「発達障害」について知りたいことや今話題の「発達障害」についての記事をチェック! (80/98)
精神疾患とは?精神障害とは何が違うの?出典 : 精神疾患とは、広義に解釈するとなんらかの脳の働きの変化により心理的な問題が生じ、感情や行動などに著しいかたよりがみられる状態のことです。この意味合いで、一般に「心の病」や「精神病」、「精神障害」などと呼ばれるものを、より医学的に言いあらわすときに使われることが多い用語です。ですが、精神医学の領域においても「精神疾患」という言葉は、普遍的かつ確立された定義がありません。使われる場面や診断基準、医師によっても定義や概念にばらつきがあり、いまもなお見解の違いで議論が行われることもあります。精神疾患がどのような概念を指すのか、つかわれる場面ごとの定義を見ていきましょう。精神疾患という言葉は、mental diseaseの直訳として使われます。精神医学の診断に使われるDSMなどではmental disorderの訳として「精神疾患」が使われることもあります。mental disorderは一般に精神障害とも訳されることがあるため、しばしば混乱を招きます。これらの用語にはどのような違いがあるのでしょうか?◇精神疾患(mental disease) は精神の病を指す医学用語医学における疾患(disease)とは、特定の原因、病態、症状、経過予後などが明確に結びついている場合を指します。しかし、多くの精神の病は原因を特定するのが難しいため、原因が不明な場合でも、病態・症状・経過・予後が特有なものであれば、疾患単位として精神疾患(mental disease)と呼ばれます。例えば統合失調症は、原因は不明ながらも代表的な精神疾患と位置づけられています。ところが、精神的な健康を保てない状態の中には、病態が不明確で疾患とは言い切れないものもあります。そのような場合、より広義な概念である精神障害という言葉が使われることがあります。例えば「適応障害」などです。◇精神障害(mental disorder)は症状や機能的な乱れがある状態像を指す障害(disorder) は、ある特定の生体機能の乱れや個人的苦痛があるが,疾患 (disease)と呼ぶには、その病態がはっきりと特定されていないものをいいます。そもそもdisorderとは、「調子の乱れ」といった意味であり,これに「障害」(差し障りや害がある)という重い訳語が当てられたことが混乱を招いているとも言えますが、ここではそのことを踏まえつつも、行政用語でもある精神障害という言葉を使います。◇『DSM』の日本語版ではmental diseaseを精神疾患と訳している精神医学の診断に使われることの多い診断基準『DSM』では、その第4版であるDSM-Ⅳからこのmental disorderの訳語として「精神疾患」があてられました。しかしDSMでdisorderとして紹介されているものには、狭義の精神疾患だけでなく発達障害や知的障害など疾患とはいえないものや病態が不明瞭なものも含まれています。そのため、時に精神疾患・精神障害の概念についてのあいまいさや誤解のもととなることもあり、この訳語については専門家の間でも議論が分かれています。このように、精神医学の領域においても「精神疾患」という言葉は統一された定義がなく、使い分けについても厳密ではない場合があります。翻訳の場合は元の用語が何だったかによっても微妙にニュアンスが変わってきます。そのため、その用語がどのような意図を持っていて、どのような概念を指しているかは、その都度注意深く判断する必要があります。参考:精神看護学2精神障害をもつ人の看護/岩﨑弥生、 渡邉博幸編集/メヂカルフレンド社行政における「精神疾患」の定義も明確なものはありません。医療・福祉に関連する法律や行政は、我が国も加盟するWHOが作成したICD-10(『国際疾病分類』第10版)に準拠することが多く、『ICD-10(国際疾病分類第10版)』の第5章「精神と行動の障害」に該当するものを精神疾患としています。参考:第2回精神保健福祉法に関する専門委員会議事録|厚生労働省HP参考:みんなのメンタルヘルスしかし厚生労働省・文部科学省など担当省庁ごとや、法律などの文脈により定義や概念が異なる場合もあります。精神疾患に含まれる具体的な疾患・障害もそれぞれで異なる場合があり、『ICD-10』の第5章と完全に一致しているわけではありません。また「精神疾患」と「精神障害」の明確な区別もされていない状況です。例えば、精神障害者保健福祉手帳は、第5章には該当しないてんかんとアルツハイマーが交付対象である一方、第5章に該当する薬物依存や知的障害は交付対象ではありません。厚生労働省の患者調査などの統計結果でも、「ここでの精神疾患には、ICD-10で「精神及び行動の障害」に分類されるもののほか、てんかん・アルツハイマー病を含みます。」とされています。「疾患」とは、狭義には原因や経過などが明らかになっている場合を指します。しかし、精神疾患の場合、多くは未だ原因などが解明されてないため、診察などでは精神の病一般という意味で、「精神疾患」「精神障害」のどちらも用いられることが多いようです。このような状況においては、なにが精神疾患でなにがそうでないかということの線引きを正確にすることはできません。この記事では、心や脳のはたらき、または発達の過程における問題により引き起こされる、思考、行動、感情のコントロールにおける医療の介入が必要な状態全般について、「精神疾患」という言葉を用いて説明していきます。精神疾患の種類(分類)出典 : 精神疾患にはどのような種類があるのでしょうか?精神疾患の分類する方法には、大きくわけて2つあります。こころの病を原因から分類する病因論に基づく伝統的診断と、症状から分類する操作的診断です。それぞれの診断方法ごとに分類・名称が異なります。参考:操作的診断基準(精神疾患の)両者にはそれぞれ長所もあれば短所もあるので、現在日本では多くの医師が伝統的診断と操作的診断を併用しています。以下において、それぞれの診断方法における精神疾患の分類と種類を紹介いたします。■伝統的診断における分類19世紀後半、ドイツの医学者クレぺリンは他の身体疾患と同様に、精神疾患を原因別に外因性精神疾患、心因性精神疾患、内因性精神疾患の3つに分類しました。とはいえ、心因性と内因性の区別は極めて曖昧で、明確な区別は難しいとされています。◇外因性精神疾患脳器質的な病変、ないし身体の病変によって生じるもの例:脳腫瘍、脳外傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、感染症(神経梅毒など)、内分泌疾患など◇心因性精神疾患心理的な内面の葛藤あるいはその人をとりまく環境からくるもの例:解離性障害、強迫性障害、ストレス関連障害など◇内因性精神疾患脳の機能異常に基づくが、明白な原因が同定されていない、何らかの遺伝的な素因が関与していることが想定される疾患例:統合失調症、双極性障害などちなみに、クレぺリンは統合失調症と躁うつ病(双極性障害)を二大精神病としました。参考書籍:『精神病』/笠原嘉著/岩波書店/1998年伝統的診断のメリットとして、精神症状に苦しむ本人やそのご家族に病気について説明する際、原因から説明すると理解してもらいやすい点が挙げられます。一方、デメリットとしては、診断する医師により診断名が異なりやすいことがあります。また、診断名が異なるということは、その病気の研究が進まないなどの問題もあります。■比較的新しい操作的診断基準に基づく分類現在普及しているアメリカ精神医学会のDSM-5などは、原因的な面は考慮せず、症状だけから分類した診断基準(操作的診断基準)です。この操作的診断基準を用いた診断のメリットは、基準が細かく明確であることから医師間で診断名の食い違いが少ないことや、福祉職、法律家などの多職種における共有言語となることなどが挙げられます。同じ基準で協力者を集めることにより、疾患の研究が進むことも期待されます。一方、デメリットとしては、症状のみによる診断名であり、疾患の本質が考慮されていないこと、医師から患者や家族への説明がわかりにくくなる、診断基準の改訂により診断名が変わることもある、などの問題点があるとされています。また、もともと操作的診断基準は患者ではなく医療機関側の都合からつくられたこともあり、個々の患者のための診断、治療に有用ではないという批判もあります。なお、現在ある診断基準はどれも暫定的で不完全なものなので、脳科学の進歩などにより確定的な診断基準が完成されることが期待されています。◇DSM-5の分類ここでは、DSM-5における精神疾患の分類(種類)を紹介いたします。・神経発達症群/神経発達障害群・統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群・双極性障害および関連障害群・抑うつ障害群・不安症群/不安障害群・強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群・心的外傷およびストレス因関連障害群・解離症群/解離性障害群・身体症状症および関連症群・食行動障害および摂食障害群・排泄症群・睡眠-覚醒障害群・性機能不全群・性別違和・秩序破壊的・衝動制御・素行症群・物質関連障害および嗜癖性障害群・神経認知障害群・パーソナリティ障害群・パラフィリア障害群・その他の精神疾患群・医薬品誘発性運動症群およびその他の医薬品有害作用・臨床的関与の対象となることのある他の状態DSM-5に関しては、以下のリンクをご参照ください。精神疾患の症状は?出典 : 精神疾患の症状には様々な種類がありますが、そのほとんどは精神疾患でない一般の人でも経験するよくあるものです。ちょっとした気分の落ち込みや漠然とした不安感を経験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?疾患であるかどうか医師の診断によって決まるのは、症状の組み合わせと症状の程度、そして症状が続いている期間です。また疾患名ごとにそれぞれの度合いや組み合わせは異なります。以下において、精神疾患の代表的な症状の一部を紹介します。症状それ自体は健康な人にも生じうるものであって、これがあるから精神疾患だ、ということではありません。あくまでも参考程度にとどめていただき、もし少しでも不安になった場合は専門機関に相談するようにしましょう。・抑うつ気分:つらい・悲しい・憂鬱・むなしいなどの気持ちになり、気力がでない状態。・幻覚:実際には刺激や対象が無いのに、それについて生じている知覚のこと。幻聴が代表的だが、幻視、体感幻覚などもあり、幻聴にもさまざまな種類がある。・妄想:根拠が無い非合理で訂正不能な思いこみ。本人は妄想とは認識しにくい。・離人:自分が自分であるという実感がしない、あるいは外界と自分との間に奇妙な隔たりを感じてしまう状態。・強迫:止めたい気持ちがありながらも、一方でそれをやらなければ気が済まないようにも感じ、同じ思考や行為を繰り返してしまうこと。精神疾患をチェックする方法はあるの?出典 : 全ての精神疾患をご自身でチェックする方法はありませんが、うつ病などの個々の病気を評価する尺度はあるので、以下にいくつか紹介いたします。以下に紹介するチェックリストは、何点以上なら病気であると判断するものではないので注意が必要です。あくまでも、その傾向があるということを示すだけなので、チェック結果の意味づけは医師と話し合う必要があります。チェックをして不安に思った場合は、自分で即断せず、チェック結果を持って医療機関に相談しましょう。■CES-D うつ病(抑うつ状態)自己評価尺度CES-Dは一般人がご自身でのうつ病を発見する目的で米国国立精神保健研究所により開発された自己評価尺度です。質問項目は20問で所要時間は10-15分、対象年齢は15歳からとなっています。(以下のリンクをご参照ください)によるうつ病症状の簡易チェック|せせらぎメンタルクリニックHP■ストレスセルフチェック以下のリンクでは厚生労働省がストレスチェックを実施する際に推奨する「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基いて制作されたテストが簡単に行えます。職場でのストレスレベルを約5分程度で測定することができます。(以下の厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票フィードバックプログラム」に基づいて、制作された「5分でできる職場のストレスチェック」をご参照ください)「5分でできる職場のストレスセルフチェック」|こころの耳HP精神疾患の原因は?遺伝との関係はあるの?出典 : 病因論にかわって出てきた精神疾患が生ずる様々なメカニズムのうち、ほとんどの精神疾患にあてはまるといわれているのが、ストレス脆弱(ぜいじゃく)性モデルです。すなわち「その人の病気へのなりやすさ(脆弱性)と、病気の発症を促す要因(ストレス)の組み合わせにより、精神疾患は発症する」という仮説です。ここでいう脆弱性とは、遺伝などの先天的な要素と、どのような環境でどのように対応してきたかという後天的な要素により決まるといわれています。一方、ストレスには家庭や職場、学校における人間関係だけでなく、戦争、災害、親族の死などがありますが、個人により何にどの程度ストレスを感じるかは異なります。思春期という、身体が急激に変化する時期は思春期であること自体がストレス因にもなりえます。同じストレスを受けた場合でも、精神疾患を発症する人としない人がいるのは、その人がもつストレスへの脆弱性が低いか高いかによると考えられます。参考書籍:『新・精神保健福祉士養成講座〈1〉精神医学』/日本精神保健福祉士養成校協会 編/中央法規/2009年◇遺伝のしくみ遺伝には、親から病気の遺伝子を受け継ぐ場合と、親から正常な遺伝子を受け継ぎながら子どもの代で遺伝子に変異が起こる場合(突然変異)があります。また、ひとことに「遺伝」といっても、突然変異によるもの、メンデルの遺伝法則に従って遺伝する単一の遺伝子の異常と、複数の遺伝子が作用した上に環境要因も加わり発症する多因子遺伝に分けられます。精神疾患のなかでも遺伝が関与するものは、多因子遺伝によるものと考えられています。◇遺伝だけが発症を左右するわけではない脆弱性(病気のなりやすさ)には遺伝も関係しますが、環境も大きな要因の一つです。精神疾患のなかでも遺伝の影響が強い統合失調症でさえ、遺伝だけが発症の原因というわけではありません。実際、双生児を対象にして、「一方が統合失調症を発症した場合にもう一方が発症する確率」を調べた研究では、遺伝子が完全に一致する一卵性双生児でも48%、遺伝子が通常の兄弟と同じ程度に異なる二卵性双生児の場合は17%という結果が出ています。参考:『分裂病の起源』ゴッテスマン/著内沼幸雄・南光進一郎/監訳この結果は、遺伝の影響だけが発症原因ではないことを意味すると同時に、その人を取り囲む環境が発症に関係する場合もあることを示しています。自分の病気の原因を探し求めても、解決につながるとは限りません。仮に、遺伝や、親の育て方などの環境が関与していることがわかったとしても、それが今更変えられないものであるなら、そこにとらわれていても解決にはつながらないのです。過去ではなく未来に向かい、今何ができるのかを考えることが必要なのかもしれません。まとめ出典 : ◇ご自身がこころの不調に悩んでいらっしゃる方へ精神疾患の経過は人によって様々です。もし仮に一般的に重い病気とされているものに罹っていたとしても、必ずしも自分も同じ道を辿るわけではありません。今はネットなどで色々な情報を調べることは出来ますが、悲観的になりすぎないことが必要です。ご自身が精神的な不調に長らく苦しまれているのなら、少し勇気をだして一度医療機関を受診することをおすすめします。自分だけでは分からなかった解決策が見えてくるかもしれません。◇ご家族がこころの不調に悩んでいらっしゃる方へ家族がこころの不調で悩んでいると、周りの人、とりわけご家族は責任感を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。しかし、精神疾患の原因は複合的なもので、決して一つではありません。たとえ家庭内に少し問題があったとしても、それだけが唯一の原因ではないのです。ご自身を責め過ぎず、疲れを感じた場合は休むことも必要です。一人で抱え込まないためにも、医療機関や福祉サービス、家族会などに救いの手を求めましょう。
2017年04月25日DSM-5とは?出典 : とは、米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルです。正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といいます。本来はアメリカの精神科医が使うことを想定したものですが、事実上、国際的な診断マニュアルとして使われています。DSMの初版(DSM-I)は1952年に出版され、以降数回にわたって改訂版が発行されてきました。DSM-5は、2013年に公開された第5版です。なお、第4版(DSM-IV, DSM-IV-TR)まではローマ数字が、第5版(DSM-5)からはアラビア数字が、それぞれ正式な表記です。第二次世界大戦中、兵士の適性検査や帰還兵の治療において精神科医が重要な役割を果たしました。平たく言えば、このときに使われた診断マニュアルが、現在のDSMのもとになっています。第3版(DSM-III)以降、DSMは、精神医学に「共通言語」を与えるという目標を明確に掲げてきました。これは、精神科医の「カン」に頼るのではなく、統一された基準を作り、それにしたがって根拠に基づいた医療行為がなされる環境を整えようということです。この方針が、現在に至るまでDSMのあり方を支えています。これについては、米国精神医学会の説明が簡潔でわかりやすいので引用します。「『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』は、アメリカや世界の多くの国々で、ヘルスケア専門職(health care proessionals)が精神障害の診断に対する権威ある指針として使っているハンドブックです。DSMに書かれているのは、精神障害を診断するための記述、症状、その他いろいろな基準です。DSMは、臨床医に共通言語を与えています。臨床医はこれを使って、患者について情報交換し、精神障害の研究に使えるような一貫した信頼できる診断を与えています。また、DSMは研究者にも共通言語を与えています。研究者はこれを使って、将来[診断基準を]どのように改訂できるか研究し、投薬治療やその他の医学的介入の発展を促しています。」(DSM-5: Frequently Asked Questions | American Psychiatric Association.より上記は発達ナビ編集部による抄訳) Frequently Asked Questions | American Psychiatric Association.また、作られた診断基準が適切かどうかを見直し、場合によっては修正することも、DSMが「共通言語」として機能し続けるためには重要でした。そのために、DSMは大規模・小規模な改訂を繰り返してきました。有名な例では、かつて精神障害としてリストアップされていた「同性愛」が、1974年に削除されたという事例があります。DSM-5の内容は?出典 : では、まず、精神障害が大きく22カテゴリーに分類されます。その下に、一つひとつの診断名が挙げられています。たとえば、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)は、DSMでは「神経発達症群/神経発達障害群」という大分類の下にあります。「神経発達症群/神経発達障害群」には、ADHDのほかに、・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション障害群(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・限局性学習症/限局性学習障害(ディスレクシアなど、いわゆる「学習障害」)・運動症群/運動障害群(発達性協調運動障害、チックなど)が含まれます。どうしてこれらの障害が同じグループに含まれるのか、疑問を持たれる方もいるでしょう。「神経発達障害群」というグループ名が示すように、このまとめ方の背後には、これらの障害はみな神経の発達のしかたという共通の原因に関連しているのではないかという仮説があります。もちろん、これは現在の仮説ですから、DSMの改訂によって今後分類方法が変わることもあるでしょう。DSM-5ではどのような改訂があったの?出典 : 年のDSM-5発表は、1994年にDSM-IVが発表されてから実に19年ぶりの全面改訂でした(ただし、小規模な改訂は繰り返されてきました。とくに、2000年には、DSM-IVの文言のみを大幅に書き換えたDSM-IV-TRが発表されました)。そのため、近年の精神医学の進歩や認識の変化によって、大きく書き変えられたところがいくつかあります。また、英語で書かれたDSM原著だけでなく、日本語訳においても、大きな変化がありました。ここでは、それをいくつか紹介します。最もよく知られているのは、「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)」という概念が導入されたことでしょう。「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」は、DSM-IV-TRで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「広汎性発達障害」などと呼ばれていたいくつかの障害をすべて含むものです。つまり、DSM-5では、これらの障害は別々のものではなく、連続した障害なのだ、という見方を新たに採用したのです。「スペクトラム」(連続体)という見方は、DSM-5でとくに重視されている見方です。これは、診断項目に「当てはまるか、当てはまらないか」を判断するよりも、それらに「どの程度当てはまるか」を判断するほうがが適切だろうという考え方です。こうした考え方は、診断名としてはもちろん、診断方法としてもDSM-5を特徴付けている点のひとつです。ところで、「自閉症スペクトラム障害」と「自閉スペクトラム症」と併記されていますが、DSM-5においては、どちらも正しい表記です。DSM-5の日本語訳では、英語の disorder をどう訳すかがはっきりと決まっておらず、「障害」と「症」が併記されています。翻訳の段階では、「障害」をすべて「症」に変えることが提案されました。これは、「障害」という言葉が持つネガティブなイメージを避けることを意図した提案です。しかし、ネガティブなイメージを避けすぎると、今度はかえって過剰診断という別の問題を引き起こすのではないか、という懸念がありました。そうした議論を踏まえて、結局「障害」と「症」が併記されることになりました。日本精神神経学会精神科病名検討連絡会「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」『精神神経学雑誌』116巻、第6号(2014年)429–57ページ高橋三郎・大野裕監訳『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2014年DSM-5はどこで使われているの?いつ必要になるの?出典 : が使われるのは、主に、精神医学を研究したりそれを応用したりする場面です。こうした事情は、日本でも世界の他の国々でもそれほど変わりません。医師がDSMに基づいて診断をしていると、患者にとってはどのようなよいことがあるのでしょうか。最も大きいのは、DSMが「共通言語」として機能することによって、精神科医一人ひとりが独自に診断をするということがなくなり、どの病院・医院でもそれなりに統一された医療行為を受けることができるという点にあるのではないでしょうか。しかし、行政や司法の場で主に使われるのは、DSMではなくICD(国際疾病分類)です。詳しくは下で説明しますが、ICDは、国連の専門機関であるWHOが発表している疾病分類マニュアルです。たとえば、発達障害者支援法は「発達障害」をICDに基づいて定義しています。[…]法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80–F89)」及び「小児〈児童〉期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90–F98)」に含まれる障害である[…]発達障害者支援法の施行について|文部科学省読者のみなさんにとって、「支援やサービスを受けるためにDSMの診断が必要だ」というケースは、あまりないかもしれません。障害年金や障害者手帳のような福祉制度の場合にも、民間の保険会社の場合にも、多くの場合、求められるのはICDの診断コードです。どうやってDSM-5の原文を見るの?診断名の調べ方は?出典 : 残念ながら、DSMの英語原文も日本語訳も、ウェブ上で見ることはできません。DSMは米国精神医学会の著作物であり、一般の書籍と同じように著作権の対象となっています。日本では日本精神神経学会によって日本語版用語監修が行われ、書籍が出版されています。『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM-5の日本語訳) and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition (DSM-5の英語原文)DSMとICD(国際疾病分類)の違いって?出典 : のほかにも、国際的に使用されている疾病分類があります。有名なものに、世界保健機関(WHO)が作成するICD(国際疾病分類)があります。ICDの最新版として、1990年に発表された第10版(ICD-10)が使用されています。また、2018年には第11版(ICD-11)の発表が予定されています。国際統計分類第 11 版(ICD-11)改訂にむけて|WHO健康開発総合研究センターDSMとICDは、しばしば列挙して参照され、またどちらも国際的に使用されています。両者の違いを挙げるとすれば、以下のようなものがあります。1. 作成機関: DSMは米国精神医学会が作成しています。これに対して、ICDを作成しているのは、国連の専門機関であるWHOです。ただし、DSMがアメリカ国内でしか通用しないわけではなく、事実上どちらも国際的に広く使われています。2. 分類範囲: DSMは精神障害のみを対象とした分類です。これに対して、ICDは身体的疾患を含むすべての疾患を対象としています。3. 使用場面: 日本の行政機関では、ICDが採用されています。たとえば、福祉制度に関する書類には、DSMの診断名ではなくICDの診断コードを書くことになります。とはいえ、実際には、ICDとDSMのどちらを主に使うかは医師・医療機関ごとに異なっています。大まかに言って、ICDのうち精神障害や発達障害に関連するコード(F00–F99)にDSMが対応しています。個々の障害(疾患)の分類方法や診断基準について、DSMとICDの間にはそれほど大きな違いはないと考えてよいでしょう。ただし、「自閉症スペクトラム障害」のような新しい概念については、DSMとICDが必ずしも対応しているとは限りませんので、注意が必要です。おわりに出典 : は、精神科医の診断マニュアルとして作成されたものです。その中には、精神医学に関する最新の知見や、まだ議論の決着がついていない事柄が多く含まれています。これらは、精神医学に関する膨大な知識と訓練がなければ、理解することも使うことも難しい内容ばかりです。読者のみなさんにとっては、DSMに基づく診断がしっくりくる場合もあれば、納得いかない場合もあるでしょう。また、「自閉症スペクトラム障害」のように、改訂によって診断名が大きく変わることに疑問を抱く方もいるでしょう。しかし、これらは精神医学そのものが発展途上にあることの証拠でもあります。精神医学の世界では、以前より格段に多くのことが明らかになったとはいえ、それでもわからないことが多くあります。私たちが普段目にするのはICDですが、DSMには、そうした医学研究の苦労が現在進行形で現れているのではないでしょうか。
2017年04月25日長所だった「目標に向かって一直線」がマイナス要素に!?出典 : 歳になったアスペルガー症候群の娘は、昔から「努力の人」と呼ぶに相応しいタイプの女の子でした。まりつきで「あんたがたどこさ」を最後までやり遂げられるように、鉄棒で逆上がりをできるように、二重跳びがとべるように…。上手く出来ない自分が悔しくて、両手に出来た豆が潰れても泣きながら、毎日毎日何時間も練習を重ねてきました。「体が疲れているから休んでからにしよう?」と声をかけても、首を縦に降ることは決してありませんでした。そうして、人の何倍も努力をして、少しずつ出来ることを増やしてきたのです。幼い頃はこのド根性がプラスに作用しており、娘の一番の長所といえるところでもありました。ところが年齢が上がり、他人とのコミュニケーションが増えるにつれ、この長所がマイナスに作用している場面が目に付くようになってきました。娘の思い描く「理想の完成形」には家族や友達が含まれ、そこに向かって努力をしない人たちに声を荒らげ、強い口調で指示を出して相手をコントロールしようとするのです。このままではせっかくの長所が、娘や周囲の人たちを苦しめる要因になってしまう…。どうすれば「目標に向かって一直線!」を良い方向に持って行くことができるのでしょうか。お箸とコップを出すだけなのに、どうして空気がピリッとしてしまうの?出典 : トラブルは何気ない日常の中にも突然あらわれます。我が家ではご飯の前に、子どもたちにお箸やコップを並べることをお願いしています。子供たちに声をかけると、日頃から「人の役に立ちたい」と強く願っている娘は「はーい!」と気持ちのいい返事を返してくれます。息子もお姉ちゃんに負けまいと急いでやって来て「じゃあ、僕はお箸を出すね!」と楽しそうに話します。問題はここから。娘「お箸はお姉ちゃんが出すから、君はコップを並べて!早く!コップは何色がいいかみんなにちゃんと確認して!」息子「はーい。えーと、僕はこのコップにするね」娘「ちょっと!!!自分のものから選ぶんじゃなくて、まずご飯を作ってくれてるママにどのコップがいいか確認しないとダメでしょ!お姉ちゃんはどれでもいいから、ママに聞いてから自分のコップを決めてちょうだい!」息子「えー、ママはどれでもいいっていつも言ってくれるから、僕はこれにする」娘「たとえママがそう言ってくれても、ママは疲れているのに私たちのためにご飯を作ってくれたりお世話してくれているんだから!ちゃんと聞くのが礼儀でしょ!もしお客さんがいたら、まずお客さんにどれがいいか聞く!自分の事は後回しでいいの!いつもそれをやっていないから、お客さんが来た時にちゃんとできないんでしょ!」私「お姉ちゃん、ありがとう。ママはどのコップでも構わないから、あなたも好きなのを選んでね」娘「ありがとうママ!じゃ、お姉ちゃんはこれにするから、早く飲み物を入れて並べて!ああ、そうじゃなくて一つずつ丁寧にやりなさい!!人が口をつけるところは手で持たないの!」こんな風に早口で息子に矢継ぎ早に指示を出したりお説教をしたり、とても慌ただしくてピリッとした空気になってしまうのです。娘の言っていることはあながち間違いではありませんし、この内容がきちんと息子に入っていけば、息子にとってもプラスになるはずです。なんとかこれを穏やかな空気の中で行うことができれば、お友だちや家族とのトラブルも減って、本人も楽になれるんじゃないかと思うのですが…。娘に教えた「必死」にならない方法出典 : そこで、娘と話し合ってみました。私はまず、そんなに必死になる必要はないのだと伝えました。でも娘の答えはこうでした。娘「私、必死になんてなってないよ!ただ役に立ちたいと思ってやっただけなのに!」そうなのです。娘は純粋に役に立ちたいがために頑張っているのです。でも結果的にはそれが弟を巻き込み、ピリッとした空気になってしまうのでした。私「あなたの『役に立ちたい!』は他の人から見ると『必死』に見えちゃうんだよ。食卓を整えるのは、別に全力でやらなきゃいけないことじゃないでしょ?今からみんなで楽しくご飯を食べようっていう時にピリピリしちゃうともったいないし、あなたもムカムカしちゃって気分が良くないでしょ?」娘「確かに・・・・」娘もここは納得してくれたようです。私はこう続けました。私「ママ考えたんだけど、必死に見えちゃうのは、1つは『早口になっちゃう』ことが原因だと思うの。伝えたいことがたくさんあって、言葉が溢れてくるのはわかるんだけど、ゆっくり伝えるだけで自分も周りもずいぶん印象が違ってくると思うよ?」娘「そう!伝えたいことがたくさんあるんだよ!でもまだ思ってることの半分も言えてないのに、ゆっくりにしたらもっと言えなくなっちゃうじゃない」私「そうだよね。でも、頭の中で考えてることを全部他人に吐き出す必要はないんだよ。何が弟にとって必要な情報かを選んで教えてあげたらいいと思うの」娘「確かに。弟も途中から聞いてないもんね」私「あとね、『これをしてもらえる?』とか『お客さんが来てくれた時はこうすると喜んでもらえるよ』とか、そんな風に話し方を変えるだけで、同じ内容でもずいぶん印象が変わってくると思うの。それだったら、ママもニコニコしながら見守れるよ。」娘「わかった!すぐには無理だと思うけど、やってみる」来年の今頃には成果があらわれると信じて出典 : そんな話し合いをしてしばらく経ったある日のこと。娘が今月の目標欄に「人と笑顔で話す」と書いてあるのを見つけました。この話し合いがきっかけになったのかどうかはわかりませんが、目標をたててそれに向かってひたむきに努力ができる娘だから、いつかきっとこの目標も達成できるのではないかと嬉しく見守っています。発達障害を抱える人は、他人とのコミュニケーションが苦手だとよく言われます。それは、特性を持たない人たちとは物事の見え方や感じ方が異なるために通じ合うことが難しいということが原因としてあげられると思います。ですがもうひとつ、「経験から学んで自然とスキルを身につける」のが苦手であるということが、相手と上手くコミュニケーションを取れない要因になっているのではないかと、最近子供たちを見ていてよく思います。でも、経験から学ぶのは難しくても、繰り返し「こんな風にしてみよう」という声掛けをすることで、少しずつ本人も周囲も楽になっていくことはあるかも知れません。人が自分を変えていくというのは、とても時間がかかります。数日声掛けをして変化が見られなくても、焦らずに年単位の目標だと思って続けてみませんか?「こうすれば上手く人と接することが出来る」という成功体験は、きっといつか社会に出て行く子どもたちの自信に繋がっていくはずです。私も来年の今頃には少しずつ成果が出てくると信じて、「必死にならず、ゆっくり話してみよう」と娘に声掛けを続けていきたいと思います。
2017年04月25日4月の放送から新マペット「ジュリア」が登場!Upload By 発達ナビニュースアメリカの子ども向け教育番組「セサミストリート」で、今春4月の放送から自閉症のあるマペットが登場することが発表されました。自閉症のある4歳児の女の子で、名前はジュリアという設定。2015年から、NPO法人セサミワークショップによる自閉症啓発サイト「Sesame Street and Autism see amazing in all children.」の中心キャラクターとして活躍していましたが、テレビ放送への登場は初めてのこととなります。第一話のエピソードは、ビッグバードがジュリアに握手のあいさつを求めようとするところから始まります。ビッグバードのあいさつにジュリアは反応を示しません。動揺するビッグバードに対してエルモは、「ビッグバードを嫌っているのではなく、ジュリアにはジュリアなりのコミュニケーションのとり方がある」ということを伝えます。このように、他のマペットたちともさまざまなやり取りを通じて「お互いに対して理解すること」を学んでいくようです。 Street and Autism see amazing in all children.本放送でセサミストリートが伝えたいメッセージは「インクルージョン」ジュリア登場企画は、自閉症児のいる家族からの番組への要望がきっかけだったそうです。アメリカ疾病予防管理センターの調査によると、学校に通う子ども68人に1人に自閉症の症状があるという統計がでており、自閉症児との関わりは多くの子どもたちにとってより身近になってきています。そこで番組制作を行っているセサミ・ワークショップ(Sesame Workshop)は、子どもたちへの自閉症への理解促進を目的として、専門家と5年以上の協議をかさねジュリアを作り上げてきました。ジュリアをつくった番組の作家クリスティーナ・フェラーロ氏によると、今回の放送で伝えたいことは「インクルージョン」。他のお友達との違いを受け入れ共生していくというのはどういうことなのかを、人形劇によって楽しく表現していくようです。セサミストリートは放送当時から画期的な幼児教育番組だったUpload By 発達ナビニュースセサミストリートは1969年からアメリカをはじめ150カ国以上で放送されてきた長寿教育番組です。就学前児童に向けて構成されており、数字やアルファベットの学習や、様々な背景をもったキャラクターを登場させることによる情操教育など、多様な価値観や知識を楽しみながら学べるように細部まで工夫がほどこされています。当時のアメリカでは子どもたちの教育をテレビ番組で行うというのは画期的な取り組みでした。放送開始からテレビ評論家から称賛され、これまでにエミー賞を164個受賞するなど名実ともに業界から愛されてきました。また、セサミストリートが他番組と一線を画す特徴は、社会問題を取り上げ続けていることです。今回、自閉症を取り上げたようにこれまでも世界各国のあらゆる事柄をテーマにしてきました。たとえばアメリカ版では、2012年に「両親の離婚」をテーマとした特設ページを開設し、親が離婚した経験を持つ子どもたちの支援を行いました。一方、アフリカ版ではマラリアやHIV(エイズ)など、病気の知識を子どもたちの早期教育のためにわかりやすく伝えることに注力しました。このように「子どもたちが生きていくために必要な教育」を常に考え、各国の事情にあわせて番組制作が行われてきたのです。時代の変化にあわせて、子どもたちのための番組作りを心掛けてきたところが初放送から46年以上たった今も世界中から愛され続けている理由なのかもしれません。セサミの歴史 Children, Big Challenges: Divorce(小さな子どもたちの、大きな挑戦:離婚)日本での視聴は?現在、日本でのテレビ放送は行っていないようです。その代わり、セサミストリート公式Youtubeチャンネルがあるのでそちらでマペットたちを見ることができるようになっています。インターナショナル版のチャンネルでは、ジュリアとその他マペットたちの歌やショートストーリーなどがアップされているのでぜひチェックしてみてくださいね。セサミストリート オフィシャルホームページ日本版セサミチャンネルインターナショナル版セサミチャンネル
2017年04月23日ADHDの長男、色んな分野におおらかなんです。細かいことは気にしない!ハンカチと間違えて雑巾を持って行ったり、父の靴下を履いて学校に行ったり…。(無頓着とも言う)そんなおおらかな長男が、春休み終盤にこんなことをつぶやきました。Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナUpload By ラム*カナ長男の成長を感じました…!なんていうか、無頓着の極みのような子だったのです。長男の今までを振り返ると…スイミングの合格したら進級という仕組みもずっと知らず、同じクラスのお友達のことも覚えず、いつ遠足かも把握せず、運動会が終わった後に「いつうんどうかいなの?」と聞き、枕元のクリスマスプレゼントも毎年素通りしちゃったりして…。そんな長男が、進級することを知り、しかも緊張するなんて!つい、感動してしまいました。とは言え、もともと環境の変化に弱い子なので、「緊張する」という感情はしっかり受け止めてあげつつ、安心して登校できるように声掛けしてあげたいなと思います。
2017年04月22日4月1日の自閉症啓発デーに合わせ、Appleがワークショップを企画Upload By 発達ナビニュースAppleでは、4月2日の世界自閉症啓発デーをきっかけとして、自閉症啓発のさまざまなイベントを世界各地で行っています。Apple表参道でも、自閉症の方などへの”アクセシビリティ”をテーマにしたワークショップが行われました。アクセシビリティとは、年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できることをいいます。最近は学校の学習でも使われることがあるiPadですが、実は発達障害の各特性に合わせたさまざまなアクセシビリティの機能が搭載されているのです。Appleはテクノロジーについてこう掲げています。「テクノロジーはすべての人が使いやすいものであるべきだと、私たちは信じています。」多くのApple製品にアクセシビリティに配慮した機能が付いているのは、こうした考えによるものなのでしょう。今回の記事では、このアクセシビリティにフォーカスを当てた、Apple表参道でのワークショップの様子をお伝えします!障害のある方にも使いやすい!今日から使えるアクセシビリティ機能をご紹介Upload By 発達ナビニュース今回のワークショップには小学校や特別支援学級の先生などの3名が参加されました。Appleのワークショップでは、参加者に合わせて内容やテーマを柔軟に変えているとのことで、今回はiPadやiPhoneの学習支援の機能についてフォーカスした内容になっていました。紹介されていた機能の一部をここでも紹介します!Upload By 発達ナビニュース「アクセスガイド」とは、特定のアプリを集中して使用したり、学習したりするのを助ける機能です。指定したアプリから別のアプリへの移動できなくしたり、画面上の指定した範囲のタップを無効にしたりすることができます。また、アプリの利用時間制限を行うことも可能です。たとえば、誤操作しやすいボタンが表示される部分へのタップを無効にしたり、切り替えが苦手なお子さんのためにはじめから時間制限を設定しておいたりするような使い方ができます。この機能に対して参加者の先生方からは、アプリの中の機能を制限したり、意図しないページに移動してしまうことを防ぐことができるので、活用したいとの声が上がっていました。Upload By 発達ナビニュース「VoiceOver」や「スピーチ」といった機能は、聴覚から情報を得やすい人向けの機能です。VoiceOverは、タップした位置の情報を音声で読み上げてくれます。操作ガイドのように、音声でタップした場所の詳細を教えてくれるのです。スピーチは、表示されている画面全体を読み上げてくれるほか、読み上げている部分を単語レベルでハイライト表示することもできます。聴覚優位の特性を持っていたり、ディスレクシアのある子どもにとっては、耳からの情報のほうがより理解しやすいこともあります。また、ADHD傾向のある子どもの場合、本などを読んでいるうちに集中力を失ってしまうこともあります。VoiceOverやスピーチは、そうした特性のある子どもの学習支援にも適した機能かもしれません。さらに、一部の電子書籍やPDFなどの文書でも読み上げが可能とのこと。紙の本では、目で文字を追ったり、じっとして集中力を維持する必要がありますが、読み上げの機能を使えばより楽に情報をキャッチしやすくなりますね。Upload By 発達ナビニュースこちらはアクセシビリティの機能ではなく、iPhoneやiPadのブラウザー、Safariの機能です。Webページを閲覧中に出てきたわからない言葉を選択して、「調べる」や「辞書」を選ぶと、言葉の意味をすぐに調べることができます。漢字が苦手な子でも、すぐに自分で調べることができるので、学習意欲も向上するかもしれません。Upload By 発達ナビニュースこちらもSafariの機能です。Webページには画像やバナーなどが多数挿入され、発達障害の特性がある人には、読みにくく写ることも考えられます。そんなときに使えるのがSafariの「リーダー」機能。この機能を使うと、テキストが整理されて表示されます。シンプルな画面で文字を読むことができるので、内容に集中することができます。Upload By 発達ナビニュース参加された先生方は実際にiPadを操作して、紹介された機能を試しながら熱心にメモを取られていました。学習サポートや支援に使える!参加した方の感想Upload By 発達ナビニュースワークショップに参加した小学校教諭の男性は、読み上げ機能が英語の学習に活用できそうと話してくれました。また、この先生の学校では、すでに1人1台のiPadが導入されているそうです。小学校で英語の授業が始まったこともあり、英語の発音などを教える際の大きな助けになるのではないかとおっしゃっていました。また、肢体に障害がある子どもや、知的障害がある子どものサポートをされている女性の方は、iPadなどを使うことで、子どもの積極性を引き出すことができると話してくださいました。たとえば、あるアプリの機能をカスタマイズして、ボタンをタップすると音楽が流れるようにすると、子どもたちは「もっとやりたい!」と強い興味と積極性を持ってくれると語ってくれました。ICT機器の活用で、発達障害の子どもたちの可能性が大きく広がる!Upload By 発達ナビニュースiPadやiPhoneをはじめとするさまざまなICTデバイスは、障害のある人の可能性をさらに広げることができます。たとえば、教科書や本を読むのが苦手だった子でも、今回紹介した機能を使って学習を進めたり、世界の最新情報を得たりすることもできるようになります。また、楽器を演奏できなくても、AppleのSkoogというデバイスを使えば簡単な手の動きで作曲をすることもできるそうです。 Skoog 2.0触知性ミュージックインターフェイス - Apple(日本)他にもAppleでは、普段から視覚に障害のある方のワークショップなどを行っており、今後もこういった取り組みを続けてゆくそうです。このようなアクセシビリティに配慮されたデバイスが増え、その使い方・有用性を伝える活動が続くことで、「障害のない社会」にまた一歩近づいてゆくのではないでしょうか。撮影: Junichi Takahashi
2017年04月21日こんにちは、ママライターの馬場じむこです。小学校までに発達障害と診断された子どもが中学校に進学する際、中学校側にどう伝えていくか悩む保護者の方は多いのではないでしょうか。積極的に話すことで、学校側に変に先入観を持たれてしまったらどうしようと心配する方もいらっしゃるでしょう。今回は、兵庫県尼崎市南武庫之荘で発達障害の6歳から18歳までのお子さんに学習支援を行う、放課後等デイサービス『みらい教室』を運営している平林景さんに“発達障害の子どもの保護者が中学校と連携をとっていく方法”についてお話を伺いました。●怠けているだらしない子と思われるのがいちばんNG『進学時、学校側に最初からレッテルを貼られたくないという気持ちになるのは分かります。専門家である臨床心理士や医師でも、最初から大げさに学校に言わないほうがいいとアドバイスする人もいるぐらいです。しかし、私は診断内容や困っていることを隠すことで、お子さんが悪意を持って怠けている、だらしない子と思われて、自己肯定感が傷つくような指導をされる方がデメリットが大きいと感じるので、診断内容や心配していることがあれば最初から学校側に伝えておいたほうが良い と思います。最近は、学校でも発達障害への理解が進んでいます。ちょっとした学校側の配慮で過ごしやすくなることも大きいですし、何よりもお子さんの理解者になる大人を一人でも増やすということで、お子さんや保護者の心の安定にもつながります』(平林さん)平林さんがおっしゃるとおり、発達障害について書かれている本でも、保護者が学校側に積極的に伝えるかどうかについては、意見は分かれていました。しかし、お子さんが苦手なことに対してツラい思いをしているのに、怠けや悪意を持った行動と誤解されて、人との信頼関係が損なわれることを考えると、最初から特性を知ってもらうほうが良いのではないかと感じます。●新学期になってすぐに校長先生も含めて話をする場を作る『では、いつ学校側に話をするかというと、できれば新学期に校長先生と担任の先生と一緒に話をする機会をもらえないか連絡しましょう。保護者から「校長先生も同席の上で」と申し出た場合、学校側は拒否できません。個人面談の季節を待つより、先に行動した方がよいです。この場合、校長先生にも同席してもらうことがとても重要 になります。なぜなら、学校での配慮の場合には校長先生の許可が必要なことがほとんどです。校長先生にわが子のことを早い段階から知ってもらっていると、配慮が必要な事態が生じたときに話が早いですし、もし、今後、学校になじめないといったことが生じて、日中にフリースクールといった外部機関を利用する場合も、出席扱いとする、内申になるべく不利にならないよう一筆書いてもらうのも、校長先生の判断によるところになるからです』(平林さん)新学期の学校が忙しそうなときに校長先生まで同席を申し出て面談となると、気が引ける保護者も多いと思います。しかし、校長先生に最初から直接話をすることでスムーズに決まることも多く、学校生活や今後の進学についての疑問があったら、その場ですぐ明確な回答をもらえるでしょう。ぜひ、多くの人にお子さんを知って、応援してもらおうという気持ちで臨んでください。----------早い段階から親が中学校と深く関わることで、先生方に理解を深めてもらって、子どもにとって充実した学校生活が送れるといいですね。【取材協力/平林景氏】『株式会社とっとリンク』代表取締役。兵庫県尼崎市南武庫之荘にて、発達障害の就学児童の学習支援を行う放課後等デイサービス『みらい教室』を運営。『学校法人三幸学園』に専門学校の教員として勤務し、その後、『東京未来大学こどもみらい園』副園長、『東京未来大学みらいフリースクール』副スクール長を兼務し、2017年1月に創業。・株式会社とっとリンク●ライター/馬場じむこ(書評ブロガー)●モデル/貴子(優くん、綾ちゃん)
2017年04月20日ノーマライゼーションとは出典 : ノーマライゼーションは、どの人にとっても「当たり前のことを当たり前に」を実現するために、社会の環境を整備していこうという考えです。そもそも、当たり前とはどういうことでしょうか。・基本的な人権が保障されている。・自分のできる範囲で、身のまわりのことをする。・自らの意志にもとづいて行動する。・個人としてアイデンティティを確立する。・一生を通じて一人の人間として成長する。「当たり前のことを当たり前に」というのは、これらのことを誰もが自然にできるようにということです。ノーマライゼーションの考えでは、障害があるかどうかや、その障害が軽度か重度かに関係なく、誰もが同じように上記のような権利や生活環境を享受できる社会が当然の姿だと考えられています。例えば、学校の入口に階段しかない場合、車椅子の子どもはほかの子が当たり前にしている通学ができません。でも、スロープがあれば車椅子で学校に入ることが当たり前にできます。ノーマライゼーションは、障害のない人が障害のある人を特別視するのではなく、障害のある人でも普通の生活を送れる環境を整えて、共に協力しながら生活していくことを目指しています。参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊ノーマライゼーションのよくある誤解出典 : ノーマライゼーションは、シンプルで誰にとっても理解しやすい考えですが、誤解を招きやすい考えでもあります。よくある誤解を解き、ノーマライゼーションを正しく理解しましょう。◇「ノーマライゼーションとは人間を“正常”にすること」ではないノーマライゼーションは、障害のある人の行動をなかば強制的に障害のない人に合わせるということではありません。ノーマライゼーションとは、障害のある人が社会で生活している多くの人と同様に多様性と選択性のある生活を送るためのものです。ノーマライゼーションでは、その社会の実現のために必要な支援は社会側がすべきだと考えられています。◇「ノーマライゼーションは特別な支援をなくすこと」ではないノーマライゼーションは、障害のある人が支援を受けずに生活できるようにするということではありません。例えば、目が悪くてもメガネやコンタクトなどの補助器具があるおかげで不自由なく生活できます。ノーマライゼーションは、障害のある人が不自由なく生活できる助けになる支援・サービスを推奨している考えです。◇「ノーマライゼーションは軽度な障害にのみ適用される考え」ではないノーマライゼーションの考えは、重度の障害を抱える人にも適用されます。ノーマライゼーションの原理は、重複障害者が当たり前のことをするためにはたくさんの支援が必要になると指摘しています。◇「ノーマライゼーションは完璧を目指すもの」ではないノーマライゼーションは、誰もが完璧に自立した生活を送れる社会を目指す考えではありません。一人ひとりの、障害や能力などに応じて最適な支援や環境を整えることを目指す考えです。参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊社会福祉の基本原理ノーマライゼーションの歴史出典 : ノーマライゼーションはデンマークで生まれました。ノーマライゼーションの誕生に偉大な功績を残した人物が、バンク・ミケルセンです。彼はデンマーク社会省で働きながら、1951年に結成された知的障害児親の会に共感します。知的障害児親の会は以下の3つのことをスローガンとして掲げていました。・1500人収容する大型施設を20~30人の小規模な施設にすること・社会から分離されていた施設を親や保護者の生活する地域に作ること・ほかの子どもと同じように教育を受ける機会を作ることミケルセンは、親たちの願いを象徴的に表現する言葉として「ノーマライゼーション」を採用しました。ミケルセンの活躍もあり、1959年に世界で初めて「ノーマライゼーション」という言葉が用いられた「知的障害者福祉法」がデンマークで制定されました。ノーマライゼーションは今日では、世界的に社会福祉の基本原理として広がっています。これに大きく貢献したのは、スウェーデンのベンクト・ニィリエです。彼が、普通の生活を測るものさしとしてノーマライゼーションの基本原理を明らかにし、英文にしたことで各国に広がりました。また、1981年の「国際障害者年」の制定もノーマライゼーションの理念が広がる大きなきっかけになりました。「国際障害者年」の制定は、国連が障害のある人々の問題を世界的な規模で取り上げ、啓蒙を行う世界最初の出来事でした。日本でノーマライゼーションが理解されはじめたのは1970年代ですが、「国際障害者年」の制定をきっかけに広く知られるようになりました。「国際障害者年」の制定は日本の社会福祉政策を後押しし、「障害者のすみよいまちづくり推進事業」や「障害者プランノーマライゼーション7か年戦略」が発表されました。「ノーマライゼーション7か年戦略」には、7つのガイドラインが盛り込まれましたが、その一つにバリアフリーの推進がありました。バリアフリーとは、障害のある人の社会参加や、自分らしく生活するときに妨げになる障壁をなくすことです。例えば、多くの駅でエレベーターやエスカレーターの設置が行われていることもバリアフリーの一つだということができます。バリアフリーの推進は障害のある人がノーマルな生活を送るために重要なことであり、2006年に制定された「バリアフリー新法」など現在でも継続的に行われています。参考書籍:野村 武夫/著『ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク』ミネルヴァ書房 (2004年)/刊参考: 厚生白書(昭和61年版)第1編 第2章 社会サービスの新たな展開ノーマライゼーションの基本原理出典 : ニィリエが提唱した、ノーマライゼーションの8つの基本原理を紹介します。ニィリエが基本原理を提唱した当時は、知的障害者は大型施設で生活し、社会から分離されることが当たり前とされる時代でした。そのため、ニィリエの提唱した基本原理には、大型施設に対して批判的な側面がありますが、ノーマライゼーションの基本原理は現在にも通じる点が多くあります。1. ノーマルな一日のリズムを送る1つ目の基本原理は、障害のある人でも、ない人と同じような一日の生活のリズムが送れるような環境をつくりだすべきという考えです。これは、例えば障害のある人も毎朝ベットから出て着替え、朝食を食べるのが好ましいということです。障害があるという理由で自分の意志に逆らって、不必要に家族よりはやく就寝したり、外出したりしないという社会ではなく、誰もが各々のリズムで生活できる社会を目指すのがノーマライゼーションの考え方です。2. ノーマルな一週間のリズムを送る多くの人は、平日は自宅や職場、学校など複数の場所で活動しています。週末は、さらに他の場所で余暇活動をすることも珍しくありません。施設で生活している人は、平日週末を問わず施設が活動場所の中心になっています。2つ目の基本原理は、障害があり施設に入所している人でも、地域社会におけるいくつかの異なるグループに所属し、日々の生活に刺激があることが自然という考え方です。3. ノーマルな一年のリズムを送るノーマルな一年には、季節の変化や、こどもの日やひなまつりなどの伝統行事、誕生日などさまざまなイベントがあります。3つ目の原理で大切なことは、障害があるかどうかでこれらのイベントに参加できるかどうかが決まってはいけないということです。これは、障害のある人が地域社会に関わっていく面でも大切な考え方です。4. 個人のライフサイクルを通してのノーマルな発達的経験をする機会を持つ誰しも、生まれてから幼児期、学童期、成人期、高齢期のライフサイクルを順に経験していきますが、障害のある人のライフサイクルは多くの人のライフサイクルとは異なっている場合があります。例えば、家族と一緒にいられる時間が極端に短い幼児期を過ごす子どももいます。そうではなくて、誰もが同じようなライフサイクルを経験できるようにしようというのが、4つ目の原理です。5. 障害者の選択や願い、要望ができる限り考慮され尊重される5つ目の原理は、本人自身の選択や希望はできる限り、尊重されるべきという考え方です。そのためには、考えていることや意見をうまく言葉で伝えることが困難な人に対しても、注意深く耳を傾け、その人の意志や要望を聞く必要があります。6. 男女が共に住む世界での生活を送る社会では、男性と女性が協力して生活しています。しかし、それらしい理由がないにも関わらず、男女が離れて生活している施設も少なくありません。6つ目の基本原理は、男女を不必要に分離するのではなく、協力しあえる環境を作るべきという考えです。7. ノーマルな経済水準を得る7つ目の基本原理は、障害のある人も、社会に参加して、基本的な経済活動を行えるようにするべきという考え方です。そのためには、児童手当や早期年金、住宅手当、年金、最低賃金などの経済支援が必要になることもあります。8. 設備が、障害のない人を対象とする施設と同じレベルのものである障害者を対象とする施設と一般市民を対象とする施設の設備のレベルが異なっていることがあります。例えば、一人あたりの居住空間を考えてみても、一般的な家のほうが、入居施設よりもプライベートな空間は広い傾向があります。このように、理由もなく障害の有無によって施設の環境にギャップがあるのは好ましくありません。障害者向けの施設をより一般的な施設に近づけていくべきであるというのが8つ目の基本原理です。ノーマライゼーションの8つの基本原理は、一見それぞれ言っていることがばらばらのようにも感じられますが、どれも障害のある人とない人の日常生活におけるギャップを埋めていこうという側面があります。参考書籍:ベンクト ニィリエ/著『再考・ノーマライゼーションの原理ーその広がりと現代的意味』現代書館 (2008年)/刊インクルーシブ教育って?ノーマライゼーションの教育分野での取り組み出典 : ノーマライゼーションが広がるにつれて、教育の現場にも変化がありました。もともと、障害のある人とない人を完全に分離して教育が行われていましたが、1981年の国際障害者年をきっかけに、分離教育を減らし、障害の有無にかかわらず同じ教室で授業を受けられるようにしようと考えられはじめました。しかし、みんなが同じ教室で授業を受けることを推し進めるあまり、子ども一人ひとりに必要な支援をすることができませんでした。この反省をもとに、「一人ひとり丁寧に」と「みんなで一緒に学ぶ」の両方を実現する新たな教育としてインクルーシブ教育が打ち出されました。特別支援学校、特別支援学級、通常学級など多様な教育の場を提供したり、子ども一人ひとりの困難さに応じた個別の配慮=合理的配慮によって、障害を気にせず勉強したり、生活したりできるようにすることが目指されています。ノーマライゼーションに基づく就労への取り組み出典 : ノーマライゼーションの理論では、障害のある人もない人と同様に就労を通じて、自己実現できるようにするべきだと考えられています。障害者の社会進出という点からも、少しずつ制度が整えられはじめました。厚生労働省は現在、障害のある人が障害のない人と同じように、その能力と適正にあった仕事をすることで、地域で自立して生活できるように、雇用対策を進めています。例えば、企業に障害者を雇うことを義務化したり、障害者雇用に積極的な企業に支援をしたりしています。障害者雇用対策|厚生労働省身近なノーマライゼーション商品などのユニバーサルデザインって?出典 : 身のまわりには、ノーマライゼーションの考えを含んだ製品や施設が数多くあります。ユニバーサルデザインと呼ばれている製品もその一つです。ユニバーサルデザインユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、たくさんの人々が利用しやすいように製品やサービス、環境をデザインする考え方です。例えば自動ドアは、特別な道具や動作をすることなく、子どもからお年寄り、車いすに乗っている人や両手に荷物を抱えた人など多くの人が利用することができるデザインになっており、ユニバーサルデザインの代表的な例であるといえます。他にも、カラーユニバーサルデザインやユニバーサルデザインフードという考え方もあります。◇カラーユニバーサルデザイン人間は、生まれつきの色の感じ方(色覚)に異なる特徴があります。また色覚は病気や老いによって変わることもあります。こうした人間の色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン(略称CUD)」と呼んでいます。◇ユニバーサルデザインフードユニバーサルデザインフードとは、日常の食事から介護食まで幅広く使うことができる、食べやすさに配慮した食品を言います。日本介護食品協議会はユニバーサルデザインフードについて自主規格を定めており、これに適合する食品のパッケージには、必ずマークが記載されています。◇教育でのユニバーサルデザインユニバーサルデザインな教育とは、障害のある子にとって「ないと困る」支援であり、どの子どもにも「あると便利」な支援を増やすことと言えます。例えば、落ち着いて授業が受けられるよう、黒板周りの装飾を最低限にしたり、学級内のルールを明文化して決めたり、それを目につくところに掲示したりすることなどが、ユニバーサルデザインを意識した教育の工夫として考えられます。◇家のなかのユニバーサルデザイン家族とともに暮らす家のなかのユニバーサルデザインは、障害のある人だけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんや小さな子どもにとっても住みやすい家になります。例えば、階段に丈夫な手すりをつけたり、洗面台の高さを工夫したり、開け閉めが楽な引き戸にしたりすることです。誰にとっても住みやすい住宅の推進のために、助成金を出したり、ノーマライゼーションの啓発のために広報誌「WITH LIFE ~共に生きる」を発行したりしている団体もあります。公益財団法人ノーマライゼーション住宅財団ユニバーサルデザインの製品やサービスが増えれば、障害のある人でもない人と同じように、社会で生活することができます。これは、まさにノーマライゼーションが目指している社会でもあります。まとめ出典 : ノーマライゼーションは、障害の有無を意識しなくても生活できる社会の実現を目指す考え方です。ノーマライゼーションは、今では世界共通の考え方になってきており、今後さらに広がっていくことが予想されます。日本でも、教育や就労において、少しずつノーマライゼーションの考えに基づいた対策が行われつつあります。身のまわりの製品のなかにも、一見ノーマライゼーションに関係がないように思われても、実はノーマライゼーションの考えに基づいている製品が見られるようになりました。ノーマライゼーションが目指す社会実現のために、ノーマライゼーションについて正しく理解したり、ユニバーサルデザインの商品を使ったりしていきましょう。
2017年04月19日えっ?あなたは宇宙人、ってこと?Upload By SAKURAいきなり何の話?突然繰り出されるマイワールド。広汎性発達障害のある娘との会話では日常茶飯事の光景です。ママにとっては、会話できるまで長い道のりも経験した娘と、こうしてお話しできること自体はとってもとっても嬉しいのですが。最近の悩みは、いきなり始まる話にいつもおいてきぼりをくらってポカーン……となってしまうこと。正直スルーしてしまうことも多々あるのですが、本人は全く気にしていないようです。ごめん、ママの思考回路は追いつかないっUpload By SAKURA油断していると、たまに巻き込まれて、別の世界に行ってしまいます(笑)
2017年04月19日反抗期ど真ん中!ナイフのような息子とまともに話すことなんて…Upload By かなしろにゃんこ。気性の荒いADHDがある息子。中2の頃は口を開けば反抗的で悪たれをついて、親の言うことはなに一つまともに聞いてはくれなかったです。荒くれ息子が、突然頭を下げて相談してきた!Upload By かなしろにゃんこ。あるとき、絵を教えてほしい、人物を描けるようになりたいと相談されました。絵を描く仕事をしている私は、息子の図工の作品を見て驚き!!まるで絵心がない!!息子は人間が描けません。それがコンプレックスになり人間の絵をなるべく描かずに避けてきたのです。息子のチャレンジ精神は嬉しいのですが、描けるようになるには時間がかかりそうだと感じました。正直、道のりは長く険しそうだ…。なんで突然「絵が描きたい」なの?Upload By かなしろにゃんこ。息子が、苦手なはずの「絵を描くこと」に挑戦しようと思ったきっかけは、同じクラスの女の子でした。我家は異性の話はオープンに交わす家庭なので好きな女の子の話を聞いてみると、どうもその女の子と重なり、好きなのかな?と思わせる話しぶりでした。マンガのキャラクターを描くのが上手な女の子のようで、その子と同じ趣味の話ができるように絵も上手になりたいと考え、できたら頭を下げたくない母親の私に相談してきたのでした。全身全霊かたむけて母の話を聞いてくれている…Upload By かなしろにゃんこ。絵の描き方を一から教えていきました。人間の体をバランスよく描くコツの話を「うん!うん!」と一生懸命聞いて覚えていきました。そして細かく指摘されながら直し直し、人間の絵を描けたときの息子は嬉しそうでした。「もっと早くお母さんに教わっておけばよかったな~」と言います。教えたって反抗して聞いてはくれないじゃないの!と内心思いますが…笑女の子がきっかけで息子の新たなライフワークが生まれた瞬間でした。着々と師弟関係築いています(笑)Upload By かなしろにゃんこ。それから絵にどっぷりハマっていった息子は、少しずつ絵の練習を積み重ねて、まぁまぁ描けるようになっていきました。たまに私に「こんなに描けるようになったぜ!」と自慢に見せにきますが、私は少しだけ褒めた後に体のバランスの悪い部分を細かく突っ込んで注意して赤ペンで添削をして返します。もっと上手になってほしいので厳しく言いたくなってしまうんです、これは親心でしょうね…。息子は自信があったのに私があまり褒めないので「そう言われると思った…」と悔しそうにします。母に宣言した将来の夢小学校のときの絵に比べたら上達したとは思いますが、息子が目指すところはもっと高いところでした。高校生のときに「漫画家になりたい」と言い出しました。私は反対しましたが、この4年間あまりコツコツ絵の練習する根気を見ていたら、この子がこんなに飽きないでやれるってことは、本物なのかしら?と思えてきました。4年後学校を卒業してもまだ絵を続けていたのなら漫画の構成や描き方を伝えていこうかな~と、反対ばかりせず応援しようかと考えています。風景画も練習中です。Upload By かなしろにゃんこ。
2017年04月18日全米のダウン症啓発活動から生まれた、「バディウォーク」ってどんなイベント?Upload By 発達ナビニュース4月22日に一般社団法人ヨコハマプロジェクトが主催するイベント「バディウォーク」が行われます。バディウォークとは、ダウン症を理解・受容(acceptance)し、共に生きる(inclusion)ことを促進するイベントで、全米ダウン症協会により1995年に「ダウン症啓発月間」の一環としてニューヨークで始められました。1マイルを歩きながら、ダウン症のある子ども達同士、親同士、一般市民が触れ合うチャリティイベントです。世界各地で開催されており、日本でも各地でそれぞれに特色のあるバディウォークが開催され、多くの方が参加しています。バディウォーク in ヨコハマが開催!Upload By 発達ナビニュース港都市として異文化交流の歴史を持ち、多様性の文化を育んできた横浜で、一緒に歩くことを通じ、相手の存在や能力を認め合えるような機会を作ってみたい。横浜のチャリティウォーク、バディウォークは、そうした思いから誕生したそうです。バディウォークのコンセプトは、「当日ウォークに参加したい人、気持ちで応援したい人などそれぞれの方が関わりたいと思うやり方で、気軽に、互いがつながれるイベント」とのことです。ウォーキングイベント以外にもお楽しみがもりだくさん!Upload By 発達ナビニュースまた、さわやかな潮風をあびながら山下公園内の歩道約1.2kmを歩くウォーキングイベント以外にも、当日はアクティビティやステージイベントも行われるとのこと。アクティビティでは、和太鼓体験・アート体験・ジャグリング体験・チアダンス体験・セラピードッグなど体験型・工作型のワークショップや、みんなで行う写真撮影、家族の思い出を写すファミリーフォト、その他にも多彩なアクティビティが楽しめます。ステージイベントでは、ジャズバンドや和太鼓・チアダンスなど様々なパフォーマンスが披露されます。みんなで盛り上がりましょう!主催者メッセージ主催者の方からは以下のコメントを頂いています。「『バディウォークinヨコハマ』には、全国各地から、多くのご家族がご参加されます。ともに楽しい時間をすごせるよう、メンバー一同、みなさまのご参加をお待ちしています。」(ヨコハマプロジェクト代表近藤寛子さん)赤ちゃんから大人まで、障害のある方もない方も一緒に歩き、一緒にワークショップを体験し、さまざまな方々とのふれあいをお楽しみ頂くのはいかがでしょうか。バディウォーク in ヨコハマ 開催概要Upload By 発達ナビニュース2017年4月22日(土)12:00~15:00(開場 11:30~)小雨決行山下公園(集合場所:おまつり広場)無料詳細は以下のウェブページをご覧ください。バディウォークinヨコハマ2017
2017年04月18日あまりにも不器用な息子。それが発達障害の診断へと繋がった出典 : 歳の息子には自閉症スペクトラム・ADHDの他に発達性協調運動障害の診断が下りています。幼い頃からとにかく不器用さの目立つ子で、少し歩けば物や壁にぶつかって転び、咄嗟に手をつくことが出来ずに顔面強打しては、一生消えないであろう傷をいくつも作ってきました。目にも障害があったため、見えにくさが転倒の原因だと思っていたのですが、成長とともに「おかしい」と思うことが増えていきました。・物を上手く掴むことができない・ご飯を食べていてもすぐにスプーンを落としてしまう・お絵描きをすると線がぶるぶると震える・幼稚園に入っても赤ちゃん用のブロックをはめることができない・ボタンをとめることができないこれは目の問題ではなく脳に障害があるのかも知れないと病院で検査をしてもらいましたが、特に問題はなしとの所見。ではこの不器用さはどこから来ているのか?お医者さまと話し合った結果、発達検査を受けることになったのです。その頃の私は発達障害についてほとんど知識はなく、不器用さが発達障害とリンクしているとは思ってもいませんでした。なので「わが子が発達障害かも知れないなんて!?」とかなりの衝撃を受けました。しかし一方で、「これで原因がわかるかも知れない…」とほっとしたのも事実です。こうして受けた検査によって、「発達性協調運動障害」の診断が息子に下されることになったのです。息子の「発達性協調運動障害」出典 : 発達性協調運動障害の症状は、「粗大運動」と「微細運動」に分類することができます。「粗大運動」とは、歩く・走る・姿勢を保持するなど、体全体を使った人間の基本的な運動「微細運動」とは、持つ・書く・摘まむ・ひねるなど、指先を使った緻密な運動息子の場合は、このどちらの症状も大きく出ていたことが原因で、日常生活を円滑に送ることができなかったのです。あのまま「努力すれば普通にできるはず」とやみくもに息子に訓練を強いる日々が続いていたら、おそらく今のように息子が笑顔を見せてくれることはなかったでしょう。息子自身のせいでもなければ、私の教え方のせいでもない。診断が下りて、育児のアプローチの仕方もずいぶん変わって来たように思います。椅子から消える息子を救ったお助けグッズ出典 : さて、そんな息子は食事中や勉強中に、突然椅子から落ちてしまうことが多々ありました。体幹が弱く、姿勢を保持するのが難しいため、ある瞬間に座っている椅子から身体ごと落ちてしまうのです。本人も「落ちそうだ」とは全く思っていないので、スプーンを持ったまま、あるいは鉛筆を持ったまま、ストンと床に落ちてしまうのです。「粗大運動」機能が上手く発達していないために、このようなことが起こるのですね。診断が下りる前は、大人用の椅子に子供用のクッションを固定して高さを合わせていたのですが、まず足を置く板がついている子供用の椅子に買い換えることにしました。それでもやはり、落下は止まりません。これを解決するには体幹を鍛える必要があるのですが、それを待っていてはいつか大怪我をしてしまいます。そこで、あれこれ探した結果、小学校への導入事例もあるという「ピントキッズ」というクッションを利用してみることにしました。ピントキッズは作業療法士によって監修された姿勢補助のためのクッションです。結論から言うと、この「ピントキッズ」の使用は大成功!お尻の部分がくぼんでいるので、姿勢を保持できない息子の体もしっかりと支えてくれるからだと思います。使い始めてから1年半になりますが、息子が家の中で私の視界から突然消えてしまう事はなくなりました。また、体幹を鍛えるために近くの体操教室に週に何度も通い、家の中で「遊びながら体幹を強くできれば」と、トランポリンやバランスボール、バランスクッションなどを用意しました。このようにいろいろな努力はしているのですが、まだ相変わらず歩けばぶつかり走れば転び、家の中で転倒しない日はありません。それでも少しずつ息子なりに進化しているはずだと、焦らず地道な努力を続けて行こうと思っています。ピントキッズ「文字を書く」ということの困難さに直面出典 : 幼稚園の頃に比べると、日常生活はなんとかスムーズに遅れるようになってきた息子ですが、ここに来て「文字を書く」という大きな壁にぶつかっています。鉛筆を持って机に向かっても、何度となく鉛筆が指から抜け落ちて床に転がってしまいます。椅子から下りて鉛筆を拾うという動作だけでも何分もかかってしまうので、なかなか「書く」という動作に入れません。ようやく書く作業に入っても、線が震え、なかなか読める字にならないのです。字の周りには、書き初めや書き終わりに指が震えて鉛筆が当たった細かな線が何本も入ってしまいます。医師からは、この症状が書字障害からなのか微細運動障害からなのかまだ診断できないとのことで、様子見をしています。ただ、息子は「小学校には行かない」という選択をしましたので、漢字の書き取りなどの宿題に苦労することはないと思います。また、ローマ字を覚えパソコンを使って文字を入力することは出来るようになったので、これからの時代は文字が書けなくてもなんとかなるんじゃないかと思う事もあります。しかし、息子自身に「書きたい」という欲求があるので、数年後には「人が読めるような字」を書けることを目標に、少しずつ思考錯誤しながら字の練習をしていこうと思っています。子どもの幸せについて、息子を見ていて思うこと出典 : 歳になった今でも、歩いている隣で「かかとを先に着けて、次がつま先だよ!かかと・つま先・かかと・つま先!その調子!」と声をかけなければ、簡単に転んでしまう息子。1人で歩くのは危険だからと歩きはじめてから5年間、息子の左手はいつも私の右手に繋がれていました。そのせいか、1人で歩く時は私と手を繋いでいた時と同じように左肩が上がったまま固まり、斜めの状態でしか歩くことができません。自分自身の体を思うように動かせないというのは、どんなにまどろっこしいことなんだろうと、息子を見ていて思います。なぜこんな説明を、なぜこんな訓練をしなければならないんだろう。人があっさりクリアできることに膨大な時間をかけなければならないこの子は、果たして幸せなのだろうか。障害について理解し、受け止めているつもりでも、時々そんな疑問が湧いてきます。ですが、子どもの幸せは、子ども自身が感じて決めることです。私達に今できることは、チャレンジできる環境を整えて、失敗しても「大丈夫だよ」と受け止めてあげること。そういった、安心できる居場所を作ることが大切なのかもしれないと考えています。
2017年04月18日自閉症の子どもと家族の成長を描いたマンガ『光とともに…』新装版が発売!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)皆さんは、『光とともに…』というマンガをご存知ですか?2001年から9年間に渡って連載され、自閉症のある少年、東(あずま)光(ひかる)くんとその家族の歩みを描いた漫画です。自閉症のある子どもに特有の症状と、それゆえに起こる日常生活上の困難や、家族の葛藤、周囲の人たちの偏見と理解、児童福祉サービスや学校での特別支援の様子などが、綿密な取材によってリアルに描かれたことが反響を呼び、これまで累計260万部が発行されています。マンガの原作ではなく、篠原涼子さん主演のテレビドラマ版でご覧になった方もおられるかもしれません。2004年の放映当時、私は実家暮らしの高校生でした。水曜日夜22時からの放送だったようで、晩ごはんを食べてから夜寝る前の時間に毎週テレビを眺めていた記憶がぼんやり残っています。主題歌の「万華鏡キラキラ」(RYTHEM)の切ないサビのメロディーだけは、今でもはっきりと脳内再生されるものですから、きっと何かの印象が私の心に残っているのでしょう。さて、そんな『光とともに…』ですが、著者の戸部けいこさんはご病気のため、物語の完結を迎えずして2010年にこの世を去られています。物語が完結したのは、2016年のこと。かつて連載を掲載していた雑誌「フォアミセス」の3月号において、戸部さんの同期で盟友の河崎芽衣さんがペンを入れた完全完結版が掲載されました。この完結編がきっかけで「初めて『光とともに…』を知った」という読者の声も多く寄せられたそうです。発売開始から15年以上の月日が経っていること、自閉症をはじめとする発達障害への認知・関心の高まりや、自閉症と診断される子どもが年々増えている現状を踏まえ、新たな母親世代に対して、改めて『光とともに…』を知ってもらうべく、これまでの単行本版よりもお求めやすい価格設定の新装版を発売されることとなりました。新装版『光とともに…~自閉症児を抱えて~』は、2017年4月1日の発売。光くんの誕生から幼少期を描いた「誕生・幼児編/保育園編」と「小学校低学年編」の2冊の同時刊行となります。ドラマ版主演の篠原涼子さんも帯に推薦メッセージを寄せる『光とともに…』新装版、私も改めて読んでみました。「お願い、"ママ"って呼んで!」願いむなしく、下された診断は…新装版の1巻目は「誕生・幼児編/保育園編」。光くんが生まれてから保育園を卒業するまでの日々が描かれます。東京都内のマンションに暮らす、東幸子(さちこ)さん。職場の憧れであった雅人(まさと)さんと結婚し、光くんを出産。喜びと幸せに満ち満ちた東家の日常から物語が始まります。光くんにはこの頃から抱っこを嫌がる、夜泣きがひどいといった様子が見られていたものの、最初はそこまで気にしていなかった幸子さん。ですが、久しぶりに集まった母親学級の友人たちの子は、我が子とは全く違う落ち着いた様子。わずかな不安を抱えながらも迎えた一歳半検診。おもちゃの音にも母親の呼びかけにも反応しない光くんの様子に、保健師さんが一言「この子、耳聞こえてませんよ」そんなはずはないと主張する幸子さんに、保健師さんは淡々と病院への紹介状を渡します。「よかったわね、早く障害が見つかって」Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)「光に障害があるなんて…」きっと何かの間違いだと祈りながら病院に向かった幸子さんを待ち受けていたのは、さらなる衝撃でした。「自閉症かもしれませんよ」自閉症は、先天的な脳の機能障害から起こると言われている発達障害の1種ですが、まだはっきりとした原因は解明されていません。耳ははっきり聞こえている。だけど、他人や物事への興味が独特で、発語やコミュニケーションにも遅れがある。そんな光くんの様子をみて自閉症の可能性を指摘する診察医。「光は普通の子よ。そのうち"ママ"って言ってくれるわ!」医師の説明を聞き、渡された資料を読み込んでみても受け止められない幸子さん。しかし……「なんとかしろよ自分の子供だろ」仕事一筋で家庭を顧みない夫「あなたのしつけが悪いのよ!」という姑からの叱責「光くん、一緒の幼稚園は無理じゃない?」何気ない友人の一言「誕生・幼児編」の前半では、周囲の理解を得られず孤立する幸子さんの心が克明に描かれます。もちろん、自閉症と言っても、その症状は十人十色で、『光とともに…』の光くんのような症状がすべての自閉症児に現れるわけではありません。また、保護者や周囲の人々の関わりも、家庭環境や地域の資源・文化によって様々でしょう。ですが、「発達障害かもしれません」と言われた時の、不安と戸惑い、拒絶と楽観の入り混じる親の心境や、自分が直面している現実を他者と分かち合えない孤独感は、似たような経験をしてきた人にとっては強く共感するところでしょうし、そうした経験がない人にとっても、自閉症児の親が抱える痛みを想像には十分すぎるエピソードかもしれません。この子は他の子とは違うかもしれない…それでもこの手のぬくもりが愛おしい胸が痛くなるような幕開けの「誕生・幼児編」ですが、それでも光くんとともに、幸子さんは一歩ずつ前へと進んでいきます。たった一人で全てを背負いこんでいた日々から、「困った時は頼ってくださいね」と声をかけてくれる療育センターの先生たちとの出会いや、同じく発達障害のある子どもたちやその親たちとのつながりが生まれていきました。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)互いを責め合い、一時は冷え切ってしまった夫の雅人さんとの関係も、とある出来事がきっかけで、再び共に手を取り合うように。もちろん、日常生活でのトラブルは決してゼロにはならず、園でも病院でもお出かけ先でも、いつだって油断のできない日々が続きます。それでも、もう幸子さんは一人ではありません。「うちの子は自閉症なんです」相手の目をはっきりと見て我が子の特性を説明をする幸子さん・雅人さんの姿勢には、「この子と共に生きていく」という、静かな覚悟が伝わってきます。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)他の子どもたちとは違うかもしれない。それでも、光くんは光くんとして、彼のままにまっすぐに成長してゆきます。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)目を合わせることも、"ママ"と呼んでくれることもない。それでもいい。この子はこの子なりの成長をしていく。そう信じながら、懸命に工夫と働きかけを続ける幸子さんと雅人さん。そしてついにある日…ここから先は、ぜひ書籍を直接手にとって確かめてみてください。新装版で発売された2巻は、「小学校低学年編」までの収録ですが、そこから先も、小学校・中学校と光くんの成長の日々は続きます。15年の時を経て再び刊行された『光とともに…』はじめての方も、懐かしい思い出とともに読み返す方も。きっと温かい気持ちになれる物語です。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)新装版 光とともに・・・~自閉症児を抱えて~Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)新装版 光とともに・・・~自閉症児を抱えて~●新装版「光とともに…~自閉症児を抱えて~」<誕生・幼児編/保育園編>●新装版「光とともに…~自閉症児を抱えて~」<小学校低学年編>4月14日(金)2冊同時発売定価:本体640円+税AC エレガンス新書判発行:秋田書店記事中画像全て: ©戸部けいこ・秋田書店
2017年04月17日保育園が「終わる」ことをどう伝えればいい?出典 : 発達障害の長男は、自閉症スペクトラム・ADHD、知的障害のハイブリッド。そんな長男が保育園年長さんだったころ、朝になると「今日は保育園おやすみ?」と私に聞くのが日課でした。私「今日は保育園行く日だよ」長男「ええ〜〜、じゃあ、明日はおやすみ?」私「お休みは、明日の明日の明日だね」そんな会話を毎日交わし、それでも行ってしまえば楽しく帰ってくる長男。集団生活は本人にとって負担ではあったかと思いますが、暖かい先生方やお友達に囲まれて穏やかな日々を過ごしていました。そんな園生活もあとわずかとなった3月、私は「保育園がもう終わること」「小学校が始まること」をいつ伝えれば良いかと、タイミングを見計らっていました。というのも、自閉症の子どもには「終わり」「区切り」をはっきりさせた方がいいということをよく聞いていたからです。確かに長男にも当てはまることがあり、「終わり」をはっきりさせることで安心する様子は日々の生活の中でよく見られます。年長の3月というこの時期には、療育の事業所であったり、行政の発達センターであったり、「終わり」になる場所がいくつかあります。それぞれの場所の先生たちも、「修了証などで目で見てわかるようにしましょうか」「きちんとさようならをした方がいいですよね」などど声をかけてくださり、長男がどう「終わり」を実感すれば次のステージへスムーズに移行できるかを親身に考えてくださいました。しかし、それで本当に長男がすっきりと終わりを認められるのか。最善の方法はなんなのか。そんなことを考える日々でした。そんな時に直面した、大好きなドラマの「終わり」出典 : いかにして「終わる」か…そんなことを考えていたある日のことです。長男が毎週楽しみにしていたドラマ「スーパーサラリーマン左江内氏」が最終回を迎えることとなりました。録画したハードディスクが火を噴きそうなほど繰り返して見ては、主役の「左江内氏」を真似て、伊達眼鏡をかけて家中を飛び回っていた長男。録画しているとはいえリアルタイムで見るために、早い時間からお風呂も済ませて毎週の放送を心待ちにしていました。スーパーサラリーマン左江内氏しかし最終回放送の日は違ったのです。「終」の漢字がわかる長男は、その日でドラマが終わってしまうことに気づいたようです。最終回の日はわざわざリビングのテレビを別のチャンネルに変えて、テレビのない寝室にこもってしまいました。そしてその日録画した「最終回」を長男はまだ一度も見ようとしません。そんな彼の様子を見て、長男も長男なりに「終わる」ということの寂しさや辛さを抱えているんだなと気づきました。わかりやすく「はい、おしまいです。」「次はこれです。」と、明示して安心させてあげることも大切ですが、「終わりたくない」「認められない」という気持ちもとっても大切な感情なはず。このことに気付いた私は、「終わり」をゆっくり自分で消化することも彼の成長なのだから、「終わりを明示する」ことだけが最善だと思うのはやめることにしました。卒園式の日、長男から思いがけない言葉が出典 : そして3月半ば、保育園の卒園式当日がやってきました。私たち両親のスーツ姿を見て、長男は何かを感じたようです。いままで毎日「保育園おやすみ?」と聞いていた長男は「保育園、終わりじゃない?」と心配そうに聞いてきました。自閉症の子どもは『別れが辛いのではなく単に毎日のルーティーンが変わることが恐怖なのだ』と、さも感情が無いかのように表現されることもあります。でもこの時私は、長男の、保育園との別れを予感して込み上げる「寂しさ」を確かに感じました。それと同時に、「左江内氏ロス」のこともあって彼に「終わり」を突き付ける気持ちにはなれませんでした。「今日は卒園式だけど、3月の終わりまでは保育園には行けるよ。」ぼんやりとした答えを伝えて、卒園式を終えました。ほどなくして迎えた保育園最後の日。最後の降園時にはたくさんの先生方が見送ってくださろうとしたのですが、そこでも何かを察した長男は「やめろ!!終わりじゃねえよ!!!」と玄関から猛ダッシュで走り去り、そのまま保育園生活に幕を閉じました。曖昧だっていい。大切なのは本人の「心地よさ」出典 : しっかりと「終わり」「区切り」を付けなかったけれど、また保育園に行きたいと言うのではないだろうか。4月からは小学校に通うということが受け入れられるのだろうか。そんな心配を抱きながら迎えた4月。小学校に入学した長男は思いの外すんなりと小学校に登校しはじめ、学校では会う人会う人に名前を聞き歩き、給食をモリモリ食べてやんちゃを働いているようです。振り返ってみると、これが彼なりの「終わり方」「始まり方」だったのかもしれません。もしかしたら心の中ではまだ「保育園」も「左江内氏」も終わっていないのかもしれないけれど、彼のペースでいつか消化できるだろうし、なんなら保育園へはまた顔を出しに行ったっていい。完全な終わりや線引きが無い、あいまいなままでいられる心地よさを求めたっていいのです。「ちゃんと終わってあげる」「区切りをつけてあげる」それだけが最善とは限らない。しっかりと子どもの心の動きを感じ取って、教科書通りではない子育てをしなければなとまた気付かされました。
2017年04月17日これ、おじいちゃんも知ってるお話なの?読んで読んで!Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子きっかけは離れて暮らす祖父母からのプレゼント娘が絵本が大好きです。小学校に入って文字が読めるようになってからは特に、色々なジャンルの本を読むようになっていきました。孫娘が本好きな事を知ったおじいちゃんおばあちゃんは、娘の誕生日に絵本を送ってきてくれました。特に今でも印象にのこっている本は『だるまちゃんとてんぐちゃん』です。祖父母が選んでくれた、どこか懐かしく茶目っ気があるこの本を娘はとても気に入り、何度も何度も読みました。たるまちゃんとてんぐちゃん(加古里子作・絵福音館書店)大好きになった「だるまちゃん」シリーズ!娘が気に入ったことを知り、祖父母はクリスマスには『だるまちゃんとかみなりちゃん』を、翌年の誕生日には『だるまちゃんとうさぎちゃん』をプレゼントしてくれました。だるまちゃんとかみなりちゃん(加古里子/作・絵福音館書店)だるまちゃんとうさぎちゃん(加古里子/作・絵福音館書店)おばあちゃんが押し入れから見つけてくれた宝物、それは…出典 : 大好きな祖父母の家に遊びに行った時の出来事です。くつろいであくびをしている娘に、おばあちゃんが家にあった一冊の古びた絵本を見せてくれました。それはだるまちゃんの絵本の作者、加古里子先生の『からすのパンやさん』でした。娘はすぐにからすの親子の楽しいお話に夢中になりました。その様子を見ていた主人が言いました。「あぁ、懐かしいいなぁ。この本まだとってあったんだ。」そう、それはパパも子供の頃に読んでいた本だったのです。私も子どもの頃読んだことがあったので、とっても懐かしく、それ以来親子の共通の話題になりました。からすのパンやさん(加古里子/作・絵偕成社)パパが読んでいた本がいっぱい!もうあの部屋は怖くないよ出典 : 祖父母の家の二階には他にも「おさるのジョージ」や「星の王子さま」や星座の物語など、主人が子供の頃に読んだ数多く本が残されていました。そのことを知った娘は、それまで怖くて全く行けなかった二階へ、自ら行くようになりました。そしてパパが子どもの頃大好きだった本が眠る部屋は、娘のお気に入りの場所になったのでした。娘にとっての「からすのパンやさん」の魅力とは…?出典 : 娘は高校生になった今でも本が大好きです。当時のことを娘に聞いてみました。私「加古里子先生の絵本の魅力はどんなところ?」娘「もちろんお話も面白いんだけど、細かな絵が面白いの。からすのパンやさんは、パンの種類だけじゃなくて、からす一羽一羽の表情とか動きとか凄く面白くて何度も見ちゃう。“ウォーリーをさがせ!”的な魅力もある!お母さんになって読み返して、はじめて感じたこと出典 : 実は娘と一緒に「からすのパンやさん」を読んだ時、私にとっても発見がありました。“子育ての苦労や子どもへの愛情がこんな風に自然に描かれていた本だったんだ!”と、とても驚いたのです。それは自分が子どもの頃に読んだ時には全く感じなかった気持ちでした。“子育てって意外と大変で楽しくて、ちょっと切なくて面白い”私達が子供の頃、私達の両親も恐らくこんな気持ちで読んでいたのでしょうね。娘が親になった時、娘もきっとこの気持ちに気が付くといいな、なんて思ったのでした。Upload By 荒木まち子
2017年04月16日成長実感する放課後デイサービス。あったかーい先生の個別支援計画この春、小学2年生に進級する長男キョウタ。幼稚園時代は発達支援センターを利用し、去年小学校に入ってからは、週に1~2回、放課後等デイサービス(6歳~18歳までの障害のあるお子さんや発達に特性のある子が、放課後や長期休暇に利用できる福祉サービス)を利用しています。時間的にも内容的にも学童保育と同じ感じですが、特別支援学校のお友達や、幼稚園時代に通っていた発達支援センターで一緒だった別小学校に入学したお友達など、色んなお友達とふれ合える特別感がプラスされた温かい空間です。福祉サービスということで、利用する際にモニタリングをしたり、個別支援計画書を作成してくれたりしてくれます。幼稚園時代の発達支援センターの先生が作成してくれた計画書は、長期目標は「様々な場面で落ち着いた行動がとれるようにする」短期目標は「自分の気持ちをうまく言葉で表現できるようにする」などでした。幼稚園では座ってられるけど場所が変わるとテンション上がって大騒ぎだったり、怒りスイッチが入るとパニックになったりひとりで端っこで1時間くらい拗ねてみたりしていた、感情や行動に波があったまだ多動性が強い長男に向けた目標でした。小学校は安心!と気を許してた母に、目の覚めるようなミッション届くキョウタも卒園する頃(6歳)には、だいぶ色んなことが安定してきて、大きな成長を見せてくれ、私も大きな心配はなく小学校に入学させることができました。成長して次のステップへ。さて放課後デイの先生はどんな目標を立ててくれるのかなぁと、支援計画書を見たんですが…(去年の4月の話です)Upload By ラム*カナUpload By ラム*カナ「短期目標」なので長男が達成しやすく長男の成功体験が積みやすい内容を設定してくれた先生の温かい意図を感じると同時に、普段下着がシャツから出ていても、麻痺して気付かなくなってしまった私を…反省したのでした。
2017年04月15日筋ジストロフィーとは?出典 : 筋ジストロフィーとは、遺伝子が変異することによって筋肉の性質が変わったり、壊れたりする疾患の総称で、国の指定難病の一つです。筋ジストロフィーが進行し筋力が低下すると、身体の各部分の運動機能に障害がみられるようになります。それによって日常生活に支障が出たり、他の病気との合併症がひき起こされたりします。この疾患と似ているものに、筋委縮性側策硬化症(ALS)という病気がありますが、筋ジストロフィーとALSでは、病気を引き起こしている場所に違いがあります。ALSは筋肉自体に原因があるのではなく、筋肉に指令を出す運動神経に原因があるとされています。一方で筋ジストロフィーは、筋肉の細胞自体の変異によって筋力の低下が起こるという違いがあり、2つの病気は区別されています。今回は筋ジストロフィーの原因や種類、診断方法や治療方法について、詳しくご紹介します。筋ジストロフィーの原因は?出典 : 筋ジストロフィーは遺伝や、遺伝子の突然変異によって発症します。原因となる遺伝子は多数発見されていて、それを責任遺伝子と呼びます。筋ジストロフィーを引き起こす遺伝子変異は、親から子へと遺伝する場合もありますし、親に筋ジストロフィーがなくても突然変異によって発症する場合もあります。遺伝形式は大きく分けて以下の3種類です。・X染色体連鎖・常染色体優性遺伝・常染色体劣性遺伝それぞれの遺伝の仕方にはどのような特徴があるのでしょうか。X染色体連鎖は、母親のX染色体のうち1つに原因遺伝子がある場合に、その遺伝子が男の子に引き継がれると発症するという遺伝形式です。原因となる遺伝子が女の子に引き継がれた場合は発症しません。常染色体優性遺伝は、ペアになっている遺伝子のうち一つに原因遺伝子があった場合に、それが子どもに受け継がれることで発症するという遺伝形式です。片方に原因遺伝子があると発症するため、親が原因遺伝子を持っているときは2分の1の確率で子どもに発症します。X遺伝子とY遺伝子の区別はないため、男女両方に遺伝の可能性があります。常染色体劣性遺伝は、1対の遺伝子の両方が原因遺伝子の場合に発症します。そのため、両親が原因となる遺伝子を持っている場合は4分の1の確率で子どもが発症します。この遺伝形式も上の常染色体優性遺伝と同じく、X遺伝子とY遺伝子の区別がないため、男女ともに遺伝の可能性があります。筋ジストロフィーはどのように発症するの?出典 : そもそも筋肉は、筋肉を構成する細胞によって構成されています。そしてその細胞を作っている要素の一つには、タンパク質があります。タンパク質は、決まった遺伝子の決まった配列によって作られているため、その遺伝子に何か異常があると、タンパク質の構成から、筋肉の構成にまで影響が出るのです。その結果、筋力が低下し、体の様々な機能に障害が現れる病気がこの筋ジストロフィーです。筋ジストロフィーの種類・特徴出典 : 筋ジストロフィーとひと口にいっても、その中にはデュシェンヌ型、ベッカー型、エメリー・ドレイフス型、福山型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋強直性、眼咽頭筋型など、多くの種類が存在します。そしてそれぞれの種類によって遺伝の仕方や、症状、進行の程度などが大きく異なります。ここでは代表的な筋ジストロフィーであるデュシェンヌ型、ベッカー型、エメリー・ドレイフス型、福山型先天性筋ジストロフィーの3つを取り上げ、その特徴をご紹介します。デュシェンヌ型(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、発症するのが男の子に限られている筋ジストロフィーです。ジストロフィン遺伝子変異により、筋繊維膜直下に存在するジストロフィンたんぱく質が欠損することで生じます。日本に生まれてくる男の子のうち約3500人に1人が発症するといわれています。歩き始めるのが遅かったり、階段を嫌がったりという特徴から病気に気づく場合もありますが、多くの場合は血液検査によってたまたま発見されるようです。発症した人の中には知的な遅れが見られることもあり、場合によっては自閉傾向を示すこともあるようです。参考:日本神経学会「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン」デュシェンヌ型と同じく、ベッカー型(Becker mudclar dystrophy:BMD)の筋ジストロフィーも男の子のみに発症し、DMD遺伝子に変異が生じる疾患です。症状はデュシェンヌ型に似ているものの、成人を過ぎても歩行が可能であるなど比較的軽い症状が多いのが特徴です。中には運動をするときの筋肉痛が唯一の症状というケースもあるようです。出典:日本神経学会「未成年で発症する疾患」福山型(Fukuyama type congenital muscular dystrophy: FCMD)筋ジストロフィーは先天性の疾患で、日本に生まれてくる全ての子どものうち1万人に1人が発症するとされています。この福山型に関しては常染色体劣性遺伝という遺伝形式から男の子女の子問わず発症する可能性があります。出典: 日本筋ジストロフィー協会東京支部「先天性筋ジストロフィー研究の進歩」福山型の筋ジストロフィー患者さんには知的な遅れを伴っている人が多くいると言われています。しかしその程度には個人差があり、単語を複数つなげた言葉を話す人もいれば、普通の会話ができる人もいます。また、約半数の人にけいれんの症状がみられることもこの福山型の特徴です。公益財団法人精神・神経科学振興財団「福山型筋ジストロフィーの子育て」エメリー・ドレイフス型((Emery-Dreifuss:EDMD)もしくはエメリー・ドレイフェス型)筋ジストロフィーは、関節拘縮、humero-peroneal 型の筋萎縮、心伝導障害など、心筋症が起こる筋ジストロフィーです。心筋症が軽微な場合は発見が遅れる場合があります。遺伝子検査によって早期に診断し、必要に応じて心臓ペースメーカなどを導入します。参考:発症 42 年後に Emery-Dreifuss 型筋ジストロフィーと診断され両室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy defibrillator; CRT-D)挿入となった 1 例筋ジストロフィーの診断方法出典 : 生後1歳未満に発症する筋ジストロフィーは先天性筋ジストロフィーと呼ばれています。親御さんが子ども低緊張の症状がみられる、歩きだすのが遅い、転ぶことが多いなど、複数の要素に気付いた場合に先天性筋ジストロフィーを疑って病院に行くことが多いようです。病院では採血・筋電図・DNAテスト(デュシェンヌ型やベッカー型の診断)・筋生検等を実施して筋ジストロフィーがあるかを調べます。筋ジストロフィーを診断できる病院は、現在全国に60ヶ所以上あります。また、もし専門病院が近くにない場合でも、神経内科において診療が可能です。筋ジストロフィーが診断可能な病院はこちらで見ることができます。日本筋ジストロフィー協会「協会で紹介する筋ジストロフィー(筋萎縮症)の専門病院」参考:「福山型先天性筋ジストロフィーの粗大運動機能と年齢の関係について」参考:一般社団法人日本筋ジストロフィー協会筋ジストロフィーの診断には、以下のような検査が用いられます。血液検査筋ジストロフィーの検査ではまず、血液検査が使用されます。血液検査では、「血清クレアチンキナーゼ」という値が見られ、この値が高い場合、筋細胞が壊れている可能性が考えられるため、筋ジストロフィーの診断に使用されています。遺伝子解析筋ジストロフィーは、遺伝子の異常によってひき起こされます。そのため、血液中の遺伝子を調べる遺伝子解析は、自分や自分の家族が筋ジストロフィーを発症する/している可能性を調べるのに有効です。また、筋ジストロフィーだと分かった場合は、その種類についての判別もすることができます。筋生検筋生検とは、筋肉の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。この検査は、症状の原因が筋肉にあるのか、神経にあるのかの判断に役立ちます。同時に筋肉に原因があるとしたら筋肉中のどこに原因があるのかを調べることができます。この検査には痛みが伴うため、局所麻酔が使用される場合が多いです。他にも筋ジストロフィーの診断には、症状の原因を探る筋電図検査や、筋肉の状態を見る筋肉CT等、さまざまな検査が使用されます。筋ジストロフィーと出生前診断出典 : 筋ジストロフィーの中には、出生前診断で確認できるものがあります。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合では、遺伝子の変異があらかじめ分かっている状態(保因者)においてのみ、検査を受けることが可能です。また着床前診断も認可されており、受精卵の状態で検査をすることが認められていますが、100%の確率で確定診断することはできません。また、出生前診断は、命の選択にも関わる大きな問題です。医師だけでなく遺伝カウンセラーなどセカンドオピニオンからも十分な情報を得ること、また診断をするしないについても家族と話し合いを重ねていくことが欠かせません。日本神経学会「未成年で発症する疾患」筋ジストロフィーの治療方法出典 : 筋ジストロフィーの完全な治療方法は、今も研究途中にあります。しかし、筋ジストロフィーを発症した人がよりよい生活をしていくための方法は、次々と開発されてきています。今回はそれらの治療方法のうち2つをご紹介します。デュシェンヌ型の筋ジストロフィーには、ステロイド(プレドニゾロン、プレドニゾン)という薬が有効であることが分かっています。この薬には筋力の低下が始まってから筋力や筋能力を改善させる効果があると言われています。出典:日本薬局方 プレドニゾロン錠出典:日本神経学会「ステロイド治療」ステロイド治療は、筋力低下が著しくなった時から歩行が不可能になるまでの期間において行うのが一般的ですが、処方を始める時期や、終了する時期については、明確には定められていません。歩行が難しくなったあとでも効果を示すという実例があることからも、患者の方や家族の方の希望を考慮して治療を続けることも可能なようです。しかし歩行期間の延長という効果を発揮する一方で、高血圧や血糖値の上昇、体重増加などの副作用がみられることもあります。日本小児神経学会「筋ジストロフィーのステロイド治療について」もう一つは、リハビリテーションです。リハビリテーションには、関節が拘縮したり、変形したりしてしまうのを予防するものや、転んだり事故を起こしたりするのを予防するもの、また車いす等を使って生活をするための訓練や、肺や胸の動く範囲を保つ呼吸のリハビリテーション等があります。そのほかにも、呼吸不全に対する人工呼吸法、心不全に対する薬物治療等もあり、最近ではデュシェンヌ型の筋ジストロフィー治療に対する遺伝子治療も研究されています。医療の発達と共に、より効果的な治療が可能になってきていると言えるでしょう。筋ジストロフィーに知的障害は合併するの?出典 : 筋ジストロフィーの中のいくつかの種類には、知的障害が見られることがあります。例えば、デュシェンヌ型では、軽度から重度の知的障害が見られることがあります。また、先天性筋ジストロフィーの福山型には、比較的重度の知的障害を伴うことが多いことが分かっています。知的障害の程度や困りごとは人によってさまざまです。お子さんが筋ジストロフィーを発症した場合は、学校の先生や医師と相談しながら、本人が快適に学習できる環境を整えていくことが大切でしょう。筋ジストロフィー患者のための医療・福祉制度出典 : 筋ジストロフィーが発症した場合、治療には多大な費用がかかります。その際に役に立つのが医療費の助成です。・指定難病医療費助成制度筋ジストロフィーは国の定める指定難病です。そのため、筋ジストロフィーであることを申請し、特定医療費(指定難病)受給者証が交付されれば、指定難病に対する支援を受けることができます。・小児慢性特定疾病医療費助成制度18歳未満の児童を対象にした医療費助成制度として、国によって定められた疾患に対して医療費が助成されます。平成29年4月1日から722疾病が認定されています。各型の筋ジストロフィーのうち7つの型の筋ジストロフィーが対象になっています。(以下、出典をご参照ください。)出典:小児慢性特定疾病情報センター・自立支援医療(育成医療・更生医療)身体に障害を抱えており、その症状が手術等の治療によって確実に改善されるという見込みがある場合に、医療費の自己負担額が補助されます。筋ジストロフィーがある人の身体介護サービスなどに適用されています。・高額療養費の助成高額療養費は、医療機関で払った額が1ヶ月間で一定額を超えていた場合、超過分の金額が支払われるというものです。年齢や所得によっても支給額が変動します。筋ジストロフィーがある人の入院や手術などに適応されます。厚生労働省患者の自立:筋ジストロフィー患者の事例から知っておきたい公費負担医療制度筋ジストロフィーの患者には医療費の助成だけではなく、手当や貸し付け等も充実しています。・障害基礎年金国民年金に加入している間に初めて医師の診療を受けており、障害等級1、2級の状態にある場合に支給されます。平成29年4月現在、1級は年額97万4125円(77万9300円×1.25)、2級は77万9300円となっています。・特別児童扶養手当精神または身体に障害のある子どもを家庭において育てている方に支給される手当です。支給額は障害等級が1級の子どもに対して月5万1450円、2級の場合3万4270円となっています。(平成29年4月現在)所得に関する条件があるため、注意が必要です。障害基礎年金厚生労働省:特別児童扶養手当についてこれらの他にも、障害児福祉手当や障害児・者扶養救済制度、特別支援教育修学奨励費の支給等様々な手当があります。ご本人のご家庭の状況や症状の状態に合わせて、上手く利用していくとよいでしょう。また筋ジストロフィーの患者を支援するものの中には、金銭面での支援だけではなく、日常生活用具の貸出や給付をするもの、日常生活の介助のサービス、各種割引の制度などもあります。さまざまなサービスを上手く使いながら、より負担の少ない生活を送りましょう。まとめ出典 : 筋ジストロフィーは、その種類から症状、治療法に至るまでさまざまな病気です。根本的に病気を治す方法は今も研究途中ですが、医療やテクノロジーの発達、また手当などの制定によって、患者さんを支える幅広い選択肢とサポートはさらに広がってきています。リハビリや薬物療法など専門家の協力を得ながら、多岐にわたる課題を日常生活を通じて少しでも緩和できるよう、取り組んでいけるとよいですね。参考:日本筋ジストロフィー協会参考:難病情報センター参考文献:宮本信也/著、竹田一則/編『障害理解のための医学・生理学』2010年明石書店/刊参考文献:河原仁志/編著『筋ジストロフィーってなあに?』2008年診断と治療社/刊
2017年04月14日一人の大人として扱われるのが大学です出典 : 高校までは、子どもたちは生徒という立場で先生たちに守られて過ごします。問題があれば担任の先生が中心となって、解決の糸口を探してくれることもあります。ですが、大学に入学すると、世話を焼いたり勉強のやり方を指導する先生は基本的にいません。課目によってはクラスはあるけれど、「ここが私のクラスだ」と毎日通うクラスは存在しません。大学は学生を一人の大人として扱います。高校までのようにいちいち管理されない分、大人としての責任を求められます。それはとても開放的で自由な環境ですが、型にはまるのが得意ともいえるアスペルガー症候群の人には、なじむまでが大変かもしれません。大学という新しい環境に飛び込んだアスペルガーと注意欠陥症を持つ私が、どんなことにつまづいたのか、そして何を得たかを書いていきたいと思います。最初は友達をどう作っていいかわからず…。出典 : 晴れて大学に入学したものの、私には話し相手が一人もいませんでした。学科の人数は約400人。授業も語学以外は大教室で行われます。周りを見ると笑顔で会話しているグループもいるのに、私はどうやって友達を作ればいいのかわかりませんでした。そのことを気にするあまり一時は「この大学は合わないから入試を受け直して別の大学に行こうか」と思ったほどです。でも、しばらくすると語学で一緒になった子と話すようになり、一緒にクラブ見学に行くことになりました。そのクラブ見学で、強いインパクトを受けたのが軽音楽部でした。軽音楽部の部室の前に机とイスがあって、そこに座るアフロヘアの先輩が「ああ、入部希望?」と言ったのを鮮明に覚えています。部室の中にいる先輩たちはなんというか個性が強烈で、「何て自由な人たちなんだ」と私は心底びっくりしました。結局私はその軽音楽部に入部することになりました。最初はどうふるまっていいのかわからず小さくなっていましたが、先輩たちに「バンド一緒に組もうよ」と誘われてからはどんどんなじんでいくように。バンドをやろうという人たちはけっこうアクが強い人が多いのですが、それでも堂々と過ごしている姿に「ああ、変わっていてもいいんだな」とホッとしたのを覚えています。大学というところは、基本的にサークルやクラブ単位で人間関係が深められていく傾向があります。なので適当に顔を出しておけばいいようなサークルでもいいので、どこかのクラブ・サークルに所属することを私は強くおすすめします。ちなみに、そういうところで知り合った先輩は、「楽勝で単位をとれる講義」「出席が甘い先生」などを教えてくれたりもします。学業に励むのもいいけれど、そういう情報も知っていて損はありませんよね。初めて気づいた、自分のコミュニケーションの特徴出典 : 私は大学に入るまで、私は基本的に誰かと群れるということが苦手でした。また当時の私は、難しい言葉を多用するしゃべり方をしたり、本音をオブラートに包まず相手に投げつけたりしていました。さらに、きつく聞こえる方言が、それに拍車をかけていたのです。ある日、そんな私にクラブの先輩が言いました。「ヨーコちゃん、あなたのしゃべり方って怖い」「偉そうに聞こえるし、怒っているようにも見える」「もっとしゃべり方を直した方がいいよ」はっとしました。そのとき初めて、自分の話し方とまわりの人の話し方の違いに気付いたのです。みんなの話し方はトーンが優しく、相手に非があってもいったん受け入れて「だけど自分はこう思うよ」と相手を傷つけないように気遣っていたのです。私は初めてそのことに気づくことができました。また、そのことを私に伝える時にも、先輩は攻撃的な態度ではなく、本音で心配な気持ちを伝えてくれました。私にはそれがうれしく、素直に「そうか、そう思われるようなしゃべり方だったんだな」と納得し、みんなが不快にならないようなしゃべり方を身につけようと思いました。そこで私は、周りの人たちがしゃべっている様子をよく聞いて真似することから始めました。自分の方言を封印することはありませんでしたが、きつい言葉は別の言葉に言い換えました。相手より優位に立とうとする態度もやめるように心がけていったのです。すると周りの人の態度も変わってきて、先輩たちも「ずいぶんマイルドになったね」とほめてくれるように。どんどん肩の力を抜いて過ごせるようになり、大学で過ごすのがますます楽しくなりました。「できない=バカにされる」だと思っていた私を変えた出来事出典 : 私の親は大学教授でした。言いふらすつもりはありませんでしたが、聞かれたら正直に答えていたので知る人は昔から多かったです。ですが親の立派な職業が肩にのしかかり、「できる子じゃなくちゃいけない」と思い詰めていたように思います。高校までは人に弱いところを見せると負けだと思っていましたし、無駄にプライドが高く人より劣っているということは認めることができませんでした。もともと負けず嫌いということもありましたが、勉強ができないと「親は大学教授なのに…」と周りの人や学校の先生から心ない言葉を投げつけられましたし、もちろん親にも「どうしてこんなにバカなんだ」といわれてきました。そのせいで同級生にも「本当は勉強が分からなくて困っているけど、知られたらバカにされる」と思って虚勢を張り続けていました。ところが、大学の語学の授業でのことです。マルクス(Marx)を「マークス」と読み違えた私にクラス中が爆笑し、「ヨーコちゃんがいるからこの授業は癒しの時間になるわ」と言われたのです。そして、あまりに英語ができない私のことをクラスの人はかわいがってくれ、いろいろと助けてくれました。年度の終わりが近くになると、先生も私が単位を落とさないように気を遣って、こんなことを言ってくれました。「君はお父さんが大学教授らしいね。もう、お父さんに頼んでこの問題を日本語に訳してもらってきなさい。そうじゃないと単位があげられないんだよ。」勉強はできない私でしたが、先生やクラスのみんなは、私を愛してくれました。それはおそらく、めちゃくちゃな読み方で大爆笑されても、必死に読み続けたこと、まじめに講義を受けて頑張っているのにどうしてもできない事実がみんなに理解されたこと、親の職業を知っていてもヨーコはヨーコとみんなが見てくれたことがあったからだと思うのです。できないからといって誰のこともバカにしない。できないのなら助けてあげる。そういう空気が教室にあふれていて、ハリネズミみたいになっていた私の心を溶かしてくれました。私はそれまで「できない=バカにされる」だと思っていました。しかし、必ずしもそうではなく、努力する姿を愛してくれる人もいるということをこの時学んだのです。この経験があったからこそ、この先の辛い社会人生活でも人として腐らずに生きてこれたのだと思っています。大学生活を振り返って出典 : 大学生活がスタートした時は、友達の作り方がわからず、大学をやめようかとも思った私ですが、人との関わり方が未熟だったことに気づくことができ、自分の態度を改めることができました。さらには、今でも付き合いのある一生モノの友人を得ることができ、「できない」ということで、必ずしもバカにされるわけではないということを学ぶことができました。ただ、すべてがうまくいったわけではありません。4年で卒業するための授業の選択がうまくできなかったり、就職活動のタイミングや方法が分からなかったり、課題もあった大学生活でした。それでも、主にクラブの仲間のおかげで、大学生活は私にとって一生忘れられない楽しいひとときとなりました。大人同士の付き合いができて、打算も何もない関係の中で友人を作ることができるのは大学ならではです。発達障害の私にとって、「相手が大人になっている」ということは何よりも助かるポイントでした。また、最近では発達障害の学生を支援してくれる大学も増えています。あらかじめそういう支援の充実した大学を調べて、支援を受けながらキャンパスライフを過ごすのもいい方法だと思います。高校までとは違い、大学から広がる世界はとても広いです。大学に行きたいと願う人にはぜひあの自由な世界を味わってほしいなと思います。発達障害学生への就学支援方法について(富山大学)ガクプロ発達障害のある大学生支援プログラム「働くチカラPROJECT」
2017年04月14日息子のことをよく考えてくれる先生だったけど…Upload By モビゾウ発達障害のある息子は、苦手なことや、頑張ってもできないことがたくさんあります。また、聴覚や触覚などに過敏性があるため、教育の現場にいる先生方にはある程度の支援や配慮をお願いしなければなりません。ところが、一生懸命息子のことを考えてくださる先生が様々な支援や配慮をしてくれているにも関わらず、息子が激しい癇癪(かんしゃく)を起こしてばかりだった時期があります。私は、何かが息子のストレスになっているのだと感じてはいたものの、あの先生に支援して頂いているのだから…と思い、いろいろ詮索せずにいました。けれども、一生懸命息子を支援してくださる先生には、こんなセリフが多いことに気付いたのです。先生なりによく考えた結果の支援・配慮。でも…Upload By モビゾウ「たぶん、息子くんはこういうことはできませんよね」「大丈夫です、配慮します」「息子くんにはやらせないようにしますから、大丈夫ですよ!」この先生が「支援」や「配慮」をしてくださるたびに、息子の癇癪は増えていきました。「どうせ僕なんかダメなんだーーー」「どうせ僕はできないからもういい!!」この時期、何か行事があるたびに息子は酷く荒れました。行事では、負担にならないようにと、息子は常に端っこのほうに寄せられていました。光を当ててもらえる他のお友達に比べて、なぜ自分はいつも「たぶんできないから」と端っこに寄せられてしまうのか…。そういった扱いを受けるたびに、息子の自尊心はひどく傷つけられてきたようでした。そんなときの担任変更。だけど私は正直不安な気持ちに出典 : ある時期から別の先生が担任になることになりました。その先生に息子が発達障害であることを相談すると、「大丈夫、息子くんは能力があるから。からまった糸をほぐしてあげれば、必ずできる子だから」とおっしゃられていました。この言葉を聞いた時、正直私は不安になりました。息子を他の子どもたちと全く同列に扱って、負担をかけてしまうのではないかと思ったのです。けれどもそんな私の心配をよそに、その先生が担任になってから息子の態度はガラリと変わりました。他の先生の「支援」に触れてUpload By モビゾウその先生は、息子が苦手としていることに対して常に「こうしたらできるかもしれないよ」とヒントを与えてくださる方でした。息子もそのヒントをもとにやってみたら、できないと思っていたことができたり…ということが何度もあったようです。そして必ず、「大丈夫、君は出来る子だよ」と息子の能力を信じる言葉をかけてくださいました。あんなに「僕は出来ない子だ」と癇癪ばかり起こしていた息子が、行事のたびに「こんなことができるようになった」「こんなことが楽しかった」と話してくれるようになりました。毎日息子を見ている私にとって、その変化は目覚ましいもので、驚きを隠せませんでした。Upload By モビゾウそして最後の発表会。以前は端役をあてがわれてきた息子が主役を演じる姿がありました。舞台からは「僕は出来ない子なんかじゃない」という息子の言葉が聞こえてきそうでした。本当に必要な「支援」や「配慮」ってなんだろう?出典 : 息子の変化を見て分かったこと。それは、「支援」や「配慮」というのは「出来ないことをさせない」ということではないということです。「どうせ出来ないから」と言って苦手なことを免除してしまうのは、その子にとっての自信には決して繋がりません。「支援」や「配慮」とは、他の子とはちょっと違う教え方やお手伝いをすることで、発達障害児にとって難しいことを、少しでも楽に出来るようにしてあげることだと思います。「あ、なんだ、こうすれば少し楽にできる」と発見したとき、それが初めて子どもにとって「できた!」という自信に繋がっていくのだと感じています。
2017年04月13日親子の楽しいおしゃべりタイム、のはずが…マイペースな広汎性発達障害の娘。ママとのおしゃべりも、しゃべり出すまで…内容に入るまで……。もともと結構ゆっくりです。娘に「あのね~」と話しかけられれば、私もちゃんと振り返ってから、「お姉ちゃんお話しなになに~?」と耳を傾けるものの、最近ではいっつも食い込み気味に、息子が私に代わって返事をしています(笑)。Upload By SAKURAかわいー弟くん。ただお世話がしたいだけなのにっ。世話好きで、自分なりに何かと気をつかってくれる娘。いつも家族のことを心配してくれます。「赤ちゃんのお世話がしたい!」と張り切っているようで、お姉ちゃんなりにあの手この手で楽しませようとするのですが、弟にはいつも、一方的にやられっぱなし…(笑)悪気ないのはわかるけど、その予想外のいたずらに、ちょっとリアクション大きめでたじろいでいます。Upload By SAKURAUpload By SAKURAでも、なんだかんだで…相思相愛みたい♥Upload By SAKURA息子が産まれる前は、果たして特性のあるお姉ちゃんと…きょうだい仲良くできるかな、と心配していましたが、今のところ二人は相思相愛。なんだかんだ、相性は良いようです。息子の成長と共に、お姉ちゃんの優しさも日々育まれているように感じています。いつまでも仲良く、共に成長していって欲しいな、と願う母なのでした。
2017年04月12日今まで普通に育ってきたのに、ちょっと最近変だな1歳ごろまでは順調に成長していた長男。ただ、言葉が出ないことには、少し心配していました。それだけではなく行動面でも不思議なことをするので、なんだろう、ちょっと変な子だなと思っていました。Upload By ぽんぽん寝ないでネットを調べましたこんな不思議な事する子いるのかな?と思いネットで調べてみると出てきたのはUpload By ぽんぽんUpload By ぽんぽん出てきたのは自閉症の文字。すごく不安になり、そこから何時間も寝ずに自閉症・発達障害の特徴を調べ、長男の行動と照らし合わせました。激しさを増すパニックやこだわりを目の前にしても、立ちつくすしかなかった2歳頃から長男の癇癪やこだわりが強くなりUpload By ぽんぽんUpload By ぽんぽんUpload By ぽんぽん夫は普段仕事で家にいないため、このパニック泣きや、日に何度も繰り返される癇癪をほとんど見たことがありませんでした。そのため、夫に相談してもUpload By ぽんぽんと言われるだけ。1歳半健診、2歳児健診と心理士に相談したものの問題ないと言われていたため、これ以上役所に同じ内容の相談をしていいものか分からず実家も遠く、同じような悩みを持っている友人・知人もいない状況で、誰にも相談できず、1人でどうしたら良いのかと悩んでいました。Upload By ぽんぽんこの先どうなるのかわからない、先の見えない漠然とした不安に押しつぶされそうになりました。息子の特性を、前向きに捉えられるようになったきっかけは…周りに相談することはできませんでしたが、ネットで検索すると同じような悩みを抱える人がたくさん出てきました。そんな中見つけたのが発達障害の診断を受けた子とその家族の日々を綴ったブログでした。Upload By ぽんぽん息子と似たような特性を持つ子どもが、成長するとどのような生活を送ることができるのかを想像することができ、不安な気持ちが軽くなりました。もちろん、ブログでは描かれていない大変さや苦労、努力もあるでしょう。それでも家族みんなが明るく、子供の個性を受け入れて、笑いながら過ごすその様子に感動さえしました。白か黒かじゃないし、白でも黒でもいいとても短い期間に、すごくすごく悩みました。毎日大変な思いをして、悩みに悩んであれこれ調べて落ち込んで。それでも長男と過ごす時間は幸せで楽しく、かけがえのない大切な我が子であることに変わりないと気付くのです。Upload By ぽんぽん
2017年04月10日支援級って、実際どうなの?出典 : 「支援級って、実際どうなの?」「どんな雰囲気で、何をやってるところなの?」…と、特別支援学級という「未知の世界」が気になっているお母さんも多いかと思います。うちの長男は、発達障害に気づかずに通常学級で入学し、4年生まで過ごしました。そして、5年生になった時、自分の意思で支援級に転籍。さらに今年の4月からは、また通常級に戻る予定でいます。今まで繰り返しお伝えして来た通り、本当に支援級を巡る状況は千差万別です。これは「あくまで一例」ではありますが、長男と私が経験した「うちの」支援級ルポを、楽々かあさんこと、大場美鈴がお伝えします。うちの支援級の1日の流れ出典 : まず、朝の風景から。うちの支援級の登下校は、お母さんが付き添って歩いたり、車で送り迎えをしていたりする場合が多いです。我が家では、行けるときは登校班で歩いてゆき、不安定な時期や、行事などで心身の負担が大きな時期は、車で送って行きます。うちの学校の支援級は2クラス。身体・知的障害のあるお子さんのクラス(以下、A組)と、長男が在籍していた、主に発達障害の傾向のあるお子さんが中心となる、情緒クラス(以下、B組)に分かれています。通常級の出席番号とは違い、支援級のそれぞれの子には「専用カラー」が決められています。下駄箱やロッカーには、名前と共に、その子カラーのテープが貼られて目印になっているのです。そこに靴を入れて、クラスに向かいます。うちの支援級は、一階の保健室近くに配置されていて、普通級とはやや離れています。逆に、職員室、1年生のクラスとは同じフロアです。登校すると、子ども達はその日の予定を確認します。スケジュールボードに、それぞれの子の時間割がマグネットで並べられています。時間割はそれぞれの子で違うものになっています。教科によって支援級で過ごしたり、交流級に行ったり、運動場や音楽室に行ったりと、けっこう移動が多いです。交流級というのは、通常級のクラスでの授業・活動に参加することです。「協力学級」「親学級」などとも呼ばれています。B組在籍の子どもは、全部で6人程ですが、B組の教室に常時いるのは2〜3人。なかには1日中交流級で過ごす子もいます。A組、B組の子達が揃うのは給食の時間。机を全部くっつけて、2クラス合同で先生方も一緒に食べています。その様子は、カオスと言っても過言ではないくらい賑やかです。両クラスの最上級生である、A組の6年生の男の子は人気者。下の学年のお子さん達が慕って、おんぶをせがんだり、給食を配ってあげていたりと、微笑ましい様子も見られます。下校時刻は、それぞれの学年に準じたものになっています。上級生になるほど、6時間目の授業も増え、クラブ活動などもあります。低学年の子達が下校する6時間目には長男と先生のマンツーマンになることも多く、学習が捗るようです。チームで子ども達を見守る、先生達出典 : 支援級の担任は、A組はしっかりした女性の先生、B組はベテランの男性の先生です。そして、それぞれのクラスに副担任の先生がつきます。介助員さんも、両クラス合わせて常時2~3名が学校にいる感じで、主に身体介助の必要なお子さんのお世話や、交流級に行っている子の付き添いなどをして下さっています。子ども1人当たりの大人の数が多く、チームで手厚く見守って頂けます。とはいえ、クラスに不安定になっているお子さんがいる時には、複数の先生がその子にかかりきりになる状況などもありました。そして、支援級の担任の先生は、前回の記事でもお伝えしましたが、必ずしも、支援に詳しいとは限りません。長男のクラスの担任の先生は定年間近の大ベテランの先生でしたが、4月の時点では支援について、ほとんど何もご存知ではありませんでした。ですが、「お母さん達のほうがお詳しいでしょうから…」と、親の話を一人ひとり、謙虚に丁寧に聴いて下さり、私は本当に頭の下がる思いでした。その姿を見て、私は「あ、大丈夫だな」と思いました。先生は多少のことには動じないタイプで、個性の強い子ども達に忍耐強くつき合って下さり、長男も信頼している様子で、私は安心して見ていることができました。知識・経験以前に、先生自身が安定していること、子どもと基本的な信頼関係が築けることが、私はまず必要なように思います。そして、その子に合わせたり、親の話に耳を傾けてくれる姿勢があれば、例え支援に対する知識・経験が十分ではなくとも、次第に「プロ」になって下さるように思えます。気になる学習内容は…?出典 : うちの支援級の学習内容は、その子の進度に合わせたプリント学習です。プリントは本当にオーソドックスな問題を、教科書の順に添ってひたすら取り組むような形です。私は支援の本にあるような手作り教具やICT機器などをジャンジャン使って、体感的な授業がそれぞれの子に行われる様子を夢見ていたので、正直、やや肩すかしでした。それでも、通常級の一斉授業のスピードについていけず、ノートも取らずにぼーっと過ごしていた時に比べれば、私にはずっと有意義な時間のように感じられました。算数は、長男がつまづいている九九や、筆算の手順など、何学年も前のところから戻ってスタートし、少人数の環境の中、自分のペースでじっくり取り組んでいました。国語は、学習内容はほぼ理解できるものの、漢字がどうしても出て来ないので、学習補助用のiPadを持ち込んで辞書アプリで調べながら進めました。ただ慣れて来ると、プリント中心の学習はつまらなくなったのか、苦手科目以外のプリントに落書きが増えてきました。その時は先生に相談して、もう少し学習内容を調整して頂けるようお願いをしました。課題のレベルは「大体できるけど、定着してないこと」から「やや難しいけれど、なんとかできそうなこと」くらいが、その子にちょうど良い学習レベルだと思います。長男は「やさし過ぎる」「難し過ぎる」ものは、どちらも集中できないようです。長男の場合は、パソコンなど興味の強い科目から交流級で参加し始め、体育や図工などの実技教科、2学期には理科・社会も…というように、長男の様子をみながらこまめに連携し、徐々に交流級を増やして頂きました。そして算数もマイペースにコツコツとプリントに取り組み続けた結果、学年相応まで進めることができ、3学期には、全科目交流級での授業になりました。通常級でできてしまった大きな段差を、支援級で長男自身のステップで徐々に上がっていったことにより、学習への自信がついたのです。異年齢・多種多様!支援級の子ども同士の様子は…?Upload By 楽々かあさん休み時間、B組(発達障害の傾向のあるお子さんが中心となるクラス)の男の子達は、手作りカードゲームなどをして楽しく遊んでいました。時折、通常級の次男も、支援級に顔を出して、一緒に遊んでいたようです。次男曰く「エアコン、効いてるんだよね~」とのこと。体温調節が身体の機能的に苦手なお子さんもいるため、うちの両支援級はエアコンが完備されています。転籍前、精神面の凸凹差の大きな長男は、通常級の同年齢のお子さん達と、やや話が合わないようでもありました。でも、異年齢で多種多様なお子さんの集まる支援級では、年下のお子さんと気が合ったり、年配の先生方とたくさん雑談できるので気が楽だったようです。とはいえ、B組の子同士の関係は、仲のいいときはすごく良いけど、ちょっとしたきっかけで大げんかするという、ジェットコースター式。気持ちを言葉で伝えたり、妥協することが苦手な子が多いため、実際の所、衝突事故も多かったです。でも、その中で長男は、「ゆずってあげる」「合わせてあげる」ことの大切さに少しずつ気づけたようにも思います。また、B組では長男は一番年長。クラスのお子さん達をまとめたり、お手本になる役割も与えられました。それよって学校での「居場所」ができたようです。支援級で過ごしたことは、長男の心の成長にも大きなプラスになったように思います。支援級に移ったことを、通常級の子たちはどう受け止める…?出典 : 交流級に行くことで、支援級と普通級を行き来していた長男は、通常級の先生の目から見てもさほど違和感なく溶け込んでいたようです。また、支援級にいても、運動会などの行事では今までクラスメイトだった通常級の子達と一緒でした。運動会の組み体操も林間学校での野外活動も、支援級の先生方に見守られながら、不安に思うことをひとつひとつクリアしながら参加しました。少しだけハードルを下げたり、大人が見守ってあげたりすることで、皆と一緒にできることはたくさんあると思います。長男が支援級に移った時は、それまでと態度が変わった子もいました。長男に対して以前より距離を置く子もいれば、かえって優しくなった子もいるし、何も変わらない子もいました。でもさまざまな機会を通して、一緒に過ごすことで、普通級の子達も支援級の子たちに慣れていきます。多感な年頃の子達の間には、お互いに取り扱いが難しい面も少なくありません。さらに、空気を読めなかったり、集団の中で目立つ行動を取ってしまう長男にとって、コミュニケーションのハードルが高いであろうと思う部分は今でもあります。それでも長男は、6年生に進級したら、居心地良さそうにしていた支援級を卒業して、皆と同じクラスに戻ると言います。私は、支援級に転籍したときのように、長男に通常級の良い点、そうでない点の両方を伝えましたが、今回も長男の決意は変わりませんでした。そこには、好奇心の強い彼にとって今の成長に必要な刺激があるのかもしれません。また、合理的に物事を判断する長男にとって、考えられるデメリットを上回る何かを、今は感じているのかもしれません。子どもの成長と学び方は、一律一様ではないのだから…。ここまで3回に渡り、私達親子の実際の体験から、支援級と通常級の間にある選択肢、支援級を検討する際の判断のポイント、そして、うちの支援級の実際の様子をお伝えして来ました。支援級は本当に千差万別で、私には「うちの」支援級が標準的かどうかも分かりません。でも、具体的な情報が開かれてゆくことで、もっと支援級が身近で気軽に感じられる場所になってほしい、と私は願っています。また、支援級と通常級、それぞれにメリット・デメリットがあり、私にはどちらがいいとも言えません。でも、通常級にいる子達にとっても、長男が5年生を過ごした支援級を「別世界」と感じてるわけではないと感じています。そして、一つだけ確かなことは、日々成長する子どもたちによって、その個性の発達のスピードやその子に合った学び方は、一律一様ではない、ということです。これは長男の今までの育ち方と、興味関心のあり方を見守って来た私が、実感として思うことです。柔軟に、臨機応変に、その子に合った学び方が、どんなお子さんにも安定して提供される日が、なるべく早く来ることを、同時代を生きる子を持つ一母親として、私は願ってやみません。Upload By 楽々かあさん大場美鈴(著), 汐見稔幸(監修), 『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法』ポプラ社, 2017年
2017年04月10日生まれた時から、「障害」は私の特徴のひとつだったUpload By 和田 恵利菜「障害者」という言葉に私はこれまで親しみを感じながら生きてきました。他ならぬ自分自身が障害者と呼ばれる立場にあるからです。私は先天性の障害で、3歳の時から電動車いすを使用しています。歩くことはできませんし、握力も弱く、自分の腕を持ち上げることも出来ません。できないことは多くありますが、現在、私は障害を自分の特徴の一つだと思っています。私は小中高と地元の学校に通い、現在は大学で心理学を専攻しています。大学では比較的バリアフリーが進んでおり、友人や先生、ヘルパーの方の手を借りながらも、快適に生活ができています。しかし、小中学校、高校での生活は、物理的にも制度的にも困難に感じることが多くありました。9年間ずーっと1階の教室で過ごした、私の同級生電動車いすを使用する私にとって、最も大きな問題はやはり「移動」です。学校には多くの段差が存在し、当然、階段も使用しなければ学校生活を満足に送ることはできません。小学校、中学校では、小さな段差や階段に対しては、スロープをつけるなどの工事を行い、問題を解消してもらえました。しかし、私の地元にはエレベーターの設置がある公立学校は少なかったため、私の通っていた小中学校でもエレベーターを設置してもらうことはできませんでした。そこで対策として、私の学年の教室は常に1階に設置してもらうこととなりました。小学生から中学生までの9年間、私はずっと1階の教室で勉強をし、日々の学校生活を楽しんでいました。Upload By 和田 恵利菜私の在籍していた学校は小中一貫校で、周囲の友人も9年間ほとんど変わることがありませんでしたので、当然、私の同級生も9年間、1階の教室で過ごすことになったのです。そんな中、ある日私は「僕だって1階じゃなくて上の階の教室がよかった」という同級生の声を耳にしました。自分のために周りの人たちに我慢を強いているのではないか。はじめてそう気が付いた私は悲しく思い、同時にどうしたらよいのか分からなくなりました。そんなとき、私を救ってくれたのは「私は1階の教室も好きだし、気にならないよ」という友人の言葉でした。彼女にとっては何気ない言葉だったのだろうと思いますが、当時の私にとっては「私に合わせて変えた環境を、受け入れてくれる人もいるんだ」と感じることができた大切な言葉でした。私は、環境を工夫すれば「障害者は障害者でなくなる」と思っています。それは私のような身体障害だけではなく、全ての障害に当てはまることだと思います。Upload By 和田 恵利菜できないことは環境の工夫次第で、できるようになります。幼少期、児童期の私にとって、歩けないこと、腕がうまく動かないことは、劣等感を感じさせるものでした。自分が思うように行動できないもどかしさにイライラしたり、周囲の人に迷惑をかけてしまっていると罪悪感を感じたりすることもありました。しかし、小中学校、高校、大学と進学し、その都度、環境を工夫し、支援をしてもらう中で、私が学校で「できないこと」は減らせることを知りました。つまり、それぞれに適した工夫によって、身の回りの「障害」がなくなった瞬間に、障害者は障害者でなくなるのです。特にそれが顕著なのは、発達障害なのではないかと思います。「環境を整える」−かつて私が受けた支援は、発達障害の子どもたちにも必要なものだったUpload By 和田 恵利菜私は現在、放課後等デイサービスでアルバイトをしています。そこでは発達障害やその傾向のある小学生の勉強を見たり、一緒に遊んだりしています。子どもたちの中には、周囲に人がたくさんいる状況で集中して勉強することが難しかったり、自分の思いや考えを言葉で表現することが難しかったりする子もいます。どうやったら子どもたちが快適に過ごせるようになるのか、どうするのが子どもたちにとって最も良いのか、私も試行錯誤の毎日です。ですが、そんな中で気が付いたのは、環境を整えることができれば、彼らの可能性はぐんと広がるということです。集中が続かない子どもに対して、時間を細かく区切って活動する、仕切りを立てるなど一人で落ち着いて勉強に取り組める環境を作る、一度にすべての指示をせずにひとつずつ図示して伝える。全て本に載っていたり、講義で学習したりした、発達障害のある子どもたちに対する対応策の一例です。Upload By 和田 恵利菜これら全てを実践してみることはまだできていませんが、一部を実際に試してみると、一見できないと思っていたことが、簡単にできるようになる子どもたちがいました。特に指示をひとつずつ伝えるということは意識を持つだけで簡単に実践できるので、私は常に気を付けるようにしています。これらの対応策は、多くが「環境を整える」というものです。そして、私が学校で受けた支援も同じ「環境を整える」というものなのです。合理的配慮の広がりに向けて、当事者として声をあげたい困難の内容は、障害によってそれぞれだと思いますが、案外、解決方法は似ているのではないか。私はそう思います。個人の特性に合わせて環境を変えていくのに、個人の力だけでは限界があります。そこで私が注目したいのは「合理的配慮」です。合理的配慮とは、2016年4月に施行された障害者差別解消法において、障害の有無にかかわらず、全ての国民が互いを尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して定められたもので、私は障害者一人ひとりの特性を踏まえた支援を行える可能性が広がったのではないかと考えています。Upload By 和田 恵利菜行政機関と民間事業者との義務の違いがあったり、配慮を実施する側の負担が大きすぎる場合など、全ての要望が実現するわけではありませんが、法律で障害者への配慮について定められたのは、大きな一歩だと思います。実際に、私は現在通っている大学に配慮の提供を申し出て、何度も話し合いを重ねてきました。また、自分が高校で受けた支援内容を行政機関に紹介したこともあります。私は、合理的配慮による可能性の広がりに期待を持っていますが、多くの人が快適に過ごせるようになるには、まだまだたくさんの課題があるようにも感じています。Upload By 和田 恵利菜例えば、要望通りの配慮が行われない場合や、配慮を申請し、実施するまでの手続きに長い時間がかかってしまう場合などは課題として挙げられるかもしれません。これら全ての課題を解決するには長い時間がかかるとは思いますが、私たち当事者ができることは、まず声をあげる、そして伝えることだと私は考えます。配慮を提供してくれる側に、何か伝える前から「私たちのことを分かって」「こちらの要望を察して」というのには無理があります。こちらの要望や状況を理解してもらうには、自分はどういう状況にあって、どういう配慮をしてほしいのか、適切に伝える必要があるのではないかと思います。目に見えない、言葉にならない障害に、周りの人たちはどんな”通訳”ができるだろう出典 : ここで、私がもうひとつの課題だと考えるのは、当事者本人が言葉を介して、自分の現状や意見を伝えることが難しい場合もあるということです。私の場合は、電動車いすを使用していて、段差や階段などの物理的障壁を解消する、トイレや移動の介助をするなど、要望は比較的目に見えやすく、想像のしやすい配慮だと思います。しかし、私はアルバイトで発達障害を持つ子どもたちを見ていて、言葉で適切にコミュニケーションをとるのが難しいと思える場合を目にし、代わりにそれを伝える役割の存在が必要なのではないかと感じました。それは保護者や友人、先生や同僚など、様々な可能性が考えられます。一人でも本人のことを理解し、それを周囲に伝えることができる人がいれば、当事者の生活はぐっと快適になり、社会に出ていくことができるようになるのではないでしょうか。障害者を取り巻く課題は、まだまだたくさんあります。環境の工夫だけではなくて、心のバリアフリーも進めていくことももちろん大切です。人はみんなそれぞれ異なった特徴を持っています。その特徴を生かして社会で暮らしていったり、反対にその特徴によって社会で生きにくくなったりします。それは障害を持っている人も持っていない人も同じです。それぞれの特徴や個性を、みんなが認め合い、障害者もそうでない人も互いに支え合いながら、共生できる。そんな社会になってほしいと私は願っています。私も自分の身近なところから、行動を起こしていきたいと思います。Upload By 和田 恵利菜
2017年04月07日「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、発達ナビでアンケートを実施厚生労働省が定める「発達障害啓発週間」(4月2日~8日)にあわせ、LITALICO発達ナビでは発達障害に関する意識調査を実施しました。ご協力してくださった皆様どうもありがとうございました。この記事では、調査結果の一部を抜粋しお伝えします。<調査対象について>「LITALICO発達ナビ」会員へのメールから、アンケートフォームにて回答いただいた発達障害当事者:101名、発達障害の子どもをもつ保護者:788名の回答を集計しました。(調査期間:2017年3月7日~3月15日)※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100 にならない場合があります。発達障害児の子育てで困り感を感じている保護者は約8割お子様の発達障害の特性と思われることによって、保護者であるあなたご自身は、どの程度日常生活で困っていますか?という質問に対して、「とても困っている/やや困っている」と答えた保護者は80.7%、「全く困っていない/あまり困っていない」と答えた保護者は19.3%と、日常生活に困りを感じている保護者は8割を超えました。Upload By 発達ナビニュースどういったことに困りを感じているかに関しては、「障害の特性ゆえの言動が周囲から理解されず、しつけをしていないといつも白い目を向けられ精神的に追い詰められる場面が多い(ASD・6~12歳の親)」「他人について行く、母子分離が難しい、訓練会やセンターでも体操や手遊びを嫌がる(ASD・3~5歳の親)」「本人の生きづらさを変える手助けをしてやりたいが、その方法がわからない。気持ちが不安定になり荒れているのを見ても、寄り添って落ち着くのを待つしかできなくて苦しい。(ASD・13歳以上の親)」「将来が心配。毎日息子が朝ブツブツ文句を言って大変。何でも決めつける。こだわりが強すぎて疲れる。(ADHD・6~12歳の親)」「指示が入りにくいため、同じ事を何度も伝えなくてはいけないが、上手く伝わらない。思い立つと行動してしまうため迷子になることが多い。(ASD・6~12歳の親)」などといった意見があげられました。発達障害の診断を受けると楽になる?苦しくなる?お子様が発達障害と診断・告知された後の心境に、どのような変化がありましたか?という質問に対しては、「とても楽な気持ちになった」が12.1%、「やや楽な気持ちになった」が32.9%、「特に変化はなかった」が11.5%、「やや苦しい気持ちになった」が21.1%、「とても苦しい気持ちになった」が22.5%と、楽な気持ちになった親御さんは計44.9%、苦しい気持ちになった親御さんが43.5%とほぼ同数になりました。Upload By 発達ナビニュース楽な気持ちになった理由としては、「子どもの行動の理由がわかったから(ASD・13歳以上の親)」「今後の子育てをどのように進めていけばよいかがわかったから(ASD・3~5歳の親)」「自身の育て方に問題があったのではないことがわかったから(ASD・6~12歳の親)」などが挙げられました。苦しい気持ちになった理由としては、「もっと早く診断されていればよかったと思ったから(ADHD・13歳以上)」「子どもの将来が心配になったから(ASD・3~5歳)」などが挙げられました。周囲の無理解を感じる理由は…お子様の発達障害の特性について、周囲の人たちから理解されていると思いますか?という質問に対しては、「理解されている」が50.7%、「理解されていない」が49.3%と、ほぼ同数となりました。Upload By 発達ナビニュースどういうときに理解されていないと感じるかに対しては、「見た目がふつうに見られるから(ADHD・6~12歳の親)」「厳しく躾ければやれるようになると思われている(ASD・6~12歳の親)」「本人の困り感が見た目には分かりにくく、助けてもらえない。(ASD・6~12歳の親)」「勉強もでき、多動もないため一見なんともなく見えるため、親が気にしすぎだと考えられがち。(ADHD・6~12歳の親)」「見た目は普通なので、親が甘やかしているからワガママなだけなんじゃないかと思われる。(ASD・3~5歳の親)」などといった意見が挙げられました。発達障害のある子どもの保護者は、世間の発達障害に対するイメージをどう思ってる?発達障害に対する世間のイメージと実態にギャップを感じることはありますか?という質問に対しては、「ギャップを感じる」は80.8%、「ギャップを感じない」は19.2%と、約8割の保護者がギャップを感じているという結果になりました。Upload By 発達ナビニュースどのようなことにギャップを感じるかに関しては、「発達障害と診断されたらお先真っ暗と思っている方が多いけど、そんなことない!わかることでできるフォローがある!(ASD・3~5歳)」「考えるプロセスや、行動というアウトプットが異なるのでなく、そもそも感じ方というインプットの段階が異なっており、しつけや訓練でどうなるものでもないこと(ASD・6~12歳の親)」「1つの診断名でもいろんなタイプの人がいることを知らない人が多いなぁと思うし、自分も息子のことだけをみて発達障害を理解してはいけないなぁと自戒の念も含め思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害そのものを知らない人が多いと思う。もっと重くてコミュニケーションがとれないような障害と思われているように思う。(ASD・6~12歳の親)」「発達障害は天才だと思われているせいで、親の育て方で変わると思われているところ(ASD・13歳以上)」などといった意見が挙げられました。さらなる調査結果はプレスリリースにてその他の回答に関してはLITALICOのプレスリリースに記載しています。発達障害の当事者・発達障害児の保護者へ意識調査を実施 過半数の当事者・保護者が「発達障害」に対する社会の理解は「進んでいない」と回答LITALICO発達ナビでは今後も発達の気になるお子さんや親御さん、当事者のさまざまなご意見やご経験を参考にしながら、よりよいサービスづくりと世の中に対する情報発信を続けていきます。今後ともLITALICO発達ナビをよろしくお願いします。
2017年04月07日1歳からずっと爪かみをやめてくれなかったUpload By モンズースー主治医の先生に相談した時に「爪かみは無理にやめさせないほうが良い」と言われました。爪にバンソウコウを張ったり苦い薬を塗ったりする方法もあるようですが、先生に聞いた話では「爪かみで気持ちを落ち着かせようとしているのにそれを無理にとめてしまったらストレスが溜まる一方」とのこと。確かに自分で周囲と会話ができるようになり、気持ちが落ち着いてきた頃に長男も爪かみが落ち着いてきました。完全にやめるきっかけは食べ物でしたが、楽しい方向に無理なく切り替えられたのでこれはこれでよかったのかなと思います。
2017年04月07日同じ「ADHD」の2人。でもその特徴は全然違っていて…Upload By モビゾウADHDの息子は集団療育に通っています。そこでの息子の相方は、同じADHDの診断がついた男の子です。ところが、2人の特性は全然違っていて、「本当にこの子たち同じ診断名で良いの?」と思うほどなのです。ADHDとはAttention Deficit Hyperactivity Disorder の略です。日本語では「注意欠如・多動性障害」となります。ところが、うちの息子はどちらかというと「多動性障害」の部分だけが強く出ています。たとえば、終始ワサワサと動き回り、おしゃべりも止まらず、相手の指示をジッと待つことが苦手です。それに対し、一緒にセッションを受けている相方の男の子は、どちらかというと「注意欠如」のほうが強く出ているように見えます。どうやら先生の呼びかけに対して注意を向けることが難しいようで、セッション中も終始先生から「○○くん、こっちを見てね」と声をかけてもらっています。はたから見たら、2人は対極的です。大騒ぎで落ち着きのないうちの息子と、静かなんだけどもなかなか先生の問いかけに反応をしない相方の子。最初は息子の落ち着きのなさがどうしても悪目立ちしていました。それを見た私は、相方の子は大人しく、手がかからない子なんだろうなと思ったりもしました。しかし、相方の男の子の親御さんに話を聞くと、違う悩みがあることがわかりました。注意欠如の特性が強い子は、ボーっとしていて車にひかれかけてしまったり、幼稚園の課題中も別のことをぼんやりと考えていて注意されてしまったりするそうなのです。同じADHDの子供を持つ親でも、こんなに悩みの種類が違うのかと実感した瞬間でした。正反対の2人を上手にまとめる、先生の「技」とはUpload By モビゾウ「ADHD」といっても、持っている特性によってこれだけ違うのです。こんな全く違った子どもたちをまとめる療育の先生たちの苦労は、察して余りあるものがあります!衝動性がなかなか抑えられないことに加えて、「1番こだわり」がある息子。そして、注意欠陥でどうしてもぼんやりしてしまう相方の男の子。この2人で一緒にセッションをやると、どうしても息子が優先されてしまうことになります。先生が「次はこれをやりましょう。」と言うと、息子は先生の指示を遮って「やるやるやるやる!!ぼくぼくぼく!」と飛んでいこうとします。かたや、相方の男の子はぼんやりとして外を眺めていて、先生の指示が入っていません。普通にやっていたら、なんでも息子がやることになってしまいます。しかし先生方は、息子の衝動性を抑えつつ、相方くんの注意も惹きつける離れ業でセッションを進めてくれます。療育の先生は、「やるやるやるやる!!!」と大騒ぎする息子に、オブザーバー(観察者)の役を与えます。「今回はあなたは相方くんの作業を見て、どんなところが素敵だったか、最後に先生に教える係だよ」と。発達障害の子どもというのは、「待ちなさい」「やめなさい」と言っても納得しないことがあります。そういう時はこのように、何かしらの役割を与えてみるとうまくいくこともあります。先生はこれを実践して、息子と相方くんを上手にハンドリングしてくれているようです。まさにプロにしか為せないセッションだと思います。このようにADHDや発達障害と一口で言っても、一人ひとりの特性は全く違います。私は息子と相方くんを絶妙のテクニックでコントロールする療育現場の先生を見ながら、教育現場での先生方の大変さに思いを馳せずにはいられませんでした。大切なのは、「発達障害」でひとくくりにしないこと。出典 : 息子と相方くんの、特性の全く違う「ADHDっ子」のちぐはぐな掛け合いを見ていて思ったことがあります。それは、「発達障害児」というくくりで子どもを見てはいけないということです。どの子も、何らかの困難を抱えている子どもではあります。けれども、「発達障害児はこういうもの」とくくってしまうことは決して出来ないのだと感じます。「ADHDという障害があるからこの支援をする」といった杓子定規にとらわれた考え方では、サポートとして不十分。この子はこの子。診断名にかかわらず、その子にとって必要な支援をすることが大切だということを忘れてはいけないと思いました。また、様々なタイプの発達障害児を支援していかなければならない現場の先生方の大変さにも思いを馳せるようになりました。両親の側からもできることとして、その子の特性をまとめたレポートを作ってお渡しするなどすれば、先生方もよりスムーズにサポートを行うことができるのではないかと思っています。
2017年04月06日療育帰りの長男を待つバス停で、話しかけてきた少女3年前、バスで療育から帰ってくる長男を待っていたときのことです。私と次男は、同じ施設に通う子のお母さんと3人でバス停で立ち話をしていました。Upload By シュウママそこへ一人の少女が近づいてきました。少女は中学生くらいでしょうか――私たちに向かって話しかけようとしているのに、目はどこか遠くを見て小さな体をぶるぶると震わせています。特別支援学校の制服を着ているその少女は知的障害があるようでした。彼女の額には汗がにじんで、ひどく焦っているように見えました。ぎゅっと結んだ手の中には何かが握られている様子……。彼女は私達のそばに来ると握った拳を開きました。Upload By シュウママ少女が拾った落し物に困惑見るとその手のひらには、小さなカラーゴムが乗っていました。Upload By シュウママおそらく子どもが落としたものでしょう。ラメが入っているのかキラキラと光っていますが、人の足に何度も踏まれたのか全体に汚れ、古ぼけていました。彼女は一生懸命言葉を探すように、ゆっくり、ゆっくりした口調で言いました。Upload By シュウママこんなものを……とっさに私は言葉に詰まり、何と返していいかわかりませんでした。金銭の入った財布ではないし、真新しい手袋や綺麗なハンカチですらない。カラーゴム一つを落し物として持って行ったって、おまわりさんが相手にするはずがないでしょう。そして私自身、古びたゴムを宝物のように扱う彼女に「かわいそうに……。この子は交番に持っていくものとそうでないものの区別がつかないんだな」という同情を感じました。そのくせおまわりさんが「そんなもの持ってくる必要ないよ」と心無い一言をもしこの子にかけたなら、この子はひどく傷つくだろう、そんな傲慢な心配まで頭をよぎりました。知的障害の人たちに対して、かわいそう、という上から目線の感情が自分の中にありながら、一方で他者がその人たちを傷つけることに憤るという矛盾したものが存在していたのです。「届けなくていいよ」と言おうと思った瞬間、一緒にいたママ友は「届けなくていいよ、そのまま地面に置いたままでいいんだよ」出来るだけ優しい口調で言ってこの場をしのごうかと思った時です。一緒にいたお母さんが、すっと手を差し出したのです。そして彼女が握り締めたカラーゴムを、壊れ物を扱うようにそっと受け取ったのです。そして優しい口調で言いました。Upload By シュウママ私達は市役所前のバス停で話していたのです。そのお母さんは「必ず届けるからね。安心してね」とにこっと笑いかけました。それを聞いた少女はほっとしたようにこわばっていた表情を崩し、笑顔で何度も頭を下げて走り去って行きました。Upload By シュウママUpload By シュウママ一部始終を見ていた5歳の次男も、「ゴム落とした人早く見つかるといいね」そう言ってニコニコと私に微笑みかけました。この時私は、親として恥ずかしい姿をわが子に見せなくて良かったと思いました。「障害は一人ひとりの個性」そう思ってきたはずなのに、残っていた哀れむ気持ち出典 : もし私が「そのまま地面においておけばいいよ」と少女に言ったなら、どうなっていたか。少女はこのゴムは取るに足らないものなんだと恥ずかしく思ったかもしれません。勇気をふり絞って話しかけたのに突き放された気持ちがしたかもしれません。私自身が彼女の優しい心を傷つける当事者になるところだったのです。彼女にとって、地面に落とされたものが財布であれ古いカラーゴムであれそんなものは関係なく、失くした人が困っているだろうと必死な思いで私達に託そうとしたのです。その思いを汲み取らず、次男の前で、長男と同じ知的障害のある少女の優しい心を置き去りにしようとしたことは本当に恥ずかしいことだと思いました。わが子の自閉症が分かってから特に、障害は一人ひとりの個性であり決して恥ずかしいことではない、そう思ってきました。けれど自分の中にもやはり、障害のある子を哀れむ気持ちが残っていたことに気付かされたのです。あの時、少女に話しかけられ、とっさに言葉につまった私とは対照的に、一緒にいたお母さんはとても自然でした。当たり前に人として訊ねられたことに人として向き合って答えた、ただそれだけのことだったのです。ただそれだけのことがいかに大変なことか。障害者への偏見をなくそう、障害者と健常者の垣根をなくそう、そのことを意識した時点で、私の心の中にすでに大きな壁をつくっていた……。そのことに気付かされたできごとでした。
2017年04月06日いつも元気な夫は、子どもたちの人気者!我が家の大黒柱の夫。いつもテンションが高く、常に笑顔です。帰ってきたときいつもハイテンション!そんなハイテンションな夫の帰宅を、子どもたちは心待ちにしています。Upload By SAKURAどんなときでも、とにかく笑顔。夫は、私が娘とももめているときも、笑顔で見守ってくれています。私の機嫌が悪い時は、笑いで返してくれます。とにかくいつも笑顔で、ニコニコ!たまにそんな夫に逆にあたってしまうこともあるのですが…(汗)。Upload By SAKURAそんな元気な夫が体調崩すと、家の中はどうなるかと言うと…そんなムードメーカーな夫が体調不良になると、家は突然静かになり…私と娘はテンションがガクンと下がります。一人で我が家の明るさを保っていると言っても過言ではないのです!Upload By SAKURA夫の明るさは、療育の支え。いつまでも元気でいてね!娘の発達障害がわかってから今まで、我が家が暗くならなかったのは、本当に夫のおかげだと思います。今まで何度も夫の笑顔に救われてきました。夫にはとても感謝しています。いつまでも、元気で明るいパパでいてね♡Upload By SAKURA
2017年04月05日特性のカミングアウト、正直なところ慎重派な母。Upload By かなしろにゃんこ。発達障害があることを、どんな人にどのタイミングで打ち明けるのか、迷いますよね。私も、息子にADHDがあると周囲に伝えたことでイヤな顔をされることは正直何度かあります。発達障害がある先輩たちの中には告白したことでイジメを受けたり、差別を感じることがあったと聞いたりしていますし、わざわざイヤな思いをするリスクを増やすのもめんどうくさい。そんなこんなで、息子が大学生となった今では「発達障害があるとちゃんと伝えるのは学校の先生だけでいいな…」とすら思う、カミングアウトには消極派な母、なのです。Upload By かなしろにゃんこ。息子にも身近な人以外には言わないほうがいいよ!と伝えたのですが、中学校のときの仲の良い友だちにはカミングアウトしていたのも知っています。自分には発達障害があると伝えた後に友だちの出方を見て、発達障害があってもなくても関係なく付き合っていける人とだけ仲良くしようというのが彼の思いでした。というわけで、昔から身近な人に特性をカミングアウトどうするかをめぐっては、親子でちょっと意見がずれていました。隠しごとができないADHDの特性。嫌われないか心配になったりしないの?Upload By かなしろにゃんこ。なんと、つき合っている彼女にもADHDがあることを伝えたというのです。私は正直に話してしまったら嫌われるかもしれないのに…と心配しましたが、彼女は発達障害の知識のある子だったようで息子が当事者でも別に気にならないと言ってくれたということでした。息子は彼女のことが好きだから、隠しておきたくないと考えたようです。特性があっての自分なのでADHDのことも知ってほしかったのだろうと思います。Upload By かなしろにゃんこ。「全部ひっくるめてわかってほしい」息子なりの気持ち趣味の話や楽しい話だけしていた仲は次第にメンタルな会話もできるようになっていったそうで、発達障害のことを話してみて良かったのかもしれなと息子は言っていました。これまで付き合いたてのカップルのギクシャクした会話もあったという二人は、カミングアウトしたことで深い話もできる仲に変化したようです。本人に直接「気になる!」なんて言えないでしょうから優しさで「気にならないよ」と言ってくれたとしても、うちのおバカな息子と付き合ってくれる優しいお嬢さんに感謝しかありません!いつかお会いしてお礼をしたいと思う母でした。Upload By かなしろにゃんこ。
2017年04月04日発達障害の娘と息子にとって、映画館は恐怖の館!?出典 : わが家には自閉症スペクトラムと診断された9歳の娘と6歳の息子がいます。まだ発達障害の疑いすら持っていなかった頃、娘の幼稚園のお友達に誘われて「シュガーラッシュ」という映画を観に行ったことがありました。初めての映画館でしたが、子ども向けの映画だし、お友達も一緒だからきっと楽しめるだろうなぁと軽い気持ちで出かけたのですが…結果は大惨敗!我が家の子どもたちは、まず映画が始まる前のCMの大音量で固まってしまいます。その間に本編が始まり、暗闇に恐怖を感じたかと思うと、今度はめくるめく色と音の洪水に翻弄されます。全身ガチガチに力が入った状態で何とか座席に座り続けたものの、子どもたちは映画が終わると同時に私にしがみつき、静かに泣いていました。それ以来、子どもたちにとって映画館というのは「恐怖の館」でしかありません。時々お友達に「観に行かない?」と誘ってもらっても、首を横に振って黙り込むばかりでした。しかし、映画を観ること自体が嫌いなわけではないのです。家でDVDを借りて来て、安心して過ごせる家で部屋を明るくし、いろんな映画を観て過ごしてきました。映画館であれほど泣いていた「シュガーラッシュ」も、今ではDVDを購入して何度も観るほどお気に入りの映画となっています。「子どもが大きくなったら、一緒に映画館で映画を観たいなぁ」と漠然とした夢を持っていた私ですが、別に映画館に行けなくても、家で楽しめれば十分だと思っていたのですが...どうしても映画館に行きたい!子どもたちが自分で乗り越えると決めた壁出典 : この春、『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』という映画が公開されました。我が家の子どもたちはドラえもんが大好き。それでも昨年公開された『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』は、映画館への恐怖に打ち勝つことが出来ませんでした。DVDが発売されるのを待ちに待って、家で何度も何度も繰り返し鑑賞したのです。しかし今年は、「DVDが発売される秋まで待てる気がしない!映画館に観に行きたい!」と頻繁に言うようになりました。これは大きな成長の証。映画館で映画を楽しむために払う犠牲が大きすぎることは、子どもたち自身もよく分かっています。その上で、どうしても行ってみたい!という気持ちが湧いてきたお陰で、苦手なことに挑戦するチャンスがやって来たのです。さらにこれは、親の方から「頑張ってみなさい」と声掛けをされたのではなく、子どもたちが自ら挑戦すると決めたことです。強いストレスを感じると出やすくなる娘のチック症状にも変化はなく、自分から進んであれこれ対策を練って楽しみにしています。子どもたちが考えた対策は以下の3つです。・ 大きな音が出ると覚悟しておく・ 光が眩しい時は目を閉じて音だけ聞く・ 暗くなっても怖い人は絶対に来ないと念じるこれに加えて私から、・怖い!危ない!もうダメ!と思っても、『きっとハッピーエンドだから大丈夫』って自分に言い聞かせよう・怖くなったらいつでもママの手を握っていい・席を立ちたくなったら、いつでも一緒に退席するということも伝えました。こんな準備を進めながら、とうとう映画を見に行く日がやってきました。どちらか1人が退席する可能性を考慮して、主人にも一緒に来てもらいます。準備は万端、いざ家族で映画館へ!その結果は…出典 : ただでさえ人混みが苦手な子どもたち。負担を少しでも軽くするために、春休みに入る前の平日に映画鑑賞に出かけると、とても空いていて座席も選び放題でした。発達障害があるお子さまの映画デビューを考えていらっしゃる方の中で、幼稚園や小学校を休むことにあまり抵抗のない方は、長期休暇中ではない平日の朝かお昼(お子さまが疲れていらっしゃらない時間帯)にチャレンジされても良いかも知れませんね。前後のお客様から離れた席を選択すれば、盛り上がったところで少し声を上げてしまったりしても、映画の大音響にかき消されます。あまり迷惑にはならないはずですし、退席もしやすいと思います。緊張と不安と喜びで始まる前からテンションがおかしかった子どもたち。さて、最後まで映画を見られるのでしょうか…?鑑賞中、息子はずっと私の手をすごい力で握り締めていました。娘もずっと張りつめていたのでしょう。誰かのセリフだけが劇場の左右からドーンと聞こえてくる演出があるのですが、驚いてびくりと肩を震わせ、緊張の糸が切れたように私にもたれかかっていました。ストーリー自体はとても楽しめたようです。ただ覚悟はしていたとはいえ、やはり心身に及ぼされる影響は強かったように見えました。二人ともぐったりとして機嫌が悪くなり、私とも目を合わせずに下を向いて歩き、自分の殻に閉じこもっしまいました。実は夕方から習い事の予定があったのですが、とても出掛けて行けるような状態ではなく、お休みすることにしました。子どもたちが、自分自身の成長を振り返るいい機会に出典 : を待たずに映画が観れたことを考えると、また来年も観に行きたい!でも、こんなに疲れるなら正直なところ、もう二度と映画館には行きたくない…。そんな相反する思いが二人にはあるようです。今のところ、「また来年も挑戦してみる」と言っていますので、その際には・ 一日の予定は映画だけにして、帰宅後にしっかり心を回復させる・ 目の前がスクリーンでいっぱいになると刺激が強すぎるので、少し後ろの方の座席を選択する・ タオルやぬいぐるみなどの安心グッズを持ち込んで、緊張を緩和させるなどの対策を取ろうと話し合っています。子どもは急には成長しません。ですが、一年に一度「映画館に挑戦してみる」というミッションをこなすことで、「最初は泣いていたのにね」「去年はこうだったのにね」と子ども自身も、自分の成長を確かめられるいい機会になるのではないかと思います。親が「やりなさい」と押し付けるのではなく、子ども自身の「やりたい」をサポートする形で、親子で一緒に成長し楽しめるものが少しずつ増えていくといいですね。
2017年04月04日ヲタママだっていーじゃない!
STEAM教育って何?
子育て楽じゃありません