「発達障害」について知りたいことや今話題の「発達障害」についての記事をチェック! (37/98)
お兄ちゃんの料理は科学実験気分?ちょっと意外なのですが、タケルは料理が得意で、人が料理をつくっている動画などもよく見ています。幼いころは、おばあちゃんに教えてもらってパンやお菓子をつくっていたことも。粉ものや液体を測って化学反応させるのが面白かったらしく、今でも料理をする様子はどこか理科実験ぽいです。料理をすること自体には問題がないタケル。でも、例えば自分で「お昼に食べよう」と考えて、ごはんをつくることはできません。私が、タケルのご飯の用意を忘れて出かけていたりすると、帰ってくるまで何も食べずに待っています。Upload By 寺島ヒロ材料を並べて「カレーつくってくれる?」といえばつくってくれるのですが、キッチンのあちこちに散在する材料から、食べたいものを選んで、その材料にふさわしい調理をして、美味しく食べられるようにするということは、『隠れている工程が多すぎて、とてもムリ!』と感じるようです。また、普段は朝と夜は私が先んじて料理をしてしまうこともあり、タケルが料理をするチャンスは昼ぐらい。それも少しもたつくと「もう行かなきゃいけないから、ラーメンでいいよ!」となってしまい、なかなか掘り下げられません。Upload By 寺島ヒロ子どもは料理をしないもの?いっちゃんのこだわり一方、妹いっちゃんは、なかなか料理に興味を持つことがなく、10歳ぐらいまでナイフを持つこともありませんでした。手先の動きが今ひとつ器用ではないということもあり、私も積極的に食材を切ったり、お皿を運んだりということはやらせていなかったので、いつしか「子どもは料理をしないもの」と思いこんでしまったようです。頼めばお箸ぐらいは取ってきてくれるのですが、それ以上の台所働きをすることはありませんでした。変化があったのは、小学校の高学年になってから。学校の調理実習で「包丁がかり」をやったことをきっかけに「子どもでも料理していいんだ!お兄ちゃんは変わり者だと思ってた!」と意識改革があったらしく、それからはちょいちょい、料理をしていると寄ってきて「やらせてー」と言うようになりました。中学生になってからはさらに進化し、たまにですが「ママさん忙しい?何かつくってあげようか?」と言って、つくってくれるようにもなりました!めでたしめでたし…かと思いきや…Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ材料を見て料理を思い浮かべられる妹と、何をつくるか決めてもらえば料理は正確につくれる息子。その力、足して2で割れないかなあ…と思う母です。。執筆/寺島ヒロ(監修:三木先生より)必要な能力を兄妹で分けてしまった感じなんですね(笑)。それぞれ「段取りを網羅的に整理するための段取り構築」と、「思いついた作業を着実に遂行する練習」ができると良いのかもしれませんね。ぜひ次は「二人で協力してつくったら…」というエピソードを読んでみたいものです。
2022年01月12日バスが乗れず家から駅まで50分歩く日々娘は2歳のころ、乗り物で癇癪を起こすことがしょっちゅうでした。中でも特にバスが苦手でした。電車よりも人の密度が高いからかもしれません。バスで癇癪を上げてしまうと逃げ場がないし、電車よりも狭い空間なのでより目立ってしまいます。私は娘とバスに乗るのを諦めて、駅まで歩いていました。しかし家から駅までおよそ50分。足早でも40分。途中で坂道も多いので、ベビーカーを押しながら毎回汗ダラダラでした。Upload By とまぱんママ友親子と遊んでも早めに帰る入園前はいつも娘と2人っきり。なので、ママ友親子と久しぶりに遊ぶ日はとても楽しみにしていました。しかし親しくしていたママ友は少し遠くに住んでいたため、お互いの中間地点までバスや電車を使う必要がありまた。まず駅まで50分かけてベビーカーを押し、電車の中では癇癪を起こさないかずっとソワソワ。途中で癇癪を起こし、持ってきたおもちゃを電車の中でぶちまけたことが何度もありました。待ち合わせ場所に着くころには恐らく老け込んだ顔になっていたことでしょう。そして問題は帰宅時間。夕方近くになってくると電車も混み始め、人混みが嫌いな娘は癇癪を起こす可能性が高くなります。人混みの中のベビーカーを想像するだけでもゾッとするのですがそこに癇癪が加わるともうこの世の終わり。そして駅から家までまた50分かけて歩かなくてはいけません。ママ友親子には悪いと思いながらも、私はだいぶ早めに帰っていました。Upload By とまぱん「動画ばかり見せてたら成長によくないらしいよ」電車で癇癪を起こしたときに一番効果的だったのは、スマホの動画でした。音量はオフにしていたものの、外で子どもに動画を見せるのは多少なりとの罪悪感はありました。しかしこれが周りに迷惑をかけない一番の方法。とある日、娘がいつものようにぐずり、スマホで動画を見せていたときのこと。Upload By とまぱんUpload By とまぱん向かいに座っていたおばあさんは、目の前にいる私たちを見ながら話していました。私の視線に気づき、気まずそうにおばあさんの話しを止めるおじいさん。娘はこの時期とても言葉がゆっくりだったため、おばあさんの「動画ばかり見せたら成長によくないらしいよ」という言葉が、ずっと頭の中でグルグルしていました。Upload By とまぱん双子の女の子たちに心が救われるいつものように電車で娘が癇癪を起こしていたときのこと。おもちゃを出してもおさまらない娘。動画を見せたいけど、この間みたいに誰かに言われたら…どうしようと焦っていたそのとき。Upload By とまぱん前に座る双子の女の子たちが、娘を見て「赤ちゃん可愛い」と話していました。恐らく娘は身長が低いので、2歳でも赤ちゃんに見えたのでしょう(笑)女の子たちは8、9歳くらいだったかと思います。そんな言葉を言ってくれるなんて、なんて心優しい女の子たちなんだ…!と感動しました。女の子たちの言葉にとても心が救われたのを覚えています。バスに乗れなかった娘は今そんな娘も、3歳を過ぎたころから大人しく電車やバスに乗れるようになりました。駅まで時間をかけて歩いていた日々。今となっては懐かしいです。大人しく乗れるようになったものの、4歳になった今も混んでる電車やバスは少し苦手なよう。そのため今も帰宅はなるべく早くしたり、混みがちな急行より各停を使ったりしています。また、人の目線を敏感に感じとってしまう娘。電車で向かいの席に座っているおばあちゃんが温かい目で娘を見ていても、それが恐怖に感じるようでよく自分の顔を手で隠しています。娘にとってのストレスは多少なりともまだありますが、もう激しい癇癪はなくなり、動画やおもちゃは必要なくなりました。娘が幼かったころ、双子の女の子がかけてくれたような優しい声かけや席を譲っていただいたことが度々ありました。私も小さなお子さんを抱えているパパママがいたら少しでも気づいてお手伝いできたらと思います。執筆/とまぱん(監修:三木先生より)お子さんもお母さんも、二人とも大変な思いをしてこれまでやってこられたんですね。凸凹のある子どもたちは、自分に向けられている視線に敏感だったりします。人が多いところが苦手な理由は、たくさんの刺激以外にそういうところにあるのかもしれませんね。世の中の人がみんなその双子の女の子たちみたいだったら、もう少し過ごしやすくなるかもしれません。そういう社会になっていくことを願ってやみません。
2022年01月11日子どもを褒めて伸ばすのがよいと言うけれどUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)の診断を受けたのは小4のときでした。息子の療育などを通して、褒めることで自己肯定感が育まれることを知り「なるべく気をつけて声をかけよう」とは思っていました。ですが、だんだんと反抗期に突入していった息子はイライラしていることが多く、特性から忘れ物やなくし物も多いことで私もイライラしてしまい、息子を素直に褒められないことが多くありました。Upload By かなしろにゃんこ。「褒め方が分からない」「褒めるところが分からない」と思っていた私でしたが、クリニックでペアレントトレーニングを受けていたときに「君は息を吸って吐いているだけで完ぺきなんだ、生きているだけで素晴らしい」という究極の褒めに達したお母さんもいるんですよ!と教えてもらいました。それを聞いてからは「なんだ、どんな些細なことでも褒めちゃっていいのね!」と思い、素直に息子を褒められるようになっていったと思います。(自画自賛ですけど、笑)Upload By かなしろにゃんこ。そんなとき、発達障害の自助会で出会った当事者の先輩から親や周りの大人から受ける傷つく言葉に「こんなふうに言われたら嫌!」とか、逆に「親からこう伝えられていたら変わったかもしれない」など、いろいろな話を聞きました。(※事前に掲載の許可をいただいております)そこで聞いたこんな意見が印象に残りました。「子どもの意見になんでも反対しないでほしい」「親の言う通りの進路を歩めないからといって全否定しないでほしい」「わざとらしく褒めないでほしい」「偉人=発達障害というケースを比べて自分に期待しないでほしい」大人が放った言葉一つで心が大きく揺れてしまうことがあるのだと知り、息子への声かけにも応用してみようと思いました。息子に合った「自己肯定感を育む関わり方」とはUpload By かなしろにゃんこ。そして、息子が小5年生くらいのときから自己肯定感を育むために「リュウ太の意見尊重しますよ!」作戦をスタートしました。それは、息子が言った「意見」に乗っかること。夕飯何が食べたいか聞いて「オムライスがいい」と言ったら、私は「リュウ太のそのアイデアいいね!オムライスにしよう!」と息子に夕飯のメニューなどを決めてもらうことにしました。意見に賛成する言葉を伝えると息子は嬉しそうでした。また、それまで褒めるとき私は手をたたいて褒めていたのですが「その言い方マジキモイ」と息子に言われてしまったので、高学年になった息子に合わせてクールな、さりげない言い方に変更しました。「お!ソレいいじゃん」や「カッコイイね」とか「へ~うまいじゃない、やるね~」など。そのほうが本心で肯定している感じに伝わると思いました。Upload By かなしろにゃんこ。息子が大人になってから言っていたのですが「大げさに褒める言い方は、オレにヤル気を出させるために褒めてる感が伝わってきて本心じゃないなって思ってた」と。年齢や性格によっては、絶賛よりも同意程度がいいのね~と息子から教わりました(笑)当事者の先輩の意見であった「偉人=発達障害と比べられたくない」というものに対しては、私はあえて使ってみることにしました。息子に偉人のようになれ!とは思っていないので、「こんな人もいるんだって」程度に起業する社長さんや研究者、芸能界などアイデアや瞬発力が必要な分野で活躍している発達障害がある先輩たちの話をしました。Upload By かなしろにゃんこ。ADHDがあるから失敗を恐れず再チャレンジができることや、豊かな発想を発信できること、好奇心旺盛で気になったらコツコツ探求、研究ができる能力があることなど、発達障害のいいところをたくさん伝えました。息子が誇らしげに聞いてくれたことが嬉しかったです。子どもを褒めようと意識するようになったときに、(うちの子、褒めるところがこんなに少ないなんて…)って思ってこともありましたが、息子と話しているうちに「この子にもいいところいっぱいあったわ!」と気がついていきました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。細かいことを気にしないで失敗しても「いっけね☆」とクヨクヨしないところなどは、本来いいところ! 忘れ物なくし物が多いマイナス面と同じくらいいいところもある!今では、「発達障害がいけないわけじゃない、世の中に発達障害があるからこそ新しい物づくりや産業が栄えたかもしれないよね!」なんて話も親子でしています。初めのうちは発達障害の悪いところばかり見てしまったいた私ですが、徐々に考えを改めて息子自身のいいところに注目できるようになっていったような気がします。息子の自己肯定感も中学からはそんなに下がることがなく、明るくのびのびと好きなことを好きなだけやる人に成長できたんじゃないかな~って思います。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)思春期になると、褒め方も年齢に合わせて変わっていきますよね。子どもの話を最後まで聞き、受け止めることはすばらしいことです。たとえ、子どもの意見が間違っていたとしても一旦最後まで聞き受け止めることが「褒めること」以上に大切だと思います。また、かなしろさんのように見方を変えることで子育ても随分楽になると思います。子どもが言われて嫌なことは障害があってもなくても同じかもしれません。子育てをする保護者みなさんが応用できることだと思いました。
2022年01月08日学校へ行かない生活小1の秋に不登校を選んだむっくん。当初は、精神的に不安定だったこともありゆっくりと本を読んだり、テレビを見て過ごすことが多かったような気がします。3ヶ月経ったころから、少しずつ活気が戻り「何かやることない?」と家の中をうろうろするようになりました。とは言っても、外へ出てどこかの集団に属することはしんどいと話すことから自宅で過ごすことに。自分のために使える時間がたっぷりある自宅でいったいどう過ごせばいいのだろう?自由って尊いけど、自由って難しいなあと感じたものでした。Upload By ウチノコおうち時間の過ごし方学習意欲が多少あるむっくんは、当初から1日1時間程度学習していました。少しずつ時間が増えていき、現在は2時間ほどの学習をこなしています。得意な内容は先に進め、苦手な内容は時間をかけて、興味を持った内容を深堀したりと、むっくんに合う方法を模索しつつ学習を進めています。初期のころは外出を嫌がりましたが、少しずつ拒否感は消えてサイクリングを楽しむようになりました。いつもより少し遠いスーパーに出かけてみたり、通ったことのない道を開拓してみたり。最近は歩数でキャラクターを育成できるスマホゲームに夢中で、歩くことを心がけているようです。本が好きなので図書館によく行きますし、科学館や市営プールなどの公営施設にもときどき出かけます。むっくんは感覚過敏があり、人が多いと疲れてしまうため今までは人の多い場所は敬遠していました。ですが、平日昼間はどこも人が少ないのでおでかけのハードルが下がり、今までは絶対無理だったショッピングモールも短時間なら付き合ってくれるように!息子との買い物にウキウキしてしまう母です。家事スキルはぐーんと伸びました!料理がお気に入りで、お腹がすくと本やインターネットのレシピを参考に斬新な食事やお菓子をつくってくれます。家にずっといるので、昼食どうしよう?と毎日悩ましかったのですが、むっくんと交代制になりずいぶん楽になりました。洗濯や掃除なども手伝ってくれることが増え、暮らしにゆとりがあるからいろいろと興味をもってくれるのかな?なんて考えています。Upload By ウチノコ過ごし方の基本かもしれないテレビゲーム!これは毎日楽しんでいます。私もゲームが好きなので、一緒にプレイしたり対戦することもあります。またscratchなどのプログラミングにも興味を持って取り組んでいます。Youtubeを使って知りたいことを調べたり、ゲーム動画、アニメ、実験動画、コマ撮り動画などをよく見ています。テレビでは学習番組や自然科学系の番組を好んで見ている様子で、ニュースチェックもするようになりました。外の世界を知ることができ、いい刺激になっている様子です。もともと高学年での理科実験を楽しみにしていたので、自宅で実験やっちゃおうと働きかけたときはとても喜んでくれました。最近では図鑑や動画でやり方を調べて、材料をメモして、買い物に行き、準備を整えて実験するという一連の流れを楽しんでいます。また、自分の実験の様子などをタブレットで撮影、編集して見せてくれることもあります。Upload By ウチノコ本が好きなこともあり、暇さえあれば何か本を読んでいます。教科書などに乗っているおススメの本を借りてきて読んだり、漫画も読むようになりました。気に入った作家さんの作品を集めて読むなど、新しい世界の広げ方を覚えてきました。音楽をよく聴くようになりました。YouTubeを使って好きな曲をいろいろ流したり、演奏したいと楽器に向かうこともあります。また、映画もよく見るようになり、80年代のハリウッド映画が今のお気に入りです。もともと物をつくることが好きなむっくん。小さなころから何かに感銘を受けたら手元で何らかの方法でそれを再現していました。頭の中がいっぱいになりそうなときに、手元でアウトプットして頭の容量を開けているのだろうと私は理解していますが、これが思うようにできないことがつらいようなので、いつでも自由に表現できる現在は満たされているようです。おかげで癇癪などはずいぶん減ったように感じています。畑を借りて一緒に野菜を育てています。一生懸命草取りをする私を尻目に、むっくんは昆虫やカエルを取ることに夢中ですが…。今年はチョウやカエルなどの飼育にも挑戦し、学びの多い活動ができました。Upload By ウチノコ自宅で1年過ごして思うことむっくんが「なにかやることない?」と言い出したとき、私は「何か刺激を与えてあげなくちゃ!」と思い込み、頑張りすぎてへばってしまいました。そのため今は、手抜きも意識しつつ暮らしています。私がやる気を出そうが出すまいが、むっくんは自分の調子で1日の過ごし方を選んでいるようです。親子が1日中一緒に過ごすのですから、当然疲れるときもあるし、喧嘩だってします。だけど、不登校生活は楽しいなぁって感じる自分もいます。むっくんは何もせず過ごす日もあれば、忙しく情報を集め活動する日もあり。当たり前なんだけど、どこで過ごそうが子どもは成長するんだなぁとしみじみ感じています。今日も私たちは明るく楽しく1日を過ごしています。執筆/ウチノコ(監修:三木先生より)とても活動の種類が多くて良いですね!これだけのことを準備してあげるのはすごく大変だったでしょうけど、でもおかげでむっくんは楽しく過ごせているようですね。また、外出で「いつもと少し違ったこと」に取り組めているのも良いですね。そうやって少しずつ世界を広げていくことも大事です。それらも含めて「頑張ったり、頑張らなかったり」を繰り返しながら、成長していくんですね。
2022年01月07日修学旅行…楽しみでもあり、不安でもあり?ASDとADHDのある息子コウ、小学6年生。「行けたらいいなぁ」と楽しみにしていた修学旅行が近づいてきました。Upload By 丸山さとこクラスメイトの子に『丸山、迷子になりそう』と言われたというコウは「僕もそう思う」と笑っていましたが、本当に迷子になりかねないコウなので笑いごとではありません。「見学で夢中になって群れから離れないように気をつけてね。周りを見るようにしてね」と改めて念押ししたものの、それで何とかなる子どもであればADHD治療薬の服用をすることもなかったでしょう。「もうあとは祈るしかないな…先生及び班員のみなさま、(多分)ご迷惑おかけします…!」という気持ちで支度を進めました。ただでさえ心配の尽きない修学旅行ですが、荷物の準備中に「日中持ち歩くリュックを自室から持っておいで」とコウへ言うと、「あー、それ、家庭科でつくったナップサックに入れるんだって」と驚きの返答。Upload By 丸山さとこ普段のお出かけはポケットを使い分けることで荷物を管理しているコウです。そんな彼が、ポケットのないナップサックに全ての荷物を入れたらどうなるのでしょうか…?「これだけ沢山の荷物をナップサックに入れたら、何か出すたびに道路や床に物を散らかすことになるのでは?」と、目に浮かぶ光景にゲッソリしながら、「これは何かしらの対策が必要だな」と思いました。Upload By 丸山さとこポーチと大判の袋で、荷物を分けて収納!班行動中にナップサックで持ち歩く荷物の数は結構多くて、全てナップサックへ入れたところ「これだけ荷物がギュウギュウに入ってると、底に沈んだ小さな物を探すのは大変だね…」という感じになりました。そこで、小さな物や薄い物はそれぞれポーチに入れることにしました。カッパ・マスク・ビニール袋は、分けて収納ができるメッシュケースにin!”収納場所のサイズとしまってある物のサイズ”を揃えることで、感覚的に分かりやすい収納になりました。Upload By 丸山さとこスポーツバッグに入れる衣類や洗面用具は、使用シーンごとに分けてまとめることにしました。Upload By 丸山さとこ・入浴時に持っていくタオルやパジャマなどをナップサックに入れた『お風呂セット』・2日目の朝に着替える服を巾着袋に入れた『2日目衣類セット』・予備のタオルや衣類をメッシュケースに入れた『予備の物セット』・そしてハブラシとコップの『ハミガキセット』浴場にいくときは『お風呂セット』、朝着替える時は『2日目衣類セット』、予備の着替えが欲しいときは『予備の物セット』と、使用シーンごとに使いやすいようまとめました。そうして荷物を整理してみた結果もし「細かく分けられると返って使いにくい」などコウから不評であればやめようと思いつつ用意してみた”袋分けシステム”でしたが、「分かりやすいしスゴく便利!」「見たら分かるし取り出しやすいよ」と喜んでくれました。Upload By 丸山さとこ「〇〇はどこ?」と聞いて取り出せるか確かめましたが、どれもスムーズに取り出すことができたので『大丈夫そうかな?』と思い荷物をまとめ、コウは修学旅行へ出発しました。『準備しているときに今分かっていても当日は焦って取り出せなくなるかもな~』と思っていましたが、その後修学旅行から帰ったコウは「大丈夫だったよー」と言っていました。後に担任の先生からも「移動中も集団から離れることなく行動できていましたし、支度も大きく散らかさずにできていました」とうかがってホッとしました。彼の”自称大丈夫”は今一つ信憑性に欠けるため出発前は心配していましたが、『荷物関連で困ったり焦ったりすることなく修学旅行を楽しめたのであれば、それはよかった!』と嬉しく思いながら、家族みんなでお土産のお菓子を食べました。Upload By 丸山さとこ執筆/丸山さとこ(監修:鈴木先生より)ADHDのある人のカバンや引き出しの中はゴチャゴチャしてしまうことが多くあります。カバンいっぱいに荷物を詰めすぎることがあるのでチャックが閉まらず開いたままということもあります。このようなことがよくある方の場合、カバンもナップサックも同じようなもので、手を入れて手探りで物を探す光景を私の外来ではよく目にします。カバンの中を見られるならば、色のついた子袋に分けるのも一つの方法でしょう。しかし、カバンの中が荷物で埋まっていて上から下まで見ることは不可能な場合も多いです。そういう場合、今回のように手触りでも分かりやすい袋などに分けておくといいでしょう。今回の場合、「使い慣れたリュックサックでもいい」という学校側の配慮もあったらよかったのかなと思いました。
2022年01月06日もしかして感覚過敏?子どもの行動が気になる場合と対処方法Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン子どもの行動が気になったときには、まず子どもの行動をよく観察してみましょう。観察するときは、特定の気になる行動が起こったときに、「どのような状況だったのか(時間、場所、その場にいた人、出来事)」と、「その行動に対してどうしたのか、その結果どうなったのか」という前後の状況を記入しておきます。そうすることで子どもの困りごとやその行動がどこからきているのか把握するための手立てとなります。また、行動をするときにはその背後に何らかの理由があります。子どもが気になる行動をとったときには、その行動がどのような刺激や、どのような理由によって引き起こされているのかを知ることが必要です。つまり、子どもがどのような種類、強さの刺激に対して過敏なのか、嫌悪感を感じているのか、受け取りにくいのかを周囲の大人が知っておくことが大事です。子どもの感覚の偏りを知ることによって、日々の子育てに役立てることができたり、幼稚園や保育園、学校の先生に具体的なサポートをお願いしたりすることができます。また、子どもの感覚の特性を把握するために、保護者が簡単に利用できる感覚のチェックリストもあります。このようなチェックリストを参照することで、気をつけておくべき子どもの行動特徴を知ることができます。判断がつかず心配な場合には、病院の小児科や、地域の子育て支援センターを訪れ、専門家に相談してみましょう。感覚過敏、感覚の鈍感さがある子どもへの3つの対応方法上で述べたように、お子さんの様子を注意深く見て、困りごとを発見することで、子どもの困りごとに対する適切な対処方法を考えることができます。感覚に過剰な偏りのある子どもの困りごとを軽減させるためには環境を整える方法と、個人にアプローチする方法があります。感覚の偏りは、刺激に対して過剰に反応する、または感覚に対する反応が鈍いというあくまで「状態」であり、病気とは異なります。医師の間でもその定義はあいまいで、処方箋や治療方法は確立されていないのが現状です。ここでは、感覚に偏りのある子どもの苦痛や困りごとを軽減するための方法についてお伝えします。1.嫌悪刺激を取り除く・別の刺激に変える子どもの感覚過敏を理解する上で重要なことは、「無理に刺激に慣れさせることは逆効果である」ということです。感覚過敏自体は、訓練や練習で急激に改善することは難しい場合もありますが、時間の経過や子どもの発達とともにある程度緩和されていくことがあります。刺激に嫌な経験が結びつくと、さらに刺激に対して嫌悪感を強めるようになります。無理に刺激を受けることを強要せず、軽減する方法を考えます。運動会やお祭りといった行事など、いつもと異なる環境で強い刺激が想定される場合・一部のみの参加にする・ピストルの音を子どもが受け入れることができる音(ホイッスルなど)にしてもらうなど刺激を軽減してもらうことも検討する触覚が鈍い子どもは、自分の感じることのできる刺激を過剰に求める「感覚探求」と呼ばれる行動をとる場合があります。例えば、なんでも触って回る、絶えず洋服を触っている、など落ち着きがなかったり、周りの人にべたべたして距離が近いなどの行動が例として挙げられます。このような落ち着きのない行動がみられる背後には、本人の脳に必要な感覚が十分満たされていないことがあるのではないかと考えられています。本人の感覚への欲求を満たせるような遊びや課題を提供してあげるのがよいでしょう。例えば、タオルや人形など、別の触っても構わないものを渡すことで、それらの感覚要求は満たされることもあります。その結果、子どもは落ち着きのない行動をとる必要がなくなり、安心してじっとして居ることが可能となります。また、痛みに対して鈍感なお子さんの場合には自ら訴えることが難しいので、共通理解や対応が必要です。2.ルールを決めておく自分で刺激を回避する方法を学ぶことも、感覚過敏による苦しみを軽減する一つの手段です。子どもと大人の間で、このような出来事が起こったときにはこうする、というルールを決めておくとよいでしょう。感覚が過敏である場合について考えます。例えば、教室が賑やか過ぎて落ち着かないときに、黙って教室を飛び出るのではなく、イヤーマフを自分でしたりして、適切な対処方法をとることができます。また、視覚が過敏な場合には、サングラスをかけたりすることにより回避することができます。「音がうるさいときには、イヤーマフをする」「外に行くときにはサングラスをする」というように子どもに決まりごととして認知させることにより、自ら刺激を回避できるようになる場合があります。これらをする場合、先生やクラスメイトなど周りの人たちの理解なども大事です。3.刺激が発生するメカニズムや、刺激が入ってくることを前もって伝える感覚過敏のある子どもは、思ってもみなかったタイミングで音や光が突然に入ってくる場合に、不安やパニックなどの不快な情動が特に起こることがあります。ゆえに、子どもを不安にさせないためにはこれから入ってくる刺激に対して、その量や質、そのタイミングを予測できるようにすることが大切です。また、なぜその刺激が生じるのか、刺激に直面した場合、どのように対応したらいいのかを理解することで、刺激に対する不安を軽減することができます。例えば触覚に偏りがある子どもの場合だと、突然に体に触れられると、驚いてパニックになってしまうことがあります。子どもの体に触れたり、水をかけたりする前に、あらかじめ声をかけるなどの工夫をしましょう。まとめ感覚過敏・感覚の鈍麻がある子どもは一人ひとりその困りの内容が違います。まずはお子さんの様子を注意深く見て、一体何に困っているのかを見つけ、適切な対応をすることがお子さんの苦痛の軽減・安心に繋がっていきます。イラスト/かなしろにゃんこ。
2022年01月03日大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」まとめ第二弾漫画『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』の監修や、発達ナビでもコラムの執筆などでおなじみのフリーランス児童精神科医の三木崇弘先生。今回はそんな三木先生とママコラムライターさんが対談した大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」コラムをまとめてみました。第二弾でご紹介するコラムのテーマは「言い争いにならない伝え方」「不登校と将来」「進路問題」「障害告知」「子どもと親の距離感」「衝動性」などなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてくださいね。当たり前が分からない!息子が理解しやすい伝え方は?おもちゃを拾ってくれた大人を見て「おもちゃとった!」と大騒ぎになってしまったむっくん。もしかして"当たり前"のことが分かってない?発達障害のある息子の癇癪。納得するのに必要なのは…!?小さなころから癇癪が起きがちなむっくん。ウチノコさんが家庭で行ってる対策や三木先生のアドバイスは役に立つものばかりです。中2発達障害長男。進学しても進路や勉強の悩みは尽きず…中学2年生のASDとADHDのある長男くん。理系の私立の中学に進学し、本人の環境にも合っているのに「進路を変えて定食屋になりたい」と言い出して…!?小5ADHD次男への障害告知のタイミング次男くんも小5になり、そろそろ障害告知をする時期が近づいているのかも…と思うスガカズさん。障害告知、障害受容などどのように考えていったらいいのか三木先生にお聞きしました。親は発達障害のある子どもをどこまでサポートしたらいいの?まだまだコウくんにはサポートが必要だと考えているさとこさん。でも一体どこまで関わっていいのかサポートの加減に悩んでいて…。衝動性からの「ついやっちゃった」への対応への理解と付き合い方ASD・ADHDのあるコウくん。理屈では理解していても「ついやっちゃった」「なんとなく」と衝動性で動いてしまうこともしばしば。そんなときに親としてできることとは…?三木先生のコメントには今後の子育てのヒントがたくさん三木先生の優しさと、ときに鋭さのあるコメントに「なるほど…!」と感じる方も多いのではないでしょうか。三木先生とママライターさんたちの掛け合いの様子も楽しい対談コラムです。各ママライターさんたちの描く三木先生の似顔絵も必見!
2022年01月02日感覚過敏のある人に起こる、それぞれの感覚ごとの症状Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン刺激の感じ方は個々によりさまざまで、症状も多岐にわたります。感覚の偏りが引き起こす具体的な症状とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と、体の動きをつかさどる固有感覚、体のバランスをつかさどる平衡感覚について、それぞれに分けてお伝えします。視覚人は多くの刺激がある環境でも、注意を向けたい刺激を無意識的に選ぶことができます。しかし、視覚過敏がある場合には、全ての刺激情報を均等な濃さで受け取ってしまいます。ビビッドでカラフルな色のものや、たくさんのものがある場所は苦手なことが多くあります。視覚過敏でない人にとっては気にならないような光や白いものが、視覚過敏のある人にとっては目に突き刺さるほどまぶしいことがあります。蛍光灯の光や、テレビやパソコンの液晶画面、白い紙など苦手なことが多いです。授業中に席を離れてしまうなどの子どもの行動の背景には、感覚の偏りがある可能性があります。聴覚賑やかな場所にいると疲れやすいなどが聴覚過敏の症状です。聴覚過敏の症状が強い場合、耳をふさぎたくなるほど耳の奥が痛くなったり、頭痛が起きたりするような身体的な痛みを伴うことがあります。人によって気になる音は異なりますが、例として、女性の甲高い声や、休み時間のチャイム、合奏の音、掃除機などの機械音などが挙げられます。選択的に音を拾い集めるのが困難になってしまい、音の刺激に対して適切に注意を向ける処理ができないために起こります。一生懸命聞こうとしていても、たくさんの音が聞こえてしまうので本人は混乱しています。逆に聴覚への反応性が低い場合には、音を聞き取ることができないために、結果的に授業中に上の空になったり、呼びかけても応じなかったり、またテレビの音を大きくしたりといった様子が見られることがあります。嗅覚少しのにおいを過敏に受け取ってしまうことが嗅覚過敏です。少しのにおいでも過剰に受け取ってしまうあまり、ストレスが増加します。においに耐えられなくなって、吐いてしまうこともあり、ひどい場合には身体的、精神的ともに支障をきたすことがあります。逆に、嗅覚の鈍感さが見られる場合には、適切ににおいを感じることができません。においが分からないと、味も分かりにくくなるので、嗅覚と同時に味覚の感覚にも支障をきたすことがあります。味覚味覚に感覚の偏りが見られる場合、多くの人にとって美味しいと感じられる味がそうではないように感じたり、変わった味を好むようなことが見られることがあります。例えば、特定の味に対して、非常に強い不快感を感じたり、味が混じることを嫌がり、分けて食べたがったり、食べ物、飲み物の苦みや酸味を過剰に感じたりします。結果的に食べ物の好き嫌いの差が顕著で偏食の傾向が見られるようになったり、刺激的な味を好むゆえに調味料や香辛料で過剰に味付けすることがあります。食べ物に関する感覚は味覚のほか、におい、食感、色、といったさまざまな感覚が関係していることがあります。一人ひとり原因が異なるので注意が必要です。触覚触覚が過敏な場合には、皮膚に触れる刺激を過剰に感じて不快感が生じます。触ることができないものとしては、のりやねんど、スライムなどのぬるぬる、べたべたするものや、たわし、毛糸、洋服のタグが代表として挙げられます。また、自分から触ることは平気でも、人から触られることが苦手な子もいます。触覚に対する過敏さからくる反応として、以下のような例が挙げられます。・特定の肌触りの服を嫌がる/好む・爪切り、耳かきを嫌がる・自分からは人懐っこい関わりをするのに、触れられることを嫌がる・触ることのできないものがある(よって、遊び・活動の幅が制限される)触覚の鈍さが見られる場合には注意が必要です。というのも、触覚が鈍いときには、痛覚(痛みを感じる感覚)、温覚(温度を感じる感覚)も同時に鈍いことがあるからです。温度、身体的な痛みを感じることができないと、身体の異変に気がつかず、その結果適切な対処をできないこともあります。例えば、転んで怪我をしたときにも、本来ならば病院に行って手当をしなければならないはずなのに、その痛みや怪我をしていることに気が付かず、即座に適切な治療を受けることができない場合もあります。自傷行動は感覚の過敏性や鈍さから起こるだけではありませんが、自分が感じることのできる刺激を求めるあまり、血が出るまで腕を掻いたりかんだり、嫌な刺激から逃れたいために頭をぶつけるなどの自傷行動を行ってしまうこともあります。固有感覚固有感覚とは、筋肉の張り具合や関節の曲げ伸ばしを感じとる感覚です。自分の体の位置や動きを把握する役割があります。固有感覚につまずきがあると、筋肉に対する刺激を過剰に求める「感覚探求」が生じると言われています。固有感覚が直接の原因ではないこともありますが、以下のような行動があげられています。・強く足踏みをする・体の一部を動かし続ける(常同行動)・他人に思いっきりぶつかる、激しく関わる平衡感覚平衡感覚とは体のバランスをとるときに働く感覚で、主に姿勢のコントロールや体のバランスを保つことに関わっています。平衡感覚が鈍い場合には、体の揺れや傾きを自身で調節することが難しく、例えば、頭を振りながら走ったり、ぐるぐる回ったり、回る遊具やブランコなどが大好きで離れようとしなかったりすることもあります。逆に、平衡感覚が敏感な場合には、動きの刺激に対して恐怖心や不安を持ってしまうこともあります。例えば、ブランコや高い場所に行くことを嫌がったり、頭を傾けたり体が傾いたりするのを嫌がったりします。感覚の偏りの原因は? 発達障害と関係があるの?感覚に偏りが見られる原因はあいまいではっきりとは分かっていませんが、中枢神経系(辺縁系や視床下部など)における感覚情報処理の問題によるのではないかと考えられています。感覚の過度な偏りと発達障害には密接な関係があります。その中でも、自閉スペクトラム症(ASD)では、幼いころから感覚の偏りが見られることが多いと言われています。発達障害のある子どもは、刺激に対して適切な感情を生じさせる機能に特性があると考えられています。そのため本来は有害でない刺激に対して過度な恐怖、不安の感情を持つことがあります。また、適切に外部の刺激を取捨選択し、注意を向けたり調整することが難しいために、定型発達の子どもに比べて、過剰に反応をしてしまうことがあります。その結果、新しい活動を避けるようになってしまったり、多動傾向になったり、パニックになったり、周囲に対する不安感が強くなったりすることもあります。それらの行動の背景に感覚の偏りがあるかどうかを見極めることは大切なことです。このような刺激に対して、環境を調節したり、適切にコントロールしたりすることができれば、本人の不安やストレスが軽減できるようになります。※記事中のような行動があったとしても、感覚の特性だけが原因とは限らないので注意が必要です。専門機関で相談されることをおすすめいたします。イラスト/かなしろにゃんこ。
2021年12月30日年末年始の帰省・旅行・カミングアウト問題などご家族で帰省される方も多い年末年始。帰省すると顔を合わせることになる祖父母や親族に、子どもの発達や特性について、どのように説明したらいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。今回は、そのようなときのヒントにもなる、祖父母との付き合い方やカミングアウトの体験談、また帰省時の移動での工夫など、発達が気になる子どもとの帰省や旅行に関するお役立ち記事をまとめました。気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてください。初めての飛行機での帰省にパニック…!?「お出かけ」がストレスなむっくん。不安が高まるとパニックを起こしてしまうことも…。初めての飛行機での帰省。移動時の不安が少しでも減らせるように母のウチノコさんが作成したものとは…?社会のテストが赤点だらけの息子が「旅育」で変わり…社会が苦手なリュウ太くん。地理にもまったく興味がなかったのですが、高校生になったころ、突然小さいころの旅の記憶を思い出し…。自閉スぺクトラム症長男、帰省での心の成長長男くんの精神安定剤はピンクのボール。家の中で長男くんとピンクのボールは常に一緒です。帰省のときに母のシュウママさんはそんなピンクのボールを荷物の中に入れ忘れ焦りますが、長男くんがとった行動は意外なもので…。新幹線での長時間移動。パニックにならないためのコツとは長時間移動での「ストレスからの総崩れ」。ASDとADHDのあるコウくんの母、丸山さとこさんの実体験をふまえた”一工夫”はすぐに真似できそうなものがたくさん!わが子の癇癪以上にストレスだった義理両親との関係グレーゾーンの娘さんの子育て。思った通りにいかずに葛藤している母のとまぱんさんは、義両親からいろいろと口を挟まれるのがつらくて…。避けられない親族へのカミングアウト。どう伝えたらいい?「子どもに障害があり、帰省して親戚に会うとき、障害について話した方がいいのか、またどう説明したらいいのか分からない」という質問を知人から受けた立石さん。知的障害と自閉スペクトラム症があるお子さんを育てるご自身の体験をふまえたお話や、監修の小児科医・鈴木先生からのアドバイスなど、とても参考になります。ASD長男4歳を連れての長距離帰省!親は大忙しだったけれど長男けんとくんが自閉スペクトラム症と診断を受けて半年。ゆきみさん一家は長距離移動での帰省を試みます。移動手段、偏食や移動の対策など、苦労と工夫の様子が描かれています。息子よりも親が楽しみな保育園行事。祖父と一緒に行ってみると…2歳ごろから発達が気になり始めたまるさんの息子くん。保育園1~2年目は保育園行事がよくわからない感じだったけれど、3年目の今年は…?楽しみにしていたじぃじと一緒に行ってみると…。家族みんなで楽しい年末年始を。長距離移動や、両親・義両親・親戚などとの関わりなど、年末年始はいつもと違うシーンがたくさん!親も子どもも、楽しいけれど疲れてしまうこともありますよね。コラムの中のヒントが少しでもそんなストレスを解消できますように。ご家族みんなで楽しい年末年始をお過ごしくださいね。
2021年12月29日カードゲーム「こまった課?」について「こまった課?」は、2人以上6人までで遊ぶカードゲーム。役所の「こまった課?」の職員と、発達障害による特性や先天性・後天性の疾患などがある方をモデルとした、社会生活での困りごとがある住人に分かれてプレイします。住人カードを引いた人は、その住人になりきって、役所の職員の質問に答えます。場面カードを引き、「この場面では困ることがありますか?」と住人に聞きます。役所の人は、その答えによって、相手の住人が「誰」なのか、キャラクター名を当てます。さらに、ヒントカードを使って、その住人が困っていることの解決策を楽しく探ります。今回は、「こまった課?」の企画・制作に携わった株式会社デジタル・アド・サービスのお二人にお話を伺いました。竹内悠さん:ビジネスデザイン部サービス推進リーダー コピーライター・コンサルタント。企業のビジョンや理念など、組織にかかわることばづくりからその実践に向けた取り組みまで、継続的な支援を行う。藤井さとみさん:ビジネスデザイン部 デザインリサーチャー。大学卒業後にコピーライターとして入社。現在は組織やブランド、サービスのコンセプトをユーザーやクライアントと共創するリサーチャー。Upload By 発達ナビ編集部発達の特性について知ることは、想像力を広げることになる発達ナビ 牟田暁子編集長(以下――)カードゲームで人々の個性・特性を理解するという発想が新しいですが、なぜデジタル・アド・サービスさんのようなデザイン会社が、こうしたゲームをつくったのか、開発のきっかけから教えてください。竹内悠さん(以下、竹内):私はふだん、高齢者福祉や障害福祉施設のビジョンづくり、パンフレットやホームページなどのコミュニケーションツールの制作に携わっています。そこから、障害や特性のある人々について、何か一般の人の理解につながるようなことができないか、という発想がありました。障害福祉に最初に私が仕事で関わったのが、「こまった課?」の共同開発・監修者である、障害者支援施設 ひだまりの里きよせ(社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会)でした。パンフレットを制作したのですが、ひだまりの里きよせが開設する前にお話を伺いに行ったときに、すごく緊張していたことを覚えています。当時は、知的障害や自閉症(当時の呼び方)といった言葉も、聞いたことはあってもよく分からなかったし、「障害者施設」ってどんな場所なんだろう、どういう人たちがいるんだろう…と思っていました。職員の方にいろいろお話を伺うときに、「こんなこと聞いていいのかな?」という不安感、緊張感もありました。でも、一緒にお仕事をさせていただくようになって、少しずつ知っていくうちに、漠然とした不安感は、だんだんに自分の中で減っていきました。そういう体験があったから、「よく知らなくてなんだかこわいから、関わらないでおこう」ではなく、違う視点をもてる体験を社会の中に増やせたらいいな…ということを、少しずつ考えるようになっていきました。知るという機会を、施設の紹介パンフレットをつくるといったこと以外に、もっと違うアプローチから、何かできないかなと思うようになっていったのです。――知る、ということは大事な一歩ですよね。藤井さんは、ご自身ではそういう視点が変わるような体験、これまでに何かありましたか?藤井さとみさん(以下、藤井):私は、入社前は福祉とほとんど関わりのない大学生でした。入社2年目ごろから、竹内とともに福祉関係の仕事をするようになり、障害のある人について少しずつ知っていくようになりました。あるとき、買い物をしていたら、レジ前で大人の男性が騒いでいる様子を見かけたのです。そのときに、「何か気に入らないこととか、いつもと違うことでもあったのかな」と思ったのですが、そういう風に考えられるようになったのは、障害福祉に少しでも関わる仕事をしているからだ、と気づきました。騒いでいる人を見て、「なんだかこわい」ではなく、「なぜ騒いでいるのかな」と疑問に思うのは、大学生のころの私にはなかったこと。仕事で知ったことや経験したことから、その人の背景を想像するようになっていました。Upload By 発達ナビ編集部竹内:私の場合は、そうしたくっきりしたエピソードがあるわけではありませんが、福祉施設の方々やその利用者さんと接するうちに、徐々に状況のとらえ方の変化が起きていった感じです。たとえば、会話の中で「みんなが」という言葉を使うときに、自分の周りだけの視点で「みんな」と言ってしまっていないかな?というように、視点が変わっていく体験があります。私も藤井もこういう体験を経て、多様な人がいる社会に対して、デザインで「伝える」というデザイン会社としてのアプローチで、なにかできたらと思うようになっていったことが、「こまった課?」をつくることになった背景にあります。「カードゲーム」で遊ぶという体験のなかで知ってほしい――こうした啓発活動には、いろいろなアプローチがあると思いますが、「カードゲーム」という形になったのは、どういう発想でしたか?竹内:障害について、学ぶ・教えるという切り口よりも、遊ぶ・楽しむというアプローチがあってもよさそうと思い、それならゲームがいいのでは?という発想でした。藤井はゲームや漫画が好きで、まずは世の中にあるゲームにどんなものがあるか、いろいろなものを取り寄せてみていくうちにテーマに合った形として、カードゲームとなりました。――キャラクター設定がよく考えられていると思いましたが、これは共同開発した「ひだまりの里きよせ」の方々の発案もありますか?竹内:はじめは、ひだまりの里きよせのみなさんとお仕事するなかから、「こういう特性のある方がいますよ」とか、「この特性によってこういう場面が起こりやすいです」という話を聞いた中から考えました。そのほかにも本や資料、ブログなどもいろいろと読みました。それこそ、発達ナビも見ていました。そうした中から、特性をリスト化してキャラクターの名前を考えて、その段階で一度、ひだまりの里きよせの職員の方々や、臨床発達心理士の方などに相談しました。その中で、こういう住人さんもいたほうがいいのではなどのアドバイスをもらって、最終的には27人の住人になりました。原案は、自分たちで絵を描いたりしてつくったカードを机にバーッと広げてみて、重複したり、抜け落ちていそうな住人さんの特性を考えたりしながらセレクトしました。Upload By 発達ナビ編集部――場面カードも、お困りを感じるシーンがそろっていますよね。この開発はどのように?竹内:朝から晩までの生活シーンで、ありそうな場面をピックアップしていきました。キャラクターと同じように、似たような場面ばかりにならないようにバランスを見て、ある程度「抜け」もないように調整しました。藤井:学校と働くシーンのバランスも考えました。カードゲームで遊ぶ人が子どもたちだと、会社のシーンばかりでは想像できないですしね。――役所が舞台というのも面白いですよね。いろいろな人が相談に来る場所だから、役所にしたんですか?藤井:はじめは、ストーリー設定はなくて、困ってしまう可能性のある人々がいて、なんで困っているか当てるというシンプルなゲームを考えました。そこで、どうして困っているかを見つけて解決する人々に近いのは、どういう場所にいる人だろうと考えたら、市町村役場の職員という設定が近いかもと考えて、役所の文脈を追加しました。Upload By 発達ナビ編集部デザインと福祉の仕事の意外な共通点――このゲームをつくるにあたって、本業であるデザインのスキルを生かせたと思う部分はありますか?竹内:小さなプロトタイプをつくってみて、失敗したら直すということを繰り返すプロセスでつくっていきました。全体のデザインについては、アートディレクター、グラフィックデザイナー と一緒につくっていきましたが、どうしたら楽しく伝わるかを考えるという面では、リサーチしたものをたくさんの人に伝わるような形を考えるという本業のやり方が、役に立ったのかなと思います。――住人さんのキャラクターは、困っている人たちですが、どこかユーモラスで可愛いというか、親しみやすいデザインになっていますよね。竹内:そこは気を配った部分です。困っていることがネガティブな伝わり方にならないようにと考えて、漫画家のスケラッコさんに作画をお願いしました。住人さん自身をネガティブな存在にしたくない、住人さんが困った存在なのではなくその状況に困っている人なのだという表現にしたかったので、絵や文章に関しては気を配りました。Upload By 発達ナビ編集部参考:「こまった課」公式サイト | デジタル・アド・サービス――さまざまな専門家の意見も取り入れて、ゲームをつくっていったと伺いました。その過程での印象に残っているエピソードはありますか?竹内:先ほどもお話ししたように、制作当初は、単純に住人さんが誰なのかを当てるというゲームでした。でも、臨床発達心理士さんに相談したときに、「せっかく当てたなら、その方のお困りを解決してあげたい、役に立ってあげたい」と言われたことがきっかけで、ゲームをさらにアップデートして「ヒントカード」もつくることになりました。こうして、困りごとの解決というゴールまでができたのです。藤井:今回のゲームの制作過程だけでなく、障害福祉全般にかかわる方々と話していて普段から感じていたことなのですが、障害福祉の仕事と私たちの仕事と、プロセスが似ていると思ったことがあります。デザインの仕事は、たくさん情報を集めて分析して、伝えたい人に伝わるようにしぼったものをつくり、さらに相手にちゃんと伝わったかを繰り返し検証していきます。障害福祉の現場の職員さんも、支援する方に常に接して、その人の情報を少しずつ集めて、その方ができることが増えたり、心地よく過ごせたりするためにはどういうことが必要なのかと、常に情報を集めて分析しています。この情報収集と分析、検証していくプロセスが似ていると思ったんですよね。広い意味で同じ「デザイナー」なんだな、ということを感じました。竹内:支援の現場では、利用者の方が「これが課題ですから、こう解決してください」とおっしゃることは少ないと思います。その状況で、仮説を立てて試して、違っていたら調整して、また仮説を立て直して…というプロセスなんですよね。――なるほど。言われてみるとそうですね。竹内:もう一つ、嬉しかったエピソードとしては、支援職のみなさんが協力的で、実際に喜んで遊んでみてくださったこと。職員研修や地域の人とも遊んでみたい、といった声もいただきました。ゲームの内容からさらに、ゲームを使って展開できるアクションについて、ポジティブに考えてくださったことが、つくる過程での励みにもなりました。Upload By 発達ナビ編集部広い意味での他者理解ができるワークショップにも活用してほしい――カードゲームは発売中とのことですが、今後どのような展開で広めていきたいですか?竹内:場面カードには学校のシーンもあるので、子どもたちにも遊んでみてほしいし、ゲームを使ってのワークショップを展開していけたらいいですね。このゲームは、障害理解はもちろんですが、広い定義での「他者理解」ができるものだと思っています。「○○障害」と障害名がついている場合だけでなく、ものの感じ方・考え方は人によってさまざまであることを知るゲームでもあります。そういう意味で、チームビルディングの場でも活用できると思います。多様な人がいると知ったうえで生活する、働いていくことを、今までより想像力をもって受け入れながら生きていけるような、「こまった課?」のプレイと組み合わせたワークショップを提供していきたいです。――社員研修にもよさそうですよね、知って想像して、お互いに優しくなれる…といいですね。竹内:困らないようにすることも大事ですが、困っているときに「困っている」と言えて、お互い助け合える、そういう状況がいいですよね。多様な人との安心できるつながりがあることは、街で生活していても、働いていても大切なことだと思っています。「こまった課?」が、そうしたことについて考えるきっかけになれたらうれしいです。――今後の展開も、楽しみにしています。今日はありがとうございました。文/関川香織撮影/鈴木江実子企画・開発・制作・デザイン:デジタル・アド・サービス共同開発・監修:社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 障害者支援施設ひだまりの里きよせ、一社団法人ぽろんのいえ 代表理事 富樫京子(臨床発達心理士SV・特別支援教育士)イラスト:スケラッコUpload By 発達ナビ編集部
2021年12月26日私の息子は3歳半健診で、「発達障害の疑いがある」と診断されました。結果的に、その1年後の健診で「発達障害ではない」と診断されましたが、息子の幼過ぎる行動を見るたびに、発達障害と親のしつけについて考えさせられた私の体験談をお伝えします。3歳半健診で色が答えられない私の夫は外国人で、私たち家族は長い期間を国外で過ごしています。息子の周りで日本語を話すのは私だけでした。 あれは日本に帰国し、3歳半健診を受けたときのことです。「この色は何?」という質問に、息子は答えられませんでした。私は相談室に入り、医師に「息子は日本語が苦手なだけです」と話をしました。その後もさまざまなテストを受け、できることもあればできないこともありましたが、最終的には「発達障害の疑いがある。様子を見ましょう」と医師に言われてしまいました。 発達障害? 親のしつけのせい?息子はレゴブロックを組み立てたり、本の内容を覚えたりする点ではほかの子よりも優れているところもありました。そのため、息子が店で走り出したり、大声で怒り出して止まらなくなったりしても、手のかかる子だと思う程度でした。 ところが周りからは、私の息子への対応が甘過ぎる、しつけが悪いと言われることもありました。そう指摘され、息子に厳しく接することも。そのため、3歳半健診で「発達障害の疑いがある」と言われたとき、「本当に発達障害かもしれない」という思いと、「いや違う、私のしつけのせいだ」という思いから毎日悩みました。 息子の個性と親のしつけを考える 1年後の健診で、息子は「発達障害ではない」との診断を受けました。テスト結果は、同年代より優れている部分と劣っている部分の両方がありましたが、普段の生活でも、ほかの子より優れている部分と劣っている部分の差が大きい息子。以前はその劣っている部分を直そうと、厳しくしつけをしていました。 私はその視点を変えることにしました。周りからのプレッシャーもありましたが、今は息子の個性を大事にして優れている部分を伸ばそうと考えています。 息子は、いまだに幼い子のように自分の感情を強く出します。それは、のちに発達障害と診断されることになるかもしれません。でも、私には息子の優れた部分もきちんと見えています。今はその個性を大切にしたいと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 イラスト/imasaku監修/助産師REIKO著者:シュストルじゅんこ二児の母。海外で結婚し、2人の男の子を妊娠・出産。異文化を楽しみながら子育てをしている。自身の体験をもとに妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。
2021年12月24日帰国後、次女の場面緘黙の症状は変わらなかった現在小学4年生の次女。小学2年生のときに場面緘黙と診断されています。小学校1年生のときに海外引っ越して、2年生で帰国。1年生のときのスクールカウンセラーから「帰国後しばらくしても変化がなかったら新しい学校で、先生やスクールカウンセラーに相談してみてくださいね」と言われていました。日本に帰国したら次女の心境も変化があるかも…と思っていたのですが、帰国後の次女の様子を見ていても、1年生のときと全く変わらず、学校で話せない状態が続いていたのでした。学校の先生との相談まずは担任の先生に相談しました。前の学校のスクールカウンセラーに場面緘黙かもしれないと言われたことや(先生自身が場面緘黙についてご存じなかったので、とりあえず一通り説明)、学校で話せないこと、友達ができないことについてお話しました。Upload By まりまりそこで言われたのは「一人が好きな子もいますし、次女さんもそうなのかもしれませんね」「学校では特に問題なく過ごせています」ということでした。先生は、学校での次女は特に問題ないと感じていたようです。スクールカウンセラーに相談その後、学校のスクールカウンセラーに相談しました。Upload By まりまりそこで言われたのは、「学校に来られていて、教室にいることができていれば問題ない」ということでした。次女は、クラスメイトと話せないだけだし、場面緘黙の子は5年生くらいになったら話せる子もいるから、今はただ見守っていくしかないと。「緘黙症状が長引くと二次障害になりやすい」とか「早く気づいて支援を始めることが重要」といったことを本で見たりしていたので、「2年生から5年生まで見守っていくだけで大丈夫なんだろうか…」と不安な気持ちになりました。次女のように静かに困っている子は見えづらいこうして、相談した先から「問題ない」と言われ続けた次女。アレ?話せないことって、そんなに問題じゃないんだっけ…? と私の今までの心配は大したことじゃなかったのかも…?とあやうくバグを起こしかけました…。こうした経過から、次女のように「学校に行けていて、何とか勉強もできている子」は、学校としては、なんら問題のない子になるのかもしれないなと思いました。たとえば、学校で友達同士でのおしゃべりの声が大きかったら先生の目に留まり、「何があったの?」と気づいてもらうことができます。ですが、クラス内で表立って問題を起こすわけでもなく、困っていても自分からそのことを言えない場合は、そもそも先生が困りに気づけず、よほどよく見ていない限り、先生からしたら「特になんの問題もない子」に分類されてしまうのかもしれません。Upload By まりまりどうしたら良いのか分からず、でも助けが必要だった「問題ない」と言われた次女ですが、それでも目に見えにくい困りはたくさん抱えています。担任の先生とだけは必要最低限のことを話すことはできますが、あくまでも「最低限」のことだけです。本当はもっと「友達や先生と話したい」「友達と遊びたい」と思っているのに…。次女の頑張りでどうにかなるものでもないですし、このころの私は次女の気持ちを大切にしたいのに、どうしたらいいのか分からずに見守ることしかできず、もどかしい気持ちでいっぱいでした。Upload By まりまりUpload By まりまり本人への声掛けや家族や学校でのサポート方法など、どうしたら次女の今の状況を良くすることができるのか悩みました。そして、私自身、自分の力だけではこの状況を変えていけるとは思えず、さらに一人で抱えていることがつらくなり、何か頼れる場所が必要だと思って児童精神科を受診しようと決意したのでした。執筆/まりまり(監修:初川先生より)次女さんの学校での様子、気になりますね。担任の先生が「問題ない」とおっしゃるのは、次女さんがかなり努力されているのではと思うのですが、どんな様子なのでしょう…。音読をする、隣の人や班の人と話し合うなど、学校生活の中では「話す」ことが必要な場面は結構あります。先生が配慮して困っていないのか、そういう場面ではがんばって何らか意思表示しているのか、クラスメートの子たちの反応や受け入れも気になるところです。言葉での意思疎通が難しいと、場合によっては遊びを通して仲良くなることも難しい場面もあるかもしれません。確かに慌てずに見守るスタンスは大切です。しかし次女さんが「話したい」「友達と遊びたい」という気持ちを持っていることをまりまりさんはしっかり把握されている。無理に話をさせていいことがある訳ではないですが、待っているだけでいいのかと不安になる気持ちも当然のことです。次女さんのそういう気持ちをもっと共有できたらきっとまりまりさんも心強かったことでしょう。次女さんやまりまりさんの気持ちをうまく支えてくれる支援者と出会えるといいなと思います。その一つとして、児童精神科があったということですね(ほかには、地域の教育相談センターも同じくきっと支えになってくれるかなと思います)よき出会いとなりますように。
2021年12月23日小学2年生だった次男がいじめにあう発達障害の中でもADHDとASDのほか、躁鬱病(双極性障害)がある猫ママ(仮名)さん。学生時代はまだ発達障害や躁鬱病が今ほど世の中に知られておらず、周囲の理解が乏しい中、「突然落ち込んで動けなくなる」ことが多かった。「あの子は怠け者」。夏休みの宿題もやり切れたことがなく、いつも「頑張らなきゃ」と無理をしていた。高校卒業後、1年余り会社勤めを経てすぐに結婚。3人の子宝にも恵まれた。ただ、当時小学2年の次男が日に日に元気がなくなっていくのを見て、違和感を覚えていた。すると授業参観の日、担任教師から「お子さんが友達に対して注意をすることが多く、反感を買っている。その話を本人にしたら、最近元気がなくなってしまった」と言われたという。しかし、詳しく状況を確認をしたところ、担任教師の対応がクラスのいじめを助長していたことが発覚。学校に事実を伝え、事態は収拾したものの、猫ママさんの心に引っかかったことがあった。「友達に注意をすることが多い」とは――。周囲に自閉スペクトラム症のある子どもがいたことから発達障害の勉強をしていたという猫ママさんにとって、次男の特性があてはまることに気付いた瞬間だった。Upload By 桑山 知之「勉強もできて友達だってたくさんいる、こんなにいい子なのに、発達障害だなんて有り得ないって最初は思いました。でもある日、夕飯を作っていたときに肉じゃがを見て次男が『これ、何ていう食べ物だっけ?』って言ったんですよね。何度も食卓に出している献立の名前も知らなかったのか、今まで意識したこともなかったのかと――それで次男にはなにかあるという確信に変わったというか。でも、どこか気持ちが軽くなったんですよね」(猫ママさん)その後、学校でのルールに耐えられなくなり、眠れない日々を過ごしたという次男。診断の結果、ADHDとASDがあることがわかった。「しんどいからできない」のか「甘えている」のかが分かりづらく、叱るのを躊躇した時期もあったが、特性を深く理解することで線引きがわかるようになったという。息子が苦手なことは自分も苦手――自身も発達障害の診断をUpload By 桑山 知之次男のあと、長男や三男の障害も明らかになった。そして猫ママさん本人も35歳のころ、診断を受けた。夫は診断こそ受けていないが、息子の担当医によれば「間違いない」という。こうして“発達障害一家”として歩んでいく決意を固めた猫ママさんは、子どものサポートに徹しようと仕事をせず、書類や水筒を忘れたらいつも学校まで届けた。「家族のサポートをする上で、私自身の苦手分野と彼らの苦手分野が被りすぎていることは、ハッキリ言ってかなりの負担です。誰か1人でもいいから、片づけができるといいんですが…。彼らの負担を軽くするために、彼らがどうしてもできないことはやってあげたいと思っています。ですが、私も同じようにどうしてもできません。私だってできることなら誰かに頼りたい」(猫ママさん)Upload By 桑山 知之思い返してみれば、猫ママさん自身も子どものころ、空気が読めなかった。周囲の様子をきちんと理解できていなかった。相手の表情や、何を喋っているか、あらゆる情報が今でもほとんど思い出せない。でも母親や教師からはよく怒られた。当時を知る高校の同級生からは「あのころはマシンガントークがすごくつらかった」とも言われた。どうやら、しょっちゅう友達の間に割って入って自分の話をまくしたてていたらしい。発達障害一家だからこそわかること「ゆっくりだけど、みんな学んでいる。」これはドキュメンタリーCM『見えない障害と生きる。』の中に差し込まれたコピーだ。猫ママさん一家も、決して例外ではない。Upload By 桑山 知之社会には、どうしても守らないといけないルールや、やらないといけないことがある。しかし、発達障害のある人にとって、「できないこと」や「わからないこと」があるのも事実。猫ママさんは、自分なりのペースで「誠意を持って生きる」ことが大切だと話す。「そもそも、自分が何をわかっているのか、わかっていないのか、わかっていないことがわかっていないというか。それダメだよって言ってくれれば、ダメなんだってわかるんだけど、言われなかったり酷い目に遭わなかったらわからないんです。そういう人多いんじゃないかな、ラインがわからない人。感覚としてわかんない。備わっていないんです」(猫ママ)Upload By 桑山 知之苦しんで育ってきた自分だからこそ、息子3人が一体どういったことに苦しんでいるのかがわかる。そのサポートをしながら、親がレールを敷くのではなく、本人の意思を尊重してきた。そのうえで、子育てにおいて大切なのは、「何ができるか」ではなく、「愛される人間であること」だという。「いちいち他人を敵に回すようでは、困ったときに助けてあげようと思ってもらうことはできません。逆に、できることが少なくて手がかかっても、いわゆる憎めない人には、ピンチのときに誰かが必ず助けてくれると思うんです。特性ゆえにわからないならなおのこと努力が要るのではないでしょうか。そのためには、障害を受容し、許容することが大前提になるのだと思います。まず親が一番最初に、わが子をしっかりと受け止め、許容すること。できないことを受け止め、その中で一緒に歩いていくこと。そしていつか必ず『手を離す』覚悟を持って」(猫ママさん)長男は25歳になり工場用機械を作る会社に就職。次男は21歳で名古屋のアパレルショップで働いている。三男は全日制の高校に通う1年生だ。猫ママさんは10年前から、発達障害や家族のことを知ってもらおうとブログなどを通じて発信を続けている。特性と躁鬱の症状で仕事は途切れがちだったが、現在はクローズ(※障害があることを申告せずに一般雇用で就労すること)でサポート側として2年半継続して勤務している。ゆっくりだけど、みんな学んでいる。Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文/桑山知之取材協力/若者支援ネットワーク研究会in東海(監修・三木先生より)「誠意をもって生きること」「愛される人間であること」はすごく大事ですね。どういった苦手さを持っているかももちろん人生に大きく影響するのですが、その困難に直面したときに誰かに助けてもらえたり許してもらえるようなキャラクターだったり振る舞いができたりすることは、実は何よりも強い武器なのかもしれません。
2021年12月22日小学3年生のころUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)がある息子リュウ太が小学校3年生のときに親子で教育相談所(※)に通っていたときのことを書きたいと思います。※「教育相談所」は、地域の教育委員会が設置している相談機関。地域によっては「教育センター」という名称の場合もあります。ほっとできる場所がなかった息子Upload By かなしろにゃんこ。このころの私は、勉強にやる気を出さない息子に対して、嫌がっている塾に無理やり行かせたり、宿題ができるまで厳しく接してしまうこともありました。同じ年頃の定型発達の子どもと同じように課題に取り組めるようにしなければならないと焦っていたのです。思い返すと厳しすぎる親だったと思います。一方でこのころの息子は、家庭では勉強のことなど厳しく言われ、学校ではお友達とのトラブルが多発していました。家庭でも学校でもほっと安らげるときがなかったのではないかなと思います。今思えば、特性が原因でうまくいかないことを親も理解できていなかったために叱られたり、友達とトラブルになったりしていたのだと分かります。しかし、まだ子どもの特性とその支援がよく分かっていなかったこの当時、イライラしている息子に対してどうしたらいいのか、どこに頼ったらいいのか私自身とても悩んでいました。そんなとき小学校の担任の先生の勧めで、地域の教育相談所に親子で通うことになりました。これが私たち親子の最初の公的な支援機関との関わりでした。そこで母の私は相談員の方と育児の相談・カウンセリングを受け、その間に息子はサポートルームで指導員さんと過ごしていました。※地域によって相談室・サポートルームの有無や利用のしくみは違うため、お近くの教育相談所(または教育センター)にお問い合わせください。サポートルームでは息子が過ごしていたサポートルームは、6帖ほどの畳の部屋でオモチャがたくさん置いてありました。そして優しい指導員さんがいて、一緒に遊んでくれます。どれでも好きなオモチャで遊んでよく、どんな遊び方をしてもOKでした。子どもが遊びを通して「自己肯定感を育む」場所なのだそうです。Upload By かなしろにゃんこ。そこでは、指導員さんは息子がやることに一切否定的なことを言いませんでした。「そうだよ、それでいいんだよ!その遊び方や考え方でいいんだよ!」と絶賛してくれるのです。学校ではトラブルが多発し、家では母や父にガミガミ叱られることが多かった息子にとって、最高の場所だったようです。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。私の育児相談やカウンセリングをしてくださった相談員の先生は、私が話す家庭の情報から今の息子にとって必要なことを導き出し、サポートルームで”息子が安らげる時間”を提供してくれたのだと思います。小学校3年生から5年生の2年間、隔週1時間お世話になりました。Upload By かなしろにゃんこ。小学5年生のときUpload By かなしろにゃんこ。小学5年生のときに「リュウ太くんはもう大丈夫、ほかにもこの場所に来るのを待っている子がいるからバトンタッチしようね」ということで、サポートルームに通わなくなりました。最後の日に息子は「ここ好きだったのに寂しいな…」と言いました。息子に発達障害があるかもしれないと分かってから、いろいろな支援機関に足を運びました。息子は親に連れられて仕方なく支援機関に通っていた感じに見えたのですが、このとき息子がサポートルームに毎週来ることを楽しみにしていたんだと分かってほっこりしました。困っているときは頼っていい。大丈夫になったらそっと離れても心配ない。Upload By かなしろにゃんこ。息子をまるごと受け止めて接してくれたサポートルームの方々と、その場所が好きだったいう息子の様子を見てから、私は公的な支援機関を頼ることに抵抗がなくなりました。困っているときは頼っていい。大丈夫になったらそっと離れても心配ない。この経験から、現在も息子にも「困ったら公的な支援機関に相談しようね!」と気軽に話すことができるようになりました。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)子育てに行き詰ったときについ感情的になってしまったりすることは多いと思います。また、支援機関に行くことは勇気が必要ですし、その間お子さんはどうしようと悩むこともあると思います。かなしろさんが体験されたように、保護者もお子さんも支援してもらえる場所もあります。地域によって相談室やサポートルームなどの有無やしくみは違うため、すべての教育相談所(※)がかなしろさんが体験されたようなシステムをもっているとは限らないので、お近くの相談できる機関や親の会などから情報を得るといいかもしれません。※「教育相談所」は、地域の教育委員会が設置している相談機関。地域によっては「教育センター」という名称の場合もあります。
2021年12月21日長男を出産後、初めての年末は夫の実家で過ごしました。義父母、義兄、義弟と私たち家族3人で新年を迎えたのですが、夫の家族は全員、夜型の生活をしている人たちでした。今回は、生後11カ月の長男を連れ、夜型家族と一緒に過ごした初めての年末年始で困ったことをお話ししたいと思います。※コロナ禍前の体験談です 眠れなかった夜大晦日、夫と私と長男の3人で夫の実家へ行きました。家とは違う場所と、ほとんど面識のない義父母や義兄弟に会った長男は少しとまどっていました。それでも、無事に1日を過ごす事ができ、夜11時ごろ、お借りした部屋で先に休ませてもらいました。 私も長男もすぐ眠りにつくことができたのですが、夜中に何度か大きな話し声が聞こえてきて、そのたびに私はびっくりして起きてしまいました。朝4時くらいまでの間に3回ほど目が覚めたので、その夜はよく眠れませんでした。 夫家族を気づかって外で過ごした元日の朝朝7時ごろに目を覚ました長男。朝4時くらいまで夫家族は話をしていたので、当然みなさん寝ていました。 長男に朝ごはんを食べさせようと思い、静かに居間へ行くと、居間で夫家族が雑魚寝をしていました。居間と台所がつながっていたので、台所を使わせていただくことも無理でした。さらに義母は台所に義母以外の人が入るのを嫌う方だったので、勝手に台所を借りるわけにはいきませんでした。 それで、夫家族を起こしてはいけないと思い、長男と外に出ることにしました。 行くところがなく、ひたすら歩いた午前中夫を含め、夫家族が夜型の生活をしていることは聞いていました。しかし、何に困るのか予想ができなかった私は、着替えや長男のおむつ、おやつ、絵本しか持ってきていませんでした。 どこかのお店で朝ごはんを食べようと近所をひたすら歩いて探してみましたが、運悪く食事をとれるお店がありませんでした。仕方なく、コンビニでプレーンなパンと水、ヨーグルトを買って、長男と食べました。 その後も行くところがなかったので、実家の近くを歩きながら過ごしました。そして11時半ごろ、夫から起きたという連絡があり、夫の実家に戻ることができました。 このときの経験から、生活パターンが違うことは仕方がないので、泊まりで夫家族と過ごすときは、パン類、水、自分用のカロリーメイトを持っていくようにしています。 イラスト:imasaku著者:川本 千華発達障害の長男、兄が大好きな次男を育てる2児の母。元ピアノ講師。自身の経験を活かし音楽・発達障害に関するライターとして活動中。
2021年12月20日自閉スペクトラム症のあるPには兄がいます。長男が3歳のときに弟のPは生まれました。Pが赤ちゃんだったころは、長男は弟が生まれたのが嬉しそうで一緒に遊べるようになることをずっと楽しみにしていました。でも待てども待てども、弟とはほとんどコミュニケーションが取れないし、関わろうとしても無視され、癇癪につながるからと母親の私から自分の行動を止められることもあって、なかなか弟と一緒に遊べず、長男は「Pはいつしゃべるようになるの?」「Pはずっとこのままなの?」と疑問や不安を感じるようになっていました。Upload By みん「弟には障害がある」ということに、長男はどのように理解を進め、どのようなことに悩んでいるのか?私たち夫婦は長男の前でもPの障害についての話を自然にしていたので、長男は大人の会話を聞いてなんとなく「Pは普通の子とは違うんだ」ということを理解していたようです。それに自分の友だちの弟や妹はしゃべったり兄姉にくっついてきたりするのにPはそういうことはまったくしないし、自分と同じ幼稚園へは行かずに、家から遠い普通の園とは少し雰囲気の異なる園に通っているということ、病院へ定期的に何回も通院していることなどからも、自閉スペクトラム症のことはまだ詳しく分かっていなくても「弟には何らかの障害がある」ことを長男なりに感じるようになっていました。そんな長男ですが、Pは自分の物を平気で取ったり壊したりするし、自分は何もしていないのに急にかまれたり引っかかれたりすることもあるし、家族がいつもPを中心に、Pに合わせた行動ばかりしていることに、日頃から不満を感じたり我慢したりしている部分は多々あるのではないかと思います。そのため、たまに「Pが僕の弟じゃなければ良かった!」「このまま大人になったら心配だよ!」「Pと一緒にいたら恥ずかしい!」と言ってしまうこともあります。私はそんな風に思ってしまうのは自然なことだし仕方がないと思い、長男のそのような発言も言いたいときは言わせていたし、聞いてあげるようにしていました。Upload By みん弟の困った行動に振り回される日々…そんなある日、PがAIアシスタントで音楽を聴きたがっていたのですが、自分ではうまく発音ができないので、長男がPのために音声操作をしてあげていたことがありました。Pは同じ曲を繰り返し聴きたがるので、長男はAIアシスタントに向かって「リピート再生」「戻って」などと延々と言ってあげなければなりません。長男は止めどきが分からず、ずっとPに付き合うのにも嫌気がさしている様子でしたが、急に止めるとPが癇癪を起こして大変なことになるのも分かっていたので、『どうしたらいいかな?』と私に相談してきました。私は「次が最後の1回だと予告してから再生して、終わったらおしまいのジェスチャーをしてみたら?」と長男にアドバイスをしました。そのアドバイスを聞いた長男は「本当にそんな風に言うだけで終わることができるのかな?」と半信半疑の様子でした。Upload By みん弟の特性に合わせた対応をしたことで、長男は弟の成長を感じることができて…しかし、実際にそのように言ってみるとPは長男の指示をちゃんと理解し、スッと音楽を聴くことを止めることができたのです。そんなPの様子を見て長男は感動したらしく思わず涙を流していました。私は長男が泣いて喜んでいる様子に驚き、何で涙が出たのかを聞くと、長男は「Pに言ったってどうせ無理だと思っていたのに、ちゃんと僕の指示を聞いてくれたから感動したんだ!物凄く嬉しかった!」と言いました。そんな長男の言葉を聞いて私は、親である私がPの小さな成長を感じては喜ぶのと同じで、兄である長男にとっても、弟の成長を感じるとたとえ小さなことだとしても、こんなにも嬉しく感動できるものなんだなと思いました。きょうだい児は、普通のきょうだいより不安や苦労もいろいろとあるかもしれません。でも普段からきょうだいのことを考える機会も多く、障害のあるきょうだいから学べることも沢山あるのかもしれないなと長男を見て思っています。まだまだ成長過程ですが、長男にとって弟のPの存在は、良くも悪くも影響があることを忘れず、長男とPとの関係も一緒に見守っていきたいと思っています。Upload By みん執筆/みん(監修:井上先生より)子育てをしていると、つい発達障害のある子の方に手を掛けてしまうことも多くなりがちです。幼いきょうだい児にとっては、自分にかまってもらえないことで感情を爆発させてしまうこともあると思います。このコラムで素晴らしいのは、この年齢のきょうだい児さんに「〇〇障害とはこういうものなんだよ」と言葉で説明するのではなく、「こうしたら弟が受け入れてくれるんだよ」「こんな声かけをしたら伝わるかもしれないよ」ということを体験的に理解させてあげられたことです。このような工夫すればうまくいく、という体験が、将来的な障害理解にも結びついていくのではないでしょうか。きょうだい児も成長とともに障害を言葉や概念としても理解できるようになってくると思います。ご家庭で発達障害について、話すことをタブーにしない雰囲気をつくっていくことが重要かと思います。
2021年12月20日「助けて」運良く空きがあった発達クリニックへ2歳の後半からほぺろうの癇癪は悪化。一日のうち10回は癇癪が起爆し、一回につき1時間ほど引きずるという毎日を繰り返し、当のほぺろうも、つき合わされる私も満身創痍でした。さすがの私も「成長を待てば何とかなるものではないかも」と察し、誰かに助けを求めなければと思い始めました。調べてみると、ちょうど近所に発達クリニックがあったので意を決して電話。一般的に発達クリニックは予約を取るのが大変だと聞いていたので、半年は待つことを想定していましたが、運良く「2週間後に空きがあります」との返事に私は飛びつきました。Upload By ぼさ子初めて訪れた発達クリニック。病院っぽい佇まいを見ただけで、ほぺろうは案の定、大号泣!!パニックを起こし、抱きかかえるのも至難の業でした。待合室に検査の人が来て「こんなに泣かれては検査できません。本当に今日検査しますか?」と聞かれました。そう言われて「発達検査って、泣かない子しか受けられないものなの!?」と頭をよぎりましたが、当時の私は発達クリニックをよく知らなかったので、この時点で「ほぺろうは発達クリニックでも手に負えないんだ」と愕然としました。でも今日を逃したらもう予約は取れないと思った私は、「すみません、すみません…やれることだけでもお願いします」と必死にお願いしました。Upload By ぼさ子ほぺろうに検査は到底できないので、暴れるほぺろうを抱えながら行った”保護者の聞き取り調査“。待合室中にほぺろうの泣き声が響き渡り、ほかの患者さんやクリニックに申し訳ない気持ちで心が折れそうでした。検査の人にも「今日は無理じゃないですか?」と何度か声をかけられましたが、当時の私はほぺろうの困りごとを助けてほしくて「聞き取り調査だけでもお願いします!」と必死でした。しかし、やがてベテランらしきスタッフが登場し強い調子で言われました。「こんなに泣くなんて、すごい声」と。お子さんは連れてこないでさらに、「聞き取り調査の結果は10日後に出ますが、説明が泣き声で聞こえないのでお子さんは連れてこないでください」と言われました。結果が出る日は夫にもほぺろうを預けられないことが分かっていたので、「どうか子ども連れでもお願いします」と私は頭を下げましたが、「無理なら諦めてください。その日しか予約は取れませんよ」と言われてしまいました。そして当日、嫌な顔をされると分かりつつ この日しか話を聞けないということなので、号泣するほぺろうを抱えて再び来院。待合室に入るなり、「詳しい説明はいらないでしょう」と言われてしまい、そのまま追い返されるように帰りました。Upload By ぼさ子「今 本当に困っているけど、ほぺろうもしんどいし周りにも迷惑かけるから、ほぺろうに手がかからなくなる日まで診察は諦めるべきなのかな…」そのときすでに心身擦り減っていた私は、何が正しい判断か分からなくなっていました。そして「私たち親子は、発達クリニックにも助けてもらえない存在なんだ」と、ますます孤独が深まりました。Upload By ぼさ子クリニックが変われば対応も変わる時が経ち、その後、引越しを機に現在お世話になっている発達クリニックを発達支援センターより紹介してもらいました。そこでもほぺろうは変わらず大号泣。申し訳なさすぎて、以前の発達クリニックでの経験から「次回から先生のお話だけの日は、息子を夫に預けてきた方がいいですか?」と恐る恐る聞いてみました。すると先生が、「お子さんの様子を見るのも診察のうちなので、なるべく連れてきてほしいです」と仰ってくださり、存在を否定されなかったことに私は目頭が熱くなりました。Upload By ぼさ子医療・療育関係のみなさまへの願い初めて発達クリニックを訪ねてから数年が経ち、優しく親身になってくれる方々にたくさん出会うことができました。今なら「初めて行った発達クリニックは、配慮がなかったな」と思うことができますが、何も知らなかった当時の私は、発達障害のある子を助けてくれるはずの機関に見放されるなんてと思い詰めていました。あのような対応は滅多にないと信じたいですし、現在お世話になっている発達クリニックのような対応が一般的なのかもしれません。『もしかして発達障害?』とわが子の発達に心配を抱える親子は、おそらく診断が出る前が一番精神的に不安定なのではと想像できますし、心身がすでにボロボロになっている可能性が高いと思うのです。医療機関や療育関係のみなさまにとっては、数多くいる相談者の中の一組かもしれません。でもその一人ひとりの親はわが子を心配し、とまどい悩み必死です。どうか保護者の気持ちにも寄り添っていただけたらと願ってやみません。Upload By ぼさ子執筆/ぼさ子(監修:初川先生より)あぁ、なんと最初のクリニックのひどいこと…!!拝読しながら衝撃を受けました…!困っているから受診しているのに、そんな親子をさらに追い詰めて、一体何がしたいんだと怒りすら湧いてきます…。同じ支援者界隈の人間として、つらい思いをさせてしまったことをお詫びしたいくらいです。ほんとにもう…!さて、しかしながら、残念な支援機関や医療機関が存在するというのは、私も各所で耳にすることです。それを回避する方法として、一つには、地域の相談機関や子育て支援機関にまず相談して、その中でおすすめの医療機関など地域の情報を得るという方法があります。行政の相談窓口だと、特定の医療機関をおすすめすることは実は難しいことですが、それでも実際には、「このあたりの人がよく受診する医療機関」については教えてくれたりします。ぼさ子さんが最後のイラストで描かれているように、「子どもの安心って親の安心からつくられる」はまったくその通りです。保護者の方をまず支えるのが支援機関の最低限の務めだと思います。クリニックであれ、相談機関であれ、最初に訪れる際にはとても勇気が要ったことと思います。「相談に来てよかったです」や、「あのとき勇気を出してよかったです」と感じていただけるのが支援者の使命だと多くの支援者は思っています(なのにほんとに、どうしてあんなことに…!)。みなさまが良き支援者・機関と出会えることを祈りつつ、支援者として気が引き締まるお話でした。
2021年12月17日不登校の中3娘、受験よりも心配なことは…うちの娘いっちゃん(ASD・中3)は、睡眠障害があり決まった時間に起きることができません。できれば進学したいという希望を持っているので、家庭での学習も(少しは)やりながら、絵の塾のようなところにも行っています。でも、テストより心配なのは「学校に受かったとして通えるか」ということなのです。Upload By 寺島ヒロ睡眠障害の改善のため服薬を実は全日制の高校に通う可能性も考えて、睡眠を朝方に安定させるべく、今年の4月ぐらいから投薬治療を始めていました。同い年の子と比べても小柄ないっちゃん、薬での治療は不安でしたが、「最近はいい薬が出てるので」と朗らかに言う医師の指導のもと、最初はロゼレム錠という自然な眠気を強化する薬を半錠飲み始めました。1ヶ月ほど飲み続けた後、医師と相談し1錠に増やしました。が、3ヶ月経ってもはっきりとし改善された様子は見られませんでした。さらに薬を増やしても改善せず…元々自然に眠くなる時間がずれているので、眠気のない時間に飲んでも眠れないのではないかと、再び医師と相談し、今度はデエビゴ錠というもう少し即効性がある薬を夜の10時ごろに重ねて飲むことにしました。これは飲むと20分ほどで眠くなるので、希望の時間に眠れるのは眠れるのですが、なんと起きる時間は「本人が本来起きるはずだった時間」になってしまうのです。Upload By 寺島ヒロ※薬の効果には個人差があります。詳しくは医師にご相談ください。10月ごろにはこれ以上は薬を増やしても、今は早急に結果が出ることはないだろう…という雰囲気が濃厚になってきました。医師も「まだ受験までには半年あるけど、どうしましょうかね…」と歯切れが悪くなってきました。いっちゃんの決断!薬は規定上はまだ増やすことはできるようでした。しかし、いっちゃんはこれを拒否。「薬を飲むと使える時間が減る!」と言うのです。Upload By 寺島ヒロ医師の先生の言うとおり、来年の春までにまだ時間はあります。まだ睡眠が改善する余地はあるのかもしれない…。でも…。来年の春からの学校生活も大事ですが、今も大事です。半年の間にいっちゃんが何枚の絵を描くことができ、どれだけの曲をつくれるのか…と考えると、14歳の半年間がとってももったいなく感じられてきました。結局、来年の春までになんとかというのはやめて、薬はデエビゴ錠のみにし「今日は用があるので絶対起きたい!」というときだけ、起きたい時間の9時間前に飲んでなんとかするというように方針を切り替えました。根本的な解決は見えていないけど…朝起きられるようにはならなかったけど、薬を飲むことでいっちゃんは自分の眠りのペースを掴むことができてきたようです。高校選びも、今までは「母さんがいいと思う学校でいいよ」と言っていたのですが、自分でネットで調べたりするようになりました。改めて通信制の学校をチョイス「ここ受けたい!」そんな娘が選んだのは、関東に本校がある高校のオンラインコース。一人でも勉強や創作に取り組むことができるいっちゃんには合っているかもしれません。ネットで調べたところ、定員に達したら募集終了になる可能性があるとのことだったので、娘から希望を聞いてすぐに願書を取り寄せ、提出しました。Upload By 寺島ヒロ結果は合格!選考基準が分からなかったので心配していましたが、なんとか進学の目処がつきました!余談ですが、結果発表は選考完了予定日の夕方5時ちょうどにメールで届きました。通信制の学校ということでネットを活用しているとは聞いていましたが、私が学生だった時代には学校まで掲示板を見にいってましたので(昭和っぽい?)、なんだかすごく便利になってびっくりしましたね!デジタル化が進むことで、学び方や学校のあり方も変わってくるのかもしれないなあと思いました。執筆/寺島ヒロ(監修:鈴木先生より)睡眠障害の場合、一般的に精神科医は睡眠薬を処方しますが、小児科医は初めから睡眠薬を処方することはほぼありません。まずは、早く起こして朝陽を浴びさせて体内時計をリセットし、日中の活動性を高めることから始めます。朝起きが不良の場合、小児科医ならまず起立性調節障害を疑います。ほかの症状として頭痛・車酔い・立ちくらみなどもあり、親からの遺伝性もみられます。15分ほどの起立テストで血圧・脈・心電図を測定することで大体分かります。治療としてはミドドリンというお薬で目覚めはよくなります。また、16歳未満の自閉スペクトラム症に伴う入眠困難の場合は、メラトベルというお薬を内服することで入眠時間を早めることもできます。
2021年12月16日発達ナビPLUSがもっと使いやすく、もっと見やすくリニューアル!Upload By 発達ナビ編集部発達ナビのプレミアムサービス「発達ナビPLUS」では、スマホ1つで発達支援の専門家とつながり、ご家庭のお悩みを解決までサポートするオンラインサービスです。「発達ナビPLUS」は、約1年半のあいだサービスをお届けする中で、たくさんいただいたユーザーのみなさまのお声をもとに、2021年12月にリニューアルしました!今回は、サービスの内容やリニューアルしたポイント、またユーザーさまからのうれしいお声も紹介していきます。満足度98%!専門家による個別アドバイスが届く。Upload By 発達ナビ編集部発達凸凹子育ての「こんなときはどうすればいいの?」に幅広くお答えします。 支援経験豊富な専門家が、保護者さまのお困り内容を整理し、お子さまの発達状況や環境情報などの分析と、分析に基づく個別最適な手立てをアドバイスします。Upload By 発達ナビ編集部■ 相談カテゴリが追加!今までも、子育てに関連するお悩みはどんなことでも受け付けていましたが、特に多くのご相談がくるカテゴリについては、新しくカテゴリとして、導入しました!■ 過去の相談と回答が一覧で見やすく!過去のご相談の流れを一覧ですぐに見返しやすくなりました。また、一覧にある過去の相談から「継続相談」を開始しやすくなりました!「相談がびっくりするぐらい丁寧で、ありがたいです。下の子が小さくなかなか相談機関に行けないので、オンラインがすごく助かります。また自分のいい時間にゆっくり相談したい内容を書いたり読んだりできるのがいいです。ありがたい支援システムをつくっていただきありがとうございます。(ASD, ADHD・小学生の保護者さま)」「学校で起こったお友達とのトラブルや、困り事を相談しています。具体的な事例を入力するだけで、専門家の先生が整理してくださり、トラブルや困り事の根本の部分をあげて、さらに具体的な対処法や練習法を教えてくださいます。(ASD, ADHD・小学生の保護者さま)」「一般的には、医師や心理士の予約には時間もかかりまた話したいこともあまり話せなかったりしますが、発達ナビPLUSだったら、文章にして相談できるのでいいです。面と向かって話さないで相談できる場所は、リアルな相談場所に行くまでの支えになります。(ASD,知的障害・未就学児の保護者さま)」その場でチャット質問もできる!ライブ配信Upload By 発達ナビ編集部ここでしか聞けない、幅広く、細かいテーマ設定で、医師・心理士など専門家が疑問を解消するライブ配信では、事前の質問に加え、その場でチャット質問も受け付け、専門家が答えていきます!リアルタイム参加できなくても、録画動画での視聴も可能です。「ライブ配信の録画は、悩んでいることの最新のものがながれることが多いので本をみるより分かりやすくいいです。(ASD, 知的障害・未就学児の保護者さま)」「主にライブ配信や録画動画を利用させていただいていますが、配信内容がカテゴリ別になっていて、子どもの状況や特性に合った内容を自分で選んで視聴できるので、知りたい情報がすぐに見つかり、とても役立っています。内容も充実していて、心理士や作業療法士など、専門の知識を持った方が講師をして下さるので、とても勉強になります。(ADHD・小学生の保護者さま)」「子供の対応の仕方で迷った時に、その時に必要な過去の配信を検索して観て、専門家の意見を学んでいます。通級指導教室、療育にも通っていますが、それぞれの先生の意見を聞いて、発達ナビPLUSの配信動画、を観て自分の意見をまとめてから対応するようにしています。(ADHD・小学生の保護者さま)」解説動画、教材・支援ツールなどがカテゴリ別に見つかる!Upload By 発達ナビ編集部さまざまなお悩み別に、5分~15分でわかる解説動画や、7,000点以上の教材・プログラム、よみもの(記事)にアクセスできます。 今の悩みに合ったコンテンツを手軽に探せます。過去に開催したライブ配信もお悩み別に探せます。Upload By 発達ナビ編集部■ おすすめ機能・お気に入り機能が追加!お子さまの年齢情報をもとにした、おすすめ機能がつき、よりご自身にあった情報が見つけやすくなりました。さらに、「あとで見たい!」と思ったコンテンツを保存♡できる、お気に入り機能も追加!■ カテゴリ検索で、今ほしいコンテンツがすぐに見つかる!画面右上の虫眼鏡マークから、お困りカテゴリを選択し、今困っていることに答えるコンテンツにすぐにアクセスできます。大きいカテゴリが12種類、小さいカテゴリが56種類あるので、あなたの今の悩みがきっと見つかります。「支援にあった教材がダウンロードし放題なので、きょうだいそれぞれ、その子に合わせて使用させていただいています。(ASD, ADHD, LD・小学生の保護者さま)」「支援教材もよくチェックしています。どんな力が身につくか、スモールステップで示されており、また、画像付きなのでとてもわかりやすいです。(LD・小学生の保護者さま)」「解説動画では、実践を含めてわかりやすく説いてくれるので親にとってはとても有難いです。(ASD, ADHD, 知的障害・小学生/高校生の保護者さま)」ライフステージマップで先の見通しまで安心にUpload By 発達ナビ編集部未就学から学齢期、思春期、成人と、ライフステージが変わるごとに、必要な情報や困りの内容も変わります。今後を見据えた情報を一目で把握できるようになりました。マップから直接、解説動画やよみものなどのコンテンツにアクセスすることもできます!入会特典で3万円分の相談がついてくる!発達ナビPLUSは、リニューアルを通して、発達が気になるご家庭の子育てに、より確かな安心を届けてまいります。入会特典として、発達ナビPLUSの相談チケット実質3万円分がついてきます!くわしくは、サイトをご覧ください。Upload By 発達ナビ編集部
2021年12月16日どう接したらいいのか分からない1~2歳のむっくんは言語発達や身体的な発達は一般的な目安通り進んでいましたが、歩くようになったころから多動が強くなり、じっとすることが難しくなりました。何かに興味を示したら、手を振り払って道路に飛び出そうとしたり、手が振り払えないように強く握っていると今度は自分の腕が抜けるまで引っ張ったり。いつも本気で追いかけていないと身の安全を守ることができませんでした。また偏食、入眠の難しさや、たびたびの激しい癇癪に途方に暮れることもありました。私は育児に疲弊しきって、1歳半健診で医師に相談しましたが元気な子だねと言われただけ…。2歳過ぎには当時住んでいた市の育児相談先にも相談しましたが、お子さんから離れる時間をつくりましょうというアドバイスのみ。このころは出かけることも億劫になり、自宅でひたすら子どもへの接し方をネット検索していたように思います。Upload By ウチノコ発達障害があるに違いないあるときふと思い立ち、困っている内容に『発達障害』というワードを組み合わせて検索してみました。すると次々とヒット!当時の私はむっくんに発達障害があるか否かには興味はなく、とにかく現在の困り感を緩和したい気持ちでいっぱいでした。ようやく求めていた情報に出合うことができて、未来が明るくなったような気持ちさえしたものです。Upload By ウチノコただ当時は夫の転勤で引っ越したばかり。慣れない土地で勇気を出した相談も「大丈夫」と言われてしまい、心が折れていました。再び第三者に相談する勇気が持てないまま、日々をなんとかやり過ごしていたように思います。そんな中、夫が3年間海外に行くことになり、私は子どもと共に実家に身を寄せることに決めました。住み慣れた土地に戻り、両親の助けが得られるようになったことから少しずつこわばっていた心もほどけていきました。Upload By ウチノコ集団生活の始まりやがて3歳になった息子は園での集団生活を始めます。すると、家庭以上に接し方の難しさが目立つようになりました。教室から脱走はしょっちゅうで、そもそも自分の席に座りつづけることが周囲の子どもたちのようにはできませんでした。製作などみんなと同じ活動を行うことを嫌い、自分の好きなように自由にふるまうことも多かったようです。癇癪も相変わらず起こしやすく、先生や周囲の子に手が出てしまうこともありました。Upload By ウチノコただ入園したことで、息子への関わり方の難しさを保育士さんと共有することができました。私はやっとむっくんのことを安心して第三者に相談できるようになったのです。保育士さんに相談するうちに発達障害がある子のための支援がいろいろとあることを知りました。支援体制を整えるためには専門の病院にかかり息子に必要な手立てをアドバイスしてもらうことが必要だと知り、3歳過ぎにやっと専門病院にかかることができたのです。診断の先にあったものその後、むっくんは自閉スペクトラム症(ASD)とADHDの診断を受けました。さらにむっくんは感覚過敏が強く、つらい思いをすることが多いだろうとの指摘を受け、今まで関わりが難しかった理由を私はやっと知ることができました。Upload By ウチノコむっくんのように理由の見えにくい癇癪や他害が目立ってしまうと、周囲から繰り返し叱責されるなどの「無理解による不適切な対応」を受けやすくなります。結果それが本人を苦しめることになり、ますます状況が悪化することもありえます。診断前は、私もたくさん「不適切な対応」をしていました。だけど、診断を受けて発達障害を学ぶことで、息子への「不適切な対応」を少しずつですが変えていくことができました。また、保育園では保育所等訪問支援などの専門家による支援を受けて、適切な対応の周知や環境改善を行っていき集団生活での状況も確実に変わっていきました。診断のおかげで、周囲の大人が知識を得て変わることができ、むっくんのつらさが和らいで状況が変わっていったのだと思います。今、悩んでいる方へ育児の悩みを人に相談することは、なかなか勇気が必要です。その上、多動があると子どもから目を離しにくいため落ち着いて相談する時間さえ取りにくかったり、他害は周囲の目が気になってしまい相談しにくいこともあります。私はなんとか相談したものの受け入れられず、結局孤立を選びました。だけど、孤立は人を必要以上に追い詰めます。追い詰められた中で状況を変えることはとても難しいです。だから、私は発達障害があるか否かを考えるよりも、まずは安心して相談できる場所や人を諦めずに探すことが大切な気がするのです。私が保育士さんに出会えたように、理解してくれる人は必ずどこかにいます。今、育児に悩んでいる方が安心して相談できる誰かと繋がっていることを私は願っています。執筆/ウチノコ(監修:鈴木先生より)本来はすべての自治体で専門的に相談できることが理想ですが、なかなか医療とのつながりがありません。診断することで「不適切な対応」が少しでも変えられれば、早期介入・診断が重要となります。本来なら1歳半や3歳児健診のようなメジャーな健診で専門医につなげる必要があるのですが、人脈などのパイプが担当医や担当保健師さんにないと「様子を見ましょう」という決まり文句で経過を見ないで終わっている現実があります。自治体で専門医による定期的な神経発達症の勉強会が行われていないことが問題なのです。
2021年12月16日保育園で開催された生活発表会でしのくん2歳10ヶ月のころ、保育園で開催された生活発表会で劇をしました。劇が始まって、私はしのくんの登場を楽しみに、ドキドキしながらカメラを構えて待っていました。ところが…Upload By keikoUpload By keikoしのくんは、登場するなり保護者席のほうへ走りだしてしまいます。そして、演技もしないでそのまま退場してしまいました…。同じクラスのお友達は、みんなきちんと劇に参加しています。セリフを言って、演技もして、最後は上手に歌も歌っていました。私は、同じクラスのお友達との違いに衝撃を受けました…。例え退場してなかったとしても、しのくんはセリフを言うこともできなければ、演技もできず、歌も歌うことができなかっただろうと思いました。私は、しのくんに「発達の遅れ」があると分かってから、知らず知らずのうちに、ほかの子にできて、しのくんのできないところばかり探していたんだと思います。このとき、今までだったら気にしないでこれた「ほかの子との差」をとても深刻に感じてしまいました。そして、周りの保護者の目も気になりはじめ…Upload By keikoUpload By keiko実際にこっちを見ているパパやママを見たわけではありません。今思えば私の被害妄想が暴走して、そんな気がしてしまっただけだったと思います。しかし当時の私には、このとき、みんながこっちを見ていて、みんながしのくんのことを「なんでできないの?」と思っているんじゃないか?と疑心暗鬼になってしまい、勝手に一人で悲しくなっていました。悲しくなって、初めて「保育園の行事に参加したくないな」と感じた瞬間でした。そして、劇が終わった帰りの廊下でも…Upload By keikoUpload By keiko先生方が口々に「しのくん!頑張ったね!」と声をかけてくださいました。しのくんは笑顔でとても満足そうだったのに、私の心の中は違いました…。Upload By keikoせっかく先生方が声をかけてくださっているのに、私は心の中で「何もしてませんけどね」と思ってしまって、早く立ち去りたくてしょうがありませんでした…。帰りの廊下がひどく長く感じました。【あとがき】当時の私は、ほかの子と比べてしまって、「しのくんは、あれもできないこれもできない…どうしよう⁉︎」と頭がいっぱいでした。しかし、あれから一年経った現在は、しのくんの「できないところ」ではなく、「できるところ」を見られるようになって、勝手に思い込んで勝手に悲しむということはなくなりました。それに、しのくんの様子を見ていると、先生方から本当に可愛がってもらっているのを感じますし、クラスの子とも仲良くしていると担任の先生から教えてもらって、今では、母子共々、保育園の行事を楽しんで参加しています。もちろん、今でもほかの子と比べてしまってショックを受けることも少なからずありますが、しのくんにはしのくんのペースがあるので、それに寄り添って一緒に歩いていこうと思います。執筆/keiko(監修:井上先生より)園の行事でお子さんが思ったように演技ができなかったり、逸脱してしまったりということを見るのは保護者としてつらいことだと思います。また一方で、お子さんの「頑張ったよ」という誇らしげな表情をみると、よけいにつらくなってしまったのかもしれません。園の先生が「頑張ったね」と声をかけてくれるのは、純粋にそんな子どもの達成感に寄り添ってくれているのだと思いますが、そのときの自分としてそれが素直に受け入れられない気持ちが生じてくるのは当然だと思います。周りからの目が気になってしまうという親の視点から、純粋にお子さんの視点に立ってみれるようになるには、多くの時間と勇気が必要であったのではないでしょうか。きっと周りのさまざまな先生方やご家族や友人の寄り添いの存在があってkeikoさんが今の思いに至られたのだと思いました。
2021年12月11日子どもの興味を引くには「擬人化」が鉄板!こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。親業は年中無休ですし、毎日バタバタと慌ただしい中で、お子さんの身支度やハミガキ、身体のケアなどのお世話がスンナリと運ばないと、家庭内の空気もつい、ピリピリしがちにもなるというもの。また、普段小さな子やお孫さんに接する機会が限られている方は、いざ、「ちょっとだけみてて」と子守りを任されると、未知の生物過ぎて「どう接していいのか、わからない」なんて、戸惑うこともあるかもしれません。でも、大丈夫。だれにでもできる、秘伝の策がありますから。それは「擬人化の声かけ」。子どもの興味を引く鉄板技の擬人化テクニックで、小さなハートをわし掴み!パパもママも、じいじもばあばも、発想を転換して、ちょっとだけ伝え方を工夫してみると、お子さんが進んで楽しくできること、やる気が出ること、泣きやめることって、結構あるんですよ。だれでもスグにできる!擬人化テクを駆使した声かけのコツUpload By 楽々かあさん小さな子のお絵かきを見ると、ニッコニコの太陽やお花を描いたりしますよね。これは、子どもがモノや自然と距離が近い世界に住んでいて、自分と同じような心があるように感じているから。また、人と関わるのが苦手なタイプの子でも、モノに対する興味や愛着が強いこともあります(大人だって、「他人の気持ちはイマイチよく分からないけど、自然や地球の気持ちなら、手にとるようにわかる」なんて方もいるでしょう)。だから、「言いたいことが、子どもになかなか伝わらない」「反応がイマイチ」と思ったら、擬人化してモノの口を借りてみると、素直に話に耳を傾けてくれたり、理解・納得しやすくなったりする可能性大。それに、大人のほうも発想を転換して、子どもに目線を合わせることで、気持ちが和らいだり、肩の力が抜けることだってありますから。つまり、「困ったら、擬人化!」は、ぜひ、試してみたい声かけ技の筆頭、というワケなのです。この擬人化テクニックを駆使するコツは、まずは「子どもをよく観察すること」です。久しぶりにお孫さんに会って、少々緊張気味のおじいちゃん・おばあちゃんも、好きなものや最近ハマっていることなどをそれとなくリサーチしたり、服装や身の回りのものなどをよく見ておくと、擬人化ネタがゴロゴロ落ちていますから、心のネタ帳にストックするといいでしょう。では、実践編をうちの具体例で紹介しますね。まずは、入門編。身の回りのモノの擬人化です。登園・登校やおでかけ前に、子どものお着替えに手間取ってしまうと焦りますよね。ましてや冬は、着せるモノがいーっぱいありますから!小さなころ、やや肌が敏感なうちの長女も、くつ下を履くのがあんまり好きじゃなくて時間がかかっていたのですが、あるとき、その日のくつ下についていた、うさちゃんのワンポイントが目に止まり……「うさちゃんが、一緒に連れてって〜!って言ってるよー」……と、パタパタさせてみせると、お世話大好きの長女は目をキラキラさせて、「しょうがないなあ。じゃあ、いっしょにいく?」と満更でもない様子で履いてくれました。(その日を境にしばらくの間、くつ下たちが「今日はぼくが一緒」「ずるい!私が先よ」と長女を取り合って争奪戦を繰り広げる展開が「朝のお約束」になってしまいましたが……)このように、身につけるモノのちょっとしたキャラクターやワンポイントに注目して擬人化したり、「この茶色のモコモコを着たら、ワンちゃんみたいでかわいいよ」「この服の組み合わせは、〇〇ジャーのブルーっぽくてかっこいいね」などと、その子の好きなものにちょっと寄せたプチ・コスプレなども、進んで着替えてくれる可能性大です。次に、少々演技力が必要な、見えないモノの擬人化。時に、子どもという生き物は、「やって!」と言われれば「ヤダ!」と即座に返し、「やらないで!」と言われれば言われるほど、好奇心がうずうずとしてしまう、天の邪鬼な性質がありますよね。うちの長女も、寝る前のハミガキを「しないとダメでしょ」と言われても、イマイチ乗り気になれなくて時間がかかっていたことも。こんなときも擬人化の声かけの出番です。例えば、夕食にハンバーグを食べたあとで、長女の口の中をじーっと覗き込んで……「ああ!ムシバキンたちが喜んでるっ!今日はごちそうだ、やったー!ハンバーグありがとう、今からみんなでパーティするからハミガキしないでね!?だって」……なーんて言ってみたら、慌ててガシガシと磨き始めました(笑)。このあとも「大変だー!みんな、隅っこに隠れろー!」「ぎゃー!流さないでー!ずーっと〇子ちゃんと一緒にいたいんだよォ〜」などと臨場感を盛り上げると、自分でとても丁寧に仕上げてくれました。「演技力に自信がない」「恥ずかしい」なんて方もいるかもしれませんが、ここは覚悟を決めて新しい扉を開いてしまったほうが、ぐずる子どもと押し問答を続けるよりも断然ラクだと思いますよ(子育て中の恥はかき捨てでOK!)。また、小さな子は声かけだけでは難しいこともあるので、お支度やお世話がなかなか進まないときには、親の足の甲に子どもの足を乗せたペンギン歩きや、「ママタクシーが迎えに来たよ」「パパバスにご乗車のかたはいませんか〜?」などと、おんぶや四つん這いで、トイレ→洗面所→着替えルートなどを巡回してしまうのもGood。また、逆に「じいじを洗面所に連れてって」「ばあばのお着替え手伝って」などと、子どもに頼むとやる気を出す子もいるでしょう。最後は応用技。目のつけどころがポイントの、パーツの擬人化です。風邪の流行る季節や、なにかと子どものケアに気を配る必要があるときには、親も神経を使いますよね。ましてや、今は新型コロナウイルスのことを気にしながらの生活が続いていますから、毎日の体調チェックに加えて、こまめな手洗いや衛生管理なども大変でしょう。これらの必要な身体のケアも、毎日のこととなると、子どもも大人も面倒でテキトーになりがちですし、お世話を嫌がる子もいるでしょう。こんなときは、子どもの身体のパーツを擬人化して、名前をつけてしまうのもテです。そして、子ども本人ではなく、そこに向かって直接話しかけるようにすると、子どもも協力的になってくれるかもしれません。例えば、うちでは子どもたちが風邪を引いたときの体調チェックには、「おへそちゃん」に向かって……「ちょっと、おへそちゃんとお話させて。もしもーし?今日はゴロゴロしてないかな?」……と、お腹に耳を当てたり、「おへそちゃん、なんて言ってる?」と子どもに聞いたりしていました。また、寝るときに「おへそちゃんが、寒いんだって」というと素直に布団をかけてくれたりも。また、乾燥しやすい季節や、こまめな手洗いの結果、手が荒れがちな子もいますよね。うちの次男も肌が荒れやすく、いつも保湿クリームを塗っていました(今もです)。毎日のこととなると本人もうんざり気味。こんな時は、手や肘の「ガサガサ君」たちに向かって……「ガサガサ君たち〜、保湿クリーム塗ってあげるよ。並んで、並んで〜」……なんて言うと、協力的になってくれたりも。子どもだって、「自分がやらなくてはいけない」と思うと面倒に感じても、他人事だと思えば多少気がラクなのかもしれませんね。それに親のほうも、たとえ子どもがお世話に非協力的でも「おへそちゃんがヘソを曲げている」「今日はガサガサ君の心が荒れている」と解釈すると、気持ちが多少和らぐのではないでしょうか。ときには大人の言い訳にも……こんな風に「擬人化」は、子どもの興味を引くのに非常に便利で手軽な声かけテクニックなのです。ですから、「本当は子ども相手にあんまりピリピリせずに、柔軟にユーモアで切り返したいのに思いつかない」なんて方でも、「困ったら擬人化」を頭の片隅に入れておくと、発想の転換がしやすくなるでしょう(脳トレにもなりますよ)。そして、ときには、擬人化は大人の言い訳にも使えちゃったりもするんです。たとえ仕事や世間のみなさまがお休みの日でも、子育てだけは年中無休で営業中ですから、せめて家事くらいは少々手を抜いたってバチは当たらないというもの。例えば、私は時々、夕食作りの直前に炊飯ジャーのスイッチを”つい、うっかり”入れ忘れたことに気がつくのですが、こんなときには……「今日は、炊飯ジャーがごはん作りたくないんだって。しょーがないから、宅配ディナーをたのもうか」……なんて、モノの口を借りて適度に本音を混ぜ込みつつ、都合よく家事をサボっています。このように擬人化の声かけ技を身につけると、だれでも簡単にユーモアで返すことができますし、何より、子どもの世界に目線を合わせて、発想を転換するクセをつけていくと、自然と大人の頭の中も、家庭内の空気も、柔らかくなるのではないでしょうか。文:大場美鈴(楽々かあさん)(監修者・井上先生より)擬人化のテクニックを使うことによって、保護者から子どもへの「~やって」という命令口調が柔らかいものになりますね。また自らのかかわりをうまく整理されていてわかりやすく素晴らしいと思いました。擬人化をすることで、大人側の気持ちの癒しにもなると思います。擬人化することが分かりやすいというお子さんには、この方法はよいですね。ただ、なかには擬人化が分かりにくいというお子さんもいるので、お子さんの様子をよく見るようにしましょう。自閉スペクトラム症のあるお子さんで、歯磨きが嫌いだがお医者さんごっこが好きだという子がいました。そのお子さんは、診察券をつくり、「次の方どうぞ~」と医師役の保護者が呼びかけるごっこ遊びの形であれば、嫌いな歯磨きもできました。このようにごっこ遊びなどの文脈にのせていくのも同様の効果が得られると思います。大場さんも書いておられるように、お子さんの好きな文脈・ストーリーを踏まえた擬人化や声がけが大切なのだと思います。
2021年12月10日子どもの”発達障害がある可能性”に気づいた、私の母のケースUpload By 丸山さとこ私には発達障害のある小6の息子がいます。また私自身、大人になってから(息子が生まれる前)自分に発達障害があることが分かりました。息子のコウは、幼少期から「物を並べる・オウム返し・目線が合いにくい」などの発達障害あるあるの行動がよく見られましたが、私は3歳児健診まで息子に発達障害があることに気がつきませんでした。一方で私の母は、私の幼少期に「娘には発達障害があるかもしれない」と感じていたそうです。今回は、私自身の幼少期と母が感じていたことについて書きたいと思います。私と発達障害の関係の始まりは、私が幼児だったころにさかのぼります。今よりもずっと発達障害に関する情報が少なかった昭和50年代でしたが、私の母は「娘は何かしら発達に障害を抱えているのではないか」と感じていたそうです。幼いころの私について、母は「言葉の発達は早いものの言葉づかいが子どもらしくなかったり、力は強いのに歩く姿が不器用でよく転んだりしていたのが気になっていた」と言います。その母は、『さとこが少しでも歩きやすいように』と”少しでも軽い靴を探す”などの工夫をしていたそうです。Upload By 丸山さとこ幼いころの私に対して、コミュニケーションの遅れは特に感じたことがなかったそうです。しかし「とにかく子どもらしくないような違和感があった」「甘えない・後追いをしない・大喜びをしない・おままごとをしない、などの行動に引っかかりを感じていた」と母は振り返って言います。幼いころのコウのように「物を並べる・オウム返し・目線が合いにくい」などの、分かりやすい発達障害がある傾向は見られなくとも、母は私の”日常の中のささいな姿”に対して違和感を覚えることが増えていったそうです。Upload By 丸山さとこ健診で総合病院に行った際など、母は何度か娘の発達に関する違和感について医師に相談してみたそうです。しかし「知的にも順調に発達しているし動作にも問題は見られない」と言われ、”不安症な母親への軽い子育てアドバイス”をもらってその場は終わったそうです。私はその後、成人してから発達障害(ASD・ADHD)の診断を受け、現在ではADHD治療薬を服用しています。今になって振り返れば、幼い私に対して母が抱いていた違和感は正しかったわけです。Upload By 丸山さとこ保育園に入園してからの私は、”指示の通らなさ”や”こだわりと見られる行動”によって集団の中でも目立っていたそうです。現在の基準であれば「発達障害がある可能性」を指摘されたかもしれません。ですが、母が違和感を抱き始めたのは私が未就園児のころであり、集団の中での違和感が目立つよりも、もっと早い段階の話だったのです。『なぜ違和感に気づくことができたのだろうか?』と先日改めて母に聞いたところ、意外な…けれど、とても腑に落ちる答えが返ってきました。”自分の子ども”以外の子どもと接することで、分かることもある!?現在60代の母が若かったころは今より子どもの数が多く、近所や親戚の子どもを預かったり見かけたりすることもかなり多かったそうです。公園や広場や園で見かける姿とも少し違う、子どもたちの”家庭での素の姿”を目にする機会も多かったため、経験から漠然と『個性はいろいろあるけれど、子どもには大抵こういうところがある』という”一般的な子ども像”を持つに至っていたのだと思う…と母は言いました。Upload By 丸山さとこ「だから、さとこを育てていて『子どもなら多かれ少なかれするはずの行動をとらない』ことが引っかかったんだと思う」「発達障害の知識はなかったけれど、とにかく子どもらしくなくて妙だな~…と感じていたよ」…と続く母の話を意外に思いつつ、同時に「あ~、でも、ちょっと分かるかも! そういえばそういうことあったな!!」と思い、私はヒザを打ちました。コウが小学生になったころ、未就園児だった親戚の子を預かったことがあります。そのときに「これが定型発達とされる子どもか~!」と発達の違いに驚いた経験があったからです。私も、大人になってからコウ以外の子どもに関わった経験がなかったわけではありません。親戚の子どものお守りをしたことや、友人の子どもと遊んだ経験はありましたし、コウが産まれてからは公園でほかの子どもの様子を見ることもありました。けれども、当時の私はコウとほかの子どもを比べたり周りを見たりする発想が(今以上に)乏しかった気がします。私自身に発達障害があるから…ということも理由かもしれませんが、単純に、初めての子育てで周りを見たり比べたりする余裕がなかったからなのかもしれません。Upload By 丸山さとこそんな私であっても、3歳児健診のおかげでコウが発達障害である可能性に気づくことができたので、「今の時代でよかったな~」と思います。周囲と比べて焦らなくてもよいと考えてはいますが、その時々のコウの発達状況における"必要な手立て"が見つけられるように「『周りの様子』と『コウの現在位置』を見ることは大切なんだな~!」と思う私でした。執筆/丸山さとこ(監修:井上先生より)幼児期は女の子の場合、男の子よりコミュニケーションの発達が早い傾向があるため、発達障害の特性は目立たないケースが多く、今のお医者さんでも女の子の発達障害を早期に診断するのは難しいものです。お母さんがこの当時、さとこさんの発達の偏りに気づいていたということは、周りの人と比較するだけでなく、さとこさん自身を本当によく観察されていたのだと思います。同じ母という立場で、自分の母親と子育ての話をする中で、これからもプラスのヒントが見つかるといいですね。3世代のよい親子関係性が築けているのがすてきだと思いました。
2021年12月09日感覚の偏りの4パターンを解説Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン「感覚過敏(過剰反応性)」とは、光や音などをはじめとする特定の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。逆に、刺激に対する反応が低くなることを「低登録・感覚鈍麻(感覚の鈍感さ)」といいます。どちらも感覚に偏りがあることが原因です。※以下感覚の鈍感さと記述します。感覚過敏があると、多くの刺激を受け取りすぎることによってストレスが増したり、多くの人にとって平気な刺激を過剰に怖がったりすることがあります。また、感覚の鈍感さがあると、遊びの呼びかけの声を聞き逃してしまい、仲間に入れないなど、集団の中でうまく過ごせないことがあります。身体の痛みに気がつかず、病院で手当てを受けるのが遅れてしまうこともあります。このように感覚に過度な偏りがあると、日常生活に支障をきたす場合があります。■感覚の偏りによる困難さは理解されにくい感覚は、個人の主観的なものであり、個々によって刺激の受け取り方はそれぞれです。そのために、感覚の偏りがある人の困難さは、ほかの人からは理解されにくいものです。シャワーをひどく嫌がる、極端に眩しがる、集団で行動するのが苦手であるなど、日常の中で子どもの行動が気になることはあるでしょうか。それは、もしかすると環境の中にあふれる情報や刺激を細かく大量に拾ってしまっていることが原因かもしれません。多くの人が何も感じない場面でも、感覚に偏りがあると、その場所にいるだけで耐えがたい苦痛を感じることがあるのです。感覚の偏りは4つのパターンに分けられる感覚の偏りに関する問題は、その傾向によってパターンに分けて整理することができます。以下に感覚刺激への反応傾向のプロファイリングで使用される4つの分類をご紹介します。なかなか理解のされにくい感覚の偏りについて、客観的な把握をすることで役立てることができるでしょう。■感覚過敏刺激に対して過剰に反応することで、環境の変化やちょっとした刺激も極度に気になるという状態を指します。■感覚回避刺激に対する過剰な反応があるため、刺激のある環境を回避する行動をとることです。■低登録・感覚鈍麻刺激に対する反応が弱く、感覚が鈍い傾向があるとされます。感覚の鈍感さを指します。■感覚探求刺激に対して反応が弱いがゆえに、強い刺激を求める行動をすることです。特性を知り、安心して過ごせるような環境を作っていく感覚の偏り方は一人ひとりさまざまで、症状も多岐にわたります。その子がどのような特性があるのかを理解し、対応方法を見つけていくことが苦痛や困りごとの軽減に繋がっていきます。
2021年12月08日集団生活で自分のペースを保つことが難しいPは…Upload By みん自閉スペクトラム症のあるPが療育園に入園したのは、年少のときです。療育園に入園してからは、毎日長時間クラスの集団の中で過ごすことになりました。クラスが騒がしかったとき、お友だちとおもちゃの貸し借りが上手くいかなかったとき、自分のペースを保てなかったときなどに、癇癪とパニックを起こすようになってしまったP。長時間泣き喚き、自傷や他害の様子も見られるようになってしまいました。私は先生からその話を聞き、母子通園が終わって園で離れて過ごすPに対して、どのように対応してあげたら良いのかと悩んでいました。集団の中で過ごすことがパニックにつながっているのは分かっていましたが、療育園自体は毎日行きしぶりもなく、楽しく通っていたので園を休んでしまうのは根本的な解決策にはならないと思っていました。その後、私はクラスでのPの様子が心配で療育園へ見学に行きました。すると教室の隅に子ども1人が座って入れるくらいのサイズの段ボール箱がちょこんと置かれていました。数日前に先生から「P君がクールダウンできるように、P君専用の箱を作って置かせてもらっています」と電話で聞いていたので、私はそれがPのための箱だと一目で分かりました。安全地帯を作ってもらい、どのような場面でどのように活用していたのか?そして自由遊びの時間、クラス全体が笑い声や泣き声で騒がしくなり、自分のペースを保つことが難しそうだったPは、何かに怒った様子で突然走り出してしまいました。「あぁ…こんな風に気持ちが乱れて不安定になってしまうのか」と思って見ていると、Pの走った先にはあの段ボール箱がありました。Pはその箱の中に一直線。すっぽり入って、自分の服をかみながら落ち着こうとしている様子でした。先生が用意してくれた段ボール箱の中は、Pが好きな色で塗ってあり、好きなキャラクターの絵やシールなども四方に貼られていました。そしておもちゃやぬいぐるみなどもたくさん入っていました。そのような空間で1人で過ごしていたPは、徐々に落ち着き始め、自分だけの力でクールダウンすることができていました。箱の外側にはPのマークも貼ってあったので、「Pの箱」であることをクラスのお友達も理解してくれているようでした。Upload By みん一時的に避難することで、自分でクールダウンができるようになってからは…教室に置かれた一時的な避難場所となる段ボール。ここに入ることで、クラスのみんなと過ごす空間を完全に別にすることなく、同じ空間にいながらも自分のペースを保ち、安心することができていたようです。そんなPでしたが、少しずつクラスの雰囲気にも慣れ、段ボールに入る回数も減って集団で過ごせるようになり、段ボールは徐々に必要なくなりました。そして新年度、新しいクラスになったときには慣れるまでの間段ボールを教室に置いてくれたりもしましたが、何回か箱の中に入ったくらいでした。そのうちほかのお友達と一緒に箱に入って遊ぶようになり、いつの間にかそれは「みんなのスペース」となっていき、P専用の避難所としての箱はもう必要なくなっていました。このような一時避難所的な安全地帯がなぜPに必要で有効だったのか?を私なりに考えてみました。音や視覚の刺激が強い自閉スペクトラム症のPは、集団生活に慣れるまでに時間がかかります。予測できないお友達の声や行動に想像以上にストレスを感じてしまうので、そのような刺激を少しでも遮断し、自分の安心できる場所を確保することで、不安や混乱を減らし、少しずつクラスの雰囲気にも慣れることができたのかな?と思いました。ですが、いつでも避難できるようにするのではなく、先生たちはみんなで一緒に決まった活動をするときや給食のときなどは教室に箱を置きませんでした。クラスで活動するときはちゃんと活動させ、箱に入れるのはあくまでも自由遊びの時間限定というルールでメリハリをつけて使うようにしてくれていました。Upload By みん自閉スペクトラム症のある子にとっての環境配慮の大切さを実感もしそれらの知識のない人が、1人で箱に入っているPを見たら、「閉じ込められてる」「特別扱い」 などと誤解されてしまう場合もあるかもしれません。でも決して誰かに無理やり入らされているわけではなく、本人が必要だと思ったときに自分の意思で入っていました。個々の性格や特性にもよるとは思いますが、自閉スペクトラム症のある子にとって「クールダウンできる環境」をつくってあげるのは、とても大切な配慮であることを理解してもらえたら嬉しいなと思います。執筆/みん(監修:三木先生より)クールダウンできる場所や方法があると思えるだけで、その場にいる安心感がかなり違ってきますよね。箱の準備も素敵ですが、運用にメリハリをつけてくれたのは先生の素晴らしい工夫ですね。
2021年12月06日将来をどう考えておけばいいの?ウチノコ(以下、――):息子のように、自閉スペクトラム症やADHDの診断はあるけれど学習面での困難さをそこまで抱えていない子は、将来の進路は一般就労に向かっていくと考えていたらいいのでしょうか?Upload By ウチノコ三木先生:そうですね、僕は知的な能力が高ければ一般就労を目指していけばいいと思っています。知的障害がある場合は一般就労では難しいケースもありますが、発達障害のある子は環境にフィットして、自分で自分の機嫌がとれさえすれば、凸凹はあっても能力に問題があるわけではないですからね。息子君も、【得意】と【不得意】の差は大きいかと思うのですが【得意】でどれくらい勝負できるかを探っていくといいと思います。――得意で勝負ですか…三木先生:例えば勉強が得意なら、私立の進学校なんてどうでしょうか?――それは…既に不登校を選んでいるので、学校に行かない場合の私立の授業料を考えてしまって(苦笑)三木先生:でも、今彼が学校に行かない理由の周りのがやがやした騒がしさが嫌だとか、授業中の待ち時間が嫌だとか、そういったものが解消できる環境なら案外合うかもしれませんよ? 私立の男子校の中には、息子君と同じような特性のある子も意外と多いのではないかと思います。理解のある学校であれば、落ち着けるような環境をつくってくれるかもしれませんよね。Upload By ウチノコ――そうかもしれませんね!三木先生:息子君の場合、勉強も進路も本人に合っていれば楽しく取り組めて、ご機嫌で過ごせるでしょう? ご機嫌でいられると、易刺激性や感覚過敏なんかもそこまで顕著に出ないんですよね。当然、程度にはよりますが、今までは無理だった環境下でも過ごせるようになったりね。合う合わないはあるだろうけど、進路として検討してみてもいいのかもしれないと思います。それに、そもそも大人に近くなってくると感覚過敏なんかは今より軽減されるというか、丸まってくるものなんですよね。加えて、認知的な理解でもコントロールできるようになってきます。例えば、急によく分からない水の音が聞こえてきたら気持ち悪い。だけど何の音なのか確認して理由が分かれば気にならなくなるじゃないですか。感覚ってある程度までは認知で調整することができるものなんです。だから成長して見える範囲が広がる、理解できることが増えて理解の深さも出てくれば、おのずと今しんどさのある音などへの過敏やこだわりなんかも多少軽減されてくるだろう。そうすると、大人になったころにはある程度落ち着いて暮らせるようになる、という見通しは立てられるようになるのでそこを目指していけたらいいですね。Upload By ウチノコ――なるほど…確かに8歳の今でさえ、以前よりも感覚過敏は落ち着いてきました。三木先生:さらに将来についても、今の時代は認知機能が高ければ就ける仕事が増えてきていますから。外資家のコンサルや証券なんかはわりとロジカルで頭が良い人が活躍されているでしょう。研究者なども、自分の興味をとことん追求するといった特性を生かして活躍できるかもしれません。勉強を頑張っていってもいいし、ほかの分野でも好きそうな興味のあることをガンガン伸ばして、得意で勝負していくことがこれからできることなんだと思いますよ。――ありがとうございます。ただ、息子の場合は学校へ行かないケースも考えておかなきゃと思うのですが…三木先生:そうですね。僕は学校の目的って授業とそれ以外って話をよくするんですけど。究極、勉強と友達(社会性)を学びに行くところなので、その2つができるなら場所は学校でなくてもいいと思うんです。ほかにも、決められた場所で、決められたことを、言われた通りにやる。っていう目的もありますが、それが息子君は苦手ですよね。今の時代、この目的の重要性は落ちてきているようにも感じます。なので、とにかく勉強と社会性の2つをどう担保するのかを考えながら次のステップの進路を考えてもらうといいのかなと思います。まあ正直、学校に行くというのが一番手っ取り早いんですけどね…(笑)――うん、学校楽ですよねー(笑)三木先生:そう、楽なんだけど。息子君のように合わないなら自力でそういうリソースを探して、経験や体験を担保していく感じかなぁ。それをずっとやっていたら、たまに学校行ってないけど起業したよ、なんて人のパターンも聞きますよね。今息子君は8歳だから、就職は15年後とかですよね。そうなると企業の採用の感じがどう変わっているかすらわからないですからね。――必要とされる人財の条件が、現在と同じとは限らないのですね。三木先生:はい、就職も正規ルートじゃなくて、変わったルートもありますからね。好きなことを通して縁があった人に「君、面白いからウチの会社に来てよ」と採用されちゃったとか。学校行かなかったけど大検受けて、大学行って好きなことやっているうちに会社になっちゃいましたなど、息子君の場合はそっちの方がイメージがわくかもしれませんね。Upload By ウチノコ――ああ、確かに。大学は行く気がするのですが、高校は微妙だなと感じているんです。三木先生:その場合、費用はかかるかもしれませんが、通信制高校など、特長あるコンテンツを持っている場所を探していくことが合っている気がしますね。社会性のほうも子どもと関わるだけでなく、彼を面白がってくれる大人の中のほうが過ごしやすい時期だってあるかもしれない。その中で新しい刺激を受けて、何か目覚めることもありますからね。「やりたいことをやるためには、興味のないこともやらなくちゃ!」という所にたどり着けると、嫌いなことや苦手なことにも必然性を感じて学んでいくかもしれません。Upload By ウチノコ――なんだか将来が明るくなった気がします。具体的にいろいろとありがとうございました!あとがき先のことがどうにも霧の中でしたが、何をするかではなく、目的をどこに置くかを明確にして考えていけばいいのだなと感じました。自分の歩いてきた道しか知らない私ですが、もっと視野を広げていろいろな事を知り、考えていけたらいいなと思っています。執筆/ウチノコ
2021年12月05日お友達への好きな気持ちがあふれ出るミミUpload By taekoASDのあるミミは小学2年生。小学1年生のころから同じクラスのYちゃんのことが大好き! 好きな気持ちが態度にあふれ出ているので、クラス中が知っているようです。学校から支給されたタブレットで撮影したYちゃんとの写真を家でもときどき私に見せてくれます。Yちゃんのことを話してくれるミミ、とっても嬉しそう。お友達に突然のハグ⁈ある日、ミミは「Yちゃんにギューしちゃった」とYちゃんに突然ハグしたことを話してくれました。私は、ギョッとして「え!急に?そのあとYちゃんはどうしたの?」と聞きました。ミミは「逃げちゃった」と…。ミミは好きな気持ちを素直に表現しているのですが、急にハグされたら相手はびっくりしてしまいます。ミミに「そっか、きっとYちゃんびっくりしちゃったんだと思うよ。またギューしたくなったら、『Yちゃんのこと大好きだからギューしていい?』って聞いて、Yちゃんが『いいよ』って言ってくれたらにしようか」と伝えました。そのあと、私が見本になるように「ミミ、ギューしていーい?」と聞いてからハグしました。Upload By taekoまた、別の日は…ミミが学校から帰ってくると「Yちゃんのことキライ!」とプンプン怒っていました。どうしたのか聞いてみるとYちゃんがクラスの男の子と楽しそうに話をしていたそうです。ミミの心に湧いてきたヤキモチが「キライ」という表現になったのだと思います。ミミはこんなときどう考えたら良いか、自分がどんな気持ちなのか、まだ混乱してるのかもしれないなと思いました。Upload By taeko数日後「キライ!」なんて言っていたけど、やっぱりYちゃんが大好きなミミ。その日、学校から帰ってくると「今日Yちゃんのこといっぱいタッチしちゃった」と話してくれました。“タッチしちゃった”は気になります…。ミミは特性からか「好き」という気持ちをストレートに表現してしまうのかもしれません。私は、ミミが通っている通級の先生と、放課後等デイサービスの先生に最近のエピソードと「お友達との距離感を学べるような活動を取り入れてもらいたい」と言うことを伝えました。好きな子がいることは良いことだし、ヤキモチも成長の現れかなと思います。何より、大好きなお友達のことを幸せそうに話すミミに私も癒されています。ただ、突然のハグやタッチは相手もびっくりしてしまうので、お友達と過ごす中で相手も心地いい距離感が分かっていってくれたらいいなと思っています。Upload By taeko執筆/taeko(監修:初川先生より)好きな人がいる。すばらしいことですね。ただ、その距離感については注意が必要です(相手もまだ子どもですし、好意ゆえといっても、ぎゅーっとくっつかれたり、タッチされたりすることが嫌だったり怖く感じたりすることがあります)。taekoさんが提案されたように、〈許可を取る〉のも一つのやり方ですね。相手が合意したらぎゅーっとしてもいいよ、でもダメと言われたら「そっか!」と言ってすぐ引き下がる…というところまでして練習おきたいものです。そして、そういう相手の出方によって行動を変えることが難しい場合には、〈お友達との距離は指先からひじまでの距離を取る〉つまり“小さく前へならえ”の距離は離れておくのが人付き合いのマナーなのだ、ということを教えるのも一つかなと思います。お子さんの理解度や年齢によってもそのあたり工夫できそうです。また、ヤキモチをやいたということ。嫉妬という気持ちも大事な気持ちですね。まだ2年生だとどこまで感じ分けることができるか難しいところですが、嫉妬について「好きな子がほかの子と仲良くしていて〈悔しかった〉〈悲しかった〉」というように、単に〈怒り〉だけではなく、〈悔しい〉〈悲しい〉あるいは〈つらい〉などもう少し細やかな気持ちの言葉を教えてあげるチャンスかと思います。ぜひそうした気持ちの言葉を教えてあげてください。こういった気持ちの言葉についてでは、〈恥ずかしい〉という気持ちも〈怒り〉あるいは〈嫌〉として表出されやすいので、チャンスがあったら教えてあげるとよいかと思います。
2021年12月04日ドキドキしながら児童発達支援センターへ電話2歳になったころから本格的に気になっていた娘の発達。いつか追いつくかもしれないという淡い期待と、現実を知るのが怖いという理由から、なかなか相談をする勇気が出ませんでした。そして娘が2歳10ヶ月のころ。ついに相談する決心がつき、ドキドキしながら電話をかけました。※児童発達支援センターは、地域や種類などによって機能に違いがあります。詳しくは、お住まいの地域にお問合せください。Upload By とまぱんUpload By とまぱん相談員さんに娘の心配ごとを一通りお話しし、児童発達支援センターに出向く日にちが決まりました。自分の悩みを伝えることができてとてもスッキリしたのと、私の悩みを否定することなく明るく聞いてくれて安堵したのを覚えています。ソーシャルワーカーさんからの聞き取りいよいよ娘と児童発達支援センターへ。当日ソーシャルワーカーと呼ばれるスタッフさんから聞き取りがありました。聞き取りはこのような内容だったと思います。●出生時の様子●歩き始めた時期などの発達具合●食生活(好き嫌い)などなどソーシャルワーカーさんから聞き取りをされている間、娘はおもちゃで真剣に遊んでいました。子どもを見守るほかのスタッフさんもいましたが、スタッフさんとは遊ばずに一人で黙々と遊ぶ娘。しばらくしてスタッフさんが娘をくすぐるとキャッキャとうれしそうにしてました。スタッフさん「可愛いわね~!きっと泣いても可愛いんだろうね」スタッフさんはそう言ってくれましたが、泣いたら人一倍手に負えない娘。私は心の中で「泣いたら決して可愛くないんだよな…」と思いました。聞き取りが終わり家に帰ろうとしたとき。娘「ぎゃーーー!!」まだおもちゃで遊んでいたい娘は、大声をあげてひっくり返りました。娘の暴れように息を飲むスタッフさんたち。スタッフさんたち「これはお母さん大変だわ…!」初めて誰かにつらさを共感してもらい、危うく泣きそうになりました。医師の診察前回の聞き取りから2ヶ月後、次は医師の診察。娘、夫と私の3人で行きました。部屋に入ると医師の前にある椅子にストンと座る娘。Upload By とまぱん子どもに人気で娘も大好きなとあるアニメキャラクター。娘は、ほかのキャラクターの名前は言えるものの、なぜかこのキャラターは2歳半を過ぎても言えなかったのです。Upload By とまぱん「○○はどこ?」といった質問はすべて指差しで答えていました。いくつか娘に質問をしたあと、次は私たちに質問をしました。指差しはいつごろだったか、友達と遊んだりはするか、などなど。最近の娘のことは答えられるのですが、昔のことは覚えておらず、ほとんど感覚で答えてしまいました。あとで過去の写真を見て調べてみると、1歳前半でできてたものを2歳と言ってしまったり、たびたび誤って答えていたことが判明。診察前に、娘の発達具合を赤ちゃんのころからちゃんと振り返っておけば良かったと後悔しました。発達具合はどれくらい?発達検査と結果医師の診察からまた1、2ヶ月後、発達検査を行いました。家では椅子に長い時間座っていられないので、当日はちゃんと検査ができるか心配でした。心理士さんは娘の気がそれないよう、明るく声をかけながら進めてくれました。「これはなに?」といった言葉で答えるテストは2つしか答えられず。それ以外のテストは娘なりに頑張ってやっていました。私は娘の様子を横で見ていたのですが、これはできそうだというものが意外にできなかったり。これはできないだろうなというものが意外にできたり。娘の知らない面を見ることができました。検査から1ヶ月後、検査の結果が出ました。全体的な発達指数はやはり平均以下という結果に。娘の発達具合は平均より10ヶ月の遅れとなりました。心理士さんは関わり方のアドバイスと娘の苦手とする部分を教えてくれました。ついに医師からの診断結果発達相談の電話をしてから半年後、やっと診断結果が出る日がやってきました。ちゃんと冷静に聞ける自信がなかったので、夫と二人で行き、娘は夫の両親に預けました。緊張しながら部屋に入ると医師からはひとこと。Upload By とまぱん心理士さんからアドバイスなどはされましたが、診断名が出るのかなどの話はしませんでした。私はいくつか医師に質問をしました。私「娘は軽度知的障害ということでしょうか」医師「現在の指数的にはそうです」私「今後、指数が上がる可能性はあるのでしょうか」医師「あります」そして私はずっと気になっていたことを質問しました。私「娘は自閉スペクトラム症でしょうか?」医師「違います」医師からはこのときこう言われましたが、現在通っている療育の先生いわく、自閉スペクトラム症の特徴はいくつか見られるとのこと。診断名がつく段階ではないけど特性がある、いわゆる発達障害グレーゾーンなのかなと私は思っています。話は戻り、続けて療育の話になりました。医師「療育は希望しますか?」私「はい、やっぱり言葉がゆっくりなので通わせたいです」医師「それでは週3・1回あたり1時間、民間の個別療育を行うといいでしょう」こうして娘は週に3回、幼稚園と併用して療育に通うことになりました。4歳になった娘は今娘は今、幼稚園の先生やお友達、療育の先生に支えられながらたくさん成長しています。言葉も驚くほど増えました。入園当初は行きしぶりが激しく、時々休ませながらマイペースに行かせていました。今も幼稚園や療育に行きたくないと言う日もありますが、娘なりに気持ちを切り替えて頑張っているようです。娘の発達を一人で悩んでいましたが、あのとき勇気を出して相談して良かったと思います。周囲の力を借りて子育てしてもいいんだと気づかされました。発達のゆっくりな部分だけどうしても目に入ってしまっていましたが、気持ちにゆとりが生まれた今。娘には長所もたくさんあることに気づかされました。診断あるなしにかかわらず、これからも娘の性格や特性を尊重しながら向き合っていけたらと思います。執筆/とまぱん(監修:井上先生より)お子さんの発達が気になってから相談機関に電話をかけるまで、多くの親御さんが悩んだり不安な気持ちと葛藤したりされると思います。とまぱんさんも、電話をかけるときや医師と初めて面談をされる診察場面では、不安や緊張があったことが伝わってきました。早期の療育は子どもの発達に有効であると言われています。発達障害などの診断がなくても、地域の発達相談で療育機関につないでもらうことができますので、気になる方はお問合せされると良いと思います。
2021年12月03日発達障害のある子どもにどんな対応をすればいいのか私は児童精神科医として30年以上、発達障害のある子どもたちの診察を続けてきました。今回は、発達障害のある子どもの育て方を考えるきっかけとして、3つのクイズを用意してみました。お子さんをイメージして「うちの子の場合は」「自分だったら」と考えながら、答えを選んでみてください。Q1. 集団遊びに入ろうとしないときは、どう対応する?幼稚園に、いつも一人で遊んでいる子どもがいます。みんなで園庭に出て遊ぶとき、ほとんどの園児は自然に集まってボール遊びなどを始めますが、その子どもは一人で虫を探したり、葉っぱを集めたりします。クラスメートや先生に誘われても、集団遊びに入ろうとしません。どんな対応をすればよいでしょう?A1. 全員参加型の遊びを企画して誘うA2. その子の興味を引けるよう、いろいろな遊びに誘ってみるA3. 一人で遊びたい気持ちを尊重する出典 : 親や先生は一人遊びをしている子を見ると、「友達づき合いが苦手なのかな」「どうすれば、みんなと仲良く遊べるようになるだろう」などと考えてしまいがちです。でも、「楽しく遊ぶこと」と「仲良くすること」は分けて考えましょう。遊びの目的は「楽しむこと」です。「仲良くすること」ではありません。楽しく遊んでいるうちに、気の合う仲間と親しくなることがありますが、それはあくまでも結果です。最初から仲良くしようとして遊んだわけではありません。遊びの場面では「楽しむこと」を大事にしましょう。というわけで、正解は3です。子どもが一人で虫を探したいと思っているのなら、その思いを尊重してあげてください。ただ、2のような対応も決して悪くありません。いろいろな遊びに誘ってみると、子どもが興味を示すこともあるでしょう。そうやって遊びの幅が広がっていくこともあります。無理やり誘うのはよくありませんが、声をかけるのはよいと思います。1の全員参加型も、機会をつくること自体はよいのですが、強制参加にならないように注意しましょう。Q2. 一人だけ先に給食を食べてしまうとき、どう対応する?小学生の例です。給食のときに、ある生徒は、一人だけ先に食べ始めてしまいます。先生には「みんなの準備が終わって、全員そろって『いただきます』と言ってから食べるんだよ」と言われていますが、自分の分が準備できると、つい手が出てしまいます。どんな対応をすればよいでしょう?A1. イラストや写真で手順表をつくって、それを見せながら教えるA2. マナーを覚えていけるように、何度でも同じことを教えるA3. 別室で待機してもらい、給食の準備が終わったら呼んでくる出典 : おすすめの対応は1と3です。口頭で何度も指示をしても伝わらない場合、1のような形で別の伝え方をしてみるとうまくいくことがあります。発達障害のある子どもには、話し言葉よりも書き言葉やイラスト、写真などのほうが理解しやすい場合があります。また、暗黙の了解を察するのは苦手だけれど、しっかり説明されれば理解できるという場合もあります。いろいろな伝え方を試してみてください。2のように、じっくりと対応するのもよいのですが、話し言葉を聞き取るのが苦手だったり、聞いて覚えても時間がたつと忘れてしまったりということもあります。何度試しても難しい場合には、別の方法に切り替えたほうがよいでしょう。3は一見、教えることを放棄した対応のように見えるかもしれませんが、これもひとつの正解です。教わったことを忘れてしまう場合や、好きな食べ物が目の前にあると衝動に負けて手が出てしまうケースもあります。その場合には環境を変えるのも一つの対応法になります。発達障害のある子どもは、さまざまな困難があるから、発達障害だと診断されます。何度教えてもうまく伝わらない場合には、「この子にとってなにが難しいのだろう」「どんな伝え方をすれば理解しやすくなるのだろう」と考えることが大切です。そうやって考えていった結果、伝え方ではなく環境を変えようというのも、一つの解決策になるわけです。「環境を変える」という意味で言うと、私は「みんなで一斉に食べ始める」というルール自体を変えてしまってもいいのではないか、とも思います。Q3. 勉強が苦手で宿題に時間がかかる場合の解決策とは?勉強が苦手で、宿題にすごく時間がかかってしまう小学生がいます。親や先生にいろいろとサポートしてもらってもうまくいかず、鉛筆を持つことさえ嫌になってしまいました。子どももストレスを抱え、親や先生もイライラするようになってきています。どんな解決策があるのでしょうか?A1. 親も疲れてしまうので口出しをやめて、本人のペースを見守るA2. 難しすぎるので親が手伝うA3. 宿題が多すぎるので、親から先生に「減らしてほしい」と相談する出典 : おすすめの対応は3です。この場合、子どもはなにも悪くありません。宿題の設定の仕方に課題があります。宿題が適切な量や難易度で出ていれば、子どもは30分もかからずにパパッと済ませられるでしょう。宿題に時間がかかり、鉛筆を持つことさえ嫌になるということは、宿題の設定を見直すべき状態です。3のような形で先生に宿題を減らしてもらうか、それが難しければ、親が宿題の量を調整することも考えましょう。私はそもそも子どもたち全員に同じ量の宿題を出すことは意味がないと思っています。勉強が好きであれば、宿題がなくても自分から勉強するでしょう。勉強が嫌いならば、宿題が負担で勉強がさらに嫌いになってしまうかもしれません。「宿題はいらない」という解説を読んで、みなさんは「そうは言っても勉強はしっかりさせなくては」「宿題で学習習慣をつけることは大事」と感じたかもしれません。確かに、常識的に考えればそうでしょう。「着替えや食事のようなことはあとで学んでいけるけれど、勉強で遅れが出てしまっては将来に響く」と考える人もいるかもしれません。しかし私はそのような考え方を聞くと、「まずは身のまわりのことを教える必要がある」と思います。子どもにとってもっとも大切なのは、基本的な生活習慣です。発達障害のある子どもの場合、生活習慣は特に大事です。着替えや食事などの基本的な生活習慣を自分なりにできるようになっていかないと、それこそ将来に響くと考えています。発達障害のある子どもにとって、一番大事なことクイズと解説のなかには「給食に手が出てしまうなら別室で待機する」「宿題が嫌なら量を減らす」といった、やや極端な対応法も紹介しました。そんな極端に思える対応の根底にあるのは「子どもを主役にする」という考え方です。発達障害のある子どもには、さまざまな特性があります。大多数の子どもたちと同じやり方をしていては、うまくいかないこともあります。そんなとき、親や先生が常識的なやり方や、大人がよいと思うやり方を優先して、子どもに無理をさせていては、その子どもはいつまでたっても自分らしいやり方を見つけられないのではないでしょうか。発達障害のある子どもの個性はさまざまです。このような解説を参考にしながら、使えそうなアイデアをピックアップしてみてください。
2021年12月02日オンラインで開催された合同学術集会「つながる」ダウン症を発見したジョン・ラングドン・ダウン博士の誕生日が11月18日であることから、日本ダウン症会議は11月中旬に開催されます。2017年の第1回から2年ごとの開催で、今回、第3回を迎えました。今回は初のオンライン開催。そして、第44回日本小児遺伝学会学術集会・第3回日本ダウン症学会学術集会とともに3会の合同学術集会「つながる」として、2021年11月12日(金)~14日(日)の間、開催されました。埼玉県立小児医療センター遺伝科の大橋博文先生による、大会長講演「先天異常症候群の包括的支援」から内容を要約・抜粋します。大会長講演より「病気について知ったときの不安や孤独を解消していくのは支援と『つながる』こと」先天異常症候群、遺伝的な疾患はほんとうにさまざまなものがあります。埼玉県立小児医療センター遺伝科で2005~2015年に初診があったのは3518名、そのうちダウン症候群は934名でした。一方で、希少疾患に関しては、年間に1人しかいない病気や、診断がつかない病気も少なくありません。もちろん、個々の疾患の治療法も大切ですが、同時に療育(医療)や、さらには地域・社会資源とどうつながっていくのか、ということが課題となります。埼玉県立小児医療センターでは、病気が分かったときの病院の対応についての調査をしています。病院側の対応について、不満があると答えた保護者は約50%に上ります。また、体の合併症などについては、約8割の人が不安には感じているけれども、ほしかった情報に関しての順位は低く(回答は4割以下)、つまり、疾患そのものの情報提供はあるけれども、保護者の多くが知りたいのは、今後の心身の発達がどうなっていくのか、育児や療育の情報について、だということが分かります。このことから同医療センターの取り組みとして、1989年(平成元年)から始まったのがダウン症候群総合支援外来(通称DK外来)です。理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、臨床心理士といったスタッフによる勉強会、家族交流会などを実施して、生後1年にわたるサポートをしています。このDK外来の参加者アンケートでは、「ダウン症のある子がたくさんいて、その親もたくさんいて、自分だけじゃないと思い、悲しさが薄れました」という声があがっています。一人ではないことが分かり、「つながる」ことで不安がなくなっていくということが伺えます。さらに、ダウン症以外の障害のある子育てをしている保護者グループとの連携をとることで、活動の幅は広がっています。不安と孤独を埋めてくれるのは、周りの人たちと「つながる」ことなのです。本人発表より「コロナ禍で、『つながる』ことで元気づけられるのは、ダウン症がある人たちも同じ」日本ダウン症会議では、第1回開催から、ダウン症のある当事者が、自分の言葉で発表をする場があります。今回の合同学術集会でも、東京学芸大学教育実践研究支援センターの橋本創一教授が座長となり、今回は3名の発表者を迎えました。発表のあと、それぞれ橋本先生との一問一答があります。Upload By 発達ナビ編集部矢野裕奈(やのゆうな)さんは、千葉県の15歳。中学3年生です。毎日楽しく通学し、部活は園芸部、趣味はダンス、カラオケ、乗馬。また、劇団「人の森ケチャップ」での活動をしています。さまざまな個性をもつ人たちと、一緒に踊ったり舞台に立つことが楽しく、それ自体が「まぜこぜの社会」の実現であることについて、写真スライドを映しながら発表しました。「私は、大好きなことに囲まれて幸せです」と話してくれた一方で、コロナ禍になって、会いたい人に会えなくなったり、会えないままのさようならも経験したりしたそう。感染拡大はとても悲しいこと。それでも、自分に起こっていることはガマンできるから、「私ができることを頑張りたいです」と結びました。矢野裕奈さんと橋本先生との一問一答より橋本創一先生(以下――)自分のことを強いと思いますか?弱いと思いますか?裕奈さん:強いです。――どんなところが?裕奈さん:コロナに勝つために、みんなのために予防すれば私は強いと思います。――高校生になったら、どんなことがしたいですか?裕奈さん:高校生になったら、勉強を頑張りたいし、お芝居も続けていきたいです。Upload By 発達ナビ編集部恒矢信輝(つねやのぶてる)さんは、三重県に住む27歳。障害者2名でのシェアハウス暮らしは5年目に入りました。マンションの一室で、ヘルパーの支援を得て自立生活しています。就労支援継続B型作業所まで電車で通勤し、野菜の水耕栽培に従事。スペシャルオリンピックスでは馬術の選手で、競泳、テニスなどもしています。また、ピアノとミュージックベルでのイベント出演も楽しんでいます。発語がない信輝さんに代わって、発表は母の景子さんがサポート。普段の生活の様子を記録した動画なども上映しました。食事の支度などはヘルパーさんと一緒にしますが、料理をする中でうまくできたことをほめられると、とても印象的な笑顔が見られます。実はお母さんがいないときのほうが、のびのびしているという姿が見られ、自立心のあらわれでもあることが伺えました。恒矢信輝さんと橋本先生との一問一答よりふだんはマカトンサインや手話でコミュニケーションしているため、橋本先生からの質問に対する回答を景子さんが選択肢を指で示し、信輝さんが選ぶという形で進行。――一人暮らしは楽しいですか?信輝さん:楽しい。――どんなところが楽しいですか?信輝さん:「母がいないこと」(「私(母)がいないこと」、「食べること」、「一人で過ごすこと」の選択肢からの答え)。――一人で暮らすのはいいですね。ビデオを見ていても、びっくりするくらい一人でできることが増えていて素晴らしいと思いました。Upload By 発達ナビ編集部金子衛(かねこまもる)さんは、東京都に住む24歳。会社員として、野菜の栽培の仕事をしています。収穫した野菜を持ち帰るときもあり、家族が喜んでくれるのが嬉しいそう。習い事は、ヒップホップダンス、習字、ピアノ。趣味はバドミントン、料理、映画観賞、音楽を聴くこと。「僕の毎日は楽しいことであふれている」と、趣味や習い事を楽しむ姿の写真スライドとともに発表したあと、金子さんは、ご自身が入院したときの経験を発表しました。昨年1月と7月と2回腸捻転を起こし、2度と起こさないようにするために手術となり、3週間近い手術入院を2回することになりました。親の面会もできないなか、どう乗り切ったかについて発表しました。入院を乗り切れたのは、やさしく接してしてくれた看護師さんや先生の存在、家族やダンス仲間からの励まし、大好きな乃木坂46、洗濯物を届けてくれたお母さんに会えた数分間などでした。こうした経験から、入院して孤独で不安なときに大切なこととして、「人とのつながりが元気をくれるということ、大好きなことがあると、大変なことを乗り切れるということ。もし、入院するときは、好きなものを持っていくことをおすすめします」とまとめました。金子衛さんと橋本先生との一問一答より――2回の入院大変でしたね。「つながる」ことの大切さ、よく分かりました。衛さん:つらかったです。――今日の発表は誰に見てほしいですか?衛さん:みんなです!(いい笑顔)――ところで、一人暮らしはしてみたい?衛さん:それはありません(きっぱり)。おうちがいいです。大変です。洗濯物とか、家事とかあるから。おうちでも(家事は)やってるけど、一人暮らしは大変だと思います。3人の発表後、橋本先生からは、今、ダウン症のある人について研究するという時代はそろそろ終わり、これからはダウン症のある本人や家族が、どういうことを研究してほしいかという段階に入っている、とのまとめがありました。「こうした本人の発表を通して、どんな自己理解をされていて、自己実現をしているのか。障害のあるなしに関わらず、ダウン症のある人もない人も、どうやって豊かな生活を営んでいきたいかが大切です。それを支えるためには、どんな課題があるのかを研究するためには、本人からの発信に常に耳を傾けていかなくてはいけないでしょう。話し言葉で表現するのが苦手な方が多いので、まわりの家族や私などが先回りして言ってしまうと、「うん」「そう」「はい」と答えてしまうこともあるので、ほんとは違うことを思っている場合もあるとは思います。こうしたご自身の言葉での発表は、そのまま問題提起となり、私たちはさまざまなことを考えさせられます。今後研究していくべきことを、提供してもらったと思っています」市民公開講座より基調講演、作家・岸田奈美さん「ダウン症のある弟が越えるべき壁を自分の壁にしてはいけないと思った」Upload By 発達ナビ編集部作家・岸田奈美さんは、母のひろ実さんが車椅子ユーザー、弟の良太さんはダウン症があり、お父さまは奈美さんが中学生のときに他界という家族構成。てんやわんやの日常を切り取り、ときに泣かせ笑わせるエッセイが人気です。「100文字ですむことを2000文字で書く」というキャッチフレーズ通り、豊かな表現で読む人の共感を呼ぶ文章を書く作家ですが、基調講演でもその饒舌ぶりが発揮されました。Upload By 発達ナビ編集部「私は特殊な家族で、平凡な日常を送っています。岸田みたいな人間もいるんだと思ってください。岸田みたいじゃなくてよかったなと思って聞いてほしい!(笑)」という言葉から始まった基調講演。3冊の著作『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』、『傘のさし方がわからない』、『もうあかんわ日記』に収録されている家族を巡る数々のエピソードを、関西弁まじりのご自身の言葉でライブ感たっぷりに語りました。笑いと涙と、どんなにつらい経験だったろうと想像しがたいエピソードもたくさんありました。良太さんがいかに、周りの人から愛されている存在なのかは、エッセイの端々に表れていますが、そういう存在になったのも、「言葉でのコミュニケーションがほとんどできない弟に、母が『ありがとう』『ごめんなさい』『こんにちは』だけはしっかりと覚えさせていたから。人見知りのお姉ちゃんより、味方をつくっているんです」と話していました。講演後、市民公開講座の司会の長谷部真奈見さんとの対話の時間がありました。Upload By 発達ナビ編集部長谷部真奈見さん:最新の本『傘の差し方がわからない』のエピソードで「60歳になったときの自分の姿が見えなかった」というところ、しみじみと読みました。奈美さんが、母と弟と離れて暮らす姿を思い浮かべることができなかった、とありました。私自身も、今小学生のダウン症のある娘と、いつか離れて暮らすなんて考えられないと思ったんですよね。岸田奈美さん:悲しいですよ、やっぱり。私が先に死んだらとか、弟が死んだらどうしようとか、順番からしても母は私よりも先に亡くなるだろうし、とか…何回想像しても何回でも悲しいです。ひとりぼっちだったらとは思うけれど、それは私がどれだけ考えても、どうにもならないことなんです。お金を残すとか、弟にとっていい場所を見つけるとかはできますが、それ以上は限界があります。だから、弟が越えるべき壁を、自分の壁にしちゃだめだなと思ったんです。弟がさみしい思いをするとか、ひとりぼっちになるということは、彼が人生の中でぶち当たる壁なんです。それを私が先回りして、弟にとっていい環境ばかりを用意していたら、彼にとってよくない環境に出合ったときに、自分で助けを求める力を奪うことになるんじゃないかと、思ったんです。弟が大好きだから、弟がつらい未来は考えただけでつらい。でも、私が一生家族のめんどうをみることが大事なんじゃなくて、自立と言うのは、できるだけ依存する先を増やしていくことだと思うんです。味方を増やしていく。私がエッセイを書いているのは、味方を増やすためという一面もあるんですけど、もし私が死んでも、ひとりぼっちになった弟を見て、「あれは奈美さんとこの弟じゃないか」と声をかけてくれるかもしれない。それだけでいいんです。あとは弟がそれまでに培ってきた人生を、しゃべれないなりに人と関わってきた人生を、信じるしかない。できるだけ傷ついてほしくないけど、彼が傷つく機会を奪ってはいけないと思っています。まとめ日本ダウン症会議をはじめとする今回の合同学術集会を通じて感じられたのは、障害のある人たちが成長して成人期になったときに、自分らしく自立して生きていくためには、周りの人の考え方、環境がとても大事であることでした。その人の、できないことを克服することに焦点を当てるのではなく、その人ができることをできるだけ伸ばすこと、そして周りの人と「つながる」こと。障害のあるなしにかかわらず、子どもの将来を考えたときに不安は尽きないものです。でもその不安を超えさせてくれるのは、やはり「つながる」というキーワードなのでした。合同学術集会「つながる」ホームページ全日程プログラム、演者一覧
2021年12月01日ヲタママだっていーじゃない!
STEAM教育って何?
子育て楽じゃありません