「発達障害」について知りたいことや今話題の「発達障害」についての記事をチェック! (29/98)
ガイドヘルパーとしての悩み障害児者にとって、家族以外のほかの大人と関わることは、大切なことだと思います。移動支援の制度を使うことで、週末の余暇活動として、ガイドヘルパーに外出の同行をしてもらうことができます。私は週末、ガイドヘルパーの仕事をしています。外出同行の際に、保護者の希望を通すべきなのか、本人の希望を通すのが良いのか、て悩むことがある場面があります。とくに、利用者の方が成人の場合、悩むことが多いです。成人の異性の利用者と手をつなぐことについて知的には5歳児くらいであるとされている、30歳の青年との外出の際には、手をつなぐかどうかについて悩みます。私は年齢に合わせた対応をした方がよいと思っています。どうしてかというと実年齢が30歳だからです。もちろん、中には隙を見て一人で走って行ってしまったり、非常ベルやホームの緊急停止ボタンを押してしまったりすることもあるかもしれません。この場合は手をつないでいる必要がありますが、そうした行動がほとんどない方については実年齢通りの対応が必要だと思っています。ですが、危険忌避のために手をつないでほしいと考えられる保護者の方の場合、どのように対応したらいいか悩んでしまうのです。お金について駅の券売機で切符を買うとき、本人に購入してもらった方がよいのか、私がかわりに購入した方がよいのかも、すごく悩みます。お金についてよく分からないと感じている場合、利用者自身で購入をしてもらおうとしたら自信をなくしてしまわないか?でも、親御さんは「一人でやらせる経験をさせてほしい」と思っているのではないか?私は、本人の楽しみのための余暇活動なので、できないことを無理じいして訓練するような場にはしたくないとも思い、逡巡してしまいます。徒歩で行くか、交通機関をつかうか親御さんは普段の運動不足を解消するため、「できるだけ歩かせてほしい」という希望があるけれど、本人は「歩きたくない。大好きな電車やバズを使って移動したい」と思っている場合があります。こんなときも、どちらを優先させたらよいのか悩みますが、本人の余暇活動なので、私は本人の意向を優先させた方がよいと思っています。こだわりを通せる場面と通せない場面ある日のことです。発語のない知的障害と自閉スペクトラム症がある利用者の方とラーメン屋に入りました。混んでいるのに麺を一本ずつ食べていました。待っている人や次の電車の時刻も気にせず、マイペースです。私が「残してよいからもう出よう」と言ってもガンとして動かなかったので、食事がすんだ私は外で待っていました。結局、1時間以上かけて完食しました。店を出てから、利用者の方がマスクをなくしたことに気付きました。代わりのマスクを渡しても断固拒否するため店に戻り、お客さまに席を移動していただいて探す状態になりました。しかし、見つかりませんでした。でもパニックを起こさず、代わりのマスクを使ってくれました。私は麺を一本ずつ食べるこだわりには応じました。でも、失くしたマスクは見つからないので応じられません。利用者の方は、自分のこだわりを通せる状況と、そうではない状況を理解できたのでしょう。この青年も、幼いころは失くしたものが出てこないと大パニックになっていたのではないかと思います。自閉スペクトラム症がある私の息子も、幼いころ、パズルの一片がなくなったとき、手がつけられないほどパニックになりました。そのために、同じパズルを何セットが予備で買っておいたことを思い出しまた。今は例えば靴下の片方がなくなっても、マスクを落としても大騒ぎせず、別のものを使ってくれます。軽度でも中度でも重度でも、成長しています。Upload By 立石美津子支援者の対応に統一性がないことも課題同じ事業所でも手をつなぐがどうか、本人の意向を優先させるか親御さんの意向を優先させるかなど統一されておらず、支援者の個人の考えに任せている場合もあります同じ事業所で一致した対応をしたとしても、移動支援をやっている事業所は増えているので、利用者さんも複数の事業所をかけもっています。そうなるとまた対応が違ってきます。本人が混乱することのないように、情報ややり方を共有して、支援のあり方を考える必要性を感じています。執筆/立石美津子(監修者・鈴木先生より)神経発達症(発達障害)のある患者さんが高校生になってバイトを始めることは社会性を高めるうえで有意義なことだと思います。親と学校の教師以外の大人と接することで自立を促し、将来の就職率が上がっています。最近は訪問看護という手段もあります。主治医の指示により定期的に専門の看護師やリハビリのスタッフが患者さんを預かってくれます。その間、親は美容院へ行ったり、普段相手してあげられない兄弟と触れ合ったりすることができます。費用はワンコインほどです。訪問看護というと寝たきり老人の看護というイメージが強いですが、自閉スペクトラム症の患者さんも扱える会社も増えてきました。今後は神経発達症に特化した訪問看護が全国に広まることを願っております。
2022年08月08日運動が苦手で不器用なグレーゾーン(境界知能)娘おっとりした性格で、インドア派、発語や言葉の理解などもゆっくりだった娘。そんなグレーゾーンの娘に境界知能の診断がおりたのは小4のころです。娘は不器用(発達性協調運動症)なことも合わさり、運動が大の苦手!鉄棒は前回りは可能ですが、逆上がりはできません。跳び箱も踏切るタイミングが取れずに3段以上は飛べず、跳び箱の前で立ち止まってしまいます。プールも25m泳げず、バタ足で最高20m程度泳げるくらいです。うまく身体の力が抜けないのか、泳いでいるとお尻が出っ張ってしまい背浮きができず、クロールをすると、どんどん水に潜っていってしまいます。小4、小6のときの担任がこのような娘の特性への理解があまりなかったこともあり、無理にクロールで25m泳がせようとして溺れそうになったこともあります。Upload By ユーザー体験談そんな娘なのでもちろん自転車にも乗れません。出かけたい場合は私の運転する車に乗りますし、中学は徒歩通学ということもあり自転車に乗る必要もないので、娘も私も乗れないことを気にしていませんでした。補助輪をつけて練習していたころもあったのですが、進んで練習したがるようなこともなく、補助輪を取ってから土手を転げ落ち、田んぼに突っ込んだ経験などがトラウマになっているのか、「上手く乗れないので嫌になった」という気持ちもあると思います。中1になったある日…娘に試練が!ですが先日、授業の一環として秋に自転車に乗り近隣の特別支援学校へ交流に出かけることになったというのです。担任の先生から「自転車に乗れない人はいますか?」と聞かれ、娘はクラス全員の前で挙手をすることになり…さらには先生から「練習しておくように」と言われました。みんなの前で挙手させられ、恥ずかしい思いをしたそうです。ただ、「練習しなくてはいけない」という強い気持ちはそこで芽生えたようです。Upload By ユーザー体験談さらには、入部した美術部でも自転車に乗りスケッチに出掛けたり、体育祭&文化祭の看板や横断幕を作成するために学校外へ自転車で出かける可能性もあります。娘は早速自転車の練習を始めました。Upload By ユーザー体験談自転車の練習を始めたけど…前途多難でしかし、練習してもやはり不器用さや身体の使い方の下手さにより公道を走行できるレベルに達さず…。こぎ出してしまえば何とかなるのですが、肝心のこぎ出しが上手くいかないことや、ブレーキ操作が上手くいかず、危険な思いをする度に、自転車=難しい・怖い・練習が嫌だ…と負のループに。久しぶりに大きな運動公園に連れて行き、練習した際も、サッカー場の周囲を1周はできましたが、やはりこぎ出しとブレーキ操作、シフト(ギア)チェンジがうまくいかずに、2周目で土手から転げ落ちてしまい、やる気がなくなってしまいました(そしてフェンスに激突し、自転車の前輪を交換する羽目になりました…)。Upload By ユーザー体験談家の近くの公道(アスファルト)を50mくらい、往復するときは実際は片道25mくらいしかこげていない状態ですが、30分程度練習すると娘ももう練習をやりたくなくなってしまうようでした。ですが、交流授業までになんとか乗れるようになりたいという思いはある…。私が仕事から帰った土日は声掛けをすると30分程度は自転車の練習に取り組むようになりました(平日は部活や宿題、習い事などもありやる気にならないそうです)。練習の結果、なんとかサッカー場の周囲1周だけは走れるようになりました。娘もそれが自信につながったようですが、公道を走るとなるとまだまだ不安です。自転車に乗れなくても…母の想い結局、現在もまだ自転車に完全に乗れていません。特別支援学校との交流授業までに乗れるようになれたらとは思いますが、母としては絶対に乗れないといけないとは考えていません。娘はおっとり、まったりした性格ですが、自己肯定感が低い訳ではありません。そこは変わりなく成長してほしいです。苦手なこと(他者に言葉で困りごとを伝えるなど)は、娘に合う方法を試行錯誤しながら良い対応方法などを見つけられるようにサポートをしたり、アドバイスをしていけたらと思います。また、娘の得意なこと(物の場所の記憶や人と違う着眼点を持っていること、黙々と同じ作業に飽きずに取り組めること)もたくさんあるので、そのような部分を伸ばしていき、上手く社会で自立した生活をしていってほしいと願っています。イラスト/taekoエピソード参考/ヒヨコ(監修:三木先生より)一生懸命頑張っておられるんですね。苦手なことでも繰り返し取り組めるのは、自己肯定感が維持されているからかもしれません。学校の先生の提案にもくじけずに前向きに取り組んでいる姿勢は、ぜひ評価してあげたいですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年08月07日Q:合理的配慮ってなんですか?A:過度な負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な配慮を行うこと。なお、学校(or教育現場での)合理的配慮は「一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるもの」です。Upload By 専門家インタビュー合理的配慮を英語でいうと、「Reasonable accommodation」。過度な負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な配慮を行うというです。そしてその配慮は、子ども一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズなどに応じて決定されるべきです。子どもの権利を保障するために各教育行政の支援としては、まず国は全国規模で、都道府県は各都道府県で、市町村は各市町村で、それぞれ環境整備(基礎的環境整備)をしていきます。これらが「合理的配慮」の基礎となります。そして、基礎的環境整備をベースに一人ひとりに合わせた合理的配慮が検討され、決定すると「個別の教育支援計画」に明記されます。設置者、学校、本人、保護者により発達の段階を考慮しつつ合意のもと内容を決定し提供されることが望ましいとされています。もし、設置者、学校、本人、保護者の意見が一致しない場合は教育委員会の諮問機関である「教育支援委員会(仮称)」の助言や、その子にかかわる関係者がつどう「個別支援会議」および校内にある「校内委員会」での話し合いなどにより問題点を解決することが望ましいです。現在はまだなされていない「基礎的環境整備」や「合理的配慮」について、希望が出されて協議がなされたこと、将来的には実現することが望まれることなどを、「個別の教育支援計画」に書き込ませることも次の一歩につなげる工夫です(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.115-120の「個別の支援計画」「個別支援会議」、p.134-135の「Q&A合理的配慮と基礎的環境整備という言葉を聴きますが、どういうことでしょうか。」参照)。
2022年08月06日なかなか新しい友達がつくれない娘小学校高学年になると 、周りのみんながぐっと成長していくことを実感します。低学年のころから仲の良かったゆいのお友達も、身長は大人と変わらなくなったし、言動も大人びてきて子どもと会話しているような感覚はもうなくなりました。ゆいももちろん成長しているのですが、周りに比べるとまだ幼い感じがあります。同じクラスにゆいと仲の良かったお友達が一人いました。でも彼女に新しい友達が増え、仲良しグループが離れたことであまり話さなったようです。高学年の女子ならよくあることだと思いますが、心配なのはゆいが会話できる友達がゼロになってしまったことでした。ゆいは人と話すことがとても苦手でなかなか新しい友達をつくることができないのです。Upload By 吉田いらこ「わたし、クラスではいつも一人でいるんだ」とゆいは話すようになりました。ゆいの小学校ではいわゆる「ボッチ」であってもそれでからかわれたりするようなことはありません。でも本人はひとりが寂しかったようです。私は「勇気を出して話しかけてみたら?」など一般的なアドバイスしかできませんでした。勉強に関しては特別支援学級に移り配慮してもらうことで負担が減りました。でも次は人間関係で悩みごとが出てきました。このままでは学校に行くことが苦痛になってしまうかも…と心配していたのですが、数ヶ月すると意外なことがありました。Upload By 吉田いらこいつも一人でいるゆいに変化が!?ゆいはクラスのある男子と仲良く話せるようになったそうです。その男子はあまりグループで固まるということがなく、だれとでも接する子のようです。休憩時間も一緒に笑っているところをよく見ますよ、と個人面談のときに担任の先生から聞いたときは驚きました。ゆいに話を聞いてみると、その男子はだれにも気軽に話しかけるようで、ゆいにも話しかけるそうです。ゆいがうまく話せなくてもまったく気にしないので緊張せずに話せるらしく、だんだん会話も増えてきたということでした。ゆいは人と話すのが苦手で自分から話しかけることが難しかったのですが、向こうから来てくれる人がいるなんて。これをきっかけに会話ができるお友達が増えて学校へ行くことがたのしくなればと願っています。Upload By 吉田いらこ子どもから大人へ精神的に成長していくなかで、友人関係もどんどん変化していくと思います。ゆいは その特性から今後も人間関係に悩むことがあるかもしれません。ですが、人間関係というものは障害とは関係なく難しいものです。そして、人間関係の変化によって、ゆい自身が成長していくこともあるかと思います。子どもの友達関係に保護者が介入することはできませんが、これからも成長の様子を見守っていけたらなと考えています。執筆/吉田いらこ(監修:井上先生より)お子さんの成長とともに人間関係も変化していきますね。思春期の女子グループの中での人間関係やコミュニケーションは複雑で難易度が高いと思います。今回、今までお話のできなかった異性と話せるように広がったのは、とても素晴らしいことだと思います。この出来事が、また新たな友達関係が広がるきっかけになると良いですね。
2022年08月05日常に次男を信じ、寄り添ってくれた特別支援教室の先生発達に凸凹のあるわが家の次男は、小1から小6の現在も通常学級に在籍しており、週1日、特別支援教室(※1)に通っています。次男が学校生活を送る中で、常に寄り添ってくださっていた先生がいます。それは、特別支援教室専門員(※2)のA先生です。※1 特別支援教室…通級指導教室のように障害による学習上または、生活上の困難を改善・克服する指導を児童・生徒が在籍校で受けられる東京都の仕組み※2 特別支援教室専門員…臨床発達心理士などの発達障害の支援に関する専門資格を持つ人(教員免許は必須ではない)Upload By スガカズいわゆる「普通」とされる環境の中で次男は、聴覚過敏、見通し不安、「0か100か」の白黒思考、叱られることへの苦手さなどから、入学当初から頻繁に癇癪を起こしていました。小1のころは、壁を蹴ったり大声での暴言が多かった次男。大人が本人の話に耳を傾けることなく、強く叱るなどすると本人は取り乱して周りが余計に見えなくなってしまうことがあり、そのような関わり方をしてしまうと万が一他害につながる恐れもあります。そのため、次男にとって家庭での関わり方や、学校での本人に寄り添った関わりがとても重要でした。A先生は次男のことを、「乱暴な子」「言うことを聞かない子」ではなく、「嘘をつかない自分に正直な子」「心の優しい子」「たくさんの可能性を秘めた子」として関わってくれました。また、私が次男との関わりで悩んでいるときにも、A先生は傾聴して、決して自分の意見を押しつけず私と次男の気もちを言語化してくれ、最後には励ましてくれました。私は、次男が学校生活での困難にぶち当たるたびに、どうしても周りの人と比べてしまったり、落胆してしまうこともあり、次男の行動に対して受け止めきれない状態に陥ることが度々ありました。トラブルを経験するたびに、私の気もちが落ちて浮上して、また落ちて持ち堪えて…。目の前の状況に対して、まずはその日を無事に終わらせることに注力します。そのためには、感情をできるだけ抑えて、次男と話し合うことが重要でした。そんなときは特にA先生の存在が大きく感じました。A先生はいつでも私と次男の味方をしてくださいました。お陰で次男との関係は良好なまま日々を過ごすことができましたし、少しずつ…少しずつ…時間をかけて、次男も学校生活に適応するようになってきたと思います。次男が小5になり、大好きなA先生が異動することに…。私にとっても次男にとっても、A先生は心の拠り所になっていました。しかし、A先生は次男が小5になる年度に、他校に異動することになりました。異動の知らせを聞いたときにも挨拶に行きましたが、離任式の際にも学校にお伺いし、感謝の気もちを直接伝えることにしました。Upload By スガカズUpload By スガカズ先生との別れを経験して、支え合うことの大切さ、人への感謝を学びましたUpload By スガカズ現在は次男は小6になり、A先生との別れを経験してから1年が経過しました。最初のころは、「オレが知っている△教室(特別支援教室)じゃない…」と、浮かない様子でしたし、心にポッカリと穴が空いているようでした。「A先生がここにいてくれればいいのに」と泣くこともありました。それでも、次男なりに少しずつ現状を受けとめながら、現在も学校生活を送っています。今でも私がA先生の話をすると、次男の表情はパッと明るくなります。先日、A先生に手紙を書きました。次男は書字障害があり、文字を書くことは大の苦手ですが、A先生への思い入れが強く、苦手な中頑張って手紙を書いていました。何度も「この文章変じゃないよね?」と、うれしそうに私に聞いてきました。人生の中で人との別れは何度か繰り返していきます。その中でも、大好きな人との別れは、本人にとって大きな衝撃で、情緒が乱れてしまう場合も多いのではないかと思います。悲しい経験をすることになりますが、そういった経験から、支え合うことの大切さ、人に感謝するこころを学び、今後の人間関係の構築のあり方について考えるきっかけになっていくのではないかと思いました。執筆/スガカズ(監修:井上先生より)すばらしい先生に出会えた経験は子どもさんにとっても親御さんにとっても大きな成長や心の支えになったと思います。子どもが大人に相談できるようになるためには、その大人が子どもにとって「自分を分かってくれる存在」になることです。A先生はまさにそんな人だったのだと思います。このお話は、多くの現場の先生たちにとって、元気を与えるように思います。
2022年08月05日虫や生き物との触れ合いを通して、学べることがありますわが家にはたくさんの生き物がいます。猫、ヤモリ、カニ、どじょう、カエル、ダンゴムシ、季節によってオタマジャクシ、アオムシなどなど。そうです、ミミは虫や生き物が大好きなんです。Upload By taekoそんなミミが通う小学校のクラスで、アオムシを飼育することになりミミは大喜び!もちろんクラスでは虫が苦手な子もいるので、虫に慣れている男の子やミミがお世話を率先してやっているようです。理科の授業や放課後など、友だちと一緒に虫のお世話をすることをとても楽しんでいます。友だちからの信頼を集めて、イキイキしている様子が嬉しいです。そして何より、その時間を通してミミにとっては人との関わり方の学びにもなっている様子でした。Upload By taeko学校から帰宅すると、お世話をしているアオムシの様子を楽しそうに話してくれます。そして家にいるときも、図書室で借りてきた虫の飼育の本を読んだり、youtubeを見て飼い方を学んでいます。その興味は学校のアオムシに留まらず、自分で虫を探して捕まえることへと広がっていきました。虫が増える春ごろには、来る日も来る日も虫を探しに行く日々を過ごしました。パパのために始まった、1ヶ月間のカマキリ大捜索中でも、「パパが好きな昆虫のカマキリ」をどうにか見つけたいミミ。きっと、パパを喜ばせたいという優しい気持ちがあったのだと思います。土手や公園に探しに行きました。それでも、簡単には見つかりません。カマキリが見つからなかったときも、次はどこに行こう?と考えて、自宅から行きやすく昆虫採集が可能な公園を探します。自分から進んで考えたり行動したりすることができて、成長を感じられるのも嬉しいです。休みのたびにいろんな場所へ行くけれど、それでも本命は見つかりません。ただ、その途中で見つけたちょうちょやてんとう虫を観察することを、楽しんでいました。Upload By taekoそして、カマキリを探し始めて約1ヶ月。「あっ!カマキリいた!」やっとの思いで早朝の公園で見つけられたときは、私もミミも大喜び!!それはそれは、とても大きな達成感でした。生き物を飼育することで、寿命まで飼う大事さや、餌を確保するのが難しいときは捕まえた場所に戻したり、学びにつながっています。パパもミミの頑張りを喜んでくれましたが、同時にちゃんと伝えるべきことは伝えてくれます。「生き物を飼うってことは、責任が生まれるんだよ」パパはいつも、捕まえた生き物のお世話の大切さを厳しくも愛をもって教えてくれるので、良い親子の関係になっているなと感じます。生き物に限らずだとは思いますが、夢中になれる本当に好きなことからは、たくさんの学びを吸収することができます。これからも生き物と付き合いながら、さまざまな発見をしていって欲しいと思います。執筆/taekoUpload By taeko(監修:井上先生より)お子さんに夢中になれる対象が見つかり、クラスの子どもやご家族もそれに理解を示し、本人もより学びを深めたり、そこから発展させたりできていることは、とても素晴らしいことだと思います。生き物を飼育することは、成長とともにその生き物が死んでしまうということにも接するかと思います。このことを通して命の大切さや、育てることの責任を、考えるきっかけにしていけると良いですね。
2022年08月02日その人らしい生活を支援するのが作業療法士(OT)の役割作業療法士(OT)の役割というと、病気やケガのあとのリハビリの印象が強いかもしれません。ですが実は、発達障害の領域でも作業療法の重要性が高まってきています。今回は、日本作業療法士協会の中村春基会長に、作業療法士の仕事や発達障害のあるお子さんを支援する際のポイントを伺いました。――はじめに、作業療法で対象となる「作業」について教えてください。中村:作業療法でいう「作業」とは、日常生活のすべての行為を指しています。たとえば、料理や掃除といった家事、接客やパソコン作業など仕事の場面で必要なこと、スポーツや音楽鑑賞、手芸などの趣味の活動はもちろん、食事や休息、眠ることだって作業の1つです。発達障害のあるお子さんの場合は、たとえば「食が細い」「なかなか寝つけない」といったことから、「黒板の文字を写すのが苦手」「授業中じっと座っていられない」といった学習や集団行動の悩みまで、そのすべてが支援の対象となります。――とても幅広いのですね。中村:驚かれるかもしれませんね。作業療法士の仕事は、「その人らしく生きるために、困りごとを軽減、解決するためのサポート」と言い換えられるのではないでしょうか。発達障害の領域でも作業療法の重要性が知られるように――現在、日本ではどれくらいの作業療法士の方がどのような分野で活躍されているのでしょうか?中村:作業療法士は1966年にできた国家資格で、自立支援についての医学、心理学、社会学的な知識を持つプロフェッショナルです。現在、日本国内で資格を持つ人は10万人を超えています。日本の作業療法士は、その多くが医療機関で仕事をしていることも大きな特徴です。ほかには、児童発達支援センター、放課後等デイサービスなどの児童福祉サービスなど。最近では就労支援施設や学校、学童保育、また刑務所などで支援にあたる作業療法士も増えています。Upload By 専門家インタビュー最近では、医療機関における子どもを対象とする作業療法で割合が大きくなっているのが発達障害です。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の支援においても作業療法が重要であることが知られるようになりつつあります。日本作業療法士協会では5年毎で「作業療法白書」を取りまとめています。最新の2021年度版を編集中なのでまだ正確な数字がお伝えできないのですが、傾向としては下記のとおりです。【医療機関】新生児期から18歳以上まで幅広い。割合としては未就学が約45%、就学~15歳までが約25%。【児童福祉サービス】未就学が5割強、就学後が5割弱で、やや未就学のお子さんの方が多い。施設種別としては、作業療法士が多くいる順に、児童発達支援センター、放課後等デイサービス、障害児入所施設。【対象とする障害や疾患】・ASD、ADHD、DCD、LDなど・脳性麻痺・精神遅滞 知的障害・てんかん・ダウン症などの染色体異常・重症心身障害・筋ジストロフィーを含む神経難病+障害が診断される前の気になる段階の子どもたちとは言え、「リハビリ」「高齢者」というイメージがまだまだ強いようです。病院や療育センターで作業療法を受けることになっても、作業療法士は何をする人なのか、保護者の方には分かりにくいかもしれません。実際の作業療法の場面では、お子さんへの対応が中心になるので、なかなか「作業療法とは何か」「作業療法士が何を目指しているのか」を伝える時間を持てないのも実情です。そこで、協会では、作業療法を「知って」、上手に「使って」もらえるよう、広報活動にも力を入れています。たとえば、『○○○とつなぐ』という協会が発達障害のお子さんを支援する方向けに発行したパンフレットは、手帳に挟んで持ち帰ってもらい、気になったときに読んでもらえるように手のひらサイズで作成しました。○○○とつなぐー子どもの育ちを支える作業療法士ー――日本以外の国では、どのような状況なのでしょうか。中村:イギリスでは7割もの作業療法士が、地域の学校や通園施設、訪問施設などで働いていると聞いています。アメリカでも、延べ13万人の作業療法士のうち3万人が教育現場で働いており、なりたい職業ベスト10にもランクインしたことがあるくらい、子どもたちにとっては身近な存在のようです。――医療機関が中心の日本とは、大きく違うのですね…!中村:そうですね。 「友達づきあいが苦手で、悪気はないのにすぐに相手を怒らせちゃう」「ボールを投げたり、鉄棒をしたりするのが苦手で、みんなにバカにされてるみたい」、こうした悩みを気軽に話せて、その解決策を一緒に考えてくれる人がいたら子どもたちはどれだけ気持ちがラクになるでしょう。医学的知識のある作業療法士が身近な存在となれば、必要があればスムーズに医療機関と連携し、早期に治療や療育を始める助けともなるはずです。作業療法士が、生活と医療を結びつける架け橋となれたら!作業療法士協会がめざす大きな目標の1つです。将来的には日本でも「町の作業療法室」のような場所があちこちにできて、困りごとがある人がふらっと相談できるようにしていけたら、と考えています。作業療法士(OT)がプロの経験と知識で、保護者の不安を解消!出典 : ――作業療法の支援計画はどのように立てていくのでしょうか?中村:ひとくちに発達障害の作業療法といっても、実にさまざまなアプローチがあります。たとえばおもちゃやボール、楽器を使った手先や運動の訓練のほか、スーパーに買い物に行ったり、子どもたち同士で料理をしたり、ときにはみんなでスポーツ観戦に出かけたりすることも。具体的な生活の場面で、何ができていて、どんなことに困っているかといったことを、学校や園、また地域社会での経験を通して子どもと一緒に考えていきます。豊富な医学的な知識に加え、心理学や社会資源に関する知識をもとに、子どもの成長の一歩先を見ながらお子さん自身の気づきと変化をサポートしていくのです。だから、作業療法の現場はいつでも前向き!作業療法士は、「この子が持っている能力は何か」「今の運動機能と知的な能力だったらどんな遊び、勉強、作業ができるか」をすばやく見つけ、子どもが成功体験を感じられるシーンをたくさんつくっていきます。――保護者の方にとっても、発見が多そうですね。中村:そうですね。こうした働きかけは、そのまま保護者へのサポートにもつながります。保護者はともすると、わが子の苦手や不得意な面に目が行ってしまい「なんとか克服させてあげたい」と思いつめがち。そこに作業療法士のプロフェッショナルな視点が入ることで、「子どもの可能性や能力に気づき、子育てがより楽しく気が楽になった」という声も聞かれます。――学校や園の先生はどうでしょうか?中村:学校や園の先生からも、作業療法士と協働することで支援がしやすくなった、という声が届いています。例を挙げると、「学習が困難なことの背景には、眼球の動きや姿勢を保つことの難しさなどの原因があることを知り、決して怠けているわけではないということが分かって教師としてもうれしかった」「授業の様子をこまかく観察してもらい、道具や教材の工夫で困りごとがある子どもたちにもできることが増えることが分かりました!」などです。こうした声を聞くことは、私たち作業療法士の何よりの喜びです。発達が気になるお子さんの保護者同士をつなげられる機会を――発達が気になるお子さんの保護者の方へメッセージをお願いします。中村:私にも3人の子どもがいますが、今振り返れば、息子の1人は発達障害の特性があったのではないかなと思います。3歳児健診で運動機能面での発達の遅れを指摘されたほか、小学校に入学してからも片づけられない、翌日の準備ができない、といった困りごとがどんどん出てきました。ただ、30数年前は発達障害についての認知が進んでいなくて、私も恥ずかしながらまったく知識がなかったんですね。例えるなら、息子を無理やり学校に引っ張っていたような状況で、のちに発達障害についても勉強を深めるなかで「なんて親だったんだ」とつくづく反省しました。今は、発達障害について以前よりも社会の理解が進み、専門機関だけでなく、学校や放課後等デイサービスでも相談できる体制があります。発達障害のあるお子さんを育てるなかでは、悩んだり、不安になったりすることもあるでしょう。そんなときは、どんなことでもプロに聞いてみてください。家庭のなかだけで抱え込むと、追い込まれてしまいます。相談するのにも、最初は勇気がいるかもしれない。でも、勇気を出した先には、きっと気持ちがラクになる、親子ともに笑顔が増えるうれしい変化があるはずです。――相談することは子どもにとってだけではなく親にとっても、大切なのですね。中村:そうなんですよね。子どもはとても敏感で、親が不安になっていたらすぐに気づくものです。その子らしい発達を支援するためには、保護者のサポートが重要なのです。専門家と一緒に、その子の特性を正しく理解できれば、いたずらに不安が大きくなったり、できないことばかりにフォーカスしてストレスをためたりしてしまうこともなくなります。作業療法の現場では、同じような悩みを抱える保護者同士が話せる場を設けたり、発達障害のあるお子さんを育てた先輩パパ&ママから数年先の見通しについて聞く機会をつくったりと、さまざまな取り組みをしています。気になることがあったら、ぜひお住まいの地域の作業療法士会に問い合わせてみてください。――ありがとうございました。取材・文/浦上藍子Upload By 専門家インタビュー高校時代に重度心身障害者施設にボランティアに行ったことをきっかけに、作業療法士をめざす。1977年国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院卒業後、兵庫県社会福祉事業団玉津福祉センター附属中央病院などを経て、2009年より現職。日本作業療法士協会
2022年08月01日「先輩の口から恋バナがあふれ出てた」という話があふれ出るコウUpload By 丸山さとこ普段は「場の空気や人の気持ちを理解するのが苦手」「こだわりが強い」「人より物に対する興味が強い」などのASDの特性が目立つコウですが、ADHDの特性もいろいろとあり、ADHD治療薬を服用しています。授業中に立ち歩いたり道路に飛び出したりするようなことはなく、一見目立った多動や衝動性はありません。ですが、注意欠如や頭の中の多動はしっかりあるため、忘れ物・聞きもらし・うっかりミス・とめどないおしゃべりはかなりのもので、そんなときは『ADHDの特性もけっこうあるな~』と改めて思います。おしゃべりもウロウロするのも止まらない!帰宅直後のコウそんな彼も学校ではある程度周囲を意識して気を張って生活しているようで、その反動なのか帰宅直後はおしゃべりが止まらない状態になることがあります。そういうときは大抵動きも落ち着きがなく、右に左にウロウロしながらしゃべっています。Upload By 丸山さとこダイニングテーブルで本を読んでいた私の向かいで1.5メートル程度の距離を右に左にウロウロし続けるコウ。おしゃべりも移動も止まる気配がありません。そんな彼の姿に「めっちゃウロウロしながらしゃべるやん」とツッコミつつ、座るよう促したところ…Upload By 丸山さとこ一瞬静かになり、歩き回るのをやめてダイニングの椅子に座った彼は、Upload By 丸山さとこ椅子に座ったまま再びペラペラと話し出しました。先輩の口から恋バナがあふれ出た日、コウの口からは「今日学校であったできごと」があふれ出ていました。Upload By 丸山さとこそしてその間、床に放置され続けるリュックや帽子たち。普段は話しながら片づけを進めることもあるコウなのですが、ウロウロペラペラモードに入っているときは無目的にウロウロするだけなので、話の隙間に「片づけ始めるまで踏まないよう端に寄せておいてね」と促すようにしています。止まらないおしゃべりタイムは「特性を解放しているとき」なのかも?元々「中学生男子にしては家庭内でよく話す方だ」と言われることもあるコウですが、学校帰りに話があふれ出てくるときは、学校で抑えていた特性を解放しているときなのかもしれないなと感じることがあります。学校では興味のあることを話したくても一方的な独演会はできませんし、会話のキャッチボールをするときも「相手に伝わるかな?」と考えながら話さなくてはいけません。衝動性を刺激する要素は多くても、「今すぐ言いたい!」を我慢するシーンは家庭よりも多いだろうと思います。Upload By 丸山さとこそんなコウが家でノビノビとおしゃべりをあふれさせている間、「私は『王様の耳はロバの耳!』と叫ぶための穴のような存在になれたらいいのかな?」と思いながら、日々学校でのようすを楽しく聞かせてもらっています。執筆/丸山さとこ(監修:初川先生より)面白いですね。おそらく学校の中であった、コウくんなりの興味関心をそそられたこと(ちょっとした興奮状態になったり、覚醒度の上がった出来事)を家で話して整理しているようですね。学校の中ではさほど多動衝動が出ていないのだとしたら、さとこさんが思われたように「特性を解放する」時間なのかもしれませんね。特に何らか反応することを求めているというよりも、話したいから聞いていてほしいというところだと思うので、「王様の耳はロバの耳」の穴のつもりで、楽しく聞くだけで十分ですね。助言や話の骨を折るような質問などすることなく、コウくんが話しやすいように聞くという役を求められているようですね。
2022年08月01日クレーン現象とは?発達障害(自閉スペクトラム症)との関連性は?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンクレーン現象とは、子どもが何かをしたいときに、保護者やほかの人の手を取って物を指す、保護者やほかの人の手を使って欲求を解消しようとするなど、相手の手などで自分の要求を表現する動作のことです。まだ言葉が使えないので、動作で要求を実現させようとするものだと言われています。クレーン現象は問題ない?子どもにクレーン現象が見受けられたら?自閉スペクトラム症や知的障害がある子どもなどに、この「クレーン現象」がしばしば見受けられます。自閉スペクトラム症の特性として「人」よりも「もの」への関心が強いため、相手の気持ちよりも、物事の達成を重要視する傾向があるからだと言われています。ただ、クレーン現象が多く出ると言われている1歳前後の年齢は、まだまだ言葉を使っての要求を伝えることができないことも多くあります。その場合、さまざまな方法で要求を伝えますが、その方法の1つとしてクレーン現象も挙げられます。例えば、定型発達の子どもでもジュースをとってほしい場合には「ジュース」や「冷蔵庫」などの単語が分からなければ、意思を言葉で伝えることはできません。言葉や指さしでの要求がまだできない場合は、保護者の手を介してその欲求を伝えることも多くあります。子どもに何度かクレーン現象が見られたからといって、必ず自閉スペクトラム症や知的障害がある訳ではありません。クレーン現象とは、まだうまく言葉で伝えられない子どもが起こす表現方法の一つなのです。コミュニケーションの発達を促すためにクレーン現象が見られるなどの場合には、指さしの意味に気づくための練習が必要なこともあります。指さしができることによって、子どもの意図が周囲に伝わりやすくなるなど、子どもにとってもメリットがあるでしょう。大人の指さしに注目する練習まずは大人が指さしのお手本をやってみましょう。ぬいぐるみや絵本などを目の前において、指さししながら「かわいいね」「わんわんだね」と言ってみます。「一緒に見ようね」と注意を引きながら行いましょう。どっちが欲しいか選ぶ練習おもちゃと絵本を置いて、どっちで遊ぼうか? と聞いてみます。子どもは自分の興味があるほうに手を伸ばします。指をささなくても、「こっちがいいのね」「選べたね」とほめてあげてください。欲しい物を指さしで伝える練習たくさんの種類があるものを並べて、あるいは表示されているところで、どれがいいのかを選ばせてみましょう。指さし練習の動画を見せる指さしの練習には、動画や絵本を活用してみましょう。ただし、動画の音声があったとしても、一人で見させっぱなしにはしないで、大人が近くにいて、「どれかな~?」「できたね!」など、肉声で声をかけるようにしましょう。情報をキャッチする力・見て・聞いて・体験して「分かる」力を育む・聞こえてくる音や言葉へ耳を傾けることを楽しむものを操作する音や、電話やチャイム・飛行機の音に耳を澄ましてみたり、楽器や歌を楽しんだり、関わり合い遊びの中で言葉かけをすることで、さまざまな音や言葉に親しむ子どもの正面で、ものを見せたり身体に触れたりしてから声をかけるなど、注意をひきつけてから言葉をかける子どもが何気なく音や言葉を聞いている様子が見られたら「リンリンと音がするね」「楽しいね」「よく聞いているね」と声をかける・見たり、聞いたり、体験して分かることを増やすその場所に行く・体験して「分かる」:プールに入ってようやく「水遊びをするんだな」ということが分かる、身体介助をされ座ってようやく「座る」ということが分かる繰り返し習慣化しているものは「分かりやすい」:玄関に行くと「靴を履く」ことが分かる、朝起きると「トイレに行く」ことが分かっている実物を見ると、次に起こること・何をすべきかが「分かる」:プールバッグを見ると「プールに行く」ことが分かる、車の鍵を見せられると「車に乗る」ことが分かる情報を「伝える」力・言葉や言葉以外の手段を使って「表現する力」を育む・子どもの伝えたいことは何か、身近な大人が推測する子どもの現在の気持ちを探り、「伝えたいこと」を推測、代弁してあげることから始める・表現手段を紹介し、一緒に練習してみる相手に向かっていく、肩をトントンとたたく、行動で示す、実物・写真・絵を持っていく、絵や文字を書いて示すなど人と一緒に過ごしたい、分かりたい、伝えたいと思えるモチベーションの源「関わる」力を育む・子どもの世界で一緒に過ごす子どもが注目しているものや、取り組んでいることに対して嫌がらない程度に近づき、声をかけ過ぎず、干渉し過ぎず、一緒にゆったりと過ごす・子どもの見ているもの・聞いているもの・感じていること・動きにコメントしてみるする世話をしながら話しかける:オムツをはかせながら「はい、オムツがはけました」「気持ちいいね」子どもの興味関心に合わせて言葉をかける:おもちゃの車を走らせながら「パトカーがくるよ」、青いブロックを積みながら「青いブロックだね」など・子どもが「思いが叶った」「気持ちを満たしてもらえた」と思えるよう関わる嬉しいことが起こった、思いが叶った、不快な気持ちが軽減した、不安が和らいだという体験を積み重ねることが大切・子どもにもっと期待してワクワクしてもらえるような関わりを心がける体を使ったふれあい遊び、繰り返し遊び(いないいないばあ、シャボン玉あそび、かくれんぼ)などまとめ定型発達の子どもにとっても自閉スペクトラム症のある子どもにとってもクレーン現象は要求を伝える方法の一つです。クレーン現象が気になったとしても、注意をしたり、無理矢理に直す必要はありません。無理のない要求であれば応えてあげてください。子どもがクレーンなど何らかの方法で要求を伝えようとしたときには、指さしで欲しいものを指す、言葉で伝えるなど、より伝わりやすいコミュニケーション方法を教えてあげる機会としてみてはかがでしょうか。
2022年07月31日ASDとADHDのある息子との帰省は大変!Upload By かなしろにゃんこ。ASDとADHDのある息子が小学1年生のとき、私の父の故郷で法事があり、遠方にある父の故郷へ家族みんなで飛行機で行きました。お盆と少し時期がずれていた8月下旬だったので空港の混雑は少し緩和されていましたが、それでも夏休み中でまだまだ人が多く、特性によりじっとしていられない息子を連れての遠出は一苦労です。私と夫はあいさつ用の手土産物などを抱えて両手がふさがり、息子と手をつなぐ余裕がありません。目を離すと勝手にどこかへ行ってしまうような息子ですから、親は気が気じゃない!それだけではなく、普段とは違うお出かけで気分が上がると息子はソワソワ、ウロウロ…そしてベラベラとおしゃべりも止まりません。Upload By かなしろにゃんこ。どこでもおかまいなしに「今、その話重要???」とツッコミたくなるようなことを思いついたまま延々と話します。「ちょっと黙ってなさーーーーーい!!!!」と私がパニックになって叫びたくなるほどです。それに、迷子にならないように「手荷物忘れないでね」「はぐれないでついてきて」「トイレは?」など気を回さなければならないことが山ほどあります。公衆の面前で「怒らない」「取り乱さない」など、気をつけようと思っていましたが、ハッキリ言って親が精神を鍛える試練の場としか思えませんでした(笑)。Upload By かなしろにゃんこ。ASDとADHDのある息子が落ち着いて移動できるように母が与えたミッションとは?それでも「家族で思い出をつくりたい!」そんな気持ちでいざ帰省へ!となったのでした。空港では、はぐれてしまわないように息子をトランク係に任命しました。大きな荷物を管理する役目を担うと息子は係に集中し、少し口数が減るので効果がありました。トランクに乗ったりしながら前進する楽しさもよかったみたいです。Upload By かなしろにゃんこ。また、機内で長時間大人しく座っていられないのではないか、という心配がありました。そこで、搭乗前に飛行機の非常口前の席に座らせていただけないか相談し、乗務員さんの隣の席にしてもらうことができました。(※現在、非常口の側の席に座る人は非常時のサポートができる年齢である必要があるため子どもは座れませんが、航空会社によっては知的障害・発達障害がある人のためのサポートがあるようなのでスタッフの方に事前に相談ができるとよいかもしれません)座席の前が広いので足さばきで前の座席の人に迷惑をかけることもなくいけました。Upload By かなしろにゃんこ。機内では息子が飛行機を怖がってソワソワしてしまったり、緊張を和らげるためなのか口数が増えることが心配でした。普段ならケチって購入しない母ですが、周りの人に迷惑にならないように事前にシールブックを3つほど購入して、目的地までシール貼りに夢中になってもらうことにしました。アニメなど映像などを見て気持ちを和らげるのもいいのですが、体の動きを少しの間封じ込めたいので手元に集中してもらえたらいいなと思ったのです。Upload By かなしろにゃんこ。多分ですが羽田から九州上空までは大人しくできていました。以後足バタバタでしたが…(汗)。目的地に到着してから、息子にはゲートなど行先を確認したり、チケットを渡す係を担ってもらいました。係があることにより息子自身が常に親がいるのかを意識して、そばから離れないようにしてくれたので乗り切れました。Upload By かなしろにゃんこ。そして帰宅後Upload By かなしろにゃんこ。普段のお出かけでは「まだー?」「どこまで行くの~?」「疲れたー」などとを言う息子。折角の楽しい帰省ですから、何が何でもテンションを下げたくないという親の必死な作戦だったのでした。せわしないので帰宅後は疲れ果て「二度と息子と遠出はしたくないな…」と思ってしまいましたが、今では良い思い出です。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)これから夏休みで家族で帰省する機会も多いと思いますが、非常に参考になるコラムだと思います。「静かにしなさい」「じっとして」とか注意するだけでなく、時間つぶしのグッズを用意されたり本人の特性を活かせるような役割を与えたり、さまざまな工夫があると長い時間の移動も楽しくなると思います。楽しい雰囲気の中で新しい体験を積むことが今後の子どもさんの自信にもなっていくとよいと思います。
2022年07月31日ADHDがある子どもへの薬物療法。治療にはどんな種類の薬が使われるの?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンADHDは投薬で治療できるの?薬物療法との向き合い方ADHDのある子どもへの薬物療法にはどのような薬が使われるのでしょうか。今回は「ビバンセ」「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」の用量、用法や、効き方、副作用などについて説明致します。発達障害の特性によって、家庭生活、学業、友人関係に支障をきたしてしまう…そんな子どもに対しては、さまざまな支援や医療的なケアを利用することができます。その中で、親として最も判断に迷うものに、薬物療法が挙げられるのではないでしょうか。薬物療法を始めても、「薬物療法が本当に良い決断なのか、子どものためになるのか」「副作用などでかえって子どもを苦しめてしまわないか」など、迷いや不安があるのは当然だと思います。薬物療法に対しては、さまざまな考え方や意見があります。中には判断に迷う情報もあるでしょう。薬物療法が全てを解決してくれる訳ではなく、過度な期待は禁物です。投薬を始める場合には、環境調整や本人への説明を行うことが重要で、ただ薬だけ投与しても効果は期待できません。逆に、薬を絶対に使わず本人の努力のみが求められるとしたら、それも子どもにとってつらいことになってしまう可能性もあります。不安な気持ちのまま薬物療法を進めるのではなく、疑問を解消して自分なりに「薬との向き合い方」を考えていくことが大切です。発達障害(ADHD)における薬の効き方とは発達障害に対して薬物療法はしばしば行われることですが、発達障害自体を完全に治癒させる薬物療法はありません。発達障害における薬物療法は、対症療法であると言えます。注意欠如・多動症(ADHD)の中核的な症状である多動性—衝動性、不注意に対して、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)が使用できます。また、2019年12月からは、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)が使用できるようになりました。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや作用のプロフィールが異なっており、患者さんの状況や薬物への反応性に応じて使い分けられます。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンリスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)ビバンセとは、リスデキサンフェタミンを成分とする薬の販売名で、不注意、多動、衝動性を改善させる効果があります。6~18歳の小児を対象に、2019年3月に販売承認され、2019年12月3日より販売が開始されました。※18歳以前に服用を開始した人に限って、18歳以降も服用することが認められています。6歳未満の子どもへの安全性は確認されていません。また、現時点では、本邦における成人期の適応は取得されていません。これまでにADHDの治療薬として、中枢神経刺激薬のコンサータ、非中枢神経刺激薬のストラテラとインチュニブが販売されています。ビバンセはコンサータと同じ中枢神経刺激薬に属します。ビバンセは体内に吸収された後、アンフェタミンに変化します。このアンフェタミンがADHD症状を改善するのです。ADHDのある人は、脳内で神経に情報を伝える働きを担う神経伝達物質の作用が十分ではないと考えられています。特に、喜び、快楽に関連したドーパミンと、恐怖、驚き、興奮に関連したノルアドレナリンです。ビバンセは、神経と神経の間(シナプス間隙)における神経伝達物質のドーパミンとノルアドレナリンの働きを高める作用があるのです。参考:ドパミン|e-ヘルスネット 厚生労働省参考:ノルアドレナリン / ノルエピネフリン|e-ヘルスネット 厚生労働省ビバンセはカプセルの薬で、20mg、30mgの2種類が用意されています。通常は、30mgから服用を始め、70mgを上限として必要に応じて増量し、1日1回朝経口投与します。増量の必要があるかどうかは診察のうえで医師が判断するため、自分で増量して服用することはやめましょう。ビバンセには併用が禁止されている薬があることから、医師の診察では服用している薬を忘れずに報告してください。ビバンセは服用し始めると、初日からその効果があらわれ始めます。服用すると薬効が12時間程度続き、不注意、多動性、衝動性を改善します。●モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤セレギリン塩酸塩(エフピー)ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)●尿のpHをアルカリ化する薬剤炭酸水素ナトリウム等●尿のpHを酸性化する薬剤アスコルビン酸等●メチルフェニデート塩酸塩コンサータリタリンビバンセで特に注意が必要なの副作用は、ごくまれに生じるショック、アナフィラキシー(顔面蒼白、呼吸困難、そう痒など)などです。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。代表的な副作用は、食欲減退(79.1%),不眠 (45.3%),体重減少 (25.6%)などです。フェニデート徐放錠(コンサータ®)コンサータは、「メチルフェニデート塩酸塩」という成分の入った薬の販売名です。ADHDのある人に処方される飲み薬で、ADHDが原因であらわれる不注意、多動性、衝動性を改善させる効果があります。2007年に6歳から18歳未満の小児に対する治療薬として承認され、2013年には18歳以上の成人にも適応されるようになりました。コンサータは錠剤の薬で、18mg、27mg、36mgの3種類があります。子どもも大人も18mgから服用を始め、その人の適量となるように必要に応じて増量していくようです。なお、18歳未満の子どもでは54mg、18歳以上では72mgが服用の上限です。医師が診断のもとで、その人にとって適正な量を処方するので、自分で増量して服用することはできません。コンサータは1日1回朝に服用します。服用時間が遅くなると夜眠れなくなってしまうことがあるため、午後には服用しないように気をつけましょう。コンサータは服用し始めると、初日からその効果があらわれ始めます。服用すると薬効が12時間程度続き、不注意、多動性、衝動性を改善します。コンサータの副作用としてもっとも多かったものは食欲減退(40.8%)、続いて不眠(18.2%)、体重減少(16.4%)、動悸(12.1%)、悪心(11.7%)となります。※ビバンセとコンサータについては、いずれも医師から処方されるものですので、処方箋なしでは入手できません。特にビバンセとコンサータは流通規制がとられており、登録した医師だけが処方できるような厳しいシステムが整備されています。アトモキセチン(ストラテラ®)ストラテラは不注意、多動性、衝動性といったADHDの症状を改善するために処方される薬です。2003年にアメリカで発売開始されてから海外でも広く使用されており、日本では2009年に18歳未満の子どもに承認されました。さらに、2012年には18歳以上の成人にも承認が拡大され、幅広い年齢の人への処方が可能となっています。ただ、6歳未満の子どもへの安全性と有効性は確立されていません。ストラテラはアトモキセチン塩酸塩という成分の入った薬で、脳の前頭前野部分に多く存在する神経伝達物質「ノルアドレナリン」を活性化させる働きを持っています。脳の前頭前野部分は、順序だてた行動や、行動をコントロールする役割を果たしており、ADHDの人はこの部分に何らかの不具合があると推測されています。ストラテラはドーパミンの代謝も調節することで、症状を改善させると推測されています。また、ストラテラは薬物依存に関係する中枢神経系には作用しないために、薬への依存性は低いといわれています。ストラテラは飲み薬で、現在カプセルと液体薬剤のどちらかが処方されます。カプセルは5mg・10mg・25mg・40mgの4種類あり、医師が処方した用量になるように組み合わせることが可能です。カプセル内の物質は刺激物のためカプセルを分解することは禁止されています。そこで、まだカプセルが飲めない子どもや、カプセルが飲みづらい人には、液体薬剤(内用液)0.4%を選べるようになっています。18歳未満の子どもと18歳以上の成人では処方量や処方回数が異なります。子どもには体重に基づき決定した1日分の用量を1日2回に分けて処方される一方、成人では体重に関係なく用量が決められ1日1回もしくは2回に分けて処方されます。また、子どもも成人も少量からの服用で治療がはじまります。どのように処方されるかは、医師が診断の上で判断しますので、かかりつけの医療機関で相談してください。薬には飲んですぐ効果があらわれるものと、効果があらわれるまでに時間がかかるものがあります。ストラテラは後者のタイプで、毎日飲み続けることで効果があらわれる薬ですから、ADHD症状が改善するためには少し待つ必要があります。約2週間で不注意、多動性、衝動性の改善がみられるようになり、安定した効果が得られるまでには6~8週間ないし人によってはそれ以上かかるといわれています。なお、薬の効果があらわれれば、その効果は途切れることなく終日にわたって続くとされています。特に気をつけなければいけない副作用は、重大な副作用の肝機能障害・黄疸・肝不全・アナフィラキシーです。非常にまれなもので、先ほどご紹介した2009年に高橋道宏医師らが実施した試験でも、これらの副作用は報告されていません。しかし、どのくらいの頻度で起こるかは不明であるものの、服用する場合には念のため注意する必要があります。重大な副作用ではないものの、ストラテラを服用すると起きやすい副作用としては、悪心(31.5%)、食欲減退(19.9%)、頭痛(15.4%)、傾眠(15.8%)などが挙げられます。このような症状が出た場合でも、すぐに医師に相談しましょう。食欲がなくなる、吐き気や腹痛などといった消化器系の副作用を防ぐためには、食事直後に薬をのむなどの対策をとることも重要です。グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)インチュニブは、グアンファシン塩酸塩という薬の商品名のADHD治療薬です。グアンファシンという成分が脳の情報伝達機能を助け、ADHDの多動性、不注意、衝動性の症状を改善する効果があります。日本で製造販売が承認され、販売が開始されたのは2017年5月ですが、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは以前からADHDの治療薬として、コンサータ、ストラテラと共に使用されてきました。インチュニブは、患者の体重、症状、薬の効き方を踏まえて飲む量を決めるので、医師の処方が必要です。また、処方される年齢は6歳~と決められており、6歳未満の患者が使用した場合の安全性、有用性はまだ確認されていません(2022年6月現在)。従来の薬とは違う作用で働くため、ストラテラやコンサータでは効果を感じられなかったり、副作用などにより継続できなかった人への効果が期待されています。ADHDの原因は解明されていませんが、脳の前頭前皮質という部分での情報伝達に問題があるとされています。中でも、シナプスという情報の送受信をする部位がうまく働かないことが原因の一つではないかといわれています。ADHDのある人の中には、後シナプス(情報を受け取る側)に伝達された情報が漏れ出てしまい、神経伝達量が減少してしまっている場合があると考えられています。インチュニブの役割は、後シナプスの情報の取りこぼしを減らすことです。インチュニブの主成分であるグアンファシンが、後シナプス中のアドレナリン受容体という物質を活性化させることで、シナプス内のHCNチャネルという穴を塞ぎ、入ってきた情報を漏れにくくさせます。インチュニブは1日1回服用する薬です。飲む量は、医師が体質、症状、薬のきき方などをもとに決めます。飲む時間帯はなるべく決まっていたほうが良いでしょう。インチュニブと併用すると、効果が変わったり、副作用が出たりする薬や食品があります。もともと服用している薬がある場合や、インチュニブを服用しながら他の薬を服用することになった場合は、主治医に相談しましょう。インチュニブの対象年齢は6歳以上です。6歳未満における有効性・安全性は確認されていません。インチュニブには、傾眠(49.8%)、起立性低血圧、頭痛などの副作用が認められています。インチュニブ服用時に特に起こりやすい副作用としては、低血圧、徐脈(心臓の拍動数が異常に減少する)、鎮静、傾眠があります。インチュニブの成分であるグアンファシンはもともと血圧を下げる薬として開発されていたこともあり、特に起立性低血圧(立ちくらみ)を生じやすい人での使用には十分な注意が必要です。まとめ子どもが一定期間薬を服用することに対して保護者の方が不安になるのは当然のことだと思います。投薬を開始するにあたって、子ども本人に薬のことをどう伝えるか、また周囲への伝え方などさまざまな悩みを抱えることと思います。子どもが発達障害とともにどのように暮らしていくか、医療とどう付き合い、利用していくのか、こういった視点の中で、自分なりの薬に対する向き合い方を考えていくことが大切です。
2022年07月30日「こどもかいぎ」って?――子どもたちによる傾聴、そして話し合う大切な時間Upload By 発達ナビニュース映画『こどもかいぎ』は、子どもたちが「かいぎ」をする保育園を1年間に渡って撮影したドキュメンタリー作品です。「こどもかいぎ」では子どもたちが輪になって自由に話し合います。何を話してもいいけれど、相手の言うことはきちんと聞くのがルール。テーマはそのときによってさまざまです。ふしぎに思うこと、最近知ったこと、保育園でいやなこと…。さて、どんな意見が飛び出すのでしょうか。「こどもかいぎ」では結論を出すわけではありません。それぞれが自分の思いを伝え合う中で、子どもたちは成長していきます。子どもたちは、 自分にも相手にも全力でまっすぐ。気持ちを伝えるというのは単に「言葉で」だけではありません。子どもたちは何を考え、自分の可能性や、人と人との関係をどのように育んでいくのでしょうか。映画『こどもかいぎ』、そこには社会の中で生きていくために大切なヒントがあふれていました。コロナ禍だからこそ、対話をテーマにしたこの映画を届けたいUpload By 発達ナビニュース今回、監督の豪田トモさんにお話をうかがいました。発達ナビ編集部(以下、ーー):映画『こどもかいぎ』の完成に至るまでの背景を教えて下さい。豪田トモ監督(以下、監督):2017年から映画『こどもかいぎ』のプロジェクトがスタートしました。撮影場所探しに1年。ようやくご縁があって舞台となる保育園で2018年の春から1年に渡り撮影させていただきました。150時間の撮影を映画として1時間半にまとめるまでに2年かかりました。しかし、 完成したタイミングで新型コロナウィルスの流行がはじまり、その当初、映画を公開できるような状況でなくなってしまいました。仕方なく、この映画はお蔵入りにするしかないと思ったんです。ーーそのような中、公開に踏み切ったきっかけはなんでしょうか?監督:わが家には娘がいるのですが、当時小5で、分散登校をしていました。ある日、タブレット端末で学校の様子を見せてもらったんですが、そこには給食の時間に黙食している子どもたちの姿があり、ショックを受けました。そのとき一番に思ったのは、「この子たちは、きっと言いたいことがあるはず。大人は子どもの声を聞けているんだろうか」ということでした。一度は公開をあきらめた『こどもかいぎ』だったのですが、このことがきっかけになり、コロナ禍だからこそ、対話をテーマにしたこの映画を公開しようと決意したんです。「対話」とは、思考と思想を交換するものUpload By 発達ナビニュースーーこの映画の大きなテーマである「対話」というキーワードですが、豪田監督が思う「対話」とはどのようなものでしょうか。監督:「対話」についてお話するときに、「『会話』と『対話』はどうちがうんですか?」と聞かれることが多くあります。「会話」と「対話」は、それぞれ辞書で調べると同じようなことが書いてあるのですが、僕自身はそこには大きな違いがあると思っています。「会話」というのは、感情と情報を交換するものだと思っています。今日会ったこと、楽しかったことを聞いて、それに答えたり、ときに怒っていること、悲しかったことなど感情をぶつけることもあると思います。一方で、「対話」というのは、思考と思想を交換するものだと思っています。会話よりも、もっと深いところにある、考えていることに根ざしている哲学を相手に伝えるものではないかと感じています。今回、子どもたちが対話する姿をみて、子どもは周りの子たちと考え方や、その裏にある気持ちを交換していると感じました。違う考え方に出合ったとき、大人はときに偏見につながることもあると思うのですが、子どもにとって対話で出合った「自分と違う意見」は、発見になるんだと感じました。ーーお話するのが得意な子ども、苦手な子ども、どちらもいると思います。それぞれがその子らしく対話の場に参加するために、大人ができることはどんなことでしょうか。監督:対話って言葉で話すことだけではないと思うんです。「お話しないといけないんですか?」と聞かれることもよくあるのですが、無理して話す必要はありません。対話では、その場にいて話を聞くということがとても重要です。それだけでも対話を重ねることで、対話の場に自分の居場所を感じることができる、子どもたちの姿を見てそう感じました。「対話」がもたらす3つの影響Upload By 発達ナビニュースーー「対話」することは、子どもたちへどのような影響があると感じていますか?監督:これはたくさんありますね! その中でも大きく3つの影響があると思っています。1つ目は、その子なりの力がのびていくこと。聴く力、表現する力、思考する力、想像する力、語彙力、タイミングを見極める力など。 対話は相手がいることなので、相手と関係性の中で場を良くしていく力や仲間意識、共感性なども育まれると感じます。また「何でも話していい居場所」があることで、自尊心や自己肯定感が育まれていると感じました。2つ目は、子どもたちを取り巻くさまざまな社会問題の解決につながるのではないかということです。対話を重ねることで話してみないと分からないこと、話してみたら分かり合えることがあると気づくことができると思います。それは不登校、ひきこもり、いじめ、貧困、ヤングケアラー、精神疾患があることからの困りごとなどの問題解決のヒントにもなると思います。対話ができるようになることで、「困っていることがある」とSOSを出したり、自分の感情を言葉にする力が育まれ、それは自分の抱えている問題を解決する力になっていくと感じています。3つ目は、将来をつくる力です。たとえば、年中から高校まで週1回「対話の授業」があったら、それまでに400〜500回は対話ができるんです。自分の思いを話す、相手の話を聞くという経験を重ねることで暴力、暴言、DV、依存症などのコミュニケーション上の社会問題の予防になるのではないかと思っています。子どもの思いを聞いてほしいUpload By 発達ナビニュースーー最後に発達ナビの読者である、障害や特性があるお子さんを育てる保護者の方へのメッセージをお願いいたします。対話は保育園や幼稚園、学校だけでなく、家庭でもできます。子どもの話を聞く、思っていることを知るというのは、愛情表現です。その子の心の中にある声を、時には待って、すべてを受け止めていく。お子さんが小さいころは身体的なスキンシップが多いかもしれませんが、思春期以降そのようなスキンシップが減っていくことが多いと思います。スキンシップが減り、精神的なスキンシップもとらなくなるとだんだんと対話できなくなり、会話もなくなっていく…そうなってくると子どもに親の愛情が伝わらないということが多くあることを感じました。「対話」さえできていれば、大丈夫ではないかと僕は思っています。「対話」は自己肯定感を育み、子どもたちの可能性を広げます。ぜひ子どもの思いを聞いてほしいなと思っています。ーーありがとうございました!たとえ一見対話は難しいと思えるような子どもや場面であっても、きっとその子の中に「思い」があるはず。それを聞き、受け止めようとする姿勢の大切さを教えてくれる映画でもあると感じました。子どもとの関わり方に迷ったり悩んだりする大人に、きっとたくさんのヒントをもたらしてくれる映画だろうと思います。映画『こどもかいぎ』上演情報Upload By 発達ナビニュース『こどもかいぎ』2022年7月22日(金)よりロードショー。東京都・シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋、イオンシネマ多摩センターほか、全国順次公開予定です映画『こどもかいぎ』劇場情報※クリックすると発達ナビから映画『こどもかいぎ』の公式サイトに遷移します企画・監督・撮影:豪田トモプロデューサー:牛山朋子編集:池宮三葉プロダクションマネージャー:徳田香織、宮澤朋子後援:内閣府、日本保育協会、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、認定NPO法人フローレンス推薦:厚生労働省※クリックすると発達ナビから映画『こどもかいぎ』の公式サイトに遷移します
2022年07月27日こだわりと興味の偏りが強い子なので…Upload By ゆきみ自閉スペクトラム症のあるけんとが3歳のとき、年齢が進むにつれて周りの子たちと成長の差が広がっていくことに不安を感じ、焦っていました。やりたいことはとことんやるけれど、やりたくないことは一切やらず、こだわりも強い性格。けんとが興味を示すものがとにかく少なく、生活面も含め、いろいろなことができるようになる気がしませんでした。どうしたらいいのか分からず、発達支援施設の先生に相談したり、ネットや本で調べてみたりすると、いろいろな苦手に対して家で遊びながら練習する方法もたくさんあることを知りました。長男のけんとと弟の場合は、どのようにすればできるようになるのか。難しくてやる気を出さないことも、やろうとしてくれるのか。そう考えるようになり…数ある方法の中から少しずつ試し、子どもたちの様子を観察する「うちの子研究」をはじめました。自閉症長男が好きな数字とラムネで重ねた成功体験Upload By ゆきみ移動用に親子3人が乗れる電動自転車を購入。しかし、けんとはヘルメットを嫌がり、かぶってくれませんでした。そこで、けんとは数字が大好きだったので、数字にからめながらやってみることに。「1秒ヘルメットに触ったら、大好きなラムネ(1粒)を食べよう♪」と、私が見本を見せてから誘ってみると、喜んでやってくれました。できたらハイタッチでイェーイ!テンションをあげてゲームみたいにしながら「3秒触ったら→5秒触ったら→1秒頭にのせたら→3秒のせたら、10秒のせたら…」と段階をふんでいくことに成功。そしていざ、自転車で実践!ヘルメットをかぶるのか?自転車に乗るのか?と心配しましたが「自転車で公園へ行って、ラムネを食べて遊ぼう♪」と声をかけると喜んでヘルメットをかぶり自転車に乗ってくれました。この体験で、ヘルメットは痛くない、怖くないということが分かった様子。数日かけて、ご褒美なしでもできるようになりました。失敗…ダメならすぐに方法をかえてみたUpload By ゆきみ4歳のとき、外出すると好きなところに走って行ってしまい、常に追いかけまわしてました。家族や友達といても、みんなで一緒に行動することができず落ち込む日々。何か方法はないかな?と思うようになりました。そこで、「ママから離れたら、プチ財布に入れたボールを減らしていく」「ボールがなくなったらラムネが食べられない」という方法をやってみることに。子どもにもよるのだと思いますが、けんとの場合は、この方法だと全くなおらず、本人も嬉しそうじゃない。結果はうまくいきませんでした。Upload By ゆきみその後、やり方を変えながら試行錯誤。うちの子の場合うまくいったのは…ショッピングモールで「あのエレベーター(50メートルほどの距離)まで手をつないで歩けたらラムネ(1粒)食べようか♪」と誘い、できたらイェーイ!「次はどこまでにする?あの本屋さんまで行こうか?」などと距離を伸ばしていく方法。このとき、行先は子どもの好きな場所にしました。これで人と歩くことに慣れてくれたのか、公園や動物園、遊園地などへ行っても、一緒に手をつないで家族みんなで歩けるようになり感動しました。ご褒美はペットみたい?悩んだ日々Upload By ゆきみけんとと同じことを弟にやってもうまくいかないことがたくさんありました。弟は天邪鬼なところがあり、やりたいと思っていることでも「やらない!」とふてくされてしまいます。そんなときは様子をみて、やりたい雰囲気が少しだけ出てきたときに声をかけ、すかさず褒めて気分をあげるとうまくいくことがありました。その子によって、声のかけかた、かけるタイミング、楽しみかた、できるまでの道のりや、かかる時間は全然違うのだと分かりました。ネットや友人の意見で、ご褒美をあげるというのは「お菓子をあげて、ペットみたい」というのがありました。確かにそう見えるのかも…と悩んだ日々。しかし「怖がりなうちの子の扉を開いてあげる手段の1つ。とにかく少しでもできることを増やしてあげたい!周りにどう思われてもいい。とにかくやってみよう」と決意しました。うちの子に合った方法を家でも模索しながら、これからも新しい扉を開いてあげられるようにサポートしていけたらと思っています。執筆/ゆきみ(監修:鈴木先生より)ある行動ができたご褒美には本人が喜ぶ行動で返してあげるといいですね。例えば肩車をしてあげる、本人の好きなところに連れて行くなどです。慣れてきたら、できたときだけ言葉で褒めて頭をなでたり、ぎゅっと抱きしめてあげたりなどして褒め方を変えていく工夫も必要です。こういった即時報酬のトークン法以外に、遅延報酬というトークン法も次のステップでは重要です。簡単に言うとお子さん専用のポイントカードをつくることです。ある行動ができたらシールを貼って、5枚までたまったらどこかに連れて行くという考えです。大人がスーパーでシールやスタンプを集めて何かをもらうことと同じです。会社のボーナスも、あとでもらえるからその日まで頑張れるのです。
2022年07月27日4周年を迎えた福祉実験ユニット「ヘラルボニー」の新たな挑戦Upload By 発達ナビ編集部福祉実験ユニットとして活動する「ヘラルボニー」。印象的なテキスタイルのファッションプロダクトやインテリアファブリック、駅舎や工事現場の仮囲いなどを活用した作品の展示など、幅広い活躍を目にした人も多いのではないでしょうか?障害のある人たちの生み出すアートには、障害があるからこその強み、異彩がある――「障害ある人の作品だから支援しよう」ではない。アート・デザインの文脈で勝負したい、「すばらしい」からコラボしたいと思う。社会の側にある「今までの常識」をシフトさせる挑戦をしたい。その想いで歩み、4周年を迎えた「ヘラルボニー」が、この度新たな一歩を踏み出しました。原画展を開催――テキスタイルやライセンシー事業から一歩踏み出してテキスタイルとして、アパレルに活かすだけではなく、魅力ある「アート作品」としてうちだしていく第一歩として、金沢21世紀美術館のキュレーター黒澤浩美氏が企画監修をつとめる美術展「ヘラルボニー4周年記念 The Colours!」を開催。Upload By 発達ナビ編集部このイベントの開催直前、キュレーター黒澤浩美氏や、アーティストの一人である井口直人さんも列席してのギャラリートークが行われました。東京・六本木にあるアートギャラリー、ANB Tokyoで2022年7月16日から開催される「ヘラルボニー4周年記念 The Colours!」には、12名のアーティストの原画が並びます。どの作品も力強く、迷いがなく、まっすぐに心の琴線に触れるものばかりです。Upload By 発達ナビ編集部黒澤浩美氏は「社会の中にある障害を低くし、メルティングし、一つの世界にしていきたい。それがこの展覧会にこめたテーマ」だと言います。アーティストたちは「あるがままに生きる中で、自由な線や色、形を発見します。自分の生きる姿の写しともいえる表現」だと言い、一人ひとりの作品を、「ヘラルボニー」の代表・松田崇弥氏と共に、丁寧に解説していきました。Upload By 発達ナビ編集部トーク後は、展示アーティストの一人、井口直人氏による制作の様子も披露されました。「ヘラルボニー」代表、松田兄弟にインタビュー発達ナビでは、「ヘラルボニー」の共同代表の松田崇弥氏・松田文登氏に、発達ナビ編集長・牟田が話を伺いました。「ヘラルボニー」は今まで、障害のある人のアート作品を・ファッションテキスタイルに活用・街をキャンパスに、工事現場の仮囲い街を美術館化・アートライセンス事業で障害のある人たちの収益を向上という取り組みを進めてきました。Upload By 発達ナビ編集部「ヘラルボニー」を立ち上げた二人は、子ども時代、自閉スペクトラム症がある人のことを「スペ」と悪く言う同級生に許しがたい気持ちを抱えていたといいます。彼らの兄には重度の自閉スペクトラム症があったこともあり「障害があっても、同じ人間なのに」と感じていました。そしていつか、この「スペ」という言葉が、差別的な用語として使われるのではなく、「スペ」だからこんなかっこいいものがつくれるんだ、という発想の転換をさせたいと考えたそうです。アートに興味がない人に「障害のある人の作品展を見に行って」と言っても、きっと行かないだろう。その魅力を理解してもらうには、「ブランド」の傘の下で魅力あるプロダクトとすることが一つの手段なのではないか。そう考えて、ファッションテキスタイルとして活用しようと思い至ったのだそうです。知的に障害のある人、自閉スペクトラム症の特性のある人には「同じことをくり返すこだわり」などがあることが多くあります。細かな点だけで描いたり、小さな丸でぎっしりと紙面を埋め尽くしたり。そのこだわり、くり返すという性質による「作品」は、テキスタイル化と相性がいいと気づきました。Upload By 発達ナビ編集部そこから生まれたブランドコラボや、アートライセンス事業では、売上の数パーセントをアーティストに還元する仕組みをつくりました。例えばアパレルなどとのコラボで1000万の商品売上があれば、アパレル側から50万円が「ヘラルボニー」へ、30万円がアーティストに支払われます。重度障害のある契約アーティストの場合、生活介護の事業所に通所していることも多くあります。その場合、月にもらえるお金は数百円であることも稀ではありません。それでは、アーティストたちは「福祉」の枠の中から出ては生きていけません。「ヘラルボニー」の契約アーティストの中には、確定申告を行うほどになった人もいるそうです。また、工事現場の仮囲いを活用した展示では、積極的に地域の事業所に通所するアーティストの作品を採用しています。身近な場所にアートを楽しむ環境をつくり、さらに地域に住む障害のあるアーティストの存在も顕在化する取り組みは、今までにありそうでなかったインクルーシブの形を見せてくれるものとなっています。しかしそのような取り組みの中で、松田兄弟は気づきます。「とても魅力的な作品でも、アパレルのテキスタイルとしては相性がよくないこともある」例えば、今回ギャラリーに原画が展示されている、国保幸宏さんの作品。オイルパステルを使い、力強く塗りこめられた大胆で迫力がある作品ですが、配色や絵柄の性格上、テキスタイル化はしづらい。Upload By 発達ナビ編集部「テキスタイルが相性がいいアーティストもいる、しかし、原画で見せるほうが魅力が生きるアーティストもいる」そうした気づき、そして今まで積み重ねてきた「ヘラルボニー」の実績を背景に、今回ブランドなどとのコラボでのテキスタイルとして人々の暮らしの中に拡がっていくだけでなく、「アート作品として勝負する」という、ヘラルボニーとしても分岐点となる試みとして、ギャラリー展を企画したのです。Upload By 発達ナビ編集部しかし、「ヘラルボニー」の挑戦は、まだまだ途上にあると言います。「福祉施設の方から、『ヘラルボニーと契約したいという利用者さんの保護者の声が多く寄せられている』と言われることが増えたんです。収益が生まれると思っていなかったところに、実は大きな価値があることに気づけた、意識が変わったことは、革命だと思っています」それと同時に、課題も感じています。「障害のある人すべてがアーティストとして活躍できるわけではないし、ほかの仕事をしたい人もいます。『ヘラルボニー』はもっと事業の幅を広げて、さまざまな『ハレの場』をつくりたいし、そうした場を通じて社会の意識をもっと変え、社会の側にある障害を取り除く存在になっていきたい」そう語る二人が、今後実現させたいと計画しているのは「福祉施設」なのだそう。「レストランやカフェなどもやりたいですね。丸の内でも、地元の盛岡でも。街の景色の中に、あたりまえのように、障害のある人たちも働く素敵な店がある社会にしたい」現在、障害のある人は、可視化されにくい場所で働いていることも多く、実際彼らの兄も、事業所で毎日缶つぶしの作業をしているそう。ですが、店員になりたい人だって、厨房で働きたい人だっているはず。さまざまな選択の幅が合っていいのではないかという彼らの課題意識が、新たな挑戦につながります。Upload By 発達ナビ編集部「ヘラルボニー」のレストラン、おしゃれでおいしくて、その街に行くたびに立ち寄りたくなるとっておきの場所になりそうですよね。「『ヘラルボニー』の契約アーティストになれるように絵画教室に通わせ始めました、なんて言葉をかけていただくこともあります。そのように言ってくださるのはありがたい。ですが僕たちは、本人に”好き”に忠実でいてほしいなと考えています。社会の側がそこにアジャストして仕事にしていけばいいのだと。できないものをできるようにするという考え方は、生活の質を上げるという点では必要かもしれないけれど、才能という点ではやりたくないなと思うんです」「ヘラルボニー」のアーティストたちの作品の中には「狙い」はありません。そこにあるのは「好き」だから、そして「おもしろいから」「やりたいから」というまっすぐな心です。その本質を大切にしたいという「ヘラルボニー」の二人の想いに強く共感をしました。「『ヘラルボニー』の活動をとおして、障害のある人のアートだから高いんだね、というくらいの価値観が逆転する未来をつくっていきたいと思っています。僕らが子どものころに傷ついた『スペ』という言葉すら、その内包する意味を変え、リスペクトを意味する言葉にしたい」「ヘラルボニー」の作品を、毎日の暮らしのなかに取り込み、楽しんでみる。「そのスカーフ素敵だね」「ヘラルボニーのテキスタイルっておしゃれだよね」「あのアーティストの作品が憧れ」と、福祉の枠を超えて「素敵だから、身につけたい」「新居に飾るのが夢」と思える社会への”地続きの「今」”に、私たち一人ひとりも、楽しみながら参加してみたいと感じました。Upload By 発達ナビ編集部「ヘラルボニー4周年記念The Colors!」は、2022年8月7日まで六本木ANB TOKYOにて開催常に挑戦し続ける、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」、そして彼らがリスペクトし、社会へ魅力を発信するアーチストたちの作品に出合いにギャラリーを訪れてみませんか?3F・4Fのギャラリーでは原画作品の展示と販売が、2Fのポップアップショップでは、ハンカチやバッグ、スカーフなどアートライフスタイルブランド「HERALBONY」のプロダクトの販売がされています。出展作家:井口直人、伊藤大貴、岩瀬俊一、岡部志士、衣笠泰介、木村全彦、国保幸宏、Juri、高田祐、中尾涼、早川拓馬、森啓輔(12名)※敬称略会期:2022年7月16日(土)~2022年8月7日(日)11:00-19:00会場:ANB Tokyo (港区六本木5-2-4)※六本木駅から徒歩3分休館日:月曜※月曜祝日の場合は翌日定休に振替入場料:無料※予約不要 / 直接会場にお越しください問合せ:official@heralbony.com主催:株式会社ヘラルボニー、一般財団法人東京アートアクセラレーション企画:黒澤浩美(金沢21世紀美術館キュレーター/ヘラルボニー企画アドバイザー)ヘラルボニー
2022年07月26日里親家族と里子の幸せな日々Upload By 発達ナビニュース生後18ヶ月のシモンを受け入れた里親のアンナと夫のドリスには、2人の息子がいました。シモンと息子たちは、朝から晩まで一緒に遊び、きょうだいのように成長しました。いつでもどこでも笑いが絶えない家族5人。幸せな4年半が過ぎようとしていました。Upload By 発達ナビニュース突然訪れた家族のタイムリミットある日、月に1度の面会交流をしていたシモンの実父であるエディからシモンとの生活を再開したいという申し出があります。シモンが産まれて間もないころ、シモンの母は他界。シモンの父、エディは悲しみに打ちのめされ、福祉機関にシモンを託したのでした。数年をかけエディは悲しみから立ち上がり、シモンとの生活を再開させるために、努力を重ねてきました。エディの申し出を福祉機関が認め、週1回週末にシモンと実父エディが過ごすというトライアルがはじまったのです。それぞれの葛藤Upload By 発達ナビニュース里親であるアンナはシモンを受け入れてから怪我や病気にならないようにといつも心配りをし、末っ子のようなシモンを大切に大切に育ててきました。突然はじまったシモンと実父の再始動をアンナは心配していました。息子たちにとってもシモンはいつも一緒にいるのが当たり前の存在。シモンがいない週末、シモンがいない誕生日会…家族の心は揺れ動きます。Upload By 発達ナビニュース一方で、シモン自身も葛藤しながらも実父エディとの距離を少しずつ縮め、親子の絆を育んでいきました。ある日、シモンはエディの家から1枚の写真を持ち帰ります。そこには生前のシモンの母の姿が。アンナと夫のドリスは、忘れかけていた「シモンには実の両親が存在し自分たちは里親である」という事実を改めて実感するのでした。家族が選んだ未来とはシモンが実父のエディと過ごすようになり、半年ほどになる12月。シモンはエディの家でクリスマスを一緒に過ごすことが、福祉機関からの連絡でも決まっていました。アンナたち家族は雪山にバカンスへ。楽しみにしていた息子たちとシモンは、その決定に不満がありました。納得できないのは、実はアンナも同様でした。5人でクリスマスを過ごすためにアンナがしたこと、そして、それぞれが選んだ未来とは…。Upload By 発達ナビニュース映画『1640日の家族』は2022年7 月 29 日(金)からTOHO シネマズ シャンテほか全国で公開Upload By 発達ナビニュース本作は、監督が子どものころ、両親が里子を迎え、4年半一緒に暮らした体験を基に描かれています。里親家族として1640日、里子と一緒に過ごした少年時代。つらい別れを見つめ直した監督が到達したのは、今は一緒にいなくても、血がつながっていなくても、家族だった時間は消えないという事実です。さまざまなかたちの家族に贈る映画、ぜひ劇場でご覧いただきたいと思います。『1640日の家族』2022年7月29日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開監督・脚本:ファビアン・ゴルジュアール出演:メラニー・ティエリー、リエ・サレム、フェリックス・モアティ、ガブリエル・パヴィ2021年/フランス/仏語/102分/1.85ビスタ/5.1ch/原題:La vraie famille/英題: The Family/日本語字幕:横井和子配給:ロングライド※クリックすると発達ナビのサイトから映画『1640日の家族』公式サイトに遷移します
2022年07月25日検査の結果、場面緘黙の診断が出たUpload By まりまり次女が小2のときに場面緘黙を疑い、児童精神科クリニックを受診しました。そこで発達検査を受けて、その結果と医師の総合的な判断から、次女の場合は、発達障害はたぶんなく、場面緘黙であるとの診断が出ました。診断が出たことで、今後の関わり方や支援に関してなんとなく道筋が見えたことで私としてはホッとしましたが、もちろん不安もありました。病院での場面緘黙の治療って何をするのか私として不安だったことのひとつとして、場面緘黙の治療って何をするのかということでした。Upload By まりまりネットや、場面緘黙についての本で調べたりはしてみました。そこで見たのは、行動療法や認知行動療法などが有効であるが、それらを実施している場所はとても限られていて少ないということでした。なので、とりあえず今のクリニックでできることをしていこうということがわが家の方針となりました。医師からのお話診断が出て、医師からお話がありました。不安や緊張で話せなくなるため、例えばあまりに不安が強く生活に支障のある場合は、不安を抑えるお薬や漢方を使うこともあるとのこと。ただ、次女の場合は、不安は強いものの、日常生活を送る上で大きな障害があるほどではなく、服薬は必要ないとのことでした。Upload By まりまりそのため、学校や家で安心して過ごせる環境をつくっていくことが大事とのお話がありました。それ以外では、臨床心理士によるカウンセリングができるとのことで、カウンセリングを行っていくことにしたのでした。臨床心理士と何をしていくのか(わが家の場合)Upload By まりまりわが家の次女の場合ですが、とにかくカウンセリングの場での緊張が高く心理士さんと次女がほとんどコミュニケーションを取れる状態ではありませんでした。なので、まずは、心理士さんとのカウンセリングの場に慣れること、ボディランゲージや筆談でなどで心理士さんとコミュニケーションを取れるようにするということを目標にカウンセリングを始めていくこととなったのでした。自分だけじゃない安心感Upload By まりまりわが家の場合はこんな感じで進んでいきました。児童精神科に行くまでは、学校では「問題ありません」と言われ続けて特に支援も得られず、次女への対応は母親である私中心という感じでした。なので、第3者の目が入るというだけでとても心が楽になった感じがしたのを覚えています。執筆/まりまり(監修:鈴木先生より)場面緘黙は神経発達症のある患者さんによくみられる症状です。家の中では普通に話せるのに、玄関を出た瞬間に話さなくなるのが典型例です。待合室では話しているが診察室に入ると喋らなくなるケースもあります。また、親と一緒では喋らないけど別々に入れると話せるときもあります。話さなくても頷いたり首を横に振ったりすることだけで意思表示する子どももいます。このような社会不安を取り除くために、SSRIという抗不安薬を投与したり、毎月外来でフォローしながら必要に応じて音楽療法を、そして心理カウンセリングでは箱庭療法や絵画療法なども当クリニックでは行っています。次女さん本人に合う治療法を見つけていくことが大切だと思います。
2022年07月25日2人目出産のために里帰りしたい!でも、息子の療育はあきらめるしかないの?Upload By べっこうあめアマミ娘を妊娠していたころ、息子はまだ障害の診断が出ていなかったとはいえ、療育に通っていました。当時息子は3歳、息子の発達における大事な時期に、療育を途切れさせたくないと思っていました。でも、夫が育休をとるのは難しい。かといって、実年齢より幼く手もかかる息子をほぼ1人で見ながら、妊娠後期、出産、新生児期の子育てをしていくことは不安が大きい…。2人目の出産をどのように迎えるのが家族にとってベストなのか、私は悩んでいました。あるとき、そのことを母に相談すると、思いもしなかった発想が飛び込んできました。「里帰り中だけこっちで療育に通えないのかね?」そのときは、「療育って待機も多いのに無理でしょ」なんて思って気にもしていなかったのですが、その後、母からさらに意外な連絡を受けました。Upload By べっこうあめアマミなんと、私が無理だと決めつけていたことを、母が水面下でなんとか調整できないか、動いてくれていたのです。そして「里帰り中だけ期間限定で療育を受ける」ことの可能性が見えてきました。「里帰り中だけ地元で療育を受ける」実現のために押さえるべきポイントとはいろいろと調べてみると、「里帰り中だけ地元で療育を受ける」ことは、意外と「押さえるべきポイント」を押さえれば可能なことが分かってきました。※地域や施設によりできないこともありますただし、できるだけ早めに動き出し、長めに準備期間を持つ必要があります。具体的には、次の6つのことを確認し、全てが押さえられるかがポイントでした。Upload By べっこうあめアマミこの中で特にハードルが高いのは、1.里帰り中の期間限定で療育を受けられるかという発達支援施設側の事情だと思います。わが家の場合、問い合わせたのが2月という、次年度の調整をしている時期で、さらに里帰りまで5ヶ月ほど時間があるという好条件が重なっていたためか、受け入れてもらうことができました。2.療育を受けるための条件は何かについては、里帰り先で利用したかった施設が公的な児童発達支援センターだったため、「住民票の移動」が必須でした。ですが、これも里帰り中だけ息子の住民票を移動することで解決できました。345.の受給者証に関することですが、これは、受給者証のしくみや「誰に」発行されているものなのかを理解すれば、対応できました。まず、受給者証は厳密に言うと、通園する子どもではなく、その子どもの保護者に対して発行されるものです。そして、発行するのは保護者(世帯主)がいる自治体です。今回、里帰りするのは息子と私だけなので、世帯主である夫の住民票は動きません。そして、受給者証は発行された自治体以外の地域でも使えます。そのため、今ある受給者証で対応できることが分かりました。※自治体や療育施設により通えない場合もありますので、各自治体、施設にご確認ください。ただし、地域によって見解が分かれる可能性もあると思ったので、念のため、「このやり方で使えるか?」と、それぞれの自治体に確認しました。不安もありましたが、その点は県を跨いだどちらの自治体でも問題ないと言われました。6.里帰り中だけお休みして、里帰り後また同じ日数通わせてもらえるか?これも、事前に必ず確認したほうが安心です。ただしわが家の場合、この確認だけは必要なくなりました。さらに里帰りと同時に引っ越し⁈ややこしすぎる状況を上手に切り抜けたワケ実はわが家の場合、里帰りとほぼ同時に新たな自治体に引っ越しをする、というさらにややこしいことをしました。そのため、里帰り後は新たな自治体で暮らすことになったので、里帰り前に通っていた療育は、里帰りと同時に解約させてもらいました。里帰り後に息子が通う新たな療育は、里帰り期間中にコツコツ探して話を進めていきました。Upload By べっこうあめアマミ引っ越しの際、夫は里帰り後に家族で住む自治体に住民票を移動、息子は里帰り先の自治体に住民票を移動し、一時的に家族が別居している状態になりました。そして、受給者証も一旦仕切り直しになります。息子が里帰り先ですぐに療育を受けられるようにするには、夫の住民票が移ったらすぐに、引っ越し先の自治体で受給者証を発行してもらう必要がありました。この流れがスムーズに進むように、引っ越し先の自治体に早くから事情を説明し、お願いしておきました。この事前の根回しと、役所の方の柔軟な対応、もともと受給者証の取得実績があったということが幸いして、住民票を移動したタイミングですぐに受給者証を発行してもらうことができました。そして、息子はすぐに里帰り先で療育に通いはじめられたのです。正直、全てにおいてすごく忙しくて大変でしたし、交渉力や情報収集力も求められました。家族の協力も必要でした。そして、関わった3つの自治体や発達支援施設が、どこも協力的に動いてくれたこと、タイミングなどの運もよかったことなど、いろいろな幸運が合わさっての結果だと思います。そのため、場合によってはうまくかみ合わず、できないこともあると思います。ただ、この経験から私は、最初から「できない」と決めつけず、「やってみる」大切さを学びました。里帰り中の療育に助けられた私たちUpload By べっこうあめアマミ息子が里帰り中に通った療育は、都会にはあまりないタイプの、後ろは山で自然いっぱいの、とても広い施設でした。毎日砂遊び、毎日プール、日常的に自然とふれあえて、息子は毎日砂だらけで帰宅し、新たな成長も見せてくれました。そして、親子分離の療育だったため、息子が日中行く場所があることで、私も両親も里帰り期間中はずいぶん助けられました。1人目の子どもが療育に通っていたり、何らかの支援が必要だったりすると、2人目の妊娠出産をどう乗り切ろうか悩む人も多いと思います。私のようなパターンは、全国どこでも通用するとはいえませんが、あきらめずに試してみる価値はあるのではないかとも思います。もし、同じような状況にいる方は、一つの例として参考にしていただけたら幸いです。執筆/べっこうあめアマミ(監修:井上先生より)べっこうあめアマミさんのように2人目の出産のために里帰りをするということは意外に多いのかもしれません。とても貴重な情報だと思います。住民票の移動や場合によっては受給証の再発行など手続きが大変かと思いますが、交渉力すごいです。家族や周りの人たちの協力を得ながら進められると良いですね。以前の療育機関で作成されていた個別の支援計画やアセスメントの情報などを新しい療育機関に引き継いでもらうなどもできるとさらにより良いと思います。
2022年07月25日Q:特別支援教育を利用する子どもが年々増えているのは何故?必要な支援は?A:義務教育段階の全児童数は減少傾向にあるのに、通級、特別支援学級、特別支援学校へ通う「特別支援教育利用児」の割合は2009年の2.3%に対して、2019年には5.0%へと増加しています。これは2004年の「発達障害者支援法」公布、その後2016年の発達障害者支援法の改正の影響が大きいです(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.106-11の「『発達障害児』への支援」参照)。Upload By 専門家インタビュー2016年の発達障害者支援法の改正により発達障害に限らず個人と環境の相互作用によって生じる困難や制限を解消するために「必要な合理的配慮」を行われるようになりました。教育に関しても同法案の第八条に「可能な限り、発達障害児が発達障害児ではない児童と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」の文言が追加されました。社会的障壁の軽減や除去を進める方向性がクローズアップされると同時に世間でも「発達障害」に対する理解が増えてきたことも理由の一つでしょう。Upload By 専門家インタビュー
2022年07月23日コウと療育園の思い出あれこれUpload By 丸山さとこコウは3歳のときに1年間療育園へ通っていました。きっかけは3歳児健診で「※発達障害がある可能性が高い」と告げられ、療育園へ通うようすすめられたことでした。当時住んでいた市の療育園は1ヶ所だったため、入園を希望しても空くのを待っている間に利用年齢を越えてしまうこともあると聞いていました。幸いそのときは、週1回であればすぐに春から入園できるとのことだったので、1ヶ月後に入園予定だった保育園とあわせて通うことになりました。あとから振り返ると、コウにとっても結果的に丁度よかったのではないかな?と思います。というのも、コウにとっては「のびのびできる保育園」と「少々スパルタな療育園」だったので、週5で療育園に通っていると親子で参ってしまっていたかもしれなかったのです。※現在では神経発達症と呼ばれることも増えていますが、当時の発言に沿って発達障害と表現しております。療育園でのアスレチックの時間は涙と共に…当時のコウはコミュニケーションの必要性をあまり感じていなさそうな『他者への無関心さ』があり、会話は少々できるがオウム返しも多い状態でした。運動面でも凹が目立ち、滑り台や梯子のある大型遊具はほぼ完全拒否な状態でした。「怖がりなんだな」と微笑ましく見たり勇気づけたりできるようなレベルではない全力の拒否に「これでは保育園入園後も苦労するかもしれないな」と考えていました。自宅に室内遊具を置いて少し練習したりしていたのですが、そんな状況のコウにも容赦なく降りかかるのが療育園でのアスレチックの時間!Upload By 丸山さとこ泣いても叫んでも脇を抱えられお尻を支えられてのサポートありで進んでいくアスレチックのループに、「これは…中々手ごわそうだぜ…(療育園もコウも)」と思った覚えがあります。ときには「ギャン泣きを越えてパニック入っているのでは…?」と思うほどのコウの反応にハラハラしながらも、繰り返している内に慣れるのだろうかと考え見守っていた私でしたが、さにあらず。全く慣れる気配のないコウの毎回の大騒ぎに、「このままでは大型遊具で遊ぶことができなくなるどころか、公園に入れなくなる可能性が高い」と思った私は、いろいろな公園を利用してスモールステップで遊具に慣れさせることにしました。Upload By 丸山さとこ大変だけどメリットもあり?療育園での実りある活動たち『遊具を見て固まったりギャン泣きしたりするコウを小脇に抱える日々。しまいには、パニックを避けるために公園が目に入らないよう遠回りで迂回したり、遊具施設のあるスーパーや児童館を避けたりするようにもなるのであった…』という未来予想図が見えてきた私の必死な(しかしコウにはそれを隠してジワジワ進めた)”遊具で遊ぼうトレーニング”の甲斐あってか、それとも療育園でのスパルタ修行のおかげか、あるいはその両方が効いたのか…コウは次第に遊具で遊べるようになり、卒園するころには笑顔で楽しめるまでになりました。と、ここまでのエピソードを聞くと「療育園に行くメリットはあまりなかったのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私はメリットもたくさんあった1年間だったと思います。まず、コウと一緒に遊びに参加したり、集団の中で過ごす彼を見たりしたことで、保育園での参観日や発表会では見られない、よりリアルなコウの課題や変化が見られました。それにより、「目を合わせる」「人とのコミュニケーションを介して要求を叶える」「集団と同じ行動をする」「スケジュール通りに活動する(切り替えする)」などの、「コウが自然には行わず興味を示さない行動の数々」に対して促していく必要性を知りました。予告されたスケジュールに従い進行していく集団行動や、指先を使った微細運動、全身を使った粗大運動など、療育園で行われるさまざまな活動は当時のコウにとって必要なものだったと思います。Upload By 丸山さとこまた、療育園で取り組んだことは、保育園での活動の予行演習にもなっていました。初めてのことが苦手なコウにとって、保護者や支援者のサポートを受けながら時間をかけて工作やお遊戯に取り組めたことは助けになっただろうと思います。「コウ君、すごく上手にできてましたよ!」と先生が伝えてくださった工作やお遊戯のエピソードは、先に療育園で体験したことのあるものがほとんどでした。きっと、コウにとって安心や自信につながっただろうと思います。あのとき「こうだったらな」と思うことがあるとすれば…今振り返ると、コウが通っていた療育園の先生(支援者)の方々は、コウにとっては強引さが目立つ指導も多かった気がします。そのように接し方については一部疑問が残る一方、取り組んでいる内容自体は理にかなっており、コウにとって必要なものがたくさんあったと思います。熱心で根気強い接し方などから「本当に子どもたちのことを思って頑張ってくださっているのだな」と感じることもたくさんありました。コウのことを『変わった子ども』として扱わない支援者や保護者の中で過ごす時間によって癒されたこともありました。そんな先生方だったのだから、私が『コウへの支援方法や接し方』についてお願いしていたら、先生方も耳を傾けてくださったのではないかと思います。Upload By 丸山さとこ少なくとも、『なぜ強引にでも進める必要があるのか』を説明したり話し合いに応じたりはしてくださったのではないかと思うと、私にも、先生方とコミュニケーションをとる気持ち・主体的に動く姿勢があったらよかったのかもしれないな…と思います。「療育園で働く支援者の方々で、相手はプロなのだから。私は知識もなく、コウが3歳になるまで療育の必要にも気付かなかった保護者なのだから」という、どこか一歩引いた受け身な姿勢が私の中にあったのだろうな…と思えるのは、コウが中学生になった今だからなのだろうな~!とも思います。Upload By 丸山さとこそんな「プロである支援者の方々に敬意を払いつつ、もっと疑問や要望を丁寧に伝えようとすればよかったな」という思いが、コミュニケーションが苦手な私に『学校の先生と面談する勇気』を与えてくれたのかも…?と思うと、それこそが療育園に通ったことの1番のメリットだったのかもしれないな~と感じたりもする、療育園での活動の振り返りでした。執筆/丸山さとこ(監修:藤井先生より)療育園に通い続けたことで、保育園での活動の予行演習になり、できたという経験につながりましたね。地域に通園タイプの療育園がないところもありますが、通園タイプですと身辺自立の相談もしやすいと思います。支援者の方とは、互いにお子さんのサポーターとして協力していくと、家や保育園、学校での環境の整え方、接し方などを考えることができます。『先生と面談する勇気』をこれからも大切にしていってくださいね。
2022年07月21日精神面で実年齢より幼いところがあった、娘のゆい私は以前から、ゆいは精神面で実年齢より幼いところがあるかな、と感じていました。でも個性の範囲だと思って気にしていませんでした。障害の診断がおりた今になって思えばもしかしたら特性もあったのかもしれませんが、なかなかの甘えん坊さんで初めてのところには一人で行けない、行く場所の下調べが必須…など怖がり屋さんだったのです。例えば、お買い物は店員さんと会話をしないといけないので苦手だし、小学5年生のときの自然学校では見知らぬところに親を伴わずに行くのが不安でたまらないようでした。「宿泊施設の間取りを教えて、施設の画像を見せて」と何度もせがまれたものです。そんなゆいですが、小学校の高学年ともなると大人びてきたなと思うところがあります。Upload By 吉田いらこ困っていた寝室問題ゆいは、不安を感じるのが人一倍強く、一人で行動できるようになるには時間がかかるタイプでした。特に、電気を消して眠れないこと、だれかと一緒でないと眠れないことにはちょっと困っていました。いえ、ちょっとでなく大いに困っていました。なぜかというと、わが家の寝室が狭いからなのです。私たち夫婦と、ゆいと小3の妹。家族4人で川の字になって寝ているのですが、もうゆいは私と身長がほぼ同じなのです。そのため家族で寝るには手狭になっていました。Upload By 吉田いらこ小学6年生になったある日…!早く独り寝ができるようになってほしいと願いながら過ごしていたのですが、小学6年生になったある日、ついにゆいが「一人部屋が欲しい」というようになりました。そこでパーテーションで子ども部屋を2つに区切り、それぞれにデスクとベッドを配置しました。広くはないですが個人のスペースをつくると大喜び!お気に入りのものを並べたりして楽しく部屋づくりをしていました。とはいえ、個室は起きている時間だけ必要なスペースで、寝るときはやっぱりみんなと一緒がいいというのかなと思っていたのですが、「今日は私、この部屋で寝るね!」と宣言し、あっさりと一人で寝られるようになったのでした。Upload By 吉田いらこそしてもう一つ。個室をつくってから、ゆいはほとんどリビングに顔を出さなくなりました。食事と入浴後、少しゆっくりしたら部屋に戻ってしまいます。本人に聞くと「平日はゆっくりしたい」「一人になりたい」と言っていました。正直に言ってしまうと、これは私としては寂しかったです…。でも夫に聞くと、夫自身も十代のころは用事があるとき以外は自室にいたというので「思春期はあんなものだよ」と言っていました。Upload By 吉田いらこあんなに部屋が狭いから早く個室に移ってほしいと思っていたのに、いざ行ってしまうと寂しいものです。これも成長なのかなとちょっとうれしく、かなり寂しくもあります…。でも私も子離れしていかないとと自分に言い聞かせています。執筆/吉田いらこ(監修:三木先生より)自分から部屋で寝る、こもるようになるというのは成長のあかしですね。こういうときにあとを追わず寂しさをぐっとこらえるのも、子育てにおける大切な役割です。思春期の「一人でぐるぐる考える時間」をたっぷりつくってあげられると良いですね。
2022年07月21日学習障害がなくても、学習に困難を感じている子どもは多くいる?ノートが上手く取れない、計算や漢字の書き取りが不得手、授業に集中できない…など、子どもの学習に関連する困りごとは、「限局性学習症(学習障害・LD)」が原因なのではないかと考える方も多いのではないでしょうか。しかし、限局性学習症がなくても、そのほかの発達障害の特性から学習に困難を感じている子どもも多くいると考えられています。特定の領域の学習ができない限局性学習症とは異なり、環境に左右される原因によって学習困難が起こることがあります。学校でのスケジュールが突然変更になったり、いつもどおりのルーティンができなかったりすると、不安が強まったり、パニックになったりする場合があるかもしれません。また、細かい情報や特定のことがらに強くこだわって全体の理解が進まないことや、興味関心と学習内容が噛み合わずに授業や学習に集中できないことがあるかもしれません。教室の中で椅子にじっと座っていることができない、あるいは座っていたとしても手足を動かしたくて学習に集中できないことがあり、無理やりじっとしていようとすることで、極端に疲れてしまうこともあります。また、注意が逸れやすく、授業に集中できない・不注意が理由で忘れ物が多い、実行機能の弱さが理由で宿題が終わらない・できないなどの困りがあります。体を協調的に使うことが難しいために、文字を書くことが苦手だったり、丁寧に書いているつもりでも読みやすい字が書けなかったりします。「学習困難」の原因かもしれない感覚過敏・感覚鈍麻とは、どんなこと?発達障害がある人には、感覚過敏や感覚鈍麻がみられることがあり、これらが原因で学習障害が起こることもあります。私たちは、いわゆる五感、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚によって情報を得ています。学習するときは、特に視覚や聴覚をフル稼働しますが、こうした感覚の働きが過敏すぎたり、あるいは極端に鈍かったりすると、学習に集中できなくなると考えられています。今やるべきことには関係のない、聞かなくてもいい音が気になったり、見なくてもいいものが目に入ったり、匂いや肌に触れるものが気になって集中できない、という経験は、ある程度誰にでもあるものです。感覚が敏感な人の場合には、多くの人は気にならないような、音や光、掲示物などの刺激を感じると、学習に集中しづらくなります。逆に、身体の感覚が鈍麻ゆえに刺激を好み、落ち着きがなく見える場合もあります。学校の授業を集中して受けられず、学習でつまずいているのは、感覚過敏・感覚鈍麻による「学習困難」が原因かもしれません。感覚過敏のある子どもが、学習時に困っているポイントはどこにある?感覚過敏がある子どもの学習の悩み、解決策にはどんなことがあるでしょうか。ここからは感覚のタイプ別にみてみましょう。目の感覚、視覚が過敏な場合は光を過度にまぶしく感じることがあります。ノートがまぶしい一般的にノートの紙は白。ノートが照明の光を反射して、まぶしくて板書ができないといったことが起こります。また、タブレットを学習に活用している場合、明るさの調節をしないと、画面がまぶしすぎることがあります。>解決策ノートの紙にほんのりと色がついているものを選ぶだけでもまぶしさは軽減します。色つきのクリアファイルや下敷きを重ねることで見やすくなることもあります(※)。また、机の配置が照明の真下にならないようにしましょう。タブレットの画面照度を子どもが見やすく感じる明るさに調整したり、機種によっては色つきの画面に設定できることもありますので、こうした機能を活用することもおすすめです。(※)子どもによって見やすい色合いや彩度は異なります窓際の席や照明の当たる席で光がまぶしい窓が近い日当たりのいい席は、光がまぶしくて黒板や先生の姿だけでなく、光を反射する教科書が見づらくなります。また、照明の種類や光が当たる角度によっては、同じような状況になります。また、本を読んでいる最中に文字が追えなくなる、ズレたりにじんだりして見える、文字がチカチカと光るように見える、文字が流れてしまうなど、光の感受性が高いために起こる視知覚の困難がある場合、一見、ディスレクシア(読み書き障害)と症状が似ているように見えますが、異なるメカニズムで起きる可能性が指摘されています。>解決策窓辺を避けた席や、照明の真下を避けるなどの机配置をしてあげましょう。もし、あまりにもまぶしい場合には、色つきメガネやサングラスの使用を検討してください。また、カラーレンズやフィルムを通してみることで、目に入る光の量を調節することができ、文字が見やすくなる場合もあります。蛍光灯の光のチラつきが気になる蛍光灯は、実は常に光っているわけではなく、通常は人の目で感知できない速さの周期で点滅を繰り返して光っています。蛍光管が古くなると、この速度が落ちてくるためにチカチカ光って見えるようになりますが、視覚過敏がある場合には新品の蛍光灯の光でもチカチカしているのを感じてしまうことがあります。>解決策家庭ではできるだけ蛍光灯をやめて、白熱電球に替えたり、蛍光灯カバーをつけたりといった対応が効果的です。視覚的情報が多すぎる目に入ってくるものが気になりやすい場合、黒板のまわりなどに掲示物がたくさん並んでいると、肝心の授業の内容に集中できなくなります。また、ADHDがある場合も、不注意の特性から揺れるカーテンや校庭の様子など、注意が逸れやすいことが理由で集中できないこともあります。単に集中できないだけでなく、情報過多になって気持ち悪くなるなど体調に影響してしまうケースもあります。>解決策黒板の周りに授業と関係のない掲示物がたくさんある状態は、学習困難がなくても気が散る原因となるので、片づけたり視界に入らない後ろの方に置くようにしたりしましょう。家庭では、学習するときには関係ないものはできるだけ片づけるのもよいでしょう。使わないものには布をかけて隠しておいたり、パーテーションを利用したりするのも有効です。聴覚が過敏だと、意識しなくても小さな音まで聞こえやすかったり、特定の音に対するつらさが強まったりすることがあります。また、必要な情報だけ音を拾って感知するという情報の選択ができず、たくさんの音が同時に耳に入ってきて、肝心な情報がかき消されてしまう場合もあります。教室の中がうるさい聴覚過敏の場合、たとえば先生が話していることに集中したくても、そこに誰かの話し声、衣擦れの音、窓の外の音や空調の音などが重なり合って、どの音に集中したらいいのかが分からなくなってしまいます。また、椅子と床がこすれる音や、特定のお友達の話し声など、苦手な音がつらく、疲れやすくなることもあります。>解決策教室の雑音は多くの子どもにとって気が散る原因となります。椅子の脚にカバーをつける(使い古しの硬式テニスボールを切って脚にかぶせるなど)といった工夫をしましょう。また、イヤーマフや耳栓をうまく活用するのもよい方法です。大きな音が苦手急に大きく響きわたるような音、たとえば陸上競技のスタートのピストル空砲、避難訓練のサイレンなどが鳴ると、誰でもびっくりするものです。元々、その音自体や音量に対する苦手さがあり、それに加えて予告なく音が鳴るような状況だと、周囲の想像以上につらく感じている場合があります。その結果としてその音に対する過敏さが強まってしまい、そのあといつまでも気持ちの切り替えができなくなってしまう場合があります。>解決策学校でも家庭でも、予測できない音はしかたありませんが、大きな音が出る場合にはこれから何が起こるのかを説明しましょう。説明を受けてもやはりその音を聞くのがつらい、という場合には我慢をせずに、大きいサイレンの音が鳴る避難訓練の時間だけ休む、運動会のピストルを旗に変えてもらうなどの配慮をしてもらうことを検討しましょう。また、イヤーマフや耳栓をうまく活用することもつらさの軽減に有効です。たくさんの音が全て聞こえてしまって疲れる自分が必要な情報に集中してほかの音を小さくするような脳の機能がうまく働かないと、教室のさまざまな音を聞き取ってしまいます。そんな状況でも特定の音声、授業中なら先生の声だけになんとか集中して聞こうとすることで、疲れてしまう場合があります。また、聞き取ることに努力が必要な子どもの場合、疲れてぼんやりしてしまうことで、集中していないという誤解を受けることがあります。>解決策生活音などの騒々しさが原因の場合は、ノイズキャンセリングイヤホン/ヘッドホンが有効です。耳栓、イヤーマフなども一定の効果があります。音に対する直接的なアプローチだけではなく、帰りのホームルームで明日の持ち物を口頭だけではなく黒板にも書いてもらうなど、聞きとりにくさを前提とした視覚的なサポートを受けられると困りごとが減るでしょう。どんな場所にも、その空間での活動によって生まれるにおいが壁や床、カーテンや家具類にしみ込んでいるため、独特のにおいがあるものです。その中には心地よいにおいもあれば、いやなにおいもあります。特に、学校の教室はさまざまな活動をする場なので、多様なにおいがあります。チョーク、古い本、床のワックス、給食、栽培・飼育しているもの、そしてたくさんの子どもたちのにおい。こうしたにおいがまざって「学校のにおい」を作っているわけですが、その複雑なにおいに対して敏感で、不安定になる子どももいます。また、授業ではありませんが、特定の味やにおいに対して過敏さがあり、給食がつらくて食べられないというケースもあります。食物アレルギーだけでなく、においや食感、温度、見た目などさまざまな感覚に対する過敏さによっても、食べられないものが多くなります。完食しないとペナルティが課せられるような場合は、給食がストレスとなって体調を崩すことも起こります。>解決策マスクをすることでも、ある程度においを隠すことができます。給食は無理をせず、食べられるだけでよいというルールにできるように相談してみましょう。食器やカトラリーの感触が苦手という場合もあるかもしれません。いずれにしても、無理をさせずに本人がどうしたいのか要望を聞いてあげるようにしてください。嗅覚過敏については、学校以外の場所であれば、ガムを噛むことなども有効です。衣類など肌に触れるものに敏感な子どもが苦手な触感のものに触れずに授業に参加できなかったり、肌に触れている服の着心地などが気になって授業に集中ができなくなる場合などがあります。のりや粘土、手の汚れることが苦手理科の実験や図工の授業など、手が汚れる体験授業はたくさんあります。触覚が過敏な場合は粘土やノリなどのベタベタしたものが手に触れることがいやで、授業にうまく参加できなかったり、がまんしようとすると先生の話が耳に入らなくなったりします。>解決策苦手なものを無理やり触らせようとせず、触る場合には、少しずつ試してみましょう。それでも触れない場合にはゴム手袋の使用など、道具を使うことで授業に参加できるように相談してみてください。服のタグや着心地が気になる着ている衣類の肌への刺激が気になることがあります。タグや縫い目、あるいは靴に入った細かい砂などが気になると、学習に集中できなくなります。>解決策服を選ぶときに、材質、タグの位置、縫い目の具合など、本人と一緒によく確認して快適なものを選びましょう。タグが気になる場合には、根元からタグをしっかり切ると、気にならずに着られるようになることもあります。感覚鈍麻がある子どもの学習の悩み感覚が過敏なこととは反対に、感覚が鈍すぎる鈍麻している場合もあります。たとえば、暑い日なのに厚手のジャケットをそのまま着てしまう、熱いものに触れているのに気づかないでやけどするといったことがあります。感覚を求めて体を動かしてしまう感覚を求める傾向が強いために、授業中に体を揺らしたり動かしたり、じっとしていられない、離席が多いなど、集中して学習に取り組めない状態となることがあります。>解決策例えば、噛めるもの・握れるものといった道具を使ったり、人工芝のついた足置きを使ったり、椅子をバランスボールにしたり、といった感覚を取り込める環境を作ることが解決策となります。それでも難しい場合は、席を教室の後ろのほうにして、動くことを許容する環境を作ってあげても良いでしょう。机や棚によく身体をぶつける自分の体の大きさや、感覚を捉えにくいために、歩いているときに机や棚などに体をぶつけやすい場合があります。>解決策体のイメージがうまく捉えられない場合、たとえば狭い隙間やトンネルをくぐるような、体の大きさを意識できるような遊びにチャレンジすることで、発達を促すことができます。暑いか寒いかの判断が難しかったり、痛みに対して感覚が鈍かったりする暑いのに長袖で熱中症、寒いのに半そでで体調不良を起こしてしまう場合があります。また、発熱しているのに元気に走り回ったり、怪我をしているのに平気な様子が見られることなどがあります。>解決策 「熱いから素手で持たないでね」「寒いから上着を着てね」など、言葉や態度で感覚のフィードバックをしましょう。特に危ないものに対しては視覚的に危険だと示す対応をすることで危険を防ぐことができます(「さわらない」の看板の掲示など)。文字や絵をうまく書けない鉛筆から指先に伝わってくる感覚をうまく処理できないなどが原因で、文字や絵などがうまく書けないことがあります。>解決策文字を書くときに、鉛筆が紙に触れている感覚が分かりやすくなるように表面がザラザラした下敷きや紙やすりなどを紙の下に敷くという方法があります。音に対する反応性が低い人からの声かけに気づきにくい子どももいます。聞き取ることがむずかしいために、忘れ物が多くなったり、お友達の声かけに気づかずに、トラブルになったりするケースがあります。>解決策たとえば、肩を叩く、目の前に立って目を合わせるなど、注意を向けてから話しかけることで改善することがあります。また、口頭だけではなく、紙に書くなど視覚情報も合わせて伝えるとより伝わりやすいです。まとめ子どもが学習に集中できないとき、表面的には分かりにくい原因があるのかもしれません。それが感覚に関連する場合、原因が分かれば対処できることがたくさんあります。子どもの様子を観察したり、原因がどこにあるのかを一緒に考えたりするところから始めてみてください。子どもが「何が苦手なのか」「どんなときにつらいのか、楽しいのか」などを知ることで、学習に取り組みやすくなる解決策が見つかるかもしれません。状況によっては家庭内での対応だけではなく、学校に合理的配慮を申し出ることもひとつの選択肢です。適切な情報を伝えることは子ども自身の助けになるだけでなく、学校側が子どもを理解する手立てとなります。まずは担任の先生と相談することから始めてみましょう。
2022年07月20日元気いっぱい、幼くてママ大好きな小学生だった小学生のころは幼く、可愛かった息子。家でも学童でも工作やブロック遊びをしたり、友達と走り回って遊んだり、楽しそうに過ごしていました。そんな息子でしたが、小学4年のころから塾に通うようになり、中学受験をして、中堅の私立中学に進学しました。小学校は小規模校で1クラスしかなく、6年間持ち上がり、クラスメートとも阿吽の呼吸で、思いを伝えなくてもみんな分かってくれる、平和な6年間を過ごしました。ところが、私立中学に入ると、急に同級生が200人近くになり、クラスメートのキャラもよく分からない、友達との距離感のとり方も分からないまま、「悪いことするのも度胸試し」的なところもあったのでしょうか。ある日学校から呼び出しが…!?ある日突然、学校から呼び出しがありました。何事かと思ったら…息子がクラスメートと一緒に、学校のカフェテリアの食券を偽造をしたとのこと。もちろん学校は停学処分に。息子の通っていた学校では、停学を何度か繰り返したら退学になってしまいます。あんなに頑張って勉強して合格した学校なのに、目先の数百円のために退学になるかもしれないことをするなんて…とショックでした。面談に伺うと、担任、学年主任、副校長などの面々がずらり…。息子は、先生方に、社会で同じことをしたら刑事罰を受けるのだと諭されました。Upload By ユーザー体験談突然の停学。母は孤独を抱えて停学は1週間以上、停学期間中はもちろん保護者の見守りが必要でした。停学の間は、夕方、学校からの確認電話に保護者が出て、その日書いた反省文のレポートをファックスで送らなくてはいけません。フルタイムで仕事をしているわが家。1週間も連続して職場を休めず、祖父母にも日中来てもらい、夕方の学校からの電話タイムには間に合うよう早退する日々。入学したばかりで、学校にはママ友もほとんどおらず、ほかにも停学になった生徒はいるのか、停学になったときはどんな風にほかの親御さんは対応しているのかもよく分からないままの、孤独な日々でした。Upload By ユーザー体験談息子のWISCの結果で特性に気づきそのことをきっかけに、精神科にも相談に行きました。息子は検査(WISC)も受け、偏りが大きいことも分かりました。処理速度やワーキングメモリなどはものすごく高かったのですが、少し先の見通しを持つ力がそれにくらべると低いのだといわれました。そのスコアの差は50近くもあり、アンバランスさを指摘されたのです。息子は、「食券偽造する」⇒「ただで食べられる」⇒「得だ」という風に考えがちで「食券偽造する」⇒「ただで食べられる」⇒しかし、規則違反の行為のために「停学、退学になるかもしれない」⇒「数百円の得しても停学になるならやらないほうがいい」とまでは思い至らなかったのではないかというのです。反抗期の息子…家庭教師は辞めていき…反抗期にも突入し、学校の成績は右肩下がりで、その後も学校に呼び出されることも複数回。息子に対し、どう接したらいいのか悩みが深かった時期でした。中学受験で無理させすぎてしまったのかも、とも考えました。いっそ、退学し、転校したほうがいいのか?と思ったほどです。学業で悩んでつけた家庭教師も、あまりにやる気がなく授業態度が悪い息子に愛想をつかし、「息子さんに教えたくない」と複数人が辞めていきました。Upload By ユーザー体験談中学2年になるときに、思い切って学校のPTA活動に参加することにしました。委員会活動で学校に毎月行くようになり、ママ友もできました。学校の様子もよく分かるようになり、子どものことを相談できる仲間もでき、先生方とも話しができる機会が増え、少しずつ肩ひじ張らずに過ごせるようになって心も軽くなっていき、「口うるさくいっても、関係が悪くなるだけ」「どうしてもダメなことは、きちんと伝えよう」と思えるようになりました。結局、息子が落ち着いていったのは、高校生になってからです。それまでは、テスト前になっても置き勉している教科書を学校から持ち帰らないので、教科書や学校で使う問題集はもう1セット購入し、自宅にも置いていたのですが「お金がもったいないからもう買わないでいい」と言われたのです。そして、テスト前には教科書をきちんと持ち帰ってくるようになりました。読めないほど汚い字で書いていたノート(汚すぎて読めないのでテスト勉強にも使えない)も、下手なりに読める字に変化していきました。特に高校3年生になってからの頑張りはすさまじく、自立して勉強に取り組むようになり、成績も急上昇し、学校の先生方に驚かれるほど。中学3年の頃からみてもらっていた家庭教師の先生にも「別人のよう」としみじみと言われました。息子は、精神的な成長が奥手だったのかな?と今なら思えます。おそらく、高校2年生くらいで、一般的な中学3年生くらいの精神年齢だったのかなぁ…と。現在大学生になった息子を見て現在大学生になった息子は、ときどき偉そうな物言いをすることもありますが「いつまで中2病やってるの。そういうの、カッコわるくない?」と軽くいなすと、それもそうだな、と思うようで、最近は大人同士の会話もできるようになってきました。車の免許も取ったので、助手席にのって練習に付き合うこともあります。息子の運転でドライブしていると、なんだか頼もしくて、つい数年前に悩んでいたことが嘘みたいに成長したなぁ、としみじみしてしまいます。Upload By ユーザー体験談エピソード参考/あっきーイラスト/keiko(監修:三木先生より)発達の偏りが大きい子は、見通しや精神面の成長が遅いことが往々にしてあります。そのため、年齢相応をイメージしているとギョッとするような不適切な行動を取ることがあります。周りの大人たちの温かい見守りのおかげでゆっくりと成長ができたようで良かったですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年07月20日私立中高一貫校って、実際どんなところなの?こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回のコラムは、これから中学受験を考えている親子さんの、「私立中高一貫校って、実際どんなところなの?」という疑問を少しでも解消できるよう、うちの子たち(長男・次男)が通う私立中高一貫校を例に、お伝えしたいと思います。昨今の少子化や新型コロナウイルスの影響下にも関わらず、中学受験者の増加傾向は続いているとのこと。これは、コロナ対応でのオンライン授業などで、公立校と私立校の差が浮き彫りになった影響もあるようで、それまで中学受験を考えてこなかったご家庭も、私立進学を検討するケースが増えたから…でもあるようです。ただし、志望校の説明会などで6年間の教育カリキュラムや設備はある程度「外側から」確認することはできるのですが、「入学後の学校生活が、実際どうなのか」は、入学してみないと分からないことも多いように思います。志望校選びの際、公立小学校の環境があまり合わなかったうちの子たちの場合は、受験校の知名度や、難易度・偏差値よりも、「入ってから」の学校生活が、その子に合っているか、過剰な負担がかからないか、6年間のびのび過ごせるか、などをイメージできる情報のほうが必要でした。そこで、当時の私たちがとても知りたかった、私立中高一貫校の一日の流れや、先生方の印象や授業内容、注意点、6年間の一貫教育…などの実際を、現在うちの子たちが通う、自由な校風のある中高一貫校(以下、A中学※)を例に、可能な範囲で「内側から」ルポしたいと思います。とはいえ、私立中高一貫校は学校自体が個性的で、それぞれ独自の教育方針に基づいて運営されているため、各校によって大きく事情が異なることも多いです。うちの子たちが通う学校が「一般的」なのかは分かりませんが、あくまで一例として、イメージのご参考になれば幸いです。※A中学は発達障害・不登校傾向のある子のいわゆる「積極受け入れ校」等ではありません。では、うちの子たちが通う、A中学の一日の流れを紹介します。まずは朝の風景から。私立中学の場合、通学範囲が多岐に渡るため、徒歩通学、自転車通学、電車通学など通学手段もさまざまで、県外から通う生徒さんも。うちの子たちは約1時間弱の電車通学で、以前はラッシュ時を避けて早めに登校していましたが、今は満員電車にも慣れたようです。登校後は各教室のHR(ホームルーム)の時間に出欠確認があります(欠席の場合は保護者からネット連絡)。各自の体調の確認は体温記録アプリの入力でスグに終わります。中学からは教科担任制なので、担任の先生と顔を合わせるのはHRの時間だけ、という日も。授業時間は中学1年生から毎日7時限目まであります。ですが、帰りのHRが終わる時刻は、公立小の6時限授業後の帰りの会終了時刻とほぼ同じ。その理由は、始業前の朝学、給食の配膳、全員での掃除の時間などがなく、とても効率化されているから。ちなみに授業の合間の休み時間は、しっかり10分あります。ランチタイムは弁当持参のほか、業者による弁当販売の利用や、登校時にコンビニなどで購入するのもOK。コロナ前は購買でポテト争奪戦が展開されていたようですが、現在の弁当販売は専用アプリでの事前予約と電子マネー決済で、生徒は当日受け取るだけになりました。帰りのHRのあとの掃除は、共用部分は清掃員の方がピカピカにしてくれるので、自分たちの教室のみ、4-5人の当番制で5分程度の簡易清掃。放課後には部活動のほか、補習授業なども行われています。補習授業は任意参加がほとんどで、検定試験の対策講座や、特進コース進学希望者のための準備講座など。部活は、運動部・文化部共に、ハード系からレクリエーション系、ユニーク活動系までさまざまで、部活自体に入る・入らないも含めて選べ、途中での入退部や複数の部のかけもちもOKなので、大学のサークル活動のような印象です。一部の運動部は外部委託のコーチがいます。また、先輩・後輩の上下関係がゆるやかで、下級生が部長・副部長に抜擢されることもあるのだとか。長男・次男の帰宅時間は、部活などがなければ17時前なので、中高生にしてはかなり早いほうだと思います(部活の日も18時には帰宅)。ただし、高校生になると学校のあと、大学受験塾に行く生徒さんも多いのだそうです。公立校と同様、中学からは教科担任制になります。A中学は「フレンドリーで個性的な先生が多い」とのこと。長男は特に先生の影響を受けやすいため、教科担任の先生次第で成績も大きく左右されます。生徒の興味を引き出すことが上手い先生もいれば、例え話がマニアック過ぎて先生の話に誰もついていけない…なんてことも。私立校は学校といえど民間企業なので、公立校と違って自治体単位の人事異動がなく、正規雇用で長く勤める先生が多いようですが、自己都合による退職・休職などで入れ替わりも時々あります(たまに、夢を追いかけて旅立ってしまう先生も…)。全体的には比較的若い先生が多いため、親しみやすくて柔軟な印象を受けますが、高校課程になると専門性の高い選択科目が増え、元大学教員などの非常勤講師のご高齢の先生なども多くなります。私が特に気になっていた先生の質ですが、長男曰く「スグに怒鳴ったり、高圧的な態度の恐い先生は、ほぼいない」とのこと。これには理由があって、A中学では「生徒側が先生を評価する」仕組みがあるため、生徒に極端に不評な先生は、大抵翌年度にはいなくなっているからです。ただし、部活動等で実績がある先生や、ICT化に詳しい先生などが、突然他校に引き抜かれてしまうことも。優秀な人材の確保には一般企業と同じく経営努力が必要で、学校側もかなり苦労されているようです。授業内容は、A中学の場合はいわゆる「超進学校」ではないので、公立校と大きく異なるわけではありません。同じ教科書を使って、同じような授業内容で進んでいると思います。ただし、主要教科では習熟度別のクラス編成があって、上位クラスでは副教材を使ってガンガン先に進んだり、少し難しい発展的な内容にも取り組んでいるようです。また、よく言われるように、中高一貫校は中3で高校受験勉強をせずに済み、その分高校課程の内容に早く入るため、高3時点で余裕を持って大学受験勉強に臨むことができる…ハズです(生徒次第かもしれません)。授業のICT化はかなり進んでいると思います。A中学では、コロナ以前から全校生徒が1人1台タブレットを所有し、先生方も含め、あらゆる場面で使いこなしていたので、緊急事態宣言時の休校措置や、校内で陽性者が出たときのオンライン授業への切り替えも迅速でした。日頃から授業中に、調べ学習やプレゼンテーション、動画や写真の記録と共有、レポート作成など、タブレットは何かとよく使っています。また、宿題でも、ネット上のグループウェア経由で、教科担任からの課題が指示されネットで提出したり、回答フォームから小テストを送信したり、宿題を提出し終わると丸つけ用の解答がPDFでダウンロード配布されたりも。生徒からの質問をメールで受けつけている先生もいます。宿題はプリントやワークなども出ますが、プレゼンテーション用の動画やスライドを作成する課題などもあって、字を書くのが少々苦手な長男も熱心に取り組んでいます。また、英検などの検定試験の勉強は、個別最適化できる学習アプリを活用しています。このように、うちの子たちが通うA中学は合理的で「自由な校風」が魅力ですが、反面、生徒自身の意思や意欲次第の「自己責任」となる部分も多いです。こういった校風の学校は、特に丁寧なケアやサポートを希望する場合、志望校選びの際は注意したほうがいいでしょう。例えば、不登校傾向でしばらく学校に登校しない子がいても、学校側から、いわゆる「登校刺激」などの働きかけはないため、先生から頻繁に電話がかかってきたり、自宅訪問されることはありません(クラスメイトとはオンラインゲームなどで自発的な交流が続くことも)。勉強についていけなくなっても、自分から職員室に質問に行かない限りは、学校側が勝手にフォローしてはくれません。勉強に限らず、やる気や積極性のある子には丁寧に面倒を見てくれますが、そうでない子は放任されます(「それが気楽」という子もいるでしょう)。そのため、校風が合わなかったり、勉強についていけなかったり、対人関係のトラブルなどが解決しなかったりで、他校に転校していく子も毎年学年に数人程度いて、同様に他校からの転入生も同程度いますが、「来る者拒まず、去る者追わず」という少々ドライな印象です。また、高校課程へ内部進学せずに、中3で他校の外部受験を希望する生徒は、学校側の受験指導やサポートは期待できませんし(留学以外)、それまで内申点を意識してこなかったり、公立校との学習進度のギャップがあったり…などの面でハードルが高くなるでしょう(万が一、外部受験して不合格だった場合、元の中高一貫課程に戻ることはできないそうです)。こういった点も事前に十分理解・納得した上で、中学受験を検討したり、志望校選びができるといいと思います。その学校の「実際」を知るには、在校生や卒業生、保護者などの声を直接聞いたり、特に配慮を要するお子さんの場合は、事前面談をお願いしたり、個別相談会などで気になる点を確認してみるといいでしょう。また、その学校に直接の知り合いがいない場合は、ネットの評価や口コミ情報なども気になると思います。ただし、うちの経験上、ネットの口コミは「現在の状況と全然違った」「一部の極端な意見だった」とあとから分かることも多かったので、参考程度に留めておくのがいいように思います。うちの子達にとって、最も「この学校を選んでよかった」と私が思うのは、ユニークな長男にも、繊細な次男にも、友達や仲間ができたことです。合理的で効率化され、のびのびとした雰囲気のA中学では、入学当初はおとなしそうな子が多いように見えた生徒さん達も、過剰な負担やプレッシャーの少ない環境で過ごすうちに、じょじょに「本領発揮」していくようです。長男曰く「最初から個性的な子が多いんじゃなくて、元からその子にある個性を出しやすいんだと思う」とのこと。そのため、思春期真っ只中の中1・中2くらいの間は、特に男子生徒同士のケンカや口論、挑発行為なども多く、心配していた時期もありましたが、先生方は「自己主張してぶつかり合うことも、成長の過程」「ケンカしないより、仲直りできるほうが大事」と、おおらかに見守っていました。すると、同じメンバーで長く一緒に過ごすうちに、どの子も心身共に成長し落ち着いていくので、中3〜高校生になるころには、次第にトラブルも減っていきました。以前は長男と反りが合わなかった子も、今では仲間として気遣ったり、協力し合ったりができるようになったそうで、わが子に限らず、子どもたちの成長をとても嬉しく感じました。A中学に限らず、子どもが「自分」や「個性」について悩みながらも著しく成長する、発達の上でも大切な思春期から青年期への6年間を、安定した環境の中で過ごし、じっくり時間をかけて人間関係を築けることは、中高一貫教育の大きな魅力だと私は思います。本当にその子に合う学びの場に出会えるように…以上、うちの子たちが通うA中学を例に、私立中高一貫校の「実際のところ」をお伝えしました。繰り返しますが、これはあくまで一例であり、学校の校風や教育方針によるところも大きいので、中学受験を検討されているご家庭は、「その学校は実際どうなのか」自分の目で見て、聞いて、肌で感じて、メリット・デメリットを十分比較した上で、志望校選びをするといいでしょう。長男の話では「確かに入学前には分からないことも多いけど、文化祭とか体験授業とかに行ってみれば、必ずその学校の雰囲気っていうのが現れる。これはもう、”雰囲気”としか表現できないけど、感じ取ることはできるから」…とのこと。中学受験に限らず、お子さんが本当に自分に合う学びの場に出会えるよう、祈っています。文:大場美鈴(楽々かあさん)記事協力:長男・〇太郎(監修:井上先生より)受験というハードルがありますが、私立の中高一貫という選択肢は高校まで一定の教育環境の中で過ごせるというメリットがあると思います。DX化が進んでいる学校だと連絡帳や必要な提出物などのチェックが楽ですよね。楽々かあさんの書いておられるように、各学校によって方針や仕組みが違うので、情報収集はそこに通っている保護者の方から直接話を聞けるのが理想だと思います。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2022年07月19日2歳半ごろから、作業療法と言語療法の訓練を始めた息子Pが訓練を始めたころは、先生の指示に従うことは勿論、座ることすら難しかったです。最初は小さな個室で訓練を行っていたのですが、閉鎖的な空間なので外へ出て遊びたい!とドアの前で泣きわめくようになってしまい、この部屋で長時間の訓練をすることはまだ難しいと先生に判断されました。でも逆に広いホールで訓練をしてみると、ホールはP以外の子どもたちも訓練をしている共有の場所なので、ほかの子どもが訓練で使っている道具やおもちゃの方が気になってしまい、自分の訓練の課題には全く集中できず、ほかの子どもたちの訓練の邪魔をしてしまうので困っていました。Upload By みん集中して療育を受けるために先生が行ってくれた環境整備そんなPに訓練を受けさせるためには、まずは部屋の環境を整える必要がありました。先生はPの作業療法のときに、個室ではあるけど2部屋分くらいの広さがあって十分走り回れるようなスペースを毎回用意してくれました。そして余計な刺激を与えず自分の課題だけに集中させるために、Pが訓練で使う道具以外の物には目が届かないように、全て部屋から出している状態にしてくれていました。Upload By みんPに必要な環境を整えた部屋で、まず最初に先生側が出す課題をし、それが終わったら次は自分の好きな課題を選んで遊ぶ、と言う順番や見通しを立てた上で訓練を行いました。先生は1番の数字が書かれたマークの横に、Pに行ってほしい課題を出します。それは主にスプーン、クレヨン、ハサミなど道具を使う課題や、紐通し、ボタン、洗濯バサミ、パズルなど手先を使って座って行うような課題でした。そして次に2番のマークをPに見せて、Pが好きそうな、トランポリン、ハンモック、バランスボールなど全身を使った遊びの道具の写真を何枚か見せ、P自身に選ばせます。1番の課題が終わったら2番目は自分が選んだ物で遊ばせてもらえるという流れでした。Upload By みん自分で課題を選択し、見通しを立てることで落ち着いて訓練ができるようになる1番目は座って集中しながら指先をたくさん使う課題、2番目はご褒美として思いっきり身体を動かし発散にも繋がるような課題。この流れが理解できるようになったPは、少しずつ見通しを立てられるようになり、先生の指示も通りやすくなって、自分から椅子に座ったり写真や絵カードを選んだりできるようになりました。「これをすればこれができる」などの順番やルールを理解しながら行う訓練は、本人が学習に向かう姿勢を作って行く土台に繋がるものでした。視覚支援、ルールの明確化、自己設定など、自閉スペクトラム症の特性にあわせた流れを組み込んだこれらの積み重ねのおかげで徐々にPは集中力や落ち着きを得て、できることも増えてきました。その土台がしっかりしてくると、やっと次のステップの訓練へ進むことができ、一つひとつが発達の成長へとつながることを母子ともに教えてもらえました。Upload By みん執筆/みん(監修:井上先生より)療育を始める際に、子どもに合わせた環境づくりをすることは最も大事なことです。お子さんとって、余計な刺激がなく、何をすれば良いかが明確で、それが目で見て分かるようにカードや具体物で提示され、困難な場合にはタイミングよく援助がなされ、達成すると褒められたり好きな遊びができたりといった自閉スペクトラム症の特性に合わせた工夫がとても有効だったのでしょうね。自分で課題や遊びを選べるといった自己決定の要素が入っているのも素晴らしいと思いました。これらをうまく整えていくことで療育が遊びより好きになるお子さんもおられます。Pさんもそうだったのかな?
2022年07月19日自分との対話、ダイバーシティを深める体験ダイアローグ・ジャパン・ソサエティは、この夏2つの場所で、3つのプログラムを開催します。大人向けのプログラムであるダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」、小学生から大人まで体験できるリアル対話ゲーム「地図を持たないワタシ」、ダイアログ・イン・ザ・ダークの2022 夏バージョン、それぞれの魅力をお伝えします。ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」Upload By 発達ナビニュースダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」が2022年7月9日(土)から東京・新宿の三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア2階で開催されています。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」について、みなさんは聞いたことがありますか? 体験したという方はいらっしゃるでしょうか。これは、純度 100%の真っ暗闇の中で見ること以外の感覚を使って、一緒に参加する仲間たちと共に、さまざまなシーンを体験するエンターテイメントです。体験を案内するのは、普段から目をつかわないで生活をしている、視覚障害があるアテンド。1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで世界で900万人以上が体験しています。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の「暗闇」はいつも同じではありません。季節など、さまざまなテーマに合わせて、さまざまな体験を暗闇の中ですることができます。三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア「内なる美、ととのう暗闇。」では、漆黒の暗闇の中で、躙り口(にじりぐち)のような小さな戸口から新しい世界へ入っていきます。参加者は裸足になり、周りの音、声、手や足など身体の感覚、そして白杖をたよりに一歩一歩進みます。清らかな水のせせらぎ、やわらかい風が吹くのを感じます。そして参加者は、真っ暗闇の中で自分でも驚くほど”視覚以外の感覚”が研ぎ澄まされていくことを体感できます。今シーズンの「内なる美、ととのう暗闇。」では、「涼やかなくらやみ 冷たいビール冷えています」と題して、暗闇の中、冷たい飲み物を飲む体験も。コロナ禍、頑張ってきた自分を、そして隣の人も一緒に、ねぎらいあって乾杯します。自分とゆっくり対話する贅沢な大人の夏休みをぜひ体験してください。※クリックすると発達ナビのサイトからダイアログ・イン・ザ・ダークのホームページに遷移します〈詳細〉「内なる美、ととのう暗闇」開催スケジュール:2022年7月9日(土)~各回約90分※日程によって開催時間/回数が異なります。詳細は予約ページにてご確認ください。※月曜休館場所:三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア2階(東京都新宿区霞ヶ丘町11番3号)体験費:大人5,500円(税込)※18歳未満はご体験いただけません。プログラム内のビールのご提供は20歳以上の方のみ。ほかにソフトドリンクもあります。※障害者割引はありません。チケット:各回定員8名の事前予約制となります。ダイアログ・イン・ザ・ダーク公式ページよりご予約ください。ダイアログ・イン・ザ・ダーク「内なる美、ととのう暗闇。」※クリックすると発達ナビのサイトからダイアログ・イン・ザ・ダークのホームページに遷移します注意事項:・受付にて年齢確認があるため、身分証明書をお持ちください。・裸足でのご体験となります。スカートや裾のつぼまったズボン、光る可能性のあるお洋服はご遠慮ください。お問い合わせ事務局:03-6812-9349(11時~18時)※月曜休館ダイアログ・イン・ザ・ダーク 2022 夏バージョンUpload By 発達ナビニュース東京・竹芝のダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」のダイアログ・イン・ザ・ダークは、2022年7月23日(土)より2022 夏バージョンを展開します。こちらは小学1年生から体験できるので、親子で夏の楽しさを味わい尽くせます。暗闇の中では、大人は子ども時代に感覚が戻ってしまうかもしれません。子どもと同じ気持ちになって過ごす夏休みを体験してみてください。ダイアログ・イン・ザ・ダーク 夏バージョン (ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」)開催スケジュール:2022年7月23日(土)~各回約90分※日程によって開催時間/回数が異なります。詳細は予約ページにてご確認ください。※月曜休館場所:ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」(東京都港区海岸一丁目10番45号アトレ竹芝シアター棟 1F)体験費:大人:3,850円、中高生・大学・専門学生・大学院生:2,750円、小学生:1,650円(いずれも税込)※小学生は保護者の同伴が必要です。チケット:各回定員8名の事前予約制となります。ダイアログ・イン・ザ・ダーク公式ページよりご予約ください。ダイアログ・イン・ザ・ダーク 夏バージョンのチケット予約はこちらから※クリックすると発達ナビのサイトからダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」のホームページに遷移します注意事項:・小学生未満のご体験はできません。・ご体験前に飲酒をなさった方はご体験できません。・ご来場時にはご参加者全員、お名前が確認できるもの(免許証・保険証・学生証など)をご提示ください。お問い合わせ事務局:03-6231-1634(11時~18時)※月曜休館リアル対話ゲーム「地図を持たないワタシ」Upload By 発達ナビニュース東京・竹芝にあるダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」では、世界で初公開のリアル対話ゲーム「地図を持たないワタシ」を2022年7月20日(水)〜8月10日(水)の期間、開催します。「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にするようになりました。でも「ダイバーシティ」を体験したことはあるでしょうか?聞こえない人、見えない人、LGBTQ、車いすの人、低身長の人、義手の人…「ダイバーシティ」とは、多様性を意味します。集団において年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などさまざまな属性の人が集まった状態のこと。つまり、あなた自身も「ダイバーシティ」のなかに存在する、一人なのです。Upload By 発達ナビニュースこのプログラムでは、宇宙船スクランブル号に乗って地球にやってきた多様な個性をもつキャストと、地球人のトラベラー(ゲスト)が対話しながら8つの部屋に用意されたミッションをクリアしていきます。ルールはただ一つ「誰ひとり取り残さないこと」。どんな個性をもつキャストと一緒に体験することになるかは、各回のお楽しみです。Upload By 発達ナビニュースこのプログラムでの出会いによって、自分が当たり前だと思っていた「地図」が消えて、「新しい地図」を手に入れることができるでしょう。小学生から大人まで参加することができます。「リアル対話ゲーム」を通して改めてダイバーシティについて考えることで、これからどのように行動していくかについてのヒントを得られるかもしれません。※クリックすると発達ナビのサイトからダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」のホームページに遷移します〈詳細〉開催日時:2022年7月20日(水)~2022年8月10日(水)各日、11時30分~をスタートに、18時30分~までの8回開催。各回約90分。場所:ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」( 東京都港区海岸一丁目10番45号アトレ竹芝シアター棟 1F )体験費:大人:3,850円、中高生・大学・専門学生・大学院生:2,750円、小学生:1,650円(いずれも税込 )チケット:各回定員6~8名の事前予約制となります。※開催がない日程・お時間もございます。詳細は予約ページにてご確認ください。リアル対話ゲーム「地図を持たないワタシ」の予約はこちらから※クリックすると発達ナビのサイトからダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」のホームページに遷移します注意事項:・小学生未満のご体験はできません。・ご体験前に飲酒をなさった方はご体験できません。・ご来場時にはご参加者全員、お名前が確認できるもの(免許証・保険証・学生証など)をご提示ください。夏休み、新しい世界をのぞいてみませんか?世代、ハンディキャップ、文化、宗教、民族など…まだまだ世界を分断しているたくさんのものがあります。それぞれのプログラムでの出会いと対話は、新しい世界、新しい価値観にふれるきっかけになることでしょう。
2022年07月18日あのウチの息子が!?新生活で絶対崩れると思っていたのにUpload By ぼさ子自閉スペクトラム症と知的障害のある、わが家の息子ほぺろうは、今年の春から新一年生として特別支援学校に入学しました。もともと切り替えが苦手で、特に場所見知りが強いほぺろう。年少で保育園に入った当時は丸一年ほど毎日泣いているだけの状態で、保育園に慣れたかな?と思えるまでにずいぶん長い期間がかかりました。特別支援学校の入学式もそれはもう大泣き…。その様子を見ている限りでも、この先の新しい環境と生活を想像すると大荒れ必至だろうなと私は覚悟していました。学校ではもちろん自宅でも癇癪大爆発間違いナシだと思っていたし、「今年一年は とにかく環境に慣れる事だけを目標にしよう…」と多くを望みませんでした。ところが…GWも過ぎ、そろそろ本格的にイヤイヤが始まるだろう…そう身構えていたのですが、私の予想を覆すが如く、これまでのほぺろうとは一味違う!歯磨き・お着替えなど、今まで見たことがないくらい自主的にやる気満々で朝の様子が別人のよう。「早く学校に行くぞー!」と言わんばかりに私の方が急かされています。「え…ウソ…。あなた本当にあのほぺろうさん!?」と実の母親でさえも疑ってしまううれしい変化を見せてくれていますが、良いときは良いときなりの理由を探ってみたいと思いました。Upload By ぼさ子考察。入学後の変化全て私が働きかけたものではなく あくまで結果論ですが、何がほぺろうにとって良かったのか考察してみました。・早寝早起きになった…保育園でのお昼寝ルーティンがなくなり現在は20時半には電池切れ。遅くても朝5時半には飛び起きて自分でカーテンを開け、お日さまを浴びる。自律神経が整っているのかも?・特別支援学校は過ごしやすい…プロの先生たちによる手厚い支援。視覚支援も充実しているので、見通しが立てやすく不安なく過ごせているのかも?・無理のない短時間活動…まだ一年生なので下校時間が早く、現在放課後等デイサービスに通う日数も少なめなので、ほぺろうにとっては無理のない範囲なのかも?・好きな科目は給食…偏食なりに楽しみにしているらしい?Upload By ぼさ子上記の事項もリンクした上で、ほぺろうの様子を見ていると、学校を楽しんでいる根本のやる気の出どころがほかにもあるような気がしています。根本的なやる気。二つの自己肯定感担任の先生から普段の様子のお話を聞いて感じた私の憶測ですが、ほぺろうは今、自己肯定感が著しく上がっているのではないかと思いました。1.個人に合わせた課題で「できた!」が増えた就学前お世話になっていたのは、いわゆる普通の保育園。いわば定型発達の子どもたちがほとんどという環境で、ほぺろうは一見無関心に見えても「自分だけできない」と悔しく思う瞬間があったのかもしれません。特別支援学校での個人に合わせた課題は、ほぺろうの内面にとって大きな変化だったと思います。Upload By ぼさ子2.お友達との関わりの中で「頼られてる」という実感保育園では定型発達の子どもたちに囲まれて、ほぺろうは常にお世話される立場でした(先生達はほぺろうの身辺自立を促してくれましたが、どうしてもその年ごろの周りの子は誰かのお世話をしたいものなので…)。私から見たらお友達に構ってもらえるのはありがたいことだし、良い刺激になってると思っていたのですが、何なら年下の子からもお世話されていたほぺろうにとっては周りが良かれとやってくれたことでも、心の中では思うところがあったのかもしれません。でも今は、さまざまな特性のある子どもたちが集まる特別支援学校で、先生に頼られたりお友達を助けたりして(できているかは別ですが)、「自分だって役に立っている」という実感が育っているように見えるのです。Upload By ぼさ子自宅だけでは得られない、社会で自分の価値を見出すという経験を、小さなほぺろうは今ようやくしているのかもしれません。今だけかも知れない。でも今を楽しんでほしい今、特別支援学校でやる気を見せてくれているのも、成長段階がタイミング的にうまくリンクしただけかもしれません。それにこの先、精神が成長すればするほど新たに複雑な悩みや葛藤が生まれて登校を渋る日も来るでしょう。先のことを考えると課題は尽きませんが、これまでのことを思い返すと『やっと』楽しいと思える時間を過ごせるようになったほぺろう。今は自分のアイデンティティを育む経験を積み重ねてくれたらうれしいです。学校での生活を見習って、自宅でも「お願いします」「ありがとう」とほぺろうを頼る習慣が増えました。Upload By ぼさ子執筆/ぼさ子(監修:初川先生より)特別支援学校での新生活が始まったのですね。ぼさ子さんの予想に反して、学校に慣れ、楽しく通えているとのこと、何よりです。考察されている点について、私もそのようなことがあるのではないかと想像しました。誰でも新しい環境での生活は初めはストレスフルですが、特別支援学校ではおそらく、活動の見通しを伝え、環境的にも整理され分かりやすく、そして大人の目も行き届きやすいという学校生活が初めから展開されているのだろうとお察しします。異文化に入ったというよりも、過ごしやすいように工夫された環境に入ったという感じなのでしょう。先生方やクラスメートの子たちとの関係性もよさそうですね。課題の設定もちょうどよい(易しすぎず、難しすぎず、ちょっと頑張ったらできるような課題設定)のでしょう。自分の働きかけに対して認め・褒めてくれる環境があり、良き相互作用の生まれそうな仲間たちがいて、いわゆる自己肯定感や自己効力感が育まれている状態なのが今なのでしょう。そうした感覚を持てる中でこそ、ちょっと難しそうだけれどやってみようとチャレンジする気持ち、周りの子や先生を気遣い、優しく振舞う気持ちが芽生えます。これからの生活も楽しみですね。
2022年07月18日カラフルレンジャーなんて、所詮はフィクション?最終話を迎えたカラフルレンジャー。この物語を読む彼女にとってそれは…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子執筆後記チラシを配っていた女の子が、マジョリティ隊と同じ帽子だったことに気づいていただけましたでしょうか?発達障害児・者を取り巻く環境は日々進化しています(先人の努力に感謝!)。日々ままならないことやつらいこともあるかと思いますが、ときには息抜きをしつつ、情報アンテナを張って前へと進んでいきましょう!!あなたは決して一人ではありません。あきらめなければ素敵な出会いがきっとありますよ!執筆/荒木まち子
2022年07月17日言葉がとてもゆっくりな娘。3歳5ヶ月で療育へ娘は2歳3ヶ月ごろにようやく単語が出始め、2語文を話し始めたのは3歳2ヶ月。とは言っても2語文は稀にしか話さず言えない単語もまだたくさんありました。例えば飴は「め」、おせんべいは「ベー」など。この時期幼稚園のプレに通っていたのですが娘の様子を先生からはこう言われました。Upload By とまぱんそんな娘を連れて発達支援センターへ相談しに行ったのは2歳10ヶ月のとき。発達検査をした上、やっと3歳5ヶ月で療育に通うことができました。療育初日は突然知らないところに連れて行かれ娘がパニックを起こしたらどうしようと不安でしたが、すんなりと教室に入り無事に終わったようでした。スタッフに「男の子たちがとまちゃんを気にしてソワソワしてましたよ!とまちゃんアイドル的存在になりそうです」なんて言ってくれました。ちなみに通っていた療育は子どもよりも先生の数が多いところでした。大人が大好きな娘にとってはあまり抵抗がなかったのかもしれません。療育が始まって1ヶ月。娘の様子は?療育が始まってから1ヶ月後、言葉は何となく増えたように感じました。でも癇癪はまだまだ健在。近所のお友達と遊んでも終始癇癪で近所の子と遊ぶのを暫くやめていました。そんな現状だったので療育終わりにスタッフに伺ってみました。Upload By とまぱん癇癪がなかったのは意外でしたがお昼の件については、想像ができるーと思いました。家でも一口食べては出歩き、一口食べては出歩き....といった感じでした。4歳の今は座って食べれるようになったのですが、このときはどんなに言っても聞かなかったので注意することも諦めていました(外食のときは注意していましたが)。完璧な躾を目指していたら3日でダウンしそうなので私の躾はゆるゆるだったと思います。時間と共に成長が解決してくれることを期待して…。療育先でも癇癪が始まり…。この先ひらがなの取得につまずくかもと言われ。療育に通って2ヶ月。スタッフの人から「うまくいかないときは時折パニックを起こしてしまいます」と伝えられました。お友達と遊んだりしてる中で自分の思い通りにいかないときなど癇癪を起こしてしまうみたいです。娘も場所に慣れて素が出てきたのでしょう。幼児だとこういうことはよくあることですが、娘はほかの子と比べても我慢や気持ちの切り替えがとても苦手なように感じていました。また、続いてこう話されました。「言葉は増えたもののやっぱり表に出る言葉はゆっくりです。もしかすると年中年長さんになったときひらがなの取得につまずくかもしれません」こう言われたことをきっかけに少しずつひらがなに触れさせてみることにしました。とはいっても年中年長さんあたりからそれぞれ家庭でひらがなを覚えさせることもあるかもしれませんが、本格的にひらがなを習うのは恐らく小学校入ってから。焦る必要はないのかもしれませんが元々発達ゆっくりな娘なのでゆるーくひらがなを見せてみることにしました。問題集を手作り。私なりのお家療育をはじめてみるひらがなが書いてあるカードを使ってこれは「ありのあ」、これは「いぬのい」だよ、と目に触れさせてみました。意外に興味津々の娘。そんなことを暫く続け…。次はカードを2枚並べて私が言ったひらがなを取ってもらうようにしました。慣れると3枚、4枚とカードの選択肢を増やしてみました。Upload By とまぱん娘は最初ひらがなを読むのを嫌ったので、カードを選んでもらうという方法をとりました。読むことに抵抗がなくなったころ徐々にひらがなを読んでもらったり。かなり自己流ですがこのように遊び感覚で少しずつひらがなを覚えていきました。ちなみに娘は筆圧がとても弱く書く意欲が全くなかったので、ひらがなを書く練習はこの時期全くさせませんでした。ひらがな以外に数字にも触れさせてみました。書店で売ってる問題集は気まぐれでやらないことが多いので娘の好きなキャラクターを描いて問題集を手作りしました。Upload By とまぱんこんな感じでキャラクターが言ってる数字の数だけ娘にシールを貼ってもらいました。自分の好きなキャラクターに娘はニコニコ。その上娘はシールが大好きなので進んでやってくれました。私は子どものころの夢が学校の先生だったのですが子どものときよく問題集を自分で作り、妹を生徒役にして解かせていました(笑)それを思い出し私自身も楽しくやっていましたが、娘がハマりすぎて私が疲れてしまい…。以前、療育の先生からは「とまさんの集中力は年相応以上です」と言われたことがありました。娘は何かに集中してるとどんなに話しかけても反応しないし、こういう学習もハマったら永遠とやるところがあります。言葉はゆっくりで癇癪も激しい娘ですが集中力の高さはこれから娘の長所になればいいなと思いました。紙芝居で入園式をシミレーション冒頭でもお話ししたようにプレの先生から「とまちゃんは目的がはっきりしない時間は待つのが苦手」と言われていました。まさに入園式も目的がはっきりしない時間。娘はずっと席に座ってられるのだろうか…と入園式が近づくにつれて憂鬱になってきました。そのため入園式とはこういうものというのを予め知ってもらうため、入園式の様子を描いた紙芝居を作りました。1週間前から毎日読み聞かせ、娘は「これとまちゃん?もう一回読んで!」と嬉しそうにしていました。Upload By とまぱん入園式当日。初めは状況に困惑し、椅子を叩いてしまうこともありましたが、紙芝居効果なのか落ち着いて席から離れず無事に終わりました。娘はほかの子よりも工夫が必要だったり苦労することも多いですが、この4年間違いなく成長はしました。幼稚園に通っている今は先生やお友達の影響でありがたいことに勝手に成長している部分はありますが、これからも何か手助けが必要であれば一緒に考えて私なりに向き合っていけたらと思います。執筆/とまぱん(監修:藤井先生より)お子さんの負担にならないように、お子さんの反応を見ながら、遊び感覚で取り組まれたのはとても良いと思います。同年齢のお子さんと比べ焦ることもあるかもしれませんが、お子さんのペース、好みに合わせて、スモールステップで過ごした時間は、お子さんにとっても、とまぱんさんにとっても、充実した時間になったと思います。新しい場面での見通しがないと不安になるお子さんへ、今回のような紙芝居や、写真などの目に見える形を用いて伝えておくことは、不安軽減に効果的です。
2022年07月14日放課後等デイサービス?その存在を知ったのは、太郎が保育園の年長クラスのころ。保育園の先生と面談をしているときだった。「先生、太郎もうすぐ小学校入学じゃないですか…。学童って利用できると思いますか?」Upload By まゆん私は、自閉スペクトラム症のある太郎が学童を利用できるのかが不安だった。利用しないと仕事ができないし、仕事ができなければ収入もなくなるからだ(私は両親とは同居しているわけではなく、両親は定期的に地元の島へ帰省している)。先生からは・今も保育園で生活できていること・太郎の落ち着き具合からみると学童を利用することは可能であると思うこと・通う学童側に聞いてみることが第一ということ・太郎との相性もあるということ・発達障害のある子どもも、学童を利用しているケースは少なくはないということなどのアドバイスをいただいた。それを聞いて、時期がきたら学童側へ直接アポをとろうと思った。そして先生から、冒頭の言葉を聞いた。「放課後等デイサービスを利用してみませんか?」デイサービスと聞くと、私の中のイメージでは高齢の方が利用するものだった。けれど、放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づき、障害のある0歳児から高校生までが利用できるところであった。先生がおすすめしてくれた施設は、個別指導が中心で一人ひとりの個性を考えたプログラムが組まれるというような説明を受けた。また、必要に応じてグループ(複数名)での取り組みを臨機応変に実施しているとのことだった。そして、地域にはほかにも放課後等デイサービスが多くあることを知った。「一人ひとりの個性を考えたプログラム」、そこに私はひかれた。Upload By まゆん小学校入学と同時に放課後等デイサービスに通い始めてそうして、太郎は小学校入学とほぼ同時に、放課後等デイサービスを利用開始した。私が思う、放課後等デイサービスの魅力はこんな感じだ(施設によって異なる)。利用について・利用の日数を、月に1回から週に6日と幅広く本人に合わせられる(※)・療育センターなどとは違い親が付き添わなくてもよい・送迎つき(学校側と連携して学校の終わる時間を把握して迎えにきてくださる)・利用限度額があり、金銭的にも利用しやすいサポートについて・発達障害の専門職の方が多い・スタッフ間でのミーティングが行われており太郎の性格や特性、方針を共通理解してくださっている・スタッフ間での話し合いの結果を定期的に保護者(私)へ伝えてくださる・今後社会へ出るであろうビジョンなど、先のことまでも一緒に保護者の身となり考えてくださる・太郎の考えを1番に尊重し柔軟に対応してくださる (ワガママを全て受け入れるとはまた違う)・私の知らない太郎を教えてくださる(※)お住まいの地域によって支給日数などは異なります。詳しくはお住まいの地域の役所にてご確認ください。放課後等デイサービスは、利用を希望してもすぐには通所できない場合もあります。また、2つの事業所を併用してる方もいます。先生からのアドバイスにもありましたが、「相性」というものが大切になってきます。人対人なので、どうしても。事業所によってさまざまなカラーもあるので、どの施設がわが子や保護者に合っているか…という判断も必要になります。太郎は今、「放課後等デイサービスに行きたい!」と、気持ちを言葉で表します。放課後等デイサービスを必要としていますし、私もスタッフの方々を信頼してます。Upload By まゆん小学校入学当初は、学童と放課後等デイサービスを併用していましたが、5年生からは放課後等デイサービスだけにしました。とても良い放課後等デイサービスにスタッフの方に出会えて良かった…そう思います。今回のコラムは、放課後等デイサービスを利用している実体験が何かの参考になればと思い、いつもと少し違うコラムとしてまとめました。執筆/まゆん(監修:三木先生より)親子とも信頼できる放課後等デイサービスに出合えたことは良かったですね。最近は子ども向けの放デイもかなり充実してきました。その子に必要なサポートを受けられるという点でも、ぜひみなさんも利用を検討してみてはいかがでしょうか。
2022年07月12日療育って何?みんなどんな療育をしてきたの?療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みです。療育という言葉はもともと、東京大学名誉教授の高木憲次氏(1888-1963)が提唱した概念です。肢体不自由児の社会的な自立を目標に、医療と教育を並行してすすめることを指しました。療育という言葉や概念は時代の変遷とともに意味合いを変えており、現在定まった明確な定義は示されていません。また必ずしも医療行為を含むものではない場合もあります。定義や実践内容の移り変わりはあるものの、概ねの理解としては、療育とは障害のある子どもの発達を促し、自立して生活できるように援助する取り組みを指すと考えると分かりやすいでしょう。1歳半健診や3歳児健診で、また周りの子どもたちと比べて…わが子の発達の遅れに気づいて専門機関に相談し言われた「療育を受けてみませんか?」の言葉。でも実際に療育ってどんなことをやるの?そんな療育についてのエピソードを発達ナビ連載ライターさんたちに描いていただきました!療育の種類や療育先選び、早期療育問題や家庭内でできることなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてください。「療育に通って」と言われてから9年。当時の私が感じたことや、知らず知らずに行っていたこととは。丸山さとこさんが、療育を初めて知ったのは3歳児健診のときでした。本を読み療育園に通うことで療育について少しずつ知っていったさとこさんは『あれ?ごく当たり前のことが書いてあるな…?』と首をかしげてしまいます。2歳で始めた療育、全力拒否!「療育に来る意味あるのかな…」と疑問が出てきて…3歳ごろに自閉スペクトラム症の診断が出たまるさんの息子・リュウくん。療育には2歳9ヶ月のときに通いだしましたが、教室から出たい、座っていられない、早くお弁当を食べたいで泣いたり逃げたり…一筋縄ではいかなくて…。理科と社会のプリントをやりたがらない息子のやる気を引き出したアイデアとは?ADHDとLDのあるかなしろにゃんこ。さんの息子リュウ太くん。”気がのらないことは意地でもやりたくない”というところがあり、小3になると「理科」「社会」の教科には興味ナシ!そんなリュウ太くんにかなしろさんが作ったあるものとは…?「療育」とは?3タイプの発達支援施設があるの?1歳半健診で指摘を受けて、長男けんとくん発達の遅れを知ったゆきみさん。市の親子教室で初めて聞いた「療育」という言葉に「これだ!」と衝撃を受け…。タイプ別発達支援施設の紹介も!「子どものため」だけでは続かない?「療育を受けさせたい」と考えている親御さんに伝えたいこと。知的障害を伴う自閉スペクトラム症があるべっこうあめアマミさんの長男くんは、2歳から療育に通いはじめました。引越しなどもあり、息子と3つの地域で6ヶ所の児童発達支援(療育)に通ってきたべっこうあめアマミさんの感じた療育先選びのポイントとは?療育は一筋の希望?ダウン症の「早期療育問題」って?ダウン症のある小学1年生のきいちゃんを育てている星きのこさん。出産後すぐにダウン症の告知と同時に医師から言われた「子どもに療育をしてください」のアドバイス。その言葉を聞いた星さんは…。次男のふーくん、初めての発達検査!ASDの特性がある長男ミミくん。次男のふーくんは定型発達だと思っていたけれど、通っている保育園からの勧めもあって、発達検査を受けることにしました。発達検査の結果を聞いてtaekoさんの感じたこととは。そのほか人気コラムはこちらから!
2022年07月11日ヲタママだっていーじゃない!
STEAM教育って何?
子育て楽じゃありません