「発達障害」について知りたいことや今話題の「発達障害」についての記事をチェック! (76/98)
療育で変化が見られない長男。母である私がもっとできることはないの…?我が家の長男は重度の自閉症のため、3歳から療育施設に通っていました。けれど通い始めて最初の1ヶ月、長男の行動には目立った変化はありません。せめて私の声かけに反応できるようになれば…そう期待していましたが、自宅では、読みきかせてあげようとした絵本を破り、ひたすらボールを回しています。このままでいいのだろうかー私がもっと努力して絵本に目を向けさせ、ボールを取り上げて他の遊びを覚えさせたほうがよいのだろうかーそんなことを悶々と考えてしまいます。そんな矢先、療育の先生から心理療法士さんの発達検査を受けてみないかというお誘いがありました。Upload By シュウママ初めての発達検査の担当は怖そうな心理療法士さん。ドキドキしながら見守ります発達検査は教室とは別の部屋で行われました。療法士さんは厳しいと評判の女の先生です。机を隔てて長男と先生が対面する形で座り、私はその様子を離れて置かれた椅子に腰掛けて見ています。机の上には、検査に必要な人形や積み木、帽子や靴が置かれています。Upload By シュウママまず先生は長男に対し「このお人形に帽子をかぶらせてくれるかな」と問いかけました。すると長男は人形をさっと取ったのですが予想外の行動をします。Upload By シュウママ「くつをはかせてくれるかな」と先生がさらに問いかけると長男は人形を床に投げました。そんな長男の様子を見ながら、私はたらっと冷や汗が流れました。先生は厳しい目で長男を見て、手元にあるノートになにやら書き込んでいます。もはや検査にならないことは明らかです。明らかにイライラしている長男、厳しいと評判の女の先生、しーんとした室内の空気…。耐えられなくなった私は先生におそるおそる聞きました。Upload By シュウママ「お母さん!」先生の大きな声に思わずビクリすると先生はぱっと顔をあげ、私の方に目線を合わせると大きな声で言いました。Upload By シュウママ「責められる…」先生の声に私も思わずびくっとなります。すると先生は声のトーンを落として続けます。「お子さんを療育していくための場所です。つまりお母さんの代りに教育してくれているんですよ。余計なことを考えない!」そして先生はふっと笑顔になりました。Upload By シュウママ3度のご飯を食べさせ、寝る布団を用意する――それは母親として当たり前のことで褒められるべきことではないと思っていました。けれど「それだけでいいんだよ、十分なんだよ」、その言葉を他人からかけてもらえた瞬間、私は涙ぐみそうになるのを必死でこらえました。親は「子どものために自分が頑張らなくちゃ」と背負い込むけれど発達障害の子を持つ親は特に、子どものために何ができるか必死に模索したり悩んだりすることでしょう。けれど時には他人の手を借りて、休まなければ心に余裕が生まれません。余裕がなければ優しい笑顔を子供に向けることもできないのではないでしょうか。長男はこの後療育の訓練で大きく変わりました。私は先生の言う通りのことをしただけで、特別な働きかけはしませんでした。けれど長男は沢山の人の手を借りて少しずつ成長していったのです。発達検査の後、部屋を出ようとした瞬間先生はこんな言葉をかけて下さいました。Upload By シュウママあれから何年も経っているのに、この時の先生の言葉が蘇ってくるときがあります。そして今も魔法のように私の心を癒してくれるのです。今育児で悩み苦しんでいるお母さん、お気持ち痛いほどわかります。だからこそあえて、私がこの先生から教わったことを、あなたにも伝えたい…。「これ以上頑張らないで、お母さんが休んでもいいんです。沢山の人がきっと手をかしてくれるはずだから」
2017年07月13日臨床発達心理士とは?出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学等の専門的な知識を生かして健やかな育ちを支援する専門家です。また、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちを支援対象としていて、人の生涯発達に関する臨床に携わる幅広い専門家に開かれた民間資格です。人は年齢を重ねていくなかで、自分自身や家族関係、友人関係、学校生活や就職などさまざまな悩みや問題に直面します。それらの問題は環境や時間の経過、またその時々の支援の在り方によっても変化していきます。したがって、生涯発達の中で出会うさまざまな問題の解決にあたっては、まず問題を正しく理解し、それに基づいて適切な支援を行う専門家が求められます。そこで誕生したのが「臨床発達心理士」の資格です。現在、「~心理士」「~カウンセラー」などの名がついた心理士の関連資格は70以上にものぼると言われています。そのうち「臨床」という名称を持つ資格はいくつかありますが、「発達」という名前が付いているのは臨床発達心理士だけです。つまり、さまざまな心理職のうち発達を専門とする資格ともいえるでしょう。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編] 臨床発達心理士わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)参考:本郷一夫「臨床発達心理士の専門性と果たすべき役割」臨床発達心理士になるには?出典 : 「臨床発達心理士」資格は、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構が認定している民間資格です。臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで年に1度、9~12月にかけて行われる資格審査に合格しなければいけません。資格取得までの流れとしては、申請書類の購入、申請手続き、一次審査(書類/筆記/業績等)、二次審査(口述審査)、資格認定といったステップがあります。1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的・理論的な知識2. 人間が実際に発達する場に関する社会的・実践的な知識3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な知識・技能これらを習得するための基礎となる学問領域は「発達心理学」または「発達心理学隣接諸科学」です。具体的には発達心理学、その他心理学、教育学、保育学、福祉学、小児科学、医学、看護学、リハビリテーション学、発達障害学、保健体育学、体育心理学、スポーツ健康科学、人間社会学、人間学、児童学、応用人間科学、コミュニケーション学、児童教育学社会学などです。2017年度から資格申請制度が新しくなり、申請タイプが5つにまとめられました。1. 発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または終了後3年未満2. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している3. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の学部を卒業している4. 大学や研究機関で研究職をしている5. 公認心理師を取得している変更点としては以下の2つがあげられます。・国家資格である「公認心理師」資格取得者が申請できること。・「公認心理師」資格が心理学系大学卒業以上を前提としていることから、発達心理学諸科学の大学や、短期大学や専門学校を卒業した人が申請できるタイプを廃したこと。ただし、公認心理師資格は2018年度以降習得可能であるため、経過措置として2019年度までは旧制度での申請も受け付けています。資格申請をするにあたって、自分の受けた教育歴と臨床発達支援に関する実践の経験年数に合わせて、以下に示す申請タイプの中から最も自分にあったタイプを適切に選びましょう。また、資格を取得すると、「日本臨床発達心理士会」に入会するとともに全国に20ある支部のどこかに所属することが義務づけられます。さらに、資格の有効期間は5年で資格更新をすることも義務付けられています。資格更新は、試験ではなく資格取得後に十分な研修を積んだか、高い専門性を保持することに努めたかがポイントに換算され審査されます。出典:資格取得までの流れ|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格申請新制度のご案内|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構出典:資格更新ガイドライン|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内(金子書房.2017)p18~41臨床発達心理士スーパーバイザーとは、臨床発達心理士になろうとしている人や臨床発達心理士になった人(スーパーバイジー)に対して、スーパービジョン(指導者から教育を受ける過程)を通して支援し、育成する役割を担う人のことです。申請要件は以下の3つになります。1. 臨床発達心理士の有資格者2. 臨床発達心理士資格取得後、5年以上関連する業務・活動を継続3. 臨床発達心理士資格を1回以上更新している出典:臨床発達心理士スーパーバイザーとは|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構臨床発達心理士はどのような人を支援するの?出典 : 臨床発達心理士は赤ちゃんから高齢者までの年代の人を対象として発達を支援する人の資格です。そのため、支援の対象はとても幅広いです。具体的に以下のようなケースが支援の対象となることが多いです。・新生児、乳幼児と保護者・自閉症スペクトラム、知的障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害・知的障害の診断を受けた人・育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題を抱える人・「気になる子」、障害の有無/グレーゾーンかの判断に対して悩みを持つ人・社会適応や成人期・老年期の悩みを持つ人臨床発達心理士の活躍の場と具体的な支援出典 : 「臨床発達心理士」資格のある人が特定の職場にいるわけではありません。赤ちゃんから高齢者を対象として発達を支援する人のための資格であることから、資格を持つ人の活躍する場は多岐にわたります。以下では、支援対象の年代別に具体的な職場やどのような仕事をしているのかを紹介していきます。・新生児医療の場:育児不安の解消、愛着形成への援助など・保育所/幼稚園:保育者、保育カウンセラー、特別支援教育コーディネーターとしての業務など・家庭支援センター:親子広場スタッフ、子育て講座の講師、家庭相談スタッフなど・保育巡回相談:主に行政からの委託で保育所、幼稚園を巡回・乳児院/児童養護施設:カウンセリング、セラピーの実施など・保健所/保健センター:妊娠中に両親学級の講師やグループワークのスタッフ、乳幼児健診および発達が気になる子どものフォローなど・小中学校/高校/大学:教師として特別支援教育コーディネーターの業務など・スクールカウンセラー:校内相談業務、保護者支援、校内研修会講師など・教育委員会:教育相談、就職相談等の相談業務、心理検査の実施など・発達支援センター:障害児童やグレーゾーンの子どものアセスメント、相談、療育など・放課後デイサービス:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童保育所:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など・学童相談室:大学等での学生相談室でのアセスメント・児童相談所:心理判定、相談、指導業務など・特別支援学校:教育のアセスメント、指導評価の実施、保護者支援、教育機関への巡回相談など・特別支援学級/通級指導教室/言葉の教室:教育のアセスメント、教育支援計画作成、校内特別支援コーディネーター業務など・障害者施設/作業所:セラピー、カウンセリング、家族支援など・高齢者施設:カウンセリング、セラピー、心理検査の実施など・企業:企業内相談業務、心理調査など・病院・クリニック(小児科・精神科・診療内科等):患者・保護者へのカウンセリング、患者へのセラピー、心理検査の実施など上記の職種以外に、臨床発達心理士以外の資格を保持しているひとは、職種の幅にも広がりがあります。臨床発達心理士の中には、他の資格や免許も有しながら職務に就いている場合も多いので、純粋に心理職として働いているケースばかりではありません。例えば、家庭裁判所で調査官として仕事をする人、震災時に現場に赴いて支援をする人、研究者として働く人の中にも、臨床発達心理士の資格を生かして仕事をしている人が多くいます。臨床発達心理士の視点を持って、両者の領域で培われた専門性を活かして活動しているのです。しかし、医師免許を有している場合でない限り、臨床発達心理士は医療行為全般(薬を用いた治療や障害かどうかの確定診断をすること)はできません。また医師にかかる場合は、健康保険が適用されますが、臨床心理士に相談する場合は基本的には健康保険が適用されません。参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p89.90臨床発達心理士による発達障害に対するアセスメント出典 : 有効な支援を行うためには、その問題を解決するために情報を集め、それをもとにその人にあった支援の方法を計画していく必要があります。これをアセスメントと言います。ここでは、一つの例として発達障害の支援計画を立てるための代表的なアセスメントについて具体的に説明していきます。◇対象の支援ニーズに関する情報収集聞き取りや観察によって生育歴や育児についての情報や、発達の経過、現在の行動や状況など日常生活に関する情報を集め、支援ニーズを知ることから始まります。これは、保護者や保育者、家族などと共同で行うことが望ましいです。◇対象を取り巻く環境に関する情報収集園や施設に通っている場合は、それらの環境に関する情報を収集する必要があります。また、家庭環境や地域環境についての情報の収集も、支援を考える際に重要になっていきます。これらの情報をもとに問題の暫定的な把握をしたうえで、発達状態の情報を収集します。◇知能検査知能検査ではおもにIQ(知能指数)の値を指標とすることが多いです。従来は、精神年齢と生活年齢をもとにもとめる比例IQを用いることが多かったですが、最近では、同年代の平均との隔たりをもとにもとめる偏差IQが中心になってきています。知能検査を行う目的は認知発達の水準を科学的・客観的に評価することで、その人の得意分野、不得意分野を分析することです。知能検査の結果からわかるその人の得意、不得意分野から療法の方向性を決定するために使われます。代表的な知能検査に以下のようなものがあります。・ウェクスラー式知能検査・田中ビネー知能検査◇発達検査発達検査では日常生活や対人関係などにおける子どもの発達基準を数値で表したDQ(発達指数)を算出します。子どもが成長していくには、発達段階に適したアプローチが必要になります。そのため、発達段階を客観的に知るための手段として発達検査は使われます。ただし、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。代表的な発達検査には以下のようなものがあります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法◇スクリーニング検査発達障害に関するスクリーニング検査は、どの精密検査を行うべきかの判断や潜在的な発達遅れや発達障害の可能性を検査するために行われます。スクリーニング検査は、たくさんある発達障害のうち、その子どもに当てはまる可能性がある障害を絞り込むためのものです。スクリーニング検査には網羅性が重要視されるため、正確性はそれほど高くはありません。仮に検査で陽性が出たとしても精密検査するかどうかの判断基準になるだけで、発達障害であることが確定するわけではないということに注意が必要です。スクリーニング検査は乳児健康診査、1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査などの場でも活用されています。代表的なスクリーニング検査には以下のようなものがあります。・STRAW・M-チャート・ADHD-RS・LDI-R・PARS◇行動観察臨床発達心理士は言葉をかけた時の子どもの反応や、話し方、質問を正しく理解しているのかなどのさまざまな反応をできるだけ詳細に観察して、子どもの特徴やくせを見つけようとします。日常場面における観察だけでなく、臨床発達心理士が状況設定した場面における観察も行うこともあります。上記の生活情報と発達状態の情報をふまえて、それぞれの特徴にあった支援計画を立てていきます。本人に対する支援や保護者への支援だけでなく、施設との連携体制を確立させたり、担当保育者などへの支援計画を立てたりすることもあります。参考:藤崎 真知代「育児・保育現場での発達とその支援 (シリーズ臨床発達心理学) 」(ミネルヴァ書房.2002)p66-70臨床発達心理士と臨床心理士との違いは?出典 : これまでの説明にあるとおり、「臨床発達心理士」とは、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちの発達・成長・加齢に寄り添い、人の健やかな育ちを支援する専門家です。それに対して、「臨床心理士」とは、同じ心理系の民間資格ですが、不登校や二次障害、精神障害などのこころの問題をかかえた人に対する心理療法や、こころの問題を予防するための研究にもとづいて、人のこころにアプローチする専門家です。つまり、得意とする支援対象やケースに違いがあります。しかし、どちらの資格も、医療・教育・保健・福祉分野においては活躍の場が同じこともあり、両方の資格を取得することでより広い視点でより広い職域において活躍することができます。支援を受ける人は、一人ひとりの発達の特徴に寄り添った支援をしてくれる専門家を見つけることが大切になってきます。出典:臨床心理士とは|日本臨床心理士資格認定協会臨床発達心理士と公認心理師出典 : いままでは、心理学系の国家資格はありませんでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。その結果、公認心理師法という法律が平成27年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。公認心理師法の大部分は公布の日から2年以内に施行されることになっています。厚生労働省によれば、平成29年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、平成30年までに実施する予定と発表されています。公認心理師はさまざまな分野にまたがる領域横断的な汎用性のある資格です。それに対して、臨床発達心理士は、臨床発達心理学・発達臨床支援の専門性を有する資格です。公認心理師の資格取得には以下のいずれかに該当する必要があります。1. 「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する2. 大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事するまた、公認心理師の職域としては、保健医療、福祉、教育、司法・法務・警察、産業・労働の5領域があげられています。この資格は、医師免許や法曹資格同様に、国家試験に合格し一度取得してしまえば終身その身分が保障されるという考えも多く、臨床発達心理士をはじめとした心理系の取得と併せて資格を取得する人が多くなることが予想されています。参考:公認心理師について|厚生労働省参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p10-15まとめ出典 : 臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学などの専門的な知識を生かして幅広い年代、状況の人たちの健やかな育ちを支援する専門家です。発達支援を必要としている方の困りごとにあった相談先や、サポートを受けられる場の選択肢のひとつとして、臨床発達心理士があるということを知っていただき、よりよい支援を受けられるきっかけになれば幸いです。また、資格制度の変更があったり、新しく公認心理師という国家資格が認定されたりと、手続きや選択が複雑に感じられますが、だからこそ今後より一層発達領域の専門資格として、臨床発達心理士の技能がとても重要な役割を担います。発達支援の仕事をしたいと考えている方が、その専門性の高さを活かしてご活躍されることを願います。
2017年07月12日2年生。本人も気に病むほど、注意欠陥の特性が顕著になって…出典 : 我が家の小2息子、小学校入学以降、注意欠陥障害(ADD)特性が目立ち始め、この年齢の男子のそもそもの特徴もあいまって、順調に「アホ男子化」している今日この頃。授業参観=息子にとってのイレギュラーな環境では、ますます注意力散漫になったことは以前のコラムでお伝えしたが、あんなものははっきり言って序の口だった。「今日の授業で空のペットボトルが必要なんだよ!」と朝に報告したり、「実はあの日、新聞紙が必要だったんだよね」と翌日以降に告白するのは通常運行。最近では宿題など、毎日コツコツと何かをこなすことが困難になってきた。要は、エネルギー出力が安定しないのだ。何日も溜め込み、ある日一気に集中して片付けている。自分も息子同様にADDの傾向があるため、「あれ?私もこんなだったっけか?」と小学生時代を振り返ってみるが、似たもの親子とはいえ別個人。宿題も提出していたし、忘れ物も少なかった。私のチェックが甘かったのかと反省し、一応声かけを繰り返すようにしているが、ままならないことは多々ある。息子自身もそんな自分が歯がゆいと感じているようで、「自分は将来どうなってしまうのか」と不安そうに呟いた夜もあった。親子の心配をよそに先生は太鼓判!?個人面談で耳にした「息子の成長」とは出典 : 担任の先生は、私たち母子に揃って発達障害があることをご理解してくださっている。対策について相談しようと思っていた矢先の6月、個人懇談が行われた。「息子さん、随分と成長しました!」着席するや否や、先生がそんなことを笑顔でおっしゃるものだから、私は面食らってしまった。毎日宿題を提出できないことや忘れ物が増えたことは決して退化ではないが、成長とは呼びにくい。ポカンとする私に、先生はどのように成長したのかを説明してくださった。■成長①以前であれば、苦手な作業(息子の場合は絵など)に関しては遅々として進まず、手すら出そうとしないこともあった。今では「自分ではここまでできるけれど、この先を進めることが難しい。手助けかヒントをもらえないだろうか」というように申告してくる、もしくは自分なりの代替案を提示してくるようになった。■成長②以前は、宿題や忘れ物をしてもこちらから指摘されるまではそのままだった。今では宿題や忘れ物に関しても自分から報告してくる、そして「何か借りられる物があれば貸して欲しい」と自分から願い出てくるようになった。つまり、自分のウイークポイントを把握し、失敗や不得手をリカバーしようという姿勢が見られるようになったということだ。家で息子はそんなことを口にしなかったから、私は更に驚いてしまった。そう言われると…うん、確かに大きく成長している。「できないことや失敗自体は悪いことじゃないんですよね。特性上、受け身になってしまうのも仕方ないと思っていました(息子と私は受身型と呼ばれるタイプの自閉症スペクトラム=ASDも持っている)。そんな息子さんがここまでできるようになったのは、本当に素晴らしいことですよね!」ー昭和50~60年代に、私は学童期を過ごした。そのころといえば、失敗をすれば教師に叱責され、廊下や教室の後方に立たされるなど、見せしめのような懲罰を課せられることが当たり前の時代。出典 : 「私も小学生のとき、あんな先生に出会いたかったな…」我が子の特性を尊重し、温かく見守っていただけているありがたさと、ほんのちょっぴり息子をうらやむ気持ちを抱きながら、私は自転車のペダルを踏み、帰路についた。生きていくために必要なのは、失敗や不得手に対する怯えではないUpload By 鈴木希望ミスしないように注意したり、スキルを磨くことはもちろん大事だが、実際社会に出てみると、失敗や不得手をリカバーしようとする努力を要される場面の方が多いと私は感じている。はっきり言って、うまくできなかった事実そのものに目くじらを立てているのは時間の無駄なのだ。そんな時間があれば、他人に助けを求めることを含め、問題を解決するための具体的な行動を起こした方が良い。成人発達障害当事者の中でも、自分がした失敗を気にするあまりに思考がネガティブスパイラルに陥ってしまったり、また失敗をすることを恐れて行動できなくなってしまうことが少なくないようだ。「あのね、失敗や不得手に怯えて行動しても、何もいいことないからね。かえって失敗が増えるのよ。これ、経験談。注意と怯えは別物。急ぐと焦るも別物でしょ?あ、関係ないか」私も相談を受けることがちょくちょくあって、だいたいこんな風に答えている。と、偉そうに書いているが、かくいう私もつい最近までこれができなかったし、今も少しだけ苦手である。ASDの特性上、抱え込みやすい(誰かに頼るという発想が即座に浮かびにくい)というのもあるが、どこかに「失敗や不得手は悪いこと、叱責されるべきこと」という感覚が残っているのかもしれない。とにかく、「生きていくために必要なのは、失敗や不得手への怯えではなく、それが起こったときに対処しようとする姿勢」ということで担任の先生と意見が一致し、私は嬉しい。もし今もどこかで無意味な懲罰が行われているのだとしたら、一刻も早く滅してほしいと願ってやまない。ーさて、息子の宿題や忘れ物に関する対策だが、「これまでどおりの声掛け、学校と家庭の連携」という話でまとまった。帰宅した息子に早速確認だ。「息子さんや、連絡帳を見せてくれないかい?」「あ、連絡袋ごと学校に忘れてきた」「オイ!!!!!!」出典 :
2017年07月12日発達障害の話をするのって、やっぱりハードル高いUpload By かなしろにゃんこ。育児の話などをしていると話の流れで「うちの子は発達障害があるから~」と話すことがあります。息子が発達障害と分かった頃は、私は単なる「発達障害がある子の新米お母さん」でした。知識も浅く自信もなかったため、発達障害のことを伝えるのって難しいな~と思ってわざわざ話すことは少なかったです。まあ、改めてカミングアウトするまでもなく、周りは息子が落ち着きのない子で短気だとわかっているだろうと感じていましたし。何年か経って、私自身も発達障害の知識がある程度身についてきた頃からは、ママ友で仲の良い人には我が子のことは伝えるようにしていました。でも、発達障害の話をしてもほとんど人はウワサ話程度にしか知らないようでした。息子の話を引き合いに出しても、なかなか根本的に理解してもらうところまでには至らないことがほとんどだったのです。暗にわが子を責められているみたい。グチを真摯に受け止めきれず…。Upload By かなしろにゃんこ。ママ友に息子の発達障害の話をしたら、そのエピソードをきいて思い出したのか、突然少し怒り出して無関係な人のグチを言われたことが2回ほどあります。ママ友のお子さんのクラスに落ち着きがなくて、いつも先生を困らせて自由に振るまう男の子がいて大変なんだから!!!という話や、図工の時間に肌に絵具を塗られた!!!という突発的な話までバラエティに富んでいました。軽い世間話のつもりでグチったのでしょうけれど、正直私は「暗にうちの子が怒られているみたいだな~」と感じていました。我が子がそのママさんや先生やお子さんたちに迷惑をかけたわけじゃないのですが、発達障害がある子のグチは何故か我が子の話のように申し訳ない気持ちになってしまいます。迷惑かけられた人の気持ちをまずは受け止めないと、その後きちんと発達障害の話はできません。本当は「うちの子も落ち着きないんだけど…。そんな他人事とも思えないグチをたらたら私に話さないでよ」と言いたいのですが、万年周りに迷惑かけてる子の母は弱いです…何も言えません(笑)。ただ、そのママ友の怒りが落ち着いてきたのを見計らって、誤解されている部分に対して「発達障害って実はそうじゃないのよ~」と伝えたら、「そういうものなんだ、知らなかったー」と溜飲を下げてくれたように見えました。発達障害の話がきっかけで深まる仲もある!Upload By かなしろにゃんこ。あまり発達障害の知識が無い人のグチに対して、怒りを押し殺しさなければならない時はちょっとツライですが、発達障害がある子の親も困っているし、落ち着いて話せば相手に「誤解してた、ちゃんと知らなきゃ」と考えてもらえる機会も作れるんじゃないかとは思っています。発達障害がある子に迷惑かけられたから許せない!と思われたままはイヤですから、まずは許してもらえるように相手の言い分も受け止めていかないとな~、とわかってきたこの頃です。でも我が子に発達障害があると伝えたおかげで、同じ境遇のママ友も何人かできました。そのママ友と話すときはイヤな話題は一つもありません、障害のある子を育てている人はどこか神々しい感じがするんです。いつも明るくて暗い話題やゴシップネタは話さないしステキな人ばかりです、そういう人に近づけるようになりたいと思うのでした。
2017年07月11日「正しい発達障害理解」を追求しつづける当事者たちの戦いUpload By 宇樹義子ここ数年、世間での発達障害についての認知は高まりつづけているように感じる。今年に入るとついにNHKが1年がかりの発達障害特集を開始し、当事者界隈はたいそうざわついた。NHKは「とにかく当事者の声を届けたい」という熱意を前面に出していたので、私も本気になった。特に第1弾のNHKスペシャル生放送時には、ブログで事前の情報記事を用意し、当日はTwitterで実況。後日、感想をやはりブログでまとめた。そもそもテレビが苦手な私が、仕事そっちのけでかじりつくようにテレビを見つめ、仲間といっしょに、放送される内容の正誤やニュアンスについてTwitterで意見する。「えっ? 正しくは『自閉症スペクトラム』だよねえ?」「これは誤解を招くからやめてほしいなあ…」「取り上げられた人たちばかりが当事者なわけではない。もっとこういうケースにもフォーカスを!」タイムライン上をいつ終わるともしれず流れ続ける、「もっと完璧な、正しい発達障害理解を!」という叫び。よく考えたらあたりまえだけど、発達障害者についてであろうがなかろうが、私が100%満足できる番組なんて世の中に存在するわけないんだし、仲間たちにとってもそれはそうだったと思う。私自身も皆も、どこか「どこでやめたらいいのか」「こうする代わりにどうしたらいいのか」をつかめずに困っているようにも思えた。「敵」と戦った日々と、「敵」と手をつなぐまでの日々Upload By 宇樹義子そこからの私は、いま振り返ってもずいぶん必死だったと思う。テレビやネットの発達障害特集の内容に誤りがあれば指摘し、親や当事者の不安につけ込むニセ医学を批判し、成人発達障害当事者の生きづらさを理解してくれない社会にブログで警鐘を鳴らし…そうやって毎日、戦っていた。「自分と同じような思いをする人たちを一人でも減らしたい」。先に述べた思いの通り、これまで発信してきたこと自体は後悔していない。だけど、そうして戦いつづけている間、いつもどこか虚しさのようなものを感じていた。…いまここで告白すると、この記事を書かせてもらっているLITALICO(りたりこ)も大嫌いだった。過去に、LITALICOが運営する就労移行支援「LITALICOワークス」を利用したことがある。結論としては、当時の私が納得できる支援は受けられず、私の心には大きな傷が残った。ここ「LITALICO発達ナビ」でも、サイト立ち上げ当初にライターに立候補したものの断られたことがある。保護者向けのコンテンツが多く、私たち成人発達障害当事者が無視されているような気がして、悔しかった。それで私はますます、LITALICOに負けるものかと、たったひとりでの「戦い」に必死になった。「絶対に発達ナビよりもいいコンテンツを作ってやる。彼らが見捨てた成人当事者の益となるコンテンツを」… そんな気持ちを原動力に猛然と仕事した。だけどそのうち、そんなやりかたも限界だと思った。きっかけは、NHKの発達障害特集だ。Upload By 宇樹義子私が必死にNHKの番組を実況しているとき、当然発達ナビも大きなリソースを注いで実況していた。今や発達ナビは、世間の発達障害者へのイメージを左右するような影響力と、それを実現できる経済的人的資源を持ったメディアに成長していた。発信するコンテンツも、大人の発達障害者をもカバーするようになってきており、質も日々上がってきている。私がずっと望んできた、発達障害者が一般の人たちに広く理解される大きなチャンス。私がこの期に及んで発達ナビに対してそっぽを向き続けるなんて、バカバカしいし不自然じゃないか。もうこんなことはやめよう…ある夜突然、発達ナビの編集長の鈴木さんに連絡をとった。そしていま、こうしてここで書いている。たったひとりで「発達障害者代表」の看板を背負う必要なんてない以上は、「いち成人発達障害当事者としての宇樹義子」のごくごく個人的な物語だ。けれど、私と同じように、自分が「マイノリティ」であることへの意識が大きくなりすぎて、かえって自分を追い詰めたり、苦しめたりしている発達障害当事者は少なくないんじゃないかと思う。だからこそ伝えたい。仮にあなたが発達障害当事者であったとしても、たったひとりで当事者全体を「代表」して戦う必要なんてないんだ、と。社会の発達障害への関心が高まったことはいいことなんだと思う。誰もが生きやすい社会のために当事者として声を上げること、誤った情報に対して批判を加えていくことにも、ある程度の範囲内であれば大きな意味がある。けれど、最近までの私がそうだったように、自分自身がその狂乱に飲み込まれ、もしかすると手をつなぐことができるかもしれなかった人たちを「敵」として、24時間戦闘状態に陥ってしまっては本末転倒だ。Upload By 宇樹義子誰かが何かの属性の看板を背負い、「お前はここが違うから仲間じゃない」「お前にわかってもらえるはずがない」などと声を枯らして叫びつづけることは、皮肉にもコミュニティをバラバラにしていってしまうことがある。なぜって私たちは、何かの属性を持つ者たちである前に、バラバラな違った個人の集まりだから。戦闘的になって違った属性を指摘しつづけていったら、最後には誰も残らなくなってしまう。たまねぎの「皮」を剥き続けたら最後には消えてしまうのと同じだ。言葉づかいの丁寧さの問題じゃない。発信に向かうときの心の態度の問題だ。私はこの点で、長いこと間違ったことをしていた、と思う。言葉は丁寧なものの、私は間違いなく「看板を背負って戦っていた」からだ。私がこよなく尊敬する精神科医・臨床心理士であり、日本におけるPTSD治療の第一人者である白川美也子先生の本がある。この本ではまず、トラウマを抱えた人は「3つのF」と呼ばれる症状を示すようになると説明される。・Fight(戦う)・Flight(逃げる)・Freeze(固まる)Fight(戦う)の項ではこんな説明がされている。私は上のくだりを読んだとき、ああ、これは私と仲間たちにそっくりだと思い、ひとしきり涙が止められなかった。そして、そのあとに出てくるこんなメッセージに、とても楽になった。やがて自分の苦しさをそっちのけにして、同じような被害に遭う人をなくすため、果敢に立ち上がり、戦い始めます。その戦いによって自分の身近にいる人を暴力や虐待から守ることができたとしても、世界にはたくさんの傷ついた女性や子どもたちがいて苦しんでいることに気づきます。戦いには終わりがありません。大切なことは、被害者にも加害者にも、そしてそれを傍観する人にもならない、三角形の3つの角の真ん中にしっかりと立つことなんだよ回復の過程において、あなたが誰かに過去のトラウマ体験を語ることだけが、誰かを救うメッセージになるのではありません。それを生き延びたあなたの身体の動きや声や、あなたの創る詩や奏でる音楽や描く絵が、人に何かを伝えます。あなたが生きているだけで本当に十分なのです。私たち発達障害者は、生きてきた中でたぶん、人よりも少し多くの傷を抱えてきた。だから、つい戦いに身を投じてしまうこともある。もちろん、それは本当に切実な情熱と願いのこもった行動だ。だけど、もしそれがつらいとか、虚しいとか、疲れたとか思う瞬間があるのなら… ときどき、ゴールがあまりに遠く感じられたり、ますますゴールから遠ざかっていくような気がするのなら…私は、あなたは、重たい戦士の鎧を脱いでもいいはずだ。Upload By 宇樹義子そして、どこかに傷を抱え、それをなんとか乗りこなしている「ひとりの人間」として、もっと自由に、軽やかに生きたとき、きっといつか、私やあなたが、そして仲間たちが願った「ゴール」が近づいてくるんだと思う。
2017年07月10日思い通りの色順でないと、気持ち悪いと感じる娘。出典 : 発達障害のあるお子さんの中には、“どうしてコレに!?”と思ってしまうほど、特定の物事に夢中になってしまうタイプの方がいます。アスペルガー症候群のある我が家の娘は、幼い頃に「色」に強い興味を示して以来、娘なりのこだわりがたくさんあります。それは小学4年生になった今でも変わることはありません。複数の色があるものは、思い通りに並んでいなければ気持ちが悪く、イライラと落ち着かなくなります。学校に通っていた頃は、休み時間に率先してお友達の色鉛筆を削らせてもらい、その代わりとして自分の思う通りの色順に並べさせてもらっていたそうです。また、お店の筆記用具コーナーに行くと、試し書きの後できちんと元の場所に戻されていないペンが気になり、すべてのペンをきちんと色別に分け終わるまで、その場を離れることができません。商品の陳列の仕方にも不服があるようで、「どうしてこんな色の順番にしちゃうんだろう!?」とプンスカしていることがよくあります。発達障害と診断されるまでは、度を越した興味の持ち方は一過性のものだと思っていましたが、どうやらこれはれっきとした娘の一部分であり、おそらく生涯持ち続けるこだわりではないかと思うのです。それならば、自分のこだわりから外れているものを攻撃することなく、上手く自分の心を満たしながら付き合っていくことができれば、本人にとっても周囲の人たちにとっても良い結果が生まれるのではないかと考えるようになりました。他人に迷惑をかけずに「こだわり」を楽しむために出典 : そこで「お店の商品や他人の持ち物を自分好みの色順に並べ替えたい!」という衝動を抑えられるようになる方法を考えてみました。衝動が湧き上がってくること自体を抑えることはできませんが、①自他の境界をはっきりさせておく②家で存分に並べ替えが出来る環境を整えておくこれくらいは、私にもできそうです。まず、自他の境界をはっきりさせることに関しては次のように話しました。「あなたにこだわりがあるように、他の人にも気に入った並べ方があるかも知れない」「他人に自分のモノを触られるのが嫌いな人もいるし、勝手に触れるのはマナー違反」「家族や親戚など近しい人でこだわりを理解してくれる人に関しては、了承を得て並べ替えさせてもらっても良い」「お店の商品はその店の方針や戦略があるので絶対に並べ替えてはいけない」こうして、自分が手を加えていい領域と、手を加えていけない領域があることをしっかり意識できるようにしました。現実には、他人の領域に手を出してしまうようなことであっても、「まだ小さいから仕方がないね」と許していただくことも多くあります。ですが、それでOKなんだと本人が勘違いしてしまうと、発達障害を抱える子どもたちは、後からその認識を修正をするのが大変なのです。トラブルが起こってからではなく、起こる前に線引きをしておけば、心地よいコミュニケーションをとるためのポイントが冷静に確認できるので、とても大切な作業だと思います。さて、次に「普段から並べ替えたいという欲を満たしておく」というのも衝動を抑えるためには必要なことだと考えました。めったに出会えない並べ替えのチャンスだったら絶対に逃したくないと思うかもしれませんが、「家に帰れば自由に並べ替えができる」と自分に言い聞かせることで、我慢できる確率も上がってくると思うのです。そこで、60色入の色鉛筆を用意してみました。30本のトレーが2段になった色鉛筆は、眺めているだけでも幸せな気分になるそうです。その色鉛筆を「ああでもない」「こうでもない」と試行錯誤を繰り返して思い通りに並べ替えられたときの娘は、本当に満足そうです。存分に並べ替えを堪能した後は、娘と一緒に塗り絵をして、わざと別の場所に色鉛筆を戻しておきます。塗り絵が終わる頃にはまた色鉛筆の並び順はバラバラになり、大好物の並べ替えを一から楽しむことができるのです。将来を見据えて訓練することも大切だけど...出典 : 娘の色に関するこだわりは私が声をかければ不機嫌になりながらも抑えられる程度のものですので、このような方法が有効でした。「タオルを手放せない」など精神的安定を求めるタイプのこだわりに関しては、無理に矯正をすると不安定になってしまうと思いますので、お子さまの様子をしっかりと観察しながらこだわりとの付き合い方を考えてみてくださいね。発達障害を抱える子どもを育てていると、つい将来のことを考えて「自分で何でもできるようにしていかなければ」「辛いことも乗り越えて力をつけなければ」「苦手なことを減らしていかなければ」と焦ってしまうことも多いともいます。私も、時々どうしようもない不安に襲われて、「こんなことで子どもは生きて行けないのでは」と子どもに成果を出すことを求めてしまうことがあります。もちろん、親の目が届かなくなったときのこと、社会に出てからのこと、親がいなくなった後のことを考えて、丁寧に子育てをしていくことは大切です。しかし、親がそればかりを求めすぎてしまうと、子どもはいくら頑張っても新しい課題を与えられて、疲弊してしまいます。なかなか難しいとは思いますが、毎日の暮らしの中で、お子さまが強い興味を持っていることを一緒に楽しんでみたり、より深くその世界を知ることで、少しずつ世界を広げていく時間を持てるといいですね。娘は色好きが高じて、色事典を写して語彙を増やしたり、聞きなれない色名が出てくる俳句に興味を持ったり、いろんな色の糸が大量に並んでいる織物教室に足を運んだりと、少しずつ世界が広がってきています。興味が限定されてしまうという特性を持つアスペルガー症候群。一つのこだわりを足掛かりに新しい世界を知ることで「好き」が増えれば、共通の話題を分かち合える人とめぐり会うチャンスも増えます。案外、そんなところから人間関係が広がっていったり、楽しいコミュニケーションが取れるきっかけが転がっているかもしれませんね。
2017年07月09日いたってシンプル。息子にはちょっと難しめの国語の2択問題です先日こんな宿題が出ました。Upload By ラム*カナこの問題、ゆきつもどりつ逡巡し、結局、問題用紙はしばらく白紙でした…。いまだに書き間違い全盛期の長男にとって、このテの宿題は難易度が高め。モチベーションが下がっているのかな?私がぱっと「こっちじゃないの?」と教えてしまえば済む話ですが、適当に丸印をつけずに立ち止まったのには何か深い理由があるかも?と、一応聞いてみました。「キョウちゃんはどっちだと思う?」Upload By ラム*カナうんうん。率直に、思ったこと言ってみて?Upload By ラム*カナわかるわからないの話じゃなかったみたいです…!
2017年07月08日ウチの息子はLDっ子!Upload By ひらたともみご覧の通り、私は歳の差兄妹の母でもあります。そんな中、この春、息子2号は中学3年生。高校進学を考える時期になったのですが…。Upload By ひらたともみ息子2号には学習障害(LD)があり、読み・書き・計算のとらえ方に偏りがあり、学校の授業や受験勉強も悪戦苦闘…果たして息子は高校生になれるのか?親である私も、心配しながら試行錯誤する日々です。LDの検査って必要?ウチの息子の場合…Upload By ひらたともみUpload By ひらたともみそして検査の結果は案の定……Upload By ひらたともみUpload By ひらたともみ息子が学習障害の検査を受けたのは、小学校6年生のとき。担任の先生の強い薦めでした。そして検査結果は案の定LDだったのですが、検査自体はLDの太鼓版を押されただけ。(あくまでも個人の感想です)どうしたらいいかは具体的には教えてもらえませんでした。また息子はなかなかLDを受け入れられず、小学校の特別支援学級にもあまり参加しないまま、小学校を卒業。中学に進学してからも、普通クラスに在籍し、個別授業も受けていません。成績は悲惨ですが、真面目な性格ゆえに珍回答ながらも精一杯、課題やテストに取り組んでいます。LDっ子の息子、高校生になれるのか!?ですが、息子もいよいよ中学3年生。部活も夏で引退になると、真剣に進路を考えなければなりません。Upload By ひらたともみUpload By ひらたともみというわけで、あらためましてはじめまして。イラストレーターのひらたともみです。思えば息子がまだ小さかった頃、絵本を読み聞かせている私に息子は「どういう意味かぜんぜんわからない。」ということが多く、その都度、本のページをさかのぼって、絵を指さしながら、ひとつひとつお話を解説して読み進めることがありました。それでも、息子の「わからない」は解消されないことが多く、そのころから何となく発達の遅れを感じていたような気がします。そして、LDと診断された息子は現在中学生3年生になりました。思春期でなにもかも「うぜぇ、うぜぇ」の息子も、英単語を覚えたりしなければ高校生にはなれません。さて、息子はどんな高校を選ぶか?高校生になれるか?子どもが自分の未来を切り開く最初の一歩でもある「高校受験」を、これから発達ナビにてコミックエッセイで綴っていきます!悩めるLDっ子とそのご家族の「なにか」になれば幸いです。
2017年07月05日息子が診断を受けた当時と「今」、時代は着実に変わっている出典 : 次男が診断を受けた3年前、私は発達障害についてほぼ無知でした。周囲でその言葉を聞くこともほとんどなく、取り寄せる専門の書籍を漁るしかないような状態。それが最近はテレビで「発達障害」という言葉を聞く機会がどんどん増えています。書店にも大人向けや支援者向け、子供向け、さまざまな書籍が増え、ネット上でも色々な取り組みが始まり、情報を得やすくなったなぁと感じています。先日からNHKでも年間を通した「発達障害プロジェクト」がスタートし、「NHKスペシャル」や「あさイチ」など色々な番組で取り上げられ始めました。言葉すら知られていなかった頃と今と、そしてそれよりもっと前の、配慮どころか診断につながることすら難しかった過去と、発達障害の当事者や保護者を取り巻く環境はここ数年でどんどん、目まぐるしいほどに変わっていっているのだろうと思います。NHKの特集を見て湧いた、相反する2つの感情出典 : スペシャルの中で流れたADHDやLDの子の感じ方を表現した再現VTRに、あぁこんな風に当事者の困難を可視化する方法があるんだ、と感心しました。色々な手法やスタジオの当事者の方の声から、これまであまり表に出ることのなかった当事者の抱えている困難が語られていく…妖怪「ペラペラノドン」に支配されちゃうんだと語っていた男の子は、どこか次男に似ていました。言葉が溢れてきてどんどん喋ってしまう彼の映像を見ながら、次男は「僕とそっくりだ」と笑っていました。同じ、そっくり、そうそうこんな感じ…番組を見ながら次男の言動に近いものが見えるとそう感じて、どこか安心したり、そこからヒントを得られたらと画面に食い入る自分がいました。でも、同時に違う、ぜんぜん違う、そんなんじゃない…という全く逆の感情がわく場面も。「違う」「うちはそうじゃない」同じ診断名でも、“ピタリ賞”の事例にはなかなか出会えない出典 : 「アスペルガーの●●さん」と紹介されている方の困難は、同じような診断名がついている次男のそれとは全く違っている、ということはよくあります。例えば幼少期の自閉症スペクトラムの子によくある特徴とされている・目線を合わせない・人の話したことをオウム返しする・呼んでも反応しない・言葉を話すのが他の子と比べて遅い・予定が狂うと混乱する・強いこだわりを持つなどは、うちの次男にはほぼありませんでした。(それが診断に至るのが遅れた要因でもあったわけですが)テレビで紹介されるADHDの特徴については割と似てるなぁと感じることはありますが、併発している事例はあまり紹介されていませんし、次男の抱えている困難をそのまま表現しているものに出会うことはまずないんだろうなぁ、と思いながらテレビを眺めていました。伝えたいことが、多すぎる ー ひとくくりにできない発達障害のリアル発達障害、とひとことで言っても、伝えたいことが本当に多すぎると思うのです。発達障害というと「ASD-自閉症スペクトラム」「ADHD-注意欠如・多動性障害」「LDー学習障害」の3つがあり、それぞれに併発する事例もある、と重なり合う3つの円で紹介されることがよくあります。Upload By イシゲスズコでも、この3つだけじゃない。この3つの重なり具合だけじゃない。知的障害を併発しているケースにはそこにしかない困難があるし、同じような特性でも環境によって困難の度合いは著しく変わっていく。次男も学級の環境の変化によって特性が強く出て困難が増えることもあればとても穏やかに過ごせることもあります。100人いれば100通りの困難がある、それが発達障害。テレビで誰かが紹介されればされるだけ、「自分に近い」と感じる人よりもはるかに多くの、「同じ診断名だけど自分は(子供は)違う、そうじゃない」「こんなケースもある」という気持ちが当事者の中に湧くのではないか、と感じています。諦めず、息長く、わたしの言葉で出典 : テレビで発達障害について放送されるたびに、「足りない」、「もっとこんなことも伝えて欲しい」、という声が出てくる。私も最初は、足りないことに対してモヤモヤしていた一人です。でも、もしかしたら「足りないこと」それこそが、周知という大きな目的の陰にある、この特集のもうひとつの成果なのかもしれない、とも思うのです。1つの番組には伝え切れる情報量には限りがある。でも放送を見て、発達障害について知る機会を得た人、知ろうと思った人はきっとたくさんいると思います。私が自分のブログでちまちま何かを発信しても、発達ナビがどんなにアクセスが増えても、人気番組での1回の特集の与えるインパクトにはとても敵わない。NHKが1年間という長いスパンで、かつEテレだけではなく広い視聴者層に訴える人気番組の中で特集を組んでいってくれる、これはすごいチャンス。一方で、そうやって関心を持ってくれた人に対して、1回の番組だけでは伝えきれない情報を補うことが、私たち一人ひとりがネットでの発信で担える役割なのだと思います。彼らの目に留まるところに「それだけじゃないんだよ」「こんなケースもあるよ」「こんな風に支援を受けている人もいるんだよ」と、当事者や家族として、個々に経験してきた困難を発信していくこと。また、テレビやネットのメディアでは見えてこない、「言葉を持たない」当事者の困難も、それ以上にたくさん存在しているのだと伝えていくこと。ブログで、twitterで、Facebookで、この発達ナビの上で…いろんな形で、息長く続けていく。それが、発信することのできる当事者家族としての今自分にできることなんじゃないか、と感じています。これまでたくさんの当事者やその家族の方たちが切り開いてきてくれたおかげで、今の支援体制があり、その恩恵を受けてきていること。その過去に想いを馳せながら、テレビの力が開けてくれた小さな風穴を、自分たちが切り開く。「発達障害プロジェクト」がすべての放送を終える1年後に発達障害のある人たちを取り巻く感情がどんな風に変わっているか。現実を変えていくたくさんの鍵の中の小さなひとつが、いま、私の手の中にあるような気がしています。きっと、あなたの手の中にも…
2017年07月05日世界初となる義足の図書館をつくりたい!義足ランナーとエンジニアがプロジェクトを立ち上げUpload By 発達ナビニュース自分の足で、歩く、走る。行きたいところがあれば移動する、疲れたら座って休憩する…両足を自由に使える人ならば無意識に行なっている日常の行為も、義足を使っている人にとっては「当たり前」ではありません。日常生活で義足を使っている人を目にしたことがある人は多いかもしれません。だけど、そうした日常用の義足では、その人は「走る」ことができないのです。「歩く」「走る」それぞれの用途により、義足の種類や性能は異なり、走るためには競技用の義足という、通常より高価な義足が必要になるからです。そうした状況に対して、「走ることが出来る競技用の義足を体験出来る場をつくりたい」と活動している義足のランナーと義足エンジニアの方々がいます。現在、オンライン上で個人が寄付をすることができる「クラウドファンディング」のプラットフォーム「Readyfor」で、総額1500万円の立ち上げ資金支援を集めるプロジェクトを展開。7月10日の午後11時まで募集をしています。Upload By 発達ナビニュース足を失った人々が「走る」ことへ一歩を踏み出せる場を創りたい!プロジェクトメンバーの一人には、発達ナビ「100人のストーリー」インタビュー記事にご登場いただいた、義足開発研究者の遠藤謙さんも。この記事ではプロジェクトの目標や、義足を取り巻く背景や課題、プロジェクトメンバーの方々の思いをご紹介します。世界初となる義足の図書館をつくりたいUpload By 発達ナビニュース健常者にとって当たり前の「走る」という行為は、義足歩行者にとってはとてもハードルが高いものだそうです。その理由として第1に、私たちがよく目にする義足はそもそも走るように作られていないということ。走るためには歩行用の義足ではなく競技用の義足が必要となってきます。そして第2に、この競技用の義足というものはとても高価だということ。1本あたりの値段は約20万~60万円と高価にも関わらず、試し履きができる場所はほぼなく、使ったことがない方がほとんどだそうです。またお金の問題が解決出来たとしても、第3の課題として環境の問題があります。競技用義足を使って走るためには、安全面に配慮し、陸上競技場など障害物のない安定した場所が必要になります。また、誤った装着は怪我の元となるため、義肢装具士の同伴が必要となります。そこで、このプロジェクトチームは、「自分の足で走ってみたい」と願う子どもから大人まで全ての義足歩行者を対象とした、競技用義足の貸し出しシステム「義足の図書館」を作り、これらの課題を解決したいと考えているそうです。Upload By 発達ナビニュースクラウドファンディングが成立したら、この走ることが出来る競技用の義足を体験出来る場になる「義足の図書館」には、子供用から大人用まで世界で多くの人が使用している競技用義足25本程(およそ1200万円分)の設置が予定されているとのこと。「そんなに設置する必要があるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、競技用義足(板バネ)の硬さは、ユーザーの体重に合わせて、それぞれ5~9カテゴリーに分かれているため、多くの方にご利用いただけるようにするためには、少なく見積もってもこのくらいは必要になるのです。学びたいと思う全ての人々が自由に本を手にすることができるように、「走りたい」と願う全ての人々が自由に競技用義足を手にすることができる、そんな空間を目指しているそうです。技術の力で障害を取り除くUpload By 発達ナビニュース今回紹介したクラウドファンディングの主催者の1人である義足ランナーの佐藤さんも、中学はサッカー部に所属する根っからのスポーツ少年でした。しかし中学3年のときにユーイング肉腫と診断され、右足膝下を失ったそうです。佐藤さんのような根っからのスポーツ少年にとって、当たり前のようにできていた「走る」という行為が日常生活から消えてしまうかもしれないことは本当に怖かったということ。そして、そんな思いをしている人が他にもいるんだったら今度は自分がそうした方々の力になりたい、そう思って今の活動を行っているそうです。これまで発達ナビでは、発達障害のある人が直面する課題をテクノロジーの力を使って解決する取り組みについて多く紹介してきました。技術の力で困難を取り除き、一人ひとりが制約なく自分の「やりたい」ことを追求できるようになったなら、障害はもう「障害」ではなくなっていく…発達障害や身体障害といった障害の種別にかかわらず、こうした取り組みが広がっていくことで、少しずつ社会は変わっていくのだと思います。クラウドファンディングの募集期間は7月10日(月)午後11:00まで。プロジェクトに共感した方は、ぜひ応援を!足を失った人々が「走る」ことへ一歩を踏み出せる場を創りたい!
2017年07月05日さすがにもう、準備段階では忘れ物ナシ!Upload By かなしろにゃんこ。小学校の頃から旅の仕度が苦手な息子でしたが、大学生にもなると持ち物リストを作って確認しながら準備を進めていくようになりました。「着る服は一日ずつまとめて袋に入れておくことにした!」と言う息子。ずっと前からそうしなさいってお母さん言ってたけどね…やっと分かってくれたんすね!と思いながら旅に送り出したのでした。帰宅後、テキパキと片付けていたのですが…Upload By かなしろにゃんこ。家族みんなが使う"クシと寝ぐせ直し"、なぜ持ち出したまま?家族が毎日使っている洗面用具やクシと寝ぐせ直しのスプレーを持って行くと言ってカバンに入れた息子でしたが、旅行から帰ってきて汚れた洗濯物は提出するものの、洗面用具などをなかなか出さないのです。旅行カバンには旅のしおりやらお土産なども入ったままになって、部屋に転がっています。Upload By かなしろにゃんこ。みんなが使う物だから早く出してちょうだいと毎日お願いしていたのですが一週間経ってもカバンの中に入れたままです。「お母さんはクシと寝ぐせスプレーを待っているんですけど!」と怒って部屋にいる息子に話しかけると、「出してほしい?…でもダメなんだ…出せない理由があるんだ…教えてほしい?」と息子はニヤリとしました。もうイヤな予感しかしません。ホテルの洗面所に置いていた物は全て置いてきてしまったというのです。その理由を聞いて思わず吹き出してしまいました、「この子らしい!」と。それも帰り仕度の最中に忘れ物の確認をしに洗面所のドアを開いて洗面台を見たのに、集合時間に慌てていて、仕度の最中に一瞬違うことを考えてしまったため注意が抜けてしまったというのです。そして「忘れ物ないネ!OK」と何故か思い込んでしまったとのこと。あまりにお決まりのパターン過ぎて、親子で大爆笑Upload By かなしろにゃんこ。そういうことならば仕方ないと納得できました。数々の忘れ物もこうしたことが原因だったんだな~と分かってきました。脳が別のことに注意を向けると今やるべきことの優先順位が一瞬で変わってしまって、本来優先して働くことが目に入っていたとしても、そこに意識はフォーカスしていかないのだと。息子も自分でナゼ忘れたのかを分析できるようになって、忘れ物をするメカニズムをご丁寧に解説してくれました(笑)。もう忘れちゃったものはしゃーないです。裏切らないねーと笑いがこみ上げてきて親子で爆笑したのでした。
2017年07月04日文字がぐるぐる回って読めないアーレン症候群、娘の場合は……出典 : みなさんは、「アーレン症候群(アーレン・シンドローム)」という言葉を聞いたことがありますか?アーレン症候群とは、視知覚における光の感受性の障害で、読字に困難が生じることが特徴です。近年、認知度が上がってきた学習障害、特に読みに困難が生じる「ディスレクシア」と一見混同されがちですが、読字に困難が生じるメカニズムは異なり、別個の障害として研究が進められています。現在11歳の娘は、8歳の夏にアーレン症候群の特性があるとわかりました。現在は、「アーレンレンズ」という専用のメガネをかけて過ごしています。同じアーレン症候群の特性を持つ人の中でも症状は様々ですが、私の娘の場合の特徴的な見え方として、・文字と文字の感覚が徐々に離れ開いていく・文章全体がぐるぐると回り渦を巻く・文章中の文字が単独で所々歪むなどがあり、このような状態で文字を読み続けると、まるで車酔いのような気持ちの悪さを感じるそうです。また、・小さな文字で行間が狭い長文・数字、ひらがな、漢字、複雑な立体図形、細かい地図・真っ白な紙に黒い文字で印刷されているなど、コントラストがはっきりしている文章などの条件の場合に特に強く症状が出るようです。読字に関する困り感以外にも、蛍光灯の光を見ると「ガーン」と頭をハンマーで殴られたような頭痛があります。自然光の入る教室内よりも、夕方の塾の教室や夜の街にあふれる強い明かりなどで痛みを感じています。アーレン症候群の特性を持つ方々の見え方はそれぞれです。こちらの動画を見ていただくと、アーレン症候群の見え方の特徴がよくわかっていただけるかと思います。子どものアーレン症候群は見つけにくい出典 : 娘の場合は・定期的に体調を崩したこと・共感覚などの複数の感覚の特性を持っているため、多様な違和感の何か一つでも大人に伝えることができたこと・元々、会話の多い親子関係であったこと・担当してくれた医師が丁寧に時間をかけ傾聴してくれ、さらにアーレン症候群について詳しくご存知だったことなどが重なり、低年齢の段階でアーレン症候群を見つけていただくことができ、対処することができました。しかし多くの場合、子どものアーレン症候群の可能性は見落とされてしまうだろうと感じています。なぜなら、・子ども自身が生まれた時からそのように見えているので、他人と自分の見え方の違いに気がつきにくい・子どもは言語で違和感を説明することが難しく、また、認知が広がっていない為に大人も存在を知らないことが多く、子どもの何気ないSOSを逃してしまうこともある・通常の小学校生活においては、子ども自身の工夫によって対処している場合もあり、子ども自身が抱えている困難が表面化しづらい(ちなみに娘は教科書を事前に読み暗記していた為、音読もなめらかで、学校生活における学習面での困難に周りは気づきませんでした)などの課題があるように思うからです。病院では検査ができない!?日本でのアーレン症候群検査機関は限られている現状出典 : 担当してくれた主治医から娘のアーレン症候群の可能性を告げられた当初はまだ私は半信半疑でしたが、「日本で検査できる機関は筑波大学の一箇所のみですし、困り感が大きくなってから焦って受診するよりも、余裕を持って今のうちに行かれる方が良いかもしれませんよ。」と主治医から背中を押して頂いたので、筑波大学心理発達教育相談室の予約の電話を入れました。筑波大学附属学校教育局心理・発達教育相談室アーレン・シンドロームについて電話にて予約確定後、自宅に質問票が郵送で届きました。Yes or Noで答える形式ではありますが、その質問数に圧倒されました。これらの質問と全く同じだったのかは記憶が曖昧ですが、アメリカ・アーレン協会のホームページ上にはセルフテストが掲載されています。Webで探せば日本語に翻訳されたセルフテストも見つけることができますので、気になった方は試して頂くと良いかもしれません。アーレンシンドローム・セルフテスト困難を一人で乗り越えてきた娘の姿を知ることに…そしていよいよ検査のために筑波大学東京キャンパスへ。Upload By IRO-IROこの頃は学習面での困難が全く表面化していなかったため、私としては「アーレン症候群の疑いを今のうちに消しておくのもいいだろう。」くらいの軽い気持ちでの受診でした。相談用の個室にて、アーレン協会のライセンスを持つ先生が、質問票を確認しながら娘に優しく語りかけ話を聞いてくださいました。すると母である私は全く気がついていなかった、娘の「感覚」や「困難を感じたことへ自分で工夫し乗り越えてきた様子」を初めて知ることになりました。こんなに小さな娘が一人で対処してきたのか、と驚きと共に申し訳ない気持ちになりました。先生の的確な質問とご説明のおかげで、娘の感じている世界、見えている世界の一端を知る事ができました。会話の多い子育てを心がけてきただけに、母親である私がいかに単一的な自分の視点ばかりで娘のことを捉えていたのかに気がつき、大きな衝撃を受けました。当事者である娘は、自分の世界を理解してくれ言語化してくれる初めての存在に出会えた安堵感を感じ、少しほっとしていたように見えました。そして幾つかの検査を経て、「アーレン症候群の可能性がとても高い。」との結果が出ました。アーレンレンズのフィッティングで疲労困憊に。出典 : アーレン症候群の症状は、その人に合ったアーレンレンズのメガネをかけることで解決出来る場合があります。どのレンズがその人に合うのかは個人差が大きく、フィッティングを通じて最も見やすいカラーのアーレンレンズを選ぶ事になります。後日、アーレンレンズの色を決めるフィッティングの為、改めて筑波大学の心理発達教育相談室を訪れました。文章を実際に見ながら、様々なカラーレンズを順に目に当て、自分にとって読みにくさが軽減する色を選んでいきます。全体からこれぞという1枚を決めたら、次はそれに重ねるとさらに良いと感じる2枚目。そして3枚目・・・とできる限り読みやすくなるまで、繰り返しカラーレンズを重ねていきます。8歳の頃は1枚のカラーレンズのみを選び、重ねない選択をしましたが、2度目のアーレンレンズフィッティングの際には、なんと13枚ものレンズが重なりました。娘の場合は、それほどの枚数を重ねてようやく、80%ほど見えやすさが改善した感覚とのことで、先生も100%完全に見えやすい状態にする、というのは現時点では難しい、と仰っていました。とはいえ、意味を持たないひらがなの羅列を読むテストでは、明らかに読むスピードに違いが見られました。Upload By IRO-IRO一方でこのフィッティングはとてもとても疲れるようです。目に当てる色によって、見えやすくなったかと思えば、次のレンズでは文字が途端に動き出し頭痛を引き起こすこともあり、1枚1枚レンズを変えるたびに目まぐるしく見え方が急変するからだと思われます。無理をせずこのくらいでやめておきましょう、と早めに切り上げて下さったのですが、それでも次第に顔が青ざめ、ソファーで少し横になって、ひと眠りしてから帰宅するほどの疲労感に襲われます。こうやってフィッティングしたカラーの組み合わせのデータを、筑波大学からアメリカへ発注して頂きます。ちなみに、13枚も重ねたレンズの色は1枚のレンズとなり届くのでご安心を。発注のタイミングにもよるそうですが、娘の場合は数週間ほどでアメリカからレンズが自宅に届きました。Upload By IRO-IRO実はこの時点ではまだ眼鏡に加工されず、丸いレンズの状態で届きます。アーレンレンズをメガネに加工できるメガネ店も、現在はまだ日本に数件のみ!アーレンレンズは日本ではメガネに加工することが難しく、合うフレームも少ないとのことで、アーレンレンズを加工してくれるメガネ店をインターネットで探し、東京都府中市にある「日本メガネ」に伺う事にしました。プロショップ日本メガネ事前に必ずメールにて来店予約をし、アーレンレンズを持って伺います。日本メガネの店長さんもお仕事の枠を思い切り越え、とても親身になって対応してくださる方でした。11歳になって再度訪れた時には、最初に伺った2年半前には無かった子ども用のアーレンレンズ専用メガネフレームも開発され商品化されていました。Upload By IRO-IROこれ以外にも、フレームの一部を緑、青、ピンク、赤などのカラーにしたデザインもあり、とてもスタイリッシュで素敵でした。「 2年かけて試行錯誤し、メーカーさんと一緒に開発しました」と店長さん。娘も、これなら!と嬉しそうにメガネのフレームを手にしていました。アーレンレンズのメガネが娘の元に届いた日「アーレン症候群の方へは最優先でメガネを作成しお送りしたいと思っているので」と店長さんが仰っていらした通り、眼鏡店を訪れた3日後には自宅に届きました。しかも、娘がこぼした「ピンクより青の方が好き。」との一言を覚えていてくださり、青色のメガネケースに入れて送ってくださいました。この温かい心遣いに娘を応援してくださる思いが伝わり、親子で励まされました。Upload By IRO-IRO写真は11歳の時に作った2代目のアーレンレンズです。13色のカラーが重なり、赤みがかった濃いレンズの色に合うようにと、本人が黒い色のフレームを選びました。8歳の頃、初めて自分専用のアーレンレンズのメガネをかけた娘の言葉は今でも思い出されます。「わぁ!よく見える!」とスラスラ音読し聞かせてくれ「普通に見えるってこういうことなのかぁ。初めて知った!」と。その娘の言葉から、改めて「誰にも気づかれず、これまで一人でよく頑張って来たのだな」と思うと胸が熱くなり涙が出ました。アーレン症候群の認知が広がれば、一人で悩んでいる子どもたちが救われるかも!出典 : アーレン症候群はアーレンレンズによってQOLが大きく改善する可能性が高い特性です。それにも関わらず、頭痛を我慢し、揺れる文字を読むことで生じる不快感を我慢し、学習において人の何倍も時間をかけ努力している子どもたちが、気づいてもらえずに一人で頑張り続けているかもしれません。もしかしたら、ディスレクシアだと思われているお子さんの中にも、実はカラーレンズのメガネによって症状が改善するお子さんがいるかもしれません。アーレンレンズが全ての問題を解決してくれる万能な存在、という訳ではないので、引き続きアーレン症候群の当事者が抱える課題感をお伝えできたら、とは考えております。ですが、まずはアーレン症候群の認知が広がり、一人でも多くの子ども達が自己肯定感を持ち、自分らしく伸びやかに暮らせる社会になると良いな、と思っています。ディスレクシアに関する発達ナビの関連記事はこちら※読みに困難が生じるという症状は似ていますが、アーレン症候群とはまた異なるメカニズムの障害と言われています。
2017年07月03日幼い、幼い。とても10歳には見えない息子。でも…息子のカムは先天性サイトメガロウイルス感染症で生まれました。両耳高度難聴、睡眠障害、感覚が過敏で、こだわりも強い(自閉症の疑いあり)です。未熟児で生まれたので、10歳になる現在でも小学1、2年生くらいの背丈。重度の知的障害があり、まだ幼い子どものように手助けが必要な部分が沢山あります。まれに、物を口に入れてしまったりすることもあるので、赤ちゃんのように注意が必要な部分も…しかーし!ところ変われば、優しいお兄ちゃんUpload By shioriこの子は3歳のいとこのゆったん。ゆったんと遊ぶときのカムはちょっと違う。おもちゃを取られても怒らない!(大人が取ったら怒ります)髪の毛を引っ張られても怒らない!(大人がうっかりカムに痛いことしたら激怒します)扱いが優しい!(大人には手荒です)まるでお兄ちゃんのような一面を見せてくれる時があります。発達がデコボコであるということは、いろんな“自分”を持っているということUpload By shiori10歳だ!と思うと、できないことが沢山あってそっちばかりに目がいってしまいますが、実際のカムは発達が凸凹(デコボコ)で、それなりに発達している部分やできることもあるのだと感じます。注意して見ていると、検査ではわからないいろんなカムを発見できるものですね。カムは一人ですが、カムの中にはいろんな年齢のカムがいる。まるで私は子だくさん母さんの気分です!発達ナビでは、そんなカムとの日々の中で面白いなと思ったことや、成長を感じた部分を綴っていきたいと思っています。これからどうぞよろしくお願いします。しおり - Instagram
2017年07月03日「困った子」、実は背景に理由がありますUpload By モンズースーこんにちは。モンズ―スーです。みなさんは自閉症児の光くんとお母さんの成長をつづったマンガ『光とともに…』を読んだことはありますか?ご紹介したのは、光くんの通う特別支援学級の担任になったばかりの先生が、思うようにいかない子どもたちに怒ってしまうシーンです。先生は注意を続けますが、うまくいかず困り果ててしまいます。このように発達障害のある子の行動には、一見すると「わがまま」「困った子」などと捉えられてしまう場合があります。でもその「周囲と違う行動」には理由がある場合が多いのです。例えば、「好き嫌いなく食べるのが良いこと」と考えられている現代ですが、発達障害の方はその特性ゆえに食べられるものが極端に少ない場合もあります。それは定型発達の人より感覚が過敏で「臭覚」「味覚」「触覚」などの刺激が強く感じられるため…というのも原因の一つのようです。偏食のある長男、食べられないのは「わがまま」なの?我が家の長男も1・2歳の時に炭水化物と乳製品などの一部の白いものしか食べられませんでした。栄養が偏っては体に良くないと思い、子どもの好きそうな料理を毎日作って並べてみましたが、食べるのは毎食白米だけ…なんてことが続きました。たまに出かける時に、食事をコンビニで買おうとしても、具の入ったおにぎりは食べず、外食に行ってもキッズプレートの中に食べられるものが何もないこともあり、困ったことがありました。Upload By モンズースーUpload By モンズースーUpload By モンズースーUpload By モンズースー「困った」行動の裏側にある理由に気づくことで変わること私は好き嫌いのない子どもだったので長男の気持ちが分からず、はじめは周囲と同じく「わがまま」と考えていましたが、発達障害の特性による「偏食」を知って長男が食べられず困っていたことに気づきました。もしその行動の裏側にある理由に気付けないままだったら、「光とともに…」で描かれている先生のように理解できず悪循環になってしまうのかもしれません。本人から「これが苦手」と話してくれると分かりやすいですが、それを他の人に伝えるのが苦手な子が多いのです。でも、絶対に変わらないわけではありません。Upload By モンズースーUpload By モンズースー長男も幼稚園の給食をきっかけに少しずつですが、食べられる物が増えていきました。※このコラムは『光とともに・・・~自閉症児を抱えて~』の場面の中から発達障害の事例を取り上げてご紹介しています。秋田書店『フォアミセス』誌でも掲載しています。よかったらお手にとってご覧くださいね!フォアミセス|秋田書店フォアミセス|秋田書店
2017年07月02日お友だちよりも“ぬいぐるみ”と遊ぶ方が幸せ!?出典 : アスペルガーの娘は、幼い頃からぬいぐるみが大好きでした。いろんな経験をしてもらおうと、幼い頃はよく水族館や動物園などに連れていったのですが、娘のお目当てはお土産屋さんのぬいぐるみ。今日はどの子をお家に連れて帰ろう?と考えている時が一番たのしい時間なのです。「どこか行きたいところはある?」とたずねると、「水族館には入らなくていいから、水族館を出たところのお土産屋さんに連れて行って。あのお店にどうしても連れて帰りたかったのに諦めたぬいぐるみがいるの」とねだられることもしょっちゅうでした。お友達と遊ぶより、ぬいぐるみと遊んでいる時の方がリラックスしていたり、怒られた時にぬいぐるみを抱きしめて気持ちを落ち着けようとしていたりする姿を見ていると、娘にとってぬいぐるみが必要不可欠な存在であることがよくわかります。娘にとって大切なものは、私にとっても大切なもの。一緒にお店をまわって、「どの子が一番かわいい顔をしているか」「どのぬいぐるみが一番手ざわりがいいか」娘にぴったりとくる子を探す旅に、私も楽しみながらつき合っています。ぬいぐるみ専用の箱を用意してみたり、すぐにその時に必要なぬいぐるみを出せるようにハンモックを吊るしてそこに並べてみたり、あれこれ収納を工夫しているうちに、ふと素朴な疑問が湧いてきました。どうして娘はこんなにぬいぐるみが好きなんだろう?娘は心を落ち着かせる安心グッズとして、いつも手ざわりの良いハンドタオルを持ち歩いていますが、ぬいぐるみにはそれとはまた別の安心感があるのでしょうか?当たり前になり過ぎて何とも思わなくなっていた「ぬいぐるみと戯れる娘」について、ゆっくり考えてみました。娘にとって“ぬいぐるみ”とはいったい?出典 : まず、娘がどんな時にぬいぐるみを必要としているのかを観察してみることにしました。私に叱られて寝室にこもっている時には、いろんなぬいぐるみがひっぱり出されています。弟とケンカして「クールダウンしてくる!」という時にも、ぬいぐるみを抱きしめていることが多く、素直に私に甘えられない時には「ママ、このくまのぬいぐるみの声をしてくれる?」とお願いをしてきます。「ねえ、ねえ、〇〇ちゃん、どうしてそんな悲しい顔をしているの?なにか辛いことがあったの?」と声を変えてぬいぐるみを動かしながら娘に話しかけると、「あのね、今日こんなことがあったの。くまちゃんはどう思う?」と、打ち明けにくいことも話してくれたりします。怖いお話を読んでしまって眠れない夜にも、娘のそばにはいつもぬいぐるみが寄り添っています。こうしてみると、ネガティブな感情で心を埋めつくされてしまった時に助けてくれる存在であることは間違いがなさそうです。しかし、楽しそうな話し声に誘われて部屋をのぞいてみると、娘がぬいぐるみのお世話をしていたり、病気になったぬいぐるみを看病していたりします。ぬいぐるみ専用のお布団を作ってあげたり、ブラッシングをしてお手入れをしたりもしていますので、ネガティブな感情を吐き出すための道具というわけではなく、とても大切な存在なのだということがわかります。おそらく、変化に対応することが苦手な娘にとって、いつも同じ表情で自分を迎えてくれるぬいぐるみというのは、とても安心できる相手なのだと思います。“変わらずにいてくれる”存在のありがたさ出典 : 小学校4年生になった娘は、1年生の息子を私が膝に乗せているだけで嫉妬して半泣きになる程、母である私のことを求めてくれています。しかし、私は「親は神ではなく感情を持った生身の人間である」をモットーに子育てをしていますので、当然、疲れていて機嫌の悪いこともあれば、「お願いだから今は話しかけないで!」というオーラを出している時もあります。なるべく子どもの意に添うように暮らしてはいますが、娘が受け入れてほしい時に私に余裕がなく、受け止めきれない時があるのです。ぬいぐるみは、そんな時に黙って娘を受け入れてくれる存在なのではないでしょうか。ぬいぐるみは、娘を拒否しません。否定もしませんし、無理に励ますこともありません。いつも同じ表情をしていますが、見る側の気分によって、いかようにも受け取ることができますから、娘が悲しいときには心配そうに、楽しく遊んでいる時には嬉しそうに、ただただ娘に寄り添ってくれているのです。その柔らかな存在に、これまで娘はどれほど助けられてきたことでしょう。ぬいぐるみを抱きしめることによって傷ついた自分自身を抱きしめ、少しずつ心を回復させて安心感を得ることができる。娘にとってぬいぐるみが必要不可欠である理由が、ようやくわかった気がします。それぞれに合った安心グッズを見つけよう出典 : 発達障害を抱える子どもたちは、計り知れないほどの不安を抱えている場合があります。感覚過敏によって心が消耗してしまっていたり、自己肯定感の低さゆえに何気ない一言に傷ついてしまったり。そんな時に心を癒してくれる安心グッズが1つでもあれば、ゆっくりと心を回復させる手助けになってくれることだと思います。娘にとってはぬいぐるみが安心グッズになっていますが、同じように自閉症スペクトラムと診断されている息子の安心グッズは、まだ見つかっていません。心が疲れた時には、私に抱っこをせがむか、三角すわりをして自分の殻に閉じこもってしまうことしかできないのです。いつか息子にも安心グッズが見つかればいいなと思うのですが、こればかりは他人が勧めて受け入れるようなものでもないので、気長に合うものが見つかるのを待っています。とはいえ、どんどん体も大きくなってくる息子をいつまでも抱っこし続けるわけにもいきません。カチャカチャとボタンを押して数をかぞえる数取器や、扇風機のボタンなどの操作が好きな息子なので、今話題の「ハンドスピナー」や、ポケットに入るぐらいの小さなボタンに興味を持ってくれるかもしれません。さりげなく息子の目に付くところに置いてみて、安心グッズに出会えるチャンスを多く作れたらと思っています。あなたのお子さまにとって、心を癒してくれる安心グッズは何ですか?皆さんで共有して、さまざまなグッズを試すことができればいいですね。
2017年07月02日きょうだい喧嘩勃発!ママの"仕上げ歯磨き"順番争い…(笑)Upload By ラム*カナ我が家の兄弟、それはそれは毎日ケンカをします。親からすれば、ケンカの原因はとてもくだらなく、毎日欠かさず争うことのひとつに“どっちが先に仕上げ歯磨きをしてもらうか”というのがありました。本当に毎晩ケンカしてはどちらか(もしくは両方)が泣くので、どっちが先にやるかは順番!!ということで落ち着いたんですが、Upload By ラム*カナ肝心な「昨日は誰が先だったか」を毎晩忘れてしまう私の脳みそ。2択なのに見事に毎晩忘れるという。しかも、自分が先にやりたいあまり、毎回「自分は昨日2番目だった!」という記憶に変換されてしまう便利な脳みその息子2人。親子そろってこんな感じだったので、こうしました。Upload By ラム*カナカレンダーに記入!(最初からこうすれば良かった…)そんなわけで、ちゃんとカレンダーに書いたあとは、ケンカにならず平和になったのです。お兄ちゃんがカレンダーに書いてくれるようになりましたUpload By ラム*カナそんなある日。「新しい月になったから、歯みがきする順番のメモを書かなきゃね~」と話していたら、長男がカレンダーに書き始めてくれました。でも、あれっ?Upload By ラム*カナ「あれ?アイちゃん(次男)が2日連続になってるところあるよ~?」きっと、長男が書き間違っちゃったのだな…、と思ったら、Upload By ラム*カナな、なんて素敵なプレゼント!!お金でもない、物でもない。なのにこんなに心がこもってるプレゼント。考えつくなんて本当にすごいな。
2017年07月01日知的障害のある人を支える年金制度、障害年金とは出典 : 障害年金とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働いたり、日常生活を送ったりする上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。この記事では、知的障害のある人が受給できる障害年金について説明します。(広義の障害年金について知りたい方は下の関連記事をご覧下さい)障害年金は、就労していても受給資格があります。国のデータによれば65歳未満の障害年金受給者のうち、3割以上の方が障害年金を受給しながら働いています。出典:年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)平成26年|政府統計の総合窓口出典:中井宏ほか『誰も知らない最強の社会保障 障害年金というヒント』p.33参考:『国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドライン』の策定及び実施について |報道発表資料|厚生労働省知的障害における障害年金の種類と等級出典 : 障害年金を理解するためには、公的年金の種類を知る必要があります。公的年金には国民年金と厚生年金の2種類があります。国民年金とは、日本に住んでいる20歳以上、60歳未満のすべての人が加入するものです。国民年金には、第1号(自営業者、学生、無職の人など)、第2号(会社員など、厚生年金保険の適用を受けている事業所に勤務する人)、第3号被保険者(専業主婦など、第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人)の3種類があります。厚生年金とは、会社(法人)に勤める70歳未満の会社員や公務員などが加入するものです。国民年金に加入中の人は障害基礎年金を受給することができ、厚生年金に加入中の人は障害厚生年金を障害基礎年金に加算するかたちで受給することができます。知的障害がある人が障害年金を受給する際には、一定の障害の状態であることを示す「障害等級」に該当している必要があります。障害等級とは、障害の状態を分けたもので、重いものから1級、2級、3級とされています。障害の等級については以下のようにまとめられ、障害基礎年金の人は1級、2級まで、障害厚生年金の人は1級、2級、3級まで障害年金が給付されます。等級に応じて受給金額も変わってきます。・1級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの・2級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに一部援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの・3級知的障害があり、労働が著しい制限をうけるものここで注意しなければならないのは、障害基礎年金の場合は、3級と判定されると年金を受給することができないということです。一方、障害厚生年金の場合、3級でも受給できます。知的障害のある人が取得できる障害者手帳である療育手帳にも等級が定められていますが、療育手帳と障害年金とは全く別の制度で、療育手帳と障害年金の等級は必ずしも一致するわけではないことにも、注意が必要です。また、年金とは一般的には65歳以上の方が受給対象ですが、障害年金に関しては20歳の誕生日になった時点で受給対象者に含まれます。参考:宇佐見和哉「精神・知的障害にかかる障害年金認定の最近の動向について」知的障害の等級判定のガイドライン出典 : 先に述べた障害等級の審査主体は、障害基礎年金、障害厚生年金それぞれの場合で異なります。まず、障害厚生年金の場合は、日本年金機構の本部が一括して申請書類の審査を行います。そのため、等級判定の基準に関する地域差は生じていませんでした。一方、国民年金に加入している受給者は、障害年金のなかでも障害基礎年金に申請するのですが、都道府県別に各地の日本年金機構が申請書類を審査します。その審査には全国共通のガイドラインがなく、地域によって支給・不支給の差が出ており、格差が大きいという問題が指摘されていました。こういった障害基礎年金審査の地域格差問題を受けて、平成27年2月に「精神・知的障害に関わる障害年金の認定の地域差に関する専門委員会」が厚生労働省内に設置され、都道府県別の地域差を改善しようと動き出しました。合計8回の専門家委員会における議論を踏まえて、平成28年6月に地域差を是正する目的で「等級判定のガイドライン」を制定し、運用を開始しました。平成28年9月から運用が始まり現在、日本年金機構は、障害基礎年金の認定において、ガイドラインを活用しながら支給・不支給の是非、等級を決定しています。これにより、国民年金における地域差は改善の方向に向かっています。参考:国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン参考:宇佐見和哉「精神・知的障害にかかる障害年金認定の最近の動向について」参考:青木聖久「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」に至る背景と今後」障害年金の支給金額出典 : 日本年金機構によると、障害年金は以下のように計算され毎月支給されますが、支給額はその年度の経済状況で変動があります。また、子どもの数による加算額は児童手当との兼ね合いで支給額が調整されます。下記は2017年度の金額です。現段階でいくら支給されるのか、目安として参考にしてください。■障害基礎年金1級の場合の年額:779,300円(老齢年金の満額)×1.25(=974,125)+子の加算2級の場合の年額:779,300円(老齢年金の満額)+子の加算※子の加算…第1子・2子は一人につき224,300円。第3子以降は一人につき74,800円。この時の子どもは下記の要件を満たしている必要があります。・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子・20歳未満で障害者1級または2級の障害がある子Upload By 発達障害のキホン出典:障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構■障害厚生年金1級の場合:(自分の老齢年金) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕2級の場合:(自分の老齢年金) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕3級の場合:自分の老齢年金額または最低保障額 584,500円※1級・2級の場合障害基礎年金も加わるUpload By 発達障害のキホン出典:障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構知的障害における障害年金受給のための要件出典 : 知的障害のある人が障害年金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。■初診日要件は無し年金に加入している間に初診日があること(20歳未満、60~65歳未満で国民年金に加入していない場合を含む)。ただし、知的障害に関しては先天的な障害とされているので、初診日の証明は必要はありません。■保険料納付要件◇初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間において、保険料が納付または免除されていること。◇初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。■障害状態要件一定の障害の状態にあること(初診日から1年6か月経過した後に障害の程度が定められた基準以上である)。参考:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構参考:宇佐見和哉「精神・知的障害にかかる障害年金認定の最近の動向について」厚生労働省の報告によると、平成26年度の国民年金保険料の納付率が63.1%とのことから、4割近い人が年金を納付していないことになります。年金を払っていないと、障害年金が必要な時に受給要件を満たせなくなるため注意が必要です。出典:平成26年度の国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について|厚生労働省・日本年金機構障害年金の手続き出典 : 国民年金の場合は、市町村区の年金課の窓口で、厚生年金の場合は、日本年金機構の窓口で申請書類を入手します。申請書類には、年金請求書、診断書、受診状況等証明書、受診状況等証明書が添付できない申立書、病歴・就労状況等申立書といったものがあります。申請書類や手続きの詳細は以下の関連記事をご参照ください。知的障害における障害年金の受給認定更新出典 : 知的障害における障害年金の新規申請では、永続的な障害年金の受給認定がでるとは限らず、数年単位の認定となることが多いようです。これを有期認定と言います。また、最初と2回目以降の審査で有期認定の年数が変わることがあります。傾向としては、短期の有期認定から長期の有期認定になることが多いようです。しかしながら、手足の切断、完全盲目など、症状が固定しているといえる障害に関しては、永久認定となる可能性が高く、知的障害においても、重度なものに関しては永久認定になる可能性があります。原則としては、障害年金は有期認定であり、更新年度に合わせて、「障害状態確認届」が日本年金機構から郵送で送付されてきます。医師の診断を受け、これを郵送にて返送し、更新する必要があります。知的障害における障害年金の遡及請求出典 : 障害年金を請求するときの診断書から、障害認定日の障害状態が判断できる場合は、20歳のときに遡って障害年金を請求することができます。これを遡及請求といいます。しかしながら、20歳から相当な期間が経ったのちに、障害年金の制度を知って申請、請求をする場合、障害認定日の診断書を取得できないことがあります。とくに知的障害の場合、継続的に医療機関に通院する必要がないため、通院していないときの診断書を医師に作成してもらうことができないケースがあるようです。そこで厚生労働省は、平成27年に「障害年金制度の運用に関する対応状況」を再確認し、仮に障害認定日以後3ヵ月以内の診断書が得られなくても、障害認定日の障害の状態が確認できると判断した過去の事例を整理し、申請者に対応することにしました。現状においては、現症状から障害認定日の障害の状態等が明らかに判断できる場合にあたっては、遡及請求して差支えない、とされています。参考:障害年金制度の運用に関する対応状況 | 厚生労働省障害年金の申請で困ったら出典 : 障害年金を利用したくても、申請などの手続きが大変なことから申請を諦めてしまう人もいます。その複雑さを軽減してくれる人が、社会保険労務士(通称、社労士)です。社労士とは、労働・社会保険に関する法律や人事・労務管理の専門家として、私たちの採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題、さらに年金の相談に応じる人のことです。障害年金についての無料相談や申請書作成の代行も行っています。まずは各地域の社労士会に無料相談をしてみましょう。参考:社労士会リスト|全国社会保険労務士会連合会まとめ出典 : 障害年金の申請には、障害年金に理解のある医師を探すことが、はじめの作業となります。申請書類の作成は専門知識のない人にとっては大変な作業です。何かわからないことがあったり、挫折しそうになったら、社労士の無料相談などを活用し、相談するといいでしょう。今までは都道府県別の地域差や遡及請求に関する問題などがありましたが、ガイドラインの制定や、専門家会議の設置などにより、それも改善の方向に向かっていっています。複雑な制度ではありますが、この制度を積極的に活用しましょう。
2017年06月30日アセスメントとは?出典 : アセスメントとは、ある問題を解決するために情報を集め、それをもとに問題解決の方法を計画していく一連の流れのことです。アセスメントという言葉は世の中のさまざまな場面で使われており、例えば「環境アセスメント」や「看護アセスメント」のように解決する課題に応じて使われています。・子どもの臨床心理アセスメントとは?上記の様々なアセスメントと同じく、子どもの臨床心理においても「アセスメント」という言葉が使われています。例えば病院で発達障害の診断を受ける前に行う場合、知能検査などの検査だけでなくカウンセリングにおける行動観察・面談などの方法によって情報を集め、子どもの特性を把握し、一人ひとりに合った方法を見つけていくことを言います。一般的にスクールカウンセラーや臨床心理士などの専門家がアセスメントという言葉を使う場合が多いですが、お子さんの特性をさまざまな角度から捉えるという考え方や専門家の視点を知っておくことは日常生活にも役立つでしょう。この記事では、子どもの特性を把握する際の専門家の視点、関係する検査、検査結果を日常生活に活かす方法についてご説明します。子どもの臨床心理アセスメントの目的出典 : 子どもの臨床心理アセスメントの目的は、子ども一人ひとりが自分らしく生活できるようになることです。そのためにお子さんの特性をさまざまな角度から把握し、それをお子さんに合った教育方法につなげる必要があります。子どもの特性を知る代表的なツールとして知能検査や発達検査があります。客観的に子どもの特性を知ることができるというメリットがありますが、その結果や障害の診断名だけで子どもの特性を決めつけてはいけません。あくまで特性を知るための方法の一つなのです。検査結果を参考にしつつ、お子さんがどんな行動をしているのかやなぜその行動をとるのかを把握していくことが、アセスメントの目的です。どんな時にアセスメントをするの?出典 : お子さんの特性をさまざまな角度から把握していくことは、ニーズを見極める時、障害があるかを判断する時、支援の計画を立てる時などにおいて欠かせません。ここでは医療、支援、学校の3つに分けてご説明します。・医療におけるアセスメント医師が子どもの発達に障害があるかを判断する時には、アセスメントが行われます。子どもの場合は専門医のいる小児科や小児発達神経科、児童精神科で受診できます。また、思春期以降の場合は精神科での受診も可能です。医療機関では、面談(観察)や脳波などの生理学的検査、認知・知能などの心理検査、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答などから得た情報をもとに、総合的に発達障害かどうかを診断されます。・支援の場におけるアセスメント未就学の子どもの場合、発達相談においてアセスメントが行われます。例えば、ソーシャルワーカーとの面談、医師による診察(任意)、発達検査・知能検査が行われ、療育プランが検討されるといった流れとなります。就学しているお子さんの場合は、通級・特別支援学級などの就学先に通う時や放課後等デイサービスなどの施設を利用する時において同じようにアセスメントが行われます。お子さんの特性をさまざまな角度から把握し、一人ひとりに合った支援方法につなげます。・学校におけるアセスメント学校での困りごとがあった時に相談しやすいのがスクールカウンセラーです。教育現場に近い立場でありながら、臨床心理士の資格を持っていることが多く、客観的なアドバイスをもらうことができるでしょう。スクールカウンセラーは主にお子さんとの面接を通して、特性を把握します。そのほかにお子さんの学校生活での様子を先生から聞いたり、場合によっては実際に授業の様子を観察したりして情報を得ます。また知能検査などの検査結果をこれらの情報をもとに、お子さんの発達や心理状態に関するアドバイスをもらえます。次の章からはカウンセラーなどの専門家が面談や行動観察、知能検査などの検査において、実際にどんな視点でアセスメントを行っているかを具体的に説明していきます。子どもの行動観察の時のアセスメント出典 : 子どもの特性を知るための最も基本的な情報収集として、カウンセリングにおける行動観察があります。服装、姿勢、態度、発言などをチェックすることが、特性を知るヒントになるのです。カウンセラーは、例えばお子さんが目線を合わせられるか、質問に対して答えられているか、極度なやせや肥満ではないか、などについてチェックしています。カウンセラーなどの専門家による行動観察の方法は、大きく分けて自然観察法と実験観察法の2つがあります。・自然観察法子どもの自然な姿を観察する方法です。例えば、待合室での子どもの様子を観察し、参考にするといったことが挙げられます。・実験観察法例えば一定の時間子どもをグループで遊ばせて、その様子を観察する方法などがあります。チェックされているポイントは集団で遊べているか、友達とけんかをしたかどうか、乱暴をしていないか、独り言を言っていたかどうかなどです。小さいお子さんの場合は、遊戯療法室で1人で遊んでいる様子を観察したり、親子や集団で遊んでいるところを観察したりします。母子分離不安が強いかどうか、多動、かんしゃく持ちなどの特徴があるかどうかなどが見つかります。また親子遊びでは、親御さんがお子さんとどのように関わっているかについてもチェックされています。例えばどのように指示を出しているか、どのように子どもの要求を受け止めているかなどです。これをもとに、カウンセラーからお子さんの接し方に関するアドバイスをもらえます。行動観察により、子どもの発達状態や、対人傾向、行動傾向などの情報を得ることができるのです。カウンセラーと子どもの、面接時のアセスメント出典 : 子どもの特性を把握する手段の一つとして、面接があります。面接では、カウンセラーが子どもと対面で話すことで特性を把握します。話している内容はもちろん、話し方、表情、身振り、視線、手足の動きなど、総合的に判断していきます。例えばカウンセラーが「おいくつですか?」と聞いたときに、お子さんが「おいくつですか?」とオウム返しをしてきたり、視線を合わせなかったりした場合、自閉症スペクトラムの可能性があるという仮説を立てることができます。しかしこの情報だけで決めつけることはなく、検査結果や行動観察で得た情報を踏まえて、特性を捉えていくのです。面接ではカウンセラーと子どもの間に信頼を築くことが大切であるため、子どもが緊張しないように座る位置などの工夫がされています。例えば視線恐怖がある子どもの場合、カウンセラーは横並びに座ったり直角に座ったりして、話しやすい環境が整えられています。また初回の面接はお子さんとカウンセラーとで行う面談の他に、どんな悩み事があるのかや、なぜこの相談機関を選んだのか、さらに家族構成や病歴といった基本的な情報を親御さんと共有する場が設けられます。今後の治療について、適用される支援、相談機関の特徴などについても聞くことができます。心配な点があれば、面接の際に質問するとよいでしょう。知能検査などの検査時のアセスメント出典 : 特性を知るためには、知能検査や発達検査などの検査を受ける場合が多いです。しかし記事の前半でもご説明したように、検査結果だけで子どもの特性を判断してはいけません。このような検査は特性を客観的に把握したり、面談や行動観察だけでは分からない特性を見つけたりすることが目的です。ここでは子どもが受ける検査の中でも、代表的な検査をご紹介します。・ビネー式知能検査対象年齢:2歳~成人検査ビネー式知能検査は精神年齢(MA)と生活年齢(CA)の比である比例知能指数(比例IQ)を算出します。生活年齢(CA)とは生まれてからの暦の上での年齢(暦年齢)を指します。一方精神年齢(MA)は、検査で解答できた問題の難易度がどの年齢のレベルにあるかによって判定されます。ビネー式知能検査の中でも代表的であるのが、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)です。検査対象が2歳から成人と幅広く、問題が年齢尺度によって構成されているため、通常の発達レベルと比較することが容易になっています。また、実施の手順が簡便であり、被検査者に精神的・身体的負担がかからないことが大きな特徴となっています。・ウェクスラー式知能検査対象年齢:WISC-Ⅳ5歳~16歳11ヶ月、WAIS-Ⅲ16歳~89歳、WPPSI 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月ウェクスラー式知能検査は言語性IQと動作性IQという測定概念を用いて、個人内差(個人の得意不得意)の測定をします。年齢に応じて児童版のWISC、成人用のWAIS、幼児用のWPPSIの3種類があります。個人の能力の特徴をより分析的に捉えることができ、知的障害や発達障害のある人の場合、検査結果に一定の傾向が見られやすくなっています。そのため、知的障害や発達障害の確定診断の際に、参考情報の一つとして用いられることがあります。・K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー対象年齢:2歳6ヶ月~12歳11ヶ月K-ABC心理・教育アセスメントバッテリーは、子どもの知的能力を認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価することが特徴の検査です。検査結果からその子どもが得意な認知処理様式を見つけ、それを実際の指導・教育に活かすことを目的としています。同時処理(情報を全体的に捉える認知特性)と継次処理(情報を順番に理解する認知特性)の個人内の差を明らかにできることから、特異な認知パターンを持つ学習障害のような場合に適用されます。・新版K式発達検査対象年齢:生後100日後から成人年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。このように子どもが受ける検査にはさまざまな種類があります。心理検査は検査によって分かることも異なるため、どの検査を受けるかはカウンセラーなどの専門家に相談するとよいでしょう。発達障害におけるアセスメント出典 : 発達障害のあるお子さんの特性を知るためには、検査を受けることはもちろんのこと、特に行動観察が重要視されています。例えば暗記がとても得意なのに算数など苦手な教科に全く興味を示さないという学校での様子をきっかけに、学習障害だとわかったパターンなどがあります。またお子さんの行動を観察することは日常生活においても欠かせません。お子さんのご家庭での様子を見て気になる点があれば、保健センター、子育て支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなどに相談しましょう。早めに相談することが、お子さんにあった療育を見つけるきっかけとなるのです。さらに年齢が上がってから特性が明らかになる場合もあるため、子どもの成長につれて、アセスメントも更新していく意識を持つことが大切です。検査結果を見ると障害の重さや数値に目がいきがちですが、それ以外の内容についても理解する必要があります。日常生活では検査結果をもとに、お子さんの苦手なことの原因を把握していくとよいでしょう。例えば「時間の見通しを持てない」という結果が出ていた場合、急かしても子どもは何を急かされているか分からずパニックを起こしてしまうのだと解釈できるかもしれません。「本人の筋緊張が低く姿勢を長時間保てない」という検査結果が出ていたなら、怠けているのではなく、きちんと着席するのが難しいのだと判断できます。このようにお子さんの困難の原因を知ることで、どんな工夫をすればよいのかの見通しにつなげられるでしょう。検査結果でお子さんの行動を見る視点を狭めないようにすることが大切です。さらにお子さんに合った教育方法を見つけていくために、検査結果などの情報を保育士や幼稚園・学校の先生に共有し、お子さんのご家庭での様子と幼稚園や学校での様子の両方を把握するようにしましょう。まとめ出典 : 子どもの臨床心理におけるアセスメントとは検査、行動観察、面談などによってさまざまな角度から子どもの特性を把握し、一人ひとりに合った教育方法を見つけていくことを言います。アセスメントの方法の一つに知能検査などの検査がありますが、検査結果はあくまで客観的に特性を知るためのものです。障害の重さや知能指数の数値だけに注目するのではなく、検査結果をもとに行動と照らし合わせてお子さんの得意・不得意を把握していくことが大切です。またお子さんの行動を知ることは日常生活においても欠かせません。面談や検査でのお子さんの様子を専門家から聞いて知る以外にも、学校ではどうなのか、さらにご家庭ではどうなのか、さまざまな角度から特性を理解してあげることが総合的なアセスメントであると言えるでしょう。参考:松原達哉/編『臨床心理アセスメント』2013年丸善出版参考:「発達 (第131号)」2012年ミネルヴァ書房
2017年06月30日息子が小学校に入り、はじめての授業参観へ出典 : 自閉症スペクトラムと注意欠陥障害を持つ息子は、この春小学2年生になった。小学校入学前に主治医とも十分に話し合い、メリット及びデメリットを考慮したうえで、息子は通常学級に通っている。以前コラムにも書いたように色々あったにはあったが、その後、担任の先生や支援コーディネータさんと会談を重ねて連携を取り合い、今ではおおむね、上手くいっている。さて、話は遡って1年生当時のこと。息子の話から察するに、日々楽しく過ごしているようであったし、ときおり常同行動を起こす以外、特に問題なく授業を受けることができているとの旨、担任の先生から聞かされていた。元々多動や衝動性は見られなかったが、年を重ねるにつれて、それまでになかった特性が目立ち始めることもあるらしい。そうした懸念がわずかばかりあるにはあったのだが。「きちんと着席して授業を受けていますし、何の問題もありませんよ」先生がそうおっしゃるなら大丈夫だろう―私は安心して、また、我が子がどんな様子で授業を受けているのだろうかと楽しみな気持ちで、初めての授業参観へと向かった。このとき私は発達特性のことばかり気にかけていたために、もうひとつの大切な事実をすっかり忘れていたのだった…廊下から見学する私に気づいた息子は、満面の笑みで…出典 : 授業が始まってすぐに教室に行けば、息子は私の姿を確認し、集中しなくなる―そうした確信があった私は、5分ほどわざと遅れて学校に着いた。そして廊下の窓から我が子の姿を確認すると…確かにきちんと着席し、真面目に授業を受けている。と思ったら、徐々に徐々に、頭の位置が下がっているではないか。椅子に沿って体を下方にスライドさせ、頭部は背もたれに、背面は台座に。まるで椅子の上で無理やり仰向けで寝ているような姿勢である。(ちょっと…何やってるんだよあいつ…)私は、背中に冷たい何かが伝うのを感じた。と思ったらすぐに座り直したので安堵していたら、今度は尻が椅子ごと後ろにスライド。顎を机上に載せ、両腕をだらりと投げ出している。(…態度悪っ!!!)それからまた姿勢を正したものの、先生が話している間、真顔で黙って白目を剥いたり、明後日の方を向いたり…。すると間もなく、息子はこちらの存在に気づいた。小さく手を振り、素人でも読唇できてしまう口の動きで声を出さずに「か・え・り・た・い!」と満面の笑みを見せた。それを受けて、ひきつりを隠せないと承知で精一杯の笑顔を作り、「ま・え・を・む・け!」と、やはり声を出さずに返した私。その後も何度となく笑顔でこちらを向く息子に、「こっち見んな!前向け前!」というアクションを私が返す、というやりとりを繰り返した。このとき私は先人たち、そう、男子小学生を育てた経験のある親御さんたちから聞いていた、「男子小学生の多くは愛すべきアホで、そのために肝を冷やすことがしばしばある」という話を思い出していた。(忘れてた…こいつ、アホだった…)今ならわかる。授業参観は彼にとってイレギュラーなできごと。たくさんの親御さんたちが見守る中で授業を受ける状況に疲弊し、著しく集中力が低下していたのだ(この日の帰り道、本人の口から聞いた)。しかし、今だからこれも言える。「発達特性も関係あるけど、あれは息子だからこその行動だ」と。私はこの日、たっぷりの冷や汗をかいた。“アホ男子母”としての洗礼を受けた気がした。私「息子がほんと、すみません…」 先生「え?ちゃんと頑張ってましたよ」出典 : 「すみません…息子は普段もあんな感じなんですかね…?」あのような態度の児童がいたら先生も授業をやりにくかろう…特性によるストレスがあるとはいえ、親の私としてはその辺りが心配で、後日担任の先生に電話をかけた。「普段はちゃんと授業に集中してますよ。あの日はやっぱり、いつもと違う状況にとまどっていたんですかねぇ…」先生は笑って普段の姿について教えてくださったあと、こう続けた。「でも、ちゃんと着席していましたし」「えっ?ちゃんと?」「ええ。お母さんがいらっしゃる前も、ちゃんと着席していましたよ」「あ、でも来たあと…」「立ち上がったりしてないですもの」「あ…!」「ちゃんと着席していましたもんね」つまり、こういうことだ。先生のおっしゃる「ちゃんと着席」は「持ち場である座席から離れていない」ということで、私が勝手に想像していた「ちゃんと着席」は、「しっかり台座に尻を置き、前を向いている」ということだったのだ。「ちゃんと着席…していましたね」「ええ!いつも学習を頑張っていますよ!」息子なりに取り組もうとすることを理解、寄り添おうとしてくださっている先生にお礼を伝え、私は電話を切った。学校は、「正しい姿勢」を身につけるための場所なのだろうか出典 : 過日、授業中における子どもの姿勢保持について、友人たちと話題になった。発達障害当事者は空間認知能力の点において弱いため、同じ姿勢を保ち続けることが苦手な人が多いという。体幹を鍛えることで幾ばくかはカバーできるらしいが、その話は横に置く。かつての私のように、親御さんは、「授業中、“他の子と同じように”正しい姿勢で授業に取り組めているか」と、ついその外面ばかりを気にしてしまうかも知れない。とはいえ、姿勢を保持するというのはそんなに大事なことなのだろうか。学校の授業の本位が何なのかを考えたら、学業に取り組むことができていたら、それで充分なのではなかろうか。その“授業に取り組む”ことだって、ひとりひとりにできる精一杯がある。ちょっとした音や視覚情報に影響されて、集中力を削がれてしまう子だっているだろう。とある友人が言っていた。「寝転がっていてもなんでもOKだったり、そういう子が姿勢保持できるような机や椅子がある環境で勉強できる、そんな学校があったらいいのにね」と。彼女の言葉を聞いて、「障害は人と社会の間にあるもの」ということを再確認した。変えるべきは、“授業中、他の子と同じように正しい姿勢を保持できないこと”なのか、それとも…それはそれとして、うちの息子の話。発達障害もありつつ、アホ男子としての落ち着きのなさもある。周りのご配慮をありがたく受け止めつつ、こちらも皆様に配慮せねばならぬと思っている2年生の初夏。
2017年06月30日発育が遅いだけとも思えない、長男への違和感にふくらむ不安我が家には双子の兄弟がいます。長男は生後まもなく難病であると診断され、医師からは「この子は長く生きられない」と宣告されました。けれど一つの薬が大きな効果をもたらしたことで、長男は定期的な通院はあるものの、少しずつ状態がよくなり歩いたり走ったりできるようにまでなりました。本当に奇跡に近いことで、私は長男が元気に育っていく姿に安堵していました。けれど一方で、双子の次男と比較した時、長男の行動に対する違和感が拭えませんでした。Upload By シュウママインターネットで長男の行動の気になる点を次々入力して検索してみました。すると検索画面にヒットするのは「自閉症」という文字…。私の気持ちはどんどん沈んでいきました。自閉症かも…病院の受診を決意このまま悩んでいても仕方がない――そう思った私は、夫に自分の考えを話しました。Upload By シュウママすると夫はしばらく黙ったあと「俺も一緒に病院行くよ」と言ってくれました。けれどわざわざ夫が会社を休んで受診するのも…そう思って私は長男と二人で行くことに決めました。帰って来た時、自閉症じゃなかったよ~そう明るく言えることを念じながら。夫は心配そうにしていましたが了解してくれました。「どうしてこの子だけが…」障害告知に止まらない涙現実は厳しいものでした。小児病院の精神保健科を受診すると、長男は室内に置かれた沢山の遊具には目もくれずひたすらボールを回し続けています。その様子を一見しただけで主治医の先生は言いました。Upload By シュウママやはり…という思いと、とてつもない脱力感がありました。難病の上に、そのうえ自閉症まで――病院からの帰り道、長男の顔を見つめていると涙があふれてきます。どうしてこの子だけがたくさんの病を背負わされたのか、いろんな考えがあとからあとから押し寄せます。家にたどり着き、苦しくなった私は夫の携帯に電話をかけました。1コールで夫が出ました。夫が何か言うのを待たずに、私は泣きじゃくりながら話しました。Upload By シュウママ夫が私にかけた言葉は、腹が立つほど能天気だったけど私が話し終えた後、受話器からは耳を疑うような明るい声が聞こえてきました。Upload By シュウママなんて能天気な男なんだ…一瞬怒りがわきあがりました。けれど「自閉症だろうがなんだろうが、シュウが可愛い息子であることに変わりないじゃん」という明るい言葉に、何かすっと心が軽くなったのです。悩んでいた事実がどうでもいい事の様に思えてきました。その日、仕事を終えて帰ってきた夫は普段のままでした。深刻な顔をするでもなく長男の頭をなでるのです。Upload By シュウママ呆れつつも、夫の暢気さと明るさに、この日とても救われたことを覚えています。数年たって、夫にあの日のことを聞いてみたそれから何年か経ち、ふと思い出してあの時のことを夫に話しました。「パパに電話した時、能天気で明るい声に一瞬腹がたったけど、あの言葉で救われたよ」すると夫からは思いがけない返事が返ってきました。Upload By シュウママ「俺が参ってしまったら、だめだろ。一家の主なんだから。だから必死で明るくふるまったんだよ」この言葉を聞いて、ああそうか、夫も辛かったけれど、一生懸命頑張ってくれたんだ、そう気づいて少しだけ夫を見直しました。どうせなら、死ぬまで言わなければもっとかっこよかったのにな…。けれどやっぱり思うんです。長男にとってこの人がお父さんで、本当によかったなー、と。
2017年06月29日メディアで話題の心理カウンセラー、心屋仁之助さんとその一門があなたの相談に答える「凍えたココロが ほっこり温まる、心屋仁之助 塾」。今回は、「発達障害の息子の将来が心配」という、きょんちーさん(43歳・パート)に、心屋塾上級認定講師の福田とも花さんからアドバイスをいただきました。■きょんちーさんのお悩み高校一年の息子は、発達障害があり対人不安が強く学校が嫌いです。幼稚園からずっと友達も作れず、言葉がでませんでした。そして小学五年生から不登校を繰り返しており、現在もまた不登校です。病院や相談室などを転々としてきましたが、どこも具体的な解決策が見つかりません。話すことができるのは、母である私と妹、小学五年生のときに優しくしてくれた支援員さんのみです。父親に対しても苦手意識が強いほうです。心配なのは、将来社会参加できるかどうかです。毎日、家事手伝いや散歩、家庭学習をさせてはいますが、本人は外にひとりで外出することができません。母子分離不安も強いので、就職活動もできるかどうか、社会参加できるかどうか心配でなりません。どうしていけば良いのでしょうか。学校の先生たちも病院の先生も手探り状態でどうしたらいいかわからない状態です。父親は他人ごとのようで、もう何もあてにはできません。誰か助けて下さい。※一部、質問内容を編集しています。■心屋塾上級認定講師の福田とも花さんよりきょんちーさん、ご相談ありがとうございます。息子さんのこと、幼稚園の頃からずっと心配で、今は将来についての不安が強くなっているのですね…。突然ですがきょんちーさん、幼稚園生くらいの小さな自分に戻ったつもりで、次の言葉を口に出して言ってみてくださいね。「私、一人で居るのが不安だよ」「お母さんとずっと一緒にいたかったよ」「学校なんて行きたくなかったよ」「お母さん、助けてよ」言ってみて、どんな感じがしていますか? 子どもは、あなたの鏡です。もしかしたら、きょんちーさん自身が、子どもの頃からずっと、一人でいるのが不安だったのではないでしょうか? 誰にも助けてもらえず、ひとりぼっちを感じて来たのではないでしょうか?本当は上の言葉を言いたかったけれど、言ってしまったら、お母さんに迷惑をかけてしまいそうな気がして、怖かったのでしょうか。もしくは、お母さんに話しかけたけれど聞いてもらえず、いま旦那さんに対して感じているように「どうせわかってもらえないんだ」と諦めて、心を閉ざして来たのでしょうか。そのような経験を繰り返して、きょんちーさんは自分のことを、「どうせ誰にも助けてもらえない、ひとりぼっちの人」「どうせひとりでちゃんとできない人」「どうせ他の人と同じようにできない人」「どうせ普通の人より劣っている人」と思い込み始めたのかもしれませんね。そのセルフイメージ通りに、目の前の子どもが、問題を見せてくれているだけなのです。発達障害のわが子が、ペラペラお喋りできて、どんどんお友達を作ろうとしてしまったら、どうなりそうで怖いですか?伝えても伝えても、誰にもわかってもらえない悲しみを、感じてしまいそうですか?発達障害のわが子が、普通に登校してしまったら、何が怖いですか?他の子と同じようにできない劣等感を感じて、傷ついてしまいそうですか?発達障害のわが子が社会に出てしまったら、どうなりそうで怖いですか?誰にも助けてもらえず、一人で困って、悲しい思いをしてしまいそうですか? その不安や怖さは、全部きょんちーさん自身が体験してきたこと。「思い出し笑い」ならぬ、「思い出し怖い」なのです。 では、どうしたらいいのか?今まで信じこんできた「どうせ誰にも助けてもらえない、ひとりぼっちの人」という自分のセルフイメージを疑ってみませんか?ほら、ここで「誰か助けて」と言えたことで、私にはちゃんと伝わりましたよ! 喋ることで、伝えたいことを、伝えることができますね。わかってもらえないこともあるけれど、わかってもらえることもありますね。傷つくこともあるけれど、傷つかないこともありますね。お母さんに話したとき、わかってもらえたと感じたことはありませんか?「どうせひとりでちゃんとできない人」「どうせ他の人と同じ様にできない人」「どうせ普通の人より劣っている人」 自分ひとりでできなかったとき、他の人と違ったとき、「そんなあなただからいいんだよ」と近くにいてくれた人はいませんでしたか?そんなあなただから、選ばれたことはありませんか?そんなあなただからこそ、できていることはありませんか?怖がりで傷つきやすいきょんちーさんがママだからこそ、わが子の繊細な心に、目を向けてあげられているのかもしれませんね。もう、自分で自分を許してあげませんか? あのときのお母さん以上に、実は、自分が自分を一番責めていたりします。「他の人と同じようにできなくてもいい」「ひとりでちゃんとできなくてもいい」「社会や学校に行くのを、怖がってもいい」「怖がりの自分でもいい」どんな自分も自分で許して上げていくと、どんな子どもでも大丈夫! と、信じて見守ることができるようになりますよ。きょんちーさん、怖がりながらも「助けて」と伝えてくれて、ありがとうございました。きょんちーさんを、心から応援しています。 ・このカウンセラーのサイトを見る
2017年06月29日TEACCHプログラムとは?出典 : 「TEACCHプログラム」は、米ノースカロライナ州で1972年以来行われているASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。このプログラムは人生を通して行われるもので、「自閉症児の診断・評価」、「構造化を特徴とした療育プログラム」、「家族・支援者サポート」、「就労支援」など様々なサービス群から成立しています。自治体と大学が主体となり、研究機関・専門家・家族・本人・地域コミュニティが一体となってプログラムを運用。その理念、成果には注目が集まり、世界的にその枠組が広がっています。「TEACCH」は「Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped CHildren」(自閉症及び、それに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育)の略で、米ノースカロライナ州で行われているプログラムには下記のような特徴があります。「自治体規模の介入」ノースカロライナ州政府の全面的なバックアップと全州規模での実施。「ゆりかごから墓場まで」幼児期から成人して地域で生活するまで、障害児の一生を地域で生活するための長期的体系的プログラムである。「自閉症児の文化」自閉症の人々の行動様式を文化の一つとして捉え理解しようとする。「親は共同療育者」専門家のセラピストの支援と同等以上に、親の療育への関与が期待される。「構造化された教育」予測不能な状態が苦手である特性を持つ自閉症児に対して、整理され、構造化された環境をつくる。TEACCHプログラムを言い換えると、ASD(自閉症スペクトラム)の当事者の生活の質(QOL)向上の為に、彼らの周囲の物理的環境、及びコミュニケーション環境を生涯にわたって設計し続けるプログラムであるといえます。参考:TEACCHプログラムによる障害児者の地域ケアに関する実践的研究TEACCHの価値観出典 : の人々が持つ「コミュニケーションの困難」「視覚優位」「こだわりの強さ」などの特徴のことを、「自閉症の文化」(Culture of Autism)と肯定的に表現します。自閉症のある人を特異な障害者として見るのではなく、「世界の捉え方が一般の人とは異なる」という態度で向き合います。無理に彼らを世間の常識に合わせるのではなく、周囲の人々がASDの人々の捉え方を理解し、許容し、その上で彼らの特性が社会に適応できるようにすることで、QOLを高めていこうと考えるのがTEACCHの基本的な理念です。TEACCHは、ASDの人々の人生を長期的かつ包括的に支援することで、彼らの自立とQOL向上を目指しています。TEACCHプログラムを実施しているノースカロライナ州立大学のウェブサイトには、TEACCHの目指すところを下記のように表現しています。「地域に根付いたサービス提供を実現すること」TEACCHのスタッフはASDの人々とその家族、コミュニティに科学的根拠に基づくサービスを提供するため、最新の方法論を常に学び続けている。「成人後のその先のニーズに応えること」ASDの成人の人々、家族、彼らの支援者のニーズに応えるためにTEACCHの臨床研究プログラムは日々発展を続けている。「生まれてからすぐのニーズに応えること」TEACCHは、ASDの幼児、その家族、支援者のニーズに応え、ASDの早期発見、介入を行うために臨床研究プログラムを発展させ続けている。「ASDの人々の労働力の質を担保すること」TEACCHは、増加しているASDのある労働者のニーズに応えるため、職業訓練プログラムを就業前の学生、及び現在の就業者に提供する。「継続すること。次の40年を見据える」「TEACCH」はノースカロライナ州、ファンドレイジング活動、研究費助成など、多様な収入源から成立しているプログラムである。以上のような目標からは、人生単位で継続的にASDの人々に関わる姿勢が感じられます。 University of North Carolina TEACCH Autism ProgramTEACCHの「構造化のアイデア」その4つの考え方出典 : の傾向がある子どもは、自分の周囲で「今、何が起きているか」「この後、何が起きるか」「自分は何をすればいいか」が明確に整理されていない場合、状況理解が難しくなり混乱してしまいます。そのため、「構造化」という手法を用いて環境を整理することで、状況理解を容易にします。環境が整理されると、心理的にも安定し、活動や学習へ参加することができるようになります。例えば、活動別に場所を決める。「休む場所」「一人で勉強する場所」など、活動と場所を結びつけることも有効な手段の一つです。これを「物理的構造化」と言います。また、コミュニケーションにおいては、特に「話しかける」などの音声コミュニケーションよりも、イラストや写真で提示する視覚的なコミュニケーションの手法に強みがあります。そのため、指示や、意思表示をイラストや写真を使って行うようにします。これを「視覚的構造化」と言います。これらの、「構造化」の詳細についてさらに見ていきましょう。彼らの周囲を物理的に整理することで不安を軽減し、これから起きることを予測可能にします。この為に、「物理的構造化(Physical Organization)」という手法をとり、環境の意味、構造を整理します。物理的構造化の手法は、大きく以下の2つです。・エリアと期待される行動を対応させる(勉強する場所、遊ぶ場所、落ち着く場所)・エリアを明確な仕切りで分ける(ついたて、棚、囲い、カーペット)また、活動エリアは大きく4種類に分けられます。1.ワークエリア(作業、勉強をする場所)2.プレイエリア(遊ぶ、落ち着くための場所)3.トランジションエリア(中継地、その日あるいはこの後何をすればいいかなど、個別スケジュールが確認できる場所)4.その他、カームダウンエリア(感情的になったとき、冷静になるための場所)などASDの子どもは、時間の概念を理解することが難しく、自分から先のことを見通すこと、先を想像することに困難があり、「Here and Now」(いま、ここ)の世界に生きています。そのため、前もって何が起こるか、何をすればいいかがわからないと不安やパニックに陥りがちです。不安を回避し、安心して学習や作業に取り組むために、「スケジュールを決める」ことが有効です。また、ASDの子どもは、視覚的な理解の方が得意な場合が多いため、写真やイラストを用いてスケジュールを提示すると理解が容易になります。例えば、イラスト入りの時間割のカードを作り、順番にボードに貼るとこの後するべきことが分かります。終わったら外すというルールにしておくと、先に何が待っているのか、何が終わっているのかがわかり安心して行動ができるようになります。今の状況を理解したり、先を見通すことに困難があるASDの子どもでも、「一人で自立して」一連の学習や作業などの活動ができるようにするための方策を、「ワークシステム」といいます。ワークシステムでは下記のような事柄を設定し、わかりやすく伝わるように環境を整えます。①どんな活動(学習や作業)をするのか②どのくらいの時間、あるいは量の作業や活動をするのか③その課題や活動はいつ終わるのか④終わった後は何をするのか、何をしてもよいのか佐々木正美, 『自閉症児のためのTEACCHハンドブック (ヒューマンケアブックス) 』, 2008年, 学研プラスの人々が、教室や作業所で不適応行動(かんしゃく、暴れるなど)を起こす場合、上記のようなことが整理されていないために、困惑や混乱をしている場合があります。逆に先の見通しが立ち、何を期待されているか、できるのかがわかるだけで安心を与えることができます。例えば学習机の左側に棚を置き、勉強の種類ごとに書類入れを作り、やる順番に宿題のプリントを入れます。子どもは上から順番に書類入れを出し、中に入っている宿題をやったら机の右側の「終わったものを入れる箱」に入れていきます。左側の最後の書類入れには、「ゲームをする」など宿題が終わったらやっていいことを書いたものを入れておきます。このように左右に動かすというシステムのほか、色や数字、マーク、文字を使うなど子どもの理解に応じた環境調整をしていきます。発語によるコミュニケーションに困難を抱えているASDの子どもにとっては、「視覚的構造化」が有効です。視覚的構造化とは、会話によるコミュニケーションではなく、「実物」「絵、イラスト」「写真」、場合によっては「文字」を通してコミュニケーションを整理する方法です。Upload By 発達障害のキホンえこみゅUpload By 発達障害のキホンTEACCHのコミュニティ出典 : ノースカロライナ州のTEACCHプログラムでは州の支援のもと、大学が中心となり、当事者、家族、支援者の他、様々な関係者が共同でASDの人々の自立に取り組んでいます。「親は共同療育者」と言うように、TEACCHでは家族への支援も充実しています。家族への教育を行うと同時に、関係機関(教育機関、就職先企業)へのスタッフによるコンサルティングも行っています。学校教育が終了した後も、人生を通しての自立とQOL向上のために、居住、就労支援を実施するなど、自治体、家族、支援者が長くお互いを助け合うコミュニティとして成立しています。このように包括的に人々を巻き込んでいく仕組みがTEACCHプログラムの特徴の一つです。 Support and Education Consultation and TrainingTEACCHとABA(応用行動分析)の違いや関係性は?出典 : 同じくASDのある人への支援の方法として注目される方法として、応用行動分析(ABA)というものがあります。ABAは、人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、実社会の諸問題の解決に応用していく理論と実践の体系です。TEACCHはASDの人々の自立とQOL向上を目指す包括的な「支援の枠組み」であるため、厳密には比較できるものではありません。TEACCHのプログラムの中にも行動分析の強化の原理や課題分析、スモールステップなどのさまざまな技法やテクニックが取り入れられています。また、ABAをベースにした支援技法を採用している療育施設やサービスで、TEACCHの「構造化」の考え方を組み合わせるなど、必ずしも相反する手法ではありません。TEACCHプログラム自体は、科学的に根拠のある手法ならば広く取り入れる姿勢をとっています。まとめ出典 : はASD(自閉症スペクトラム障害)の人々をその人の一生という長期にわたって、そして家族、支援者、地域を巻き込みながら当事者を包括的に支援する枠組みです。その目的は、ASDの人々の「自立とQOL(生活の質)向上」。TEACCHのプログラムから学ぶことができるのは、指導の方法に留まらず、周囲がASDとその人自身を理解すること、そして当事者や家族だけでなく、教育関係者、就業先なども広く一体となって生活に関与することの重要性ではないでしょうか。参考文献:自閉症児のためのTEACCHハンドブック (ヒューマンケアブックス)ノースカロライナ州TEACCHプログラム公式サイト(英語) to TEACCH(Youtube/英語)
2017年06月28日我が家も「ラン活」開始!でも少し不安なことも…出典 : 「毎年前倒しになっている」と噂のランドセル商戦。気に入ったデザインのものは早めにゲットしなければあっという間に売り切れてしまうのだそうです。昨年の夏には我が家も例に漏れず、子供のランドセルを選んで購入する、通称「ラン活」をスタート!実はこれでも遅いそうなのです。正直私の中では「行く学校がまだ決まってないのに、ランドセルを買ってしまっていいのだろうか…?」となかなか踏み出せずにいたのでした。当時、自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害のある長男の、就学相談真っ只中。私の壮大な「ブレ」によって希望進路を「支援級」→「通常級」→「やっぱり支援級」とウロウロしていた頃でもありました。特別支援支援学級の中にはランドセル必須でない学級もあるようでしたし、もし特別支援学校に進学する場合、長男の学区ではランドセルではなくリュックになります。張り切ってランドセルを買っても無駄になるのでは…そんなことを思いながらも、「小学1年生の象徴」とも言えるピカピカのランドセルを背負う姿を見たい気持ちで、心をゆさぶられていました。まんざらでもない表情で試着する長男。そんな顔を見せられたら…!!出典 : ある日、義母と一緒に大型スーパーのランドセル売り場へ行くことになりました。スーパーに着くと、長男、主人、義母の3人からなるランドセル試着チームが結成されます。私はというと、試着を待っていられない次男と一緒にスーパー内をウロウロ。そんな折に試着チームからは、長男がランドセルを背負う姿の写真が送られてきます。絶対に背負うのを嫌がると思ったのに、まんざらでもない表情の長男。後から聞いた話では、長男の好きな「黄色」のデザインが入ったランドセルだけ気に入り、唯一それだけ試着したそうです。「このランドセルなら背負うから買ってあげようか」「でも、もしかしたらランドセルの要らない学校に行くかもしれないし…」「支援学校だとランドセル必要ないけど、支援学校には入学しないでしょ。支援級か普通級ならランドセルでいいんだよね。」そんな家族会議を経て、最終的にそのランドセルを買ってもらうことになりました。そして入学!ランドセルの行方は・・・出典 : そして、結論から申し上げますとそのランドセルは入学式の写真撮影時、たった1回しか使っておりません長男は当時のおおかたの予想を覆し、ランドセルを使う「通常学級」でも「特別支援学級」でもなく、リュックで登校する「特別支援学校」に入学したのです。長男の通う特別支援学校では、扱いやすく、すべての荷物が中に入る、45L程度の登山用リュックを購入することになっています。45Lって…背負えるのかしら?と不安になりましたが、体の小さい1年生たちも一生懸命自分で背負って登校しているようです。教科書やノートではなく着替えや給食セットが主な荷物ですので、リュック登校はランドセルよりずっと理にかなっているわけです。が、しかし、我が家の片隅でまあまあな存在感を放つランドセル…。買って頂いたものでもあるし、それなりに愛着も湧いてしまったので誰かにお譲りする気持ちにもなれず…。次男の入学式で使うまでは箱に入れたままになりそうです。入学準備はどうぞ急がず焦らず確実に…。出典 : というわけで、我が家のラン活はちょっと残念な結末を迎えてしましました。とはいえ我が家の場合、支援学校への進学が決まったのが新学期ギリギリだったので仕方ないかな、と思っています。今小学校の進路に迷われている方はどうぞ我が家と同じルートを辿られませんように、ランドセルに限らず、進学の可能性がある学校指定の持ち物は早めにチェックされることをおすすめします。そして、購入はできるだけ「進学先が決まってから」にされると安心ですよ!と、身を呈してお伝えしたいと思います(笑)
2017年06月26日楽しいはずの食卓が…息子の偏食で長男はADHDを伴うアスペルガー症候群です。私を悩ませた息子の特性のひとつに、偏食があります。子どもの好き嫌いは少なからずあるものですが、味覚が過敏な発達障害児の偏食は一筋縄では行きません。息子の偏食の兆しは離乳食が始まった直後から。食べるのは某メーカーの瓶詰めのみで、私が時間をかけて作った離乳食は食べないというこだわりがありました。瓶詰めだと食欲は旺盛で二瓶くらいぺろりと食べてしまうのに、私の作ったものだと食べるのは軟飯くらい。離乳期間が終わり、レトルトに頼らない食事になると食欲は激減。息子の食へのこだわりはますますはっきりしてきて、アンパンマンのようにまるまる太っていた息子はみるみるやせていきました。出典 : 食べられるものは、米、蕎麦、根菜、かぼちゃ、青魚、卵、納豆や豆腐などの大豆の加工品……以上です。どんなに工夫して調理してもそれ以外のものは食べません。さらに、環境が変わると普段食べているものも食べられなくなるし、調理法が変わっても食べられません。学校給食では牛乳しか飲まない。実家を含め、よそのお宅でご飯が食べられない。外食は蕎麦屋しか行けない。しかも生蕎麦で茹でたてでないと食べません。空腹に耐えられなくなると、食事を採る努力はせずに角砂糖をなめてカロリーを補給する。さらにダラダラと長い食事も私にとっては悩みの種で、楽しいはずの食卓は親子でイライラして辛い時間でした。子供の偏食が不安で仕方がない出典 : 子どもの偏食を私が必要以上に大きな悩みにしてしまったのは、「健康に影響が出るのではないか?」「このままだと一生食べられないのではないか?」という、ふたつの不安があったからでした。だから私は一生懸命工夫して、なんとか食べさせようと躍起になりますが、結果が全く伴わなかったためイライラを増幅させて、息子にとっても食事をさらに辛いものにしてしまったのだと思います。息子には食べられないと分かっていても、食べられない食材を使い、食べられないものを作り、食べてくれないとイライラする。「食べなさい」「イヤだ」の押し問答の挙句、私はひとつも手をつけない息子の食事を取り上げて、シンクにバーンと捨てて、自己嫌悪するなんてこともありました。偏食は気にしなくて良い???そんな私の偏食に対する考えが変わったのは、児童精神科医の佐々木正美先生の言葉です。「子どもの健康に影響が出ていないのなら、偏食は気にしなくていい。無理強いしないで食べられるものを作ってあげなさい。無理強いしなければそのうち食べられるようになる。」と先生の著書にありました。先生のお子さんも偏食があったこと、給食を無理に食べさせないで欲しいと学校にお願いに言ったこと、佐々木先生の家ではビュッフェスタイルで自分で食べたいものを取り分けていたこと、成長と共に偏食は自然に改善したこと……本に書かれていた先生の実体験にずいぶん励まされました。早速我が家でもトライ!出典 : それからの私は息子の偏食を治そうとやっきになることはやめ、息子が食べられる食材で食べられるメニューを考えるようになりました。こうして向き合ってみると、食べられる食材は少ないですが、意外とバランスが取れた「偏食」だと気づきました。佐々木先生の家のビュッフェスタイルをアレンジし、お皿に全てのおかずを少量ずつ盛り、全部食べることが出来たら、魚や豆など好きなものをお代わりできるルールとしたのです。その結果、限られた食材なのでメニューは工夫してもマンネリになってはしまいますが、イライラは激減しました。給食も食べることを無理強いせず、帰宅後におにぎりなどの軽食を用意し対応しました。また実家に帰るときは今も息子が食べられるものを作って持っていくようにしています。外食も「蕎麦屋しか行けない」と考えず、「蕎麦屋だけでも行けるところがある」と考えるようになりました。息子の偏食に変化が…出典 : 息子に変化が現れたのは小学校3年生の時。それまで学校給食は仕出し弁当だったのですが、学校に給食室が出来て学校調理に変わり、温かい給食が提供されるようになりました。そして学校での周囲の友達の「美味しい」という反応が後押ししたのか、自然といろんな物を口にするようになったのです。5年生のとき、から揚げをしのぐ給食人気メニューの「洋風かき玉汁」を家でも食べたいと言われ、どんな食材が入っているのか?どんな味付けなのか?と息子に聞き取りをしながら家で作ったことは今でも忘れられません。息子は「学校はもう少し野菜が少ないよ」と言いつつ完食してくれました。「洋風かき玉汁」は今も我が家の定番です。味覚だって、その子のペースでゆっくりと発達していく息子の偏食は、人並み・・・とまでは行きませんが、食事に苦労しない程度には徐々に改善していきました。今では、ポトフなんてゴロゴロ野菜が入ったスープを喜ぶほどの変貌ぶりです。外食の際の選択肢も広がりました。いろんな物をゆっくりと食べられるようになっていく息子の姿を見て、思ったことがあります。それは、「発達障害児は味覚の発達もゆっくりなのかもしれない」ということです。佐々木先生の言葉は、「ゆっくり、でもちゃんと発達はしていくのだから待ってあげなさい」というメッセージが含まれていたのかもしれないと思います。それに食事は、ただカロリーや栄養素を補給すれば良いわけではありませんよね?体だけではなく心にも栄養を補給する大切な時間だと思います。それは、子どもだけでなく親にとっても同じなのかもしれません。子供の偏食を治そうとしないで、子供が食べられる食材で食べられるメニューを家族で楽しみながら、味覚の発達を待ってみませんか?笑顔のある、穏やかな食卓で。
2017年06月26日「友達と一緒にいても、ポツンと一人でいるような気がしてた」出典 : アスペルガー症候群と診断されている9歳の娘は、今は小学校に通っていません。ある日「もう学校へは行かない」と宣言してからはホームスクールで毎日を過ごしています。学校へ通っていた頃の話は今でもよくするのですが、ある時こんなことを話してくれました。「みんなで机を並べてお喋りしていても、私だけがいつもみんなから離れた場所にいるような気がしてた」「私が話すことなんて、誰も聞いていないような気がして怖かった」「友達と一緒にいても、ポツンと一人でいるような気がしてずっと孤独だった」娘と同じような特性を持つ私にも、この気持ちはとてもよくわかります。一般的に見れば、娘の学校生活は充実していたように思います。お友だちが多く、先生との関係も良好。通学路の見守り隊の方々にも可愛がられていて、今でも外出時に顔を合わせると「最近見かけなくて心配していたよ。元気だった?」と声をかけてもらったりしています。他人と関われず、1人で過ごしていたわけではないのです。むしろ1人でいる時間の方が少なく、担任の先生から見れば「特に問題なし」と分類されるタイプだった娘。しかし、そんな娘がなぜそこまで孤独感を感じていたのでしょうか。同じ「アスペルガー症候群」でも女性と男性は違う!?出典 : 一般的にアスペルガー症候群の特徴として挙げられるものは、男性のアスペルガー症候群の方にぴたりと当てはまるものが多いのだそうです。もちろん個人差はありますが、女性の方が社交性を身につける能力が高い傾向にあるため周囲に溶け込みやすく、こだわりの強さやコミュニケーションに関わる問題が露呈することが少ないためだといわれています。では、ある程度の社会性を身につけた女性のアスペルガー症候群の方は何の困り感もなく過ごせるのかというと、それはまた別問題。原因不明の体調不良や、女性同士の他愛ないお喋り(いわゆる「ガールズトーク」)について行けず人間関係に悩んでしまうことが多いそうです。娘が感じていた「孤独感」は、この「ガールズトークの苦手さ」から来ているのだと思います。本を読むのが大好きな娘は、お友だちと登場人物やストーリーについてあれこれお話ししたいのですが、まず読んでいる本が違うのです。学校の女子の間で流行っているのは恋愛小説や友情物語。娘が好きな『十五少年漂流記』や『ぼくらの七日間戦争』、探偵ものや推理小説を読んでいるのは上級生の男の子ばかり。娘もみんなに合わせて『一期一会』や『1%』を図書館で借りて目を通してみましたが、あまり興味を持つことができないようでした。なので、学校でその話題になると「おもしろいよね」「すごかったよね」と適当に相槌を打って過ごしていたようです。また、みんなが夢中になっているアイドルは好きになることはできず、内心ではつまらないなと思っていても、にこにこ笑って一緒に盛り上がったふりをすることに疲れていたのだろうと思います。上手にやってるように見えても、心の中は...出典 : お友だちに囲まれてお喋りをしている姿を見ると、保護者や先生方は「楽しく過ごせているな」と感じがちです。私も参観日にそんな娘の姿を遠くから見て「お友だちとうまくやっているんだな」と安心していました。しかし、自分が本当に好きなことは話せず、興味の持てない話題にその場しのぎで対応をしている時間は、娘にとっては苦痛な時間だったのです。そんな休み時間に疲れ果てたとき、娘はそっと校庭に出て、ジャングルジムの頂上から一人でプールを眺めていたそうです。誰もいないその場所で、安堵のため息をつきながら季節の移り変わりを感じている時が、唯一自分でいられる時間だったそうです。娘が興味を持つものや、それについて一生懸命調べて得た知識を分かち合える相手は、今の段階では同じアスペルガー症候群のお友だちか大人しかいませんが、今はそれでいいと思っています。同学年の集団の中で揉まれることももちろん大切だとは思いますが、自分を押し殺さず、興味のある分野で共感し合える相手がいる環境を見つけるのも、アスペルガー症候群を抱える子どもたちにとってはとても大切なことだと思います。娘の場合は、いろんな大人と知り合い、興味のある分野のお話しを聞いたり情報を共有したりすることが、“娘らしく生きる”ということに繋がっているのだと思います。絶対的な安心感の中で育ってほしい。私の願い。出典 : さて、娘と同じような特性を持っていた私が子供だった頃は、学校に行くのが当たり前の時代でしたので、私は何の疑問も持たずに学校に通っていました。しかし、自分を理解してくれる人は1人もいない孤独感と、自分が周囲の友だちと同じように感じられない焦燥感は常に付きまとい、私は自分を出来損ないの人間だと思って生きてきました。友達はたくさんいましたし、運動部にも入っていましたので、集団生活になじめていないわけでもなかったのですが、自分を押し殺して他人に合わせて過ごすたびに「ここは自分の本当の居場所ではない」と感じていたのです。そうして、“こんな自分を必要としてくれる人はいない”と思って生きていましたので、誰かに必要とされると、それが同性であっても異性であっても「ずっと必要とされたい」「失望されたくない」という思いから、相手の嫌な部分には目をつむり、“自分さえ我慢すれば必要としてもらえる”という歪んだ思考に陥って、精神的にボロボロになることも少なくありませんでした。でも今は、子どもを産み育てる中で「この子たちから必要とされている」という絶対的な安心感を感じ、ようやくありのままの自分で生きられるようになりました。できれば、自分の子どもたちにも、そして同じように発達障害を抱えるお子さまたちにも、「自分を絶対的に受け入れてくれている人がいる」という安心感の中で育ってもらいたい。そうすれば、いろいろな問題に直面しても自分を卑下せず、工夫しながら前に進む力を持つことができるのではないかと思うのです。そんな風に願いながら、よく子どもたちに「ママのところに生まれて来てくれてありがとう」「ここにいてくれるだけで幸せだよ」「大好き」と声をかけます。「家族なんだからそんなことをわざわざ言わなくても伝わるでしょ?」と言われることもありますが、環境から学ぶことが苦手な子どもたちですから、なるべくたくさん伝えた方がいいのです。普段から言い慣れていないとちょっと恥ずかしいかも知れませんが、まずはメモ程度のメッセージからでもいいと思います。お子さまたちに「君は大切な存在なんだよ」ということをご自身の言葉で伝えてみませんか。子どもたちが困りごとに立ち向かう大きなパワーに繋がるかも知れませんよ。
2017年06月25日とにかく朝から晩まで元気なんですADHDの長男はとっても元気。Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナと、思っていたけど…Upload By ラム*カナなんと、寝ている間も多動だった件…!Upload By ラム*カナ
2017年06月24日子どもの癇癪(かんしゃく)とは?出典 : 癇癪(かんしゃく)とは、声を荒げて泣いたり、激しく奇声を発したりする状態を指します。怒りや不安などの感情を持つこと自体は誰にでも起こる自然な現象ですが、気持ちのコントロールがうまくできないときに癇癪は起こります。癇癪を起こした子どもには、・床にひっくり返って泣きわめく・物を投げたり、叩いたりする・周りの人を殴ったり蹴ったりするというような状態がよく見られます。それまでは問題なく穏やかに過ごしていた子どもが突発的に癇癪を起こすこともあります。また過度な場合だと癇癪を起こしているときに、自制できない衝動的な行為として自分を傷つけてしまうこと(自傷行動)もあります。癇癪は、子どもにとっての何らかの不都合を取り除く機能をもっています。例えば、おもちゃを取り上げられてしまって癇癪を起している子どもの状況を考えてみましょう。おもちゃを取り上げられた子どもにとっては「おもちゃが自分の手元からなくなったこと」が不都合なことです。そのおもちゃを取られたという状況をなくすために、手段として癇癪を起こすという行動の流れになります。ですので子どもの癇癪をただ「怒っている」「泣き叫んでいる」という単なる一つの行動ではなく、「不都合な現実(原因)」→「不都合を取り除く方法(手段)」→「目的の達成」というグループ化された行動のまとまりとして捉えていくことが大切です。上の例でいうとおもちゃを自分の手元に取り戻すことが「目的の達成」です。もうひとつ大切な点は、癇癪を起こす子ども自身も怒りの爆発を抑えられず困っている場合があるということです。泣き叫ぶ子どもを見ると「どうして早く泣き止まないの?」とイライラすることもあるかもしれませんが、癇癪がひとたび始まると本人も感情を抑えようとしても抑えられないのです。詳しいことはあとで述べますが、これは子どもの癇癪を理解するために重要な、もうひとつのポイントとなります。癇癪は赤ちゃんから幼児期、児童期にも見られ、思春期や大人になっても続くこともあります。発達段階やその場の状況によって原因は異なるものの、癇癪が起きているときには、「何か不都合を取り除こうとしている」そして「困っているよとサインを発している」という2つの点を思い出してみてください。子どもはなぜ癇癪を起こしてしまうの?出典 : その場の状況や子どもの気質によって、癇癪を起こす原因はさまざまです。癇癪を起こす子どもにはどのような背景があり、癇癪がどのような目的を達成するための役割を果たしているのかを考えていきます。子どもが生まれてからしばらくの間は、保護者がする通りにご飯を食べたり、服を着替えたりします。ですが、1歳頃になると、保護者のしたいことと自分のしたいことが違う場合があることをぼんやりとわかり始めるようになります。自我が芽生えるのです。この頃から、保護者の行為に対して拒否的な反応を示すようになっていきます。癇癪を起してしまうのは、どうしても不都合で回避したい出来事があるようなときでしょう。これらの反応は、自分が保護者とは別の意図をもった人間であるということに、子どもが次第に気付いてきたという成長のあらわれです。これはだいたい1歳頃から始まるとされており、2・3歳になると言葉も加わって「いやっ!」といいながら自分の意見を主張します。これがイヤイヤ期といわれる時期です。周囲の人と言葉でコミュニケーションができる子どもであれば、苦痛や拒否、要求などを適切に表現して伝え、助けを求めることができるでしょう。しかし、言葉をまだ覚えていない乳幼児期の子どもの場合には、泣き叫んだり、暴れたりするなどの行動によってしか、自らの気持ちを伝える手段がありません。癇癪を起こすときには、注目、要求、拒否の3つの場合があります。【注目】注目を引きたい、かまってほしい【要求】物が欲しい、活動を行いたい【拒否】活動をやめたい、ある場所を避けたい等、嫌だという気持ちを伝えたいつまり過去に、癇癪を起こすことによって結果的に要求を叶えたり、嫌なことしなくて済んだりしたといった経験があった場合には、コミュニケーションの手段として癇癪が習慣化してしまっていることが考えられます。例えば、癇癪を起こすと母親が駆けつけて抱きしめてくれた、癇癪を起こしておもちゃを貸してもらったなど、親にとっては癇癪をやめさせようとしてとった行動が、子どもにとっては「癇癪を起していいことがあった」というご褒美になっていることもあるのです。癇癪はそれぞれの子どもの状況において別々の原因がありますが、こうした経験が重なることで、かまってほしいときに行うコミュニケーション行動として「泣き叫ぶ」「暴れる」ことが学習され、定着してしまっている可能性があります。癇癪と発達障害って関連はあるの?出典 : たびたび癇癪が起こるからといって発達障害があるというわけではありません。ですが発達障害のある子どもに強く見られる傾向が癇癪が起こるきっかけと絡んでいる場合があります。◆気持ちのコントロールが難しい成長するにつれて人は自分のストレスを減らすために工夫を行います。例えば、不快になりそうな状況そのものを避けたり、状況を変えるように働きかけたり、気晴らしをしたり、考え方を換えたり、「この悪いことには何か特別な意味があるに違いない」と状況の意味づけを行ったりです。このようにストレスや興奮を減らすことを専門用語で「自己調整」といいます。発達障害のある子どもたちは、この自己調整を行うことが難しい傾向があります。このような行動の工夫を行うことが苦手なので、不快な状況をそのまま経験することになり、ストレスが蓄積されていきます。最後には自分の気持ちをコントロールすることができずに不満や怒りが爆発して癇癪を起こすことがあります。◆他者と自分の意図をすり合わせるのが苦手である私たちは、自分の思いと相手の思いの両方を考えながら、時には譲ったり、自分の願いを優先させるために交渉したりして、他人との関わりの中で生きていきます。発達障害のある子どもたちは、他者の思いと自分の思いを調節することが難しい傾向があります。自分と他者の思いを調整するためには、まず相手の気持ちを把握した上で、「これぐらいなら譲れる(または要求できる)」という2つのステップが必要です。自閉症スペクトラム障害といわれる発達障害のある子供の場合、まず最初に必要な相手の気持ちや意図を理解するというステップを通過することが難しく、そのために自分と相手の意図を調節するための材料を持ち合わせていない状態に陥りやすいのです。他者の思いが見えないままに、自分の思いのみで物事が進行するときに、相手から「これをしてはだめ」と行動の抑止が入ると、それが「自分のしたいことを邪魔するものだ」として不快な気持ちが起きます。また、ADHD(注意欠如・多動性障害)といわれる発達障害の場合は、「やりたい」という気持ちを抑えるのが難しいために、相手の気持ちが分かったとしても、「これくらいなら」と程度を見極めてさじ加減をはかることができません。気持ちを譲ることができないことと、感情がすぐに表面化することで、爆発的に怒ってしまうことがあります。◆言葉に遅れがある発話が困難であったり、身振りや手振りでうまく伝えるのが苦手であることで、その伝わらないもどかしさや要求を伝えるための手段となり、癇癪を起こしやすくなります。発達障害のある子どもは、全体的に言葉の発達のスピードがゆっくりな傾向があります。発話が困難であったり、身振りや手振りでうまく伝えるのが苦手であることで、その伝わらないもどかしさや要求を伝えるための手段として、癇癪を起こしやすくなるのです。癇癪を起こさないために普段から気を付けたいこと出典 : いったん始まってしまうと、癇癪を鎮めるのは難しいので、普段の生活から子どもに十分配慮をし、癇癪が起きないように回避することが重要です。自我の芽生えと共に、子どもは自分の意思をもって、自分でやりたい!という気持ちを持ち始めていきます。自分が主人公でありたいという思いを認めてあげることが大切です。あまりに幾度となくやりたい気持ちを発散する機会を奪ってしまうと、子どもは泣いたり癇癪を頻繁に起こすようになるばかりか、やがて周りの環境にはたらきかけたいという気持ち(やる気)がなくなってしまい、発達が遅れることもありうるので注意が必要です。気持ちの切り替えを行うことは子どもにとっては難しいことです。いきなり遊びを中断されたりすることは子どもにとって大変ストレスなことなので、癇癪を起こす要因の一つとなります。次の行動に移るためには、気持ちの準備をする時間が必要です。「●●したら、ご飯にしようね」など、次の行動が予測できるような声掛けを行うことで、子どもは行動を切り替えるための心の準備をすることができます。スマートフォンやゲーム、テレビなどの利用時間を制限したい場合には、タイマーなどを使用して終わりの時間を視覚化するのもおすすめです。「今、自分はこんな気持ちだ」ということが周囲に知ってもらうだけでも、気持ちが楽になっていくこともあります。言葉で気持ちを伝えるのが難しい場合、絵カードやコミュニケーション支援アプリを使って視覚的に気持ちを伝える方法を教えるとよいでしょう。ここでは、ツールの例をひとつご紹介します。癇癪は徐々にいらだちが募り、爆発を起こすというパターンが多くなります。ですので、爆発を起こしてしまう前のイライラしているという状態を視覚的に示すカードを用意します。「落ち着いている」「少しイライラしている」「とてもイライラしている」「我慢できない」などとカードに感情を表す絵を描いて子どもの目に見える場所に置いておきます。簡単なことですが「困ったらどうしたらいいか」を教えてあげることも、子どもが癇癪を起さないためのひとつの方法です。というのも子どもの場合には、ネガティブな感情をもったときにそれをどのように処理したり扱ったりしたらよいか分からないことがあります。例えば、「どうしたらいいかわからないときには『困った』って言うんだよ」などと、困ったときに口に出すべき具体的なセリフを教えてあげることで、「困ったときには人に頼ってもいいんだ」という安心感が生まれます。Upload By 発達障害のキホン言葉を理解し、話すことができるくらいの年齢の子どもに対して有効な方法です。怒りの真っただ中にいるときには大人でさえ、冷静さを取り戻すのは大変難しいものです、子どもならばなおさらです。このようなコントロールの難しい心理状態でも、あらかじめ対処方法について大人と子どもが一緒に考えることで備えることができます。普段穏やかな状態のときに「怒っちゃったときにはどうするのがいいかな?」と子どもと大人で話し合って、ルール化するのです。例えば、以下のような方法が考えられます。子どもによって、落ち着くことの出来る方法はさまざまなので子どもに合わせた方法を選びましょう。・子どもが好きな匂い袋を嗅ぐ・つぶやくと落ち着く言葉を覚える(魔法のことば)・新聞紙を破る・(家庭/園/学校などの場合)特定の落ち着く場所を決め、不安になったときに行くようにする・布団や毛布にくるまるなどまた以下のコラムでは、「景色を見ながら、そこにあるものを読み上げ」て、自らの怒りを抑えることを子ども自身がが編み出したエピソードが掲載されています。このように対処方法をルール化することで、怒りの感情から抜け出すための「いつもの方法」をもつことができ、癇癪が起こったときに子どもが自分で冷静さを取り戻すことも可能となります。子どもが癇癪を起こしてしまった!対処方法は?出典 : 癇癪が起きるタイミングは、予測できるものばかりではありません。子どもが癇癪を起こした時にどのように接するべきか前もって知っておくことで、焦らずに対応しやすくなります。癇癪が起きた時は、まずは子どもが怪我をしないように安全を確保します。頭を床や壁にぶつけるなどの癇癪の場合には、クッションや枕を子どもと物の間に挟んで怪我を防ぎましょう。もっとも避けたいのは子どもが怒り狂っている様子に周囲の大人が引きずられてしまうことです。癇癪のときの子どものエネルギーは絶大なもので、自分が攻撃されていなくとも、子どもの隣にいるだけでイライラしたり、気分が荒れたりすることもあります。まずは、保護者自身の気持ちが乱れたりがストレスを受けたりしないようにしましょう。保護者の方の心が乱れていては、子どもに冷静に対応することはできません。物が飛んできたり、殴りかかってきたりと怒りの矛先が自分に向いたときにはもちろんのこと、甲高い泣き声が長い時間続くときには、精神的な危機にさらされているんだということを理解してください。あまりに真摯に向き合いすぎると、精神的に過度なストレスが溜まってしまい病気になってしまうこともあります。そばにいなければ、子どもの身の安全が確保されないという場合には、大きな声が耳に届かないように耳栓をするなど、子どもの癇癪に自分が引きずられないように工夫をします。子どもが癇癪を起こしたときに避けたいのは、罰と報酬です。罰とは、頭ごなしに叱りつけたり、暴力をふるったりすることです。報酬とは、お菓子をあげたり、おもちゃを買ってあげたりすることです。おもちゃやお菓子を与えると子どもの癇癪が止むこともあるので、癇癪の対応方法として一見効果的に思われますが、子どもに「癇癪を起こすととなにかいいことがある」と思わせてしまう要因となります。また、要求を通さないと最初に子どもに言ったならば、その態度を貫き一貫性をもって接することが大切です。ただ、乳児期の子どもの泣きやぐずりについては、子どもと保護者の愛着関係を作り上げるための大切なコミュニケーション手段となり、その後の子どもの気持ちの発達の基礎となるので、子どもの要求に合わせて応対するという姿勢が必要です。癇癪が止まり、子どもが完全に冷静さを取り戻したタイミングで落ち着けたことをしっかり褒めるようにしましょう。「別の部屋に行って落ち着けたね」「我慢できて偉かったね」などと褒めてあげることで子どもは安心感を抱き、さらには「癇癪をやめた方がいいことがあるんだ」と感じやすくなり、予防にもつながります。時間が経ってからだと、癇癪を起して落ち着いたという一連の流れを忘れてしまうので、落ち着いたらその場で褒めてあげることを心がけましょう。子どもの癇癪に悩んだら、早めに相談を出典 : 子どもがたびたび過剰に癇癪を起こす場合、保護者が一人で継続して向き合うことは簡単ではありません。また癇癪が起こる場面を予測し、予防の方法を考えるには、専門性が求められることがあります。特にプランを見直しながら継続するのは負担が大きいので、専門家と連携しながら取り組むとよいでしょう。もし現在子どもとの関わり方や癇癪への対応に一人で悩まれているのでしたら、なるべく早く相談できる味方を見つけることをおすすめします。子育て支援センターは、乳幼児の子どもと子どもを持つ親が交流を深める場です。市区町村ごとに、公共施設や保育所、児童館などの地域の身近な場所で、乳幼児のいる親子の交流や育児相談、情報提供などを行っています。子育てをしている家庭の支援活動を行う施設であり、保護者にとっては、育児に関する不安の相談に総合的に応じてくれる心強い施設です。詳しくはお住いの市区町村のHP内の子育て・育児のページをご覧ください。子どもの特性や困りごとに応じた支援を行う、いわゆる療育プログラムを提供している福祉施設です。事業所によっては相談支援事業も行っており、保護者からの子育ての相談にも乗ってもらえます。また事業所にもよりますが、言語聴覚士や理学療法士、 作業療法士などの専門家による支援を受けらレル場合もあります。利用までにはお住まいの自治体の福祉担当窓口への申請が必要となりますが「通所受給者証」を取得することで、低い自己負担額で利用できます。発達障害の当事者、及びその周囲の関係者(保護者や教師など)を支援する機関です。大人の発達障害や、その関係者の支援が充実している施設ですが、基本的に年齢に関わりなく相談できる場所です。子どもの問題行動について機能分析の知識をもつ発達支援の専門家がいることもあります。癇癪があまりに強すぎると、反抗挑戦性障害や破壊的気分調節不全障害 、行為障害として診断される場合があります。そのようなときには何らかの医療・福祉的な配慮によってトラブルを解決できることもあります。あまりに高頻度で長時間の癇癪が続いたり、自傷行動を行うなど身体的、精神的にダメージが大きいときや、解決に緊急性が求められるときには医療機関への相談も選択肢の一つです。医療機関に相談する場合、「発達外来」や「小児神経科」「児童精神科」が専門となります。まとめ出典 : どのように対応したらよいのかわからない困りごとにぶつかったときには、同じく子どもも困っています。言葉がなかなか出ずに、自分の気持ちを表現できないもどかしさがあったり、相手の気持ちが見えづらいために自分の思いだけが先行してしまったりするというように、癇癪には何らかの背景が隠れています。癇癪を起こす子どもが何に困っているのだろうという視点をもつことが癇癪を理解するために大切なポイントです。
2017年06月24日強迫性障害とは出典 : 強迫性障害は自分の意思に反して不安・不快な考えが浮かび、抑えようとしても抑えられない、もしくはそのような考えをなくそうと無意味な行為を何度も繰り返すことで日常生活に支障が出てしまうこころの病気です。具体的な症状としては、汚れているのではないかと不安になって手を異常なほどに洗ったり、鍵をかけたか何度も確認して生活に支障が出てしまったりするような例があります。そういった行為には何にも意味がなく、やり過ぎだと自分で分かっていてもやめられないことが特徴です。英語ではObsessive Compulsion Disorderと表記され、略してOCDと呼ばれます。発症率は100人あたりおよそ2.3人といわれていて、決してまれな病気ではありません。10代~20代に多く発症しますが、小児期から症状が始まることもあります。原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』強迫性障害の症状とは出典 : 「手をいくら洗っても、きれいになった気がしない」「ドアの戸締りが気になり、無意味に何度も確認してしまう」など、なんらかの考えが自分の意思に反して繰り返し浮かび(強迫観念)、それによって生まれる不安や恐怖などの感情を解消するために、同じ行動を繰り返すことを自分に強いる(強迫行為)のが「強迫性障害」の症状です。強迫観念は繰り返し、そしていきなり浮かんでくるもので、コントロールするのは困難とされています。強迫観念によって引き起こされる不安や恐怖は強迫行為を行うことで一時的に和らぐものの、強迫観念の出現は時間をおいて繰り返されます。強迫行為を行うと、一時的には不安を抑えることができますが、特定の場面に遭遇すると再び強迫観念が現れ、また強迫行為を繰り返してしまいます。この悪循環にはまってしまうと、自分で症状をコントロールすることが困難になり、強迫行為の程度が悪化していく人もいると言われています。一口に強迫性障害といっても、人によって症状の現れ方はさまざまです。以下では、中でも代表的な3つの症状を紹介します。■不潔恐怖汚染への強い恐怖により、長時間洗浄してしまうことをいいます。身体が汚れる、もしくは健康を害してしまうという強迫観念が、汚れや細菌汚染に対して恐怖を感じさせ、過剰に手を洗ったり繰り返し入浴・洗濯するといった強迫行為を引き起こします。またドアノブや手すりなどを不潔と感じ、手を触れることができないこともあります。■確認行為鍵をかけたか不安になり、何度も確認するような症状が出現します。「もしかしたら開いているかもしれない」「実は消えていないかもしれない」という強迫観念が玄関の施錠や、ガス栓・電気器具のスイッチを異常なほど確認する強迫行為を引き起こします。確認しても大丈夫だと確信を得ることができず、心配になって頭から離れません。自分で確認することに満足せず、家族に確認させる「巻き込み型」となることも少なくありません。その場合重症化することも少なくないので、注意が必要です。■加害恐怖誰かを傷つけたり犯罪を犯してしまったという思いに駆られ、確認したり罪の意識に苦しむことをいいます。誰かに危害を加えたかもしれないという強迫観念が新聞やテレビ、警察や周囲の人に確認する確認行為を引き起こします。危害を加えていないことを確認しても安心することができず、何度も確認してしまいます。このほか、自分の決めた手順でものごとを行なわないと恐ろしいことが起きるのではないかという不安を抱く儀式行為や不吉な数字・幸運な数字、配置や正確性・対称性に異常なほどこだわることなどが挙げられます。強迫性障害は、症状が重くなることで日常生活や社会生活に大きな支障をきたす可能性のある病気です。強迫性障害の人の中には、強迫行為に大半の時間をとられて他のことをする余裕がなくなってしまったり、自宅の外に感じる汚染への恐怖や戸締りの心配を理由にひきこもりになってしまったりする人がいるのです。強迫性障害の症状について理解するうえで重要なのは、患者さん本人は自分自身が強迫行為をしてまうことに対して精神的な苦痛を感じているということです。頭では意味のないことを繰り返しているとわかっていながら、それでもやめることのできない自分に対してネガティブな感情を抱いてしまうのです。症状に苦しむ生活が続くことで、気分が落ち込みやすくなるなど精神的に不安定な状態に陥ってしまうこともあります。そのため、強迫性障害の患者さんはうつ病を発症する可能性も高いと言われています。強迫性障害を引き起こす要因出典 : 強迫性障害の発症に関わる決定的な要因は、未だに特定されていません。しかし、気質要因、環境要因、遺伝要因・生理学的要因が何らかの形で影響を与えることがわかっています。■気質要因幼少期に教え込まれたこと、または感情や行動を強く否定されたことがあることが考えられます。■遺伝要因・生理学的要因セロトニンという神経伝達物質との関連や脳の部位に機能的な異常がみられる可能性も指摘されています。これにより強迫性障害が発症する背景には、脳の部位を結ぶ神経ネットワークに問題があると推定されています。■環境要因強いストレスを引き起こすような出来事や虐待などは強迫性障害の発症の危険性を高めると考えられています。また神経免疫機能との関連が考えられています。以上のような要因に加え、受験や結婚、育児などのライフイベントによる強いストレスから発症することもあります。強迫性障害になりやすい人出典 : 強迫性障害を世界的に研究している機関OCCWG(Obsessive Compulusive Cognitions Working Group)によると、几帳面な人や完璧主義などの性格の人が強迫性障害になりやすいと言われています。しかし、こういった性格があるからといってすべての人が強迫性障害を発症するわけではなく、その他の要因や環境との相互作用によって症状があらわれます。自分の性格を理解し、ストレスをためこまないよう上手にコントロールしましょう。原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』強迫性障害と併発しやすい病気出典 : 強迫障害の人は他の精神疾患を併発することが多いと言われています。不安障害、強迫性パーソナリティー障害、チック症の併存が見られる場合があります。原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』不安障害とは不安を主症状とする神経症で長時間続く病的な不安をいいます。強迫性障害と関連のあるものとして、人との接触を恐れる社会不安障害や特定のものや場所・条件を恐れる恐怖症、突然パニック発作が生じるパニック障害が挙げられます。強迫性パーソナリティー障害とは秩序や規則に対して強いこだわりを持ち、本人や周りの人が日常生活を送る上で支障が生まれることをいいます。強迫性障害と似ていますが、異なります。両方の症状がある場合は、両方の診断を下すことができます。チック症とはまばたきや首振りなど一見癖のように見える行為が現れる精神疾患です。摂食障害とは食行動に関する障害で、一般には拒食症、過食症と呼ばれます。食欲が単に増減するということではなく、体重や体型の認知が歪み、自分で食欲がコントロールできず、極端なやせ願望や太ることに対する恐怖心があることが特徴です。摂食障害のある人は食について、「食べてはいけない」という強い強迫観念を持つようになります。強迫性障害の診断におけるチェックポイント出典 : 国際連盟の専門機関の一つであるWHO(世界保健機関)が作成する疾患の分類である『ICD-10』によると、強迫性障害において重要とされるのは以下の3つのポイントです。・強迫観念や強迫行為といった症状が2週間以上の間、ほとんど毎日現れること・自分が行う強迫行為は過剰で無意味なものであると自覚していること・症状が社会生活や日常生活の妨げになっていること診断基準によって細かい違いはありますが、もし何らかの強迫観念にとらわれることがあり、症状の様相が上記のポイントを満たす場合には強迫性障害と診断されることがあります。強迫性障害に関する相談先出典 : 強迫性障害かもしれないと思った時は精神保健福祉センターなどの専門機関へ相談、または精神科もしくは心療内科を受診しましょう。強迫性障害はうつ病や統合失調症の初期や脳炎、脳血管障害、てんかんなど、脳器質性疾患と似たような症状をもっています。医療機関では識別するため、血液・髄液(ずいえき)などの検査や頭部CT、MRIなどの画像検査をする場合があります。全国の精神保健福祉センター一覧|厚生労働省他の強迫性障害の患者さんとの交流を通して、普段は話さないような悩みに共感し合ったり、治療法や症状への対処法に関する知識を共有を行うのもよいかもしれません。強迫性障害に特化した自助グループやコミュニティがありますので、ご紹介します。■OCDの会強迫性障害で悩む患者と家族のサポートグループです。の会■OCDサポート 強迫症/強迫性障害の案内板強迫性障害の症状をかかえる人や家族が、他の患者さんや家族と交流し、情報交換をしています。サポート強迫症/強迫性障害の案内板■強迫友の会OBRI(オブリ)強迫性障害という個性を持った子どもたちと家族のための自助グループです。情報交換や啓発活動を行っています。強迫友の会OBRI(オブリ)強迫性障害の治療方法出典 : 強迫性障害の治療法としては、薬物治療と認知行動療法の2つがあります。この2つを併用すると、より効果的であるとされています。強迫性障害は発症の仕方や症状が人によって異なります。本人の状態や併存する他の疾患を考慮に入れたうえで、治療方針を相談しましょう。薬物療法とは投薬することにより治療する方法です。一般的には「SSRI」という脳内のセロトニンに効果のある薬が使われます。一定期間継続して服薬しすることで、強迫行為をしたくなる衝動が薄れ、気分に余裕が生まれるといった効果が期待できます。強迫性障害では、薬のみの治療で症状をある程度改善できる人とそうではない人がいるようです。『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』原田 誠一認知行動療法とは、ものの受け取り方や考え方を見つめなおし、気持ちを楽にする精神療法です。そのなかでも、強迫行為を引き起こす不安な状況に慣れる訓練をする「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」という方法がよく取られています。認知行動療法は、実施できる専門家がまだまだ少ないのが難点ですが、薬物と同等以上の効果があります。認知行動療法を希望する場合は、かかりつけ医もしくは保健所や精神保健福祉センターなどに相談しましょう。強迫性障害に対する望ましい周囲の対応出典 : 強迫性障害のある人は、家族に不審がられることをためらって相談できないケースも少なくありません。またクセや強いこだわりと捉え、心の病気だと気付かないことがあります。放っておくと症状がエスカレートしやすくなるので、普段とは異なる行動がみられる場合や、生活に著しく支障を及ぼす場合は、早めに専門医を受診することを促しましょう。一方で、強迫行為を無理やり止めることは避けましょう。本人も止めたいと思っているのに止められないのが強迫性障害です。無理強いさせてしまうとパニック状態に陥ったり暴力をふるってしまうことがあります。薬物療法や認知行動療法などにより改善するものなので、強迫行為を無理に止めるようなことはせず、早めに医療機関などに相談しましょう。また、強迫症状が進むと自らの強迫行動を監視させる、強迫行為を強制するなど家族を巻き込むような行動がみられ、家族の日常生活に影響を及ぼしてしまうこともあります。こういった、「巻き込み型」の強迫性障害は約3人に1人が発症すると言われています。拒絶すると本人の不安を強めてしまいますが、むやみに従うと、かえって症状を悪化させるおそれがあります。そのため、基本的に家族は強迫行為や、患者本人の強迫観念を一時的に和らげるための行為に協力しないことが重要になります。主治医と相談し、適切な治療方法を相談した上で対応しましょう。出典:強迫性障害|厚生労働省まとめ出典 : 不安や恐怖にさいなまれたり、自分の意思と反して同じことを何度も繰り返したりしてしまうのが強迫性障害です。強迫性障害の治療には、本人はもちろんのこと家族や学校など周囲の理解・支援が不可欠です。正しい知識を得るとともにお互いに適切な距離感を保ちながら生活しましょう。症状の再発・悪化を予防するには、強迫性障害の悪循環にはまらないことが大切です。強迫観念→強迫行為→強迫観念→強迫行為・・・・という悪循環にはまりそうになったら一度落ち着き、深呼吸をしましょう。また、強迫観念が現れた時への対処法としては、「他のことに注意を向ける」のも有効とされています。あえて他のことを考えたり、気分転換に音楽を聞いたりするのです。このとき、「強迫観念をなくそう」と意識してしまうとかえって頭から離れなくなってしまうので、「この曲を聞きたいから聞くんだ」というように、強迫観念とは別の動機で他のことに注意を向けるようにすることがポイントとされています。さらに、疲れを溜めないよう、適度な休憩をとるようにすることも大切です。ストレスとうまく付き合い、無理のない生活を送ることで、少しずつ症状をコントロールできるようになることを目指しましょう。厚生労働省「知ることからはじようみんなのメンタルヘルス強迫性障害」「若者のこころの病 情報室「強迫性障害」ってどんな病気?」国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター「認知行動療法とは」原田 誠一『強迫性障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 』原井 宏明、岡嶋 美代『図解やさしくわかる強迫性障害』
2017年06月23日そんなに不登校が怖いですか?出典 : 我が子が不登校になって日が浅い…。そんな親御さんによく見られる様子があります。「もう1ヶ月も学校に行ってないんです。このまま行けなくなったらどうしよう...」「せめて朝ちゃんと起きて欲しい」「勉強だけでもしてくれなければ心配で...」といった反応です。でも、これって結局「不登校していても体や心を休ませないで、いつでも学校に戻れるようになって」というメッセージを子どもに送ってしまっていることになると思います。うちも、娘が小学校2年生で不登校になったときは、周りから「勉強が遅れたら大変よ」「甘やかしていたら本当に学校に行けなくなるわよ」「将来進学や就職ができなかったらどうするの」と言われていました。なので、不登校の子を持つ親御さんたちが周りから受けるプレッシャーのつらさはよくわかります。それを承知で言わせていただきますが、そんなに不登校が怖いですか?怖がっているのは「学校へ行かないとまともな大人になれない」と思い込んでいる親御さんだけではないですか?どうして不登校になるのでしょう?出典 : 大人も子どもも、エネルギーがなみなみと入ったコップを心に持っていると想像してください。職場や学校、家庭などでストレスにさらされ続けると コップの中のエネルギーはどんどん減っていってしまいます。でも、底をついてしまう前に環境を調整したり、たっぷりと休養を取れば、コップの中のエネルギーはまた溜まっていきます。ですが、そのまま何も手を打たずに無理を続けるとコップは空になり、ついにはマイナスの状態になってしまうのです。私も、発達障害の二次障害で神経症になったときに、主治医に「あなたのエネルギーはマイナスの状態です。そこまで行ったらプラスになるには、マイナスになるまでの倍の時間が必要です」と言われたことがあります。不登校になる子どもたちも、 コップのエネルギーがマイナスになった状態だと思います。行けなくなったときには、すでに何らかの原因で疲れ切ってしまっているのですよね。うちの娘も私が気づいたときにはコップのエネルギーはマイナスになっていて、 朝起き上がることもできなくなっていました。本当は気づいていたのに、どうして休ませてあげなかったんだろう。のちにそう後悔することになりました。ようやく少しずつ動けるようになってきたのは中学2年生のとき。期間にして5年ほどかかったことになります。ただ、今でも体調には波があり完全に元気になる見通しはまだありません。どうしても学校というシステムには合わない子もいます出典 : 学校というところは、子どもたちに一斉に同じ課題を与え、それをこなしてついてくることを要求します。そして誰とでもみんな仲良くしましょうと指導します。それは実際にはとても難しいことで、学習についていけなくなったり、友達付き合いがうまくいかなくなったりする子が一定数出てくるわけですが、先生はなかなかそこまで面倒を見てくれません。先生たちは忙しく過労気味。職員室でも自分のクラスの悩みを打ち明けられない先生が増えているそうです。脱ゆとり教育、早期教育の負担は確実に学校を蝕んでいっているのでしょう。子どもたちはそんな体制に窮屈さを感じ、ストレスを抱え込んでそれを弱い子にぶつけます。そんな中でサバイブするには、ある程度のメンタルの強さや適応力、いい意味での鈍さなどが必要になります。ストレスを感じても、うまくかわしながらやっていける子がいる一方で、真面目で繊細な子ほど学校という場に起きている矛盾にぶつかって「行きたくない!」となってしまっているように見受けられます。不登校はいつ終わるのでしょうか出典 : 不登校がいつ終わるのか。正直、こればかりはわかりません。義務教育が終わり、高校進学を節目として立ち上がるになる子は多いですし、もっと早い段階で学校へ戻る子もいます。逆に、通信制高校などに進学してもスクーリングに行けず退学してそのまま引きこもる子もいます。高校、大学で不登校になる子も増えているようです。ただ、みなさんが恐れるように、不登校からそのまま引きこもりになる子も少なくないのが現実です。ですが、親の会で当事者の青年に話を聞くと、引きこもっている間も「何とか世間とつながれないか」と自分の頭で必死に考えています。「これでいいや」と思っている子はいません。 無理に引っ張り出すなど不適切な対応をしない限り必ず自分の力で立ち上がります。5年遅れて高校に進学して大学へ通っている子、引きこもっていたけれど居場所を見つけて週3日アルバイトをしている子、30歳を過ぎてから当事者活動であちこち飛び回っている子、私が行っている親の会だけでもいろいろなケースがあるのです。ぐるりと回り道はするけれど、人一倍真剣に「なぜ生きるのか、どう生きるのか」考え、自分のペースで生きていく、そんな生き方があってもいいのではないでしょうか?私がたどり着いた答え出典 : 親は「子どもは学校に行って育つものだ」と思っています。 私もそうでした。不登校になるということは安心できるレールを外れて、どこをどう走るかわからないトロッコにのる感じです。だけど、親が「学校第一」の価値観を持ったままで、家の中まで学校の価値観でいっぱいにしてしまったら、学校へ行けない子どもはどこで生きていけばいいのでしょうか。私も娘が学校に行っている間は、家の中が学校化してました。「宿題はできたの?」「もっと丁寧に字を書きなさい」「ちゃんと明日の用意をして」「先生に怒られないようにちゃんとやりなさい」って。これがどれだけ学校がつらい子どもたちを追い詰めていたか、親の会に行くようになり、不登校中に死のうとした当事者の青年たちの声を聞いてよくわかりました。どうかお子さんが不登校になったら、まずは黙ってゆっくり休ませてあげてください。そして、一直線に学校に通う以外の生き方もある、そういう生き方しかできない子どももいるということを理解してあげて欲しいと思います。今は大人でも仕事で追いつめられて、精神を病んでしまう人が多い時代です。親世代の頃よりも世の中は確実に生きにくくなっていて、それは子どもの世界にも浸透しています。大人も子どもも苦しいのです。だけど、コップの中のエネルギーがたまれば人はまた立ち上がります。さんざん我が子を追い詰めて病気にまでさせてしまった私が、今やっとたどり着いた答えです。
2017年06月23日悩みはみんな同じ、それは「偏食」!出典 : 息子が幼稚園の頃、同じ発達障害の子どもを持つお母さんたちと園で会うたびに話した共通の話題は「偏食」についてでした。発達障害のある子どもの多くは、食にこだわりがあったり、初めての食べ物に対する恐怖感が強かったりで、偏食傾向があります。うちの息子は味覚過敏もありましたので、「混ぜ込んで食べさせる」ということも通用しませんでした。苦手な食材の、ほんの少しのかけらが舌に当たった瞬間に、嘔気を催してしまうのです。同じ幼稚園で出会った、他の発達障害のお子さんたちもそれぞれ偏食には悩まされていましたが、その現れ方は様々でした。なかには、「パンの固さ」や「ごはんの温度」にまでこだわりがあるお子さんもいて、それぞれのお母さんは毎日のお弁当作りに、それはそれは苦労していました。息子の場合は、食べられる食品の種類は両手で数えられる程度。混ぜ込みは受け付けないので、おかずのバリエーションも増えません。ごはんにかけるふりかけさえ、こだわりがありました。息子の幼稚園は毎日お弁当でしたので、両手で数えられる程度のおかずを毎日順番に詰めるだけの毎日。結局幼稚園の3年間で、そのバリエーションが増えることはありませんでした。ある日幼稚園の先生から言われた意外な一言出典 : 世の中には「キャラ弁」や「食育」という言葉が「母の愛情」の象徴としてあちらこちらで語られています。我が家はそんな「母の愛情」とは無縁のお弁当。全く頭を使わせることのない、同じ食品のオンパレードでした。そんな味気のないお弁当を作って楽しい気持ちになるわけもなく、「食育」という言葉を聞くたびに責められているような気持ちになりました。ある日、私はふと妙なことを思いつきました。「もしかしたら、みんなが一緒に食べていることに触発されて、嫌いなものでも食べるかもしれない」それまでは息子の食べられるものだけをお弁当に詰めていた私ですが、ある日を境に息子の苦手な物を1~2品入れるようになりました。ある日はプチトマト、ある日はブロッコリー、ある日は野菜炒め…。しかし息子は見事にそれだけは残して帰ってきました。それでも私は毎日、息子の嫌いなものを一品ずつ入れました。「いつか食べられるようになる」という気持ちと、「私だって食育に無関心なわけじゃないんだよ…好きなものだけ食べさせればいいと思って手を抜いているわけじゃないんだよ…」という、後ろめたい気持ちに、私は勝てなかったのでした。祈るような気持ちで息子の苦手な食べ物をお弁当に詰めていたある日、幼稚園の先生から突然お電話がかかってきました。そして、こう言われたのです。「お母さん、お弁当は、お母さんと息子さんとの信頼関係の一つです。息子さんの嫌いなものはお弁当に入れなくて大丈夫です。食べられるものだけを入れてあげてください。息子さんの大好きなものだけを詰めてあげてください。後になってその意味が分かると思います。」幼稚園の先生からの電話を受けて、私は呆気に取られてしまいました。それまで言われていた「食育」とは真逆のことを言われたからです。本当にいいのだろうか、栄養のことは考えなくていいのだろうか、このまま偏食を治さなくていいのだろうか…。幼稚園の3年間、私は迷いながらも息子の好きなものだけをお弁当に入れ続けたのでした。小学校に入って分かった、先生の言葉の意味出典 : そして息子は小学校に入学しました。小学校に入学して、私が一番嬉しかったことと言えば、給食が始まったことです。毎朝毎朝、同じような食材を詰めるだけの幼稚園のお弁当は、私にとっては本当に苦痛でした。しかし、そんな私の喜ばしい気持ちとは裏腹に、息子にとっては小学校生活で一番頭が痛いことが「給食」だったのです。バランスを考えていろいろな食材が混ぜ込まれて作られている給食は、息子にとっては食べられない物のオンパレードです。息子いわく、「僕はクラスでお残しナンバーワン」だそうです。前日に給食のメニューや食材を見せて、予告はしていますが、それを食べられるかと言われれば全く別問題です。お腹が空けば、そのうち食べられるようになるだろう、と周囲は楽観視していますが、どんなにお腹がすいても息子は初めての食べ物が怖いのです。何が出るのか分からない、どんな味か分からないものが毎日提供される給食。一口手をつけようと頑張ってみはするものの、固まってしまう息子。「こんなに残すのはあなただけ」と周囲にたしなめられ、がっくり肩を落として帰宅します。そんなある日、小学校が1日だけお弁当の日がありました。毎日給食のことでがっくりとして帰ってくる息子のために、息子の好きなものだけてんこ盛りのスペシャル弁当を作って持たせました。今思えば、幼稚園時代はそれがスペシャル弁当だという認識はありませんでした。息子の好きなものだけを詰めるということは、苦痛でしかなかったからです。久しぶりのお弁当デー。息子は目をキラキラ輝かせて帰ってきました。帰ってきて一言。「お母さんのお弁当には、僕の嫌いなものは絶対入ってないんだ。幼稚園の頃はいつも、安心しきってお弁当箱を開くのが当たり前だと思ってたんだ。給食みたいに、出てくるときに怖い気持ちにならなかったんだ。お母さんのお弁当は、安心できたんだ。」この言葉を聞いて、かつて幼稚園の先生が「息子くんの好きなものだけを入れてください。それは信頼関係なんです」とおっしゃってくださった意味が分かり、私は幼稚園時代が懐かしくて、涙が出てきてしまいました。出典 : 初めてのものが怖い息子にとって、いつも安心して弁当箱の蓋を開くことのできた3年間は、宝物のような時間だったのです。そして、その安心感を親が与えずに、誰が与えられるでしょうか。「食育」とは、栄養をバランスよく与えることではなく、「食べる」ということを楽しいことだと感じられるようになる教育だと私は思っています。そう考えれば、偏食の多い発達障害児が、安心感を持って食事をできるようにすることも、立派な「食育」ではないかと私は思います。
2017年06月22日子育て楽じゃありません
細川珠生のここなら分かる政治のコト
私の愛すべき家族