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持ちものをなくしやすいリュウ太に先生がくれたアドバイスUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太は忘れものをしたり、ものをなくしたりということがとても頻繁にあったので、小学校のときは道具入れに少し工夫をしていました。リュウ太が小学校2年生のときまで、まだ発達障害であるとわかっていなかったのですが、リュウ太のなくしものの数や落ち着きのない態度を見た当時の担任の先生が、持ちもの管理の方法についてアドバイスしてくれたのです。Upload By かなしろにゃんこ。例えば、学校で一律に決められていた道具箱や収納袋。「リュウ太くんは違うものに変えましょう!」と提案してもらいました。Upload By かなしろにゃんこ。リュウ太が通っていた小学校では、教室の机の中に特別支援学校のお兄さんお姉さんが制作してくれた木製の引き出しを入れて使うルールがありましたが、整理整頓ができないリュウ太の引き出しの中はいつもごちゃごちゃ。先生は、「A4サイズの書類が入るプラスチックケースの底とフタを入れて、教科書とノートを分けやすいようにしましょう」とアイディアを出してくれました。A4ケースを使っても相変わらず中はごちゃごちゃでしたが...2箇所に仕切られているので少しは中身が見えやすくなり、またプラスチックで軽くて蓋も閉まるので、ケースごと持ち帰って家で整頓し、再び学校の机に戻すという管理の仕方ができるようになりました。今まで使っていた文具入れを大きめの入れものにかえることも先生が提案してくれました。みんなは巾着などに入れますが、「リュウ太くんは中にあるものが一目で確認できるかたちのものにしましょう。」との提案をもらい...Upload By かなしろにゃんこ。チャックで180度開閉できる文具入れにしました。さらにハサミやセロハンテープをなくさないように文具入れと紐で繋げました。紐で繋げたものは壊れるまでなくさずにいました。Upload By かなしろにゃんこ。「所有物の色をなるべく統一しましょう。」という提案も、リュウ太のなくしもの防止にとても役立ちました。"この色のモノは僕のモノ!"とわかるように、ネームテープの色を統一するようにして、目立つように蛍光色にしました。Upload By かなしろにゃんこ。ピンク、オレンジ、黄色。派手な色のものが落ちていたら自分のものだと思って拾うこと!と伝えました。目につくようになったことでペンや定規などもなくさなくなりましたが、自分のものではないペンや消しゴムも拾って所有するクセがつき筆箱はいつもパンパンです。「リュウ太の筆箱ブタすぎる~ゲラゲラ^^」とよく話題になっていました(笑)こんな工夫で小6までものの管理はなんとかなっていました。リュウ太のように手のかかる子の場合だけだと思うのですが、ときには決められた道具ではないものをつかっても良いのだと教えてもらったおかげで、普段から持ちもの管理の工夫ができるようになりました。アドバイスは家でも...Upload By かなしろにゃんこ。家の中で息子はハサミをよくなくしていました。何個買い直したかわかりません。私の仕事用のハサミまでも使い、もとに戻さずにいて、私が使いたいときにない!という問題が度々発生。ハサミやセロハンテープなど、私の文房具まで机周りの棚に紐で繋げて、なくさないように(なくされないように?)していました。息子のおかげ?怪我の功名か…紐でぶら下げるという管理方法はとても便利であるとわかり、今ではキッチン用具や文房具など、よく使うものはなんでも紐でブラブラです(笑)Upload By かなしろにゃんこ。先生の提案のおかげで、わが家の持ちもの管理もグッとラクに!学校で使う道具は指定のものがあることも多く、発達障害がある子にとって使いづらいこともありますよね。でも収納グッズなんかはみんなと少し違っても活動には支障がないので、子どもにとって使いやすい工夫を考えてみることも大切だなと学びました。柔軟な対応を先生から提案してもらえてとても助かりましたし、家でも工夫を取り入れられて勉強になりました。ちなみに、ブラブラ吊るすのが有効!と気づいてからは...上履きシューズバッグ、給食着袋、体操着袋などなど、持ちものは全部ドアノブに吊るしていました。忘れもの防止にとても役立ち、小学校生活もなんとか乗り切れたのでした。
2020年04月15日春になると思い出す、言葉にできない生きづらさを抱えていた幼なじみの存在3月になると、私はある大切な人の存在を思い出す。保育園から小学校、中学校で学び舎を共にした、幼なじみでもある3月生まれの友人だ。名前を仮に「T」とする。ADHD(注意欠如多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)のような傾向があったTと、後にADHD傾向のあるASDとの診断を受ける私は、共に「扱いにくい、変わり者の生徒」との対応を、多くの教師から受けており、理不尽に煙たがられていた。当時は言語にできなかった「生きづらさ」を抱え、それを共有できることも、Tと私の距離を縮めたのかもしれない。気をつけていても失敗が絶えないこと、場の空気に合わせた言動を選んだつもりなのに、自分が周囲から浮いていると感じられて苦しい、変人扱いされるのが悲しい、などとよく話していた。しかし、「発達障害」という概念さえ知らなかった、田舎に住まう30年前の女子中学生が、解決手段を見つけ出すことなどできようか。「どうしたらいいんだろうね…」とため息をつくばかりであったが、「自分の苦しみを理解してくれている人がいる」という事実は、私の心の支えとなっていた。中学校卒業間近になった頃、どんなタイミングであったかは忘れてしまったが、Tが「死にたいと思ったことはある?」と質問してきた。「あるよ。しょっちゅう。死にたいというか、自分をなかったことにしたいような」同級生からのいじめや、教師からの吊し上げも経験した私は、素直に答えた。すると、Tは安堵したような表情を浮かべた。「ああ、あるんだ。そうか」「そういうこと言うな!とか怒られそうだから言わないようにしてるけど」「同じだ。私も思っていたとしても黙ってた。でも、思っちゃうのは仕方ないよね」「うん、仕方ない仕方ない。思いたくなくても思っちゃうんだもん」自分の存在の重みなんて紙以下だと思っていたこの頃の私には、Tの質問を受けても深刻にならなかった、と申すべきか、「そうか、君もか」という、T同様、安堵に近い心理状態であった。もしかしたら、この時Tはすでに追い詰められていたのかもしれない。しかし、自分のことで精一杯だった私は気づくことができなかった。これも3月、彼女の誕生日を間近に控えた時であったと記憶している。「吐き出すことさえ許されないの⁉」――電話の向こうで泣きじゃくる幼なじみ。その時私は。その後、彼女は…卒業後、Tと私は別々の高校に進学。Tは卒業後、県外の専門学校に進み、私は高校を中途退学して働き始めた。その後、私が新潟を離れて生活するようになると、入れ違いのかたちでTが新潟に戻った。進学先で身心のバランスを崩したため、実家で療養、精神科などに通院するのだと教えてくれた。あらぬ誤解を避けたいので、彼女の診断名は伏せる。私は私で季節性のうつを発症し、やはり精神科に通っていた。ここに至るまでも、交流は続いていた。月に何度かの手紙の交換や電話、私が帰省した折や、彼女が私の暮らすまちまで出向いてくれた時に対面できる程度ではあったが、まだまだインターネットが普及していなかったという背景を考えると、頻繁だったように思える。家と病院の往復生活で人と会う機会が少なかったTと、やはりなかなか人とは会えない生活をしていた私は、双方が地元で暮らしていた頃以上に親密度を増していた。「死にたくなることがある」というようなことを吐き出すこともあったが、お互いに騒ぎ立てることはなく、お互いに話を聞き、最後にはいつでも笑いながら話を終わらせていた。ところがある日のTは、電話の向こうで泣きじゃくっている。そして、「死にたい、死にたい」と繰り返すのだ。一進一退を繰り返しつつも、希死念慮と戦っていることを、彼女は私に教えてくれた。当然私はTには生きていてほしい。でも、今以上に未熟だった20代の私は、かけるべき言葉を見つけられず、「落ち着け!まず落ち着け!」ばかりを繰り返していた気がする。「うん、うん」と、絞り出すように相づちを打ち、少し落ち着いてからTは、途切れ途切れになりつつも、私に訴えた。「私が“死にたい、消えてなくなりたい”、って言うと、“そんな悲しいことを言わないでほしい”って返ってくるんだけどさ…私だって、死にたいとか思わなくて済むようになりたいよ。誰かを悲しませることなんて言いたくないよ。でもそういう気持ちが浮かんでしまうし、黙っていると苦しくて…。でも、“そんな悲しいことを言わないでほしい”って言われたら、吐き出すことさえ許されないのか、ってますます苦しくなるし、死にたくなる…。どうしたらいいのか分からない、すべての感情をなくしてしまいたいよ…」苦しみを訴えるTに「そんな悲しいことを言わないで」と伝えた人は、彼女を大切に思い、共に生きていきたいからこそ、その言葉を選んだのだろう。しかしTは、吐き出す口を封じられたように感じられてしまったのだ。私だってTには生きていてほしい。でも、彼女の気持ちは否定したくない。私は「生きていてほしい。でも気持ちは分かるんだよ」というようなことを繰り返すしかできず、どういう過程で彼女が冷静さを取り戻したのか一切覚えていないのだが、「また連絡するね!」という元気なTの声を聞いて終話した直後、脱力した記憶がある。以後も彼女が泣きじゃくりながら、あるいは沈み切った声で電話をかけてくることはしばしばあったが、おおむね穏やかな交流は続いていた。そしてある日、「臨時収入が入ったし時間が取れそうだから、近々希望ちゃんのところに遊びに行っていい?」という申し出があった。当時の私は初めての結婚生活を送っていたのだが、配偶者もTとは面識があり、互いに友人と認識している関係であったため、夫婦揃って歓待の構えであった。「じゃあ、詳しい日程が決まったら連絡するね!」明るくはずんだ声だった。それなのに。数日後、私の携帯電話に、Tの番号から着信があった。こちらに来る日程が決まったのかとニヤニヤしながら受話した私の耳に響いたのは、彼女のご家族の声だった。死にたい気持ちに襲われ、言葉にしながらも、必死で生きる理由を模索していたTは、唐突に自らの生を終わりへと導いた。希死念慮を打ち明けることは「かまってちゃん」的行動なのか?少し前、とある著名人の言葉がSNSを駆け巡った。【「死にたい」という友人からのメールに、自分はこう返信した、「死にたいというのは、生きたい気持ちの裏返し。わざわざ周りにそんなことを訴えるのは、生きたい気持ちを確認しているだけ。だから君は絶対死なない」と】文面は変えてあるが、上記のような内容だった。正直、げんなりするくらいに見聞きしている言説である。この投稿は、「まさにその通りだ」という絶賛と共に拡散されたが、同時に「その言葉を本人に向けるのはいただけない」という批判も多く、たちまち炎上した。「死にたいというのは、生きたい気持ちの裏返し」というのは分かる。もう少し細かく言えば、「死にたいほどに現状が辛いが、この苦しみが和らぐのならば生きていたい」というのが私の知っている感覚だし、Tの一件から、「死にたいとわざわざ口にする人間に限って死なない」なんてことはないと痛感した。「死にたいと口にして、実際死を選んだ人はもうこの世にいないから、死にたいと口にして死を選んだ人がいない、もしくはごく少数に見えるだけ」というような意見をどこかで目にして、その通りだと私はうなずいたものだ。まさに「死人に口なし」、語るすべのない人の話は聞くことができない。そして私は、自分が生きてこられたのはたまたま、ほんのちょっとの偶然で「死ぬ」という選択をせずにいられただけだと思っている。だから私も、先述の投稿には首をかしげざるを得なかった。話は変わるが、Tの逝去から数年後に、私は2度目の結婚生活をスタートさせ、夫からのDVを受ける羽目に陥った。DVを受けているという自覚がないため周囲に助けを求めることができず自責を繰り返し、身心共に衰弱。通勤途中や帰路、無意識のうちに駅の線路へと身を投げようとして、見知らぬ方々に羽交い絞めにされて正気に戻る、ということが日常と化した。さすがにまずい、どうするべきかと友人に相談したところ、戻ってきたのは「そうやって死を掲げて同情を引こうとするのはやめろ」という言葉だった。今なら分かる。詳しい事情も知らされずに「無意識の自殺未遂が日常化していて…」などと相談されたら困惑するだろう、無理もない。しかし当時の私には相手の気持ちを慮る余裕がなく、「私は苦しみを吐き出すことも許されない人間なのか」とさらにふさぎ込み、亡きTへと思いを馳せていた。さて、このような行為は「かまってちゃんの困った大げさ行動」のように捉えられがちだが、果たしてすべてそうだと判断しても良いのだろうか。精神科医の松本俊彦氏は、自傷について下記の見解を記している。自傷ほど誤解されることの多い行動もありません。大人たちはともすれば、「甘えている」、「弱い」、「人の気を惹こうとしている」と捉えがちですが、それは違います。じつは自傷の多くは、怒りや不安、絶望感といったつらい感情をやわらげるために行われます。自傷を繰り返す子どもの96パーセントは、ひとりきりの状況で自傷におよび、そのことを誰にも告げないこともわかっています。つまり、自傷とは、周囲の関心を惹くのとは正反対で、むしろ困難な状況において独力で生き延びるための行動なのです。なぜ彼らは人に助けを求めないのでしょうか?おそらくその子の周囲には、「この人ならば信頼できる」と感じることができる大人がいないか、あるいは、その子が自分のことを「価値がない存在、生まれてこないほうがよかった人間」と考えていて、「こんな自分のために忙しい大人の手を煩わせてはいけない」と考えているのでしょう。もしかすると、かつて勇気を出して大人に助けを求めたものの、「つらい状況は何も解決しなかった」、「もっとひどい目にあった」という体験をしている可能性もあります。「「誕生学」でいのちの大切さがわかる?」『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(松本俊彦、姜昌功、ほか/星海社新書)P149よりタイトル通り、子どもを守るためのアドバイスがつづられた本なので、「子ども」を苦しみの渦中にいる人、「大人」を苦しみを打ち明けられた人に置き換えて読んでほしい。Tも私も自傷の経験はないが、【勇気を出して助けを求めたものの、つらい状況は何も解決しなかった】体験があり、自殺未遂を繰り返した末に彼女は自らの生涯にピリオドを打ち、私はどうにか生き永らえた。そして「死にたい」と口にする心理についても説明がなされていた。「死ぬ」、「死にたい」と言った場合はどうでしょうか。口にしてはいけないと禁止すべきでしょうか?まさか。そもそも、心の中が100パーセント、「死にたい」気持ちで埋め尽くされていたならば、わざわざ誰かに伝えたりせずに黙って行動に移します。言い換えれば、誰かに「死にたい」と告げるのは、「死にたいくらいつらいけど、もしもそのつらさが少しでもやわらぐのであれば、本当は生きたい」という気持ちがあるからです。だから私たちは、その発言を子どもからのSOSとして捉えなければなりません。「「誕生学」でいのちの大切さがわかる?」『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(松本俊彦、姜昌功、ほか/星海社新書)P155よりを奮う夫から逃げての帰郷後、私は【死にたいくらいつらいけど、もしもそのつらさが少しでもやわらぐのであれば、本当は生きたい】という自分の気持ちと向き合う体験をすることになる。PTSD様の症状から、精神科での治療を始めたばかりの頃、「つらい思いが浮かんだら、それを紙に書く」というワークを、当時の主治医から勧められた。「死にたい」「消えてなくなりたい」などと頭に浮かんだら、そのまま紙に書く。誰かに読ませることなど意識せず、考えず、ひたすら書く。しばらく続けていたところ、いつの間にか「生きたい」「生きたい」「生きたい」と、嗚咽しながら、自分ですら読めないような文字で書きなぐっている自分がいたのだ。「死にたい」「消えてなくなりたい」と思うたび、本当は生きたい自分がいることに気づかされた。何度も何度も、繰り返し。(※上記は個人の体験であり、誰にでも有用かつ無害なワークであると保証するものではありません。お試しになる場合、精神科医や臨床心理士など、身近な医療従事者にご相談ください)私はこの体験によって【死にたいくらいつらいけど、もしもそのつらさが少しでもやわらぐのであれば、本当は生きたい】という心の奥底にある思いを知ることができた。しかし、「死にたいというのは、生きたい気持ちの裏返し。わざわざ周りにそんなことを訴えるのは、生きたい気持ちを確認しているだけ。だから君は絶対死なない」と第三者に言われたら、受け入れることができただろうか?おそらく、無意識での自殺未遂を繰り返していたあの頃のように、泣きじゃくりながら私に電話をくれたTのように「私は苦しみを吐き出すことも許されない人間なのか」とふさぎ込んでいたように思える。「生きたくても生きられない誰か」の存在で、命の大切さを感じられるのか?「死にたいほどに苦しんでいる私」は、生きる希望を見出せるのか?では、「死にたい」と打ち明けてきた人にはどう返答・対処するべきなのか。信頼できる大人は、大人にとって不都合な言動を単純に禁止しません。きれいごとを言い聞かせもしません。大事なのは、子どもの言動の原因です。「死ね」でも「死ぬ」、「死にたい」でも、「もしも話せそうなら教えてほしいのだけれど」という謙虚な言葉で、言動の背景にある問題を探り、できればその問題の解決に向かって子どもと一緒に考えることが必要でしょう。もちろん、問題の解決は容易ではないかもしれません。しかし、大切なのは、「死ね」や「死ぬ」といった言葉に耳を傾けてくれる大人との関わりの積み重ねです。そうすれば、たとえ「いのち」の意味はわからなくても、自分や他人を大切にすることを自然に学んでいくはずです。「「誕生学」でいのちの大切さがわかる?」『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(松本俊彦、姜昌功、ほか/星海社新書)P155よりこちらの質問に対して、あるいは患者から自発的に「死にたい」という言葉が出てきた場合、訴えを軽視しないで真剣に向き合い、そして支援を約束する姿勢が伝わるようことが大切である。(中略)安易な励ましをしたり、やみくもな前進は唱えたりするべきではない。「残された人はどうするのだ」、「家族の身にもなってみろ」、「死んではいけない」という叱責や批判、あるいは強引な説得も好ましいものではない。「自殺はいけない」と決めつけられた時点で、患者はもはや正直に自殺念慮を語ることができなくなる。そうなった場合、援助者は自殺のリスク評価が困難となり、再企図を防ぐことはおぼつかなくなるであろう。『もしも「死にたい」と言われたら 自殺リスクの評価と対応』(松本俊彦/中外医学社)P44-45より過去を振り返って思う。「死にたい」という言葉を繰り返していた頃の私は、確かに生きたい気持ちがあったのだろう。しかし、「死にたい」と語ること、思うことを否定されるたびに、死にたいほどに苦しんでいる気持ちや、ともすれば自分の存在さえ否定されているように感じられていたものだ。「死にたいほどにつらい、この苦しみから逃れたい、でもどうすればいいのか分からない」と言語にする余裕がないゆえの「死にたい」だった、私の場合は。そして、その言葉を封じられた私は、助けを求める術を見失った。中学生だった私はある日、ぼんやりとテレビを眺めていた。誰が出演していた、どんな番組であったかは完全に失念している。ただ、「自殺を食い止めたい」「命を大切にしてほしい」というような話の流れで、「生きたくても生きられない人だっているのに、自ら死を選ぶなんてもったいない」と、誰かが明るく、したり顔にも見えるような表情でコメントしていたことはしっかり覚えている。(生きたくても生きられない誰かと、死にたいほどに追い詰められている私の苦しみは別物なんだから)うんざりして、私はテレビの電源を切った。(生きたくても生きられない人だっているのに、って言われてもね。あげられるならその人に命をあげて、最初からいなかったことにしてほしいよ、私なんて)「死にたい」と願うほどのつらさを解決できないままに命の大切さを語られたところで、心に響くわけがないのだ。もしわが子が苦しみを吐露する日が来たら――「死にたい」と繰り返しながら生き永らえた私が心に誓うことところで私は料理が好きだ。自炊の経験はそこそこ長いので、自分好みの料理をつくることは、経験則により容易にできる。しかし他者に向けたものとなると話は別だ。10年一緒に暮らしている息子の好みでさえ、私は完全に把握できていない。彼があまり好まなかった料理について、「どういうところが苦手だった?」と聞くようにしているが、はっきり答えてもらえることもあれば、「うーん、うまく言葉にできない」という返答を受けることもある。そこで私は「美味しいと喜んだ料理」と「苦手だった料理」の要素を洗い出すべく、息子自身の言葉が聞けたらそれと共にメモするようにしている。それを元に、本人が「苦手な料理」と思っているものから、可能な限り苦手な要素を取り除いたり、好む要素を加えることで、「美味しい!」と喜んでもらえることもあると知った(息子には感覚過敏もあるため、どうしたって食べてもらえないもの、食べられないものもある、念のため)。細々とメモをして分析したのは、私が好んで選んだ行動ゆえ、ほかの方にお勧めしたいわけではない。しかし、「こういう考え方や行動をしないなんて(あるいは「するなんて」)もったいない!」と、相手の選択や主張をとがめるよりも、一旦受け入れ、選択や主張の背景を洗い出してから対応する方が、打開策を見つけ出す近道になるのではないかと、私が感じられる要因の一つになった。もちろん食事の苦手と希死念慮は全く別の話であるし、同じようにできるとは言い切れないことは、私だって知っている。それでもふと考える、Tも、私も、「死にたい」という言葉の背景に何があるのかを見つめ、問題を洗い出すことができたらどうなっていたのだろうかと。いくら考えたところで、3月生まれの彼女が、5月生まれの私の齢に追いつくことはもうないというのに。だからというわけではないが、これから成長するに連れて様々な問題に直面し、悩みを抱える可能性のある息子の言葉や行動を見つめ、苦しみの背景を探る手助けができたら、と思っている。私にできるのはそれぐらいだ。
2020年04月13日長男は4歳のときに、子ども発達支援センターで発達検査を受けました。担当の先生からは発達障害のグレーゾーンと言われ、長男への接し方や特性の話を聞きました。乳児期のころから長男のことを育てにくいと感じていたのですが、当時はなぜ育てにくいと感じてしまうのかわかりませんでした。今回は長男が発達障害であるという結果を聞いたときの私の心境をお話ししたいと思います。 子育てがつらいと感じていた日々長男は生後3カ月ころから寝付きが悪く、夜泣きもひどく、育児用ミルクは一切飲まず母乳のみでした。実家は遠く、夫は非協力的で、金銭的な余裕もなかったので、私ひとりで長男の子育てや家事を頑張るしかありません。さらに長男が1歳、2歳と成長してくると、偏食・言葉の遅れ・こだわりが目立ち始めました。 健診では問題ないと言われていましたが、長男の様子に違和感を持ち始めていた夫や義父から、私のしつけが悪いと言われるようになり、私は長男の子育てをつらいと感じるようになってしまいました。 発達検査を受けた結果長男が4歳になる1カ月前、長男の子育てと成長について子育て支援センターに相談に行ったところ、すぐに子ども発達支援センターを紹介され、長男が4歳3カ月のときに発達検査を受けました。 担当の先生からは検査の結果、「発達障害のグレーゾーン」と言われ、知能的に高い部分と社会性の低い部分で2年半の差があるということでした。発達に凸凹があるために、長男には理解できることとできないことの差がありますが、それは性格や環境のせいで「お母さんのせいではないですよ」と言われたのです。 ショックよりホッとした気持ち夫や義父に長男へのしつけが悪いと言われていた私は、「お母さんのせいではない」と言われたとき、体の力が抜けたと同時にホッとしました。 また長男には発達障害という脳機能の問題があると聞き、妙に納得した感覚がありました。脳機能で何かうまくいかないことがあり、感覚などの過敏があるのだとすると、育てにくいと感じていた長男の偏食やこだわりなどをすんなりと理解することができたのです。そして発達障害だと言われても、不思議とショックはありませんでした。むしろ、発達障害のことを、長男のことを、しっかりと理解したいと思いました。 発達検査の結果が出たあとも、夫や義父は長男の発達障害をなかなか受け入れてくれず、私のしつけが悪いと言っていましたが、私は気にしませんでした。発達検査の結果を聞いた日を境に、長男の子育ては「育てにくい」から「理解したい」という方向へ変わっていきました。私のせいじゃなかった、そう思った瞬間のホッとしたときの気持ちは、うまく言葉では表せませんが一生忘れることはないと思います。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 先輩ママの体験談、いかがでしたか?「共感した」「私の場合はこうだった」など、ぜひベビーカレンダーサイトのコメント欄にご感想をお寄せください。また、ベビーカレンダーでは皆さんから募集した体験談を記事でご紹介させていただくことも。ベビーカレンダーに会員登録すると届くメルマガから、皆さんのオリジナル体験談をご応募ください。 監修/助産師REIKO著者:川本 千華発達障害の長男、兄が大好きな次男を育てる2児の母。元ピアノ講師。自身の経験を活かし音楽・発達障害に関するライターとして活動中。
2020年04月11日緊急事態宣言を受けて、特別支援教材の無償開放期間延長!Upload By 発達ナビニュース発達ナビでは、3月11日から、発達支援施設向けに通常有償でご提供している特別支援教材の一部無償開放を、4月5日までの予定で行ってきました。現在までに、教材のお申し込みを960のご家庭よりいただいています。新型コロナウイルスの影響はより大きくなり、新学期になっても休校が続く地域が多くあります。また、保育園や学童も休園・休所となった地域もあります。そこで、この教材の無償開放期間を4月下旬まで延長(※)させていただくこととなりました。ご利用を希望される方は、下記よりお申込みください。※無償ご提供期間は新型コロナウイルスの影響により、変更の可能性がありますどのようなプログラムがあるのかや、多くのご家庭で活用されている教材については、下記のコラムでご紹介しています。ご家庭向けの新サービスを準備中家庭での学習はもちろん、3月から4月にかけて計8回行ったオンライン保護者会では、お子さまだけでなく保護者の皆さま自身も不安を抱えている状況であること、相談先を必要としていることが分かりました。こうした多くのご家庭からのニーズを感じ、発達ナビではご家庭向けの支援サービスを開発しています。少しでも早く必要とされる皆さまへお届けできるよう準備しています。こちらについては、改めてご案内の予定です。ぜひご期待ください。
2020年04月10日前回のあらすじ障害年金申請に必要な書類を揃え、いよいよ申請窓口に提出しに行きました。窓口の担当者さんが丁寧に書類を確認してくれて、安心して提出することができました。資料がない!療育センターでの親子セッションが終了してから幼稚園卒園までの間、娘は療育センターの主治医に紹介してもらったある大学の研究室で療育を受けていた時期がありました。その事を『病歴・就労状況等申立書』に記入しようと思い資料を探したのですが、通い始めた正確な時期の記録がどうしても見つかりませんでした。Upload By 荒木まち子ネットで確認すると、その施設も療育センターと同様、名称・建物ともに娘が通っていた頃とは変わっているようでした。「20年近く前の娘の記録は残っているかしら?毎年、年賀状などで娘の様子は伝えているけれど、先生方は娘のことを覚えているかしら?」そんな不安を抱えつつ私は施設に電話をしました。私の不安をよそに、電話を受けた先生は娘の事をしっかりと覚えていてくださいました。当時の先生方も残っていらっしゃり、娘の記録も保存されていました。療育期間やそこで行われた療育内容を確認した後、私は先生にずっと伝えたかったことをお話ししました。検査後の細やかな対応を無駄にしてしまったという後悔の念娘は今まで、必要に応じて療育センターや、教育委員会、病院などで発達検査を受けてきました。検査結果は施設によって・口頭でIQの結果のみを伝えるところ・評価点のページだけをコピーでくれるところ・詳しい検査結果を文書で添付してくれるところなど様々です。今回、娘の障害年金申請のために過去の発達検査結果の資料をすべて読み返し、私はこの研究室で受けた発達検査報告書が簡潔かつ的確でとても優れていたことに気が付きました。特に引越し直前に受けた検査結果報告書には、娘が新たな環境で直面するであろう困り感を軽減するのための手段――研究室で行った、娘に有効だった手立てや後に娘に対して必要になると思われる配慮――などが分かり易く記されていました。(報告書の一部)・ことばは平均的な発達をしているので、ことばが使えることで理解できているように判断されるが、実際にはもう少し丁寧に指導していく必要がある。特に人との付き合いに関して細かな読み込みが苦手なので、全体の指示と同時に本児が理解しているかどうかの確認が必要になる。・協応動作に関しても不器用な面があるが、これを本児はきっちりとこなそうとしている。しかしこれに速度を要求されるとかなり負担がかかると考えられる。例えば文字の形のバランスを取ることや、字の画数が多くなると形を整える事が難しくなるので、宿題の量を加減してもらったりプリントの書くところを少し大きくしてもらうなどの配慮は必要になるかもしれない。これらは15年たった今も全く変わっていない、そしてこれからもずっと変わることはない娘の特性です。大学の先生たちは娘が未就学のときから娘の将来を見越していたのです。でも当時私はその意味がよく解っておらず、せっかくの報告書を次の環境で上手く引き継ぎ活用することが出来ませんでした。先生から語られた驚きの事実私「今になって当時そちらの施設で最先端の療育が行われていたことが分かりました。あの頃は私自身、検査報告書に書いてあったことの意味もよく理解していなくて、いただいていた報告書を学校や次の療育センターで活かすことができず、“様子見”をしている間に、娘は学校でいじめにもあい二次障害も起こしました。」先生「そうでしたか。今、こちらの地域では施設の整備も進み、療育センター・幼稚園・学校・各種関係機関の連携も密になっています。実は荒木さんがこちらにいらした時期は一番大変なときだったんです。阪神淡路大震災直後で震災復興に予算が当てられて、子育て支援に関する計画が先延ばしになった時期でした。各機関連携の計画はもっと早くに実現するはずだったんですよ。」確かに街中には仮設住宅が残っていました。療育センターの建物も平屋のプレハブでした。先生の話から、私はなぜ当時の療育センターの廊下に「動かない謎のマッサージチェア」が鎮座していたのか、その理由を察することができました。でもそんな状況下でも研究室の先生方は幼稚園と連携を取り、娘にどう接したらいいかなどを幼稚園の先生に伝えてくださっていました。また、療育時には大学の実習生やボランテイアの生徒さんもセッションに参加し、障害のある子どもたちに明るく接してくれていました。私はそれで十分と感じていました。私「そうだったんですね。当時は悩んだり、それなりに辛いこともあったけれど、いま振り返るとそちらで過ごしていた頃が娘の子育ての中で一番幸せな時期だったと感じます。きっとプロフェッショナルの先生方に見守られ療育を受けることができていたからだと思います。」大人になった娘の近況を先生に報告して...私「その後、娘は何とか落ち着き今は特例子会社で働いています」先生「お母さんは、娘さんが落ち着いた一番の理由は何だと思いますか?」私「このままじゃダメだと思って、必死に理解してくれる支援者を探したからだと思います。親だけじゃどうにもならないので本当にみっともないほど、なりふり構わず探しました。辛かったけど今は二次障害があったこともひっくるめて、それが娘なんだと思っています。」先生「そこまで言えるのはすごいですね。」私「はい。15年の間に“恵まれた環境”は待っていても訪れないから自分から動かないとダメなんだと知りました。あと、私達親子は実際痛い思いをしないと学べないタチなんだなと身を持って経験しました。いっぱいいっぱい泣きましたけど、その分強くなったのかもしれません。」障害年金申請の手続きは、『子育て振り返りの旅』年金申請資料を作っていると、過去の辛かったことを思いだしたり、自分の選択を後悔したりします。ときには自分がしてきたことを恥ずかしく思ったりもします。でもふとした瞬間に実は幸せだったことに気づきます。じたばたしていた自分を辛抱強く見守ってくれていた人の存在に気が付いて、感謝の気持ちを抱いたりもします。私にとって今回の障害年金申請作業は、自分の子育ての振り返りの作業だったような気がします。今後に向けて子どもが20歳になったからといって当然子育てが終わったわけではありません。行政や支援者とのやり取りや手続き、書類の作成などは、まだ親が手伝っています。今後は一人暮らしに向けた準備も必要になってくることでしょう。少しずつで良いので親の手助けがフェードアウトできるようにしていきたいと考えています。数年後に訪れるであろう「障害状態確認届」提出の頃、娘は一体どうなっているでしょうか。そのときは本人主体で手続きが進められるような工夫をしていこうと思っています。そのときにも娘が理解ある支援者に囲まれた環境にいる事を願ってやみません。
2020年04月09日「私も、発達障害?」の質問に、私は…音に反応し、体調が悪くなる娘のために、購入したイヤーマフ。そこから娘は、「自分は、発達障害?」という疑問を持つことになりました。娘に「『発達障害』ってなに?私もそれ?」と聞かれた瞬間、私は動揺しました。しかし、決めていたことをすぐに思い出し、笑顔で話し出しました。Upload By SAKURA娘は自分の経緯を知りたがり、いろんな質問をしてきました。発達障害のことを知りたがったときが、本人に話す最良のタイミング。私は言葉を慎重に選びながら、娘に正直に話しました。Upload By SAKURA暗い雰囲気になってしまうのでは…?と心配していた私でしたが、娘らしい一言がとび出し、少し緊張がとけました。思った以上に、難しい質問も…娘は続けて、こんなことを聞きました。Upload By SAKURAこれはとても難しい質問です。特別支援学級に通っているということは、何かしら苦手なことがあるということです。しかし、みんながみんな『発達障害』ではないかもしれませんし、障害名についての話をしたくない人もいるでしょう。娘がその言葉をかけることによって不快に感じる保護者の方もいるでしょうし、まだその意味を知らない子どもたちがその言葉を覚えてしまい、わけもわからず使ってしまうことになるかもしれません。それを娘にどう伝えるか…少し考えてから、私はこう話しました。Upload By SAKURA私は、「『発達障害』という言葉は使い方が難しい」ということを娘にそのまま伝え、もう少し大きくなってからもう一度話すことを約束しました。娘は思った以上に、一つひとつ真剣に聞いてくれました。娘が気になったのは…娘は、質問を続けました。Upload By SAKURA私は、おそらく娘はこの質問をするだろうと思っていました。私が娘の立場なら、きっと気になるところだと思ったからです。私は、娘に「病気じゃなくて、個性だよ」と話しました。すると娘は…Upload By SAKURA娘は、個性の話の後、自分が今後どうなるのかを聞いてきました。私は、何も変わらないと答えました。そして、今、娘がたくさんの人に助けてもらっていること…親である私たちも、娘のためにやれることはなんでもする…ということも話しました。娘はそれを聞くと、笑顔で「わかった」と答えてくれました。話し終えた途端、こみ上げる不安…そして、夫に報告。娘に発達障害のことを話した私でしたが、冷静を装っていても、内心、心臓はドキドキしていました。ちゃんと言わなきゃ、笑顔で…悪い印象を与えないように…正直に…いろんなことに気を付けながら、言葉一つひとつに気を配り、話しました。しかし、話した後は不安が一気に襲ってきました。その日の夜…私は夫に、娘に『発達障害』について聞かれたこと、娘にどういう風に説明したか…を話しました。Upload By SAKURAちゃんと言えたか、表情は暗くなかったか、余計なことを言わなかったか、説明はあれでよかったか、不安を与えなかったか…振り返れば不安ばかり。そんな私に、夫は優しく声をかけてくれました。助けてくれる先生方との、情報の共有。その後私は、特別支援学級、放課後等デイサービスの両先生と情報を共有するため、すぐに手紙を書きました。私がどういう風に娘に説明したかや、もし娘から聞かれたときは隠さず話してほしいということを書きました。後日、放課後等デイサービスの先生に聞いた話によると、娘は発達障害についてかかれた漫画を持って、先生のところにやって来て…Upload By SAKURA一言、言って去っていったそうです。放課後等デイサービスの先生は、「今まで私が担当した子の中で、『自分が発達障害』と言ってきたのは、あーさんだけでした。私も、みんなはどういう風に認識しているのか…認識していないのか…親御さんが話しているのか…気になってきました。」と言いました。Upload By SAKURA娘が『発達障害』をどう捉えたか、まだわからない状態ではありましたが、娘は今まさに一歩踏み出したのです。私が教えたわけではなく、自分で気がついた娘を誇りに感じたのでした。ここから娘は娘なりに、この『発達障害』を自分の中で考え始めます。続く…
2020年04月08日はじめにーー最近の研究と活動私は東京成徳大学で心理学を教え、特に学校心理学を研究しています。子どもの自立を促進する・促進しにくい親と子の関わり方の法則・「親と子が幸せになるXとYの法則」を発見し、教師と親が一体となって子どもを援助する“チーム援助”を提唱しています。子どもの気持ちを代弁しながら心理学研究の経験をもとに分かりやすく伝えられるようカウンセリング教育に携わり、“チーム援助”は広く学校現場で実践され始めています。最近では、LD、ADHD等の当事者団体の協力を得て援助方法を研究したり、夜尿症とADHDの疫学調査を学校と協働しながら行っています。小学生になっても続いたら治療の対象に?「おねしょ」というと皆さまはどのようなイメージをお持ちでしょうか。小学生になってもおねしょが続く場合に「おねしょは病気じゃない。子どもが根性を出せば治る」「親のしつけが悪いから治らない」など、このようなイメージをお持ちの方が少なからずいらっしゃると思います。これは間違いです。しかし、「おねしょは小学校を境に夜尿症ととらえられ治療の対象となる」ということを知っていらっしゃる方は少ないと思います。さらに、おねしょは発達障害のあるお子さんにはかなり高確率でみられるということもあまり知られていないことと思います。そこで今回は、おねしょについて理解を深めていただき「おねしょの知識を得ることで気持ちが軽くなり、何をどうしたらいいのか分かる」ことを目指してお伝えしたいと思います。おねしょで悩んでいらっしゃるお子さまやご家族の皆さまはもちろんですが、学校の先生方やスクールカウンセラーなど援助者の方々にもお役に立てたら幸いです。注意:このコンテンツは皆さま方への情報提供のみを目的とするものです。一般的な事項であり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。また、医学的状態やその治療に関する情報が一部記載されていますが、それらの情報は、医師の治療アドバイスの代わりになるものではありません。現在お困りの事象がある場合は、すみやかに病院に相談してください。Upload By 田村 節子生まれて2歳ごろまでの子どもは毎晩おねしょをしますが、その頻度は年齢とともに減っていきます。しかし、5~6歳以降でもおねしょが月に1回以上、3ヵ月続く場合は病気ととらえて、「夜尿症」と呼びます。一般に、ときどきおねしょをしてしまう程度の子どもの比率は、5~6歳で約20%、小学校低学年で約10%、10歳で約5%程度といわれており、成長とともに減少します。また、成人まで続くケースはまれです。発達障害のある子どもでは、発達障害のない子どもに比べて夜尿症の頻度が高いことが知られています。夜尿症との関連についての報告が多いのは注意欠如・多動性障害(ADHD)ですが、ADHDで夜尿症を合併する割合は20~30%に上ると報告されています[1]。カナダで行われた調査では、6歳児の夜尿症の割合は、ADHDのない子どもで7.8%、ADHDのある子どもで20.9%と、ADHDのある子どもの方が2.7倍多いことが示されています[2]。 おねしょ(夜尿症)の原因と発達障害との関係Upload By 田村 節子おねしょ(夜尿症)の原因は、「夜間に尿をためる膀胱のサイズが小さい」や「夜間につくられる尿の量が多い」ことと合わせて、「就寝中に膀胱に尿がたまったときの目覚めの悪さ」だと考えられています[3]。成長に伴って中枢神経機能やホルモン分泌が成熟すると、就寝中の膀胱のサイズが大きくなり、作られる尿の量も少なくなるように調整されるため、夜尿症は徐々に改善します。発達障害のある子どもでは中枢神経機能の発達遅延により尿意切迫や膀胱の過活動などの排泄機能の異常が生じやすいこと[1]、睡眠の質が悪く、成長期に成熟する成長ホルモンや抗利尿ホルモンの分泌の発達が遅延しやすいこと[4]、感触の鈍麻によって下着が濡れても気持ちが悪いと思わない、お漏らししたことに気付きにくいこと[5]などが報告されており、研究段階ではありますが夜尿症に関係する染色体が発達障害とも関連する(夜尿症に関連する染色体8、23、13、22番がADHDでも関与)ことから[1]、発達障害のある子どもは夜尿症になりやすく、高学年まで続くケースも多いと考えられています。夜尿症が子どもや家族に与える影響次に、夜尿症が発達障害のある子どもや家族に及ぼす影響についてです。夜尿症が高学年まで続き、修学旅行などの宿泊が伴うような共同行事が増えてくると、夜尿症は自尊心の低下や劣等感などの心理的ダメージの原因になります[3]。夜尿症は一般に「そのうち、よくなるだろう」とされがちですが[6]、発達障害のある子どもにとっては、発達障害の症状に加えて、夜尿症があることによる心理的ダメージが加わるため、軽視してはいけません[6]。また、夜尿症は発達障害の病態にも影響を及ぼすことが指摘されています。聴性脳幹反応(音を出して脳の活動状況を確認すること)では、夜尿症のみの児やADHDのみの児よりも、夜尿とADHDを併発している児においてもっとも強く反応しており、ADHDのある子どもに夜尿症が合併すると、中枢神経の感情反応が強まり、反抗的な行動をとるなど感情コントロールの悪化を招く可能性があります[7]。また、夜尿症を合併したADHDは夜尿症のないADHDよりも、不注意の度合いが強くなり、夜間覚醒や自分で朝目覚める能力が低下しやすくなる場合があることも分かっています[8]。Upload By 田村 節子こうしたことから、発達障害があるからこそ、夜尿症を積極的に治療する必要性があると考えています[6]。夜尿症は治療することが可能な疾患です。夜尿症を治療することで明るさと自信を取り戻し、発達障害への対処や治療にも取り組みやすくなります[6]。夜尿症は、子ども自身だけではなく、その家族、特に母親の心理状態にも大きな影響を与えます。子どもの夜尿が続くことで、日常のイライラ(デイリーハッスル)が蓄積し、感情的になり子どもを強く叱ってしまうことはありませんか。そして、そうした行動を起こしてしまったことを省みて、深く落ち込んだことはありませんか。子どもは夜尿をなかったことにしようという心理的な防衛機制が働くため、実際は落ち込んでいても平気な顔でとりつくろうとすることがありますが、デイリーハッスルが蓄積してしまった母親は、夜尿をしたのに平気な顔をしている子どもを見ると、夜尿を治す気がない、反省もしていない、親の言うことを聞かないと誤解し、やがて子どもを受容できないという嫌悪感をもってしまうリスクがあります。また、家族や祖父母から子どものしつけ方が悪いと言われてしまうと、より自責感も抱きやすくなります[9]。発達障害のあるお子さんの保護者は、いろいろな事象に加え夜尿があることで、より親の責任であるかのような錯覚に囚われ、悩みが深刻化することがあります。このような嫌悪感、自罰感、自責感は「母親失格」という負の心理的刻印[9]としてお母さんを傷つけています。このように、夜尿症と発達障害の両方があるご家族では、お子さんとその親の両方が負の感情を持ちやすく、お互いの負の感情が連鎖して、より深刻な状況を引き起こすこともあります。この負の感情の連鎖を断ち切るためにも、夜尿症と発達障害の特性(原因や対応法など)を理解することが重要です。Upload By 田村 節子次回は、夜尿症の治療/対策、家族や周囲の望ましい対応、病院のサポートの受け方についてご紹介します。Upload By 田村 節子東京成徳大学応用心理学部臨床心理学科教授。東京成徳大学大学院心理・教育相談センター長。学校心理士スーパーバイザー。公認心理師・臨床心理士。学校心理学に基づく研究、および実践の専門家。現在、家庭、教育、医療との連携について夜尿や発達障害の子どもに焦点をあてて研究と実践を行っている。【引用文献】1. 石崎優子. 夜尿症研究 . 2011; 16: 11-152. Robson WL, et al. South Med J. 1997; 90: 503-505 夏苅郁子. 児童青年精神医学とその近接領域. 2008; 49: 336-3534. 夏苅郁子. 夜尿症研究. 2011; 16: 63-665. 平谷美智夫. チャイルド ヘルス. 2011; 14: 1333-13366. 大野友子. 小児看護. 2007; 30: 112-1157. Equit M, et al. Acta Paediatr. 2014; 103: 868-878 Elia J, et al. J Pediatr. 2009; 155: 239-244 田村節子. 小児科臨床. 2016; 69: 1263-127110. 田中幸代. 大阪小児科学会誌. 2011; 28: 1211. 池田裕一. 特別支援教育研究. 2016; 16: 29-3112. 石崎優子. 外来小児科. 2013; 16: 364-367
2020年04月06日大人だって動きたくない日もある!のんびり室内遊びUpload By 丸山さとこ家の中で1日子どもと過ごす日が続くと、「おかーさん!」「なんかヒマ…」「何したらいい?」「何かすることある?」の猛攻を受けがちな私ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。前回は体を使う遊びを兼ねたトレーニングを紹介しましたが、今回は“体を使わず、のんびりしながらできる室内遊び”について書いていきます。実験や工作、お絵かきやテレビゲームなど、子どもと行う“体を使わない室内遊び”は色々ありますが、それらの遊びは「子どもに合わせる」内容になりがちです。たまには母親である私の好きな遊びにも付き合っていただきたい!ということで、今回は実際に我が家で行われている「私が好きな遊び」をする私とコウの様子を書いていきます。上の句 下の句ゲームUpload By 丸山さとこ私とコウのどちらかがまず“上の句”を詠み、もう一方が“下の句”を詠むだけのゲームです。実際にあったことを詠んでもいいし、全く架空のことを詠んでもいいので自由度は高く、大喜利的な感じで楽しめます。暇な時にストックしておいた川柳や無季俳句を渡しておくと、親の休憩時間が稼げます。一見“頭を使う高尚な遊び”のようにも思える、この「上の句 下の句ゲーム」ですが、字余り字足らずOK、季語はなし、大体文字数さえ当てはまっていれば成立してしまうゆるい遊びなので結構ゆるゆると遊べます。何なら、“全く字足らず・大幅に字余り”でも大丈夫。「全然七七になってないじゃーん!」と笑えば、それはそれで盛り上がったりします。Upload By 丸山さとこまた、このゲームの良いところは、子どもさえ許してくれるのであれば「親はゴロリと横になったままで行えるゲーム」だということです!私は血圧が低く貧血もあるためなのか、どうしようもなく体を起こしていることが辛い時が珍しくありません。「これは…体を使った遊びどころかゲームやお絵かきだって辛いぞ…」という状態でも、横になったまま口頭だけで行える遊びはかなり助かります。「今はそういう気分じゃないんだよねー。」とコウが乗り気じゃない時も、「ごめんね、今起きてるの辛いから、横になってできる遊びしかできないんだよね。」と言うことができます。とにかく構って欲しい時なら「じゃぁ3回だけやる!」となりますし、運(?)がよければ「じゃあいいや、仕方ないから図鑑の模写するー。」とひとり遊びを始めてもらえます。相手の駒をはさんで取る“はさみ将棋”コウは夫と時々将棋を指します。私も基本のルールだけは覚えているのですが、もっと気楽にできる遊びの方が好きなので、コウとは主に“はさみ将棋”をしています。親の関わり度は高い遊びですが、コウの手番の間はボーッとできるので結構らくちんです。Upload By 丸山さとこはさみ将棋はシンプルな遊びです。使う駒は“歩”だけで、一方が“歩”の面を、もう片方が歩を裏返した“と金”を使います。通常の将棋やオセロのように、一手ずつ交代で進めていきます。駒は縦横に好きなだけ動くことができますが、他の駒を飛び越えることはできません。縦か横に相手の駒を自駒ではさんだら、その駒を取ることができます。通常の将棋とは違い、取った駒を手駒として再配置して使うことはできません。多く駒を取った方が勝ちです。私とコウは「3駒先にとった方が勝ち」にしているのですが、それくらいが今のコウの集中力にとってちょうど良いゲームのボリュームになるようです。似たようなシステムのゲームにオセロがありますが、オセロよりもコウにとっては楽しみやすいところがあります。まず、「折角はさんで自分の色にした石が再び相手に取り返されるストレス」がありません。その結果、相手の一手で「積み上げてきた物が一気にムダになる」と感じることが少なくなるようです。Upload By 丸山さとこ取られた石を取り返したり一気に形勢逆転をしたりできるところがオセロの面白いところだと思うのですが、その結果“一手一手の良し悪しが分かるまでのタイムラグが大きくなる”ため、衝動性が強いコウにとっては戦略が組みづらく、考える面白さが半減してしまうようです。もちろん、はさみ将棋にも「目先の一手」が後々の損を生み出す展開はあるのですが、取られたコマが取られっぱなしになることで“どの手が後々の不利に影響したのか”が見えやすくなるようです。Upload By 丸山さとこまた、負けても「取れた駒の数」で善戦が見える辺りも、「ムダになった!全部台無しだ!」という気持ちを防いでくれるようです。親の側の一手の持ち時間を短くしたり、“待った”を数回使えるようにしたりすることでハンデを設けることもできます。オセロでは一度置いた石は動かすことができませんが、はさみ将棋では一度置いた駒もどんどん動かすことができます。私は、このシステムが特に面白いなと思います。衝動性の強いコウが甘い手を指してしまった時、「これ、大丈夫?お母さんはうれしいけど…?」などとヒントを与えることで、すぐに「今の手は間違っていたこと」に気付いた上で、次の手番になったらその駒を逃がすことができるのです。はさみ将棋で得られた副産物?Upload By 丸山さとこはさみ将棋によって得られた思わぬ副産物もありました。はさみ将棋をしばらく続けた後は、衝動性で動きかけた時に「ん?これしていいのかな?」と1拍置くようになったのです。これは多分、「目先の刺激や利益に飛びつくと即痛い目を見る」という経験が染み付いたことで、一時的に衝動性に“待て”がかかるようになったのだと思います。1拍置く間に考えるという行為は、「これをしたらどうなるのだろう?」と“行動の結果を予想する”ということです。はさみ将棋では、「自分のしたいこと」の為に「相手のしたいこと」を読まなくてはなりません。コウにとって頭から抜けやすい要素である「人の気持ちや考え」を読むことの良い練習になっているのかもしれません。未来の自分も、ある意味“(今の)自分ではない別の人”です。「今の僕は面倒くさいって思ってるけど、未来の僕は『あの時やっておけばよかった』って思うのかも…?」と考えることは、“見通し”にとって重要なことのひとつだと思います。Upload By 丸山さとこ喉元過ぎれば…なのか、1~2週間やらない時が続くと、“1拍置く習慣”はスーッと消えていってしまいます。今後定着することがあるのかどうかは分かりませんが、何かしら「1拍置かないと即座に(分かりやすく)損をする、リカバリーやリトライができる」遊びを探していきたいなと思います。とは言っても、コウは思春期も始まるであろう5年生。段々と親が用意したものにホイホイ乗る子どもではなくなっていくだろうと思います。今の内に経験した「分かりやすいレスポンス」の記憶が、どこかに残っていってくれるといいな、そしてできれば今後も良い経験に恵まれていくと良いな…と思いながら、今日も「ねーねーお母さん!」の嵐に揉まれています。Upload By 丸山さとこ
2020年04月03日時差通勤の理由より、15分前集合を優先する『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。新型コロナウイルスの感染防止のため、通所している就労移行支援事業所から「10時30分から作業開始」の連絡がありました。Upload By 立石美津子息子は満員電車で通所しているので、少しでも通所時間が遅くなればラッシュを避けられて安心です。でも、いつも「15分前集合!10時15分時間厳守!」と念仏のように唱えています。そもそも、感染防止のための時差通勤なのだから、「少しでも遅く家を出た方が電車の混雑は少なくなり、感染予防になるから。9時25分に家を出て、10時25分に到着すればいい」と何度も説明をしても…「社会人マナー!時間厳守!」と言って聞き入れません。応用のきかない真面目な人です。最終的には、私と言い争いになってパニックを起こし、自傷行為に陥りました。「ずっとマスクをしていなさい」というとUpload By 立石美津子更に…「新型コロナウイルスやインフルエンザが流行っているから電車内だけでなく、ずっとマスクをしていなさい」と伝えたら…真顔で「ごはんを食べるときはどうしたらいいのか?」と聞いてきました。「ごはんのときはマスクを取らないと食べられないでしょ!」と私がイラッとして答えると、「わからない!わからない!お母さんの言うことわからない!」とふたたび自傷しました。遅刻より忘れ物のほうが重要――重要度の低い忘れ物を取りに戻る息子新型コロナウイルスの影響による時差通勤が始まる前、就労移行支援事業所に出かけるため、息子は家をいつも9時に家を出発していました。ある日、いったん家を出てから20分後(9時20分)に戻ってきました。家を出てから7分後には電車に乗っているので、この時刻に戻ってきたということは…いったん電車を降りて戻ってきたのでした。そして「テッシュペーパーを忘れた!」というのです。ティッシュペーパーを取りに戻ったら遅刻してしまうのに、それでも忘れ物を取りに帰ってくる、ものすごく真面目です。融通がききません。Upload By 立石美津子更に!事業所では欠席する場合の連絡を9時30分~10時の間に本人が入れることになっているのですが、テッシュペーパー取りに戻ってからすぐに家をでると、9時30分~10時の間は電車内にいて、欠席の電話をすることができません。ということで…9時30分まで家にいて、自分で電話していました。さらに遅刻してしまうというのに…就労移行支援事業所に通えるのはあと1年だけれど言われたことを字面通り受け取ることは、本人にとってはいたって当たり前のことですが、社会はそうではありません。「猫の手も借りたい」と叫んだ上司に、猫を探しに行き手渡したら叱られます。「胸に手を当てて考えてみろ」と言われて胸に手を当てたら「俺をバカにしているのか」と上司から思われます。就労移行支援事業所に通っているので、私は忘れ物のこと、時間厳守の件で起こったことを面談の度に支援員に伝え、指導の中に入れてもらうことにしています。就労移行支援事業所には2年間しか通えません。もう1年経過してしまいました。まだまだ不安なことがたくさんあるので、通所するの人のニーズに合わせて通所年数も調整できたらいいのに、もっと長く通所させてもらえたらいいのに、と思っているこの頃です。
2020年04月01日3種類のゲームで学習『みんなの怒りスイッチをさがせ!ゲームで身につくアンガーマネジメント』学校や日常生活の中で人と関わる場面を取り扱った60枚の『怒りのできごとカード』を使った、『怒りの温度当てゲーム』『3重丸ゲーム』『こんなときどうする?ゲーム』の3種類のゲームで遊びながらアンガーマネジメントの方法について学習していくことができます。『怒りの温度計カード』、そのできごとを自分が許せるどうかを視覚化する『3重丸シート』、『こんなときどうする?箱』など、場面にあった自分や他人の怒りを具体的に分析できるツールも用意されています。自分の怒りの度合いに気づくこと、人との感じ方の違いに気づくこと、そして怒りを感じる場面でどうしたらいいのかを考えることと、アンガーマネジメントを身につけるために必要な要素を総合的に学べる教材です。シングルマザーの著者の実体験を綴った『うちの子、へん?発達障害・知的障害の子と生きる』シングルマザーの著者、知的障害がある息子「ぽんちゃん」、ぽんちゃんの姉のみいちゃんの3人の家族のエピソードが漫画で描かれています。ぽんちゃんに障害があると知り母は絶望しますが、それでも持ち前の愛嬌で言葉がなくても誰とでもすぐに仲良くなりみんなに愛されるぽんちゃんを見て前向きに過ごしていきます。そしてそんな母やぽんちゃんを見て育つ、お世話好きな姉みいちゃんの頼もしい様子にも心がほっこりして、読んでいて元気が湧いてきます。間に挟まるコラム部分では、障害児を育てるにあたって知っておきたいことが解説され、また巻末には日常生活で活用できる絵カード『準備カード・きもちカード』もついていて、ぽんちゃんと家族の前向きな日々に触れながら、ご自身の子どもとの関わりにも役立てられる一冊です。女性ならではの困りごとを具体的に解説『こころのクスリBOOKS よくわかる女性のADHD 注意欠如・多動症』遅刻や忘れもの、うっかりミス、衝動買いなど、ADHDのある人の困りごとについて取り上げ、中でも女性ならではの困りごとに焦点をあてて解決方法を紹介する書籍です。仕事や家事で使えるライフハック術の提案や忘れもの防止策から、『いい恋愛をするために』『夫との関係を平和に保つには』『子育てが苦手と感じたら』など女性の視点にたってピックアップされた困りごとまでを取り扱っています。例えば『時間の管理』に関する困りごとは、『専業主婦で子どもがいない場合』『子ども0歳代の育休中の場合』などライフスタイルごとに生活の枠組みを提案するなど、女性の生活に寄り添いながらより実現可能な対策を考えられるよう工夫されているので、いろいろなライフハック術をうまく機能させられないという方にも手にとっていただきたい書籍です。イラストつきで関わり方のポイントがわかりやすい『保育園・幼稚園のちょっと気になる子』保育園・幼稚園にいる『ちょっと気になる子』――みんなが過ごしやすくなるための「目で見て分かる支援」や「分かりやすい話し方」など、関わり方の工夫が解説されています。「こんなときどうすればいい?」の章では、園生活の中での外遊び、自由遊び、登園渋りなど、さまざま場面での"ちょっと気になる"行動が取り上げられており、保育者も保護者も子どもの行動について考えるヒントを得られそう。たくさんの工夫、関わり方のポイントが詰まったこの本では、子どもの過ごす場所は成長とともに変わっていくことを踏まえて、園生活だけでなく就学後の生活の見通しについても触れられています。子どもが安心して過ごせるための丁寧な関わりをこの本を通して考えたいですね。子育て×科学!?『科学的に考える子育て エビデンスに基づく10の真実』子育てに関する疑問に対して、科学的な視点から回答しているこの本、目次に並ぶ10の真実も『結局、「叱る」は大人の負け』『ほめるのはタダだが、技術が必要』『「学校は社会の縮図」ではない』など気になるものばかりです。科学的なエビデンスのある内容が記載されているので、例えば「ほめる」という行動についても、どのようなほめ方が・なぜ良いのか・ほめることが持つ機能とは...など解説が非常に具体的で読んでいて納得感があります。"科学"というと難しいように感じますが、イラストも交えたシンプルで分かりやすい説明で、サクサク読み進めることができますよ。苦しんだ子ども時代から、話せるようになったあとの苦労までーー『かんもくの声』家では元気でよく話すのに、学校では話せない――そんな子ども時代を経て27歳になった著者は、インターネットで偶然『場面緘黙症』という言葉に出会い、「この悩みは世界で自分だけのものではなかった」と大きな衝撃を受けたそう。そこから場面緘黙症について調べ、同じ経験をしている人たちと出会い、人生を通して場面緘黙について考えていきます。話せないことで苦しんでいた子ども時代だけではなく、話せるようになったあとの苦労についても書かれており、場面緘黙が「治る」とはどういうことかについても著者の考えが綴られています。話せる・話せないという表出している状態のみではなく、内面的な部分も含めて知ることができる書籍です。
2020年03月31日「ちょっと気になる子」を理解できると関わり方が変わるこの本には、「ちょっと気になる子」を理解するために必要なことが書かれています。1章「ちょっと気になる子の理解」では、「ちょっと気になる子」は、具体的にどんな子どもなのかが見えてきます。発達障害の名称をつけるのではなく、たとえば「こだわり・興味の狭さが気になる子」とか、「ことば(コミュニケーション)が気になる子」として、園でよくある風景の描写から、どんな様子が見える子なのかがこまやかに紹介されています。そして、こういう子に共通して想定される「脳の中のちょっとした不具合」について、感覚統合の考え方から分かりやすく説明されています。Upload By 発達ナビBOOKガイド大脳が働くとは、豆電球がピカピカ光ることなのですが、そのためには、豆電球に向かって電気がスムーズに流れるよう電線を整備しなくてはなりません。「脳の働き方に、ちょっとした不具合があるかもしれない子どもたち」は、電線が細くて電気がうまくながれなかったり、つまりぎみだったりする可能性があります。そういう子どもたちには、意識的に体を動かして元気に遊ぶことで、電気が通りやすいよう電線を整備することができます。これが、感覚統合を進めるかかわりということです。(P66)この「配線」について理解することが、気になる子の理解に通じることになります。2章「子どもを支える配慮と工夫」では、「ちょっと気になる子」に有効な支援「目で見て分かる支援」と「分かりやすい話し方」について、簡潔に説明されています。また、それは「ちょっと気になる子」だけでなく、特に気になるところのない子も含めて、すべての子どもたちにとって、いいことだと述べられています。たとえば、「ひとりへの配慮が、みんなのために」として、こんなエピソードが紹介されています。ちょっと早口なある先生が、難聴の子どもがクラスにいたときに、はっきりゆっくり分かりやすく話すように心がけていたことがあったそう。そのときは「クラス全体が落ち着いて、子どもたちも授業に集中してくれていたような気がします」(P68)と書かれています。また、「目で見て分かる支援」では、いくつもの工夫が示されていますが、「お部屋の中の装飾を見直す」として、こんな例もあります。先生の説明に注目したくても、お部屋の飾りつけやロッカーからはみ出したバッグ、床に散らばっているブロックなどが視野に入って注目を阻害していることもあります。カーテンはひもで固定してはためかないようにする、室内装飾は少なめに、ロッカーの整理かごは色をそろえるなど、過剰な刺激を避ける工夫をします。(P78) By 発達ナビBOOKガイド絵を見ると、一見落ち着いているように見えた子も、部屋がすっきりすると前よりちゃんと先生の方を見ていることが分かります。すべての子どもは「地続き」で、白黒はっきりわかれているのではない、ということも伝わってきます。3章「こんなときどうすればいい?」では、さまざまなシーン別に、対処法が紹介されています。「席から離れてしまうとき」「大人から離れられないとき」「外遊びに出たがらないとき」など、保育の日常の中にありそうな、子どもの姿と、具体的にどうしたらいいか、について書かれています。「登園しぶりがあるとき」では、もしかしたら先生の声かけが元気すぎるのかも、ということから、子どものそばに行って小さな声で「おはよ」と言ってみたり、Upload By 発達ナビBOOKガイド自由遊びは「ほんとうの自由を保障する」時間として、お友だちの輪に入りたがらない子には、無理をさせずに見守ってあげたりといった保育者からのアプローチが提案されています。Upload By 発達ナビBOOKガイド4章「つながりの中で育てる」では、ここまでの3章を受けて、子どもたちの園以外の場にいるときの姿へとつながっていきます。子どもの居場所だけでなく、過去と未来についても考えられています。「子どもたちは成長とともに居る場所が変わる」ということをふまえ、今まで受けてきた支援や配慮、これから入って行く学校生活への見取り図が示されています。ここでは、なんとなく敬遠してしまいがちな、保護者と保育者が、お互いに協力していくための具体的な話し方も示されています。1秒だって気を抜けない息子のことを「まったく疲れちゃうんです」と愚痴った時、保育園の先生は笑顔でこう言ってくださいました。「○○ちゃんの頭の中、開けてみてみたいって、私たちはいつも言ってるんですよ。次々と新しいことを思いついて、ほんとうにおもしろいから!」。(P156) By 発達ナビBOOKガイド同じ子どもでも、保育の場からと家庭からでは、違う角度で見えるものです。子どもの未来、特に就学を考えるときに、「就学までにできるようにしておかなければ」と焦るのではなく、「就学してからも、支援を受けてのびのび育っていけばいいんだ」と思えてくる、希望を持つことができる。この本にはそのためにできる具体的な工夫や例が、たくさん登場するのです。保育と療育の間にいる子どもたちをどう見守るか、という課題ところで、この本の内容はもともと、臨床育児保育研究会発行の隔月刊誌「エデュカーレ」で、特別支援教育をテーマに連載されていたものだそう。実はこの「ちょっと気になる子」というタイトルとも、関連しているそうです。著者の中川信子先生にお話を伺いました。Upload By 発達ナビBOOKガイド発達ナビ編集部(以下――)「気になる子」は、保育と療育の間にいる子どもとして、この本では書かれていますが、もう少し詳しく、「気になる子」はどんな子どもなのか、あらためて教えてください。中川先生:『気になる子』とは『気にしている大人の目から見て気になる』です。はっきりした障害名がつき、『気になる子』が『障害のある子』になると、大人の中では気にならなくなるということもあります。でも、障害名の助けを借りなくても、どういう子なのかが理解でき、どう接してあげればいいのかが分かれば『気にならない、かわいい一人の子』になるのではないかと思います。『気になる子』という名称は、『エデュカーレ』の発行母体である『臨床育児保育研究会』と関係があります。保育の現場から上がってきた『子どもたちにもっと的確な保育ができるようになりたい』という願いから始まった『気になる子研究会(気に研)』が発展して『臨床育児保育研究会』になりました。私はずっと『障害』の側から子どもたちを見てきたので、『気になる子』がいたら、可能性のある障害特性を仮定し、それにもとづいた適切な対応をさぐろうとしました。それに対して、保育者の方たちは、子どもたちの行動を見て『なぜ?』『どうして?』『どうしてあげたらいいの?』と『気になる』様子だったのです。『気になる子研究会』では、『気になる子』について、『あてはまる障害名を探す』『白黒はっきりさせる』ではなく『気になる』行動の背景に想定される、さまざまな行動特性や障害の特徴などを、私からお伝えしました。そのことで、目の前の子どもたちが単に『気になる子』ではなく『こういうふうに対応したらいい子ども』となっていく。連載を依頼されたときには、そのことを読者にお伝えしたいと考えて書きました。「気になる子」には、安心できる環境が必要――現状では、療育は、保育とは別の場所で行われていることが多いと思います。このことについてはどう思われますか。中川先生:本来、障害児保育と一般保育は同じところを目指すはずだと思います。私は発達障害ということばをあまり使いたくないので、「発達系」と呼んでいるのですが、この発達系かも?という子が増えて、今、療育はパンク気味です。これを転換期ととらえ、今後は、保育園・幼稚園などの生活の場で、療育に近い関わりが行われ、わざわざ別の場所での訓練に通わなくてもすむようになればいいと思います。保育園、幼稚園での「療育に近い関わり」「ていねいな配慮のある関わり」をこの本では提案したつもりです。でも、そのためには、集団の人数の問題は避けてはとおれません。どうしても大人数だと配慮は行きとどきにくいし、子どもの側の集中もとぎれがちになるからです。また、『分からない』と声をあげればちゃんと助けてもらえる環境があって、安心して『分からない』『教えて』と言えることが大事なんですよね。そこで子どもの学びは進むのですから。それはやはり、大人数のクラスでは、かなえられないことだと思っています。安心できる環境はとても大切です。『アタッチメント』ということばは、日本語では愛着と訳されて、何だか「母の愛」というようなイメージがありますね。でも本来アタッチメント(attachment)とは、しがみつくという意味。風が強いときに飛ばされないように柱のようなものにしがみつく、そのことがアタッチメント。困ったときや不安なときでも、頼れる人がいれば安心していられます。集団生活の中でも子どもが安心して過ごせるかどうか、園の先生の態度が大きな意味を持つと思います。感覚の違いを理解できたら、「気になる子」の理解は進むはずUpload By 発達ナビBOOKガイド――本の中には、感覚が敏感な子どもへの理解についての話も登場します。過敏さを理解するには、どんな風に考えたらいいですか。中川先生:たとえば、私たちだって、押し入れに頭をつっこんで探し物をしているようなときに、急にうしろから背中をたたかれたりすれば、びっくりして飛び上がりますよね。でも、後ろに人がいることが分かってさえいれば、そんなにびっくりはしないものです。過敏さがある子たちはいつもこんな感じなのでしょう。不安な環境にいるからびっくりして、大人から見ると気になる行動に出てしまう。でも、安心できる環境にいれば、そんなに過敏にはならずにすむ。本の中でふれた、感覚統合の考え方を知ると分かりやすいと思います。保育士さんは、元気な人が多いので、大きな声で『おっはよー!』って挨拶なさいますよね。でも、耳が敏感で音に過敏な子は、その声にびっくりしてしまうわけです。前向きな方には、遊びが嫌いな子、みんなのところに参加したがらない子の気持ちも分かりづらいんじゃないかなと思います。この本を読んでくださる保育者には、『気になる子』はこう感じているかもしれないと気づいていただけたら、と思っています。子育てには正解はないから、保護者がひとりぽっちにならない子育てを――ところで、保護者の方たちは、保育者よりも長い時間子どもと接する中で、どうしていいか分からなくなることも多くあります。そんなときはどうしたらいいでしょうか。中川先生:保護者の方は、子どもの発達について『自分の育て方が悪いのではないか』と悩むことが多いのも事実です。だからこそ、脳の働きについて正しく理解することが、すべての子どもの育ちがよく見える助けになるのではないでしょうか。それでも、こうしたことは頭で理解していても、日々の子育ての中でやっぱりイライラしたり怒ってしまうことはありますね。人間は感情の動物、カッとなることはありますよ。でも、手はあげないでください。もし、つい手が上がってしまったら、その手はそのまま自分の頭にのせておいてくださいね。腹が立ったときは、じょうずに感情を別のところに吐き出して。クッションや枕に口を当てて『もうやだー!』って20回くらい叫んでごらんなさい、だんだんクールダウンしますよ。つらいことは、体で表現すると楽になります。理屈をこねても鎮静しません。『怒っている私』を、子どもに当たる以外の方法で解放してあげてほしいです。子育てには、正解はありません。叱って育てても、その子らしさを受け入れて育てても、結果は親子ごとに違うかもしれない。でもあとになって、できなかったことをいろいろと引っ張り出してもしょうがないことなんです。『みんなとちがう』ことが心配になるのは親であれば誰しもですが、どうか、分かってくれる人や、同じ思いをしている人を見つけて、『ひとりぽっちじゃない』状態で、長丁場の子育てに取り組んでいってほしいと願っています。そして、保護者の方はお子さんのことがよく分かっていても、先生に伝えるのはなかなか難しい場合がありますよね。この本の中に、お子さんにあてはまるような例があったら、コピーを先生に渡していただき、『こんな風に書いてある本がありました。うちの〇〇と似ているので、お持ちしました』と、『さりげなく』お伝えになる助けになればと思います。「気になる子」を理解することが、幸せにつながってほしい――気になる子は、その子自身が困っていることが多いです。どうしたら、気になる子自身も周りのお友だちや大人たちも、困ることがなくなるでしょうか。中川先生:昔から、『いっぷう変わった子』や『元気過ぎる子』や『ひとつのことに熱中すると他のことが目に入らない子』というのは、たくさんいましたし、今もいます。私自身もそうです。私は家族全員がちょっと変わった人たちだったので、特に問題視されない恵まれた環境だったと思いますが、それでも悩み深い少女でした。自分のそういう部分を、もしかしたら心理学を勉強したらコントロールできるかな?と思い、『人の幸せのために役立つ心理学』を学ぶことができたことで、今の私があります。ところが、今はちょっとでも『みんな』から外れていると、親も保育者・先生方も『発達障害ではないでしょうか?』と、心配するようなご時世になってしまいました。『多様性の尊重』とか『一人ずつに合わせた教育(保育)』と言いながら、その一方で社会の規範がどんどん狭まり、そこから少しでもはみ出た子には『障害』のレッテルを貼って『特別な支援』につなげなくては!と焦る風潮が強まっていると感じます。障害は、英語ではdisorderで、これは本来、列の乱れ、列からちょっと外れた状態を意味します。今の日本では、ちょっとでも列から外れると、列に入れようと、ぎゅーぎゅー引っ張るやり方をしていますが、ほんとうは、列には入ったり、戻ったりすればいい。列への参加のしかたはいろいろでいいはずなんです。『全ての子を、こういうふうに見て、こういう配慮をすればいいのね』と『集団の中での個別配慮』についての認識を、子どもを理解することで深めていってもらえたらと願っています。そのために、例えばこの本の中の一つのお子さんの例を題材に、保育の場で先生方同士でお話しいただき、『○○組さんの○○くんのこともこんなふうに見ると分かりやすいね』と共通認識を持つために役立てていただけることもできるのではないかと思います。ある意味『ふつうとは違う』側の中に、人間としての豊かな可能性や、人と協力し合いながら生きていく大切さが潜んでいると思います。これから育っていく子どもたちと、そのご家族が『幸せだなぁ』って思っていただけるといいなと思いながら、この本を書きました。Upload By 発達ナビBOOKガイド絵によっても、子どもへの理解がより深まるこの本には、たくさんの場面についてのイラストが登場します。子どもがどんな風に感じているのか、子どもの表情や、ちょっとした体の使い方に表現され、「こういう子、いるね」「こういうことある!」というリアルさがあります。大人の接し方によって、子どもはこう変わるといった様子も、おおげさではなく描かれています。また、実は表紙には違うイラストが入る予定だったそうです。子どもはニコニコして前を向き、ママもスカートをはいていて余裕が感じられる様子でした。(p148にあります)。でも、中川先生は「ちょっと気になる子は、なかなかこうはいかないでしょう」と提案され、その結果、ちょっと不機嫌そうな子どもの様子と、笑いつつもちょっと困り顔のお母さんの表情の絵となったのだそうです。こういう子いるね、うちの子と似てる、と思ったら、そのページからまずは読んでみてもいいかもしれません。育児する人、保育する人へ、「この子はこんな風に感じているかもしれないから、こうしてみたら?」という温かい提案を、少し先の成長した姿とともに見せて、安心させてくれる「保育園・幼稚園のちょっと気になる子」です。取材・文/関川香織写真/鈴木江実子
2020年03月31日子どもをうまく愛せない……。そう深く思い悩み、心療内科を受診した私の行き着いた先は「愛着障害の疑いがある」という診断でした。なぜ愛着障害になったのか? それは私自身の生い立ちにありました。 なぜ無性にイライラするの?私は現在2児の母親ですが、上の子どもを出産したときは実家との折り合いが悪く、里帰り出産をしませんでした。したがって、退院してからは自分ひとりで子育てをしなければならず、毎日とても必死だったのを覚えています。そんなストレスフルな環境で、上の子どもが1歳半くらいのときから、子どもに対して無性に腹立たしくなってしまうことがありました。子どもは特にかんしゃくがひどいとか、何か成長に関して大きく気になることがあるといった問題もありません。冷静に考えてみれば、ごく一般的な子どもが、ごくごく普通にママに愛情を求めて泣いたり、自己主張したりしているだけなのに、それだけでもイライラしてしまう自分がいたのも事実です。 2人目もワンオペ。そして精神の限界へ本格的に上の子に対して嫌気がさしてきたのは、下の子を出産したときでした。このときも里帰りはせず、退院直後から3歳になった上の子と新生児をワンオペで見る毎日。もう私の精神も限界に達していたのでしょう。思わず感情的に怒鳴り散らしたり、またある日は突然涙が止まらなくなったり。そんな状態が下の子を出産して半年。私の情緒は落ち着くばかりか、ますます不安定になっていき、ついに意を決して心療内科を受診することに。結果は「適応障害」と「産後うつ」。おまけに「発達障害の疑いがある」とも言われ、後日心理テストを受けることになったのです。 発達障害を調べるテストを受けた私発達障害などを詳しく調べる検査は2日かかりました。1日目は臨床心理士さんとの面談があり、具体的にどのような家庭で生まれ育ったか、また学業成績など客観的な私の過去のデータについて話したのです。2日目はIQテストや、日常生活においてどれほど困難さを感じるかの自己記入式テストをしました。2日合わせて3~4時間ほど費やして、精密に検査をしていただきましたが、結果は「発達障害はない」との所見でした。しかし、私の症状や実親からの虐待などの出来事から「愛着障害である可能性がある」と聞かされたのです。 検査を通してわかったこと「愛着障害」とは、乳幼児期において暴力やネグレクトなど適切な愛情を持って育てられなかった子どもが、社会人になったときに対人関係や仕事、そして育児などに支障が出る障害のことだそうです。愛着障害と聞かされたときは「やっぱりな」と腑に落ちる私がいました。しかし、この検査を通して愛着障害と判明したことで、今までの生きづらさの理由がわかり、それを私の子どもたちに味合わせたくないと強く感じたのです。 イライラの理由が明確にわかったことで、これからは自分のつらかった過去とも向き合いながらも、子どもたちを育てていこうと心に決めることができたので、私は検査を受けてよかったと感じています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 先輩ママの体験談、いかがでしたか?「共感した」「私の場合はこうだった」など、ぜひベビーカレンダーサイトのコメント欄にご感想をお寄せください。また、ベビーカレンダーでは皆さんから募集した体験談を記事でご紹介させていただくことも。ベビーカレンダーに会員登録すると届くメルマガから、皆さんのオリジナル体験談をご応募ください。 イラスト/マメ美監修/助産師REIKO著者:仲本まゆこ自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆している。
2020年03月30日自閉症啓発デーって?2007年、国連総会「4月2日は世界自閉症啓発デー」にすることが決議されました。この日には、それぞれの加盟国が、自閉症についての理解が進むように意識啓発の取り組みを行うことなどが求められています。世界自閉症啓発デーは、自閉症に関する理解を深めたり、自閉症のことについて知ったりすることで、自閉症のある人を含めたすべての人が過ごしやすい世界を実現していくための日です。例年、日本では東京タワーなどのランドマークが青く染まるほか、NYやパリ、ロンドンなどさまざまな都市のランドマークも同様に青く染められ、イベントが行われます。昨年・一昨年も、発達ナビではその様子をリポートしています。タイムラインを青に染めよう!オンライン上でのイベント「Warm Blue 2020」を開催Upload By 発達ナビニュース2020年の自閉症啓発デーは、新型コロナウイルスの影響により、リアルイベントの開催は中止となりました。そこで、自閉症のテーマカラー「ブルー」でタイムラインを染め上げようというイベントが開催されます。参加の方法は以下の通りです。「私たちの4月2日」「青いものを身につけた写真」「青をテーマにした写真」「自閉症啓発デーを応援する活動・パフォーマンスの動画」などを投稿してください。投稿の仕方は以下2つです。1、直接以下の公式アカウントに投稿実行委員会-101651501470359/Warm Blue キャンペーンFacebook 公式ページ Blue キャンペーンTwitter 公式ページ2、みなさんご自身のTwitterやFacebookなどで発信青いものを身につけた姿や、青いグッズを撮影して、SNSに投稿しましょう。その際、以下のハッシュタグを使用すると、Warm Blue実行委員会が公式FBとTwitterでシェアをします。#2020TT#WB_2020#MAZEKOZE#LIUB皆さんの投稿で、タイムラインを青く染め上げましょう!出典 : 多様性を認め合える社会へ出典 : 自閉症がある人だけでなく、どんな人も皆、色とりどりの個性をもっています。どんな人も自分らしく生きていけるように――自閉症啓発デーを通して、多様性を認め合える社会へ近づけるよう、一人ひとりができることを始められたらいいですね。
2020年03月30日保護者420名以上が申し込み!すべて専門家が監修した、特別支援教材を自宅学習に活用発達ナビが行ったアンケートでは、新型コロナウイルスの影響による休校措置で、お子さまの学びの機会が減ってしまうことに不安を抱く方が多くいることが分かりました。そこで、通常、発達支援施設向けに有償でご提供している特別支援教材の一部を、保護者さま向けに開放する取り組みを期間限定で始めました。2020年3月27日時点で、420名以上の保護者さまからお申し込みをいただいています。このコラムでは、さまざまな教材の中でも、どのようなものが多く利用されているかについてご紹介します。レッスンプログラムで人気の教材は?Upload By 発達ナビニュースレッスンプログラムの中でもっとも参照されていたのは、気持ちの切り替えをサポートするツールや方法についてご紹介したものでした。突然の環境の変化で戸惑うお子さまにどう対応すればいいのかのヒントや、具体的なツールをご提供しています。Upload By 発達ナビニューストラブルが起きてしまった場面について、どういう風に振り返ったらいいのかが分かりやすくまとまっているレッスンが、2番目によくみられていました。やはり環境の変化の中で戸惑うお子さまをどうサポートするのか、その方法を学びたいという方が多くいらっしゃったのではないかと思います。Upload By 発達ナビニュースいまはどんな気持ち?うまく言葉で伝えられない場合も、視覚支援ツールがあれば周囲に伝えることができやすくなります。表情カードの活用方法についてのレッスンが、3番目に多くみられていました。実際に使えるツール、何が人気だった?Upload By 発達ナビニュースいまどんな気持ち?どんな体調?を指差しだけで伝えることができる、気持ちの温度計。気持ちを見える化するうえで役立つツールです。この「気持ちの温度計」が最もダウンロード数の多いツールでした。Upload By 発達ナビニュースずっと家の中で一緒にいると、興奮したりイライラして声が大きくなったりして、きょうだいなど家族とトラブルになることも…そんなとき、どのくらいの大きさの声で話したらいいのかを伝えられる視覚支援ツールが「こえのものさし」です。お子さまの状況に合わせて、動物バージョン、数字バージョン、人バージョンの3パターンがあります。Upload By 発達ナビニュースリアルなやきいもの教材は、やぶってみるなど、手先をつかう練習をたのしくできるツールです。こうした工作ツールも人気が高く、多くダウンロードされていました。教材の無償開放は4月5日まで。春休み中の自宅学習にひきつづきご活用くださいお子さまの学びの機会をサポートするため、4月5日までの期間、ひきつづき教材の無料開放を行っています。詳しくは次のコラムをご覧になった上で、お申し込みください。
2020年03月27日新型コロナの影響で不安な資金繰り…放デイ対象の助成金・融資・補助制度放デイ・児発で活用できる、新型コロナウイルス感染症の特別措置が設けられているのは以下の5つの施策です。1、雇用調整助成金(特例措置)2、小学校休業等対応助成金3、新型コロナウイルス感染症特別貸付と特別利子補給制度4、独立行政法人福祉医療機構 福祉貸付事業による融資制度5、セーフティネット保証制度(4号)活用するにあたっての概要と留意点をこちらからお伝えします。
2020年03月27日睡眠障害で学校に行けていない...いっちゃんの学習面は我が家の長女いっちゃんは、10歳ごろから睡眠障害の症状が現れ始め、小学校6年生で登校日のおよそ半分を欠席し「不登校」になりました。中学に進学しても1/3ほど登校するのがやっとといったところです。一応プリントなどもらってきて、家で勉強もしていますが、自発的にするのは自分が興味を持ったものだけです。テストの出来も良くはないし、ノートの提出も全くできない…通知表の評定もそれなりです。Upload By 寺島ヒロお兄ちゃんのタケルは、読んだ文字や聞いた言葉をそのまま覚えておいて、頭の中から取り出すことが得意だったので、学校を多少休んでもテストの成績は問題ありませんでした。でも、いっちゃんは映像や音楽などイメージに変換して記憶するタイプのようで、ものの名前や単語を覚えるのが苦手。社会の穴埋め問題などはほとんどできません。記述テスト向きではなさそうだなーとは、かねてより思っていました。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ将来のことは「よくわからない」このままでは心配!?でも...さて、そんなテストが苦手ないっちゃんは「将来のこと」についても、中学校などで聞かれるとあまりしっかりした返事はしていないよう。「高校とか、就職とか言われてもよくわからんし興味ない」だそうで、「このまま大人になっちゃいけないの?」と、逆に答えにくい質問を返したこともあったそうです。学校にろくに行けていないわけなので「このまま…となると、高校に行っても不登校、就職しても通勤できないってことだろう。何とかしないと!」という考えに一瞬私も傾きかけたのですが、いやいや!?と思い直しました。Upload By 寺島ヒロ高校も会社も興味がないと聞くとニート一直線か!と、つい心配してしまうところですが、いっちゃんは実は性格的にはとてもアクティブなのです。将来何も仕事をしないで暮らすとか、無気力になっているとは考えにくい…。固有名詞が苦手ないっちゃん、もしかして将来のことを大人が求めるような「どの高校に行く」とか、「どこの会社に入る」という考え方で捉えてはいないのではないか?そこで、ずばり12歳のいっちゃんに「将来どんな大人になって暮らしていけたらいいと思う?」と聞いてみました。すると「絵を描いたり、曲を作ったり、歌ったり、ナレーション?とかもして、こういうことで仕事にならないかなと思ってる。何って決めてないけど、やるからにはすっげーってみんなが言ってくれるようになりたい!あと料理も自分で作れるようになりたい!」と言うではないですか!意外と具体的な内容が出てきたのです。一般的には、子どもが絵描きになりたいとか歌い手さんになりたいと言ったら、夢みたいなことを…と思うかもしれません。例えば高校3年生になった子どもが「アニメが好きだから声優の専門学校に行く」と職業について深く調べもせず急に言い出したら、正直不安しかないでしょう。しかし、いっちゃんは、物心つく前の本当に小さいころから、"努力"とは意識もせず、ずっと絵を描いたり、曲をつくったり、ピアノを演奏したり…「創り表現すること」を続けてきたのです。そのため、私はいっちゃんの言葉を聞いて「確かに!そのままでいい!」と思いました。Upload By 寺島ヒロ学校以外での「名前のない学び」も大切に見守ること13歳になった今のいっちゃんは、描画ソフトで絵を描くことはもちろん、MMDという有名なコンピュータアニメーションを作成するCGソフトを使って3Dキャラクターの改変モデルをつくったり(さすがに丸ごとはまだつくれない)、AviUtlというソフトで動画編集をしたりしています。ボイストレーニングや演技の勉強も続けていて、中学校にこそ行っていませんが、しっかり学んでいる様子が見て取れます。Upload By 寺島ヒロとはいえ、学校で数学も物理も学んでいないので、動画制作はしばしばカン頼みです。もし誰かと一緒に協力してつくるとなると、基礎教養や共通言語がないので相当苦労することでしょう。でも、今そのことを心配して「同級生のみんながやっていること」を無理やりやらせても効率は良くないような気がします。本人が必要だと思い知ってから学んでも、きっと遅くはないはずです。おそらく、いっちゃんのような子どもにとっては、高校や、会社のような「名前のあるもの」は、そういう毎日の学びと創作の延長線上にたまたまあるものなのでしょう。「名前のないこと」をやっている子どもを見守る力が、親には求められているのかもしれません。
2020年03月26日順調に活躍していたイヤーマフ。聴覚過敏で体調不良を起こしていた娘。試しに使ってみたイヤーマフは、大活躍してくれました。嫌な音を遮断できるということですっかり気に入り、常に持ち歩いて、放課後等デイサービスで集中したいときや学校で一人になりたいとき、家で読書をするときなどに愛用していました。Upload By SAKURAイヤーマフがきっかけで目に留まった言葉。そんなある日、放課後等デイサービスお迎え時…Upload By SAKURA私はドキッとしました。すると、娘は続けて…Upload By SAKURA「自分が発達障害か」を聞いてきました。今まで私は、娘に『発達障害』という言葉を使って娘の特性について話したことはありませんでした。娘の特性について話した経緯。言語訓練に通う理由を聞かれたので…Upload By SAKURA簡単に理由を話しました。娘は「言葉が苦手」というのを、マイナスには捉えなかったようで、気がつけば周りの人に対しても「私はね、言葉が苦手なんだよ」と自ら説明するようになっていました。2年生から特別支援学級に在籍になった娘は、慣れるために1年生の後半から特別支援学級の教室に行くことになりました。そのときに、『特別支援学級に行く理由』を説明しました。Upload By SAKURAその後、2年生から本格的に特別支援学級在籍になったときに、もう一段階詳しい話をしました。Upload By SAKURA娘は気にするどころか、長い時間特別支援学級にいられることを喜んでいました。「障害」という言葉を耳にすることが多くなってきて…それから時間は経ち…2〜3年生になると「障害」という言葉を授業やテレビで聞くことが増え、障害のある人が世の中にいるということを知るようになりました。Upload By SAKURAこのときから私は「いつか娘に『発達障害』について話す日がくる…」と考えていました。どんな状況で聞かれるのか…どんな風に答えようか…想像し、ずっと頭の中でシミュレーションし続けていました。そして、聞かれたときのために決めていたことがありました。そのときのため、決めていた3つのこと。『発達障害』のことを話す最良のタイミングは、聞かれたとき。あまりに幼いときは話す必要はないと思いますが、娘はもう小学生。専門的な話はしなくても、そういう特性について、言葉を選べば説明していいと考えていました。Upload By SAKURA真剣な顔や暗い表情で話してしまうと、これは悪い話だと思われてしまいます。話すときは、普段の会話のときと同じトーンで、なるべく表情は変えない!少しでも誤解を与えたくないと思いました。Upload By SAKURA『発達障害』に対して、「これ以上聞かないで」という対応は絶対したくないと思っていました。聞きたければいくらでも話す、聞いてはダメなことではないと娘に態度で示そうと思いました。Upload By SAKURA何度もシミュレーションして、これは絶対に守ろうと決めていたことでした。シミュレーションは完璧だったはずだけど…しかし、そのときは思った以上に突然やってきました。まさか、イヤーマフから繋がるとは…!イヤーマフを購入したときは、そんなこと想像もできませんでした。Upload By SAKURAあんなにシミュレーションし続けていたのに…いざ聞かれると私の心臓はドキドキ音を立て、動揺が一瞬で全身に広がりました。しかし、動揺してはいけない!返事に間を空けたら、娘に変に思われる!と決めていたことを思い出し、自分に気合いを入れ、ついに娘に話すことにしました。続く…。
2020年03月25日突然の休校で子どもも保護者も不安定に。一人で抱えがちな悩みをシェア新型コロナウイルスは、子ども達の学校生活、そしてその子ども達を育てる保護者の生活にも大きな影響を与えています。先日行った発達ナビユーザーへのアンケートでは、さまざまな悩みや不安を抱えている様子が分かりました。そこで、発達ナビができることとして、オンライン保護者会を実施。すでに、3月18日、19日、23日の3回を行いました。多く挙げられた悩み別にテーマを設定――同じ悩みや不安を抱える仲間とのシェア、そして専門家からのアドバイス今回の保護者会では、お悩みとして挙げられたなかで多かったものを中心に、4つのテーマを設定しました。「不安定になっている子どもとの関わり方」「保護者のストレス緩和の方法」「子どもの生活リズムの乱れへの対応方法」「家庭学習の支え方」それぞれのテーマに沿って、現在の状況現在の対応質問したいことを事前に寄せていただき、参加者でシェアし、臨床心理の専門家の先生からのアドバイスもそれぞれに頂く形で進めています。Upload By 発達ナビニュースはじめて関わる仲間同士。でも、すぐに打ち解けて…Upload By 発達ナビニュースオンライン保護者会はZOOMミーティングでのグループで行うテレビ会議形式です。初めて話をする方同士ですが、画面を通じての会話でも、同じような困りごとで悩んでいる仲間同士ということもあり、悩みや対応策がそれぞれヒントになり、話すだけで気持ちが楽になる、という声もいただきました。また、いつもとは違うイレギュラーな状態なうえ、親子で過ごす時間が多くなる今だからこそ、いつも以上に課題に気づけるという視点も。一緒にいる時間が多い、ここまでイレギュラーなことが起きる状態は珍しい、だからこそこの機会を活用してイレギュラーなことに対応する練習をしてはという専門家からのアドバイスに、思い切り向き合う時間にしたい、という前向きな意見を寄せてくれる方もたくさんいらっしゃいました。無料オンライン保護者会は、4月3日まで実施Upload By 発達ナビニュース今後も、週に2~3回の頻度での開催を予定しています。【今後の開催日時】3/25(水) 16:00~17:00(テーマ:家庭学習の支え方)3/27(金) 14:30~15:30(テーマ:不安定になっている子どもとの関わり方)4/1(水) 10:30~11:30(テーマ:子どもの生活リズムの乱れへの対応方法)4/3(金) 10:30~11:30(テーマ:家庭学習の支え方)今後のオンライン保護者会に参加希望の方は、下記のフォームよりお申し込みください。発達支援施設向けに通常有償でご提供している特別支援教材についても、4月5日までの期間限定で無料でご提供しています。オンライン保護者や教材のご提供について、詳しくはこちらのコラムにてご案内しています。
2020年03月24日何をしたらいいのか分からない?Upload By 丸山さとこ家の中でお子さんと過ごすことも多いこの頃、時間も体力も持て余した子どものエネルギーをどう消費させるかに頭を悩ませる保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。ASD(自閉スペクトラム症)の子の中には、余暇を過ごすのが苦手な子がいるそうですが、コウもよく「何か楽しいことしたい」と言いつつ何をすれば“楽しいこと”になるのか分からず、気分が不安定になることがあります。「つまんなーい」とグダグダし始める内はまだよいのですが、次第に不安になったりイライラソワソワしだしたりします。一緒にいると私も何だか落ち着きません。お母さん(の気力体力)は、限りある資源!Upload By 丸山さとこ家で「何したらいいか分からない」になった時など、退屈や落ち着かなさを埋めるための「ねーお母さんお母さん」が止まらなくなることは多く、休日は私がグッタリしてしまうこともしばしばです。常にコウのペースと付き合っていては心身がもたないので、ゲームや動画鑑賞・読書・工作・図鑑の模写などの“1人でできる遊び”や簡単なお手伝いなどを提案しつつ、“お母さんの関わり度”が高い遊びは私が好きなことをするようにしています。体を使った遊び…のフリをした筋トレ達Upload By 丸山さとこ発達障害のある子どもは体幹が弱かったり協調運動が苦手だったりする子が多いといいますが、コウもやはりその辺りに弱さがあります。更に、親の私も成人の発達障害者として体幹や協調運動にまつわることが苦手だったりします。そんな私は筋トレをすることで姿勢を保ちやすくなります。コウも、姿勢を保つのに必要な筋肉が勝手についてはいかないようなので、一緒に筋トレをするようにしています。Upload By 丸山さとこヨガの立ち木のポーズや英雄のポーズ、プランク、アームレッグクロスレイズなど、“体幹やバランス感覚が弱いと保持するのが難しいポーズ”を一緒に行います。より長く立っていられた方が勝ち!…としても良いのですが、コウは勝負となるとムキになりやすいところがあります。一度勝ち負けにこだわり始めると筋トレを楽しめなくなってしまう時があるので、様子を見ながら勝負にしたり、「30秒キープしたらクリア」などの目標を設定したりして行うようにしています。Upload By 丸山さとこコウは足裏のアーチが自然にはできませんでした。全然歩かない子というわけでもないのですが、足裏を地面にドンドンとつく“幼児のような歩き方”をしがちなため、正しく足を使えないことからアーチが形成されないのだろうと思います。根本的には正しい歩き方を身につけることが必要ですが、必要な筋肉がないことで「正しい歩き方は難しいし快適ではない」と感じていると、中々正しい歩き方も身につき難いのではないか?と考え、遊びがてらトレーニングをしてもらっています。脱力もトレーニングのひとつ?Upload By 丸山さとこ筋トレをした後は、軽くストレッチをしてから「しかばねのポーズ」をとり、しばらく静かに脱力します。体幹はグニャグニャでも、首肩や手足は過剰に緊張していたりするコウです。そんな彼にとっては意外と難しい脱力ですが、筋トレ後は疲労のおかげで自然と脱力することができます。脱力した時の「リラックスした感覚」を体感していけたらいいなと思っています。親子でする筋トレは一石二鳥?Upload By 丸山さとこトレーニングを始めた頃は、姿勢によっては手を離した瞬間にコロンと転がったりしていたコウでしたが、コツコツと続けることで少しずつ長い時間キープできるようになってきました。足指でのジャンケンも、最初はチョキなのかパーなのか分からない動きしかできなかったところから「明らかにチョキ」「パーをしようとしていることは分かる」ところまで動かせるようになりました。グーも、以前より指の根元から握り込めるようになってきています。そして、私自身もコウの筋トレに付き合うことでサボり癖を防ぐことができています。親子で筋トレをすることで、「親と子それぞれの筋力キープ」と「一緒に何かをする楽しさ」の両方が得られて、一石二鳥で中々いい感じです!Upload By 丸山さとこ筋トレは体に良いものですし、体を動かす遊びは充実感があって楽しいものです。とはいえ、「今日はずっとノンビリ静かに過ごしたいな…」「ゴロゴロしながら相手をしてお茶を濁したいな~!」という時もありますね。私はしょっちゅうです。ということで、次回は「体を使わず、のんびりしながらできる室内遊び」について書いていきます。
2020年03月20日家で過ごす毎日に...手先を使う遊びをやってみよう「ゲームやテレビもいいけれど...家の中でいつもと違った遊びはできないかな?」そんなときに家にあるものでできる、手先を使った遊びを動画でご紹介。小さなお子さんにも楽しんでいただける内容を集めました。遊びながらいろいろな感覚に触れたり道具を使ったりもでき、子どものスキルや好みにあわせて難易度の調整もできるところが手づくりならではのよさです。お子さんと一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか。よく見かける小麦粘土、家にあるものでカンタンにつくれるんです。自分でつくると、つくる過程から楽しむことができます。サラサラした小麦粉、水を混ぜたらベタベタしてきて...混ぜていくうちに変化していく触感もおもしろいですよね。できあがった小麦粘土はたくさん触って、いろいろなかたちをつくって遊んでみてください。過敏さがあって触るのが苦手なお子さんは、手袋をつけたりスプーンなどの道具を使ったりして、直接触らずに遊んでみることもできます。好きなイラストを描いた台紙に洗濯バサミをたくさんつけて、指先の力を使いながら遊ぶことができる手づくりおもちゃです。イラストは大人が描いて、「洗濯バサミをつけたら何になるかな?」とお子さんに想像してもらいながら楽しむのもよし、好きなイラストをお子さん自身が描くのもよし!厚紙でつくると繰り返し遊べます♪折り紙は見本通りに折る必要があって、手先が不器用だと難しいですよね。でも、切って飾りをつくるのであれば、折り紙への苦手意識があってもチャレンジできるかも。切るたびに違う模様ができあがって自由に取り組めるので、どんなかたちになるかワクワクしながらつくることができます。たくさんつくったら、飾りとして家の中に貼るのもいいですね。
2020年03月19日長男入学時、初めての保護者説明会でのこと長男が特別支援学校に入学して、初めての保護者説明会のこと。「入学後に必要なものリスト」という資料が配布されたのですが、その中に「個人備蓄品」とありました。何だろうそれ、頭の中が?です。通常学級に通う双子の次男が入学した学校では、そのようなものはなかったからです。すると先生から説明がありました。「特別支援学校には通学バス、あるいは公共交通機関を使って遠方から来ている子どもたちが多いです。万が一地震などの災害が起きて交通インフラがストップした場合、親御さんが引き取りにくることが困難になるかもしれません。3日間は学校で過ごせるように、各自非常食を3日分用意してください」Upload By シュウママそういうことか、と納得しました。けれど非常食はどのようなものを用意すればいいのか分かりません。好き嫌いの多い長男に合うものはあるだろうか、そう思っていたときでした。先生が机の上に何やら並べはじめたのです。種類もさまざま!どれが子どもの好みなのかそれはいろんな種類の非常食でした。Upload By シュウママ乾燥したお餅とセットされた水、そしてあんこやきなこ顆粒をふりかけるタイプのもの(トレーや箸もついています)、袋を開けてすぐ食べられる煮込みハンバーグやおでん、肉じゃが、あるいはビスケットにつけるチューブ入りのチョコなどいろいろあります。先生はそれを袋から出して皿にあけ「試食して、これを参考にご家庭で準備してください」と言われました。私も試食したのですが、食べてびっくり!非常食はパサパサしていると思い込んでいたのを覆し、なかなかに美味しかったのです。Upload By シュウママちょっと多めに非常食を取り寄せて、食べさせてみる私はさっそく非常食を取り寄せ、長男に食べさせてみました。自閉症で好き嫌いの多い長男のこと、やはり試食させて正解!食べられないものも何点かありました。けれどあんこの入ったお餅は気に入ったようで、パクパク食べること食べること。Upload By シュウママそれと何点か長男の好きそうなものを学校から配られた非常用持ち出し袋に入れました。この非常用持ち出し袋は毎年、学年末に学校から戻されて中身を確認します。そして賞味期限の切れそうなものは都度入れ替えます。4月で6年生になる長男。今年もまた非常用持ち出し袋が戻ってきました。他にもある!特別支援学校での取り組み長男が通う特別支援学校では、他にも防災訓練の一環として、学校の体育館、教室、テントなどで生活する体験会を計画しているようです。発達障害のある子どもは予想外の事態に柔軟に対応することは難しいと思います。そういった取り組みはとても必要でありがたいことだなと思います。自宅でも、食料品や水をストックしているのですが、これは地震が起きたときに使うものだよと長男に説明しています。さて、あっという間に小学校最後!の年がやってきました。大きくなった長男、どれくらいの量食べられるだろうか、そんなことを考えながら、新しく買った非常食を詰めている母なのでした。Upload By シュウママ
2020年03月18日前回までのあらすじむっくんが小学校進学後に在籍する学級に悩み、就学相談を受けた私たち。むっくんの特性を客観的に考え、担当者との面談を経て、「むっくんに用意したい環境」をイメージすることができるようになりました。小学校訪問そして、いよいよ小学校訪問です。当日は私、夫、むっくんの3人で小学校を訪問。校長先生とゆっくりと話す機会はなかなかないので、貴重な1日になりました。Upload By ウチノコ自閉症・情緒障害特別支援学級の見学むっくんの小学校は自閉症・情緒障害特別支援学級2クラス、知的障害特別支援学級が1クラスあり、定員は各クラス8名、先生は5名につき1人という規定で運営されていました。まずは特別支援学級3クラス合同の体育の授業を見学。1年生から6年生まで、情緒障害特別支援学級の子も、知的障害特別支援学級の子も交ざっての体育は発達や感覚統合の考え方を取り入れてある内容もあり、見学して初めて小学校でもこういう取り組みがあることを知りました。次に自閉症・情緒障害特別支援学級の教室の見学です。教室にはあちこちに子どもたちのための合理的配慮が取り入れてあり、TEACCHを使った支援が掲示してあったりと、工夫の様子を見ることができました。これらは話だけでは分かりえなかった情報で、見学することはとても大切だと感じました。むっくんの通う小学校は特別支援教育にとても力を入れている様子で、校長先生自身も発達障害に対する知識をしっかりお持ちで、質問に対しても専門的に回答していただくこともできました。ここまで熱心に取り組んでくれている小学校もあるのかと、涙が出るくらい嬉しく同時にとてもホッとしたのを覚えています。Upload By ウチノコ通常学級の見学通常学級の見学ではむっくんも授業に参加させてもらい、楽しい時間を過ごすことができました。発達障害の勉強をされていらっしゃる先生も、まだ経験不足を感じる先生もどちらも見ることができ、先生によってクラスの雰囲気が異なる様子を体感。これはむっくんの進路を考えるうえで大きな情報になりました。知識のある先生のクラスでは、できる限りの環境調整もしてあり、通常学級での努力も知ることができました。ひょっとしたらむっくんは通常学級に通うことができるかもしれないなぁとも感じましたが、なんとか通常学級に適応できたとしても集団活動に苦手意識のあるむっくんにとってその環境が幸せなものであるかは疑問だとも思いました。Upload By ウチノコ進路決定学校からは、「どちらに決めてもいつでも進路を変えることはできる。しかし年度途中で通常学級から特別支援学級に変更する場合、先生の人数を急に増やすことは難しいので、理想的な環境をすぐに用意できないケースもある。逆に特別支援学級に籍を置いて、ほぼ100%通常学級に通う子もいる。こちらのケースの方が学校としては環境は整えやすい。」という運営上の事情も正直に教えていただきました。おかげでむっくんの小学校では通常学級よりも、特別支援学級のほうが汎用性が高いことも理解できました。以上を踏まえて、現在のむっくんに少人数でひとりずつ向き合ってもらえる特別支援学級の方が向いていると確信しました。相談しやすい小学校の雰囲気を感じ、成長による変化があればまたその時々で相談しようと思えたことで私の気持ちも楽になりました。そして何より、特別支援学級の丁寧な運営が「私も通いたかった!」と思うほどだったことで、私は安心してむっくんの進路を自閉症・情緒障害特別支援学級に決めることができました。Upload By ウチノコむっくんの気持ちを確認する私の気持ちが決まっても、通うのはむっくんです。私とむっくんは「どちらに通いたいか?」という話を学校訪問前から度々交わしており、むっくんの気持ちは「今は自分で決められない」ということだと確認してありました。見学後もむっくんの気持ちに変化はないよう。そこで、私の思いを正直にむっくんに伝えました。すると、むっくんなりに理解してくれたようで、お互い納得のうえ、1年生は特別支援学級の希望を出すことになりました。Upload By ウチノコ就学相談を終えてここ数年、私の頭の中はむっくんの小学校での進路でいっぱいでした…。今思えばあれこれ考えるよりも早く見学に行っていたらよかったなぁと思います。百聞は一見に如かずとはよく言ったもの。実際見学し、先生方と直接不安について話せたことで、頭の中で思い描いてたモヤは晴れ渡りました。子どもにとって良い選択を、と求められたところで、その答えはずっと先にならないとわかりません。特別支援学級にした方が良いと言われながら通常学級にきめることもありです。また通常学級と言われながら特別支援学級にすることもありです。もっとほかの道を模索することもありです。違うなぁって思ったらまたそこで立ち止まって考えたらいいと思っています。私は特別支援学級と決めましたが、今後問題が起こらないわけでもないし、そもそも集団が苦手なむっくんが小学校に通い続けるかすらわかりません。きっとむっくんの小学校生活は驚くような出来事でいっぱいで、その度に先生たちと相談し合うことになると思っています。だけど、私が自分でしっかりと考えて決めたのだからこれがいいのだ。何が起こってもなんとかなる!という覚悟をきめて、私なりにむっくんの小学校生活を支えられるよう頑張っていきたいと思っています。
2020年03月17日「困りごと」を誰かに伝えることはおとなになっても難しい出典 : 発達障害の診断を受けてから、発達障害当事者としてインタビューを受ける機会が何度かありました。そこではおおむね、当事者として発達障害の「困りごと」についてお話をすることが多いです。しかし、たとえば以前視覚過敏についての「困りごと」を聞かれたとき、私はうまく答えることができませんでした。というのも、“視覚過敏がない状態では周りの景色がどう見えるのか”を知らないため、何をどう伝えればいいのかうまく考えをまとめることができなかったからです。視覚過敏がある状態が私にとっての通常の見え方なのです。結局その場では、強い光を浴びると目が開けられないとか、夜は街灯や車のライトが拡散して見えるといったお話くらいしかできずにインタビューを終えました。これをきっかけに、こういう「周りからは困っていそうに見えるが、本人はそれに気づいていない・あるいはうまく説明できないこと」というのは多いのではないかと考えはじめるようになりました。そこで今回は、世の中でいわれている発達障害の特徴や困りごとと、自分が実際に感じている困りごとについてを書き出してみようと思います。多分疲れやすいほうだし、そもそも自分の疲れぐあいに気づけない出典 : さまざまな本やホームページなどをみてみると、“発達障害当事者は疲れやすい”と書かれることが多いと感じています。私も体感として、毎日仕事が終わって家に帰るとぐったりしてしまって何もできない時間が数時間あるし、自分はかなり疲れているんだろうなと感じています。その疲れやすさが他のひとと比べてどうなのかと聞かれると、「言われてみれば自分は疲れやすいのかなと思う。ただ、他のひともこのくらい疲れるだろうと考えているので、自分が特別疲れやすいのかどうかはどうにも判断できません」という回答になります。そもそもこのくらいの活動をしたからこのくらい疲れているかな?などと他人の疲れ具合を想像することも難しいので、比較して考えることも難しいのです。また、自分自身だけに視点を向けて、自分の疲れについてどう認識しているか聞かれるとすると、「多分いま疲れてると思うけど、正直よくわかりません」という回答になります。そもそも自分の状態に気づくということがとても苦手なのです。たとえばお酒を飲んでいるときも自分がどのくらい酔っているのかわからずに飲みすぎてしまったり、体調が悪いときに自分に食欲があるのかがわからなかったりします。周りから見ても明らかに足元がフラフラしてからようやく酔っていることに気づいたり、すぐにお腹がいっぱいになって全然食べられなくなってから初めて食欲がなかったことに気づいたりします。発達障害の当事者(というか私自身)が疲れやすい原因として、この「自分の状態に気づけない」というところも大きく影響しているのかなと感じています。自分の疲労に気づけないためにペース配分を考えなかったり休憩をとらなかったりして、エネルギーを使いすぎてしまうという側面もあると考えているからです。発達障害のない人は、自分の体調に自分で気づいて適切にコントロールしていることが多いのかなと思います。それができる人から見ると、私のようにペース配分ができず疲労を溜め込んでいる人は「疲れやすい人」に見えるのでしょう。空気を読めない・・・の背景にあるもの出典 : これはASDの特徴になりますが、「周りの空気を読めない」とか「人の気持ちを想像できない」というものがあります。周りから見るとたしかにそう映るのだろうなと思うところではあるのですが、私としてはちょっとニュアンスが違うのかなと感じています。私の場合、子どものころは「他人の気持ちが存在することを想像していなかった」ということはありましたが、思春期のころからいまもずっと周りの空気がどういう状態かとか、自分がどう振る舞うべきかを自然と察することが難しく、毎回意識的に考えるようにしています。考える練習を繰り返してきて、「何かやらなければいけない場面である(どうすればいいかはわからないけれど...)」ということと「結果、その場面がどうなったか」はある程度適切に理解できているのではないかと自分では思っています。しかし肝心の「自分がどう行動するのがその場にふさわしいのか」というところのすれ違いが本当に多いです...結果として周りからは「空気を読めない」とか「人の気持ちを想像できない」というように映るのかなと思います。空気を読んだつもりが…新入社員時代の失敗たとえば私が新卒で入った会社でのできごとなのですが、入社してすぐに新人研修が開催されました。その研修講師の方は私たちの上司や同期にもウケがよかったこともあり、研修の全日程が終わったあとに新人主催で講師を交えた飲み会が開かれました。半月後、別の研修があったのですが、その講師の方は私たちの上司や同期からのウケがあまりよくありませんでした。ところが「この前は飲み会があったし、今回もやるんだろうな」と思った私は、講師の方に「今日の飲み会はいらっしゃるんですか?」とダイレクトに質問してしまいました。慌てて他の同期がフォローしていたのですが、後日その同期から「きみが空気読まずに講師の方に飲み会の話をするからびっくりしたよ」と冗談交じりのクレームを受けました。私としては『研修が終わったら講師を交えて飲み会をするもの』なのかなと思っていたのですが、いま振り返ってみると私たちの上司や同期が“一緒にお酒を飲みたいなと思うかどうか”がポイントだったのです。そのとき私以外の社員の中では「今回の講師は一緒に飲みに行きたいタイプの人ではないな」という空気ができていたようなのですが、私は全く気づいていませんでした。私なりに新人として研修後の飲み会のことで率先して動いたつもりが、そのときの周囲の気持ちとはズレた行動になってしまったのです。発達障害のない人は、自分自身から一歩離れて客観的に考えて状況を把握し、適切な振る舞いをすることが自然とできるのだと思います。当事者である私も適切に状況を判断しているつもりなのですが、もしかしたら自分の疲れに気づけないのと同じように、周りの状況にも気づけていない部分がたくさんあるのかもしれません。私の本当の困りごとは「周りの状況を適切に把握できないこと」なのか「自分が適切だと考えている振る舞いが実際には適切ではないこと」なのか、あるいはその両方なのか。正直なところ自分ではわかりませんし、周りから見たら結果としては同じ「困りごと」として映ることでしょう。自分のことに気づききれていないこと、周囲の状況を適切に捉えられていないかもしれないこと。それぞれ解決していくとしてもまったく異なるアプローチとなってしまうため、ひとりで克服していくのはかなり難しいなと感じています。周りから見える困りごとの奥に本当の困りごとがあるかも?出典 : ここまで私自身が感じている困りごとについて書いてきましたが、もしかしたらこの記事を読まれている方の周りにいる当事者の方も同じように、周りから見えている困りごとと本人が感じている困りごとが、実はちょっと違うことがあるのかもしれません。表面化している事象だけでなく、根底にあるその人の特性や苦手に関してのサポートが必要な場合もあります。当事者をサポートしていてあまりサポートの効果がないなと感じるような場合、もしかしたら当事者の方が本当に困っている部分とサポートしている部分がずれているのかもしれません。そのような場合、その困りごとに直面しているときに本人がどう感じているのかを確認したり、普段の様子を観察して他に困っているポイントはないかを探ったりすることも必要かもしれません。当事者としてもこのあたりをうまく言葉にして伝えるのはかなり難しいところなので、サポートする際に「どう感じているの?」と質問して、本人の困りごとや必要なサポートについてすり合わせをしていくことが大切だと思います。ただ、感覚的な部分などは自分にとっては“当たり前”になっていて、困りごととして認識していない場合もあります。そのため当事者が自身の困りごとについて言語化するのはなかなか難しいと思いますが、言語化する機会を増やしていくことで、自分の感じ方や考え方を振り返る機会も増えます。自分の状態を他のひとに伝えることができるようになると、対処法が見つかったり環境面の工夫で解決できたりと、当事者の生きづらさが軽減されるのではないでしょうか。どういうところに困っているかとか、困っているときにどう感じているのかというところは、自分ひとりではなかなか考えることが難しいところになるのかなと思っています。そのあたりを考えたり言葉にして話したりする機会があると、当事者にとってはとてもありがたいサポートになるのではないかと思います。
2020年03月12日発達ナビユーザーから寄せられたニーズを紹介。特設ページも開設しましたLITALICO発達ナビでは「新型コロナウイルスによる休校措置についてのアンケート」(実施期間:2020年3月4日(水)から3月8日(日)、回答数279)を行いました。発達が気になる子どもの保護者の声が多数寄せられました。仕事への影響、親子のメンタルへの影響、そして情報不足に悩む姿――このコラムでは、調査結果から分かったことを紹介。また、アンケートで浮かび上がったニーズから、特設ページを開設。特設ページの内容についてもお伝えします。発達ナビユーザーから、約280の声が集まりました今回アンケートに協力してくれたユーザーのうち、72.8%が小学生の保護者、うち44.1%が低学年でした。特別支援学校小学部に通う子の保護者は1.8%でした。11.5%が中学生、5%が幼稚園でした。Upload By 発達ナビニュース71.7%が共働き、9.7%がシングル世帯です。その他18.6%の中には、母親が専業主婦もしくはシングル世帯で現在休職中などが含まれています。約40%が保護者と在宅、約15%が子どものみで留守番。放課後等デイ利用は約17%Upload By 発達ナビニュース共働き、シングル世帯が8割を超えているものの、全体の4割は保護者と過ごしているという状況が明らかになりました。また、どうしても都合が付けられず、子どもだけで留守番をしているという家庭、祖父母に見守りをお願いしている家庭もあります。学童や学校預かり、放課後等デイを利用できていても、通常よりは預かり時間が短く、仕事の調整をしてしのいでいる家庭も多そうです。Upload By 発達ナビニュースアンケート結果からも、31.6%が通常の勤務とは違う形で就労していることが分かります。具体的には、給与減を伴うシフト調整などで対応している家庭が15.8%、テレワークが6.1%、時短等が4.7%、有給等が5%という状況でした。保護者の心配ごととは?子どもの学習機会減や生活リズムへの影響、家庭内でのトラブル増への懸念が大きいUpload By 発達ナビニュース最も多かったのが「子どもの学習機会減」でした。学校のみでなく習い事なども中止となる中、子どもの学びを保障できる機会が減っていることに大きな危惧を抱いている様子が分かります。また、学校だけでなく「習いごともすべて中止になり体力を持て余している」「ゲームづけの毎日に」「未就学児保護者への優遇はあっても障害児保護者への理解はなく早く帰れない」「普段は学童だが今回は低学年優先で対象外に」といった声もあげられていました。平日日中、子どもはどのように過ごしている?Upload By 発達ナビニュースゲームをしているという答えが最も多く、次に学校から出た宿題、漫画や本、動画配信サービス、ドリルや教材という順でした。勉強もさせているものの、どうしても一人で楽しめる遊びに傾きがちな様子が浮かび上がります。家での生活、それぞれの家庭ではどんな工夫をしている?「タイマーを使って、学校の時間割のように、勉強時間を区切り、学校でのリズムを真似ている」「毎日、やるべきこと、遊びの選択肢を箇条書きして見える場所におく」など見通しをつけやすくしたり、「子どもがいかに課題に取り組めるか課題を小分けにしたり、声かけ」「なるべくしりとりやクイズ、逆にクイズ(問題)つくりなどやって一緒に楽しむ」といった課題の出し方の工夫、「朝、親が出かける前に、今日やっておいてほしいことを伝える。skypeなどで連絡がとりやすい状態にしておく」「休憩時間に電話やメールで安否確認と指示。どうしても困ったら連絡するように伝えている」など保護者が不在でも不安にならないようにするという声が多くありました。「なるべく会話をするようにしている。テレビも見せっぱなしではなく、感想を言い合ったりしている」など、動画配信サービス等も一人だけで完結しないよう関わるようにしているというユーザーもいました。「夕飯のメニューやおやつを子どもにリクエストしてもらい、イベントにして機嫌を良くする」「ひたすら子どもの好きなメニューをつくる」と、食事面でメンタルを安定させる工夫をしているという方も。「和室にテントを張ってレジャー気分。秘密基地にもなって楽しそう」など、屋内であっても小物などを使いいつもと違う雰囲気にしているというご家庭もありました。メンタルへの影響大。子どもも保護者も不安定に子ども自身も不安定になり、そうした子どもと一日中過ごす保護者自身もストレスを感じているという状況が浮かび上がりました。また、適切な情報が入ってこないことも保護者の不安を大きくさせています。子ども自身「気持ちのバランスを崩し、特に寝付きが悪い。一日に何度も突然のハイテンションと突然の沈黙を繰り返したり、ADHDの困り事が急増。慣れたと思っていた、社会性が必要な場への緊張感が増してしまい、自傷行為が目立つ」「スケジュールに対するこだわりがより強くなって、混乱している」など不安定になっています。また、外出できないストレスなどに加え「課題を親が管理しなければならない。あれこれやれと言えばキレたりして物に当たる。本人もどう手をつけて良いか分からなくなっている」「家庭学習を集中して行える環境になく(テレビ、本、おもちゃなどが見える)、大人が見守っていないと課題をやらない。親の疲れが増大」など、通常学校で行っている学習を保護者が管理・確認することで子どもとの摩擦がおきているという状態もあるようです。また、「今は休みで嬉しいと言って過ごしているが、日中留守番で見守りできない状況の中、テレビやゲームを長時間やっており、体を動かさないこともあり夜には疲労が蓄積している様子。イライラや不機嫌などが長く続くと精神的な不安定さが増すと考えている」など、生活リズムの乱れから健康面で影響が出てきているという心配も。きょうだいも24時間一緒にいることから「きょうだい児へのストレス」「兄・姉・妹トラブル。常に衝突をする。3人共に発達障害がありトラブルの連続」など、家庭内でのトラブルが起きています。子どものメンタル面をサポートするため、スキンシップをとったり、細かく言いすぎない、好きなことをできる時間を多く設けたりといったことを心がけているご家庭も多くありました。また「暴れないかヒヤヒヤ。服薬させお腹を満たしあまり強く言わない」「刺激しない、親ががまんする」など刺激しすぎないようにしているという声も。保護者へのストレスも大きくなっている現実があります。Upload By 発達ナビニュース情報はどこから得ている?必要な情報は届いている?Upload By 発達ナビニュース「保護者の皆さんは地域の状況の情報はどのように入手していますか?」という設問に対し、自治体や学校からのメール連絡、テレビのニュース、自治体のホームページを見るという回答が多い反面、「必要な支援はなんですか?」という設問に対して、最も多くあげられたのが”学校や自治体からの速やかな情報連携(115名)”でした。なかなか十分な情報が届いていない様子が感じ取れます。発達障害のある子と家族向けの特設ページを開設!地域情報のシェアや最新関連コラム情報をまとめて紹介発達ナビでは、2020年3月10日より、新型コロナウイルス関連情報をまとめたページを開設しました。発達ナビユーザー同士での情報シェアができる非公開コミュニティ(匿名制)や、関連コラムのアーカイブなどがまとめてみられます。ユーザーアンケートから明らかになった「適切な地域情報が手に入らず不安」「家での過ごし方が分からない、トラブルが増えて困っている」「親子ともにメンタルが不安定になっている」という皆さまに向け開設しました。新しく開設したコミュニティは「47都道府県別コミュニティ」のほか、「家での過ごし方、人込みを避けた過ごし方」「こんな支援が必要です」「親も子も不安定、そんなときは…」「昼間の子どもの居場所は?預け先は?をシェア」です。ぜひご活用ください。関連コラムは、今後も随時配信予定です。また、発達ナビでは、ユーザーの皆さまが必要とするメンタル面でのサポート、お子さまの学習機会に寄与する支援なども充実させていきたいと考えています。こうした情報を、ひきつづきお知らせしていきます。
2020年03月11日休校で自宅待機...不安やストレスを感じやすい子どもたちへの対応はこんにちは。「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法」他・著者、楽々かあさんこと大場美鈴です。世の中、大変なことになってきましたね。新型コロナウィルスの世界的な拡がりに伴い、日本では園や学校が突然休校となり、春休みまで自宅待機をしているお子さんも多いですよね。こういった状況では、どんな子もストレスを感じやすいと思いますが、特に、発達障害・グレーゾーンで、「いつもと違うこと」「予測できないこと」に不安を感じやすいお子さんや、活発でエネルギッシュで活動的なお子さんが、変化の多いイレギュラーな状況や行動範囲が制限される期間が続くほどストレスをためがちになるのも無理のないことだと思います。また、親のほうも、やむを得ず子どもを一人で留守番させたり、学童や放課後等デイサービス、高齢のご家族に預ける中で相互の感染リスクが心配になったり、ご自身の仕事のことや今後の世界経済や物流への影響、学校再開の目処などへの、不安要素は尽きないことでしょう。こんな時に少しでも子ども達の不安とストレスを減らす方法を、うちの経験を踏まえて紹介します。保護者の方にも負担なく、手軽に簡単におうちでできる工夫をできる限り紹介しますので、少しでもヒントになると嬉しいです。不安な気持ちを安心させる工夫Upload By 楽々かあさんまずは、安心させる工夫から。「いつもと違う」ことが不安な時には、できるだけ、小さなことでもいいので、「いつもと同じこと」を続けると、安心できるかもしれません。お子さんが毎日習慣にしていたことは、同じようにできるといいでしょう。例えば…・朝、学校に行く時と同じ時間に起床し、同じ時間に朝食を食べる…など。いつもと同じ「朝のルーティン」をこなすだけでも違いますし、親が朝はバタバタして難しくても、お風呂や就寝時間などの生活習慣を「いつもと同じ」にしたり、家族が毎日決まって行う習慣(挨拶、ゴミ出し、コーヒーを淹れる…など)を目の前で続けるのも、安心感があると思いますよ。その他、お子さんが「いつもやっていること」があれば、可能な範囲で続けさせてあげると、落ち着きやすくなるでしょう。また、不安感が強い時やお留守番の時なども、お子さんが慣れ親しんでいる「安心グッズ」を身近に用意しておくとGood!感覚が敏感な子は特に、「いつもと同じ」色やニオイ、音、さわり心地、味・食感などがあると安心感を得やすいので、例えば…・肌触りの良い毛布や、使い古しの布団でくるむ・愛着のあるぬいぐるみ・キャラグッズなどを見えるところに・落ち着く音がするモノ(ノイズ音、波の音など)や、お気に入りの音楽をBGMに・お昼ごはんに給食メニューを一部再現(紙パックの牛乳、ソフトめん、冷凍みかんなど)…などなど。うちでは、愛犬の肉球や、母のぷにぷにの二の腕、パパの加齢臭の染み込んだ枕などが、子ども達に人気の「安心グッズ」です(笑)。そして何より、子どもが不安な時には、保護者の方と一緒に過ごせれば落ち着きやすいと思いますが、諸事情でなかなか難しい場合には、・時々、見守りカメラやスマホのビデオ通話などで、お互いに顔が見えるようにする・遠方のおじいちゃん・おばあちゃんと電話でお話しする・親の仕事中の様子などを動画で撮って、メッセージで送信…など、「離れていても一緒にいるよ」というメッセージが伝わる方法を、ご家庭に合った方法で工夫できるといいでしょう。持て余したエネルギーを有効活用する工夫Upload By 楽々かあさん次に、活発なお子さんなどが、エネルギーを持て余している場合(…日頃から、大変ですよね)。ただでさえ、じっとしているのが苦手な子が、「家から出てはダメ」「近所迷惑になるから、家の中で騒いでもダメ」「くれぐれも、勝手にゲームセンターなどには行かないように!」…など、やむを得ない非常事態とはいえ、「あれもダメ、これもダメ」ばかりでは、当然ストレスは溜まりますよね。ここは「やってはいけないこと」より、「やっていいこと・できること」を教えてあげるといいでしょう(ちなみにうちの長男は一日中オンラインゲームでも全く飽きないようですが、それはそれで、親の小言も増えがちに…苦笑)ご存知のように、軽く体を動かすことは、ストレスを和らげてくれます。既に、家の中でできるあそびや運動・体操などは、ネット上でも沢山動画などがアップされていますが、ここではシンプルな方法を。・親子ストレッチ、深呼吸、くすぐりあそび・お風呂そうじ、床の雑巾がけ、窓拭き、庭の草むしりなどのお手伝い・トランポリン、バランスボール、フラフープ、エアロバイクなどの室内器具を使った「ながら運動」…などが、手軽でオススメです。園児〜小学校低学年くらいのお子さんには、・夏場のビニールプールを出して、ボールプールに(ボールがなければ、ぬいぐるみプールやレゴプールなども)・浮き輪やダンボール、椅子の脚、マットレスなどを組み合わせて、簡易アスレチック…などの工夫もできます。中高生のお子さんがヒマそうにしていたら…・家具の配置換えや家の補修、DIY、粗大ごみの解体、車の洗車を手伝ってもらう…などもいいでしょう。また、「絶対に、一歩も家から出てはいけない」ワケではないので(2020年3月10日時点)、人混みを避けた、空いている時間帯や場所を選んだ上で、少し外の空気を吸ってくるのもいいと思います。うちでは、人の少ない早朝の時間帯に、犬の散歩に行ったり、自転車やランニングで近所を軽く一周してくるなどで、リフレッシュしていますよ。親子でストレスをスカッと解消できる工夫Upload By 楽々かあさん自宅待機が長期化してくると、子ども達の(そして親も)ストレスが爆発することもあるでしょう。そんな時に、「怒ってはダメ」「みんなガマンしているんだよ」なんて言い聞かせても、納得できない子もいますよね。ここは、正論よりも親子でスカッとできる方法を工夫するのが現実的。手軽にできるストレス解消法は…・空き缶・ペットボトルつぶし!・クッション、サンドバッグ、パンチボールなどをパンチ!キック!・お風呂で水風船を叩き割る!・穴を開けた箱や重ねた紙袋に向かって「あ”ー!!!」と叫ぶ!…などなど。親も一緒にやると、結構スッキリして楽しいですよ。サンドバッグは、布団や毛布をくるくる丸めてヒモなどで縛るだけでも自作できますし、パンチボールは、家にあるゴムボールや丸めた服などを、ネットや体操袋に入れて吊るせば代用できます。市販のボクシング用のミットとグローブ(なければ、重ねた手袋と小さめクッションでも可)で、親がスパーリングの相手になってあげると、お互いいい運動になりますよ。また、うちでは長女の要望で床一面に模造紙を広げて落書きOKにしたり、3兄妹で大量に作った紙飛行機でサバイバルゲームを始めたり、自分達で次々とあそびのアイデアを思いついては、意外と飽きずに楽しく過ごせています。子どもはあそびの天才ですからね。子どもに笑顔が戻ったら、ストレスが解消されたサインです。未知の経験は、誰もが不安になるからこそ…こんな時には、誰だって、不安になるのは当たり前です。でも、そんな中だからこそ、できることや気づくこともあります。これからを生きる子ども達には、もしかしたら、今後も新型コロナウィルスだけでなく、地球環境の変化や、グローバル化や情報化社会のメリット・デメリットとも、共存しながら工夫して生きていく、柔軟でたくましい力が必要とされるのかもしれません。一刻も早く、子ども達が(大人達も)、何事もなく平穏無事に過ぎていく、当たり前の日常を取り戻せますように…。大場美鈴/著『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』2017年/刊/ポプラ社
2020年03月10日通常学級でも大丈夫…?むっくんはADHDと自閉スペクトラム症の診断を3歳半の時に受けていて、就学相談の受付が始まる前から、小学校入学後の進路について考え始めていました。そのとき、まず最初にしたのは現在のむっくんの情報をできるだけ客観的に考えて整理すること。Upload By ウチノコ診断を受けた当時の手が付けられなかった頃と違い、6歳になった今は一見、困難さを抱えているようには見えません。自宅ではほとんど手はかからず、会話能力も十分あり、最近では気持ちを言葉で表現できることも増えてました。読み書きも数字や計算も好きな様子。5歳8か月で受けたWISC-Ⅳという知能検査や、言語発達遅滞検査でも大きく数値に現れるような偏りや遅れはありませんでした。コミュニケーション能力においては、多少の偏りはあるか?という評価を受けましたが、主治医や知り合いの特別支援学級の先生、療育教室の先生などからは、データから考えると問題なく通常学級に通えるだろうと判断されていました。そうだな、落ち着いていれば大丈夫だ。私もそう思います。そう、「落ち着いてさえ、い・れ・ば…」です。むっくんの見えない困難さとは?落ち着いていれば理性的なむっくんですが、「集団の中」に入ると様子が変わります。むっくんは自分の気持ちを我慢して、周囲の行動、大人や先生の要求に応じることがものすごく苦手です。また、感覚の過敏さから集団の中で生じる音や臭いなどをつらく感じることもあり、これも大きくコンディションを崩す原因になります。Upload By ウチノコそしてコンディションが崩れてきた時に、「強い衝動性からくる、やりたい!気持ちを無理に押さえつけられる」「一方的な叱責や行動制限を受ける」「不愉快な刺激から逃げられない」などの事象にさらされるとむっくんは別人のようになってしまいます。感情のコントロールがきかなくなり、大きな声で泣き、叫び、暴言、暴力、逃走など激しい行動に出ることがあります。普段の理性的なむっくんは消え、幼く退行してしまいます。この衝動について理性的なむっくんと話すこともありますが、今は「自分でもどうしたら良いかわからない」と話してくれました。就学相談開始前、私の思い小学校は集団で過ごすことになるので、基本的にむっくんのコンディションは「悪い」と捉える方が自然だと私は考えました。悪い=本人が辛いのだから、まずはできるだけコンディションを保ちやすい環境で過ごせることを大切にしたいと思いました。当時は、まだ特別支援学級がどういう場所であるのか、主治医が通常学級で大丈夫と言っているのに、通えるのかどうかも理解できていませんでした。それでも、少なくとも通常学級はむっくんにとって辛い可能性が高いと考え、仮に通常学級に通うとしても何らかの支援があると安心だと感じたことから、小学校と相談の場を持つために就学相談を申し込むことに決めたのです…。Upload By ウチノコわが家の就学相談スケジュール私の住んでいる市町村区では就学相談は年長になった4月より受付開始というシステムでした。早々に受けるつもりでいたので、年中の冬には主治医に希望を伝え、就学相談に備えて2月、3月に発達検査を受けました。(過去の発達検査は本人の検査拒否で参考値しかなかったので)4月早々に就学相談を申し込んで、その後の流れはこのような説明を受けました。Upload By ウチノコ就学相談担当者との面談を通して最初に就学相談担当者から様々な聞き取りをしてもらいました。むっくんも面談し、簡単な特性を見るテストのようなものを受けました。主治医に通常学級で良いと言われていたことから、特別支援学級を希望できるかわからなかったのですが、むっくんは希望すれば自閉症・情緒特別支援学級を選べるということで、選択肢が広がりホッとしました。その後も更に2、3回面談を行い、小学校の通常学級や特別支援学級のシステム(先生の人数、1クラスの人数、授業、活動内容)について説明を受け、質問にもわかる範囲で答えていただきました。担当者との相談を通して、私自身が不安に感じていることも見えるようになりました。小学校に通うのは子どもですが、何か起こった時は小学校と親の連携が大切になってきます。頑張るのは子どもだけではありませんので「子どもにとって」だけではなく、「私にとって」を考えることもまた、大切だと感じました。Upload By ウチノコ私なりに考えたむっくんに用意したい環境面談のおかげで「むっくんと私にとって理想的な環境」をイメージすることができました。・通常学級よりも人数の少ない自閉症・情緒特別支援学級の方がむっくんに合っていると思う・私自身も先生としっかりと連携してむっくんの小学校生活を支えたいと考えている(積極的に相談していきたい)・むっくんのコンディションが悪い時の避難先(クールダウンスペース)を用意しておきたい・通常学級には同じ園のお友達も多くいることからそちらとも繋がりは絶ちたくない・交流学級というシステムは素敵だが、集団生活が苦手なむっくんは必ずしも決まり通り行けるかわからない。その都度本人のコンディションを見て対応してほしい・むっくんは自分で決めたことはしっかりと頑張る人なので、しっかり対話した上で日々のことを決めて欲しいということでした。細かい支援方法は小学校によって異なる為、願ったからと言って叶えられるものではありません。だけど小学校訪問前にある程度自分の気持ちをまとめたことは、今思えば訪問時に何を確認し何を質問するかを明確にでき、当日を有意義に過ごすことに繋がりました。面談後、担当者の方は保育園を訪問し集団でのむっくんの様子の確認や担任の先生への聞き取り、小学校からも園にむっくんを見に来てもらったりと準備を進めていただきその年の11月、私たちは小学校訪問に臨みました。Upload By ウチノコ
2020年03月10日"まわりはみんな敵!"だったリュウ太が、初めて気をつかえた相手はUpload By かなしろにゃんこ。ADHDと広汎性発達障害がある息子リュウ太は学校など大勢がいる場所では、お調子者に振舞ったり強がる傾向にある子どもでした。ん?21歳になった今もかな…?でもなぜか女の子の前では態度が一変して、調子のいいしゃべりも強がる振舞いも控え目になることが分かるエピソードがありました。小学校1年生のとき。リュウ太は保育園から同級生の女の子Sちゃんとよく遊んでいました。Sちゃんはいつもリュウ太に優しくしてくれていました。当時のリュウ太にとって同年代のお友だちは全員ライバルのようで、どの子とも敵対しながら遊ぶような仲でした。特に休日などに男の子数人で集まって遊ぶと、遊びのルールのことで意見が分かれて言い争いになり、すぐ解散してしまいます。遊べて1時間?くらいでしょうか~…短かっ!結局家の中で一人で遊んだほうが気楽で楽しいとなり、午後は一人で過ごすことが多かったのです。しかしSちゃんと遊ぶブームが来てから、リュウ太の気持ちに少しだけ変化が起きました!Upload By かなしろにゃんこ。自分に優しくしてくれる子に不思議な気持ちを抱いたのかもしれません。「Sちゃんは優しい」と言って、その子を気に入っていました。"優しくしてくれる"といっても、普通に話してくれて「リュウ太は?何して遊ぶのがいいの?」と落ち着いて質問をしてくれるだけなのですが、当時は「周りはみんな敵だ!」と思い込んでいた時期ですから、Sちゃんの何気ない気づかいに感動し、心を開くことができたのでしょう。さらにリュウ太は父親から「お母さんを含む女の人や女の子には優しくしなさい」と教えられていましたから、「ボクもSちゃんに優しくしないとな!」と気をつかうことを覚えたようでした。Upload By かなしろにゃんこ。21歳になった息子に「あのときSちゃんと遊んでどう思っていたの?」と聞いたら、周りが敵だらけの世界で生きている自分を労わってくれているように感じていたそうです。「男子同士のときみたいに乱暴なことも下品なことも言えないし、恐がらせないようにしたほうがいいんだろうな~と思ってた。もしかしたらはじめて相手のことを考えて遊んだかも!そんな記憶がある」とも言います。Upload By かなしろにゃんこ。保育園時代は気に入らないことがあるとオモチャを投げたりして暴れていた息子。小学生になってからも男の子同士ケンカのトラブルもありました。この子は人とうまく遊べないのかもしれない...と思い込んでいたので、女の子相手のときだけ気をつかって遊んでいる姿を見て、小学生にして尻に敷かれているような感じでおかしかったのを思い出します。ふたりでどんな遊びをしていたかというと...気づかいの特訓ができたのは...彼氏ごっこ!?Upload By かなしろにゃんこ。Sちゃんをお家まで送ってあげる彼氏ごっこです。なんじゃそりゃ⁉って遊びです(笑)Sちゃんと遊んだ後は必ず「Sちゃんを家まで送るように!」とリュウ太に言っていました。リュウ太がSちゃんを送っていくと、Sちゃんは「リュウ太の家に忘れものしちゃった」と言って引き返してきます。わが家まで戻ってきて「あ、忘れものしてなかった」と言って再び家に帰ろうとするので、再度リュウ太が「送るね」と言ってSちゃんを送る...ということがあり、それが遊びに発展。Sちゃんと遊ぶときは4回くらい『送る→戻ってくる→送る』をくり返すようになったのでした。Sちゃんは送られることで女の子扱いされることにハマってしまっているのかも?と当時は微笑ましく見守っていました。(笑)何度もくり返すことでリュウ太はへトへトになっている様子もあり、内心面倒に感じていたかもしれません。それでもイライラしたり勝手に帰ったりはせず、Sちゃんが「帰るね」と言うと「送るね」と断らない男でした。息子の意外と男らしい面に、素晴らしいじゃないの~と思ったのでした。あの頃のSちゃんとの遊びがあったからUpload By かなしろにゃんこ。そんな奇妙な遊びが数日続き、お互いに飽きたのかその後はあまり遊ばなくなってしまいましたが、優しくしてくれる子にはリュウ太も優しくできるのだと知って母は嬉しかったのでした。周りからは乱暴なイメージがあるリュウ太でしたが、Sちゃんだけはリュウ太の優しい一面を見てくれていて遊んでくれたのかな?と今は思います。人間関係の構築が難しい子どもだったリュウ太、大人になった今も相手の出方を見てから自分がどう接するか決めるそう。「相手が自分に友好的な人だったら、身構えないし最初から笑って話せるんだ」といいます。万人と最初から仲良く...は難しくても、優しくしてくれる相手とは自分も笑顔で関係を築いていくことができる。そんなふうに人との関わりに少しだけ自信がついたのも、Sちゃんと遊んだ日々のおかげかもしれません。リュウ太に女の子との接し方や、何より"気づかいの大切さ"を学ばせてくれたSちゃん、ありがとう!と思うのでした。
2020年03月09日「自分が障害者だって、自分で明かしてはいけないの⁉」――息子の不服げな表情を見て改めて考えた、「障害」という言葉のイメージについて小学4年生の息子が、ある日「腑に落ちぬ」と言わんばかりの表情で帰宅した。彼はADHD(注意欠如多動性障害)傾向もあるASD(自閉症スペクトラム障害)当事者。約1年半の不登校生活を経て復学、最近また休みがちではあるものの、通常学級に籍を置きながら特別支援学級を利用しており、次年度からは特別支援学級への転籍が決まっている。発達障害は「見えない障害」とも言われており、息子や私も、ぱっと見では障害を抱えているとは分かりにくいだろう。そんな息子が4年生になってから、特別支援学級を利用し始めた――通常学級のクラスメイトたちからしたら、不思議だったに違いない。なぜなのかと彼らから理由を聞かれた息子は、「発達障害があって、感覚過敏などがあるから」というようなことを伝えたのだという。すると、「障害者とか、そういうことを言ってはいけないんだよ!」とたしなめられたのだそうだ。息子にしてみれば「質問に対して誠実に答えただけで、なぜ叱られるのだ」という気持ちになるのは当然だ。「誰かの秘密を勝手にしゃべったわけでもないのに…」などと、ブツブツひとりごちていた。「障害って、悪いことだとか隠すべきこと、みたいなイメージがあるからなあ」隠さざるを得ない事情や場面があることを重々知りつつ、私は息子へと言葉を投げかけた。「本当はそんなことないんだけどね」すぐにそう付け加えて。前回も書いたように、「障害」とは「人と社会の間に生じたずれ」だと思っているし、近年はそうした考え方も広がりつつあるが、まだまだ障害という言葉に対するイメージはよろしくない。「障碍」や「障がい」の表記や別の呼称を使おうと行政などが推し進めたところで、本質的なところは何も変わっていないというのが当事者としての印象であるし、「障害」という言葉、あるいは診断名が、揶揄の言葉として使われているのが現実だ。(今ふと思ったのだが、件のクラスメイトたちは「障害などの言葉で人を罵るのはいけないことである」というご指導を、親御さんから受けたのかもしれない。それが頭の中で「障害と言ってはいけない」へと変化した可能性がある)私は学童期にてんかんを発症しているため、「障害者」というラベルを手にしてからの生活はそこそこに長い。本当は良くないのだが、自分が受ける差別にはある程度慣れっこで、障害名で揶揄されたところで「はいはいそうですよ」と聞き流すことができる。最近は「障害という言葉や診断名が揶揄に使われ続けたら、誤ったイメージは広がる一方だな」と考え、冗談さながらの軽口であっても、「その言葉を聞き流すことを、私はやめることにした」とお伝えしているのだが、とにかく、傷つくことはほとんどない。しかし、自分ではない相手にそうした言葉が向けられているのを見聞きすると、なぜだか落ち着いてはいられない。ADHD性による衝動を用いて発言なさった方のもとに駆けつけ、直後にASD性を発動、「発達障害という概念やアスペルガーとも呼ばれている自閉症スペクトラム障害についての簡単な説明と、“頭が悪い”ということについてのあなたの定義を伺ったのち、障害と頭の良し悪しは必ずしも関係しないこと、そして“真に頭の悪い人など存在しないのでは”と私が思うその理由を説明させていただけないだろうか」などと申し上げたい気持ちになるが、そんなことをすれば本末転倒、障害のイメージ悪化に拍車をかけてしまうこと請け合いだ。そのうえ私は気が弱い。そんな大それた行動を起こせるわけがない。歯がゆさを抑えられないまま、「どうしたもんかね……」とうなだれるぐらいしかできないのである。支援に必要な情報である障害を容易に明かせない現状について、「障害」というラベルを長年持ち続けている私が思うこと前項に書いたように、私にとっての障害名は、自分について説明を要する際に使うラベルやカードのひとつであるという認識だ。「努力や我慢では克服できないレベルの苦手がある、ただし、こうした方法なら可能だ」と説明するためのものであり、もちろん診断名を出さない方が話が早そうなときはそうするが、障害を明かすことに抵抗はない。そして私は、「我々はどうやら発達障害というものの当事者であるらしい」と息子には早いうちに告げており、息子も息子で「なるほど。早めに分かっていれば、有事の折に対応もしやすかろう」とばかりにあっさり受け入れていた。「ゲームは夢中になり過ぎて時間を忘れがちだから、アラームをセットしよう」と自ら対策を講じたり、「自分は感情をその場で認識できないことがあるが、あとから友達に気持ちを伝えるにはどうしたらいいのだろう?」と私に聞くなどはするが、普段は自分が発達障害の当事者であることを、さして意識していないように見える。それは私も同様で、こうしたコラムを書くときや、発達障害についての情報に触れるときなどは発達障害当事者であることを意識するが、平時は「自分の一要素」に過ぎず、見えてはいるが注視はしない。しかし、ネットなどでは「子どもへの障害告知は慎重に。本人のアイデンティティーを揺るがしかねないデリケートな問題です」「障害という単語にショックを受けてしまうケースも考えられます」などと書かれており、私はのけぞった。「本人のアイデンティティーを揺るがしかねないデリケートな」障害告知を、「晩ごはんはカレーだよ」ぐらいの軽いノリで済ませてしまったからだ(もちろん、どのような行動特性が該当するかなども説明はしたが)。当時の私が発達障害を抱える方々の現実について、全くの無知であったからこその行動である。物分かりが良く、自ら質問してくれる息子であったことや、障害をネガティブなものと捉えずにいられる環境があったからうまくいっただけ。分かっている。とはいえ何かが引っかかる。『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』の中で、児童精神科医・臨床心理士の姜昌勲氏が下記のように書いていらした。発達障害は、「治療しなければいけない障害」ではなくて、「支援するために必要な病名」であるとともに、「かけがえのないその子の個性」でもあるのですから。「発達障害はニセの病名?」『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(宋 美玄、姜昌功、ほか/星海社新書)P92より「支援するために必要な」情報を聞いた子どもがショックを受けたり、明かした人から不当な扱いを受けたり、ネガティブなイメージを抱かれるのはやっぱりおかしい。「実は発達障害で」「ふーん、そうなんだね」でいいじゃないか。もちろん私は「発達障害の当事者は誰もが、その事実を明かすべきだ」とは思わないし、「実は自分も発達障害で」とこっそり打ち明けてくれた方の話を他人に話す気にもなれない。それは、今の自分が、発達障害に関しては、明かしても差別される機会の少ない環境に身を置いているだけだと自覚しており、かつてはてんかんで「隠しても地獄、明かしても地獄」を体験しているからだ。だからこそ、悔しくてたまらないし、憤りさえも感じている。必要な情報を、誰もが気軽に明かせない現状に。「障害はその人が持つ事実ではあるが、人格そのものではない」と思う私に向けられた、友人からの嬉しい言葉Upload By 鈴木希望ところで私は、かばんにいつもヘルプマーク(外見では分かりにくい疾病や障害のある人が、配慮を必要としていることを知らせるためのピクトグラム)を付けている。私が住む新潟県でも配布されてはいるが、まだまだ認知度が低い印象がある。あるとき、私のヘルプマークを見た友人が、「これは何?」と尋ねてきた。彼女は帰郷してから知り合った人で、発達障害つながりではない。子ども同士が仲良しだったことからつながった、いわゆるママ友だ。私がヘルプマークの概要を簡単に説明して、「私はてんかん発作を起こしたり、発達障害からくる感覚過敏があって、パニック発作を起こす可能性があるんだ。だからそうしたときに適切な対応をお願いできるように、このマークを付けているんだ」と話した。すると彼女は「そうなのかー。てんかんのことも発達障害のことも私はよく分からないけど、手伝えることがあったら教えてね!」と微笑んでくれたのだ。(そう…!これ!これなんだよ!こういう対応が嬉しいの…!)感激屋の私はむせび泣きそうになるのをぐっとこらえて、「うん、ありがとう!お願いするね!」と返した。差別されたくないのはもちろんのこと、同情が欲しいわけでも、特別扱いされたいわけでもない。いつでも誰に対しても助けを乞うつもりはないし、自分ができる範囲内なら、ほかの誰かが困っているときにはサポートだってしたい――私が知る限りではあるが、多くの障害当事者はそう願っている。障害を感じにくい人たちもそうであるように、障害当事者にも純粋な人もいれば卑劣な人もいる。障害を理由に差別されていることを逆手に取ってひらりとかわす、狡猾でありながらもどこかキュートな友人の話もいずれ紹介したいが、それは一旦横に置く。とにかく「障害」というのはその人に関する事実ではあるが、人格そのものではない。「実は発達障害で」「ふーん、そうなんだね」ぐらいの扱いになってほしいと願うのは、傲慢なのだろうか。重要なのはラベルではなく中身。「障害」という言葉のイメージを変えたい私が考えた、あえての遠回りさて、息子の話に戻る。「障害って言ってはいけないのなら、これからどういう風に説明したらいいんだろう…というか、障害は悪いことじゃないんでしょ?なのに…」まだ「解せぬ。世の誤ったイメージのためになぜ自分が厄介なことを考えなくてはならぬのだ」という思いがにじみ出る表情の息子に、私は代替案を伝えた。「最初に障害って言葉を言わないでさ」「え⁉言ってることが矛盾してる!!」「分かってるよ。でも、誤解されるなら最初は避けた方がいいんじゃない?で、今回は特別支援学級を利用している理由を伝えたいわけだよね。だから、例えば“チョークで黒板に書く音で耳が痛くなったり、たくさんの人のひそひそ声で先生の話に注意を向けにくくなって、授業を受けることに障害を感じてしまうから”とか、困っていることの具体的な内容と、“障害というのは、困っていることという意味なんだ”と受け止めやすい言葉で伝えたらいいんじゃないかなあ?」幸い、クラスメイトたちは息子の特性を、なんとなくかもしれないが理解してくれているようなので、これで十分に伝わるだろう。「そのときになったら、そんな説明できるかな…」「じゃあ、“通常学級で授業を受けていると、困ったこと、障害がいろいろ出てくる”とかはどう?そこで質問してもらえたら具体的に言えばいいし、ふーんで終わればそれはそれでいいと私は思うが、どうかな?でも、障害っていう言葉を使う必要はないかなと私は思うよ。伝えたいのは障害の中身であって、障害という単語じゃないんだから」私の提案を受け、息子はまだ納得できていない様子だったが、少し考えてから「そうか…そういうことが障害なんだって後から分かってもらえたらいいのかもな…」と、誰に向けるでもなく、つぶやいていた。「障害」という言葉に付きまとう悪いイメージをなくしたい私が「障害」という言葉を避けるような表現を選ぶのは、息子が申すように矛盾も甚だしく、本末転倒とも言える。しかし、障害を明かさなければならない場面において重要なのは、「障害」というラベル以上に、「なぜそうしたラベルを持たざるを得ないのか」という理由、ラベルを示す人それぞれの困難の詳細についてというケースが多いように私は感じている。ならばそちらを優先させて、追々「障害」という言葉との紐づけを行う方が、遠回りのようだが、実は効率良くイメージの変化へとつなげられる道なのではなかろうか。その前に、発達障害については誤解をなくすことや、地域による情報格差など、片づけるべきさまざまな問題があるのだが…。「障害」という言葉のイメージが変わり、障害のある人たちへの偏見がなくなることに従って、人と社会の間のずれも消えていき、あらゆる人が助けを求めやすい世の中になる――なんて、現状では夢物語だ。しかし、そのような未来が訪れることを、私は願っている。そのためにも私はもっともっと学びたいと思っているし、感覚のアップデートも忘れたくない。
2020年03月08日つまずくことの多い毎日の中で、心が折れることも…Upload By 丸山さとこ基本的には「授業も勉強も好きだ」と言うコウですが、実際にはつまずくことや苦手なことは多く、宿題に対しても嫌になってしまうことはしばしばあります。作文の清書の為にお手本の原稿を作って細長く畳んだり、教科書を書き写す時は定規を使ったりと色々工夫をしながら取り組みますが、そのような工夫以外にも、心が折れたコウには“気持ちの立て直し”が必要でした。心の添え木には“ファンタジー”が有効でしたUpload By 丸山さとこコウの心が折れた時は、あまり「なぜそれをやらなくてはいけないのか」の必要性を説くような説教や励ましはしないようにしています。本人もそんなことは分かっているので、かえって落ち込んだり荒れたりする可能性が高いからです。そんな彼の心を添え木として支えてくれるもののひとつが、“ファンタジーな物語”です。自分の失敗について客観的に状況を見たりシミュレートしたりする時に、ぬいぐるみを使って説明をすると落ち着いて話を聞けるくらい、コウはファンタジーな表現が大好きです。ファンタジーな味付けをすると、事実を受けとめやすくなる!Upload By 丸山さとこコウは字を書くことが少し苦手です。空間の把握が難しいようで、”心”の字が部首のようになったり、数字の“8”が横倒しになったりするのです。漢字の書き取りノートや計算ドリルなどの宿題が出ていると、何度も消しては書き直すことになります。面倒な上に、消しゴムかけで紙を破ってしまったりして…彼はすっかり嫌になってしまいます。Upload By 丸山さとこそんな時はファンタジーの出番です。「心が書けない!」とグズつくコウに、「心をゆっくり育ててねー。焦らなくていいんだよ。」「今、心が疲れちゃって横になって休んでるのかな?」と話しかけると、彼は「無理して頑張ると、心もプレッシャーで大きくならないよね…。」と落ち着いて返事をしてくれます。一度冷静になれば、後は「ゆっくり大きくなるんだよー。」と心の字を励ましながら(?)頑張ることができます。上手くいかなかったとしても、「ちょっと今日は『心』がごろんとしてるんだよねー。疲れちゃったのかなー。」と笑いながら“上手くいかないこと”を受けとめることができます。Upload By 丸山さとこ数字の8が横倒しになる時は、「ちょうちょになって飛んでいっちゃいそうだね。」と言ってみたら、それまでは「えー、また書き直し?」と渋っていたコウも、「飛んでいっちゃわないように書き直そう!」とやる気を取り戻していました。工夫をするのは“コウの気持ちを軽くする”ためUpload By 丸山さとこUpload By 丸山さとこ物事が上手くいかずに苦しむ彼を見ていると、「それは嫌になるだろうなぁ…」と思います。「大人である私でも、あんなに上手くいかなければ心が折れるだろう」と感じるくらい大変な様子になるコウなので、最初にファンタジーを使い出したのは“宿題を頑張らせるため”というより、“コウの気持ちを軽くするため”でした。“結果を出すこと”は大事だけれど、頑張っていてもすぐにどうにかならないこともあります。そういう時、上手くいかない現実や自分を責めずに“上手くいかなさ”をふわっと受けとめつつ努力することを、ゆっくりと覚えていってくれたらいいなと思っています。上手くいかなさを直視してばかりいると辛くなりますが、目をそらしていても事態は変わらず、それもまたそれで辛くなってしまいます。すぐに結果が出ない努力を地道に続けていく時、「自分が受けとめられる方法で事実を受けとめること」は、彼を助けることになるのではないかと考えているのです。「努力も工夫もしてみたけれどできなかった」という時も、それを認めることで「じゃあどうしよう?助けを求めようかな。他のことでカバーしようかな?それができなくても困らない道はあるかな。」と、違う道を探すことができるかもしれません。2年生の頃は、九九を覚えていても“順番に言うこと”ができず、宿題の度に泣いている時がありました。3年生の頃は、口形が乱れて「きつつき」を“き”の口のまま発音するようになってしまった時期もありました。「何で僕だけできないんだろう」「頭では分かってるのに何で出てこないんだろう」と荒れたり悲しんだりするコウをなぐさめ励まし、時に取っ組み合いになりながら問題に取り組むこともあります。けれど、いつもそんな調子では親子ともども息切れしてしまいます。「できるようになること」は大事だけれど、それと同じくらい「今すこやかに過ごせること」も大事なのだろうと感じています。明日を笑顔で迎えるために、今日の笑顔も大事にしていきたいな…と思う、心が折れがちな親の私です。親子ともどもポキポキ折れながらの毎日ですが、ゆっくり、歩ける速度で進んでいきたいなと思います。Upload By 丸山さとこ
2020年03月06日「障害があるお子さんの将来について考える」動画公開障害がある子や、発達が気になる子の将来について考えるときに気になる「お金」「仕事」「暮らし」のこと。具体的にどのような制度やサービスがあるのか、今から備えておきたいことは何か。「親なきあと」をテーマに全国各地で講演活動をされている、行政書士の渡部先生に分かりやすくお話しいただきました。障害があるお子さんについて、一番気がかりなのは「お金」という方も多いのではないでしょうか。渡部先生によると、「たくさんのこすこと」よりも、「のこし方」が大切とのこと。お金がお子さんのためにしっかり使われる仕組みにはどのような選択肢があるのか、具体的な「のこし方」についてヒントをいただきました。――こんなキーワードが気になる方へ:生命保険信託・家族信託・遺言代用信託・障害者扶養共済「働く」「暮らす」を支援するさまざまな制度やサービスがあります。主なものについて、特徴や違い、2018年4月に改正された障害者総合支援法を踏まえた最近の傾向について教えていただきました。――こんなキーワードが気になる方へ:就労継続支援・就労移行支援・就労定着支援・入所施設・グループホーム・日中サービス支援型グループホーム・ホームヘルプ・自立生活援助・重度訪問介護「成年後見制度」は、判断能力の不十分な方々を保護し支援する制度です。聞いたことはあるけれど、どういった制度か分からないという方も多いかもしれません。成年後見人には誰がなれるのか、成年後見人の選任方法や役割について教えていただきました。――こんなキーワードが気になる方へ:成年後見制度・法人後見・財産管理・身上監護「成年後見制度」と両輪の制度と言われる社会福祉協議会が実施主体の「日常生活自立支援事業」。具体的にどのような困りごとに対応してもらえるのか教えていただきました。また、「成育歴を記録しておくこと」「家族会などのつながりづくり」「離れて過ごす練習をすること」の大切さについても教えていただきました。――こんなキーワードが気になる方へ:日常生活自立支援事業・成育歴・つながりづくりスマートフォンでも見やすく!動画には、スマートフォンで再生しても見やすいように大きな文字で字幕をつけています。・移動中の電車の中で・外出中の待ち時間に・ご自宅での隙間時間にぜひご覧いただければと思います。また、動画の最後に渡部先生がお話されたことを記載した「まとめ」を設けています。ぜひチェックしてみてください。約30年間出版社に勤務後、独立。2014年行政書士、2018年社会保険労務士登録。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。世田谷区手をつなぐ親の会会長。「親なきあと」相談室主宰。著書に『障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備』(主婦の友社)、監修に『障害のある子が将来にわたって受けられるサービスのすべて』(自由国民社)などがある。
2020年03月06日STEAM教育って何?
子育て楽じゃありません
細川珠生のここなら分かる政治のコト