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家庭は「落ち着けない場所」アルコール依存の父とDV母Upload By 桑山 知之manaさんは、公務員の父親と保険などの営業を行う母親のもとで、2人姉妹の長女として育った。父親はアルコール依存症、母親は包丁を突きつけたり首を絞めてきたりと、たびたびmanaさんに暴力をふるっていたという。喘息などアレルギーにも悩まされた。家庭は「落ち着けない場所だった」と振り返る。「母親に崖に連れていかれたこともありました。家出もよくしていたんですよ、母親は。ただ、そういったことも最近まですっかり忘れていたんです。母親の影響もあって、私のメンタルがやられていたのかなって思い至るようになりました」(manaさん)Upload By 桑山 知之授業中も、椅子に座っていられない不快感や衝動があり、とても苦痛だった。中学1年から不登校気味になり、15歳で小児科の「思春期外来」を受診した。診断は「心身症」。25年以上前の当時は発達障害の認知が今ほど進んでいなかったこともあり、ストレスによるものだと医師から言われた。普通科高校に進んだが、中学3年のころに無理して登校していた影響などから、過食のため胃腸の調子が悪くなり、夏休みの宿題に着手できなかったことがきっかけとなって退学し、通信制高校を転々とした。「自分は人と違う」と自覚した。その後、福祉の専門学校に進み、発達障害について学ぶ機会があった。教科書を読み進めれば読み進めるほど、自分にあてはまることが多かった。家でその話をすると、「知らんほうがいいこともある」と父親に諭された。物をよく失くすなど、どうやら父親も発達障害の特性が見られたらしい。manaさんが26歳のころ、父親はアルコールの飲みすぎなどが原因で、食道ガンにより亡くなった。母親に相続の放棄をさせられたため、遺産を受け取ることはできなかったという。28歳で診断生きづらさと向き合ってUpload By 桑山 知之専門学校を卒業後、高齢者施設に半年ほど勤めたが、父親が倒れてからは仕事を辞め、看病をしていた。父親の死後、就いたのはコンビニ店員のアルバイト。マルチタスクを処理する能力が求められるため、ADHDがある人は苦労すると言われる職種だが、manaさんにはこれが合っていたという。のべ13年間働き、トレーナーも経験した。「バイトで来る人にもいろいろな方がいて。店の様子を把握しながら、その日の進行管理を考えつつ、レジ打ちしつつ、発注書を書いたり、レンジをチンする40秒の間にほかのことをやったり。なぜだかわからないんですけど、自分の傾向がたまたますごく合っていたんですよね」(manaさん)Upload By 桑山 知之専門学校の実習先で知り合った男性と、28歳のころに結婚。その後、ADHDかつ双極性障害だと診断を受けた。また、言語性IQと動作性IQに明らかな違いが見受けられた。不注意で忘れ物が多く、家が散らかってしまうこと、聴覚過敏のことも、特性だと思えば肩の力を抜いて生活できるようになった。現在、8歳の長男と4歳の次男、夫と4人で暮らしている。スマホは紛失補償のある保険に入り、夫や妹がGPSを見られるようにしているほか、予定を詰めないために小さな手帳を使っている。財布がわりの透明なケースは、著名な料理家がジップロックを使っているのをテレビで見て参考にした。Upload By 桑山 知之「家は極力モノを少なくしています。荷物もいっぱい持つとなんだか訳がわかんなくなって落としちゃうので、そもそも減らすっていうか、カバンを小さくしました。学生時代は登山用のリュックサックで登校していたんですよ(笑)」(manaさん)福祉×アートで世の中をより良く学生時代、家庭の方針でテレビはNHKしか見ていなかった。好きだったのはドキュメンタリー。「いろいろな人が世の中にはいっぱいいる」と興味が湧いた。マイノリティと言われる人々の生きざまに、自然と惹かれていた。そんな中、ドキュメンタリーCM『見えない障害と生きる。』をテレビで見て、「生きることを認められている」気持ちになった。育児がひと段落し、昨年夏には障害者支援施設で働いた。しかし猛暑の中頑張りすぎてしまったためか、パニック発作が出た。“日本一暑い町”多治見市は、感覚過敏のmanaさんにとってなかなか酷である。来年度からは、多治見市が委託する「母子保健推進委員」として活動する予定。無理をしすぎないよう調整しながら、障害のイメージを「ポジティブに変えたい」と話す。Upload By 桑山 知之「自分にも見えない障害があって、周りにもそういう人がたくさんいるわけで。もっといろいろなことを知って、パッと見ではわからない困りごとがある人と、行政やサービスを結ぶ活動をしていきたいです」(manaさん)気軽に話せる相手がいなかった幼少期。誰かに助けてもらうという選択肢すらなく、今も当時の記憶は断片的なまま。子どもを社会全体で育てていく、そのチームの一人になりたい。それが当面の目標だ。中でもアートが大好きだというmanaさん。子どものころには、鼻血を出すまで集中して絵を描いていた。引きこもっていたころも、アートに支えられた。「アートには力がある」。福祉とアートをつなげる仕事ができたらと、一歩を踏み出していく。Upload By 桑山 知之Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海(監修・井上先生より)専門学校で福祉を学んだり、実際にその分野で働いたり、子育てを経験する中で、ご自身の特性や診断に向き合ってきたということは、同じような特性や診断のある人や支援に対して非常に役立つだろうと思います。障害者支援の仕事は、一方では利用者の方々の得意なことにスポットをあてていく仕事だと思います。そういった視点はmanaさんにあっているのではないかと思います。ただ、福祉や支援サービスの現場は過酷な面もあり、合理的配慮が得られにくい場合もあります。ご自身の特性を踏まえて、働く時間や内容をアレンジするなどして、ご自身が無理しすぎない環境を整えることも大切です。職場の中で理解や配慮が得られるようにしつつ、当事者であり支援者であるということを活かし、またご自身の得意な分野でmanaさんらしい仕事を続けていっていただけるよう応援しております。
2022年02月02日一般社団法人青少年ワークサポートセンター広島(広島市東区、代表理事:杉野 治彦)は、2022年3月1日、不登校気味な小・中高生を対象とした個別指導型の学習塾『STUDYWALK(スタディウォーク)』を開業します。スタディウォークは、不登校気味な小・中学生の「復学」や「復学の先にある進学」、「進学の先にある卒業」を目指した学習支援をICT教材やオンラインを活用しながら、「卒業の先にある自立」までを見据え、「社会性(力)を身につける」支援を、生徒ひとりひとりの不登校状況や進度、理解度に合わせた「寄り添い型個別指導」によって行います。スタディウォークでは、通塾による「勉強」だけではなく、オリジナルプログラムによって「様々な社会(家族・学校・ともだち・クラブ活動・etc)とのつながりをしっかりと構築できる力」の育成も並行して行っていきます。なお、現在、無料相談・無料体験を受け付けています。★現在、無料相談・無料体験受付中!通塾学習(イメージ)お子さまの進度に合わせて(イメージ)訪問学習支援(イメージ)◎STUDYWALK(スタディウォーク)事業概要◆名称小学生・中学生個別指導塾 STUDYWALK(スタディウォーク)学校へ通いづらくて、立ちどまっているお子さまが、まずご自身のペースで踏み出す一歩が大切で、ひとりひとりに合ったゴールを目指すために歩み続けていくための支援を行う指導方針をネーミングに込めました。◆所在地広島県廿日市市駅前1-3-201◆塾長上田 嘉治◆運営団体一般社団法人青少年ワークサポートセンター広島〒732-0052 広島市東区光町2-9-30-204◆電話番号TEL:0829-30-8696・FAX:0829-30-8697◆営業日時9:00~18:00(土日祝除く)◆授業時間12:00~18:00(土日祝除く)(※このうち3時間程度の授業を受けていただきます)◆入塾対象小学校高学年・中学生(学校に通いづらい方・保健室登校の方・不登校の方)◆支援内容個別又は集団学習指導で授業を行います●個別学習指導●スタディウォークオリジナルプログラム・コミュニケーションプログラム(レクリエーションから社会生活技能訓練等)・基礎体力作りプログラム/各種スポーツ・社会体験プログラム/農業体験・英会話など●訪問型学習支援/家庭教師派遣(ご自宅へ学習指導に伺います)●ICT教材を活用した在宅学習支援◆通塾コース・基本料金(入塾相談時にお子さまの状況により決めて行きます)・週1回コース:初期段階・訪問指導の場合 /月額16,500円(税込)・週2回コース:1回あたり3時間程度・主に小学生/月額27,500円(税込)・週3回コース:1回あたり3時間程度・主に中学生/月額33,000円(税込)・随時コース :初期段階・訪問指導の場合 /1回 5,500円(税込)◆オプション・訪問指導:1回 3,300円(税込)・送迎 :距離・回数などは別途ご相談に応じます。◆ICT利用料パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末は自己所有の機材を利用※ご自宅内のインターネット環境整備も自己負担にてご用意ください。◆HP ◎STUDYWALK(スタディウォーク)開業の目的「不登校児童生徒への早期支援による復学」、ひいては「ひきこもり問題の長期化を未然に防ぐ」という目標を達成するため、今般、前頁の内容にて新たなサービスを実施する運びとなりました。広域通信制高等学校のサポート校として実績のある当社が、学校へ通いづらくて立ちどまっている小学生や中学生を対象に、「復学」や「復学の先にある進学」、「進学の先にある卒業」を目指し、学習支援だけでなく、「卒業の先にある自立」までを見据え、「社会性(力)を身につける」支援を、生徒ひとりひとりの不登校状況や進度、理解度に合わせた「寄り添い型個別指導」によって新たに行います。◎STUDYWALK(スタディウォーク)開業に至る背景これまで当社は、ひきこもりがちになられている方々に特化した支援を行っている団体は殆ど見当たらない状況において、相談から自立までを総合的に支援して行くために『無料相談』というサービスである「ひきこもりケアセンター」を立ち上げ、幅広くひきこもりに関する相談を行う一方で、ひきこもりの主要因に発達障害が深く関係している実態に着目し、「障害福祉サービス」などの活用により各個人へのより細かく専門的な支援アプローチを活用・運営し数多くの社会復帰への実績を積んできました。一方で、『8050問題』に象徴されるように、重度化・複雑化したひきこもり問題は増加しており自立が困難なケースも増加しています。これらの、多くのケースを分析検討したところ、発達障害等によるひきこもりの早期段階での支援策が整っていないことに起因し、結果的にひきこもりが長期化してしまう事例がとても多い事がこれまでの支援活動から分かってきた重要なポイントです。そこで、一昨年より準備を進め、廿日市市を拠点に「不登校児童・生徒」への支援を開始しました。しかしながら、コロナ禍という環境要因もある一方で、相談者の人数は予想以上に多いものの不登校初期段階で必要な支援として重要な、障害福祉サービスを始めとしたより専門的な支援プログラムの利用になかなか繋がらないという課題も出てきました。これらの要因について精査したところ、不登校児童・生徒の一番の復学への阻害要因が「学校の勉強についていけなくなっている事」に対する「本人の不安感」や「家族の焦燥感」であることが分かってまいりました。その他、「復学・進学に対しての高すぎる目標設定」「不登校について相談出来るところが無い」「発達障害等の正しい理解が進んでいない」などの様々な要因から、本来必要である適切な支援が受け入れられにくいという厳しい現状が分かってきました。こういった、現状の課題を打破しながらも、早期に、より高度で専門的なプログラムの利用を促進し、不登校・ひきこもり状態を長期化させず、社会復帰(復学・自立)を強力にバックアップするため、今般、小学生・中学生向け個別指導型の学習塾『STUDYWALK(スタディウォーク)』として新たなサービスを開始する運びとなりました。◎一般社団法人青少年ワークサポートセンター広島 企業概要・設立年月日:2012年5月17日・代表者 :代表理事 杉野 治彦・所在地 :広島市東区光町2-9-30-204・事業内容 :生活訓練(自立訓練)事業就労移行支援事業就労定着支援事業就労継続支援B型事業共同生活援助事業放課後等デイサービス事業ひきこもりがちな若者サポート事業児童発達支援事業広域通信課程サポート校学習支援(小学生・中学生向け個別指導型学習塾)・事業拠点:◎本社 同上◎ワークサポートセンター広島東(生活訓練(自立訓練)事業)広島市東区光町2丁目9-30-204 Tel. 082-569-5252◎ワークサポートセンター広島南(就労移行支援事業・就労定着支援事業)広島市南区出島1丁目7-14 Tel. 082-258-3530 ※3月移転予定◎ワークサポートセンター広島光町(就労継続支援B型事業)広島市東区光町2丁目9-15-203 Tel. 082-207-0858◎明誠高等学校広域通信制課程広島SHIP広島県廿日市市津田596-1 Tel. 0829-40-1150◎わくサポケアセンター廿日市駅前(学習支援/STUDYWALK併設)広島県廿日市市駅前1-3-201 Tel. 0829-30-8696◎わくサポジュニア廿日市(放課後等デイサービス・児童発達支援事業)広島県廿日市市津田596-1 Tel. 0829-40-1151◎ワークサポート廿日市ヴィレッジ(共同生活援助事業)広島県廿日市市津田596-1 Tel. 0829-40-1152◎STUDYWALK(スタディウォーク)塾長 上田 嘉治(うえだ よしはる) 略歴・出身地 :広島県広島市出身・生年月日:1960年 3月生まれ・学歴職歴:1983年 3月 早稲田大学法学部卒業1986年 3月 早稲田大学教育学部国語国文学科卒業1986年 4月 有名私立中学・高等学校勤務2021年 3月 有名私立中学・高等学校定年退職2022年 2月 STUDYWALK塾長に就任◎一般社団法人青少年ワークサポートセンター広島代表理事 杉野 治彦(すぎの はるひこ) プロフィール・出身地 :広島県広島市出身・生年月日:1963年 3月生まれ・学歴職歴:1987年 3月 広島大学教育学部卒業 障害児教育(自閉症)専攻・民間企業にて人事・採用(新卒・中途)業務を10年以上経験2007年 4月 キャリアコンサルタントとして活動開始2010年1月~2012年6月 広島市ひきこもり相談支援センターにて相談員2012年 7月より現職2017年 12月~ RCCラジオ「おひルーム」(月1回金曜日13:10~)出演中・資格 :産業カウンセラー、ジョブコーチ(第1号職場適応援助者)特別支援学校教諭・広島県内の地方自治体や社会福祉協議会などで講演会多数STUDYWALK(スタディウォーク) 公式SNSQRコード 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年02月01日「なんでうちの子が発達障害なんだろう……」。息子の発達障害という現実をなかなか受け入れることができずに苦しむばよさんでしたが、ひとまず療育相談センターへタロちゃんを連れて行き、検査やトレーニングをおこないました。その後、小学校入学するにあたって「通常級」か「支援級」か、葛藤することに。ばよさんの答えは……?! 「誰のため…?」 療育相談センターは市の施設で、平日しかやっていませんでした。もし仕事が平日休みじゃなかったら、どうしていたんだろう……。会社辞めていたのかな??などとたまに過去の自分に思いをはせます。 ひとたび気持ちがストンと決まり、ご近所の仲良いママたちに何もかもすっかり打ち明けたら、気持ちが軽くなってオープンマインドになれました。何をあんなに私は悩んでいたんだ?とすら思えます。 市の教育委員会による就学相談会が開催され、特別支援級が望ましいとの通知を受けます。 「できれば通常級に入れてやりたい……」と悩みましたが、「一番大事なことはなんだ?」と改めて考え直したばよさん。 「タロに合ってるんだからいいじゃん」 ストンと気持ちが決まりました。 仲の良いママたちにも打ち明けることができ、気持ちが軽くなってよかったですね! 監修/助産師 松田玲子 著者:マンガ家・イラストレーター 星河ばよ
2022年01月31日「YouTubeで学ぶこと」が浸透してきたのはこの1~2年中学生・高校生に向けて、Youtubeで「とある男が授業をしてみた」を発信中の葉一(はいち)さん。子どもたちからお金をとることなく学ぶ環境をつくりたいという熱い思いを、LITALICO発達ナビ編集長・牟田暁子が聞きました。Upload By 発達ナビ編集部発達ナビ牟田暁子編集長(以下――)葉一さんは、中学生・高校生に向けて、自宅で撮影した動画をYouTubeに投稿している「とある男が授業をしてみた」を発信中で、チャンネル登録数167万人(2022年1月現在)!すごい数字だと思います。かなりの更新頻度でアップされていますよね。葉一さん(以下、葉一):はっきりとは決めていませんが、週3~4回くらいの頻度で更新しています。それと、「自習室」はできる限りやっています。約1時間の間は無言で作業するというライブ配信です。これはコロナ禍の一斉休校をきっかけに本格的に始めたものですが、休校期間中は最高時2,500人くらい集まっていました。学校が再開してからは落ち着いて、700人くらいが同時に参加してくれています。――たくさんの子どもたちが、一緒に勉強しているんですね。でも、こんな風にYouTubeで勉強できるということが認知されるようになったのは、いつごろからですか?葉一:ここ1~2年くらいですね、YouTubeで学べるということが、社会人の方も含めて認知が広がったのは。自分のチャンネルが人気になるというより、このジャンルが盛り上がらないと意味がないと思っているので、やっとだなと感じています。始めた当初は、YouTube自体がいわば無法地帯でしたからね。そんな場所に「教育」という、ある種「聖職」といわれる部門を混ぜたものだから、誹謗中傷を受ける毎日でした。「教育に携わる者ですが」で始まるメールは、特につらいものが多かったです。「偽善者」と言う言葉は毎日のように言われていた気がします。非常にきつかったですね。大人を信頼できなかった中学時代。高校で恩師に出会うことで変わったUpload By 発達ナビ編集部――やはり10年前は大変だったんですね。YouTube学習を始めたきっかけを伺いたいのですが、そもそも教育に携わろうと思われたのは、いつごろからだったのでしょうか。葉一:中学時代は、教師は「悪」だと思っていたんです。当時ぽっちゃりしていた私の体形をからかう教師がいて、大人全般が信頼できないものだと思っていました。そんな自分を変えてくれたのは、高校時代、恩師となる先生との出会いでした。一昨年、その先生とYouTubeで対談させていただいたのですが、そのときにも「あのころは、ほんとに斜に構えていたよね」と言われるくらい、ひねくれていたんですよね。そんな自分が、先生のことは100%信頼できると思った。教師というだけでなく、大人というものへの価値観を変えてくれた先生でした。――そんなにひねくれていた葉一さんが、どうしてその先生を信頼できるようになったんですか?葉一:最初の授業のときに先生が、「おまえらに好かれようとは思わない」と宣言して、「なんていう教師なんだ!自己紹介でそんなこと言うか?」と思ったのですが、だんだんに印象が変わっていきました。いちばんインパクトがあったのは、授業が分かりやすかったことです。板書がとにかく綺麗で分かりやすい。そして、授業中は厳しいけれど、休み時間はすごくフランクに話してくださる。分からない問題があって質問しに行くと、必ずその場で解いてくれることがすごいと思っていました。そういうことが重なって、だんだんに信頼していきました。この先生はとりつくろって話をしない、本心で話す人なんだと。あるとき、その先生から「教師に向いているんじゃないか」と言われたんです。自分自身、もともと子どもが好きで、人に教えるのも好きだったので教師を目指しました。頑張って勉強して、なんとか東京学芸大学に入ったというわけです。Upload By 発達ナビ編集部――東京学芸大学といえば、先生になるための大学というイメージですね。葉一:そうなんですが、教育実習先で、ある生徒たちとの出会いがあって、また考え方が変わりました。授業中の時間のはずなのに、教室ではなくテラスにいる子たちがいたので、思わず声をかけたんです。そうしたら、保健室登校していて、そのうちの一人が睡眠薬を多量摂取して、なんとか命は助かってやっと退院した、と話してくれたのです。そのあとも、授業以外で本当にたくさん話をしました。実習後、その子たちが「もう死のうとしないから。頑張って生きていくからね。そう思えたのは○○(※葉一さんのこと)のおかげだよ。ありがとう」と、感謝の気持ちをこめて言ってくれました。そのとき、ああ、自分もこうして人の役に立つことができるんだと、力強く突きつけられた気がしたんです。当時、自分自身が生きていく意味もよく分からなくなっていた時期だったので、私があの子たちを変えたんじゃなくて、あの子たちが私を変えてくれたんですよね。だから、教育というフィールドで子どもたちに恩返しをしていこう、教育に身を捧げようと決めたのはその瞬間でした。――そうだったんですね。でも、そのまますぐに教育現場に入ったわけではないですよね。葉一:ストレートに教師になるよりも、一般企業で修行してからのほうが子どもたちにいい刺激を与えられると考えたからでした。とにかくキツイ経験を積もうと、教材販売の営業という仕事に就きました。一軒一軒まわって、ピンポンして、毎日怒られるような日々でした。その後、ドクターストップがかかったこともあって、塾講師に転職しました。そこで分かったのは、家庭の経済状況によって、学ぶ選択肢がすごく違うということでした。普段は通塾できても、夏期や冬期の特別講習の月謝は払えない、頑張りたいのに頑張れない子たちがたくさんいたのです。お金がネックになって学びが止まるという、歯がゆい状況をたくさん見ました。子どもたちからはお金をもらわずに、教育を届ける方法はないのかと強く思うようになりました。勤め始めたときに、辞めるにしても続けるにしても3年を節目にすると決めていたので、3年間はがむしゃらに働きました。数字の評価が強い職場だったので、数字の面でもかなりの成績を上げましたが、3年できっぱりと辞めることにしました。次、どうするかは決めてなかったですね――決めずに!葉一:何をしたらいいのか、そのときは思いつかなかったけれど、一度きりの人生なんだし、きっと何かできるはずと思ったんですよ。辞めたあとで、YouTubeを見ていたときに、これだ!とひらめいて今につながっています。勉強が分かるようになることが、脱・不登校のきっかけにもなるUpload By 発達ナビ編集部――10年間、いろいろなことがあったと思いますが、YouTubeの配信を続けてきて、いちばんうれしかったエピソードってどんなことですか?葉一:娘さんが不登校だったというお母さまからもらったメールでした。当時、そのお子さんは保健室登校で、私の配信を見て勉強していたそうです。保健室で受けたテストでは、だいたい80点以上とれて、そのことが自信となって学校に行き始めたら、授業もよく分かったそうなんです。周りからも「学校に来てなかったのに」にとびっくりされ、その後は卒業まで通えた、と。お母さまからいただいたその感謝のメールが、この10年でいちばん泣いたときですね。私自身も、なんとか学校は通っていたけれど、不登校になってもおかしくなかった時期があります。だから、学校が合わない子どもたちには、人生のサポートをしたいと思っています。こうして親御さんから感謝の言葉をもらえたときに、その子と同時にそのお母さまの人生もサポートできたんじゃないかと思わせてもらえた、そういう経験でした。不登校の子が学校に戻れない理由は、人間関係で行けないことが多いでしょう。でも実は、そこにプラスして、授業が分からないストレスで、学校に行けなくなることが多いということも教えてもらいました。――テストで点がとれていれば大丈夫かも、ということが心強さにつながるんですよね。葉一:私自身、勉強はできなくはないけれど、すごく得意だったわけでもありません。中学生のころは、ひどく陰口を言われていたこともあって、自己肯定感がほぼなくて、勉強しかすがることがなかったんです。勉強は、ある程度努力したら結果が出るということは、心強いものだと思っています。気持ちを吐き出していい相手でいるために、変わらずにい続けるUpload By 発達ナビ編集部――専門家の先生方からよく聞くのは、「思春期には、親や先生以外に相談できる第三者との関係があるといい」ということなのですが、葉一さん自身が、子どもたちにとって、そういう存在になっているのかもしれませんね。葉一:それは意識しています。自分が中学生のときに欲しかったんですよ、そういう存在が。今の子どもたちにとって、大人といえば先生と親がほぼすべてですよね。私は、教育をやっているけれど、学校の先生ではない。相談したときに、その子の周りにうわさが広がることもないから、そういう意味でも気持ちを吐き出せる場所になっていたいと思っています。そのためにも、変わらない安心感については意識しています。インターネットで活動しているからには、数字を獲らなくちゃいけない世界です。でも、たとえば登録者数が増えただけでも、子どもに「遠くに離れてしまった」と思わせてしまう。そこのバランスが難しいんです。だから自分は数字を狙った動画はつくらないんですよね。「2年ぶりに葉一の動画を見に来たけど、変わってなくて安心した」と言われたりするくらい(笑)。バズることを狙うならば、教科書レベルの授業をすべきではないかもしれません。でもそこは、これからも変えないでいきます。子どもたちは大人の背中を見て育つ。だから生きる教材でありたいUpload By 発達ナビ編集部――こうしてYouTubeを続けてきた情熱やモチベーション、どういうところにあると思いますか?葉一:子どもたちからの「分かりやすかったです」とか「ありがとう」を、YouTubeのコメント欄で毎日もらえることですね。ほんとに贅沢な人生だと思うんですよ。今はある程度成功しているように見えるかもしれないけれど、始めた当初の半年間くらいは誹謗中傷ばかりでしたから。だから、頼ってくれる子が一人でもいるなら、やめられないよな、とはいつも思っています。――きっと、ストイックに続けている姿を見て、みんな信頼するのでしょうね。葉一:そこは、授業のしかたも、教師としての在り方も、今でも恩師が自分にしてくれた姿を追いかけている部分があります。私自身が中学生のときに大人になりたくなかったのは、自分のまわりにキラキラしている大人がいなかったからでもありました。父は多忙すぎて家にあまりいなかったし、母も忙しくて働くのは大変だとこぼしていたから、歳をとることに対してネガティブな感情を抱いていました。学校の先生にも不信感が強かったころだから、大人になりたいとは思えなかったんですよね。でも、自分が大人になってみると、すごく楽しいんです。だから、楽しんで、自分の道を突き進んでいく姿を、子どもには見せていきたいと思っています。今、8歳、5歳の子どものパパとして、息子たちに対しても、YouTubeを見てくれている子どもたちにも、自分が生きる教材でありたいと強く思っています。――今の姿は、10年前に想像した通りですか?葉一:YouTubeを見て学べるということを浸透させるのが夢だったし、時間をかければ叶うとは思っていたけれど、実は思ったよりも早く実現に近づけました。それはコロナ禍での一斉休校があったからでもあります。人生をかけて叶えるつもりの夢だったので、前倒しにはなってきた感じです。でもまだまだこれからです!学ぶということ=お金をかけることというイコールを外していく。そこは10年前と変わっていません。手段はYouTubeではなくてもいいと思っていて、今後は、理念が重なる人たちと一緒にやっていきたいです。自分のチャンネルが数字を獲っていくということよりも、お金がなくても学べる方法があるということを浸透させるために、これからも活動していきます。文/関川香織撮影/鈴木江実子葉一さんYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」
2022年01月31日療育をすすめられ、ショックを受けているばよさんの気持ちを思いやることもなく、矢継ぎ早に決断を迫る主任保育士の態度に堪忍袋の緒が切れた!その場で判断せずに夫と帰宅したものの、その後数カ月にわたって夜眠れなくなってしまったばよさん。「長男が発達障害」という現実を受け入れるのにかかった時間は……? いろいろな感情が押し寄せる日々… あの面談のあと、なかなか眠れなくなりました。ショックと怒りでめらめらと……。 心は置いてけぼりでしたが、タロの成長に関わる大事なことだからと療育相談センターに行きました。 面談からどれくらい経っていたかな。遅くとも面談の翌月にはセンターに向かったと記憶しています。 悲しみ、自責、ショック、否定、成長への希望……現実を受け入れるのに2年かかりました。 いろいろな感情が大波、小波、津波のように次から次に押し寄せた2年でした。 同じように面談で子どものことを言われたママ友と情報を共有したり交換したことで、本当に救われました。 「なんでうちの子が発達障害なんだろう……」 なかなか受け入れることができずに苦しむばよさんでしたが、ひとまず療育相談センターへタロちゃんを連れて行き、検査やトレーニングをおこないました。 そして、同じように面談で子どものことを言われたママ友とつらい気持ちや情報を共有しました。 監修/助産師 松田玲子 著者:マンガ家・イラストレーター 星河ばよ
2022年01月30日4歳で初めての発達検査を受ける太郎が年少のころ、発達相談所に発達検査を受けに行った。案内されたのは6畳程の狭い個室。そこには小さなテーブルと椅子が2つ、子どもが遊ぶようなブロックや積み木が部屋の隅っこに置かれていた。Upload By まゆん発達検査を行うのは児童心理司さんだが、まだ部屋にはいなかった。太郎は部屋に案内されると、部屋にある積み木やブロックで遊び始めた。ちょうど遊び始めたころに、児童心理司さんが部屋に入ってきた。私が太郎に「おもちゃを片づけよう」と声をかけると、太郎はすぐに片づけに切り替えることができた。Upload By まゆん机を挟んで対面で太郎と児童心理司さんは座った。私と同席していた太郎の担任の保育士さんは、部屋の隅で座っていた。いよいよ検査が始まる。児童心理司さんが「こんにちは」と挨拶をすると、太郎は「こんにちは」と挨拶をかわせていた。検査の初めは静かに椅子に座っていた太郎だが、質問を重ねて行くうちにガタガタと椅子を揺らしたり身体を揺らしたり、落ち着きがなくなっていった。Upload By まゆん児童心理司さんの質問も頭に入らないのか、机に突っ伏してしまった。Upload By まゆんなかなか問題が進まなくなったとき、児童心理司さんから次の発言があった。「太郎くん、真面目にしてくれるかな?今日はね、太郎くんのお母さんはあなたのために、わざわざ仕事を休んでここに来てくれてるの、無駄にしないでほしい!」Upload By まゆん・・・・・・・ちょっと待て…私の心は凍りついた。Upload By まゆん私が思ってもいないような気持ちを代弁しないでくれないかな?いつ私が「わざわざ休みとりました」なんて、「わざわざ」なんて言ったかな?私は怒りをおさえながら、太郎と児童心理司さんのやり取りを見ていた。強めの口調で注意された太郎は、その空気を感じることができたのか、状態を起こし渋々と質問に答え始め、最後まで受けることができた。そんな児童心理司さんとのやり取りをみながら、私の心はまださっきの「わざわざ」にモヤモヤとしていた。(切り替えが苦手なのは私の方なのかも……)検査を終えると児童心理司さんは採点と評価をするため、一旦退室した。太郎は再びブロックで遊び始めた。私はまだモヤモヤとしていた。(やはり切り替えが苦手なのは私)そして評価のため、児童心理司さんが再び入室。そこでの評価の中に「注意すると我慢することができ、指示の理解もあった」というのがあった。私は、さっきの「わざわざ」は、わざと注意して太郎の行動を試していたものなのか?と思いもしたが、いやいやそれにしても、とモヤモヤしていた。Upload By まゆん私は太郎と一緒に、発達検査や療育リハビリへ何度も行っています。対応してくださるスタッフの方もさまざまで、強い口調で頭ごなしに注意されることもありました。今回のコラムで書いた発達検査では太郎は渋々と質問に答えることができましたが、ほかの場面では涙を流しながらすることも多くありました。先生から強い口調で注意をされ涙を流す場面を、私はどうしていいのか、これが正しい指導なのかと思いながら歯を食いしばって見ることもありました。発達障害についての知識が増えた今だから言えるのですが、あまやかすとは別で、注意の仕方、気づかせ方の問題だと思うのです。注意の仕方一つで相手の気づき方も変わり、人の動きは変化すると思います。頭ごなしに強い口調で注意しても相手に不快な思いしか与えられず、動けるものも動けなくなると私は考えています。これは発達障害に限らず誰にとっても、どこの社会でもそうだと思います。人を育てる、伸ばす、ということと、圧をかけることとは別だと思ってます。発達障害のある子どもはどうしても指示が入りにくく、相手の思い通りにいかないので神経を逆なでるのかもしれませんが、そういう場面を保護者が見るのはとてもつらいです。もしも同じ思いをされている方がいらっしゃるのであれば、周りにヘルプを出していただきたいと思っています。執筆/まゆん(監修:鈴木先生)4歳の太郎君は、お母さんの指示に従いおもちゃを片づけて椅子に座り、きちんと挨拶ができているので、いい子です。ただ、ガタガタと椅子を揺らして落ち着きがないのは非移動性多動がありそうですね。それでも強めの口調で注意されながらも最後まで質問に答えた太郎君は偉いと思います。心理担当者は思い通りいかないと強い口調になってしまう側面がおありかなと思いきや、「注意すると我慢することができ…」との記載があったので実は試していたのかと私も感じてしまいました。そうならば、あとで試していたという説明が親に対してあるはずです。プロなら強い口調で言ってもそのあとの質問に答えられたならば「よく頑張ったね。さっきは強く言ってごめんね」というフォローの一言があって然りだと思います。発達障害(神経発達症)のあるお子さん対する接し方の基本は、「優しく・丁寧に・具体的に・肯定文で」と日ごろ外来で親御さんにお話ししています。
2022年01月29日知らない国への旅に似ている、暗闇での体験発達ナビ編集長牟田暁子(以下――)ダイアログ・イン・ザ・ダーク、実は5年ほど前に、息子と一緒に体験したことがありました。今回、あらためて体験したのですが、暗闇に入る前に緊張していることに気づき、「この感じ、知っている」と思ったら、学生時代に予備知識のほとんどない未知の国に行った経験に似ていたんですね。風景の予想もできない、どんな文化があるのかもよくわからない国に入国する前のような、そんな気持ちでした。私の学生時代はパソコンもスマートフォンもなく、今ほど情報がなかったので、特に。ジブラルタル海峡を船で渡ってモロッコに入国する前の、不安感と好奇心と興奮が織り交ざったような気持ちに似ていました。ですが、暗闇の中に入ってみると、私、すごく喋っていたんですよね。一緒に体験したみなさんと声を掛け合っていました。普段の生活ではこんなに知らない人に向かって話しかけることなんてないなということも思いました。これも、見知らぬ国を旅するときに似ていました。街の様子をよく知らないから周りの人に話しかけるし、知り合った旅人同士協力しながら宿を見つけたり、次に行く街を相談したり…。Upload By 発達ナビ編集部志村真介さん(以下、志村):知らない人にただ話しかけるだけではなく、「ここに段差があるよ」とか、相手に対して安全な情報を発していませんでしたか?これは別に誰かを助けてあげないといけないルールだからそうするのではなくて、必要な情報だから共有しようとしていたのではないでしょうか。もしこれが、「病気や障害のある人を助けよう」というメッセージが根底にある体験だったら、「楽しんではいけない」と思う人がたくさんいそうです。でもそうではなくて、あくまで「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」はエンターテインメント、楽しむ体験なんです。暗闇というのはこれまで、人間がものすごく恐れていたもので、火を焚き、灯りをともすことで安心を得てきたのです。人は、明るいところ、都市に集まるものでした。ところが、都市の中にこの暗闇をつくって体験するというのは、真逆のことです。そこで怖いはずの暗闇を体験した人はみんな、人の体温を感じたとか、自分と人との境界線が曖昧になった、と話します。暗闇をポジティブに変換できる装置となったのです。これは(ダイアログ・イン・ザ・ダークの)開発者、アンドレアス・ハイネッケによる大発明だと思っています。――たしかにそうですね。暗闇をポジティブに変換する装置、まさにそうでした。目に見えない壁をなくしていくのはダイアログ=対話Upload By 発達ナビ編集部――そもそも、ダイアログを日本で開催しようと思われたのは、どうしてですか?志村:ダイアログは、ドイツの哲学者・アンドレアス・ハイネッケが1989年に始めた活動で、現在世界50か国で開催されています。私が最初にダイアログについて知ったのは、1993年の日経新聞に掲載された小さな記事でした。その記事が伝えていたのは、ウィーンの自然史博物館を真っ暗にして、普段の生活で目を使わない(視覚障害がある)人がその中を案内して、最後にはバーがあってみんなでお酒などを飲むという内容でした。普通、展示物を「見せる」博物館が何も「見せない」、なのにチケットは完売。しかもハイネッケは、世界中にこれを展開しようとしている。その当時、私はマーケティングの仕事をしていたので、目に見えることが付加価値だと思っていました。だから、すでに成熟しているヨーロッパでは、物ではなく、時間や人との関わりといった目に見えない付加価値を提供して、お客さまがチケット代を払って楽しんでいるというのが、ものすごい衝撃だったんですね。その記事を見て、新聞社経由でハイネッケに手紙を書き、ようやく日本で初開催できたのが1999年。そのときは常設ではなく単発のイベントとしての開催でした。そこから今に至るまでも、たくさんのことがありました。――目に見えない付加価値を提供すること、2020年代の今、ようやく理解できるようになってきたと思いますが、1990年代当時はまだまだ考えにくいことでしたよね。志村:ハイネッケがダイアログをスタートした1989年というのは、東西ドイツの壁が崩壊した年。それから30年ほどの時間が経った今、物理的な壁はないけれど、人にはそれぞれ目に見えない壁がある。それはそれぞれの人の思い込みによる壁なんですね。障害の有無とか、男女の違いとか、国籍の違いとか、さまざまな違いが人を分け隔てています。ダイアログには、暗闇の「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、無音の静寂を聴覚障害者がアテンドする「ダイアログ・イン・サイレンス」、高齢者との対話「ダイアログ・ウィズ・タイム」がありますが、これらのダイアログ・シリーズが挑戦していることは、こうしたそれぞれの思い込みによる壁を溶かしていくことなんですよね。宇宙飛行士から見た地球には国境線は見えません。それなのに分けてしまうのは、何らかの固定観念とか既成概念があるから。それを1回リセットするために、ダイアログ・シリーズがあります。――ダイアログ・シリーズはエンターテイメントですよね。こうした社会課題に取り組むプロジェクトは、一般的にはまじめに学ぶものが多いと思いますが、「楽しむ」という形も新鮮です。志村:ソーシャル・プロジェクトには、さまざまなアプローチがあります。イソップの「北風と太陽」の北風タイプの、厳しい現実を突きつけていくアプローチもあるでしょう。一方でダイアログの場合は、太陽タイプで、楽しみながら見えない壁を壊していきます。だから、ソーシャル・エンターテインメントと呼んでいます。自分とは違う世界の人だと思っていた視覚障害者や聴覚障害者と一緒に遊ぶことによって、彼らの文化に興味がわいたり、向こう岸にいる人ではなく地続きにいる人だったと理解したりしていく。楽しみながら、主語を「私」から「私たち」と変えていく、違う文化の人も包含していくような体験になることを目指しています。「いま、ここに、私がいます」を実感する暗闇Upload By 発達ナビ編集部――異なる文化に対して、その国の人と友達になると印象が変わるという体験は、これまでにもありました。暗闇に入る前に緊張したのは、知らないから怖かった、ということもあるのでしょうね。志村:そうですね。知ることで怖さがなくなっていくのは、たとえば留学がその体験に似ていると思いますよね。知らない土地のことを知りたくて留学するわけです。でも実際に留学してみると、今度は逆に質問されることがあります。「あなたはどこから来て、あなたはどういう考え方で、その背景にあるあなたの国の文化はどういうことなのか」と。自分自身について聞かれるわけです。それと同じことが、暗闇でも起こります。50ヶ国で行われている「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の暗闇の中で、アテンドは必ず「あなたはどこですか」と質問します。すると、どの国の参加者も、多くが共通して言うセリフがあります。それは「私はここです」。ふだん私たちは「今ここにいる」と意識していないことが多いのではないでしょうか。「昨日あのとき、こうすればよかった」とか、「あと1時間したら出かけなくちゃ」とか、過去と未来に行ってしまって、「今ここ」にいないんですよね。でも、暗闇の中にいると「今ここ」しかなくて、過去も未来もありません。それは「本当の自分はここにいます」という、とても本質的なことでしょう。これを今読まれている方が、「あなたは誰ですか」と聞かれたとき、「発達障害のある子どもを育てる親です」という言い方もあるかもしれませんが、それは「あなたは誰ですか」という問いとは本来関係ないことなのです。たとえば「視覚障害者の山田さん」と言うと、「視覚障害者の」という枕詞がついた時点でその人に対する見方にバイアスがかかります。本質的な山田さんは単なる山田さんで、その山田さんの一部として目を使ってないという特性もあるということ。発達障害のある子どもを育てているという一面があったとしても、それがその人の人生の中核ではありませんよね。そういう「今ここにいる私」というものを、暗闇では体験することになるのです。―「ADHDのある○○さんのお母さん」ではなくて、自分自身に戻れる場所なんですね。子育てする中では、子育て優先で自分の時間は持てない、楽しむ余裕はないと思っている保護者の方も少なくありません。でも、「私自身」として楽しいと感じることをしていていいんだよ、どうしていると私は幸せなんだっけ、ということを思い出す場所になりますね、この暗闇は。対等な関係になれるからこそできる、本質的な対話Upload By 発達ナビ編集部――なぜ、暗闇の中だと、そういう本質的なことがスッと入ってくるのでしょうか。志村:それは情報を引き算しているからなんです。ふだん、学んだり楽しんだりするときは、情報を足し、掛け合わせて盛り込んでしまうのが、暗闇では情報がそぎ落とされる。日本文化は、引き算のじょうずな文化だと思っています。たとえば、俳句のように。言葉を短く、五七五の中に凝縮しますよね。本質的に、どこに心が動いたかという表現が、得意なのではないでしょうか。ハイネッケは、ラジオ局で目の見えないジャーナリストとともに働くことになったときに、ダイアログ・イン・ザ・ダークの原点を考えつきました。仕事が終わって部屋を出る前に電気を消すと、日常生活で目を使う人は右往左往して出口を探すけれど、目の見えないジャーナリストはスタスタ帰っていく。助けるべき存在だと思っていた人が、部屋の灯りが消えただけで、自分を導いてくれる人になるという瞬間だったそうです。漆黒の暗闇をつくると、助ける側と助けられる側の立場が入れ替わるというだけではありません。視覚障害者も、私たちも、同じように目を使わないのです。そこで対等になります。対話は、対等な関係でないとできません。ダイアログでは、その対等になれる空間をつくっているのです。その空間があるからこそ、本質的なところに入っていきやすいのではないかとも思います。子どもたちのダイアログ体験を、未来の社会が変わる力にUpload By 発達ナビ編集部――ところで、2022年はどんな活動を展開していくのでしょうか。志村:今、「こども5000人たいけん!」プロジェクトを進めています。海外のダイアログは、国が子どもたちの学校教育の一環として展開しているところが多いのですが、日本ではまだです。小学校4年生ぐらいになると、人と違うところがかっこ悪く感じるようになることが多いでしょう。また、違うところがある子どもをいじめたりしてしまうこともある。そうした時期に、ダイアログを経験してもらいたいと願っています。そこで、まず佐賀県がふるさと納税を使い、2,000人ほどの県内の子どもたちに、学校教育として取り入れてくれました。そのときの子どもたちへのアンケートでは、ダイアログの体験後に自己肯定感が上がるということが分かりました。「あなたの希望はいつか叶うと思うか」、「自分に満足しているか」といった質問の回答が、体験後にはポジティブな方向に変化していました。ただ、こうした結果があっても、全国の学校で実施するに至るには時間がかかります。私たちは昨年クラウドファンディングを実施しましたが、そのときに、子どもたち5,000人に無料体験してもらうということを、リターンにしました。「こども5,000人たいけん!」によって起こる、10年後の未来の社会をみなさんがイメージして支援してくださいました。このプロジェクトは昨年から徐々に始まっていますが、今年5,000人に達成させたいと思っています。Upload By 発達ナビ編集部――それは楽しみですね。こうした取り組みに、コロナ禍の影響もありましたか?志村:コロナによって、人と人との距離感が変わりましたよね。見えない壁は、厚くなったとも思っていました。ところが、(一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ )代表理事の志村季世恵は、「マスクをしている恋人同士がマスク越しでキスをしているのを見たの。それって、3年前にはなかった風景じゃない?」と言ったんです。相手のことを思うからこそマスクを外さない姿。たしかに愛の伝え方は、すごく変わりました。病院でもこれまでは、愛する人の手をにぎって最期のときを過ごしたのが、ガラス越しになったりモニター越しになったりしています。でも、伝えたいことは同じ。「愛している」「ありがとう」といったシンプルなことで変わらないはずなんです。コロナによって愛の「伝え方」が変わったことを、ダイアログで再認識してもらえたらと、2月14日まで「LOVE イン・サイレンス」、「LOVE イン・ザ・ダーク」を開催しています。――気持ちの伝え方の変化、たしかにありますね。そして、たくさんの変化が、この約2年の間にありました。志村:ヨーロッパの13世紀にペスト菌やスペイン風邪がはやり、最悪の事態に陥ったあと、14世紀には人間性復興、ルネッサンスが起こったように、ここからまた新しい芽が出るはずだと信じています。コロナで1回リセットされたあと、立ち上がっていくのは、健常者だけでもないし、さまざまな障害のある人だけでもない、男性だけでも女性だけでもない。イメージで言うと、城壁のようにさまざまな形と大きさの石が重なり合い、お互いに摩擦を起こしながらも繋がり、しなやかでありつつ強靭になっていく。そんなイメージが、まさに多様性、ダイバーシティではないかと考えています。これまでとは、方程式が変わった気がするんですね。――今までなら、学校に行って学ぶ、会社に行って働くのがあたりまえだったから、障害のある人は通学・通勤だけでも大変でした。それがリモートが可能になったら、誰でも家で学べるし、働ける。働きやすさ、暮らしやすさが見直されて、みんなが力を合わせていくような社会構造に変わっていくことが望まれていますね。志村:障害のある人は、何らかの状態に適合しないということでもあります。でも今は、すべての人が学校や会社に通えないとか旅行できないとか、全員が適合できていない状態。今は全員がボーナブル、脆弱性を持っています。だから、社会が変わることによって自分がハッピーになると考えるのではなく、社会に内在している自分が変わることで、周りが変わって社会が変わるということを考えたいですよね。ダイバーシティについて考えるとき、外側から見るのではなく、自分も含まれているということを忘れずにいたいと思っています。Upload By 発達ナビ編集部文/関川香織撮影/鈴木江実子言葉の壁を超えて、人はもっと自由になる。純度 100%の真っ暗闇の中で、見ること以外の感覚を使い、驚きに満ちた発見をしていくエンターテイメント。体験を案内するのは、普段から目をつかわない視覚障害者のアテンドです。視覚以外の感覚を広げ、新しい感性を使い、チームとなった方々とさまざまなシーンを体験します。1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで世界 50ヶ国以上、800万人以上が体験。日本では 1999年に初開催し、これまで 23万人以上が体験しました。現在は東京・竹芝のダイアログ・ミュージアム「対話の森」で体験が可能です。※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティのサイトに遷移します1962年生まれ。関西学院大学商学部卒。コンサルティングファームフェロー等を経て1999年からダイアログ・イン・ザ・ダークの日本開催を主宰。1993年日本経済新聞の記事で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と出会う。感銘を受け発案者ハイネッケに手紙を書き日本開催の承諾を得る。2020年8月、東京・竹芝「アトレ竹芝」内にダイアログ・ミュージアム「対話の森」をオープン。著書に『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦 』(講談社現代新書)
2022年01月29日娘のグループホーム探し娘は、障害のある方の雇用の促進、そして安定を図るために設立された『特例子会社』に勤めていましたが、メンタル面の不調から体調を崩し入社3年目(2020年)に会社を休職しました。休職から2ヶ月、投薬の調整もあり精神的に徐々に落ち着いていきた娘。休職中でも生活リズムを崩さないために、卒業校や基幹相談支援センター(※)に相談に行ったり、かつて放課後等デイサービスや居場所として通っていたNPO法人などを訪れていました。※基幹相談支援センターとは障害のある人の支援を行う施設で、全国の市町村に設置されています。そこで支援者との定期的な面談を重ねるうちに娘は「グループホーム」探しを決意。娘のグループホーム入居に向けた取り組みがスタートしたのでした。大人のサポートブック娘がグループホーム入居を前向きに考え始めたのを機に、私たちは転居先の自治体の担当者さんやグループホームの職員さんと情報を共有するための娘のサポートブック(※)を作成することにしました。※サポートブックとは、支援者に知っておいてほしい、本人に関するさまざまな情報(特徴・接し方・支援方法など)をまとめたツール(冊子)です。児童・学生向けのサポートブックのテンプレート(雛型)はネット上にも多くあるのですが、成人済の娘に合った内容のものはなかなか見つからず、ジュニア/サポートブックテンプレート以前、基幹相談支援センターの勉強会でもらった冊子「親心の記録®」(発行/一般社団法人日本相続知財センター®本部)は秀逸なのですが、手書きでの記入が大変なのと、情報更新のしづらさが難点でした。Upload By 荒木まち子その後「親心の記録®」の内容をネットでダウンロードもできるようになりましたが、PDFなのでやはり手書きの記入や情報の更新には時間がかかります。「親心の記録®」PDF無料ダウンロードそこで私たちは、今の娘に必要と思われる項目を集めたオリジナルの『大人のサポートブック』をパソコンでつくることにしました。本人がサポートブックをつくることの利点幸いなことに娘はパソコンでの入力作業が得意です。また休職中で時間に余裕もありました。なので娘には・住所、氏名、生年月日や血液型、・緊急連絡先・使用している福祉サービスの種類・現在かかっている病院や飲んでいる薬・アレルギーについて・得意なこと、苦手なこと・趣味・有効な指示の方法・身辺自立の程度などをまとめてもらいました。この作業は娘が自分自身を改めて知る良い経験にもなりました。親が作成したもの保護者の私は・成育歴※・病歴・過去に利用したことがある医療機関と診察券番号・ヒストリーシート(学校や所属名)・利用している施設や関係機関の連絡先と担当者・保護者から見たフェイスシート(日常生活の自立の度合いを示したもの)などをまとめました。※生まれてから現在までの出来事(大きな怪我やいじめ、服薬など)を時系列で表にしたもの。成育歴は病院転院時や新たな支援機関にかかるとき、障害年金申請時などにも役に立つので早いうちからつくっておくのがおすすめです。ライフステージ(入園、入学、進学)が変わるごとに情報を更新しておくと良いと思います。追加や差し替えもできるようにさらにそこに今回は支援者には渡さないけれど、今後の事を考え障害者手帳や障害年金証申請時の書類や診断書、今までの知能検査結果のコピーも付け加えました。そして、これらの書類を差し替えや追加もしやすいようにバインダーにまとめました。Upload By 荒木まち子すると娘のサポートブックは『娘の歴史』といった感じのそこそこ厚い冊子になりました。Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子そして次のステップへ6ヶ月の休職期間を終えるころには娘のメンタルは落ち着き、娘は以前と同じ職場に復職しました。そして2020年1月末、グループホームから直接会社に通勤をする1週間の体験宿泊が決まりました。コロナ禍ではありましたが、娘のグループホーム入居に向けた動きは着々と進んでいったのでした。執筆/荒木まち子(監修:井上先生より)いよいよ娘さんがお家から出て、生活面でもグループホームでの自立の第一歩を踏み出すということで不安もあると思います。その中で、サポートブックを一緒につくるということは、本人と保護者共に実際の生活をイメージしていくのによいですね。保護者が書くこととしては、かかりつけの医師の連絡先、お子さんの血液型、持病、調子を崩しやすい病気など医療的な情報も大切です。重要な情報は、サポートブックとは別に普段身に着けられるタグをつくっておくのがおすすめです。お子さんの名前・血液型・持病、保護者の名前・連絡先、かかりつけ医の名前・連絡先などを記載しておくことで、急なケガや病気などをしてしまったり、被災してしまった場合などに役立ちます。また、保護者が書く部分もお子さん本人に確認してもらいながら、表現にも気をつけて書くことが重要です。グループホームでの普段の配慮事項に関しては、実際に生活しながら変更したり加えたりしていけるとよいですね。
2022年01月28日とっても育てやすい子でした!11年前に生まれてきてくれた長女ゆい。何の問題もなく、すくすくと成長していきました。首が座って、お座り、ハイハイ、つかまり立ち…普通に夜泣きがあって、普通にイヤイヤ期があって。そして普通に時期が来ればおさまっていたので、特に心配することもなかったです。性格は大人しめで発語も問題なく、年齢ごとの健診で指摘されることも何もありませんでした。母子手帳の発達項目にはすべて「できる」に○をつけて「悩みは特にない」って書いてたっけ。まさに育児書通り、平均的な成長をしていたと思います。…といっても、私はかなり大雑把な性格だから、いろいろなサインを見落としてた可能性は大いにあるけどね。勉強の遅れが目立ち始めて…Upload By 吉田小学校3年生あたり、勉強の難易度が上がってきてからどんどん授業についていけなくなりました。国語は特に漢字が苦手で、書く文章はほとんどひらがなでした。先生にも「文字というよりカタチでとらえて書いている感じがします」と言われたことがあります。算数は、文章問題を前にフリーズするようになりました。いったい何を問われているのか、意図が読み取れないといった感じです。テストは真っ白で提出することが多くなっていました。参観日に算数の授業を受ける姿を観たときは、先生の話を明らかに聞いておらずボーっとしていたので焦りました。今思えば、サボっているのではなく先生が何を言っているのか理解できなかったんですよね。呑気すぎる私もちょっと焦りだして、通信教育や個別指導塾に行かせてみたけどあまり効果はなかったな…。そして小学4年生になったとき、担任の先生に呼び出され、「発達検査を受けてみませんか?」と言われて…調べてもらったところ、○軽度知的障害○ASD○場面緘黙(ばめんかんもく)があると教えていただきました。周りは厳しい…Upload By 吉田診断が出て、将来のことがものすごく不安になっちゃいました。なにか社会的支援はあるの?仕事ってどんなものがあるの?そこからは、スマホにかじりついて検索する日々。LITALICO発達ナビも、このときに読みまくっていました。私は焦っていましたが、家族は…Upload By 吉田夫はこんなんだし、Upload By 吉田義理の両親はこんな感じ…ついにはお世話になっているスクールカウンセリングの先生に「先のことを考えすぎですよ(苦笑)」と言われて、一旦立ち止まることにしました。Upload By 吉田そんなゆいですが、学校や本人と話し合い、小学校5年生から算数だけ通級へ通っています。勉強についていけず自分に自信をなくしていたゆいに元気が戻ってきたのが一番の収穫でした。でもこれから先、もっといろんな壁が出てくるだろうし、親としてはいつまでも心配してしまうけど、これはきっとどんな家庭でも同じことだよね。わが家も勉強や今後の進路、将来の就労はどうなるんだろうと不安は尽きませんが、たくさん悩み、笑いながら成長していきたいと思います。それには夫の協力も欲しいところだね(単身赴任で月イチの帰宅しかできないけど…)そんな日々をここでつづっていけたらと思いますのでよろしくお願いします。執筆/吉田いらこ(監修:三木先生より)子どものこととなるとついつい先のことまで心配してしまうのが親というものです。でも、先を見すぎて今を見失うことが往々にしてありますよね。スクールカウンセラーさんのコメントでそれに気づけたことはとても良かったと思います。そしていらこさんがおっしゃるように、実は子育ての悩みの本質は「どの家庭でも同じ」なんですよね。障害があるといろいろとそのせいだと考えてしまいがちなのですが、とってもフラットで素晴らしい視点だと思います。
2022年01月28日なかなか勉強モードになれない息子Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)がある息子のリュウ太。小学生のころは、感覚過敏があって教室にいることがつらかったり、教室での勉強に集中できないことがほとんどでした。中学校では、遊びほうけていました。せっかく通っている塾をさぼったり、テスト勉強をいっさいやらなかったり…。高校受験を控えているにも関わらず勉強することを真剣に考えていないようでした。それは、将来のことがぼんやりしていて、イメージできていないことや、特性によって勉強に集中できないという理由があったようです。現在はそんな息子も23歳。最近になって息子に聞いてみると、将来のことに目を向けて勉強にちゃんと取り組めるようになったのは18歳のとき。専修学校高等課に通っていたころからだったと言います。(遅っ!!)Upload By かなしろにゃんこ。なぜそれまで勉強に取り組めなかったのか。特に中学校のころ、一般的に将来について考え始めるようになる高校受験の時期に、どうして受験勉強に真剣に取り組めなかったのかを息子に聞くと、こんな答えがかえってきました。1、学校の勉強と塾の勉強と学校の宿題の3つは気持ち的にキツイ。学校に行くだけで疲れてしまっていた。「ボー――っと音楽を聴いたりくだらない動画を見て自分を癒したいって思っていたんだよね。勉強はそのうちやればいいだろうって後回しにしてた」2、イヤなことは追い詰められないとできない。追い詰められてもできない。逃げたくなる。「勉強ってどこまでやったら記憶できるか、分からなかった。できるまでやるには相当な努力をしなくちゃいけないのか?と疑問に思ってた。自分はそこまでの努力をしたことがないから、全く分からなかった」だから、親に促されて勉強をしてもパフォーマンスに留まり、身になる学習には結びつかなかったというわけでした。Upload By かなしろにゃんこ。当時を振り返って「勉強法が分からなかったから勉強なんてやったってムダだと思っていたし、いくつもの熟語や単語を暗記しても覚えたそばから忘れていく。本当にちゃんと忘れずに覚えてるだろうか?って再度確認するっていう勉強法が面倒くさかったんだよね」と言う息子。短期記憶や作業記憶など苦手という特性があったこともあり、思うように記憶ができず勉強につまずいていたのだなと思いました。成果が出ないとヤル気もなかなか起こらないというのは分かります。Upload By かなしろにゃんこ。「結局、『コツコツと覚えていく』『一つひとつ積み重ねていく』方法しかないんだって納得できるくらいの経験値が少なかったから、真剣に勉強に取り組めるようになるまで何年もかかってしまった」と息子は言います。「みんなはもっと簡単に覚えているんだろうと思っていた」とも言っていました。自分だけがスゴイ努力が必要なんじゃないかと思っていて、それをやるのは面倒くさいな…と感じていたそうです。周りのみんなも繰り返し暗記して覚えているんだと、あとになってから分かっていったようでした。Upload By かなしろにゃんこ。18歳のとき、息子が発見した「勉強モード」になる方法Upload By かなしろにゃんこ。そんな息子は、好きな動画を見て、楽しく気持ちのいい時間を味わいながら勉強を始めるとスルリと勉強に入っていけるんだと専修学校の高等課3年のときに自分で発見!「自分は好きなものと勉強を結びつけてスタートさせるとやりやすいと分かったんだ」と言っていました。Upload By かなしろにゃんこ。また、「勉強しているのに『お風呂入りなさい』とか『学校からの手紙出しなさい』とか声かけられると調子よく勉強モードをつくった雰囲気が台なしになるから声をかけないでほしいって思ったね!」とも言われました。22時ごろになると声をかけて、就寝の準備を促していたのが息子にとっては勉強の妨げになっていたと知り、母は反省です…。息子は、自分なりのやり方を見つけてから勉強への苦手感が少しずつ軽減・解消されていったのではないかと思います。Upload By かなしろにゃんこ。調子よく勉強できるようになる脳年齢があるのか?精神年齢と関係があるのか?知りたいところです。現在息子は23歳となり、車の整備士から異業種に転職して再度資格取得に向けて専門の講習などを受けています。学生のころと変わらず周りについていくのが大変のようですが自分なりの集中法で毎日机に向き合うことができるようになっています。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)お子さん自身が自分のやりたいことや、自分に合った勉強法を見つけることができたのはとてもすばらしいですね。思春期以降にこのことに気づけることは、とても重要だと思います。義務教育の間はどうしても周りの人がしていることを同じペースで学ばなければいけないので、学習面に凸凹がある子どもたちにとっては時として苦痛になることもあると思いますし、好きなことに出合わないと、勉強する意味もわからず、やる気も起きないことが多いかもしれません。将来やりたいことや、学びたいこと、好きなことがあれば、大学を待たずに先にかじってみるのもいいかもしれません。自分が『やりたいこと』をやるには、「どの分野を学習すればよいのか、自分には今何の分野の学習が足りないのか」が分かることで、苦手と感じる分野であっても勉強する意欲につながったというケースも実際にあります。また、現在の専門学校や大学、大学院の制度は柔軟になっています。特定の領域だけが得意だというお子さんにも、チャンスはあります。勉強が好きになる時期に脳年齢というのがあるわけではありません。むしろ今の息子さんは「何歳までに○○を勉強しないといけない」というものに縛られず、『好きなこと、やりたいこと』を見つけ、それを学習することの価値を見つけられたのだと思います。本来の学ぶ喜びに出会えた息子さんは、新しい価値観や人生にこれから出合えていくのではないでしょうか。
2022年01月25日おうちで手軽にできる方法が、療育あそびを気長に続けられるコツこんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回のコラムは、おうちでできる親子あそび・療育あそびのうち、特に、指先などの感覚を育てるのに役立つ、寒い冬にオススメの手軽で楽しい手探りあそびをご紹介しますね。うちの子たちが幼かったころは、身近に頻繁に通いやすい療育施設などがなかったこともあり、私は独学で「感覚統合」に関する書籍等を参考に(※)、子どもの興味・関心や、親の都合やライフスタイル、住宅事情などに合わせて、家庭でできる療育あそびを無理なくできる範囲で取り組みやすいようにアレンジし、手軽に楽しみながらできる工夫を試行錯誤して気長に続けてきました。おかげで、「発達障害」の診断のある子もない子も、いつの間にかできることが増えたり、落ち着きやすくなったり、学校で得意分野での実力が発揮しやすくなったりして、総合的な適応力が次第に高まっていったように思います。ただし、うちの経験上、「療育」というのは、そんなにすぐに結果がでるようなものではないように思います。そして、親のほうも毎日慌ただしい中で、まとまった時間を療育のために確保するのは負担やプレッシャーに感じてしまうこともあるでしょう。ですから、療育は日常生活の延長線上に、自然な形で「あそび」として組み込んでしまうのが、親子で負担なく、長期間根気よく、楽しみながら続けられるコツだと思っています。ちなみに、うちの「療育あそび」の実践モットーは、「さり気なく」「ついでに」「いつの間にか」なので、3人の子どもたちは「療育されている」ということに、全く気づいていませんでした。……とはいえ、実は「療育」は、そんなに特別なことではありません。私自身は、「世の中の大半のあそびは、何かしらの療育になっている」と考えているほどですが、家庭で実践する際の2大ポイントは、・興味の幅の狭い子に「楽しみながらいろんな動きを継続的に経験させていくこと」・子どもがあそびに興味を持ったら「できるだけ気長につき合って(または見守って)あげること」でした。(※参考書籍:『感覚統合をいかし適応力を育てよう1.発達障害の子の感覚遊び・運動遊び』監修・木村順/講談社、『発達障害のある子どもの運動と感覚遊びを根気よくサポートする!』監修・木村順/日東書院、ほか多数)触覚過敏のある子や不器用な子には、手探りあそびがオススメ!では、うちで実際にやってきたたくさんの療育あそびのアイデアのうち、今回は「手探りあそび」をピックアップ。手探りあそびは、どんな子にとっても楽しいあそびだと思いますが、特に、肌が敏感で触るのが苦手な素材がある子や、手先が不器用でおはしやコンパスがうまく使えない子などにオススメです。うちの次男も、小さなころは、本当は工作が大好きなのにのりや絵の具が触れませんでしたが、(このあそびだけで全てが緩和・改善したわけではないものの)いつの間にか、触れても大丈夫になったものが増えたように思います。では、毎日の日常生活の延長線上で手軽にできる、寒い冬にオススメな楽しい手探りあそびを紹介します。Upload By 楽々かあさんおやつタイムを「お菓子くじ」形式にするだけで、毎日楽しく手探りあそびができます。もし、おうちにケーキやお歳暮の空き箱などがあれば、簡易的な「くじ引きBOX」にリメイクするのはどうでしょう。【作り方】箱の上面を丸くくり抜いて、不透明クリアファイルなどを三角形に切って、裏側から両面テープで貼り付けるそして、個包装のアメやクッキー、おせんべいなどの小さなお菓子などを沢山入れて、「1人3個まで、取っていいよ」などとすると、自分の好きなお菓子をなんとか探り当てようと、真剣に指先の感覚を研ぎ澄ませて手探りしてくれます(欲しいものを間違って取ると泣いちゃう場合は、あとからきょうだいや親のお菓子とトレードOKにすると、ついでに交渉力もUPするのでGood!)。この「お菓子くじ」は、うちにあそびに来た子どものお友達にも大人気で、みんなで盛り上がっていました。ほかにも、ガチャガチャで集めたモンスターのミニフィギュアなど、その子が大好きなものを入れて、どのキャラクターか手探り当てっこゲームをしたり、スーパーボールなどを詰めて、その中から小さな人形をレスキューごっこしたりと、「くじ引きBOX」を1回作っておくと、子ども自身のアイデアで勝手にいろんなあそびに発展していくことも。また、「工作は苦手」「作るのが面倒」という方は、巾着袋やナップザックなどでも同様のことができます。それから、たとえば荷物で両手がふさがっているときなどに、「ママのポケットから、カギを取ってくれない?」など、日常生活の中で、ちょっとした手探りを促す声かけを意識してみるだけでも、いつかはチリも積もれば山となるかもしれません。小さなお子さんとのお風呂タイムも、不透明の入浴剤などを入れるだけで、手探りあそびがついでにできてしまいます。ただし、感覚が敏感な場合には、ニオイや色、素材などに抵抗感がないものを選んでいただければと思います。水の中が見えないとお子さんが不安になる場合は、最初は半透明の入浴剤から始めて、ゆっくり慣らしていくといいでしょう。そして例えば、うちでは……・お風呂の中に沈んでいったおもちゃや石鹸などを、手探りでつかまえる・指などを動かして、水中かくれんぼ(ときどき、水面からチラッと見せると盛り上がるかも)……などを、親・きょうだい同士でときどきやっていました。最近は、いろんな種類のバスボム・バスボールも市販されていて、中に小さなおもちゃやマスコットの入ったものや、カラフルなもの、泡がいっぱいでるものなどもありますし、簡単にできる手作りキットなどもあるので、お風呂があんまり好きじゃないお子さんも、あそんでいるうちに、ゆっくり湯船で体の芯まで温まることができるかもしれませんね。また、お風呂ついでにできる、「なーんて書いた?」と、背中に文字を書いて当てるクイズや、いろんな素材で身体を洗ってみることなども、触覚の過敏さを緩和し、ボディイメージを育ててくれるようです。ただし、もし、お子さんが、こういった触れ合いあそびに抵抗感があったり、刺激が強過ぎてしまう場合には、無理のないところからで構いません。最初は「パパの背中に落書きしていいよ」などと、お子さんのほうから自分のタイミングで触ってもらい、あそび自体に慣れてから、目で確認できる手のひらなど、大丈夫な場所からゆっくり始めたり、服を着ているときにちょっとだけトライしてみるのもテだと思います。日本の冬といえば、コタツとお茶とみかん、ですよね。コタツの中は、闇鍋のようなブラックボックスの空間となっているので、ぬくぬくタイムのついでのついでに、指先だけでなく、全身でちょっとした感覚あそびをするのにうってつけではないでしょうか。例えば、うちでは……・足の指先で、子どもにちょんと触れて「だれの足かな〜?」「これは、〇〇ちゃんのどこだろね?」と当てっこ・「はい、みかん、受け取って」などと、コタツの下をくぐらせて、手探りでものを渡す・足の裏などをこちょこちょする、くすぐり遊び(刺激を強く感じる場合は、くつ下をはいてる時から慣らすとGood!)……などと、ちょっとしたあそびのヒントやきっかけを与えると、今度は子どものほうから、いろんな方法でタッチングクイズのアイデアを次々と考えてくれました。とはいえ、昨今コタツのないご家庭も多いでしょうし、見えないことへの不安感が強いお子さんなどは「コタツに入るのが怖い」という場合もあるでしょう。そんなときは、使い慣れた毛布やひざ掛けなどを使っても同様のことができるので、無理のない範囲で、ちょっとしたスキマ時間に「ついでに」「楽しく」、タッチングクイズのチャンスを見つけていくといいと思います。現在は、子ども達もすっかり大きくなって、家族みんなでコタツに入ると足を伸ばすスキマもなくなってしまいましたが、今でも毎年コタツを出すと「ワクワク感」があるようなので、小さなころの楽しいコタツあそびの思い出が記憶に根づいているのかもしれません。おうちでの療育あそびは、子どもが笑えばOK!感覚過敏の中でも、特に触覚過敏の問題は、親子の愛着関係や周りへの興味などの発達にも影響があるようなので、私はうちの子たちの発達面の課題の中でも優先順位を高くして、家庭でできるときにできる範囲で、手軽な感覚あそびを続けてきました。また、療育あそび以外にも、日頃から日常生活の中で、自然な流れでちょっとしたタッチやスキンシップをキモチ多めに取るようにも意識してきました。触覚の過敏さが少しでも緩和されると、子どもが落ち着きやすくなり、お世話もラクになるので、子育ての上でもメリットが多かったように思います。ただし、療育はなかなか結果が出ないと不安や焦りが強くなりますし、子どももプレッシャーを感じ取ってしまうと、どんなに良い方法でも、主体的に気長に続けられなくなってしまうかもしれません。ですから、親のほうも「トレーニングしなくては!」「改善しなくては!」などと気負わずに、家庭での療育は、あそびの延長として、「子どもが笑ったら効果あり!」くらいの気持ちでいると、たとえお子さんが期待通りに取り組めなかった場合でも、気長に続けられるのではないでしょうか。そして、温かいイメージと一緒に刻んだ、毎日の生活の中での親子のちょっとしたふれあいの思い出は、子どもが成長して少々取り扱いが難しい時期になってからも、その子の心や親子関係の根っこを支えてくれるのだと、私は最近よく実感するようになりました。たとえスグに結果がでなくても、あれこれと親がやってみたことは、ちゃんとお子さんの成長の栄養になっていますからね。文:大場美鈴(楽々かあさん)(監修・井上先生より)大場さんの書いておられるように、触覚あそびの中でのアタッチメントは親子の関係性を深めるのに有効なやり方だと思います。 療育やトレーニングは、自然なあそびのなかに入れ込んで行えることもたくさんあります。ソーシャルスキルトレーニングなどで行うロールプレイなども、日常生活の中で自然な形で機会をつくることができます。日常生活の中での機会設定は、般化しやすいというメリットもあります。わが家では、子どもが小さいころは「宝探しゲーム」をよく行っていました。絵や文章を手掛かりにおもちゃを探すゲームです。ヒントの出し方によっては概念理解も進む(例えば、「れいぞうこの下」という空間概念など)あそびです。子どももわくわくしながら一緒にあそんでいましたよ。(新型コロナ等の影響で)家から出られないときの遊びとしてもお勧めです。大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2022年01月24日場面緘黙かもと次女に伝えることは特に悩まなかった次女が小学校1年生のときに、話せない様子を見て場面緘黙を疑い学校に相談、スクールカウンセラーにも「場面緘黙かもしれない」と言われていました。学校でずっと話せない次女。その姿を見ていて一番心配していたのは、次女自身が「話せないなんて、私ってダメだな…」と自分自身を責めて、自信を失ってしまうのではないかということ。「話せないこと」はもちろん本人にとってはとてもつらく苦しい大きな事実ですが、それは次女自身の一部であって、それがすべてではないことを知ってほしいと思っていました。すべて自分自身のせいではなくて、そういう病気があって、助けが必要なこともあるし、実際改善している人も居ると知ることは、本人が暗中模索の中で場面緘黙と共に過ごしていく中での道しるべになると思いました。なので、本人に言うか言わないかは特に悩むことなく、「場面緘黙について正しい知識をつけてほしい」という気持ちで、本人に伝えることにしました。実際にどう伝えたか次女が小学校2年生になり、病院を受診する前には本人に場面緘黙について話していました。私自身、説明が下手だしうまく伝えられる自信も無かったので、子ども向けに場面緘黙について書かれている本を長女と次女と一緒に読むことに。Upload By まりまり次女の反応はどうだったか私が説明しながら、3人で本を読み進めるといった感じでした。次女より、長女の方が興味深く見ていた気がします。Upload By まりまり次女自身は「なんでか分からないけど学校で話せない」ということは自覚していたので、「ほかにもこういう人いるんだね?」と、本の説明から話せない理由については少し理解してくれたかなという感じがしました。その後もその本は手が届くところに置いておいて、たまに引っ張り出して見ていました。まだ小学校2年生だったので完全に理解したという感じではありませんでしたが、「自分が話せないのは場面緘黙というもので、そういう人も世の中にはいる」程度の理解はできたのかな?と思いました。「場面緘黙」って知ってよかった?あのころは伝えるのが当たり前くらいで迷いなく次女に場面緘黙について伝えましたが、今思うと「本当にそれで良かったのかな」という気持ちもわいてきました。そこで、次女に直接聞いてみました。Upload By まりまりUpload By まりまりUpload By まりまりこんな反応でした。次女にとっては、「病気については嫌だけど、聞いておいてよかった」という感じのようでした。告知することを迷わずに伝えてしまったけど、わが家の場合は、結果として言って良かったようです。私から見ても次女が、場面緘黙に対して、そして自分自身に関しても、少し客観的な視点で見られるようになったかなという気がしています。執筆/まりまり(監修:井上先生より)告知に対して悩まなかったとは言え、子どもへ告知をすることは親御さん自身にも勇気がいることです。タイミングや伝え方の工夫などもされ、がんばって伝えましたね。次女ちゃんの理解にも繋がり良かったです。「告知は何歳位までにしなければならないでしょうか」という質問をよくもらいますが、適切なタイミングはお子さん一人ひとりで違います。まりまりさんの体験のように、きょうだい一緒の方がいいか、時期や場面をずらして伝えた方がいいかなども大きな課題です。告知をする前の条件としては、お子さんの好きなことや得意なこと、そして苦手なことがあることを親子で共有・理解できていることが重要です。告知をする前に親御さんが、診断に関する適切な知識を身につけておくことも必要です。また一度で理解できない場合も多いので何度かに分けて理解しやすいように伝えていくいくことが大切かと思います。
2022年01月24日マンガで自閉症スペクトラム(ASD)を学ぼう!マンガで分かりやすく発達障害が学べる『マンガで学ぶ発達障害』シリーズ。自閉スペクトラム症(ASD)について分かりやすく解説した3つのコラムをまとめてご紹介します。主に社会性と対人関係、コミュニケーションの困難、行動や興味の偏りなどの特徴があると言われている自閉スペクトラム症。その特徴の詳しい説明や、自閉スペクトラム症の診断や治療方法、困りごとを解消するために行いたい療育について、強いこだわりがある場合が多いASDのある子への接し方など、公認心理師の井上先生の解説とともに詳しく解説します。自閉スペクトラム症(ASD)は先天的な発達障害の一つで、・社会性と対人関係・コミュニケーションの困難・行動や興味の偏りの2つの特徴があると言われています。このコラムでは自閉スペクトラム症の特徴や原因について解説します。自閉スペクトラム症の医学的な治療の話や療育方法を解説します。自閉スペクトラム症の特性に合わせてトレーニングをしたり、環境調整をすることで、困りごとを改善したり、得意なことを伸ばしたりできるのが療育です。そんな療育の原則『SPELL』についても詳しく説明!自閉スペクトラム症のある子どもは、強いこだわりや特性などを持つことが多いです。どのように接すればいいのか、9つのポイントとともに解説します。まとめ自閉スペクトラム症のある子は、ものしりだけど、興味の対象が独特だったり、知識に偏りがあることが多く、一人で遊ぶのが好きでお友達に関心をしめさない、初めてのことが苦手で不安にもなりやすいです。ですが、そのユニークな感性を尊重し、接することで、唯一無二の個性となっていきます。まずは自閉スペクトラム症のある子どもそれぞれが抱える苦手なこと、困っていることを知って、その世界を一緒に楽しむことが成長や生きやすさにつながっていくはずです。
2022年01月23日春には中学生になる予定のコウですUpload By 丸山さとこついこの間小学生になったような気がするのに、気がつけば春には中学生になるコウです。相変わらず工作とゲームとおしゃべりが好きで、学校のことから最近興味を示している歴史の話まで「少し静かタイムにしない?」と言いたくなるくらい毎日あれこれと話してくれます。そんな風に毎日を一緒に過ごしていると「もうじき中学生になるのに変わらないな~」と感じてしまうコウですが、ここ半年間で身長も私を越えて声も低くなり、急に”中学生間近な雰囲気”になってきました。スクールカウンセラーの先生は、コウの現状を見て『今は落ち着いて過ごしていても、中学になってからはいろいろな壁にぶつかる可能性は高い』とおっしゃいます。Upload By 丸山さとこ「6年間の小学校生活で大体のクラスメイトは『丸山君はこういう人だな』ということをだいたい分かっているので、学校生活の中でのちょっとしたズレは助けたり流したりすることができています。ですが、中学になれば環境の変化と忙しさで、みんな自分のことだけで手一杯になることが多いです」「中学ではこの小学校以外からの生徒の割合が多くなります。丸山君を知らないお子さんが多い状態になると、今のように周囲からそのまま受けいれてもらうことは難しくなるかもしれません」…と、スクールカウンセラーの先生は現時点で予測される今後の可能性についてお話ししてくださいました。厳しい予想ですが、『今までのコウを見てるとな~実際そんな感じだろうな~…!』と私も思います。「そのときどきで対応していこう」と夫婦で話し合い思わず五七五でボヤきたくなるくらい、コウの中学校生活がどうなるか予想できない今現在の私です。先輩保護者の声を聞いても”コウと似ている児童のケース”ではないので、あまり参考にはならなさそうです。Upload By 丸山さとこ今分かることもいくつかはあります。小学校よりずっと忙しくなること、持ち帰り用具と提出物の「あっ、忘れてた!」が今よりさらに増えそうなこと、指示に対して「え、こういう意味だと思ってた!」などの勘違いが増えそうなこと、など…必ずそうなるとは限りませんが、このままの流れでいくとトラブル増加の予感です。Upload By 丸山さとこ一方、小学校の6年間を振り返ってみると「できなかったこと・できたこと・できるようになったこと全て、理由も含めて長期的な見通しはつかないものだな」と思います。忘れ物一つとっても、コウのコンディションが関係してくるほか、クラスメイトの何気ない一言や先生方の対応などなど、いろいろな要素が絡むことで思いがけない展開になることはありました。先の展開は読めないとはいっても、何も予測を立てず準備もせず…というわけにはいきません。「見通しは立てつつ、そのときどきでこまめに現状を反映しながら動いていこう」と夫と話し合いました。小学校の入学前も、「肉が食べられないけど『一口でも頑張ろう』って応援してくれる先生だった場合はどうする?」「プリント持ち帰れるかな…」「コウが登校を拒否したらどうしようか?」などと、いろいろな気がかりについて夫と話したことを思い出します。Upload By 丸山さとこ先日のスクールカウンセリングにて、前述のような”中学入学にあたっての気がかり”について相談したところ、『小学校からも申し送りはあると思うが、現在通っている病院のドクターに一筆書いてもらうのも一つの方法』というアドバイスをいただきました。コウや周囲の状況が急に大きく変わる可能性はあまり見込めない今、「コウや周囲の状況が今すぐ変わらなくてもできることがある」という選択肢はとても嬉しいものでした。「あんなことが起きたらどうしよう」と身構えず、「今考えても分からないし」と投げ出さず…スクールカウンセリングなどの場で相談しながら、”コウと親それぞれができること”を探していきたいと思います。(監修:鈴木先生より)高校は選べますが中学は私立に行かない限り選べません。自治体によっては公立でも小中一貫となっている地域もあってスムーズに移行できる場合が増えていますが、今回のケースのように地域で違いがあります。今回の丸山さんのような場合は、必ず特性や留意してほしい点などを文書で申し送りをするよう保護者にアドバイスしています。言った・言わないなど、あとで問題となることが多いからです。中学入学後も不安なら、ドクターとは医療支援ファイル(担任からの問題点に対して主治医が答え、保護者が見てサインをする)を通じて教員と連携をとることをおすすめします。今後日本でも神経発達症(発達障害)に理解の深い小中高の一貫校ができることを祈願しています。
2022年01月22日偏食はなぜ起こる? 子どもの好き嫌いは「防衛本能」って本当?特定の食品への好き嫌いを極端にはっきり示すことを、一般に「偏食」といいます。偏食のある人の食事風景を目にすると、「わがまま」「親のしつけが悪かったんだろう」「食わず嫌いでは?」などと眉をひそめる人が多いかもしれません。けれど、発達途中の子どもの食に目をうつせば、偏食は決して珍しいことではなく、多くの子どもが通る道です。偏食はなぜ起こるのでしょう?大人にとっては、食事は栄養補給の手段であると同時に楽しみの一つ。「おいしいものを食べるために頑張っている!」という人も多いでしょう。でも、幼い子どもたちにとっては、食べることは不安を伴う行為でもあります。食べるということは、体の中に異物を入れるということ。もし腐っていたり、毒物だったりすれば、命が危険にさらされてしまいます。食べたことのない食材を警戒するのは、「本当に食べていいのか分からない」と本能が危険シグナルを発するから。「青い色は未熟でおいしくない?」「酸味は腐敗のサイン?」「苦味やえぐみは毒の可能性がある?」こうした本能的感覚は、体が未熟で免疫力も低い子どもにとっては、生き抜くために大切なもの。さまざまな味や食感を楽しめるようになるには、経験と学習を積み重ねることが必要です。ぺっと吐き出したり、見るだけで食べなかったりすることも、乳幼児期の子どもにとっては「本当に安全?」と確かめるための大切な経験なのです。好き嫌いをなくそうと「全部残さず食べなさい!」と叱ったり、「どうして食べられないの?」と責めたりするのは、逆効果になることも。怒られながら食べる食事が楽しいはずはありませんね。嫌な記憶と結びついて、ますます偏食が進んでしまう恐れもあります。子どもの偏食が気になるとき、大人はどんなアプローチをするといいのか。発達段階別にポイントを見ていきましょう。離乳食期の偏食克服は、「食べにくさ解消」が最大のカギ「同じものばかり食べたがる」「苦手な食材があるとお皿のはじによけたり、口からペッと出したりする」離乳食が進んで3回食になるころから、こうしたお悩みがよく聞かれるようになります。離乳初期はスムーズに食べていた赤ちゃんでも、成長するにしたがって「緑の野菜が苦手」「お肉を食べたがらない」など、特定の食材への好き嫌いをはっきり示すようになることも少なくありません。乳幼児期は、まだかむ力が弱く、消化機能も未熟です。奥歯まで生えそろっていなければ、繊維質の野菜や肉をすりつぶして食べることはできません。また加熱しすぎてパサパサした魚や肉は飲み込みづらく、口の中にいつまでも残ってしまうことも。離乳食には、発達段階に合わせたかたさ・大きさの目安がありますが、目安どおりに調理しても食べにくそうな場合は、より小さめ、やわらかめを意識するとスムーズに食べられるようになるでしょう。離乳食期をすぎたあとも、食べづらそうにしている食材やメニューがあれば、小さく刻んだり、とろみをつけたり、やわらかく煮込んだりするといいでしょう。食べ慣れていない食材や調理法は、赤ちゃんにとっては未知のもの。信頼する大人が食べている姿を見ることで、「これは食べても安全なんだ!」と確認でき、「食べてみよう」という意欲につながります。3回食になり、食べられる食材が増えてきたら、大人の食事と同じ食材で離乳食をつくり、いっしょに食卓を囲むのもおすすめです。赤ちゃんの偏食は、「見慣れていないから」「食べたことがなくて不安だから」という可能性も高いものです。ペッと出されたり、残されたりするのはがっかりしてしまうものですが、めげずに何度も食卓に登場させてみましょう。たとえ食べられなかったとしても、ほかの人が食べる姿を見るだけでも、赤ちゃんにとっては大きな経験になります。何度も繰り返し目にするうちに、ふとしたタイミングでパクッと食べられるようになることも。ただし、「食べなさい」と無理強いするのはNG。「食べられたらラッキー!」くらいのおおらかな気持ちでトライしてみましょう。幼児期の偏食克服のポイントは?気分を乗せる声かけも大切!離乳食を卒業すると、幼児食へとステップアップします。幼児期も、まだかむ力や味覚は発達途上。いろいろな味や食感を体験しながら、食の世界を広げていく段階にあります。なじみのない食材、はじめて目にするメニューには、警戒心を抱いたり、進んで食べようとしないことも当然あります。また自己主張が強くなり、「これはイヤ!」「○○は食べたくない!」と断固として拒否することもあるでしょう。子どもの食べる様子を観察しながら、食事を楽しみながら好き嫌いを少なくできるよう、工夫してみましょう。「もぐもぐと咀嚼するけれど、飲み込めずに出してしまう」「口に入れるけれど、かみにくそうな表情をしている」。こんなときは、かたさや大きさを見直してみましょう。ほとんどの食材が食べられるようになっていますが、咀嚼力は大人と同等とはいきません。大人と同じメニューでも、子ども用はこまかく刻んでやわらかく火を通す、食べやすくカットするなどの工夫が必要です。苦手な野菜はこまかく刻んでホットケーキやハンバーグにまぜたり、具だくさんのシチューに入れてよく煮込み、素材の味を分かりにくくしたりと、「嫌い!」と意識せずに食べられるように調理すると食べられるようになることも。また、好きなキャラクターのお皿に盛りつけたり、かわいい型で抜いて見た目を楽しく演出するのもよいでしょう。見た目の楽しさが、子どもの「食べてみたい」という気持ちを後押ししてくれます。ひと口でも苦手な食材を食べられたら、「すごい!」「食べられたね」と大げさなくらいほめてあげましょう。ほめられたことが自信となり、「次も食べてみよう」という意欲につながります。また、「お肉、おいしいね」「野菜の色、きれいだね」と好奇心を刺激するような声かけをしていくのもポイントです。偏食が気になると、つい「全部食べられるかどうか」にばかり意識が向いてしまいますが、自分が食べる姿をじーっと見つめられながらの食事は子どもにとっても気詰まりなはずです。「そのうち食べられるようになる」と気楽に考え、会話を楽しみながら食事をしましょう。学童期の偏食克服には「いっしょにつくる」もおすすめ学童期に入ると、かむ力もぐんと発達し、経験の積み重ねで「苦手だった食材が食べられるようになった」ということも出てくるでしょう。その一方で、嫌いな食材については、本人にも苦手意識が強くなり、どんなに調理法に工夫をしても頑として食べようとしない、ということもあるかもしれません。苦手な食材を出すときは、完食しやすいようにあらかじめ量を少なくします。頑張って完食できたら「お皿、ピカピカになったね!」「がんばったね!」とたっぷりほめてあげましょう。もちろんひと口だけでも食べられたら、大きな一歩! 完食することを無理強いせず、食べてみようと思ったことをほめてあげましょう。いっしょに買い物にいったり、調理をしたりするのも、子どもの食の世界を広げる体験です。苦手な食材でも「自分で選んだ」と思うと、どんな味なのかが気になったり、少しでも食べてみようと興味がわくものです。また、調理をいっしょにするのもおすすめ。食材の色の変化を見たり、においをかいだり、グツグツ、ジュージューという音を聞いたりと、調理は五感への刺激にあふれています。できあがった料理には、愛着もひとしお。喜んで食べてくれる家族の顔をみれば、ますます「自分も食べてみよう」という気持ちが動かされるはずです。挑戦する料理は、難しいものである必要はありません。野菜をちぎってサラダにするだけでも十分! 子どもがつくってみたいと思うもの、簡単にできそうなものからトライしてみましょう。苦手なメニューでも、いつもとは違う雰囲気のなかでなら、思わず楽しく食べられることもあります。たとえばお弁当を持って公園でピクニックをしたり、友達を招いてホームパーティをしたりなど、気分が盛り上がるイベントの中のメニューに苦手食材も入れておくのも一案。食べられたら、しっかりほめて達成感を感じられるようにするのもポイントです。発達障害がある子どもには、偏食の悩みが多い?発達障害や感覚過敏がある場合は、新しいものや知らないことに不安や緊張を感じやすく、偏食がひどくなりやすい傾向があります。(ただし、偏食があるからといって必ずしも発達障害があるとは限りません)また、感覚過敏があると、苦みやえぐみ、酸味などを強く感じて、食事がおいしいと感じにくいこともあるほか、食材の色がどぎつく見えたり、食感が気持ち悪いと感じて食べられなくなるケースもあります。たとえばトマトの種のつぶつぶが目に飛び込んできて「こわい」と感じたり、揚げ物の衣が口にささって「痛い」と感じたり、感じ方はさまざまです。食べ物の食感や味わいだけでなく、金属製のスプーンやフォークの冷たさにびっくりしてしまったり、口当たりが気になってしまって、食事に集中できないという子もいます。また、「白いごはんは食べられないけれど、混ぜごはんなら食べられる」「学校では食べられないけれど、家なら食べられる」、反対に「白いごはんしか食べない」「学校以外では食べられない」など、その子なりのこだわりが強いケースもあります。発達障害は外見からは障害の有無が分かりにくいため、なかなか理解が得られにくい障害です。発達障害の特性によって出ている偏食についても、「そんなの嘘だ」「家で食べられるなら、学校でも食べられるはずだ!」と責められてしまうことが懸念されます。学校の給食で毎日「好き嫌いなく食べなさい」という指導を受けつづけた結果、学校に行くこと自体が難しくなってしまうこともあります。ただ、発達障害があるときの偏食は、単なる好き嫌いではなく、「痛み」「恐怖」「堪えがたい不快感」などと結びついていることも少なくありません。無理やり食べさせようとすれば、ますます不安や緊張が強くなり、食べられる食材や量がいっそう狭まったり、食べること自体に嫌悪感を持つようになってしまうことも考えられます。偏食が激しいと、「栄養不足になるのでは」「成長に影響が出てしまう」と心配になるのも当然ですが、焦りは禁物。子どものペースに合わせて、ゆっくり少しずつ食べられるものを増やしていくことが大切です。こだわりや特性に合わせたメニューで「食べられた!」を増やそう発達障害の特性によって偏食が起きている場合は、まずは子どもが安心できることを最優先に考えましょう。偏食があっても食べられるもの、食べられる場所は、その子にとって安心できるもの。経験を重ねることで、安心を増やしていくことが大事です。たとえば、感覚過敏があってかたいものやサクサクしたものが口内に刺さるように感じられる場合も、しっとり煮たり、蒸したりすればおいしく食べられることもあります。「野菜の種や葉脈がこわい」という場合は、ポタージュスープのようにすれば不安がぐっとやわらぐかもしれません。えぐみや苦みを敏感に感じ取ってしまう場合は、葉野菜や肉類は下ゆでしてアクを抜いたり、トマト味やクリーム味など、好きな味に調味して食べやすくするのもいいでしょう。子どもの声を聞きながら、不安を取り除き、不快感なく食べられるメニューにアレンジしていきましょう。どうしても難しく特定の栄養がとりにくい場合には、サプリメントや栄養補助食品やジュースなどで補うなど、取り方を変える方法もあります。買い物に行ったり、調理をしているところを見せたり、お手伝いをしてもらうのもおすすめです。食べることに直結しなくても、食べ物にまつわる経験を重ねることで、食に関する認知力が少しずつ上がり、ふとした瞬間に「食べてみよう」という意欲を持つことにつながります。ベランダ菜園で野菜を育てたり、食べ物が登場する絵本を読んだりするのもいいでしょう。大人数での食事がプラスになるお子さんもいる半面、大人数だと食べられないお子さんもいます。食事をとる環境によって食べられるものや食べられないものが変わってくることもあるので学校や園と情報交換をすることが大事です。文部科学省では、「偏食により食事量が極端に少ない、反対に特定の食品の食べ過ぎにより成長や栄養の摂取状況に問題がある児童生徒」を個別的な指導の対象としています。学級担任や栄養教諭、養護教諭が、子どもの達成感や自信につながるような指導をすることを目指すもので、ほかにも特別支援教育コーディネータ、学校医などが連携することもあります。一方では過度な偏食指導によって園や学校に行くことが苦痛になる子どももいます。園や学校での偏食指導においては先生方と相談・連携することが大切です。極端に全体の食事量が少ない場合の偏食指導は、慎重に進める必要があります。また、地域の児童発達支援センターや子ども発達支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談してみるのもよいでしょう。食事は毎日のこと。親子だけで抱え込むと、日々の食事が大きな負担になってしまうこともあります。専門家からのアドバイスを受けることで、新しいアプローチ法が見つかることもあるはずです。参考:食に関する指導の手引第6章 第6章個別的な相談指導の進め方:文部科学省スモールステップで少しずつアプローチを!偏食が激しい子どもも、食に関する経験を重ねていくことで、だんだんと食べられるものが増え、食の世界を広げていきますし、偏食は時間が経てば解決する場合もあります。偏食のことを考え、工夫してつくった食事を食べてもらえなかったり、早く片づけたいのに食事に時間がかかってしまうなどすると親としてもストレスが溜まりますよね。食事の時間が親も子も苦痛に感じてしまう場合には、一度偏食指導を休憩するのも一つの手です。頭ごなしに「食べなさい!」と怒るばかりでは、食への拒否反応はさらに強まってしまいます。偏食克服にはある程度の時間がかかるものとおおらかに構え、「においをかげただけでもOK!」「ぺろっとなめるだけでも成長!」とスモールステップを大切に、子どもが達成感を得られるようにサポートしていきましょう。
2022年01月22日むっくんのことを抱きしめたい子どもを抱きしめて、隙間なく体をくっつける。ぬくもり、肌のやわらかさ、シャンプーの匂い、背中にまわる小さな手のひら。安心して体を預けてくれる様子に子どもからの信頼を感じ、愛おしさが育くまれていく大切な抱っこの時間。だけどむっくんは小さなころから抱っこが苦手な子どもでした。私はこのかわいらしい子をぎゅうっと抱きしめてしまいたいのに、抱きしめるとのけぞって逃げ出したり、癇癪を起こしてしまったり…。むっくんが私の腕の中でじっとしてくれるのは、ぐっすり眠る真夜中だけでした。眠ったことを見計らって抱きしめて、私は寂しさを埋めていました。「スキンシップを大切に」は育児のセオリーなのに、それができないこの子にどう愛情を伝えたらいいか分からず、私はよく途方に暮れたものでした。Upload By ウチノコ「感覚の違い」によるすれ違い私は当時「子どもは抱っこが好き」と思い込んでいたため、抱っこを嫌がるむっくんは私を必要としていないと悲観していました。だけど、むっくんと付き合っていくうちにその背景には感覚過敏や多動ちゃんならではの理由があって「抱っこ嫌い=私を嫌っている」ではないと理解できるようになりました。Upload By ウチノコ「感覚の受け取り方」「感覚によって与えられる感情」というさまざまなことを理解する上での「基盤」がむっくんと私は違います。抱っこ一つとっても、そこから受け取るさまざまな感覚が私にとっては「心地よいもの」ですが、むっくんにとっては「不快なもの」。抱っこをしないほうがむっくんにとっては「安心」で、私にとっては「寂しい」。私たちは親子なのに感覚や感情を共有しにくく、小さなすれ違いが起こりやすい親子です。そんなすれ違いを防ぐために、いつからか意識するようになったことがあります。それは「感覚や感情を余すことなく言葉にして伝える」ということです。感覚も感情も見えないし聞こえません。感じ方が異なる以上、私の感じ方を、動いていく心を、意識して伝えなければ伝わりようがないと思い至ったのです。言葉を尽くして伝えるむっくんが抱っこが好きではないことは知っていますが、私はやっぱり抱きしめたい気持ちを抑えられないときがあります。だって私は大好きなむっくんをぎゅうっと抱きしめる幸せを感じたいからです。そこで、ときどきむっくんに抱っこの許可をもらった上で抱っこさせてもらいます。そのときはむっくんがつらくないように、できる限り言葉を使って具体的に感覚と感情を伝えることを心がけています。Upload By ウチノコ心を言葉で実況中継すると、むっくんは抱っこ中にいくらか安心した表情を見せてくれることに気がつきました。言葉で伝えはじめたころはとにかく恥ずかしく感じたものですが、以前よりも今の方がむっくんに私の気持ちや幸せが伝わっている感じがするのです。また、伝える言葉を紡ぐため、私も自分と向き合う必要があり自己理解まで深まった気がして、言葉を尽くす清々しさに目覚めた気分です。さらに、意識して言葉で気持ちを伝え続けるうちに、むっくんにも変化が…。私と同じように、むっくんも言葉を使って感覚や感情を伝えてくれることが増えてきたのです!Upload By ウチノコ気持ちを伝えてくれながら、恥ずかしそうに抱っこを求める様子はひたすら愛おしくって。私たちはこれまでスキンシップで育めなかったものを、今言葉を使って育んでいるようにも感じています。ひょっとしたら感覚の受け取り方は違っていても「言葉を使うことが得意」「言葉で感覚を共有しやすい」という部分が私とむっくんは似ているのかもしれません。Upload By ウチノコ自分を知って、人を知る特性の有無は関係なく、人それぞれ感覚の感じ方、感情の動き方、伝わりやすい方法などは違って当たり前です。だけど、私は息子と出会うまで、自分がどんなふうに感覚を受け取り、その感覚から何を感じ取って生きてきたのかを言語化できるほど考えたことはありませんでした。また、目の前の人がどんなふうに感覚を感じ、どのように感情が動くのか、また理解しやすい方法が何なのか、なんて真剣に考えたこともありませんでした。それらを意識せず、ただ漠然と人と関わっていた私の生き方は、他者とのすれ違いを生み、大切な人を傷つけていたのだろうと思います。だから、自分と相手は「心地よい感覚や感情の動き、伝わりやすい方法」が違うのではないか?という視点を持つことがとても大切だと思うようになりました。それに気づくことができれば、明日から見える景色は大きく変わるかもしれません。むっくんのおかげで、私の世界は外に内にどんどん広がっていくように感じています。息子を通して世界と自分を知る。こんなにも面白い経験をさせてくれるむっくんにただただ感謝です。執筆/ウチノコ(監修:初川先生より)抱きしめることをめぐるプロセス、素敵な気づきのシェアをありがとうございました。読みながら、うぉぉぉ…なんと素晴らしい…!!!と心の中で声にならない声をあげながら拝読しました。可愛いわが子を抱きしめたいのにそれを拒絶されるつらさ、いかばかりだったかと思います。「私を必要としていない」と思い至ってしまう面は、多くの保護者の方で何らか思い当たる節があるのではないでしょうか。(赤ちゃんのころなど何をしても泣き止まないときに途方に暮れつつ悲しくなったご経験をお持ちの方は多くいらっしゃるのでは)感覚の受け取り方が違うのだと頭では理解していてもそれでも苦しかったことと思います。しかしながら、そこからウチノコさんが言葉で伝えながら抱きしめるという方法を実践されてゆきますね。むっくんが言葉の理解が得意だった面もよかったのかなと推察しますし、何よりお母さんがむっくんに安心してもらおうと一生懸命説明しながら関わる、そして嫌だと思う前に撤退する、ということ。そこから、むっくんとウチノコさんの2人が納得し満足するあり方を模索していかれている…。そこが本当に素敵です。コミュニケーションというものは、相手を理解して付き合うということは本来そういうプロセスだったんだろうな、という基本に立ち戻らせていただいた気持ちになります。さらに、むっくんはむっくんで自分の気持ちや抱きしめてもらいたいときのこと、強さについて言語化していることにも驚きです。すごい。お互いの歩み寄り、2人で心地よい距離感を探る。素敵です。最後の【自分を知って、人を知る】にて書かれていること、私もまさにそうだと思いますし、そこを自らのご経験から気づき、学び、語られているというところで感心するばかりです。いろんな方に今回の記事を読んでもらいたい!と勝手に興奮しています(笑)。プロセスと気づきのシェアをありがとうございました。
2022年01月21日保育園の参観日しのくんは3歳8ヶ月。発達障害グレーゾーン、視覚優位タイプの男の子です。その日は、保育園の参観日。子どもたちは保育園の教室で先生のピアノに合わせてダンスをしていました。私は、(しのくん、できるかな?)と、ドキドキして見守っていました。しかし…Upload By keikoUpload By keikoUpload By keikoUpload By keiko参観をする保護者の中から私を発見するなり、すぐ側に来てしまい、そのまま私のところにいようとする、しのくん。クラスのほかの子どもたちは、先生のピアノに合わせて踊っていて、保護者の元へ来たのはしのくんだけでした。しのくんに「みんな踊ってるよ。しのくんも行っておいで」と声をかけると、そのときは教室の中へ戻りますが…すぐにまた「ママー!」と言って、私の元へ戻るというのを繰り返していました。参観ではしのくんが保育園でみんなと過ごしている様子を見たかったのですが、この日はそれが見られず残念だったので、後日、私は言葉の教室の先生にこの出来事を相談しました。後日、言葉の教室の先生に相談すると…Upload By keikoUpload By keiko先生に「こっそり見てみるのはどう?」と言われ、目から鱗が落ちました。「ママのことが大好きだから、そりゃママの側に来ちゃいますよ。そんなときは物陰からこっそり見るといいかもしれません」という先生の言葉に(なるほど~)と思いました。私は子どもから隠れて参観日に参加するということを考えてもみなかったので、「しのくんがママを見つけなければ、ママのところに駆け寄ってはこない」という、当たり前の事実に気づくことができませんでした。言葉の先生に助言をいただき、次からの参観は「こっそり物陰から見てみよう!」と思いました。そして、次の保育園行事は運動会今回はしのくんの様子を「こっそり物陰から見る」という作戦だったのですが…Upload By keikoなんと運動会は座席指定でした。しかも…Upload By keiko私の席は保護者席の最前列だったのです!!そのため、「こっそり物陰から見る」ということができませんでした。運動会ではこの作戦はできませんでしたが、保育園の先生にも相談して次こそ「こっそり物陰から見る」というのをしてみたいなと思っています。いつか、しのくんが保育園のみんなと過ごしている様子を最初から最後まで参観できる日を楽しみにしています。執筆/keiko(監修:初川先生より)お母さんの姿が目に入ったら、そちらに来てしまう。まさにそうですね。そもそも参観日の様子がいつもの様子であるかどうか、というところもだいぶ怪しくはありますね。参観日の様子はあくまでも「参観日の様子」です。保護者がたくさん見に来ている状態で、いつもと同じ様子になる子もいますが、そうではなくて、いつもより頑張ってしまう子も多くいるものです。お子さんの様子を見ようとしたときに、保護者の方ご自身が「刺激」となって、いつもとは違う様子を見せる場合は往々にしてあることです。「こっそり見る」ことの良さはできるだけいつもの環境を保った中で、様子を見るということですね。ぜひこっそり見に行ってみてください。
2022年01月20日気温がコロコロ変わる沖縄の、難しい体温調整。広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)の娘は、小学5年生。私たち家族は、沖縄県に住んでいます。沖縄は、南国というイメージ通りで基本的に一年中暖かく過ごしやすいですが、寒くなるときは突然。夏からいきなり寒くなり、冬になるという感じ。秋がありません。また、冬になり一度寒くなっても、次の日には気温が24度まで上がったりするので、昨日は長袖+上着だったのに、今日は半袖一枚という日もあります。今の時期も、一日の中でコロコロ気温が変わるので、朝と夜は寒いけど、昼間は暑いなんて日もしょっちゅうです。Upload By SAKURA暑くないのに、クーラー・・・?沖縄の夏は長いため、だいたい5月から10月下旬までは、クーラーが必要不可欠。わが家も夏場は、クーラーをつけています。昼間はリビングだけつけ、寝るときは、クーラーの冷風が届かない、娘が寝る部屋もつけるようにしています。そして、娘の部屋のクーラーは、いつも娘が寝る前に自分でつけ、それからベッドはいるというのが夏の間の日課でした。Upload By SAKURAその日課が、5月から10月下旬まで続いていたある日…もうクーラーは必要ないかな~と感じるようになったので、昼間もクーラーを切り、家中の窓を開けて扇風機だけで過ごしていました。Upload By SAKURA夜になり、娘は、寝るために自分の部屋に向かいました。しばらくして様子を見に、部屋に行くと…Upload By SAKURA娘は、窓全開で、クーラーをつけていました。Upload By SAKURA最初は、つい間違えたのかと思ったのですが、翌日の夜・・・Upload By SAKURAまたクーラーをつけていた娘。今度は窓を閉めてはいましたが、涼しいときはクーラーをつけないでほしい・・・。私は、提案のような言い方ではなく、今度は「つけないで」とはっきり伝え、具体的な方法も伝えました。しかし、さらに翌日の夜…Upload By SAKURA娘はクーラーをつけていました。Upload By SAKURAパターンを覚えるのが早く、習慣化しやすい娘なので、長く続いた習慣が抜けきれず、ついついクーラーのリモコンを手に取ってしまうのかもしれない…。そう思ったので、結局クーラーのリモコンを娘の部屋に置かないようにしました。寒いのに、扇風機!?それから扇風機だけの日々が続きましたが、ある日…肌寒さが突然やってきました。窓を少し開けるだけで十分で、扇風機をつけると寒すぎると感じる気温。その夜、娘が寝たかどうか部屋に様子を見に行くと…Upload By SAKURA娘は、窓を全開にし扇風機を強にして、ガタガタ震えていました。Upload By SAKURA行動を選ぶこと、組み合わせることが苦手。娘は、体感で「暑い」「寒い」は感じることができますが、そう感じたあとの行動が、分からないようでした。自分が感じた気温から、「窓を開ける(閉める)」「扇風機をつける(消す)」「クーラーをつける(消す)」など、いくつもある選択肢の中から、自分の暑さのレベルに合わせて、ぴったりの行動を選んだり組み合わせたりするということが、娘にとってはとても難しいのです。Upload By SAKURA今までは、その日の気温に合わせて、寝る部屋の環境は、私たちが整えてあげていました。そのあとに、娘が「暑い~」とか「寒い~」とか、言ったときは微調整もしてあげていたので、まさか自分の体感で判断することがここまで苦手だとは思いませんでした。改めて、娘の苦手に気がついた出来事でした。この苦手は、なんとかするべきだろうか…そう考えていたとき。私たちは、もう一つの娘の苦手に気がついたのです…。執筆/SAKURA(監修:井上先生より)感覚過敏性や感覚鈍麻性があって、暑い・寒いの感覚がほかの人と違っているお子さんもいます。感覚の違いというのは多くの親御さんにとって自分の感覚にないことなので悩ましいと思います。また、あーさんと同じように暑い・寒いが感じられたとしても、適切な対処をすること、例えば厚着をしたり服を脱いだりする、扇風機とクーラーと窓の3つを使い分ける、などが難しいお子さんもいます。適切な水分補給なども難しいという子がいます。手立ての一つとして、「〇度以上になったらスイッチを入れる」「〇度~〇度の間は、窓を開けて扇風機にする」といったように、肌感覚ではなく具体的な数字、温度や時間を手掛かりに推奨される行動を決めて紙に書いて「見える化」するなどがあります。もちろん、体調が悪いときなどは融通をきかせないといけませんが、一旦は獲得しておいて、普段こうだけど体調や状況に合わせて変えようというのはその次と考えるのも手かと思います。こだわりも関係していると思うので、自分で判断や調節するのが難しい場合も、大人になるとできるようになることも多いようです。
2022年01月19日自閉スペクトラム症と知的障害のあるほぺろうの就学時健診ほぺろうは、来年春から特別支援学校の1年生。昨年の秋に就学時健診に行ってきました。就学時健診とは、次年度に初等教育を受けるお子さんに対して行われる健康診断で、実施についてはお住まいの地域の自治体よりお知らせが来ます。おおよそ内科検診、歯科検診、視力検査、聴力検査が行われ、地域によっては知力検査も含まれる場合もあるようです。わが家の息子ほぺろうは、自閉スペクトラム症があるゆえに慣れない状況に癇癪を起こしやすく、知的障害があるゆえに健診をよく理解していません。何度も予告したり「痛いことはされないよ、こんなことをするよ」と説明しても、病院や医者っぽい雰囲気を察しただけで反射的に号泣してしまいます。とは言え、今回の就学時健診は「行き慣れた場所」「保育園のお友達も一緒」「内科医は行きつけの先生」という好条件で、身体検査自体も保育園で毎月実施してくれているので抵抗は少ないだろうと思い、「たかが就学時健診、まぁなんとかなるだろう」と私は深く考えませんでした。しかしこれが間違いで、ほぺろうにとっては好条件も一蹴するほど「たかが就学時健診」ではなかったのです。Upload By ぼさ子まず、視力検査・聴力検査は完全お手上げ自閉スペクトラム症と知的障害のあるほぺろうにとって、内科検診・歯科検診など「医師が一方的に診てくれる系」はまだ何とか受けられます(身体を抑えておくのが大変だけど)。しかし、視力検査・聴力検査など「自己申告系」は完全にお手上げ!Upload By ぼさ子就学時健診の視力検査は大人と同じく、片目を隠して指定された図形を答えるというスタンダードなものでしたが、ほぺろうは指示も分からなければ、発語がないので質問に答えることもできません。私はこのときようやく、「ハッ!ほぺろうにはこの検査はできない」と気づき、自分を悔やみました。職員さんに検査ができない旨を説明しお詫びすると、5~6歳児の中で検査ができない子どもがいるとは想定外だったのでしょう。「え…ええええ……、どどどどどうしましょう……?」と声が震えるほど動揺させてしまいました。とにもかくにも検査できないものは仕方ないので、その場は免除になりました。そして聴力検査はヘッドホンを装着して質問に答えるもので、視力検査同様に職員さんを戸惑わせ、こちらも免除になりました。Upload By ぼさ子また、ほぺろうは待合ロビーに入った時点で号泣スイッチが入り、待ち時間も健診中もずっと大爆音で泣いていました。体は年長さんの体格なので声量がすごく、会場に逃げ場もなく、泣き声で周りの人は検査内容が聞こえないなど多大な迷惑をかけてしまいました。皮肉なことに待ち時間はとても長く、その時間はずっとほぺろうの癇癪と周りへの申し訳なさで押し潰され、謝ってばかりいました。また、癇癪で擦り減った私の精神には、1歳半健診や3歳健診のときより開いている周りの子との差は堪えるものがありました。自分の備えのなさのせいで健診側の方たちや周りに迷惑をかけただけでなく、ほぺろうにも負担をかけ、何時間も待ったのに検査できない項目もあったり、ほかの子との差を痛感したり…。いろんな思いが重なって、いい大人なのに帰りに泣いてしまいました。事前の相談が鍵!健診が難しい場合の対策今回の経験は同じ境遇の方から体験談を教えていただける機会に恵まれたので、そのお話と自分の反省をもとに「こうしたら良かった」という対策をまとめてみました。あくまで私が思う対応策なので、自治体や特別支援学校等にお話を聞けたらもっと正しい情報が得られたかもしれません。就学時健診のお知らせが来たら…1.まずは進学先の特別支援学校等に相談集団健診が難しいお子さんのために、入学後学校側で健診してくれるところもあるそうです。そうであれば、自治体の集団健診は欠席の旨を伝えたら良いと思います。それでもやはり、自治体で健診してくださいとなった場合は…2.自治体に相談お子さんの困りごとを伝えた上で、・できない項目は免除してもらう・順番をなるべく最初にしてもらう(待たなくて済む)・集団を避けるように日程をずらしてもらう・個別に医療機関で検査してもらうなど…Upload By ぼさ子近年、発達障害のあるお子さんは増加傾向にあると言われていますが、大きな視野で見ると発達障害に限らずいろいろな事情を抱えたお子さんはほかにもいるはずです。そのため、自治体側も詳しい説明がなければどのような配慮が必要かなど分かりにくいかもしれません。診断名や療育手帳の内容を伝えると良いと思いますし、お世話になっている園や発達サポートから話を通してもらうのも一つの方法だと思います。また私もそうでしたが、就学時健診は『任意』であることを知らず、必ずほかの子と同じことをさせなければ…と頑張った結果、つらい思いをしてしまった方も少なくないという印象を受けました。どうしても難しそうであれば「いっそ休む」という選択肢もありますし、自治体によっては希望通りとはいかないかもしれませんが、相談することで少しでも配慮をお願いできることを祈っています。発達が気になる子も楽しく就学準備をしたい発達に心配を抱えるお子さんの就学準備は、進路に迷うという悩みだけでもストレスがあるのではないかとお察しします。私の中では、就学準備の中でも就学時健診がある意味思い出深いものになってしまいましたが、やっぱり就学準備は子どものために希望いっぱい明るく楽しく行いたいもの。情報提供や配慮は、自治体や学校によってバラつきが出てしまいますが、親だけでなく当のお子さんの負担を少しでも軽くするために、自分の経験を情報共有できたらいいなと思いました。※就学時健診の場所や流れは自治体や進学予定先によっても異なることがあります。不安なときは、お住まいの自治体の担当窓口に相談をしましょう。Upload By ぼさ子執筆/ぼさ子(監修:鈴木先生より)神経発達症(発達障害)のあるお子さんの保護者の方には、新年度になったら早めに個別で教育委員会へ相談することをおすすめしています。自閉スペクトラム症のあるお子さんは一般の健診のような集団は苦手なことが多く、なかなか落ち着いて多くの相談をすることもできにくいと思われるからです。小学校入学が一番教育環境の変化するタイミングになります。神経発達症(発達障害)のあるお子さんは、ほかの幼稚園や保育園から来た子と一緒になるなど教育の場所や環境が変わったときには注意が必要です。いじめを予防するためにも入学式の後に担任&校長とよく相談することが大事です。入学後も不安なら、主治医とは医療支援ファイル(担任からの問題点に対して主治医が答え、保護者が見てサインをする)を通じて教員と連携をとることをおすすめめします。
2022年01月19日一般社団法人たけのこ(本社:大阪府箕面市、代表理事:浅井 猛雅)は、オンラインでの早期発達支援プログラム「おうちLIBO -ONLINE-」の受付枠の増枠が決定いたしました。コロナ禍を考慮して、また全国のお子様・保護者様からのご要望を受け開始した「おうちLIBO -ONLINE-」は、2021年10月のサービス開始から大変ご好評いただき、受付枠の上限までお申し込みがございました。この度、制度を整え、人員を充実させることで、受付枠の増枠が可能になりました。一般社団法人たけのこは「科学的根拠に基づく質の高い発達支援の提供」を理念に掲げて、お子様の可能性を広げる児童福祉事業・就労支援施設を運営しています。おうちLIBO -ONLINE- 1おうちLIBO -ONLINE- 2【日本で唯一!米国の早期発達支援プログラムを活用!】LIBOでは、アメリカの大学で研究によって効果を立証された早期発達支援プログラム(PRTやJASPERやなど)を日本の文化や教育課程に合わせてアレンジして支援を行います。日本には、発達障害支援でオンライン療育を取り入れた施設は一桁ほどしかありません。その中でもアメリカの専門的で、科学的効果の実証されたプログラムを提供できるのは現時点ではLIBOだけだと自負しています。【高度な専門性を持つスタッフが対応!】LIBOでは、お子様の発達を正確にアセスメントして、一人一人に合った科学的根拠に基づく早期発達支援プログラムを提供しています。所長は帝京大学の黒田 美保教授で、長年幼児期における対人コミュニケーションの発達支援研究を続けています。また、LIBOでは心理士の資格を持つ発達支援の専門家が親身になって丁寧に支援させていただきます。【医療機関や療育施設からの推薦多数!】言葉の遅れやコミュニケーションの難しさ、社会性の発達に不安があるお子様に対して「より専門的な発達支援を受けさせたい」という保護者様のニーズが増えています。0歳から6歳までの幼児期は脳の発達にとって重要な時期です。お子様の持っている力を引き出し、可能性を広げることを望む保護者様が、医療機関や他の療育施設から「効果的な早期発達支援を求めるならLIBOに通ってはどうか」と紹介されて、私どもの施設にいらっしゃいます。【オンラインにより、コロナ禍の非接触や遠方のご家族にも対応可能に!】LIBOのサービス内容はそのままに、オンラインでの対応が可能となったことで、日本全国のお子様やご家族に早期発達支援が可能となりました。外出が困難なご家庭や遠方にお住まいの方、コロナ禍で外出自粛や非接触を心がけるご家庭でも支援を受けていただけるようになっています。また、ご自宅への職員の派遣を行う「おうちLIBO -VISIT-」も同時に開始し、こちらもお問い合わせなどが徐々に増えてきております。【おうちLIBO -ONLINE-の概要】ご自宅と教室をオンライン会議システムZoomでつなぎ、心理士の資格を持つ職員がマンツーマンで発達支援を行います。お子様の成長を促す関わり方を習得していただくため、ご家庭での様子を見せていただき、イヤホンマイクを通してお子様への適切な声掛けや対応を伝えます。また、お子様の発達に合わせた目標と、保護者様の関わり方などについてフィードバックし、次回までの簡単なホームワークを出して、効果的な関わり方を習得できるように保護者様へのコーチングを行います。4~5歳を対象にしたアカデミック・ステップでは、自ら学ぶ力をはぐくむことを目指します。社会性やコミュニケーションの力を伸ばすことを大切にしながら、同時に、小学校入学を目標に認知力を高める課題を実施し、数や文字などの学習にも役立てるものです。増枠開始日: 2022年1月17日対象 : 0歳から6歳までのお子様とご家族詳細 : 【おうちLIBO -VISIT-の概要】心理士の資格を持つ職員がご自宅に伺ってマンツーマンで発達支援を行います。お子様の成長を促す関わり方を習得していただくため、ご家庭での様子を見せていただき、お子様への適切な声掛けや対応を伝えます。また、お子様の発達に合わせた目標と、保護者様の関わり方などについてフィードバックし、次回までの簡単なホームワークを出して、効果的な関わり方を習得できるように保護者様へのコーチングを行います。お子様とセラピストのマンツーマンで行い、小学校に向けた準備として遊びの中に学習の要素をとりいれていくことが可能です。増枠開始日: 2022年1月17日対象地区 : LIBOから公共交通機関で30分程度詳細 : 【施設概要】施設名: 自由が丘こころの発達研究所LIBO所長 : 黒田 美保所在地: 東京都目黒区自由が丘2-22-3 Lotus Calyx 102電話 : 03-5726-9975URL : おうちLIBO -ONLINE- 3【会社概要】会社名: 一般社団法人たけのこ所在地: 大阪府箕面市萱野5-12-1代表 : 浅井 猛雅電話 : 072-736-8727URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年01月18日お気に入りの本や壁紙を破ると言うこだわりUpload By みんみん(以下、――):P(次男)は年長6歳、自閉スペクトラム症、知的障害(中度よりの重度)があります。手に感覚を入れたがる傾向があり、以前は私の腕や首などをつねっていたのですが、今は成長と共に少し落ち着いて、置き換えで絵本や壁紙を破ってしまうようになりました。不思議とお気に入りのものや好きなページから破ってしまい、細かく破って部屋中散乱している状態に…。できるだけ古本などを与え、破ったものは本人にも片づけをさせていますが、家ではその行為をOKとしてしまっているので、本屋さん、友達の家など破ってはいけない場所で破いてしまったらどうしようという不安があります。Pの心の安定のために破かせても良いのでしょうか?「本を破く」ということはそもそもダメな行為なので止めさせるべきでしょうか?三木先生:リスクゼロにするとなると監視が必要ですね。どの程度監視し許容するのか?破ってよい、よくないをどう教えていくのか?今は説明して本人は分かりそうですか?――分からないと思います。でも破ったら叱られるし、ダメなことだというのは何となく分かっていそうなのですが、いくら注意してもやめられないので、もう衝動的に破ってしまう癖のようなものに近いと思います。私の腕をつねる回数は減り絵本に置き換わったので、今回も将来的には絵本から何かほかの物に置き換えていきたいのですが…Upload By みん絵本から置き換えられるような物がほかにはないか?考えてみる。三木先生:何に置き換えられるか?悩みますね。プチプチできる梱包材のおもちゃ的なものや、つねることができるようなものも良いですが、一番身近ないいものとして新聞紙はどうでしょう?――新聞紙自体にあまり興味がないのでうまくいかないかもしれません…好きな絵や柄が書いてあるものの方がいいかもしれません。三木先生:好きなページをカラーコピーしたり、スキャンデータをとっておいていつでもプリントできるようにしてみては?そうやって本から少し離していき、本じゃないものにしていければ良いのですが…試してみないと分からないですが、紙質など本人の手ごたえも重要ですよね?それからお友達の家へ行く場合も、了解をとって破ってもいい本をあらかじめお友達の家に置いておいてもらうのはどうでしょう?それを破るのはOKとし、もし破らなかったらほかの家では破るのNGだと思って場所をわきまえてはいる?ということになりますが、リスクゼロにするにはやはり見せない触らせないなど完全に監視するしかないですね、でもそれではお母さんも大変ですよね。――そうなんです。破るという行為はできればやめて欲しいのですが、もしやめさせるならやはり何か他のものに置き換える必要がありますよね。今までもいろいろと置き換わって来ているので何か良い方法を探したいと思っています。Upload By みん問題となる行動を、問題としないようにする方法三木先生:やっても差し支えない範囲内でやってもらうように置き換えて…梱包の紙など、荷物が届いたらご褒美的な感じでやってみたらどうでしょう?華やかさが必要なら梱包の紙にお子さんの好きな絵を描いてみたり…。一日のご褒美タイムで破ってもらえるようにしてもいいのではないでしょうか。外で破くのを我慢できて、そのご褒美として家で自由に破ることができるという流れにできれば、外で破るリスクは減ると思います。もう少し大きくなったら…ちぎり絵など作品づくりに置き換えるのもいいのでは?――そうですね!色紙などをちぎらせて集めておいて、それを使ってちぎり絵などの作品を作ることに挑戦してみるのも面白いかもしれないです!今はただ破るだけですが、破ったものをまた新たに遊びに使うのは目的のある行為にもつながって良いと思います。そんな風に移行するのは時間がかかるかもしれませんが、一つのアイデアとしてとても参考になりました。Upload By みん感想絵本を破るなどの問題行動は、できればやめて欲しかったのですが、Pは絵本が大好きですし、破るという行為を楽しんでいて精神安定にもつながっていたので、物理的に絵本を与えないという選択はなるべく避けたいと思っていました。今回三木先生に相談して、実害のないものに上手く「置き換えていく」方法や、問題行動を問題行動としないようにする考え方やアドバイスをいただき、一見すると困った行動も、こちらの導き方によって困った行動ではなくなるようにできる場合もあることを学びました。執筆/みん
2022年01月18日マンガでADHDを学ぼう!マンガで分かりやすく発達障害が学べる『マンガで学ぶ発達障害』シリーズ。今回はADHDについてご紹介!主な症状として挙げられるのが、『不注意(集中力がない)』、『多動性(じっとしていられない)』、『衝動性(考えずに行動してしまう)』の3つ。ほかにも症状が出る年齢、ADHDの診断基準や診断までの流れ、ADHDのある子どもへの関わり方など、公認心理師の井上先生の解説とともに詳しく解説します。ADHDは先天性の発達障害です。「人の話をじっと聞けない」「集中力が続かない」「気になることがあると、後先を考えずに行動してしまう」、こうした行動は、多くの子どもに見られるものですが、本人が努力してもなかなか改善が難しいため、だんだんと集団生活に困難を感じたり、生きづらさを抱えたりするようになることも少なくありません。そんなADHDの3つの症状を詳しく説明します。ADHDは、学習や対人関係、社会生活に困難を抱えることが多いため、ある程度成長するまではなかなか障害に気づきにくいのも特徴の一つです。そんな症状を幼少期から学童期、思春期と、年代別に変化する症状や困りごとについても解説します。「ADHDかもしれない」と感じたら、早めに専門機関に相談すると共に、早い時期に専門医の診断を受けましょう。この記事では、相談できることや専門機関の特徴についてまとめました。ADHDの診断にはどんな検査項目があるのか、診断を受けるために必要な持ち物や年齢の目安など、医療機関を受診する前に知っておきたいことをまとめました。まとめADHDのある子どもが生き生きと過ごしていくためには苦手なところをサポートし、いいところを伸ばしていってあげることが重要です。そのために周りがADHDの特性を知り、家庭や保育園、学校などで協力し、子ども自身が自分の気持ちをコントロールできるように支えてあげられるとよいですね。
2022年01月16日「学校変えて」と涙のミミミミは、小学2年生。その日、暗い表情で帰宅したミミは私のところに来て「あのね、まだ誰にも言ってないの」と話し始めました。「学校変えて」と涙を流しながら言うミミ。私は「そんなにすぐは変えられないけど、学校を変えたいくらい悲しいことがあったのね」となだめました。ミミによると、クラスメイトのE君が突然ボールを投げてきたとのこと。2回ボールをぶつけられ、E君は笑い、ミミは泣いたそう。学校の校庭での出来事ではあるけれど、放課後ということもありミミは、先生にも誰にもこのことを話さずに帰ってきたそうです。E君とは以前、ミミがパンチの打ち合いに誘われて断ったのに一方的にパンチされた、という話を聞いたことがありました。それから日が浅いので、もしかしてミミはときどきからかわれているのかも?と、ちょっと心配になりました。Upload By taeko小さい揉めごとなんて日常茶飯事と分かっていても、大きなことになる前に先生に出来事を伝えようと思い、いつ・どこで・誰と、など具体的に紙に書き、「2人のことを少し気にかけてほしい」と要望も書いてみました。翌朝、ミミに「ボールの件を先生に伝えようと思うけどどう思う?伝えていい?」と聞くと、伝えてほしいと言ったので、授業前にその紙を先生に渡しました。Upload By taeko夕方(ミミが帰宅する前)担任の先生から私のところに電話があり、それぞれの子ども(ミミ、E君、見ていた子)に聞き取りをした内容を報告してくれました。E君はミミにボールをぶつけたことを正直に答えてくれて、ミミに謝りたいと思っているということ。先生はそのことをミミに伝えたが、ミミは頑なに拒否したこと。先生は、「今すぐ無理に仲良くする必要はないけど、授業で関わらないというのはナシにしよう」とミミと話したことを教えてくださいました。先生が素早く丁寧に対応してくれたことに感動しました!Upload By taekoいつもは1人帰りのミミですが、少し心配だったので、先生からの電話のあと学童にミミを迎えに行きました。するとミミは、E君も一緒に8人くらいの子どもたちで遊んでいました。二人に積極的な関わり合いはないようでしたが、E君と一緒の輪の中で遊んでいて私は拍子抜け。学童の職員さんにも今回の事情を話し今日の様子を聞いてみましたが、学童での二人の間に特に問題はなかったようでした。帰りに「E君と遊ぶの嫌じゃないの?」と聞くと「そうでもなくなった」とミミは言いました。先生に悲しかった気持ちなどを聞いてもらえて落ち着いたのかもしれません。Upload By taekoミミが話をしてくれた日、「ボールをぶつけられて嫌だったことを教えてくれてありがとうね、私は何があってもミミの味方だからね」と伝えていました。Upload By taekoこれからもお友達とのことで悲しくなってしまうこともあるかもしれないけど、自分気持ちを話せるようになったこと、環境をいきなり変えるのではなくお友達とのやりとりの中で「まあ、いいか」と思えるようになったことにミミの成長を感じた出来事でした。執筆/taeko(監修:鈴木先生より)一般に神経発達症(発達障害)のお子さんは嫌なことがあると我慢して慣れようとはせずにその状況から離れるという選択をすることが多いのです。大人は職場を変えることができますが、子どもは学校を簡単には変えられません。そして、担任や周りの友人の理解がない場合、自分に嫌なことがあったり思い通りにいかなかったりしたことが続くと、登校渋りから不登校になってしまうケースがよくあります。ただ、今回のケースのように先生が丁寧に素早く対応してくれれば問題がすぐに解決することがあります。大事なのは親も教員もお子さんの話に耳を傾け、親と教員とでよく話し合うことではないでしょうか。
2022年01月14日塾通いのきっかけは授業でわからない単元が出てきたことUpload By スガカズ小学校生活を送る上で、定型発達のお子さんでも小3から小4にかけて学習につまずいてしまうことが多いと聞いたことがあります。わが家の発達に凸凹がある長男も同様で、小4で割り算の筆算につまずいていました。長男は大人しい性格で、人に「助けて」と言うのが苦手です。先生の状況を見て質問するタイミングをはかること、その場に合った適切な言葉で質問することができなかったようです。学校生活の中だけでは学習の分からないところが解決せず、理解できていないまま授業が進むのがつらいようでした。一方で私自身は子どものころから計算が得意で、小学生のころは暗算が楽しくて家でも繰り返し計算問題に取り組んでいるような子どもだったので、宿題以外で復習する習慣がない長男に合った指導が家庭でできず悩みました。そんなある日、長男は下校してから宿題に取り組もうとするものの、問題の解き方が分からず、「算数が分からないから学校に行きたくない」と泣きながら私に訴えてきました。Upload By スガカズ「分からないままだと長男の学校生活がもっとつらくなってしまうなぁ」「学校そのものは嫌いじゃないし、人と関わることが嫌なわけじゃないもんね…」と、どうしたものかと悩んでいました。そのうちに、「私が教えてあげることができないのなら、普段から子どもに勉強を教えているプロから学んだほうが長男にとって良いのでは?」と気がつきました。泣いている長男に、「勉強が分からないのなら、塾に通ってみるのはどうかな?」と提案しました。泣きながら床に寝そべっていた長男は、体を持ち上げ「そうか!授業で分からないことが減って、学校が楽しくなるかもしれないね。オレ、塾に通う!」と、言いました。こうして、発達に凸凹のある長男に合った塾探しが始まりました。家庭教師、集団塾、個別塾…いろいろあるけど、長男にあった環境はどれ?Upload By スガカズ発達に凸凹のある子どもを育てる家庭は、その子の特性にもよりますが、家庭教師や個別指導塾を選ぶことが多いということを耳にしていました。しかし、わが家は4人きょうだい。当時下のきょうだいたちは、2歳と1歳でまだまだ手がかかる時期でした。そのため家庭教師の方にお願いしても、下の子たちが長男の勉強中に部屋に入ってしまうのではないかという不安がありました。そうすると結果的に長男が集中して学習に取り組めない状況をつくってしまいます。また、発達障害のある子ども向けの塾もありますが、わが家に関しては県をまたいで通わないといけないため、難しいと判断しました。加えて、長男はインドアの遊びが大好きで、自分から外遊びをすることはほとんどありません。体力に不安があり、当時は自転車で坂道がうまく登れませんでした。そのため、通うルートの勾配が少なく、自宅から2キロ圏内のところにある集団塾と個別指導塾を中心に、見学と体験をすることにしました。見学と体験を通していくつもの塾の見学、体験を通して分かったことは、「習い事はさまざまな前提条件が重なるため、発達に凸凹のある子どもにぴったりな塾を探すのは難しい」ということでした。家との距離、開始時間、指導方法、人数、先生との相性などなど…条件に優劣をつけて決める必要がありますし、場合によってはなかなか見つからないこともあるのかもしれないと思いました。体験の際には、塾の先生に必ず長男の障害や特性について伝え、学習に取り組む様子を見ていただきました。実際に体験してみると、進学塾ではないものの、子どもの能力を選別した結果入塾を断るところもありましたし、個別指導塾で私は長男に合っていそうと思っても、長男自身がしっくり来なかったという場合もありました。塾探しをはじめて1ヶ月経ったころ、最終的に、長男の意向を尊重する形で「集団塾」に通うことに決めました。Upload By スガカズその塾に通う前に一つ不安なことがありました。決めた塾は、平日の午後4時半までに塾に到着していないといけないルールだということ。午後3時半に小学校から下校して、40分後には家を出ないといけません。そのためには私が長男に「塾に行く時間だよ」と促す必要があるので、塾の予定に合わせ私の予定も見直しました。実際に通い始めてみて分かる、発達に凸凹のある子どもの「習い事」の大変さUpload By スガカズいよいよ長男の塾通いが始まりました。長男は自閉スペクトラム症とADHDがあり、特に時間の概念が弱いところがあります。また、工作など自分が好きなことに取り組んでいるときは目をキラキラと輝かせ、2時間でも3時間でも没頭し続けます。そんな長男が、例えば「やっと学校終わった~!!」と、喜々としながら工作に取り掛かり始めると大変です。塾に遅れないように時間の確認、声かけ、送迎をしようと私は試みますが、長男自身「やりたいこと」に取り組んでいるので、何度声をかけても長男には届きません。長男が塾に向かうころには私自身がぐったり…。始めのころは週3回の通塾予定でしたが、お互いに無理をしすぎないほうがよいと判断し、週1〜2回に減らすことにしました。工夫をしたものの常に臨機応変に対応することは難しく、ほかのお子さんに比べて長男は塾の遅刻が多い状況でした。その点に関して塾の先生は「長男くんは時間を守れない、時間にルーズな子だ」と呆れていたようでした。それでも長男なりに頑張って塾に通ってくれたので、小学校でのつまずきは目立たなくなりました。気づけば「学校に行きたくない」とは言わなくなってたので、(もうここで学ぶのは十分かもしれないな)と思い、長男と相談して小5の終わりごろに約2年間通った塾の退塾を決めました。辞める際、塾長からは私たち親子に厳しい言葉がありました。長男は、「もう辞める塾だから」と思っていたのか黙って先生の言葉を受け入れていましたが、私は「ただ長男が生きやすくなればよいと思って塾に通わせたし長男も頑張っていたけど、残念な終わり方になってしまったな」と、複雑な気持ちでした。「塾に遅刻する」という経験を通じて分かったことUpload By スガカズ集団塾を辞める少し前に、私は長男に「マイペースなあなたに合う塾がほかにあるはずだから、塾を変えない?」と提案しました。すると長男は、「通ってみて分かったんだけど…」と、自分の気持ちを話し始めました。「オレは今まで、学校から帰ったらまず遊ぶのが、ずっとクセになっているから、遊ぶ時間が少ないと『頑張るぞ!』って気持ちにならないんだ」どうやら、体験を通して「『やりたいこと』の時間を確保できたら『やるべきこと』に取り掛かる意欲がわく」という自分自身の法則に気がついたようです。また、私自身も長男の優先すべき条件が把握できたため、今後違う習い事を決める際に通い始めてからのイメージもつきやすく、周りとの摩擦も起きづらい環境を選ぶことができるようになりました。親子で大変なことも多く、辞めるときは複雑な気持ちになった習い事でしたが、長男も私も失敗を通じて気づきを得られた貴重な経験になりました。執筆/スガカズ(監修:三木先生より)学校って学習がメインの時間なので、勉強が分からないのは実はかなりつらいことなんですよね。それを解消するためにじっくりといろんな選択肢を検討して取り組まれたことは良かったと思います。また、長男くんが自分の行動パターンに気がついたのもすごいことですね。こうやって時間がかかっても「鳥の目で見た」自分の気づきが増えてくると良いですね。
2022年01月13日天候の変化で片頭痛、眠気やだるさ生理が来るようになると、天気の悪い日にはときどき片頭痛が出るようになりました。片頭痛が出ない日でも、天気が悪いと眠気やだるさに拍車がかかる。身体が砂袋のように重たく感じられました。発達障害と片頭痛の明確な関連はわかっていないようですが、片頭痛の一つの原因として脳の過敏があげられているので、私に発達障害があることと片頭痛持ちであることにはなんらかの関連があるかもしれないと個人的には思っています。冬の時期の冷えのぼせと感覚過敏私にはもともと体温調節が苦手で、暑さ寒さに敏感なところがありました。中学高校は通学にトータルで片道2時間近くかかる私立一貫校に通っていて、慢性的に過労状態だったことから、今思えば自律神経の状態はガタガタでした。それで、ひどい冷えのぼせが起きていたのです。暖房のきいた室内で上半身は暑くてしょうがなく、顔は真っ赤で、みんなセーターを着ている中ひとりでブラウス1枚になって腕まくり。襟のボタンも開けて下敷きで顔を扇いでいました。許されるものなら下着一枚になっていたことでしょう。暑くてたまらないのに汗がうまく出ない。こんなとき、下半身は触っても感覚がないほど冷たくなっていました。「まだ思春期なのにもう更年期みたいな感じだな」と思っていた当時。私の発達障害に気づいている人は私も含め誰一人いなかったので、ただひたすらに耐えるばかりでした。制服の冬服はウールを使った比較的高価なものでしたが、私の感覚過敏の症状からすると耐え難く、セーターもスカートもコートの襟の部分もチクチクしました。コートはいい生地でできていましたが鎧を着ているように硬くて重く、着ているだけで疲労困憊してしまう。でもみんなが同じつらさに耐えているんだと思っていましたから、やはりこれもひたすらに我慢していました。冷えのぼせと感覚過敏のつらさが重なって、通学電車で気持ち悪くなってしまうこともよくありました。厳しすぎる校則で倒れそうなほど空腹私の通っていた私立の中高一貫校は保守的なお嬢様校で、どうしてこんな校則が存在しているんだろうと首をかしげるような、厳しすぎる校則がたくさんありました。昼食は保護者の手作りのお弁当でなければならない。買ってきた惣菜などはギリギリ認めるが、形だけでもお弁当箱に詰め替えなければいけない。お菓子などの持参はいっさい禁止で、早弁も禁止。結果として昼休みまで間食はダメ。ジュースなどの飲み物も禁止で、「水筒に入れたお茶」しか飲んではいけない。朝6時ぐらいに朝食を済ませた、もともと自律神経系の不安定な成長期まっただなかの子どもが、昼の1時近くまでいっさいカロリーをとってはいけないわけです。なんなら1時間目ぐらいから小腹がすいてきて、2時間目ぐらいからはひたすら空腹との戦い。4時間目ぐらいになるともう頭がもうろうとしてフラフラになり、呂律も回らなくなってきます。1分1秒を数えるようにしてお弁当にありつき、あっという間にかっこんでからしばらく机に突っ伏して、15分ぐらいすると頭がはっきりしてくる…いま思えば、空腹すぎて頭がぼうっとするとか舌がまわらないなどといった症状が出ていたのは、いわゆる低血糖という状態になっていたのでしょう。あまりの生理痛のためトイレで卒倒私はもともと生理痛が重いタイプでしたが、徐々に痛みでいつものような活動がままならない状態になりました。出血量の多い日などは強い痛みと下痢で(痛み物質が大量に放出されると下痢が起こるそうです)トイレに籠もり、悪心と脂汗の中でしばらく気を失ってしまうことがありました。慢性的に自律神経の状態が悪かったのに加え、冬場はスカートに薄いハイソックスかデニール数の指定されたストッキングしか許されず、冷えがひどかったのも生理痛が強くなったひとつの原因だったのではと思います。のちのち、生理時のトイレでの卒倒は迷走神経反射といって、あまりに強い痛みのために身体がショック状態のようになって失神するものらしいとわかりました。30歳を過ぎてからようやく信頼できる婦人科医に出会い、子宮内膜症の可能性を指摘されて低用量ピルで治療して劇的によくなりましたが(※)、当時は周囲の大人がみんな「生理痛は自然現象なんだから我慢するもの。痛み止めも癖になるからよくない」という考え方だったため、私もひたすら我慢していました…※毎回痛み止めが必要だったりと、生理のときに生活に支障があるほどの症状がある場合は婦人科系疾患の可能性があります。この場合は病院での治療対象なので、我慢せず病院に行くことをおすすめします。ひどい生理痛を起こすひとつの原因である子宮内膜症は、放置すると命に関わることもあるそうです。特性が判明していたら… 健康を最優先に考えてくれていたら…今になって思うのは、当時自分の発達障害が判明していたら… 生徒の健康を最優先に考えてくれる校則であったら… ということです。厳しい校則には学校側の生徒管理の負担を軽減する役割があることも理解できますが、校則に従わせることが生徒の健康に悪影響を及ぼすのであれば、学校側が校則を見直したり、合理的配慮をしたりしてしかるべきです。例えば、手作りのお弁当や水筒に詰めたお茶しか持ってきてはいけないという校則には、生徒間で競争が起きてはいけない、食べ物や飲み物を買うために生徒が寄り道(これも校則違反)することになってはいけない、という事情もあったようです。それなら、校内に商品の値段を揃えた菓子パンやジュースを売る自販機を設置して、一定の緩めのルールのもと使わせる、といったような形にしてもよかっただろうと思います。(書きながら、そういえば私が高校の後半になってようやくジュースの自販機が設置されたことを思い出しました)制服もやはり、特定の生徒に合理的配慮として指定外のものを許可するとか、そもそも指定自体を大幅に緩めるとかしてほしかった。思い返すと、足に疾患がありスニーカーで通学する特例を認めてもらっている生徒はいました。最近は制服のバリエーションとしてスラックスを作る学校も出てきていますが、すごく羨ましいです。ルールも大切だけれど、健康的な生活がまず守られるべき教育の中で子どもに校則を守らせることの中には、彼らが社会に出たときに一定のルールを守れる人になれるよう鍛える意味もあるでしょう。けれど個人的には、これほど社会全体が多様化・不安定化している中で、「画一的なルールを守れる」ということ以上に、大事な成長期の健康のほうが大切なのではないかと感じます。進学する学校選びの際、その学校が生徒の健康を重視した柔軟な校則運用をしているかどうかを確認することは、学校選びの際のひとつの大事なポイントだなと思います。文/宇樹義子(監修・初川先生より)季節による不調、生理による不調を細やかにお伝えいただきありがとうございます。まさにそういう不調真っただ中にいる子どもたちはまだそれを言語化できないことも多く、こうした発信を読むことで、「そうそう、それそれ」と思うでしょうし、保護者からしたら、「もしかしてうちの子もこんな不調を?」と思う視点を得ることができます。さて、学校はこれまで、「管理」することで不都合や不平等を無くそうとしてきたのだろうということは校則や制服をめぐるいろいろを見ていると感じるところです。そして、体調管理は子ども本人に任されるところで、ざっくり言えば「気合いで何とかしろ」みたいな感じだったんだろうなと思います。体調管理するのも学校生活のうち、みたいなきれいな言葉で見えなくなっていたものが多かっただろうなと思います。季節や寒暖、女性の周期による不調などについて、発達障害やそうした特性のある子は特に自律神経の調整の難しさを抱えやすいとは言われていますが、そうでなくてもいわゆる「頭痛持ち」、「生理が重い」といった人は多くいることでしょう。そうしたことについて、相談しやすい学校・社会であるといいなぁと思います。不調を押して授業を受けていても、上の空になってしまうわけで、どうしたら学習や学校生活にもっと取り組みやすくなるのかという視点から、さまざま見直されるといいなと感じます。
2022年01月13日お兄ちゃんの料理は科学実験気分?ちょっと意外なのですが、タケルは料理が得意で、人が料理をつくっている動画などもよく見ています。幼いころは、おばあちゃんに教えてもらってパンやお菓子をつくっていたことも。粉ものや液体を測って化学反応させるのが面白かったらしく、今でも料理をする様子はどこか理科実験ぽいです。料理をすること自体には問題がないタケル。でも、例えば自分で「お昼に食べよう」と考えて、ごはんをつくることはできません。私が、タケルのご飯の用意を忘れて出かけていたりすると、帰ってくるまで何も食べずに待っています。Upload By 寺島ヒロ材料を並べて「カレーつくってくれる?」といえばつくってくれるのですが、キッチンのあちこちに散在する材料から、食べたいものを選んで、その材料にふさわしい調理をして、美味しく食べられるようにするということは、『隠れている工程が多すぎて、とてもムリ!』と感じるようです。また、普段は朝と夜は私が先んじて料理をしてしまうこともあり、タケルが料理をするチャンスは昼ぐらい。それも少しもたつくと「もう行かなきゃいけないから、ラーメンでいいよ!」となってしまい、なかなか掘り下げられません。Upload By 寺島ヒロ子どもは料理をしないもの?いっちゃんのこだわり一方、妹いっちゃんは、なかなか料理に興味を持つことがなく、10歳ぐらいまでナイフを持つこともありませんでした。手先の動きが今ひとつ器用ではないということもあり、私も積極的に食材を切ったり、お皿を運んだりということはやらせていなかったので、いつしか「子どもは料理をしないもの」と思いこんでしまったようです。頼めばお箸ぐらいは取ってきてくれるのですが、それ以上の台所働きをすることはありませんでした。変化があったのは、小学校の高学年になってから。学校の調理実習で「包丁がかり」をやったことをきっかけに「子どもでも料理していいんだ!お兄ちゃんは変わり者だと思ってた!」と意識改革があったらしく、それからはちょいちょい、料理をしていると寄ってきて「やらせてー」と言うようになりました。中学生になってからはさらに進化し、たまにですが「ママさん忙しい?何かつくってあげようか?」と言って、つくってくれるようにもなりました!めでたしめでたし…かと思いきや…Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ材料を見て料理を思い浮かべられる妹と、何をつくるか決めてもらえば料理は正確につくれる息子。その力、足して2で割れないかなあ…と思う母です。。執筆/寺島ヒロ(監修:三木先生より)必要な能力を兄妹で分けてしまった感じなんですね(笑)。それぞれ「段取りを網羅的に整理するための段取り構築」と、「思いついた作業を着実に遂行する練習」ができると良いのかもしれませんね。ぜひ次は「二人で協力してつくったら…」というエピソードを読んでみたいものです。
2022年01月12日バスが乗れず家から駅まで50分歩く日々娘は2歳のころ、乗り物で癇癪を起こすことがしょっちゅうでした。中でも特にバスが苦手でした。電車よりも人の密度が高いからかもしれません。バスで癇癪を上げてしまうと逃げ場がないし、電車よりも狭い空間なのでより目立ってしまいます。私は娘とバスに乗るのを諦めて、駅まで歩いていました。しかし家から駅までおよそ50分。足早でも40分。途中で坂道も多いので、ベビーカーを押しながら毎回汗ダラダラでした。Upload By とまぱんママ友親子と遊んでも早めに帰る入園前はいつも娘と2人っきり。なので、ママ友親子と久しぶりに遊ぶ日はとても楽しみにしていました。しかし親しくしていたママ友は少し遠くに住んでいたため、お互いの中間地点までバスや電車を使う必要がありまた。まず駅まで50分かけてベビーカーを押し、電車の中では癇癪を起こさないかずっとソワソワ。途中で癇癪を起こし、持ってきたおもちゃを電車の中でぶちまけたことが何度もありました。待ち合わせ場所に着くころには恐らく老け込んだ顔になっていたことでしょう。そして問題は帰宅時間。夕方近くになってくると電車も混み始め、人混みが嫌いな娘は癇癪を起こす可能性が高くなります。人混みの中のベビーカーを想像するだけでもゾッとするのですがそこに癇癪が加わるともうこの世の終わり。そして駅から家までまた50分かけて歩かなくてはいけません。ママ友親子には悪いと思いながらも、私はだいぶ早めに帰っていました。Upload By とまぱん「動画ばかり見せてたら成長によくないらしいよ」電車で癇癪を起こしたときに一番効果的だったのは、スマホの動画でした。音量はオフにしていたものの、外で子どもに動画を見せるのは多少なりとの罪悪感はありました。しかしこれが周りに迷惑をかけない一番の方法。とある日、娘がいつものようにぐずり、スマホで動画を見せていたときのこと。Upload By とまぱんUpload By とまぱん向かいに座っていたおばあさんは、目の前にいる私たちを見ながら話していました。私の視線に気づき、気まずそうにおばあさんの話しを止めるおじいさん。娘はこの時期とても言葉がゆっくりだったため、おばあさんの「動画ばかり見せたら成長によくないらしいよ」という言葉が、ずっと頭の中でグルグルしていました。Upload By とまぱん双子の女の子たちに心が救われるいつものように電車で娘が癇癪を起こしていたときのこと。おもちゃを出してもおさまらない娘。動画を見せたいけど、この間みたいに誰かに言われたら…どうしようと焦っていたそのとき。Upload By とまぱん前に座る双子の女の子たちが、娘を見て「赤ちゃん可愛い」と話していました。恐らく娘は身長が低いので、2歳でも赤ちゃんに見えたのでしょう(笑)女の子たちは8、9歳くらいだったかと思います。そんな言葉を言ってくれるなんて、なんて心優しい女の子たちなんだ…!と感動しました。女の子たちの言葉にとても心が救われたのを覚えています。バスに乗れなかった娘は今そんな娘も、3歳を過ぎたころから大人しく電車やバスに乗れるようになりました。駅まで時間をかけて歩いていた日々。今となっては懐かしいです。大人しく乗れるようになったものの、4歳になった今も混んでる電車やバスは少し苦手なよう。そのため今も帰宅はなるべく早くしたり、混みがちな急行より各停を使ったりしています。また、人の目線を敏感に感じとってしまう娘。電車で向かいの席に座っているおばあちゃんが温かい目で娘を見ていても、それが恐怖に感じるようでよく自分の顔を手で隠しています。娘にとってのストレスは多少なりともまだありますが、もう激しい癇癪はなくなり、動画やおもちゃは必要なくなりました。娘が幼かったころ、双子の女の子がかけてくれたような優しい声かけや席を譲っていただいたことが度々ありました。私も小さなお子さんを抱えているパパママがいたら少しでも気づいてお手伝いできたらと思います。執筆/とまぱん(監修:三木先生より)お子さんもお母さんも、二人とも大変な思いをしてこれまでやってこられたんですね。凸凹のある子どもたちは、自分に向けられている視線に敏感だったりします。人が多いところが苦手な理由は、たくさんの刺激以外にそういうところにあるのかもしれませんね。世の中の人がみんなその双子の女の子たちみたいだったら、もう少し過ごしやすくなるかもしれません。そういう社会になっていくことを願ってやみません。
2022年01月11日子どもを褒めて伸ばすのがよいと言うけれどUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)の診断を受けたのは小4のときでした。息子の療育などを通して、褒めることで自己肯定感が育まれることを知り「なるべく気をつけて声をかけよう」とは思っていました。ですが、だんだんと反抗期に突入していった息子はイライラしていることが多く、特性から忘れ物やなくし物も多いことで私もイライラしてしまい、息子を素直に褒められないことが多くありました。Upload By かなしろにゃんこ。「褒め方が分からない」「褒めるところが分からない」と思っていた私でしたが、クリニックでペアレントトレーニングを受けていたときに「君は息を吸って吐いているだけで完ぺきなんだ、生きているだけで素晴らしい」という究極の褒めに達したお母さんもいるんですよ!と教えてもらいました。それを聞いてからは「なんだ、どんな些細なことでも褒めちゃっていいのね!」と思い、素直に息子を褒められるようになっていったと思います。(自画自賛ですけど、笑)Upload By かなしろにゃんこ。そんなとき、発達障害の自助会で出会った当事者の先輩から親や周りの大人から受ける傷つく言葉に「こんなふうに言われたら嫌!」とか、逆に「親からこう伝えられていたら変わったかもしれない」など、いろいろな話を聞きました。(※事前に掲載の許可をいただいております)そこで聞いたこんな意見が印象に残りました。「子どもの意見になんでも反対しないでほしい」「親の言う通りの進路を歩めないからといって全否定しないでほしい」「わざとらしく褒めないでほしい」「偉人=発達障害というケースを比べて自分に期待しないでほしい」大人が放った言葉一つで心が大きく揺れてしまうことがあるのだと知り、息子への声かけにも応用してみようと思いました。息子に合った「自己肯定感を育む関わり方」とはUpload By かなしろにゃんこ。そして、息子が小5年生くらいのときから自己肯定感を育むために「リュウ太の意見尊重しますよ!」作戦をスタートしました。それは、息子が言った「意見」に乗っかること。夕飯何が食べたいか聞いて「オムライスがいい」と言ったら、私は「リュウ太のそのアイデアいいね!オムライスにしよう!」と息子に夕飯のメニューなどを決めてもらうことにしました。意見に賛成する言葉を伝えると息子は嬉しそうでした。また、それまで褒めるとき私は手をたたいて褒めていたのですが「その言い方マジキモイ」と息子に言われてしまったので、高学年になった息子に合わせてクールな、さりげない言い方に変更しました。「お!ソレいいじゃん」や「カッコイイね」とか「へ~うまいじゃない、やるね~」など。そのほうが本心で肯定している感じに伝わると思いました。Upload By かなしろにゃんこ。息子が大人になってから言っていたのですが「大げさに褒める言い方は、オレにヤル気を出させるために褒めてる感が伝わってきて本心じゃないなって思ってた」と。年齢や性格によっては、絶賛よりも同意程度がいいのね~と息子から教わりました(笑)当事者の先輩の意見であった「偉人=発達障害と比べられたくない」というものに対しては、私はあえて使ってみることにしました。息子に偉人のようになれ!とは思っていないので、「こんな人もいるんだって」程度に起業する社長さんや研究者、芸能界などアイデアや瞬発力が必要な分野で活躍している発達障害がある先輩たちの話をしました。Upload By かなしろにゃんこ。ADHDがあるから失敗を恐れず再チャレンジができることや、豊かな発想を発信できること、好奇心旺盛で気になったらコツコツ探求、研究ができる能力があることなど、発達障害のいいところをたくさん伝えました。息子が誇らしげに聞いてくれたことが嬉しかったです。子どもを褒めようと意識するようになったときに、(うちの子、褒めるところがこんなに少ないなんて…)って思ってこともありましたが、息子と話しているうちに「この子にもいいところいっぱいあったわ!」と気がついていきました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。細かいことを気にしないで失敗しても「いっけね☆」とクヨクヨしないところなどは、本来いいところ! 忘れ物なくし物が多いマイナス面と同じくらいいいところもある!今では、「発達障害がいけないわけじゃない、世の中に発達障害があるからこそ新しい物づくりや産業が栄えたかもしれないよね!」なんて話も親子でしています。初めのうちは発達障害の悪いところばかり見てしまったいた私ですが、徐々に考えを改めて息子自身のいいところに注目できるようになっていったような気がします。息子の自己肯定感も中学からはそんなに下がることがなく、明るくのびのびと好きなことを好きなだけやる人に成長できたんじゃないかな~って思います。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)思春期になると、褒め方も年齢に合わせて変わっていきますよね。子どもの話を最後まで聞き、受け止めることはすばらしいことです。たとえ、子どもの意見が間違っていたとしても一旦最後まで聞き受け止めることが「褒めること」以上に大切だと思います。また、かなしろさんのように見方を変えることで子育ても随分楽になると思います。子どもが言われて嫌なことは障害があってもなくても同じかもしれません。子育てをする保護者みなさんが応用できることだと思いました。
2022年01月08日学校へ行かない生活小1の秋に不登校を選んだむっくん。当初は、精神的に不安定だったこともありゆっくりと本を読んだり、テレビを見て過ごすことが多かったような気がします。3ヶ月経ったころから、少しずつ活気が戻り「何かやることない?」と家の中をうろうろするようになりました。とは言っても、外へ出てどこかの集団に属することはしんどいと話すことから自宅で過ごすことに。自分のために使える時間がたっぷりある自宅でいったいどう過ごせばいいのだろう?自由って尊いけど、自由って難しいなあと感じたものでした。Upload By ウチノコおうち時間の過ごし方学習意欲が多少あるむっくんは、当初から1日1時間程度学習していました。少しずつ時間が増えていき、現在は2時間ほどの学習をこなしています。得意な内容は先に進め、苦手な内容は時間をかけて、興味を持った内容を深堀したりと、むっくんに合う方法を模索しつつ学習を進めています。初期のころは外出を嫌がりましたが、少しずつ拒否感は消えてサイクリングを楽しむようになりました。いつもより少し遠いスーパーに出かけてみたり、通ったことのない道を開拓してみたり。最近は歩数でキャラクターを育成できるスマホゲームに夢中で、歩くことを心がけているようです。本が好きなので図書館によく行きますし、科学館や市営プールなどの公営施設にもときどき出かけます。むっくんは感覚過敏があり、人が多いと疲れてしまうため今までは人の多い場所は敬遠していました。ですが、平日昼間はどこも人が少ないのでおでかけのハードルが下がり、今までは絶対無理だったショッピングモールも短時間なら付き合ってくれるように!息子との買い物にウキウキしてしまう母です。家事スキルはぐーんと伸びました!料理がお気に入りで、お腹がすくと本やインターネットのレシピを参考に斬新な食事やお菓子をつくってくれます。家にずっといるので、昼食どうしよう?と毎日悩ましかったのですが、むっくんと交代制になりずいぶん楽になりました。洗濯や掃除なども手伝ってくれることが増え、暮らしにゆとりがあるからいろいろと興味をもってくれるのかな?なんて考えています。Upload By ウチノコ過ごし方の基本かもしれないテレビゲーム!これは毎日楽しんでいます。私もゲームが好きなので、一緒にプレイしたり対戦することもあります。またscratchなどのプログラミングにも興味を持って取り組んでいます。Youtubeを使って知りたいことを調べたり、ゲーム動画、アニメ、実験動画、コマ撮り動画などをよく見ています。テレビでは学習番組や自然科学系の番組を好んで見ている様子で、ニュースチェックもするようになりました。外の世界を知ることができ、いい刺激になっている様子です。もともと高学年での理科実験を楽しみにしていたので、自宅で実験やっちゃおうと働きかけたときはとても喜んでくれました。最近では図鑑や動画でやり方を調べて、材料をメモして、買い物に行き、準備を整えて実験するという一連の流れを楽しんでいます。また、自分の実験の様子などをタブレットで撮影、編集して見せてくれることもあります。Upload By ウチノコ本が好きなこともあり、暇さえあれば何か本を読んでいます。教科書などに乗っているおススメの本を借りてきて読んだり、漫画も読むようになりました。気に入った作家さんの作品を集めて読むなど、新しい世界の広げ方を覚えてきました。音楽をよく聴くようになりました。YouTubeを使って好きな曲をいろいろ流したり、演奏したいと楽器に向かうこともあります。また、映画もよく見るようになり、80年代のハリウッド映画が今のお気に入りです。もともと物をつくることが好きなむっくん。小さなころから何かに感銘を受けたら手元で何らかの方法でそれを再現していました。頭の中がいっぱいになりそうなときに、手元でアウトプットして頭の容量を開けているのだろうと私は理解していますが、これが思うようにできないことがつらいようなので、いつでも自由に表現できる現在は満たされているようです。おかげで癇癪などはずいぶん減ったように感じています。畑を借りて一緒に野菜を育てています。一生懸命草取りをする私を尻目に、むっくんは昆虫やカエルを取ることに夢中ですが…。今年はチョウやカエルなどの飼育にも挑戦し、学びの多い活動ができました。Upload By ウチノコ自宅で1年過ごして思うことむっくんが「なにかやることない?」と言い出したとき、私は「何か刺激を与えてあげなくちゃ!」と思い込み、頑張りすぎてへばってしまいました。そのため今は、手抜きも意識しつつ暮らしています。私がやる気を出そうが出すまいが、むっくんは自分の調子で1日の過ごし方を選んでいるようです。親子が1日中一緒に過ごすのですから、当然疲れるときもあるし、喧嘩だってします。だけど、不登校生活は楽しいなぁって感じる自分もいます。むっくんは何もせず過ごす日もあれば、忙しく情報を集め活動する日もあり。当たり前なんだけど、どこで過ごそうが子どもは成長するんだなぁとしみじみ感じています。今日も私たちは明るく楽しく1日を過ごしています。執筆/ウチノコ(監修:三木先生より)とても活動の種類が多くて良いですね!これだけのことを準備してあげるのはすごく大変だったでしょうけど、でもおかげでむっくんは楽しく過ごせているようですね。また、外出で「いつもと少し違ったこと」に取り組めているのも良いですね。そうやって少しずつ世界を広げていくことも大事です。それらも含めて「頑張ったり、頑張らなかったり」を繰り返しながら、成長していくんですね。
2022年01月07日修学旅行…楽しみでもあり、不安でもあり?ASDとADHDのある息子コウ、小学6年生。「行けたらいいなぁ」と楽しみにしていた修学旅行が近づいてきました。Upload By 丸山さとこクラスメイトの子に『丸山、迷子になりそう』と言われたというコウは「僕もそう思う」と笑っていましたが、本当に迷子になりかねないコウなので笑いごとではありません。「見学で夢中になって群れから離れないように気をつけてね。周りを見るようにしてね」と改めて念押ししたものの、それで何とかなる子どもであればADHD治療薬の服用をすることもなかったでしょう。「もうあとは祈るしかないな…先生及び班員のみなさま、(多分)ご迷惑おかけします…!」という気持ちで支度を進めました。ただでさえ心配の尽きない修学旅行ですが、荷物の準備中に「日中持ち歩くリュックを自室から持っておいで」とコウへ言うと、「あー、それ、家庭科でつくったナップサックに入れるんだって」と驚きの返答。Upload By 丸山さとこ普段のお出かけはポケットを使い分けることで荷物を管理しているコウです。そんな彼が、ポケットのないナップサックに全ての荷物を入れたらどうなるのでしょうか…?「これだけ沢山の荷物をナップサックに入れたら、何か出すたびに道路や床に物を散らかすことになるのでは?」と、目に浮かぶ光景にゲッソリしながら、「これは何かしらの対策が必要だな」と思いました。Upload By 丸山さとこポーチと大判の袋で、荷物を分けて収納!班行動中にナップサックで持ち歩く荷物の数は結構多くて、全てナップサックへ入れたところ「これだけ荷物がギュウギュウに入ってると、底に沈んだ小さな物を探すのは大変だね…」という感じになりました。そこで、小さな物や薄い物はそれぞれポーチに入れることにしました。カッパ・マスク・ビニール袋は、分けて収納ができるメッシュケースにin!”収納場所のサイズとしまってある物のサイズ”を揃えることで、感覚的に分かりやすい収納になりました。Upload By 丸山さとこスポーツバッグに入れる衣類や洗面用具は、使用シーンごとに分けてまとめることにしました。Upload By 丸山さとこ・入浴時に持っていくタオルやパジャマなどをナップサックに入れた『お風呂セット』・2日目の朝に着替える服を巾着袋に入れた『2日目衣類セット』・予備のタオルや衣類をメッシュケースに入れた『予備の物セット』・そしてハブラシとコップの『ハミガキセット』浴場にいくときは『お風呂セット』、朝着替える時は『2日目衣類セット』、予備の着替えが欲しいときは『予備の物セット』と、使用シーンごとに使いやすいようまとめました。そうして荷物を整理してみた結果もし「細かく分けられると返って使いにくい」などコウから不評であればやめようと思いつつ用意してみた”袋分けシステム”でしたが、「分かりやすいしスゴく便利!」「見たら分かるし取り出しやすいよ」と喜んでくれました。Upload By 丸山さとこ「〇〇はどこ?」と聞いて取り出せるか確かめましたが、どれもスムーズに取り出すことができたので『大丈夫そうかな?』と思い荷物をまとめ、コウは修学旅行へ出発しました。『準備しているときに今分かっていても当日は焦って取り出せなくなるかもな~』と思っていましたが、その後修学旅行から帰ったコウは「大丈夫だったよー」と言っていました。後に担任の先生からも「移動中も集団から離れることなく行動できていましたし、支度も大きく散らかさずにできていました」とうかがってホッとしました。彼の”自称大丈夫”は今一つ信憑性に欠けるため出発前は心配していましたが、『荷物関連で困ったり焦ったりすることなく修学旅行を楽しめたのであれば、それはよかった!』と嬉しく思いながら、家族みんなでお土産のお菓子を食べました。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)ADHDのある人のカバンや引き出しの中はゴチャゴチャしてしまうことが多くあります。カバンいっぱいに荷物を詰めすぎることがあるのでチャックが閉まらず開いたままということもあります。このようなことがよくある方の場合、カバンもナップサックも同じようなもので、手を入れて手探りで物を探す光景を私の外来ではよく目にします。カバンの中を見られるならば、色のついた子袋に分けるのも一つの方法でしょう。しかし、カバンの中が荷物で埋まっていて上から下まで見ることは不可能な場合も多いです。そういう場合、今回のように手触りでも分かりやすい袋などに分けておくといいでしょう。今回の場合、「使い慣れたリュックサックでもいい」という学校側の配慮もあったらよかったのかなと思いました。
2022年01月06日子育て楽じゃありません
細川珠生のここなら分かる政治のコト
私の愛すべき家族