「発達障害」について知りたいことや今話題の「発達障害」についての記事をチェック! (14/98)
赤ちゃんの頃から気になっていた娘の発達。成長して一見目立つ困りごとはないけれど…はじめまして、マミヤと申します。わが家は主人、私、小学校3年生の娘(8歳)の3人家族です。娘のしぇーちゃんは2歳4ヶ月の時に自閉スペクトラム症と診断されました。娘が産まれてすぐ「寝ない、飲まない、泣き止まない」ことで育てづらさを感じ、歩き出してからは多動や意思疎通の難しさが気になるようになりました。1歳半健診では発語の少なさや指差しができず「要観察」。その後自閉スペクトラム症の特徴と思える行動(逆さバイバイやクレーン現象など)が増えてきたので、「娘に発達障害があるのではないか」という思いが私の中で次第に強くなりました。その後、発達相談を経て、娘が2歳になってすぐに療育機関へ通うことになりました。就学までいくつもの療育機関に通い続けた結果、2~3歳頃に心配していた多動は徐々に落ち着き、オウム返しも減り、年長になる頃には、娘は一見目立つ困りごとはない元気な女の子に成長しました。Upload By マミヤ小集団療育でも一斉指示が通らない、聴覚過敏もある娘。就学先は…ただ、目立つ困りごとがないからといって、娘の自閉傾向がなくなったわけではありませんでした。年長で小集団療育に通っていた時のことです。療育に参加していた子どもは娘を入れて5人。子どもたちの目の前で、先生が活動の開始を伝えるのですが、何回やっても娘には先生の「それでは始めて下さい」が聞こえませんでした。さらに、活動を始めている周りの子どもを見ることもありません。個別の声がけをされるまでボーっとしているのです。また、雨が激しい日や蝉の声が聞こえる時期には、 娘は「外の音で室内の声が聞こえない」と訴え、これではとても通常学級の中で学校生活を送れるとは思えませんでした。娘をよく見て下さっていた小集団療育の先生のすすめもあり、娘が楽しく通えることを優先して特別支援学級の情緒障害学級を希望しました。Upload By マミヤ登校渋り、不登校…心配事もあるけれど、娘の個性に寄り添ってUpload By マミヤ娘は好奇心旺盛で負けず嫌いです。「やりたい!」と思ったら何度も練習して習得するガッツがあります。好きな言葉は「あきらめない」。これは大好きな戦隊ものや美少女戦士から影響を受けていると思います。活発でゲームが大好きなのでお友達は男の子が多いです。逆に細やかなコミュニケーションは苦手で親しい女の子の友達はいません。また正義感が強く、納得できないことをいつまでも気にしたり、自分が理解できない行動をする相手を嫌悪したり怖がったりしてしまうことがあります。「学校にいるだけですごく疲れてしまう」と教えてくれたこともありました。特別支援学級に入れたので「はい、安心」とはいかず、入学後は娘の登校しぶりや不登校など現在も悩みはつきません。娘の小さい時の様子や小学校生活での出来事、親子関係などもお伝えできたらいいなと思っています。執筆/マミヤ(監修:新美先生より)マミヤさん、初めまして。しぇーちゃんの魅力が伝わる素敵な初回コラムをありがとうございます。好きなものがいっぱい、好奇心旺盛で負けず嫌いで、好きな言葉は「あきらめない」ってとっても素敵ですね。また「学校にいるだけですごく疲れてしまう」と自分の状態を言語化できるのもすごいです。学校という枠は、しぇーちゃんには窮屈なところがあるのかもしれません。そんな学校とのお付き合いで日々の調整を担う親のほうもとっても疲れますよね。コラムでいろいろ聞かせてもらえるのが楽しみです。よろしくお願いいたします。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月16日2人兄弟を育てるゆーとぴあさん。2歳児健診で長男は言葉が遅いと発達相談を受け、親子教室に通います。次男は言葉の遅さに加えて多動傾向があるにも関わらず、健診で問題なしと言われたことに疑問を抱き、後日保育センターに相談して長男と同じ親子教室に通うことにしました。それでも次男が心配で、同時にほかの施設の教室にも参加させ幼稚園に備えました。入園式は制服を身につけるのを嫌がり、抱っこしていないと走り出してしまう状態で通園に不安を覚えます。予想に反して次男はすぐに幼稚園に慣れたものの、先生から次男の問題行動の報告を受け、発達医療センターへ行くように言われます。さらになんと長男まで発達医療で診てもらうように言われ、就学のため特別支援級の見学に参加するように予定を組まれてボーゼンとするのでした。帰宅して夫に長男について、幼稚園での面談の報告をすると、見学して息子に合っていれば支援級でも構わないのではと冷静な返答。数日後、義理の叔母が家に押しかけ長男が支援級に入ることになったのかとまくし立てます。長男の発達障害は母親のゆーとぴあさんが原因なのではと、不躾で勝手な決めつけでものを言う義理の家族に怒りと悔しさを募らせるのでした。 お父さんってもしかして? ただ質問しただけなのにーー 義理の叔母の言葉が引っかかり、図書館で大人の発達障害について調べるゆーとぴあさん。専門書に発達障害は遺伝するという記述を見つけます。自身が発達障害であるならば、両親のどちらかも発達障害の可能性があるのかもしれません。 それを確かめるべく、母親に聞こうと実家を訪ねて質問します。すると母は、ゆーとぴあさんは少し変わっているので発達障害かもしれないと思っていたと笑って答えますが、加えて遺伝なのかと聞くと途端に険しい表情に。 「亡くなったお父さんって発達障害だったのかな?」「うちのお父さんはそんなんじゃない!」 すぐに発達障害のせいにする最近の人の風潮に怒りをあらわにします。相談のつもりで聞いたのに、逆ギレのような受け答えをされてゆーとぴあさんは呆気に取られるのでした。 ◇◇◇ 息子の未来を考えるために相談したかっただけなのに、「発達障害」に対する世代からくる考え方の違いからか、議論の入り口にも立てない状態でした。ゆーとぴあさんの発達障害の可能性はすぐに受け入れましたが、父の可能性は受けつけず逆ギレした母。もちろん不確定の要素で、責めているわけでもないのに、子どもとしてこの状況はあまりに悲しいですよね。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 ※ADHDについてADHDの症状は最終的な神経経路で起こるとされ、原因は様々とされています。乳児期の外傷、分娩時の問題、妊娠中の薬物や飲酒、遺伝的な可能性等が記載されていますが、原因がわからないことがほとんどです。ADHD以外に自閉症スペクトラムの症状がある場合は、精神科や小児神経科等で診察を受けてみるのもよいでしょう。 ゆーとぴあさんの連載は、以下のサイトからもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。 監修者:医師 神奈川県立こども医療センター 産婦人科 松井 潔 先生 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2023年09月15日強いストレスとプレッシャー。小6ですでに二次障害の兆し学校で壮絶ないじめにあっていたけれど、勉強はできた私。私が小学生だった30年ほど前は、発達障害についてなんてほとんど誰も知りませんでしたから、親や先生を含め、周囲の大人は私を神童扱いしていました。持ち前のバイタリティで出世しつつあった父は、私にもそのバイタリティを求め、厳しく叱咤激励しました。「学校に行かなくなったら将来路頭に迷うぞ」「お前は頭がいい、エリートになれる。将来エリートになって、いじめっ子たちを見返してやるんだ」。普通の小学校高学年の子どもが、こうした言葉をどのように理解するかはわからないのですが、ASDの私はこうした言葉を字義通り解釈し、怖くて震え上がりました。そして、「死ぬ気で学校に行き続け、有名大学に入り、ゆくゆくは有名企業に入るなり弁護士とかになるなりしなければならないんだ」と思い込むようになったのです。小6の時、それまで無条件で可愛がってくれていた祖父が亡くなりました。唯一の心の支えであった彼を亡くした私は、さまざまな精神症状に苦しむようになります。教室に入るとき、どのような顔で、どこに視線をやりながら、どっちの足から入るか。何歩で、どういった角度で自分の席を目指すか……。そういったことを頭の中で一生懸命シミュレーションする。クラスメートの声が、すべて自分を攻撃し、嘲笑しているように聞こえてくる……。もし当時、医療とつながる機会があったなら、何かしら二次障害の診断が出ていただろうと思います。頼る先も、情報も選択肢もない日々でも、当時の親や先生が、私に障害があり、二次障害を起こしているであろう状況だなんて知るよしもありません。「子どもがメンタルに不調を感じたら大人と同じように専門家につなぐべき」などという知識もありません。私自身も、ただ自分が「頭がおかしく」て、「悪い」んだとばかり考えて、自分を恥じていました。勇気を出して相談したところで「あと少しなんだから頑張れ」とか、叱咤激励が返ってくるか、母の場合はショックを受けて寝込んでしまったりするだけだということもわかっていたので、自分が苦しいということは周囲に対してひた隠しにしていました。私が中学生になる頃には母の言動もだんだん異常になっていき、家庭生活も厳しさを増しました。自治体の広報だよりなどから「精神保健福祉センター」というものがあることを知り、親に隠れて電話相談に頼ったりしていました。しかし、結局そこでも理解ある対応はしてもらえず、「お母さんに感謝しなさい」などと叱責されてよけいに落ち込んだり……。結局、何十年もあとになってから、母は強迫症やためこみ症といった精神疾患だったことがわかったのですが、そういったことも当時は誰ひとり気づかなかったわけです。知識・情報と選択肢が欲しかった今となっては、周囲の大人には「子どもにも、学校に行く以外にさまざまな選択肢がある」「勉強ができること、エリートになることだけが、あなたの存在意義ではない」と教えてもらいたかったと思います。それだけではなく、発達障害も含めたさまざまな精神障害について、もっと世間に知識や情報が普及していてほしかったし、困ったときには家庭で抱え込んでいないで福祉など外側の人に頼っていいのだということも知っていたかったです。私はそれらのないまま、一人で傷だらけになり、いわゆる青春のすべてを勉強のために犠牲にして無理を重ねました。大学新卒時の就活がうまくいかなかった時には「エリートになっていじめっ子を見返す」という唯一の精神的支柱を失って完全に心折れてしまいます。その頃には母の精神状態もさらに悪くなっており、そのまま20代を準ひきこもりで過ごすことに……。今、発達障害についての知識は深まっていますし、子どものメンタルケアの環境も整いつつあるので、私のような状況に追い込まれる子どもは少なくなっているかもしれません。それでも、保護者のみなさんには、相手が子どもだからといって良かれと思ってさまざまなことを決めてしまうことはせず、多様な選択肢を見せて選ばせてあげてほしいと思います。たとえば、特別支援学級やフリースクールに行ったほうがいいかもという事態になったとき、保護者としてはできるだけ頑張って通常学級に行かせたいと思うかもしれません。しかし思い返すに、私の場合は通常学級にこだわりすぎず、特別支援学級やフリースクールに行かせてもらったほうが、いま背負っているような傷や二次障害を背負わずに済み、結果的に社会適応度も上がって、もっと楽に幸せに生きられたのではないかと思っています。もちろん、特別支援学級やフリースクールに行くことでのデメリットもあるとは思いますが、本人が教育を受ける中でできるだけ傷つかず、結果的に強くポジティブに生きられるようになることがいちばん大事なのではないかと、私は思うのです。支援を得ること、人と違う生き方をすることもとても素晴らしいこと、あなたが最も楽で幸せな道を選ぶのが大事なのだと、お子さんに伝えていただければ嬉しいです。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)障害者支援法という法律もできたように、時代とともに神経発達症に対するとらえ方には変化がみられています。しかし残念ながら神経発達症に対する支援や知識はさほど以前とは大きな変化がないように私は感じています。各自治体において医療・教育・福祉・保健の連携がまだまだないのも一因であると感じています。学校の先生、小児科医、精神科医などの神経発達症に関わる人びとの知識もまだ十分とは言えないでしょう。車いすのように目で見える障害であればわかりやすいのですが、神経発達症は困りごとが見えづらく、また障がいというより特性なので、わかりづらい面があります。最近は神経発達症に関する知識が深まったとはいえ、いまだにかかりつけ医でも診断することが難しいのです。特別支援学級やフリースクールに在籍していても、理解の乏しい環境下の場合、通えなくなるお子さんも多く目にしてきました。小・中・高と診断されないまま、大学生や社会人になって初めて受診する患者さんも多くいらっしゃいます。誰か一人でも傾聴して認めてくれる人がいれば最も楽で幸せな道を選ぶことができるはずです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月15日自閉スペクトラム症のスバル、幼稚園年少の困りごと息子のスバルは3歳で自閉スペクトラム症と診断されました。2歳から通園していたプレ幼稚園は、診断を受けたと同時に退園になりました。その後、新たに幼稚園を探しはじめ、スバルを受け入れてくれる幼稚園に出合い、無事に年少から幼稚園に入園することができました。しかし、入園できたからといって全てがうまくいくわけではなく、入園当初はプレ幼稚園に通園していたときと同じように教室の中をふらふら歩いたり、教室を出て廊下の窓から車を眺めたりしていました。ところが6月のある日からピタッと歩き回らなくなり、座るべき時間に座り、話を聞くべき時間に話を聞くようになりました。話は聞いているだけで右から左へ抜けてしまっているみたいでしたが、それでもスバルの中で点と点が繋がるような何かがあったのだと思います。それをきっかけにスバルは集団生活のコツをつかんだようで、少しずつ社会のルールを学習しクラスへ馴染んで行きました。スバル一人と向き合うとたくさんの困りごとがあるのですが、3歳になったばかりや4歳の子どもが一緒に活動する「年少クラス」という空間では個人個人の成長の差が激しく、スバルの困りごとは飛び抜けて目立つものではなくなりました。この時は「スバルはこのまま『ちょっと変わったクラスメイト』として小学校では通常学級で過ごして行くのかな」と思っていました。年中のスバルの困りごと年中になり、周りの子どもたちの成長に置いていかれる形でスバルの困りごとが目立つようになりました。細かいことはたくさんあるのですが、大きく気になる部分は3つ。1つめはコミュニケーション能力。人が好きでグイグイと距離を詰めるわりには、一方的でズレた会話をするのです。その様子はまるで一人だけ別に撮影した動画を合成しているようなチグハグなものでした。いわゆる「空気が読めない」立ち振る舞いなのですが、よく観察すると人の顔色なんかはしっかり読んだ上で空回りし続けている感じもしました。また自分の得意な分野に関しては大人のような言葉を使いまくし立てるように話すのに、そのほかのことは2~3歳年下のような語彙力でたどたどしく話しました。2つめは運動能力。のちに「発達性協調運動症(発達性協調運動障害)」と診断されるのですが、年中の時点では両足ジャンプがかろうじてできるくらいで、ケンケンはもちろん片足立ちすらできませんでした。ダンスは踊れないし、あらゆる道具は使えないし……。運動面で苦手なことに関しては幼稚園の先生がマンツーマンに近い形で手伝ってくれていました。3つめは集団の中では集中して話が聞けないこと。プレ幼稚園の頃から、一対一で話すと理解ができるのに先生が集団に呼びかけた「おかたづけの時間ですよ」と言った一斉指示が通らないという悩みがありました。幼稚園に入園してからのスバルは日に日に成長し、簡単な指示は通るようになりました。しかし、工程が複数あるような複雑な指示になると最初と最後くらいしか覚えていないようでした。Upload By 星あかりそれらのことを踏まえ、年中の冬に療育の先生から「就学相談」の資料をもらった時には少人数で学べる「特別支援学級」を進路の候補として考えるようになりました。家や公園など少人数で過ごすときと比べて、集団の中に入ると爆発的に困りごとが増えるスバルをずっと見てきたのでぼんやりと「少人数が合っているのだろうな」と思いました。ただ自分自身が経験したことがない「特別支援学級」に少なからず不安はありました。特別支援学級ってどんなところ?いざ学校見学へ!年長の夏にある就学相談がスタートする前に、わが家の希望を固めておく必要がありました。特別支援学級を第一候補と考えてはいましたが、特別支援学級のことを私は何も知らないのです。そうと決まれば見学です。いろいろと調べた結果、学区の小学校の特別支援学級(知的クラス)、学区外の小学校の特別支援学級(情緒・自閉クラス)へ見学に行くことになりました。私たちの住んでいる地域は情緒・自閉クラスがある学校の数が少なく、情緒・自閉クラスへは学区外から越境して通学する人もたくさんいます。(※就学に関する制度は自治体により異なります)逆に情緒・自閉クラスを希望していても距離的に越境通学が難しい場合は、学区の小学校の知的クラスを選択する人もいます。当時同じ療育に通っていた仲間たちの中に特別支援学級(情緒・自閉クラス)を希望しながらも距離的な理由から知的クラスや通常学級を選択する人もたくさんいました。わが家は学区・学区外どちらの特別支援学級も候補に入れ、見学することにしました。どちらの学校も「納得するまで何度でも見学に来てください」と言ってくださったので、本当に何度も足を運びました。通常授業の日、イベントの日、穏やかな日、荒れている日。夫婦で行ったり、一人で行ったり、スバルを連れて行ったり、義母を巻き込んだりもしました。その結果、学区外の情緒・自閉クラスをわが家の希望として就学相談に挑むことに決めました。情緒・自閉クラスの特別支援学級の中で活動し成長するスバルの姿が一番ハッキリと想像できたからです。見学に行く前は、閉ざされた印象を持っていた特別支援学級でしたが、そこは明るくのびのびと過ごせる「ホーム」のような場所でした。見学に行くたびにニコニコと迎え入れてくれる子どもたちにスバルを重ね、特別支援学級での生活に明るい未来を感じました。知らないがゆえの漠然とした不安はなくなっていました。この時すでに、季節は年長の夏になっていました。年長の夏、就学相談がスタート就学相談がスタートしました。春に就学前検査(発達検査)があり、夏から説明会などがいくつかと面談の日がありました。面談の日は私と夫とスバルで行きました。療育ママ友の口コミで「母親だけで行くよりもスーツを着た父親を同行させると話し合いがスムーズ」と聞いていたので、夫にはスーツを着せました。まずは呼ばれた子どもが数人ずつ部屋に入り、係の人の指示に従って行動する様子を、数人の大人がファイルに何か書き込みながら観察する……そんな緊張感のあるオーディションみたいな部屋をいくつか回って、最後に面談がありました。面談では学区の知的クラスではなく、わざわざ学区外の情緒・自閉クラスを希望していることについて聞かれました。どうやら数の少ない情緒・自閉クラスは狭き門のようでした。私は用意して来たありったけの志望動機を伝えました。渾身のスピーチだったと思いますが、面接官には学区の小学校の知的クラスを薦められました。「情緒・自閉クラスの希望者が多すぎて全員の希望は聞けない」という意味の話を遠回しに言われました。しかし今まで真剣に悩んで決めた私たちの希望を、簡単には諦めることができません。結果的に希望通りにいかなかったとしても、この場では「何と言われても情緒・自閉クラス希望」である意志を伝えました。Upload By 星あかりそして秋の終わり「学区外の小学校の特別支援学級(情緒・自閉クラス)」に就学が決定した通知が届きました。小学1年生から始まった特別支援学級での生活フタを開けてみると、見学時には1クラスしかなかった情緒・自閉クラスは3クラスになっていました。新1年生だけではなく、ほかの学年にも新しく入って来た子どもたちが増えていました。多くの子どもが門前払いされてきた扉が、少し開いたのだと思いました。現在スバルは、先生やクラスメイトに恵まれて毎日楽しく通学しています。苦手なことも多いスバルですが、特性に配慮した学習方法で得意を伸ばし、苦手をちょっと底上げしながら学んでいます。さんざん見学して悩んで悩んで決めただけあって、スバルにはこのクラスが合っていたと思います。願わくば、一人ひとりの子どもに合った学びの場がいつでも開かれていますように。執筆/星あかり(監修:初川先生より)就学にまつわる幼稚園年中時からの経緯と思いのシェアをありがとうございます。入念な情報収集、スバルくんの課題を見取ること、それをふまえた就学先の希望。あかりさんがスバルくんの小学校生活に向けて、かなり周到にご準備されたことがよく伝わってきます。あかりさんは年中の頃から就学について・就学相談についての準備を始めたとのことですが、自治体によっては、年長の4月以降でないと就学相談の問い合わせ自体受付されない場合もあります。そのあたりはお住まいの自治体にご確認してください。ただ、特別支援学級や通常学級に関して、学校公開など広く公開されている際に見学することは年中時でもそれ未満でも可能です(※コロナ禍によって地域住民に公開されていない場合もあるので事前に学校に確認した方が安全です)。未就学児を連れていくとなかなか落ち着いて見学できないと思いますので、可能ならまず保護者だけで見学に行くのをおすすめします。特別支援学級がどんな場所なのかということは、あまり知られていないことも多いと思います。見学をしたうえで、わが子に合いそうかどうか検討することはとても大事です。また、あかりさんがされたように、特別支援学級のさまざまな場面(教科学習、自立活動、行事の練習など)を見に行く、一人で、あるいは家族と見に行くなど何度か足を運ぶことは素晴らしいことです。一度見た印象で決めてしまうのはあまりおすすめしません。年長になり、就学相談に正式に申し込むことで、特別支援学級の見学を就学相談担当が仲介してくれることもあります。そのあたりも自治体によりなので、ご確認ください。スバルくんは、あかりさんの入念なリサーチと「情緒・自閉クラスの特別支援学級の中で活動し成長するスバルの姿が一番ハッキリと想像でき」、それを就学相談の場で熱くお伝えになり、また、就学相談担当による行動観察や検査の結果など総合的に判断されて、その通りの提案が出て、情緒・自閉クラスの特別支援学級に就学されたのですね。現在楽しく通学できているとのこと、何よりです。このコラムを読んで、こんなに早く準備に動き出さなければならないのか等焦りや不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、就学相談にエントリーすること自体は、年長の春夏ごろでも十分に間に合います。また、秋には各学校で就学時健康診断が行われますが、そこで就学相談を勧められて申し込まれる方もいるのでそれ以降でも間に合います(ただ、締め切りもあるので、悩んでいる方は秋のはじめごろにはエントリーすることをおすすめします)。就学相談はさまざまなプロによってお子さんが小学校で充実した生活を送るためにはどのような環境で、また周りの大人がどのようなことに気をつけて(どのような合理的配慮をして)過ごしたらよさそうかを検討し、提案という形で保護者にフィードバックするものです。お子さんの今の様子をもとに、少し先の未来について一緒に検討してくれる場ともいえます。どこに就学するかは提案が出てから家庭でまた考えてみることができます。そして、お子さんが最終的にどこに就学するのであれ、就学相談でのお子さんの行動観察や発達検査の結果などをふまえた見立ては入学する学校に共有してもらえるので、学校がお子さんを受け入れる準備を整えた形で入学式を迎えることができます。そういう意味で、就学相談に申し込むこと自体に葛藤を感じる方は、ぜひ前向きに検討していただければと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月14日3歳でDQが境界域であることがわかった息子。自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの特性もありそうで…現在6歳の息子は、3歳9ヶ月の時に市の発達支援センターで「新版K式発達検査」を受け、3歳0ヶ月相当の発達で境界域であることが分かりました。まだ医療機関を受診していないため正式な診断はないのですが、日頃の行動を見ていると、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの特性がそれぞれ当てはまるように思います。服が濡れるとすぐ着替えたがる、大きな音が苦手ですぐ耳をふさぐ、強い匂い(特に食べ物の匂い)が苦手、急な予定変更や初めての場所が苦手、お気に入りのテレビ番組のナレーションやYouTubeのセリフなどを丸覚えして話す……これらがASDの特性の表れではないかと私は感じています。また、じっとしているのが苦手で大抵モゾモゾしている、園では先生の説明が長くなると途中で集中を欠き、近くのお友達としゃべったりよそ見をし始める、相手が話している途中で飽きてくると自分がかぶせてしゃべってしまう、会話が一方通行になりがち、片づけが苦手で、自分がモノを置いた場所をすぐ忘れる、興味がすぐ別のものに移る、イライラのコントロールが苦手……などといった多動性・衝動性もあるように感じています。天真爛漫な甘えん坊で、おしゃべりが大好きな息子。絵本やDVD、YouTubeなどが大好きで語彙が豊富で表現も面白く、大人を笑わせるのが得意です。ちょっと内弁慶で人見知り、失敗するとクヨクヨしがちなところもありますが、わが家のかわいいかわいい宝物です。しっかりと目も合うし、言葉が出るのも早く、コミュニケーションも取りやすかった息子。まさかのちに発達の遅れがわかるとは、思いもよりませんでした。まるでパリピ⁉陽気な酔っぱらい⁉はしゃぎだしたら止まらない乳幼児期の息子乳幼児期からおしゃべりが大好きな息子でしたが、1歳後半くらいからでしょうか、しゃべり出したり、はしゃぎ出したりしたら止まらなくなるようになりました。無邪気でかわいいのですが、「この陽気な酔っぱらいみたいなテンションの高さは誰に似たんだろう……。夫も私も物静かなほうなのに……」と思うほどでした。そして1歳11ヶ月頃、保育園で習った歌を先生から聞いてYouTubeで流してあげると大喜びして踊るようになりました。陽気に歌い踊る様子はパリピのようで(?)とてもかわいかったのですが、何回も何回も繰り返し再生させられ一向に止まりません。さすがにそろそろ終わりにしようと「もうおしまい」と言うと息子はギャン泣き!おさまるまで待つのが大変でした。さらに息子はこれ以外の遊びに興味を示してくれなくなってしまいました。園でもそんな感じだったと連絡帳に書いてあります。毎日毎日踊り続ける息子を見て、他の遊びはしないのかな?と疑問に思いつつも、でもそれも子どもだからかなと思っていました。Upload By ユーザー体験談その後2歳になるとイヤイヤ期が始まり、息子のパワーが増大!私の体調が悪い時や家事をしている時でも「一緒に遊んで!抱っこして!」などと絶対に譲らず、「ちょっと待ってね」ができないことにしんどさを感じ始めました。「日頃仕事で構ってあげられていないし、子どもだから仕方ないよね」と思っていましたが、これらが『子どもだから仕方ない』というレベルではないということが1年半後に分かるのです。歯科健診で大パニック、内科健診では着替えられず…。それを見た医師からの言葉は月日がたち、3歳6ヶ月児健診を受けた時のことです。臨床心理士さんによる検査(積み木を使った検査や、絵を描く検査など)が終わった後、別室で歯科健診がありました。歯医者さんにあるようなリクライニングの椅子に座って、椅子が倒れた状態になったところで、上からライトを照らして口の中を先生が診てくださるといった、歯医者さんでの診察と同じような流れだったのですが、園での歯科健診しか知らない息子にとっては、初めてシチュエーション。それが怖かったんだと思います。椅子から降りようと大泣きして大暴れしたのです。その様子に驚きつつも、私は息子の体を押さえて健診をしてもらいました(先生が優しかったのはせめてもの救いでした)。Upload By ユーザー体験談他にも泣いてる子どもや嫌がっている子どもはいましたが、息子の嫌がりぶりは飛び抜けていたように思いました。でも、その時点での私は「すいませ~ん(苦笑)」くらいの感じで、「まあ子どもだし仕方ないか~、うちの子ビビりやなぁ(笑)」と思っていました。歯科健診のあとの内科健診では、受ける前に部屋の一角にマットを敷いたスペースがあり、そこで服を脱がせてパンツ一丁にさせ、持参したバスタオルを体にかけて受診するよう指示がありました。息子は、歯科健診でのパニックが尾を引いていて、なかなか切り替えられず、「服脱ぐの嫌!」と言って譲りませんでした。息子のあとに診てもらう予定だった子ども何人かと順番を代わってもらったくらいです。10分くらいして、ようやく息子が落ち着いたので内科健診を受けました。その時先生が息子がなかなか着替えられなかったこと、そしてそれまでの検査結果を見て「できることとできないことの差が大きいね。この場で断定はできないけど、今後発達面で気になることが出ないか、様子を見たほうがいいかもしれません」と言ったのです。Upload By ユーザー体験談発達面の指摘を受けショック!市の発達支援センターへ相談すると…この医師からの言葉には、やはりショックを受けました。これまでも、息子の落ち着きのなさ、執着の強さや衝動性の強さに若干の「育てづらさ」は感じていましたが、「まあ、子どもってそういうもの?」「育てづらいと思うのは、私が過敏だから?考えすぎ?」と杞憂だと思いたい気持ちもありました。なので、「やっぱりそうじゃない可能性がある」という事実は、それなりに重くのしかかりました。一方で「やっぱり杞憂じゃなかったか。私の予感、当たったかもな」という、腑に落ちた感もありました。その1ヶ月後、息子に対して感じていた「育てにくさ」を誰かに相談したいと思い、まずは市の発達支援センターに電話をして、いま悩んでいることを担当者の方(心理相談員の女性)に聞いてもらいました。すると、「お子さんはいま保育園に通われていますか?その場合、保育園とも情報共有をしたいので、発達支援センターの相談員が保育園に赴いて、保育園で発達検査を行うことになります」と言われたので、そうしてもらうことにしました。そして、息子が3歳9ヶ月の頃、息子が通っている保育園で発達検査(新版K式発達検査)をしてもらい、後日診断結果をいただきました。全領域、DQ80、3歳0ヶ月相当の発達で境界域とのことでした。境界域とわかり夢を一つ絶たれたような気持ちになったこともあったけれど…私は、20代の頃に学習参考書の編集者をしていたこともあって、子どもの教育にはとても関心がありました。「子どもの成長に合わせて一緒に勉強して、私も学び直しをしたい。私も勉強で失敗したり頑張ったり、楽しさを感じたりしてきたので、その経験が息子の学びの役に立つこともあるのではないか」とも思っていたので、息子の認知機能が弱い、つまり、知識や思考を広げたり深めたりすることが難しいという事実を知ったときは、正直、夢を一つ絶たれたような気持ちにもなりました。ですが、激しい落ち込みはありませんでした。というのも、目の前の息子は、時に育てにくさを感じるとはいえ、基本的には無邪気で面白くて、すごくかわいかった!また、同年代の子どもと比べると幼いところはありつつも、彼なりに成長している姿も見えました。私は「まあ、命があれば十分かな。息子と私たち親には、当初思い描いていたのとは別の課題が与えられたってことなんだ。じゃあ、これからはその問いに一生懸命取り組んでいこう」と思うようになりました。私は妊娠21週で流産したことがありました。その後数年間子どもを授からなかったのちにようやく授かった息子だったので、余計にそう思えたのかもしれません。息子の頑張りに気づくこと、「頑張りたい気持ち」をつぶさないことが、今私に与えられているミッション!現在、息子は字の練習をしたり、最近は絵を描くようになりました。園で他のお友達が書いている字や絵よりもつたないということは彼なりにわかるみたいで、「へただからやりたくないなぁ」と口にすることもあります。ですが、そう言いながらも一生懸命取り組んでいる姿が見られ、「頑張ってるところがかっこいいよ!ちゃんと上達してるよ!」と伝えています。自宅では通信教育のワークブックを一緒にすることもあります。きれいに字が書けなかったり、問いの意味がすっと理解できずにいらだっている様子も見られますが、こちらがイライラすることなく、落ち着いた様子でちょっと助け船を出したり、励ましたりすれば、ブツブツ言いながらも投げ出さずに取り組む姿勢も見られます。息子を見ていると、子どもってちゃんと「頑張りたい気持ち」を持っているなぁと思います(ただ、なにぶん不器用で、その気持ちをもって挑んでも出る成果が少ないので、本人も親も途中でいらだってしまう……といったこともしばしば起こっているのが反省点です)。息子の頑張りに気づくこと、「頑張りたい気持ち」をつぶさないことが、今私に与えられているミッションなんじゃないかと思っています。息子が、自分で幸せをつかめる人になれるよう、一緒に進んでいきたいです。Upload By ユーザー体験談イラスト/SAKURAエピソード提供/苗(監修:鈴木先生より)誰でも障がいがあると告知されればショックは隠せません。仮にASD傾向がありそうだなと思っていても医師からの告知は重いものがあります。神経発達症のお子さんでもDQの値はさまざまです。たまたま今80だとしても伸びる可能性はあります。知的ボーダーラインや知的発達症は、ASDやADHDとは別の疾患です。正確には5歳以上になってIQテストをして初めて知的な面での方向性がわかります。何ができないかではなく、何ができるかに注目してあげるといいです。いろいろなものにチャレンジして頑張っているのであれば「がんばりカード」を作って、たとえば頑張った毎にシールなどを貼って3枚たまったらどこかに行けるなど、ご褒美を与えるトークン法が有効です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年09月13日2歳まで発語ほぼなし、3歳から療育へ…不安でいっぱいだった私しのくんは、2歳まで意味のある発語がなかったことがきっかけで、ことばの教室へ通うことになり、5歳になった現在も続けています。また、集団行動が苦手だったため、3歳からは療育センターにも通うようになりました。初めの頃は、どうしたらいいのか全く分からないことばかりで、私のメンタルはボロボロ。不安でいっぱいの毎日を過ごしていました。そんなしのくんも気づけば5歳。心も体もずいぶんと成長しましたが、まだまだ同じ年の子どもと比べて言葉の遅れがあるなと感じます。たまたま出会った同い年の男の子。初めは楽しそうにしていたけれどそれはゴールデンウィークに家族で海に釣りに行った時のこと。偶然にも、しのくんと同じ年の男の子と出会いました。当時しのくんが大好きだったキャラクターの描かれた服をしのくんが着ていて、そのキャラクターの話で男の子と盛り上がっていたのですが……しのくんが何を言っているのかうまく伝わらず、男の子が相手をしてくれなくなってしまったのです。Upload By keikoしゃべっても相手に伝わらない、聞いてくれないと思ったしのくんは、相手を振り向かせるために大きな声で話しかけます。Upload By keikoUpload By keikoそして、その想いは虚しく……男の子に「声が大きくてびっくりする!」と言われてしまいました。その後しのくんは、小さな声でその男の子に話しかけていましたが、やはりしのくんの思いは伝わりにくいようでした。以前の私だったら落ち込んでいたはずの出来事。でも今は…しのくんは、自分の言葉で物事を表現することが苦手で、考えたことをそのまま口に出しやすい傾向があります。特にサ行とラ行の発音が苦手なこともあって、余計に何をしゃべっているのか、親は理解できるけどほかの人には分からないことが多いです。この時は、コミュニケーションの相手が同じ年の子どもだったので、なおさら伝わらなかったんだと思います。そして、そんなしのくんを見て一人で不安になって焦っているのが以前の私でした。以前の私だったら、「どうしよう!どうしよう!」と不安になって落ち込んでいたと思います。でも……今の私は違います。しのくんが男の子とうまく話せなかったときも、「いつかできるようになるさ」と、落ち込まずに割り切ることができました。Upload By keikoほかにも、以前はママ友からしのくんと同い年の子どもを連れて映画を観に行ったと聞いて、ざわざわしていたのが、今では「まぁ、いつか一緒に観に行けるさ」と思うことができるようになりました。こんなふうに「いつかはできるようになるさ」と、メンタルを揺さぶられなくなってきた自分に気がついた時は驚きました。「あれ?昔と違うな……?私のメンタルが成長している!?」と……(笑)「いつかはできるようになるさ」母としてのメンタルの成長。その理由は?こんな風に思えるようになったのは、今までしのくんの成長を見てきて、いろんな経験を重ねて、たくさんの支援と繋がって、安心していられることが大きいのかな?と思います。しのくんが今通っていることばの教室は、小学生になっても続けることができます。また、小学校に上がってからは、言葉に苦手がある子どもたちが通える「通級指導教室」もあります。何かあってもすぐに相談できる環境って本当にありがたいと思います。これからも前向きに「いつかはできるようになるさ」と思い、しのくんと頑張っていこうと思います。Upload By keiko執筆/keiko(監修:室伏先生より)keikoさんの心の変化を、具体的なエピソードを交えつつ分かりやすく伝えてくださり、ありがとうございます。以前のkeikoさんと同じように不安な気持ちでいらっしゃる親御さんの気持ちをほっとほぐしてくれるような、そんなあたたかいメッセージになるのではないかと思います。ここまでの道のりは簡単なことではなかったと思いますが、周りの方々の支援、そして何よりkeikoさんとしのくんの頑張りの賜物ですね。keikoさんがしのくんの成長を信じる、前向きなお気持ちは、きっとしのくんに大きな安心とkeikoさんへの信頼、そして安定した心の成長をもたらしていることと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月13日ほんのわずかな期待長男は年長になってから療育センターに通う日数が月1回から月2回になり、小学校入学のためのトレーニングがプラスされました(発達が同程度の子どもたちが10人ほど集まって、2時間くらい遊んだり工作したりして過ごす)。長男は自分の興味が乗らない活動を拒否したり、私の膝の上で丸くなったりしていましたが、療育センターに通い始めてから1年半ほど経っていたので、私はもしかしたら小学校では通常学級でいけるのではとほんのわずかな期待をしていました。Upload By 星河ばよ市の教育委員会による就学相談は年長の秋ごろにありました。私たち夫婦と長男を含め、集まった保護者とその子どもたちは15~20組ほど。そのうち子どもたちだけが別の部屋に移動し、保護者はそのまま待機しました。教育委員会の人たちは集められた子どもたちがおのおの過ごす様子を見て、それぞれの子どもにどのような支援が必要なのか、特別支援学級が望ましいのかそうでないかを判断するようです。子どもたちがその間どんなふうに過ごしていたのか私には分かりませんでしたが、賑やかな声はずっと聞こえていました。就学相談は小1時間ほどで終了しました。就学相談といっても何も相談はしていません。保護者はただ子どもの様子を見てもらっただけでした(※就学相談の内容や時期は自治体によって異なります)。Upload By 星河ばよ淡々と記された報告書……母の心は揺さぶられてそれから教育委員会より結果が届いたのは1ヶ月後のことでした。私は読み進めるのが怖い気持ちでした。第一、あんなに大勢の子どもたちを一斉に見て教育委員会の人たちは分かるんだろうかとも思いました。ところが報告書を読み進めると、長男のことが驚くほど見抜かれていました。(一部編集して抜粋)・身の回りのことは、ほぼ自立している・体の動きは良好である・気分や相手によって態度が変化したり、呼びかけに応じないことがある・興味・関心のある話は集中して聞くことができるが、興味のないことに対しての指示・理解は難しい・片づけや集合の声かけに対しては即座に行動できないため、個別の対応が必要である報告書に記された活字が、淡々と事実を伝えてきます。最後に書かれたこの文章が、まだ長男の発達特性を完全には受け入れられていなかった私にとどめを刺したように感じられました。「特別支援学級の就学が望ましい」Upload By 星河ばよおわりに私は、長男がいつか定型発達の子どもに追いつくと思っていました。長男の「今」を見ようとしていませんでした。発達障害グレーゾーンということが当時どうしても受け入れられなかったのです。だけど「特別支援学級の就学が望ましい」という教育委員会の言葉は、この現実を受け入れる1つのきっかけになりました。就学相談がなければ、私はもしかしたら長男を通常学級に入れていたかもしれません。今では長男にとって特別支援学級は落ち着いて過ごすことのできる、大切な居場所になっています。通常学級のみの在籍だったら、登校渋りがもっと強く出ていたかもしれません。教育委員会の客観的な視点とアドバイスがあったのは、私にとって本当に幸いなことでした。執筆/星河ばよ(監修:初川先生より)就学にあたっての逡巡する思いについてシェアしてくださりありがとうございます。就学相談で何をするかも自治体によって異なりますが、お子さんたちを複数名いっしょに集めて行う場合には、ミニ授業のようなことをしたり(着席する、先生の指示を聞く、指示に従って何らか作業をする)、担当の方が声かけしてそれへの反応を見たり、運動へと誘い、その際の身体の使い方を見たり……と内容(観察すべき観点)が決まっていることもあります。また、そうした集団での観察より前に、保護者の方から生育歴を聞いたり、お子さんに知能検査を実施したりといったことを行う場合もあるでしょう。療育機関や医療機関にかかっている場合は、そちらからの情報提供書を提出していただくこともあります。さまざまな情報を集めて、総合的にどのような就学形態がよさそうかという判断をし、「提案」という形でお伝えするものです。通常学級か、特別支援学級かに関して言えば、まずは1クラスあたりの子どもの数が違うこと、対応できる大人の数も違うこと(特別支援学級の場合、担任のほかに支援にあたる先生が複数入る場合もあります)が大きな違いです。また、学習内容についても、通常学級だと大半の子が理解できるペースで一斉に進んでいくことが基本なのに対し、特別支援学級だと個に合わせた学習内容を設定しやすかったり、着席して机上で行うものと活動を伴うものとの配分がより活動的なものであったりという違いもあります。知的にゆっくりなお子さん向けの特別支援学級だと学習そのものがじっくり進みます。情緒障害・自閉スペクトラム症のお子さん向けの特別支援学級ですと、学習の進みはそこまでゆっくりではないですが、環境調整や本人の興味関心に合わせることを少人数ゆえに重点的に行うことができます。星河さんの長男くんは、特別支援学級に就学され、さまざま葛藤はあったとのことですが、今となっては、長男くん本人が学級に安心感を感じて通うことができているとのこと、何よりです。就学にあたって、通常学級で大丈夫かなと信じたい気持ちの保護者の方にとっては、こうした教育委員会からの提案はなかなかに抵抗や葛藤を生むものかもしれません。ただ、就学前相談会では地域の専門家や長く就学相談を務めている方など、その道のプロがさまざま検討した結果としてお伝えしている場合が多いです。その提案は提案として聞いてみて、まだ入学まで時間もあると思うので、特別支援学級や通常学級の見学に行ったり、特別支援学級の先生とお話をしてみたり、あるいは療育の先生、園の先生などのお話も聞いて、家庭で検討していただければと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月12日1歳半健診が近づくにつれ、募る不安1歳を過ぎると歩いたり少し言葉を喋るようになったりと、目覚ましい成長を見せる息子。そして気になってくるのが1歳半健診のことでした。すでに健診が済んだお子さんのママたちから、身体測定などに加えて、『発語の様子』『指差し』『積み木を積めるか』といったことをみられたり、保健師さんや医師からのヒアリングがあると聞きました。1歳半健診の話題が出たのは、息子が1歳過ぎの頃。その当時は健診項目ができていなくても「そのうちできるかな」とのん気に構えていました。しかし息子が1歳半に近づくにつれ、「あれ、そういえばできていない?」と気づき、焦りはじめました。Upload By ネコ山多動傾向があり落ち着きがない息子。言葉も遅めで、1歳半の時点で意味のある言葉は「オイシー(美味しい)」のみでした。指差しをする様子もないので、いろんなものの名前を言いながら指さして見せても、息子はまったくといっていいほど反応をしません。積み木は積まず、打ち鳴らすばかり……。最終的に健診の数日前に、「カーカー(カラス)」と「あった!(〇〇あった)」を言うようになり、積み木もようやく積めるようになりましたが……不安な気持ちで当日を迎えました。落ち着けない身体測定・内科健診1歳半健診の会場に着くと早速走り出す息子。いつも通りの息子の様子に「やれやれ」と思ったと同時に、周りの様子を見てびっくりしました。大体の子どもがイスに座っていたり、立ち歩いていても親の近くから離れないのです。一方の息子はというと、会場前のロビーで目についた気になるものを見つけては走り出して触ったり、階段を行ったり来たりで落ち着きがありません。「おとなしく座って」と言っても無理だと思ったので、健診の順番が来るまで廊下や階段を行き来して過ごしました。順番が来て会場内に入ると、まずは身体測定と内科健診がありました。身長・体重・頭囲・胸囲の測定はおとなしく測られていました。内科健診も同様に、おとなしく私の膝の上で診察を受けていました。こう見ると特に問題なく見えるのですが、大変だったのは待ち時間。数分程度の待ち時間でさえじっとできず、持参した息子の気を紛らわせるためのアイテムを早々に使い果たしてしまいました。必死な私は会場の壁に人気キャラクターのイラストが貼ってあるのを見つけて「ほら見て!」と声をかけてみましたが撃沈。息子は赤ちゃんに大人気のキャラクターでさえまったく興味がなかったのでした……。Upload By ネコ山保健師との面談、最終的に脱走!母子手帳を出してついに保健師さんとの面談です。保健師さんは積み木をいくつか出すと、息子にお手本を見せてくださいました。しかし息子は保健師さんを見ていません……。机上に置かれた積み木で遊びだしました。その後何回か説明し直しても保健師さんの指示が伝わっていない様子です。保健師さんは次の「発語」の課題に進みました。「オイシー」「カーカー」「あった」が言えることを伝えたものの、保健師さんは微妙な反応……。「ママ・パパは言いませんか?」と聞かれてしまいました。1歳半のほとんどの子どもは「ママ・パパ」と親のことを呼ぶものなんだ……と少しショックを受けました。指差しの話題になっても、息子は保健師さんの話を聞いていません。先ほど出してもらった積み木に夢中です。「積み木は終わりにしようか、次はこっちを見てね」と促しても一向に積み木を離しません。最終的には途中で積み木遊びを邪魔されたことに気を悪くした様子で、面談場所から脱走していきました。発達支援教室を薦められるが……発語が遅めなことや意思疎通が取れないということで、保健師さんから自治体が運営する未就園児向けの発達支援教室を面談後に紹介されました。週1回集団遊びや親子遊びを通じて、発達が気になる子どもの成長を促すものです。(※発達支援教室等の支援内容や利用条件は自治体によって異なります)。多動だったり言葉が遅めの息子。「支援教室で発達に詳しい専門の方たちや、同じ年くらいの子どもたちと過ごせば言葉が増えるかも!私も、そんな息子との関わり方を学べるかも!!」と、瞬時に参加することを決めましたが、その後の保健師さんの言葉に絶望しました。「妹さんが生まれたばかりとおっしゃっていたのですが、預け先はありますか?きょうだいの同伴はできないんです」実家・義実家・そのほか親戚全てが遠方のわが家は発達支援教室に参加できず、息子の発達については『様子見』ということで、保健師さんとの面談は終わりました。Upload By ネコ山暴れる歯科健診発達支援教室に参加できず、失意の中での歯科健診でした。「歯科健診は多分なんともなくクリアできるだろう、ただしじっとしていれば」不安材料はあるものの、保健師さんとの面談に比べたら気持ちが楽です。息子の順番が来て先生の膝に頭を、対面した私の膝にお尻をのせて診察開始です。おとなしく先生の膝に寝転んだ息子でしたが、口の中に器具を入れるや否や先生にキックをしそうになりました!Upload By ネコ山先生は慣れているのかうまく避けてくださりましたが、次に息子は私が固定している足をバタつかせ逃げようとします。「息子は歯磨きのときもいつもこんな感じで暴れるんです……!」と謝り、最終的に歯科衛生士さんにもサポートしてもらいなんとか健診を終えることができました。5歳になった今でも息子は歯磨きに抵抗があるので、口内が敏感なのかもしれません。今思えばあの暴れようが少しは理解できます。その後、5歳になった息子はADHD+ASDの傾向があり、児童精神科医からグレーゾーンと言われることになるのですが……そのお話はまた次回以降に書きたいと思います。執筆/ネコ山(監修:室伏先生より)1歳半健診の頃の息子さんのご様子とネコ山さんのお気持ちを具体的に共有していただき、ありがとうございました。不安と戸惑いの中での健診、大変でしたね。発達に課題をもつお子さんの徴候は、1歳~2歳頃に顕在化してくることが多いように思います(この時期に徴候が分かりにくいお子さんもいらっしゃいます)。発達障害のお子さんは、単に発達が遅れるというものではなく、発達の進む順番や質が異なっています。発達の遅れを示す用語としては、「発達遅滞」があり(言語発達が遅れていれば言語発達遅滞、運動発達が遅れていれば運動発達遅滞となります)、発達障害のお子さんで発達遅滞も併せ持つ場合もありますが、発達障害と発達遅滞は言葉の意味としては異なります。例えば、自閉スペクトラム症の特性があるお子さんは、話し言葉はゆっくりなのに、数字や文字を読むことの習得がとても早い場合もあります。これは、興味の方向が、コミュニケーションツールとしての言葉ではなく、記号としての文字・数字に向かっていると推測されます。大人もそうですが、子どもは自分の興味のあることに対しては、絶大な記憶力や集中力を発揮するわけです。自閉スペクトラム症の特性の一つとして、言葉やアイコンタクト、ジェスチャーなどのコミュニケーションに対する興味が薄かったり、興味はあっても相手にとって心地よい、距離の維持や関わり方が難しいといったことがあります。せっかくの発達支援教室も、妹さんがいらっしゃると通えないというのは、とても辛い制限でしたね。こういったことを共有してくださることで、今後の課題が明確になり、支援を受けやすい社会に変わっていくことを願います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月11日英語学習と音楽・美術の面で成果をあげるUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイわが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族のほぼ全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。中学時代に吹奏楽部で演奏しながら譜面が読めない問題でつまずいたことのある長女ニャーイは、その後、美術を志し、全国のコンテストで実績のある公立高校へ進学しました。ところが顧問の先生は、指導のスタイルがしっかりと確立されていたため、ニャーイが目指していた精密画とはまるで相性が合いませんでした。ニャーイが失望して退部したタイミングで、夫ラクマから理想的なインターナショナルスクールを見つけた、という知らせが入りました。さっそく体験入学と面談を申し込み、4人の子どもたち全員を伴って学校を訪問しました。訪問した学校は保育園から高校までの生徒が学んでおり、学園長は海外経験豊富な日本人で、教師や生徒は、世界のさまざまな国からやってきていました。授業はオールイングリッシュで1クラス数人の少人数制でした。教科書は数学のみ日本語版で、それ以外はすべて英語版でした。教室は開放的な広いワンルームを学年ごとにパーテーションで仕切っていました。私は教室を回って授業を見学しました。先生方は、とても大きなアクションを交えながら楽しく授業を進めていました。私もラクマも4人の子どもたちもこの学校をとても気に入り、全員が転校することを決めました。インターナショナルスクールへの転校後、先生方の分かりやすいリアクションや声がけが発達凸凹タイプに向いていたのか、子どもたちは以前より生き生きと学ぶようになりました。また、得意科目に集中的に取り組めるカリキュラムであったため、やる気スイッチが入りやすかったこともプラス要素でした。さらに各教科担任の先生方が表現豊かに褒めて励まし、新しいことへチャレンジを促すので、子どもたちの世界がどんどん広がったのです。特にニャーイの学力や画力、音楽に関する技術の進歩は目を見張るものがありました。音楽の授業ではピアノ、ギター、ドラムにチャレンジし、さまざまコンサートやライブに参加しました。絵本づくりや英語でのプレゼンテーションを数多くこなし、自信を深めていきました。やる気スイッチにムラがあり、洗濯や約束事でトラブル連発Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ学習面では大きく伸びたニャーイですが、家族で役割分担した、家事の手伝いはトラブル続きでした。ニャーイは洗濯の係でしたが、まともに仕上がることが少なかったのです。というのも、洗濯していることを本人が忘れて外出してしまうので、気づいたら洗濯物は洗濯機の中でカチカチに固まっていることは日常茶飯事でした。洗濯物が痛むので家族からはブーイングですが、どんなに注意しても一向に良くなりません。洗濯のやり直しが多くて、ついに洗濯機のほうが壊れてしまいました。将来について父ラクマに相談すると父は困惑Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイインターナショナルスクールに転校してしばらくたったある日、ニャーイは父親のラクマに将来の進路を相談しました。ニャーイはラクマが長年仕事としている商業デザインのイラストレーターを志望していたのです。ラクマはニャーイにどのように伝えようか悩んだ末、彼女に言いました。「商業デザインは時間に追われる仕事だよ。しっかり自己管理して締め切りを守らないといけないけど、できるかな?」ニャーイはすぐさま「イラストレーターは諦める」と言って志望を変えました。後日、私はラクマにイラストレーターになることを反対した理由を確認しました。「もしニャーイがイラストレーターになったら、上司が気の毒すぎる。彼女に仕事をさせるのはひと苦労だよ」という答えでした。ラクマは、絵のうまいニャーイにイラスト作成のアルバイトを頼んだことがあったのですが、締め切りを何度も忘れるので、かえってラクマの仕事が増えてしまい、すごく苦労したということでした。当時は時間の管理がうまくできないニャーイに対して、どう対処して良いのかという理解が足りていませんでした。今は親も子も発達凸凹の特性理解が進んでいるので、メモや手帳の活用、リマインダー係を配置するなど、二重三重の工夫を行なっています。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:室伏先生より)インターナショナルスクールでのニャーイさんの成長のご様子と、ご家族の関わりについて、共有してくださり、ありがとうございます。微笑ましく読ませていただきました。お子さんに合った学校へ転校された、ご両親の行動力と決断力に感銘を受けました。ニャーイさんと相性のよい学校に出合うことができて本当によかったですね。家事のお手伝いについては、学生時代は失敗ばかりだったとしても、ニャーイさんが独り立ちした時に、不得意なものについて自分に合う方法を考える一つのきっかけになったかもしれませんね。便利な家電も増えていますし、忘れても大丈夫な環境にする、というのも一つの自立への道かもしれません。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年09月10日娘の外出を阻むものは二つ。一つ目は「男性」。父親でもおかまいなし!6歳の時に自閉スペクトラム症、軽度知的障害の診断を受けた娘がいます。幼少期の外出では本当に苦労しました。娘には苦手なものが二つありました。「男性」と「ハンドドライヤー」です。0歳の時からでしょうか、娘は男性が苦手でした。それが自分の父親であってもです。きっかけはいまだ分かりませんが、「夫の抱っこで泣かない」場面を見たことがないくらいでした。ですので、夫が居ても私はほぼワンオペ育児、短時間であっても一人で外出はできない……これもつらいところでした。1歳になると、向こうから知らないおじさんが歩いてくるだけで騒ぎ出します。外に出て男性がいない……なんて場面、なかなかないですよね?それでも、娘を夫に預けて買い物に行くことができないため、トラブル前提で娘を連れて買い物へ行っていました。Upload By ユーザー体験談買物中に前方から男性が歩いてくるだけでも泣きそうになる娘。そんな娘を抱っこすると両手がふさがってレジでお金が払えず……。いま思うと本当に大変だったなと思います。ただ、娘は「外が好き」という面があったので、お出かけは移動のとき人に会う機会を減らせる、車を使うようになりました。二つ目は「ハンドドライヤー」。このせいで外のトイレが使えない……!乳幼児期から外でトイレに行くと泣く娘。ずっと原因が分からないままでしたが、3歳になってやっとわかりました。ハンドドライヤーでした。Upload By ユーザー体験談娘は3歳から保育園に入園したのですが、そこで掃除機が苦手なことが発覚しました。なんでだろう?と思っていたのですが、どうやら音が怖かった模様。そこで「トイレが苦手なのはハンドドライヤーの音のせいなんだ!」と気づきました。そんな娘を連れての買い物は大変です。娘がトイレに行きたいとなると、一度自宅に戻り、再び買い物へ行かなくてはなりません。スーパーへは車で片道15分から20分位、この往復の手間と、一度商品をカゴから出して戻し、再びカゴに入れる作業……。もう、面倒でイライラしてしまいます。ただ、どうしようもないので諦めて淡々と行うだけでした。低学年頃になると、もう間に合わない!というときは外でのトイレも決行しましたが、自分がハンドドライヤーを使わなくてもほかの人が使う音もダメなので、逃げるようにトイレから出てきていました。これらの苦手は療育で乗り越えられました!「男性」「ハンドドライヤー」、実は現在はほぼ克服できています。ハンドドライヤーについては、就学後通いだした療育で相談したところ掃除機の音で慣れていこうということになりました。娘の近くで掃除機をかけてもらうと最初はさすがに気にしていましたが、徐々に慣れていってくれました。また嫌な音があるときは自分から離れることも覚えてくれました。Upload By ユーザー体験談その後、遠出をした高速道路のサービスエリアで、ちょっと強めに誘ってトイレに座らせてみたところ、無事トイレをすることができたので、とても褒めました。そうすると、ホテルのトイレも大丈夫になり、次の日の観光地の農場でも成功。これをきっかけに、ついに外のトイレに問題なく行けるようになりました。ただ、ハンドドライヤーを使うことはないので、ハンカチは忘れないようにしています。また、男性についても療育の実習のお兄さんと手をつないだり、触れ合う機会をつくることで、2年生頃にようやく大丈夫になりました。いまでも、大きな声を出したり怒鳴るような人は苦手ですが、そういう人がいたらその場から立ち去るようにしているようです。Upload By ユーザー体験談いまは公共交通機関を使い自力で登校しています現在、高等特別支援学校1年生の娘は自力でバスと電車を使い通学しています。幼少期のような外出トラブルはもうありません。ここまでできるようになるか正直不安でしたが、予想を超えてくれました。ここまで自立できホッとしています。娘は明るい性格で、ダンスや歌が大好きです。やりたいことを精一杯やりつつ、人生を謳歌して欲しいです。私は、時間がある限り、後ろから見守っていきたいです。イラスト/taekoエピソード提供/にじいろ(監修:藤井先生より)特定の物が苦手というのは自閉スペクトラム症のお子さんに認められることがあります。小学校に入る前は手立てがないような感じがして大変だったかと思いますが、小学校低学年の頃には療育施設などに相談して少しずつ症状が和らいでいったのですね。聴覚過敏などがあっても、安心・安全な状況を確保しつつ、音に慣らしていくことで克服できることがあります。ご家庭だけで工夫しようとしても限りがあることもあり、療育施設や支援の先生などに相談して、一緒に取り組んでいくと良いと思います。読者の方の励みになる体験の共有をしていただき、ありがとうございます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月08日未診断だった弟・ふーの就学相談。5月の予約から、親の面談、本人の面談、発達検査、集団行動観察・精神科医面談と続きましたわが家は二人兄弟です。兄のミミは小4で、自閉スペクトラム症(ASD)があります。年長さんの弟・ふーは、年中のときに受けた児童精神科で、診断名はつけられないけれどつけるとしたら自閉スペクトラム症の傾向があり、繊細で敏感なタイプと言われています。それからはふーは、週1回の児童発達支援、月1回の自治体の療育を続けていました。そして4月、年長になった、ふー。5月から就学相談が始まるので、私はすぐに申し込みました。就学相談の予約は電話で取ることができます。最初は親のみで区役所へ行き、担当の方と面談をしました。そこで私たちは、就学相談を希望する理由や困りごと、例えば、ふーは少しの注意でもショックを受け機嫌を損ねることがあり、原因が分かるときはまだいいけれど、どの言葉や行動が嫌だったのか、全く分からないときもあることを伝えました。そして後日、別会場でふー一人で職員さんと面談、発達検査を受け、その1ヶ月後、集団行動観察と精神科医との面談がありました。当日、私が時間を間違えてふーを急がせてしまいましたが、ふーはぐずることなく会場に行くことができました。ASD の兄ミミだったら、急な予定変更はグズって大変なので、スムーズに出掛けられるふーは、私にとって「めちゃくちゃ良い子」と映っていました。Upload By taeko未診断のふーも、自閉スペクトラム症の兄・ミミと同じく「特別支援教室」判定に面談、検査が終わってから1ヶ月、ついに結果を聞く日になりました。親が結果を聞くだけなので、私1人で区役所へ向かいました。ふーの就学問題、どうなるのか何年も前から考え続けてきました。緊張しつつも冷静に、職員さんからの話を聞きました。職員さんからは、ふーも「特別支援教室」に通う事が必要であると伝えられました。ミミと同じでした。詳しく聞くと、ふーの就学相談での発達検査はほぼ標準だったとのこと。特別支援教室が必要だと判断したのは、保育園や療育へのヒアリング、審査委員会を経ての結果とのことでした。Upload By taeko長い帰り道、時間があったのもあり、つい余計なことを考えてしまいました。ふーもミミと同じく配慮が必要ということが、正直ショックだったのです。やや怒りっぽいところがある自閉スペクトラム症のミミとは違い、穏やかでいつもニコニコしているふー。ふーの笑顔はとてもかわいくて、こちらを温かい気持ちにしてくれます。「どうしてこの子が……」と思ってしまいました。未診断だったふーも特別支援教室に行くことになるなんて。きっと私も発達障害なんだろうな。私も療育受けたかったな……。発達障害の親が発達障害の子どもを育てたら空回りだらけ……。負のスパイラルです。どんどんどんどん暗い思いにとらわれていってしまいました。……いけない。プラスに考えないと!だからこそ、療育、特別支援教室に通うことで世の中に助けてもらおう。療育を受けられる子どもたちは恵まれているんだ、配慮してもらえるんだ。かかりつけの小児科医の先生の「本人が困るから、療育や特別支援教室に行ったほうが良いよ」という言葉を思い出し、ふーが困りごとをクリアして行くため、自分の気持ちを表現できるようにするため特別支援教室行くんだ!と自分に言い聞かせました。私を心配した長男の温かい心遣い。私の子どもたちはとても優しく育っているから、大丈夫帰宅後もそんな事をもやもやと考えていたら、どうやら表情に出ていたようです。私を心配してくれたミミが気を遣って、なんとお風呂を洗いお湯を沸かしてくれました。このミミのやさしさが、私を負のスパイラルから引き上げてくれたのでした。私の子どもたちはとても優しく育っているから、大丈夫。Upload By taeko執筆/taeko(監修:鈴木先生より)保護者の接し方次第で、ASDの子どもの態度は変わります。相手の気持ちを読み取ることが苦手なASDの子どもが気遣ってお風呂を沸かしてくれたことは、素晴らしい行動ですね。今回のように、保育園などで配慮が必要と判断され、診断名のないまま特別支援教室へ行くお子さんが多くみられます。なぜ、そのお子さんが特別支援教室と判定されたのか、私は、専門医のきちんとした診断を受けてから歩んでいくことをおすすめしています。診断によって、将来の方向性がある程度わかるからです。羅針盤のない航海よりも、羅針盤を使って目標をもって進むほうが、親御さん、お子さんにとってメリットが多いと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月08日障害の診断を受けて一番に考えたこと長女が小学校4年生だったある日、私は担任の先生から呼び出されました。「ゆいさんを見ていると、授業の進度についていくのが少し大変そうに感じます。もしよかったら一度専門の機関で相談してみては……」と先生から薦められました。その後長女は発達に関する検査と診察を受け、軽度の知的障害・ASD・場面緘黙と診断されました。検査の結果を受けて小学校の先生方と話し合い、算数など苦手な教科のときは特別支援教室で授業を受けることにしました。通常学級の授業は長女にとっては進度が早く、苦手な教科はついていくのが難しいので、この取り出しタイプの指導は長女にぴったりだったと思います。(※自治体により制度は異なります)ただ、一つ心配なことがありました。同じクラス中でほかの子どもたちと一人だけ違うことをすることで、友達から違和感を持たれることはないか、友達との関係が変わってしまうのではないかということでした。Upload By 吉田いらこ女子グループの中で浮いてしまうのでは…?長女はおとなしいタイプなので友達と喧嘩をすることはありませんでしたが、人間関係って何がきっかけで変わってしまうか分からないから……と、私は少し不安に感じていました。「もし長女が友達とうまくいかないようなことがあったら、保護者としてはどう対応したらいいのだろうか……」など心配しながら過ごしていました。ある日、長女が学校から帰ってきて「今日友達がうちに遊びに来るよ」と言いました。しかも「一緒に宿題をするんだ」とうれしそうに言うので私はちょっと焦ってしまいました。特別支援教室で出された長女の宿題は、通常学級の宿題とは違い、長女の学力に合わせた易しい内容のものです。一緒に宿題をするって、どうするんだろう……?Upload By 吉田いらこ自分の考えが恥ずかしくなったけれども私の心配は全く無用なものでした。友達数人でわが家に集まり宿題が始まったのですが、皆が長女に勉強を教えてくれるのです。それは子どもたちにとってはとても自然で当たり前のことのようでした。私は、自分が心配をしすぎていたことが恥ずかしくなりました。特別支援教室で授業を受けること、そんなことで友達は態度を変えたりなんてしないし、長女も何も変わりません。私だけが「この子は皆と違う」と枠をつくって囲っていました。障害の診断がついたことで変わったのは大人の私の意識だけ。しかも悪いほうに……。Upload By 吉田いらこ長女に障害の診断がついたことで私自身は変な方向に意識を変えてしまっていたのです。この状態では、私は第三者が掛けてくれる優しい声を、逆にネガティブに受け取ってしまうかもしれません。これからは私が考えを改めないといけないなと痛感した出来事でした。そして、何も変わらない子どもたちに大切なことを教えてもらったありがたい出来事でもありました。成長と同時に長女にはこれからも新たな悩みが出てくるかもしれません。でも、母である私自身がなんでもフラットに受け止められる状態でいられるよう努力していきたいと思っています。執筆/吉田いらこ(監修:藤井先生より)特別支援教室に転籍したらいじめられるのかも、と親御さんが心配されることがあります。今回の吉田いらこさんも、友達関係が変わってしまうのかも、と心配されていたようですが、心配は無用だったようですね。親だからこそ、子供が困らないようにと心配してしまうのは仕方がないのですが、案外平気なこともたくさんあります。今回のように、心配無用だったなということを知り、親自身、大人自身が教えられる場面もたくさんあります。子育て中は、こうなったらどうしようと心配になることもあるかもしれませんが、そうなったらそうなったときに考えれば良い、とどんと構えることも時には必要かと思います。素敵なエピソードの共有をありがとうございました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月07日川崎病とは?原因、かかりやすい年齢はある?川崎病は、1960年代に川崎富作氏によって報告された、子どもに特有の全身の血管に炎症が起こる病気です。一番気をつけなければいけないのは、心臓に合併症を起こす場合があることです。まれに重篤な合併症を起こす可能性がありますが、適切な診断や治療を受ければ重症化しないことが多いです。現在のところ、遺伝的な要因、細菌やウイルスなどの感染、免疫システムの過剰な反応などと関連があると言われていますが、川崎病の原因は特定されていません。4歳以下での発症が多いですが、それ以降の学童期にも発症しうる疾患です。2021年の報告によると1歳が最も多く、2歳、0歳がこれに続き、女児よりも男児に多い傾向があります。再発率は約4%と報告されています。また、欧米に比べると日本をはじめとするアジアの国々で多く発症するとも言われています。血管に強い炎症が起こることで、冠動脈(心臓に酸素を届ける血管)が瘤のように膨らむ「冠動脈瘤」ができることがあります。冠動脈瘤は大きいほど重症で、まれに心筋梗塞や突然死を招く恐れがあります。川崎病の症状は?病院受診の目安や検査、治療、予後などについて小児科医が詳しく回答!川崎病にかかると、どのような症状が出るのでしょうか。また、どのようなことが気になったら受診する必要があるのか、検査や治療はどのようなことをするのか、予後はどうなのかなど、気になることを小児科医の室伏佑香先生が分かりやすく答えてくださいました。(質問)川崎病にかかると、どんな症状が出ますか?(回答)以下の6つの主要症状のうち、経過中に下記の5症状以上に当てはまる場合は、川崎病と診断します。1. 発熱個人差はありますが、無治療ではおおよそ1~3週間にわたって熱が上がったり下がったりします。現在は発熱日数を問わず、川崎病の診断基準の一つとみなされています。2. 両側眼球結膜の充血血管が拡張して見えやすくなることで、眼球結膜(白目の部分)が赤くなります。3. 口唇、口腔所見…口唇の紅潮、いちご舌のどが赤くなる、唇が赤く乾いてひび割れる、舌が赤くブツブツが目立つようになりイチゴのようにみえる、などの症状が出てきます。4. 発疹(BCG接種痕やその周辺の発赤も含む)発疹の形態はさまざまで、蕁麻疹(じんましん)や、 麻疹(はしか)や 猩紅熱(しょうこうねつ)による発疹のように見えることがあります。5. 四肢末端の変化急性期…手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑回復期…指先からの膜様落屑手の平と足の裏が赤色または紫がかった赤色になったり、手足の指が腫れぼったくなったりします。発症から約10日ほど経つと、手足の指の皮膚がむけ始める場合もあります。6. 頚部のリンパ節の腫れと圧痛首のリンパ節が腫れ、圧痛を伴います。腫れや痛みが強い場合には、首を動かしにくくなることもあります。上記の主要症状は同時期に一気に出現せず、数日かけて揃ってくる場合もあります。また、5つの症状が揃わなくても、その他の症状や検査結果などから総合的に川崎病と診断することがあります。川崎病の症状の現れ方は個人差が大きいので、似たような症状が出ていても、必ずしも上記の症状に当てはまらないこともあります。少しでも気になる症状がある場合には、ためらわずかかりつけ医などを受診することをおすすめします。Upload By 発達障害のキホン(質問)病院ではどんな検査をするのですか?(回答)血液検査や尿検査、咽頭ぬぐいの検査などを行い、感染症のチェックや川崎病を疑う血液検査所見(白血球や炎症反応(CRP)の上昇など)があるかどうかを確認します。また、少しでも川崎病の疑いがあれば、心電図検査や心臓超音波検査(心エコー検査)などの心臓の検査を行います。そこで、心臓の動き、冠動脈瘤や心臓弁の異常の有無、心膜や心筋の炎症の有無などを確認します。心エコー検査で動脈瘤が見つかれば、心臓カテーテル検査を行うことがあります。Upload By 発達障害のキホン(質問)川崎病と診断されたら、どんな治療を受けるのでしょうか?また、入院期間はどのくらいなのでしょうか?(回答)川崎病の治療開始はできるだけ早く開始すること、いわゆる「急性期」治療が重要です。特に冠動脈疾患のリスクを抑えるために、症状が現れてから7〜10日以内に治療を行うことが望まれます。治療内容としては、1~2日間にわたり高用量の免疫グロブリン(全身の炎症を抑える)を静脈内投与し、中等量のアスピリン(血管の炎症を抑える、血液を固まりにくくする事により血栓を予防する)を経口投与します。この治療で十分に症状が改善しない場合には、免疫グロブリンを再度投与したり、ほかの治療を追加することもあります。数日熱のない状態が続けば、アスピリンを減量しますが、その後もしばらくは内服を継続することが多いです。冠動脈瘤がない症例では、炎症が治まればアスピリンの投与を中止しますが、冠動脈に異常が見られる症例では、長期にわたってアスピリンを内服します。入院期間は、1回のグロブリン点滴治療で炎症が落ち着き、解熱した場合でおおよその目安として1~2週間程度です。冠動脈瘤があったり、治療を行ってもなかなか解熱が得られない場合は数ヶ月入院することもあります。退院後も外来で、年単位でエコー検査を継続することが多いです。Upload By 発達障害のキホン(質問)川崎病が重症化すると命にかかわるのでしょうか?(回答)熱などの症状が目立っている急性期での致死率は、0.1%未満です。しかし、2~3%の確率で冠動脈瘤ができてしまうことがあります。(心臓の血管の一部が瘤のように膨らむ)冠動脈瘤ができてしまうと、血液の流れが滞って血栓ができやすくなります。ここから流れた血栓が冠動脈をふさぎ、その先の血流が途絶えて酸素が届かなくなってしまうと、心臓の筋肉が壊死し、心筋梗塞を引き起こします。だからこそ急性期の治療がもっとも重要であり、後年に心筋梗塞を生じるリスクを減らすことにつながります。川崎病は全身の血管に炎症が起こるため、さまざまな臓器にも合併症がみられます。しかしほとんどは一時的なもので、適切な治療すれば重症になることは多くはありません。まれに心筋炎、心不全、不整脈、肝障害、イレウス、けいれん、脳症など重い合併症が起こることがあります。Upload By 発達障害のキホン川崎病は治るの?後遺症や再発の可能性について川崎病の死亡例は、全国調査において2019~2021年の2年間で2例のみとなっています。また、再発の可能性は全体の約4%、後遺症を生じる例は約2.5%という結果が出ています。後遺症の内訳は、冠動脈の小瘤が1.44%、中等瘤が0.57%、巨大瘤が0.13%、心筋梗塞が 0.01%、弁膜病変が0.45%となっています。このような長期的心合併症も生じうる疾患であるため、川崎病の既往がある場合には受診時に既往がある旨を伝えましょう。また、お子さん自身で健康管理を行う年齢になったら「川崎病にかかったことがある」と伝え、本人が病歴を把握しておけるようにしておくことも必要でしょう。参考:特定非営利活動法人日本川崎病研究センター 川崎病全国調査担当グループ第26回川崎病全国調査さいごに川崎病は早期に治療を開始することがとても重要です。気になる症状があれば、ためらわず病院で受診をしましょう。川崎病患者の情報を正確に伝達するために、日本川崎病学会が監修した「川崎病急性期カード」というものがあります。臨床情報や治療、心臓合併症などの医療情報を正確に書き込むことができ、罹患後の健康管理に役立てることができます。また、多くの都道府県で治療費の補助も出るので、ホームページなどで調べてみましょう。川崎病は、このように検査方法や治療法や医療費補助、罹患後のフォローがしっかり確立されています。過度に不安がらず、適度に健康的な生活に留意しながら、普段通りに過ごすことができます。万が一何かあった場合に備え、入園や入学時に園や学校に「川崎病にかかったことがある」と伝えておくことも大切です。
2023年09月06日防災について取り組んでいることーーわが家の防災ノウハウUpload By 丸山さとこときおりホームセンターに現れる災害対策コーナーを見る度に「防災かー、見直さないとな~」と思いつつ後回しになってしまうわが家です。けれども、そんなわが家も息子が小さかった頃は今より熱心に災害対策をしていました。現在中学2年生の息子のコウには、感覚過敏による偏食がありました。特に幼児期は偏食傾向が強く、非常事態だからといって普段食べ慣れないものを食べてくれる可能性が低かったからです。日頃のコウの様子を見ていた私は、「普段食べ慣れないもの」が不安なら「食べ慣れたもの」をストックしておけば、非常時でもコウが食べやすいかもしれないと考えました。食料の備蓄方法の一つにローリングストックというものがあります。普段から食材や加工品を少し多めに買っておき、使った分を新しく買い足していくことで食料を家に備蓄しておく方法です。Upload By 丸山さとこ普段から食べているものであれば「以前は食べられたけれど久しぶりに食べてみたらダメだった」というパターンも防げて安心です。お腹に溜まるものとして乾麺やスープパスタを、栄養バランスが取れるものとして乾燥野菜やビタミン入りゼリー飲料などを備蓄しておくことにしました。ゼリー飲料や経口補水液は、発熱した際にも役立ちました。非常時の環境によるストレスを少しでも減らせるようにまた、食料の備蓄以外にも心配なことはいくつかありました。小学生の頃のコウは想定外の事態に対してパニックになりやすかったからです。コウは保育園の頃に「1日1回はシャワーを浴びなければならない」というこだわりが生まれかかったことがありました。そのため、「非常時にはシャワーを毎日浴びられないこともある」という話は、災害のニュースがあるときなど折に触れて話すようにしていました。Upload By 丸山さとこ災害時の入浴について話すときには「被災地は大変だね。早く復旧するといいね」「仮設のお風呂ができてよかったね」と雑談の形をとるようにしていました。不安が大きくならないように、日常の中で自然に伝えることを意識していました。災害などの非常時はシャワーを浴びられないだけでなく、家や避難所が埃っぽかったり、冷暖房が十分でなかったりすることもあります。そのため、わが家はキャンプへ定期的に行くようにしています。キャンプ中は埃っぽく冷暖房が不十分な環境で過ごすことになります。レジャーの中でそのような環境に慣れておくことで、災害時のコウのストレスを少しでも減らせたらいいなと考えました。Upload By 丸山さとこキャンプ場では冷蔵庫も電子レンジもない状態は普通のことです。そのため、1日に必要な食料品の備蓄量を正確に知ることができます。しかも、実際の災害時とは違い管理棟や地域のスーパーなどを頼ることができます。実際にキャンプ場で食事をしてみると、「お湯を注ぐだけの食事は手を洗わなくても衛生的に調理ができて助かるな」とか、「疲れて汗と埃でベタベタのときは食欲が落ちるな。クラッカーなら少しは食べられそう」など分かることがたくさんありました。1日に必要な飲料水の量もキャンプで分かるため、ペットボトルの水をストックしておく際に、ある程度の自信を持って数を決められるようにもなりました。災害に備えて、できることをできる形で私の知人の中には、大きな地震や水害を体験した人が何人かいます。写真を見せてもらったり話を聞いたりする中で、災害そのものはどうにもできなくても備えることはできるのだと感じました。現在のわが家の災害への備えとしては、食料品のローリングストックや非常用トイレセットのほかにキャンプ用品があります。寝具・調理器具・携帯医療キット・ライト・ポリタンク・軍手などがあるため、自宅が倒壊していなければ何とかなりそうです。Upload By 丸山さとこそのような備蓄品は一通り揃っている一方で、非常時持ち出し袋は手薄になっていると思います。現在備えている「一家で1つの防災リュック」から「1人1つの防災リュック」に変更するなどして、今のわが家にあった災害対策へと見直していきたいと思いました。執筆/丸山さとこ(監修:室伏先生)災害への対策について詳しく教えてくださり、ありがとうございます。大変参考になりました。食べ慣れたものを準備しておくことのできるローリングストック、シャワーなどのこだわりへの対応、日常の中での災害に対する意識づくり、災害時に近い環境の体験などなど。コウくんの苦手を熟知している親御さんだからこそ成せる技ですね。それぞれのお子さんの苦手や発達段階に合わせた、防災対策や災害意識づくりができると安心ですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年09月05日発達障害っ子の災害対策!わが家の防災ノウハウ大公開!私は、もともと「何かあったらどうする?どうなる?」と考える性格。いざというときに、持ち出すものに迷ってぐずぐずしないようにするため、お薬手帳や、保険証、病院の診察券は常にまとめて、持ち出しやすいようにしてあります。Upload By 寺島ヒロバラバラな場所で被災したらわが家の凸凹きょうだいは、現在、兄タケルが大学院生、妹いっちゃんが通信制の高校生。比較的家にいることが多く、くっつき合って暮らしているので、もし地震などがあってもお互いを探し合うことはあまりないかもしれません。しかし、頻度は低いですが、タケルはフィールドワークで1人で遠くに出かけることもありますし、いっちゃんも友達と遊びに行くこともあります。もしそういうときに大きな災害に遭ってしまったら、不安でその場から動けなくなったり、逆に慌てて動き回ったりして危険かもしれないなと思います。位置情報が分かるアプリを活用集団で被災したときは、指示されたことを理解できなかったり、何か手伝いを任されてもうまくできなかったりして、ほかの人に迷惑をかける可能性もあります。そういうことも考えて、一刻も早く合流できるよう、いつも持っていスマートフォンやタブレットに家族全員がお互いの居場所が分かるアプリを入れています。わが家で使っているアプリは、そのスマホやiPadがある場所を「だいたいこの辺にあります」と地図上で表示してくれるものです。普段から「動けなくなった!」などのSOSを受けて探しにいくときも便利に使っています。お出かけのときには必ず障害者手帳をまた、バラバラに被災したとき、身元を分かるようにするため、出かけるときには障害者手帳を常に携帯するようにしています。もちろん、帰ってきたら「元の位置」に戻すようにします!避難所暮らしはどうなる?災害復旧がすぐにできない場合は、避難も考えないといけません。しかし、わが家の凸凹きょうだいは、基本1人になりたい時間が長いので、ほかの人と一緒の環境で寝泊まりするのは難しそうです。特にタケルは緊張が高まるとしゃべり続けてしまう可能性も高いですし、一緒にいる方々に迷惑をかけてしまうかもしれません。基本的には自宅避難基本的には家でできるだけ粘ろうと思っているので、乾物や缶詰はいつも1週間分ほど買い置きしてあります。Upload By 寺島ヒロまた、避難のための移動や、避難所暮らしが難しい場合に簡易寝所として使うため、何がなんでも自家用車(軽ですけど)を維持しようと思っています。わが家の家計においては、本当に大きな負担ではあるのですが……日ごろの送迎にも使いますし、車があると夜間の時間を有効に使えるというのもありますから、なんとか頑張っています。普段からちょっと気をつけていること災害対策というわけではないですが、地域での繋がりをつくるために、ちょっとだけ心がけていることがあります。それは、地元の夜中のコンビニに行くこと。夜中に行くと店番しているのは大体経営者家族の誰か、つまり、元々地域に住んでいた人だったりするんですよね。特に深夜でもお酒を販売している店は、ずっとその地域で塩屋や酒屋を営んでいた一家の可能性が高いのです。特に仲良くなろうと意気込むことはないと思うのですが、ときどき買い物に行って丁寧に会話して「この辺に住んでいるのだな、子どもになにか障害があるみたいだ」と覚えておいてもらえるようにします(行き帰りの夜道には気をつけて!)。もちろん助けてもらうことばかり考えるわけにはいかないので、こちらも近くのお店の人や、人の顔は覚えるようにするし、地域のイベントの手伝いを頼まれたら引き受けたりもします。地味ですが、こういうことがいざというとき、お互いの助けになるんじゃないかなと思って、日ごろから心がけています。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)災害時のための備えについて教えて下さりありがとうございます。とても具体的な内容で、分かりやすく、わが家でどのような対策が必要かについて考えるきっかけにもなりました。災害時という「普段と違う状況」というのは、発達の偏りがある人にとって、通常よりもさらにストレスがかかりやすい状況で、実際にその時はそれなりに苦労することが予想されます。それでも、一人ひとりの特性にあった対策を立てておいて、いざというときにも乗り切っていくしかないですね。お子さんが成長して行動範囲が広がっているなら、GPSを使った位置共有アプリなどを設定しておくのはとてもいいですね。突発的な出来事がおきるとパニックになって連絡がすぐにとれないということもあるかもしれません。災害時は電話が繋がりにくくなることがあるかもしれないですが、位置共有アプリならデータ通信が生きていれば場所が特定できてお互いに安心ですね。避難所生活が、発達の偏りのあるタイプの人にとって可能かどうかは、その方の特性にもよりますが、他者との距離が近く人が多くざわざわしている避難所には入れない方もいると思います。自家用車や、テントなどを活用することを考えて準備しておくことは大事ですね。また、非常事態では、口頭でいろいろ説明するとかえって不安が増しやすく、書いて見せて伝えたほうが伝わりやすいという方もいます。筆談セットなどを用意しておくのもオススメです。寺島さんのご家族は、家族一人ひとりが災害時に備えて準備したり、役割を分担したりしているのはとても素晴らしいです。この記事を読んで、わが家ももう少しいざというときのための対策をしておかなければいけないと反省しました。ありがとうございました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月04日発達支援センター2回目の相談Upload By プクティ初めての発達支援センターへ相談に行った日から2ヶ月後、2回目の相談日がやってきました。この日もまた、臨床心理士の方が長男を見てくださっている間に、私たち夫婦は療育に通うまでの流れを説明してもらいました。通う療育のタイプによって異なる場合もあるようですが、私たちが住んでいる地区の発達支援センターの療育に通うには、まず先に「通所受給者証」を取得することが必要とのことでした。その日は療育開始までの流れを聞いた後、次回受ける知能検査の予約を取って帰りました。診断書の取得から受給者証の申請へUpload By プクティ受給者証取得には、基本的には医師の診断書の提出が必要でした(このあたりはお住まいの自治体によって異なる場合があります)。しかし、専門病院へ受診の予約をしたところ、初診の予約日が数ヶ月先になってしまったので、とりあえず、かかりつけの小児科で、支援が必要との意見書を出してもらい、すぐに受給者証の申請を出すことができました。初めての知能検査Upload By プクティ2回目の相談日から1ヶ月後、ついに知能検査を受ける日がやってきました。この日は私の都合が悪く、長男は夫が一人で連れて行ってくれました。発達支援センターに到着すると、長男は別室に案内され、夫は検査が終わるまで、長男が見えないところで待機することになりました。Upload By プクティ検査は臨床心理士の方と長男の一対一で行われたのですが、別室で待機していた夫のところに聞こえてくる声の様子だと、長男はなかなか集中できず、違う話ばかりして手こずっているようでした。そして約1時間ほどで検査が終了。検査結果は後日ということで、その日は終わりとなりました。気になる検査結果は…1ヶ月後、検査の結果ができたということで、今度は夫婦そろって再び発達支援センターへ行きました。そして気になる結果は……Upload By プクティ長男の実年齢4歳に対し精神年齢は2歳と、発達が2歳遅れという結果が出ました。臨床心理士さんからは、ボディイメージが弱く、手足を使っての行動が瞬時に取れないことや、人より物への興味のほうが強く、興味があることへの集中力はあるが、興味がないことへは集中できないことなどを指摘されました。IQに関しては、臨床心理士さん曰く「集中力の問題で実際より低めの数字が出ている」とのことで、また数ヶ月後、検査内容を忘れた頃に再度検査を受けることをすすめられました。執筆/プクティ(監修:初川先生より)療育を受けるためには(プクティさんの地域では)受給者証の取得と知能検査の受検が必要だったのですね。受給者証は福祉サービスを自費でなく受けるためには必要ですし、お子さんのアセスメントとして知能検査やそれに付随する行動観察などはあったほうが支援の精度があがりますね。さて、知能検査に関してですが、「そこまで発達の遅れはなさそう」とこれまで言われてきたこともあり、想定外の結果だったかもしれませんね。ただ、知能検査で大事なのは、数値もそうですが、そこに至るまでの行動面でのアセスメントも同じくらい大切です。注意集中の苦手さや、理解したことを行動で答えることの苦手さ、また、好きな話は上手にできるがゆえに遅れを感じさせない様子がありそうですが、聞かれたことに適切に答えるという面では苦手だったのかも……など、さまざまな特徴、つまり、得意不得意が見えてきそうな感じがしました。そうした数字に表れきらない面もとても大事な知見となります。再検査の提案もあったとのことですが、まずは、今回の結果からも、標準化され客観的な検査(今回は田中ビネー知能検査)に対して、長男くんがどう反応したのか。そこから得られるものがたくさんあるので、そこを活かして療育の内容の工夫や日常生活での支援がより長男くんにフィットしたものになってゆくといいなと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年09月03日吹奏楽部の顧問から強く叱責されてしまうUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイわが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族のほぼ全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。中学生になった長女ニャーイは、音楽が好きだったこともあり、友人に誘われて吹奏楽部に入部しました。ニャーイはフルートを担当することになり、熱心に部活の練習に通ううちに、だんだん上達してきました。そのうち、フルートのパートでリーダーとしての役割を担うようになりました。ところが、せっかく実力が認められてリーダーになったのに、ニャーイ自身はだんだんと暗くなって落ち込んでいくのです。私は気になってしまい、部活で何があったのかを、本人からじっくり聞き取ることにしました。すると、ニャーイは部活の顧問から「やればできるのに、ちゃんとやろうとしない」「やる気がない、ふざけている」と強い叱責を受けていると言うのです。私はとても驚きました。家庭の中でのニャーイは家事の手伝いもきちんとこなすし、家庭学習も毎日しているし、性格も素直で真面目です。こんな彼女が、好きな音楽に真面目に取り組まないなんてありえないと思ったからです。きっと顧問の誤解だろうと感じましたが、よく考えると小学校時代の担任からも「やればできる子なのに、きちんとやろうとしない」というふうに学習態度をよく注意されていました。この学習問題の時、私はニャーイの性格からして悪ふざけをして勉強していないとは考えられなかったし、成績は標準くらいあったので「まぁ、そのうち良くなっていくだろう」と楽観的に考えていました。この部活の問題もどこかで繋がっているかもしれないと感じていましたが、どう考えてもよく分かりません。この誤解をどう解決すべきか思い悩み、夫ラクマに相談しました。すると彼は少し憤慨して「それは絶対に誤解だから、顧問の先生に会いに行ってくる」と言うのです。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ部活の顧問と話し合い誤解を解くラクマはめったに着ないスーツに袖を通し、ネクタイを締めてニャーイの通う中学校を訪ね、部活の顧問と面談をしました。改めてニャーイの部活での態度を確認すると、顧問の発言はニャーイ本人が話した内容通りでした。「楽譜は読めるし、演奏もうまい。なのに、譜面通り、きちんと演奏しない」ということでした。ラクマは、ニャーイの幼少期から現在まで、いかに真面目で素直な性格であるか、家庭学習や家の手伝いもちゃんとする子かを説明しました。顧問が「やればできるのに、ちゃんとやろうとしない」と言う原因はよく分からないけれど、決して悪ふざけや怠けがあるわけではないことを力説したそうです。ラクマの熱意が伝わったようで、その後は顧問からニャーイに強い叱責はなくなりました。でもニャーイに対する根本的な問題が解決したわけではないので、私はずっと心に留めていました。16年後、「やればできるのに、ちゃんとやろうとしない」問題の根っこに気づくUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイニャーイの部活トラブルから16年後のことです。長女ニャーイは30歳になっていました。その頃のわが家は、夫ラクマ以外の家族全員が発達凸凹の当事者であることが分かっていたので、各地で体験発表や当事者支援活動を行なっていました。そこへ、家族ぐるみでお世話になっているある方から夫ラクマへ、催しの運営の依頼がありました。「学校の視力検査では発見できないような、読字の問題解決について書いた本の著者と知り合いになった。地元に招聘して地域貢献のイベントを行いたい。運営を手伝って欲しい。ラクマ家の活動と近いかもしれない」という内容でした。ラクマは依頼を快諾し、その講演は地元で3回開催されました。チェックを受けて問題の核心を知るUpload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイその講演で紹介された、物の見え方に関する簡易チェックを家族全員で受けてみたところ、講師から「長女ニャーイさんと次男ウッシーヤさんには、読字の問題があるようです」と言われました(この講師は医師ではなく、診断を受けたわけではありません。あくまで当時の体験をもとに書いています)。今思えば、「ディスレクシア」に近い症状があったのだと分かります。なかでもニャーイは症状が重いらしく、講師から「縦書きの文字はかなり読みづらいはず。パソコンで変換して横書きにして読むと読みやすいと思います」とアドバイスされました。また当事者の疑似体験ができるコーナーで、私は講師から「ニャーイさんの見え方が疑似体験できるメガネをかけてみてください」と言われ試してみました。すると、メガネをかけたとたんに目が回りました。手元にある本を読もうとすると、本の中央の綴じ目にある余白部分と、紙面の文字がいくつも重なって暴れて見えるので、とても読めたものではありませんでした。私は心の底から驚きました。ニャーイに「こんなに読みづらくて、よくやってこれたね」と声をかけました。すると彼女は「生まれつきだから、変だとか苦しいとか思ったことがない」との返事でした。ニャーイが学校で「能力があるのに勉強をしない」「演奏がうまいはずなのに怠けている」という誤解を受けた原因は、文字や楽譜がうまく読めていないことだったのでは……と気づきました。また、ニャーイは高校からオールイングリッシュで学ぶインターナショナルスクールに進学し、そこで学力の目覚ましい進歩を遂げたのですが、それももしかすると、縦書きの日本語よりも横書きの英語での学習が本人に合っていたからなのかもしれません。ニャーイは今、英語と絵と音楽を仕事にしています。早い段階で、自分に合った環境に身を置き、自分の特性や得意な部分に気がついたからこそ、実現したことではないかと思っています。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:森先生より)「ディスレクシア」は、学習障害のひとつで、文字の読み書きが困難である状態を示します。文字の一つひとつが分かっていても、単語として認識しづらかったり、うまく文章として認識できないので、時間がかかったり間違えてしまうのです。「音韻処理」といって、「文字を見てその読みを頭の中でスムーズに処理する」という機能に困難があるのではないかと言われています。一度文章や楽譜の内容を理解して覚えてしまえばその後はスムーズに読めることが多いのではないでしょうか。本人は真面目に努力しているのに、周囲からは「本当はできるのに、わざと間違えているのでは?」と誤解されてしまうこともあり、とってもつらいですよね。「ディスレクシアではないか?」と思ったら、単語や文の切れ目に補助線やスペースを入れたり、色をつけて単語のまとまりを分かりやすくしたり、音読をしてあげて理解を手伝ったりと、いろいろな方法を試してみましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年09月02日通信制の大学「放送大学」、学びの特徴や障害学生支援は?発達障害があるお子さんの大学選びについて、・通信制のほうがわが子に合うかもしれない・通信制の場合、どのような合理的配慮や支援を受けられるの?・通信制でも、スクーリングやサークル活動はあるの?など、通信制の大学が気になっている保護者の方もいるのではないでしょうか。放送大学は、8万人を超える学生が在籍する通信制の大学です。入学の機会は4月と10月の年2回、学力試験はなく書類による選考のみとなります。学生は主にBS放送やインターネットなどで学習を行いますが、全国に57ある最寄りの学習センターやサテライトスペースに所属し、職員に相談などをすることができます。今回は、放送大学の学びの特徴と障害学生支援についてお聞きしました。発達ナビ編集部(以下、――)放送大学では、どれくらいの障害学生が学んでいるのでしょうか。障がいに関する学生支援相談室(以下、学生支援相談室):2023年1学期の学生の在籍数は85,057人(学部、大学院合計)で、そのうち合理的配慮(本学では特別措置と言っています。以下、特別措置)を申請している学生は862人います。障害別の割合は、肢体不自由、精神障害、発達障害がそれぞれ22~23%、視覚障害17%、聴覚障害、病弱がそれぞれ6%程度となっています。発達障害の診断名として出ているものは、自閉スペクトラム症16%、注意欠如多動症4%、学習障害・書字障害0.7%程度となっています。ただし、これはあくまで特別措置を申請した学生の数字です。ここ数年の傾向としては、精神障害、発達障害が増えており、5年で2倍、10年では約4倍にもなっています。――特別措置を申請した学生が増えているということですが、どのように学生支援を行っているのでしょうか。学生支援相談室:実際に支援を行うのは学習センター、サテライトスペースの職員ですが、少人数で通常の業務をこなしながらの対応なので課題は多く、本部の「障がい学生支援係」「障がい学生支援相談室」と連携して行っています。係長と係員の2名で、実質的な障害学生支援、合理的配慮に関する実務を行っています。障害のある学生一人ひとりのニーズに基づいた支援が行えるよう、合理的配慮に関する情報を集約し、実際に支援を行う学習センター、サテライトスペースと連携しながら具体的な修学に関わる仕事をしています。印刷教材のテキストデータやラジオ講義原稿の提供、字幕制作の関係部署との調整、支援機器の整備、試験や授業の際の学習センター、サテライトスペースや関係部署との調整、日常の支援の内容や方法に関する相談や情報提供などを行っています。室長と専任教員1名、兼任教員3名で構成されています。主に専任教員が日常的に「障がい学生支援係」と連携しながら一緒に問題を考え、対処しているほか、教職員からの障害や修学に関する相談に対して、メールやZoom、対面での相談を行っています。特に必要がある場合は学生本人の相談を受けることもあります。また教職員への理解啓発を目的とした研修会の実施や研修動画配信、ガイドブックの作成などにも力を入れています。なお、相談室教員には精神科の医師、臨床心理学や情報アクセシビリティの専門家、特別支援教育の経験者などがおり、必要に応じて適切な支援への助言を行っています。――全国57ヶ所にいる職員のみなさんを本部からサポートされているのですね。具体的な支援内容について、入学前・入学後に分けて教えていただけますか。Upload By 発達ナビ編集部放送大学|教養学部大学案内学生支援相談室:入学を検討する方には、入学相談の機会を設けています。そのうえで合理的配慮を希望する場合は全員、学習センター、サテライトスペースの所長との面談(特別措置面談)を実施し、特別措置に関して相談を行っています。入学後は、学習センター、サテライトスペースで学習相談を実施しており、履修の仕方や単位修得に関する相談に対応しています。障害特性などに関する専門的な相談は本部の専任教員が受けています。事例を挙げると、発達障害の学生の書くことや文章構成に関すること、面接授業でのコミュニケーション、学習障害の学生へのICT活用など多岐にわたりますが、いずれも学習センター、サテライトスペースの職員を通じての学生への支援(助言)という形で行われます。試験については、試験時間の延長、(学習センター、サテライトスペースでの受験の場合は)別室での受験、文字や用紙の拡大など、障害の状態に応じてさまざまな配慮を行っています。――就職支援もあるのでしょうか。学生支援相談室:一般学生も同様ですが、特に行っていません。――学習センター、サテライトスペースの所長と合理的配慮に関する面談をする前に、どのようなことを準備しておくとスムーズでしょうか。学生支援相談室:あらかじめ自分にどのような特性があり、修学をするうえでどのような配慮が必要かを整理しておくことをおすすめします。特別措置を申請するには根拠資料が必要になるので、障害者手帳や診断書を始め、中学・高校時代に支援を受けていたことが分かる資料などを用意しておくことが必要です。――入学直前に焦らなくて良いように、早めに準備しておきたいですね。学生支援相談室:放送大学は放送授業やインターネットの利用を中心とした通信制の大学であり、他大学のような対面の支援は受けづらいことや、特別支援教育で受けたような個別の手厚い支援を受けられるわけではないことを十分理解していただくこと、そのうえで修学に当たって家族や周囲の人からどのような、どの程度の支援が受けられるかについても、あらかじめ検討しておくことが必要になると思います。障害の有無にかかわらず、放送大学のような学習形態や試験のシステムなどが適している人もいれば適していない人もいると思われるので、自分の性格や障害特性と照らし合わせて考えたり、自分をよく知る人と相談してみたりしてはいかがでしょうか。こんなときは?集中力が続かない・タスク管理が苦手・友達関係を広げたい…続いて、発達が気になる学生や、その保護者の方からよく聞かれるお悩みをもとに、ご質問してみました。Upload By 発達ナビ編集部学生支援相談室:放送授業及びオンライン授業は学生専用サイトでインターネット配信されており、集中力が持続しにくい場合は数回に分けて視聴したり、繰り返して学習したりすることが可能です。多くの授業に字幕が付与されており、また再生速度を調整することも可能ですから、発達の特性やご自身の学習のしやすさに応じて学習することが可能です。Upload By 発達ナビ編集部学生支援相談室:学習センター、サテライトスペースの限られた職員ではそうした個別の配慮は難しいですが、学習相談の中で、携帯のリマインド機能を使うことやカレンダーにチェックするなどの助言を行っています。そのほか、大学本部の学生サポートセンターから入学当初の学生(入学1学期目と2学期目)を対象に、通信指導や単位認定試験のご案内の架電をしています。また、除籍にならないように3学期連続及び4学期連続科目未登録の学生には架電をしています。Upload By 発達ナビ編集部学生支援相談室:全国の学習センター、サテライトスペースでは年間3,000もの面接授業(スクーリング)が開講されており、学生の交流の場ともなっています。また、各学習センター、サテライトスペースではさまざまなサークルもあります。年齢層が10代から90代までと幅広いという特徴があります。自分に合った学び方を選ぶために一人ひとり、学びたいことや自分に合った学び方が異なります。「日本における生涯学習の拠点」として、多彩な授業スタイル・コース・プログラムを用意している放送大学。ホームページでは、「障がいのある方への修学支援」の詳細や、10代・20代の方に向けた特設ページが用意されいるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。放送大学|修学上の特別措置について(サポートメニュー)放送大学|10代・20代の方々へ
2023年09月01日発達障害の姉と妹は仲良し姉妹わが家には3歳差の仲良し姉妹がいます。自閉スペクトラム症、ADHDがある姉(現在中1)は、小1~小3は通常学級(小1は加配あり)、小4~小6は特別支援学級(情緒)、中学進学後も特別支援学級(情緒)に引き続き通っています。普段は素直で優しい姉ですが、こだわり強め、癇癪頻発、また特性から1日中しゃべり続けていることもあります。記憶力が良いため昔のことをよく覚えていて、特につらく悲しい記憶が抜けない面があります。以前交流級の男子数名からいじめにあったことがあり、学校へ行くことが怖く現在は不登校を選んでいます。妹(現在小4)は、周りをよく見ていて常に気配りできる子どもです。いつも自然に姉の面倒を見てくれていて、声かけのタイミングや話の聞き方は療育の先生より上手と思えるほどです。二人の関係は良好です。妹が姉のやりたいことを優先してくれることもありますが、妹が対戦ゲームをしたいときなどは、姉を誘って一緒に遊んでもらうこともあります。姉は話を聞いてもらいたいタイプなのですが、脈絡なく話してしまったり、話が飛び飛びになったりもするし、聞き取りにくいことも多々あります。それでも妹は相づちを入れつつ「ちゃんと聞いているよ」という姿勢で姉との会話を楽しんでいるようです。このように妹は話の聞き方一つにしても、親以上に姉への対応が上手だなと感じています。それは4歳の頃から自然に身についていったように思えます。Upload By ユーザー体験談4歳から自然と身についていた姉への「声がけの仕方」妹は小さい頃から”周囲の人を助けたい”と思う性格のようで、園や学校のお友達が困っていると自然と手助けをしていましたし、姉のフォローもいつもすすんでしてくれています。姉は話しかけられても気づかないことが多いのですが、妹は4歳くらいの頃から、姉に話しかけるときは姉の視界に入る場所に移動して名前を呼び、一旦注目させてから話すということを自然と行っていました。普段私がそのように話しかけている様子を見て、自然に習得したようです。妹が年長くらいになると、出かける際、姉に「〇〇(姉の名前)、□□(場所)に行きます。あわてないで準備します」などと姉に声がけをするようになりました。姉のパニックや癇癪に事前に気づいてくれるまた、妹は姉のパニックや癇癪に対して、落ち着くまでそっとしておいたほうがいいときと声がけをしてあげたほうがいいときの違いを感覚的に掴み、対応してくれます。それも妹が4歳頃から自然と行っていたように思います。姉がパニックや癇癪を起こしたときは、落ち着くまで待つのが1番の対応になります。妹はそのときも何も話しかけずただ待っています。そして、おさまったタイミングで、「落ち着けてよかった」など声をかけて、パニックや癇癪を起こしたことは責めません。ちゃんと落ち着けたタイミングを見極められていることもすごいことだなぁと思います。また、姉がパニックを起こしそうになる状態に気づくのがとても早く、先生がそれに気づかず進めていると、「〇〇(姉の名前)大丈夫?ちょっと休む?」と絶妙なタイミングで声をかけています。妹の声かけがもう1分遅かったら癇癪を起こしていただろうと思うことが何度もありました。癇癪を起こしてしまうと長いし、本人も周りもつらいので、一瞬の表情の変化や動きで気づいて助けてくれる妹にはとても助かっています。また姉も「ありがとう、ちょっと休みたいな」と妹の声がけだと素直に応じられることが多いです。Upload By ユーザー体験談姉のパニックを最小限に抑えてくれる妹のすばやい状況理解と対応以前療育施設で、姉と妹だけ別の部屋に案内されたときの話です。案内された部屋には、学校の机と椅子があり、その部屋に案内された時、一瞬姉の動きが止まりました。瞬時に妹はその動きに気づき「やばい!」と思ったそう。やはり姉が癇癪起こす直前の状態、体が強張る様子になっていました。いじめられて不登校になった姉は、学校を思い出させる机と椅子がとてもつらく、耐え難いものでした。療育の先生はそのことを知らなかったということもあり、異変の理由に気づきませんでした。私は、姉が学校の机と椅子が嫌なことを妹には話していなかったのですが、妹は姉が学校を連想したのかもしれないとすぐ気づき、部屋に入る前に「このお部屋は学校みたいだから〇〇(姉の名前)は苦手みたい」と療育の先生に教えてくれました。また姉には「この部屋はいやだよね。無理しなくていいと思うよ」と穏やかに声をかけていました。Upload By ユーザー体験談その後、妹が姉にその後の予定を話し、落ち着かせようとしてくれました。姉も一旦落ち着きかけたのですが、少しパニックになってしまったため、その日の療育はそのまま終わってしまいました。ですが、あのまま案内された部屋に入っていたら、1週間は荒れていたと思います。妹の気づきと素早い対応のおかげで、その日1日荒れる程度で済みました。これからも仲良し姉妹で!姉は少しでも過ごしやすいように、妹には好きを優先してほしいこのように妹には姉だけでなく、私もとても助けてもらっています。ただ、優しすぎて自己主張が苦手な面がある妹。いつも負担や我慢ばかりさせているかと思うと、親として申し訳ない気持ちもあります。ですので、母と妹2人で出かけたり、ぎゅーっと抱きしめることは欠かせません。Upload By ユーザー体験談親としては、二人がこれからも仲良し姉妹でいてもらいたいというのが何よりの望みです。姉は、素直で優しい部分はそのままで、気持ちのコントロールを徐々にできるようになってもらい、悲しみばかりに囚われず少しでも過ごしやすくなってもらいたいです。妹は……いつも自分の気持ちよりも相手のことを優先しがちなので、もっと自分のやりたいこと、好きなことを優先できるようにになってもらいたいです。サポートには本当に助かっていますが、妹には妹の人生があると思うので、その部分は我慢をさせないように親としても注意して見守っていきたいです。また妹は、家では姉をサポートし、学校では特別支援学級の子をサポートしているようです。本人も人を助けたい思いが強く、大人になったら姉の通う療育施設の先生になろうかなと話しているので、療育の先生になって支援が必要な子やその家族の支えになる存在になってくれればと思っています。イラスト/カタバミエピソード参考/naco.(監修:森先生)とっても良い妹さんですね。お母さんから妹さんへの配慮も、大変素晴らしいと感じます。発達障害のある子どもが成長するためには、親だけでなく家族全員の協力が得られるとより良いですよね。親だけではケアできない部分もあり、同年代のきょうだいからケアしてくれることは、とっても助かるでしょう。ただし、パニックや癇癪の対応は、大人でも疲れてしまうこともあるくらい大変なことです。「きょうだい児」がどんなに優秀でも、親はそれに甘え過ぎないことが大切です。「きょうだい児」にも、安心して家族に甘えたり、ときに反抗したりすることも必要です。「きょうだい児」とのコミュニケーションも大切にして、ときに親と2人っきりで甘えられる時間を意識的にとってあげること。「お世話をしてくれるから」でなく、「その子自身を愛している」こと、「その子のやりたいことを応援している」ことを、これからも今の調子でしっかりと伝えられるといいのではないかと思います。
2023年08月31日太郎の特性は自分のせい?看護師の仕事のほうは育休明けから時短勤務にしていた。1日7時間勤務とは言えど私はヘトヘトだった。私が疲れ果てて家で全力で太郎の相手をできていない事や、一緒に過ごす時間が短い事が、太郎の保育園で多動、緘黙に影響しているのかな、働いている私のせいかな……。自分を責めるような思考にもなった。Upload By まゆん主治医の先生からはそうではないと説明を受けていたし、それだけではないと頭では分かってはいた。それでも、私が太郎と関わる時間を増やすことで太郎が落ち着くなら……。Upload By まゆんそう思い一大決心、さらに勤務時間を短くしパートに切り替えようと考えた。職場の上司からは「もったいない、時短勤務・正社員のままでいいのでは?」とアドバイスがあった。私も、職場の立ち位置が主要メンバーではなくなるという疎外感を多少なり感じるだろうと予想していた。だが、私が仕事をしている事で愛情が足りていないせいで太郎の情緒が不安定になっているという可能性が少しでもあるならば、太郎と関わる時間を増やそう!と決めた。Upload By まゆん私の勤務時間が短くなり、太郎はどうなったかというと……。結論、なにも変わらなかった。むしろ、保育園に早めに迎えに行っても太郎は園庭を駆け回っており「帰りたくない!」と汗を流して言われるほどだった。太郎の言葉で気持ちが楽になった。楽しそうにしている太郎を見ていて気づいたことがあった。私との時間も大事だけど、保育園で過ごす時間も太郎にとって同じくらい大事なものなんだと。Upload By まゆん保育園の先生たちに対して、悪いなという思いは残った(加配が必要と告げられているため)。それでも、太郎の遊び回る姿を見ていて、親子それぞれの時間も大切にしようと思えるようになった。パート期間を終えてパートの期間はおよそ1年間で終わりにした。その後は正社員に戻り夜勤も週に1回入るようになった。特に両立が大変だった時期は、小学校4年生の音楽発表会前。行き渋りもなく普通に登校していた太郎が連日急な嘔吐で呼び出しがあった。たまたま私が日勤だったため、上司に事情を話して太郎を迎えに行くということがあった。夜勤ではなく本当に良かった……。現在の職場でも、面接の際に自閉スペクトラム症のある太郎の特性について話をした。療育センターに通っていることや中学生だけれども社会的な部分は小学生の低学年か年長さんほどということ。情緒面で不安定さが多いことも伝えた。また、私の母がほぼ同居状態ではあるが、太郎の体調不良時はなるべく私が傍にいて様子を見たいため休みをいただくことも伝えた。私の家庭環境や太郎の特性を理解してもらうためには、自ら行動して納得してもらう必要がある。直接的ではないが、こういう執筆活動もその一つだと思っている。あとがき中学生になった今、夜勤業務をセーブしています。社会的な面で、太郎と周りとの成長の差が気になることがあり、学校から帰宅したあとの太郎の様子を見ていたい気持ちがあるからです。学校からの呼び出しは劇的に減ったけれど、「吐きました」「固まりました」「急に泣きだしました」といった情報共有の電話は何回もあります。いまでも働き方は悩むところがあります。ずっとずっと太郎との関わり方については考え続けています。結構しんどいときもありますが、太郎ファーストで進んでいる私です。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)私の外来でも母親への告知のあとに必ず「お母さんの育て方のせいではありませんよ」と優しく伝えます。さらに、「ここのスタッフはみんなお母さんの味方で応援団ですから困ったことがあったら遠慮なくおっしゃってくださいね」とも伝えます。ほとんどの母親がここで涙を流します。今まで一人で抱え込んでいたからです。母子家庭でない場合も父親の関わりが薄く、実家でさえ相談に乗ってくれない事情を抱え、ずっと一人で悩んでいる母親が多く見られます。父親ではなく母親がお子さんと向き合うために仕事をパートへ切り替えているケースも多く見かけます。身近では地域の保健師や園と学校の先生が相談に乗ってくれる場合もありますが、向き合い方は人それぞれです。時には同じ障害があるお子さんの保護者が集まる親の会を紹介して仲間をつくることも提案します。悩みを一人で抱え込まずに地域のみなさんと一緒になって子育てに関わっていくことが大切なのです。
2023年08月30日場面緘黙次女と通級指導教室(ことばの教室)の先生との最初の面談での心配事まず、通級指導教室(ことばの教室)を利用するにあたって、次女と通級の先生と個別の面談をすることになりました。場面緘黙の次女は、クラスメイトとは話せませんが、担任の先生とは必要最低限の会話をすることができ、なんとか自分の意思が伝えられます。Upload By まりまりただ、知らない先生だと、初めての面談でコミュニケーションをとるのはかなり難しいのではないか……と思い、心配していることを先生に話してみました。Upload By まりまり先生からの提案すると、先生のほうから「次女さん、タイピングはできますか?」との質問がありました。次女はタイピングが得意で、少し自信を持っているので「もしかしたらパソコンを使ったほうが、やり取りがうまくいくかも……」と伝えたところ、必要であれば面談時にパソコンを使っていただけることになりました(そして実際使ってコミュニケーションがとれました!)。Upload By まりまりさらに先生から「面談で初対面だと緊張しちゃうと思うので、事前に一度顔を合わせておいたほうが良いでしょうか?」とのご提案があり、とにかく目立つのを恐れている次女のために、みんなに注目されにくい時間ということで、給食の準備の時間に、こっそり声をかけていただくことになりました。こんなに考えてもらえるとは思っていなかったこうして、先生と細かいことまでいろいろお話できたのは、Upload By まりまりと、言っていただけたことが大きかったと思います。正直、ここまで次女や保護者の気持ちを考えて対応してもらえるとは思っていなくて驚きました。もっと早く学校での支援ができていれば…と、同時に、「もっと早く学校内での支援ができていれば……」という気持ちにならざるを得ませんでした。学校での緘黙症状が一番強い次女。1年生で場面緘黙疑い、2年生で場面緘黙の診断を受けて、4年生の終わり頃になってやっと学校で……という気持ちでした。次女自身への支援はもちろんありがたく、さらに、私自身にとっては「学校に理解・協力してくれる先生方がいる」というだけで、何もなかった頃よりかなり安心した気持ちで学校へ次女を送り出すことができるようになりました。Upload By まりまり子どものため、そして、自分のためにも、通級指導教室を利用し始めて良かったなと思いました!執筆/まりまり(監修:室伏先生より)次女さん、ことばの教室での授業をスタートされることになったのですね!先生との初回の面談のご様子や、まりまりさんのお気持ちなど、詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。事前の顔合わせや、タイピングでのコミュニケーションの提案など、授業開始前からさまざまな工夫を取り入れてくださるとのこと、安心できますね。今後、次女さんの安心できる居場所が増えるといいですね。また、通級の先生と考えた工夫が、今後さまざまな場所で活躍してくれるかもしれませんね。通級で場面緘黙に対する支援をしてくれるかどうかについてはまだまだ地域差も大きいというのが現状かと思います。場面緘黙のお子さんが安心して過ごせる支援の場が増えることを願います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年08月30日手づかみ食べはなぜ必要?手づかみ食べはいつから始まる?子どもの発達について解説離乳食は、生後5〜6ヶ月から始めることが推奨されています。最初は、10倍がゆをなめらかに裏ごししたものをゴックンと飲み込むことからスタートしますが、生後7〜8ヶ月ごろになると、水分を減らしたメニューも舌と上顎ですりつぶして食べられるようになります。そして生後9~12ヶ月頃になると、離乳食は1日3回になり、栄養の大半を離乳食からとるように。かむ力もだんだんとついてきて、やわらかくゆでた野菜などを前歯でかじりとり、歯ぐきですりつぶしながら食べるようになります。この頃になると、手指も発達し、手のひらでものを握ったり、親指と人差し指でつまんだりといった細かい動作が徐々にできるようになってきます。食事の時、子どもがお皿のなかに手をのばしてさわろうとする仕草も増えてくるかもしれません。こうした仕草が見られるようになったら、ぜひ離乳食にも手づかみで食べられるメニューを取り入れ、十分に手づかみ食べをさせてあげましょう。手づかみ食べは、食べ物を見て確かめ、手でつかみ、口へ運んで食べるという「目と手と口の協調運動」です。この3つの協調運動は、スプーンやフォーク、箸などの食具を使うためにも重要です。手づかみ食べをたっぷり経験することで、食具を使いこなす土台も育まれていきます。また、この時期は「自分でやりたい!」という意欲が芽生えてくる頃です。食べ物をつかんで投げたり、ベタベタの手で顔や頭、テーブルなどをさわったり、お皿をひっくり返したりと、保護者にとっては困った行動に見えることも増えますが、ここはぐっとこらえてできる限り子どもの自由にさせてあげましょう。子どもは手指をセンサーにして、食べ物の形状や温度を感じ取りながら、「落としたらどうなる?」「手でにぎるとどうなる?」とさまざまなことを学んでいる最中です。食事用のビニール製やシリコン製のスタイを使用したり、食事いすの下にレジャーシートや新聞紙を敷いたりすることで、食べこぼしの片づけは少しラクになるでしょう。子どもが手づかみ食べしない4つの原因、手づかみ食べしないことでの影響とは?手づかみ食べは、9ヶ月頃から多くの子どもに見られますが、なかには自分から食べ物に手を伸ばそうとしない子どももいます。子どもが手づかみ食べに興味を示さない理由としては、以下の4つが考えられます。1.手が汚れる感覚がイヤ離乳食後期から完了期のメニューは、歯ぐきでつぶせるくらいのかたさが目安です。手づかみ食べメニューも、手でぎゅっと握るとつぶれてくっついてしまうことから、手にベタベタとくっつく感触をいやがって、手づかみをしようとしない可能性が考えられます。ただ、しばらくは慣れない感触をいやがる子どもも、ママやパパがやってみせたり、何度か繰り返して安全であることを学習することで、次第に抵抗感がなくなっていくケースも少なくありません。子どもとママやパパに負担のない範囲で、チャレンジを継続していくとよいでしょう。また、保護者が汚れるのをいやがって、こまめに子どもの手を拭いたり、「それは手づかみしないで!」など、手づかみ食べ用のメニュー以外をさわらせないようにしていると、子どもの「さわってみよう」「自分で食べてみよう」という意欲がしぼんでしまうこともあります。手づかみ食べの時期は、ある程度汚れるのも仕方ないと割り切りましょう。2.食への興味があまりない大人でも食べることが大好きな人もいれば、食べることよりも趣味や仕事の優先順位が高い人もいます。赤ちゃんのタイプも、大人同様にさまざまです。食事の際は、子どもの気があちこちに散らないように、集中できる環境を整えましょう。テレビは消し、おもちゃは目に入らないところに片づけます。保護者がいっしょに食卓を囲み、大人が食べている姿を見せることも、食への関心を引き出すのに効果的です。3.手先がまだ器用ではない手づかみで食べるには、手指のこまかい動作が必要です。子どもの発達には個人差が大きく、手指の発達スピードにも幅があります。9ヶ月ではまだ上手に手づかみできなかった子どもも、10ヶ月、11ヶ月と月齢が大きくなるにつれ、次第にこまかな動作ができるようになり、上手に口に運べるようになっていくことも多いものです。あせらず、その子なりのペースを大事に見守りましょう。4.自分でやりたいという意欲が育っていない子どもが離乳食に手を伸ばしたり、さわろうとしたときに、汚れるのを嫌がってさわらせないでいると、子どもが「食事は大人に食べさせてもらうもの」と学習してしまうことがあります。すると、月齢が進んでも、大人がスプーンを運んでくれるのを口を開けて待つばかりで、自分から食べようという意欲が見られなくなってしまうケースも。子どもが手づかみしやすいメニューを持たせてあげて、自分で食べる経験を少しずつ重ねていくことで、徐々に意欲が育っていきます。手づかみ食べの機会が少ないと、食具を使って自分で食べる発達もゆっくりになるなどの影響が考えられます。ただ、手づかみ食べは個人差が大きく、あまり手づかみ食べをせずに、はやくからスプーンなどを使って食べることに興味を示す子どももいます。大切なのは、子どもが「食べるって楽しい!」と感じて、おいしく味わって食べられること。手づかみ食べのメニューも用意しながら、おおらかな気持ちで子どもの自発的な食行動を見守っていきましょう。手づかみ食べのポイントと促し方は?9ヶ月頃になったら、手づかみで食べられるメニューを献立に加えることを意識しましょう。たとえば、ごはんを小さめのおにぎりにしたり、ゆでた野菜やいも類をスティック状に切ったりするだけでも十分です。バナナやふかしたさつまいもなどは、やわらかくて甘みも強く、手づかみ食べにぴったりです。手づかみ食べメニューは、少し大きめにカットすると、子どもが前歯を使ってひと口量をかみとる練習にもつながります。子ども用のお皿に盛りつけ、子どもが自由に手をのばせるようにしましょう。最初は口いっぱいにつめこんで、「おえっ」とえづいてしまうこともあるかもしれません。それも子どもにとっては、適切なひと口量を覚えるための学習です。食事中は必ずそばにいて、のどにつまらせないように見守りましょう。食事は食べさせてもらうものではなく、自分で食べるもの。子どもの「食べたい」という意欲を引き出していくためには、おなかがすいて食事をする、というリズムをつくることも大切です。3食は毎日できるだけ決まった時間に設定し、体を動かしてたっぷり遊び、空腹を感じてから食事をできるようにしましょう。食事の時間だけでなく、起床時間、昼寝、就寝などの生活リズムを整えていくことも大事です。手づかみ食べをしないときの対処法は?手づかみできるメニューも出して、食べこぼし対策も万全!それでも子どもが手づかみ食べをしようとしない……。そんなときは、次のような工夫を試してみましょう。1.調理法&味つけをチェンジ離乳食も後期になると、ゆでる、蒸すだけでなく、焼いたり、素揚げしたりしたものも食べられるようになります。また1歳以降であれば、天ぷらやフライにも挑戦できます。同じスティックにんじんでも、ゆでたものと表面をカリッと香ばしく焼いたものでは、手触りや食感が異なりますね。いろいろな調理法を取り入れて、子どもの好奇心を刺激してみましょう。ゆでた野菜をかわいい型で抜いたりして、見た目を楽しく演出するのもおすすめです。また、離乳食後期になると、少量のしょうゆやみそ、塩、砂糖などを使って調味したものも食べられます。薄味を基本に、さまざまな味を試し、子どもが「おいしい!」と喜んで食べられる食卓をめざしましょう。2.みんなで一緒に食べる子どもの食べる意欲を引き出すには、食べるのはの楽しい、という雰囲気を演出することも大切です。ママやパパといっしょに食卓を囲んで食べる様子を見せるのも効果的。また、祖父母や友人を招いたり、お弁当をつくって公園でピクニックをしたりと、環境を変えてみるのもおすすめです。3.手指を使う遊びを取り入れる食事のとき以外に、つまんだり、ひっぱったり、手指を使う遊びを楽しむのもよいでしょう。子どもが楽しく夢中になれることで、手指の発達を促していくことが、手づかみ食べにもつながっていきます。ただ、「手づかみ食べの練習のために!」とノルマのように取り組む必要はありません。子どもが興味を持ちそうなおもちゃがあれば、いっしょに楽しみながら遊んでみましょう。手づかみ食べで食の世界を広げて手づかみ食べは、子どもの成長にとって大切な発達段階の一つです。汚れたり、いつもより食事の時間が長くかかったり、大人にとっては大変なこともありますが、それも一時期のことです。子どもの食への意欲を育くみ、自分で食べる基礎を築いていくためにも、たっぷり手づかみ食べの経験をさせてあげましょう。手づかみ食べは9ヶ月頃からが目安ですが、個人差も大きいものです。あせらずおおらかな気持ちで見守りましょう。なかなか手づかみ食べをしなくて心配なときは、小児科医や保健師など、専門家に相談してアドバイスをもらいましょう。
2023年08月29日インフルエンザ脳症とは?原因も解説インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスに関することによって引き起こされる脳症で、「意識障害」「けいれん」「異常言動・行動」などの症状が表れる病気のことです。主に子どもが発症する場合が多いといわれています。そもそもインフルエンザとは、通常の風邪とは異なりインフルエンザウイルスに感染することで発症し、38℃以上の発熱や全身の倦怠感、頭痛、筋肉痛などの症状が見られる病気です。インフルエンザは1週間程度で症状が落ち着いてくるといわれていますが、子どもの中にはインフルエンザに伴った急性脳症を発症することがあり、これをインフルエンザ脳症と呼んでいます。インフルエンザ脳症がなぜ起こるのかは現在までのところはっきりと分かっていませんが、いずれにせよインフルエンザウィルスの感染がきっかけとなっているため、まずはインフルエンザウィルス感染を予防することが大事と考えられます。インフルエンザ脳症の割合ですが、2019年から2020年にかけてのインフルエンザの患者数は約729万人で、そのうちインフルエンザ脳症は254例報告されています。(2020年第 14 週までの暫定値)このデータをもとに計算すると、インフルエンザにかかった方のうち、約3万人に1人がインフルエンザ脳症も発症していることになります。ただ、こちらは全年齢の調査なので、子どもに限った場合はインフルエンザ脳症にかかる確率は先程挙げた割合より高くなると考えられます。インフルエンザ脳症にかかった場合は意識障害などの症状が表れ、治療後も後遺症が残る場合もあるため、早期に医療機関を受診することが大事です。インフルエンザ脳症の初期症状とは?後遺症の割合や症状も解説インフルエンザ脳症の初期症状として、「意識障害」「けいれん」「異常言動・行動」が挙げられます。その中でも意識障害はインフルエンザ脳症を判断する際に最も重要な症状といわれています。意識障害とは、刺激を与えたり呼びかけをしたりしても反応がない、または鈍い状態のことで、インフルエンザ発症時に意識障害が見られた場合はインフルエンザ脳症の可能性があり、救急にて受診する必要があります。意識障害以外のけいれんと異常言動・行動は通常のインフルエンザに伴って表れることもある症状のため、それだけではインフルエンザ脳症とは判断できません。異常言動・行動も短時間のものは経過観察となる場合があり、1時間以上を目安に長時間続く場合などはインフルエンザ脳症の可能性が高いと考えられています。異常言動・行動には、・保護者のことが分からなくなる・突然大きな声で歌いだす・幻覚が見えるようになる・意味不明なことを話すなどがあります。ただ、けいれんと異常言動・行動が両方表れている場合は、インフルエンザ脳症の可能性が高くなるため病院に受診することになります。インフルエンザ脳症を発症したあとは、無治療の場合は死亡率が約30%でしたが、その後の研究などにより、10%以下にまで下がってきます。ただ、治療後も後遺症が残る場合があり、その割合は25%程度ともいわれています。後遺症としては身体障害や精神障害が残る可能性があります。身体障害が残ることは少ないですが、四肢麻痺が残る場合もあるといわれており、精神障害が残る場合は知的障害、てんかん、高次脳機能障害が多いです。後遺症が残った際は、症状に合わせて運動機能やコミュニケーション訓練などのリハビリテーションが行われます。それとともに、突然障害が生じたことへの子ども、家族双方の精神的なケアも並行して行っていくことが多いです。また、インフルエンザ脳症の後遺症の影響により、学校生活や勉強で困ることも考えられるため、スクールカウンセラーや先生などと連携してフォローアップしていくことも大事とされています。子どもは高熱が出たときに、意味不明な発言をしたり、突然大声を出すといったことがあり、この状態は熱せん妄と呼ばれています。熱せん妄とインフルエンザ脳症の異常言動・行動は共通している部分も多く、正しく診断するためには鑑別が必要です。厚生労働省の発表しているインフルエンザ脳症のガイドラインによると、①おおむね1時間以上続く②明らかに意識状態が悪いという条件を満たす場合に、インフルエンザ脳症の可能性が高いとしています。ただし、1時間以上などの条件はあくまで目安のため、状況によっては専門的な医療機関で検査することが必要とも記載されています。また、同時にけいれんが見られる場合にもさらなる検査が必要とされています。後悔しないために。子どものインフルエンザ脳症の予防法、治療法インフルエンザ脳症を防ぐには、まずインフルエンザにかからないような対策が有効といえます。インフルエンザの予防法としては、・流行前のワクチン接種・外出後の手洗いやアルコール消毒・50~60%程度の湿度の維持・室内でのこまめな換気・バランスの取れた栄養摂取と休養・人混みなどへの外出の自粛などがあります。ただ、充分に予防していてもインフルエンザにかかることはあると思います。その際は、先ほど挙げた意識障害やけいれん、異常言動・行動が見られた場合はすぐに医療機関を受診するようにしましょう。インフルエンザ脳症は症状の進行が早い疾患です。そのため、早期に診断を受けて治療を開始することが重要といわれています。インフルエンザ脳症の治療法としては、主に対処療法や特異的療法があります。対処療法とは患者の状態をより良く保つことを目的とした治療法で、インフルエンザ脳症では心肺機能を安定させる措置や、けいれんに対しての投薬などがあります。特異的療法では、高サイトカイン状態と呼ばれる、炎症を引き起こす特定のたんぱく質が過剰に産生されている状態を鎮静化させることを目的に行われます。具体的には抗ウイルス剤を用いた薬物療法や、メチルプレドニンゾロンパルス療法、ガンマグロブリン大量療法と呼ばれる点滴治療などがあります。インフルエンザ脳症では高熱を伴うことが多く、体温が40℃を超える状態が続くことで治療やその後の状態への悪影響も考えられるため、解熱剤が用いられる場合があります。インフルエンザ脳症の解熱剤としては、アセトアミノフェン(総称名:カロナール)が推奨されており、体重1kgあたり10mgの割合で投与されます。通常は空腹時の服用を避けて4~6時間以上の間隔で経口摂取し、年齢などにもよりますが一日体重1kgにつき60mgまでを限度としています。アセトアミノフェンは副作用が少ない薬として知られていますが、服薬することで何か症状が表れた場合は医師に相談することが大事です。また、解熱剤の中でアスピリン、ジクロフェナク、メフェナム酸はインフルエンザ脳症では禁忌といわれており、基本的には用いられません。子どものインフルエンザ脳症を防ぐためにインフルエンザ脳症はインフルエンザを原因とする脳症のことで、「意識障害」「けいれん」「異常言動・行動」などの症状が見られる病気です。インフルエンザ脳症は主に子どもが発症することで知られており、治療後も約25%の方に何らかの後遺症が残るといわれています。インフルエンザ脳症を防ぐためには、まずは予防接種や手洗い、アルコール消毒、換気などインフルエンザ自体の予防法を徹底することが大事です。インフルエンザ脳症は早期の診断と治療が重要といわれており、もしインフルエンザにかかった場合に、意識障害などが見られたらすぐに医療機関を受診するようにしましょう。参考:インフルエンザ脳症ガイドライン|厚生労働省参考:令和4年度インフルエンザQ&A|厚生労働省参考:インフルエンザ2019/20シーズン|国立感染症研究所参考:インフルエンザ脳症の新しい治療法について|国立感染症研究所
2023年08月28日感覚統合とは…何をしたらいいの?ゆきみ(以下、ーー):自閉スペクトラム症がある長男けんとは、・身体を動かすのが苦手・手先がとても不器用・感覚過敏だと思われる場面が多く見られることから、年少の頃から月に1度、作業療法へ行っていました。そのときに作業療法士さんに「感覚統合をしていったほうがよさそう」と言われました。感覚統合ができる施設があるのか……などと調べてみたり、本を読んでみたりしましたが、具体例が多すぎてどれを選んでいいのか分かりません。Upload By ゆきみ本で読んだ中からいくつかチョイスして、家で「カゴにボールを投げ入れて、何点!」みたいなゲームをやってみたりしますが、「これで合ってるのかな?」と不安になることも。どうやれば、感覚を統合できるのでしょうか?そもそも、感覚統合って何なのでしょうか?感覚統合の捉え方…作業療法士野田先生からの回答は野田先生:感覚統合とは「感覚統合療法」という作業療法の手法で使われる用語で、複数の感覚を整理したりまとめたりする脳の機能のことです。感覚統合療法は発達に関する困りごとがあるお子さんを支援するためのアプローチで、その特定の困りごとや、発達の特性に対して行います。感覚の困りがあるからといって、必ず感覚統合療法をするべき、というわけではありません。人は外から入ってくるさまざまな刺激を、皮膚や筋肉などから感じ、感覚をまとめあげて身体を動かしたり、世界と関わったりしていきます。そのバランスがとれていなかったり、処理の仕方に偏りがあったりすると、「身体をうまく動かせない」「ざわざわする場所が苦手」「人より光を眩しく感じてしまう」「腕の曲がり具合が上手くつかめないのでダンスのまねができない」などの困りが生じます。上手く統合できていない感覚に対してのアプローチ方法として編み出されたのが感覚統合療法ですが、感覚や運動にまつわる全ての困りごとを解決するわけではありません。合っているお子さんに、合ったやり方をすると効果が出るものだと思ってください。実は感覚統合療法以外にもさまざまなアプローチの方法があるので、「感覚統合」というものに必要以上にとらわれる必要はありません。Upload By ゆきみ例えば……身体の感覚がつかめない、姿勢が崩れても気づかない、というような場合、身体の感覚に気づきやすい活動をしていきます。この場合一つの方法として、狭いトンネルをくぐる遊びをすると、頭が当たらないように気をつけることにより、トンネルの大きさと自分の身体の大きさの関係をつかむというアプローチになります。一つひとつの困りに適した対応にはいろいろな進め方がありますが、感覚統合療法は一つの候補になるかもしれません。そういう捉え方ができるといいかなと思います。いろいろな角度からアプローチーー「感覚統合」というワードにとらわれすぎず、一つひとつの困りごとに、いろいろな角度からアプローチしていくのがいいということですか?うちの息子は身体を動かすのが苦手で、縄跳びを上手に飛ぶことができません。これに対して、どのようなアプローチ方法があるのでしょうか?Upload By ゆきみ野田先生:「トップダウンアプローチ」と「ボトムアップアプローチ」というのがあります。トップダウンアプローチでは、「縄を素早く回す」というように具体的なスキルに焦点を当てて練習をします。ボトムアップアプローチは、筋力をつける、身体の感覚をつかむ能力を育てるなど、特定の運動ではなくさまざまな動きや訓練を通して運動に関わる機能を育むものです。感覚統合療法は、遊びの中でいろいろな身体の使い方を学んでいくものなので「ボトムアップアプローチ」にあたります。年齢やスキルの習熟度にもよりますが、「縄跳びができるようになる」ためには、どちらのアプローチも大事です。ーー学生時代、私はバスケットボール部だったのですが、部活でやっていた「シュート練習」と「筋トレ」どちらも大事みたいな感じですか?野田先生:そうです!そのような「スキル獲得の練習」と「筋トレ」の違いだと思ってください。ボトムアップ・トップダウンのどちらのアプローチが適切かは、お子さまの状態や年齢によって異なります。専門的な分析が必要な場合は、作業療法士などの専門家にたずねてみてくださいね。~対談を終えて~Upload By ゆきみ野田先生からのお話しで「感覚統合しなきゃ!」と、抱えていた不安がとても和らぎました。「大人にとっての筋トレ」=「子どもがたくさんの種類の遊びをすること」なのかな?と思いました。「感覚統合」という言葉にとらわれず、たくさん遊ぼうと思います!公園の端にある石の上をバランスを取って遊び歩くのも、新聞紙を丸めてチャンバラして遊ぶのも、風船が床に落ちないように上に叩きあげて遊ぶのも……、子どもが行う小さい遊びの一つひとつが、身体や感覚をつくり上げていくんだなぁと。その際に、一つの遊びをやるというより、いろいろな種類の遊びをすること、身体を動かすさまざまな経験をすること、というのを頭の片隅に入れていくとよさそうですね。それらの中に、もしかしたら感覚統合療法が入っているのかもしれません。とはいえ小学生になり、縄跳び、ドッジボールなど、特定のスキルが必要な場面も多くなってきました。焦らずゆっくりと、トップダウンアプローチもやっていこうかと思います。執筆/ゆきみ(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月28日市内すべての区にインクルーシブな公園を整備するために準備を進める福岡市Upload By 発達ナビニュース福岡市は、障害の有無や、特性、背景にかかわらず、すべての子どもたちが自分らしく遊べる「インクルーシブ」な遊び場を市内すべての区に整備すると発表しています。インクルーシブには、“誰一人取り残さない”というSDGsの基本理念や、すべてを包み込むという意味があります。2022年度、福岡市は背もたれがある回転遊具、車椅子からも乗りやすいようにつくられたトランポリンなど、障害の有無にかかわらず楽しめる遊具を舞鶴公園に期間限定で設置。体験した人などにアンケートを取るなどしてそれを基に指針整備を進めてきました。そのうえで福岡市は、2025年度末までに、市内7つの区すべてに1ヶ所ずつインクルーシブな遊び場を整備していくと発表しました。今回は、九州大学院 芸術工学研究院 教授の平井康之先生がモデレーターを務めたほか、「みーんなの公園プロジェクト」代表 倉敷芸術科学大学 教授 柳田宏治先生、「インクルーシブふくおか」代表の上角栄子さん、福岡市住宅都市局公園部整備課 甲斐航平さんが登壇。福岡市のインクルーシブな子ども広場の整備指針を参加者の方々に共有したほか、デザインの視点からもインクルーシブな子ども広場の今後の在り方を議論しました。多様な人や団体の連携が鍵。海外で成功しているインクルーシブな遊び場とは?「インクルーシブな遊び場づくり〜海外の先進事例より〜」と題した基調講演を行なったのは、倉敷芸術科学大学 教授の柳田宏治先生です。柳田先生は、1990年代にアメリカでユニバーサルデザインについて調査したあと、国内で普及活動を行っているほか、著書「すべての子どもに遊び場を ユニバーサルデザインによる公園の遊び場づくりガイド」を刊行。インクルーシブな遊び場づくりの促進を目指す市民グループ「みーんなの公園プロジェクト」の代表も務めています。「みーんなの公園プロジェクト」は、プロダクトデザインが専門である柳田先生、特別支援学校の教員と元教員というメンバーで構成。それぞれの立場から「遊び場の具体的なニーズ調査」「国内外の公園を訪れての事例調査」「関連情報の収集と発信」などを行っています。「みーんなの公園プロジェクト」ホームページ2006年から20年近く活動を続けるなかで、最近特にインクルーシブな遊び場への興味が高まってきたことを感じるという柳田先生。反面、表面的な理解や誤解をしている人が多いとも感じています。・インクルーシブな遊び場は障害のある子どものためのもの・平らな地面に易しい遊具を置けば、「それでよい」・目指すゴールは「遊び場の完成」である・インクルーシブな遊び場は一ヶ所あれば十分上記がよくあるインクルーシブな遊び場に対する考えだそうですが、この全てが誤解なのだそう。では一体「インクルーシブな遊び場」とはどんな場所なのでしょうか。柳田先生の考える「インクルーシブな遊び場」とは、“個人の特性や背景などの違いにかかわらず、あらゆる子どもが共に遊び、育ち合う場”。それには3つの柱が必要だといいます。1つめがすべての基本となる「誰もが利用できること」、2つめが単に遊べるだけではなく子どもたちのさまざまな能力を引き出すために「遊びが豊かであること」、3つめが子ども同士はもちろん保護者同士や地域住民を含めたコミュニティをつくれるような「人や地域とゆるやかなつながりがあること」です。柳田先生は、この3つの柱に合わせて、海外では具体的にどのような取り組みがあるのかを紹介しました。“誰もが利用できる”ために欠かせないのが全体のアクセシビリティです。遊び場は、土地の高低差も利用しながら、すべてのエリアがアクセス可能な地面や園路でつながっています。これは、「公平性」を保証するためのもの。また、遊具エリアの地面に使われているのはゴムチップ舗装です。クッション性があるので、怪我の心配も少なく、雨が降ってもぬかるむことがありません。エリアの特性によって、コンクリート、芝、ウッドチップなど色や感触の異なる地表面材を使い分けられているのは、視覚に障害のある人を含め、多様な利用者が直感的に場所を認識しやすくするためだそうです。“遊びが豊かであること”につながるのは、さまざまな選択肢があり、子どもたち自身がそのなかから選べるという環境。滑り台一つとっても、幅やタイプの異なる数種類が用意されていたり、エリアごとに回転遊具、揺れる遊具、音遊び…などに分かれていて、子どもたちが自分の気に入った遊びを選びやすいような工夫もあるそうです。また、1人で遊べるもの、みんなで遊べるものなどの選択肢も大切な要素の一つになります。“人や地域とゆるやかなつながりがある”については、さまざまな視点からの仕掛けが。たとえば、砂場や回転遊具などは、車椅子やバギーに乗ったままみんなと同じ場所で遊べるのはもちろん、初めて会った子ども同士でも砂のやりとりや協力する遊びが生まれやすいようデザインされています。また、「〜したい」「走る」「あれは何?」など、遊びのなかでよく使う言葉をピクトグラムにしたコミュニケーションボードを設置し、音声言語を持たない子どもや、外国にルーツのある子どもなども意思の疎通をはかりやすいようになっているのです。公園内のステージは、イベントの開催を促したり、地域とのつながりを広げることを目的として設置されています。こうした海外の質の高い事例の背景には、多様な連携があると柳田先生。自治体の積極的なリードはもちろん、障害のある当事者やNPOや市民団体の働きかけ、大学や企業による開発や研究、そして地域住民の協力や寄付など、さまざまな人が公園づくりに参加しています。公園を“つくる人”、“使う人”、そして“地域社会”がそれぞれの強みを活かし、対話を重ねることで、このような遊び場が現実のものとなっているのです。柳田先生は講演の最後にこんなことを語りました。「福岡市の取り組みは、まさに多くの方の連携が実践されているように思います。遊び場をつくる段階から、多くの人が参加することで、人々のあいだにオーナーシップが生まれ“私たちの公園”と呼べるものになっていくのです。子どもたちにとって、こういった遊び場で得た経験は、将来学校や社会のあらゆる場面で活かされていくでしょう」目指すのは、誰もがお互いを理解し、安心して、笑顔で、自分らしく遊べる場所Upload By 発達ナビニュース柳田先生の講演に続き登壇したのは、福岡市住宅都市局公園部整備課 甲斐航平さんです。甲斐さんからは、2023年1月に策定された「インクルーシブな子ども広場整備指針」の説明が行われました。まず冒頭で、心に残っている言葉を紹介した甲斐さん。「公園ってもともとインクルーシブな場所なのに、なぜ今になってインクルーシブと言い出すのか?」「そもそも公園に行こうという発想がない、いくとしたら人気がない時間に行く」という市民の方からの言葉です。指針をつくるにあたり、この2つの言葉を根底で意識してきたと振り返りました。福岡市は2011年から「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」というプロジェクトをスタート。市内のさまざまな場所で、バリアフリーやユニバーサルデザインの取り組みを進めてきました。そんななかで、子どもの遊び場に注目したときに、“ブランコは体を支える力が弱い子は使えない”、“車椅子や歩行器具を使っている子は、柵が設けられている砂場には入りにくい”……など、遊び場にはまだまだユニバーサルデザインの取り組みが行き届いていないと気づいたといいます。そんな課題意識から始まったのが、「インクルーシブな遊び場」についての整備指針づくりだったのです。「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」ホームページ整備指針をつくるにあたり、実証実験やアンケートなど、さまざまな調査を重ねてきた福岡市。その結果、「公園にあまり行かない理由」の多くが、たとえば障害などが理由で遊具を使用できないことなどの物理的なものより、ほかの公園利用者とのトラブルなどに不安を感じるという心理的なものだということが分かりました。また、福岡市の調査では、身体障害よりも知的障害のある子どものほうが多いという数字も出ています。これらのことから、身体に障害のある子どもが使えるようなユニバーサルデザインの遊具を設置しただけでは、インクルーシブな遊び場は完成しないことが分かったのです。周りの音が気になってしまう子ども、1つのことに長時間集中して周りが見えなくなってしまう子ども……など、さまざまな特性のある子どもがいるということにも配慮しながら、整備指針の作成を進めました。Upload By 発達ナビニュース福岡市は、インクルーシブな子ども広場を、「誰もがお互いを理解し、安心して、笑顔で、自分らしく遊べる場所」と定義しています。この言葉にある“誰もが”には、多様な子どもはもちろん、その保護者やあらゆる公園利用者が含まれているのです。また、“安心して”という言葉には、子どもや保護者が気兼ねなく過ごすことができるという意味が込められています。そんな「インクルーシブな子ども広場」を実現するために、指針のなかで6つの要件を策定。身体的、精神的発達や忍耐力・協調性といった社会性を育むために「身体的遊び」「精神・情緒的遊び」「社会的遊び」の3つからなる多様な遊びの要素を実現すること。また「アクセス」「安全性」「情報環境」として整理した周辺環境の整備を実現すること。これら6つを意識して、整備を進めることにしたのです。また、いくつかの共通配慮事項も示しています。1つめが、保護者が子どもを補助しやすいようなスペースを設けること。保護者が子どもを補助したり、一緒に使用できる遊具を設置したりする予定なのだそう。2つめが、自然と人工物の調和が取れていること。木々や草花などを触れて感じることができるのはもちろんですが、シンプルな芝生広場は、小さな子どもや肢体不自由な子どもがはいはいやずりばいなどで楽しめるようにという面でも考えられています。3つめが、1人遊びとみんなでの遊びを選択できること。複数人が同時に遊ぶことを想定している場所とは別に、集中して1人遊びができるスペースを設けることを想定しています。最後が、特に配慮すべき利用者が気兼ねなく利用できることです。おむつ替えや医療的ケアが必要な子どもなど、屋内での対応が欠かせない利用者にはバリアフリートイレは必須。乳幼児連れの保護者などでバリアフリートイレが混み合って、“絶対に必要な人”が使えないということがないよう、男女のトイレにベビーベッドやベビーチェアの配置をする予定です。また、インクルーシブな遊び場は障害のある子どものためだけのもと、という誤った理解をしている人も多いので、表現を考えていかなければいけないと甲斐さんは話します。また、一方で障害のある子どもを育てる保護者は、公園の利用をあきらめてしまうというケースも多いので、月に一度は障害がある子どもがのびのびと遊べる日をつくるなど、運営面で環境を整えることも重要だと考えているそうです。最後に甲斐さんはこんな言葉で説明を締めくくりました。「検証を基に整備指針を作成してきましたが、実際の整備はこれからです。本日お話ししたことが100%正解だとは思っていません。整備後にもまだまだ改善点が出てくるはずです。その点は市としても継続的に検証を進めていきたいと思っています。公園を利用される市民のみなさんにもご協力いただきながら、より良い遊び場が生まれるような取り組みを続けていきます」ハード面はもちろん、ソフト面の整備が重要な鍵に甲斐さんからの説明のあとは、「インクルーシブふくおか」代表の上角栄子さんからのお話に移ります。上角さんは、「インクルーシブな子ども広場」の整備指針ができるまでの経緯について説明しました。福岡市は、整備指針をつくるにあたり、舞鶴公園の一角にインクルーシブな遊具を整備し、実証実験を実施。障害のある子どもとその保護者が参加しました。喜んでいた子どもたちがいた反面、砂地を車椅子で移動するのが大変だったり、知的障害や視覚障害の子どものための遊び場はなかったりなど、まだまだ課題が多かったのが現実です。そこで、障害のある子どもがどんな遊びが好きなのか、アンケートを行いました。その結果を分析し、当事者の思いを取り入れ、整備指針の作成を進めていったのです。上角さんたちが考えた整備指針に欠かせないものは、「誰もが遊べる場所を整備すること。安心して安全に過ごせる場所であること」。そのうえで、理想の「こども広場」のレイアウトを考えてみることにしたのです。みんなで遊べる場所や1人遊びに集中できる場所、感覚遊びができる場所、自然のなかを散策できる場所のほかに、車椅子でもアクセスがしやすい工夫や充実したトイレなどが必要だという声があがりました。その後、そのレイアウトを基にワークショップを開催しました。そこで、障害のある子どもの保護者に聞き取りなども行なったのです。「車椅子からおりて遊ぶ場所があったらいい」「装具を外して遊ぶ場所があったらいい」などの声があったほか、不安要素として大きかったのが子ども同士、あるいはほかの保護者とのトラブルでした。そういったことから、公園をより利用しやすくするには、ハード面の整備が大切なことはもちろん、ソフト面も重要だと分かってきたのです。上角さんは、最後に福岡市への感謝の言葉で発表を締めくくりました。「福岡市が、当事者家族に寄り添い、整備指針に私たちの思いを反映してくださったことに感謝いたします。今後とも誰もが住みやすい街になるよう、市民と共に歩んでいく福岡市であってほしいと思っています」インクルーシブデザインの考え方が指針のベースに上角さんの説明のあとは、モデレーターでもある九州大学院 芸術工学研究院 教授の平井康之先生が「インクルーシブな子ども広場とインクルーシブデザイン」と題した発表を行いました。通常、「インクルーシブな子ども広場」のようなプロジェクトは行政が企業を選定し、業務を委託して進められます。ですが、今回は平井先生のような学識者や、当事者家族でもある「インクルーシブふくおか」の上角さん、NPO法人福岡市障害者関係団体協議会の清水理事長、東福岡特別支援学校の野口校長、パラアスリートの道下美里さんの5人が委員となり、当事者の意見を重視する整備指針検討委員会が進められることになったのです。委員会開催は3回だけですが、課題を丁寧に共有する検討会が、毎週15回にもわたって開催され、委員会メンバーだけではなく、多くの方と考えを共有してきました。さらに、「こんな公園あったらいいな」という理想の姿を一緒に描き、それを実現するための道筋を現実とつなげていく「バックキャスト」というインクルーシブデザインの手法を用いて、当事者にとってどんな公園が必要かということを模造紙にデザインしていったのです。その結果、良い整備指針ができ、そのプランと同じ5000平米の公園が実現しました。Upload By 発達ナビニュース「インクルーシブな子ども広場」の背景には、インクルーシブデザインの考え方があります。インクルーシブデザインとは、これまで排除されてきた人たちの視点から、新たなデザインを共創するアプローチのこと。決してそれは、障害者の「ための」ものではなく、すべての人を対象にしたデザインのことなのです。障害がある人も、ない人も両者が価値を感じられることが、相互理解を促し、さらに新しい価値を創造することにもつながっていきます。また、インクルーシブデザインの考え方が指針のベースになっていることはもちろん、開園後、そこで形成されるコミュニティなどにも取り入れ続けられることが、遊び場にとってとても重要なことなのです。最後に平井先生はこんな思いを語りました。「整備指針検討委員会は、今月末で解散となります。今後については別プロジェクトになりますが、引き続きインクルーシブデザインやそれをベースにしたコミュニティづくりなどを議論、検討し続けられればと思っています」あらゆる面で選択肢があるのが「インクルーシブな子ども広場」Upload By 発達ナビニュースシンポジウムの最後には、平井先生がモデレーターとなりパネルディスカッションが行われました。語られたのは、「子どもの遊び場」に物理的な面だけではなく、心理的な面への配慮があることの大切さです。当プロジェクトでは、障害のある子どもの保護者は「周りの子どもに迷惑をかけてしまったらどうしよう」「嫌な言葉をかけられたらどうしよう」などという気持ちを持っていることが分かりました。ですが、定型発達の子どもを育てる保護者もまた「子どもが車椅子に触ってしまったどうしよう」……などと、心配に思っていることが分かったのです。そんなことから、子どもと子ども、そして保護者同士が自然にコミュニケーションをとれるようなきっかけが「子どもの遊び場」には大切になります。また、今回のシンポジウムのなかで柳田先生が海外の事例を紹介しましたが、海外で質の高い遊び場が実現できている理由として、自治体のお金だけではなく、個人や企業からの寄付で多くが賄われているという背景があるのです。日本でもクラウドファンディングで公園のなかの一つの遊具を整備するなどの動きが始まっています。今後は公園の整備だけではなく、運営にも自治体だけではなく、多くの人が関わっていくことが「インクルーシブな子ども広場」の成功の鍵になってくるのでしょう。最後に、甲斐さんがこんなふうに語っています。「これから7ヶ所の公園を整備していくわけですが、100点の公園が7ヶ所できるわけではないと思います。でも、70点80点の公園だったとしても、そこから利用するみなさんの声を反映しながらブラッシュアップしていけるはずです。また、7ヶ所あるので、こっちの公園が合わなくても、あっちの公園が合う……ということもあるだろうと想定しています。そんなふうにいろいろな選択肢が持てる公園を整備していきたいです。ぜひ、これからもみなさんからのご意見をいただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします」多くの人が熱量を持って取り組んだ「インクルーシブな子ども広場」の指針づくり。その指針を基に整備される最初の公園が早良区の百道中央公園です。2023年秋に工事がスタートし、2024年の春がオープンとなります。どんなインクルーシブな場所が完成するのでしょうか。その遊び場で、子どもたちが互いに理解しながら、笑顔で楽しく遊ぶ姿をみるのが楽しみです。インクルーシブな子ども広場について|福岡県
2023年08月27日熱せん妄とは?原因や症状など子どもが高熱を出したときに、突然うわごとを言ったり、歌を歌い出す、笑いだす、泣き出す、部屋の中を歩き回るなどの行動を起こす「熱せん妄」。その原因や症状、子どもが熱せん妄を起こしたときに心配になる後遺症についても解説します。熱せん妄は、高熱が出ることにより、脳内のホルモンバランスが崩れることが原因だとされています。脳は睡眠中に夢を見ているような状態なのにも関わらず、筋肉の力は抜けずに身体は目覚めているような状態になり、そのため夢を見ていることを現実と勘違いしたり、またそれに伴い身体が動いてしまったりするのです。また、高熱により、もうろうとしているため夢と現実の区別がつかなくなり、パニック状態につながることもあると言われています。熱せん妄の代表的な症状は以下の通りです。・事故や他害に繋がる異常な行動・幻聴、幻視などが起き、感覚が混乱する・うわごとを言ったり、突然歌を歌い出したりする・支離滅裂な行動や無意味な動きをする・怯えたり、恐怖を感じている様子を見せたり、突然泣き出したりする・なんのきっかけもないのに突然笑い出す・呼びかけに対して無反応、無表情・部屋のなかを歩き回ったり、外を徘徊したりする・食べ物ではないものを含め、なんでも口に入れようとする子どもの熱せん妄のほとんどが一過性のもので、決して珍しい症状ではありません。その大半が良性の病態で、熱せん妄による後遺症や命の危険はほとんどないと言われています。ただし、ごく稀に脳症などの重症疾患の初期症状として、熱せん妄に似た状態になることがあるので、一定の注意は必要になります。もしかして熱せん妄?病院受診の目安、対応方法など一般的に熱せん妄は10分から15分という比較的短時間で改善することがほとんどです。長くても数時間で、後遺症が残ることはほとんどないと考えられています。もしも、数時間経っても意識障害や異常行動が治らない場合や、痙攣などを起こした場合にはかかりつけ医に相談しましょう。夜間に初めて熱せん妄が起きた場合、朝まで待つべきなのか迷うこともあるかもしれません。心配なときは、まずは救急外来に相談し、指示に従ってください。また、症状が治った場合でも、本当に熱せん妄だったのか心配な場合、また同じ症状を起こすのではないかと気になる場合はかかりつけ医に相談できれば安心です。熱せん妄による異常行動で転落などがあり外傷を負った場合には、早めに受診した方が良いでしょう。熱せん妄と混同されがちなものに脳症があります。脳症の中でも代表的なものは、インフルエンザ脳症でしょう。インフルエンザ脳症とは、1歳から5歳くらいまでのインフルエンザに罹患した幼児に、脳全体が腫れる「脳浮腫」、脳内の圧が上昇する「脳圧亢進」などが生じます。痙攣や意識障害、異常行動などの神経症状が見られ、血管が詰まったり、臓器が動かなくなったりすることもある命に関わる疾患です。この脳症の初期症状と熱せん妄の症状はとてもよく似ていて、専門家であっても見分けるのは難しいと言われています。そのなかでも、以下3点のどれか、あるいは複数が見られる場合は、脳症の初期症状の可能性が高くなります。・連続、または断続的に1時間以上症状が続く・声かけに反応が乏しいなど意識状態が明らかに悪い、または悪化していく・異常行動と痙攣が合併している上記の症状がある場合はただちに病院を受診しましょう。子どもが高熱を出し、さらに異常行動などがあれば看病している保護者側も慌ててしまうことがあるかもしれません。前章でお伝えした通り、熱せん妄と脳症の初期症状が似ているということもあるので、慎重に経過を見守ることが大切です。子どもに熱せん妄の症状が出たときに、どんな対応をすれば良いかをお伝えします。・高熱の子どもから目を離さない・飛び降りや徘徊を防止するため、ドアや窓の施錠はしっかりする・処方薬はちゃんと飲ませる・体を冷やす・手を握る、体をさするなど子どもを安心させる熱せん妄の場合は、ほとんどが短時間で快方に向かいます。それを念頭に置いて、看病する保護者がパニックにならないように注意しましょう。熱せん妄になりやすい子どものタイプや起こりやすいシーンなど事前に熱せん妄になりやすい年齢や体質を知っておけば心構えができる……と考える方もいるかもしれません。熱せん妄は、1歳から10歳くらいまでの年齢の子どもで幅広く見られる症状です。しかし、起きやすい体質などは現代の医学では解明されていません。1歳から10歳前後の子どもがいる保護者は、どんな子どもでも熱せん妄を起こす可能性があると考えておきましょう。一般的にコロナやインフルエンザに罹患した際、高熱が出るケースが多いので、それに伴って熱せん妄を起こしやすくなります。特にインフルエンザの場合は脳症を起こす可能性もあるので注意が必要です。子どもが発熱したときには、アセトアミノフェン系の解熱剤(カロナール)が処方されます。作用のおだやかな解熱鎮痛剤で、皮膚の血管を広げて熱を放散させたり、脳の痛みの感受性を低下させたりする効果があります。ただし、発熱の原因そのものを治すことはできません。アセトアミノフェン系以外の解熱剤は15歳以下の子どもには使用不可となっています。アセトアミノフェン系以外の解熱剤をインフルエンザの子どもに使用した場合、脳症を引き起こすリスクが指摘されているためです。アセトアミノフェン系の解熱剤には、こうしたリスクが低いとされており、子どもの発熱時において、最初に投与すべき「第一選択薬」となっているのです。まとめ今回は「熱せん妄」の原因や症状、対処法などをご紹介しました。いざというときに、こういった知識が役立つのではないでしょうか。繰り返しになりますが、インフルエンザ脳症の初期症状に似ているという注意点はありますが、熱せん妄で後遺症が残ることはほとんどありません。発熱後の子どもに朦朧とする様子や異常行動などが見られても落ち着いて対処することが大切です。
2023年08月26日脳性麻痺とは?原因や定義など。脳性麻痺とは、妊娠中から新生児期の間になんらかの原因で生じた脳の損傷のために、姿勢や体の動きなどに運動機能の障害が引き起こされる症候群です。厚生労働省脳性麻痺研究班により、次のように定義されています。脳性麻痺とは受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく、永続的なしかし変化しうる運動及び姿勢の異常である。その症状は満2歳までに発現する。進行性疾患や一過性運動障害または将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する。(厚生労働省脳性麻痺研究班の定義(1968年))公益社団法人日本リハビリテーション医学会/監修『脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版』脳は、体を動かすときに筋肉へどのように動かしたらよいかなどの信号を送る役割を果たしています。そのため、脳が損傷すると、自分が思った通りに動いたり、姿勢を保ったりすることが難しくなります。脳が損傷している部位は一人ひとり異なりますので、動きや姿勢に現れる症状も一人ひとり違ってきます。脳性麻痺の原因には、さまざまな要因による脳形成不全や、胎児期における風疹やトキソプラズマ症などの感染、出産前後の低酸素状態、核黄疸(新生児期の重度の黄疸による脳の障害)などがありますが、はっきりしない場合もあります。脳性麻痺は、運動障害の性質により、「痙直型」「アテトーゼ型」「失調型」、痙直型とアテトーゼ型が組み合わさった「混合型」などいくつかのタイプに分けられています。このコラムでは「アテトーゼ型」について詳しく解説をします。アテトーゼ型脳性麻痺とは?アテトーゼ型は、痙直型に次いで多いタイプの脳性麻痺です。もっともよく見られる痙直型は、脳性麻痺全体の約70%を占めると言われています。主な症状は、筋肉が緊張し続けているために突っ張った状態となるこわばり(痙直)と筋力の低下です。筋肉のこわばりは、両方の手足に起こることもあれば、片側の手足、足のみに起こることもあります。次に多いアテトーゼ型は、約20%を占めると言われています。自分の意志とは関係なく体が動く不随意運動が見られるのが特徴です。この不随意運動のことをアテトーゼといいます。不随意運動は、不安に感じて緊張したときやうれしくて興奮したときなど、強い感情によって激しくなります。睡眠中には見られません。不随意運動は、自分の意志とは関係なく引き起こされますので、例えば、筋肉の緊張が高まって腕がピンと伸びるなどして姿勢を保てなかったり、全身の緊張が高まってうまくしゃべれなくなったりすることもあります。首がすわるのが遅い、寝返りをしない、おすわりができないなど、赤ちゃんが一般的にできるようになると言われている月齢を過ぎてもできないと心配になることもあると思います。しかし、発達の個人差は非常に大きいため、発達がゆっくりだからといって脳性麻痺であるとはかぎりません。赤ちゃんの段階で脳性麻痺かどうかを判断するのは、難しいのが現状です。同じような運動や姿勢の異常が見られても、必ずしも脳性麻痺ではなく、一過性の異常で、成長と共に見られなくなる場合もあります。脳性麻痺の症状として、知的障害を伴うことがあります。軽度〜重度と症例によって程度はさまざまです。アテトーゼ型脳性麻痺は言語療法を必要とすることがありますが、口の動きが思うようにできず、言葉をうまく発音できないために起こる構音障害に対して行われます。赤ちゃんの頃には、さまざまな反射と呼ばれる動きが見られます。赤ちゃんの成長のためには必要なもので、ビクッとして手を大きく広げる「モロー反射」などがよく知られています。アテトーゼ型脳性麻痺の赤ちゃんに残存しやすい反射には、「緊張性迷路反射」や「非対称性緊張性頸反射」などがあります。「緊張性迷路反射」とは、赤ちゃんの頭を前に傾けると体や手足が前に丸まり、頭を後ろに傾けると手足や体が伸びるという反応です。一方、「非対称性緊張性頸反射」とは、仰向けの姿勢で首を一方に向けると傾けたほうの手足が伸びて反対側の手足が曲がるという反応です。反射は、成長するとなくなりますが、それが残存することがアテトーゼ型の脳性麻痺のある赤ちゃんの特徴だと言えます。参考文献:飛松好子「中枢神経の障害(4)不随意運動:特に脳性麻痺アテトーゼ型について」日本義肢装具学会誌(2000年、日本義肢装具学会)脳性麻痺の原因は、妊娠中から新生児期の間に何らかの要因により引き起こされた脳の損傷です。病気ではありませんので、悪化することはありません。また、現在の医療技術では、脳の損傷した部分を直接治すことはできません。しかし、脳のほかの部分が補って、動かない体の部位の代わりに、ほかの部位が発達していくこともありますし、適切なリハビリテーションにより活動範囲を広げ、自立性を高めることはできます。リハビリテーションには、次のようなものがあります。・理学療法(PT)歩く、立つなどの運動や姿勢を改善するための運動療法や、マッサージや電気刺激で痛みを軽減する物理療法を行います。・作業療法(OT)食事や着替えなどの生活動作や仕事で使う動作などのスキルが高まるように、実際の作業を通じて訓練を行います。・言語療法(ST)話すことや聞くこと、ものを飲み込むことなどに困難がある場合、それらができるように訓練を行います。発声がうまくできるようになるために行う構音訓練も、言語療法のひとつです。このほか、関節を固定させたり歩くことを補助したりする装具を用いる装具療法があります。また、必要に応じて投薬や手術などの治療が行われることもあります。リハビリテーションは、通院だけでなく、入院でも行われます。また、病院のリハビリテーション室で行う訓練だけでなく、日常生活での環境調整が大切です。家庭や学校で日常の動作として立ったり歩いたりする機会を多く持つことが重要になってきます。参考文献:朝貝芳美「教育講座脳性麻痺時におけるリハビリテーションの実際―運動機能を中心に―」The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(2017年、日本リハビリテーション医学会)まとめここでは、アテトーゼ型の脳性麻痺についてご紹介してきました。アテトーゼ型の脳性麻痺は、自分の意志とは関係なく手足などの体の部位が動く「不随意運動」が見られるのが特徴です。赤ちゃんの頃から運動面の発達に遅れが見られますが、発達がゆっくりだからといって、必ずしも脳性麻痺とはかぎらず、成長とともに改善する一過性のものであることもあります。赤ちゃんの発達で気になったときは、医師に相談しながら、成長を見守っていくことが大切だと言えるでしょう。また、アテトーゼ型の脳性麻痺も、ほかの脳性麻痺同様、脳の損傷による障害ですので、現在の段階では、直接治療する方法はありません。しかし、理学療法や作業療法など、姿勢や運動機能の改善を目指すリハビリテーションが行われています。症状は一人ひとり異なりますので、それぞれに合ったリハビリテーションを受け、環境調整を行うことで、日常生活での困りごとを軽減し、主体的な生活がおくれるようになっていきます。
2023年08月25日登校拒否でパニック、通常学級から特別支援学級への転籍、フリースクールに転校も…不登校体験談をご紹介!総務省の調査によると、小中学生で不登校の子どもの数は9年連続で増加し、令和3年度には過去最多の約24.5万人と報告されています。総務省不登校・ひきこもりのこども支援に関する政策評価 <評価結果に基づく意見の通知>教室の音やにおいなどがつらい、集団授業についていけない、お友達とのトラブル……発達障害のあるお子さんが学校で遭遇するつらい場面や困りごとは多岐にわたります。今は学校に通っているけれど、ある日突然、子どもに「学校に行きたくない」と打ち明けられたら……と考えたことのある方も多いのではないでしょうか?このコラムでは、実際にわが子の不登校を経験した発達ナビの連載ライターによるコラムや、読者の皆さんの体験談をご紹介します。ADHDと自閉スペクトラム症のあるむっくん。特別支援学級に通っていましたが、小学校1年生の秋、あることをきっかけに、頻繁に癇癪を起こすようになりました。やがて、むっくんのストレスは限界に……。「子どもが学校へ行かないことを認める」、保護者にとっては勇気がいる決断だと思います。むっくんの母であるウチノコさんが、不安や葛藤を抱えながらも親子で不登校を選ぶまでのお話です。ASD傾向のある小学5年生の女の子のお母さんから寄せられたエピソードです。娘さんは私立小学校に入学したものの、小学2年生から行き渋りが始まり、保健室登校をするようになりました。やがて、小学4年生から完全に不登校に……。私立から公立小学校の特別支援学級への転校も経験した娘さんの現在の居場所は……?発達障害グレーゾーンの息子さんお二人を育てているお母さんの体験談です。現在中学1年生の息子さん(長男)は、幼稚園の頃から「ちょっとほかの子どもと違う?」と感じるところがありつつも通常学級に入学しました。しかし、小さなトラブルが積み重なり、自信を失ってしまったのか、小学2年生から不登校になりました。その後、4学年下の弟さんも不登校となったことがきっかけで発達検査を受け、きょうだい共にASDの傾向があることが分かり……。わが子に合った環境の選ぶ大切さについて、深く考えさせられるエピソードです。【不登校の疑問Q&A】スクールカウンセラー・臨床心理士の初川先生のアドバイス2023年1月、発達ナビで開催した「発達障害のある子の不登校サポートセミナー」。スクールカウンセラーで臨床心理士の初川久美子先生による特別講演には、多くの反響が寄せられました。講演の内容の一部と合わせて、子どもが不登校になったときの対応や、学校との連携のヒント、発達障害のある子どもの特性をふまえた自宅での過ごし方や学習のすすめ方など、気になるギモンへの初川先生のアドバイスを、ギュッとまとめてお届けします!まとめ「わが子には、できれば楽しく学校に通ってもらいたい……」と思ってしまうのは、自然な親心。しかし、お子さんが不登校になったとき、早く解決しようと原因を探したり、焦って解決策を求めるのは、かえって逆効果になってしまうことも。過度に慌てず、お子さんの特性、環境、こころの状態などを見ながら、学校の先生やカウンセラーの先生たちとも連携して対応しましょう。ときには、放課後等デイサービスやフリースクール、習い事など、学校以外の居場所や、そこで関わってくれる人たちが支えになることもあります。親も子も頑張りすぎて疲れ切ってしまわないように、力を抜いてほっと息をつく時間も大切にしながら、長い目で見守っていくことが大切です。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年08月24日幼稚園からあった登園渋りが、小学校になりよりひどくなって…現在10歳の息子は、4歳で自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの診断を受けています。息子は感覚鈍麻があり刺激が欲しくて多動になるタイプです。小学校入学後に服薬を開始したため衝動や多動はだいぶ落ち着いていますが、基本的に落ち着きがなく、一度にたくさん指示があると処理しきれずに「もういい!」とキレることが多々あります。幼稚園でも入園直後から登園渋りはあったのですが、年中から療育に行くようになると息子にあった声掛け、対応ができるようになったこともあり、少しずつ成長することができました。進学にあたっては就学相談を行い、学校とも相談をしたのですが、入学予定の学校に情緒級がなかったこと、通級指導教室は別の学校へ移動して受けるということを息子が「疲れるから嫌だ」と拒否するのが予想できたので避け、結果通常学級となりました。そして、入学後間もなく、登校渋りが始まってしまいました。登校渋りの原因1:ゲーム依存ゲーム時間、寝る時間を守ってくれず…息子の登校渋りの原因は大きく分けると2つあると思います。1つ目はゲーム依存でした。幼稚園の頃、友達の家で見たオンラインゲームを「やりたい!」とずっと言っていた息子。ゲーム依存の危険性も理解していたのですが、時間を守ることを覚えたり、友達と約束をして楽しくプレイするのは成長になるかと思い、あるシューティングゲームを1年生のゴールデンウィーク前に解禁しました。ですが、これが間違いでした。それまで慣れない小学校への登校で疲れていた反動もあってか、ゴールデンウィークに過度にゲームにのめりこんでしまった息子。寝るように言っても寝てくれず、生活リズムは大きく崩れました。学校に行くようになったら朝起きてくれるだろうと思っていたのですが、ゴールデンウィークが終わり登校する日の朝、「嫌!行かない!」とベッドで癇癪を起こしたのです。Upload By ユーザー体験談「どうして?」と聞いても、本人はうまく気持ちを言語化できないのもあり、「全部が嫌になったんだ!」と声を上げるばかり。1日休ませてみたところ、翌朝も同じように癇癪を起こしたので、遅刻して登校させてみたりと、なんとか意地でも学校に行かせるという状態になってしまいました。寝る時間を約束しても、ゲーム時間を制限しても、時間がくると駄々をこねまくり、毎回こちらが疲れてしまいました。ここで私が面倒になって、長時間ゲームをやらせていました。でも、ボイスチャットで友達とギャグを言い合いながらプレイする姿が本当に楽しそうで……。そんなに楽しいなら……と思ってしまう面もあったのは否めません。登校渋りについてはスクールカウンセラーさんに相談していたのですが、6月、ゲームのシステムがアップデートをし、本人が目指していたステージのクリアが課金をしないと難しくなりました。さんざん課金をお願いされたのですが、私も夫もそこは許可しなかったところ、「飽きたらから辞めた」とあっさりそのゲームからは引退。その後は別のゲームを始めたのですが、前のようにはまることもなく、時間もそこそこコントロールできるようになりました。ただ、学校で嫌なことがあるとゲームに依存しがちになってしまうので、そこは前のように依存しないように注意して見ています。登校渋りの原因2:友達トラブル運動会で「また、分からなくなっちゃったの~?」と揶揄される息子2つ目は友達とのトラブルで、これが最大の原因であり今も頭を悩ませているものです。切り替えの苦手さや不注意の特性からの失敗をクラスメイトによく注意され、それが嫌だと言っている息子。1年生の運動会での玉入れ競技のとき、その場面を実際に見る機会がありました。玉入れが終わり数を数える場面で、息子は玉を持たなくていいのに手に玉を持ってしまいました。すると、それに対してクラスメイトの男の子が「また、分からなくなっちゃったの~?」と揶揄していたのです。先生から言われていたことを忘れてしまっていたこと、また、やることの切り替えがスムーズにできなかったことが原因の失敗だと思います。「今は玉は持たなくていいんだよ」という声掛けなら問題ないのですが、男の子の言い方からはバカにされたようなニュアンスを感じた私は、(今までもよく友達に注意されると言っていたけれど、こういう言い方だといじめに発展しかねない……)と不安に感じました。そして即、教頭先生や教育支援センターに相談し、なるべくクラスの様子を見に行ってもらえるようお願いしました。Upload By ユーザー体験談「こんな特性持って生まれてきたくなんてなかった」「俺のことなんだからほっとけよ!」と叫ぶ息子このようなトラブルがありましたが、1、2年の時は先生の対応も手厚く、だいたいは登校できていたと思います。ですが3年生になると「学校なんて行かない!」と本格的に不登校になってしまいました。本人が落ちついているときに改めて「学校に行きたくない理由は?」と聞いてみたところ、「クラスメイトに注意されるのが嫌なのが1番の理由。それがなければ学校は案外楽しいので行けるよ。勉強嫌いだけど。好きな教科もあるし」と言う息子。でもその後興奮して、「俺はもう一万回はクラスの子から『遅い!』とか『早くしろ』とか、『どうしようもないな!』って言われてきた!もう生きるのが嫌だし、こんな特性持って生まれてきたくなんてなかった!俺のことなんだからほっとけよ!」と爆発していました。Upload By ユーザー体験談さらに、「お母さんやお父さんだって、特性がなければもっと俺のことを自慢できたし、俺だって、特性がなければ●●君みたいなしっかりした子みたいにやれたし。お母さんもそんな子どもが欲しかったでしょう?」とも……。息子には少しでも生きやすい方法を身につけてほしい……、親ができることは何でもしたい……そんな思いの中、私は再度学校に相談をすることにしました。中学まで引き継げる支援を。息子を支えるチーム体制ができ、母の負担が減りました私は担任の先生に面談をお願いし、「通常学級が合ってないのかもしれません」と伝えました。すると先生は「注意されることが苦痛であるならば、環境調整で原因を取り除くことによって改善できるはずです。授業そのものは本人にも楽しんでいる様子がありますし、発言も見られます。もっと頑張れる子だと思います」と言われました。そして先生方は以下の対応をしてくれることになりました。・なるべく叱らない・おおげさなくらいに応援して、課題ができたらほめる・不注意があったら先回りして配慮をしておくUpload By ユーザー体験談また、教育支援センターに相談したところ、巡回相談をしてくれることになりました。そして、心理士さん、言語聴覚士さん、作業療法士さんの中で1名(日によってどなたがが参加されます)、学校に配属されている発達障害のある子どもと保護者をつなぐベテランコーディネーターの方、担任の先生と私の4人で、どうして息子が学校に行けないのか、行けるようになるためにどのような支援が必要かを話す場が設けられました。「学校でできる工夫」「家でできる工夫」「それをもとに変わってきたこと」小さな目標をたて、それができているか確認、見直しをしています。息子の行動の説明やアドバイスをまとめた資料をくれることもあります。感覚鈍麻がある息子は、高いところからジャンプすることで、自分の体の感覚をつかむ訓練になるのでそういった遊びをするといい、などです。一緒に考えていただけるようになって私の負担が少し減りました。小学生のうちに息子の困りごとを減らすとともに、中学校生活での必要な支援をまとめておくことで、息子の助けになればと思っています。特性を抱えて生きるつらさを感じている息子に寄り添っていきたい息子は明るく根は素直で、悪いことをしたら謝れる子どもです。ユーモアもあるので、最初の友達作りに問題はありません。ただ、頑固さや切り替えの悪さなどから、その後の継続した関係が難しいようでなかなか仲の良いクラスメイトができません。息子が特性を抱えて生きるつらさを感じている現在、息子の気持ちに寄り添うことが私のつとめだと思っています。ですので、不登校を許容したい気持ちもあるのですが、それよりも今は周りの助けを借りて本人の困りごとを取り除き、環境調整をしていくことが最優先です。100人いれば子育ても100通りですよね。他の子どもと比べてしまったり、今も何かあるたびに落ち込んだり、疲れてしまうこともありますが、「息子には息子にあった子育てをしよう!」と思っています。イラスト/吉田いらこエピソード参考/翠ママ(監修:藤井先生より)100人いれば子育ても100通り、息子さんには息子さんにあった子育てを、との言葉に強く共感いたしました。この言葉の意味を頭では分かっていても、どうしても実行できないことが親子だからこそあると思います。見守る、寄り添う、その子のペースを大切に、と言われてもできません、と話される親御さんは多くいます。私自身も子育て中なので、そのお気持ちはよくわかります。それでも、100人いれば100通りの子育てというのはとても大切だと思います。そこにたどり着くまでに時間はかかるかもしれませんが、一人で子育てを抱え込まず、いろいろな人に相談することで、視野が広がり、お子さんのペースを大切にする視点に立つことができるようになります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月24日家族の休日の過ごし方が豊かに!困りごとも解消!Upload By べっこうあめアマミ私の息子は重度知的障害として、東京都から「愛の手帳」の2度の判定を受けています。「愛の手帳」というのは東京都が交付する療育手帳の呼称で、障害の程度を示す等級は、・軽度4度・中度3度・重度2度・最重度1度となっています。「A1」「B1」などとアルファベット付きの等級名を使う地方自治体が多いことを考えると、少しめずらしいかもしれませんね。息子が初めて手帳を取得した年長の時は中度の3度でしたが、小学校入学後に再度判定を受けに行くと、重度である2度になっていました。就学前の就学相談の時点で教育委員会から「重度知的障害」と言われていたので、最初に判定を受けた時は幼かったのもあり、少し軽めに判定されたのかもしれません。手帳の等級が重くなればなるほど、受けられるサービスは手厚くなります。特に私の経験上、中度から重度に変わるところで、支援内容が大きくランクアップしたように感じました。中度の手帳を持っていた時から手帳の便利さは感じていましたが、重度判定の手帳をもらって、その存在感はより大きくなったからです。息子を含めた家族の毎日が、以前より過ごしやすくなり、困りごとの多くが解消されたと感じています。具体的に何が助かっているの?Upload By べっこうあめアマミ療育手帳を持っていると助かるとか、いろいろなメリットがあるという情報はよく出回っていますが、具体的に何がどう助かっているのか?イメージしづらい人もいると思います。なぜなら、療育手帳制度は地域差が大きいので、インターネットで調べても具体的なことは断定しづらいからです。そこで、あくまでわが家の息子が利用しているサービスや支援について、具体的にお伝えしたいと思います。実際に手帳で受けられるサービスは、分厚い冊子1冊で語られるほど種類が多く、対象者の規定も細かいです。そのため、その全てを理解し、利用するのはかなり難しいのではないかと思います。本人の年齢や家庭環境によっても必要な支援やサービスは変わるでしょう。あくまで一例ではありますが、小学生の息子がいるわが家が今、「これは助かる!」と思って利用しているサービスのみに絞ってお伝えしたいと思います。息子が、私たち親の代わりにヘルパーさんに付き添ってもらって外出する、移動支援の利用。そして、夜間の宿泊込みで息子を預かってもらう短期入所の利用。これらは手帳とは別にそれぞれ受給者証の取得も必要になりますが、非常に助かる福祉サービスです。移動支援も短期入所も施設を探すハードルが高く、利用までは時間がかかりますが、障害がある子どもの付き添いや預け先を確保しておく安心感ははかりしれません。手帳を提示すると、駐車場料金が無料になる都立公園は非常に多いです。公園以外でも、都立のレジャー施設の入場料などが同伴者含め無料になったり割引になったりします。民間のレジャー施設の入場料も手帳の提示で割引になることが多いため、休日のお出かけに手帳は必須の持ち物です。知的障害や発達障害などがある子どもとのお出かけでは、レジャー施設に行っても何かしら本人にひっかかるところがあって入れなかったり、癇癪を起こして早々に出ることになる場合もあるでしょう。しかし、入場料が無料であれば、親としても気軽に「行ってみようか」と誘えますし、無理せずサッと帰ったり、何度も入りなおしたりできるのが非常に助かります。・タクシー券の配布(重度から)※所得額などにより支給制限があります・駐車禁止等除外標章の交付(重度から)・都営地下鉄、都営バスなど都営交通の利用料が無料・有料道路の通行料金割引(ETC利用も)・JR、私鉄の旅客運賃の割引などの移動の際に使えるサービスも助かります。これらのサービスは、レジャー施設と同じように、本人の気分が乗らなければサッと移動しようというフットワークが軽くなるのがうれしいところです。駐車禁止等除外標章をもらえると、いくつかの定めに沿った場所であれば路上に車を停めておけるので、子どもの送迎などの際に助かります。東京は駐車場が少なく、学校、放課後等デイサービス、福祉施設や病院も駐車場がないところがほとんどなので、持っておくと特にありがたみを感じます。手帳を持っていると、等級に応じてさまざまな手当を申請できます。所得制限の基準などもあり、必ずしももらえるとは限りませんが、何かとお金がかかる障害児育児を金銭面で助けてくれます。自動車税や軽自動車税の減免や、所得税や住民税の障害者控除などが受けられます。どこまで受けられるかは障害の等級によりますが、手帳を取得したなら申請しておくに越したことはありません。注意!手帳は地域差が大きい&障害の程度でサービス内容が大きく変わるUpload By べっこうあめアマミここまで療育手帳について詳しく書いてきましたが、ここで書いているのは、あくまでわが家の息子の場合です。具体的には、東京都が交付する療育手帳、「愛の手帳」の2度(重度)判定で受けられる支援やサービスの中で、息子の家庭環境や状態に適応しているサービスです。そして、わが家もすべてのサービスを利用しているわけではなく、必要なものを選択して利用しています。療育手帳の運用は地方自治体に任されているため、先にもお伝えした通り、療育手帳は障害者手帳の中でも特に地域差が大きいです。そのため、すべての地域で同様のサービスが保証されてはいません。その上、障害の程度によっても状況は全く変わります。ただ、おおまかな内容は似ていると思うので、「こんなことはできるのか?」と気になることがあれば、ぜひご自分の地域の障害福祉課などにお問い合わせください。手帳がないと、障害児育児はより一層ハードモード…持っていて損はないUpload By べっこうあめアマミちなみに、はじめて息子の手帳を取得した時は、不覚にもショックで涙した私でしたが、重度判定を受けた時は特に何も出てこず、無の感情でした。しかし、「実際の障害の程度は重度なのに受けられる支援は中度」なんていう不条理な状況を脱することができたことには心底安心しました。もちろん、両手をあげてバンザイ!と言えるほど喜べるわけではありませんでしたが、今以上に障害児育児が楽になると思うと、それは喜ばしいことだったのです。とはいえ、障害の等級が重くなったことに変わりはありません。息子が重度判定を受けた日、なんともいえない複雑な空気で児童相談所をあとにした私たち。そんなモヤモヤを察した夫が、「じゃあ景気づけに焼肉行こう!」と言って空気を変えてくれたのがなんとなく救いでした。夫の一声で、家族みんな楽しくわいわいモードになり、ポジティブな気持ちで一日を締めることができました。その後の毎日も、息子が重度判定になって受けられるようになった支援を存分に使って生活しています。障害児育児は大変です。でも、手帳を持っていないとその毎日はより一層ハードモードになるでしょう。少しでも負担を減らして生きていくために、使えるものは使ったほうがいいんじゃないか、手帳は持っていて損はないものなんじゃないかというのが、私の気持ちです。執筆/べっこうあめアマミ(監修:初川先生より)療育手帳の活用法を具体的にシェアしてくださりありがとうございます。手帳取得をめぐっては葛藤を感じられる方も多いので、手帳取得の思い、判定が変化した際の思いも含めて聞かせていただき、とても参考になりました。さまざまなサービスを受けられるからぜひ取得したらとすすめられることが実際には多いのではと感じますが、アマミさんが書かれていたようにお子さんの気分が乗らない、癇癪を起こしたなどでも、心の面からしてもさっと引き上げられるというメリットがあるのですね。さまざまなところでお子さんにとって良い経験をさせてあげたいと思って外出されたり、療育や通院で必要に迫られて移動したりする際に、移動(交通費、駐車料金)や入場料などの負担が少ないのは長期的に見て、また外出しようという行動を維持しやすいですね。実際の活用法は自治体によって、障害の度合いによっても違うと思います。お住まいの自治体の障害福祉課にまずは話を聞きに行くところから情報収集していだければと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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