっと座っていられない」といった学習や集団行動の悩みまで、そのすべてが支援の対象となります。――とても幅広いのですね。中村:驚かれるかもしれませんね。作業療法士の仕事は、「その人らしく生きるために、困りごとを軽減、解決するためのサポート」と言い換えられるのではないでしょうか。発達障害の領域でも作業療法の重要性が知られるように――現在、日本ではどれくらいの作業療法士の方がどのような分野で活躍されているのでしょうか?中村:作業療法士は1966年にできた国家資格で、自立支援についての医学、心理学、社会学的な知識を持つプロフェッショナルです。現在、日本国内で資格を持つ人は10万人を超えています。日本の作業療法士は、その多くが医療機関で仕事をしていることも大きな特徴です。ほかには、児童発達支援センター、放課後等デイサービスなどの児童福祉サービスなど。最近では就労支援施設や学校、学童保育、また刑務所などで支援にあたる作業療法士も増えています。Upload By 専門家インタビュー最近では、医療機関における子どもを対象とする作業療法で割合が大きくなっているのが発達障害です。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の支援においても作業療法が重要であることが知られるようになりつつあります。日本作業療法士協会では5年毎で「作業療法白書」を取りまとめています。最新の2021年度版を編集中なのでまだ正確な数字がお伝えできないのですが、傾向としては下記のとおりです。【医療機関】新生児期から18歳以上まで幅広い。割合としては未就学が約45%、就学~15歳までが約25%。【児童福祉サービス】未就学が5割強、就学後が5割弱で、やや未就学のお子さんの方が多い。施設種別としては、作業療法士が多くいる順に、児童発達支援センター、放課後等デイサービス、障害児入所施設。【対象とする障害や疾患】・ASD、ADHD、DCD、LDなど・脳性麻痺・精神遅滞 知的障害・てんかん・ダウン症などの染色体異常・重症心身障害・筋ジストロフィーを含む神経難病+障害が診断される前の気になる段階の子どもたちとは言え、「リハビリ」「高齢者」というイメージがまだまだ強いようです。病院や療育センターで作業療法を受けることになっても、作業療法士は何をする人なのか、保護者の方には分かりにくいかもしれません。実際の作業療法の場面では、お子さんへの対応が中心になるので、なかなか「作業療法とは何か」「作業療法士が何を目指しているのか」を伝える時間を持てないのも実情です。そこで、協会では、作業療法を「知って」、上手に「使って」もらえるよう、広報活動にも力を入れています。たとえば、『○○○とつなぐ』という協会が発達障害のお子さんを支援する方向けに発行したパンフレットは、手帳に挟んで持ち帰ってもらい、気になったときに読んでもらえるように手のひらサイズで作成しました。○○○とつなぐー子どもの育ちを支える作業療法士ー――日本以外の国では、どのような状況なのでしょうか。中村:イギリスでは7割もの作業療法士が、地域の学校や通園施設、訪問施設などで働いていると聞いています。アメリカでも、延べ13万人の作業療法士のうち3万人が教育現場で働いており、なりたい職業ベスト10にもランクインしたことがあるくらい、子どもたちにとっては身近な存在のようです。――医療機関が中心の日本とは、大きく違うのですね…!中村:そうですね。 「友達づきあいが苦手で、悪気はないのにすぐに相手を怒らせちゃう」「ボールを投げたり、鉄棒をしたりするのが苦手で、みんなにバカにされてるみたい」、こうした悩みを気軽に話せて、その解決策を一緒に考えてくれる人がいたら子どもたちはどれだけ気持ちがラクになるでしょう。医学的知識のある作業療法士が身近な存在となれば、必要があればスムーズに医療機関と連携し、早期に治療や療育を始める助けともなるはずです。作業療法士が、生活と医療を結びつける架け橋となれたら!作業療法士協会がめざす大きな目標の1つです。将来的には日本でも「町の作業療法室」のような場所があちこちにできて、困りごとがある人がふらっと相談できるようにしていけたら、と考えています。作業療法士(OT)がプロの経験と知識で、保護者の不安を解消!出典 : ――作業療法の支援計画はどのように立てていくのでしょうか?中村:ひとくちに発達障害の作業療法といっても、実にさまざまなアプローチがあります。たとえばおもちゃやボール、楽器を使った手先や運動の訓練のほか、スーパーに買い物に行ったり、子どもたち同士で料理をしたり、ときにはみんなでスポーツ観戦に出かけたりすることも。具体的な生活の場面で、何ができていて、どんなことに困っているかといったことを、学校や園、また地域社会での経験を通して子どもと一緒に考えていきます。豊富な医学的な知識に加え、心理学や社会資源に関する知識をもとに、子どもの成長の一歩先を見ながらお子さん自身の気づきと変化をサポートしていくのです。だから、作業療法の現場はいつでも前向き!作業療法士は、「この子が持っている能力は何か」「今の運動機能と知的な能力だったらどんな遊び、勉強、作業ができるか」をすばやく見つけ、子どもが成功体験を感じられるシーンをたくさんつくっていきます。――保護者の方にとっても、発見が多そうですね。中村:そうですね。こうした働きかけは、そのまま保護者へのサポートにもつながります。保護者はともすると、わが子の苦手や不得意な面に目が行ってしまい「なんとか克服させてあげたい」と思いつめがち。そこに作業療法士のプロフェッショナルな視点が入ることで、「子どもの可能性や能力に気づき、子育てがより楽しく気が楽になった」という声も聞かれます。――学校や園の先生はどうでしょうか?中村:学校や園の先生からも、作業療法士と協働することで支援がしやすくなった、という声が届いています。例を挙げると、「学習が困難なことの背景には、眼球の動きや姿勢を保つことの難しさなどの原因があることを知り、決して怠けているわけではないということが分かって教師としてもうれしかった」「授業の様子をこまかく観察してもらい、道具や教材の工夫で困りごとがある子どもたちにもできることが増えることが分かりました!」などです。こうした声を聞くことは、私たち作業療法士の何よりの喜びです。発達が気になるお子さんの保護者同士をつなげられる機会を――発達が気になるお子さんの保護者の方へメッセージをお願いします。中村:私にも3人の子どもがいますが、今振り返れば、息子の1人は発達障害の特性があったのではないかなと思います。3歳児健診で運動機能面での発達の遅れを指摘されたほか、小学校に入学してからも片づけられない、翌日の準備ができない、といった困りごとがどんどん出てきました。ただ、30数年前は発達障害についての認知が進んでいなくて、私も恥ずかしながらまったく知識がなかったんですね。例えるなら、息子を無理やり学校に引っ張っていたような状況で、のちに発達障害についても勉強を深めるなかで「なんて親だったんだ」とつくづく反省しました。今は、発達障害について以前よりも社会の理解が進み、専門機関だけでなく、学校や放課後等デイサービスでも相談できる体制があります。発達障害のあるお子さんを育てるなかでは、悩んだり、不安になったりすることもあるでしょう。そんなときは、どんなことでもプロに聞いてみてください。家庭のなかだけで抱え込むと、追い込まれてしまいます。相談するのにも、最初は勇気がいるかもしれない。でも、勇気を出した先には、きっと気持ちがラクになる、親子ともに笑顔が増えるうれしい変化があるはずです。――相談することは子どもにとってだけではなく親にとっても、大切なのですね。中村:そうなんですよね。子どもはとても敏感で、親が不安になっていたらすぐに気づくものです。その子らしい発達を支援するためには、保護者のサポートが重要なのです。専門家と一緒に、その子の特性を正しく理解できれば、いたずらに不安が大きくなったり、できないことばかりにフォーカスしてストレスをためたりしてしまうこともなくなります。作業療法の現場では、同じような悩みを抱える保護者同士が話せる場を設けたり、発達障害のあるお子さんを育てた先輩パパ&ママから数年先の見通しについて聞く機会をつくったりと、さまざまな取り組みをしています。気になることがあったら、ぜひお住まいの地域の作業療法士会に問い合わせてみてください。――ありがとうございました。取材・文/浦上藍子Upload By 専門家インタビュー高校時代に重度心身障害者施設にボランティアに行ったことをきっかけに、作業療法士をめざす。1977年国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院卒業後、兵庫県社会福祉事業団玉津福祉センター附属中央病院などを経て、2009年より現職。日本作業療法士協会
2022年08月01日思春期・反抗期は、成長のプロセス。広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、現在小学6年生。思春期・反抗期の真っただ中です。発達外来の受診で、発達障害児の思春期・反抗期についてや、娘の状態に合わせた療育方法を先生からアドバイスしてもらい、少しずつよくなってきました。しかし、そもそも思春期・反抗期は、正常な発達。娘の自立力を伸ばすことが目的であり、反抗的な態度をゼロにしようとは思っていません。日常生活では、反抗は引き続きあるのが現状です。Upload By SAKURA自分の発達に関して、興味津々。わが家では娘に「発達障害」の告知をしています。そのことも関係しているのか、娘は自分の発達状態にとても興味津々です。自分は何歳で歩いたか、何歳のときにしゃべったか、オムツが外れたのはいつか、小さいときはどんな子だったか…。決して後ろめたいという聞き方ではなく、「私のことを知りたい!」「教えて!」と楽しそうに、何度も聞いてきます。Upload By SAKURA正しい知識を教える。そんな娘には、思春期・反抗期というものを発達のちゃんとした知識として、教えた方がいいと思った私たちは、思春期・反抗期についてよく説明しています。Upload By SAKURA元々、理論的な説明が大好きな娘。自分のイライラや、親に反抗してしまう言動が、発育として説明がつく状態が面白いようです。私ともめたときも…Upload By SAKURA自らの態度の理由を「思春期・反抗期」と言う娘。それを言うことで、娘の反抗が急に可愛く見え、私は笑いをこらえるのに必死になってしまいます。自分の経験も話して聞かせる。元々、あまり他人に興味を示さない娘ですが、思春期・反抗期に関しては自分だけではなく、ほかの人がどうだったかを知りたいようで…Upload By SAKURAUpload By SAKURAこんな会話をしていると、まだまだ娘は、反抗期じゃないような気さえしてきます。話して、向き合って、乗り越える!私たちの場合、思春期・反抗期というものを会話なくただ過ぎるのを待つより、「あなたは今、思春期・反抗期に入っていますね」と、状態を説明してからの方がお互いどこか冷静になれます。この方法が全員に通用するとは思いませんが(たぶん私の場合、そういう言い方されると余計イライラしていたかも…)、思春期・反抗期についてあえて話すというのも、乗り越えるための一つの方法かもしれません。執筆/SAKURA(監修:初川先生より)思春期・反抗期について、説明されたのですね!すてきなエピソードのシェアをありがとうございます。思春期・反抗期は、体感としては、「なぜだかはっきりしないけれど、なんだかイライラする」「今まではイライラしなかった『宿題やったの?』の声掛けになんだか無性に腹が立つ」、そんなイライラ先行かと思いきや、ときには、親に甘えたくなったり、友達と比較して悲しい気持ちになったりと、今までとはなんだか違う…といった感覚にとらわれることが多いです。そうした内発的な変化について、学校の保健で習ったり、言葉として「思春期」「反抗期」と知っていたりはあるにしても、そこと結びつけて「あー、これが噂の思春期か…」と認識できる子は少ないと思います。多くの場合、「なんでそんなに反抗的なのよ!」と親に言われるなどして、気づくことが多いです。自閉スペクトラム症のある方のように、自分の体感をモニタリングしづらかったり、未知のことに出合うことの衝撃を大きく受けたりする場合には、早めに説明するということが安心安全につながることがあります。SAKURAさんのされたように、それは正常な発達なのだということを伝えることがとても大切です。これまでとの違いに違和感やしっくりこない感じ、終わりの見えない感じ、そして、大人になるということへの不安がないまぜになって感じられる場合もありますが、それは正常な発達で、いずれ落ち着くということ、その見通しを伝えることが大切です。SAKURAさんの娘さんの場合には、そのあたり理解され、自分のことを「思春期・反抗期」とカテゴライズして語ることができるようになりました。自分の状態が何であるか知っていること、自分の状態の手綱を握れていること。とても素晴らしいですし、大人への第一歩だなと感じます。
2022年07月06日視覚支援との出合い私が初めて視覚支援を学んだのは、発達障害の勉強会でした。目で見て分かるよう、イラストなどを利用して視覚情報を使い子どもに伝えたいことを伝える。今考えてみれば成長途中の子どもは文字の理解や言語のレパートリーが少ないため、視覚情報の方が理解しやすいのは当たり前です。大人だって「百聞は一見に如かず」ということわざがあるくらいなので、情報は視覚で補助すると理解しやすいというのは当然なのですが、当時の私はそういう視点が全くなかったので、なるほど!と感動したことを覚えています。おうちでの視覚支援小さいころ、むっくんはマークが大好きでした。車のエンブレムやお店のロゴ、交通標識などにも興味を示し、記号の本が好きで色んなマークをよく覚えていました。視覚支援を知った私は、むっくんのこの特技を利用すればいいのだと思いいたり、3歳のころから外出の際はお店のロゴを使って行先を伝える工夫をするようになりました。これは診断のない弟にも有効で、子どもたちのどこへ行くのか分からない不安を和らげる効果がありました。また、むっくんはおもちゃなどについている注意書きマークにも興味を示したことから、ルールを伝えるのに使える!と導入したのが「さわっちゃダメマーク」です。家の中の危ない場所にはこの「さわっちゃダメマーク」を貼って理由を伝えておくと。ルールを守りたいタイプのむっくんは触らないように頑張ってくれていました。当時は子どもの行動に困ったな~と感じると、視覚化することで何か伝えられないかな?と考えていたように思います。Upload By ウチノコ成長と共に、家庭内の視覚支援はどんどん増えていき「朝の準備」「カレンダーでの予定表」「おもちゃ箱に写真」なかなか進まないトイトレでは「トイレにトイレマーク」も貼りました(笑)さらに、一日の出来事を思い出すことが苦手だったむっくんに、保育園での「活動メニュー表」を作って会話のきっかけにしたり。お風呂あがりの「体の拭き方」や運動会での「ダンスのふりつけ」など動作を伝えるイラストを描いて貼ったこともあります。また、私の伝えたいことはイラストを描きながら説明すると集中して話をきいてくれることもありました。わが家では診断の有無にかかわらず兄弟ともにこういったツールをたくさん使って暮らしています。Upload By ウチノコUpload By ウチノコ視覚支援に囲まれた子どもたちの今現在8歳のむっくんは文字や聴覚情報でも十分ものごとが伝わるようになりました。それでも複雑なことや、忘れやすいことは視覚情報で消えないように伝えることが鉄則です。最近では将来を見据えて、デジタル端末を使う視覚支援も増やしています。例えばスマートスピーカーの残量が表示されるタイマーは時間管理に便利ですし、忘れやすい予定はタブレットのリマインダーで通知、家族共有カレンダーを使い、自分や家族の予定を確認できるようにもしてあります。また、むっくん自身もタブレットのデジタルふせんやメモ帳を使い、忘れたくないことを自分でメモすることも増えてきました。さらに弟まで忘れないように目印を付けるなど自分から視覚支援を使おうとすることもあり、この子たちは困ったときは工夫で補えることを知っているのだなぁと感心させられています。二人とも小さいころよりも言葉で伝わりやすくなったため、つい視覚的な提示を忘れがちなのですが。何度か声かけが必要なケースは視覚支援を考えた方がいいことを忘れないように私も気を付けています。Upload By ウチノコ方法ではなく本質を伝える最近のむっくんは、自分の伝えたいことを図やイラストを描きながら説明してくれることがあります。これはまさに私がむっくんに対してやってきたことなので「この子は視覚情報と聴覚情報合わせて使う方が自分も伝えやすく、相手にも正しく伝わりやすいということを知っているのだな」と驚かされます。発達障害と診断されたことをきっかけに学んだ視覚支援。私は暮らしやすさをもとめて取り組んだに過ぎないのですが、それらが子どもたちの中に芽を出し育っているのだなぁと感じています。視覚支援の根っこにある「自分にも相手にも伝わりやすい方法を模索する」という考え方は、私の手を離れた後もきっと彼らを支え続けることになるでしょう。工夫しようとする子どもたちを見ていると、試行錯誤してきた過去の自分のことを私はちょっとだけ誇りに思えるのです。執筆/ウチノコ(監修:初川先生より)むっくんとの視覚支援の歴史のシェアをありがとうございます。視覚的な刺激を得意とするお子さんは多いですし、言葉が苦手なお子さんでもイラストや写真などを用いたものや目印やマークを用いて判断しやすくするものなど、とても有効ですね。聴覚的な支援は、その瞬間の注意を引くには良いのですが、その記憶の保持が難しいですね(別のことに気が向いたらすぐに忘れてしまうため、声をかけ続けなければならないことも…)。消えてしまわずに残っているという意味でもとても便利です。不注意なお子さん(大人もですが)にもとても有用です。今日園(や学校)で何があったかを話してもらうきっかけとしての絵や写真もとてもいいですね。話したくないわけではないけれど、呼び水がないと思い出しにくいこともあります。時系列で思い出すのも得意な子と苦手な子といるのではないでしょうか。ちょっとの間、覚えておくべきことを、忘れないように忘れないようにと思いながら過ごすことは、本来がんばりたいことへ注意集中が削がれている面もあります。学習場面における、机上の整理であったり、毎日の支度における物の管理であったり、そこにいちいちエネルギーをかけるのはややもったいないです。思い出す・判断するという行為は、なかなかに負担なので、そのあたりをメモやマークなどを用いて負担をショートカットすることはとても理に適っています。視覚支援のありがたみに気づいてきたお子さんは自らメモを取ったり、写真で残したりと工夫をすることも多いです。保護者の方がされてきたことは、お子さんにも受け継がれてゆく面があります。
2022年07月05日気圧や湿度の変化で体調悪化私は、天気の変化で気圧や湿度などが変わると心身に大きな影響が出ます。片頭痛、抗えない眠気や怠さ、無気力、関節痛など。幼いころのことは覚えていませんが、第二次性徴期に入って生理が来るようになるころにはすでに、天候によって調子が悪くなる感覚はありました。天気の変化によって起こる不調のことを「気象病」と言うそうです。気象病はどちらかというと女性に多いとも言われています。気象病には内分泌系や自律神経系の調節不全が関わっているため、これらの系統に困難を抱えている発達障害のある人には気象病が多いと聞いたこともあります。気象病を抱える人のうち、多くが気圧の低下に伴って症状を感じますが、気圧が下がるときには症状が出ず、上がるときに出るタイプもいます。私の眠気や怠さ、無気力は気圧が下がる雨の日によく出ますが、片頭痛はどうも気圧が上がるときに出るタイプのよう。台風や前線が過ぎかかって気圧が上がってくるととたんに発作が始まることが多くあります。症状があるときは生産性ゼロ気象病の症状が出ているときには普通の生産的な生活が送れなくなります。身体が泥袋のように重くなって昼寝するしかなくなったり、頑張って作業しようとしてもまったく頭が動かなかったり。天候という不可抗力によってその日の生産性を大きく左右されてしまうので、普通の会社勤めなどは私には無理だなと感じることがあります。気象病に対する私なりの対抗策気象病の多くは内耳にある気圧センサーのような機能の不全から来るらしいと聞いてから、気圧が変化しそうなとき、症状が出始めたときには耳を引っ張ったり揉んだり、上半身を中心にストレッチしたりして、耳周りの血行をよくするように心がけています。気のせいかもしれませんが、気象病の不調がマシになってきたように感じています。気圧の変化を知るためにアプリを参照することも。無料プランではできることが限られますが、指定した地点の気圧の変化をわかりやすい折れ線グラフで見ることができるので、とても参考になります。気象病は天気と同じで完全な予測はできず、ランダムに発生するものなので、気象病による生産性の低下は起こるものと前提したうえで、常に余裕のあるスケジュール設定をするようにも心がけています。薬もときどき服用しています。体内の水分を調整し、雨の日の頭痛に効くと言われている、五苓散(ごれいさん)という漢方薬はよく飲んでいます。天気によってめまいを感じる人が、気圧が変わりそうなときにめまい止めや酔い止めを飲む、という例を耳にしたこともあります。できる対策から試してみてITを活用して症状の出現を予測する、耳まわりの血行をよくする、薬をうまく使う、症状が出る前提でスケジュールを組むなど、気象病対策としてできることはいろいろあります。できることから無理なく対策を始めてみてはいかがでしょう。薬については、精神科の主治医やかかりつけの内科の医師に相談してみることをおすすめします。文/宇樹義子(監修者・鈴木先生より)小児科では気象病という言い方はせず、起立性調節障害(自律神経失調症)と診断されることが主流です。これは、神経発達症(発達障害)の20%に併存すると言われています。車酔い・朝起き不良・頭痛・腹痛・立ち眩みが主な症状です。小学校の高学年ごろから症状が出現し、不登校の原因の一つとして考えられています。午前中調子が悪く午後になると元気になるので傍から見るとさぼっているのではないかと誤解されやすい病気です。遺伝性もあり、どちらかの親も朝起き不良・立ち眩みや車酔いなどの症状があることが多いです。車酔いは自分で運転すればなくなるので大人になるとさほど目立たなくなります。春や秋など季節の変わり目に具合が悪くなるケースが目立ちます。クリニックでは15分くらい立たせて脈拍・血圧・心電図を測定して判定する起立テストを行います。心臓のポンプが弱く馬力がないので、ミドドリンという起立性低血圧を治すお薬で調整を行います。気象による影響のある病気で有名なのは喘息や骨折です。喘息は雨が降る直前に発作がよくおこり、骨折は雨が降ると痛くなるようです。
2022年07月02日こだわりが強く、心配性な長男長男は現在小学2年生。年長のときに自閉スペクトラム症やDCD(発達性協調運動症)などの診断を受けました。性格は特性も関係しているのか、こだわりが強く融通が利きにくく、また慎重で真面目で過剰なぐらい心配性で、不安感も強く怖がりです。そして、独り言が多く過剰に喋る所があります。もともと優しく世話焼きな性分なので、過剰なぐらい世話を焼いたり、小言なども多い長男。学校や学童では次男の世話を焼き過ぎるぐらい焼いては、次男に「うるさい!」などと言われているようです(苦笑)。私と実母、実父との関係私と実母(子どもたちにとっての祖母)の関係はあまり良いとは言えません。私自身バツイチなのですが、離婚の際には世間体を気にして大反対、今の夫(夫もバツイチです)のことも最初から受け入れてくれず、その後生まれたわが子たちに関しても「孫だとは一切思わないし会いたくもない!」と言い張っていると実父から聞いていました。母は障害への偏見も強く、元々好き嫌いをハッキリ態度に出し、一度相手のことを嫌い!となるとそれ以降は一切受け入れないので、そもそも「会いたくない」と言っているのに、障害のある長男を受け入れてもらえるかは心配の種でした。実家が遠いこともあり、頻繁には会わないのですが、対照的に父は「会ったことがない孫であっても孫には変わらないから」と毎月仕送りをしてくれています。御礼の電話の度に子どもたちと楽しそうに話す様子を見て「父はやっぱり孫に会いたいのだろうな…」と私も夫も申し訳ない気持ちになっていました。家族旅行で実家のある県へ。そこで両親に会い…そんなある日、家族旅行で実家のある県へ行く機会がありました。仕送りしてくれている父への感謝を会って伝えたい。せっかく近くまで行くのだから、両親に孫を会わせたいと考えました。実家で会うよりも外で会う方が良いだろうと、宿泊しているホテル近くの駅で待ち合わせて、喫茶店で話すことにしました。喫茶店で自己紹介をするやいなや、定型発達の次男は当たり前のように私の両親の間に座り、うれしそうに2人と手をつなぎました。甘え上手な次男のニコニコと人懐っこい様子に、二人は「可愛い、可愛い」と目を細めました。一方長男は、様子を伺いオドオドして、私の手を離しません。父が長男に少し質問したら、関係ないことまで話し出したり、独り言を言いはじめたりといつもと違う環境に興奮気味なのか声の大きさの調節もできずにいました。Upload By 発達ナビ編集部長男がパニックを起こしてしまい…次男と夫がトイレで席を立つと、母から責めるような言葉を投げかけられました。長男の様子が気に入らなかったのでしょう。場の空気が張り詰めたキツイ感じになりました。そんな母を父は諫めてくれたのですが、長男は場の雰囲気を感じ取りパニックを起こし大声をあげて号泣してしまいました。私は長男を抱き締めて「大丈夫だよ。喧嘩じゃないからね。ママはここにいるよ」と背中をさすり続けました。Upload By 発達ナビ編集部その間もずっと母から「小さい子じゃあるまいし泣き喚いて恥ずかしい」「何話してるのかさっぱり分からないし、独り言をずっと言ってて気持ち悪い」「甘やかしてるからそうなるんじゃないの?障害だからって周りの人にも迷惑でしょう?」など厳しい言葉を言われ傷つきましたが、ただ長男の背中をさすって母の言葉をやり過ごし続けました。昔からこう言う人だからと、あきらめていたのだと思います。それを聞いていた父は、優しい口調で「ビックリしたんやなぁ。電話で毎月じぃじと話してるけど初めての土地で初めて顔合わすし、そら怖いやろう。でも、じぃじは泣いてもその顔すらもうれしいんやでぇ。それだけ大きい声で泣けるんは元気な証拠やぁ。お前もよう頑張ってるなぁ。2人を見れば分かるよ。大変やと思うけどえぇお母さんやっとる。頑張っとるなぁ」と長男の頭をなでてくれました。父が話してくれたこと夫と次男がトイレから戻ると、父が持病のかかりつけの医師に、長男の発達障害について話したときのことを教えてくれました。なんと父自身、多動傾向があり衝動性が強く、集団生活が苦手で会社を辞め自営業に転職したことや、国語はからっきしなのに、計算だけはものすごくできたというのです。医師に「ご自身も発達障害の傾向があったのかもしれませんね」と言われたと話してくれました。それを初めて聞いた母は「なんでそんなこと言い出すんよ?!そんなわけないやろ?!」と苛立って声を荒げました。父はしれっとした感じで「障害があろうとなかろうと、この子はこの子でただの個性や。それをぐちぐち言える権利が俺らにはないんやで?この子のありのままを受け入れてやらんとやろ?」と泣いている長男の手を取り何度もさすってくれました。その言葉がとてもうれしく、涙がこぼれそうになりました。Upload By 発達ナビ編集部次男も「お兄ちゃんはね、パニックになってるだけなの。優しくてね、僕の自慢のお兄ちゃんなの。だからねチクチク言葉はダメなんだよ?」と母に言うと、母は父と次男に「自分が悪いの?」と非難するような視線を送りました。父は「何も気にすることはないし、この子はこの子。しっかり育てるんやで」と笑ってくれました。母だけが納得のいかない表情をしていました。長男の優しさに触れて別れる時間となり、みんなで両親を駅まで見送りに行きました。母は数ヶ月前に足を骨折してから、骨粗鬆症もあり治りが悪く、足を引きずるようになっていました。父からも母が週5だった仕事を週3にしていることを聞いていたので子どもたちにも「ばぁばはね、足が悪いからゆっくりしか歩けないんだよ。抱っこをねだったり、手を引っ張って急かしたらダメだよ」と言い聞かせていました。父と母と手をつないで歩いていた次男がふざけて手を引っ張り駆け出そうとしたりしていたのを見て、長男が「そんなことをしてはダメ!」と強い口調で言いました。その後、母の元に駆け寄ると「ばぁば、足痛いんでしょ?大丈夫?弟がごめんね。無理しないでね」と顔を見上げ心配そうに声を掛けていました。母は驚いて戸惑うような表情をしていました。先程パニックを起こした長男の様子を見ていたので、そんな気遣いができるなんて想像できなかったのだと思います。その様子を見た父は、目を細めて微笑みながら長男の頭をなでて、母に「この子は優しい子やないか?違うか?」と言い、「ありがとうな。ばぁばを気遣ってくれたんやなぁ」と長男をたくさん褒めてくれました。母は父の言葉に目を伏せて黙って頭を垂れていましたが、「ありがとうね。心配してくれたんやね」とそのときに初めて長男と言葉をかわし、頭をなでてくれました。駅に着き、別れたあとも両親は改札の向こう側から何度も振り返り、手を振ってくれました。Upload By 発達ナビ編集部母に対して思うことすぐさま、母の認識や価値観を変えるのは難しいと思います。ですが、最後に長男の優しさに触れて、長男自身を見てくれた、と少しだけ安心しました。完全に解決したとはまだまだ言えませんが、少しばかりは母との関係も前進したのかなと感じています。エピソード提供/みぃこイラスト/SAKURA(監修:三木先生より)優しいお祖父様ですね。ご自身が苦労をされて、そしてそれを悩みながらを乗り越えられた経験のある方は、同じような困難を持つ人に受容的になれますよね。またお祖母様も長男さんと気持ちのこもったやり取りができることによって、「障害」というフィルターを外したコミュニケーションができたんですね。こういう関係を積み重ねていくことで、またみなさんの関係が良くなっていくのだと思います。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年06月28日SSRIはどんな薬?適応となる症状は?SSRIとはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の頭文字をとったもので、こだわり行動、うつ、不安障害、場面緘黙、潔癖症などの症状緩和に使われる薬剤です。発達障害のある子どもには、「自分が一番にならないと気が済まない」「方法や手順などに自分の中での確固としたルールがあり、状況に合わせて柔軟に変更することができない」「一つのことに集中しすぎて周囲が見えなくなる」と、いった特性が見られることがあります。これが「こだわり行動」といわれるものです。不安障害は、突然理由もなく激しい不安に襲われ、心臓がドキドキしたり、めまいがしてふらふらしたり、呼吸が苦しくなってしまうといった症状で、パニック障害とも呼ばれます。場面緘黙とは、家族などとは問題なくおしゃべりできるのに、幼稚園や学校など特定の場所になると話せなくなってしまう症状です。ただ、一口に「こだわり行動」と言っても、その程度はさまざまです。環境を整えたり、周囲が発達障害の特性を理解して接することで、生活に支障がない程度に改善できることも多いでしょう。その一方で、こだわり行動や突発的な不安からイライラが募り、自分や他者への暴力的な衝動に駆られたり、外に出られなくなったり、といった問題がある場合には、薬の力を借りて症状を緩和させることも選択肢の一つです。SSRI(フルボキサミン)の投薬の適応となる症状には、ほかにも強迫性障害、潔癖症などが挙げられます。強迫性障害は、「十分に洗ったのに、くり返し手を洗い続ける」「持ち物がなくなっていないか、何度も確認してしまう」「服が少しでも汚れると、全部着替えないと気が済まない」といった行動となってあらわれます。また潔癖症があると、人が使ったものがどうしても触れなかったり、手指が汚れるのが嫌で手づかみで食べることができない、といった困りごとがでてきます。SSRI(フルボキサミン)の効果・効能は?SSRIには、脳内の神経間でセロトニンという神経伝達物質の再取り込みを阻害する効果があります。セロトニンには心のバランスを整えてくれる働きがあることから、「幸せホルモン」の異名でも知られています。セロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり、不安を感じたりしやすくなると言われています。SSRIは、セロトニンの再取り込みをしにくくすることで、脳内のセロトニンの量を安定させ、気持ちを穏やかにする働きをします。SSRIにはいくつかの種類がありますが、本記事ではこだわり行動、うつ、不安障害、強迫性障害などに使われる「フルボキサミン」について見ていきましょう。SSRI(フルボキサミン)は、日本では「ルボックス」「デプロメール」の商品名で販売されている錠剤です。また、「トーワ」の商品名で、ジェネリック薬も出ています。いずれも8歳以上の小児の強迫性障害にも使用が認められています。SSRI(フルボキサミン)の用法・用量は?SSRI(フルボキサミン)の錠剤には、25mgのもの、50mgのもの、75mgのものの3種があります。8歳以上の子どもがSSRI(フルボキサミン)を服用する場合は、1日1回、就寝前に25mgの錠剤1錠からスタートします。1週間以上継続したのちに、朝に25mg1錠、就寝前に25mg1錠、合計50mgに増やします。薬の量は、年齢や症状に応じて医師が判断し、1日合計150mgを超えない範囲で増減します。ただ、増量する場合は、1週間以上の間隔を開け、1回ごとの増量は25mgまでに留めるように推奨されています。医師は、必要最小限の服用で効果が出るよう、慎重に経過を観察しながら処方量を調節します。自己判断で勝手に薬の量や回数を増やしたり、減らしたりしないことが大事です。副作用の心配はない?子どもへのSSRI(フルボキサミン)の投与で最も懸念される副作用は、自殺念慮、自殺企図があらわれる可能性です。24歳以下の患者に投与した場合に、リスクが増加することが報告されています。子どもがSSRI(フルボキサミン)を使う場合、保護者は自殺念慮や自殺企図があらわれる可能性についてきちんと知っておくことが重要です。そして、担当医と緊密に連絡を取り合いながら、経過を見守ることが大切です。自殺念慮、自殺企図のほかに、下記のような副作用があらわれることもあります。・眠気・吐き気・悪心・口の渇き・便秘・めまい・ふらつきまた、投薬を急に中止したり、急激に減らしたりすると、頭痛や吐き気、めまい、不安感、不眠、集中力の低下などがあらわれることも報告されています。服用を止めるときにも、徐々に減量していくなど、医師の指導に基づいて慎重に行いましょう。親子で抱え込まずに、医師に相談をASDなどの発達障害による特性は、個人差も大きいものです。また、成長するにつれて、特性が変化していくことも大いにあります。ただ、強いこだわりや不安、過度の潔癖症などによって、日常生活に困難を抱えている場合は、薬によって症状を緩和していくことも検討したい選択肢の1つです。困りごとを抱えたままでは、強いストレスにさらされ続けることになったり、失敗や挫折が続くことで自己肯定感が低下たりすることが考えられます。そうした状態が長く続くことで、身体的不調、うつ症状、不登校やひきこもり、暴力といった二次的な問題に発展してしまうこともあります。笑顔で過ごせる時間を増やしていくためにも、家庭のなかだけで抱え込まずに、医師や専門家に相談することが大切です。 そして、投薬をする場合は、副作用のリスクなどもしっかり理解したうえで、医師と手を取り合いながら適切な服用をしていくことが重要です。参考:日本薬局方 フルボキサミンマレイン酸塩錠|ニプロ株式会社医療用医薬品 フルボキサミンマレイン酸塩|KEGG データベース
2022年06月26日STEAM教育って何?
子育て楽じゃありません
細川珠生のここなら分かる政治のコト